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1977-03-03 第80回国会 衆議院 決算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月三日(木曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 芳賀  貢君    理事 天野 光晴君 理事 丹羽 久章君    理事 葉梨 信行君 理事 森下 元晴君    理事 北山 愛郎君 理事 原   茂君    理事 林  孝矩君 理事 塚本 三郎君       井出一太郎君    宇野  亨君       櫻内 義雄君    津島 雄二君       西田  司君    野田 卯一君       村上  勇君    高田 富之君       馬場猪太郎君    春田 重昭君       安藤  巖君    川合  武君       麻生 良方君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁長官官房         審議官    伊勢谷三樹郎君         環境庁長官官房         会計課長    高橋 盛雄君         環境庁企画調整         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁企画調整         局環境保健部長 野津  聖君         環境庁自然保護         局長      信澤  清君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君         文化庁次長   柳川 覺治君  委員外出席者         大蔵省主計局司         計課長     原田 周三君         厚生省環境衛生         局参事官    三井 速雄君         厚生省社会局保         護課長     入江  慧君         林野庁林政部管         理課長     江上 幸夫君         会計検査院事務         総局第一局長  前田 泰男君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 三月二日  辞任         補欠選任   春田 重昭君     浅井 美幸君 同日  辞任         補欠選任   浅井 美幸君     春日 重昭君 同月三日  辞任         補欠選任   春田 重昭君     矢野 絢也君   山口 敏夫君     川合  武君 同日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     春田 重昭君   川合  武君     山口 敏夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十九年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十九年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十九年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十九年度政府関係機関決算書  昭和四十九年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十九年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管環境庁)〕      ————◇—————
  2. 芳賀貢

    芳賀委員長 これより会議を開きます。  昭和四十九年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管環境庁について審査を行います。  まず、環境庁長官より概要説明を求めます。石原環境庁長官
  3. 石原慎太郎

    石原国務大臣 環境庁昭和四十九年度歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和四十九年度の当初歳出予算額は百五十四億七千六百九十六万円でありましたが、これに予算補正追加額三億六千五百九十四万円余、予算補正修正減少額二億七百九十九万円余、予算移替増加額五千四百五十万円、予算移替減少額二十五億七千七百十八万円余、前年度からの繰越額十億三千六百二十六万円余を増減いたしますと、昭和四十九年度歳出予算現額は、百四十一億四千八百四十九万円余となります。この予算現額に対し、支出済歳出額百十六億九千七十八万円余、翌年度への繰越額十四億八百六十一万円余、不用額十億四千九百九万円余となっております。  次に、支出済歳出額の主なる費途につきまして、その大略を御説明申し上げます。  第一に、公害防止等調査研究関係経費といたしまして、十四億八千四百二十一万円余を支出いたしました。これは、水俣病に関する総合的研究地域開発生態系に及ぼす影響調査大気汚染物質の解明、排出規制方式の確立のための調査光化学スモッグに関する調査及び水質汚濁に関する調査等を実施するための経費並びに国立公害研究所運営等経費として支出したものであります。  第二に、自然公園関係経費といたしまして、二十五億五千五百六十七万円余を支出いたしました。これは、自然公園等における、園路、歩道、野営場等の建設及び管理、交付公債による民有地買い上げ渡り鳥観測ステーション整備特定鳥類保護対策等推進を図るため、支出したものであります。  第三に、環境庁一般事務経費として、七十五億九千六百三十九万円余を支出いたしました。これは、公害防止を図るための施策推進に必要な調査費都道府県及び政令市に対する各種補助金公害防止事業団及び公害健康被害補償協会に対する交付金環境行政に従事する職員の資質向上のための研修所運営費並び環境庁一般行政事務等経費として支出したものであります。  最後に、先ほど申し上げました翌年度繰越額不用額について主なるものを御説明いたしますと、翌年度繰越額は、自然公園等施設整備事業が、公共事業抑制等のため工事年度内に完了しなかったために繰り越されたものであります。  また、不用額は、退職者が少なかったためのもの、環境保全総合調査研究促進調整費のうち、目未定のもの及び交付公債による特定民有地買い上げが少なかったためのもの等であります。  以上、簡単でありますが、昭和四十九年度決算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほど、お願いいたします。
  4. 芳賀貢

    芳賀委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。前田会計検査院第一局長
  5. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 昭和四十九年度環境庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めたものはございません。
  6. 芳賀貢

    芳賀委員長 これにて説明の聴取を終わります。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。森下元晴君。
  8. 森下元晴

    森下委員 二十分ばかり質問をいたします。  二つ問題がございまして、ダムによる河川の汚濁問題とマツクイムシの防除問題、この問題は建設省とか農林省質問すべき問題でございますけれども、非常に環境庁関係がございますので、長官あるいはまた関係局長質問をしたいと思います。  ダムの効用につきましては、洪水の調整であるとか、また水力それから灌漑用水工業用水と、非常に多目的に利用されておるわけでございます。しかし、最近ダムがあることによってのいろいろな被害、また公害かなり出つつございまして、これを何とか改善してもらいたいという陳情がたくさんございます。もうすでに環境庁の方にも参っておると思います。  その一つは、上流地方の崩壊によりまして、土砂がダムサイトに流れ込む、しかも細かい粒子がちょうど沈でん層のようなかっこうで、ヘドロ状態ダムの底にこれが沈でんいたしまして、この取り入れ口ダムが完成したときには、かなり上にあったわけなんですが、だんだんダムが埋まってまいりますと、取り入れ口のすぐそばにヘドロが密接してしまう。だから水が満々と蓄えられておりましても、取り入れ口が底の方にあるものですから、常に下流は死んだ水が流れまして、それに本当に粒子の細かいヘドロがまざって、そしてアユのえさになります珪藻類が育たないというので、内水面漁業なんかもかなりやかましく言っております。とにかく台風があって二カ月も三カ月も水の濁っておる例は、私ども吉野川とか那賀川、高知県の物部川その他全国でもそういう例が見られます。  最近建設省の方でも、それに気がつきまして、ダム取り入れ口は固定すべきではない、常に水の多い少ないによってフロート状にして、生きた水が流れるようにすべきである——表面が水が一番きれいなわけでございますから、そうすれば生きた水が常に下流に流れて、台風等がございましても、数日できれいな水が下流に流れる、そういうような考え方もあるようでございますけれども、まだ御意見だけで、実施段階に至っておりませんし、まだ調査段階でございます。  その点につきまして、環境庁の方で強力な指導をしてもらいたいし、実態の調査をひとつ全国的にしていただかなくては、せっかくダムがそれ相当の効果を上げながら非常に悪い副作用が出つつあるということを私は初めに申し上げまして、関係局長また長官の御答弁を願いたいと思います。できるだけ簡単にお願いします。
  9. 金子太郎

    金子政府委員 吉野川早明浦ダム関連先生指摘の問題につきましては、徳島県、高知県、それから林野庁と通産省の出先機関電発、四国電力、こういうものを含めました吉野川水系濁水調査委員会というものをすでに設置しておりまして、その委員会の下に専門委員会を設けまして、専門家意見をすでに聴取いたしております。そうして五十二年中に中間報告書をとりまとめる方向検討中でございます。それから中央官庁といたしましても、最近この問題につきまして各省連絡協議会というものを設置して検討に入っております。  環境庁といたしましては、濁水問題の検討資料を得るために必要とあれば、五十二年度調査調整費というものが私どもございますので、それを林野庁建設省と三省で共同して要求して、支出していくというようなことを予定いたしております。
  10. 森下元晴

    森下委員 私、いま言い忘れましたけれども、水のあるうちはいいわけなんですが、先般のように雨が降らぬで、ダムの水が渇水いたしまして、ちょうど地獄のような様相を呈しておりまして、特に非常に小さなローム層のようなヘドロが沈でんしておりまして、それが異常に乾燥するものですから、ちょうど黄河の上流オルドス地域黄砂風塵が巻き起こって大変に空気が汚染されるように、ちょっと強い風が吹きますと、風塵を巻き起こしまして洗たく物も干せないという被害も実は出ておりまして、何とか塩をまいて塩のにがりによって固めるとか、そういう心配も実は出ておるわけなんです。それもつけ加えたいと思います。  続きましてマツクイムシの問題でございますけれども、いま農林省の方でマツクイムシ退治のために新しい法案を出しておりまして、これも早く、しかもタイミングをうまくやらないと、年じゅうやるわけにいきませんので、この点について私は環境庁の方もひとつ御協力を願いたいと実は思うのです。  マツクイムシにつきましては、もう御承知のように北は松島の一部もやられかけております。南はもちろん沖繩までそうでございますけれども日本の景色というもののよさは、やはり白砂青松に代表される白い砂と青い松、この松がやられかけておるわけでございますから、まことに環境破壊の最たるものがあるわけなんです。本来、この松の木は非常に強い植物でございまして、あの潮をかぶる岩でもしがみついて生存できるだけの力を持っておるが、これがマツクイムシという虫にまことに弱いわけでございます。特にこの数年間、物のみごとに松だけがやられて、汽車に乗りまして山陰地方東海地方などどの山を見ても、松山は特に冬は茶色から白いような色になって、非常に醜い景観を呈しております。  その防除方法で、この薬剤人畜に非常に被害があるとかということで、かなり反対運動もあるようでございますけれども林野庁の方でもこの問題につきましては、かなり人畜被害の少ないような、また天敵等を殺さないでマツクイムシだけに効果があるようなりっぱな薬もつくっておるようでございますので、この点ひとつ環境庁の方としては、農林省法案が早く通りますようにお願いしたい。  このマツクイムシは、二つの虫が共同して松を枯らすようでございまして、一般マツクイムシというのは、マツノマダラカミキリというのがマツノザイセンチュウ、線虫類でございますけれども、これをおんぶしてこれによって松を枯らす。強い松も枯らすだけの力を持っておるようです。だから、どうしても五月の二十五日ごろに、ヘリによって上から薬剤を散布しないと効果がありません。ということは、マツクイムシが羽が生えて飛び出すのが、大体六月のいわゆる梅雨の初期でございますから、このときに松の新しい葉にその薬剤をかける、それを食うと、その虫は死ぬ、こういう段取りでございますので、もう八月になりますと、これは幾ら薬剤を散布してもだめだ。  だから非常に時期を要しますし、特にいま日本では木材を約一億立米使っておりますが、その百分の一の百万立方メートルぐらいの材がマツクイムシによって損なわれておる。大体住宅五万戸分の材がマツクイムシにやられておる。これも経済的に非常にもったいない話でございますし、早く効果的な方法がとれるように、せっかく農林省の方でつくったわけでございますから、環境庁の方でも御協力を願いたい。  以上、二つの問題を申し上げたわけでございますけれども最後長官の御答弁を願いまして、私の質問は終わります。
  11. 石原慎太郎

    石原国務大臣 マツクイムシの問題につきましては、松もまた自然環境一つでございますし、同時に空中散布によって死ぬと言われているほかの昆虫も対象でございまして、非常に二律背反し、環境庁としても苦脳いたしておるところでございますが、先般両方がなるたけ並び立つようにという意味で幾つか条件をつけまして、このマツクイムシ空中散布について了承いたしました。もし詳細について必要ならば、政府委員答弁いたしますが、原則的に環境庁といたしましても、これを是といたしましたので、そのように御理解賜りたいと思います。
  12. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 関連して、長官にちょっとお尋ねいたしたいと思います。  きょう私どもは四十九年度歳出決算概要説明を聞きましても、日本環境を守っていただく環境庁予算というのは、ほとんど事務費だけで、実際から言って非常に少ない。五十二年度予算に対しても、きっと努力せられて、相当たくさんの予算を要求せられたのであろうと思いますが、これまた大した予算でないという考え方を私は持っているわけです。  そこで、総合的研究だとか、地域開発の問題だとか、大気汚染だとかいうあらゆる環境問題を長官中心にして国全体、一億一千万の国民の健康を守っていくということになるわけですけれども、その進め方によっては、都道府県単位でいろいろの委員会等が設けられまして、そうして地域開発に対する一つの決定をし、そして、ここは自然林であるから、なぶっちゃいけないとか、あるいはこういうところは環境を悪くすることであるので、いけないとかという結論が出てくるわけなんです。特に環境庁と本省の建設省農林省関係との進めぐあいというのは、たとえば建設省は、ここに道路をつくることが最適である、こういう結論が出た、それですでに着々とそれが進められようとしているときに、環境庁としては、自然を破壊するから、ここに道路をつくることは適当でないという答えが出てくる。国民はこのときに、道路をつくってもらうことが、われわれには非常に便利であるという考え方、片や環境、自然を破壊することであるから、ここに道路をつくることは適当でないという結論——こういうような問題で、いままで相当いろいろの問題が絡み合って結論の出ないところも、いまだにあると私は考えている。前の長官でありました大石武一長官の当時にも、そういう問題がしばしば出ておるわけです。  そうすると、どちらに軍配を上げるかということは国民も迷うであろうし、長官同士も非常に苦しまれるだろうと思いますが、そういうようなコントロールをつける一つ機関、団体というか、首脳部の集まりで、そういうことを国民の前に発表する前に、長官同士で話し合いをするような機構を今後持っていかれるのか。また、そうした環境問題に対して、もう一度府県に対しても、本当に厳格に環境問題は取り扱えというような指導方針でいかれるのか。いまのところ地方でも、こんなところは当然許可すべきだと私どもが見ても考えられるところがだめだということで、事業計画が中途半端で終わるというような実情がたくさん出ているのです。  そういう点については、長官、今後の方針として、どういうお考えを持っていらっしゃるか、ひとつ説明をしていただきたい、こう思います。
  13. 石原慎太郎

    石原国務大臣 丹羽先生指摘のような現況はあちこちにございます。そのために第三者機関のようなものをつくるよりも、むしろ事業計画段階住民を含めた多角的な意見を取り入れ、その事業がいろいろ経済性でのメリットをもたらすと同時に、あるいはもたらすかもしれない環境に対する影響を測定し、事業をどういう形で進めるかということを測定いたしますアセスメント法というものを現在環境庁で考えておりまして、今国会に提出する予定でございます。それが通過いたしましたならば、いままで起こっていたような、事業が進みかげながら、とんざするというような事態は免れ得ると思います。
  14. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 長官それでは、これからの問題はそれでいいとしまして、いますでに工事を進めるんだという断定的な認可建設省もおろしてしまっているというような問題について、環境庁の前長官大石さんから横やりが入って、それはいけない、住民の一部にも、それを幸いとしてわあわあと騒ぎ立てているというようなところもあるわけですが、こういうような問題に対しては、現在責任ある長官として今後どういう解決を考えられているでしょうか。  たとえば私の方の名古屋市なんかでも、鏡ヶ池線という線がすでに許可になっているのです。それが当時いろいろの問題があるということで、知らず知らずのうちに住民問題として起きてきた。それがために大変交通が渋滞しておる、一日も早くやってくれというのだけれども、もう時期が、やってもらわない方がいいという声が起きてきた。いま道路をつくってもらうということに対して、山間僻村では喜ぶかもしれないが、都市においては道路をつくるということには、高架であろうと地下であろうと何であろうと、余り好む状態ではないのです。  そういうことに環境関係してくるということから、いろいろ問題がありますが、そういう許可を与えてしまった問題は問題点として取り扱っていかないのか、それとも問題点のあるところも環境問題が含まれておるとするならば、もう一度取り上げて再検討してみるという考え方環境庁としては進んでいくのか、そういう点について、これからの進め方について、もう一ぺんお聞かせいただきたいと思います。
  15. 石原慎太郎

    石原国務大臣 いま先生がおっしゃいました後者の方でございます。  以前に基本的認可がおりました開発でも、現時点でいろいろ問題がございます場合には、やはり環境庁として周囲住民の健康の保全というものを第一義に考え、考え直すべきものは考え直すべきだと思います。何と申しましても、このわずか数年の間に日本にもたらされました社会変化というのは、質的にも量的にも非常に多いものがございまして、いろいろ道路等そういう開発というものが認可された時点での国民全体、社会全体の価値観が、この数年間特に変わってまいりましたので、いろんな摩擦が起きておると思います。これは歴史的にも必然性のあることだと思いますので、これを無視して、すでに数年前に許可がおりたものであるから、それをそのとおりに行うんだということでは、国民の本当の満足をいただける開発にはならないと思いますので、少しは回り道になるかもしれませんが、やはり勘案すべき問題は勘案して、合理的な解決を見ていきたいと思っております。
  16. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 どうもありがとうございました。
  17. 芳賀貢

  18. 原茂

    ○原(茂)委員 きょう四点お伺いしたいと思うのですが、最初に南アルプススーパー林道の件についてお伺いします。  まず、大臣にお伺いするのですが、このスーパー林道のいままでの経過と現状については、お聞きになっていると思うのですが、今後どうしようとなさる方針なのか。少なくとも現時点で、約一キロ半ストップのままで、大臣決済を仰ぐというような時期にいま来ているわけですが、これに対してどういう方針おいでになるのか。少なくとも現地ごらんになって決済をなさるのか。歴代の大臣現地ごらんになって、決済するつもりではいたのでしょうが、いつも現地へ行って話をされたのとは違って、今日までじんぜん延びてきたわけです。こういうことを振り返りながら、現地ごらんになった上で決済をするのか、もうすでに当局から聞いて決済段階にあるのか、いつ決済をなさるのか、それをひとつ簡単に……。
  19. 石原慎太郎

    石原国務大臣 この問題につきましては、自然環境保全審議会審議を依頼いたしまして、すでに四回会議を開かれているようでございますが、いまだ答申は受けておりません。しかし、その答申答申として承りますが、あくまでも先生おっしゃいましたように、私自身も現地へ伺って、私の判断を加えて解決を見たいと思っております。  ただ、お聞きをしますと、雪に閉ざされて、どうも現地まで到達できるのは五月、六月ということでございますが、できるだけ早期に現地に伺いまして、私の判断の基準にしたいと思っております。ですから、現在のところ、環境庁といたしましては、この問題については全く白紙でございます。
  20. 原茂

    ○原(茂)委員 五月、六月の雪解けを待つなんて、待たなくても行かれますよ。その気があれば、五月にならなくても。
  21. 石原慎太郎

    石原国務大臣 わかりました。伺います、それでは。
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 長官は特に山が好きなはずなので、行く気があれば何もあすこはいま大した雪じゃないです。ただ、雪が少しでもあると、現地を実際によく踏査したことにならないかもしれませんね。そういう意味できっと五月、六月というようなことが一応設定されるのかもしれませんが、なるべく早くおいでになって、もうここらでけりをつけていいのじゃないかと思うのです。ただ、先ほどおっしゃったように、答申を待っているというその答申が、実は隠れみのなんで、答申方向なり傾向というものは、ほとんどもうわかりきっているんですが、なおかつ答申待ち答申待ちと言っている。  これはいつも私は言うのですが、この種のものを審議会答申を求めるときに、これほど長い期間かかって同じことをずっと審議をしていて、しかも期限も切らずに答申を待っている。長官は今度は現地ごらんになって、しかもまあまあ決断を下せるかというと、やはり答申待ちだというので、また逃げる。従来のパターンを同じように繰り返すのじゃないかなという危惧があるわけですが、やはり、はつらつとして非常に大きな期待を担って登場した長官ですから、同じようなパターンで同じようなことを、あとまた答申待ちだというようなことのないように、いまおっしゃった五、六月に実際に現地調査がされるなら、少なくとも七月ごろには決断を下すというくらいな、余りにも長く、もうすべてがわかりきっているんですから、そのときになってまた、現地は見たけれども答申待ちだというようなことにならないように、ぜひお願いしたいと思うのですが、いかがですか。
  23. 石原慎太郎

    石原国務大臣 私、五月、六月と申しましたのは、やはり周囲植生等も自分の目で見たいと思いますので、その時期を申し上げましたわけでございます。  それから、現地に私が赴きました限りは、すでに四回も審議会をやっておるわけでございますから、一応その審議会結論というものをそんたくする意味でも、私自断が行った後半年も一年もということではなしに、一応時間を区切りまして答申を得まして、それをそんたくしながら判断をしようと思っておりますが、よけいなことを申すようですけれども、これから新規に計画する道路と、またすでに九割方できてしまった道路の実情では、いろいろ意味合いも違ってくると思いますので、十分そういう点考慮して、しかし、あくまでも私自身の目で見聞いたしまして上で判断させていただきたいと思っております。(原(茂)委員「決を下しますか」と呼ぶ)そうですね。よほど新しい発見、重大な発見がない限り、やはり現地に行きました後一月や二月の間では判断すべき問題だと私は心得ます。
  24. 原茂

    ○原(茂)委員 特に注意をしていただきたいのは、ことしの異常気象といいますか、寒さは少し別でございましたから、既開発道路が、すでにその両壁などの崩壊というか、崩壊に至るような状態というのは非常にしみてできているんじゃないかと思う。そうでなくても、いろいろな林道をつくった後の災害というのは非常にあって、それに対して一々修景というのか何か知りませんが補修をして、相当の国費をかけてきているのですが、少なくとも二度とそういった——この種の状態では、この種の天候で再び崩れたのを、あるいは危険な状態になるということのないような完全な修復というものもできることを前提にして、あと残った一キロ半に対する決断を下していただくように、これはぜひお願いしたいと思うのですが、この点いかがですか。
  25. 石原慎太郎

    石原国務大臣 いずれにしましても、その点も私自身の目で確めさせていただきまして、判断させていただきたいと思います。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 それではアルプスに関しては、ひとつ行ってからまた期待をしてお伺いをいたします。  次に、ニホンカモシカの問題について、一昨日に続いてまたお伺いをしたいと思うのです。  このニホンカモシカというものは、特別天然記念物に指定をされて今日に至り——前には御存じのように、勝手たるべしで狩猟の対象になっていたんですが、これが特別天然記念物に指定をされて以来、ある程度法律も整備されながら、この天然記念物というものに対する管理あるいは保護をする方針というものが行政上行われてきたのですが、これは非常に手落ちがあって、何回も古くから言っているのですが、依然として根本的な過ちがまだ直っていない。その根本的な過ちとは一体何かといいますと、御存じのように、これは重要な特別天然記念物であるといって、日本だけにすんでいる非常に重要な物だといって指定はしたのですが、その保護、管理の責任者を、いまだに指定していないのです。決めていない。  ですから、俗に言うと、これは絶対にとっちゃいけない、大事な物だから保護をしなさいと日本国民に命令はした、指示は与えた。食い物はどこかへ行って勝手に食ってよろしい。どんどん食い荒らして、どんどん食って、食われたやつは泣き寝入りして、がまんをしていなさいという状態で、ずっと放置されて今日に至っている。しかも食う物は、まあ杉を除いてほとんどの植林の一年生から五年生に至る間を食っちゃうわけですね。その頭を食ってしまう。ですから、その造林をやっている業者なり、それで飯を食っている人々は、あっという間に自分の食うべき基礎を失ってしまうという状況が至るところにあらわれている。  にもかかわらず、もう何年も同じことを言っていて、いまだに調査調査。一体どういう状態で生息しているのか、その調査をしてみないとわからないというので、いま調査段階にようよう調査費をつけて入ったという段階。で、一部さくを設けて持定の地域を、ごく小さなところですが、ここにニホンカモシカも押し込まれて、その生態の研究をしたり、どんな状態になるかを見ている。その間、余りほっておけないからというので、さくを用いれば効果があることは決っているし、やってみるとなかなか効果があるので、防護さくを少し補助をして、予算をつけて、小さな地域の防護さくをやってみたという段階が今日の段階なんです。  議論をしていて問題の解決ができるわけじゃないのでありまして、現実には被害はどんどん拡大をされているように、全国的な被害状況は日を追って数字が多額になってきている。かといって、実際には生態調査をそっくりやってみないと、的確なこれに対する保護、管理の方針が出てこないと国の立場、環境庁はおっしゃる。では、その間はしようがないから、できる限り公有であろうと民有であろうと造林地の被害に対する補償をしてやる。で、その補償の起きないように、食われないように、被害を受けないように防護さくを講じてやろう、あるいは忌避剤を塗るような、それに助成を行うとか、何とかの袋をかけるようにする、それの助成を行うというようなことが片方では、当然のことですが、わずかに行われているのが現状であります。  冒頭申し上げたように、依然として、この頭数がだんだんふえていくことは間違いないようで、ふえればふえただけ植林木に対する被害というものは拡大をされていっている。この現状が、いま私が申し上げたような現状になっているのですが、何かやはりけじめをつけて、どちらかにウェートを置いて、この特別天然記念物だというものを保護しようという以上は、その保護の任に当たるものを決め、その保護が至らないために被害を受けたものに対しては、国庫で金額の補償をしてやるとか補助を行うとか、こういうようなことをきちっと決めていかなければいけないと思うのですが、大きな意味大臣から方針だけ聞きたいのですが、いま私が言ったようなことで方針としては取り組んでいただけますかどうか、最初に大臣答弁を聞いて、後、出ている細かい点について、これから伺っていきたい。
  27. 石原慎太郎

    石原国務大臣 原則的に、先生のおっしゃいますような積極的な姿勢で、この問題を考えてみたいと思います。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 私は、細かいことを聞くようですが、一昨年の六月と十一月にお伺いしたそのうちの小沢環境庁長官にお尋ねした部分で、その後どうなっているかを五つ、六つお伺いしますから、やったその跡をひとつお答えをいただきたい。  当時答えられた信澤さんの答えの中に——私からこういうことを実はお伺いしてあるのです。いつまでにというおよその見当をつけないで、ただ検討します、検討させるだけではちょっと困るので、やはり仕事をする限り、一応のめどというものをつけてやるべきだと思うが、結論はいつごろ出すのだ、こういういま言ったようなことの総括的な意味質問しましたら、信澤さんのお答えは、「捕獲を認めて、それを現地で飼育するというふうなことについては、場合によっては考えられることもあるべし、その場合の条件等については、ただいま申し上げました五カ所から出ております申請の方々に対しては、仮に捕獲をし、それを現地で飼育する場合にはどういう方法でやるのか、そういう点までも片方で詰めながら文化庁の方の御調査結論を待っている、」というのですが、文化庁の方の調査結論がどんなふうに出てきたのですか。
  29. 信澤清

    信澤政府委員 いまお話ございました捕獲の問題でございますが、あのときのお話は、具体的に青森県、長野県、岐阜県という被害の大きい、また捕獲申請の出ております地域を想定してお話を申し上げたつもりでございます。その点につきましては、当時文化庁が、それぞれ近辺の大学の先生にお願いして調査をやっていただいたわけでございますが、その調査の結果、若干の捕獲はやむを得ない、大まかに申しますと、そういう結論だったというふうに聞いておりますので、それに従った措置をとったわけでございます。
  30. 原茂

    ○原(茂)委員 それで、若干の捕獲はやむを得ないというので、捕獲の許可をどことどこに与えて、何頭与えて、それがどういうように実施をされましたか。
  31. 信澤清

    信澤政府委員 長野県は、先生御承知のように飯田市ほかでございますが、これに対しては五頭の捕獲を認めております。許可期間は、五十年の十二月十日から翌年の三月三十一日でございます。ただし、実績ゼロでございました。  それから岐阜県につきましては、小坂町というところでございますが、ここにつきましては、第一回五十一年の一月一日から三月三十一日まで、実際捕獲できませんでしたので、その後さらに第二回五十一年五月十三日から五十一年十月十二日まで、この際一頭捕獲いたしましたが、この捕獲方法が悪かったせいか、死亡いたしました。さらに第三回を五十一年十月十三日から五十二年三月二十六日まで、この際二頭捕獲をいたしまして、これにつきましては、近隣の国有地にいわゆる保護飼育をしている、こういうことでございます。
  32. 原茂

    ○原(茂)委員 そのうち、長野県五頭許可したのに実施に至らなかった理由は、どういう理由ですか。
  33. 信澤清

    信澤政府委員 事情をつまびらかにいたしておりませんが、私が聞いておりますのは、捕獲が実際問題として非常にむずかしいということだったように承知いたしております。
  34. 原茂

    ○原(茂)委員 いまつい軽く出たのだと思うのですが、捕獲の許可を与えておいて、その捕獲をしなかったとかしたという、しなかった場合の事情をよく聞いてないなんて、そんな簡単なものではないのではないですか。大変な思いをして許可をしておいて、五頭許可したのに、五頭が何の理由で一体実施できなかったのかというのに、余りよく聞いてないのだというような調子で扱っている根性が、だらしがないと思うのです。それは間違いじゃないですか。
  35. 信澤清

    信澤政府委員 こういう事情であったように承知いたします。  一つは、岐阜県の方での捕獲の状態を、実施方法等について地元の方ではその様子を見ておられたと申しますか、その結果を待って処理したいというお考えがあって、捕獲に着手した時期がおくれたということが一つあったと思います。  それから、そうなりますと雪が解け始めますので、なだれ現象等の危険があるということで、実際問題として捕獲するに至らなかった、こういう事情だったというふうに承知いたします。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 大まかにはそのとおりで、費用の点もあったのですね。そのことについては、後でまた、もうちょっと突っ込んで触れます。  それから次に、やはりこれも信澤さんが答えているのですが、捕獲の方法についてお答えをいただきました。「捕獲だけを中心に考えるわけではなくて、防護壁の問題をどうするか、そういうことで丹沢でございますとか、あるいは一番問題になっております長野県につきましても担当課長を派遣いたしまして、仮にさくをめぐらすとしたらどういう方法があり得るか、こういう点の検討もいたしておるわけでございます。」と言って、後で「頭数が多過ぎて、ある程度捕獲して隔離しなければ被害の減少は見込まれないという事態になりますれば、また調査の結果もそれを認めるという方向が出ますれば、それはそれなりの処理をいたしたい、」こう答えている。これはどういうふうに結論づいたのですか。
  37. 信澤清

    信澤政府委員 先生のお尋ねは、たしか一昨年の十一月だったと思います。当時私ども予算要求の段階にあったわけでございますが、実は五十一年度に新規に、いわゆる保護さくを設置するということについて予算を計上することができました。したがって、昨年この補助を執行いたしまして、御希望のございました長野県につきましては約一万五千メートル、岐阜県につきましては、これは二百六十メートル程度でございますが、防護さくの設置を行ったということでございます。
  38. 原茂

    ○原(茂)委員 まだ記録はもう少しあるので、ちょっと読んでもらうとよかったのだが、いま私が聞き返しているのは、ふえている、頭数が多過ぎて、それがある程度捕獲して隔離しなければもう被害の防ぎようがないというときには、他の方の調査の結果を見ながら措置を考えます、こう言ったのです。頭数が多過ぎてしまっていると、われわれは判断している。現地ではもちろんそう思っているのですよ。そのときには、ある程度捕獲して隔離しなければだめだ、そうじゃないと防ぎようがない、こうなったときには、隔離その他の手段を考えますといって答えているのですよ。それをいまどういうふうに考えているか。
  39. 信澤清

    信澤政府委員 まず先ほど岐阜県を二百六十メートルと申し上げましたが、二千六百メートルでございます。訂正させていただきます。  それから、いまお話しの点でございますが、保護さくはつくりましたが、実はこれは年次計画で進めていくという考え方でございます。したがって、保護さくはつくったけれども被害があるという実情も承知はいたしております。  そこで、その場合、すぐにとるのかということになりますが、これは地元の御意向、特に県のお考え等も伺いながら、私ども判断しなければなりませんが、どのようにさくをつくっても、うまくいかないということになりますれば、私がこの前答弁申し上げたとおりの考え方で処理いたしたいと思いますが、当面は防護壁そのものについても、かなり効果がある、こういうことでございますので、さらに防護壁の延長を延ばす、いわゆる囲い込み作戦をさらに続けていく、こういうことで対処していきたいというふうに思うわけでございます。
  40. 原茂

    ○原(茂)委員 その点も後で触れますが、防護さくをいまやっていること自体に非常な矛盾があるのですよ。いろいろな問題もあるし、矛盾もある。これは適当な答えをいただきませんが、後でまた聞きます。  次に、小沢長官がこういう答弁をしている。「天然記念物として保護する。天然記念物として保護するならば、数はそんなにどんどんふえていくことまでも、そう考えないでもいいわけ」だ、この意味わかるでしょうね。そういうことをはっきり言って、「天然記念物としてこれは絶滅するおそれがあるからやめるということはわかりますけれども、いまいる、あるいはまた一定の数があれば天然記念物としての目的は達成する。」一定の数があれば。「とすると、これは捕獲なり、あるいは射殺を禁止したということは、」動物愛護の問題だろうと思うけれども、一方被害というものについても考えなければいけないから、防止するだけの対策は講じる。と同時に、一定の数天然記念物を保護すれば、そのほかのものに対しては射殺も考えられる、捕獲も考えられる、それはいますぐにはできないんだが、そういうことも考える必要がある、こう言っているんですが、どうですか。これはこういう思想で、いまでもおいでになりますか。
  41. 信澤清

    信澤政府委員 当時、小沢大臣は、国務大臣として御発言になったわけでございまして、私ども事務方といたしましては、天然記念物行政は、先生御承知のように、当然のことながら文化庁の御所管であるわけでございます。したがって、大臣の御趣旨、それは私どもも理解はできますし、そういうこと自身を否定するつもりはございません。ございませんが、実は私どもだけで決めるわけにいきません。そこでこの問題については、文化庁、それから主として被害を受けられる立場にある林野庁、三者でもって、過去いろいろ打ち合わせをしてきております。そのときの結論は、迂遠とおっしゃられるかもしれませんが、やはり正確な調査、分布状態、頭数等を含めて、そういう調査をやった上で、何らかの結論というものを出すべきじゃないか。  私ども、昨年の一月ですか二月ですか、ごくラフな、府県に聞き込みの調査をお願いいたしました。大体生息の地帯、いわゆる分布状況というのは、わかったわけでございますが、一体どのくらい頭数がいるか等々については十分に把握してない。ということになりますと、大臣のおっしゃったような、もう天然記念物としての適当数、これもまた問題があると思いますが、そういうものとのかかわり合いも、十分検討ができてないわけでございますから、もう少し正確な実態をつかんで判断を出したいというのが、三省庁の結論であった、現在の結論であるということでございます。
  42. 原茂

    ○原(茂)委員 これは大臣にお伺いするのですが、いまぼくが言いまして御答弁いただきましたように、特別天然記念物だというので指定をしますね。これは何頭という数は言いませんが、ある数、いまおっしゃったように調査の上で数を決めるというのですが、私は、生態調査その他を全部やった上で数が決まるというのは、これは数そのものが決まるのであって、そうでなくて、考え方としては、小沢長官の言ったように、ある頭数をきちっと保護できて育成していけば、その余分なものに対しては、何らか適当な方法を考慮するという考え方は正しいと思うのですが、これは長官、どう思いますか。
  43. 石原慎太郎

    石原国務大臣 私は昔狩猟をしておりましたけれども、このごろ全然いたしませんが、射殺ということになりますと、ちょっと私の個人的な感情として問題があるように思いますけれども、今日いろいろあちこちに自然の動物園等がございまして、かなり大きなスペースを持ったのがございますが、そういうところへ捕獲して移管する等々、私は目に余る数といっても、そういう処置をすることで解決のできる限りの数だと思います。  ですから、現在の森林の中に野放しにするという形が、それだけの被害をもたらしているならば、捕獲をして、人工の動物園へ移管する、そういうふうな形で解決すべきものではないかというふうに考えます。
  44. 原茂

    ○原(茂)委員 なるほど一万から三万と言われていますから、いま長官の言われたように、多く見て三万程度だったら、国できちっと入れるところに入れて飼育していけばいいじゃないかという考えのようですが、これは小沢長官と石原長官の違いは、確かに今度は実際に数をつかんでみた上で判断をするということになるでしょうね、違いがあれば。  私は考え方としては、一定数——数は幾らか知りませんよ、いま三万だかどうか知らぬ。一定数あれば、あとのものは適当にどう処置する、これは射殺を含めているわけじゃないですが、処置をするという考え方があっていいんじゃないかというふうに私は思います。  ただ、長官は違った考えですから、それで結構ですが、私は少しそれは甘いんじゃないか、実際にはできないだろうと思いますが、これは数をつかんだ上で論議をしなければいけないと思います。  それから長官がまた、「じゃ被害がある人に補償する制度があるのかと研究をさせてみましたら、全くないわけでございまして、」云々と言って、「そうすれば、生息地を一定して、そしてそれ以外に出ていかないように、また生息地の中で、この天然記念物が生きていけるような措置を考えていかなければならぬのではないだろうかということで、いませっかくできるだけ早くこの対策を決定していきたいと思って検討いたしておるところでございます。」こう答えている。  二つのことをお伺いします。  やはりこの種の被害に対しては、被害を受けたものに対して、保険に準ずるような何らかの補償をしてあげるような制度を考えていかなければいけないと思いますが、この点どうでしょうかというのが一つ。  それから、やはり生きていくために、きちっと、いま長官も言ったんですが、何か考えていかなければいけないから、そのことも考えていくという、二つ目を言っていますが、この後考えていくという二つ目と、補償するという意味の、保険制度に準じたような、被害を全額補償できるような方法を、当然国が指定した天然記念物の与えた被害でございますから、国が責任を持ってそういう制度を考えたらどうかと思うのですが、この点はいかがですか。研究して何か成果がありましたか。
  45. 石原慎太郎

    石原国務大臣 私詳しく存じませんが、文化庁の方に、天然記念物に関しては一般的に何か補償制度があるようでございますので、政府委員から説明をお聞き取り願いたいと思います。
  46. 柳川寛治

    ○柳川政府委員 先生が前回御指摘いただきましたとおり、文化財の保護に当たりましては、財産権の尊重の精神がございます。その関係から、たとえば現状変更を不許可にして、そのことによる損失に対しては、通常の損失を補償するという規定を設けております。また、必要な場合は、修理、管理等に著しく負担を伴うという場合には、これに対して国の補助を行うというような措置をとるような規定になっておりますが、現在のところカモシカにつきましては、御指摘のとおり、種の保存としての地域を指定してございまして、これに伴う被害関係につきまして、必ずしも現状変更の不許可等の因果関係が生じないというようなことで、現在のところ、これに対する損失補償という施策までには及んでいない次第でございます。  ただ、ほかのもので積極的に保護増殖をしていくというような形で、保護増殖費の補償措置を講じておるという例は見島牛等にあるわけでございますが、この辺の問題は今後の調査と相まちまして、たとえば造林に当たりまして、先生も御指摘いただいておりますとおり、下草が大事だということがあるわけでございますから、一定の造林の間に下草の確保をしていく、そういうような造林計画を立てる、そういうような際の民有地での造林等につきまして、何らかの保護策と対応した措置がないかということを、現在検討しておるところでございます。
  47. 原茂

    ○原(茂)委員 依然として進歩していないのですよ。前にお聞きしたときと何ら変わっていない。  やはりこれは何か保険に準ずるような形の何かを考えてあげなければ、特に民間の造林業者、造林で飯を食っている労務者、これは失業はしちゃっているわ、造林そのものがもう全然見込みのない状態に食い荒らされてしまったというときの、ほかのいろいろな事例から見たって、保険という考え方が、やはりこれにも適用されるように考えてあげることか——いま調査をしている、何をしているというのは結構です。結構ですが、現にもう何年も何年もこういった被害を天災のように与えられている人々に対して、これにはもっと的確な具体的な手当てを、きちっと安心できるようにしてやっておかなければ、それで二年も三年も四年も五年も調査をしています、いま食の跡によって、これはカモシカだか野ネズミだかウサギだか何だかというのを調べた、それをみんな各地方自治体に協力してもらって、一体全国で一万なのか三万なのか調べておりますとか、一体どういうふうにしたら、これが防げるとか、まあ薬も研究してます、さくも研究してます、何もやっていますというのは結構だし、どんどんやってもらわなければいけないし、当然の義務だと思うのですが、一方では、この長い間被害を受けている諸君に対する補償というものは、もっと具体的な形でぴしっと出せていかなければ、私は政治だと思わないのですよ。  いつまでも同じような答弁で、同じような状態に放置しているような状態が許されていいかどうかという点は、もう何回言っても同じなのですが、こういうことは非常に問題だと思うのです。これに対して事務当局では、なかなかにいまのような答弁、あるいはそのほかに的確にやっていないというのかどうか知りませんが、これは大臣、こういうことに対しては何らか保険と同じ、これに準ずるような制度で、片方では本当に特別天然記念物だから保護するのだ、さわれないのだ、とっつかまえられないのだというので、ずっと遠くで自分の畑を食いほうだい食い荒らされるのを見ているわけですからね、こういうものに対しては、やはり的確な、保険に準ずる何かを考えてあげるということは、方針としてどうでしょう、間違いでしょうかね。大臣、どうですか。
  48. 石原慎太郎

    石原国務大臣 方針として、そうすべきだと思います。  ただ、補償と言いましょうか、すでにそういう実害があるのでございますから、補償ということになると、非常にめんどうな問題があると思いますけれども、たとえば被害地域を守るための設備に補助をするなり、まあいろいろ方法があると思いますので、積極的に考えさせていただきたいと思います。
  49. 原茂

    ○原(茂)委員 後で大臣答弁らしいものをつけ加えて配慮したようですが、ずばり言われたように、やはりそうすべきだと思うと言ったことが正しいと思うので、当局ももっと真剣に、もうちょっと具体的な、保険に準ずるような制度を考えることを、大臣だって、やはりそうすべきだと思っていることは間違いないので、皆さんだってそうしたいと思うのだけれども日本の縦割り行政というのは、各省との関係があって、なかなかそれができないというのでしょう。しかし、これは余り長過ぎますと、大事なものだから保護しなければいけないのだということはわかっていても、陰で本当にやむなく、食うために法律を犯すような人だって出てきますよね。こっちが不備なために、生活するために、食うために、自分の生活防衛のために犯していけない法律を犯すという事態が予測できますよね。現にあるとは言いませんが、予測できる。そんなものを放置しておいて政治があるとは言えないと思うので、その点はもうちょっと真剣に、前向きで、保険制度に準ずるものをやはり当局としても検討して考えてやらなければいけないと思いますよ。これからずいぶん時間がかかりますもの。それは大臣の一番最初に答弁した線に沿って、ひとつ考えてもらいたいと思うのです。  それから信澤さんのお答えの中に、いろいろありますが、「審議会でそこらあたりを理論的に整理をしていただき、」そこらあたりというのは、自然を守れといったって、なかなか守れない、カモシカは大事にしなければいけないのだというので、いまの問題がありますね、被害がいっぱいあります。そういう問題に対して審議会で理論的に整理をしていただいて、「若干の御提言もいただいております。」と言っているのですが、いまの件に関して、審議会が若干の提言をしているという提言というのは、どんな提言をしているのですか。
  50. 信澤清

    信澤政府委員 これはいまカモシカの問題が出ているわけでございますが、一般的に自然保護ということを言います場合に、自然保護をすることは必要でございますが、それに伴っていろいろな不公平が出てくるわけでございますが、いわば、そういう場合における費用の負担の公平化ということをどう考えるべきか、こういう御諮問を昭和四十八年に審議会に対してしているわけでございます。  これに対しまして、五十年の秋でございましたか、一応中間報告をいただいております。鳥獣保護だけではございません、国立公園の関係のいろいろな公益性に関連する問題等々ございますので、多岐にわたっておりますが、いわば考えの骨格というようなものの中間報告はいただいておる、こういうことでございます。
  51. 原茂

    ○原(茂)委員 その中で、森林国営保険法の適用などには全然言及していないのですね。
  52. 信澤清

    信澤政府委員 先生お話しのように、いわゆる保険制度というものはございません。
  53. 原茂

    ○原(茂)委員 審議会が少し提言しているというから、何かこのことに触れているのかなと思ったのですが、やはり森林国営保険法が現在あるのですから、その中の一環として、これを考えるということで、私はやろうと思えば踏み切れると思うのですが、どうですか、これは無理ですか。
  54. 信澤清

    信澤政府委員 たしか一昨年この委員会で、林野庁指導部長は、大変むずかしいということを申し上げたのを私記憶いたしておりますが、そういう意味では、恐らく林野庁サイドとしては、基本的にはその考えは変わっていないのじゃないかというふうに考えます。
  55. 原茂

    ○原(茂)委員 江上さん、来ているのでしょう、これはどうですか。
  56. 江上幸夫

    ○江上説明員 林野庁でございますけれども、森林保険の関係は、私、実は担当ではございませんが、森林保険というのは、森林火災とかあるいは天災とか、そういうものの被害を救済するための制度でございまして、いわば文化財の保護に係る被害の問題につきましては、これは文化財保護法の体系の中で、自己完結的に処理されるべきものというふうに考えております。
  57. 原茂

    ○原(茂)委員 文化財であろうと、被害を与えられたのは森林なんですよ。その森林国営保険法というのがあるのに、文化財が森林を天災のように荒らしたから、これは適用できないのだという、そういう論理で何か逃げていくといいますか、そういうことで、前から言っておるのですが、いま日本にある法律からいったら、これを適用して、何とかこれに入れて考えるということを考える以外にないのじゃないですか。それを、天然記念物がまるで災害か何かのように荒らしたのだ、天然記念物が荒らしたから、これは文化庁関係の何とかだ、こういうふうに逃げようとしている。いいですよ、逃げてもいいのだけれども、一体国の立場でこういうものを何とかして救済してやろうといったときに適用できる法律と言ったら、これ以外にいまのところないのじゃないかと思うのだが、どうなんですか。ほかにまだありますか、類似したこういうものが……。
  58. 江上幸夫

    ○江上説明員 先ほどちょっと申しましたように、文化財の保護に係ります被害につきましては、文化財保護法でその救済規定もございますので、それでやるのが第一義的にとらるべきものと考えております。このカモシカの基本的対策が五十三年度までの調査に基づきまして立てられるということになっておるわけですが、それに関連いたしまして、そこの問題も検討されるべきものというふうに考えております。
  59. 原茂

    ○原(茂)委員 そうですか。前進ですよ。いまおっしゃったように、五十三年調査の結果、これに適用するかどうかを考えるべきものというのは非常に前進ですよ。これは帰ったら林野庁長官にもよくここでそう言ったことを責任を持って伝えてもらうし、それから環境庁長官も、文化庁関係も、いまのことを覚えておいていただいて、私はこれ以外にないのじゃないかと思うから、五十三年調査が終わったところで、これに適用させるかどうかを考えるということは非常にいいことですから、これは忘れないでやってもらいたいと思います。ほかにいまのところ救いようがないと思います。  余り根本的なものだけ言ってもどうかと思うので、もっと具体的にいろいろな問題に入っていった方がいいかもしれませんが、ひとつここでお伺いしたいのは、先ほども言っているように、ある特定の地域を設けて、そこに押し込めるというか入れて、そうして保護育成をしていくという考え方は、いま研究もしているし、実際に小さな地域でやってはいるのですが、将来でかいものをやはりよかったらやるのだ、そういう方向をまず非常に大きな一つのテーマとして考えているのだというふうに考えてよろしゅうございますか。大きな地域を指定して、そこにやはりある程度入れなければいけないというような考えを持っているかどうか。方向として、そういうものがないといけないだろうと思うし、急速にその方はやるべき手があったらやらなければいけないと思うのです。  これは私が言わなくても、アメリカなんかでも、非常に大きなエリアを自然公園にして保護していますよ。メリーランド州なんかにも、でかいのがございますね。これはわれわれの想像を絶したでかいものですけれども、そういうようなものを、いわゆる国立の何とかセンターを置いて、そこに保護するということを基本的にいまから相当突っ込んで考えておかないと、やがてそのことが必要になってくるだろうと思うのです。  そういう方向というものは、いまわずかに十三ヘクタールのところに、さくをつくって入れております。それで二頭、三頭入れていま研究しています、見ていますというようなことは、もう一年半もやっているのだけれども、そんなことだけで恐らく大したものはつかめないだろうと私は思うので、近い将来の方向としては、その生態調査を全部終わってからどうのこうのじゃなくて、いまから大きな大胆な方針一つとして、これは絶対なければだめだというものの一つに、非常に広大な地域を指定して、そこに自然公園なり、あるいは国立動物何とかセンターなり、ニホンカモシカセンターなりというものを置いてやらなければいけないという方向だけは、もういまから決めて、土地の選定なりその他もやったって、あしたに選定なんかできっこないのですから、一年も二年もどうせかかるのですから、その方はその方でやはり研究をどんどんして、実際にどんなところがあるかという土地を考えていくということを国として第一に考える。  それから第二には、これほど日本全国に分布してしまって、相当の県に被害を与えているということになれば、一県ごとに、やはりこのニホンカモシカを保護する何とかセンターというものを置くということをしなければいけないのじゃないかと思いますが、これは何かあと三年も四年もたって、生態研究が終わりました、それからでございますというようなことにやはりなるのか。そうではなくて、基本的な方針としては、すでに国全体で大きなこういう自然公園センターをつくります、それから県は県単位で、この種のものをさくをつくって、あるいはどういう方法か知りませんが、大きな地域の中に何とかセンターとして県ごとにこういうものを置くというような方針ぐらいはいまから持って、これもやはり三関係省庁で相談をしながら検討をしていくというふうにしなければ、これだって手おくれになる。二年も三年もたって、結論が出ました、それからやりますというようなことではなくて、県ごとに、いまからもう検討していいのじゃないですか。いない県なんかやったってしようがないのですし、ごく希薄な県は隣の県と一緒になっても結構でしょう。しかし、相当いる県に関しては、そのセンターを置いて、そこへ置くというような方針がいまから出されて、それも検討を同時にしていく、むだになってもいいのですから。  しかし、われわれの考える範囲では、そのことが必要だということはわかっているのです。いまやっている皆さんの全く微々たる研究が二年も三年もかかって結論が出ました、その後になってから、さて長野県に何とかセンターを一ヵ所つくったらどうか。審議会にかけました、それも必要だということになりました、そこで一年。また二年目ごろから予算がつきました、調査費がどうのこうのというようなことで、まず七、八年かからなければ、土地の選定ですらできないようなことをずっとやっているんですよね。ここまでも被害をかけ、迷惑をかけたニホンカモシカの問題に関しては、大体の方針としては、メリーランドではありませんが、やはり国として大きなものを一つつくります、県単位で必要なものはセンターをつくって、そこへ置く必要があるから、その土地選定あるいはそれに関係したものを研究もいたしますというような方針が、いまからあっていいのじゃないか。その二つに対して、大臣から答えてもらいます。  あと事務当局には、一体三十二条の二にあるように、法律では決まっているのだけれども、依然として管理者は指定されていない。管理者の指定をしないままに、この種の問題が論議されていることもおかしい。特別天然記念物に指定をしました、それではその管理責任者はどこだ。いっぱい全国にいる。全地方自治体に対して、一人もまだ管理責任者という指定を文化庁長官はしていないままで放置されていることにも大きな穴があるし、矛盾があるのですが、これを一体いつになったら、どう指定をしますか。この三つ目は当局でいいですけれども一つ二つ目は長官から答えてください。
  60. 石原慎太郎

    石原国務大臣 先生指摘の問題は、本来なら私は文化庁の所管の案件になるべきものと思いますけれども、いずれにしましても、公営のそういう施設を新規につくるということは、いろいろ問題があると思いますけれども、積極的に考えさせていただきますが、私、ちょっと考えますには、御存じかどうか知りませんが、日本に何ヵ所か非常に広大な地域を確保した企業による自然公園がございます。ライオンであるとかトラであるとかが飼われておりまして、かなりのお客さんたちが詰めかけております。私はカモシカの習性をよく存じませんけれども、アフリカの自然公園なんかに行きますと、非常な数が群れて生息しておりますけれども、もしそれに似通うものがあるならば、むしろライオンとかトラのおります自然公園の中に、別にライオンのえさとしてということではなしに、ある地域を区切りまして、企業の管理の中にこれを委嘱するということはできるのじゃないかと思うのです。そういうことも考えてみたいと思います。  まあ県単位ということになると、これはかえって細分化されることで問題が大変だと思いますが、どこか日本の中に何ヵ所か、いまのような小さなものじゃなしに、大きなそういうゾーンを設けるということは必要じゃないかと思いますけれども、その前に、私企業によります、そういう自然公園にこれを委嘱することができるかできないかということも考えてみたいと思います。
  61. 原茂

    ○原(茂)委員 いま、県単位というのは、かえって大変だろうとおっしゃったのですが、現実のニホンカモシカの被害の状況を見ると、これは非常に広範囲にぽつぽつと実はあるのです、数がたくさんいるようでも。これを一ヵ所、二ヵ所に集めてしまうというのは、できれば一番理想的、一番いいのですが、できなかったら、できる範囲で県単位で、全部一遍にやらなくてもいいですから、やっていくというような思想も持たないと、実際問題の解決にならないのだろうという感じがします。  これは私の感じで、いま長官が言われたように、私企業の中の大きなあれがある。岡山にもありますわね。そういうようなものの中に入れるという考え方も確かにいいと思うので、そういう点も利用しながら、基本方針としては国が積極的にそういった大きな地域指定を行って、そこへやっていくということを考える必要がある、そういうふうに思います。  それから、先ほどもちょっと触れられたのですが、文化財保護法第八十条の現状変更の許可を与えなければ実際問題の解決ができないということが一つあります。それから、狩猟に関する法律第十二条の特別許可がないと、実際には、論議していても次の論議ができないのですが、ニホンカモシカの捕獲というものを中心に考えたときに、いま言った二つの、特別許可なり、あるいは許可を与えるようなことを、ときによっては考えますかどうですか。
  62. 信澤清

    信澤政府委員 私どもの方の所管は先生御承知のように鳥獣保護の関係でございますが、先ほど御答弁申し上げました長野県、岐阜県における捕獲許可、これは法律に基づく許可でございます。ただ、片方だけ許可してもいけませんので、文化庁の方の許可とあわせて実施してやる、こういうことになるわけでございます。
  63. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、これは特別この間だけ一遍あっただけじゃなくて、これからも、こういうことが状況によってあり得るということですね。
  64. 信澤清

    信澤政府委員 先生最後に、状況に応じてとおっしゃいましたが、状況に応じて許可することあるべしというふうに、お考えいただきたいと思います。
  65. 原茂

    ○原(茂)委員 一遍だけじゃいけないので、状況に応じて、ぜひ考えてもらわなければいけないと思います。  それから、少し細かいことを具体的に伺ってまいりますが、防護さくの設置補助金ですが、たとえば長野県の場合、五十一年度五百二十四万ですか、これを大幅に増額しませんと、いま一番防護さくに頼っているんですね。日本じゅうでやってみたら、一番これがいい。いろいろな問題がありますよ。金の問題もあるし、それから労務者を確保するのに非常に困難があるようですね。先には、やはり金でしょうね。その金が長野県のあの被害に見合って五十一年度わずかに五百二十四万円、これは半額補助ですね。これだけでは、それは進んでいきませんよ。五十二年度も大したことないですね。この状態じゃ、防護さく、防護さくと言っていながら、これが一番いいんだろうと考えていながら、それが実際に進まない。これをやはり何とか打開しなければいけないんじゃないでしょうか。これはどうですか。それが一つ。  それから、先ほど私がちょっと触れたように、地方公共団体なりその他の法人を指定をしなければ、実際に管理者の身が入らないし、いけないと思うのですね。その指定をする気があるかどうかをさっき答えなかったのですが、近くしなければいけないと思いますし、したときに、一体こういった施策に対する予算はどうなるんでしょうか、あわせて……。
  66. 信澤清

    信澤政府委員 防護さくの問題は、先生指摘のとおりの予算措置を来年もお願いしているわけでございます。ただ、地元負担も伴いますので、私どもとしては地元の県なりの財政事情、御希望等を考えながら予算措置をしていくべきだと思いますが、去年は、やや試験的に設置したということでございますので、一応今年度並みということで来年度予算は御審議をお願いしているわけでございます。しかし、実際やってみました効果は、先生おっしゃっていただいておりますように、かなり効果を上げているわけでございますので、その点はよく県その他と相談いたしまして、必要ならば補助金の増額等を考え、防護さくの設置を急ぐということを当然考えなければならぬと思っております。  それから管理人の問題は、これは文化財保護法の問題でございますので、文化庁からお答えいただきたいと思います。
  67. 柳川寛治

    ○柳川政府委員 天然記念物に指定されております動物につきまして管理団体に指定してまいりましたのは、一定の地域指定がなされておる場合が通例でございます。特に地域指定のない、種としての指定をされておる動物につきましては、積極的に人工増殖をする、そういう保護事業を行う団体を管理団体といたしまして指定をしてまいったという例が若干ございます。  カモシカにつきましては、現在、御指摘のとおり管理団体の指定に至っておりませんが、この管理団体の指定に当たりましては、地方公共団体の同意を前提としております。その同意を得るに当たっての前提条件と申しますか、御指摘の地域指定の問題、それから具体の管理計画の設定、その点をぜひ明確にして、逐次地方公共団体を管理団体にしていく方向で作業を進めていきたいというように考えておる次第でございます。  また、これには国有林の問題もございますし、環境庁林野庁とも十分連携をとりながら、その方向で進めてまいりたい。その辺の具体的な全体の管理計画の設定は、やはり現在三年計画での調査を進めておる、これを待つ必要があろうかと思いますが、具体に応急の措置として、防護さくの設置あるいは下草の確保等の問題を今後詰めてまいりたい。その事業主体として、どこをするかということの問題とも絡めて検討を進めておるところでございます。
  68. 原茂

    ○原(茂)委員 それを大至急でやらなければいけないのを、いまのお話だと、まだ相当の時間がかかるようですが、なるべく急いでそれをやらないと、実際には、管理主体がはっきりしてないということで右往左往大騒ぎをしているという状態になっているのですね。こういう問題の管理責任者はおれなんだというので、そこに中心的な問題解決の主体がやはりできてこないと、この種の問題の住民に対する救済その他もなかなかうまく進まないのですから、早くそれをやってもらわないといけませんね。  次に、被害を受けた造林地の復旧造林に対する助成がありますね。それはたしか四〇%ですが、先ほどの防護さくの二分の一も不当なんで、これは全額、国庫が持つべきですね。何も彼らが好んで防護さくをやるわけじゃないんで、したがって本来なら国が全額持つべきなんだ。地方自治体なんかに半分持たせるのは不都合なんで、これも全額負担にしなければいけませんし、それから復旧造林に対する補助を思い切って増額されませんと、要するに、被害を受けた者がもう一遍何とかして植林し直そうとしてもできないわけですから、これの増額というものを考えなければいけないと思いますが、これは一体どうなのか。  もう一つ、三つ目に、実は防護さくをやっても、ある時期が来て目的を達して要らなくなるときがあるのですね。仮にやってみた、ところがそのやった結果、もうほかへみんな行っちゃいました、もうこの防護さくは取ってよろしいという事態が来たときの防護さくの撤去の費用をどこが負担するのですか。三つですね。
  69. 信澤清

    信澤政府委員 防護さくにつきまして地元の負担の問題をよく考えなきゃならぬという御趣旨はよくわかりますので、御趣旨の方向に沿って少し検討させていただきたいと思います。  それから、防護さくが要らなくなった場合どうなるかということでございますが、実はその場合は、すぐ撤去する事態になるのかどうか、その事態を想定いたしておりませんので、大変うかつな話でございますが、腹案を持っておりません。やはり相当長期間にわたって、さくは必要なのではないかというふうに考えておりますが、仮にそういうふうな事態になりまして撤去に関する費用ということが問題になりますれば、それはその時点で、それなりの国としての考えを持つべきだというふうに思います。
  70. 原茂

    ○原(茂)委員 三つとも全額国庫負担が原則だと私は思うのです。いまのような二分の一だ、四〇%だというのは実際けしからぬと思いますよ。ですから、いまおっしゃったように、検討してふやすようにやってもらうことが一つ。  それから撤去は、現実の問題として、もう長野県の場合には撤去していいじゃないかという地域が一カ所あります。そんなことは、まだ皆さんには申請してないでしょう。もうしようかなと言っている。ただ費用はどうなるんだろうということで、いま騒いでいる。その問題が近く起きますから、撤去するときの費用に対しては、やはり国が考えるということを、いま検討されると言ったとおり検討してもらいたいというふうに思います。  それから、先ほどの毒薬、麻酔の問題なのですが、実は長野県でいろいろな関係者が集まって、一体どうしたらいいだろうという協議をしたのです。報告がきっと行っていると思いますが、協議をした。  その結論としましては、いまのところは防護さくが一番いいだろう。  しかし、この防護さくへ持っていくにしても、あるいは防護さくで消極的に入ってこないようにするだけでいたのでは、防護さくをした以外の民有林その他はどんどん食い荒らされてしまうから、これも困る。これが二つ目。  防護さくは確かに効果はあるのだけれども、小さなところをさくで囲いました、そのかわりそのさくの外をやられてしまいます。それは困る。そこで、さっき言ったように何かセンターというか、ある特定の地域を設けて、その地域に押し込めるということをどうしても三つ目に考えなきゃいけないだろう。これはもういろいろ苦しんだ人がみんな集まって会議をした結論です。  それで四つ目に、押し込めるとか、特定の地域に持っていこうというときには、やはり麻酔銃を使わせてもらってやるのが一番いい。そうじゃなくて網によって生け捕りにするとか、自動的に生け捕りにしようというようないろいろの機器の開発なんかをいましているようですが、そして試みにそれを使っているようですが、暖かい地域の方々で使っているところを長野県で視察をした結果、長野県は非常に寒い、したがって、こういうところではいまの生け捕りの器械じゃ、ちょっと無理だというようなことになったので、結果的には麻酔銃を使って捕獲をさせてもらって持っていく以外にないという、大ざっぱに言うと、四つの順を追った結論めいたものを出していますね。  そこで、その四つ目の麻酔銃なんですが、麻酔銃は動物園内における動物等に使うことは許されても、そのほかで使うことは依然として許されていない。だが、これは検討に値するというので、前回も前々回も検討することになっているのですが、検討した結果、ニホンカモシカに対して必要があれば麻酔銃を使わせますか、どうですか。
  71. 信澤清

    信澤政府委員 前回も御答弁申し上げましたように、これは実は法律で禁止をされているわけでございますので、法律改正が必要でございます。そこで、鳥獣保護法全体の法律改正の問題、これまた審議会で御審議いただいていることは、前回御報告したとおりでございますが、その検討の席で、先生のようなお話を含めまして御相談をいたしましたところ、一定の条件のもとに野生鳥獣の保護のため麻酔銃を使用するということを認めてもいいのではないか、おおむねそういう方向委員先生方の御意向は固まっております。  したがって、ほかにまだいろいろ事項がございますので、そういう問題について私どもできるだけ早く結論を出していただきたいというお願いをいたしておりますので、いずれ近く結論をいただきました上で、法律改正の措置を講じたい、このように考えております。  同時に、使うことはいいわけでございますが、経験上、いままで動物園の動物しかやってないわけでございます。したがって、ニホンカモシカのような野生の、しかも草食獣に、いまのままの経験の上で使っていいかどうかという問題もございますので、麻酔薬をどういうふうに使ったらいいかといった研究は並行してやりたいということで、五十二年度予算案の中で御審議をお願いいたしております。
  72. 原茂

    ○原(茂)委員 その鳥獣法第十五条の改正に手をつける前に、いま、いい答えがもう近く出る、こうおっしゃったのですが、いい答えが出るのは、いつごろの見込みですか。
  73. 信澤清

    信澤政府委員 問題の八割方は結論がまとまっているわけでございますが、一番重要な狩猟の場所をどうするかという非常に根本的な問題が実は残っております。しかし、ここ三年ぐらい、もうすでに御審議はいただいているわけでございますので、そろそろ、ともかく結論を出していただきたいということをお願いしておりまして、今月中にもそのための小委員会を開くというような状況でございますので、ともかく急いでいただくということでお願いいたしております。
  74. 原茂

    ○原(茂)委員 今月中にも再度委員会を開いて、そこで結論が出るように、それでは期待をします。もう長いんですから、早く結論を出してあげた方がいいと思うのですよね。これはお願いしたい。  それから、ニホンカモシカもそうなんですが、大型野生獣というものを捕獲した場合ですね。いま言った麻酔を使うこともあり得るでしょうが、どういう方法であれ捕獲をした場合、その捕獲した後のえつけでございますとか、あるいは人工飼育でございますとかいったものの研究が行われていないと、捕獲は許された、持ってきました、研究ができていないから死んでしまいました、どうなってしまいましたということになると挫折しますからね。  同時に、そういった種類のいわゆる大型野生獣をとってきて人口飼育をする方法だ、それ、何だといった生態研究というのも、いまやっていますか。これをやっていないと、いつもやってしまってから、またそれを研究するから百年かかってしまうんですよね。二十年も五十年もかかってしまう。それじゃ困るので念のために言うのですが、そういう研究も同時にいまやっていないと、この方の論議を幾ら進めても実際にニホンカモシカの捕獲というのは、できなくなりますからね。どうですか。
  75. 信澤清

    信澤政府委員 先生のお話に直接結びつかないかとも思いますが、私ども現在、カモシカの生態と申しますか、特に食性、どういう食物を食べるか、こういうふうなことについて研究を依頼しております。今年度調査は、おおむね終わるわけでございますが、それなりの結論は出てまいっております。したがって、カモシカに関するそういうような生態的な知見というものをもとにいたしまして、たとえばできるだけ自然状態で飼育をするとか、あるいは動物園で飼うようにするとか、こういうことを決めていきたいと思います。  動物園でもすでに飼育しているところがございますので、人口飼育の手法その他については、それらの経験が利用できるのではないかと思いますが、先ほど大臣もおっしゃいましたように、また先生のお話にございましたように、やはり捕獲をしてできるだけ隔離をして自然状態で飼育をする、こういう方向を考える必要があると思いますので、どういう条件を整えてやったら、どのくらいの頭数の飼育ができるのか、そういうような研究は現在いたしておるわけでございます。
  76. 原茂

    ○原(茂)委員 それから、さっきちょっと聞き落としたのですが、いまの補助金の問題で、被害を受けるであろうことが、もう予想される、はっきりわかっている地域があるんですね。被害がずっと及んできまして、いよいよここへ来るなという地域はわかっている。またわかったところへ案の定カモシカというのは来るんですよ。それで被害を与えていくのです。ところが、いまの補助は、被害を受けてから申請しなければ補助がない。現に、けもの道じゃありませんが、ここまで来た、ここまで来た、ずっと来たあれから言うと、ここへ来るなとわかっていて、来るぞというところに来るのですよ。その来るなといったときに防護さくを設けようといったときの助成はどうですか。
  77. 信澤清

    信澤政府委員 補助事業の執行の問題だと思いますので、お話のような、そのおそれが十分あるというところに対しては、よく御相談をして防護さくの設置ができるように配慮したいと思います。
  78. 原茂

    ○原(茂)委員 それは非常にいいことです。じゃ、相談に来るでしょうから、ぜひやっていただきたいと思う。  それから、先ほどもちょっと触れたように、防護さくを設けます。設けると、そこはいいんだけれども、その回りがどんどんやられちゃうのですが、これに対する対策はどうしたらいいでしょう。
  79. 信澤清

    信澤政府委員 私どもも、いま先生指摘のようなさくを設けたところはうまくいっている、しかし、むしろ周辺に被害が起きる、こういうお話も伺っております。ただ、先ほどから申し上げておりますように、たとえば長野県について私ども、どのくらいの被害面積があるかということを当時担当の課長を派遣して調べたわけでございますが、当時約千三百ヘクタールというお話でございました。今回防護さくをつくったのは、その十分の一にすぎないわけでございます。したがって、やはりもう少し抱え込みをやりますれば、あとは自然林の方に追い込むかっこうになるわけでございますので、やや過渡的な問題でもあるのではないかという感じもいたしております。しかし、大変重要な問題でございますから、もう少し地元の御事情等も伺い、研究させていただきたいと思います。
  80. 原茂

    ○原(茂)委員 カモシカの問題に関しては、いま大臣お聞きのように非常に大きな被害にだんだん広がっていくにもかかわらず、後手後手というよりは、もっと後手だという感じを被害を受けた人々は持っていて、政治に対する不信というよりは、もうもどかしさといいますか、先ほどもちょっと触れましたように、これに手をつけてはいけないという法律があっても承知の上で、自分の生活権を守るために、自分の生活自身を守るために手をつけるという事態が起きかねない状態になっている。そういうせっぱ詰まった状況にありながら、依然としていまお聞きのように結論がまだすぐには出ない。かゆいところに手の届くような対策もできないで、二分の一の補助でございます。四〇%補助いたします、何にしますということも、しかも、いろいろな事象のうちのごくわずかに対してそれをやっているだけだというのを放置しておいたのでは、これは本当にわれわれとして相済まぬと思うのです。  これは全国の問題ですから、したがって環境庁長官としても、いま目の前にちゃんとそういう被害が現に起きているという事態、やれ企業責任を問うとか問わないとか、海の水が汚染されたというのを後になって分析して、どうのこうのということも大事ですが、それもやらなければいけないでしょうが、現に生きた人間が、生きたニホンカモシカによって、もう自分たちどんなに目の前で食い荒らされても手が出ないでいるこの状態、やろうと思えばできるいろいろな手があるのに、それが調査でございます。何でございますというので、関係三省庁にまたがっているから、その相談の結果でございますとか審議会答申を待っておりますとかいうようなことで、ずっとじんぜん、当局の皆さんにすれば一生懸命にやっておられると思います。思いますが、被害を受けている人間からいったら、これはもうとてもじゃないけれども、まどろっこしくて、この状態で放置されて一体どうなるんだろうというせっぱ詰まった状況にいまなっていることは間違いない。  そういうことに対して、やはりいま当局であれもこれもやっておられることに私も早くやっていただきたいと非常に期待をいたしますけれども長官からも、この被害を受けている人々に対しても思い切ってあらゆる諸般の調査なり、あるいは研究なり、それを含めた施設づくりなり、または損害を受けたときの賠償の問題なりというような問題を早急にやらせるように当局を督励し、三関係省庁との間の連絡を密にしながら、いままでよりはスピードを上げて急速にこの問題の処理に当たるという決意を、これは被害者に言うつもりでひとつおっしゃっていただけませんか。
  81. 石原慎太郎

    石原国務大臣 この問題に限らず、どうも行政と政治の間のギャップがあちこちにございます。環境庁の抱える問題にしましても、従来は、もう起こってしまった問題を後手後手に後追いして、これを要するに調整し、回復するということを主にやってまいりましたが、やはりアセスメント法の趣旨も、つまり起こるべき問題を未然に防ごうという姿勢のあらわれでございまして、この問題もそういう姿勢で取り組むつもりでございます。
  82. 原茂

    ○原(茂)委員 次に、オニヒトデの被害の問題についてちょっとお伺いしたいのですが、特に国立公園、国定公園にも全部関係いたしますが、海中公園の一番中心的な景観保持の大きな役目をしているのはサンゴ礁なんですが、そのサンゴ礁がオニヒトデのために次から次に死滅の状態、白くなってしまって、われわれの飾り物になるような状態に食い荒らされほうだいで今日に至っているのが現状だと思いますが、これに対して、そうは言ってもサンゴポリプというのは、そう食われっ放しじゃないんだ、オニヒトデを退治するための予算も計上し、実際にやっているんだ、こうおっしゃるんだと思いますが、実際にこのオニヒトデ退治に対して効果のある、先行きぴしっとこれを絶滅するという自信のある長期の方針のもとに予算措置その他、その執行に当たっておられるかどうか。それを先にひとつ……。
  83. 信澤清

    信澤政府委員 先生御案内のように、オニヒトデの問題というのは、沖繩、奄美大島という形で南の方から、いわば北上してきているわけでございます。いままで私どもが研究等依頼しておりました結論から言いますと、恐らく産卵の場所の北限というのは北緯二十八度線、ちょうど奄美本島の南あたりになりますが、このあたりが限界ではないかと言われているわけであります。したがって、根本的な対策というのは、その産卵の場所を押さえてしまうということになろうかと思いますが、実際問題として、現在のところ、そのための駆除方法等適切なものが開発されていないという現況でございます。  したがいまして、私ども現在とっておりますのは、いわゆる素もぐりでヤスを使うとか、あるいは本土になりますと海が深くなりますので、ダイバーが入るわけでございますが、そういう人力によって駆除するという方法しか現在のところ最善の方法がない、こういう判断をいたしておるわけでございます。  これにつきましては、四十九年度以降、二分の一の補助でございますが、県に対して補助を出しておりまして、成果といたしましては、それでもオニヒトデが絶滅したという状態にはなっておりません。なっておりませんが、相当程度サンゴ礁の侵食というものは防げている、こういうふうに考えておるわけでございます。
  84. 原茂

    ○原(茂)委員 四十九年以来やった措置で相当程度サンゴ礁の侵食が防げていると、いまおっしゃったのですが、そんなに防げていますかね。いま、日本のサンゴ礁が一体どのくらいなエリアがあって、どのくらい食われているか、ある時点でこれをつかんで、そして、それ以上次の年度にふえていないとか、そのままだとか、そうして生きたサンゴ礁がどんどんふえているとかいうような調査は四十八年以来やっていないんじゃないですか。どうして相当の成果を上げているという自信を持てるんですか。調査してないんじゃないですか。
  85. 信澤清

    信澤政府委員 調査と申し上げましたのは、先ほども申し上げましたようなオニヒトデの発生の条件の問題、駆除方法の問題ということに関連いたしまして、当時の被害状況を調査したということでございます。  これは別に調査費等を組んでおりませんが、海中公園の管理の当然の問題として、私ども、サンゴ礁の状態の変化ということについては常に関心を持っているわけでございますので、そういう観点から申しますと、おっしゃるように、局所的には被害が起きているというところがございますが、少なくとも現状より進まないように抑えることはできるのじゃないか、こう言うだけの見通しは持っているわけでございます。
  86. 原茂

    ○原(茂)委員 現状よりも侵食しないように抑える自信を持っているとおっしゃったのですが、オニヒトデの産卵、ふえていく数は、タラコなんかよりも何倍かの数ですよ。三十分から二時間くらいの間に、産卵期には一匹が千二百万個から二千四百万個出すのです。こんなものはほかにないですよ。それを、国立公園につながる海中公園その他のところを、わずかのお金で、オニヒトデの退治をするのに何をやっているかというと、沖繩でやっているみたいに、結局もりだか何だか知らないけれども、突いてとるのでしょう。それで、漁師の日当が幾らか知りませんが、何百匹か何か、とにかくようやく一日にとっている。予算はどうだと言えば、予算というものは何百万円ですよ。そうして、先ほど北限は奄美群島とおっしゃったが、いまは紀伊半島、熊野灘に来ています。これがぎりぎりだろうと思うけれども、そんなところまで来てしまっている。この数限りなくある、しかもふえる一方で、どんどんここまで来てしまった。北限のぎりぎりまで来てしまったんでしょう。それは、ふえている証拠ですよ。四年間でずっと来たのです。えらい繁殖率です。それを、あの程度の予算で、しかももりで突いてとるのが一番確実だというやり方では、ダイバーが何人雇われても、およそ数に挑戦できないはずですから、現在で侵食されないという自信なんか持っていたら間違いなんです。  こんな状態というものは、やはり正式にオニヒトデの現在の状況と、サンゴ礁の荒らされている状況というものを調査費をつけて国で調査をやるべきだと思うのです。各地方自治体に補助金をやるから申請しろ、申請するときに、現状はこうでございます。私の自治体で見たサンゴ礁の状態はこういう状態でございますというものを集約してみたら、現状がこうだったというような、いまの環境庁の受け取り方だろうと思うのです。そうではなくて、この大事な資源が、いまのような状態になっているのを環境庁として放置できないという意味で、やはり調査費をつけて、国の立場で全体的な調査をすべきじゃないか。その時期に来ていると思うのです。  御存じのようにサンゴ礁は稚魚の生息地です。近海漁業はもう大変だ。二百海里時代で、いまは大騒ぎをしていますよ、かまぼこをイワシでつくろうなんて言っているのですから。その状態の中の、しかも近海の浅瀬の稚魚の生息地、ここで育っていくのですから、大事な魚の育つ一番大事な、最初の、初歩的すみかでしょう。これが、ポリプが食われて、どんどん死んでいってしまうのですからね。このことは、有限時代有限時代と福田さんは盛んにおっしゃるけれども、目の前でそうなっていって、どんどん有限になっていくものを、実際に一番稚魚のすみかになっているところをどんどん食い荒らされて、残骨にしてしまって、サンゴ礁を白くしてしまって、稚魚が寄りつかないですからね。ということになると、まさにいろいろな意味から言っても、これは大変な問題だという前提に立って、オニヒトデの駆除方法の思い切った積極的な技術の開発なり何かを、それこそ徹底的に急速にやることがまず一つ。  それと、オニヒトデの分布状況と、いま北限に来ている状態が一体これ以上侵食しないのかどうかということも、国として調査をぴしっとするということが二つ、どうしてもいま緊急の問題としてやられるべきだと思うのですが、どうですか。
  87. 石原慎太郎

    石原国務大臣 大変いい御提言をいただきました。  私は、いささかこの問題について専門家でございまして、私自身スクーバでダイビングしますと、食い荒らされたサンゴ礁の印象は本当に無残なものでございます。同時に、あるところで、ここまでオニヒトデが来たなという地域でもぐったこともございますけれども、いま先生が言われたみたいに、一時間、三十分の間に二千万個に近いものを産卵する割りには、要するに成長したオニヒトデというのはそう多いものではなくて、ただ同時に、非常に発見しにくくて、これが一匹でも非常に広範囲を食べてしまう。この実態は実はわかるようでわかりませんで、私もクストーというフランスで有名な、カリプソ号であちこち調査をしている博士に私信で聞いたことございますけれども、非常に重要な問題で、オーストラリア等からも委嘱されているが、ほかに問題があるからなかなかわからない。世界全体が悩んでいるようですけれども、いまだに適当な駆除方法がなくて、どこの国でも仕方なしにダイバーを動員してやっているようです。  いずれにしても、系統立った生態的な研究が私たちの国、特に海洋国である日本で全然行われてないというところに問題があると思います。これはもういい提案をいただきましたので、ぜひ国が系統立った調査の体制をつくり、そういうチームに物を依頼しまして、分布的な生態から何から、早急に行ってみようと思います。
  88. 信澤清

    信澤政府委員 私どもいろいろ調査をやっておりますので先ほど混同いたしましたが、先生お挙げになった四十八年の調査というのは、自然環境保全基礎調査ということで、植生、地形、地質、動物層、こういったものを全国的に国の予算調査した結果でございます。これはおおむね五年ごとにやることになっておりますが、とりあえず四十八年から五年後は五十三年度でございますので、五十三年度には、少なくとも前回と同じ調査をやるということで現在準備を進めております。  それから駆除方法の問題、いま大臣からお話し申し上げましたが、先ほどもちょっと申し上げたように、いろいろ天敵の利用、それから物理化学的な方法というのも実験的にはあるようでございます。しかし、実際問題として非常に広い海に適用するのはむずかしい、そこで人海戦術によらざるを得ないというのが実情でございますが、そちらの方の研究も私どもとしては、なお進めていきたいというふうに考えております。
  89. 原茂

    ○原(茂)委員 海洋資源の問題ですから、せっかくひとつやっていただくように、私からも切にお願いしておきます。  これで終ります。
  90. 芳賀貢

  91. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま、自然の豊かな地域におけるいろいろな問題点の御指摘がありました。そしてまた大都市周辺のような自然の乏しい地域にもいろいろ問題点があると思います。  長官は、就任なさってから、事務当局からいろいろ御報告も受けられたし、また代表的なところには、現地にも行かれたと思いますが、いまの日本自然環境の荒廃状態についてどういうふうな考え方を持っておられるか、どういうふうな対策を講じようとしておられるのか、基本的な考え方についてお伺いしたいと思います。
  92. 石原慎太郎

    石原国務大臣 お答えいたします。  御指摘のように、高度成長時代に、これを国是のごとくして行われた開発がもたらした自然の破壊は本当に恐ろしいものがございます。それが石油ショックでとんざいたしまして、いま大きな価値観の変革がもたらされたわけでございます。非常におくればせながら、私たちは、金で買えない、買い尽くせない、実は非常に高価なものを決定的に失ったという認識にようやく立っているわけでございまして、それでいながら、それでもなお、その種の破壊が行われつつあるというのが現況だと思います。  こういうものをいろいろな規制をすることで未然に防いでいくこと、また、できるならば破壊された自然を時間をかけても修復し、長い長いサイクルで物を考えて、五十年、百年先の子孫に残していく努力をおくればせでも、いまから始める必要があると心得ております。
  93. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 長官、実際に目で確かめられて非常に国土の荒廃ということは実感として感じられたと思います。いま経済事情で、ある程度それにブレーキがかかっておるかも一わかりませんが、実際にはどうでしょう。いまなお荒廃は進みつつあるのでしょうか。いろいろ調査をなさっておるわけですから、どの程度進んでおるのか。特に大都市周辺では、どういう問題が起こっておるのかということについて、局長の方からお答えいただきたいと思います。
  94. 信澤清

    信澤政府委員 原先生の御質問にお答えいたしましたように、四十八年に全国的な調査をやりました。当時の現況はかなり正確に把握をいたしております。これは五年ごとでございますので、五十三年度実施するということで、したがって、その後の組織的なフォローはいたしておりません。したがって、的確な御答弁はいたしかねますが、いま御指摘のございましたように、都市近郊においていろいろ改変が行われているという事実は、私ども日常目の当たりに見ておるわけでございますので、かなりの変化が起きておるのではないかと考えます。
  95. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 環境庁として、そういう変化が行われているであろうという想像だけじゃなしに、具体的に自然破壊の進行状況をチェックする機能あるいはまたそれを監視する機能、そういったものはございませんか。
  96. 信澤清

    信澤政府委員 私どもは御承知のように総合企画官庁でございますから、私ども自身がやらぬまでも全体的な状況の把握なり施策の決定というものについては、それなりの発言権もあり、またやらなければならぬことがあると思います。同時に、私ども自身は国立公園の管理を直接やっておりますし、国定公園等々の制度もあるわけでございます。したがって、そういうゾーニングをした地域については、いわば管理者の立場からかなり厳格に見ているわけでございますが、全国的に、組織的に毎年毎年調査をやるということまではいたしておりません。本来そうあるべきかと思いますが、いまの私どもの体制では、先ほど申し上げた五年に一遍全国的な調査をやるというのが一つの限度であろうと考えております。
  97. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうしますと、実感としては相当荒廃は進んでいるであろうけれども、実際には他の官庁から得る情報とかいったことだけで、しかも環境庁自体としては五年に一遍しか調査をやらないのだから、その間の進行状況は的確に把握ができない、つかみ得ない、いわば自然環境は荒されっ放しだという状態が続いておっても手がつけられないという現状にあるわけですか。
  98. 信澤清

    信澤政府委員 私申しましたのは一般的に申し上げたわけでございまして、非常に大規模な開発でございますとか、その意味で当然環境庁意見を求められるとかいうような問題はたくさんあるわけでございます。たとえば海浜の埋め立てにつきましても、一定規模以上のものは環境庁長官に協議が参ります。そういう段階に物事をチェックするとかいうようなことは、これは私どもの局だけではございません、環境庁全体の仕事として現にやっておるわけでございまして、改変を野放しにほうっておく、すべて野放しにほうっておくということではございませんで、ある条件のものは、環境庁はそれなりに、それをチェックもし把握もしている、こういうことでございます。
  99. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 瀬戸内海を船でお通りになったら、もうよく御承知のとおりだと思います。あれだけ美しかった瀬戸内海の島がもうほとんど水辺までえぐりとられて、完全に島がなくなっているという現状も御承知のとおりだと思います。  東京は比較的山が遠いわけですが、私ども大阪周辺というのは、生駒山系あるいは六甲山系というのが目の前に見えるわけです。この荒廃といいますか、自然破壊は、はなはだしいものがあるわけですが、これを実際に監視しているのは、林業関係の職員が、生駒山系についてはせいぜい四、五人の職員が回る程度である。しかも、それは林業という立場でしか歩いておりませんから、自然破壊が目の前に進んでおっても、そういったことはわかりません。そういう状況が進んでおる中で、果たしてこれ以上歯どめができるかどうか。いまの自然環境保全法のもとでは、いろいろ制約があって、都市周辺の開発が進んで、自然破壊が進んでおっても、実際問題には、なかなかそれをとめられないような問題が多いと思います。  特に一番荒廃の激しいのが四条畷だとか、大東だとかいう、山の周辺ですが、しかもその荒廃を進めたのは、国自体が行った国道をつけることから始まっておるわけなんです。そういうことになると、むしろ国自体が環境破壊の一番大きな引き金になっておるというような面が多いわけなんですが、そういう点については、他の省庁等について、どういうふうに協議をなさっておるのか、そして荒廃が進まないような手を打っていらっしゃるのかということについてお伺いしたいと思います。
  100. 信澤清

    信澤政府委員 ただいま事例としてお挙げになりました生駒山系の問題は、恐らくいろいろな開発があろうかと思いますが、私ども承知いたしましているのでは、一つは採石の問題が大きな原因であろうと思います。この点については、先生よく御承知のように、採石法その他の法律があるわけでございますが、私どもの国定公園があそこにございますが、国定公園内については、それらの法律によるほか、さらに公園法上都道府県知事の許可にかかわらしめている事項がございます。そういう点で、その許可の中でさらに厳しい条件をつけるというようなことはやっておるわけでございますが、ただ、あそこの現状と申しますのは、ちょうど公園の地域と、そうでない地域とが、いわばボーダーラインのような状態にあるところに起きているわけでございまして、公園の地域の中で幾らやっても、外の方の状態を私ども自身が持っている法律で規制できないという、一種の隔靴掻痒の感はあるわけでございます。  まあ、これもやや後追い行政になりますが、最近あの種の問題については、関係省庁集まりまして、いろいろ対策を考え、主として権限が府の知事のものでございますので、府で対策を考えていただくようにお願いし、かつ府で実行していただいているというふうに承知をいたしております。
  101. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いまの自然環境保全法では、なかなか独自の立場で歯どめをかけるような措置がとれない、だからほかの省庁と話をしてということなんですが、具体的にはどういう官庁のどういう係とか、あるいはどういう法律に基づいて、そういう歯どめの仕事をなさっていらっしゃるのですか。
  102. 信澤清

    信澤政府委員 これは先生御案内のように、いろいろなケースがございますので、一概に申せませんが、仮に採石の問題、特に四条畷市のあの問題を考えましたときには、建設省の砂防の関係、それから国土庁の大都市圏整備関係、さらに資源エネルギー庁の鉱物の関係、こういうところにお集まりをいただき御相談をしたことがございます。  それから、一般的な開発の問題について、先ほど来申し上げておりますように、環境庁に協議をする、あるいは中央レベルの審議会環境庁自身が委員になっている、この種のものにつきましては、それぞれその開発に当たっての協議あるいは連絡がございます。その際、いろいろ、環境影響評価の状況等を審査いたしまして、そういうチェックをいたしているわけでございますので、その段階関係省庁と申しますのは、きわめて多岐にわたる、こういう状況でございます。
  103. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 関係省庁といろいろ協議はするけれども、具体的には指示も何もできぬ、権限も何もないわけですね。そうすると、結局その関係省庁と協議はしたけれども、しっ放しということで、具体的な歯どめ策というのは考えられないものでしょうか。  環境庁としては自然環境を適正に保全するという責務があるわけですから、そういう立場から何か歯どめをかけないことには、たとえば砂防法関係だったら砂防法関係でお話をなさっても、環境庁としてはただそれをお願いするだけで、それ以上荒廃をとめるというような措置が講じられないわけですね。そうすると、環境庁としての責務を全うするだけの能力がないということになってしまいます。むしろほかの関係省庁が、環境庁がいらっしゃるのだから、あちらの方へお任せしておいた方がというふうな気風も強いというふうなこともうかがえるわけです。したがって、恐らくいま言われた保全法以外に砂防法だとか都市計画法だとか、あるいは急傾斜地の何々法というような、十九か二十ばかりあると思うのです。それぞれの分担をなさっているところがお互いの分野だけではどうにもならない。結局総合的なまとめ役をやっていただくのは一番関係の深い環境庁しかないと思うのですが、いまのままでは協議のしっ放しだけで、具体的な施策はなかなかとれないというふうに考えますが、何か具体的に歯どめをかけられる措置というものは環境庁としてはとれないでしょうか。
  104. 石原慎太郎

    石原国務大臣 そういう意味で現在一定規模を超える開発に関してのアセスメント法というものを考えているわけでございますが、そういう問題を持ち出す前にお考えいただきたいのは、自然環境保全というものも政治全体の中で大きな問題でございますけれども、ただやはり安定成長とはいえ、十二年間も続けば、日本の経済が倍になろうというような過程の中で、最低規模の開発も必要とされるわけでございます。こういったものをどういうふうに兼ね合わせるかということで、いま非常に論議が沸騰しているわけでございまして、ある場合には一種のトレードオフというものが必要でございましょうし、ある場合には、たとえそれが国定公園、国立公園に指定されていない地域でも、その地域の方々が、どちらを優先するかということが、自然環境というものを、開発をどう変えていくかということに大きな規制力になり得るかと思います。  いずれにしても、話があちこちに飛ぶようでございますけれども、自然というものは、そのままほったらかしの形で置いておくことが、必ずしも自然を自然として生かすということにもならない場合もございますし、またそうしなければ自然が自然として生きない場合もございまして、本当にケース・バイ・ケースであると思います。  先生の地域に起こっている問題は、つまびらかにいたしませんけれども、いま一般論のような御質問がございましたので、こういう答えをいたしました。  そういう意味で、ある規模以上の開発に関しては多面的に物を考える。しかも、その中で環境の問題というものを、従来事業主が説いていたメリットと同じレベルまで引き上げて評価するという意味アセスメント法も考えているわけでございます。
  105. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 アセスメント法を考えていらっしゃる趣旨もわかりますし、その意気込みも理解できるわけでございますが、現在、大都市周辺というのは、自然の豊かさ、乏しさからいえば、非常に乏しいわけです。したがって、一番先に必要なのは大都市周辺の環境を守るということなんですが、現実には先ほど局長もお答えいただいたように、自然公園法で規定されておる範囲内とか、あるいはまた近畿圏整備法で網をかぶせられた範囲内とか、そういったところから何とか手を打たれる。また、地域については、その府県の長の責任だとおっしゃるのですが、実際には、いま起こっております生駒山系とかあるいは六甲付近というものは府県の境域を超えている場合が非常に多いと思うのです。現に自然公園法によって規制されている部分は、もう開発はすでに終わって、自然環境保全法が施行されたときには、もうすでに開発が終わって、その網をかぶせているほかのところが、いまだんだん乱開発をされておる。さらにそれだけじゃなしに、いま経済的には非常に長い不況が続いておるために、開発事業というものは一定ペースダウンをしております。それでもなおかつ、外縁に向かってだんだん広がっております。たとえば生駒山系の中にも、大阪府から京都府、奈良県あるいは滋賀県にまで、だんだんそういったことが及んでおるのが事実だと思うのです。  そうすると、一定の地域で規制がきつくなれば、今度また外の方向へ広がっていく。そこについては何らの規制の働くようなものがない。しかも各府県で条例が設けられているけれども、いろいろな理由で原生保全地域だとか自然環境保全地域だとかいったいろいろな規制枠の指定すら、なかなか行われないという現状が続いております。ということになると、環境アセスメント法をつくっていらっしゃる間にも刻々と荒廃が進んでいっておる。ただ単に荒廃が進むだけではないと思うのです。現に昭和四十二年、四十七年、それから四十九年、五十年と、四回にわたって例の寝屋川あたりの大水害、そして大東市では訴訟まで起こるというような事態が起こりました。もちろんこれはほかにも原因はありますけれども、やはり自然の環境が破壊されて、いわゆる鉄砲水というものが狭い川にはんらんしてくるというようなことが主たる原因だとも言われております。  そういう状態が刻々と続いておるのに、一方では五年間調査をしないと的確なことがつかめない、一方では各省庁にわたるために歯どめがきかない。これでは自然の荒廃というものは、なすがままに放置しなければならぬというふうな状態が続いております。だからといって、それじゃその責任をどこに求めようかと言っても、なかなかそれぞれの主管をなさる省庁は、はっきり言って、それを引き受けて歯どめをかけるためのいろいろな対策を講じようとなさらない。ということになれば、結局自然環境に適正な保全をするための責任をお持ちになるのは環境庁以外にはないわけですから、法律があろうとなかろうと、それに対して、もっと積極的な対策を講じなければならない面がたくさんあると思うのです。ですから、それは大阪府の範囲内だ、兵庫県の範囲内だということでなしに、環境庁として何らかの前向きの施策というものを考えていただく必要があると思うのですが、それに対しての長官のお答えをいただきたいと思います。
  106. 石原慎太郎

    石原国務大臣 おっしゃるとおりだと思いますが、私も初体験でございますけれども、役所というものは非常に不思議な世界でございまして、正しい大義名分のために仕事をしようと思うと、あちこちから、それは潜越であるというブレーキがいろいろかかりまして、環境庁のように、この五年間日本社会の意識変革に非常に大きな、ある意味で前衛的な仕事をしてきた役所が、これこそ十年、二十年後の国民のために必要な措置であるということをしましても、待った、待ったがかかりまして、なかなか物事はうまくまいりませんが、そういう障害をできるだけ蛮勇を持って越えていくつもりでございます。
  107. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 長官が初めて経験なさって、行政縦割りの弊害については痛切に感じられたわけですが、しかし、これは感じられただけでそのままじゃ困るわけなんです。具体的に一番直接荒廃を促進しているのは、どちらかと言えば、先ほど局長からの御答弁もあった土砂や砕石をとる採石業関係ということになると思うのです。これは特に関係が深いわけですが、通産省とお話しになったことはございますか。
  108. 石原慎太郎

    石原国務大臣 採石の問題でございますか。
  109. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 先ほど局長もおっしゃったように、一番荒廃の原因をつくっているのは、土砂を採取するとかあるいは採石、そういった事業が、大都市周辺の環境破壊に一番大きく寄与していると局長はおっしゃっているわけです。ですから、そういうことがわかっておれば、何らかの形で、国自身の機構の中でお互いに調整をするために、建設省あるいはまた特に関係の深い通産省あたりとお話しになったことがあるのかどうか。
  110. 石原慎太郎

    石原国務大臣 私自身はそういう機会を持ち合わせておりませんけれども局長がしておると思いますので、局長の方から答弁いたします。
  111. 信澤清

    信澤政府委員 採石の問題一般について御協議をしたということはございません。先ほど来お話に出ております生駒山系の採石が大変深刻な厳しい状況にあるということで、これにつきましては、先ほど申し上げたような諸官庁にお集まり願いまして、当面あそこに対する対策をどうするかということを御相談し、いずれにいたしましても、ほとんどの権限が知事にいっているわけでございますので、この場合は、大阪府に対して各省それぞれの立場からの指示もいたしました。また、それにこたえて府自身が対策のための指導会議というようなものもつくっていただいて、そこでやっていただいているはずでございます。  ただし、個別の問題を論議する以上、一般的に採石法とその他の採石にかかわる規制法をどう絡み合わせるべきかというようなことは当然論議をいたしたわけでございますが、余りに法律が多過ぎて、またそれぞれが、それぞれの目的を持っておるわけでございますので、それを一元的に処理をするというようなことは、なかなかむずかしい、さらに今後検討をしようというのが、一般論としての採石問題に関するその時点における結論であったわけでございます。
  112. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 都合の悪いことは、その地域の知事さんの権限だとおっしゃるのですが、じゃ生駒山系なんかは裏側と表側は府県が違うわけですよ。先ほども申し上げましたように、大阪府の知事権限に属さない京都府の知事の権限だからとか、あるいは奈良県の権限に属するような問題にまで、いまは広がっていっているのです。  先ほど申し上げましたように、むしろ大阪側はすでにもう開発を終わってしまって、そして終わったところを、どうしてそれを守るかという段階に来ておるわけです。あるいはまた、宝塚市に実際に行かれましたでしょうか。宝塚の駅から見ますと、六甲山系はまる裸になってしまって、完全に坊主になっております。しかもまだ採石がどんどん進んでいっております。協議、協議とやっていらっしゃる間も、毎日、毎日何百台というダンプが出入りしているわけです。  もちろんこれだって、いま言われたように一方的にとめられないでしょう。生駒山系や宝塚の奥の採石事業というのは、国道をつくったり、いろいろな面で、確かに役所自体がどこそこ山系のどういう砂というふうな指定をしておることもあるわけですから、そういうことになると、国の省庁の間で十分意思統一ができないまま、そしてどの法律でもきちっとした取り締まりができない、歯どめもできないまま荒廃、自然破壊が進んでおるという状態を見殺しにしなければならないと思うのです。  だから、協議をしておるけれども、なかなかむずかしいということではなしに、やはり一刻も早く重要な個所だけでも、とめられるような方法を考えなければならぬわけですが、もっと積極的に通産省なり建設省なりとお話をなさる、あるいは局長クラスではなしに大臣相互間の——これはいま私の目に見える範囲内ですから、近畿地方の例を申し上げておりますけれども、恐らく大都市周辺では、そういうような問題はたくさんあると思うのです。しかも大都市周辺では土地が求めにくくなったために、だんだんそれが地方に拡散していっておる現状だと思うのです。ですから、いま申し上げましたように、各省庁のもっと具体的な連絡調整をおやりになる意思があるかどうか、長官から答えていただきたい。
  113. 石原慎太郎

    石原国務大臣 そのように積極的に努めます。
  114. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま長官の方は積極的に努めたいということですが、事務当局の方も、いつごろからそういうことを始めていただけますか。
  115. 信澤清

    信澤政府委員 きょう早速呼びかけてみることにいたします。
  116. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 積極的に取り組んでいただくのは結構なんですが、いまも言いましたように、自然環境保全法自体が、もうすでに乱開発をしてある程荒廃を招いたときに出発をしておるわけです。そういう意味では、これから積極的な自然の創造、東海道の松並木一つにしても三百年、四百年前にわれわれの先祖が植えてつくったものなんです。放置しておいたのでは、これはどうにもならないと思うのです。  そういう意味では、いまのままでは自然は荒廃するばかりだと思いますから、国自体としても、これからは積極的に自然をつくり出すのだという意欲が必要だと思います。それに基づいて植樹計画とか植林計画とか、あるいはまた、いままで自然公園として指定しておらなかったところを自然保護の立場から、もっと広げていく、そういう長期にわたる計画について何か構想をお持ちかどうか、お伺いしたいと思います。
  117. 石原慎太郎

    石原国務大臣 環境庁の行政も、そういう問題に取り組む時期に来ておると思います。いま私、具体的に計画をつまびらかにいたしませんけれども、ドイツのシュワルツワルトのように千年不伐の森を、恐らくあれは三分の一近いものを植林してつくった例もございますし、木を切るための植林ではなしに、自然をもう一回つくり直す努力を十年、二十年のサイクルで考えて行うべきだと思います。
  118. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 局長の方でも、事務的にそういう作業を進められた例が今日まであるのですか。
  119. 信澤清

    信澤政府委員 いずれにしても環境保全の問題、自然環境であれ公害対策であれ、計画を持って長期的視野のもとに進める必要があることは当然でございます。そういう意味で、いま御指摘ございましたように、従来もやってきたわけでございますが、やはり将来を見通しての計画的な行政の進め方ということは必要と考えるわけでございます。  その点で、私ども現在いわゆる長期計画というものをつくる作業を進めておるわけでございますが、自然環境につきましては、すでに私ども関係審議会から、そういう長期計画をつくります場合の基本的かつ具体的な構想というものを御審議の結果、答申していただいております。これを下敷きにいたしまして、いま先生からお話のございましたような問題もどれだけ組み込めるか、これも関係省庁との御相談の問題があろうかと思いますが、そういうものを早急に長期計画として策定し、その計画に従って環境保全行政というものを進めていきたい、このように考えているわけでございます。
  120. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 審議会答申はあるけれども、長期計画について、まだ具体的な作業には取り組んでいらっしゃらないわけですか。
  121. 信澤清

    信澤政府委員 審議会の御答申は、構想と申しましても、基本的な具体的な構想ということでございまして、ある意味では、そのまま長期計画たり得るような、そういうかなりな細かい内容になっているわけでございます。したがって、これをどういう形でもって計画にするかということについては、環境庁自然環境保全だけではございませんで、生活環境の問題等ございます。そちらの方はそちらの方の審議会の御意見もいただくような段取りが進んでいるわけでございますので、両者合わさったところで一本の計画としてまとめる、こういうことでございまして、計画ができないから、ほっておくというわけではございませんで、私どもの仕事そのものは、その構想に従って逐次やっていくというつもりでおります。
  122. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 逐次やっていくのは当然のことなんですが、それじゃ具体的に各府県あたりで植樹計画などをお持ちになった場合に対して、保護助成とかそういった方策というものは考えていらっしゃいますか。
  123. 信澤清

    信澤政府委員 先生、先ほど御指摘になりましたように、当面急ぐべきは都市及び都市周辺の地域だと思います。したがって、こういうような地域は主として都市計画法なり、あるいは都市公園法なりによって所要の事業ができる、こういう地域であるわけでございます。この点については、建設省の方で先般「緑のマスタープラン」というものを御発表になっておりますが、実は私ども審議会で、都市及び周辺地域における緑化、保全ないしは復元という問題については、そちらの審議会と十分連絡をとりまして、ほぼ同じ内容のものを私どもの基本計画として答申いただいておるわけでございます。  したがって、向かうべき目標については、私どもと実際に作業を担当する建設省の間には認識の違いはないはずでございますので、この点は、今後何カ年かの計画に従って都市公園の整備あるいは国営公園の整備、こういうものをやっていくということになるわけでございます。
  124. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 環境というのは、何か物事を実施する場合に、結局公園関係だとか林業関係だとかいうところに委嘱するという程度にとどまっておると思うのです。それでは、やはり積極的な環境行政というものは進まないと思うのです。そういう意味では、自主的に市町村なり府県なりが植樹計画をやる、それに対する助成を、必ずしも物質的な面だけでなしに、いろいろな形でするということも必要だろうと思いますし、同時にまた、日々のそういう作業を進める傍らでは、長期計画を早くお進めいただいて、そして一日も早く荒廃したところを回復するような御努力をお願い申し上げたいと思います。  これで終わりたいと思います。
  125. 芳賀貢

    芳賀委員長 午後三時再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————    午後三時一分開議
  126. 芳賀貢

    芳賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。林孝矩君。
  127. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私は、公害健康被害者に関する質問を行いたいと思います。  ここに報道されている事実でございますが、いま二つの例を申し上げます。  一つは「転地療養費補助 宙に浮く十億円 公害病救済厳しすぎる条件 環境庁」「これでは使えぬ…自治体」という見出して報道がなされております。その内容は「本格的な光化学スモッグシーズンを迎えて、今年も被害者の激増が心配されているが、大気汚染による公害病患者の転地療養などのために、一昨年から計上されている「公害保健福祉事業費」のほとんどが、今年も宙に浮いたまま使われずじまいになりそう」だ、こういう問題点指摘して、この一つ環境庁の善政がうまく運営されていないということで、環境庁のつける補助金交付条件が実態にそぐわない、厳し過ぎる、実際に患者の世話をする自治体からもそのような声が出ている。十億円近い財政が宙に浮いているということで、全国の三十七の指定地域、いま三万七千人に及ぶ公害患者の一つの重大な問題として報道されているわけでございます。  もう一つは、公害補償をもらったら生活保護がカットされる、こういう報道でございます。「公害健康被害補償法が四十九年九月に施行されてまる二年。公害被害者救済の“エース”として期待は大きかったが、実は同補償法が施行されてからは、公害被害者家庭で働き手を失って生活保護の適用を受けると、保護費を“カット”され、悲惨な状態に陥ることがわかった。」これは厚生省が障害補償費のほとんどを収入とみなしているために、生活保護法の併給禁止の条項によって保護費がカットされるということが原因なんです。そのことが原因で、全国の公害被害者の中から認定を申請しない人も生まれてきている、こういう事実の報道でございます。  昭和四十九年度決算の中で、公害健康被害者に特に関連のある公害健康被害補償協会の補助金が五億八千百三十万八千円、その中で九千六百八十万四千円、約一億円に近い不用額が出ているわけです。五億円の中で一億円に近い不用額、これは非常に重大な問題でございます。この理由について長官にお答え願いたいと思います。
  128. 石原慎太郎

    石原国務大臣 私の答弁で足りない詳しい部分については政府委員からお聞き取り願いたいと思いますけれども、やはり制度の発足後非常に日が浅く、各府県における実施体制がまだ整備足らずであったこと等から、残念ながら十分な実績を上げることができませんでしたことは認めざるを得ない事実だと思います。こういう経験を踏まえまして、事業の適正かつ円滑な促進を図るために、たとえば胸部疾患の専門医でありますとか、そういう関係専門家、実務担当者が構成いたします検討会を設けまして、この問題についてこういう事態が起こらないように努力するつもりでございます。
  129. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それではちなみにお伺いしますが、これは四十九年の不用額ですが、五十年の不用額はどのようになっておりますか。
  130. 野津聖

    ○野津政府委員 五十年におきます不用額は約一億九千七百万でございます。
  131. 林孝矩

    ○林(孝)委員 その五十年の予算は幾らになっていますか。
  132. 野津聖

    ○野津政府委員 予算額といたしましては、約六億一千四百万でございます。
  133. 林孝矩

    ○林(孝)委員 長官、いまお聞きのとおりです。私は四十九年度についてこの問題を指摘しましたけれども、五十年においても六億の予算のうち一億九千七百万のこれまた不用額が出ているわけです。いま長官が御答弁になった、まだ日が浅い、整備されていないというような理由は、このように毎年こうした形で不用額が出てくるということになってきますと、ただ単にそれだけでは問題は解決しないのではないか、私はそう考えるのですが、いかがでしょうか。
  134. 石原慎太郎

    石原国務大臣 残念ながら、そのように認めざるを得ないと思います。そのために、恐らく後で先生から御質問いただくと思いますけれども、この事業の中に幾つか事項がございますが、そのある部分のもう少し弾力的な積極的な活用というものを図らざるを得ないと思っております。
  135. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこでこの四十九年、五十年の二年間、私はさらに五十一年とこう事例を挙げていきたいわけですが、まずこの二年間だけをとってみても、こういう実態であるということが明白になったわけです。それで公害保健福祉事業というのは、これは言うまでもなく公害健康被害者補償法によって二分の一を汚染原因者が負担し、残り二分の一を公害保健福祉事業を実施する都道府県と国が負担するようになっているわけです。  ここでお伺いしておきたいのですが、福祉事業の内容にはどういうものがあるか、これをお伺いしたい。
  136. 野津聖

    ○野津政府委員 公害保健福祉事業の内容といたしましては、これは公害健康被害補償法の第四十六条に決められておりますことでございますが、内容といたしましては、リハビリテーションの事業、それから転地療養の事業、それから家庭におきます療養用具の支給事業、それから家庭におきます療養の指導事業、この四つを現在実施しているところでございます。
  137. 林孝矩

    ○林(孝)委員 リハビリテーションに関する事業、転地療養に関する事業、家庭における療養に必要な用具支給事業、家庭における療養の指導に関する事業、この四点ですか。
  138. 野津聖

    ○野津政府委員 この四点でございます。
  139. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、「被認定者の福祉を増進し、又は指定疾病による被害を予防するために必要な事業環境庁長官が定めるもの」これは含まれないのですか。
  140. 野津聖

    ○野津政府委員 現在実施しておりますことにつきまして四点申し上げたわけでございますが、ただいま御指摘ございましたように、政令の第二十五条におきましては、ただいまの四点と、前各号のほか、環境庁長官の定めるものということになっておるわけでございますが、現在はただいま御説明申し上げた四点について実施をいたしておるところでございます。
  141. 林孝矩

    ○林(孝)委員 話し方がおかしいわけですよ。政令で定めるのに五点あって、実施しているのが四点だというのが正しい説明の仕方だと思うのです。私は実施していることについて、しぼって聞いているのじゃないのです。これは後に関連する問題ですから……。  そこで、公害保健福祉事業費に八千万円の不用額が出ております。これは地方自治体では、指定地域内の住民のために非常に必要な財源だと私は思うわけですが、この公害保健福祉事業費の八千万の不用額というのは何が不用の原因になっておりますか。いま御説明のあった、この福祉事業費の内容の中で原因があると思うのですけれども
  142. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいま申し上げました現在実施いたしております四つの項目の中につきまして、いろいろな問題点が、それぞれあるわけでございます。  特に昭和四十九年度におきましての問題でございますが、第一番のリハビリテーション事業でございますけれども、四十九年度におきましては、いわゆる補償法によります第二種地域におきますリハビリテーション事業予算化されていたわけでございます。ただ、この第二種地域につきましては、もう御案内のとおり水俣病、それからイタイイタイ病、さらに砒素中毒というのが、その対象に現在なっているところでございまして、これらの事業につきましても、いわゆる福祉事業という形で県、市が実施することになっているわけでございますけれども、実態上は患者と企業との間の協定がございまして、その補償協定の中で、この事業が実施されているということ、それからもう一つは、いわゆる適切な施設において理学療法等を行うという形になっておるものでございまして、実態といたしましては医療機関あるいは社会福祉施設の中で行われているということになりまして、社会福祉制度の中での実施という形になっておるために、この事業につきましては、いわゆる第二種地域の事業につきましては、こちらの方からの支出がなかったという問題があるわけでございます。  それから転地療養事業でございますが、転地療養事業におきましては、先ほど長官からも御説明申し上げましたとおりでございますけれども、ただ、実際の問題といたしましては、医師とか看護婦を雇い上げるということは非常にむずかしい問題がございましたし、また、転地療養の際に、季節も考えなければいけないということになってまいりますと、適当な季節に適当な施設が確保しがたいというふうな問題もございました。またさらには、被認定者へこの事業の趣旨が徹底していないという点も見られたわけでございます。さらには、これらのいわゆる病気の方々を別の場所に御案内するという制度であるために、県、市の職員に対します負担が非常に大きいというふうな点もあったわけでございます。  また、この療養用具の支給事業でございますけれども、特にこの面につきましては、在宅しておられる特級、一級の患者さんが対象になるということでございますけれども、特に特級、一級の方々は、どちらかと言いますと、入院して治療を受けておられるというふうな形もあるわけでございまして、この数が私どもの予測しておりますよりも少なかったという点があるわけでございます。  それから、家庭療養指導事業でございますけれども、これは制度といたしまして、地域におきます保健婦の方々を雇い上げて訪問指導をしていただくという形になっているわけでございますけれども、実際の問題といたしましては、公害部局ではございませんで、衛生部局におられます保健婦さんにこの仕事をお願いするというふうなこともございまして、現在衛生部局あるいは保健所におられる保健婦さんの、何と申しますか、いわゆる当然やるべき家庭におきます療養指導の中にも取り込まれる仕事という点があるわけでございまして、その中での実施という形で行われておりますために、結局は数としては少ないというふうな結果が出てきたのが、ただいまの四つの事業につきましての、それぞれの問題点であったわけでございます。
  143. 林孝矩

    ○林(孝)委員 たとえば、いま御説明のあったリハビリテーションに関する事業、さまざまな原因をいま御指摘があって、それで四十九年で不用額がこんなに多かった。そうしますと、そうした実績が五十年においてはどうなっておるかというふうに当然考えなければならないわけです。たとえば五十年度の場合に、予算で四千五百十三万円、実績ゼロですね。四十九年度も五十年度もこれまたそのような実態なんです。ですから、リハビリテーションだけではなしに、先ほどの福祉事業の中で、たとえば自治体で事業計画を進め得なかった問題で一つの事柄となっております転地療養事業、四十九年度において総額一億九千三百三十二万六千円のうち九百十八万九千円、これが実績だ。パーセンテージに直すと、四・七五%の実績しか達成されておらない。五十年度はどうか。五十年度は四億三千四百三十二万六千円、これが総額で、実績は三千八百二十一万二千円。パーセンテージに直すと八・七九%、総額予算の中の四・七五%だとか八・七九%、そういう実績という実態、いろいろな四十九年度の理由を挙げられたわけですけれども、五十年度もこうだ。この問題に関して一つの明らかな、どうしても解消、改善されなければならない問題として私は指摘したいのですが、この転地療養の事業の場合に一つの基準が設けられております。その基準について環境庁の方から説明してもらいたいのですが。
  144. 野津聖

    ○野津政府委員 現在の状況といたしましては、転地療養事業につきまして、大人の場合と子供の場合とあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、一つの基準といたしましては期間が六泊七日、また一つのグループが五十人というふうな条件で基準をつくっていたところでございます。
  145. 林孝矩

    ○林(孝)委員 五十人グループで六泊七日の基準だ、さらに随行として医師、看護婦、生活指導員、事務員この五人が随行するわけでしょう。そうじゃないですか。
  146. 野津聖

    ○野津政府委員 御指摘ございましたように、医師、看護婦そして事務員等あるいは児童指導員等が随行するという形になっているわけでございます。
  147. 林孝矩

    ○林(孝)委員 五十人一グループで六泊七日というこの条件。随行は必要だと思いますね。この五十人一グループ、六泊七日という条件でいきますと、これだけの人が公害患者で集まって、一つのグループをつくらなかったならば転地療養に行けない。そうすると、集まらなかったら、転地療養できないわけでありますから、せっかく予算がついておっても、当然そこに不用額が生まれてくる。事実、たとえば川崎市であるとか全国の公害指定地域の中で、これだけの人数が集まらないから行けないという問題が起こっておるわけです。  これが、たとえば三泊四日であるとか、あるいは二泊三日であるとか、とにかく一番多いのは、大気汚染で考えますと、ぜんそくです。こういう人たちが、小学生、中学生にしても、あるいはもう壮年、婦人にしても、そういう人たちがたとえ二泊三日でも、三泊四日でも空気のいいところへ行って、そして静養して医師にもちゃんと診てもらえる、また人員も五十名そろえなくてもいい、三十名でもいい、こういうふうになれば、環境庁予算で転地療養というせっかくのものが、そうした公害患者にとって、もっと有効に働くのではないか。  したがって、この六泊七日で五十人グループでなければというような条件は、この際、改善されたらどうかと私は提案するわけですが、これは環境庁長官答弁をお願いしたいと思います。
  148. 石原慎太郎

    石原国務大臣 おっしゃるとおり再検討する余地が十分あると考えます。
  149. 林孝矩

    ○林(孝)委員 環境庁長官が改善する余地があると言われたわけでございまして、これは公害認定患者、全国三万八千人、四万人になろうという患者の人たちにとっては大きな効果を、また喜びとなってあらわれることだと私は期待しております。  それから、いま転地療養費のことで申し上げましたけれども、先ほど御説明のあった家庭における療養指導、これにつきましても、四十九年度予算総額が三千八百八十四万二千円、それに対して実績が六百六十二万円、一七%。五十年度において予算総額が一億一千八百九万九千円、それに対して実績が千九百六十三万一千円、これも一七%。このように家庭の療養指導も、また転地療養と同じく、実績を見ますと、非常に程度が低いわけですね。これから不用額が出てきておる。これにつきましては、どのようにお考えになりますか。
  150. 野津聖

    ○野津政府委員 家庭におられる患者さんに、その療養指導をすることは非常に大事なことであるわけでございますが、いま御指摘ございましたような結果になっているわけでございますけれども一つは、この制度そのものが、地域におられる保健婦さんを雇い上げて訪問指導をしていただくというふうな形の制度になっているわけでございまして、実態論としましては、その地域に潜在しておられるといいますか、そういうふうな保健婦さんがなかなか得がたいという点が一つあるわけでございます。  もう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたように、保健所には、いわゆる一般の保健指導を行います保健婦がいるわけでございますけれども、この一般の保健婦さん方は、通常の業務等もあるわけで、こちらにも割きづらいというふうな面もあるようでございますけれども、実態の問題といたしましては、これらの保健婦さんも応援をしていただいて、訪問指導をしているということでございます。  したがいまして、この決算額に出てまいりますような形では、地域におられる保健婦さんを雇い上げて訪問指導するという形のものと、それからこの中に出てこない、いわゆる保健所の保健婦さんの普通の仕事という形での訪問指導の分があるわけでございまして、その分はこの補助金とは関係ない形で、保健婦さんの通常の仕事という形で実施されている分もあるということもございます。したがいまして、こういうふうな結果になっているというふうに私ども考えておるところでございます。
  151. 林孝矩

    ○林(孝)委員 どうすれば、もっと有効に家庭における療養指導ができるとお考えでしょうか。
  152. 野津聖

    ○野津政府委員 やはり、現在の制度そのものが、いわゆる雇い上げという形で、地域におられるかおられないかわからない保健婦さんを当てにした仕事になっているというところが一つ問題点じゃないかと思っております。したがいまして、私ども逆にむしろ実際に各県市に勤めておられる、衛生部局におられる保健婦さんに、十分こちらの知識を持っていただいて、その仕事として訪問指導を、ほかの、たとえば結核なり、あるいは母子なりで訪問しておられるわけですけれども、こういう公害にかかわります疾病にかかった方も訪問していただくというふうな形で、こちらの方の体系の患者さん方に対しますいろんな指導の中身というものを徹底していただくことも一つ方法ではないかというふうに考えております。
  153. 林孝矩

    ○林(孝)委員 長官、いまお聞きのように、保健婦がいるかいないかわからない、そういう漠然としたものに予算をつけてやるものですから、不用額が当然の結果として起こってきているわけですね。このことに対する一つ解決策としての提案を、意見をいま述べられたわけですけれども、この点についても、長官として、今後こういう方向でやりたいということを明確にしておいていただきたいと思うのです。
  154. 石原慎太郎

    石原国務大臣 いま部長が申しました線で改善の努力をしたいと思っております。ただ、保健婦さんそのものですが、絶対数が、そういう形で物を進めようとするとき、足りるか足りないかというのは、また別個の問題でございますけれども、それでもなお、そういう方法に切りかえて仕事が進むような地域に関しましては、もうできるだけそういう形で業務の進むように、検討し直します。
  155. 林孝矩

    ○林(孝)委員 地方自治体から、あるいは患者から、事業目的に沿わない要望がある場合もあると私は考えます。  昭和四十九年度の補助金についてでございますが、九千六百八十万円の不用額が出た。五十年度で、先ほど説明がありましたように、一億九千七百万円の不用額が発生した、先ほど議論をしたとおりでございます。五十一年度予算は、五十年度に比べて六千五百三十万、今度はふえているのです。不用額がふえて、予算がまたふえているわけですね。六億七千九百五十万二千円、このようになっているわけです。四十九年度不用額が出て、それで解決されないまま五十年でまた不用額が出た、しかし予算の方は、いま申し上げましたように六千五百三十万、五十一年度では増加している。これで五十一年度不用額がまた発生するということになった場合、これまた問題になります。  公害の健康被害患者は実際現実問題として、個々に会ってみてもおわかりのとおり、非常に苦しんでいるわけですね。こういう環境庁の画期的な事業に、そうした苦しんでいる人が一人でも多く、また一回だけではなく、何回もそういう事業計画に乗っかっていくということで、初めてこうした行政が生かされた状態になるわけで、そのような目標に向かって進まなければならない、私はそう思います。そのためにも、やはりこうした不用額が発生しないように効率的に予算の執行というものをしていただきたい、これは要望でもございます。  それで先ほど五十一年度の話をしましたけれども、五十二年度においても一千六十九万円、五十一年度に比較して予算が減っております。いま審議されている予算ですが。四十九年、五十年、五十一年と予算がふえていって不用額がふえてきた。今度は五十二年度においては予算額を減らされましたね。予算額を減らしたわけですから、いまの私の議論は今度は逆になるわけです。予算のふえていくのはかまわないわけで、それが有効に効率的に使われれば目的は達成される。不用額が大体出過ぎているという議論なんですが、今度は五十二年度予算が減額されたということになると、また新しい問題がそこに起こってきます。結局、最初に長官答弁されたような、いろいろな制度上の整備の問題であるとか、現場で一つ一つ積み重ねていかなければならない、いまの保健婦の問題にしてもそうですけれども、これがまだ努力されない間に今度は予算の方が減らされてくる、一体この理由はどういうことにあるのでしょうか。
  156. 石原慎太郎

    石原国務大臣 詳しいことは政府委員が御説明いたしますが、これはやはり作意が不足であったということの、てきめんのたたりではないかと思います。
  157. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいま御指摘いただきましたところでございますが、御審議いただいております五十二年度予算額につきまして、公害健康被害補償協会の補助金におきましての千六十九万九千円の減少になっていることを御指摘だろうと思うわけでございますが、この減少になりました金額につきましては、協会の事務所の敷金がなくなってきたということが一つあるわけでございまして、この敷金の減によりまして一千六十万六千円の減がございます。また、等級別の職員給与の見直しを実施いたしまして、これにつきまして約一千百万の減額という形に補償協会の補助金に対してなっている点が、ただいま御指摘いただきました減額になっている点であろうというふうに考えているところでございます。
  158. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと環境庁の姿勢としては、いま御説明がありましたように、予算額を減額したということは、環境行政に消極的になった、あるいは不用額が余り出過きるので努力をするということよりも、予算を減額した方が予算に対する不用額のパーセンテージがダウンするというようなことでもないので、純粋な意味で、姿勢は決して変わっていない、さらに積極的に取り組んでいくということには変わりないと理解してよろしいでしょうか。
  159. 石原慎太郎

    石原国務大臣 私の予算に関する認識がちょっと違っていた点がございまして、政府委員説明のとおりでございます。  そういう意味環境庁として、この問題に対する姿勢を変えるつもりは毛頭ございません。御指摘の点を再検討させていただきまして、積極的に効果の上がるような方法検討していきたいと思います。
  160. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、公害健康被害補償給付支給事務費交付金不用額についてお尋ねしますが、四十九年度の二億七千百七十四万九千円のうち一億二千五百六万三千円が不用になっております。まず、この理由について御説明を願いたいと思います。
  161. 野津聖

    ○野津政府委員 この不用額になりました理由といたしましては、私どもこの制度が円滑に働くようにということで、いろいろと手元にあります資料を十分使いながら見込みを立ててきたわけでございますけれども、一応その時点で認定されます患者さん方が約三万人というふうな見込みを立てたわけでございますが、実態としましては、約一万七千人の患者さんが認定されたというふうな結果になりましたための不用額ということでございます。
  162. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまの御答弁は、認定患者数が少なかったということですね。
  163. 野津聖

    ○野津政府委員 そのとおりでございます。
  164. 林孝矩

    ○林(孝)委員 指定地域については、どうなんでしょうか。
  165. 野津聖

    ○野津政府委員 指定地域につきましては、一応調査を行って指定をするという形で、私どもの見込みとは余り変わってないと思うのです。
  166. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この予算と実数の差は、一億二千五百万円の不用額ですから、ほぼ半分ですね。パーセンテージで何%になるか、そちらで計算されておりますでしょうか。
  167. 野津聖

    ○野津政府委員 ちょっとパーセンテージの計算をいたしておりませんけれども、ほぼ四十数%ということになるのではないかと思います。
  168. 林孝矩

    ○林(孝)委員 四十九年度で四六%になっております。これが不用額ですね。五十年度には四億二千八百九十一万四千円の不用額がまた出ているのです。この五十年度不用額のパーセンテージは予算額に対して四九%、四十九年より五十年の方がこれもまたふえております。先ほど認定患者数が少なかったからとおっしゃいましたが、これだけの不用額が出ておる理由としては、それだけでは私は納得できないのですがね。もっと考えなければならない問題があるのではないかと思うのです。  というのは、先ほども別の項目で指摘いたしましたけれども、四十九年度不用額はパーセンテージで四六%、五十年度で四九%だ。不用額がふえていっているわけです。ところが、五十一年度予算を見ますと、十億一千六百四十六万四千円、対前年度比一億四千九百一万九千円の増なんです。ということは、予算を策定するに当たって、四十九年度、五十年度決算でこれだけの不用額が出て、五十数%しか効率的に予算が使われていない、それでも五十一年度予算をふやしたわけですから、そこに、こういう形にすれば、これだけの予算を必要とするというものがあって、それで五十一年度にこれだけの予算をふやされたのではないかと思うのです。  先ほどの不用額の出た原因は認定患者数が少なかった、そうすると、五十一年度予算をふやされたということは、今度は不用額を十分効率的に便って、さらにこれだけの予算を増額するわけですから、それだけ認定患者がふえるとか、あるいは認定されるという見通し、そういう計算がなされて五十一年度において対前年度比一億四千九百万円余という増額をなされたのか。五十二年度は十一億二千百四十九万円、これも対前年度比一億五百三万円の増です。ですから、四十九年度四六%、五十年度四九%の不用額が出て、五十一年度、五十二年度でさらに予算が増額されておるということは、先ほどその不用額の原因として認定患者数が少なかったという一点を挙げられましたが、その一点が五十一年、五十二年の予算を増額したこととどういう関連にあるのか、この点について納得のいく説明を願いたいと思うのです。
  169. 石原慎太郎

    石原国務大臣 詳細な問題でございますので、政府委員から答弁させていただきます。
  170. 野津聖

    ○野津政府委員 御案内のとおり、この制度が四十九年の九月から発足したわけでございまして、それまでいわゆる救済法と称しておりました特別措置法によりましての地域が十二地域あったわけでございます。その地域の実態を踏まえながら、私ども予測を立ててきたわけでございますけれども、いろいろな変動要因があるわけでございます。指定された直後には、患者さんが非常に数多く認定申請されますけれども、あと逐次増加率が減ってくるというようなこともございます。また地域の指定も、それぞれの年度で行われてきたわけでございまして、その場合に、その地域におきましてのいわゆる患者さんの伸びというものがその地域、地域によりまして非常な特殊性を持った動き方をしているわけでございます。  したがいまして、私どもはある限りの資料を用いながら推計をして、翌年度の患者の数というものを想定していくわけでございますけれども、その年度の途中で地域指定が行われるということを前提としながらも、やはりその地域の特殊性がございまして、この制度が始まってまだ二年半でございますものですから、非常に推計のしにくいという結果が出てきたわけでございます。逐次これが固定化いたしました場合には相当間違いのない推計ができるかと思いますけれども、やはり地域が指定されます、そうしますと、それに対して申請される患者さんが出てくるわけでございますので、その形が地域によって非常にばらつきがございます。その辺をどのように私ども解釈していいのかという面もあるわけでございます。できるだけ私ども近い数字を用いながら推計するわけでございますが、この制度の仕組みの関係上、不足してはいけないという面も考えているわけでございます。したがいまして、毎年の患者の推定します数というのが、実態とずれてくるというような現実に、ただいま直面しているのが実態でございます。  したがいまして、制度が落ちつきましたときには、できるだけより間違いのない形でしてまいりたいというふうに考えております。
  171. 林孝矩

    ○林(孝)委員 昭和四十九年九月、健康被害救済特別措置法、この旧法から公害健康被害補償法、新法に変わりました。公害防止事業団から補償協会が引き継いだわけですね。  そこで認定地域についてお伺いしたいのですが、その当時十二地域だった、現在は認定地域はどのようになっておりますか。
  172. 野津聖

    ○野津政府委員 現在は三十九地域がこの大気汚染にかかわります第一種の指定地域としてあるわけでございます。
  173. 林孝矩

    ○林(孝)委員 指定地域で、一たん指定されていて、その後調査を行って地域が拡大されたところがあります。今後も拡大していくと思われるのですが、申請数、これはどのくらいありますか。
  174. 野津聖

    ○野津政府委員 これは地方自治体の方から、この地域の拡大というふうな御要望があるわけでございますけれども、形といたしまして、申請という制度をとっておらないわけでございますので、現在申請数という形でのものはつかまえておらないわけでございます。ただ、五十一年度におきまして地域の調査を実施いたしましたのが、新規に二地域と、それから拡大で一地域あるわけでございます。この調査の結果を見まして、地域の指定なり、あるいは地域の拡大が行われるというふうな方法をとっているわけでございます。
  175. 林孝矩

    ○林(孝)委員 一つお伺いしますけれども、この認定はどういう手続、順序を経て行われるのか、御説明願いたいと思います。
  176. 野津聖

    ○野津政府委員 地域におきます大気汚染の程度と、それからその地域におきます有症率の調査、さらには有病率等の調査をいたしまして、それが指定要件に合っておりますと、この地域を指定するという形になっているわけでございます。ただ、地域の指定の要望という形で各地方自治体から地域の指定をしてもらいたい、あるいは、むしろ調査をしてもらいたいということが一番最初に先行するわけでございまして、その調査をしてもらいたいという要望につきまして、従来まであるいろんな資料をベースといたしまして、どこを調査するかということが決まるわけでございまして、その調査の中身としましては、大気汚染の程度と、それから健康の状態調査をするわけでございます。
  177. 林孝矩

    ○林(孝)委員 自治体から調査の依頼があって、その調査をして、それが認定要件に合っているかどうか、それによって、その地域が指定される、こういうことでしょうね。
  178. 野津聖

    ○野津政府委員 さようでございます。
  179. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、認定要件というのは常識的なことでございますけれども大気汚染の場合に、大気は固定しているものではございませんから、移動いたします。汚染されている地域も移動すれば、また今日まで、たとえば東京都で都民の皆さん方が経験されたように、光化学スモッグ一つを例にとって考えても、どの地域に起こるかという予測ができないわけですね。起こった地域が結果的に汚染されておるという判断があるわけです。  そういうふうに考えていきますと、この地域の認定というものは、やはり調査をするといっても、ことしの初めの調査と夏の調査では違う、私は常識的な感覚で物を言っているわけですけれども、このように思うのですが、環境庁がその調査をされて認定されるという過程で、そのようなことは議論になりませんでしょうか。
  180. 野津聖

    ○野津政府委員 大気汚染調査につきましては、約十年間さかのぼりまして、各月のあるデータを全部まとめて調査をするわけでございます。  それからまた、健康調査関係につきましては、現在の症状じゃございませんで、過去の症状も含めた形で調査をするわけでございまして、一つの断面的な調査という形じゃない形で調査をいたしまして、それが指定要件に合っているかどうかを見て指定をするということになるわけでございます。
  181. 林孝矩

    ○林(孝)委員 東京都下の二十三区の中で、未指定の区はどういう区になっておりますか。
  182. 野津聖

    ○野津政府委員 二十三区のうち、練馬、杉並、中野、世田谷の四区が指定地域になっておりません。
  183. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この地域からは、過去において環境庁に申請があったと承るわけでございますけれども、その事実がございましたでしょうか。
  184. 野津聖

    ○野津政府委員 この四区につきましては、地域指定をしてもらいたいという御要望は、過去からございました。
  185. 林孝矩

    ○林(孝)委員 現在から今後の問題について私、物を言いたいわけでありますが、この世田谷、杉並、中野、練馬というこの四区の立地条件、これは環境庁長官一番よく御存じだと思うのですが、光化学スモッグの発生している地域でもございます。また、環状八号線、これに沿った地域があって、非常に大気が汚染している地域だ。こういう地域が東京都の中で、この四つの区だけが指定されていない。大気というのは、先ほど私、常識的なことを言いましたけれども、その区の行政区画から、ようかんをすぱっと切ったような形で上空の状態が変わるのではないと私は思うのです。ですから、線引きというのは非常にむずかしい。当然のこととして、境界線からこっちには患者は生まれないけれども、こっちには生まれるとか、こっちにはいないけれども、こっちにはいるとか、こっちは汚染されていないけれども、こっちは汚染されているとかということにはならないと思うのです。まして、その自治体から認定の申請が今日まで出されていたということ。  もう一つ伺いますけれども、たとえば先月の十七日に、総理大臣に対して地域の人たちが認定の申請をしているわけです。この陳情の内容というものは、石原長官、お読みになったでしょうか。
  186. 石原慎太郎

    石原国務大臣 同種の陳情を私自身受けたことはございますが、総理大臣に出された陳情については、まだ承っておりません。
  187. 林孝矩

    ○林(孝)委員 総理に出された陳情というのは、環境庁所管の問題に対して、具体的にはこの地域の指定をしてもらいたいという地域住民の陳情書なんです。そういうものは環境庁にどういう手続を経て長官のもとに届けられるのでしょうか。
  188. 石原慎太郎

    石原国務大臣 私、よく存じませんので、政府委員から答弁させていただきます。——それは、ちょっとお伺いいたしますが、いつごろのことでございましょうか。
  189. 林孝矩

    ○林(孝)委員 二月の十七日です。先月の十七日です。
  190. 石原慎太郎

    石原国務大臣 ごく最近ならば、次の閣議で総理から私に何らかの御発言があるかとも思いますが、すでに何日か経過しておりますので……。
  191. 林孝矩

    ○林(孝)委員 定例閣議は、その間には行われておりますね。
  192. 石原慎太郎

    石原国務大臣 何度も行われました。その席では、私何も承っておりません。
  193. 金子太郎

    金子政府委員 恐らく近いうちに、内閣官房の方から書類が下がってくるのではないかと思っております。
  194. 林孝矩

    ○林(孝)委員 その辺から、まず交通整理をしていただきたい。これは要望しておきます。  これは善意に解釈してですけれどもね。やはりそういう東京都民の声が環境庁長官の耳に入らなければ、この行政が生かされないわけですから。そうでしょう。東京都下で、もちろん地形だとか気流だとか、いろいろな季節的な調査を必要とすることだと思いますし、その調査自体が困難なことだと思いますし、地域を指定するということは、そういう意味でむずかしいかもしれません。ところが、この四つの区だけが東京都の中で外されておる。これに対して過去に自治体から要望もあり、つい最近も地域住民から総理の官邸において陳情がなされておる。それが環境庁長官のところに届かないということになれば、非常に重大な問題だと思いますので、この点については調査方を依頼したいと思うのです。よろしいでしょうか。
  195. 石原慎太郎

    石原国務大臣 福田総理は世田谷の住人でございますので、そういう一つの親近感もあって、また改めて住民の方々が向こうへ陳情されたのかも存じませんが、従来、いろいろな角度から、いろいろな立場の方々から同じ種類の陳情を受けております。それに対して、いつも同じ答えを環境庁からしておりまして、これは決してそっけないものではございませんで、いまも部長が御説明しましたように、かなり手の込んだ調査をしまして、二十三区のうちの十九区を指定地域にし、四区を外したわけでございます。  ただ、先生おっしゃるように、空気というものは、決してようかんを切るように切れないものではありますが、同時に、微妙なその流れ方といいましょうか、層というものがございまして、それに沿って裁断をいたしますと、四区の大部分が、われわれが基準にしている数値を下回るものでしかございません。  ただ、確かに四区のうちにも、部分的には他の指定区域と同じ地域がございますので、いわゆる分区の指定ならばする意思があると、こちらで答えておりますが、四区の代表の方々、住民の方々、どうもそれでは納得いただきませんで、するならば全区をしろと言われますけれども、そうすると、他の部分でいろいろ混乱を生じてまいりますので、そのようにいままでお答えし、御了承を賜ってきたわけでございます。
  196. 林孝矩

    ○林(孝)委員 第一点は、福田総理は世田谷ですけれども、親近感から陳情されたんではなしに、この二月十七日は中野区の方です。  それから、その次は、先ほど私も申し上げましたように、気流の関係とかいろいろありますけれども、だからということで環境庁が取り組んでおりますと——やはり地域に住んでいる人が一番そういうように被害を受けたり、あるいはそういう不安な状態にあるから、自治体からも今日まで要望があったんだし、最近においてもこうした陳情が行われているのでありまして、何にもなければそういうものも出てこないと思うのです。  と同時に、先ほどから指摘しておりますこの不用額という問題ですね。これだけのものがあって、そして患者数が少なかったからという一点の答弁である。しかし、いろいろ考えてみれば、もっともっと効率的に予算が使われる可能性の非常に大きな事業であって、したがってやはり環境庁としても、もっともっと積極的に取り組んで、この四つの区が、従来はそういう判断をしてきたけれども、今日において、こういう過去の自治体からの要請、また最近における地域住民の要望、また長官もみずからおっしゃったように、それ以外にも数々の要望があるということですから、この際、積極的な姿勢に転換されて、この四区の地域指定については取り組んでいかれる、これから夏にかけて光化学スモッグだとかいうような問題が起こる可能性の多い地域でございますから、そのような姿勢で取り組んでいかれることの方が私はいいと、これは提案するわけでありますけれども長官いかがでしょうか。
  197. 石原慎太郎

    石原国務大臣 御存じのように、現在の地域指定は、あくまでもSOXをベースにして行っているものでございます。その限りでは、やはり役所としましては、科学的な知見というものをもとにしたラインを引かざるを得ません。そういう意味で、分区指定ではどうかということをこちらで申し上げているわけで、特に世田谷などは確かに環状七号、八号が通っておりますけれども、他の地域も通っておりますが、同時に東京には珍しい非常に閑雅な地域もございまして、これをどうも一緒くたにしてというわけにはまいらない事情があるということも、ひとつ御理解願いたいと思います。
  198. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そういうこともわかっておりまして、その上での議論でございます。環境庁として適切な行政をとっていただきたい。  時間が迫ってまいりましたので、あと二点ほどお伺いしますけれども公害健康被害補償協会交付金の八億円の中の六千八百九十三万三千円の不用、これもあるわけです。先ほどからずっと不用額ばかり挙げてきているわけですけれども、ここにもまた不用額がある。これもどういう不用額か、どこに原因があるのかということをお伺いしておきたい。  それから補償給付費用、これは汚染負荷量賦課金及び特定賦課金を協会が徴収して、自動車重量税の一部と合わせて原因者負担で充当しているわけです。不用額発生の理由は何かという点、これが第二点目。  それから五十年度にも六千四百二十一万二千円の不用がございます。これも問題だと指摘しておきます。  それから、厚生省に来ていただいておりますが、これは厚生省に関係する問題でございます。  いわゆる旧措置法時代、認定患者に医療費を支給していたわけです。私が冒頭に取り上げた生活保護の問題です。協会に引き継がれて後、医療費や諸手当を含めて七種類の補償給付を行うことになっているわけです。私は非常に結構なことだと思いますが、生活保護法や公害健康被害補償法で併給禁止措置がとられているということは、冒頭に申し上げたとおりです。  そこで障害等級二級、三級の認定患者で、障害補償費が生活保護費を下回っても生活保護の方を打ち切られて困っている世帯の救済措置をどうされるのか。これは厚生省、最初の二点については環境庁から御答弁願います。
  199. 入江慧

    ○入江説明員 御存じのように、生活保護法の方は地域別とか男女別とか年齢別に、それぞれ最低生活保障水準というものがございまして、それにそのほかから入ってまいります所得、この場合で言いますと、いまの制度からまいりますと、障害補償費でございますけれども、それが満たない場合は、その保障水準との差額について保護費を支給します。その水準を障害補償費が上回った場合には保護廃止となるということでございまして、公害健康被害者補償法関係の障害給付との関係で保護廃止になった世帯がどのくらいあるかということについては、私どもちょっと把握しておりません。
  200. 野津聖

    ○野津政府委員 御案内のとおり補償協会に対します交付金でございますけれども、この交付金の性格といたしましては、公害保健福祉事業費の原因者分が半分あるわけでございまして、そのうち、いわゆる自動車重量税引当分が二〇%あるわけでございます。その二〇%部分につきまして交付金という形で交付しているわけでございます。  したがいまして、いま御指摘ございました不用額の六千八百九十三万三千円の内訳といたしましては、補償給付費の見合い分が四千百四十一万円、それから保健福祉事業費の部分の見合い分が二千七百五十二万三千円、こういう形になっておるわけでございまして、先ほど来いろいろ御指摘いただいておりますことと同じ形での中身につきまして、いわゆる交付金という形でカバーしているところでございまして、御指摘いただきましたような各種の条件あるいは理由によりまして、こういう形で不用額が出たというところでございます。
  201. 林孝矩

    ○林(孝)委員 先ほどの厚生省の答弁ですが、それならば水準を上げるとか、いわゆる生活保護なんですから。環境庁の方は、健康を回復するための手当をしているわけですね。いままで生活保護を受けてきた人が公害患者になった。環境庁の行政によって健康を回復するための補償がなされた。そうすると、その額が水準をオーバーしたからということで生活保護がカットされた場合は、こちらは生活の保護ですから、教育費だとか子供の生活だとかいろいろあるわけです。こっちの方は健康を回復するという次元の違うものですね。  これは、いまもう時間がございませんから詰めませんけれども、こういう点については、今後環境庁のこの制度、行政が生かされていく、その先でぶつかる問題ですから、よく話し合っていただいて、前向きに検討していただきたい、こう思うわけです。
  202. 入江慧

    ○入江説明員 ただいまお話のありました一点でございますけれども、保護費の方は、確かにおっしゃるように教育費とか住宅費とかございますけれども、それを含めた全体の保障水準に対して、要するに丈比べをするわけでございまして、したがいまして、その教育費なり住宅費が保護費の方にあるから、それだけ有利になるということはございません。  それと、もう一つおっしゃいました問題でございますけれども公害補償費として出ている中には療養手当とかあるいは葬祭料等ございますけれども、そういうふうに実費補償といいますか特定の目的に使われる費用については、こちらは収入認定といいますか収入とみなしておりません。生活費に回ると考えられる部分について保護法との丈比べをしまして、収入認定ということになるわけでございます。
  203. 林孝矩

    ○林(孝)委員 見方の方はそれでいいのですけれども、額の面で、生活保護を受けている人が保護されるという状態を続けられる額をどのようにしていけばいいのかということについては、これだけ毎年経済構造が変わってきているわけですし、これから先も変わるわけですから、四十九年の状態が五十年になっても、五十一年になっても、五十二年になっても、同じ物価でもなければ同じ生活内容でもないわけですから、その点を考えてやっていただきたいという要望なんです。  それから、私これで最後ですが、いままで議論してきましたように、不用額の問題は、われわれの先輩の委員の人たちが、今日まで当決算委員会においてしばしば指摘されてきたことなんです。議事録を通して私もそれを知るわけです。  そういうことで、先ほどから私が指摘した中にも五〇%近い不用額があったり、予算の中で実績がゼロであったり、二%とか三%の実績というような状態。これは自治体においても事業計画が容易に作成されるような条件にしていくとか、あるいは被害者の認定を緩和していくとか、また手当等の支給額を増加していくとか、いろいろなことが考えられると思いますけれども、何らかの手を打っていかないと、四十九年以来五十年、五十一年と起こってきたこの決算の状況は改善されないで、また五十二年度も繰り返すのではないか。私は、この問題を重大な認識で受けとめるかどうかということは、今後の行政に大いに影響を与えていくと思うわけです。この点について、最後長官の決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  204. 石原慎太郎

    石原国務大臣 おっしゃられますとおり、何年度にもわたりまして、こういう膨大な不用額を出すこと自身非常に問題があると思います。まして公害被害者の健康の補償の問題は、一番現代的な先鋭的な問題でございますので、今年度にまたこういう事態を起こさないように、方法を再検討いたしまして、何らかの新しい施策も講じ、こういう結果がもたらされないように、環境庁全体といたしまして努力をするつもりでございます。
  205. 林孝矩

    ○林(孝)委員 終わります。
  206. 芳賀貢

    芳賀委員長 安藤巖君。
  207. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、産業廃棄物の処理問題についてお尋ねしたいと思います。  この関係については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律がございますが、これからこれを単に処理法というふうに申し上げますので、よろしくお願いします。  この法律は、一昨年の暮れの産業廃棄物問題関係省庁協議会あるいは産業廃棄物処理問題懇談会、それから生活環境審議会などの答申がありまして、昨年の六月十六日に改正をされ、いよいよ今月の十五日から施行される運びになっておるわけですけれども、この改正の中で、処理業者の資格などいろいろ許可条件を厳しくされたとか、あるいは委託の禁止などで、もぐりの無許可業者の不法投棄に関する規制をやられておるわけです。この点は一歩前進だと受けとめているわけですけれども、この改正された法律に基づいて現在政令をおつくりになっているというふうに伺っておりますけれども、この政令では、どういうようなことをお定めになっていこうとされているのか、お伺いしたいと思います。  これは環境庁長官にお伺いしたいと思うのですが、これは厚生省の方の所管ですか。
  208. 三井速雄

    ○三井説明員 この政令につきましては、環境庁と厚生省の共同の政令ということになっておるわけでございます。  主な概要を申し上げますと、まず第一に、先生指摘のとおり一番大事な点でございますが、事業者が排出物を処理業者に委託する場合の基準を定めております。  それから、その事業場に産業廃棄物処理責任者を置かなければいけないことになっているわけでございますが、それをどういう範囲の事業場に置くかということについて定めております。  第三番目に、今回の法律改正によりまして、一定の範囲の事業者につきまして、その排出物の排出状況等について帳簿を記載する義務を課すことにしておりますけれども、その範囲等を定めることといたしております。  それからまた廃棄物の最終処分場、いわゆる埋立地でございますが、これについての構造基準等を定めるという内容を盛っておるわけでございます。  それから、環境庁の所管しておられるところでございますけれども、新たに水銀等を含みます燃えがら、あるいはばいじん等の産業廃棄物の埋め立て処分あるいは海洋投棄処分に関する基準を整備することというようなことを主な内容にしております。
  209. 安藤巖

    ○安藤委員 いろいろ具体的にお定めになるようでございますが、ところで、そういう政令をおつくりになる、あるいは法を厳正に実施されるということにつきましては、現在の産業廃棄物なるものが一年間にどれくらいの量出て、処理業者あるいは地方公共団体も参加しての処理場等で、それが処理し切れる体制になっているのかどうかということですね。そういう実態調査は、一体どの程度進んでいるのかということをお尋ねしたいと思います。
  210. 三井速雄

    ○三井説明員 産業廃棄物の全国的な排出状況につきましては、実は私ども五十二年度の現在審議をお願いしておる予算におきまして、排出状況実態調査のための費用を計上しておるわけでございます。これによりまして、初めて全国的な統一的なレベルでの排出状況の把握ができるわけでございます。  現在のところ、私どもいろいろな調査からの推計をいたしておりまして、それによりますと、現在の時点において、総量ほぼ三億二千万トンと推定しておるわけでございます。ただし、三億二千万トンのうち、約七千数百万トンがいわゆる建設廃材、いわばコンクリートのかたまりでございますが、そういうものが七、八千万トンを占めておるわけでございます。  そのほか、大きなものといたしましては汚泥、そういったようなものが、これまた四、五千万トンということになっておりまして、私どもの感じといたしましては、大変大ざっぱな感じで恐縮でございますが、いわゆる中間処理を要するものが一億トン前後ではないかというふうに考えております。  これに対しまして、どれだけの処理能力があるかという問題でございますが、私どもいわゆる届け出施設と称しまして、一定規模以上の処理施設について届け出義務を課しておるわけでございますが、この総数が約五千近くございます。ただ、これはいろいろな施設がございますので、単純には処理能力云々という議論はできませんで、いろいろな地域的な偏在とか、あるいは時期的に偏在するというような現象がございますし、また大変特殊なものにつきましては、確かに処理する能力がないというようなこともございますけれども、大変大ざっぱな考え方で恐縮でございますが、大ざっぱに申し上げて、特に不足することはないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  ただ、いわゆる最終処分場、埋立地でございますが、これにつきましては、いろいろな排出事業から大変遠いとか、あるいは距離にかかわらず、現実にその捨て場がないというふうなことがございまして、最終処分場につきましては、全国的な現象といたしまして不足をしておるという実態であろうかというふうに考えておるわけでございます。
  211. 安藤巖

    ○安藤委員 産業廃棄物の処理の問題につきまして、やはり一番問題になるのは、先ほどおっしゃった最終処分場、これが一番問題になっているんじゃないかというふうに思っているのです。ところが、いまの御答弁によりますと、やはりそれが一番不足しているんじゃないかという御答弁ですね。  そうしますと、それに対して一体どういうような措置をとって最終処分場を確保して、産業廃棄物の処理を完全なものにしていこうとしておられるのか、それをお尋ねしたいと思うのです。
  212. 三井速雄

    ○三井説明員 最終処分場と申しますのは、いわゆる埋立地でございまして、いろいろな形で中間処理がされましたものが最終的に地面に返されるという場所でございます。通常でございますと、陸地の中に一定の場所をつくりまして、そこへ物を集積してくる。もちろん周りに囲いをつくりましたり、あるいは水処理施設をつけましたりということがあるわけでございますけれども、そういうことをいたして集めます。あるいは海のいわゆる公有水面の埋め立てというようなことで、廃棄物を埋め立て素材として埋め立てるというようなこともございます。  現在不足しているというふうに申し上げましたわけでございますが、いろいろな意味環境問題、特に住民の方々の環境に対する強い関心から、やはり自分の生活しておるところの周囲に、そういう廃棄物の捨て場ができるということに対しまして、大変むずかしい問題が生ずるわけでございますので、一つは経済的にコストがかかるという問題もございますが、それ以前の問題といたしまして、なかなか場所が決めがたいという問題がございます。  それで、この産業廃棄物につきましては、先生御承知のとおり、これはやはり事業者が責任を持って処理をするということが原則でございます。その中には、もちろん費用を自分で負担するということも当然でございます。ただ、場所が求めがたいということになってまいりますと、これはやはり、一事業者のみで、すべてをやれ、あるいは民間企業のみに、すべてを任せるということもなかなかむずかしいという認識もございます。したがいまして、あくまで原則といたしましては、場所を求めることも含めまして事業者みずからがやるべきであるという原則を一方では立てながら、実際問題といたしまして、国なり地方公共団体なりというものが適当な関与をして、場所を見つけやすくするという方向で将来進んでいくべき必要があろうかというふうに考えております。  現実に地方公共団体レベルにおきましては、そういったものを県なり、あるいは別の法人をつくりまして、やっておるということもあるわけでございますけれども、その費用につきましては、基本的な考え方といたしまして、事業者から、その必要な費用を徴収するということになっておるわけでございます。  それにいたしましても、大変むずかしい問題がございますので、要求量を十分に満たすというまでには至っていないというのが正直なところの現状でございます。
  213. 安藤巖

    ○安藤委員 それは非常にむずかしい問題であるということは、私もよくわかるのでありますけれども、いま、五十二年度予算調査費を出して実態の調査をおやりになるというお話がございましたが、これは五十二年度中に調査を終了されるというような御予定になっておりますかどうか。その点だけ。
  214. 三井速雄

    ○三井説明員 現在のところ、単年度調査で終了する計画でございます。
  215. 安藤巖

    ○安藤委員 環境庁長官がほかの委員会へお出かけになるということで、時間が制約されているというお話を伺いましたので、環境庁長官に、まずお伺いしておきたいのです。  これは環境庁が管轄しておられるというのですか、公害防止事業団というものがございますね。この公害防止事業団はいろいろ詳しいことは申し上げませんけれども事業の内容として建設譲渡業務、それから貸付業務というのがあるわけですけれども、その建設譲渡業務の中に四つありまして、そのうちの第一番目に共同公害防止施設を設置して、これを譲渡するというのがあるわけですね。  ところが、この公害防止施設をつくって、これを譲渡するという事業をやっておられるのですけれども、これは昭和四十年に発足をしているのですけれども、現在までのところ非常に売れ行きが悪くて、昭和四十八年度一つ、四十九年度はゼロ、五十年度一つ、そして五十一年度ゼロ、五十二年度一つあるというような見込みらしいのですが、これは非常に利用状況が悪いわけですね。だから、せっかくこういう公害防止事業団があって、産業廃棄物の処理の問題について乗り出しておられるわけですけれども、この利用度が非常に悪いという点については、どこに原因があるというふうに環境庁長官はお考えになるのでしょうか。
  216. 石原慎太郎

    石原国務大臣 就任早々でございますので、具体的な個々の件につきましては、担当の局長から答弁させていただきます。
  217. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 公害防止事業団の産業廃棄物処理施設の建設譲渡業務につきましては、先生がおっしゃられるとおり非常に申し込みが少のうございまして、いま言われたような状況でございますが、これはほかの共同公害防止施設と違いまして、比較いたしますと、生産工程との直接的な関連性が非常に薄いとか、それから処理技術あるいは用地の確保等で解決すべき問題がなかなか多いということのために、いままで申し込みがきわめて少なかったわけでございまして、したがって、申し込みがないので、事業実績も少なかったということも事実でございます。
  218. 安藤巖

    ○安藤委員 これは、先ほど厚生省の方から御答弁いただきました最終処理場の不足している問題をカバーするための非常に大切な事業だと思うのですね。だから、それは生産と直結していないということは最初から明らかなことなんで、申し込みが少ないから、こうなっているんだということでは、全体の産業廃棄物の処理の問題と絡めてみますと、こういう状態は非常に寒々としたことじゃないかと思うのですね。だから、これはPRの不足とか、あるいは行政指導の不足とかというような問題が指摘されるんじゃないかと思うのですが、そういう点については今後どういうふうにしておゆきになるおつもりなんでしょうか。
  219. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 PRの不足の問題も確かにあると思います。今後また、地方自治体を通じ、あるいは公害防止事業団みずからよくPRをして、せっかく資金は確保してございますので、これを有効に使っていきたいと思うのでございます。  先ほども厚生省の方からもお話しになりましたように、昨年廃棄物処理法の一部が改正されまして非常に厳しくなってきたというようなこと、また最近、政令も出されるというような段階に至ってまいりましたので、企業とかあるいは地方自治体ともに、この中間処理施設とか、あるいは最終処分場の確保に迫られてくるものというふうに思いますので、現在、事業計画を企業あるいは地方自治体でいろいろ検討しているところが相当あるように聞いておるわけでございまして、したがいまして、今後は事業団の方でもそれに相対応できるように、組織なんかも産業廃棄物課というようなものを今度つくりましたり、あるいは技術職員も充実をいたしまして、これに対応していけるように進めていきたいというふうに考えております。
  220. 安藤巖

    ○安藤委員 いきたい、という御答弁、もっとこれを具体的に、もっと精力的にやっていただきたいと思うのです。  それからもう一つ、先ほど申し上げました業務の中で貸付業務がございますが、この貸付業務が、たとえば昭和四十九年度を見ますと、七十二件ありまして、その七十二件で額が五十四億五千四百四十万円ですか、ところが五十年度は件数が五十五件に減って金額が百五十四億二千四百万円、かえって金額がふえているわけなんですね。ということは、この数字だけから見ますと、貸し付けの対象が中小零細企業の中でも中の方か、あるいはもっと大企業の方に貸付金額が回っているんじゃないかというような気がするんです。それはそれで別に悪いということは申し上げるわけじゃないのですけれども、一番やはり困っているのは中小零細企業、しかも事業者の責任だということになってきますと、これは一体どうしたらいいんだということで、一番困っているのは中小零細企業じゃないかと思うのですね。ところが、この貸付業務の内容を見ますと、いま申し上げましたように、貸し付けが大型化しているんじゃないかと思うのです。中小零細企業を対象にもっと枠を広げるとか、もっとそちらの方にもPRをするとかというような点の御努力が足りないのじゃないかと思いますけれども、その点はいかがですか。
  221. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 なるほど四十九年は七十二件で五十四億、五十年度は五十五件と件数は落ちて、金額は百五十四億ということなんでございますが、これは一つには処理場の規模が大型化してきておる、大企業という意味じゃなくて、処理場の規模が大型化してきておるのと、もう一つは小さい企業が個々に処分地を確保するということが、だんだんむずかしくなってきておりますので、協同組合のような形で共同化をしてきている、それで大型のものをつくる、そういうような傾向になってきておるわけでございますので、それで件数は減って、金額はふえてきているということで、これは五十一年度も金額はもっとふえてくるものというふうに考えておるわけでございます。
  222. 安藤巖

    ○安藤委員 環境庁長官に、これは直接お答えいただきたいのが二点あるのですが、この産業廃棄物の問題ばかりではないんですが、産業廃棄物の問題についてだけお尋ねしたいんですが、いまも実際に産業廃棄物の処理をどうするか、その監視体制はどうするかという点については、これは厚生省が担当するわけですね。そして環境庁の方としては、そのための基準をおつくりになるということですね。通産省の方は、生産と直接関与しない産業廃棄物の方は余り目をくれないで、とにかく生産をどんどん上げろというようなことで指導されるということになりますというと、どうもこの産業廃棄物の処理の問題について行政の筋が一本通っていないのじゃないかという気がするのですね。  だから、せっかく環境庁というりっぱなところができておるわけですから、この産業廃棄物の処理の問題について、ひとつ行政を一本化して、環境庁としてまとめてやっていこうというようなお考えはないのか、これをお尋ねしたいと思うのです。
  223. 石原慎太郎

    石原国務大臣 日本の行政の体系は非常に縦の系列化がありまして、横の連絡が有機的にいかないところに問題がございますけれども、これはやはり御指摘のように総合的に、いまある縦の系列の中では総合的に行政を行わなければならない問題でございますので、一本化ということは、非常に行政体系そのものを基本的にいじります大問題になりますが、現在の時点では、問題の解決のために関係各省庁とできるだけ連絡を密にとって行っていこうと思っております。
  224. 安藤巖

    ○安藤委員 もう一つ、新進気鋭の環境庁長官にお伺いしたいのは、この産業廃棄物の処理の問題につきまして、法のたてまえは、ごみ処理施設の問題、施設の設置ですか、あるいは災害等の場合に廃棄物が出た場合というときには、国の方から一部の補助を出す、助成をするという規定があるのですが、この産業廃棄物の問題につきましては、資金の融通とか、あっせんとか、それが先ほどの公害防止事業団一つの仕事だろうと思うのですけれども、これを国の方の関与を積極的に進めるという意味で、産業廃棄物の処理施設の設置について、国の方から直接助成をするという方向でお考えいただくということはできないのかどうか、そのために御努力をしていただくことはできないかどうか、これをお尋ねしたいと思います。
  225. 石原慎太郎

    石原国務大臣 これは産業廃棄物を出す発生源そのものは多様でございまして、ある意味で、その大部分を大企業が占めているわけでございます。当然大企業は、その企業として廃棄物の処理に対する責任を持っているわけでございます。その能力のない中小企業等に対しましては、この事業団を通じて、いろいろ指導助成をしておるわけでございますので、一律に国が補助を直接しろと言われましても、大企業にまでそれが及ぶ必要はないと思いますし、ですから、産廃を出します発生源そのものの態様に応じて考えていくのが妥当と思います。
  226. 安藤巖

    ○安藤委員 長官は御用がおありだそうですから、厚生省に一点だけお尋ねしておきたいんですが、家電、家庭電器製品ですね、あれを販売するときに、いわゆる発泡スチロールというのを使って箱の中で固定するということがございますね。その発泡スチロールの処分について、電気屋さんがお客さんに買ってもらって持っていっても、発泡スチロールだけは要らないから持っていってくれということでたまってしまう。その業者の人たちは業者の人たちで、また処理に困ってしまう。まとめてどこかへ捨てるというのですけれども、これはやはり家電のメーカー、これは大手が多いですけれども、その大手のメーカーに引き取らせるなり処分させるなりというようなことは、お考えになっておられないのか、その行政指導はどういうふうにやっていかれるのか、そのことだけ最後にお尋ねしたいと思います。
  227. 三井速雄

    ○三井説明員 現在の廃棄物処理法の体系に従いますと、産業廃棄物と一般廃棄物というふうに分かれるわけでございます。  お尋ねの、そういう発泡スチロールの包装用材というものが一たん家庭の段階まで参りまして、それが市町村を通じて収集されるというような形になりますと、これはいわゆる一般廃棄物の系列に従って処理をされるということになってまいります。  それから、電気屋さんの店頭におきまして、その包装をとりまして、その中身だけを家庭へ持っていく、その外側は電気屋さんの段階で始末をするということでありますと、これは産業廃棄物ということになりまして、大変形式的な区分になるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、現在の法律の体系からいたしますと、やはりその当該物を排出した事業所を把握いたしまして、これにその処理の責任を負わせるという体系をとっておるわけでございますので、それが産業廃棄物の段階でございますと、その電気屋さん自体の処理責任になるというわけでございます。  ただ現実問題といたしまして、これは将来の問題も含めて、私どもいろいろ検討しておるわけでございますけれども、やはりこういったものは、そのまま捨てていってしまうのではなくて、もう一度使う、あるいは別用途に使うというようなことも含めまして、そのあり方を考えていく、処理の仕方を考えていくということが必要でございますので、そういう考え方の一環といたしまして、先生指摘のように、もともとの生産者に、どういうふうな役割りを担わせるかというようなことも含めて考えさせていただきたいというふうに存じております。
  228. 安藤巖

    ○安藤委員 以上で終わります。
  229. 芳賀貢

    芳賀委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十一分散会