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1977-05-18 第80回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年五月十八日(水曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 山田 太郎君    理事 佐々木義武君 理事 中村 弘海君    理事 宮崎 茂一君 理事 石野 久男君    理事 日野 市朗君 理事 貝沼 次郎君    理事 小宮 武喜君       伊藤宗一郎君    玉生 孝久君       塚原 俊平君    原田昇左右君       与謝野 馨君    上坂  昇君       村山 喜一君    瀬崎 博義君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     小山  実君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君         科学技術庁原子         力安全局次長  佐藤 兼二君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       武田  康君  委員外出席者         原子力委員会委         員       吹田 徳雄君         経済企画庁総合         計画局電源開発         官       飯島  滋君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電課長  高橋  宏君         労働省労働基準         局安全衛生部労         働衛生課長   宮野 美宏君     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子力基本法等の一部を改正する法律案内閣  提出第二五号)  日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法  律案内閣提出第一二号)  科学技術振興対策に関する件(原子力安全性  確保に関する問題)      ————◇—————
  2. 山田太郎

    山田委員長 これより会議を開きます。科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 資源庁長官にお尋ねいたしますが、日本は、非常に人口は多いし、国土は狭い、資源も少ない。そういう中で、生産を拡大していくということについての資源政策というのは、非常に問題の多いことは言うまでもありませんが、その中で、国内におけるエネルギーに関する一次産業位置づけというものはどういうふうに見ていらっしゃるか、その点についての考え方をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  4. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のように、狭い国土の中で一定経済成長を維持していかなくてはならないという命題に対しまして、それを支えるためには、どうしても必要とするエネルギー確保しなければならないという認識に立っておるわけでございます。  御承知のように、日本の一次エネルギーの九〇%までは海外に依存しておる、また、一次エネルギーの七五%まで輸入石油に依存しておるというのが現実でございます。そういった一次エネルギー現状に即しまして、これを海外でいかに安定的に確保し、これを国内におきまして、いわゆる二次エネルギーとしていかに安定的に供給するか。一言で申し上げますと、必要とするエネルギー安定確保に対して最大の努力を払っておるというのが現状でございます。
  5. 石野久男

    石野委員 その場合、地下資源としての石炭とか、あるいはその他ガスなどがございましょうけれども、原子力エネルギーというのは、非常に高い位置づけを与えて計画に組み込まれている。その原子力について、資源庁としてはいまどういうような見方をしているか。実際に、計画どおりになかなか確保できないという事情のあることを踏んまえて、どのようにお考えになっていらっしゃるか。
  6. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まず、国際エネルギーをできるだけ活用するということは当然のことかと思いますが、ただいまお話のありました石炭等につきましては、私から申し上げるまでもなく、日本におきましては賦存量もきわめて少なく、かつは自然条件が非常に悪いということでございまして、国内エネルギーとしての代表的な石炭の活用につきましても、おのずからの限界が出てまいるわけでございます。そういたしますと、不安定なあるいは将来その供給限界が来るのではなかろうかと言われております石油にかわるべきエネルギーといたしましては、やはり原子力あるいはLNGといったようなものにつきましても、開発もしくはこれを輸入してまいらないと、量的にどうしても一定経済成長を支えることができないという現状でございます。  そういった意味合いにおきまして、原子力につきましては、先生御承知のように、昭和六十年時点におきまして四千九百万キロワットの開発ということが、一昨年の夏、総合エネルギー調査会答申に基づいて、官民で努力すべき目標ということで定められておるわけでございますが、原子力につきましては、主として立地難原因といたしましてなかなか目標どおりに進捗しておらないというのが現状でございます。もちろん、原子力発電開発に当たりましては、安全の確保、環境の保全といったようなことを第一といたしまして、国民の理解と協力の上に立ってこれを進めていくべきだ、かように考えておるわけでございますが、現状においては必ずしも順調に進んでおらないと言って差し支えないかと思います。
  7. 石野久男

    石野委員 順調に進んでいないことについて、それはもう事実そうですか、その問題についてこれからの期待をどういうふうに——従来の計画どおりに進めていかれるとお考えなのでしょうか、それとも計画変更資源庁としてもどうしても考えなければならぬとお考えなのでしょうか、その点。
  8. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現在、総合エネルギー調査会の場におきまして、昭和六十年度、必要な場合には六十五年時点における総合エネルギーバランス需給バランスはどうあるべきかということの検討に入っておるわけでございます。これは一昨年、総合エネルギー調査会から答申がありました時点より、さらに石油供給可能性といったような問題についても慎重に検討する必要がある、かたがた石油にかわるべき代替エネルギーとしての原子力あるいはLNG等も必ずしも順調に進んでいないといったような現状を踏まえまして、整合性実行性のある計画として見直すべきであるというような御意見もございまして、現在、鋭意総合エネルギー調査会検討を進めておる。われわれとしては、できればこの夏までには中間的な答申と申しますか、総合エネルギー調査会での検討結果をいただきたいということでございます。
  9. 石野久男

    石野委員 じゃ、まだ、その総合エネルギー計画なるものの調査会での答申が出てこなければ資源庁としては方針は持ち得ない、こういう状態ですか。
  10. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 方針といたしましては、やはりエネルギー安定確保ということが第一でございます。そのためには国産エネルギーをできるだけ活用する、あるいは石油に対する輸入依存度を減らしていく、そのための代替エネルギーあるいは新規エネルギーあるいは省エネルギー政策をどう進めていくかというようなことがエネルギー政策方向づけになってくると思うわけでございますが、ただいま申し上げております六十年あるいは六十五年における需給バランスは、現在、総合エネルギー調査会需給部会検討いただいておるということでございますので、やはりその検討結果をわれわれとしてはしんしゃくして、さらに方向を定めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  11. 石野久男

    石野委員 資源庁としては、そういうエネルギー計画方針の大本が出てこなければ動きがとれないというものだろうか。それとも、石油依存度を減らしていくということに対する自信といいますか、そういうものはお持ちになっておられますか。
  12. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 自信というと、どのようにお答えしていいかということになるわけでございますが、いずれにしましても、一次エネルギーの七五%まで石油に依存している、しかもその九九・七%まで海外に依存しておるという現状はきわめて不安定でございます。それから昨今の情勢、たとえば石油価格の二本立てにもあらわれておりますように不安定な要素がますます増してきておる。しかも一九九〇年代以降、石油に増産の限界が来るのじゃないかということが世界的にも通説となりつつあるわけでございます。  長期的に見ましてもあるいは当面的に見ましても、石油供給確保というものは一段と努力をいたさなくてはならないわけでございますが、これが、どちらかと申しますと、われわれのあずかり知らない外国において、その供給量あるいは価格が決定されるという不安定さというものはどうしても存在するわけでございます。そういった意味合いから、われわれとしては極力石油に対する依存度というものを減らしていかなければならないというたてまえでございます。  かたがた、昨今、OPEC諸国でも、できるだけ石油を節減してもらいたい、将来は、化学原料としていわゆるノーブルユースといったような形で使うように先進工業国考えるべきである、こういったことも言っておりますので、われわれとしては、何はともあれ、石油への依存度あるいは輸入依存度を減少していくという方向努力をいたすべきだと考えておるわけでございます。
  13. 石野久男

    石野委員 依存度を減らす方向努力すべきだという、その方向というものをどういうところに求めようとしていますか。
  14. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 これは当面的あるいは中、長期的にいろいろな考え方があると思います。  当面的には、やはり省エネルギーと申しますか、エネルギー使用を効率化していくあるいはむだな使用を排除していくといった節約を含めた省エネルギー、さらには長期的には、産業構造自体エネルギーの多消費型産業構造からいわゆる知識集約的な産業構造に改めていくということも必要だろうと思います。当面、やはり産業面輸送面あるいは家庭生活等の面におきまして、極力節約を図るということもきわめて重要なことかと思うわけでございます。  それから、さらに長期的な問題になろうかと思いますが、いわゆる水素エネルギーあるいは核融合、太陽熱、こういった言われるところの二十一世紀に期待されるエネルギーにつきましても、できるだけ早く実用化される方向努力すべきだと思います。  そういった中の中間的な位置づけといたしまして、量的な面で石油にかわっていくものとしてはやはり原子力LNG、こういった代替エネルギーに依存せざるを得ないのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  15. 石野久男

    石野委員 原子力LNGの問題はまた別にしまして、省エネルギーという問題について、それは当然産業構造の変革の問題を含めて考えなくちゃいけないのですが、私はいまのこの生産体系の中で、たとえば石油が足りない足りないと言いながら石油使い方にむだがあったり、あるいは生産がずっと行われているけれどもいつの間にかむだな使い方をしているということが非常に多いと思われるのですよ。たとえば原子力施設で、百万キロワットの原発を一つ設置をしてエネルギー確保しようとするときに、それが最初に敷地を求めてから建屋をつくって炉を入れて高度のいろいろな仕事が始まるときまでに、どのくらいのエネルギーを使っているだろうか、そしてそのエネルギーの中で石油をどの程度使っているだろうか、こういう計算をしたことがありましょうか。通産省ではどうですか。
  16. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 私の知っている限りでは、ちょっと計算した記憶はございません。
  17. 石野久男

    石野委員 経済企画庁いかがですか。
  18. 飯島滋

    飯島説明員 経済企画庁でも、そこまで細かい計算はしておりません。
  19. 石野久男

    石野委員 私は、この計算は一応しなくちゃならない、やはり政策決定のための必要な過程であると思うのですよ。たとえば各電力会社へ行きますと、こういういろいろな概要とかいうものをたくさん出しているのです。その中に、使用資材としては鉄筋はどれだけ、鉄骨はどれだけ、コンクリートはどれだけと書いてあるわけです。  この計算で、たとえば私は東京電力の福島の一号炉の問題でずっと見ておりますと、確かに四十六万キロワットから七十八万キロワット、百十万キロワットと、発電の力が大きくなるに従って資材節約がたくさん出ているわけです。率直に言って鉄骨鉄筋など、四十六万キロワットを一〇〇と置いた場合の百十万キロワットは、発電能力においては二三九%に伸びるわけですけれども鉄骨使用量は一八四%ですから、非常に節約になっているわけです。それからセメント、コンクリート関係はそれほど減らないのです。二三九%の発電力の倍率に対して二〇八%。しかし、とにかく鉄骨関係などはこれだけ節約できていくことがわかる。  ただし、今度は、この鉄骨の中にどれだけ石油がかかっておるかという問題、この計算一つ必要だと思うのです。そして同時に、ここで使った石油とここから出てくる百万キロワットのエネルギー、それがバランスシートの上でどういうふうになるのかということを、やはり長期計画の中でどうしてもやらなければいけないんじゃないだろうか。石油が足りない足りないと言っていながら、案外発電をするために使った石油の量が多過ぎたのでは意味をなさないというふうに思われるのですよ。そういう問題について、経済企画庁計算の準備なり何か作業をやっておりましょうか。
  20. 飯島滋

    飯島説明員 現段階では、そういう作業をやっておりません。
  21. 石野久男

    石野委員 資源エネルギー庁あるいは大臣なんですが、エネルギー計画をするに当たって、こういう問題の基礎的なデータがないままに、必要だから確保しなければいかぬというようなことをやっておったら、わが国のように輸入が七〇%も占めておって、そのうちの九〇%は石油だというふうなものについての対策は、明確には出てこないと思うのですね。やはり内閣で、今後エネルギー計画における省エネルギーの一番基本になる問題は、こういう計算をいま緻密にやる必要があるんじゃなかろうか、これをやらなければ、日本エネルギー政策というものはいつも空転していくのではないか、こう私は思います。この計算はぜひひとつやってもらいたいと思うのですが、企画庁はきょうは長官も来ているわけでございませんから、大臣内閣でそのことをやっていただくように、ひとつここで約束してもらいたいのです。そして、急いでその計算を出してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  22. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 御指摘の面は非常に大切なところでございます。従来から、そうした施設に投下されたエネルギーは二年くらいで回収されておるのではないかという説もございますが、いま御指摘のとおり、われわれも確たる数字を持ってお答えしておるというわけではございません。民間でそういうふうな話もあるということでもあり、学界でそういうふうな話もあるという程度でございます。  これは非常に貴重な問題でございますから、海外依存度を低め、同時に国産エネルギー開発するという意味においては、そのバランスシートをつくっておかなくちゃなりませんので、仰せのとおり、内閣といたしましても、この問題は重要な問題として検討を急ぎたいと存じます。
  23. 石野久男

    石野委員 エネルギー問題で非常に大事だと思いますことは、発電をするのに、代替エネルギーとして石油にかわるものとして原子力考えることは、着想としては間違っていないだろうと思いますけれども、しかし、実際問題として、原子力については発電をするだけではなくて、燃料サイクルの問題をどうしても考えなくちゃいけない。そうすると、燃料サイクルの中では再処理の問題が出てまいります。いま一つ非常に大事なことは、廃棄物処理管理の問題があります。廃棄物処理管理の問題に対して全くエネルギーは必要としないものであろうかどうだろうかという問題が一つあるわけですよ。  この再処理の問題でエネルギーバランスがどのようにとれるのか、あるいは廃棄物処理管理の問題でエネルギーバランスはどういうふうになるのかということを含めませんと、代替エネルギーとしての価値があるかどうかも十分でないと思うのですね。この計算も必要だと私は思うのです。いたずらに発電の局部だけとらえて、そしてエネルギーは充足したと言うけれども、その後の廃棄物処理だとかあるいは再処理の問題というようなものにエネルギー可能性が出てこなければ、かえってトータルバランスの上では物すごい損をすることになる。この問題がいま基本的に必要な問題だと私は思います。  原子力についてその計算も恐らくできていないと思うのですけれども、いかがでございますか。
  24. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のように、そこまで計算いたしておりません。ただ、先ほど宇野長官からお答えがありましたように、われわれもそういったトータルバランス、がどうなるかということは検討いたさなくちゃいけないとは思っております。  ただ一言、これは決して異議を申し立てるわけではございませんが、わが国のように年々人口のふえていく国におきましては、やはり一定経済成長というものをどうしても確保しなくちゃいけない。御承知のように、毎年百万人前後の若い人たちが学校を出て就職の機会を求めるわけでございますが、こういった人も含めて完全就業機会を準備するということも必要でございますし、また、御承知のように、わが国の社会はますます老齢化してきております。それに伴って福祉対策というものも充実していかなくちゃいけない、そういった観点からの物の判断も必要だと私は考えるわけでございます。  それにいたしましても、トータルバランスがどうなるかということは、やはり十分認識してかかる必要があることは申し上げるまでもないことだと思うわけでございます。
  25. 石野久男

    石野委員 ここでは論争するつもりはありませんけれども、人口の増加に伴うところの生産の場を持たなくちゃならぬということは当然考えなければならぬことです。しかし、これはまた別個の形の中で、制度上の問題として考え要素を多分に持っているわけですね。たとえば、一つ生産が行われてGNPは非常に伸びている、けれども国民所得は低いという問題があります。この生産を幾ら伸ばしても所得が低いという問題の解決は、別途考えなければならぬ問題があるはずです。これは制度の問題なんですよ。資本主義体制の問題なんですよ。こういう問題をいまここで私は論じようと思いませんけれども、いずれにしましても、エネルギーが足りない、石油が足りない、だから原子力だ、原子力だと鼓舞するけれども、その安全性の問題に絡むところの、今度は人間を養うために行った生産人間の健康を害するような事態が出たら意味がないのですよ。少なくとも原子力についてはその部門が非常に多い。そういう意味で、私は原子力トータルバランスというものはどうしてもひとつ計算をしていただく必要がある、こう思うのです。  この点は、ぜひ長官にもひとつ積極的に内閣でその策をやっていただいて、計算の結果を早く私どもに知らしてほしいのです。私たちは、エネルギー計画について党の中でもいろいろな計算をしますけれども、スタッフがありませんから、なかなか計算がしにくい。これはやはり政府でやってもらって、私たちは皆さんの資料を利用させてもらいたいと思いますから、ぜひ急いでやっていただくようにお願いしたいと思うのです。これはいいですね、大臣
  26. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 承知いたしました。
  27. 石野久男

    石野委員 エネルギー問題について、そういうグローバルな形での物の見方を明確にした上で、特に原子力の問題を見なくちゃならないだろう。原子力についての安全性の問題は、もうわれわれだけでなしに、政府も皆同じようなことでして、特に資源庁長官は、原子力発電課というものを総括していらっしゃる、発電所の実務上の管理監督をなさっていらっしゃる。いまここでは論議をいたしませんけれども、基本法改正とか規制法改正等によって、通産に対する責任は非常に大きくなってくるような政府の意図でもあるということも聞かされております。  そこで、私は、当面監督の責におられる資源庁長官に、どうしてもこの安全性の問題についてお尋ねしなくちゃいけない。  あなたも御承知のように、美浜発電所におけるところのいわゆる事故隠蔽と申しますか、これはもう具体的な事実になって出てきております。こういうような事実はかねて予算委員会でも私はちょっとお尋ねをしておるのでございますけれども、長官は、こういうような問題についての監督官庁である通産省として、どういう点にこういう問題を引き起こす原因があったのか、あるいはまた、その後におけるところの対策等についてどういう点を考えなければならないのかという点について、いろいろお考えであろうかと思うのです。もうすでにこの美浜問題は言い尽くされておるくらい言われておることですから、この際長官に、管理監督面におけるところのあなたの考え方と申しますか、所見をひとつ承っておきたい。
  28. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘美浜発電所における事故報告義務違反ということは、われわれとしても非常に遺憾なことと思っております。安全性という問題につきましては、まず第一番に、監督官庁はもちろんのこと、当該電気事業者における基本姿勢と申しますか、真剣に安全性に取り組む姿勢というものが何よりも大切であろうかと思うわけでございます。  ただ、直接的に今回の美浜事故の問題について申し上げますと、これは会社側安全性にどの程度真剣に取り組んでおったかということに対してわれわれもまことに遺憾に思う点があるわけでございますが、監督官庁の立場といたしますと、やはり定期検査を充実してまいりまして、かような事故報告を怠ることのないように十分に指導、監督ができる体制を確立すべきであろうか、かように考えておるわけでございまして、すでにこの三月以降、本省における検査官を九名増員いたしまして、中央、地方合わせまして七十六名の担当検査官をもってこういった定期検査に当たりたい、かように考えております。まず、そういった方向に即しまして、従来のいわゆる立ち会い回数なるものを一基当たり八十数回にまで引き上げたい、あるいは立ち会い項目を四十数目に増加させる、あるいは立入検査は従来は一ないし二回程度であったわけでございますが、これを三ないし四回まで拡充してまいりたい。さようなことからいたしまして定期検査体制というものを拡充強化しつつあるわけでございまして、一部につきましてはその実現を見ております。  しかし、いずれにいたしましても、そういった体制を強化するにいたしましても、根本は原子力発電安全性に対する基本認識あるいはそれに対する基本姿勢というものが最も大切かと思いますので、われわれといたしましてはもちろんのこと、関係事業者に対しましても、十分安全性を尊重し、それを実現するための努力を傾注するように指導してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  29. 石野久男

    石野委員 御努力の跡は幾らかわかるのですが、私はもっと大事なことは、とにかく原子力というのはパーツも非常に多うございますし、それから仮に定検をやるにしましても何にしましても、たとえこれを九名ふやして七十六名になりましても、一ヵ所に投入ということはできないわけですから、一つの定検の場所に五人か六人ぐらい、多くても十人とはなかなか入れないのですね。そういう情勢のもとで非常に多くの部面をずっと見ようとすると、容易なことではない。  そこで、私は特に美浜なんかで痛感することは、定検に入っている方々が現場で非常に克明に記されておるであろう作業日誌などがあるわけです。しかし、その作業日誌を全部目を通すことができないところに問題があったのだと私は思う。しかし、これは私は非常に善意に解釈しているのですよ。もう少しきつく考えれば、目を通しておってもすがめで、見て見ないふりをしてしまったということもあり得る。もしそういうことがあるとすれば、これはなお重大ですね。作業日誌をちゃんと見ておって事故のあることを確認していながら、それを上に上げないで現場で処理をしてしまうとか何かあるとすれば、これは綱紀の問題にかかわってきます。私は、恐らく監督官の諸君があそこに入られて見る場合には、初歩的な問題ですから、作業日誌ぐらい見ていると思うのです。その作業日誌も見られないような検査業務であったならば、私は意味がないと思うのです。  長官は、あなた方の部下に、定期検査をやらす場合には作業日誌なんか見なくてもいいという指示をしておるのですか、どうなんですか。この点、先に聞かせていただきたい。
  30. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のようなことを指示した覚えは毛頭ございません。
  31. 石野久男

    石野委員 それだったら、検査官作業日誌を見ておりますね。
  32. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 かねて先生の御質問に対してお答えしたところでございますが、定期検査の量というのは少なくとも百日前後かかる、そういったところから、要するに検査対象が非常に膨大であるということもございまして、いわゆる立会検査と自主検査に基づく記録確認検査、両方併用いたしておるわけでございます。美浜の場合には同様な形で、立会検査と記録確認検査とに分かってやったわけでございます。当時、この御指摘の燃料棒の折損といった部分につきましては任意検査と申しますか、会社側で検査した結果を点検する、こういう記録確認検査ということでやったわけでございまして、その際に会社側の方からそういった折損事故のあったことの報告がなかったというところから知り得なかったということでございまして、その点まことに遺憾に思っておりますが、今後の方針といたしましては、いわゆる立会検査項目をふやすということでただいまお答えいたしたわけでございますが、随時必要に応じて作業日誌等を点検するということはあってしかるべきだと思いますので、そういった立会検査と記録確認検査を併用しつつも、その中で随時必要に応じて弾力的に本来の定検の目的を達成し得るように作業日誌等のチェックもあってしかるべきだと考えます。そういった方向で指導いたしたいと思います。
  33. 石野久男

    石野委員 私は、細かいことまで言いたくありませんけれども、作業日誌等の点検もあってしかるべきだというような問題で見るべきじゃないと思っておるのです。いまもおっしゃられるように、企業の側では報告をしなかったのです。報告しなかったということになれば、あなた方がいわゆる確認検査をやろうとしたって、報告がなければ確認はできませんね。そうすると、その確認もできないということを前提として記録確認なんというようなことを言ったって意味がないのですよ。だから私は、最低のなにとしては、どんなことがあっても作業日誌だけは見る必要があると思うのです。これは今度の美浜の事件から私は見ますると、仮に検査区域がどんなに大きくても、とにかく作業日誌だけは見る必要がある。それでなかったら、報告漏れになったところをチェックできないじゃないですか。その点を私は、これはどうしてもやってもらわなければいけない。  これは美浜だけじゃないですよ。各発電所における事態について安全性確保しようとすればその必要があると私は思いますが、いかがでございますか。
  34. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の点ごもっともだと思います。ただ私どもちょっと実態というのは現場を見ておりませんので十分なことを申し上げかねるわけでございます。が、作業日誌というのはかなり膨大なものになるということのようでもございます。一方で検査官等の充実を図るとともに、そういった検査日誌も十分チェックできるようにいたしたいと思いますが、いま直ちにここであらゆる場合においてあらゆる作業日誌を点検するというところまでお約束することは、かえってほごになる場合に申しわけないと思います。むしろ実情をよく調査いたしまして御趣旨に沿うような方向で改善してまいりたい、かように考えます。
  35. 石野久男

    石野委員 私も、一年三百六十五日ありますから、作業日誌が一枚ずつでも三百六十五枚あるわけです。その上に今度は各部署がありますからそれは膨大なものになるのはよくわかっている。しかし、膨大なものがあることはわかってはいるけれども、報告がなければ確認はできないという、こういうやはり前提に立った検査であるとするならば、どうしたってそれを見なくちゃいけない。しかし、いま長官が言われるように、非常に膨大なものだから実務上目は通せられないのだ。だとするならば、何かそれをチェックができる方法がなければいけないと私は思うのです。これはいますぐ答弁はできないのかもしれませんし、私もこうしろということはなかなか言えません。しかし原則としては、その作業日誌というものが目に入っておって、そしてその上で検査に入らなければ本当の検査はできないだろうと思うのです。美浜の問題は明らかにその必要性を示しておると思いますので、この点だけをはっきりとひとつ案を立てて、後であなた方がこうやりましたということができたら、ひとつ報告してもらいたいと思う。これは現場の企業の側からすればいやなことかもしれませんけれども、非常に大事なことだと思いますので、このことは約束していただけますね。
  36. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 定期検査の対象量が非常に膨大であるということからいたしますと、やはり体制を充実いたしてまいりましても、当分の間、立会検査と記録確認検査と両方併用していかざるを得ないと思います。その場合のマイナス点をカバーするためには、いわゆる記録確認検査の項目につきましては極力そういったチェック材料と申しますか、チェックポイントというものを考えていって、これを補完していくという考え方も必要かと思います。  そういった観点に立ちまして、御指摘の点につきまして現実に可能な方法といったものについて検討してまいりたい、かように考えるわけでございます。
  37. 石野久男

    石野委員 私は、長官にもう一つどうしても聞いておかなければいけないことがあるのです。  美浜の問題で昨年の八月二十五日に私が質問をしました。それに対してあなたの部下の方々が答弁をし、あなたも私に答弁してくださった。その答弁は、ほとんど企業の報告をそのままリピートしただけだった。後から見るとそれが間違っているということがわかった。これじゃ全然権威はありませんね。だから、政府、が答弁するに当たって、そんな権威のない答弁を繰り返されたのでは国会の審議は非常に迷わされる。これをどういうふうにしてあなたは直していこうとしているか。こういった誤った考え方をどうやったら直すことができるか。何か策を考えていますか。
  38. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 昨年の十月一日だったと思いますが、私、予算委員会で先生にお答えいたしましたのは、会社側を招致して事情を聞いた、ところが会社側の説明では、いわゆる「原子力戦争」に書かれているような燃料棒の溶融事故はなかった、こういう答え方をしておった。われわれとしては、それを確認するための措置として九月に当時の一次冷却水の放射能濃度等をチェックするために資料の提供を求めた、その時点におきましては、いわゆる燃料棒の溶融事故といった事故が発生したとは考えられません、しかし、さらに目視あるいは水中テレビ等によって調査を継続してまいりたい、かようにお答えしたわけでございまして、あの時点でも断定的なことを申し上げておらないわけでございます。事実、その後十二月あるいはことしに入って一月、関係の機械器具の整備をまちまして立入検査を実施いたしておる。そういった検査過程を経て、最終的には折損事故があったということを確認いたしたわけでございます。  さようなところから、われわれとしてはできるだけ会社側から事情を聴取すると同時に、われわれとしても関係官庁と協力いたしまして、できるだけ実態の把握あるいは原因の究明に努めてまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  39. 石野久男

    石野委員 溶融事故はなかったということについてのなにでは間違っていなかったんだということをいまも強調されるようでございますが、当時は折損の事故は、引き出すときにどこかにぶつかって、そしてもろくなったところが壊れたんだという御答弁でしたね。しかし、これは事実と違いましたね。あなた方は現場の報告がそうだったからそういう報告をしたんですよ。企業側がそういう報告をしたからそのとおり報告したのです。しかし、これは後から見ると、とても引き出したときのなにでは違うんですよね。そうじゃなくて、炉の中におるときにすでにああいう事態があったということがはっきりしておる。そうすると、企業はうそをついているわけですよ。そのうそをついた事態をそのまま政府の答弁としているのですよ。  これは、あなた方は権威を失するじゃありませんか。こういう問題を繰り返さないためにどうするんだということ、私はそれだけ聞きたいのですよ。
  40. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 あの時点で、われわれとしては会社側から事情聴取した結果はかように答えておりましたということを申し上げたわけでございますが、その後、先ほど申し上げましたように、現地に立ち入りまして写真を撮るとかあるいはテレスコープで見るとかあるいは水中テレビでこれを確認するとかといったような措置を講じましてさらに検討した結果、運転中における故障であった、したがって報告義務違反であるといったふうに、われわれとしては結論づけたわけでございますが、そういった昨年の十月時点におきまして会社側がこう申しておるということを申し上げましたのは、われわれとしての最終的な結論として申し上げたわけではございませんで、先生が昨年の八月二十五日に当委員会で御指摘になって、その後直ちに事情聴取に入って、その十月一日時点における会社側事情聴取の結果はかくかくであるというようにお答えしたつもりでございます。  したがいまして、われわれといたしましては、それはその時点で、われわれも自分たちの手で確認したものをお答えいたしたかったわけでございますが、やはりいろいろと危険なものを危険な地域に入って調査するためには、第二次事故を引き起こさないようにそれなりの設備、器具なり準備を整えた上でということで、結果として二、三ヵ月おくれてしまったということは申しわけないと思うわけでございます。今回の経験に徴しまして、今後さようなことのないように、できるだけ早くわれわれの目でもって現実に事故の究明ができるように努力したいというふうに考えておるわけでございます。
  41. 石野久男

    石野委員 私は、原子力安全性の問題をしつこく追及しておるのです。事態はとまっておるわけじゃないんですから、特にあなた方はなるべくエネルギーを欲しいからといって、稼働へ稼働へと積極的な体制をとっているわけですよ、炉を動かすことに。そうでありますると、炉の中に起きている事故というものを、ある一定の安全区間の間だけならいいけれども、それを越えて危険な場所に入っていく、そういうときに、何も知らないでおったときの事故というものは非常に恐るべきものであるという心配を持っておるわけです。したがって、監督官庁はそういう問題について早く事実を認知しなければいけないし、対策を明確ににして指示を与えなくちゃいけないだろう、こう思うのです。今度の場合などは、結局現場から報告があったことを報告せざるを得なかったというような事情で、事実はそのとおりですよ、それは私は事実をどうこう言うわけじゃない。しかし、それではよくないじゃないか。ことに今度のように三年も四年ももう隠されておるというような事実でありますから、なおさらこの問題についてはもっと積極的でなければならぬというふうに思う。  そういうことを勘案しまして、今度の美浜問題は、あそこだけに限ったことじゃありませんけれども、監督業務上からいって通産の手落ちであったという、いろいろな管理業務上の手落ちであったという事実についての反省がもっとはっきりしませんと、われわれは安全管理の上におけるところの信頼性をあなた方に持つことができなくなってしまう。だから私は、やはりこういう問題についてもう少し具体的に、隠される時間のないようにする方策というものを厳しくやってもらいたい。このための特別な対策をお立てになっていらっしゃるのか、もうこの前予算委員会等で答弁のあった後、その後何も策をなさっていないのかどうか、その点についてもう一度長官のお話をお聞きいたしたい。
  42. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の点は、できるだけ早く実態を把握する、あるいはその実態に対する原因を究明し、かつはそれに対する改善策を立てていくという手順になろうかと思います。そういったことでなければなかなか安全性確保ができないということにもなろうかと思いますので、われわれといたしましては直接その現場におる会社側の当事者に対しても十分そういった方向で対処するように指導すると同時に、先ほども申し上げましたように、われわれといたしましてはいわゆる定検制度を拡充強化してまいりまして、御趣旨に沿うような方向努力したいというふうに考えるわけでございます。
  43. 石野久男

    石野委員 それはひとつ努力していただきたいと思います。  いま福島や島根で炉本体にひび割れが出ておる事実があります。私は、この前、島根にも行って見てまいりましたし、一昨日福島に行っていろいろ見てまいりました。このひび割れの問題について、いろいろ作業が進んでおりますけれども、いま通産はこのひび割れに対してどのような対策、指示を与えておりますか。
  44. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 制御棒の駆動水戻りノズル部分にひびが発生しておるということにつきましては、いわゆる高温の原子炉水と低温の制御棒駆動水戻り水の混合の際生ずる温度変動によってひび割れが発生したというふうに承知いたしておりますが、技術的な問題でございますので、審議官からお答えをさせていただきたいと思います。
  45. 武田康

    ○武田政府委員 先生御指摘の制御棒駆動水戻りノズルのひび割れにつきましては、その傷のついている部分を削り取りまして、そこを仕上げをするというのが一つでございます。それからもう一つ、制御棒駆動水の戻りノズルにつきましては、余っている水を別の部分に戻すなり何なりするというような措置をとることが技術的に可能でございますので、したがいまして、今度は水を戻さないというような、いわば戻りのルートをとめるというような措置をとることといたしております。  それからもう一点、福島では給水ノズルに同様な問題がございましたが、給水ノズルにつきましては、やはり似たようなことでございますが、傷の部分は削り取ってそこを仕上げをする。それからもう一点、ちょうどそこに冷たい水が入ってきますときに、ある狭い空間があいておりまして、そこに冷たい水がたまっているというところにも問題の一因がございますので、その部分に水がたまらなくて済むように、差し込み方を変えるといいますか、そういうようなことをいたしましてその間隙をなくする。そういうことによって、今後そういったようなトラブルといいますか、ひびが発生しないような措置をとる。  こういうようなことをいたすことにしておりまして、それぞれの発電所ごとにそういう措置をするようなことでいま進行しているところでございます。
  46. 石野久男

    石野委員 時間が余りありませんから、端折っていろいろお聞きしますけれども、戻り水のノズルの問題は別として、福島の給水ノズルのひび割れの問題というのは非常に大きいようですね、一号機などになりますと。私は向こうで聞きましたら、一号機の場合はちょうど四十五度のやっとその対称になっているノズルにおけるひび割れば、片方は四ヵ所、片方は三ヵ所というふうに出ておる。そして、最大のものは深さ二十五ミリまでいっておる、こういうわけですよ。いまノズルのひび割れば、GEの関係では世界ではたくさんの例がありますね。一番最初にノズルで問題が起きたのはミルストンの炉だということを聞いておりますけれども、そういうような問題について政府の方ではいつごろから承知していらっしゃるのですか。そして、その間どういう対策をしておりますか。
  47. 武田康

    ○武田政府委員 先生御指摘のように、アメリカでも幾つかの例がいままであったようでございます。私どもがそういう情報をキャッチしたといいますか、事実を知ったという時期は、昨年の冬、十一月か十二月、あるいはもうちょっと前だったかもしれませんが、その時期でございまして、その時点で、実は最も運転経験の長い発電所一つでございます福島第一が定検にすでに入っていた時期でございますけれども、初めの定検計画にはございませんでしたが、給水ノズルでそういう情報をわれわれキャッチいたしましたので、点検することを指示いたしまして、会社がそれに基づきましていろいろ計画を立てまして、ことしになりまして、たしか二月初めだったと記憶しておりますが、先ほど先生からお話のございましたようなひびが幾つか入っているということを見つけたわけでございます。  実は同様なBWRタイプのものはまだほかに日本にもございますので、逐次そういったチェックをいたしておりまして、いままでチェックいたしましたところでは、あと中国電力の島根発電所、それから日本原子力発電会社の敦賀発電所、これまたBWRタイプでございますけれども、その両発電所につきましては、福島の一号機で見られましたような傷は発見されておりません。  しかし、これは運転の長さとかあるいは起動、停止、要するに温度変化なり何なりに影響を与えるような要因の度合い等々がいろいろ関係があるようでございまして、逐次私どもとしてはチェックいたしまして、何らかの現象があるものにつきましてはしかるべき措置をとるというふうに考えている次第でございます。  なお、アメリカにおきます幾つか発見されましたものにつきましての措置も、やはり同様に削り取り、しかるべき仕上げをしというような措置がとられているようでございますが、これにつきましては、私自身一度聞きましたのですが、はっきりいま覚えておりませんので、個々具体的な発電所についてどうだったかということにつきまして、ちょっとここでお答えする能力を持っておりません。
  48. 石野久男

    石野委員 GE関係のこの種の問題というのは、一九七四年の段階でミルストンで事故が起きて以来、数多くありますね。特に私どもの持っておる資料でいきますと、七五年から七六年に大変数多くの手直し、修理が行われておるわけですよ。こういう状態をあなた方は、昨年の暮れに通産の技術顧問会議が行われる、GEの方ではこの問題を公表するというような事態で初めて知ったという事情のようですね。だけれども、この種の問題については、電気機器メーカーとしての東芝さんとか日立さんなんというのは、もっと早くから知っておったのじゃないですか。
  49. 武田康

    ○武田政府委員 私の承知しております限りでは、私どもが知りましたのが昨年の十一月か十二月ごろでございまして、日本の機器メーカー自身が従前から知っておったかどうか、その点については承知しておりません。
  50. 石野久男

    石野委員 通産はもう少しこういう情勢を、これは電力会社とか電気機器メーカーから聞かなくたって、いろいろな情報をキャッチすることについて十分知り得るはずなんですね。われわれのようなところでも情報は入るのだから、政府の側で、ないわけはないのですよ。もうちょっとそういうところを早くに知り得るような体制づくりというものをしなかったら、対応はできないのじゃないだろうか。  原子力委員会などはこういう問題について情報はキャッチしていませんですか。
  51. 吹田徳雄

    ○吹田説明員 原子力委員会は大体そういう問題があるということは聞いておりまして、原子力委員会の下に原子炉技術専門部会というのがございますが、そこで各発電所に起こります個々の問題からむしろ共通な問題を取り上げようと考えまして、いつも問題になるのは結局材料でございますので、さしあたってBが問題でございますが、Pもですが、東大の鵜戸口教授を主査といたしまして、こういう個々の発電所に起こる材料的に見て重要な問題をどういうふうに把握、解決したらよろしいかという中間報告を実はいただいておりまして、それに基づきまして、予算化できるものは本年度のたとえば原研の安全研究でございますとか、平和利用委託費にできるだけ反映するようにいたしました。
  52. 石野久男

    石野委員 通産は、事故のあったときもそうだし、そういういろいろな問題について情報キャッチをもう少し早くして、ただ企業から入るだけの情報で対処するというようなことを一日も早く脱皮して、自主的な管理なり監督というものができるように、技術関係の情報キャッチをする体制づくりというものをする必要があると思うのですよ。福島のこのクラックの問題で、特に一号炉の四十五度のところに出ておるところのクラックは、大きいやつになると深さ二十五ミリになっておるわけですよ。これは世界最大だと言われるのですね。GEで幾つかのものが出ているけれども、こういう大きいクラックは余り見ていない。しかもこの四十五度の角度のところに四ヵ所、実際は五ヵ所らしいのですが、そういうクラックをグラインドしているわけですよ。しかもそのグラインドしておる側面を埋める、土盛りするというか、削り取ったやつを全然もとへ戻さないままに今度は仕事をさせる、稼働に入れるのだという指示をなさっているようですが、この問題についての技術的な側面からする問題は全然ないのですか、どうなんですか。
  53. 武田康

    ○武田政府委員 傷のついている部分を削り取ってそのまま仕上げをする、それで技術的に問題があるかどうか、こういうことでございますけれども、一般には原子炉の中をステンレス等で内張りみたいなことをしてございます。何でそういうことをするかといいますと、原子炉水の中に溶けていくと言うとおかしいのでございますが、鉄板の方から微量なものが炉水の方に漏れていく、そういうようなことをなるべく少なくする、こういうことでございます。  ところで、そうではございますけれども、原子炉本体そのもの並びにいろいろなノズルが出たり入ったりしておるわけでございますが、そういったもの全部を含めて面積全部当たってみますと、ごく一部には普通の鋼、ステンレスじゃないものがそのまま表面に出ている部分もあるわけでございます。こういったものをマクロに見まして、炉水が平均してどうなるかというようなかっこうでございますので、ごく微小部分につきまして削り取ったままそのままにするということで技術的に問題があるかどうかと言えば、問題なしというふうに考えていいような状態があるわけでございます。非常に広がって、それじゃ全部炉心自身のステンレス内張りが要らないのかということになりますと、これはまた問題が起こるわけでございますが、今回のようにごく一部、微小部分につきましてある部分を削り取ったまま、しかし仕上げの状態を非常によくしなければいけませんが、そうしてそれがどうだろうということになりますと、技術的判断としては問題なし、こういうようなかっこうになろうかと思うわけでございます。
  54. 石野久男

    石野委員 報告によりますと、五月四日の原子力委員会の安全審査部会はそのことを認めたというように聞いておりますが、そうなんですね。
  55. 武田康

    ○武田政府委員 ただいまの給水ノズルあるいは戻り水ノズル等のいろいろ私どもの評価につきましては、私どもも顧問の先生方にいろいろと御相談したりいたしますが、その過程は科学技術庁事務局とは非常に密接な連絡をとっている次第でございます。ただ原子力委員会につきましては、その下部の組織に発電用事業炉部会という組織がございまして、発電用事業炉部会及びそれを経由いたしまして原子力委員会に五月初めだったかと思いますけれども詳しいことを御報告し、それから通産省としてはこう判断しているのだということもお話しし、それで御了解を得たと聞いております。
  56. 石野久男

    石野委員 私はこの点について、原子力委員会は安全審査をするときに、炉本体の内面はステンレス張りにするということで安全審査をしておる。ノズルの部分は炉本体にくっついておりますが、部分的にはこういうような事故があって、一ヵ所だけならいいのですけれども、ひび割れが何ヵ所も重なってきているわけですよ。そこにみんな穴ぼこができているわけですよ。それはこの前私は報告でいただいたのですが、わからないので写真をいただきましたら、このような形になっているわけですよ。これは福島のノズルですね。それでこういうようにノズルのところに四ヵ所あれしている。これは別な形ですが、島根の発電所のノズルのひび割れというのは、ごらんなさい、大変なものですよ、これを皆さんは仕上げをどういうようにするのか知りませんが。長官もちょっとこれを見てください。こういう状態なんです。それを仕上げをして、しかも安全審査ではステンレスで安全審査を通しているものを今度は削り取って、ステンレスの部分といわゆるカーボンの部分とが両方出たままで稼働へ入れていくわけです。それでもよろしいんだということになりますと、安全審査の基準がどこにあるのかちょっと私どもわからなくなってくる。  こういう問題について、安全審査はそのときそのときの都合によって、その部分は結構ですよというような形でずっと素通りさしていくのかどうなのか。私はこれは原子力委員会安全審査部会というものの立場の問題、そしてまた、われわれは信頼をどこに置くかという問題についてもどうも疑問を持つ。武田さんはいま、顧問会議か何かでそういうことをされたとかなんとか言っておりますけれども、長官、あなたのところには顧問会議があるのだそうですけれども、その顧問会議で出た結論でいろいろな指示を与えているそうですか、私はその顧問会議の技術者にここへ来てくれと言ったら、公的なものじゃないからここへ出られないのだ、こういう御答弁があって、とうとう参考人としては出てもらえなかった。そういう公的なものに出ることのできないような人々の結論であなた方はいろいろな指示を与え、現場指導をしておるということはどうもおかしいので、この顧問会議は持ってもらっては困ると私は思うのだ。どういう位置づけをこの技術顧問会議には持たしておるのですか。
  57. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の技術会議は、昭和四十年の省議決定に基づきまして、一応諮問機関といったようなことでお願いしておるわけでございます。大体顧問が二十七名おられると承知しておりますが、いわゆる安全審査あるいは検査等に当たりまして十全を期するために、そういった権威のある方からお話を伺い、あるいは御意見を徴した上でわれわれの行政の実務に反映させる、かような性格のものと承知いたしておるわけでございます。
  58. 石野久男

    石野委員 その顧問会議の技術者の方々というのは、この委員会等に出て発言をするという資格を付与していないのですかどうなんですか。そういうことをしてはいけないのですかどうなんですか。
  59. 武田康

    ○武田政府委員 前回か前々回だったかと思いますけれども、うちの顧問のしかるべき人に参考人にというお話がございまして、私どもとしては当該出てくださる方の御都合等も伺わなければいけませんが、その間にやや時間がかかっていたわけでございます。一方、その日自身はなかなかむずかしい、しかし、ある予告期間を置いてくださればできるだけ時間を合わせるようにしますというところまで話が進みかけた状況だったわけでございます。  他方、私の承知しております限りでは、通産省の顧問というのがどんな権限を持っているのだろうかという全く別の方からのお問い合わせがあったようでございまして、それにつきましては、責任は通産省自身にある、しかし通産省の判断をよりいいものにするために、権威のある顧問の方々にいろいろ御意見を伺い、あるいは集まっていただいて議論していただいたりして、その結果を私どもそしゃくして通産省としての判断をするんだというようなことを、また同時並行だったように記憶しておりますがタイミングは不確かでございますけれども、そういうお話をしておりまして、実は私の承知しておりますところによりますと、そういう余り責任のないといいますか、その人自身が責任を持って判断するということでない性質の人だと、参考人として呼んで来ていただいてどうなのかなというような議論があったのかとも思いますけれども、実は私どものアレンジ中に——アレンジが中途半端だったのはまことに申しわけなかったと思いますけれども、アレンジ中にキャンセルになってしまったというふうなことでございます。  今後もし必要でございまして、しかし私どもお願いしている顧問の先生方もなかなかお忙しい方もおられまして、きょうのあしたというような調子でうまくそのアレンジができるかどうかは別でございますけれども、ある予告期間があれば私どもとしてはそういうアレンジの努力はいたしたいと思っておる現状でございます。
  60. 石野久男

    石野委員 私は、手続の問題や何かを言っているのじゃないのです。とにかく顧問会議で決めたことで現場の作業指導をやっているということが原子力委員会の安全審査部会との関係はどうかということが問題なので聞くのです。詳細設計の問題は通産省に任しているんだからいいということであり、あるいは戻りノズルのところの事故は詳細設計だ。しかし、給水ノズルのところに起きておる福島などでの事故については、当然のこととしてこれは原子力委員会安全審査部会が検討を加えなければならぬ問題だと思います。  そういう点で、私はこの前も吹田委員にはお尋ねしたのですけれども、どうも技術的に見ましてもステンレスとそれからカーボンとが表面に出たままの、そういう作業で手直しといいますか、うまく表面の作業をやっただけで、もとへ戻さないままでやったときの不安定性というものはあるのではなかろうかという疑問を提起したわけですよ。安全審査部会としてはそういうものをどういうふうに見ておられるかということが一つと、それからそういうことをやった場合に、それの長期に対応できるだけの力があるのかどうかという問題などは安全審査部会で当然考えなくちゃならぬ問題じゃなかろうか。それを通産の技術顧問会議の議を経たから、それで指示を与えて現場作業指導をやるというようなことは、これは安全審査の上から言ってもよろしくないのじゃないかというように私は思うので、その点についての観点をひとつお聞きしたいと思います。
  61. 吹田徳雄

    ○吹田説明員 この前石野先生から提起された問題を、私帰りまして早速安全審査会の下部組織の発電用事業炉部会で、これが基本設計思想に関係するかどうかを検討すべきではなかろうかということを言いまして、規制課の方では四日に事業炉部会を開いて、その結果を十日の原子力委員会に報告を受けました。その結果は、通産で行ったあるいはこれから行おうとする計画は、これは技術的に見てやはり妥当であろうという報告がございまして、原子力委員会でも大分質問をいたしまして、一応妥当であろう、そのかわり運転するまでにいろいろな確認試験をするようでございますので、一応妥当と認めたわけでございます。それが十日でございます。
  62. 石野久男

    石野委員 安全審査部会がそういう結論を出したということはそれは一つ方向でしょうけれども、私たちの懸念しているのは、クラックの部分の削りっ放し、運転再開というようなことをやりますと、これは炉の健全性についてどの程度根拠、があるのかということに疑問があると思うのです。これは事が進んでしまったことだから追認のような形の結論であろうかと私は思うのですけれども、健全性の問題については非常に問題があるのではないかと思います。安全審査時におけるところの、最初の安全審査のときにステンレス張りということが条件になっているということになりますと、その条件変更ということは非常に炉の生命にとって問題があるのだ、こういうように思いますので、これはどうもやはり事後承認というような形であるだけにわれわれとしてはそれに信頼性を置くことは非常にむずかしいし、また、こういうようなことをやっておいて本当に炉は本来の使命のように、設計基準のようにずっと進むかどうかということに疑問がございます。これは恐らく学術論争の問題なんかでも出てくることだと思いますので、まあ報告はわかりました、そういうことだということ。だけれども、こういうような安易なやり方だけはひとつ避けていただきたいということを特にお願いしておきたいと思います。  福島三号の問題を、また近く削り取りをやるというようなことだそうですか、やはり福島三号にもそういうことが出ているのですね、これは現場で私は聞いてきたのですが。
  63. 高橋宏

    ○高橋説明員 福島の三号機につきましては、給水ノズル及びCRD戻りノズル、点検をする計画でございますが、まだ点検するところまで至っておりません。現在準備中でございますので、何かの間違いだろうと思います。
  64. 石野久男

    石野委員 一昨日私は現場へ行ったときに、福島三号は削り取りを近くやるつもりだと言っておりましたから、よく聞いてください。これは恐らくそういう事実はもう出ているのだと思いますよ。  それから浜岡一号炉では、炉心の流量が設計値のとおりに出ない。九〇%ぐらいしか出ないので、昨年のピーク時においても九八%ぐらいしか出なかった。こういうようなことで、やはりこれは設計上の問題があるのじゃないかということの疑問が提起されているようでございますけれども、しかし、現場はピーク時にどうしても運転したいからというので、それを稼働に入れるのだということではありますが、そういうようなことは情報としてあなた方の方に報告はありますか。どうなんですか。
  65. 高橋宏

    ○高橋説明員 浜岡で流量不足で出力が出ないという話は私は聞いておりません。いろいろと安全のために出力はできる範囲で余裕を持った運転をするようにという一般的な指導を私どもとしてはしておりますが、流量不足で出ないという話は聞いておりませんけれども、必要があれば調査いたしたいと思います。
  66. 石野久男

    石野委員 福島の二号炉におけるところのノズル点検がやはり項目に入っているのですね。あそこでは分岐点の再循環水の入り口のところにもまた問題があるというようなことがある。いずれにしましても、各炉ごとにいろいろな事故が多い。これは私は開発優先で、安全を十分に監視しようという観点からすると非常に重要な問題だと思うのです。  特に安全の問題では注意してもらいたいと思いますが、時間がございませんので労働省から来ておる方にちょっとお尋ねしますけれども、ああいうふうにして事故がたくさん起きますと、そこでの作業が行われます。作業が行われる場合の作業現場を私は島根でも見せてもらいまして、福島は現地の現場へ入れなかったからテレビで見せてもらいましたけれども、ずいぶんシールドを厳しくやって作業現場を汚染度を低くしておるのですが、しかし、この囲いをして作業をするシールドの中の汚染度というのは大体どのくらいのいわゆる汚染度になっているか御存じですか。
  67. 宮野美宏

    ○宮野説明員 現在ちょっと資料を持っておりませんので、調査をしたいと思います。
  68. 石野久男

    石野委員 これは恐らく労働省はなかなかわからないだろうと思うので、通産の方はそういう問題についてはどの程度なにしておられますか。
  69. 武田康

    ○武田政府委員 発電所ごとに数字が違うかと思いますけれども、福島一号機につきまして私が前聞きまして覚えているところでは、一時間当たりたとえば百ミリレム程度、これは作業といいますか、炉の中での作業でございますが、その程度ぐらいまでに低減するような防護対策をしてその程度というような話を聞いておりますが、実績結果につきましてはちょっといま手元に持っておりません。
  70. 石野久男

    石野委員 およそ大体そういうようなものなんですね。そういう中で労働者が仕事をするのです。労働者の線量管理の問題は福島ではどういうふうになっておるのですか。
  71. 宮野美宏

    ○宮野説明員 一般的な問題としまして、管理区域内で常時働く労働者、それからまた臨時的に業務上立ち入る労働者につきましては、被曝線量の記録と保存を義務づけているところでございます。また管理区域内で常時働く労働者につきましては、特別の健康診断の実施と結果の記録及び保存を義務づけ、かつ、その結果を被曝線量とともに労働基準監督署長に報告させているところでございます。
  72. 石野久男

    石野委員 労働省はやはりその作業現場の実態というものを掌握していませんから、労働者がどの程度被曝をきつく受けているかということは十分承知をしていないだろうと思うのです。しかし、いま通産からも言われるように、炉を洗いましてそしてその上にまたシールドをやって放射能をうんと防ぐ形にやってさえも炉内のなには百ミリぐらいになっている。そうすると、これは大変なものなんですよ。長い作業はできません。どんなに多くても三百ミリか、全被曝量で五、六百ミリ、一レントゲンまでいったら大変なことになっちゃうでしょう。そういうようなことを管理監督をするということについては、ああいう作業のあるときは労働省はもう少し積極的に現場に出ていく必要があるのじゃないだろうかということを私は痛感します。  それで、そういう体制がいま労働省に全然ありませんね。これはやはり何か考えなければいけないのじゃないかと思いますが、あなた方はそういう点についてどういうようにお考えになりますか。
  73. 宮野美宏

    ○宮野説明員 私どもは職業性疾病につきましては労働行政の最重点といたしておるところでありまして、昨年も職業性疾病対策要綱というものをつくりまして、基礎的な研究から予防、治療、補償そういうようなものについて系統的に、あるいは総括的に把握をし、対処するという形をとっております。そういう中でも電離放射線につきましては行政の重点として監督指導を行っておるところでございまして、先生御指摘のようないろいろな問題につきましても、この電離放射線障害防止規則というのは、本来個々の労働者の被曝状況を把握いたしまして、一定の被曝線量を超えないよう厳正な監督指導を実施するというようなことでございますけれども、御指摘のようなたとえば全体の被曝というようなものに対する考慮も必要な場合がございますので、事業者に対しまして事業場全体におきます被曝線量の動向を把握する、あるいは一日、一週あるいは業務別等の被曝線量につきまして所要の統計等を作成するように指導しておるところでございます。
  74. 石野久男

    石野委員 いろいろな指導はよろしゅうございますが、定検のときとかあるいは修理作業を別途に行うときの労働者の被曝というのは、これはよっぽど注意をしませんと、超過被曝をしてしまって大変な事故を起こすだろうと思うのです。もちろん現場の監督もよく行っていると思いますけれども、それでも事実は必ずしもそうあなた方が考えるようにはいかない。たとえばヘルメットをかぶれと言っても、下請とか請負なんかで行っている人などは、現場が暑いからヘルメット帽を脱いだままで入るとか、あるいは手袋をやっているのはめんどうくさいから手袋をとっちゃって仕事をしているとかという事実がたくさんあるわけですよ。こういう問題はもう少し厳重な監督をしなければいけないと思いますから、そういう意味での監督を重視してもらいたいし、それからそういう現場におけるところの線量がどういうふうになっているかということをもう少し労働省は勉強しておいてもらわなくちゃ困ると思うのだ。そうしなければ本当の被曝管理はできないだろうと思うので、そういう点はひとつ新たに注意を喚起していただきたい。  と同時に、福島では事故が起きているのですよ。これは三月三日にあすこのちょっとした修理作業をしている中で、この三号機の定検の中で起きた事故なんです。で、萩原勇一という人ですが、その方が配管溶接作業の準備中に事故が起きて死んでいるわけですよ。時間が余りありませんので多くを申しませんけれども、しかし、県の労働基準局、富岡労働基準局の関係で、県会におけるところの答弁を生活環境部長がしておるのですが、そのときの答弁の中に、事故が起きて十分以内に看護婦が行って救出しましたという答弁をしているのですよ。でたらめなんですよ。とにかく廃棄物を入れている貯蔵タンクが三つあるところで、地下七メートルのところへ落っこちているのですよ。出入り口は下にはないのです。最終的にはけがした人をロープで縛りつけてつり上げているのですよ。つり上げて、そして持ってきてから今度は被曝線量が多いから線量を洗ったり衣服をかえたりなんかすることがあり、看護婦が行ってからそこで救い出したのに、行ってから十分間くらいでしょうけれども、そこまでにずいぶん時間がかかっているということは全然隠されてしまっている。  私は、こういうでたらめな報告が労働省あたりの答弁として出てくるということについても問題がある、これはやはり十分に現場の情勢認識してない結果としてこういう報告が出ているのだろうと思うのですが、当時の事情はどういう事情ですか、ちょっと説明してください。
  75. 宮野美宏

    ○宮野説明員 先生おっしゃいました方についての、三月五日の午前十時八分に被災労働者が地下七メーターに墜落をいたしまして、救出に十分ぐらいを要した。それから十時二十分ごろに廃棄物処理建屋の外に出したわけでありますけれども、東電の救護班が来ておりまして、直ちに看護婦によります酸素吸入なり応急止血をした。しかしながら、屋外でもありまして、ショック等を起こすおそれがあってはいけないということで、事務本館といいますか、屋内に搬入をいたしまして、さらに止血、酸素吸入等を行いまして、十時四十五分ごろ東電の救急車で看護婦及び救急処置の心得のある者が一緒に同乗いたしまして、双葉厚生病院に移送したというように聞いております。
  76. 石野久男

    石野委員 そういう報告の中で、いろいろありますけれども、たとえば答弁の中には、ヘルメットをかぶっておったのだけれども落っこちるときに切れちゃってそれは離れてしまったというような答弁をしているのです。ところが、きのう現場へ行って聞くと、現場ではヘルメットをかぶってないのですよ。ヘルメットはその作業場の入り口のところに置いてあるのですよ。本人たちは中へ入ると暑くて仕方がないから、マスクをしておっても、こんなものめんどうくさいといってマスクを外しているし、ヘルメットはかぶっていないし、もちろん作業交代の時期でございましたからですが、七メーターの上で作業しているのに命綱もつけてない。こういうような状態では、事故が起きて死んでしまうのはあたりまえなんですよね。  こういう管理監督上の手落ちというようなものについて、もう少し十分な注意が払われてないとこれは困る。こういうような点について、これはどこが悪いんだ——この下請は本下請から六つ下の下請なんですよ。孫請や曾孫請じゃないのですよ。六番目なんですよ、下請の作業をしているのは。だから現場では、何が何だかわけがわからないのだ、上の方では。こういう仕事をしている。だから、そういうものに対する労働省の労務管理なりあるいは被曝管理というようなものについて、もう少しやっぱり綿密な対策がなければ、幾ら上で言ったところで、作業するのは下請、六階下の作業者がやるのですから、とてもとても上で言っていることがここへは響かないのですよ。実際はここが必要なんですからね。そういうような問題が起きているということについて認識が十分じゃないということになると、これは困るのですよ。労働省はそういう問題をよく承知していますか。
  77. 宮野美宏

    ○宮野説明員 原子力発電所の元方事業者としての義務を厳重に履行するように、これは監督指導の重点の中にも加えておるところでございます。
  78. 石野久男

    石野委員 もう時間がありませんから、私は深く追及することもありますけれども、これでおきます。しかし、労働省は、こういうような安全管理上特に一番問題である現場作業者に対する安全管理の規制というのは元方だけについてやったって、実際に仕事をするのは下請、孫請、ずっといって六代目の、そういうところの人たちが仕事をしておるのだ。これでは幾ら上の方だけ管理したって、ここへ響かないような監督管理じゃ何の意味もないですよね。それをどうするかという問題を積極的にひとつ考えてもらわないと困る。上だけやればいいのだ、形だけつくればいいので下はどうでもいいのだということだったら、実際に苦しむのは労働者ですよ。  島根でも同じようなことがある。島根で、ある労務者が雇われて行っている。作業に入っている。一日三十ミリレントゲンという作業、これが大体規制になっている。ところが、この人は一日六十ミリレントゲンの仕事をやっているわけですよ。したがって、昨年の十月に雇用されて、この前もちょっとお話ししましたけれども、ことしの五月までの雇用期限がある男だ。それが三月で首になっちゃった。もう被曝線量が限界に来ちゃったから必要がないのですよ。一日二度、三十ミリレントゲンの被曝の作業に入れられているわけです。三月十八日に首になっている。本人は文句言っているけれども、現場では使っても限界に来ているから入れられない。こういうような形の労務が行われているということになったら、労務管理などというのは全然なっていないということになるのです。  労働省は、こういう問題に対する管理監督をもっと強くやらないと、至るところで、隠されたところでこういう事態がどんどん進んでいく。しかも、下請が六段階も下だということになると、ここで働いている人はどこへも文句の言いようがないのです。法制上の問題も何も全く無法地帯で働かされているのですから、こういう問題についてもっと厳しい監督業務をやる方策を考えてもらわなければいけない。これは労働省に考えてもらいたい。  と同時に、科学技術庁長官資源エネルギー庁長官もそうでございますが、いずれもこういうものについては、もっと政府の側で監督業務なり実務上の具体的に成果の上がるような方向を模索しない限り、労働者に対する被曝線量を薄めようといったってとても無理だと思う。方策を積極的に考えてもらいたいし、また、原子力委員会としてもこういう問題に対する指示を与えてもらいたいと思う。そういう点について大臣、ほかの皆さんの所見を申し述べていただいて、私の質問を終わります。
  79. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 たとえそれが事故死でございましても、原発施設内における事故というものはわれわれといたしましても今後極力未然に防止するというふうな体制を整えなくてはなりませんし、ましてや、被曝という重大な問題もあるわけでごいますから、いま御指摘の点はわれわれといたしましては慎重に今後取り扱っていきたい、かように存じております。
  80. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 観念論に終わらないように、実情に即した対策が実現できるように努力いたしたいと存じます。
  81. 吹田徳雄

    ○吹田説明員 下請の問題は、私個人非常に重要な問題と思っておりますので、今後この問題をいろいろな方面から研究したいと思います。
  82. 宮野美宏

    ○宮野説明員 先ほども申し上げましたように、職業性疾病対策要綱というもので、総合的、系統的な対策を展開していく中で、先生のおっしゃるような下請についても十分措置をしていきたいと思います。
  83. 石野久男

    石野委員 大臣、これはぜひひとつ閣議で問題を提起してもらいたいと思うのです。元請とかあるいは電力会社などのような大きいところでは、いろいろな法制上の規制もずいぶん整備しておりますけれども、下請のところはなかなかそこが行き届かないものがある。これをやることもなかなかむずかしい問題があるのですけれども、ほうっておくわけにいかない。どうしても中央、地方を通じて、特に労働省の本省と地方出先の労働基準局との関係を十分やってもらう必要がありますから、これはひとつ閣議で提起してもらいたい。  それからエネルギー庁長官については、現場におけるところの作業について情報を得るということが非常にむずかしいことはよくわかっているけれども、企業側の報告だけでよしとするような態度は許せない。そんなことがもし通産で許されるとするなら、われわれ安全管理とかなんかについての信頼性は全然なくなってしまうから、そこのところに対する対策を明確にするような具体的な方策をするための研究をしていただきたい、そのことについてのあなたの所見を聞かせていただきたいと思います。
  84. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 労働問題に関しましては、当然私と労働大臣で十分話し合って御趣旨に沿いたい、かように存じます。また、通産大臣とも当然話を進めなくてはならぬ、かように存じます。
  85. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御趣旨に沿いますように、体制を整えてまいりたいと思います。
  86. 山田太郎

    山田委員長 これにて石野君の質疑は終了いたしました。  午後一時十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後一時二十分開議
  87. 山田太郎

    山田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  原子力基本法等の一部を改正する法律案及び日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎茂一君。
  88. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 ただいま議題になりました二法案につきまして、若干お尋ねいたしたいと思います。特にこの質問につきまして、大臣とか局長とか言いませんけれども、適宜お答えをお願いいたしたいと思います。  まず、日本原子力船開発事業団法の一部改正の件でございますが、これは過去三国会で十分に審議していると私ども自由民主党は考えております。  一点お伺いをいたしたいのですが、今回出てまいりました法案は十一年延長というふうになっております。今回の期限延長という問題は、その時点において大体原子力船が実用化と申しますか完成と申しますか、つまり事業団法がその時点で解消するのじゃないか、こう思うのですが、十一年というのに何か理屈があるのかどうか。これは見通しの問題で、十年とか二十年とか、でなければ期限はひとつ削除をするとか、そういったことも考えられるのじゃないかと私は思うのですけれども、特に十一年というふうにありますのは何かつながりがあるのか、どういうことなのか、その点をお答え願いたいと思います。
  89. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいまの延長法案、十一年の根拠に入ります前に、若干原子力船「むつ」の考え方について御説明申し上げたいと思うのでありますが、「むつ」が放射線漏れを起こしました後、先生御承知のとおり放射線漏れ問題調査委員会あるいは原子力委員会の中に設けました原子力船懇談会といったふうな場におきまして、今後わが国におきます原子力開発のあり方、特にその中におきます「むつ」の位置づけといったようなことにつきまして、鋭意検討をいただいたわけでございます。これらの検討の結果、近い将来に到来が予想されます実用原子力船時代に備えまして、引き続きこの「むつ」を開発することが必要であり、かつまた、実施機関としましては、これまで船につきましての各種の経験を蓄積してまいりました日本原子力開発事業団が適当であろうというのが結論であったわけでございます。  そこで、「むつ」を今後いかように開発を進めていくかという点につきまして、私どもこれらの結論を踏まえて検討をいたしました結果、結論的に申し上げますれば、十一年間を使いましてこの「むつ」の開発を推進したいという結論になったわけでございます。  この十一年の中身として考えておりますのは、まず「むつ」の安全性の総点検と改修に四年間を考えております。これは、「むつ」を修理港に回航いたしまして、原子炉部を中心とした技術的な総点検を実施いたしますとともに、必要な改修工事を行うものでございます。さらに、この四年間に引き続きまして、出力上昇試験というものを考えておるわけでございます。この出力上昇試験に引き続き海上試運転を実施するわけでございまして、その所要期間を一年間と見込んでおります。この試験が済みました後、実験航海に入るわけでございますが、実験航海を二つの段階に分けまして、まず当初の第一回の実験航海を三年間予定をいたしております。これは操船に慣熟するための運転航海、さらに所期性能及び安全性確認のための航海、あるいは出入港の経験を積むための航海といったふうなものを行う予定にいたしております。この実験航海の三年間を終了いたしました後、燃料交換を行いまして実験航海のその二に入るわけでございますが、実験航海のその二におきましては、先行します実験航海によって得られました基礎的なデータにつきましてさらに実験航海を重ね、信頼性の確認とかあるいは安全基準の策定等のためのデータの蓄積を図るといったふうなことを考えておるわけでございます。  これら合算しまして十年間でございますが、さらにあと一年間をかけましてこれら成果の取りまとめをしようとしておるわけでございます。  この十一年間が済みました後、事業団の扱い並びに技術的成果の扱いにつきましては、その時点におきましてこれらの成果が今後とも最大限に活用されますように、また、この経験豊かな人材につきましてもいたずらに散逸しないで、ぜひその技術的能力を活用できますように必要な検討を加えまして、所要の措置を講じたいというふうに考えておる次第でございます。
  90. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 いま「むつ」の話がございましたけれども、団法が延長になりましたならば、やはり実験船と申しますか、原子力船を研究する期間に充てられるわけなんで、これはもっと弾力的に考えてもいいんじゃないか。大臣、どうでしょうか。「むつ」を、いま事務当局が答えましたように細かくきちきちっとやるというような考え方でなくて、法律の上では期限延長ということだけですから、いまの答弁は行政の計画の問題でしょうし、やはり弾力的に考えていいんじゃないかと思いますが、大臣、その点はいかがですか。
  91. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 時限立法として今回も提出いたしましたのは、過去の経緯がいろいろあったからでございます。そのことは御承知だろうと思います。しかし、非常に大切な問題でございますから、原子力船の将来等々を考えました場合には、いまおっしゃったような弾力性ということもわれわれ決して無視できない問題だと、一応そういうふうには考えております。
  92. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 いまの大臣のお答えを了といたしまして先に進めたいと思いますが、この問題は国会で大分議論されておりますし、また、今国会でも本会議あるいはまた予算委員会等で野党の諸君からの質疑を通じまして、政府の態度もあるいはまた野党の考え方も十分明らかになったわけでございまして、私が考えておりますのは、大体政府案に対してわれわれ国会の方でイエスかノーか、あるいはまたそれに対して修正案を出すとか、そういう国会としての態度を決めなければならない時点に来ていると思うのです。そういったことにつきましては理事懇の中でいろいろとやっておりますので、この点につきましてはもうこれ以上触れない方が私はかえっていいと思っております。  そういうことで、こういう将来の日本原子力の平和的な利用を考えて、原子力船時代が来ることに対応して研究を積み重ねておく、こういったような基本的な方針を貫いていけばいいんじゃないか、私はそういうふうに考えているわけでございまして、自民党といたしましても、この期限延長の問題、いま出ております日本原子力船事業団法の一部改正、この附則改正につきましては、もう過去に何回も議論をしておりますので、これ以上質疑はいたさない、こういうつもりでおるわけでございます。大臣、もし感想がございますれば述べていただいてもいいのですが、時間もございませんので次に移らしていただきます。  原子力基本法等の一部改正に対する法律案が今回初めて出たわけでございます。御存じのように、原子力の平和利用につきましては安全性というものが第一に考えられているわけで、今回の措置は、従来の原子力委員会のほかに原子力安全委員会というのを設けようという問題でございますから、本質的には私ども賛成をしているわけでございます。この法案は非常に各方面の改正案を必要としますので膨大にわたっているようでございますが、提案理由の説明の中でも見られますように、二つの項目になっているように考えるわけでございます。  原子力安全委員会の設置の問題、いわゆる行政の区分の問題です。研究炉の方は科学技術庁長官、実用発電炉は通産大臣、船舶の舶用炉は運輸大臣、この辺が一番論議の焦点になるのではないか。言ってみますと、行政手続と申しますか、役所の仕事の再配分の問題というふうに考えておりますので、私ども内容の問題ではないのではないかと思います。しかしながら、多少問題があるようでございますから御質問をいたしたいと思うのであります。  こういった行政機構を改革する、安全委員会を設けるとか、あるいはまた通産、運輸の両省に権限を与える、こういう必要性というのは現時点において本当にあるのかどうだろうか、必要性と緊急性と申しますか、実はそういったような感じがいたすわけでございます。  御承知のように、安全性の問題は必要です。基本的には私どもは安全委員会をつくった方がいい、こういうふうに考えておりますが、国会の最近のエネルギー問題、いわゆる原子力問題の審議は、午前中もそうだったと思いますが、安全性の審議がなされております。あるいはまた原子力発電所に対する反対運動、そういうことで、安全性については大分国民にも浸透しているのではないかと私どもは思うわけでございます。  また一方、エネルギー危機という問題が出てまいりまして、カーター発言以来アメリカでもエネルギー石油節約をしているという問題もありますから、本当は石油節約原子力をもっと代替エネルギーとしてどんどんつくらなければならぬのじゃないか。いまの安全委員会をおつくりになろうという現代の背景を考えますと、かえってそういったような問題も出てきているのではなかろうか、こういうふうに思うわけでございまして、最近では安全問題が非常にやかましく言われて、発電所計画が当初よりも大分ダウンしたという話を聞いておるわけです。そういったような背景を考えて、なおまた、この案は実はカーター発言の前におつくりになった。いまでもどうしてもやらなければいかぬというような大臣のお考えなのかどうか、安全委員会についてその点だけお願いします。
  93. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この国会を通じまして、原子力行政には安全ということがその基盤をなさなければならぬということを私は再三申し上げてまいりました。また、与野党を論ぜず同様の御見解がしばしば開陳されたわけでございます。特に今日まで原子力委員会といたしましてもベストを尽くしてまいったわけでございますが、しかし、今後原子力行政を進める上におきまして、特に被爆国であるわれわれ国民の中には、いまなお根深い原子力に対する不安感と申しましょうか、アレルギーがあることは事実でございますから、そうした問題も政府みずからが一日も早く解消していただくように、まず身をもっていろいろと実践をしなければならない面もあったと存じます。  さようなことで、原子力委員会が開発と安全規制とを同じ職能として持っているということ自体に対する国民の批判も少なくなかったというふうな経緯から、御承知の行政懇の、この際思い切って安全委員会を設置なさってはどうであろうか、こういうふうな御進言もあったわけでございますから、いやしくも前内閣とは申せ、その当時の総理大臣の私的諮問機関がそうした意見を述べられたわけで、自由民主党の内閣としては当然継続性がございますから、私といたしましてもこの答申を守らなければならない、これを実施したい、かように存じまして、新内閣になりましても、これに重点を置いて提出をさせていただいたという次第でございます。  したがいまして、その後カーター政権の動きもいろいろございますが、わが国といたしましては核エネルギー開発ということは、言うならば準国産エネルギー開発でございますから、開発と安全というものは表裏一体をなして進めるべきものである、こういうふうに考えておりますので、さような意味合いで、今回の法案を慎重に御審議を賜りたいものであると存ずる次第でございます。  なおかつ、一貫化の問題につきましては、原子力船「むつ」の放射線漏れの経緯等にかんがみまして、それぞれの責任ある体制を確立しておかないことには、何か責任のなすり合いをしておるというふうなことであってはいけないということでございます。これも非常に厳しい規制法のもとになされるわけでございますから、何省がこうだからこうなるのではないかとかそんなことでなくして、むしろ行政懇が指摘をいたしましたとおりに、ダブルチェックの機能を十分に果たし得る、かように考えておりますので、この点におきましても、われわれは安全委員会の設置と同様に、同じ重さを持った大きな今後の行政のポイントである、こういうふうに存じておる次第でございます。
  94. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 新しく設けられますところの安全委員会の委員長は委員の互選による、こうなっております。そしてまた、原子力委員会の方は大臣委員長でございますが、この二つの委員会ができて、原子力行政に対するうらはらの問題、一方は安全の問題、一方は開発利用、そういう問題でございますが、こういう安全委員会ができることによりまして、果たして調整がうまくいくのだろうか、もし意見が異なった場合にどうなるんだろうかということが心配でならないわけです。いままでは原子力委員会のもとで、事務当局として原子力局と安全局があって原子力委員長がやっておられる。ですから安全性が非常にやかましく言われるとその利用の方、開発の方が委員会の中で自分自身でコントロールされていく、そういうふうにも見られるわけですが、今回は安全というのが非常に重要だから別に切り離そう、そういたしますと、原子力委員会と原子力安全委員会の調整が果たしてうまくいくだろうかというふうな危惧を持つわけでございますが、その点は大臣いかがでございますか。
  95. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 当然そうした危惧の声もなきにしもあらずでございますが、この両委員会はそれぞれ開発と安全、別個の分野において独特の権能を有しておるわけでありますから、したがいまして、独立してお互いに侵さず侵されずという関係でやっていかなければならないことは当然でございます。しかし、広い意味では原子力行政にともどもに携わっておる、こういう立場でございますので、常に連絡をするということは必要ではないか、私はかように存じております。今回提出をいたしました法律案の中においても、設置法の第二十一条におきまして、両委員会が原子力利用が円滑に行われるように相互に緊密な連絡をとりなさいというふうにしてあるゆえんもさようなことでございますので、行政という面におきましては、そうした面で独立を保ちながらそれぞれの機能を十二分に果たしていくことが正しい、かように存じております。
  96. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 独立を保つということもいいわけですけれども、もし意見が違った場合、それは具体的にやはり内閣総理大臣が調整することになりますか、それとも長官になるわけですか、その点はいかがですか。そしてまた、それがこの法律で担保されているのかどうか、この点はどうですか。
  97. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 最終的には、やはり内閣総理大臣の諮問機関でございますから、この点は内閣総理大臣がそうした調整の判断を示されるということになるであろうと存じます。もちろん、その間におきましては、私自身も重要なポストにあるわけでございますから当然いろいろとそうした面におけるところの役割りも果たしていかなければならない、かように存じておる次第であります。
  98. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 もう一つお尋ねしたいのですが、この安全委員会をつくることによって行政自体がいまよりも複雑になりはしないかと思うのですが、その点はそんなに複雑にならないのかどうか。いま御存じのように行財政の整理をしようということで、どうせ日本経済の成長率が鈍化しますから、行政、財政の整理をしようというときにこれをつくるということ、これが行政の複雑化を招かないのだろうか、複雑になっても安全委員会をつくるべきだという議論になるのか、複雑にはなりませんということになるのか、その辺、大臣いかがですか。
  99. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 これはよく論議されたところでございます。たとえば発電炉に関しましては通産大臣が一応チェックをし、さらに原子力安全委員会もチェックをし、また、原子力委員会は別の平和利用等々の面に関しましてチェックするわけでございます。そうしたことを一般的にながめますと、あるいは複雑化するんじゃないか、それとも屋上屋ではないかという極言すらあったわけでありますが、これらのことは屋上屋ではございません。いわゆるダブルチェック機能を発揮してより一層慎重に安全を確保したいということでございますので、あるいはさような意味におきまして行政がちょっと手間取ることがあるかもしれませんけれども、しかし、将来のわが国原子力というものがいかに国民生活を支えるに必要な行政であるかということを考えました場合には、多少そうしたことがございましても——それでもしも無理な面が余り生じましたならばやはり行政能率を上げなければならないでございましょうけれども、まず安全ということを念頭に置いて、そして将来の長い目で見た原子力行政のための基盤をつくるべきだ、かように存じておりますので、ダブルチェックは屋上屋ではないというふうに私は申し上げる次第であります。
  100. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 そういう御意見だということで承っておきます。  あと改正法の後段でございますが、いま大臣が触れられました実用炉の方は運輸、通産両省に、研究炉の方は科学技術庁にという基本的な考え方は私ども非常にわかるのです。研究の段階あるいは実験の段階は科学技術庁だ。研究炉と実用炉、初めは全部研究炉でしょうから、どこでだれがこれからは実用炉だというふうに判定をするのか。運輸、通産両省にこの権限をお渡しになるというのですか、それはどういうタイミングになるのか。その点について法律の中では余り明確になっていないようですが、これは技術的な問題なのか。実験をしていながらだんだんとこれはもう実用化されたと認定するわけですか。これはどなたが認定することになりますか。
  101. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 原子炉がどのような分類になるかということにつきましては、これは政令でもっておのおのの原子炉の区分をいたすことになるわけでございます。その立案は内閣総理大臣、通商産業大臣及び運輸大臣が行うわけでございますが、政令の立案に当たりまして原子力委員会及び原子力安全委員会の意見を聞くという手続が法律上にも明定されております。したがいまして、その両委員会の意見を聞きました上で政令が定められるということでございます。  なお、特に御指摘のございました実用炉の概念というのははっきりするかどうかということでございますが、私ども現在事務方として考えておりますのは、現在発電用に使用されております軽水炉につきましては、御高承のとおりすでに世界全体におきまして百数十基、七千万キロワットというものが運転中でございます。わが国におきましても十数基が運転中でございますので、しかもその間、環境に影響を及ぼしたことはないというふうな運転実績もございますので、そういうことを考えますとこれは実用炉に該当するものと考え得るというのが事務方の考え方でございます。
  102. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 この法律が通った場合に直ちにそういった政令を出しておやりになるのかどうか。というのは、原子力船ですね、舶用炉についてはまだ——先ほどの原子力事業団法もそうですか、まだ研究段階だ、こういうことになるわけで、これから十一年かかるのか五年かかるのかわかりませんけれども、そういった意味からいきますとまだ運輸省の方に譲るのは早いのじゃないか、法律はたとえば今国会で通ったとしてもずっと後になるのじゃないか、つまり、まだ権限を渡すのに時期が早いのじゃないかという問題と、いま通産省の関係の発電所の軽水炉の問題が出ました。  御存じのように、軽水炉は実用化されていると言えばそういうことかとも思いますが、果たして発電所の軽水炉の場合、通産省にそういった権威のある技術者がいるのだろうか。こう言っては失礼な話でございますが、通産省という役所は、午前中の質問も聞いておりましたけれども、一生懸命発電所をよけいつくるという役所ですから、時期的に見て法律案が通ればすぐ軽水炉の分はぱっと通産省だというふうにうまくいくものか、技術者の問題あるいはまた訓練の問題についてどういうお考えであるのか、お伺いしたい。
  103. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 この法律案が御審議の結果成立をいたしました暁におきまして、いつからこれが施行されるかという問題を含めて御答弁申し上げたいと思います。  まず、原子力委員会と原子力安全委員会、この二つができますのは十月一日を想定しておるわけでございます。一方、行政の一貫化と申しますか、各省庁でそれぞれ責任を持って安全規制等を実施するのは五十三年度、つまり五十三年の四月一日からと考えております。したがいまして、その間に半年間ございますので、その期間を準備並びに体制の整備の期間といたしたい。その間に先ほど御説明申し上げました政令も定められるわけでございますし、また、各省庁での職員の量、質ともにおきまする整備につきましても、その間に十分に充実強化を図ることになるということでございます。特に昭和五十二年度にかなり原子力関係の人員の増強というふうなことにつきまして行われたわけでございまするが、五十三年度はさらにそれに加えまして人員の増加につきまして関係方面の御理解も得た上で強化されることを期待いたす次第でございます。
  104. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 五十三年の四月からですね。そうしますと、まだ相当、一年近くもあるわけで、御承知のように今国会も余り余裕もございませんが、この基本法はあるいは臨時国会で通ってもいいんだということになるんですか、その点は。
  105. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 行政懇談会の御意見といたしましては、遅くとも昭和五十二年度からこの新しい体制が実施されることを要望する、こうなっておりますので、私どもといたしましては、ぜひ五十二年度からこれが実施に移るということを期待いたしまして、この法案の御審議をお願いいたしておる次第でございます。  なお、先ほどちょっと申し落としましたが、原子力船「むつ」につきましては、これは実用舶用炉ではない、こういうことで政令の段階においての指定が行われることになると予測いたしております。
  106. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 もう一遍伺いますが、原子力船の問題ですね、それはずっと後になる、こういうことですね。いまの話は、舶用炉についてそれが実用化される段階というのはもうあと十一年先だ、こういうように理解してよろしゅうございますか。
  107. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 御指摘のとおりでございます。
  108. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 それで、発電所に使われております軽水炉の問題ですが、アメリカあたりでもこの前カーターさんが、プルトニウム、高速増殖炉ですか、それはひとつ少し中止してくれ、しかし軽水炉の方はじゃんじゃんつくれ、六ヵ月ぐらいでつくれという御意向だ、私はこれは間違っておるかわかりませんけれども、聞いたわけですけれども、軽水炉というのはどうですか、日本では大丈夫、実用と見ていいのかどうか。この委員会でもいま、現在の軽水炉のいろんな故障の点についていろいろ御質疑があるわけでございますが、これはもう大丈夫、法律が通れば通産省に任していいのかどうか、もう一遍ひとつその点お伺いいたしたいと思います。
  109. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 あるいは御質問の趣旨十分とらえておらないかもしれませんが、先ほども御説明申し上げましたように、現在の軽水型の原子力発電の技術と申しますものは世界的に定着をしてきておるというのが、これは私どもだけではございませんで世界的にそういう認識になっておると承知いたしております。ただし、実用にはなっておりますけれども、いろいろ故障等がございますことも事実でございます。したがいまして、実用炉であるということがすなわちもう安全性は手を抜いてもいいということではございません。そういうことでございますので、関係各省庁でそれぞれ所管大臣以下十分御責任を持って安全性確保には御努力いただく、こういうことであるかと存じております。
  110. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 そういたしますと、軽水炉の方は、発電所の方はひとつ通産省の方に任す、しかしながら安全性については十分考えていく、その場合に原子力安全委員会と科学技術庁の果たす役割りということはどうなりますか。直接安全委員会と通産省、こういう形になりますか、その辺どうですか。科学技術庁は何も入ってこないか。
  111. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 現在御提案申しております法律案におきましては、たとえば通産大臣が実用発電炉の設置の許可をいたそうといたします場合には、原子力委員会及び原子力安全委員会にその許可の基準の適用の可否について諮問をするわけでございますが、そのときに科学技術庁の原子力局及び原子力安全局がそれぞれ両委員会の事務局という形で関与をするということになっております。なおそのほかに、内閣総理大臣といたしましてはこの許可に際しての同意という行為がございます。そういうふうな案になっておるわけでございます。
  112. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 先ほども申し上げましたように、安全性が非常に議論されると、一方において開発利用の速度が落ちるような気がするのですが、事実問題としては、通産省は見えてないのでしょうが、原子力発電計画がどのぐらいダウンしたのですか。長期計画が四千九百万キロとか言っていましたね。あれは目標幾らにダウンしましたか。
  113. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいま目標といたしておりますのは、昭和六十年度におきまして四千九百万キロワットでございますが、この六十年度時点におきます目標達成というのはきわめて困難な状況になっておるということは率直に認めざるを得ないかと存じますが、昭和五十五年時点におきます目標値というのは約千六百万キロワットでございまして、この数字につきましてはほぼ計画どおり進め得るというふうに考えております。
  114. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 安全委員会というのが一つできてさらに安全性が——これは先ほど大臣のお話もありましたように、日本は被爆国だし、原子力に対する安全性というのは非常に強く要請をされるので、そういう少々機構が複雑になっても、あるいはまたいろいろ事務手続にめんどうなことがあっても、安全委員会をつくってやろうということでございますが、一方私は、この安全のことを否定するわけじゃございません。これも大いにやっていただきたいのですが、安全性の方ばかり強調いたしますと、本当にエネルギー政策というのですか、日本のこれから将来を考えてみますと、エネルギーが不足するということでございますから、やはりアメリカでさえエネルギーの不足に対応してエネルギー白書を出している、ああいった資源の多い国でも。日本は、やはり石油節約もですけれども、そういったエネルギー開発、これをやはりやりませんと困るのじゃないか。いま原子力発電所は、いままで大臣がときどき答弁されておりますが、発電所による直接の人身被害、人身事故、こういったものがないのだ、こう言っておられますが、安全委員会ができたから安全ばかりやるということじゃなしに、やはり開発を進めないということは国民生活に大変なことになると思うのです。  エネルギー節約エネルギー開発の問題、これについて、この安全委員会、この法律とは別途にそれは進めていくのだというお気持ちなのか。大臣のこの安全委員会設置の、この原子力基本法改正するに当たって、安全問題と、それから私どもが十年先、二十年先を考えると、非常に大変なことになるのじゃないかと思うわけでございますが、この開発利用に対する御所見を承って私の質問を終わりたいと思います。
  115. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 非常に貴重な御意見を拝聴いたしましてありがたく存じますが、私自身といたしましても、行政の面におきましてはもちろん、これは安全とそして開発というものが表裏一体、あるいは車の両輪という姿で推進さるべきである、かように存じております。アメリカにおきましても、従来の原子力委員会が安全委員会になった、そうするとややもすれば開発がおくれたうらみがあったというふうなことも聞いております。しかし、われわれといたしましては、日本とアメリカは全く事情が違うわけでございますから、さような意味におきましても、国民の方々に安全に関しましては十二分に御理解をいただけるような積極的な方策をとらなくちゃならぬ、私はかように思いまして、その一つが今回提案をいたしております安全委員会の設置であり、さらには規制の一貫化でございます。  特に私は国民の皆さんに申し上げておるんですが、原子力関係にわが国が取り組みましてすでに二十年という歳月が流れておりますし、あるいは発電に取りかかりまして十数年の歳月が流れたわけですが、その間に、原子力に関係される方々が現在六万人と承っております。官民合わせまして六万人であります。これは非常に大きな人数でございます。そうした方々が夜となく昼となくがんばってくださっておって、ますますこの原子力そのものの実用化に対しましても非常に自信を持って進んでおられるということに関しましては、やはりわれわれは感謝すると同時に、そうしたことも広く国民の方々に知っていただいて、そしてやはり、日本省エネルギーももちろんやらなくちゃならないが、準国産としてのエネルギーとして原子力開発、これはもう焦眉の急であって、これを忘れては本当にあすの日本はないんだと。率直に申し上げまして、日本は、六%台の成長を続けるとするのならば、やはりエネルギーに負うところが大でございます。そのエネルギーにもしも支障があったならば、その成長というものを遂げることができない。しからば失業問題もまた深刻化するであろう、福祉問題に関しましても手を差し伸べるチャンスを失うことが多くなるんじゃないか、等々を考えますと、やはりわれわれといたしましても、このエネルギー問題は、そうした国民生活全般からとらえましても、広く国民各位の御理解を仰ぎたい、かように存じております。この点に関しましては、政府はますます今後国民と接しまして、そして十二分にその安全性を保証すると同時に、国民にも自信を持っていただく、そういうふうに私は進めていきたい、かように存じている次第であります。
  116. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 以上で質問を終わります。(拍手)
  117. 山田太郎

    山田委員長 次に、石野久男君。
  118. 石野久男

    石野委員 基本法改正等の法案の審議に当たって、私は、いまも宮崎委員の質問に大臣がお答えをしておられますが、原子力問題はやはりエネルギー確保ということについて重要なものとして提起されている、こう思うんです。したがって、原子力エネルギー確保の中で、もうこれがなければあすの日本はないんだと大臣はしょっちゅう言いますけれども、私はやはりそれについてはいろいろと問題があるだろう、こう思います。しかし、それはここでは抜きますけれどもね。ただ私が考えてもらいたいことは、けさほども別な形で一般質問で申しましたが、やはりエネルギーのグローバルな形でのトータルなバランスシートが出ないと、非常に解決しない問題がたくさん残っていくだろう、こう思うんです。  そこで、原子力について一番大事なのは安全性の問題だ。核分裂でエネルギーは出る、けれども、安全性確保されなければ元も子もないだろう、こういうふうに思われる。行政懇が「むつ」の問題を契機として一つ答申を出して、この法案の中では原子力委員会が安全委員会と二つに分かれるということになったのですが、問題の一番大きい点は、この安全委員会が果たしてその機能を果たし得るかどうかという問題が一つと、それから法案の中で、従来は安全審査とか規制の問題についてのメーンとして科学技術庁が位置づけられていて、それが原子力委員会というものを背景にしておったのが、今度は、規制の問題等が運輸省にも分かれれば通産省にも分かれる、そして科技庁と、こう三本立てになってくる。この趣旨は、いわゆる詳細設計と基本設計との関係づけをどのようにするかというところにある、こう思われます。私どもはそういう観点から、詳細設計と基本設計との関係を一貫性を持たすようにという趣旨はよくわかりますけれども、この安全に関する多元的な管理監督というものは、本当にわれわれの心配している安全性の問題によき答弁を与えてくれるだろうかどうか、政治的にもそういう結論を出してくれるかどうかということに非常に不安を持つのですよ。  大臣にお尋ねしますけれども、最近の原子炉における事故の実態というのは、主として現場においての事情が監督官庁にはっきりわからないところから、拡大していったりあるいは停滞したりするという問題が出ているのですが、安全性に対するこの一元性という問題とそれから一貫性という問題ですね。この一元性の問題と一貫性の問題との関係づけというものについて、私がいま申し上げたような心配をしている点、大臣はどういうふうにお考えになっておられるか、その点をひとつ。
  119. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 これはまず「むつ」の放射線漏れという、ああした不意のトラブルがありまして、それについてまず、政府といたしましても、従来の原子力行政に欠くるところなかりしや、それを十二分に検討してもらおうというのででき上がったのが、先生御承知の総理大臣の私的諮問機関であります行政懇でございますから、この行政懇において本当に、一年数ヵ月かかって、その筋の専門家がもう徹底的に調べていただいた、その結果安全委員会の設置並びに一貫化という、二つの重要なポイントが示されたわけでございます。  私は、さような意味合いにおきまして、政府といたしましても恣意的にこちらの方がいいのだという、政府のそうした恣意的な問題で選択したのではなくして、まず諮問機関が出していただいた答えを忠実にわれわれとしては法制化することに努力をしたのだ。その間におきましてはいろいろ経緯がございまして、あるいはそうしたこと自体が開発をチェックするんじゃないかというような御意見もありましたし、あるいはまた、やはりその方が大いに開発を推進するのだから安全だという御意見もありましたし、まさに二つの大きな意見が各方面にあったわけでございます。それだけに、私は、政府として行政懇の御意見を、言うならばそのまま忠実に法制化したというところをひとつ考えていただきたい。したがいまして、そこには言うならば何ら一片の私心もなく、ひたすら中正厳正に今後の原子力行政を進めていきたい、こういう趣旨から出たものでございます。  したがいまして、それに係るところの規制法改正も今回御審議を賜っておりますので、従来よりは変わった面が確かにございましょうが、たとえそれが通産大臣の所掌するところとなり、運輸大臣の所掌するところとなりましても、これはいわゆるダブルチェックという機能が働くような仕組みになっておりますし、また、規制法そのものは今日まで原子力委員会がきちっと守ってまいりましたような非常に大きな意味を果たしておりますので、そうした面におきましても、今回提案させていただいた法は、今日の日本原子力行政としては私自身も——もっとも安全であるかどうかそれはいろいろございましょうけれども、言うならば完全に近い線であろうという、私もそうした自信で出させていただいた、こういうふうに考えておる次第であります。
  120. 石野久男

    石野委員 これは立場が違うからということもございますが、大臣のいまの話は、すべて行政懇の答申に基づいておる、一分一厘もそれにたがうことなく、いわゆる中正厳正にこの法律を立案したのだ、こういうお話です。行政懇に対してはまさにそういう忠実な態度はよくわかりますけれども、それが果たして国民に対して忠実であるかどうか、これはまた別ですよ。行政懇に対しては、少なくとも行政懇の委員であった総評代表はいろいろな不満を持ってそれから抜けております。だから、国民の総意をそこにあらわしておるというふうには私たちは必ずしも見ていない。むしろ労働者代表はこれに対して不満をあらわしているというようなその委員会の意見を忠実に、しかも厳正中立にこの法文にしておるということになりますと、すでにそれ自体が私どもにとって問題があるのです。ことに、いまお話のありました運輸だとかあるいは通産に任しても大丈夫でございますということにむしろ私たちは疑問を持っておるわけですよ。不信感を持っておるという意味はなぜであるか、過去における事実が信頼を置き得られないような事実を数多く見ているし、それははるか遠い過去ではなくてごく真近に見ているという事実。そういう事実からしても、むしろその事実に照らし合わせてそういう反省がここに出ていないといけない。言うなれば、皆さんが非常に忠実厳正に具現したという法案は一世紀前のことになってしまって、一番手前の問題は抜けておる、こういうふうにさえわれわれにとっては思われるのだ。だから、私は、大臣がこれは非常に完璧でございますなどと言うのはちょっと言い過ぎだと思うし、むしろもう少し現状に照らし合わせて考え方を再検討していただく必要があるように思うのです。これは論議ですからあれですが、いまたとえば美浜の問題だとかあるいは福島だとかいろいろな事故がございまして、それに対する対応の仕方などで言えば、通産がとっている態度に私たちは若干の意見も持っております。こういうような意見が、もしこの法案のとおりにいきましてわれわれの心配しているような問題に対するチェックができないままでいくとするならば、かえってこの法案は改悪になってしまうだろうとさえ思うのですね。  ダブルチェックというのはどういうふうに実効果をあらわし得る内容になるものなのか、ちょっとその間の説明をしてもらいたい。
  121. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 ダブルチェックということでどういうふうなことが期待されるかということにつきまして、これは原子力行政懇談会におきましてもある程度検討いただいたわけでございますけれども、実際の実効につきましては、原子力安全委員会が発足いたしましてから十分な御検討が行われるものであると考えております。  ただ、基本的に申しまして、ダブルと申しますけれども、完全に同じ行為を二度やるということではございませんで、まず行政省庁がその省庁の責任におきまして十分に専門知識を駆使いたしまして安全性の審査を行いまして、その結果を原子力安全委員会に提出をする、そのときに原子力安全委員会といたしましては、行政庁の審査で使用いたしました資料なり解析結果は十分活用をするわけでありますし、また、その安全性のチェックにつきましても行政省庁がやりましたことすべてを安全委員会でもう一度やるという必要はないわけでございまして、その設計の基本的な思想、そこのところを十分詰める。特にその施設が新しい施設であるということで安全設計の考え方につきまして新しい考え方が導入されるときには安全委員会の役割りは非常に大きくなるわけだ、こう考えております。したがいまして、効果的、重点的にそのチェックが行われるということが期待されるわけでございます。
  122. 石野久男

    石野委員 そうしますと、各省庁の行政面におけるところの安全に対するいろいろな審査、これの間には差がついてくるというようなことはございませんでしょうか。
  123. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 安全委員会がダブルチェックをいたしますいろいろな意味があると思いますが、そのうちの一つに、そういう各省庁の審査の斉一性と申しますか、それを図るということが一つ期待されるわけでございます。そのためには、もちろん個別の審査においての斉一化を図るということもございましょうが、さらに基本的には、各種の基準につきまして原子力安全委員会が十分にこれを事前に検討いたしまして基準をつくるということから始まりまして、その基準を適用しながら各省庁が安全性の審査を含めます規制行政を行う、こういうことになるかと思われますので、その両方の観点から原子力安全委員会の役目というものが十分期待されると考えております。
  124. 石野久男

    石野委員 斉一化するための基準というものを、たとえば現状で申しますと、原子炉等規制法というものと、それから通産の方では、たとえば定検なんかの場合になると電気事業法の方にまいりますね。その規制に基づくようになります。そうすると、炉の規制法とそれから電気事業法との関係、それから船舶の方へいきますとまた船舶でのいろいろな問題がありますが、その三つの規制のあり方の斉一化というものをどこでどういうふうに図るという考え方になっておりますか。
  125. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 先生の御指摘は、最初の設置の許可の段階における斉一化以外に、詳細な設計あるいは工事の方法、検査ということにつきましての……
  126. 石野久男

    石野委員 両方です。
  127. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 まず基本的な設計の考え方につきましては、先ほど御答弁申し上げたようなことが期待されるわけでございますが、電気事業法あるいは船舶安全法との関係におきましては、原子炉というものが発電所あるいは船の中に一体的に組み込まれる施設でもございますので、その観点からの斉一性というものがそれぞれ電気事業法及び船舶安全法の立場として一つございます。そういう観点も踏まえました上で原子力特有の問題につきましての斉一性を図るということが必要かと思われます。  そこで、その点につきましては、原子力安全委員会が設置の許可をいたしますときに問題点を十分指摘をいたしまして、詳細設計なり検査なりの段階でこういう問題があり得る、それについては原子力安全委員会の方に報告せよとか、そういうふうないわば宿題を出すというふうな運用が期待されるわけでございます。そういうふうな運用によりまして原子炉等規制法と電気事業法、船舶安全法との間の調整を図ることが考えられております。
  128. 石野久男

    石野委員 意図するところはわからないわけじゃございませんけれども、しかし、具体的に実務をやるわけですから、実務のよって立つところがどういう法なのかということですね。ですから、最初の認可を与える場合、その認可はたとえばこの規制法なら規制法に基づいてやるのだ、それは運輸省もあるいは通産省も科技庁関係も全部これに基づくのだというのはどの法律なんですか。
  129. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 原子力施設の設置の許可はすべて原子炉等規制法に基づきまして行われるわけであります。
  130. 石野久男

    石野委員 そうすると、その規制法に基づいて行うものを斉一的というか、総括的に見るというのは場所がないわけですね。それは皆三省にばらばらになってしまうわけですか。
  131. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 総括的に見るという観点からいたしまして、原子力委員会と原子力安全委員会がそれぞれの所掌分野におきまして十分その斉一性を図るということでございます。
  132. 石野久男

    石野委員 そうなりますと、原子力委員会なり原子力安全委員会というものは各省から出てくるものの斉一化を図るためだけの役割りをするわけですね、そういう役割りをすると見てよろしいわけですね。
  133. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 御指摘のとおりでございます。
  134. 石野久男

    石野委員 そうすると、原子力委員会なりあるいは安全委員会というものは、三省が認可を与える、その認可を与えるときの最終決定の役割りをする、少なくともそういう位置づけに置かれているのが本来の姿である、こういうふうに考えてよろしいのではないでしょうか。
  135. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 各行政機関の長がたとえば設置の許可をいたします場合に、行政責任は当然その行政機関の長の責任でございますけれども、この許可をいたしますときの基準の適用につきまして両委員会の意見を聞き、これを尊重する、これは法律上必ず意見を聞かなければいけない、そういうことでございますので、そういう点からいたしまして両委員会が横断的と申しますか、全体、各省庁をにらみながら基準の適用について意見を述べる、こういうことになっております。
  136. 石野久男

    石野委員 二十四条二項の「意見を聴き、これを尊重してしなければならない。」ここに規定されているという問題は、一応額面上はそういうふうになりましても、実際上にそれがそういうこととして効果をあらわし得るかどうかということについての保証、こういうふうに三省に分立しましてそれぞれが権限を持った場合に、原子力委員会なりあるいは安全委員会の意見を聞かなければならぬ、尊重しなければならぬというような問題の成果が上がり得る保証といいますか、担保というか、そういうものはどこに求められますか。
  137. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 法律にそのように規定がされております限り、各行政機関の長は当然にこの両委員会の意見を尊重するものである、こう期待いたしております。
  138. 石野久男

    石野委員 その場合に、たとえば許可を与えるという手順でございますが、その手順は各省庁がそれぞれ認可権を今度は持つことになりますね。その認可権を持っている省庁の長とそれから各委員会ですね、この委員会との関係で、どちらが先にどういうふうなことをやって、どういうふうにいくのかというその手順がちょっとわかりにくいのだ。そこのところをひとつはっきり説明してくれませんか。
  139. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 原子力施設、たとえば原子炉の設置の許可という問題につきましては、原子炉を設置いたします事業者がまず申請書を所管大臣提出するわけでございます。その申請に基づきまして所管省庁におきまして安全性などの審査が行われまして、これを許可してしかるべしという判断をその省庁が持ちました段階におきまして両委員会にこの事案が諮問されるわけでございます。それを受けまして両委員会がこれを検討いたしまして許可の基準についての意見を述べる、その意見を尊重して行政省庁が許可をするあるいはしないという行為を行うわけでございます。
  140. 石野久男

    石野委員 これは、総理大臣は、十八条規定によって、意見を尊重しなければならないとなっているし、各省庁は二十四条でそうなっているわけですけれども、それがどの程度どういうふうに規定が及ばれるかということはこれはなかなかわからないのであります。この中には勧告の問題がありますね、勧告の問題で十九条に規定しております「内閣総理大臣を通じて関係行政機関の長に勧告することができる。」ということになっているわけだけれども、いままでもそれはあるけれども、勧告をした事実がいままでどれくらいあるのですか。それから勧告はどういうような場合に行われるのか。
  141. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 私の記憶で御答弁申し上げますが、安全性の問題につきまして従来原子力委員会が勧告をしたという例はちょっと記憶にございません。
  142. 石野久男

    石野委員 だから、法文上はそういうものが書かれておりましても、事実はなかなか出てこないのですよ。勧告があるとすれば、先般美浜で行われたなにに対する総理大臣の勧告というようなものがあったというようなことがそれになるのかどうか知りませんけれども、多分それぐらいのものだろう、私もその程度しかよう記憶にはないわけです。しかし、それにもかかわらず実態はどんどん進んでいきますから、だから法文上書いてあるから大丈夫なんだということだけでは、本来の安全を確保するということについてのわれわれの信頼感というものはなかなか出てきにくいということになるわけです。そういうときに、従来科技庁が総理大臣を代行して、長官委員長としてやってこられて、安全性の規制を一応手綱を締めるという形にしておる、それが皆ばらばらになっていくことについての不安感というものはどうしても抜け切れないのです。それをやはりこれは大丈夫なんですよということについての斉一化の問題ですね、この斉一化の問題をもうちょっとはっきりしていただかないと、この行政懇の勧告といいますか、行政懇が政府に答案を出したという内容について私どもは理解がなかなか進まない。むしろこういうやり方をされると、やはり「むつ」の問題で原子力行政を見直さなくちゃならないと言われたその盲点が逆に拡大していく、そして開発優先であってはならないということでいろいろ行政機構のしぼり方をしたのに、むしろ一番開発の先頭に立っていく通産省にくつわが全然はまらないというようなことになる危険性があるのではないかという心配を持っておりますが、大臣、これはどういうふうに感じておりますか。
  143. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この問題に関しましてはいろいろと御意見ありました。だから私も行政懇のそうした御意見を尊重してやってまいりまして、われわれ自体としても行政の責任者としてあらゆる声をもとに検討した結果がこの法案でございます。したがいまして、想像されることはいろいろあろうかとは存じますが、やはり法というものは今後の運用が大切でございますから、さような意味合いにおきましてりっぱなこの法の運用、それをつかさどる方々、そうした方々のいろいろな人選等に関しましても慎重を期していかなくちゃならないだろうと思いますが、いま安全局長がお答えいたしましたような手順から申し上げまして、従来よりはやや複雑になるかもしれません。なるかもしれませんが、それだけにいわばダブルチェックをしてでも安全性を確認するのだということにおきましては、私はむしろ従来よりも大きく進んだのではないだろうか、かように存ずる次第でございます。  したがいまして、たとえば通産大臣が自分の所管だから甘いお考えを持ってあるいは許可されるのではないかというふうな揣摩憶測がたとえあったといたしましても、これは安全委員会がダブルチェックによりましてそれは甘過ぎますよというふうな機能を十分発揮し得るわけでございますから、そうした仕組みというものは今日の日本原子力行政の上におきましてわれわれがいろいろとベストを尽くして検討した結果である、こういうふうに存じております。もちろん、完全だと、私は神様のようなことは申し上げませんけれども、しかし、やはりベストを尽くして検討したのだ。しかも、わが国の複雑な官僚機構がございますが、そうした面に対しましてもわれわれ十分メスを入れまして、それぞれがその特徴を発揮し得て、そして十二分に原子力行政の遺憾なきを期すというところから出た結論でございますので、したがいまして、いろいろそういう御心配の向きがあることは十分わかりますが、これは当然法の運用は厳正に、そして公正にやっていけば十二分にその目的を達成することができるのではないか、かように考えております。
  144. 石野久男

    石野委員 私は、法の改正をするに当たって、国家、政府という立場で安全性を確立していく、もっと整備し、いいものにしていかなければならぬというようなことで、行政懇の答案を忠実に法にするという政府姿勢そのものは悪いとは言いませんけれども、問題になるのは、たとえば安全委員会を一つつくります。しかし、安全委員会の組織とそれの人員をどのように充実するかということについては、従来ともアメリカのそれと比較してはるかに劣っておるし、もっともっと人員の問題でも予算の問題でも充実強化しなければならぬということはかねてから言われておったことです。  いま、科学、通産、運輸と三つに分けまして安全審査をやられる。そこに従事される技術者、メンバーというのは、各省がみんなそれぞれによって違うわけですよ。一つの仕事についてこれは三重に重なっているわけですよ。これは原子力委員会なり安全委員会というようなものが総括しておれば、人員は三分の一にならなくても、半分になっても能率は非常に進むだろうと思いますし、経費も安上がりになるだろう。しかも、そこでは一元化の方向が出て——一貫性の問題は機構上の問題として幾らでも解決できるのですから、安全性の問題にとって一番大事なのは、一貫性よりも一元化の問題が大事なんだと私は思うのですよ。その一元化の問題について能率よく、しかも効果あらしめるということをするならば、私は三つに分けて三つで安全審査をやるよりは、原子力委員会の中にスタッフを拡大して、それがもっと効率的に動けるように予算と人員をそこにつぎ込んでいくという方針の方が、むしろ「むつ」に学んだ成果ではないだろうか、こういうように思うのです。こういうことでやりますと、予算は三重にかかってくるのですよ。そしてまた、そこで果たして本来の目的を達成し得られるかどうか、私は疑問に思うのです。従来やはり一括して行政管理をしておりました科学技術庁からすれば、身を切るような思いでこういう実態を見ておるのではないだろうか、素人考えで私はそう思うのですよ。これは政府方針としては逆行しているのではないだろうか、安全性に対してはむしろ逆にみんな疎散化してしまって、焦点がぼけてしまいはしないだろうかというふうに私は考えるのですよ。  だから、大臣がそういうふうに考えておるということは、大臣の気持ちはよくわかりますけれども、具体的な事実としてそういうようにはならないのではないだろうかなと思うのですが、安全委員会をつくったときに人員をどのくらいにふやすつもりでおりますか。予算の上からは大したことはないのだが、どうなんですか。
  145. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 安全委員会並びに関係省庁におきまする安全規制の人員の充実が必要であるというのは御指摘のとおりでございます。具体的に申しまして、原子力安全委員会の組織につきましては、委員の数は五名、うち常勤四名をいま考えておるわけでございます。なおその下に専門家から成ります検討グループをつくることを予定いたしておりまして、たとえば原子炉安全専門審査会、これは現在三十名の定員でございますのを四十五名にふやす、核燃料安全専門審査会は三十三名を四十名、なおそのほかにもいろいろ基準関係の専門部会等を設けることになっておりまして、その関係の人員もふやすことになっております。それから関係省庁におきましても科学技術庁だけではございませんで、通産省、運輸省それぞれ人員を量、質ともに拡充していただく、こういうことでございます。  なお、行政効率というのは確かに先生御指摘のように非常に大切な問題でございますけれども、まず一番重要なことは、国民の御信頼を得るということであるかと思われます。そういう観点からいたしまして、どういう行政組織が一番国民の御信頼を得るか、そういう点に十分の思いをいたしました上で、この法案を御提出させていただいた次第でございます。
  146. 石野久男

    石野委員 いまの安全委員会のメンバーをどういうふうにするかという計画はわかっておりますが、これは一遍、この法案ができましたときに、運輸省なりあるいは通産省なりの、このことのための所要の人員を各省別にずっと出してほしいのです。そして全体でどういうふうになるかということの表をつくってください。まずそういうものを中心にして、それが三つに分かれておった場合と一つにした場合と、各省のためではなくて国のためにも、やはり政府の立場からしても国民の立場からしても、どちらがいいかということを検討した方がむしろいいのじゃないかと思いますから、ひとつその表を出してください。いいですね。
  147. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 関係省庁と御相談いたしまして、出させていただきます。
  148. 石野久男

    石野委員 それから行政効率の問題については、やはり国民の信頼感を得なければならないからという観点でこれを出したということについての見方なんですよ。その点で私どもはまだ疑義があるわけなんです。あなた方は行政懇がこういう答えを出したからいいんだと言うけれども、行政懇の出した物の考え方というのは、時間も余りありませんから細かく言いませんけれども、私たちから見ると、どうもやはり業界ベースの方が強く響いているんじゃないだろうか、こういうふうに思うのです。やはり原子力行政について、いろいろな立場から原子力行政を進めなければならぬという見方をしております。その場合に、開発優先という立場はあったということは「むつ」ではっきりしたわけです。それではいけないのだからもっと基本的な立場で研究を十分にし、研究、実験に重点を置くような行政をしながら安全性確保して開発に向かっていきなさい、こういうことが基本だったと思うのです。その観点からいたしますと、行政懇の出しておる答えというのは、どうも言葉の上ではそういうことであるけれども、結果的に見れば業界はほくほく顔で見ているということになるのだろう。しめたと思っていると思うのだ。私は、そういうような結果がこの法案の中に出てきておりはせぬかということを憂えます。それらの問題についてはいまの人員問題等を通じて検討を加えて、やはり政府としてはもう一遍考え直さなければならぬものがあるのではないだろうかというふうに思いますので、これはひとつよく御検討いただきたいと思います。  それから安全委員会の中で、いろいろな任務、「企画し、審議し、及び決定する」ということの中に、「障害防止の基本に関すること。」というのがありますね。これは主にどんなことを意味しているのですか。
  149. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 これは現在の原子力委員会設置法におきましても「障害防止の基本に関すること。」という規定がございまして、この関係が原子力安全委員会の所掌に移る、こういう整理になるわけでございますが、障害防止の基本でございますので、たとえば国際放射線防護委員会の勧告をどういうふうに取り上げていくか、あるいは環境放射線といったものをどういうふうに測定し安全を確保するか、いろいろ障害防止の基本に関する問題はあり得るわけでございます。ただその具体的内容につきまして、もし現時点におきましてはっきりとどこまでであるかという御質問でございますれば、その辺についてはいま少し詳細に検討させていただきたいと思います。
  150. 石野久男

    石野委員 それはまた後で資料をいただきます。  この場合、国際関係の課題が非常に多くなってくると思いますけれども、この安全委員会がそういう問題に関連するときに、外務省などとの関係の問題などはどういうふうに出てくるのであろうか。あるいはまた、そういう問題に対してはどういうふうにこの安全委員会は対処していくのであろうか、そんな問題は全然ないのかどうか、そこのところをお伺いいたします。
  151. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 原子力安全委員会は原子力安全規制の政策について責任を持つわけでございます。そういう観点からいたしまして、外国のいろいろな事情の調査というふうなことがもし必要であるといたしますれば、関係行政機関の長に対しまして資料の提出など必要な協力を求めることができるように法律上なっております。そういう規定を活用いたしまして御協力をお願いする、こういうことになるかと存じます。
  152. 石野久男

    石野委員 たとえば今度カーター政策などが出てまいりますね。そうすると当然このカーター政策を政府が受けとめなくちゃならない。そのこととこの安全委員会との間には何か関係は出てくるのですか。ああいうようなときには何も関係はないのですか、どうなんですか。
  153. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 具体的な事案によりまして関係が出てくるか出てこないかというふうなことがその都度検討されることになるわけでございますが、基本的には、原子力政策という観点からいたしますれば、主として原子力委員会が意見を述べる立場にあるかと存じます。
  154. 石野久男

    石野委員 これは安全委員会の改正の要綱の中にありますが、「1から3までに掲げるもののほか、原子力利用に関する重要事項のうち、安全の確保のための規制に係るもの」十三条関係なんですけれども、こういうものというのはどういうものがあるのですか。
  155. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 これはやや例文規定的でございまして、その他事項というものをここですべてひっくるめて書いてある、こう御理解いただきたいと思います。
  156. 石野久男

    石野委員 原子力委員会の委員長と安全委員会の委員長との選び方の違いがある。なぜこういう違いが出てきておるのですか。
  157. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 原子力安全委員会につきましては委員長は学識経験者というふうな案になっておりますが、これはやはりこの安全審査の性格からいたしましてまず専門的な知識を要するということで、比較的長い期間にわたって御在職いただきたいということが一つ。それからいま一つは、やはり客観的な安全性ということに責任を持つわけでございますので、行政省庁とは一線を画した姿勢、こういうことがやはりはっきりしておく必要があるかと存じます。そういう観点からいたしまして、原子力安全委員会の委員長は国務大臣というよりもむしろ学識経験者にお願いするということが適当であろうと考えております。
  158. 石野久男

    石野委員 そうしますと、安全委員会の方は長期的に客観的に任務についてもらいたいという立場、それから原子力委員会の方は、大臣が二年続けば結構なことなんだけれども、半年ぐらいでかわっちゃう、それでも結構だ、こういうような意味合いなんですか。
  159. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 ただいまの御質問は原子力委員会の方の委員長が国務大臣であるということの問題はいかがか、こういうことかと存じますが、原子力委員会はやはり原子力政策の基本につきましていろいろ方針を御決定いただくことのほかに、具体的な予算の見積もり、調整というふうな仕事も大きな仕事の一つとしてございます。そのようないろいろな観点からいたしまして、やはり閣議の場におきまして御発言いただける方が委員長であるということが非常に重要だと思われます。また、先ほどの原子力安全委員会とやや違いまして、内閣方針とかなり一体化した場での御発言というのは当然あり得ると思います。そういうことからいたしまして、原子力委員会は委員長が国務大臣という従来の方式が適当であろうと考えております。
  160. 石野久男

    石野委員 私は、今度は原子力委員会を安全委員会と分離していくその過程の中で、原子力委員会も安全委員会もいずれも原子力行政の上での重要な部門を持っておって、ことに普通の考え方からいたしまする場合、原子力委員会の中に事が起きた、安全を確保するために安全委員会ができる、そしてその安全委員会は客観性を持ち、しかも持続性を持った委員長を長とするというようなことを必要とする、それほどの重要性を持っている場合であるならばその安全委員会の位置づけというものが重要度を持ってこなければいけない、こういうふうに思うのです。  ところが、この法の中の扱いとしては結局は一事務局みたいなものになるのですね。先ほどもお話しのように、炉の認可を与える場合については、運輸省あるいは通産省のそういう審査業務の事務局的役割りをする、こういうお話でございました。ちょっとやはり権威がなさ過ぎるんじゃないかと思うんだけれども、そういう意味ではやはりこの安全委員会というものの位置づけというものは行政委員会のようなものにしなければならないという内容を持っているんじゃないだろうか。むしろ国民の信頼性を確保するという意味合いからこの委員会を重視するとするならば、そういうふうに行政委員会的な性格を持ち、権威を持っていくのでないとつじつまが合わないのじゃないだろうか、こういうふうに私は思いますけれども、大臣はどう思いますか。
  161. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 行政懇におきましてもそういうふうな強い御意見もあったということを承っております。しかし、最終的にはやはり国家行政組織法に基づくところの第八条の委員会というふうな制度がいいんじゃないかということに落ちつきまして、われわれ自体から考えてみましても、やはり広い意味での原子力行政に携わっていただくわけですから、原子力委員会と安全委員会というものはお互いに独立した機関であるけれども、同等の性質、同等の権限、そうしたものでやっていただいて、そしてそれが総理大臣に対しては強い答申があって、総理大臣はそれを尊重しなければならぬ、これの方がむしろいいんじゃないか。したがいまして、いわゆる安全規制に関する一貫化で行政が行政をチェックするという意味じゃなくして、やはり八条機関としての機能を保有しながら行政の面における許可等々に関しましては今後それぞれ厳しい態度で臨み得る、その方がいいんじゃないか。われわれもいろいろ検討いたしましたが、現在のようなことで、いま仰せのとおりのような説はなかなか実現できなかったという経緯でございます。現在も、その方が今後の原子力行政のためにいいのじゃないか、私はこういうふうに考えております。
  162. 石野久男

    石野委員 その方がいいというのは、どちらの方のことなんですか。
  163. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 行政機関ではなくして、現在の八条機関として委員会としての機能を発揮してもらいたいということであります。
  164. 石野久男

    石野委員 それは、大臣はそれがいいとおっしゃられるけれども、私はそれとは逆な見方をしているのですよ。そういう機能の発揮はなかなかできないだろうと思います。しかし、これもまた論議になりますからあれですが……。  もう一つお聞きしておきたいのです。核燃料物質等の廃棄に関する規定を整備する中で、「内閣総理大臣は、基準の違反に対し、廃棄の停止等を命ずることができるものとする」こういうふうにあります。この廃棄の停止を命ずることができる、それはもうそれでいいのですけれども、廃棄の停止を命じたときにどうするかという問題についての対応は、どういうふうに指示をしあるいは対処をしていくという考え方を持っておられるのだろうか。
  165. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 これは、一般的にある規制を行います法律におきまして、基準の違反ということにつきましてどう対応するかということの一つかと思われます。廃棄の方法が基準に適合していないときには廃棄はしてはならぬ、そういうことでございます。その場合に、あらかじめ「保安のために必要な措置を講じなければならない」ということも決めておるわけでございます。したがいまして、その時点におきまして、具体的な事案につきまして廃棄の停止を命じて、それをどう措置させるかということにつきましては別途の措置が行われると考えております。
  166. 石野久男

    石野委員 これは後でまた資料などが出た上でもう少し検討させていただきたいと思いますが、私はやはり、この法の改正を通じて、行政懇の御意向に沿うものだと言いつつも、どうもかえって逆な面が出てきやしないだろうか、その心配を非常に強く持っておるのですよ。ですから、これは行政懇の意見によって変えたいということはよくわかりましたけれども、もう少し他の側面からするところの意見があるということがどうも欠けているのじゃないだろうかと思ったりしますので、そういう側面での意見を、この法案を審議する過程で受けとめるだけの用意を持っておられるかどうかということを大臣にちょっと聞いておきたいと思う。そういう意見がいろいろと出てくると思いますがね。
  167. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 もちろん国会の御審議を仰いでおるわけでございますから、その審議における意見というものに対しましては、私は決して耳をふさぐつもりはございません。常にそれを傾聴いたしておるということでございます。
  168. 石野久男

    石野委員 時間が来ましたからこれで……。
  169. 山田太郎

    山田委員長 次に、日野市朗君。
  170. 日野市朗

    ○日野委員 今度原子力基本法等の一部を改正する、こういうことでありますが、まず安全委員会の所掌事項と原子力委員会の所掌事項、これについて若干伺っておきたいと思います。  まず所掌事項の第一号を見ますと、原子力委員会の方は「原子力利用に関する政策に関すること。」とあります。そして安全委員会の方は、「原子力利用に関する政策のうち、安全の確保のための規制に関する政策に関すること。」とあるのです。  この二つを読み比べてまいりますと、違いがどういうところにあるのであろうかということがちょっとわかりにくいように私には思えるのです。「原子力利用に関する政策に関すること。」というのは、原子力利用に関する政策の中には当然安全性に対する配慮というものも含まれているはずなんです。今度は安全委員会だということでさらにとってつけたような感じがいささかしないわけでもございません。この「定全の確保のための規制に関する政策に関すること。」というふうにございます。この二つをどのように読み分けて理解したらいいのであろうか。これは所掌事項であるから余りめんどうなことを言うなという考え方もないわけではございませんでしょうが、ひとつそこいら御説明を賜りたいと思います。
  171. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 先生御指摘のように、この両委員会の所掌事務につきまして、端的に申しまして多少の重複はあるわけでございますが、基本的な考え方といたしまして、原子力委員会は安全問題まで含めまして、全体的な原子力の政策について責任を持つわけでございます。ただその具体的な問題につきましては、やはり原子力安全委員会が責任を持って企画、審議し、決定するということになるわけでございますので、実際に重複する部分というのは基本的な問題で、しかも非常にたくさんそういう重複があるということではないと考えております。
  172. 日野市朗

    ○日野委員 どうもよくわからないのですけれども、まあよろしいでしょう。  それから、同じく所掌事項ですが、原子力委員会の所掌事項の第四号に「核燃料物質及び原子炉に関する規制に関すること。」とございます。一方、原子力安全委員会の所掌事項の第二号を見てみますと「核燃料物質及び原子炉に関する規制のうち、安全の確保のための規制に関すること。」これもどのように読み比べたらよろしいのであろうか。それから「安全の確保の規制に関すること。」といった場合の具体的な業務内容として想定されるものは何と何と何になるのか、ここはできるだけ詳細にお述べいただきたいと思います。
  173. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 原子力施設の規制に関しましては、安全規制がすべてではございませんで、たとえば設置の許可をいたします場合の基準につきましても、平和利用であるとか計画的遂行上支障がない、あるいは経理的基礎が十分あるか、こういう問題は安全規制とは直につながらない規制でございます。  それから、安全委員会が責任を持ちます安全の規制といたしましては、たとえば施設の設置を許可いたします場合の検討事項といたしましては、技術的能力があるかどうか、あるいは災害防止上支障がないか、こういうふうな観点がございますし、さらには指針なり各種の技術的基準といったものの策定という仕事があるわけでございます。
  174. 日野市朗

    ○日野委員 私がいまこれを伺ったのは、実は原子力委員会と安全委員会との区別と言いますか、機能上の差異について聞きたかったのでお答えをいただいたわけなんです。  基本法においては、同じ法律で同じ条項の中に原子力委員会と安全委員会、この二つが併記される形になるわけであります。それらは現実の力関係において全く平等、同じような機能を果たすのか、二つ並列的に並んでいるのか、どちらかが上位、下位というような区別があるのか、それとも全く質的な違いが想定されているのか、そこらを伺いたいと思います。
  175. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 この両委員会は、現在原子力委員会が持っておる機能を二つに分けるということでございまして、分かれました後の両委員会は並列の委員会でございまして、同格と申しますか、それぞれ独立の機能を持ち、その間に、上下、優劣というふうな差はございません。
  176. 日野市朗

    ○日野委員 私は、実は非常に危惧している点があるのであります。というのは、従来、原子力委員会が持っていた機能を二つに分けて、それぞれ分有するといいますか、区別して持つことになるのだという点は、一応頭の中ではわかるような感じはいたします。しかし、従来の原子力委員会が果たしてきた機能を考えてみますと、原子力基本法の中に実は安全ということについての記載がないのですね。原子力基本法の中には、安全に十分に留意をすべきであるというような、安全というものに対する位置づけが欠けているように思うのです。そういう中で原子力委員会は機能してきたと私考えておるのですが、政府側のその点についての認識は私と一緒かどうか、どうでしょう。
  177. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 現在の原子力基本法におきましては安全という言葉が出ておらないのではないかという御指摘でございますが、原子力開発をいたします場合に、安全問題を抜きにした開発というのはあり得ない、すなわち、原子力開発、利用は、もう大前提として安全という問題がその中に含まれておるわけでございます。  なお、現在の基本法におきましても、第六章等において、「原子炉の管理」ということで、別に法律で定めるところによって安全上の規制を十分行うのだということは書かれております。そういうことからいたしまして、現在の基本法においても安全というものは大前提として含まれておる、こう考えております。
  178. 日野市朗

    ○日野委員 ここでは余り議論をしたくはないのですが、基本法の中に、安全ということについて非常に注意を払うべきだというようなことが書いてあるのとないのとでは、実際の運用上かなり違ったものになってきやしないかというふうに私は思っておるわけなのです。それで、現在までの原子力委員会の実際の仕事ぶりといいますか、そういうものを見てまいりますと、やはり安全よりは開発の方に力点がかかった運用がなされてきたのではなかろうかなという感想を私は持っているわけであります。  そこで、今度は、いままでの原子力委員会の機能を二つに分けるということになって、安全委員会という一つの委員会が誕生するわけですね。そうしますと、これは、必然的にチェック機関になってくるというふうに考えてよろしゅうございますね。
  179. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 仰せのとおりでございます。
  180. 日野市朗

    ○日野委員 チェック機関ということになりますと、これは、大は裁判所から、準司法的な役割りを果たすという行政委員会などいろいろございます。こういうチェックをするためのいろいろな位置づけというものがございますが、これはどうでしょうか、準司法的なといいますか、そういう役割りを果たすという見方をとってもよろしゅうございますか。
  181. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 準司法的という意味を正確にどういうことと理解すべきかは別といたしまして、  一般的常識論としてそういう感じでよろしいかと思います。なお、正確に申しますと、国家行政組織法第八条第一項の規定に基づく機関ということでございます。
  182. 日野市朗

    ○日野委員 こういうチェック機関にとって必要なことは、ある程度の独立性が認められるということであって、これはチェックをするという立場に立って仕事をする委員会などにとっては必要不可欠のことではなかろうかと私は考えるわけですが、この安全委員会を見てまいりますと、安全委員会に関する法文上の表現といたしましては、どうも独立性ということをはっきりとうたった条文はない。むしろ原子力委員会と連絡を密にしなければならないというような規定が二十一条にあったりいたしまして、チェックの機能を十分に果たし得るだろうかという点では若干の疑問を感じざるを得ないのであります。その点、いかがでありましょうか。
  183. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、国家行政組織法上の八条機関、いわゆる諮問機関でございます。しかしながら、この諮問機関としての、ほかのいわゆる委員会、審議会と非常に違っておりますのは、法律に基づく権限といたしまして、みずから積極的にある事案について「企画し、審議し、及び決定する。」ことになっておりまして、内閣総理大臣の尊重義務その他も法律上明定されておるわけでございます。そういう意味では実質的に非常に独立性を持った機関であると考えられると思います。
  184. 日野市朗

    ○日野委員 安全という問題は原子力開発についてはもう不可欠の問題であるという認識、これはだれしも異論のないところであると思います。この安全委員会が独立してやっていくためには、国家行政組織法八条の規定や安全委員会の報告に対する尊重義務というものについては見受けられるわけですが、ある程度人事等での独立といいますか、その職務権限の独立といいますか、そういうものについての配慮はどのようになされているのか、これからそれをどのように運営していかれるおつもりなのか、この点について所見を伺っておきます。
  185. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 安全委員会の委員の人選が非常に重要な問題であるということは、先生御指摘のとおりでございます。この安全委員会の委員の人選につきましては、実質上非常に慎重な配慮による人選が必要なわけでございますけれども、法律的には、この人選に当たりまして国会の御審議を経るということになっておりますので、そういう観点からいたしましても非常に客観的、公正な人事が行われることになっておると考えております。
  186. 日野市朗

    ○日野委員 特に人選の問題について若干伺っておきたいのであります。  これは単に国会の承認案件だということだけでは必ずしも公平だとは言えないだろうと私は思うのです。特に最近、原子力発電所の立地とか原子力船「むつ」の母港問題等によく見られるように、安全という問題は、単にこれは安全だ、安全だと言っただけではだめなのであって、その地域に住んでいる人たちの納得が得られるということが必然的に大切なことになってくるわけです。それがなければ、どんなに安全だと言ってみたところで、とうてい立地も得られないというような事態に遭遇せざるを得ない。現在の原子力行政の一つの大きな障害になって立ちはだかっているのはそこいらの点であると思うのですが、私はこういう点から見て、住民の側の賛同が得られる、同意が得られるということを考えた場合、むしろ反対運動の側からの推薦による人選というようなこともこれは十分に考えられるべき事柄ではなかろうかというふうに思うわけであります。政府がこの安全委員会をつくろうと考えられるに当たって、そのようなことまで配慮されたであろうかどうかという点について伺いたいと思います。
  187. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 原子力委員会もさようでございますが、今回設置されます安全委員会も当然厳正中立でございますので、賛成だから入れる、反対だから入れないという問題ではございません。したがいまして、いまの御質問の趣旨にはさような意味合いでお答えできないと思いますが、しかし、常に人選には慎重を期さなくちゃならないことと、同時にそれは、いわゆる広い意味の行政の中において重大な仕事をしていただく諮問機関でございますから、そのスタッフというものは当然民意も反映するということにおいて人選を慎重に進めたい、こういうつもりをいたしております。
  188. 日野市朗

    ○日野委員 この安全委員会を設置するということは、いままで安全ということが全然原子力基本法の中に文言として表現されていなかった、その中に一応入ってくる、そして一応安全性チェックをやりたいという姿勢を、前進的なものだというふうに評価するか、それとも場合によってはこれは重大な落とし穴になりかねない危険があるという見方と、二通り成り立ち得ると思うのです。このとおり安全委員会を設けましたよ、それでチェックをいたしましたよということが政府の今後の原子力行政全般にわたって一つの隠れみのとなるというような危険性もないわけではないというふうに思うのです。  そういうふうに考えてまいりますと、これはこの安全委員会の中に人を得ること、だれからも信頼を得られるような人選がなされるということが何よりも大切なことではなかろうかというふうに私は考えるのですが、いま長官のおっしゃられたことは、それは公平な人事を行うのだ、公平に人選を行うのだ、賛成だから入れる、反対だから入れないという問題ではない、こうおっしゃるのですが、公平な人選という、公平なというふうにモディファイヤー、修飾語をつけたところで果たして公平かどうかということはわからないわけですから、賛成者も入れる、反対者も入れる、中立と思われる人も入れるというような配慮をなさることの方がむしろ公平に近いものになってくるのではなかろうか、公平に対する担保が出てくるのではなかろうかというふうにも考えられるところなんですが、その点についていかがでしょうか。
  189. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 もちろん、委員会のシステムは最終的には多数決で決まっていくわけでございましょうが、しかし、こうした一番重要な問題に頭から多数決を想定し、あの人は反対だ、この人は賛成だという立場で私は臨みたくはないのでありまして、公平というよりもむしろ常に厳正中立というふうな立場で臨んでいきたいと思います。  そしてその次には、何と申し上げましても一番重大なことは、先ほど局長が言いましたように、やはり相当なベテランでなくちゃいけないということであります。単なるそのときの感情とか、あるいはだれかの意見がこうだったから、そうだ、そっちの方がよさそうだなというのではなくして、やはり長年の蓄積によるところのりっぱな御判断によって、そしてそれだけの判断をする知識を持っておる専門家、こういうふうにわれわれは考えていきたいと存じます。  さような意味合いにおきまして、私は、安全に対しましてはいずれの方々も慎重なお方ばかりであって、原子力行政に反対だから入れるんだ、それでは頭から——原子力行政そのものではございませんから、いわゆる安全に関してはいろいろ学説はあろうけれども、その中におきましても長年の蓄積によって十二分に自分みずからがそれだけのことを判定し得る、そして自分みずからがイエス、ノーをはっきり言い得るというお方を私たちは望みたい、こういうふうに思っておりますので、いま日野委員のおっしゃるように初めから反対の人を入れたらどうか、賛成と反対をはっきりさせたらどうだということには、われわれといたしましてはいささか疑問に感ずる次第でございます。
  190. 日野市朗

    ○日野委員 そこまでいくとあとは、それ以上になりますとかなり議論になってしまいますので、私なんかとしてはそのように考えている。むしろいまの時点では、客観的に安全なのかそれとも安全でないのかなどをはかるスケールというものはないのでありまして、早い話が結果論待ちなんですね。でありますから、そこまで進むプロセスでいろいろな人の納得を得ていくというためには、私がいま提言したこともひとつ、まるきり根拠のないことではないと思いますので、十分に御考慮をこれからもいただきたいと思うのであります。  それから、この委員会の独立性に関して若干問題がある規定があるのではなかろうかと思います。それは、さっきも言いましたけれども、二十一条の「連絡」と題する規定であります。「原子力委員会及び原子力安全委員会は、その所掌事務の遂行について、原子力利用が円滑に行われるように相互に緊密な連絡をとるものとする。」こうあるわけでありますが、私が質問したことに対するお答えによりますと、これはかなり独立性を持った機関であるし、これからも独立性は尊重していくんだというふうに政府側の答弁は聞こえたわけであります。私はこの独立性というものは非常に重大なことだと思うのですが、所掌事務の遂行について、私は原子力委員会と原子力安全委員会がむしろけんかをしているような状態、極端な表現になりますが、そんな状態の方がむしろ望ましいのではなかろうかというふうにすら思っているわけなんですが、この「緊密な連絡をとる」ということについて、そういった点からどういうことを意味しているのか、これをはっきりさせておきたいというふうに思います。
  191. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 この問題につきましては、行政懇談会におきましても、非常に議論があったと承知いたしておりますが、やはりこの両委員会、それぞれ独自の分野でそれぞれの守備範囲で政策決定なり具体的な判断が行われるわけでございますけれども、原子力の政策というものと安全規制というものが不可分である、そこでこの所掌の範囲の間にたとえば空隙ができるというふうなことがありますと、これは全体的に見まして非常に好ましくないことになるわけでございます。そういうこともございますので、相互に意見は尊重はいたしまして、相手の独立性を侵すということはいささかもございませんけれども、十分に連絡を密にするということによりまして原子力利用が全体的に円滑に遂行されるということを期待してこの条文を規定しているわけでございます。
  192. 日野市朗

    ○日野委員 そうしますと、両者の意見の食い違いができたときにそれを話し合いなんかで調整しようとか、その手のことではないというふうに断言いただけますね。
  193. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 おっしゃるとおりでございまして、それぞれの分野で独自の責任を持つわけでございます。たとえば原子力安全委員会は安全性につきまして独自の判断をし責任を持つわけでございますから、それにつきまして原子力委員会が安全上の問題で別の御意見をお出しになるということはあり得ないということでございます。
  194. 日野市朗

    ○日野委員 ちょっとよくわからなかったのですが、もう一度。
  195. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 所掌事務がそれぞれ明確に区分されております。特に、設置の許可におきまして何を所管大臣が諮問するかということは法律上明定されております。それぞれ別のことを諮問するわけでございますので、その諮問された事項についてそれぞれの委員会が独自の立場から独自の判断をなさるわけでございまして、その間に重複はないわけでございます。
  196. 日野市朗

    ○日野委員 そうしますと、この二十一条の連絡の規定はあくまでも所掌上の問題なのであって、所掌上の問題について争いが起きた場合のみにかかわる規定であるというふうに伺ってよろしゅうございますか。
  197. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 必ずしも御質問の趣旨を十分理解しておらない御答弁かもしれませんが、こういう原子力開発にともに関与する二つの委員会でございますので、いろいろ実質的に連絡を密にする、連絡調整が必要になってくる。先ほど申し上げましたように、その間に間隙があるということは非常に好ましくございません。相互に意見を尊重しつつ十分連絡調整をするというのがこの二十一条の趣旨でございます。
  198. 日野市朗

    ○日野委員 どうもわかったようなわからないような、大体二十一条の規定自体もわかったようなわからないような規定なんですが、この規定の意味するところはあくまでも所掌事務の分野のみに関するものである、このように伺ってよろしいですか。
  199. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 この種の規定はほかの法律にもあり得るかと思いますけれども、趣旨といたしまして両方の委員会が十分緊密な連絡をとる、そういう姿勢といいますか精神といいますか、そういうことをうたったものでございます。いわゆる精神規定、訓示規定と俗称されるようなものでございまして、所掌の範囲に空間が生じないようにというふうな配慮もございます。
  200. 日野市朗

    ○日野委員 最近は何でもかんでも訓示規定だというのがはやっておりますけれども、私はこれは訓示規定ではないと思うのですよ、別に揚げ足を取ったりなにかする意味ではありませんけれども。私がさっきから言っていることは、特に安全委員会に必要なことはその独立性だ、こう言っているわけですね。原子力委員会とこの安全委員会が緊密に連絡をして話し合って、そこのところに問題はあろうけれども顔を立ててというようなことをやられたり、そこのところの安全性については問題はあろうけれども、もっとほかの政治的な理由がいろいろあってとか、非常にエネルギーが乏しいのだからそこいらは何とかのんでくれとか、こういう緊密な連絡のもとにそういうことをやられたら困ると思うのです。ですから、ここの意味をもっと明らかにしておいて、これが通った場合選任されるであろう安全委員会の方々が後顧の憂いなく仕事ができるように、その解釈基準をここで明確にしておいていただきたいということを申し上げている。現実にこの規定は訓示規定ではないと私は思いますよ。
  201. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 この両委員会は、現在の原子力委員会がその機能を二分をし、かつ、それぞれが十分に機能することが期待されるわけでございますので、先ほども御説明申し上げましたように、その両委員会の間に間隙ができて、いわばどちらもその問題に関与しないというようなことがあっては非常にまずいという実態があるかと思います。そういうふうなことでございますので、両委員会の運営はそれぞれ独自の分野、独自の諮問に応じ、その諮問自身は、先ほど御説明申し上げましたように、たとえば設置許可についての諮問にははっきり分野が決められておりまして、その間に調整を必要とするようなものではございません。原子力委員会に諮問されることと安全委員会に諮問されることとはそれぞれ別の問題でございます。その間に調整は必要ない、そういう性質のものでございます。  したがいまして、先生の御懸念のようなことはないと思うわけでございまして、この規定が設けられましたゆえんのものは、やはり間に間隙、空間が生じないようにという配慮、そういうことでございます。
  202. 日野市朗

    ○日野委員 所掌上の問題だけである、そう言っていただければ、私はそれで納得するのですが……。
  203. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 ちょっと先生の御質問の御趣旨、十分把握し得ないのは申しわけございませんけれども、先ほどからるる御説明申し上げておりますように、両委員会はそれぞれ法律上に明定されました仕事の範囲、所掌の範囲があるわけでございますから、その間に混同を起こすようなことは本来あり得ないという前提のもとに、こういう両委員会の運用が円滑に行われるようにという趣旨でこの規定が設けられておるということでございます。
  204. 日野市朗

    ○日野委員 ちょっとしつこくここを聞いておきますが、まず所掌事務についても先ほども二つばかり例を挙げて伺った。原子力委員会の所掌事務の第一号と原子力安全委員会の第一号、たとえば「原子力利用に関する政策に関すること。」というのと「原子力利用に関する政策のうち、安全の確保のための規制に関する政策に関すること。」というのでは、現実に私は理解できないのですよ。さっきからあなたは、大前提になっているのは安全のことだということをずっと言っておられますね、原子力基本法に安全という文字が出ていようがいまいが、そうあなたは言っておられるわけです。私も実際そのとおりだと思う。そうすると、「原子力利用に関する政策に関すること。」といっても、この中には常に安全という問題が裏打ちされているわけでしょう。そうすると、この原子力安全委員会の「原子力利用に関する政策のうち、安全の確保のための規制に関する政策に関すること。」ということになってくると、これは必ずしもその意義というものは明らかになってこないと思うのです。ですから、ここらの所掌関係についていろいろな空隙が生ずるということも出てまいりましょうし、場合によっては重複する部分もかなり出てくるだろうと思うのですよ。そこらでこの安全委員会の独立性というものが保たれていないと、これはなあなあになってしまう、原子力委員会の方に押しまくられてしまうのではなかろうか。そんな懸念があるから伺っているわけなんです。いかがでしょうか。
  205. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 ただいま先生の御指摘の重複の問題につきましては、確かにその政策の面におきまして多少の重複はあり得るわけでございます。具体的に申しますと、原子力安全委員会は安全の規制の政策ということに責任を持つわけでございますが、その中身といたしましては、たとえば安全研究、どういうふうな安全研究をやるべきか、こういう計画についてまず原子力安全委員会が安全委員会の立場でこの問題を検討して方針をお決めいただきます。しかしながら、これは原子力開発、利用全般につきましての予算の調整、そういった観点からいたしまして、原子力委員会が最終的にこの調整をすることがやはり必要でございます。  そういう観点からいたしまして、多少の重複はあるわけでございますけれども、この場合におきましても、安全研究の計画というものにつきましての原子力安全委員会の専門的な立場の御検討というものがまず先にあるわけでございますから、それにつきまして原子力委員会の方で別の御意見が出て別の立場でというふうなことは基本的にはあり得ないのではないかと考えております。
  206. 日野市朗

    ○日野委員 大体わかったようなわからないような答弁ですが、この点についてはこの程度にしておきたいと思います。  それで、さっきから言っておりますように、原子力基本法自体には安全という言葉はない。そして、これについて、安全とは一体どういう基準によっているのかというのは、現在は行政的な基準の策定とかそういうことに任せられているわけであります。この法律が通って安全委員会ができる、その仕事をするについても、安全ということを考える場合に、一体何を基準に安全というふうに考えたらいいのかという点については、非常に迷わざるを得ないところだろうと思うのです。それで、この法案の審議を通しても、少しその点について触れておくべきではなかろうかというふうに私は思います。  先日、四月二十七日ですか、参考人の方々をこの委員会にお呼びをいたしましていろいろな御意見を伺ったわけですが、特に内田参考人が安全について、コスト・アンド・ベネフィットのアナリシスということだというようなお答えをされたのが、私、非常に印象に残っているわけなんです。恐らく局長もお聞きになっていたと思います。  この原子力をめぐっての安全という場合、こういうコストとベネフィットのアナリシスというようなことでは問題は進まないのではなかろうか。また、その委員会の席上でもちょっとどなたかから出ていましたけれども、飛行機だって事故があるではないかとか、石炭だって掘るのに多くの犠牲を伴うではないかというようなことなども言われているわけなんですが、どうなんでしょうか、そのような次元で、現在の政府考え方、それから将来の考え方として、この安全性という問題は原子力開発に伴うプラス面とマイナス面との比較考量だけで進むものというふうにお考えになっているかどうか。  これは大臣にも伺っておきたいと思うのです。大臣はいまよく聞いておられなかったかもしれませんが、少なくとも原子力安全性というものを考える場合、いささかの危険をも許さないという厳しい態度が必要だというふうに私は考えているのです。そういう私の考え方に御賛同をいただけるかどうか、伺いたいと思うのです。
  207. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 安全に関しましては、何度もお答えいたしておりますとおり、行政面ではあくまでも原子炉設置の場合、そして建設の場合、さらには管理運営の場合、そこにいらっしゃる従事者の場合、そして環境、そうしたものについての個個の安全に関しましては本当に細心の注意を払っていかなければなりません。特に被曝という問題に関しましては、御承知のとおりに、世界において放射線防護委員会という一つの機関があって、そこが検討検討を重ねた結果基準を示しておりまして、わが国におきましてはそれを守りながら、さらに環境等においてはそれよりもなお一層厳しい基準で臨むべきであるという結論もすでに「原子力委員会は出しておるような次第でございます。  だから、この安全という問題を論じますときに、いま日野委員がおっしゃったとおりに、本当にみじんも不適格な条件は許さないのだ、当然そうであろうとは思いますが、しかし、何もかも絶対的に安全だ——絶対という言葉だけはむずかしいことであって、したがって世界の学者の間におきましても、本当にチョークの粉末のようなささいなものを吸い込んでも直ちにそれが被曝するのだという説もあれば、この間のお説のように、いや、隕石と同じぐらいの安全度があるのだといって極端から極端までの話があるがごとくに、これは総括的にりかまえましたときには非常に論議を呼ぶところでございましょうが、いやしくも行政面においては常に厳しい態度で臨まなくてはならないのだ、それも安全を保証する基準というものが幾つもございますから、そうした基準というものを十分尊重してやっていかなくてはならぬ、これは今日まで厳にやってまいったわけであります。残念ながら、ちょいちょい報告すべき事故を忘れたというふうな、ああいう件もあったわけでありまして、この点に関しましても、行政面では、法律的にはすでにこれはだめな問題であるかもしれぬが、行政的な責任をとらせろといってやっていく、つまりそうしたことが今後も必要ではないだろうか、こういうふうに思いますので、原子力行政におきましては開発の十分な保証をするのが安全である、安全あってこそ開発し得る、これは車の両輪だ、こういう気持ちで今後もやっていきたい、こういうふうに思っております。
  208. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 補足させていただきますが、内田参考人は、参考人として御出席のときにも、そのコストアンド・ベネフィットの考え方を敷衍しておられまして、単なる経済上の価値の比較ではないという御説明がたしかあったと思います。広い意味で社会的に原子力開発する便益と社会的負担の比較という意味である、こういう御説明があったと思います。  大臣の御引用なさいました国際放射線防護委員会におきましても、たとえばこういうふうなことを言っております。「電離放射線への被曝が含まれる活動をしないで済まそうと望むものでない限り、ある程度の危険が存在することを認識しなければならず、かつ、考えられる危険が、このような活動から得られる利益から見て、その人及び社会により容認できると思われるレベルにまで放射線量を制限しなければならない。」ということでございまして、この基本的な考え方は、利益を得るために何がしかの不便は忍ぶことが必要であろうけれども、それはできるだけ少なくするのである、こういう基本的な考え方かと思われます。世界各国ともこのような立場を踏まえまして原子力開発の推進を図っておる、こういうふうに承知いたしております。
  209. 日野市朗

    ○日野委員 こういう公式の席での話になりますと、安全性については非常に留意をしておりますという話になってしまうのでありますが、現実に起きている事故などに対応する対処の仕方なんかを見てみますと、私自身も非常に危惧の念を禁じ得ない現象が具体的に幾つか私たちの目の前に突きつけられているような感じがするわけであります。特にこの安全委員会なんかが仕事をする際に、いろいろなデータを一いままでの事故の記録というのは、実は貴重なものだと私は思うのですよ。事故、故障と言ってもいいでしょうが、そういったもののデータは非常に貴重である。失敗、故障、そういったものを乗り越えていくところに進歩があるのであって、安全性ということを考える場合に、それらのデータが提示されないままになっているということは、これは非常に憂うべき事態だと思いますし、安全性に対する姿勢は、それだけでももう非常に大きな欠陥を持っている、これを公表しないというようなことがね、そういうふうに指摘せざるを得ないのであります。  原子力基本法の第二条に基本方針がうたってありますが、この中にその成果の公開ということがございますが、その中には当然そういったものの公表というようなことも含まれるであろうというふうに思うのですが、これらを公表して安全委員会の仕事、または世論の喚起ということにサービスをされるおつもりがこれからおありかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  210. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 ただいま先生御指摘の資料の公開、これは非常に重要な問題でございますが、ただ、私ども、この原子力基本法をどう理解するかということにつきましていろいろ検討いたしておりますが、安全審査に関係する資料の公開、これが直ちに基本法の第二条に申します成果の公開に該当するというものではないと考えております。しかしながら、資料の公開というのは非常に重要な問題でございまして、特に御信頼を得るという意味からいたしますと、何か隠しておるのじゃないか、こういう御印象を与えることはもう実にマイナスでございます。そういうことでございますので、従来からできる限り資料は公開いたしておりますし、今後ともその方針は続けてまいりたいと考えておる次第でございます。
  211. 日野市朗

    ○日野委員 いま伺ったことについて通産省の御意見はいかがですか。
  212. 武田康

    ○武田政府委員 先ほどの先生のお話のうちデータの公開、それからもう一つ事故その他の記録をフィードバックして技術を改善するという点、いずれも重要なことと思っております。  私どもといたしましては、美浜のような例もございましたけれども、ささいな故障、事故といえども、原因調査し、究明し、それから公表していくというようなことをずっと逐次強化してきておりまして、現在では、ある意味では少しその頻度を高く、こういうものが見つかったというようなことを世の中に出し過ぎて——出し過ぎてというのは語弊がございますけれども、もっとわかりやすくないと、こんなのをぼんぼん言われてもすぐ理解はできないということで、そういう説明の方法をもう少しさらに考えなければいけないというようなことはございますけれども、実は私どもとしては、私どもの可能な限り、ささいなことといえども、いろいろ調べ、究明し、それからその結果を発表する、なお同時に、先生おっしゃいましたように、技術的な改善の要素になり得るものにつきましては、そのほかの場所なり原子炉なりにも適用していくという方向で進めてきているところでございますし、これからもなお一層そういう方向努力いたしたいと思っておる次第でございます。
  213. 日野市朗

    ○日野委員 美浜事故についていま言及されたところですが、いま指摘しました参考人をお呼びして意見を伺ったときに、たしか久米参考人だったと思いますが、たとえばクラックの事故ですね、クラックについてこれを削り取ってしまうというようなことをしますと、ますますその原因調査は困難になるというようなことを言っておられるわけですね。これの調査に関するいろいろなデータは恐らく得ているのであろうと思うのですが、こういうデータが専門的な知識を持っている人、そしてかなりの良識を持ってそれらを処理できるであろうと思われる人にまでこれが明らかにされていないという事態を見ますと、私はこれは非常に憂慮すべき事態なんだなというふうに思うのですが、その点、通産省なんかいかがお考えになっているのでしょうか。
  214. 武田康

    ○武田政府委員 私、この前の参考人のお話のときに、後ろの方で聞いておりましたので、たしか久米参考人がそのようなことを、正確には覚えておりませんけれども、おっしゃったことを記憶しております。  私どもといたしましては、クラックの原因につきましては何度か御説明申し上げたのでございますけれども、要するに、冷たい水と温かい水がまざる、それから、それが駆動停止あるいは制御棒の動作等々というようなことにより、その量なりまざりぐあいなり等々が変化する、そういうようなことが原因になりまして、温度差原因とでも言ったらいいかと思いますけれども、そういう微細なひびがまずできて、それが時間とともに発展する、こういうようなものであるというその原因の究明をいたしまして、それで、それをとめるためには二つの対策一つは削り取って滑らかな表面に仕上げる、もう一つは、これは全部に適用ではございませんが、ほかに戻しようのある水のような場合には戻すことを別のルートに変えるというような対策等々を現在とりかけているというところでございますけれども、そういうような原因究明、それから、その結果並びに対策というものがまとまりましたたびに、あるいはものによりましては中間的にその中間結果とでも言うのでしょうか、中間の事実認識とでも言うのでございましょうか、そういうものも含める場合もありますけれども、そういう節々といいますか、まとまるごとに公表し、それでより一層一般の方々の理解を深めていただく。同時に、それはほかの発電所に適用すべきものについては適用して、それで技術の向上に、一方では信頼性の向上に役立てていく、こういうようなことでございます。  そういうようなことをやっておりまして、今後ともそういうことを続けていきたいし、また充実していきたいと思っている次第でございます。
  215. 日野市朗

    ○日野委員 やはり安全委員会なんかができても、データも何もさっぱり見せられないというようなことでは全くどうにもならないと思いますから、そういったデータを公表するということも、これからはどしどしやっていただく、そのことが一時的にはブレーキをかけることになっても、結局は健全な技術開発を進めていくことになるのだという認識をひとつ持っていただきたいというふうに思っているわけであります。  それから、やはり同じ日の参考人の中で、岸田参考人なんかはこんなふうに言っておられるのですね。「たとえささいな故障等が起きてもすぐ事故原因の究明と対策検討を慎重に行って、報告すべきものは直ちに報告するように、いま九社そろって、その線上でやらなければならない」というふうに考えているのだというようなことを言っているわけなのです。私は、この態度はかなり高く評価してもいいのではないかと思っているのですが、むしろ、こういうささいな事故でも決してゆるがせにはしない、これを一生懸命検討して進めていきたい、こういう業界の姿勢があるわけなのですが、これは本音であることを私は希望するわけですけれども、そういう業界としてはある程度欠損を見込んでもやむを得ないというくらいの態度のように私にも見られるわけですが、こういう態度を、せっかく電力業界がここまで考えているのを、むしろ通産省の側がもっとやれやれというような形でけつをたたくというようなことは絶対になさらないようにしていただきたいというふうに思うわけです。その点はよろしゅうございましょうね。
  216. 武田康

    ○武田政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、私どもといたしましては、ささいな事故、故障といえども調査し、究明し、それから必要な処置をとり、公表するというような指導を、私ども自身もそうでございますが、電気事業者に対しましてもそういう指導を積み重ねてきているところでございまして、先ほど御指摘のございました岸田参考人のお話も、私どもの指導の線と全く一致していると思っている次第でございます。
  217. 日野市朗

    ○日野委員 もっと原子力基本法等についても若干聞きたいところは残るわけですが、時間がなくなってまいりましたので、日本原子力船開発事業団法について若干の質疑をしておきたいと思います。  事業団の仕事として原子力船「むつ」があるわけですが、これは当初の事業計画からも大幅におくれおくれて現在まで来ておりますね。このおくれた原因というのは、これは幾つかあると思います。非常におくれてしまった、その大きな原因を三つぐらい、思いつくままで結構です、挙げていただけませんか。
  218. 山野正登

    ○山野政府委員 突然の御質問でございますので、三つ挙がるかどうか疑問でございますが、昭和三十八年に「むつ」の開発に着手したわけでございますが、当時はまだわが国において、原子力開発自体、まだ陸上におきましても実用化に至っていないような段階でございますし、舶用炉につきましては、特に日本はまだ経験がなかった段階でございます。そういったふうな全く未経験な分野についての開発着手ということでございまして、当初計画に着手するに際しましても、日本国じゅう探しまして、なかなかこの道の専門家というものが集まりにくかったといったふうなこともございまして、開発計画の策定あるいは経費の見積もりといったふうなことが、相当事志と違う面が出てまいったというのが一つあろうかと存じます。  それから、これは技術開発にはある程度つきものであると私どもは存じておりますけれども、御承知のような放射線漏れというトラブルがあったわけでございます。これは、このようなトラブルがなく開発が進め得ればこれに越したことはないのでございますけれども、しかし、若干の試行錯誤というものはこの種の開発にはっきものでございますので、これもやむを得ないことかと存じますが、これが計画が遅延した原因の第二でございます。  それから第三の原因としましては、これは陸上の原子炉につきましても言えることかと存じますが、これは私どもの国民の理解と協力を求める努力がまだまだ足りないという面もあろうかと存じますが、この原子力の平和利用についての国民各層の御理解というものが、いまひとつ、まだまだ足りなかったといったふうな点もあろうかと存じます。  以上、思いつくままに三点を挙げた次第でございます。
  219. 日野市朗

    ○日野委員 最大のものを挙げてくれなんて言うと、反対運動のせいだと言われると困るんで三つと言ったわけですが、いままでのこの「むつ」の開発の経過をずっと見てみますと、いろんな計画のそごがあったということが言えると思うのですね。これは何しろやはり未経験の分野ですから、当然いろいろなそごもあったろうし、いろんな放射線漏れのようなトラブルなんかもあっただろうと思うのです。こういう全般的ないままでの開発計画、それからずっといままでやってきたその研究と、それからその実用化といういろんな過程を見て、まだまだ舶用炉というのはいろいろ研究の余地があるんだ、もっともっと研究していかなければならないものだというふうに私なんか感じているのですが、そういう点については、いかがお考えになりましようか。
  220. 山野正登

    ○山野政府委員 舶用炉の研究開発の今後の必要性につきましては、先生御指摘のとおりでございまして、現在進めております「むつ」に搭載しております舶用炉の研究開発が終了すれば、わが国における舶用炉の開発あるいは将来の量産といったふうなものがスムーズに参るとは私どもはもちろん思っていないわけでございまして、これは日本原子力研究所におきます基礎研究でございますとか、あるいは運輸省の船舶技術研究所におきます舶用炉の研究といったふうなもの、さらには産業界におきますこの分野の研究といったふうなものが両々相まって、今後のわが国における自主的な技術に基づく舶用炉の生産といったふうなものを可能にすると思いますので、御説のとおりだと思います。
  221. 日野市朗

    ○日野委員 これもちょっと唐突な質問になるかもしれませんが、現在世界じゅうで動いている、これは原子力の軍艦は別として、軍艦以外の原子力船、これはどのくらいあるか、そして、現在どういった国で開発が進んでいるかということを、もし御存じでしたら教えていただきたいと思います。
  222. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいま米国でこれはほとんど開発の使命を達成いたしておりますが、一隻、それからドイツで現在運航中のものが一隻、さらにソ連におきまして主として砕氷船として使われておりますものが二隻でございまして、さらにソ連におきましては第三船の建造が着手されております。それ以外にイギリス、フランス等におきましても、船自体はつくられておりませんけれども、原子力商船の建造計画といったふうなものが検討されております。
  223. 日野市朗

    ○日野委員 いまアメリカでと言われたのは、恐らく「サバンナ」を指しておられるだろうし、ドイツは「オット・ハーン号」を指しておるだろうと思うのですが、どうも当初の「サバンナ号」が就航する、「オット・ハーン」ができたというころは、これはもうすごい勢いで世界じゅう原子力船に席巻されるのではなかろうかというような意気込みが一時は見られたようですが、現在は、実用船の開発ということについて、むしろそういった動きはとまっているかのように私には見えるのです。実用船の開発ができて、そして実用船が世界の海を所狭しと走り回るようになるまでにはかなり時間がかかるのではなかろうかなというふうな感想を私は持っておるのですが、いかがでございましょう。
  224. 山野正登

    ○山野政府委員 原子力船時代がいつ来るかという点につきまして、確かに過去に考えられておりましたよりも造船、海運界等の不況によりましてかなり後にずれ込んでおるということは事実でございますが、一昨年の五月にニューヨークで開かれました原子力船に関する国際会議というのがあるのでございますが、そのときの、これはアメリカ、西独、フランス、イギリス、日本といった国々が参加いたしておりますが、その結論といたしまして、原子力商船が海運界で活躍する時期といたしまして昭和六十年ごろ、八〇年代後半といったふうな見方、それから原子力商船の第一陣の建造決定の時期と申しますのが、大体ことしから来年にかけてといったふうな見方になっておりまして、あと十年ないし十数年のうちにはそういう時代になるというふうに見込まれております。
  225. 日野市朗

    ○日野委員 一応原子力船時代というのは、目標としてはかなり遠のいたということでしょうな。つまり、その間、これからの「むつ」、これはもう炉、船とも十分な検討をするだけの時間的な余裕、これは見ても差し支えないというふうになるんではありませんか。
  226. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいま申し上げましたように、あと十年ないし十数年もたてば、ある一定のフリートでの原子力商船の運航といったふうなことはあり得るわけでございますから、やはりこのような大型の技術開発は、時間的な要素考えますと、現時点から必要な研究、必要な開発というものは積極的に進めてまいる必要があるんじゃないか、まだ十年先だから、いましばらく手をこまねいて待てばよろしいではないかといったふうな議論はあり得ないのではないかというふうに考えます。
  227. 日野市朗

    ○日野委員 これで終わります。
  228. 山田太郎

    山田委員長 次回は、明十九日木曜日、午後一時三十分理事会、一時四十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時散会