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大島参考人 私は
日本生活協同組合連合会の
大島でございます。
日本生活協同組合連合会と全国消費者団体連絡会の場で、
国鉄の値上げ問題について全国のアンケートをとりました。集約を四月末日としたために現在全県の集約はされていないわけですけれども、たまたま宮城県、福島県、それと東京その他の一部から八百九十枚ぐらいのアンケートが寄せられております。それをもとに現在の
運賃法の
改正に対して、反対の
意見を表明したいというふうに思います。反対の理由は、まず全国消団連などで総論的に
考えてますことを最初に申し上げて、次にこのアンケートにあらわれたそういう点からの反対理由ということを申し上げたいというふうに思います。
総論的に申し上げて五点あるわけですけれども、
一つは、この
運賃法の
改正につきまして積極的な
改正理由が明示されてないというふうな問題があろうかと思います。
国会審議が時間がかかるから適時適切な
運賃値上げができないとか、または小幅の値上げを何回にもわたってやれるからというふうなこの
二つくらいの理由が、現在の
国鉄問題を
考えるに当たって決して積極的な理由とはなり得ない。逆に言えば、
国民が
国鉄から離れていく、そういうふうな条件もつくり出すのじゃないか、こういうふうに
考えているわけです。これが第一です。
第二は、
財政法三条、
憲法八十四条の問題につきましても私たちはこれは違反していると思っております。この点については詳しい展開は避けたいと思います。
三番目には、現在の交通問題について基本問題を避けた論議になっているんじゃないかというような問題を
考えております。この基本問題というのは具体的に三点ございまして、その
一つは、エネルギーの効率性ということが現在非常に問題になってきた時代だと思います。そういう時代に
国鉄のような大量交通
輸送機関というのは、普通の自家用車なんかに比べて単位エネルギー当たりの
輸送効率というのが数倍から数十倍になる、あるいは八倍から三十倍だとか、五倍から二十倍とか
幾つかの説はあるようですけれども、いずれにしろそういう
国鉄などの大量
輸送機関の方が自家用車などに比べて非常に
輸送効率が高いということは論証されていると思います。そういうような観点から見れば、過去二十年ぐらい続いてきたモータリゼーション
中心の交通
輸送体系をもう一回
考えるべき時期が来ている。それはやはり
国鉄などを大きく生かす形で
考えるべき時期が来ているのじゃないかというような点があると思いますけれども、こういう交通の基本問題について十分の論議がなくて、過去の延長線上、その発想に立った解決案として現在の
運賃法の
改正が出されてきている、この点が問題だろうというふうに思っております。これが三番目の点です。
四番目ということで、この基本問題の二に属するわけですけれども、
高度成長時代の過ちの責任の明確化と、それを明らかにした上での
再建方針というのでなければ、今後の抜本的な
再建方針につながらないだろうというふうに
考えております。
高度成長時代の過ちというのは、どこの
企業であっても
借金を膨大にやって固定
資産をどんどんつくっていくということをやれば、一、二年前にも興人という会社が倒産しておりますけれども、同じようなことをやれば
赤字になるのは決まっているというような問題が基本問題だったと思うのですね。そういう点では
借金による過大な
設備投資をやってきて、それによって
経営体質を悪化さしてきたというような問題を解決することなくして、またはその解決ということになれば当然利子
負担の軽減措置をどうするとか長期
債務を計画的にどういうふうにやるとか、または国の財産ですから国の財産を買うための基礎的な費用、これはどこが出すべきかとか、そういう基本問題があって初めてその一環として
運賃の
決定方式ということが論じられてしかるべきだというふうに
考えているわけです。
ちょっと時間かあれですが、あと五番目にアンケートなんですけれども、
国民の期待がどこにあるかというような点から見て、
国民の期待から背を向けて
再建はないのじゃないかというような問題をアンケートを
中心に申し上げたいというふうに思います。
アンケートの結果でございますけれども、先ほども言いましたように、アンケートは八百七十八枚集まっておりますけれども、その中で
国鉄の
運賃法の制定について
国会で審議せよという論議は七八・五%でした。ですから、
国鉄運賃については
国会で審議してほしいというような声が
中心であったというふうなことでございます。この点は、アンケートをやる中で出てきたみんなの声をもうちょっと聞いてみますと、まさに
国鉄というのは
日本国有鉄道でありまして、都会の人にとってみれば
私鉄があります、何がありますということになりますけれども、全国的なアンケートをとれば、
国鉄というのは本当に国有鉄道だ、
国民全体のものであるというような意識が相当強いということが不実問題としてあったと思います。そういうことの結果として、いま言ったような
国会で審議せよというふうな
意見が圧倒的であったというふうなことでございます。
二番目には、
赤字の解消の基本的な
考え方について問うた場合にも、国の援助をふやして解決してほしいというのが九三%、これももう圧倒的でございます。ですから、小幅の
運賃値上げをたびたびやって解決してほしいというような
意見はほとんどなかったというようなことでございます。
三番目には、アンケートは、きょうちょっと一部福島県の分だけ持ってきたのですけれども、
一つ一つ十四項目について、マル・バツ式じゃなくて、希望を言葉で詳細にずっと書いてもらったわけです。その中で次の問題になるのは、
国鉄について要するに不満がある点は、大きく見て、まず
国鉄ダイヤの編成が非常に住民本位じゃないという問題が一番大きく出されております。ダイヤ問題はアンケートの回答者の中で約八割の方が出しております。その中で具体的な中身を見ますと、生活ダイヤの本数が少ない、これが半数近くあります。その他いろいろあるのですけれども、ひとつ具体的にちょっと例を挙げますと、こんなことが出ています。
奥羽本線で弘前から青森に通う方ですけれども、九時三十分に普通電車が出たら十二時四十四分まで普通電車がないというのはどういうことか、こういうわけですね。奥羽本線ですからね、弘前から青森まで三十七・四キロを行くのに。それはほかでも出ています。たとえば福島の人がアンケートに答えて、福島から山形方面に行くのに午前中に適当な列車がないので日帰りで帰れないから困るというふうに答えてきています。時刻表を見てみたら、確かに午前中に適当な普通列車というのはないのですね。朝の六時半ごろ出たらもう本当にない。こういうふうなダイヤの
状態を改めなくちゃいけないというふうに
考えております。
それともう
一つ、これはアンケートの中でやはりこの
運賃法改正に絡んで比較的重要だなと思っているのは、
国会外で特急
料金や何やらが決められるようになった結果、それがいかに
国民生活から遊離した決め方になってきているかという事例が続々と挙がっていることです。ですから、特急
料金なんかの決め方を見ると、
国会の論議を外しちゃったら、どういうふうな
国民から遊離した決め方になるかわからない。そら恐ろしくなるような実例が続々と挙がっているということです。これについても
二つぐらい典型的な事例を挙げてみたいと思うのです。
一つは、これは栃木の方が出したやつですけれども、十年前に宇都宮から上野に上ってくる急行は、大体日光号というのが
中心だったそうですけれども、一時間十分から二十分で上野に着いたそうです。ところが、現在は特急で一番早いという「ひばり」が一時間十二分です。それではくつる」が一時間三十六分。ですから実際には十年前の急行並みの速度で特急が走っている。
料金だけは物すごく高くなっている、こういうふうなことですね。
同じように、
料金とそういう問題の関連を言いますと、これは千葉のアンケートですけれども、安房鴨川から千葉に大体朝の七時から夜の七時直前まで、つまり一番利用する十二時間という単位をとってみて、それで普通、急行、特急がどういう間隔で走っているかというと、この間、十二時間の間に普通が十一本走っています。急行が三、本、特急が九本走っているわけですね。それで、その特急はやはり栃木の人が言われたように前の急行より遅い特急が走っているということです。
料金はどうなるかというと、鴨川の三つぐらい先に主な駅で茂原というのがありますけれども、そこでもやはり特急を使わなければいけない。それで
料金は、
運賃が二百七十円、特急
料金が八百円だそうです。一番遠い鴨川であっても
運賃が七百六十円、特急
料金が八百円、こういうことですね。ですからこういうような点を見ると、昔の急行より遅い特急を走らせておいて、それでそれしか、または本数から見ても昼間の大事な時間はもう特急が九本も走っている。特急、急行を合わせた方が普通より多いんだというような
状態にしておいて、それでなおかつ短距離であっても特急
料金を払わせる、こういうふうな
状況を
考えてみると、法定でやらないでいる現在のこの
料金の決め方の実態、こういうことが反省されないで、ただ
運賃が
国会再議から許可制に改めればいいんだというふうな論議というのは、成り立たないんじゃないか。少なくともそういう論議を出す以上は、いま言ったような
国民の切実な期待にどうこたえるかということについての抜本策が同時に出されなければ、
国民としては納得しないだろうということを感じております。
まとめですけれども、
国民は、先ほども申し上げましたように、
国鉄を
国民のものだというふうに
考えているということが大事な
前提だと思います。そしてそれを直していく際に、国の
財政支出であってもまたは
料金の値上げであっても、いずれにしろ
国民の大きな合意、応援団ができなければ
国鉄再建というのはできないだろうと思うのです。現在ややともすると応援団の声の方は、自動車の応援団であったりまたは飛行機の応援団の方が多いような感じが続いておりますけれども、それはやはり、
国鉄もそういう
状態をつくり上げてきたのじゃないか。本当に全
国民がこぞって
国鉄再建について応援団になれるようなそういう
状態をつくり上げなければ、または単なる応援団じゃなくてみずからも参加して、それで改善提案を行ったり一緒になって改善していくというようなことにならなければ、本当の
意味の改善というのはないのじゃないかというふうに
考えているわけです。そういう
国民の合意、
国民の参加ということをつくり上げていくしで、現在の
国鉄運賃法の
改正というのが全く
国民のそういう要求から背を向ける、足げにするというような
性格を持つものだろうと思いますので、ぜひ
運輸委員会におかれましては消費者のそういう声を十分におくみ取りいただきたいというふうに
考えております。
以上でございます。(拍手)