○原(茂)委員 以上で明らかなように、百三十億円にも及ぶ巨額の周辺整備事業助成を行いながら、それは、事業助成の根拠とされた肝心の地元関係農民には直接寄与していない。わずかに彼らの
福祉向上に間接的に寄与しているにすぎないという結論は、おわかりいただいたと思う。これでは、当然演習場の長期
使用に見合った地元関係住民の現在及び将来の生活安定策は、少しも周辺整備事業においては実行されないということが判明いたしました。
とすれば、地元関係住民の生活安定というのは、
閣議了解が決めたもう
一つの地元安定策たる、いま問題の二百十ヘクタールの国有地払い下げ措置いかんにかかっている。この二百十ヘクタールの国有地の払い下げいかん、その内容によって民生安定が、今度は実現するかどうかがかかっていると言わなければならないのであります。いままでは、直接民生安定に寄与していない。いるならば後でお答えをいただいて結構ですが、いるという証明を願いたい。断じて直接民生安定には寄与していない。とすれば、あと了解事項が決めた二百十ヘクタールの国有地の払い下げを通じて、今度は本当に民生安定に寄与するようにしてやるかどうかが、これから決まる。
ですから、二百十ヘクタールは非常に大事です。私たちと同じ
日本人に対して、われわれは残念ながら、ある意味では幸いにもそんな不幸な目に遭いませんでした。彼らは不当に抑圧をされ、不当に自分の生業のもとであるものを、あっちへ行きこっちへ行き、勝手気ままに国の安保条約その他の方針によって左右されたままで、今日四苦八苦生活している気の毒な数多くの私たちの仲間
日本人、この人々に対して、いままでの周辺整備事業が、本来的に直接的な民生安定に寄与していないことがおわかりいただけたと思えば、二百十ヘクタールの今度の国有地払い下げを通じてこそ、今度本当に彼らの民生安定に寄与するようにしてやろうと私は考えますが、当然われわれ政治の場にある者のこれは任務だ、このように私は考えております。
この二百十ヘクタールは、五十一年三月ごろまで、去年の三月ごろまでは、三年にわたって恩賜林組合を払い下げ先として、ずっと作業が進められてきたのです。当初から山梨県を払い下げ先としていたのではない。いまは山梨県だ。去年の三月までは、恩賜林組合をずっと払い下げの対象にして作業を進めてきたのですよ。ところが、国有財産中央
審議会の
審議を残すだけのところへ、
日本社会党軍事基地対策特別委員会小委員会の
報告が出されて、同組合への払い下げは
閣議了解に反すると指摘されるなどのことがありまして、各
審議会の了解を得ることが非常に困難になったということも原因して、恩賜林組合への払い下げは取り
やめになった。
いま申し上げた
社会党の北富士小委員会
報告の要旨、これも全部読むのは大変ですから、かいつまんでその要旨を申し上げてみますと、
一つは「恩賜林組合の林業整備計画は地元民生安定にならない。」二つ目に「恩賜林組合の返還国有地取得は地元民生安定に直結しない。」三つ目に「恩賜林組合への払下げは、法の禁じている国有財産を政策実現の手段に利用した典型的ケースであり、そのような違法は許されない。」この三つに要約できるのが、いわゆる小委員会の
報告であります。恩賜林組合への払い下げが取り
やめになった非常に大きな主因の
一つになっております、この
報告であります。こうした批判が出される中で、
閣議了解後三年にわたって進められてきた恩賜林組合への払い下げは、いま申し上げたとおり振り出しに戻った。
その後、山梨県選出
国会議員団のあっせんによりまして、山梨県への払い下げの
方向で国と県との間で話し合いが進められてまいりました。ここで重要なことは、このあっせん案は事態収拾策であって、県への払い下げが、
閣議了解の目的に照らしても適正であるかどうかを
決定したものではないという事実であります。その理由は、この払い下げは、県を土地所有者にすること自体を目的にしているものではないのです。県への払い下げを通じて地元関係住民の民生安定を図るためなのであります。したがって、その適否は、あくまでも県への払い下げが地元民生安定になるかどうか、地元関係住民の生活の安定と
福祉向上に寄与するかどうかによって判断されなければならないはずであります。
政府は、山上施設庁長官が四十五年七月に、恩賜林組合への払い下げを密約した覚書、これにとらわれているんじゃないかと、いまでも思うのですが、
閣議了解の地元民生安定を、ただたてまえと考えて、地元民生安定の
検討というのは、たな上げにして、抜きにして、もっぱら県への払い下げのためだけを考えているのが現状だと私は思う。その節がいっぱいあります。県もまた、県への払い下げを受けた後、恩賜林組合に払い下げることのみを考えて、住民の民生安定を第一義に考えている様子は何
一つ見受けられません。
以下、具体的にその内容を
検討しながら、
政府の見解を徐々にお伺いしてまいります。
その
一つは、県が作成しました「北富士国有地払下地区、林業整備計画の基本的考え方」の「一、計画の基本方針」に次のように書かれています。「この地区の林業整備については、その払下げの
趣旨に即し、土地の現況及び自然的立地条件を考慮し乍ら、森林の有する木材生産等の経済的機能と国土の保全、保健休養及び自然環境の保全形成等の公益的機能とを、総合的かつ効果的に発揮させ、地元民生安定に寄与するよう実施するものとする。」なかなかいいことが書いてあります。
そして「二、計画の大綱」では、この地区を「普通施業林、特殊施業林、保全林、展示林、環境緑化樹園及び特用林に区分し、それぞれの利用区分ごとに十分な効果をあげるよう
努力する」として、具体的に「一 木材生産機能の増強(普通施業林の造成)」「二 公益的機能の確保(特殊施業林、保全林の造成)」「三 地元利用施設の整備(展示林、環境緑化樹園及び特用林の造成)」の三点を挙げています。特に「地元利用施設の整備」の項では展示林、環境緑化樹園、特用林を隣接して造成設置し、保全林とも連携させながら森林総合利用地区として「地元の民生安定に寄与するものとする」と書いてあります。
地元民生安定に寄与すると指摘されているものを列挙しますと、「一、展示林関係 地元住民等の保健休養的な利用」「二、環境緑化樹園 地元労働力の積極的雇用」「三、特用林関係 キノコ類の栽培に要する原木の供給と山菜類の採取」ということに、大まかに言うとなっているのであります。
以上が、県の計画の大綱でありますが、以前の恩賜林組合の計画に比べて、地元民生安定への寄与が強調されている点だけが特徴的だと思います。しかし、ここでは、作文上の文字をうのみにしないで、計画の内容に即して
検討しながら、お伺いをいたします。
地元民の払い下げ地内での農業経営、林業経営は一体どうこの計画で処理されるか。払い下げ予定地内においては、現在忍草入会組合が檜丸尾地区で林業経営を行い、土丸尾地区では、富士吉田市新屋などの農民が農耕に従事しております。
そこで、まず最初に、これらの事実との関連で県の計画を見てみますと、土丸尾地区の畑は、県の計画によれば、わずかの涙金と引きかえに環境緑化樹園、展示林、特用林にされることになっています。県が「地元の民生安定に寄与することに重点をおいて整備する」とした、これらの施策は、実は驚くなかれ、新屋などの農民が
昭和十六年開墾以来、営々三十六年の長きにわたって肥培
管理してきた畑をつぶして林がつくられるのであります。よくも平然と地元民生安定に重点を置いたと、これで言えるものだと私はあきれ返っているのであります。
新屋の農民たちは、こう訴えています。県の素案は、さきの吉田恩賜林組合の計画よりも、地元民生安定を考慮しているというが、とんでもない。われわれの耕作地を取り上げる点では、県の素案は、吉田恩賜林組合の計画と全く同じである。われわれが長年汗水たらして、ようやく仕上げた上畑をわれわれから取り上げ、しかも、それを環境緑化樹園や特用林、展示林にかえて何が地元民生安定か。また、現在農業基盤の四割以上を、この土地に依存しているわれわれにとって、涙金が一体何の足しになるか。この耕作地を取り上げられることは、われわれにとって墳墓の地新屋を出ていけという追放宣言にほかならない。われわれの耕作地が演習場内にあったときは、一貫してその
使用が許されていたというのに、地元民生安定のために払い下げを決めた
閣議了解で、演習場から除外されたら、今度はすべて取り上げられてしまうというようなことは、全く百姓をばかにした不当、不法な措置だ、われわれは絶対に許すことはできない。こう新屋の開墾をする農民諸君は訴えているのであります。
地元民生安定が払い下げの目的であると
閣議了解でうたいながら、実際には、この長年にわたる汗の結晶たる耕作地を涙金で平然と取り上げるという、われわれ百姓を足げにしたやり方を、われわれは断じて認めることはできない。われわれにとってかけがえのない、これらの耕作地は、
閣議了解の払い下げ目的である地元民生安定の
趣旨どおり、開墾永小作権者たるわれわれに払い下げられるべきであると信ずると、彼らは宣言もいたしております。
また、檜丸尾地区での忍草入会組合の林業経営については、県は普通施業林に組み入れ、伐期が来るのを待って立木を買い取る計画であるという。立木を買い取ると言えば、いかにも温情的に聞こえるのですが、民法的にはあたりまえのことなんです。何ら温情的な措置でも何でもない。重大なことは、伐期以降は林業経営ができなくなってしまうことなんです。これでは、忍草の農民たちにとっては生活安定どころか、生活破壊につながるわけであります。
彼らは言っている。われわれは
昭和三十一年以来、国の一時
使用許可を得て、払い下げ国有地内の檜丸尾に植林し、保護、
管理を行って今日まできている。この檜丸尾の林業経営が、払い下げ措置の結果、消滅させられたならば、われわれにとっては生活安定どころか、生活破壊そのものなんだ。林雑補償の割合から見てもわかりますように、当忍草部落は、演習場の設置によって、唯一の入会地すべてを奪われたため、完全に村の成長の芽を摘まれ、現在、全村婦女子に至るまで日雇い土方をしなければ生きていけないという、致命的な破壊を余儀なくされています。したがって、部落発展のせめてもの道は、当該国有地の利用以外にありません。
そこで、村の再建整備のため、当該国有地を採草、放牧地、風水害防災林として利用させてもらいたい、そのための必要な手続をいま準備したり、各方面に訴えているところであります。これが忍草母の会あるいは入会組合全体の意向として強く叫ばれているわけであります。
同じように、払い下げ措置の結果、檜丸尾以外の返還国有地内の、われわれの入会地が利用できないということになれば、われわれはこの面でも新しく得るものは何もない。したがって、国有地払い下げによって地元民の生活をよくするという国の方針は、われわれにおいては、現在
使用中の檜丸尾地域、それに続くわが入会地の払い下げという形で具体化さるべきであり、それが理の当然だ。そうでなければ、地元民の生活をよくするはずの国有地払い下げ措置によって、ついに、われわれの生活は悪くさせられてしまうものである。われわれは、
閣議了解どおり、われわれの生活が具体的によくなる形で払い下げ措置のとられることを強く要求するものであるという、これも各方面に対する彼らの主張であり、涙を込めた訴えなのであります。
以上で明らかなように、県の計画は、払い下げ予定地内に生業上、生活上、深いかかわりを持つ地元民を全く無視しており、
政府答弁書が指摘した、関係住民の生活の安定及び
福祉の向上に寄与する
趣旨を忠実に実行するどころか、全くその逆を実行するものとなっているのが、この計画であります。
もっとも、県は、国管法、
昭和二十七年法律第百十号、第四条二項によって、彼らの
使用または権利は消滅したという見解に立っており、その立場から、彼らの耕作地や植林事業の取り上げを当然だと言っているのでありますが、これに対して新屋開墾永小作権者連盟は、この耕作地は国管法によって創設的に認められた耕作地ではなく、
昭和十六年開墾以来、肥培
管理してきた開墾永小作権の存する土地であり、国管法の
規定する消滅すべき権利には該当しないと主張しているのである。ために裁判もいま行われています。
また、忍草入会組合は、本来入会権に基づく植林事業だが、米軍演習場内では国管法しか適用されないので、法形式的に同法を
使用して入会植林を実現したものだと主張してもおります。
しかしながら、いずれの主張が法的に正しいかどうかは、ここで
検討する中心問題ではありません。何よりも問題にされなければならないことは、県の計画が、国管法の
規定だけを厳守して、地元民の生業上、生活上の基盤を奪いながら、一方、地元民の生活安定を図ろうという
閣議了解の根本目的の方はないがしろにしたままで作成されているという事実であります。
国管法で彼らの権利が消滅したとするならば、本来その計画の作成に当たっては、県は、
閣議了解の根本目的の立場に立って、彼らの農業経営、林業経営が、いまなお生活上不可欠であるという事実を重視して、それにかわる生活安定策を具備した計画を作成すべきなのである。そうしてこそ山梨県民のための県当局であり、
閣議了解の目的どおり計画は作成されたことになると私は思うのですが、遺憾ながら、これから申し上げるように、そのようなものは一かけらも具備されていないのであります。県の計画は、払い下げ予定地に生業上、生活上深いかかわりを持つ地元民に対しては、民生安定どころか民生破壊しかもたらさないといったことは、前述したとおりである。
ここで、県の計画をもう少し具体的に
検討をしてみたいと思います。
「北富士国有地払下げ地区林業整備計画収入
支出額概算表」というのがある。これによりますと、
支出総計は二億二千百八十九万九千円、収入総計は七億三千十一万七千円となっております。したがって、約五億一千万円の黒字であります。これはもう皆さんのお手元にも、この計画は出ているはずです。この五億一千万円の黒字の大部分は、普通施業林、特殊施業林、展示林造成による林業経営の収益に基づくものであるとされています。これらの造成あるいは保育費の合計が、原価ですが、約七千百二十万円かかります。収入合計が約五億二千八百九十二万円、差し引きますと、約四億五千万円の収益ということになります。このほかに環境緑化樹園の収益約六千万円もございますが。
ところで、この黒字収益約四億五千万円という数字には、これはすこぶる疑問を持たなければなりません。だれでも疑問を持つと思います。なぜなら、県林務部の指導で作成されましたさきの恩賜林組合の計画では、
支出合計が約六千三百十五万円で、ほぼ同じ費用をかけながら
赤字だということが、はっきり一年前には示されている。それがわずか一年後に、同じ県の林務部が作成した県の計画では、一躍四億五千万円の収益が上がるとされているのであります。一年で、こんなに変わって、いまの林業というものを見直すことができるでしょうか。林業経営の現況というものは、そんなにこの一年間で好況に向かって大転換をしたように、どこから調べたって出てこないのであります。そんな事実は全くない。また、山梨県下の恩賜林経営を見ましても、少しも好転してはいないのであります。
昭和五十一年度恩賜県有財産
特別会計、これは
一般会計からの
繰り入れ及び県起債を合わせて計十一億六千六百四十万四千円の
赤字になっている。
昭和五十二年の
予算においても全く同様で、約十一億七千四百万円の起債が行われているのであります。それなのに、なぜこの林業整備計画だけは四億五千万円という収益を一年で、すぱっと上げることができるというのか。一年前には
赤字とされた林業経営が、いま一年後に突如として黒字になるというのは、どう考えても、だれでもが納得いく数字ではありません。当然その根拠が示されなければいけないと思いますが、何もこの点に関しては
説明をされていない。ただ、リストが出ただけ。なぜ、一体一年で四億五千万、
赤字のやつが、いきなり黒字になるのか、
説明が何もない。
このように、計画で示された数字には、強い疑問がどうしても生じざるを得ないことは、皆さんも同じだと思う。ここでは一応県の示した数字をもとにして、百歩譲って、もう一歩突っ込んで
検討してみようと思いますが、県の計画に示された約五億円の収益は、地元民生安定に一体どう寄与するかを、それではひとつ
検討してみたい。それがそのままそっくり地元民に還元されないことは、あたりまえであります。
計画では、県の作成した事業計画を恩賜林組合が実施することになっている。ここは非常に重要なんだ。したがって、この収益は、従来からの
管理条例に従って、あるいはそれに準じた取り決めによって、県と組合に配分されることに、まずなります。従来の基準で配分されるとなりますと、よくてその七〇%が恩賜林組合の取り分となる。だが、それもそのまま地元民に配分されないことは、前に申し上げた
社会党北富士小委員会の
報告が指摘しているとおりであります。つまり、さらにその半分以下のおこぼれ程度が同組合を構成している市や村に配分されるにすぎないのであります。
要するに、県への払い下げでは、百歩を譲って、たとえ林業経営が黒字になっても、それがそのまま地元民生安定のための経済効果には絶対にならない。その大半は県の
特別会計の
赤字の穴埋めと恩賜林組合の収入増となってしまい、残りのわずかの、ほんのおこぼれにさえ地元民はありつけないのであります。
さらに重大なことは、構成している市や村に配分される、そのわずかのおこぼれさえ、配分される時期はどうでしょう。四十年から五十年後だというのであります。バックがくるのは四、五十年先なのであります。四十年から五十年たたなければ、わずかなおこぼれさえ市や村にこない。したがって、地元民生安定のために、せっかく払い下げられた二百十ヘクタールの土地の効用は、地元民生の安定のためには、現在の子供たちが孫を持つようになるまでは何の効果も上げないということになる。だが一方、演習場はその間ずっと使われているのだ。これでも地元民生安定と演習場
使用が両立していると言えるかどうか。
本事業実施に伴う雇用効果その他は一体どうだろうか。特用林の造成整備によってキノコ栽培用の原木供給と山菜類の採取がなされることは間違いない。これは多分行われる。しかし、問題は雇用効果だ。うたっている雇用効果が一体どうなるか。
県が新聞に発表したところによりますと、最初の六年間が平均約三千七百五十人、次の六年間が年平均三千二百四十人、その後は年間二千九百人の雇用効果があるという。だが、その数字にも疑問を持たざるを得ません。さきの恩賜林組合の事業計画と、大して変わらない計画で、しかもその
支出面でも大差はないのに、年間雇用人数だけは実に三倍にふくれ上がらせているからであります。
県の発表した計画は、林業経営の収益にしても、年間雇用人数にしても、数字だけは前に申し上げた
社会党北富士小委員会の指摘を考慮してか、急に非常にふえているのである。その根拠は、いずれも明確に示されてはいないのであります。
それはともかく、さきの雇用人数を一カ月二十六日稼働するとして、一日当たり雇用人数を
計算しますと、最初の六年間は十二人、次の六年間が十・四人、その後が三・三人ということになる。県は六年間で植栽する計画を、恩賜林組合などの要望を入れて三年間に変更したから、この数字もまた変わってくるのは当然ですが、つまり一番仕事の多い最初の六年間でも、本事業実施に伴う雇用効果は、わずか十二人しかないのである。これなら、わざわざ二百十ヘクタールもの国有地を払い下げなくても、他に幾らでも方法はあるのです、こんな効用、効果なら。
ここで、これまで申し上げました
検討内容を要約整理してみますと、県の林業整備計画というのは、
一つに、林業経営の収益があっても、地元民へは直接配分されないということ。わずかに地元民の住む市や村あてに、上がった収益のほんの一部が四十年から五十年後に配分されるにすぎないということ。国有地二百十ヘクタールの効用は、地元民生安定面では、実に半世紀の長きにわたって全くゼロだということであります。
二つ目に、事業実施に伴う雇用効果は、最初の六年間ですら、わずか十二人が雇われるだけ。
三つ、地元入り会い住民の払い下げ予定地内の農業経営、林業経営は完全に抹殺されて、わずかに特用林地区の一部で山菜採取が許されるだけで、地元入り会い住民の入会地利用は完全に締め出されているということ。
二百十ヘクタールの土地を取得して、
特別会計の
赤字の穴埋めができる県と、本事業を一手に実施できる恩賜林組合は別にして、地元民の生活安定のためには、まさに何
一つ付加されないのである。それどころか、地元民は周辺整備事業の助成の面でも放置された上に、いままた国有地払い下げによって忍草、新屋の農民のごとく、これまで保持してきた生業上、生活上の基盤すら剥奪されてしまうのであります。したがって、このような
閣議了解に反した林業整備計画のために国有地を払い下げては、絶対いけないと私は信ずるに至ったのであります。
なお、念のためにつけ加えれば、こうした見解に対して、林業整備事業だから、その効果が四十年、五十年先になるのは当然ではないかという
意見があります。地元民生安定に直結させる
努力もしないで、ただ作成した
閣議了解無視の計画を林業整備事業の長期的性格を口実として正当化しようという、これは全く意味のない反論にすぎません。
閣議了解の
趣旨を全く無視しておる、あるいは間違って理解をしているものかもしれませんが、繰り返し申し上げましたように、
閣議了解の
趣旨と目的は、そのようなものでは絶対ない。
そのことは、鈴木参議院議員の
質問書に対する
政府答弁書を見ても明らかであります。すなわち、鈴木議員が、
閣議了解が地元民生安定のための国有地利用の具体策として、林業整備事業を特定したからには、林業整備事業といえども、その方策いかんでは、確実に地元民生安定策となり得ると判断をして決めたはずである。したがって、その
閣議了解がなされるに当たって、いわゆる担当閣僚から林業整備事業が地元の民生安定に寄与しますという
説明があったはずだが、その
説明の要旨を明らかにされたいと
質問いたしましたところ、
政府は「林業振興、国土保全に資する等により関係住民の生活の安定及び
福祉の向上に寄与する
趣旨であり、その旨
説明されている。」と回答をしておるのであります。
つまり、林業振興、国土保全だけでなくて、同時に関係住民の生活の安定と
福祉の向上を図ること、これが
閣議了解であって、林業整備事業を地元民生安定の具体策として特定した
趣旨だと
説明がされているのであります。したがって、返還国有地の払い下げを受ける以上、県には、この両者が両立する林業計画を作成する義務と責任があるのであり、
政府もまた、その遂行ができるように指導、監視する責務を負うべきものだと思うが、一体どうでしょうか。いままでのくだりで、民生安定に対する
閣議了解を実施する責任が、県にはもちろんありますが、国にも、それを指導、監視する義務があると思いますが、
大蔵大臣、いかがですか。簡単に……。