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1977-05-25 第80回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年五月二十五日(水曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 有馬 元治君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 山田 久就君 理事 河上 民雄君    理事 土井たか子君 理事 渡部 一郎君    理事 中村 正雄君       稲垣 実男君    大坪健一郎君       川崎 秀二君    左藤  恵君       佐野 嘉吉君    三池  信君       井上 一成君    松本 七郎君       中川 嘉美君    渡辺  朗君       寺前  巖君    伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房同和対策室長 今泉 昭雄君         経済企画庁調整         局審議官    岡島 和男君         外務政務次官  奥田 敬和君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   加賀美秀夫君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         水産庁次長   佐々木輝夫君         郵政大臣官房長 佐藤 昭一君  委員外出席者         法務大臣官房参         事官      藤岡  晋君         法務大臣官房参         事官      土肥 孝治君         外務省経済局国         際経済第一課長 賀来 弓月君         外務省経済協力         局外務参事官  三宅 和助君         外務省国際連合         局外務参事官  村上 和夫君         外務省情報文化         局文化事業部長 西宮  一君         文部省学術国際         局企画連絡課長 七田 基弘君         郵政大臣官房国         際協力課長   中山  一君         郵政大臣官房郵         政参事官    澤田 茂生君         郵政省電波監理         局無線通信部航         空海上課長   吉川 久三君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 委員の異動 五月二十五日  辞任         補欠選任   川田 正則君     左藤  恵君 同日  辞任         補欠選任   左藤  恵君     川田 正則君     ————————————— 五月二十日  戦争犯罪及び人道に反する罪に対する時効不適  用に関する条約加入に関する請願安藤巖君紹  介)(第五八四四号)  同(荒木宏紹介)(第五八四五号)  同(浦井洋紹介)(第五八四六号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第五八四七号)  同(小林政子紹介)(第五八四八号)  同(柴田睦夫紹介)(第五八四九号)  同(瀬崎博義紹介)(第五八五〇号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第五八五一号)  同(田中美智子紹介)(第五八五二号)  同(津川武一紹介)(第五八五三号)  同(寺前巖紹介)(第五八五四号)  同(東中光雄紹介)(第五八五五号)  同(不破哲三紹介)(第五八五六号)  同(藤原ひろ子紹介)(第五八五七号)  同(正森成二君紹介)(第五八五八号)  同(松本善明紹介)(第五八五九号)  同(三谷秀治紹介)(第五八六〇号)  同(安田純治紹介)(第五八六一号)  同(山原健二郎紹介)(第五八六二号)  北朝鮮帰還日本人妻安否調査等に関する請  願(萩原幸雄紹介)(第五八六三号)  同(大久保直彦紹介)(第六一三八号)  金大中氏の再来日実現のための決議に関する請  願(荒木宏紹介)(第五八六四号)  同(東中光雄紹介)(第五八六五号)  同(正森成二君紹介)(第五八六六号)  同(三谷秀治紹介)(第五八六七号) 同月二十一日  戦争犯罪及び人道に反する罪に対する時効不適  用に関する条約加入に関する請願東中光雄君  紹介)(第六三三一号)  同(正森成二君紹介)(第六三三二号)  同(三谷秀治紹介)(第六三三三号)  金大中氏の再来日実現のための決議に関する請  願(宇都宮徳馬紹介)(第六六二三号)  同(鳩山邦夫紹介)(第六六二四号)  同(安島友義紹介)(第六八九五号)  同外二件(安宅常彦紹介)(第六八九六号)  同外二件(井上泉紹介)(第六八九七号)  同(井上一成紹介)(第六八九八号)  同外一件(井上普方紹介)(第六八九九号)  同外二件(伊藤茂紹介)(第六九〇〇号)  同外二件(池端清一紹介)(第六九〇一号)  同外二件(石野久男紹介)(第六九〇二号)  同(石橋政嗣君紹介)(第六九〇三号)  同(板川正吾紹介)(第六九〇四号)  同外一件(稲葉誠一紹介)(第六九〇五号)  同外一件(岩垂寿喜男紹介)(第六九〇六  号)  同(伊賀定盛紹介)(第六九〇七号)  同外三件(上田卓三紹介)(第六九〇八号)  同外一件(上原康助紹介)(第六九〇九号)  同外一件(枝村要作紹介)(第六九一〇号)  同(小川国彦紹介)(第六九一一号)  同(小川省吾紹介)(第六九一二号)  同外一件(小川仁一紹介)(第六九一三号)  同(大柴滋夫紹介)(第六九一四号)  同(大島弘紹介)(第六九一五号)  同外一件(大原亨紹介)(第六九一六号)  同外一件(太田一夫紹介)(第六九一七号)  同外二件(岡田哲児紹介)(第六九一八号)  同外二件(岡田春夫紹介)(第六九一九号)  同外五件(加藤清二紹介)(第六九二〇号)  同(加藤万吉紹介)(第六九二一号)  同(角屋堅次郎紹介)(第六九二二号)  同外二件(金子みつ紹介)(第六九二三号)  同(川口大助紹介)(第六九二四号)  同外一件(川崎寛治紹介)(第六九二五号)  同(川俣健二郎紹介)(第六九二六号)  同(川本敏美紹介)(第六九二七号)  同外三件(河上民雄紹介)(第六九二八号)  同(木島喜兵衞紹介)(第六九二九号)  同(木原実紹介)(第六九三〇号)  同外一件(北山愛郎紹介)(第六九三一号)  同(久保三郎紹介)(第六九三二号)  同(久保等紹介)(第六九三三号)  同外一件(栗林三郎紹介)(第六九三四号)  同外一件(兒玉末男紹介)(第六九三五号)  同(後藤茂紹介)(第六九三六号)  同外一件(小林進紹介)(第六九三七号)  同外二件(上坂昇紹介)(第六九三八号)  同外一件(佐藤観樹紹介)(第六九三九号)  同(佐野憲治紹介)(第六九四〇号)  同外一件(斉藤正男紹介)(第六九四一号)  同外三件(坂本恭一紹介)(第六九四二号)  同(柴田健治紹介)(第六九四三号)  同(島田琢郎紹介)(第六九四四号)  同外一件(島本虎三紹介)(第六九四五号)  同(嶋崎譲紹介)(第六九四六号)  同(清水勇紹介)(第六九四七号)  同(下平正一紹介)(第六九四八号)  同(新村勝雄紹介)(第六九四九号)  同(新盛辰雄紹介)(第六九五〇号)  同(鈴木強紹介)(第六九五一号)  同外一件(田邊誠紹介)(第六九五二号)  同(田畑政一郎紹介)(第六九五三号)  同外二件(多賀谷真稔紹介)(第六九五四  号)  同外二件(高沢寅男紹介)(第六九五五号)  同外二件(高田富之紹介)(第六九五六号)  同外一件(竹内猛紹介)(第六九五七号)  同外二件(武部文紹介)(第六九五八号)  同(只松祐治紹介)(第六九五九号)  同外一件(楯兼次郎紹介)(第六九六〇号)  同外一件(千葉千代世紹介)(第六九六一  号)  同外三件(塚田庄平紹介)(第六九六二号)  同外一件(土井たか子紹介)(第六九六三  号)  同外一件(栂野泰二紹介)(第六九六四号)  同外一件(中村茂紹介)(第六九六五号)  同外一件(中村重光紹介)(第六九六六号)  同(楢崎弥之助紹介)(第六九六七号)  同外一件(成田知巳紹介)(第六九六八号)  同外一件(西宮弘紹介)(第六九六九号)  同外二件(野口幸一紹介)(第六九七〇号)  同外一件(野坂浩賢紹介)(第六九七一号)  同(芳賀貢紹介)(第六九七二号)  同外一件(馬場昇紹介)(第六九七三号)  同(馬場猪太郎紹介)(第六九七四号)  同外一件(長谷川正三紹介)(第六九七五  号)  同(原茂紹介)(第六九七六号)  同外二件(日野市朗紹介)(第六九七七号)  同外一件(平林剛紹介)(第六九七八号)  同外一件(広瀬秀吉紹介)(第六九七九号)  同外三件(福岡義登紹介)(第六九八〇号)  同外三件(藤田高敏紹介)(第六九八一号)  同(古川喜一紹介)(第六九八二号)  同外一件(松沢俊昭紹介)(第六九八三号)  同外一件(松本七郎紹介)(第六九八四号)  同外三件(美濃政市紹介)(第六九八五号)  同(水田稔紹介)(第六九八六号)  同(武藤山治紹介)(第六九八七号)  同外一件(村山喜一紹介)(第六九八八号)  同(森井忠良紹介)(第六九八九号)  同外一件(八百板正紹介)(第六九九〇号)  同(矢山有作紹介)(第六九九一号)  同外一件(安井吉典紹介)(第六九九二号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第六九九三号)  同(山田耻目君紹介)(第六九九四号)  同(山田芳治紹介)(第六九九五号)  同外二件(山花貞夫紹介)(第六九九六号)  同外一件(山本政弘紹介)(第六九九七号)  同外一件(湯山勇紹介)(第六九九八号)  同外三件(横路孝弘紹介)(第六九九九号)  同外一件(横山利秋紹介)(第七〇〇〇号)  同外一件(吉原米治紹介)(第七〇〇一号)  同(米田東吾紹介)(第七〇〇二号)  同外一件(渡部行雄紹介)(第七〇〇三号)  同外一件(渡辺三郎紹介)(第七〇〇四号)  同(渡辺芳男紹介)(第七〇〇五号)  同(阿部未喜男君紹介)(第七〇〇六号)  北朝鮮帰還日本人妻安否調査等に関する請  願(濱野清吾紹介)(第六六二五号)  同(林大幹君紹介)(第六六二六号)  同(福田篤泰紹介)(第六六二七号)  同(福永健司紹介)(第六六二八号)  同(藤本孝雄紹介)(第六六二九号)  同(三木武夫紹介)(第六六三〇号)  同(与謝野馨紹介)(第六六三一号) 同月二十三日  金大中氏の再来日実現のための決議に関する請  願(沖本泰幸紹介)(第七〇二二号)  同(鍛冶清紹介)(第七〇二三号)  同(北側義一紹介)(第七〇二四号)  同(権藤恒夫紹介)(第七〇二五号)  同(坂井弘一紹介)(第七〇二六号)  同(田中昭二紹介)(第七〇二七号)  同(谷口是巨君紹介)(第七〇二八号)  同(玉城栄一紹介)(第七〇二九号)  同(長谷雄幸久紹介)(第七〇三〇号)  同(春田重昭紹介)(第七〇三一号)  同(細谷治嘉紹介)(第七〇三二号)  同(薮仲義彦紹介)(第七〇三三号)  北朝鮮帰還日本人妻安否調査等に関する請  願(伊藤公介紹介)(第七〇八二号)  同(江藤隆美紹介)(第七〇八三号)  同(大内啓伍紹介)(第七〇八四号)  同(大塚雄司紹介)(第七〇八五号)  同(奥野誠亮紹介)(第七〇八六号)  同(粕谷茂紹介)(第七〇八七号)  同(亀岡高夫君紹介)(第七〇八八号)  同(川合武紹介)(第七〇八九号)  同(草野威紹介)(第七〇九〇号)  同(熊谷義雄紹介)(第七〇九一号)  同(小宮武喜紹介)(第七〇九二号)  同(佐野嘉吉紹介)(第七〇九三号)  同(津島雄二紹介)(第七〇九四号)  同(中村正雄紹介)(第七〇九五号)  同(永末英一紹介)(第七〇九六号)  同(中山正暉紹介)(第七〇九七号)  同(西田司紹介)(第七〇九八号)  同(平石磨作太郎紹介)(第七〇九九号)  同(伏屋修治紹介)(第七一〇〇号)  同(松野幸泰紹介)(第七一〇一号)  同(森山欽司紹介)(第七一〇二号)  同(山口シヅエ紹介)(第七一〇三号)  同(渡辺朗紹介)(第七一〇四号)  同(中川一郎紹介)(第七五三二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  投資の奨励及び相互保護に関する日本国とエジ  プト・アラブ共和国との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(条約第一三号)  国際海事衛星機構(インマルサット)に関する  条約締結について承認を求めるの件(条約第  一四号)  アジア太平洋電気通信共同体憲章締結につ  いて承認を求めるの件(条約第一五号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井三一成君。
  3. 井上一成

    井上(一)委員 約九十日に余る長い交渉の結果、日ソ漁業暫定協定がやっとその調印の運びになったということでございます。きょうその暫定協定の全文が新聞を通して明確にされたわけでありますが、そこで、まずもって暫定協定についてお尋ねをしたいと思います。  その第一条に、いわゆる「ソヴィエト社会主義共和国連邦最高会議幹部会令第六条及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府決定に従つて定められる北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国」云々、この「決定に従って」とはどのような意味を持つのか、まず外務大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  4. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまお尋ね協定の第一条の「最高会議幹部会令第六条及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府決定に従って定められる」というのは、現在まで定められましたものは二月二十四日の閣僚会議決定というものがございます。その閣僚会議決定は当然この定められるものに入るというふうに私どもは解釈をいたしております。
  5. 井上一成

    井上(一)委員 二月二十四日のソ連閣僚会議決定ということがこの第一条の「決定に従って定められる」というこの「決定」に入るとするならば、すでに何回となくわが党の先輩議員が指摘をしてまいりましたように、北方四島はソ連領土であるということをこのソ連閣僚会議確認をしているわけなんです。そういうことであれば、この第一条というものはいわゆる北方四島はソ連領土であるというソ連解釈を認めたことになるのではないかというふうに解するのですが、いかがでございますか。
  6. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの点は一番議論になり、また問題になった点でございまして、終局的にはこの一条の線引きというものは純粋に漁業だけの問題であるということの了解のもとに第八条を修正いたしまして、第八条に本来「第三次国際連合海洋法会議において検討されている海洋法の諸問題」、こういうことにつきまして書いてあったのですが、そこに「相互関係における諸問題についても、」という字句を挿入いたしまして、これは領土問題を当然含むという理解のもとに、領土問題につきましては、日本国政府立場またソ連邦立場、「いずれの政府立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」この規定によりまして、日本国立場を害するものでないということを明らかにしたわけでございます。
  7. 井上一成

    井上(一)委員 八条の問題についても後でさらに質問をしたいのですが、外務大臣に重ねてお伺いをいたします。  私は、いま、第一条の「決定に従って」というのは二月二十四日のソ連閣僚会議意味するのかという質問をいたしたわけであります。外務大臣は、まさにそのとおりである、二月二十四日のソ連閣僚会議を含むというお答えをされたと思うのですが、それに間違いございませんか。
  8. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 原案には、御承知のように、二月二十四日の大臣会議決定ということが書かれておったわけでございます。原案と申しますのは、イシコフ漁業大臣から示された原案でございまして、その閣僚会議決定を引かれることは非常に困るということを主張いたしておったわけでございます。その表現が結果におきましてはこのような抽象的な決定になったわけでございますけれども、現在までにソ連邦が決めた決定には二月二十四日の大臣会議決定があるわけでございまして、それを排除してないということは確かでございますので、当然この条文ではそれを含むという解釈でございまして、いわゆるソ連の行いました線引き、この線引きを全く拒否するということでは漁業交渉はまとまらないということになりまして、その決定は実態的には認めざるを得ない、このように考えたところでございます。
  9. 井上一成

    井上(一)委員 漁業交渉をまとめるに当たって、領土の問題について、日本の毅然たる姿勢あるいは国民世論に支えられた強い日本見解をあえて示し得られなかった。二月二十四日のソ連閣僚会議では、北方四島はソ連領土であるという確認をされておるわけなのですね。その決定が第一条の「決定に従って」という字句に含まれているということになると、私は大変な問題だと思うのです。  重ねてお聞きをいたします。二月二十四日のソ連閣僚会議、これはすなわち、北方四島はソ連領土であるという取り決めをした会議なのですけれども、その閣僚会議での決定も第一条の「決定に従って定められる」という中に包括をされているのだと先ほどお答えをいただいているのですが、間違いないのかどうか。
  10. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ソ連国内法で決めた大臣会議決定というものをどのように扱うかということが実態問題としてあるわけでございます。この点につきましては、先般日本国内法の御制定をいただきまして、日本として十二海里の領海法並びに二百海里の漁業水域法を御承認いただいたわけでございます。そして現在におきましては、日本ソ連海域入漁をする、それだけの協定締結を見たわけでございますけれども、この六月中には、ソ連日本海域入漁をする協定ソ日協定と言われておるものでございますが、——日本が二百海里をどの範囲に施行するかということは政令によって定められる、こういう段階でございまして、その点は先方もよく知っておるところでございます。したがいまして、ソ日協定日ソ協定と両方あわせなければ正確なことは申し上げられないわけでございますが、ソ日協定の方はまだ締結を見ておりません。しかし、日本といたしましては、日本の二百海里法の趣旨はよく説明してあるわけでございます。したがいまして、今回ソ連が決めた国内法の中に日本入漁をしていくという際の純粋の漁業上の問題といたしましては、いまの段階としては、ソ連が決めた国内法のもとに日本入漁をする、その協定として第一条を書いた、こういうふうに御理解を賜りたいのでございます。しかし、それはあくまでも今般の漁業上の扱いだけでありまして、領土問題は、第八条の修正によりまして領土には関係のないことである、領土には一切影響を及ぼさない、こういう趣旨を明らかにしたところでございます。
  11. 井上一成

    井上(一)委員 私は、北方領土は魚によって取引をされてなくなってしまったのではないか、この第一条についてはさらに強い疑いを持つわけであります。八条という条文、これは領土と切り離された問題だ。ところが日本は、北方四島に絡む二百海里の線引きがまだなされてない、明確にされてないわけです。ソ連は、すでに領土問題も解決済みである、この一条に二月二十四日の閣僚会議決定というものを含むならば、もう解決済みであるという意思表示がなされていると思うのです。仮に、日本考え方、受けとめ方とソ連理解している受けとめ方が相反するもので食い違ったものであるということであるならば、利害の伴わない第三国の人はこの第八条の条文をどのように理解されるのか。この第八条の条文で全く領土問題は切り離されたのだというように理解できるのかどうか。とりわけ、後段において「いずれの政府立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」害してはいけないということを書いておるのです。だから日本政府立場あるいは見解を害してはならない、と同時にソ連立場ソ連見解も害してはならない、こういうふうに私はこの八条は理解できると思うのです。いかがでございましょうか。
  12. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 第八条の表現は、当然双方の政府について申しておることでございます。ソ連政府が、領土問題は未解決の問題ではない、解決済みであるという主張を最近またいたしておるということも事実でありますし、日本政府としては、平和条約締結する際の未解決の問題と言えば領土問題だ、このように主張をしておるところであります。それらについて日本が未解決という主張をしておる、そういうことにつきましては何ら影響がない。また、ソ連ソ連としていろいろな主張を持っておるでありましょうが、現状におきましてソ連がこの条約によって未解決の問題を認めたということにはならないと思います。そういう意味で、現状領土問題というものがそのままの形でこれには影響を及ぼさないという趣旨で書かれておる、このように解するのが正しいと思います。
  13. 井上一成

    井上(一)委員 さっきも申し上げたように、わが国線引きはまだなんですね。ただ、漁業水域に関する暫定措置法というものはすでに国会で成立しているわけなんですけれども、いわゆる線引き政令によって線引きをするということなんですね。私はここで外務大臣政府見解を聞きたいのですけれども、そうするならば、わが国北方四島にかかわる線引きは、わが国北方四島をわが国固有領土だという前提に立って線引きをなされるというふうに理解をしてよろしいですか。政令で定めるわけなんですけれども、それじゃわが国線引きは、北方四島を日本固有領土だという見解の中で線引きをするというのが政府考えであると理解してよろしいですか。
  14. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この点は現行法のたてまえが、政令で除外しなければ、わが国固有領土であります北方四島につきましても自動的に線引きという特定の行為を必要としないで、当然のことながら二百海里の漁業水域というものが設定をされる、このように考えております。この点は、所管といたしましては農林大臣の御所管でございます。したがいまして、私から申し上げることは適当でないかもしれませんが、これは二百海里法の御審議の際に鈴木農林大臣からもたびたび申されておることでございますから、その方針にいささかの変更もないだろう、私といたしましてはこのように考えております。しかし、これは政令段階の問題でございますから、その際に、所管大臣から御説明を申し上げた方がよろしいのではないか、このように考えておるところでございます。
  15. 井上一成

    井上(一)委員 関係政府委員からさらに答弁を求めるわけですけれども、その前に少し、けさの報道によると、外務省筋という形の中で、漁業水域に関する暫定措置法、いわゆる二百海里漁業水域法北方四島を含む水域に適用されておるわけなんです。外務大臣、おわかりですね。しかし、政令その他で特に四島周辺線引きする考えのないことを二十四日、昨日外務省筋確認した、こういう報道がなされているわけなんです。なお、さらに政府部内では四島周辺にはわが国の施政が及んでいないという現実の問題あるいは二百海里漁業水域法の第十四条を適用あるいは政令裁判管轄権などが及ばない海域に指定することも検討している、こういうふうに報道されているのですけれども、このことについてはいかがでございますか。  このような報道に対して、外務省筋はこの報道と同じ考えなのか、全く違った見解を持っていらっしゃるのか。ここでは線引きをしないという方向が打ち出されているのですけれども、さっき私がお尋ねをした、政令で四島を含めての線引きをするのだ——どちらですか。
  16. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この問題は、この協定をいたしまして、その後に残りますいわゆるソ日協定というものが六月中旬の交渉に持ち越されたわけでございます。このソ日協定につきましてどのような規定をするかという点につきまして、少なくとも大きな方針について何らかの話し合いがあった方がお互いに次の段階もスムーズにいくわけでございますけれども、その点につきまして、この協定の大筋は決まったのでありますけれども、残りましたソ日協定につきまして若干の問題が残されておるわけでございます。その点につきましてまだ最終的に報告に接しておらないというのが現状でございまして、いまこの政令の扱いをどうするかという点につきまして、いまここで断定的なお答えができないのでありますけれども、しかし三条によりまして除外をする海域の指定が行われるということになっておりますし、そしてこの三条の対象には北方四島については言及しておりません。そういう態度で日本政府としては進んでおるということを申し上げたいと思います。  したがいまして、先ほどの新聞記事でありました外務省筋という発言がどういうところから出たのか存じませんが、その発言は適当な発言ではないと私は考えます。
  17. 井上一成

    井上(一)委員 それでは外務大臣日ソ漁業暫定協定とソ日漁業暫定協定はうらはらなものですね、だから日ソ漁業暫定協定では一条で、ソ連領土を含めた主張を全面的に取り入れてある。しかしながら、ソ日漁業暫定協定、六月に行われるそれには、日本側の領土にかかわる主体的な見解を明確に示す意味からも、必ず北方四島を日本固有領土だという考えのもとに線引きはなされるわけですね。そのように理解してよろしいですか。
  18. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 政府といたしまして、二百海里法の御審議の際に、政令の予定という文書もたしか農林大臣の方からお出ししてあると思います。その方針に従いまして日本政府としては対処をしてまいる、こういう考えでおるわけでございます。したがいまして、いま私がここで申し上げるのはいかがと思いますけれども、これは鈴木農林大臣からお答えいただくべきだろうと思うのでございます。しかし、私としては当然この既定の路線に沿いまして対処をしておるということを申し上げたいと思います。
  19. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、重ねてお伺いをいたします。  既定の路線とはどのような路線なのか、改めて外務大臣として——私か御質問申し上げておる、日本線引き北方四島を含めた形の中で政令で定めるのだということが既定の方針ですか。
  20. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本の二百海里の暫定措置法の御審議の際に日本政府考え方を申し述べてあります。特に第三条によりまして政令で適用を除外する水域を決める、この除外する水域日本海から黄海、それから沖縄方面の太平洋の一部、それから東海でございますね。そういうような海域につきまして適用水域を外す、このようにお出ししてあるはずでありますし、その路線で進む、こういうことでございます。
  21. 井上一成

    井上(一)委員 農林大臣の御出席を求めておりませんでしたが、私はあえてここでこの許された質問の時間内に農林大臣にかわる答弁をいただきたい。  いま外務大臣お答えの中では、政府の既定の路線に沿って政令線引きをしていくということでございます。その政令線引きをする中にいま私がくどく申し上げたように、北方四島の領土日本固有領土であるという意思表示日本側としては必ず明確にするのだという外務大臣としての御意思を確認したいと思うのですが。
  22. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 現在まで政府といたしまして御説明申し上げましたとおりでありまして、北方四島は日本固有領土であるという主張をしておる、そういう前提に立ちまして日本としては対処してまいるということを明らかに申し上げたいと思います。
  23. 井上一成

    井上(一)委員 さらに私は——農林省のお答えを先にいただきましょうか。
  24. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 ただいま農林省におきまして漁業水域に関します暫定措置法の政省令の検討をいたしておりますが、その段階で、暫定措置法の三条に基づく適用除外水域の中に北方四島周辺水域を含めるということは全く考えておりません。
  25. 井上一成

    井上(一)委員 わかりました。ぜひ除外をしないという、北方四島を含めた線引きを明確にするということを強く私も要望し、かつまたいまのお答えで四島を含めた線引きがなされるというふうに理解をいたします。  さらにまだ若干の疑問があるわけであります。四島周辺の沿岸漁民がこの第五条によってどういうことになるのか。いわゆる五条の前段の部分と後段の部分、許可証を有している場合、あるいは三項で許可証の発給に関しては妥当な料金を徴収するということがうたわれているわけなんです。このことは一体どういうことなのか、お尋ねをしたいと思います。
  26. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 この協定に基づきまして、ソ連の沿岸の二百海里水域内で操業いたします場合には、ソ連政府が発行する許可証を取得し、これは船内の一定の場所にいつも備えつけておく義務があるわけでございますけれども、その許可証を取得しなければ操業ができないということを規定しておるわけでございます。  またそれに関連いたしまして、三項で許可証の発給の際に妥当な料金を徴収できるということで、入漁料の支払いもソ側の方から要求されれば支払う義務が当然生ずるわけでございますけれども、その点につきましては実態問題として今後の漁獲量、漁業規制措置の交渉の中で話が煮詰められるということで、これまでの論議の中でどの程度の入漁料の支払いをソ側が要求するかということはまだ明らかでございません。
  27. 井上一成

    井上(一)委員 これは非常におかしいじゃないかと思うのです。いわゆる零細漁民、小さな船で沿岸漁業に専念をしているたくさんの漁民に対してあるいは小さい漁船に対して許可証を発行して、そして同時にそれに関して適当な料金を徴収する。これは全くもって沿岸漁民、沿岸漁船に対する締めつけだ。この第五条の一項、二項、三項についてどのように政府は零細漁民の立場理解しているのか、私は非常に強い憤りを感ずるわけです。いかがですか。この点について十分配慮されておるのかということです。
  28. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 漁業の操業が漁船を単位として行われます関係上、日本国内法漁業法等におきましても、その資源保護あるいは漁業調整上一定の規制を課する必要がある漁業につきましては、一船ごとに農林大臣あるいは北海道知事の漁業の許可を発給いたしまして、それによりましてその一定の制限のもとに操業させているというのが実態でございます。したがいましてソ側の方の二百海里の中で操業いたします場合に、いまのような協定に基づいてソ側の方の許可証を受けるということも実態から見てやむを得ない点があると思います。ただ許可証の発給等を受けます際に手続上大変煩瑣な事務が伴いますので、そういった点については、これらが沿岸漁民の負担にならないように道庁等とも御連絡をいたしまして、特に零細な漁船につきましては漁業協同組合単位にいろいろな事務処理をまとめる等、それに対して日本政府としてまたできるだけの援助をするというようなことを現在考慮中でございます。  また入漁料につきましては、先ほど申し上げましたとおり、まだソ側の方から具体的な料金額等の提示がございませんけれども、もしそれが、わが方で受け入れざるを得ない、あるいは受け入れ可能な妥当な金額であって、かつそれが沿岸漁業者等に相当な負担にもなるということが具体的に明らかになりました場合には、それに対するいろいろな国としての援助措置ということも考えなければいけないというふうに思っております。
  29. 井上一成

    井上(一)委員 私が尋ねているのは、日本国政府、都道府県知事の権限下において行われるものではないのです。この条文では。少なくともソビエト社会主義共和国連邦の権限のある機関、いわゆるソ連邦の機関に対して許可証の発給を願い出るわけです。それにかかわって、まだ明らかではないけれども妥当な料金を支払う、徴収されるのだ、こういうことなんですよ。ソ連政府に対して願い出て、そしてそれに対して料金を支払っていく、徴収されるのだ。いまの立場とは全く違った立場に立つのですよ。その点をどういうふうにお考えなんですか。いまの立場と同じじゃないのですよ。
  30. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 私の説明があるいは不足だったかもしれませんが、いまと同じだということを申し上げているわけではございませんで、ただ漁業のいろいろな資源保存その他のための規制上、一船ごとの許可を中心にした規制が必要であるというのは現実面から見て否定はできない。ソ連側の主権的な権利というのを二百海里の水域の中で認める前提で協定を結んで、その範囲内で日本漁船の操業の継続を確保するためには、一船ごとに許可を日本政府の許可とは別にソ連側から取得をしなければならないことになるというの、沿岸漁民にとって決して歓迎すべきことではございませんけれども、現在の世界の大勢から見てやむを得ない措置であるというふうに考えておるわけでございます。それに伴う実態的な漁業者の負担の加重ということにつきまして、できるだけそれを軽減するように、政府としても事務処理の面、あるいは将来もし入漁料等が相当多額な問題になる場合には、それに対する援助措置等を考えなければならないということを申し上げたわけでございます。
  31. 井上一成

    井上(一)委員 この点で五条についても大変疑義があり、またわが国漁民に対して全く不利益をこうむる条文だと私は考えるわけです。さらにこれは強く追及をしてまいります。  続いて、その二条について「日本国の地先沖合」という表現が使われているわけなんです。「日本国の地先沖合における伝統的操業を継続する権利を維持するとの相互利益の原則に立って与えられる。」、これはいわゆる十二海里内での操業が含まれているのか、含まれていないのか。
  32. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 十二海里内でのソ連漁船の操業に伴いまして大変大きなトラブルが日本沿岸で起きたということは、もう先生御承知のとおりでございます。それも一つの大きな動機になりまして、領海の幅を十二海里に広げるわが国領海法が制定された経過もございますし、その趣旨を十分ソ側の方には従来から繰り返し説明をし、領海が十二海里に拡大をされた場合にも、その中でのソ連漁船の操業の継続というのは実態問題からいっても認められない、そういうことを繰り返し鈴木大臣からソ側に伝えてございます。ソ側の方も、当初は、十二海里に拡大した場合にもなお一部の地域についてはソ連漁船の操業の継続を認めてもらいたいという意向が非常に強うございまして、最後まで、条文上も、そういった領海の幅を広げた場合にソ側漁船の操業の継続について協議をするというような規定を入れたいということを強く主張いたしましたが、日本側の一貫したそういう十二海里内での操業を認められないという態度にかんがみまして、ソ側の方も最終的にはそれを撤回したという経過もございます。日本側の漁船がソ連の二百海里水域内で操業することを中心にしてこの協定の規定がつくられています関係上、明文上は必ずしもその点が明確でございませんけれども、ただいま申し上げましたその審議の経過等から見て、ソ側の方も十二海里内での操業の継続を一応断念しているということは明確でございますし、また日本側の十二海里領海法の運用の問題といたしまして、将来とも外国漁船の操業をこの中で認めるということは全く考えておりません。
  33. 井上一成

    井上(一)委員 日本側の見解というものは常にそのように明確にされつつ今日まで来たわけですけれども、逆にソ連側の見解というものもあるわけなんです。これがまたその八条にかかわってくるのではないか、こう思うわけなんです。一条についてはソ連側の見解が明確に条文に出てきた。しかし、日本側の見解というものは、八条によって領土は切り離してるんだという見解を明確にしたんだということなんです。この十二海里内での操業の問題については、日本側は明確にこの八条を盾にとっていこうと。しかし、逆にソ連側はソ連側で、この八条のいわゆるいずれの国の立場もあるいは見解も害することばないんだという解釈を盾にとられた場合に、大変私は困る問題ではないだろうか、こういうふうに思うんです。だから、領海内での操業があいまいもこにされてしまう、そういうおそれはないだろうかという一つの危惧の念を持っておるわけなんです。この際これを明確にしておくことが大変大切である、大事なことであると思うわけであります。明らかにそのようなことはないんだ、あるいは日本政府の八条に対する解釈は再三聞いておるわけでありますけれども、さらにここで、そのようなことは決してないのであるということのお答えを明確にいただけるのか、そしてソ連側はこの八条を盾にとってそのような主張はしないという話し合いがなされておるのかどうか、その点についてお答えをいただきます。
  34. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 先ほど御説明いたしましたとおり、いままでの審議の過程で、ソ側の方も、日本の領海が十二海里に拡大された場合に、その中での操業を継続するのは実態的に不可能であるということは十分認識をしているというふうに考えております。  この問題は、先ほど外務大臣の方からお答えもございましたとおり、六月のいつごろになりますか、に入りまして開始されますソ日漁業協定の中で、明文としても明らかになる問題だと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、七月一日以降は遅くともわが国領海法が施行され、発効するわけでございますから、その時点においてソ連漁船の操業というのはいまの制度の中でも認められないということになるわけでございまして、それを前提にしてソ日漁業協定の中でその点ははっきりされてくると思いますが、実態問題として、その点について両方の誤解があるというふうには考えておりません。
  35. 井上一成

    井上(一)委員 さらに私は、ソ連側の主張として等量主義というものを持ち出しておるわけであります。これは具体的な数字を私から申し上げなくとも御承知だろうと思いますけれども、ソ連がいわゆる漁獲をしておった二百海里内での漁が五十万トンであり、日本側が平均して百七十万トンぐらいだと記憶しておるのです。これが等量主義になると、日本側にとって大変不利益を生じるわけなんです。ここで外務大臣、私は、そういうソ連の等量主義に対して、わが国はあくまでも過去の実績を尊重するというか、実績を無視しない、実績主義で今後の交渉に当たっていくんだということが大変大事だと思うのです。このことについての外務大臣のお考えを聞かせていただきたい、こういうように思います。
  36. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 残された問題はまさに漁獲量の問題になりまして、この点につきまして御報告をさせていただきたいと思います。  けさNHKのニュースでも言っておりましたが、この六月から十二月の漁期の分として四十五万五千トンという提示、そういう原案が内示をされたということでございまして、三月には二十四万五千トンを日本としては漁獲をいたしておりますので、三月とそれから六月−十二月の分として、合計いたしますと七十万トンということになりまして、これは昨年の三月と六月−十二月分のものと比べますと七〇%に当たる、こういう数字のようでございます。また六月−十二月の四十五万五千トンは六三・八%という数字になっておりまして、相当厳しい数字が内示をされたということであります。  これらの点につきましてこれから折衝が行われるわけでございますが、その点につきまして、従来は「相互利益の均衡」というような表現が先方の案にありまして、その「均衡」という表現も落とした、こういうことになりまして、この等量原則というものは大変不合理である、従来の伝統的な実績をもとにして考えるべきであるということを日本政府としては主張いたしておりますし、その点は、今回の内示案におきましても等量主義ということは言われていないというふうに考えております。
  37. 井上一成

    井上(一)委員 いろいろと危惧すべき点が多々あるわけであります。  そこで、外務大臣お尋ねをいたしたいと思うのですが、日ソ共同宣言の中で歯舞、色丹は日ソ平和条約締結後には日本に引き渡すのだ、このように約束がされております。私はこれは必ず守られるべきであり、それがためにも日ソ平和条約の一日も早い締結に取り組む必要があるということを、大変ごりっぱなあなたのお父さんの偉業をさらに受け継いでほしいということを、最初の質問で特に要望したわけなんです。いま考えてみると、今回の日ソ漁業暫定協定締結することによって、日ソ共同宣言での約束事、いわゆる歯舞、色丹は日本へ返還するのだ、そういう約束事すらこれを締結することによって御破算になってしまう、なくなってしまうということはまさかないでしょうね。私は心配するのです。念のために、まさかそんなことはないでしょうね。
  38. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 歯舞、色丹につきましてはただいま御指摘のような明確な約束があるわけでございますから、そのようなことは断じてないというふうに信じております。
  39. 井上一成

    井上(一)委員 私もそう信じたいし、そうあるべきだし、それがために日本政府日本の国民すべてがその約束を守るために一致協力をしていくべきだ、強い取り組みの姿勢を示してもらいたいと思います。そういうことを考えれば、この日ソ漁業暫定協定については鈴木農林大臣が大変御苦労をなさっていらっしゃるし、なされた。その案文の中身については、いろいろ疑義がありますし、今後議論を重ねますけれども、私は協力を惜しまない、大変御苦労に対しては感謝の意を表したいと思うのです。  そこで外務大臣暫定協定農林大臣の役割りとして十分果たされたけれども、いわゆる本協定については外務大臣みずからがこれに取り組むのだ、そして本協定については外務大臣がみずから出向いていって、あるいはその中に飛び込んで、いま危惧された数々の問題点も日本国民に心配がないのだということを明確にするお考えがおありでしょうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  40. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この席におきましてもたびたび申し上げたのでございますけれども、二百海里時代になりまして、領土、特に島でございますね、たとえば日本にすれば北方四島の問題がございます。この北方四島の問題というものは二百海里時代になりまして大変拡大をされたと当然考えられるわけであります。そういう意味で、領土問題を含みます大きな未解決の問題としております平和条約交渉、この問題はなるべく早い機会にソ連政府日本はしっかり腰を落ちつけた交渉を持つべきであるというふうに考えております。  また、明年以降の日ソ漁業の今後の本協定締結につきまして、漁業関係は従来から農林大臣がこれに当たられておりますが、この点につきまして私自身が当たれという御趣旨でございますけれども、これにつきましてはいまここで申し上げるわけにはいかないのでありますけれども、来年以降の問題に対処する上でも、やはり平和条約の問題につきましてはなるべく早い時期に当方も十分な準備をした上で外務大臣間の交渉を持つべきであるというふうに考えます。
  41. 井上一成

    井上(一)委員 限られた時間で十分御質問を申し上げることができないわけですけれども、いわゆる二百海里時代を迎えて、食糧基幹産業としての水産業の位置づけ、取り組み方を考え直すべき時期に来ているんじゃないか、私はこういうふうにも思うのです。相互主義が原則だということが根底にあるわけですから、なおさらそういう意味では現在の問題も含めて将来への展望というものを明確にしていかなければいけない。現在の問題は国内的に、特に北海道周辺の漁民の皆さんにしんぼう強い忍耐を押しつけるだけではなく、いわゆる生活保障の面あるいは転廃業に対する対策あるいは関連事業、漁業に関連した企業への救済措置、いろんな行政指導も必要でありますけれども、将来の食糧基幹産業としての水産業の位置づけをもう少し明確にしていかなければいけない。だから、二百海里内での新しい漁場の開発ということも必要である、あるいは沿岸漁業資源の開発、栽培漁業だとか言われておりますけれども、そういう取り組みもこれは農林省が明示をしながら、そして外務省も今回のこのような国際協定締結に当たってのいろんな問題点を助言しながら、さらに強い取り組みの姿勢を示していくべきだ、私はこういうふうに思うのです。  それと同時に、二百海里時代になりますとあらゆる意味での問題、トラブルが起こると思うのです。そういうことについての外交的な面での問題解決あるいは具体的な事犯に対する問題解決について、水産庁が当たられるのかあるいは海上自衛隊がそれに当たるのか、海上保安庁が当たるというお答えがあろうかと思いますけれども、それじゃ海上保安庁がいまの装備、いまの体制の中でそういうことが万全を期せられるのかどうか、こういう点もこの際伺っておきたいと思うのであります。
  42. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 いま御指摘のとおり、日本漁業を取り巻く環境が急速に変わって、非常にむずかしい新しい土俵の上で日本漁業の将来を考えなければいけない時期にまさに入ったわけでございますが、これに対する水産庁としての対策といたしましては、まず当面はやはり日本の従来の漁業の実績をできるだけ確保する、そのために精力的に各国との間の漁業外交を強力に進めるということをまず当面の対策としては重点として考えております。  次に、長期の対策といたしましては、やはりこういう海の利用の秩序が変わった、そういういわゆる二百海里時代に備えまして、日本周辺の二百海里の中のいろんな資源の高度の利用あるいは漁場の開発ということに大いに力を入れるべきであるというふうに考えておりまして、すでに五十一年度から沿岸漁場整備計画を七カ年間で総事業費二千億円という規模で発足をさせておりますけれども、それも当初計画よりさらに一層テンポを速める必要があると思っております。関連して、いろいろな県営の段階あるいは国の段階での、そこへまきます種をつくる種苗センターといいますか、そういった種づくりの方の施設にも大いに力を入れて、日本周辺で大いに資源をふやしてとるということに一層力を入れようと思っております。  それから第三の課題といたしましては、こういった資源有限時代に入りました段階において、とりました資源をできるだけ有効に利用するということで、従来フィッシュミールとか養魚のえさに回っておった部分を、できるだけ今日の人間の嗜好に合った食品に加工する技術あるいは従来廃棄しておったものをえさに回す技術、こういったものに総合的に力を入れていく必要があると考えております。  なお、二百海里時代に入りました場合の取り締まりその他の問題でございますが、これは従来から水産庁も国内の漁業者を中心にしました指導的な取り締まりをやってまいったわけでございますけれども、今後、外国漁船が一応日本政府の許可のもとで日本沿岸で操業するということが続くわけでございますから、その間での操業の紛争がないように、たとえば沿岸の漁業者の方の団体に、自衛的な取り締まり船、監視船を配置する場合にそれを助成するとか、国の力だけでなくて漁業者の側でもそういう体制が整備できるようにする。同時に、これは広域の話でございますので、当然主務官庁である海上保安庁と連携しながら、そういった外国漁船との間で合理的な秩序のもとで操業できるように努力したいと考えております。
  43. 井上一成

    井上(一)委員 ソ連のパトリチェフ貿易相が来日されるわけです。日ソ貿易支払い協定の調印ということで来られるわけですけれども、今回の漁業暫定協定交渉の中で、日本経済援助、経済協力の申し入れがあったように聞き及ぶわけなんです。そういうことも決して悪いことではありませんから、もし日ソ経済協力の申し入れがあったということであれば、その問題について外務省はどのような御見解を持っていらっしゃるのか、お尋ねをしたいと思います。
  44. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 パトリチェフ貿易大臣の来日につきまして急に話が出まして、日本としても歓迎をいたすつもりでおるわけでございますが、日ソの漁業交渉の話し合いの中でほかの問題が出たということは私自身承知をしておりません。ただ昨日、パトリチェフ大臣が来日されるという話が座談の間に出まして、先方からもパトリチェフが行くからという話も出ておりますけれども、その他の経済協力の問題は両相間の話し合いの際には出ておらないと聞いております。
  45. 井上一成

    井上(一)委員 それでは最後に少し論点が変わるわけでありますけれども、委員長、前々回ですか、私は日本の外交姿勢という形の中で、いわゆる尹教授の拉致事件に係る日本の外交姿勢を強く追及したわけであります。その折に、ぜひ参考人として尹さんを日本に招聘をしていただきたい、そして本委員会でその真実を明確にしていただきたいというお願いを私からいたしたわけであります。  これは御承知のように、私みずからニューヨークで尹教授と面談をいたしまして、政治的な立場ではなく、世界の平和と人権を守っていくのだという純粋な人権擁護の立場から、あるいは日本の誤った外交姿勢を正していただくためにも、日本に参ってその真実を明確に話したい、こういう意思も確認をしてきているわけなんです。  その後、この問題について、私に対する何の回答もないわけですけれども、いかがでございますか。最後に私は、会期短い今日、きょうあえてここで一国会議員として、外務委員として、いわゆる日本の外交政策を正すためにも、特に格段のお願いをいたしたわけでありますが、このことについての委員長の御見解と御返答をひとつ承りたい、かように思います。
  46. 竹内黎一

    竹内委員長 委員長からお答え申し上げます。  井上委員の御提起の問題については、過去二回理事会において協議をいたしましたが、まだ意見の一致を見るに至っておりません。引き続き協議の予定でございます。
  47. 井上一成

    井上(一)委員 重ねてお願いをいたしておきます。もう相当日時がたつわけであります。いろいろと国際的な問題で審議を重ねなければいけないたくさんの問題がある中で、大変御迷惑な点もあろうかと思いますけれども、さらに一日も早い、できましたら今会期中に、次回の委員会にぜひ御返答を賜りたい、このように思うわけであります。できますれば次回の委員会にぜひ私の要望をかなえていただけるような御返答を期待をいたします。
  48. 竹内黎一

    竹内委員長 先ほども申し上げましたように、さらに理事会で協議を続けておりますので、井上委員の強い御希望は私からもまた伝達をいたしたいと思います。
  49. 井上一成

    井上(一)委員 では、これをもって質問を終わります。
  50. 竹内黎一

  51. 土井たか子

    ○土井委員 アメリカのカーター大統領が、在韓米軍の撤退計画に反対を表明いたしましたシングローブ参謀長を二十一日解任したわけであります。もはやアメリカ軍は韓国から地上軍を撤退するということは、単なる机上の論ではなくなりまして、二十四日からソウルで米韓の公式交渉が始まることになりました。現にその交渉が進行しつつあるわけであります。  かねてより福田・カーター共同声明で、その第五項の中に、米国は韓国とまた日本とも協議の後朝鮮半島の平和を損なわないような仕方でこれを進めていくことになろうというふうな趣旨のことが述べられております。こういう点から考えてまいりますと、もう撤退の問題がプログラム化されて具体的に進んでいくということになる中で、いま日本としては、韓国における米軍の撤退という問題をめぐり、朝鮮半島の平和を損なわないような仕方でこれを進めていくこととなろうという中身をどういうふうに理解して、バランスを損なわない撤退とは具体的に一体どのように把握をされているか、これをまずお伺いしたいと思うのです。大臣いかがですか。
  52. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまお話のありましたように、朝鮮半島におけるバランスを崩さないとかあるいは安定を崩さないという仕方で地上軍の撤退が行われるであろうと思います。その具体的な点につきましては、まさにこれからの折衝あるいは議論の対象でございまして、現在アメリカのブラウン統合参謀本部議長とそれからハビブ国務次官がソウルで話し合いに入られただろうと思います。その帰りに日本にお寄りになる、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、これから具体的にどのようなということは、まさにこれからの研究課題であろうというふうに考えております。
  53. 土井たか子

    ○土井委員 しかし大臣、いまもうその交渉が具体的に進行しつつある中ですよ。一体この米軍撤退が是か否かという基本的な問題にかかわる日本としては、もし撤退が具体的に実現をしていくならばどういう役割りを果たさなければならないかということは考えておかなければならないことであります。したがいまして、そういう点からいたしましても、この朝鮮半島における平和を損なわないような、つまりバランスを損なわないような撤退とはどういうふうな撤退であるべきかということぐらいは、日本としてはっきりした姿勢を持っていていいはずでありますが、この点は外務大臣お尋ねしても、いま交渉は進行中でありますし、具体的にそれは交渉の中で詰められる問題だ——それならば、万事交渉交渉で、その場所に、何でも結構、その決められたことは万事日本として承りますという態度で臨んでいらっしゃるのですか。
  54. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 これは福田総理もたびたび申されておりますけれども、まず第一義的には米国と韓国との問題であることははっきりしておるわけであります。日本は、福田総理が介入は慎しむということをおっしゃっておるとおりであります。そういうことで、私も日本としてはやはり米韓関係に介入をするという立場はとるべきではないと思います。そうではなくして、やはり日本としては日本立場で、朝鮮半島におきます危険が増大をするようなことは非常に困る、これがまず根本的な考え方でありまして、大筋につきましていろいろな御相談を受けると思いますけれども、それにつきまして当方からあらかじめ態度を決めるということは必要がないのではないかというふうに考えております。
  55. 土井たか子

    ○土井委員 それは介入をするということではなくて、日本としては自主的にこの問題に対してどう考えるかということを私は聞いているわけでありまして、かの福田・カーター共同声明の中におきましても、米国は韓国とまた日本とも協議をして、この朝鮮半島における平和を損なわないような仕方で撤退を進めていくこととなろうという趣旨のことが中身としてあるわけでありますから、そうなってまいりますと、この米軍の撤退によって日本としては担う役割りというのが違ってくるのか違ってこないのか、日本として今後その役割りを担っていく上から言うと、いわゆる装備というのがどういうことにかっこうとしてはなるか、そういう問題なんかについては自由的に考えるべき問題じゃありませんか。したがって、こういうことをどのように考えていらっしゃるかということ、この交渉が進行する中で日本としてはどうなのかということを私は先ほど来お尋ねしているわけであります。
  56. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この撤退問題自体につきまして、恐らくこれが緒につく段階であろう、こう思います。したがいまして、今般ブラウン議長並びにハビブ次官の来日ということによりまして状況がやや明らかになる部面も出てくるかと思いますけれども、今日までのところでは具体的にどうするという話はまだ何らございません。したがいまして、それに対してどう対処するかということを、いま、ただ日本だけで準備をするという段階にはないというふうに考えておるところでございます。
  57. 土井たか子

    ○土井委員 問題は具体的に交渉でいろいろ詰められていくという御答弁を相変わらず外務大臣としてはなさるであろうと思いますが、しかし、基本的に大事なことだけは、日本としてどうするのかというはっきりした姿勢というのは押さえておかないといけないと思うのです。  その基本的な問題の一つに核の撤去という問題がございます。すでに五十年の六月に当時アメリカのシュレジンジャ長官が、韓国において核が配備されているということを正式に発表いたしました。それは当時核防審議で、いわば政治的配慮からいたしますと、自由民主党の中のタカ派をなだめる材料にこれが実はなったはずでありますけれども、日本がアメリカの核のかさの中にあるということを知らしめる目的があのシュレジンジャー長官の発言の中には明らかにあったわけであります。  そういうことからいたしますと、日本の防衛という点から考えまして、韓国の核がそのために使用し得ると言われていた、その核が撤去されるということになりますと、日本の防衛への影響は非常に大きく出てくるのじゃないか、このことはやはり日本として考えなければならない基本的な一つの問題になるだろうと思います。この福田・カーター共同声明の中でもこのことを確認をいたしておりまして、韓国に核があるということは極東戦略からして重要な意義があるはずであります。したがいまして、韓国側はアメリカの核撤去を容認しながら、片や戦術核兵器の一部を韓国に移管してほしいというふうな意思表示をしているということでございますから、現にいまお尋ねしたいことは、グローバルな核拡散防止という立場から考えまして、韓国に核があるということ自身、わが国からこれに対してどのような立場、どのような取り組みを今後していくということが考えられているのか、この点は外務大臣、いかがですか。
  58. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 御質問の点は、趣旨が——私自身もここでお答えする自信がないのでありますけれども、韓国にあると言われておる核兵器が日本の防衛のためにあるというふうには私どもは、いろいろな面で関係はあるかもしれませんけれども、直接そのようなものであるということは承知をいたしておりません。したがいまして、いまのお尋ねにつきまして、私、これ以上ちょっとお答えできないのでございますが、政府委員の方からお答えさしていただきます。
  59. 土井たか子

    ○土井委員 ただいまの外務大臣御答弁はまことにおかしい御答弁であります。外務大臣、五十年六月のシュレジンジャー当時の国防長官発言を御存じなんですか。あのシュレジンジャー発言の中には、韓国にある核は日本への核攻撃に対しても米国がそれを使うという可能性があることをはっきり確認し、それを示唆しているのですよ。したがいまして、いま私はかような御質問をしているわけであります。御存じなんですか。
  60. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 シュレジンジャ一元国防長官が一九七五年六月二十日に国防省で記者会見をいたしましたときに、韓国に戦術核兵器があるということは確かに申しております。ただ、これはやはり結局朝鮮半島における平和の維持という観点から話しておったわけでございまして、われわれの了解するところでは、韓国にある戦術核兵器の存在というものは、朝鮮半島のバランスの観点から常に考慮されてきたし、現在も考慮されておるというふうに了解いたしております。
  61. 土井たか子

    ○土井委員 いまのも御答弁にならないわけでありますけれども、外務大臣、これに対して、御存じがないことを幾ら御質問しましても、しかとした御答弁は返ってこないのはあたりまえですから、この点はいかがなんですか。  今回米軍の核が撤去されて戦術核兵器の一部が韓国に移管したというふうな場合、グローバルな核拡散防止の点からして、韓国という場所に戦術核兵器が存在するということは、わが国は核拡散防止の点からどのように考えるかという基本姿勢というのはあってしかるべきだと思うのです。この点はどうなんですか。
  62. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 米軍の保有しておる核兵器が韓国に移管をされるというふうな話は全然、聞いておりません。したがいまして、この点につきましてはコメントをする立場にございませんけれども、必要があればまたアメリカ局長からお答えをさせていただきます。
  63. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 いま大臣からお話のありましたとおり、米軍が朝鮮半島に保有しております戦術核兵器を韓国政府に移管するという話はわれわれとしては承知しておりません。また韓国は、現に核防条約を批准しておりますので、その核防条約の義務からしても核兵器を保有することはあり得ないと考えております。
  64. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、現在いろいろ交渉の過程の中で、韓国に対して核の全面撤去ということをアメリカ側が打ち出せば、少なくとも一部は韓国に移管するということを韓国側は要求する方針だということが報道として伝えられてまいっておりますし、これが具体的にもし実現をしないのならば、朴大統領はこれまでのところ核と戦闘機を除くあらゆる兵器というものを国産化していくということを述べてきているわけであります。しかし実際問題として、朴大統領の発言というのが片やある一方で、韓国についてはもう十分な核開発能力があるということは西側の専門家によっていままでのところはっきり指摘をされてきている。また、韓国自身も濃縮ウランの国産化というものを決定していっている。こういう点からいたしますと、韓国に対して核防の立場からすると、そういうものを開発される可能性はない、されるはずはないと言い切ってしまっていいのかどうか。大丈夫だと手をこまねいて腕組みをして、その問題に対してもただただ事の成り行きに任せるということであって果たしていいのかどうか。日本としてはこの問題に対して確たる姿勢というものがあってしかるべきだと思って御質問をしているわけであります。外務大臣、どうなんですか。
  65. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 核兵器のこれ以上の拡散は日本政府としては反対の立場は当然であります。
  66. 土井たか子

    ○土井委員 さらに、ただいまその交渉段階だとまた御答弁をされると思いますが、現在韓国の作戦指揮権というのは国連軍、すなわち米軍の指揮下にございます。     〔委員長退席、山田(久)委員長代理着席〕 実際上米軍が撤退するということになると、陸軍に関する限りは、作戦指揮権は今度は韓国軍が主体になって、そうした作戦指揮権に対して韓国に返還が要求されるという形になっていく。そこで新たにわれわれとして考えなければならないことは、韓国に作戦指揮権が移るということになりますと、朝鮮半島においては真正面からにらみ合う形がここに展開されるわけでありまして、新たな緊張状態というものが生ずるのではないか。これは一般の見方であります。こういうことに対して日本の外務省当局としてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  67. 大川美雄

    ○大川政府委員 在韓米軍が仮に撤退いたしました場合にも、御承知のとおり国連軍と申しますのは、別に国連の一連の決議に基づいてあそこに設置されているものでございますから、理論的には在韓米軍が撤退いたしましても、その司令官は国連軍の司令官を兼ねておりますので、国連軍自体の撤退ということが決定されない限り、国連軍司令部の司令官としての米軍の司令官が残ることもあり得ると思います。
  68. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、米軍は撤退しても国連軍が撤退しない限りは国連軍の指揮下に韓国軍はある、したがって相変わらず国連軍という帽子をかぶった米軍の指揮下に韓国はある、このように認識していいわけでありますか。
  69. 大川美雄

    ○大川政府委員 現在韓国軍が国連軍司令官の指揮下に入っておりますので、その事態が変わらない限りいまのようなことで御了解いただいて結構と思います。
  70. 土井たか子

    ○土井委員 在韓米軍の撤退で一つ新たな機運が動いてまいっておりますのは、日米安保条約の改定をアメリカのブレジンスキー大統領補佐官が示唆しているという点であります。日本政府としてはこれをお考えになっていらっしゃるかどうか。七〇年代から八〇年にかけての安全保障ということをこの機会にもう一度見直すというふうな御用意がおありになるのかどうか。あるいは現在の安全保障条約をそのまま堅持していくことになると考えていいのかどうか、この点外務大臣どうなんでありますか。
  71. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 事実関係についてまず私の方から御説明申し上げまして、その後大臣から御答弁あるかと思いますが、ブレジンスキー補佐官が五月三十日付のUSニューズ・アンド・ワールド・レポート誌にアメリカの外交政策についていろいろ語っておるわけでありますが、その中で日米間の安全保障取り決めというふうな問題について触れていることは事実でございます。この点につきましては、私たちの方としまして早速その記事を取り寄せまして読んでみましたけれども、そこで言っておりますことは、われわれはこれから七〇年代後半においてそして八〇年代に向けてどのような種類の安全保障上のアレンジメント、これは取り決めと普通訳されているようでございますが、アレンジメントが適当であろうかということについて、韓国側とそして日本側と討議にまさに入ろうとしている、こういうふうに書かれておりまして、これを読みました限りにおきましては、今回のこのブレジンスキーの発言が、日米間の現存の安全保障上の協定を改定したり、あるいは新たな取り決めを検討するということまでを言っているものではないと考えておる次第でございます。
  72. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日米安全保障体制につきましては、先般の福田・カーター会談におきましてもこの問題については現行の体制を堅持していく、こういう話し合いでありまして、ブレジンスキー氏の談話がいろいろ出ております。それは私も読みましたけれども、そのようなことまで考えての御発言ではないのではないか。これから、アメリカとしては韓国並びに日本との条約を持っているわけでございますけれども、それを実際どのような考え方で運用していくか、こういうようなことではなかろうかと思いまして、条約自体をどうするかということではないのではないかというふうに思います。
  73. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、いまの外務大臣の御答弁から考えまして、現行安保条約の中で考えられる日本の安全並びに極東における平和と安全の維持に関して日本の果たす役割り、さらにアメリカ軍の日本における軍事基地を初めとしたいろいろな行動計画そのものに対して変更があり得るということは、事実これは言えますね。いかがです。
  74. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 安保体制をどうするかということは、これは大変大事な問題でありまして、やはり首脳間で話し合われるべき問題であると思います。したがいまして、このブレジンスキー氏のことに関連しては、私は根本的なことは変わりないというふうに考えるところでありまして、現在におきまして、またいままで、状況の変化というものに対しまして、それは常時対応の姿勢というものはあろうと思います。しかし、根本におきまして大きな変化というものはただいま考えられない、このように考えております。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 先ほど、米軍が撤退をしても国連軍が撤退をしない限りは、国連軍の作戦指揮権のもとに韓国軍というものがあるということを考えてよかろうというふうな御答弁の向きがございましたが、現在朝鮮半島の戦争防遏の枠組みになっているのはいまの休戦協定であります。この休戦協定からいたしますと、この米軍撤退によって国連軍司令官の実体がなくなる、国連軍そのものの名目はあっても実体がなくなっていくということになりますと、実際問題として考えられるのは、やはり休戦協定そのものの内容から考えて、実体が空文化されていくということになるのじゃないか。そうすると、朝鮮半島の戦争防止の歯どめについて、いわゆる休戦状態ということではなく、本当に戦争防止の方向で、一方やはり米軍の撤退に伴って積極的な措置というのを講じていくという必要があるのじゃないか。こういう問題からいたしますと、極東の安全について、特に善隣外交などを外交の姿勢として持っております日本といたしましては、新しい体制というものを話し合うために、アメリカとか韓国とか、さらには朝鮮民主主義人民共和国との話し合いということが現実に必要な問題になってこようと思いますが、これに対しては外務大臣としてどのようなお考えをお持ちになっていらっしゃるかをお尋ねをしたいと思います。
  76. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 地上軍の撤退問題がいまこれから話し合いに入ろうと、こういう段階でございます。福田総理が撤退ということより削減の方がいいんではないかと言われた趣旨も、撤退と言いますといきなりなくなってしまうというふうに一般の方がお考えになるからそのようなことを言われたのでありまして、もういますぐにも米地上軍がいなくなってしまう、このようなことを今日考えるというのは現実的ではないというふうに私どもは考えております。これは何年かかってどういうやり方で撤退をされるかということにかかっておるわけでありまして、したがいまして、急にすぐさま米地上軍が一兵もいなくなる、こういうことを頭に描いてものを考えるという必要はないというふうに考えているところでございます。しかし、これから長い時間をかけましてはいろいろな変化が起こってくる。それには対処をしてまいるという必要がもちろんあろうと思います。しかし、それはこれから検討されるべき問題である、こう考えるところでございます。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 時間の関係がございますから、改めて機会を持ちましてこの問題に対しての質問を続行したいと思いますが、あとただ一つ、私は外務大臣にじかにお尋ねを申し上げておきたい案件がございます。  それは、去る五月十日の衆議院の本会議におきまして私は補充質問をいたしました。その節、質問の内容で「現在、世界には二十四の大陸棚境界画定条約がございますが、一体自然延長論で境界画定がなされた例を挙げていただきたいと存じます。外務大臣、いかがでございますか。」こうお尋ねしたら、外務大臣の御答弁には「相対する国の間の境界画定で自然の延長が採用されたケースがあるか、こういうお尋ねでございます。二十四のケース中にあるかということでございますが、これにつきましては、一九七二年に署名されましたチモール沖の大陸棚に関する豪州とインドネシア間の協定がございます。この協定上の境界線は、中間線よりもインドネシア側に寄って決められておるわけでございます。」と、まあ、癖実の問題については中間線よりもインドネシア側に寄って決められたということは指摘をされておりますが、しかし私の尋ねております。大陸だなの境界画定について自然延長論で画定をされたかどうかということに対しては、何らお答えになっていらっしゃらないのです。  現に、当委員会におきまして、五十一年五月七日の日の審議の中で、このオーストラリア・インドネシア間の画定の問題が取り上げられて質問をされた節、政府答弁といたしましては「同じ中間線と申しましても若干バリエーションがあると思いますが、等距離線ないしは中間線を原則として決められたものでございます。」こう答えておられるわけです。したがいまして、私があの五月十日にお尋ねをした自然延長論でこの境界画定がされたのではないということを、当外務委員会の御答弁でも政府答弁としてはっきり出されておる。また、日韓大陸棚協定審議の節、参考人の御出席をお願いして質疑をいたしました節、自民党の方が御推薦をされました東北大学の法学部の教授である山本先生のいろいろな御発言に対して私が質問をいたしました節にも、自然延長論で境界画定がされたという例を知らないというふうなきっぱりした御答弁もあるわけであります。こういう点からいたしますと、外務大臣が御答弁になったのだから外務大臣お尋ねいたしますが、本当に、あの五月十日の御趣旨の、インドネシアとオーストラリアとの間の大陸だなについては、チモール沖の大陸だなの境界画定については、自然延長論で境界線が画定されたのですか、どうなんですか。
  78. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 詳しくはあるいは専門家の方からお答え申し上げますけれども、自然延長論という御趣旨は、私は結局、大陸棚協定の場合は沖縄海溝の取り扱いの問題である、自然延長論という意味はそういう意味であろうと思います。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 それはそうじゃないですよ。
  80. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そうじゃないのですか。要するに、自然の延長が切れるところはどこで切れるかというと、一つの韓国側の主張しているのは、沖縄海溝で切れておるということを言っておるわけでありますね。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 だから、それは中間線論じゃないですよ。そのことを聞いておるわけですからね。
  82. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 中間線論とこの自然延長論と、こういうふうに対立されて言われておるわけでありますけれども、その対立というのは、海溝が一つの大陸だなを区分しておるのかどうかということであろうと思います。そこが、自然延長論と言われるのは、沖縄海溝によりまして自然の状態がそこで変わっておる。日本側から見ればそこで切れておるし、韓国側はそこまでつながっておる、こういう主張が自然延長論と言われておる趣旨ではないか。一般に自然延長論という定義がないわけですから、したがって不正確に使われていると思いますけれども、日本側として、海洋法会議などで主張しております自然延長論は、仮にどこまで行っても、大陸だながあれば、どこまでも自然につながっておればそこまでみんな大陸だななんだ、こういう主張には日本は反対をしてきたわけであります。そういうふうにして自然延長論も使われますし、ただ現実の問題として、大陸棚協定でいま問題になっておりますのは、沖縄海溝によって大陸だなというものが切れるかどうかということが論点であるわけでありますから、そういう場合では沖縄海溝、これは深いところは千何百メートルもあるわけであります。そういう海溝があった場合に、それが考慮をされて線が引かれたか、考慮をされなかったかという御質問であると私は受け取りますし、それ以上私は御質問解釈のしようがない。したがいまして、例といたしましては、そういう海溝があるにもかかわらず中間線がとられた例が確かにある。しかし、この海溝があるために本来の中間線よりもインドネシア側に少し片寄って引かれたという例もある。しかし、それが理論的根拠といたしまして中間線論あるいは自然延長論であるかどうかという点は、理論的根拠としてどこまで言われたかということでありますけれども、それによって中間線ではなくして引かれた例というふうに申し上げたのでございます。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、かつてなされたあの五十一年の五月七日の当委員会における政府の御見解というのは間違っているというふうに大臣はお考えなんですか。これは現にあの海峡について等距離線あるいは中間線を原則として決めている、こう御答弁なすっているのですよ。私は大臣からお伺いしているのです。本会議大臣答弁だったんですから、大臣が責任を持った御答弁をなすったのですからその大臣に申し上げたいと思います。おかしいですよ。大体御自分でこのことに対して責任をお持ちになる御答弁しかなさらないはずだと私は大臣に対しては思っています。  時間ですから、大臣御答弁のあの協定についての条文をひとつはっきり御提出願えませんか。一九七二年に署名されましたチモール沖の大陸棚に関する豪州とインドネシア間の協定、これをひとつ御提出をお願いします。
  84. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 五十一年の五月の答弁につきまして私まだ調べてなかったのでありますので、この点ももう一度調べます。またこの協定につきまして外務省に何かあると思いますから、あれば御提出いたします。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 終わりますが、ただ外務大臣、御答弁には責任をお持ちくださいね。そして本当に質問に答える御答弁をひとつお願いします。     〔山田(久)委員長代理退席、委員長着席〕
  86. 竹内黎一

    竹内委員長 中川嘉美君。
  87. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 日ソ漁業暫定協定が仮調印をされたわけでありますが、国会提出はいつごろになりますか。その見通しをまず伺いたいと思います。
  88. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 お答え申し上げます。  日ソ漁業協定は、昨日のモスクワ時間で午後の四時、日本時間では十時から行われました仮調印の式で仮調印が行われたわけでございます。そして、この仮調印が行われまして漁獲量クォータの交渉に入るということになりまして、クォータにつきまして先方の案が渡されたわけでございます。そしてこの署名の時期につきましては、モスクワからの連絡によりますと、二十六日の午後十時に署名をいたしたい。ということは、それまでに一切の漁獲量の交渉も終えて、二十六日の午後十時に署名をいたしたい。そういうことで、これはその後のイシコフ大臣のいろいろな日程等の都合もあってここに終局点が置かれたという知らせが来ております。そういたしますと、日本時間でありますと二十七日の朝の四時というのがこの署名の最終的な日限ではないかというふうに考えられるわけでございまして、この時点から国内手続を進めるということになろうと思います。したがいまして国会提出は、まだ閣議等で全然相談はいたしておりませんけれども、二十七日からそれほど時間がたたないうちにというふうに私どもは考えております。しかしまだ政府として決めたものではございません。
  89. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 この暫定協定の有効期間ですけれども、ことしの十二月三十一日まで、こういうことになっておりますけれども、今回の暫定協定交渉の経過を見てみますと、いわゆる本協定締結は一層渋滞するんじゃないだろうか、このように懸念されるわけです。  もしことしの十二月三十一日までに本協定締結されない場合、これはどうなるか。この暫定協定の効力を延長させるのか、あるいは無条約状態となってもやむを得ないと考えておられるのか、この点はいかがでしょうか。
  90. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 十二月三十一日までに長期協定ができなかった場合には、私どもとしてはそのような事態はないように極力努力をすべきことと思いますが、もし万一長期協定ができない場合にはこの協定がないということになり、したがいまして、ソ連国内法によれば日本の出漁は認めない、このようなことになるのではないかと思います。
  91. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そういう場合、これは暫定協定の効力を延長させるというお考えはありませんか。
  92. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そのときにならないとこれはわからないと思いますけれども、この協定自身はもう期限が切ってございますので、何らか別のそれについての合意が要るということになることは明らかだと思います。
  93. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いわゆる無条約状態になってしまうということのないような事前の配慮というものが当然必要じゃないだろうか、私はこのように思います。  暫定協定を見る限り、領土問題、これは非常にあいまいな形で終わったような感が強いわけで、日ソそれぞれが都合のいい解釈をしたんじゃないか。それで終わってしまったと言っても過言ではないと私は思います。政府は、この暫定協定日本にとって成功であったと考えておられるかどうか。たとえば第一条でソ連の二百海里、すなわち北方四島を含む線引きというものを認めている。それから一方この第八条では、漁業に限定されているとは決して書いていないわけでございます。ソ連側から見れば、第一条で北方四島を含めた線引き日本が認め、第八条においても北方四島はソ連領であって解決済みという立場を害しない、こういうことになるんではないかと思います。したがって、政府がどういうふうに説明をしようとも、日本北方四島のソ連線引きを認めた、すなわち北方領土後退ということにしかならないんではないかと私は思いますが、この点はいかがでしょうか。
  94. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ソ連最高会議幹部会令によりまして二百海里の漁業専管水域を施行した。この事実によりまして北方四島の問題が大変大きな問題になったことは、私は否定できないと思います。第一条におきまして、ソ連国内法による区域を示すということを主張をして、日本政府としてはその問題が領土の問題に影響をしては困るという立場を貫いてきたわけでありまして、その点につきましてはもうたびたびの会談を通じまして、この問題、いわゆる線引き領土とは全く関係ないことである、純粋に漁業だけの問題として対処をするこういうことが確認をされて条文化をされたわけでありますから、日本として領土につきまして後退をしたということは全くない。ただ現実問題として、今回日本入漁するためには、ソ連線引きをしたもの、この線引きを変更さすということは——これは現実にソ連北方四島につきまして施政を行っておる、この事実を認めただけであって、その施政というもの、日本が本来固有領土として四島を主張しておる、そういう事実の上に立ちまして、現実の管轄権といたしましてこれが北方水域におきましてもソ連線引きは一応認めざるを得ない、こういう立場であります。  ただ、いま御指摘のような領土の問題には、実質的に影響があるではないか、こういうことでありますが、その点につきましては、これからソ日協定におきまして、日本として日本の二百海里の範囲はこうである、こういう問題と絡めて考えまして、日本立場というものは後退をいたしていないということが申せると思うのでございます。
  95. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうしますと、ただいま言われたソ日協定においては、日本としては、北方四島を含めた日本漁業水域二百海里、この線引きソ連側が認めるということを絶対的な前提条件とするものと私は思いますが、外務大臣の御見解をもう一度確認をしておきたいと思います。
  96. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ソ日協定につきましては、これから六月の恐らく中旬ごろに折衝が始まると思います。その際に決められるべき事柄であろうと思います。その際に、ソ連が現実に施政を行っているという点、それから日本固有領土であるという主張、これらを考えてその間にいかなる措置を講ずるかということが、今回の交渉におきましては最終的にまだ決着を見ないままソ日協定の方に持ち越されたような形になってまいっておるところでございます。したがいまして、それらをあわせ考えていただかなければならないということでございます。
  97. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうしますと、この日本漁業水域二百海里の線引きソ連が認めるということが絶対的な前提条件となるかならないか、この辺がまだもう一ついまの御答弁では明確でないわけです。この間三十日に、内閣委員会におけるわが党の新井委員質問に対して水産庁の次長の御答弁によりますと、絶対的な前提条件であるという旨の御答弁があったわけですが、いまの大臣の御答弁よりは非常に前向きなものを感じるわけです。まだそこまですっきりとした御答弁はいま引き出せなかった感じがしますが、その辺の関係はいかがですか。
  98. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本政府といたしまして、先般御承認をいただきました暫定措置法、二百海里の漁業水域日本は設定する、この点につきましては当方からもよく先方に説明してあるわけであります。そして適用を外す水域政令で指定をする水域が外れるんだ、こういう説明もよくしてあるわけであります。したがって、この点につきまして後のソ日協定とのつなぎをどうするかという点につきましては、鈴木農林大臣がお帰りになりますればきわめて明らかになると思うのでございます。しかし、最終的な話し合いが果たしてどのようなことになっているか、若干まだはっきりいたさない面もございます。しかし、わが日本政府といたしましては、それはもうたびたび申し上げておりますように、適用水域北方四島を当然含んだところの適用水域、これを主張をしておることは確かでありますし、その方針を貫く考え方でございます。
  99. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 今回のこの交渉の経緯を見ましても、また、日ソ漁業協定交渉ということを考えても、領土問題は避けて通ることのできない最大の問題であることはもう言うまでもないわけで、しかも暫定協定ではわが国の従来の主張がやはり後退したのではないか、こういう疑問を払拭することができないわけであります。したがって、外務大臣としてことしじゅうに平和条約交渉のための訪ソを予定しておられる、このことを明らかにされたわけですが、私は、もうそのような悠長なことは言っている段階ではないのじゃないか、このようにも思うわけです。したがって外務大臣は急遽訪ソをして領土問題について交渉を行うべきではないか、ソ連側にその旨を直ちに申し入れるお考えはないかどうか、この点についての御答弁をいただきたいと思います。
  100. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 領土の問題はこれは両国にとりましても最大の問題でございますから、領土問題を未解決な問題といたしまして、平和条約交渉を進めるに当たりましても、これは慎重な準備をいたして臨むべきことであろうと思います。その中にはやはり日本国内の強い世論のバックというものがなければならないことは当然でございますし、そういう意味で十分なる準備を整えまして、しかも時期を失することなく訪ソをいたしたい、このように考えておるところでございます。
  101. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 十分なる準備に果たしてどの程度かかりますか私はよくわかりませんけれども、平和条約交渉のための訪ソということについて発言をなさった。そうしますと、ことしじゅうということですが、大体いつごろになるのか、この点の大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  102. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 まだ総理等とも御相談を申し上げておりません。また、今回非常に御尽力をされました鈴木農林大臣ともよく御相談もしなければならないと思っておりますが、私のいままで考えておりますことは、長期取り決めの交渉がございますし、この長期協定というのはこれから先々、将来長い漁業関係を決める問題でございますから、その長期協定交渉に入る前には私自身努力をいたしたい、こう思っておるのでございます。
  103. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 暫定協定の第六条後段のところに「これらの規定又は規則に従わない日本国の国民及び漁船は、ソヴィエト社会主義共和国連邦の法律に従い責任を負う。」こういうふうになっておりまして、次に第七条の三項のところには、一番終わりのところですが、「禽(だ)捕された漁船及びその乗組員は、適当な担保又はその他の保証が提供された後に遅滞なく釈放される。」こういうようになっておりまして、六条の方は裁判を行うということを意味しているのだろうと思いますが、七条の三項は、適当な担保またはその他の保証が提供されれば遅滞なく釈放されるということになっておるのですが、この辺の関係は一体どんなものか、これを説明していただきたいと思います。
  104. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 通常の場合ですと、裁判の結果で罰金であるとかあるいは漁船、漁獲物の没収等が行われるわけでございますけれども、裁判の判決が出ます前に、あらかじめいわゆる保釈金を積むことによって漁船員等が釈放されるということを一応明定しておるというふうに理解しております。
  105. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 北方領土が——いまの御答弁、非常に簡単にいただいた形ですが、私はこの関係についてはまだ疑問が残されているような気がするわけですが、この北方領土そのものが、そうしますと、領土問題として法的にもう一つだけお聞きしておきますが、時効によってソ連領となってしまうことがないように、日本はいかなる方法をとろうとされるか、少なくとも時効にならない手当てということをしておかなければならないのじゃないか、このように思いますが、この点はいかがでしょうか。
  106. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  国際法におきまして、時効によって領土の取得が行われるという考え方が、先生おっしゃられるとおりないわけではなかろうと思いますが、本件北方領土の問題につきましては、御承知のように日本政府は、これはわが国固有領土であるということで、あらゆる機会をつかまえてソ連に対してその主張を行っているわけでございまして、現に今度の協定におきましても、第八条において領土問題に対するわが国立場を明確に留保しておるわけでございまして、そのような事態からかんがみまして、時効が進行するというような解釈が生ずる余地は万々にもないというふうに確信いたしております。
  107. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 日ソ関係でもう一問だけ伺いますが、この協定を見てみますと、結局ソ連が、日本の領海内での操業要求というものができる可能性が残されているような気がするわけです。日本側にこういったことを強く要求してくるんじゃないだろうか、このように思いますが、大臣の御見解を承りたい。
  108. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 第二条の規定の仕方によりまして、伝統的な権利というような表現があります。しかし、これは経過から申しましても、領海が十二海里になった場合に領海内に入るというそういう権利を言っているわけでは毛頭ないということは、いままでの協議を通じまして明らかなところでございますし、第二条の第二項にそのような趣旨が書いてありましたのを先方は落としたという経過からも明らかでございます。しかし、この問題はソ日協定によりまして明らかになるという問題でございますので、わが国は領海内の操業は認めないということを従来から主張し、またソ日協定におきましてもその立場を崩さない、こういうことでまいりますので、その御心配はないものというふうに考えております。
  109. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 まあ時間の関係で、一つ一つの質問に対する御答弁、そしてそれに対して一つ一つとも十分にさらにお聞きしていく余裕もなかったわけですけれども、それに対する政府の答弁、非常に希望的な観測に満ちたといいますか、楽観的とまでは言わないまでも、私は、非常に日本独自の解釈といいますか、そのような気がしてならないわけでございますが、やはりこの委員会の場で答弁をなさったそれぞれの項目に対しての姿勢というもの、やはりソ連との交渉においてあくまでも、この場で発言されたこの内容を踏まえた前向きな交渉をひとつ今後とも続けていただきたい。向こうと交渉するときには何となく弱腰になってしまうということがあっては断じてならないと私は思いますので、この場で発言なさったことについて、これを踏まえた積極的な外交を貫いていただきたい、このように思います。  領有ということに関連をして、きょうは南極の領有について若干伺いたい、このように私は思いますが、まず最初に、現在南極において基地を設定している国はどことどこか、これらの国々の名前をまず挙げていただきたい。なお、同地域、南極地域における各国の活動状況、これは簡単で結構ですから、どこの国がどういうことを大体やっているという、これらについて御説明をいただきたいと思います。
  110. 大川美雄

    ○大川政府委員 南極地域につきましては、いまから十六年前にできました南極条約というのがございまして、それの原締約国が、日本を含めて十二カ国ございます。その国名を申し上げますと、アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、チリ、フランス、日本、 ニュージーランド、ノルウェー、南アフリカ共和国、ソビエト連邦、イギリス及びアメリカでございます。  そのほかに、その後に締約国になりました国があと七つ、ポーランド、千エコスロバキア、デンマーク、オランダ、ルーマニア、ドイツ民主共和国、ブラジル、この七カ国で、合計十九カ国でございます。  その条約の目的といたしますところは、南極地域の軍事利用の禁止、それから南極地域における科学的調査の自由を保障し、それに関する国際的な協力を促進するということ。それから第三番目に南極地域における領土主権あるいは領土に関する請求権等の法的な現状を凍結するというようなことでございます。  どこの国が基地を維持し、そのほかにどういう活動をしておりますかということにつきましては、ただいま手元に資料がございませんけれども、少なくとも南極における科学的な調査、気象状況であるとか資源の調査とかいった問題につきまして米、ソ、イギリス、フランス、日本等の国々が基地を設けまして活動をしていることは事実でございます。
  111. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いまの南極条約の御答弁の中にも出てきておりますが、第四条の二項ですね、「この条約の有効期間中に行なわれた行為又は活動は、南極地域における領土についての請求権を主張し、支持し、若しくは否認するための基礎をなし、又は南極地域における主権を設定するものではない。南極地域における領土についての新たな請求権又は既存の請求権の拡大は、この条約の有効期間中は、主張してはならない。」ということが規定されておりますが、この条約が成立した一九五九年当時と現在とでは事情が大きく変化してきているのではないか、海洋法の理念がここ数年の間大きく変化したと同じように、南極の地位も経済的、軍事的理由から大きく変更される可能性があり得るのではないか、このように思います。こういった可能性に対する政府見解、南極に対する国際的動向の見通しといいますか、こういったものはどんなものか御意見を伺いたいと思います。
  112. 大川美雄

    ○大川政府委員 条約が発効いたしましてから十六年たっておりますので、いろいろ新しい事態が発生していることは事実でございます。特に南極における鉱物資源に対する国際的な関心が最近とみに高まっております。  鉱物資源についての具体的な開発活動を実施していいかどうかということにつきましては、南極条約では明確な規定はございませんで、加盟国の間でも直ちにそれをやってもいいという意見の国々と、しばらく科学的な調査を継続して、それまでの間は具体的な開発は実施しない方がいいという立場をとっている国がございまして、南極条約締結国全体としての具体的な、はっきりしたこれに対する立場はまだできておらないような状況でございます。  このほかに、もちろん環境保護的な立場から、南極の環境を開発の過程でいたずらに傷めたりすることがないようにというような配慮が締約国の間には働いております。
  113. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 南極において資源の開発ということは認められているかどうかという問題ですが、現在の南極条約は科学的な調査に限られている。したがって、特定国による開発、占有を意味する開発といいますか、こういったものは認められていないと私は思いますが、この点を確認をしておきたいと思います。
  114. 大川美雄

    ○大川政府委員 私どももさように理解しております。
  115. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 先ほど来いろいろ御質問をしておりますが、ここで一点だけ漁業に関連して伺っておきたいと思います。  今日、日本が世界の漁場から締め出されてしまったという非常に強い印象があるわけですが、南極のオキアミに関心を寄せているわけですけれども、政府は、このオキアミ漁獲について何らかの規制をする必要があるのじゃないか、いわゆるオキアミといっても無尽蔵であるわけではないわけで、いまのうちに何らかの自発的な抑制とかあるいは国際的な規制を提案しなければならないんじゃないか、このように思います。また乱獲による南極地域の生態的な悪影響、鯨なんかは非常にオキアミが好物のように聞いておりますが、こういった生態的な悪影響が心配される、そういった意味からもこの国際的な規制といいますか、こういうことを日本が行っていく必要があるんじゃないか、このように思いますが、ちょっと漁業問題を一点だけここにはさましていただきます。この点はいかがでしょうか。
  116. 大川美雄

    ○大川政府委員 南極地域における水産資源として、最近オキアミというのがこれまた非常に大きな関心を寄せられている問題でございます。特に将来の動物性たん白源として関心が持たれるわけでございますが、たとえばこれの分布状況でありますとか、その他生態調査は現在国連の食糧農業機関、それから南極条約のもとにおける締約国の科学調査というのが行われておりまして、そのほかにソ連でありますとかノルウェー、チリー、西独、日本等も若干試験的な漁獲を行っておると承知しております。
  117. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 領土に戻りまして伺いますが、サンフランシスコ平和条約の第二条(e)項ですけれども、「日本国は、日本国民の活動に由来するか又は他に由来するかを問わず、南極地域のいずれの部分に対する権利若しくは権原又はいずれの部分に関する利益についても、すべての請求権を放棄する。」このように規定されておりますが、このことは一九一二年白瀬中尉の南極探険というのがありましたけれども、この探険による領有権の権原、先占の法理とか発見による領有の法理とか、こういったものを放棄することであると私は解しますけれども、この点はいかがでしょう。
  118. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 仰せのとおり、明治四十五年一月に白瀬中尉が行いました探険によりまして生ずるところのわが国の権利の保留ということも、この条項によりまして放棄されたということになるわけでございます。
  119. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 この件についてもという表現がいまあったわけですが、平和条約の第二条(e)項の規定は、要するに平和条約締結までの、この「までの」というところが大事なところですが、その締結までの日本国の南極における領有権に対する権利権原を放棄すると解すべきですかどうですか、この点に対する政府見解をいま一度確認しておきたいと思います。
  120. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生御指摘のとおり、についてもと私が申し上げましたのは、私、それ以外にいかなる主張平和条約発効前にあったかを実は明確につかんでおりませんでしたので、そういう意味合いで申し上げたわけでございますが、いずれにせよ、先生御質問のとおり平和条約の発効史でに生じて持っていたことのあるべき請求権はすべて放棄したということになると思います。
  121. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうでないと、平和条約締結までの日本国の南極における領有権に対する権利権原の放棄ということでなければ、将来の領有あるいは開発等をめぐる各国の主張に対抗することができなくなってしまう、こういうことを私は非常に懸念するわけですが、あくまでも平和条約締結以降ばそういったことと関係がない。すなわち、領有ないしは開発等をめぐる各国との論議といいますか、わが国としても当然これは主張できる、対抗できる、このように考えてもよろしいわけですね。この点を確認をしておきたいと思います。
  122. 大川美雄

    ○大川政府委員 先ほど先生も御引用になりました南極条約四条二項の規定で「南極地域における領土についての新たな請求権又は既存の請求権の拡大は、この条約の有効期間中は、主張してはならない。」ということになっておりまして、日本もこの条約の締約国としてこの規定に縛られていることになるわけでございます。したがいまして、将来の問題として日本が南極地域において何がしかの領有権を主張できるとすれば、それはこの条約の有効期間終了後、言いかえれば条約がなくなった時点ということが一つでございましょうし、その他の場合としては、締約国の全会一致による条約改正、これは条約の十二条に規定がございますけれども、規定の改正が実現した場合に、たとえば締約国で分割して領有するというような新しい体制になった場合には、その一環として日本主張できるかと思いますけれども、ただ、同時にこの条約の性格として、これはいわば半永久的な性格の条約でございますので、現実の問題として果たしてそういうような事態が出てまいるかどうか、これは別問題かと思います。理論的には可能だと思います。
  123. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 資源の面で、すでに石油とかあるいは鉱物等があることは明らかになっているというふうに聞いておりますし、将来やはり領有権というものを争うようなことが絶対にないということは言えない、そういうことになると思います。そういった意味で、この条約が半永久的というふうなお考えもあろうかと思いますけれども、そういうときのためにも、十分にひとつこういった資源が非常に乏しいというわが国立場も踏まえて、大いに領有権あるいは開発等々を含めたわが国主張ということに関心を抱いていただきたい、大いに研究もしておいていただきたい、このように私は思うわけです。  きょうは時間がもう参ったようですので、一応この辺で私の質問を終わりますけれども、先ほどの日ソ漁業問題につきましては、そういったことで前半ちょっと時間がなかったために、後ほどまた改めてさらに御質問をさせていただきたい、このように思います。  以上で終わります。
  124. 竹内黎一

  125. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 初めに、外務大臣に一点だけ日ソ漁業交渉につきまして御質問をさせていただきたいと思います。  外務大臣、率直に、いままでの話し合いとそれからまた暫定協定の案文をお読みになりまして、領土問題は本当に日本主張が貫かれたというふうにお考えになりますか。実を言いますと、たとえば第一条でソ連側の主張日本側がのんだという形になっており、第二条において大変不明確であり、かろうじて第八条のところでいろいろな解釈ができるような玉虫色というような形になっている。全体として本当に日本主張というものが盛り込まれたのかということに大変に不安感がありますし、疑義が出てまいります。そういう点、私は外務大臣の率直なお感じをひとつ聞かしていただきたいと思うのです。  関連しまして、もちろんこの問題は詰めた審議をしていかないといけないでしょうけれども、私は前例があるのかどうか知りませんが、この協定というものに関連して、衆参両院で国会の決議、こういったものをやはり発表するべきではあるまいか、そして承認するというような形にでも持っていかないと、国民の中に大変疑義が残っているということを強く感じますので、これは細かな条文解釈ということよりも、外務大臣としてどのように今後明確化させたらいいのかという点につきましてもひとつ御意向を聞かしていただきたいと思うのです。その点だけを私は日ソ関係に関連いたしましてお聞かせさせていただきたいと思いますので、お願いいたします。
  126. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の交渉は、ソ連国内法、しかも北方四島周辺水域につきましてソ連国内法をもちまして線引きを行った、この事実に対処をいたしまして、日本政府といたしましては、最終的に——線引きは否定をするという方向では交渉はできないということは当初から明らかであったところでございます。それに対しまして日本といたしましてどのような対応策を講ずるか、その点につきまして、国会で本当にわずかな日数の中で二百海里の暫定措置法を成立させていただいた、このバックのもとに、今回日本政府といたしまして、ソ連日本海域入漁をする、こういう対等の立場がとれたということ、このことによりまして、日本政府といたしましても、仮に今回のソ連国内法制として引きましたその二百海里というものの線引きにつきまして一応漁業上におきましてはこれを受け入れざるを得ないが、領土問題には全く影響を及ぼさない、また、ソ連日本入漁するソ日協定におきまして、日本といたしましてはこの点につきまして、日本北方四島に対します。固有領土である、このような考え方を示す、そういうことが可能になったわけでありまして、したがいまして、今回の漁業交渉は、日本入漁をする問題につきましては大変日本としてはつらい立場に立たされたわけでありますが、しかし、領土には全く影響がないということをソ連政府をして明らかに確認をさせたということによりまして解決を見たということで、領土の問題につきましては、前進もできなかったと言えばそうでありますが、しかし、後退は絶対にしないで済んだという点につきまして日本としては評価をすべきではないか、このように考えておるところでございます。
  127. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 外務大臣、いま私、提案をいたしましたけれども、やっぱり国会の決議をこれにつけよう、あるいは関連して発表しようという点についてはいかがでございましょう。
  128. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この点につきまして鈴木大臣がお帰りになりましていろいろ御相談があろうと思います。今回の交渉に臨みまして、国会の御意思というもの、また超党派の議員団が訪ソをされた、このような全国民的なバックのもとに交渉が行われ、そして解決を見た、このように思います。また、今後の問題につきまして、まだソ日協定の問題があり、また長期協定の問題もある。また日本としても、未解決の問題すなわち領土問題である、この領土問題の解決を図って平和条約を取り結ぶ、こういうことの必要に迫られてきているわけでありますから、それらの問題を全部考えまして政府といたしましても慎重に十分検討しなければならない。それらの問題につきましてもやはり国民的なバックが必要でありますので、国会の御決議自体はそれをどうするかは国会でお決めいただくことでありますが、政府としては懸命にそれらのことを検討し、また各党の御理解もいただくべきであるというふうに考えております。
  129. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それでは次に、在韓米軍の撤退問題それとアジア全域の安全保障の問題、こういったものの関連につきましてお尋ねをしたいと思います。  昨日から在韓米軍の撤退に関する米韓両国の協議、これが進められているわけでありますが、日本側の方でいま予想しておられる、どの程度の削減の規模あるいはまたその時期、こういったことについてのお考えをひとつ知らせていただきたいと思います。
  130. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この撤退がいかなるスピードで、いかなる態様で行われるかということにつきまして、まだ何ら正式な提案を受けておらない段階でございます。したがいまして、いまコメントできる立場にないのでございますが、一説には、四年とか五年とかいうようなことが言われておるところでございます。そのようなことが一応いろいろなところで何らか話があるのではないかという気がいたしますけれども、この点も明らかではございません。したがいまして、いかにこれに対して日本は対処し、検討すべきか、これにつきましては関係当局の間でいろいろな検討は進められていると思いますけれども、まだ政府としてこれらにつきましてどのようなことを準備すべきか、それらの点につきましても、まだ何ら決めておらないところでございます。ブラウン統幕議長またハビブ国務次官が来日されますので、この会談が済みますと、何らかのあるいはもう少しはっきりしたことが出てまいるかもしれない、現在のところはまだ何も具体的なたたき台すらないというのが現状でございます。
  131. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いまおっしゃったハビブ次官あるいはブラウン統合参謀本部議長、この来日、そして日本政府当局との話し合い、協議という、これは日程は決まっておりますか。
  132. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 恐らく二十七日に東京に立ち寄られる、こう伺っておりますが、まだ時間等は決めておらないのでございます。
  133. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そうすると、もう数日後でございますので、当然賢明な外務省当局、日本政府といたしましても、それだけの情報はキャッチしておられるでしょう。どの程度の規模で、どのようなスピードで、どのような影響がまた起こってくるのかという、在韓米軍の撤退問題についての対応策は準備しておられなければうそだと思うのです。特に、先般からもお話が出ておりますように、ブレジンスキー大統領補佐官、これも日米協議というようなことをほのめかしておりますし、東北アジア全域における安全保障の新しい取り決めを目指しているというような点、問題を提起しておりますので、当然これはやはり対応しておかなければならぬところだろうと思うのです。そこら辺について、ハビブ次官が来日してそして協議をする場合に、どのような態度で臨まれるのか。単にアメリカ側の意向あるいは米韓の間の取り決められたこと、これを聞かしてもらうだけの協議でございましょうか。そこら辺ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  134. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の会談で、私どものこれは想定でございますからわかりませんが、しかし、今回の会談ですべて事が決まってしまうというようなことでは当然ないだろうと思いまして、恐らく韓国との間にいろんな理解を深めるということが主体ではなかろうかという気がいたします。とにかく、第一回の会合でございますから、これからは恐らく何回かの会合が必要になるだろう、それだけの大きな問題であろう、こう考えておりますので、今回立ち寄られます場合でも、この撤退問題に対します韓国側の考え方、アメリカ側の考え方というようなものが、ややはっきりしてくるような段階ではなかろうか、このように想定はいたしておりますけれども、日本としてこれに対しましていかなる対処をするかということにつきましては、今後の検討課題ということでございます。
  135. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私、関連いたしまして先ほどのブレジンスキー補佐官のUSニューズ・アンド・ワールド・レポート、これに載った会見記事、私は大変重大な問題を提起していると思いますので、これは米韓、日米関係、これを含む新たな東北アジアの安全保障という問題を提起しているならば、少なくとも、それを取り寄せて読んだという程度の御答弁ではなくて、本当を言うと一体何を意味しているのか、私はアメリカ側の意向も確認をとっておくことが必要であろうと思うのです。その点、そのような方針を実行される用意はございますか。
  136. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 ブレジンスキー大統領補佐官のこのUSニューズ・アンド・ワールド・レポートの記事につきましては、先ほども他の委員の御質問がございまして、御答弁申し上げましたわけでございますが、この記事が新しい安保条約をつくるとか、あるいは安保条約を改定するとか、そういうことまで考えているものではないというふうにわれわれとしては受けとめております。しかしながら、在韓米地上軍の撤退ということが現実の日程に上ってまいりますと、その関連においてわれわれとしてもいろいろ検討しなければならないというふうには思います。  そこで、この点は今度ブラウン統合参謀本部議長とハビブ国務次官が日本に参りましたときに、まずいろいろ先方から考え方が聞けるわけでございますから、それを手がかりとして日本側としてもいろいろな勉強はしていきたいと思っております。ただいずれにいたしましても、このブレジンスキーの発言が新しい協定をつくるとか、現行の協定を改定するとかいうふうなことを考えているのではないというふうにわれわれとしては受けとめております。
  137. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 さらに私はお聞かせしていただきたいと思いますのは、アメリカ側のこのような在韓米地上軍の撤退というものは、朝鮮半島における南北対話の促進あるいは民族統一への呼び水となること、これを期待しているというような点も節々に見られるのですけれども、そうしますと、わが国の対朝鮮政策、これにも重大な影響が出てまいりますが、どのように政府としてその影響及びアメリカ側の対朝鮮政策、こういったものを見ておられますでしょうか。外務大臣、お願いいたします。
  138. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 アメリカの国務省筋では、この新たな北鮮に対する政策というものはまだ何ら語っておらないのでございます。そして北鮮に対していかなる措置をとるかという点につきまして、アメリカ側はやはり韓国とよく相談をしてやるという態度をとっておるところでございます。したがいまして、急激な変化はないだろうというふうに思われるところでございます。しかし、従来から私ども情報として得ております北鮮におきます——やはり北鮮側としては当面の相対する地上軍は米軍でございますから、その点におきましては、先般の板門店事件のような事件があったわけでありますから、そういう問題を考えますと、この問題が南北の融和に何らかの働きを持つ可能性があるということは私どもは十分考えられるところでありますし、日本立場からいたしまして、南北間の緊張が緩和されて、そして南北間の交流というものが何らかもう一度開始されないかという点に期待は持つものでありますけれども、現在行われます撤退問題というものは軍事的な観点から行われるということでありますので、この撤退問題と違った次元の問題といたしまして、やはり南北間の緊張緩和をいかに促進させるかという問題が大事な問題としてあると考えておるところでございます。
  139. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そういう点で、一面においては南北融和というようなこともあるいは可能性を期待することができるかもわからない。と同時に、純粋に軍事的な観点から米側が駐留軍を撤退させる、いまお答えございましたが、その中にたとえばホルブルック次官補の最近の発言で、戦術核兵器の撤去についても検討しているというようなこともございました。  私、それについてお尋ねしたいのですけれども、在韓米軍を削減する、さらに戦術的核兵器も撤去することを検討する、これは短期、長期、いろいろな時期的な問題はございましょう。そうした場合に、それらは一体どこに持っていかれるわけでございましょうか。どういうアメリカ側の戦略的な変化が起こってくるわけでございましょうか。そこら辺についてお聞かせをいただきたいと思います。
  140. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 在韓米地上軍が撤退した場合に、その部隊をどこに持っていくかということについて米国政府は正式に言明したことはございません。ただ、御承知かと思いますが、本年の一月にモンデール副大統領が日本に参りましたときに、在韓米地上軍を撤退した場合にこれを日本に、つまり在日米軍基地に移すという計画はないということを言明しておったわけでございます。それ以上のことは、われわれとしては承知しておりません。  次に、韓国にあると言われております戦術核兵器の問題でございますが、この問題については仰せのとおり、ホルブルック東アジア担当次官補がその削減を検討しておるというふうなことを言ったというニュースは聞いておりますが、われわれはこの問題についてアメリカ側から正式には何も聞いておりません。また、従来アメリカ側の方針といたしまして、核兵器の所在に関する情報は最小限度しか出さないということになっております。  韓国については、戦術核兵器があるということは、確かにシュレジンジャー国防長官も言明したわけでございますが、それ以上のこと、核兵器が何発どこに置いてあるかというようなことは一切言っておらないわけでございまして、また、つまりどういう今後仮にそれが削減されることになったとしても、その問題に関する発表は最小限度にとどめられるのではなかろうかというふうに推測されるわけでございまして、この問題に関して日本政府として情報を集めるということはきわめて困難なことでございます。
  141. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私、いまの御発言を聞いておりまして、もうちょっといろいろな点を分析していただき、そしてまた予想も立てていただき、それが日本としてプラスかマイナスか、そういうような点をもう少し私は出していただきたいと思って御質問をしたわけでございます。  たとえば昭和五十年の五月二十日でございます。アメリカの上院の軍事委員会は、アジアにおける米国の防衛体制及び基地配置に対する長期的な見地からの検討を国防総省に勧告をいたしております。そのときに、韓国からの米地上軍の撤退問題については無計画にやってはならぬ、それを行うときには韓国がみずからの力で防衛できることがはっきりする、これが前提であるということを言っております。そうしますと、今回ハビブ次官が韓国に到着して記者会見をしている、そのときの談話の中にはっきり出てきておりますのは、韓国が防衛能力を非常に強化した、これを高く評価している。そして、次の段階で韓国からの米軍の撤退あるいは削減を行うというような立場が表明されている。  そうしますと、いまアメリカ側の国防総省に上院軍事委員会が勧告した問題と符牒がぴったりと合う。さらに、アメリカ側の軍事戦略としてマリアナ群島、そこにおける特にテニアンを中心にした巨大な軍事基地化が進行している、こういった問題と関連して米国の韓国からの地上軍撤退という問題があるのではあるまいか、私はそういうふうにも理解するのですけれども、いかがでございましょう。そこら辺の関連性についてお尋ねをしたいと思います。
  142. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 アメリカの議会におきましても、在韓米地上軍を撤退すべしという議論は相当強いわけでございます。その際に、いま渡辺委員からお話ありましたように、それを行うに当たっては非常に注意深く、かつ、組織的な方法でやるべきだという意見があることも仰せのとおりでございます。そういうふうな議会の空気もありまして、カーター大統領としては大統領選挙中にああいう在韓米地上軍撤退の公約をいたしたものであろうと想像はいたしております。したがいまして、仰せのとおりこれは行政府のみならず、議会の方としてもこの撤退の問題を計画的に、組織的にやっていこうとしておることは確かに認められる次第でございます。  しかし、その後の撤退したものをどこへ持っていくかということにつきましては、先ほども申し上げましたように、まだ正式にわれわれとしては何も聞いておらないし、アメリカ政府としても言明しておらない次第でございます。  それから、現在、北マリアナのお話がございましたが、北マリアナにつきましては、北マリアナ連邦と米国政府との間で、コモンウエルスと称しておりますが、一種の連邦を結成するという協定が合意を見ております。まだこれは発効するに至っておりません。といいますのは、北マリアナは国連の信託統治下にあるミクロネシアの一部をなす問題でございますので、最終的には国連と話し合う必要があるわけでございます。  具体的にテニアンその他においてどういうことか行われているかということについては、われわれとしても詳細はまだ承知しておらない次第でございます。
  143. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私は、いま質問いたしました点でもう一つの確認をしたいと思いますけれども、マリアナ群島の中のテニアンの場合には、全島の三分の二がすでに買収が行われ、そしてそこが軍事基地化として大きく進展している、こういうことはつとに報道されていたところでございます。特にまた、さきの米上院の軍事委員会の方で米国の防衛体制の再検討を勧告いたしましたときに、米国の防衛線はマリアナ諸島まで下げる、こういう戦略構想がニクソン・ドクトリン以降の一連の流れとして打ち出されてきている。私はその中でミクロネシア諸島の問題についてお尋ねをしたいと思うのですが、いま御答弁がありました中にも触れられました、北マリアナ連邦と米国が取り決めを行ってプエルトリコと同格なステータスを与えようとしている、あるいはまたトラック、ポナペ、マーシャル群島においては米国のいわば緩い自治領として自由連合型の形のものにしようとしている。これはヤップ島も含めております。そういった動きと、それからアメリカの戦略構想の具体化というものとの関連性、これを私はお尋ねしたいわけであります。その点先ほどの御答弁の中で落ちておりましたので、もう一度お聞かせをいただきたいと思います。  すでに御存じのように、マーシャル群島にはビキニがあります。原爆、水爆の実験基地でございます。かつまたクェゼリン環礁にはミサイルの試射場がございます。テニアンは巨大な軍事基地化が進んでいる。グアム島においてもしかり。こういうことになりますと、アメリカの大きなやはり西太平洋、つまり日米共同声明の中でうたわれたその海域において新しい安全保障、東北アジアを含むアジア全域に対する安全保障の体制が着々と進行しつつあるのではあるまいか、その一環としての米軍の韓国からの撤退という問題が出てきたのではあるまいか、こういうふうに思うのですが、いかがでございましょう。
  144. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 ミクロネシアの帰属の問題に関してもう一度改めて御説明申し上げたいと思いますが、ミクロネシアのうちでこのマリアナ諸島地区につきましては、一九八一年をめどにアメリカと連邦——コモンウェルスと称しておりますが、連邦を結成することになっておりまして、この点については米国政府とマリアナ住民との間で合意に達しておるわけでございます。その際できますものは、正式には北マリアナ連邦と称せられることになっております。ただ、これは先ほども申し上げましたように、最終的には国連の信託統治理事会との関係もございますので、その方面の手続を了した後になるものと承知しております。  ミクロネシアのその他の地区につきましては、アメリカとの間でいわゆる自由連合、フリーアソシエーションという形態をめどに交渉が重ねられておりまして、仮調印も終わったということでございますけれども、まだ本調印にまで至っておりませんで、実はごく最近、この五月十八日からハワイにおきまして、米国政府とこれらの地区の住民との間でこの問題につき協議が行われておる次第でございます。  それから、アメリカは一種の防衛線を下げてミクロネシアを中心に新しい防衛線を築こうとしておるのではないかというふうなお話でございますか、この点は種々報道はございますけれども、アメリカ政府の正式の考え方としてそういう計画を聞いたことはない次第でございます。テニアンその他においても何か工事が進んでおるという話も一、二ありますけれども、実際問題としてはいろいろな計画はあるようでございます。また、この北マリアナ連邦の協定が発効いたしますれば、アメリカは北マリアナ、テニアンの一部の土地を使用する権限を取得するようでございまして、そうなればそういう一種の基地化の工事が始まるかと思いますが、いまのところはまだ協定自体が最終的な段階に達しておりませんので、具体的な動きについてはわれわれとしては承知しておらない次第でございます。
  145. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 時間がありませんから、二つ質問を関連してさせてもらいます。  第一点、これはアメリカがどのような戦略構想を持つかにかかわらず、国連の信託統治地域内におけるたとえばテニアン島、そういうところで軍事基地化を進めることは許されるのでしょうかどうでしょうか。そしてまた、日本政府としてはこの問題について何らかの発言をしておられましたか、いかがでしょうか。  第二点、ミクロネシアの数百とも数千とも言われる島々がある。これらがそのような形で米国領土に帰属するというような動き、数日前ワシントンポストが米国側の意向かそのようなものであるということをはっきり報道しておりました。こういったことに対して、国連の信託統治委員会あるいは国連の安保理事会、こういうところで問題が取り上げられるでありましょうけれども、日本国としてはどのような意思表示を今日までされてまいりましたか、そこら辺をお聞かせいただきますようお願いをいたします。
  146. 大川美雄

    ○大川政府委員 国連の信託統治理事会では、最近この北マリアナ連邦の設立という問題、それからカロリン、マーシャル両群島の将来の政治的地位について、アメリカとミクロネシア住民代表との間の話し合いで集中的に議論が進められております。この国連信託統治制度のもとで、国連憲章の第八十二条に「信託統治地域の一部又は全部を含む一又は二以上の戦略地区を指定することができる。」という規定がございます。ミクロネシアはこの憲章第八十二条に基、つく戦略地区の指定を受けて、憲章第八十三条の規定に基づき安全保障理事会の一種の監督のような形で存続しております。第一義的な責任は信託統治理事会でございますけれども、背後に安保理事会が控えておるということでございます。それぞれの信託統治地域の内容については、設けられた協定に規定されているところでございます。日本はこの信託統治理事会の構成国ではございませんので、直接信託統治理事会に出て発言をするという機会はございません。ただし、この地域との戦前からの日本関係からいたしまして、日本としては信託統治理事会等におけるこの地域を対象とした論議には関心を持って、いままでオブザーバーのような形でその議論を聞いてまいっております。昨年信託統治理事会の第四十三会期がございましたけれども、その際に、北マリアナ連邦設立に関する先ほどの協定は、北マリアナ地、区住民の自由かつ公正な民族自決権の行使によって承認されたんだという趣旨の結論を含みます信託統治理事会から安保理事会への報告書が採択されておりますが、今後北マリアナ連邦協定を初め、カロリン、マーシャル群島の政治的将来をめぐり、マーシャル、それからパラオの分離独立、あるいは米国との個別交渉等の動きが当然信託統治理事会で行われることと予想されますので、次の会期が六月六日から始まる予定でございますけれども、わが国としてもその理事会における動きに注目してまいりたいと考えております。
  147. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 時間がないので本当に手短に質問をさせていただきますが、その場合に、ただ注目していくということでは余りにも自主性がないと思います。私は、反対なのか賛成なのか、ここら辺やはりはっきりしておかないといけないと思います。特に、これが日本の安全保障の問題にも関連が出てくる、あるいはまた二百海里時代におけるこのミクロネシア諸島の非常な重要性という問題も私はあると思います。特にまた、日米共同声明の中で前にも論議をいたしましたけれども、そのときは大変あいまいな、これは文章のあやみたいなものであるというような御答弁もございましたけれども、最近の動きを見てまいりますと、またミクロネシアの米国領有化というような問題を見てまいりますと、共同声明の中でうたわれた西太平洋の平和と安全の問題というものが再度軍事的な意味合いを持ってクローズアップしてくるのではあるまいか、それだけに日本政府としての明確な態度を明らかにしておかなければいけないというような点を感じます。その点について外務大臣からの御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  148. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 これは戦争前も戦時中も日本の委任統治地域でございますから、日本としては大変重大な関心がある地域でございます。しかし、この地域の将来につきましては、いま軍事的な面の御主張があったわけでございます。この点につきましては、私どもも重大な関心を持って見ていくべきであろうと思いますが、私どもといたしまして、ミクロネシアの方々、この方々がやはり政治的に独立をしよう、こういった動きに対しましては私どもも心から支援を送るべきであろうと思います。しかし、いままでの日本のミクロネシア全般に対します関係というものは戦後きわめて薄かったと言わざるを得ないと思います。これからは独立してあるいは政治的な発言権を持つような方向に進むことにつきまして支援をいたしたいと思いますが、ただいま直接のお尋ねは、その軍事基地化につきましてどのように考えるか、こういうお話でございますが、これはエクソン・ドクトリンからのアメリカといたしまして大きな方向が示されているというように思いますし、またアメリカ自体のアジア各方面に対します防衛責任というものもあるわけでありますので、それらを考え合わせてやはり日本としても考えていかなければならない、このように思うわけでございまして、今後とも私どもも関心を持ちながら、しかも住民の福祉の向上という観点から取り組むべきことであるというふうに考えております。
  149. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ありがとうございました。終わります。
  150. 竹内黎一

    竹内委員長 午後二時二十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時四十四分休憩      ————◇—————     午後二時二十九分開議
  151. 竹内黎一

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。寺前巖君。
  152. 寺前巖

    寺前委員 限られた時間内で、最近の在韓米地上軍の撤退をめぐる動きと日ソの漁業交渉の問題についてお聞きしたいと思いますので、ひとつ要領よくお答えをいただきたいと思います。  アメリカの統合参謀本部のブラウン議長が、二十四日から韓国において朝鮮半島の軍事情勢の問題、そして在韓米軍の撤退後の問題などについて米韓の会談をおやりになっているようですが、その後、日本に来られて、そして日米間の協議をするということが報道されております。これが事実とするならば、日本政府としてはブラウン統合参謀本部議長らと一体何を相談をされるのか、協議を日本側としては何を考えているかということについて御説明をいただきたいと思います。
  153. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ブラウン議長とハビブ次官が来日されることは確かでございます。しかし、これは韓国へ行かれまして、その帰りに寄られるわけでございますので、私どもは、米国と韓国との間の話の経過等を承ろうと、このように考えておりまして、当方から具体的に何を先方に対して要望する等のことは、特にいまだ準備はいたしておりません。
  154. 寺前巖

    寺前委員 報道では、在韓米軍撤退後の在日米軍基地の機能の強化などについて話し合いをされるというようなことが流れております。それだけに最近の一連のアメリカの動向は、日本の国民に注目をされております。米議会の予算局が、十八日、アメリカが韓国防衛のために地上軍を駐留させる必要はなくなったとして、全面撤退を主張する報告書を公表しております。この報告書の中に、さきに日本、韓国を訪問した下院の国際関係委員会のレスター・ウルフ・アジア太平洋小委員会委員長が、序文の中で福田総理との会談に触れて、日本は、韓国に対する適切な防空と軍備の改善が保障されれば米地上軍は必要ないと述べた、との結論を下しているということがこの中に書かれていると言われています。とすると、こういうような態度を日本政府はとっているのかどうか、こういう話し合いをされたのかどうかということと、こういう内容があるのかどうかということと、そして、これについてどういう見解を持っているのかということについてお聞きをしたいと思います。
  155. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御指摘のありました、ウルフ小委員長の、福田総理が言われたというようなお話は、私は、全く考えられないことであろうと思います。
  156. 寺前巖

    寺前委員 考えられないことである……。  ではその次に、同じく二月二十二日の米下院の歳出委員会国防総省小委員会でブラウン国防長官が、在日米陸軍は、朝鮮半島で紛争再発の場合、韓国陸軍を兵たん支援する十分な能力があるということを指摘をするとともに、在日米陸軍の最大の存在目的が韓国陸軍支援であると言明をしているということが報道されております。この報道について御存じですか。
  157. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 ブラウン国防長官が、おっしゃいました五月九日公表された下院歳出委員会の国防小委員会で二月二十二日に行ったものの中で、在日米陸軍の兵たん機能は、朝鮮半島における新たな紛争の場合に韓国軍に兵たん支援を提供する能力を確保しているというふうな趣旨の証言をしていることは、事実でございます。
  158. 寺前巖

    寺前委員 大臣、在日米陸軍の最大の存在目的が韓国陸軍支援にあるという指摘をその中でしていることが明らかになりました。これについてどういう見解をお持ちになりますか。
  159. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 アメリカがわが国に配置しております部隊の能力、機能については、それが日米安保条約の目的に合致するものである限り、われわれとしては問題がないものと考えておるわけでございます。
  160. 寺前巖

    寺前委員 いまの答弁でよろしゅうございますか。私が質問をしたのは、在日米陸軍の最大の存在目的が韓国陸軍支援にあるということを発言をしたということは事実だ、この発言の事実において、これで結構ですとおっしゃいますか。重ねて大臣にお聞きいたします。
  161. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 このブラウン国防長官の発言がどういう背景のもとでどういう考え方でなされたか、われわれとしても十分承知しておらないわけでございますが、理論的な問題として考えますと、万一朝鮮半島で紛争が起こった場合に、在日の米陸軍部隊が、国連憲章で認められました自衛権の発動として、極東の平和と安全の維持に寄与するためにわが国にある施設・区域を使用して純然たる兵たん支援、すなわち補給活動を行うということは、日米安保上は問題がないと考えておる次第でございます。
  162. 寺前巖

    寺前委員 大臣、答弁ありませんか。
  163. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 在日米軍の機能が日本のみならず極東の平和のためにあるということは、安保条約にも明記してあるところでございますので、それ自体がおかしいことであるとか不都合なことであるとかということではないと思います。ただ、そこで強調されております。その最も大きな目的が、という点につきましては、日本の防衛ということも大変大事な目的であるということは、私どもはそのように考えておるところでございます。
  164. 寺前巖

    寺前委員 日本の防衛も大事なことだ、それよりも最大の目的が、韓国のその支援部隊として存在するんだと、在日米軍の任務というのが朝鮮半島における韓国軍の支援にあるんだと、日本がそのために土地を提供しているんだということは、私はきわめて大事な問題だと思いますが、大臣はあくまでも言い張りますか。そういう韓国陸軍支援部隊のアメリカ軍に日本の土地を提供させるんだ、それが最大の目的だ、こういうことで、それじゃ今度の会談もその立場に立って相談をするんだということになりますね。間違いありませんね。重ねて大臣に聞きます。
  165. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そのときの発言が、いかなる応答によりましてそのような発言がなされたかということも関係があるだろうとは思います。その文脈を全部詳細に見たわけでございませんから何とも言えませんけれども、いま朝鮮半島あるいは在韓米軍の問題、これらが議論されておるところに、どういう状態、環境で発言されたかということで、日本といたしましては、在日米軍は日本自体の防衛のために駐留をしてもらっておる、しかしアメリカ自体といたしましては、日本並びに極東の安全保障上の約束を守るために日本に駐留するという、それとあわせて、極東の平和維持、あるいは諸外国に対するコミットメントにつきましてアメリカとしては責任を持っておりますから、そのための行動ということも考えておるに違いない。ただし、日本といたしましては、いずれにいたしましても、もし有事の際の日本を基地といたします戦闘作戦行動という場合には、当然のことながら、事前協議の対象であるということは御説明するまでもないことであります。
  166. 寺前巖

    寺前委員 私はどうも日本政府が怪しい雲行きになってきておるということは指摘をせざるを得ないと思うのです。最大の目的が韓国陸軍の支援に置かれるというような事態の提起が公然とアメリカでやられ始めているということ。  そこで、その次に聞きます。国家安全保障会議の事務局長であり、アメリカの大統領の補佐官であるブレジンスキー氏が二十二日に発行されたUSニューズ・アンド・ワールド・レポート誌の最新号のインタビューの中で、在韓米軍撤退の問題をめぐって日韓両政府との協議の目的について次のように触れております。八十年代に向けてどのような安全保障取り決めが適切であるかを論議することだ。先ほどのアメリカ国会におけるところの発言では、在韓米軍が撤退をしていくが、日本にあるところの米軍というのは、この韓国軍を支援するのが最大の目的なんだ。支援部隊としての日本の位置づけを明らかにしている。そして新たに安全保障取り決めをどのようなものにした方が適切だということをここに持ち込んでくる。この一連の動きというのは、日本の役割りを在韓米軍の撤退後一層この安保問題としては新たな段階に高めていくという性格を持っているというふうに国民が見るのは、私は当然であろうと思うのです。  そこで、大臣に聞きます。このブレジンスキーがこういう目的でやってくるんだというこの発言に対してどういうふうにお考えになるのか。重ねて、さっきの問題とあわせて聞きたい。
  167. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 ブレジンスキーの発言の前に、いま先生のおっしゃいました在日米陸軍の最大の目的が韓国軍の兵たん支援であるというふうに言っておられるわけですが、この点はちょっともう少しはっきりさしておきたいと思いますが、ブラウンが言っておりますことは、まず第一に——その前に申し上げておいた方がいいと思いますが、在日米陸軍というのは、実戦部隊は全くないわけでございます。全く兵たん支援の機能しか持っていないということでございます。それを前提といたしまして彼が言っておりますのは、在日米陸軍の兵たん機能は、朝鮮半島において新たな対立が生じた場合に、韓国軍に兵たん支援を提供する能力を確保するものである。ここでは別にこれば最大の目的であるというようなことは言っておりません。さらにつけ加えまして、ブラウン国防長官は、在日米陸軍第九軍団の存在は、日米安保関係を具体的に支援するとともに、日本の陸上自衛隊との関係を通じて米日両部隊の補完関係の改善に寄与している、こういうわけでございまして、もちろん在日米陸軍は日本の防衛にも寄与するような任務を持っているということもあわせて言っておるわけでございます。したがいまして、韓国軍を支援するだけが最大の目的で在日米陸軍がいるんだというふうに解釈するのは必ずしも当を得ていないのではないかというふうに思います。  次に、ブレジンスキー補佐官の五月三十日付のUSニューズ・アンド・ワールド・リポート誌上の発言でございますが、これに関しましては、われわれとしては、この発言は日米安保条約を改定したりあるいは新たな条約を検討するということまでを言っているものではないと考えております。  この発言につきましても、正確に申し上げますと、彼が言っているのは、われわれは、これから七十年代後半において、八十年代に向けてどのような種類の安全保障上の取り決めが適当であろうかということについて韓国側、日本側と討議にまさに入ろうとしておるということでございまして、長い目で見て将来の安全保障上の取り決めをどうすればよいかを考えることであるということを言っているだけでありまして、現在の条約関係を変えようとか、全く新しいものをつくろうとかいうことを具体的に言っておるものではございません。また、そういうことを軽々とそういう新聞のインタビューで言うはずはないわけでございまして、そういう問題があるとすれば、当然日本政府に対して正式に申し入れてくるべきものだと考えておる次第でございます。
  168. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまアメリカ局長からお答えしたとおりでございますが、特にブレジンスキー補佐官の会見の記事は、質問に対して答えられたものでありますし、質問自体が、韓国からの撤退がアジアにおきますアメリカのコミットメントを弱くしはしないかという質問に対しましての返答でございます。そういう意味で、われわれとしても、将来にわたりますセキュリティーアレンジメント、どんなセキュリティーアレンジメントがいいかということを討論しよう、こういうことでありまして、セキュリティーアレンジメントですから、どのような備えをするか、こういう程度にも読めるわけでありますから、これを安保取り決め、こういうふうに大きくとるのはむしろ適当でないのじゃないかというふうに私は考えております。
  169. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、今度は向こう側がどう言おうと、日本政府の態度として、在日米軍が韓国軍隊に対する支援部隊としての位置づけをされるということに対して、冗談じゃないという態度をとられるのかどうか。新しい安保取り決めの問題として言われるようになってきているけれども、われわれはそういう態度をとらないという態度をとられるのかどうか。どういう態度で今度の日米協議をおやりになるのか、その態度について、いまの問題との関連において日本の態度を示していただきたいと思います。
  170. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私どもは、いままでモンデール副大統領が来日された以来の経過をずっと考えておりましても、韓国からの陸上部隊の撤退、これも慎重に相当の期間をかけてのことと思いますけれども、これは直ちに南北朝鮮間の軍事バランスを乱さないようなやり方で行われるということでありますし、これが日本を取り巻く軍事情勢に大変大きな変化ができるんだ、到来するというふうには考えていないのでございます。  そういう意味で、いまお尋ねでありますけれども、私どもといたしまして、先方のアメリカと韓国との話し合いがどのように進展をするか、これを注意深く見守っておる段階でございます。そういう意味で、日本としてこの大変な変化に対してどういう対処をするんだ、こういうふうにお尋ねになりましても、私どもは根本的にそのような変化は生じないであろうという考え方であるわけであります。  なおしかし、これは今後の話し合いの進展によるところでございますから、これからの話し合いの進展に応じまして、それに対して日本としてはいかなる対処をするかということを考えていけばいいことである。日本に駐留しております米軍の任務がどのように変わるかということにつきまして、これは将来のことをいまここで予測はできませんけれども、そのような今後の検討課題ということでそれに対処してまいりたい、こう考えております。
  171. 寺前巖

    寺前委員 また引き続いて質問をさせてもらうということにいたしまして、残された時間を仮調印をされた日ソ暫定協定について聞きたいと思います。  日ソ暫定協定の仮調印、この協定文というのは、引き続いてソ日の漁業協定なりあるいは日ソ長期基本協定に対して問題点を残しているのか残していないのか、御説明いただきたいと思います。
  172. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 まずソ日協定の方から申し上げますと、ソ日協定は、日ソ協定のちょうど裏返しみたいな関係に立つわけでございます。ソ日協定はこれから六月、恐らく中旬ごろと思いますが、交渉に入るだろう、こう思います。しかしソ日関係につきましては、いままで確実に決まったというものはございません。したがいまして、そういう意味で問題は残されておるわけであります。それから長期協定になりますと、これはさらに先の話でございます。私どもといたしましては、長期協定段階は、これは完全な双務協定の形にした方がよろしかろうといまのところは考えておりますし、ソ日協定も、その前に暫定協定ができますれば考え方というのは詰まってまいりますので、長期協定の方はお互いに双務的な関係にできるのではないかというふうに考えております。したがいまして、まだ今後問題はいろいろ残されておると私どもは考えております。
  173. 寺前巖

    寺前委員 ソ日協定を検討する過程において残されている問題点というのは、何が問題になるでしょう。
  174. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ソ日協定につきまして一番大きな問題は、逆に日ソ協定におきましても適用海域が最大の問題でありましたので、私は、ソ日協定におきましても適用水域の問題がやはり大きな問題であろうと思います。また、いろいろ御心配になっておりますわが方の十二海里の領海、この中に入りたいということが言われておりました。しかしこれにつきましては、日本側としては、これは沿岸漁民の保護のために絶対に入っては困る、こういう態度を堅持しております。しかしこの問題が蒸し返されないということは、まだそこまではっきりはしてないだろうと思いますけれども、わが方としては強くわが方の立場を貫き通す、こういうことであろう。思いつきますのはその問題と、あと漁獲量の問題、これはいずれにしても問題になるであろう、このような点でございます。
  175. 寺前巖

    寺前委員 そうするとソ日協定では、線引きの問題と、それから十二海里の領海の中でソビエトが漁をやらしてくれと言っておった問題について引き続いて問題になる。ということは、今後の協定の調印の中では、すっきりしていない問題として問題点は残っているんだということと解釈していいわけですね。
  176. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 その点は、先方は日本に約束をさせようとしておったのでございます。しかし日本は、ついに日ソ協定段階ではそれを認めるということは一切言わないで、約束もしない、また条文化もしないで、第二条の規定のとおりの表現をとったわけでありますから、これはもっぱらソ日協定の際の問題であり、しかも日本としては何ら約束をしないでソ日協定に臨む、ソ日協定におきましては日本は領海内に入漁を認めるということは全く考えておらない、こういうふうにお考えいただきたいのです。
  177. 寺前巖

    寺前委員 第八条でなかなかもめた問題としてあったわけですが、この第八条の中でこういう言葉がありましたね。「相互関係における諸問題についても、いずれの政府立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」という言葉がありましたね。この仮調印の内容について言うと、日本の方から言えば、「相互関係における諸問題」と言った場合には、領土と魚を分離するんだというふうに解釈をしているけれども、逆に言ったらソ連の側では、前々から領土問題は解決しているんだという立場をとっておったと思うんです。そうすると、向こうの解釈に従うならば、政府立場または見解を害するものではないんだということですね。おれの方は、この問題についてはもう了解させてしまったんだ、しかも日ソ漁業協定の第一条では、ちゃんと線引きはどの範囲にするんだということまで書いてあるんだ、もう領土問題は解決済みだ、こういう物の見方をしてしまったら、これははっきりと禍根を新たな段階に導くことになっているんではないだろうか。この領土問題、領海問題に対する発言権というのは、こういう形で承認をしたならば、もっとみじめな段階にまでこれはもたらされているんではないだろうかというふうに言えるんではないだろうか。  もう一つ、この政府立場見解を害するものではないという問題は、第二条において、当初ここに日本線引きを入れるという話がありましたが、それはなくなってしまっておる。そして、ここに出てきている問題では、伝統的な操業を認めるんだということになってくると、従来伝統的に操業を三海里から十二海里の範囲でやっておったということをここでも認めてしまっているんだというふうな理解の問題としてこの第八条は使えるんではないだろうか。とするならば、私は、もっときっぱりした領海に入っての漁業の問題なりあるいは線引きの問題について、附属書なりあるいは本文の中でもう少し明確にさせておかなかったならば、どう見たってこれはソ日協定では悪い結果を導くことになるんではないかというふうに思うのですが、重ねてソ日協定は皆さんのおっしゃるように、これは日ソそれぞれの意見がたな上げになって領海の中にとりにくるということはなくなるという保障は、日ソ漁業交渉のこの協定によって大丈夫だと言い切れるのかどうか、重ねて聞いて質問を終わりたいと思います。
  178. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この協定の文章は、非常に時間がかかったわけでございます。寺前先生がいま、これで大丈夫かとこうおっしゃられたわけでありますけれども、先方は先方で、一体ソ日協定のときはこんなことで大丈夫かということで、いろいろな条文を提案されたこと、それはお聞き及びだと思いますけれども、そのようにお互いにこれじゃ大丈夫だろうか、先に今度はソ日協定の際に日本が強いことを言ってきたら、ソ連日本の沿岸で魚がとれなくなりはしないか、そういった心配から、もっと安心できる条文をいろいろ提案されてきてまた一日かかった、予定がまた伸びてしまった、出漁ができないというようなことになりまして、結局のところ、これは日本にとって非常に有利なものができました、あるいはソ連の方に非常に有利なものができました、こういう条文でないことは確かであります。そういう意味で公正な結論になったんじゃないかというふうに思うところでございます。  まず八条の問題でございますけれども、いずれの政府立場見解も害さない、こういう表現でありまして、逆に日本だけの立場を害さないというような表現は大変むずかしいわけであります。やはり両国ともそれぞれの見解なり立場をとっておる、この協定がそれに影響を与えるものじゃないんだ、こういうことを言っているのでありまして、したがいまして、領土の問題につきまして解決済みであるとか、いや平和条約の際の未解決の問題なんだ、こういうそれぞれの立場をそのまま害さないでいるということでありますから、どうしても領土問題の解決領土問題の解決として、これは本当に腰を据えて取り組まなければならない。それに対して、この協定日本はこういうことを承知したから領土問題ではもうおれの方が強いんだ、この協定を結ぶことでそういう言いがかりはできないということはもう明らかであります。  それから第二条の点につきまして、日本は、日本水域をここに書く案も出したことは事実であります。それはやはりお互いの水域関係につきまして今度の機会にはっきりさせよう、こういう考え方でありましたけれども、先方は双務協定の案も、これまた考え方を百八十度変えるということは時間がかかってむずかしい、第二条に水域を入れるということも主要な点におきましてほぼ同じようなことになるものですから、それも聞かなかったということでありまして、この第二条の規定の伝統的な操業を継続する権利、これだけで、決して三海里まで入る権利があるということではない、それはソ日協定の際に明らかにできる問題であるというふうに考えておりますし、この点はもう何回も鈴木大臣主張されておりますので、徹底をしておるというふうに考えております。
  179. 寺前巖

    寺前委員 お約束の時間が来ましたので、またの機会に質問をさせていただきますが、領土問題で、サンフランシスコ平和条約第二条の(c)項で千島の放棄をやっているということが今日の禍根の大きな問題を含んでいるので、あの問題についての再検討をされるべきときがいまや明確になってきている。これがそこに輪をかけるようなものになっているというふうになったら大変なことだということで、国会は改めて慎重にこの問題についての検討をやるべきだというふうに思います。時間が来ましたのでこれでやめますが、主権に係る問題については慎重に取り扱われることを要望しておきたいと思います。終わります。
  180. 竹内黎一

    竹内委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後三時四分休憩      ————◇—————     午後三時三十九分開議
  181. 竹内黎一

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  投資の奨励及び相互保護に関する日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件、国際海事衛星機構(インマルサット)に関する条約締結について承認を求めるの件、アジア太平洋電気通信共同体憲章締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田久就君
  182. 山田久就

    山田(久)委員 私は、まず日本とエジプトの投資保護協定、これに関連いたしまして、三、四の点ちょっとお尋ね申し上げたいと思います。  御承知のように、日本も油の問題等で、アラブ関係でいろいろ苦労を重ねたようなところがあったわけですけれども、このアラブ政策というものに影響を与える、つまり、これを制するためには、産油国としてのサウジアラビア、また政治的にアラブに対して非常な指導力を行使していると言われるエジプトを掌握する、これが非常に重要である、こう言われております。それは、すなわちエジプトは対アラブ政策の上から、ひいては対中東政策というものの上から、最も重視すべき国の一つであろう、こういうふうにみなされていることは御承知のとおりでございます。したがって、欧米の主要国、また湾津のアラブ産油国等は対エジプト援助という点については非常に前向きである。エジプトの安定、ひいては中東和平の実現ということに寄与しよう、こういう構えで積極的な施策を行っていることは御承知のとおりでございます。  以上のような事実にかんがみて、まず一体日本の場合、わが政府は対エジプト関係の強化という点でどのような措置を特に重視してとっておられるか、この点が一つ。  ちなみに、ちょうど一九七三年石油問題で三木特使がアラブに派遣されたことは御承知のとおりでございますけれども、御承知のような趣旨から、対エジプトの経済協力というような面では積極的に取り組むという姿勢で臨んだことは御承知のとおりであります。自来、なかなかこれが進んでいないというようなことも聞いておるのですが、その後のこの点についてのフォローアップ、どういうふうにいっておるのか。まずこの点について御説明をいただきたいと思います。
  183. 加賀美秀夫

    ○加賀美政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のございましたように、中東情勢、なかんずく中東和平の動向は、現在全世界の注目を集めているところでございます。わが国といたしましては、中東における平和の達成、それからさらにより直接には、石油の安定供給というような観点からも、中東情勢の安定には多大の関心を寄せていることは御承知のとおりでございます。ただいまも御指摘ございましたように、このエジプトが中東におきまして政治、経済、文化、歴史等、いろんな面におきましてきわめて有力な国である。さらに中東紛争の一当事国といたしまして、さらにアラブ穏健派の一つのリーダーといたしまして、中東紛争にきわめて真剣な努力を傾けておるということはすでに知られているところでございます。そういった点から、日本といたしましてもエジプトとの間に人的、文化的、経済的交流、それから経済協力というような関係を一層拡大いたしまして、相互理解の増進に努めるという方針をとってまいっております。  それで、経済協力の点につきましては、三木特使の派遣以来、わが国といたしましても一九七三年四月に第一次商品援助を行いました。その後も引き続き円借款等与えまして、現在のところ、これまでに与えました円借款は七百五十二億五百万円に上っております。それから昨年の一月には一億ドルの輸出信用の枠のプレッジをいたしております。その他技術協力の面におきましても、技術研修員のわが国への受け入れでございますとか、各種専門家及び調査団の派遣、それからプロジェクト協力などエジプトの経済開発に多大の貢献をしております。そのほかにも、エジプトとの関係の強化のために、人的交流、文化交流等の広範な分野におきましてエジプトとの関係を増強、増進するという方面に努力しております。
  184. 山田久就

    山田(久)委員 いま一通りのお話があったわけですけれども、実際対エジプト工作を強化するというのは、平板的な、ただ経済協力をこうやった、人的交流をこうやったということじゃなくて、もっと人のつながり、人物の布石、そういうことについて突っ込んだことをやっていく必要があると思う。御承知のように、かつてエジプトとサウジアラビア、これは犬猿のただならざるような関係であった。サダト大統領になってから非常に急速に改善されたわけですけれども、これにはちょうど前のファイサル国王の王妃のファミリーが、かつてサダトが革命で逃げたときにかくまった、こういう特別な関係というようなものを非常に把握して育て上げている。こういうことから生きたエジプトとサウジアラビアの関係が生まれておるというようなことで、特にこういう中近東方面に対しては、そういう人的な結びつき、培養、そういう点が私は非常に重要であろうと思う。そういう点を考えてみると、残念ながらまだそこまでなかなかいっていない。計画としては考えられておるけれども、まだ足りない点があると私は思う。そういう点もっと私はしっかり腰を据えてやってもらいたい、こう思います。  実際、経済援助というようなことでいろいろなことをやっておりますけれども、間々エジプトの経済状態が悪いというようなことで、とかく大蔵省的な頭で、言うといろいろなことを渋るというようなことが過去においてはあったわけで、そういう意味で、エジプトが対日関係において飽き足らないような気持ちを持っておるというようなことがあるばかりでなくて、本当にエジプトというものを引きずって、わが中近東政策に寄与させようというような面で迫力、行動力が足りないというような点が見られる。こういう点もう少し突っ込んで対策を立ててもらいたいというふうに考えているのですけれども、外務大臣、それらの点についてあるいは御同感いただけるのじゃないかと思いますが、ひとつお考えを承りたいと思います。
  185. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御指摘のような日本とエジプトとの関係におきまして、外交努力、これは三木特使、小坂特使が行かれて、最近急激にエジプトとの関係を重視しておるわけでありますが、やはり残念ながら過去の蓄積と申しますか、そういったものがないというのが確かなことではあるまいかと思います。そういった意味ではこれから大変な努力が要るものと思うのでございます。御指摘の点も十分心得まして、これから努力をさしていただきたい、このように考えておるところでございます。
  186. 山田久就

    山田(久)委員 エジプトの中のサダトを助けてやっておる側近の指導者、そういう方面との結びつき、そこら辺のことはもっともっと考えてやっていただきたい。そのことを、特に今度の協定等はそういう政治的配慮から生まれているという意味において、私は措置としては適切なことであろうと思うけれども、もう一歩突っ込んだ対策をぜひ希望しておきたいと思います。  次に、これに関連しての中東和平への動きでございますけれども、御承知のように、カーター政権が成立して以来中東和平というものへの動きが活発になってきているように思われます。そこで、この中東和平というのは、石油問題その他世界の平和という意味では重要なファクターでありますので、そういう点で最近の中東情勢が一体どのようになっているのか、またエジプトは常にこういう方面では重要な役割りをなしていると考えるんだけれども、この中東和平についてのエジプトの重要な動きというようなものがどんなふうになっているのか、この点ひとつまずお伺いいたしたいと思います。
  187. 加賀美秀夫

    ○加賀美政府委員 中東情勢につきましては、カーター米新政権が発足いたしましてから、まずことしの二月にバンス国務長官を中東諸国に派遣いたしまして、関係当事国との意見交換をやりまして、その後三月から五月にかけましてカーター大統領自身がアラブ、イスラエル諸国首脳との会談を行いました。こういう過程によって中東紛争当事国諸国の立場を把握する、諸国の見解を聞くということをやっておりまして、今後、本年秋以降におけるジュネーブ会議の開催ということを目指して積極的な努力をしておる。他方、ソ連の方も、三月のブレジネフ演説におきまして中東紛争解決のための若干の案を明らかにしておる、そういう状況でございます。他方で、中東和平の行方を決めますのに重要と思われますイスラエルにおきまして、最近五月十七日に総選挙がございまして、この選挙におきまして、これまで長い間政権の座にございました労働党連合というのが敗北して、右派のリクード党というのが第一党になりました。これが今後の中東和平の動向にどういうような影響を与えるだろうかということにつきましては、まだ確実なことはなかなか予言することはむずかしかろうかと思いますけれども、各方面の観測等を総合いたしますと、どうも中東和平の問題に困難が増したのではないかというような観測が多うございます。しかし他方で、アラブ諸国の方も、イスラエルのどの政党が天下を取ってもいずれ同じである、やはり問題はアメリカがどのようにイスラエルを説得していくかということにあるんだというような冷静な受けとめ方をもしております。したがいまして、今後このリクード党がどういうような連合政府をつくるか、つまりリクード党自身過半数を取っておりませんので、いずれにいたしましても連合政府をつくらざるを得ない。どのような連合政府ができてくるかということが一つの問題でございますけれども、こういった今後の行方を見定めていく必要があろうかと存じます。  他方で、この総選挙の後、ジュネーブにおきましてアメリカのバンス国務長官とソ連のグロムイコ外相が会談いたしまして、その共同声明におきましては、米ソ両国とも本年秋にジュネーブ和平会議を再開するべく共同の努力をするというようなことをうたっております。したがいまして私どもといたしましても、せっかく盛り上がって使いりましたこの中東和平へのモメンタムというものが今後とも維持されていくということを大いに期待しているわけでございます。  エジプトがこの中東和平の問題についてどういうような役割りであるかという御質問でございますけれども、これは御承知のとおり、従来からアラブ諸国内におきまして現実主義的な路線を追求しております穏健派のリーダーとしての役割りを果たしておる。昨年の十月レバノン紛争が収拾に向かう際におきましても、アラブ側の中東和平についての見解の調整、そういったことの努力、それからアラブ諸国の中の協力体制の確立というようなことで大きな役割りを示しております。サダト大統領は、本年二月のバンス国務長官のエジプト訪問の際に、ジュネーブ和平会議前にヨルダンとパレスチナの連邦結成が行われるべきであるというような提案をいたしておりますし、それからPLOのイスラエルに対する姿勢の柔軟化のためにも影響力を行使しようとしたということもございます。四月にはアメリカに参りまして、アラブ首脳としては初めてのカーター大統領との会談を行っております。エジプトが中東和平への努力の中において、アラブ側におけるきわめて重要な役割りを果たしていくということは今後とも続けられるものと考えております。
  188. 山田久就

    山田(久)委員 エジプトの重要性、役割りは、これは各国そしてまた近隣のアラブ諸国も認めて、具体的に、エジプトの地位の強化というようなことにいろいろ手をかそうとしておる点は注目に値すると思うのでございます。この中東和平の盛り上がりというような環境の中で、こういうような見地から、去る五月十一日世銀主催の第一回エジプト援助会議が開かれたことは御承知のとおりでございますけれども、これはまことに注目に値するものではないか、こう考えております。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕 右会議では、エジプトの再建の具体策について一体どのような話し合いが行われたのか、これはまた大事な点だと思うので、要点をひとつ説明願いたいと思います。
  189. 三宅和助

    ○三宅説明員 お答えいたします。  御案内のとおり、五月十一日に世銀主催の第一回エジプト援助国会議が開かれたわけでございますが、欧米先進国、それから国際機関、アラブの諸国、アラブ開発機関その他多くが参加したわけでございまして、現在エジプトが直面しております経済的な諸困難というものを解消いたしまして、エジプトの経済再建を実現するために今後の援助のあり方についての一般的な協議を行ったわけであります。  エジプト政府といたしましては、現在確かに財政的な赤字、これによるインフレ、それから開発資金の不足というものと対外債務の累積が最近拡大しております。したがいまして、こういうもろもろの経済的な困難を打破するために、どうしても国際収支の均衡回復、それから対外債務の削減、外国投資の奨励、あらゆる面で努力を行っているわけでございますが、このようなエジプト側の経済再建に対する努力を実らせるために、幅広い国際協力というものを望んでいるという強い希望の表明があったわけであります。世銀及び参加各国からもこれに積極的な援助の姿勢を打ち出したわけでございますし、アメリカ、アラブ諸国、各国ともこの経済再建策というものを評価いたしまして、今後積極的にこれの再建計画に協力しようという検討を約したわけでございます。
  190. 山田久就

    山田(久)委員 わが国としてもいまエジプトの援助というようなことで、特に具体的な注目すべきアイテムはぜひとらえて積極的にひとつわが方としてもやっていただきたい、こう考えております。  次に、最近のエジプトと米ソの関係ですけれども、もうすでに御承知のように、かつてソ連との関係がかなり密接であった。それがサダトのときになって、その点がむしろ解消されて、米国に非常に接近するというような動きが出てきておりますが、これに対して巻き返しというようなことも、ポドゴルヌイの訪問というようなことで行われたようにも思われます。この中東は石油資源というような重要資源をめぐっておりますので、前々から米ソの動きと、またその中においてエジプトの重要な地位ということに関連いたしまして、両国の働きかけというようなものもいろんな形においてかなり執拗かつ活発に行われているように思われます。そこで、最近の米ソ両国というものとエジプトの関係というものがどのような発展のぐあいにあるのか、少し中を割ってその点についての実情をひとつ説明してもらいたいと思います。
  191. 加賀美秀夫

    ○加賀美政府委員 エジプトと米ソ両国との関係の御質問でございます。  まず第一にソ連との関係について若干申し上げますと、すでに先生御存じのとおり、大体一九七〇年ごろまで、つまりサダト大統領の就任直後までは、エジプトとソ連との関係は非常に友好できわめて緊密であったということが言えると思います。ところが七一年五月にサダト政権がソ連派の連中を追放した、それから七二年七月にソ連軍事顧問団の引き揚げをさせたということから、ソ連、エジプト関係は冷却いたしまして、特に最近七六年三月に至りましてエジプトがソ連・エジプト友好協力条約というものを廃棄したということになって、きわめて冷たい関係になったということが言えるわけでございます。こういうソ連、エジプト関係が悪くなってまいりました背景には、ソ連のエジプトに対します軍事経済協力、それから特に七三年の第四次中東戦争当時のソ連のエジプトに対する協力ぶりというものがエジプトの望むような形でなかったということに対するエジプトの不満があったということが言われております。  しかしながら、その後、七六年十一月にはブルガリアにおきましてソ連、エジプト両外相会談が行われましたし、それからジュネーブ和平会談の早期開催という問題、それから両国関係現状、将来をめぐる協議というようなことが行われましたほか、今後ソ連、エジプト双方の共通の関心事である諸問題をめぐる意見交換を継続すべきであるというようなことにつきまして、ソ連、エジプト両国間で合意が成立した。それから来る六月にも両国の外相会談が開催されるというような運びになっております。したがいまして、ソ連、エジプト関係が若干改善するという余地が生じつつあるように見受けられます。  こういった両国間の関係を修復していこうという動きの背後には、やはりソ連といたしましても、ジュネーブ和平会議再開という問題を控えまして、和平会議の共同議長国であるソ連としてその責任もあるということで、エジプトとの関係を改善していくことが望ましいという考慮があるのではないか。それからエジプト側におきましても、ソ連に対する債務の問題であるとか、それからソ連製武器の部品の供給再開問題というような問題もございますので、ソ連との関係を改善していこうという必要があるというふうにエジプトも考えておる、そういうことが言えると思うわけでございます。  他方でアメリカとの関係でございますけれども、アメリカの方は、一九七三年の戦争の結果切れておりましたエジプトとの間の外交関係を七四年二月に再開いたしました。それから七四年六月にはニクソン大統領のエジプト訪問があり、それからサダト大統領が七五年の十月とことしの四月にアメリカを訪問して、急速な緊密化の動きが見られたわけでございます。ちなみに七六年におきますアメリカのエジプト援助は大体十億ドルというような数字が出ております。  このようなアメリカとエジプト関係の急速な緊密化ということは、サダト大統領も公に述べておりますように、中東紛争の和平解決のためにはやはりイスラエルを説得していかなければならない、それができるのはアメリカだけである、そういう基本的な判断に立っておる。それでアメリカといたしましても、こういったエジプトの期待にこたえてエジプトヘの経済援助を促進する、それからジュネーブ会議早期再開ということへの努力を行っておる、そういうふうに考えております。
  192. 山田久就

    山田(久)委員 それに関連しまして、ジュネーブ会議の早期再開、そういうことを一般に言われているのだけれども、実際にこれが具体的な成果ということを目指しての開催ということの可能性、そういう点どういうふうに考えているのか。また、それについての実際の米ソの態度、そこら辺のところをちょっと説明してもらいたいと思います。
  193. 加賀美秀夫

    ○加賀美政府委員 ジュネーブ会議再開の問題につきましては、御承知のように昨年来、特にレバノン紛争が収拾に向かいまして以来、急速に機運が高まっているわけでございます。昨年は、少なくとも昨年の秋までは、レバノン紛争があったこと、それから他方でアメリカの大統領選挙がありましたこと、というようなことによって余り進展がなかったわけでございますけれども、その後レバノン紛争の収拾によってアラブ側の内部の争いが一応おさまったということ、そしてアメリカの新政権が誕生いたしましたということから、ジュネーブ会議再開による和平への動きというものが機運が高まってきたということが言えるわけでございます。もちろん中東問題、中東紛争それ自体はきわめて根の深いものでございまして、そう簡単に解決に到達できるとはだれも信じておらない。しかしながら、このジュネーブ会議再開によって和平へのプロセスと申しますか歩みを進めていくということは、アラブ諸国にとってもきわめて重要である。エジプト、シリアにおきましても和平への動きを進めていくということは国内的にも重要である。それから関係当事国すべてがきわめて重い軍備の重圧にさらされておって、国内経済の面からも和平への動きは歓迎されるべきである。  米ソの方は御承知のように、アメリカがキッシンジャー長官時代にステップ・バイ・ステップという方式をとって若干の進歩がございましたけれども、その後はむしろステップ・バイ・ステップよりも、包括的な解決案を関係当事国間で交渉して和平への進展を図るという方向に転じてまいっております。ソ連も種々の機会にステップ・バイ・ステップではなくて、むしろ包括的な解決案が必要であるということを申しておりますし、新政権になりましてからカーター大統領が種々の機会に包括的解決案の一端を示すような発言をしております。そういうわけで、米ソそれから関係当事国いずれも和平への機運、和平を待ち望む機運が高まっておる。  しかし、他方で問題の実質をながめますと、PLOの出席をどうするか、あるいはイスラエルの占領地域からの撤退をどうするか、あるいは最終的な国境線をどうするか、そういった問題につきましては非常に大きな困難な問題があるわけでございます。したがいまして、果たしてこのジュネーブ会議が再開されるかどうかという問題はかなり疑問視する向きもございますけれども、一番最近では、米ソ両外相がジュネーブで会いまして、その共同声明に、本年秋におけるジュネーブ会議の再開を目指して共同努力をするということがはっきり出ているわけでございますので、もちろんこれによって開催が確保されたということは言えませんけれども、いずれにいたしましても米ソ両国が、できればこの秋に開催をするために努力する。前には本年じゅうということを言っておりました。しかしこの秋にやるということをはっきり言ったことは、米ソ両国ともかなりかたい決意を持っておるということではないかと思います。もちろん、そう言ったからといって必ず開けるというものではございませんけれども、他方でジュネーブ会議が再開されず和平への交渉が全くとんざするというようなことになりますと、せっかく穏健路線をもって進んできておるアラブ諸国も、国内的な困難に立ち至るおそれもある。したがいまして、国際的な努力はジュネーブ会議の再開に向かってこの努力が向けられておるということが言えると思います。予言の方はなかなかできませんけれども、開かれる可能性がかなりあるのではないか、そういうふうに考えております。
  194. 山田久就

    山田(久)委員 重要国エジプトをめぐっての米ソのいろいろな動き、いまお話しのようなところで動いているようでありますけれども、一方において私は、アフリカ大陸という方面における動きを見ていってみますと、片や平和共存という旗印をソ連は掲げながら、しかし基本的な重要な戦略兵器の交渉ということになると一歩も引かない、むしろ優越を保っていかなければいかぬ、これが相当はっきりしている。と同時に、一方、つまり自由世界に対する資源の補給路切断といいますか、そういう方面のグローバルな戦略ということからはかなりエジプトに力を入れているという状況がいろいろうかがわれる、こう思うのです。共産圏の影響下に立つ国が相当最近エジプトなんかでも多くなってきていますし、また湾岸並びに紅海方面の重要方面に対するその種の浸透というものも非常に注目していかなければいかぬ。そういう意味において、今後大きな意味の世界和平と、いま違った形におけるソ連の動きというような面では、日本としてもそういう動きを相当的確な情報をつかみながら、またグローバルな意味で、実際主要自由先進国あるいはアメリカとの間にそういう角度でひとつ今後の突っ込んだ相当な協議というものをやっていく外交上の必要があろうか、こう私は考えております。ぜひそういう面でがんばっていただきたいと思うのですが、この点について外務大臣のお考え、ひとつお話しいただければ結構だと思います。
  195. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国といたしまして、アラブ諸国特に石油産出国との関係が大変大事である、これは申すまでもないことでありますが、アラブ諸国に対しましては、やはりアラブ諸国のうちで指導的な地位にありますエジプトあるいはサウジアラビア等々の有力なる国と日本はますます緊密な関係を保持していくべきことは最も必要なことであります。  それに関しまして、まず何よりもアラブに平和を樹立をすること、これがまたただいま御指摘のように何より大事なことでございます。その点につきましてアメリカが大変カーター新政権が熱意を持っておりますこと、これも大変結構なことでありまして、私もバンス長官にお目にかかりましたときに、アラブの和平の問題につきましてただしたのでありますけれども、ことしは何とかとにかくテーブルにつかせたい、すなわちジュネーブ会議をもう一度開くように努力をしたいということを言われておりました。そのような方向で日夜努力をされておる状況であると思います。  日本といたしましても、アラブにおきまして平和をつくり上げる、そのためにとにかく努力をして、国際的に日本の地位が認められ向上すること、これがまた日本として資源の入手等につきましてもはね返ってくるべきことであろう、このように考えますので、ただいま御指摘のような点につきまして今後の外交を進めてまいりたいと思いますし、またその点につきましては山田先生の御指導を心からお願いを申し上げたいところでございます。
  196. 山田久就

    山田(久)委員 それでは最後に一つだけ、エジプトというものの重要性に関連しての今回のこの投資保護協定、そういう政治的な背後の考慮があっての協定だと思うのでございますが、そこで本協定の基本的な意義というような点、つまりこれを一つの新しい試みとしてやった意義というようなことで、ひとつ一言だけ大臣からその点についての所信をお伺いいたしたいと思います。
  197. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この投資保護協定、これは日本の企業がエジプトに投資しやすくなるような措置を定めておるものでございます。このような協定は、開発途上国との間では初めてのものでございます。したがいまして、エジプトとの間にこのような協定ができるということは大変結構なことであろうと思うのでございます。現在までのところ、民間の資本が直接投資するというようなケースはそれほど多くないのでございます。特にいま心配されておりますことは、途上国に投資されましてもいつ国有化をされるかわからないというようなことが一般に言われているわけでありますから、そのようなときにこのような協定ができるということは、大変結構なことであり、今後民間ベースのこのような投資が発展されることが、日本とエジプトとの関係を本当に緊密にしてまいるために何より必要なことであろうと思いますので、この協定を御承認いただきたい、こう考えるところでございます。
  198. 山田久就

    山田(久)委員 その運用が余り事務的に陥らないで、本来の政治的な目的に沿うような運用をぜひお考えいただきたいことを希望しておきます。  以上でもって私の質問を終わります。
  199. 有馬元治

    ○有馬委員長代理 次に、左藤恵君。
  200. 左藤恵

    左藤委員 私は、お許しをいただきまして、当委員会で議題となっておりますアジア太平洋電気通信共同体憲章承認の問題、さらにまた、インマルサットの条約の問題、この二つにつきまして質問をいたしたいと思います。  まず、アジア太平洋電気通信共同体憲章のことにつきまして、もうすでにいろいろ御質問があったと思いますが、本共同体の憲章が各国間で話し合われて、そして話がまとまるに至りますまでの段階におきます背景といいますか、そういうものについて若干私は御質問を申し上げたいと思います。  まず、共同体のことについて、日本がこの問題についてイニシアチブをとったのか、あるいはまた、アジア太平洋地域におきます各国の中から、特に発展途上国の中からこうした空気が起こってきたのか、この辺について、外務省の方からでもお伺いしたいと思うのです。
  201. 村上和夫

    ○村上説明員 お答え申し上げます。  アジア=太平洋電気通信共同体につきましては、アジア太平洋地域を中心にいたします第三十二回のエスキャップでそもそもの話が起こってまいりまして、日本も、この共同体の成立につきましては非常に意義があるという見地から、積極的に働きかけたわけでございます。
  202. 左藤恵

    左藤委員 そこで、アジア=太平洋憲章の一番大きなねらいとするところは、アジア電気通信網の開発、そしてその促進ということであろうかと思いますが、そういう問題につきまして、この共同体憲章の中にも一つの問題として取り上げてあるわけでありまして、その中に、目的と任務のところで、一つの統一的技術基準の採用、効率的な運用方法の採用というふうなことを推進することが目的とされておるわけでありますが、こういった問題において、わが国の電気通信技術というものはこの地域におきましては他の国に比べてレベルが非常に高いわけでありますし、そうしたものについての技術協力というものが今日ほど大切なときはないと思うのであります。そうしたときに、わが国が積極的にアジア電気通信網の建設並びにそうした地域に対する技術協力という形で、この共同体に参加することによって推進していくということは非常に意義があると私は思います。  ただ、この地域におきましてこうした共同体ができましても、わが国の協力いかんによりましては、ほかのたとえば欧米の先進国の技術というものが導入されることもあろうかと思います。この場合に統一的な技術基準というものをどういうふうな決め方をするかによりまして、わが国の非常に得意とするような技術が十分活用できるか、あるいはそうでないかということについて、今後に非常に大きな問題を残すと思いますが、こういう点について、わが国が積極的な立場に立つことができるものと判断をしておられるかどうか、お伺いいたします。
  203. 中山一

    中山説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生から大変むずかしいかつ専門的な、御経験を踏まえた御質問をいただいたわけでございます。先生御案内のとおりでございますが、電気通信、テレコミュニケーションと申しますものは、技術的な基準がITUなどの場で決められてございます。そういう技術基準を前提といたしまして一つのネットワークができ上がっているわけでございます。日本は御案内のとおり、電気通信の分野では世界の先進分野に属してございます。したがいまして、日本がお役に立てる技術を少しでもアジア地域の電気通信網の形成のために活用できるのが最も望ましい。そのことが結果的にいい電気通信システム、ネットワークができていくということにつながっていくのではなかろうかと思っております。したがいまして、日本といたしましては、この電気通信共同体を通じまして、技術協力といったものを従前の協力に加えて推進していき、結果的に、アジア地域の電気通信網のりっぱなものをつくり上げることに少しでも協力していきたいという考えを、通信関係者全体が持っておる次第でございます。
  204. 左藤恵

    左藤委員 それでは、外務省の方にちょっとお伺いいたしたいと思いますが、この電気通信共同体というものが設立されたならば、そこで今度は、従来エスキャップにありました電気通信小委員会といったものがどういう形になるのかということが第一点。  次に、この共同体につきまして批准された国の数がそろいました場合には、創立会合がことしの夏行われるのじゃないかという一つの予測が行われております。こういうことについての見通しについて、外務省の方の御見解をお伺いしたいと思うのです。
  205. 村上和夫

    ○村上説明員 お答えいたします。  二つの点の御質問かと思いますが、前半の、この共同体ができましたことによりまして、他のエスキャップの電気通信関係がどういうふうになるかということでございます。これはこの共同体そのものが、経緯といたしましてはエスキャップでできたわけでございますが、この共同体の性格上、完全にエスキャップからは独立したものでございますので、他のエスキャップの電気通信関係の機構その他には全く独立して関係がないわけでございます。  それから、この共同体の今後の見通しという御質問かと思われますが、現在この共同体の加盟国が、すでに十三カ国が署名をしておりまして、そのうち四カ国、つまりバングラデシュ、ビルマ、インド、ナウルの四カ国は批准を終わっているわけでございます。したがいまして現在の見通しでは、この共同体は成立するというふうに私たちは考えている次第でございます。
  206. 左藤恵

    左藤委員 それからこの電気通信共同体に関連いたしまして、こういった地域的な、地域を限ってのそうした通信共同体といいますか、そういう一つのグループというものが国際機関の中においてできるといった例、あるいはそしてそこに、単に主管庁であります郵政省なら郵政省が参加するだけではなくて、あるいは政府が参加するだけではなくて、その事業体、この場合、恐らく電電公社とかあるいは国際電電あるいはNHKといったものの参画ということが当然考えられると思いますが、そういった事業体が構成員として認められているほかの国際機関というものがどういうものがありましょうか。インテルサットの条約の場合とちょっと違うと思うのですが、この辺についての外務省の、そういう国際機関としてのあり方というものについてお伺いしたいと思います。
  207. 村上和夫

    ○村上説明員 お答えいたします。  この共同体には領域及び事業体が構成員として認められているわけでございますが、その他の国際機関の場合にもこれに準じた例はございまして、それにつきまして順次御説明申し上げますと、まず領域につきましては、準加盟国として領域が認められているという例がございます。たとえばユネスコにおきましては、領域といたしまして英領のカリビアンあるいはナミビアというような領域がユネスコの準加盟国として認められております。また同様な趣旨がFAOとかWHOとかIMCOでも認められているわけでございます。また国同様の構成員として認められている例もほかにございまして、たとえばWMO、世界気象機関でございますが、ここにおきましてもそういう形で、WMOの第三条に、領域の集合体もしくは領域そのものが国際関係について責任を有する構成員として加盟を申請すれば認められるというような規定がございます。また万国郵便連合におきましても同様な規定がございます。  それから事業体が構成員として認められている例でございますが、これは国際電気通信連合、ITUでございますが、このITUもそれからインテルサットにおきましても事業体そのものが構成員として認められているわけでございます。たとえばITUにおきましては、わが国の事業体といたしまして日本電信電話公社、国際電信電話株式会社、NHK、日本民間放送連盟というようなものがITUにおいて認められているわけでございます。なお、インテルサットにおきましては、この協定の中で、先ほど申し上げましたように国際電信電話株式会社等が認められているわけでございますが、運用協定等において構成員と若干違った限定もなされているわけでございます。
  208. 左藤恵

    左藤委員 それで、地域的な電気通信ネットワークと申しますか、こういった問題について、この共同体は一つの開発を目的としているという先ほどの答弁ですが、将来の問題といたしまして、たとえばアジア・オセアニア郵便連合の場合、地域におきます郵便料金の低減という問題を取り上げておるわけでありますが、こうした中において電話の通話料、こういったものが将来問題となってくると思いますが、共同体においてはこの問題について研究する可能性があるのかどうか、この辺についておわかりであればお伺いしたいと思います。
  209. 佐藤昭一

    佐藤(昭)政府委員 お答えいたします。  アジア太平洋地域の電気通信関係者が当面強く望んでおりますのは、アジア電気通信網などの地域的、国際的電気通信網を実現させて、開発のおくれておりますこの地域の電気通信を改善することでございます。したがいまして、地域電気通信網の実現と通信網完成後の運用につきまして、地域的な協議機関としてのこの共同体におきましても、当面の力点はアジア電気通信網の実現に置かれておるものと考えられるわけでございます。  また、お尋ねの料金問題につきましては、国際電気通信連合で研究を行っている機関もございますので、この問題を当面この共同体で扱うものとは考えていない次第でございます。
  210. 左藤恵

    左藤委員 将来そういったところまで私は当然発展していくべき性格であろうと思います。今後この批准が行われ、日本がこれに積極的に参画するという段階におきまして、そうした点も取り上げていくという積極的な姿勢が欲しいと思います。  時間がございませんので、憲章につきましては以上で質問を終わりまして、次に、インマルサットの条約に関連いたしまして幾つかお伺いいたしたいと思います。  当委員会でもすでにいろいろな質問が行われたと思うわけでございます。このインマルサット条約に基づきまして、これから将来海事衛星を使いましての国際的な通信というもの、そして船の位置を確定するだけじゃなくて、船との通信という問題が衛星を使っての世界的な一つの機構というものに発展していくわけであります。これは一九八〇年代の問題としていまから十分準備をしておかなければならないということは御承知のとおりだと思います。  まずお伺いいたしたいのですが、こうしたことで、従来短波によって通信をいたしておりましたのを衛星に切り変えるということによってどういったメリットがあるであろうか。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕 それともう一つは、この海事衛星通信が出てまいりますことによって従来の無線通信士の制度というものはこのままでいいのかどうか、これを改定する必要があるのかどうか、これは電波監理局にお伺いいたしたいと思います。
  211. 吉川久三

    ○吉川説明員 お答え申し上げます。  現在の海上無線通信は短波によって遠距離通信をやられておるわけでございますが、これが衛星通信が導入されますとどのような改善がなされるかという点でございますが、まず第一番目に中波及び短波帯におきます無線通信の現在の混雑が緩和されるわけでございます。と申しますのは、使用できる周波数の数の関係あるいは伝搬特性等の関係がございまして、現在の特に短波帯通信は混雑をしておる次第でございますが、これが衛星通信の導入によりまして緩和が期待できるわけでございます。  次に、現在の短波通信によります通信の品質の改善並びに速度の改善が期待できる次第でございます。現在の短波通信につきましては、電離層を利用しておる関係がございまして、フェーディングによります品質の劣化等があるわけでございますが、この衛星通信の導入によりましてこのフェーディングによる通信品質の劣化ということはない次第でございます。  第三番目の利点といたしまして、この衛星通信は高い周波数を使用いたします関係で、高速度データ伝送等の、現在の中波あるいは短波帯では期待できないような不可能なサービスの要求にこたえることができる次第でございます。  次に、将来的には無線測位業務並びに船舶の遭難、安全にかかわる通信にかかわります業務の一層の改善に貢献できるというような内容を持っておる次第でございます。  短波通信に比べまして、この衛星通信が導入されますと、以上のようなメリットが期待できるわけでございます。  次のお答えでございますが、この海事衛星通信の出現によりまして、現在の無線従事者制度に対する影響でございますが、この海事衛星通信の出現によりましても、現在の無線従事者制度につきましては影響は生じない、そのように考えております。  以上でございます。
  212. 左藤恵

    左藤委員 そういった意味で、非常にいろんな意味のメリットというものが当然期待されるわけでありますが、これに一挙に参加するということでなくて、それまでの段階におきましてへ海事衛星につきましては現在マリサットというふうな一つの商業組織というものがあるわけであります。このマリサットというものと、そして将来のインマルサットの条約への——日本としては、マリサットというものを一つの足場にいたしまして、過渡的な通信措置といいますか、そういうものから経験を積んでいって、そして最終的にはインマルサットのところへ入っていく。そのためにもいまから条約を批准しておいて、そして、たとえば日本に地球局を建設するというようなことをすることによって、このインマルサットにおきましても大きな発言力を持つことができる。さらにまた、いろんな日本の技術というものをフルに生かすことによって、インマルサット自体におきましても十分なサービスの提供が日本の力でできるというところまで持っていきたいと私は思うのでありますが、そういった意味におきまして、インマルサット条約を各国に先駆けてわが国が批准するということは、私はそういう意味での大きな意味があろうかと思います。  そこで、現在ありますマリサットとの関係を含めまして、通信行政上の立場といいますか、日本がいま置かれている立場あるいは国際電電がこれからそれに対して一つの事業体としてどう積極的に取り組んでいくかという見通しについてお伺いをいたしたいと思います。
  213. 澤田茂生

    ○澤田説明員 お答えいたします。  ただいま先生の御指摘いただいたとおりでございまして、マリサット業務につきましては、去る四月十八日にKDDに対しまして試行役務といたしまして認可をし、業務を開始したところでございますが、これはインマルサットに至るまでの技術の修得という観点、さらにはそれまでの間の海事通信に対する需要にこたえるというものでございまして、最終的にはやはりこのインマルサット条約というものにのっとる一元的な海事通信の利用ということを私どもは考えているところでございます。  本件のインマルサット条約というものを早期にわが国が批准するということは、条約作成の段階におきまして重要な役割りを果たしてまいりましたわが国が、インマルサットの早期発足に積極的であるということを国際的に示すという意味合い、その上でマリサットからインマルサットヘの円滑な移行のための発言力を確保していくというようなためにぜひ必要なことであろうと考えておりますし、またKDDが国際通信というものを担当する日本における唯一の事業体として、今後このマリサットの経験を踏まえ、さらにインマルサットへ進むことによって、万全な海事国際通信の確保に努めるよう私どももKDDを十分指導してまいりたいと考えております。
  214. 左藤恵

    左藤委員 ぜひそういうふうにお願いいたしたいと思います。と申しますのは、これから一九八〇年代の通信というものを目指して、マリサットにおきましても、これはライフが五年というふうなこともありますので、次の第二世代のものをどういう内容にしたものを打ち上げるというようなことがすでに計画されておると思います。ことしヨーロッパにおきましてはマロツというものが打ち上げられる、こういうようなこともあります。いろんな意味で打ち上げの技術というものはアメリカがもう圧倒的な一つの指導的な地位にあるわけでありますけれども、通信を行う一つの機器としての衛星通信の球と申しますか、そういったものにつきましては日本は非常に技術的にすぐれておるわけであります。さらに地球局の建設、こういうものにつきましても非常に国産の優秀なものを建設することができるわけでありますので、そうした意味におきましても、将来の衛星通信組織という意味において、インテルサットにおきましてもインマルサットにおきましても、日本がそういう立場というものを確保するために、KDDだけでなくて、そうした日本の技術というものを十分生かすことができるような立場で、これは外務省におきましても郵政省におきましても、今後の運用について十分配慮をしていただきたいと思います。それが要望でございます。  それからもう一点、このインマルサットの条約の中のことでございますけれども、インマルサットの組織におきまして公用語とか業務用語ですが、これについて、条約には、運用規定にも何ら規定がないわけであります。こうしたことが見当たらないのですけれども、重大なことは明文化しておいた方がよかったと思いますが、この辺について何か外務省の方では御意見ございましょうか。
  215. 村上和夫

    ○村上説明員 このインマルサット組織の中に公用語及び業務用語についての条約上の明確な規定がないということは御指摘のとおりでございますが、そういう規定がない結果、公用語及び業務用語につきましては機構自身が決定できるということになるわけでございます。この政府間の国際機構の中におきましてこのような公用語とか業務用語がないという例も若干ございまして、たとえばIAEAとかICAOとかIMCOの場合にもそういうわけでございますが、御指摘のように、公用語及び業務用語をはっきりと条約の中に規定しておいた方がいいという便宜上の点はございますが、このインマルサットができました経緯の中で、実はいろいろの国が自国語を公用語及び業務用語にしようといたしましていろいろ交渉上のむずかしい点がございまして、最終的に妥協として規定を設けないということになった次第でございます。
  216. 左藤恵

    左藤委員 こうした機構におきましても、今後は発展途上国が数の上で非常に大きな地位を占めるということもありますし、一方、こういったものに対しましての分担金というものの負担もあるわけでありますので、そうした意味におきまして、当然先進国としての義務というものもあろうかと思いますが、一応私は、できるだけこういったものを事前に話し合うということにしておかれた方が、今後のいろんな条約の問題一つ取り上げてみましても、わが国にとってプラスではないか、このように思います。  時間もございませんので、私はもうこの辺で質問をやめますが、いま申しましたインマルサット組織というものに移行いたしますまでの段階におきまして、十分わが国の権益というものが発揮できるように、たとえば今月の終わりにも何かアメリカの方のコムサットゼネラル、会長が来日するというふうなことも伺っております。こうしたことで、たとえばマリサット第二世代というものがどんなものが打ち上げられるか、それに対応して日本が地球局を建設するということについてどういう準備をしていったらいいかということについても、十分そういった機会というものをフルに利用して、この条約を批准するまでの段階、そして批准してからの段階わが国の権益というものを十分発揮することができるように御努力をお願いいたしまして私の質問を終わります。ありがとうございました。
  217. 竹内黎一

  218. 井上一成

    井上(一)委員 まず、投資の奨励及び相互保護に関する日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定について質問を二、三いたしたいと思います。  最初に、エジプトとの投資保護協定は、わが国として初めてである。このような、投資活動、資産の保護を目的とした協定であるわけでありますけれども、特にエジプトと締結した理由及び、このような提案がエジプト以外の国からもあったように聞き及ぶわけでありますが、それが結実をしなかったというふうに聞き及んでおります。なのかどうか。エジプト以外の国との投資保護協定についての話し合いもなされたのか、あるいは現在なされておるのか、そういう点も含めてお答えをいただきたいと思います。
  219. 賀来弓月

    ○賀来説明員 お答えいたします。  近年わが国の対外投資はますます増加しておりまして、今後とも増加するものと私どもは矛想しております。したがって、国家間の協定締結によりまして投資財産の保護を図るという重要性がますます認識されるに至っております。かかる状況のもとで、エジプトは、日本以外の欧米の先進国と投資保護協定を結んでおりまして、わが国に対しても同様な協定締結を提案してまいったような次第でございます。  現在のところ、エジプトに対する対外投資実績は必ずしも高くはございませんが、エジプト経済の重要性にもかんがみ、今後ともふえる、それから、御承知のとおりエジプトはアラブ世界において政治経済的にも非常に重要な地位にある国でございまして、この協定締結によってわが国のアラブ世界との緊密化に貢献する、そういう配慮からこの協定締結交渉に入ったわけでございます。  その他の諸外国との投資保障協定締結でございますが、過去非公式な形で協定締結について打診があったことはございますが、具体的な形ではございません。現在も若干の国から非公式にその打診は二、三ございますが、私どもといたしましては、関係国の外資政策、投資環境あるいはその国とわが国との政治的、経済関係等諸般の事情を総合的に考慮して、投資保障協定のメリットというものを考えて、積極的に取り組んでいくというのが方針でございます。
  220. 井上一成

    井上(一)委員 二、三の国ともこのような話し合いがあったということです。もし差し支えがなければ、国名、そして締結を見られなかった理由を、ひとつ簡単にお答えをいただきたい、こういうように思います。
  221. 賀来弓月

    ○賀来説明員 過去、たとえばブラジルあるいは東欧の一、二の国から、協定締結してはどうかという、政府の正式な申し入れではなく、たとえばたまたまほかの用務で来日した係官が述べるとか、そういった提案でございまして、したがって、今日までに具体的な政府間の交渉を開始するという段階にまで立ち至っておりません。今後さらに検討してその具体的なステップを検討したいと、そういうふうに思っております。
  222. 井上一成

    井上(一)委員 この協定の内容は、従前の国際的フォーラム、いわゆる国際的会議などでの開発途上国の主張に比べると、非常に先進国側の立場が強く取り入れられておる協定だと解釈をするわけです。この協定の中身を審議するに当たって、さらに今後ともわが国が開発途上国との投資保護協定締結については、このような協定を一つのモデルというのか、スタイルというのか、そういうものにする方針なのかどうか、ひとつお伺いをしたいと思います。
  223. 賀来弓月

    ○賀来説明員 お答えいたします。  もう先生御案内のとおり、海外投資は、資本、技術、経営ノーハウを一体的に投資受け入れ国に移動させることによって、関係国の工業化、産業開発、雇用増大等に積極的な役割りを果たしているということは広く認められるところでございます。したがって、投資受け入れ国たる開発途上国にとっても、外国投資に対し一定の保護、保障を与えることによって外国投資の国内誘致を図るということは、これらの開発途上国にとっても非常に重要かつ必要な、利益に合致するところではないかと考えます。エジプト政府もこのような基本的な考え方に基づき、特に第四次中東戦争後は、エジプトの国内経済を開放しますし、諸外国からの外資導入に非常に積極的に働きかけている。そういった環境のもとにおいてエジプト政府日本に対し投資保護保障協定締結を先方から申し入れて、そして、エジプトがこれまで欧米の諸外国と結んでいる協定は一般国際法しの原則に合致したものでございましたものですから、日本としてもまた私どもの考える利益に合致するということで、この協定締結に踏み切った次第でございます。
  224. 井上一成

    井上(一)委員 開発途上国との投資保護協定を結んでいくということは、より安全であるという観点からは理解ができるわけですけれども、果たして政府が期待しているほど相手国が応ずるかどうか、これはまた疑問な点もあるわけなんです。それと同時に、先ほども指摘をしたように、非常に先進国側の立場というものが強められておるという、いわゆる保護協定であるという性格からやむを得ない部分も若干は私は認めざるを得ない、理解ができるわけですけれども、むしろ経済帝国主義というふうにとられるおそれも、その反面あるわけであります。あるいはまた、植民地主義の姿勢であると非難を受けるおそれもあるということであります。こういう協定が、当然投資保護の立場に立っての協定ですから、いま申し上げたように開発途上国の立場を十分理解をしているのだとお答えになろうかとは思いますけれども、その中身というものは、非常に先進国側の立場を強めておるというのがその中身であります。こういうことについて、あえて私はここで帝国主義いわゆる植民地主義、経済帝国主義という言葉を出したわけですけれども、そのような誤解を多分にはらんでおるというふうに私は理解をするのです。外務大臣、外務省としてどういうふうにお考えなのか。そういう点を十分配慮された中で開発途上国との経済協力関係を私は結んでいくべきであると考えるわけですけれども、外務大臣としてどのようにお考えでありますかをお尋ねをいたします。
  225. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国の企業が発展途上国に進出いたします場合には、やはり発展途上国の産業あるいは住民の福祉に協力をするという態度でなければならない、こういうふうに考えるところでございます。そういう意味で、従来から企業の進出に対しましていろいろと批判があったわけでございますけれども、近来はわが国の企業の進出につきましても、大分いわゆるお行儀はよくなってきたというふうに聞いておるところでございます。  日本とエジプトとの間は、従来から東南アジアにおきますような情勢にはないわけでございましたが、これからの日本が中近東方面と交流を深める上ではやはり民間の方々の進出というものが必要であろう、こう思うわけでございます。しかし、それが先方の経済にやはり協力をするという趣旨でなければならないというふうに考えるところでございまして、今後ともこのような点については私どもも関心を持っていくべきことであろうと思います。そのような注意をしてまいらなければならない、このように考えております。
  226. 井上一成

    井上(一)委員 五月十一日にエジプトの債権国会議が開かれているわけなんです。経済の再建にエジプトが努力をしておる、こういう形の中でわが国も当然支援すべきであり、開発途上国の立場に十分理解のある姿勢を示していくべきだと思うわけであります。私は、この協定がそういう意味合いを含めた中で、開発途上国から見て果たして公平な協定と言えるのであろうかどうか、若干の危惧を持つわけでありますけれども、いかがでございましょうか。先ほどから指摘をするように、いわゆる開発途上国の必要に迫られた経済回復というか、経済的な支援体制というか、そういうことについて余りにも先進国側に立ったきらいもあるのではないかというふうにも理解するのですが、その点についてもう一度重ねて伺いたいと思います。
  227. 加賀美秀夫

    ○加賀美政府委員 お答え申し上げます。  五月十一日、十二日にパリにおきましてエジプト援助国会議が開かれましたことは御案内のとおりでございます。その場におきまして、諸国それからエジプト政府自身から、エジプト経済の現況それから今後の見通し等につきまして議論が交わされました。日本もそれに出席いたしております。日本といたしましては、この援助国会議の結果を踏まえまして、日本のエジプトに対する援助の継続、さらに促進ということを考えていきたいと思っておるわけでございます。  それから先生御指摘の投資保護協定におきます先進国寄りの考え方と申しますのは、エジプトは他の諸国と同じような協定を結んでおりまして、日本がいわゆる先進国寄りの規制をエジプト側に押しつけたというようなことはございません。本来この協定はエジプト側の希望もあって締結いたしたものでございまして、日本、エジプト双方の利益になるものと確信いたしておるわけでございます。ただ先生御指摘のように、今後開発途上国との同種の協定締結に当たりましては、やはり開発途上国側の利益、それから主張等も十分に考慮いたしまして、日本それから開発途上国の双方に利益のあるような協定を結んでいきたい、そういうふうに考えております。
  228. 井上一成

    井上(一)委員 本協定の第五条の中で、一項で投資財産及び収益に対する「不断の保護及び保障を受ける。」というふうに明記されているわけです。「不断の保護及び保障」とは具体的にどのようなことを指すのか、お尋ねをいたします。
  229. 賀来弓月

    ○賀来説明員 お答えいたします。  不断の保護、保障とは、文明世界において一般的に外国人に対して与えられる最低限度の水準以上の保障、そういう意味でございます。それで「保護及び保障」という言葉を使ってございますが、いずれも同様の意味でございまして、この表現わが国が従来ほかの協定において使った言葉を引用した、そういう意味がございます。この言葉は、具体的な意味というよりも、国際法上の一般原則を表明しているということのほかに、今後投資に関連して具体的な紛争が生じたときに一つのガイドラインを与える、そういう意味がある規定でございます。
  230. 井上一成

    井上(一)委員 いわゆる国内標準主義を取り入れるんじゃなくて、国際標準主義の義務を負う、いわゆる国際標準主義で合意したんだというふうに理解をしていいのですか。
  231. 賀来弓月

    ○賀来説明員 お答えいたします。  これは従来の一般国際法において認められている原則をこの協定の中に導入したという趣旨でございます。
  232. 井上一成

    井上(一)委員 さらに二項でも「収用、国有化若しくは制限又はこれらと同等の効果を有するその他の措置の対象としてはならない。」保護条約として当然であるというふうにお答えになるかもわかりませんけれども、何度も繰り返すように、大変有利な形の中で、いわゆる開発途上国の立場というものを十分理解しておらないのではないか、あるいはわが国の投資保護のみに何か重点を置いたようなきらいがあるのではないかというふうに思うわけです。そういう点について、さらに両国にとって投資それ自体がお互いの経済発展の基礎をもたらすのだ、基礎になるのだというふうに私は願いたいと思うわけであります。  なおまた、七三年の秋の石油ショックの際に中東に派遣された当時の三木特使は、二十億ドルを超える経済協力を大枠として約束してきたと言われるわけであります。この際に私はお尋ねをしたいのであります。そういう約束をしてきたことがその後どのように発展をしていっているのか、進捗状況というか、ひとつ経過を踏まえた中でお答えをいただきたい、こういうふうに思います。
  233. 三宅和助

    ○三宅説明員 先生御指摘のとおり、三木特使が七三年に参りましたときに、エジプトに対しまして六百八十億円の円借款を約束したわけでございます。そのうち、まずエジプトの商品借款といたしまして百五十億円、これはそのうち七十五億円を第一期分といたしまして交換公文を締結したわけでございますが、その後、残りの七十五億円にさらに七十五億円足しまして百五十億円の新規の商品借款を行ったわけであります。そのほかエジプト・スエズ運河拡張計画に対しまして、円借款三百八十億円を昭和五十年の四月に交換公文の締結をしております。その後、五十一年の七月にはアレキサンドリア港改修計画に対する円借款、これは五十八億円の金額の交換公文を締結しております。さらに、エジプトの大カイロ水道改善計画に対しまして五十八億強の円借款を五十一年の十二月に行っております。したがいまして、六百八十億円のうち三十三・八億円を除きまして、全部コミット済みでございます。残りの三十三・八億円というのは、まだ先方から具体的なプロジェクトについての提示がない。もちろん、あり次第、われわれとして適当と認めた場合にはこれに対してコミットをするというような段階になっております。
  234. 井上一成

    井上(一)委員 わが国の海外経済協力のあり方についてとかく批判されがちなのでありますが、その援助政策に計画性の欠けることがその批判をされる要因になっておるのではないか、政府自身にこのような援助問題を扱う中心的窓口というものがない、いわゆる一件主義、そのときそのときの一件主義がそのような批判を受ける要因をもたらしているのだ、こういうふうに思うわけです。外務大臣、いかがでございましょうか。わが国経済援助に対してとかく批判があるというその根底には、そういうような要因があるのだと私は理解するのですけれども、外務大臣の御意見はいかがでございますか。
  235. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国経済協力の部面におきましていろいろ批判がございます。その中にはいろいろな見地からの批判があろうかと思いますが、援助が、予算の段階ではいろいろな計画、算定をいたしましても、これがなかなか消化が思うようにいかないという問題もあるのでございます。これらのいわば事務が円滑にいかないということがどこにあるのかということにつきましても、いろいろな見方がございます。各省が皆一致をしないと援助が進まない、関係省が集まりますと、その中の一つの役所が反対をすると事が進まない、こういうようなことが言われることもございます。これらの点につきまして、私自身何とかこれを改めたいと思っておるところでございますが、なおお気づきの点がありましたならば御指摘を賜わりたい。確かに批判も多いことでありますし、これから改善すべき点が多いだろう。また、機構の問題につきましても、党の方でもいまいろいろ検討をされていると聞きますけれども、機構等につきましてもやはり問題はあるだろうとは思っております。しかし、これは長い間のしきたりの集積がございまして、なかなか一朝一夕に直らない複雑な背景を持っておりますので、これにつきまして、鋭意改善の方向を見出してまいりたい、このように考えております。
  236. 井上一成

    井上(一)委員 いまの外務大臣お答えで、体制の検討、改善をしていこうという御意思については全く同感だし、ぜひそうあるべきだと思うのですけれども、私はここで少し具体的に、このような経済援助問題を扱う外務省の窓口、それから大蔵省、通産省、経済企画庁の窓口をお教えをいただきたい。なお、そのような窓口での定期的な協議が持たれておるのかどうか。私はぜひ必要だと思うのですけれども、そういうことが持たれておるのかどうかということについてもお尋ねをします。そして、それらの取りまとめの責任の担当はどこなのか。あるいは先ほどのお答えで、体制の検討、改善をするというお答えがあったわけですけれども、さらに私からも、十分に現在の体制を検討し、改善をしていって、実効性のあるいわゆる窓口一本化を促進すべきであろう、こういうふうに思うわけです。  さらに、その運用面で関係省庁と関係機関が非常に複雑に絡んでいるというふうに聞き及ぶわけであります。そういう意味で、日本輸出入銀行、海外経済協力基金、あるいは国際協力事業団、国際交流基金等の実行機関ですが、そのような機関はこれらの経済援助を果たすためにどのような役割りを果たしているのか、具体的にひとつ数字をもってお答えをいただきたい、こういうふうに思います。
  237. 三宅和助

    ○三宅説明員 経済協力につきましては、中身が非常に多岐でございます。したがいまして、ある外国からの援助要請があります場合に、外務省を通じまして参ります。外務省は、これを技術協力の場合と円借款の場合に二つに大きく分けて考えますと、技術協力につきましては、外務省が主管しております国際協力事業団を通じまして一元的に実施しております。ただし、関係各省に、もちろん技術的に関係する分につきましては、その都度相談しながら実行しております。  それから第二の無償一般案件につきましても、これまた外国からの要請と日本から見た国益という総合的な観点を外務省が判断いたしまして、関係各省と協議いたしまして、これが直接実施しております。  それから円借款、これは日本の援助の六割見当が円借款になるわけでございますが、この六割の円借款につきましては、これまた外国からの要請が外務省を通じて参ります。外務省といたしましては、経企、通産、大蔵省、四省の間で十分ケース・バイ・ケースで協議いたします。それぞれの担当官庁からの専門的な意見を聞き、そこで四省の協調体制を図って決定するという仕組みになってございます。一たんこれができました際には、実施問題といたしましては、基金の執行を通じまして基金にこれをゆだねる。基金がこれに対して、もちろんローンアグリーメントをつくりましてこれを実施しているというような体制になっております。確かに先生御指摘のとおり、慎重に検討する余りに若干手間取っておるきらいもなきにしもあらずと思いますが、最近非常に四省協調関係がうまくいっておりまして、事務の迅速化を図っておりますし、またどうやってディスバースを早めるかという方策につきましても、常時、課長レベル、次長レベル、局長レベルということで促進策を検討中でございます。ほとんど毎日のように会っておりまして、四省間で単なるケース・バイ・ケースの案件のみならず、今後の経済協力をどうやって慎重かつ有効にこれを実施し得るかということにつきまして常時協議中でございます。  金額につきましては、日本のODA関係予算が全部で今年度につきましては五千四百億円ついております。執行率は、そのものによって違いますが、大体七割五分現在執行されておる。その六割が円借款ということで基金にやっておりますし、それから事業団関係は、ちょっといま数字は持っておりませんが、全体のODAの約一〇%、技術協力ということでございます。それ以外にマルチ、要するに国際機関に対する拠出でございますが、これが約二割五分以上になっております。これがたとえばアジ銀なり、世銀なり、それからUNDPなりという国際機関に対する拠出という形になっておりまして、これにつきましては、相手国分に対して国際機関にぽんと払い込むというかっこうになっております。
  238. 井上一成

    井上(一)委員 ケース・バイ・ケースで、毎日のように話し合いをしているのだ、答弁としては私は非常にきれいと思うのだ。しかし、そういうことが実を結んでおらないということもまた事実なんですよ。だから外務大臣も先ほどの答弁で、制度、体制、機構それ自体についても改善をしたいというふうに、改善をすべきであると、私の提案に対してもお答えをいただいているわけなんです。私は、大蔵、通産、経済企画庁の窓口はどこですかということも聞いたのです。一件ごとに窓口が違うというなら、このお答えはそれで結構です。
  239. 三宅和助

    ○三宅説明員 外務省は経済協力局がございまして、政策課が特に中心になりますが、そのほか通産省は経済協力課がございます。それで経済協力課が窓口になっております。それから経企庁につきましては経済協力一課でございます。それから大蔵省は国際金融局の投資二課が中心になって窓口になっております。主にそういう窓口課を通じまして四省間で十分協議を行っておるという状況でございます。
  240. 井上一成

    井上(一)委員 この問題については、さらに実効性のあるいわゆる経済協力を促進するための最善の努力を要望しておきます。  さて、七三年の末にカイロを訪問した三木特使が、経済関係だけでなく文化交流も盛んにしたいということをエジプト側に申し入れたと聞き及んでいるわけです。具体的にはカイロ大学の文学部に七四年の三月から日本語科が設置されたわけです。そして二人の教師が派遣をされた。ところが七七年の秋の新学期までに二人の増員を要求し、存続の危機に立たされていたが、その要求を受け入れ、解決したと聞いておるわけであります。学生の志望者も非常に親日派が多くおるということも手伝って、非常に文化交流——いわゆるカイロ大学のそのような二人の増員を要求したことに対して、これが認められないなら新入生の募集を打ち切るという方針まで打ち出したわけですね。そういうことで私は経済協力と相並行した中で文化交流をうんと促進をしなければいけない、こういう考え方に立っているわけであります。そうすることが日本に対する十分な理解を求められるし、先ほども申し上げたように日本に対する一人でも多い理解者が開発途上国においてふえていただくというか、理解者が多くなるということになるわけですけれども、文化交流については非常に消極的だと私は思うのです。そういう点についてひとつ外務大臣、いかがでございましょうか、いまの日本政府の文化交流の状態というものをどういうふうに把握されておるのか、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  241. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本は特に経済大国、こう言われて、貿易面で大変な黒字を出しておる、こういうことが言われております。こういう問題に取り組みましても、やはり日本がいわゆる経済外交主体ではないか、こういうようなことが言われておりますから、私といたしまして文化交流を盛んにする必要を痛感をいたしておるところでございます。ことしの予算で国際交流基金に五十億円の出資を、これは福田総理の御指示で追加要求をいたしまして計上していただいたわけであります。しかし、これは元金でございまして、その金利分が使えるわけでございますので、それだけでもってそれほどいばれるわけではないのでありますけれども、しかし昨年は計上されなかった五十億円の出資を計上したということは、これは姿勢としてこの文化交流に非常な熱意を持っておるということを示したいがためであったというふうに考えております。今後とも文化交流には一層の力を入れていくべきものと考えております。
  242. 西宮一

    西宮説明員 先生の御指摘ございましたカイロ大学の日本語学科の問題でございますが、現在国際交流基金を通じまして海外の日本語教育機関に派遣しております日本語の講師の数は、四月一日現在で三十四名でございます。このうち、現在までカイロ大学に二名の日本語教師を派遣しておったわけでございますが、ただいまお話にございましたように、さらに二名の増員をしてほしい、こういう希望がわが方の出先の大使館を通じて寄せられまして、私どもの方も事情を調査いたしまして、その結果といたしまして本会計年度じゅうに二名の増員を実施する、こういうことにいたしました。  なお、先ほど先生御指摘のとおり、この日本語学科におきます学生は当初約四十名で出発しましたが、ことしの秋以降の新学期では約百二十人に達する、こういう見込みでございます。
  243. 井上一成

    井上(一)委員 さっき私があえて経済帝国主義的な感覚があるのではないかということを申し上げたわけなんです。私はやはり文化交流をより優先する中で経済交流もより強めていくことが非常に望ましい、こういう考えなんです。ちなみに、私自身はそのカイロ大学の日本語科の中でどのような教育がなされているかということは十分存じ上げておりませんけれども、私の承知しておる中では、その中での日本語の教科書というものもベトナム人用の日本語の教科書を使っているんだというように理解をしているのですよ。さらに、いわゆる基金の枠は一国二人だという枠があるわけですけれども、アラブ二十カ国の中で日本語科を持っている大学というのはカイロ大学だけなんですよ。そういう意味からすれば、仮に四十人を派遣したっておかしくはないわけなんですね、単純計算によってでも。そういうことを考えると私は、非常に文化交流という面で外務省は一体何を考えているんだ、経済協力を前面に打ち出して、いわゆる文化交流、金もうけ主義に走らない人間的な人間同士の交流、友情を深めていこう、そういうことについては非常に外務省は力を入れておらないというふうに断定せざるを得ない、もっともっと文化投資をすべきであるというふうに考えるわけなんです。これはぜひ外務大臣に私は意見をお聞きしたいわけですけれども、それ以前に私なりの意見も提案として申し上げて、外務大臣のお考えを聞かせていただきたい、こういうふうに思います。  なお、現在エジプトに対して文化交流予算がどれほど組まれておるのかということも念のために聞きおきたいと思います。  開発途上国に進出する商社なり、いわゆる企業に、そこに投資する投資額のたとえば一%の額をいわゆる文化基金、文化投資として負担をさす、そういう企業あるいはそこにおいて経済活動をするそれぞれの団体に対して、文化基金を総投資額の一%を義務づけることが非常にいいのではないだろうか、いわゆる民間の投資基金というものを有効に使っていくことも一つの策ではないか、私はこういうふうに思うのです。そうすることが文化交流、経済交流相まった中での望ましい相互協力関係が結ばれるというふうに私は理解をするわけです。このエジプトとの投資保護条約協定を結ぶに当たってひとつそのように文化投資に対して民間投資、民間基金を投資に向ける提案、私なりの考えを提案にして質問をするわけですけれども、外務大臣いかがですか、あなたのそれ以上によい方向、お考えがあれば聞かしていただきたい、こういうふうに思います。  なおまた文部省にもこの点についてはさらにその所見を承りたい、こういうふうに思います。
  244. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま大変文化交流につきまして御熱意のあるお話を承りまして、私自身も、先ほど申し上げましたように、文化交流は本当にこれからますます大事になってきつつあると思います。そういう意味で、ただいま投資額の一%というお話もございました。私は、いまの貿易の黒字につきまして先ほど触れましたけれども、投資に応ずるのも一つの方法でありますし、また貿易額の方がよほど大きいものですから、そういうものに応じてもいいのじゃないかという気もいたしますし、それはなかなか定額としては実際問題としてむずかしいかもしれませんが、貿易界の企業に対しまして文化交流に対します貢献を私自身も呼びかけておりますし、これは何とか実現をいたしたいと考えております。ただ従来、実は国際交流基金に対しまして民間の拠出というものが予定をされておるわけでありますけれども、それすらも景気が悪い時代になりますとなかなか集まらないというのが実情でございます。しかしその点につきましては、文化交流の緊要性にかんがみまして、なお今後とも関係の貿易界等に呼びかけを強めてまいりたいと思っております。
  245. 七田基弘

    ○七田説明員 文部省といたしましても、やはり国際交流の関係関係をいたしております。従来その国際交流につきまして非常に弱かったということは痛感をいたしておりますし、今後その拡充を図りたいというふうに考えております。  文部省は教育、学術及び文化、この三つの分野を所掌いたします省といたしまして、それぞれにきめの細かい事業をやっていかなければならないわけでございますが、さしあたりまして学術の分野につきまして、文部省にございます学術審議会で開発途上国に対する学術協力の問題の審議をお願いしております。また外務省ともいろいろ御協力いたしまして、たとえば先ほどございましたカイロ大学への教員の派遣にいたしましても裏方を務めておるわけでございますが、こういう問題につきましても今後とも御協力をしていくという考え方でございます。  ただ御承知のとおり、国際交流といいますのは、ある意味では国内の体制がかなり固まりませんとなかなかうまくいかないものでございます。そこがまた文部省のつらいところでございますが、先生の御趣旨を体しまして、私どもとしてもまたがんばっていきたいというふうに考えております。
  246. 竹内黎一

    竹内委員長 交流の予算は……。
  247. 西宮一

    西宮説明員 エジプトとの文化交流の実績は、昭和五十一年度のまだ正確な数字は出ておりませんが、大体三千五百万円ぐらいかと私どもは推定はしております。そのような状況でございまして、昭和五十二年度はどうなるかという点につきましてはこれまた確定数字というものを申し上げられない段階にございます。  事業の内容としましては、人物交流でございますとか日本研究の促進、日本語の教材の購送、図書援助、現地の日本語講師の謝金、映画、テレビフィルムの購送、各種の展示事業等でございます。  なお先ほど先生の御指摘ございましたカイロ大学日本語学科への援助の問題でございますが、国際交流基金の方では、カイロ大学に対しまして先ほど申しました日本語講師の派遣、それから日本語の教材の援助並びに現地の日本語講師の謝金の援助、さらに日本語講座の中で成績優秀な方を日本に呼ぶ、こういう仕事をしております。
  248. 井上一成

    井上(一)委員 さらに詳しく質問をしたいわけですけれども、とまれ私の質問趣旨は、経済交流優先でなく文化交流も並行して、むしろ経済交流よりも文化交流を優先させるべきである、こういうことを申し上げているのであって、いまの額にしても非常に微々たる額であるし、あるいは対策等についても非常に手ぬるい、こういうことです。だから関係各省が文化交流に対して十分な配慮をするよう、さらに強く私の方から要望をしておきます。  そこで、この協定の案文とは少しそれるかもわかりませんけれども、いま申し上げたように世界の各国すべてにわが国の実情を十分理解してもらうためにも文化交流を優先すべきである、そしてお互いの信頼と強い友情を打ち立てるべきであるということを常々申し上げているわけですが、ここで私は若干の時間、あえて毎回私が申し上げておる国際人権規約の問題についてお尋ねをしたいと思うわけです。  一九六六年に国連において採択をされてもう十一年たったわけであります。いずれの時点においてもこの国際人権規約については、日本国憲法の前文及び憲法の趣旨に照らしても、崇高なその理想あるいは理念、全くどこをとっても障害になるべき点あるいは何らの疑問点はないと私は思うわけであります。このことについては外務大臣からできるだけ早い機会に批准をいたしたいという答弁をいただいておるわけでありますが、改めてここでもう一度外務大臣として国際人権規約の早期批准についての私の質問に、簡単で結構でございますから、ひとつお考えを承りたいと思います。
  249. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私は、日本という国は人権が最も尊重されている国であるというふうに実際問題として考えております。そういう意味日本がこの国際人権規約を批准できないということはまことに残念なのでございます。そういう意味でこの人権規約の批准ができますように今後一層の努力を払いたいと思います。
  250. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣は、いわゆる日本は人権が尊重される社会であるというようにおっしゃられたわけでありますし、国際人権規約の批准がいまだなされておらないことはまことに残念である、私もまことに残念なのであります。  そこで、ひとつきょうは、もう多くをお尋ねいたしませんから、国際人権規約を批准することについて賛成なのか、あるいは今日まで十一年間、国際人権規約を批准することに何が障害になっておったのか、なぜ批准できなかったのか、まず総理府からお尋ねをしたいと私は思います。
  251. 今泉昭雄

    ○今泉(昭)政府委員 お答えいたします。  国際人権規約につきましては、私ども最近いろいろ問題になっておることは承知しておりますけれども、総理府の同和対策といたしまして、この問題が果たして同和問題と直接的に結びつくかどうかという点につきましては、いろいろ問題があると思って、ただいま検討している次第でございます。
  252. 井上一成

    井上(一)委員 私は国際人権規約の批准について、総理府からはきょう同和対策室長がお見えなのですが、いま外務大臣から、早期批准ができないということは大変残念である、こういうお答えがあったわけですけれども、総理府の同和対策室長としては検討中なのですか、それとも早期批准をすべきであるというお考えなのか、まだ猶予すべきだというお考えなのか、どちらですか。
  253. 今泉昭雄

    ○今泉(昭)政府委員 私どもの所管の問題でございませんので、私の所掌事務といたしましては、これにつきましての判断は差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一国民の立場に立ちますれば、この問題につきましては、やはり人類は皆友達である、きょうだいであるというような立場から考えれば、早期に批准すべきであると国民としては考えます。
  254. 井上一成

    井上(一)委員 この問題では余り時間をとりたくありませんが、私の方もさらにいまの総理府の同和対策室長質問もいたしたいわけですけれども、これはいま国民としてということでしたが、私は実は同和対策室長としてぜひお答えをいただきたかったわけであります。所管でないということですけれども、私はその点については、まだ国際人権規約があなたの所管であるとかないとか——総理府にも非常に関係のある条項かたくさんあるわけなんです。そういう点についてはさらに機会を改めてお聞きをいたします。  法務省、そして労働省、文部省、厚生省あるいは国際人権規約にかかわる国内法とのかかわり合いを持つ各省の意見をひとつ聞かしていただきたい。
  255. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 国際人権規約、いわゆるA規約、B規約二つございます。私ども法務省といたしまして、いかなる点が障害になって、たしかこれはまだ署名をしておらないと思いますが、署名、さらには批准に踏み切れないでおるのかという角度からの先生のお尋ねお答えをしたいと思います。  まずA規約、いわゆる経済的、社会的及び文化的権利に関する規約でございますが、この第六条の規定に、かいつまんで申しますと、規約の当事国はすべての人に対して本人が自由に選択する労働、仕事に従事する権利を保障するのだ、こういう趣旨の規定があるわけでございます。  このすべての人というのは、どうもこの規約のほかの規定などと総合して読みますと、規約の当事国の自国民だけでなくて、当事国の領域内にいる外国人をも含むと読まざるを得ないのではなかろうか。もし外国人を含まないということでございますと、私ども法務省といたしましては最初から特段に問題意識がないわけでございますが、外国人を含むということになりますと、具体的な例を引いてみますと、私は日本を観光したいので日本に来た、そういうことであればどうぞ日本にお入りください、いわゆる入国を許可いたしましたところが、その後になってその外国人が、たとえばバーのホステスをして働くとか、あるいは留学生でございますと言って来た人が芸能活動のようなことをするとか、自由に選択する権利があるのだから規約の当事国はそれに対してとやかく介入、制限、干渉できないではないかというようなことになっては、これは実は法務省の中では入国管理局の所掌事務でございますが、入国管理の仕事の基本が揺るがされることになるのではなかろうか。それがA規約につきましての法務省の問題意識でございます。  なお、ほかにも若干の問題意識を持つ点がございますが、答弁の正確を期するという意味合いで、ほかの問題点につきましては法務省の他の部局の係官からお答えをいたしたいと思っております。  いま申しましたすべての人に外国人を含むと読まざるを得ないだろう、常識的に考えましてどの国でも外国人に本人の望むとおりの職業活動を無制限にやらせておる国はたしかないと思いますので、しからばA規約の六条に言うところの自由に選択する権利と言っても、それはおのずからそれぞれ当事国の国内法令上の制限に服すると読めばいいではないかという考えもあるのでございますが、もしそういう読み方をいたしますと、逆に今度は、そんなわかり切ったことならば何も規約に書く必要はないではないか、規約に書いてある以上はやはり国内法いかんにかかわらず規約による制限を受けるのだということになるのではなかろうか。その辺が国内法の立法過程と違いまして、いわゆる議事録的なものもないようでございますので、どうもしかとつかみかねるというのが実情でございます。  なお、ほかの関係部局から御答弁をしたいと思います。
  256. 土肥孝治

    ○土肥説明員 それではいわゆるB規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約の方でございますが、この規約で法務省側で問題にいたしておりますのは、二十条の一項の戦争のための宣伝、それから二項の差別的または暴力の扇動を構成する国民的、人種的または宗教的憎悪の衝動をそれぞれ禁止するという点でございます。  これにつきましては、この禁止の条項が、結局、罰則を設けた国内立法というものを義務づけるということになりますと、そもそもその概念がいささかはっきりしないということで、罪刑法定主義に反するのではないかという問題だとか、あるいは一方基本的人権として非常に尊重することが言われております表現の自由という憲法二十一条に反するのではないかという、こういった問題がまだ未解決のまま残されておりますので、こういった点についてさらに検討の必要があるのではないかということを申し上げておる次第でございます。
  257. 井上一成

    井上(一)委員 私はきょうは、条約審議の中の限られた時間で、あえて国際人権規約もエジプトとの経済協力関係という中で持ち出して、簡単明瞭、ごく平易な形で質疑をしたかったわけでありますけれども、いまの法務省の見解等を踏まえた中で、あえてこれは時間をかけて、各省のお答えを聞くまでに、法務省のいまの答弁に対してさらに質問をしたい、こう思います。  前後になりますけれども、二十一条の表現の自由というものは、どのように理解をしているのですか。
  258. 土肥孝治

    ○土肥説明員 表現の自由と申しますのは、要するに憲法でも保障されております基本的人権の中においてもきわめて重要なものであって、内心に抱いた思想とか、そういったものを表現するに当たっていろいろ規制を受けない自由であるというふうに一応理解いたしております。
  259. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ具体的に、内面に持つ考えをすべてそのとおりにあらわすことを表現の自由だとおっしゃられるのですか。内面に持つすべての考えあるいはそのものを、すべて表に出すということが表現の自由だとお考えになられるのですか。
  260. 土肥孝治

    ○土肥説明員 要するに、内心のことを何らかの形で外部に表現する以上、それはあくまで表現の問題である、これについて自由が保障されなければならないというのが基本的な考えじゃないかと思います。
  261. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、その表現によって生きることさえ保障され得ないような事態が起こり得る表現も、表現の自由だと理解をするのですか。
  262. 土肥孝治

    ○土肥説明員 ちょっと御質問趣旨がわからない点もございますが、この表現の自由というのを憲法の分野において考えました場合に、全く無制約のものであるかどうか、おのずからそこに制約があるのではないか。たとえば他人の基本的人権を害するような表現の自由というものは、そこでおのずから制限を受けるのじゃないか。また、憲法上の問題をとらえても、公共の福祉に反するようなものはぐあいが悪いのではないかとか、そういった制約、これは内在的制約と言っていいのか、あるいは憲法上の公共の福祉の問題からの制約ととらえていいのか、そこは問題がございますが、そういった点で制約を受ける場合は当然起こり得るのではないか。たとえば刑法においても、他人の名誉を棄損するようなものは処罰されますし、侮辱に当たるようなものも処罰されるということはあり得ると思います。
  263. 井上一成

    井上(一)委員 名誉だとか侮辱だとかいうことではなく、それ以前の問題として、具体的に私の質問趣旨がわからないとおっしゃられるなら、あえて申し上げましょう。  差別的な発言が、それすらも表現の自由だとおっしゃるのですか。あなたの答弁の中で非常に大事な問題が含まれておる。すべて意のままに思うことを表現する。いまの答弁で初めて憲法の枠ということが言われたわけです。私は表現の自由というものは憲法の枠の中にあってこそ許されるべき問題である。いまの日本の憲法は基本的人権を認め、かつまた平和憲法である、主権在民であるというこの基本的な理念の中に立って日本国憲法は成り立っているのじゃないですか。差別的発言もすべて表現の自由だとあなたはおっしゃるのですか。
  264. 土肥孝治

    ○土肥説明員 その基本的な点においては先生のお考えと私どもの考え、全く一致しているのでございまして、決して表現の自由というものは先ほど申し上げましたように全く無制約のものであるというふうには考えておりません。(井上(一)委員「最初の答弁はそうだったじゃないの」と呼ぶ)いえ、それは一般的に表現の自由というものはどういうものかという御趣旨お答えしたのでございまして、決して無制約なものだということで申し上げているものではございません。
  265. 井上一成

    井上(一)委員 私が、生きることさえ保障され得ないのだと言うことは、やはり差別によって生きることすら十分保障され得ない人々も現にいらっしゃるわけなんです。そういうことについて国際人権規約の中で障害になる差別発言あるいは差別への禁止の問題、戦争への禁止の——日本の罰するとか罰さないとかいうことは私は別だと思うのです。そういうことを処罰をすることの対象に置くということはこれはまた別の問題だ。しかし戦争を扇動したりあるいは差別を扇動したりすることの禁止、これはいまの日本の憲法からすれば当然私はあってしかるべきだという私なりの考えを持っているわけなんです。ところが、それが表現の自由を損なうんだということになれば、差別発言もそれまた表現の自由か、こういうことになるのですよ。いかがですか。そういうことについて、表現の自由というものは何を言ってもいいんだ、思っていることを何んでも言葉であらわしていくんだ、あるいは文字であらわすんだということにはならないのですよ。おわかりですか。いかがなんですか。
  266. 土肥孝治

    ○土肥説明員 その点においては私どもも別に異存はないわけなんでございますが、ただこの条約の禁止の場合に、先生御指摘のように全くこれは刑罰の対象としないというように考えていいものかどうか、そこが非常にわれわれとしても心配いたしておるところでございまして、結局禁止を実効あらしめるためには刑罰というものまで考えなければならないということになりますと、そこにおのずから問題が生じてくるのではないかということを最初に申し上げた次第でございます。
  267. 井上一成

    井上(一)委員 刑罰を主体に考えるのではなく、いま言うように、そのような差別発言を含めてあらゆる人権侵害あるいは戦争への誘導、そういうことに対する扇動を禁止することについては私は当然だと思うのです。その点についてはいかがですか。
  268. 土肥孝治

    ○土肥説明員 その点につきましては全く先生と同意見でございます。
  269. 井上一成

    井上(一)委員 法務省の参事官、土肥参事官に、私はあなたの先ほどの答弁、当初の答弁、もう一度ここで議事録を見なければいけませんけれども、あなたも潜在的にすべて表現することが、あからさまに内面に持つものをすべて表現することが表現の自由だというように私は理解をしたのだけれども、そうでないとするならばそうじゃないということを明確に。私はそうじゃないと思うのですね。そういうことがあってはいけない、こう思うのですが、私の考えに同感なのかあるいはあなたが別の感覚を持っていらっしゃるのか、もう一度ここで改めて答弁をしてください。
  270. 土肥孝治

    ○土肥説明員 憲法上で保障されておる表現の自由につきましても、憲法の公共の福祉とかそういったことでおのずからその制約があるということは、これは先生おっしゃるとおりであるということに間違いございません。
  271. 井上一成

    井上(一)委員 さらに藤岡官房参事官に、あなたは先ほど労働の保障、これを言われたわけです。観光で入って、それをあたかも今度は何らかの形で職業保障を要求される、あるいはそういう場合に非常に法務省としては困るのだ、そういうことが支障なんだ。ぼくはおかしいと思うのですよ、その解釈は。やはり観光という一定の条件を具備した中で入国を許可しているのですから、そんな理屈は成り立たないんだ。だから法務省としては、この国際人権規約と取り組むことに真剣に努力をするのだということなのか、あるいは何でもいい、ひとつ理屈をつけて批准をすることをおくらすのだということなのか。いまの支障になる具体的なその一例を挙げられたお答えの中では私はどうも納得がしがたいわけなんです。だからそういう点も、いま私が言ったように、条件をつけた条件的な入国なんだからそういう点については何ら私は国際人権規約には触れない、抵触をしないということに理解をしているわけです。ここで職を求めて永住を、あるいはここで生活を日本に求めて働きたいのだという形の中での入国は、職安を通して職のあっせんをしていくのだ。これは当然なんですよ。ところが観光で来て、その観光の条件で入国を許したのに、やあどこそこで働くのだ、何か風俗営業のそういう関係機関で働くのだ。ぼくはおかしいと思うのだな。そういう論理展開というものは、私の常識ではどうも相入れないわけだ。そういう点についてもう一度法務省の見解を聞かしていただきたい。
  272. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 お答えをいたします。  私の例の引き方、あるいは不適当だったかとも思いますが、法務省あるいは入国管理局は、何とか理屈をつけてこの規約の署名ないしは批准をできるだけ引き延ばしたいなどとはさらさら考えておりません。むしろそうでなくて、法務省には人権擁護局という局もございます。人権につきましては恐らくはかの諸官庁よりも具体的で切実な関心を持っておるわけでございまして、確かに先生おっしゃいますように、常識的に考えてそんなことはあり得べからざることではないか、観光だからいいでしょう、お入りくださいと言った人が、一たん入ってしまえば何をやってもいいんだというようなことはあり得べからざることではないか、私も確かにそういう感じがいたします。  そこで問題は、先生のいまのその御解釈、御見解で私も正しいのだろうと思うのですが、ひとり合点をいたしまして、私どもが、われわれはそう読むのだ、つまり観光で入った者は当然観光という、私どもの言葉で申しますと在留資格上のレギュレーション、規制を受けるのだ、そのことは規約に反しないのだということがしかと確認をできさえすれば、私どもは真っ先に入りたい、こう思っておるわけでございます。
  273. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ法務省は十一年間何をしてきたのか。どこの省よりも法務省は早期批准に対して取り組んできたんだ。大変御苦労だったと思いますが、何をしてきたのか、具体的に、そして今後どのような見通しを持っていらっしゃるのか、ひとつ聞かしてください。
  274. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 確かに規約が作成されましてから長年月を経ておるわけでございますが、たとえば、議事録はないだろうか、何か頼りになる、信頼できる資料はないだろうかというような点、あるいは一体ほかの国がこの規約のいまの第六条についてどういう見解を持っておるのだろうかというようなことが、私どもの決断といいますか、決意の参考資料になると思われますので、その点につきましていろいろ調べてみたわけでございますが、どうもはっきりしない、議事録的なものはない、またほかの国の考え方というものも的確につかめないというようなことで、第六条の関係では今日なおひっかかっておるというような状態でございます。
  275. 井上一成

    井上(一)委員 法務省は、六条の勤労の権利で、よその国はどうなのだろうか。私は日本の国の、日本政府の姿勢を聞いているのですよ。よそのはどうだから、こうだからじゃないのですよ。  私、この委員会で与えられたというか、お約束の時間もすでに過ぎているのですよ。本当はもっと簡潔に終了したい、質問を終えたい、こういうように思っていたのですけれども、関係各位には大変御迷惑だけれども、あえて私はこれを続けざるを得ないのです。  それで、さっき尋ねたのも、法務省が十一年間何をしてきたか、具体的に示しなさいということなのですよ。そして、これからどう取り組むのか、それを聞いているのですよ。よその国が六条について云々ということは私は聞いておらぬ。それを参考にされるということ、あるいはそういうことを法務省の対応する判断の中で参考にされたのだ、そういう事情はあるかもわからないけれども、私の尋ねているのはそうじゃない。十一年間法務省は何をしてきたのだ、これから何をするのか、明確に答えてください。
  276. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 法務省として最終的に腹を決めるについての参考としてと申し上げたつもりでございます。そのために、先ほど来申し上げますように、議事録的なものはないだろうか、これは国連関係の規約、条約でございますので、その筋にもルートを通じてお尋ねをしたり、あるいはほかの国の考え方等につきましても、何とかキャッチできないものかということでいろいろ手を尽くしてみたわけでございます。  なお、私がいま考えておりますことは、これは国連関係の規約、条約でございますので、私は条約とか国際関係というのは素人でございますから、あるいは見当違いかもしれませんけれども、国連のしかるべき筋から、いまの第六条に関して、それは当該締約国の国内法令の範囲内においてということなのだよという何か権威のある見解の表明と申しますか、そういうものでもあればな、そういうものがあれば私どもは何ら遅疑逡巡することなく入りたいのだがな、こう思っておるわけでございます。
  277. 井上一成

    井上(一)委員 何と言おうか、全くもってあきれ返ったお答えを私は聞かされているわけなんです。国連のしかるべき筋から何とか通達でもいただければな。私は法務省の主体的な見解、国際人権規約に取り組んできたこれまでの経過並びに今後における取り組む姿勢、これを聞いているのです。  委員長、特に私からお願いをしたいのですが、私の質問に対して的確にお答えをいただけるように、政府委員に特に助言をしていただきたい。
  278. 竹内黎一

    竹内委員長 政府委員は、質問者の趣意を体して答弁してください。
  279. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 法務省として何をしてきたかということのお尋ねに対しましては、先ほど来お答えを申し上げたとおりでございます。
  280. 井上一成

    井上(一)委員 先ほど答えたというのは何なんですか。十一年間の経過の中で何をしてきたのですか。
  281. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 条約解釈上参考になる公の記録はないだろうかということのサーチと申しますか、それから関係国の考え方を探るといったような作業でございます。  なお、これは実を申しますと、法務省あるいは入国管理局という角度で、いまそういうレベルで申し上げておりますけれども、実は入国管理局の仕事といいますのは、入国管理局が独自に計画をしあるいは実施をするという性格のものではもちろんないわけでございまして、早い話が、先ほど来の働く目的でないということで、そういう了解のもとで入国を許可した者が勝手に働いておるということになりますと、これはいわゆる労働市場を撹乱する要因になる。そういうような見地から、むしろ労働政策あるいは人口政策等々、いろいろな法務省以外の官庁にかかわりのある多角的な角度から検討をいたしまして、そして特に日本のように人口がやたらに多くて国土は狭い、資源はない、そういうところでは、いわゆる単純労働と私ども呼んでおりますけれども、そういった単純労働を目的とする外国人の入国、滞在は原則的に認めないという政策があるわけでございまして、それを振り返りながら、A規約の第六条の解釈がはっきりしない以上は、入管だけが、法務省だけが、いやこれはこう読めばいいのだ、だから前進だというふうになかなかまいらない事情があるわけでございます。
  282. 井上一成

    井上(一)委員 藤岡官房参事官、国際人権規約の基本的な性格、本質というものはどうとらえていらっしゃるのですか。
  283. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 私も必ずしも専門家ではございませんが、一九四八年の国連の世界人権宣言の中に、いろいろな角度からの人権の国際的保障について言及されていると承知しておりますけれども、それをA規約、B規約、それぞれのカテゴリーの範囲において具体化して、しかもこれを単なる宣言ではなくて、法的拘束力のある、つまり国際法として確立しようとしておる、こういうものだというように承知しております。
  284. 井上一成

    井上(一)委員 それならば、すべての国のすべての国民の人権を擁護していくのだというまことに崇高な理念に向かって最大の努力をわが日本国政府としても払っていかなければいけない。なかんずく、人権を守るべき立場に立つ中枢的な行政府法務省が、私が直接の関係であるとかないとか、そういうことじゃなく、法務省が取り組んできた事柄と取り組む姿勢というものは、私は明確にされてしかるべきだと思うのです。各国の事情を聞いたり、あるいはいろいろとその他の情報収集をしてきたのだ。十一年間もかかってそれだけのことしかできないのですか。そして私が言ったように、これからどう対応するのだ。私の質問に対してどう考えているのですか。どうなんですか。
  285. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 先生先ほど来のお尋ねの御趣旨をよく体しまして積極的に、ひっかかっておる障害を何とか早く取り除いて、前進する方向で検討したい、かように考えます。
  286. 井上一成

    井上(一)委員 なぜそれを最初に言わないのですか、なぜ最初に。
  287. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 表現が適切であったかどうかは存じませんが、何とか障害を取り除いて、障害をなくして、遅疑逡巡することなく署名、批准の方向に持っていきたいという気持ちにおいてはほかの省庁に劣らないつもりだという趣旨のことを申し上げたと思っておったのでございますが、舌足らずであったならばここで補充をいたします。
  288. 井上一成

    井上(一)委員 さらに私はお尋ねをいたします。  今後については前進した取り組みをしたいという意思表示が、お答えがあったわけです。過去において十一年間、いまのお答えの中では、六条にのみ法務省としてはいわゆる障害的な要因をはらんでおった、二十条についてはさっきの土肥官房参事官の答弁で、私は一応現在までの取り組んできた姿勢と、それから今後取り組むいわゆる戦争、差別に対する表現の禁止、刑罰は別として、そういう私の考えに同意をいただいたわけですけれども、六条のみが法務省としては非常に障害なのだというふうに、その他については障害はないというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  289. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 お答えをいたします。  ないと申し上げます。細かいことを申しますといろいろございますけれども、はっきりないと申し上げたいと思います。——六条だけでございます。(井上(一)委員「その前の表現は何だって」と呼ぶ)  若干補足させてください。  私、主として入国管理局関係の事務についてお答えしておりますので、その入国管理局関係の所掌事務に関しましては、第六条だけでございます。こういうふうに申し上げます。(井上(一)委員「法務省の見解を聞いているのにああいうようなことではちょっと困る」と呼ぶ)
  290. 竹内黎一

    竹内委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  291. 竹内黎一

    竹内委員長 速記を起こしてください。  先刻の土肥説明員及び藤岡説明員の発言につきましては、後刻速記録を取り調べの上、適当な処置を取り計らうことといたします。  この際、藤岡説明員及び土肥説明員からそれぞれ答弁を求めます。藤岡説明員。
  292. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 補足して申し上げます。  私の答弁申し上げた趣旨は、私といたしましては、外務大臣が最初に述べられましたように、この人権規約の趣旨、精神を体して積極的に署名、批准の方向へ努力をするというのと全く同一でございまして、ただ私の発言の中で入国管理局の関係というようなことが二、三ございましたのがあるいはお耳ざわりだったかと思いますけれども、これは別に入国管理局だけということではございませんで、たまたま私が法務省内で入国管理局を担当しておりました関係でさような言葉が出たものでございますので、法務省といたしましてこの規約の趣旨、精神をよく体しまして、先生先ほど来御発言の趣旨もよく体しまして、積極的な姿勢でさらに臨んでいきたい、かように考えております。
  293. 竹内黎一

    竹内委員長 土肥説明員。
  294. 土肥孝治

    ○土肥説明員 補足して申し上げます。  先ほど申し上げました中で、いささか表現に至らぬ点があって先生に御納得いただけなかった点は申しわけなかったのでございますが、表現の自由というのは、私どもも憲法上内在的に制約があるということは十分に考えておりまして、いかなる発言も許されるものであるとは決して考えておりません。ただ、このB規約において二十条で禁止しておるという事柄が、刑罰をもって行われなければならない、刑罰の国内的立法が必要だということになると問題があるというふうに考えて、そういうことを申し上げた次第でございます。  しかし、法務省としまして、国際人権規約については本当に前向きにやっていかなければならないということは十分考えておりまして、外務大臣の言われました発言を体しまして、今後できるだけ積極的に検討していきたいと思っております。
  295. 竹内黎一

    竹内委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  296. 竹内黎一

    竹内委員長 速記を起こして。  この際、藤岡説明員及び土肥説明員から再答弁を求めます。藤岡説明員。
  297. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 人権規約につきましては、前向きの姿勢で積極的にやっていきたいと思っております。
  298. 竹内黎一

    竹内委員長 土肥説明員。
  299. 土肥孝治

    ○土肥説明員 ただいま藤岡説明員が申しましたように、法務省としては人権規約の批准を目指して、できるだけ積極的な姿勢で取り組みたいと思います。
  300. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、来る二十七日金曜日午前十時理事会、午前十一時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十三分散会