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1977-05-18 第80回国会 衆議院 運輸委員会大蔵委員会物価問題等に関する特別委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年五月十八日(水曜日)     午前十時四分開議  出席委員   運輸委員会    委員長 大野  明君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 増岡 博之君 理事 宮崎 茂一君    理事 坂本 恭一君 理事 渡辺 芳男君    理事 河村  勝君       北川 石松君    永田 亮一君       堀内 光雄君    三塚  博君       久保 三郎君    斉藤 正男君       田畑政一郎君    草野  威君       宮井 泰良君    薮仲 義彦君       米沢  隆君    小林 政子君       中馬 弘毅君   大蔵委員会    委員長 小渕 恵三君    理事 小泉純一郎君 理事 保岡 興治君    理事 山下 元利君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君       愛知 和男君    大石 千八君       後藤田正晴君    砂田 重民君       原田  憲君    村上 茂利君       山崎武三郎君    山下 徳夫君       伊藤  茂君    池端 清一君       大島  弘君    川口 大助君       川崎 寛治君    沢田  広君       貝沼 次郎君    宮地 正介君       中井  洽君    荒木  宏君       永原  稔君   物価問題等に関する特別委員会    委員長 西宮  弘君    理事 青木 正久君 理事 加藤 紘一君    理事 片岡 清一君 理事 砂田 重民君    理事 武部  文君 理事 中川 嘉美君    理事 米沢  隆君       愛知 和男君    中西 啓介君       平泉  渉君    堀内 光雄君       湯川  宏君    馬場猪太郎君       宮地 正介君    大成 正雄君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 田村  元君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君  出席政府委員         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         大蔵省主計局次         長       松下 康雄君         運輸大臣官房長 山上 孝史君         運輸大臣官房審         議官      真島  健君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 杉浦 喬也君  委員外出席者         経済企画庁物価         局審議官    水田 治雄君         大蔵省主計局主         計官      宍倉 宗夫君         厚生省社会局保         護課長     入江  慧君         厚生省援護局庶         務課長     吉江 恵昭君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本国有鉄道常         務理事     高橋 浩二君         日本国有鉄道常         務理事     馬渡 一眞君         日本国有鉄道常         務理事     吉武 秀夫君         物価問題等に関         する特別委員会         調査室長    芦田 茂男君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改  正する法律案内閣提出第一一号)      ————◇—————
  2. 大野明

    大野委員長 これより運輸委員会大蔵委員会物価問題等に関する特別委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行います。  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 大野明

    大野委員長 本案についての趣旨の説明はお配りいたしておりますので、資料により御了承願うこととし、直ちに質疑に入ります。  質疑時間は、申し合わせの範囲で御協力をお願い申し上げます。  なお、政府及び日本国有鉄道当局におかれましても、答弁は簡潔にお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、これを順次許します。沢田広君。
  4. 沢田広

    沢田委員 きょうは連合審査ということでありまして、運輸委員会大蔵との関連性を持ちましてそれぞれお伺いをしてまいりたいと思いますので、今日の国鉄のあり方あるいは国鉄の存在が国民に与える影響きわめて大なるものがあるときでありますので、その点を十分配御慮の上、御回答を賜りたいと思っておるところであります。  第一は、今日の日本政治内憂外患それぞれありますが、内政のうちの三悪と称せられるもの、言うならば地方財政赤字また医療体系赤字、さらに加えて国鉄財政赤字、これが内政分野を占める、当面いたしておりまする三悪と言われているわけであります。言うならば、これは今日までの長年にわたる自民党の政治的怠慢とでもいうものによって発生したのでもありましょうし、あるいはまた官僚政治と言われておりまするものの結果によって発生したものでもあろうと思うのであります。  今回提案をされておりまする国鉄財政再建について資料を拝見いたしましたが、抽象的な文章だけであって、具体的な全体計画というものが提出されておらないのであります。私もこの再建のためにどのような方向——一方では昭和五十四年度までに具体的な解決案を出したい、一方の文章では昭和五十五年度までに出したい、内容もそういうまちまちなところもありますし、また占めている中身も、言うならば抽象的な文章の羅列であって、具体的に再建する方策は何であるかということは少しも国民に示されておらない。ああしましょう、こうしましょうという抽象的な文章はありますけれども、具体的なものはない。財政当局においては昭和五十五年度までに赤字国債をなくすというような、いわゆる再建経済企画庁計画案はもうすでにできているわけであります。国鉄についてだけは言うならばこうしたい、ああしたいというようなことだけで、何ら具体的な数字的なものがあらわれていない。これはどういうことによってそういうことであるのか。言うならばわれわれ国民借金の証書に名前を書いて判こを押して、あとは幾ら利息幾ら借金額になるのか、それを白紙一任しろ、こういう法案にも匹敵するものであろうと思うのでありますが、ひとつ具体的な再建目標を提示していただきたいと思うのであります。その点関係者提出を求めますとともに、御回答をいただきたいと思います。
  5. 田村元

    田村国務大臣 四月四日に私に提示されました再建計画は、国鉄経営改善計画の骨子でありますから、言うなれば総論であります。これを踏まえまして、国鉄が五十二年度中にいろいろな具体策をつくり上げる、いろいろな赤字要因も洗い出す、経営努力をする、こういうことでございますので、さように御了承をいただきたいと思います。
  6. 沢田広

    沢田委員 そういう方向であるならば、この提案はまず控えて、具体的な計画案をつくる。運賃値上げをするとかあるいは弾力条項にするとかそういうようなものは一応差し控えて、もう少し緻密な計画案をせめて経済企画庁——あれもりっぱなものとは言いがたいとしても、一応昭和五十五年度を目標にしてそれぞれ出されております。福田総理世界各国に六・七%の成長率を公約したばかりであります。そういうような方向昭和五十五年度までに赤字国債はなくします、ただし建設国債は除くというただし書きはございますけれども、そういうことでそれぞれ具体的な提案がなされているわけです。ところが、この中身についてはいま言われたようなものであって、さっぱり先の見通しはわからぬ。国民はこれを見て、後どうなるんだろうか、いま私が言ったように白紙委任状政府に出すあるいは国鉄に出すだけにしかならない。こういうような不安定な提案国民の前にするということは若干不見識のそしりを免れないのではないかと思うのでありますが、その点再度お答えをいただきたいと思うのであります。
  7. 田村元

    田村国務大臣 私はこの計画を受け取りましたときに、これは不見識であるというような受けとめ方をいたしませんでした。国鉄経営努力、国の助成それから適正な運賃値上げ、こういうものが相まって再建の実を上げるものと心得ております。でありますから、経営努力の面についてはこれから、本年度内にこれを洗い出して作成をしていく、その努力をしていく、こういうことでございます。
  8. 沢田広

    沢田委員 重ねてでありますが、その昭和五十二年度の分については一応予算にもありますし、この再建計画の中にもそれぞれ示されております。では五十三年、五十四年について、これが果たしておっしゃられるように再建が完全に果たし得るためにはどういう条件とどういう条件がこれから必要になってくるのか。いまおっしゃられている言葉では、国の責任、企業努力というような言葉で、国の助成もいたします、企業努力もお願いをいたします、運賃値上げもお願いいたしますということ、そういう形で表現をされておりますが、ではその後の問題についてはどういうふうになるのか。この提案以後の具体的な数字はどうなるのか、五十三年度はどうなるのかあるいは五十四年度はどうなるのか、企業努力についてはどういうふうになるのか、どれだけの成果を上げるのか、あるいはまた国の助成についてはどの程度五十三年度、五十四年度において行っていくのか、あるいは運賃値上げについては五十三年度、五十四年度においてどういう方向で措置をするのか、少しもわからぬじゃないですか。具体的に言っていただきたいと思うのです。
  9. 住田正二

    住田政府委員 従来、御承知のように二回再建計画を立てたわけでございますが、この再建計画は十ヵ年という長期の計画でございまして、ある意味におきましては数字つじつまを合わせたという計画であったために、経済情勢変化等から挫折を来したという経験をいたしてきているわけでございます。したがいまして、今回の再建に当たりましては、そういう数字上のつじつまを合わせるというようなことを避けまして、国鉄再建できるための条件を整備していくことに重点を置いて、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、国鉄から経営改善計画総論が出て本年度じゅうにさらに各論で具体的な計画が出てくることになっております。そういうような考え方に立っておりまして、今後の経済情勢等いろいろ不確定要素も多いわけであります。私どもといたしましてはいろいろな想定をいたしまして、いろいろな前提を置いた上で国鉄経営改善努力、国の適正な助成、今後の物価情勢前提とした運賃値上げということを行えばおおむね五十四年度に収支均衡ができるという判断をいたしまして今回の再建を行っているわけでございます。いま申し上げましたように、数字を出してつじつまを合わせるということではなくて、条件を整備して今後の不確定要素を勘案しながら五十四年度に収支均衡に持っていくための努力をしたいという考え方でございます。
  10. 沢田広

    沢田委員 いまの発言はきわめて重要だと思うのでありますが、政府は一体であると思うのであります。経済企画庁昭和五十五年度まで一応日本経済方向を示されておる。だから、不確定要素があるということを言われることは、経済企画庁が出されておりますそれぞれの産業における諸要素あるいは経済指標、そういうものに対して信頼感を持たない、こういう前提に立っておられるということになるわけです。また一方の言葉で、つじつまを合わせることはしない、こういうことを言っている。これはまことに不見識言葉だと思うのであります。じゃあ経済企画庁つじつまを合わせたものをわれわれに出しているということにしか反対用語としては受け取れない。つじつまを合わせるという言葉意味はどういう意味なんですか。具体的に言ってみてください。
  11. 住田正二

    住田政府委員 経済企画庁でいろいろ指標を出しておられますけれども、これはあくまで予想でございます。前二回の再建計画もそういうような指標に基づいて再建計画をつくったわけでございますが、そういう指標に基づく数字つじつま合わせといいますか、をやってみましても、いろいろ前提が変わりますと、従来経験いたしましたように、計画が予定どおり実行しにくいということになるわけでございますので、そういう不確定要素はその都度できるだけ判断をしながら再建計画を進めていく、毎年毎年いろいろな要素を考えながら計画を進めていった方が再建が確実に行われるというふうに今回は考えているわけでございます。数字つじつま合わせということは、前二回の再建計画からの経験上申し上げた言葉でございます。
  12. 沢田広

    沢田委員 この問題だけで本来ならば委員長に求めたいと思うのですが……。国民はこれから、一般に言われている運賃値上げ法律の枠を外して、いつ値上げをされるのだろうか、あるいは一九%値上げをされるそうだ、その後また値上げをされるそうだ、あるいはまた物価が上がればまた値上げをされるそうだ、こういう不安を持っているわけであります。一方昨年度に値上げをした経験から考えてみても、一兆六千億の予算収入を見込んでいたにかかわらず、一兆五千億の運賃収入に減ってきている。しかも乗客は減ってきている。いかに値上げが今日国鉄運賃収入を減らしたかという実績も示されている。そういう実態の中で将来の展望なくしてこの法案審議しろということはきわめて不見識なものではないかと思うのです。有能な官僚を集めている大蔵なり国鉄皆さん方は、いま官尊民卑だなんて、年金問題ですらさんざんたたかれている最中であります。そういう中で、そうじゃないんだ、おれたちは有能なんだという証拠を示すためにも、五十五年度なり五十四年度までにはこういう具体的な再建方策によってこの部分はこうなります、この部分はこうなります、この部分はこうなりますということが、コンピューターの今日の時代にこれらの諸条件がある一定指標をもって示されないということは、この法律提案に当たって不見識のそしりを受けるのではないかと思うのであります。まことにわれわれにとっては、先ほど述べたように、この法案審議をするに当たっては白紙委任状政府なり国鉄当局判こを押して出す、もしこれに賛成するとすればそういう形になる。後は私に任してください、どうなるかわかりませんけれどもやってみます、借金幾らになるかわかりません、利息もわかりません、皆さん負担がどうなるかわかりません、そのことは一切お任せいただきたい、ただ判こだけは押しなさい、こういうこの法案提出の仕方ではないですか。そう思いませんか。もう一回それは御回答いただきたいと思うのです。
  13. 田村元

    田村国務大臣 経済というものは非常に流動的なものでございます。特に国鉄は過去の再建計画でつまずいておることは、これは否めない事実でございます。でありますから、国民密接不可分の、国民の足でございますから、そういう点で当然慎重の上にも慎重を期することは、当を得たものとわれわれも判断をいたしております。
  14. 沢田広

    沢田委員 全然前進しないのでありますが、五十四年度、五十五年度と両者の論がありますけれども、いずれにしてもその段階でどういう形になるのか、その形だけは示されてしかるべきではないかと思うのです。そうでなかったら、これは審議の対象にならないのじゃないかと思うのです。そういう条件がなくしてこれを審議しろということ自身が無理じゃないかと思うのですね。その点はもう一回、ただ何とはなしにやれということではわれわれも審議するのに自信を持てないですよ。この結果がどうなるんだ。国民皆さん、この法律案はもし、たとえば賛成したらこういうことになります、こういう形か、さもなければこの法案審議するけれども、もう流してもらって結構です、形式的に御論議をいただけば結構なんです、こういうことであるならば、そのようなたてまえに立って私もこれから質問をいたします。しかし、もしそうでないとするならば、少なくとも国民の前に五十三年はこうなります、五十四年はこうなります、五十五年度にはこうなりますというスタイルが示されていいものではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  15. 住田正二

    住田政府委員 同じような答弁で恐縮でございますけれども国鉄再建のためにやらなければならない問題がいろいろあるわけでございます。先ほど来問題になっております国鉄企業努力というものも、直ちに実を結ぶものもあれば相当長期間かかるものもあるわけでございます。また、経済予想につきましても、昨年度の経験からは相当の需要の減退を見ている。これは単に運賃値上げ影響だけではなくて、経済自体が冷えてきたということによる需要が減っているという現象もあるわけでございまして、従来のように一定需要伸びであるとかあるいは人件費伸びであるとか物件費伸びであるとか、そういうような数字をもとにいろいろ計画をつくりましても、前二回の経験からはなかなかそういう予定したとおりの姿にならないという苦しい経験をいたしているわけでございまして、今回の再建に当たりまして必要なことは、国鉄再建し得る条件を整備することであるというように考えているわけでございます。  そういう考え方のもとにいろいろな想定をいたしまして、その想定も幾つかあるわけでございますけれども、そういう想定に基づきましておおむね六十四年度には、国鉄努力し、われわれも努力いたしましたら収支均衡を図れるのではないかということで、おおむね五十四年度に収支均衡を図るという考え方をとっているわけでございます。したがいまして、今後毎年毎年いろいろな要素を入れまして、五十四年度収支均衡目標に向かって努力をいたしたいという考え方でいるわけでございます。
  16. 沢田広

    沢田委員 これ以上やりとりしておりましても仕方がないようでありますから、要するに白紙委任状を出せということであるようでありますし、一生懸命やってみるけれども、後はわかりません、暗やみの牛みたいなもので、後は盲のけんかか何かでさっぱりどこへ行くかわからぬということのようでありますから、まあ一応形式的に議論してもらえばいいんだ、この法案は無理に通過を期待していない、こういうふうに私は受けとめまして、そういうふうにできるまでの間、企業努力をしてあるいは国の財政負担をやって、それで国民に求むるものは何か、それが本筋ではないかと私は思っておりますが、そういう答えがないので、いわゆる暗中模索という形になりますけれども、時間の関係がありますから先に進ませていただきまして、はなはだ遺憾である、はなはだこういう形で審議に入るということは私の不本意とするところであるということだけ申し添えて、次の問題に入らしていただきたいと思います。  これは運輸大臣並びに国鉄総裁にお伺いをいたしますが、今日の赤字財政になった原因はどこに起因すると考えておられるのか、その点ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  17. 高木文雄

    高木説明員 非常に包括的なお尋ねでございますので大変お答えしにくいわけでございますけれども、一番大きな理由としては、やはり鉄道というものの、輸送サービスの中における地位がだんだん変わってきたということが挙げられると思います。いろいろの産業その他の地域的な分散状態も変わってまいりましたし、飛行機とか、それから自動車とか内航海運とかいう他の交通手段も発展してまいりましたし、その中において鉄道がどういう役割りを持っていくかということの位置づけが必ずしも今日まで明確でない状態が続いておるわけでございます。同時に、鉄道というものはある意味では非常に弾力性がないという面がございまして、そういう面で事態に即応していっていないということであろうかと思っております。  今後の問題といたしましては、現象的な見方でございますけれども現実赤字になっておりますいろいろな要因を突き詰めまして、その要因ごとにその対策を考えていくということではなかろうかという考え方で、そこに焦点を合わせまして経営改善計画の中でいろいろ触れておるということでございます。今後大至急その点を詰めていかなければならぬと思っております。
  18. 田村元

    田村国務大臣 いま総裁が申したことで大体尽きておると思いますが、やはり日本の国が非常に近代化してモータリゼーションの発達とかあるいは航空機の発達とかということで、輸送という分野においての国鉄の果たす役割りといいますか、独占性の薄れとかあるいは競争の激化とかシェアの低下とかということも大きな原因だと思います。と同時に、運賃問題につきましても、何と申しましても適時適切な値上げができなかったということも大きな原因の一つであろうと思います。ここまで国鉄運賃が高くなってきた、これは現実でございますが、それならば過去においてもう少し適時適切な値上げがなされておったならば、累積赤字もあるいはもっと違ったかもしれないというようにも考えられます。同時に、総裁は立場上遠慮をしたのでありましょうけれども、私ども政治家としてながめる場合には、労使の不正常ということが国鉄経営あるいは経営の基礎になる合理化、いろいろな面において大きな支障になったということも否めない事実だと存じます。  しかし、このようになったのはなぜかということを考えますと、とにかく理由というのは数限りなくある。それを今日の御時世にかんがみて、改善できるそういう赤字要因というものをいま国鉄は必死になって洗い出しをしておる、その対策を立てておる、こういう段階でございます。
  19. 沢田広

    沢田委員 今度、大蔵省松下主計局次長からお伺いをいたしたいと思います。  御承知のとおり国鉄は、明治十九年でありますが、当時千六百八十九万の収入があって、営業費は七百八十五万、益金が九百四万という数字でありました。こういう九百四万は、明治十九年、まだ私も生まれておりませんが、一般会計へ繰り入れられているという事実のようでありますが、これも時間の関係でつけ加えて言いますが、明治三十九年に鉄道国有法ができて、当時の金にしますと一億二千四百八十八万円が一般会計へ繰り入れられている。物価指数をかりますといま十兆円くらいになると思うのであります。さらに帝国鉄道会計法ができまして、明治四十二年、一般会計から独立をいたしました。昭和十一年には七百万円が一般会計にまた繰り出されている。昭和十二年には準戦時財政になって三千万円がこれも繰り出されている。それから十三年から二十年までは臨時軍事費特別会計というものが生まれて、それの会計に繰り出された金は七億六千四百万円になっている。この明治四十二年から昭和十九年までの繰り入れの総合計は四十六億千四百五十万円に達していると言われているのであります。現時点に直しますと、先ほども言いましたように十兆円以上になるのではないかと思うのですが、この国の財政に寄与した条件というものを大蔵当局としてはどのように受けとめておられるのか、その点ひとつお伺いをしたいと思います。
  20. 松下康雄

    松下政府委員 鉄道創業時以来の御経緯の御指摘でございます。やはり鉄道はその創業時におきましてはわが国の官業として非常に先端を行き、また時代の要請に最もこたえる事業でございましたから、公共性とともに相当の収益性を確保し得る面があったと存じております。国の考えとしましては、基本的には恐らく投資の系統に国費を投入するとともに、収益についてこれが剰余を生ずれば国に収入するというような国そのものの一部の働きとしての経営を続けてまいったのであると存じます。いまの国有鉄道の発足前の問題でございますけれども、確かに全体的に見まして収益の一部を国に納付する金額が相当に上る、同時に鉄道の資産につきましては元来国費をもってこれを建設したという面がまたあるという状態で現在の国鉄発足まで推移してまいった点は、御指摘のようなことであると思います。その後の公企体としての鉄道事業の発足以後、公共性につきましてこれを国と直接の関係を切り離しました一種の独立の企業体としての経営に移ったわけでございますけれども、その後社会情勢等の変化によりまして、鉄道事業そのものの収益性の根底に問題を生ずるに至って今日にまいっております。長年の間、鉄道事業につきましては、これを別個の企業体としての経営努力にまつということで国としてまいってきたわけでございますけれども昭和四十年度以降、このような情勢のもとに国鉄経営基調が赤字に転化いたしまして以後、四十三年に初めて国の助成を投入をいたしまして、その後今日に至りますまで企業体としての経営負担の限界を超えて、これは国費をもって支えなければ公共的使命の達成が困難であると考えられます部分につきまして国の助成を行ってまいっておりますことは御承知のとおりでございます。
  21. 沢田広

    沢田委員 私がいま聞こうとしていることは、当時の益金が、若干時点の差はありますけれども、当時一銭くらいが相当な価値を占めていた時代であります。そういう時代で四十六億千四百五十万円を一般会計で借り入れたようなものである。この間、貴金属特別会計で、戦時中でありますか、日銀から金を借りた、それを返すのには現在の時価が千五百円であるけれども、六百九十円程度で日銀へ払い下げるという法案を議決をいたしました。言うならば、あの当時の金額にしてみれば、金の一グラム単位というものはわずかな単位であったと思うのです。また、現在年金問題の議論の焦点になっておりますのも、千分の二十という当時の恩給納金の掛金が——軍人恩給にしても当時のものを仮定本俸にスライドをして、今日の時価に換算をして現在計算の根拠にされているわけです。だから、もしこの四十六億千四百五十万円を現在の時価に換算をして、もし一般会計から国鉄会計に払い出すとするならば、どの程度払い出さなければならないと見られておるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  22. 松下康雄

    松下政府委員 先ほど申し上げましたように、特別会計といたしまして国有鉄道が国の事業そのもの、国の一部の活動として経営をいたしておりました当時の損益なり国の投資の関係につきましては、ただいま御指摘のように、これが鉄道会計一般会計に対する債権であるという形で整理はいたしませんで、その年度の歳入歳出の中で決着をつけながら運営をしてまいったわけでございます。一方で、国有鉄道が発足いたしましたときに国有鉄道の資産として帳簿上引き継ぎをいたしました価額は四十億余りに上っておりますけれども、これらにつきましてもそのときまで別に国の方からの債権債務の関係でいまの収益の納付金と関連をつけて何かの処理をいたすべきだという原則には立ってまいらなかったわけでございます。したがいまして、御指摘ではございますけれども、今日の国有鉄道と国との関係を考えます際に、旧特別会計時代の納付金について何らかの債権があるという考え方に立って国が財政処理をすべきものだとは考えておりません。
  23. 沢田広

    沢田委員 債権があるということよりも、四十六億貢献したことに対して、今日一方が赤字でいるという対応した条件の中で、こういう功績に対して見合った財源助成というものが行われるということは当然ではないかと思うのですが、その点もう一回ちょっとお答えいただきたいと思います。
  24. 松下康雄

    松下政府委員 過去におきまして鉄道企業から一般会計に益金の納付がございましたことが何らかの金銭的なあるいは何らか他の意味におきますところの国の債務となって今日残っているようには考えないのでございますけれども、ただ今日の国有鉄道事業に対します国の助成の問題はそのことから生じたのではございませんけれども、国有鉄道の持っておりますところの公共的な使命と、それが現在の諸情勢の変化によりまして何らかの国の助成なくしては公共性を発現することは困難になっているという新しい今日の現状からかんがみまして、国といたしましても現在まで国鉄に対する助成をいたしてまいりましたし、また今後も必要に応じて助成の方途を考えてまいるというつもりでございます。
  25. 沢田広

    沢田委員 昭和二十年の臨時軍事費特別会計までの分をいま論じたわけでありますが、続いて次の分に入らしていただきますと、昭和二十年のときからがいわゆる七億四千百万円の営業欠損を生じたわけです。当時借り入れが十一億四千二百万円、二十一年からはこれはインフレが続いたときであります。そのときに四十二億四千六百万円、いわゆるこれは戦争中の無理な輸送によって国鉄が荒廃を来し、いわゆる総動員というような条件の中で、保守も施設もとにかく無理強いをして酷使をした。その結果、戦後の復興にかかった急場しのぎの資金投資というものの条件であり、当時のインフレが目覚ましいものであったことを示しております。  昭和二十二年、国有鉄道事業特別会計法ができて、二十四年六月、日本国有鉄道法が、現在が生まれたわけです。  先ほど松下次長は言いましたけれども、二十二年以降の欠損は戦時の荒廃の欠損によって起こったわけでありますけれども、結果的に四百二十六億のうち借り入れが三百九十九億、二十七億が負債勘定として公共企業体は出発をしたわけであります。発足はこの二十七億の負債勘定を持って、二十二億三百六十五万円を調整勘定に置いてやって、二十四年、二十五年でこれ益金で相殺をしたわけです。でありますから、いま松下次長は、その債務の問題について四十六億の答えに際して、負債についてはとやかく言わなかったと言ったが、公共企業体が二十五年には全額政府出資はゼロになって出発をしている、こういう事実についてはどのようにお考えになっておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
  26. 松下康雄

    松下政府委員 四十九億の設立時の出資につきましては、その後償却をしたということではないと存じます。その後に至りまして、国の助成の一環としてさらに出資の追加を行いまして今日に至っているわけでございます。
  27. 沢田広

    沢田委員 私は、昭和二十五年のときの出発時点においては政府出資がゼロで、その四十三年からまた再投資をしたということを否定しているわけでないのですから、その点はまた次の場合にお答えをいただきたいと思います。  次に、いまの答弁の中で言われましたように、公共企業体という形になって公共性といわゆる企業性、どちらがウエートが高いか、これは相反する問題だ、性格だと思うのです。企業性というものを高めれば公共性というものがどうしてもしぼむ。また、公共性というものを高めれば企業性というものがどうしてもしぼむ、こういう相反する性格を担っているものだと思うのでありますが、その点はこれは大蔵省というよりも運輸大臣の方からひとつお答えをいただきたいと思うのでありますが、公共性と企業性というものが両立する条件、そういうものはどういうスタイルによって両立する条件があるのか、その点ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  28. 田村元

    田村国務大臣 私は、国鉄の場合をながめるときに、公共性と企業性が相反するものであるとは思っておりません。つまり、国鉄の有する企業性というものは当然国鉄が企業として負担すべきもの、それについての企業性の追求。そうして公共性を有するがゆえに国鉄負担の限界を超えるもの、そういう面においての公共性。でありますから、公共性と企業性が相まつ、つまり企業性を十分に認識して経営努力をすることによって基盤を固め、公共性によって受ける経営の圧迫については政府がこれを補っていくということで、両々相まってりっぱに運営できるもの、このように確信をいたしております。
  29. 沢田広

    沢田委員 言葉としては確かにそのとおりかと思うのであります。確認をいたしますが、公共性分野に相当する分は、これは国の政策の分野に属する。ですから、国の政策の分野に属する分は、これは国の負担で賄っていく。そして企業性については企業努力をやはり行っていく、こういう考え方だ、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  30. 田村元

    田村国務大臣 おおむねそのようにお受けとめいただいて結構でございます。
  31. 沢田広

    沢田委員 次に、企業努力の面について。若干これは大蔵省側の方としては、政府としても応分の——応分のといいますか、いわゆる公共性に応ずる分は政府負担を考える、こういう原則に立ちますと、今度は企業努力というものが伴わなければならないと思います。そういう立場に立って、昭和五十年度の決算などから若干その企業努力の足らない点等を私は指摘をしてお伺いをしてみたいと思うのであります。  幾つか問題があると思いますけれども、なぜ運輸収入が、一兆六千億の予算収入を見込んだが、一兆五千億に減ったか。こういう条件についてはどのように受けとめられているか。いわゆる国鉄離れというものが何で生まれてきたのか。その点の理解をどのように考えておられるのか。これは国鉄当局にお伺いをいたしたいと思います。
  32. 高木文雄

    高木説明員 五十年、五十一年、二ヵ年につきまして、予算に比べましていわば収入実績が及ばなかったということはまことに申しわけないと思っております。そのように狂いを生じました一番大きな理由としては、やはり消費者といいますか利用者といいますか、国民皆さんのいろいろ消費についての考え方が少しずついま変わってきておるのではないか。まあ一口に言いますと、高度成長時代と安定成長時代とで国民の生活の姿といいますか、そういうものが変わってきておるのではないか。以前のようにいろいろ列車を増発をいたしまして、あるいはサービスを向上していきますと、それに応じてお客さんに乗っていただけるという状態でだんだんなくなってきておるのではないか。それについての見通しを誤った点があるのではないかというふうに思う点が一点でございます。  それから、やはり何といいましても全体として経済活動が活発でない状態が続いておるわけでございまして、必ずしも私ども国鉄だけでなくて、他の輸送機関におきましてもやはり思ったほどの収入が上げられないという状態が見られるのはそのせいではないかと思っております。  それから、いま御指摘の点は、主として五十一年の運賃改定に関連してのお尋ねかと思いますが、やはり私ども運賃改定がありますとその直後にはお客さんが減るという現象があるわけでございまして、したがいまして、収入を見込みます場合に、改定をいたしました場合の名目改定率というものとそれから実収率というものとの間には相当の開きがあるという前提収入を見込んでおりますけれども、その乖離率といいますか、そういうものが大きくなったわけでございまして、それには一つには、昨年は六月からの改定を当初期待をいたしておったわけでございますが、実際には十一月からの改定になりましたから、したがいまして、そのいわゆる乖離率が非常に大きい。最初大きくなりましてだんだんそれがもとへ戻ってまいりますが、その大きい期間が十一月以降でございますので、五十一年度の収入にあらわれた。こういったことが理由であろうかと思います。なお、基本的には私どもの営業態度の問題といいますか、増収を図る、それがための営業サービスというような面においていろいろ問題があるという点は、基本的な問題としてまた別途あるわけでございますが、当面の収入の見込み違いという点はいま言ったような三つの要素が一番大きいのではないかと私は考えております。     〔大野委員長退席、加藤(六)委員長代理着席〕
  33. 沢田広

    沢田委員 あと十五分ぐらいでありますから、ひとつ回答も簡単にしていただきたいと思います。  次に、二兆四千百八十五億の収入に対して利子の債務が四千五十四億、パーセンテージにして地方財政でもこんなに大きな赤字の元利償還を行っておる団体は少ないと思うのであります。きわめて不健全な団体だと言わざるを得ないんでありますけれども、その点についてどのように受けとめておられるのか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  34. 高木文雄

    高木説明員 利子の支払い金額は非常に大きくなっておりますけれども、しかし一方において利子補給を受けております。したがいまして、収入と利子補給を受けました後の実質利子負担の比率はいま一三%ぐらいになっております。どのくらいであればよろしいのかということ、いろいろ議論があるわけでありますが、少なくとも国鉄の過去の数字と比べてみますと、五%とか六%程度であった時代もございますが、戦前を見ましてもかなり高い利子支払いをいたしておるわけでございまして、そのときそのときの経済事情、企業体質が違いますから直ちに戦前と比べることは適当でないかもしれませんが、一三%という率が著しく高い率であって経営負担になっているということは言い切れないのではないかと思っておるわけでございます。もちろんできるならば利子負担が少ない方がよろしいわけでございまして、昨年度の法律の御措置によりまして過去債務のたな上げをやっていただいたということによって非常にわれわれの経営は楽になってきておりますことがそのことをきわめて具体的に物語っております。
  35. 沢田広

    沢田委員 雑収入が七百二十三億ということでありますが、国鉄の下請企業というものは数百社あるいは数千社と言うとオーバーになりますが、恐らく五、六百社以上にわたると思うのであります。特に雑収入の七百二十三億というものはきわめて僅少であると私たちは想像するわけであります。果たして妥当な金額で貸付料等が行われているのかどうか、その点疑問を持たざるを得ないのでありますが、どういう貸付基準に基づいてガード下とかその他の貸し付けが行われているのか、その基準については説明員で結構でありますが、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  36. 高木文雄

    高木説明員 ごく原則だけ申しますと、たとえばいま例としてお示しになりましたガード下の貸付料は、やはりその場所におけるところの土地の価格というものが基本的な基準になりますけれども、しかしたとえば土地の価格というのは上空を無限に使用することができる権利ということが前提となっておりますけれども、高架下の場合には一階という非常に制限された部面しかありませんので、土地の価格を基準にしてそういう制限的利用権であるということによるいわゆる一種の割引といいますか、価値を低く見る調整率を適用しなければなりませんし、それからガード下の場合には実はそれをお借りになる方の権利が必ずしも、普通の場所と違いまして一時使用のような形になっておりますので、そういう意味での制限がありましてなかなか思うような価格で貸すという合理的な根拠を見出しがたいわけでございます。しかし、それと同時に、過去の因襲といいますか、いきさつからいろいろな点に思うようにそういう収入を上げられないというまた別途の制約も受けております。しかしいろいろ努力努力を重ねまして、現在のところでは年々あるいは何年間に一遍という形をとることもございますが、総平均で見まして、年々改定を試みまして実収を上げることに努めている次第でございます。
  37. 沢田広

    沢田委員 これは一つの例だけ出しておきますが、これは武蔵野線の場合であります。武蔵野線の建設に当たって鉄道公団は、これは協定書ですがね。この協定書には企画部長や浦和市長や公団の東京支社長、浦和市の自治会長、こういう人が署名をしておりまして、「鉄道公団は、被買収者が高架下の使用を希望する場合は、文書で国鉄に引継ぎその実現について努力する。」こういう協定がまず一項あるわけです。そしてそれについてその希望者が提出をいたしましたならば、これは何とか東部開発株式会社と言うんだそうでありますが、そこへ出したらば、百五十八平米であるそうでありますが、月額四万四千円払ってほしい。権利金が百三十万円である。敷金が百十万である。これは全部国鉄に入るんですか。どうなんですか。こういう指示をされているのでありますけれども、この月額四万四千円は百五十八平米、これは坪十八万円で買ったそうであります。そうすると約五十坪を坪十八万円で公団は買ったんだ。それが月額四万四千円でこれはほぼ永久権利、出入り口ですから永久権利です。それに百三十万の権利金と敷金の百十万、これはこういう会社が受け取る。国鉄には入っていかないじゃないですか。その点はどうなんでしょう。
  38. 高橋浩二

    ○高橋説明員 いまの武蔵野線の高架下につきましては、武蔵野線東部開発株式会社というのが設立されまして、私の方は一括そこにいま管理をしてもらっているという状況でございます。まだ具体的にお貸ししているところはございません。これから買収当時のいろいろの事情を踏まえまして、そういう方々の希望もとり、そして今後適正な価格でお貸しをしたいということでございますが、いま先生のおっしゃいますその権利金等については、これは私の方では収受いたしておりません。もともと高架下の土地使用料に見合うものは国鉄に入ってまいりますけれども、高架下が余りばらばらの建物等になりますといろいろの開発上も困りますので、間接会社が一応前後左右その他見比べまして、同じ程度の建物等をつくりましてそしてお貸しするというのを原則にいたしております。したがって、その建物をつくる等の金に幾らかかるかということはあるかと思いますけれども、権利金等については取りませんし、また国鉄も収受しない。原則としては土地代金に見合うものを国鉄が管理して収受しているというのが全国的な実態でございます。
  39. 沢田広

    沢田委員 これは単に一例を挙げただけであります。私は、こういうものが有楽町や神田やその他上野やこの近辺にしても数多く散在し、あるいは第三者、第四者に転売をされ、権利金をつけられていっているということをわれわれは知り得るわけでありますが、傍観をしているのが現在の態勢ではないだろうか。もっとチェックをしていくべきではないかということが一つあると思うのであります。もっと厳格な姿勢がいまの国鉄には求められている。いわゆる公正妥当、国民に納得いくような姿勢というものが国鉄に求められている。こういういわゆる切実な国鉄の態勢というものが今日必要になっているんではないかと思うのであります。そういうだらしないと言うと言葉は悪いのでありますが、そういう形は今日の国民国鉄に期待しているものではない。それではこれからの国鉄再建は私はできない、こう言っても過言でないと思うのでありまして、私は雑収入がこれの十倍の七千二百億にはならないと思いますけれども、少なくともそれに近い数字には、現在では賃貸料も固定資産評価額の三・五倍までは法律上許されるわけであります。そういうこともあるわけでありますし、同時に権利金とかこういうものを下請会社だけがもうけて、国鉄に入っていかないという仕組みを是正することだけでも、大きな収入になることだけは明らかだと思うのであります。その点、お答えをいただきたいと思います。  時間がなくなりましたからついでにもう一つだけお伺いをいたしますが、企業努力をするためには、どうしても支出を抑制するということが必要になってくると思います。そのためには、これは速記録を見ますと、運輸委員会等においても御指摘があったようでありますが、車両費とか一般施設費とか、そういうやむを得ないものは別として、不急な工事、東北新幹線であるとか、山陽幹線はこれでは三百三十億近いものになってきておりますけれども、いわゆる不急な投資というものは抑えてこれ以上の借金を少なくしていく、こういう努力が当面必要になっていくのではなかろうか。当面の財政再建が焦眉の急である、こういうふうな視点でとらえていかなければならないのではないかと思いますが、その二点についてお伺いいたしたいと思います。
  40. 高木文雄

    高木説明員 高架下の問題はもう十年近くも前から各方面から御指摘を受けておりまして、前は国鉄の方で直接管理をしておりましたのを、とても目が行き届きませんということで管理会社をつくるという形に変えてきております。そして、いろいろ具体的な案件について個別に交渉したりあるいは場合によりましては訴訟をいたしましたりということで臨んでおります。しかし、一般的に御指摘のような御批判があることはよく承知をしておりますし、私どもも適正価格の範囲内においてではありますけれども、さらに収入を上げる努力をしていかなければならない。その点は担当を通じまして私どもも督励をいたしておりますので、そのような収入を伸ばす方向で考えておるというふうに申し上げておきます。  それから、むだな投資はもちろんでございますけれども、効率の悪い投資は当然やらないように、それぞれの専門専門で投資効率を考えてやっております。  ただ、いま東北新幹線のことにちょっとお触れになりましたが、この場合には、東北新幹線というものは収益性という点から見ましても、私どもの見積もりでは十分採算的にそろばんが合うものというふうに考えておりますし、その前に、大宮から宇都宮の間あるいは大宮から高崎の間は、日本全体の中でいま一番パイプが詰まっておるところでございます。だんだん東京のベッドタウン的な色彩を持ってきましたので、通勤電車をもう少し増発をしませんと、不測のいろいろなトラブルが起こる危険があるわけでございます。しかし、いまは特急その他がたくさん走っておりますので通勤電車をふやせないという現状でありますから、これはただ東北地域の方々あるいは上越地域の方々の便益のためというのでなくて、大宮以北にお住まいの方々に対するサービスからいっても、ぜひとも早く東北新幹線、上越新幹線が開通しないと、サービスを適正に維持する上において困難であると私ども考えておるわけでございまして、その意味ではちょっとお触れになりました東北新幹線については、決して能率の悪い、むだな投資というふうには考えていないわけでございます。
  41. 沢田広

    沢田委員 残された時間はあと二分ぐらいになりましたが、今日までの国鉄のありようというものについては私もいろいろ指摘をいたしましたが、企業性というものを一〇〇%発揮して、これは新聞等に見ると、発想の転換という、私も言いたかったところを運輸大臣も言われているようでありますが、いわゆる発想の転換というものをやって、企業性というものをどうやったら充実をしながらいわゆる縮小再生産ではなくて拡大再生産という方向がとれるかということがこれからの課題だと思うのです。しかし、大蔵当局も、医療問題と同じようにこれに対応した財政援助というものをひとつ惜しみなく出していただいて、そして、国民負担によらざる国鉄再建というものが、いま歴史を述べたようにこれは一に国と国鉄との関係によって発生した問題でありますから、これはひとつ両者で十分話し合って国鉄再建の方途を求めていただきたい、こういうふうに考えるわけでありますが、運輸大臣大蔵省当局と国鉄、三者があわせてその方向について努力されるかどうか、その点をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  42. 田村元

    田村国務大臣 国鉄経営の姿勢その他につきまして、大体あなたと私と考え方は、お互いに官僚じゃありませんから、基本的にそう違うものじゃないと思うのです。でありますから、私が国鉄に発想の転換を求めておるというその意味は、大体あなたがお求めになる発想の転換とそう大きな違いはないのじゃないか、このように考えておりますので、これからも私の意見はどんどんと申していくつもりでございます。
  43. 松下康雄

    松下政府委員 国鉄助成問題につきましては、国鉄自体の経営努力なり料金適正化の問題なりということはございますけれども、なおその問題で及ばずして、公共性の発揮をいたしていきますために必要な助成につきましては、これまでも努力をしてまいりましたし、また、今後も運輸省、国鉄からのお話はお伺いをしながら検討いたしてまいります。  ただ、ちょっと申し上げたいと思うのでございますけれども、国の助成となりますと、結局は国の税の負担にこれを求めるということでございますので、いまの利用者の負担ということとちょっと次元が違いますが、国民全体の負担ということをやはり考えることになります。財政状況も非常に危機的な折でございますけれども、御指摘の趣旨は私どもも念頭に置きまして検討いたしてまいります。
  44. 高木文雄

    高木説明員 企業努力を高めまして、お客様からもこの程度は運賃を払うのもやむを得ないではないか、財政の方からもこの程度は援助をするのはやむを得ないではないかというふうにお認めいただけるような国鉄に持っていかなければならぬというふうに思っておるわけでございます。
  45. 沢田広

    沢田委員 終わります。どうもありがとうございました。
  46. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 馬場猪太郎君。
  47. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 昨年は政府は八・六%の物価上昇ということで臨まれましたけれども、結果は九・四%に上がりました。総理も経企庁長官も非常に遺憾の意を表されておるわけですが、さらに景気刺激策によって金利引き下げだとかいろいろな対策を打てば打つほどまた物価に関連することも非常に多いと思います。中でも公共料金の値上げということは、物価抑制の中でも一つの大きな柱と言われておりますが、あえてこの時期に、昨年の五〇%の値上げに引き続いて一九%の値上げ国鉄提案なさる。その間に、経企庁の方としては国民の暮らしを守るという立場で運輸省との間にいろいろ御協議なさった。その御協議について問題になりました点、どういう点で経企庁は一番心配なさったのかというような点についてひとつお伺いをいたしたいと思います。
  48. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  公共料金の水準をどの水準に持っていくかということは非常にむずかしい問題でございます。国鉄運賃につきましては、御承知のように、国鉄経営状態が危機的な状況にある、もし民間であればこれはもうとっくに破産をしているという状況にあるわけでございまして、したがって、私どもとしましては、国鉄が徹底的な経営合理化を行うということを前提にいたしまして、その上でやはり国鉄経営が成り立つような運賃が定められなければならない、そう考えておるわけでございます。そういう立場から昨年の十一月に五〇%の値上げが行われ、なおことし引き続いて国鉄運賃が上がるということは、国民生活の面から申しますと非常に残念なことでありますけれども国鉄経営を安定的な軌道に乗せるためには、やはりどうしてもある程度の値上げが必要であるということで、昨年考えましたのは五〇、五〇ということでありましたけれども、しかし今日の物価の状況、また諸般の情勢を考えてまいりますと、急激な値上がりというのはどうしても国民生活としては許容することができない。そういうことを考えまして、運輸省当局ともいろいろ打ち合わせた結果、九月から一九%程度の値上げをするということに落ちついたような次第でございます。
  49. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 当然経企庁の方は国民生活を守るということで、経営を中心に考えていらっしゃる国鉄や運輸省とは意見が対立するのは当然だと思うのです。そして、その中で、いま言われたのは、ただ一つだけ、一気に五〇、五〇で上げるのは大変だということで、これを五十四年まで徐々にという方向に変えた。その他経企庁と運輸省と打ち合わせの間で問題になった点はございませんか。  それから、昨年の値上げ、五〇%の値上げ物価にどの程度、これは明確にはとれないと思いますが、どの程度反映したのかということもあわせてお伺いしたい。
  50. 倉成正

    ○倉成国務大臣 昨年の十一月の国鉄運賃五〇%アップが消費者物価に及ぼす影響については〇・五%程度と試算されております。  なお、国鉄当局運賃値上げについてのいろいろな協議、運賃値上げが非常に大幅であれば国鉄離れがないのかどうかというような問題、その他いろいろな点について御協議を申し上げたような次第でございます。
  51. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いろいろな点と言われるのですが、経企庁としてはほとんど内容に立ち至って消費者の立場の発言というのはなさってないんじゃないでしょうか。というのは、せんだっての地下鉄やタクシー、こういったものの値上げのときにも運輸省と協議なさったはずなんですが、むしろ国民生活を守る立場の発言よりか経営の立場の発言だけが多くて、それが今日の公共料金値上げを続々と引き起こしている大きな原因になっているんじゃないかと思うんですが、漠然とでなしにどういう点が問題になったかということを二、三で結構ですからお示しいただきたいと思います。
  52. 倉成正

    ○倉成国務大臣 率直に申しますと、運賃値上げの幅が非常に大きいと国民生活への影響が非常に大きい。したがって急激な値上がりというのは好ましくないというのに尽きると思います。  それから、ただいまのお話の御趣旨を体しますと、国鉄運賃値上げというのが好ましくないという意味での御発言かと思うわけでございますけれども、私は、公共料金を据え置くあるいは公共料金の水準をどこに置くかということを考えてまいりますと、先ほどから申し上げましたように、徹底的な経営合理化ということを前提にいたしますと、やはりその経営が成り立つようにしなければならない、成り立つようにするためにはどうしたらよいかということになると、大幅な財政負担をするかあるいは運賃値上げするか以外にないと思うのであります。  そのいずれかをとらないとすれば経営が行き詰まる、そして国民に対するサービスが低下するというわけでありますから、その選択をやはり国民的なコンセンサスのもとでやるという覚悟がなければ、ただ安易に公共料金を抑えるというだけで問題は解決するものではない。過去において二回ほどわれわれも公共料金のストップをいたしましたけれども、これが結果的には大きなツケとなって返ってきたということもございますので、まことに残念なことでありますけれども国鉄経営を軌道に乗せるために一九%程度の値上げを九月からお願いをするということが、現在とり得る最善の道である、そう考えておる次第でございます。
  53. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 大臣はいろいろ政治的な立場での考えで言われておると思いますが、少なくとも事務当局の間ではいろいろ具体的な問題は詰めていらっしゃると思うのですが、事務当局の方ではどういうふうな問題点が挙がったか、お知らせいただきたいと思います。
  54. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 国鉄運賃値上げ国民生活に及ぼす影響は非常に大きいという観点で私どもはこの問題に取り組んでいるわけでございますが、そうなりますと、その前提として、一体国鉄経営合理化努力というのがどういう形でなされるか、また関連した事業収入をどう増大していくということについての努力が払われるかというような、国鉄自体の努力の問題もやはり一番問題になると思うわけでございます。  そのほか、こういう形で運賃の改定が行われますと、同時に、他方で公共性の問題その他の点から国の助成というものが行われるわけですけれども、そういう助成がどういう形で行われていくか、そういうようなことについては、やはり全体として関心を持っておりますので、そういう点を中心にしていろいろ私どもからも事情をお聞きしたということでございます。  それから、都市交通関係の地下鉄とかそういう問題については、企画庁が庶務を担当しております物価安定政策会議特別部会を開いていただきまして、そこでいろいろ御意見を承って、たとえば定期運賃の引き上げ幅の問題とか、それから公共サービスとしての役割りを持っております輸送機関が、消費者にいろいろな形で、サービスの改善その他の形で還元していくというようなことについての御意見をいろいろ賜ったわけでございます。  そういうような御意見も付しまして、いろいろ運輸省の方ともお話をして、さきの都市交通料金の認可に立ち至ったということがあるわけでございまして、私どもとしては、今後とも、そういう公共料金の問題については、国民生活と物価という観点から真剣に取り組んでいきたいと思っております。
  55. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 非常にわかりにくい、総論的なことばかりなんですけれども、やはり実際には利害相反する両官庁なんですから、議論があってしかるべきだと思うのですね。ですから、その中で問題になったような点はひとつ専門的な立場で教えていただきたいと言っているのですが、そういう御答弁がないのです。  それでは私からちょっと伺いますが、いろいろなファクターがあると思うのです。値上げをしなければならない、またそれから差し引かなければならないファクターもいろいろあると思うのです。  運輸省と建設省の両省のいわゆる運建協定というのは、企画庁の方では御存じですか。大臣、どうですか。
  56. 高木文雄

    高木説明員 運輸省と建設省の間では、たとえば踏切を除去するために高架にいたします場合に、道路側と鉄道側と両方が便益を受けることになりますが、それをどういうふうに分け合うかということについてのルールが運建協定という形でできておるわけでございます。
  57. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 国鉄当局は当然都市計画事業として助成金をもらう立場ですから、私はいま国鉄当局大臣にお伺いしているのじゃなしに、企画庁としてそういうことを御存じですかということをお伺いしたのです。
  58. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 道路と鉄道との関係につきましては、その費用負担関係、いろいろな、いまお話がありましたように、高架化等に伴う工事、そういう工事の費用の負担をだれが背負うかということについて、関係者ということになりますと、道路関係では建設省、鉄道関係では運輸省ということになるわけでございまして、そういう費用負担関係を調整するためいろいろな取り決めがあるわけでございまして、それが運建協定と言われるものだと思います。     〔加藤(六)委員長代理退席、増岡委員長代理着席〕
  59. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 運輸省と建設省と、都市周辺とか連続立体交差についての費用分担を一部取り決めたのも一つの項目ですが、それはどのくらいの割合になっているか、経企庁としては御存じですか。もし御存じなかったら、関係省庁じゃないですから結構です。運輸大臣からひとつお答えいただけますか。
  60. 田村元

    田村国務大臣 連続高架化の問題でございまして、国鉄の場合は一〇%、私鉄の場合は七%という負担比率が四十四年の両省次官の折衝で運建協定が決められた、それに立って決められた、こういうことでございます。
  61. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 都市計画側の国、府県、市が国鉄の場合は九〇%ですね。そして国鉄側が一〇%ですか、それだけ非常な公共の投資をして助成金をやっておるということは、どういう意味があるのでしょう。
  62. 住田正二

    住田政府委員 この建運協定の考え方でございますけれども、本来鉄道が先に敷かれておりまして、その後道路がそれに交差するということで、主として道路側あるいは都市計画事業として連続立体交差が行われているという経緯があるわけでございます。したがいまして、原因負担という点から見ますと、本来都市計画事業側あるいは道路側が負担すべきものでございますけれども、同時に国鉄側あるいは私鉄側にもメリットがあるわけでございまして、そのメリットを計算いたしまして、先ほど大臣からお答え申し上げましたように国鉄の場合は一〇%、私鉄の場合は七%というように考えているわけでございます。
  63. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 国鉄の場合は一〇%、私鉄の場合は七%、逆に言えば九〇%の国庫の助成が入っている。これは国庫だけじゃありませんけれども、国、府県、市ですね。私鉄の場合も九三%入っているわけですね。ですからそういった多額の、大阪だけで私は計算してみますと、大体五年ないし七年で五私鉄で約二千七、八百億くらい助成が出てますよね。これだけの多額の費用が出ているということは、ある程度何か意味を持っていると思うのですね。それはどういう意味を持っているのでしょうか。
  64. 住田正二

    住田政府委員 いま申し上げましたように、この連続立体交差の建運協定というのは、道路側あるいは都市計画事業側からの要請で決められた助成でございますけれども、逆に道路があってその後に鉄道が高架で通るという場合には、これは国鉄、私鉄を問わず鉄道側が全額負担しているという状況でございまして、したがってやはり原因負担という点から割り切って物を考えればいいのではないかというように考えております。
  65. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その九〇%と一〇%の割合がどうしてそんなふうな割合になったのか。ただ利用価値とかそういうことだけじゃないわけですね。そういう事実も、運賃値上げのところのある程度一つのファクターとしてやはり計算なんかなさっているわけですか。
  66. 住田正二

    住田政府委員 国鉄、私鉄を問わず、運賃値上げの原価の算定をします場合には、当然国鉄あるいは私鉄が負担しております部分についての償却は原価に算入するということになっております。
  67. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 なぜそういうことをお伺いしたかと言えば、ある程度経企庁あたりと事務当局の間で詰めておられるかと思ったら、そういうことは余り経企庁の方では事務当局の方も詳しく御存じないですね。そうすると、余り細かい詰めをしたんじゃなしに、経企庁は結局運賃値上げの場合には運輸省の言いなりになっているのじゃないか、消費者としての声が余り反映されていないんじゃないか、そういう実態をひとつ明らかにしてもらいたいと思ったから、経企庁がどの程度までタッチしていらっしゃるのかということでお伺いしたわけです。  今度また去年の五〇%に引き継いで一九%値上げされるということについては、恐らく私鉄に対する影響、波及効果ということもある程度出てくるのじゃないかと思います。特に関西のようなところでは、国鉄と私鉄が競合しているようなところが非常に多い。あるときには私鉄が先行して運賃値上げの刺激になっている場合もあるし、国鉄側が今回の値上げをやることによってまた私鉄を刺激するという場合もあると思うのですが、運輸省の方として、いま私鉄の運賃値上げとかそういったような動きはございませんか。
  68. 住田正二

    住田政府委員 私鉄の運賃値上げは一昨年の十二月にいたしたわけでございまして、その際少なくとも二年間は運賃値上げはしないということを私鉄側に申しております。昨年の決算はまだ最終的にまとまっておりませんが、大体黒字——会社によりましては赤字のところもございますけれども、全般的に見まして収支バランスがとれている状況でございます。五十二年度の収支の見通しはもちろんまだわかりませんが、少なくとも本年中に値上げをするというようなことは考えておりません。
  69. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 一応二年間はやらないけれども、今後どういうふうになるかわからない。エネルギーの値上げの問題であるとか、その他諸物価の問題等々が起こってくれば、やはりその際に今回の国鉄の昨年に引き続いての値上げということが大きく影響してくると思いますが、その点はいかがでしょうか。
  70. 住田正二

    住田政府委員 各交通機関の運賃につきましては、やはりそれぞれの法律で定められておりますように、能率的な経営のもとにおける適正な原価、適正な利潤を償うということでございますので、国鉄値上げしたからそれに便乗して私鉄も値上げをするというようなことはとうてい認めるわけにはいかないことでございまして、私鉄は私鉄で原価計算をいたしまして、先ほど申し上げましたような基準に合うかどうかということを慎重に判断した上で決定をいたしたいと思っております。
  71. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ただ単に数字的なデータだけじゃなしに、公共料金の中でも電信電話料金や国鉄料金というものは社会に対する影響力が非常に大きいわけですね。心理的にも非常に影響力が大きいと思うのです。そういう意味では、やはり国鉄が上がったのだからという私鉄側の甘えも出てくるきっかけを与えることにもなりかねないと思うのです。あるいはまた今日まで、私鉄の運営も過疎は過疎なりに、過密地帯は過密地帯なりに非常な投資をしたり合理化をやったりして、鉄道自体の経営ということについては苦しい状態のところがたくさんあると思うのです。その間、いろいろ百貨店の経営であるとか土地経営であるとか、そういった本来の仕事以外のことでカバーしていた面も多いが、それも最近の三年続く不況の中で、私鉄自体もかえって先買いした土地で苦しんでおるというような経営実態もたくさん報告されております。ですから、運賃値上げということは早晩起こってくるだろうと思います。そういう問題についてどういう見通しを持っておられるのか、あるいはまた心理的な影響についてはどういうふうに思っておられるのか、お答え願いたいと思います。
  72. 田村元

    田村国務大臣 これは大切な問題でございますから私からお答えをいたしますが、私鉄の運賃値上げにつきましても航空運賃値上げにつきましても、私は国鉄運賃値上げとの関連を一切否定してまいりたいと思っております。  心理的に連鎖反応を起こすではないかという御疑念があるようでございますが、先ほど鉄監局長からお答えを申し上げましたような前回の私鉄の運賃値上げのときの経緯もございます。でありますから、年内は私鉄の運賃値上げはいたさない所存であると先ほど鉄監局長が申しましたけれども、私自身口を酸っぱくして先般来国会でお答えいたしておりますように、それが私鉄であろうと航空であろうと、国鉄運賃に連動した形での運賃値上げは一切いたす腹はございません。でありますから、年内は航空も私鉄も私はきわめて否定的でございます。
  73. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 当初、国鉄が五〇%値上げをなさったときには実収入として三七%増収を期待しておられた。新聞によりますと、なかなかそういう予定どおりいかなくて三〇%とかあるいは二五%とかいろいろな数字が出ておりますが、実態はいかがなものでしょうか。
  74. 高木文雄

    高木説明員 十二月が一二一%、それから一月が一三〇%、二月が一三三%、三月が一三三%、四月はまだ数字の整理が終わっておりません。
  75. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 当初考えられたとおりにはいっておらないわけですね。その上さらに一九%の値上がりということはどういう予測を持っておいでになるでしょうか。
  76. 高木文雄

    高木説明員 やはり値上げ直後にはどうしてもショックが大きいものでございますから、過去の例に徴しましても一時相当ダウンをするわけでございまして、全体の経済の基調にもよりますけれども、もうしばらくしないと一三七というところまでは戻らないだろうと思いますが、漸次そういう足取りになるものと思っておりますし、私どももいろいろの努力を続けてそういう方向にしなければいけない、それが一九%の改定につながる前提であると考えております。
  77. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 去年に引き続いてことしまた一九%上がるというニュースが流れて、それだけでも相当な影響があると思うのです。そしてまた、特に貨物あたりについては合理化も進められておるわけですから、かえって合理化で、国鉄内部の経営状態についてはある程度。プラスになる面があるかもしれないけれども、たとえば小荷物の受け付け、過疎地域の受け付けなんかは、一つか二つの駅が飛んでしまうとさらに遠いところまで運ばなければならないということになって、途端にトラックに切りかえる、現にこの値上げ案が出ただけで貨物あたりについても相当国鉄離れがあると言われておりますが、そういう実態についてどういうふうな状況かお教えをいただきたいと思います。
  78. 高木文雄

    高木説明員 貨物につきましては非常に経済的に動くわけでございますので、いま御指摘のような点が起こりはしないかということを大変心配をいたしておりますし、また現実にそういう現象も一部に見られております。したがいまして、私どももたとえば一種の営業割引制度を大幅に適用するというようなことを通じて、荷主さんの求めるものが何であるかということを見ながら、そしてトラック輸送との比較を見ながら、営業活動を通じて何とか国鉄離れがなだれ的に起こりませんように努力はいたしておるわけでございます。しかし、長期的に見ましても、長い間鉄道からトラックあるいは内航海運に漸次移ってきておるという趨勢にあるわけでございまして、必ずしも運賃だけの問題でなしに、鉄道輸送の弱点がございまして、そういう大きな流れがございますので御指摘のような点は非常に心配でございまして、またそれを食いとめるために相当骨を折っておりますが、これで大丈夫ですというところまでなかなかいきにくいわけでございまして、いまそれが私どもの貨物の仕事の中心になっておると言っても過言でないかと思います。
  79. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま総裁お答えになりましたように、非常な事態の中で総裁に就任なさって非常な決意で取り組んでいらっしゃるその熱意は非常に高く評価もいたしますし、その御努力を今後も期待したいと思いますけれども、しかし精神的な努力だけではどうにもならない点も多いと思います。いま言われたように貨物に対しても非常に憂慮している、あるいはまた旅客に対しても、この連休あたり見ましても非常に節約ムードが浸透しまして、今後相当期待していらっしゃるような伸びは期待できないのじゃないか、むしろもういまが、料金の問題については頭打ちになっている感じがいたしますが、その点についてはどうお考えになるでしょうか。
  80. 高木文雄

    高木説明員 確かに以前に比較いたしますと、他の輸送機関の運賃、料金の水準と私ども運賃、料金の水準がだんだん接近をいたしてきておりますし、たとえば東京−大阪間のような場合では、グリーン車の運賃料金が航空機の運賃を上回ってまいりましたというような状態になりましたから、とうていそう安易に改定ができるとは思っていないわけでございますけれども、それではもう完全に頭打ちかといいますと、まだそこまではいってないと思っております。いろいろきめ細かな工夫を要しますけれども、まだまだ、これ以上は全く上げられない、それでは完全に競争に負けるということではないという感じでございます。
  81. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 頭打ちではないと言われるものの、実際数字の上ではなかなか目標達成はむずかしいということを現に表現しておられるわけです。運賃の増収を図る方法としては、できるだけ安い価格で旅客の数、利用者数の増を図るという方法と、高くても収益を上げるという二つの方法があると思うのです。現実には、これ以上高くなると期待されておるような利用量をふやすということはむずかしいのじゃないかと思います。かつて市街地で都電だとか市電が非常に経営が悪化するということでどんどん撤去された。しかし今日長崎市あたりを見ましても、私鉄の中でも非常に悪条件を克服して、経営いかんによってはうまくやっているところを私たちもときどきお聞きいたします。そういう意味から言うと、旅客の数をサービスの向上によって、国民国鉄なんだ、われわれの国鉄なんだという親しみをいままで持ってきたわけですから、心理的にも国鉄離れをさせないような方法で、むしろ料金を抑えるだけ抑えて、そして旅客の増を図るという方針の方がいまの時点では賢明な策ではないか、特にいまのように低成長時代、安定成長時代と言われているときですから、そういう方向にいく方がうまくいくのじゃないかと思いますが、いかがなものでしょうか。
  82. 高木文雄

    高木説明員 しかしながら現状は、大体ラウンドで申しましてコスト一〇〇の商品を七五くらいで売っておるという関係でございまして、もちろんいろいろ助成はいただいておりますけれども、それでもなお御存じのように単年度で巨額な赤字が出るという現状でございますので、御指摘の点は非常によくわかるのでございますが、それで問題が片づけ得るという状態であればよろしいわけでございますけれども、いかにも赤字状態がひどいわけでございまして、やはり私ども努力をいたしますし、助成も漸次ふやしていただかなければならぬと思いますけれども、お客様にもそれ相応には負担をしていただかざるを得ないというのが私ども考え方でございます。
  83. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 先ほどからお伺いしておりますと、努力努力という言葉ばかり出ておるのです。確かに一生懸命取り組んでいらっしゃる姿勢もわかるのですが、精神的な努力だけではどうにもならない問題があると思います。そしてまた先ほどの総裁の御答弁の中にも、航空運賃あるいは海上運賃、陸上運賃——陸上運賃の中でも大量輸送機関と私的な自動車等の輸送機関、こういった問題を含めた運賃体系がばらばらであるということもまた国鉄の問題にも大きく影響していると思います。いま運輸大臣はちょっと席を外されておりますが、そういうふうなことについてはどう考えていらっしゃるのか、事務当局で結構ですからお答えいただきたい。
  84. 真島健

    ○真島政府委員 陸海空の各交通機関の運賃で私どもが認可その他で関与をいたしておりますいわゆる公共料金と称せられる運賃、この運賃をどういうふうな水準に決めるかということは、先ほど鉄監局長からもちょっと触れましたけれども、航空は航空法、自動車は道路運送法、国鉄運賃法というような各事業法規によりましてその決め方が現在は特定されておるわけでございます。原則といたしまして、能率的な経営のもとにおける適正な原価を償うというものが各機関の運賃である、こういう形でございまして、異種の交通機関間の運賃のバランスということになりますと、これは直接に物差しがあるわけでもございませんし、たとえば自動車が航空の三分の一でなければいかぬとか二分の一でなければいかぬというふうな物差しはないわけでございまして、私どもの感じでは、やはり各交通機関が適正な経営努力をなし、そのために出てまいります必要な原価、これを償うという形で運賃が決められていくことがすなわち、総合的に運賃が適正な水準に並んでいく、こういうことではないかというふうな感じを持っております。
  85. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それぞれのよって立つところの法律が皆違うからそうなっているんだ。法律の上ではそうかもわかりませんけれども経済的な原則の立場から見ると、一定のそれぞれの整合性のあるものが必要だと思うのです。ですから、空と海と陸上、そういった総合的な対策が必要だと私は考えますが、大臣、いかがお考えになるでしょうか。運賃がそれぞれ違う根拠はわかるけれども、しかしむしろ総合的な観点から空、海それから陸上、これを整合性のあるものに考え直す必要があるのではないかということを申し上げたわけです。
  86. 田村元

    田村国務大臣 実は、私が運輸大臣になりました直後に、記者会見の席でいまおっしゃったことと同じことを言いました。つまり、総合交通運賃体系とも言うべきものを策定した方がよいのではないか、こういうことを申しました。私は、各機関の交通運賃の整合性を図っていかなければならぬという考え方については、いまも考え方を変えておりません。ただ、現在はまだ、安定したりとはいえども経済情勢が微妙に揺れ動いておる現状下にあります。それから、いま一つは、国鉄財政が極度にアブノーマルな状態にあります。でありますから、この極度にアブノーマルな状態下にある国鉄運賃を仮に一つのベースとして他の交通運賃を策定していく、それが仮にガイドライン的なものであっても、これを策定していくということはきわめて危険な状態にあります。でありますから、いま直ちに総合運賃体系的な、仮にガイドライン的なものであっても、これをつくるということはいささか時宜に適していないという感じはございますが、いずれにいたしましても、経済情勢も安定して国鉄の体質もノーマルな状態になったときには、整合性を考えたガイドラインというものははっきりと示していく必要があろうか、これは私の考えでございますが、いまなおその考え方を私は変えておりません。
  87. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 もう一つは、先ほども総裁がお答えになったのですが、結局費用分担の区分というものがはっきりしてないこともまた料金値上げに対する国民世論の反発が大きい原因の一つだと思うのです。当然国が負担すべきもの、そして国鉄負担すべきもの、そして利用者が負担すべきもの、そういう費用負担の区分の原則をはっきりするという点についてはどういうふうにお考えになっていますか。
  88. 住田正二

    住田政府委員 いま御指摘の費用負担区分の問題でございますけれども、やはり国鉄は一つの企業体でございますから、基本的には国鉄収入というものは利用者の負担にお願いするというのが原則ではないかと思います。もちろん利用者に負担をお願いいたします前提といたしましては、国鉄が能率的な経営を行うということが当然の前提になろうかと思います。しかし、国鉄経営につきましては、先ほど来御指摘がございますように、国鉄の力ではどうにも原価を償うことができない分野があるわけでございまして、そういう国鉄経営の限界を超えるようなものについては、やはり国なり、場合によっては地方公共団体を含めまして助成をするというのがたてまえではないかと思います。すべて一応原則としては利用者負担という考え方をとっておりますけれども経営の限界を超えるものについては、国なり地方公共団体がめんどうを見るという考え方で対処いたしているわけでございます。
  89. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま言われたことが国民の合意に達するようなはっきりした費用負担の区分というものが明確になっておるのですか。はっきりしておらないわけでしょう。当然これは利用者の負担すべきものだということがはっきりしておれば、住民の合意もまた得やすいわけなんですね。そういう点で明確になっておらないんじゃないですかと言っておるのです。
  90. 住田正二

    住田政府委員 国鉄の業務というのは全国的に行われておりますし、またいろいろな事業をやっているわけでございます。したがいまして、それらの事業についていかなる部分経営上の限界を超えるかという点について十分検討をする必要はあろうかと思います。やはり国が助成する以上、先ほど申し上げましたように、一方では国鉄の能率的な経営ということが前提になるわけでございまして、そういう点を踏まえまして今回国鉄経営改善計画を出してきております。これは総論的なものでございますので、本年度じゅう経営改善計画を具体的につくっていって、その中でやはりこれは国鉄経営の限界を超えるものだということがあれば新たに助成の問題として検討したい。一律に五〇%であるとか六〇%であるとかいうような比率による区分というのは設けることが非常にむずかしいわけでございまして、やはりそれぞれの分野について十分検討した上で、いかなる部分国鉄経営の限界を超えるか、それを明らかにした上で助成のやり方を考えていく、そういう方向で対処いたしたいと考えておるわけでございます。
  91. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 費用負担の原則をできるだけ徐々にはっきりしていかなければならぬけれども、その具体的なあらわれとして、昨年の値上げのときに衆議院、参議院でそれぞれ附帯決議がつけられました。参議院の場合は全会一致ですが、その附帯決議についてはどういうふうに具体的にいま取り組んでいらっしゃって、今後どういう計画でそれを実現していくように手だてを講じておられるのかお伺いをいたしたいと思います。
  92. 住田正二

    住田政府委員 昨年、衆参両院で附帯決議がつけられておりますが、共通している部分もあれば別個の——各衆参別々につけられている附帯決議でございます。まず共通的な問題といたしまして、過去債務の積極的な処理という問題がございます。この点につきましては、五十年度末の過去債務のうち、二兆五千四百億円は国が肩がわりをするということになっておりますし、また五十一年度に新たに発生いたしました赤字につきましても、それが国鉄負担にならないように本年度利子の一部を補給するということをいたしております。この赤字につきましては、将来国鉄の収支が均衡できたという段階で最終的な処理を決めたいと考えております。  次に、地方交通線でございますが、地方交通線については五十一年度から暫定的な助成措置を講じております。この問題につきましては現在運輸省の運輸政策審議会でいろいろ御検討をいただいておりまして、本年の一月に中間答申が出ております。この中間答申の中でも、この問題が解決されるまでの間、国は暫定的なめんどうを見るべきであるということで、本年度は昨年の百七十二億円から四百九十億円ということで大幅に助成をふやしておりますが、最終的にはことしの秋に最終答申が出ますので、その結果を待って処理をいたしたいと思っております。  それから公共負担の問題でございますが、国鉄のいわゆる公共負担と言われておりますものの中には純粋な公共負担とむしろ営業割引と見られるものもあるわけでございまして、営業割引については今後強化するものもあればあるいはまた是正すべきものもあろうかと思います。そういうものを除きました純粋の公共負担については、やはり附帯決議の中で言われておりますように、政策実施官庁で負担していただくということが必要かと思いますけれども、やはりその前提といたしまして、たとえば公共負担の中で一番大きな負担は通学割引でございますけれども、通学割引につきましては、御承知かと思いますが、国鉄、私鉄あるいは公営で非常にアンバランスになっております。一番割引率の低いのが公営でございます。いかなる割引率が妥当であるかということをまずはっきりさせませんと、負担といいますか、どこまで助成したらいいのかというのが出てこないわけでございまして、現在そういう点も検討中でございますが、そういう検討を行った上で各実施官庁にも助成をお願いしたいと考えております。  なお運輸省といたしまして、いまの通勤通学割引に関連いたしまして、今後建設される大都市交通が国鉄経営負担になるということで、本年度からは大都市交通の建設費の三〇%を助成するとか、あるいは鉄建公団から借りております大都市交通線の借料の三割を補助するという措置を運輸省としてもとっております。そのほか細かいことはあると思いますけれども、主なものといたしましてはそういう措置をとっているわけでございます。
  93. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いまの公共割引等については、それでは具体的にそれぞれの省庁に対してある程度の話し合いというものは進んでいっているわけですか。
  94. 田村元

    田村国務大臣 この問題は従来から関係省に対して強く申し入れておりますが、同時に先般の五十二年度予算編成のときに閣議におきまして、ここに倉成長官もおられるわけでありますが、私から強く協力を要請しました。あるいは文部大臣あるいは厚生大臣、いろいろと私から要請をいたしました。なかなか担当省にとっては厄介な問題であることはわからぬではありませんけれども、しかし国鉄を担当しておる運輸大臣としては何とか決着をつけてもらいたいところであります。でありますから、これからも関係省に対して強く要求し、私も関係大臣に対して強く要求するという姿勢を崩しておりません。
  95. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 公共割引問題については総合的な対策ということで各省庁に非常に関係が深いと思いますし、今後も積極的なそういう努力を続けていただかなければならぬと思います。先ほどの連続立体じゃないけれども、もらう方はたっぷりもらっておるけれども、後はまたこちらのやるべきこともきちっとやるのだという姿勢を続けていただきたいと思います。  それでは最後に、会期末が非常に迫りまして、運賃問題については非常に関心を深く持っておりますが、先ほどお聞きしたところによりますと、経企庁あたりでは消費者の立場を強く主張するという立場がもう一つ弱いような感じがいたします。今後の取り組む姿勢についてひとつお答えをいただくと同時に、運輸大臣並びに総裁から決意をお伺いいたしたいと思います。
  96. 田村元

    田村国務大臣 いまお願いいたしております二つの法案につきましては、何とか国鉄再建したいという一念からでございます。特に運賃問題につきましては、上げることももちろんでありますけれども、それ以上にわれわれが頼みといたしております目的は、適時適切に運賃値上げすることの権能ということについてでございます。ある意味においては国鉄に対して当事者能力を強めてやるということでございます。でありますので、この点についてどうぞ深い御理解をお願いいたしまして、何とぞ御賛同を賜りたいと心からお願いを申し上げる次第でございますが、同時に、運賃値上げにつきましては、もちろん利用者の方々は申すに及ばず、国民全般に対して物価面からも配慮をしていかなければなりません。政治的な配慮というものは官僚がつくったスケジュールをときに乗り越えることもなければならないのであります。でありますから、その意味において硬直的な態度、硬直的な考え方で今後も運賃問題と取り組んでいこうとは断じて思っておりませんし、政治はまたこれをチェックしなければならない、コントロールしなければならぬということも当然であろうと存ずるのでございます。このようなわれわれの心情を何とぞお察しの上、よろしくお願いを申し上げる次第でございます。
  97. 倉成正

    ○倉成国務大臣 公共料金が国民生活に及ぼす影響はきわめて重要であるということは、私ども仕事をいたす上において中心として考えていることでございます。ちょうど狂乱物価のときに公共料金を非常に低く抑えたものですから、そのしわ寄せが五十一年にかなり大きく出てきたということも事実でございます。五十一年、五十二年を通じてこの公共料金の調整をできるだけ図りまして、さらに物価の安定を図っていきたいというのが基本的な姿勢でございまして、五十二年度は五十一年に比較いたしますと公共料金の物価上昇に寄与する率は低いというふうに私ども考えております。したがいまして、こういう基調をもとにいたしまして、これからの物価安定に最善を尽くしてまいりたいと存じておる次第でございます。
  98. 高木文雄

    高木説明員 私どもは、運賃を安易に引き上げますと国民皆さんにいろいろ御迷惑がかかるということはもちろんでございますけれども、それ以上に、先ほど来御指摘をいただいておりますように、それでかえって収入が減る危険があるわけでございますし、全体として国民国鉄という一種の愛情というようなものがだんだん薄れていく危険がありますので、企業的な運営の精神からいいましても、そうみだりに運賃を上げることは適当ではないというふうに考えております。  ただ、国鉄の場合には大体総経費の中で占めます人件費率が七割前後になっております。およそ輸送業は、私どもに限らず他の輸送業も人件費率が高い産業でございます。つまり労働集約型の産業でございます。物価と賃金の悪循環のようなことが現在起こっておるわけでございますが、現実に人手によって動かすウエートが非常に高い現状におきまして、その賃金はやはり物価ともにらみ合わせながら毎年改定を余儀なくされておるわけでございますので、そういたしますと、それだけコストが上がってまいるわけでございますから、コストの変動が毎年ありますのに商品の方の値段は上げないでいけないかと言われましても、それはほとんど不可能でございまして、どういう形で国民生活への影響を大きくしないようにするか、あるいはまたそのことがよってもって運賃値上げによるお客さんの減少を来さないようにするかということを、十分に考えながらではありますけれども、やはりコストの上昇を十分償えるような姿にしていただきませんとどうにもやっていかれないというのが現状でございますので、その辺の御理解を今後とも私どもも広く求めてまいりたいと思うわけでございます。
  99. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 終わります。
  100. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 午後一時に再開することとし、暫時休憩いたします。     正午休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  101. 大野明

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。貝沼次郎君。
  102. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案につきまして質問をいたします。  この法律案は非常に問題が多いのでありますけれども、今回の法定制緩和法案がもし成立するようなことがありますと、本年から五十四年度まで三年間、毎年最低二〇%前後の値上げがされることは必然であります。四十九年以来六年連続の値上げ国民生活が非常に圧迫されておる、こういう事例はたくさんあるわけでありますが、国民生活が非常に苦しくなっておるという現状にかんがみて、果たしてこういう安易な値上げというものが許されてよいものかどうか、私は非常に疑問を持つものであります。したがって、このような運賃値上げの恒常化を目指す国鉄再建案に対しては私は承知できないわけであります。  ところが午前中の質疑を聞いておりますと、運輸大臣は、本法案の目的は適時適切な値上げにより国鉄再建を図るという発言をしたようでありますが、これは安易に値上げしようとする発想があるのではないか、こう実は考えられるわけであります。国民の代表が集まっておる国会の審議、こういったものをあたかもボイコットするがごとき響きのある発言をなされたということは、私は非常に遺憾に思うわけでありますが、それでは国民が納得しないだろうし、また国民の声というものも反映されないのではないか、国民無視の行政ではないかというふうに言われてもいたし方ないと思うのでありますが、この点についての大臣説明をお願いいたします。
  103. 田村元

    田村国務大臣 適時適切な運賃値上げができるような権能を持たせたいと申しておりますのは、これは私はきょう初めて申したことではありませんでして、最初からずっと一貫して申し上げておるところであります。また国鉄運賃法の改正自体の目的が適時適切な運賃値上げということを目的といたしておることも当初から御説明申し上げておるわけでございまして、特に私がいま異なことを申したという趣旨ではございません。
  104. 貝沼次郎

    貝沼委員 その問題は、私いま実は詳しくやろうとは思っておりません。  それで国鉄再建の柱である三つの事柄でありますが、その一つは企業努力、それからもう一つは関連事業への投資拡大、こういった問題については当局で最大の努力をなすべきことは当然であります。しかしながらも、もう一つの国の財政援助という問題につきましては、大蔵省が非常に深くかかわってくる問題でありますので、この点について大蔵省に伺っておきたい、あるいは要望したいと思います。  私は、国鉄と国の経費の負担区分を明確にすべきであると考えるのであります。午前中の質疑で鉄監局長から、国鉄経営の限界を超えるものについては国なり公共団体の負担と考えるべきだ、こういうような意味答弁もありました。  そこで私はこのことから国鉄の方に対しましては、国鉄の現状はその限界を超えておるのかいないのか、この点について総裁伺いたいと思います。
  105. 高木文雄

    高木説明員 従来は全体を一つとして経理をしていく、たとえば地方のローカル線については実際上路線別に見ますと、経営収支が償っていないわけでございますけれども、他の地域のお客さんからいただく運賃、料金の収入で、ある程度全体としてのバランスがとれるという状態を長く続けてきたわけでございますが、最近では、長距離につきましては飛行機との競争というようなこともございますし、短距離につきましては私鉄とかバスとか、さらには自家用車との競争という関係になりますので、そう安易に上げられないという実態になっておりますから、そうなってまいりますと、地方のローカル線についてどう対処すべきか、それをやはりどうしても損益に関係なく運営を続けていかなければならない、それが公共目的を使命といたしております国鉄の任務だということになりますと、その部分についてはやはり援助をしていただかなければならないわけでございまして、五十一年度からその種の補助金を計上していただき、さらに五十二年度にはそれを大幅に拡充していただいておりますのもその趣旨によるものと思われます。そういう意味で、まだいろいろ路線別でございますとか、それから業務の種類別でございますとか、いろいろな角度で分析をいままでとは違った意味で深めてまいりましたが、私どもの手に及ばないところで、なおかつどうしても運営を続けていかなければならぬという場合には、援助をお願いしなければならぬと考えておるわけでございまして、今後そうしたものの分類、分析を推し進めまして、必要なものについてはお願いをせざるを得ないというふうに考えております。
  106. 貝沼次郎

    貝沼委員 いまの総裁答弁ですと、この限界というものは、現在はこれは超えておるのですか、それとも超えていないという判断ですか。もう一度お願いします。
  107. 高木文雄

    高木説明員 一例としてでございますけれども、いまのローカル線なんかの場合は、明らかにもうすでに私ども経営し得る限界を超えておるという意味でございます。そういうフィールドはほかの分野においてもあるわけでございまして、五十二年度から新たに大都市通勤線の増強の工事経費につきまして三割の補助金を新しく計上していただくことになりましたのも、大都市通勤は確保するということは国鉄の使命でございますし、さりとてそれをいまのように非常に高い建設費をかけてやりましても、採算的にはこれは見合わないということでございますので、その分はひとつ援助をしていただきたいということにしたわけでございまして、そういうものを全体をプールして物を考えるのではなしに、部分的にそういう部分がございますから、そういう部分について援助を求めるということで、限界を超える部分があちこちに出てきておるということでございます。
  108. 貝沼次郎

    貝沼委員 じゃ、この限界というのは全体として判断するのではなしに、部分的に判断をしていく、こういうことですね。それならば、そういう限界の具体的な基準というものはどういうふうにお立てになっておりますか。
  109. 高木文雄

    高木説明員 これは何か理論的に基準があるということではなくて、私は経験的に生まれてくるものではないかと思うわけでございます。また同じ例を引きますが、ローカル線の場合につきましても、私どもとしてはそれなりにどうやって経費を切り詰めていくかという努力をいたし、住民の方々には御迷惑であり御不満の声が上がっているわけでございますけれども、たとえば無人駅をふやすとか委託駅をふやすとか、あるいは多少貨物の取り扱いをやめるとかいうようなことを通じて経費の節減を図ってきたわけでございますけれども、それをやりましてもなおかつ相当の赤字であるということになりますと、やはりその部分はもう私ども経営努力の限界を超えたものというふうに考えますので、その一部について援助をお願いする。それに対して、しかしまだまだ工夫の余地があるよということもございましょうから、その種の赤字の全部について補助していただいているわけでなくて、その一部について補助していただいているということでございまして、その限界をどこに求めるかということは、理論的にかくあるべしというようなことで生まれてくるというよりは、むしろ経験的な数値から生まれてくるというふうに考えられるわけでございます。経費そのものにつきましても、年々人件費も上がってまいります。また収入の方も、場合によりますと、逆にお客さんが過疎地帯ではどんどん減ってまいりますから、したがってその差が大きくなって赤字がふえていくということでございますので、その赤字の実態というものは年々変わってまいりますから、何かそこで理論値でもって割り切ってしまうということはできないのではないかというふうに思います。
  110. 貝沼次郎

    貝沼委員 経験という言葉がどうも、——経験的に基準はでき上がってくると思うというものだと思いますが、どうもそれだけではわかったようなわからないような——はっきり言ってわからないわけでありますけれども、これについてはある程度具体的な、たとえばこういう地方のローカル線なんかの場合についてはこういったことがその基準になりますとか、いろいろな場合によってその経験的に積み重ねられたものをやはり示して、そして理解を得るような方向にいかなければ、国民的な理解はちょっと得られないのじゃないか、私はこういう考え方を持っておるわけであります。したがって、今後そういうような具体的基準について国民に示すという姿勢がおありかどうか、この点をもう一度伺っておきたい。
  111. 高木文雄

    高木説明員 それぞれの路線につきまして、それぞれある種の別経理を行いまして、そしてそれをある基準で補助をしてもらうという考え方もあり得るかと思います。たとえばいま運輸省が中小の地方私鉄に対して補助をしておられる場合には、ある種の基準を示して、その基準に応じて補助をしておられるわけでございますが、私どもの場合は、いま北海道から九州までの九千二百キロという膨大な経営路線につきましてまだプールで計算しているというようなやり方になっておるわけでございまして、また、その各路線で赤字が発生します事情は、大別して輸送人員が少ない、もともと人口の少ないところで大量輸送機関に適しておる鉄道が走っておるというところに無理があるわけでございます。しかし、それをやめてはいけないというのが要望であって、やむを得ず走らしておるような形になっておりますので、基準の立てようがないわけでございます。基準を立てて、こういう能率の悪いものはやめます、これからここまでのものはこの程度の補助をいたしましょうというようなことでやっていくのでございましたら、基準を立てる意味がありましょうかもしれませんが、いまは、たとえ効率が非常に悪いものでございましても、公共福祉のために動かさざるを得ないという実態でございますから、その場合にその基準を立てましても、その範囲内でやりくりするという余地がないわけでございますので、やはりいま申しましたように実績値に基づいて、そしてその実績値をいかに赤字を小さくしていくかという努力を私どもとしては重ねていく以外にないのではないかという物の考え方をいたしておるわけでございます。
  112. 貝沼次郎

    貝沼委員 それはまた結果を見て、後でまた問題になると思いますが、私は国の財政援助につきましては、具体的には基盤施設整備費、これは全額国庫負担とすべきである、私はこういう考え方を持っておるわけであります。したがって、そのためには国の財政援助を制度化すべきではないか、こういうふうに考えておるわけであります。私が言うまでもなく、たとえば外国の、ヨーロッパあたりの例を見ましても、たとえば国からの援助は昭和四十九年度まで六年間の助成というものを考えてみまして、西ドイツでたしか三四%ぐらいですね。フランスが三八%、英国が一七%、それに比べて日本は九・三%というような数字にたしかなっておると思いますが、こういうようなことでは再建というのは大変だと思うわけであります。そこで、国の財政援助を制度化する考え方があるかないか、あるべきだと私は考えるわけでありますが、この点についての見解を承りたいと存じます。運輸省の方とそれから大蔵省の方から伺いたいと思います。
  113. 住田正二

    住田政府委員 先ほど申し上げましたように、国鉄に対する助成の基本的な考え方は、国鉄経営の限界を越えるものについて援助するということでございます。いま基礎施設の例を取り上げられたわけでございますけれども、基礎施設につきましてもいろいろな場合があるわけでございまして、その基礎施設によって償却費、金利も賄えないような設備投資もあれば、投資によっては十分、一定期間内に回収することができるような基礎施設もあるわけでございます。したがいまして、一律に国鉄の基礎施設であるから助成が必要であるというような判断をすることはできないのではないかと思います。  また、基礎施設について国が助成するということは一般国民の税金によるということでございまして、逆に言いますと、基礎施設については利用者に一切負担をさせないという考え方になるかと思いますけれども、現在、他の交通機関と比較いたしましても、たとえば航空の場合、空港とかあるいは管制施設等の基礎施設につきましては、大体利用者負担の原則にのっとりまして、一般会計からの助成というのは一%程度で、九九%は利用者負担ということになっております。また道路についても、御案内のとおり、ガソリン税とか軽油引取税とかもろもろの特定財源がございまして、そういうものを含めますと、大体八二、三%が利用者が負担するという仕組みになっております。  したがいまして、そういう点を比較いたしますと、国鉄だけが一般国民の税金によるということは、他の交通機関の基礎施設の利用者負担率との関係からいいまして、かえって不公平になるのではないかというように考えられます。  しかし、そういう利用者負担率という点を別にいたしまして、国鉄の基礎施設の中にはなかなか収入だけでは投資が回収できないものがある。たとえば、先ほど申し上げましたように、大都市交通施設につきましては、輸送力が増強いたしましてもお客さんがふえるわけではない、混雑率は緩和するだけであって、直接収入には結びつかない。しかし、そういう点についても今後やはり投資が必要である、そういうような採算のとれない投資については国が三〇%助成するということで、やはり個々の施設についてそれが国鉄経営に対してどのような負担になるかということを判断しながら助成は考えていくべきものではないかと思います。
  114. 貝沼次郎

    貝沼委員 運輸省はそれで国鉄再建というものはできると考えておるのかどうか、私は非常に疑問に思うわけであります。恐らくそれはむずかしいだろうと思うのですね。  そこで、こればかり時間をとっているわけにいきませんので、国鉄運賃値上げだけに頼って再建案が可能だということは、これはもうできないということは、昨年のたとえば五〇・三%という大幅値上げによって旅客、貨物収入ともに国鉄離れの現象が起きているということは国鉄自身も実はよく承知をしておることだと思うのですね。したがって、国鉄運賃値上げ国民生活に非常に影響を与えておる、こういう懸念があるわけであります。  そこで、たとえば国の施策として、これだけ運賃値上げしていったならば日本国民生活の上において物価政策上非常に影響が大きくなる、これ以上はもう上げられないという経済政策上の点があると思うのですね。ところが国鉄再建の上から考えるとその点を上回らなければならないという点があるわけであります。したがって、その差というものをこれは国が財政援助という形で負担すべきではないかと私は考えるわけでありますが、大蔵省はこの点についてどのようにお考えでしょうか。
  115. 松下康雄

    松下政府委員 運賃の適正な水準というのはどの程度まで可能であろうかとか、あるいは国鉄企業努力によりましてどの程度まで経理内容の改善をできるかということは、実はこれは御理解いただけると思いますが、あらかじめ数年先を見通しまして計数的に決めてまいることは非常に私はむずかしいと思います。国鉄はやはり現在非常に大きな曲がり角にあるわけでございまして、これをうまく曲がり切って新しい交通需要に応じました体系に持っていっていただく必要がある。ただ、この曲がり角を曲がってまいります際には、いままでやってきましたこともそれぞれ基本に立ち返って見直しをしていっていただく必要がある。その結果は、これはまた努力をして初めて答えの出る問題でございまして、あらかじめそれを見越した上でどの部分が将来にわたって国の助成となるべきかということをいわゆるルール化してまいることには、ただいまの問題はむずかし過ぎるのではないかと、そういうふうに思っている次第でございます。鉄監局長が申しましたような基本の考え方で、私どもは将来の財政援助の考え方について努力をしてまいりたいと思っております。
  116. 貝沼次郎

    貝沼委員 次の問題に移りたいと思いますが、この提案理由説明を私読んでみまして感じましたことは、国鉄が非常に経営が困難である、したがってこの値上げをしてもらいたい、財政上の措置を講じてもらいたいというようなことは一生懸命書いてあります。ところが、この値上げによってたとえば国鉄のサービスがどうよくなるように努力するとか、国民に理解をされるようなものになりたいとかというようなものは一切のぞいておらないわけですね。ところが、たとえばタクシーの料金の値上げなどのときにもいつも問題になるのは、サービスが果たして向上するかどうかということが問題になっておる。  そこで、私は運輸大臣にお尋ねをしたいと思いますが、この国鉄運賃法の改正に伴ってそういうサービス面、ことに国民的な信頼を得るような方向の姿勢、こういったものはどのようにお考えなのか、聞かせていただきたいと思います。
  117. 田村元

    田村国務大臣 国鉄のいわゆるサービス、旅客に対するサービスという点で欠ける面が多々あることは私も承知をいたしております。私自身、旅行いたしまして、ときに不快感を覚えることもあります。そういう観点から、国鉄総裁にはサービスの改善について厳しく注文もつけ指導もいたしております。今度は国鉄が徹底した経営改善を行うということをまず第一の柱にいたして経営改善と取り組んでおるわけでありますから、私はこのサービスの問題も徹底した経営改善の中身の一つであると、このように理解をいたしております。
  118. 貝沼次郎

    貝沼委員 いま大臣がおっしゃったようなことも、私はそうだと思います。  それから、私がこれから申し上げたいことは、実はそういう話とは別に、現在すでにでき上がっておる制度、こういったものが実は余り知られていない、知らされておらないというか、こういう状況にあるという点であります。たとえば昭和四十三年三月二十九日、日本国有鉄道公示百十二号、昭和四十三年四月一日施行の特定者用定期乗車券発売規則というのがあるわけでありますが、この規則は実は余り知らされておらないようなんですね。そこで、この規則がどういう意図でつくられたものか、その内容、さらに現在の状況について説明をお願いします。
  119. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 昭和四十三年の四月一日から施行になりました特定者用定期乗車券発売規則というのは、昭和四十三年に定期の割引率の是正をいたしました際に、該当する被保護世帯について負担が非常に重くなるということを避けるために、認可の付帯事項としてこの規則が発足したわけでございます。  この利用状況につきましては、現在、昭和五十年度で延べ百六十万人ということになっておりまして、市町村あるいは福祉事務所等で証明書を書いてもらいまして、それを国鉄の窓口に出していただきまして定期券を売るということになっておりますので、国鉄といたしましては、その受け口として十分対応できるように、いろんな規則類の整備であるとかそういったことをやって受け入れ体制を整備しておるわけでございます。
  120. 貝沼次郎

    貝沼委員 いまの話ですと内容をよく説明してもらえなかったのですけれども、私から申し上げますと、これは生活保護法の定めにより保護を受けている世帯、それから国民年金法の定めるところにより母子福祉年金または準母子福祉年金の支給を受けている世帯、それから児童扶養手当法の定めるところにより児童扶養手当の支給を受けている世帯、こういうような方々が通勤定期乗車券を購入する場合に、三〇%割引をしてもらえるという制度なんです。  ところが、これが果たしてどれだけ利用されておるかということでありますが、ただいまの吉武常務の説明によりますと、昭和五十年度の推定値で延べ輸送人員が十六万人、これは一人が定期を買った場合、一ヵ月は三十日でありますから三十人というふうに計算した延べの人数なんですね。したがって、これを計算いたしますと大体四百四十四人くらいの数字、しかもこれは推定値となっておるわけでありまして、割引額は約二百万円、こういう数字なんです。これは日本全国の数字であるわけですね。したがって、これでは恐らく知らない人が多いだろうということはもう想像するにかたくないのであります。それならば、これは五十年度でありますけれども、その前、昭和四十三年からこれは行われておる制度でありますから、四十三年からは一体どういうような数字になっておりますか、これを示していただきたいと思います。
  121. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 四十三年から現在までの全体の数字は、現在数字を持っておりませんので、調べておきます。  それから、さっき私ちょっと数字を一けた間違えたと思いますが、先生が御指摘のように延べ十六万人、私ひょっとしたら百六十万人と言ったかもしれませんが、十六万人でございます。
  122. 貝沼次郎

    貝沼委員 いま数字を持ってないといっても、これは私はきのうから言っている話なんですね。ですから、これは数字をいま持っていないのではなしに、わからないのです。わからないならわからないとはっきり言ってもらいたいと思うのですよ。実際はわからないのでしょう。どうですか。忘れてきたのですか、わからないのですか、どっちですか。
  123. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 現在手元に持っておりませんので、いますぐではありませんが、調べてみれば大体推測はつくと思います。
  124. 貝沼次郎

    貝沼委員 厚生省の方いらっしゃると思いますが、これは厚生省の社会的弱者の擁護といいますか、基本法の精神にのっとってこれを要求してこの制度ができ上がったと思うわけであります。したがって、そういうようなたとえば母子家庭の方であるとか生活保護世帯の方がどれだけこの制度の恩恵に浴しておるか、このことは厚生省として非常に関心事であると思いますが、四十三年以降の状況については掌握しておりますか。
  125. 入江慧

    ○入江説明員 この制度は、いまおっしゃいましたように生活困窮者あるいは母子世帯の負担軽減というために設けられた制度でございますけれども、保護世帯あるいは母子世帯の性格上働く世帯というのは非常に少のうございまして、しかもその中で国鉄の通勤定期を利用する世帯というのは非常に少ないと思いますけれども、私どもは購入証明書の配付を都道府県を通じてやっておりますが、それが現実にどれだけ利用されているか、全国的には把握しておりません。ただ、二、三の県を当たりましたところによりますと、たとえば愛知県なんかでございますと、被保護者が二万人ぐらいおりますけれども、この通勤定期券を利用する該当者というのは六名おりまして、その中で会社から現物給付なんかがある方もございますので、実際にこれを利用しておるのは三名というようなことになっております。
  126. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういうことではどうしようもないのですよ。これは結果はその数字なんですけれども、しかし知らない人が大部分。だれが一体PRしたのかですよ。厚生省の方も厚生省、そういう母子家庭や生活保護世帯あるいはそういう社会的弱者の方々の向上を目指してつくった制度が果たしてどれだけ利用されておるかということに対して関心が払われておらない。数字だって出せないわけでしょう。どの県がどうだと幾つかきのうあたり当たったのだろうけれども、実際は出せない。こういうことでは厚生省としてもうまくないと思うのですよ。それから国鉄の方も、やはりこういう制度があるということを、たとえば実際に定期を買いに行くところに行って買おうとしたときに、こういう母子家庭の人が定期を買おうとしたら、そういうことが示されてあって、なるほどこういう制度があるならば証明書をもらって私は三割引いてもらうというようなことがわかるようなPRだってあったっていいわけですね。ところがそういったものはどうも見当たりません。そうして、私がちょっと調べたところによりますと、この証明書の数も、たとえば昭和四十七年あたりは全国で二千枚と言われておる。それが四十八年が四千四百枚になって、実際これは使われたかどうか私はわかりませんけれども、四十九年が千五百、五十年で八百枚、そして五十一年に至って一万二千五百六十四とぐんとふえておるのですね。これは国から県へ配付した証明書の枚数でありますけれども、これはそのときに附帯決議がなされたからふえたわけでしょう。ですから、実際はこれは国鉄の方も別に責任も持っておらぬようだし、また厚生省の方も責任を別に感じておらぬようだし、こういうことではせっかくできた制度そのものが実は生かされないでしまうのではないか。先ほど厚生省はこういう世帯の方々は通勤をするというのは非常に少ないという思い切った発言をしておりましたけれども、そういう発言をなさるならば、ではそういう人は少ないという証拠でもあって発言なさったのですか、その点、ちょっと聞いておきたいと思います。
  127. 入江慧

    ○入江説明員 被保護世帯の場合について申し上げますと、被保護世帯の中で実際に働いている者というのは一三%程度おりますけれども、その中で常用労働者というのは四%程度でございます。それで、被保護世帯といいましても、実際に八〇%が母子世帯でありますとか傷病障害のある世帯でございまして、要するに稼働年齢にあって健康な被保護者というのは非常に少のうございます。その中で国鉄を利用するということになりますと推計のしようがないわけでございますけれども、非常に少ないと思いまして、それで愛知県その他岡山県にも聞きましたけれども愛知県の方は、先ほど申し上げましたように、実際に全事務所を通じて調べましたけれども、通勤定期を利用するような被保護者は六名であったわけで、岡山県につきましては四名ということになっております。  それとPRの点につきましては昨年の秋以来、一度、ある市の窓口でこの制度を知らなかったというような事情がございましたので、母子世帯につきましては母子相談員の会議あるいは私どもの方につきましては全国のブロック会議等を通じてPRの徹底に努めております。
  128. 貝沼次郎

    貝沼委員 いま岡山県という話がありましたから一言言っておきたいと思いますが、岡山県は四十三年は二人なのですね。それからずっとゼロで、四十六年が二人、五十一年が三名、五十二年が三名、たったこれだけなのです。そうして知らなかったという人が非常に多く私は聞いておるわけであります。なぜこういうことが知られなかったのか、それは官報やその他でPRしたと当局は言うでしょうけれども、こういう方々が一々官報を読んで徹底できるものかどうかということを考えると、私はやはり先ほど申し上げましたように、実際に定期券を売る窓口であるとか、そういうところでPRをしなければ徹底できないと思うのですね。  それで、これは参考までに申し上げたいのでありますが、たとえば身体障害者の国鉄運賃割引対象というものはきちっと数字が出ておるのです。こっちの方がきちっと数字が出ておるのに、どうしていまのこの制度がはっきりわからないのか、こういう点に私は疑問を感じて、こういうような社会的に弱い立場の方々のための温かい手を差し伸べることなくして国鉄再建などという、あるいは国鉄運賃値上げだけを主張するようなやり方では、これは国民的コンセンサスは得られませんよということを私は申し上げたいわけであります。そうして、それと同時に、こういうたとえば母子家庭とか生活保護世帯とかいうような方々、これはもうでき上がっておりますから、それに対するPR、そうしてまた、さらに老人等も含めた福祉型運賃制度の確立、こういったことを私はやるべきだと思うわけであります。そうして、それに対する減収部分、これについては国が補てんすべきであるという考え方を持っておるわけでありますが、この点につきまして運輸省並びに大蔵省から答弁をいただきたいと思います。  それから、時間がありませんのでもう一点だけつけ加えておきたいと思いますが、身体障害者の国鉄運賃の割引の件でありますが、これは現在急行までは認められておる。しかしながら、特急券は認められておりません。ところが、現実に、現在東京−大阪間急行列車は何本走っておるだろうかと私は調べてみました。そうすると、二本か三本しか走っておりません。したがって、身体障害者は、結局割引をされない特急料金によって東京—大阪は動かなければならないわけであります。  いま、時代の趨勢は、もはや新幹線を利用しなければならないという時代になっておると思います。したがって、この割引という考え方を、本当にそういう方々のためを思う姿勢があるならば、その金額あるいは何割とか距離がどうとかということはまた別の問題としても、何らかの姿勢というものは示すべきではないかと思うわけでありますが、この点は運輸大臣に伺っておきたいと思います。
  129. 田村元

    田村国務大臣 いまの急行の問題につきましては国鉄総裁から具体的にお答えをすべきものと思いますが、一般論として、いま御提案の諸問題については、私も全く同感であります。  ただ、ここで明確に申し上げておきたいことは、政府において対策を講じろ、弱者救済対策は、国鉄負担部分については政府でその責任をとれということでございます。そのとおり、私は異議ありません。ただ、問題は、政府といいましても非常に漠然としております。やはり関係各省がこの問題について意欲的に取り組んでもらわなければなりません。関係各省の分野において予算化をしていただくということが必要であります。午前中も私、ちょっと申し上げたのでありますが、言うなれば公共割引とでも言うべきものでありましょうが、いままで運輸省からもずいぶん関係各省にお願いもした、ところが、なかなか御同意が得られない、閣議の席においても私は強く要求した、それでもなかなか前向きの姿勢がいただけないという悩みがございます。でありますから、この問題について、私どもはいま御指摘の御意見について賛意を表しますが、同時に敬意も表しますが、反面、関係省庁がやはり本来取り組んでもらうべきものというふうに考えます。本来取り組んでもらうべきものというのは、国鉄にのみ押しつけるべきものではない、政府としてみんなが力を合わせて責任を分担すべきもの、こういう考えでございます。
  130. 松下康雄

    松下政府委員 国鉄運賃制度の中でこの福祉的な問題をどういうふうに受けとめていけるかという点は、国鉄の現状をよくながめてみますときに、私、運輸大臣がいまお答えになりましたような考え方であろうと存じております。  広くこの福祉政策という観点から、各省それぞれの施策の中でどういうふうに優先順位を持ってまいるかということは、また、それぞれの各省庁間の検討事項でございますので、各省庁におかれていろいろの施策をお持ちになって私どもの方にお話に来られましたならば、私どももこれに対して財政の面からよく検討することにいたします。
  131. 高木文雄

    高木説明員 先ほどの特急の問題でございますが、かつては、国鉄経営がいまに比べましてかなり余裕がございましたので、国鉄自体の負担においてそういう制度がつくられたわけでございますが、現状こういう事情でございますのでとうていそういうことはできませんので、厚生省の方から財源つきでお話がないと、ちょっといまお引き受けいたしかねるという状況でございます。
  132. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  133. 大野明

    大野委員長 中川嘉美君。
  134. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私は物価問題等に関する特別委員の一人といたしまして、今回の改正案に重大な関心を抱かざるを得ないわけですけれども、まず今回の法案の柱というものが法定制の緩和ということであって、財政法第三条で国会で審議をするものと決まっているにもかかわらず、国会の審議権を阻んでしまう。すなわち国会でチェックするものがチェックができないというふうなぐあいになってしまうわけですけれども、前年度が赤字の場合に、物価変動率に百分の十五を加えた率、すなわち物価スライド制プラスアルファを取り入れるという、こういうものでありますけれども、このように法定主義の緩和によって、容易に運賃というものが引き上げられたのでは、国民はたまったものではない、このように思うわけですが、一体、運賃値上げ以前のチェックですけれども、これはどこで行うのか、この点をまずお答えをいただきたいと思います。
  135. 田村元

    田村国務大臣 まず国鉄が原案をつくりますその時点で、国鉄がいま考えております。そういう面でチェックをする役割りを果たす委員会、そして国鉄から申請が出されてまいりまして、運輸大臣が認可をいたしますその以前にチェックをする機関、つまり御審議をいただく機関が運輸審議会であります。そして、また物価安定会議というものにもときに御意見を伺わねばならないだろう、このように考えております。
  136. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いまお答えをいただいた運輸大臣の諮問機関である運輸審議会がチェックするということでありますが、この審議会の構成が、利用者の意思を果たしてどこまで反映できるのか、そういう構成になっていなければまた意味がないわけでありますけれども、果たして、与党と野党の比率ぐらいになっているのかどうか。現実には、労組とか消費者の代表は参加をしておられない。ただ一人、元社会党の衆院議員であられた方を除いては、すべて政府寄りのメンバーで構成されているような気がするわけですけれども、こういったことでは、いわゆる公平かつ平等なチェックはできないのではないかと私は思います。この点について、どのような見解を持っておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  137. 田村元

    田村国務大臣 先ほど申しました国鉄自体につくります委員会、これには各界各層の方々がお入りになるやに承っております。そして、この機関は国鉄運賃値上げの原案を定めるときに諮問をする、御意見を承る。運輸審議会は、それに対しく完全な厳正中立の立場で御判断をいただく、こういうことでありますから、特に、その厳正中立な立場にお立ちになる運輸審議会の委員は、国会の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。しかも兼職を認めない。すべての人々からそのオーソリティを等しく認められる、そういうメンバーでございますから、私は非常に厳しくチェックできるもの、このように確信をいたしております。運輸審というのは、あくまでも厳正中立の立場である。でありますから、経営者側にも偏らず、すべての立場に偏らないということを求められておるわけであります。
  138. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 厳正中立というこの言葉の表現、これは私も決してわからないわけではないわけでありますが、そういうことであるだけにやはり消費者とかあるいは利用者の意思というものは反映させる。そういうものを反映させる意味においても、こういう労組あるいは消費者が入ってきていいんではなかろうか。そういった意味でも、ただいまの御答弁に対して、若干の疑問を抱かざるを得ないような気がするわけであります。  それで、先ほど来おっしゃっているところの運賃値上げについて、国鉄総裁の諮問機関として、国鉄の中に委員会を置くというお話でありますが、この設置の意味と性格というものはどんなものか。目的とか構成について、もう少し詳しく、またその計画案そのものがあるのかどうかも含めてお答えをいただきたい。  なお、これは財政上のための委員会であるか、公共料金としての性格を持ったものとしてチェックをするものなのか、この点もあわせて御答弁をいただきたいと思います。
  139. 高木文雄

    高木説明員 今後運賃の改定に関しましては、私ども運輸大臣に認可申請をいたします前に各界の方々と御相談することにしてはどうだろうかということを考えておるわけでございます。  ただ、それはまだ初めてのことでもございますし、余り硬直的になってもいけないかなというような感じから、現在は法制上の制度としてではなしに、事実上の制度としてスタートしてみたらどうであろうかというふうに考えておるわけでございまして、実はそうした委員会の構成の問題であるとか、性格の問題であるとかいうようなことにつきましても、国会での御議論を十分承りまして、それを受けながらつくっていきたいというふうに考えておるわけでございまして、私どもが最初から余り固定的な考え方で臨むよりは、この法律の国会での御審議の過程での御議論を承った上でだんだん考え方をまとめていきたいというようなふうに考えておったわけでございます。  ただ、現実問題といたしましては、運輸審議会のような場合と違いまして、各方面の消費者の方方は、あるいは財政援助の問題も起こりますから、納税者の方々、あるいはまた交通問題等についての学識経験をお持ちの方々といった方々の中からお願いをするというようなことを漠然といま考えておるわけでございまして、必ずしも人数とか、あるいはどのフィールドから何名というようなことはまだはっきりとプランを持っていない現状でございます。
  140. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 現状ではそういったプランがないというお考えのようですが、またいろいろ検討するものがあるとしても、やはり法案の成立前に国民の前にこれを明らかにするのが本来の姿ではないだろうか。そうでないと、これはまた国民を説得するためのまやかしのようなものにすぎないと言わざるを得ないわけですけれども国鉄総裁の諮問機関と運輸大臣の運輸審議会とで、この両方できるわけですけれども、一体どちらの諮問機関の言うことを国民が優先をして考えたらいいのか、本当のチェック機関は果たしてどっちなのか、この点についてはいかがでしょうか。
  141. 田村元

    田村国務大臣 先ほども申し上げましたように、国鉄総裁の諮問機関とも言うべき委員会は、国鉄自体が原案を定める以前に意見を聞く委員会であります。運輸審議会は国鉄から運輸大臣に対してなされてきた申請を運輸大臣が決定をする以前に審議をする機関でございます。でありますから、横に並べてどちらが重いかということは、ちょっと申しがたい、全く異質のものでございますから。しかし、異質のものではありましても、ダブルチェックとも言うべき役割りは双方十分に果たし得るだろう、このように考えております。
  142. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 先ほど伺ったことに関連しますけれども、そうなると、今度は運輸審議会、横というよりも縦と考えた方がよろしいかと思いますが、このメンバーを先ほど非常に政府寄りである、私たちから言わせますと非常にお粗末なメンバーであるように思うわけですけれども、ここでさらに消費者とか労働界の声を反映し得るように、こういったメンバーを加えるという、このことを私たちは強く要望するわけですけれども、この点についていま一度大臣のお考えを伺いたいと思います。
  143. 田村元

    田村国務大臣 先ほども申しましたように、厳正中立の立場に立つ方々、しかも非常に高い学識経験を有しておられる方々、そういう方々の中から内閣総理大臣が両院の同意を得て任命をするということでございますから、今日までその人選に誤りがあったとは思いません。特に、今日のごとく政党がたくさんでき上がって、保革接近と言われておるときには、国会は、運審委員に対して同意を与えるという権能をフルに活用なさるであろうと、このように思っております。
  144. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 次に、私は、グリーン車の問題について若干伺いたいと思いますが、国鉄総裁運輸大臣が、グリーン車を値下げをすることを以前から言っておられるわけですが、飛行機よりグリーン車の方が高い。たとえば東京−新大阪で見るならば三千九百円の差があり、また、東京と博多で見ますと二千九百円の差が出てきている。国民国鉄離れというものは、こういったぐあいですと当然ではなかろうかと私は思います。法定制の緩和で九月一日から一九%の値上げをするならば、当然グリーン車の方も上がることになる。ますます旅客離れをもたらすということは明らかではないかと思いますが、赤字国鉄が、こういったことですとさらに減収を招くことになるのではないか。大臣も、四月からこのことを実施すると以前に言われておられるわけですけれども、すでにいまもう五月半ばを過ぎているわけですけれども、一体いつになったらグリーン車の値下げというものを実施されるのか、具体的な見通しと、それから値下げ幅そのものがおわかりでしたらお答えをいただきたいと思います。国民にとっても非常な関心を持っている問題ですので、明確に御答弁をいただきたいと思います。
  145. 田村元

    田村国務大臣 先ほどの御質問の中で、四月から実施すると私が言明したということでございますが、それは申しておりません。四月からということは一度も申したことはありません。実は、国鉄でグリーン車の値下げを、部分的な値下げを検討しておるということを私が聞きまして、それはおかしいじゃないか、いまグリーン車は空気を乗っけて走っておるじゃないか、むしろ値下げしてでもお客様に多く乗っていただく、しかも航空運賃との格差が逆ざやで開いてきた、だから、この際思い切って値下げをしたらどうかということを提案いたしました。御承知のとおりであります。それといま一つ私の胸中去来いたしました考え方は、昔の白レベルの一等車、青レベルの二等車というような特権階級的なものでない、庶民がだれでも安直に利用できる、そういうグリーン車を実現したいという私の悲願でもありました。そういうことで、国鉄総裁並びに鉄監局長に対して、グリーン車を思い切って値下げをしてみたらどうか、これを検討せよということを指示いたしたわけであります。いつ、どの程度ということは、目下国鉄が検討をいたしておるわけでありますが、私といたしましては、なるべく早い機会になるべく大幅な値下げを決定したいものだと期待をいたしております。いま国鉄の作業を私はじっと見守っておる、その報告を待っておる、こういう段階でございます。
  146. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いまの御答弁から、大臣の大変に意欲的な取り組みの姿勢というものは感じるわけですけれども運賃は国会で決めるわけですが、料金については審議会の了解をとって運輸大臣が認可するということになっているわけで、ただいまの御答弁にあったような、やる気であればいつでもできるのではないかと、このように私は思います。一日も早く実施ができるように御尽力をいただきたいし、また、そのことによって客を呼び戻すということを真剣にひとつ考えていかなければならないのではないかと、このように思うわけでございます。  次に、きょうは時間の関係で一つ一つを詰める時間が残念ながら余りございませんが、国鉄赤字の最大の原因である貨物の問題を取り上げてみたいと思います。  国鉄の損益計算を見てみますと、まず四十六年度の赤字が二千百四十三億円、これはもう全部貨物部門の赤字としか考えられない。四十七年について見てみますと、国鉄赤字は三千百八十二億円、このうち二千六百十八億円が貨物部門の赤字である。次に、四十八年は四千二百八十二億円の赤字のうち三千百八十四億円が貨物部門、四十九年度では六千二百四億円の赤字のうち四千五十二億円が貨物部門の赤字、こんなふうになっているわけでありますが、国鉄財政破綻の原因の大きな部分意味しているのではないか、この貨物部門によってそういったことが起きているのではないかと思うわけですけれども、この点についてお考えを伺いたいと思います。
  147. 高木文雄

    高木説明員 ただいまお示しありましたような傾向でございまして、大変貨物部門の赤字が大きいということは否定できないわけでございます。ただ、問題はどうやって貨物の損益を経理するか、旅客の損益を経理するかという点についていささか疑問があるわけでございまして、貨物と旅客とに分かちがたい共通経費的な部分が相当ウエートが高いわけでございまして、その観念上の配分がいかにあるべきかということに一つ実は大きな問題がございます。もともと、仮に貨物がゼロになりましても共通部分の経費はかかるという関係にございますので、そのように実体的に貨物に大きなウエートの赤字があると見るべきかどうかについては、見方によっては問題があることは否定できません。しかし、いずれにしましても非常に貨物は困窮をいたしておりまして、その原因は、何よりも輸送量が減ったということによる点が多いと思います。     〔大野委員長退席、加藤(六)委員長代理着席〕 なぜ輸送量が減ったかといいますと、やはり石炭でございますとか木材でございますとかいうものの国内生産が落ちまして、輸入に依存する程度が非常に大きくなりましたので、それらの輸送がレールによって行われないで船によって行われるということが多いわけでございまして、私どもが一番過去において多く運んでおりました当時と比べまして、輸送量が大体七割に落ちておるわけでございます。しかし、七割に落ちましたからといって、列車を減らしますとかあるいは貨物ヤードを減らしますとかということはなかなかできにくいわけでございまして、総体としてじわっと減っておるという感じでございますために、この貨物列車を減らしますとか、この貨物取扱駅はやめますとか、ヤードをやめますとかいうわけになかなかいかない。そういう関係から経費が落ちないということでございまして、そこで、先般お示ししました経営改善計画では、このいわば経営上、運営上のロスともいうべき部分を切り落としたい、それによって経営の立て直しの手がかりとしたいというふうに考えております。
  148. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 貨物輸送における国鉄のシェアを見てみますと、昭和三十五年が三八六%、これが五十年で見てみますと一二・九%まで下がってきている。一方、自動車による貨物輸送昭和三十五年で一五%、五十年で見てみますと三六%にも上昇してきている。したがって、戸口から戸口へといった現代的な要望、こういったものに国鉄が十分対応し得なかったということも、こういったシェアの一つの変化ではないか、こういうふうに思いますが、国鉄はやはり国鉄でなければできないという国内輸送、この重要な役割りというものも果たしているわけでありますから、今後は企業や国民の要望に合致した、たとえて言うならば、通運とか倉庫とか自動車運送とか、あるいは内航海運との有機的な連携というものを図るなどの消流とか物流にわたる一貫体制というものが整えられなければならないのじゃないか、こう思いますが、これらの施策について運輸省並びに国鉄がどのような進め方をしようとしておられるか、この点についても伺ってまいりたいと思います。
  149. 田村元

    田村国務大臣 非常に適切な御指摘でありまして、私はそのようにあるべきだと思いますし、特に過当競争とも言うべき貨物輸送の現況にかんがみて、とりわけ通運との連携、意欲的なお客様の発見、開発、開拓、これはもう大いに努力をしなければならないところであります。国鉄もそういう点において意欲的に検討しておるやに承っております。
  150. 高木文雄

    高木説明員 トラックとの関係については、従来いささかお互いに競争的な立場をとるような関係にあったと言えるのではないかと思います。それを競争というよりは協調的なものに持っていかなければならない。私どもは戸口から戸口へということはできないわけでございますから、両端をトラックの担当の方にお願いをしなければならないわけでございますので、結局両方、トラックの方と連携、提携ということを密にしていかなければならないということが基本であろうと思います。  そういうふうにネジを巻き戻すようなことをいろいろ工夫いたしたいと思っておりますが、ただ問題は、やはりそれぞれの通運業者なり路線業者の方々は所要の車両なり人員なりを抱えておられる関係もありまして、全体としての輸送量が落ち込む、不況になるということになりますと、そう国鉄のことばかり考えているわけにもいかない。みずからのことも考えなければいけないということにもなりますので、なかなか現実の問題としてはむずかしいわけでございます。  しかし、基本の姿勢としては、協調を求めていきたい。路線なり、通運業のそれぞれのお立場がありますから、そう当方の都合だけでお願いするわけにもいきませんけれども、基本はいたずらなる競争ではなくて協調、提携ということで進めていきたい。ただ、具体的にはなかなかそれがこういう形で一緒にやりましょうというところまでまだ進んでいないということは申しわけないと思っておりますが、基本はそういうふうに考えております。
  151. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 トラックとの連携などを検討していきたいという御答弁ですけれども、この国鉄とトラックの競争条件の整備という問題については、まだいろいろと方法もあろうかと私は思います。たとえば、これは西ドイツの話ですけれども、トラックから道路税を取って、国鉄の貨物部門に補助金の形で出して、条件整備をやっている。このような方法に対してどのようなお考えを持っておられるか。わが国の場合、競争条件をどうするかということについては、単なるトラックとの連携ということでなくして、もっと幅広く検討が加えられていかなければならないのではないかと思いますが、いま一度御答弁をいただきたいと思います。
  152. 田村元

    田村国務大臣 実はいまから何年前でありますか、私がたまたま何の役職もなく党におった当時、この問題を提起したことがあります。それも具体的に金額まではじき出して、そのトータルをどのように扱うべきか、非常に具体的なデータをつくって提起したことがあります。まことに残念でございましたが、袋だたきに遭いました。なかなか現状を改革するということは勇気の要ることでもあり、厄介な問題でもあります。でありますから、いまここで私が運輸大臣という立場で、かつて私が自分自身で作業をした、いまおっしゃった問題を蒸し返すこともいかがかと思われますし、それに対して特に声を大いにして性急な御答弁を申し上げることもいかがかと思いますが、いまおっしゃったような問題も含めて検討するに値するということは言えるであろう。ただ、国鉄財政再建させるための特定財源を同じ国鉄と競争する民間の業界に求めることがいかに困難なことであるかということについては御理解をいただきたいと思います。
  153. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そういう一つの問題提起ということに対して当時反対をされたということは大変残念なふうにもいまは響くわけですけれども、また時も流れも変わってきて、現状こういった赤字にどう対処するかということについて真剣に考えなければならないというときが来ておるわけなんで、どうかひとつただいまの御答弁の後半にありましたとおり、こういった積極的な施策というものを講ずることによって、競争条件の整備ということをひとつさらに強力に検討していただきたい、このように思います。  次に、政府物価安定を重要課題にとっておきながら、昭和五十年度消費者物価の上昇を八・二%と約束をして、途中で八・六%に変更をした。その上実際には九・四%というところまで上昇するなど約束が守れなかったわけでありますが、ことしも国鉄値上げを含めて政府は七・七%に抑える、このように言っておりますが、こういったことを引き金として、米価の値上げのように諸物価値上げしやすいような状況をつくり出して上がってくるのは明らかである。経済企画庁にもひとつお答えをいただきたいわけですが、国鉄運賃値上げというものが諸物価の上昇にどのような影響を与えるのか、このことについて政府はどう考えておられるかについて、経済企画庁の方から御答弁をいただきたいと思います。
  154. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 五十二年度の国鉄運賃の引き上げが九月から一九%ということで予定されておるわけでございますが、それによります消費者物価の上昇は〇・二五%でございます。私どもとしましては、本年度の公共料金については、全体として昨年が三%程度でございましたけれども、二%程度のところで落ちつくようにしたい。そういうことによりまして、他方卸売物価の現在の落ちつき基調等につきまして十分な対策を講じていくことによりまして、全体として五十二年度の消費者物価を七・七%に持っていくように努力をしたい、こういうことで現在いろいろ対策をとっておるところでございます。
  155. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 時間がありませんので、さらにもう一点だけお聞きしたいと思いますが、総理大臣の私的諮問機関である物価安定政策会議、先ほども答弁の中にこういったことは出ておりましたが、この物価安定政策会議に事前協議をする方針を決めた、運輸省はこう述べておられますが、経済企画庁ではこれによって満足なる事前チェックが可能であると考えておられるのかどうか、この点を伺いたいと思います。この会議で事前協議をしたとしても、法定制緩和をされてしまった場合に完全なる歯どめとならないのではないか、事前協議がなし崩しになる可能性が出てくるのではないかと思いますが、運輸省のお考えについても同時にお聞かせをいただきたいと思います。
  156. 田村元

    田村国務大臣 先ほども答弁申し上げましたように、国鉄総裁の諮問機関といいますか、委員会、運審、そして物価安定政策会議、このように幾重にもチェックをしていくということは非常によいことであると思います。その意味において物価安定政策会議が出される意見というものは、物価安定の見地からよき指標ともなるだろうというふうに考えております。
  157. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 物価安定政策会議の中に特別部会というのがございまして、国民生活に密接に関係するサービスや物資の価格、料金を審議するということで、これまでも重要な料金、価格についての検討をされているわけでございますが、今回、国鉄運賃につきましては決定方針が弾力化されるということに伴いまして、私どもといたしましては運賃の決定について御協議があったときには物価の観点から、この物価安定政策会議にはいろいろ各界の代表者が参加しておられますので、御意見を聞いて適切に対応していきたいと思っております。
  158. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ただ、この会議は総理の諮問機関というものであって法的な根拠がない、いつ解散になるかもわからない、こういうわけですけれども、今後はこういった機関を法的な根拠を持った諮問機関にしていく必要があるのではないかと私は思いますが、この点はいかがでしょうか。
  159. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 御指摘のとおり、物価安定政策会議は閣議決定に基づくものでございまして、四十四年から設けられて現在までいろいろ活動を続けておられるわけでございますが、必ずしも法律制度に基づくものでなくとも、現在の閣議決定による会議という形をとりましても、適切に物価安定の問題についていろいろな意見を取りまとめられたり提言されたりということで、それなりの、それなりといいますか、十分効果は果たしていると思いますので、現在の方式のままでこれからもいろいろ御意見を承るようなことにいたしたいと思います。
  160. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 時間が参ったようですので、最後に、私は以上のごとく法定制緩和は認められないという理由を述べてきたわけですけれども、このほかに国鉄再建前提条件となる国の助成強化とか、あるいは既往の赤字の処理の問題、設備投資に対する国費支弁の問題、政策割引分の国庫補助の問題、地方交通線の赤字補てんの問題、さらには労使間の問題、貨物輸送に関する問題等々いろいろあるわけですが、こういったものの国鉄企業努力というものが現在のところなされていないのではないか。これらの条件が満たされていない中で、いたずらに国民負担を強化するという法定制緩和にはわれわれは反対せざるを得ないわけです。まして、物価を早急に安定させる手段は必ずしも多くはない。たとえば流通機構の合理化とか独禁法の強化は長い目で見れば相当の効果があっても、早急に大きな効果は期待できないというわけであります。賃金の統制ということも大きな問題があるし、また金融の引き締めについても不況と物価高ではとうてい実行できないと私は思います。結局公共料金の抑制以外には政府の実行する効果的な手段はないんではないかと考えますが、こういった意味で、公共料金の中で一般物価に対する影響のきわめて強いこの国鉄運賃の引き上げあるいはそれを容易にするところの国鉄運賃法の改正には断固反対をせざるを得ない、こういうところでございます。  こういったことを最後に述べさせていただきまして、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。
  161. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 中井洽君。
  162. 中井洽

    ○中井委員 最初にお尋ねをいたします。  四十四年、四十八年、二回にわたって国鉄の立てられました再建計画は失敗をしておる。そして、昭和五十年十二月に思い切った閣議了解事項というものが立てられ、これがまた諸般の情勢でうまくいかずに、一部改正で昭和五十二年の一月に閣議了解事項という形で出された。そして、この了解事項をもとに今回の法改正案が出されたわけであり、国鉄当局におかれましては今後ともこの非常時の国鉄再建に当たってこの閣議了解事項を基本として、変更せずに再建計画というものに取り組んでいかれるのかどうか、この点について最初にお尋ねをいたします。
  163. 高木文雄

    高木説明員 五十年の十二月あるいは本年の一月に定められております閣議了解の考え方は、運賃の改定と政府からの助成国鉄自身の企業努力というものの三つを中心にして何とか再建を図れということでございました。これはなかなか容易な道ではないわけでございます。いろいろな原因が絡まり合って現在のような状態が生み出されておりますので、非常にむずかしい問題があるのでございますけれども、しかしさりとてそれ以外に立て直しの道はないということもまた明らかでございますから、私どもはそこに示されました基本的なラインに従って何とかやっていく、またいかねばならぬというふうに考えております。
  164. 中井洽

    ○中井委員 運輸大臣にお尋ねをいたしますが、この閣議了解事項に基づいて今回出された運賃法定制の緩和ということが国鉄再建の大きな基本的な柱であるとお考えか、あるいはまたいままでの赤字をつくってきた大きな原因の一つがこの運賃法定制度であったとお考えになっておるわけでございますか。
  165. 田村元

    田村国務大臣 やはり国鉄再建への大きな柱の一つになるだろうと思います。  それから、適時適切に運賃値上げができなかったという過去の経緯を見て、やはりある程度の阻害要因としての影響があったというふうに思います。
  166. 中井洽

    ○中井委員 今回の一部改正案の中の冒頭に「当分の間」という字句があるわけであります。この「当分の間」という字句は運輸省は何年という年数をお考えになっておられるのか、あるいは国鉄財政がこういった状態になればまた運賃法定制へ戻るんだ、このようにお考えになってこの字句をお入れになったのかどうか、お尋ねをいたします。
  167. 田村元

    田村国務大臣 「当分の間」といいますのは、昭和五十一年度にたな上げをいたしました債務以外の累積赤字が解消されて次の運賃改定が行われるその間というふうに考えております。
  168. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、この運賃法定制の緩和あるいはいま大臣のお言葉にありましたように、もとへ戻るということであるならば、また国会で審議をして運賃値上げというものを認めていくんだという、運賃法定制に戻るということでございますね。
  169. 田村元

    田村国務大臣 当分の間法定制を緩和していただく。その当分の間が過ぎて、国鉄が正常化した場合には、当然われわれはもとの制度に返るものという考え方に立っておりますが、そのときの国会の御意思によってどのようになるか、それは私にはわかりません。
  170. 中井洽

    ○中井委員 先ほども申し上げましたように、再建計画が何度も失敗に終わっておる。この反省の上に立って、今回の法制の改正というものが出された、あるいはまた国の財政援助というものがなされたと、私どもは理解をしているわけであります。この間の政府国鉄に対する指揮監督の失敗、こういったものはなかったのかどうか、大臣、これについてお答えをいただきたいと思います。
  171. 田村元

    田村国務大臣 指揮監督の失敗がなかったのかと問い詰められると、ちょっと私も答弁に困りますが、過去の経緯は余りよく存じませんが、しかし言えますことは、国鉄再建計画が幾たびか改定を余儀なくされたということは、単に経済事情あるいは社会事情の変化ということのみでなく、政府にも国鉄にも、それは労使を含めてとあえて私は申し上げますが、すべてに責任がなかったとは言いがたいというふうに思います。
  172. 中井洽

    ○中井委員 国鉄総裁どうでございますか。国鉄経営努力の失敗——総裁になられてまだ二年ぐらいでございます。非常にお気の毒なわけでありますが、この再建計画は何度も何度も失敗をしておる。そういったところにおける国鉄自身の責任あるいは経営陣の責任、あるいはその責任から来る反省に立った新しい再建計画、そういったものは一向見られないように私どもは考えるのでありますが、いかがでございますか。
  173. 高木文雄

    高木説明員 しばしば運輸大臣からも御答弁ございますように、これまでの再建計画は非常に長期のものであったわけでございます。その長期のものが崩れました一つの大きな理由は、やはり前提となる諸ファクターが見通しのとおりいかなかった。物価なり賃金なりが非常に予測と違ってしまった。中でも石油ショックの影響によりまして、日本物価水準が変わったことによる影響が非常に大きいわけでございますし、また当時見込んでおりました賃金水準の見通しというものが、非常に大きく狂っておるわけでございます。  そういうことを考えますと、予測が甘かったということは言えるかもしれませんけれども、必ずしも計画そのものがきわめて無責任きわまるものであったとはなかなか言い切れないのではないかと思います。ただ、いま運輸大臣もお触れになりましたように、もう少し早い時期から国鉄自体が経営的感覚と申しますか、そういうことで労使が取り組むような雰囲気が生まれてくればよかったんではないかと思いますが、残念ながらいろいろ労使間のトラブルがむしろ悪い方に進んでいったということも、今日の原因の一つであろうかと思います。  私どもといたしましては、できましたひび割れの状態を何とか早く修復をするということでないと、再建はとてもできない。今度の案は、前二回と比べて全く比較にならない程度に私は現実性のある案だと思っておりますけれども、それにしましても、その場合にいま申しました、労使間のひび割れというようなことを何とか早くもとに戻しませんと、実効が上がらない、大事なポイントだと思って取り組んでおります。
  174. 中井洽

    ○中井委員 国鉄総裁の御答弁にありましたように、私どももいろいろな経済情勢の変動、こういったこともあって、計画自体の失敗ではなかった、こういっことも理解ができるわけでございます。  ここに五十年十二月の、先ほど申し上げました閣議了解事項がございます。いろいろなことが書いてございます。いろいろな項目につきましては、いまお話のございましたように、できなかったあるいは改定できなかった、やむを得ない面もございます。しかし、この基本理念の二番目にある「責任ある経営体制の確立」特にその中に二つございます「責任ある業務遂行体制と厳正な職場規律の確立」「組織及び人事制度全般にわたる抜本的改革」、この二つのことについて国鉄当局は一年間半どのような措置をとられたのか、あるいはどのような実効が上がってきたのか、また各職場でこれをもとにどのように規律ある職場というものは回復をされてきているのか、お話しをいただきたいと思います。
  175. 高木文雄

    高木説明員 国鉄経営の問題につきましても、片一方は経営者、片一方は働く者ということで、対立概念でお互いに事の処理に当たるということでは、国鉄のような非常に大きな規模の組織の場合にはうまく進まないと思います。労使交渉でいろいろな物事が決まってまいりますけれども、その労使交渉ということだけで——労使交渉になりますと、どうしても対立関係、相対する関係になりますので、そういう形だけではなかなかいかないと思います。そういう意味で、普通の労働法上の制度である労使交渉というものとはまた別に、経営についていろいろとお互いに隔意なく話をするような場所をつくろうではないかという提案をいたしておりました。ある程度、そうした雰囲気が生まれつつございます。  ただしかし、何分大きな組織でございますので、東京で話し合いますことができましても、地方の管理局でも同じような形での話し合いができるようになってきたか、さらにはそれぞれの駅なり機関区なりもろもろの現場なりというところで、そういう空気が出てきたかということになりますと、まだまだ皆様の前にこういう状態になりましたということを申し上げる段階にまでは至っていないわけでございます。ある意味では、物事の進展がきわめて遅々としておるということで、歯がゆさを感ずることもあるわけでございますけれども、それはやはり非常に大きな組織でございますし、数年前から非常に深い傷が両者間にあったということから考えまして、そうにわかにあしたから急に物事が変わってくるというわけにもいかないのも無理からぬことかなということで、少しずつ時間をかけてでも、物事が進展をしていくということに大いなる希望と期待を持っております。現在、一年前なら一年前と比べてどういうふうになったか、いい方に向かっているということが言えるかどうかということについては、広く皆さんの御批判にまちたいというふうに考えます。
  176. 中井洽

    ○中井委員 私どもは、日常国鉄あるいは国鉄の駅、またいろいろな週刊誌、新聞等で見られるいまの国鉄経営の姿勢、あるいは最大の問題である、だれもが指摘をしておる、またいま総裁から御答弁のあった労使関係の悪さ、こういったことが直らない限り、また直していこうという当局の厳しい姿勢がない限り、どのような再建案をおつくりになろうと、幾らお金をつぎ込もうと、国鉄再建というものはなかなかむずかしいんじゃないかというふうに考えております。  なるほどおっしゃったように、大変な数の職員でございます。日本一数の多い企業でございます。その労働組合に対して、たとえば閣議了解事項のあった再建案について十分理解が求められておるのか、あるいは今度の運賃法定制の緩和につきましても、中にあります組合の鉄労等はこれを積極的にやらなければ国鉄はやれない、こういうふうに考えておるけれども値上げ絶対反対ばかりを繰り返している組合もある。そういったばらばらの状態で国会がこういったものを審議し、たとえ通したとしたところで、いまの総裁のお話のとおりでございます。現場へ行ったら何にも通じない、こういったことでは私は意味がないと考えるわけであります。また、労働組合の問題については後刻お尋ねをいたしたいと思いますが、再度、国鉄の労使間の健全化に向かっての総裁の決意、このことをお聞かせいただきたいと思います。
  177. 高木文雄

    高木説明員 昨年いろいろな面で御迷惑をおかけいたしました。経営がうまくいきませんために工事を繰り延べなければならないとか、経費を節約するために列車のもろもろのサービスを落とさなければならないとかいうことがございました。  非常に利用者の方々にも、また関係業界の方々にも御迷惑をかけたわけでございますけれども、そのときにやはり、ちょうど昨年のいまごろといいますか、ちょっと過ぎたころにボーナスの支給がおくれるというようなこともございましたし、それから他の公社等に比べましてベースアップの実施の時期が大幅におくれるというようなことがありましたので、やはりおのずと、自分の勤めておる職場である国鉄が非常に経営的に困ってきておるということが職員諸君の生活とどういうふうなつながりがあるかということが、きわめて具体的な形で浸透をしていったわけでございまして、たとえばいまの運動方針というようなことになりますと、なかなかそう簡単な切りかえはむずかしいというような事情がありましょうか、まだ余り大きな変化は見られませんけれども、職員一人一人の気持ちの中、心の中ではこれは大変なことになりつつあるぞということが浸透してき始めたということだけは言えるわけでございまして、何といいましてもやはり職員の諸君が国鉄経営自体についてみずからの問題として心配をするということでなければいけないわけで、そのやっと入り口に立ったというくらいのところかと思います。
  178. 中井洽

    ○中井委員 この点に関して田村運輸大臣がどのようにお考えになっているのか、率直なところをお尋ねしたいと思います。  特に、運輸大臣は前に労働大臣をなさったこともございます。それらの御経歴等から、労働問題について独特のお考えがおありだと私は聞いているわけであります。ひとつざっくばらんなところをお聞かせいただければありがたいと思うのです。
  179. 田村元

    田村国務大臣 国鉄再建経営努力と国の助成運賃値上げだ、公式にはそう言われておりますが、国鉄再建要素というものは、そのシェアから言えば優に五〇%以上が労使間の正常化にある、私はそう信じ切っておるのです。幾ら運賃値上げしても、政府から助成をしても、関連事業収入でかせぎに行っても、労使の正常化がなかったら私は結局りっぱな案でも画餅に帰するという感じでございます。でありますから、私自身も各労働組合の諸君との融和を図るべく今日まで努力をしてまいりましたが、国鉄におかれても、若干時間はかかりましょうけれども、どうぞお互いに理解し合って現実的な労使関係に立ってもらいたいということをお願いいたす次第であります。
  180. 中井洽

    ○中井委員 お答えをいただいたわけでありますが、おっしゃられたように、現実的な関係あるいは協調的な関係、こういったことを求めていく上に一番大事なのは、国鉄当局の組合運動に対する是は是、非は非という明確な態度であろう、このように私は思うわけであります。  現在の国鉄のいわゆる労働組合に対する対策というものを見ておりますと、ややもすると悪い意味での国鉄一家意識が働いて、私どもが腑に落ちないところで、また法を曲げたような形での妥協というものがたびたび行われておる。私は、労働組合運動というのは、運輸大臣にこんなことを申し上げてあれでありますが、とにかく法律によって日本は非常に守られておる、この守られておる法律というものを破った労働組合あるいは組合員に対する国鉄当局の態度というものは非常に不明確である、そのことが職場のいまの緩み切った、たるみ切った空気というものをつくり上げておると理解をいたしております。  私自身の郷里におきましては、人口九万ぐらいのところに三千人以上の国鉄職員の方がおられます。十数年前までの国鉄職員の方々はいまのようなたるみ切った空気の中で仕事をなさっていなかった。ここ数年国鉄当局の姿勢の悪さによる職場規律の乱れ、これはひどいものがあると思います。そういったことに対して大臣も勇気を持って指導をしていただきたいとお願いをする次第でございます。  もう一つ、次に別の面からお尋ねをいたします。  先ほど政府国鉄赤字についての責任ということをお尋ねいたしました。午前中の質疑にもあったと思うのでありますが、国鉄赤字について、大体どこまでを国が責任を持っていくのか、どの程度まで国が税金でめんどうを見ていくのか、こういった限界あるいは規定というものをきちっとされる気というものはございませんか。
  181. 田村元

    田村国務大臣 原則論で申し上げますと、いかに公共性の強い国鉄といえども一個の企業であります。広義の意味における企業であります。でありますから、本来独立採算制ということを指向することは当然であろうと思います。ただし、国鉄負担の限界を超えるそのような公共性の高い負担については国が助成でこれを補っていく、これは当然のことであろうと思います。と同時に、国鉄も全面的に経営改善の必至の努力をなすべきである。いま申し上げたのはいわゆる一般論であります。     〔加藤(六)委員長代理退席、大野委員長着席〕  そこで公共性の高いものは何か、いわゆる公共的なものは何かということになりますと、それは経済事情、社会事情の変化等によって流動的に変化をすることもありましょう。その典型的なものが赤字ローカル線であります。でありますから、私がいま申し上げた原則論的な一般論として申し上げたことを基礎に考えて、これからいろいろと国鉄負担の限界を超える部分は何かということを洗い出して手厚い政府助成をしていくという考え方であります。
  182. 中井洽

    ○中井委員 私が申し上げておりますのは、本年度も四千五百億円ぐらいに上る援助がなされた。来年もこの法案が通ったとしたところで赤字が出る。これに対してまた補助をしていく。この補助をいつまでも少しずつ、まあことしは赤字ローカル線についてつけたとか、新規につけたとかいうふうに毎年毎年繰り返す、そして毎年毎年国会で多いとか少ないという議論をしていく、そういったことではなしに、ここからここまで国がきちっと見る、この分とこの分の赤字は国が見る、残りは全部国鉄ががんばりなさい、こういう形ではっきりと明確にした方が私は国鉄自身も経営努力というものをやっていきやすいというふうに考えておるわけでございます。そういった面について再度御答弁をいただきたいと思います。
  183. 田村元

    田村国務大臣 中井君がいま何を答弁として求めておられるか、非常によくわかります。また、私自身が恐らくその席に着いて質問をすれば、同じことを聞くであろうと思います。でありますから、先ほどお答えした、本来国鉄負担の限界を超える部分、それは公共性のものである。しかし、これに対して、いわゆる一般論として申し上げたわけですが、これに対しては政府助成という形で世話をしていかなければならぬ。しかもその公共的なものということは、これは流動的なものであるということも先ほど申し上げました。四千五百億円が是か非か、私はそれはいまここにきめつけた数字として見ていくことは危険だと思います。今後もっと手厚くしなければならぬかもしれぬ、あるいは国鉄が一生懸命にかせいだことによって減らしてよい時期が来るかもしれぬ、まあ余り来ぬかもしれませんが、来るかもしれない。でありますから、いまここに制度化してきちっときめつけていくという必要はないのではないか、それはわれわれ運輸省として心の持ち方であろう、財政当局の心の持ち方であろう、このように思います。
  184. 中井洽

    ○中井委員 それでは、この法案に見られますように、赤字であるならば物価変動指数プラス一五%値上げをしていく、こういうことが盛られているわけでありますが、このようなことが果たして毎年毎年実行できていくのか、あるいは運輸省として物価変動指数プラス一五%のアップというものを現実にお認めになっていけるのかどうか、私はどうもできないのじゃないかと考えているわけであります。  去年、五〇%の値上げをした、このことによって旅客の国鉄離れというものが起こって、お考えになっていたよりもずいぶん少ない収入の増しか見込めなかった。今後国鉄の、先ほどからお話にございましたサービスの悪さあるいは打ち続く違法なストライキ、これに対する当局の、まあ言葉が悪いですけれども全く無能と言っていいような対処の仕方、あるいは他の交通機関の発達国鉄値上げに相対して他の交通機関の運賃というものが安くなるわけでありますから、そういったことを考えるとますます旅客のあるいは貨物の国鉄離れというものは起こってくると思うのであります。  こういうことを考えますと、どうしてもやろうと思えば、国鉄が他の交通機関と競争力を持ったままこの値上げを認めていこうと思えば、他の交通機関の値上げというものをやっていく以外にない。そうすると、先ほどから経企庁の方やいろいろな方が、五〇%の値上げをして〇・五%の物価指数に対する影響だ、こうおっしゃるけれども国鉄値上げ、それに連動して他の交通機関を上げていかざるを得ないと考えると、非常にインフレというものを招いていくのじゃないか。したがって、逆に言えばこの毎年の値上げというものはやっていけないというふうに考えるわけであります。  大臣、どうでございますか、こういった値上げが本当に毎年できていけるものだとお考えでございますか。
  185. 田村元

    田村国務大臣 先ほども他の委員の方に答弁申し上げたとおり、連動的な値上げを認める意思は毛頭ございません。むしろこれは阻止しなければなりません。  それから、国鉄と運輸省が協議をしてスケジュールをつくりました。そのスケジュールは今日運輸省も国鉄もともにこれを実行しようといたしておるわけであります。しかしながら、いま中井君がおっしゃったようないろいろな事情も出てくるでありましょう。政治は、この運輸省と国鉄が、つまり役人がつくったスケジュールをときにチェックする力を持っておるし、その義務があるわけであります。でありますから、私は政治がこれをチェックすることは多分にあり得るということをお答えしておきたいと思います。
  186. 中井洽

    ○中井委員 それでは総裁にお尋ねをいたしますが、私どもが、実現不可能な値上げをもとにしたこの計画、実現不可能だと考えておる数字、これをもとにした法改正、こういったことで昭和五十四年度までに果たして単年度収支が均衡する、またさせられるとお考えでございますか。
  187. 高木文雄

    高木説明員 非常にむずかしい問題であると思います。そう簡単に、単年度収支が均衡するようなことがすらすらと進むようには考えておりません。それにはいろいろと工夫をこらしていかなければいけない。少しでも多くの旅客に乗っていただく、多くの荷物を運ばせてもらうということによって増収ということを考えていかなければならないわけでございまして、ただいまお願いしております案も、物価変動プラス一五%といいましても、それはタリフのうちの一番最高の限度を言っておるわけでございまして、それだけ上げるということを予定をしておるわけではないわけでございます。  基本において、やはりお客さんから乗っていただくような雰囲気をまずつくることが基本でございまして、この運賃改定というよりは、むしろそっちの方がうまくいくかどうかが五十四年度までに単年度収支ができるかできないかの分かれ目といいますか、ポイントであろうと思いまして、決して運賃改定を行うことによって均衡ができるとは考えておらないわけでございます。
  188. 中井洽

    ○中井委員 私どもは、この運賃法定制の緩和というものが、国鉄再建の本当に最後のような案になってくるのではないかという感じを持っているわけであります。この運賃法定制を緩和をするということは、国鉄が本当に公社として独立採算、自立経営をやっていく第一歩だと思うのであります。  いま国鉄総裁のお答えにございました、値上げがちゃんといくよりか、お客さんが乗ってくれるかあるいは貨物がちゃんと国鉄へ来るか、こういったことの方が非常に心配である、こういうことでございましたけれども、それであるならば、ますます国鉄経営努力の姿勢あるいは労使関係の健全化というものが重要になってくると私は思うわけであります。  私ども国鉄運賃法定制の緩和ということについて理解をする、認めていくということについてはやぶさかではありません。しかしその前提に、やはり経営の姿勢、それから労使関係の健全化というものをどうしてもやってもらわなければならないと思うわけであります。  特に、この再建案といいますか改正案を見ますと、国の財政に対する要求あるいは利用者負担の増額というもので、非常に厳しく国民の方に国鉄側から国鉄をどうしてくれるのだという形で投げかけておる。しかし、朝の議論にもございましたように、国鉄内部に対して、国鉄経営陣に対する厳しさというものをどこへ求めていくのか、どのようにお考えになっているのか、再度国鉄総裁のお考えをお尋ねしたいと思います。
  189. 高木文雄

    高木説明員 いずれにいたしましても、非常に大きな組織でございまして、そして多様多種類の職場に分かれておりまして、それが足並みがそろわないと動かない、たとえば運転士さんと車掌さんとで動くというわけにはいかないわけでございます。信号だとかあるいは工場だとかいろいろなところがどこか調子が外れますとうまく動かないわけでございます。それがどの職場も一様に緊張感を一段と取り戻してくるということにならなければいけないわけでございまして、その辺に普通の企業の場合とはまた違った悩みがあるわけでございますが、何とかそれを低い水準のところを引き上げていく、高い水準のところはさらに効率を上げていくような雰囲気をつくり上げるということが必要でございまして、そういった気分はだんだん浸透しつつありますけれども、いままでの慣例がどうだとかなんとかいうことがいろいろあるわけでございますので、それを、大変回り道のようではございますが、一つ一つほぐしていかなければならない、そういった道を、きわめて遅々としたもののようにごらんになりましょうかもしれませんが、それをじみちに進めていく以外にはないというふうに考えておるわけでございます。
  190. 中井洽

    ○中井委員 大変お答えいただきにくい質問だと思うのでありますが、運輸省におきましては田村運輸大臣という官僚出身でない、しかも私どもは同県人でございまして、非常にユニークな勇気のある政治家でございます。また高木国鉄総裁大蔵省出身総裁という形で、国民全体はいまの国鉄に対してこのお二人のコンビであるならば、国鉄にとって非常に必要な新しい考え、いま総裁がおっしゃった従来の慣行、国鉄当局では打ち破れない従来の慣行というものをこの二人なら打ち破ってやってくれるのじゃないかという期待があるわけであります。私どもも期待をいたしているわけでございます。総裁自身あるいは運輸大臣自身、新聞等で見ますと、まあまあ先ほどのグリーン車の問題とかあるいは新しい血を国鉄に入れるとか、いろいろな形で試みをなさっておられると思います。  国鉄総裁にいやなことをお尋ねいたしますが、いままで国鉄総裁がいろいろ国鉄をこうしようどうしようというふうにお考えになりお命じになったことが、どうでございますか、当局の手で柔軟にスムーズに実行されているとお考えでございますか。
  191. 高木文雄

    高木説明員 私どもが思いつきでいろいろ申しましてもいけないわけでございまして、それが国鉄の中に血となり肉となって消化されていかなければいけないわけでございますので、私は余り何かずばっと決めてそれを押しつけるというかっこうでなしに、問題を投げかけながら進めていきたいと思っております。それなりに時間がかかっているわけでございますが、しかし私はいま一年間顧みまして、決して不愉快な思い出を持ったことはなかったわけでございまして、幹部はもちろん各現場の責任者等もそれぞれ大いにやる気を起こしておる、しかしお互いになかなか思うようにいかないというような状態を毎日繰り返しておるわけでございますが、決してこれは希望が持てない状態ではないというふうに見ております。
  192. 中井洽

    ○中井委員 先ほどの中川さんの御質問の中にありました運輸大臣のグリーン車の料金の値下げ、あの問題が出てからずいぶん時間がたつわけであります。こういった問題が出たら、積極的に国鉄総裁あるいは国鉄当局がお進めになるというようなこともやはり私は必要かと思います。この点についてお答えをお願いいたします。
  193. 高木文雄

    高木説明員 私自身もグリーン車がいま非常にすいておりますことは気になっておったわけでございます。また運輸大臣からいろいろサゼスチョンをいただいておるわけでございまして、いまそれをいろいろ検討いたしておりますが、新幹線というものが非常に国鉄の看板でございますだけに新幹線のグリーン車が大変すいておるということが皆さんの目についておりまして、これを何とかしたらどうだ、また東京−大阪間の飛行機との競争関係から見てもおかしいではないかという御指摘を受けておるわけでございます。ただ、グリーン車は新幹線だけで走っておるわけではないわけでございまして、他の地域にも、北海道から九州までグリーン車という制度はございまして、そしてそれが一律に一様に非常に国鉄離れになっているかと申しますとそうでもないというような事態がございまして、いまそういったことを少し分析をしておるわけでございまして、大臣からお声がかかりましてから大変時間がかかっておるのでございますけれども、それはそれなりに問題をほうり出してあるわけではないわけで、いろいろどうもああも考えこうも考えということでおくれておるわけでございまして、どうしたらよろしいか、仮にそこらを値下げという方向で改定するにしましてもどういうふうな組み合わせにしたらよろしいかということをいまいろいろ練っておるところでございまして、そのうちに、そう言っているうちにも赤字がふえてまいるわけでございますから、決してじんぜん日を送るつもりはありませんので、もうしばらく御猶予をいただきたいと思っております。
  194. 中井洽

    ○中井委員 わかりました。  問題は、私が申し上げたかったのは、結局、いろいろないいアイデアが出る、また新しい感覚の人が入ってくる、そういった中でそれらのいい考えがスムーズに反映をされていくような国鉄経営体制、あるいは国鉄総裁あるいは国民全体あるいは国会で決められたこと、いろいろな再建案がスムーズに国鉄四十万職員の中にまでしみわたっていくような体制あるいは健全な労使関係、こういったものをつくり上げる御努力をぜひお願いをしていただきたい。  私どもは、今回の改正案そのものにはいろいろとまだ問題がありますが、運賃法定制の緩和ということにつきましてはそういった条件がつくならばこれを認めていきたいと考えているわけであります。積極的な労使関係の健全化にぜひ御努力をいただいて、閣議了解事項の中にもございます。私質問したかったのでありますが時間がなかったもので考えだけを申し上げますが、五万人の合理化案、これは国鉄にとって私は一つの救いであると思います。いろいろな会社、民間企業等が合理化あるいは倒産をしかかっているというときに首切り問題が出てくる。これは非常にいやなことである。しかし国鉄においては年齢構成から考えて、ちゃんとやっていけば自然に五年くらいの間に五万人以上の人が減るわけである。この減る五万人の合理化を、後どのように労働力の合理的な再配置をやっていくか、このことが私は国鉄再建の一つの大きな要素だと思うのであります。しかしいまのような労使関係あるいは過去数年の間に種々出された合理化計画が、地域地域によって達成されたり達成されないといったような中堅幹部あるいは当局の姿勢、こういったものではせっかくスムーズに合理化、人員の再配置というものがやられる要素がありながら、またどろ沼に突入をしてしまう。このことを心配するものでございます。ぜひとも健全な労使関係の確立のために当局の厳しい姿勢、そして積極的な行動をお願い申し上げるわけであります。  最後に、きのう国鉄の仲裁裁定というものが出ました。この完全実施ということが大変注目を浴びているわけでありますが、量りますと一部には何か十六条に基づいて国会付議にしようという動きもあるようであります。運輸大臣、この点について完全実施をする、させるというお言葉、御答弁をいただきたいと思うのでございますが、いかがでございますか。
  195. 田村元

    田村国務大臣 完全実施をすることにつきましては私は異議がありません。十六条の問題についてはまだそこまで考えておりません。
  196. 中井洽

    ○中井委員 財源的に不足あるいはそういったことで国会に付議をされるということのないように、特に国鉄の中にはこの再建案、あるいは先ほどから国鉄総裁のお話にございましたけれども、まじめにやろうとする空気あるいはまじめに現実にやっておる労働組合もあるわけでございます。こういった人たちの生活あるいは意欲というものを考えて、ぜひ完全実施されますように重ねてお願いをいたしまして、質問を終わらしていただきます。
  197. 大野明

    大野委員長 荒木宏君。
  198. 荒木宏

    ○荒木委員 二、三お尋ねをいたしますが、国鉄が大変な赤字ということで、特に貨物部門の赤字が非常に大きい、こういうことですが、輸送基盤に対する投資といいますか、過去、将来にわたって大いに検討すべき問題があるのではないか。経済企画庁昭和五十年代前期経済計画によりますと、四十五年から四十九年まで道路には十一兆九千億、約十二兆円の財政投資、鉄道が四兆四千億。これから五年間で道路が十九兆五千億、鉄道が八兆円、大体二対一ということです。  もちろん道路と一口に言いましても生活道路もありますし、鉄道といいましても民鉄もあるわけですから、全体の数字だけでもちろん一概に言うことはできませんし、それにまた赤字原因として先ほど総裁も御指摘になったように物流経路が、産業構造の変化に伴って輸出がウエートが非常に大きくなった、あるいは輸入が大きくなった、したがって、船の方に大分流れてしまった、こういうことはもちろんあると思うのです。  しかし、こうした輸送基盤に対する投資態度に問題がありはしないか。自動車輸送の方に基盤整備ということでどんどん金をつぎ込む、そこの手当てをうんとよくする。普通の商売でも、そうなればお客が寄ってくるというたとえでありますので、国鉄の大赤字、貨物部門が特に大きいということで、トラック輸送とそれから貨車輸送、バス輸送とそれから客車輸送、ともに運輸大臣の所管であらわれるわけなんで、こうした輸送基盤の投資についての問題点、これについての御意見を伺いたいと思います。
  199. 田村元

    田村国務大臣 確かに自動車は私どもの所管でありますけれども、道路ということになりますと私どもとはちょっと関係がありませんので、具体的に私から論評することは避けたいと考えます。  しかし、いずれにいたしましても、国鉄がモータリゼーション等の発展のために非常に圧迫を受けておることは事実であります。四十六年答申の、言うなれば総合交通体系というものからながめましても、まだまだ国鉄の果たす役割りというものは非常に有意義なものとしてガイドライン的に示されておるわけであります。その意味において、私どもとしてはバランスのとれた社会資本投資ということをお願いを申し上げたい、このように思います。
  200. 荒木宏

    ○荒木委員 人もある、設備もある、輸送の力もある、しかし宙に浮いて輸送機関だけが働くわけじゃありませんから、もちろん関連の基盤投資ということが非常に大きな影響があると思うのですね。所管の大臣のお立場としてもいまのような御所見なんですけれども、そうした輸送基盤投資も含めて全体の公共投資、その中での財政の占める役割り、企画庁で総合調整をしておられるわけですが、長官は別の委員会の関係でお出ましになっておられないのですが、企画庁の方から、政府委員が見えていると思いますので、いま運輸大臣からも指摘があったようなモータリゼーションの被害を受けているといいますか、そうしたことについて今後の経済計画としてその点をどのように是正しようとしておられるか。資源有限時代、そして節約、効用をさらに伸ばしていくということが言われておるわけですけれども、宝の持ち腐れと言えばちょっとたとえとして語弊がありますが、そうした政治情勢でありますから、ひとつ企画庁の方から、いまの大臣答弁を受けた今後の展望、方針、政策について伺いたいと思います。
  201. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 戦後、特に高度成長期におきましては、交通需要というものが道路を中心とした自動車に集中されましたことは事実でございまして、交通需要特性というものもそういう背景にあるかと思いまけすれども、そういうことで道路が非常に整備されましたにつれて自動車需要がふえてまいりました。そのことがいま先生の御指摘の問題の所在かと思いますけれども経済計画におきましては、今後の資源の制約の問題、あるいは供給サイドにおきます諸条件の変化ということを考えまして、できるだけ公共交通機関へ移行する方向で物を考えていきたいというように考えておる次第でございます。  したがいまして、道路交通につきましては基本計画よりもやや低目の道路投資になっておるかと思いますが、そういったことを踏まえまして私どもはできる限り需要特性と供給特性というものの関連の中から一番効率のいい交通体制を見出すような投資を考えていくということで、御指摘のございましたように、百兆の中で三十一兆ぐらいの交通整備及びその中におきます道路交通、それから鉄道、航空の分担関係を決めた上で設備投資を構想しているわけでございます。
  202. 荒木宏

    ○荒木委員 一般的には局長の言われたとおりかと思うのですけれども、しかし中身を見ますと余り変わってないんじゃないですか。十九兆五千億、これは丸いアバウトの数字ですから、それだけでどうこうということはあれですけれども、それと八兆でしょう。だから、いま大臣言われたように、いままでの点で問題ありとすれば、だれが見てもなるほどその点が検討されて姿が変わったとわかるようにしなければどうもならぬと思うのですが、いままでの五年が大体五兆弱と十兆余りですか。出ている計画ではこれから八兆と十九兆というんですから、大して変わりはせぬと思うのです。ですからその点は、長官お見えになっていないのであれですが、局長、もっとはっきりわかるようなことでひとつ腰を据えてやるということでなければだめだと私は思うのですが、どうですか。
  203. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 確かに十九兆の道路投資が八兆に比べて大き過ぎるという御批判もあるかもしれませんけれども、もしこのまま放置いたしますれば、さらに道路交通というものに大きなシェアを持たせなければいかぬというような状態もございまして、そこは大量交通機関への移行というものをある程度考えたということでございます。  もう少しはっきり言えと、こういうお話かもしれませんけれども、現在の交通需要特性というもの——需要特性そのものにつきましても相当考慮する必要もございますので、私たちなりの考え方のもとでそういうような分担関係を決めたということで御理解をいただきたいと存じます。
  204. 荒木宏

    ○荒木委員 それぞれ需給の特性ということの検討はもちろん必要でしょうね。また、ドラスチックな転換がどういう影響を及ぼすかということもまたしさいに見なければならぬと思いますが、しかし、言われるように、確かにレールと道という、それだけではないと思うのです。ないと思いますが、全体の交通体系といいますか、そういう総合的な判断ということが必要だと思います。しかし、出ているところでは変わってない。そればかりか、全体の体系としてほかの要素もひとつ加味するならば、私は運輸省の方の従来の扱い姿勢といいますか、さらに問題があると思います。というのは、道の方がモータリゼーションで、産業道路とかそういうことが整備される、その上に、トラック輸送では御案内のように過積み問題あるいは労働強化の問題、運賃ダンピングの問題、もうすでに本院でも具体的なケースも取り上げられたとおりでありますが、この基盤はうんとこちらへ重点を置いていくわ、その上でアウトロー的な輸送実態がやられておって、それを野放し——野放しというとあるいは言い過ぎかもしれませんが、十分な実態把握とチェックがやれらなければますます物流秩序は変形していくのじゃないでしょうか。  大臣にお伺いしたいのですが、こうした長距離大規模トラック輸送における過積みあるいは労働強化、さらには運賃ダンピング、低賃金、こういう問題について実態を把握していらっしゃるかどうか、その点をひとつ伺いたいと思います。
  205. 田村元

    田村国務大臣 過積み等の実態につきまして、いま自動車局長が来ておりませんので具体的なことを私から申し上げるほどの知識をまだ持っておりませんが、実は自動車局所管の事項につきましてはいまおっしゃったようなことが一番大きな問題の一つでございます。でありますので、相当実態を把握しておると思いますが、過積み等につきましても監理官制度を設けたり、あるいは物流問題について、特にトラック関係においてはダンピングその他いろいろと真剣に取り組んでおることは事実でございます。
  206. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣、いま申し上げましたのは過積みだけじゃございませんで、低賃金、ダンピング、それから過積み、労働強化とあります。これひとつ実態の調査されておる資料をお出しをいただきたい。そしてそれに対する効果のある規制措置、対策もあわせてお示しをいただきたい。これは後刻でも結構でございます。それをひとつお約束いただきたいと思います。
  207. 田村元

    田村国務大臣 早速自動車局長に言って、当委員会にお出しするようにいたします。
  208. 荒木宏

    ○荒木委員 私が聞きましたところでは、十分な実情の把握がなされていない、こういう報告を聞いておるのです。  たとえば、トラック協会でも賃金については調査をいたしておりまして、一般の事務職と比べますと、大体二十五歳ぐらいは同じくらいの平均なんですけれども、三十五歳、四十歳以上になると、一般の事務職に比べても二、三割方大型運転手の平均給与がダウンしているということですから、そうした調査をきちっとつかめば把握はできるわけでありまして、そのことが十分につかまれない、それに対する規制がきちっとやられぬ、これらはいずれも貨物部門で赤字が生じたそれなりの大きな原因の一つだと思いますが、それに対する実態調査、規制がやられぬままに運賃は上がっていく、私はここに大きな問題があると思うのです。  いま申しました点とそれから運賃との関連を、大臣の立場として十分に検討をするということをひとつお約束いただきたい。その原因の方を十分やらぬで運賃値上げだというのじゃとても国民承知できぬと思うのです。
  209. 住田正二

    住田政府委員 いま御指摘になりました問題は、運輸省だけで処理できる問題ももちろんございますけれども、同時に警察関係あるいは労働基準監督局等と十分連絡した上で対処しなければならない問題であろうかと思います。したがいまして、先ほど大臣から申し上げましたように、本年度主な陸運局あるいは陸運事務所に貨物輸送監理官というものを設けまして、関係各省と十分協議をして、過積みの問題であるとか、あるいは過酷な労働条件の問題であるとか、あるいは白トラックの営業類似行為の取り締まりであるとか、あるいは運賃ダンピングの問題、そういう問題について対策を論ずるということにいたしているわけでございます。  こういうトラックの行為が国鉄の貨物輸送にどの程度大きな影響を与えているかということについてはなかなか判断のむずかしい問題であるわけでございますけれども、大まかに申し上げまして、現在日本にありますトラックのうち、国鉄と競争関係に立ち縛るトラックというのは全体の五%、いまトラック全体で千百万台くらいあると思いますが、まあ十トン以上のトラックということになりますと四、五十万台程度ではないかと思います。国鉄の貨物輸送というのは、当然両端の輸送というものはトラックに依存しなければならないわけでございまして、そういう点から言いますと、現在のトラック全部が国鉄の貨物輸送と競争関係に立っているとは言えないのではないか。もちろん一部には競争関係に立っているものもあるわけでございます。ただ、一般的に申し上げまして、国鉄輸送というのは大量輸送でございます。それに対しましてトラック等は少量輸送でございます。したがいまして、その間に輸送分野というものがあるわけでございまして、単に運賃だけでその間の調整ができるということではなくて、やはりそれぞれの分野を守っていくということが必要であろうかと思います。  したがいまして、先ほど総裁がお話し申し上げておりますように、トラックとの関係については、競争ということよりも提携をしていくという方向で対処していく方が望ましいのではないかと思います。先ほどドイツのお話も出ておりますが、レーバー・プランでもそういう鉄道とトラックとの連帯輸送ということに重点を置いた貨物輸送対策が講ぜられているわけでございまして、単に鉄道と自動車が競争関係、ライバル関係にあるというような立場で物を考えていくよりも、いま申し上げましたような方向で処理する方が国鉄の貨物輸送の増加につながる、さように考えておるわけでございます。
  210. 荒木宏

    ○荒木委員 私はそういう答弁を求めているんじゃないのです。何も一〇〇%なんて言っていないですよ。しかし、昨年に続いて今年もまた上げようという、法定制までいじろうという、そういうときなんですから、だから関連があるとしたら、するべきことはきちっとけじめをつけなければいかぬじゃないですか、こういうことで言っているわけで、政治姿勢の問題としても大臣は特に御留意をいただきたいと思うのです。  そういった財政資金の供給がモータリゼーションに比べて少ない、勢いそうすると借金に頼らざるを得なくなってくる、巨額の利子の支払いということが経営を圧迫をする、こういうこともすでに指摘をされておりますが、さらに利息の支払いの中でまた格差を生ずるというようなことが起こってきてはいないか。鉄道債券に例をとってお尋ねをいたしますが、四千億円余りと言われる鉄道債券のうちで、利用債はいま利率が、時期によって違いますが、当初、五十年でしたか、八・五%、ところが銀行その他が引き受けると号債の方は九・二%。この利用債、たとえば自治体などは御存じのように地方財政危機で手元が大変苦しいわけですね。そこに債券を安い利子で、どうですかと言う。一方金融機関の方は、これは都市銀行は不況の中でもふところが楽だというのは事実申し上げるまでもないと思うのですが、そこは九・二%という高い利息になっている。ますますしわ寄せがいく中で、さらに自治体を圧迫し、一方金融機関の方は優遇される、こういうことになっているのではないかと思うのです。これは総裁、いかがですか。
  211. 高木文雄

    高木説明員 ちょっと申しわけございませんが、この債券の金利体系の問題について私ども知識が十分でございませんので、不確かなお答えをしてもいけませんので、恐縮ですが答弁を差し控えさしていただきます。
  212. 荒木宏

    ○荒木委員 それでは後刻きちっとした報告をひとつしていただきたいと思います。  そうした利息の支払いは四千億余りにも上っておりますし、経営圧迫の大きな原因になっているわけです。そのことが国鉄の職場では合理化運賃値上げということになっている。そればかりか、こうした債券の金利体系の上でもさらに地方自治体や何かに圧迫を及ぼしている。鉄道債券は自治体の方が持たされていますけれども、それを引き続いて持っているところはいまないでしょう。長崎本線でも横浜線でも湖西線でも草津線でも、みんな自治体はやむなく抱いているけれども、途端にもう一遍売却しなければならぬ。そこでまた損がある。小さい自治体は取引の金融機関が小さいですから、資金コストが高くて、そこでもまた小さいところ、弱いところほどよけい損がいくような形になっている。ですから、その実態の報告とあわせて是正方の検討、この点を、後で結構ですから、総裁ひとつお約束いただきたいと思うのです。よろしゅうございますね。
  213. 高木文雄

    高木説明員 よく私も勉強いたしまして、資料その他をもってお答えいたします。
  214. 荒木宏

    ○荒木委員 本来負担させるべきことではないのじゃないか、こういうように私は思うのですよ。ですから、そういう点を踏まえてひとつ御検討願いたいと思います。  関連しまして、国鉄経理の問題ですけれども、同時に減価償却費がまた約四千億余り、こういうように言われておりますが、減価償却のやり方についてはいろいろ本院でも論議を重ねられてきました。私は、そのうち一つ耐用年数の問題をお聞きしたいと思うのですけれども、車両にしても機関車にしても、時代の推移とともに、一つは安全性、これは当然だと思います。それから快適であるというようなこと、同時に丈夫で長もちというのも大事なことではないでしょうか。技術が進めば、改善されるわけですから、機械、設備の寿命が普通は延びると私は思うのです。ところが、車両並びに機関車は、昭和三十五年の耐用年数は二十年でしょう。その後縮めてきていますね。寿命が縮まってきている。これは一体どういうわけだろうか。また、諸外国に比べて、日本の車両や機関車は大体法律上の耐用年数、寿命が短いのではないか。資源有限時代と言って物の節約とかいろんなことを言われているときに、耐用年数を縮めて使い捨てをやっていって減価償却費をふくらませて、赤字でございます。これはちょっとうなずけぬと思うのですが、この点どなたか御答弁をいただきたいと思います。
  215. 馬渡一眞

    ○馬渡説明員 お答えいたします。  実は、国鉄の償却制度につきましては、確かにおっしゃるとおり何回かの改正を経て現在の制度に至っているわけでございまして、耐用年数についての制度を改正いたしましたのは、昭和四十年に行われました制度が現在そのまま行われているわけでございます。当時、私どもはやはりできるだけ法人税法にのっとった形で整理をしてまいりたいということで、しかもこれにつきましては部外の学識経験ある方々の委員会をもって研究をしていただいて、その御答弁を受けて私ども制度を変えたということでございまして、現行の中で法人税法にのっとっておらない年数で決められておりますのは、新幹線の電車が、うちだけのものでございますので、これが特に十年と決まっておりますものと、それからディーゼル機関車は、逆に、一般の場合は十一年となっておりますが、うちのディーゼル機関車がほかの普通の民間にありますものよりむしろ規模が大きいということで十一年が十八年になっているということ以外は、法人税法にのっとった姿での耐用年数になっております。
  216. 荒木宏

    ○荒木委員 私はそういうことをお伺いしているのじゃないのです。それで決まっていることに問題がありやしないか、こう聞いているのですよ。現に航空機の場合、国際線で六年とか七年とか言っていたでしょう。同じ飛行機が同じ空を飛ぶのに何でルフトハンザやパンアメリカンやあるいはノースウエストとそんなに違うのか。向こうは法律上十四年も十五年も使っているじゃないか。それを言って、いやなるほどそのとおりですといって今度延びることになったわけですよ。だから、空がそうならレールの上が同じように考えられないはずはない。現に一遍比べてみたらどうですか、こう言うのです。自動車の例で言いますと、運輸省所管に自動車もあると思うのですが、日本は六・五年ですよ。アメリカは十一年、西ドイツは九・五年でしょう。ただでさえ資源消費国で資源有限と言っておきながら、同じ自動車で何で寿命が半分だということになるのか。それほどもろい車しかつくれぬぐらいの技術しか日本にはないのか、私はそういう立場から言っておるわけです。構築物、機械、その他につきましても、OECDとの比較によりますと、日本は建物が三十六年でありますが、アメリカは五十年です。西ドイツも五十年。機械装置も一緒で、十一・七年が、アメリカ十五年から二十二年、西ドイツ十九年から三十四年になっているのです。実際の使用から見ましても、東京駅は大正三年でしょう。もう六十年以上もたっている。六十二年たっている。ところが法定の耐用年数は四十五年でしょう。まああれはいろんな歴史的な意味もありますからね、使用期間、保存についてはまた別の観点があるかもしれませんが、そうした意味で耐用年数の見直しを、国際比較も含めて、その後の技術的な進歩も含めて、検討されたらどうですか。そのことが、いまの償却費が四千億にもなっている、それをカバーすることにもなります。一例として申し上げておるのですが、運輸大臣、いかがでございますか。
  217. 田村元

    田村国務大臣 一度十分これを検討してみたいと思います。
  218. 荒木宏

    ○荒木委員 限られた時間でもうあと余りありませんけれども、最後に輸送サービスの問題で一つ伺っておきたいのです。  大都市近郊の通勤路線につきましては混雑率が大変な状態になっておって、これは、監査報告書にも出ておりますし、私も質疑の中で過去にお尋ねしたこともあるわけですけれども、その点について特段の御努力をひとつ要請をしたい。運賃値上げについては申すまでもなく国民感情としては反対であります。われわれ政策としても、そうしたことについては国民に犠牲を負担させずに再建をしていくということで、すでに数年前に五項目の再建案というものを出しました。昨年も政策を発表したことは御承知のとおりだと思うのですが、サービスの改善が十分やられぬままで負担だけは重くなっていくというのでは、とてもじゃないが国民国鉄として信頼されるようなことにはならぬと私は思います。  サービスの一つの例として冷房化率、これは資料をいただいたのでありますが、いまだに三〇%以下というところが、東京地区では、常磐線が一〇%、それから中央線二二%、関西の方では、関西線一六%、阪和線二〇%。一方、一〇〇%のところもあるというのですが、特にこうした低いところは——いま冷房の問題だけを例に言いましたけれども、混雑率の緩和の問題、輸送力増強の問題、そして冷房化の早期重点的な促進ということを含めて、これはひとつ総裁から、国民——国民というのはその関係の都市勤労者が納得をするような決意と展望を伺いたいと思います。
  219. 高木文雄

    高木説明員 通勤対策については、ときどき考え方が変わっておった時代もございますけれども、現在は相当ウエートを置いて促進してまいりたいと考えております。ただ、現実問題としては、都市部の路線を拡幅するというのは大変経費がかかりまして、もう初めから採算には合わないということになりますので、とかくヘジテートする傾向があったわけでございますが、五十二年度から新たに建設費の三割、補助金をいただけるということになりましたので、そうなれば比較的はずみをつけてやっていけると思います。ただ、一方におきましては用地問題等がございまして、なかなか思うようには進んでおらない実態でございますが、努力をしてまいりたい。  それからいま車両の問題でございますが、車両につきましては冷房の例をお挙げになりましたが、もともと車両の更新がいささかおくれぎみになっておるわけでございまして、これもどうも資金が思うに任せないというところから、車両の更新がおくれぎみになっております。それから冷房というお話がございましたが、この冷房の場合には新製車をつくりまして、それは当然冷房車両になっておりますので、これをどんどん入れていくという方法と、そこまでいかないで現在の車両に冷房設備を備える場合とあるわけでございますが、後者の方につきましては一つにはかなり廃棄しなければならぬような旧型の車を使っております部分について、いまここで追加投資をすることがいいか悪いかということを議論したりしておりますものですから、十分に思うように進んでおりません。しかしこれはどうしても都市におきます通勤対策は、冒頭にも申しましたように非常に大きなウエートを置いて考えておりますので、気持ちといたしましてはそれを進めてまいりたい。また徐々にではありますが実績も改善の跡をたどっております。御激励でございますから、その方向で考えたいと思います。
  220. 荒木宏

    ○荒木委員 ことしは特に暑い夏だと言われておるわけですから、その点強く要望して質問を終わります。
  221. 大野明

    大野委員長 大成正雄君。
  222. 大成正雄

    ○大成委員 まず、本日は、国鉄経営問題で審査の機会を拡大して私たちにもその発言の機会を与えていただきましたことに対しまして、委員長に感謝を申し上げる次第でございます。  最後でございますので、なおかつ時間の制約もありますから端的に承りますが、よろしくお願いを申し上げます。  まず最初に、今次春闘の仲裁裁定の扱いについて承りたいと思うわけでありますが、昨日九・一二%という裁定が出されたわけであります。これに対しまして、これを完全実施をするといたしますと、必要財源といたしまして千百五十九億、不足財源として二百六十四億ということが伝えられておるわけでございますが、この一九%の運賃値上げを見込んだ予算で見るときと、この運賃値上げが見込まれなかった場合の予算との、いわゆる必要財源と不足財源との数字の違いは当然出てくると思うのでありますが、まずその点を承りたいと存じます。  同時に、先ほどの大臣の御答弁では、完全実施はしたい、しかしながら公労法十六条の取り扱いについてはそこまで考えてはおらない、こういう御答弁であったわけでありますが、そこまで考えないで完全実施をするとするならば、どこまで考えて完全実施をされようとしておられるのかを承りたいと思います。
  223. 田村元

    田村国務大臣 まず最後のところから申し上げますと、そこまで考えていないというのは、日本語というのはむずかしいものでありまして、いまのところそこまで考えておるという段階ではない、こういう意味で、タイムの関係でございますから、内容じゃありませんから、誤解のないように願いたいと思います。  公労法十六条の取り扱いをどうするか。これからいろいろと周囲の事情を勘案しながら関係省庁と相談をしなければならぬ、こういう意味でございます。  今回の仲裁裁定によります国鉄の所要財源、いま御指摘のあったように千百五十九億円であります。当初予算で給与改善費を八百九十五億円見込んでおりますから、差し引き不足額は二百六十四億円、御指摘のとおりであります。  そこで五十二年度の国鉄予算は九月から一九%の運賃改定を行うことを前提として編成されておることも事実であります。またこのような運賃改定は、現在提案しております国有鉄道運賃法の一部改正法案が成立して初めて可能になるということも事実であります。したがいまして、この法案が成立しない場合は、運賃改定による増収予定額の約千八百八十億円、それに地方交通線の特別貸付金二百十四億円、合わせまして二千九十四億円の収入欠陥が生じます。そこで仲裁裁定につきましては、昭和三十二年以来完全実施してきているところでもございます。今後ともそのために全力を尽くすというわれわれの方針に変わりはございません。しかしながら、今年度の国鉄の仲裁裁定につきましては、いま申し上げたような特殊の事情がございますので、これから冒頭申したように、関係閣僚レベルで慎重に相談をいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  224. 大成正雄

    ○大成委員 ごもっともだと思うのですが、ただタイミングの点については、またその取り扱いについては、ただいま大臣の御答弁で結構だと思うのですが、内容的にはもうすでに結論は出ておるのじゃないだろうか。十日間以内に結論は出さなければいけないと思いますし、また今年度の予算で一兆八千五百六十四億円という人件費予算になっておりますが、定昇二%、ベア五%という積算しかしておらないわけでありますから、予算上、資金上の当然制約を受けることだけは事実でありまして、公労法十六条の手続をとらないで完全実施が可能かどうか、その内容的な考え方だけ承りたいと思います。
  225. 田村元

    田村国務大臣 この運賃法と絡ませるなという御要望も強いわけでありますけれども、いま申し上げたような状況下にありますから、この法案審議の過程をもう少し見守りませんと物の言いようがない。絡ませるとか絡ませないとかいうことではなく、何も故意に絡ませる気はありませんが、しかしいま言ったような事情下にございますので、これは密接不可分関係がございますから、しばらく状況を見ないと判断がいたしにくい、こういうことでございます。
  226. 大成正雄

    ○大成委員 次に、昨年十一月五〇%の値上げをしたわけでありますが、これにはいろいろな影響があったと思うのであります。そこでまず第一に、国鉄職員のこの昨年の運賃値上げに対する意識というものはどのような意識になっておるのかを承りたいと思うわけでありますが、先ほど国鉄総裁は、みずからの問題として心配をするような空気になりたいものだ、こういう御答弁をされたわけであります。私は、この国鉄経営の問題は基本的にはやはり労使問題である。この運賃値上げも、人件費も、これは労使一体でなければならない、これが当然だと思うのです。ところが、その辺の駅へ行きますと、堂々と運賃値上げは反対だ、法定制撤廃も反対だ、こう言ってわれわれ国民大衆にはそういう宣伝をしております。要するに総裁以下の、総裁の部下の一族郎党の大部分の者は運賃値上げに反対だ、法定制撤廃反対だ、そうして大臣総裁だけがこうやって国会の中で一生懸命御苦労されておる。こういう姿、形で果たして本当に国鉄の抜本的な経営の改善ができるのかどうか。運賃値上げ反対だ、春闘でも一番先にストライキをやるのは国鉄の労働組合である、汽車をとめるのも一番先だ、こういうことでは、これは国民は納得しない。そこでこの労働組合の諸君もおれたちの国鉄をどうするんだということをもっと真剣に考えるような、そういう声を先に出すような職場の空気に持っていくのが本当だと思うのですが、この国鉄職員の意識についてどのように受けとめておられるのか、その点を承りたいと思います。
  227. 高木文雄

    高木説明員 私どもの職員は同時にそれぞれの組合の組合員でもあるわけでございます。そこで職員としての物の考え方と組合員としての物の考え方が一人の人間の盾の両面のようなかっこうになっておるわけでございます。そしていろいろございますけれども、多くの職員が属しております組合は上部団体に属しておる。総評なら総評という上部団体に結局属しておる。そこで、その総評という団体のいろいろなアピール活動その他にも従うという二重人格を持っておるわけでございまして、恐らく非常に大ぜいの職員がかなり心中矛盾を感じながらいろいろな行動をとっておるということが言えるだろうと思います。最近におきましては、たとえば新幹線に乗務しております車掌の諸君なんかも、大変お客さんが減っているということから、いろいろなアピール運動をやりながら、同時にまた非常に心配をしておるという実態でございます。そこのところが私ども国鉄の職場の他の産業の職場とちょっと色彩の違った異色のところでございまして、私も職員諸君には組合員であると同時にもっと職員としての意識を高めるようにという呼びかけをいたしておるところでございまして、いま委員からお尋ねがございました、あるいは御提示がございました疑問というものは、私自身も職員諸君にぶつけて、いろいろ話し合いの中でそういう話し合いをいたしておるところでございます。それが具体的に実ってまいりますにはいささか時間がかかるかと思いますが、ここ数年間の経過の過程におきまして国民皆さんの声がどういうところにあるかということも痛いほど職員の方もわかってきておるわけでございますから、全く意識に変化がないということではない、これは甘いかもしれませんが、そういう見方をいたしております。その辺は非常に他の職場と私どもの職場の違うところでございまして、これをどう変えていくか、変わっていくかというのが今後の最も大きな問題の一つでございます。
  228. 大成正雄

    ○大成委員 ただいまの件につきましては民間企業の経営体質から言うならば理解できないところでありますので、常識のまかり通る国鉄にしていただきたい。このことを御注文申し上げたいと思います。  次に運賃値上げ物価との関係でありますが、先ほど三月末の九・四%の消費者物価の値上がりの中でその寄与率が〇・二五であるということの御説明があったわけであります。さらに今年七・七%を目指して努力をするということでございますけれども、この数字だけでは国民の生活実感としては割り切れないものがいろいろあるだろうと思うのです。特に私鉄や地下鉄やバスやこういった過般の運賃値上げ等から考えるならば、国鉄が上げたからおれたちも上げるんだという考え方もあり得るわけであります。また同時に、大臣も御承知のとおりロンドン会議の結果わが国の経済が国内的には不況を底上げをしなければならない、海外においてはインフレ克服あるいは経済の発展に寄与しなければならぬという、二律背反の馬を制御していかなければならないというむずかしい立場にある。同時に、そういうむずかしい立場で一番問題なのはアメリカと同様わが国においてもインフレだと思うのです。そこで公共料金というものはやはり一番最後に上げていくという姿勢でなければならないと思うわけであります。  わが新自由クラブは法定制の撤廃には賛成であります。同時にまた、国鉄経営自体がいわゆる経済合理性の上に立って、いわゆる採算分岐点の上に立ってその運賃を位置づけていく、そういうことが正しいのだ、このように考えておるわけでありますが、物価の問題といい、この運賃の位置づけの問題といい、もっと社会的な、経済的な合理性の上に立って、あるいはそういう社会的な、経済的なコストの上に立ってこの運賃というものを考えていかなければならないと思うわけであります。そういうことに対してどのように考えられるか。  ついでですからお聞きしますが、いわゆる貨客の国鉄離れという問題があります。特に先日の運輸経済研究センターの発表によりますと、貨物の五三・九%の運賃値上げ以後非常に国鉄離れが多い。先ほどからいろいろ御指摘の点もあるわけでありますが、乳製品、繊維、化粧品、家電、こういった関係がトラックやフェリーに移行しておる。移行できない貨物、たとえばセメント、石油、肥料、ビール、化学薬品あるいは出版物、こういったものはやむを得ず価格転嫁をせざるを得ない状態にあるようであります。また特に国鉄の統計からしますと、近距離の民間のトラックとの競合においては国鉄の方がとても太刀打ちできないが、遠距離においてはかなり太刀打ちができる、こういった問題もあります。そういう個々の対象を考えながらどのように国鉄離れを防いでいくか。グリーン車の値下げというような問題も一つの発想であります。結構だと思いますが、この貨物輸送の問題についてはともかく今日国鉄の一二・九%というシェアからいっても、もっと抜本的に企業単位なりあるいは扱い品目ごとに検討を加えていかなければ、あるいは輸送の態様等においてもきめ細かな発想が展開されなければ、この問題は解決できない、ただかけ声だけでは問題の解決はできない、このように考えますが、その点を承りたいと思います。
  229. 田村元

    田村国務大臣 一般的に公共料金についてはいま大成君がおっしゃったとおりだと思います。十分物価へのはね返り等神経質なまでに考慮して、しかも物価の後追いでこれが上げられるものならば上げていくということは私は正しい意見だと思っております。でありますから、国鉄運賃にいたしましても、さっき私が他の委員の方に御答弁申し上げたように、役人がつくりました国鉄再建のスケジュールをいま実行しようとしておるわけでありますけれども政治はもっと高い角度から大衆の声を声としてこれをときにチェックしなければならぬということは当然だと思います。私はその意味で運輸省も国鉄も硬直的になってはいけないと考えております。  それから貨物の、お客さんもそうでありますが、国鉄離れに対する御懸念のことでありますけれども国鉄再建というのは、とにかく労使が協調して徹底した経営努力をして、なお足らざるところを運賃値上げとか政府助成、もっとも政府助成というと運賃値上げとは若干趣を異にしまして、国鉄が本来負担すべきでない、負担の限界を超えておるというものについては手厚く保護をすべきだということはさっき申し上げたとおりでありますが、いずれにしても運賃値上げとか国の助成でカバーをしていく性格のものであろうと思います。でありますから、徹底した経営努力というものはとりもなおさずサービスの充実にもつながるものでありますから、そういう点でこれから過当競争とも言える厳しい競争場裏にあって国鉄が必ず打ちかっていくように努力をしなければならないと思います。  それからもう一つは、先ほど長距離なんかではまだ十分国鉄は太刀打ちできるではないかという御意見でありますが、むしろ逆に中長距離では国鉄に太刀打ちできる者はないんだ、これがわれわれの仕事なんだ、使命なんだというぐらいのスピリットを持って高木総裁以下が経営に臨まれることを祈ってやみません。
  230. 大成正雄

    ○大成委員 次に、本委員会の性格からいって、いかがかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。  東北新幹線、上越新幹線の関係で、国鉄総裁に承りたいと思います。  過日、この与野、それから浦和、戸田、この三市の反対同盟の代表の皆さん総裁はお会いになったはずでございます。そこで、問題は非常に深刻でございまして、お会いになった結果、これらの人たちと話し合いで果たして解決ができるという確信を総裁はお持ちでしょうか。その点を承りたいと思います。  また、第二の成田みたいに、それらの話し合い、説得ということだけで、じんぜん日を送るということもいかぬでしょうが、いつの日かは決断をしなければならぬと思うのですが、国家権力によって決断をするというそのタイミングというものは、どの段階までに行ったらそういう決断がなされるのか、これもあわせて承ります。  次に、この東北新幹線と上越新幹線が分離する伊奈町というのがあります。上尾の東ですが、この伊奈町の町議会では、新幹線に協力する条件として、この周辺の上尾、大宮等とも話し合いの上で、サービス輸送手段としての、総合交通手段としてのモノレールを引いてもらいたい。できるならば、新幹線のピアにくっつけて引いてもらいたい。また、陳情に行った人たちに対して、そいつは間違いない、やると言ったとか言わないとか、あるいはピアはモノレールをひっかけてもいいだけの構造になっているから心配するなとか、そういう説明がなされたとかどうとかという話を聞いていますが、この真相なり、国鉄は本当にモノレールを引っ張ってくれるのかどうか。もちろん国鉄法の改正の問題あるいは交通発生源の問題、いろいろ問題点はありますが、国鉄自身としては、そういうところまで真剣に考えているのかどうかを承りたいわけであります。  次に、第一番の質問と関連いたしますが、どうしても大宮以南がむずかしい。東京でジョイントできないということであるならば、せっかく投資したものをほっておくわけにはいかない。きょうあたりからも東北各県の説得団が埼玉の方にやってくる。よけいなことを言いに来るな、いや、おまえたちに言うんじゃないんだ、議員に言いに来たんだ。いろんなことが新聞に伝えられておりますけれども、とにかくせっかく投資した新幹線のレールをさびさしておくわけにはいかないと思うのですが、大宮始発ということは考えられるのかどうか、この点も承りたいと思います。  その辺で一応締めくくります。
  231. 高木文雄

    高木説明員 おっしゃいますように、ごく最近に与野、浦和、戸田、三市の住民の反対運動を進めていらっしゃる方々とお会いをいたしましたのですが、これは、先方さんからそれで話し合いをして交渉をするとかいうことでなくて、抗議であるということでございますので、まだちょっと抗議と言われたのでは、前へ進めないという状態で、率直に申しまして、これをどう打開していくか弱っております。ただ、私どもいろいろ各地域で新しく線路を引く仕事を経験いたし、その都度住民の方々の御理解を得るのにいろいろ難渋をするわけでございますが、その過去の経験に徴しましても、今回の反対運動は、きわめて御熱心である、熱烈であるということで、率直に言って戸惑っておるわけでございますが、いずれにしましても、かなり振動の問題、騒音の問題というのは、住民の方々の関心事であることは、この地域に限らず近来の問題でございますので、やはりこの方方にとっくり事実を御説明し、御理解をいただくということをしなければならぬ。先ほど、ちょっとどこかで踏み切れというお話でございましたが、それよりは、まずいまのところはお話し合いを進めなければいけないというふうに考えておるわけでございます。  それから、伊奈町のモノレール問題につきましては、これは伊奈町は非常にお気の毒でございまして、東北新幹線と上越新幹線両方がそこで分かれますものですから、三角地点といいますか、両方のレールに囲まれた、非常に条件の悪い場所ができるわけでございますので、何か地元の御要望に応じることができないものかということで、前向きに考えております。ただ、現在はそこにお住まいの方の人口が必ずしも多くないものでございますから、そういう設備をつくりましても、つくることはよろしいが、後、赤字が出てしまいますので、一体どういうふうにするのかという問題がありまして、私どもの新幹線の新設に伴って持っております土地だとか、あるいはピアだとかというものをお貸しするというような形での御協力は十分できると思うのですが、後のことが心配でございまして、それはまたかえって住民の方の、関係市町村の将来負担がふえるということになってはいけませんので、その辺の何かノーハウを開発をしていただきたいということで、いま県を中心に御検討をいただいております。  大宮始発問題は、これは全く考えておりません。と申しますのは、この東北、上越新幹線のメリットは、それによりまして特急とか、急行とかを在来線から新幹線に移すところに意味があるわけでございますが、大宮でございますと、たとえば福島とか、郡山とかいう方の旅行形態を考えてみますと、一遍上野なり、東京なりから大宮まで行って、そこで乗りかえてということになりますと、せっかくスピード列車の意味がなくなってしまいます関係上、うんと遠い方は別としまして、途中の方はやっぱり在来線を残せということになりますので、在来線と新幹線、——在来線に特急を残せということになりますので、それの併用を考えますと、新幹線メリットがほとんどないということになりまして、列車本数をふやすだけ経費がかかるというような関係もございまして、いまは大宮始発は考えておりませんので、何としてでも早く開業にこぎつけたいというふうに考えております。
  232. 大成正雄

    ○大成委員 ただいまの御答弁なり、総裁の姿勢からしますと、恐らく五十五年の新幹線の営業開始はむずかしいのじゃないだろうか、このように拝察しますが、だとするというと、仮に一年間予定よりも営業開始がおくれたとした場合に、一年間の投資した総投資額に対する利子負担その他の損失というものはおおむね幾ら判断していいのか、この点を承りたいと存じます。  以下の問題は省略しまして、次に、四番目にたるみ事故が多発しているという問題について承りたいと存じます。  去る九日に国鉄運転局から事故防止対策委員会への報告内容として伝えられているところによりますというと、こういった国鉄経営が危機的な状態にあるにもかかわらず、事故が非常に多発しておる。特に責任事故百八十八件、三十七件もふえておる。二五%もふえておるということが伝えられております。新幹線三島駅の「こだま」の運転士の置き去り事件を初めといたしまして、車両の入れかえ作業のミスが七十七件、四一%、駅の通過が二十六件で一四%とか、あるいは検査作業のミスが二十三件とか、あるいは信号確認不良が十五件とか、そういった事故が多発しているということであります。そのほか運転阻害であるとか、あるいは新幹線のおくれが一列車平均六・五分とか、こういったことがその報告の中に伝えられておるわけでありますが、真剣に大臣以下国鉄経営再建のために御苦労されておるこの国鉄の現状からするならば、むしろ国鉄の現場の心の再建ということの方が大事じゃないか、そのように考えますが、これに対する責任者としての対応をどのように考えるか承りたいと思います。  時間がありませんから、一緒に質問しますが、最後に、五十年十一月のいわゆるストライキの問題であります。当時十一月二十六日から十二月三日まで百九十二時間というストをぶち抜いたわけであります。国民は大変な迷惑を受けたわけでありますが、これによる減収が二百六十二億、損害が二百二億と推定されるというふうに伝えられ、国鉄は労働組合を相手に訴訟に踏み切ったわけであります。この訴訟に踏み切ったということはわれわれも承知しておりますけれども、その後その裁判がどうなっているのかさっぱりわからない。いつの間にか総裁が組合と手を握って和解してしまったのではないか、そういう誤解をする人もおるかもしれません。はっきりひとつ国鉄の態度を、この訴訟を貫徹する態度であるのかどうか、この点を承りたいと思います。同時にまた、五十一年の春闘の五十二時間ストの損害に対する訴訟はどうなったのか。また、ついこの間の春闘によって迷惑をこうむった国鉄の損害は幾らであり、これに対してはまた訴訟も辞さないのかどうか、この点を承りたいと思います。
  233. 高木文雄

    高木説明員 最初のお尋ねの営業開始のおくれによる利子負担の問題は、ちょっと数字だけ別途担当の常務から回答するようにいたします。  たるみ事故の問題は非常に申しわけないわけでございまして、どうしてここのところへ来て急に集中的にふえてきているのかということは、私どもにとりましても非常に大きな関心事でございます。その原因を分析をして処理をしていかなければならないわけでございます。その中身を見ますと、駅の関係で八十一件、動力車区の関係で七十三件ということで、全体の七六%を占めております。それから、事故原因別に見ますと、入れかえ作業の不良によるものが七七%という高い率を責任事故中占めております。  そこで、やはり日ごろからの教育訓練というようなことをもう少し充実していかなければならないのではないか、長年の間、いろいろ合理化というようなことで職場が変わりましたり、いろいろしております。それから、最近に至りまして年配の完熟した職員がだんだんやめていっております。それで要員にいささか窮屈な面が出てきておりますので、どうも教育面というようなところがいささか不十分だと言われても仕方ないんではないだろうか。また、四十三年でございましたか、ダイヤ改正がございましたが、それ以来列車の頻度が非常に上がっておりまして、路盤の保守それから電気関係の保守といったようなことがどうも少しおくれぎみになっております。そこでこれらを解消いたしますために指導訓練を充実するとか保安施設の整備改善を進めるとか、いろいろなパートパートの受け持ちの人方の相互の連携作業を強化するとかということをいたすべく、随時指図をいたしておるところでございます。しかし、いずれにいたしましてもこういう細かい事故が大きな事故につながる危険があるわけでございますので、私ども非常に注意を払っております。  それから三番目にお尋ねのありました損害賠償請求問題でございますが、いままで口頭弁論が四回行われております。国鉄側は私どもの主張を展開しておりますし、私どもが原告でございますが、被告側からは、公労法の立法論であるとか解釈論であるとか、そういう基本的な点についてかなり詳しい反論が三回にわたって述べられておるわけでございます。これは初めてのケースでもございますし、両当事者ともこの種の訴訟に必ずしもなれておらぬということもございまして、相当長期にわたらざるを得ないと思いますが、しかしいまちょっとお触れになりましたように、これを途中で何かやめてしまうというようなことはいまのところは考えておりません。  ただお尋ねの中に、五十一年、昨年の春闘のときのストについて損害賠償請求を私どもが提起をしておるかのごとくお尋ねがございましたけれども、これは何か委員のお取り違えでございまして、私どもが訴訟をいたしておりますのは五十年十一月のいわゆるスト権ストと言われた長期ストについてでございます。五十一年の方は請求をいたしておりません。その理由は、一にかかって、これによる賠償額の算定が合理的になかなかできにくいわけでございます。変な話でございますけれども、毎年春には残念ながらストが続いておりますので、ストによる被害額の算定が非常にむずかしいわけでございまして、五十年の秋には、これは異常なときにございましたものですから、これはかなり自信を持って、合理的な損失額の計算がございますので、それを要求をしておるということでございます。
  234. 高橋浩二

    ○高橋説明員 いま総裁から、最初の御質問について私から答えるようにということでございますが、東北新幹線の総額はただいまのところ二兆六百七十億を予定いたしております。五十一年度までに六千七百億の工事を遂行をいたしております。それで、一年おくれてどれだけの利子負担になるかということでございますが、従来の例によりますと、完成の最後の年には総額の大体一五%ぐらいの工事費を突っ込むことになりますので、開業の一年前までには約一兆七千億ぐらいの工事費が使われるのではないかというふうに仮定をいたしまして、そこで一年おくれますと、一兆七千億の利子は、私の方いま政府の利子補給をいただいておりますので、三分五厘というふうに計算しますと、一年間の利子負担は約六百億ということになります。ただ、ただいま工事費は年々実は上昇ぎみでございますので、私の方はできるだけ早く工事を仕上げていくことの方がそういう面では得かというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても開業がおくれないように、全力を挙げて工事を遂行していきたいというふうに考えております。
  235. 大成正雄

    ○大成委員 最後に申し上げます。  これは本委員の記憶違いでも何でもないのであえて申し上げたのですが、五十一年のストによる損害についてですけれども、五十二時間ストの減収が百八十五億、当然損失もあるはずでありますが、たとえ五億だろうが十億だろうが、労働組合がストによって国鉄に損害を与えたら訴訟をしてこれに対抗する、そういう姿勢を持つべきだという意味で私は申し上げておるわけでありまして、損害が少ないからいいかげんでいいやというような姿勢だから労働組合になめられてしまう。そういうことのないようにやってもらいたい。  それからもう一つ、新幹線の営業開始が一年延びることによって国民のこうむる損失というものが幾らかということをもっと声を大きくしてやってもらわないと、いつまでもいまのような空気では、一年延びようが二年延びようがまあしようがないじゃないか、こういうことになると思うので、もっと企業体意識を、また経済合理性の姿勢でもっと強く打ち出してもらうように総裁に強くお願いを申し上げたいと思います。  終わります。
  236. 大野明

    大野委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。     午後四時十九分散会      ————◇—————