○高橋治君 私は、今回の法律改正について基本的には
反対である、こういう立場から、以下何点かにわたって
意見を申し述べたい、こう思います。
まず、今度の
国鉄運賃法の改正の中身は、言うまでもなく法定主義の緩和あるいは当分の間の廃止、ひいては巷間伝えられておることしの九月から一九%を
値上げする、そういうねらいを持ったものだと思います。私は、むしろ現在認可事項になっておる定期旅客
運賃や、あるいは特急、急行、寝台などの料金についても、実は
国会において民主的に議論すべきだと考えておるぐらいでありますから、今回のいわゆる
運賃決定方式の弾力化と言われる法定主義の緩和については
反対であります。
政府や
国鉄当局は、現行の法定制のもとでは、
運賃改定の計画から実施までにかなりの日時を要するため、当初予定した所要の収入を確保することが困難になり、財政危機がますますひどくなる、こう言っておるようでありますけれども、これでは
運賃を経営上の採算からだけ見て政府が勝手に決めることになり、物価や
国民生活に重大なかかわり合いを持っておるこの
国鉄の
運賃が、
国民の知らないところでいつの間にか決められてしまう、こういうことになろうかと思います。
もちろん私は、
運賃の改定をする場合は経営採算を度外視してもいいんだ、こういう考え方は持っておるわけではありませんが、しかし、それよりも国の経済、財政
政策や
国民の合意との
関係で決めることがきわめて大切だと考えております。したがって、私は、
国鉄運賃など公共料金を審議するために、本当に
国民を代表する各層の人々によって、たとえば公共料金審議会のようなものをつくって、そこで十分審議をして、その
結論を
国会で承認を求める、そうして最終的に決める、そういうふうにした方がいいのではないかと考えております。
二番目の問題として、言うまでもなくいま
国鉄の赤字問題、ひいては
国鉄の危機ということが叫ばれて非常に年月がたっておるわけであります。
昭和五十年十二月に決定された
国鉄再建対策要綱あるいはまたことしの一月にそれを修正した
再建対策、こういうものもこのような状況の中で生まれてきたものと思います。そして、この
対策要綱の延長線上に今度の法律改正の問題が出てきているんだと考えます。
それによりますと、
国鉄の経営
努力、国の助成、
運賃改定、こういう三本柱で
国鉄を
再建するんだ、こういうふうに言われております。しかし、
国鉄輸送の伸び悩みあるいはまた財政の破綻、これなどの本当の
原因について突っ込んだ分析がなされておりません。そして、ただ出た赤字をなくせばいいんだ、あるいはまたこれから出るであろう赤字をなくせばいいんだ、こういう単なる財政的、技術的な問題だけでやろうとしているところに問題があると思います。これでは本当の
国鉄再建はできないと思います。いままでも
国鉄の場合に、第一次から第三次の五ヵ年計画あるいはまた
昭和四十四年度からの十ヵ年計画、そしてそれを手直しした四十八年度の計画などの経過を見ても、それだけでは決して根本的な解決にはならないということが示されておると思います。本当に
国民のための
国鉄にするためにはどうすればいいのか、こういう観点から
国鉄の
再建を考えていくべきだと考えます。
実は、この宮城県の生活協同組合連合会、生協連で、ちょうど一年前、去年の二月から三月にかけてでありますけれども、
国鉄に対する
意見、要望についてのアンケート
調査を実施いたしました。対象は主に家庭の主婦でありますけれども、配布した枚数は六百九十九枚、そして回収したのは五百二十九枚でありました。
それによりますと、その時点で、この一ヵ月のうちで
国鉄を利用した方は実に五一・七%の多きに上っておるのであります。そして、通勤や通学を除いた、本当に私用その他も含めて旅行しておる人は、そのうち実に八一%もおるというのであります。もちろん、これは去年の五〇%の大幅
値上げ以前の
調査でありますから、あるいは現在と若干変わっているかもしれません。しかし、それにしても、
国鉄利用の面から見ても、
国鉄は
国民のためだ、
国民の
国鉄である、こういう一面が出ておると思います。なお、同じくその一ヵ月の間で
国鉄の貨物を利用した人は一七・九%もおるのであります。そして、通勤通学
列車がいまのままでよい、こういう考えを持った人はわずかに二五・六%、不便だと感じている人は実に七四%もおるのでありまして、さらにまた、どんな
列車の増発を希望しておるか、こういう
質問に対しては、もちろんこれは仙台駅を中心にした増発でありますけれども、たとえば普通
列車で言えば一日に十二本、これはいろいろ具体的に時間や区間が書いてあります。通勤通学
列車は実に十八本、快速電車は十四本、こういうふうに、非常にダイヤの改正、増発についても要望が強いのであります。さらにまた、駅の施設やサービスについての要望も四十二件、
車両や安全等についての要望も四十三件、その他二十三件というふうに、
国鉄に対する要望
意見が数多くある実態が明らかになっております。これは、逆に言えば
国鉄に対する期待が非常に大きい、こういうこともあらわしておると思います。
さて、このような実態も考えてみますと、なおさらのこと、赤字を消すためにたとえば無人駅をどんどんふやしていくとか、あるいは貨物取扱駅をなくしていくとか、
国鉄の労働者の数を減らしていくとか、そうしてその上
運賃だけを上げていく、こういう考え方では、結局
国鉄は
国民のものではなくなってしまい、
再建などはとてもできないと考えます。
先ほどのアンケートでも、八三・三%の人たちは
国鉄が赤字であることを知っております。そしてその
原因については必ずしも詳しくわかっておりませんけれども、その赤字を解消するためにはどうすればいいかという
質問に対して、四〇・八%の人は国の援助をふやすことが第一だということを答えておるのでありまして、
運賃の
値上げが必要だというのはわずかに三%にすぎないのであります。
現在、交通運輸は、
国民生活にとって衣食住とともに必要欠くべからざる社会的施設になっていると言われております。したがってこのような観点から、
国鉄問題は国の総合交通
政策の重要な柱として位置づけて、
国民生活の向上に役立つような方向で検討しなければならないと思います。そのための具体的な
意見を以下何点か述べてみたいと思います。
まず第一は、設備投資といいますか、鉄道
建設などの問題でありますけれども、
国鉄赤字の大きな
原因の一つは、政府が口では
国鉄の独立採算性を言いながら、一方ではその独算性を無視して、大企業奉仕のための貨物輸送力の強化、そうしてそのうらはらに
新幹線の増設などを行い、あるいはまた
国民生活にとって必要、不必要にかかわらず、景気
対策などの観点から
建設したり中止したりというようなことが行われてきておると思います。そうしてその結果、膨大な設備投資を行い、借金
政策を
国鉄に強いてきたのだと思いますが、私は今後このような考え方を改めまして、本当に
国民の要望に沿った、たとえば過密ダイヤの解消であるとか、先ほどのアンケートに出ておるような通勤通学の改善など、在来線あるいは都市近郊の通勤通学路線、こういうものの改善や増設を最優先にすべきだと考えております。
さらにまた
新幹線の問題でありますけれども、私はもともと
新幹線を優先的に
建設することについては
反対でありますし、また先ほどのアンケートの結果でも、たとえばいま
建設中の東北
新幹線について、これが必要だと答えておるのは四一・四%、何らかの理由で
反対だと答えているのは三六・五%、確かに必要だというのは多いパーセントになっておりますが、しかし現実にいま
建設されておる東北
新幹線について、
反対も三六・五%あるということは注目すべきことだと思います。しかし現実にいま東北
新幹線とか上越
新幹線は
建設中でありますから、これ以外の
建設計画はやめるべきだと考えております。そしてまた、この前もちょっと話題になりました、原子力船「むつ」を寄港させることと引きかえに長崎まで
新幹線を延ばしてやるというような話も出ておるようですけれども、このような考え方は絶対やめるべきだと思います。
なお、東北
新幹線や上越
新幹線にしても、景気
対策上工事がストップしたりあるいは進行したりしておるのが昨今の現状だと思います。どんな政治的な背景があるのか、あるいは経済的な効果を考えておるのかわかりませんけれども、素朴な考え方から言えば、非常に長い期間かかっておるわけです。だから、仮に東北か上越線片一方をやっていたならば、すでに片一方は開通をして営業を始めていたのではないかというような素朴な疑問も出てきますし、さらにまた
建設費などを見ますと、鉄道
建設公団がやっておる上越
新幹線の方の単価が東北
新幹線よりも非常に高い、こういうようなことも
建設公団のあり方とかかわり合って非常に問題があるのではないかと思っております。
同じように、先ほども話が出たわけですけれども、この宮城県でもいま丸森線とかあるいは気仙沼線などが
建設中でありますけれども、どちらもいろいろな事情で十年もあるいは十五年もかかっておる、こういうことについても素朴な県民の感情から言えば非常に疑問なわけであります。あるいは途中になってやめるべきかやるべきかというような議論が出てきたり、こういうことについても非常に問題があると思います。
さらにまた、このような地方路線を新設する場合、政治路線などというような言葉がありますけれども、そうではなくて、本当に地域住民の立場から考えるならば、その地方路線と在来の交通機関、バスその他とのかかわり合いを十分に考えて、総合的な交通
政策の観点から
建設をすべきである、こう思います。一見、確かに新しい路線が
建設されれば便利なわけですけれども、結果的に片一方のバスその他の路線が廃止されるというようなことになれば、住民の不便が逆に倍加するというようなことも現実に起こり得るわけで、総合的な観点から十分検討してやるべきではないかと思っております。
したがって、現在の鉄道
建設審議会などというものも、
国民の声が十分反映できるように民主的に改組をして、地域住民の事情あるいは
国民経済の効果などを十分に考え合わせて、
建設すべきは
建設しなければならないと考えております。
二つ目は
国鉄の財政問題でありますけれども、言うまでもなく、一つ目はいままでの長期借入金は全額国庫で肩がわりすべきだと考えております。二つ目は、公共の負担区分を明らかにすべきだと思います。たとえば、道路や港湾を
建設する場合と同じように、
国鉄の路線
建設等については政府出資をすべきだと思いますし、ローカル線への政府補償あるいはまた公共割引への政府または企業の負担などを行うべきだと考えます。これは、国際的に見ても
国鉄あるいは運輸省が出しているデータにも明らかなように、フランスやドイツ、イギリスなどでは収入の四〇%から五〇%ぐらいの国の補助が出ておることになっておりますが、日本の場合はわずかに一二・三%
程度であります。
三つ目は、市町村への納付金は廃止をして、そのかわり国が特別交付税を市町村に交付すべきだと考えております。
次に、ローカル線の問題については先ほど申し上げたとおりでありますが、ことし一月運輸
政策審議会から中間報告が出ておるようでありますけれども、私はいままで申し上げたとおり、基本的にはローカル線は欠損を政府で補償する、こういう立場から
国鉄で運営すべきだと考えております。
次に、貨物輸送の問題であります。
国鉄はことしの四月に承認された経営改善計画の中で、貨物収支を
昭和五十五年度までにとんとんにする、こういうことで貨物の取扱駅を三分の一減らす、あるいは
列車キロ数を約三五%削減する、そして
関係労働者を一万五千人も首切る、こういう計画を出しておるようでありますけれども、これは大変な問題をはらんでいると思います。
確かに、
国鉄赤字の大きな
原因の一つに、この
国鉄の貨物の赤字があると言われておりますけれども、しかし、これは明らかに大企業優先の貨物輸送
政策をとってきたためではなかったのかと考えております。さらにまた、
国鉄の貨物のシェアも減っていることも事実だと思います。しかし、これもシェアが減ったから赤字が出たというだけではどうにもなりません。やはり、貨物輸送全体の問題、たとえばトラック輸送、特に白トラと言われるような問題を野放しにしておる問題も一方にあるわけで、そういう問題も十分検討をしてみる必要があると思います。単に
国鉄の貨物部門を切り捨てていけば、一般
国民あるいは中小荷主を犠牲にしていくだけであり、大企業優遇策をとってきたいままでと全く変わりない、こういう結果になると思います。このような計画を実施するならば、貨物部門の面でも
国鉄は
国民から遊離をして、公共輸送の任務を放棄することになると思います。
次は、
国鉄経営の民主化の問題についてであります。
言うまでもなく、
国鉄は
国民生活上欠くことのできない公共的な交通運輸の中心機関でありますから、そういう位置づけを明確にして、政府が
国鉄に対して全
責任を負うというものでなければならないと思います。したがって、利用者
国民や
関係労働者の
意見が十分反映できる機関を、中央地方に設置することが必要であると思います。
二つ目は、
国鉄の経営を民主化するため、現行監査
委員会を改組して、利用者や学識経験者、
関係労働者などで構成する機関に改めるべきだと思います。
さらに三つ目は、
国鉄の当事者能力を拡大することであり、あわせて労働者のストライキ権を回復して、真に近代的な労使
関係を確立することが
国鉄の
再建にも役立つことだと思います。
最後に、
運賃値上げの問題についてであります。
いままでも申し上げたとおりでありますが、
国鉄が本当に
国民のための
国鉄としての機能を果たし、公共輸送機関として民主的な経営が行われるようになるならば、冒頭に申し上げたように、
国民各層から成る、たとえば公共料金審議会あるいは
運賃審議会などを設置して、そこで十分審議をして、最終的には
国会で承認を縛るということが望ましいと思います。しかし、巷間伝えられておる九月から一九%
値上げするということについては
反対であります。
いままでの幾つかの
再建計画が破綻してきたように、いつも三方一両損というような発想で、出た赤字あるいは出るであろう赤字を解消することだけが
国鉄再建かのようにやってきたわけでありますけれども、結局残ったのは大幅な
値上げと合理化だけでありまして、ますます
国民の足から遠のいてしまい、結果的に赤字も解消されない、こういう状況だからであります。
以上で私の
意見を終わりたいと思います。