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寺前委員 いや、私はどういうことをやっているかというよりも、実際にそういう手が打たれていない、現実的には活用されていない問題として、
衝突上の問題から反省をする必要があるのじゃないかということを提起しているので、そういう角度から、もう一度
海上衝突の予防の角度から見直してもらいたいということを申し上げているわけです。
それで、もう時間も参りましたから、あと一、二だけちょっと聞いておきたいと思いますのは、便宜置籍船です。便宜置籍船が
日本の
瀬戸内海なり東京湾なり伊勢湾なり、こういう一番大きなところにかなりの数が来ていると思うのですよ。便宜置籍船の問題というのは、労働の方から見てもいろいろ検討しなければならない問題だと思うのです。
日本の
国内において
外国人を雇用する問題については、労働省は厳しい指導をやっていますよ。
日本の国民よりも低賃金の労働者が大量に
外国から入ってきて、そして
日本の
国内がかきまぜられるというようなことになったら困るということから問題になっています。それでは船の場合にどうなっているのだろうか。船の場合に、
外国の船をチャーターするという形式をとって、安い労働力を雇って、使っていくという
やり方が行われていないのだろうか。
私は、そういう意味において、この便宜置籍船の問題というのは、
日本の労働者の雇用問題から考えても、きわめて重要な問題を含んでいると思うのです。ところが同時に、それはまた、今度は海上の輸送の安全面からも重要な位置を占めると思うのです。先般OECDの研究
報告書を見ますと、一九七一年にリベリア船に乗り組んでいた職員千六百人中の約半数がリベリアの資格免状を保有していなかったという、
調査をした結果から報告が出ております。こういう問題は、私はやはりチャーター船、便宜置籍船の問題は、安全上も非常に重要な問題だ。免許資格の問題、安全対策から、これらの船に対する立ち入り検査がかなり厳しくやられないと、安全上も重大ではないだろうか。これに対してどういう見解と、どういう指導方向をいま確立されているのか。今後さらに改善する点はないのかということを一点聞きたいと思うのです。
それから、すでにイタリアやアメリカ、カナダなどでは、この雇用の面からも、安全上の面からも便宜置籍船対策の必要に迫られて、実際に行われているというふうに聞いているのですが、どういう
措置がとられているのかを第二番目にお聞きしたい。
それから第三番目に、この一月一日から東京湾で強制水先区として、一万トン以上の
船舶に対して水先人の強制化を図られたところですが、
瀬戸内海についても、そういう
措置を考えなければならないのではないだろうかというふうに思うのですが、その点についてどういうふうなお考えを持っておられるのか、お聞きをしたいというふうに思います。
最後に、せっかくの機会ですから
——法務省お見えになっていますか。
衝突あるいは座礁
事故が起こって、そこで問題になってくるのは、
沿岸漁民との間に汚濁問題、
漁場が被害を受けるという問題が必ず問題になってきます。一昨年の
国会では、
船舶の所有者等の責任の制限に関する法律が成立いたしました。私
どもは、そのときにこれは問題だということを
指摘して、反対いたしましたけれ
ども、昨年の九月以降の
事故を見ただけでも、いろいろ問題を含んでいるように思うわけです。
全漁連へ行きまして、被害要求額と妥結額というのを、ずっと一覧表を十三件の問題について見せていただいて、いろいろ御
意見を承ったところですが、たとえば昭和五十一年九月十二日のパナマ籍船
貨物船JICS号事件は鹿児島県の伊唐島で起こった事件ですが、損害額は
漁民の側からいうと二億七千五百万円だ、こう言う。実際に、責任制限法によって制限される額は五千万円だ。あるいは昭和五十一年九月二十九日の三重県布施田の沖で起きた第十五山洋丸については三千六百万円だと、被害額を要求されるわけですが、実際に責任制限は一千万円だということで、そこには、裁判にかけておったら時間がかかるということで和解をしてしまうという事件がありましたけれ
ども、
不満はいっぱい残ったままになっている。
そこで、こういう問題に対して、法務
委員会で
審議されたときにも、運輸省の当局は、「一たん
事故が起きた、そして損害額が非常に大きくて責任限度額を上回っているというような場合に、この法律に基づく責任制限をした結果、その損害賠償の
内容が社会的に見て妥当性を欠くというようなことになる場合には、われわれとしては
海運業界等に対して、そういう責任制限は行わないというような行政指導を強力に実施していきたい」という
答弁をされているわけですし、また、法務、農林、運輸の三省間でもその点に対するところの覚書ですか、交わされているわけですけれ
ども、実際問題としては強力な行政指導がなされていないということで、
不満を持っておられます。したがって、こういう問題に対して、本当にどういうふうにしていこうとされるのか、法務省当局から
お答えをいただきたいし、また運輸省からも
お答えをいただきたい。
以上で質問を終わりたいと思いますが、ひとつよろしくお願いします。