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1977-06-03 第80回国会 衆議院 外務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年六月三日(金曜日)     午後三時四十七分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 有馬 元治君 理事 山田 久就君    理事 河上 民雄君 理事 土井たか子君    理事 渡部 一郎君 理事 中村 正雄君       石川 要三君    大坪健一郎君       川田 正則君    木野 晴夫君       佐野 嘉吉君    玉沢徳一郎君       津島 雄二君    塚田  徹君       福田 篤泰君    宮澤 喜一君       井上 一成君    岡田 春夫君       馬場  昇君    松本 七郎君       瀬野栄次郎君    中川 嘉美君       吉浦 忠治君    渡辺  朗君       寺前  巖君    伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         外務政務次官  奥田 敬和君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         水産庁長官   岡安  誠君         海上保安庁次長 間   孝君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 委員の異動 六月三日  辞任         補欠選任   川崎 秀二君     津島 雄二君   木村 俊夫君     石川 要三君   中山 正暉君     木野 晴夫君   福永 一臣君     塚田  徹君   三池  信君     玉沢徳一郎君   塚田 庄平君     馬場  昇君   正木 良明君     吉浦 忠治君 同日  辞任         補欠選任   石川 要三君     木村 俊夫君   木野 晴夫君     中山 正暉君   玉沢徳一郎君     三池  信君   津島 雄二君     川崎 秀二君   塚田  徹君     福永 一臣君   馬場  昇君     塚田 庄平君   吉浦 忠治君     瀬野栄次郎君     ————————————— 六月三日  北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦の  地先沖合における千九百七十七年の漁業に関す  る日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦  政府との間の協定締結について承認を求める  の件(条約第一八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦の  地先沖合における千九百七十七年の漁業に関す  る日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦  政府との間の協定締結について承認を求める  の件(条約第一八号)      ————◇—————
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との問の協定締結について承認を求めるの件が、本日委員会付託になりました。  本件議題とし、審査を進めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 竹内黎一

    竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。外務大臣鳩山威一郎君。     ————————————— 北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  4. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま議題となりました北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、ソビエト社会主義共和国連邦が、昨年十二月十日付の最高会議幹部会令に基づき本年三月一日より北西太平洋同国沿岸に接続する海域における生物資源の保存及び漁業の規制に関する暫定措置を実施していることを考慮いたしまして、北西太平洋ソビエト社会主義共和国連邦地先沖合いにおけるわが国漁業に関する両国間の協定締結するため、本年二月以来モスクワにおいて交渉を行いました結果、本年五月二十七日にモスクワにおいて、わが方鈴木農林大臣及び重光駐ソ大使先方イシコフ漁業大臣との間でこの協定の署名を行った次第であります。  この協定は、本文九カ条及び附属書から成っております。協定内容としては、北西太平洋ソビエト社会主義共和国連邦地先沖合いにおけるわが国漁業の手続及び条件を定めるものであり、具体的には、漁獲割当量操業区域等決定の方法、許可証の発給及び料金の徴収、ソビエト社会主義共和国連邦の公務員による検査及び取り締まり、違反行為に対する処罰等の事項について定めております。  この協定締結により、わが国漁船ソビエト社会主義共和国連邦地先沖合いにおいて引き続き本年末まで操業することができることとなります。なお、この協定締結交渉におきましては、政府は、北方領土問題に関するわが国立場を害することなく北洋における円滑な操業確保するという困難な課題に取り組む必要がありましたところ、これにつきましては、漁業の問題と領土の問題とを切り離して協定締結するとの基本方針で臨みました結果、領土問題に関するわが国立場はいささかも害されることのないことが協定上も確保されたと考えております。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 竹内黎一

    竹内委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  6. 竹内黎一

    竹内委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件審査のため、明四日、参考人出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 竹内黎一

    竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 竹内黎一

    竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  9. 竹内黎一

    竹内委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬場昇君。
  10. 馬場昇

    馬場(昇)委員 九十日に及ぶ交渉で、鈴木大臣を初め関係者皆さんは、肉体的にも精神的にも大変御苦労でございました。さらに私は、この交渉によって塗炭の苦しみを味わった漁業者及び関係業者皆さんの心痛というものは察するに余るものがございます。  そこで、日ソ漁業暫定協定について、鈴木大臣総理大臣も、いままた外務大臣も、領土と魚の切り離しに成功した、こう言明されておられるわけですけれども、私にはどうしても成功したとは思えないのでございます。  まず、第八条の方から読んでみますと、「相互関係における諸問題についても、いずれの政府立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」こういう第八条になっておるわけですけれども、これをソ連の側から読みますと、ソ連は、この第八条は、領土問題は解決済みである、北方四島はソ連領だ、こう読めるわけでございますし、日本の側から読みますと、領土問題は未解決だ、北方四島は日本領土だ、こういうぐあいに双方読むことができるわけでございます。この第八条というのはそういう意味でまさに玉虫色相打ちの形になっておるわけでございます。  この協定の第一条の目的のところで、これははっきり、北方四島はソ連領だ、それに二百海里の線引きをするという最高会議幹部会令、すなわちこれはソ連の法律に当たると思うのですけれども、それと連邦政府決定、すなわちこれは二百海里線引きの政令だと思うのですけれども、これをソ連日本双方で認めておるというのが第一条であろうと私は思います。  だから、第八条は玉虫色相打ちだ、第一条は双方ともそれを認めておる、こういう協定内容から言いますと、実際上、現実の問題としては、この第一条だけがひとり歩きをするのではないか、事実問題として領土問題を日本が譲歩したことになるのではないか、私はそのように考えざるを得ないのでございます。これにつきましては後で同僚議員質問もあろうかと思いますし、先ほどの本会議総理外務大臣農林大臣から答弁を聞きましたので、これに対する答弁は私はいまここでは求めませんけれども、私がここで聞きたいのは、領土が後退していないとおっしゃるのですから、そのあかしを示していただきたいということでございます。  それは近く交渉が行われるソ日漁業暫定協定交渉でそのあかしを示してもらいたいのです。すなわち、近く行われますソ日漁業暫定協定で、その第一条に、この日ソ暫定協定第一条を日本側から主張する、すなわち北方四島は日本領土でそれに線引きをする、そのことをソ日協定できちっと認めさせる、この成功こそ、領土と魚を切り離して、魚で領土問題を後退させなかったのだ、そこで対等、平等の立場になるのではないか、私はそう思います。そこで、このソ日協定ではぜひ第一条にそれを実現させていただきたい、そのことが、政府が言う、北方領土問題に関するわが国立場はいささかも害されない、こういうあかしになると思うわけでございますので、この点について鈴木大臣の御答弁を求めたいと思います。
  11. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 まずもって、今回の長いかつ苦渋に満ちた日ソ交渉に当たりまして、終始党派を超えた御鞭撻、御支援を賜りまして、この点厚く御礼を申し上げます。  ただいま馬場さんからの御質問の点でございますが、これは五月二日に海洋二法を国会で御決定をいただきました。これを踏まえて、五月交渉におきまして強力に交渉を進めました結果、いま申し上げたように、第八条において領土と魚を分離をして、そしてこの問題を処理することができた、私はこのように確信をいたしておるわけでございます。この日ソ漁業協定ソ日漁業協定が同時並行してこれが交渉がなされ、成立を見る、こういうことになりますれば、いまの漁業水域法で定めております水域わが国領土沿岸沖合い二百海里に設定をされておるわけでございますから、この漁業水域法暫定措置法ソ側が認めなければ、ソ日漁業交渉にはもう門口から入れないということに相なります。私は、そういう意味日ソ協定ソ日協定を同時に締結をしたい、並行して交渉したい、こういうことで取り組んでまいったわけでございますけれども、ソ連側としては、政府全体としてまだソ日協定に対する方針が決まっていない、そこで日ソ協定交渉、いま残っておる一条問題、二条問題、そういう問題を継続して交渉せざるを得ない、こういうことになりまして、日ソ協定ソ日協定が時間的なずれがそこに生じておるわけでございます。そういうようなことで、適用海域で相殺をするという手だてはできなかったかわりに、第八条の修正——協定の諸規定は、国連海洋法会議で検討されておる諸問題についても、また相互の間の諸問題についても、両国政府立場及び見解を害するものとみなしてはならない、こういう八条の修正をわが方から提案をいたしまして、そしてこれは純然たる漁業に関する協定であり、この第一条による適用海域水域というものは純然たる漁業に対するところの閣僚会議適用水域である、こういうことで双方が理解をしてああいう決定になった、こういうことでございます。
  12. 馬場昇

    馬場(昇)委員 経過は私も知っているわけですけれども、端的にはっきりお答えしていただきたいのですが、ソ日協定の第一条に、この日ソ協定の第一条を日本側から見たような条文を必ず実現していただきたい、するのかという質問をしているのですが、いかがですか。
  13. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 全くそのとおりでございます。
  14. 馬場昇

    馬場(昇)委員 次に、日ソ漁業基本協定、いわゆる長期協定についてでございますが、二百海里時代世界趨勢というのは、鈴木大臣もよく言っておられますように、余剰分配原則というのが基本になるのだ。さらに言いますと、私はやはり行き着くところは余剰分配原則相互等量主義、こういう方にいくのではないか、こう思いますし、さらには、今日の漁業水域というものが、これは遅かれ早かれ、私は早く来るのではないかと思うのですけれども、経済水域に移行していく、これはもう趨勢だろうと思うのです。だから私は、日ソ暫定協定交渉の教訓から、この原則の上に立った日本水産政策というものを樹立して、その基盤の上に立って主体性を持った交渉をすべきではないか。もちろん実績確保というものも必要でございます。しかし、そういう基本原則を持たなければ、実績確保という物ごいの交渉ではまた領土を売ってしまうという危険性があるのではないか、こういうぐあいに思うのです。  そこで、これはもう時間がございませんので端的に答えていただきたいのですけれども、余剰分配原則相互等量主義、あるいは漁業水域経済水域になる、そういうものを踏まえて日本水産政策を立てる、そこを原点にして長期協定を結ぶのだ。イエスかノーか、もう時間がありませんので、端的にお答えしていただきたいと思うのです。
  15. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま馬場さん御指摘のように、厳しい二百海里時代に対応いたしまして、わが国漁業政策を根本的に洗い直す必要がある。日本列島周辺漁場開発整備をし、資源をふやし、さらに進んで、育ててとる栽培漁業の振興を図る、こういう方向、また二百海里の外における未開発漁場を整備する、多獲性の魚族の高度利用を図る、こういう方面に漁業政策の重点を向けていく必要があると私も考えております。そういう方向努力をいたす所存でございます。
  16. 馬場昇

    馬場(昇)委員 ちょっとお聞きしますけれども、鈴木さん、今度の日ソ暫定協定は、あなた、交渉されて何点ぐらいだと思いますか。
  17. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、ソ日協定に対するわが方の基本的な考え方もあわせ考えまして、領土問題につきましては百点だと考えております。  しかし、クォータの問題につきましては、残念ながら余剰原則というものが実績主義よりも非常に強く働いたということで、操業海域とともにきわめて不満なものがございます。そういう点につきましては、今後先ほど申し上げた政策でカバーをしてまいりたいと考えております。
  18. 馬場昇

    馬場(昇)委員 どうしても私には百点とは思えないのですけれども、ソ日協定長期協定もあるわけですから、そこでがんばってもらって、国民から百点と言われるように、自分勝手に言うのではなしに、がんばってもらいたいと思うのです。  次に、これは外務大臣にお聞きしたいのですけれども、中国が、何か私聞くところによりますと、年内ぐらいに二百海里をやるのではないか、韓国が、これはもう七月一日ごろからやるのではなかろうか、こういう情報も聞いておるのですが、さらに朝鮮民主主義人民共和国だとか、あるいはオーストラリアとかインドネシアとか、その他の諸国も二百海里制定の動きがある、こういう情勢でございますけれども、今度の日ソ交渉は、私は言うならばどろなわ式対処ではなかったか、こういうぐあいに思うのですが、この中国とか韓国とかさっき言いましたような国々、そういうものが二百海里を引こうとするのに対して、どういう情勢分析をしておられて、どういう対策を立てておられるか、外務大臣にお聞きしたいと思うのです。
  19. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私ども、まだ中国が近く二百海里の水域を設定するというようなことにつきまして情報を得ておりません。しかし、国連海洋法会議単一草案が出ておりますし、今回のニューヨーク会議におきましてこの海洋法会議結論が出るかどうか。各国といたしましては、国際的な制度が決まらないうちに各国がどんどん海洋分割のようなことに踏み切るということは、国際的な秩序として好ましくない、したがって、早く今回の会議で何か結論を出そうではないかという空気にあると思います。そして、今回のニューヨーク会議結論が出るか出ないかにかかわらず、各国といたしましては、それぞれ準備にかかりつつあるし、仮に結論が出ない場合にも踏み切る国がふえてまいるというふうな感じがいたします。したがいまして、日本といたしましても、これから各国が二百海里の水域に踏み切った場合にどう対処するかということにつきまして、即刻これから対処の研究をしなければならないと思うわけでございます。  ただ、わが国といたしまして、従来から遠洋漁業に非常に比重があったがためにわが国対処の仕方がおくれた、そのことがどろなわ式というような御批判があったわけでありますけれども、わが国といたしましては、海洋秩序、これはやはり国際的な制度としてつくり上げて、そのもとにわが国としてもやるべきだという考え方をとっておったわけでございますので、その点はおくれをとったという御指摘は、これはおくれたことは事実でありますけれども、今後諸外国に対しましてわが国といたしまして十分な対処をしてまいる必要があると考えております。
  20. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いま外務大臣お答えを聞いておりますと、また今度の日ソ交渉みたいにどろなわ式になってしまうのではないかという心配がわいてまいります。情報がおわかりにならないのかどうか知りませんけれども、海洋法会議では、私たち国民でも世界趨勢というのは十二海里、二百海里に動いている、そのときに日本だけがミスター三海里とかなんとか言われて、ちょっとばかにされたと言えば余りにも言い過ぎですけれども、ひやかされておったというような状況も聞いておるのですよ。そういう点で、いま言いました国々がそういう動きがあるということ、十分早くから対策を立てていただきたいということをお願い申し上げておきたいのです。  次に、きょうの本会議でも議論になり、総理大臣お答えになったのですけれども、領土問題でございます。北方領土の問題でございますけれども、日ソ漁業交渉というのは、表面は漁業だったけれども実質は領土問題だった、これはもう交渉に当たられました鈴木大臣なんか十分体験しておられるところでございますし、国民もこれを知っておるわけでございます。  そこで、日ソ領土問題についてでございますけれども、本会議でも答弁はあったのですが、この答弁、私は非常にずれておるのじゃないかと思うのです。昭和四十八年に田中さんが訪ソいたしました。そのときの日ソ関係というのは、言うならば日ソ友好ピーク時にあったのじゃないかとさえ私は言っていいのじゃないかと思うのです。そういうピーク時で田中ブレジネフ合意が成り立ったわけでございまして、領土解決という合意があったことは事実でございます。しかし今日のソ連というのは——この合意があったんだ、だからブレジネフの方から日本に来るべきじゃないかというようなことを総理大臣なんか人ごとのように言っておられますけれども、今日のソ連状態というのは変わっておるんじゃないですか。日ソ関係というのはいろいろの問題がありますけれども、象徴的にミグ事件等がありまして、今日、どん底とまでは言いませんけれども、余りいい状態ではない、こういう状況がございますし、さらにソ連領土問題に対する態度というのは、昨年のソ連共産党の二十五回党大会ブレジネフ演説で、日本領土要求というのは根拠のない不法な要求だということをブレジネフ演説をしておるわけです。党大会書記長演説をするということは、日本で言うならば、ソ連にとっては憲法みたいな原則だろう、私はこういうぐあいに思うのです。だから、今日の情勢の変わっておるあるいはソ連合意を守られるような状態ではない、やはりこういう認識をして福田首相がみずからが出かけていって、日ソ関係領土問題等について基本的な解決を図るべきである、これなしにはもう常に、漁業と言いながら領土問題が出てくることは明らかでございます。こういうことでございますので、きょうは総理大臣じゃないですけれども、外交の当面の責任者である外務大臣等がずっと積み上げながら、やはり総理大臣が行ってきちんと解決をすべきだ、こういう方向外交をやっていただきたいと思うのですけれども、いかがでございますか。
  21. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日ソ間の関係田中訪ソのころよりは悪化しておるのではないかという御指摘でございます。昨年いろいろな事件があったことは両国間のために大変不幸であったと思いますが、これらの関係を調整をいたしまして、これから友好関係を築き上げていくということが大事なことは御指摘のとおりでございます。今回の鈴木農林大臣長期にわたります漁業交渉を通じまして、私は漁業を通じましての大事な外交が築かれたと思っております。このような努力を通じまして、次第に日ソ間の関係が築かれていく必要があると思います。  ただいま総理大臣訪ソに触れられたわけでありますけれども、私自身はやはり何回も先方外務大臣と折衝を積み重ねることによって、そういう努力を積み重ねることによって初めて道が開けるというふうに考えておる次第でございまして、今回、なるべく早い機会に訪ソをいたしたいと思っておりますが、先方が大変かたいことは当然予期しておるところでございます。しかし、そのかたいとびらに対しまして、やはりこれは何回も当たることによって道を開かなければならない、このように大変抽象的なことでございますけれども、そのような気持ちでいるわけでございます。
  22. 馬場昇

    馬場(昇)委員 外務大臣情勢認識ですけれども、田中ブレジネフ合意ということは、それは確かに合意したわけですから、守らなければならないことだと思うのですけれども、先ほど言いましたように、去年の党大会ブレジネフ根拠のない不法な要求だ、田中さんと約束したブレジネフがこういうことを言っておるわけです。党大会演説というのは、日本で言うと憲法だと私は思うのですよ。そういうぐあいに情勢が厳しくなっておる。だから悠長なその合意に基づいたあれでなしに、この厳しい日ソ関係にどう対処するかということは、ものすごく厳しい考え方で積極的な姿勢をとらなければならぬと思うんですが、これはどうですか。
  23. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 厳しい情勢にあるということ、また、それを当然考えた上の対策を講ずべきだという点につきましては、私も全く同感でございます。福田総理自身の御行動につきまして私が申し上げるわけにもいきませんけれども、しかし、情勢が進展を見た場合には、私はやはり総理のお力を借りなければ、この私が幾ら努力をいたしましてもできないという事態も当然考えられるわけでございます。しかし、福田総理自身モスクワに行っていただいて打開を図るというところまでまだ——その前に私どもがやることがたくさんあるというふうに考えておるのでございます。
  24. 馬場昇

    馬場(昇)委員 きょう本会議総理大臣答弁を聞いていますと、日ソ田中ブレジネフ合意があるんだ、向こうから来ればよさそうなものじゃないかというような答弁をされて、私は非常に残念に思ったのです。情勢の厳しさを考えていない、人ごとのように考えている。苦しんでいる漁民なんかの実態をいま見ますと、そんな悠長なものじゃないわけですからね。そしてまた、みずからはアメリカなんかよく行っているわけですから、そういうことも考えますと、やはり積極的に取り組んでもらいたいということをぜひ積み上げながら、そういう情勢総理大臣に進言していただきたい、こういうぐあいに思います。  そこで、いまの段階で、さっき鈴木大臣ともやりとりあったわけですけれども、やはりソ日協定長期協定というものを見てみなければ本当の総括はできないと私は思うんですけれども、この段階で私は、日ソの今度の漁業交渉の総括といいますか、反省と教訓といいますか、そういうものはやはりしておく必要があろう、そういう意味で、そういう幾つかの点について鈴木大臣に御質問申し上げたいと思うんです。  確かに今度の日ソ漁業交渉において、ソ連交渉態度は強圧的であった、大国主義的であった、こういう批判はあるわけでございます。しかし私は、日本交渉態度、その交渉態度の基盤になる日本外交、水産行政にも大きく自己批判しなければならない点があると思います。  たとえば、いまも議論したんですけれども、日ソ平和条約交渉あるいは領土問題の解決にどれだけ一生懸命やったか、サボっておったと言えば言い過ぎかもしれませんが、私は、そういう言葉でも当てはまるんじゃないか、こういう問題があると思います。  さらに先ほども言ったんですが、領海十二海里、漁業水域二百海里が国際常識になっても、目をつぶりながら領海三海里を主張し続けて、二百海里時代におくれをとってしまった、こういうこともあると思います。  さらにまた、目の前でソ連が北海だとか北大西洋で漁獲量が減ったわけですから、その減った分を自国の二百海里で埋め合わせるという厳しい情勢というのはわかっておった。それなのに、相互実績主義を安易に考えておった。そういうことを考えますと、日本外交、水産行政というのは後手後手に回っておった、こういうことが言えるんじゃないかと思うんです。  さらに、事実かどうか知りませんけれども、日本の略奪、乱獲による資源枯渇、こういう問題が世界各国から指摘されておったわけです。そして、いろいろ協定で割り当てなんか決まる。けれども、これはうわさであればいいんですけれども、大体サケ・マスというのは、決まったものの二倍ぐらいとってきておったとか、母船式は三倍ぐらいとってきておったとか、こういううわさもあるんです。こういうものに対する行政指導というものが十分行われていなかった。  さらに今日、日本国内を見ても、いまのこの時点になっても、魚転がし、魚隠し、そして海外にまで及ぶ魚あさり、そしてそれが魚価をつり上げておる、国民を苦しめておる、これに対する行政の打つ手というのが非常に遅い、こういうたくさん反省しなければならない問題があると思うんです。  これらのことについて一々御答弁を求める時間がありません。私は、こういうことになった原因がどこにあるのか、こういうことで御質問をしたいわけでございますけれども、多くの原因があると思うんです。しかし私は、きょうは時間がありませんから、その中の一つについてだけここでお尋ねしておきたいと思います。  これは、大手水産会社とその代弁機関とも言える大日本水産会を初めとする諸団体、そことの癒着に日本の水産行政が大きくゆがめられてきた、打つ手がそことの癒着の関係上おくれてきた、こういうことがあるんじゃないかと思うんです。だから私は、いまから日本の水産行政と大手企業等の癒着について御質問を申し上げます。  まず、政治というのは人が行うわけですから、人が基本でございます。私が今日まで調べたところによりますと、五十一年度現在大手水産会社、水産関連団体の役員に、いわゆる横滑り、天下りした者、その役員だけをとってみますと、現在三十人ぐらいおります。私は、ここに調べた一覧表を持っておりますから、後で大臣にお見せしたいわけでございますけれども、持っております。これは私が調べた数でございますから、まだまだ多くふえるんじゃないかと思うんです。  そこで、たとえば大手水産会社、水産団体、さらに関連企業の大元締めとして水産行政に強い発言力を持っておりますところの大日本水産会を例にとって申し上げますと、元水産庁の生産部長をやり農林事務次官をやりました亀長友義さんが会長です。元水産庁海洋第二課長をやられて、現在日本鰹鮪漁業協同組合連合会長の増田正一氏、これがいま大日本水産会の副会長です。元水産庁の課長補佐をされまして、現在大洋漁業副社長をしておられます塩谷政徳氏が常務理事です。元水産庁課長で、現在の日鰹連専務の吉崎司郎氏が常務理事です。さらに元水産庁長官、現在の海外漁業協力財団理事長、そして今回の日ソ交渉の首席代表の荒勝巖さんがこれまた相談役でございます。こういうものを挙げたら、数限りないわけです。  そして私は、役員でない天下り、横滑りした人を調べてみました。ここに全部、その調べつつある資料を持っておるのですけれども、現在まで私が調べたところによりますと、水産関連企業に天下り、横滑りした人が四十八人おります。そしてまた関係団体に横滑りした人が八十一人、いま調べ出しております。これまた、まだ調べればたくさんふえるんじゃないかと思うんです。  そこで鈴木大臣、いま私が言ったようなこういう事実を大臣はどうお考えになりますか。
  25. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 馬場さんが大変詳細に御調査をなさったその事実は、私もそのとおり認めておるわけでございます。しかし、いまお挙げになったこれらの諸君は、いずれも有能な諸君であり、また関係団体、業界から嘱望されてその地位におるものでございます。いま役所が、民間の団体なり会社なりに政府も大きく助成でもしておれば別でございますけれども、そうでない民間の団体や会社にこれをひとつ採用してくれと押しつけて、受けるような御時世ではない。またそういう形で行っても、それが本当に関係業界のメンバーの諸君の信頼を得なければ、それは一期しか勤められない、私はこれが実態だと思います。  たとえば鰹鮪の増田君にいたしましても、本当に業界のために一生懸命働いておる。大体、私見ておるのでありますが、漁業者というのは、大部分沖合いに出て自分で仕事をしておる、船の経営に忙殺されておるということで、そういう団体の世話や何かをみずから買ってやるというような人は、余りおらぬわけでございます。そういうような中にありまして、業界の取りまとめ、また金融の問題その他の問題で業界のために世話をする、こういうことで有能なしかも関係業界に信望のある人間は、これは拒否すべきではないだろう、こう私は思うわけでございます。  私は、国会へ出る前は漁民運動を長年やってきておった人間でありますから、全漁連とかそういう漁業組合の諸君には一番交友はございますけれども、今後私は、大手漁業会社とかそういうために、私の行政なり政治の姿勢を曲げて特別な手心を加えるとか利益を考えてやるとか、そういうことは絶対にやらないつもりでございます。
  26. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いま私はが読み上げましたのはほんの一例でございまして、一例についての御答弁がいまあったのですけれども、結局、たとえばイカならイカでも、自由操業承認制にする、許可制にする、団体をつくる、そこに天下りをする、こういうシステムでずっとやってきた例が数限りなくあるのです。私が言っておるのは、天下りとかなんとか全部悪い、こういうことを言っておるのではないわけでございまして、問題は、天下りした会社幹部がいまの水産庁の役人の先輩なんです。これが意のままに後輩の官僚である水産庁の役人を動かしておる。こういう任務を持って天下りをしておるし、そういう状態にいまなっておるというところが問題でございます。  たとえばこういう例がございます。これまでの水産関係の国際会議には、必ずと言っていいほど業界代表が水産庁顧問の肩書きで同行しております。こういううわさも聞くのです。顧問は長い間の会議中に、暇をもてあましてマージャンばかりしながら結果待ちという形もたくさんあるんだ。一方、会議出席した水産庁関係者は、業界が出発だとか滞在その他至れり尽くせりのサービスをしておる、そういう事実もたくさんあるのです。  そしてまた、今回の日ソ漁業交渉団のことを業界の一部では何と言っておりますか。今度の交渉に出ていったものは大手の利益代表団だ、こういう陰口をたたく人もたくさんおるわけでございます。そしてたとえば鈴木さんが一番関係のある全漁連でもこういうことを聞きます。大手漁業の水産行政、すなわち大日本水産会にばかりに任せてはおけぬ、全漁連が自前の二百海里漁業対策本部をつくらなければならぬと言ってつくっておる、こういう事実もございます。  先ほどの資料を私は持っておりますけれども、とにかくいま霞が関かいわいで一番いばっておる官庁というと、許可、認可を一番よけいに持っておる運輸省だ、次は水産庁だ、こういうぐあいにも言われておるわけですけれども、たとえば許可をする、認可をするというところに不正があるわけです。私は事実がありますから、これもまた事実かどうかということを質問したいのです。たとえば、今度は補助金をやる。日ソ操業協定ができましたときに、その補助金問題で不正があったという事実を聞いております。しかしこういうことについては時間がありませんから、きょうは質問をいたしませんけれども、このようなことで公正な行政ができるかどうか、こういうことを私は問題にするわけでございます。  そこで具体的に聞きますけれども、近いうちに水産庁の佐々木次長が大日本水産会の専務に天下りするという話を私は聞いております。これは五月の通常総会であるとこういう事態だから問題があるから、臨時総会を開いて佐々木次長を大日本水産会の専務理事に迎える、こういううわさを私は聞いておるのですけれども、これはどうですか。
  27. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私はまだそういうことを聞いておりませんし、大日本水産会の方からも、要請も実は受けていないわけでございます。馬場さん、水産界の事情も相当よくお知りになっておるわけでありますが、そういう水産庁のOBが現職の諸君に大きな影響力を与える、こういうことを御心配なさっておるようでございますが、そういう水産庁のOBの影響力よりも、私が責任者としてあそこにおるわけでございますから、私の方針、私の姿勢に対して反するような行動は断じて許さないつもりでございますから、御心配なく御了解願います。
  28. 馬場昇

    馬場(昇)委員 個人の名前を出して失礼でございましたけれども、佐々木次長の話は、これは聞いたうわさですから、まさか大臣も知らないうちに水産庁の次長ともあろう者がこそこそそういうことを約束することは、私もないと思うのです。大臣が知られなかった。もしそれが、大臣が知られないうちにやっておるなんということになったら、いまの大臣の答弁から言っても大変な問題でございます。だからこれはうわさだろうとは思いますけれども、先ほど私はたくさんの事実を挙げたのですけれども、一々言いますと鈴木さんも知られないところがあると思うのですよ。だから、こういう業界とか国民の批判があるということは謙虚に反省されて、先ほど言われましたような姿勢でもってやっていただきたいと思うのです。  そこで、また大手との癒着についての一つの例として質問を申し上げたいのですけれども、今度の日ソ漁業暫定協定で減船が行われるわけでございますけれども、この減船のいわゆる救済、補償というものに——月期の決算で大手の水産会社は物すごい利益を上げておりますね。これはもう御承知のとおりだと思いますし、大法人の上位に大手水産会社が位置しておるわけでございます。本当に漁民が塗炭の苦しみを、中小、零細業者を含めてやっている、そして国民が高い魚を買わされて困っている、そういうときに大手水産会社が物すごい利益を上げておる。どうしても私は、これは理解に苦しむわけでございます。そういうことについても聞きたいのですけれども、時間がございません。  そこで結果を聞くのですけれども、この大手企業に減船救済をなさるという方針が水産庁にあるのだ、母船を一つ出さなければそれを三十億補償しろという要求も出ている、こういうぐあいに聞くのですけれども、大手のこんなに利益を上げている水産会社に救済補償をするよりも、救済というのは本当に北洋漁業に生計を全面的に依存しておる中小、零細漁民、こういうものにこそ手厚く救済補償をするべきであろう、莫大な利益を上げておる大企業によりも、いま言ったような中小、零細商工業者に手厚く救済をすべきだ、この原則鈴木大臣にお尋ねしておきたいと思うのです。
  29. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今度の日ソ交渉に伴いまして、母船式のサケ・マス船団も大幅な減船を余儀なくされておるわけでございますが、その際に当たりましても、母船を出しております大手水産会社、漁業会社に対しましては、私は厳しく、全体として四割の減船をのましておるわけでございます。その他独航船でありますとかあるいは中型のサケ・マス流し網でありますとか、そういうものは平均して二五%程度でございますが、母船に対しましては四割の減船をさせておるわけでございます。それによりまして、一母船当たりの独航船の付属する隻数を平均二十二、三隻から三十二、三隻にふやす、そういうようなことによって母船経費をできるだけ合理化をして、それを中小漁船の独航船等の魚価に反映せしむるようにする、そういう措置もとっておるわけでございます。私は、今回の減船に伴う補償等におきましては、大手漁業会社に対して国から直接一般会計等で補助するという考えは持っておりません。
  30. 馬場昇

    馬場(昇)委員 時間が余りないのですけれども、私が基本に据えておりますのは、水産行政と大手企業の癒着ということが今日の日ソ暫定交渉、さっき言いましたいろいろの反省点がある、それを生む基盤になったんだということを言っておるのですけれども、なかなか鈴木さんはお認めにならないわけですが、反省が全然ないというと鈴木さんもぐるじゃないかと極端に言いますと考えざるを得ませんから、その辺についてはきちっと反省をしてもらいたいのです。  ここでもう一つ。では具体的に公のもので質問したいのですけれども、五月二十七日に発表されましたが、ことしの漁業白書を見てみました。私はこの漁業白書を見て、水産庁と大企業の癒着がここまできたかということを第一に感じたのです。これは鈴木さんが責任で、この白書を農林省責任で出されたと思うのですが、たとえば一見して見てまずすぐわかる。これは去年の漁業白書です。これを見てみますと、ページ数からいって百九十四ページ、二百ページくらいあります。これはことしの漁業白書です。言ページです。半分になっているのですよ。量が半分になっている。この二百海里の時代で新しい日本の水産行政を打ち立てなければならない、そして水産の実態を国民に知らせ、国民の力を結集して二百海里時代の新しい水産行政を築き上げなければならぬというときに、従来の半分くらいの漁業白書しか書かなかったということの問題、これは大変な問題であろう、私はこういうぐあいに思います。これは量の問題ですけれども。  次に、質の問題について質問したいわけですけれども、私は一読しただけでございますので見落としがあるかもしれませんけれども、見落としであれば幸いですけれども、非常に問題が多いのです。たとえば、昨年の白書では明記されておりましたところの大手会社の資本規模別売上額とか、あるいは売上総利益額だとか、財務状況、財務関係諸指表などがことしは除かれておるのです。これはなぜでしょう。しかも、営業利益は従来は資本金別の大きい、小さい別にずっとこう書いてあったのが今度はもう資本金一億円以上の会社を全部トータルして二十八社の単純平均で数字が出ております。これは全然参考にもならないのですよ。それから、さらに注目すべきは、大手会社による価格操作の疑いが濃いと言われますところの冷凍品の価格動向というのは、去年のには皆載っているのです。ことしのには欠落いたしております。これは私はやはり、経営規模別構成比でわずかに〇・一%の大企業、これが水産業界をいま牛耳っているのは資料を見れば明らかでございます。これらに不都合な項目を意識的に削除して国民の疑惑の目をそらそうとしておる。これこそ、こういう漁業元年と言われておる時代にこのようなことをするということは許されないことだ、こういうぐあいに私は思います。こういう点について鈴木大臣の御所見を承っておきたいのです。
  31. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 馬場さんから御指摘がございましたが、漁業白書は日本漁業、水産業の現状をできるだけ的確にとらえ、それを分析をして、そしてどこをどう改善をし将来に向かって発展をさせるか、そういう資料を国民皆さんに提供するということでございまして、そういう意味合いからいたしまして、いま御指摘のような点がありましたことは私残念でございます。  ただ私ははっきり馬場さんに申し上げておくのでありますけれども、私の終始一貫とっております漁業政策は、沿岸漁民、沿岸漁業、そういう漁民政策であり漁村政策である、そういう方面に最重点を置いて漁業政策を今日までも努力してまいりましたし、今後も展開をしていきたい。私は、資本漁業が今後日本の水産界でそれほど大きなウエートを持つものであるとは考えておりません、評価をしておりません。やはり日本列島周辺漁場開発整備をして資源をふやし、需給体制を確立するものはやはり中小漁業者であり中小漁船である、そういう認識のもとに今後の漁業政策を展開してまいる、そういう方針でございます。
  32. 馬場昇

    馬場(昇)委員 鈴木さんの答弁を聞いておりますと、決意のほどは非常にりっぱなんですよね。そして私は鈴木さんをよく知っておりますから、その人間性もわかります。ところが鈴木さんの意向と違うようなことが、たとえば今日の漁業元年、これだけ二百海里時代漁業水産の政策をとっていかなければならぬときにこういうことが実際あらわれてくるということについては、鈴木さんの意向が官僚に伝わっていないのじゃないか。鈴木さんの意向よりも官僚が大企業と癒着してそこで仕事をすることが多いのじゃないですか。こういうことで見てもすぐわかるわけでしょう。  まだあるのですよ。この中をちょっと一読してみますと、わが国漁業規模という項がございますけれども、水産業の位置づけというのが出ておりません。魚価の基調の変化というのもまた抜けておるのですよ。それから「水産物の需給動向」という項でも、漁業部門別生産動向における業種別生産量、生産金額の推移に関する表が抜けているのです。これはみんな昨年はあったのです。それから水産物の加工と流通という項では、冷凍の生産流通動向に関するコメントと表が抜けておるのです。その他、従来あったものがたくさん抜けているということは、これは問題とお思いになりませんか。たとえばこういう重大な時期でございますし、私はこの白書というのは、さっき大臣も言われましたが、そういう意味も持つとともに、やはり前と今度の連続性があるべきだと思うのですよ。今度のこの白書というのは連続性を欠いております。これは過去の本当に蓄積してきたこの過去の蓄積と教訓というものを放棄しておるのです。そういうこともございます。  そこで、私は大胆にお願いしたいのですけれども、これはさっきの精神訓話、りっぱな考えを具体的に行政に移してもらいたいという意味でも申し上げますけれども、先ほどから言っておりますように、この二百海里時代の厳しい時代に立ち向かう新しい日本漁業元年ですから、ことしが新しい出発の年としては、この内容というのは余りにも空疎であり、本当に歴史を逆戻りさせております。今日の課題にこたえていないのです。それで水産行政と大手水産会社の癒着を一層強化しておりまして、これはまさに反国民的であって国民を裏切っておる、私はこういうぐあいに思うのです。そこで私は、この白書というものを、やはり漁業元年にふさわしい、二百海里時代にふさわしい、そしてその基盤になるように、それで国民にそういう世論が盛り上がるように、親切にわかるようにつくり直していただきたい、あるいはこれ以上のものをまたつくっていただきたい、それで国民に明らかにしていただきたい、こういうぐあいに思うのですが、いかがでございますか。
  33. 竹内黎一

  34. 馬場昇

    馬場(昇)委員 委員長、大臣に質問しているのです。
  35. 岡安誠

    ○岡安政府委員 ちょっと簡単に……。
  36. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いや、もう時間がないですからあなたやめてください。大臣に質問しているのですから。大臣に質問している。時間ないですよ。あなた、大臣じゃないだろう。
  37. 竹内黎一

  38. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 馬場さんの御指摘、御叱正は十分私も承りましたので、この問題につきましては、水産庁並びに官房によく検討させまして、善処いたしたいと思います。
  39. 馬場昇

    馬場(昇)委員 ぜひお願いをいたしたいと思います。  そこで、最後の質問になるわけでございますけれども、農林水産委員会でも大臣の答弁を聞いておりまして、先ほども答弁なさいまして、私も賛成ですけれども、やはりこういう時代には何といっても日本の近海、沿岸、この漁業を振興するのだ、そのことが大企業癒着からも離れて中小、零細漁業を大切にするということにも通ずるわけでございます。そういう意味で大臣はかつて農林水産委員会で、日本の近海にいま百十万ヘクタールぐらいしか漁場はない、しかし水深二百メートル以下のところが三千万ヘクタールぐらいあるのだ、その三分の一の一千万ヘクタールぐらいを漁場として開拓すると近海だけでいまの漁獲量の一千万トンぐらいはとれるのだ、そういう方向でがんばっていきたいのだということを言われました。私もこれは大賛成でございます。  そこでこの魚の問題というのは、日本人は魚食民族ですし、海洋国家であったわけですけれども、魚を食う量が少なくなるということは、米を食う量が少なくなることになるわけです。これはもう農林大臣御存じのはずです。そういたしましたら、いまでさえ四〇%近い食糧自給率というものが大変なことになってくる。そういたしますと、この魚の問題は食糧全体の問題であり、さらに言うと、もう魚も食糧も戦略物資になろうとしておる、そういう時代でございますので、大問題でございます。だから私は、新しい日本の水産行政を打ち立てるということを大臣言っておられるわけですけれども、賛成ですが、まだ聞きたい、物足りないのは、いつまでにつくってどうするのだというタイムリミットのことが出ないのです。やりましょう、やりましょう、やりましょうということで、こういう手順でいつまでにそういうことを打ち立てて、こういう展望でもっていきたいのだ、そういうことが現在まで出ておらない。だから、そういう点について具体的な手だてあるいはいつまでというタイムリミット、こういう問題について先ほどのりっぱな姿勢を裏づけしていただきたいと思うのです。
  40. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私、モスクワから帰ってまいりまして、早速次官以下水産庁の幹部を集めまして、先ほど来申し上げておる方針に基づいて、役所内だけでなしに学界あるいは団体、技術者を含めて、知能を集めて、そして沿岸漁場開発整備の問題、資源の問題、さらに沿岸国二百海里の外の未開発漁場の調査開発の問題あるいは多獲性魚種の有効利用の問題、そういう問題について、研究チームをつくって早速研究に入るように問題を提起してやらせることにいたしておりますが、これは五十三年度予算にぜひその一端を生かしていきたい、レールをここに敷いていきたい、こういう考え方で取り組んでおるわけでございます。
  41. 馬場昇

    馬場(昇)委員 時間が過ぎたわけでございますけれども、漁業元年と言われる年でございますし、魚食民族でいま五〇%ぐらい動物性たん白質を魚でとっておるわけでございますから、本当にこれは国の安全にかかわる問題でもあるわけでございます。  最後に一つだけ聞いておきたいのは、さっき言いました近海の漁場開発して一千万トンぐらいとれるようにやりたいという構想があるわけでございますね。これについて、今度漁民救済もまたあるわけですけれども、日本の今後の水産行政を打ち立てるのに抜本的な法律というものをつくる必要があろう、こういうぐあいに思います。だから、法律をつくる、そして五十三年度予算で抜本的水産行政の裏づけをする、こういうことで特別立法ということについてもお考えになっておられるかどうかということを聞いておきたいと思います。
  42. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 現在漁業法があり、水産資源保護法があり、いろいろの法体系がございますけれども、それを総合して今後の新しい時代に対応するものが考えられなければならない、私もそういう認識を持っておりますが、これから全体をひとつ洗い直してみまして、そういう問題につきましても研究を進めたいと思っております。
  43. 馬場昇

    馬場(昇)委員 時間が来ましたので、外務大臣にもぜひ後のソ日協定長期協定というものについても全力を挙げていただきたいし、農林大臣も含めまして漁民の救済というものに全力を挙げていただきますし、長期的な二十一世紀に向かってのきちんとした水産行政、水産外交を打ち立てていただきたいということを最後にお願いをいたしまして私の質問を終わります。
  44. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、土井たか子君。
  45. 土井たか子

    ○土井委員 馬場委員に続きまして私も、長日月大変な日ソ交渉の中で御苦労されました農林大臣並びに関係の方々に対しまして感謝を申し上げたいと思います。  先ほどの本会議場におきまして、外務大臣は、近く訪ソをされるに当たりまして領土問題について非常な決意でもってこれに臨まれるだろうと思うのですが、つまり領土問題についての解決の糸口をこの訪ソでつかみ取りたいという意味も込めての御答弁をいただいたわけであります。お尋ねをしたいのですが、外務大臣はやはりこの四島一括主張という立場領土問題に対しては対ソ交渉を進めるということを確認させていただいてよろしゅうございますか。
  46. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 四島一括返還ということが政府方針でございます。
  47. 土井たか子

    ○土井委員 政府方針方針といたしまして、今回はその線をどこまでも曲げないで、一つは訪ソをして事に当たるという外務大臣のお立場であるということも確認させていただいていいわけでありますね。
  48. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 結構でございます。
  49. 土井たか子

    ○土井委員 ところで、有力な現閣僚の中で、二島で話を進めるという、それは内容からいたしますと歯舞、色丹の領土権を確認をして、国後、択捉については共同管理をするというような立場で事に当たって話を具体的に進めてみてはどうか、そういう案を持って訪ソをされるやに私どもは聞き及んでいるわけでありますが、外務大臣はこのことをどのように受けとめていらっしゃるわけでありますか。
  50. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そのような御意見は、私自身伺ったことがございません。各党におかれましてもいろいろな御意見がございます。日ソ間の本当に長い間の懸案でございますので、国民各層の間でもいろいろな御意見があろうかと思います。これからの交渉に当たりまして、各関係の皆様方、自民党内はもちろんでございますし、また国会の皆様方との本当のコンセンサスが得られた上で交渉に当たることができれば、これは一番望ましいことであろうと思うのでございます。しかし、まだ現実にそこまでのコンセンサスが得られておらないように思っております。しかし、この問題は、いろいろな案を出したからすぐ進展をするというような性格の問題ではないように私は考えております。根本はやはり日ソ間の真の友好を打ち立てていくことができるかどうか、こういったことにあるのであろうと私は思うのでございまして、われわれの努力ということもそれから始めなければいけないというふうに考えておるのでございます。
  51. 土井たか子

    ○土井委員 まことに回りくどい御答弁をただいまいただいたわけでありますけれども、政府としては四島一括返還という立場である。しかしいろいろな各人各様の物の考え方もあろう。国民的コンセンサスもまだ十分に得られていない状況である。  ところでその中で、有力な現閣僚が二品で話を進めるという案を持って訪ソをされて具体的に進められるということもあり得る、そういうこともあるかもしれないというふうな意味でただいまの御答弁をなすったわけでありますか。
  52. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そのようなことを申しておるのではございません。その有力な閣僚がどのようにお考えになっているか、これも私自身存じませんけれども、このようなことはやはり政府・自民党としてはっきりした態度を決めた上でなければならないと思いますし、私どもは北方四島一括返還ということで態度を決めてあるわけでございますから、この方針を変えるというようなことは軽々にできる問題ではないと考えております。
  53. 土井たか子

    ○土井委員 国民的コンセンサスも大事であります。しかし、政府立場は四島一括返還と先ほど言われたけれども、政府の閣僚間においてのコンセンサスがいまだ十分ではないのではないかと、こういう事例からすると考えさせられるわけであります。したがいまして、いま私が申し上げたような具体的な動きが動いてまいりました節、一体外務大臣としてはどう対応なさるわけでありますか。
  54. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私どもは、まだそのような動きが現にあるとは思っておりません。既定の方針によりまして臨むことに変わりはないのでございます。
  55. 土井たか子

    ○土井委員 訪ソについての外務大臣のお立場というのが、あくまでも四島一括返還という基本的な問題をゆがめないで、それに立脚をしてこの対ソ交渉に当たる、さらには平和条約締結に向けての努力を払うというふうにお考えになっていらっしゃるということを、ひとつはっきり確認をさせていただきたいと思うわけであります。ただ、しかし、こういう有力な現閣僚の中での動きがあるということ自身についても、外務大臣外交に対しての最高担当責任者でおありになるわけでありますから、具体的にそういう事実を存じませんとおっしゃるのは、まことに異様な感じが私自身にはするわけであります。今回の漁業交渉に当たりましても、外務大臣がこの外務委員会の席で種種御答弁をなさること、一つ一つ核心に触れてまいりますと、農林大臣の御帰国を待ってというかっこうになりますし、また核心に触れてまいりますと、協定内容が固まってからというふうな御答弁になってまいります。外務大臣は、この対ソ交渉に対して、何だか肝心のところは耳になすっていないのじゃないか、いわば二階にほうり上げられたようなかっこうになってしまっているのではないかというふうな危惧を非常に私たちは持って臨んでいるわけでありますが、さて、この協定内容についていささかお尋ねを進めてみます。  この第一条にあるところの「ソヴィエト社会主義共和国連邦最高会議幹部会令第六条及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府決定に従って定められる」云々とございますが、ここにある「ソヴィエト社会主義共和国連邦政府決定」というのには何と何があるわけでありますか。
  56. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この第一条の表現につきましては鈴木大臣も御苦労されたところでございますけれども、二月二十四日の閣僚会議決定、これが現にあるわけでございます。現にある規定は何かとおっしゃれば、その規定があるということになりますが、この規定を直接表現をすることは避けた経緯はあるわけでありますけれども、現在の規定を見れば、明らかに現在ある規定は二月二十四日付の閣僚会議決定があるということだと思います。
  57. 土井たか子

    ○土井委員 閣議決定以外にはございませんか。
  58. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ただいまのところ私どもが了解しておりますものは、二月二十四日の大臣会議決定でございます。そのほかにも理論的にはまだ緯度経度で線を引くというようなことを大臣会議決定することは今後ともあり得るわけでございますが、ここで私どもが了解しておりますのは二月二十四日の大臣会議決定でございます。
  59. 土井たか子

    ○土井委員 委員長、ところでこの第一条ではこういう明文の規定になっているわけであります。「ソヴィエト社会主義共和国連邦最高会議幹部会令第六条及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府決定」と、こうなっているわけでありますね。こういう内容を具体的に明らかにしている資料というのは、この節委員長、われわれ委員には提示をされているかどうか、いかがなんでございますか。
  60. 竹内黎一

    竹内委員長 お答え申し上げます。  ただいま土井先生御指摘の資料は当委員会にはまだ提出になっておりません。
  61. 土井たか子

    ○土井委員 同様にこの条文から申し上げますと、第六条というところで、この罰則を問題にする部分でありますけれども、規定違反についての罰則の内容は「ソヴィエト社会主義共和国連邦の法律に従い責任を負う。」とございます。また、「第一条にいう海域における生物資源の保存及び漁業の規制のためにソヴィエト社会主義共和国連邦において定められている規則に従うことを確保する。」とあります。この規則並びに法律とは具体的に言うとどういうものでございますか。
  62. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ここにございますのは、本年二月二十四日付のソ連邦大臣会議決定のほか、同じく二月二十五日付で、ソ連邦沿岸に接続する海域における魚類その他の生物資源の保護に関する規定の承認についてのソ連邦大臣会議決定及び三月二十二日付、ソ連邦沿岸に接続する海域における生物資源の保存及び漁業規制に関する暫定措置に関するソ連最高会議幹部会令第七条の適用方法に関するソ連邦最高会議幹部会決定等でございます。
  63. 土井たか子

    ○土井委員 それぞれは関係資料として本協定とともにわれわれ委員に提示をされておりますかどうですか。委員長、いかがですか。
  64. 竹内黎一

    竹内委員長 お答え申し上げます。  ただいま土井委員指摘の資料は、当委員会にはまだ提出になっておりません。
  65. 土井たか子

    ○土井委員 これについていかようにお思いになりますか。この協定を審議するために必要参考資料としてこれは配付すべき内容ではないでしょうか。国会に対してこの条約承認を一日も早くというふうに急がれるのは外務省であります。この協定の条文そのものを提示されるのは当然でありますけれども、この協定内容にさらに提示しなければならない参考資料としてあるのはこういう問題だろうと私は思う。当然添付しなければならない参考資料を抜きにして、一日も早く御審議をとおっしゃるのは僭越しごくというものであります。外務省、これに対して手落ちがあるとお思いになりませんか。
  66. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 至急取りそろえまして御提出いたします。
  67. 土井たか子

    ○土井委員 委員長、いかようにこれをお考えになりますか。もう審議は始まっているわけですよ。一日も早くというのがいまわれわれに対して課せられている使命であります。そういう点からいたしますと、当然なければ具体的内容に対して把握することができない。その資料をわれわれに提示せずして審議というのは、一体どういう審議になるか。委員長、いかがお考えになりますか。
  68. 竹内黎一

    竹内委員長 委員長も土井委員の御指摘はごもっともだと存じます。よって、委員長からも政府に御希望申し上げますが、本協定の審議に必要な資料は速やかに提出方をお願いいたします。
  69. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 印刷の時間をいただければ、即刻お出しいたします。
  70. 竹内黎一

    竹内委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  71. 竹内黎一

    竹内委員長 速記を起こして。  午後五時五十分から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後五時二十一分休憩      ————◇—————     午後五時五十六分開議
  72. 竹内黎一

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  73. 土井たか子

    ○土井委員 お手間をかけました。大体要求をいたしました資料は、ただいま手元にいただいたようでありますが、なお具体的には、内容に対して少し検討した後、また他日時間をちょうだいして質問の中で取り扱っていくことになろうかと存じます。  さて、先ほど外務大臣も少しはこの問題に対してお触れになったわけでありますが、当初から、この第一条の条文を起こすに当たりまして、ソ連側の閣議決定を入れることに反対をしてきたのが日本側立場でありますが、この日本側の意思がここに入れられなかった、そうして、その結果この第一条のただいまのような条文になっている。この関係から言いますと、結局はソ連側に押し切られたかっこうで、この第一条というものはこういう条文になったというふうに確認をさせていただいてよろしゅうございますか。
  74. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ソ連の草案テキストは、一九七七年二月二十四日閣僚会議決定によって定められた海域、こういうことでございました。この点につきましては、私が二月二十八日から三月四日までのイシコフ大臣との間で、御承知のように適用海域につきまして交換書簡で合意したわけでございますが、その表現と違うということで、あの表現をそのまま採用すべきではないかというのがわが方の主張であったわけでございます。しかるところ、正式の協定案文のテキストにおきましては、いま申し上げたように、閣僚会議決定海域、定められた海域、こういうことになりまして、その点相当論争をしたわけでございます。約束をしたこと、一遍合意したことがその都度変わってきたのでは困るという点もございまして、大分論争をいたしました。しかしわが方でも、五月の二日に漁業水域法決定をしていただきました。ソ日協定の第一条を考えました場合に、この暫定措置法及び政令並びに規則ということになるわけでございまして、そういうようなことも勘案をいたしまして幹部会令第六条とソ連政府決定というようなぐあいにパラレルにすることもやむを得ない、こういう判断をいたしました。これが第一点でございます。  それからもう一つは、この問題は、わが方の漁業水域法の制定、公布ということもございましたので、向こうの漁業に関する管轄権の及ぶ水域のラインとしてこれを認めても、今度はソ日協定において同様にわが方の漁業水域法によって水域を設定することになれば相殺もできる、こういう考え方も一つあったわけでございます。しかし、交渉の過程において、日本沿岸沖合いにおけるソ連漁船の操業についてはソ連政府部内の意思統一がまだなされていない、検討の段階であるということで、いままでの日ソ協定の草案を基礎に、まとまっていない一条問題二条問題をひとつ詰めようではないか、こういうことでその段取り、進め方を合意をいたしたわけでございます。  そこで、結局領土の問題と漁業の問題を切り離して、この協定純然たる漁業協定であるということで、第八条について修正案を私の方から、最終的にこれはぎりぎりの線であるということで提案をいたしまして、ようやくにして第八条の修正によりまして合意を見るに至った、こういう経過でございます。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 連日御苦労された農林大臣からの経緯についての御説明を込めての御答弁でございますけれども、結局は第一条の内容としてここに書かれているところに従って考えてまいりますと、ソビエトの沿岸に接続する海域を設定するに当たっては、日本側がこれを入れることに反対をしてきた閣僚会議決定に従っての海域線引きになってしまっている。このことは歴然たる事実として第一条に対してはまず確認をしなければならないことだと思うのです。ですから、その間の御努力は御努力として確かにございましたけれども、結果、一条としてはこの中身では日本の意思は生かされていない、閣議決定はこの中に入れないようにという努力は実らなかったということだろうと私は思うわけであります。  ところで、いまソビエトの沿岸に接続する海域についての線引きでございますから、領土問題と漁業問題を切り離してみごとにこれを今回の協定では具体化することができたという総理大臣の本日の本会議における御答弁もございましたけれども、しかしながら、接続する海域は何に接続しているかというと沿岸であります。沿岸はいずれの沿岸かというと、ここに明示されているとおり、ソビエトの沿岸であります。ソビエトの沿岸ということになると、それはソビエトの領土における沿岸に接続する水域をこの場合は問題にしているわけでありますから、したがってやはりこの領土問題についても、この一条の内容についてははっきりここでしたためられているというふうに確認せざるを得ないと思うのでございますけれども、いかがでございますか。
  76. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ソ側としては、現に北方四島は占有をし施政を行っておるという現状の上に立ってそういう線引きをしてきた。この線引きを頭からもう容認ができない、こういうことでありますと、これはソ連の二百海里水域内に入るという漁業交渉協定でございますから、それ自体を否認してかかった場合においては、これは交渉にも何にもならぬわけでございます。  そこで、どうしても北洋における伝統的なわが国漁業を守るためにはこれを相殺をする方法か、あるいは第八条等によってこの問題は純然たる漁業水域の区域を決めるものである、こういうことで、イシコフ大臣と徹底的に論争をいたしまして、領土の問題と切り離して漁業問題としてやろうではないか。この海域についても、海図の上に緯度、経度でもって示すことになるが、これは純然たる漁業に関するソ連の規制を行うところの海域である。もっと端的に言うと漁業に関する管轄権と申しますか、これが及ぶ海域である。これはわが方としては認めざるを得ない。認めなければ漁業交渉にはならない、漁業協定にはならない、こういうことでございます。その点は御理解を賜りたいと思うわけでございますが、それを、どういう形でわが方の北方四島に対する固有の領土としての主張、わが方の立場を守るか、そこに問題が集中をいたしまして、長期にわたって苦渋に満ちた交渉、ジャングルの中へ入ったような交渉が連日続けられた、こういうことで、そこで第八条の修正によりまして私はようやくその迷路から脱却をして、イシコフ大臣とこのことを確認し合って、そしてこの協定を結ぶことになった。したがいまして、これは避けて通ったのでなしに、通って避けたという表現が事実であろう、私はこう思うわけでございます。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 なかなかいわく微妙な表現での御答弁でございますけれど、そういたしますと、これは一応この第一条に言うところの海域における管轄権はソビエト側にあるということを確認した上でなければ日ソ漁業交渉というものは成り立たない、そういう意味において、一条に対しては、この水域はソビエト側に管轄権があるということを確認したにすぎない、こういうふうに御答弁をされている向きに私は受けとめるわけであります。  しかし、何と申しましても、ここで問題にされておりますこの海域自身は、この「沿岸に接続する海域」であって、しかもその沿岸はいずれの国に所属する沿岸であるかということを見た場合に、ソビエト側にはっきり所属するということの前提に立ってのこれは海域の設定であります。したがいまして、海域のみならず、やはり海域を設定するに当たって前提となる領土についての認識がいずれに属するかということにおいて、今回はここにおける管轄権がソビエトにあるというふうな認識が初めて出てくるわけでありますから、そういう点から言うと、なお一層この漁業問題と領土問題とを切り離して考えたということに対しては釈然としない向きが残るわけであります。  ただ、しかし、いまの大臣の御答弁からすれば、そのことに対して担保がある、何かと言ったら第八条だ、それからさらにやがてソ日協定の中で、日本側日本側として持っている立場見解というものを具体的に第一条の内容として生かすことによって相殺できる、この自信がおありになる、こういうふうな向きの御答弁で、漁業問題といまの領土問題というのは本暫定協定の中では切り離して考えることができるのだという仕組みを実は種々説明されるわけであります。  ところで、その担保となる第八条という条文を見てまいりますと、「この協定のいかなる規定も、」ずっと書いてございまして、中を飛ばして「この協定のいかなる規定も、」「いずれの政府立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」こう読み上げることもできると思うのです。「この協定のいかなる規定も、」でございますから、本暫定協定の前文から、一条から九条に至るまでのいかなる規定についても、日本側もソビエト側もいずれの政府立場をまた見解を害するものとみなしてはならないということになると思うのですが、この八条の条文からいたしまして、「いかなる規定も、」だから、六条も、この第八条から読めばいずれの政府立場または見解を害するものとみなしてはならないというふうに理解をしなければなりません。いかがでございますか。
  78. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは土井さんもお読み上げになりましたように、国連海洋法会議で検討されておる諸問題、相互の間の諸問題についても、いずれの政府立場及び見解を害するものとみなしてはならない、こういうことでございまして、ここでは先ほど来さんざんイシコフ大臣と議論をした結果、これは漁業問題としてやろうではないか、こういうことで完全に合意をして相互の間の諸問題、こういうことではっきりと表示をした。相互の間におけるところの諸問題という中には領土問題が明確に入っておる、こういう——私どもは、これは条約局並びに内閣の法制局に、これは大事な点でございますから、これがこの協定を結ぶ場合の最大の問題でございましたから、あらゆる角度から東京でも御検討願って、その確認を得て、私はこれによって決着を見た、こういうことでございます。  そこで、本協定の諸規定は害されてはならない、こういうようなことでございますけれども、この協定の中の各条項は、これははっきり協定の中で取り決めたことでございますから、害されるということは、そういう意味ではこの協定でうたっております条項は両国合意によってなされたものでございますから、私はその点ははっきりしておると申し上げていいと思うのでございます。  なお、六条その他の問題につきましては、これは沿岸国が漁業に関する管轄権をその水域に及ぼしておるわけでございますから、日米漁業協定等におきましても同様の規定がそれぞれあるわけでございます。また、ソ日協定においても同様の規定が裏返しとしてされる、こういうことでございますから、わが方の立場を害するものではない、このように考えております。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 ただしかし、わが方の立場を害するものではないというふうにおっしゃる鈴木農林大臣にお尋ねをしたいのでございますが、この第八条の条文は、この条文をずっと読んでいただきたいと思うのですが、「この協定のいかなる規定も、」といって、一たん切ってあるのです。その次に「第三次国際連合海洋法会議において検討されている海洋法の諸問題についても、」で切ってあるのです。三つ目に、いま大臣がおっしゃった「相互関係における諸問題についても、いずれの政府立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」という条文の体裁になっているわけであります。  そこで、六条というのは、もう大臣御承知のとおりに何を決めているかというと、第一条に言う海域におけるソ連側の規則に反した場合に、それを罰するためのソビエト側の法律に従う責任を日本国民及び日本の漁船に対して課している条文であります。したがいまして、ここにあるのは、この水域における裁判権、この海域における裁判権は、いずれにあるかというとソビエト側にある。それからこの海域におけるところの取り締まり権というものは一体いずれにあるかというと、これはソビエト側にある。裁判権とか取り締まり権ということになってまいりますと、単に管轄権ということではなくて、むしろ主権的権利という表現を私たちはよく経済水域あるいは専管水域に対して用いるわけでありますけれども、主権的権利というものがソビエト側にあるということをここに第六条の内容としては確認をしているのじゃないか。  こうなってまいりますと、いかようにこの説明をされようとも、第一条というものは、したがいまして、単に水域の点についてだけ、漁業に関する限りの管轄権というものをソビエト側に確認したにすぎないというわけにはどうもいかないように私自身は思うわけであります。  そこで、お尋ねをしたいのですけれども、ソビエト側のロシア語で、ここの第八条に当たる部分に、日本語に言う「規定」という文言がございますかどうですか、いかがなんですか。つまり、「この協定のいかなる規定も、」とこう書いてありますが、ロシア語の方は、この「規定」に当たる文言というのはございますか。
  80. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 御質問の点につきまして、私自身実はロシア語を解しませんので、ロシア語をそのまま英語に直した場合にどうなるかということを事務的に作業いたしましたもので御説明……(土井委員「外務省にどなたかロシア語がわかる方がいらっしゃるでしょう」と呼ぶ)現実にはロシア語と同じだと思います。むしろ、御理解をいただくために便宜説明さしていただくわけでございますが、そこのところは英語でやれば、英語に直せば、ナッシング イン ザ プレゼント アグリーメント、この協定における何物も、いかなるものもということでございますから、「この協定のいかなる規定も、」ということに日本語ではなるわけでございます。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 本暫定協定は「千九百七十七年五月二十七日にモスクワで、ひとしく正文である日本語及びロシア語により本書二通を作成した。」とございまして、英文はございませんです。
  82. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま私お断り申し上げましたように、英語がオーセンティックなものであるという意味で申し上げたわけではございませんで、御理解をいただくためのよすがとして、私自身も解しますところの英語をもって御説明さしていただいたわけでございます。  そこで、さらにその点を敷衍さしていただければ、いま先生の御指摘のございますロシア語を英語にした場合には、ナッシング イン ザ プレゼント アグリーメントということになり、それを直訳すれば、この協定におけるところのいかなるものもということでございますから「いかなる規定も、」ということになるわけでございまして、その点は、先日、本委員会で御審議をいただきました日米の漁業協定におきましても、その同じ部分につきましては、これは第十四条でございますが、ナッシング コンテーンド イン ジス アグリーメントとございまして、同じくその日本語は、「この協定のいかなる規定も、」というふうになっております。これが通常の条約文の作成技術というふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 その条約の作成技術を私はお尋ねしておるんじゃございませんので、ひとつ質問に対して——ロシア語の場合には、日本語に言う「規定」に当たる部分があるかないかというのは、これは追って御答弁いただくことにして、保留にしておきます。ロシア語の方はどうなのかということを明確に改めて御答弁をお願いをしたいと思います。そうでないと、いたずらに時間を——私は限られた間で質問するわけですから、質問してないことに対する御答弁をいただきたくないのです。それは時を改めてやってください。  それで、先を急ぎますから、少しお尋ねを進めます。  第八条を問題にされる場合に、いわゆる鈴木私案というものがあったように私たちは聞き及んでおります。その鈴木私案の中では、この第八条に現在ございます日本語の文言からいたしますと、「相互関係における諸問題についても、」というところに、「諸問題その他についても、」というふうな表現であったというふうに私たちは聞き知っているわけでありますが、この「その他」という文言が削除されまして、ただいまのような第八条になっているわけでありますけれども、鈴木私案にいう「その他」というものが消えたということで意味が大変違ってまいりますか、いかがでございますか。
  84. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これはモスクワにおきまして、イシコフさんと私との合意に沿いまして、法律専門家、日本側からは斎藤条約課長等も参加をいたしまして検討いたした際におきましても、「その他」という字句を入れたらいいか、要らぬのではないかという議論を大分やったようでございます。その結果、一応私の案としてはこれがA案として出ておったわけでございますが、ソ側は、最終的にこのA案をのむということに相なりまして、その際にソ側から、この「その他」の字句を削りたいということでございました。私は、このA案ができる経過も聞いてはおりましたけれども、しかし、専門家の間でそういう「その他」が入ってA案というものが決まったことでございますので、全体としてのバランス、いろいろの意味合いから慎重に扱う必要があるということで、さらにこれを東京に確認を求めまして、いろいろな角度から御研究を願った結果、「その他」を削除しても趣旨においてはいささかの心配もないという確認を得まして、これによって最終的に決まったという経緯になっております。  なお、法律的な問題につきましては、条約局の方から御説明を願います。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 法律的な側面はこの際結構でございまして、大臣は、「その他」という文言をお考えになったときには、その内容としては何を意図されていたのか、その辺について少し承りたいのです。
  86. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私が一番重要と考えておりましたのは、両国相互関係について、いずれの政府立場及び見解も害してはならないということで、相互関係における諸問題、これによって領土問題と漁業問題を切り離して、純然たる漁業問題として処理したい、ここに一番中心があったわけでございます。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっとよくわからないのですけれども、そういたしますと、漁業問題と領土問題というものを切り離して考えて、本暫定協定漁業問題を専門に取り扱うものであり、第八条にいうところの「相互関係における諸問題」という中には当然ながら領土問題も入ってくる、だから、領土問題に対する認識ということについては、ソビエト側は、日本側北方領土に対してはまだ解決されていないと言う立場を尊重し、日本側は、ソビエト側が北方領土に対しては解決済みだと考えている立場を尊重する、この百八十度違うお互いの立場を尊重して、損なうことがあってはならないということを確認しているのが第八条の条文だというかっこうになるわけですか。
  88. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、イシコフさんとの間でこの点については大分議論を闘わしたわけでございます。北方四島の領土の問題は解決済みだということは絶対に容認をしない。現に占有をし施政を行っておるということは遺憾ながら認めざるを得ないけれども、解決済みであるということは、一九七三年の田中ブレジネフ会談の共同声明にも反することであり、それは絶対に容認できない。でありますから、私としては、ソ側が現に占有をし、これに施政を行っておるという現状を頭に置いておるわけでございます。また、わが方においては、歴史的にもこれはわが国固有の領土である、しかし、これは戦後未解決の諸問題として、今後政治レベルの問題としてハイレベルで検討さるべき問題である、漁業問題でその問題とは切り離して今回の協定を結ぼうということでございまして、イシコフ大臣にも、私はもう解決済みだなどということにつきましては絶対に容認をしないという立場で折衝をしてきたわけでございます。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、そういう領土問題に対しての日本側の主張というものが、まだ本暫定協定において侵されてはいない、害されてはいないという認識の上に立って、ソ日協定交渉に臨むということにさらになると思うわけでありますが、先ほど言われましたように、ソ日協定の第一条で日本側北方海域に対する日本側立場での線引きをやることによって、今回の本暫定協定との兼ね合いから言うと相殺になるという立場鈴木農林大臣は明確に御答弁になっているわけでありますが、そこで、それならば確認をしたいのは、ソ日協定の場合においては、北方四島周辺の水域に対して、漁業水域に関する暫定措置法線引きによって、第一条では、日本側北方海域をこのように日本の沿岸に接続する海域と理解しているという明文の規定を設けるということが確認できますか、いかがですか。
  90. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この点は、国権の最高機関であるわが国会が、漁業に関するところの水域法、暫定措置法によって、わが国領土、その沿岸に接続する海域に適用される、これは政令等をまつまでもなくはっきりと法律で明確に相なっておるわけでございます。したがいまして、ソ日協定を結ぶ際におきまして、このわが方の暫定措置法を前提としなければソ日協定交渉には入れないということになるわけでございまして、ソ側があくまでこのわが方の暫定措置法を認めないということであれば、ソ日協定交渉には入れない、したがってできないということに相なるわけでございます。しかし、いままでのイシコフさんとの話し合いの過程におきましては、ソ日協定締結する目的をもちまして、六月には東京で交渉を行うということで、合意をいたしておるところでございます。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 確かに本日の本会議におきましても、ソ日協定に当たっては、日本側漁業水域に関する暫定措置法立場で臨むという御答弁はいただきました。ただしかし、先ほど大臣がおっしゃったように、相殺になる、つまり相打ちにするという意味からいたしますと、第一条の条文それ自身に、いま本日ソ暫定協定が規定の上で掲げておりますような、最高会議幹部会令第六条とか、あるいはソビエトの政府決定等々のように具体的に明示がされております。それと同じように、漁業水域に関する暫定措置法という名称を具体的に明示されるところにまで、第一条に対してソ日協定はやはり意を用いて、われわれが主張すべきことは主張するという政府の態度でお臨みになるのかどうか、その点の確認をはっきりすることが、私はソ日協定に当たって基本的な問題ではないかと思うのです。いかがですか。
  92. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、ソ日協定の第一条は、わが国の沿岸に接続する海域漁業水域に関する暫定措置法の適用を受ける海域ということに相なろうかと思うのでございます。表現は専門家にいずれ詰めてもらいますけれども、趣旨はそういうことに相なるわけでございます。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、その北方海域において日本側線引きによる水域に対しては、裁判権とか取り締まり権とかいうような主権的権利の行使が日本側に当然あるという、本条文からいたしますと第六条に当たるような明示の規定というのも当然用意をすべきであると考えられるわけでありますけれども、この点はいかが相なりましょう。
  94. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、基本的にそういうぐあいに考えております。ただここで、もう外交のベテランでいらっしゃる皆さんでございますから、現にあの北方四島についてはわが国の施政は及んでいない、こういうような事情もございますが、そういう点等を頭に置きながら、私は、しかしながら漁業水域法におきましては、明確にわが国の沿岸、沖合いで漁業水域法の適用を受ける海域というのは北方四島を囲み込んだ水域である、こういうぐあいに考えておるわけであります。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、北方四島周辺の、少なくとも日本側ソ日協定に当たりまして具体化する第一条に言うこの北方海域については、特殊水域というふうな物の考え方というものがあるいは通用するかもしれないと私自身は思うわけでありますが、この点は農林大臣はどのようにお考えになりますか。
  96. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは、これからのソ側との交渉の具体的な交渉事項に相なるわけでございます。私は、法文上、条約上の規定としてはそういうぐあいに認識をされる、こう考えております。  今回、日ソ漁業協定におきましても、あの北海道に近接する問題の海域につきましては、運用の面におきまして、三十トン未満の中小漁船並びにクォータの設定に当たりましても、一隻一隻にクォータを与えるのではなしに、漁業団体にまとめてクォータを与える、許可の申請も団体でまとめて申請をする。また、その海域に対しますところのわが方の指導船、艦船も行政指導に当たる、こういうような実情に即するような運用の仕方というものは相互の間で話し合ってまいっておるところでございますが、ソ日協定の際にこの点は明確にいたしたい、こう考えております。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 いま鈴木大臣がおっしゃったのは、本暫定協定の上では明文化されていないけれども、この協定以外にいわば口頭約束のような形で、たとえば三十トン未満の船に対しての取り扱いを便宜的措置としてこういうふうにした方がよかろうというふうな話し合いが、具体的に進められているということなんでありますね。それはそれとして結構なんでございますけれども、このソ日協定の場合における第一条の条文の内容に対してどのような立場で臨まれるかというのは、ほぼ輪郭が出てまいりました。  ただ、それからいたしまして、本日ソ暫定協定で少し気にかかるところがございます。それはどこかというと、第二条の内容なんでありますが、第二条のところで「日本国の地先沖合における伝統的操業」云々とございます。「日本国の地先沖合」とは一体具体的に言うとどういう範囲を指すのであるか。これは端的にこのことを表現しようとするならば、もうすでに五月の二日に国会において成立をいたしております漁業水域に関する暫定措置法という表現をここに持ってくるということも可能であったに違いないと私自身は考えるわけでありますが、この表現がことさらとられずに、単に「日本国の地先沖合における」云々というふうに表現をされております。したがいまして、この内容についてはどうももう一つ具体的になっていないというきらいがあるわけでありますが、なぜこの漁業水域に関する暫定措置法という明示の法律名を第二条の中でお入れにならなかったか、そのいきさつについて少しお伺いしたい。
  98. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは、わが国暫定措置法適用海域というものはソ日協定で明確になるわけでございますが、ここではタイトルでもごらんのとおり、「北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百」云々、こういうぐあいにいたしておりまして、この第二条におきましては、こういう表現をそのまま、「地先沖合」こういうことで使ったわけでございます。しかし、これはわが国の沿岸、沖合いでソ連漁船が操業する場合におきましては、漁業水域暫定措置法水域であるということがソ日協定で明確になるわけでございます。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 それはソ日協定をまたなければ明確にならないということでありまして、本日ソ暫定協定の中では一体「日本国の地先沖合」というのは具体的に言うとどういうことになるのかということについて、法律がなければ別でございますよ。しかし、もうすでに五月の二日に国会で成立をいたしております漁業水域に関する暫定措置法という法律が日本としてはあるわけでありますから、したがって、このことを明示するということの方がこれは一層具体的に明らかになったに違いない、このように私は思うわけなんです。したがってこの質問をさせていただいたわけでありますが……。
  100. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 全くおっしゃるとおりでございます。私もそういうぐあいに書きたかったわけでございます。しかしソ側としては、まだこの暫定措置法の政令その他もはっきり決定をしていない、またその水域についての効力が発生するのも未来の問題である、こういうようなこと等もございまして、どうしてもそういう表現を現時点でとることは困る。こういうことで、この点は意見の分かれたところでございますけれども、私はいずれ——この第二条というのは、ソ連の漁船をわが国漁業水域内に迎えての問題をここにうたっておるわけでございます。わが国の漁船がソ連の幹部会令の適用海域操業する権利というのは、ソ連の漁船がわが国漁業水域内において操業するものを認めてもらう、こういういわば相互関係相互利益の関係を二条で担保しよう、こういうことでございましたから、これはいずれソ連漁船をわが方に迎え入れる場合の水域の問題であるから、ここで意見が一致しないものは私は今後の問題として十分解決できる、こういう判断であったわけでございます。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 端的にお伺いしますが、水産庁もお見えになっていらっしゃいますね。そして外務省ももちろんいらっしゃる。「地先沖合」ということに対してどのような理解を持てばよいのか、定義をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  102. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  「地先沖合」ということの厳密な定義というものは存在しないと存じます。御承知のようにこの協定におきましても、厳密な定義を設ける必要のあるものにつきましては第三条において定義を設けておりますが、その中に「地先沖合」ということを定義した規定はないわけでございます。  いずれにせよ「地先沖合」と称しますのは、沿岸との関連においてその沖合いの水域を一般的に表示した言葉であって、それが具体的に何海里から何海里までであるとかいうようなことにつきまして別に国際法上の定めがあるわけではないという状況でございます。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 水産庁いかがですか。
  104. 岡安誠

    ○岡安政府委員 私も、一般的に「地先沖合」とはという定義につきましての確定的な考え方を水産庁が持っておるわけではございません。たとえば外国人漁船の取り締まりに関する法律等につきましては、「本邦の水域」という表現によりまして領海を指すというような運用もございます。そこでも、この「地先沖合」ということは、言葉だけの意味からすればやはり沿岸から沖合いに広がる海域というようなことでございまして、これが具体的にどの地域を指すというふうなことは申し上げられないのではないかというふうに思っております。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 ただいまのように「地先沖合」という言葉そのものには明確な定義がないようでございます。したがいまして、この暫定協定の二条では、具体的にこの内容はこう考えるという定義がないまま、「日本国の地先沖合」という表現になっておりますから、この条文を客観的に見た場合に、このままで果たして二百海里というふうに中身が直ちに読めるかどうかというのは大変問題が多いと思うのです。いかがでございますか。
  106. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 第二条において問題になります点は、「地先沖合における伝統的操業を継続する権利を維持する」、ここの中にいわゆる日本の十二海里領海も含んでおるのではないか、それが領海内での操業ができるように解釈ができるのではないかということを土井さんは御指摘になろう、こういうことでございます。しかしこの点は、当初から執拗にソ側要求してきたところでございますけれども、五月二日に領海法をつくっていただいて幅員が十二海里になった、これは即日交付されておる、いずれ六月中には政省令も出まして実施をされるというようなことで、領海内十二海里の中には絶対に入れませんよということをさんざん話をいたしまして、イシコフ大臣も、入らぬことにしよう、しかし両国政府で協議をすれば、また場合によれば、両国合意すれば入れるような道もひとつふさがぬでおこうではないか、こういうことに第二段としておりてきたわけでございます。しかし私としては、絶対にこの領海の中には第三国の漁船は入れない、外国船は入れないという法律になっておるわけでございますから、協議をするなどという規定を設けることそれ自体が誤解を招くおそれがある、絶対にそういうことはやるわけにはいかない、やるべきこと、やってはいけないこと、やる可能性のあるもの、ないもの、そういうものは明確にして、可能性のないもの、絶対に容認できないもの、こういうものははっきりしておるわけであるから、そういうような検討とか協議とかをするとびらをあけておくというようなことはいけないということを申しまして、——ソ連のテキストには、これは要求でありましたが、申し上げてみます。「相互利益の原則に立って与えられる。」その後に第二文としまして、「この原則に基づき両締約国は、この協定の発効前に行われていたソ連邦及び日本国の領海の若干の水域における伝統的操業の実施問題を検討する。」そういうソ側要求があったわけでございますけれども、いま申し上げたように、そういう可能性のない、絶対にわが方はやる気持ちのないものを検討するとかいうようなことも、これはいかぬということで、第二文も削除をさせた、こういうことでございまして、明確にこの領海内では操業をしない、させないということがはっきり合意されたわけでございます。したがいまして、ソ日協定におきましても、ソ側が領海内での操業をまた蒸し返してくるというようなことは断じてございませんから、その点は御安心をいただきたいと存じます。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、その十二海里の領海内での操業は一切認めないという立場で臨んでいる限りは、この第二条で言うとおり、相互利益の原則に立ってソ連も主張されるわけでありますから、ソビエト側からいたしますと、現に一つ懸案になっております日ソ・コンブ採取協定、大臣御存じのとおりの貝殻島区域の一定水面でのコンブ採取のあの問題ですね。これはもうすでに五月五日に失効いたしているわけでありますけれども、この協定について交渉することが困難になり、むしろ不可能になってきているのじゃないか。ために、三百三十隻、五百世帯が、ただいまコンブ採取はもうすでにできないという状況になっているわけでありますが、このコンブ採取協定は、したがってあきらめるということに相なるわけでありますか。
  108. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、いま申し上げたような経緯からいたしまして、政府間の交渉政府間の協定としてコンブの採取の問題は主張する立場にございません。ただ、御承知のように、あのコンブの採取は民間協定、大日本水産会が中心になりまして民間の間でなされておった、こういう歴史的な問題がございますので、これは今後の民間の問題にゆだねることにいたしまして、政府間ではこの交渉を正面からやる立場にございません。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 大臣、ちょっとただいまの確認をしておかなければならないと思います。  日ソ・コンブ採取協定については、五十一年五月五日に協定をさらに一年延長することを取り決めた節、ソ連代表団は、一九七七年に本協定政府協定に移行したい旨の意向を表明して、これに対して日本側は、一応日本政府にその意向を伝えるということでこれに臨んできたわけでありますが、そうしますと、日本側は、このコンブ採取協定について政府が直接の交渉主体になって交渉するということに対してはいま消極的であるということを大臣自身はお考えになっていらっしゃるわけでございますね。
  110. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 コンブの採取漁業者に対しましては気の毒でございますけれども、このために、自分の方もコンブをとらしておるんだから、日本の領海の中でも、ひとつ実績もあることでありソ連の漁船に操業させろ、こういうことに相なりますと、事態はなかなか容易ならぬことでございます。今回、領海の幅員を三海里から十二海里にしていただいた、国会が満場一致でお決めいただいた立法の趣旨等からいたしましても、私はこの問題は、コンブのためにこの領海法の立法の趣旨というものを崩すようなことがあってはいけない、このように考えておるわけでございまして、あくまで民間協定の問題として今後それにゆだねたい、こう考えております。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 あと一問で私は終えます。  第五条で「妥当な料金」についてソ連側は徴収する権利があるわけでありますけれども、ことしじゅうはこの料金を徴収しないという旨の報道が聞こえてまいっておりますが、このことについては実際にそのとおり決定がなされたのかどうかですね。そしてもしそのとおりだとすると、日本側も料金の徴収についてはやはり同様な対応をしなければならないのではないかと考えられます。そのことをソ日協定の中でどのようにうたわれていくのか、これについて一定の線がございますならばお聞かせをいただきたいと思います。
  112. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 協定文の中に、この許可証を交付する際に料金を徴収するという規定がございますが、在莫のわが方の大使館の方がソ側に接触をいたしましたところ、今回、暫定協定期間においては、許可証を発行する場合に料金はいまのところ取る考えは持っていない、こういうことが非公式に伝えられてきたわけでございます。しかし、この許可証、入漁料と申しますか、この料金をどうするかの問題は、ソ日協定の場合におきまして相互の間で最終的に協議し、決定をすることに相なるわけでございます。
  113. 土井たか子

    ○土井委員 これで終えたいと思うのですが、漁船の問題について、この協定に何ら規定がない問題で一つ大変気にかかることがございますから、これをお教えいただいて私は終わりにしたいと思うのです。漁船が漁業を目的としないで、本協定の一条の水域を通航する場合があるだろうと思うのです。その場合の規制はどのようになっているか。これは実は日韓漁業協定の場合は、この合意された議事録の9において、漁具を船内においてきちんと収容したままで通航すれば認められるというふうな向きの無害通航権というものを、実は具体的に決めているわけでありますが、日ソの場合はこういう問題に対し何らかの取り決めがあるのかないのか、このことをひとつお聞かせいただいて終わりにしましょう。
  114. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いまのお話は、操業をしないで漁具等を格納してソ連の二百海里水域内を通航する場合のお話だと思いますけれども、そういうことに関しましては話し合いは全然ございません。ただございますのは、特定の海域におきまして操業をする、それ以外はできないというようなことは取り決めをいたしておりますけれども、いわば領海内通航というような場合と同じような形での取り決め等は一切ございません。
  115. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。残余の問題はまた別の機会に……。ありがとうございました。
  116. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、河上民雄君。
  117. 河上民雄

    ○河上委員 鈴木農林大臣、また鳩山外務大臣、このたび全国民が関心を傾けてまいりました日ソ漁業暫定協定締結のために非常に御尽力いただきましたことに対し心から敬意を表したいと思います。  この協定内容につきましては、私どもの同僚委員であります馬場委員、土井委員からそれぞれすでに多面的な質疑が続けられておりますので、残されました時間、かなり短くなっておりますけれども、私は気になっております点を二、三お伺いさせていただきたいと思います。  先ほど鈴木農林大臣北方四島周辺の日本漁業、特にコンブの採取につきまして、土井委員質問に対し、これとの引きかえにおいて日本の領海内の操業は認めないということを大変明確に言われたのでございますけれども、この協定はあくまで暫定協定で一九七七年のものでございますし、領海法の実際に施行になりますのは、もう七月ということになりますから、漁期としてはほとんど盛りを過ぎているというようなこともあると思うのでございます。したがってことしはそれでもいい。しかし来年あるいはその次という場合には、つまり長期漁業協定、これは長期漁業協定が結ばれることになるのか、あるいは毎年毎年結んでいかなければならないのか、これはまだ今日の見通しは立たないと思うのですけれども、将来もそうした立場を貫き通されるおつもりであるか、またそうした自信があると申しますか、そういう点につきまして重ねてお伺いしたいと思います。
  118. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、このコンブの問題は今後とも民間の取り決めとして処理していくべきものである、またそのことを期待をいたしておるわけでございます。私は、先ほども申し上げましたように、わが方が、外国漁船によってわが国の沿岸漁業が相当被害を受け、沿岸漁業者が一日も早く領海の幅員を十二海里にしてほしい、十二海里の外に外国漁船の操業は排除してほしい、こういう切なる願望の上に成立をした領海法、これは私は絶対に曲げてはいけない、このように考えておりますので、コンブ採取の問題は民間取り決めとして今後交渉する、政府はこれに真っ正面から取り組む立場にない、このように考えておるところでございます。  なお基本協定のお話がございましたが、私とイシコフ大臣との間には、まず日ソ協定をつくり、さらにソ日協定をつくり、その日ソ協定ソ日協定を踏まえて今後十年、二十年に及ぶ長期の新しい時代日ソ漁業関係をひとつ再構築しようではないか、こういう基本的な話し合いもいたしておるわけでございまして、私は、毎年協定が結ばれるのでなしに、基本協定によって相当長期の間の日ソ漁業関係の枠組みが決定をされる、レールが敷かれる、こういうぐあいに期待をいたしておるところでございます。
  119. 河上民雄

    ○河上委員 それにもかかわらず第二条におきまして「日本国の地先沖合における伝統的操業を継続する権利を維持するとの相互利益の原則に立って」、こういうことが確認されているわけでございますが、この「地先沖合」という言葉と、その前の、ソ連については「ソヴィエト社会主義共和国連邦沿岸に接続する海域」という表現とパラレルになるのか、また内容的にも全く同じものであるのか、この点はちょっと非常にわかったようなわからないようなことなんでございますけれども、その点も伺いたいわけでありますけれども、「日本国の地先沖合における伝統的操業を継続する権利を」ソ連側は維持するわけでございますが、その場合の「伝統的操業」というのは、どうも日本側から言いますると——その前にソ連側から言えば、現実に三海里から十二海里の海域において行ってきたものを指しているように思うのですけれども、それに対して日本側は、恐らく領海内の操業を排除した場合には、ソ連が期待するもの、ソ連がここに明記した「伝統的操業を継続する権利」というものを具体的にどういう形で保障するのか、それを伺いたいわけです。
  120. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この点は、ソ側日本沿岸沖合い操業した実績には間違いないわけでございますから、しかし今後は領海内では外国漁船の操業は認めない、領海の外百八十八海里のいわゆる漁業水域内で操業を認める、こういうことでございますので、三−十二海里の中でソ連が挙げておった漁業実績というものは、百八十八海里のクォータを決める場合の基礎の数字に算入してあげよう、こういうことを私よく説明もし、理解を求めたところでございます。  と同時に、そうなった場合におきまして、ソ連が希望しておるところのサバは十二海里の外でも十分とれますけれども、イワシは八〇%が十二海里の中である、こういうようなこともございまして、十二海里の中で認めないということになるとイワシがどうしても不足を告げる、欲しい、こういう場合には物々交換でこの欲しいイワシはひとつ交換をしてあげましょう、こういうことも話し合いをいたしまして、ソ連側に、十二海里の外へ出てもちゃんと欲しいイワシは日本の需給関係に支障を来さない範囲で物々交換で向こうに提供する、こういう話も理解し合っておるところでございます。
  121. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、この「地先沖合における伝統的操業を継続する権利」を日本政府は保障しているわけですけれども、それは従来ソ連操業を行っておった水域における操業の権利を保障したものではなくて、魚獲量といいますか、あるいは魚種の内容、それについて日本政府は今後——と申しますのは、本協定になれば当然でございますけれども、今後かなり長期間にわたってソ連に対してその魚獲量及び内容を保障する責任を、この第二条によって負ったというふうに解さなければならないと思いますけれども、そういうふうに理解してよろしいわけですか。
  122. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは二つの問題があるわけであります。一つは、いままで三海里までがわが方の領海であったわけでございますから、三海里の外は天下の公海である、自由に操業して漁獲実績を重ねてきておるわけでございます。ですから、領海の幅員が十二海里になりまして領海内ではとれませんけれども、その実績だけはやはり認めてあげるということが当然のことだ、こう思います。そして、その実績を一〇〇%認めるかどうかは別問題としまして、つまりクォータを決める基礎の数字、それに算入してあげよう、こういうことでございます。私は、これは当然のことだと思っております。  それから、イワシが欲しい、これをバーターでやろうとかあるいは貿易の形でやろうとかいうのは、これは純然たる経済問題、商取引の問題でございます。こういう点はわが方でも窓口をできるだけ一本にいたしまして、向こうの団体との間に価格を決め、数量を決め、これはバーター取引として、商取引として経済問題としてやる、こういう問題でございます。
  123. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、領海内では認めない、つまり二百海里の水域内で過去の実績を保障しよう、こういうことになるわけでございますが、そういたしますと、二百海里時代の理念で言いますと、いわゆる余剰原則といいますか、余ったものを配分するんだ、こういう原則があるわけでして、それを日本は受け入れなければならないという最初の処女体験が今度の暫定協定だったと思うのですけれども、あるいは日米漁業協定だったと思いますが、これはいわゆる余剰原則とは若干違うものになるわけでございますね。
  124. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、先ほど来御答弁を申し上げておるのでありますが、二百海里漁業専管水域時代、二百海里時代になりまして、沿岸国は実績尊重ということよりも余剰原則の方が優先し、これが強く働いておる、こういうことを申し上げておるわけでございます。今度の日ソ漁業交渉におきましても、ソ連があれだけ強大な漁獲能力を持っている、漁船団を持っている、しかも大西洋海域あるいは北海その他の海域で相当漁獲量を削減されて、船は十分稼動できないでたくさん船団が余っておるわけでございます。それを北西太平洋ソ連の二百海里内に投入をいたしますれば、余剰はないぐらいとるんだということをイシコフ大臣は言っておりました。しかし、余剰原則ということは確かに強く働いておりますが、一方において日本との伝統的な漁業関係日本実績、これが日ソ友好の唯一のかけ橋になっておったという、こういう問題を考えて、そうして百七十万トンから百万トンというようなぐあいに大幅な漁獲量の削減を見ましたけれども、とにかく百万トン台の漁獲割り当てをわが方にやってきた、こういう状況にございます。わが方も、日本の漁船団をもってしますれば余剰のないほどとれることはとれると私は思います。しかし、これはソ連の方からは、日本は百万トン割り当てをもらっていながら日本海域では余剰がないといって全然与えない、こういう一方的なことは成り立たない、こういう状況にあろうかと思います。また、魚種に関しましても、わが方の欲しいものが北洋の二百海里の水域内にある、また向こうの欲しいイワシ等が日本漁業水域内にある、こういう場合には、やはり相互利益の観点でこれを補完し合っていくということが大事なことだ、私はこう考えております。  今回、漁獲量を大幅に削減されたといっても、なおわが方は百万トンから百十万トン前後確保したわけでございます。ところが、日本沿岸沖合いでとっておりますソ連の漁獲最というのは三十五万トンか四十万トン程度でございます。でありますから、私は、そういう関係を考慮に入れますと、このソ連の割り当て量というものをある程度削減をいたしましても、余り厳しい条件を強いますと、これはソ連側としては、いや、そこまで漁獲量を削られたのでは、あるいは操業条件を厳しくされたのでは日本に船団を送り込んでそろばんがとれない、こういうことに相なった場合におきましては、まあ、ひとつ相互に入れ合うことはやめて、お互いの畑だけを耕すことにしようではないか、こういうことになりかねないわけでございます。私は、やはりそういう点も十分考慮をしながら、ソ日協定におけるソ連に対するクォータその他につきましても慎重な配慮が必要である、このように考えておる次第でございます。
  125. 河上民雄

    ○河上委員 領海の幅を拡大するという話が起きました直接の動機といいますか、きっかけは、日本の近海におけるソ連の大型船団の操業日本の沿岸漁民に対して大きな被害を与えたというところにあったように思うのでありますが、そういう点から言いまして、私は、いま鈴木農林大臣も言われましたように、また今回の暫定協定第二条から言いましても、日本ソ連に対していわゆる日本近海の実績を保障する責任を負ったという形になっていることは十分理解するわけです。しかし、それならばソ連日本の近海で、たとえ領海の外でありましても乱獲に等しいような操業を行うことが許されるかどうか。行う場合、現実に日本の沿岸漁民に大きな被害を与えるわけです。領海十二海里の外においてもそういうことはあるわけですね。そういう意味において、二百海里の水域におきましても、ソ連操業について、ちょうどソ連ソ連の沿岸における二百海里内の日本の漁船の操業についてある種のいろいろの規制を設けておる、それは資源保護という立場に立脚している点はむしろ私は十分認められる点であると思います。しかし、同じことはまた日本についても言えるはずでございます。日本としては、日本の沿岸漁民の生活、利益を守り、かつ科学的な根拠に立って、資源保護の立場からも、ソ連操業というものを——二百海里内において全然、どうぞ御自由にということなのか。その辺、やはり相当のコントロールをお互いに加えていくという姿勢で今後臨んでいくことが必要なのではないかと私は思うのです。たとえば、領海外であっても、禁止区域を設けておるのがソ連のケースでありますが、あるいは漁区を決めたりしておりますけれども、日本の場合二百海里の中も自由にやっていいということなのか。それではやはり将来いろいろトラブルを起こすのではないかと思うのですけれども、その点、政府のお考えを伺いたい。
  126. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 河上さんおっしゃるとおりの考えでやってまいるわけでございます。漁業水域二百海里の中につきましては日本漁業に関する管轄権が働くわけでございますから、領海の外でありましょうとも、資源保護上の観点から底びき網等の禁止区域、操業されては困るという場所も設定をいたしますし、秩序ある操業をやってもらうためのいろいろの規制の措置というものは、当然ソ日協定において明文化されるわけでございます。ソ日協定で、ソ連がわが方の漁船に課するような規制、資源保護上の措置というものは、百八十八海里の領海の外の水域につきましても同様の規制措置が講ぜられるというようなことを私考えておるわけでございまして、その点は河上先生御心配のないように私ども考えております。
  127. 河上民雄

    ○河上委員 このソ日協定というのが今回の日ソ協定と表裏一体になって将来の長期的な本協定の基礎をなす、こういうように鈴木農林大臣は御説明になりました。また、鳩山外務大臣も常にそうおっしゃっておられるわけでございますが、日ソ協定を見ますと、どうもかなり重要な部分が全部ソ日協定の方へ申し送られておるような感じもいたしますだけに、そのほかにも幾つか心配な点もあるわけでございますけれども、お尋ねをしたわけでございます。  今度は鳩山外務大臣にお尋ねいたしますけれども、ソ日協定の中の最大の焦点は、日ソ協定北方四島を自分の国の領土だと認めて、しかもこれを解決済みと考えておるソ連の二百海里水域を、わが国が認められるかどうかということでずいぶん長い交渉が続いたと思うのです。今度は逆に、ソ日協定でこの部分に関して、わが国領土であることを前提にした日本の二百海里水域線引きソ連がそのまま認めるかどうか。われわれは、日ソ協定では非常に難航した部分であるだけに、今度は全く百八十度転換して考えてみますときに、同じような問題が起こるのではないか、こう思うのでありますが、この点政府はどういうふうに線引きの表現をされるおつもりでありますか、お伺いしたいと思います。
  128. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いわゆるソ日協定におきましても、その第一条、すなわち適用水域あるいは適用海域、この問題がやはり大事な問題になるということは当然でございます。先ほど鈴木農林大臣からも御答弁がございましたが、ソ日協定の際に、わが方としては先般急遽御審議、またお認めいただきました漁業水域に対します暫定措置法、この適用水域というものが当然出てくるわけでございます。わが方といたしましては、北方海域というものも当然わが国水域である、こういう前提のもとにこの法律は御制定をいただいたわけでありますから、当然その趣旨が貫かれるものと考えております。今日の二百海里体制が急激に進んだことは、国際法的な根拠がまだできないうちに各国が国内法を制定してそれぞれの国が規制を始めた、こういうことにあるわけでございますから、そういう意味で、わが国としてはわが国の国内法、これに従って、その国内法に基づいてソ連邦の入漁を認める、こういう姿勢になることは当然であろう、こう考えるわけでございます。その際に北方海域につきましてどのような話し合いが行われるかということは、これからもまた鈴木農林大臣が大変御苦労なさるところと思います。しかし、これにつきましては何らかの合理的な解決を見出すということが、ソ日協定の場合におきましても大事な課題になる、このように考えております。
  129. 河上民雄

    ○河上委員 基本的な姿勢につきましては、るる、再三御説明のあったところで大体わかるのでございますけれども、具体的にどういう表現になるか、これから交渉しなければならぬから言えないというようなことがあるいはあるかもしれませんけれども、しかしどういう表現でいくか、そのパターンぐらいは当然用意されておると思うのですけれども、それは実際はどういうふうになりますか。
  130. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 その点につきましても先ほど鈴木農林大臣から御答弁があったわけでありますが、この日ソ協定の第一条に表現されておりますソ連最高会議幹部会令、これに相当するものが、先ほど国会でお認めいただきましたわが方でいえば暫定措置法、これが対等の立場で同じそこに表現をされるもの。それに伴いましてわが国といたしまして政令等がございます。そういったものの適用を受ける水域ということが規定をされる、そのように考えておるところでございます。
  131. 河上民雄

    ○河上委員 二百海里法の効力の及ぶ範囲というようなことになるのだろうと思いますが、あのときいろいろ審議をしたので問題になりました点でございますけれども、いわゆる適用除外水域というようなものがあったり、政令にゆだねると言いながら政令自体が必ずしも線引きをしていないとかそういうような点があるわけです。なるほど対等に東の横綱と西の横綱が並ぶような形でここにソビエト社会主義共和国連邦最高会議幹部会令というようなものに当たるような形でそういうものがもし書かれたといたしましても、そしてまた、ソビエト社会主義共和国連邦政府決定というふうに、ここは政令というふうな形になったといたしましても、言葉の上ではパラレルになりますけれども、その内容は向こうはきわめて明確に線引きがある、こっちの方は実は政令にゆだねる、政令へいくとまたそこは線引きがないとかいろいろなことになってまいりますので、その辺やはり北方水域に二百海里漁業水域というものが適用されるということを協定の上で明確にしていただきたい。またそこに主権的な権利を行使できるという立場を明確にしていただきたい。これがいま日本国民が非常に切に望んでいるところだと思うのでありますが、その点いかがでありますか。
  132. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 河上先生もうすでに御承知のように、五月二日に成立をいたしました漁業水域に関する暫定措置法、これはわが国の沿岸、沖合い、沿岸に接続する海域暫定措置法の適用を受ける海域、こういうことでそれ自体がもう線引きされておるわけでございます。政令は、その暫定措置法適用海域の中から、相互主義で韓国あるいは中国等が二百海里を設定しない場合におきましてはその関係水域は適用しない、こういうことになるわけでございまして、暫定措置法そのものは、日本の国土の沖合いの二百海里、これが暫定措置法の適用を受ける海域、こういうことになるわけでございます。私はそういう意味で、ただいま鳩山大臣からも御答弁がありましたように、第一条につきましては、漁業水域に関する暫定措置法というもので適用海域を明確に示すことができる、このように考えております。
  133. 河上民雄

    ○河上委員 もう時間がございませんので残念でございますけれども、実は今度のソ日協定の一番のポイントはいろいろございますが、いま言った二つに尽きるのではないかと思うのであります。その中でも線引きの表現の問題、これはもちろん相手のあることですからなかなかむずかしい点でもあろうと思います。しかし、この線引きの表現があいまいに終わったためにいままでの努力がすべて水泡に帰することのないように、私は強く要望いたしたいと思います。  すでに時間がないので最後応一問だけ伺います。ソ日協定は日ソ暫定協定と表裏一体のものであるという位置づけは再三なされておるわけでありますが、これは必ず国会の承認を仰ぐ措置はとられることと私は思いますけれども、その点念のために確認をさせていただきたい。
  134. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いわゆるソ日協定の国会の御承認をどうするかということでございますが、これはいわゆるソ日協定の中に盛り込まれるべき規定の性格によって決まるものというふうに思うのでございます。国会の御承認をいただかなければならない条項が入れば当然いただかなければいけないわけでありますし、その点は今後農林大臣とよく御協議の上決めたいと思っておりまして、ただいまのところはまだそこまで決まっておらないのでございます。
  135. 河上民雄

    ○河上委員 もう時間がないのでこれでやめますけれども、日本の主権と、また日本国民がそこで仕事をするに当たっていろいろ国民の権利、義務というものにかかわるそういう協定だと私は思うのであります。そういう点から見まして、日ソ漁業暫定協定が国会でいま当然承認が求められておりますように、ソ日協定も国会の承認を求めるのが至当だと私は思います。その点非常にあいまいな御答弁でありまして私は大変不安でございますので、重ねてもう一度明確な御答弁をいただいて質問を終わりたいと思います。
  136. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私から敷衍して御答弁を申し上げておきたいと思います。  この漁業水域に関する暫定措置法、またその御審議をお願い申し上げた際に、政令の実施見込みというものも提出をいたしまして、一体として国会の御審議を願い、御決定を願っておるわけでございます。でございますから、これはわが国の沖合いの暫定措置法が適用される海域について、外国船の操業を認めるということにつきましての諸規定、また政令というもの、いろいろなことを想定いたしまして国会の御審議を得ておるわけでございます。したがいまして、その暫定措置法並びに政令の実施見込み事項、こういう御承認を得た枠内をはみ出さない範囲においては国会の御承認を得る必要があるかどうかという問題は法律的にも十分検討を要する問題だ、私はこう考えております。  よその国の漁業専管水域の中に入ってまいります場合におきましては、日本人が、日本の漁船がいろいろそこで権利、義務を制約されるわけでございますから、これはどうしても国会の御承認を得なければならぬわけでございます。そういう意味におきまして、日ソ基本協定の場合におきましては明確にこれは国会の御承認を得なければならない。しかしそうでない今年度の暫定取り決めをやりますところのソ日協定の場合におきまして、暫定措置法並びに政令の実施見込み、これで国会の御承認を得たその範囲内で行われます場合におきましては、これは鳩山大臣も申し上げましたように、どうしても政令を新たに別途なものをつくらなければいかぬとか、いろいろの問題が起こった場合におきましては当然国会の御承認を得なければならないと思いますけれども、そうでない範囲においては、今後政府部内において十分その辺を研究しなければならない問題だと思っております。
  137. 河上民雄

    ○河上委員 もう時間がありませんのでその辺をさらに追及することはまた後日に譲りたいと思いますけれども、ソ日協定の一つの焦点がいわゆる線引き相打ちにあるんだ、これは政府の力説してやまないところでございますけれども、そういう観点から見まして、外国人の権利、義務だけがかかわってくるのではなくて、また日本人の権利、義務が当然そこにかかわってくるということが言えると思いますし、何よりも主権の問題がかかわっているわけです。そういう点から見まして、いまおっしゃったような形式的な御判断で済むものかどうか私は重大な疑いを持っておるということをここに申し上げまして、きょうの質問を終わります。
  138. 竹内黎一

    竹内委員長 午後八時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後七時三十一分休憩      ————◇—————     午後八時一分開議
  139. 竹内黎一

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中川嘉美君。
  140. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私は、本協定のまず第四条ですけれども、この日本語正文を読んでみたわけですが、若干理解に苦しむわけでありまして、この条文について納得のいく御説明をいただけるかどうか。どう見ても文章上の誤りがあるような無がいたします。  そこで、この第四条が、冒頭のところが、「第一条にいう海域の範囲についで、ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限のある」云々、こう書いてありますが、この条文は一体どういうことを言おうとしているのか、まずこの点を御説明いただきたいと思います。
  141. 宮澤泰

    宮澤政府委員 非常に簡単に申しますと、第一条に定められている海域において日本国民がとることを認められている魚の量及び魚の種類、それから区域、条件等は別の書簡で記したものを渡す、こういうことでございまして、その二項は、先にことしの三月じゅうには日本漁船が協定締結前に漁獲を認められましたので、そこで揚がった漁獲量は第一項で割り当てられる漁獲量の中に算入される、こういう意味でございます。
  142. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私がお聞きしているのは第一項でありますが、     〔委員長退席、山田(久)委員長代理着席〕 いま御答弁のあったような意味がこの条文の中にあるであろうということは私もほぼ見当はついているわけなんですが、私の質問は、この第一項の主語は果たしてどれで述語はどれに当たるのか、このことについて、何遍読んでいても文法的な問題でどうも突っかかってしまう。条文そのものの問題ですが、もう一度御答弁をいただきたいと思います。
  143. 宮澤泰

    宮澤政府委員 この文章の主語は、四行目にございます「具体的な区域及び条件は、」というのが主語でございます。「漁獲割当ての量及び魚種別組成並びに日本国の国民及び漁船が漁獲を行う具体的な区域及び条件は、」ここまでが主語でございます。それで、その割り当ての量、魚種別その他の具体的な区域等はソビエト共和国連邦の権限のある当局が定める。その定める区域及び条件は書簡に掲げられる。六行目に、こう読めるわけでございます。  そこで、「第一条にいう海域の範囲について、」この「ついて、」は共和国連邦の権限のある当局が第一条に言っている海域に関して定める、その海域でこれだけとっていい、こういう種類の魚をとっていい、こういうものは書簡に掲げられることになる、こういう意味でございます。説明がよろしゅうございましたでしょうか。
  144. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 第一条にいう海域の範囲に関して定めるという文章はどこにもないわけで、私、「ソヴィエト社会主義共和国連邦の権限」以降ずうっと終わりまで、「書簡に掲げられる。」までの文章は、文章上誤りはない、このままするっと読めると思います。とすると、この「第一条にいう海域の範囲について、」という言葉、これはこの第四条全体のどこにつくのかという、いまそういう注釈つきと申しますか、に関して定めるという表現で御説明があったようですが、このままではとうてい、このどこにつくのか、また「第一条にいう海域の範囲について、」という言葉は一体何を言おうとしているのか、このままの条文ですと理解できない。したがって私は、この四条の文章そのもの、この解釈をいま一度明らかにしていかなければならない、こう思うのですが、どうもこれを初めからずっと読んでいきますと、「範囲について、」というこの言葉にひっかかってしまう。  それで、ロシア語正文を読んでみますと、この日本文の「第一条にいう海域の範囲について、」のところ、これは第一条にいう海域の範囲においてはとかまたはおけるというふうに書いてあるわけで、ロシア語でブプレジェーラフモルスキーフライオーノフという、この海域の範囲におけるというふうに当然これは解釈ができるのです。このロシア語のブというのは、その中でとかあるいはその中においてとか、におけるとか、あるいは内部で、こういろいろな意味がありますが、どう見てもついてという解釈が出てこない。いま申し上げたような、中でとか、中においてとか、こういうものを意味するところのこれは前置詞であるわけですけれども、もし外務省の日本語正文の「範囲について、」というふうであれば、ロシア語はオという言葉あるいはブアトナシェーニーという言葉、こういう言葉が当然この「について、」という言葉に相当するロシア語として使われなければならない。こういった前置詞の使い方、訳し方によって文章の意味が全く変わってしまうということは、私はこれは重大な問題を引き起こすのではないか、こう思いますが、外務省の、いま私が言ったことに対するとらえ方、この点はいかがでしょうか。
  145. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ロシア語につきまして私十分に堪能でございませんので、さらに御疑問がございましたら、こちらに堪能な者がおりますので御説明いたさせますが、私の了解しております限り、「第一条にいう海域の範囲について、」これは文字どおり、ただいまおっしゃいましたように、「おいて」という表現にロシア語ではなっておりますが、これを「おいて」といたしますと、「おいて」「定められる」という日本語とぶつかりまして、その場所で定めるというようなわかりにくいことになるということから、法制局と協議いたしました際に、この海域に関して定めた割り当て量とか魚種とか、そういう意味上からそういう文章にいたしましたわけでございます。  この日本語につきましては、この最終条文でも、ひとしく正文であるロシア語及び日本語とございまして、ソ連外務省の極東部におきまして厳密に突き合わせをいたしまして、向こうもこれでよろしいという一応了承をとっておりますので、念のために申し添えますが、大体そういう経緯でこの「おいて」というロシア語の原文が、日本語では「について、」というふうに訳されておるわけでございます。さらにロシア語につきまして補足説明が必要でございましたら、いたさせます。
  146. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ロシア語の説明を仮にいただいたとすれば、私がさきに述べたところの訳し方が行われなければならない、当然それは語学そのものの立場からの御答弁であろう、こう思うわけですけれども、いまの御答弁によると、法制局との話し合いの結果云々ということなので……。私はこういうところに非常に疑問を持たざるを得ない、こういうことです。「第一条にいう海域の範囲について、」ここのところを「おける」と置きかえるならば、第四条の文筆は明快に理解できてくるのじゃないか。協定には終わりの方で署名のところがありますが、その手前のところに「ひとしく正文である日本語及びロシア語により」、「正文である日本語」、ロシア語を翻訳したのではない、「正文である日本語及びロシア語により本書二通を作成した。」このようにあります。このように本協定日本文、ロシア文がともに正文である、こういったことから、これは単なる誤訳ではなくして明らかに外務省当局の誤文である、これを見る限りは私はこのように言わざるを得ないわけです。いま法制局との打ち合わせにおいてということですけれども、どうも、また一番冒頭に戻るようですけれども、「第一条にいう海域の範囲について、ソヴィエト社会主義共和国連邦」、こう読んでいきますと、どうも文章にならないわけですよ。それならそれなりの何か注釈なり納得のいく説明というものがこの条文の第一項には当然要求されるのじゃないだろうか、このように思います。いま審議の段階ですからあえて伺いますけれども、いま一度外務省の見解を御答弁いただきたいと思います。
  147. 宮澤泰

    宮澤政府委員 共和国連邦の権限のある当局が定める割り当て量その他、これはどの海域について定めるのかというと、第一条にいう海域の範囲につき定める、この範囲の中について定める、そういう意味の「について」でございます。ですから、意味の上ではこのカバーされる水域について、そこでとられるべき量、魚種その他、そういう意味でございます。
  148. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうすると、もう一度伺いますが、この解釈の上からは、本来ならばこれは「における」あるいは「において」ということにならなければならない形になっていますけれども、ソ連側では最終的に「について」という表現でよろしいという、何らかの形で先方の了承をとったのかどうか、もう一度ちょっと御答弁をいただきたい。証拠があるかどうか。
  149. 宮澤泰

    宮澤政府委員 これはソ連の外務省と正式に厳重な照合をいたしました上で双方で署名をいたしたものでございますから、そういう意味では確認をとったものでございます。
  150. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 この条文だけにとらわれるというわけにもいきません。きょうはかなり多くのことを伺いたいと思いますが、特に前文のところに「日本国の国民及び漁船が、北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合において伝統的に漁業に従事してきたことを考慮し、」とありますけれども、わが国ソ連邦の地先沖合いにおいて伝統的に漁業に従事してきた海域、この海域についてまず明らかにしていただきたいと思います。
  151. 岡安誠

    ○岡安政府委員 ソ連邦の地先沖合いにおきましてわが国の漁船が伝統的に漁業に従事してきた海域は、オホーツク海、日本海、べーリング海等の公海部分ということになるわけでございます。
  152. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうしますと、この地先沖合いの問題については後ほど渡部委員からも改めて質問があると思いますので、この場では深くは言いませんけれども、いまの御答弁、オホーツク海、日本海、べーリング海云々という御答弁がありましたけれども、先ほどの休憩以前の委員会における質問に対する農林大臣等の御答弁を聞いておりますと、まことに明確な定義がない、一般的な規定がないというような御答弁であったわけです。それではこのように明確にいま幾つかの御答弁があったわけですけれども、その辺の関連は果たしてどうなのか。そのようにはっきり決まっているわけですね。これをちょっと御答弁いただきたいと思います。
  153. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いま先生の御質問で、伝統的に漁業に従事してきた実績はどうか、事実はどうかという御質問でございますので、私ども伝統的にわが国の漁船が漁業に従事してきた海域を申し上げたわけでございまして、この地先沖合いの定義がどうかという御質問お答えしたわけではないと思っております。私どもは、実績がそうあったということをお答えいたしたというふうに御了解いただきたいと思います。
  154. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは第二条ですが、「ソヴィエト社会主義共和国連邦国民及び漁船のために日本国の地先沖合における伝統的操業」こうありますけれども、ソ連邦がわが国地先沖合いにおいて伝統的操業を行ってきた時期ですね、これはいつごろからか、お答えをいただきたいと思います。
  155. 岡安誠

    ○岡安政府委員 ソ連船がわが国近海において操業を始めましたのは、昭和三十年ごろからでございます。本格的に操業をいたし始めましたのは昭和四十六年ごろというふうに私どもは見ております。
  156. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 わが国北方海域漁場そのものを開拓して開発に従事したのは、すでに徳川時代からだった、こういうふうに言われておりますけれども、ソ連わが国地先沖合いにおいて本格的に漁業を開始したのは、ただいまの御答弁にあったように、四十六年ということは六年前という計算になりますが、わが国の場合は徳川時代。こだわるわけではありませんが、ソ連の場合にはきわめて最近のことである。伝統的と言う場合にその条件が成立する要件はどういうものを指すのか、六年で伝統的と言うのかどうか、何をもって伝統的と言えるのか、この辺に私はまず疑問を持たなければならない。ソ連邦がわが国地先沖合い漁業を行った事実のみをもって、五、六年前ですから、伝統的とみなすことが果たしてできるのかどうか、ソ連日本近海における漁業を果たして伝統的漁業と言うことができるのかどうか、大いに疑問を持たざるを得ないわけです。五、六年でも伝統と言うのか、果たして何年以上をもって国際的に伝統とみなされるのか、いろいろな問題が出てくるわけですけれども、どうでしょうか。五、六年でも伝統と言えるのか、国際的には一体どうなのか、何年くらいをもって伝統と称するか、この辺についてお答えをいただきたいと思います。
  157. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 国際法的に見て、伝統的操業という文言をもって表現さるべき操業実態が何年であるかという明確な基準はないというふうに考えます。
  158. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうすると、この伝統という言葉は一体どこから出てきたのかということにもなるわけですが、どうですか。五、六年で伝統的と言えるのかどうかということですね。この点はどうでしょうか。
  159. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいまの水産庁長官の御説明でも、ソ連船がわが国近海で操業を開始したのは昭和三十年ごろからである、本格的——本格的ということの意味がどうであるかということにもよりますけれども、非常に大規模にあれしたのは昭和四十六年ごろからだ、こういうのが実態であるというふうに理解いたしております。  ここでいずれにしろ「伝統的操業」と言っておりますのは、そのように、過去においてきわめて短期間ということではなしに、過去において操業が行われていたという事実を「伝統的操業」ということで表現したものでございます。
  160. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 これ以上詰めませんけれども、わが国の場合には徳川時代からだという非常に長い歴史を持っている、ソ連の場合には五、六年であるということだけは一応考えに入れて交渉に当たりませんと、同じようなてんびんにかけられて、全く相互主義的な、いわば向こうもこっちも伝統的に同じ期間やってきた、長年やってきたんだというような物の考え方で対ソ折衝するということに大きな問題がまた出てくるのではないかと思いますので、この点だけ一つ私から御注意を申し上げておきたい、この問題についてはそのように思います。  協定前文において「日本国の国民及び漁船が、」とありまして、ずっときて「ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合において伝統的に漁業に従事してきた」、この「漁業に従事してきた」とこうありますが、第二条のところでは、途中からですけれども、「日本国の地先沖合における伝統的操業を継続する権利を維持するとの相互利益の原則」とこうなっておりますけれども、「伝統的に漁業に従事」ということと「伝統的操業」ということではどう違うのか、なぜこのように使い分けるのか、その辺の理由について伺いたいと思います。
  161. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生御指摘の二点の表現につきまして、基本的に深い意味の違いはないというふうに考えます。いずれにしろ、そこの文脈上最も適当な表現を使ったということを申し上げる以外にはないんではなかろうかというふうに考えます。
  162. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いずれにしても、この地先沖合いにおける漁業に両方とも関係しておるわけなんですね、文章をごらんになると。たいして変わりないと思いますという御答弁ですが、それぞれの国における地先沖合いにおける漁業であることは間違いがない。何でこんなふうに表現を違えなければならないのか。その理由としてそれほど大きな理由はございませんということになりますと、この中にはこういう個所がたくさん出てくる可能性も出てくる。いま一点だけとらえて言っておりますけれども、非常に繁雑になるであろうし、誤解とかあるいはいろいろな問題を引き起こす可能性も出てくるんじゃないか。同じことならば統一された文字にするべきではないか、このようにも私は思うわけですけれども、こういったことと関連しまして、第二条はそれぞれの漁業水域での漁業というものは相互主義を原則とするということを規定してありますが、この意味からも地先沖合いの定義というものを明確にしていかなければならないわけで、どうしても地先沖合いについての日ソ両国の解釈というものを明らかにする必要があるんではないか。先ほど農林大臣から、領海内の操業の有無に関して御答弁がございましたけれども、万一ソ連が領海内でも日本漁業を認めるという解釈になれば、ソ日協定においては、ここで言うところの相互主義の原則によって、ソ連船の日本領海内での操業を認めざるを得なくなるのではないか。こういう場合に領海内の漁業相互に認めることになるのかどうか、いま一度明確に御答弁をいただきたい。先ほど農林大臣からの御答弁は、そういうことが決してないようにという趣旨の御答弁でしたけれども、私がいまお聞きしているのは、万一ソ連が領海内でも日本漁業を認めるというような場合ですね、向こうがそうなってきた場合はどうでしょうか。
  163. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 わが方としては、ソ連の領海内での操業政府間の協定に基づいて要求していく、要請していくということは考えておりません。と申しますことは、中川先生御指摘のように、その場合には当然日本沿岸沖合いにおける領海内での操業相互利益の原則ということで要求される、こういうことに相なるわけでございまして、国会で領海法を制定をしていただき、三海里から十二海里まで幅員を広げていただいた。それには、ここで御説明申し上げるまでもなしに、外国漁船による日本の三海里の外十二海里までの間で相当無秩序操業が行われてわが国の沿岸漁業者漁業上の制約を受け、幾多の漁具その他の被害を受けた、これを排除しなければならないという強い漁民の願望にこたえて領海の幅員を十二海里にしていただいた、こういう事情からいたしましても、わが方として相互利益の原則ということで領海内の操業を外国船に認めるようなことは、わが方からそういう条件を生み出すようなことはいたさない考えでございます。
  164. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 大臣の御答弁をひとまず信頼いたしまして、次に伺いますが、したがって本協定第二条の相互利益の原則、この規定によってもしもソ日漁業協定が成立しなかった場合、あるいは長期交渉が妥結しない場合、本協定の効力というものを一時停止するとかあるいは無効とする理由になるかどうか、このいわゆる相互利益の原則というところがそういう理由になるかどうか、この点はいかがでしょうか。
  165. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この点につきましては、交渉の経過を御説明を申し上げて、ここに至った結論的な第二条に相なったということを御説明いたしたいと存じます。     〔山田(久)委員長代理退席、委員長着席〕  当初ソ連は、三海里と十二海里の間でも操業をしておったことでもあり、またこの海域ソ連が特に必要とするサバ、イワシというものが漁獲されておりました関係もありまして、執拗にこの海域での操業実績を認めろ、操業させろ、こういう要求をしておったわけでございます。この点につきましては、私は強く初めからこれを拒否し続けてまいったわけでございますが、五月二日に領海法が成立をいたしまして十二海里になりました事情を踏まえて、絶対にこの領海内では操業は認めないということを、領海法を盾に強く拒否をいたしたわけでございます。しかるところソ側は、それでは協議をして両国合意をした場合にはやれるようなとびらだけはひとつあけておこうではないか、窓だけはあけておこうではないかということで、第二文といたしまして、「この原則に基づき両締約国は、この協定の発効前に行われていたソ連邦及び日本国の領海の若干の水域における伝統的操業の実施問題を検討する。」こういう第二文をつけ加えまして、両国で今後協議をして、やるようなことで合意がなされた場合にはやっていいではないか、一方がそれを拒否した場合には協定ができないのであるから、しかしこれを協議するだけの窓は閉ざすべきではない、こういうことで第二文を加えてきたわけでございます。これに対しまして私は、新しい領海法が国会で御承認をいただいたその経緯等から見て、今後いかなる場合、またいかに両国間で検討協議をしても、わが方としては絶対に領海内の操業を認められない、できないこととできることとあるわけでありまして、絶対にこの立法の趣旨から言ってできないことを検討するなどという、そういう窓を開いておくというそれ自体が、国会で御承認を得ることにはならないということで強硬に反対をいたしまして、この第二条の第二文というものも、イシコフ大臣はついに了解をいたしまして、これを削除することに相なった次第でございます。したがいまして、ソ日交渉におきましてソ連側が再びこの問題を蒸し返してくると私は考えておりません。また、絶対に領海内で操業を認めるようなことはいたさない、これは政府の不動の方針である、こういうぐあいに御理解を賜りたいと存じます。
  166. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 大変御丁寧に経過を御説明いただいたわけですが、それでは、ソ日漁業協定が成立をしなかった場合、これは仮定ですけれども、あるいはまた長期交渉が妥結しない場合、先ほど私が申したとおり、本協定の効力が一時停止するとかあるいは無効とする理由になるかどうかという、この「相互利益の原則」について伺ったわけですが、これは果たして、この最悪の事態というものを考えなくてはいけない、そういうことでお聞きしているわけですが、条約論の立場からはどうでしょうか。
  167. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この第二条で「相互利益の原則」と申しますのは、ソ連の二百海里水域の中に日本漁船の操業の権利を認めてやるかわりに、日本沿岸沖合いにおける、具体的には日本漁業水域の再八十八海里の中においてソ連漁船の操業をすることを認めさせる、日本側はそれを一定の条件のもとにその操業の権利を付与する、こういう意味合いで「相互利益の原則」、こういうことをうたったわけでございまして、この領海の操業問題でもうイシコフ大臣とは十二分に意を尽くして論議を重ねてこういう結論に相なったことでございますので、そのことが「相互利益の原則」ということと相絡んでソ日協定がこのために不調に終わる、こういうことは私はないものと確信をいたしております。
  168. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 本協定の第六条ですけれども、日本漁船が第一条に述べられている海域において漁業をする際に、ソ連邦の規則に従わなければならない、もしこの規則に違反した場合にソ連邦の法律に従って責任を負うことになっているというわけですけれども、先ほどからもいろいろ論議が出ていたようですが、この責任の範囲、これはどうなっているか、再度伺いたいと思います。
  169. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ここで申しますことは、本件協定またはソ連邦の漁業規則に違反した日本の漁船は、ソ連邦の法律によりまして行政処分に服し、あるいはまた裁判を受けて有罪と認められたときは処罰されるということを意味するものと解しております。
  170. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 もう少し具体的に、この量刑の範囲はどうなっておるかとか、体刑そのものはあるのか、罰金刑の場合にはその範囲はどんなふうになるのか、こういったことについてもお答えをいただかなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  171. 宮澤泰

    宮澤政府委員 しばしば引用されております最高会議幹部会令の七条でございますが、ここに、   本幹部会令の諸規定あるいは本幹部会令の実  施のために発布される規則の違反に対しては、  その違反者は、罰金による処分を課せられるも  のとする。   行政手続で課せられる罰金額は、一万ルーブ  ルまでとする。   もしも上記違反が重大な損害を与えるか、そ  の他の重大な結果を招来したか、あるいはその  違反がくり返されたときは、その違反者は裁判  責任に問われるものとする。裁判手続によって  課せられる罰金は、その額を十万ルーブルまで  とする。本幹部会令第一条で規定されている海  域における魚類及び他の生物資源の保護を担当  する機関の申し入れにより、裁判所は違反者が  使用した漁船、漁具及び器具ならびに不法に捕  獲したすべてのものを没収することができる。   外国漁船の逮捕あるいは拿捕の場合には、ソ  ヴィエトの権限ある関係機関は遅滞なく、旗国  に対し、とられた措置及びすべてのその後の処  罰措置を通報するものとする。拿捕漁船及びそ  の乗組員は、それ相当の担保あるいは他の保証  が納入された後直ちに釈放されるものとする。このような規定になっております。
  172. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 同じくこの六条によって、日本漁船が違法行為によって拿捕される、ソ連邦の法律によって裁判にかけられる場合、その訴訟手続そのものはどうなりますか。たとえばわが方から弁護士の派遣はできるかどうか、この点をお答えいただきたいと思います。
  173. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ソ連の弁護士がつくことになっておりますので、日本から弁護士を派遣することは認められておりません。ただ、日ソ領事条約によりまして、逮捕、拘禁されました場合には、直ちに日本の領事官が通報を受けますとともに、必要に応じてその被逮捕者と連絡をして事情等を聞くことができる、そのようになっております。
  174. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 したがって、これらのことがすでに具体的に判明していなければならないのじゃないだろうか、本協定の賛否は別として。承認が調った暁には直ちに現実の問題となることもあり得る、拿捕の問題ですね。したがって、私が先ほど申した、すでに具体的にいまいろいろなことが判明していなければならない、このように思うわけで、こういったことはすなわち漁民の救済措置に直接結びつくのではないか。早急にやはりこういった手が打たれなければならないということですが、政府のこのことに対する見解として、鳩山大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  175. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本の漁船員が拿捕され、また場合によっては裁判まで受けるというようなことは、漁民のために大変重大なことでございますので、これらの点につきましては、周知徹底を図るように極力努力をいたしたいと思います。
  176. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 第七条ですけれども、ソ連邦の公務員はいわゆる漁業水域において操業中の日本漁船に乗船できることになっているわけですが、そして日本政府ソ連邦の公務員が日本漁船に滞在をすることについての経費、これをソ連邦に償還することになっているわけですが、まず第一の疑問は、「償還」という言葉、これは一体どういう意味なのか。なぜこれに要する経費は日本政府が負担するとか、こんなような言い方ができなかったのかということですね。返済でもいいはずです。何か「償還」というと非常にどぎつく感ずるのですけれども、なぜこのような言葉がここで使われているのか、お答えをいただきたいと思います。
  177. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 この第七条の二項の趣旨は、基本的にはソビエト側の公務員がわが国の漁船に滞在する場合に、それに関連する経費が基本的には日本側の負担であるということを意味するものでございまして、現実に具体的な費用を当該公務員がわが方の漁船にその場で支払った場合には、日本国政府がその費用を今度はソ連の権限のある機関に償還するという趣旨でございます。
  178. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 公務員が日本の漁船に対して支払った場合にはその分を償還するという意味ですか。
  179. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 さようでございます。
  180. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そういうニュアンスは、ちょっとこれだけ読んだだけでは理解されないよう気がしますね。償還されるというのは、負担するというふうにするっと読めるのではないか。初めに私が申し上げたとおりなのですが、ソ連の側の公務員が滞在経費を支払った、それはソ連に償還をするのだ、そういうことはここで言えているわけですか。何か根拠がありますか。「償還」という言葉を使っているからそういうことであるということなのかどうか。
  181. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 この点につきましては、交渉の過程におきまして、これは基本的にはソ連側から提案された案でございますが、そこの意味につきまして、まさに先生が御懸念のように、現実に日本側が見る必要のない場合に日本側の負担になるというようなことがあってはならないということで、この条文の意味につきまして向こう側と大いに詰めました。再三再四詰めましたところ明らかになりましたことは、要するに、まずソ連側の官憲の日本の船舶における滞在の費用を現実に日本側の漁船が見る場合には、これは経費の償還ということは起こらないわけでございまして、その場合には何らこの条項が働く余地はない、しかしながら、ソビエトの官憲が当該日本漁船に対して現実に滞在に要した経費を支払っていく場合に、それは後ほど、その支払った額に相当する金額をソ連側の官憲に日本政府から支払う、それを償還する、こういうことであるわけでございます。
  182. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうであるならば、よけい何か第二項のこの四行にわたる文章では、ちょっとお粗末といいますか、その本当の意味合いというものは出てきてないような気がしてならないわけですけれども、これに関連して、それじゃもう一つ聞きますけれども、経費の問題で、この経費の算定基準というものはどうなっているか、この点について算定基準そのものをお答えいただきたいと思います。
  183. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 算定基準と申しますような明確な基準があらかじめ決められているわけではないわけでございますが、要はここの規定は、ソ連側の官憲が日本の漁船に乗ってくる、その場合に必要となるべき経費でございますから、たとえば具体的には食費とか通信機の使用費とか、長期の潜在の場合には船室を貸す費用というようなことになるわけでございまして、それらが具体的にいかなる金額であるかということは、これは当該日本の漁船が現実に負担すべき経費が基礎になるわけでございますから、そういう意味で、その日本側の漁船の負担した経費に相当する額、こういうことになろうと思います。
  184. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ところで、第八条についていままでもいろいろと論議されておりますが、この中の「相互関係における諸問題についても、いずれの政府立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」こう規定されていますが、このことは、日ソ両国領土問題に対する立場または見解である。こう言われていますけれども、確認のためにお聞きしておきますが、わが方としては明確に北方四島に対する領有権の主張であり、ソ連の四島占拠ということは不法である、こういう見解だと解しますが、いかがですか。確認をしておきたいと思います。
  185. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そのとおりでございます。
  186. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 御答弁がイエスということであれば、今回の線引きそのもので主張を貫くことができたというふうにもなろうかと思いますが、ソ日協定においても、日本の主張が貫かれるように、はっきりと具体的な表現で協定文に入れられなければならないのではないか、このように思いますが、ここでもう一つ政府の御見解を聞いておきたいと思います。
  187. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほど鈴木農林大臣からもお答えになられましたように、ソ日協定の第一条におきまして、明確にわが方の国内法、すなわち漁業水域に関します暫定措置法を明確に引くことによりましてその趣旨を明らかにする所存でございます。
  188. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 北方四島周辺に対する線引きというものは、わが方とソ連両国の間に重なる部分がありますけれども、この水域における漁業とかあるいは裁判権というものは日ソ競合の水域となるべきだと私は思いますが、この点はどうかということ。こういうことで初めて実態的な相打ちということになるのではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  189. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 基本的にそのように考えております。
  190. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 したがって、大臣のそういう御答弁であるならば、この水域に関する限り、どちらか一方の国、まあいまソ連ということになりますが、一方の国による権原の主張というものを協定に盛り込むということ自体は、私としては納得がいかないわけです。ソ日協定交渉においては、この水域の権原に関してわが方はどのように対応しようとされるか、この点を伺っておきたいと思います。
  191. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これはソ側日本漁業水域に関する暫定措置法の適用を受ける海域操業するところの協定交渉を行います場合におきましては、その大前提として、この漁業水域に関する暫定措置法適用海域である、こういうことを認めなければソ日協定交渉に入れないわけでございます。この点につきましては、イシコフ大臣は、日本暫定措置法が五月二日に成立をし、そして公布されておる、七月の一日までにこれが実施に移される、こういうことも十分承知をいたしておりますし、そしてそういうことを踏まえて六月中にはソ日協定についての交渉を東京において始めよう、こういう相互の了解もついておるということでございます。
  192. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 この問題とは別に、原則としてソ日協定内容そのものは、多くの事項について本協定の裏返しあるいはまた読みかえといいますか、そういうことになるんじゃないかと思われますが、この点はどうであるか。それとも本協定とは全く違った内容のもの、ですから日ソとは全く違ったソ日ですね、そういった内容のものになりますかどうか、この点はいかがでしょうか。
  193. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日ソ協定の第二条、これは日ソ協定ソ日協定が時間的にずれて、ソ日協定が後で行われるということで第二条というものがここに設けられたわけでございますが、ソ日協定ではこの第二条というものは要らない条項である、しかしその他の条項につきましては、大部分裏返しといいますか、そのような規定は同様にソ日協定でも設けられる、私はこういうぐあいに考えております。
  194. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 大臣の御答弁を率直にそのまま受けとめていけばいいと思いますが、では一例だけこういったことはどうかという点で確認しておきますけれども、ソ日漁業協定の場合は、許可証の発給とかあるいは許可証の効力の停止または失効、違法行為のソ連漁船あるいはソ連国民に対する裁判権、こういったものは当然明記されると思いますが、この点はそのように解釈してよろしいですね。
  195. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 基本的にそのとおりでございます。
  196. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 これからソ日協定交渉に入られるわけですけれども、わが国の国益というものを考えた場合に、多くの事項について、先ほどの御答弁のとおり、裏返しといいますか読みかえでなければならないと私も当然思いますが、同時に日本側として、特にこのソ日協定交渉段階で国益を前提とした主張というものを十分に検討して貫くべきだ、このように思いますが、この点に関する政府見解及び決意といいますか、そういったものをお聞かせ願いたいと思います。
  197. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、重要な問題として、わが国の領海内での操業はいかなることがありましても絶対に認めない、認められない、こういうことが第一でございます。  それから、領海の外百八十八海里の中におけるソ連漁船を初め外国漁船の操業を認める場合におきましては、わが国の国内法その他漁業に関するところの諸般の規制、取り締まり、そういうものには服してもらわなければならない、これは十分確保いたしまして、そして秩序ある操業をさせる、そういう条件のもとにこれがなされるということが第二でございます。  それから、やはりわが国漁業水域内におけるところの水産動植物、水産資源、この保存と適正な利用ということ。特に資源の保存ということにつきましては、これをわが方の考え方のもとに、漁業政策の上に立ちまして十分確保してまいる、こういうことが重要であると考えております。
  198. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうしますと、たとえばいまの御答弁意味は、こういった場合はどうかということですが、二百海里水域内でのソ連漁船に対しては入漁料を徴収するかどうかですね。暫定措置法の第八条三項には、二百海里水域において操業する外国漁船に対しては入漁料の納入を規定していて、この件について政令で定めるということになっておりますが、その政令はどうなっているか、また魚種別によってこの入漁料は定められるのか、この辺を伺っておきたいと思います。
  199. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この点はやはり相互主義でわが方の態度も決めたい、こう思っております。ソ連側が、許可証発給の際に料金を取るのか取らないのか、また漁獲量に応じてそういう入漁料を支払うことに応ずるのかどうか、また日本要求するのかどうか、これらは同じような条件ということが当然なされなければならぬわけでございます。今度のソ日協定の際におきまして、入漁料関係につきましては最終的な結論を出したい、こう考えております。
  200. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ところで政府は、わが方の二百海里漁業水域内でのソ連漁船の操業区域を制限するものと思われますけれども、ただいまの御答弁からもいろいろ想定はできますが、そう理解していいかどうかですね。たとえば、わが国にとって最も重要な漁場ソ連船の操業を制限するということも考えられるか。この点はどうかということ。ソ連漁船の操業区域を設定するのかどうかという問題ですね。ソ連も二百海里内では、特定の水域については日本漁船を制限しているわけですから、先ほどの御答弁からもほぼ推測されますけれども、いま一度この点も明らかにしておいていただきたいと思います。
  201. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この点につきましては、主として資源保護上の観点並びに日本の漁船の操業の制約を受けないように、こういう点を基本にして操業海域というものを決めていきたい、こう考えております。特に十二海里領海の外でありましても、資源保護上の観点あるいは沿岸漁業者との摩擦、紛争を避けるために、禁漁区等を設定しておるところ、そういうところは当然操業海域として認めることができない、このように考えております。
  202. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは関連して伺いますが、わが国漁業水域に関する暫定措置法第三条三項の規定に基づいて、二百海里漁業水域から除外されるところの日本海域においては、十二海里領海のその線まではソ連漁船の操業は可能なのかどうか。韓国とか朝鮮民主主義人民共和国あるいは中国、こういったところに対して、オーブンになっている区域ですが、ソ連が仮に非常に乱獲をするというようなことがあってもならないと思いますし、そういったものに対する阻止のための何か有効な手段ですね、そういったものはないかどうか、この点を考えておられるかどうか、伺いたいと思います。
  203. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは漁業水域に関する暫定措置法を御審議をいただきました際に、政令の実施見込み事項、こういうものを提出をいたしまして、法律と一体としてあわせて御審議をいただいておるわけでございます。私どもは、今後ソ連はもとより、その他の国と漁業協定を結ぶ、わが方の漁業水域内で操業を認めるという場合におきましては、この漁業水域に関する暫定措置法と、国会であわせて御審議をいただいた政令の見込み事項、こういうものを尊重し、遵守いたしましてやってまいる考えでございます。
  204. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 先ほど同僚委員からの質問の中で、貝殻島周辺の例のコンブ採取協定というのが出ておりましたけれども、私はもう一回、わが党の立場において確認だけしておきたいのですが、本協定すなわち日ソ漁業暫定協定ですね、これとの関係がどうなるか、別々のものと解していいのかどうか、この点だけまず伺いたいと思います。
  205. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 コンブの採取の問題は、領海内操業にかかわる問題でございます。したがいまして、わが方がわが国の領海内での外国船の操業は一切認めないという方針を堅持しておるわけでございますので、自分の方はこれを認めないという立場をとりながらよその国の領海内操業政府として要求をする、そのための交渉を行う、これは私は、わが方の領海内に外国船を入れないというこの方針を貫く場合に影響を受けるおそれが多分にある、このように考えております。そういうような観点からいたしまして、貝殻島のコンブ採取の問題は、これはもともと民間協定としてなされておった問題でございますから、今後も民間の取り決めの問題としてこれが実現を図ってまいるように民間に指導してまいる考えでございます。
  206. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 簡単なお答えで結構ですが、そうしますと、民間ですから、コンブを別の協定とみなして、協定効力の延期ということを考えようとしておられると思いますが、簡単で結構ですから、その点をお答えいただきたいと思います。
  207. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは大日本水産会が中心になっていま考えておるようでございます。
  208. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは鳩山大臣に伺いたいと思います。  日ソ平和条約の前提である領土問題を交渉するために大臣が訪ソすることを過日の委員会で明らにされたわけですけれども、現在のデッドロックをどう打開されるつもりか。ただ領土を返還せよと言うだけでは事態は一向進展しないと私も思うし、明らかになった今日ですから、何か新しいアプローチの方法というものを考える必要があるのじゃないか。大臣はこのことについてそういった何か新しいアプローチのお考えがあるかどうか。このままでは、幾ら交渉を重ねても事態は一歩も前進しないというふうにとれるわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
  209. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の漁業交渉暫定協定交渉におきまして、鈴木農林大臣が大変苦労をされたその大部分は、北方四島水域の問題にあったわけでございます。したがいまして、この漁業問題と関連いたしましても、領土問題がいかに大事な問題であるかということは明らかでありますし、この問題がまた大変解決困難な問題であることも明らかでございます。それで、私どもといたしまして、領土問題につきまして全力をもちまして先方交渉を行う、こういう必要を痛感をいたすわけであります。従来から非常に変わってきたということは、各国が二百海里時代を迎えて、国内法でそれぞれ二百海里の漁業水域法というものをつくるに至ったということであります。これは戦後今日までの間の一つの大きな変化であることは違いないわけであります。したがいまして、この変化の時点をとらえて、日ソ間に懸案の領土問題の交渉を行うということは絶対に必要なことであると私は思います。  そのために何らか新しい考え方があるか、こう仰せられましても、簡単な解決法があるとは私は思いません。しかし、この大きな時代の変化に際しまして、領土問題について真剣に取り組む、そういう姿勢をとる必要がどうしてもあるわけでありますので、そういう趣旨で私はモスクワに臨みたいと思っておる次第でございます。
  210. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いま大臣、大きな時代の変化というふうに言われましたけれども、確かに、北方領土は未解決のまま世代が変わって、新しい世代の人たちの領土問題に対する関心というものが非常に希薄になってくるとも考えられるわけです。われわれはそういう事態を非常に恐れるわけですけれども、政府も百年交渉などと悠長な考え方をここでは当然捨てなければならないし、早急に、ただいま大臣が言われたように問題解決にあらん限りの努力をされなければならないのじゃないか。先ほど私は新しいアプローチと申しましたけれども、たとえばということで申し上げますが、国連総会あるいは国際司法裁判所、仲裁裁判所等において北方領土問題を取り上げてもらうような努力も必要なんじゃないだろうか。要するに、領土問題が最終的に決着がつかない限り、今回の漁業交渉で痛感したような事態、農林大臣長期にわたって非常に御苦労をされた、このように伺っておりますし、また私たちも当然それは認めなければならないわけですけれども、漁業交渉そのもので痛感したような事態が繰り返されるようであってはならないし、また日ソ間の真に相互理解といいますか、そういったものに基づいたところの友好関係というようなものも確定しないのじゃないか、こんなふうに思います。  最後に私伺いますけれども、ただいま新しいアプローチを例を挙げて言いましたけれども、こういったこともいろいろと勘案し、より積極的な領土返還のための作業というものを来るべき訪ソにおいて行ってきていただきたい、こう思いますが、最後に大臣の御決意を承って、本日の私の質問を終わりたいと思います。
  211. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御示唆をいただきましたような点も含めまして、平和条約交渉領土問題の解決を図り、平和条約締結が可能となりますように全力投球をいたしたいと思います。
  212. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  213. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、渡部一郎君。
  214. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大変お疲れのところ恐縮でありますが、当協定の重要性にかんがみ、遅い時間でございますが少々御質問をさせていただきたいと存じます。  ただいま外務大臣は、モスクワに行かれまして領土問題を解決し平和条約締結するための強い意思を表明されたようでございますが、いつごろ行かれるおつもりですか、また何を交渉に行かれるおつもりか、その辺のところを伺いたいと存じます。
  215. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 時期につきましては、やはり先方とも打ち合わせを要しますので、いま確たることは申し上げるわけにいかないわけでございますけれども、私自身の率直な気持ちといたしましては、明年度以降の漁業協定交渉が行われる前にぜひとも訪ソをいたしたいと考えております。しかしまだ明確な時期までは決めておらないところでございます。  何をするのかという仰せでありますが、私どもといたしまして、懸案の問題の解決に一歩でも前進できるようなこと、そのためにあらゆる努力を傾けたいということでございます。
  216. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 明年度以降の交渉が行われる前にとおっしゃいましたのは、漁業協定交渉のことをおっしゃっているのだろうと思いますが、そうしますと、本協定交渉は恐らく十一月ごろには盛りになるだろうと思いますし、またいま参議院選挙が続いておりますから、恐らく大臣は参議院選挙をほおってまでお行きにならないだろうと思いますから八、九、十の三カ月ということになりますですね。その辺でお行きになるおつもりですか。
  217. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 まだ明確に決めておりませんし、先方との打ち合わせも要することでございますけれども、ただいまおっしゃいましたような期間のうちには伺いたいという気持ちでおります。
  218. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 かなり時間的には煮詰まっているのでございまして、それで、おやりになるのは、善隣友好条約とソビエト側が言っておりましたあれを交渉に行かれるおつもりなのか、日ソ平和条約締結するという見通しでお行きになるのか、単に領土問題について意見を交換するために行くとおっしゃっているのか、あるいは田中ブレジネフの共同声明の中の諸問題はほとんど解決しておりませんが、あの中に挙げられた問題を解決に行かれるのか、その辺焦点が非常にあいまいでありますが、どの辺に焦点をしぼられますか。
  219. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日ソ間の懸案の問題は、過去に二十一年間あるわけでございます。したがいまして急速に結論を出すということはなかなかむずかしい問題と考えているわけでございまして、その最初の交渉というつもりで参りたいと思っておるわけであります。
  220. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、まずお決めにならなければならないのは何を交渉するかであります。向こうへ行って向こうの顔を見て決めるというわけにはいかないだろうと私は思いますから、ソビエト側の言われたような善隣友好条約、アジア安保の方角で行くのか、領土解決、平和条約方針方向で行くのか、その二つに分けて聞きますが、どちらをおとりになるのですか。
  221. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そのような具体的な対策をまだ政府として決めているわけではございません。まず前提といたしまして、日ソ間のあらゆる問題につきまして外相の定期会議をいたさなければならないわけであります。全体の国交を修復して日ソ間の友好関係を深める、こういうことが当面必要なことと考えているわけでありまして、そのようなこれからの友好関係の増進の過程におきまして領土問題も解決される問題である、私はこう考えているわけでありまして、ただいま御指摘のような具体的な、どういう方式でどうするかというところまでただいまのところ考えておらないのであります。
  222. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 対ソ外交の場合に、こちら側の立場というのを明確にしてかかりませんと、今回のように二百海里法を交渉の途中でつくり上げましたような妙な事態が起こりますので、大づかみの方針というか、大綱方針は明快につくられまして交渉に当たられるように希望いたします。  その問題につきましてはお話しにくいようですからその辺にとどめまして、本協定の一番の問題点の一つは、領土に関する日本国の主張が先方に受け入れられたかどうかであります。ソ日協定の完成を待たなければならぬ面もあるとは存じますから、改めて詰めてお伺いをするわけでありますが、先日領海法が国会において通過をしておりますが、日本の領海は北方四諸島、竹島、尖閣列島等に施行されておるのですかおらないのですか、またいつから施行されるのですか、その点はどうなっておるか、法律的な点を明らかにしていただきたい。いまからめんどうなことを言いますよ。
  223. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 この点につきましては、すでにほかの委員会及び当委員会で御質疑があったと存じますが、いずれにせよ北方四島はわが国の固有の領土であるというのがわが国立場でございます。したがいまして、現在でも北方四島の周辺にはわが国の領海があるというのがわが国立場でございます。先般成立いたしました領海法によりましてわが国の領海が十二海里に拡張されれば、北方四島周辺のわが国の領海も当然にそれに伴って拡大されるというふうに考えているわけでございまして、領海法の施行はたしか七月一日ということになっていたと思います。
  224. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そこまではお答えの半分ですね。それで、現在三海里幅になっているわけですね。今度十二海里になろうとしているわけですね、北方四島に関しましても、竹島に関しましても、尖閣列島に関しましても。ところが、竹島の方からいきましょうか、現に竹島については三海里線なんだけれども、私は自分で見てないからわかりませんが、武装兵力、武装能力があそこを占領しているわけですね。それに対して海上保安庁はあそこに出張していないわけですね。そしてわが国としては実質的にあそこに施政権を及ぼしていないわけですね。そうすると、いまあなたの言われたわが国固有の領土として十二海里領海が施行されているというのは、頭の中で、観念の上では施行されているが、現実的には施行されていない、こういうことですね。
  225. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生のおっしゃられる領海なり領海法なりが施行されておるという言葉の意味を必ずしも明確に私はつかんでいないかもわかりませんが、いずれにしろ領海は当然にその国が定めた幅において存在するわけでございます。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕  そこで問題は、そのような領海において現実の施政を及ぼし得るかどうかという点であろうかと思われます。いずれにしろ竹島につきましては、その竹島自身の領有権をめぐって日韓双方の主張が相対しておる、そういう意味で紛争地域になっておりまして、島自身に対するわが国の施政が現実に及んでいないという状態がそこにある、こういうことであろうと思います。
  226. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、竹島については現実の施政が紛争が起こっているため及んでいない。及んでいないという言い方でおっしゃいましたけれども、及ぼしてもいないわけですね。海上保安庁については現地に対して出動することが停止されており、海上における海賊勢力に対しては、海上保安庁の要請によって海上自衛隊が出動してこれを排除するということは定められておりますが、それも要請されてないわけですから、むしろ竹島に関しては、施政権が及んでいないのではなくて、施政権を及ぼしていない、及ぼす意思がない、こう見てよろしいですね。
  227. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 竹島につきましては、わが国立場に反して韓国がそこに島を占拠しておるという事態があるわけでございます。それが紛争の原因であるわけでございまして、わが国の海上保安庁の巡視船は定期的にあの周辺を回って島の中における韓国側の占拠の状況を観察し、韓国側の退去を求めるという外交的措置をとっているわけでございます。
  228. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは違いますよ。海上保安庁は三海里線から中に入らないように命じられており、あの辺を外側からは見ているかもしれないけれども、三海里線の中に入って退去しろなんと言うことは命じられていないはずですから、その御答弁はあいまいですね。
  229. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 三海里の中に入るなという指令を受けておるかどうかの点につきまして、私ただいま確信を持っておりません。いずれにせよ周りを回ってその中の状況を調べて韓国側に対して抗議をしておるということでございます。先生の御指摘の方が正しいかもしれません。ちょっと私はその点について自信がございません。
  230. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 さて、大分怪しげな話になってきましたが、そうすると、私がなぜ竹島のことを丁寧に言ったかというと、こういう前提で、今度は北方四諸島の方をひとつやりたいと思うのです。  北方四諸島の方においては、わが国の領海三海里が存在すると堂々言われたわけです。そうですね。北方四諸島についてわが国の三海里領海幅がある。七月一日から十二海里になる。間違いございませんね。そして、これは竹島と同じなんですね。
  231. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 その点につきましても、過日予算委員会において御討議があったと思いますが、いずれにしろ総理及び関係大臣から御答弁されましたところは、わが国としては、これらの島々はわが国領土であるというたてまえから見て、立場から見て、その周辺にはわが国の領海があり、そしてその領海が一般的に拡張されればそれらの諸島の周辺の領海も拡張されるというたてまえであるということをお答えされておるというふうに理解しております。
  232. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あなたはさすがに法律家らしくて、三海里という領海があるというたてまえだといま二度にわたっておっしゃいましたね。たてまえだということは、反対用語として本音というのがあるわけでございまして、本音はそういうものは全然ないのだから、たてまえとしてという言い方で使われる用語であることは御承知のとおりですね。だから、三海里という領海があるというたてまえでいる。予算委員会ではそういうふうに表現する。しかし、本音としては、問題なのは、本体としては政治支配は及んでいない、施政権は及んでいない、竹島とそっくり同じである、こういう言い方になるわけですね。
  233. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 北方四島周辺の領海、わが方の持っておる領海においてわが国の施政が現実に及んでいないということは、先生御指摘のとおりでございます。
  234. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、この北方四島に対する施政が及んでいないという以上は、わが国のこうした交渉事に対する立場は、二百海里線もこの調子で引く、十二海里線も四島に引く。が、実際は施政が及んでいないということで、先方の了解を求めて国内向けにだけ顔を立てる、こういう意味になりますね。
  235. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先方の了解を得て国内向けに云云とおっしゃられた意味は必ずしも明瞭でございませんが、いずれにせよ、政府が従来お答え申し上げておるところは、この漁業水域に関する暫定措置法によって設定せられるところのわが国漁業水域二百海里は、わが国の固有の領土である北方四鳥周辺についても設定せられるということで、あの法律の御審議の際にその立場は明確にお答え申し上げておるところでございますし、その点につきましては、本日の御審議でも鈴木農林大臣及び外務大臣からも御説明があったところというふうに考えております。
  236. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、外務大臣農林大臣に伺いますが、領海の方については外務大臣に伺いまして、二群海里の方は農林大臣に伺いますが、日本の領海は北方四島についても領海法の設定とともに十二海里になるという見解は、日本政府の公式の見解である、こういうことですか。
  237. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国といたしまして、北方四島は固有の領土である、こういう主張をいたしておりますので、領土に伴う領海、これは当然あるたてまえである。たてまえという言葉を申し上げて恐縮でございますが、この三海里の領海は今回の領海法によりまして十二海里になる、このように観念をいたしているわけであります。  しかし、ただいま御指摘がありましたように、現在北方四島はソ連邦が占有をしておるわけでありまして、また、わが国の施政が及んでおらないということも事実であります。したがいまして、領海があるはずである、あるいはたてまえとして広がるはずである、こう申し上げているのは、やはり北方四島に対しますわが国領土であるということを示すために必要なことなのでございまして、したがいまして、そういう趣旨で領海を主張し、その領海がまた拡大されることを主張すべき立場にある、このように御理解を賜りたいのでございます。
  238. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは希望と現実を交錯する行き方でありますから、法律的に言えば、期待と現実を交錯すれば、他の領海に対する主張もまた同様にみなされるという弱点を法律上生じます。したがって、このような希望的な表明をたてまえの上から話されるだけでは、禍根がかえって残るわけであります。ですから、今日の問題になっている協定において、もし日本の十二海里あるいは三海里の領海がこの協定の中で侵されているとしたら、日本側はこれをのんではいけないはずですね。たてまえとしてわが方の領海だと主張したとしても、そういうたてまえを貫くなら、この第一条、第二条は明確に日本側の領海に対するたてまえを打ち破るものになってしまうじゃありませんか。竹島の場合だったら、わが国は竹島に関する韓国側の主張に対して一々抗議して、これは違いますと言って、問題が起こるたびに何回も抗議しているわけですね。ところが、ソビエト側に対しては、抗議するどころかこんなものを結んでしまっているというのははなはだぐあいが悪くありませんか。
  239. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの御質問は、この一条の海域を認めることによりまして、わが国領土といいますか、固有の領土であるという主張を損なうものではないかということに帰着をするのであろうと思うのであります。しかし、その点につきましては、わが国立場は害されない、こういうことが八条で確保されておるわけであります。このもとをただせば、いま御指摘のように、やはり平和条約ができておらないということに帰着をいたすわけでありますから、平和条約を結ぶ場合に、懸案の領土問題につきましてわが国立場を損じてはならない、こういうことが最大の問題であり、わが国の法制上におきましても平和条約を阻害しないような配慮が必要である。したがいまして、いま御指摘のようなこのような協定は結ぶことがおかしい、わが国の領海を侵すのではないか、このような御主張でありますけれども、わが国といたしましては、北方四島は固有の領土である、こういうたてまえをとっておる。歯舞、色丹の二島につきまして、これにつきましてはわが国といたしまして一九五六年に共同宣言におきましてある約束をしたわけであります。しかし国後、択捉島につきましては、何らの約束もなくして今回まだ解決を見ずにおるわけであります。しかし、これらの点につきましてわが国の固有の領土である、この主張を損じてはならないというのが政府の一番大切に考えておる問題でありまして、領海がこの第一条の水域によりまして侵されるではないかという御指摘は、その限りにおきましてはごもっともでありますけれども、これは漁業だけの問題に限りまして今回このような措置をとったということでありまして、これらの水域におきまして日本が国内法としていかなる措置をとるかということにつきましても、これが将来の平和条約の際に決定せらるべき領土問題についていささかも支障を来すようなことはいたしてはならない、このような考えでおるわけでございます。
  240. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣は私の質問を誤解なさっておられるわけでありまして、第一条において海域と認められた地点を考えれば、わが国領土に対する立場を損なっているというふうに私が質問しているように受け取られたのでありますが、違うのであります。私の言っているのは別の表現で申し上げておるのであります。私の言っているのは、たてまえでこの海域には領海があるというふうに説明されたから、第一条とぶつかってくるわけですね。領海があるのにほかの国ともう一つ条約を結んで領海を放棄するのですから、そういう言い方をすれば、領海が現にあるのにこれを放棄したという言い方をすれば、これは領土主権はなくなるわけですね。そういうたてまえという言葉を使って御説明なさろうという御苦心はわかります。だけれども、そういう言い方では、わが国領土主権を放棄したと詰め寄られたときにどうしようもない立場になるのではないですかと私は聞こうとしているのです。説明が下手だと申し上げておるのです。条約局長はもう少しそこのところを巧みに御答弁いただかなければ私は質問のしようがない。よろしゅうございますか。  ほかの領海は全部本物の領海ですね。本音の領海なんです。向こうにたてまえの領海があるんだ。本音とたてまえでやりましょう、その方がわかりよさそうですから。本音の領海の部分だったら本当の領海なんだから、これはもうちょっとでも先方の権益が及ぶのはノーと言わなければいけない、それはこっちの立場ですね。たてまえの領海が向こうにあるんだ。たてまえの領海の部分と本音の領海の部分と一緒にして議論したらまずいんじゃないですかと私言っておるのです。ここの中ではたてまえの領海の問題が議論されているわけですね。だからこの四条、五条、六条、七条とこう見てみますと、ここの中ではすさまじいことが書いてあるわけだ、簡単に言うと。  四条においては、漁獲割り当て権はソビエト側にある。魚種別組成指定権は向こうにある。漁獲をする海域を指定する権利は向こうにある。また五条においては、許可証発給権は向こうにある。日本側の漁獲に関する情報を提出せしめる権利が向こうにある。日本側の漁船の操業日誌の記載をソビエト側の指定する手続によって記載を命ずる権利を向こうは持っておる。料金徴収の権利もそれについて持っている。六条においては、「第一条にいう海域における生物資源の保有及び漁業の規制のためにソヴィエト社会主義共和国連邦において定められている規則に従う」、日本用語によれば、法律、法令に従うということを命令する権利を先方は持っておる。七番目には、日本の漁船に先方の公務員が乗船権を持つ。検査の実施について日本側の漁民が先方に協力するということを命ずる権利を持っておる。しかも乗った場合の費用を日本側に払わせるという権利を向こうが持っておる。日本の漁船を拿捕する権利を持っておる。拿捕したら、今度は適当な担保かそのほかの保証があったら釈放する。保証がなければその担保を取り上げ、押さえておくという権利を持っておる。  私はわざわざ権利という言葉を使いまして説明しましたが、行政権も司法権も十分に先方は行使している。施政が及ばないなんというようなやわらかい言い方でなくて、わが国の施政が及ばないんじゃないですね。先方の施政が全部及んでいる。先方の施政が全部該当海域においてはわが国側の漁民あるいは領土に対して及んでおる、そういうことでしょう。
  241. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生がただいまお挙げになりました各条項の規定内容そのものは、いずれにせよいわゆる二百海里の漁業水域に対して行われるところの漁業の規制措置でございます。これはその第一条において、わが国は、ソ連側が幹部会令第六条及びソ連側決定に基づいて定められた海域において、漁業の規制を現実に行っておるという厳しい現実があるわけでございまして、この厳しい現実のもとで、わが国としてはそこで行われておるところのソ連側によるところの漁業の規制を前提として、わが国の漁民の四島周辺における操業の安全を確保するために、ソ連側が行う漁業の規制の範囲、その限界としてはその海域を認めるということにしたわけでございます。したがいまして、先生のお挙げになりましたような条項が北方四島周辺においても適用になるわけでございますが、この協定の第一条にありますように、協定の目的は、わが方の漁船が二百海里の水域において操業するところの条件及び手続を定めたものであります。そこでわが方といたしまして、わが方の立場から見ても、ソ連の本当の領土であるところから引かれた漁業水域と同じ条件、手続で北方四島水域においてもわが方が操業するということにしたわけでありますけれども、そのことによってこの四島に対するわが国領土主権が害されることがあってはならないということで、協定第八条を設けて、領土問題に対するわが国立場が害されないということを明確にしたわけでございます。
  242. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 局長、その表現は違いますよ。そういうふうに言うから話がごちゃごちゃするので、わが国領土主権は害されないんじゃなくて、もう現に害されている。そこにいる日本人はつかまえられるんだし、そこにいる人たちは魚の割り当てや何かでつかまえられるんだし、裁判権は向こうにあるんだし、いま領土主権に伴うものはないんだよ。ないんでしょう。ないのに、あなた領土主権は害されないと言ったって、それはあくまでも頭の中だけで害されてないわけ。条約局にとっては害されてないわけ。漁民にとっては害されっ放しなんですよ。そうでしょう。だからあなた、言葉をそういうふうに使い分けられては困るのですね。  私が言うのは、よろしゅうございますか、ここをわかっていただきたい。これは日本側領土主権を害されたと私は言ってない。そうじゃなくて、ここでは現在日本側の施政が及んでないんだ。ここまではお互い合意ですよね。施政が及んでない。及んでないので、わが国にとっての領土主権というのは何なのかを説明してもらいたい。私に言わせれば、それは沖縄の過去の姿においては潜在主権という言葉で先方説明し、われわれはその潜在主権という言葉を頼りにして沖縄の返還をかち取ったじゃありませんか。今度は潜在主権ということさえ許されてないわけでしょう。だからここのところで、ぼくに言わせれば、領土主権を取り戻すための期待権、交渉権みたいなのが残っているだけでしょう。それを何と言うのですか。それと現実の領土主権とをごちゃごちゃにしてはいかぬと言うのです。話は混乱するばかりじゃありませんか。そこを明確にしていただきたい。ここの北方四島の海域に対してどういう権利が残っているのですか。私が心配しているのは、この協定を結ぶことによって、歯舞、色丹、国後、択捉について、歯舞、色丹については北海道の一部であると日本が主張した事実がいままでにもあります。歯舞、色丹は北海道の一部である、地質学的にもそうだということまで論証されている。国後、択捉についてはクリール・アイランドの中に入ってないと主張したこともあります。そうでないこともあったようですが。じゃ、この歯舞、色丹、国後、択捉というのは、わが国領土主権に関する見解においては害されていないという説明はわかりますが、領土主権は害されてないんじゃないんだ、害されっ放しなんだ。いままでは不法占領だったのか無法占領だったのか、そうしていまはこういう協定を結んだからには、不法占領とも無法占領とも言いがたいでしょう。どういう権利権原に変わっているのですか。それを法律的にぴしゃっと巧みに述べて、私たちがああなるほどな、こういうふうにすればいいんだなというふうに思うようにしていただきたい。たてまえと本音なんというのは法律用語じゃないじゃないか。法律の番人と言われる外務省条約局は、もう少しすばらしい知恵で御説明になってもいいじゃないですか。いかがです。
  243. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 説明がうまくないという御指摘は甘んじなければいけないかと存じますけれども、私がるる申し上げておりますところは、北方四島周辺に関する漁業の規制に関する限りは、北方四島周辺においてソ連側が行っている漁業規制を前提として、そこでわが漁民が他の水域と同じように、同じ条件で入漁することによって操業の安全を確保するということにしたのが今回の取り決めなわけでございます。  そこで問題は、ただソ連側によるところの漁業の規制を、いかなる留保もなしに、断りなしに認めるということになれば、まさにその根源のその島に対するわが国の領有権を捨てたということに解される危険があるということで、その根源のわが国領土主権というものは決して放棄してないぞということを第八条で明記したわけでございます。  ただ、先ほど先生から潜在主権というお話がございましたけれども、これはいまさら先生に御説明申し上げるまでもなく、潜在主権は沖縄においてわが国がかって持っていた権利でございます。これは御承知のように、平和条約第三条において沖縄に対する行政、司法、立法のあらゆる権利をアメリカに与えて、アメリカが行使することを法律的にも認めて、すなわち沖縄に対する施政権をアメリカに対して認めたということでございまして、そこでその根っこに残っておるところのわが方の法的立場を潜在主権というふうに表現していたわけでございますが、今回の場合には、北方四島に対しては、わが国はこの北方四島に対する施政権をソ連が行使することを認めたことはないわけでございますから、ソ連があそこにおりますのは、依然として根源の領有権なしにそこに居座っておるという意味において、不法な占拠だという事態は依然として変わっていないわけでございまして、そういうわが方の立場は変わっていないということを、今回の漁業の規制に関する限りは、今回のようなことを取り決めても、なおかつわが国の根源的な領土領有権主張というものは害されていないということを、第八条で明記したということになるわけでございます。
  244. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、いますごいことを言われたわけです。北方四島に関してはソビエト側の不法占拠であるという立場である、いま言われた言葉を一つつかまえているわけですよ。不法占拠であるといま言われた。それでソビエト側は正式の領有権なしに居座っていると認めている。今回の協定においては、こういう協定は結んだけれども、領有権に基づく施政権を放棄したものではなく、領有権という根っこのない権利について、日本の漁民の安全を図るためにそれを仮に与えたのである、こういう意味ですか。
  245. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 たびたび繰り返しになりますけれども、わが国は、御承知のようにこれら四島に対して、四島がわが国の固有の領土であるという立場をずっととってきているわけでございます。ソ連側がそこにおりますのは、法的な根拠なくしてそこにいるという意味において不法であるということも、わが国立場であるわけでございます。これらのわが国立場が今回の協定によっても変わっていないということを申し上げているわけでございまして、今回の協定は、要するに漁業の規制に関しては、あそこにソ連側が現実の規制を行っておるという事態を前提としてその操業の安全を確保するために、それを他の漁業水域におけると同じような条件で入漁することを取り決めたというにすぎないわけでございまして、ただそのことによってわが国の領有権主張が害されたというふうに解されることがあってはならないということで、第八条においてそのようなことはないということを明確にした、こういう関係でございます。
  246. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 農林大臣に伺いますが、いまの応酬を聞いておられまして、これで交渉されているときによろしゅうございますか。というのは、わが日本国民としては、ソビエト側は不法に占領しているのである、漁民の大事をおもんばかるがために、わが国民にかかわる権利権原を、根っこのない権利を部分的に今回一部先方に与えることによって漁業の安全を確保した、あくまでもこの北方四島に対する先方の主張並びに占拠している事実というのは不法な行為である、これでよろしゅうございますか。
  247. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今回の日ソ漁業協定、これに関する第一条の問題、第二条の問題、第八条の問題、これは先ほど来政府見解を外務省から申し上げておったところでございます。  そこで、私は角度を変えまして、先ほど渡部さんが、わが国漁業水域に関する暫定措置法が五月二日に国会で決定されたのであるが、これを今後のソ日協定なり基本協定においてあくまで貫くつもりであるかどうか、こういう御質問があったわけでございます。  この点につきましては、私は、わが国漁業水域に関する暫定措置法ソ側が頭から否定をしてまいりました場合、あの北方四島の沖合いの海域について否定してきた場合、これはソ日協定交渉にも入れない、わが方としてはそういうソ側の主張というものは断じて認めるわけにはまいらない、こういう立場でございます。  そこを今度はソ側が、現に自分の方で北方四島を占有し、施政を行っておることであるから、あの沖合い海域については領海等と同じように日本漁業に関するところの管轄権を行使することを拒否する、こういう主張をやってくる、あるいはこれは第十四条に伴うところの政令等で、あの海域についてのソ連国民及びソ連の漁船については適用除外すべし、こういう要求をしてくる、あるいは第三条に基づいて適用海域からあの部分を政令ではずすべきである、こういう主張をしてきた場合、これは高度の政治判断を要する問題である、私はこのように考えております。つまり第三条なり第十四条の政令で適用除外を求めるということは、その前提としてわが方の漁業水域に関する暫定措置法というものが適用されておる海域というものを認めた上で十四条なり三条で適用除外を求めてくる、こういうことでありますれば、これはいまの北方領土の未解決の問題、こういうわが方の立場を害するものでない、こういうことで、そういう要求の際にそれをのんでソ日協定締結するかしないかということは、高度の政治判断を要する問題である、私はこう考えます。しかし、漁業水域に関するところの暫定措置法そのもの、あの海域に及ぼすことそのものを否定してかかってくるならば、認めるわけにいかない。国会の決定ではあるけれども、あの海域を除いた漁業水域法にしてくるならばよろしいけれどもそうでない場合は認めるわけにいかない、こういうことはわが国としては断じて承認できない。これは国権の最高機関である国会が御決定をいただいたことでございますから、私はそのように考えております。私はそういう心構えでこのソ日協定には取り組んでまいる考えでございます。
  248. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、そのことは余りさわると危険だと思いますからその辺にしておきまして、わが国側のこの問題に対する従来からの外交関係における主張というものは、あくまでも堅持していただくように外交、農林当局に希望しておきたいと存じます。  次に地先沖合いのお話、「地先沖合」という言葉が使われ、「沿岸」という言葉が使われ、本協定には同じ露文でありながら翻訳は二様に分けられているわけでございますが、昭和四十七年五月十八日発効の核兵器及び他の大量破壊兵器の海底における設置の禁止に関する条約において地先沖合いの定義が示されております。定義が示されているというよりもその用語が用いられているわけであります。また昭和五十年の六月二十五日には、外務省は伊達参事官がこれに対して領海及びその先の海面であると指定をいたしております。  憂慮いたしているわけでございますが、第二条においてソビエト側の国民及び漁船のために日本国の地先沖合いにおける伝統的操業を継続する権利がうたわれております。そうすると、これによりますと、伊達さんの御答弁及び四十七年の核兵器云々の条約質疑状況を考えますと、領海及びその先の海面を意味する言葉として地先沖合いが使われているならば、これは領海内操業先方に認めた文章になってしまう可能性があります。少なくともソビエト側に日本国新領海内におけるソビエト側漁船の操業を認める根拠を与える文章にこれはなっているわけです。大分まずい文章をお書きになったのではないか。私は交渉の余地では、まだ何とかなると思います。まだこれでも交渉のやり方によっては何とかなると思いますが、少なくとも言葉の上では、地先沖合いという言葉は領海を含んでの海面になっていますでしょう。領海を飛び越して領海の向こう側の海面という言葉にはなってない。さて、それをどうなさるのか。露文と日本文との多少の言葉の言い違いはやめますよ、その質問は。それをいま言おうとしておりません、夜も遅いですから。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕  「地先沖合」この言葉に対する解釈、統一されてなかったら、そこで統一してくださるようにお願いします。
  249. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほども「地先沖合」の定義につきましていろいろ御論議が行われたわけでございますが、その際にも御答弁申し上げましたように、「地先沖合」というのは、沿岸との関連において沖合いの水面の広がりを一般的に表明している言葉でございまして、地先沖合いであるからどこからどこまでという厳密な定義もないし、確立された概念もないということを申し上げたわけでございます。  先生ごらんのとおりに、今回の協定におきましても、協定の名称そのものが北西太平洋におけるソ連地先沖合における云々という名前になっておりまして、その場合の「地先沖合」ということで考えられているのは、まさにソ連の二百海里の漁業水域が考えられているわけでございます。  それから……
  250. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 答弁途中で悪いけれども……。  ただいまの答弁は、まことにまずいことには、すでに外務省の参事官が五十年の六月に答弁された答弁と全く質を異にいたします。これは不統一のきわまりでありまして、統一見解が出ないということは異常事態でありますから、理事会を招集し、この問題の扱いを審査されんことを求めます。
  251. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 私の御説明を若干補足させていただきますが、私が申し上げようと思いましたのは、「地先沖合」という言葉は、その条約によって、条約の目的によりて、いろいろな意味に使われておるということを申し上げようとしたわけでございまして、まさにその最初の例として、今回の協定の名称に出てきますところの「地先沖合」というのは、二百海里の水域を頭に置いて使われている言葉である。先生の御指摘の伊達参事官の答弁にありますのは、私いま何の条約との関連で使っておるのか直ちには明確になし得ませんが、たとえば従来に使われました例でも、日米の漁業協定におきましても、「地先沖合」という言葉を使っておりますが、その場合の「地先沖合」というのは、アメリカが設定いたしましたところの十二海里の漁業水域を考えているわけでございます。それから日ソ操業協定においても、同じように「地先沖合」という言葉を使っておりますが、これは御承知のように日本の近海で、公海における操業に関する取り決めでございまして、そこに言うところの「地先沖合」というのは、まさに日本の地先におけるところの公海部分を言っておる。  それぞれ条約の目的、それから使われておるところの意味合いによりまして、具体的にそこのどれだけの水域を示しているかということは異なるわけでございまして、そのことをぜひ御理解いただきたいというふうに考えるわけでございます。
  252. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 悪いけど、御理解できないですね。条約ごとに違う言葉を使って平然としているなんというのは、それは日本語とは言わないと私は思います。そんないいかげんな言葉を駆使してやられるというんであってはどうしようもない。しかし、それに意味があるんじゃなくて、いまは、国会で御説明になる場合、少なくとも外務省の代表がすでに公式的な見解を述べられた、その公式的な見解とあなたの見解は相違せられておる。これは従来は不統一の見解として拒否されるべきものです。ほかの国をだましたというんだったら、ここでは別の説明が要るでしょうけれども、私が言っているのは、国会に対して説明が行われた、それが二通り行われたとあったら不統一じゃありませんか。だから私が統一見解要求している。その統一見解要求しているのに、委員長はそれをお取り上げにならないで、何か変な御説明を黙認せられたというのは、これはどういう意味ですか。私は委員長に問題があると思いますよ。理事会を招集してこの問題の決着をつけてください。それでなかったら、政府の統一見解をその場で要求してください。
  253. 竹内黎一

    竹内委員長 ちょっと速記とめてください。     〔速記中止〕
  254. 竹内黎一

    竹内委員長 速記を起こしてください。  委員長からこの際政府に要望申し上げます。  ただいま渡部一郎委員提起の「地先沖合」の定義の問題につきましては、明日の委員会において政府の統一見解を示されんことを望みます。渡部一郎君。
  255. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 余り時間がありませんからちょっと詰めてお伺いするのですが、本日の本会議の席上、総理大臣は、この漁業交渉の途中に親書を出されたということについて本会議場において質問がございましたときに、この親書によって行き詰まっていた日ソ漁業暫定協定が非常に前進をしたと自画自賛をなさいまして、その内容については親書であるから言うことはできぬと言われた上、親書の内容はことごとく鈴木さんが知っておるから後で詳しく聞いてくれと放言をされました。そこで、よく知っておられる鈴木大臣に親書の内容をお伺いいたします。
  256. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 親書は、園田官房長官が携行したブレジネフ書記長並びにコスイギン首相あての親書と、それから、交渉がぎりぎりの段階に達しました際に、ブレジネフ書記長並びにコスイギン首相に親電を送られた、こう二回あるわけでございます。  私がある程度承知しておりますのは、交渉が非常に重要な段階にありました際に、ソ連のお二人の最高首脳に総理から電報で親書を送られた。これは、私とイシコフ漁業大臣が会談をいたしました際に、イシコフ漁業大臣が、ただいまコスイギン首相あてに福田総理から送られた親書のコピーを受け取ったということで、こういう点を私の前で読み上げました。それは、純然たる漁業問題として今次の交渉を取りまとめるというのが私の基本的な考えでございます。日ソ友好関係の将来を考えた場合に、大局に立ってこの問題を処理していきたいという趣旨のくだりをイシコフ大臣が披露いたしまして、私といろいろ話し合いをしたわけでございますが、その際に、いま御披露になった総理の、純然たる漁業問題として今次の交渉は取りまとめをしたいという基本的な考え方というのは、私も同じ考え方に立って、総理基本的な考え、政府基本方針に基づいて今日までやってきた、イシコフ大臣も、自分もまた、領土問題等政治問題は政治の分野の方々にお任せをして、われわれは漁業問題としてひとつまとめようではないかということで、総理の親書というものを非常に高く評価をされまして、そして、私が第八条の修正案を提起したちょうど前後でございましたので、そういうことが一つの大きな契機になりましてこの問題が妥結に進んだ。まあイシコフさんの言葉をかりますと、これによって迷路を脱することができたという表現まで使ったわけでございますけれども、第八条の修正、つまり、今次の交渉純然たる漁業問題として処理しようではないか、日ソ友好という大局に立ってこれは判断をすべきだということを強調されておった、こういうことが今回の行き詰まった交渉を打開する一つのきっかけになったということを、私、交渉に当たってよく承知をいたしておるわけでございます。
  257. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 同じくきょうの本会議の御説明の中で、漁業基本について大きな変革が必要だという旨、総理及び農林大臣から御説明がございました。私どもにとりまして、世界国々の二百海里漁業専管水域の設定に伴い、四百五十万トンに近い巨大な漁獲量がそれらの国々の管轄権下に入ると聞いておりますが、六百万トンと言われる日本側の漁獲高の中でまだやりくりが相当できるのではないかと言われております。たとえば、本当に六百万トンをそのまま食べているかといいますと、意外に食べていない。ここに、農林省の食料需給表及び同速報から選んだ粗い資料で申し上げますれば、国内消費仕向量を一〇〇%といたしましたとき、食用向けが七五%、非食用向けが二五%。非食用が全部役に立っていないと申すわけではありませんけれども、食用向けが七五%。しかも、そのうち三六%は不可食部分として切り落とされ、純食料となっているのは三九%のみであるという恐るべき数字が上がっているわけであります。ですから、魚六百万トンといいましても、その三九%では恐らく二百何十万トンしかない。そういう部分をもう少し引き上げる方法も十分工夫してしかるべきでありましょうし、また、コールドチェーンのシステムが大量の冷蔵倉庫を主力とするため、価格の安い魚が流通機構の上に乗らないという点がすでに各方面において指摘されておりますが、これに対する対策がとられている気配がまだない。  第三に、実際的に言えば、市場において定率の取引利益率というものが考慮されているため、値段の高いものは卸売市場に並べるが、値段の安いものは全然並べない。東京の中央卸売市場でもわずか十トン程度のイワシをさばくことすら容易でないというような状況にあって、こういう定率の利益によって卸売市場が魚介類の仲介を行うことに対して修正を試みなければならない。  また第四に、消費者教育を初めとし、さまざまなそうした問題について、また第五に、日本の二百海里線の中における漁場の再開発、あるいは栽培漁業の充実等を考えなければならぬというようなことが問題になっているようでございます。  もちろん農林水産委員会でもこうしたことについて多くの議論が出ているやに伺っているのでありますが、こうした問題について政府側の意見の御表明が遅きに失するだけでなくて、国民の耳にほとんど届いていない。いたずらにお魚は先細りで将来ものすごく高くなるという感じのみが国民の中にある。消費者の権利の一つである的確な情報を与えられるという部分が欠落をしている。消費者行政の最もきらっている状況がいま生まれている事態に対し、これを積極的に改良なさることが必要ではないか、こう思っているわけであります。  表現が巧みでないのは申しわけないことですが、意のあるところをお察しいただいて、適切な施策を打っていただき、国民、消費者が安心できる施策を立て実施し、そしてもう一つ、実施するだけでなくて知らせていただきたい、広報していただきたい、こう思うのですが、その辺五項目挙げましたけれども、それらについて御説明並びにただいまの結論について御意見を承りたい。
  258. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 渡部さんが御指摘になりました五つの問題点、項目というのは、いずれも現下の二百海里時代、厳しいこういう情勢の中で、たん白食糧の五一%程度を魚介類で賄っておる、魚肉たん白で賄っております日本としては重要な問題点を御指摘になっております。  いまの可食部分が非常に少ない、また三割程度のものがミールであるとかあるいは魚のえさ、ハマチ等に回されておる。もっとこれらのものを高度利用をして可食部分をふやし、また魚のえさ等に回すようなもったいないことをしないで、養魚のえさは別途開発をして、これらを食ぜんに回すようにするという問題、あるいは沿岸漁場を積極的に開発整備をして資源をふやす、また進んでは栽培漁業等を盛んにする、こういう問題は今後の、急いで取り組まなければならない喫緊の課題に相なっておるわけでございます。  ちなみに、専門家の検討によりますと、日本列島周辺には三千万ヘクタールの利用できる海面がある。実際に現在増養殖等に利用されておりますのは百五万ヘクタール程度しかございません。せめて三分の一の一千万ヘクタールを開発、積極的に利用する、資源をふやしてやっていくということになれば、優に一千万トンの漁獲が可能である、こういうことも言われておるわけでございまして、五十一年度から水産庁としてはこういう情勢も踏まえまして、沿岸漁場開発整備事業、二千億、七カ年計画でやったわけでございますが、これを五十三年度からはさらに一層この執行年度を繰り上げて、こういう問題にもっと積極的に取り組んでいく必要がある、このようにも考えております。それから、イワシ、アジ、サバ等のような多獲性の大衆魚、これをもっと食ぜんに供すべきではないだろうかという御指摘、しかもこれは非常に栄養価の高いものでございます。どこに一体ネックがあるかと申しますと、小売の段階それから消費者の側にもあるわけでございます。イワシのようなものを仮に一日に二十貫、三十貫扱いましても、その魚屋のマージンというものは非常に少ない。それよりはマグロを扱った方がいい、タイを扱った方がいいということ、こういうことでなかなかイワシ等を扱うということにならない。現在の住宅事情等から言って、イワシを持っていってアパートでこれを焼いたりすると、隣近所からどうもひんしゅくを買うとか、いろいろな問題がそこに伏在をいたしているわけでございます。そういう問題につきましても、やはり加工の面その他を十分研究開発をして、家庭の荒い奥さん方もイワシの加工品等を喜んで食べてもらえるような、そういう工夫も必要でございます。  と同時に、沿岸国二百海里の外の未開発漁場というものも、公海上の漁場があるわけでございますから、そういう未開発漁場開発、こういうことも調査並びに開発を積極的にやる必要がある。  総合的な、きょうも本会議で申し上げましたように、この厳しい二百海里時代に対応いたしまして、日本漁業、水産食糧の自給できるような体制に、漁業政策水産政策をこの際見直して真剣に新政策を推進をする必要がある、こういうことにつきましては渡部さんの御認識、御指摘と全く同じでございまして、今後そういう方向努力をしてまいる所存でございます。
  259. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もう時間も遅うございますから、もう一つ農林大臣に申し上げたい。  アメリカの沿岸に出ている船とソビエトの北転船なんというのが非常に大幅に削減されたと承っているわけでございますが、漁業権の関係が直さなければならぬ大問題として起こってくるものと思われます。ちょうど農業において戦後農地解放が行われ、農地の割り振りというものを適正に変えるために大変な荒療治が必要であったような事態が、いま日本漁業界を襲っているものと思いますし、根本的には漁業法の根幹問題に関する基本に手をつけなければならぬほどの問題になるかと思われます。また、これらの就労漁場を失った漁民に対し、あるいは漁船経営者に対し、あるいは休業、減船を受けたそうした補償に対し、あるいは漁業関係加工業者あるいは流通業者等に対し、補償すべきものは余りにも多額であり巨大であろうかと思います。これらに対して補償の事務等は、直ちに目につく業務として取り扱われやすいのでございますが、この際漁業問題の基本に関し、漁場の割り振りに関し適切な基本命題をつくり上げ、国民の前に速やかに提示することが必要であろうと考えるわけであります。その点、どういうふうな根本的な施策をお立てになっておられるのか。細かい点については別の際にお述べになっていると思いますので、基本的な問題についてお伺いしたいと存じます。
  260. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 当面急いで処理をしなければならないのは、いま御指摘がありました北転船でありますとか沖底びき網漁業でありますとか、あるいは全面禁漁になりましたニシンの刺し網漁船でありますとか、そういうような転換を要するもの、減船を要するもの、そういうものに対する救済措置の問題でございます。また、その乗組員等の離職者に対するところの雇用の問題あるいは職業訓練等の問題、あるいはそれらの生活保障の問題、当面緊急を要するいろいろの問題がございます。各魚種別、漁業別にクォータもだんだん固まってまいっておりますので、私は、この新しい情勢に対応したところの適正な漁業規模というものを早く確定をいたしまして、そして今後の二百海里時代わが国漁業の再編成をしなければいけない、このように考えております。その際におきまして、できるだけ中小漁業者等を中心としてその働く漁場確保するようにいたしたいと考えております。  また、それに関連をいたしまして、現在とりあえず、休漁をいたしております者に対して緊急の融資をいたしておるわけでございますが、これは融資だけで事足りるという問題ではございません。これらの減船あるいは漁場の転換、漁業の転換というようなものに対して、それらが十分救済できるような根本的な措置を講じてまいる考えでございます。そのために相当の資金がここに要るわけでございますが、私といたしましては、やはり要るだけの資金は国として十分これを支出をして万全の措置を講じてまいりたい、このように考えております。  また、この働く人たちの離職対策等につきましては、現在の雇用対策法あるいは漁業再建整備法あるいは船員保険法、現行制度をできるだけ活用をいたしますけれども、落ちこぼれがないかどうかを十分精査をいたしまして、これらの方々が全体として救済の手が伸びるように、場合によれば臨時特別措置法等の立法についても検討を進めてまいりたい、このように考えておるところでございます。  なお、先ほど提起されましたところの現在の漁業制度漁業法でありますとか水産資源保護法でありますとか、そういうような漁業関係の法制の整備、再検討、こういうことにつきましても、十分新しい情勢に対応できるように再検討を加えてまいりたいと考えております。
  261. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 十分御認識をいただいておると思いますので、私はこれらの対策については、今国会においてはもう間に合わないものだろうと思いますが、早急に整備をしていただきまして、できるならば特別国会を行ってもいいので、特別国会、臨時国会を予定してやられることさえ必要な段階だろうと思いますし、当然そういう姿勢で法案の整備をやっていただきたい。また法案によらずして政令ででき得るものについては、最高度にスピーディーにこれに対して処理をしていただきたい。問題は、スピードとその内容が充実していることだと思いますし、これらを社会不安の原点とすべきことであっては決してならない。わが国未曽有の産業変革の一つであるという御認識の上から、早急かつ充実した、徹底したやり方をしていただきたい。特に最後にお願い申し上げます。よろしくお願いします。
  262. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私も非常にそのことを大事に考えておりますので、真剣に取り組んで最善を尽くしたいと考えております。
  263. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、明四日土曜日午前十時理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十時三十六分散会