運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1977-06-01 第80回国会 衆議院 外務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年六月一日(水曜日)     午後一時五十八分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 有馬 元治君 理事 毛利 松平君    理事 山田 久就君 理事 河上 民雄君    理事 土井たか子君 理事 渡部 一郎君    理事 中村 正雄君       大坪健一郎君    川田 正則君       佐野 嘉吉君    福田 篤泰君       宮澤 喜一君    松本 七郎君       中川 嘉美君    寺前  巖君       伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君  出席政府委員         外務政務次官  奥田 敬和君         外務大臣官房審         議官      内藤  武君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アジア局         次長      大森 誠一君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省中近東ア         フリカ局長   加賀美秀夫君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         水産庁次長   佐々木輝夫君         労働大臣官房審         議官      谷口 隆志君  委員外出席者         外務省経済局国         際経済第一課長 賀来 弓月君         外務省経済協力         局外務参事官  三宅 和助君         外務省国際連合         局外務参事官  村上 和夫君         郵政大臣官房郵         政参事官    澤田 茂生君         郵政省電波監理         局無線通信部航         空海上課長   吉川 久三君         郵政省電波監理         局無線通信部検         定課長     川島 由造君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 委員の異動 五月三十一日  辞任         補欠選任   伊藤 公介君     山口 敏夫君 六月一日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     西岡 武夫君 同日  辞任         補欠選任   西岡 武夫君     伊藤 公介君     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ルーマニア社会主義共和国との間  の条約締結について承認を求めるの件(条約  第一一号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ブラジル合衆国との間の条約を修  正補足する議定書締結について承認を求める  の件(条約第一二号)  投資の奨励及び相互保護に関する日本国とエジ  プト・アラブ共和国との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(条約第一三号)  国際海事衛星機構(インマルサット)に関する  条約締結について承認を求めるの件(条約第  一四号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川嘉美君。
  3. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私は、これから始まるソ日漁業協定とその後の日ソ漁業協定、この二つの日程を見てみますと、ことしじゅうにこれら二つ協定が成立をするということがきわめてむずかしいのではないか、このように考えるわけですけれども政府の見通しは果たしてどうか、実は前回大臣にこの件についての御質問をした記憶がございますが、今時点において御見解を賜りたい。もし日ソ漁業協定が年内に成立できないような場合に政府はどういう対応策を考えておられるかという問題、また、暫定協定期間延長ということがあり得るかどうか、この点について再度御質問を申し上げたいと思います。
  4. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 長期協定の方から申し上げさせていただきますが、長期協定は当然のことながら来年の一月一日以降の日ソ間の漁業協定になるわけでございます。これには国会の御審議、御承認をいただかなければならないわけでございます。したがいまして国会の御審議をいただくためには、どうしても臨時国会が開かれませんとその機会がないということになろうかと思うわけでございますが、その点につきましていまから申し上げるのは時期も適当でないかもしれませんが、例年十一月ごろに臨時国会が開かれておりますので、その臨時国会機会があれば、御審議がいただけるものというふうに考えておるところでございます。現行の暫定協定を仮に延長いたします場合におきましても、やはり国会の御承認は当然必要になろうということになりますと、やはりそれまでに長期協定を仕上げ国会の御承認を賜る必要があるというように考えておるわけでございます。  ソ日協定につきましては、まだ農林省との間の打ち合わせが済んでおりません。したがいまして、どのような形の協定になりますか、これはまだ申し上げ段階でないのでございますが、日本の二百海里暫定措置法に基づきまして農林大臣権限の範囲内で協定が結べるものかどうかというところにいま問題があろうと思うのでございまして、その点は今後の検討にゆだねられると思いますが、時期的にはこの法は恐らく今月の中旬には交渉が始まるものというふうに考えております。
  5. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 過日御質問をしたときの大臣の御答弁、またただいまの御答弁、私は若干希望的な観測といいましょうか、そういう形で進むことをわれわれも当然希望しなければいけませんけれども政府がいつまでも外交後手後手に回ってしまうという、こういうことが今後もあってはならないし、そういった意味で常に最悪の場合というものだけは考えていかなければいけない、こういった意味で私はそのような御質問を申し上げたわけで、どうかこの点を十分踏まえて、特にこのたびの日ソ漁業暫定協定経緯等を見ておりましてもそう簡単には推進されていない、非常な期間がかかったということ、こういうことも当然ひっかけて十分なる対応をしていただきたい、このことを冒頭質問で要望をしておきたいと思います。  ところで、昭和三十一年に日ソ間における往復書簡が交換されております。いわゆる松本グロムイコ書簡という例の書簡ですけれども、その中のグロムイコ書簡の中に「ソヴィエト政府は、前記の日本国政府見解を了承し、両国間の正常な外交関係が再開された後、領土問題をも含む平和条約締結に関する交渉を継続することに同意することを言明します。」このように述べているわけですけれども、ここに言うところの領土問題の対象地域をどのように解釈をしておられるか。千島全島意味するのか、四島を意味するか、あるいはまた歯舞、色丹の二島であるか、このことについての日ソ政府解釈は当然一致していなければならない、このように思いますが、まずこの点を明らかにしていただきたいと思います。
  6. 宮澤泰

    宮澤政府委員 日本側が考えております領土問題、これは歯舞群島、色丹島、国後、択捉のいわゆる四島、北方領土でございます。
  7. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いずれにしても、この領土問題は未解決であるという事実、これはソ連側も認めざるを得ないと私は思います。こういった書簡も厳然と残されている。  じゃ、ソ連のこの松本グロムイコ書簡に対する見解は一体どうなのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  8. 宮澤泰

    宮澤政府委員 この松本グロムイコ書簡は、日ソ共同宣言とあわせて私ども一体のものと考えておりますので、この共同宣言の最後でございますが、ここにやはり「両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約締結に関する交渉を継続することに同意する。」このような文章がございまして、この中の「平和条約締結に関する交渉」には当然この領土問題を解決する交渉が含まれておる、このように解釈しております。
  9. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ところで政府立場ですが、北方領土周辺のこのたびの漁業交渉について言うならば、線引きそのもの日ソ相打ちである、このようなことですけれども、われわれには率直にそうは思えない。もし相打ちだったとするならば、この北方領土周辺における漁業は、少なくとも日ソ共同水域として日ソ共同漁業が認められなければならないはずであります。暫定協定は、ソ連線引き内での漁業は一方的であって、わが方の漁業は排除されてしまっている。他方、わが方の線引きソ連に対して何らの規制力を持たない、単なる名目上のフィクションにすぎないのではないか、このように考えるわけですけれども、この意味北方領土問題ではわが方が大きく後退したのではないか、このように言わざるを得ないと私は思いますが、政府はこの事実をどのように認められるか、この点についてお答えいただきたいと思います。
  10. 宮澤泰

    宮澤政府委員 今回の交渉におきましては、鈴木農林大臣からもしばしば国会で御説明されましたように、領土問題と漁業の問題とを切り離して交渉する、なすわち純粋に漁業問題として交渉をまとめたいという方針、これは総理もしばしばおっしゃったところでございますが、そのような方針で結局交渉が妥結に至ったわけでございます。それでこの北方四島周辺水域につきましては、これはわが国固有の領土でございますから、当然私どものこの暫定措置法におきましても四島周辺水域がカバーされておるわけでございますが、ただ現実にこの島に対して日本施政が行われていない、すなわち現実にはソ連施政を行っているという現実に基づきまして漁業取り決めをしたわけでございますので、実際上はただいまおっしゃいましたような状態になることもやむを得ないと考えております。
  11. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 きょうは条約そのものの中身についての審議ではないという前提ですので、条約審議のときにさらにこの件についても御質問を重ねていきたいと思いますが、領土問題についてわが方は大きく後退したと言わざるを得ないという私たちのこの考え方に対して、簡単で結構ですから、その事実を認めるか認めないか。この御答弁は非常に大事なことを意味してくると思いますので重ねて伺いますが、認めるか認めないか、そのように考えないかどうか。ソ連側に対しても、われわれのこの審議というものがどういう内容で進められ、どういう審議現実に展開されているか、大変大きな影響力を持つと思います。これに対する政府答弁そのものがこれまた当然大きな影響を与えるわけですから、もう一度確認をしておきたいと思います。
  12. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の交渉が大変長くかかりまして八十日以上に及んだということは、やはりこの北方四島に関係したがためでございます。したがいまして、この問題は日本としても明確に納得のできるような形でなければ、これは締結するわけにいかないわけでございます。そして、長い長い折衝、交渉を続けました最終段階といたしまして、領土問題は一切切り離して解決をしよう、こういうことになったわけでございます。したがいまして、八条に修正が加えられて、日本並びソ連邦相互の間の諸問題につきまして、両国政府立場あるいは見解を害するものとみなしてはならないという明らかな条文が書かれまして、領土問題は領土問題として解決を図るということが、これは交渉経過並びに八条の文章、双方から見てもうきわめて明らかな点でございますので、領土問題につきましては一切後退はいたしておらないということを明確に申し上げたいと思います。
  13. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 時間に制限がありますので、この問題については条約そのもの審議のときに、いろいろまだまだ問題が残されております。したがって野党としても当然その折にさらに御質問を展開していきたい、こう思います。  ところで、最近自由民主党内において、日中平和友好条約締結に対する党内慎重論、いわば日ソ漁業交渉経過を見て、ソ連を刺激するのを回避するためということだそうですか、こういった慎重論が出てきていると私は聞いているわけですが、政府として、自民党内のいわゆる党内意思決定というものがあるまで日中平和友好条約交渉は進められないということになるのか、党内意思統一といいますか、これを見るまではこの問題はたな上げにしようとしておられる意向なのか、この点を伺いたい。また、こういったことに対して、すなわち日中間平和条約締結に対して、政府としてどのような交渉の進め方をされようとするか、この辺の方針もあわせて伺いたいと思います。
  14. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の日ソ間の漁業交渉が非常に難航いたしたということの裏に、いろいろな原因があるのではないかという議論が行われておることは確かでございます。それは私どもといたしましては、日中間関係日ソ間の漁業交渉影響を及ぼしているとは理解をいたしておりません。しかし、何らか関係があるのではないかというような議論をなさる方は多うございます。そのようなことでいろいろな議論が行われておりますが、政府といたしましてはそのようなことは考えておらないところでございます。したがいまして、日中間の問題は日中間の問題として、また日ソ間の問題は日ソ間の問題として、それぞれ政府としては最善を尽くさなければいけない、このように考えておるところでございます。  日ソ間につきまして、共同声明が出ましてからもう二十一年になるわけでございますが、その間に日ソ間におきましてまだ平和条約ができておらないという状態でありますので、日ソ間は日ソ間として平和条約締結にできる限りの努力をいたすべきである。それとともに、日中間におきましては、既定路線が引かれておりますので、既定路線に沿いまして平和友好条約締結努力をいたすべきである、このように考えておるところでございます。
  15. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうしますと、自民党内の慎重論そのものに対しては、これは問題にしないということを意味するのでしょうか。
  16. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 自民党の御意見につきまして、やはり党内におきましていろいろ御審議があろうと思います。私ども自民党の御意見に従うべき立場にあるものでございます。したがいまして、これからのいろいろな御議論は伺いたい、このように思っております。
  17. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうしますと、これを尊重していろいろ議論を伺いたいとおっしゃる大臣のお言葉ですけれども、そういった問題が解決をするといいましょうか、党内統一を見るまで、冒頭に私が御質問したように、この日中平和友好条約締結は残念ながらたな上げにせざるを得ない、こういうことでしょうか。
  18. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私ども既定路線が引かれておる日中間平和友好条約締結に対しまして、党内のいろいろな考え方あるいは国内の世論というもの、これらを踏まえた上で解決に当たるべきものと思います。しかし、たびたび総理大臣からも私からも申し上げましたように、これは既定の約束と申しますか、既定方針に沿いまして、私どもとして最善努力を払ってこの条約締結を達成をいたしたい、このような熱意を持っておるところでございます。
  19. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 お答えが私の質問に対してどうしても返ってこないような気がしてならないわけです。熱意を持って取り組みたいという点をいまここでお伺いしておくにとどめまして、このことはさらに別途詰めてまいりたいと私は思いますが、非常にこういうことを私は憂慮している一人でありますけれども、日中問題について言うならば、これから申し上げることについても、これまた非常に問題が残されているのではないか。  それはどういうことかといいますと、もし日本政府中国抗議前回もお聞きした日韓大陸棚協定に関しての抗議、これを無視して共同開発協定発効というものを最終的に強行してしまうならば、このことがいつの日か日中関係友好発展の途上に重大な障害物となってはね返ってくるということもあるのではないかと私は思います。私はこのことを大いに憂慮するものですけれども国際法的にも多くの疑問を持っているし、また、さらに国際政策上にも妥当性を欠くこういった協定発効というものは、当然見合わせるべきではないか、こういうことで政府に再三再四警告をしてまいったわけですけれども、これでもなお政府協定発効を強行しようとされるかどうか。これはこの間すでに参議院の方に回ってしまった今日ですけれども、いま一度この点についての御見解を伺いたいと思います。
  20. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日韓大陸だなの共同開発につきまして、中国側に対しまして一層の理解を得るために小川大使に訓令をいたしまして、先方のしかるべき地位の方によく御説明するようにしたわけでございます。その結果は、私どもが期待したような先方理解を得ることはできなかったわけでございます。しかし、先方が申しましたことは、かつて三年前にこの協定の調印に踏み切る際に発せられましたスポークスマン声明と同じ内容のものであったわけでございます。わが方からは、いかなる意味におきましても中国側権限を侵すものでないということをるる御説明をして御理解を求めたところでありますが、先方といたしまして、一度決めた方針は変えられなかったということは、私どもから見れば大変残念ではあったわけでございます。  しかし、この問題につきましては、日本側といたしましてはあくまでも礼を尽くして先方理解をいただくという態度に出るべきであるというふうに考えておるところでございまして、なお今後とも努力をいたすことによりまして、この大陸だなの共同開発日中間友好関係を損なうことがあってはならない、かように考えて努力を続ける所存でございます。いま、御心配、憂慮されるという御趣旨がありました。私どももこの点につきましては、私ども努力によりまして日中の友好関係を阻害しないように今後とも努めたいと思っております。
  21. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 礼を尽くしてというお言葉がありますが、やりたいことをやってしまってから礼を尽くす、これはどこまで通るかという問題ですね。もうすでに私はいままでの委員会においても、中国からの抗議というものが現実に報道もされ、そういったことに対して、たしか農林水産との連合審査のときだったと思いますが、大臣にもお聞きしているはずです。あの段階はまだ衆議院における審議段階ですけれども、そういった警告に対してどんどん審議が進み、審議強行も行われ、そういう大陸棚協定についてはいろいろないきさつがあった。今日そういうものを、われわれが思うままの行動といいますか決定を行って、後に礼を尽くしてと言っても、通るものとなかなか通らないものとあるんじゃないだろうか。熱意を込めて、努力をして、御答弁の中にいろいろな言葉が出てまいりますけれども、やはり礼を尽くしてという以上は、それなりにそれが相手に通ずるだけの責任を果たしていかなければ、とうていそういったものは相手に通じないのじゃないか、このようにも考えるわけであります。  さらに、この間の福田総理の五月二十九日の姫路市における記者会見ですが、保利議長の訪中に際して親書を託することもあり得ることが明らかにされておりますが、先ほど来申し上げておるように、中国側意思というものを無視をして日韓共同開発協定発効を強行したということ、これで果たして親書内容を率直に受けをとめられるかどうか、楽観できるかどうかということですけれども中国の対日不信について政府はいささかも懸念することはないのかどうかということ、またこのことが日中平和条約締結にも何らかの影響がないかどうかということ、たびたび伺うようですけれども福田総理のあの記者会見のことを考えても大変に気になる問題であろうかと思います。この親書の問題に関連をして一言御答弁をいただきたいと思います。
  22. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 福田総理親書という点につきましては、私といたしまして、総理大臣から何らの指示を受けておりませんので、いまここで申し上げ立場にないものでございます。しかし、いまおっしゃいましたように、大陸棚協定自体がこの問題に関係してくるということは直接にはないものというふうに私どもは考えております。
  23. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 福田総理姫路における記者会見内容について関与しないというふうに私には非常に響くのですが、これは外交問題に全然関係のない親書ではない、あくまでも日中間の問題に関連をした親書である以上は、やはり外務大臣として、もちろん内容に対してもすでにいまの時点で当然重大なる関心を示していただきたい、示していかなければならないのじゃないかということが第一点ですし、日韓大陸棚協定のことは関係をしてこないと思いますという御答弁ですけれども、その親書を受けとめる中国側にしてみても、少なくともこういった日韓大陸だなの共同開発問題を全く無視してそういったものを受けとめるとか素直に受け入れるとか、そういうことは私は決して考えられないと思いますし、残念ながらこの対応そのものが、うまくいくであろうという希望的な響きに感じてならないわけで、これからこういったことがどんどん国際間で、特に日中間で行われていくというやさきであるだけに、冒頭に私が申し上げたとおりの最悪の事態ということも考慮に入れて、大臣のこれからの言動といいましょうか、御決意を賜りたい、このように思うわけであります。  先ほども答弁いただいたことに関連しますけれども小川中国大使中国外務省の何英外務次官日韓大陸棚共同開発協定について日本立場を説明したときに、何英次官が非常に厳しい態度を見せた、こういうことですけれども、そのときにどういうやりとりがあったのか、先ほどの御答弁では若干漠然としておりますが、そのときのやりとり内容について明らかにしていただきたいと思います。
  24. 大森誠一

    大森政府委員 このときの会談におきまして、小川大使の方から、日韓大陸棚協定署名前後からわが方としては機会あるごとに行ってまいりましたわが方の日韓協定についての立場を説明いたしまして、東シナ海大陸だなは関係国話し合いによって処理されることが望ましいことは言うまでもないところではあるけれども、実際問題として、近い将来話し合いが実現する可能性はないわけである、こうした事情にかんがみ、東シナ海大陸だなのうち日韓にまたがる部分に注意深く限定して韓国との間に取り決めを行ったのが今回の協定である旨を述べました。その上でさらに、東シナ海大陸だなのうち日中間にまたがる部分については、その境界画定につき中国側と速やかに話し合いに入りたい旨を改めて先方に申し入れした次第でございます。  これに対して先方からは、従来わが方が中国側に説明した際と同様に、一九七四年二月四日の中国外交部スポークスマン声明というものを引用しました上で、この日韓共同開発協定中国主権を侵すものであるという立場であることを説明し、したがってこの協定には同意できないという立場を述べたわけでございます。  また、小川大使から申し入れました日中間大陸だなの境界画定話し合いの点につきましては、先方関係国話し合いで決めるべきであるという従来からの立場を繰り返しまして、現在のところ、まだその時期は熟していないとして、速やかに日中間で話し合おうということは先方は申さなかったわけでございます。
  25. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ただいまの御答弁に、中国主権を害するものであってという、その次が抜けているような気がするのですが、絶対に容認できない旨の発言があったと私は思うのです。ですから、先ほど来大臣の御答弁の中で、礼を尽くしてやれば何とかいくであろうとか、あるいはまたそのようなことには関係なくうまく解決するであろうとか、関係してこないという表現でしたか、言葉じりをなにするようで恐縮ですけれども、そういう見方に対して中国側は非常に厳しい態度で臨んできていることは間違いがないわけで、何英次官は、東シナ海の大陸だな区分は中国及び他の関係国との協議を通じて、ただいま御答弁にありました、決定さるべきであるとの見解を述べられておりますが、こういったことはわが党としても当然主張してきたことですけれども、それにもかかわらず、なぜ日本政府国際慣習となっている関係国との話し合いをあえて回避したのか、この点に大きな疑問を抱かざるを得ないわけです。中国、朝鮮民主主義人民共和国はあの区域に対する大陸だなの主張は根拠がない、このように判断をしたのかどうか、この点が一つ。したがって、たび重なる中国抗議をあえて無視したのかどうか。また中国政府抗議対応しようとしなかった日本政府態度は、外交政策からも妥当性を欠くのではないか。  以上の諸点について明快に御答弁をいただきたいと思います。
  26. 大森誠一

    大森政府委員 先ほど引用いたしました中国外交部スポークスマン声明の要旨、また今回中国側小川大使に述べた要旨というものにつきましては、中国立場は、この東シナ海大陸だなの境界画定についてはすべての関係国が協議をして決められるべきであるということがその重要な点をなしていると理解いたします。そこで中国側は、今回の日韓協定中国と協議をしないで取り決めたものであって、その意味中国主権を侵している、かように中国立場というものを理解しているわけでございます。  私どもといたしましても、その際に小川大使中国側に述べましたように、この東シナ海の大陸だなの境界画定というものは、確かにすべての関係国が集まって話し合いをして決めることができれば、それは最も望ましいというふうに考えているわけでありますけれども現実国際関係というものを見ました場合に、現在、この東シナ海の大陸だなの関係国がすべて集まって話し得る、そういうような関係にないというのがこれもまた現実の姿でございます。したがいまして、それぞれ外交関係があって話し合いのできる国がその国同士の間で処理し得る範囲に限って話し合いをして取り決めていくということが、最も現実的な方法である、かような見地からわが国といたしましては、まず日韓間の大陸だなの問題については韓国との間で話をし、中国との間の大陸だなの問題については日中間で話をしていきたい、かような立場をとっているわけでございます。  このように、まず話し合いのできる二国間で大陸だなの問題について協定を順次結んでいくという例は、北海の大陸だなに関しても先例のあるところでございます。したがいまして、私どもとしては、日中間大陸だなの境界画定については速やかに中国側話し合いに入りたいという気持ちはただいまも強く持っているところでございまして、今後も、日本側立場というものを十分誠意を尽くして中国側に説明いたしますとともに、中国側話し合いに入れるよう、先方のそういう対応を求めていきたい、かように考えているわけでございます。
  27. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 これはもう時間が来ておりますので、大変残念ですが、いまの御答弁は明確に議事録に残されていきますし、それでは、いわば国際慣習というものは全く度外視した、無視をしてしまったケース・バイ・ケースの各国との交渉というものをやらざるを得ない、礼を尽くしていけばいい、誠意を尽くしていけばいい、一方的な日本側考え方にとどまるような気がしてならないわけで、この問題については、これまた当然さらに詰められていかなければならない問題ではないかと私は思います。  時間の関係であと一点だけ、国際情勢一般ですのでお聞きしたいと思います。  報道によりますと、カーター大統領が、USニューズ・アンド・ワールド・レポートという雑誌のインタビューで、北からの挑発があればいつでも核兵器を使って撃退する用意がある、このように述べたことは非常に重大な問題であると私たちは受けとめております。カーター発言は、核兵器は抑止力であって使われない兵器であることを明確に否定をして、使用される、使われる兵器であるということを言明したものにほかならないのではないかと私は思います。さらに、カーター大統領の発言は、核兵器の先制使用というものを示唆したものとして見逃すことはできないのではないか。非核三原則を国是とするところのわが国と核兵器の先制使用というものを公言するアメリカとは、安全保障について全く対立するものと思わざるを得ないわけですけれども、この点に関する政府の御見解を伺いたいと思います。
  28. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 USニューズ・アンド・ワールド・レポートの五月二十七日号の中に、カーター大統領の核兵器に関する質疑に対する応答が載っておるわけでございますが、これにつきまして、私は、やはりカーター大統領として、核兵器は絶対使わないのかと言えば、はっきり絶対使わないということは言わないという趣旨ではないか、私、カーター大統領の弁護をするつもりはございませんけれども、あの質疑の応答の趣旨は、むしろ、核兵器を最初に使った国は世界的にも大変な批判を受けるということを述べておられますから、最初に核兵器を使うということにつきましては大変慎重でなければならないという趣旨を発言されたのではなかろうか、そして、私もあの記事を読んでみましたけれども、特に韓国南北間においてそれを使うとか使わないとか言ったのではなしに、アメリカとして各地に核兵器はあるということで、それはどうしても使わなければならないときが来たらば使うこともあるだろうという趣旨ではないか、したがいまして、先制使用を特にカーター大統領が考えておるとかいうようなことでは全くないように思います。それは、文章の前後を見ましても、どうもそこに重点があったとは考えられないところでございます。
  29. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 どうでもいいのですけれどもと言っちゃならないのでしょうけれども、いまずっとこうやって御答弁をいただいていることは全部きょうはアメリカ大使館の人も聞いていると思います。ですから、日本の考えというのはそんなものなのかということになっても非常にぐあいが悪いし、私もここでアメリカのことをかなり追及した日の夕方、大使館で、これは全然別なあれですが、あるレセプションがあった。入り口のところでもう大使を初め書記官の方々が、きょうはえらい質問をしましたねということで、全部聞いちゃっているわけなんで、核兵器を使用しないということはないという意味でというその辺が、御答弁が先ほどございましたけれども、すべてこれが全部キャッチされているという前提でやはり日本側政府の考えというものはきちっと述べていただかなければいけないのじゃないか、このように思います。  時間がありませんので、あとちょっと続けて一問にしぼってしまいまして、御見解だけ聞きたいものですから、つけ加えたいと思います。  カーター大統領の発言は朝鮮民主主義人民共和国に核兵器による対抗心をかき立てる結果となるのじゃないだろうか、カーター大統領は、核兵器拡散禁止という理由でもってわれわれに対して再処理すら禁止しようとしているけれども、みずから核兵器の先制使用ということを公言することを見ておりますと、これは明らかに矛盾をするのではないか、アメリカだけに核兵器の先制使用を合法化する根拠があるのかどうかという点、これが第一点です。  もう一つは、このたびのカーター大統領の発言は非核国に対して核兵器保有を挑発する結果となるおそれがあるのじゃないだろうか、在韓米軍の撤退ということは平和よりむしろ重大な危険をはらむと言うべきではないかと私は思います。特に日米軍事同盟下にあるわが国にとってその危険性を深刻に受けとめなければならないのではないか、このようにも思いますが、この二点について最後に政府の御見解をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  30. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 カーター大統領のUSニューズ・アンド・ワールド・レポートとの会見記事、私たちもただいま入手しまして慎重に読んでみたわけでございますが、大統領がこの問題に関して最初に言っておりますことは、核兵器を使う最初の国は全世界の非難を受けるような結果を招くだろうというふうなことを言っておるわけでございまして、カーター大統領が、核兵器の最初の使用、いわゆる先制使用を大いにやりたいとか、そういうふうなことを考えておるわけではないということは明らかでございます。ただ、現実の問題として、世界には核兵器があちこちに置かれておるということを踏まえまして、アメリカが各地に置いておる核兵器については、やはり国を守るために、あるいは同盟国を守るために、必要があればその使用をする可能性はありますということを言っておるわけでございます。したがいまして、核兵器というものがある以上、その使用の可能性は排除されないということを言ったまででございまして、アメリカだけがそういう権利があるとか、そういうことを言っておるわけではないと考える次第でございます。
  31. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 では、この問題はいずれこれだけではなしに当然詰めていかなければならない重大な問題でもありますが、きょうは時間がちょっと過ぎましたので、これで終わりたいと思います。
  32. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、寺前巖君。
  33. 寺前巖

    ○寺前委員 日ソ協定について、これから審議に入ることでもありますので、私は、深く立ち入ってきょうは聞きたいとは思いませんが、幾つかの関係する問題点についてだけちょっと聞いてみたいと思います。  漁獲量と漁業区域の設定が協定発効と同時になされています。二カ月間休業させられて、そしてつくり上げられてきた量については、非常に大きな犠牲を払ったのにもかかわらず厳しい結果になっているということを関係者はみんな言っていると思うのです。そこから、弱腰ではないかという意見も出てきます。私は、そういう厳しい態度の問題については、ソ連側にも問題があるだろうし、われわれの側にも問題があるのではないか、特に強く感ずる問題としては、やはり領土問題に対するところの毅然たる態度がとり得ない、ここに一番の問題が結果的には出てくるのではないだろうかというふうに思うわけです。  そこで幾つかの問題を聞くわけですが、この領土問題について、結局のところ第一条で向こうの閣僚会議線引きを認め、第三条以下で主権的権利の内容についての確認がやられている。それに対して日本の方はどうかと言えば、伝統的な操業を認めますという項が二条にちょっとあって、最後にそれぞれの政府見解をちゃんと記録にとどめてあるという何か受け身の表現にしか思われない。そうすると、これ全体の表現から見るならば、主権的権利の基礎は領土にあるのだから、領土問題については受け入れてしまっているのではないんだろうかなという印象を受けざるを得ないのですが、その点は大丈夫なんだろうかどうか、一番懸念する問題です。ここを率直に、大丈夫なら大丈夫です。こうだからということをひとつ明確にお聞かせをいただきたい、これが一つです。  それからもう一つは、ソ連政府が十二海里の問題で、日本の領海の中で操業をやらせいという問題がありました。日本は断っておるのだという話がありますが、この文章から見るならば、伝統的操業を日本はソビエトに対して認めるのだという文章が第二条に出てくる。第四条には、もちろん見解の問題として漠としたものが書いてあるけれども、これではけりがついていないというふうに言わざるを得ないのではないだろうか。特に、ソビエトが三海里から十二海里の日本の沿岸でイワシの操業をやっておった伝統的操業の事実から見るならば、その実績を尊重するならば認めざるを得ないことになるのじゃないだろうか。だから、実績尊重は、欲しいイワシについてはそれは御遠慮願わざるを得ませんのだということをソ日協定段階に明らかにしたいということになるのかどうか、ソ日協定に臨む態度関連する問題としてその点を聞きたいと思うのです。  第三番目に、ソビエトとの間にこうやって二百海里をめぐっての新しい時代への対応問題が出てきた。その前にはアメリカとの関係があった。もとはと言えば、発展途上国や資源確保のためからの二百海里問題もありましたが、悪乗りしたアメリカの新しい海洋支配の対応——軍事上もあるでしょう。そういうものが急速に第三次国連海洋法会議の結果も見ないで起こってきているところから、世界じゅうにがたがたをつくらせてきたと思うのですが、このがたがたが一角で始まり出した。一番大きなアメリカから始まり出したら、影響するところが大きいのは当然です。  そこで今度は、日ソ間の問題でこうやっていま進んでいるけれども、聞くところによると、ニュージーランドその他も次々と出てくる。日本の外へ行っての漁業の面から見て、恐らくことしじゅうにこの地域の漁業問題は新しい海洋時代において問題にしなければならない事態が生まれるであろうと言われる地域はどこの水域になるのか、それによってどういう打撃を受けることになるだろうか、どういう対応をするつもりであるのか、その対応準備はどうなっているかということについて三番目にお聞かせをいただきたいと思うのです。とりあえず、御説明をお願いします。
  34. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 第一点でございますが、第一条によります線引きを認める、特に北方四島周辺線引きを認めるということは、結局その基礎の領土を認めたことになるのではないか、こういった御質問だと思います。それなるがゆえに二月の末から五月の末まで、八十日近くかかったわけでございますが、その大半の時間はこの第一条関係の問題に費やされたのは事実でございます。その結果と申しますか、それと、国会におかれまして領海あるいは暫定措置法をおつくりいただいた、このことによりましてこの問題に決着をつけよう、こういうことになりまして、この八条に修文を加えた上で、領土については一切影響がない、そういった前提で決着をつけようということになったことは御承知のとおりであります。したがいまして、先ほども申し上げたのでありますけれども、八条で明確に、両国間におきます相互の諸問題につきまして、両国政府立場あるいは見解を害するものとみなしてはならない、こういう規定を置くことによりまして、これは領土は領土、漁業漁業、今回決めたものはもっぱら漁業上の問題である、このようなことに合意を見ましてやっと決着がついたわけであります。したがいまして、ただいま御指摘のような領土の問題におきます御心配は全くないというふうに理解していただきたいと思います。  それから第二条の「伝統的操業を継続する権利を維持する」というこの表現の点だろうと思います。「伝統的」というのは、十二海里以内三海里、昔からの領海の外でとっておった、これが「伝統的操業」ではないか、こういう御心配でありますが、この点につきましては、交渉経過から見ましても、また文理上から見ましてもそれを意味しないということは明らかでありまして、これはソ日協定の際に明らかにできるものと考えております。  なお、この「権利」という表現でありますけれども日本ソ連の海域で漁業をする、これも「権利」というふうに日ソ協定の第二条におきまして表現されております。また、日本の漁船が「北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合において伝統的に漁業に従事してきたことを考慮し、」権利を与える、こう言っておるものでございますから、お互いに権利という表現であらわされておる、まさにこれは両方とも同じ表現であります。  また、日本がこのような伝統的な操業権がある。しかしながら現実におきましては、操業する地域をずいぶん先方は指定をして非常に狭い区域に狭めてきておるわけでございます。したがいまして、この伝統的操業を認める権利ということがあるから十二海里以内でもとらせるということでは決してないというふうに私どもは確信をいたしておるところでございます。  なお、現在始まりつつあります海洋法会議、第三回国連海洋法会議のニューヨーク会期におきまして最終的な決着がつくかどうかということはまだ見通しが立っておりません。しかし、海洋法会議の決着がつかなくても、二百海里に踏み出す国がいろいろ出てくるのではないかということは当然予想をされるところでございます。豪州並びにニュージーランドにおいてはいろいろ準備を進めておるということも聞いております。これらの国に対します具体的な対処方針を述べよという話でございますが、これらにつきましては水産庁当局の方とまだ打ち合わせが済んでおりませんので、対処方針ということを申し上げるわけにいきませんが、日本漁業の方から申しますと、いままでの漁業協定考え方は、広域な回遊性の魚につきましては適用しないような考え方になってきております。わが方のニュージーランド方面に進出いたしております漁業は主としてカツオ・マグロ船でございまして、これらは高度な回遊魚であるということで、高度回遊魚につきましてどのような規制方法を先方はとるであろうかという点につきましてはまだ明らかになっておらないところでございます。  また、いろいろな日本の農産物の輸入政策等と絡めるというような話もありますので、わが方といたしましては、両国間のお互いの立場をよく理解し合った上で、それぞれの国と友好関係を深めることによりましてこの漁業問題の解決にも資したいということで努力をいたしておるところでございます。
  35. 寺前巖

    ○寺前委員 日ソ漁業協定は現に存在しているのがあります。サケ・マスは二百海里の設定に伴って全面的にその内の漁は禁止になります。コンブは民間協定というのでしょうか、協定を結んで漁をやっていました。これもゼロになる。これは伝統的操業なりあるいは現に存在しているそういう協定、コンブの問題は一年協定ですからこれは別になりますが、伝統的操業の観点からも、現に存在しておる観点から見てもこれは不当だという考え方にはならないのだろうか。私は今度の問題で、あのスケトウダラのカムチャッカの西部方面におけるああいう取り扱いなり、あるいはこのコンブの問題については、これでいいというわけにいかない性格を持っているように国際常識から見て言えるのではないかと思うのだけれども、この点についてはどういうふうにお考えになって交渉されたのでしょうか。
  36. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 モスクワに鈴木大臣に欧亜局長が同行いたしておりましたので、後で局長からもお答えを申し上げた方がよろしいかと思いますが、日本側といたしましては、伝統的な漁業というものを尊重すべし、こういうことを主張し、また第二条の表現でありますけれども、相互利益の均衡の原則という均衡というものをとったという経過があるわけでありますけれども日本ソ連も同じ量をそれぞれとるというようなことではいけない。それぞれいままでやっておった伝統的な漁業というものを尊重して、急激な変化というものを生じさせないようにすべきである、このような考え方を述べておったところでございます。結果におきまして均衡原則ということではなしに、日本側としても一年間を通ずれば百七万トンでしたかにはなるということでありますから、百七十万トンと比べれば大変な開きがある数字ではございます。しかしこの百七万トンということは、ソ連日本の近海でそれだけとらせろということは、全くそういうことは言えない数字でありますから、均衡原則ではないだろう。しかし、日本側の希望といたしましては、従前の実績を若干下回ることがありましても、このような大幅な減少というものは大変残念なことであり、大変不満なことであることは確かでございます。この点につきまして、これから六月にはソ日協定が行われるわけでございます。その際に、いままで決めた四十五万五千トンというものがまた何らかの追加があるのかどうかこれはわかりませんが、しかしその際のいろいろな話の際には、日本側として四十五万五千トンという数字は非常に不合理であるということは申し述べる機会はあるだろうと思いますし、そのような努力鈴木農林大臣としてはされるだろうと私は思っておるわけでありますが、これは今後のことでありますので、いまここで申し上げるのもいかがかと思いますけれども、私どもの方としては、漁獲量並びに水域につきまして一応非常に時間がなく決まったという要素があるわけでございます。したがいまして、次回の折衝の機会には、もう一度この見直しをすることができれば、日本側としては大変結構なことじゃなかろうかという期待をわずかながら持っているわけでございます。
  37. 宮澤泰

    宮澤政府委員 今回交渉に当たられました鈴木農林大臣がすでに記者会見その他で述べられましたところでございますが、これからの二百海里漁業水域時代におきましては、実績もさることながら、次第に余剰原則という方向に向くことを覚悟しなければならない、こういうことをおっしゃっておりました。現に海洋法におきましても単一草案の中にそのような思想があらわれておるわけでございますが、大体今回鈴木農林大臣が三回にわたってソ連に赴かれましたのも、二百海里という漁業専管水域の新時代においてソ連との間に話し合いを行う、そしてその間に日本もこの二百海里という水域を設定した、こういう新しい想定のもとにソ連話し合いを行われたわけでございます。そしてソ連は元来、二百海里設定をいたしますときに、これはどこの国でも同じでございますが、水産資源の漁獲と同時にこれの保存ないし再生産ということを非常に重視しなければならない、こういうことを強調いたしますと同時に、特にサケ・マスにつきましては、糊河性の魚につきましては母川主義、母なる川の主義をとっておる、こういう幾つかの主張がございましたので、鈴木大臣は元来二百海里設定という前提の上に立ってソ連交渉されましたので、いまおっしゃいましたような漁業条約がまだ有効であるという事態にもかかわらず、そのような新時代に対応する交渉としてこれをお受けになったということでございまして、純粋に法的に申しますと、今度の協定によってすでに廃棄通告されました漁業条約がこれに取ってかわられた、ことしに関します限りは、そういうふうに説明できますけれども、実際問題といたしましては、やはりこういう二百海里時代というものの現実を直視して交渉されたということでございます。  ただいま外務大臣もおっしゃいましたように、いわゆる協定の枠組みをつくりますために、ことに領土問題につきまして日本立場をいささかも損なわぬために大変な労力と時間を鈴木大臣も費やされましたために、漁獲量につきましては、相手側の都合もあり、こちら側の本当に希望したほどの時間を費やすことはできませんでしたけれども大臣初め代表団一同、何日間にわたってほとんど徹宵に近い作業をして漁獲量を決めたわけでございますので、この点は御理解をいただけると存じます。  それからコンブにつきましては、先ほどから問題になっておりますわが国の領海内の操業は絶対に認めない、これは鈴木大臣が何回もイシコフ大臣に念を押されまして、これにつきましては先方も納得をしましたことは、昨日朝日新聞の朝刊の一面に、秦役員がイシコフ大臣と話しましたときに、あの問題はもう自分としては蒸し返すつもりはないということでも明らかでございますように、鈴木大臣が明らかにされました。そしてそれとの関係等もございまして、やはりコンブの点は、これは今後のまた話し合いはございますが、一応たてまえとしては、あきらめる、こういうことになったわけでございます。
  38. 寺前巖

    ○寺前委員 あそこの領海並びに二百海里問題で返す返すも問題になるのはやはり領土問題にならざるを得ないだろう。時間がかけられたというのもまた当然だと思うのです。  そこで私は、時間がそんなにございませんが、許せる範囲においてちょっと聞きたいわけですが、歯舞、色丹というのはサンフランシスコ条約で放棄した千島に入るのか入らないのか、明確にお答えをいただきたいと思うのです。
  39. 宮澤泰

    宮澤政府委員 桑港平和条約によって日本が放棄いたしました島のいわゆるクリール・アイランズ、千島と書かれておりますが、歯舞群島及び色丹島はその中に含まれていないというのが政府解釈でございます。
  40. 寺前巖

    ○寺前委員 それは国際的にも通用する見解になりますか。
  41. 宮澤泰

    宮澤政府委員 桑港条約で放棄いたしました島は、日本語は千島でございますが、原文の英語はザ・クリールズとなっておりまして、このクリール諸島というものの定義は、歴史的に帝政ロシアと日本が結びました千島樺太交換条約及び日露修好条約、この両条約にはっきりと定義がされておりまして、この中には歯舞群島、色丹島は国後、択捉とともに含まれておりませんので、これを有力な根拠として私どもはそのように主張をいたしております。
  42. 寺前巖

    ○寺前委員 ソビエトとの間に歯舞、色丹というのはどういう扱いを受けていますか。
  43. 宮澤泰

    宮澤政府委員 日ソ共同宣言の第九項におきまして、ここに書かれておりますことは、「ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約締結された後に現実に引き渡されるものとする。」このように書いてございます。
  44. 寺前巖

    ○寺前委員 ちょっと適切な私の質問のお答えだとは思いませんが、要するに歯舞、色丹というのは、日本が放棄したサンフランシスコ平和条約の千島とは別だということはソ連に対しても通用する話なんですね、相手さんとの間において。そこのところを聞きたいのです。
  45. 宮澤泰

    宮澤政府委員 私どもはその議論は当然ソ連に対して通用すると思っておりますので、そのように主張しているわけでございます。
  46. 寺前巖

    ○寺前委員 これは相手さんも平和条約でそういう位置づけをやってきているというところから見るならば、通用する話だろうというのが私は妥当な結論だろうと思うのです。それが妥当な結論だとすれば、問題になるのは、日ソの間において、共同宣言において、あそこはいまお話しになった平和条約が結ばれるならばお返ししましようという話、その後これが行き詰まった過程がありますね。安保条約が改定されたときに行き詰まってきたという問題がある。私はこの問題は、千島の領有問題をめぐっての話とは別次元の性格を持っている内容だと思うのです。すなわち、戦争が終わったときの占領として軍事支配がされてきた。そしてその後の話の過程の中でお返ししましょう、それはこういう条約が結ばれたとき。明らかに歯舞、色丹というのはそういう経過の上に立っている問題だから、この問題については、ここに軍事基地を置かないということが明確にされるならば、ソビエトとの間には話を千島問題とは別個に進め得る条件を持っているというふうに思うわけです。だから、昨日もわが党委員長総理にその問題を提起したわけですけれども外務大臣にお答えをいただきたいと思うのです。そういう問題提起として進め得ないのか、得るのか、どうでしょうか。
  47. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 昨日の宮本委員長のお話は私も拝聴いたしておったわけでございます。共産党とされてそのような千島全島、これを返還を求めるという御主張でありまして、ただ日本政府といたしましては、サンフランシスコ条約日本政府といたしまして署名をいたしたことであります。したがいまして、日本政府としては、共産党がおっしゃるような主張はいたしかねるということでございまして、千島全島の返還ということが実現されればこれにこしたことはない、私どももこんなにいいことはないと思います。しかし、現実政府としてはそういうようなことは申すわけにはいかないと考えるところでございます。政府として申せることは、一八五五年のいわゆる下田条約の際に明確に両国間の国境を決めたわけでございます。そういった経緯がありまして、その後何らの戦争とかその他のことでなしに決められたことが今回の戦争の結果として日本が領有を奪われる性質のものでないというふうに考えて、日本といたしまして国後、択捉の二島も歯舞、色丹とともに返還を求める、こういうことを決めておるわけでございます。したがいまして、政府といたしましてはこの線を主張し続ける、こういう考え方でございます。
  48. 寺前巖

    ○寺前委員 私の言っているのを先走らないようにしてほしいと思うのです。  私は、歯舞、色丹については、ヤルタであろうと、カイロであろうと、ポツダム宣言であろうと、ずっと一貫した問題として帰属問題についてその対象にならなかったところではないのですか、したがって、そういう意味から言うならば、軍事占領を終結させる問題として取り扱うことができるのじゃないでしょうか、軍事占領を終結させる問題として提起をするならば、返還後の非軍事化を保障することが条件になるであろうということを思うがどうなんだ、これが一つなんです。  それから次に、日本政府が放棄した千島返還をめぐるところの問題があるのですよ。それは連合軍の領土不拡大の精神から見ても不当ではないのか、したがって、あそこの支配をするということについて国際的にもう一度見直しをしてくれという要求を、当然サンフランシスコ平和条約第二条C項の問題を廃棄をして、国際的にもう一度見直してくれということを宣言して交渉に当たるという問題と、二つ問題を持つのじゃないのかということで聞いているわけです。  第一番目のお答えをもう一度いただきたい。歯舞、色丹については軍事占領があるというのは現実、だけれども、ヤルタ、カイロ、サンフランシスコ、一連の千島放棄の問題とは別の性格じゃないか、そういうふうに位置づけられないのか、これにお答えをいただきたい。  もう一つは、千島の領有問題をめぐって、この千島というのは南千島、北千島両方合わせて千島と言っているのだということを、当時の国会答弁の中で西村条約局長が言っている。こう言っています。「平和條約は一九五一年九月に調印いたされたものであります。従ってこの條約にいう千島がいずれの地域をさすかという判定は、現在に立って判定すべきだと考えます。従って」「この條約に千島とあるのは、北千島及び南千島を含む意味であると解釈しております。」きっぱりと言い切っているわけです。とすると、この西村条約局長の言っている南千島というのは何を指しているのか、その当時日本政府としてどう解釈をしたのか、私はここを中途半端にして、千島放棄問題の本質問題と、そのときのとった態度とを混同してはならないと思うのです。ですから、誤りは誤りとして明らかにすることによって、国際的に論理も成り立って、そしてしっかりした外交を進めていくことができる。だから、第二番目の問題は、千島に含まれているという南千島は何を指しているのかお答えをいただきたいと思うのです。
  49. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ただいまヤルタ協定、カイロ宣言、ポツダム宣言その他のお話がございましたが、日本が戦争終結に当たりまして受諾いたしましたのはポツダム宣言でございまして、これに基づいてやがてサンフランシスコ平和条約締結されるに至るのでございますが、その平和条約におきまして日本は千島を放棄いたしました。その千島は、先ほど申しましたが、英語で申しますクリールでございまして、このクリール諸島は歴史的な定義から見ましても歯舞群島、色丹島のほか、さらに国後、択捉も含んでおらない、こういう解釈でございますので、ソ連がいかような根拠に基づいてこれを占領しているかということにかかわらず、日本はこの放棄した千島、ザ・クリールズは放棄したものでございまして、これに含まれておらないいわゆる北方領土は、わが国固有の領土としてその回復を主張しておるわけでございます。  それから、ただいまおっしゃいました西村条約局長答弁につきまして、南千島、北千島とはどういうことか、こういう御質問がございましたが、私どもは、この南千島、北千島という概念は、法的な概念として使ってはおらない、こういう見解でございまして、西村条約局長答弁に対しましては、その後森下政務次官が統一見解を出しておられまして、ただいま私が述べましたような日本政府見解をその後統一見解として確認しておられますので、今日なおそのような見解をとっております。
  50. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 歯舞、色丹が放棄した千島に入るか、あるいはヤルタ協定等に入るか、こういう御質問が最初にあったと思います。したがいまして、いまおっしゃいましたような、この千島と歯舞、色丹というものは本来取り扱いが違うことが当然であったのではないか、このようなお話でございまして、歯舞、色丹は本来北海道の一部である、北海道に属する島であるという見解、その限りにおきまして私ども見解をともにすると思います。  ただ、それなるがゆえに国後、択捉は別扱いというようなことにされては困るわけでございますので、現在、この北方四島として日本としては返還を求める、このような態度には変わらないわけでありますけれども、本来、北海道の一部の島であるという点につきまして、ヤルタ協定等におきましても取り扱いは違ってしかるべきだというふうに考え、その点は同じ見解でよろしかろうと思います。
  51. 寺前巖

    ○寺前委員 お約束の時間が来ておりますので、この問題について保留して、また次回にさせてもらうことにしたいと思います。だけれども、中途半端にできませんので、一言だけお答えをいただきたいと思うのです。森下政務次官ですか、おっしゃったのは、いつ、どの場でその見解を示されたのか。
  52. 宮澤泰

    宮澤政府委員 昭和三十一年二月十一日の衆議院外務委員会におきまして、森下政務次官が政府の公式見解としてこれを明らかにしております。
  53. 寺前巖

    ○寺前委員 先ほどの西村条約局長が発言しているのは昭和二十六年十月十九日でございます。五年たった後に統一見解とは一体どういうことなんだろうかというのは、国際的にも問題が残されているであろうし、さらにまた、最近アメリカの外交文書の一九四九年というのが公表されておりますが、この文書の中においても、当事国であるアメリカ自身の文書の中からもそう解釈するのはむずかしいという文章が出てきております。あわせて研究をしていただいて、私は再度この問題について取り扱いたいと思います。こういう問題について中途半端にしているから、国際的には通用しないということが起こってくるのだ。サンフランシスコ条約千島放棄条項の廃棄を率直に私は検討すべきだ。歯舞、色丹は返還後の非軍事化を保障する問題として、別の問題としての位置づけをしっかりして交渉に当たるべきだ。きょうの質問はこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  54. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、伊藤公介君。
  55. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日ソ漁業協定暫定協定から御質問をさせていただこうと思ったのでありますけれども、役所の方々がもうしばらく後ほどだというお話でございますので、日ソ漁業問題をいろいろ進めていく過程の中で、懸案であります日中の問題がソビエト側に対しても非常に大きな問題になっているということを私たちも質疑をする中でひしひしと感じてきたわけであります。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕 まず日中問題、日中友好平和条約を早急に批准をしなければならないと思うわけでありますけれども保利議長が訪中をされる、こういうお話でございます。保利議長の訪中によって日中問題はどう進展をしていくのか、まずその見通しをお尋ねしたいと思います。
  56. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私ども保利議長が訪中をされるということにつきましては新聞等で拝見はいたしておるところでございます。しかし、総理の方からも何の公式な御連絡はないところでございまして、いま私ども重大な関心を持っておりますけれども、それにつきましてここで申し上げ立場にないわけでございます。国会等におきましていろいろ御決議等のお話も出ているやに伺っておりますが、これらとの御関連もあろうことと存じます。私どもただいまのところといたしましてまだ何とも申し上げかねるのが実情でございます。
  57. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 石田労働大臣が一方においては訪ソされる、こういうお話も出ているわけでありますが、石田労相の訪ソは日中問題とどんなかかわり合いを持っているのか。当然訪ソをすれば日中友好平和条約の見通しについてただされるでありましょうし、すでに私どもの方にもソビエト大使館を初めソビエト側の関係の方々からも日中問題の行方に関して多大の感心を示されているわけでありますけれども、石田労相の訪ソについてお尋ねを申し上げたいと思います。
  58. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 石田労働大臣は、ILOの会議がジュネーブで開かれますので、その機会にモスクワに寄られます。石田労働大臣日ソ議員連盟の会長をしておられます関係もありまして、モスクワに多くの友人の方がおられます。そういったことで旧交を温めにモスクワに立ち寄られる、このように伺っておるところでありまして、日中問題との関係等につきましては私どもは何ら伺っておらないところでございます。
  59. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 そうすると、今度の石田労相の訪ソということは政治的なテーマを持たずに訪ソするということなのか、全く個人的なと申しますか、友人を訪ねるということだけの訪ソなのか、あるいは政治課題を持っての訪ソなのか、きょう現在で外務大臣おわかりの範囲内でお聞きをしたいと思います。
  60. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 石田労働大臣日ソ議員連盟の会長をされておりますので、モスクワに行かれました場合には、ソ連政府のあるいは党の有力者とお会いになることになろうと思います。その際に日ソ間におきますいろいろなことが恐らく話題に上るであろうということは当然考えられるところでございますが、こういった特定の話題につきまして相手方と交渉するとかそういったような次元の問題ではないと思います。先方並びに政府の首脳の方々とお会いになりましていろいろなお話をされるであろうということは考えられるところでございます。しかし、そこで何らかを取り決めるというようなことはないというふうに考えておるのでございます。
  61. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 今度の漁業問題では農林大臣が訪ソをする、さらに石田労相も訪ソをされる、あるいは一方においては保利議長中国を訪問されるという話も聞いているわけでありますけれども、こうした中で、外務大臣御自身が訪ソするあるいは訪中をして新しい日本外交の進展を図っていくという御意思は今日ありませんでしょうか、いかがでしょう。
  62. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私自身なるべく早い機会にぜひ訪ソをいたしまして、特に日本といたしまして何よりも大事な領土の問題を含めた話し合いをいたすべきであるというふうに考えております。これもただ一度行けばということでなしに、やはり交流は多ければ多いほどいいというふうに私自身も考えておるところでございます。ただ、その時期がいつになるかはいまちょっとまだ時期までは決めておりませんけれども、なるべく早い機会に訪ソいたしたい、こういう気持ちは変わりございません。
  63. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 外務大臣は日中友好平和条約について今後どのようなスケジュールでお進めになるおつもりなのかお尋ねをします。
  64. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日中平和友好条約につきましては、もうたびたび申し上げておりますように、既定路線共同声明によりまして引かれておるわけでございまして、その線に沿いまして双方とも満足のできるような条件を見出して締結に踏み切りたい、このようなことが政府態度でございます。ただ時期がいつになるかということはまだここで申し上げ段階にはないのでございます。
  65. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 複雑な国際情勢の中で慎重に進めなければならないということはよくわかりますけれども、日中問題は日中問題として、また日ソの問題は日ソの問題としてそれぞれ考え、また懸案の日中友好平和条約の批准については積極的にお進めをいただきたいと思います。  日中問題と直接的な関係はないわけでありますけれども、一点だけ私はちょっとお聞きをしておきたい点があるわけであります。  在韓米軍の問題でありますけれども、せんだってブラウン、ハビブという両氏が韓国から帰国途中に日本に立ち寄られたわけでありますけれども、その際にどのようなことをお話しになられたのか、その内容についてお尋ねをしたいと思いします。
  66. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先般ブラウン統合参謀本部議長並びにハビブ国務次官が韓国の帰途立ち寄られまして、私もお目にかかったのでございます。わが方から韓国との話し合いはどういうことであったかということをお尋ねをいたし、それに対しまして質疑応答を苦干いたしたわけでございます。会談時間は約二時間くらいあったのでございますけれども、その間に先方の申しましたことは、いろいろ新聞報道等にも出ておりますが、韓国からの陸上兵力の撤退につきましては、四、五年の間に撤退をしたいということであります。ただし、その撤退のやり方につきましては、南北間の軍事バランスも考えながら朝鮮半島におきます平和に対する阻害要因にならないように慎重に段階的に行うんだ、こういうことでございます。また空軍、海軍等は、特に空軍は残すということであります。したがいまして、従来聞いておりますところと新しいことはなかったわけでございます。  当方からは、南北間の平和、朝鮮半島の平和というものを戦争が起こってしまってから後で空軍あるいは海軍力で何とか処理をするよりは、やはり戦争が起こらないようにすることを第一に考えてもらいたいということを当方の希望として申したところでございます。それには韓国内におきまして不安感を起こさないようなことでぜひとも実施をしてもらいたい、そのためにはアメリカとして韓国に対しますコミットメント、いままでの約束をあくまで守ることが何より大事なことだということを申しておったところでございまして、ごく大ざっぱに申し上げますとそのようなことをいたしたということでございます。
  67. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 その際に、つい先日朝鮮民主主義人民共和国の議員団の方々が正式な形で初めて来日されたわけでありますけれども、今後の南北問題、特に朝鮮半島——日本と北朝鮮とは交流が十分できなかったわけであります。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕 すでにアメリカ自身は交流を進めるという方向に動き出しているわけでありますけれども、こうした日本と北朝鮮との交流あるいは渡航というような問題についての話し合いはなかったのでしょうか。
  68. 中江要介

    ○中江政府委員 ブラウン統合参謀本部議長とハビブ国務次官が来ましたときの鳩山外務大臣との会談の中では、いま先生御指摘のような日本と北朝鮮との交流の問題あるいはアメリカと北朝鮮が何らかの接触を始めるのではないかというような問題は一切話になりませんでした。
  69. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 幾たびか朝鮮半島の問題が大変大事だということは質問してきたわけでありますけれども、朝鮮半島の平和そして南北間の問題に関して、すでに朝鮮民主主義人民共和国の議員団が過日訪日をされて、大変熱心にそれぞれの立場の方々とお会いをされたり、また新しい友好関係をつくられて帰られた、こういう状況の中で一つの歴史をさらに力強くお進めをいただきたい。わが国としても積極的な姿勢を示しながら、しかし朝鮮半島全体の平和ということに熟慮をしながら、ぜひ進めていただきたい、こうお願いを申し上げておきたいと思います。  日ソ漁業暫定協定につきまして、細かな条約の問題あるいは大変不鮮明な協定内容については後日改めて質問させていただきますけれども、当面すでに起きつつあります漁業に従事している方方の職場を失っている人たちに対する対策は、現在どうなっているのか、また、すでに新しいこの海洋法等によりまして生まれている事態、また、今後この協定等によって生まれてくる失業対策等について、具体的に現状を御報告いただきたいと思います。
  70. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 ただいまお尋ねの、漁船に従事しています乗組員のいろいろ対策につきましては、現在水産庁のほかに、主管官庁でございます運輸省あるいは労働省、厚生省等と協議をして、対策に万全を期したいということで検討を進めておるところでございます。  で、現在の制度といたしましては、御案内のとおり、海から陸に職業転換を余儀なくされる者につきましては、雇用対策法による職業転換に対する各種の助成措置がございます。また、海から海へ、漁業以外の職種に転換いたします場合は、漁業再建整備特別措置法によりまして、予算はこれは運輸省が所管をされておりますけれども、同様の助成措置をとることになっております。私どもといたしましては、今回かなりな大規模な漁業従事者の職業転換等が予想されますので、その減船の規模等を早急に固めますとともに、それに従事しております乗組員の実態に応じまして、ただいま申し上げました雇用対策法、漁業再建整備特別措置法、この運用でできるだけその適切な救済対策、転換対策を進めてまいりたい。また、それを進めます際に、漁業の実態から見て現在の制度で救い得ない部分がございます場合には、それの打開についても対策を講じたいということで、関係省庁で現在進めておるところでございます。  なお、その日ソ以外の海洋法の進展と申しますか、いわゆる二百海里時代に入りまして、同じようなケースがすでにアメリカとの関係でも発生をいたしたわけでございますし、今後もそういったことが予想されるわけでございますが、これはアメリカの場合を例にとりますと、この場合は大体北方トロール四隻程度を一応間引くということで、漁獲量の削減も前年対比一一%程度でございましたので、一応対応することが可能でございました。したがって、この場合には二隻をその所属会社の中で配置転換をさせ、それから残りの二隻につきましては、海洋水産資源開発センターがやります海外でのいろんな新漁場調査にその船を乗組員ごと用船をして使うというような対策をとって、一応いわゆる失業問題ということは出さずに済んだわけでございます。今後もその減船の規模あるいは乗組員の職を離れなければならない場合の人数あるいはその人々の年齢階層、そういったようなことを十分検討しながら、実態に応じて、いまのように漁業内部での転換それから他種産業への転換、こういったことを組み合わせて、適切な対策を講じていきたいというふうに考えております。
  71. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 具体的に、今後この協定によってどのくらいの仕事ができないという方々が出てくるのか、どんなふうに予想をされているのか、お尋ねをしたいと思います。
  72. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 今回の暫定協定の中で、漁獲量その他漁船の隻数規模について一応合意をしたわけでございますが、漁船の隻数で申し上げますと、現在大体実数で約七千四百隻ぐらいの漁船がソ側の二百海里の水域の中で操業をしているというふうに把握をしております。で、これに対しまして、ソ側の方と話し合いがまとまりまして、水域別に操業隻数を固めましたものが、合計いたしまして六千三百三十五隻でございます。したがいまして、漁船数で言いまして約一千隻近くの漁船が一応そのソ側水域二百海里の中に入れなくなるわけでございますけれども、実は、これらの船のうちには特に日本近海での、日本の二百海里の中で相当操業しているものもございます。全部が直ちに減船をしなければならないということにもなりませんので、現在漁業種類ごとに、いま一九七七年、与えられた条件の中でどれだけの漁船が操業可能か、逆に言いますと、どれだけが廃業を余儀なくされるかということを鋭意作業を進めておる段階でございます。しかし、おおむね一千隻に近いものが上限としては転換を余儀なくされるというふうに想定をいたしております。  乗組員の人数になりますと、さらにその同じ船に従事しておりましても、季節によって人が交代したり、周年雇用されたり、非常に複雑な関係がございますので、ただいまの減船の規模の確定を待って乗組員についても直ちにその実態の把握を進めようということで、並行してやっておりますが、従来の平均的な規模で申しますと、おおむね一隻平均七人ないし十人近くの乗組員が就業いたしておりますので、最高限度としては一万人近くの規模の者がこういった職業の転換なりあるいは従来と違った漁業の操業ということを余儀なくされるであろうということを、一応めどとしては頭に描いておるわけでございます。  なお、これにつきまして、必ずしも全部が他種産業に転業いたすということだけでなく、さっき申し上げましたように、日本近海でのほかの漁業への吸収、あるいは、先ほど申し上げました資源調査のための調査船への活用あるいは取り締まり船への転用、そういったことも、他方面可能な限り転用ということをまず第一に考えながら、そのうちやむを得ないものについては他種産業への転換ということも逐次並行して検討していくというつもりでいま作業を進めております。
  73. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 一万人近い方々が新しい職場転換をしなければならないということも予想される、特に北海道においては季節労働者がすでに二十九万人近くも職を失っている、こういう現状の中で、現地の方々にとっては大変な事態を迎えているわけでありますけれども、これはもう全く私は素人でありますからわかりませんけれども、いろんな現地の方々のお話を聞いたりしておりますと、新しい職場といってもそうそうなかなか身近なところにない。政府みずからが新しいエネルギー問題を考えなければならない事態の中で、北海道の石炭対策というものを積極的に考え直して、そして職業転換ができる方々、あるいはすでに季節労働者等の新しい職場を求めている方々をあわせて考えてみることができないのか、こういうお話も出ているわけでありますけれども、そうした北海道等における石炭を見直すということから開始をしていくということは考えられないのかどうかということが一つの問題。     〔委員長退席、山田(久)委員長代理着席〕  それから、こうした、当面船員保険であるとか職業転換給付金であるとか等々の救済を図る、あるいは補償をしていくということとあわせて、やはり漁業に従事をしてきた方々は、そうそう職業転換といっても、海を離れて全く違うところでということも、これはもう大変なことであろうと推察をするわけでございますので、むしろもっと優良な漁場を新しく求めていくということが必要なのではないかという気もするわけでございます。特に、ニュージーランド等におきましては、早くからもっと多くの乳製品あるいは牛肉を日本に買ってもらいたい、こういうことで幾たびかの要請もあったわけでありますし、話し合いの場も持たれてきたわけでありますけれども、遅々としてこういうことも進まない。しかし、こういうことを考え合わせながら、ニュージーランドやオーストラリアなど、あるいは南米等に関しても、新しい優良な漁場を早急に政府みずからが交渉していくということの方がむしろもっと大切なことであろうというふうに思うわけでありますけれども、どのような考えで今後臨んでいくおつもりなのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  74. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 最初にお尋ねのございました漁業以外の他の季節産業の失業労働者、こういった対策を含めて総合的に考える余地はないのかというお尋ねでございますけれども、この点、実は現在漁業関係の離職者ないし転業を必要とする者自身についても、前回申し上げましたような段階で、鋭意必要な規模あるいは転業を余儀なくされる人の年齢構成、そういったようなことを現在検討中という段階でございますので、それを中心に労働省あるいは運輸省、厚生省等と協議を進めておりまして、その問題の煮詰めの中で、あるいはいまお示しのような話が関係省庁の方からも出てくるかということも考えられるわけでございます。そういった段階で、関係省庁と十分適切な対策を、当面水産庁としては漁業中心でございますけれども、今後検討してまいりたいというふうに考えております。  それから二番目の、新漁場ないしは外国の沿岸の二百海里の中での国際協力的な観点に立った漁場調査に積極的に力を入れろという点につきましては、私ども全くそのような方向で今後施策を進めたいというふうに考えておりまして、先ほど申し上げましたアメリカ水域から転換を余儀なくされましたトロール船のうち一隻は、チリ政府の要請で、五十二年度にチリの二百海里の中の水域の資源調査に協力という形で従事することになっております。その結果いかんで、共同で資源開発をやる余地が出てまいるということが期待されておりますし、アルゼンチンからも実は五十一年度にあって、すでに一部調査船を派遣いたしまして、そういう南方漁場の調査に協力いたしておりますが、さらに積極的に、アルゼンチンの方も各国の協力を求めて資源開発を水産面で進めようという動きもございますので、こういった国々と協力をしながら、囲い込まれてはいるけれどもまだ利用されていない資源の開発に、日本の従来のいろいろな技術的な蓄積なりあるいは先ほど申し上げました漁船、漁業労働といったようないろんな蓄積を活用することを考えるべきだと思っております。  またそのほかに、太平洋の真ん中にございます天皇海山のような、将来ともに外国の二百海里外になります海域につきましても、全く開発の余地がないわけではございませんので、こういった点にも鋭意いまの転業を余儀なくされます漁船等を活用しながら、新しい漁場、新しい資源の開発に大いに力を入れたいというふうに考えておるところでございます。
  75. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 時間が参りましたので、終わります。      ————◇—————
  76. 山田久就

    ○山田(久)委員長代理 所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ルーマニア社会主義共和国との間の条約締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ブラジル合衆国との間の条約を修正補足する議定書締結について承認を求めるの件、投資の奨励及び相互保護に関する日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件、国際海事衛星機構(インマルサット)に関する条約締結について承認を求めるの件、以上の各件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。寺前巖君。
  77. 寺前巖

    ○寺前委員 順次聞いていきたいと思いますが、条約がたくさんありますから、要点だけをお聞かせいただいたら結構でございます。できることならば、大臣から要領よくお答えいただいたら一番ありがたいと思います。意地悪言っておるわけじゃないのです。  まず、投資の奨励及び相互保護に関する日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定について率直にお聞きします。  第二十九回国連総会で採択された諸国家の経済権利義務憲章、そういうのがあります。その第二条第二項に次のように書かれております。「自国の法令に基づき、また自国の国家的目的と政策の優先順位に従い、自国の国家管轄権及び範囲内で、外国投資を規制し、それに対し権限を行使すること。いかなる国家も外国投資に対し特権的待遇を与えることを強制されない。」第二項に「いかなる国家も次の権利を有する。」と指定して。これが国際的な慣習というか、国際的にも確立されてきている内容だというふうに理解することができるのじゃないかと思うのです。また、(c)にはこう書いてあります。「外国人資産を国有化し、収用し、またはその所有権を移転すること。ただし、その場合には、自国の適切な法令及び自国が適当と認めるすべての事情を考慮して、妥当な補償を支払わねばならない。補償問題で紛争が生じた場合はいつでも、その紛争は、国有化した国の国内法にもとづき、かつその法廷において解決されなければならない。」以下云々と書かれております。  いずれの項を見ても、それぞれの国の自国のその状況のもとにおいて処理していくということがその国家の権利であるという権利規定がここに示されているわけでありますが、いま議題となっておりますこの協定内容というのは、この権利と比べたときに合致するものであると言えるのか言えないのか。私は、これに合致しない、国家の権利として位置づけておるものに合わない協定であるというふうに見るのが妥当だと思いますが、大臣はこれについてどういう見解にお立ちになっているのか。  第二に、この協定の第五条「いずれの一方の締約国の国民及び会社の投資財産及び収益も、他方の締約国の領域内において、不断の保護及び保障を受ける。」という保護、保障を規定するとともに、その第二項には、「収用、国有化若しくは制限又はこれらと同等の効果を有するその他の措置の対象としてはならない。」ということで、収用から国有化のみならず、投資をした事業に対して何らかの制限が起こった場合には、それは補償をせよということを条件にしている。この「制限又はこれらと同等の効果を有する」という行為が行われたときに、そこの国の権利の問題として国有という段階よりももっと幅広く、ちょっとした制限が最初に意図しておったものとは違った段階でも、弁償せいということを言うことができる内容としてこれは理解ができるわけだけれども、そうしたら、本当に全面的に、どんな事態があろうとも、ここに投資をする側は伸び伸びと相手さんに対して要求できるんだという、先ほど指摘した、特権的な権利もいいとこだというそういうものにこれが理解できるんだけれども、余りにもちょっと厚かましい姿にはなっていないだろうか。私は、どうも国家の権利に属する問題においての重大な干渉事項のようにこれは感ずるんだけれども、その点どうなんでしょうか。  この二点について率直に、大臣はきょうは研究してこられるというお話になっておりましたので、その点だけ質問をしてこの協定については終わりたいと思いますが、いかがなものでしょうか。
  78. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 経済の権利義務憲章とただいま御審議いただいております投資保護協定はやや抵触するのではないか、こういうお尋ねでございます。  経済権利義務憲章の投資等に関する項目は、投資受入国の権利を非常に強調しておる、それから国際法上の義務を十分規定していないというそういう色彩を持っておりまして、わが国といたしましてはこれに反対をした経緯があるわけでございます。わが国といたしましても、国有化の権利を含めまして一定の投資受入国の権利は認める立場をとっておるのでございます。本件協定は、投資国及び投資受入国の国際法上の権利及び義務を踏まえて、上述の経緯の立場を具体化する形で規定を設けておるわけでございます。したがいまして、ニュアンスといたしまして、御審議いただいております協定の方が投資につきまして保護を重く見ておるというニュアンスを持っておるものと思うわけでございます。しかし、これらにつきまして、これが相反するというような関係ではなくて、若干のニュアンスの違いがあろうというふうに思います。  なお、後段の方のお尋ねにつきましては政府委員の方からお答えさせていただきたいと思います。
  79. 加賀美秀夫

    ○賀来説明員 お答えいたします。  いわゆる投資事業活動に関しましては、現在では、従来の全面的な収用あるいは国有化措置に加えて、制限あるいはこれと同等の効果を有するその他の措置というものが世界の一般的な風潮になっていることは一つの事実でございます。こういった国際情勢の変化にかんがみまして、受入国は従来の収用あるいは国有化からの保護を提供すると同時に、それに至らないあるいはこれと同等の制限または措置からの保護を与えることによって、先進工業国からの投資を誘致し、もって自国の経済開発のために役立てるという立場に変わってきております。他方、投資国の立場から言えば、従来の全面的な収用、国有化に加えて、それに至らないあるいはそれと同等の制限ないしは措置からの保護を求めてこういった投資協定を結ぶ傾向にあるわけです。  まさにエジプトも同様の立場を反映しまして、そのエジプトはわが国との協定締結を提案する前に、英国、ドイツ、スイス、オランダ、イタリア等との間に同じような条約を結んだのでございますが、これらの条約におきましても、エジプトは、収用または国有化の措置に加えて制限等の措置からの保護を認める規定を与えておるわけでございます。そして、わが国との協定の中に含まれております協定五条二項の規定は、エジプトがイギリスとの間に結んだ協定のテキストと全く同一でございまして、さらに、文言は若干違ってございますが、ドイツ、オランダ、イタリア、スイス等とエジプトが結んだ協定においても同様の制限ないし措置からの保護が規定されてございます。
  80. 寺前巖

    ○寺前委員 そういうことになっているということだけではだめなんで、海外へ出ていきます日本経済活動は、両国間の問題ということだけじゃなくて、企業の意図を持って海外に出ていく。企業は利益の最大限追求をやっていく。相手の国が、そういう上において、政府が国民との間にまだ矛盾のないときはそれで済むかもしれない。しかし、矛盾が生まれてきた段階には、何も日本の企業のためにわれわれが犠牲になることはないじゃないかという国内世論が、ある場合には国有化という形で生まれるだろうし、あるときには制限という形で生まれるでありましょう。それはあくまでもその国の権利、国民の持っている権利だと思うのです。ですから、わが日本経済活動人をそういう不幸から守りたいという要素はあるかもしれないけれども、その経済活動のあり方の上において、平等互恵の立場に立って将来にわたってこういう活動をやっておったならば批判を受けて不安になる、それを相手の国家の政府の名前において保護を受けておこうという態度自身に、やはり問題を残しているように私は思うのです。大臣は、先ほどニュアンスの違いだ、こうおっしゃったけれども、明らかにこれはニュアンスの違いという程度のものではないと思うのですよ。それはやはり、発展途上国が今日の世界の趨勢の中で、諸外国の経済活動の批判がそれぞれの国において出てきて、そこからそれぞれの国家の権利としてこれを明確にさせようということで、先ほどの国連における決議が生まれたという経過があると思うのです。日本政府はそれに反対しておられるようだけれども、それだったら、日本政府としてお互いの国際間のあり方の問題として、むしろこれは本当に反省すべき内容ではないかと私は思うのです。ですから、もう一度日本経済活動が現にいろいろな角度で批判を受けているという実態を背景にして、国際関係で結んでいるこのような条約については、私はこれをモデルにして新しくやっていきたいのだということをこの前の委員会のときにはお話しになっておりましたけれども、平等互恵の立場でそれぞれの自主的経済の発展の道を追求していく、そういう経済政策をとっていくように抜本的に改善をする必要がある。とするならば、この協定についても私は反省をしなければならない内容を含んでいるというふうに思うわけです。  私はこの際に、違った角度の問題ですが、租税条約の二条約についてあわせて聞いてみたいと思うのです。非常に似通っていると思うのです。ここに出されているのは、ルーマニアとブラジルであります。ブラジルに対して投資をする、融資をする、配当金が入る、利益が生まれる。二重課税にならないように条約は現在存在しているけれども、ブラジルの政府が取り分を要求したい、そのかわり日本の方の取り分は減らしてあげてくださいよというのがその性格の一つだろうと思うのです。この場合におけるところの日本経済活動、これは明らかに最大限利潤の追求のためにブラジルの中で行われていくと思うのですが、その活動においても、いまのエジプトとの関係のように、相手さんの国内で日本経済活動にいつ批判が出てくるかわかったものではない、私はそう思うのです。現にビルマなりあるいはタイなりシンガポールなりインドネシアなり、日本経済活動が全体として批判を受けてきているのは事実じゃないでしょうか。そうすると、相手さんの政府日本経済活動に何らかの制約を加えている場合には批判は起こらないかもしれないけれども日本経済活動を野放しにやっておったならば、将来批判を受ける条件というのは持っているということになるのではないでしょうか。私は大臣にそこを聞きたいのです。タイにおいては、日本経済活動は批判を受けた。インドネシアでも受けている。エジプトでは受けないという保証はどこにあるのか、あるいはブラジルにおいては受けないという保証はどこにあるのか。どこが違うのか。タイで受けたものが、インドネシアで受けたものが、エジプトで受けない保証あるいはブラジルで受けない保証は一体どこにあるのか、ルーマニアで受けない保証は一体どこにあるのか。私は、それぞれの国の違いがあると思うのです。日本経済活動が批判を受けるのか受けないか、その根拠はどこに求めることができるか、御説明をいただきたいと思うのです。
  81. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 経済活動に対しまして根本的な考え方の相違があるのかもしれませんけれども、私は最近までの趨勢につきましてこのように考えております。  それは一時、発展途上国等におきまして非常に国有化が進みました時期がございます。そして民間企業からいたしますと、外国へ経済協力的な意味を持つもの、あるいはもっぱら商売という方もありましょう、いろいろありますが、しかし、経済行為というものは、やはりその国のお互いの利益になるから経済的な進出ということがあるものと思います。そういった段階に、一つの時期に、非常に国有化が、しかも補償はほとんど名目的な補償しか払わない、それによりまして国有化がどんどん進められたというような時期があります。そういう動きに対しまして、これでは経済協力もできない、進出したくても、企業というものは常に財産は没収をされる危機に立つわけでありますから、そういった状況では経済的な発展というものは阻害をされる、こういった反省の時期がまたあって、いまこのエジプトの場合でございますけれども、このエジプトが本当にこれから経済を振興しなければならぬ、こういったときになりまして、そういうときには、投資に対しまして、特に投資者に対しまして、常に危険にさらされるというような状態はやりません、エジプトとしてはそういったいままでのようなことはなくして、経済の発展を考えるようにしなければならないのだ、こういう政策的な態度をとるに至ったのではないか。そういうような経過をたどって今日このエジプトの投資についての協定ができた、こういう経過ではないだろうかというふうに思います。  したがいまして、企業の進出はすべてこれ悪であるというような考え方に立ちますと、おっしゃるような論理が出てくるかもしれませんけれども、私どもは、エジプトの経済を立ち直らせるためには、やはり諸外国との経済的な交流というものを通じて達成されるだろうと思いますし、そういったことをエジプト政府も考えておられるに違いないと思います。したがいまして、いろいろな例をお引きになりましたが、今日、東南アジア等の国におきましても、一時は日本の企業に対します非常な批判が強く出た。それには、日本の企業のいろいろな批判さるべき要素が多くあったろうと思います。しかし、余りにも急速に外国の資本が出ていくということにつきましては、やはりそれぞれの国におきましていろいろな問題も引き起こしかねないことであります。最近に至りましては、日本の企業進出というものがほとんど急激に減ってしまったのが現状でありまして、そういった状態になりますと、逆にもっと日本の企業は来てもらいたい、こういうような空気にいまなりつつあるというふうにも聞いております。そういうように、やはり物事は行き過ぎますといろいろな批判が出てくる。したがって、国有化等の問題につきましても、余りに資本をいじめつけますと、資本はそこの国にはもういかないということになる、そういった関係にあろうかと思うのでございます。  したがいまして、いまエジプトが政策的にとっております態度、これは大変おかしいではないか、そういった条約を結ぶことはおかしいのではないか、こういうような御批判も、早急にそういうような判断も下せないのではないか。それぞれの国が置かれましたそういう段階もありましょうし、また環境もありますから、したがいまして、やはり余り行き過ぎると問題が起こるというような感じがいたします。  そういったことで、いま御指摘でありますけれども、御指摘のようなこともそれは重々心にとめておかなければならないことであろうと思いますけれども、現在の段階におきまして、このエジプトとの協定、これを御承認いただきまして、これができましたから日本の資本が相当エジプトにどんどんいくということではなかろうと思います。双務協定としては、とにかくそういった経営の危機を起こさないような仕組みをつくったわけでございますので、この御承認を賜りたい。直接の御答弁になりませんけれども、気持ちを申し上げたわけでございます。
  82. 寺前巖

    ○寺前委員 いや、私は率直に聞かせてもらう方がいいと思うのです。それで、いま大臣のお話にありましたように、行き過ぎてもだめだ、それぞれの国の間には段階があるという御指摘がありました。私はこのことが非常に大事だと思うのです。相手国の政府というものが、自国の経済建設をどういうふうに位置づけて他国の持っている技術なり他国の持っているところの能力なりを提供してもらいたいか、自国の経済建設に対してどのような態度をとっているかという問題が、日本経済活動の側の態度だけじゃなくして、相手側の問題もあって、両々相まって国際活動というのは展開されていくだろう、私はここが大事だと思う。その場合に、日本の側が相手さん方の持っている独自の権利、国民として国家としての権利を侵さない、平等、互恵の立場日本経済活動をまず立たすということがわれわれの側から言うならば一つあります。相手さんの側も、自国の経済建設に対して自国の国民が持っている権利を侵されないようにしてやっていくという問題をやらなかったら、国内におけるところの不満が爆発的になるのはまた当然のことだと思うのです。この両者を見て初めて国際協定というのが結ばれていくという性格だと思うのですよ。  そこで私は、そういう意味において、このエジプトの協定の方は、相手さん方が持っている固有の権利としての制限をしたりすることは、各国に対して、国民としては当然持っている自分の権利なんだということを侵すような協定をしておくということは、協定としてそこまでやってしまうと、私はこれはちょっと行き過ぎていっているのではないだろうかというふうに思うわけです。  それから、租税条約の側で言うと、相手さんの国とこちらとの関係で言うと、ブラジルの問題について言うならば、ブラジルの政府というのは軍事政権ではないでしょうか。そして、ブラジルの野党の議員が言論の自由を抑圧されて逮捕されているという事情下にあるんじゃないでしょうか。私は、そういう事情下において、国家建設というのが自主的経済の道筋の追求として、平等互恵の立場に立って協定を結び得る状況下にあるというふうには思えないというのがいまのブラジルの姿ではないかと思います。ブラジルの政府というのは、どうでしょうか、軍事政権で、そして議員が逮捕されているという事実はないんでしょうか。お聞きをしたいと思います。
  83. 内藤武

    ○内藤政府委員 お答えいたします。  ブラジルにおきましては、先生のおっしゃるように、一九六四年以来、要するに陸軍系の政権ができておりまして、すでに四代続いております。先般訪日のガイゼル大統領は四代目でございますけれども、ブラジルにおきましては、一九六六年に政党の再編成をいたしまして、現在は与党であるいわゆるARENAと称するものと野党というものがありまして、野党に対しましても、発言であれ、政治に関与する機会は十分に認められております。それから、かたがた一九七四年の選挙におきましては、むしろ野党がある程度の伸びを示したというような状況になっておりまして、野党に対してもそれなりの発言であれ、政治関与の機会は与えられておるということでございます。  それから、先生の御指摘のように、一部の野党なりあるいは政府に対する非協力であった分子に対しての逮捕が一時行われたという事実はございますけれども、現在においては国会も開かれておりますし、野党もそれなりの発言の機会を与えられているというのが現状でございます。
  84. 寺前巖

    ○寺前委員 淡々としてうまくいっているような言い方をされますけれども、外務省の中南米第一課から昨年の八月にいただいた「ブラジル概観」を読みますと、「治安当局に対する非難ないしは現政治体制を批判したことにより本年初頭以来五名にのぼる野党MDB議員が軍政令第五号により相ついで議員資格の剥奪及び公民権の停止処分をうけることとなった。」という指摘が明確にあります。それから、その後段にはまた「前者野党議員五名の追放措置は、言論統制をゆるめたとは言え、軍事政権の寛容度の限界を示すものであり、後者は、軍部の行過ぎを許さないガイゼル大統領の統率力の健在を示すものと言えよう。」という指摘がわざわざ書かれておりますし、これは広くブラジルの中における軍政批判が広がっているという事実からも、ブラジルの現状というのは、自主的経済の道を追求する状況下に言論の自由が保障されている、民主的に建設がされていっているとは言いがたいんじゃなかろうか、さればこそまた、アメリカの大統領の発言も存在したと私は思うのであります。  こういう一連のことを考えてみた場合に、私はそういう立場に立って、租税条約という税金だけの問題かもしれないけれども、真の意味両国関係を友好親善でやっていくという場合に、やはりそこの国内の姿というものは重要な判断の要素として見なければならないと思うのです。だから、エジプトの問題あるいはブラジルの問題というのはそれぞれ性格は違います。それぞれ性格は違いますが、ここに出されてきている条約というのは、うんと言うわけにはいかない性格を持っているように思うのです。  なお、ブラジルとルーマニアの文化交流の問題です。やはり両国の親善のために税金は取らぬでおこうじゃないかという関係のルーマニアとの租税条約と、ブラジルの場合には取るという問題の違い、ここにも、それぞれの国が自主的に経済の追求、友好親善の関係のあり方、そういう面において相互主義の立場に立っている姿の違いが、ルーマニアとブラジルの間のこの租税条約協定内容として違ってきているという点も、ここからもうかがえるように私は思うのであります。ですから、こういうような条約を結んでいく場合には、われわれの側の問題点は何かということと、相手さんの国の問題点は何かということによって判断は決めていく必要がある。そういう点ではブラジルに対するところの相手さんの政府に対する態度の問題というのは、私はさきの答弁では非常に甘いというふうに言わなければならないと思うのです。  その次に移ります。インマルサット。最近の宇宙利用という問題はいろいろありますが、これが新しい時代におけるところの重要な課題の問題になってきているだけに、これが、平和利用として宇宙利用がされていくことを私は希望するものであります。ところが、現実には、この宇宙の中に打ち上げられていく衛星が軍事的な性格を持ってきているということが広く言われてきているわけであります。  そこで、お尋ねしたいのは、この宇宙に打ち上げられていく衛星がどの程度軍事的にいま利用されているのか、利用されているというふうに見ておられるのかという問題が第一であります。  それから第二に、本条約が、軍事目的には使わすのか、使わさないのか、これは明らかにしてほしいと思うのです。すなわち軍艦などに使わすのかという問題です。そして同時に、日本の自衛隊はこれについてどういうふうに取り上げるつもりでおるのか。以上、お聞きしたいと思います。
  85. 村上和夫

    ○村上説明員 お答え申し上げます。  最初に、現在衛星がどのくらいあって、それが軍事的にどの程度利用されているかということでございますが、私たちが承知している限りでは、一九七六年末までに打ち上げられました衛星の数は約二千というふうに承知しているわけでございます。そのうち軍事目的にどの程度使われているかということにつきましては、実際に政府間で発表された数字もございませんし、いろいろの推定はあるやに聞き及んでおりますが、私たちは公式には全く承知しないわけでございます。  それから、先生の第二の御質問の、インマルサットの目的が平和的であるかあるいは軍事的なのかという点でございますが、御審議いただいております条約の第三条の第三項には、「機構は、専ら平和的目的のために活動する。」という規定がございまして、これは文字どおり平和的目的のために活動するわけでございます。現実に、これが条約の規定上軍事目的に使われ得るのか。また、自衛隊がこれに対してどういう考え方をしているかということでございますが、純条約解釈といたしましては、第三条第三項に「平和的目的のために活動する」ということがございますので、平和的目的に使われるということでございますが、インマルサット自体が非常に技術的な海事公衆通信業務のために開放されているものでございまして、海軍の軍艦がこれを利用することについて禁止されているわけではございません。日本の自衛隊がこれを使う計画につきましては、現在のところインマルサットの利用計画はないというふうに承知しているわけでございます。
  86. 寺前巖

    ○寺前委員 公式には聞いたことないというお話ですが、推定をひとつ聞かしてください。どの程度これが軍事利用に使われているのかということ。  それから宇宙条約というのがあると思うのです。この宇宙条約では、核兵器などに衛星を使ってはならないということがあるかと思うのですが、宇宙条約の中で軍事目的に使うという問題についてはどのように検討され、どのように日本政府は臨んだのかということをお聞きしたいと思います。  それから、国際的ないろいろな機構がつくられていく場合に、いつも問題になるわけです。お金をたくさん出す国が、たくさん使う国が発言権があるのだという形で役員構成をやっていく。しかし機構を全体としてこういうふうに運営していくのだとか、国際的にお互いに助け合っていくという場合に、お金を持っている国が発言権を持っていくというやり方でいったならば、それは必ず破綻を来す内容にならざるを得ないであろう。ですから、そういう役員構成の選び方というのは検討すべき段階に来ていると思うのだけれども、この条約のときにはどういうふうにそれを相談をしたのか、日本政府としてはどういう態度をとってきているのかということをお聞きしたいと思うのです。
  87. 村上和夫

    ○村上説明員 お答え申し上げます。  最初の、衛星がどういうふうに使われているか、推定でございますが、これはたとえば国連で発表されております種類別の人工衛星等の成功の数はございますが、ただ、この国連のドキュメントも、その分類が、たとえば技術開発衛星であるとか、科学衛星とか、あるいは月探査機とか、惑星探査機、有人宇宙船、気象衛星、測地衛星、地球観測衛星等々に分類されておりまして、これがどの程度軍事的に利用されているかという点は全く推定にまつわけでございます。この全体の数字が先ほど申し上げました約二千でございまして、正確には千九百八十九というふうに国連のドキュメントでは示しているわけでございます。  第二の御質問の宇宙条約関係でございますが、確かに御指摘のように、宇宙条約の第四条には、平和的目的の使用は月及びその他の天体のみに適用されるような書き方がございまして、この宇宙条約によりますと、核兵器及びその運搬手段の配置は禁止されているわけでございます。  この宇宙条約は、御承知のように一九六七年に調印されたわけでございますが、この審議に当たりましては、私どもが承知しておりますところでは、インドとか、アラブ連合が偵察衛星とか、軍事通信衛星の禁止に相当強い主張をいたしまして、米ソの両国がこの偵察衛星とか、軍事通信衛星等の使用が安全の維持に不可欠であるという立場から反対の立場をとりまして、いろいろ議論が行われたというふうに承知しているわけでございます。わが国はこれに対しまして、この宇宙条約というのが早くできることが望ましいという立場からいろいろ動いたわけでございますが、最終的には、たくさんの国が参加しておりまして、いろいろの妥協の末、一九六七年に現行の宇宙条約ができた次第でございます。  このインマルサットの機構の運営の権限について、たくさん出資している国が発言権をたくさん持つことについての御質問でございますが、確かにこの機構そのものの審議段階でもいろいろの考え方が出てまいりまして、たとえばソ連とか開発途上国は、総会をこの機構の中心にすべきであるというような議論を展開したわけでございます。この機構の中には総会、理事会、事務局とあるわけでございますが、いろいろの細かい議論をすべての国が参加する総会において決めるということには事実上いろいろの難点がございまして、結局、ソ連も第二回の政府間協議では、総会を当初は主張していたわけでございますが、それを変えまして、実際に組織に出資しております国の発言権が強い理事会に相当の権限を譲るというようなふうになったわけでございまして、この条約そのものの規定によりますと、この機構は、すべての国の船舶に対し差別を設けず、平等な利用を認めておることになっておりますので、あくまでも平等ということが第一義的なものではございますが、機構そのものの中のいろいろの問題につきましては、いま御説明申し上げましたように、総会及び理事会の関係につきましてはすべてを総会にゆだねるというふうにはなっておらないわけでございます。
  88. 寺前巖

    ○寺前委員 いろいろ動いた末こうなったという御説明でした。ですから、日本政府はどういう態度で宇宙条約をつくり上げさせたかったのか、日本政府態度をひとつ明確にしてほしい。  それから、今後理事会というものが力を持ってくるわけだけれども理事会のあり方について、インマルサットに限らず、金を出したものが発言権を持っていくというやり方を改善する必要があるという声がかなり発展途上国から出ていると思うのですが、大臣は今後のこういう理事会構成のあり方について日本としてはどういう態度をとっていくべきだという見解にお立ちになるのか、お聞きをしたいと思うのです。
  89. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本といたしまして、これから各種のいろいろな機構に出資をしたりあるいは拠出をしたりする機会が非常にふえて、しかもやはり日本経済力ということを考えますと、その中でわりかた多額の出資をする部類に入る、そういう傾向にあるように思います。そしてやはり日本として、国のあるいは国民の出資あるいは負担によってそのような機構ができますときには、やはり日本としてもそれに積極的に参加をすべきものであろう、そう思いますので、したがって日本といたしまして、途上国の主張は主張として、そのような主張に対しましてある程度の理解は示す必要があろうと思いますけれども日本から申しますと、やはり積極的な経営責任も引き受けていくべきである、その方が好ましいというふうに考えております。しかし、金を出してあるから、とにかくその金の力によりまして不合理な運営が行われるというようなことになってはならないと思いますけれども日本はただでさえいろんな国際的な活動の場におきまして消極的であるという批評もあるわけであります。今後はやはりいろいろな国際的な経営につきましてももっと積極的に参加するという方針日本としてとるべきであろう、このように思っておるところでございます。
  90. 寺前巖

    ○寺前委員 日本としての動き、宇宙条約に対する日本としてはどういう態度をとっておるか。
  91. 村上和夫

    ○村上説明員 宇宙条約につきましては、わが国は、宇宙をあくまでも平和的に利用すべきであるという立場から、平和利用の面で積極的な主張をしたわけでございます。
  92. 寺前巖

    ○寺前委員 平和利用というだけではちょっともう一つわからないが、まあいいです。     〔山田(久)委員長代理退席、委員長着席〕  それで、私は先ほどちょっと聞き忘れましたので、大臣に最後にもう一度お聞きをしたいのですが、エジプトに対しては、投資した結果が安定的に守られるようにということからああいう投資条約を結ぶ。これが手始めになって国際的にも広がっていくということに今後日本の問題としてモデルとして考えたいというお話があったわけですけれども、ブラジルに対してはいまどうなっているのですか。そういう問題はやはり将来の問題として考えるのですか。どういうことになっているのです。
  93. 加賀美秀夫

    ○賀来説明員 お答えいたします。  ブラジルとの間に投資保証協定締結するという正式の話はございませんが、今後対伯投資の状況それから先方の外資制度その他諸般の事情を考慮して具体的に検討することになろうかと思います。
  94. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃその次にちょっと、ルーマニアとの間にはどういうことになるのでしょうか。
  95. 加賀美秀夫

    ○賀来説明員 お答えいたします。  投資保証協定締結問題自体については、やはりルーマニアについても、特にルーマニアが社会主義国家であるからどうということでございませんけれども、基本的には具体的な締結の話があり次第、具体的な話が出れば、その国に対する投資の状況、先ほど申し上げました外資制度の問題それからその他諸般の事情を考慮して、それぞれケース・バイ・ケースに検討していく、そういうことになろうかと思います。
  96. 寺前巖

    ○寺前委員 検討しなければならない投資関係の状況にあるのですか。相手さん方がそういうことをまた考える条件下にあるわけですか。日本側としてもそれは考えなければならない必然性があるのですか。そこはどうなんでしょう。
  97. 加賀美秀夫

    ○賀来説明員 通常、投資保証協定締結する場合には、私ども相手国に対する投資の実績、それから今後の見通し、それから相手国における法制等、その他諸般の事情を非常に詳しく調査をいたしまして、そしてかつ相手国がそのような条約締結する意思があるのか、希望があるのか、そういった諸般の事情を総合的に考慮して最終的な決定をなすわけでございます。  それで、ルーマニアの場合にどういう結論になるのか、いまのところ御返事をいたす状況にございません。
  98. 寺前巖

    ○寺前委員 ということは、いま検討しなければならないという条件下にはないということですか。そういうことですね。それでいいですね。
  99. 加賀美秀夫

    ○賀来説明員 さようでございます。
  100. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、いまの投資の姿から考えてみても、やはりさっき大臣がおっしゃったように、それぞれの国との間における協定締結というのは、われわれの側の反省点もあるけれども相手さん方の政府の存在のあり方、それにも影響するという問題として、やはり一つずつを見ていかなければならないということは結論的に言えるのじゃないだろうか。大臣が先ほどおっしゃっている点というのは、私はそういう意味では大事な、基本的なあり方だというふうに、ちょっと念を入れて聞いてみただけです。時間も大分たちましたので終わりたいと思いますが、大臣何か……。
  101. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほど、エジプトとの投資の奨励及び相互保護に関する協定でございますが、この第五条にお触れになりまして、要するに投資側の方が相手国におきまして不断の保護及び保障を受ける、こういう点にお触れになったのであります。しかしその点につきまして、二項以下はやはり国有化とか収用とかいう権限と申しますか、それを決して否定しているわけではなくて、二項以下に書いてあるわけであります。先ほどニュアンスの違いとかいうことを申し上げたのはそういう意味で、エジプトとしては、仮に日本の投資が行われて、その投資をどうしても収用するという政府意思を決めた場合には、収用の権限はもちろん国でありますからありますということは、これは二項以下を見れば明らかでありますし、その収用の仕方につきまして、条件として(a)(b)(c)と書いてある、その措置が公共のためにかつ正当な法の手続に従ってとられるという条件とか、その措置が差別的なことでない、ただ日本の企業だからとってしまうということではないとか、その措置が迅速、適当かつ効果的な補償を伴うものである、補償がなければならぬとか、三項でその補償は合理的なものでなければならぬということが書いてあるわけで、したがって、相手国の権限を否定するようなことではないということを申し上げたかったわけであります。それから正当な手続というようなことはやはり必要なことでありますし、これはそういう意味で一つのモデルというようなものであろう、そういうことが協定としてできたことは、日本としては投資する側の方が多いと思いますけれども日本としてはこれは結構な協定ではなかろうか、そういう意味で申し上げているのでありまして、投資につきまして相手国の権限を非常に制限をするというような性質のものではないというふうに考えております。そういう意味でこれがモデルになってほかの国との間にもこういうことでできれば、私は決してこの内容が不当なものではありませんし、きわめて合理的なものであるというふうに考えておるのでございます。そういった趣旨でございますので御理解を賜りたいと思います。
  102. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が参りましたので、終わりたいと思います。
  103. 竹内黎一

  104. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定締結について御質問を申し上げたいと思うのでありますけれども、エジプトとの投資保護協定というものは、わが国としては初めての投資活動であります。資産の保護を目的とした協定締結をすることになるわけでありますが、一般に結ばれている通商条約との相違はどこにあるのか、まずお尋ねを申し上げます。
  105. 加賀美秀夫

    ○賀来説明員 お答えいたします。  いわゆる通商航海条約は、一般的に相手国への入国、居住、投資事業活動、課税あるいは輸出入、関税、海運、訴権等の問題、経済活動全般にわたって規定しておるわけであります。そして内容的には、これに対して投資保護協定は、通商航海条約の規定対象になる事項のうち、特に投資事業活動及び財産の保護等についてだけ詳細に定めた、まあ通商航海条約に対して特別法の地位を有する協定でございます。
  106. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 わが国とエジプトとの関係では文化協定、航空協定というものくらいしか締結をされていなかったと思うのでありますけれども、通商条約ではなくて特に投資保護協定を結ぶ必要性は一体どこにあるのか、それからわが国のエジプトに対する民間投資額、あるいはその投資額の件数は現状でどのくらいあるのか、本協定締結後の投資見通しと、日本の財界等における本協定に対する反応等はどうなっているのか、お尋ねを申し上げたいと思います。
  107. 加賀美秀夫

    ○賀来説明員 お答えいたします。  わが国の対エジプト投資は必ずしも現在多額ではございませんが、今後対エジプト投資はふえる可能性もあり、かつまたエジプト政府は第四次中東戦争以後、外国投資を誘致して国内経済開発を進めていくという、そういう基本方針のもとに開放政策をとってきておるわけでございます。このようなエジプト側の事情を反映して、同国からわが方に対して投資保護協定締結を積極的にアプローチしてきた経緯がございますし、わが国の利益とも合致すると認めて、この協定締結に踏み切った次第でございます。なお、御承知のとおりエジプトは、アラブ世界において政治的、経済的にもきわめて重要な地位を占めており、エジプトとかかる協定締結することは、わが国の対アラブ政策を今後推進していくためにも、経済的のみならず政治的にも大きな意義があるものかと考えます。  次に、先生の第二番目の御質問でございますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、わが国のエジプトに対する投資残高は、一九七五年度末現在で合計六件、投資総額は十九万ドルとなっております。この内訳を若干申し上げますと、証券取得が九万八千ドルで四件、それから支店の設置が九千三百万ドルで二件、合計六件、金額にして十九万ドル、こういうふうになっております。  エジプトに対する投資の今後の見通しでございますが、エジプトはいわゆる開発途上国の一つとして、労働力の質的な問題あるいはインフラストラクチュアの整備等といった基本的な問題もございますが、他方エジプトは国内市場として大きなものがある、それから労働力も豊富で賃金も安い、それから、アラブ世界における主要国として今後アラブ産油国の資金が導入される可能性が非常に大きいこと、さらにまた、レバノン紛争により中東におけるベイルートの従来の地位にかわる重要な拠点になりつつある、こういったこと、さらに、先ほども申し上げましたように、第四次中東戦争後の自由化政策が軌道に乗り、外資に対して非常に開放的な政策をとっている、こういった事情が重なりまして、エジプト側においても外資が誘致される要件が整っている、それから、他方わが国においても、今後わが国の対外経済活動において海外投資事業のウエートというのはだんだん大きくなっていきますが、その意味からでもアラブ及びエジプトに対する投資事業活動の推進があるものと期待しております。
  108. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 ことしの三月三十一日に社団法人の日本貿易会から「対外経済協力の迅速・効率化に関する要望書」というのが出されておりますけれども経済協力に関する行政官庁の一元化あるいは効率化に対しての改善策をお持ちなのかどうなのか。
  109. 三宅和助

    ○三宅説明員 お答えいたします。  日本貿易会から要望が出ておりますし、また、経済協力審議会の中間答申でもやはり行政の整備問題について出ておりますが、経済協力の中身は非常に多岐にわたっておりまして、関係各省にまたがっております。しかしながら、同時に経済協力はわが国の非常に重要な外交の一環でございます。したがいまして、外務省といたしましては、関係省庁と緊密な連絡を保ちつつ、実効を高めるようにいろいろ努力してまいったわけでございますが、確かに先生御指摘のとおり、経済協力にかかわる行政事務は、必ずしも従来系統的に整備されていたということは言いがたい面もございます。また、それが執行の面においてのおくれの一因になっていることも、これまた事実でございます。わが国の経済協力というものは今後拡大しなければならないわけでございまして、したがって、援助機構というものを整備する必要がある。したがいまして、政府といたしましても、今後一層の援助の拡大というものを前提にいたしまして、経済協力の円滑かつ効果的な処理のために、援助の行政の系統化、それから整備、改善のために大いに努力したい、また、そのための具体的な案を検討してまいりたい、かように考えております。
  110. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 最近の中東情勢の中におけるエジプトの役割りというものをどのように認識をして今後エジプトとの関係を持っていくのか。また、つい先日の本委員会での質疑にもございましたけれども、エジプト大学に日本語の先生を二人から四人にふやすというようなお話がありましたけれども日本とエジプトとの文化交流等のことを考えますと、もはや日本語の先生を二人から四人にふやすなどということぐらいの議論をしている段階ではない。ことしの秋までにはエジプトのサダト大統領も訪日を予想されていると聞いているわけでありますけれども、こうしたときに、新しい日本とエジプトあるいは中東との文化交流というものをより具体的に進めなければならないと思いますけれども、どのようなお考えを持っているのかお尋ねをしたいと思います。
  111. 加賀美秀夫

    ○加賀美政府委員 お答え申し上げます。  中東情勢におけるエジプトの役割りがまず第一の御質問でございますが、御承知のように、昨年秋ぐらいからこの中東和平への国際的な機運というものが高まってまいりまして、カーター米新政権が発足いたしましてから積極的にまずバンス国務長官を中東地域に派遣する、あるいはその後中東地域から指導者をアメリカに招いてその見解を聞くというような動きがあるわけでございます。そして、サダト大統領もこの四月にアメリカを訪問いたしましてアメリカ政府との意見交換をやっておるという状況でございますが、その間にありましてエジプトは、中東諸国の中でも穏健派の一つのリーダーといたしまして、積極的に和平への希望を表明し、かつ、かなり柔軟な態度を打ち出しているということも言えると思います。その柔軟な態度の一つと申しますのは、ジュネーブ会議再開前にもパレスチナ国家とヨルダンとの何らかの、公式の宣言されたリンクを設けるべきであるというようなことも申しておりますし、また、パレスチナ解放団体であるPLOの態度の柔軟化にもエジプトが努力するというようなことを申しておるわけでございます。こういうことで、中東和平への国際努力の中にあって、エジプトはきわめて積極的な、かつ指導的な役割りを果たしておるということが言えると思います。  それから、日本とエジプトとの今後の関係でございますが、御承知のように、日本はエジプトの政治的、経済的重要性を認識いたしまして、数多くの要人の交流が行われております。先生御指摘のようにこの秋にはサダト大統領の来訪ということも考えられておりますし、これまでの先方要人の来日といたしましては、昭和四十九年の当時のハテム副首相の来日、それから文化大臣、人民議会議長、政党の代表の来日、近くは昨年十月のサダト大統領夫人の来日、本年になりまして経済協力次官ナーゼル次官の来日、さらに再びハテム統括官の来日というようなことがございましたし、わが方からは、四十八年の十二月に三木特使のエジプト訪問、それから四十九年には前尾衆議院議長、四十九年十一月には当時の木村外務大臣、五十年になりますと小此木政務次官、昨年一月には河本通産大臣等のエジプト訪問がございます。  それから経済協力の実績といたしましては、商品援助その他の円借款が総額七百五十二億円に上っております。これは一九七三年以降昨年までの実績でございます。  それから、技術協力の面でもかなりの数の研修生を受け入れておりますし、専門家も派遣いたしております。  文化交流の点では、これは文化人の交流が、わが方から派遣いたしましたのが、昭和五十年度七名、五十一年度に五名、招聘、つまりエジプト側からの文化人の招聘が五十年度には三名、五十一年度が四名という数でございます。  それから、エジプトが現地における日本研究の促進といたしまして、日本語講師の派遣を五十年度は二名、五十一年度に二名、それから日本語講座成績優秀者の招待も行っております。それから、日本語教材の援助といたしまして、五十年度に十二万六千円、五十一年度八万四千円というような実績もございます。  その他、展示事業といたしまして、五十年度に近世の日本絵画名品展、これをエジプトで展示しておる。それから、五十一年度には平山郁夫展の開催というようなこともやっております。  そのほか、これは文部省所管でございますけれども、国費留学生の招聘、それから総理府の所管で、青少年交流使節の派遣というような交流事業をやっております。  その他、学術調査の派遣であるとか映画、テレビフィルムの購送、そういったこともやっております。  私どもといたしましては、エジプトの政治、経済面の重要性ということから、中東和平への国際努力、それに対しては日本のこれまでとっております一九七三年十一月二十二日の官房長官談話の基本ラインがございますけれども、これをもって中東和平に対する日本立場とする。これはアラブ側にもかなり高く評価されておりまして、日本の基本的態度、すなわち中東戦争においてイスラエルが占領いたしました地域からの撤退、それからパレスチナ人の国連憲章に基づく権利の尊重、さらにその地域におけるすべての国、すなわちイスラエルを含みますすべての国の平穏に存在する権利の保障、さらにPLOが和平交渉に参加を許さるべきであるという基本的なライン、これは総理大臣外務大臣国会演説にも明確に表現されておりますけれども、そういう基本的なラインの保持によってアラブ諸国との友好も増進する。特にエジプトにつきましては、その他経済協力等の促進、あるいはさらに人的交流を進めていく、文化交流も含めましてそういった交流を進めていくことによって、この日本・エジプト関係を増進してまいりたい。そして、今回御審議をいただいておりますこの条約等も、今後の日本のエジプトに対する投資の奨励になるということを念じているわけでございますが、こういう方法によって日本とニジプトの関係をさらに増進してまいりたい、そういうふうに考えております。
  112. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 今日までの日本とエジプトとの文化交流ということは十分でなかったわけでございますので、比較的地理的にもそう近くない国であるだけに、政府みずからが相互の理解のために積極的に文化交流を具体的な形でぜひお進めをいただきたい、こうお願いを申し上げまして、次にインマルサット条約について質問をさせていただきます。  最近、各国の船舶の増加に伴って、船と陸上、航行中の船と船の間の無線通信が非常に混雑をしてきている、こう言われておりますけれども、一体どのようなぐあいに混雑をしているのか、まずその実態をお伺いしたいと思います。  また、わが国の商船であるとか漁船が、どこの海域からのどのような時間帯の通信というものが一番混信が多いのか、的確な通信を行うことが困難になっているのかというその実情についてお伺いをしたいと思います。
  113. 吉川久三

    ○吉川説明員 お答え申し上げます。  現在の海上無線通信、特に短波通信は、使用いたします周波数の数の関係、これは使用できます周波数に一定の制限があるわけでございますが、それと伝搬特性との関係がございまして、相当混雑しております。  その混雑の度合いでございますが、たとえば一通の電報を船舶から日本の海岸局に伝送するに要する時間でございますが、船舶が一通の電報を受け付けまして、これを日本の海岸局に送り終わるまでに要します時間は、平均的に約四十分かかっております。また逆に、海岸局が電報一通を受け付けまして、これを船舶局に送り終わるまでに要する時間は、平均約三時間を要しております。  それから通信が混雑しておる海域等でございますが、これは先ほどの一通の電報を送信するに要する時間でなくて、一定の海域におきまして最も取り扱い電報量が多いという海域を申し上げますと、一般的にCゾーンと申されております東部インド洋からシナ海、それから西部太平洋にかけての海域、それからDゾーンと称されております中部太平洋の海域、これはわが国の船舶等が多数航行しておる関係がございまして、この海域に発着いたします電報が一番多うございます。時間帯でございますが、昼間、特に十三時から十六時にかけての時間帯が取り扱い電報量といたしましては一番多うございます。そのような状況になっております。
  114. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 通常、外航商船や遠洋漁業に従事をする漁船は、一体何人ぐらいの無線通信士によって、通信の発信であるとかあるいは受信体制がとられているのか。また、通信士のいない船というものは現状でどのくらいあるのか。わが国の無線通信士は一級から二級、三級、航空級無線通信士、電話級無線通信士を毎年どのくらいの人数の方々が国家試験に合格をして、通信士養成の学校であるとかあるいは学部数、またその学生数等は現状がどうなっていて、これが現状ではわが国の無線通信士というものが十分足りているのか。今後の見通し等についてもお尋ねいたしたいと思います。
  115. 川島由造

    ○川島説明員 お答えいたします。  現在船舶に乗り組んでいる通信士の数でございますが、これは一隻当たり法定では一人ということになっておりますが、船舶の規模によりましてこれはいろいろ異なりますので、二名の船舶もございますればあるいは三名乗り組んでいる船舶もございます。  それから現在の通信士の国家試験の状況でございますけれども、これは細かい数字をただいま持ち合わせておりませんけれども、船舶を主体といたしますと、大体第一級無線通信士あるいは第二級無線通信士が国際航海に従事する船舶の通信士ということになっております。  昭和五十一年度に実施されました国家試験におきましては、第一級無線通信士におきましては二百六十一名、それから第二級無線通信士につきましては、二百五名が国家試験に合格しております。  それから、船舶の通信士が乗り組んでいない船舶があるかという御質問でございますけれども、現在外航船舶には必ず通信士が乗り組んでおります。  その需給状況でございますが、最近は、御存じのとおり海運事業の不況あるいは海運の国際競争力の低下というような状況がございまして、船腹が非常に少なくなっておりまして、船舶の関係の無線通信士というものは不足というよりもむしろ過剰ぎみという傾向にあるようでございます。
  116. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 インテルサット、インマルサットによる通信の体制によって、無線通信士の存在というものは不要になるのかどうなのかということ。それから、先年にはインテルサット、今回インマルサットに加入するということでありますけれども国際電信電話株式会社の組織あるいはその設備は現状のままで受け入れが一体可能なのかどうなのか。人の増員の問題、設備の増設というものは必要なのかどうか。また、国際電信電話はもっと安くならないのかどうなのか。お尋ねを申し上げます。
  117. 川島由造

    ○川島説明員 お答えいたします。  インマルサットによりまして将来船舶の無線通信士が不要になるか、こういう御質問でございますが、これにつきましては、将来無線通信士が不要になるということはないと考えられます。
  118. 澤田茂生

    ○澤田説明員 お答え申し上げます。  KDDが新たなるインマルサット業務を行うに十分なものであるかどうかという御質問であったと思いますが、国際電信電話株式会社は公衆電気通信業務の国際部門を独占的に行う事業体として存立しているわけでございまして、現在インテルサット、それから海事通信関係といたしましては、最近になりましてマリサットシステムというものを取り扱うということで、そういう体制もできておるわけでございます。新たにこのインマルサットを行うということになりますれば、それ専用の地球局を建設するということは必要になってまいりますが、それ以外の点につきましては、現在の組織、要員等で十分賄っていけるであろう、こういうふうに考えております。
  119. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 この条約には多少矛盾があるのではないかと思うのでありますけれども条約によって締約国はインマルサットという機構を設立しているわけでありますが、その運用については、資金的にもほとんど指定事業体に任せて責任を負わないような制度になっている。もう少し実態について各締約国が責任を持って、その出資金あるいは使用料というものを決定すべきではないかというふうに思うのであります。  それから、締約国の代表で構成をする総会の権限を小さくして、指定事業体の代表で構成をする理事会の権限を重くした、この理由は一体どこにあるのか。理事政府代表を充てるようにすることは一体できなかったのかどうかという問題、普通の場合でありますと総会が一切の権限を持っていて、理事会は総会の決定事項を執行するという制度が望ましいと思うのでありますけれども、このような形態が採用されたのはどういうわけなのか。二点についてお尋ねを申し上げます。
  120. 村上和夫

    ○村上説明員 お答え申し上げます。  この条約は、総会と理事会とございますが、一つの特徴は機構自体が財政的に独立採算制になっているということでございまして、実際の出資国がこの理事会で大きな発言権を持っておりますというのも、主として財政的な見地から、第十三条でございますが、「署名当事者の代表二十二人」で、実際問題として「最大の出資率を有する署名当事者又は署名当事者の集団の代表十八人。」それから同じ十三条の(1)の(b)で、ただし「開発途上にある国の利益に妥当な考慮を払いつつ衡平な地理的代表の原則を尊重することを確保するよう」というふうに、出資率の多い国に確かに御指摘のような発言権の大きい部分を認めているわけでございますが、同時に、開発途上国であるとか地理的な配分の公正さを確保するというのがこの条約の特徴でございます。総会は確かにございますが、実際の運営に当たっては、この十三条以降の規定で理事会が相当の発言権を持つという次第でございます。  それから第二点かと存じますが、実際の事業体がこの理事会で云々という御質問でございますが、インマルサットが提供いたします海事公衆通信業務といいますのは、各国の通信政策上の立場が違っております関係で、たとえばフランスであるとかノルウェーのように国そのものが事業体である場合と、アメリカとかわが国のように民間のKDDであるとかいう事業体が行っている国とございまして、その妥協の産物としてこの条約の規定ができたわけでございまして、最終的には宇宙活動であるという意味でその国の責任というものも明確にしてはございますが、御説明申し上げましたような事業体の関与という観点から条文は非常に複雑になっている次第でございます。
  121. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 事務局長理事会が任命することになっているわけでありますけれども、どのような地位の、あるいは経歴の人が予定をされているのか、お尋ねをしたいと思います。  また、締約国は候補者を推薦することができないのかどうなのか。事務局のスタッフについてはどのくらいの方々を予定をされておられるのか。郵政省あるいは国際電電株式会社からインマルサットに積極的に職員を送り込むというお考えをお持ちなのかどうなのか。
  122. 澤田茂生

    ○澤田説明員 お答えいたします。  事務局長を大体どの程度のランクの人というようなことの具体的な問題につきましては、まだ何ら決まっておりません。事務局長あるいは職員の推薦ということにつきまして、実際の任命に当たってどういう形をとるか、推薦方式というものが別に明確に規定されているところでもございませんが、ただ適当な人材があればこれを推奨するというようなことは行われるであろうというふうに想定をいたしておりますが、現時点においてはそういうことでございます。
  123. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 最後に、七条の一項によってインマルサットがすべての国々に開放されるということになりますと、改めてこの締約国になる必要はないという気もするわけでありますけれども、いかがでしょうか。
  124. 村上和夫

    ○村上説明員 御指摘のとおりに第七条には「宇宙部分は、理事会が決定する条件で、すべての国の船舶による使用のために開放する。」という規定がございますが、同時に第十九条の三項には「理事会は、署名当事者以外の事業体であってインマルサット宇宙部分を使用することを第七条の規定に従って許可されたものに対し、署名当事者に対して定める使用料率とは異なる使用料率を定めることができる。」という規定がございまして、非締約国である場合には実際の使用料率の面で非常に不利になるということが予想されるわけでございます。また、このインマルサットに加盟することは、実際に衛星の打ち上げ計画の決定であるとかインマルサットの運営に当たって、わが国は出資率が非常に高いものでございますから、いろいろの点で発言力も強く、またその利用の面におきましても、いろいろの発明、技術情報の利用であるとか、実際の関連機器の調達に当たってのわが国の経済面での協力であるとかいう観点から、わが国といたしましては本条約の締約国になることは利益になるというふうに考える次第でございます。
  125. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 質問を終わります。
  126. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十三分散会