運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1977-04-27 第80回国会 衆議院 運輸委員会 第17号 公式Web版

share
  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月二十七日(水曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 大野  明君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 増岡 博之君 理事 坂本 恭一君    理事 渡辺 芳男君       北川 石松君    関谷 勝嗣君       永田 亮一君    藤本 孝雄君       堀内 光雄君    三塚  博君       太田 一夫君    久保 三郎君       田畑政一郎君    草野  威君       宮井 泰良君    薮仲 義彦君       米沢  隆君    小林 政子君       中馬 弘毅君  委員外出席者         参  考  人         (学習院大学法         学部教授)   山内 一夫君         参  考  人         (埼玉大学経済         学部助教授)  鎌倉 孝夫君         参  考  人         (東京大学経済         学部教授)   岡野 行秀君         参  考  人         (日本消費者連         盟代表委員)  竹内 直一君         参  考  人         (財団法人運輸         調査局企画室         長)      鈴木 順一君         参  考  人         (日本生活協同         組合連合会組織         部次長)    大島 茂男君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改  正する法律案内閣提出第一一号)      ————◇—————
  2. 大野委員長(大野明)

    大野委員長 これより会議を開きます。  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日御出席願いました参考人は、学習院大学法学部教授山内一夫君、埼玉大学経済学部助教授鎌倉孝夫君、東京大学経済学部教授岡野行秀君、日本消費者連盟代表委員竹内直一君、財団法人運輸調査局企画室長鈴木順一君、日本生活共同組合連合会組織部次長大島茂男君、以上六名の方々でございます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきましてまことにありがとうございました。本法律案につきましてそれぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りまして、審査の参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げますが、山内参考人鎌倉参考人岡野参考人竹内参考人鈴木参考人大島参考人順序で、御意見をお一人十五分程度に取りまとめてお述べいただき、次に、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、山内参考人にお願いいたします。
  3. 山内参考人(山内一夫)

    山内参考人 今回の法律案を拝見いたしまして、国鉄運賃につきまして、従来のように賃率そのもの法律で具体的に定める方式を改めまして、一定の基準なり制約なりを法定いたしました上で、具体的金額決定については運輸大臣認可によることとしようとするもののように拝見いたしました。  この法案につきましては、憲法八十四条との関係をどう考えるかという重大な法律問題がございます。この点につきまして私の意見を申し述べたいと存じますが、先に結論を申し上げますと、私、この法律案の定める認可制憲法違反ではない、合憲性を弁明し得るのではないか、かように思っているわけでございます。  私のその結論に至る理由を簡単に述べたいと思いますが、八十四条はいわゆる租税法律主義を定めております。課税要件国会が御制定になるところの法律できっちり定められるということになっておるわけでございます。この租税法律主義は、申すまでもなくマグナ・カルタ以来の原則でございまするが、その立法趣旨考えますると、租税は国の経費を賄うために徴収されるものでありまするから、国会の定める法律できっちりと定めるということにしておかないと、国民負担がたえ切れないものになる、こういう考えであろうかと存じます。国の経費は、極端に言えば幾らあっても足りないということでございましょうから、そこを法律できっちり定めておかないと、行政府税金を欲しいだけ取る、こういうことを抑えるということだろうと思います。     〔委員長退席増岡委員長代理着席〕 この点は、いまさら当委員会の諸先生に申し上げるまでもないことかと存じますが、一応改めて、立法趣旨はそういうところにあるのではないかということを申し上げるわけでございます。  ところで、この租税法律主義につきましては、国の独占に属する事業料金実質上の租税であるという考え方があります。確かに事業独占に属しますと、独占をてこにして受益の限度を超えて高い料金を取ることができるわけでありますから、国としてはその分を実質上の租税として使う、実質上の消費税として使うということが可能になるわけでありますから、そういう考え方原則としては私成立するのだろうと思います。  たとえばその代表的な例は、たばこの専売価格でございますが、これが消費税的な部分を含んでおるということはだれも認めるところだろうと存じます。わが国も明治以来こういったいわゆる財政専売で国の経費をずいぶんと賄ってまいってきておるわけでございます。しかしながら、その事業独占に属すると申しましても、その料金事業経費にだけ使われまして、それ以外の国の経費財政法の言葉をかりますと、その事業経費以外の国の各般事業には使われないということでありますならば、その料金実質上の租税だと言う必要はないのではないかというふうに私は考えるのであります。つまり、そういった事業料金までも実質上の租税だと考えまして、租税法律主義の対象にする必要はないのではないかというふうに私は考えるわけでございます。  そこで、国鉄運賃について考えますと、事業独占性があるかということが第一の問題になると思いますが、私、国鉄独占性はやはり皆無とは言えないと思うのです。それはあると思うのです。最近はいろいろな輸送手段が発達しましたので、国鉄独占性はずいぶんと弱められてはおりますが、全然なくはない、皆無ではない、独占性はやはりあるというふうに私は思うのでございます。その論証は長くなりますから省略しますが、それは十分にできると思うのです。しかし、他方におきまして国鉄運賃租税たる部分を含む可能性があるか、いまはむろんないのですが、制度上そういう租税分を含むことになる可能性があるかと申しますと、それは私ないと思うのです。と申しますのは、国鉄は現在独立の人格を持った公法人というわけでございます。そして、国との関係におきましては納付金制度がないわけでございます。これは専売公社のようにそういう制度はないわけでございます。納付金制度をたしか昭和二十八年に廃止されておりまして、いまは国鉄お金が国の各般事業に使われるという可能性はないわけでございます。制度上そういうものはないと思うわけでございます。ですから、国鉄運賃実質上の租税と見る必要はないのじゃないかと思います。  国鉄運賃認可制租税法律主義に違反して違憲だということになりますと、ほかにも差しさわりのあるものが幾つか出てくるように私は思うのでございます。たとえばお米の売り渡しの価格でございますが、これは農林省が告示で決めておることは御案内のとおりだと思いますが、お米はいまの食糧管理制度からいきますと、これを国で買い取ってそれを売るということになっておりますから、やはり一種独占だと思うのです。この食管制度は時代とともに大分趣旨が変わってまいりましたが、日本国憲法施行後も、お米の需給が逼迫しておりましたそういう状況のもとにおいても、お米はやはり国会法律では決めておられなかったわけですから、それを独占価格である、税金の分を含んでいるんだということになりますと、いまの法律で決めなかったということが憲法違反になるということになりかねないと思います。  それから、これは多少例が悪いのですが、日本放送協会料金でございますが、これはNHKは電波の独占性を背景としておりますし、それから契約強制ということがございます。そういう点からいうと、これも可能性としては税金に使われるということだって、NHK国家との関係をそういうふうに規律すればできるわけでございますが、これもそういうことはありませんから、やはり法律では決まっておりませんです。  それから私鉄運賃も、やはり私鉄一種の相対的な独占を持っていると思うのですが、これも運輸大臣認可制でやっておるわけでございます。むろん私鉄は国の事業ではございませんし、私企業でございまするから、それはそのお金が国の各般経費に使われるということはあり得ないわけですが、独占から来るところの国民負担という面に着目すれば、それはやはり同じことではないかというふうに思います。そこのところを非常に警戒をすれば、国会法律で決めるという考え方も成り立つわけでございましょうけれども、これは実質上の租税にはならない。国の各般経費に使われるということはありませんのですから、これも認可制でいっているわけでございます。ですから、私先ほど申し上げましたように、八十四条との関係で、この法案違憲だというふうには考えておらないわけでございます。  ただ、こう申しましても、私、憲法には八十三条の規定がございまして、財政はやはり国会の意思で決まるというふうになっております。そういった何と申しましょうか、議会政治立場を全般的な原則として憲法の八十三条で定めておりまするから、国鉄運賃に対しまして国会がしかるべき統制をなさるのは、これは当然でございますし、その観点から見ますと、この法案のように決定原則の縛りがあれば、これで八十三条の方の要請も満たされるのではないかというふうに思っているわけでございます。  それからもう一つ財政法三条という規定がございます。これはやはり財政法基本原則という考えで置かれているのだろうと私思いまするが、これを存置したままで、当分の間とは言え国鉄運賃認可制をとるということがどうかという問題が一つあると思います。  ただ、これは法律法律関係でございますから、非常に理詰めにいけば後法優先原則あるいは特別法優先原則で片のつく問題だと思います。ただ、先ほども申しましたように、財政法三条が基本原則のような意味合いで置かれておりますと、この今回の法案認可制との関係で多少気にはなりますが、これは憲法法律という問題でございませんし、多分に立法技術的なもののように思います、立法技術と立言の技術の問題のように私は思うのです。仮に財政法三条と抵触するというのでありますれば、結局において後法優先原則あるいは特別法優先原則で、この法案認可制の方が勝つということになりますから、それはこの法案のとおりでもいいのじゃないかと思っておるわけでございます。  以上、私のつたない意見を申し述べました。以上のとおりでございます。(拍手)
  4. 増岡委員長代理(増岡博之)

    増岡委員長代理 ありがとうございました。  次に、鎌倉参考人にお願いいたします。
  5. 鎌倉参考人(鎌倉孝夫)

    鎌倉参考人 鎌倉です。  私は、一応日本経済を研究している立場で今回の法案に対して意見を言いたいと思います。  一つは、国鉄再建に当たって企業の努力ということで国鉄経営合理化、そして二つは、運賃引き上げ、さらに運賃法定主義弾力化、撤廃の方向を目指した弾力化、そして三つ目は、政府助成の若干の拡大あるいは累積した赤字債務のたな上げ、こういう再建方向が出されているわけでありますが、こういう形での国鉄再建策というのが果たして国鉄の抜本的な再建になるであろうか、可能であろうか、こういう点を考えてみなければならないと思うのです。  それで、今回の運賃法定主義弾力化の問題にしても、あるいは一九%の運賃引き上げの問題にしても、あるいはまた貨物合理化中心としたいわば非常に厳しい合理化政策にしても、この形での再建策の基本的な考え方の底流にあるものは、依然としていわゆる高度成長下国鉄経営あり方と基本的に変わる考えではない、こう考えております。  といいますのは、こういった形での再建策の内容、そこにあるものとしては幾つかの点か指摘できるわけでありますが、一応簡単に指摘しておきますと、一つは、国鉄経営独立採算制というものを前提にしながら、国鉄経営自体の中で収支採算を実現させるという考えが基盤にあるわけですし、第二番目は、特に貨物の問題について、民間トラック輸送あるいは内航海運国鉄貨物輸送との非常に激しい競争競合関係、こういう競争関係にいわば対処していくという考え方、そういう競争競合関係を何とか直していくということではなくて、むしろそれをそのまま前提にしながら、その上で、いわば民間トラック輸送や内航海運競争できるような形でのコストダウン合理化を実現していく、こういうとらえ方が前提にされております。  さらに三つ目は、インフレ政策による物価上昇の過程の中でコストが大幅に上がってくる、したがって料金引き上げがやむを得ないということでありますが、これも基本的な点では、財政インフレのメカニズムと財政インフレ政策というものをいわば当然の前提とした上でとらえているということでありますし、さらに重要な点は、財政インフレ政策自体改革変革していかなければならない問題が問題として提起されておりながら、不況対策という形でのいわば国鉄新幹線拡大ということに象徴されるような大幅な公共投資増大インフレをさらに激化させるような政策が依然として盛り込まれているわけであります。こういう点から、非常に激しい不況インフレの継続という状況の中で、しかも従来のような高度成長がもはや実現困難であるという状況の中であるにもかかわらず、国鉄再建方向として提起されているのは、依然として、一方では合理化によるコストダウン他方では財政支出拡大によるいわば莫大な投資と大幅な料金引き上げ、こういう方向でしかない、今回の法律改正案というものはむしろこういう方向を助長するものでしかないというふうに考えるわけであります。  そこで、国鉄問題を根本的に考え直すためには、一体国鉄経営赤字がどこから、何を原因として引き起こされてきたものであるのかということをそれこそ真剣にとらえ、その赤字原因となる問題を解決していかなければならないというふうに考えるわけであります。  そこで、国鉄経営の破産に瀕したような莫大な赤字、こういうものは一体何を原因として引き起こされてきたのかということをここでかいつまんでとらえておく必要があると思うのです。  一つは、国鉄というのは公共的な事業国家的な事業でありますから、直接独立採算の形での採算に合わない性質というものを本来持っていると言ってもいいと思います。いわば国民の足の確保、これを図るためには、たとえば過疎地帯における国鉄地方線の問題にしても、これは維持していかざるを得ない性質のものでありますし、そういう意味ではいわば社会政策的な性格を持っているととらえていいと思います。でありますから、こういう問題をも担っていかなければならない国鉄については、独立採算制企業内においていわば収支採算を合わせるということは本来不可能な本質を持っていると言っていいと思います。  ところが、そうであるにもかかわらず、国鉄の、戦後特に昭和三十年代、四十年代を通して行われてきた経営方向というものをとらえてみますと、まず国家的な事業として当然国家が、政府設備投資中心とした投資負担を行わなければならないのに、政府投資というものがほとんどなされてこなかった。そして投資を行う場合においてもほとんどが外部からの借金というものに依存してきたわけであります。いわば借り入れによって設備投資がなされてきた。現在七兆円以上にも達する国鉄資産そのものが実は借り入れという形によってなされてきたわけでありますが、この債務の累積をカバーしていく方向が、一つ国民大衆料金負担であり、もう一つ国鉄労働者の激しい合理化労働強化というものによって償われてきたわけであります。そういう意味では国鉄資産全部が国民大衆の金と国鉄労働者労働によって築かれてきた、こういうふうにも言えるわけでありますが、こういった形でなされてきた国鉄経営あり方そのものが、いわば莫大な債務を累積し、赤字を累積ししてきたところの決定的な原因である、こう考えなければならないと思います。  さらに第三点としては、このような莫大な国鉄投資、それを借金を通して行ってきたわけでありますが、その中で重要な特徴は、いわゆる民間企業中心とした高度な蓄積拡大というものを国家財政が一面的にいわば促進をし、国鉄も実はそういった国家全体の政策の中に完全に組み入れられてきたという点であります。特に幹線あるいは新幹線中心とした莫大な設備投資、これが一つ公共事業に関連する種々の、中心的には大企業に対する莫大な市場を提供してきた。そして二つは、この幹線網拡大というものによって特に貨物輸送コスト合理化が図られ、重要なのは大企業貨物コストが完全に採算割れの、原価割れの形で輸送されてきたということであります。このような形で、一方では国鉄赤字拡大していく反面、他方ではいわば大企業自体蓄積を高度に進めていく。いわば国鉄経営赤字というのは大企業自体の利潤の拡大蓄積増大というものの反面として引き起こされてきたものと考えなければならない。と同時に、このような形での資本蓄積の過度な拡大が、一方では過密過疎、こういう問題を引き起こしていく。都市問題あるいは地方過疎線赤字拡大をもたらしていく。さらには公害の激発や地価の暴騰、こういう問題をも引き起こしていく。このことが赤字を一層拡大してしまったわけであります。  もう一つ重要な点は、最近はエネルギー価格が急上昇しております。しかしこのエネルギー価格上昇も、たとえば石油資源価格上昇を引き起こした原因OPEC諸国料金引き上げ価格引き上げということだけに起因するのではない。むしろそれを引き起こした原因は、資本主義各国の高度な石油消費そして財政インフレ、こういうものが回り回って原油価格引き上げをもたらしてきたわけであります。問題なのは、そういうインフレ的な資本主義経済体質を改善する以外に解決の基本的な方向というものはあり得ない、こう考えられます。     〔増岡委員長代理退席委員長着席〕  ところで、こういった形で国鉄経営赤字が累積してきた中で問題は解決されたかというと、再建案が何回か出されたにもかかわらず、すべてその国鉄再建案というものは破綻を証明してきたと言っていいと思います。なぜ破綻をしたのか。抜本的な改革をしないで、むしろ一方では合理化を通した要員削減を行い、他方では料金引き上げによって、いわばきわめてこそくな手段でこの問題を解決しようとしたからであります。その結果国鉄状態はどういう状況になっているか。要員削減によって一方では労働強化が図られる、他方では機械化に伴い労働意欲自身がきわめて減退しております。さらには下請化というものが進み、安全問題その他についても種々の重大な問題が生じております。あるいは国鉄の作業場の中では国鉄労働者の激しいいわゆる職業病が多発しております。過密ダイヤあるいは安全保守合理化切り詰めということによって種々列車事故が多発しております。合理化自身がいわばほとんどこれ以上進行し得ないという限度に達してきている、こう言っていいと思います。  さらにその上に、料金引き上げによって一層いわゆる国鉄離れというような状況もあらわれているわけであります。その上に、さらにこの矛盾拡大再生産するような方向でしか提起されていない現在の再建策というものは、さらにこの矛盾拡大する以外の何物でもないと考えざるを得ません。  抜本的な改革種々むずかしい問題が根底にあると思いますけれども、従来巨大企業が自己の蓄積拡大を図るために国鉄をいわば徹底的に利用してきたわけでありますが、一つ国鉄設備投資を利用した、国鉄市場とする側面、あるいは低貨物運賃による輸送という側面、この問題をやはり基本的に変えていく必要がある。特に重要な問題はトラック輸送や内航海運との競合という問題をそのままいわば野放しにした上で、国鉄貨物輸送合理化を図ろうとしても、これは大変困難でしかないのであって、この競争関係をどういうふうに解消していくかという問題が大変重要な問題ではないかと思います。  この問題は、一つ日本貨物輸送合理化コストダウンを通して、特に輸出主導型の産業あるいは国内においては自動車産業というものの蓄積拡大が図られてきているわけでありますが、こういった産業構造に対する変革、これを変えていくという方向がはっきり行われない限り、この国鉄経営の改善ということは基本的には不可能だと考えざるを得ないと思います。  それと同時に、公共機関としての、いわば当然採算に合わない性格を持つものとしての国鉄性格を十分明確にするとともに、少なくとも設備部分については政府の責任として全額出資という形でこれを実現していかなければならない、そういう点が確定されなければならないと思います。  さらには抜本的な政策として、財政インフレ経済体質自身変革インフレ政策そのものをなくしていくことのできるような体制を築いていくことが重要ではないかと思うのです。こういった根本的な点からメスを入れない限り、ただ合理化運賃引き上げということだけでは、国鉄経営は改善されるどころかむしろますます悪循環を繰り返していくのではないか、こういうふうに考えております。  以上です。
  6. 大野委員長(大野明)

    大野委員長 ありがとうございました。  次に、岡野参考人にお願いいたします。
  7. 岡野参考人(岡野行秀)

    岡野参考人 ただいま御紹介いただきました岡野でございます。  私が本日申し上げたいことは、実は五年前の昭和四十七年五月八日の同じこの運輸委員会で、当時提出されていました国鉄運賃法改正案について参考人として出頭して申し上げたことと本質的には何も変わるところがないわけであります。実は昨日改めて会議録を取り出しまして読みましたところ、そのとき申し上げたことをここで訂正することも何もございません。ただ変わった点は、国鉄財政状態が一層悪化したということだけであるわけでして、私としては、その当時自分の信ずるところを申し上げて、それが何の役にも立たなかったということを残念に思う次第であります。  国鉄運賃法の今度の改正についてでありますが、私は、四十七年のときにも申し上げましたけれども、運賃法を含めましてすでにかなり前から国鉄が置かれている状態に全くそぐわなくなっている、したがって、全面的に改めるべきであるという見解を折に触れて述べてまいったわけであります。それは日本経済構造変化とともに、交通市場そのもの構造が著しく変化しました。その結果、国鉄自体にとっての市場も大幅に変化いたしました。たとえば貨物一つ例にとりましても、かっては石炭木材が主たる貨物であったわけですが、これは国内でほとんど生産されなくなった。石炭石油にかわり、木材は外材にかわる。そうしますと、いままで持っていたそういうものを運ぶための国鉄の線路というものは貨物がなくなるわけであります。こういう変化と、それから都市化に伴って人口分布変化いたしました。他方、他の輸送手段が発達いたしまして、交通市場はごく一部を除きまして著しく競争的になったわけであります。でも、ごく一部といいますのは、これは大都市中心といいますか、大都市部門でありまして、大都市におきましては、たとえば国鉄私鉄が大幅値上げをいたしましても、私、車を持っておりますけれども、都心内へ車で通勤するということはできないわけであります。しようとしますと、この間のストライキのときのように、通常の五倍から九倍の交通量になるという状態になるわけですから、したがって、大都市においては、交通市場は決して競争的な状態にはないわけであります。こうした変化に対応するためには、国鉄はどのような輸送サービスをどれだけどのような運賃料金で供給するか、それを市場変化に応じて弾力的に決めていかなければならないわけです。イギリス、フランス、西ドイツ、アメリカ、これらの国の例に見られるのと全く同じであるわけですが、独占時代には運賃決定について厳しい規制を行ってきました。交通の規制の歴史は、鉄道に対する規制の歴史であると言われるくらいであります。しかし、これらの国においても鉄道の運賃決定について規制を緩め、事実上鉄道の自由な決定にゆだねるようになってきたのは、こういう交通市場変化に対処していくにはそれ以外にないというふうに考えられているからだと思います。  今回の運賃法改正についてでありますが、私は、四十七年の委員会で申し上げたときにも、国会で決める必要はないだろう。それは改定がおくれるというような技術的なこともありますが、いずれにしても改定をするためには国会を通さなければならないということでありますと、適時に改定を行うということができなくなります。それから国会で決めることの経済的な意義という点を考えますと、これは政治的あるいは政策的な考慮を払って運賃を決めようということだろうと思うのですが、これが政策的あるいは政治的にたとえば国民の所得再分配を図ろうというような考え方運賃を適当に決めようというふうにお考えになりましても、これが十分できるのは独占のもとでありまして、独占であればこれはある部分を高くしてそこでもうけてほかの部分を補うということもできますけれども、いまそういうふうにある部分を高くするということをやりますれば、その利用者たちは他の輸送手段に逃げる、その所得再分配のための原資すら得ることはできないだけでなく、かえってお客を失うということになるわけであります。つまり、そういう政治的、政策的な決定というものができなくなり、経済のメカニズムの中で対応していかなければならないという事態になっているというふうに考えます。適時に運賃を改定するということと、それから今回の法律案にありますように幅についての制限が考えられますが、これは実は両者組み合わさったものでありまして、適時に行われるのであれば、必ずしも幅を大きくしなければならないということにはならないわけであります。過去の日本の公共料金決定につきましては、国鉄運賃だけでなく、郵便料金もそうですか、四年ないし五年に一回ということになりますと、その間に大幅な値上げをしなければならなくなるということになるわけであります。  ちなみにたとえば例といたしまして英国の国鉄を取り上げますと、一九七〇年以降この七年間ですが、車扱いの貨物につきまして十回運賃改定をしております。ただしその幅は五ないし二〇%、インフレの激しいイギリスでありましてもその幅は二〇%に抑える。それからフランス、これは私はフランスから聞いた話ですが、やはり回数は多くする。しかし一回の上げ幅を二〇%以上上げるとお客を失う。したがって一回の改定の幅をむしろ考えまして回数でやっていく。そうでないとなかなかお客を保つことができないという話をしておりました。そういう点からいいましても、私は適時に幅をなるべく小さくして、そうして回数は多くなるかもしれませんが、幅を小さくする。幅を小さくしますと、国民の方にとりましてもそのショックというものは小さくて済むわけであります。  したがって今回の趣旨につきましては私は賛成するものでありますが、ただ私としましてはこれは大変不満でありまして、いま程度の法定主義を緩和するというだけでは、実は国鉄運賃政策上の観点からいいましても不十分であります。これだけですと、現行の全国一律の賃率のもとでその率だけを上げていく。要するに全般のレベルアップということしかできないわけであります。実際上は、この前の値上げの後の例にも見られますように長距離については航空機との競争が非常に激しい。それから近いものにつきましては自動車との関連が出るという、そういうことでありますから、国鉄の置かれている市場の条件に応じて若干その賃率が変わるということがあってもいいということまで踏み切りませんと、国鉄はせっかく輸送力を持ちながらお客を失うということになりかねないと思います。基本的な考え方は、やはりいいサービスを、そしてなるべくお客さんに使ってもらって収入を上げる。そのためにはどういう運賃体系を考えたらいいかということであるかと思います。  もう一つ再建のためであるという理由がついておりますが、国鉄再建につきましては当然、昨年五十一年度の予算に初めて計上されました地方交通線補助の百七十二億円でございましたか、こういうものを拡大しまして、地方交通線の要するに国として維持しなければならないと判断された部分につきましては国が補助を出す。そしてほかの輸送手段競争していくという点につきましてはより自由に国鉄企業として競争する。マーケティングを行ってお客さんにうんと使ってもらうようにするとか、あるいはこういう運賃ではお客が使ってくれないということであればそのときにはそれを改正する。要するに若干の試行錯誤を踏まえながらいきませんとなかなかうまくいかないというふうに考える次第であります。  私はやはり競争というものがないと国民のためにならないという考え方を持っておりまして、もし競争を制限してそして国鉄にお客さんが来るようにするということを考えますと、——実はこれは不可能ではないわけです。戦後のイギリスで交通部門を全部国有化いたしました。この国有化の目的は、実はトラックの輸送部門を国有化することによってそこで収入を上げ、国鉄で生ずる赤字を埋めるという考え方であったわけですが、実際上、一部の近くの中小企業等が持っているような自分の商品ですね、家具等を運ぶトラックがあるわけですが、こういうトラック部門については自由を認めざるを得なかった。要するに国有化することはできなかった。そうしますと国有化されたトラック部門が十分利潤を上げるような運賃を設定しますと、いままでは近郊の住宅へ家具だけを運んでいたそういう自家用のトラックがそのかわりに長距離まで走るようになるという形になりまして、結局トラックについて高い利潤を得るということができなくなる。これが一つ、イギリスの国有化の失敗であったというふうに思います。  もし日本でも自家用車を制限して、自家用のトラックを制限しそれから営業用のトラックについても規制を行い、その上で国鉄運賃も上げるということをやれば恐らく国鉄の収入は上がるかもしれませんが、それはツケは国民の方に来るわけでありまして、いままではすべてトラックが安く運んでいた、今度はトラックまでも高くなる、ただし国鉄は楽になった、こういうことでは、長い目で見た国鉄の将来を考えますと、決してプラスではなく、財政再建されても、将来国民にいいサービスをできるだけ安く提供しようという自立の精神が失われるのではないかと考えます。  それからもう一つ、時間が参りましたが、国鉄法の改正の件についてですが、これは私は原則的には賛成いたします。ただ注意すべきことがあると思います。それは、国鉄としてはレールのお客さんがふえるような方面に使っていただきたい、利用していただきたいということであります。最近新聞紙上で拝見しましたところでは、住宅公団とタイアップして高層の住宅をつくる、これは私は必ずしも反対はいたしません。といいますのは、いい立地条件を持っているわけですから、そのいい立地条件でアパートをつくれば、そこに住むことができる人は大変便利な住宅を得ることができるわけで、住宅政策の面からも望ましいと思います。ただ、民業圧迫ということから非常に使い方について制限されるとしますと、その民業圧迫というのは本当の意味での民業圧迫であれば確かに問題にしなければならないかもしれませんが、いままで国鉄のおかげをこうむって利益を得ていた企業なり人が、今度国鉄がそういうことをやれば自分たちの利益が失われるということを称して民業圧迫と言うのであればこれは大変困るわけでありまして、やはり国鉄の、そして国の、国民資産を有効に利用して、しかも国鉄の収入にもプラスになるというような形で使うことを望んでやまない次第でございます。(拍手)
  8. 大野委員長(大野明)

    大野委員長 ありがとうございました。  次に、竹内参考人にお願いいたします。
  9. 竹内参考人(竹内直一)

    竹内参考人 私は、この改正法案に反対の立場から意見を述べさせていただきます。  この国鉄運賃法定主義というのは、法律で法定主義でいくんだということを過去の国会でお決めになっているわけなんです。したがってそれはそれなりにしっかりした理由があってこういう制度がしかれているはずなんです。それを、またこれを改めると言うからには、それ相応のしっかりした理由がなくてはいけない、国民を納得させる理由がなくてはいけないと思うわけなんですが、この法定主義を緩和するという改正案の提案理由について私どもは納得のいかない幾つかのものを発見するわけです。それを述べさせていただきます。  第一に、民法によりますと社団法人というのがありますが、この社団法人には社員総会というのがあって、その社団の重要なことはすべて総会にかけるということが規定されております。それから商法によれば、株式会社には株主総会があって基本的なことは株主総会で決めるという決まりがあります。そういうことになりました場合に、公社である日本国有鉄道の最高意思決定機関は何かということになるわけですけれども、いまのシステムでいきますと、これは国民の代表である国会が、日本国有鉄道にとっての最高意思決定機関でなければならないと考えるのですが、言うなれば、国民全部がここへ来て総会を開くわけにいきませんから、代議員総会と言えるものではないかというわけなんです。したがいまして、国会国民の代表が議論する、社員総会に該当するものとして国鉄の運営について議論をするということが必要であると思うのですが、現状ではだんだんとこの運賃法定主義がなし崩しに奪われてきておる。たとえば新幹線の切符を買いますと、約半分が特急料金になっております。これは国会のらち外で決められていく、運賃法定主義の効果が半分に減ってきておる。私は、いまのようなやり方で運賃法定主義がなし崩しに奪われていることに非常に不満を持つし、これはおかしいと思う。ですから逆に、いまなし崩しにされてきたこの運賃法定主義を本来の姿に戻すべきであると考えるのですけれども、今回それを逆になお緩めようというような改正を行うというのは逆コースではないかというように思います。  それから次は、こういうような改正をする理由として、国会で議決を要することとすると手間がかかる、あるいは弾力的にできないではないか、その間に赤字がどんどん増大するからこれは運輸大臣認可事項にすべきだという理由が述べられているわけですけれども、これはわれわれ有権者の立場からいたしますと、議会無視の官僚主義的発想であると言わざるを得ない。従来確かに運賃値上げ法案が出ますとずいぶん国会でもめました。それは運賃値上げについて国民が納得するような内容でないからもめるのであって、世論を無視した内容のものを出せば、もめるのは当然ではないかというように考えます。こういうような考え方は、株式会社の執行部が株主総会を暴力団を呼んできて十分間で終わらせよう、ああいう発想と相通ずるものがあるのではないかと考えるわけです。とにかく民主主義というのは時間がかかるものだということを承知の上でこういう制度は運用されなくてはいけないと思うわけなんです。会社の重役が最近は所有と経営の分離だ、これが世の趨勢だと言って、経営権を拡大しようという動きがあるわけですけれども、こういうことになれば、やはり少数者による独裁を許すことになる、これは国鉄においても例外ではないというように考えるわけです。  それから次に、国鉄労使の当事者能力を回復するために国会議決事項を少なくするんだという理由も述べられておりますけれども、これも、私をして言わしめればすりかえの論理ではないか。むしろ大蔵官僚による予算執行についての行き過ぎた介入、干渉、こういったものこそ国鉄労使間の賃金問題を硬直化させる理由ではないか。私自身の例を申しますと、私はかつて愛知用水公団という政府機関におりましたけれども、ああいうところの賃金を決めるについて、愛知用水公団の役員が大蔵省の主計局へ日参をしても全然うんと言わない。うんと言わない理由は、愛知用水公団だけでそれだけ出すことができても、よそとのつり合いがある、おまえのところだけ高く出せばよそもまた高く要求する、これでは困るから低く抑えるのだ。私は、国会で決めるから当事者能力がないんだというよりも、いまの官僚のこういった不当な干渉こそ問題にすべきであるというように考えるわけです。  それから次に、運輸大臣が国の意思を代表するんだから、運輸大臣認可をとればそれでいいではないかというような考え方があるわけですけれども、こういう考え方は、役所の組織を御存じない考え方ではないか。大臣が認可をするときは、非常に綿密な調査と議論の上で、ある決定がなされるというように外部の者は思いますけれども、役所の組織を中に入ってみますと、担当局があり、その下に担当課があり、担当課の中に担当の係がある。結局のところ、こういった運賃料金認可について一生懸命にやるのは担当係なんです。せんだって、叙勲について通産省の担当係が汚職をやったというニュースがございましたけれども、結局あれは通産大臣がこの人がいいというようにやるにしても、実際にやるのはこの担当の係であって、あとは全部それにお任せ、盲判をつくというシステムであります。そういうような形で出てきたものが、これが国の意思なんだというように決めてかかるということは実情無視のとんでもない考えではないか。したがって私は、運輸大臣認可するからいいではないかという議論に対しては、反対をいたします。  それから次に、審議会をつくって広く民意を聞くからよいではないかという意見もございますけれども、これもその審議会のあり方にいろいろ問題があります。審議会のメンバーは官僚が人選をいたします。ひどい場合は、郵政審議会のように現職の事務次官が委員になっておる。これが何で民意を聞くということになるんでしょうかというわけなんですけれども、仮にそういうものができましても、これは単なる御意見番であって、意見を聞きっ放し。私自身もこういったところの公聴会に出ましたけれども、十分間以内にしゃべれというのであって、ただしゃべりっ放し、聞きっ放し。そういうことで民意を聞いたということになるのかということであります。こういうことになれば、主権者である国民を無視した考えであるというように考えるわけです。  そこで次に、国鉄赤字赤字だというように言われますが、その原因は何かということを突き詰めないで、ただ赤字が出るから手早く運賃改定ができるようにするんだというような考え方は、われわれ主権者からすればまことに心外であるわけなんで、その原因は何であるかということを分析し、それを解決する手だては何かということを、それこそ国鉄経営の基本方針について議論をするのがこの国会の役割りではないかというように考えるわけなんです。その上で、言うなれば株主総会である国会で、それでは運賃を幾らに直すかということを意思決定さるべきことではないか。  そこで、重複を避けますけれども、国鉄のいまの赤字の要因は、第一番目には貨物を見殺しにしてきた、そうして自動車産業、それから鉄鋼だとかセメントのように道路づくりのための産業を育てるためにトラックに優先的な地位を与えてきたために、国鉄赤字の大半の要因が貨物にあるということ。それから第二番目には、出資金で賄うべき設備投資について、利息つき償還を要する借金ですべてやらせた。こういうことが果たして企業経営として許されるのかどうか。  この二つ赤字の大きな要因だと思うんですけれども、それに対する対案として国鉄がいま考えていることは貨物合理化です。ということは、貨物輸送のサービス低下ということに通じます。これは一種の敗北主義であると考えるわけです。それから二番目には、長距離の旅客優先のやり方、そして生活ダイヤを冷遇する、そういうことによって合理化をしていく。こういうことは、国鉄というものが公社であるというその趣旨を忘れた一民間会社的な発想ではないか。  私どもは国鉄はなぜ必要かと言うなれば、民間会社ではとても採算がとれない、民間会社ではとてもやれないことを国が金を出し合ってこういう設備を持ち、動かすんだ、そういう認識を持っておるわけで、言うなれば福祉事業としてわれわれは認識しているから国鉄というものを認めているわけなんです。そういう観点に立って考えるならば、私はやはり国鉄の問題は国民がみんなで考えるという主義に徹しなければ基本的な再建はできないと思うわけなんです。ところが、値上げをすれば増収になる、こういう官僚的な発想で値上げを簡単に手早くやろうというのは、まことに心外であるというわけなんです。今度のあれで新幹線のグリーン車ががらがらである、それをカバーするために航空運賃を上げようという考えがあるようですけれども、仮に航空運賃を上げてみたところで、お客が再びグリーン車に乗るという保証はない。最近の消費者の消費行動というのは、ずいぶん意識的に行動するようになっておる。ですから、いままでがこうであったから今後も消費者の消費行動というのはそうであろうという考えのもとにいろんな対策を練るとするならば、これは大きな誤算を来すであろうというように考えるわけです。  そこで、締めくくりとして申し上げたいことは、国鉄に関する限りこの国会という議会制度がだんだんと形骸化してきておるという事実の上に、さらにその形骸化を増幅させようというこの改正案というのは、国政をわれわれの代表である議員にゆだねている有権者、主義者として、これはまことに逆コースもいいところで かつて国家総動員法という法律があって議決権を譲り渡した結果どういうことになったか、国民がどういう不幸な目に遭ったかということを思い起こしていただきたいのです。非常にオーバーな例を引き合いに出しましたけれども、われわれはそれほどいまの議会制度の形骸化ということに対して危機感を持っておるということを申し上げて、意見の陳述を終わります。(拍手)
  10. 大野委員長(大野明)

    大野委員長 ありがとうございました。  次に、鈴木参考人にお願いいたします。
  11. 鈴木参考人(鈴木順一)

    鈴木参考人 財団法人運輸調査局の鈴木でございます。  今回提案されております国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案に、日ごろ交通問題の調査研究に携わっております一学徒として意見を申し述べたいと思います。  私は、ここに提案されております法案の内容に基本的に賛成でございます。その理由を三つほどにまとめて申し上げます。  その第一は、運賃の賃率を法律によって定めるという最も慎重な手続は、現在ではもっと簡便な認可という方法に改めてよい時代になっているということでございます。いささか私事にわたることに触れますのをお許しいただきますが、私が交通問題の勉強を始めましたのは昭和二十八年でございます。当時のことを思い起こしますと、昭和二十四年に発足いたしました公共企業体という新しい制度をめぐりまして、いろいろ議論が活発な時期でございました。そのころ、内閣総理大臣の諮問機関として臨時公共企業合理化審議会というのが設けられました。この審議会が二十九年十一月に答申を行っておりますが、その中できょうここで問題にしております運賃決定方式につきまして次のように言っております。「国鉄運賃については、国会が直接その決定に関与することをやめて、政府部内に運賃決定のための特別の審議機関を設けることが希望された。」こういうふうに申しております。この意見の表明を皮切りといたしまして、その後今日まで、国鉄問題に関しましてざっと数えましただけでも二十を超す答申、意見書、提言が提出されております。その中で、運賃決定方式に関する提言は、大きく分けて三つになると考えられます。一つは、法定主義を廃止し、運賃独立の機関または政府等が単独に決定するものであります。二番目は、法定主義を廃止し、運賃政府決定するが、何らかのチェック機関の議決を必要とするもの。三番目に、法定制度を維持しながら緩和を図ろうとするもの、この三つのグループに分類することができます。  それぞれの内容に立ち入る時間的余裕がありませんので、省かせていただきますが、これらの中で、私の考えでは、一昨年の夏から半年にわたりまして運輸大臣が直接司会を務められて行われました国鉄再建問題懇談会、この席で出された運賃決定方式に関する意見に最も同感でございますし、きょうここでそれを参考にしたいと思うわけでございます。  懇談会の意見の概要として公表されているものからそのままここに引用させていただきますと、運賃決定方式について次のようにまとめられております。「現在の運賃法制度は廃止して、合理的な運賃改定のできるシステムとするべきであるという意見が多数述べられた。その理由として、次のような意見が出された。」五つ挙げてございますが、「一、本来運賃は、経済原則にのっとって決定されるべきものであるが、現実には運賃改正法案が政治的取引の材料とされている。二、国鉄に当事者能力を持たせるには、運賃も弾力的に決定するようにするべきである。三、運賃を法定している例は外国にもない。四、国会は予算統制により十分監督ができる。五、国鉄運賃はたばこの専売納付金と異なり、利益を生じても国庫に納付する制度ではないので、租税性格がなく、金額まで法定する必要がない。」五つに分類してあるのはこれだけでございますが、なお、次のような意見も述べられております。「金額の法定制を廃止するとした場合には、これに代わるべき制度として、決定原則法律で定めたうえで、運輸大臣認可制とすべしとする意見が多数出されたが、その際処分がルーズにならないよう、権威ある第三者機関でチェックするシステムとすべきであるとする意見が多く、運輸審議会をこれに充てる場合には、消費者代表を含める等民意を反映するよう措置すべきであるとする意見もあった。」  以上、少し長くなることをいとわずここに御紹介申し上げましたのは、過去三十年にわたるこの問題の議論の中で、運賃法定主義廃止の意見がもはや一つのはっきりした形をなしていることを申し上げたいと思ったからでございます。そしてこの背後には、国鉄運賃法が制定されました昭和二十三年から数えますと、約三十年たつ間に、交通サービスの需要と供給をめぐる環境というものがすっかり変わったという時の流れがあることを改めて痛感いたします。それは、一言で申せば交通革命でございます。陸上交通機関における覇者、すなわち覇権を握り天下に命令するものが鉄道から自動車へ改まったという歴史的事実がございます。  鉄道の先進国であるばかりでなく、モータリゼーションの普及の点でも、したがってまた、鉄道と自動車の競争という点でも先議でありますヨーロッパにおける国鉄は、運賃決定方式の変更につきまして、日本より早く、しかももっと徹底した形で取り組んでいるように思います。  イギリス国鉄は、一九六二年、いまから十五年前に、ロンドンと七大都市圏を除いて運賃が自由に決定できるようになりました。ただ、現在はインフレ抑制のため物価委員会の承認を必要としております。  フランス国鉄は、六年前の一九七一年から原則として自由に運賃決定し、運輸大臣に届け出ればよいことになりました。ただパリ市内だけは他の交通機関との調整上、運輸大臣認可を必要としております。  ドイツ連邦鉄道も、一九七一年以降、現行の運賃水準を基準として最高二〇%までの枠内で自主的に運賃を改定できる自由を認められております。ただし、これは通勤通学の定期運賃が除かれております。  ヨーロッパとわが国では国情も交通事情も異なりますので、外国の事例をすぐ日本に当てはめることは十分戒めなければならないと思いますが、鉄道と自動車の競争という流れの中で生じております鉄道の運賃決定方式の変化は、少し大げさに申しますと、一つの歴史的必然としてわが国にも十分当てはまると思います。むしろ、わが国におきます四十年代後半の急速なモー夕リゼーションの浸透を考えますと、二十年前から議論されていた国鉄運賃決定方式の変更はもっと早く実現してもよかったのではないか。先ほどの岡野先年の御発言に私も同感でございますが、その点ではやや遅きに過ぎたと思いますが、いまからでも決して遅くはないと思います。  第一点が長くなりましたので、第二、第二は手短に申し上げるつもりでございますが、第二は、適時適切な運賃改定ができるようになるという点でございます。  利用者にとって運賃値上げが好ましくないことは言うまでもありませんが、避けることのできない値上げであれば、一遍にまとめて五〇%上がるよりも、小刻みに上がる、いわば分割払いの方が抵抗が少ないことは明らかでございます。  ヨーロッパの国鉄の最近の運賃改定状況を見ますと、先ほども岡野先生がちょっとお触れになりましたが、ほとんど毎年一けたの運賃値上げを行っております。ただ、イギリスだけはちょっと事情が違うようでございます。これは、七四年の三月にスタートしました労働党のウィルソン政権が、経済的リアリズムという立場から、国有企業価格を抑制すると補助金を増大しなければならないという悪循環を断つために、鉄道を初めとしまして、各国有産業価格を早急に経済レベルに引き上げるという政策に転換いたしました。その結果、コストとのギャップを深めておりました鉄道の旅客運賃は、七四年の六月、七五年には三、回、一月、五月、九月、七六年一月と、二十二カ月間に五回、累計約七〇%のペースで連続値上げをしております。これには、いまだに収束を見ないイギリスのインフレという事情も考慮に入れる必要があろうと思います。こうして毎年小刻みの運賃値上げをしております状況は、一見したところ、何か安易な値上げをやっているように見えますが、私はこれはむしろ運賃に本来の価格機能がよみがえってきている証拠と思います。また、公企業なるがゆえの放漫経営運賃値上げになっているのではないかと疑うこともできますが、これはヨーロッパ国鉄の実情を細かく分析しなければ何とも言えないことでございます。ただ一般的に言えますことは、競争条件を整えて公企業競争市場のいわば無言の圧力にさらした方が経営改善の効き目は大きいということでございます。  日本国鉄の場合には、競争条件を整えるということのほかに、当事者能力をどうするかという制度上の制約があるわけでございますが、この運賃法改正案が、実現いたしますと、私は国鉄経営一つの大きな刺激が加えられることは確かだと思っております。私は、それによって国鉄企業体としての活力を取り戻す一つのきっかけになることを期待するものでございます。  先ごろ国鉄がおまとめになりました経営改善計画を拝見しておりましたらば、「企業マインドを発揮し、国鉄経営を活力あるものとしていく」ためにという表現が使われているのを読みましたが、この運賃法と並んで提案されております国鉄投資条項の拡大につきましてもこの意味で賛成するものでございます。  三番目に、これは賛成の理由というよりも問題点でございますが、先ほど触れましたヨーロッパ国鉄運賃決定方式に都市交通に関してはそれぞれ制約がついていたことからもわかりますように、自由化されている中にあって都市交通については各交通機関の調整を図っていることは、依然として交通政策の重要な決め手であるということを教えてくれるものでございます。一般の財の価格決定が需給関係の試行錯誤の結果としてある水準に落ちつくように、運賃もやってみなければわからないという一面があることを否定できません。しかしそれをなるべく能率よくやるために、ちょうど賃金水準の決定について情報提供の役割りを果たす公的な機関、専門的な機能を備えたいろいろな委員会がございますように、運賃についてもそうした機構のあることが望ましいように考えます。  これで私の発言を終わります。
  12. 大野委員長(大野明)

    大野委員長 ありがとうございました。  次に、大島参考人にお願いいたします。
  13. 大島参考人(大島茂男)

    大島参考人 私は日本生活協同組合連合会の大島でございます。  日本生活協同組合連合会と全国消費者団体連絡会の場で、国鉄の値上げ問題について全国のアンケートをとりました。集約を四月末日としたために現在全県の集約はされていないわけですけれども、たまたま宮城県、福島県、それと東京その他の一部から八百九十枚ぐらいのアンケートが寄せられております。それをもとに現在の運賃法改正に対して、反対の意見を表明したいというふうに思います。反対の理由は、まず全国消団連などで総論的に考えてますことを最初に申し上げて、次にこのアンケートにあらわれたそういう点からの反対理由ということを申し上げたいというふうに思います。  総論的に申し上げて五点あるわけですけれども、一つは、この運賃法改正につきまして積極的な改正理由が明示されてないというふうな問題があろうかと思います。国会審議が時間がかかるから適時適切な運賃値上げができないとか、または小幅の値上げを何回にもわたってやれるからというふうなこの二つくらいの理由が、現在の国鉄問題を考えるに当たって決して積極的な理由とはなり得ない。逆に言えば、国民国鉄から離れていく、そういうふうな条件もつくり出すのじゃないか、こういうふうに考えているわけです。これが第一です。  第二は、財政法三条、憲法八十四条の問題につきましても私たちはこれは違反していると思っております。この点については詳しい展開は避けたいと思います。  三番目には、現在の交通問題について基本問題を避けた論議になっているんじゃないかというような問題を考えております。この基本問題というのは具体的に三点ございまして、その一つは、エネルギーの効率性ということが現在非常に問題になってきた時代だと思います。そういう時代に国鉄のような大量交通輸送機関というのは、普通の自家用車なんかに比べて単位エネルギー当たりの輸送効率というのが数倍から数十倍になる、あるいは八倍から三十倍だとか、五倍から二十倍とか幾つかの説はあるようですけれども、いずれにしろそういう国鉄などの大量輸送機関の方が自家用車などに比べて非常に輸送効率が高いということは論証されていると思います。そういうような観点から見れば、過去二十年ぐらい続いてきたモータリゼーション中心の交通輸送体系をもう一回考えるべき時期が来ている。それはやはり国鉄などを大きく生かす形で考えるべき時期が来ているのじゃないかというような点があると思いますけれども、こういう交通の基本問題について十分の論議がなくて、過去の延長線上、その発想に立った解決案として現在の運賃法改正が出されてきている、この点が問題だろうというふうに思っております。これが三番目の点です。  四番目ということで、この基本問題の二に属するわけですけれども、高度成長時代の過ちの責任の明確化と、それを明らかにした上での再建方針というのでなければ、今後の抜本的な再建方針につながらないだろうというふうに考えております。高度成長時代の過ちというのは、どこの企業であっても借金を膨大にやって固定資産をどんどんつくっていくということをやれば、一、二年前にも興人という会社が倒産しておりますけれども、同じようなことをやれば赤字になるのは決まっているというような問題が基本問題だったと思うのですね。そういう点では借金による過大な設備投資をやってきて、それによって経営体質を悪化さしてきたというような問題を解決することなくして、またはその解決ということになれば当然利子負担の軽減措置をどうするとか長期債務を計画的にどういうふうにやるとか、または国の財産ですから国の財産を買うための基礎的な費用、これはどこが出すべきかとか、そういう基本問題があって初めてその一環として運賃決定方式ということが論じられてしかるべきだというふうに考えているわけです。  ちょっと時間かあれですが、あと五番目にアンケートなんですけれども、国民の期待がどこにあるかというような点から見て、国民の期待から背を向けて再建はないのじゃないかというような問題をアンケートを中心に申し上げたいというふうに思います。  アンケートの結果でございますけれども、先ほども言いましたように、アンケートは八百七十八枚集まっておりますけれども、その中で国鉄運賃法の制定について国会で審議せよという論議は七八・五%でした。ですから、国鉄運賃については国会で審議してほしいというような声が中心であったというふうなことでございます。この点は、アンケートをやる中で出てきたみんなの声をもうちょっと聞いてみますと、まさに国鉄というのは日本国有鉄道でありまして、都会の人にとってみれば私鉄があります、何がありますということになりますけれども、全国的なアンケートをとれば、国鉄というのは本当に国有鉄道だ、国民全体のものであるというような意識が相当強いということが不実問題としてあったと思います。そういうことの結果として、いま言ったような国会で審議せよというふうな意見が圧倒的であったというふうなことでございます。  二番目には、赤字の解消の基本的な考え方について問うた場合にも、国の援助をふやして解決してほしいというのが九三%、これももう圧倒的でございます。ですから、小幅の運賃値上げをたびたびやって解決してほしいというような意見はほとんどなかったというようなことでございます。  三番目には、アンケートは、きょうちょっと一部福島県の分だけ持ってきたのですけれども、一つ一つ十四項目について、マル・バツ式じゃなくて、希望を言葉で詳細にずっと書いてもらったわけです。その中で次の問題になるのは、国鉄について要するに不満がある点は、大きく見て、まず国鉄ダイヤの編成が非常に住民本位じゃないという問題が一番大きく出されております。ダイヤ問題はアンケートの回答者の中で約八割の方が出しております。その中で具体的な中身を見ますと、生活ダイヤの本数が少ない、これが半数近くあります。その他いろいろあるのですけれども、ひとつ具体的にちょっと例を挙げますと、こんなことが出ています。  奥羽本線で弘前から青森に通う方ですけれども、九時三十分に普通電車が出たら十二時四十四分まで普通電車がないというのはどういうことか、こういうわけですね。奥羽本線ですからね、弘前から青森まで三十七・四キロを行くのに。それはほかでも出ています。たとえば福島の人がアンケートに答えて、福島から山形方面に行くのに午前中に適当な列車がないので日帰りで帰れないから困るというふうに答えてきています。時刻表を見てみたら、確かに午前中に適当な普通列車というのはないのですね。朝の六時半ごろ出たらもう本当にない。こういうふうなダイヤの状態を改めなくちゃいけないというふうに考えております。  それともう一つ、これはアンケートの中でやはりこの運賃法改正に絡んで比較的重要だなと思っているのは、国会外で特急料金や何やらが決められるようになった結果、それがいかに国民生活から遊離した決め方になってきているかという事例が続々と挙がっていることです。ですから、特急料金なんかの決め方を見ると、国会の論議を外しちゃったら、どういうふうな国民から遊離した決め方になるかわからない。そら恐ろしくなるような実例が続々と挙がっているということです。これについても二つぐらい典型的な事例を挙げてみたいと思うのです。  一つは、これは栃木の方が出したやつですけれども、十年前に宇都宮から上野に上ってくる急行は、大体日光号というのが中心だったそうですけれども、一時間十分から二十分で上野に着いたそうです。ところが、現在は特急で一番早いという「ひばり」が一時間十二分です。それではくつる」が一時間三十六分。ですから実際には十年前の急行並みの速度で特急が走っている。料金だけは物すごく高くなっている、こういうふうなことですね。  同じように、料金とそういう問題の関連を言いますと、これは千葉のアンケートですけれども、安房鴨川から千葉に大体朝の七時から夜の七時直前まで、つまり一番利用する十二時間という単位をとってみて、それで普通、急行、特急がどういう間隔で走っているかというと、この間、十二時間の間に普通が十一本走っています。急行が三、本、特急が九本走っているわけですね。それで、その特急はやはり栃木の人が言われたように前の急行より遅い特急が走っているということです。料金はどうなるかというと、鴨川の三つぐらい先に主な駅で茂原というのがありますけれども、そこでもやはり特急を使わなければいけない。それで料金は、運賃が二百七十円、特急料金が八百円だそうです。一番遠い鴨川であっても運賃が七百六十円、特急料金が八百円、こういうことですね。ですからこういうような点を見ると、昔の急行より遅い特急を走らせておいて、それでそれしか、または本数から見ても昼間の大事な時間はもう特急が九本も走っている。特急、急行を合わせた方が普通より多いんだというような状態にしておいて、それでなおかつ短距離であっても特急料金を払わせる、こういうふうな状況考えてみると、法定でやらないでいる現在のこの料金の決め方の実態、こういうことが反省されないで、ただ運賃国会再議から許可制に改めればいいんだというふうな論議というのは、成り立たないんじゃないか。少なくともそういう論議を出す以上は、いま言ったような国民の切実な期待にどうこたえるかということについての抜本策が同時に出されなければ、国民としては納得しないだろうということを感じております。  まとめですけれども、国民は、先ほども申し上げましたように、国鉄国民のものだというふうに考えているということが大事な前提だと思います。そしてそれを直していく際に、国の財政支出であってもまたは料金の値上げであっても、いずれにしろ国民の大きな合意、応援団ができなければ国鉄再建というのはできないだろうと思うのです。現在ややともすると応援団の声の方は、自動車の応援団であったりまたは飛行機の応援団の方が多いような感じが続いておりますけれども、それはやはり、国鉄もそういう状態をつくり上げてきたのじゃないか。本当に全国民がこぞって国鉄再建について応援団になれるようなそういう状態をつくり上げなければ、または単なる応援団じゃなくてみずからも参加して、それで改善提案を行ったり一緒になって改善していくというようなことにならなければ、本当の意味の改善というのはないのじゃないかというふうに考えているわけです。そういう国民の合意、国民の参加ということをつくり上げていくしで、現在の国鉄運賃法改正というのが全く国民のそういう要求から背を向ける、足げにするというような性格を持つものだろうと思いますので、ぜひ運輸委員会におかれましては消費者のそういう声を十分におくみ取りいただきたいというふうに考えております。  以上でございます。(拍手)
  14. 大野委員長(大野明)

    大野委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
  15. 大野委員長(大野明)

    大野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤六月君。
  16. 加藤(六)委員(加藤六月)

    ○加藤(六)委員 参考人の先生方には御貴重なる御意見をお聞かせいただきましてまことにありがとうございました。心より御礼申し上げます。時間も制約されておりますので、ごく簡単に要点のみお聞かせいただきたい、こう思います。  山内先生にお聞きいたしたいのでございますが、私は、今回のこの改正案は法定の中の法定ではないだろうか、こう思っておるのが一点でございます。財政法三条、特例法その他の枠の中でやらざるを得なかったいろいろな経過があるわけでございます。一つは、法定の中の法定ということで法定廃止にはならぬのじゃないかという、幅広い意味のやはり法定の枠は残っておるという点、どうお考えだろうかということが一点です。  その次は、法律手続としまして、これもずいぶん議論したのですが、運賃法の附則の第十条の次に次々と加えていったわけでございますが、これは先ほど先生から、法律法律関係である、あるいは公権法に対する特例法の関係として見ればいいではないだろうかというような御説明がございましたが、運賃法の附則の中にこういう賃率等の決定に関する特例ということで新しく条文を入れていったとしても、特例として変わりはあるのかないのか、ここら辺のことについて簡単に承りたい、こう思うわけでございます。
  17. 山内参考人(山内一夫)

    山内参考人 いまの、私もちょっと意味が受け取れかねたところありますので、私のお答え足りなければもう一回お聞きくだされたいと思いますが、法定の中の法定という意味は、法律のしかるべき枠の中で認可制があるのだという意味ならば、確かにそうでございまして、国会が相当厳重な枠をつけておられるわけですから、財政民主主義というか、国会の意思がやはりそこにあらわれているという意味だと思います。それは憲法の八十三条から流れてくるようなそういう精神で、仮に八十四条の租税法律主義の適用がないとしても八十三条という問題はあるのですから、どうしてもそういうことにならざるを得ないでこうなるのは当然かと私は思います。  それから先生が御質問になった後の方の問題でございますが、財政法の三条に書いてあるのは専売価格事業料金、どっちも国の独占に属する事業についてのことでございまするが、これはやはり憲法の八十四条から出てくるものだというふうに学者は、多くの人は説明しておりますね。そういたしますと、この八十三条と運賃法の附則で書いてある、現在問題になっているこの制度はどういう関係に立つかということでございまするが、これは二つ考えがございまして、今回のような、消費税部分を含まないような国鉄はそもそも財政法の三条の事業料金に入らないのだという解釈が私は一つあると思うのでございます。そうすれば、これは三条を存置しておきましても全然問題はないわけですが、そうでなくて、あの言葉どおりに独占に属する事業料金もあそこへ入るんだ、国鉄のようなものも入るんだというと、財政法の三条と現在のこの法案はちょっと矛盾するように思われるのです。もう一つ矛盾しないように解釈するのは、「法律又は国会の議決に基いて」と書いてあるのだから、行政府に委任ができるんだというふうに読めばそれはいいのですけれども、こういった委任がそこへ入っているのかどうかというのは、そこにまた解釈の争いが多少出るのではないかと思うのです。ですから、解釈の仕方によると、財政法の三条とこれとは矛盾するという理解は一つあると思いますが、仮にあっても、先ほど申し上げましたように後法優先原則と申しますか、特別法の優先の原則でそちらが勝つというふうに読むのが常識だと思います。いま運賃法の附則で書いてある部分は、これは経過的にそういうふうにできておりますから、そこに書いてあるから何らかの違った結論が出るということではないと思います。経過的にそういう一つ制度をつくられたのが附則でございますから、その附則としてできた制度が三条なり憲法八十四条とどうなるか、こういう問題になるのではないかと思っておりまするが、足りなければどうぞ……。
  18. 加藤(六)委員(加藤六月)

    ○加藤(六)委員 ありがとうございました。  次に、岡野参考人に御質問いたしたいと思います。  前回も、前々回の際にも貴重な御意見をいただき、きょうはまたおしかりをいただいたわけで、恐縮いたしております。  岡野参考人からいろいろお教えいただいた中で私たちも非常に考えさせられた問題がいろいろあるわけですが、一つは、ようやく昨年の当運輸委員会において、運賃改定方式の検討ということを委員会の決議の中に入れたわけであります。四十七年に御意見いろいろ承りながら非常に遅くなったのはなんですが、まあ、いろいろな事情があったわけです。それで、きょうお教えいただいた中で、私たちも国鉄再建問題で一番苦労いたしておりますのは、経済環境の変化市場構造変化競争条件の変化というものが行われております。この競争条件あるいは市場構造変化、経済環境の変化ということに対応して国鉄再建するためには公権力の介入というものをどの程度やればいいのか。先ほど、競争制限は余り好ましくないというような御意向等もあったわけでございます。そして英国の鉄道国有化から始まってのトラックの国有化の例等もお教えいただいたわけでございますが、ある面では規制を加えつつ、国鉄を他の競争機関と自由に競争させないと国民に申しわけないという気持ちがあります。しかしまた別の面では、こういうだらしない国鉄になりまして、四千五百億になんなんとする国民税金をこれにつぎ込まなくてはならないということになってきておる。そこで、いま申し上げました経済環境、市場構造競争条件の変化に対応して、国鉄の保護、助成、再建というものにどの程度の公権力が介入したのが一番いいのだろうかという点をもう少し詳しくお教えいただきたい、こう思うわけでございます。
  19. 岡野参考人(岡野行秀)

    岡野参考人 お答え申し上げます。  これにつきましては大変意見が分かれるだろうと思います。一つは、非常に公権力を発動して——もし神様が公権力を発動したならば恐らくすべてがうまくいくかもしれません。     〔委員長退席、小此木委員長代理着席〕 しかし人間がやる限りにおいては、公権力の発動がかえって市場をゆがめるというのが私の信念であります。まあ、信念というふうに申し上げます。そしてそれは最終的に、たとえば旅客にしましても、われわれはどういう輸送手段をどういうふうに使うかということについて自分の選択権を完全に自由に持っております。したがって、長距離が高くなれば旅行も短距離で回数をふやそうとか、あるいはほかの輸送手段を使おうということができますし、それから荷主は、短期的にはほかの輸送機関を使おうかという選択もできますし、長期的には、それだけ高くなったのならば工場を移しで、むしろ消費地立地にしてなるべく輸送を使うまいという調整もできるわけでして、そこまで見通して公権力でうまくやれるかといいますと、私は恐らく無理だろうと思います。むしろ現実の問題として何かぐあいの悪いことが起きてきたときにそれを矯正していく、そして原則としてはなるべく競争をさせる。ただし、その競争の条件につきましては、まあ、こういうことを申し上げていいかどうかわかりませんが、たとえばトラックにつきましても、前回の道路関係税の改正において、片一方ではイコールフッティングという議論をしながら、営自分離ということで営業用のトラック等について、あるいは営業用について有利な税制をする。これは本来のイコールフッティングということからいえば実は逆のことをやっているわけであります。したがって、部分的に見て公権力の発動が一見よくても、全体としてコンシステントなやり方をとるというのは大変むずかしいというふうに私は思います。  それで国鉄の問題ですが、これはいままでの国鉄の過去債務等々につきましても、形式上は国鉄国会で予算の承認を得ていろいろ投資をするわけですけれども、もし国鉄が相当の自主的な経営の権利というか、そういうものを与えられているとしたならば、一体どこまで鉄道を建設したか。建設公団が建設して、それを国が借料まで出してくれて国鉄経営しても、人件費すら賄えないような線がいっぱいあるわけです。こういう投資を、もし自主的な経営能力が与えられていたならば果たしてやっただろうか。そういうことを考えますと、これは大変むずかしいことかもしれませんが、やはり国鉄自体が、現在の市場の中でどういうことをどういうふうにしなければならないかということを自主的に決める。企業という立場からすれば、先ほど申し上げましたように、何をつくるための施設をどこに、そしてそれをどれだけ使って何を生産し、それを幾らで買ってもらうか、それからサービスの質はどうするか、これが企業が決めなければならないことであるわけですが、そのうちの大部分につきまして企業が決められない。そういう制約の状況企業がやれることといったら非常に限られるわけであります。私はそういう点で、国鉄に対してもし国としてこういうことをやれとおっしゃるのであれば、たとえば地方交通線について、これは採算に合わないだろう、しかし、これは国としてやるべきだというふうにお考えであればそれについて補助を出す、それからほかの輸送機関等々と競争が十分やれる可能性があるというところにつきましては、企業体として自主的に行動させる、そういうことが必要であるかと思います。  また、運賃の問題になるわけですけれども、たとえば料金が大変高くなりました。グリーンにしましても、急行、特急にしましても、大変高くなりました。これも実はいろいろな見方があるでしょうが、国会で法定をしなくなったから上がったという見方もできますが、逆に言いますと、われわれが払うとき、特急を使いたいと考えますと、特急料金が幾らで運賃が幾らであるからいいということではなくて、特急というサービスを使うからには、どこかへ特急を使って行くときには全体として幾らか、特急の輸送サービスに対して幾ら払うかということが問題であるわけで、その内容自体は問題ではないわけであります。ところが運賃の方だけが国会で決められ、しかもそれがおくれがちになるとしますと、何とか収入を上げようということになれば料金自体を動かさざるを得ない。そういう形で来たのが、むしろ現在のような運賃のひずみをもたらしている。そういう運賃だけが法定されていた、これを全部法定すればいいじゃないかという考え方も成り立つかもしれませんが、その場合には一体その水準をどう決めるか。国会で、これが一番適切な額で、これであればお客さんが納得してどのぐらい乗ってくれるかということがどの程度おわかりになるか。これは私は、国鉄市場調査をし、そしてなるべくお客さんに乗ってもらってお金を払っていただくというようにせざるを得ないというふうに考えますので、そういう点でなるべく国鉄経営について責任を持たせ、そしてその中でやっていくことをしますれば、私は一般の職員もそれに伴ってそういう努力をするだろうと確信しております。
  20. 加藤(六)委員(加藤六月)

    ○加藤(六)委員 鈴木参考人にお伺いしますが、ただいま岡野参考人からいろいろお教えいただいたんですが、私たちは昨年の五〇%運賃アップ以降、国民国鉄離れという問題と運賃改定の限界という問題をいろいろ研究いたしておるわけでございます。もちろん、これは国鉄以外の他の交通機関との競争関係という問題あるいは国民の乗り物を選ぶ自由という問題、いろいろの問題があると思うわけでございますが、この運賃改定の限界という問題に実は相当真剣に取っ組んでおるわけでございます。もし今回この法律が幸いに各党の協力をいただいて通過したとしても、運賃改定そのものには相当の限界が出てくる、こう思うわけでございますが、鈴木参考人はこの運賃改定の限界ということをどのようにお考えになっておるだろうかということが一点。  もう一つは、国民国鉄離れという言葉がよく使われております。これは昨年の大幅運賃改定その他から起こったのかあるいは国民国鉄労使の姿勢に対する問題も国鉄離れというものの要因になっておるのかどうか。そこら辺平素こういう問題について調査をされておられます鈴木参考人に御意見を承っておきたい、こう思います。
  21. 鈴木参考人(鈴木順一)

    鈴木参考人 運賃改定の限界はどの辺かというお尋ねでございますけれども、これは先ほども私の陳述の中で申し上げましたように、やってみなければわからないという大変無責任なお答えしかできないわけでございます。ただ、ヨーロッパの例を引き合いに出しましたけれども、幅を見てみますと、フランスでは旅客につきまして七〇年以降四・六、五・二、五、五・一、七・五、八・五、八と毎年上げております。先ほど申しましたイギリスはやや例外でございますが、物価の上昇ということを考えますと、それに見合ったような改定というのは、これは当然行われ得ると思います。  これは後段の御質問の国鉄離れとの関係になるわけでございますけれども、大幅に上がったから国鉄の利用をやめたという点ももちろんあると思います。しかし私、昨年の値上げ以降の動きで、私自身としては特に考えなくてはいけないと思っておりますことは、何と申しましてもこの四十九年以降三年続いております大幅な経済活動の停滞という現象が、物の移動、人の移動を極端にスローダウンさせたということの影響を人一倍強く見ておりまして、国鉄運賃が上がったために——これはもちろんわれわれは、上がればそれに応じてもっと安いものはないかとかいろいろ考えるわけでございますから、上がれば減るというのはいままでもございました。ただ、五〇%という大幅でありましたために、それがやや強くあらわれているだけであると思います。  国鉄離れの理由として何を考えるかということでございますが、私は、これはモータリゼーションという、車にモーターがつくことによって、いままで足で行っていたところが車で行けるようになるという、戦後われわれが手にした自由の中で最も確実な自由ではないかと思います。その自由を享受していると思います。これが国民の交通という行動の中に定着いたしまして、大抵のことならもう自分の車で済ませるとかあるいはバスで済ませるというようなことが行われるようになりました。ローカルに参りますと確かに国鉄のダイヤは不便になっておりますけれども、これは大体そこに並行してバスが非常に頻繁に出ている。どんな山奥といいますか、へんぴなところに参りましてもバスがあるというようなことが、在来それがなかったために国鉄を利用していた人たちがいたために国鉄のシェアが高かったわけでございますから、それが、われわれが車を利用するようになったために当然起きた変化でございまして、この国鉄離れを私はそう国鉄として卑下することはないし、また余り深刻に考えない。むしろわれわれの生活が便利になっていく、進歩していくことの一つの結果であると思っているものでございます。
  22. 加藤(六)委員(加藤六月)

    ○加藤(六)委員 どうもありがとうございました。
  23. 小此木委員長代理(小此木彦三郎)

    ○小此木委員長代理 次に、久保三郎君。
  24. 久保(三)委員(久保三郎)

    ○久保(三)委員 それぞれの参考人の皆さんからは、大変有益なお話を伺いまして、ありがとうございました。限られた時間でありますので、それぞれの皆さんにお尋ねできないかもしれませんので、あらかじめ御了承いただきたいと思うのです。  最初に山内参考人にお伺いしたいのでありますが、先生は提案されている法律に忠実に限定してお話しをなされたようであります。国会でこれまで問題になっているのは、運賃に象徴されておりますが、国鉄全体の問題が問題になっておるのでありまして、国鉄全体の問題を抜きにして運賃の問題はないことは御案内のとおりであります。そういうことを前提にして考えていった場合に、運賃が適当であるかどうかの前に、利用者である国民そのものが負担する責任があるかどうか。よく受益者負担原則とか利用者負担原則とかいうことで言われております。その原則が、実は国鉄経営の中ではいまだに確立されておらないのであります。ややそういう方向には向いてはきておることは事実でありますが、完全でないのであります。  そこで、先ほどの先生のお話の中で、租税分、そういうものを含んでいないからいいではないかというお話のように承ったのでありますが、たとえば国鉄の中には公共割引という制度がございます。しかも、これは法律に基づかないものもあるわけであります。そういうことになりますと、これは政策的な割引でありますから、当然利用者の負担ではなくてむしろ税金で賄う部分であります。そういうもののしわ寄せが運賃に含まれるということ自体に矛盾があるわけでありますね。そういうことがありますので、われわれ自身としては、運賃そのものの費用負担の区分を明確にしていくことが先決であろう、こういうふうに一つは思っておるわけであります。  それからもう一つ運賃については、先生御承知のように、賃率は法律で決めるということになっておる。今度の改正案は、賃率ではなくて、賃率を決める計算の方法を言っているわけです。そうなりますと、これはへ理屈というか、三百代言的な議論になるかもしれませんが、どうもその点は法律にもとるのではないだろうかというような考えもあるわけであります。そういう点について、先生はどういうふうにお考えでありましょうか。
  25. 山内参考人(山内一夫)

    山内参考人 先生がおっしゃった前段の点ですが、私は先生と同じような意見でございます。私、国鉄に縁がありまして、何回か相談を受けるような機会にも恵まれまして、何とか国鉄再建してあげたいというとずいぶん言葉が潜越でございますが、そういう気持ちを持っておりましたが、その場合、公共割引と申しますか、それが相当重く国鉄経営にのしかかってきているのじゃないかと思うのです。ですから、国鉄企業としての合理性を徹底していく、それから外れる公共的な割引というものは国がめんどうを見るというたてまえ、制度をとりませんと、受益者の方のお金を何か公共的なものに回す、そういうところがありまして、租税分がないということは、そこで多少そういうにおいが出てくるところは、私もちょっと気になるところではあるのでございます。ですから、国鉄再建のためには、ぜひ公共の割引を国の方でめんどう見るということになりませんと、うまく再建できないのじゃないかというふうに私も思います。  それから、後段の運賃法の賃率で、附則の部分原則が書いてあって、運輸大臣認可制の基準が少し書いてある形になっておりまするが、その附則で書いてある分は、本当は法律の体裁から言えば、立法技術といたしましては、特例法を別につくるという考え方があると思います。だけれども、附則である時期を限って書かれるわけですから、ああいうふうに附則で書かれるのもやり方としては私はあると思います。しかし、それはある時期については原則を崩しておるわけですから、運賃法の本体の原則とは違うのは当然で、それだから問題になると思うのですが、そこで運輸大臣認可の基準がああいうふうに拘束されるならば一応合憲性が弁明できるのじゃないか。それは先ほど加藤先生にも申し上げたように、主として憲法八十三条との関係でございますが、そういうふうに思っております。
  26. 久保(三)委員(久保三郎)

    ○久保(三)委員 次に、岡野参考人にお伺いしたいのです。先生のお話は前にもお聞きしておるわけですが、きょうは一つだけお尋ねしたいのです。  この法律が通過すれば、言うならば運賃法定制が緩和される、緩和されるというのは、法律というより国会決定から緩和されるということ、ただしこれは運輸大臣認可ということになります。それでは運輸大臣認可国鉄の予算総則との関係はどういうふうになるのだろうか、本当にこれで緩和できるだろうかというふうにも思うわけでありまして、これは先ほど鈴木参考人からもお話がありました当事者能力の問題も、理屈としては出てくると思うのです。ただし予算総則がそのままで運輸大臣認可でということでは、当事者能力を認めていくにしてもあるいは法定制緩和を認めていくにしても、どうもすきっとした考えにならないように思うのでありますが、岡野先生の御意見としては、予算総則との関係でこういう方法がとられた場合にはどういうふうになるだろうか、どういうふうにお考えでしょうか。
  27. 岡野参考人(岡野行秀)

    岡野参考人 お答え申し上げます。  この問題は実は大変むずかしい問題だと私は思います。私は、基本的にはいまのような予算総則についても本当は変えるべきだ、要するに企業体として活動する場合に、初めから予算をつくるわけですけれども、どの企業でも、今年度の予算をつくったといって、全部その予算のとおりにいって、最終決算までやるということはまずあり得ないわけです。何がどれだけ売れるかということすらちゃんとわからないわけですから、本来から言えば、いまのような予算の決め方についてもかなり概括的な、そして実際の成果が間違ってなかったかとか、そういうことで本来やるべきであろうというふうに私は思います。現時点の問題ですと、確かにそういう点ではむずかしい点があるかと思いますが、予算の段階でもある程度弾力性を持たせて、その間運輸大臣認可運賃改定をした場合に、その時点でまた次のそれ以下の計画といいますか、をつくるということ以外にはないだろうというふうに思います。
  28. 久保(三)委員(久保三郎)

    ○久保(三)委員 もう一つ岡野先生にお伺いしたいのですが、運賃の弾力性というのは値上げをすることだけではないだろうと思うのですね。ところが、今度の法案は値上げをすることだけなんですよ。下げることはないんですね。いまどなたかのお話の中にもありましたが、競争前提にというお話もございました。特にこの国鉄貨物の問題一つとっても、やはり競争原則前提にしなければできないものもたくさんございます。特に国鉄輸送を全部完結することが、ある特定の品物以外はできないんですね。そうだとすれば、協同一貫輸送ということになりまして、その中にはある程度、協同でありますから、独善的な立場での運賃や運用というのはむずかしいと思うのですね。そういうことを考えますと、いまもしも考えるとするならば、弾力的な運用の方法を先に考えるべきではないのだろうかというふうに思うのです。  グリーン車の話が出ましたが、グリーン車を上げた、上げたら乗らなくなったというのでいまあわてふためいているわけですが、まだ下がらぬようでありますが、一週間たっても十日たっても乗ってくれなくなったら、それは率直に言って失敗だというので、どこのお店でも値下げするのがあたりまえなんですね。そういう値下げする方はちっとも弾力性がないんです。そういう意味で、適用の方、適用の受けざら、決められた賃率、運賃、そういうものを運用する、適用するその受けざらの方の弾力性というものを先に考えるのが筋のように思うのですが、いかがでしょう。
  29. 岡野参考人(岡野行秀)

    岡野参考人 その点については私、最初に申し上げましたように、現在の国有鉄道運賃法自体が、たとえば賃率を決めて全国一律の賃率でも適用しなければならない。そのほか、実際には運輸大臣認可で決められる料金等々もあるわけですけれども、こういうものにつきましてたとえばキロごとでやる、場合によっては擬制キロというようなものが使われたことがありますけれども、賃率も含めましてもっと弾力的に決められる。ですから、私は、実際にもし私が国鉄の総裁であれば首をかけてあるいは実験してみるかもしれませんけれども、場合によってはあるところは下げるということも十分あり得ると思います。ただ、問題なのは、そういうことが国鉄としてなかなかやりにくいということは、国民一般にキロ当たりの単価といいますか、賃率というものが同じであるということが公平である、実際上片一方でコストの違いがあるんだということを認めながら、賃率が等しいということが公平であるというような観念がありますと大変むずかしくなるわけです。先ほど例が出ましたような特急の料金にしてもグリーンの料金にしましても、あるキロ程で階段的にぱっと上がるようなかっこうになっているわけですが、これはいままでの制度上、運賃はキロ程ごと、それから料金はあるキロ程で階段的に上げる、そういうかっこうになっているわけでして、私自身はこういうものについてもすべて弾力的にし、あるケースによってはその部分については値下げをする。ですから、今度の運賃法改定は、いままでですとすべてきちっと決められてしまうということに対して私としては実は大変不満なんですが、一歩前進である、将来の方向としては一層の自由化をすべきであるというふうに考えております。
  30. 久保(三)委員(久保三郎)

    ○久保(三)委員 鎌倉先生にお伺いしたいのですが、お述べになったことではなくて、いま国鉄で大きな問題になっているのは、御承知のように幾つかありますが、その中でも貨物輸送の問題が当面の課題になっておりまして、国鉄当局は昨年の十二月に、大体三分の一から四分の三くらい現有勢力を減らして固有経費で二年か三年でとんとんにしよう、こういう計画のようであります。手前どもはそういうことをやったらば、だれかが言ったように、国鉄貨物は安楽死であろうというふうに思っているのですが、これらについてどのようにお考えでしょうか。
  31. 鎌倉参考人(鎌倉孝夫)

    鎌倉参考人 貨物の問題については、一つは自動車、民間輸送の問題との競合関係ということと、それからもう一つは、不況の問題もかなり重要な問題としてあると思うのです。そういういわば民間貨物輸送との競合問題、その中で、実は民間輸送業者の間の競争から、たとえば夜間のトラック過積みの問題等々、その労働者についても大変過酷な条件が加わってきている。そういう状態をいわば前提にした形で、国鉄自身がまた競争できるような貨物合理化をやっていこうということになりますと、一つは、ただでも非常に悪化している国鉄労働者労働条件、それがさらに一段と悪化してしまうということになるわけで、いわば悪化の競争という形でしか問題が処理できないという状態だと思います。そういう中でやはり輸送体系全体を抜本的に改革していく方向というものをはっきり打ち出していかなければならないと思うのです。  一つは、民間輸送についての一定の規制を明確にしていかなければなりませんし、あるいは国鉄輸送民間輸送との一種の協調関係なりあるいは分担関係なりをはっきりと位置づけていく必要がある、いわば労働強化なり定員削減なりそういう撤退の方向ではなくて、全体的な協調の中でもう一度徹底的に見直しをしていく必要がある。少なくとも重要なのは、トラックの輸送というのは日本の場合に大変比重が高いわけでありますし、最近では資源の問題なりあるいは公害問題等についてトラック輸送から来る大変重要な問題が、本当に解決を迫られている問題が出ているわけでありますから、そういったいわばトラック輸送全体の見直しが何としても必要ではないか、こういうふうに考えます。  しかし、その問題を解決していくためには、いまの日本産業構造にかかわってくる問題となるわけで、この産業構造を変えていく問題の一環として、少なくとも国民の福祉向上を目指す産業をどう立て直していくのか、そういう問題の一環としてやはり国鉄貨物輸送の問題も考え直していくべきではないか、こういうふうに考えております。
  32. 久保(三)委員(久保三郎)

    ○久保(三)委員 次に、鈴木参考人にお伺いしますが、国有鉄道法の一部改正について言及されたのは鈴木さんだけであります。私どもは実際言うとこれは不安に思っているのです。本業が斜陽というか左前になっているのに、兼業でうまくいくなんということはあり得ないだろうというふうに思っているんですよ。世の中の人は何か国鉄には遊んでいる土地がたくさんあるから、その土地でも売ったり利用したらもっともうかるじゃないかという考えをする人が多いもんですから、そういう世論というか、意見に押されて、この法律案改正が出たとするなら、私はこれは大変な間違いだと思っているんです。鈴木参考人は専門家としてどういうふうにお考えですか。  それから、もう一つは、企業マインドというのは、先ほど大島参考人からお話がありましたように、いわゆる商品であるべき輸送サービスに対する不満が国民の中にたくさんあるのですね。不満がある限りは、これは売れないと言ったら、何か言葉が変でありますが、これは企業マインドどころか、大変なことだと思うのですね。事実、大島参考人がお挙げになった幾つかの例が、われわれの目の中にも入ってき、耳にも入ってくるのであります。そういうものをそのままにしておいて、企業マインドというものを率直に私どもは受け取れないと思っているのです。これには、やはり体質をどういうふうにか改善しなければならぬ。しかし国鉄自体体質国鉄自体が変えるということは、これは百五年もたっていますから、実際に言って、なかなかむずかしいと思うのですよ。  そこで、われわれは従来提案しているのは交通委員会というものを地域に設けて、その交通委員会という中には、利用者なり地方自治体なり関係者なりが入って、国鉄ばかりではありませんけれども、そういう交通に対して注文をつけたり、提言をしたりということをして、交通を民主化することが一番大事ではないかというふうに思っているのですよ。そういう意味で、企業マインドということにお触れになりましたが、そういう意見がなければ、私はとうていだめだろうと思うし、それから、たとえば住宅公団に今度は土地を貸して、住宅をつくるということが新聞に出ましたが、これもいいと思うのでありますが、私は、輸送関係のない住宅を建てても、これは国鉄のやる仕事ではないと思うのです。住宅公団のやる仕事ではあるが、国鉄関係する住宅政策ではないと思うのですね。電車を利用する人のための住宅を建てることが先決でなくてはいけないのではないかと思うのですが、その辺はいかがでしょう。  あわせて、時間もないので大島参考人にもちょっとお伺いしますが、お述べになりました幾つかの不満というか、要求というか、そういうものをまとめる工夫は、いま私が申し上げたような組織をつくることが一つではないだろうかと思うのだが、いかがでしょう。
  33. 鈴木参考人(鈴木順一)

    鈴木参考人 お答え申し上げます。  国鉄投資拡大することについての御批判と承りましたけれども、具体的な例でひとつ私の感じを率直に申し上げます。たとえば、汐留の駅、あそこをもっと立体的に開発したらいいじゃないかというような意見はかなり前から出ていたと思います。私、たまたまチャンスがございまして、浜松町の駅のそばにございます国際貿易センタービルの展望台に上ったことがございます。あそこから見おろしますと、都心によくこれだけのスペースがあったなという感じがまずいたします。その道一つ隔てたところまで銀座のビルが押し寄せてきているわけでございまして、そして、その汐留の構内はもっぱらコンテナ専門になっているようでございますので、朝着いて夕方出るというときに活況を呈する以外に、昼間はほとんど閑散としております。そうするとこれを見た人は本当にこのスぺースをもっと有効に活用したらという感じを持つな、私自身もそういうふうに思いました。この問題はそういう土地利用という、しかも都心のああいう限られた土地でございますから、これは国鉄だけの問題ではないと私は思っております。  どういうふうにそれをやるかということについて、先ほど例に引きました経営改善計画の中でも、その点にはちゃんと触れておられますけれども、私は、外国の事例などから勘案いたしまして、これは都市開発あるいは都市画開発といったような観点からの取り組み方が必要であろう、そういうふうに思っております。もちろんいろいろな懸念もございますし、それでもって、収益に結びつけるということは、御指摘のように本当に容易なことではないという点については同感でございます。  それから、企業マインドという言葉についてのお尋ねでございますけれども、国鉄のサービスが本当に利用者に喜ばれているだろうか、不満だらけのサービスをしていて、利用されるはずはないじゃないかという御指摘は、私もそのとおりだと思います。これはお言葉を返すようですけれども、いつ着くかわからない貨物輸送とか、あるいはスピードダウンとかいうことでダイヤが必ずしも守られていない、いらいらするような経験はしばしば持つわけでございまして、こういう意味でのサービスの質の向上ということはぜひやっていただきたいというふうに思います。  それからダイヤの問題とか、ローカルな、その地域独特の問題について、本当に利用者の声が吸い上げられているのだろうかどうかという点については、私もかねがね一つ問題意識を持っておりまして、パブリックリレーションズという英語が戦後アメリカから入ってまいりました。これはアメリカの企業が、公衆とのもろもろの関係を常日ごろよく保っておかないとだめだということに根差した一つ経営学上の、経営的な新しい手法として日本でも広く迎え入れられたわけでございますが、残念ながら私の見るところ、これはパブリックリレーションズの頭文字のPRがプロパガンダのPRに誤解されている節が多い。本当に利用者、公衆との関係という点については、これは国鉄だけではなくて、日本企業にとっていろいろ問題がある。だからこそ企業の社会的責任というようなことが問題になる。この点について、国鉄も、パブリックリレーションズという英語はともかくといたしまして、公衆との関係を新しい発想で取り組むような、何か太いパイプをおつくりになったらどうだろうか、住民運動に対してもちゃんとした窓口がないという不平をずいぶん聞くわけでございますけれども、そういうものにむしろ正面から取り組むようなことが必要であろうと思います。  それから、これはわれわれ利用者を含めて、私自身を戒める意味で申し上げるのでございますけれども、国鉄は百五年の歴史といまおっしゃられました。本当に国鉄のわれわれの生活に占めている影響というものは非常に大きいものがございます。しかし先ほどの陳述でも申し上げましたように、実は交通事情というものは刻々変わっているわけでございます。その変化に目を覆って、国鉄に対する古きよき時代のイメージといいますか、それはかえって国鉄に対するひいきの引き倒しになるというふうに私自身考えております。何でもかんでも国でやるのだ、国鉄がやるのだというやり方がいいのか、むしろこれだけ交通環境が変わってきた中で、国鉄の本来得意とする分野をわれわれはもっと伸ばして使うし、車で行くところは車で行くという分業がどうしても必要だと思います。そういう意味企業マインドということも、国鉄自体がこれから力を入れていかれる一つ方向というふうに私は理解しているわけでございます。     〔小此木委員長代理退席、委員長着席
  34. 大島参考人(大島茂男)

    大島参考人 いまの先生のおっしゃられた意見に賛成でございます。つまり国鉄と地方公営バスなんかを軸にして、総合的に国民の足を考える、そういう場がどうしても地方単位にも国の単位にも要るだろうというふうに基本的に考えております。  一つ、その点について、簡単な事例ですけれども、アンケートの中で国鉄のコンテナの問題について質問をいたしました。利用したことがないと言う人が非常に多いのですけれども、利用したことがない理由は、多い順序から言いますと四つありまして、一つは日数がトラックよりかかるのではないかと思うから、これが第一位。第二位が料金が高いのではないかと思うから、これが第二位です。第三位が手続がめんどうだと思うから。第四位がコンテナなど全く知らなかった。こういうような四つの理由を挙げております。この四つの理由全部、もうちょっとやはり住民と国鉄関係が密接であるならば解決できる理由でありますし、そういうふうな解決がなされたらもっとコンテナなんかが国民のものに入っていくということだってあると思うのですね。  そういう意味で、やはり基本的に私はこのアンケートをやって感じたのは、国民の中にはやはり国鉄を自分たちのものと思っている、そして改革する意欲もある。しかし、その意欲を意見として出す場がない。意見を出しても、こうやってたまたまアンケートなどで集めても、それを改革してくれる道筋がなかなか明確になっていない、こういうような意味で問題があるわけですから、その辺のやはり問題を解決していく意味でも、いま先生のおっしゃった提案に私も賛成でございます。
  35. 久保(三)委員(久保三郎)

    ○久保(三)委員 どうもありがとうございました。  時間がありませんので大変竹内参考人には失礼ですが、お尋ねできませんでした。ありがとうございました。
  36. 大野委員長(大野明)

    大野委員長 宮井泰良君。
  37. 宮井委員(宮井泰良)

    ○宮井委員 各参考人の先生方におかれましては、お忙しいところ大変貴重な御意見を伺いましてありがとうございました。  私は竹内参考人にお伺いします。お忙しいようでございますので簡単にお答えしていただきたいと思いますが、運賃値上げによります国民生活への影響ということでございます。  法定制緩和ということは当分の間ということでございまして、政府昭和五十四年度を目途といたしまして単年度の赤字解消までということになっておるわけでございますが、そういたしますと昭和五十二年度から毎年大体二〇%ぐらいの値上げはやっていかなくてはならない、こういうふうな計算になると思うのです。それは、五十二年度から毎年二〇%ぐらいの幅で値上げになる。そういたしますと、国鉄運賃の値上げといいますのは諸物価の値上げの引き金になる、先導役になる、こういうふうに考えるわけでございますが、今回の法改正国民に与える影響につきましてのお考えをお伺いいたします。
  38. 竹内参考人(竹内直一)

    竹内参考人 私は、毎度申すことなんですけれども、よく公共料金の値上げの理由づけをする場合に、政府は家計の中で占めるウエートがコンマ以下だからということを申しますけれども、私たちが一番心配するのは、物価というものは計算どおりいくものではないので、心理的な要因が非常に大きいものですから、政府が公共料金を二割上げる、三割上げる、五割上げるということになりますと、民間政府がそれだけのアップ率でやるならば、われわれもやろうではないか、そういう心理的な要因によって物価が全体が押し上げられる、この影響が非常に大きいということを申し上げたいわけなので、いまお話しのように毎年二〇%以上ということは、これは大変なことになりますし、そうなるとわれわれは家計の防衛上結局運賃支出というものを切り詰めざるを得ない、あるいはほかの支出を切り詰めざるを得ない。結局それは生活水準のレベルダウンになる。これは福祉を念願としている国の政策としては逆行ではないかというように考えます。
  39. 宮井委員(宮井泰良)

    ○宮井委員 ありがとうございました。
  40. 大野委員長(大野明)

    大野委員長 米沢君。
  41. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 まず最初に鎌倉参考人にお願いを申し上げたいと思います。  先ほど国鉄赤字原因について、四つほど原因をお示しいただきましたけれども、その中で三つ目に、いわゆる日本の高度経済成長の過程で大企業蓄積拡大するその中に国鉄が組み入れられた。その赤字が相当大きなものであるというふうな判断をお示しをいただきました。  総論としてはなるほどという感じがしますけれども、しかし、いま蓄積がどちらに流れたかという、配分といいましょうか分布といいましょうか、そういうものにはかなり大きな問題があるにせよ、国鉄そのものが国民経済、それは単に大企業とか中企業とかいうものは離れても、国民経済全体にとりましては、特に物流コストを下げるという意味で私は大変大きな影響力を持ってきたのではなかろうかと思います。これは社会主義であれ資本主義の社会であれ、経済の生産性を上げていくということはその国のあたりまえのことでございまして、そういう意味で、たとえば貨物民間トラック、内航海運、そういう競合関係の中においてコストダウンを図っていくという努力は、私はぜひ必要なことではなかろうかと思うのです。不公正な競争はいざ知らず、それが公正な競争であるならば、何しろ物流コストを下げていくというのは国民経済にとっても私は大変いいことであって、そういう意味で、確かに企業蓄積拡大国鉄が組み入れられて赤字を大きくしたということと同時に、国民経済にとっては物流コストを下げていくという意味では私は大きな影響力があったのではなかろうかと思います。そういう点に関してどういうお考えであるのか。  同時にまた、この赤字原因の中で、公共的なものであるから企業採算をとるのは大体むずかしいのだ。そうなりますと、政府が金を出すにせよ、国民から受益者負担という形でお金を取るにせよ、結果的には何かしら先生のおっしゃる論でいきますと、物流コストそのものは全体的には上がらなければならぬという、そういう結果になるような感じがするのでありますが、いかがでございましょうか。
  42. 鎌倉参考人(鎌倉孝夫)

    鎌倉参考人 一つ高度成長の過程で、また現在もそうですけれども、特に国鉄経営赤字の大きな原因として形成されてきたのは貨物料金自身が大変な赤字であるということ、特に貨物を利用するいわば大口のお客、それについての料金の大幅な割引、こういう点から貨物輸送自身の大幅な赤字が形成されているということであります。  この点のいわばメリットがなかったかという御質問だと思うのですけれども、問題なのは、そういったいわば流通コスト、物流コストの、特に巨大な大口輸送を行う大企業中心としたコストの削減が一体国民経済全体にとって、あるいはいわゆる小口の中小零細企業なりあるいはわれわれ庶民なりにとってどういう役割りを果たしてきたのか。  さらに、もう一つ重要なのは、そういった貨物輸送中心とした赤字を解消するものとして、先ほども若干提起いたしましたが、いま貨物輸送に関する大々的な合理化提案が行われているわけでありますけれども、こういった合理化の中で国鉄に現に働いている労働者、これが非常に大きな労働強化あるいは職業病の多発、そういう形をこうむってきているということ、その点を考え直さなければならないというふうに思うのですね。  それから、もっと産業構造全体の問題にかかわらせて言うならば、日本の場合には資源を対外的に輸入している。しかも、それを加工しつつ重化学工業中心のいわば輸出主導型の産業構造がつくり出されてきた。この輸出主導型の産業構造、これをさらに維持し、拡大せんがために、いわば貨物輸送中心とした大きな合理化が行われてきたし、現にさらに行われようとしていると言っていいと思うのですが、これがいわば物流コスト削減の直接の効果としてあらわれたことだと言っていいと思います。つまり輸出主導型の産業構造をさらに拡張していくという方向しか出てこないということでありますが、この方向を依然として促進していくことになれば、結果はきわめて歴然と目に見えているわけです。すなわち現在引き起こされているアメリカや西ヨーロッパとの激しいいわゆる貿易戦争、そういう中で日本の輸出自体が大変困難になっているし、そのことがまた不況を回復させ得ない重要な原因となっている。ところが円の切り上げなりあるいは輸入の増加の要請なりあるいは輸出規制なりというものを受けて輸出が思うように伸びなくなれば、今度はまた逆にさらに一段と合理化強化して輸出競争強化を図っていくということになる、そうなると、ますます要員削減あるいは労働強化、そういった問題がさらに激化して、結果としては日本国内市場自体がいわば停滞してしまう、そのことが企業自身、特に重化学工業の発展をさらに一層輸出主導型にしてしまう、こういう悪循環の繰り返しでしかないということなんであります。いままでそういう形で不況問題を克服しようとやってきているわけですが、これが一向に回復できない原因は、まさに物流コストの徹底的削減を大企業主導の形でやってきた、そのことが原因一つの大きな問題としてある。こういう点をそのままいわば前提にし、野放しにしたままでいろいろ国鉄の物流コストの削減をやれとかあるいはさらに合理化をやれと言ったとしても問題は一つも解決しないのみか、いま言った構造上の矛盾をさらに一層激化することにしかならないだろう。その点との関連で先ほどの問題を提起したわけであります。
  43. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 ありがとうございました。  次に岡野参考人にお願いを申し上げたいと思いますが、今度の法定主義の緩和によりまして国民が一番心配しますのは、一体歯どめ策があるのかどうか。特に国鉄は内部においては非能率な面がたくさんございますし、採算性も追っていかねばならぬし、相当な赤字も持っておる。そうなりますと、確かに合理化努力にも一定の限界がありましょうし、国の助成という意味でもある一定の限界がありましょうし、そうなりますと安易な道はやはり運賃を上げていくというそういう安易な道に走らざるを得ないのではないかという、その結果、法定主義緩和というものが大幅な運賃値上げを毎年行われるという方向に進んでいくんではないかという、そういう危惧の念が一番大きな問題として指摘されるんではなかろうかと思うのであります。しかし、いまあらわれておりますように、余り上げても結果的には国民が離れていくという、そういう一面はございますけれども、経済の需給関係と同じように適当なところで運賃を上げていくという国鉄一つの判断が、適当なところでとまっていけるものかどうか、そのあたりが大変心配だというのがあるのですが、そのあたりの歯どめという意味からどういう御判断をなさっておられるのか、それが第一点であります。  それからもう一つ、先ほど来何回も主張がなされておりましたように、結果的に国鉄の大きな赤字借金政策に頼ってきたというところに大きな問題があると言われております。そういう意味では、利子負担も相当な額に上っておりますし、今後国鉄がいろいろな設備投資をするにせよ、今後国鉄が使うお金の原資の問題が何といっても財政考えていく場合には重要な課題だと思いますが、この国鉄のいわゆる設備投資等に使われる原資の問題をどういうふうにとらえていったら財政対策として、再建対策としてベターな方向に進むのか、そのあたりの可能性のある論議をぜひお聞かせいただきたいと思います。
  44. 岡野参考人(岡野行秀)

    岡野参考人 お答え申し上げます。  第一の歯どめ策ですが、これはいまちょっと御指摘がありましたように、現実に国鉄運賃を上げていこうとしましても、法定主義が緩和されれば即運賃の値上げの自由化だというふうに国民は言っているわけですが、その国民国鉄離れだと自分で言っているわけでして、国民がもし国鉄離れをするんですと、これは運賃を上げても利用者がいなくなるということでありまして、私は現在の市場の環境からしますと、それから現在の経済の状態は非常に不況輸送の伸び自体が非常に小さくなっておりますので、ここで大幅の値上げを繰り返すということは実際上不可能だろう。運賃を上げれば、上げ幅が大きければ大きいほど収入の歩どまりはだんだん小さくなる。そしてやはり国鉄の職員にとっても、たとえば若干の人がうんと払ってくれる。それで収入は多少ふえる。しかしがらがらであるというのではこれは国鉄の職員にとっても働く意欲がなくなるわけでして、私はそういう点からいいましても、市場の中に実際に歯どめの機能を果たすものがいま実際に存在している。そういう点でほとんど心配をしていないわけであります。この例外は、先ほど申し上げました大都市の交通だけでございます。  それから第二の、確かに国鉄の現在の赤字が、借金政策に頼ってきたということにあるわけですが、これはよく考えてみますと、日本経済が戦後成長する過程ですべての企業借金政策でやってきたわけであります。その借金政策でやってきた企業が現在成長して全部お金を銀行に返すという状態になっている。なぜ国鉄は返せなかったか。それは結局収益を生まないような投資をしてきた。あるいは実際上、大都市に人口が集まりまして設備投資をしなければならない。これも、もし人口がそれほど多くなければ複線で十分済むところを複々線にしなければならないというような輸送力増強があるわけです。要するに収益につながらないような投資をやらざるを得なかったということにあるわけです。それも二つに分けまして、一つは、しかしやらざるを得ないものと、本当はやらなくても済んだというものと両方あると思います。この二つを混同いたしますと実は間違いだと思いますが、私はやらざるを得ないような投資でしかもそういう採算性に乏しいものについては国が助成をするということについて賛成であります。ただし初めからそれが国民立場から見てもわずかに一日に四十人、五十人しかお客がいないようなところまで本当に鉄道をつくらなければならないのかどうか。こういうことから起こる利子負担というのが生ずるような状態にすべきでないというふうに私は考えます。いままでの借金に基づく累積したものから生じてくるものにつきましては、これは私はやはりなるべく早い時期において全部一回きれいにしてしまう、そしてそこから新しく経営を始めるということをしなければならないというふうに考えます。
  45. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 ありがとうございました。  次に、鈴木参考人にお願いしたいのでありますが、この法定主義を緩和することによって一つのチェック機関として第三者の公正なチェック機関が必要であろう。しかしいままでのいろんな審議会とかありますけれども、そういうものに対する国民の不信は大変強いものがありまして、どうも委員会委員のメンバーの選考等につきましても、非常に、つくるということで公正な意見を聞こうという意思はわかったとしても、実際本当に公正な意見が聞かれるのかどうか、国民全般の代表されるような意見がそこに集約されるのか、そういうものが一番大きな問題だと思うのです。長年こういう特に運輸関係の研究をなされてきた鈴木さんの立場から  第三者のチェックシステムというもののあり方というものを何か抜本的に変えていかない限り多様化した国民の意識構造にはついていけない。そのものが逆に不信を生んで、結果的には幾らつくって時間をかけてやったところで納得性のいかないものに、逆にそんな新しい芽をつくってしまう。そういう意味からこの第三者のチェックシステムというものについてどういう御見解をお持ちなのか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  46. 鈴木参考人(鈴木順一)

    鈴木参考人 チェックと申しましても、これはコントロールという英語とどう違うのかとかいろいろ言葉上の問題がございますが、考え方としましては交通サービスの価格である運賃原則として市場にゆだねてしまう、突き詰めていけばそこになると私は思っております。  先ほど来申し上げておりますように、運賃はやってみなければわからないということは、結局独占でございますれば言い値で物が売れるということでございますが、競争という条件は逆に価格市場で決められてしまう、相場がそこで決まっているという状況をあらわすことでございますから、もしその価格メカニズムがうまく働けば私はそれにゆだねるのが一番いいと思っております。ただ、交通の場合は一般の財と違いましていろいろ制約がございますから、それのバランスをとるためのシステムが必要だというふうに基本的に考えております。そうしますと、たとえば一番典型的な例はアメリカにインターステーツ・コマース・コミッション、これは州際商業委員会と訳されますが、実はアメリカに運輸省ができるまでは運輸省のかわりをやっていたようなところでございまして、賃率につきましてコントロールする機関でございます。これが戦後占領政策の一環として日本にも行政委員会という形で移植されかかりましたけれども、結局公正取引委員会を除いては行政委員会というものがわれわれになじまない。これは国情のしからしむるところだろうと思います。いま御指摘のように、審議会とかそういうものの公正の機能というものについて私もふだんから疑問を持っているものでございまして、これは無理なものを形だけつくるよりも、私の考えとしましては、やはり競争のあるところではこれを市場に任せる、ただ、大都市交通のようないろいろな条件が錯綜しておりますところでは、そのバランスをとるような緩やかなチェックシステム、という言葉であらわしていいかわかりませんが、そういう緩やかな機構を考える、できればといいますか、なるべくそれが国民に支持されるような形の仕組み、これは具体的にどうするのかと尋ねられても、私自身まだその辺は模索している段階でございまして、具体的にこういうシステムがという青写真を持っているわけではございません。
  47. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 ありがとうございました。
  48. 大野委員長(大野明)

    大野委員長 小林政子君。
  49. 小林(政)委員(小林政子)

    ○小林(政)委員 大島参考人にお伺いをいたしたいと思いますけれども、国鉄は公共交通機関の根幹であると私ども考えております。したがって、それにふさわしい財政経営にしなければならないというふうに思っておりますけれども、その中でも国鉄の線路とか駅舎というものは、その修理とか改善あるいはこれを本当にきちっとやっていけば半永久的に利用できるというものでございますし、結局国民の財産でもございますので、国鉄再建を図っていくという上でこの建設や改良費は当然国が出資するべきではないか、このように考えておりますけれども、御意見をお聞かせいただきたいというふうに思います。  それからもう一つ、先ほど来御意見を述べられましたときに、国鉄再建というものは、国民的な合意を得て国民の期待や要求にこたえていく、そして、この国鉄輸送力、サービスを改善していく方向が大切であるという意味のお話でございました。いま国鉄が一方的に経営改善計画なるものを発表いたしておりますけれども、それは駅の無人化だとかあるいは貨物駅の廃止だとかあるいはサービスの低下、こういう内容を盛り込んだものでございますけれども、このようなやり方が本当に国民立場に立った国鉄再建と言うことができるのかどうか、この点をお伺いをいたしたいと思います。
  50. 大島参考人(大島茂男)

    大島参考人 いまの問題にお答えしたいと思います。  やはりアンケートをとったときの感じなんですけれども、国鉄国民のものだ、ですから、線路だとか駅だとかそういう基本財産はやはり国民全体が所有しているものだというような認識というのは、もう相当共通のものというか常識的なものというか、そういうものに根差して、九〇%以上の方が国が負担をすべきだというふうにアンケートに答えたわけですね。そういう意味では、やはり基本財産について、国有ですから国民全体が負担するような、そういうことについては相当広範な合意が得られる問題だというふうにその問題は考えております。  それともう一つ、この再建の基本問題にかかわってですけれども、先ほどどなたかからも家計支出の割合の問題がちょっと出ましたけれども、私がきょう出るに当たって国鉄からいただいた一カ月の月間支出という中でも、五十年で一月に一世帯が国鉄のために使った汽車賃が七百八十九円というのですね。七百八十九円というのは、これはもう一世帯で行ったとすれば、本当に二百円かそのくらいのところを行ってくればもう一カ月はそれで汽車賃は終わりというふうな程度しかやはり国民国鉄を使ってないという数字が出ているわけですけれども、本来国鉄を改善するとすれば、身近にきれいな山や海や川や家族そろって行きたいようなところがいっぱいあると思うのですけれども、そういうところへ月一回じゃなくて、本当は二回ぐらい、または一回でもちょっと遠出して五十キロぐらいのところへ行けば、もうこんな予算ではとうてい間に合わないというような点では、やはり身近なところで国民国鉄を本当に利用できるようなそういう状態をつくり上げていくことの方が、真の意味国鉄再建になるのじゃないかというふうにその問題も考えております。
  51. 小林(政)委員(小林政子)

    ○小林(政)委員 次に、鎌倉参考人にお伺いしたいというふうに思いますけれども、先ほど来赤字原因がどこから出たものであるか、このことを明らかにしてその原因を取り除いていくということは、再建策をつくっていく上で大変大事な問題であるという御意見でございますけれども、私が調べてみますと、赤字の大部分がやはり貨物である。しかも、五十年末の累積赤字三兆一千六百十億円のその中でも、四十九年までの損益計算では旅客の場合は四百四十三億円も黒字になっております。しかし、その法定制を緩和してこれからも旅客の運賃は毎年のように値上げを行っていく、こういうことが昨日の国会の答弁の中でもほぼ明らかになっておりますけれども、コストを割って出血サービスまでしてまいりました大企業貨物赤字を旅客に転嫁をさせ、負担をさせていくというようなことについては、一体そういうことでいいのだろうか、このように考えておりますけれども、この点についてお伺いをいたしたいというふうに思います。  それからいま一つ、それとの関係国鉄経営の大きな問題となっております一つは、中小貨物駅の廃止の問題でございますけれども、国民や中小企業者やあるいは農民、漁民にとってこれはやはり非常に犠牲を強いるものだということで大きな反対の声が強まっておりますけれども、このような事態というものは、ますます国鉄貨物離れといいますか、貨物を切り捨てることになるのではなかろうかというふうに思いますけれども、国鉄貨物対策という問題について、どのようなお考えをお持ちかお伺いをいたしたいと思います。
  52. 鎌倉参考人(鎌倉孝夫)

    鎌倉参考人 赤字原因の非常に大きなものが貨物赤字である、その赤字分を旅客における黒字でカバーするというようなやり方が確かにやられてきたわけでありますけれども、これは、要するに国鉄を利用しなければならない労働者、国民料金負担のもとで、まさに大口の貨物輸送を行う大企業にその分だけいわば利益を与えてきた、こういうことだと思いますし、今後もこういう方向一つも改善されないやり方でいくということになりますと、われわれはまさにもつともっと大きな抑圧をこうむっていく以外の何物でもないと思うのです。こういう形でいかに改善策をとっていこうとしても赤字そのものの原因は解決されないばかりでなく、むしろさらに大きな矛盾が引き起こされてくるんではないかと思います。その矛盾の端的なあらわれが中小貨物駅の統廃合という形で小口の貨物、農民や中小零細企業あるいは庶民の輸送する貨物が締め出しを食い、ますます大口の貨物に統合されてしまうという中ではっきりあらわれているわけでありますが、そういう意味では大企業に対して種々の面で抑圧を受けている小企業、農民あるいは労働者家庭の犠牲がむしろもっともっと拡大していく以外の何物でもない。  そればかりでなく、大きな問題、日本経済全体の問題から言うならば、たとえば安全を守ると言っても、中心労働者の労働条件が十分確保されなければあるいは必要な要員が十分確保されなければ安全問題も一つも解決しないし、あるいはまた本当に日本経済を維持していく基盤になっている中小零細企業、農業あるいはわれわれ労働者の家庭が向上していかない限りにおいて日本経済改革もないわけですが、実はそういう方向ではなくて、問題の運賃法定制の緩和の問題にしてもあるいは貸物合理化の問題にしても、ますますそういう大きな矛盾を激化していく以外にないと思うのです。そういう点からいいますと、もう戦後三十年間あるいは特に高度成長の段階で主導してきた産業構造自体の抜本的な改革を行っていくような基盤を、少なくともはっきりつくり出していく方向性を明確にするとともに、そういう変化を実現できるようないろいろな力をつくり出していかなければならないのではないだろうか、そういう中で国鉄赤字問題というものも抜本的に改革をしていかなければならないんではないか、こういうふうに考えています。
  53. 小林(政)委員(小林政子)

    ○小林(政)委員 最後に鈴木参考人にお伺いをいたしたいと思いますけれども、収支の均衡を図っていくためには五十四年度を目途にしてやっていきたいんだということを政府は言っておりますけれども、昨日、私質問をいたしましたけれども、そのときに具体的な計画内容というようなものを政府の方ではいまだ明らかにいたしておりませんし、委員会にもまた国民にもその内容というものが全く明らかにならないまま、ともかく五十四年を目途に収支の均衡を図ってということだけで、この運賃法定制の緩和を認めてほしい、こういうことでございますけれども、この問題について御見解をお伺いいたしたいと思います。
  54. 鈴木参考人(鈴木順一)

    鈴木参考人 政策当事者でおられる方たちが五十四年度にどうなるかということをわからないといいますか、これはある意味では当然なことでございまして、交通というのは社会現象のいわばすべてにかかわりを持っている現象でございます。したがいまして、それについてある程度の予測はもちろん立つわけでございますから、その辺はおわかりになっておられると思いますけれども、それをお示しにならないのは、やはりそこにむずかしいという理由があるのではないかと私は推察いたします。  将来がわからずに運賃法を改定するのは、法定主義をやめるのはどうかというお尋ねでございますけれども、私は、先ほど来申し上げておりますことは、これはもう、一つの歴史的な流れとして理解しておりますので、そのこととは切り離して考えてもいいと思っているわけでございます。
  55. 大野委員長(大野明)

    大野委員長 中馬弘毅君。
  56. 中馬(弘)委員(中馬弘毅)

    ○中馬(弘)委員 どうも参考人の先生方皆さんのお話を聞いておりますと、やはり国鉄の問題といいますのは相当根本的なところから改革していかなければならないということの御認識が皆様方一致しているようでございます。その中にありまして、こういう公共的な立場で、かつ競争にさらされているといった中におきます公共企業体のあり方といったもの、これについての一つの御見解をいただきたい気がするわけでございます。どこまで公権力がタッチすべきなのかあるいは企業としてのことを発揮しようとするならばどこまで自由であるべきなのか、この点について、山内先生ひとつ御見解をお願いいたします。
  57. 山内参考人(山内一夫)

    山内参考人 私は、法律学者の端くれでございますが、そういう面ですから、企業をどう立てるかということについて特別の私見があるわけではございませんが、ただ、私、ずっと国鉄経営を見まして、国鉄の公共性ということ、これが一つ原則になっているわけでございますが、かねがね、その公共性ということから、運賃の公共割引とかそういういわゆる政策的なことをずいぶん強いてきたように思っておりますのです。私は、国鉄の公共性というのは、そういうのは入らないのだと思っているのです。公共性というのは、結局、企業を弁理主義的に貫徹することによって結果的に得られる公共性、そこが一番大事なことで、そこを、ちまちました公共性を入れると、全体の本当の意味での公共性が崩れてくる。いまの結果はそういうようなことではないかという気もするのですが、なるべく、参考人の方々何人かおっしゃっていらっしゃいますが、企業の自主性をもっと認めていくということが大半なんじゃないか。  これは私の専門の方の学問からではなくて、ずっと見てきた素人の考えですから、先生に対するお答えになっているかどうかよくわかりませんですが。
  58. 中馬(弘)委員(中馬弘毅)

    ○中馬(弘)委員 少し法律的な立場でまたもちろん若干の御見解もおありでしょうが、今度の、あの形で運賃の法定制を緩和するという方向でございますが、あそこに、法律におきましてあれだけ上限を決めるということ、これが果していま先生おっしゃったような意味での、本当の意味での当事者能力を持たすだとかあるいは自主的に物事が運べるという形と若干矛盾するような気がいたすわけでございますけれども、その点についていかがでしょうか。
  59. 山内参考人(山内一夫)

    山内参考人 そうでございますか。私は先ほど申しましたのですが、国鉄というのはやはり、場所にもよりますが、独占性があると見ているのです。こう申し上げるとあるいは国鉄当局なり運輸省当局は、必ずしもそこのところはそういうふうには見ておらないようでございますけれども、私は全体の鉄道体系は、地方鉄道も含めまして、やはり鉄道は独占性を持っている。ほかの輸送手段が相当競争しておりますから、それがまた国鉄が困ることにもなっておりますが、理屈だけからいうと独占性があると見ているものですから、どうしてもそこへ上限を抑えないと、ある種のコントロールをしないと、国会がやはり全体の枠組みとして統制するという面が崩れてきますので、ああいうような枠づけというものは必要ではないかと思っています。ですから、できるだけ企業の自由にするということと矛盾はしますが、必要な限度はやはり国会がコントロールされていいのじゃないか、こうは思っているのですが……。
  60. 中馬(弘)委員(中馬弘毅)

    ○中馬(弘)委員 鎌倉先生にお尋ねしたいと思うのでございますが、国会一つの機能を果たす、特に今度の法定制の緩和におきましても、一つの上限を決めるといったようなことで機能を果たす、先ほどは竹内先生でしたか、場合によっては株主総会の役割りを国会が果たすべきだといったような御発言もありましたが、そういった国会というものが現実問題としてそのような機能を十分に果たし得るものかどうか、この点についての鎌倉先生の御見解をお願いしたいと思います。現実の問題として。たてまえの問題としてではなく。
  61. 鎌倉参考人(鎌倉孝夫)

    鎌倉参考人 現実にはやはり国会の中での少数意見というものがそれこそ十分に参考にされ、あるいは反映されなければならないと思いますし、少なくともこれはいろいろな制度にも関係あるのかもしれませんが、いまの国会の中でのいわば少数意見というのが、労働者あるいは庶民の、国民立場というものを少数の方が代表し、多数の方がむしろ代表していない、こういう現実が確かにあるというふうに思うのです。そういう中で、いままでの国会の運営の仕方にしても、やはり本当に日本を担っているのは働く者でしかないわけでありますから、その者の立場を十分に尊重するような方向に変えていってもらいたいと思いますし、またそういう力をわれわれ全体もつくっていかなければならないなというふうに思います。  特に法定制緩和の問題にしても、いままでの国鉄が戦後置かれてきた状態、そしていわば労働者なり利用者なりが全面的に負担を負いながら、こういう形で国鉄経営赤字になってきたわけでありますけれども、それについてのやはり根本的な改革案というものがどうも十分出されてこないし、革新の政党が改革案を具体的に提起してはおりますけれども、部分的にたとえば政府の助成の拡大ということで一定程度反映はなされておりますが、やはり基本的な点ではどうもむしろいままでのやり方をさらに拡大し、悪化させていく方向でしかないというふうに思うのです。そういう意味では、日本を担う、竹内さんが本当の主権者だと言う国民の声を組織し、それを本当に国会に反映していくようなやり方が真剣に考えられなければならないと思います。
  62. 中馬(弘)委員(中馬弘毅)

    ○中馬(弘)委員 現実の社会の、それこそ何といいましても現実は自由主義経済体制で、それこそ競争原理が働いている本音の体制の中にあって、たてまえの政治といいますか、そういったものに振り回されているのがいまの国鉄の姿じゃないかと思うのです。  次に、岡野先生にお伺いしたいのでございますが、先ほどお話がありました投資枠の拡大、これは一つの鉄道企業というものが、たとえば鉄道を敷くことによってもろもろの外部経済、こういったものを内部化することも含めて前向きに評価しておられた、かように思うわけでございますが、その外部経済を内部化する方法にしましても、たとえばアメリカなんかで地下鉄を敷いた場合に、駅周辺の間接税を一%高く取るだとか、それによってもちろん土地代が高くなった固定資産税の一部を特定の財源として企業の方に渡すだとか、場合によっては面接に事業経営してその開発利益を内部化するといったようなことがあろうかと思いますが、どういう形がいいか、その辺、先生の御見解をお伺いします。
  63. 岡野参考人(岡野行秀)

    岡野参考人 具体的には大変むずかしい点があるかと思いますが、スーパーの文句にもありますように、何々は駅のそば、要するに立地条件は大変いいわけでして、なぜ立地条件ガいいかと言えば、やはり鉄道を使って来る人がいるからいいわけであります。とすれば、その鉄道を使って来てくれるような人が集まるような場所に使うとかいうことであれば、これは国鉄のレールをそれだけ使うということになりますので、私はやはりそういう方向で行くべきだろう。その範囲につきましても、いろいろ実際には問題があるかと思います。たとえば旅行をすればホテルに泊まるわけですから、そのホテルの問題もあるでしょうし、それから貨物で言えば、貨物のターミナルに同時に倉庫があるということであれば、実際に貨車を倉庫がわりに使うような荷主もいなくなるかもしれません。そういうふうに現在の遊休の土地が、国鉄が供給しているサービスとの関連を考えてよりよく利用され、かつそれが若干の収益の寄与にもなるという方向考えるべきであって、これは具体的にどういう場所にどういうものであるかということによって、何が適切であるかということは、それぞれのケースで非常に違ってまいりますので、一概には申し上げられませんが、基本的な考え方としてはそうであろうかというふうに思います。
  64. 中馬(弘)委員(中馬弘毅)

    ○中馬(弘)委員 どうも本当にありがとうございました。
  65. 大野委員長(大野明)

    大野委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会に御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時十九分散会