○川本
委員 先ほどからお聞きすると、通達、通達とおっしゃるのですけれども、それが地方の
労働基準
局長の手元でとまってしまっておったのでは何ら実効は上がらぬ。私が全国的に、その通達に基づいて全国の
労働基準局がどういうふうに対処しておるかということを調べますと、北海道の
労働基準
局長だけが、これに対する協力要請という形の文書を各事業主に流しておるわけです。「基本的には賃金収入の低下をできるだけ防止することに配意をするとともに、次の点に留意した指導を行なって、
労使の十分な協議のもとに対応策を講ぜしめること。」というこの基準
局長の通達をそのまま下部に出しているのは、ここだけなんです。ほかはまだどこも流していない。
先ほどからお聞きしますと、全部通達を出しました、通達を出しましたということですが、通達を出して、それで全部が終わってしまったのでは困る。通達を出したときからが始まりでしょう。それから、それをいかに実現さしていくか、実行に移していくかという努力がなされない限り、私は、ここで幾らいい御答弁をいただいても、これは絵そらごとに等しいと思うわけです。
だからひとつ、そのことについて、実際ここで参議院の矢山先生に対する答弁で言われました一〇〇%上積みさせるという努力、指導を現実にどうされたのかということについて、次の機会にまたお聞きしたいと思いますので、それまでに十分御努力をいただいておきたいと思うわけです。
そこで最後に、もう時間がありませんので一言だけお聞きしておきたいと私は思うのです。
先ほども申し上げましたように、私の奈良県というところの民有林は、全国一位だと私は思っておるのですが、その私どもの奈良県で、奈良市にあります国立の教育大学の家政学の教授で清水キワという教授がおられる。この方が昭和五十年の四月三十日に「過疎地の家計に関する一研究」という論文を発表しておられるわけです。日経
新聞にも載っておりましたので、あるいはごらんいただいた方があろうかと思うのですけれども、その中を見てみますと、大塔村というところは人口も少ない小さな村ですけれども、村の全人口の中で、世帯数はわずか四百戸余りなんですが、その中で三百十四名が山林
労働者、そのうちで二百五十五名が専業の山林
労働者であるということで村民の九八%。「昭和四十五年国勢
調査統計による村内林業従業者中、専業及び兼業の山林
労働者は九八%に達する」というふうに言っておられるわけです。
さらにその中で、白ろう病の問題にもいろいろ触れられておるわけです。「山林労務の
種類、職業病、
労働災害」という中で「山林
労働者が慢性の腰痛を訴えている。また伐採用自動鋸は手鋸の二十倍以上の能率を上げるが、それの使用時の振動は毛細血管の血行障害をおこし、手指がしびれ、激痛を伴ない、白蝋状となるので白蝋病とよばれている。進行すれば筋萎縮、心臓障害をおこし廃人になってしまう人がたくさんいる。」ということをここで記述しておられるわけです。
そして一番最後に、これは家政学の先生ですけれども、この家政学の先生が、一番最後のところで結びの言葉としてこういうことを言っておられるわけです。「朝は四時から夕方の七時までも精魂をかたむけて働き、稼働不能日の
労働分を取りかえすのである。時間的にも、仕事量の上からも、正に過重かつ危険な
労働といわなければならない。このような
労働があればこそ三百年あまり山を維持しつづけて来た。日雇という、
資本面からは一見合理的であり、
労働力を維持するという
生活面からは不合理な賃金形態は、決して
産業振興に寄与するものではないことが、僻地山林
労働者については特に強調されてよい。」私は、これをひとつ林業
対策あるいは日本の
労働対策の中で取り入れてもらいたいと思うからこの研究をしたのだ、参考の一助にしてもらいたいということを最後に言っておられるわけです。
まさにそのとおりで、いま白ろう病が民有林でたった九百人しか出ていない、奈良県においても三千人もおると言われながら二百六十何人しか出てこない、その
原因は何かというと、白ろう病だと認定されると休業補償では
生活できなくなるわけですね。さらに一日二時間、週五日以上働いてはいけないと言われても、働かなければ出来高払いの賃金ですから食えないわけですね。そういう山林
労働というものの前近代性、こういうものがいまの白ろう病を大きく進行さす
原因になっていると思うわけです。
だから、そういうことを
考えましたときに、少なくともいまの山林
労働者の
雇用の安定あるいは
労使関係の近代化、そういうことをまずやらない限り、白ろう病を撲滅することはできないのじゃなかろうかと私は思うのです。
労働基準法でも時間とか休日
労働とかいうことについては、山林
労働者は除外するという規定があるのは御承知のとおりです。
労働基準法は昭和二十二年九月にできたものですから、チェーンソーもなければ集材機もなければ、架線の機械もなければフォークリフトもなかった
時代です。だから、そういう
時代の法律をそのままいいものとして三十年たった今日まだ放置しておるというところにも
一つの問題があるのじゃなかろうかと思うわけです。
私は、まずそういう点について、
一つは農林省、林野庁の方にもお聞きしたいと思うのですけれども、やはり林業振興という
立場から
考えても、あるいは山村振興という
立場から
考えても、現在の林業
労働の実態をそのままに放置しておいていいと思うのかどうかということをまずひとつお聞きしたい。
さらに
労働大臣からは、
労働基準法の
改正とかあるいは林業
労働を近代化するための特別の立法をするとか、そういうようなことについて必要と思われるかどうか、その点最後にお聞きしたいと思うわけです。