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1977-05-24 第80回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年五月二十四日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 島本 虎三君    理事 登坂重次郎君 理事 林  義郎君    理事 向山 一人君 理事 土井たか子君    理事 水田  稔君 理事 古寺  宏君    理事 中井  洽君       相沢 英之君    池田 行彦君       永田 亮一君    福島 譲二君       藤本 孝雄君    山本 政弘君       東中 光雄君    刀祢館正也君  出席国務大臣         建 設 大 臣 長谷川四郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁企画調整         局環境保健部長 野津  聖君         環境庁自然保護         局長      信澤  清君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君         通商産業政務次         官       松永  光君         通商産業大臣官         房審議官    平林  勉君         通商産業省立地         公害局長    斎藤  顕君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省都市局長 中村  清君         自治大臣官房長 近藤 隆之君  委員外出席者         国土庁計画・調         整局計画官   田中 信成君         国土庁地方振興         局東北開発室長 城  宏明君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 仲村 英一君         農林省畜産局自         給飼料課長   山田  績君         林野庁林政部管         理課長     渡邊 信作君         林野庁指導部計         画課長     下川 英雄君         林野庁業務部監         査課長     石田 基隆君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件(公害対策  並びに環境保全の諸施策)      ————◇—————
  2. 島本虎三

    島本委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本政弘君。
  3. 山本政弘

    山本(政)委員 建設大臣が、二十分でしたか、時間が余りないようですから、建設省関係のことから先にお伺いしたいと思うのです。  今回のアセスメント法について先週質問を申し上げましたら、二十一省のうちに二省といいますか、通産と建設だけが意見を持っておる、他の省庁については賛同いただいているけれどもというお話があったわけです。そこで両省について御質問申し上げましたけれども、なお、私としてはお伺いしたい点がございますので、あえて再質問を試みたわけであります。  そこで、建設省について問題点をお伺いいたしましたら、建設省の方としては、都市計画法に規定をする都市計画施設に関する事業、それから市街地開発事業については都市計画法に定めるところによって措置をすべきであると考える、こういうお話がございました。そしてその点については、なお都市計画決定についてはすでに住民意見聴取手続が存する、建設省としては住民参加手続法だと考えているからというようなお話がありまして、いま申し上げたように、住民意思聴取手続がすでに存在している、だから本法案対象外として都市計画法制にゆだねるべきである、実はこういうお話があったわけであります。  そこでまずお伺いしたいのは——自治省の方お見えになっておられるでしょうか。先般、私、自治省についてお伺いをしたのですけれども、私の質問で不十分なところがありましたから、実はもう一遍確かめてみたいわけであります。建設省は、都市計画地域内の都市計画施設、つまり道路とか電気事業とか河川工事とか、それから公団法に基づく住宅団地、それから流通団地地域振興整備公団法による業務宅地開発公団等が行う宅地開発等々がありますが、そういうものや市街地開発事業、これは多摩ニュータウンとかあるいは福井臨海工業ですか、そういう地帯のようなものがあると思いますが、そういうものをアセスメント法案から外す、そして知事環境影響予測評価を行う、そして評価書をつくる、公開、縦覧、それから説明会住民意見取りまとめ等をやる、こういうふうに考えているようでございます。要するに、そういうことが地方自治体知事で一体やれるのか、どうだろうか。私は、大変荷が重いという感じが実はするわけです。したがって、お伺いしたいことは、一体可能なのか、可能でないのか、この二点のどちらか、これは環境庁の係の方、どなたでしょうか、お二人にお伺いしたいと思うのです。
  4. 近藤隆之

    近藤政府委員 お答え申し上げます。  実は、アセスメント法案に対する建設省提案というのを、私ども建設省からお聞きしておりません。アセスメント法につきましては、環境庁の案というものを基礎といたしましてわれわれ検討いたしておりましたので、建設省案なるものを存じないわけでございますけれども、ただいまのお話によりますと、都市計画法でやるすべての事業については知事評価を行うということのようでございます。都市計画法で行います事業の中で、ただいま御指摘のように、住宅公団が行うもの、地域振興整備公団が行うもの、あるいは臨海工業地帯、いろいろなものがあるわけでございますが、そういったものの環境評価ということになりますと、そういうのをすべて都道府県知事ができるものかどうか。アセスメント法性格から言って、現実事業を行うその事業実施主体が行う方が適当じゃないかというような感じがちょっといたしますけれども、何分、建設省案そのものを私ども拝聴いたしまして建設省の御意見というものを十分検討したわけではございませんので、ちょっと感じたまま申し上げて恐縮でございますけれどもアセスメント性格からいきまして、事業主体がやるのが当然ではなかろうか。それから、たとえば公団事業というようなものについて知事がこれをアセスメントしろと言いましても、現実問題としてはなかなかむずかしい点もあるのじゃなかろうかということで、万一そういう方向でございますれば、それを前提としてもう一度検討しなければならないんじゃないかと思っております。
  5. 山本政弘

    山本(政)委員 ちょっとお伺いしますが、つまりそういう法案であればなかなかむずかしいというふうに受けとめていいですね。
  6. 近藤隆之

    近藤政府委員 ただいまも申し上げましたように、建設省案というものについての細かい説明を私ども受けておるわけじゃございません。ただ、いまのお話によりますと、都市計画事業で行うものは現実のその中に行われる事業主体がどんなものでも全部知事がやれということのようでございますけれども、そうなりますと、アセスメント性格からいきましてそういうことが果たしていいのかどうかということと、知事能力という問題もございます。私ども従来から、大規模公団住宅、それから大規模道路、そういうものについては当然その事業主体が行うものだという前提でおりましたので、そこまですべて都市計画事業であるから都道府県知事が行うということになれば、やはり地方団体能力とかそういったものにつきましても、そういった見地でもう一度地方団体側と十分打ち合わせなければいけないのじゃないかと思います。
  7. 山本政弘

    山本(政)委員 自治省官房長からそういう意見がありました。建設省の方からお伺いしなければわからないけれども、もしそういうことであればむずかしいんではないか、あるいは知事能力を超えたものではないだろうかという話があったのですが、環境庁のどなたか担当の方、意見聞かせてほしい。
  8. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 都市計画地域内のいろいろな都市施設あるいは市街化事業等につきまして、知事がそのアセスメント予測評価を行ったり、いろいろな手続アセスメントについて行うということは、現状ではまず不可能だろうと思います。
  9. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ建設省担当の方にお伺いいたしますけれども自治省も、建設省の方からお話を改めて聞かなければむずかしいということである。環境庁の方の担当者からもそういう話がありました。私は前回質問の中で、都市計画法に規定する都市計画施設に関する事業及び市街地開発事業については都市計画に定めるところによって措置すべきであるというふうにちゃんと御答弁を実はいただいたからそういう話を申し上げたのであります。つまり、両方の担当者の方はむずかしいと、こう言っているわけですね。あるいは知事能力を超えたものであると、こう言っている。そうすると、要するにできないものをあなた方はやらせようというお考えをお持ちになっているのかどうなのか。その辺がぼくは問題になるところだと思うのですよ。つまり、言葉として大変妥当を欠くかもわかりませんが、あなた方のお考えというものは、やはりできないものに対して横車を押しておるのじゃないだろうかという感じが私はいたします。率直に言えば、このアセスメントというものを、言葉としてそういう言葉がいいかどうか知りませんが、つぶしたい、あるいはおれたち権限だ、権限は荒らしたくないというようなふうに私は受け取らざるを得ないような気持ちになるわけですが、一体いま申し上げたように、能力を超えたものである、不可能と考えると、こういうようなことに対してどういうふうにあなた方はお考えになっているのか、あえてそれをなさろうとしているのだろうか。
  10. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 いま自治省お答えはよく私も聞いておりましたからわかります。しかし、現在できている法案があるわけでございます。新しく建設省案をつくったというのじゃございません。現在できている法案で、その法案をどういうふうに環境庁法案とマッチさせるかという、こういう面で何かまだその面が追っつかないのじゃないでしょうか。現在できているのですよ。できている法案と新たなるものとどう調和をとるかという、そこのところだけではないでしょうか。
  11. 山本政弘

    山本(政)委員 それは前に斎藤さんから私はすり合わせというような言葉で、法案すり合わせをしたいということで御答弁をいただいたのですよ。だけれども、仮に法案すり合わせをするしないは別にしても、建設省の方の答弁は、つまり都市計画法に規定する都市計画施設に関する事業、それから都市開発事業については都市計画で定めるところによってやりたい、こういうことなんですよ。だから法案幾らすり合わせをしても、つまり都市に関する、人口八〇%を擁する、地域的に言えば二割の地域であるところについては、全部おれたちの言う都市計画法によってやらせろという考えが根底にあるわけなんですよ。私はそういう答弁をいただいているからそう申し上げているのですよ。それならば、そういうことの内容を持つものが現実地方自治体首長実施をできるのかどうだろうかということで、きょう御質問をしたわけですね。それができないということなんですから。ですから、それは早とちりしてもらっては困るのですよ、いきさつがあるわけですから。どうなんですか大臣、要するにあれで話し合いをしようと言っているわけで、話し合いをしたって実際のやる人は地方自治体首長なんですよ。だから首長が、どんなに法案をこうやったって、現実にそういうことを実施していくのは知事だとすれば、知事にとってそれが大変な負担になるだろうし、いまさっき話があったように能力を超えたものになる、こう言っているのです。
  12. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 だから、自治省お答えは、まだ建設省法案内容も見ておりませんからと、こうおっしゃるわけです。別に新しい法案を対抗として出しているという意味ではないのです。だから、現在ある法案といま新たにつくろうという法案と、これは環境影響評価というこの問題は、なさなければならない問題なんですから、なさなければならない問題というものが前提にあるのですから、そのすり合わせといまおっしゃった、それをどこでどういうふうに調和をとっていこうかという、これはひとつ事務的にもう少し詰めてもらわなければならないのではないだろうかというふうに考えます。しかし、この公共事業実施に当たって、こういう問題は当然しなければならない問題で、環境アセスメントというものはなさなければならない問題なんですから、そのくらいの調和両省役人が集まってなぜできないのかと私の方は言いたいぐらいでありまして、こういう点については、今後も十分にそれを理解させて、今後は具体的な実効性のあるものにしていかなければならぬというふうに、私はそういうふうに考えております。
  13. 山本政弘

    山本(政)委員 大臣、私は根拠なしに聞いているのじゃないですよ。環境影響評価法案というのが法案としてはもう環境庁から出ているわけです。出ている中で、第一条、目的、第二条、定義とありますが、この定義の中で、従来のような考え方、つまり建設省考え方でいけば、都市計画法、それから市街地開発事業都市計画に基づく都市計画施設に関する事業、それから市街地開発事業について都市計画で定めてやりたい、こう言っているわけですね。それはすり合わせとかなんとかという問題ではなくなってくるのですよ。すり合わせというのは要するに評価の問題とかあるいは予測の問題とかですり合わせをしたい、こう言っている。しかし、そんなところに問題があるというのじゃなくて、そこにも一つの問題があるけれども、しかしもう一つ、問題が二つあると私は言うのです。一つの問題は、つまり都市計画法でやるとするならば、都市計画法制と言った方がより正しいかもわかりませんが、そういうことでやるとすれば、この環境影響評価法案で言われておる十幾つかの開発事業というものがあるわけです、その開発事業の中の市街地開発事業流通業務団地造成事業日本住宅公団が行う事業地域振興整備公団が行う事業、そういうもの、それから河川法に基づくもの、要するにこういうものがすべて建設省のおっしゃる都市計画法に基づいて行われることになってくるということなんです。  つまり私の言いたいことは、これは権限の争いではないだろうか。当然アセスメントというものは、環境庁が言っているようにこのアセスメント法案に基づいてこうしなければならぬやつを、何か権限としては渡したくないというようなことで、要するに横車を押しているというふうにしか私は受け取れないのだ。あなたの言うような法案すり合わせとかなんとかいうことではないんだ。法案すり合わせということは別問題なんですよ。わかりませんか。ですから、そのことについて知事能力を超えたものである、こう言っているから、それを一体どういうふうにするのかと、こう言っているのですよ。
  14. 中村清

    中村(清)政府委員 お答えを申し上げます。  自治省官房長も先ほど申されましたように、私ども環境庁から環境影響評価法案の御提案を受けた際に、実は、後ほど申し上げますが、私どもとしてはこういうふうにしたいという対案をお示しをしました。まだ環境庁事務的に十分詰まっていないという段階でございましたから、自治省の方にはもちろんお話をまだ通しておりません。そういう段階お話でございまして、この間もお答えを申し上げましたように、都市計画といいますのは、そもそも良好な都市環境を形成するということと、都市機能を維持、増進するということを目的にしておるわけでございますから、先ほど権限どうのこうのという御指摘もございましたけれども、私どもは毛頭そういう気持ちはございませんで、本来都市計画というものは先ほど申し上げましたように、環境をよくしようということがそもそもその中身でございますから、環境についてどういう予測をしどういう評価をするかということは、実は都市計画手続とは切り離して考えられないのじゃないか。環境をよくするということ自身が都市計画のすでに内容になっておる。こういったことが頭にございまして、先ほど御指摘がございましたが、私どもは、都市計画については都市計画法制の中で環境影響評価をやりたいということを言っておったわけでございまして、たまたまその中身が、いままでやっておった中身とそれから環境庁から御提案がございました新しい法案をいろいろ考えてみますと、確かにいままでは実際上は予測評価をやっておりますけれども、それは法制上は情報公開という仕掛けが出ていない。実際問題としてはたとえば説明会開催でございますとかあるいは公聴会開催であるとか、そういう機関を通じまして環境の問題についていろいろ御議論がある、やりとりがある、そういった過程を通じて最後に都市計画決定という段階になるわけでございますが、そういったことは実際上いろいろやっておりましたけれども法制上は情報公開という制度がはっきりしていなかったので、今度はそういうこともはっきりした上でやりたいということで、都市計画法中身を変えたいという御提案を申し上げた次第でございます。
  15. 山本政弘

    山本(政)委員 私が一番心配することは、要するに都市計画事業というのがあなたのおっしゃるように個別法でもし対処するとするならば、他の対象事業も同じように個別法でやりたい、こうなってくるわけですよ。そうすると、アセスメント法案というものは結果的には意味のないものになってくるのじゃないですか。私はそれを一番心配しているわけですよ。  それからもう一つは、前に工場立地適正化法というものをつくろうとした。いまの工場立地法ですね。このときも、同じような事由をもって反対というか、要するにそういうことをしたのは建設省だと私は思うのですよ。都市計画法というのは、むしろ土地の利用といいますか、立地といいますか、そういうものについて用途地域別とかあるいは建築基準とかいうものについて、そういうことをおやりになればいいのであって、環境というものは、いまのような時代になれば、時代の要請に従ってそれを一つの基本的なあるいは総合的なもので規制をしていくという考えというものが、時代に一番適合した考え方だと思うのですよ。しかし、それに対して何も考えようとしておらないということなんですね。それは大変おかしいと思うのです。  何か大臣の退席の時間が来たというのですが、大臣、こういうことがあるでしょう。私があなたに申し上げたいことは、これは七十一国会からずっと環境影響評価関係の各大臣国会答弁ですよ。全部、要するに何とかしたい、真剣に取り組みたいという返事なんですよ。八十国会のあなたの答弁を見てみましたよ。福田総理は「環境影響事前評価法を早期に制定すべし」「これは、世論もそういう高まりを見せておるわけでございますが、やはり私も、」「開発行為が行われる前に効果的な環境影響評価をしておく必要がある、こういうふうに思います。」こう答えておるのですよ。これは衆議院の本会議です。そして、衆議院予算委員会でも、石橋書記長質問に対して「開発に当たりましては事前に十分な環境アセスをする、これは当然のことであります」「その体系整備をするということをはっきり申し上げます。」こう言っておるのです。そして、三月三日の衆議院予算委員会であなたは何とおっしゃっているかというと、「公共事業環境との調和を図るために、」「建設省としては従来からきめ細かい対応に努めているところでございまして、これに対して何も別に、何の不平も不満もございません」と、こう言っているじゃありませんか。あなたの答弁ですよ。そのほかにもあるのです。これも衆議院予算委員会、三月十七日。「アセスメント法につきましては、」「一日も早くその結果があらわれるように進めておるところでございます。」こうおっしゃっているじゃないですか。  ところが現実には、いまお聞きのように、そして前回の私の質問にもありましたけれども、要するにいろいろ意見を述べて、すり合わせとかなんとか言っている。そして、道路とか電気事業とか河川住宅団地流通団地、あるいは多摩ニュータウンとか福井臨海工業地帯の問題も含めて、そういうことに対する問題については建設省でやりたい、こう言っているわけでしょう。これは法案を変えるという問題じゃないのですよ。基本的な考え方の問題じゃありませんか。いまあなたが申されたような答弁だったら、総理の言ったことに相反しますよ。もしあなたが総理意見と全く同じだというんだったらば、いまの建設省局長その他の方々の答弁とは食い違いがあるということじゃありませんか。閣内不統一なのか、省内不統一なのか、どっちなんです。
  16. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 いまでも変わりはございません。総理がおっしゃっているとおりだと思います。  ただし、環境庁建設省のその衝に当たる人の話し合いが、たとえばこういうふうなものをつくるんだけれども、現在こういう法律があるんだから、その法律調整がとれないなんということは断じてあるべきものじゃないはずなんです。環境庁がつくったものが、そのままそっくり修正というものがなくてすべてがいくんだ、そういう絶対的なものでなくて、従来ある法律十分考慮に入れた上に立って、お互いがそこのところを譲り合ってその大眼目に到達するということが、役人としての当然の義務だというふうに私は考えます。私の意見は、精神は、いま読み上げていただいたそのとおりで、一つも変わっておりませんということを明らかに表明いたします。
  17. 山本政弘

    山本(政)委員 時間ですね、わかりました。  あと一つだけ。五十二年五月十三日の閣議で、環境庁長官環境影響評価法案の取り扱いについて発言をいたしましたね。御存じですね。その後で官房長官記者会見をしております。そこで、来国会に出すのかということを質問されて、そういうことだ、とにかく早く成果を得るように努めたい、こう言っております。問題点はどこかと聞かれて、電力都市計画、特に電力が問題だ、こう言っております。そこで私は、大臣一つだけ。閣議了解というのがありましたね、昭和四十七年でしたか。それじゃ、これは閣議決定まで持っていくようなお気持ち、ありますか。いま最大限の努力をするんだとおっしゃったから。それも私は一つの進歩だと思うのですけれども、その点はいかがでしょう。大臣は大変賢明な方だから……。
  18. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 この法案をつくるときにすでに閣議を経てきておるのであって、改めてこれを閣議決定に持っていく必要はない、もうこれだけのものができて、今日なさなければならないということは、われわれ全部が認識の上に立って承知しておるところでございますので。ただ、建設省環境庁事務員が、事務に当たっているのが、なぜその調和がとれないのか。おれの方はこれでなければならないんだと言うが、こっちにもあるんだから、それじゃ、それをこういうふうにしようぐらいの話し合いができないということは、私はあり得ないだろうと思う。私は、新たなる問題として閣議決定に持っていく考えはないと考えております。
  19. 山本政弘

    山本(政)委員 まあ、時間がないそうですから、大臣に、お帰りになって問題点がどこにあるかをもう一遍確かめていただきたいと思うのです。そうしなければ、あなたのような簡単な御返事はできませんよ。これだけは私申し上げておきます。そんなに簡単なものじゃありませんよ。法案が骨抜きになるのかどうかという問題なんですよ。要するに、最も基本的なものがなくなるかどうかという問題にかかわるから、私は申し上げておるのです。あなたのように、事務当局で話し合いをしたら簡単に解決がつくものではないだろうと私は思うのです。私も御質問申し上げるのですから、多少の調べはしてまいりました。しかし、この法案というものは半分はなくなってしまうのですよ。建設省の皆さん方の主張は、そういう性格を持っている主張なんです。そして、私が一番おそれるのは、そういう主張がまかり通ったら各省庁、つまり二十一省庁のうちの残りの十九省の人たちも同じようなことになりかねないということを私は危惧するのですよ。だから申し上げておるのです。しかく簡単なものじゃございません。  どうもありがとうございました。  通産省の方、おいでだったら、もう三十分しかございませんから、要するに私は質問だけ申し上げます。  前回問題点の中で、SO2とBODしか予測評価ができない、だから問題がある、こういう話を私はお伺いしたわけですが、SO2とBODしか予測評価しないアセスメントというものが一体アセスメントと言えるのだろうかどうだろうかということなんですね。それから、SO2とBODしか予測評価しないような法律というものが一体法律として成立し得るのだろうかどうだろうか。私はそのことに対して大変疑問があるのですけれども、これは環境庁意見を聞かせてほしいと思うのです。
  20. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 現在環境庁で、いろいろ環境影響評価の審査等毎年相当の数行っておるわけでございますが、これは大気汚染あるいは水質、それから騒音とか振動あるいは自然環境問題とか各般にわたってやっておるわけでございます。したがって、SO2とBODしか評価をしないというようなアセスメントということになりますと、これはもうアセスメントという名に値しないものじゃないかというふうに思います。法律をつくります際にも、その二つのことしか入れないような法案をつくれと言われても、これはできない相談だと思います。
  21. 山本政弘

    山本(政)委員 しかし、現実には通産省はそういうアセスメントをやってきたわけですね。電源開発調整審議会で計画決定をした発電所が未着工になっているというのがたくさんある。それでちょっと調べてみたのですけれども、十一ぐらいありますね。一番古いのは四十一年の四月四日に決定をしているのだけれども、未着工になっている。  つまり、いま申し上げたように、SO2とBODしか予測評価をしないというようなアセスメントをもし通産省がやっておったとすれば、これはいいかげんなアセスメントになってくる、したがって、それが住民の反発を招くというようなことでトラブルが起こってくるのはあたりまえだ、ぼくはこう思うのですよ。一体その辺はどういうふうにお考えになっているのか。つまり、通産省がおやりになっているアセスメントというのはいいかげんなものだったのかという疑いを私は持たざるを得ないのですが、その点いかがですか。
  22. 斎藤顕

    斎藤(顕)政府委員 お答え申し上げます。  先日の私の先生への御答弁でSO2、BODの問題を取り上げました趣旨は、現在、科学的に論理が確立され、そしてその予測評価が的確に行われる、そのシミュレートが可能なものはSO2とBODしか実はないのでございます。他の項目は、現在予測はしておるけれども、そういうふうな意味からの正確度というものが確立されておらない、したがいまして、現在これを法律で規制するというふうな手法をとる場合には、政令でその辺をはっきりできるものとそうでないものとを書き分けていくべきではないかという考え方一つございますということを申し上げると同時に、もし全般的な問題として取り上げていくならば、法律による義務づけということになりますとそこに大変な主観の相違が入ってくるおそれがございますので、むしろ法律によらないで行政指導という形でしばらく運用していったらいかがでございましょうかという趣旨を申し上げたわけでございます。
  23. 山本政弘

    山本(政)委員 要するに、評価のできないものについてはこれを政令にゆだねるという話なのですが、私、この前もお話し申し上げたように、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律というのがありますね。  これは上田喜一東京歯科大学の教授がお書きになった論文でありますけれども、この人は中公審健康環境基準専門委員会の委員長であります。この人が、私が申し上げたようなことを言っているのですよ。要するに、化学物質というものについては、自然界における残留性というものが一つある、それから生物体内の蓄積性というものが一つある、慢性毒性というものが一つある、こう言っているのですね。  それで、自然界における残留性の点、分解が非常に容易なものについては、これはシロと分けてしまう、そして残りのものについて、生物体内の蓄積性というものについて検討してみる、これが第二のスクリーニング試験といいますか、そういうものだ。ここには灰色のものがたくさんあるけれども、しかしまあまあということでこれならよかろうというようなものについてはのけていく、そして蓄積性というものについてきわめて疑わしいものについては、これは慢性毒性があるかどうかということで試験をしてみるということで、クロが出るかシロが出るかテストした結果、クロならクロということでこれを特定化学物質として規制していく、こういうことなのですね。そうすると、この灰色についてはあなたのおっしゃるように数値は出ないのですよ。その出ないものについては、政令によって特定化学物質にしてないのですよ。そうなってくると、あなたがいまここでおっしゃったこととは違ったことが同じ通産省で行われているという事実があるわけですね。この点はどうなのですか。  もう一つは、慢性毒性があるということで、それじゃ特定化学物質として規制の対象になっているのは一体どんなものがあるか、それを聞かせてください。六千から七千あるいは一万とも言われる化学物質の中で、あなたのおっしゃるように、そういう評価ができないものがたくさんあるだろうと思うのですよ。しかし、平林さんの話では、大変ごまかしがこの前の答弁ではあったと思うのです。要するに、残留性というものがはっきりし、蓄積性というものがはっきりする、そうしたら残りのものは全部政令にゆだねるのです、こうおっしゃったのだけれども、シロとクロの間に灰色の部分がたくさんあるわけですよ。そういうことをおっしゃっておれば、いま斎藤さんがおっしゃったことと非常に違うものが同じ通産省でまかり通るという結果になる。私はおかしいと思うのですよ。
  24. 斎藤顕

    斎藤(顕)政府委員 繰り返して御答弁申し上げることになるかと思いますが、法律によりましてアセスメントを施行していく場合には、どういう項目を予測し、評価していくべきかということを政令ではっきり書く必要がございましょう、そういう政令で書くものはどういうものかというと、その辺の因果関係と申し上げますか、SO2、BOD等の科学的に知見しそして評価し得るものを定めていくべきでございましょう、こういうふうなことを意見として申し上げたわけでございます。  それから、いまの第二の先生の御質問でございますが、実は私ども、いまその専門家も来ておりませんので、ちょっと時間をいただきたい、後ほど御説明に参上したいと思います。
  25. 山本政弘

    山本(政)委員 科学的に知見し得るものについては法として載せていく、科学的に知見し得ないものについては政令にゆだねるというわけでしょう。そうですね。
  26. 平林勉

    ○平林政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律で、この対象となる物質が政令で定められることになっておりますが、先生御指摘のようないろいろな要件がございまして、そういう要件に該当するもので政令で定めるということでございまして、不確かなものを政令で定めるということではございません。現在政令で定められておりますものはPCBだけでございます。
  27. 山本政弘

    山本(政)委員 そんなことを言っているんじゃないのですよ。ぼくの言ったのは、難分解性とか蓄積性とかいうものを除いてみて慢性毒性のはっきりしたものについては特定化学物質として政令にゆだねる、それがいま申し上げた化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律でしょう。そしていまその適用を受けているのは、あなたのおっしゃったようにPCBだけだ、こういうことなんですよ。ところが上田さん自身がこう言っているのです。五千も六千もあるものだから、危険物資を選び出して試験を行うには相当な期間がかかると言っているのです。だから、まだわからないわけですよ。わからないものが幾らでもあるわけですよ。しかも、そのことについてあなた方は法律にちゃんと載せられているわけですよ。知見し得ないものについて法律に載せるのだったら、あなた方の言うアセスメントについて、知見し得るものは法律に載せる、知見し得ないものは政令にゆだねるということとこの法律とは正反対のものになりはしないだろうか、私はこう言っているのです。そんなものが一つの省でぬけぬけと使い分けができるのでしょうかと言っているのですよ。
  28. 斎藤顕

    斎藤(顕)政府委員 私の御説明が御理解いただけなかった面があるようでございますので、再度同じことでございますけれども環境影響評価の場合にどういう項目を評価していくということを、はっきり政令で書くべきであるというのが通産省の意見でございます。したがいまして、そういうふうに予測評価できるものをはっきり書いていきませんと、こういうことについて評価が要るのですよということをはっきりしていきませんと、後々その評価の価値をめぐっていろいろな意見が出てくるおそれがある。したがって、どの項目について今後影響評価をしていくかということを法律上政令にゆだねてはっきりしていただきたいという意見環境庁に申し上げておったわけでございます。付随的な問題としまして、それでは現在政令にゆだねられるはっきりしたものというのはどういうものがあるかと申し上げますと、SO2、BODははっきりしておりますけれども、その他いろいろな項目がございますが、それらのものははっきりしておらないものでございまして、法律的にこれを義務づけていくというところにいささか難点があるのではないかという意見環境庁に申し上げておったということでございます。
  29. 山本政弘

    山本(政)委員 どうもすれ違いになってかみ合わないのですけれども、結局SO2とBODしかできないと言っているわけでしょう。ところがエネルギー庁の通達では自然環境から草案その他細目にわたって調査を指示している文書が出ていますね。これにはNOxですか、そういうものについても全部出ているわけですよ。そして発電所の立地に関する環境調査の審査についてエネルギー庁長官の通達が出ているわけですね。こういうものを出しておってなおかつアセスメントができない、その法案に対して反対であるというのが理解ができないのですよ。つまりいま科学的にはもちろん限界があるわけです。その限界というものを、要するにここに限界があるんですということを住民にもう少しはっきり知らせるということの中から合意が生まれてくると思うのです。確かなものと不確かなものがあるでしょう。確かなものはここまで、ここから先は不確かです、不確かですけれども、当面考えられる最高の技術にはこういうものがある、この技術を駆使してできるだけ精度の緻密なものにしていきたいということで住民の理解あるいは合意を得る、こういうことじゃないのでしょうか。私はそう思うのですがね。
  30. 斎藤顕

    斎藤(顕)政府委員 私どもの基本的なアセスメント法に対する考え方は、先生御指摘のようにそういう不確かな、現在の段階では科学的に完全な予測あるいは評価ができないものが多いから、そういう時期に法律で規制していくと、できないものまで法的な裏づけをやらなくちゃならぬことになりますので、しばらく制度の運用といいますか行政的な運用でやっていったらどうでございましょうかと申し上げているわけでございまして、電気の問題も、環境アセスメントの必要性は私ども十分わかっているわけでして、積極的に取り上げてきたわけでございます。そういう意味で長官の通達という運用でやっておるわけでございまして、法律で裏づけて義務を課していくというのはまだ時期的に無理じゃございませんかということを申し上げているのでございます。
  31. 山本政弘

    山本(政)委員 斎藤さん、将来の予測に絶対性というものがあるのでしょうか。その点聞かしてください。
  32. 斎藤顕

    斎藤(顕)政府委員 これは予測でございますから、プラス、マイナスの方向に予測現実とがかみ合わないということはあり得ると思います。
  33. 山本政弘

    山本(政)委員 いまはっきりわかっているものですら、極端な言い方かもわかりませんけれども、要するにバックグラウンドの違いによって変わる可能性はあり得るだろうとぼくは思うのですよ、あなたが絶対性がないとおっしゃるのでしたらね。そうすると、どこで割り切っていけばいいのかということが問題になってくるのじゃないでしょうか。あなたこの前、定性的なものはわかっているのだ、正確に言えばそれしかわかっていないのだ、だから定量的なものはわからないとおっしゃったけれども、定性的なものがわかっておるならば、それに対していまの時点で考えられる最高の技術を使って手当てをしていくということが時代の要請に合った行き方だろうと私は思うのです。と申しますのは、一九七〇年にアメリカで国家環境政策法をつくりましたね。この基本的な考えは、要するに技術を道具にして防衛をしていくということでしょう。技術と言ったら何ですか。つまり考えられる最高の技術を駆使をしていくということじゃないのですか。ぼくはこれが国家環境政策法の基本的な考え方だろうと思うのですよ。ですから、ここで考えているのは手法とか評価というものであって、権利権限といいますか、許認可ということじゃないのでしょう。何か通産省も建設省も、自分たちの権利権限を取られるというようなことでお考えになっているとすれば間違いで、ぼくは事業立法じゃないと思うのですよ。つまり政策立法でしかない。政策立法だということを考えていけば、いま申し上げたようにどこかで割り切らなければならぬのじゃないか。繰り返し申し上げますが、ここまでは確かなんだ、しかし、ここまでは不確かだ、この不確かなものについては技術でディフェンスしていく、問題はここでしょう。その技術でディフェンスしていくというのがいまの環境庁が出されているアセスメント法案だろう、こうぼくは思うのですよ。  と同時に、もう一つは、この法案考え方の大切なところは、決定までの経過というものを大切にしていくということじゃないでしょうか。あなたのおっしゃるのは、トラブルが出るとかなんとかいうことは、極論すれば、いままでは事業主体というものが自分の主観で、と言ったら言い過ぎかもわかりませんが、アセスメントをやって、そしてそれをどんと住民の方に押しつけていくということだったんじゃないのですか。今度のやつはそうじゃなくて、この前ぼくが言ったように、衆人環視と言ったらこれは言い過ぎかもわかりませんよ、しかし、決定までの経過を重視する、不確かなものもある、しかし議論をして政策決断をしていくという、そういう考えというものがこの法案に盛り込まれている、そこにこの法案意味があるだろうとぼくは思うのですよ。そうじゃございませんか。
  34. 斎藤顕

    斎藤(顕)政府委員 実際問題として、アセスメントの手法を運用していく以上、先生の御説もあり得ると思います。私どもも全く同じ考えでございまして、手法の確立され、予測できるもの、現在はまだ予測できないけれども、しかしながら、予測できないものについてはこういうふうにしたらいいんじゃないだろうかといふうなことを政令ではっきり書いてください、こういうことを意見として申し上げ、案の検討をしておったわけでございます。ちょっと私の御説明が不十分な点がございましたけれども、そういう趣旨の検討を環境庁としておった段階でございます。
  35. 山本政弘

    山本(政)委員 どうも私は、そういうことを聞くと、やはり通産省の考え方というのは技術だけでまやかしているという感じがするのですね。繰り返し言いますけれども、決定までの経過を重視をしていこうということですから、わからなければわからぬということを、この点は技術的に解決しています、わかっています、この点はわかりませんということを住民にさらけ出す、それをどうして法案に組み込めないのだろうか、これがぼくにはわからないのです。あとの質問者の方もおられるので、その辺をひとつ次官、どういうふうにお考えになるかということです。それをお答えいただきたいのです。ぼくは、きょうは大臣に本当は出てきてほしいと思うのですけれどもね。
  36. 松永光

    ○松永(光)政府委員 事務的なことは後で必要事項について局長からお答えがあると思いますが、通産省の考え方としては、環境アセスメントについては、その必要性は十分認めておりまして、その立場で電源立地その他につきましても、先ほど先生が読み上げられたような資源エネルギー庁の通達等も出しまして、きちっとやっておるわけでございます。ただ、先ほど局長答弁いたしておりましたように、環境評価の手法や基準等について科学的、客観的でない分野がまだ多々ある、そういう段階法律によって義務づけをするということはかえって混乱を招くという点の指摘を通産省はいたしまして、その点について環境庁事務的にいろいろな折衝をしておる段階でまとまらなかったと、こういうふうに聞いておるわけでございまして、将来につきましては、先生がおっしゃいますように、電源立地がおくれておりまして大変電力需給が逼迫しておること等も考えますと、こういう問題は速やかに解決をしていかなければならぬと思っておるわけでございますが、通産省としては、よい環境を保全していかなければならぬということは十分認識しておりますので、いままでやっておったような手法を基準にいたしまして、今後ともこの環境影響評価はきちっとやってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  37. 山本政弘

    山本(政)委員 ぼくがいま経過が必要だと、こう言ったのは、政務次官、こういうことですよ。伊丹のエアバス問題がありました。これは初めての経験だったと思うのです。私は、両方に異論があったと思うのですよ。しかし、いま私が申し上げたように、この部分は確かな部分です、この部分は不確かな部分ですと、ちゃんとデータをさらけ出して説明したわけですね。それが実は合意に達したわけですよ。もちろん住民の方にとって批判があっただろうと思います。しかし、つまりそういうやり方が結局一つの成果を生んだといいますか、そうすると、これはレアケースだと思うのです。しかし、そういうレアケースというものを大切にしなければいかぬとぼくは思います。だけれども、通産省のいままでのやり方というのは、要するに事業者あるいは行政当局が一方的におろしていく、そして実施段階になってトラブルが起こってくる。そして、データはどうだとかというような問題になって、要するにさっき申し上げたように発電所が十年以上、決定が行われているにもかかわらずできてこないというようなことが出てくるということなんですよ。それを何とかしなければならぬということなんじゃないでしょうか。だから、いままでどおりやっているから差し支えないということじゃないとぼくは思う。その辺をひとつぜひお考えをいただきたいと思うのです。  それから、これは建設大臣にもお話しを申し上げたように、石原長官の発言があり、それを受けて、それから官房長官記者会見の話もあったわけですね。そうすると、そういうことに対して通産省もやっぱり前向きに対応していく責任があるだろうと私は思うのです。それは単に政府だけじゃないでしょう、いまの、世論にこたえていくということが必要だとぼくは思うのです。もしそのことに対して背を向ける、あるいはすり合わせとか何とかいうようなことで、ぼくに言わせたら権限争いをするとすれば、それはやはり国民の意向にはなはだしく背馳したものであるとしか言いようがないと思うのです。ですから、そのことに対して松永さんの最後のお考えを聞かしていただいて、そして質問を終わりたいと思います。
  38. 松永光

    ○松永(光)政府委員 電源立地等についての環境予測について通産省だけで一方的にやっているということではないのでありまして、専門家に集まっていただいた顧問会とかあるいは審議会等があるわけでございまして、そういったところで十分な審査をしていただいているものだと、こういうふうに考えております。なお、ここで問題になっております環境アセスメント法の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、また、先生のお言葉にもありましたように、不確かな部分等について法律で義務づけするということはかえって混乱を招きはせぬかというふうに私は考えておるわけでございます。しかし、いま先生のおっしゃったような予測の手法、評価の基準等々の問題については、十分事務当局でも検討してもらって、今後とも環境庁との議論もしてもらって、何とかひとつまとまる方向で努力してもらいたいというふうに私は考えております。
  39. 山本政弘

    山本(政)委員 終わりますけれども、次官、これだけはひとつ覚えておいてほしいのです。工場立地適正化法案のときに、あなた方というより、行政当局が非常に苦労したことがある。そして工場立地法にいったわけですね。そのときに、まさにあなた方がおっしゃったようなことが他の省からあなた方に言われておったのですよ。私は、他山の石としてそれを生かしてほしいと思います。  希望だけ申し上げて、私の質問を終わります。
  40. 島本虎三

    島本委員長 山本政弘君の質問はこれで終わりました。  次に、土井たか子君。
  41. 土井たか子

    ○土井委員 わが国の大気汚染の状況を見てまいりますと、硫黄酸化物であるとか粉じんによる汚染の改善というものがだんだん進んでまいっておりますが、そういう中で、二酸化窒素の環境濃度というのが依然として横ばいの傾向である。月別に見ていきますと、大変に高い月も実はあるわけでありますが、現在その対策というのが非常に強く地域住民の方々から求められているところです。五十年度の窒素酸化物の現況というのを見ましても、全国の中で有効測定局数が三百四十四都市、六百六十六局の中で、長期的な評価によって見てまいりました場合には、二酸化窒素の環境基準を達成している測定局というのはわずか五十四局でしかない。その中に占める比率というのは八・一%にしかすぎないということになっています。先日五十一年十二月付の資料をいただいた中身を見ましても、この資料の中では五十年度を振り返っていろいろ検討された結果の数値が記載をされておりますが、大気質では、第一次から第五次の計画策定地域内で全有効測定局の基準適合局数がずっとここに述べられておりますが、比率を見てまいりますと、SO2の場合は七三%に何とか努力をしている、達しているのに対して、NO2というところを見るとわずか二%です。こういうふうな状況からしますと、一口に申し上げましてNO2の環境基準の達成状況というのがまことに思わしくないというふうに言わざるを得ないのですね。この原因は一体どの辺にあると環境庁としては現在考えていらっしゃるのですか。
  42. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま事実関係につきましては先生の御指摘のとおりでございますが、原因はどこにあるのかという点を申しますと、一つはNO2とSO2の問題の相違が非常にあるというところにあろうかと思います。これはSO2の場合には燃料の中に入っているSというのを燃料の脱硫で取るか、あるいは排煙脱硫ということで取れるわけでございますが、一方NO2になりますと、どうしても燃焼には空気を使いますと、その空気の中の窒素が窒素酸化物になる。これはもう不可避でございます。それから、燃料の中に窒素が入っておるということで、燃料の中の窒素分も、ある程度の問題はございますが、空気中の窒素が燃焼で使われているところに非常に大きな問題があるということが一点でございます。  次は対策として、NO2は、世界のどこでもほとんど何も体験のないものを、日本が初めて取り組んでおるということでございまして、よその国には一切型がございません。日本がこれに取り組み始めて、しかも年限としてはわずか五年足らずの年限で当たろう。SO2につきましては、正直申し上げますと昭和三十七年以来でございますから、十五年間の積み重ねがあってここにきたというところでございまして、発生源の態様の相違もいろいろございますが、そのようなものが影響している。  最後の問題は、NO2の環境基準条件は非常に厳しいということでございます。
  43. 土井たか子

    ○土井委員 いまのNO2の環境基準というものが非常に厳しいと力を込めておっしゃいましたけれども、その非常に厳しい環境基準をおつくりになりましたのは環境庁でございまして、したがって、その基準値に対してもこれでなければならないという自信がおありになったからこの環境基準というものをお示しになったのであろう。また、こうでなければならないという切なるお気持ちがおありになったから、この厳しい環境基準というものを具体的に示された、そういうことだろうと思うのですね。この厳しい環境基準に対して、現にいろいろな方面からいろいろな意見が聞こえてまいっておりますけれども、この基準値に対してひとつ手直しをしよう、見直そうというふうな作業が現に環境庁の中にございますか、どうですか。環境庁長官、いかがですか。
  44. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 環境庁の中であるかという御質問でございますが公害対策基本法第九条の第三項にある、前段の科学的な知見について、定期的に点検してみるという作業があるのでございまして、環境基準を変えるというような前提に立ってしている作業ではございません。
  45. 土井たか子

    ○土井委員 この九条三項という条文によって、現にその基準値というものについてのいろいろな新知見というものを具体的に検討してみるという作業は、これでよいか、これで不適当であるか、適正であるか、さらに何らかの手直しをする必要があるか、そういうことの意味が全然ない作業というふうに理解をしていいわけでありますか。
  46. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 審議会に対しましては、これでよいか悪いかという諮問は一切いたしておりません。判定条件と、それからそれに伴う指針値を欲しいということでございます。そういうことで、審議会の諮問において、これでよいか悪いかという議論は一切いたしておらないというのが現状でございます。
  47. 土井たか子

    ○土井委員 審議会に対しての諮問事項としては、局長のおっしゃるとおりでしょう。ただ、その諮問を受けて、九条三項の条文を見てまいりますと、「常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。」とございます。したがって、これに対して必要な科学的な判断が加えられた結果、環境庁としては、その判断に基づいて、さらに改定が必要であるというふうに認識をされれば、改定の作業が進められる、こういう関係になると思うのですが、この点いかがなんですが。
  48. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 その後のことはどうかという御質問でございますが、その判断につきましては白紙でございます。白紙と申しますと、それより厳しい条件になるか、同じ条件になるか、あるいはもう少し高くてもいいという条件になるか、違うような条件になるかというようなことについて一切こだわりなくいま検討いただいておるという状態でございます。
  49. 土井たか子

    ○土井委員 一切こだわりなしは、それは諮問の中身だろうと思うのです。ただ、その諮問をされた審議会がどういう答申を持って来られるかということによって、やはり基準に対しての見直し作業というのは当然の結果として出てくるということも、これは私たち考えておかなければならない問題であろうと思うわけです。現に、この公害対策基本法第九条の一項を見てまいりますと、井「政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」というのが一項であって、この一項の基準については、「常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。」というのが第三項の趣旨でございます。したがって、あくまで一項を受けての三項だということになれば、いま諮問の内容は、あくまで新知見、つまり「適切な科学的判断」というものについての意見を求められるということでありましょうけれども、その意見を求められる本意は一体どこにあるかと言ったら、九条一項、三項との関係から当然出てくるのじゃないか、このように思いますが、長官、いかがですか。
  50. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 当然そういうことだと思います。先ほど局長お答えしましたように、専門家の検討をいただき、新しい知見をそれに添えて検討いただいた結果、〇・〇二というものが妥当であるということならばそれで結構ですし、これではなお高過ぎるからもっと厳しくしろ、しなくてはならぬということならばそうしなくてはならぬでしょうし、また同時に、前にもどなたかの質問お答えいたしましたが、百のものを五十にするのと違って、〇・〇四というSOxの基準値のさらに半分ということになりますと、これはそれを義務づけられる企業側としても非常に額の高い設備投資をしなくてはならないと思います。でありますから、〇・〇二が実は〇・〇三でもよろしいのだということになれば、そういう意味では過剰な投資を省くことになりますけれども、私も詳細なことは存じませんが、とにかく高濃度のNO2を動物実験で暴露してみますと、ある種の器質変化が見られる。SOxの場合にはそれがなかった。非常に重症のぜんそくにはなるにしても、器質変化が見られない。器質変化というものは、医者、専門家の立場から見れば非常に恐ろしい暗示に富むものであるので、それが主たる要因になって、〇・〇四SOxに対して〇・〇二という非常に厳しい基準値が一応できた。それを科学的に裏づける資料、データ、知見というものをいまそろえつつあるわけで、その幾分かもありましたが、なおそれに対する評価もいろいろまちまちでありますので、ともかくさらに徹底した、いまある限りのデータを専門家の分析に任せまして、現在の時点での一つの基準値に対する科学的な裏づけというものの作業をしているわけでありまして、これから先もさらに、国立公害研究所等で続いている実験が何カ月か何年か先に、ある的確な効果を上げたならば、その時点での再検討、その結果基準値というものが見直しされるということは、当然あり得ると思います。しかし、あくまでもいまのは高過ぎるから、低過ぎるからこれを高くするという、そういう前提で作業をしているということは一切ございません。
  51. 土井たか子

    ○土井委員 ただ低過ぎるから、高過ぎるからという立場で検討しているということは一切ございませんという御答弁ですが、先ほど還環庁長官の御答弁の向きを承っておりますと、私ちょっとひっかかるのです。やはり企業者側からすると、多額のこれに対しての防除資金というものをかけて、そして大変に厳しい環境基準というものを果たして守っていく必要がありやなしやという側面もあるというあたりをお述べになっていらっしゃるということからいたしますと、片やこの環境問題、特に公害対策についてございます基本法の先ほど私が読みました第九条では、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい環境基準というものを定めなければならないのだということがあくまで至上命題になっているのです。だから、その点からいたしますと、その至上命題になっている点は、どんなことがあったって外されてはならない、これはもう長官も知っていてくださるとおりだと思うのですが、そういう点から言いますと、ことしの二月の初めに環境庁の方が出されました「複合大気汚染健康影響調査」というのの結果が一応まとまった形で出ております。大阪とか、千葉とか、福岡、三府県に六地域の主婦と高齢者を対象に、かなり長期、四十五年から五年間これにかけられた調査期間があるわけですが、その結果を見ますと、窒素酸化物と有症率との関連性というのが四十八年度ぐらいから非常に高くなってまいりまして、特に四十九年度の分析結果というのは一〇〇%近い相関関係を示しているというのがはっきり具体的に環境庁からのデータとして出されているわけであります。特に大阪とか尼崎かいわいは御承知のとおり大気汚染でどうにもならない地域だというふうに申し上げていいわけですが、ここでは健康被害を受けられる住民の方々の立場からいたしますと、硫黄酸化物などの環境濃度というものは大幅に改善されて低下してきておる。ところが公害病の認定患者さんはふえていく一方だ。一体、こういうことになってくると、那辺にその理由があるかというと、やはり窒素酸化物による汚染以外に考えようがない。したがって、窒素酸化物に対しての取り上げようが今後どうなるかということが、実は公害病の認定患者さんが多いこの大阪とかそれから尼崎かいわいでは、さらには川崎あたりではもう非常に切実な問題になってきていると思うのです。まさに本日出されました五十一年度の公害白書、この中身を見てまいりますと、大阪と尼崎などではこの被認定者数というものが激増いたしておりますが、四十九年あたりから地域拡大をやり、大阪の場合には五十年に至っても地域拡大をした結果によるということでも一つは人数がふえたという関係はあるかもしれませんが、大阪の場合はもうすでに一万六千四百六十人、尼崎市は東部と南部とで四千七百七十一人という、この数字はずんずんウナギ登りになっていって、決して横ばいでもなければ、低下していっているわけではないのですね。だから、こういう認定患者さんがふえる一方の地域なんかから申し上げますと、設備投資にお金がかかるというむだ遣いを省くために一体どうする、こうするという姿勢がみじんもあってはならない、こういう問題だろうと思うのですよ。そこでいま環境庁としてはいろいろ中公審に対して諮問をされている段階でありますけれども、この基準見直しのための新判定条件というふうなことが一体どういうことになっていくかというのが実は大変気にかかるところでございます。  そこで、このNO2の環境基準を一応ここで中間的に見る、それから長期的に見る、両者がありますけれども、五十三年について一応見直した上で再出発するというふうに環境庁としてはお考えになった取り組みをいま進められるお気持ちがおありになるのか。それとも、この〇・〇二という環境基準というものは絶対変えないで据え置きにしておいて、ただ達成期間というものを少し延長させていく、その間に中間的な目標値というのを考えてみようというふうな、いわば行政のガイドラインを引くというような方法もあろうかと思うのですが、いろいろなことに対してあらまし、まだ確定的なものはないにしろ、心づもりくらいはお持ちになったからこそ。私は中公審に対しての諮問がおありになったはずだというふうに考えますが、長官、そのあたりはどうなんですか。
  52. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 基本的なことについてお答えしました後、局長の方から具体的に答えさせていただきますが、土井先生御指摘になるまでもなく、環境庁業務にかかわらず、私は人間の生命、健康というものはすべての問題について最優先されるものだと思います。しかし、同時にこういったものに対する設備投資というものは決して企業だけの負担にとどまらず、国民全体の経済にも響いてくることでございますから、そういう意味では国民の立場が那辺にあろうと、間接的に、ある場合には大きな影響も与え得るので、国務の仕事を預かる者としては、つまりそういうものについての配慮も当然あってしかるべきだと思います。しかし、基本的にはこれはもう人間の健康の保全というものが絶対至上の目的でありますから、それを幾分でも阻害して、他の要件というものを勘案することによってそれを阻害してもなお基準を云々するということは基本的には絶対ございません。  そのあとのことについては、局長答弁いたします。
  53. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 基本の方向については大臣が明確に申されましたように、健康の保護というのは絶対的であるという立場でございます。そういうことで望ましいというものはどういうものであるかということは確かにあるわけでございます。ただ、みんなが聞かれるのは、一体どこから危ないのかという議論を非常に聞かれまして、そのときに、幾ら何でもこれだけはクリアしなければいけないというような条件は一体どこにあるのかというところが、この環境基準をまず運用していく上においてきわめて切実な問題になったわけであります。そういうことでこの中間目標値の〇・〇四というのがございますが、これは何らそのような影響とリンクした数字ではございません。環境基準を何%充足したらそうなるかということだけでございます。そういうことで、そういう統計的なことだけでは物は言えないということはございまして、この五年間の知見を重ねてみますと相当新しいものができた。WHOの知見も出てきましたし、先生の先ほど御指摘の六都市五年間の調査一つの有力な知見でございます。一歩、二歩前進したと思いますが、完全な解決をしたものではございません。しかし、少なくとも予防に対する突っかい棒は強まった。補償に対してあるいは余り突っかい棒にならなかったかもしれませんが、予防に対しては非常に突っかい棒になったということは事実でございます。  そういう点で五十三年五月といいますのは、環境庁の告示の中に、五年地域では環境基準を達成し、八年地域では中間目標を達成するということが努力目標で掲げられている地域でございます。そういうことで私どもは五十三年五月にクリアがなかなかできないということを正直に申し上げて、そのかわり環境基準がいまあるのだからそれを動かす気はない。非常に白紙の立場で議論をしております。だから基準を問う必要はない。しかし、運用の面で、医学、公衆衛生の立場から、ディザイアラブルというのはこうだけれども、アクセプタブルというのはどの辺かというところをはっきりつかまえながら運用しないと、そこを統計といいかげんなコストとリスクだけの判断でやっていたら非常に道を誤る。そのような観点からこれに対して取り組みを始めたというところが事実でございます。
  54. 土井たか子

    ○土井委員 いま局長の御答弁のとおりで、五十三年にはこれはクリアできないということを率直に認めた上でという、いわば再出発みたいなこの問題に対する取り組みが具体的になされなければ、いまある環境基準達成というのもおぼつかないだろうというくらいに私自身は考えているわけであります。  少しここでお尋ねしたいのは、先日WHOの窒素酸化物に関する環境保健クライテリアが明らかにされているわけですが、WHO値というのを、短期の測定の問題を中心に考えてまいりまして、日本のいま考えている環境基準値というものに換算して考えてみると、一体どういうぐあいになるか。  それからWHOと日本のいまの環境基準というものを比較した場合に、日本の環境基準というのはめちゃくちゃに厳し過ぎる、諸外国においてもこんな厳しい環境基準というものはあったものじゃないという業界からの声というものが聞こえたりいたしますが、WHOと日本の環境基準というのをきちっとお互いに比較考量できるように計算をし直した場合、それほどひどい隔たりがあるものであるか、どうか。局長、いかがですか。
  55. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘にもございましたように、WHOのクライテリアに基づきましてガイドを出しまして、その中で一時間値が一カ月で一回以上〇・一を超えないか、あるいは一時間値が一カ月に一回以上〇・一七を超えない、こういう条件を出したわけでございます。それに対しまして、日本の一日平均値の九八%値とあわせて検証してみる方法があるかということをいろいろやってみまして、一つは、これは通産省さんなんかもよくやっていらっしゃるラルセンの統計的な手法をもってやるというのがありますが、どうもその方法ではこのWHOの条件の推定がつかないということがはっきりしてまいりまして、そこで環境庁は過去二年ですか、三年ですか、いままでのデータを全部洗い直しまして、WHOの条件にはめてみたらどこがどういうぐあいに合うかということを調べたわけであります。そうしてみますと、一カ月のうち一回以上〇・一を超えないという条件に合うというのは一日平均値の九八%値が〇・〇三七、これは計算上の問題でございます。それからもう一つは、〇・一七に相当するものにつきましては〇・〇六六というようなところが、ここの条件をクリアしておればWHOの条件はまず満足される。まずと申し上げましたのは、それ以下のところでもWHOの条件を狂わすことがあるが、全体の傾向として見た場合にそのような条件があるということでございまして、WHOの言っておりますのは、ディザイアラブルとは申してません。ミニマムにパブリックヘルスとしてせめてここまで許す余裕があるか、このようなことでございますので、ミニマムアクセプタブル、パブリックヘルスと医学の角度からミニマムなアクセプタブルということを、短期の、マクロの急性影響ということについて三分の一から五分の一のセーフティーを持っていったのがWHOであり、日本のはこれに対して視点が違っておりますので、慢性影響としていっておる。  そういう点でこの下限の方に比べてみますと、日本のが〇・〇二、中間目標値が〇・〇四、WHOの方が〇・〇三七という数字でございまして、WHOはそれに対して、ほかの科学的に活性の汚染物質がある場合にはこれはSO3とか、あるいはオキシダントとか言っておるわけですが、そういうものがある場合にはより厳しくしていかなければならないということの条件からいくと、日本の条件はなおかつ非常に厳しいということは申せますが、めちゃくちゃに厳し過ぎるというような非難には当たらない、こういうように思っております。
  56. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、いまの局長の御答弁どおりでいきますと、ここに私が持ってまいりましたパンフレットは、もうすでに御存じのとおりに、全国に各自治体を通じて配付される、また議員の手元にもこれが届けられる、また環境庁の方にも恐らくは行っていると思うのですが、日本鉄鋼連盟から配られました大変豪華なパンフレットであります。この部数というのは、新聞で伝えられるところによりますと、恐らく一万五千以上作成されて配付されたであろうというふうな数字も出たりいたしておりますが、この中身で言われている、世界に類を見ないまことに厳しいもので、その中身には科学的合理性を欠くというふうな批判がございます。この点はいまの局長の御答弁からすると、これはまさしく意味のないパンフでの記述であるということになろうかと思います。いかがでありますか。
  57. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生御指摘の鉄鋼連盟のパンフレット、私もよく読んでおりますが、やはり日本は言論が自由の国でございますし、環境の問題というのは不確かさが伴いますので、専門家によって意見が違う、利害関係者によって意見が違うことは当然でございます。そういう点から見ますと、非常に類を見ない厳しさ、これは確かに類を見ない厳しさでございます。科学的でないというところの物の言い方が違っておりまして、科学ではっきりしたことだけをやれということが科学的であるという議論ならばそういう議論でございましょうが、科学はあくまでも道具でございまして、そういうことで、先ほどの山本先生の御質問のときにもございましたが、非常な不確定性のもとにどういう政策を打ち出すかということで打ち出したのが日本の環境基準でございまして、それはOECDの評価でも、科学的、経済的なものが完全に固まるのを待たないで厳しい基準を打ち出した。これはその政策でございます。政策が科学を道具として使って一つの方向づけをしたということでございますので、科学的でないと言う立場の人もございましょうが、私どもは、科学はあくまでも道具であり従属物である、それに縛られるいわれはない、こういう立場でございます。
  58. 土井たか子

    ○土井委員 確かに日本は言論の自由の国でございますけれども、問題は、その言論の自由という次元でこの問題を把握して、何を言っても結構だということで捨ておいていいことかどうか、これは大変大問題だと思うのです。これはいわばPRです。鉄鋼連盟からいたしますとこうしていただきたいという環境庁に対しての要請も込めてのこれは立場であります。だから、そういうことからすると、かつての公害対策基本法の一条二項というものがなぜ削除されたかという本来の公害行政のあるべき姿に関係をする問題であります。どういう立場に立って環境行政というのが公害対策に取り組んでいくかということが、いわばこれは問われてよいような一つの材料がここに出ているというふうに言わざるを得ない、こう私は思うわけです。それからいたしますと、この中身にはいろいろの記述がございまして、たとえば疫学データが不足している、室内でストーブをたけば環境基準をオーバーする、また、たばこの問題などを考えていった場合に、こういう厳しい環境基準を設けてNO2に対してとやかくわれわれが言われることは理に合わないというふうな趣旨の記述すらこの中には散見するわけでありまして、世の中は御承知のとおりいわゆる低成長経済下であります。したがって、そういうことからすると、少しでもこういう公害防除に対しての手だてをサボる。そのことによって少しでも経済的効率というふうなことを、業者の立場からしたら功利に展開させていこうというふうな気配が最近特になきにしもあらずということなんです。だからそういう点からすると、こういうふうな〇・〇二をもし守れと言うのだったら私たちは経済的な活動というものを停止せざるを得ないのだ、それ以外に方法はないのだ、半ば開き直ったような形で、なおかつ〇・〇二と言い続けるのですかというような意味までも込めたこういうPR紙に対して、環境庁として黙っていらっしゃるというのはおかしいと私は思うのです。黙殺するというふうなことをかつておっしゃったようでありますけれども、このことに対して、環境庁長官に御答弁を願います、もう時間ですから。
  59. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 例の過去五カ年間に及びます大気複合汚染の調査を私見ましたときも、どうも気管支系の疾患との相関性についての有意性ということに関しては、このデータだけだと産業界をぎゅっと黙らせるにはいろいろデータにばらつきがあるなということを私申しました。あのデータに対しての評価はいろいろあるようでございますけれども、ともかく業界は業界側の言い分もあるでしょうが、私たちは現況持ち合わせている知見というものをより専門的に分析することで、とにかく先ほど申しましたように人間の健康の保全というものを第一義に考える行政をするつもりでございますから、それは御了解いただきたいと思いますし、その趣旨にのっとって業界側の言い分は言い分として聞くものは聞きますが、しかし、専門家の分析の結果をかざして反論し、これを説得すべきものは説得し、行政を通じて環境の保全というものを十分に図るつもりでございます。
  60. 土井たか子

    ○土井委員 まあ時間が参りましたけれども、科学的な根拠というのを明確にしないと、企業側の物の言い方に対して十分なる反論ができない、しかも環境基準に対してその中身実施せよという強い姿勢というのはとれない、こういう御趣旨かと思いますけれども、しかし、片や科学的データ以前に、現に大気汚染が進む中で公害認定患者さんの数がふえていっているという厳然たる現実というものは無視されては困るわけであります。一体これに対してどうこたえるかということを中心として考えていただく。それに対して、科学的データが出るまで待っていよということになると、四日市の例というのを二度も三度もあっちゃこっちで繰り返さざるを得ない。こういう厳しい現実というものに対して毅然たる態度というのはやはり曲げてもらっては困るし、科学的データというものの分析結果が出るまで待ちなさいということでは間に合わないということだけはしっかりと私は申し上げて、このことに対して、やはり現に基準値に対してもう一度内容を洗い直しをしようというふうな意味も含めての中公審に対しての御諮問であろうかと私は思いますから、その点をひとつ曲げないという確認をいただいて、私は終わりたいと思います。
  61. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 これは、先ほど山木先生の御質問と通産省のやりとりにありました問題に通うものだと思います。ですから、今度の中公審に対する諮問も、そこでつまり一〇〇%、一足す一が二であるというふうな、そういういわゆる合理的な裏づけというものはとても得られないと思います。しかし、おっしゃるように、防止というものがこれはやはり今日の行政の大きな眼目になっている限り、おっしゃるように、十全過ぎるぐらい十全の科学的な信憑性がそろわなければつまり基準に対する合致を企業側がするようにこちらが督促を、指導を差し控えるということはございません。これはやはり、ある資料がそろい、しかも人間の体験というものを踏まえれば、一つ予測ができるわけでありますから、繰り返して申しますけれども、人間の健康の保全というものを最大の眼目にしまして、そういう指導をしてまいるつもりでございます。
  62. 島本虎三

    島本委員長 時間になりました。  なお、環境庁長官、いまの答弁でわかりましたが、言っている言葉の中に、命と健康は最優先させたい、しかし、経済に響くのであるから、それも考慮しなければならないという言葉があるのは、これは紛らわしゅうございますから、もう一回、そこははっきりさせてください。
  63. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 人間がこの社会の中で生きていくためには、第一に必要なのはやはり命であり、健康でございますが、そのほか教育でありますとか人づき合いとか、いろいろ問題がある中に経済というものもあると思います。これは今日のような日本の社会の中で、人間の生活というものをある水準に保つ一つの大きな要因でありますので、何と言っても健康、人間の生命というものが第一義でありますけれども、しかし——そこが大事なところです。第一眼目なんです。ですけれども、しかし、第一眼目であるということが達成されながら、それが十分守られるのに、なお過剰な、つまり投資というものをし過ぎて経済というものに破綻を来せれば、これまたやはり大衆、国民の生活に違った角度から響いてくるものでありますから、とにかく第一義に人間の健康、生命というものを守るということを眼目にいたしますけれども、しかし、知見をそろえて科学的な分析をし、この基準値で十分であるという結論がもし出て、たとえばNOxに限らずある基準というものをいままでの位置よりも上げても大丈夫だという保証があるならば、それは上げれば結構だと思いますし、同時に、経済にどのように響こうと、現在の基準値というものがそれでもなお高過ぎるということになれば、これは多少経済に響こうと、やはり健康の保全のために基準値というものをさらに下げるということも当然必要であるという意味で申し上げたわけです。
  64. 島本虎三

    島本委員長 この際、午後四時まで休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後四時一分開議
  65. 島本虎三

    島本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。林義郎君。
  66. 林義郎

    ○林(義)委員 先般来、当委員会でNOxの問題につきましていろいろ御質疑を申し上げました。その問題について再度議論をいたしたいと思いますが、たびたびの長官の御答弁では、問題は、健康の問題をどうするかということだったと思うのです。健康を第一にこれからの政策を推進していかなければならないということは当然のことである。私は、この健康というのは一体何であるかということを少し取り上げてやってみたいと思うのです。これと関連しますので、NOxの問題を離れまして、まずカドミの問題について若干の質疑もいたしておきたいと思うのです。  公害問題では、カドミなり、最近長官が水俣に行かれましたけれども、水銀の問題もある。私も、やはり健康の問題というのをどう考えるかというのが一つの大きなポイントになるだろうと、こう思うのです。カドミウム汚染につきましては、実はここに持ってきておりますが、自民党の政務調査環境部会で昭和五十一年一月二十九日に「カドミウム汚染問題に関する報告」というのを出したことがあるのです。これは、一年間にわたり十一人の先生方を招致いたしまして意見を聞き、また、イタイイタイ病に関係のある学者三十四人に質問状を発して得た回答をもとにしてつくったものであります。その内容につきましては、また改めてさらに詳しく国会でやりたいと思いますが、きょうはその問題を離れまして、第一に、次の点をまず確認しておきたいと思います。  第一点は、神通川流域でイタイイタイ病は新たに発生しておるのかどうか。現在五十七名の患者がいますが、これは昭和四十九年までに認定したもので、その後新たに発生していないと考えるが、その点をまず第一点に確認をしておきたい。     〔委員長退席、土井委員長代理着席〕
  67. 野津聖

    ○野津政府委員 神通川流域におきますイタイイタイ病についてでございますが、ことしになりまして、要観察者の方のうち一人がイタイイタイ病という形で認定を受けられた以外につきましては、ただいま御指摘いただきましたような状況でございます。
  68. 林義郎

    ○林(義)委員 第二点、神通川流域以外のカドミウム汚染地域ではイタイイタイ病は存在しないと聞いております。最近の報告でも、長崎県の対州では二十人の人を調査し、その中で、明らかな代謝性アシドーシスを伴う近位尿細管機能障害があり、重炭酸塩の補給などによる治療が望ましいと考えられるもの二例、近位尿細管機能障害もあるが、医薬品による治療は有益とは考えられない、ただし経過観察が必要であるもの十七例、その他となっていますが、とにかく神通川流域以外のカドミウム汚染地域ではイタイイタイ病は発生しておりません、ということは確認していただけますか。
  69. 野津聖

    ○野津政府委員 従来から行ってまいりました住民の健康調査の結果によりまして、現在の状況におきましては、神通川流域以外にはイタイイタイ病は発生していないという研究班の報告になっております。
  70. 林義郎

    ○林(義)委員 第三点、現在までの研究の成果であります「カドミウムの人体影響に関する文献学的研究」については、この調査でありますが、環境庁が日本公衆衛生協会に研究費を出しまして委託研究されたものでありますが、これは、前長官の小沢さんが、昭和五十年の二月ごろでしたと思いますが、小坂善太郎さん、それから私もいろいろお話を申し上げましたけれども、その質問に対して答えたものに基づく文献学的な研究であると考えておりますが、この研究の中では、結論として「現在のところ、イタイイタイ病の発生と進展に、カドミウムが何らかの役割を果たしたことを否定する根拠は乏しいが、カドミウム投与の動物実験で定型的な骨軟化症の再現に成功していない点や、カドミウムによる腎尿細管機能異常が骨軟化症をひきおこすことが立証されるに至っていない点は、カドミウムをイタイイタイ病の主な原因とするうえで重要な障害になっている。」これは最後のところに書いてありますが、ということであります。「否定する根拠は乏しい」とこう書いてございますが、肯定する根拠もまたないわけである。「カドミウムをイタイイタイ病の主な原因とするうえで重要な障害になっている。」という後段の説明は、「イタイイタイ病の本態は、カドミウムの慢性中毒によりまず腎臓障害を生じ、次いで骨軟化症をきたし、これに妊娠、授乳、内分泌の変調、老化および栄養としてのカルシウム等の不足などが誘因となって、イタイイタイ病という疾患を形成したものである。」という厚生省見解とは異なるんだと思うのです。少なくともここに書いてあります、この文献学的研究にありますのは、「イタイイタイ病の主な原因とするうえで重要な障害になっている。」とこう書いてあるわけですから、そこは明らかな違いであるということは、私は、はっきりしておるのだろうと思うのです。こうした私の言っていることが、間違っていれば間違っていると言ってもらいたいし、間違ってなければ間違っていないと、いま私が申し上げたことだけで結構ですから、ひとつ御答弁をいただきたい。
  71. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいま御引用になりました文献学的研究の結果の報告の要旨でございますけれども、その内容につきまして部分的に引用することは差し支えるということが言われているわけでございまして、部分的な引用によりましてこの文献学的研究の全体を批判することは非常にむずかしい問題があるのではないかと思っております。ただ、私どもこれらの研究の成果を踏まえて考えてみますと、厚生省の見解の基礎となった当時の科学的知見と矛盾するような点は見当っておらないわけでございまして、本研究の結果が従来の厚生省見解を否定するというふうには私ども考えておらないわけでございます。  ただ、ただいま御指摘ございましたような、部分的な引用ではございますけれども、いろいろな問題の提起がされているわけでございまして、私どもとしましては、今後もさらに動物実験あるいは住民の健康調査等を進めていきながら本態を明らかにすべきであろうというふうに考えております。
  72. 林義郎

    ○林(義)委員 私は別に厚生省見解との関係を聞いているわけではないのです。論理として、文献学的研究のこの最後のところにありますのは、これをずっと読みますと、「総括」の一番最後のところの、締めくくりになっている論理であります。この論理というのは、最後のレジュメを書いたようなものでありまして、ここではそれを否定するような、「カドミウムをイタイイタイ病の主な原因とするうえで重要な障害になっている。」ということを書いてあるわけですから、それといままでの、主な原因であるとこう書いてあるところというのは、やはり論理的には違うんだということを私は、論理的にこれは同じことを書いてあるんだというのか、論理的には違うということを書いてあるんだということを言うのか、どちらかということを聞いているわけです。私は、厚生省見解を改めろとか何とかということをいま申し上げているわけじゃありません。その辺は、その論理はちょっと違うんじゃないかということだけを、少なくともこの最後のパラグラフのところは違うんじゃないかということを私はお尋ねをしているわけであります。
  73. 野津聖

    ○野津政府委員 この最後のパラグラフがレジュメになっているかどうかということでございますけれども、これは「総括」という形で、動物実験の結果あるいはカドミウム作業者におきますいわゆる産業衛生上の結果の問題、それから健康調査の問題を踏まえてからきているわけでございまして、先ほど申し上げましたように、部分的にこれを引用することは若干の誤解を招くおそれがあるのかもしれないと思いますけれども、「カドミウムが何らかの役割を果たしたことを否定する根拠は乏しい」ということが第一段でございます。また、それと続きまして、「カドミウムをイタイイタイ病の主な原因とするうえで重要な障害になっている。」ということが、これはまさに並列して書かれているというふうに理解いたしております。
  74. 林義郎

    ○林(義)委員 並列して書いてあるのと一直線で書いてあるのとは明らかな違いであることはだれが見ても明らかなことであります。私は論理の問題をここで余りもてあそぶつもりはありませんが、この文献学的研究の十四ページを見ますと、カドミウムと骨変化との関係を示す図があります。ここにあるのですが、こういった図があります。これは産業労働者で観察されたという黒い線の部分と動物実験の黒い太い点線、類似疾患から推定される仮説の細い点線及び細い点線にクエスチョンマークのついた仮説が示されている、こういうふうな形になっておりますが、ここではっきり言えることは、カドミウムから腎尿細管機能異常というのが認められ、動物実験で腎のビタミンD活性化障害が起きる、骨のリシルオキシダーゼの活性障害が起こる、骨塩代謝障害というものが起こる、骨芽細胞形成障害が起きるということが観察されているが、その障害があるからと言って、これから先は実は仮説でしかないわけであります。ここにはっきり仮説だと書いてある。この点は、この文献学的研究から言って読み取れると思うのですが、要するに厚生省見解の「カドミウムの慢性中毒によりまず腎臓障害を生じ、次いで骨軟化症をきたし、」云々というのは、この説明によりますと一つの仮説である、こういうことであります。これははっきり仮説と書いてある。仮説ということはこの文献学的研究ではっきりすると思いますけれども、この辺はどうなんでしょう。やはりこの文献学的研究では一つの仮説だというふうに考えていると言っていいのではないでしょうか。
  75. 野津聖

    ○野津政府委員 この印がついておりますのは、一つの仮説に基づいて結果が出てくるということでございまして、学問的な研究の場合には、各種の仮説を立てての結果が出てくるというのは当然のことであろうと思っております。
  76. 林義郎

    ○林(義)委員 次に、カドミウムが腎臓の尿細管機能に影響を及ぼすということでありますが、腎尿細管機能異常にはいろいろな原因があり、カドミウムに限らず、他の重金属による場合だって私はあると思うのです。と同時に、むしろ老齢化によって腎尿細管機能異常というものが出てくるというのもこれまた医学的な常識だろうと思うのです。そういうふうに聞いておりますが、腎尿細管機能異常という点について、厚生省なり、環境庁でも結構ですが、医学的見地から言ってどういうふうに考えておられるのですか。
  77. 野津聖

    ○野津政府委員 近位尿細管障害が起こりまして、低分子たん白尿が出て、尿の中に排せつされるという症候があるわけでございます。その原因といたしましては、各種の重金属あるいは高齢化あるいは抗生物質等の投与によりまして起こるということも言われておるわけでございますが、カドミウムによりましても近位尿細管障害が起こりますのは、労働災害あるいは労働衛生上の問題としまして、これは学説として固まっている問題であります。
  78. 林義郎

    ○林(義)委員 そこで、腎尿細管機能異常というものが老齢化であるとかその他の重金属によって起こる、こういうこともあり得る。そうしますと、一体カドミウムがどの程度の原因であるかが問題になってくるんだろうと私は思うのです。  そこでWHOのクライテリアという問題がありますが、実はここに原文もあるのですが、ちょっと原文でというわけにいきませんから、仮訳をしたものがありますので、それで比較をいたしますと、腎皮質のカドミウム臨界濃度についてWHOは、最も妥当と思われる値として二百マイクログラム・パーキログラムとしておりますけれども、文献学的研究では明確な数値を示していない。ここに明らかな差異が一つあると思うのです。  第二点は、米のカドミウム濃度とその影響につては、WHOは米中のカドミウム濃度が〇・五ないし〇・八ミリグラム・パーキログラム及びそれ以上の地域において低分子量たん白尿の出現率の増加と関連があるというふうに言っておりますが、文献学的研究では十二ページ、十三ページにかけまして、現時点における米中カドミウム濃度と腎尿細管機能異常との間に量−反応関係が必ずしも見られないのも当然と言えるかもしれない、量と反応の関係を明らかにすることが今後の急務である、こういうふうにしておる点であります。  また、結論的な部分でありますけれども、カドミウムとイタイイタイ病との関係についてWHOは、カドミウムはイタイイタイ病の進展には必要な要因であったという結論になるとしておりますが、文献学的研究では前にも申し上げたとおり、この十七ページのところにございますけれども、「イタイイタイ病の発生と進展に、カドミウムが何らかの役割を果たしたことを否定する根拠は乏しいが、カドミウム投与の動物実験で定型的な骨軟化症の再現に成功していない点や、カドミウムによる腎尿細管機能異常が骨軟化症をひきおこすことが立証されるに至っていない点は、カドミウムをイタイイタイ病の主な原因とするうえで重要な障害になっている。」としておりまして、両者の間には差異が見られるわけであります。これらの点をこれからどういうふうな形で調整していくのか、そのお考えをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  79. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいまお示しがございました文献学的研究につきましては、わが国の学者が内外の文献につきましてこれをレビューいたしましてまとめた結果であるわけでございます。  それから、ただいま御指摘ございましたWHOの報告でございますけれども、これは現在の段階では一応サマリーという形になっておりまして、いまの表に出ましたお話だけで私ども批判できるものではないというふうに考えているところでございまして、ただいまの段階では、本文が出てくるまではそれに対します考え方は差し控えさしていただきたいと思います。
  80. 林義郎

    ○林(義)委員 WHOのクライテリアもこれから発表されるわけですから、そういう御答弁があるのはしようがないと思いますが、この文献学的研究の方は政府が委託して日本の学者に研究させたものであります。一方、WHOの方も国際的立場で研究させたものであり、この二つの研究は、立場が相互に異なっていることはあってもいいんだろうと私は思うのです。しかし、それが国際機関だからといって信頼しなければならないというようなものでもないし、特にイタイイタイ病というのは日本だけで発生しているものであって、日本の医学界の名誉にかけても日本で解明をしていくということは私は必要なことだと思うのです。カドミウムとイタイイタイ病との関係については、本来、日本は世界の権威にならなければならないのだと思うのです。  こうしたようなことからいたしまして、インターナショナルなものにおいてナショナルなもの、日本の立場が高くなるということば、日本の公害環境政策の上で、そうした環境医学を進める上において日本の声価を高めるという意味におきましても、国際機関がどう言ったからこう言ったからということではなくて、日本の見解を日本独自の立場において出すことが必要なことではないかと思います。そういう意味で、これからこの問題をどういうふうに片づけていくか。WHOが言ったとか、OECDが言ったとかということからではなくて、やはり日本独自の立場においてこの問題は解決していくのが日本政府のあるべき姿だろう、こう思うのでありますけれども、長官、私のこういった考え方はいかがでございましょう。
  81. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。私はこの問題は余りつまびらかにいたしませんが、聞き知った範囲で世界じゅうにカドミウムによる汚染と申しましょうかのケースは幾つかあるにしましても、そこでイタイイタイ病のような非常に特性のある病気の発生というものの例がない。言うならば、カドミウムがこちらにあり、こちらにイタイイタイ病の症状がある、この組み合わせというものは相関性があるかないか別にしまして、この取り合わせというものは日本独特のケースでありますから、これは世界の専門家の意見もさることながら、日本もある水準以上の医療技術を持った国でありますので、おっしゃるようにこれは日本独特の問題として日本の専門家の責任でこれを解明し、また政治問題としても、日本の独特の問題として、私たちが独自の判断で責任を持って解決していく問題だと思います。
  82. 林義郎

    ○林(義)委員 そこで、実は現在、米のカドミウム濃度は一ppmという基準があります。これは自民党の政務調査会の報告書によりますと、アンワーの動物実験の研究から始まって有意な腎障害は出なかったという、一〇ppmのカドミウムを含む飲み水から計算した毎日の摂取量千マイクログラム・パーキログラムを、一ppmのカドミウムを含む米を毎日五百グラム、米以外からのカドミウム摂取百六十五マイクログラムを加えて六百六十五マイクログラム・パーデーが十三マイクログラム・パーキログラムとなることから十分な安全率であるというふうに結論づけられたものであります。この点は私はまた別の機会にもう一遍詳しくやりたいと思いますが、安全基準とは何かを考えると、何十年食べても、また、一日置きに食べても安全ということが基本的構成になっていると思うのです。このアンワーの報告というのは私はそういうことだと思います。考え方を整理しておく必要があります。  そこで、現在、凍結措置をとっているところの〇・四ppmから一ppmというまでの米は、右の基準から見まして食用には供さないという学問的な根拠は、というよりは医学的な根拠というものは、私は全くないと思うのです。当時の状況から米が非常に過剰であった云々というようなことから、その辺も研究観察対象にしましょうという形でやったわけでございまして、医学的、学問的な感じから言いますと、アンワーの研究だけからいたしますと、一ppm以上の米であるならば問題であるけれども、一ppm以下の米であるならば全然問題はないというのが医学の立場であろうと思うのですけれども、この辺につきましては、厚生省の方だろうと思いますけれども、厚生省の方はどういうふうにお考えになりますか。
  83. 仲村英一

    ○仲村説明員 ただいまお尋ねになりました一ppmの米のカドミウムの濃度でございますが、私どもはアンワーの実験を基礎にしまして一ppmという数値を出しておりまして、一般の通則からいたしまして、それを下回るものは食品として安全であるという立場をとっております。
  84. 林義郎

    ○林(義)委員 一ppmを下回るものは安全であるという立場が私は医学的な立場だろう、こう思うのです。  そこで、その一ppmというのは一体どういうところが決めたのか、こういうことであります。ちょっと図を持ってきていないので申しわけないのですけれども、ハッチのAというのがあるのです。医者の方をやっている方はよく御存じだろうと思うのですけれども、ここにこういうふうな表がありまして、こちらから実は濃度がだんだんと上がっていきまして、上がっていきますと化学物質の濃度がいろいろ上がってきます。そして、こちらから上がっていきますと体に対する影響を及ぼす。非常に少ない場合にはほとんど人体に対する影響というものはない。少々のものが入ったところで人間の体というものは大丈夫だと思うのです。正常な状態というのがここにあるだろうと思うのです。ところが、正常な状態を過ぎて少し濃度がだんだんと高くなってくるようなところにまいりますと、たとえば、私もきょうはせきをしておりますが、のどが悪くなるとかくしゃみをするとか、せきが出るとか、これは異常な物質が鼻や口から気管支に入りますと気管支がそれで作用して、それを排せつするような作用を起こすというのがあると思うのです。これを代償状態と言います。代償状態からさらに進んでいろいろな濃度が入りますと非代償の状態が入りまして、なかなか治らない。薬を飲まなくちゃならないとか、長期に病院に入って寝なくちゃならない。いろんなことがある。そういった状態がこうありまして、最後のところでは死に至るということであろうと思います。  そこで、私は、この先ほどの一ppmというのは、どうも正常状態から非正常状態に入るところのこの点のところにあるのがこの一ppmではないかというふうに考えるわけでありますけれども、果たしてそういった考え方でいいのか、あるいはもう一つ代償状態のところの極限にいったところのこの点なのか。そのどちらの点なのでしょうか。  それからもう一つは、NOxの〇・〇二というものをこの前から問題にしておりましたけれども、一体この図で申しますと正常状態に対するところの限界点を〇・〇二というふうに考えたのか、あるいは少々せきやくしゃみをしたり何かして、あるいはたんが出たり何かするというような状態までいって、なおかつよろしいというのが〇・〇二という形で考えたのか。私は、これは健康の問題だ、健康の問題だとおっしゃるから、一体健康の問題というのは化学物質なりいろんな大地からの汚染物質がどういうふうな形で影響するかというのが、このハッチの産業労働医学の話ですけれども、この医学の立場で果たして類推していいのかどうかもわかりませんよ。わかりませんが、少なくともこの図ぐらいで一遍議論をしておく必要があるだろうと思って一応出してきたのです。その辺は一体どういうふうに環境庁当局の方はお考えになっておられるのでしょう。
  85. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいま御指摘ございましたハッチの図があるわけでございますけれども、この図の問題につきましては、いわゆる健康というふうな問題を中心とした形で、いまお話ございましたように、いわゆる労働環境の労働者に対する影響という形で見ているわけでございます。この考え方に二通りが含まれていると私ども理解をいたしておるわけでございまして、一つは、少なくとも健康というものが連続性のあるものであるという考え方に立ちまして、この図にございます。これは一つの仮説を伴いました議論であるわけでございますけれども、この中にありますカーブの上を常時動いておるというふうな一つ考え方があるわけでございまして、それを今度はいわゆる汚染質との関連性を置きまして、いま先生から御指摘ございましたような形で汚染質の増加というふうなものに伴いまして、健康の問題がどのように動いていくか、こういう二つの考え方があるわけでございます。  私どもとしましては、一つの仮説に基づきました健康というもの、特に環境汚染に関連しました健康というものをどのように理解するかという場合に、非常に有力な資料であろうと私どもは理解をいたしておるわけでございます。ただ、これだけの一つの仮説に基づいた論文の中に出てきた御意見であるわけでございまして、すべてはこれで処理されるとは考えておらないところではありますけれども、有力な一つの仮説に基づいた議論であるというふうに私ども理解をいたしておるわけでございます。
  86. 林義郎

    ○林(義)委員 確かにこれはハッチの一つの仮説であることは間違いないのですが、私がその仮説で立てたときのアンワーの動物実験によるところのものというのは、やはりこの仮説で当てはめてみると、どうも私はAの状態ではないかと思うのです、動物に対して何らの反応がなかったということでありますから。要するに正常状態での反応の極限を示すものが一ppmだろう、こういうふうに私は理解をしておるのです。仮説の上に仮説で、またそれで答弁を求めるのはどうかと思いますけれども、どうもそういうことではないかと思います。  それと、もう一つそれではお尋ねしましょう。実は自民党で窒素酸化物に関するところの研究問題をやったときに、大学の先生五人に来てもらって議論をしたのです。その五人の先生方から話がありましたのは、実はやはり同じようなこの表を出してもらって話をしたのですが、それでは正常状態のところの限界点、代償状態のところの限界点、それぞれについて、これは個人差が非常にあるわけですから、平均人のところならばずっとこうなるでしょう。ところが平均人よりも非常に体の強い人は、少々の汚染にさらされたところで大丈夫だ、虚弱な人であるとか老齢な人であるとか幼児、そういった人というのは、そんなものではとても耐えられない、こういうことになってくるだろうと思うのですね。環境の問題というのは、労働医学と違いまして、労働というのは大体相当強健な人がやっておられる。環境の問題というのは、長官みたいに体の強い人ばかりでなくて、体の弱い人も皆やらなければならないという問題もあるでしょうけれども、一体ここで環境基準というものを決めるときには、あるいはいろいろな基準を決めるときには、恐らくこういうふうなカーブになるだろうと思うのです。いろいろな形で、非常に強い人はこちらの方までいきます。平均点がありまして、ずっと弱い人はこちらの方にいく、ここまでしか書いてありませんが。こういうふうなS字型といいますか、それを書いたような形のものになるだろうと思いますが、そのどの辺を考えてやられるのか、その辺は詰めてもらわなければならない問題ではないかと思うのです。先ほど申しましたように、健康というのは、正常な機能に対するところの諸問題あるいは代償的な問題、さらには病気が薬を使えば相当治るというような状態、いろいろありますから、そこで健康というものを考えてもらうということが必要なんではないだろうかと私は思いますが、この辺についてはどういうふうに考えられますか。
  87. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いまの先生の御質問は、シェーマによってやられておるわけですから、こちらもシェーマという形で物を考えるということで、そのラフさはお許しいただきたいと思います。  それで「維持されることが望ましい」というのは、全く問題がない、だれにでも大丈夫ですよとはっきり言い得る状態であって、しかも基本法の論争のときに、健康保護の「うえで」というのがあります。あれが「ため」になるともっとぴしっときつくなるのです。「うえで」というのはストリクトにリンクはしていないということで、どういいますかなかなかそこは科学論争がむずかしいということで「うえ」になったわけです。「維持されることが望ましい」という点で、維持されるべきという形から、もっとよくなければ、絶対安全でなければならぬということになったのですから、私の個人的なことで政府委員として価値のあることかどうかわかりませんが、OとAとのちょうど真ん中辺のところは少なくとも見てやるのが、「維持されることが望ましい」という、こちらの弱い方の人はもうこの辺で反応を起こすわけですから、そのぐらいな物の考え方で〇・〇二という基準は決められてあると思って、これを超えてもすぐ驚く必要はありませんということを申しております。
  88. 林義郎

    ○林(義)委員 そうするとOというのは全然何にもないというところですね。それから、それから先の方に寄って正常機能調節の間で、正常の機能の中でも人によっていろいろあるが、その中でだれにも問題がないということですから、相当にこれは厳しい。一般の人からすれば、たとえば私も含めてここにおられるような人にとってはオーバーな、ここにおられるような方々で、よく働いて体も相当に健康であって通常の年の人であるということであれば問題は全然ない。少なくともそれにとっては、その人の健康を維持するためにはちょっと厳し過ぎるような基準ということだろうと私は思います。この辺での環境基準という考え方、いまの橋本さんが話をされたその考え方が果たしていいのかどうかというような点を中央公害対策審議会なんかで議論をしてもらっていい問題だろう、こう思うのです。  それからもう一つの点を私申し上げておきますが、いろいろな疫学的な統計があります。この前も統計の問題でちょっとお話を申し上げましたけれども、統計学上の有意性というのは、たとえば百人の中で何人の患者が出るというのがありますから、百人の中で五十人以上が少なくとも有意性を持つような形にならなければ統計学的に見て有意性というものがないというような議論があります。統計学上の有意性というものと、医者の場合に、この前の環境庁の保健の調査がありまして、大気保全局長もそれから部長さんも長官もそれぞれニュアンスの違った御答弁がありましたけれども、統計学的に見て疫学の有意性というものは一体どの辺にあるんだろうかという点についても詰めてもらう必要があるだろうと私は思うのです。そういった意味で、いまのお話を聞いてだんだんはっきりしてきましたけれども、そこでは統計学的にゼロから正常機能調節のところの間の中間ぐらいというふうな、中間というのは一体どの程度だ、全く二分の一で切ったところをとるのか、三分の二で切ったところをとるのか、三分の一で切ったところをとるのかというのも実は問題なんであります。  一説によりますと、いろいろと話を聞きますと、〇・〇二を決めたときの話は、いろいろと当時のデータがありまして、SOxと同じような形での問題があります、有意性は少なくともあるでしょうというデータがあります。それから先に、SOxの場合の基準よりはきつくしなければならないというふうに決めたのは、NOxの方が肺の内部にまで浸透してきます。SOxの場合は、粒子その他の関係で鼻から入りまして気管支とかなんとかというところで、その辺の影響であるけれども、NOxのときはずっと入りまして、肺細胞の一番の末端のところまでいくから、その辺は非常に危険であるからそれよりきつくしておいて〇・〇二にしてしまえという、どうもそういう話ではなかったかという話を漏れ承っておるわけでありまして、私は、そういった点も含めまして、NOxの基準の見直しというものもこれから考えていかなければならない点ではないかと思うのであります。  そこで、SOxの方に入りますが、いまの点につきまして環境庁の方でどういうふうにお考えになりますか。
  89. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いまさっきのお話は非常に模式的に物を申しまして、その間と、弱い人でもどうもないと思われるということですが、では〇・〇二には何にもないという証明があるかと言われますと、科学的にはないです、絶対安全という。これは経験的にいっていますから。先生のおっしゃるような、非常に厳密な安全性の証明をよこせと言われると、これは私たちはまずそこでまいってしまうというのが実態でありまして、そこのところはお互いにいろいろな議論があるということをお含みおき願いたいと思います。  それから次は疫学の問題でございますけれども、有意か有意でないかということでございますが、これは学問的な検定としては一つの大事なことだと思います。差があると見てよいかどうかというようなことは、先生のおっしゃった五〇%有意かなんてそんなラフなことをしているわけではございませんで、一%か二%か三%か五%か、そういう議論をしているわけであります。それぐらいなリスクで言えるかどうかということでございまして、五〇%というようなそういうけた外れのラフな議論をしているわけではないということ、それが一つでございます。  それからもう一つは、疫学調査の大規模人口調査というのは、どうしてもサンプリングを入れるもので制約を受けます。そういう意味で、統計的に意味がないとなったら全部捨てるかと申しますと、私どもは単純には全部捨てません。なぜそういうかといいますと、動物実験のデータと矛盾する結果が出てきているかどうかということであります。これは非常に大事なところでございまして、動物実験でポジティブなデータが出ている。しかも動物実験でぶつかっているデータが、われわれが経験している濃度とほぼ同じか、たとえばわれわれがぶつかる濃度は一時間値〇・一二を常日ごろぶつかるわけです。動物実験の方では〇・五です。物によっては〇・二というのがございます。同じオーダーです。ですから、アメリカの労働衛生の有名な人が、これは環境が厳し過ぎるという批判を「サイエンス」という雑誌に書いたときに、少なくとも動物実験の濃度は、自分たちが暴露される濃度の十倍オーダーか百倍オーダーでポジティブに出たら非常に注意をせよ、しかしながら、それを何千倍、何万倍の量で出たからといって、いま騒ぎ過ぎておるというようなことを非常に批判しております。  その条件に当てはめてみますと、NO2の〇・〇二という濃度といいますのは、動物実験では十分の一のオーダーで出ておるのですからね、余りそうかけ離れた議論をしておるわけではない。それから所見としては矛盾が来ないというところで、しかもこれは相関が有意に出たデータが幾つかあるかというと、出たのもありますし、出ていないのもあります。これは別のデータを引くと、低いのが出ております。ですから、六都市の五年間の調査でも、一、二歩前進というところまでであるということを申し上げておりますが、やはりあれだけ厳しい相関にぶつかったことはわれわれはございません。しかも、動物実験とはわりあい矛盾はしないというところから見ると、簡単に捨て去るわけにはいかない、突っかい棒としては少し強いものがあるのじゃないかということでございます。  そういう意味で、疫学的にもシグニフィカントで動物実験とも矛盾をしないとなりますと、しかもオーダーが余り変わらないということになると、これは非常にセンシティブにわれわれは考えるということが——補償の立場ではそういうことは起こりません。補償はもうはっきり実態的な被害がなければだめですから。予防するという立場では、そのような立場をとってやっていくというのが「維持されることが望ましい」という環境基準をつくり、それを守っていく行政当局の責任者としては当然であろうというぐあいに思っております。
  90. 林義郎

    ○林(義)委員 わかりました。補償の問題の因果関係の問題と予防の立場でのいろいろな考え方というのはやはり違うんだ、それは私も非常によくわかるのです。  そこで、私はその予防の立場に立ってやるような話がこの問題であるならば、やはりその予防の立場に立ってやるということをひとつ十分に考えていかなければならない。予防医学ということになりますと、手を洗って食事をしなさいと私たちは子供のときに言われたわけです。しかし、手を洗うのも、川の水で洗うよりは水道水で洗う方がよろしかろうし、水道水で洗うよりは塩水で洗った方がよろしかろうし、塩水で洗うよりはいろいろな薬を入れて洗う方がよろしい、こういうことで、ですから私はそういったところの予防の立場というのはやはり一つの経済的な問題、本当はそれはもう全然どこにも触れないような形の方が一番いいのでしょうけれども、そういったような物の考え方というものをやはり入れていく必要があるだろう、こう思いますし、日本の環境基準といいうのは、先ほど来も話をいたしたように、単なるゴールであるから、厳しければ厳しいほどいいという物の考え方ではないので、むしろ工学的なり、経済的、社会的要素を含んだ総合判断の所産であって、本当はいいのだろうと私は思うのです。前回から指摘をしているように、ところが地方レベルでの規制は非常にしゃくし定規になっている。橋本局長は大変よくわかっておられるから、東京ではそういうことをいっても、地方に行きますとなかなかそういうことにならないというような実例も間々聞くわけであります。したがって、その辺はやはり環境庁としても十分に宣伝をされる、また、環境基準というのはこういうものであるということを宣伝される必要がありますし、そういったことが私はどうも足りないという気がしますから、私の浅学非才にもかかわらず、きょうはそんな図を示したり何かしましてあえてお尋ねをしたような次第であります。  そこで、環境基準によって保護しようとする健康というものが人体の代謝調節の範囲内を指すものとすれば、国民や地方自治体の一部で受けとめられているような、現実環境濃度が環境基準をオーバーしているから直ちに健康にとって有害であるとか、環境基準は安全限界であるというような考え方を言っている人がありますけれども、それを超えたらもうすぐ直ちに病気になるとかなんとかというような話がありますが、そういったことは私は明らかに誤りだろう、こう思うのです。そういった点をやはり環境庁としては積極的に言っていただくことが私は必要だろう、こう思いますけれども、この辺についてはどういうふうにお考えになりますか。
  91. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いまの先生の御指摘の点、全くそのとおりでございます。そういうことで、〇・〇二というのはいままでの知見ではまず絶対安全と言っていいのだ、それを超えたらすぐ危いのじゃないのだということを私は大気保全局長に就任して以来、非常に批判する方々もございますが、正直に申し上げて、まだまだ浸透していないということは事実でございます。そういうことで今度は判断条件ということで、いままでは四十七年までの判断条件によっておりましたが、五年たってより新しくなったということで、その判断条件と指針を出していただけばもう少しはっきり言えるのじゃないかということをもって、今度専門委員会にそういうものをお願いをしておる。おっしゃるとおり、われわれの周知徹底の努力というのが私は不足していると思いますし、できるだけのことはしたいと思います。
  92. 林義郎

    ○林(義)委員 健康に対して及ぼす影響というのは、単に、NOxの問題をいま議論しておりますが、NOxだけではないと思うのです。高度成長なりその手前から人間の寿命というのは非常に延びてきた、日本人の寿命というのは非常に延びてきました。やはりこれは日本の生活水準が非常に上がったことが私は延びてきたことだと思うのです。それば単にファクターとしては、お互い栄養のある物を食べるような、栄養水準なんというのもずいぶん上がってきたし、一般的な保健、環境、衛生水準なんというのも非常に上がってきたと思うのです。お互いの子供のころの生活水準を考えたり、お互いの子供のころの食べ物といまの子供たちが食べている食べ物を比較しましたら、それは全然違うのですね。それはやはり農林業政策がうまくいったとか、あるいは一般の政策がうまくいったとか、医療保険制度が完備をしてきたからということが総合的にあった、私はそういったことの成果だろうと思うのです。健康の問題を言いますと、単に環境の問題で言うのでなくて、やはりそういった総合的な政策の中の一環として考えていかなければならない問題だろう、私はこう思うのです。この点は、環境行政はほかのところと特別に離れたところにあるような行政ではなくて、やはりそういったいろいろな、栄養の問題であるとか、保健衛生の問題であるとか、福祉であるとか、あるいはさらには、大衆消費社会になりましたこの大きな産業社会というものの一つの大きな成果を踏まえてお互いの健康を進めていかなければならないだろう、私はこういうふうに考えているのですけれども、こういった点につきましては、長官、どういうふうに考えられますか。
  93. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 いまの御指摘のように、昨今平均年齢が非常に延びてまいりました。長生きをするということは、つまり健康状態が昔と比べて相対的に長く続くから寿命が延びたということでありまして、それは純衛生学的なあるいは医学的な条件のみならず、その他の条件が完備したことがこれを促進したということは、私は否めないと思います。ただ、休憩前に土井委員と応答したことの続きなんでございますが、現時点でつまり人間の寿命というものに非常に大きく寄与した諸条件をつくるに非常に効果のあった日本の経済というものと、健康問題が二律背反する場合には、私はあくまでも健康をとるべきだという一線は守るべきだと思っております。
  94. 林義郎

    ○林(義)委員 そこで、この前から大分質問いたしましたが、後で速記録を読ましていただきましたら、ちょっと、いろいろと問題が残っているようでもありますから、その点再度お尋ねをいたします。  第一は、「複合大気汚染健康影響調査」の評価に関する問題であります。これはその調査地域について言いますと、NOx汚染がこの程度の場合には余り切迫性はないというようなことを大気保全局長も言っておられますが、調査地域が六都市の話でありますけれども、これを全国を代表するものと選ばれたのでありますから、調査地域におけるNOx汚染に切迫性がないということは、全国的に見てもNOx汚染に余り切迫性がないというふうに理解をしていいのか、どうなのか。  それからまたもう一つは、NOx汚染の現状に切迫性がないということであったならば、いずれ健康にとって必要な目標値を設定し段階的に削減していけばいいのではないかという考え方がそこで出てくるわけでありますけれども、この辺につきましてはどういうふうに考えておられますか。
  95. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 六都市の五年間の調査につきまして環境保健部の方がいろいろまとめて報告が出ておるわけでございます。その中で、われわれは疫学調査を規制の立場からはやっておりますのは、やはり作業仮説を一応つくって、それでどう生きるか。特に六都市の問題は、この大気保全局にとりましては、伊丹のエアバスの判断のときに非常に困って、どう判断するかという一つの重要な材料になったわけでございます。濃度の範囲であそこにあらわれたところに関する限り、あのようなコンビネーションのことで見れば、ばいじんとSOxさえ下がれば、NOxが頭を抑えられたような形で少し上がりぎみということであっても、有症率は三十歳ではきれいに下がっておる。片方の方は下がっていると言ってもいいだろうという程度のものだということ、まあ、定性的でございます。これを濃度にはめて一々言うことには私、非常に問題があると思いますので、濃度にはめては申しません。そのような定性的な感じからいきますと、全国的ないまのNOx問題をどう思うか、こう聞かれますと、全国的なNOx問題で見ると、これは非常にひどいなというところは、特にひどい、実にクリティタルに危ないというところは、私はちょっとなかなか見当たらないのではないかと思います。非常に汚れているじゃないかというところまではあると思います。よし、これは大変だ、すぐさま前の四日市のときのように、もう気違いのようなアクションを起こして、何物をも犠牲にしてでもがさっとやらなければならないという事態はない。それから各国に比べてみまして、日本のNOxがめちゃくちゃに高いということは一向にない。特にロスに比べれば、今度の白書の中でも議論しておりますが、日本の方がぐっと二分の一か三分の一ぐらいであるというところから見て、汚染は改善する要がある、これは確かに指定地域を見てみますと患者がふえるということはあります。自然の患者増もありますからどれまでかという解析の問題はありますが、少なくともふえているという実態はあるわけですから、ですから何もないとか心配は要らないとかいう断言は、これは一切できません。ですから汚染はあって対策は打たなければいけない。しかしながら、何物をも、失業も何もすべてのものを犠牲にしてどかっと猛烈な対策を打って、産業がどうなっても構わぬのだという状態にあるとは思えない。そこで、その議論で、もしも延期できなければ、五十三年五月を目指して猛烈なことを、そればいやおうなしにやる覚悟でおったわけです。これならば少し時間がかせげる、こういうことになったわけですから、そこでステップ・バイ・ステップに入っていこう。しかし幾ら何でも、どれだけの濃度は確保しないと医学や公衆衛生の立場からこれならば受け入れられると言えるかどうかというところについて、従来の判定条件ではそれは出せない、それを明らかにしてもらおうということで出たわけでございます。
  96. 林義郎

    ○林(義)委員 よくわかりました。  それからもう一つ。四月七日のこの委員会におきまして、大気保全局長から、この調査はNOxと健康影響との関係について、大気保全行政の立場から一歩確からしさを増したものと評価し得ると、先ほどもそういう御答弁がありました。とすればこの同じ調査から、SOxと有症率の関係には関係がないらしいという従来のことがやはり出てくるということがあるわけです。そうすると、またSOx行政の方を根本から揺るがすようなことにもなりかねないと思うけれども、こういうふうな点はどういうふうに考えられますか。
  97. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いろいろ議論をしております影響は非特異的な影響でありまして、この部分はSOx、この部分はばいじん、この部分はNOxというように分けることは不可能でございます。そういう意味で、いまのSOxがあれぐらいの程度にずっとなってくると、だんだん相関がルーズになってくる。しかしSOxが悪いということは明白であります。  それから体験的な議論で恐縮ですが、オキシダンドの被害の反応というのは非常に緩やかになってきております。専門家連の言いますことは、やはりSOxが下がっているからではないか、ばいじんが下がっているからではないかという議論をかなりされるわけです。そうやってみますと、これはNOxで今度は置きかわってきた、こう見るわけでして、やはりSOxも別に何も果たしてないわけではありません。そういうことで、環境基準にあと一歩というところで、いま八〇%ぐらい達成していますから。ですから維持されることが望ましいと決めた基準でございますね。これはあらゆる方々の合意のもとに決めて、汚れてないところに比べても問題がない。前のSOxの古い基準は、汚れていないところに比べて二倍の有症率になる。これは絶対にいけないと、すべてのものに指定されたわけでありますから、同じ水準にするというならもうあと一息のところでSOxはいけるだろうというぐあいに判断しております。
  98. 林義郎

    ○林(義)委員 第二は、WHOのNOxガイドラインの取り扱いの問題でありますが、WHOのNOxガイドラインの一時間値の評価につきましては、恐らく先ほど土井さんも御質問されたのだろうと思いますけれども、この委員会におきまして有力な資料であることを認めつつも、急性影響を予防するという限定的意味においてであって、それ以上先の慢性的影響についてWHO自身データが乏しいこともあって議論を発展させていないということでありますし、中公審の専門委員会で新たなデータをもって議論されるものということである、こういうふうな答弁がこの前あったわけですが、中公審の専門委員会でも十分討議されてもらいたいのですが、WHO自身が慢性的影響について採用すべき疫学的データがないと判断したことはきわめて重要なことではないかと私は思いますし、この辺につきましては、WHOの見解に対してどうだと言うのもまたどうかと思いますけれども、これについては環境庁、どういうふうに考えておられますか。
  99. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま御指摘になりましたように、慢性の影響を判断するのに疫学資料は定性的な知見をあらわすのみであるということと、それからあのレポートの中にもございますが、疫学的にあらわれている知見は動物実験とは矛盾はしていないというところは認めているわけであります。しかし慢性影響としてあの中ではとうてい合意に至るまい、一週間の期間でございますから。そういうところがあり、そこまで議論を発展させなかったという議論でございまして、それでそのほかにいろいろのデータがありまして、非常に不満な人もおるわけです。これは日本人ではございません。ほかの人で不満な人もおるわけですが、そこらの問題が残されております。このところは、日本は日本としての考え方でいろいろ整理をするところではないか。これは先ほど先生も、カドミは、日本は日本としてとおっしゃることと同じ考え方で対応したいと思っております。
  100. 林義郎

    ○林(義)委員 さきのWHOにおける報告では安全率三−五倍として、一時間値〇・一から〇・一七という範囲内でNOxのガイドラインをつくるということを言っておりますが、これの日間値換算がいろいろ議論されておりまして、橋本局長答弁ですと、常に〇・一のアンダーライン、一番下の〇・一から〇・一七ですから、一番下は〇・一である。その〇・一のアンダーラインの議論だけでありますけれども、〇・一から〇・一七というところの話でありますから、普通で言いますと、たとえば中間値をとって〇・一四五というような形をとるのか。そういった形で議論した方が議論としてはいいのではないだろうか。〇・一でなければならない、〇・一から〇・一七であるという話がありますけれども、この辺はどういうことなんでしょう。さっきの話で、ディザイアラブルである、アクセプタブルである、この前議論しましたね、その議論、ディザイアラブルレベルであるのかアクセプタブルレベルであるのかという話でありますと、ディザイアラブルであるならば、一番低い方ならば低い方という話でしょうけれども、その辺は私は詰めてみる必要があるだろうと思うのですけれども、この辺はいかがでしょう。
  101. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 これは専門委員会でいろいろ議論いたしますから、そちらの判断に任せたいと思いますが、私はどう思っているかということを言うことをもしもお許しいただけますならば、まずWHOはよく思い切って三分の一と五分の一というセーフティーファクターを使ったということであります。従来エアポリューションについてセーフティーファクターを使ったケースはございません。と言いますのは、使うととてつもないものになってしまうということで使いませんでした。そういうことでWHOがセーフティーファクターを使ってエアポリューションをやったのは、今回が初めてでございます。これはいままでの対策がすべて後手であったということは、WHOは認めておるわけです。十年、二十年汚して、さんざんデータを集めてから決めたという経験がございますから、そこで、これからそれをやっていると動物実験でも発がん物質でもすべて手がない。そういう意味で、動物実験をどういうぐあいにして使うかという非常に新しい次元に来た判断で、私は、三分の一と五分の一という普通ならば驚くようなセーフティーでやったということに対して非常に敬意を表しております。  その次の、それでは〇・一でいいかということでございます。WHOのレポートの中にも入っておりますが、ぜんそくの患者を、よくドイツはああいうことをやるものですが、暴露実験をしておるのです。〇・一ではやはり緊縮の問題の変化があらわれるわけですね。変化があらわれまして、先ほどの先生御指摘のこの図で言いましたならば、あれは恐らくAとBの間にあるのだろうと思うのです、あの一つのデータは。それはもっと追試する必要があるということを書いてありますが、少なくともそのデータがあります。そういう観点からいきますと、やはり〇・一という数字というのは日本のような多数の人口集団を抱えているところと——これは人口集団の多い少ないは問題じゃないじゃないかという御議論がよくございますが、やはりWHOの前のレポートの中に、人口が大きくてリスクや何かが大きいということはダメージの規模も大きくなるということはよく考慮に入れるという条項がございます。そういう点で、私は個人的な感じとしてはやはり一時間値の〇・一というのは非常に大事なものなのだなあというような受け取りをしながら物を見ているというぐあいに御理解を願えればありがたいのではないか、そう思っております。
  102. 林義郎

    ○林(義)委員 いろいろといま橋本さん、注釈をつけて、個人的な見解ということでお話がございましたけれども、やはりその辺は、私は中公審あたりで十分御議論していただいたらいいと思うのです。個人的な見解でいまお話のありました点も非常によくわかりますが、いろいろな学者の意見、橋本さんも大変りっぱな学者ですが、同時にいろいろな方々、いい学者をたくさん集めてやっておられるわけでありますから、そこで十分に私は議論を尽くしていただきたい、こう思うのです。  ところでNOxのガイドラインの日平均値への換算の重要性というものは、この前の委員会のときでも私はラーセンモデルその他を引いて申し上げました。日本の条件では環境庁自身の換算結果については自信があるというような答弁をしておられますが、私は、この辺の問題も中公審で議論してもらった方がいいし、また、そういうふうな御判断だろうと思うのです。  そこで、先ほど来申しましたような諸点、統計の問題であるとかその他の問題もやはりどこまでやったらいいかということを議論をしてもらうためにも、やはり統計の専門家などというものも中公審に入って、メンバーがおられなければそういった特別の専門委員会をつくられてやってもらった方が本当はいいんじゃないだろうか。というのは、環境問題というのは日本でこれだけになってきましたけれども、まだまだ環境問題に関する学問的な体系というのは、実のところ申しまして死に至る病のような形の医学が発達しているのとは違って、健康とその原点を探るというのは余り発達していないのです。これはもう一つ言いますと、医学そのものにも原因がある。医者はいよいよ苦しんでいる人だったら少々金を出しても研究しようという形で医学があるわけですけれども、健康でぴんぴんしている人がより健康になるとか、健康かどうかはわからぬけれどもそれをやろうというときに実は余りみんな金を出したがらないから、結局医学もなかなか発達しなかったということもあるのだろうと思うのです。そういった意味でやはりそういった点については金を惜しんではならないし、これからの環境行政には、そういったいろんないままでの学者のすぐれた英知を結集してやるということが一番大切なことだろうと思うのです。本当に私申しまして、環境医学というのはこれからまだまだ大いに発展をさせていかなければならない問題だと思いますけれども、この辺につきましては長官なり環境庁当局はどうお考えになりますか。
  103. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 確かにおっしゃいますように、そういう科学技術的な体系の整備しないまま、しかし幾多の公害現象があり、それにかんがみて、先ほどWHOの所見についても局長も申しましたが、後追い、後手後手に回らぬためにNOxの基準もわが国はわが国なりにかなり思い切った数値を構えておるわけですけれども、先ほど休憩前の議論にもありましたが、それを科学的により新しい知見でもって洗い直すと申しましょうか、科学的に裏打ちしていく作業というものは必要でありまして、それによってそれが修正、高くなるのか低くなるのかいずれにしろ修正されるべきものならば、これはやはり法律にもうたわれてあるものですから、すべきことだと思います。そしてやはり、体系が整わないままにとにかく一応未然防止ということで設けた一つの基準値というものをアプリオリとして、もうゆるがせないものとして考える発想というものは、ある意味環境行政というものを非常に硬直し、つまりある場合にはむだな過重投資も招くおそれもある。しかし同時に、先ほどから繰り返して申しますが、健康と経済というものが二律背反する場合にも、あくまでも健康優先であるというたてまえで、常に新しい知見を持ってそういった数値というものを洗い直し、それが公害防止の体系をより確かなものにしていくよすがになるということは、作業として必要だと私は思います。
  104. 林義郎

    ○林(義)委員 質問の時間が大体来ましたから、また後に譲りますが、もう一つだけ、恐縮ですけれども……。  前回私が御質問申し上げました中で、自治体のNOx規制の実態について質問しましたし、条例とか、あるいは地方自治体との協定を結んでおられまして、どのくらいあるかという御答弁が抜けているわけです。〇・〇二と〇・〇四を目標としている自治体はそれぞれどのくらいあるのか。また〇・〇二を目標として条例または協定上NO、削減を実施している自治体はどこかというのを、きょう資料がなければまたこの次でも結構ですから、私は出していただきたい。この辺は、先ほど申しましたように、環境庁あるいはこの国会での議論というのはこうやりましても、実際の運営というのは地方自治体なりがいろいろこうやっているのですから、その辺の実態を十分によく把握していただいて、いまのような考え方地方自治体の末端まで及ぼしていくことが国民の信頼をつなぎとめるところの方法だろうと私は思うのです。そうした意味で、どのぐらいこれをやっておられるのか、数字がありましたならばお答えいただきたい。なければこの次の機会でも結構ですから出していただきたい。
  105. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 残念ながらいま手元に、どれぐらいの自治体が〇・〇四か〇二かという数字がございません。ただ私どもいままで承知しておった範囲内では、〇・〇二を五十三年にストレートにぴしゃっと入れる形のものは、いまちょっと頭に全然浮かびません。〇・〇四を目標にしてやっておりまして、全く新しいところにつくるときにそれを振り回しながらやっていて実際は厳しい規制が入っているというのがございますが、一度よく調べてみたいと思います。  それから、先ほど先生の御注意がございまして私のいろいろ申し上げましたのは、先生からの御質問に対してここで申し上げたので、専門委員会の席上では一切さようなことを申しておりません。全く白紙で議論をしてくれということで、かなりいろいろの色彩の先生、専門家が中に入っておりますから、公正な議論ができるということでございます。
  106. 土井たか子

    ○土井委員長代理 橋本大気保全局長に申しますが、ただいま林委員から御指摘の各自治体においていろいろ具体的に規制をどのようにしているかという資料でございますね、それは出していただけますでしょうか。
  107. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 調べてお出しいたします。
  108. 土井たか子

    ○土井委員長代理 それでは、それでよろしくお願いいたします。
  109. 林義郎

    ○林(義)委員 委員長から言っていただいたから、私は、それを最後にお願いをしまして質問を終わろうと思います。  ありがとうございました。     〔土井委員長代理退席、林(義)委員長代理着席〕
  110. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 古寺宏君。
  111. 古寺宏

    ○古寺委員 林野庁にお尋ねいたします。  昭和四十六年に国有林の活用法ができてから今日まで国有林の活用がどのように行われているのか承りたいと思います。青森営林局管内の例を申し上げますと、青森県の場合には、当初の長期計画では四万六千百ヘクタールの活用の計画があったわけでございますが、これが五カ年間に活用された面積は四千二百五十九ヘクタールでございます。これは当初の計画に対しまして九・三%、こういうふうに言われているわけでございますが、この活用計画が進行しない主なる原因はどこにあるのか、まず承りたいと思います。
  112. 渡邊信作

    ○渡邊説明員 お答えいたします。  昭和四十六年に国有林野の活用に関する法律が施行されまして、全国で農用地造成のための活用実績は約九千九百ヘクタールでございます。それから部分林の設定のための林業活用実績が約一千二百ヘクタールとなっております。青森県について見ますと、農業活用の実績が一千四百ヘクタール、それから林業活用の実績は約五百ヘクタールという数字になっております。  ただいま先生がおっしゃいましたように、なぜ活用が進まないかということでございますが、国有林の活用につきましては、国有林野の活用に関する法律第四条に基づきまして、農林大臣が基本的事項というのを公表しております。そこに活用適地の基準を定めておりますが、その基準に合うかどうか、合ったものにつきまして農業サイドからの要望がございます。それに国有林野も事業をやっておりますのでいろいろな使命を持っておりますので、その国有林野の管理と経営というものが適切に行われるということについて考慮を払いながら活用を進めてまいりますので、要望があったものがすべてそのまま実現するということにはなりませんで、両方の調整を図りますので、先生言われたような計画といいますか要望と実績の差があるのかと思います。
  113. 古寺宏

    ○古寺委員 いまこの条件がある、これは国なり県の補助事業、あるいは農林漁業金融公庫の融資を受けられるような対象の事業でないと活用の対象にはならないようでございますが、このいわゆる活用法に対応した対応策を、農林省の特に畜産局、草地造成とか林間放牧についてどういう対応策を考えておられるのか、承りたいと思います。
  114. 山田績

    ○山田説明員 畜産におきまして飼料の安定的供給、特に草食動物におきますところの自給飼料、草の確保ということは非常に大切なことでございまして、このため各種の事業を行っているところでございます。先生もいま活用の対象は補助事業とかあるいは公庫融資事業に限られているというようなことでございました。国有林野活用法におきましては、国有林の本来的なる責務でございます木材の供給あるいは国土の保全とか水資源の確保という役割りとの調整の中で、農業構造改善等の多目的に活用、提供するということにあるのでありまして、国有林使用に係るすべての事業ということではなく、国あるいは都道府県が直接間接に補助するとか、農林漁業金融公庫等政策金融が関与するとか、公的に指示された事業に活用するということをたてまえとしているわけでございます。しかしながら、地元の産業振興や住民福祉の見地から、国有林活用法以外に、一般的に国有林野法に基づく一般地元施設として貸付使用の道もございますので、かかる方法も活用しつつ、国有林の畜産的利用ということにつきまして林野庁によく相談をして、積極的に畜産的な利用を図っていきたいというふうにしているところでございます。
  115. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは、青森県の地元で草地の造成事業をやりたい、あるいは林間放牧をやりたい、こういう希望がございますね。その場合に、農林省としてそのいわゆる計画に見合った補助事業なりあるいは融資を伴う事業なり、そういうものを計画してございますか。
  116. 山田績

    ○山田説明員 お答えいたします。  具体的に青森県の地元からどのようなる事業が出ておるかということにつきましては、つまびらかに私いま存じませんが、草地の造成なんかにおきましては、団体営あるいは県営あるいは畜産基地造成事業というような各種事業がございます。そしてその中で、先ほど申しました国有林の活用ということを適宜林野庁と協議をして行いつつあるわけでございまして、ほとんどの草地造成に関する、畜産的事業に関する事業は大体補助事業によって行われているものと思われます。たとえば青森県東部におきましては、畜産基地におきまして現在計画でございますが、地区面積が四千百七十七ヘクタールのうち国有林の面積が千七百四十五ヘクタールと膨大なる土地を計画の調査対象地区として取り上げておりまして、畜産局、林野庁ともにこれらの畜産的利用の方途につきまして調査実施しているというようなところでございまして、個々のケースがございますならば、それに基づきまして私の方は適宜事業として仕組み、これを実施していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  117. 古寺宏

    ○古寺委員 林野庁には毎年の事業の概要というのがございますね。事業の概要の業務方針の中に、地域の産業発展と住民福祉の向上に努めるものとし、というふうにちゃんと方針を示しているわけです。そうしますと、林野庁と、出先は営林局ですね、営林局と県側と何遍となく協議をしているわけです。その協議をしている内容について林野庁が農林省にお話をしなければ、あるいはまた農林省の方でその協議の内容をよく聞いておりませんと、地元の要望とかみ合わぬわけです。ですからこれを活用していく上においては、一番大きなウエートを占めているのが農業構造改善事業でございますから、農林省と林野庁と地元の県側、この三者が協議をしてこの計画を検討し、計画を実施していくように推進しませんと、国有林の活用というものは私は促進されないと思う。それが林野庁は県側の要望を聞くだけにとどまって、農林省の方は全然それを知らずにおって、直接今度は農地開発事業とかいろいろな問題で来たものを取り上げている。そういうばらばらの行き方では国有林の活用というものはできないと思う。この業務方針にもありますように、地域住民の福祉向上を図るためには、どうしてもこの三者がよく協議をして計画の推進をしていかなければならないと思うわけでございますが、こういう面について林野庁はどういう考え方を持っているのか、もう一回御答弁願います。
  118. 渡邊信作

    ○渡邊説明員 お答えいたします。  国有林の活用につきましては、先ほど申し上げましたように、国有林野の管理及び経営の事業の適切な運営に必要な考慮を払いながら、適正かつ円滑な活用が図られるように推進しているわけでございますが、ただいま先生御指摘の点につきましては、農林省の中におきまして林野庁と畜産局あるいは構造改善局の間で国有林野活用ということが絡みます新規事業の計画段階、それから農用地造成の計画樹立段階で十分連絡をとっておりまして、適正に進めております。現地におきましては農政局、それから営林局、都道府県等が十分調整をとりながらその活用の適否を判断し、調査等も共同で行うようになっております。
  119. 古寺宏

    ○古寺委員 むつ小川原の開発に伴いまして吹越台の国有林を活用することになっておるわけですが、当初の面積に比較しまして決定した面積が非常に少なくなったようでございます。その主な理由は何でございますか。
  120. 渡邊信作

    ○渡邊説明員 吹越台の国有林の活用につきまして、ただいまちょっと手元に資料がございませんのでお答えできませんが、至急調べまして御返事いたしたいと思います。
  121. 古寺宏

    ○古寺委員 それは資料がなければ結構でございますが、主な理由としては、国土保全あるいは自然保護の立場で現地を調査した結果この面積を縮小した、こういうふうに私承っているわけでございます。  そこで林野庁にお尋ねしたいのですが、治山事業を営林局がやっておりますが、予算が足りないために非常に危険個所が多い。現在青森県の危険個所を見ましても、山地に起因する災害危険個所というのが四百十三カ所ございます。これは全国では何カ所ございますか。
  122. 下川英雄

    ○下川説明員 お答えいたします。  昭和四十七年時点で調査いたしました山地に起因しますところの災害危険個所でございますが、全国では約十二万四千カ所ということになっております。
  123. 古寺宏

    ○古寺委員 昭和四十七年から昭和五十一年まで第四次治山事業五カ年計画というのが行われました。これの全国の進捗率は何%でございますか。
  124. 下川英雄

    ○下川説明員 お答え申し上げます。  第四次の治山事業五カ年計画は、昭和四十七年度から五十一年度までの五カ年間でございますが、この間に五千八百億円の投資を行う計画でございましたが、この五カ年間におきますところの実績は約五千五十八億円でございまして、進捗率は八七・二%ということになっております。
  125. 古寺宏

    ○古寺委員 青森県の例で申し上げますというと、昭和五十一年度の治山事業の予算、国有林の予算が四億九千九百万円、それから五十二年度が五億五千万円、この対象面積が約四十万ヘクタール、ところが民有林の方は二十四万五千ヘクタールに対して五十一年度が十三億六千九百八万九千円、五十二年度が十六億二千九百八十二万一千円です。国有林の方が面積も危険個所も多いのに治山事業の予算が大体三分一です。  しかも、昭和四十七年から五十一年までの第四次治山事業の進捗率を見ますと、全国平均が八七・二%に対して、青森の場合は七一%です。国有林の面積が一番多い青森県が一番おくれていることになる。こういう治山事業が一向に進捗しないためにいろいろな災害が発生する、公害が起きているわけです。  たとえば、青森県の大きな災害では、岩木山の百沢の大事故がございました。あるいは十和田湖の渓流、これはもう雨が降ると汚濁して大変なんです。こういうような治山事業のおくれによるいわゆる自然破壊、環境破壊あるいは公害、こういうものについて環境庁はどのように把握をし、どのように林野庁と調整しているか、お答え願いたいと思います。
  126. 信澤清

    信澤政府委員 お話しの点でございますが、国立公園あるいは国定公園、こういった地域におきます林野庁の事業、具体的に申し上げますれば、森林施業と申しますか、これにつきましては、施業計画を林野庁から環境庁に御協議いただきまして、その中で処理をいたしておるわけでございます。  その内容の大部分は、いわゆる木を切るということでございますが、中には、いまお話しのように治山治水事業のためにいろいろな工作をする、こういう内容のものも当然含まれておるわけでございまして、その段階で私どももいま御指摘のような問題と照らし合わせて御協議をする、こういう手続で処理をしてまいっておるわけでございます。
  127. 古寺宏

    ○古寺委員 私は、特に環境庁に申し上げたいのは、自然公園とか特別保護地域とか、非常にいろいろございますが、そういう国定公園あるいは国立公園の中にも国有林がたくさんございまして、林野庁がどんどん伐採を進めます。そうしますというと、ちょっと雨が降ったり、何か地震等がありますと、災害が発生する、公害が発生する、こういうような状態になっておるわけです。ですから、こういう林野庁の伐採計画、施業計画については、やはりアセスメントを行って、環境を十分に保全する、自然保護を図っていく、環境を守っていく、そういう考え方にこれから立っていかなければならないと思うのです。  そういう面で、私は十和田湖の例で申し上げますと、雨が降りますと奥入瀬の渓流が非常に汚濁をいたします。これは昭和四十三年の十勝沖地震がございまして、山にたくさんの崩壊とかあるいは亀裂が生じまして、それに対する十分な治山事業が行われていない。後追いなんです。本当はこの治山事業というものは予防治山事業でなければいけない。ところが現在林野庁がやっているのは、復旧の治山事業も思うようにいかない、そういうような状態でございますので、やはりこの日本の自然を守るためには、環境を守るためには、アセスメントをきちんとやって、そうしてこういう林野庁の治山事業等についてもやはりチェックをしていろいろ調査をしなければならないと思う。そういう意味におきましては、十和田湖とかあるいは奥入瀬渓流についての雨が降った時点の透視度あるいは透明度、さらにはまた危険個所、崩壊区域、そういうものについての掌握が環境庁においては私は十二分になされていないと思う。今後ひとつそういう面について調査をしまして、そうして林野庁の方にはそういうところは優先して必ずこの治山事業をやってもらう、そうして自然の景観なり環境を守る、こういう行政をひとつ進めていただきたいと思うのです。これは環境庁長官からひとつ……。
  128. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 まことにごもっともな御指摘だと思います。自然公園の保護あるいは利用のためにも治山活動というものはもう切っても切れない関係にあると思いますし、いまだその林野庁の作業にアセスメントを施したという前例は多分なかったと思いますが、これは新しい御指摘でございますので、早速その方法等について考えてみたいと思います。
  129. 古寺宏

    ○古寺委員 それから、危険個所がふえるのは、木を切り過ぎるのです。伐採収穫量の推移を見ましても、これは青森営林局のデータでございますが、昭和四十七年には二百七十四万六千立方メートル、四十八年には二百二十万八千立方メートル、四十九年には百九十九万九千立方メートル、五十年には二百六万三千立方メートル、五十一年は二百三十五万三千立方メートル、一時四十九年には少し減りましたけれども、またこの伐採量がふえてきている。林野庁、これはどういうわけなんですか。
  130. 下川英雄

    ○下川説明員 ただいま先生から数字をお挙げいただいたわけでございますけれども、私の方で掌握しております数字と若干の違いがあるようでございます。  申し上げますと、昭和四十八年度が二百二十四万五千立方メートル、四十九年度が二百二万七千立方メートル、五十年度が二百九万三千立方メートル、五十一年度が二百四十一万六千立方メートルというふうになっております。  四十八年、九年、五十年と減少してまいりまして、五十一年度にふえておるわけでございますけれども、これは実はこの四十八年度から五十年度までの実績を見ますと、予定しました量に対しまして、振動障害等のために予定量が十分に消化されておりません。そういうことで予定量を下回った伐採がされたわけでございまして、その分の若干を調整いたしまして五十一年度は二百四十一万六千立方メートルにふえたということでございます。
  131. 古寺宏

    ○古寺委員 この前も三厩村の例を挙げて申し上げましたが、非常に伐採量が多過ぎるのですね。それで、活力のある山をつくるためには樹種更改をしなければならぬといいまして、濶葉樹をどんどん切って、そこへ針葉樹をどんどん植える。それが大きな災害の原因になっているわけです。ですから、皆伐をやめてやはり択伐とか間伐を、自然保護をきちっと守る環境保全考えた上で伐採計画を立てませんというと、国土が荒廃してしまう結果になるわけです。なぜこういうふうに林野庁が山の木を切るかといったら、これは国有林の会計が赤字なんですね。国有林の会計が赤字です。現在どのくらいの借り入れがございますか。
  132. 石田基隆

    ○石田説明員 お答え申し上げます。  五十二年度の予算におきましては八百三十億円の財投からの融資を受けております。
  133. 古寺宏

    ○古寺委員 環境庁長官、お聞きになったと思うのですがね、国有林の会計が赤字なんです。特別会計なんです。赤字なものですから木を切るのです。一方では木を切って国土を荒廃させるのです。一方では治山事業の予算が非常に少ないわけです。ですからどんどん環境破壊が起きてくるわけなんです。ですから、こういう国有林会計というものは特別会計じゃなしに一般会計にしませんと、将来大変なことになります。そういう面は、長官も国務大臣なんですから、どうかひとつ政府において検討していただきたいということが一つ。もう一つは、一般会計に移行できないならば、その間十二分にこういう対策を、環境保全、自然保護ができるような伐採の計画を進めるように一般会計からの繰り入れを十二分にしてあげて、めんどう見てあげる、こういう対策が必要じゃないかと思う。この面についてひとつ大臣、御答弁願います。
  134. 信澤清

    信澤政府委員 大臣の御答弁の前にちょっと申し上げたいと思いますが、お話のように林野特会、特別会計でございますから独立採算というたてまえでございますが、いまお話しになっておりますような治山事業に要する経費というのはほとんど一般会計から繰り入れをしておりますことは先生御承知のとおりでございます。そういう前提の上に立っての特別会計であるということをまず事務的に申し上げておきたいと思います。
  135. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 いずれにしても、自然の環境というものは金にかえがたいということは一つの公理でございまして、それが財政のやりくりで防止できるならば、これは所管が違いますけれども、私も国務大臣としてそういう助言を積極的にいたしたいと思います。
  136. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、国有林を活用するに当たっての貸付料が非常に高過ぎるという皆さんの不満があるわけなんです。活用はしたいけれども、貸付料が高過ぎる。使用料とかこういう貸付料が高過ぎる。その例を申し上げますと、一番高い例は、青森市でございますけれども、青森市の場合は一万四百二十五円と八千四百六十一円というのがありますね。これは八甲田です。それから横内、前岳では九千百八十九円と一万一千四百三十七円。こういうふうに非常に金額が高い。これに対して、よその地域を見ますと、安いところは大体三千円から四千円ぐらい、これはヘクタール当たりでございますか、そういうふうになっています。こういうふうに、地域によって非常にでこぼこがあるのですね。聞いてみますと、算定の方法は一応はあるようでございますが、それがみんなばらばらになっているようなんですね。ですから、参考小作料というものがあるそうです、こういうものを適用して、ひとつ貸付料の公平を期していただきたいと思うのです。  申し上げますと、東通村というのがございますが、ここには東北電力あるいは東京電力が原発の用地を買いました。そういう地域では地価が高くなり、あるいはむつ小川原の開発が行われる、そういう地域においては地価が高くなる。そういう高くなった地価の時価でもって算定しますと、これはもう住民にとっては大変な迷惑なんです。一生懸命、そういう公共事業だからといって土地を手放すようにいろいろ指導して、自分の農地を手放した。そうして今度は新しい国有林をお借りしていろいろな事業を始める。その場合に、こういう使用料とか貸付料が高いと、畜産経営をやっても間に合わないことになるのです。そういうような現地の実情というものを十分に考えて、貸付料というものは公平に地域住民の立場を考えてひとつ決めていただきたいと思いますが、どうでございますか。
  137. 渡邊信作

    ○渡邊説明員 お答えいたします。  国有林活用の際の草地の貸付料でございますが、これは非常に有利になっておりまして、一般の貸し付けの場合には土地の価格の百分の四ということになっておりますが、草地につきましては百分の三。百分の一だけ安くなっております。さらに共同利用の場合には百分の一・五ということで、非常に有利になっております。そしてまた、契約更新の際に、地価上昇が大体どこでもするわけでございますが、あまり急激に上がりますと御迷惑がかかりますので、一般には、大企業なんかの場合には前年の一・五倍の範囲にとどめるようになっていますが、草地につきましては、前年の一・一倍に抑えるという形でかなり優遇しております。  それから、先ほど先生が言われましたように、観光開発とかあるいは大規模な工業開発等の外部的な要因で土地の価格が急激に上がりますと、時価でやってまいりますと非常に高くなります。そういうところは時価ではなくて、ケース・バイ・ケースで類似のところの賃貸料とか、それから先生ちょっとおっしゃいました参考小作料というものを勘案して決めることになっておりますが、参考小作料を一般的に使うということには、国有林の立場といたしまして、一応ルールといたしまして時価に一定の比率を掛けて賃貸料を決めるという原則がございますので、その原則の中で非常にぐあいが悪いところがございましたら例外的に手当てをしていく、こういうふうにやっております。
  138. 古寺宏

    ○古寺委員 それから、公共用地の売り払いでございますが、非常に価格が高いのです。青森県の下北郡の大畑町の保育所の敷地が一千六百六十五万八千円、上北郡の六ケ所村の母子健康センターの公営住宅の敷地が二千八百九十万円、それから下北郡の脇野沢村の診療所の売り払い金額が一千三百六十万円です。非常に高い売り払い代金になっている。先日も、十和田湖の休屋というところがございますが、そこの小学校の敷地を林野庁から何とか分けてもらいたいというので御相談申し上げたところが、価格が高くてとても学校をつくれない、こういうことを言っているのですよ。こういう公共事業についてはむしろ無償で払い下げてあげるくらいのことはできないのでしょうか。
  139. 渡邊信作

    ○渡邊説明員 お答えいたします。  公共用地に国有林を売り払いまたは貸し付けをする場合、特に、相手が地方公共団体であったり公共用に使う場合には、国有財産特別措置法第三条に基づきまして、時価から五割以内減額した対価で売り払いすることができるようになっております。したがいまして、ただいま先生がおっしゃいましたような用途につきましては、この法律に基づいて減額して売り払っております。その評価については、林野庁に評価基準というのがございまして、時価を評価して、その時価について五割以内の減額売り払いをやっております。
  140. 古寺宏

    ○古寺委員 こんな高い値段で、これで五割減額しているなんてちょっと考えられません。田舎の、こんなことを言うと怒られるかもわかりませんが、もっと土地の安い地域なのですから、こういう値段で減額しているなんということはちょっと考えられないのですね。非常に地域住民からの要望が強いわけです。軒先国有林と言って、自分のうちの後ろがみんな国有林で、何にもできないのですよ。この五十二年度の業務方針を見ますと、いかにも地域住民の要望にこたえるような方針になっておりますので、そういう面についてはひとつ十二分にこれから考慮していただきたいと思う。  それから、林道の整備でございますが、下北郡の佐井村の福浦と牛滝の間の林道がございます。これは、併用林道になっておりまして、国定公園の中でもございます。この林道を県道に昇格させてもらいたいというのが地域住民の願いなのです。ところが、県側は、この併用林道には支障木が三千本もあると言うのです。林野庁ではこれをどういうふうに調査してどういうふうに措置するのですか。
  141. 石田基隆

    ○石田説明員 お答え申し上げます。  ただいまお話のございました佐井営林署の管内の牛滝−福浦間の海岸林道の問題でございますけれども、すでに五月一日までに、関連する支障木等につきまして五百五十七本、百十七立方を伐採済みでございます。  また、県道移管等の問題につきましても、国有林の林道について地域住民の利用が多く、特に公道的な性格を有する路線等につきましては、努めて公道化を図ることにいたしておるわけでございます。したがいまして、この間の海岸林道等につきましても、すでに一部は県道に移管されておりますが、なお残余につきましても、県道移管につきまして、青森県の受け入れ準備の整い次第鋭意移管すべく青森県と協議中でございます。
  142. 古寺宏

    ○古寺委員 販売方法についても申し上げたかったのですが、きょうは時間がございません。販売方法には一般競争入札と一般競争特別資格づきと随意契約とありますね。一番困っているのは中小の製材業者あるいは木材業者でございます。随契が非常に多くて、大手の製材業者あるいは大手の木材業者には原木が十二分に販売されているようでございますが、中小企業に対しての配慮が十分になされていない。そのために一般競争特別資格づきというのがあるらしいのですが、これは素材についてはございますけれども、立木については全くございません。実績ゼロでございます。きょうは時間がございませんので、立木の販売について、今後一般競争特別資格づきという制度を考える必要があると思うのですが、林野庁の考え方をお聞きしたいと思います。
  143. 石田基隆

    ○石田説明員 国有林材の販売につきましては、いま古寺先生からお話がございましたように、一般競争入札、指名競争入札、随意契約というものがございますけれども、特に地元の中小企業の育成を図るという趣旨も含めまして、随契等におきましては、国有林材の販売に当たりまして、国有林材の安定的需要先であり、かつ農山村地域等において地域経済の重要な担い手となっております製材工場に対しまして、地元工場としてこれら中小企業の経営の安定に資するよう、実は随意契約等を原木供給という意味で安定的に行うなど、その育成を図っておるところでございます。  また、御質問の立木の限定づきにつきましても、それらのことが運用できるように現在の制度でなっておりますことをお答え申し上げます。
  144. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、国土庁にお聞きしますけれども、国土保全の立場から、国土庁は国有林の治山事業についてはどういうふうにお考えになっているか承りたいと思います。
  145. 田中信成

    ○田中説明員 お答えいたします。  国土庁におきましては、国土の総合的あるいは計画的な利用を進める見地から、有効利用を含めて国土の利用についての計画を作成しております。これは国土利用計画と申しておりますが、この中におきまして、国土の保全という立場から治山に十分配慮するということを旨といたしまして、国土の全国の利用計画を作成しております。人口の減少等に伴いまして山林の管理が粗放化され危険地帯が出てくるということがございますので、私どもといたしましても、そういう意味では治山の問題が重要な課題であると考えております。  全国計画ではその程度の治山の配慮でございますが、現在、各県におきまして県のレベルでの国土利用計画というものを作成中でございますので、その各県の計画の中で治山の問題が十分検討されることを期待しております。
  146. 古寺宏

    ○古寺委員 国土庁の「官庁速報」という五月二十三日付の新聞ですか、ニュースがございますが、その中に「むつ小川原、気になる環境庁の出方」こう書いてあります。ずっと読みますと、「四十四年に策定された新全国総合開発計画で景気よく打ち上げられたものの、その後の経済社会情勢の変化に直面して“漂流”していた日本最大の石油コンビナート基地建設計画「むつ小川原開発計画」がどうやら六、七月にも閣議了解に持ち込まれそうだ。その時期は参院選を控えて微妙だが、「国会会期中はない。選挙中もない」(某幹部)」とこうなっております。国土庁の某幹部、こう答えております。これは国土庁の考え方ですね。  そこであなたにお聞きしますけれども、むつ小川原開発計画の閣議了解の見通し、どういうふうに考えておられるのですか。
  147. 城宏明

    ○城説明員 お答えいたします。  御承知のように、現在青森県におきまして環境影響評価の作業を実施いたしておりますが、環境影響評価報告書案につきまして住民への公表を終わりまして、現在住民意見が出てまいっておる状況でございます。青森県といたしましては、現在この住民意見に対しましてどのような対応策と申しましょうか、措置をとるかということにつきまして関係省庁とも十分相談をしながら最終報告書の作成のための準備を進めておるという状況でございます。  今後の日程と申しますか、スケジュールといたしましては、この環境影響評価作業の成果を勘案しながら、関係省庁間におきまして、県が作成いたしました総合開発計画の総合的な調整を図りまして、その上でできる限り早い時期に閣議了解が得られるように努力してまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  148. 古寺宏

    ○古寺委員 次に「六月八日以後、参院選公示前が一つのヤマ場。景気浮揚ムード演出の本四連絡橋ルート決定、新幹線整備五線のアセスメント実施などと並ぶ参院選対策とみれば、「六月十日、あるいは、十四日の閣議決定」の八卦も出てくる。」こういうふうに載っているのですけれども、これはどういう意味なんですか、「六月十日、あるいは、十四日の閣議決定」というのは。
  149. 城宏明

    ○城説明員 お答えいたします。  ちょっとニュースのソースが明確でございませんのでどういう趣旨かはかりかねますが、私どもといたしましては、関係省庁間の調整が終わりましたならばできる限り早い機会に閣議了解を求めてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  150. 古寺宏

    ○古寺委員 その次に「ところが環境庁の出方次第で、延びる可能性も大。」こうありますが、これはどういう意味ですか。
  151. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 青森県から環境影響評価の書面をいただきまして、目下、部内でそれぞれの分野について検討を行っている段階でございまして、いまの段階でどういう状況であるかということは申し上げる段階にまだ至っておらないわけでございます。
  152. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、国土庁にお聞きしますが、現在までにこのむつ小川原の土地を買収するためにむつ小川原株式会社が借り入れをしている金額は幾らでございますか。
  153. 城宏明

    ○城説明員 お答えいたします。  ちょっといま手元に詳しい資料を持ってまいっておりませんが、約五百億程度でございます。そのうち土地の買収という意味では約三百億円でございます。
  154. 古寺宏

    ○古寺委員 その一年間の利息は幾らですか。
  155. 城宏明

    ○城説明員 これは毎年借入残高がふえてまいりますので、少しずつふえてまいりますが、昭和五十二年度では約四十億ぐらいになろうかと思われます。
  156. 古寺宏

    ○古寺委員 私がお聞きしているのでは五十億と言われていますが、違いますか。
  157. 城宏明

    ○城説明員 現在借入残高が約五百億程度ございますので、平均的な利回りで八・八%ないし九%ということでございますので、四十億円台ぐらいではなかろうか、このように考えておるわけでございます。
  158. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、この開発がおくれる、閣議の決定がおくれるということは、それだけ利息がかさんでいくことになる、こういうふうに言うわけですね。そうしますと、土地がどんどん高くなっていく、企業が張りつくかどうかわからぬ、こういうことをおっしゃっている方もございます。そういう点からいきまして、現在この環境庁アセスメントの指針に基づいて報告書案ができて、そしてそれに対する意見についていろいろいま検討している段階なんですが、国土庁の八卦では「六月十日、あるいは、十四日の閣議決定」こうなっておりますし、環境庁の方では、「環境庁の出方次第」こうなっておりますけれども、まだ何にも答えられない段階だ、こういうふうにおっしゃっていますが、この見通しについて国土庁はどう考えているのですか。
  159. 城宏明

    ○城説明員 このむつ小川原開発につきましては、関係の十三省庁でもってむつ小川原総合開発会議というものを構成いたしまして、この会議におきまして基本的な問題点調整しながら進めていく、こういうことになっております。現在このアセスメントがこの総合開発会議における調整の非常に重要な問題になっておりまして、これは何分、関係官庁も非常に数も多うございまして、この間の意見調整を現在図っておりますので、これが何日までに解決がつくという見通しは、現在の段階では申し上げにくいと思います。
  160. 古寺宏

    ○古寺委員 これはやはり閣議のことでございますから、大臣でなければ政府の考え方はわからぬと思いますので、いわゆる福田内閣として、このむつ小川原の開発に関する閣議決定の問題についてはどういうような見通しに立っておられるのか、承っておきたいと思います。
  161. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 その点につきましては、私はいまの段階で全く何も関知しておりません。
  162. 古寺宏

    ○古寺委員 国土庁は何か長官の方からお聞きしておりますか。
  163. 城宏明

    ○城説明員 私が聞いております範囲では、先ほどお答え申し上げたように、できるだけ早い機会に閣議に諮って事業の円滑な推進を図ってまいりたい、このようにお聞きしております。
  164. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、この現在出ている意見書に対するいろいろな検討がいま行われていると思うのですが、この作業については、青森県だけでは意見に対する回答を出すということはとうていむずかしいと思うのです。したがって、十三省庁ともよく打ち合わせをしながら現在その作業に入っていると思うのでございますけれども、そういう点について、報告書案も意見書も環境庁ではごらんになったと思いますが、その内容について、何か青森県の方に宿題といいますか、指摘をしている面はないのでございますか。
  165. 柳瀬孝吉

    柳瀬政府委員 住民その他の方々からいろいろ意見を徴した内容については、私どもも青森県からいただいておりまして、その内容がたくさんあるわけでございます。環境問題、それ以外のいろいろな各省庁の所管にわたるような問題がいろいろございまして、先生おっしゃいますように、これは青森県だけで処理をすることのできないものも多々ありますので、十三省庁の方にその内容について検討をしていただくようにお願いをすると同時に、青森県自体でできる措置については青森県に検討していただくということで、県の方にお話をしておる段階でございます。
  166. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは、また前に返りますけれども、林野庁は、地域社会への寄与とか災害防止と健康管理の充実とか、いろいろな業務方針を掲げておられますので、山をどんどん切り過ぎて災害を起こしたり環境を破壊しないように、どうかひとつ今後十二分に留意をして、自然保護、国土保全に努めていただきたいと思いますし、また、そういう面につきましては、環境庁としましても、林野庁のそういういろいろな問題について十二分によくチェックをして、日本の自然を守るという立場で行政を進めていただきたいと思います。  なお、先ほど言い忘れましたが、環境アセスメントで一番大事なのは、いわゆる国土の有効な利用と申しますか、国土の資源をいかに適切に、有効に活用していくかという問題でございますので、そういう面から言うならば、植物と自然の関係、あるいは動物と自然の関係という立場に立った、先ほど具体的に申し上げました林間放牧とかあるいは草地造成ですとか、いろいろなものを考えた、国有林とか国土の活用というものをこれから図って、その上に立って自然を守っていく、環境を保全していく、そういう考え方が特に大事ではないかと私は思います。そういう面について、最後に環境庁長官から、日本の国土保全、自然保護の立場から、アメリカのアセスメントのこともよく御存じかと思いますが、そういう面に立った環境行政の考え方につきまして承って、質問を終わりたいと思います。
  167. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 先ほど御指摘にありました林野庁所管の事業が、実は私たちが所管しております環境の保全というものに非常に密接に関係があるということでございます。いままでも林野庁と何度か連絡の会議を持ってまいりましたが、今後もより密接に接触いたしまして、環境の保全に努めたいと思いますし、また、前にもちょっと申しましたが、ドイツのシュワルツワルトのように、五十年、百年後も切らない、環境を新しくつくるための植林というものも、これはいまの行政の体系ですとやはり林野庁の仕事になるのでしょうか。しかし、環境庁がむしろイニシアチブをとって林野庁に事業をお願いするということも出てくると思いますし、おっしゃるとおり、横の連絡を密にとりまして、自然、特に山林の保護あるいは新しい造成というものにも心がけていきたいと思っております。
  168. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 次回は、来る二十六日木曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時六分散会