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武田政府委員 福島一号機の経緯でございますけれ
ども、いま
先生御
指摘のとおりでございまして、
定期検査を繰り上げ実施をいたしまして、大体
定期検査は三カ月、百日前後かかるものでございますから、繰り上げました当初におきましては、八月の半ばに始まるわけでございますので十一月ごろには終わるかな、こういうことであったわけでございます。
実は、その
定期検査をやっております過程で、九月になりましてからでございますが、中、下旬であったかと思いますけれ
ども、
原子炉の計装系とかあるいは浄化系の配管ににじみと申しますか、ある液体をたらしてチェックをいたしますと、にじみみたいなものが出る、それが発展しますとひび割れみたいなものになり得るものでございますが、そういった、
一言で言えば微細なひび割れ、そういうものが発見されまして、そうなりますと、そこの
部分を切り取りまして新しい管に直すとか、そういったたぐいの措置をとるわけでございますが、そういった必要が起こりまして、その時点で、はっきり
原因がわかったのがあるいは十月にずれていたかと思いますけれ
ども、ことしの一月、二月くらいまでかかるというような判断をしたわけでございます。
そうやって
定期検査を進行さしておりますときに、昨年末、十一月の終わりか十二月になってからでございますけれ
ども、アメリカの同タイプ、BWR型の
原子力発電所で
給水ノズルに微細なひびが入っているのが発見されたという情報が入りまして、それで
福島第一
発電所はもう
運転を始めましてから六、七年になるものでございますので、そうすると、もしかしたらそういう現象があるかもしれぬというような判断をして
給水ノズルの点検を指示いたしました。
給水ノズルというのは、御承知のように
原子炉の圧力容器に、
原子炉に参ります給水が入る入り口でございます。で、実は一次冷却水の中に
——中につかっていると言うとおかしいのでございますが、接触しております。かなり放射線レベルの高いところでございます。点検そのものにも作業者の放射線被曝等がないようにとかいうような細工をしなければなりません。そんなこともございまして、実際に点検ができましたのがこの二月に入ってからでございます。で、点検いたしました結果が、
先生御
指摘のように
給水ノズルのコーナーの
部分に微細なひび割れが見つけられたわけでございます。ひび割れにつきましてはその
部分をはぐとか、それから
原因を検討いたしまして、ちょうど
ノズルのコーナー
部分に、給水と
原子炉の中に入っておる温かいお湯との温度差が
原因ではないかということで、そういう
原因がなくなるような措置をしなければいけないというようなことでございまして、それから一方同時に、先ほど御
指摘の
制御棒冷却水の戻し
ノズル、これにつきましても微細なひびが発見された。これについても、物が違いますのでなお詳細
調査中でございますけれ
ども、あるいは似たような
原因ではないかといま推定しているわけでございますが、これについても対策が必要でございます。
そんなこともございまして、それがわかりましたのが二月の終わりか三月の初めだったものでございますので、それから後さらに三カ月あるいはもう少しかかるだろう。現在、
運転再開になりますのは、それらの処置も終わり
定期検査も全部終わりまして、ほかのものもよければの話でございますけれ
ども、終わりますのがことしの六月、七月あるいは八月というぐらいに想定をしているわけでございます。
それから一方、
事故、
故障と
環境への
影響でございますが、実は先ほど一番最初の
定期検査を繰り上げることになりました
発電機励磁回路、これは
原子炉とは無
関係の
部分、電気回路でございます。これは
故障部分の取りかえ、いわばエレメントの取りかえ等の措置で機能が復帰すればそれでいいわけでございまして、これは済んでおります。それから二番目の配管のひび割れあるいはにじみでございますが、これはその
部分を切り取って新しいものに変える等々の措置をすでに済ましております。それから
給水ノズルと
制御棒冷却水の戻し
ノズルでございますが、この二つにつきましてはいま
修復作業といいますか、それが進行しているわけで言いますが、その
部分は実は一次冷却水と同じところに入っているわけでございまして、冷却水なりそれから蒸気になりましてタービンの方にいってぐるぐる回っている回路そのものが一種の防壁になっておりまして、放射線的には外部に
影響を与えるものではない。それから先ほどの配管の
部分もこれは建物の中に閉じ込められている
部分でございますから、外部に放出する放射線、これはにじみ程度でございますので、そこから大量に出るという性質ではございません。
そんなこともございまして、現在、昨年の八月それから九月、この二月に見つけた
事故部分あるいは
故障部分につきまして、外部に放射能的な
影響を与えるものではなかったわけでございます。ただ一番最後の
給水ノズルの修理等につきましては、実は
原子炉の容器内の
仕事でございますので、作業者の放射線管理というのには非常に神経を使わなければいけない
部分でございます。その
部分に。きましてはそういうしかるべき措置をとりまして、これはどちらかと言えば
科技庁の
関係かとも思いますけれ
ども、作業者に対する被曝管理というのを厳重にやるというような措置がいま続いております。仮にそれがうまくいけばと言うとおかしいのですが、適正に行われれば、そういう
意味での作業者に対する問題もなかろうかと思います。
私自身も少し混乱いたしておりまして、いま
事故とか
故障とかという
表現を無意識的に使い分けたり混同したりいたしておりますけれ
ども、実は
電気事業法では
事故報告という
表現でございまして、物が壊れてもそれから人に
影響を与えても、いずれも
法律で
報告が必要と定めているものにつきましては
事故という
表現を使っております。先ほどの
伊原局長のお話と
法律が違うものですからその
表現がちょっと違いまして、その
意味でも少し私自身を混同したことをいま
事故と
故障について申し上げたかと思います。
それからなお、機器の
故障が何度も何度も起こったらあるいは積み重なったらどうなるか、こういうことでございますが、実は機器の
故障、私
どもで言う
事故の中、あるいは
故障と言ってもいいのでございますけれ
ども、それはたとえばある部品を取りかえればいい、または何ならある
部分を切り取ればいい、あるいは溶接か何かで埋めてしまえばいい、いろいろな処置の対応がございます。処置の対応がございますが、同じカテゴリーでも時間のかかるものと短くて済むものとございます。特に
原子力発電所の場合で放射線レベルの高い
部分で何か
仕事をするという場合には、厳正なあるいは厳格な作業者の放射線被曝管理をするというような
意味から、
火力発電所との比較でございますが、同じ
部分が壊れても、あるいは
故障をしても、手直しにはかなり余分な時間がかかるというような現象が起こっております。それで
原子炉の圧力容器内でなくても、たとえば配管でございましても、PWRの系統の配管あるいはPWRの一次系の配管等ということになりますと、これは放射線レベルのかなり高いところでございますし、それが再度
故障を起こしますと非常に困る場所でもございますので、チェックにつきましても、
修復につきましても非常に慎重にやらなければいけない。放射線と無
関係の
部分が
原子力発電所の中でもございますが、そういう
部分につきましては、また
故障が起こればそのまま、たとえば動かしたままでまた手直しができるというようなこともあり得るわけでございまして、同じ
故障、同じ
事故でも、その場所なり
実態次第で時間はいろいろ変わってまいろうかと思っております。
それから、そういうものが重なって非常に問題かどうかということでございますが、私
どもがいままでいろいろ見つけました
事故なり
故障なりあるいはそこまでいかない
トラブルというものは、相互に必ずしも重複しない性質もございますし、それからこれは
原子力発電所の
環境なり何なりに対する放射線管理といいますか、被曝管理あるいは放射能管理というようなものにつきましては、俗っぽい
言葉で言えば三重、四重の防壁がございます。ですから、
一つくらいの防壁が壊れても、それがすぐ見つかり、管理できるというものでございますと、あるいは
修復できる、こういうものでございますと、そのあとの二つなり三つなりが機能をしてそれで抑えられるという性質でございます。したがいまして、時間はかかるかもしれませんけれ
ども、一遍に重なって、それから前あったものと今度起こったものとが重複してということはなくて、むしろ問題は、
原子力発電所の稼働率が下がる。稼働率が下がるというのは、ある
意味で経済的な問題でございますけれ
ども、そういう問題にはなってくるかと思いますけれ
ども、対外部への安全管理というような
観点では、
もともと一番最初に原子力
委員会、
科技庁等が行われます安全審査を十分にやってあるということでもございますので、そこはそれほど心配はない。しかし、ただ放置して、知らない
かっこうでずっと長々と放置いたしますと、そういうものがあちこちで積み重なって問題、ということはあり得るわけでございますので、私
どもも毎年一回
定期検査で
原子力発電所の各部をいろいろな角度から点検するというようなことをしているわけでございますし、それから今回
美浜等々の関連でいろいろ御
指摘もございまして、私
どもも定検をさらに一層充実するというようなことで、今後とも一層その管理に努力していきたい、こう考えておる次第でございます。