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1977-06-05 第80回国会 衆議院 外務委員会農林水産委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年六月五日(日曜日)     午後三時二分開議  出席委員   外務委員会    委員長 竹内 黎一君    理事 有馬 元治君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 毛利 松平君 理事 山田 久就君    理事 河上 民雄君 理事 渡部 一郎君    理事 中村 正雄君      小此木彦三郎君    大坪健一郎君       川田 正則君    北川 石松君       井上 一成君    松本 七郎君       瀬野栄次郎君    津川 武一君       寺前  巖君    伊藤 公介君   農林水産委員会    理事 森   清君 理事 瀬野栄次郎君    理事 稲富 稜人君       染谷  誠君    福島 譲二君       岡田 利春君    津川 武一君       菊池福治郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         外務政務次官  奥田 敬和君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省条約局長 中島敏次郎君         水産庁長官   岡安  誠君         中小企業庁計画         部長      児玉 清隆君         運輸省船員局長 横田不二夫君         海上保安庁次長 間   孝君         労働大臣官房審         議官      谷口 隆志君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      古橋源六郎君         厚生省保険局企         画課長     正木  馨君         外務委員会調査         室長      中川  進君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 本日の会議に付した案件  北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦の  地先沖合における千九百七十七年の漁業に関す  る日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦  政府との問の協定締結について承認を求める  の件(条約第一八号)      ————◇—————
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより外務委員会農林水産委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行います。  北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。     ————————————— 北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 竹内黎一

    竹内委員長 本件についての提案理由説明は、お手元に配付してあります資料によって御了承願うこととし、直ちに質疑に入ります。  この際、御質疑される各委員に申し上げます。質疑は申し合わせの時間内で御協力をお願いいたします。  なお、政府当局におきましては、その答弁を簡潔にお願いいたしたいと存じます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森清君。
  4. 森清

    ○森(清)委員 今次の日ソ漁業交渉におきましては、ソ連が二百海里の漁業水域を設定した、こういう事実を踏まえて行われたのでありますが、まことに厳しい交渉を担当せられました鈴木農林大臣を初め政府関係者の御労苦を多とするものでございます。  しかしながら、領土問題との絡みで交渉が非常に長引きまして、また漁獲量等の問題についても、必ずしも国民の満足のいく結果をもたらしたものであるとは、残念ながら言えないのでございます。  そこで、私は外務大臣お尋ねをしたいのでございますが、この交渉を顧みて感ずるものでございますが、いまやすべての国が新しい海洋法秩序形成という大きなうねりの中にあるのでございまして、漁業資源の問題のみではなくて、広く海洋関係全般について、あるいは極端なことを言えば軍事的な見地も踏まえて、各国がその国益最大限に守る、あるいはむしろ積極的に国益主張し、確保するための動きとして、このような問題をとらえなければならないのではないかと思うのでございます。また、この新しい海洋法秩序形成の問題というものは、それぞれの国が国際政治において世界戦略の一環としてこれをとらえ、そしてこれの形成に努めておるもの、このように考えるものでございます。  このような基本的な国家国家利益の衝突といいますかその調整、こういうものを背景として行う、国益がもろにぶつかり合う交渉であるのではないか。そのような観点から考えますと、わが国においてもこの国際政治におけるわが国基本方針というものを確立して、そしてその方針に基づいて世界戦略を立て、それに基づいてしっかりした基礎の上に立って交渉を行わなければならないし、今後の事態に対処していかなければならない、このように考えるのでございますが、この点に関して外務大臣の御所見を承りたいと思うのであります。
  5. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 二百海里時代に入りまして、世界各国が、特に沿岸国がその権限を行使をする、そういう意味で、二百海里時代に入る前と比べまして大変な変化が起こるということは、いまおっしゃったとおりであろうと思います。そういう意味で、この二百海里時代というものが、沿岸国のいわば主権、これが仮にエゴのような国家主義的な動きを拡大をするということは、世界平和の観点から問題があろうと思います。しかし、いろいろな批判はありましても、二百海里時代がもうすでに来つつあるという現実、この現実を踏まえて、日本といたしましてもこれから確固とした海洋政策を確立しなければならない、こういう時代に来たものと思います。  大変急激な変化でありまして、わが国体制というものもまだこれに十分対応するに至っておりません。日本はこのような状態に直面をいたしまして、これから急遽この体制を立て直していかなければならない。また外交面におきまして、世界各国が二百海里時代に入る、そういったことで大変な問題が起こりつつあるわけでございますが、これに対しまして、外交面におきましても十分な努力をいたして、とにかくわが国国民生活に大きな影響のある海洋政策というものに対処をいたしたい、こう考えておるところでございます。
  6. 森清

    ○森(清)委員 それでは、協定内容について二、三御質問をしたいと思いますが、協定第一条と、それに関連をいたしまして第八条でございますが、ソ連との厳しい交渉に当たりまして全力を傾けた代表団努力の結果、この第八条ということで解決を見たこと、私はこの成果を高く評価するものでございます。この交渉は、もとより純粋に漁業交渉として行われたものでありまして、協定の性格上、漁業問題でございますが、事実上、ソ連邦施政権を行使している、その地域についても、施政権を行使しているという現実前提とせざるを得ない、そういうものであったのであります。しかし、それを前提として交渉せざるを得ないということが、わが国固有領土であります北方四島に何らの影響を及ぼすものではない。わが国立場影響を及ぼすものではない。すなわち、この漁業交渉の問題と領土問題とは完全に切り離して行われなければならないし、また、そのような結果をもたらさなければならなかったのであります。そのために第八条の規定苦心の末合意に達しているものでありまして、私は、この協定においてはわが国領土に関する立場というものは一歩も後退しているものではない、むしろ、この第八条の規定苦心の末置くことによって、領土の問題が日ソ両国間の未解決の問題であるということを再確認をしたものではないか、このようにも解釈するものであります。  そこで、今後日ソ間においてはこの領土問題というものが最も重要な問題でございますが、外務大臣、今後この領土問題を含めて、日ソ平和条約の問題についてどのような態度で また方針で取り組まれていくか、その御決意のほどを伺わせていただきたいと思うのでございます。
  7. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま第八条の点に触れられまして、日本領土主張、戦後最大の未解決の問題であるという点が示されたこと、これを評価をいただいたわけでございます。今回の漁業交渉におきまして、鈴木農林大臣が三回に及んで訪ソをされて折衝に当たられました。そして、その最大の問題が第一条の適用水域にあったこと、これはまさしく事実でございますし、今日まで長い間適用水域の問題でこれだけソ連との交渉をされたということ自体におきまして、北方四島の問題が未解決であるということが現実に示されたわけで、その結果として八条にあのような条文が入ったということでございます。したがいまして、私自身といたしまして、この戦後最大の問題であります北方領土問題、これが四十八年の国会の御決議の線に沿いまして実現できるように最大限努力をいたさなければならない、そのような決意に燃えているところでございます。
  8. 森清

    ○森(清)委員 続いて、この六月中にも開始されると言われております逆の場合のソ日協定の問題でございますが、日ソ暫定協定とあわせまして、ソ日協定については、今後の新海洋法秩序の中で日ソ間の漁業関係を律していく重要なステップであります長期漁業協定にも直接つながっていく、関連する問題でございます。このようなソ日協定締結に当たりまして、この暫定的なソ日協定、それからさらに、恐らく秋ごろ行われるのでありましょうが、長期漁業協定に関しまして、私は、やはりそういう一連の段階の中にあって、この暫定的なソ日協定締結に当たりましても、日ソ協定のいままでの交渉経過あるいはその結果というもの、そうして、わが国がこの問題について終始取り続けてまいりました基本的な立場を踏まえまして、日ソ間の長期の安定した漁業関係の確立に努力をすべきものである、このように考えるのでございますが、これに関して外務大臣見解を承りたいと思います。
  9. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 明年度以降の日ソ間の長期取り決め、これは今後の日本北洋漁業長期取り決めをいたすわけでございますから、大変大事な取り決めになろうかと思います。しかし、今回の暫定協定、また、これからの今月中旬から行われることを予定されておりますいわゆるソ日協定におきましても、これらが一つの前例になって今後の日本北洋漁業のあり方を決めていくもの、このように考えますので、まことに大事な交渉になろうかと思います。  この交渉におきまして、北方四島に対します日本主張というものがいささかも傷つけられないで締結をされる、また、長年日本北洋漁業におきまして関係漁業者の方々が築き上げられました伝統的な漁業実績というものが尊重されるような協定締結に取り組む、そのような考えでおるわけでございます。
  10. 森清

    ○森(清)委員 その際、これはもちろん当然のことでございますが、北方四島というものについては、これは漁業協定と直接関係がない、この前の交渉ではそういうことでございますが、当然にわが国固有領土であるということ、このわが国の当然の見解というものを前提としてソ日協定が結ばれなければならない。これは蛇足でございますが、それを前提として結ぶ。いろいろ技術的なことは、私はそれ以上のことは申し上げませんが、当然にそれが前提となって、そうしてそれを先方にも認めさせた上でソ日協定を結ばなければならない、このように考えますが、そのようにお取り運び願うものだと考えますが、いかがでございましょうか。
  11. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 鈴木農林大臣が、ただいま森さんがおっしゃいました、北方四島は日本固有領土である、戦後最大の未解決の問題である、こういう前提のもとにイシコフ漁業相と折衝されましたわけでございます。これからソ日協定に臨む場合におきましても、いままでの基本的な路線を守っていかれるもの、このように信じておるところでございます。
  12. 森清

    ○森(清)委員 それでは続きまして鈴木農林大臣お尋ねを申し上げたいと思います。  北洋漁場世界有数漁場でありまして、古くは徳川末期からわれわれの父祖が血と汗によって開発し、その資源の保存と有効利用に努めてきたところでございます。この海域に依存する漁業遠洋漁業から沿岸漁業にわたりまして、また、これに従事する漁業者中小企業者を中心にきわめて多数に上っております。今回の日ソ漁業交渉わが国北洋漁業の将来を決定する重要な交渉でありまして、単に漁業者のみならず、日常の食生活において貴重な動物性たん白質の過半を水産物に依存するわが国国民がひとしく重大な関心を持って注目していたところでございます。しかるに、適用水域の問題という本来漁業とは関係のない事項によりまして交渉の大半を費やしまして、漁獲量漁業実態面に関する交渉期間がきわめて短かったということはまことに遺憾と言わざるを得ないのでございます。しかしながら、このきわめて困難な交渉に、三度にわたって訪ソされ、粘り強く交渉を進められまして、ついに妥結に導かれました鈴木農林大臣の御努力に対しましては、心から敬意を表するものであります。  しかしながら、その御尽力にもかかわりませず、漁獲量については従来の実績の三六%減、あるいは漁業水域につきましても、オホーツク北部東樺太千島等の七つの水域のみに限定されまして、べーリング海、東西カムチャツカ、西樺太等重要な漁場が失われました結果、北転船を初めとする底びき網漁業ニシン刺し網漁業等に相当な打撃が与えられるということは、これは二百海里時代というこの大きな時代の流れとはいえ、きわめて厳しいものがあったのでございます。  そこで、四月以降出漁を見合わせ漁期を失した人たち、あるいは厳しい規制に伴いまして減船等を余儀なくされた者、その漁船乗組員離職をせざるを得ない人たち、さらにはまた北洋水域での漁獲物を原料とする加工業者等、その与える影響はきわめて甚大なものがあるのでございます。こうした局面に臨んで、政府としてはそれ相応の対策を講じておられることは、農林水産委員会におきましても、あるいはまた当委員会においても質疑答弁がなされたことと思いますが、私はやはり、こういう問題につきましては、休業、減船に対する補償の問題あるいは離職者対策の問題等総合的に考え、広範な対策が必要であると考えるのでございますが、農林大臣から、これに対する政府の施策をまとめてといいますか、その対策の基本的な考え方、そしてその概要についてお伺いしたいと思います。
  13. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいま森さんが御指摘になりましたように、今回の交渉の結果といたしまして、わが国北西太平洋ソ連の二百海里水域内における漁獲量というものが大幅に削減をされたわけでございまして、この点は交渉に当たりました私自身にとりましてもきわめて残念な結果であり、また、国民の皆さんの御期待関係漁民諸君期待にこたえることが十分できなかったということを、私は非常に遺憾に考えておるところでございます。  今回の六月から十二月までの漁獲割り当てが四十五万五千トン、それに三月中にとりましたところの漁獲量を合わせまして七十万トンに相なるわけでございます。また、一月から二月、休漁いたしました四月から五月までの漁獲を合わせますとおおむね百万トンないし百七万トン程度というようなことで、相当の削減に相なるわけでございます。  私は伝統的な漁業実績を確保するということを踏まえて交渉に当たりましたが、厳しい二百海里の余剰原則沿岸国ソ連がとって余剰が出たものを分かち与えてやろう、こういう余剰原則というものが強く働きまして、わが方の代表団諸君が夜を徹しての交渉にもかかわらずこのように相なったことは、本当に残念でございます。今後、今年の秋に締結交渉をやりますところの基本協定段階におきましては、操業水域とともにこの漁獲量の適正な改善につきましてさらに最善努力を傾けたい、こう考えております。  と同時に、今回の漁獲量削減に伴いまして、約一千隻余の減船を余儀なくされる。私は一千隻の船が全部減船になるとは考えておりません。漁場の転換なりあるいは調整なりによりまして減船の数をできるだけ少なくしたい、こういう努力をする考えでございますが、それにしても、多数の漁船乗組員諸君及び加工業等関連企業等にも大きなしわ寄せに相なるわけでございます。  これに対する政府としての救済措置また補償意味合いを含んだ救済対策、こういうものをただいま各業種別業態別に詰めております。また、雇用問題あるいは離職者に対する救済転業対策等、総合的な問題につきましても、労働省、運輸省厚生省、また大蔵省との間でいろいろ具体的に詰めております。今月中にはこれを固めまして閣議決定をして、そしてできるだけ早くそれらの措置をやってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  14. 森清

    ○森(清)委員 本年度漁獲量については以上のようなことでございますが、秋にも基本協定締結し、そうして来年度以降の問題、特に実際問題として来年の漁獲量の確保という問題、すぐにも出てくる問題でございますが、この点についてどのような見通しをお持ちになっているのか、お尋ねしたいと思います。  さらに、来年の規制内容、今年度は非常に厳しい規制内容でありましたが、これをことしよりも改善する余地があるかどうか、その辺についてもお答えを願いたいと思います。  それから、一年間の漁業協定が行われるのが普通でございますが、今回は十二月まででございます。来年の一月から五月分についてはどのようにお取り扱いになり、またどのように交渉されるのか、その辺、来年の問題について見通しなり内容について具体的にお答えいただくことがあれば御答弁を願いたいと思います。
  15. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 基本協定締結交渉に伴いまして、来年度以降の漁獲量の問題につきましては、私はそう楽観的な甘い考えを持っておるわけではございませんで、これまたきわめて厳しいものがあるであろう、こう存じております。しかし、今回の今年六月以降に割り当てられた漁獲量前提といたしますと、わが国北洋漁業は大変な打撃を受け、これが経済問題のみならず社会問題にまで発展をしておる状況でございますので、この状況を十分訴えまして、ソ側理解を得ながら漁獲量増枠、さらに操業海域改善、こういう問題には全力を尽くしたい、こう考えております。  ソ連は、いまノルウェーでありますとかECでありますとかアイスランドでありますとか、これらの国々との漁業交渉を行っておるようでありますが、まだいずれも結論が出ていないようでございます。こういうことも来年以降の漁獲量影響してくると、私は非常な関心を持っておるところでございます。イシコフ大臣は、アメリカ、カナダその他欧州方面削減考えると頭が痛い、六百万トンぐらいの漁獲量削減を見るのではないか、そのために多数のソ連漁船操業不能に陥る、それらの船をどういうぐあいに配置がえをし、これを活用するかということで頭がいっぱいだということを私にも強くお話がございました。そこで、これらのECその他のヨーロッパ、大西洋海域等におけるソ連漁業交渉の結果が、これまた北西太平洋の二百海里内におけるソ連漁獲量、それに関連するわが方に対する漁獲量割り当て、これは切っても切れない関係にあると思うのであります。そういう点等を総合勘案いたしまして、私としては最善を尽くしたいと考えております。
  16. 森清

    ○森(清)委員 協定第二条で、「日本国国民及び漁船が」ソ連海域で「漁獲を行う権利は、」ソ連邦の「国民及び漁船のために日本国地先沖合における伝統的操業を継続する権利を維持するとの相互利益原則に立って与えられる。」ということが書かれておるわけでございます。もちろん交渉の過程においても、また領海ということの本質から考えましても、三海里から十二海里に近くわが国が広げられるわけでございますが、その広げられた十二海里の範囲内においてソ連漁船に対して操業を認めるというようなことはあり得ないことである。それは事の本質上もそうでありますし、また交渉経過からしてもそのようなことは明らかである、このように考えておりますが、外務大臣、そのような理解でいいのでございましょうか。御見解を承りたいと思います。
  17. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 第二条の規定表現が「伝統的操業を継続する権利を維持するとの相互利益」こういう表現になっておることから、ソ連側が十二海里の領海内で操業することも先方期待をしているのではないかというような御疑問があろうかと思います。この点につきましては、農林大臣からたびたび御説明がありますように、イシコフ漁業相との問で明確に話し合われてあることでございまして、これには第二文があった。三海里が広がる場合におきましても、そこでまだ両政府が協議によって入る余地を残そう、それを協議しよう、検討しようという条項があったのを先方はあきらめたという経緯があります。しかし、まだこの文面上排除してないではないかとおっしゃられればそのとおりでありますけれども、この「伝統的操業を継続する権利」というのは、日本側もこの協定によりまして、第一条並びに第二条、またお持ちでありましたら前文の二枚目でございますが、「日本国国民及び漁船が、北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合において伝統的に漁業に従事してきたことを考慮し、」そして第一条でその海域におきます手続と条件を定め、第二条でその権利日本国民及び漁船がその「漁獲を行う権利」と言っておりまして、これは日本側伝統的操業北洋漁業において行う、それと同じように日本地先沖合においてもソ連側が伝統的に行うという意味であります。したがいまして、この二条の適用におきまして、日本領海から排除でき得ること、これは先方がいろいろ海域を指定していることからも当然でありますし、またソ連邦自身が自己の領海内の操業は認めておらないわけでありますから、その点は御心配は全くないものと考えております。
  18. 森清

    ○森(清)委員 それでは最後に農林大臣にお伺いいたしたいと思います。  今度のソ日交渉におきまして、ソ連操業実績というものも一応尊重するといいますか、認めた上で交渉なされるわけでありますが、どういう考え方かお聞かせ願いたいと思います。この十二海里内でソ連が相当な実績を持っておりますが、その実績というものをそのまま認めてというか、十二海里外の実績に上乗せする、あるいはまたそれと関連いたしまして、十二海里内でとれておりましたイワシをバーター取引によって供給するというようなことを条件にして、ソ連の方はもちろん操業を断念したというようなことが言われておりますが、このようなことを含めまして、ソ日漁業交渉における向こうの実績の見方なり、あるいはそれに対応してわが国がどのような態度で臨むのか、御見解を承りたいと思います。
  19. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ソ日協定におけるソ側漁獲量をどのように考えるか、この問題に関連をいたしまして、いままでのソ連漁船実績というのは、多く三海里の外十二海里までの間において八〇%くらいの漁獲を上げておったわけでございます。そこで、今回領海範囲をわが方が十二海里にいたしまして、十二海里の中では外国船操業は一切これを認めないということにいたしました関係から、今後ソ連漁船に対しましても、十二海里の外、百八十八海里の漁業水域内で操業を認める協定を行うわけでございますが、その際にクォータの算出の基礎としての漁獲実績の中には、三−十二海里内の漁獲実績も加算をするということは当然の措置であると私は考えております。そしてその実績の何%をソ側に与えるかという問題につきましては、慎重に考えていきたいと私は思っております。  第一は、ソ連の二百海里海域内で約百万トンないし百七万トンの割り当てを受けておる。わが方はソ側に対してこの実績基礎にして幾らの割り当てをするか。余り過酷な割り当てにいたしました場合には、ソ側としては船団を組んで、高い燃料を使って、そして日本海域操業する経済的な、商業的な価値がない。そろばんがとれない。そうなりますと、日ソの相互の関係から見まして、そういうことであるならばお互いに入り会うことはやめて、お互いの畑だけを耕すことにしようではないか、こういうことに相なりますと、相互補完、相互協調ということができなくなる、私はそういうようなことを冷静に勘案をし、判断をいたしまして、この漁獲量というものを慎重に決めたいものだ、このように考えております。  操業海域につきましては、もとよりわが国の沿岸の漁業資源等の保護、そういう点を十分達成できるようにという観点操業海域等も定めたい、このように考えております。  なお、十二海里の外だけで今後操業を願うわけでございますが、そうすると、八〇%三−十二海里の中でイワシをとっておったということでイワシの漁獲量が大幅に減る。しかし、ソ側が希望しておるものはイワシでありサバであるわけでありますが、イワシにつきましては、その際におきまして、ソ側が希望するのであれば、わが方の関心を持っておるところの魚種と一定の評価のもとにバーターしてよろしい。またバーターでなしに、貿易の姿でやってもよろしい、こういうことを申し上げておるわけでございます。その際におきまして、向こうも窓口が一つでございますから、わが方におきましても、全漁連、道漁連等を中心とした窓口を一本にいたしまして、これらの仕事が円滑にいくようにいたしたいものだ、このように考えております。
  20. 森清

    ○森(清)委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。
  21. 竹内黎一

    竹内委員長 岡田利春君。
  22. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 鈴木農林大臣には長い間の交渉、大変御苦労さまでした。  私は主として漁業関連して御質問いたしたいと思うのですが、その前段に一つだけ外務大臣お尋ねをいたしますけれども、今度この二百海里の交渉経過を踏まえて、領土問題の厳しさというのはきわめて強く受けとめられたものと思うのです。しかし、日ソの外相会議もありますし、領土問題、懸案事項の解決に大臣も意見を述べられておるわけです。かつて福田総理大臣が外務大臣時代に、この懸案事項、領土問題の解決に当たって、歯舞、色丹あるいはまた国後、択捉、これらが返還をされる場合には、いわば非武装地帯にすべきではないか、いわば安保条約適用除外、わが国の自衛隊の配置はしない、そういう非武装地帯として設定をする、このぐらいの決意をもって当たらなければならないのではないか、こういう質問をいたしたことがございますけれども、きわめて傾聴すべき意見であるという実は答弁がなされておるわけです。鳩山外務大臣は近くグロムイコ外相とこれらの問題について話し合いをするわけでありますけれども、その場合に、いま私が申し上げましたこういう点について、どのように受けとめられてこの懸案事項の解決に臨まれようとするのか、その所信を承りたいと思うのです。
  23. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 領土問題につきましては、いかなる国でありましてもこれは最大関心事であり、また政府のみならず国民全般が領土問題に対しましては大変な熱意を持っておるわけでございます。したがいまして、この領土問題の解決というものはなまやさしい問題ではないと私自身考えておるところでございますけれども、戦後三十一年たち、また共同宣言が発せられてから二十一年経過した、こういう時代でありますし、また、今回の鈴木農林大臣イシコフ漁業相との間の交渉におきましても、この問題がやはり背後にあるがために、しかもこの問題が未解決でありますがために、漁業問題としての扱いも大変な問題になったわけでございます。そういったことを踏まえまして、領土問題につきまして、外交を預かるものといたしまして最大限努力をいたしたいと考えております。  歯舞、色丹、特に国後、択捉島に関しましていろいろな過去の経緯がございます。中には沖縄返還と絡む話もあり、また日米安保体制と絡む話もある、いろいろあるわけでございます。これらのことも十分踏まえまして、いま御指摘のありました非武装地帯化というような話も、そういう考え方も十分あり得るわけでございます。これらを踏まえまして全身全霊を打ち込んで交渉に当たりたい、このように考えております。
  24. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今度の八十日に及ぶ交渉を振り返ってみますと、極端に言えば、線引き交渉があって漁業交渉はなかった、そういう一般国民の感じはやはり非常に強いのではないかと私は思うのです。同時にまた、今回の漁獲の決定は、量の決定だけではなくして魚種あるいはまた漁場の問題、特に五十度以北あるいは西サハリン海域、こういう重要漁場が失われてしまった。また漁具の規制が行われ、漁船の隻数、魚種別、トン数別の規制が行われた。まさしく私は厳しいの一語に尽きると思うのです。だがしかし、最終二日間の交渉の中で、ソ連側の提案ではアンチョビーとかあるいはまたホカケダラあるいはマグロとかカタクチイワシ、こういうわが国がこの海域漁獲していない魚種についても提案があった。漁区のずれも最初の提案に出てきた。いわばこのソ連側の認識というものについて若干われわれは疑わざるを得ない面があるわけです。私はそういう面からいって、二日間の交渉でいわば最終的な四十五万五千トンが決まった、この点については、どうも関係漁業者も一般国民も腑に落ちない。なぜ一体もう少し時間をかけて相互理解の中で交渉をしなかったのか、こういう率直な意見や疑問があると思うのです。この点について鈴木農林大臣にその間の事情を端的にお伺いいたしたいと思います。
  25. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のように、確かに漁獲割り当て及びそれに関連する操業海域、こういう問題についての交渉の期間というのは実質的に四十八時間というような短い時間でございました。しかし、わが方の水産庁長官ほか代表団は、その間不眠不休でこれに取り組んだわけでございまして、四十五万五千トンの中で、御指摘のように、あるいはカタクチイワシであるとかあるいはマグロであるとかいろいろのわが方が余り関心を持たない魚種等もたくさんあったわけでございます。しかし、この限られた時間の中で調整をいたしまして、たとえばスケトウダラ、当初四万九千トンというものを十万トンにとにかくふやすような努力をした。その他海域等につきましても、日本海域等におきましては、これもある程度の海域を広げるようにした、可能な限りの努力をしたわけでございます。しかし、いま岡田さんがお尋ねになったように、ソ連の意図はわからない、具体的にはわかりませんけれども、しかし、先ほど来申し上げておるように、沿岸国ソ側としては、自分たちが操業をまずして、そして有用魚種は自分らがとって、余りのある資源あるいは未利用の資源等々を、これを日本に与えよう、こういう余剰原則というのを一本強く貫いておった、こういうことが一つでございます。  それからもう一つは、どうも二百海里時代というのは、沿岸国というのは、実績尊重ということよりも、自分の国でとって余りを分かち与えてやるということで、交渉によってクォータが決まるのでなしに、向こうがあらかじめつくっておるところの案によって相手国に与えてやる、これが基本的な姿勢でございます。そういう点を私どもはできるだけの従来からの両国の関係漁業関係というものを踏まえて交渉したということであって、今後におきましてもこういう基本的な姿勢というものはそうやすやすとこれをぶち破ることができない、その壁は厚いものである、こう受けとめておるわけでございます。  しかし、先ほども申し上げましたように、基本協定締結する際におきましては、十分ソ側に対して日本立場、今回のクォータによってわが国漁船団、関連企業が受けた深刻な打撃、そういうようなものを十分訴えましてその理解と協力を求めて改善をいたしたい、できるだけの努力を今後やってまいる所存でございます。
  26. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今回の漁獲割り当て量が四十五万五千トン、三月から十二月までで七十万トン、百万トン減になったわけです。しかし、一説によりますと、この漁獲の量を平常な一年間で引き直すと百万トンベースが確保された、こうも言われておるわけです。果たして百万トンのベースが確保されたのかどうか。私は、やはり魚種あるいはまた漁期の問題があります。百万トンベースとすれば、今回の十万トンのスケトウダラは、これが主力でありますから、百万トンの実績があるわけでありますから、そうすると、あとの追加される分は大体スケトウの漁獲が認められるベースである、こう言わざるを得ないのではないかと思うのです。私はそういう意味考えますと、百万トンベースというものについて非常に不安を感ずるわけですが、大臣の率直な御意見を承りたいと思います。
  27. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かに先生の御指摘のとおり、今回のクオータは六月から十二月、その時期にとれる魚種につきましてのクォータでございますので、これに一−五月を加えた場合どうなるかということはほとんど推定の困難な話でございまして、百万トンベースと申し上げておりますのは、五十年の六月から十二月の実績がございます。約七十一万三千トンでございますけれども、それに対比いたしまして四十五万五千トンが約六三、四%であるので、百七十万トンに比較しますと百万トンなり百七万トンぐらいになるということを申し上げたわけでございます。もちろん、今後の交渉にすべてはかかっているということでございます。
  28. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私はそういう認識について、むしろ期待をいたしたいと思っておるわけです。このことだけを申し上げておきたいと思います。  特にこれから対ソ関係は、ソ日協定、そして長期協定、そして来年一年間の漁獲量の決定、十二月三十一日までに完了しなければなりません。このタイムリミットをずれれば、また元旦から北洋には出漁できない状況が生まれるわけです。したがって、今後の日程は、今回の交渉の経験にかんがみて十分余裕のある期間設定の交渉が望まれる、もちろん相手方がありますから大変でしょうけれども、いわゆる今回のことを繰り返してはならない、こう私は考えるわけです。そういう意味で、これからの対ソ交渉に対する基本的な考え方を承っておきたいと思います。
  29. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いよいよ六月中にソ日協定、これをぜひ締結するように交渉を精力的に進めてまいりたいと考えております。でありますから、十日から十五日の問ぐらいにわが方の草案をソ側に提示をいたしまして、ソ側がこれを検討した上で六月二十日前後から交渉を始めよう、これがイシコフ漁業大臣と私が打ち合わせてまいりました段取りでございます。大体東京でそれを行うということに相なることと思っております。その際に、日ソ協定もでき、ソ日協定もそういうことで交渉が進むわけでございますから、この日ソ協定ソ日協定を踏まえて基本協定をつくる、こういうことになりますので、イシコフ大臣との問では、ソ日協定交渉を進める間において、基本協定についても基本的な骨格的な問題をひとつ話し合おうではないか、こういう打ち合わせも実はしてきておるわけでございまして、この一九七七年間の暫定協定の期限が切れる前に基本協定締結をやり、国会の御審議を経て、そして基本協定暫定協定に直ちにつながっていくように、そこにまた空間ができないようにということを十分心得ながら進めてまいる所存でございます。
  30. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今回の小型サケ・マス漁船操業海域の問題でありますけれども、もちろんこれは二百海里外であります。ただしかし、出漁に当たって水産庁は、ソ連の二百海里内を通航してはならない、迂回をせよ、こういう指導が行われておるわけです。したがって、直行しますと三百九十海里、二昼夜四時間で到達する漁場であります。迂回すると五百二十海里、二昼夜二十二時間要します。したがって、十八時間よけい時間がかかるわけであります。ところが、帰りは向かい風になりますから、大変危険な状態で魚を満載して帰る、こういう状況で不安を感じているのが現在操業している小型サケ・マス漁船の実情であります。トン数が十トン未満でありますから。私は、何か日ソ交渉の中で、この漁場に到達するのに国際法上認められている無害通航も否定されておるような話があったのかどうか、なぜ一体こういう指導をしておるのか、堂々と無害通航で漁場に行くようにむしろ指導するのが政府立場ではないか、こう思うのでありますけれども、いかがでしょうか。
  31. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かに私ども、特に小型サケ・マス漁船その他が漁場に到着する際におきましては、ソ連の二百海里を迂回するように指導いたしました。と申しますのは、現在ではもうすでに調印済みでございますけれども、当時は、まだ日ソの間におきまして二百海里内の漁労につきましては話し合い継続中で、私どもも漁船操業をとめている状況でございます。そのときに漁船が二百海里内に入るということは、ソ連側に対しまして、まだ協定ができていないのに、いかにも漁労のためにソ連の二百海里内に入ってきたというような誤解を与えた場合には、無用のトラブルを起こすのではあるまいかということを心配いたしまして、そういう無用のトラブルを避ける意味におきまして、二百海里内を避けて通航するように指導いたしたわけでございます。  もちろん、今後の問題といたしましては、この二百海里というものはいわゆる公海であるということには決まっておりますし、私どもも、ソ連当局との間におきまして二百海里内の漁船の通航につきましては何ら制約的な約束をいたしているわけではございません。先ほどの指導は、そういう意味合いから事前予防として指導したということで御了解をいただきたいと思います。
  32. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうであれば、もうすでに協定はできたのでありますから、したがって、そういう指導をし直さなければならないと思うのです。いまでもやはり迂回して守っているのでありますから、この点を特に要望いたしておきたいと思います。  次の問題は、先ほど話が出ましたけれども、イワシとスケトウのバーター制の問題は、大臣も話し合いの中で一応イシコフ漁業大臣に話された。ただ問題は、このスケトウをすり身にする場合には、冷凍スケトウではすり身になりませんから、当然原魚でなければならぬわけであります。一方、また、ソ連の指定しているイワシも非常に鮮度の落ちやすい魚でありますから、直ちにかん詰めにして、いわば塩づけあるいはまたオイルづけにする、こういう措置がとられなければならないわけであります。そうすると、普通一般の魚種のように貿易という体制は、ちょっとこの場合に問題が出てくるのではないかと思うのです。そうすると、沖合い取引ということが当然専門的に見ても考えられてくるわけです。そうしますと、基地経済との関係、また、そういういわば沖合い取引の形態、いま現地では非常に注目をいたしているわけです。大臣が発想されたこの提案はどういうことを前提にしてお考えになられたか、この機会に承っておきたいと思います。
  33. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 岡田さんは産地におられる関係で、非常にその点具体的なことをお尋ねになったわけでありますが、お説のとおりでございます。したがいまして、わが方の沿岸漁民がとったイワシを向こう側に渡します場合において、ソ連の冷凍なりあるいはかん詰めなり、そういう設備を持った船舶に沖で渡す、こういうことになろうかと思います。また、スケトウダラをどういう形ですり身業者等に提供するか、この点今後十分研究をする必要があると思います。従来、北洋水産等がやっておるように、沖で買って、船上ですり身にし、あるいはミールにするということであっては、北海道その他の、これを原魚としてやっておる加工業者のためにはプラスにならない、私は、どうしてもこれを加工業者等に提供できるような仕組みにしたい、そういうことを基本的に考えて、この受け渡しの方法等を具体的にひとつ今後詰めていかなければならない、こう思っております。  いずれにしても、この全漁連、道漁連等沿岸漁業団体を中心にした窓口を一本化しまして、そして向こうも一本でございますから、その間において具体的な取り扱いの方法あるいは魚価その他の取り決めの問題、そういう問題はやはり相互のそろばんにもかかわることでございますから、十分関係者の間で詰めてもらう、こういう考えでございます。
  34. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 一千万トンのうち三〇%はスケトウ一魚種で占められておるのがわが国漁獲実績であります。したがって、これらは非自由化品目に指定されておることも御承知のとおりであります。しかし、大臣承認によってここ数年来原魚が六万五千トン輸入されておりますし、製品としてスケコが千四百十七トン、すり身で八千百四十三トンがここ三年ばかり毎年毎年輸入されておるわけであります。これは一体どういう関係なのか。いま大臣が言われたように、沖合いで受ける場合には、大臣が非自由化品目なのに許可したものかどうか、この点についてまず第一点お伺いをします。  同時にまた、スケトウは大体標準が体長が四十五センチ程度であります。しかも洋上すり身にする場合には肉質は四〇%どまりであって、すり身としては一八%どまりであります。しかし陸上でこれをすり身にする場合には三〇%の歩どまりがあるわけであります。特にアメリカの場合には百万トン、北転船割り当てが八万六千トン程度であります。北洋漁場という位置、アメリカ海域ソ連海域を包括的に考える場合に、今回のこの漁獲の減に対応して、母船式のあるいはまた大会社の底びきトロール、このクォータの関係を当然これは割り振りをすべきである。対米交渉をそういう形で行わなければならない。そして北転船を従来の大手水産会社の漁場に約半分程度はこれを転換をする、こういう漁業構造の改善をやらなければならないと私は思うのです。これは強力に進めなければならない問題であると思います。大臣の所見を承りたいと思います。
  35. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 IQ品としてのスケトウダラの取り扱いの問題につきましては、水産庁長官から答弁をさせることにいたしますが、アメリカの沿岸海域におけるところの底びき漁船、この操業の問題、これは岡田さんも御承知のように、沖底並びに北転船は従来北西太平洋漁場操業をしておった、それから大型トロール船は遠隔の漁場でもあるというようなこと、またそれを内地の漁港まで運ぶには相当日数もかかる、鮮度等も落ちるというようなこと等も考えて、大型トロール等が中心になってやっておった。北転船北西太平洋の漁期が終わった後、裏作といいますか、その漁期を選んで操業をさしておった、こういう操業形態になっておったことは御承知のとおりでございます。それが今回の漁獲量の大幅な削減によりまして北転船が一番大きな打撃を受ける。私は、沖底びき網漁業につきましては、これは零細な諸君が多いわけでございますから、これは北西太平洋で大部分ひとつ割り当てをしてとらしてあげなければいけない。問題は北転船でございます。こういうぐあいに漁業事情が急に変わってまいりましたから、今後においてアメリカ海域におけるところの大型トロールとの問の調整という問題を私も真剣に考えてみたいと思っております。  と同時に、これらの大型トロール等をどこの漁場に転換をさせるか、これも一つ大きな問題でございます。そういうようなことで、今後は沿岸国二百海里以外の公海上、未開発の漁場というようなものを積極的にひとつ開発をして、それらの大型トロール等がそういう新漁場に転換ができるということになってくると、これは北転船に与えられる余地というものが非常に広がってくるわけでございますが、そういうものと相関連をさせながら十分検討してまいりたいと思っております。
  36. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いま私が提案した問題は、非常にこれから重要な課題だと思います。どうしても大手がだめだというなら、じゃサケ・マスの母船の方をやめて基地独航にしようかということにもなりかねないと思うのです。いずれにしても国民の世論は高まってくると思います。十分ひとつ御配慮をお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、コンブ協定を民間協定で大変な人々の努力によって、そして高碕さんが代表で結ばれました。今回の交渉でこの民間協定を破棄をする。しかし、線引きが認められたわけですから、今度は政府協定でもおかしくないわけであります。しかし、わが国領海の内におけるソ連船の操業関係、それとコンブの協定関係、同時にまた三十年間伝統的に認められてきた北海道と国後の野付水道の三海里から中間線の漁場、これも締め出されたわけであります。これは相互主義の原則から言いますと、当然二条と関連する問題で、いわば若干触れたけれども強く押し得ないで戻られた、こう私は理解せざるを得ないと思うのです。そういう意味で、この点はわが国領海をきちっと守る以上政府としては交渉の手がないではないか、こう思うのでありますけれども、いかがでしょうか。
  37. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この点は、いま岡田さんお話しのとおりでございまして、コンブ協定、これは大日本水産会の会長としての高碕達之助先輩がコンブ業界の諸君と一緒になりまして苦労して民間協定として開いたものでございます。今回の十二海里内の操業云々の問題から政府としては強くこのことを押せなかった。そういうジレンマ、これはひとつ御理解を賜りたいと思うのでありますが、これは民間協定でなされておった問題でございますから、今後大日本水産会と民間団体にゆだねまして、これが実現するように今後とも努力を願うことにいたしたいと考えております。
  38. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 羅臼を中心とする、また半面、この海域の問題についても、本当の零細漁民でありますから、資源の配分の問題も絡んでくるでしょう。やはり大変な地域の状況であります。十分ひとつ検討を進められて対策を立てるように、この機会に要望いたしておきたいと思います。  次に、いままで水産庁の見解は、北方四島に関しては三海里もしくは水際まで操業してもよろしい、わが国領土だから、こういう見解をとってきたのであります。今回一条で水域を認めたのでありますから、そういうわけにいかぬと思うのであります。協定は遵守をしなければなりません。したがって、もしこれに違反して拿捕された場合には、従来の拿捕保険制度で支えるということはできなくなるのではないか、こういう考えが当然浮かんでくるわけであります。この点についてどのように対応されるのか、伺っておきたいと思います。
  39. 岡安誠

    ○岡安政府委員 従来北方四島関係につきましての拿捕保険の趣旨は二つございまして、一つは、北方四島がわが国固有領土であるという点と、それから仮に施政が行われているにいたしましても、三海里、十二海里の問題が従来はあったわけでございます。後者につきましては、日ソ両国とももう十二海里になりましたので、問題はやはりあの四島がわが国固有領土という問題がございます。あの水域に入りますためには、まず私どもは、今回の日ソ漁業協定によりまして許可証を、これは私どもの漁業法に基づいての許可証もつけますけれども、ソ連の発給する許可証を持って入らなければならない。そういう違反事項につきましては、これは拿捕保険の対象にはなり得ないというふうに考えております。  ただ、やはり北方四島周辺の領海と称せられる、ソ連が称しております十二海里周辺の水域につきましては問題がございますので、この運用につきましては、私ども従前どおり拿捕保険の対象になり得るのではあるまいかというふうに考えておりますが、この運用につきましてはさらに検討はいたしてまいりたいというふうに思っております。
  40. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いまの長官の答弁では大変な混乱がまた起きると思います。一応の見解として承っておきます。もうソ連との間に水域を画定したのでありますから、こちらが許可証を出さなければならぬわけでありますから、従来と違うのであります。すでに交渉中に二隻拿捕されております。したがって、現地が混乱のないように、速やかにこの面は見解を統一をして指導されるように強く要請をいたしておきます。  次いで私は、ソ日協定の中で当然漁場の設定というものが行われると思うのです。たとえばわが国の底びき禁止ライン内、あるいはまたオッタートロールラインというものもございます。特に船型とかそういう関係も出てまいりますけれども、大臣は先ほど前者の答弁もございましたけれども、これらの国内漁業調整区域については、禁漁区、外国の漁船操業は認めないという原則に立つべきだ、あるいはまた期間を指定すべきだ、参議院の農林水産委員会ではそういう答弁もされたように私は聞いておるのであります。その考え方に変わりはありませんか。
  41. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この点につきましては、領海の幅員が十二海里に広がったわけでございますけれども、その十二海里の外といえども漁業権の設定をされておる海域もございます。また底びき船の操業禁止区域等もございます。私は、今後ソ日協定漁獲量とともに操業海域を決める場合におきましては、資源の保護上の問題を重視をいたしまして、また沿岸漁業者との摩擦が起こらないようにという観点に立ちまして、慎重に対処いたしたいと考えておる次第であります。
  42. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今日、北海道沿岸にはソ連船あるいは韓国船が現在操業中であります。特に、きのう網走沖合いにおいて百三十隻の漁船が海上デモを行って韓国漁船に対して強い抗議集会が開かれた。大変な混乱した状況にあるわけです。実はここに海図があるのですが、ここは大和堆ですね、いわば魚道にあるものであって、ちょうど首根っこのようなところであります。ここに韓国の船団が、多いときには十三隻、今日六隻、少ないときでも五隻操業いたしておるわけです。船型は、一千二百トンが最低で、大きいものは五千トンであります。しかも、この操業の状態というものをずっと調べてまいりますと、大体一日、三十分引いて七回から八回網を揚げるわけであります。漁獲の量は一回十トンないし七十トンであります。そうしますと、三十トンで七回で七隻であれば一千四百七十トンであります。この平均で百日間操業すれば、ここは通年操業できる地域でありますから十四万七千トンにもなるわけです。大変な量になります。このような状態が続けば資源が枯渇することは間違いありません。いま韓国及び北朝鮮の二百海里でわが国漁獲実績は二十万ないし二十四万トンであります。韓国にわが国の二百海里の問題をそのまま放置をすれば、韓国はそれ以上相当上回る漁獲実績を上げることは間違いありません。今年度は恐らく突破するでありましょう。逆転するでありましょう。この実態を一体把握されておるかどうかという点について第一点お伺いをいたしたいと思います。  特にこの大和堆の漁場は、これはオッタートロールといえども禁止をいたしております。したがって、かけまわし底びきだけであります。かけまわしの場合には、これはちょうど横に引いていくわけです。トロール船の場合には縦に引いてくるわけですから、クロスする状況であります。しかも、ここは刺し網、はえなわ、ツブかご、こういう零細漁民が好漁場としていままで育て上げてきたところであります。ですから、韓国漁船操業を二百海里適用外においてこのまま放置をすれば、大変な混乱が起きることは間違いのない事実であります。これらの対策を一体政府はどう対処しようとするのか、改めて検討しなければならない重要な問題である、かように実は考えるわけであります。海上保安庁でもあるいは道の監視船でも指導しておりますけれども、あそこはかけまわしの場合でも百四十トンで制限されているのですから、百四十トン対二千、三千、五千トンでありますから、話にならないわけです。だから海上保安庁の指導も、結局いや応なしに日本漁船操業を危険のないように操業せい操業せいというようなかっこうの指導しかできないわけです。向こうは自由でありますから太刀打ちできないのであります。そうしますと、こちらの方は今年の実績で、もう昨年の四五%以内に落ち込んでおるわけです。一方、韓国の方は、国内の漁船の揚げている水揚げ量の十数倍の量を揚げているのです。ですから、ここにたむろしていますと、もうどうにもならぬわけであります。これから千島の方面については水深千八百メーター、漁場にはならないわけであります。こういう新しい状態に対応しなければなりませんし、もちろん南の民間協定が結ばれている韓国漁場との関係もあるでしょう。あるけれども、これを避けて通ることはできない状態にあるという認識を持たなければならぬではないか。このまま放置をしていくのか、どう対策を立てられようとするのか。こういう状態が次々続いてきますと、わが国の二百海里でいま六百万トン魚を揚げている、これが資源が枯渇していく、漁場が衰えていく。外国の二百海里から締め出されて、わが国の二百海里内の漁獲の量がじり貧の傾向をたどるとするならば大変な問題だと思うのです。したがって、政府はそういう意味で、もう少しこの点について操業の動向を十分調べて、決断を持ってこれに対応せざるを得ないのではないか、対応すべきではないか、こう思うのでありますけれども、見解を承りたいと思います。
  43. 岡安誠

    ○岡安政府委員 北海道周辺におきます韓国船の操業は私どもよく承知いたしております。一時は相当多数の漁船が集結しておりましたけれども、最近ではなおかつ釧路沖、オホーツク、日本海等に十数隻が常時操業しているという情報を聞いております。  私ども、先生おっしゃるとおり、漁業水域法が成立し、施行になりますけれども、韓国との間におきましては、相互主義の観点から韓国人並びに韓国漁船につきましては漁業水域法を直接的には適用しないというふうに考えておりますが、いまのお話のような、わが国漁船資源保護その他調整上の観点から操業を自粛しているような水域につきまして、やはり韓国漁船にも当然これは自粛してもらわなければならないわけでございます。先般も政府の職員を韓国に派しまして協議をいたしたわけでございますけれども、私ども近くさらに職員を韓国にやりたいと思っております。やはり日本漁船が現在操業を自粛しているような水域につきましては、当然韓国漁船もその制約に服してもらうように、そういうことを政府間で約束を取りつけ、その遵守方を要請をいたしたいというふうに考えております。
  44. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 最近この海域では、二十七サンウン号、これに対して第五十八大雄丸が接舷をして、相手国の船に乗り移っていろいろ話をしました、そういうことがあるのであります。このときに向う側の乗組員は、一体どこから来たかという問いに対して、下関から来た、こう答えたことが、実はその関係者から明確になっておるわけであります。したがって、韓国漁船がこれらの水域で水揚げをしたもの、あるいはまた油や食料品を積み込むためにわが国に寄港する動向、こういう点について十分調べられておるのかどうか、同時にまた、はっきりしませんけれども、どうも日本人の漁船員が乗っているのではないか、こういうことも強く実は言われておるわけであります。残念ながらこの点にはまだ明確な確認がないことは事実であります。しかし、これがもしそういう方向でいくとすれが大変注目をしなければならない問題だと思うのですが、そういう意味でこれらの動向についてどう把握をされているか。同時にまた、これらの漁船はかつては大手水産会社の漁船である。それをマグロ船と同じように中古を下取りで韓国に売って、そして金を貸して、漁網とかそういう援助を韓国の水産会社にして、そして漁業を奨励している、援助をしている、こういう実態にありますから、韓国漁船の急速なわが国の近海におけるトロール漁業というものは、いわば大手水産会社のそういう無定見な政策のしわ寄せである、こう言わざるを得ないのであります。そういう意味で、十六隻の船舶のリストは全部あるわけでありますから、これの動向について調べたことがあるのかどうか。早急にこれらについても調査をする必要があると私は思うのです。いかがでしょうか。
  45. 岡安誠

    ○岡安政府委員 韓国漁船の実態につきまして、御指摘のような話を私どもは聞いておりますが、まだ実態は把握いたしておりません。先ほど申し上げましたように、近く職員を韓国に派遣をいたしたいと思っておりますので、そういう接触の機会に相手方にもよくただしてみたい、かように考えております。
  46. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この点も早急にひとつ具体的な調査を要求いたしておきます。  次に、減船、休漁等によるいわゆる救済の問題について、端的にお尋ねをいたします。  昨年水産庁は、抱卵ニシンの救済措置というものを予算措置で行われました。ニシンは全面禁漁でありますから、当然同じ措置がとられなければならない。大臣は、交捗が終わった後で態度を決めると——少なくともニシンについては昨年同様の救済措置がとられる、こう思いますが、いかがでしょうか。
  47. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 全面禁漁になりましたニシン漁船、ニシンの漁業に従事しておる漁業者、そういうものを含めまして、全体の、今回の日ソ交捗によって生じた減船、休漁あるいはそれに伴う職場の転換、離職対策、こういうものをいま具体的に業種別に詰めております。今月中にも閣議決定をいたしまして、急速に措置を講じてまいる考えでございます。
  48. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 非常に不安もございますし、早急に決められるよう……。やはり原則は法のもとに平等でありますから、また、政府の行政の中でやはり平等な扱いということが原則でありますから、当然私の指摘は肯定されてよろしいのではないかと、こう思うわけです。サケ・マス等については、その後漁獲実績もあるでしょう、魚価の問題も関連するでしょう、いろいろ多様な面がありますから、それぞれ救済措置が違ってくることは理解できますけれども、ニシンのような場合にはぴしっとしているのではないか、そういう理解でおりますので、十分御配慮を願いたいと思います。  同時に、この漁場で働いている労働者一万五千人ぐらい実は失業するであろう、こう推計されておるわけであります。ところがいまの制度では、海から陸への場合も二年間、四十歳以上という制限がございます。雇用給付金の場合の該当はそういう制限です。海から海の場合には漁業再建整備特別措置法でこれまた同じ規制があるわけです。しかし、作業の強度率からいいますと、死亡率なんかを見ても、鉱山労働者よりも漁業関係の方が高いわけであります。同時にまた、五十五歳から年金が支給されるということは、炭鉱労働者の坑内夫並みの年金制度になっておるのであります。同時にまた、歴史的に言えば、北洋漁場の果たしてきた役割り、また、石炭産業がエネルギーの大宗として果たしてきた役割りは、これまたほぼ似ていると、こう申し上げなければならないと思うのです。したがって、今回の措置については当然年齢制限を撤廃すべきである。同時にまた、二年間は三年間、炭鉱離職者並みの手帳扱いをすべきだ、そういう思い切った措置をとるのが当然ではないか、こう思うのでありますけれども、この点について、二つあるわけでありますけれども、労働省と、それから漁業再建整備法の関係があるわけでありますけれども、見解を承っておきたいと思うわけであります。
  49. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 今回の漁業交捗の結果に基づきまして今後減船を余儀なくされる漁業従事者の方々の職業転換対策につきましては、私どもも、関係省庁と協力いたしまして万全の措置を講じたいということで検討いたしておるわけでございます。そのうち労働省につきましては、先生から御指摘のありましたように、陸上産業部門へ転換される方々につきまして再就職の促進を図るわけでございますけれども、その際関係地域の職業紹介とか職業訓練の体制を強化いたしまして再就職の促進を図りたい。同時に、職業転換につきましては、今後の減船によります離職者につきましては、雇用対策法に基づく特例措置としての職業転換給付金の適用を図ることについて現在検討しておるわけでございます。その際、私ども、特に問題は、職業転換される場合には職業訓練を実施することが必要でありましょうし、また非常に効果的であるというふうに考えておるわけでございまして、先ほど年齢の指摘があったわけでございますが、雇用対策として実施いたします場合は、就職が困難であるか容易であるかという点はある程度の基準のようなものも必要かと思いますけれども、特に職業訓練を実施する面につきまして、これは年齢制限というところを抜きにいたしまして実施することにより再就職の促進を図ってまいりたい、このように考えているわけでございます。
  50. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がありませんから、後は大体同じ答弁でしょうから、いいです。同じじゃないですか。違いがありますか、いまの答弁と同じですか。——これは考えてくださいよ。これは私は、やはり炭鉱離職者と同じように、準じてやるべきだと思うのです。年齢制限なんてものは外さなければならないですよ。海から陸に、かっぱがおかに上がるような感じですからね、炭鉱だって地下から地上に上がるわけですからそういう特例がとられているわけですよ。私が客観的に立証しているように、それと同じような扱いをする根拠があるじゃないですか。いま答弁をもらっても同じ答弁しかないと思いますから、ぜひこの点は、客観的に条件が同じであるならば同じような取り扱いをする、こういう方向で、前向きでひとつ検討してもらいたいということをこの機会に述べておきます。  次に、いま漁船員の関係運輸省、船員保険法の関係運輸省、あるいはまた、普通一般の漁民の場合は労働省の関係、保険関係もそうであります。そして失業保険というのは陸と違って適用者がきわめて少ないということは、しばしば国会でも問題になってまいりました。私は、保険制度も一元化すべきではないか。船員保険といわゆる社会保険を一元化すべきではないか。したがって、労働行政も一元化すべきではないか。一元化しないで問題が早急に解決できると思われますか。この点どう考えられておるか、運輸省、労働省、そして保険を扱っている社会保険庁の見解を承っておきたいと思います。
  51. 横田不二夫

    ○横田政府委員 お答えをいたします。  保険の問題は、陸上は雇用保険でございますし、海の方は船員保険でございます。それぞれ所管省がございますので、私の方からは申し上げません。しかしながら、労働行政につきましては、船員についてだけ運輸省の船員局で所管しております。これは先生も御承知のように、海上労働の特殊性が非常に陸上と違っておるということが第一点でございまして、また同時に、この海上労働の特殊性からする海上労災の防止という観点からいたしますと、船舶の安全を図る、これと全く一体になっておるわけでございます。そういう意味で、昔から伝統的に海上労働行政である船員行政と、安全を図る船舶の安全行政、また、これに付帯します人の資格に関する船舶職員行政、こういうものが一体的に扱われてまいりまして、大体諸外国もそういうふうな例になっているわけでございます。そういう意味におきまして、私どもの省といたしましては、いまの形で海上労働の面を一括してその安全を前提考えていく方がよろしいのではないか、かように考えております。
  52. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 船員の労働関係の行政の問題につきましては、先ほど運輸省から答弁もありましたとおりで、海上労働なり船員労働という特殊性から、沿革的に、労使関係、労働条件あるいは職業安定、すべて運輸省で所管されておるわけでございまして、私どもはそういう形でそれぞれの目的に応じた適切な運営がされることを期待しておるわけでございます。
  53. 正木馨

    ○正木説明員 船員保険の関係の御質問がございまして、ただいま運輸省、労働省からお答えがございましたが、先生御案内のように、船員保険は現在、五十一年十二月末で二十三万五千人の被保険者を抱えておるわけでございます。先生御案内のように、船員保険は、先ほど運輸省からお話がございましたように、船員労働の特殊性に着目いたしまして、一つの総合保険として成り立っておるわけでございます。しかしながら、今日の時点で考えてみますと、海運、水産界の不況といいますか不振、そういったものも背景といたしまして、船員保険は非常にいろいろむずかしい問題を抱えております。  特に、ただいま御指摘のございました失業保険の面で申しますと、二十三万五千人のうちの約半数が漁業労働者である。その漁業労働者十二万足らずのうちの約三分の一しか失業部門の適用がないわけでございます。約三分の二は失業部門の適用がない。この点につきまして陸上労働者との間の不均衡があるじゃないか、これをどうするんだということが一番私どもの頭の痛い問題でございます。そこで、現在、通年雇用の漁業労働者には失業部門の適用がございますので、これは私どもとして、いやしくも漏れのないようにということで、徹底を図っております。しかし、残りの通年雇用でない期間雇用の労働者についてこれをどうするかという問題がございます。この方々につきましてこれを適用いたしますとしますと、先ほど申しましたように二十三万五千の船員保険の規模の中で取り込むということになりますと、それぞれ保険料負担の面での非常な御負担という面が出てきます。これについて、船員関係者の間の、あるいは船主も含めまして、合意のもとに抱え込んでいくんだという考え方が一つあろうかと思います。しかしながら、先生おっしゃいましたように、海陸一本としまして、これを一つの保険制度として考えるべきじゃないかという御意見もあるところでございます。ただ、そういう考え方をとりました場合に、現在ございます船員法との関係をどうするか、あるいはその他海陸の労働条件の違いの点についてどう評価していくか、いろいろむずかしい点はございます。しかし、私どもとしては、今日の事態におきましてこういったむずかしい問題を避けて通ることはできないわけでございまして、現在、社会保険審議会の船員保険部会においても、今後の船員保険のあり方をどうするかということを真剣に御議論いただいております。私どもとしても、いずれもむずかしい問題だとは思いますけれども、そういう御意見も踏まえながら、今後の新しい時代に即応した船員保険のあり方というものを究明していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  54. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 とりあえず四月分に対するつなぎ緊急融資が行われておるわけです。五月分についてはまだ決定がなされていないようであります。非常に急いで、待ち望んでおるというのが現地の実情であります。いつ五月分のつなぎ融資については行うのか、これが第一点であります。  第二点の問題は、御承知のように、漁業者に関しては三%の金利、そして水産加工の場合は規模によっていわゆる四%、六・五%、そしてそれ以外の業種については八・一%ということに実はなっておるわけであります。しかし、水産加工は魚を扱っておるから四%だ、こういう立て方をされますが、一例を申し上げますと、魚箱のみをつくっておる会社が釧路市に二十一社あるのです。九十八万トンの魚を扱うのです。その箱は千三百万箱であります。金額にして二十六億円であります。木材にして五万立米であります。そして、五月二十一日現在で休業が十四社、操業が七社、最近サケ・マスの揚がりがありますから、半休業の状態のものが六社、こういう状況であります。雇用保険の調整給付金を受けましたのは八社であります。あとは対象にならない。道から四百万円の融資が行われたのは十一社であります。ほかは銀行の窓口でベースに乗らないで対象になっておりません。こういう状況なのです。ですから、この状況から判断しますと、大変な申し込みになって、倒産寸前という憂慮すべき状態も考えられるわけです。この状況は水産加工と全く同じでしょう。あるいはまた、魚のみを運ぶ専用トラック、そういう運輸会社があります。転用できないのであります。  ですから、同じ緊急融資をやるのに、水産加工には四%、あとは八・一%だ、こういう不公平な措置というものは私どもとしては納得ができないのであります。この点について、きょう大蔵省が来ておると思うのですが、そういう実態認識の上で大蔵省は財政的態度を決めておるのかどうか、知っていてやったのかどうか、承っておきたいと思います。  第三点は、中小企業の業種転換というものが当然予想されます。関連業界が漁獲の減によって企業を転換しなければならないという問題が出てまいります。そうしますと、中小企業の転換に関する法律がございまして、業種指定が行われなければなりません。水産加工であれば農林大臣ということになるでしょう。しかし、いまのような場合には、これは通産大臣の所管にもなるでしょう。トラックの会社の場合にはこれは運輸省、運輸大臣の所管になるでしょう。それぞれ大臣が業種指定をしなければならぬわけであります。その場合には、そういう転換法に適用を載せなければならないことはきわめて当然ではないかと私は思うのであります。  この三点について、残念ながら時間がありませんから、明確な御答弁を願いたいと思います。
  55. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まずつなぎ融資による対策でございますけれども、先生御承知のとおり、漁業者に対する部分につきましては、三月、四月分並びに五月分はすでに決定をいたしたわけでございます。  それから第一次関連産業、加工業者につきましては、四月分をすでに決定をいたしましたが、五月分は現在検討中で、なるべく早く決定をいたしたい。  それから次に、いまの魚の運搬用の箱をつくるとか、その他いわば比較的関連の度合いが遠い業種、しかし影響は非常に受けておるという業種につきましては、これは関係担当省庁も通産省その他があるわけでございますので、それらの省庁と現在鋭意協議中でございまして、できるだけ早くそれらの対策を講じてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、すでに決定いたしました融資のうち、漁業者に対する融資分は金利が三%であり、加工業者に対する金利が若干上であるということはございますけれども、これはやはり中小企業その他既設の関連融資の利率等との関係がございまして、そのように決定をされたわけでございます。  私ども、やはり今回の影響をこうむる業界が、水産業界を中心といたしまして関連するところに相当広く及んでおるということは十分認識をいたしておるつもりでございますので、できるだけ早く対策は決定いたしてまいりたい、かように考えております。  それから転換対策につきましても、これは寄り寄り関係省庁と相談いたしておりますが、現時点ではすぐ転換をいたしたいというような業種が必ずしも出てきておりませんので、これはやはり、なお事態の推移を見ながら当然検討はいたさなければならないというふうに思っております。
  56. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 お答え申し上げます。  第一点の金融措置でございますが、これにつきましては、いま長官の方から御答弁がありましたとおりでございまして、とりあえずの措置といたしまして、水産加工というものについて特利融資という点を適用いたしておりますが、それ以下の面につきましては、いわゆる広い関連につきましては、ほかの現在非常に深刻になっております倒産企業その他の業種との関連もございまして、現段階におきましては、とりあえずのつなぎ措置におきまして、まず量的補完をやっていく、それから信用補完面の措置をとっていくということに重点を置いておりまして、金利の面については御指摘のような差がございます。これも慎重に検討していくべき問題かと思っております。  それから、事業転換についてでございますが、御存じのように、昨年の末に成立いたしました中小企業事業転換対策臨時措置法というものにつきまして、政令も現在整備されているわけでございますけれども、今回のような水産業界ないしはその関連ということでの対応につきましては予想されておりませんので、果たしてこの事業転換法であらかじめ転換を迫る要因として私どもが考えていた事態に該当するか否かという点については、まだはっきりした結論を出せる段階にございません。したがいまして、もうしばらく事態の推移を見まして、果たして事業転換を迫られる業種がどの程度、あるいは個別の認定としてどの程度必要性が出てくるかということを見まして、関係省庁との緊密な連携をとりまして対処してまいりたい、このように考えております。
  57. 古橋源六郎

    ○古橋説明員 水産加工業系統の低利融資の問題についての御質問でございますが、私どもは今回の漁業交渉の結果、その影響を受ける度合い、そういうもの等を種々勘案いたしまして、ほかの各種業界にいまやっております中小企業金融とのバランスを考えながら、関係省庁ともよく相談の上で決定いたしたものでございます。すなわち、漁業者の場合につきましては、四−五月全面休漁ということでございますので、特に低利の融資をいたしました。さらに水産加工業につきましては、そのうち四−五月五〇%以上操業を落としたものについては通常よりも低利の融資をするし、それ以外のものにつきましては現在の中小企業金融の中でやっていただく、こういうことに制度をいたした次第でございます。
  58. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 どうもやはり実態把握、認識というのが甘いんじゃないですか。集中的に起きる問題でありますからね。全国的な業種的なケースじゃないのですよ。その基地に集中的に起きる。だから、箱でもいろいろな箱をつくるものがありますけれども、魚箱なら魚箱だけしかつくらぬわけですよ。稚内とか釧路とか根室とか、そういうところに集中的に起きているわけですよ。それをきちんと把握して対応策を立てなければ大変です。地域経済そのものが陥没しているわけでありますから、集中的に陥没するのでありますから。この点もう一度、それぞれ陳情もあるんじゃないかと思うのですが、実態は正確に把握をしてもらいたい。  同時に、金利政策というのは財政措置が伴うのであります。そういうベースでやっておるから、なかなか実態把握とそれにすきっと対応する対策がとられていないと思うのです。かつて大蔵大臣は、本会議の質問に対して、ひとつ十分その資金をわれわれは確保する、こう言いました。そういう意味で特に財政資金の対策の問題、財政対策をどうするかということがこれから具体的に対策を進める上においてのキーポイントであります。いまの予算の中で運用すると言っても、はみ出す可能性は非常に強いと思うのです。その意味で、この点については大臣ベースできちっと問題に対応する措置をとる、こういう明確な態度がなければ、現地の関係では問題がおさまらないと思うのですよ。ひとつ大臣の所見を承って、終わりたいと思います。
  59. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今回の救済対策を進めてまいります場合に、財政的な手当てがどうしても必要になるわけでございます。私は、現在の国の財政事情から勘案をいたしまして、一遍に相当額の資金をここに投入をするということは困難な面もいろいろあるわけでございますが、そこで、政府から二、三百億ぐらいの出資を願って一つの機関をつくり、それに財投の方から相当の救済に必要な資金を導入をして、緊急を要するところの今回の救済対策を進めてまいりたい。そして、後年度において一般会計の方から逐次それを埋めていってもらうというようないろいろの重要な基本的な問題がございます。     〔竹内委員長退席、山田(久)委員長代理着席〕 大蔵大臣を初め総理を含めて、政府としてこの問題は十分検討の上対処いたしたい、こう考えております。
  60. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 ありがとうございました。
  61. 山田久就

    ○山田(久)委員長代理 瀬野君。
  62. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日ソ漁業暫定協定につきまして、外務大臣並びに農林大臣等に質問いたします。  日ソ漁業暫定協定の表題及び前文、さらには第二条に、三カ所にわたって「地先沖合における」と条文が定められております。また、第一条には「ソヴィエト社会主義共和国連邦沿岸に接続する海域における」こういうように「沿岸」ということが二カ所に条文が定められております。そこで、私はさらに確認をする意味であえて質問をいたしてまいりますが、この「地先沖合」と「沿岸」となぜ異なるのか、その相違点は何であるか、この点からひとつ外務大臣、明らかにしていただきたい。
  63. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 昨日、「地先沖合」につきまして共通見解をお述べいたしたところでございますが、この「地先」の「地」というのと「沿岸」という意味は同一の観念である、このように私は思います。そういう意味で、「地先沖合」という意味と「沿岸に接続する」と——「接続する」というところと「先」というのとが似たような観念であるというふうに思うのでございます。昨日のいろいろの御論議を蒸し返すわけではございませんが、「地先沖合」という意味はそのように確定的な距離的な観念を持つものでない。したがいまして、領海が入るとかあるいは公海まで及ぶとか、そういうことではなしに、距離的観念のない意味で使用しておるというふうに御了解を願いたいと思います。
  64. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 外務大臣おっしゃったように、なるほど本件については、六月三日の当外務委員会でわが党の渡部委員の指摘によって政府の統一見解が一応出されたわけです。それによると、大事な問題でありますので、前略しますけれどもちょっと読んでみますが、「「地先沖合」という概念は、沖合いの水面をその沿岸地域との関連において一般的にとらえた概念であって、それ自体としては距岸何海里から何海里までというような明確な距離的限定を伴うものではありません。したがって、領海が常に排除されている概念ではありません。なお、日ソ漁業操業協定第一条一項で「地先沖合の公海水域」なる表現が用いられていることは、「地先沖合」が領海以遠の公海をも意味し得る概念であることを裏づけるものであります。また、海底軍事利用禁止条約第四条で「地先沖合水域(特に領海及び接続水域をいう。)」なる表現が用いられていることは、「地先沖合」が領海及び接続水域を含む水域意味し得る概念であることを裏づけるものであります。」こういうふうに述べてあります。ということは、「地先沖合」とは概念であって、明確に定義がない、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  65. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 明確に法律的な意味で定義というものはないと思います。
  66. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そうすると、前文及び第二条に規定している「地先沖合」、それに第一条の「沿岸に接続する海域における」云々とありますが、日本地先沖合いでのソ連漁獲が保障されているということになると私は思うのです。すなわち法文上は領海操業を認めるということになる。その点はどうですか、法文上。
  67. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 第二条のこの表現からいいまして、この表現領海内の操業は認めないというところまで記述はしてないわけでございます。
  68. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 認めないと記述してないということは、認めるということに法文上はなる、裏を返せばこうなるわけですね。  そこで、結局断れない、断ることはできないことになるとも言えるわけで、私はその点を国民の前にはっきりしておかなければいかぬという意味であえて確認するわけですが、法文上こういった誤解を招くようなことについては、明らかに日本政府としてはソ連に断るのか、その断るやり方というものを明らかにしてください。
  69. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この第二条の趣旨は、日本国民及び漁船ソ連邦の二百海里内に入漁いたす、そのような権利を与えることは、ソ連邦国民並びに漁船日本の沿岸水域におきましても入漁をさせる、そのようなお互いの利益、こういったことを漠然と述べておるというふうに御理解願いたいのでございます。この表現の文句から申し上げましても、前文の第四項でございますが「日本国国民及び漁船が、北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合において伝統的に漁業に従事してきたことを考慮し、」この第一条の海域において、その定める手続、条件に従って日本国国民及び漁船は入漁をする、その入漁をする、そして漁獲を行う権利というものをソ連邦日本国に与える、その与えるというのはソビエトの国民及び漁船日本国地先沖合いでやはり「伝統的操業を継続する権利を維持する」、これがバランスがとれておる、こういう意味でございまして、双方ともに地先沖合いに入ります。こういうことでございまして、この「地先沖合」ということと「沿岸に接続する海域」ということは全く同じことを指しておるのでございます。したがいまして、日本国国民並びに漁船ソ連の二百海里以内に入漁をする、その入漁の条件というものは、先方の十二海里の領海内には日本国民も入らない、そういう条件のもとに入漁いたしておるのであって、双方が相互利益のもとでお互いに入漁し合う、その趣旨を述べたもの、したがいまして、ソ日協定におきまして日本国の国内法に基づいてソ連邦が入漁する、そういう意味ソ日協定におきまして明快にこの適用水域が決められると考えるわけでありまして、この条文では領海内における操業は認めませんということは書いてありませんけれども、交渉経過並びに文理から言いまして、このことが直ちに領海内の操業を認めることであるということでは決してないと解しておるわけでございます。
  70. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 微妙な答弁でございますが、いまの問題は後々問題になりますので、そこは一応さておきまして、農林大臣の方に若干はしょって聞きますが、ソ連船は日本の二百海里内で、イワシが主でありますけれども、イワシと何をとっておりますか、簡潔にお答えください。
  71. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 イワシとサバとその他底魚が主なものでございます。
  72. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、主なる日本沿岸の漁場と期間、領海の中か外か、その点もちょっとお答えください。
  73. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いままでは三−十二海里の中で約八〇%、十二海里の外で二〇%前後、こういう状況でございます。(「違う」と呼ぶ者あり)
  74. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 領海の中で八〇%、外で二〇%ということですが、違っているんじゃないかという声もかかっております。もし間違っておれば後で訂正していただいて結構ですけれども、いずれにしても領海内でもとっているわけです。普通ソ連は六十万トン日本近海でとっている、こういうふうに言っていますけれども、水産庁の推計では三十ないし四十万トンということでありますが、量にしてみると領海の中で何十万トン、領海外で何十万トンですか、お答えください。
  75. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私、先ほどイワシのことを申し上げたのですが、三−十二海里の中で八〇%、十二海里の外で二〇%ぐらい、これはイワシの場合を申し上げたので、全体の、先ほど申し上げたサバであるとか底魚であるとかを含めますと、大体その漁獲は半々ぐらいになっておる、こういう状況になっております。  それから、ソ連が一体どれぐらいの漁獲を今日まで揚げておるか、昭和三十年ごろからソ連漁船わが国の近海に出没をしておるわけでありますが、四十六、七年ごろから相当本格的な操業に入ってきております。今回ソ日協定締結交渉するに当たりまして、この漁獲量を、具体的に年次別に統計数量をわが方に提供してもらうようにソ側に求めておるところでございます。
  76. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が限られておりますので、本論が後にありますから、ひとつ質問に簡潔に答えてください。  そこで、結局領海内で何十万トンであるから、いわゆる今回の十二海里内で日本が魚をとらせないとなると、ソ連は何十万トンの魚がとれないという計算になるのか、その答えだけでいいから答えてください。
  77. 岡安誠

    ○岡安政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げましたとおり、われわれの推定では、大体ソ連では三十万トンから四十万トンぐらい最近はとっているというふうに推定いたしまして、そのうち三−十二海里で約半分ぐらいはとって三−十二海里ではとれなくなるわけでございます。ただ、私どもといたしましては、ソ連側漁獲量のクォータを与える場合におきましては、従来の実績の算定の場合には、三−十二海里で従来ソ連がとっておりました実績を、十二海里以遠の百八十八海里、大体半分でございますけれども、それに加算をして、それを基礎として算定をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。言いかえれば、従来半分ぐらいは三−十二海里内でとっておりますけれども、今後日本漁業水域の中でソ連側に与えるべきクォータの算定の基礎としましては、やはり三十万トンから四十万トンぐらいを基礎として算定をしてまいりたいということを申し上げたいと思います。
  78. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 要するに領海の外で三十万トンぐらいとらせる、こういう意味ですか。
  79. 岡安誠

    ○岡安政府委員 漁業水域内におきましてソ連側にどれくらいのクォータを与えるかということは、過去の実績を参考にしなければならないわけでございます。その参考とする過去の実績には三十万トンから四十万トンということを考慮いたしたいということを申し上げているわけでございます。
  80. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それではそのとらせるのに、いわゆる全体に入れる全入方式か、または部分入漁許可式、いわゆる釣り堀方式といいますか、そういうふうにするのか、その点はどう検討しておられます。
  81. 岡安誠

    ○岡安政府委員 釣り堀か全入か、そういう表現は非常に正確ではございませんで、私どもやはりわが国漁業水域百八十八海里の中におきましては、わが国漁船につきましても資源保護上その他調整上から操業規制をいたしている区域等がございます。そういう点は十分私どもも考慮いたしまして、ソ連船につきましても操業規制をいたしたいというふうに思っております。  その結果、特定の海域につきましてやはり操業を認めるということになろうかと思いますが、その範囲等につきましては、現在検討中でございます。
  82. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、いろいろ申し上げたいのですけれども、一つの例を申し上げますが、実はきのう六人の参考人を呼んでいろいろ伺いました。中でも北海道漁連の兼平参考人、さらには全漁連の池尻参考人等からも強い要請がございましたが、貝殻島のコンブと取引するんじゃないかというようなことも懸念されるので、いろいろわれわれも伺ってみました。また、イワシとコンブと取引の材料にされるということになるとまことにけしからぬ問題で、政府もそういったことを考えて、政府協定については今回の協定が終わるまではそっとしておくというようなかっこうで、余り積極的でない感じを受けるのですけれども、参考人の意見を聞きますと、何としても政府間の交渉できっかけをつくってもらいたい、精神的な打撃を受けて地元住民は大変な苦しみとまたやるせない気持ちでいっぱいである、憤りを持っている。日ソ親善と言いながらも、日ソ親善友好の言葉はかけ声だけであって、まことに悩みとむなしさを感じてならない、何とかひとつ努力してほしい。現在七億円ぐらいの水揚げがあっているのですけれども、これが全部ふいになるし、三百三十隻の船が、普通ならば六月一日から出漁するわけですけれども、一切これがストップしているということで、民間協定の復活を早くしなければならぬ。しかし、政府がやはりきっかけをつくらなければどうにもならぬ。しかし、いま言ったイワシと取引されるとなるとまた問題であるということになりますので、その点十分対処しておられると思いますけれども、この民間協定の復活、これの見通し、貝殻島のコンブ協定についてどういうふうに見ておられるか、また、このきっかけをつくるために政府の方で努力しておられると思うが、その点簡潔にひとつお答えください。
  83. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 簡潔に申し上げます。  この三−十二海里問題があり、領海ソ連操業を執拗に迫ってきた経緯、これを拒否した経緯、いろいろ御承知のとおりでありまして、そういうようなさなかにおきまして、ソ連漁船領海内には入れない、しかし日本漁船は入れてくれ、こういう交渉はなかなかこれはそう簡単に割り切れるものではございません。コンブの採取業者の諸君には大変気の毒な面がございましたけれども、これらの問題はソ日協定と一連の協定が合意をいたしました上で処理いたしたいと考えておりますし、基本的には大日本水産会等を中心とする民間協定でもございましたので、そういう方向で努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  84. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、次の問題に入る前に、日米漁業協定日ソ漁業暫定協定、これはどこが違うか、全く同じじゃないわけですけれども、違うところだけひとつ簡潔に、会議録に残しておきたいので、おっしゃっていただきたいと思う。
  85. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 両者いずれも、沿岸国地先沖合い二百海里に及びますところの漁業資源に対する管轄権の行使を認めて、その具体的な規制内容規定いたしました点で全く同じでございまして、いま違うところを示せとおっしゃられました。  違うところという点で大きな問題といたしましては、まず第一に、日ソ間には領土問題というむずかしい問題がございます。その意味で、わが国が相互の関係における諸問題に関する立場を明確に留保したところの第八条の規定日ソ協定にはあるということが第一点。  それから、日ソ間ではわが方が入漁するのみならず、いずれにしろ先方漁船がわが漁業水域において入漁するという実態があります関係上、日ソ協定においてはソ連漁船のわが近海における操業を予想したところの第二条という規定がございます反面、アメリカの場合にはそのような相互の入漁という実態がありませんので、そういう規定が本文上にございません。  なお、合意議事録の中に、日本政府はアメリカの漁船に対して日本国民に同様な状況のもとに与えるような待遇を与える用意があるという意思を表示した個所があるだけでございます。  その他詳細につきましては、また御質問があればお答えいたしたいと思います。
  86. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、ソ連船は日本の二百海里内で日本の法律に従わせることができるかどうかということと、御承知のようにソ連漁船に対して漁獲割り当て量、操業区域等の決定、許可証の発給とか入漁料の徴取、検査及び取り締まり、違反行為に対する処罰、すなわち裁判権とか拿捕に対するいろいろな手数が要るわけですが、こういったこと。また、ソ連側は今回の条文で、拿捕した場合は担保を取って、担保を入れると釈放するとかいうようなことを言っておるようですが、そのことを含めて、いわば日ソ漁業暫定協定で認めているように、日本側ソ連への譲歩の裏返しの権利を今度はわが国が逆に主張するわけですが、それを認めさせるということで、全くいま言ったようなことも全部認めさせる、こういう決意で臨まれると思うのですが、そういうふうに理解していいですか、どうですか。
  87. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 わが国漁業水域に関する暫定措置法、これは法律がそういうことでこの漁業に関する規制措置を講ずることに相なっておりますから、ソ日協定日ソ協定と同じような規制を行うこと、これは当然のことでございます。
  88. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、念のためにお尋ねしておきますけれども、四島周辺で日本漁船が拿捕された場合、条約局長は昨日も、できるというのがわが方の立場である、こういうふうに言いました。なぜできるとはっきり言わなかったのかなと私答弁を聞いていて少し不本意に感じたわけです。また鈴木農林大臣は、管轄権は及びます。こういうふうに言っておりましたが、もしそうでなかったならば不平等、不公平であり、また、本協定の第二条で言う相互利益原則に立って与えられるということにならないわけでございます。そういったことで私は当然のことだと思いますが、四島周辺で日本漁船が拿捕された場合にわが日本国としてはどういうふうに対処されるのか、その点簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  89. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 四島周辺に向こうが引きましたところの二百海里の漁業水域につきましては、この漁業水域の線がソ連が行いますところの漁業規制に関する水域の限界という意味わが国はこれを認め、そのかわり領土問題に対する立場を明確に留保したというのが協定でございます。したがいまして、その漁業水域はたとえ四島周辺についてであろうと、ソ連側が行っております現実規制というものを前提にいたしまして、協定において他の漁業水域と同じような操業条件及び細目を取り決めたものでございます。その中には、先方漁業資源の管理、保存を確保するために法令の遵守を先方が取り締まる、その違反がある場合には裁判管轄権をも行使するという点を含みまして、それらの条件を他の水域と同じように適用するということを協定の上では認めたわけでございますから、その限りでその規則に違反したわが方の漁船が拿捕され裁判にかけられるというようなこと、これはないことを望みますけれども、そのような事態がありました場合に、これはわが国としては協定でこれを認めたわけでございますから、これを認めないというわけにはいかないだろうということを申し上げたわけでございます。ただ、そのことによってわが国の領有権主張が害されてはならないということで第八条に明確な留保を置いた、こういうことでございます。
  90. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、施政権と施政についてちょっとお尋ねしておきたい、明確にしておきたいと思う。  政府わが国北方四島には施政が及んでいないと言っていられるが、施政権と施政を混同しておられると思うのです。最近はだんだん明確になってきたようですが、私が本年二月の予算委員会外務大臣農林大臣に質問したときにこれが混同して、発言の中に間違いがあったということで後ほど取り消しをされた経緯がありましたが、思い出していただきたいと思うのです。  そこで、四島が日本国固有領土なら、この四島の施政権はあると言えますか、明確にお答えください。
  91. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 仰せのとおり、四島に対する施政権わが国が保有するということでございます。
  92. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そうであるならば、端的に申してソ連のこの施政というものは不法かまたは無法ということが一応言えるのではないですか、どうですか。
  93. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 わが国施政権があるということは、裏返せば、先生のおっしゃられるとおり、ソ連側のそこにおける占有は法律的な根拠なくしてそこを占有しておるという意味で不法な占拠である、こういうことになります。
  94. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日ソ漁業暫定協定ソ連施政権を認めたことにはならない。そこで、ではソ連施政権を認めないで施政を認めたということでございますか、そういうふうに理解していいですか。
  95. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ソ連施政権を認めたことにならないように第八条の留保を置いたわけでございます。ただ、現にソ連漁業規制をあそこにおいて行っておるという事態を前提にして漁業操業に関する現実的な取り決めを行ったのが今回の協定でございます。
  96. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 こんな変な例が外国にもあるかどうか、あればひとつお示しください。どうですか。
  97. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 突然のお尋ねでございますので私も確信はございませんが、この北方四島のように二つの国の間に双方の領有権主張が重複しておるという水域があって、その水域の周りに双方が漁業水域を設定するという例は私はいま直ちには念頭に上がってまいりません。また、そのような例がありましたらいずれの機会に御報告したいと思います。
  98. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間もあれですから、その例があれば後刻ひとつ調べて知らせていただきたいと思います。  そこで、ついでに言うと、締めくくりの意味で念を押すために言うのですが、ソ連日本二百海里内操業は施政、施政権ともに日本のものと思うが、そのように理解していいですか、どうですか。要するに、ソ連北方四島に二百海里の線を引いていろいろと言っておりますけれども、私はこの四島についても、当然いまいろいろ御答弁いただいた結果からして、日本としては施政も施政権もともに日本のものである、こういうふうに理解していいか、こういうわけです。
  99. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 四島はわが国固有領土でございます。さればこそ今回の協定においてもその立場が崩されないように第八条をもってこの立場を留保した次第でございます。
  100. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その点は明確に答えていただいて了解しました。  そこで、さらにお伺いしますが、日ソ間に暫定協定ができたからには——最近もまた拿捕が起きたりしております。拿捕された隻数だとか、現在拿捕されている人員だとか、総トータル等いろいろお伺いしたがったのですけれども、時間がないので後日またデータをいただくことにしまして、、今回の日ソ漁業暫定交渉で大臣は、この拿捕についても早く釈放しろ、また船も早く日本に返せと強力に言っていただけた——ところが、日ソ漁業交渉のこの交渉をするためには、そういったものをあわせてやるといろいろ困難が伴うという配慮か何かわかりませんが、今回は余りそういったことに触れていないのであります。そういったことで、私はこの拿捕船員を早く返すのは当然であるという観点から、あえて外務大臣、また関係当局にお伺いするわけですけれども、国内法であるならば、新しい法律が施行されたならば、その施行と同時にその法律に従って行われることになるのは当然であります。よって、古い法律は改正されるということで、自然に消滅するのはもう常識でございます。今回の日ソ漁業暫定協定によって前の法は改正されたわけでありますから、今回、いままで拿捕され、または抑留されている漁船員等は当然日本に返すべきである、こういうふうに素朴にお伺いしたいわけでございます。そういった意味で、強力に今回、ソ日漁業協定がいずれ行われるわけですけれども、この協定に当たってはひとつ強力な交渉をして、早く拿捕された漁船並びに漁船員を釈放するように迫るべきである、かように思うわけですけれども、その点どういうふうに政府理解しておられるか、お答えをいただきたい。
  101. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私はこの日ソ協定を調印いたしました直後におきまして、イシコフ漁業大臣に、わが国の漁民諸君を直ちに釈放してもらいたい、こういうことを強く要請をいたしたわけでございます。イシコフ大臣は、これは自分の所管であれば直ちに処理ができるが、沿岸警備隊の所管にもなっていることであり、自分からもいまの鈴木大臣の要望を伝えて善処方を要請しよう、こういう約束をしてくれておるわけであります。また、今回ジュネーブに石田労働大臣が行かれて、その帰途モスクワに寄ることになっておりますが、この石田大臣に対してもソ連の首脳に会った場合にはくれぐれもこのことをよろしく頼むということを要請をしておいた次第でございます。
  102. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大臣、これはまた将来のことですけれども、地元の漁民とも相談せにゃならぬことですが、一つの提案として参考にお聞きいただきたいが、ソ日協定でいまの拿捕漁船員等の送還について強力に迫ると同時に、現在日ソ漁業暫定協定減船、休漁をやむなくされた日本の船がたくさんあります。漁船員だけでも一万五千人以上おるであろうと言われておりますが、こういった方たちの救済意味で、ソ連二百海里内で魚をとるために、いわゆるソ連の旗を立てて、漁船員が遊んだり、船を遊ばせたりしてさびついても大変ですから出漁させる、そしてとった魚は向こうでちゃんと計量して、その魚を適正価格で日本が買い受ける、そして急激に相当たくさんの船も休み漁船員も休むのですから、そういうことのないようにそういったこともいろいろ検討し、地元とも相談して、急激なカーブが切れないわけですから、何とかそういったことも考え交渉をして、そして日本漁船、漁民を守るためにいろいろアイデアを考えてやるべきだと思うが、その点大臣どう思うか、ひとつあなたの見解を若干聞いておきます。
  103. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今後の日ソ関係漁業の枠組み、将来に向かっての関係で、ソ日協定基本協定、そういうものを締結いたしますと同時に、いま御提案になったようなこと等につきましても私もいろいろ構想を練っておるところでございますから、いまここで具体的なことはお話しできませんけれども、いろいろ今後対処の方法を考えてまいりたい、こう思っております。
  104. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 では最後に、もう時間が参ったので締めくくりをいたしますけれども、この連合審査のわずかな時間でこの大事な問題をやりとりするということは困難なんですけれども、はしょって大事なことを今後のために私申し上げてまいりましたが、最後の締めくくりとして外務大臣にお伺いしておきます。  御承知のように、先日のわが党の渡部委員の質問に対してもいろいろお答えをいただいたわけですけれども、今回の交渉はまさに長い九十日に余る交渉でした。鈴木農林大臣は、避けて通れない、通って避けるというようなことを先日も三日の委員会で私の質問に対して答えられましたけれども、今後の交渉に当たっては、ソ日漁業暫定交渉も早くやるべきでありますが、秋の国会にかけるということになりますと、十二月三十一日までの暫定協定であっても相当長い期間を要しますので、八月、九月、十月などと言わずに、六月終わったならば七月からでも即座にこの基本協定長期協定交渉に入らなければ間に合わぬじゃないか、相当いろいろな問題が起きてくる、私はこう思う。そういった決意をお聞きしたいし、一刻も早く、七月からでも始めるべきだというように思う。と同時に、この暫定協定が終わりまして本協定に入りましたならば、この第八条で領土問題等、これはいろいろありますけれども、害しないということで、玉虫色で、まさにこれは歯どめにならない、こういったことから、日ソ平和条約交渉に直ちに取り組むという内容の書簡を交換してやるべきである、内容はもう時間がないので申しませんけれども、そういった決意で早急にやらなければこれは手おくれになる、私はかように思うわけですけれども、その点外務大臣から御見解をお聞きしまして、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。
  105. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ソ日協定に引き続いて長期協定に急いで取りかかれ、御趣旨は全くごもっともでございます。適用水域の問題につきまして鈴木農林大臣が大変御苦労なさいました。三カ月に近い間の御苦労をなさったわけでございます。二百海里時代になりまして、領土問題未解決であるがために大変な御苦労をおかけをしておるわけでございます。したがいまして、私自身といたしまして不退転の決意を持ちまして、未解決の問題を含みますこの平和条約交渉、定期の外相会談の機会にこの問題につきまして取り組みたい、このように考えております。
  106. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  107. 山田久就

    ○山田(久)委員長代理 稲富稜人君
  108. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、与えられた時間がわずか二十分間でございますので、詳細に承っておりますと時間がありませんので、ただ日ソ外交の基本的な性格に対しまして、外務大臣に二、三の質問をいたしたい、かように考えるわけでございます。  ただいま議題になっております日本国政府ソ連邦政府との間に結ばれました日ソ漁業暫定協定内容を私たち検討いたしますと、その検討を深めるほどこれに対する疑惑と将来への不安と不満というものを感ずる、さらにまた、一方には一種の義憤さえ感じざるを得ないというような気がしてならないのであります。  その理由は何であるかというと、この協定ソ連の一方的な主張のみが主体をなして、わが国はこれを押しつけられたというような感じがするからであります。その理由は、御承知のとおり、本協定はその前文において「千九百七十六年十二月十日付けのソヴィエト社会主義共和国連邦最高会議幹部会令に規定されている」云々、最後にソ連の主権的権利を認めると明記してあるからであります。  そのような前提のもとにこの協定をなされ、ここまで締結することに進められました鈴木農林大臣の苦労というものは並み大抵ではなかったのだろうというその努力に対しては、私はいささかも不満を持つものではなく、むしろこれを高く評価して感謝する気持ちでいっぱいであることは当然でございます。  そこで私は、ここで外務大臣に特に申し上げたいと思いますことは、今回のこの漁業交渉がかくも困難をきわめた大きな原因は何であったかというと、従来わが国がとってきたソ連外交に対する弱さあるいはソ連考え方に対する読みの甘さというものが大きな原因ではなかったのであろうか、何だかソビエトに対する外交交渉というものが敬遠されておった、こういうようなことがあって、従来の外交に対する非常な弱さというものがついこういうような状態に置いたのではないかとさえもわれわれは考えざるを得ないのであります。     〔山田(久)委員長代理退席、竹内委員長着席〕  私は、その具体的な例を示しますならば、今回の交渉鈴木大臣が最も苦労なさったと思われますのは、ソ連わが国領海内における漁業の継続を強く望んだことであり、これをいかにして拒否するかということに当たって鈴木農林大臣が非常に努力をされたということであります。ここで、私たちが考えなければいけないことは、ソ連領土に対しましてもあるいはまた漁業操業に対しましても、相手方の立場等は何ら考慮することなくしてみずから既成事実をつくり上げ、これを既得権であるかのごとく主張する、そして話を進めてくる、こういうようなことがあるからであります。  何ゆえにソ連がこれを強く主張したかということは、これは具体的に申し上げますと、ソ連は昭和四十八年十月以来日本近海、すなわち日本国地先沖合いにおいて無謀な漁業操業を始めたのであります。これを詳細に申し上げる時間がありませんので、結論だけを申し上げますと、これは農林省の調べによりますと、昭和四十八年度十月から三月までの六カ月、四十九年度十月から三月までの六カ月、五十年度は五月から三月までの十一カ月、五十一年度は六月から十二月まで七カ月問、すなわち三十カ月の間にこれは判明した分ばかりでございますが、これだけでもわが国の漁民がソ連漁船のために漁具、漁船の被害を受けた件数というものは千七百九十三件に及んでおります。その被害総額は実に五億六千四百十九万円に及んでおるのであります。それのみか、彼らの無謀な操業のために、あるいは内臓が捨てられ、頭は切り捨てられる、こういうことで漁場は汚染されるという事実、傍若無人な振る舞いというものは全く目に余るものがあったのであります。よって私たちは、政府に対してソ連のこの不当な行為に対してはしばしば強く抗議するとともに、わが国の漁民に与えた損害に対しては当然被害の補償を要求すべく強く要望してまいったのであります。それと同時に私たちは、一日も早く日本領海十二海里を設定して、四十九年カラカスで開催されました海洋法会議に臨む際にも、すでにこれを設定して臨むべきであるということを主張したにもかかわらず、政府は何に遠慮をされたのか、これさえも実現することができなかったのであります。そして、今回のこの領海法の制定と相なったのであります。そういう中にソ連漁船団はますます操業を、理不尽な行為を続けてまいっている、漁民への被害はますます増大するのみの、こういう結果になったのでございます。  それで、そういうことが今回の条文を見ましても、協定の第二条に「日本国地先沖合における伝統的操業を継続する権利を維持するとの相互利益原則に立って与えられる。」とまで明記されたことは、全く以上述べましたようなソ連の行為に対する日本政府の従来とり来った外交の弱さを物語ったものである、かように申し上げましても当然ではないか、こういうことさえも私は考えるのでございます。  私は、これに対して政府はどういうような反省を今日なさっておるのであるか、またこういうような無謀な数年間にわたるソビエトの日本近海における操業に対しまして外務省はいかなる考えを持たれておるのであるか、またこれに対していかなる抗議をなされたのであるか、その抗議の結果はどういう結果になっておるのであるか、その経過があればこの際承りたい、こういうことをまずお尋ねしたいと思うのでございます。
  109. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 協定の第二条で、日本が十二海里に領海を拡張しても、その領海内にソ連は入ってくるのではないか、それを認めたのではないかというようなお話でありますが、そのようなことは全くない。たびたび申し上げましたように、日本の国内法制を先方が認めなければ、そもそもソ日協定には入れないということでございまして、その点は御心配のないようにお願いをいたしたいのでございます。  なお、領海を十二海里に広げることが遅かったではないかというような御批判に対しましては、ここで反論を申し上げることもできませんが、ソ連漁船が近海におきまして大変にわが沿岸漁民に被害を与えるということが、領海法をお決めいただきました最大の理由でございますから、したがいまして、どうしても領海の中に入る操業というものは一切認めないという態度ソ日協定には臨む、これは鈴木農林大臣もたびたび言明をされておるところでございます。  また、ソ連船の与えた被害につきまして、これは一昨年の十月に、このような被害に対しまして日ソ漁業操業協定というものをつくりまして、その手続等を決めたわけでございます。なかなかこの手続に時間がかかりまして、損害賠償の手続が遅々として進まないのはまことに残念でございますけれども、これにつきましては、一層促進をできるように努力をいたしたい。また被害が発生いたします都度、これはたびたびソ連に対しまして抗議を申し込んでおるところでございます。その詳細の御説明でございましたら、政府委員の方から御説明を申し上げます。
  110. 稲富稜人

    ○稲富委員 政府委員の方承っておると時間がありませんので、それはもうやむを得ません。ただ、いままで非常にそういう交渉が手ぬるかったということだけを指摘して、そういう問題に対して、本当に今後外務省として反省をして、今後対処してもらいたい、私はかように考えるわけでございます。  ことに、ただいまの大臣の御答弁にありました二条の問題でございます。これに対しましては、鈴木大臣からも漁業相との間に一切了解ができておるから、再びこれをソビエトが主張するようなことはないだろう、こういうようなことを承っております。もちろん私は、鈴木農林大臣のその言葉を信じたいし、また信ずるものでございますが、ただ、私がここで申し上げたいことは、今後のソ日交渉において、また再び来年度において締結されるであろう日ソ漁業協定交渉に当たって、十分こういうことに対しては心して、さらに今後日本立場を強化するような強力なる交渉が必要ではないか。それは何となれば、いま申しましたように、両大臣との間には了解事項になっておっても、今回のこの条文の基本的な問題が、すなわちソ連邦最高会議幹部会令によって基本的になされている、こういうことを考えますと、その幹部会においての問題がありますから、両大臣の了解事項で果たしてその問題が一切、二条というものがなくなってしまうということを解釈することができるのであるかどうか、ここに私たちは非常な疑念を持つわけでございますので、こういう点も考えながら今後の交渉に対しては、ひとつ強く当たっていただきたいということを、私はこの際申し添えておきたいと思うのでございます。  さらに、第二の問題に対して申し上げたいと思いますことは、元来日本の外務省のソ連に対する考え方に、やはり非常にソ連の状態に対する読みの甘さがあったのではないか。たとえば、わが国漁業交渉では一切の領土問題をたな上げにして、漁業だけの問題としてこれを解決する考えで臨んで、よってソ連側領土問題は一切解決済みである、日本領土問題を避けて交渉するから、これをいいことにしてソビエト側としては、領土問題は日本の一部の人たち主張であって、全国民主張ではないとさえ言っておるのであります。今回の交渉において、ソ連がいかに領土問題に執念を有しておるかということは、政府は明らかに今回はこれを認識されたことであると思います。  すなわち、この協定の第一条において、この協定は、一九七六年十二月十日付のソ連邦最高会議幹部会令第六条及びソ連邦政府の決定に従って定められる云々、こういうことが明記されておるわけであります。  ソ連邦最高会議幹部会令のこれを見ますると、これは詳細に申し上げておると時間がありませんから、その主たる部分を申し上げますと、「ソ連邦沿岸に接続する海域の生物資源の保存、再生産ならびに最適利用に関しソ連国家利益の保護のための措置を緊急にとる必要があることを考慮し、ソ連邦最高会議は次のとおり決定する。」すなわち「ソ連国家利益の保護のための措置」というものが、このソ連邦最高会議幹部会の決定であるのであります。しかもこの第六条には、「ソ連邦沿岸に接続する具体的海域についてとられる生物資源保存及び漁業規制のための暫定措置の実施の条件及び期間、本幹部会令の諸規定の遵守状況の監督措置の確定ならびに本幹部会令第二、三、四及び五条の適用方法はソ連邦大臣会議が規定する。」ということをはっきり明記されておるのであります。  それで、鈴木農林大臣は八条を挿入された、こういうことによって第一条のこれも非常に弱まってきた、こういうことをおっしゃっている。ただいま申し上げました第二条の問題もそうなんです。しかしながら、これはイシコフさんはどういう漁業大臣としての権限があるか知らないが、ソ連邦大臣会議の規定であって、これをなくするというならば、これが効力を発するものであるけれども、大臣会議が規定していない以上は、この条文の効力がなくなったものだということを果たしてここに断定することができるかどうか、この点に対する私は外務大臣考え方を承りたいと思うのでございます。
  111. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 大臣会議の決定を、第一条の適用水域におきまして日本はこれを認めたのでございます。しかし、これは漁業水域として認めたのであって、領土問題、最大の未解決の問題である日ソ間にあります領土問題につきまして、両国政府立場を害さない、こういう趣旨でありまして、漁業水域としては第一条で認めた、こういうわけでございます。しかし、その漁業水域を認めたからといって、領土問題を認めたことではないんだということが、八条に示されているわけでございます。
  112. 稲富稜人

    ○稲富委員 その点が外務大臣考え方に非常に読みの甘さがあるのではないかと私は思うのでございます。このソ連邦最高会議幹部会令というものは漁業の問題だけを規定したのではないのですよ。これは領土まで含んで規定したものだ、私はかように考えます。この幹部会令によって、これを基本として今回の漁業協定が結ばれておる。それだから、この幹部会令の基本というものを考えるときに、この解釈をなくして、ただ漁業問題だけですべての問題が解決したのだ、領土問題は解決したのだ、こういうような解釈をすること自体に非常に観測の甘さがあったのではないか、先刻から私が申し上げているのはそこなんです。この問題は、恐らく今後の条約その他において根を引くことであろうと私は思う。そういう点から、私は念を押してこれをお聞きしておるわけなんです。私は、このソ連邦最高会議幹部会令というものは漁業の問題を言ったのではなくして、領土まで含んでの幹部会令である、こう思いますがゆえに、私はそう解釈するのでございます。それでは、このソ連邦最高会議幹部会令というものは漁業だけに限ったものだという解釈を政府はしていらっしゃるか、この点を承りたい。
  113. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 第一条に掲げておりますのは、漁業海域を決めておるわけであります。今回の協定におきまして第一条で決めておりますのは、日本国民並びに船舶がソ連の沿岸に接続する海域、そこに入漁をする海域並びにその手続を決めたのが第一条でありまして、それ以上のことは第一条には一切決めてないわけでございますから、それは御心配はないと思います。
  114. 稲富稜人

    ○稲富委員 どうもこればかり言っておると時間がかかりますから省きますけれども、これはちゃんとこの協定の頭書きに、「千九百七十六年十二月十日付けのソヴィエト社会主義共和国連邦最高会議幹部会令に規定されている」という、これを前提としてこの協定というものが結ばれているということ、であるならば、いま申しました連邦最高会議幹部会令というものが漁業だけをうたったものではないということ、これは私が先刻申し上げたように、これは「ソ連国家利益の保護のための措置を緊急にとる必要があることを考慮し、ソ連邦最高会議は次のとおり決定する。」という、すなわち「ソ連国家利益の保護のため」ということをはっきりうたってあるじゃないですか。これから考えますときに、この問題を度外視して、これで漁業問題が解決したから領土問題も解決したのだというような解釈はされ得ないのではないか、私はこういうことを言っておるわけなんでございます。しかし、この問題だけを議論しておりますと、もう時間が来ましたので、これはいずれまた機会を改めまして私は申し上げたいと思うのでございます。  最後に私は、この際ひとつ申し上げたいと思うのでございますが、私が最もこの際遺憾に思いますことは、わが国は今日までソ連に対して、どこまでも友好善隣の相互信頼の上に立って交渉を進めてきたことは御承知のとおりであります。果たしてソ連側が、この日本の気持ちを本当にそのまま受け入れてわかってもらえておるかどうか、ここに私は非常に疑点を持つわけなんです。この際ひとつ、領土問題は全日本国民の統一した願望であるということを十分ソ連邦に知らしめる必要が政府にあると私は思います。それとともに、領土に対しましては国民考え方を統一すべきである。かりそめにも閣僚間において違った意見をするような認識を持った者があるというようなことさえも言われるということは、これは今後の領土問題解決のためには最も遺憾なことであると私は思いますから、政府は責任持って、この領土問題に対しては統一した見解と、さらにこの領土問題を死守することは日本国民の全体の願望であるということをソ連に徹底させること、そうすることによってこそ、初めてソビエトと日本との隣国としての日ソ親善関係が永久に守られ、相互利益の上に立ってともに国の発展に寄与することができるということを私たちも考えソ連もまたこれを考えてもらうことに努力をするような、かような緊密なる外交を日ソ間に進めることが必要である、かように私は考えるわけでございますが、これに対する外務大臣としての所見をひとつ承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  115. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま稲富先生がおっしゃいましたこと、私ども全くそのとおりの考え方をいたしております。領土問題につきましては、これはもう戦後三十一年になります今日までに解決を見なかったこと、これはまた容易ならぬ問題であるということも物語っておると思います。わが国民の本当の悲願であるとも思いますが、ソ連といたしましても領土につきましては大変な執心を強く持っておる国柄と聞いております。したがいまして、これは容易ならざる問題でありますけれども、この問題につきましては全国民の悲願、この問題の解決のために全身全霊を打ち込んで交渉に当たりたい、ただいまの御説は私ども全くそのとおりに感じておるところでございます。
  116. 稲富稜人

    ○稲富委員 いろいろまだお尋ねしたいこともありますけれども、時間がありませんので私の質問をこれで終わります。
  117. 竹内黎一

  118. 津川武一

    津川委員 鳩山外務大臣にひとつお尋ねします。  私たち今度の暫定協定に賛成して日本漁業を守るつもりでございますが、それについてもやはり気になるのは領土の問題です。向こうは決定済み、もう片づかないものは何もない、日本は未解決、こういうことでいままでやってまいりました。この点で、今度の八条でそこのところを解釈できるというので、私たちこれを武器に戦うつもりですが、いままで向こうは決定済み、こっちは未解決、それでやってきた。これで一つの平衡があったわけです。今度は暫定協定の一条で向こうの線引きを認めたわけです。いままではこれで平衡してきたのに、日本が線引きを認めたという新たな事態が加わったわけです。したがって、領土の問題は後退したのじゃないか、こんなふうな心配を国民も学者も持っているわけです。この点、そうでなければいいのですが、外務大臣の正直な所見を伺わしていただきます。
  119. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 二百海里の漁業水域の問題が出ましてから、この北方四島の取り扱いが最大の問題である、これは当初から、昨年の十二月十日にソ連の最高会議幹部会令が出ましたそのときから、これは最大の問題になることを覚悟いたしておったわけでございます。戦後領土問題が未解決であるがためにこれは最大の問題になるわけでございますが、そこで今回鈴木農林大臣がほぼ三カ月近い期間をかけられまして、イシコフ漁業大臣と本当に大変な折衝をしていただいた。その間に、国会におかれましては超党派議員団の訪ソをしていただく、また全国民のこの問題についてのバックアップ、この国民全体の要望であるということが、私は、ソ連政府にもずいぶんこれは理解が進んだとさえ思うのでございます。そのような長い問の折衝、また全国民のバックアップということがありまして、今日やっと第八条というものに決着を見たわけでございまして、そういう意味で、この領土問題が未解決であるということがここで大きく取り上げられたとさえ言えると思うのでございます。したがいまして、長い間の経過を見て、第一条、ソ連が国内法で二百海里を施行したその国内法は認めなければ日本漁船は出漁ができない、こういう関係にあります。したがいまして、漁業としてはこれを認めたけれども、領土の問題としては一切認めないんだ、従来の立場を貫いたということは言えると思いまして、今回この漁業関係が一段落をした暁におきまして、領土問題に真剣に取り組んで、この二百海里時代になりました機会に、この領土問題の解決、そのために一歩でも前進ができますように努力をいたしたい、こう思っておるわけでございます。
  120. 津川武一

    津川委員 外務大臣、向こう側は解決済み、未解決のものがない、こっちは未解決だ、これで平衡を保っておったわけです。それに対して、魚に関するだけだけれども四条、五条、六条で向こうの主権だ。前文は向こうの主権をはっきりうたってある。ここで認めた。したがって領土問題でわれわれの方が後退したのではないか、正直なところ。したがって盛り返すとすれば、今度ソ日暫定協定の第一条に一われわれ共産党は千島全島が日本のものだと思っているわけです。政府は歯舞、色丹、国後、択捉、四島だけと言っているが、仮に四島に限ってみる。そこで四島にはっきりした第一条で線引きすると、初めて、いままでの解決済み、未解決のものはない、こういうように言うソ連と、われわれは未解決だと言うこの平衡がもう一回保たれるのではないか。向こうはすでに第一条で一つの陣地を築いた。われわれはそれを取り戻すためにソ日暫定協定ではっきりとそこのところをやらないと平衡が失われてくると思うのだが、この点はいかがでございます。
  121. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 領土問題といたしまして、漁業としての協定がいかようになりましょうとも領土問題には一切影響を及ぼさないと私は考えます。しかし、漁業問題といたしましても、北方四島水域漁場日本としても大変大切な漁場であるわけであります。漁業問題といたしましても、その北方四島周辺の海域というものにつきまして私は大きな関心日本としては持たなければいけないものと思います。したがいまして、いまおっしゃいましたソ日協定におきまして、その日本としての線引きが四島にも及ぶ、これはソ日協定日本として努力をする、また現行の暫定措置法におきましても当然ここは線引きをしてあるんだ、こういう観念でございますから、したがいまして四島周辺の水域というものは、一般に相打ちというような言葉が言われておりますけれども、日本としては当然日本水域として考えるべきである。  それで二百海里の時代に入りまして、日本が二百海里の体制を敷く前に先方が最高会議幹部会令というもので昨年の十二月十日に先方水域を先に引かれたという前後の関係ができたわけでございますが、日本としては、五月二日に成立をいたしました暫定措置法によりまして日本漁業水域であるということを示したわけでありますので、国会のお決めいただきましたこの法制の枠内におきましてこれからのソ日協定に臨むというのが現状である、こう考えておるわけでございます。
  122. 津川武一

    津川委員 もう一回繰り返してみます。向こうは閣僚会議の決定できちんと歯舞も色丹も国後も択捉も北千島もわがものなりとしているわけです。私たちの方が相打ちにするとすれば、共産党は先ほど繰り返したように千島全島ですが、仮に政府立場に立つとした場合、四島に明確に引いてこそ相打ちになるわけです。向こうは明記しておる。したがってこれを明記できるかということなんです。そうでないと相打ちにならない。そうでないと後退になる。この点はいかがです。
  123. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この点は鈴木農林大臣からお答えいただいた方がいいかと思いますけれども、日本の五月二日にお決めいただきました暫定措置法におきましては、これは日本領海の基線になります沿岸から二百海里につきまして暫定措置法として漁業水域を設けたわけでございます。これは具体的な線を、適用する場所と逆に適用しないところを政令で定めるようにいたしましたので、これは制度としての決め方であって、ソ連邦のように適用するところを決めていくやり方と、全体に決めて適用しないところを決めるという決め方の差でございますから、観念的には違いがないものというふうに考えます。
  124. 津川武一

    津川委員 これはあした寺前委員が総理と詰めることにして、私はその点が非常に心配であるから申し上げたのですが、問題を進めます。  今度は鈴木農林大臣に。私たち国民の栄養が戦後かなりよくなってきた一番の原因は、たん白質をとれるようになったからです。特に動物性のたん白質の中で魚のたん白質、貝のたん白質が大きな役割りを果たしている。動物性のたん白質、畜産の豚や何かのたん白質、脂だとコレステロールがうんと多くなる。植物性のたん白質だとコレステロールが少なくなる。魚はその中間にあって非常にいいものなんです。この中で、北洋漁業に依存しておるところが相当大きくなって、これが仮に七十万トンでも減ると、やはり国民の栄養を落とすわけにいかないから輸入せざるを得ないと思いますが、輸入がふえると思いますか。
  125. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 津川先生は医学の大家でございますから、このたん白食糧の中で魚肉たん白が健康上非常に貴重なものであるという御指摘は全くそのとおりでございます。  そこで、この厳しい二百海里時代を迎えまして、わが方が海外の漁場でとっておりましたところの四百五十万トン前後の漁獲量がどうしてもこれは削減を受けざるを得ない、残念ながらそういう状況下にあるわけでございます。これをいかにして補っていくかということが今後の水産行政、漁業行政に課せられた重大な課題だ、こう私は心得ております。  そのために先日も御指摘がありましたが、現在利用されておる多獲性の魚種で本当に国民の栄養に直接供せられておる可食部分というものは非常に少ないわけでございます。相当のものがミールなりあるいは海洋性のたん白質として流失されておる。ロスが多い。こういうものをできるだけ今後加工技術、保蔵その他の問題を十分開発しまして、最高度に利用するという問題が一つございます。と同時に、やはり今後の未開発の漁場の開発の問題が一つございます。それから基本的にはやはり日本列島周辺の資源をふやし、漁獲量をふやしていく、自分の畑を大いに耕していく、これがやはり重要な問題であると考えます。そうしてなお足らざる分、相当今後の削減等で必要になってくるわけでありますが、日本の沿岸漁民等と競合しないように、圧迫しないような方法で秩序ある輸入を図っていく、こういうことを総合的に進めてまいる必要がある、こう考えております。
  126. 津川武一

    津川委員 そこでその輸入ですが、農林大臣はこの間、スケトウとイワシのバーターなどの取り扱いで、大手にはやらせない、全漁連や道漁連などの生産者団体に一本化する、そういう人と相談して輸入していく、こう言っております。これは私、正しいと思います。私たちもこれを支持していきたい。しかし、大洋漁業が道漁連と提携して漁業施設プラントとのバーターを行う動きが報ぜられております。こういうことは十分御承知だと思いますが、こうなると大手がまたのさばり出て大変なことが起きます。現にまたアラスカでは、大商社などがスジコの買いあさりに殺到しておるために相場がかなり暴騰しておる。大企業がかなり大きな役割りを果たすとこういうことになります。  そこで一つの事実ですが、ニュージーランドのイカ、五月十二日現在で日本全国で五十八隻入船しております。この中で三十七隻が八戸港。五月二十一日に八十四隻が日本に入港している。ニュージーランドのイカをとって積んできておる。このうち五十七隻が八戸なんだ。したがって、輸入されたイカの流通の中心が八戸、イカの値段を決めるのが八戸なんです。そこで水産庁、ニュージーランドのイカの八戸での入札されるときの値段の動きを覚えていますか——覚えてなければ私の方からやりますか。これは三月の十日に、いろいろ大きさのいかん、種類によっても違いますけれども、一ケース三千六十一円、四月八日に四千三百五十円、五月の初めごろになってくると約四千円。どうしてこんなに上がっていくかということなんですが、ここには、いろいろのものがある中で、ニュージーランドのイカを買い付ける買い受け人があるわけです。このうち大洋系、日水系、極洋系、東食系と分けると、入札しているのは四月で言うとこの四社で五七・五%、五月で五三・〇%、これがつり上げるのです。八戸に集中的に集まってくるのを、これの半分以上を大手がやる、そして管理価格をつくってしまう、こういうことになりますので、これから輸入する場合を大手商社に扱わせないという大臣の方針は正しいし、この大手商社にメスを入れなければ、解明しなければ問題は下がってこないと思います。こういう点で八戸、釧路にはかなり問題がございます。八戸のスケトウのすり身一次加工の工場十九、八工場が大洋漁業系、六工場が日水系、それで一日に生産される能力が四百六十七トン、このうち大手が四百二トンなんです。在庫保管量能力でいくと、全部で五万二千百九十六トンある中で大手だけで四万四千トン。これが管理価格をやるものだから、午前中の外務委員会で話されたように値段が上がる。この大手をこんなふうにはびこらしておくことに対して、政府方針を聞かしていただきたいのです。大臣いかがでございますか。
  127. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まず、先生はイカの値段が上がっているということで日付別に取引価格の御提示がございましたけれども、御承知のとおり昨年来イカは、日本近海のイカが非常に不漁でございまして、現物が非常に少ないということがまずあります。で、それ以外は大体同じようにニュージー等からとってくるわけでございますが、このイカ船は大体普通は一ぱいとか二はいを持っている船主によって運用されているわけでございまして、これはまあ公正な価格でいろいろやられております。先生お話しのように、大手水産会社の一部が遠洋のイカ釣りと提携をしている事例も確かにございまして、そういう場合には提携の船主から直接イカを買い取っているという例もございます。ただ私どもの調査によりますと、この場合の買い取り価格は、その買い取り日当日の全国の産地市場での代表価格を基準として決済がされているというふうにも承知いたしておりますし、また、買い取られたイカにつきましては、半分程度は大体消費地の市場に直ちに放出し、販売をいたしておるというのが通例であるというふうに聞いております。  いずれにいたしましても、私どもそういうような提携関係があることは承知いたしておりますけれども、それによって価格が不当に操作をされているというようなことは聞いていないわけでございます。
  128. 津川武一

    津川委員 水産庁長官、現地に行って調べて報告してほしいのです。ニュージーランドのイカが上がるのは、ずっと大体コンスタントに船が入ってきていて、三月の初めには三千百円なんですが五月になって一回四千三百円に上がって、それが高値安定でいま四千円前後なんです。だからこれは、どうして管理価格がこうなるかというと、そこのところに大手がこれだけのシェアを占めているからなんです。したがっていまの岡安長官の答弁はとんでもない答弁なんです。現地に行って調べてここの委員会にもう一回報告してもらわないと私は承知できません。このことを要求して質問を終わります。
  129. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いまの津川さんの御質問には二つ問題があります。  一つは、ニュージーに出漁をしておる漁船、これは大型イカ釣り漁船ではございますけれども、大企業ではございません。まあいわば中堅の日本漁業者である。その諸君が八戸の市場で水揚げをして販売するわけでございます。この諸君からいいますと、長途の航海をやり、高い燃料をたいてやっておるわけでございまして、私はそういう意味で魚価がこの漁業経営を賄うような魚価であることが望ましい。問題は、その買い取ったものが今度は市場へ出て暴利をむさぼるかどうかというところに問題がある。産地における価格の問題ではない、こういう点を分析してやらなければいけない、こう思うわけでございます。
  130. 津川武一

    津川委員 はい、結構です。
  131. 竹内黎一

  132. 菊池福治郎

    ○菊池委員 私は外務大臣並びに外務省の関係の方々に二、三の点をお伺いいたします。  今回の漁業交渉は、鈴木農林大臣の非常な御苦労にもかかわらず、大変難航した困難な交渉でございました。しこうしてその結果も、結論的には必ずしもわれわれを十分に満足させるものではなかったということは、いろいろ交渉のむずかしさというものに原因があるわけでございます。もちろんソ連の側に大部分の問題があったと思うのですが、そういう外交の背景というか、環境というか、そういう問題について一、二お伺いしたいと思います。  ソ連側のいろいろな事情というのは、たびたび言われておるように、ソ連自身ECその他で漁獲高が減ってくる、六割以上も減ってくる、したがってソ連にはやはりソ連としての漁獲高を確保しなければならぬという厳しい食糧問題があったわけでございます。また、いままでの実績主義というものがもう通用しなくなって、余剰原則に基づくそういう海洋の新秩序の時代であるというふうなことがこの交渉を厳しいものにしたわけでございます。ただ、私は今度の交渉を見ておりまして、日本の外交の側にそういうものと関連する何かがなかったのかというふうなことを考えてみますると、やはりいままでの日本の外交のソ連に対する外交政策というか、外交の進め方ということにも問題があったのではないかというふうにも感じるわけでございます。外務省としては、当然のことながら、どこの国が友好国であるとか、どこの国は非友好国であるとかいうふうに区別をして、日ごろ外交政策というものを進めておるということはないと思いますけれども、ソ連日本にとって友好国であるのかどうかという点をひとつお伺いいたしたいと思います。それと、日本は友好国であるというふうに考えて外交を進めておるわけでしょうけれども、ソ連が果たして心を許して本当に友好国として日本を見てソ連なりの外交を進めておるかどうかという、この点に関しまして外務大臣のお考えを、御感想をひとつお聞かせいただきたい。
  133. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本の外交は、あらゆる国と友好関係を維持していくということが外交の基本方針だと私は考えております。世界の国々の間には体制をいろいろ異にする国があるわけであります。体制の相違によりまして友好であるとか、友好でないとかいうことは日本としては許されないことでありまして、仮に体制の違う国につきましても、日本は平和憲法をいただき、平和外交を進めていく上におきまして、いずれの国とも友好関係を維持していくことが世界平和のために必要なことであるというふうに考えます。(菊池委員ソ連日本をどう見るか」と呼ぶ)  先方のことをここで申し上げることはいかがかと思いますけれども、先方といたしましても、日本との友好関係を決して阻害しようという気はないものと思っております。とにかく日本ソ連とは、これは引っ越しのできない隣接国である。こういうことは、先般パトリチェフ貿易大臣が見えましたけれども、貿易関係におきましては、貿易量も非常に増大をしておるわけでありまして、それぞれの分野におきましてそれぞれの友好関係を維持していく、これが大切なことであると思います。
  134. 菊池福治郎

    ○菊池委員 昨年九月でしたか、ミグ25という不幸な事件があったわけでございます。あの事件が起こったときに、飛行機が着陸して何日か経過したわけでございますが、その間にわれわれが素朴に抱いた感触というか、感じというものは、やはりある種の不安というか、これでいいのかというふうな感じを持ったわけでございます。このミグ25の処理ということは、わが国としては、ソ連に対して友好的な、あるいは外務省が考えられておりまする友好的な国に対する態度を貫くというふうな意味最善の取り扱いであったのかどうかということになりますると、これは受け取る方から言えばいろいろ問題があったんではないか、日本の国として共産圏に対しても等しく友好的な関係を維持していくというふうな方針であり、態度であるならば、あれ以外にもまたいろいろとるべき態度があったのではないかというふうに考えるわけでございます。あの問題は終わった問題でございますが、その後賠償を何十億円とか請求されたというふうなことも聞いております。その賠償問題はその後断ったというふうなことも聞いておるわけでございますが、その経過、その後何も言っていないのか、あの処置というものは日本として友好的な態度を維持するための最善の方法であったのか、それ以外にはもっとベターな方法というものは全く考えられなかったのか、この点に関してちょっとお伺いいたしたいと思います。
  135. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 昨年のミグ事件というものは、日ソ両国にとりましてまことに不幸な事件であった。これはまさに降ってわいた事件でありまして、この事件の処理に対しましていろいろな批判もあろうと思います。しかし、これはお互いに不幸な事件であったということで、やはり日ソ両国ともあの不幸な事件は忘れたいのだ、こういう気持ちでおるわけでございますので、ああいう不幸なことがいつまでも記憶に残るということはよくないことであるというので、そういう気持ちを率直にここで申し述べたいと思います。
  136. 菊池福治郎

    ○菊池委員 そういう気持ちは当然でありますし、早くそういうものを乗り越えて、安定した友好関係というものをこれから相互の努力によってさらに築いていくということが大事であろうと思います。あの問題が起こった後に、ソ連としては、日本は外交的配慮を要しない非友好国である、そういう態度というものが一貫してあったのではないか、一貫してそういう態度があって、今回の漁業交渉というものもその流れの中にあったのではないかというふうなことを考えるわけでございまして、そういうことが何ら影響しなかったということであればこれは幸いでございますが、そういう問題もあるいはソ連側として厳しく出てきた態度の中には——こっちは忘れたいと思っておりましても、向こうはなかなか忘れなかったというふうなことにもなるのではないかと思うわけであります。  それでは次に進めたいと思いますが、いま大臣も言われましたソ連の貿易大臣がおいでになったようでございます。それで、経済協力事業の継続を進めるために政府間で長期の経済協力協定締結したいということを、これは通産省の方に申し入れたのでしょうけれども、今日の現状においてソ連と友好関係を樹立するということは、もちろん魚だけの問題ではないわけでございます。貿易も相互に発展拡充をしなくてはならぬ、あるいはシベリヤ開発等の経済協力等も、これは早い速度で確実な相互の理解のもとに進めていかなくてはならぬと思うのでございますが、この貿易大臣の締結したいという申し入れに対して、日本は断ったというふうなことを聞いておるわけでございます。この間のいきさつなどをもし御承知であればお伺いいたしたいということと、今日シベリヤ開発等の経済協力を、とにかく相当理解し合って相互に進めておるわけでございましょうが、その実績というか、今日の段階でどの程度に進んでおるか、あるいは近いうちにこういう協定あるいは相互の契約があってこういうふうに発展する可能性があるというふうなことを、もし御承知であれば伺いたいと思います。
  137. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 パトリチェフ大臣が見えまして、日ソの間の貿易関係取り決めの調印に見えたのでございますが、貿易以外の長期の投資関係、経済協力関係につきまして、ソ連としては諸外国との間にそのような協定を結んでおるというので、日本とも結んだらどうだろうか、こういうお話がありました。私どもとしては、いままでの投資案件はそれぞれ個別の案件につきましていろいろ手続を進めておるのでありまして、果たして長期的なものができるかどうかという自信がないものでございますので、そのように申し上げたのでありますが、諸外国とどのような協定を結んでおるか先方もいろいろ資料を送るから、ひとつ検討してみてもらいたい、こういうお話で、私どもは検討を約しておるところでございます。  また、ただいま仰せの実績等につきましては、政府委員の方からお答え申し上げます。
  138. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 いわゆるシベリヤ開発協力と言われておりますものは、一九六八年から今日まで、大きな項目として七項目ございまして、この内容は、極東森林資源開発あるいはウランゲル港、ソ連の極東の港でございますが、ウランゲル港の埠頭設備の建設、それからパルプ、チップの開発、それから南ヤクート原料炭の開発、さらに第二次極東森林資源開発、それからサハリンの大陸だな石油、ガスの探鉱、それからきわめて最近のもので、昨年から始まりましたヤクートの天然ガスの探鉱、これが七項目でございまして、最初の三項目につきましては延べ払い、それから後の四項目につきましてはバンクローン、いわゆる輸銀の融資でございまして、今日までに合計十四億七千五十万ドルほどの金が貸されております。  さらに、貿易につきましては、順調に日ソ間の貿易が進んでおりまして、一九七四年の彼我の貿易総額は二十五億ドル余り、七五年は二十七億ドル余り、七六年、昨年は三十四億ドル余り、貿易も順調に進んでおります。
  139. 菊池福治郎

    ○菊池委員 御承知のとおり、資源問題にいたしましても、日本の国はあらゆる外国の国々からそういうものを仰がなければならぬ立場でございます。したがって、共産圏、中国も含めてソ連に対しましても、ただいまのような開発契約あるいは経済協力というふうなものを積極的に進めまして、また一方、貿易も相互の協力によってこれを拡大することによって、要するにソ連日本とのふだんの協力のきずなというか、あるいは友好関係のきずなというものを太くしておくということが一番大事なのではないか、何か問題が起こったときだけにソ連というものに大騒ぎするというふうな態度ではなくて、経済協力をすべきものはする、わが方も資源の獲得の観点からそういうことを必要とするわけでありますから、相互の経済協力というものがこれからますます盛んになって、相互の理解が深まっていく、友好関係が高まっていくということを心から希望するわけでございます。  時間がありませんので、もう一点だけお伺いいたしますが、最近、福田総理初め、日中の平和友好条約締結に関するムードというか、いろいろ話が出て、方々で機運が高まっております。これは総理の言葉で言えば、日中関係条約を含めてベルトコンベアに乗っている、速度はのろくても見通しはある、こういうふうな言葉でこの間も言われておったようでございます。ベルトコンベアでございますから、速度はのろいわけでございますが確実に進んでいるという意味でございますが、ところがたまたま慎重論というか、あるいは自民党の中にもいろいろな考え方が出てきまして、また最近は総理の考えも後退したかのごとき報道がされておるわけであります。これは、日中平和友好条約というものをいま結ぶような機運を盛り上げて締結に向かって進むことは、一方において、今日ソ連と漁業協定あるいはソ日協定あるいは長期の本協定を結ぶというふうな重大な段階を迎えておるのだから、日中の方をどんどん進めていくとソ連がそれに反発してさまざまなそこにむずかしい問題が起こってくるのではないかというふうなことを言う方もあるわけでございます。また、一部の報道などから見ますと、今度のソ日協定において、ソ連はやはり十二海里内の要求というものを強く出してくるのではないか、あるいは日本北方四島に対する線引きというものを強く拒否してくるのではないか、これは日中の条約を進めようとする日本態度に反発する態度から出てくるのだというふうなことを、一部の新聞は大きく報道しておりますが、言うまでもなくこれは本質的に違う問題でございます。わが国日ソの問題も、日ソ平和条約ももちろんこれは本質的に深く掘り下げて長い間検討しておる問題でございますから、これは一日も早く、懸案の問題はありますけれども、日ソ条約も急がなければならぬ、また日中の問題も、これももちろん問題はもう出尽くしておる問題でございますから、機会があれば、これは福田総理が言うように、あらゆる問題はもう解決するという可能性がある問題でございますから、これも機運に乗じて日中の平和条約というものを強力に進めるべきであるというふうに思うわけで、日ソと日中のこの問題を絡ませるということは、もちろんこれはあり得ないわけでございますが、そういうふうな見方をして、したがって日中の平和条約も余り熱心に進めない方がいいというふうな空気が自民党の中にもあるというふうに報道されております。新聞にはそう出ておりますが、あるいは総理のさまざまな発言によりましても、保利議長が行くときに親書だか手紙だかを頼むというふうなことを一週間ばかり前に言われたのが、今度は所沢なんかへ行ったところが、そうでもないような言葉になっておるというふうな微妙な変化もあるわけでございますが、こういう態度は、私は外交の基本的な進め方としては間違いではないかと思うわけであります。  やはり自主性を持った日本の独自の立場でやるべきことは敢然とやっていくというふうにすべきだと思いますが、日中条約を進めるという機運が高まってくるということを見て、ソ連が何か強く出てくるとかなんとかという、そういう感触というものを外務省は受けておるのかどうか、それから、日中平和友好条約というものを本当に進めていくというふうな心構え、方針が外務省にあるのかどうかということをお伺いいたしまして、時間でございますから質問を終わりたいと思いますが、その辺についてちょっとお答えをいただきたいと思います。
  140. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日中平和友好条約締結と、また、ソ連に対しましても最大の未解決の問題を解決して平和条約締結しなければならない、これはともに日本の将来にとりまして大事な問題でございます。  したがいまして、いま菊池さんおっしゃいましたとおり、双方に向けて日本政府としては最善努力をしなければならない、こういうことで、この両者を絡ませるとかいうような考えではなくして、日本政府といたしまして双方とも最善努力をいたすべきだ、このように考えて、いまの御趣旨と全く同じように考えておる次第でございます。
  141. 竹内黎一

    竹内委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。     午後六時三十一分散会