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1977-07-13 第80回国会 衆議院 外務委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年七月十三日(水曜日)     午後一時七分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 有馬 元治君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 毛利 松平君 理事 山田 久就君    理事 河上 民雄君 理事 土井たか子君    理事 渡部 一郎君 理事 渡辺  朗君       稲垣 実男君    大坪健一郎君       川田 正則君    佐野 嘉吉君       高沢 寅男君    中川 嘉美君       寺前  巖君    伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君  委員外出席者         警察庁警備局長 三井  脩君         外務政務次官  奥田 敬和君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済局漁         業室長     阿曾村邦昭君         外務省条約局長 中島敏次郎君         水産庁次長   佐々木輝夫君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 六月九日  一、核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び   4の規定の実施に関する日本国政府国際原   子力機関との間の協定締結について承認を   求めるの件(条約第一〇号)  二、所得に対する租税に関する二重課税回避   のための日本国ルーマニア社会主義共和国   との間の条約締結について承認を求めるの   件(条約第一一号)  三、所得に対する租税に関する二重課税回避   のための日本国ブラジル合衆国との間の条   約を修正補足する議定書締結について承認   を求めるの件(条約第一二号)  四、投資の奨励及び相互保護に関する日本国と   エジプト・アラブ共和国との間の協定締結   について承認を求めるの件(条約第一三号)  五、国際海事衛星機構(インマルサット)に関   する条約締結について承認を求めるの件(   条約第一四号)  六、アジア太平洋電気通信共同体憲章締結   について承認を求めるの件(条約第一五号)  七、国際情勢に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鯨岡兵輔君。
  3. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 水産庁来ていますか。——それじゃ、外務省の方でお答えいただけるのならばお答えいただいてもいいのですが、俗に言うソ日協定というのが、いま、選挙中からずっと進んでいるわけですが、あれはどうでしょうか、大ざっぱに言って、順調に話は進んでいると承知してよろしゅうございましょうか。
  4. 宮澤泰

    宮澤説明員 ただいままでのところ、大ざっぱに申しまして、順調に話が進んでおると私ども考えております。
  5. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 以下申し上げることは、いま協議中ですから、特にここでその内容について言うことは適当でないとお考えならば、お考えでそれでよろしいが、われわれが国民の立場として、また前に委員会等でせっかく強く御要望申し上げたことで、日本領海十二海里の中でお魚をとらせることは、事情が幾らよくわかってもそれはできないことだという点、一点。それから、年来われわれが主張しているわが国固有の領土である四島を基準として二百海里というものを設定する、こういうこと。それから、日ソ協定国会批准をいたしましたように、今度のソ日協定もやっぱり国会批准をするということがいいんじゃないか。そういうようなことでございますが、これらの三点は、その順調な交渉の中でやっぱりうまくいくとわれわれは考えてよろしいでしょうか。
  6. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま三点につきましてお尋ねでございますが、第一点の十二海里内のソ連漁船操業につきましては、日ソ漁業交渉の際にも当方から強く主張いたしておるとおり、領海十二海里の中におけるソ連漁船操業は認められないという線を強く申しておりますし、ソ連側もその点につきましては了解しているものと私ども考えております。したがいまして、ただいま御指摘のように、領海十二海里内のソ連漁船操業当方としては全く認める意思はないということでございます。  それから北方四島につきまして二百海里の漁業水域設定すべしというお話でございますが、この点につきましても、法律趣旨規定によりまして、もうすでに線は、私どもは当然北方四島を含んで設定をされておる、そういう前提のもとに交渉を進めるべきであるという点も全くそのとおりでございます。  また、ソ日協定につきましても国会の御承認をいただくべきであるという点につきましても、先国会の末期にそのような主張各党からも非常に主張されました。私といたしまして、これは協定内容国会の御承認をいただくべきものかどうかによって決まるものである、そして協定自体内容は、折衝してみないと、どうなるか、いま事前には決められないと申し上げてまいりました。協定内容がまだ決まっておりませんので、その点につきましては、いまここで明確にまだ申し上げられないのでございますけれども先国会各党皆様方からの御主張も十分踏まえまして、この点につきましても慎重に対処すべきであると考えております。
  7. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 一点、二点についてはわれわれの立場として満足すべきお答えをいただいてありがたいと思いますが、三点については、内容の問題は言うまでもないことです。しかし、日ソ協定国会批准を得た以上は、ソ日協定国会批准を得る。これは、内容の問題、十分わかりますけれども、ぜひひとつそのようにお取り計らいを願いたい、このことを申し上げておきます。  それから、これは簡単でいいのですが、七月一日から十二海里、二百海里を設定した以上は、諸外国においても、わが方の意を了とせられてそれを十分守っていただきたいと思っておるのでございますが、トラブルはどうでございましょうか、韓国ソ連その他。トラブルはないから、いまのところは大丈夫だとか、あるいはこういうようなことがあったがというようなことがありましたならば、手短にひとつお答えをいただきたいと思います。
  8. 宮澤泰

    宮澤説明員 私が承知しております限り、少なくともソ連漁船につきましては何ら申すべきトラブルもないように聞いております。
  9. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 ありがとうございました。  二百海里の設定は、ソ連がやったから日本もやったという形で、中国韓国朝鮮民主主義人民共和国はしばらくやらないんじゃないかなというような思惑があってか、この方はちょっと線引きしないでいたら、急に、八月一日からですか、朝鮮民主主義人民共和国がそれを宣言した。  そこでちょっとお尋ねしたいのですが、漁業専管水域という漁業の問題だけでなしに、言っていることは、政令で何か言ったようですが、経済水域と言っているのですが、そこの点はどうですか、条約局長かどなたか、何かニュアンスが違うのか、ソ連やわれわわが言っている漁業専管水域とだけ考えていいものか、経済水域考えていいものか。
  10. 中島敏次郎

    中島説明員 お答え申し上げます。  北鮮の二百海里の水域設定につきましては、私どもピョンヤン放送によりまして承知しているのが現状でございまして、そのより詳細な点につきまして情報を収集している過程にございますが、その放送で私どもが承知しております限りは、たしか、生物資源のみならず非生物資源に対する管轄権をも行使するという趣旨発表であったというふうに聞いております。
  11. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 そうすると、これはもうわが方は決めたことでありますから、確固たる方針をもって進むのは当然のことで、何ら、以下私が申し上げることでもう一回考え直すとかなんとかいう筋合いのものではもちろんないのですが、再三にわたって日韓大陸棚条約のときに抗議らしきことを言っていた朝鮮民主主義人民共和国として、いまのようなお話と関連して、何か今後彼が言うてくるだろうと思われるようなことにはならないものでしょうかどうでしょうか。関係はないですか。
  12. 中島敏次郎

    中島説明員 ただいま申し上げましたように、まず政府といたしましては、北鮮当局発表した内容が何であるかということを正確に把握することが先決であるというふうに考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、実は北鮮当局の今回の発表に限らず、従来二百海里の水域設定いたしております国の中には、経済水域と称しまして、非生物資源に対する管轄権をも主張するたてまえをとった国々は案外あるわけでございます。いま手元に数字を持っておりませんけれども、わりあいにあるわけでございますが、これらの国においても、当面各国とも直接の関心を持っておりますのはいわゆる漁業資源に対する問題でございまして、その点において、実態的には、ソ連アメリカが実施いたしておりますところの二百海里の漁業水域線設定と基本的には変わらないものだろうというふうに考えております。  ただ、もちろん、先生のおっしゃいますように、考え方としては、生物資源のみならず非生物資源に対しても権限を及ぼすということであれば、いずれのときにかその問題が出てこないということは言えないと思いますが、当面、各国が一番関心を持っておりますのは漁業資源である、そういう意味において、今回の北鮮当局考え方もそのようなものではなかろうかという一応の推定がなされ得るだろうと思いますけれども、その詳細につきましては、いま申し上げましたように、もう少し事態の把握に努めたいということでございます。
  13. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 朝鮮民主主義人民共和国が二百海里を設定して、非生物資源は別として、生物資源、お魚、これは日本も大分行ってとっていたわけですから、今後もとるということに対して絶対的に拒否するものではないと期待いたしますが、それは国交が結ばれていないのですから、政府政府でもって話ができないことはいま中島さん言われたとおり。そこで、民間協定でも結ぶしかないんじゃないかなというようなことを期待するような意向もあるようですが、たとえ民間協定をやっても、先方側とすれば、それに対して日本政府が何らかの保証をしなければ困るというようなことは出てくるのではないかな。そういうことになってくると、国交を結んでいない国のことについて保証するということは、これは韓国側としてもなかなか困ることだし、非常にむずかしいことになると思いますが、元来が、先ほど申し上げましたように、朝鮮民主主義人民共和国は、中国韓国ともに二百海里の設定などということはいましばらくしないだろうと、これは私の邪推かもしれませんが、およそ見当をつけていたというのがそうでなくなってきただけに、この間のことについて、これからの交渉ですから、これまた、いま政府として責任ある発言は差し控えたいというのなら、それも理由のあることですから、いいですよ。いいですが、もしお考えがあったらお話しいただきたいと思います。
  14. 中江要介

    中江説明員 ただいま鯨岡先生の御指摘のような問題点は、私どももよく耳にする問題点でございますけれども、まず客観的な事実といたしまして、いま条約局長が申しましたように、北朝鮮側が今回ピョンヤン放送で明らかにしたというところに関する限りは、漁業専管水域ではなくて経済水域であるということがはっきりしておるわけですが、一体、その経済水域というものを日本周辺設定したのは、これがもし事実だといたしますと、初めてなわけです。したがいまして、漁業水域でなくて経済水域というものをどう受けとめるかという基本問題は一つあると思います。にもかかわらず、その中に漁業水域的な性格が当然含まれている、これも条約局長が言いましたとおりでありまして、その部分だけに着目いたしますと、いま先生が言われましたように、日本のあの水域での漁業利益がどうなるかということは問題になります。  ところが、あの部分といいますのがまずはっきりいたしません。つまり、ピョンヤン放送放送だけでございまして、公式の文書があるわけでもございませんし、私どもに正式に通報を受けた具体的内容というものもないわけでありまして、放送内容だけから見ますと、領海基線からはかって二百海里のみと言っておりまして、その基線というのがどこにどう設定されているのかという問題がはっきりいたしません。  と申しますのは、この朝鮮半島の周辺における日本漁業のうちで、韓国の実効的に支配しておりますところの沿岸及びその沖合いにつきましては、日韓漁業協定という現実の漁業秩序があるわけでございまして、この日韓漁業協定に基づく漁業秩序というのは、現在まで平穏裏に遂行されておりますし、その限りにおいては、問題が生じた——いわゆるいろいろの漁業紛争といいますか、小さい問題はございますけれども漁業秩序としては守られてきている。それを前提にいたしまして、北朝鮮の今回の経済水域というものがどこまで及んでいるのか。つまり日韓漁業秩序で守られている水域にまで、北朝鮮の二百海里の経済水域が影響を及ぼし得るものなのかどうかということが、まず地域的な限定として問題になります。  そこのところの問題と、その部分がそこに及ばない、むしろいま先生の御指摘の、それよりも北の部分で、かつて松生丸事件が起きましたような、ああいった水域での問題についてこれからどうなるかという点につきまして、必ずしも民間漁業協定というものだけが解決の方法であるかどうかという点がはっきりいたしません。つまり、ピョンヤン放送内容で言っております。今度新しい水域設定された後にその水域内で漁業活動をいたします場合に、北朝鮮当局の一種の承認なり許可なり了解なり何らかの行為が必要とされたといたしましても、それがどういう形で行われるものなのか、包括的な協定のようなものが必要なのか、個々の入漁する場合にそういう手続が必要なのか、そういった問題で、どういう形で日本漁業利益を守るかということを検討する前提になる諸条件がまだはっきりしておらない。それがために、政府が申しておりますように、このピョンヤン放送の具体的な内容について情報を収集しよう、そしてまた、その努力を続けているというのが現段階である、かように御理解いただきたい。
  15. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 あと、まだ重要な問題が二、三ありますので、この問題はこの程度にしたいと思うのですが、まだ相手方の意図が十分にわからない。わからないからと言っても、しょせんは外交ルートでわからせるわけにはいかない。しかも向こうの伝えるところによると、八月一日から実施するというのでしょう。それだったら、八月一日以降になってしまったら、二百海里に入ってきたらつかまえるよということになったら、どうしますか。そんな相手方の様子がわからない、わからないとだけ言っているわけにはいかないのじゃないかなと思うのですが、手短に、どうします。
  16. 中江要介

    中江説明員 手短に申しますと、わからない、わからないと言うだけでなくて、わかろうという努力をしている、こういうことでございます。
  17. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 まことに名答弁で、ひとつ早くわからせないと、期日が来るのですから、向こうは、これがわかってからつかまえるよと言うんじゃないんですから。わかろうが、わかるまいが、二百海里は、八月一日からつかまえるというのでしょう、決めた以上は。つかまえられたらたまらないですから、それはもちろん外務大臣は何かお考えがあるんでしょうね。これは言わないでいいです。  次の問題に移ります。金大中事件で指紋が見つかった人は何という人でしたか。その人の当時の官職は……。
  18. 中江要介

    中江説明員 当時は、在日大韓民国大使館一等書記官でありました金東雲という人でございます。
  19. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 金大中事件というのはどうなっているのですか。資料を後で私どもへいただきたいとさっき言っておいたが、いただけないけれども、いただけない以上、私の記憶で申し上げる以外にありませんが、私の記憶誤りなければ、社会党の小林進さんの質問に対して、文書政府統一見解なるものが出ている。その統一見解趣旨は、これまた私の記憶誤りなければ、日本法律で守られていべき日本人もしくは外国人が、外国公的権力によってよその国へ不法に拉致されたというようなことはありません、それからKCIAなんというものが日本の国内で活躍していたということもありません、しかし犯罪が行われたことだけは事実だから、この犯罪はどういう犯罪であるかということは引き続き捜査をいたします。こういう文章であったのですが、その政府見解は、今日においてもいささかも変わりはないと承知していいのですか。どうでしょう。
  20. 中江要介

    中江説明員 先生の御指摘の最初と第二点で、ありませんとはっきり言われましたところは、政府は、ありませんという表現よりも、むしろあの小林進先生質問に対する回答を出しました時点では、そういうことがあったという事実を承知していませんということであったと思います。私がそう言い直します意味は、国際刑事事件としては、刑事事件としては引き続き捜査を継続しているということでございますので、その後、新たな証拠が出てくれば、あるいはそれはあったかもしれないし、あるいは結局出てこなくて、ないのかもしれない。つまり、あの時点では、絶対ありませんと言うだけの根拠があるわけじゃなくて、むしろそういうことがあった、つまり公権力の行使があったというようなことを断定するような証拠はなかったということでございまして、その状態につきましては現在も変わりがない、こういうことでございます。
  21. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 中江さん、ありませんと言ったのじゃなしに、あの時点においては、そういう事実を証明する何物もないということを言ったんで、それは今日においても変わりはない、こういうことですか。そうですね。  それではちょっと伺いますが、アメリカの下院の、俗称フレーザー委員会に、かつて韓国のその方面の高官であった金炯旭という人が出て、もちろんその人は金大中事件が起きたときにはすでに高官ではなかったようですが、その人が、かつての部下であった当時日本に公使としておられた金在権その他に聞いたところによれば、間違いなくこうだという証言をし、その証言を受けてフレーザー委員長が、この金大中事件日本という国に対する最大侮辱である、こうまで言っているわけです。もちろんこのことは新聞にも大きく伝えられて、特に園田官房長官は、アメリカと十分話して、なぜそういうことになるのか、厳重に抗議といいますか、調べてみたい、こういうことでありましたが、まことに重大な問題だ。  そこで、二つお尋ねしたいことは、先ほど、あの時点においては何ら証拠もなければ、そういう外国公権力日本の中で不当なことをやったという事実はない、KCIAが活躍しているという事実もない、こう言われたんですが、いま私が申し上げましたようなアメリカフレーザー委員会のことも踏まえて、選挙中ずいぶん御調査なさったと思いますが、それでもまだその御意思は変わりはないものかどうか。  フレーザー委員長が御親切にも——まことに親切だな、あの人は。日本に対する最大侮辱だ、少なくとも日本政府侮辱だと思ってないのに、それを侮辱だと言っているんだ。それはどういう根拠でそういうことを言われたのか、われわれはどうも選挙でもってあっちへ飛びこっちへ飛びしていたんで困ってしまうのですが、外務省としては、かなり詳細なアメリカ側との話し合いがあったと思いますが、これはちょっと、私四十三分までしか時間がありませんので、あと私が言うところがなくなっちゃっちゃ困りますが、それを残して、詳細にひとつお話しを願いたい。
  22. 中江要介

    中江説明員 時間を残して詳細に申し上げるのはちょっとむずかしいのですけれども、いまのフレーザー委員長発言につきまして、官房長官が、金炯旭という人は六九年にKCIA部長の地位を退いているのであるから、七三年に起こった事件についての証言はすべてが伝聞に基づくものであるはずなのに、これをフレーザー委員長が事実と断定しているのはまことに遺憾であるという見解を表明されたことは、おっしゃったとおりでございます。  それについて一体どういうことであるのか調べてみたいということをその記者会見でおっしゃっておりまして、それに基づいて私どもが調べましたところ、フレーザー委員長の方から返ってきましたことの問題点二つございまして、一つは、根拠になっております新聞に報道されましたフレーザー委員長記者会見なりあるいは記者に語ったと伝えられているところのものは、記録には残っておりませんので、確かめようがないということが第一点でございました。  第二点は、このフレーザー委員長のスタッフの方からの情報といたしまして、日本園田官房長官の言われたコメントに関連して、フレーザー委員長の名においてこういうことを言ってきております。それは、われわれがアメリカ調査を行っている議題は米韓関係であって日韓関係ではない、そして日米関係重要性については十分自分たちは認識しておる、したがってこの調査においてわれわれは日本の問題に介入しようという意思は毛頭ないということをフレーザー委員長の側近からフレーザー委員長の名において伝えられてきた、こういうことでございます。  なお、そういったことがあったことによって先ほど申し上げました政府態度に変わりはないかという点につきましては、この判断捜査当局の御判断にまつというのが一貫した外務省態度でございまして、捜査当局の方でこれをどう評価されるかということの結果を体して私どもは行動するということでございます。
  23. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 外務大臣園田官房長官の、金炯旭というすでにその職を退いている人の伝聞による証言をまことと信じて日本という国に対する最大侮辱であると言ったのはどういうことですかという問いに対して、二つお答えになりましたが、先の方は何のことかよくわからない。私の聞き誤りでなければ、そんなふうに言った覚えはないのだというふうに受け取れるようないまのお話。二番目の方は、アメリカのわれわわがやっていることは、アメリカ韓国のことをやっているのであって、日本のことを何も言っているのじゃないのです。日本アメリカとの関係はこれからも仲よく持続していきたいのです。と問うてないことに答えているみたいなことで、これはロッキード事件のときもそうなんです。何かというとばかんばかんと出して、後でそのことについて、それじゃ教えてくださいとこちらが恥ずかしいのをがまんして聞きに行けば、それはアメリカの内部の問題をやっているのであって、ロッキード社というものがどんなことをやっているかということをやっているのであって、日本関係のないことなんだ、調べたかったら自分で調べなさい。しばしばそういうことなんです。  これは外務大臣日本アメリカとの密接な関係から言って遺憾なことだというふうに私は思うのですが、いかがでしょう。そんなばかなことはないでしょう。日本に対する最大侮辱だと言う。よけいなことだ。最大侮辱だと言う以上は、事実をつかんで、これはどうもわが友邦日本に対して何ということをするのだといって怒ってくれるなら親切ですが、聞きに行けば、そんなことを言った覚えはないとか、われわれはそんなことに関心はないとかという返事は、外務大臣、いかがですか。
  24. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 フレーザー委員長発言につきまして、園田官房長官会見でおっしゃいましたように、日本政府といたしましては大変遺憾だと思います。しかし、その点を事実を確かめようといたしましたところ、そのような発言をしたという確証がないということでありまして、したがいまして、これ以上追及のしょうがないということでございます。したがいまして、小委員長としての記者会見で言われたことが事実であるとすれば、私どもは大変遺憾だ、こういうふうに考えております。  それは、その事実をいまとして確かめる方法がない、こういうことを申し上げておるのでございまして、私どもといたしまして、ただいまアジア局長から御答弁申し上げましたように、この金炯旭氏の証言によりまして、この事件につきましてやはりまたそういう疑わしいという感情を日本国民に与えているわけでありますから、この点につきましては、事実をつかまえることが私どもとしては先決である、そういう意味で、直接の事実を知っている人につきまして、警察当局捜査に期待をして、事実を把握したい、こういうふうに考えているわけであります。
  25. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 私も、時間がなくなりましたから、外務大臣、お言葉を返すようですが、外務省は前々から警察当局、警察当局と言うのですが、そして警察当局が言うように、証拠がなければどうにもならぬということを言っておる。これは捜査というものはそういうものだと思います。しかし、金東雲という人、当時韓国の駐日一等書記官とかいう高官ですよ、これは。その人が、拉致した現場に指紋が残っているのですよ。りっぱな証拠じゃないですか。そこまで来て、その人が外交官の現職だったということになれば、私はもう捜査捜査として、外務省が動くべきことであって、それでも外務省捜査捜査だ、これは警察がやるんだと言っていることは私はおかしいと思いますよ。考えたくないことでいやなことだけれども、これは証拠がなければ捜査陣としては言えないでしょう。だから、あの高橋さんという人も、証拠がないからと現職のときは言っていながら、どうもやはりKCIAのやったことなんじゃないかなと個人になってみればそう思う。国民みんなそう思っているのですよ、そういうふうに。しかも、このごろアメリカが御親切にもいろいろなことを言ってくれたので、ますます思っているのですよ。思うまい思うまいとしているのが日本政府態度なんだ。これは私は両国の親善のために言うんですよ。両国の親善のためにただすべきものはただし、再びかくのごときことが起こらないようにしなければならぬ。何かそう思いたくないものだから、思うまい思うまいとしている態度が見えてしようがない。これは現職の外交官の偉い人が現場に指紋を残しているのでしょう。だったら、もう今度は外務省の動くべきことですよ。  私は以上申し上げて、何かお話があれば承って終わりにします。
  26. 中江要介

    中江説明員 思うまい思うまいと思ってというふうに推定されましたのですが、私どもは決してそうではございませんで、あの事件が起きたときからその疑いがあるということで、疑いを晴らそう晴らそうという努力をいたしまして、金東雲一等書記官の指紋が出ましたときに、いまから顧みますと、はっきりしておるのでございますけれども、まず金東雲一等書記官の任意出頭要請をしたわけでございます。つまり、任意の出頭要請をいたしましていろいろ調べたいという捜査当局の意を体して、外務省は外交的に任意出頭要請をいたしました。これに対しまして、国際慣例に基づいて任意出頭させることには応じられないという外交特権の壁があったわけでございます。しかし、その後金大中氏の生存がソウルで確認されましたので、金大中氏を含めまして三人の関係者の再来日というものを要請いたしました。しかし、それに対しましても、先方はこれには応じられないということでございまして、結局金東雲につきましては、十月の二十六日にわが方は、好ましからざる人物、ペルソナ・ノン・ダラータということの処分をいたしまして、外交的にもこの外交官の身分についてとるべき措置はとった、しかし、そのことは捜査を遂行するに役立つような証拠調べなり証拠を挙げるということには現在までのところ貢献しなかったというのが遺憾な状況である、こういうことでございます。
  27. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 フレーザー委員長から園田官房長官の要求に対して直接の返事、それからブレーン間の返事、これは資料としていただけますかな。後で理事会に諮ってでも何でもいいのですが、いただけるものならいただきたい。要望しておきます。
  28. 竹内黎一

    竹内委員長 河上民雄君。
  29. 河上民雄

    ○河上委員 選挙期間中にわが国が当面しております外交的な事件が次々起きておりまして、その中で、いま御質問もありましたが、朝鮮民主主義人民共和国による二百海里経済水域宣言の問題と、それから金大中事件に関する問題について御質問をしたいと思います。  それに先立ちまして一言だけ、選挙に際しまして福田総理は、いわゆる日韓大陸棚協定批准をわれわれから言えば強行した結果、これで日中平和友好条約の調印に向けての態勢が整ったというような判断をしていたように伝えられておりますけれども、その後の経過は、やはりわれわわが指摘したように、日韓大陸棚協定批准強行は日中平和友好条約締結の阻害要因になっているのではないか、私どもはそういうふうに判断をいたしております。少なくとも一種の不快感を与えておる、こういうことは事実だと思うのでありますが、外務大臣はその点どのようにお考えでいらっしゃいますか。
  30. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日韓の大陸棚の共同開発に関します協定が日中間の平和友好条約交渉に阻害要因になるのではないか、あるいはなっているのではないか、こういうお尋ねでございますが、私どもは、大陸棚協定につきましてはあくまで大陸棚協定といたしまして、中国側の主張といいますか、主権の侵害にはなっておらないということを繰り返し説明し理解を仰ぎたい、こういうふうに考え、そのような努力をいたしております。  ここで、この大陸棚協定の自然成立に際しまして、中国側からいろいろな発言があったことは事実でございます。これに対しましては、私どもはこの問題につきましてさらに理解を深めていただけるように最善の努力をいたしたい、そのことが日中平和友好条約締結に阻害にならないように私ども最善の努力をいたしたい、このように考えております。
  31. 河上民雄

    ○河上委員 日本外務省は、いつも自分のひとり合点で世界像といいますか、アジアにおける国際関係を描いて、それなりに納得しながらやっておられるようですけれども、私は必ずしもそういうふうには行ってないんじゃないかと思うのでございます。たとえば二百海里宣言につきましても、韓国中国朝鮮民主主義人民共和国、これはしないんではないか、だから日本の方も線引きをしない、こういうふうなことでございましたけれども、このたび朝鮮民主主義人民共和国から二百海里経済水域の宣言をしてまいりました。これは単に漁業専管水域だけではなくて、いわゆる海底資源を含む経済水域の宣言をしているところに、日韓大陸棚協定批准というこの事実の関連をやはり私は感ぜざるを得ないのでありますけれども、これらの一連の経緯というものは、やはり束シナ海における沿岸関係各国が話し合っていかなければ、これからの将来というものはないんじゃないか、仮に海底開発ということを考えましても、そういうことを私は示しているように思うのです。漁業問題はさることながら、そうしたことをここではっきりと示しているように思いますけれども外務大臣はその点いかがお考えですか。
  32. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国の政令によります二百海里の経済水域、その内容がどういうものであるかという点につきましてまだ把握できておりません。平壌放送による以外の事項についてまだ確かめ得ないというのが現在でございます。しかし、これは予断を持つことはできませんけれども、たとえば韓国周辺の海域についても二百海里の経済水域朝鮮民主主義人民共和国水域であるとして主張しておるのかどうかという点につきましては、これはまだ確かめられておりませんが、どうもそうではないような感じを私どもは持っております。これは予断をしてはいけませんけれども、現在までの私どもの耳に入ってまいりますことでは、どうも韓国の隣接する水域韓国の地先沖合いの水域をも朝鮮民主主義人民共和国水域であるというようには申していないのではないかというふうに感じておりますけれども、これははっきりいたしておりません。その辺ははっきり確かめたいと思っております。したがいまして、大陸棚協定と直接の関係を持つものかどうかということもわからないのでございます。
  33. 河上民雄

    ○河上委員 いま朝鮮民主主義人民共和国の二百海里宣言に伴って、すでにわれわれ承知しているところ、日本漁船が六万トン余の年間の漁獲量があり、千五百から千六百隻の零細漁船がずっと出漁しているわけでございまして、西日本の漁民にとりましても非常に重大な問題だと思うのであります。いま範囲についてどうも見当がつかないというようなお話でございましたが、アジア局長に伺いますけれども朝鮮民主主義人民共和国の憲法では、朝鮮民主主義人民共和国の領土といいますか、主権の及ぶ範囲というものはどういうように規定しておりますか。
  34. 中江要介

    中江説明員 ちょっと憲法の具体的な条文に即してお答えできませんので、後で調べておきますけれども、私どもの承知しておりますところでは、憲法のたてまえとしては、朝鮮半島全体を領域として成り立っている国であるという認識に立っている、こういうふうに了解しております。
  35. 河上民雄

    ○河上委員 ということは、南朝鮮の南端まで含んでいるというふうに理解してよろしいわけですか。
  36. 中江要介

    中江説明員 たてまえとしてはそういうたてまえに立っているというように理解せざるを得ないと思います。
  37. 河上民雄

    ○河上委員 最近、日ソ漁業交渉その他いろいろわれわれ日本もそういう問題で厳しい体験をしているわけですけれども、やはり原則として二百海里という問題について日本の場合でもそういうたてまえを踏まえながら主張するわけでして、朝鮮民主主義人民共和国がそういうたてまえを踏まえながら経済水域二百海里の主張をするという可能性は十分にあるというように考えられますか。
  38. 中江要介

    中江説明員 まさしくその点が、先ほど大臣もお答えになりましたように、私どもの知りたいところでございますけれども、南半分につきましては、日韓漁業協定というあの水域に一つの国際的な漁業秩序がございまして、この漁業秩序そのものに対して北朝鮮側が何らかの問題を起こしたことが過去にないということは、これはまたたてまえとは別の事実として存在いたしておりますので、私どもといたしましては、日本漁業利益というものを事実に即して守ってまいりたい、こういう考えでございます。
  39. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、もし仮に休戦ラインを基礎にして経済水域二百海里というものを線引きをした場合、どういう線引きが行われるわけですか。韓国との境目ですね、どういう線引きが行われるのですか。ここで地図を見せて、そしてちゃんと説明できますか。
  40. 中江要介

    中江説明員 いま河上先生の御提起になりました線引きをする責任は、もしありとすれば南北朝鮮の間で引くわけでございまして、日本政府がこの線引きをするわけでございません。したがいまして、南北両朝鮮が国際法に準拠いたしまして、実効支配をしている領域のうちの領土に即して海面上に線引きをして、はっきり境界を画定してくれれば、日本としては非常にありがたいことだ、こういうふうに思っているということ以上のことは申し上げるわけにまいらぬのじゃないか、こう思います。
  41. 河上民雄

    ○河上委員 実効的に支配している俗に言う領海の境界線を延長したところが線引きになるのですか、それとも何らかの意味で別な基準が働くのですか。
  42. 中江要介

    中江説明員 これは一般的に相隣接する国の沿岸及び沖合いについて、領海なり漁業水域なりあるいは経済水域についてどういう境界を画定すべきかということは、海洋法会議で、いま議論されている問題でもありますので、専門的には別途答弁していただいた方がいいと思いますが、常識的に言えば、いま先生の言われましたように両方の実効支配している領域から等距離の点を結んででき上がった線であるべきではないか、こういうふうに私は思います。
  43. 河上民雄

    ○河上委員 いずれにせよ八月一日から実施されるわけですので、いま外務省の御答弁のように全くどういうことになるかわからないということでは、日本の漁民の安全操業、生命の安全また財産の保障はできないわけですね。こういう状態を放置しておけるはずがないと思うのでありますけれども、こういう点をもう少しはっきりさせるために、国交のない北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国との間の問題ではありますが、何らかの形でアプローチするのが私は日本政府として当然のことだと思うのであります。いま新聞等によりますと、水産庁の米澤審議官がニョーヨークでの海洋法会議の席上で朝鮮民主主義人民共和国の代表と接触しているというふうに伝えられておりますけれども、その点何らかの成果がございましたか。
  44. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 外務省とも御相談の上で、国連海洋法会議の機会を利用しましていまのような接触を試みておるわけでございますけれども、ただいままでの段階では、そこへ出席しております北朝鮮側の方の代表のところでも、例の平壌放送以上の情報というのはわれわれは持っていないんだということで、私どもとしては、その後何らか本国の方から連絡があった場合にはぜひとも至急日本側の方にも内容について知らせてほしいということを申し入れておるような段階でございます。具体的にはまだ入っておりません。
  45. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣、いまのような状況ですけれども、それ以外に何らかの具体的なアプローチの努力をされるおつもりはないのですか。たとえば第三国を通じてやるとか、あるいは朝鮮民主主義人民共和国に直接係官を派遣するとか、いかがでございますか。
  46. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 国交のない間柄でございますので、本体は民間ベースによる接触ということが本筋であろうというふうに考えております。しかし、外務省あるいは水産庁も含めまして、情報の収集という点につきましては、いろいろな考えられる手段によりまして接触を試み、情報の収集に当たっておるというのが実情でございます。ただ、話し合いという場面になりますと、これは国交のないということが一つの障害でありますので、民間ベースと申しますか、政府ベースでないところでの接触ということがやはり本体になるのではあるまいか、このように考えております。
  47. 河上民雄

    ○河上委員 いま外務大臣は民間ベースでやりたいということでございますが、その際参考になりますのは、五月に朝鮮民主主義人民共和国から代議員グループ、代表団がこちらに来られまして、日朝議員連盟と日朝間の問題について協議をし、近く民間漁業協定締結をしたいという点についての合意を見たわけです。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕 残念ながら日本政府の方の保証措置がなく、協定成立までに至らなかったわけですけれども、ともかくこれに努力するという合意はもうできているわけですね。あとは政府がこれに保証措置をとるかどうかということにかかっているわけですけれども、いまの外務大臣のお言葉からいたしますと、いま現実にある民間ベースという点では日朝議員連盟というのが一番有力なチャンネルではないかと思いますが、八月一日までというもうあと二週間ぐらいしかない、こういう状況の中で、日朝議員連盟にそういうアプローチといいますか、そういうものを依頼するお気持ちはございませんか。
  48. 中江要介

    中江説明員 いま先生がおっしゃいましたような方法をとるかどうかということを含めまして検討しておるわけでございますが、その目的とするところは、河上先生も御指摘のように、主として西日本日本漁民の利益を守るための問題でございますので、西日本漁業界の意向というものを体しまして、必要とあればいま申されましたようなルートというものも考え得るか、こういうことでございます。
  49. 河上民雄

    ○河上委員 そういう場合、民間漁業協定に何らかの形の保証措置を加えることが一つの条件ということになりましたら、二百海里の設定という事態に伴う一つの対応の仕方として、そういう点を政府としては一歩踏み込んで考えるおつもりはございませんか。そこまでいかなければ事態はなかなか解決しないという感じを受けるわけですけれども、いかがでございますか。
  50. 中江要介

    中江説明員 政府の保証ということが従来再三言われておりまして、そのたびごとに私どもが申し上げておりましたことは、いまも申し上げましたように、日本の漁民の利益を守るために何ができるかということの中に一体何が具体的に必要かということは、民間漁業協定の場合ですと、その民間漁業協定というもののまとまりぐあいを見まして、その上で検討するということで、余り先取りをして政府保証というものを抽象的に検討するということはいたしておらない、こういうことでございます。
  51. 河上民雄

    ○河上委員 しかしそれは、いまここで政府の保証をするということを言明は避けたいということでありますけれども、言いかえれば、こういう事態を放置しないためには保証する場合もあり得る、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
  52. 中江要介

    中江説明員 これはいま北朝鮮側考えを鋭意ただそうという努力をしている最中でございますので、ある程度の結果が出るまでは、その結果をはっきりと御質問お答えするということはちょっとむずかしい、こういうふうに思います。
  53. 河上民雄

    ○河上委員 しかし、いずれにせよ、これは何らかの措置をとらない限り、もう八月一日を迎えてしまうわけです。そういう意味で、この問題は外務省としては国交のない朝鮮民主主義人民共和国との間の問題ではあるけれども、何らかの積極的なアプローチをとるというお考えをここで明示していただくことがやはり漁民の不安を取り除く第一歩であると私は思うのでございますが、外務大臣、いかがでございますか。
  54. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この問題は西日本の漁民の方々の大変な関心のある問題でありますが、しかし漁民の方々はやはり黄海全域と申しますか、黄海、東海等で活動しておるものでございますから、私どもといたしましては、その漁民の方々の真の利益と申しますか、そういった観点に立って物事を考えるべきであろう。したがいまして、国交のない関係のもとにおきます間柄で、どのようなことでそれが確保できるかということ、これが大事なことであろう。したがいまして、いまここで六万トンの漁獲量を確保するためには何でもやりますというようなことは、申し上げかねるわけでございます。
  55. 河上民雄

    ○河上委員 いずれにせよ、いま当面している問題について全力を尽くしてもらいたいのでありますが、これとの関連におきまして、北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国が二百海里の線引きをした場合、いましていないわけですけれども日本の二百海里の線引きと交錯する場合ですね。日本海の部分について政令で今後線引きをされますか。それとも北朝鮮の方が一方的にしても、日本側はこれに対して対抗的に線引きをすることは避けるおつもりですか、いかがでございますか。
  56. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本海におきます具体的な線引きの問題につきましては、やはり農林大臣とよく御相談をしなければならないわけでありまして、朝鮮民主主義人民共和国が二百海里の線引きをしたから直ちに日本もするというようなことは、ただいまのところ考えていないと思います。
  57. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、もし韓国北朝鮮の、朝鮮民主主義人民共和国の二百海里線引きに対応して、みずからも二百海里線引きをした場合は、日本もこれに対抗的にされるおつもりですか。
  58. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 仮定の問題なので、なかなかいまのところ想定しにくい点が多いと思いますけれども、東シナ海、黄海あるいは西日本の方で全体的にそれぞれ二百海里の線引きをやるというような事態になりましたときには、わが国でもその時点におきまして、日本漁業の利益の総合的な確保という観点から慎重に検討した上で、必要があればいつでも直ちにその線引きの手直しをする、そういった用意は常に怠ってないという段階でございます。
  59. 河上民雄

    ○河上委員 それは中国韓国、それから朝鮮民主主義人民共和国、この三国について、どこかの国がしたらそれに対応するというんではなくて、日本海から束シナ海全域にわたって総合的に、ある時期を選んでやる、こういうことでございますか、いかがでございますか。
  60. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 関係国の範囲も複数でございますし、それぞれの事情も違いますので、その時点時点日本漁業の利益を確保する上で、どういった対応が総合的に見て一番損失が少なく利益が大きいかという観点で常に判断をしてまいりたい、こういうことでございます。
  61. 河上民雄

    ○河上委員 もしそういうことで、日本日本海から東シナ海にわたって二百海里の線引きをしなければならない場合、当然竹島は北方領土と同様日本としては絶対譲ってはならない一つのポイントだと思います。その点について、外務大臣はいまいかがお考えでございます。
  62. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 竹島問題は、また両国政府にとりましてお互いに領有権を主張し合っているところでございます。したがいまして、日本立場から言えばこれは主張するのが当然である、かように考えております。
  63. 河上民雄

    ○河上委員 いずれにせよ、もう八月一日という期限がございますので、私はやはり全力を尽くして朝鮮民主主義人民共和国と従来のいきさつにとらわれず接触をして、新たな東北アジアの国際関係というものを切り開くぐらいの気持ちでこれに当たらない限り、後手に回って結局は日本漁民が悲惨なことになるということになりゃせぬかと思いますので、その点、私は外務省のこの際少し一歩踏み込んだ対応を切に期待したいと思います。  それでは、金大中事件につきまして一、二御質問をしたいと思います。  この前の金炯旭氏の証言につきましては、内容は四つあります。第一は、朴大統領の許可なしに実行できなかったはずのプランである。それから第二は、李厚洛元KCIA部長が最高指揮者で、現地の指揮者は金在権氏であった。それから三番目には、派遣された六名のチームのうち三名が金大中氏尾行の際、日本の警察に写真を撮られて、金在権公使が警告を受けた。したがって、スタッフを交換した。四番目には、下手人十一人のリストを発表している。  こういうようなことだろうと思いますが、その一々につきましてここで申し上げる時間はございませんのですけれども、まず第一に、外務省は今回の金炯旭氏の証言につきまして、これは信憑性があると考えておるのか、ないと考えておるのか。フレーザー委員長は、これは十分に信憑性がある、自分たちの調査と全く一致しておるということを強調しておるわけですけれども、この点私どもは、アメリカの議会の証言というものが、宣誓を行ってもしうそであるということならば偽証罪に問われるという、そういう可能性を持っておるわけでございます。そういう点で、信憑性があるのかないのか、こういう点につきまして政府はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  64. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 金炯旭氏の証言自体が信憑性があるかどうか、あるいはうそを言っていない、真実を述べていると考えるかということになりますと、これは宣誓をされた上の証言でございますから、うそを言っておるというふうに言うことは、私どもはそういうことは言わない方がいいだろうと思います。しかし、その証言内容が、それでは事件自体につきまして本当に証拠的な価値としてその証言があるかということになりますと、これは証言の中にも言われているように、御自分でもこれは聞いた話ということをおっしゃっているわけでありますから、したがいまして、伝聞であるということは変わらないというふうに考えます。
  65. 河上民雄

    ○河上委員 そうすると、伝聞であるものは証拠としては取るに足らないものだ、こういうような御判断のようでございまして、特に在職中でない、もうすでにやめた後の事件について、たとえその関係者であってもその人の証言は余り当てにならぬ、こういうようなことを政府はお考えのようなふうに受け取れるのでありますが、今回の金炯旭氏の証言の中で、日本の警察が写真を撮った上で金在権公使に事前に警告を発した、そのことがあの拉致事件の計画の一部変更をもたらしたということを言っているのであります。これは従来、写真を撮ったということは余り言われてなかったのでありますけれども、この問題について三井さんは、日本警察の名誉の問題だということを新聞で語っておられますけれども、この金炯旭氏の証言は全くうそだというふうにお考えでございますか。  私はその点、実は金大中氏が拉致されました昭和四十八年の八月八日、その後の最初の衆議院外務委員会、八月二十四日ですが、そのときに、高橋警察庁長官が事件の発生する前に、韓国大使館における金在権公使に、そういううわさがあるけれどもそんなことをしないでほしいという警告を発したという情報があるけれども、それについてはどうかということを聞いた一人でございます。すでに四年前からそういううわさがずっとあったものが、いまここに少なくともKCIAの元部長——そのときはそのポストになかったかもしれませんけれども、少なくともKCIAの内部の事情に一番詳しい人がそう言っているという事実を私は非常に重く見たいわけでございますが、その点三井さんはいかがお考えでいらっしゃいますか。
  66. 三井脩

    ○三井説明員 事件当時、警察が金在権にいまおっしゃるような趣旨で警告したのではないかといううわさがあるので、その点はどうかということを国会において河上委員が質問され、それに対して当時警備局参事官が、さようなことは全くございませんという趣旨の答弁をいたしておることは、議事録により私も承知いたしております。  今回の金炯旭氏の証言は、ややそれと符節を合わすような点があるわけでありますけれども金炯旭氏自身がうそだと思いながら証言されたというようには私は必ずしも思いませんけれども、そういう事実が全くない、われわれにとっては事実無根であるということでありますので、どういうつもりで言われたのかという点については、私たちは理解に苦しむということであります。  その証言が伝えられましたので、私たちは全く事実無根だということを言ったのですけれども、報道等によりますと、なおあれは事実だということについて金炯旭氏は固執しておられるというように考えますので、そうなると、われわれがうそを言っているのか、日本の警察がうそを言っているのかというようなことになると、これは名誉にもかかわる、こういうように私は思いますけれども、警察としてあの際にも申し上げましたが、金大中氏を尾行しておる韓国側の要員を警視庁が尾行したというようなことはございません。報道によれば、金炯旭氏はその後、警視庁でなければ神奈川県かほかの県の警察かもしれぬというようなことも言っておるようでありますが、そういうことも含めまして、警察がさようなことをしたことはございませんし、したがいまして、写真を撮ったこともなく、これを金在権氏に示して警告を発するというようなことも全くございません。この点は当時からはっきり申し上げておるわけでありますけれども金炯旭氏がうそを言っておられるとまでは私たちは思いませんが、どういういきさつで金炯旭氏がそう言われるのかという点については、われわれとしては理解に苦しむということでございます。
  67. 河上民雄

    ○河上委員 三井警備局長は、金炯旭氏の発言について全く理解に苦しむ、こう言われたわけでございますけれども、私自身、実は四年前に、事件発生当時にそういう情報を得て質問をした一人として、そのうわさを消す確固たる証拠がないままに、ここにはっきりと向こう側の責任者の一人によって証言されたという事実を非常に重く見ているわけでございますが、三井局長から見たら理解に苦しむ発言が、実はあなた方の仲間の方からも出ているわけでございます。  それは、警察友の会の機関紙に載っておるのでありますけれども、昨年の八月、和歌山県高野山で開かれた近畿警察官友の会主催の夏季教養講座で、高橋前警察庁長官が、これはやめられた後かもしれません、事件が起った当座はそのポストにいた方でございますが、金炯旭氏は、事件が起こったときにはそのポストにいなかったという理由で、余り当てにならぬと言っていますけれども、高橋さんは事件が起こったときにそのポストにいた人です。その人が、「金大中事件、あれは私の一生の中でいちばんいやな事件でした。あの当時から、私は金大中はあぶないと思っておったが、まさかああいうばかなことをやるとは、思っていなかった」「新聞あるいは公式には、あれはKCI(A)ではないといっておるが、KCI(A)であることはまちがいない。金東雲というのはある程度知っておったが、あの野郎がこんなことをやるとは思わなかった。逆手をとられたわけです」云々というようなことを講演の中で述べておられます。この文脈からしますと、金大中氏が日本に来たのは警察としては全くノーマークで、事件が起きて初めてこういう人がいたということがわかったというのは全くのうそで、やられるのじゃないか、やられるのじゃないかと前から思っておった、しかし、まさかそんなひどいことはしないと思っていた、その油断を突かれてこういうことになった、自分の一生の中で一番不愉快な事件だ、こう言っておられるのですね。三井さんは、警察庁あるいは外務省は、この高橋さんの発言を、これも全くのうそだ、寝言だというふうにきめつけられますか。
  68. 三井脩

    ○三井説明員 高橋前長官がそういう講演をされた、それが印刷物になって機関紙に載っておるということを私たちことしになってから知ったわけでありますけれども、そのことについて、まず内容が大変おかしいので取るに足らないということで、私たちはこれを無視いたしました。それが第一点であります。  最近になりましてから、金炯旭発言等の絡みもあり、そのことが特に取り上げられるというようなことでありますので、そういう状況の中で、高橋さんにそのことについてどういうことですかと事情を聞かせました。そうすると、高橋さんはそういうことを言った覚えがない、こうおっしゃいました。しかしながら、こういうふうに速記とったものが載っておる、印刷物になっておるということも申し上げましたところ、大変意外だ、高野山で話したことを内容は別として思い出され、あのときに講演をしたけれども、あれは記録に残さないというようなことであったし、また印刷するというようなことについて別に了解も求められなかったし、自分としては、ああいう形で出ておるということは大変心外である、こういうことでございました。これはいきさつでございます。  次に、内容についてでございますけれども、高橋さんがおっしゃるには、当時そういうことを言った覚えがないけれども、いま印刷物でそうなっておるということを聞いてみると、当時新聞その他で推測としてKCIAとかあるいは某国の秘密警察がやったのではないかということをしばしばおっしゃった方もありますので、そういうようなことが頭に残っておって、金東雲を割り出した警察の功績といいますか警察の努力を大いに称揚する意味でややオーバーなことを言ったのではなかろうか、自分ではそう思う、こういうような話でございました。  私たちが見ますと、あの内容は幾つも事実と違うところがあります。したがって、私たちとしては、現職を離れた方の一私人として、当時推測として言われたのであろう。本人は今日では必ずしもそういう推測を持っておるのではないというようなこともおっしゃっておるようでございます。違う点はと言いますと、金大中が入ってきて危ないと思っておったというようなことは全くございません。金大中の問題につきましては、当時私が警視庁におりまして第一線を担当しておりましたからよく知っておりますけれども、金大中が入ってきた、これは危ないと思ったことはございません。したがって、警察庁の長官が思うはずはない、こう思います。したがってこれは間違いだ。  第二に、金東雲についていかにも事前に知っておった、そういうふうに読み取れるような文句があるのです。長官が金東雲一等書記官を知っておるはずがないと私たちは思っておりましたが、御本人に確かめましたところ、金東雲は全く面識がない、知らない、こういうことでございます。  等々のことでございまして、あの事件はむずかしい事件である、いやな事件であるということはそのとおりでございましょうけれども、そのむずかしい事件について何とか金東雲を割り出すところまで捜査でこぎつけた、警察官の集まりですから、諸君しっかりやってくれ、こういう意味であったとおっしゃいますので、私もそれが真相であろうというように考えておるわけでございます。
  69. 河上民雄

    ○河上委員 日本の警察の内部というのは大変のどかなものだということがいまの話でうかがわれるのですけれども、どこかの町内会で話したというならともかく、将来有為な警察官を前にしてそういうでたらめを言うということはちょっと私ども考えられないわけです。特にその当時の最高責任者がそういういいかげんなことを言うということになりますと、現在のポストにある人に対してもわれわれは信用をおけないことになってしまうわけです。そういう日本の警察であるということは私は考えたくないのでございまして、これは金大中氏が少し危ないのじゃないかという予感をやはり持っておられたことを暗に示しておるというように思うのでございます。  具体的に長官が知っておられたかどうか知りませんけれども、少なくとも警察部内のある雰囲気を長官の発言は反映しておるというふうに私は考えたいのでありますが、こういう問題をここまで、韓国の元KCIA部長もそう言い、日本の警察庁前長官もそう言っておる、こういうことを考えますときに、私はやはりこの金炯旭氏の発言というものが、宣誓をした上でしているという事実を考えますときに、部分的にいろいろ思い違いや何か仮にあったといたしましても、こういう事実がなかったと否定する根拠は私はいまの三井さんの御説明からはどうしても伺うことができないのでございまして、われわれとしてはこの疑いをさらに深くせざるを得ないというように思うのでございます。  この後、私どもの同僚議員の土井さんの方から金大中事件の問題についてもう少し詳しく追及をする予定になっておりますので、時間も参りましたから私の質問を終わりますけれども、私としては、四年前に一つの疑いを持った事実が何ら具体的証拠で否定されることなく、今日アメリカの議会における元KCIA部長証言によってそれが裏づけられているという事実を非常に重く見ております。その事実が具体的に否定されない以上、私どもとしては、日本の警察がうそをついているというふうにここで断定はいたしませんけれども、やはりそこに何か隠されているという疑いを一層濃くせざるを得ないということをここに申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  70. 有馬元治

    ○有馬委員長代理 河上先生、先ほどの御質問の補足を中江アジア局長がされます。中江アジア局長
  71. 中江要介

    中江説明員 先ほど北朝鮮の憲法の問題、領域の問題で御質問ありましたときに、私は具体的な条文を承知しておりませんでして、早速調べましたところ、南北共同声明の出ました年の十二月に朝鮮民主主義人民共和国の憲法が改正されまして、御承知と思いますが、その第五条にこういう規定がございます。「朝鮮民主主義人民共和国は、北半分で社会主義の完全な勝利をおさめ、全国的な範囲で外部的勢力を撃退し、民主主義的基礎の上で祖国を平和的に統一し、完全な民族的独立達成のために闘う。」こういう規定になっておりまして、現在はどうも北半分の社会主義の勝利のために闘っておるけれども、行き着くところは平和的統一だというふうに推察されるという点が一つと、第百四十九条に首都、首府でございますが、首都はピョンヤンである、こう書いてございまして、これは改正前の憲法ではソウルが首都となっておりました。それをピョンヤンに首都の場所を憲法上変えているということもございまして、この辺は先ほどの御質問の私の答弁を補足するものとして一考に値するかと思いましたので、補足説明させていただきました。
  72. 有馬元治

    ○有馬委員長代理 次に、土井たか子君。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕
  73. 土井たか子

    ○土井委員 去る六月二十二日のアメリカ下院国際関係委員会国際機構小委員会、通称フレーザー委員会での公聴会で、もうすでに先ほど来御質問が展開をされております金炯旭氏の証言に対しまして、外務省とされましては、資料を取り寄せてそして具体的にその内容に対して吟味をしてみなければ事の信憑性がよくわからないし、事情についてもそれをつかむことができないというふうないままでの対応で今日まで事を運ばれてきたというふうにわれわれは理解をいたしております。  ところで、御承知のとおりに米議会においては宣誓をしての証言でございますし、フレーザー委員長自身が、金氏が述べた情報のいずれを見てもフレーザー小委員会での他のいろいろなほかから得た情報によって知り得たことと一致しているからこれに対して疑ういわれはない、というふうなことも明言をされているようであります。  まず外務大臣にお尋ねしたいのは、外務省としては、いままで米議会での証言に対して、いろいろ資料に対してももう聴取なさっているはずでありますから、この問題に対していまどのように御認識を持っていらっしゃるかというのをまず承りたいと存じます。
  74. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いわゆるフレーザー小委員会におきます金炯旭氏の証言でございますが、正式の議事録は大分おくれてしまうわけでありますけれども、とりあえず市販されておる速記録、これを取り寄せて検討いたしたところでございます。  その私どものとりあえずの考えといたしまして、その中で述べられておること、これは先ほど来申し上げましたように、バックグラウンドの説明あるいは伝聞等が多い、こういう認識でありますが、その中で、金在権氏からいろいろ聞いておる、こういうことが述べられておりますので、金在権氏につきましていろいろ証拠のあるようなことが入手できるのではないか、こういうふうに考えまして、金在権氏の所在あるいは接触の可否につきましていまアメリカの国務省等に折衝をしておるというのが現状でございます。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 伝聞でございましても、真実である場合はこれを事実として認めざるを得ないわけでありまして、伝聞であるから証拠にならないとか、伝聞であるから事実でないと決めつけてかかるのは、これは間違いだと思うわけであります。したがってそういう点からすると、いま外務省とされては、さらにその金在権氏に対して接触を求めていらっしゃるということでありますが、このことに対しての可能性は一体どういうぐあいに伺わせていただいたらよろしゅうございますか。つまり金在権氏との接触ですね。
  76. 中江要介

    中江説明員 通常、こういう接触の場合の可能性を判断する場合の材料に二つの要件があると思います。  一つは、いま大臣が申されましたように、アメリカ政府日本政府のそういう要請に応じるかどうかという点が一つ。これは日本のある意味での公権力アメリカの領域内で行使されるということになるわけでございますので、アメリカ政府の了解がなければならないということが一つでございます。  第二点は、そういう了解ができました上で、今度は本人が任意の事情聴取に応じるかどうかという点がございます。  この二点につきましては、いまのところはどういうふうに判断してできるかという点は何とも申し上げられない、こういうことでございます。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 ただしかし、この取り上げ方によっては、日本の対応の仕方が、伝聞であるからそれに対しての裏づけというものを日本は独自のいろいろな足がかりを求めて調査を急ぐというふうな行き方は、むしろアメリカの議会からすれば、宣誓を得ての上での証言であり、むしろこれがいろいろこの発言内容に対して責任を迫られるような問題であるならばいざ知らず、アメリカの現在の委員長自身がこれに対してこれを疑ういわれはどこにもないというふうな態度で臨んでおられるわけでありますから、場合によったら、米議会に対して非常に失礼な取り扱い方を日本政府としてはされるような懸念もあるわけでありまして、こういう問題に対しての対応というのは、現に出ているいろいろな資料に基づいてまず確かめるということが先立つ問題であろうと思います。そういう点からすると、外務省としてはもうすでにいろいろ正式の資料については要求をされているわけでありましょうけれども、具体的にいつごろそれを入手されるという予定でありますか。
  78. 中江要介

    中江説明員 もし、いま御質問の正式の資料というのが金炯旭証人の証言についての権威ある議事録なり速記録ということでございますと、先例に徴しますと半年ぐらいしないと出てこないという状況ではないかと思います。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 全く気の長い話でありまして、飛行機で往復すれば一日かかるかかからないというふうな距離にある相手方に対して、対応の仕方というのが少しどうかならないかというふうな気がするようなただいまの御返答でございます。  ところで、先ほど来御質問の御答弁として、外務省としてはこういう問題に対しての捜査とか調査とか、具体的な後づけというのは外務省のやるべき仕事ではなくて、むしろ警察庁、警察の職権に係る問題だというふうな御発言がございました。つい先ほど、河上委員の方から、当時の高橋警察庁長官の問題を取り上げられまして「けいさつの友」の内容で披瀝されている金東雲氏をめぐる問題、さらにKCIAについての御認識というのがここでも取り上げられたわけでありますが、三井局長、この「けいさつの友」という、この文章、私もいただいて手元にございますけれども、これくらいはっきり述べられているということになってまいりますと、これは当時の高橋長官でございますから、したがって、警察としては、あの金大中拉致事件というのは結局はKCIAの犯行によるものであるというふうに認識を持っていらっしゃるというふうにわれわれは理解をしていいわけですね、どうですか。
  80. 三井脩

    ○三井説明員 金大中氏拉致事件、つまりこれは不法逮捕監禁誘拐事件という刑事事件でございますので、刑事事件捜査に警察は従事しておる、こういうことでありますから、捜査の目的、いまさら申し上げるまでもないのでございますけれども、事案の真相を証拠によって解明するというのがいまや警察の任務であると心得ておるわけでございます。したがいまして、事件でも何でもない、警察に直接関係のない単なる情報判断の問題として、あれはどこがやったんだろうなという推測をするのはもとより自由でございますけれども捜査として警察がこれにタッチしておるといいますか、これを中心の仕事としてやっておるという現状におきまして、ここでこの事件の性格なり犯人なりというものについて言う場合には、あくまでも証拠というものを踏まえて言わなければならぬ、こういうことであります。正確に申しますと、現在までわれわれが捜査の過程で収集した証拠によれば、これはKCIAあるいは韓国公権力の行使というわけにいかない、こういうことでありまして、将来調査が進んでいけばどうなるかわからないということで、そういう可能性は別に否定しておるわけでございませんで、現状における現在までの捜査ということから言えば、KCIAだと断ずるわけにまいらない、こういう意味でございまして、警察が一生懸命、何かに書かれておりますようにKCIA隠しに躍起になっておる、こういうものではないという点を御理解をいただきたいと思います。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、高橋当時局長といまの三井局長とはこの問題に対する認識を異にしていられるということでございますか、いかがですか。
  82. 三井脩

    ○三井説明員 捜査をやっておるのはわれわれ現場でやっておるわけでありまして、捜査として出てこないことを捜査に基づかないで判断をするのは、単なる私的憶測、こういうことになるわけでございます。現職を離れてそういう立場で物を言うということは一つの可能性としてはあると思いますけれども捜査を踏まえて物を言うという意味からはあのように言えない、こういうことでございます。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 まことにおかしいことを三井局長はおっしゃるのですね。現にあの事件当時は高橋さんは警察庁長官でいらしたわけでしょう。警察法に従って考えてまいりますと、警察官の職務というのは上官の指揮監督を受けて警察の事務を執行する、こう書いてあるのです。だから長官の指揮を受けて事に当たられたというのは法律から考えたって当然だし、そうあるべきだとわれわれは認識しております。特に、そのときの長官だけれどもいまは一私人とおっしゃることはこれまたおかしいのであって、国家公務員法からするとどうなっていますか。三井局長は御存じのとおりであります。国家公務員法の第百条では「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」とちゃんと書いてあるのですよ。こういうことからいたしますと、警察というのは、警察をやめさえしたら何を放言しょうが、何をどう言おうが全然これは構わないということで日ごろ警察の職務に従事していらっしゃるわけでありますか。
  84. 三井脩

    ○三井説明員 まず第一点の上司の命令に従って仕事をするというのはもとよりそのとおりでございます。ただいま申し上げておりますのは捜査の中身でございまして、捜査が進むに従って集まった証拠によって判断できるところまでそろうものもあればそろわない段階というのもあるわけでありまして、現状での捜査の進行状況からはそういう判断はできないということでございます。  第二点に絡むわけでありますが、そういう意味におきまして、高橋当時の長官とわれわれ捜査を担当いたしておりました者との間にその判断に差があったわけではないわけでございます。つまり証拠に基づいて判断するということについては何ら差がない。ただ捜査を離れていろいろ推測してみよう、ブレーンストーミングと申しますか、いろんな意味で揣摩憶測をたくましくするということは自由であるということで、捜査上のことはもとより言えない、国家公務員法によって、職務上の秘密は現職を離れてもまた国家公務員法百条の規定の規制を受けるわけでありますから、これは言えない。したがって捜査ではないもの、そういう立場でいろいろ描いてみるとこういうことだろうということは、ここはまた自由、こういうことでございまして、恐らくそういうような立場で、したがって御本人も現職を離れた気やすさからいろいろ言ったのであろう。当時のことを考えてみると、こういうことをおっしゃっておるわけでありまして、そういうこともあり得ることであろうというように考えるわけであります。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 一私人であれば別でありますけれども、この高橋さんというのは当時の警察庁長官なんですよ。当時警察に対して最高指揮をとっておられたその御当人でございます。その方がはっきりこの発言の中で、特に大変重大な問題に対して断定的表現をされているということは、これは単に一私人が勝手に憶測をたくましゅうして言う分には自由であると言って済む問題とあなたはお考えになっていらっしゃるのですか。ここには、KCIではないと新聞だとか公式には言っておるけれども、KCIであることは間違いないと断定をされて「金東雲というのはある程度知っておったが、あの野郎がこんなことをやるとは思わなかった。」と、はっきりこう書かれておるのですからね。この問題に対してはそうであるかもしれないしないかもしれないという表現じゃないのですよ。断定的表現だというのは客観的にだれが見てもこれは読み取れる内容であります。一私人と言ってこれは済む問題ではないと私自身は思いますけれども、三井局長とされては、かつての御自身の上司でいらっしゃる方でありますからまあ言いにくい問題でしょう。しかし、三井局長としてこの問題に対してはどういう感想をお持ちか、ひとつ率直に言ってみてくださいよ、非常に大事な問題だから。
  86. 三井脩

    ○三井説明員 先ほどもちょっと触れたわけでありますけれども、いまお読み上げになりました点から言いますと、普通の人が読めば、その講演者である高橋前長官は金東雲を事前に知っておる、事件発生前から面識があるとか——面識があるかどうかわかりませんが、知っておる、こういうような感じを受けるわけです。そんなはずはないとわれわれは思いまして御本人に確かめましたところ、案の定、全然知らぬ、こういうお話でございまして、私は、それは本当だ、こういうふうに思うわけでございます。その他の点につきましても、先ほどちょっと触れた、事前に金大中氏の身辺について心配しておったとかそういうようなことも事実と相違するわけでございまして、事件が済んでから、あの点をそういうふうに事前に知っておって、あるいは金東雲などというのも何か悪いことをしそうだということを事前に知っておって、ぴしっと検挙できれば大変よかったという願望というのは後からのわれわわの反省、検討の中ではあり得るわけでありますが、それと事実とは違うわけでございます。  それからまた、当時の長官と当時の捜査担当者との間に事実の認識、事件の認識について何らそごを来しておらなかったのでありまして、これは当時現職、当時の長官でございますので、当委員会初め国会でもしばしば高橋長官は答弁をされておりますが、その中でも、あれはKCIAではないかとか、その他いろいろの情報がたくさん寄せられております。そういうような中であるからなおさらわれわわは揣摩憶測を排して証拠に基づいて事実を追及していくという立場でやっていかなければならぬということを、何回か委員会で明言をされておるわけでありまして、当時、何ら変わっておりません。それと今回の退職後の発言との違い、その間の違いを説明するとすれば、捜査を離れた私的な立場での推測の一端を申し述べられた、こう解するのが正しいのではなかろうかというように考えるわけでございます。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 いろいろと言い回しには気をお使いになりながら、御答弁に際してはまことに微妙な御答弁を続けざまに三井局長としてはなさらなければならないようなお立場でいまはいらっしゃるだろうと思うのでありますけれども、ちょっと外務省にこの辺で聞きたいのですが、四十八年といえば事件当時でありますが、四十八年の八月二十七日に、日本における韓国大使館の韓国中央情報部出身者についてということに対しての問い合わせが当時参議院の法務委員会でありまして、そのことに対して八月二十七日付で回答書を外務省としてはお出しになっているわけですが、これを見てみますと、各国公館長については任命に当たってわが国のアグレマンを求めるという国際慣例との関連で履歴書を受け取るということになっているけれども、公館員についてはそのようなことになっていないので、現在のところ、日本にある韓国大使館員のうち元中央情報部員であった者の氏名とか人数というのは確認することができないから、これを具体的に明らかにするという立場にはないけれども外務省としてはさらに韓国側に対してより具体的な回答をもたらすように要請している、こうございます。このことに対しての要請をされた結果、これに対してのどういう回答が韓国側から外務省に寄せられたのでありますか。
  88. 中江要介

    中江説明員 これはその後、いまと同じ御質問を法務委員会で受けまして、私どもの方から御説明申し上げましたのは、韓国大使館の見解といたしまして、韓国政府は、在外にあります在外公館に外交官を派遣いたします場合には、その過去の経歴がいかようであれ一様に外交官として派遣しているので、その者の、外交官として活動している間においては、その過去の経歴あるいはその職務について特に差別がない、たとえば農林部から来ている人も外交官であれば、商工部から来ている人も外交官である、そういう意味で、具体的に申しますと、在京韓国大使館に外交官として正式に登録されております外交官は一様に外務部長官の指揮下に入る外交官である、こういう説明があった、こういうことでございます。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 それは、いまの外務省から出されている四十八年八月二十七日付の、外務省としてお出しになった内容に即応して、韓国側にどういうふうにお尋ねになった結果そういうことになっておるのですか。いま私が、外務省北東アジア課の名前で出ている文書に従ってその部分を読みますと、「現在のところ在本邦韓国大使館員のうち、元中央情報部員であった者の氏名及び人数を確認することはできないので、これを具体的に明らかにしうる立場にはないが、外務省としては更に韓国側に対しより具体的な回答をもたらすよう要請している。」こう書いてあるのですよ。このことに対して具体的にどうお尋ねになり、どのような返答があったのですか。いまの御答弁ではその点は釈然といたしません。
  90. 中江要介

    中江説明員 この事件に限りませず、いかなる場合でもそうでございますが、国会でいろいろ御質問がございまして、それに基づいて外国に物事を照会いたしますときには、正確を期するために、国会における質疑応答の関係部分の写しをつくりまして、こういういきさつがあったのだ、したがってこの点についてこういうことを要請するという形で、本件の場合は韓国側に要請しましたところが、その回答は先ほど申し上げたようなものであった、こういうことでございます。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃさらに、今度警察にまたお尋ねをしたいと思うのです。外務省の方もそういうふうな要領を得ない返答を受け取られたままのかっこうになっておりますが、さて警察にお伺いをしたいのは、当外務委員会、昭和五十年七月三十一日、その当日、私は、社会党が得ました、金大中氏事件に対して関与した人たち、それとおぼしき人たちの氏名が十二名、これは拉致の役割り分担及び関与者の名前がそこに明記されているわけですが、その明記されておるリストを取り上げまして問いただしをいたしました。その節、三井局長は、捜査に参考になる資料はどんなものでもいただきたいという気持ちだから、提供いただいてよく検討いたします。こうなんですが、検討結果についてはいまだに私は何ら聞かされておりません。御報告もいただいておりません。このリストの内容は、今回のアメリカの下院における金証言の言うところのリストと符合するわけであります。別に私たちは金さんに対して、事前に知っておるわけでもなければ、ましてや連絡をするというわけでもないし、そのリストは金さんからいただいたリストでもないわけであります。しかし、私たちが社会党としてこれを入手して、外務委員会で取り上げて、そして問題にした節、この内容に対してはかなり信憑性があるということを確かめて取り上げておりますという発言もいたしまして、そしてこのリストも提供して、警察としてはしたがってこれに対してよく検討するというふうな御答弁をいただいたままになっておるのですが、その後この御検討結果についてはどのようになっておりますか。
  92. 三井脩

    ○三井説明員 当時、外務委員会でいまお話しのようなことがありまして、委員会が済んでから警察庁にお見えになりまして資料を出していただきました。これについては即刻検討をいたし、捜査の参考としたわけでございます。その後、ことしに入りましてから、二月十四日に文明子名による犯行リストの発表がありました、それからさらに、六月二十三日の、二十二日かもしれませんが、金炯旭氏の発表ということで、三つあるわけでございます。この三つを比べてみますと、文明子氏と金炯旭氏とは、多少違う点がありますが、大体同じ、一名違う点があります。五十年七月三十一日、社会党の先生からいただきました資料では、金炯旭氏のものとは実行者の中で三名違っております。それから上部の命令者あるいは最高責任者という点については、李厚洛、金致烈というのは社会党名簿にはないというところで、その中間のところは大体同じです。ただ一つ、社会党の先生からいただいた弄、現場指揮をやった、車両船舶輸送指揮をした下手人、こう書いてあります尹という人は、韓国文字でインチンゲンとわれわれ呼んでおりましたけれども、その後文明子、金炯旭氏の話によりますと、そういう役割りをしたのは尹振元である、こういうことでありますので、読み方はいろいろありますが、インシンゲンが正確かというように修正をいたしますと大体同じでございます。  このそれぞれについて捜査をいたしましたが、この中には全然日本におったことがない、こういう人もあるわけでありまして、たとえば韓春、これは一等書記官でホテルを予約をした、こういうふうに言われておるのですが、この人は事件発生当時、わが国の外務省に照会いたしましたけれども、外交官名簿にも載っておらず、また出入国の記録もない、こういうことでありますので、これはちょっとおかしいのじゃないか、こういうふうに思います。  それから河泰俊という人、これは地位は局長で国内管理という役割りをしたと書いてあるのですけれども、外交官名簿にもなく出入もしておらない、いかなる人物かは不明ということであります。  それから金振洙、この人は外交官名簿によれば参事官で同じ人物がおる、というのは、その後調べたときにはおりますが、事件当時にはおらないということですので、これも違うということで、十二名の末尾三名はどうも情報がおかしいのじゃないか、こういうふうに思います。  その他の人についてはそれぞれ捜査をいたしました。いたしましたけれども、総じて申しますと、事件との関係を把握するに至っておらない、関係ありという結論は出ておらないわけであります。細かく言いますと、事件当時隣のあるいは向かいのホテルの部屋を借りてそこに入っていろいろ指揮したというようにあのリストには書いてありましたけれども、どうもそういう事実について、われわれとしては、捜査上出てきておらないというようなこともありまして、せっかくの資料について十分捜査をいたしましたが、あれから犯人はこうだというものを断定するといいますか特定するところまで現在のところ至っておらないということであります。  なお、これを資料といたしまして今後捜査を進める上につきましては、参考として活用してまいりたいと考えております。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 警察の方からはいまそういうふうな御発言なんですが、外務省としては、今回アメリカ発表された金大中事件犯行リストの十一人の中で、当時日本に在住されていたという方々に対しての確認をされている部分があるやにわれわれは察知しているわけでありますが、外務省としてはいかがですか。
  94. 中江要介

    中江説明員 いまのリストの十一名の中で、わが国の大使館または総領事館で勤務していた者として私どもの外交団あるいは領事団リストで調べましたところ、八名の者が金大中事件前後日本において在任していた期間というものがはっきりいたしております。  それを順次申し上げますと、金在権公使、これが一九六九年十二月十五日に赴任しておりまして、一九七四年一月二十八日に離任しております。尹英老参事官、七二年三月二十七日に赴任しまして、七六年一月三十日に離任しております。金東雲一等書記官、一九六八年の五月二十二日に赴任しまして、一九七三年十月二十三日に離任しております。柳春国二等書記官、副領事、これは一九七一年六月二十日に赴任いたしまして、一九七三年十月十五日に離任しております。洪性採一等書記官、領事、これは一九七一年六月二十日に赴任いたしまして、一九七三年九月五日に離任しております。白哲鉱一等書記官、領事、一九七一年五月二十八日に赴任いたしまして、一九七三年十月十五日に離任しております。劉永福副領事、これは横浜の副領事ですが、一九七二年五月十七日に赴任しまして、一九七三年九月六日に離任しております。李台煕領事、これは神戸の領事ですが、一九六八年十月五日に赴任いたしまして、一九七四年三月二十五日に離任しておる。つまり金大中事件前後における日本での在任期間というものを調べました結果は以上のとおりでございます。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 さて、いま言われた、当時日本に在住されていた方々の中で、今回のリストでは、アメリカの国内において明らかに韓国中央情報部、つまりKCIAのメンバーである、むしろKCIAの主要なるメンバーであるということを確認し、そしてそのことを具体的に認めた証言に現になっているわけですね。昨年の一月十六日、三木さん当時に国会に配付された首相名の見解を見ますと「我が国において、外国公権力の行使により、日本に居住する日本国民及び外国人の基本的人権が侵害されたような事例は承知していない。政府としては、韓国中央情報部部員が日本国内に存在し、かつ活動を行なっているとの事例はは握していない。したがって、特別の外交措置を執るという問題は生じていない。」このように言明をされて今日まで来ているわけでありますけれども、もうすでに当時のリストの中で日本に在住されていた方々の名前も、その方の肩書きも、いま御答弁のとおりはっきりわかるわけであります。したがって、こういうふうな国会に首相名によって披瀝された見解内容からいたしましても、一体韓国中央情報部員であるのかないのかということは、明らかにその人たちに対して外務省は責任を持って明確に調べる必要があるのじゃないか。このことを明確にしないと、これはアメリカ側の今回の資料あるいは証言というものがどうも怪しげだと言ってみたり、どうも事実無根であると言ってみたり、あるいは伝聞であると言ってうそぶいていることが、何ら裏づけによる日本側の発言とはなり得ないと私は思うのです。だから、そういう点からすると、外務省としては、リストの中にあるその当時日本に居住をされていてしかも肩書きもはっきりわかっている人たちのそれぞれの身分について、果たしてKCIA関係があったかなかったかということに対してはきちっと押さえておく必要があると思うのですが、いかがですか。
  96. 中江要介

    中江説明員 その問題は、この八名全員についてという形ではございませんでしたが、いま申し上げました名前の中の幾人かにつきましては、すでに国会においてもこれがKCIA部員として日本で活動していたのではないかという疑問が再々提起されまして、外務省として調べる能力といいますか方法といたしましては、これは韓国側に正式に照会する以外にないということで、韓国側に照会したことは再三ございましたが、韓国側の説明は、先ほどの御質問に対する私の答弁で申し上げましたように、いま読み上げました人名の肩書き、それぞれ一等書記官とか領事とか副領事とか二等書記官とか参事官とか公使とか、 つまり外交官としての肩書きで日本に在外公館員として勤務しておるということで、正式に外交ルートを通じて通報を受けました外交官でございますので、そういう資格で外交活動をしているという説明以上のことは得られなかったわけでございます。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 いままでのところはそうでしょうが、さらに外務省はそれについて事情聴取を進められるように、一つはぜひ要求すると同時に、このことに対して警察庁としてはどういう事実を把握されているか。当時の八人、日本に在住されていたということに対しては、リストの中身を吟味された結果外務省としてもそのことを掌握されているわけであります。警察庁としてはその点をどのように追っかけていらっしゃるか、いかがですか。
  98. 三井脩

    ○三井説明員 先ほど申し上げましたように、リストに載っておってリストと事実が違うという点はお答えしたとおりでございますが、その内容については、私たちとしては外務省に照会をするということでございますので、アジア局長の御答弁のとおり認識をいたしておるわけでございます。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 さらに、その点は、これは聞いても水かけ論みたいなことになるかもしれませんが、アメリカからいま提起されている証言に従って、日本におけるKCIA活動というふうなものが主権の侵害ということで投げられているこの問題でありますから、よほどこのことに対してははっきり調べる必要があると思います。明確にする必要があると思いますよ。  ところで、いま非常に疑惑がある問題がもうすでに新聞紙上でも大きく書かれたわけでありますが、KCIAと警察庁とのつながりであります。金炯旭氏の発言によると、これは伝聞じゃございません。御本人の発言によりますと、一九六五年当時、相互に情報交換の協定を結んでいるということを証言をされているわけであります。伝聞ではなく、御本人が。金炯旭氏のこの発言からいたしますと、恐らく日本の方はそういう協定はないと否定をされるに違いないわけでありますけれども金炯旭氏自身はそういう秘密協定を結んだというふうな事実を、当時警察庁の協力が六五年東京において取り交わされた、合意されたというふうな内容について触れて、述べられているわけであります。  したがって、このことに対して、こういう協定があるかないかということと直接関係があるなしというのは後でこれは問題においおいしていくとして、ちょっとお尋ねしたいのは、昭和四十一年の十月の十日から十月の十五日まで、当時の警備局長である高橋幹夫局長韓国にいらしていると思われます。同時に、四十五年になりますが、一月の七日から一月の十日まで、川島広守局長韓国にいらしているというふうにわれわわは把握をしております。四十六年の一月に三井局長韓国にいらしているということも把握をいたしておりますが、これは事実でございますか。いかがでございますか。
  100. 三井脩

    ○三井説明員 訪韓したことは事実でございますが、当時私は局長でありませんで、警備局参事官でございます。その他は事実でございます。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 そのときに韓国に行かれました訪問先というのは、一体どういうところに行かれたわけでありますか。いかがです。
  102. 三井脩

    ○三井説明員 もう古いことでありますので、当時の記録等はございませんが、関係者に当たって聞いてみましたところを整理いたしますと、高橋局長当時は内務部、それから内務部治安局、それから中央情報部及び大統領警護室というように聞いております。川島局長の場合には、違う点は大統領警護室には行かないで、日本で言えば最高検察庁、向こうでは大検察庁と言うようでございますが、そこに行ったというように聞いております。私が参りましたのは、内務部治安局、今日治安本部と言っておりますが、主として治安本部に参りまして、中央情報部にも表敬いたしました。  以上でございます。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 川島局長も中央情報部には足を運んでおられるようですね。これはそのとおりだと思います。確認させていただきます。そうですね。
  104. 三井脩

    ○三井説明員 そのとおりでございます。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 ところで、ちょうど金炯旭氏がそういう秘密協定を結んだというふうに言われている一九六五年、後ずっと見てまいりますと、公用で韓国に警察から足を運ばれる件数というのはずっとふえていっているわけであります。  六五年というと昭和四十年に当たると思いますが、昭和四十一年ぐらいから見てまいりますと、昭和四十一年の十月に三件、昭和四十二年の二月に三件、四十二年六月に一件、九月に二件、こういう調子で進んでまいりまして、金大中氏事件にずっと向かっていく四十八年以降の問題を取り上げてみますと、昭和四十八年三月、五月、七月と追ってどんどん——八月に例の事例が起こるわけでありますが、警察からは韓国に足を運ばれているわけであります。四十八年の三月に四件、五月に五件、七月に三件、そして九月に一件ですね。この四十八年は何と計十三件です。そして、四十九年になると、あの八月、ちょうど一年たった八月になりますけれども、十一人、これは当時の総理に同行されて警備に当たられたというふうに、内容はこの四十九年の分についてはわれわれは認識をいたしております。五十年については、九月に二件、十一月に二件。五十一年になると十月に二件、十一月に二件。このように相次いで現在に至るまで警察から韓国に行かれているわけです。これは表敬訪問と言いながら、いろいろな情報交換というものが当然その中であってしかるべきでありまして、これは公務で出張なんですから、だから、こういう点から言うと、秘密協定ありやなしやというのは、具体的に秘密協定がございますかと言うと、恐らくそんなものはございますと局長はここでおっしゃらないでしょう。しかし、具体的にこういうふうに韓国に対して韓国もうでをなさる、韓国に足を運ばれるというこの警察庁の方々の数があるという事実は、これはなかなか私は事実として問題だと思いますよ。  こういうことを踏まえて考えてまいりますと、特にこの金炯旭氏が例の六五年にこういう秘密協定、それも情報交換の協定を結んでいるということを言われているわけでありますけれども、いま私が出しました数字というのは、これは間違いはないと思います。公用旅券で警察庁から発給を要求をされた数字でありますから、したがって、内容については、韓国に行ってどこに足を運ばれたか、何の目的で行かれたか、こういうことをひとつはっきりさせていただきたいと思う。いかがでございますか。
  106. 三井脩

    ○三井説明員 ただいま大変詳しい回数等をおっしゃったのでございますけれども、どこでそういうのを得られたのか、ちょっと私たちもあれでございますが、われわれのそういう外国出張の記録は五年保存といいますか、ということでございまして、古いものはないわけでございます。したがいまして、先ほどの四十一年というのは本人の記憶等によって申し上げたわけでありますが、なお私たちが調べるといたしますと、人事記録には、公務出張でありますから履歴書に書いてあります。したがって、この人が行ったのかというときには、その人の名前を拾って、そこに書いてあるということで確認する。警備局長ぐらいになりますと確認も容易でありますけれども、その他になりますと、人の出入り、交代等もひんぱんでありますので、なかなかわかりかねるわけでありますが、われわれが資料のある過去五年間における警察庁職員の韓国訪問の状況を見ますと、七回でありまして、その内容は、七回のうち二回は総理の訪韓警護——警護は、実際についていく場合と、その先行をして調査する場合でございます。それから三回は麻薬、覚せい剤取り締まり状況の視察等でございまして、具体的要務によって行った場合、その他の二回が警察事情の視察ということでございまして、先ほど申し上げました表敬的な訪問というのがありますのは、この警察事情視察の二回ということになるわけでございます。  なおまた、いま申しました麻薬あるいは覚せい剤その他のことで、近い韓国のことでありますからしばしば訪問する、要務を帯びて行くということがあるわけでありますけれども、これは何も警察庁職員だけでありませんで、都道府県の警察官、これが行くわけであります。具体的に事件を扱っておる、その事件捜査に従事しておる者がその事件に関して出張をするわけであります。この場合は、公務のために韓国に出張する場合には、警察庁に併任をいたしまして、そこで公用旅券の発給を受けて行く、そういたしませんと一般旅券ということになりますので、そういう手続をいたしますので、警察職員としていまお挙げになった数字、大変多いように、私たちが把握しているのと違って多いように思うわけでありますが、そういう警察庁職員のそれは、都道府県職員の公用旅券発給の手続上の数も含まれておるものと思うわけでございます。  なお、念のためでございますが、金炯旭証言の中には幾つか事実関係が間違っておるところがございます。これは先ほど申し上げましたが、必ずしも本人が意識してうそを言っておるというふうに私は思いませんけれども、人から聞いた話というのは、往々にして間違いもあるわけでありますけれども、その間違いの最たるものの一つに、先ほどの事前に警視庁が知っておったということ、そして二番目には、秘密協定があったということがその誤りの最たるものでございます。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、秘密協定があったというのは誤りの最たるものと言ったのは、これは伝聞じゃないですよ。当時、この金炯旭氏自身がKCIAの部長であった当時の自分の問題でありますから、したがって誤りがあると言って誤りで済む問題じゃなかろうと思います。そうなれば、これは御自身の当時KCIAの部長をされていたときの問題を御自身が語られているわけでありますから、このことに対して違うなら違うで、警察庁からすればこれに対して公式の何らかの、違うじゃないか、事実無根ではないかという声明なり申し入れなり抗議なりがあってしかるべきだと思いますが、どういうふうに考えていらっしゃいますか。
  108. 三井脩

    ○三井説明員 その点は、伝聞でないということは私もわかります。しかし、思い違いということもあり得るわけだと思いますが、秘密協定の点は私の認識によれば、いわゆる公式の証言ではなくて新聞記者とのインタビューの中で言われたことではないか、こういうふうに思いますが、そのいずれでありましても、その点について私は記者会見におきまして明確にそういう事実のないことを申し上げておりますので、十分御本人にも伝わっておる、世間にもわかっておるというふうに考えます。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 もう時間的制約がありますから、あと二問をいまここでお尋ねをし、さらに要求をして、私、終わりたいと思うのですが、一つは、この金大中氏事件が起こった直前あるいはその直後にもかけてでございますけれども、在米韓国大使館員数名が事件より前に東京に入ってアメリカ韓国に対して電話をかけたというふうな事実があるようであります。このことはすでにあの事件直後の八月二十一日の閣議後の記者会見で当時の田中伊三次法務大臣が半ばお認めになっている向きの御発言もあったやに私たちは記憶をしておるわけでありますが、名前を申し上げますと、ワシントンの二等書記官の朴正一氏、これは事件前日七月に一たん日本に来てソウルに行かれて、ソウルからまた東京に引き返してこられているという方がありますし、孫仁徳、これはニューヨークの領事であります。また、八月一日になると、李相鎬、ワシントン公使ですね。それから林圭一、これは武官です。この方々がワシントンから日本に来られて、そして東京のホテルから韓国アメリカに対して電話をかけられた、そしていろいろと連絡をとられたということに対して、警察の方ではこの事実に対して認識をされているかどうか、電話の通話料や電話先などについて捜査をされたはずだと思いますけれども、このことに対しての具体的な調査内容がどうなっているか、これが一つであります。  それと同時に、これは当委員会における五十年七月三十一日のわれわれが提起をしたこむの金大中事件犯行リストの問題についても、検討すると言われたままで、今日までその問題を聞かしていただく機会が実はなかったわけでありますが、アメリカにおいてこういう金証言というものが公にされ、そしてしかもフレーザー委員長から、日本の主権侵害というものがこれによって現にあるではないかというふうな発言も公にされているわけです。そうなってまいりますと、当の日本といたしましては、金大中氏事件後、警察がどのような捜査を具体的に展開されて、どういうふうにこのことに対しての捜査のさらに追跡調査というものを現に続けられているかということは、実は大変大きな問題になってまいります。幾ら政治決着はつけましたとおっしゃっても、刑事事件としての捜査を打ち切られているわけでもございませんから、そういう点からすると、警察とされてはやはり中間報告をこのあたりで公にされるという必要が絶対あると私は思うのでありますが、このことについて警察としてはいかがお考えになっていらっしゃるか。
  110. 三井脩

    ○三井説明員 ただいまの朴正一なる名前以下の点につきましては、事件当時マスコミ等にもしばしば取り上げられ、国会等でも質問があり、当時詳しく御報告、御説明申し上げておるところでございます。電話云々の細部につきましては、いま、ただいま私は覚えておりませんけれども、結論といたしまして、いずれも事件との関係を把握するに至らずというのが今日の中間的結論でございます。  ところで、この際、中間的な報告を出したらどうかということでございますが、これは衆議院、参議院を初めしばしばそういう御要請がございますけれども、一貫して私お答えしておるわけでありますが、この事件につきましては、外交的決着とは別に、警察におきましては刑事事件捜査として事件の真相解明のために鋭意努力を継続しておる、こういうものでありますので、その中間で報告するということは、とりもなおさず今後の捜査を放棄するということに等しいことになるということで、中間報告についてはぜひこの点の警察の状況を御理解の上、御猶予をいただきたいと申し上げておるわけでございます。ただし捜査の状況等につきまして、国会委員会その他において御質問ある場合におきましては、先行きの捜査、いままでの捜査の状況を勘案しながら、今後の捜査に支障のない限りにおきましては最大限にお答えをするという立場で、現にお答えをしてきておるわけでございます。  中間報告いたしますと、ただいまのところで言いますとこういうことになるわけですが、この事件についていろいろの捜査をいたしました。捜査の結果、やったけれどもそれは実らなくて結局むだであったというふうなこともありますが、現在そういうものを除きましてでき上がっておるのは、金東雲を犯人の一人と認めておる。それからまた、横浜の総領事館の劉永福副領事の車が金大中氏を拉致するに使われた容疑がきわめて濃い。この二点はどこに出しても申し上げられることでございます。  中間報告いたすといたしますと、そのプロセスでこういうことをやったが結局シロになりました、あの人を調べましたがシロになりました、こういうことになるわけでございまして、あるいはもっと詳しく言いますと、あの人が怪しいという情報を何某さんからいただきまして、何某さんに当たって聞いたところがシロになりました、こういうことになりますと、捜査の過程で無用に問題を起こすといいますか、人に迷惑をかける、こういうおそれもありまして、ひとり金大中事件に限らず、警察に協力して何かしゃべると、いざというときにはいつの間にかばらされる、こういうことになっても治安維持の立場からはなはだ困る、こういうことでございますので、中間報告よりは、事件解明のために前進をするということに御期待をいただきたいと思う次第でございます。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 まだ重要な問題が残っておりますけれども、時間が経過しておりますから後刻に譲りたいと思います。ありがとうございました。
  112. 竹内黎一

  113. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私は、まず金炯旭証言に関して政府並びに警察当局に伺ってまいりたいと思います。  非常に基本的な問題から伺いますけれども金炯旭KCIA部長の米下院フレーザー委員会における証言でありますけれども、これによると、金大中拉致行為はKCIAによって行われたことが明らかになっている。政府はこれでもなお、金大中氏拉致行為がKCIAによって行われたものではない、このように信じているのかどうか、この辺を冒頭に明らかにしていただきたいと思います。
  114. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほど来御答弁申し上げておりますように、金大中事件KCIAの手によって行われたのではないかという疑いはいろいろなところで述べられているわけでありますが、政府としてはそのようなことを信じてないということではありません。そうではなくして、この事件刑事事件でありますから、刑事事件として、証拠に基づいてはっきりした結論が出るまでは断定ができないというふうに申し上げているのでございます。
  115. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは伺いますが、さきに金大中氏事件について政治的決着をつけたということでしたけれども、この政治的決着とはどういう内容のものであるか、またこの政治的決着によって金大中氏拉致事件が最終的に決着したという考えを持っているかどうか、この点について伺いたいと思います。
  116. 中江要介

    中江説明員 御質問の政治的決着がついたということはどういう内容であったかということでございますが、その内容は、一九七三年、つまり昭和四十八年の十一月二日に、当時の田中総理と当時の金鍾泌国務総理との間の会談の結果でき上がりました了解事項、これが大きく分けて四点ございまして、第一点は、韓国側としては、犯人の処理と監督責任者の処分、つまり日本側で指紋を明らかにいたしました金東雲の容疑を認めまして、これを取り調べて一これは韓国側が取り調べまして、これに対しては相応の措置をとる、捜査の結果は通報する、また金東雲の監督責任者について相応の措置をとる、これが第一点でございます。  第二点は、金大中氏の自由の問題でございまして、これは韓国側としましては、一般市民と同様、出国を含めて自由ということをはっきりいたしまして、特に日本及びアメリカに滞在しておりましたときの金大中氏の言動については責任を問わない。ただし今後、つまりその後ですね、決着を見ました後、韓国に対する反国家的活動をした場合は、その限りでない。  第三は陳謝でございまして、これは朴大統領の親書を持ってまいりまして、金国務総理が遺憾の意を表明いたしました。  第四は将来の保障ということでございまして、金国務総理が訪日いたしました際に、再びかかる事態を生じないように努力をする。  こういう内容の了解を双方の総理の間で確かめ合いまして、それによって外交的決着を見た、こういうことでございますが、その意味は、先ほど来捜査当局の方の御説明にもございますように、刑事事件としてこれがこんなもので決着するわけではございませんので、それは韓国も、向こうでは向こう捜査を継続するし、わが方も、日本国内で起きた事件でございますので、捜査は継続する。しかし、その捜査の結果を待つまで、日本韓国との間のあらゆる友好関係というものをストップしてしまうということが果たして賢明であるかどうかということにつきましては、いま申し上げましたような大統領の親書を持って陳謝し、また総理が日本に参りまして、いま言いましたようなことを約束して、そうしてそのことによって日韓関係というものを、この事件事件として、もとに戻して、一九六五年の国交正常化以来の関係を友好裏に進めるということが両国にとって利益であるという判断があったために、この外交的決着がなされた。  これですべてが終わったかと言いますと、そこに私が申し上げましたように、金東雲についてどうするか、捜査の結果を通報するということが一つ懸案として含まれておりますし、他方、金大中氏の自由というものが、果たして一般市民と同様に出国を含めて自由であるかどうかということについては、これはわが方としては、これで終わるんじゃなくて、ここから始まった問題でございます。  そのうちの金東雲一等書記官の捜査の結果については、中間を省略いたしますが、その翌々年の七五年の七月二十二日に韓国側から口上書が参りまして、金東雲については鋭意捜査したんだけれども、嫌疑事実を立証することができないので不起訴処分にした。しかし、彼がこういう問題で大きな疑惑の対象になったということにかんがみまして、公務員の地位は喪失させたということを言ってまいりました。  で、この金東雲捜査については、日本としては十分これによって納得することはできないけれども、しかし韓国側としては二年近く鋭意捜査した結果がそういうことであるということならば、それはそれなりに評価いたすべきであろうという当時の日本政府判断によりまして、金東雲についてはそれで一応第一次の外交的決着のときの問題は決着を見た。  そういうことになりますと、現状といたしまして了解事項の中で残っておりますのは、金大中氏の自由の問題でございますが、これはその後御承知のように三・一宣言事件という、その後の韓国立場からいたしますと反国家的な事件と、それからそれ以前の選挙違反の事件、この二つ事件のために身柄の拘束を受けておりますけれども、そのことは了解事項には違反しているものではない。しかし、究極的には金大中氏は一般市民と同様に出国を含めて自由であるという、そのことが実現を見るように日本政府としては鋭意注視し続けている、こういうことでございます。  他方、刑事事件としての進展状況は、累次国会その他で報告されているような経過をたどっている、こういうことでございます。
  117. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうしますと、このたび明らかになった金炯旭証言ですけれども政府がこれを事実無根であるというふうにするならば、この証言に対して当然これは反論するのがあたりまえではないかと私は思いますが、この点に関してどうお答えになるか、また政府金炯旭証言の信憑性に対して疑問を持っているとするならば、それはどういう点においてか、この点をあわせてお答えをいただきたいと思います。
  118. 中江要介

    中江説明員 これは、先ほど外務大臣からも御説明がございましたように、金炯旭という人は宣誓を行って証言をしておりますので、その限りにおいてその信憑性というのは重みを持っているということではございますけれども、ただ述べられている内容が多くのものが伝聞によっているもので、その伝え聞いたもとはと言いますと、金在権元公使ということになっておりますので、日本外務省といたしましては、とりあえず取り寄せました証言記録によりまして捜査当局の御意見も徴しましたところ、そのもとになっている金在権元公使から任意の事情聴取をすることが、本件捜査を進めていく上において有益ではないかという御判断でございましたので、その捜査当局の御判断を踏まえまして、いまアメリカ政府との間で本件について金在権元公使の任意の事情聴取が行われるようにということを打ち合わせているところである、こういうことでございます。
  119. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 金炯旭証言をいわゆる金在権元駐日公使からの伝聞にすぎない、このように受け流しておられますけれども、それではもし金在権が米議会において同様の証言をした場合、政府はどうするか。いわゆる新事実が出てきた場合ですね、そういう場合に外交的決着の再検討も必要となるんじゃないかと私は思いますけれども、こういう場合はどうでしょうか。
  120. 中江要介

    中江説明員 このことは、先ほど申し上げました外交的決着をつけましたときに、その時点においてすでに日本政府としてもその問題点を意識しておりまして、主権侵害があったかなかったかということについて国民に疑惑があった状況のもとでの外交的決着でございましたので、将来の捜査の結果、主権の侵害があったという証拠が出てきたときにはこの外交的決着はもう一度再検討しなければならなくなるぞという点は、はっきりと韓国側に念を押してございます。したがいまして、いま御質問のようなことで、どういうところから証拠が出てくるか、これは捜査当局の方の御努力にまつわけですけれども、もしそういうものが出てまいりましたら、それを踏まえまして外交的決着の再検討が行われる、こういう筋書きになろうかと思います。
  121. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私はここで、金炯旭元部長の証言会議録、公式なものについて——手元にきょう理事会でいただいたのは、これはもちろん非公式として受けておりますが、公式な原本と日本語訳、この資料をぜひ御提出をいただきたい、日本国会でありますから、当然日本語訳の資料も至急提出をしていただきたい、このことを委員長に御要請をしておきたい、このように思います。
  122. 竹内黎一

  123. 中江要介

    中江説明員 公式の議事録といいますか速記録がアメリカで出るのが大体半年ぐらい先になる。出ましたならば、もちろんそれが秘密のものでない限り明らかにいたしたいと思います。現在のところは、商業ベースで速記をとりましたものを基礎にして資料は一応つくってございますけれども、公式のものとなるとちょっと先になる、こういうことでございます。
  124. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 御要請としていまここで善処方をお願いをしておきたいと思います。  金炯旭証言は、金大中氏拉致事件そのものがKCIAによって行われたと言っている。このことは韓国政府機関によって行われたということを明らかにしたわけですけれども、こういった事実は疑いの余地もなく主権の侵害である。また政府は、これを重大な主権侵害として徹底的にこの事実を究明しなければならない。しかしながら、何となくなまぬるい態度に終始しているのがどうも私は納得がいかないわけですけれども金炯旭証言が行われてから政府は真相究明にどのような行動を行ったのか。先ほど来のいろいろな委員の御質問に対しては、そのつどお答えの中に出てきてはいるようですけれども、少なくとも韓国政府に対して再調査を申し入れたのかどうか、こういった点について、どうも政府の沈黙の意味が私は理解できませんが、韓国政府に対して再度この調査を申し入れたかどうか、この点を伺いたいと思います。
  125. 中江要介

    中江説明員 まず結論を一つ申し上げますと、韓国政府に、金炯旭証言があったからといって再調査を申し入れたかという点は、申し入れておりません。なぜそういうことかということは、金炯旭証言というのが、先ほど来申しておりますように、金炯旭という人自身が、この金大中事件が起きたときにはすでにそのポストを去って四年たっておりますし、現場である日本にいたわけでもございませんし、アメリカにいたわけですので、その人がこういう証言をしたということだけで主権侵害があったと断定して、そしてそういう断定に基づいて韓国側に申し入れるということは政府としてはできないことである。したがって、金炯旭証言のもとになっておる金在権公使から、もう少しはっきりした、日本捜査当局も十分に裏づけのとれるようなもの、そういう情報が得られるのであれば、それを突き詰めた上で、もともとそういう問題について留保した上での外交的決着でございましたので、それの再検討が必要ならばやる、こういう態度で臨んでいるわけでございます。
  126. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 金炯旭証言によりますと、金大中氏を韓国に拉致した際に使用された船舶ですけれども、これは韓国政府の公船であったというふうに言われている。もしこの韓国政府公船が日本の港に待機していたとするならば、その際は日本政府の許可が必要であるし、またそれでなくとも、領海内まで入ったとすれば領海侵犯として韓国抗議すべきである、このように思いますが、警察当局捜査の結果はどうであったか。本件に関しては、政府の御見解と警察当局の御答弁と両方いただきたいと思います。この点いかがでしょうか。
  127. 三井脩

    ○三井説明員 金大中氏自身の事件後の陳述によりますと、船に乗せられて韓国に運ばれた、こういうことでございますので、大阪、神戸を中心といたしまして、あの辺を中心にかなり広範に船の捜査をいたしました。その結果、事件当時、可能性として金大中氏を乗せて運ぶ可能性を持った船は三十六隻でございました。これを捜査した結果、二隻にしぼりました。その二隻について特に、もう韓国に戻っておりますので、韓国側で調べてその結果をもらいたいということで、もらいました。その結果、犯罪とはつながらないという結論を韓国側からいただいておる、こういうことでございます。したがいまして、ただいまおっしゃいました公船云々という点は、金炯旭証言の中に、対北鮮用に使う高速艇云々ということでありますので、それが公船だ、こういうことでもあろうかと思うわけでありますけれども、私たちは公船であろうが民間の船であろうが、要するに運ぶ可能性のある船というものを網羅いたしまして、これを捜査対象として捜査した結果そういうことになっておりまして、ただいま言いました最後に残った二隻の船はいずれも民間の船でございまして、公船が容疑船として残っておるというようなことはございません。
  128. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 金炯旭証言によりますと、金大中氏を自動車で大阪まで運んだ、次に三十五ノットの快速艇で韓国に運んだということでありますが、もしこれが真実であるとすれば、三十五ノットの快速艇というのは商船とか漁船ではないことは明らかである、何らかの目的のための韓国公船以外にちょっと考えられないわけですけれども、一説によると北朝鮮のスパイを捕捉するためのKCIAの船であるというような報道も当然なされております。いずれにしても、外国の国有船が入港する場合に日本政府の許可を要すると思いますけれども政府にはその事実があったかどうか。またこれらの事実について、警察当局のいまの御答弁ではもう一つ私は納得のいかないものがありますが、こういった三十五ノットの快速艇云々ということになってきますと、その三十五隻の中でどうのこうのということではなしに、当然これは判明するんじゃないかという気もしますが、こういった事実を御存じであったかどうか、捜査をしたのかどうか、もう一度この辺もお答えいただきたい。先に政府お答えをいただいて、それから警察当局にお願いしたいと思います。
  129. 中江要介

    中江説明員 外務省といたしましては、こういう事実は当時承知しておりませんでした。
  130. 三井脩

    ○三井説明員 ただいま申しましたように捜査をいたしましたので、三十五ノットも出るようなそういう船があるということであれば、これは変わった船だということで当然記録も残りましょうし、私も記憶に残ろうかと思いますけれども、いま調べました三十六隻の船、ことにさらに追及しなければいかぬということで残った二隻の船は十一ノット程度でありまして、三十五ノットというような非常識といいますか常識破りのスピードの出る船というのはございませんでした。したがって、客観的にもなかったのではなかろうかといま思っておる次第でございます。
  131. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 この点は外務省としても許可をした事実もない、あるいはまた警察当局としてもそのような船は見当たらない、こうなってきますと、これは当然また捜査をした地域、港以外のところである可能性も絶対ないとは言えないということで、まだまだ問題は残されていると思いますけれども日本政府は金大中氏拉致の経路、特にこの場合も某港というような表現をせざるを得ないわけですけれども、どういう経路をもって金大中氏の身柄を輸送したかという問題、これを警察当局がどのように把握しているかというような問題、まだいろいろな調査をしていかなければならない、もっとそれを深めていかなければならない問題が多々あると私は思います。正当な手続を経て入ってきているのであれば差し支えないわけですけれども、出入国管理法違反、あるいは領海侵犯、さらには主権侵害の疑いを持たざるを得ないわけですけれども、いまこの時点までの御答弁によると、どうもこういったことに対する御答弁にまで発展し得ない状態であるわけですので、これはさらに新たなる機会にこういったことを御質問するといたしまして、ここでお伺いしたいことは、要するに政府金炯旭氏の証言というものを最終的に全面的に否定しようとするのか、あるいはその証言のある部分については肯定するのかをここでもう一度明らかにしていただきたい。  ロッキード事件でコーチャンを初めとする米議会での証言はすべて事実が述べられたように、今回の金炯旭氏の証言も十分に信憑性というものも考えられるわけですから、政府金炯旭氏の証言をどのように受けとめておられるか。これは米議会でなされた証言であるだけに、日本の米議会に対する見方を決定づける重要な問題でもあると思いますので、ここでうかつにその重みといいましょうか、先ほどの御答弁の中ではそれなりの重みがあるという御答弁もあったようですけれども日本が見た米議会そのものの重みというものを決定づけることでもありますので、慎重にこの点をお答えをいただいておきたいと思います。
  132. 中江要介

    中江説明員 これは私が先ほど申し上げましたことの繰り返しになるかもしれませんけれども金炯旭氏の証言というものはアメリカの議会における宣誓に基づく証言でありますので、それなりの重みがある。しかし、その証言内容につきましては、伝聞に基づくところが多いし、それは御本人が四年前に職を去ってアメリカにおられて、事件当時は日本にもおられなかったという事情からやむを得ないことだろうと思います。むしろその述べられたことの真相をさらに一歩踏み込んで確かめたいという捜査当局の御意見でございますので、その一歩踏み込んだ金在権元公使からの任意の事情聴取を何とか実現させたいということで臨んでいるということでありまして、全部を否定するとか、そのままこれに基づいて断定するとか、そういう判断をする以前の問題といたしまして、いまはそういう点に努力を傾注しているということでございます。
  133. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 警察当局に伺いますけれども、金大中氏拉致事件について、少なくとも金炯旭証言によって金在権元公使が直接の責任者であったという新しい事実が明らかにされたわけですけれども、これはランクとしては上の人なんです。したがって、この事実を究明するために係官を派遣して、金在権氏及び金炯旭氏と直接接触して事実を明らかにすべきではないかと私は思いますけれども、警察当局としてはいかがでしょうか。
  134. 三井脩

    ○三井説明員 結論として申しますと、そういうような点も検討してまいりたいというように考えます。金在権氏がこの事件の責任者であるというような話は先ほども出ましたけれども、五十年から、二年前から私たちはそういう情報、資料を得ておるわけでございます。したがって捜査の上にそういう着眼というものは持って捜査を進めておるということでありますが、今回はそれを——いままでは、ちょっと言いますと、金在権氏から金炯旭氏が聞き、金炯旭氏から文明子氏が聞いて一般に話をしたとか文章に書いたとかいうような、ざっと言えば二重の伝聞であった。今回は金炯旭氏がみずから公の場で言った、こういうことで、一重の伝聞になったという意味ではニュースソースに近づいた、こういうことになりますので、御本人が言っておるニュースソースの金在権氏、この人がニュースソースというわけでありますから、この人について聞くのは意味のあることだというように考えております。  ただ、金在権氏には事件発生の翌日にわが捜査員が当たって事情を聞いておるのです。そういうこともありますので、金在権氏に当たったからといって、果たしてどれだけのものが期待できるかということについては疑問なしとしないわけであります。また手続的に言いますと、そもそも金在権氏にわれわれが捜査立場で当たって話が聞けるのか、こういうような点も大変クエスチョンマークだと私は思いますが、こういうような点につきましては、その衝にある外務省当局にその辺についての配慮といいますか、検討といいますか、そういう点についてはよろしくお願いをしたい、こういうことできておるわけでございます。
  135. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 少なくとも事件発生の翌日に、金在権氏にそういったような事情聴取をしたということでありますから、そのときにどのような内容を聴取されたのか。それと今度は金在権氏が金炯旭氏にいろいろなことを話をした、伝えた。伝聞という言葉で盛んに出てきていますけれども、その辺等の食い違いも当然あろうと思いますし、それを確認する意味においても、当然警察当局として金在権氏に接触をするべきではないかと私も思いますので、この点をもう一度慎重に考えて、できればこれを実行に移していただきたい、このことを要請いたします。  次に、外務大臣に伺いますけれども、警察当局からそのような御答弁があったわけです。御答弁というのは、金在権氏がそういった疑いがあるということを二年前から知っていたというような御答弁が先ほどありましたけれども、在日韓国公使であった金在権氏が金大中氏拉致事件の主たる責任者として関与していたとするならば、そのことはわが国の重大な主権侵害ということになると思います。たびたび主権侵害という言葉が先ほど来出ておりますけれども政府見解をいま一度ここで明らかにしていただきたいと思います。
  136. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 在日韓国大使館の公使である身分の方が、もしいまおっしゃるようなことをされたということであれば、それは大変な主権の侵害になるであろうというように考えるわけでありますけれども、しかし、そのように断定するにはやはり証拠に基づかなければならないということで、私どもといたしましては、警察当局の御意見を聞きながら、金在権氏について接触の可能性といいますか、接触できるように、いま在米大使館等が可能になるように努力中ということでございます。
  137. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 金炯旭証言は、金大中氏拉致事件で、警察当局KCIAの動向を察知して、KCIAの行動そのものに対して警告していたと先ほども同僚委員の御質問に出ておりました。くどいようですけれども、この計画を日本の警察当局が事前にキャッチして、東京の警視庁が金大中氏を尾行しているKCIA工作員の写真を撮った。このようなことが表面に立つと日韓関係によくない影響を与えると、金在権公使に警告したという件ですけれども、それにもかかわらずKCIAの手で金大中氏を拉致したとするならば、これはそういうことを前提として申し上げるのですけれども日本警察が犯行を事実上黙認していたか、あるいはKCIAによる主権の侵害を黙認、幇助したという重大な責任問題になりかねないわけですけれども政府はここで改めてこの問題、この間の事実ですね、これを明らかにすべきであるとまずここで思います。政府にこれに対する見解をもう一度ここで伺っておきたいのです。  もう一つは、警察当局の先ほどの同僚議員に対する御答弁の中にありましたけれども、全くそのような事実がないというような御答弁である以上、警察当局はこの金炯旭証言に対してそれでは何らかの反論をしたのかどうか。先ほどのあれにも関連いたしますが、金在権を呼んででも確かめるべきではないかと私は思いますが、全くそういう事実がないとするならば、この辺について何らかの反論をなさったかどうか、この辺をお伺いしたいと思います。  まず政府の御答弁そして警察当局の御答弁をいただきたいと思います。
  138. 三井脩

    ○三井説明員 警察関係の方が先のようでございますので申し上げますが、そういうことを金炯旭氏が証言をしたということを、私は夜中でございましたけれども聞きました。早速早朝出勤とともに、そういう事実は全くございません、言葉は悪いですけれども事実無根ですということを強調したわけでございます。したがいまして、それをあったと仮定をして事を論ずるというわけにもまいらないわけでありますが、またもっと反論できないかというようなことでもあろうかと思いますけれども、何せないということについては目撃者もないということでありますので、これはまた、ないということを繰り返す以外にないというように考えるわけでございます。
  139. 中江要介

    中江説明員 政府としてという御質問の御趣旨がどういうことであるのかわからないのですが……。
  140. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 じゃ警察当局にもう一度だけ伺っておきますが、そういうことを前提として私もいま御質問したわけですけれども、じゃ、いまの御答弁を一応一たん信じて、仮に以後そういうものを前提として質問しないと仮定しても、御承知のとおり新聞報道あるいは雑誌、週刊誌とか、こういうことは相当出回って、国民大衆としては、相当そのようなことで、何だ警察が知っていたのかというような声があっちでもこっちでも聞かれている今日、では、この国会の場だけで事実無根でございますというので三井局長がそれで済まされるかどうか、国民世論というものに対してどう対処されようとするのか、この辺だけもう一度だけ聞いておきたいと思います。
  141. 三井脩

    ○三井説明員 いろいろその点についても有効な方法はないかという点を考えておるわけでありますけれども、適当な方法もございませんので、結局はあらゆる機会にないということを繰り返すということかと思っておるわけでございます。
  142. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 結論として、政府の御答弁ないしはいまの警察当局の御答弁も含めて、どうもわれわれを納得させるに足るものではないように私は思うわけで、われわれは事の重要性にかんがみて国会独自で問題を究明しなければならないというふうに責任を感じております。  よって、私は委員長に特に申し上げたいわけですけれども金炯旭氏及び金在権氏を国会に出席を求めて事件の真相を明らかにすべきだと考えますので、委員長の善処を求めたい、このように思います。
  143. 竹内黎一

    竹内委員長 ただいまの中川委員の御提案につきましては、理事会で協議をいたします。
  144. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それではテーマを変えまして、北朝鮮、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国政府が二百海里経済水域設定したということをめぐっての御質問が先ほど来出ておりましたけれども、先ほど来の御答弁がもう一つ明確でないように私は思いますので、再確認の意味で二、三伺ってみたいと思います。  政府はニューヨークの海洋法会議に出席中の朝鮮民主主義人民共和国代表との間に接触を持ったと聞いておりますが、その結果はどうであったか、お答えをいただきたい。
  145. 中江要介

    中江説明員 ニューヨークで最初に、北朝鮮の代表団の団員にわが方の団員が、本件について平壌放送以上のさらに詳しい情報があれば知りたいということを申し入れましたのに対して、あの平壌放送以上のことは知らない、こういう返答がありまして、それならばさらに詳しいことがわかったら知らせてほしい、こういうことを言って向こうに依頼してある、こういうのが現状でございます。  このことは、かつて松生丸事件のときにわが方が、あの事件について北朝鮮側に真相究明をしようといって接触しましたときに比べますと、北朝鮮側では全くこれを最初から聞く耳を持たないという状況ではないという点は違っておるかというふうに思っております。
  146. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうしますと、先方は交渉に応ずる意思を表明したかどうか、日本政府朝鮮民主主義人民共和国政府に対して正式にこの交渉を申し入れるのかどうか、この辺はいかがでしょうか。
  147. 中江要介

    中江説明員 そもそも御質問にありますような交渉を要するような事態であるかどうかということを判断するために、私どもとしてはより平壌放送以上の詳しい考え方というものを知りたい、そういう段階でございます。
  148. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 政府間ではないいわゆる民間団体との間に結ばれるであろうところの日朝漁業協定に対してですけれども日本政府はこれにいわゆる政府保証をするかどうか、この点はいかがでしょうか。
  149. 中江要介

    中江説明員 一言で政府保証といいましても、実態がよくわからないものでございますので、まず日本漁業利益を守るためにどんな協定になるものなのか、その辺すらもはっきりいたしておりません段階では、政府保証のことについては具体的に考えようがない、こういうことでございます。
  150. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 はっきりわからないので具体的に考えようがない、こういうような御答弁ですけれども、このような事態の発生もあり得る、そのようなことから、われわれは早くから朝鮮民主主義人民共和国との国交を正常化すべきであるということを提唱しているわけですけれども外務大臣にお伺いいたしたいと思いますが、政府国交正常化する意思があるかどうか、この点について御答弁をいただきたいと思います。
  151. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国との国交をどうするかという点につきましては、これは今後わが国といたしましては、たびたび申し上げておりますが、朝鮮半島の平和的な統一というこが望ましいという立場には変わりないわけでございます。しかし、現実において韓国との間が対話すらできないという情勢でありますので、この情勢が好転をしてまいるということをわが国としては期待をいたしておるわけでございまして、わが国自身の行動というものも、韓国北鮮との間の好転ということと相まって進展を期待をする、こういうことで考えているわけであります。
  152. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 朝鮮民主主義人民共和国の布告は、漁業水域二百海里ということではなくて経済水域二百海里でありますけれども経済水域の法的地位というものは漁業だけではなしに海底及び地下にも及ぶというものです。政府交渉を行うとするならばこのことを認識した上で行うのかどうか、御意見を伺いたいと思います。
  153. 中江要介

    中江説明員 これは基本的に、北朝鮮当局何らかの話し合いが日本の民間団体なり、あるいはその他のものの間で行われるといたしましても、それはこの二百海里の経済水域の法的性格についての法的論争というよりも、その北朝鮮側のとった措置によって被害を受けるかもしれない日本の利益を守るための話し合い、こういうことでございますと、いま北朝鮮が現実に支配しておりますところにかんがみますと、一番大事な、そして恐らくそれが中心になるであろう問題は漁業である。したがいまして、二百海里経済水域の中の漁業権益に関する部分についての話し合いになろうというふうに観念しておりまして、この経済水域全体について何らかの措置を必要とするというような事態はいまのところは予測しておらない、こういうことでございます。
  154. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 漁業専管水域というのは海洋沖条約規定された制度ではありませんけれども、すでに慣習法化されている。いかなる国が二百海里漁業水域設定しても、これをもはや違法とする国はないわけであります。同時に、海洋法条約の草案に明記されているところの経済水域もやがては慣習法化することも十分考えられる。政府見解はこの点についてどうかという問題、現時点において沿岸国の一方的な経済水域設定は違法であると考えるかどうか、あるいは慣習法化に至らなくともすでに慣習化したと見てよいのか、この辺について御意見を伺いたいと思います。
  155. 中島敏次郎

    中島説明員 先生御承知のように、経済水域の問題はただいま国連の海洋法会議において論議せられておる制度でございます。そして制度自体がこの国連海洋法会議との関連で発想が示され、討議されてきた構想でございまして、その構想の中身につきましてはいまなお最終的には討議が終わっておらないということでございまして、その意味経済水域というものが国際法上の規範として確立しておるということはない、いまだそのような段階には至っておらないというふうに考えておるわけでございます。  なお、ちなみに、先ほど漁業水域の点についてお触れになりましたが、漁業水域自身は、海洋法会議の場では漁業水域の制度ということで論議されているわけではございませんけれども漁業資源に対する沿岸国の管轄権の問題は、この経済水域の問題の中の一部として論議をせられておる。ただし、先生もおっしゃられましたように、二百海里の漁業水域というものは、もともと漁業水域というものを設定するということは国際慣習法として確立しつつあり、いまや国際法上の規範になりつつあるというふうに考えている次第でございます。
  156. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 あとちょっと中国問題について二問ほど最後に伺っておきたいと思います。  外務大臣に御質問したいと思いますけれども、バンス米国務長官が近く訪中をして、いわゆる米中関係改善に非常に意欲的な取り組みを見せておりますけれども、米中関係に劇的な進展があると政府は予想しておられるか、また米中国交正常化は近いと考えておられるのか。これは大臣の御意見として伺うわけですけれども、この点はいかがでしょう。
  157. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 バンス国務長官とパリでお目にかかってまいりました。日中関係につきましても話題としていろいろ話し合いはしてきたわけでございますけれども、バンス長官自身、北京に行かれました帰りに東京に立ち寄って、そしてその際に中日問題につきまして十分な話し合いをしよう、こういうお話であったわけでございます。私どもとしては、八月の末ごろになると思いますが、そのころバンス長官ともう一度中国問題につきまして隔意のない意見の交換をいたしたい、このように考えておるわけです。したがいまして、アメリカ自身といたしましてもわが国と密接な連絡をとりながら対処してまいりたい、こういうような姿勢でおられるように私ども考えております。表現があれですが、中国に対する問題につきましていろいろ話し合いをしよう、こういうことでございます。
  158. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 参議院選挙後、福田内閣は日中平和友好条約締結についてどう取り組むのか、その方針をここで明らかにしていただきたい。外務大臣としての御答弁をぜひひとついただきたいと思います。それからまた日中共同声明でのいわゆる反覇権条項、これをそのまま平和友好条約に盛り込むことそのものに異存はないと思いますけれども、この点大臣のお考えをもう一度確認をしておきたいこと、もう一つは、具体的に日中平和友好条約を正規の外交交渉の場に乗せるのはいつごろになるだろうか、そのために何らかの条件があるのかどうか、この点、三点になりますけれども、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  159. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日中平和友好条約の問題につきましてただいま三点おっしゃいましたけれども、いずれもこれは相関連しておる問題でございまして、反覇権の条項を含みまして、日本中国の双方が満足できる条件におきましてなるべく早く条約締結いたしたいということに尽きるわけでございます。大変抽象的な御答弁でございますが、政府がいままで申し上げていることと全く変わりのない立場にあるわけでございまして、なるべく早く締結をいたしたい、こういう考え方でございます。
  160. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 なるべく早くという御意向であることは、第八十国会でたびたびお伺いしたときの御答弁であるわけで、それだけに私がお伺いしたのは、参議院選挙後、福田内閣がこの中国とのいわゆる平和条約締結に対して何らかの取り組みの姿勢といいますか、そういったものに積極的な変化があるのかどうか、そういう方針が出てきたかどうか、この点をお伺いしたかったということ、もう一点は、重ねてお伺いするようですけれども、反覇権条項の問題、これはいままでも論議されてきた問題であるだけに、ここでもう一度確認をしておきたい。第三点は、正規な外交交渉の場に具体的にいつごろ乗せるのだという問題。こういうことで私は三つに分けてお伺いをしたわけですけれども、そういうことであれば、機会を改めてまたお伺いをしていかなければならない、こう思います。  日中平和友好条約締結問題についての一つの大きな進展というもの、それは一気には無理かと思います。当然今日までのいろいろな経過を踏まえての進展であろうと思いますけれども、より積極的な取り組み、また福田内閣としての具体的な対応というものをぜひとも次回にまたお伺いをしたい、このように念願いたしまして、時間がちょうど参りましたのでこれで終わりたいと思います。
  161. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 国会も終わりまして選挙も終わった、こういう時期にあるわけでございまして、一層真剣に取り組むということを申し上げさせていただきたいと思います。
  162. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、渡辺朗君。
  163. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、きょうは北朝鮮の二百海里経済水域設定に関して主としてお伺いしたいと思いますが、それに先立ちまして、金大中問題につきまして警察庁長官に一、二、お尋ねをいたします。  いま捜査本部は続いておりますね。
  164. 三井脩

    ○三井説明員 警視庁において捜査本部を引き続き設置しております。
  165. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実を言いますと、国民の中に大変疑惑がそのまま残っております。一体どういうふうなことが事実であったのか。そしてまた日本政府が要望し、私どもも要望いたしました金大中氏の原状回復の問題、これは一体見通しがあるのか、ないのか。また捜査が行われていると言うけれども一体どういうことが行われているのか、いま何を中心に特に調査をしておられるのか、そこら辺をひとつ教えていただきたいと思います。
  166. 三井脩

    ○三井説明員 捜査につきましては先ほどちょっと触れたと思いますけれども、今日まで捜査をいたしました結果、固まった事実として把握いたしておりますのは、あの事件の犯人の一人は金東雲である、また犯人はおおむね六人というように考えられるわけでありますが、そのうち判明しておるのは一人、さらにあのホテルから金大中氏を連れ出した車、この連行に使われた車が横浜の韓国総領事館の劉永福副領事の車である疑いが濃いということが中心であります。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕  なお、金大中氏自身の事件後の供述によりますと、車によって高速道路を走り、途中大津のインターチェンジのあたりを通り、インターチェンジをおりてからアンの家にしばらく置かれ、海岸に行き、ボートに乗って大雪な船に乗りかえ、そして結局韓国に連れ戻された、自宅の近所で釈放された、これだけが一応の筋としてわかっておりますけれども、そのうち証拠的に明確なのはただいま申し上げたとおりでありまして、行動から言いますと、劉永福の車と思われるものによってグランドパレスホテルを出たというところまでははっきり確定された捜査上の事実として申し上げることはできるわけでありますけれども、その後、申し上げた連行経路等につきましては、捜査をいたしておりますけれども、今日まで確定するに至っておらない、こういう現状でございます。  したがいまして、われわれがやるこれからの仕事といいますのは、つまり目下やっております仕事というのは、連行ルートの確定、使われた船の確定、船が日本の領域を出るまでに通ったコースといったようなものが目標としては中心でございまして、これを捜査するためにやっておることといいますと、いままでに捜査をした膨大な資料がありますので、この中でさらに再検討し深めなければならぬものをえり分け、これを逐次捜査し、つぶしていくといいますか、白いものはシロにするという仕事でございます。同時にまた、多くの情報が寄せられましたので、そして今日その後の事情の発展といたしましては、いろいろの人がいろいろのことを言っておる、こういうようなことを踏まえて、そういうものを参考にして新たな目でいままで得られた情報資料、捜査資料を再検討する、その中から捜査の活路を見出すといいますか、今後深めるべき方向、資料というものを探り出していくというのが、ざっと申しました現在の捜査の重点といいますか、方向というものでございます。
  167. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実はこの事件が起こりましてから四年たちました。しかも伝えられるところによりますと金大中氏病気説あるいはまた衰弱をいろいろしておられるとかいうような問題も伝わってきております。私は、これはいつまでも捜査ということでは困るので、一定の時期にはやはり全貌を、どれだけわかったかは別といたしまして、国民に発表する、その発表のめどや何かもつけておかないといけないだろうと思うのです。そこら辺はいかがでございましょう。
  168. 三井脩

    ○三井説明員 捜査を打ち切るときには、あるいは捜査が終了するときには、そういうことに相なろうかというように考えますけれども、現在は捜査を行い、かつ捜査が実ることを私たちは期待して進めておるわけでございますので、この段階でいままでやっておることの全貌というものを申し上げることについては、せっかく御協力をいただいた人たちに対していろいろ迷惑がかかるということもありますので、現状では中間報告という点は差し控えたいと考えておるわけでありますが、捜査終了の暁には、そういう点を明確にしてまいりたいというように考えております。
  169. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、外務大臣にもこの問題につきましてお伺いしたいと思います。  これは事件が起こりました際に、金大中氏の原状回復ということが強い要望として日本から出されたわけでありますけれども、この見通しについてどのようにお考えでございましょうか。そしてまた、今日までその点を韓国政府側に対して申し入れをしておられますでしょうか。ごく最近においてそのような申し入れがあったとしたら、その時期を教えていただきたいと思います。
  170. 中江要介

    中江説明員 事実関係について私から若干説明させていただきますが、まず前提といたしまして、金大中氏の原状回復ということが方々で要望され、また議論されていることは事実でございますし、私どももそのことを全く無視しているわけではないのでございますけれども、現実にいま韓国の管轄下にあります金大中氏の身柄の原状回復を、権利として日本政府韓国に要求するというためには、前提といたしまして主権の侵害があったという、韓国側に相当重大な国際法上の責任を生じているということでないと、権利としては要求しにくい、またできないという判断が当時あったわけでございます。  したがいまして、一九七三年十一月二日の外交的決着のときには、金大中氏の原状回復ということが約束されたのではなくて、金大中氏の自由については日本としては関心を持っているので、その点についてはどうかということを韓国側に迫りましたら、韓国側は一般市民と同様に出国を含めて自由が保障されている。現にあの翌年の一月ごろの状態では出国のための旅券申請がなされておりまして、それに対して旅券が出されるかどうかというようなところまで現実問題として進んでいたこともあったわけでございます。  他方、この金大中氏の自由に関連いたしまして、外交的決着の際に、この拉致事件が起きますに先立って日本及びアメリカでずいぶん反朴的な言動をしておりまして、もしその部分が追及されるようなことだと、これは出国もむずかしいんじゃないかというので、その点について韓国に迫りましたところでは、米国及び日本において金大中氏が行った言動についてはこれを追及しない、ただしその後、つまりこの拉致事件韓国に身柄が戻りまして後、韓国に対して反国家的な行動があれば、これは別だということであったわけです。  そういう経緯から見ますと、昭和五十年、つまり七五年の十二月十三日に例の選挙違反事件で禁錮一年、罰金五万ウオンの判決があって、これが控訴されている。そういう段階で、明けて七六年の三月一日に例の民主救国宣言事件というものがございまして、これによって起訴されて第一審で懲役八年、資格停止八年の判決、これを控訴いたしまして、高等法院におきまして懲役五年、資格停止五年、さらに上告いたしまして、これが本年の三月二十二日にソウルの大法院で上告棄却の判決があって、控訴審判決が確定いたしました。この懲役五年、資格停止五年の判決という、この金大中氏の身柄に関連いたします措置は、これは政治的決着の了解のときの、帰国後の反国家的活動というふうに韓国としてはみなしておるわけでございますので、この点について日本政府としてとやかく言うということは、これはやはり司法権に対する介入ということで、国際法上日本としてできることではない。したがいまして、日本政府といたしましては、金大中氏の自由については、拉致されて韓国に帰ってから、戻ってからの反国家的活動について韓国が司法権に基づいて何らかの措置をとることを云々する立場にはないということが一方にあると同時に、それを踏み越えて、たとえばそれの刑期が終了してからとかあるいは何らかの事態の進展の結果として、そもそもの政治的解決のときの金大中氏の自由、すなわち一市民と同様に出国を含めて自由である状態になったときにそれが守られるかどうかというところに焦点を合わせて、あらゆる機会をとらえて、韓国政府なり韓国の司法当局が金大中氏に対してもろもろの措置をとりますごとに、つまり判決があるごとあるいは起訴されたとき、あらゆる機会に東京及びソウルにおきまして、そのこと自身を論ずることはできないけれども日本としては政治的決着のときの金大中氏の身柄についての了解事項というものが最終的に守られなければならぬということについては、そのとおりであるかということを韓国に念を押しまして、韓国側からは、その都度、七三年の十一月二日の了解事項に変わりがない、こういう確言を得ているというのが現状でございます。
  171. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実はこれに関連いたしまして、またこのたびアメリカの下院におけるフレーザー委員会金炯旭KCIA部長、これの証書があったわけでありますけれども、こういった場合に、私はもう少し日本国民あての、もっとはっきりした、日本政府としてどういう立場をとるということを明確にしないと、どんどん疑惑だけが深まってきて、疑心暗鬼だけが出てくる。ここら辺を認識していただいて、私はその都度やはり問題点というものを明らかにしておいていただきたいということを要望しておきます。それから同時に、努力をやはり続けてもらいたい、これを私は強く要望しておきたいと思います。  先ほどからの議論になっておりましたフレーザー委員会証言問題でありますけれども、私、証言の中身についてはこれはまた改めてぜひ質問させていただきたいと思っております。なぜなら、ただいまも資料は外務省の方からいただきました。先般もお話がございましたように、これは金炯旭氏の証言の議事録であります。しかも非公式の記録である、それから民間会社がつくっている、そして市販をされている。ですからオーソライズされたものではない。先般来、この議事録の中身についても通訳の間違いがあった、その他の発表が一、二ありました。したがいまして、私も重ねて要望いたしますけれども、正確な議事録、公式的なものを早く手入していただきたい。  それからさらに私お伺いしたいのですが、フレーザー委員会証言だけをやっているのではなくて、十二名の専門の委員がおり、七人の下院議員によって構成されている調査委員会であります。したがいまして、金炯旭証言のみならず、恐らくはさまざまな記録あるいは討議された内容文書としてあるに違いないと思うのです。それが金大中問題あるいは日韓問題について言及している部分が多いであろうと予想されます。これらについて確かめ、かつまたそれを入手するべく申し入れ、あるいは努力をされたのか、そこら辺をお聞きしたいと思います。
  172. 中江要介

    中江説明員 これは、フレーザー委員長金炯旭証言のありました後、その金炯旭氏の証言及び金炯旭氏との一問一答——これは非公式のものでございますけれども、一部分資料としても御提出さしていただいておりますが、そういうものを踏まえまして、金大中事件というのはKCIAが行ったものだというふうに断定するような発言があったと新聞で報道されましたことにつきまして、日本政府として、官房長官発言として、もしそういうことで断定したとしたのであれば、これは日韓間の問題であるわけですので遺憾なことであるということを発言されまして、事実を調べたい、こういうことを言われました。それを受けてフレーザー委員長の方の反応といたしましては、そういうことを言ったか言わなかったかということに触れることなく、フレーザー小委員会というのは、米韓間の問題を調査しているのであって日韓間の問題を調査しているのではないということ、それから日米関係重要性というものは十分わきまえておるわけであって、日本の問題、つまり日本の内政といいますか、日本の問題について何らかの判断なり意見なりを言おうというようなことは全く考えていないということが、フレーザー委員長の名においてフレーザー委員長の側近からわが方に伝えられたということがございました。これから判断いたされますことは、フレーザー小委員会は、当然のことでございますけれども、もっぱら米韓間の、つまり米国における韓国の中央情報部の活動その他を調査している委員会である。しかし、それに伴いまして日本に関連する部分がありますれば、これは日本としても参考にいたしたいということで、いままでレイナード元朝鮮部長の証言が出ましたときにも、日本政府としては米側にいろいろ接触いたしました。しかし、あのレイナード部長の証言も、ついに正確な証拠に基づくものでないということがはっきりしただけで、わが方の捜査に余り役立たなかった。今度は金炯旭氏の証言がございまして、これはさらに具体的に言われておりますので、その伝聞のもとになっております金在権元公使から、わが方の捜査官を派遣して任意の事情聴取をしたいということで、アメリカ側と接触をしているということでございまして、私どもとしてこれが日本側にも有益だと思うものにつきましては、ちゅうちょすることなく、積極的に接触していこうという立場には変わりはないわけでございます。
  173. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 そのことに関連いたしまして、私は外務委員会委員長にお願いしておきたいと思うのです。国会の議長を通じてでも、アメリカの下院フレーザー委員会に対して、そこで討議されている問題、そしてまたその議事録、そういったものは当外務委員会の方に送付されたし、これを入手する努力をする必要があろうと私は思います。なぜなら、たまたま金炯旭氏がこう言ったということ、そしてまたそれが日本の主権を侵害するという発言までフレーザー委員長から行われた、こういう事件があったから、われわれも新聞に報道されたがゆえにこれについての非常な関心を持ち、そしてまたその当否を論ずることができたわけですけれども、これがもし新聞でも報道されなかったら、恐らくそのままになってしまう、そして他国においてそういった日本の主権の問題について誤解なりあるいはこれが正当なものなのか、こういったことが論議されて、われわれが関知しないままいくというようなことがあり得るわけでございます。まして金大中問題はまだまだ疑惑が残ったままでございますので、これを解明する重要な手がかりもあるであろうと思います。したがいまして、この申し入れば議長を通じてでもやっていただきたい、これを要望しておきます。  それから、私は外務大臣にひとつお尋ねをしたいのですけれども、これは二百海里経済水域問題に関連してでございます。  先般日仏外相定期協議、この会合が行われました。そこで外相はフランスの外相ともお会いになりました。その際に、その協議の中でフランス側は、南太平洋の仏領諸島におきまして、二百海里宣言を今年中に行うということがあったやに聞いておりますけれども、そうでございますか。
  174. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 御指摘のように、日仏の定期協議の際にそのような発言がございまして、日本として漁獲の希望があればなるべく早く申し出るように、こういう話があったわけであります。
  175. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 大臣、これは経済水域というようなフランス側の話でございますか。漁業水域でございますか。そこら辺はどうでございましたでしょう。
  176. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 漁業水域と承っております。——失礼しました。取り消します。
  177. 阿曾村邦昭

    ○阿曾村説明員 フランスが考えております二百海里水域経済水域でございます。この水域はタヒチを含むというように聞いております。
  178. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 今年中にやるということがフランス側から提起され、そしてまた、聞くところによりますと、オセアニア各国はこの七月の二十九日ですか、南太平洋会議をやりまして、その席上でも二百海里宣言が行われるというようなことを聞いております。  私、関連して外務省とそれから水産庁の方にお尋ねしたいのですけれども、そういうことになりますと、仏領のポリネシアあるいは仏領ニューカレドニアあるいはワリス諸島、こういうようなところは日本のカツオ・マグロの大変な漁場でございまして、大変大きな影響が出てくるのではないかと思いますけれども、これに対する対策というのはどういうふうに考えておられますか。
  179. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 ただいま御指摘のように、太平洋の南の方の日本のカツオ・マグロ漁船が、そこら辺を基地にして操業しております地点の南大洋の圏内で、それぞれ近く二百海里の設定に踏み切るという動きが進んでおります。さっき御指摘のございました仏領ポリネシアにつきましては、年間大体三千トンないし四千トンぐらいの漁獲がございますし、ミクロネシアの周辺では約十万トン近く、それからパプア・ニューギニアを含みましたその他の南大洋の諸国十カ国ぐらい合計しまして、六万六千トン程度の従来カツオを中心にした水揚げがございます。ここら辺について、今後どのような条件でもって日本漁業操業の継続が可能であるかということは、まだいかなる内容漁業専管水域設定されるか、具体的にその内容が確定をしておらない段階でございますので、私どもの方としても、それぞれ各国の規制措置の内容考え方等に応じて日本漁業の実績が継続できるように、最善の努力をしたいと思っておりますが、総じて言えますことは、これは太平洋の南の開発途上にあります国々につきましては、従来から日本漁業について、漁業面での開発その他の経済開発、技術開発につきまして、各種の課題についての協力を求められております。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕  こういったことについて、ある程度沿岸国の方の漁業の発展等にも寄与しながら、同時に、日本漁業の実績の継続ということについても理解を示してもらうということが、相当数の国について可能であろうということを一応考えておりますので、それぞれの国の協力面での要望事項、あるいはこれからのいろんな規制措置の内容等について、接触を密にしながら情報をいま収集している段階でございます。
  180. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 情報収集の段階ではちょっと困るのでございまして、たとえばいまのマグロにしろ、カツオにしろ、カツオなんかの場合には全体の漁獲量の三分の一くらいはこの水域だというようなことを聞いておりますけれども、そうしますと、いまから対策を講じるというのでは大変後手後手になってしまいます。しかし、そういう昔のことをさかのぼって責めるわけにもまいりません。ですから今後力を入れて、どういうふうな対策を講じていくのか、積極的に漁業協力あるいは漁業の技術援助、こういったものを私は進めていっていただきたいと思います。  時間の関係がございますので、先に進ましてもらいますけれども、実はこういう点でも、南太平洋の地域においても、何か対症療法みたいなものばかりが出てくる。また私どものすぐ近所の北朝鮮による経済水域設定という問題におきましても、同じように何か後手後手になったような感じが強くするわけであります。  私は、第一番目に、まず北朝鮮に対して、わが国が先ほどの漁業水域に関する暫定措置法を決定して実施する、これに際しまして、外務大臣にお尋ねいたしますけれども北朝鮮側に何らかの方法でこういうわれわれの国の意思というもの、これを説明したり伝達はされたのでございますか、そこら辺からまずお聞きしたいのです。
  181. 中江要介

    中江説明員 北朝鮮との関係では、二つの場面がございまして、一つは、このわが方の二百海里漁業専管水域を実施するに当たりまして、六月二十七日に、国連事務総長に対しまして、わが国の領海法及び漁業水域暫定措置法のテキスト及び英語の仮訳文の配付方を依頼いたしまして、国連加盟国及び北朝鮮を含むオブザーバーのミッションに対する配付が行われている。これが一つ。  もう一つの場面は、今度の北朝鮮側のいわゆる経済水域設置の平壌放送につきましてさらに詳細な情報を得たいということで、ニューヨークで接触いたしましたときに、わが国の二百海里漁業水域についても説明する用意がありますということを先方に伝えております。
  182. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 関連してお聞きしますけれども、それでは、先般日本北朝鮮の代表団が参りました、そのときには説明はされましたですか。
  183. 中江要介

    中江説明員 これはたてまえ上、政府関係なく、議員団といいますか、その関係の非政府の団体の間でのお話し合いでございますので、それこそ伝聞でしかございませんが、わが方の二百海里あるいは領海法案について詳細な話があったということは聞いておりません。
  184. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実はその点も国連を通じたりあるいはニューヨークで、というのもこれはいま国交関係がないわけでございますからやむを得ないかもわかりませんけれども、余り間接的な、遠回りな形じゃなくて、もっと直接的な方法も講ずる必要があったのじゃあるまいか。  このたびの北朝鮮側経済水域設定につきましても、先ほどからの御答弁を聞いておりますと、向こう側の真意を知ろうと努力しておられることはわかりますけれども、どうなっているのか、何が本意なのかまだちっともわからない、こういうような話でございます。これがどうも対症療法、出てきたときにそれに対応する後手後手のやり方で、それのしわ寄せがいろいろなところにまた出てくるのではあるまいかという心配を私はいたします。  向こう発表によりますと、たしか六月二十一日に経済水域設定し、そして八月一日から実施する、こういうようなことを発表しているわけでございますから、これは実施の時期が目の前に来ておりまして、まだ真意もわからないし実体もわからないから民間協定についての保証の方法もないみたいな状態では、これは水産庁、どのようにされます。漁民たちの方としては大変な不安を持つと思うのですが、いかがでございますか。
  185. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 北朝鮮との関係では当面特にイカ釣り漁業関係が問題になるわけでございますけれども、水産庁といたしまして、いろいろな事故が起きますのを未然に防止するために、もちろん指導しようという腹づもりでございますけれども、しかし具体的な指導をやります前提として、規制措置の内容であるとか、あるいは範囲であるとかといったようなことがある程度明確になりませんと、ただ抽象的に関係団体を指導するわけにもまいりませんので、当面外務省等と協力しながら向こう側の規制措置の内容等について正確な情報を得ることに全力を挙げているわけでございます。
  186. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまのような状態になってまいりますと、国交未調整の国と全然関係を持たずにやっていくということは、どうもそのままでは過ごされなくなってきた。国交未調整の隣国とは真っ正面から取り組まぬといけない時期になっている、もう避けられない状態になってきていると思います。  つきましては外務大臣にお尋ねをしたいのですけれども、先ほどからの御答弁を聞いておりますと、情勢の好転を待つというお話がございましたし、北朝鮮との接触も、ポジティブではあるけれども情勢もまだ熟していないというお話でございましたが、私は、日本が積極的に出ていかなければ情勢の好転もないだろう、こういうふうなことを感じます。したがって、ここら辺で何らかの形で、たとえば一つの具体的な前例ですけれども、かつて日中間で国交がないときに日中覚書貿易に基づきまして事務所を設けたということもございました。民間の漁業協定、こういうものをいわばよりどころにしまして、先ほどの日中間の問題と見合うような形ででも一歩まず踏み出す。さらに日本北朝鮮の間の国交正常化の問題について青写真もつくっていただく、こういうようなことはいかがかと思いますけれども、ひとつここら辺でお考えのほどをお聞かせいただきたいと思います。
  187. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国が二百海里の政令を出したということ、これは将来このままではいけないではないかというお話でございますけれども、南北の関係がまだ対話すらできないという状態、ある種の緊張状態が続いておる、こういう現状のもとにおきまして、これはやはり朝鮮半島全体のことも考えて事に処しなければならない、そういう事態に現実にあると思います。しかし、この事態が決して好ましい事態ではない。政府といたしましては、たびたび申しておりますように平和的な統一ということが好ましい、こういう考え方でいることは毎回申し述べておるところでございます。  具体的なこの漁業の問題を通じましてもっと積極的に接触を持つべきである、こういう御意見かと思いますが、政府といたしましても、この問題につきまして、やはり南北全体の関係考えながら取り組んでまいりたい、このように考えております。
  188. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間も参りましたから、実はこの問題についていろいろお尋ねもしたいのですが、一つ要望をしておきます。  それは、今度の北朝鮮側発表しました政令の内容を見ましても、北朝鮮当局の事前承認なしに外国船舶等が漁労等の行為を行うことを禁止するということを言っておりますし、読み方によっては、北朝鮮当局としては話し合う用意ありということを示唆したようにも受け取れます。それだけに私は、この際、余り引っ込み思案ではなくて、特に朝鮮半島全体の進展を考えてということを外務大臣はおっしゃいましたが、これはもう当然であります。しかし、いま朝鮮半島の情勢そのものも変わりつつある。その中で、やはり日本がポジティブに出ていくべきであろう。私はその点を、いますぐにはなかなか国交調整もできませんでしょう、しかし将来国交を正常化さしていくための条件は何かということぐらいはもっともっと明示し、さらにその初歩的な段階、どこから始めるのだというところぐらいには踏み出していただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  189. 竹内黎一

    竹内委員長 寺前君。
  190. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が限られておりますので、選挙期間中たくさんお聞きしたいことがたまっているわけですが、何と言ってもこの間に大きく話題を提起しましたのは、金大中氏の拉致事件をめぐって日本の警察が事前に知っておったことだという問題が出された以上は、これは当委員会としても十分にメスを入れなければならない問題だと思います。  この質問に入る前にもう一つ重要な問題がありましたので、これについて一言だけ聞いて、別の機会に当委員会で集中的に審議をしていただいたらありがたいと思います。  それは六月十七日、米会計検査院が勧告をやっているわけですね。日米両国は防衛費をもっと平等に分担すべきだという内容の問題です。この内容を見ますと、単に分担のお金の問題だけではなくして、在日米軍は使用していない施設を単独で再使用する権利を保有するとの条件で共同使用に合意しているが、これを協定の項目としても加えて日米両国間の覚書として交換すれば、共同使用実施の上で役立つだろうというように、基地の使い方において、在日米軍基地百三十八のうち三十八カ所が日米共同使用となっている、日本の自衛隊が緊急事態に備え維持に当たっている、報告書では、この共同使用化をさらに進める候補地として、米陸軍が比較的使用していない相模兵たん基地とかいろいろある。このほか修理施設、訓練場、弾薬貯蔵所など共同使用できる。その場合、緊急事態には米軍が確実に現在の状態で再使用できるように協定で明文化しておいて、そしてこの節約を図りながら日米軍事協力の強化につながる、また自衛隊の必要にも合致するということで、米軍事戦略に日本をかなり組み込んでいくという内容を含めて勧告をやっているようです。  そこでお聞きをしたいわけですが、対日要求具体化の検討がアメリカ当局では日程に上ってきているというふうに見なければならないと思う。この勧告の動きについて大臣はどういう見解をお持ちになるのか。これが一つ。  それからもう一つは、この動きをめぐって官房長官記者会見をやっておられて、米軍基地労働者の賃金の一部日本側分担について協議が行われているような発言をしておられます。そこで、アメリカがどういう要求をしているのか。どういう場所で、いつから、だれが協議に当たっているのか。基地労働者の賃金の全部または一部が日本の分担となるということになると、地位協定に改正の必要があるんじゃないかというふうに思うわけだけれども、そこらはどういうふうに見ているのか。これは関係者から、局長から報告をしていただいたらいいと思います。  この二点についてまず最初にお答えをいただきたいと思います。
  191. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 アメリカの会計検査院が去る六月十五日、米国上下両院議長に対しまして報告書を提出いたしております。その中で、アメリカは対日貿易収支の慢性的な赤字にもかかわらず、米軍のアジア駐留のために引き続き多大の負担を行っているのに対して、日本は防衛上のかさを米軍に依存することによって防衛支出を最小限度にとどめて世界第三の経済大国に成長し得たとして、米国は日本との間でより公平な経費分担の可能性を検討すべきであるという旨の勧告をいたしております。その報告書のことはわれわれとしても承知しておる次第でございます。  しかしながら、この報告書はアメリカの会計検査院長がアメリカの議会に対して行いました勧告でございまして、アメリカ政府がこの勧告をどのように取り上げていくかというのはこれは米国の問題でございます。いずれにいたしましても、この防衛費の分担という問題に関しましてアメリカ政府から具体的な要求が日本政府に出されているという事実はございません。  それから、寺前委員から御質問のありました駐留軍労務者の給与の問題でございますが、この問題に関しましては、こういう問題とは離れまして、昨年春以来日米間におきまして検討が行われてきております。こういう検討が行われるようになりましたのは、オイルショックを契機といたしまして最近のわが国の賃金水準が非常に高騰していること、他方アメリカ側の在外基地関係の予算が非常に窮屈になってきておるというふうな事情がございまして、駐留軍労務者の雇用の安定の問題が非常に大きな問題になってきたわけであります。つまり、米軍としては経費が窮屈なために駐留軍労務者の数を減らすというふうな動きが出てまいり、また賃金改定に関してもこれを少しでも安くしようとするような動きが出てまいったわけでございます。  そこで政府といたしましては、駐留軍労務者の雇用の安定を図るという見地から、日米地位協定の枠内で、地位協定を変えないで何ができるかということを見きわめるために、こういう検討を行っておるものでございます。  最初、防衛施設庁と在日米軍との間で予備的な検討が行われたわけでございますが、現在その結果を踏まえまして日米合同委員会レベルでこの話し合いを進めております。この話し合いは、両方の了解によりましてことしの秋までに結論を出すということをめどにして行っておりますが、現段階におきましてはどういう解決策が見出されるのか、また日本政府としてこれにどう対応していくかという等の点につきましては、現段階では何とも申し上げかねる次第でございます。  なお、官房長官が御発言になりました趣旨も、いま私が申し述べました趣旨と同趣旨であると了解いたしております。
  192. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまアメリカ局長からお答え申し上げましたとおり、駐留軍の労務者の人件費がもとになりましてこの問題は提起されてきた問題でございます。しかし、アメリカ国会に検査院長から報告をされたというのは、やはりこれは相当問題として取り上げられる可能性が強い、こう考えまして、私どもこの問題についてはやはり検討しなければならない事項である、こう考えております。  しかし、地位協定の変更というようなことは、とてもこれは適当でないと私ども考えておりまして、その枠内におきましてどういうことができるかという点につきまして、やはり今後検討をいたしたい、こう考えております。
  193. 寺前巖

    ○寺前委員 この問題は、それでは引き続いてまた委員会で検討させていただくということにして、金炯旭氏の発言をめぐっての質問に入りたいと思います。  時間の都合がございますので、私はきょうは三つの点についてお聞きをしたいと思います。  第一番目の問題は金炯旭氏が、日本の警察が事前によく知っておったという疑惑の問題です。  申すまでもなくこのフレーザー委員会における金炯旭氏の発言というのは、事前にフレーザー委員会自身が調査をした上で、その上で記録にとどめるためにわざわざこれを開いたということを記者会見でもフレーザー委員会委員長は言っています。ですから、記憶違いとかそういう単純なものじゃない。宣誓までやって記録にとどめることを前提にしてやったというこの事実は、私は非常に重要な事実だと思う。  そういう事実の上に立って、先ほど外務省からいただきました仮訳に基づいて紹介をいたしますと、金炯旭氏は、拉致事件が起きた直後に日本にいる以前の部下に電話をしてまず確認をやった。それで彼らのしわざであるということを知った。ですから、KCIAの責任者をやった人が自分の部下に直後に自分自身調べている。これは非常に重要な意味を持っていると思うのです。  それから、「非常に興味を持ったので、韓国にも日本にも自分で行ってみた。」情報を収集していたが、滞日中、韓国の駐日公使である金在権がある夜自分のところへ訪ねてきて一晩ともにして、私が自分で発見したことを彼に語ったら、彼は同意した。こういうふうに明確に言っているわけです。これは記憶違いだとか、単なる人から聞いたというふうに取り扱うことのできない指摘をわざわざやって、あと長々とどういうふうにこの事件を起こすまでの経過があったかということを事細かく彼は発言をしています。ですから、単なる雑談で得るような情報ではこういうことはできないと思います。  そして、その過程の中でこう言っております。「一九七三年八月一日日本警視庁も、金大中氏を尾行しているこのチームの写真をとった。このことがあった後、金在権公使は日本の警視庁に呼び出され、警察当局は写真即ち同チームの内三名が金大中を尾行しているスナップを金在権公使に示した上、金公使に対し、このような日本政府を困難な立場に置くこととなるような活動を打切るよう述べた。」それで金在権氏自身も、具体的に名前までずっと挙げられて、それで写真で確認された連中の名前まで挙げて、向こうから派遣されてきているメンバーの名前も言って、その人自身がこの計画を直接韓国の駐日大使に報告をした。そうすると、その報告で大使は驚いて、計画を中止するように金公使に指示をした。金公使も金大使を説得した。ただ「私がここで言いたいのは、李大使自身も大使としてこの計画が実行される以前にこの計画を知っていたということである。」云々と、ずっとこう書いてあるわけですが、本当にリアルに、これだけの内容を聞き違いとかそういうふうに扱うことは無理だ。とすると、これは、そんなことはありませんという通り一遍では、これは日本の警察当局者なりあるいは日本政府として通り一遍で済ますことのできない発言だと見なければならないと私は思うのです。外務大臣どうでしょうか、通り一遍に警察の関係者がこんなことはないと言ったことで済ますことができるかどうか、まずそれを聞きたいと思います。
  194. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 最初に御指摘をされました、日本の警察が事前に知っておったのではないか、三名につきまして尾行して写真を撮ったという点につきましては、三井さんが先ほどから全く事実に反する、こう言われておりますので、私も三井さんのおっしゃっていることを信ぜざるを得ないわけであります。  その他の点につきまして、やはりこれは金在権氏からいろいろ聞いたということが述べられておるわけであります。したがいまして、先ほども三井さんがおっしゃいましたように、やはり金在権氏が直接関与しておるのであれば、直接に金在権氏に接触することができれば何とか接触をして、そして真相を確かめたい、先ほど来申し上げておるとおりでございます。
  195. 寺前巖

    ○寺前委員 私の言っておるのはそうじゃない。通り一遍に警察が否定をしたからで済む話として扱うことができますかと聞いておる。なぜかというと、記者会見フレーザー委員会委員長が言っていますよ。事前に調査をして、これを公式の記録にとどめるために、記者会見でこう言っていますよ。「二十三日の公聴会は、公開の記録に残すために行われた。金炯旭KCIA部長は過去一年以上にわたり、当委員会調査に協力しており、今後も協力を継続する考えである。公開の席で証言を求め、記録に残すことは、われわれの調査の目的を米国内の大衆に理解してもらい、米韓関係のよりよい理解に資するためである。」公式の記録に残すためにやった。フレーザー委員会自身の調査というものは、もっとすでにずっとやられておったわけですよ。ですから後でも、そういう経過があるだけに、この証言というのは「金氏の証言の信びょう性を疑う理由はない。彼の証言は他の情報源から得られた情報と一致する。」そこまで断定している。このフレーザー委員会委員長自身がそこまで断定しているものを、私は通り一遍で、否定をしていますということだけで済むかということを言っているのです。それじゃ済まないんじゃないだろうか。済まないとするならばどういうふうにしてその疑いを晴らすつもりなのか。これは警察の方から聞きましょう。
  196. 三井脩

    ○三井説明員 金炯旭氏の証言が大変リアルである、それが真実であるということのあるいは一つのあらわれだというようにも言われたように思いますけれども、私はまた逆に、リアル過ぎるから、自分が体験しないことをリアルにしゃべり過ぎるというのはおかしいという説も成り立たぬわけでもあるまいというような気もするわけでありますが、少なくともその仮訳の中に、その後御本人自身が記者会見で訂正されておるというところが幾つかあります。  まず第一に、日本金在権と会ったというのは違うのだ、こう本人が記者会見で訂正されておりますから、公式の証言が間違っておったということではないか。  それからまた、韓国並びに日本に行ったとそれに書いてありますけれども、私の見解では、韓国に行ったのは間違いであろうと思います。本人がみずからその中で認めておりますように、みずから選んで亡命した、こう言っております。そういう人が韓国に入ることができるのだろうか。なるほど日本事件後来たということは、われわれも記録を調べてわかっておりますが、韓国に行ったということはちょっとまゆつばではなかろうかというように、その記録を見て私は思うわけであります。  それと同様に、先ほども申し上げましたけれども、警視庁の警察官が事前に尾行したとか、尾行している者を尾行して写真を撮って、金在権を警視庁に呼び出して警告をした、こう言っておりますけれども、その後の記者会見によれば、あれは警視庁ではなかったかもしれない、神奈川県かもしれない、あるいはその他の県の警察官かもしれないというように言い直しております。  等々、それらのことを考えますと、果たしてどこまで本当か。本当かという意味は、本人がうそであることを意識しながらうそを言ったという意味で私は必ずしも言うわけではありませんけれども、本人の記憶の不確かさというものもあるのではなかろうか、あるいはまた、この仮訳自身に問題があるのかもしれません。  そういう意味におきまして、私はその問題についての証言についての信憑性ということを否定するというわけではありませんけれども、はっきりわれわれがそれにかかわって、そういう事実がないということについて、あると言っておる点はいかにも誤りではなかろうか。ことに金在権が警視庁に呼び出されて警告されたときに、赤面をして、万事休すと思ったというのはいかにもリアル過ぎるではないかというような説もまた成り立たないわけでもあるまいというように思うわけであります。  いずれにいたしましても、警視庁に呼び出して警告したとか、写真を撮ったとか、写真を見せたとかということは全くございませんので、この点は私からも重ねてはっきりと申し上げたいと思う次第でございます。
  197. 寺前巖

    ○寺前委員 先ほどから出ていますように、レイナード元国防省の朝鮮部長さんも発言をしております。それから李在鉱元駐米韓国大使館公報館長も、KCIAが金大中を誘拐したということで日本政府も警察情報で確認しているということを発言をしておりますし、あるいはまた、先ほどありました高橋前警察庁長官の発言といい、一連の各国のしかるべき責任ある人が全部共通したことを言ってきているという客観的事実というのを私は非常に重要な事実として見なければならない。そういうふうに客観的にだれが見たって思う事実がある場合に、根拠をもって警察が説明をしない限り、ないということを盛んに言ったって、それは人は信用せぬということに私はなるだろうと思う。少なくとも、この金大中氏が日本に来た。韓国にとっては選挙をやって現政権と競り合いをやった幹部だ。その人が日本に来て、この人の動向について日本の警察がこれをどの程度知っていたのか。ここまでわれわれはこの人についての動向について知っておって、という問題も明らかにしなければならないだろうし、それから、こういうふうにまで言われた以上は、これについて、たとえば日本国会でおいでをいただいて対決をさしてくれというのか、何かの形で、日本の警察としてもこれだけ公開の記録にさせられた以上は、何かのしかるべき取り扱いの発言があってしかるべしじゃないだろうか。いまも信憑性を否定するわけではないがというようなクエスチョンマークみたいなものをつけて御答弁なさっておりましたけれども、ここまでリアルに提起された以上は、リアルに対決をするなり何らかの形で明らかにしていかなかったら、根拠を示さなかったら、それはだめだろうというふうに私は思うのです。  それからもう一つは、今度は、政治決着をつけたと言われる、しかしまだ警察としては捜査本部は解散していないのだ、解散していないとするならば、その捜査本部が、ここまで具体的に名前まで出されて、それでこれらについてその後ここまで捜査をやっていったのだという具体的に捜査の進展をリアルにそれこそ国民の前に公開して示さないことには、金炯旭氏の言っていることはそれはうそだ、日本の警察ようやっているやないかということにはならないだろうと思う。だから、そこらのリアルなその後の活動についてここで説明してもらわないと私はわからない。  たとえばことしの予算委員会においても、文明子女史の発言をめぐって金在権氏の問題がちゃんと出てきましたよ。それは私も予算委員会の分科会で質問もやりましたけれども、たとえばこの金在権という人について、それじゃどういうふうに具体的に調査をするために接触を保ったのか、接触の保ち方はどういうふうに活動を具体的に展開したのかというような問題まで含めて具体的に報告して、ようやっているのだということが明らかにならない限り、何か存在しているらしいが、なんや一向にはかばかしくないじゃないか、これではやはりぐるかなという話になってしまうのじゃないだろうかというふうに私は思うのですよ。  先ほど、ちょっと具体的な話といえば、三十五隻の船でしたか、うち二隻まで話をしぼってきて、それでそこまでの話をちょっと——三十五隻でしたか、間違っておったら訂正してくださいよ、おっしゃっておりました。ですから具体的に船の名前も明らかにして、これについてここまで調査がいったけれども、それがここで詰まっているのだとか、何かなるほど決まっておるなということが明らかに説明されない限り、やはりぐるかなということにならざるを得ないだろう。そこらは一体どういうふうに根拠をもって示せますのや。
  198. 三井脩

    ○三井説明員 まず金炯旭氏の証言が、みずからその後証言外の記者会見で訂正をしなければならぬという点が数点あったという点を御認識いただきたいと思います。  その内容の中で、御本人がそれにもかかわらず訂正されておらない点でわれわれが大変遺憾だと思う点が二点。せんじ詰めれば一点ですけれども、事前に知っておった、事件が発生する前に警察は知っておった。その知っておったという中身が二つに分かれるわけでありますが、一つは先ほどの尾行したり写真を撮ったり警告したりということ。もう一つは金大中氏が七月に日本に来日したときに、すでにこれは危険であると思っておったはずである、こういう点でありますが、これは全く違うという事実が一つございます。  それから、この金炯旭氏の証言趣旨は、いろいろな間違いがありますけれども、その趣旨は、金大中事件というのはKCIAが行った犯行だ、こういうところを言いたいのだろうと思います。この点については、私たちはあの事件KCIAの犯行ではないと言ったことはありません。この点は明らかにいたしております。われわれは、この犯行がどういう形で行われたかということを究明するために、真相を明らかにするために捜査を進めておりますが、現在までの捜査の過程では、KCIAの犯行と認めるだけの資料、証拠はございません。こう言っておるわけであります。こう言っておる言葉の受け取り方のあるいは差かと思いますけれども、正確に言えば、そういう趣旨のことをわれわれが言っておる、こういうことでございます。  それから次に、中間報告をしてはどうか、すべきだということでございますが、中間報告をこの時期にするということは、捜査をやるな、捜査はもうやらぬでもいい、こういうことに、とりもなおさずなる、こういうことをしばしば申し上げ、本日も、先ほど申し上げたわけでございます。これは捜査というものの性質上、さようなものでございます。  なお、その中で、それでは全然言わないのかというと、そうではありませんで、そのときの捜査の現状を踏まえまして、国会で御質問があるときには、その捜査に大きな支障にならない範囲においては努めて答弁という形で御報告申し上げておる、こういうことでありまして、将来の捜査を伸ばしていくということに御協力をいただけるなら、中間報告を提出せいということについてはわれわれが差し控えたいという点について御理解をいただきたい、こういうことを繰り返し申し上げておるわけでございます。  それから、さきほど申しました金大中氏を韓国に連れ戻した船、三十六隻について、そのうち二隻にしぼって云々ということは、もう四十八年当時からしばしば詳細申し上げております。もう四年前から繰り返し言っておることであります。ことしもしばしば申し上げました。いま初めてのことではございません。というようなことでありまして、こういう捜査の概況につきましては、御質問に応じ、捜査の先行き等を見ながらお答えをしておる、こういう点を御理解いただきたいと思うわけでございます。  なお、金炯旭氏が、いろいろ細かい点については問題もあり、また警察との関係ではきわめて重要な点において大ミスがあるという点は明瞭でありますけれども、なお結論であるKCIAの犯行だと彼が言っておる点は、要するに金在権氏に確かめた、つまりニュースソースは金在権氏である、こういうことでありますので、私たちはその金在権氏にかつて事件当時当たりましたけれども、今日なおそういうふうに言われておる、しかも相当間違いもあるけれども、リアルに言われておる。こういう点を踏まえまして、御本人から直接話を聞く機会、事情聴取できる機会があれば大変ありがたい、こういう観点に立って外務省当局に相談申し上げておる。これはかねてからのわれわれの姿勢でございます。態度でございますけれども、現状はこういうことであるということでございます。
  199. 寺前巖

    ○寺前委員 肝心な話は一つも聞かしてもろうてない、理屈はいろいろ言われたけれどもね。要するに、二隻にしぼった、その船名がこれこれの船の名前で、その捜査はどこで行き詰まっておるのか、これは言えないというのだったら、それ以来のことについては何が活動しているのかさっぱりわからぬということになる。それから、具体的に名前までがずっと挙がってきた、私的の名前がずっと出てきた、この名前の人について、それではその後どういう調査を具体的にやったのか、それがちょっともはっきりしない。金東雲は政治決着のときに問題を提起した、その後断りが来た、これで終わりなのか。では進展は何もないじゃないか、そうならざるを得ないと言うんだよ。  それからいま具体的に、金炯旭氏がアメリカの公式の記録としてとどめさせるという立場に立って行われた。公式の立場に立って行われたものに対してどういうふうに対置をしていくのかということに対する御答弁が少しも明確でない。それから金在権に対するものも、外務省当局に要求をしているというだけであって、これも進展が一つもない。これでは全体として行われていることは、日本捜査当局はよくやっているぞということにならぬじゃないか。実際に捜査をやりたいというのだったら、捜査員を韓国なりアメリカなりに派遣して、そして具体的に何月何日にこういう申し入れをやってこうやっています。何かそこまで出てこない限りは、それは私は疑いを持たれる方が普通だと言わざるを得ない。これが日本の事前に知っておったじゃないかということに対する、現実的に国民の疑惑を解明し得ない問題点は、私はいまの答弁の中にもあると思う。そこを私は明らかにすべきである、これは御答弁いただきたいと思う。  それから第二番目に、朝日新聞で秘密協定の話が出ました。これは本人自身が六五年合意という形で発言をしているのだから、伝聞でも何でもないのですね。本人自身がやったということを事細かく問題を提起している。そして問題を提起しているだけではなくして、現にそのことによって、韓国国会議員が日本の大学で、在日朝鮮人総連合会というのですか、あそこから資金をもらって勉強しておったということが重要な根拠になって、そして処刑をされているという事実が本人の言葉を通じて出されている。これは非常に重要な問題だと思うのですね。そういう資金をもらったからといって処刑される。その情報日本から提供している。これは私は非常に重要な問題だと言わざるを得ないわけだけれども、とすると、そういう協定を結んでいるのか、ないしは覚書があるのか、何らかのそういう情報を提供する約束があるのか、これははっきりしてもらわなければならぬ。それから本人自身がそのことによって死刑にまで処せられる結果をつくったということに対する責任をどういうふうに感じているのかということについて明らかにしてほしいと思う。
  200. 三井脩

    ○三井説明員 まず最初の金炯旭氏が公の席で発言し、証言をしたというので、そのニュースソースである金在権氏について話を聞きたいというようにわれわれが考えておる、こういうふうに受け取られたかと思いますが、そういう趣旨ではありませんで、いままで文明子氏の話として今回と同じような内容が出ておりました。それは本人が金炯旭氏から聞いたのだ、その金炯旭氏は金在権氏から聞いたのだ、それを文明子氏が文書にしたとか、記事にしたとか、こういうような話でありまして、二重の伝聞ではどうしようもない。今度は本人が一歩前に進みまして、金炯旭氏が自分金在権から聞いた、あるいは自分で調べたというようなところになりましたので、それでは金在権氏から聞けばわかるのだろう、こういうふうになったという趣旨でございます。  それから船の名前等はいままでも答弁しております。  それから、それでは先へなぜ進まないのか、こういうことでありますが、そしてまただれに聞いてどうだった、どういう聞き込みや捜査をしてそれでストップしておる、あるいは行き詰まっておるというところまで言わなければ納得できないとおっしゃるわけですが、それをするのが困るのだ、だから中間報告は差し控えさせていただきたいと言っておるのはそこのところでございまして、捜査というのはいろいろな方の協力を得ます。その協力を得た人の名前とかその内容とかそういうことを詳細申し述べますと、そのことがあからさまに名前が出ないといたしましても推測される、つかまれる、こういうようなことになりますと、警察は聞き込みに来るときには外には出しませんと言っておるけれども、いざというときにはいろいろなルートで外に出てしまうということになりますと、捜査一般に大変な支障が生ずる、こういう意味で申し上げておるわけでございます。  それから第二の秘密協定云々という点でございますが、まず秘密協定というのはございません。伝聞でないから本当だろうというふうにそう単純にもまいらない点もあろうかと思うわけでありまして、秘密協定などというのは全く存在しないわけでございます。  またその中で、それの一つのあらわれとして金圭南事件について、これは御本人が報道で言っておるわけでありますが、金圭南事件について金圭南が日本に留学中、その学資を朝鮮総連から出してもらった、これが端緒で北鮮スパイであることがわかった、こういうふうに、なるほど金炯旭氏は言っておると伝えられておるわけであります。しかしながら、金圭南事件というものを見ますと、実はそうではありませんで、金圭南氏がイギリスに行きまして、イギリスにおる北鮮スパイの韓国人の大物、この人にいわゆる包摂をされて、東ベルリンに行ったりあるいは平壌、北鮮へ行ったり、そこでは北鮮労働党に入党をして資金を多額にもらい、あるいは暗号の教育を受け、そしていろいろ帰ってきて活動したんだ、こういうことによって反共法、国家保安法ですか、それから機密を漏らす罪ということで有罪とされたのだ、こういうふうになっておるわけでございます。  なおその前段として申し落としましたけれども、金圭南氏がそういう学資を朝鮮総連からもらっておったかどうか、私たちはそういうことは存じません。したがってそういうものを提供するというようなことももとよりないわけでございます。  なるほど、いま申しましたが、伝聞でないという点はそのとおりでございますけれども、だから直ちにそれが真実かという点について申しますと、ただいまわれわれがそれにタッチしておるところから見ましても、いま申したような問題点があるという点から御判断をいただくべきものではなかろうかと考えるわけでございます。
  201. 寺前巖

    ○寺前委員 この秘密協定とか情報提供というものが疑いを持たれるというのは、もちろん金炯旭氏自身の発言の中からも出てくるだけじゃなくして、最近も政府に対して在日韓国人政治犯を支援する会全国会議というところから総理大臣あてに要望書が出ています。これらの人々の中からもいろいろな事例を提起をしているわけです。  たとえば昨年五月に韓国で国家保安法違反などで無期懲役刑を受け、十二月に突然釈放された人たちがおりますが、その中にたとえば夏谷進さんという人は、韓国で逮捕された直後にその留守宅に警察が調査に来ているということを家族の人が言っているわけです。  それから、あるいはいま二審で死刑判決を受けている人で李哲という在日韓国人の人が、昭和四十八年八月に朝鮮民主主義人民共和国に行ったとされてスパイ容疑で死刑の判決というところまで来ているわけですが、この人自身が向こうで、熊本市の大洋デパートでこの時期に腕時計を買っておるということを言ったのかどうか、そこでそれについて、この熊本の北署の警備課の巡査部長がやってきて調査をしている。  そういうところから、何だ日本の警察は向こうとの間に情報を提供したりあるいは協力をこういうふうにさせられてきているのじゃないか。こういう内容というのは何も一般的な刑事事件でも何でもないんで、いわゆる日本の国においては罪にならないようなものが向こうでは国家保安法とかなんとかいう形でやられておる。それに日本の警察機構が協力しているんじゃないか。証人までおるわけですね。こういうことになってくると、何かのものをやっているのじゃないか。私は、だから本当にないと言い切れるのかどうか、これらの人たちが言っていることは事実に反するというのかどうか。現に死刑に処せられた人まで出てくるとするならば、現に在日朝鮮人で向こうで政治犯としてつかまっている人はどれだけおって、その人たちに対して、日本政府が提供しなかったら——学資をもらっておったとか、在日朝鮮人総連合との関係でどうのこうのというものは、KCIA日本で活動するか、ないしは警察か日本のそういういろいろな分野のところが活動しなかったら、情報提供しなかったらできない話じゃないか。何かあるのじゃないか。そこのところの解明の上にとっても、いま具体的に出ているこういう人たちの問題について、絶対にないと言い切れるのかどうか。韓国との間にはそういうものが絶対にないと言い切れるのかどうか。起こっている事犯について、外務省として、いま在日韓国人がどれだけいかれておるのか、それについて事実を報告してもらって、それに対してどういうふうに政府として考えるのか、ちょっと報告してもらいたいと思います。
  202. 三井脩

    ○三井説明員 いま例を挙げられましたことですが、夏谷進氏の件は兵庫県の事例でありますけれども、これはその中で言っていること自身に矛盾があるのです。つまり御本人は、たしか、私のあれに間違いなければ、四十八年に検挙されておるはずです。事件直後というと四十八年でないといかぬわけです。一方では、五十年に家宅捜索を受けたと言っておるはずです。それ自身矛盾です。それのみならず、家宅捜索などということは、われわれは令状によって、犯罪容疑によってやるのでありまして、一般にもとより令状のない家宅捜索などはやるはずがありませんし、この夏谷さんの件については、私たちはそんなことをやった覚えは全くございません。  二番目に李哲氏のことでありますが、この人は熊本県出身と言われておるわけで、母親は熊本県におられるわけでありますけれども、この人が韓国で逮捕されてから、この李哲氏を救う会とか救出する会とかいうのが熊本でもできまして、ビラ活動とかハンスト、さらに集会、デモが行われております。地元熊本県といたしましては、特にこれは熊本北署でありますけれども、北署としては、直接デモその他の問題として警備上のこともこれあり——そういうことでありますから、この母親が、本人が北朝鮮へスパイ活動のために行っておったと韓国側で言っておるその時期には、実は熊本の大洋デパートで腕時計を買って、そのときの本人自身の保証書のサインが出されておるはずだということを主張し、韓国へも母親が行って、法廷でもそういう主張をされたようでありますけれども、そういうようなことが熊本の地元紙では大きく取り上げられました。したがいまして、ハンスト、デモ、集会等が行われておるその原因となっておることは、新聞が伝えるように、そういうアリバイもあり、全く無実だということであればデモの勢いその他もまたいろいろ違ってくるであろう。そういう意味で、警備上の観点から、所轄警察署としてこの保証書というのは本当にあるのだろうかというところをデパートに行って聞いてみた。デパートでは先年火事になっておりまして、そういうものは全くありません、それからまた、それを扱った従業員も現在おりませんでその事情はわからない、こういうようなことであったということは聞いておるわけでありまして、これを称して、何とかの会で言っておるように、韓国日本の警察とはこういう問題について共同捜査をやっておる、こういうような言い方をされておりますけれども、事実はそういうものでないということでございます。  先ほども申し上げましたように、こういう点について韓国とわが方が共同捜査をやるとか情報交換をやるとかといったような協定は、秘密協定のみならず表向きの協定も全くない、こういうことでございます。
  203. 中江要介

    中江説明員 外務当局として、在日韓国人で、いま言われましたようなことでつかまっている人の現状をどういうふうに把握しているかという点について概略を申し上げますと、私どもの承知しております限りでは合計三十名でございまして、そのうちの十五名は刑が確定しております。その確定しました中の七名は死刑であります。その七名とも死刑が執行されたという情報は得ておりません。  こういう人たちに外交的な措置として何をしているかという問題でございますが、基本の問題といたしましては、在日韓国人も韓国の国籍を持っておるわけでございますので、韓国人が韓国の法令に基づいて韓国で処理されておるということにつきましては、日本としては、内政にわたることでございますので、とやかく介入はできない。しかし、他方、こういう人たちは在日期間の長い、日本の社会に溶け込んでおる韓国人であるという点に着目いたしまして、できるだけのことは側面的に援助といいますか協力するということで、弁護士のあっせん、弁護士に対する面会あるいは助命嘆願書の伝達といったものにつきましては、在ソウル大使館を通じましてできるだけの便宜は図っている、こういうことでございます。
  204. 寺前巖

    ○寺前委員 時間も参っておりますので、もうやめますが、最後に外務大臣に一言お伺いしておきます。  先ほどからの話を聞いておりますと、警察当局は全面否定だけですが、アメリカの議会では公式に記録にとどめてかなり言われておるし、記者会見フレーザー委員長自身が、日本の主権を侵害する行為だということまで発言をされておるわけです。そこまで日本の位置というのが扱われておる。扱われている以上は、やはりもう一度見直してみる必要があるのではないか。主権の侵害だ。先ほど警察の言われている点を見ても、金東雲は間違いない。それから車は間違いない。この事実だけでも、これは韓国の大使館との関係の問題になります。  疑いの持たれる人たちが六人おると言われる。リストがすでに金炯旭という人からはああいう形で言われてきている。あのメンバーを見ると、韓国の大使館の筋合いの者である。そうすると、これはどこから考えたって組織的に行動されたと見る方が客観的妥当性を持っている。にもかかわらず政治決着だ。その政治決着は四点あると、さっき説明がありましたが、その四点の中で、原状回復はされないままに、次の理由でもっていかれてしまっておる。それから金東雲の自首が拒否されたままになっておる。これで、政治決着のままで済ましておいていいのだろうか。どこから考えてもこれは主権の侵害の疑いがあるというふうに見るのが妥当だと思うのですが、大臣としてやはり疑いがあるというふうに見られるか。同時に、金大中氏の原状回復を政治的にもう一度明らかにすべきではないか。それで、あの政治決着というのは白紙に返すという措置をとる、そういうことをやられないと、フレーザー委員会などでここまで言われているので、私は日本の権威にかけても重要な位置を占めると思うのです。それについて最後に大臣としての見解を聞きたいと思う。  それから、委員長には、先ほど理事会でも申し上げましたけれどもフレーザー委員会委員長記者会見で断定までしておられますから、フレーザー委員長見解をわが国会が直接行って調査をする、あるいは金炯旭氏に日本国会に来ていただいて、ここで日本国会として明確にさせる措置をとるというようなことをとられなかったら、私は日本の主権にかかわる重要な問題だと思いますので、その取り扱いをぜひとも委員会できちんと決めていただきたいということを要望したいと思うのです。
  205. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほど、日本政府が疑っていないというようにおっしゃいましたけれども、決してそうではないので、その点につきましては三井局長からも先ほど来申し述べているとおりで、警察当局としては証拠力のある事実を求めておるわけでございまして、したがいまして、捜査活動を続けておるということは、政府としても、その刑事事件というものにつきましてやはりまだ未解決の問題として考えているわけでございます。したがいまして、その直接の証拠力となり得る金在権氏に何とか接触できないかということを努力をしている段階でありまして、したがいまして、いまの段階で、小委員会金炯旭氏の証言だけで外交的決着につきましてもう一度やり直すというようなことはいまの段階では適当ではないのではないかと考えておるわけでございます。したがいまして、今後とも外務省といたしましても、金在権氏に警察当局が接触ができるように努力を払っておるという段階でございますので、そのように御理解を賜りたいと思います。
  206. 竹内黎一

    竹内委員長 ただいまの寺前委員の委員長に対する提案につきましては、理事会において精力的に検討いたしたいと思います。  次に、伊藤公介君。
  207. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 引き続いて金大中事件について御質問を申し上げます。  仮定の問題で大変恐縮でございますけれども、今度のアメリカフレーザー委員会発言、この金炯旭氏の証言が、特に国民に関する証言について事実であるならば、それは今日まで日本政府がとってまいりました政治的な決着はついた、残された問題は刑事事件だというわが国の政府がとってきた姿勢は、改めてこれを変えなければならない、こう思いますけれども外務大臣の御見解を伺います。
  208. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 刑事事件捜査中であって、この事件の決着次第によりましては、このいわゆる政治的決着というものにつきましてもう一度再検討しなければならない、そういう事態も考え得ると思います。  政治的あるいは外交的な決着という意味につきまして、私どもといたしましては、この金大中事件というものを片方で捜査を続けながら、しかし、日本韓国との間につきまして、この事件によって引き起こったところの外交上のいろいろな支障というものは一応もとに復して外交関係を結んでいこう、こういうことであろうと思うのでございます。したがいまして、この事件がどうなるかということにつきまして、その先のことは仮定の問題でございますので、現在の外交関係をどうするかというところまでは申し上げにくいわけでありますけれども、仮定の問題として申し上げれば、もう一度検討し直すということも考えるべきであるという御意見は傾聴に値すると思います。
  209. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 アメリカの議会では、明らかに証言がすでに事実として行われているわけであります。それが事実無根であるのか、あるいは正しい証言であるのかということはこれからの問題でありますけれども、いま外務大臣の、傾聴する意見だという御答弁がありましたけれども、あの金大中事件の決着のときには、もしKCIAの介入していた事件であるということであれば、これは当然刑事事件だけでは終わらないわけでございます。明確に御答弁をいただきたいのですが、もしこのフレーザー委員会における証言が事実であるとすれば、改めて政治的な交渉を始める意思があるのかどうなのか、はっきりとお答えをいただきたいと思います。
  210. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 仮定のことでございますので、どのような措置をとるかということまでいまここで申し上げにくいのでございますけれども、おっしゃいましたような点につきましても検討をすべきであろうというふうに考えます。
  211. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 三井警備局長さんにお尋ねをしたいのでありますが、私も実は、刑事事件として今日まで取り扱われてきた、それに対してかなりの時間が経過をして、一体この金大中事件について、われわれも含めてもちろん多くの国民の方々がどうもすっきりしない、ロッキード事件でも決着はどうもあいまい、今度の金大中を含めて日本韓国との関係について非常に疑わしい問題が横たわっているのではないか、こういう国民の感情は事実あると思うのです。先ほどからの御答弁を聞いておりましても、政府自身にも、今度のフレーザー委員会における証言を含めて、すべて事実無根なのではないのだ、多少疑いを持ってこれをいま考えているのだというような御答弁があったわけでありますけれども、つい先日も、三井警備局長さんは、日本の警察の名誉にかかわる問題だ——これは警察の名誉にかかわるだけの問題ではなくて、まさにわが国の国民の主権にかかわる大変重大な問題であります。一方においてはこういう事実が明らかにされて、すでに私どもの前に、「北東アジア課」という署名入りで非公式速記録にしても提出をされている。証言はされたという事実が目の前に突きつけられている。しかしその証言は事実ではないとおっしゃっている。それでは、一体この事実であるのかないのかという決着をどういう形でつけられるおつもりなのか、御答弁をいただきたいと思います。
  212. 三井脩

    ○三井説明員 金大中事件発生以来長くたっておって、さっぱりすっきりしないというふうに国民が受け取っておるとおっしゃるわけでありますが、確かにそういう点があると思いますけれども、恐らくこの事件が解決をしなければ、それまでは、事件解決までの間はもやもやは残るのであろう、こう思います。ただ、同じもやもやが残る中で、今回の金炯旭証言で問題なのは、事件がまだ解決しておらないということのほかに、日本の警察が事件を事前に知っておったという事実を挙げ、だから、捜査をやる気がない、こう言っておるのかどうかわかりませんけれども、だから挙がらないのだろう、こういう印象を与えるような言い方になっておるわけであります。その点については、そういう事実は全くないのにそういうことを言うという意味で、金炯旭証言には誤りが相当あるということをわれわれは言っておるわけであります。したがって、金炯旭証言が全体としてうそであるとかなんとかということを言っておるわけではありませんで、わが警察が鋭意努力をしておるにかかわらず、何かそれは見せかけの努力であって、本当の努力をしないみたいな印象を与えるような言い方、しかもその根拠になる事実として挙げておる点が全く事実無根であるという点を私たちは強調し、そういう金炯旭発言は自由でありますけれども、そこから一般に与える印象というものを払拭するように努めておる、こういうことであります。  金炯旭証言の本当の意味は、そういう個々のデータということではなくて、金大中事件というものがKCIAによって起こされたものであると彼が言っておる、そこに意味があるのじゃなかろうかと私たちは思うわけです。ただしかし、それが仮に真実であり、そのとおりであるといたしましても、金炯旭がそう言っておるからわれわれが捜査上あれはKCIAの犯行だと断定するわけにはまいらない。捜査というのは証拠資料を積み上げて、それの上に合理的に判断される、証明といいますか、証明された事実によってKCIAの犯行であるのか、だれの犯行であるのかという点を明らかにしなければならない、こういう性質のものでありますので、人が結論を示してくれたから、そしてまたその言っておる人の証言に権威があるから、それをまるのみして、捜査のプロセスをカットしてそういう結論に飛躍するというわけにはまいらない、こういうことでありまして、将来捜査をしていけばどういうことになるかわかりませんけれども、われわれはただいまやっておる捜査をさらに鋭意積み上げてまいりたい、こういうことを申し上げておるわけでありまして、この基本姿勢というものは依然として変わらないわけでありますので、さらに精力的にこれを進めていくということであります。  ただ、金炯旭証言その他の発言等があったこの機会に、とりあえず何をするのか、こうおっしゃれば、これは捜査捜査として進めますけれども金炯旭のニュースソースと称しておる金在権氏から話がもし聞けるものならば、かつまた金在権氏が率直に話をしてくれれば、われわれの今後の捜査の展開について有力な資料が入手できるであろう、こういうふうに考えるわけであります。しかし、果たして外国におる金在権氏からそういう話が聞けるのかどうかということはにわかに判断しがたいので、その点につきましては外務当局に、その辺についてしかるべく処理をしていただきたい、その回答を待ってわれわれは捜査を進めたい、こういうのがただいまの現状である、こういうことでございます。
  213. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 一点参考にお聞きをしたいのでありますけれども、今度フレーザー委員会において金炯旭氏の証言がいろいろとされたわけでありますが、その中に捜査上参考になる資料が現実に出ていたかどうかということをまず一つ明らかにしていただきたい。  それから、今日まで少なくとも一国の議会の中で、日本政府が事実ではないということを証言をしている。しかもフレーザー委員会委員長も、これは日本の主権にかかわる問題だという発言をされておる。このフレーザー委員会において証言をされた金炯旭氏に対して、その事実ありやなしやを確かめるためにその接触をされたのか、あるいはされる何らかの行動を今日までされたのか、外務大臣からもお答えをいただきたいと思います。
  214. 三井脩

    ○三井説明員 金炯旭氏の証言は、捜査の観点から言いますと、特にそう参考になる点はないのです。というのは、いままでしばしば言われておる内容です。あの内容は、主要な部分は五十年の七月にもう社会党から資料としてもらっています。その出所が不明な点は問題がありますけれども内容としては言われておるわけです。また、ことしの二月、文明子氏が同様なことを言っておるというようなことでありまして、すでに旧聞に属するところであります。どこが違うのかというと、宣誓をしてやったというところが違うわけでありますけれども、宣誓してやろうがやるまいが、内容はおおむね変わりない。宣誓したから伝聞伝聞でなくなるわけではない。いずれも伝聞であるということですから、他の点は別といたしまして、警察の捜査という観点から見るとプラスするところはない。のみならず、警察が事前に知っておったとかいうような、むしろわれわれにとっては事実無根のことを言われて迷惑千万である、こういうことでありますので、全体としては価値がないどころか、マイナスの価値ではないかとわれわれは思いますけれども、実態はそういうところであります。  しかし、金炯旭氏が金在権氏からそう聞いたんだ、こういうことを言っておられる、こういう点については、かねてからそうでありますけれども、本人の口からそう言われたという点は確かにプラスです。いままでは金炯旭氏が金在権氏から聞いたと言っておるということを聞いた人がしゃべっておる、こういうところが、本人が直接彼から聞いたんだ、こう言っておる、そういう点はわずかに前進か、こう思うわけでありますが、しかし、いずれにいたしましても金炯旭発言というものは、われわれはそれとして受けとめてまいるわけでありますが、だからといっていままでの伝聞伝聞でなくなるわけでありませんので、金炯旭氏から話を聞くということについては格別捜査上の意義を認められない、むしろ金在権氏から直接聞いた方がいい、こういうことで、先ほど申し上げましたような、金炯旭氏ではなくて金在権氏に接触する方途というものを模索しておるといいますか、そういうことについて努力外務省にお願いをしておるということでございます。
  215. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 金炯旭氏の名前は文明子さんから出たことがあったわけでございまして、その段階で文明子女史並びに金炯旭氏に対して接触を試みるべくアメリカの大使館から国務省にも相談をしたことがあったわけでありますけれども、その段階では、アメリカ大使館としてはその点について協力が得られなかったわけであります。そのままになっておったわけでありますが、今回の金炯旭氏のフレーザー小委員会におきます証言がありましたので、金炯旭氏が知っておることはおおむね証言で話されたというふうにわれわれは見ているわけでございます。したがいまして、ただいまも話がありましたように、私どもとしては、金在権氏に接触をする必要がある、このように考えていま国務省を通じて折衝をいたしておる、こういうことでございます。
  216. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 アメリカの議会で証言をされたことが事実でないという点が幾つかあるわけでありますけれども、この点について改めて何らかの形で抗議をする意思がおありなのかどうなのかという点と、いま私どもに配られている資料、議事録は非公式速記録でありますけれども、先ほどもちょっとお話がございましたが、正式にアメリカの議会での公式会議録を取り寄せていただきたい。これは委員長に改めてお願いを申し上げたいと思います。
  217. 三井脩

    ○三井説明員 金炯旭氏の証言の中で明らかにおかしいと思われる点は、警察との関係であります。その他でもありますけれども、警察との関係があるわけでありまして、警察といたしましては、この点はおかしいということをそれぞれの機会に言っておりますので、またそのことは報道されておりますから、改めて抗議意思表示といいますか、そういうことをやるということは、ただいまのところ考えておりません。
  218. 竹内黎一

    竹内委員長 ただいま伊藤委員が提案されました公式の会議録の取り寄せの件につきましては、他党の委員からもすでに注文が出ておりますので、理事会において協議をしたいと思います。
  219. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 先ほど申し上げましたけれどもアメリカの議会では明らかに証言がされている。しかし、日本側ではそれは事実無根だと言う。これは多くの、ごく一般の国民の皆様方がこの議論を聞いていれば、一方の方は、議会の場ではっきりいろいろと事実を並べて、こういう事実ですと言って証言をしている。一方では、事実でありません、事実無根ですと言って答弁をされている。一体、どっちなんだろうという疑問は当然残るし、やはりこれを明らかにしなければならない。そのためには、事実無根であるならば、やはり事実無根なんだ、かくかく事実無根なんだということを、多くの国民の方々にわかる形でこれを明らかにしていかなければならないと私は思います。ただ、刑事局長さんが、それは事実でありませんと言うだけでは、この疑惑は晴れない。いずれかはっきりした形でこれを日本政府の名において抗議をするという姿勢は、日本の国民に対しても必要だ、私はこう思いますけれども、いかがでしょう。
  220. 三井脩

    ○三井説明員 金炯旭氏の発言でおかしい点は、警察関連で、事前に警察が事件の起こるのを知っておって、しかも警告まで発した、この点が中心でございます。この点はそういう事実、尾行したとか事前に知っておったとか警告したとか写真を撮ったとかということは全くないわけです。そういう意味で事実無根と、こう言っておるわけでありまして、何かそれにかわる事実があって、その事実の解釈として金炯旭氏は間違ってそういうふうに解釈しておったのだ、しかし実際は、形はあるけれどもそういうことでなかったのだ、こういうことなら、そういう形の目撃者というのはあり得るわけですから、その人等を通じ、それは意味が違うということの証明が容易でありますけれども、事実無根、全くないことを、ないということの証明は大変むずかしい、こういうことが一つございます。  それからもう一つ、今度は内容でありますけれども、あれは、金大中氏が七月にわが国に入国した、その当時から警察は、彼は危険であるということを知っておって、さらに、拉致するために犯人どもが金大中氏を尾行しておったのを知りながら、それを尾行し、写真も撮り、かつ金在権公使を呼んで警告を発した、こういうことでありますから、仮にそういうことが事実であり、われわれが、それでないにいたしましても、金大中氏がだれかに誘拐されそうだというようなことを事前に知っておれば、誘拐計画があるということを事前に知っておれば、わが警察は誘拐させません。誘拐するというような犯行を未然に抑えるについては十分の自信を持っております。その点は十分御理解をいただきたい。そうすると、警察はそれだけの力と自信がありながらなぜ誘拐させたのか、こういうことになるわけでありまして、そんなことはあるはずがないということは容易に御理解をいただけるのじゃなかろうかと思う次第でございます。
  221. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 いずれにしても、一つ一つ雲が晴れない問題が次々と続いてきた。そして、事実無根なことにもはっきりした形で抗議をしない、こういう形が続いてまいりますと、国民の多くの方々は、どうも何かあるのではないかという疑惑を持たざるを得ない。私たちも、こういう国民の方々がわかりにくい点について、もっとわかりやすい形で日本政府自身が、特に外交関係については強く正しい姿勢で臨んでいただきたい。強く要望を申し上げ、大変重要な問題をもう一つだけお聞きをしたいと思います。  北朝鮮の二百海里経済水域設定の問題であります。朝鮮民主主義人民共和国はことしの八月一日から経済水域二百海里を実施をする、こう発表しておるわけでありますけれども外務省はいまこれについてどのような情報を実際得ているのか。報道によりますと、政府はニューヨークの国連海洋法会議の場において北朝鮮に接触をするように訓令を出した、こう伝えられておりますけれども、一体その成果はどうなっているのか、まずお尋ね申し上げます。
  222. 中江要介

    中江説明員 問題が海洋法の問題でございましたので、ニューヨークの海洋法会議がたまたま開かれておりますし、その場で双方の担当官の間でさらに平壌放送内容について具体的な説明が得られれば大変参考になると思いまして、 ニューヨークで情報の収集に当たらせましたところ、海洋法会議に出ております北朝鮮の代表団員は、自分も実は平壌放送以上のことは知らない、こういうことでございまして、とりあえずのところは役に立たなかったわけですが、日本側といたしましては、平壌放送以上のより具体的な情報がわかったら教えてもらいたいということを先方に依頼してその結果を待っているというのが現状でございます。
  223. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 北朝鮮の二百海里水域内では年間六万四千トン余りの漁獲量がある、こう言われているわけでありますけれども、これを確保するためには、いずれにしても改めて話し合い、交渉が必要である、こう思います。しかし、国交のない北朝鮮との間でございますから、どのような形で漁業交渉を実際に進めようとしているのか、政府の姿勢をお尋ね申し上げます。
  224. 中江要介

    中江説明員 どのような交渉が必要かということは、すなわちどういう内容について何を話し合わなければならないかということが前提でございまして、いまの六万四千トンの実績を守るといたしましても、出漁しております漁業者がどういうふうなかっこうでならいままでの漁業活動が継続できるのかという点が、平壌放送発表だけでは非常にあいまいでありまして、承認を得なければとございますけれども、どういう手続でその承認が得られるものなのか、また、承認を得ようといたしましたときに、その漁業が自由な漁業活動になるのか、漁獲量について問題があるのか、そういった具体的なことが一切平壌放送でわからないものですから、先方の考えております二百海里経済水域というものの実施後の姿というものについて、まず私どもがよく情報を知りまして、そういうもののもとで日本漁業利益を守るためには何が必要かということをそれから検討したい、こういうことで目下のところは鋭意情報の収集に努めている、こういうことでございます。
  225. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 八月の一日までの非常に限られた期間の中で対応していかなければならないわけですけれども政府が直接第三国を経由して交渉するのか、あるいは早急に民間ベースの話し合いを求めるのか、民間ベースの場合には民間協定を積極的に指導をしていくという意思をお持ちなのか、お尋ねします。
  226. 中江要介

    中江説明員 いろいろなことが考えられますが、従来からの経緯を見ますと、先般も北朝鮮の代議員団が参りましたときに、漁業問題を含めまして日朝間のいろいろの問題が、議員ベースでございますが話し合われたということもございますから、あるいはそういうルートでさらに問題を考えていくというのも一案かと思いますが、いまのところは具体的にどうするかということまでを考え前提になる情報が必ずしも十分整っていないということでございますので、これについて十分な情報が得られましたならば、そして北朝鮮の側で、一部に伝えられておりますように、本当に日本の漁民に被害を与える意図がないんだということでありますならば、どういう形で被害を与えないようにするかということについてもう少し事情がわかりたい、こういうことでございます。
  227. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 民間漁業協定については日本政府の保証が必要である、ことしの五月に来日をした朝鮮民主主義人民共和国の代議員のグループ代表団がこういう発言をされておりました。日本政府の保証について、政府は何らかの保証をする方針があるのか、重ねてお尋ねを申し上げます。また、もし保証ができるとすれば、どういう保証ができるのか。
  228. 中江要介

    中江説明員 実は政府の保証という言葉がずいぶん前から何度も北朝鮮側から言われるのでございますけれども、具体的に何を意味しているのか必ずしも明確でないのがもう一つの難点でございます。日本国交正常化前の中国との間で日中漁業協定というものがございまして、これが、政府間の何らの話し合いもないままで、しかし円滑に実施されて、そこに一つの漁業秩序というものが保たれたというような先例も参考になるかと思います。そういうことも勘案いたしながら、一体日本政府としてどういうふうにあの地域の日本の漁民の利益が守れるか、つまり日本の漁民の利益を包括的に守る方法としていろいろのことを検討していくということで、政府保証をするかしないかというところにもっぱら焦点を合わせた検討はしていない、こういうことでございます。
  229. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 この六万四千トン近い漁獲量の内容を見ますと、二十トン未満の非常に零細漁民の方々でございます。大きな企業の問題であれば当然もう検討されている、また検討しなければならない大変重要な問題だと思うのです。特に政府の保証なり支えというものが非常に必要な漁民の方々でございますので、この点については、もう八月の一日という期限つきでありますから、当然起こってくる事態であります。大きなものなら急いでやるけれども小さな零細漁民にはということではなしに、早急に御検討いただきたいということをお願い申し上げまして、時間が参りましたから質問を終わります。
  230. 竹内黎一

    竹内委員長 この際、三井警備局長から発言を求められておりますので、これを許します。三井警備局長
  231. 三井脩

    ○三井説明員 先ほど寺前委員に対する答弁の中で船の捜査について申し上げたわけでありますが、三十六隻を捜査対象として捜査した結果二隻にしぼった、その二隻の名前でございますが、「竜金号」と「てんけい号」でございます。  なお、ちょっと申し落としておりますのでつけ加えますが、この二隻のうちさらに最終的には「竜金号」にしぼっておりますという段階で現段階は終わっておるということでございます。
  232. 竹内黎一

    竹内委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十八分散会