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1976-10-26 第78回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十六日(火曜日)    午後三時三十五分開会     —————————————    委員異動  十月二十日     辞任         補欠選任      岡田  広君     岩本 政一君      山本茂一郎君     丸茂 重貞君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         田代富士男君     理 事                 大島 友治君                 平井 卓志君                 佐々木静子君                 原田  立君     委 員                 梶木 又三君                 栗原 俊夫君                 小柳  勇君                 橋本  敦君                 下村  泰君    国務大臣        法 務 大 臣  稻葉  修君    政府委員        法務大臣官房長  藤島  昭君        法務大臣官房司        法法制調査部長  賀集  唱君        法務省矯正局長  石原 一彦君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局事務総長   寺田 治郎君        最高裁判所事務        総局人事局長   勝見 嘉美君        最高裁判所事務        総局刑事局長   岡垣  勲君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        法務省刑事局公        安課長      石山  陽君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○証人出頭要求に関する件 ○集団代表訴訟に関する法律案原田立君外一名  発議) ○民法の一部を改正する法律案佐々木静子君外  一名発議) ○裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○検察及び裁判運営等に関する調査  (総理に対するニセ電話事件に関する件等)     —————————————
  2. 田代富士男

    委員長田代富士男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  岡田広君、山本茂一郎君が委員を辞任され、その補欠として岩本政一君、丸茂重貞君が選任されました。     —————————————
  3. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 証人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  総理に対するにせ電話事件に関し、京都地方裁判所鬼頭史郎判事補証人として十月二十八日午前九時三十分に出頭を求め、その証言を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、その手続等委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 集団代表訴訟に関する法律案議題といたします。  発議者原田立君から趣旨説明聴取いたします。原田立君。
  7. 原田立

    原田立君 ただいま議題となりました集団代表訴訟に関する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  欠陥商品やみカルテルによる価格引き上げ等の一企業または数企業違法行為によって無数消費者損害を受けているという現実があるにもかかわらず、現行民事訴訟制度は、原則的には、一対一の対等な当事者間の紛争解決することを念頭において紛争解決するための手続を定めているにすぎないから、このような原則に基づく現行民事訴訟制度のもとでは、一対無数すなわち企業無数消費者民事紛争解決しようとしても、その訴訟追行は事実上不可能であります。すなわち、今日の消費者問題は、訴訟を通じては事実上解決できない状況にあります。これは、法制度が社会の進展に即応していないからであります。  すなわち第一に、消費者各人損害額少額であるとしても、集団としての消費者損害額は巨額になると思われます。消費者集団のこの巨額な損害賠償企業に対して請求することができる訴訟制度確立することなしには、社会的経済的公正を確保することはできないのであります。  第二に、企業消費者との間には訴訟行能力及び訴訟費用負担能力の不均衡があるにもかかわらず、現行民事訴訟制度のもとでは、これを対等な当事者として取り扱っているため、訴訟による権利救済の方途はきわめて厳しい現実にあります。この現実を打破して、実質的に対等な当事者としてみずからの権利を行使できる訴訟制度確立しなければならないと思います。このような訴訟制度確立なしには、消費者主権は、裁判によって保障されない眠れる主権、幻の権利に終わらざるを得ないのであります。  第三に、企業違法行為による無数消費者損害は共通の原因によって発生し、またその損害額一般的には定型化する傾向があります。このような実体について、消費者各人訴えの当否を個別的に審理することは訴訟経済観点からもむだだと思います。また、企業違法行為によって発生した損害賠償をめぐる紛争は、事実上は企業無数消費者紛争と思いますので、その紛争解決は、消費者集団企業との間で包括的に解決することが望ましいと思います。  われわれは、消費者主権確立のためには、このような困難を克服して、民事訴訟制度が真に機能する制度確立しなければならないと思います。  以上の観点から、非訟裁判による訴訟信託設定方式を採用することにより、消費者代表者消費者集団全員のため企業に対して提起する損害賠償一括的請求目的とする訴え、すなわち集団代表訴訟を可能にするためのこの法律案を提出いたした次第であります。  以下この法律案内容たる集団代表訴訟制度の仕組みにつきましてその概要を御説明申し上げます。  まず第一に、申し立てに係る共同の利益を有する著しく多数の者の少額債券について集団代表訴訟による紛争解決が適当であると認められる場合に、非訟裁判により、除外申し出をしない限り債券を一括して訴訟目的とするための信託設定されたものとすることができるようにいたしております。すなわち、集団代表訴訟を追行させるため、除外申し出をしなかった少額債権者たる委託者から少額債権者代表者たる受託者当該債権信託的譲渡されたものとする信託であります。なお、少額債権者権利を保護するため、信託設定については公告するほか、非訟裁判所代表者たる受託者を監督するようにいたしております。  第二に、集団代表訴訟におきましては、職権証処調べを採用するほか、重要な訴訟行為につきましては、非訟裁判所の許可を要するものといたしております。なお、欠陥商品やみカルテルによる価格引き上げ等に係る少額債権者全員損害総額の算定につきましては、推定規定を設けております。  第三に、各少額債権者は、受益者として、代表者たる受託者に対し、勝訴判決の最初の公告の日の翌日から二年以内に通知することにより、その債権の満足を得ることができるようにいたしております。なお、請求してこなかった債権者の分は、国庫に帰属するようにいたしております。  第四に、代表者たる受託者は、集団代表訴訟の追行等に関して必要な費用につきましては、国庫による裁判費用等の立てかえ、支払い猶予制を置くほか、その他の事務費用を含めて集団代表訴訟により得た財産をもって充てることといたしております。なお、敗訴等の場合には、立てかえ等をしてもらった裁判費用等返還等を免除するほか、最終的に受託者負担となることのないように交付金を交付することといたしております。以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  8. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 次に、民法の一部を改正する法律案議題といたします。  発議者佐々木静子君から趣旨説明聴取いたします。佐々木静子君。
  9. 佐々木静子

    佐々木静子君 民法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  わが国においては、戦後、個人の尊厳と男女の本質的平等をうたった新憲法のもと、民法もこれに応じて改正され、家の制度を廃止し、男女不平等を取り除く努力がなされてきました。しかし、現行民法にはなお男女平等を阻害し、家の制度の残滓を思わせる規定が温存され、古い因習や観念と相まって婦人の地位向上の隘路の原因となっている点が多く見受けられるのであります。  したがって、男女平等に反する家族法規改正こそまず実現されなければならないと考えるのであります。以上の見地からこの法律案を提出するに至った次第であります。  そこで、この法律案は、配偶者相続順位を被相続人兄弟姉妹の先順位とし、配偶者相続分を引き上げることにより、妻の地位実質的向上を図ろうとするものであります。  この法律案の要点を申し上げますと、第一は、配偶者相続順位に関する改正であります。  現行法のもとでは、血族相続人として、第一に子とその代襲相続人、第二に直系尊属、第三に兄弟姉妹とその代襲相続人という順位があり、これら血族相続人と並んで配偶者は常に相続人となると定められていますが、最近は、被相続人と最も密接な家族共同生活をともにした生存配偶者相続権に対する観念も改まり、生存配偶者は、相続上第一位の相続人として重視し、血族であるというだけで相続人となり得る親等の遠い非家族構成員に優先させることが新しい相続法傾向に合致するものと考えられるに至っているのであります。  そこで、被相続人兄弟姉妹は、相続人である被相続人配偶者、子及び直系尊属がない場合に相続人となることとし、配偶者相続順位を被相続人兄弟姉妹の先順位とすることといたしております。  第二は、配偶者相続分に関する改正であります。  現行法のもとでは、妻の法定相続分は、子と共同相続する場合は三分の一、直系尊属共同相続する場合は二分の一と定められているのでありますが、戦後相続法改正された当時に比べ現在は家族構成が大きく変化しており、妻の相続分が子一人の相続分より少なくなるなど配偶者相続分について不合理な結果をもたらし、妻の地位の保護にも欠け、実質不平等を生ぜしめていると考えられるのであります。  そこで、配偶者が被相続人の子または直系尊属共同相続人となる場合における配偶者相続分をそれぞれ二分の一または三分の二に引き上げることといたしております。  以上が民法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上速やかに御可決されますようお願いいたします。
  10. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 以上で両案の趣旨説明聴取は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  速記をとめてください。   〔速記中止
  11. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 速記を起こしてください。     —————————————
  12. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  政府から両法案の趣旨説明聴取いたします。稻葉法務大臣
  13. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。  政府は、人事院勧告趣旨にかんがみ、一般政府職員給与を改善する必要を認め、今国会に、一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職職員給与に関する法律及び沖繩国際海洋博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般政府職員の例に準じて、その給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第でありまして、改正内容は、次のとおりであります。  第一に、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並びに検事総長次長検事及び検事長俸給は、従来、特別職職員給与に関する法律適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職職員俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣その他の特別職職員について、その俸給を増額することとしておりますので、おおむねこれに準じて、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並びに検事総長次長検事及び検事長俸給を増額することといたしております。  第二に、判事判事補及び簡易裁判所判事報酬並びに検事及び副検事俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職職員給与に関する法律適用を受ける職員俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。  これらの改正一般政府職員の場合と同様、昭和五十一年四月一日にさかのぼって適用することといたしております。  以上が、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  14. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 以上で両案の趣旨説明聴取は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
  15. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 検察及び裁判運営等に関する調査議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  16. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは私からまずこの間から非常に大きな話題を呼んでおります京都地方裁判所判事補鬼頭氏に関連する問題についてお尋ねいたしたいと思います。  まず、法務大臣にお伺いしたいと思うわけでございます。このような現職裁判官総理電話をかけたかかけないかということは別の問題といたしまして、非常に私どもの常識を乗り越えたとてつもない事柄現実に起こっているわけでございますが、この件につきまして、先般ロッキード対策特別委員会総理がおおむね電話の件は認められ、そしてその件について厳重に法務大臣捜査を依頼したというふうな御答弁があったと聞いているわけでございますが、その後の経過について概略大臣から御説明いただきたいと思います。
  17. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 参議院ロッキード問題調査特別委員会でただいま佐々木委員の述べられたような質疑がございました。これに対し総理からも答弁があり、また委員から法務大臣に対しても厳重に調査すべき問題であるという御意見がありましたので、刑事局長を通じ、その旨検察庁側に厳重に捜査されるよう申し入れをさしたところ、ただいま裁判官の身分を持っている人だと言われておりますので、電話の主がですね、新聞等では。それで最高裁で直ちに調査に乗り出されましたから、その最高裁調査を待って犯罪捜査の必要があると認定すれば捜査に乗り出す。こういうことの報告を受けております。
  18. 佐々木静子

    佐々木静子君 犯罪の容疑があれば捜査に乗り出す。そうするとまだ捜査には着手しておられないということでございますか。
  19. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 最高裁判所調査の結果等をも待って捜査には乗り出すべきものというふうに判断をしているようでございます。
  20. 佐々木静子

    佐々木静子君 さらに法務大臣に伺いたいのですが、これは三木総理電話を受けたと、細かいことはともかくとして、このような応対を一時間ぐらいしたという趣旨答弁特別委員会でしていられるわけですけれども、その事柄についてはこれは法務省とすると確認はしておられるわけですか。
  21. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 確認をしております。
  22. 佐々木静子

    佐々木静子君 いつどのような方法で確認なすったわけですか。
  23. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 確実にこれは重要な問題があるなと、だから徹底的にこれは背後関係等についても調べなければいかぬなと、こういう気になりましたのは読売の新聞報道があってからのことでございます。しかし、その前には全然そういう電話のあったことを総理から聞かなかったかというと、聞いた覚えがあるのですね。聞いた覚えがありますけれども、私の経験でいろいろな電話があるものですから、そんなものを余り気になさらぬ方がいいのじゃないですかと、内容などはどういうことを聞いてきて、自分はどう答えたかというようなことは全然私は聞きませんでね、そういう答えをした、そういう記憶はあるのです。しかし、新聞に出ている内容は重要なことですから、重大なことですから、事はなまやさしいことではありませんから、これは徹底的に調査しないといかぬなと、こういう気になりましたのは読売新聞に出て以後のことであります。
  24. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはよくあること、政治家の、特に大臣のところなどにはにせ電話というものもよくかかってくるのじゃないかというふうに思いますけれども検事総長名前をかたってのにせ電話だということもよくあることなのですか。
  25. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 私のところへ検事総長の名をかたって電話をしてきてもすぐわかりますから、そんなことは全然ありません。ただ、総理大臣の場合は検事総長の声を全然知りませんから、総理大臣なら応対するだろうと思ってかけためじゃないでしょうか。しかし、それにしても総理大臣としては検事総長から直接電話なんかかかるわけはないのだから、その応対を、委員会で御注意があったような応対の仕方をすべきだったかもしれませんな。ただ、この間、この前のロッキード委員会の質問に対しては総理は、いやそれは途中でわかったと、そんなことは、検事総長でないということは、聞いている内容がおかしいからとも思ったのでしょう、指揮権の発動を促すような内容ですから。それでこれはにせだということがわかったけれども、その背後関係とは一体どういうやつが自分にそんなこと促して言質でもとって問題にしようとしているのか探ってみたいという気持ちになって長々やったと、こんなことを言っておられましたな、委員会では。私、直接二人でそういうことを伺ったのじゃないのですけれどもね。
  26. 佐々木静子

    佐々木静子君 その点についてはまた後で時間がありましたらお尋ねすることといたしまして、最高裁に伺いますが、最高裁がこの十月二十二日、京都地方裁判所山内所長を同日、問題の鬼頭判事補と合わせて、この事件内容について聴取されたというふうなことが報道されているのですけれども、これは事実ですか。どういう経過で、どういう事実の聴取があったか。また、どういうことから京都地裁所長当該裁判官から事実を聴取するようになったのか、経過を述べていただきたいと思います。
  27. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) ただいまお尋ね事件に直接関係がございませんが、御承知の二十一日の朝日朝刊で、例の網走刑務所の問題の記事報道されました。これも御承知のように、その朝日新聞報道には裁判官ということでありましたけれども、それがだれであるかということの記載はなかったわけでございます。その日のうちに共産党の衆議院諫山議員から、あの裁判官鬼頭判事補である、したがって調査されたいということがございました。そこで私どもといたしましては、大阪高裁を通じまして京都地裁山内所長に対して、鬼頭判事補からその件の事情聴取指示をいたしたわけでございます。ところが翌二十二日になりまして……失礼いたしました。二十一日の日は同裁判官に対する事情聴取は結局行われなかったようでございますが、そのまま二十二日になりまして、二十二日の朝のただいま御指摘読売新聞に御指摘事件が出たわけでございます、どうも大変失礼いたしました。二十一日の日に所長事情聴取を命じて、現実に同日の日にその網走の件につきまして所長から事情聴取を行いまして、この日は余り時間がなかったようでございますが、結局、その裁判官というのは自分であるという事実を認めたという報告をいただいたわけでございます。翌二十二日になりまして読売新聞朝刊で、いま御指摘のいわゆるにせ電話事件報道がなされまして、これは鬼頭判事補というはっきり名指しの記事であったわけでございます。そこで二十二日の朝、早速重ねてこの事件事情聴取をするようにという指示をいたしまして、翌二十三日の土曜日には直接最高裁判所に出てくるように指示いたしまして、本人から翌二十三日の土曜日にはこちらに上京するという返事をもらったわけでございます。一方、事務総局の中に急遽矢口事務次長委員長とする調査委員会を設置しまして調査を開始したような経過でございます。
  28. 佐々木静子

    佐々木静子君 京都地裁所長は、そうすると最高裁からの依頼により事情聴取をしたというふうに承ったらいいわけですか。京都地裁所長鬼頭判事補事情聴取した根拠、それからその時間ですね、二回にわたっていると伺いましたがその時間、それから場所などを御説明いただきたいのです。
  29. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 二十一日の網走関係事件につきましては的確に記憶しておりませんが、余り長時間でなかったかと思います。それから二十一日の朝日報道につきましては、先ほど申し上げましたように、裁判官名前が出ておりませんし、私ども承知していないような事実でございましたので、当然京都所長も、京都裁判所鬼頭判事補であるということなどはゆめ思われなかっただろうと思います。先ほど申し上げましたような情報といいますか、話がございましたので、最高裁から大阪高裁を通じて京都地裁所長指示いたしたわけでございます。で、二十二日になりまして、本人は当然二十二日も事情聴取を受けるという予定になっていたと思いますが、ただいまのにせ電話事件のこともありまして、二十二日の午前中、所長官舎所長から事情聴取を行ったというようないきさつでございます。
  30. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、二十一日の新聞で某判事補として報道され、しかも同日衆議院法務委員会名前が出されるまで、追及されるまで最高裁鬼頭判事補のことは全然知らなかったわけなのですか。
  31. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 先ほど申し上げましたように、二十一日の昼ごろ諫山議員からお電話をいただいたわけでございまして、その二十一日の昼ごろまでは私どもといたしましてはこの事件裁判官、この事件のいわば主体が鬼頭判事補であるということは存じなかったわけでございます。
  32. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、国会議員からの連絡で初めて鬼頭判事補の問題を知ったと、京都地裁所長も初めて知ったと、そのように承っていいわけですね。
  33. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 抑せのとおりでございます。
  34. 佐々木静子

    佐々木静子君 最高裁での聴取というのは二十三日からですね。これは大分新聞報道されておりますけれども現実聴取に当たったのはどなたですか。
  35. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 私、勝美と私のところの調査課長泉徳治でございます。
  36. 佐々木静子

    佐々木静子君 新聞報道によると、これは非常に、時間が九時間ほどかかっておりますね。この間にどういう話があったのか。私ども二十二日の新聞で見ることよりも余り新しい事柄が出てきておらない。むしろ電話をかけたのは自分でないというふうな弁解が出てきている。これは一体九時間どういう話をしていられたのですか。
  37. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) その日の事情聴取の時間は私どもの計算では大体約七時間というふうに承知しております。そこの七時間の間に何を調査したかというお尋ねでございますが、当然のことでございますけれども網走関係、それから電話関係と二つに分けまして相次いで聴取いたしたわけでございますが、結論的に申しますと、新聞報道された事実のうちのいわば最も重要と思われるような点、たとえば網走事件につきましては資料をよそに見せたか、あるいは流したかというような点につきましては全然ないということでございましたし、それからにせ電話事件については絶対に自分はそういう電話をしていない、問題になっておりますテープの声の主は自分ではないというようなことでございまして、本来両事件とも私どもとしては最もウェートを置いて、いわば知らなければならない事項について結局はいわば言ってもらえなかったというようなことがございまして、まあいわば長時間を要したというような経過がございます。なお私ども調査の出発はもう新聞報道だけでございますので、新聞報道をもとにいたしまして一つ一つ聞いていったわけでございます。  なお各紙とも、鬼頭判事補にまつわる両事件とは違ういろいろなケースにつきまして、たとえば田中事務所に電話をしたとか、名刺を持って訪問したとか、いろいろな報道がなされておりましたので、それらの報道された各事実についても逐一事情を聴取いたしたような次第でございます。
  38. 佐々木静子

    佐々木静子君 そのうち本人は、そうすると網走刑務所の例の宮本氏の身分帳を閲覧したのは自分であるということは認めたわけですね。それからにせ電話についてもテープを読売新聞社に持ち込んだことは、これは認めたわけでございますね。
  39. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 前段についてはまさにそのとおりでございます。後段につきましてはまあ持ち込んだということが当たるかどうかでございますが、読売新聞と接触をいたしたことはみずから認めております。
  40. 佐々木静子

    佐々木静子君 接触したというのは非常に抽象的な言い方ですけれども、どういうふうに認めたわけなのですか。
  41. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 実は新聞でも御承知かと存じますが、昨日臨時裁判官会議がございまして、私の方からその間の調査の経緯とともに私ども調査いたしましてきのうの時点でまとめ上げた事実というものを報告いたしたわけでございますが、大略次のようなことを報告いたした次第でございます。  先ほど申し上げましたが、自分三木総理電話したと報道されているが、このような電話をしたことはない、しかし次のような事情がある、八月上旬の終わりごろか中旬に問題の電話を録音したチーフのあることをかねてから親しいある人から聞かされ、そのさわりの部分だけを聞いた、テープのあることをかねてから知り合いの読売の人に話をした、そのときは公表されても仕方がないと考えていた、その読売の人はぜひ一度聞きたいと言い、テープを聞く日時、場所を設定した、けれども別の親しい人が内容が重大過ぎる、公表されれば検察庁のロッキード事件捜査の妨害になると自分に忠告があったので、これは公表すべきでないという考えに変わった、しかし自分の読売の方に対する話がうそでないことを証明するため読売の人に聞かせることにした、自分はさきの理由を言って記事にしないことを申し入れ、結論的には両者の間で記事にしないとの合意ができた、で、約束どおり読売の人にテープを聞かしたが、その内容はメモをとっていたというのが事実裁判官会議に私ども事情聴取した結果として報告した内容でございます。  なお先ほども申し上げましたが、テープの声の主は自分でないし、だれの声であるかは思い当たらない、それからテープの存在を教えてくれた人、それから公表しない方がいいというふうに自分に忠告してくれた人の名前はいずれも言えない、問題のテープは現在廃棄されたと聞いていると、まあ以上のようなことでございます。
  42. 佐々木静子

    佐々木静子君 おおむねわかりましたが、その報告書を、国民がこれだけ関心を持っていることですから、それを法務委員会にも事情聴取の結果としてどういうものを出しているかということを提出していただきたいと思います。よろしゅうございますね。
  43. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 裁判官会議には私から口頭で御説明申し上げた次第でございますが、ただいまのことを要旨にして差し上げることについては異存がございません。
  44. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは最初はテープの声とテープを貸した人間とが同一人であるかのごとき言動だったのじゃないのですか。それがいつの間にか別の人になったという話に変わった、そういうふうに新聞報道では聞いているのですが、その経過はどうなのですか。
  45. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 私どもといたしましては、当初から先ほど申し上げましたように新聞報道を前提として本人にその間の事情を聞いたわけでございますが、結局私が先ほど申し上げたようなことであるということで、いわゆる同一人説については全く否認をしておったわけでございます。
  46. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは同一人じゃなければ、当然テープの提供者はだれであるかというようなことをいろいろとお尋ねになったと思うのですけれども、そのやりとりなり、それはどういうことだったのですか。
  47. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 先ほど冒頭に申し上げましたように当然のことですが、もし鬼頭判事補の供述のようなことであれば、だれから提供を受けたのか、テープの声の主はだれなのかということは最も重要なことであります。当然のことでございますが、私どもといたしましてはそのところを繰り返し尋ねたわけでございますが、結局答えを得られなかったというよりも、その人の名は言えないということ一点張りであったわけでございます。
  48. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはあなたがお調べになる権限というようなものも、これも伺いたいと思っているのですけれども、少なくとも強制力はないと思いますので、無理やりに言わすというわけにはこれは実際上まいらぬと、法律上まいらぬかもしれませんが、と思うのですけれども、しかしこれは国民ははたから見てると非常に歯がゆい感じがしているわけですね、何一つ聞き出せておらぬじゃないかと、一体この間何をしていられたのかというふうに思われて仕方ないのですけれども、その背後関係としていろいろな人の名前は出ましたか、あなたの方からお尋ねになるについて。
  49. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) それも繰り返しになって恐縮でございますが、私どもの尋ね方といたしまして、あくまでも新聞報道に出ている事実を前提にして尋ねる方法をとりました。で、ある新聞報道に具体的な名前の方が出ておったように思いますので、その点についても尋ねました。
  50. 佐々木静子

    佐々木静子君 飯守元鹿児島地裁所長のことなどが、かなり彼がその方と言っている方に該当するのではないかというのがこれは一般の国民の声なのですけれども、そういう点についてもかなり突っ込んだ質問をしておられますか。
  51. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 仰せのとおりでございます。
  52. 佐々木静子

    佐々木静子君 ほかにどういう人の名前が出ているわけですか。
  53. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 私のただいまの記憶で、あと新聞報道として、いわば背後の人でないかという点についてはなかったのではないかというふうに思います。それで、先ほど名前をお挙げになった方についてもちろん聞きまして、そのほかにもうないのかという趣旨のことは当然尋ねております。
  54. 佐々木静子

    佐々木静子君 なかったかと思いますとおっしゃるけれどもね、人事局長、調べたのはこの間ですよ。これが三年も五年も前の取り調べについて検察官証人に出てもらったときならば、どう言ったかこう言ったかということになるとなかなか記憶を喚起するのは大変かしらないけれども、どうも歯切れが悪いですね。そして新聞に出ていることだけだったら七時間もしゃべりようがないでしょう。もう少し名前が出ていたのじゃないですか、どうなのですか。
  55. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 新聞は全部切り抜きをここに持ってきておりますが、絶対の確信がなかったので先ほどそう申し上げたのでありますが、なかったはずでございます。
  56. 佐々木静子

    佐々木静子君 次にまた、きのうの裁判官会議で、ちょっと話が飛びますが、引き続いて聴取をするというふうなことになったというふうに新聞でちょっと見ているのですけれども、やっぱりそういう状態なのですか。
  57. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) さきに御批判がございましたように、私どもがこの席上で御報告申し上げたことは、結局新聞報道からいわば重要な点がずいぶん後退していることでございますし、私が先ほど申し上げたことはあるいは真相にほど遠いものなのかもしれません。私どもといたしましてはできるだけ調査をいたすつもりでおりまして、まだまだ調査未了ということでございますので、必要があればまた本人に来てもらって事情を聴取するなり、周辺のいろいろなことを私どものできる限りのことをやりたいということを裁判官会議にも申し上げましたし、裁判官会議からもそういうふうな御指示をいただいたわけでございます。
  58. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは勝見局長ももちろん裁判官も長くなさっており法務省にもおられた方ですから、そんなこと言うまでもないことですけれども、人を調べるのに相当の知識をいろいろ持たないと人の調べようがない。もうわかっているものであっても、外からいろいろな事実関係をつかんで、こうではないのか、ああではないのかと突いていかなければ、そんなことは人を調べるとぎの常道じゃないですか。あなたのようなお話だとすると、新聞は彼も読んでいるわけですよ。その読んでいる者同士が話をしたところで、それは何も出てこないのはあたりまえのことじゃないですか。どういうわけでそういうなまぬるいことをなさっているのですか。裁判の方でだめなら、やはり検察庁の方へ、早く捜査関係の手にゆだねるとか、いろいろな方法があると思うのですけれども、一体、この新聞記事というのは両方とも読んでいるわけですからね、その中の範囲内で話をしたって出てくるはずないでしょう。そのあたりどう考えていられるのですか。
  59. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) この報道が出ましたのは先ほど申し上げましたように二十二日でございまして、本人に上京を求めましたのは二十三日でございます。また、この事件の性質上、仰せの外からのいろいろなデータ収集ということにつきまして、私ども結局はそういうものを得られないまま二十三日のいわば事情聴取に入ったような次第でございます。もちろんこの調査の結果につきまして、いま佐々木委員指摘のような御批判は当然あろうかと存じますけれども、私どもとしてはとにかくできるだけのことをやりたいというふうに考えております。  それから、捜査との関係でございますが、私ども事情聴取を行いましたのは、あくまでも司法行政の、いわば裁判所の一職員としての鬼頭判事補に対するいろいろ身分上の問題に関連する事項として、司法行政の一環として調査しているわけでございます。捜査の方は先ほど大臣からのお話があったような状況にあるようでございますが、私どもといたしましては、この時点でこの事案の調査を打ち切って捜査機関にお任せするということを考えてはおりません。なお調査を重ねまして、あるいはどうしても私どもの力が及ばず、真相が——まあ真相と言いますと先ほど申し上げたような点でございますが、かもしれませんが、できるだけの努力はいたすつもりでおるわけでございます。
  60. 佐々木静子

    佐々木静子君 できるだけの努力をすると言うて何一つ努力してないじゃないですか。そんな新聞のことだけで聞いたって、そんなものはだれも答えるはずないですよ、相手は否認しているのですから。あなたは総理にこの事実関係、この事件では、いまも話をしていたのですけれども、この電話では鬼頭判事補自分はかけてないと言うのであれば、はっきりしている人間はこの電話応対した総理しかいないのですからね、まず総理から固めなければ事実調べはできないわけですけれども総理から事実の確認はきっちりとっていられますか。
  61. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) この点につきましては、確かにそのとおりだと存じます。ただ鬼頭判事補本人自分の声ではないということを主張しているわけですが、新聞報道によりますと、記者会見の席上で自分の声はこのようにテレビの前で報道され、総理も恐らく聞いておられるだろう。それで同じなら同じだとおっしゃるはずであるというふうなことを言っておりましたが、私どもといたしましては、総理がこの電話の声についてどういうふうに言って、考えておられるかにつきまして、場合によってはあるいは総理にしかるべき機関を通じましてお伺いすることも考えられるところでございます。なお、このテープの問題につきましては、読売新聞社が最も密接な当事者といいますか、関係しておられるわけでございます。本日の午前中矢口次長から読売新聞社に対して調査に対する協力方依頼をいたしております。相手がプレスのことでございますし、いろいろ情報源の問題とかその他いろいろな問題があろうかと思います。どの程度の調査の協力をいただけるか、ただいまお答えを待っているような状態にあるわけでございます。
  62. 佐々木静子

    佐々木静子君 御指摘のとおりというのは総理確認してないということでしょう、そうですね。
  63. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) そのとおりでございます。
  64. 佐々木静子

    佐々木静子君 この矢口次長から読売新聞社への問い合わせ、テープのテープですね。あるいはテープそのものか、テープの復製は読売新聞社に存在するという返事でしたか、存在しないという返事でしたか。
  65. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 先ほど申し上げましたように、読売新聞社に対しましては協力方を依頼した段階でございます。
  66. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういうふうにまどろっこしく持って回った言い方をするのが裁判官の権威のように思っていらっしゃるかしれないけれども、テープが存在するか存在しないか、あるいはテープの写しがあるのかないのか、これがこの問題の大きなポイントじゃないですか。それをまず聞くのがあたりまえじゃないですか。ごまかさないで答弁なさい。
  67. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) まさにテープの存在が、まだテープが存在しているかどうか、存在しているとすればどこにあるのかいう点についてはまた重要な点の一つであろうと私どもも考えております。読売新聞社に対しまして、きょう協力方をお願いいたしましたのは、そういうことも当然含めての依頼というふうに御認識いただきたいと思います。
  68. 佐々木静子

    佐々木静子君 依頼したことはわかりました。その返事はどうだったかということをさっきから聞いておるのです。
  69. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) ただいま私はまだ御返事をいただいたという報告に接しておりません。
  70. 佐々木静子

    佐々木静子君 それではすぐ矢口さんの方へ電話をかけてこの委員会私の質問は五時までですから、返事をもらってください、よろしいですね。
  71. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) すぐ電話して報告を求めます。
  72. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは人事局長もいろいろ御努力なさっている点は私も認めるわけですけれども、いままでの裁判官がこれほど大きな話題になる問題は少ないけれども、いろいろと不祥事件というものがこれは大勢の裁判官の中だから起こっている。しかし、この問題を契機として私のところへも実に何十人と言っていいくらいの弁護士さんあるいは一般の方から裁判官に対して最高裁はかばうことばかりかかっていると、いままでの経過で。これはいままでの経過から言うと、今度もこれは最高裁事情聴取というものは証拠隠滅ではないか、そういう疑惑の目が特に弁護士会の中では非常に強いわけです。もうちょっと持って回ったような言い方をしないではきはきおっしゃらないと私どももその疑惑をぬぐい切れない感じがするわけです。たとえば申し上げますと、余りプライベートなことは言いたくないですけれども、この鬼頭判事補、彼が名古屋の地裁の判事補のときに、そこへ来た女性の修習生と同棲生活をしている。あるいは名古屋地裁のまた別の裁判所職員とかなり深い関係を持っている、そういう事柄について、これは部外者もいるわけですけれども、ほかの民間会社の課長とも深い関係にあったと、私の知っているのは三つですけれども、名古屋時代は。まだ次のところでは順番にありますけれども、しかし、部内だけのことを言うと、その婦人の司法修習生から最高裁へその問題について上申を出した。あるいは女子の裁判所職員からこの問題について最高裁の人事局へ上申を出した。それは事実ですね。
  73. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 恐らく佐々木委員指摘の女性の方だろうと思いますが、そういういわば上申書といいますか、封書をいただいたことはございます。
  74. 佐々木静子

    佐々木静子君 まあ鬼頭を通じて御本人からも伺ったのですけれども、そのときの最高裁の扱い方というものは、これは当該裁判官をかばうことばかりで、この間のあなたに質問しましたけれども、男が命をかける司法の世界へ女を入れるのはけしからぬというような発言と同じ姿勢で、その婦人の修習生に対しては、かえって婦人の修習生の方が悪いというふうな断定で、その当該裁判官をかばった。そのように、ともかくいまの最高裁の人事局のやり方というものは、非常に裁判官をかばうことばかりにかかっている。むろん仲間内だからこれは何とかしてかばってやりたい救ってやりたいという親心はわかりますけれども、しかしそういうふうな事実の積み重ねの前で、人事局長が真相究明だの何だの言ったって国民は全然信用しておりませんです。どういう調べをされたのですか、証拠隠滅をその間やっていらっしゃったのじゃないですか。
  75. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 仰せのような疑念を抱かれているということについては、全くそのようなことはございません。ただどういうことをもってそのような評価がなされているかについては思い当たる節はございませんが、私どもといたしましては、あくまでも真相は何かということを追及しているつもりでございます。なお名古屋の問題につきましては、実は衆議院法務委員会で御質問を受けたところでございますが、また朝日新聞だったと思いますが、今度の事件に関連して報道されたところでございます。この件につきましては、投書者の上申書にあった事実関係関係者に当たって調査をいたしました。ただこの事件につきましては余りプライバシーに入りますので詳しく申し上げることを差し控えさしていただきたいと思いますが、本人の御希望もありまして投書者である女性本人の書面の中の御意向を伺いまして、結局はこの際には鬼頭判事補に対する措置は何らなさなかったようでございます。
  76. 佐々木静子

    佐々木静子君 あなたが人事局長でなかったらその第三者的な返事でもいいけれども、なかったようでございますじゃないようですよ、実際は。それは最高裁のいまの姿勢から考えてもなかったようでございますというような人ごとの話はできないと思います。これはまた後で実はこの当該裁判官ばかりじゃない。いろいろな問題があるわけなので、逐次また当委員会でお出ししていきたいと私は考えておりますが、しかし最高裁の人事局があくまでそういう姿勢を固執される。結局、司法の独立とか裁判官の独立を尊重しなければならないという美名のもとに、独立そのものではない独善をいままで許してきておる。裁判官というものは治外法権であると、私ども国民からのこの鬼頭判事補だって、これは普通の常識から考えても突拍子もないことですよ。そういうことをやるような人間を育ててきておる。私はこれは最高裁の姿勢の重大な問題だと思うわけなのです。独立という名前で余り干渉しない方がいい、甘やかす、そして全然そういう素質でない人も中にはいるでしょうけれども、多少ともそういう素質のある人はこの振幅が非常に大きくなって、全く自分だけ治外法権、何をやってもいいというふうな鬼頭判事補の言っていることを見て、これは私も先般大阪弁護士会の何人もの弁護士がこれは異口同音に、もう期せずして出てきた言葉が一番最初に、ああこのぐらいの変わったことをやるような裁判官は大分いるよというのがみんなの発言だったわけです。このぐらいの変わった人間がかなりいる。たまたまこれがロッキード問題で表に出たけれども、全く何をしでかすかわからないという裁判官、それを司法の独立という名前でいま人事局が、そしてはたの人間を切って捨て、はたの者が悪いのだ、裁判官は正しいのだ、常に正しいのだということでやってきた、そこら辺に非常に問題があると思います。まあ人事局長はいま問題あるとはおっしゃらぬでしょう。しかしそういう態度を続けていらっしゃる限り、これは裁判不信というものは、この鬼頭判事補のことによる裁判不信よりも、今度のことにおける最高裁の処置を国民から見てのふがいなさによる裁判不信というものの方が私は非常に大きなウエートを占めているのじゃないかと思う。その点どのように事務総長考えられますか。
  77. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいま佐々木委員からいろいろおしかりを受けまして、本件に関しまする限り、いかようにおしかりを受けましょうとも、私ども弁解の言葉のない次第でございます。裁判官の独立が独善であってはならないこと、また裁判官を甘やかしてはならないこと、まことにお説のとおりでございまして、われわれもかねてからさように考えておるわけではございますが、まあ何と申しましても裁判官にはやはり身分保障、裁判の独立というものがございますので、余りにわれわれが立ち入って干渉と申しますか、注意と申しますか、そういうことをいたしますことも行き過ぎになりましては、また恐らく佐々木委員からおしかりを受けるというような面も出てまいるのではないか、その辺の兼ね合いが大変むずかしいところでございます。しかしながら基本的な考え方において、私全く佐々木委員のただいまのお話と同感でございます。  なお、本件の処理につきまして、私自身も人事局長の事実調査報告を聞いておりまして、このままこれが真相であるというふうに信用するには何かまだ割り切れないものがある、そういうことで再調査調査の途中にも命じたりいたしましたことも、かなり時間をかけた一つの要素になっておるわけでございますが、私直接その衝に当たっておりませんのではっきりいたしませんけれども、いろいろ付随的な発言等が多かったりして、時間を要した面もあるようでございます。  そこで先ほど来人事局長から答弁いたしておりますように読売新聞社の協力その他周りの方をもう少し固めまして、その上で鬼頭本人の再尋問、再調査ということになれば、ただいまの状況よりはもう少しはっきりするものが出てまいるのじゃないか、かように考えておるわけでございまして、その点につきましても佐々木委員のお話のとおり考えておるわけでございます。
  78. 佐々木静子

    佐々木静子君 事務総長の御答弁にあったように是非国民の、それこそ信頼にこたえる聴取、調べ、あるいはこの問題に対する対応というものを最高裁がやらなければ司法権に対する侵害というものは、これはもう取り返しのつかない大変なことになると私は思っているわけなのです。で、この間からの調査聴取を一生懸命やっていらっしゃるようだけれども、非常に見ていて歯がゆい、これなぜ捜査権力が動かないのかというふうな気持ちがするのですが、検察庁の方はいまどのようなことをしていられるのか。主としてこれは検察捜査の常道というと、背後関係から固めていかなければ、周辺から固めていかなければ捜査にならぬと思うのですが、事実上どのような罪名でどのような事柄をいま調べておられるのか、お述べいただきたい。
  79. 石山陽

    説明員(石山陽君) 検察庁の捜査関係につきましては、ただいま佐々木委員指摘のとおり、捜査の常道と申しますれば、いきなり直接本人から聞く場合もありましょうが、多くの場合には周辺的な事情からいろいろと事情聴取あるいはその他の方法により証拠固めをし、いかなる容疑があるかを決定した上で本格的な捜査に入るというのが順当だと思います。その意味におきまして、検察庁はとりあえず先ほど大臣からも申し上げましたように、本件つまりロッキード関係のにせ電話事件につきましては、最高検から東京地検の方に捜査の検討方の指示があり、現在東京地検においては捜査のこれからの方針、それから周辺事情をどうやって捜査するかというふうな点について方針を固めつつあるやに聞いている段階でございます。
  80. 佐々木静子

    佐々木静子君 適用罪名とすると、いまのところどういう線で調べていられるわけですか。
  81. 石山陽

    説明員(石山陽君) 本件はただいままでのところ、新聞報道等で伝えられます話では、それぞれの当事者の話がいろいろ食い違っております。表現は悪いのでございますが、芥川竜之介の薮の中みたいな表現になっておりますので、これらにつきましては、それぞれどのような事実関係からどのような被疑事実を想定するかという点につきましては、今後もう少し周辺事実、ただいませっかく最高裁事務総局、あるいはその余の関係につきましてもわれわれの方で調べている点がございますので、それらの調査結果を合わせましたところで、どのように罪名を決定し、本格的捜査に入るかということを検討する段階だと思います。ただいまのところで、どういう罪名がすでに成立しているかどうかという問題につきましては、ちょっと申し上げかねる次第でございます。
  82. 佐々木静子

    佐々木静子君 わかっている罪名はそうすると一つもないわけですか、罪名不詳ということで調べていられるわけですか。
  83. 石山陽

    説明員(石山陽君) 一般論といたしましては、先日のロッキード特別委員会等におきまして、私どもの方からも御説明も申しましたように、新聞報道等でもすでに伝えられましたとおり、軽犯罪法に言います官名詐称というようなことも当てはまる余地があるのではないかというような観点についても調査しているやに聞いております。
  84. 佐々木静子

    佐々木静子君 この鬼頭判事補の身柄ですけれども、もちろんそういう軽犯罪法の容疑ぐらいではこれは身柄の拘束などということは不可能だと思いますが、いまどういう状態になっているわけですか。これは私ども、伝えられるように大きな権力の陰謀の中に巻き込まれている人間とすると、また逆に鬼頭判事補の身柄というものも非常に憂慮される状態に置かれているのではないか。そのあたり公安当局とするとどのような手を打っておられるのですか。
  85. 石山陽

    説明員(石山陽君) いま先生御指摘のとおり、軽犯罪法と申しますと拘留または科料という罪でございますので、氏名、住所等が明らかにならない限りは直ちに逮捕できないということでございますので、仮に鬼頭裁判官事件が軽犯罪法違反に当たるといたしましても、いわゆる強制捜査を直ちに本人の身辺に加えることはできないことになっておるわけでございます。したがいまして、現在の段階におきましては、仮にそれらの事実につきまして、その事実だけしか当てはまらないということになりますれば、私どもは任意捜査を原則としてやらざるを得ないということにならざるを得ないと思います。その辺の、したがいまして本人が任意に出頭するということは、逆を言いますると行動の自由につきましては本人自身が享有をしておられることでございますので、私どもは関心はございますが、検察が今後その辺につきましてどのように本人の供述あるいはその他につきまして捜査上必要な身辺の保護を含めた警戒をなしているかどうかという点につきましては、警察の判断に任せざるを得ないというふうに現段階では考えております。
  86. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは業務妨害という罪名も考えられるし、あるいは電信電話法違反というような罪名も考えられるのじゃないか、あるいはこれの被害者を三木総理と考えるならば三木総理の方からの名誉棄損ということも、あるいは検事総長の名誉棄損というようなことも考えられるし、そのほか国家公務員法違反というようなことも考えられるのではないかと思いますが、その点はどうなっているのですか。
  87. 石山陽

    説明員(石山陽君) 一般論といたしましては、今後事情の聴取あるいはそういった周辺の調査が進みました結果によりましては、先生御指摘のような罪名等が成立する余地について検討する必要が生ずる場合は当然あるものと思います。ただ、先生法律家でいらっしゃいますからよく御案内のとおり、たとえば証拠隠滅であるとか、あるいは偽計による業務妨害とかいうことにつきましては、刑法の構成要件上の問題点につきましてそれぞれこれから検討を進めてまいる。何と申しましてもその前提といたしましては、その具体的事実がどういう形において行われたかという点をまず確定いたしませんと、それが何の罪名に当たるかの最終判断をいたしかねますので、この点につきましては検察の方で起訴事実その他につきましての情報の収集なり捜査の方針を検討ということを待った上でその成否が論ぜられることになるだろうというふうに考えておるところでございます。
  88. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは時間がありませんので矯正局長に一言伺いますが、これは例の網走刑務所に所在する身分帳の問題ですが、私ども法務委員会からも、これは別個の方の身分帳ですけれども、国政調査権に基づいて提出していただきたいと以前にお願いしたことがあってもこれは拒否されている。また、私も担当した事件ですけれども、身分帳について民事事件裁判所の提出命令をとった場合にも拒否されておるわけなんですね。これが単に治安問題についての研究をするというだけの人間になぜ閲覧させたのか、また御丁寧に写真まで撮ることを認め、その上写真のフィルムの巻き直しを巻き誤ったから、それをまたゼロックスをとってもう一度刑務所の職員が手伝うとか、全く常識で考えられないのですけれども、そのあたりの調査はどうなっているのですか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  89. 石原一彦

    政府委員(石原一彦君) 身分帳につきましては佐々木委員指摘のとおり、受刑者の刑執行中における経過、身上等につきまして詳細に記録してございまして、人の名誉に関する事項あるいは行刑の処遇に必要な事項、あるいは面会、書信の内容等、行刑当局だけが知り得る事項を含むものでございますので、その内容は秘匿すべきものが多いのでございます。したがいまして、秘扱いにしているのでございまして、それが外部に出たという点で私ども大臣からも詳細にかつ迅速に調査せよという御指示を受けまして、目下鋭意調査を行っているところでございます。何分にも二年以上前のことでもあります上に、私どもでは関係者が二人おります。しかも、佐々木委員おわかりのように、すでに鬼頭判事補本人がいろいろ述べているわけでございますが、一つの自白的な供述といたしますれば、かえってそれにとらわれるのもいかがかということで、先般新聞に出まして直ちに当時の所長を呼びまして、事情を聴取いたしました。昨日来網走の当時の庶務課長であった者を呼んでおりまして、本日は両方を呼んで供述の食い違いあるいは記憶にないところの喚起に努めているところでございます。詳細が判明しましたときには御報告申し上げるつもりでございますが、鋭意調査をいたしておりますので、いましばらく時間をいただきたいと存じます。
  90. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはあるいは当委員会にも、また証人として喚問したいという声も出ているわけでございますけれども、いま御当局で調べられているということでございますが、大体一番急いでどのぐらいの間に調べができるわけですか。
  91. 石原一彦

    政府委員(石原一彦君) 当初は網走刑務所だけの問題かと思いましたところが、途中矯正管区にも口添えを頼んだという新しい事実が出ております。その点につきまして調べておるのでございますが、鬼頭判事補が口添えを頼んだと思われる人はいまだ記憶がないということでございますし、その方もまた東京から離れたところに在勤いたしておりますので、いつ呼ぼうかということを考えているわけでございます。全容の解明には私はある程度日時が必要であろうかと思いますが、明後日の喚問ということもございますので、あるところで固まった際には中間報告ができるかという点につきましても、きょう帰りまして両者の調査内容を聞いて、できるだけ早い機会に御報告申し上げるように努力したいと思っております。
  92. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは事の真相を究明する上で迅速にしていただきたいと思うわけですね。法務大臣には失礼だけれども、前の中間報告のようなわけのわからぬ中間報告ではちょっと困るわけでございまして、この中間報告はすぱっと法務行制自身がはっきり全部出てくるように、鋭意早急に努力していただきたいというふうに思うわけです。  それから、いま鬼頭判事補が辞職の意思を表明していると、これは京都地裁に辞職願いは出たのですか、出ていないのですか、いまのところ。
  93. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) ただいまのところ、京都地裁所長から辞表が出たという報告に接しておりません。
  94. 佐々木静子

    佐々木静子君 実は御承知のように、明日も国会における当裁判官に関する訴追委員会が開催されるわけでございますけれども、この辞職願いというものが出た場合に、これは事務的にどういう手続を経て辞職になるのか、あるいはこういう問題でいろいろと裁判所においてもあるいは国会においてもその他いろいろな機関で調査をしなければならないという状態のときに、もし辞職願いが出た場合にそれを保留することができるのかどうか、そのあたりの事務的なことを説明していただきたいわけです。
  95. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 裁判官の免官願いが出た場合の手続でございますが、所属の裁判所長に出されまして、さらに高等裁判所を経由して最高裁判所にまいるわけでございます。最高裁判所はその願いを経由して内閣に送付するような手続に相なるわけでございますが、その間最高裁判所にその辞職願いを受理しない権限というものがあるかどうか、そこにいわゆる実質的な審査を加えて辞表を受理するのが相当でないと考えた場合に、内閣に経由しないで、いわば最高裁判所にとどめおくことができるかどうかというような点は、内閣の任免権限とのいわば裏腹の関係にありまして、相当むずかしい解釈問題が出てこようかと思います。本件の場合にはただいま調査中でございまして、果たしていずれが真相として確定できるか問題がございますが、確かにこれだけ世間を騒がしたケースでございますので、果たしてどういうふうに処理すべきか、この点につきましては慎重に検討いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  96. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう時間がありませんのであと二問ほど伺いますと、普通の国家公務員の場合は懲戒免職という手段が残されている。しかし、最高裁の方は、これは辞職願いが出たのをそのまま取り次ぐだけしか権限がないというようなことにもしなれば、これは何のために裁判官に対する監督権というものを持っておられるのか、また国会における訴追委員会あるいは弾劾裁判所というものが、これは分が悪くなればみんなやめてしまえばそれでおしまいなのだから、これでは憲法上規定したところの弾劾裁判所というものに対する規定が全く無意味になってしまいますね。いま人事局長の話では任命権限は内閣だとおっしゃるけれども、これは私どもいままでも毎年毎年裁判官の任官問題について法務委員会でやっているわけですよ、そのたび内閣総理大臣とやっていないですよ、最高裁の当局とやっているわけですよ。というのは、とりもなおさず内閣の任命権限は、これは形式的なことであって、実質的には最高裁当局が任命しているわけなんです。だからこそここで最高裁裁判官の任命問題についていつでも議論しているわけですよ。それですから、監督権限を持ち、任命権限を持っている以上、これをやめさすかやめさせないかの権限も当然これは最高裁が持つべきじゃないかというふうに私は思いますね。これは裁判官が議論を遊んでいる、もう実際の世間から遠ざかって法律理論ばかりを言っている、いまの御議論はその典型だと思いますね。これは裏返せば最高裁当局は非常に無責任だと思いますね。これは当該裁判官に対して無責任なんというのじゃなくて、国民に対して無責任だということです。あなた方がこれらの裁判官の監督権限なり任免権限を持っているということは、これは国民から委託されてやっているからこそ毎度毎度任命問題なんかについてもここで問題になっているわけです。もしいま辞職願いをそのままフリーパス、そうなると、この裁判官はいま給与法案がいよいよ法務大臣もお読みになって御提案いただいて、私どもこれから審議に入るのだけれども、ベースアップになれば退職金までふえますよ、そういうふうな矛盾をどう思っていますか。その点についてもう少し理屈じゃなくて、法律の解釈問題をここで論じているのじゃなくて、国民がもっともだと思う回答というものをなさらなくては、これは最高裁はいよいよ国民から笑われ者になるのじゃないか、信頼されないものになるのじゃないか、その点事務総長に伺いたいと思います。
  97. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 佐々木委員のお話まことにごもっとで、私どもも全く同感でございます。裁判官につきましては最高裁判所実質的に全責任を持っておるわけでございまして、裁判官をどうするかと、また、特定の裁判官の処遇をどうするか、あるいは身分をどうするかということにつきましては私どもの全責任においていたしたいと法律論を離れまして考えておるわけでございまして、本件につきましては私どもはっきりした態度をとって国民の御期待にこたえたいと、かように考えております。
  98. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは最後に法務大臣大臣はこの問題の真相の徹底究明ということを国会でいままでもおっしゃっていただいておりますけれども、そういうことについて私ども国民もこの問題の真相究明、そして、これからの大臣の直接の御所管でないにしても、司法行政のあり方というようなものについても深い関心を持っているわけでございますが、その点について最後に大臣の御所信を述べていただきたいと思います。
  99. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 身分帳の出たこと、世間に流布されているなどというだらしのないこと、それからゆゆしい電話事件みたいなことがあって、そういうものをやった人間のことはもちろんですけれども、その背景等、真相を究明しなければこれはもう司法の信頼に関することでございますし、また、法務省の行刑の重大事件でございますから徹底的に調査して、そして国会を通じて国民の前に明らかにしなければ国民の信頼を失うと、したがって、先ほど御要求になったような、なるべく迅速にやって中間報告をせいというなら中間報告もいたしますし、いい中間報告をね。いい中間報告をする。この間の報告自分で悪いとは思っていませんけれども。それ評価もいろいろあることですから、今度は自分でもいい中間報告だなと思い、皆さん方も、ああ、なるほどいい中間報告だと思うようなことをして、そして信頼にこたえていかなければならぬ問題であると、重大な問題だと、こういう認識で取り組んでいきたいと思っております。
  100. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 先ほど佐々木委員から御依頼のありました件につきまして返事がまいっておりますのでお答え申し上げます。  本日、編集局次長、社会部長に調査一般についての協力を依頼した読売新聞社は、報道機関としての限界はあるが、原則として協力することを了解していただいた、具体的個々の事項についてはこれから両者の間で詰めることにしていくと、以上のような電話報告が入りましたのでお答え申し上げます。
  101. 佐々木静子

    佐々木静子君 テープの有無はわからないわけですか。そうすると返事はもらっていないわけですか。
  102. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) この点についてはただいまの報告の中には入っておりません。
  103. 原田立

    原田立君 京都地裁の鬼頭史郎判事補の問題について質問いたします。  この鬼頭判事補の一連の事件は現職の裁判官が関与していることであり、問題はきわめて重大であります。この問題は司法の威信にかかわることでもあり、このような問題の起こった動機、あるいは背景等を含めた一切の真相究明を徹底的に行うことは当然のこととして、速かに適切な処置を講ずることが肝要であります。すでに佐々木委員からもただいまいろいろと質問されておりますが、事はきわめて重大な問題でありますので、重複する点もあるだろうと思いますが、率直に明確なる御答弁をいただきたいと思います。  まず、最初に今回のにせ電話事件は、一般の国民が裁判官裁判所に対しての信頼を裏切る行為であり、衝撃的な大事件である、このような不祥事は二度と起こしてはならないことであるし、あってはならない問題であろうと思うのであります。その点について法務大臣あるいは最高裁いかがお考えですか。
  104. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) かような事件を絶対に二度と繰り返してはならないと、固く信じております。
  105. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 勝見人事局長の調査の結果によれば裁判官が直接電話したのでないと、こう言っているというのですがね。その点ももう少し徹底的に調べなければいかぬ。もし現職の裁判官がこのロッキードの事件に対してああいうような内容電話総理にしたなんてことになれば、これは裁判所の威信を大変に傷つけてどうしようもないことですね。どうかしているのじゃないかと、もし事実ならばね。裁判官があんな電話総理にしたということが事実であるとすれば、これは話になりません。どうかしている。そんなおかしな裁判官裁判するようでは国民は非常に不安でしょうな。ですから、そういう点については徹底的にこれは究明しなければいかぬと。私も総理から言われたときはそんな内容でそういう裁判官からなんてという話は全然わからぬわけですね。新聞を見て、裁判官がやってきたのならばこれは重大なことだ、徹底的にこれは調べなければいかぬ、総理も、これ調べましょうよねえ稻葉君と言うから、それはもちろん調べなければしょうがないじゃないですか、こう言って直ちに刑事局長を通じてしっかりやってもらうようにお願いした。そして、先ほど報告があったように、いろいろなことを調査をしているというわけでございます。
  106. 原田立

    原田立君 最高裁調査委員会での調査では一般報道されている内容調査結果では事実においてかなりの違いがあるのか、もし違っている点があったとしたら報告をされたいと思います。要するに新聞報道されていることは、調査した結果まさにそのとおりであったのかあるいは違う点があったのか、その点はいかがですか。
  107. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) いわゆるにせ電話事件につきましては、先ほど繰り返して申し上げましたように、読売新聞の最初の報道を私ども調査の対象として本人にいろいろ尋ねたわけでございます。尋ねました結果は先ほど申し上げたとおりでございまして、電話の主、それから読売新聞社に対するいわば接触の仕方等につきまして、読売新聞報道と非常に重要な点において違っております。なお、読売新聞報道にありますテープの、いわば会話の内容でございますが、会話の内容につきましては、鬼頭判事補は現在余り覚えていないというような答えでございましたし、その意味でもそういうような食い違いといいますか、不十分な供述ということに相なろうかと存じます。
  108. 原田立

    原田立君 このにせ電話事件の取り扱い方に対して、最高裁または法務当局の姿勢に大きな問題があるのじゃないか。この事件については、すでに八月十九日号の週刊新潮に掲載されていること、また今度の十月二十二日の読売新聞夕刊には「ある判事は二十二日未明「あの話が新聞に出るんですか」と話し、」京都「地裁内部の一部では“すでに知られた事件”だったことを」新聞報道されておりますが、これらの点についてどのように掌握されているのか、その点はいかがですか。
  109. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 週刊新潮の八月十九日号に掲載された記事につきましては、この事件読売新聞報道された後に見させていただきましたが、当時この週刊新潮の記事について現在新聞報道されているような形での、と申しますと、鬼頭判事補がこの週刊新潮の記事にからんでいるというようなことは、私どもとしては全然知らなかったような次第でございます。  なお、ただいま後段で御指摘の「あの話が新聞に出るんですか」というようなことをある判事が言ったというようなことでございますが、実は私どもこのような質疑があるというふうなことを聞きましてむしろ驚いているような次第でございまして、もしその時点においてそのようなことがあったかなかったか、また十分に調べさせていただきたいと存じます。
  110. 原田立

    原田立君 十分調べていただきたいと思うのです。新聞報道されている、まさかうそなど書いているわけはないだろうと思うのです。また、現職の判事がそういうふうなことを言ってびっくりしておった、言っておったというようなことが言われているわけでありますから、この点はあいまいにしないで後日私としては報告をしていただきたいと思うのです。  それから法務当局に聞きたいのですけれども法務大臣、八月十九日の週刊新潮、これを見ると大変中身が非常に詳しくて、そうしてやはりなかなか重大な問題ですね、雑誌で報道されたのですけれども、この雑誌で報道されたその時期において法務当局としては何か初動捜査というか、活動を開始したとか、そういうことはなかったのかどうか、この点はいかがですか。
  111. 石山陽

    説明員(石山陽君) ただいま先生御指摘記事は私もここへ持ってきておりますが、これはすでにごらんいただいたとおりでございまして、なるほど中身にかなり詳しいやりとりの問答体の記事がございますが、いかんせん、この記事だけではだれがどこにいかなる機会に出したかということについて何ら特定がございませんで、まあいわば一種の政界怪情報というような形で実は編集され、発表されたものでありました。したがいまして、当時私がただいままでに聞きましたところによりますると、これが一つの話題になったことは事実のようでございますが、これが出ました八月十九日付号というのは、現実にはそれも数日前に出版されていますので、その時期がたまたま地検といたしますればロッキード関係捜査の核心に触れる時期でもあったということもありましたので、これをもって直ちに捜査を開始すべきだけの周辺事情が解明されたあるいは容疑が何であるかというところまで確定するに当時至らなかった、言い方は悪いのですが、手も回らなかったというのが事情のようでございます。
  112. 原田立

    原田立君 そこいら辺が少し生ぬるいのじゃないかと言うのです。というのは、この雑誌を見ても、「総理閣下、夜分遅く恐縮でございます」、総理というのは三木さんにきまっているじゃないですか。それから「中曽根逮捕」云々、これ中曽根幹事長でしょう。それから「田中の起訴」云々、これは田中角榮前総理でしょう。これでしかも週刊新潮も一流の雑誌であろうとぼく思うのです。そこに出たのをただ軽々しくいわゆる政界の怪情報だなんというようなとらえ方でおられたというのは非常に軽率なのではないでしょうか。当局と大臣、どうですか。
  113. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) そうですね、こんなのが週刊新潮に出ているということも知らなかったですな。それは軽率じゃないかと言われればそうかなあといま思う、いまにして思えば。しかし、これ自分でだれにも知らされない、こういう記事が出ているよなんていうことを知らされてないのですよね。知らされてないものですから、どれどれと言って見なかった。それは軽率ではないのでしょう、それは。総理から言われたときに、もう少し総理に一体どんな電話だとか、そういうことを聞きたださなかったと言えば、いまにして思えばもう少し聞いておけばよかったな、こういうことですけれども、   〔委員長退席、理事平井卓志君着席〕 当時はまあ捜査を受けている側もいろいろなことをやるわけですよね。中曽根の名前出して法務大臣にいやがらせみたいなことをやったり、いろいろあるわけですからね。それしかもその週刊新潮にこんなことが出ていると私知らなかったものですから、それから新聞に出て、なるほど前に週刊誌にそんなもの出ていたのかということを初めて知って、だれか注意してくれれば、もう少しやりようがあったかなあということをいま考えているわけであります。軽率と言われても、生ぬるいと言われても、生ぬるうございましたね、軽率でございましたなという気持ちに私なれないのです。
  114. 原田立

    原田立君 非常にその答弁は私納得しがたい。今回十月二十二日に読売新聞に出ましたですね。これをごらんになって非常にびっくりしたというふうにお話になりましたけれども、その点は間違いありませんか。
  115. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 間違いありません。
  116. 原田立

    原田立君 そうしますと、この週刊新潮に載った内容と、それからこの十月二十二日の新聞内容とずっとこう突きつけてみますと、雑誌の方が確かに言葉は多いけれども、筋としては大体法務大臣同じですよ。これはこっちの新聞の方は大事だと感じたけれども雑誌の方は大事でないだなんて、それはちょっと不見識な御答弁じゃないでしょうか。
  117. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 週刊誌のこっちの方と、読売のこっちの方では大分違うのですね。  まず第一に、電話をかけたのが新聞では裁判官だという。それからもう一つは、おれは布施検事総長ですがと言うてかけているというふうにこっちは書いてあるし、こっちはそういうふうにないのじゃないでしょうか。その一番のポイントのところはわれわれに非常に重大だか、いやこんなもの、こんな怪情報みたいな、デマみたいなものかということの分かれ道なんですからね。ですから、これを見たときには私もこれは司法の威信に関すると。  それからもう一つは、検事総長名前をかたられているということをいまごろわかって、えらいことに、どう思っているかなといろいろな関心をこのときには持って重大だと思いましたし、これは全然見てなかったのですけれども、このとき見ても、このとき見たとしても、これを見たときほどの重大さは認識しなかったかもしれません。まあ見ないのだからしようがないけれども。そういう違いがあるようです。
  118. 原田立

    原田立君 そうすると大臣のお考えは、布施検事総長名前電話があったと、この一点だけでこの新聞報道が重大であると、こういう御認識ですか。
  119. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) もう一つは、この新聞報道によりますれば現職の裁判官が布施検事総長名前総理電話をしているという点でありますね。
  120. 原田立

    原田立君 いま問題になっているのは、この中身では、総理指揮権発動ですね、これがあったかなかったかという点が重大事件になっているわけです。ここの中をずっと詳細に読んでいますと、そのにおいをふんぷんと感じるんですね。大臣はどう思いますか。
  121. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) まあ、いろいろあって、最後にお任せしますよと言い切っているから、ああこれはよかったなあと思っております。
  122. 原田立

    原田立君 そこにコピーがおありだろうと思いますが、この新聞読みますと、   首相 指揮権(発動)みたいなことはしたくないからねえ。   ——そんなことにはなりません。総理のご意向のあるところを忖度して私の方の一存で行うことですから……。  それから中略して、   首相 あなた自身の判断を加えて下さいよ。私は、日ごろ、公平、厳正にやってくれと言っている。それが大きく曲げられては具合が悪いことになる。   ——外部的には公平の形は公平、厳正を保てます。   首相 内部的には?  と、こう言ってですね、もう総理は乗せられているんですな、ここのどころはね。そうして、   首相 内部的にはあなた自身の判断ということで……。私の指揮をあおいだということでなく……。   ——それは当然のことで、申し上げるまでもないことです。永久に私の胸の中の問題です。歴代の総長は正式の指揮権とは別に総理の内意を受けてきております。   首相 混乱を避けなければならない。一つの歴史としても残したくないしねえ。  云々と。そうして、   首相 内部的にも無理のないよう……。   ——内部的にも外部的にも、無理のあるように致しません。ではそういうことでよろしゅうございますか。   首相 うん。  こう言っているのですよ。これは指揮権発言を含んでいるのじゃないですか。
  123. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) これはずっと読んでみまして、途中でいろいろなことはあるけれども総理は、ロッキード調査特別委員会答弁しているように、ああこれは自分を陥れる何らかの背後の動きによる電話だなと感づいたので、いろいろどういう背景があるのか自分でも少し探ってみようかという気になって向こうの電話に対する答弁をずっとやってきたと。しかし、私は、総理指揮権を発動するような気持ちは全然ないと思っていますよ。それから私も同様でございますね。政治的介入は一切しないというので、総理も最後のところで、「私は何も政治的に関与することでありませんから最終的にはあなたの判断にお任せします。」、こう言い切っているわけですから、指揮権の発動のにおいがふんぷんとするというのは、私は思いませんな。総理の意向をよく知っている私としてはそうは思いません。ただ、背景がどんなふうであるかひとつ探ってみようか、こういうような気持ちがあって途中いろいろな返事をしているというふうに受け取れますな、私は。
  124. 原田立

    原田立君 いま大臣が言われたその後に「では、中曽根不逮捕、田中起訴ということで」行いますと、こうなっているのですね。これは指揮権発動、政治的介入じゃないですか。
  125. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) このことだけでそうとは思わないのですよ。「内部的にも外部的にも、無理のあるようには致しません。ではそういうことでよろしゅうございますか。」と、こういうのだから、これも「うん」だか「う一ん」だか何だか……。(笑声)
  126. 原田立

    原田立君 大臣大臣の言われたのは一番おしまいのところなのですよ。そこのところじゃないのですよ。もう少しおしまいの方のところの御見解をお伺いしたい。一番最後です。
  127. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 「では、中曽根不逮捕、田中起訴ということで……。」、そこのところではこれは切れてるね。そこで切れているのですな。もう少しここで——ここで「では、中曽根不逮捕、田中起訴ということで」と、こう切ったら、追っかけて、政治介入はせぬ、こう言えば一番よかったかもしれませんけれども、向こう切っちゃったからこっちもそのままになっちゃったのじゃないですか。これで、では中曽根不逮捕、田中起訴ということでと、こういうことを検事総長がもし私に言うてきたとしても、私はそれはいかぬとか悪いとかいう返事はできないですな。まあ普通一般にあなた方から見れば、これ私のところに電話してきたとして、では中曽根不逮捕、田中起訴ということで大いによしと、こう私が言いそうに思われますけれども、そういうことは一切やっていないのです、私は。そんなことはしないのです。一切介入しない。だれが何であろうと、自分の非常に親しい人であろうとそうでない人であろうとそんなことは一切差別扱いしない、そういう気持ちで、総理も全くその気持ちですから、よく知っていますからね。私はこれがいかにも指揮権発動のにおいがふんぷんとするというふうにお考えになっていただかないようにしてもらいたいと思っていますな。
  128. 原田立

    原田立君 もう非常に不満な御意見ですけれども、時間がありませんから次に進みたいと思いますが、私は今回の事件に対していまの三木首相の行為に対して非常に疑問を持つものであります。というのは暴力電話に応ずること自体不見識きわまりないものであるばかりか、一時間も応待する必要などどこにもなかったのじゃないのか、一時間もですよ。ところが三木首相は二十二日の参議院ロッキード特別委員会で、初めは検事総長と思って電話に出たと、途中で気がつき、どんな方面の者がやっているのか突きとめてやろうと考えたから長くなったと、まあこんなふうな答弁をしているわけでありますが、このような不見識な総理の行為は軽率な行為としか言いようがない、私はそう思うのです。法務大臣いかがですか。
  129. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) なかなかむずかしいことをお聞きになりますが、よしこの背後をつかまえてやろうというのも一つの考え方だと思いますな。検事総長といって電話して、やってみるとどうもそうでないというのだから、これはひとつけしからぬやつだと、こう総理が思われて背後でも少し突きとめてやろうかという気持ちになったということはそう軽率というほどのことではないのじゃないでしょうか。まあその背後を突きとめてやろうというにしてはもう少しうまく突きとめてくれればよかったなと私は希望しますがね。突きとめられなくて残念だったなと、いまにして思えばそう思います。ただ、だらだらだらだらこんな者の相手になっていちゃいかぬじゃないかという点については同感で、それは総理も少し軽率であったかなというふうな答弁をされたように私覚えていますがな、参議院のロッキード委員会で。ですから御本人のお気持ち次第でしょう。私からかれこれ批判を申し上げるべきことではない。なかなかしかしいかにもこう指揮権発動のようなことを引き出そう引き出そうとしても、それに対してはきわめて慎重に対処をして指揮権の発動にならないような答弁をしているが、その点は用心深いものだなとは思いますな。
  130. 原田立

    原田立君 十月二十五日の毎日新聞ににせ電話事件で「鬼頭判事補、本社記者に語る」、「“田中起訴”指示の言葉公表したかった」と、こういう記事が出ております。法務大臣ごらんになっただろうと思いますが、毎日新聞、これに対してこの毎日新聞のインタビューについて鬼頭判事補がもう一遍ぜひ一度会って弁明したいということで勝見局長がお会いになったようでありますけれども新聞報道ではごく簡単に出ておりますが、この毎日の記事、これは非常に重要な問題ですね。指揮権発動の問題がぞろぞろ出ています、というふうな内容のものが。どういうことであったのか。
  131. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 実は昨日第二回目の事情を聞いたわけでございます。その点につきましてそのいきさつを申し上げますと、二十四日の読売の朝刊に当然のことですがこの関係記事が出ておりまして、実は本人から申し出がありましたのは二十四日の読売の記事について釈明をしたい、こういうことであったわけでございます。で、ただいま原田委員指摘のとおり二十五日の毎日の朝刊が出ましたので、この点につきまして私どもの方から聞きたいということを言ったわけでございます。それでまた事情聴取に入ったわけでございますが、確かに原田委員指摘のとおりこの内容が非常に重要なことに関連いたしますのでこの点について尋ねましたけれども、この点につきましては結局は要領を得なかったというのが実情でございます。と申しますのは、本人は最初申し上げましたように、このテープの内容については、もうすでに長いテープの内容につきましてはほとんど忘れているというようなことを述べておりましたものですから、私どもの方で改めて聞いたわけでございますが、いわばこの点については否定するとも肯定するとも言わなかったわけでございます。
  132. 原田立

    原田立君 この新聞報道によりますと、あなたが一人で最高裁三階の人事局会議室で聞いたというような報道がなされているわけでありますけれども、当初第一回目のときには態勢を整えてお聞きになったのだろうと思う。何人でお聞きになったか、その点はちょっとまだつまびらかでないのですけれども、たった一人で会うということはちょっと不見識じゃないですか、それが一つ。  それから、午後零時四十分最高裁の二回目の事情聴取が終わった鬼頭氏は東京高裁内の司法記者室に姿を見せ記者会見に応じたと、私がいよいよ辞表を出すことになると三木首相は閣議でその取り扱いを協議することになる、一方の当時者である三木さんは電話の主であるのかないのかはっきりすべきだと、主であるとすれば国会答弁のように内容は忘れたではなく中身を明らかにすべきではないのかと、こういうふうにそのテープの、かけたことは自分であるというような意味にとれる内容発言をしているわけなんです、記者会見発表しているわけです。ここら辺についてはどう思いますか。
  133. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) まず私ども事情聴取いたしましたのは、第一回目と申しますと土曜日の日の第一回目の事情聴取は私と泉課長で当たりました。その際事務官二人を入室させております。それからきのう行いました事情聴取は私と泉でいたす予定でございましたが、私が所用がございまして大半は泉課長に行わせまして、その報告を受けました。そのような状況下であったわけでございます。その際きのうも二人の事務官を立ち会わせております。  それからきのうの午後の記者会見の報道についてでございますが、御指摘のような報道がなされておりますが、私どもの面前では当初申し上げましたように電話をしたのは自分ではない、テープの声の主は自分ではないというふうに言っておるわけでございますので、私どもといたしましては鬼頭判事補電話の主と同一人であるというふうには、現在のところ確信を持って同一人であるというようないわば考えを持っているわけでは、まだそこ——それが真実であるとすれば、そういうところまでは至っておらない心証でございます。
  134. 原田立

    原田立君 もう一問で終わりますが、にせ電話、これをかけただれかがいて、そうして聞いたのは総理、この二人しかいないわけですね。先ほど佐々木委員からも指摘があったけれども鬼頭判事補がいろいろと新聞記者会見あるいはテレビなんかの会見で、これで言うていますよね。その声、それを三木総理も聞いておられるだろうと思うのですよ。それでお伺いするのですけれども、その当日、三木さんが聞いた電話の声と鬼頭判事補の声と合致しているのかどうか、そこら辺は確かめられたのかどうか。また、まだしていないとすればいつごろ確かめられるのか、これは重大なポイントでありますから。私はまた当委員会において三木総理の出席を要求しております。片方の方で聞いて片方で聞かないのだということはなりませんから。まあ、それはそれとして、事実、確かめられましたか。
  135. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) まだいたしておりませんが、先ほど申し上げましたように、そのようなことをしかるべき方を通じてお願い申し上げることもあるかと存じます。  実は、テープの電話の声の主が自分ではないと言うものですから、それでは読売の新聞報道に出ているこの電話記事を声を出して録音にとらせてもらっていいかということを言いましたら、それはかまわないということで、最初の部分を録取してございますので、必要なときにそういう措置に出ることも考えているわけでございます。
  136. 原田立

    原田立君 大臣、これは重大な問題ですから、速急に大臣から総理に聞いてもらいたい、いかがですか。
  137. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 聞くことは必要でございますな。早速聞きましょう。ただ鬼頭判事補がテレビを通じてだれか会見をして、それがテレビに映っておる。その声を総理が本当に聞いたのかどうか、それもまだ聞いていませんからね。聞いたとすれば、電話のときの記憶とあの声と同一人だと思いますか思いませんか、聞くのはわけないですな。
  138. 橋本敦

    ○橋本敦君 最初に法務大臣に伺いますが、このにせ電話、謀略電話事件、これでいま法務大臣はこれは重大な問題だということで徹底的な調査をやらせるということを繰り返し表明された。その重大な意味というのが、いま大臣がおっしゃったのは、布施検事総長の名をかたって一国の総理に謀略の電話をしたことだと、こうおっしゃいました。そのとおりです。私が大臣に聞いたのは、この謀略電話があって後、しばらくしてあなたは総理からこの話を聞かれ、そのときにあなたは、いや、いろいろ妨害やおかしな電話があるから、総理、気にしなさんなとおっしゃった、こう言っていますね。まず最初に聞きたいのは、法務大臣のところにどんないやがらせの電話、どんな妨害の電話があったのですか。自分のところにもいろいろあるのだと、総理、気にしなさんなと、こうおっしゃったわけですね。たとえばどんな電話がございましたか。
  139. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 私のところへまさか布施検事総長の名をかたったり、刑事局長の名をかたったり、そんな電話はありませんな。それはすぐばれると思いますから、そんな人はありませんわね。ただ、なぜ前総理ともあろう者を……。
  140. 橋本敦

    ○橋本敦君 あなたのところへどんな電話がかかったか。
  141. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 私のところへ——ですから、なぜ総理を逮捕したとか、そんな電話はたびたびありましたね。
  142. 橋本敦

    ○橋本敦君 わかりました。つまり田中角榮逮捕に対して、これを快く思わない者から抗議の電話があった、こういうことですね。   〔理事平井卓志君退席、理事原田立君着席〕 だから、特に謀略的な電話という意味じゃないですね。  そこで法務大臣、いまあなたがおっしゃったことが大事なのです。布施検事総長、安原刑事局長の名をかたれば、法務大臣は一遍にわかる。ところが、総理は布施検事総長の名をかたられてもなかなかわからなかった。つまりこのテープ、電話の主は、総理が布施検事総長の声を余りよく知らないということを知っていてかけた人間だ、非常に賢明だ、知能犯だと私は思うのですが、まず、この点どうですか。
  143. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 布施検事総長の声を知らないからこそかけたのだということはもう明瞭でありますね。
  144. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、総理が布施検事総長の声をよく知っているということならかけられないわけです、実際問題としてね。だから、布施検事総長総理がそういう電話のやりとりはほとんどないということを知っている人間だということが一つ目星がある。  それから大臣、あなたがこの話を総理からお聞きになったときに、自分のところへは謀略じゃなくて抗議の電話ですが、これは謀略電話だと、これは布施検事総長の名をかたり、一国の総理にかけたのだからこれは重大だと、徹底的に調査すべきだ、そのころもあなたがそう思われなかったのもまた不思議なんですが、これはどういうことですか。
  145. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) そのときは、総理から聞いたときにはたしか布施検事総長の名で妙な電話がかかってきたというようなことだったように思いますな。そんな、布施検事総長があなたに直接電話なんかするわけがないじゃないですかと、そんなものはにせ電話に決まっているじゃないですか、そんなものは幾らでも逃げる方の協力があっていろいろなことをやりますよと、そんなものにかかわり合ったってしょうがないですよと、こういうことを、私、言いました。総理もわしも忙しいときでしたよ。
  146. 橋本敦

    ○橋本敦君 わかりました。だから、あなたが直感的に感じられたのは、これはロッキードで逃げるグループのどこかの謀略だと、こう思われた。私もその直感は正しいと思うのですよ。まさにそういう政治謀略です。しかし、そのときにあなたが幾ら忙しくとも、いやしくも布施検事総長の名がかたられ、一国の総理にロッキード隠しの謀略的な電話だと認識されたのですから、これは重大だと、総理、その内容をもっと詳しく聞かしてもらいたい、徹底的にそのときに調査をすべきだ、こう思っておられれば、もっと調査が今日進んでいたということは間違いない。この点で法務大臣、そのときにあなたが総理からお聞きになったときの認識と、調査をすぐ厳重にしなかったという問題は、これはやっぱりいまから見ればもっとやっておくべきであったというようにいささか反省されてもよいのではないかと私は思うのですが、その点はどうですか。
  147. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) まあ、いまから見れば、私もあの当時、田中逮捕後のそれから忙しいときでしたものですから、そんな謀略電話みたいなものに一々かかわり合っていてどうするかいという気持ちで、総理も余り気にしない方がいいと、こんなふうなときでしたからね。いまにして思えば、あなたのおっしゃるとおりですな。いまにして思えば、そのとおりですよ。私はやっぱり少し脳が足らぬな。(笑声)
  148. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は法務大臣が脳が足らぬなどという失礼なことはいささかも申し上げるつもりはございません。ただ、この謀略電話がかかったのは田中をどういうように起訴ということで処分するかどうか、検察最高首脳会議が開かれる前夜なのです。これもまた巧妙な時間の設定なのですね、そう思われませんか。
  149. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 逮捕のときに刑事局長からの電話の通知のときにも気になっていました問題です。果たして起訴なんかに持っていけるのかどうかもわからない前総理を逮捕するというのは。これはしかし政治介入するわけにはいかぬからよろしいと、許可と、こういうわけですから、それで非常に微妙な時期ですな。非常に微妙な、タイミングよく総理にかけたものだと、いまにして思えばそう思いますな。
  150. 橋本敦

    ○橋本敦君 だからこの点でも実に計算された知能犯的なやり方だということになるのです。  そこで、最高裁に伺いますが、この鬼頭裁判官はテープを自分読売新聞社に持っていったことは認めている、これはいいです。そこで、この行為が鬼頭裁判官の一人の行為でないことは、彼にテープを渡した人がある、そして電話をかけた人は別だと彼が言っているという状況がある。すると、ここで少なくともテープを彼に提供した人間と電話をかけた人間と、そして鬼頭裁判官、三人の人間が浮かんでくる。だからこの謀略電話事件は鬼頭裁判官の単独の行為じゃなくて、何人かのグループがあるということは、調査の結果認識されておられますか。
  151. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) このにせ電話事件がいわば鬼頭判事補の何といいますか単独の行動であるかあるいはグループの行動であるかという問題も、私ども調査の対象といたしましては重要なことであろうかと思います。で、鬼頭判事補の供述は先ほど申し上げましたように、自分はやっていないけれども、ほかの人から聞かされて読売……
  152. 橋本敦

    ○橋本敦君 それはわかっているのです。もう聞いている。
  153. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) そういう供述でございました。それに対して私どもがどう思うかというお尋ねでございますれば、私どもといたしましては、いずれとも判定しがたいというのが現在の心証でございます。
  154. 橋本敦

    ○橋本敦君 つまり、いずれともというのは、まだ調査の結論を得ていないからそうおっしゃるわけです。少なくとも彼一人の行為だとだけは見られないと、何人かの関係者があると、こういう観点も踏まえて調査をするという必要があることはお認めになりますか。
  155. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 仰せのとおりであると思います。
  156. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、彼は非常に重要なことを言っているわけです。たとえば——たとえばですよ、こういうことを言っていますね。毎日新聞報道されていますが、「電話をかけた人はだれ、だ。」という記者の問いに対して、「それは言えない。この話は永田町の話なんだヨ。」、こういう答えをしている。「永田町ということは政治家関係しているということか。」と、こう突っ込んで聞かれると、今度は「政治家なのか……ジャーナリストなのか、法曹界の人間なのか。なにしろ言えない。」、こう言って明らかにしてませんが、彼がぽっと「それは言えない。この話は永田町の話なんだヨ。」と言った事実は私は重大だ。永田町といえばまさに人の知る日本の政界の中枢部ですよ。そして、しかも彼は前に、自分が十年目に判事に任用されるかどうかということが心配になっているという問題を友人から聞かれたときに、おれは大丈夫なんだよ、おれはさる有力な筋の政治家を知っているのだよと友人に語ったという事実も報道されているし、私どももそれを間違いなくつかんでいる。この「永田町の話なんだヨ。」という問題はきわめて重要な問題ですが、こういう点は本人調査をされておられますか。
  157. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 二十五日の朝の毎日新聞報道につきまして、御指摘のとおり非常に重要な事項が出ておりましたので、当日の事情聴取に当たっては聞きましたところ、結論といたしましては、その内容については否定するとも肯定するとも結局は要領を得ないままに終わった次第でございます。
  158. 橋本敦

    ○橋本敦君 彼が否定していないということが重要ですよ。要領を得ないままということが重要ですよ、やっぱりその筋は。私ども調査では、彼と同期生——彼は修習生十九期生ですね。彼と同期生で、そして鹿児島地裁の判事補をしていた人で、そして自民党の橋本登美三郎氏の秘書をしていた人で現に国会議員でいる人がいる。まさに彼の同期の友だちです。それは言うまでもなく田中派ですよ、橋本さんの秘書をしていたのだから。   〔理事原田立君退席、委員長着席〕 こういう政治家とこういう深いつながりがあったかどうか、これは調べられましたか。
  159. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) その前に、先ほどの二十五日の毎日の記事につきましては、否定していないところが重要だと、こういうふうなことでございましたけれども、私どもといたしましては、結局鬼頭判事補の口からはっきりした答えは得られなかったという趣旨でございまして、いわばその記者会見についてはコメントしないという態度であったわけでございます。その点を明らかにさせていただきます。  それから第二点の問題につきましては、そのような話のあったことにつきましては、私どもただいま初めて聞いたことでございまして、その判事補につきましては、特定できると思いますので、事情聴取をいたしたいというふうに考えます。
  160. 橋本敦

    ○橋本敦君 現在判事補じゃないのですよ。元判事補、鹿児島地裁の判事補をしていた人。
  161. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) どうも失礼いたしました。できる限りわかりましたならば、必要があれば事情聴取をいたしたいというふうに考えております。
  162. 橋本敦

    ○橋本敦君 これはやっぱり何人かのグループという関係と同時に、この鬼頭氏がどういう交流関係、交友関係政治家とのつながりを持っていたかという、ここまで最高裁は私は調査する責任があると思う。公然どこういうことを言っているのですから、永田町筋だというようなことも。だからこの永田町筋だというのはどういうことだということを聞いて、明確にコメントしなかったというだけで終わったのでは調査にならないのですよ。たとえば彼は鹿児島地裁所長をしていた飯守重任氏を尊敬をしている。飯守重任氏もまた彼を非常にほめている。彼こそ国を憂る人間だと、こう言っているということが新聞報道されている。この飯守氏と彼とはどの程度の交流関係を飯守氏が鹿児島地裁所長をやめてからも持ってきたのか。最近四十九年、五十年、そして今日までどの程度お互いに行き来し、どういう話をしていたのか、これも調べる必要が私はあると思うが、その点はお調べになりましたか。
  163. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 新聞報道に出ておりましたこともございまして、当然飯守元裁判官との交際についても聞きました。私どもの聞きましたところによりますと、まず公的には鹿児島地裁の所長をやっておられたころ約二ヵ月弱、鹿児島で御一緒であったはずでございます。で、鬼頭判事補の述べるところによりますと、確かにそういう関係もありましてつき合いはもちろんあったということでございましたが、少なくともこの事件に関しては全然自分ももちろん関係ないと言っているわけでございますので、飯守元判事が、新聞記事が出ておりますように、もし鬼頭君がこんなことをやるのであれば大変けしからぬことであるような趣旨の発言もいたしておりましたので、私どもといたしましては、それ以上このたびの事情聴取につきましては聞かなかったわけでございます。
  164. 橋本敦

    ○橋本敦君 聞く必要があるのではないかと私は聞いている。  話は飛びますが、この鬼頭裁判官が外国へ旅行した、特にアメリカに行っているというのを私ども調査をしておりますが、その関係調査をして明らかになっていると思いますが、明確にしてください。いつごろ、どういう目的で行ったということですね。
  165. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 裁判官につきましては、海外に出ます場合には私どものところまで、いわば許可制にかからせております。  私どもの手元の資料では、四十九年の十二月二十九日から五十年の一月四日まで渡航先西ドイツということで許可が出ております。さらに、五十一年の七月二十三日から八月九日まで渡航先西ドイツ、アメリカ合衆国ということで申請が出ておりまして、そのまま許可になっているわけでございます。
  166. 橋本敦

    ○橋本敦君 最初の四十九年のときも西ドイツからアメリカに回ったのではありませんか。
  167. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 本人の述べるところによりますと、このときには西ドイツヘ行ったということでございます。
  168. 橋本敦

    ○橋本敦君 その目的は何ということになっておりますか。
  169. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 親族面会、知人の病気見舞いということになっております。
  170. 橋本敦

    ○橋本敦君 その目的は事実かどうか調査しましたか。彼は一方で自分の専門である治安立法、この研究に行く、こう言って出ておる事実があるのですよ。
  171. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 四十九年の暮れから五十年にかけての海外渡航申請にはただいま申し上げました二つでございます。
  172. 橋本敦

    ○橋本敦君 五十一年もそうですか。
  173. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 五十一年につきましては個人的研究、専攻テーマに関する調査、文献の収集、こういうことになっております。
  174. 橋本敦

    ○橋本敦君 私が指摘するのはそれなのです。その個人的研究、文献の調査、——内容を具体的に聞かれてますか、最高裁は。
  175. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 最高裁としては聞いておりません。
  176. 橋本敦

    ○橋本敦君 どこへ行ってどういう研究のためにどういう文献資料を集めてきたか、これを調べてください。
  177. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 調査しておりません。
  178. 橋本敦

    ○橋本敦君 いや、調べてくれますかと。
  179. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 本人事情聴取の際に必要とあればまたこの点について聴取いたしたいと思います。
  180. 橋本敦

    ○橋本敦君 彼は飯守裁判官の思想傾向を受け、影響を受け、そして彼自身は飯守裁判官の言葉によれば、国家を憂えるという言い方でまさに右翼的な思想の持ち主で、彼は日本の治安立法——戦前の治安立法を含めてこれの最高権威者だと自分で人々に言っておる。彼はその目的でアメリカへ行ったと。どこへ行ってどういう調査をしたか、これは重大なんです。アメリカのどういう機関と接触をしたのか、そしてこの海外渡航費は一体だれが負担したのか、完全に彼自身の個人の負担なのか。全部調べてください。私はなぜそれを言うかといいますと、このような謀略電話をかけるのは彼個人の発想ではなくて、まさにCIAばりの発想なのですよ。だから、彼自身がそういうアメリカへの渡航、こういう関係においてどのような機関と接触し、どのようなところでどういう調査をしたか、これは明らかにする必要がある。だからいま人事局長が言われたように、今後の調査の中でぜひこの点を究明してもらいたい。  それからさらに次の質問に移りますが、彼は、テープを彼のところへ持って来た人は、これは何歳ぐらいの人で、どういう地位、どういう職業の人だと言っておりますか。
  181. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) その点については、もう私どもが見当をつけることができるような供述は全然いたしておりません。
  182. 橋本敦

    ○橋本敦君 つまり、彼はその事実を明らかにしないということです。隠しているということです。そのままで置いていたら調査できませんよ、これは。今後どういうようにそれを調査されますか。
  183. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 仰せのとおりであると存じますが、非常にむずかしい問題であると私ももちろん考えておりますけれども、果たしてどういう人かということを、どういう方法でいわば調査していくかということについて十分に検討さしていただきたいと思います。
  184. 橋本敦

    ○橋本敦君 彼の個人的な私生活をめぐっても、交友関係をめぐってもいろいろ問題があるのです。きょうは時間がありませんから指摘をしませんが、特に、彼が二回にわたってアメリカへ行く旅費はどこから出ていますか、この点だけ聞いておきます。
  185. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 先ほど申し上げました渡航についての許可申請書には、私費ということに相なっております。この点について、私費であったかどうかについてはまだつまびらかにしておりません。
  186. 橋本敦

    ○橋本敦君 それも調べてください。二年続いて、四十九年、五十一年、アメリカへ西ドイツを回って行くとすればかなり多額の費用ですよ。大体裁判官はつつましい暮らしをしていらっしゃるのを私どもよく知ってます。彼が二年続いてアメリカへ行くという、そういう私費が一体どこから出てきたのか、これも疑問の一つとして調査する必要があります。  さて、時間がありませんから、次に法務大臣に伺いますがこの鬼頭裁判官が宮本委員長の身分帳を見たという事実は今日明らかになっている。この鬼頭裁判官は、宮本委員長の身分帳だけでなくて、宮城刑務所をも訪れて、わが党の袴田副委員長の身分帳も見たいというように言っていったという事実、これは間違いありませんか。それはいつごろですか。
  187. 石原一彦

    政府委員(石原一彦君) 御指摘のように四十九年の八月ごろ宮城刑務所に袴田里美氏の資料についての照会をいたし、宮城刑務所において断った事実がございます。その日付につきましては、現在確定するように宮城刑務所に照会中でございます。
  188. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから彼は単に網走だけではなくて宮城にも行っておるということがはっきりするわけです。そしてこのように彼が網走に行き宮城に行っているという状況は、これは私は当刑務所の方から当然法務省本省に鬼頭裁判官という人間がこういうことで来たということは報告されてしかるべきだと思います。また報告されているに違いない、こう思いますが、いかがですか。
  189. 石原一彦

    政府委員(石原一彦君) 御指摘ではございますが、私の方に報告はございません。どういう事情でそうなったかという点につきましては、目下調査を続行している間においてある程度判明するのではないかと思っております。
  190. 橋本敦

    ○橋本敦君 これはしかし、法務省の行政上の問題としては重大な一つの遺漏ではありませんか、本来なら見せてはならぬものを見に来た人がいるのですから、裁判官と名のって。こういうことであったというのは当然報告あってしかるべき問題だということは言えますね。
  191. 石原一彦

    政府委員(石原一彦君) 刑務所の場合に参観というのがございますが、これは所長の権限が原則でございますが、女子刑務所を男子が見る場合、あるいは男子刑務所を女子が見る場合には法務大臣の許可にかからしめておりまして、私のところで適否を審査いたしますが、普通の調査で、——今回の場合にはやや異常な調査ではございますが、普通の調査でおいでになるという、すべての場合にまで本省に報告があるものではございません。
  192. 橋本敦

    ○橋本敦君 いや、問題をきわめて軽視をしていたことになると私は思うのですよ。  そこで局長に聞きたいのですが、彼は了解を得て写さしてもらったと、こう言っていますよ。了解を得て。いいですね。そうすると、法務省調査で聞きたいのですが、当時の刑務所長あるいは庶務課長が了解を与えたのですか。その事実はどうなんですか。
  193. 石原一彦

    政府委員(石原一彦君) 結果的には閲覧の了解を与えていることになろうかと思います。その了解を与えるに至りました本人側の申請理由等につきまして、現在鋭意調査中でございます。
  194. 橋本敦

    ○橋本敦君 その了解は刑務所長及び庶務課長がそれ独自の判断で与え得られる了解では私はないと思う。なぜならば、これは厳重な秘匿文書ですから、刑務所長及び庶務課長が、ましてや一庶務課長自分の判断で了解してよい事項ではない。これは当然了解が得られるかどうかという本省への照会があってしかるべき性質の事柄だと私は思っておりますが、どうですか。事柄の性質としてだけ言ってください、事実はいいです。
  195. 石原一彦

    政府委員(石原一彦君) まさにそこが問題でございまして、通常の場合にそうした了解を現地所長がやられる場合があるのであります。たとえば刑名、刑期等でございます。そういう場合であったか、そうでなかったかという点がまさに調査のポイントでございまして、この点を十分調査しているわけでございます。
  196. 橋本敦

    ○橋本敦君 ですから局長、この場合自分の研究のためにと彼は言うのですよ。研究のために他人の身分帳を見る、こういうことで言って取ってきておるのです。こういう場合に所長の単独了解ということは普通はあり得ない。ほかの言い分とか名義はともかく、素直に彼が言うとおり自分の研究のために他人の身分帳を見たいということで行った場合は、軽々にこれは許されないことはわかり切っているので、こんなものは単独で了解できない事項で、当然本省に照会をして判断を仰がなければならぬ問題だということは間違いないでしょう。
  197. 石原一彦

    政府委員(石原一彦君) そのとおりでございます。そこがポイントでございまして、私どもある程度調査はしておりますが、まだ二人の分につきまして十分な調査ができませんので、私もここで申し上げることができないのを残念に思っているところでございます。
  198. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうしますと、なぜ了解を与えたかということは二つの問題がある。一つは当時の刑務所長及び庶務課長法務省内のおきてを犯して、みずからこの秘密が漏れることに手をかしたということなのか、それともどこかもっと上司の方から見せてやれという事前の連絡もしくは事後連絡があって、そういう上司もしくはそれに類するところからの指示があったかということも、これも調べなければならない、こういう二つの点について調査をいま進めておられると伺ってよろしいのですか。
  199. 石原一彦

    政府委員(石原一彦君) まさにそのとおりでございまして、本日ここで申し上げられないのは残念でございますが、ただいまの二点以外にも許さざるを得なくなる事情もあるのではないかという点も調査の対象にいたしております。
  200. 橋本敦

    ○橋本敦君 いずれにしても、この鬼頭裁判官に許さざるを得ない事情というのは奇々怪々なんです。それは徹底的に調べてもらわなければならぬ。そしてこの彼が写し取ったこの身分帳、宮本委員長の診断書というものがまさに問題になりますが、民社党の春日委員長が週刊サンケイとのインタビューで診断書の写しを持っている、こう言っている。そうして京都の右翼である松本明重が発行した本にはその全文が登載されている。そして「文春」に出た日本共産党研究の立花氏の論文に一部が援用されている。そこで局長に聞きたいのです。この松本明重が援用しているこの診断書は事実そのものと相違ありませんね。
  201. 石原一彦

    政府委員(石原一彦君) 前提として橋本委員も身分帳の内容は秘匿すべきものだということであろうかと思います。そうしますと、この段階におきまして私がそれが真偽いずれかを申し上げることは、身分帳の内容を申し上げることになりますので、いかにするかを私の方がいま苦しんでいるところでございます。どうぞそれで御了解願いたいと思います。
  202. 橋本敦

    ○橋本敦君 なかなかお上手な答弁ですね。(笑声)だが、しかし微妙な答弁ですよ。あれが事実でないなら、ないとおっしゃっていただくことが大事なのです。法務大臣、あなたは人の名誉を重んずる法務大臣として、人権擁護の立場で、私はこういう方だと思いますよ。この宮本委員長自身が見せてほしいと言っても見せられない身分帳、診断書を研究のためにもちろんだれにも見せてはなりません、これがこういう本に出される、研究論文に出される、週刊誌で騒がれる、これは言ってみれば宮本委員長の名誉が著しく侵害されている状態が現出されているのです。そう思われませんか、まずその点。
  203. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) そう思います。
  204. 橋本敦

    ○橋本敦君 そして、宮本委員長の名誉が侵害されている状況はいま局長がこれから調べるとおっしゃった法務省自身の重大な疑惑と不始末の中から出てきている。これが一体どこから出てきたかと、いま明らかになっていることは鬼頭判事補が写してきたという事実、そしてこういう本に出ているという事実、いいですか、こうなりますと、一体彼らはどこから手に入れたか、鬼頭裁判官との関係は徹底的に究明しなければならない。こういう点の究明は今後の調査としておやりいただけますか。
  205. 石原一彦

    政府委員(石原一彦君) ただいまの点付加さしていただきますと、身分帳、診断書そのものは現在私のところに保管いたしております。ところが今回鬼頭判事補本人の供述によりますと、手書きのものを送らせたということでございますので、その手書きのものと御指摘のものとが一致するかどうかを調べなければなりません。その手書きのものが鬼頭本人に渡っておりますのでいかにして調査するかということにただいま腐心をしているところでございます。しかしながら、その関係が明らかになりますれば御報告申し上げる事項でありますし、明らかでない場合にはその旨を明確に申し上げる所存でございます。
  206. 橋本敦

    ○橋本敦君 あと二問だけで終わります。  鬼頭裁判官から、彼が受け取った手書きのものを提出させたらいかがですか。それならわかりようがありますね。
  207. 石原一彦

    政府委員(石原一彦君) 先ほど衆議院法務委員会でもその御議論がございましたが、仮にその取り方が不法といたしましても、本人の所有に属しておりますので、任意の関係でどこまでできるかという点については今後とも検討さしていただきたいと思います。
  208. 橋本敦

    ○橋本敦君 出してもらいたいと協力を求めればいいのです。私は強制捜査やれなんて言ってないのですよ。局長いかがですが。協力を求めたらいいのです。その意思はありますか。当然でしょう。
  209. 石原一彦

    政府委員(石原一彦君) 私ども、今回の鬼頭本人を入れましてわが方の二人合わせて三人につきましては独自に調査をいたしておりますが、ある一定の段階になりましたときには、私ども調査結果をも裁判所に御通報を申し上げ、裁判所からも詳しい点をお伺いいたしまして、その点を考慮いたしたいと考えております。
  210. 橋本敦

    ○橋本敦君 最後に伺いますが、いま局長がおっしゃったことを私は最高裁にも要求したい。合同の調査を徹底的にやる必要があるのですよ、この問題については。まさに、謀略にせ電話をかけた鬼頭裁判官をめぐる行為は、いたずらな反共攻撃のために利用された疑いのある身分帳の閲覧ということと彼自身を接点にして一つになっている、それぞれの調査をお進めになるということは必要ですが、必要な場合は合同会議を開いて裁判所の責任、法務省の責任、この統一した責任で事態を究明し、明らかにし、それを稻葉法務大臣国会報告するというようにすべきだと思いますが、この点についての大臣の意見を賜って終わります。
  211. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 実はこの件に関します事情聴取でございますが、当然のことでございますけれども、刑務所に行って写さしてもらったいわば書類の中身——中身といいますか、まず表目は何だというふうに尋ねましたところ、その表題を言えば結局自分は公表したことになるからそれも言えないというようなことを述べておったわけでございます。それから……。
  212. 橋本敦

    ○橋本敦君 そんなことでおさまっていてはだめなのだよ。合同で会議を開いてちゃんと調査するということをやるかやらぬか、大臣の意見を私は聞いているわけです。
  213. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 私の方で本人にその書類の提出方は求めておりませんが、ただいまの御指摘の点につきまして、法務省とよく相談の上でやりたいというふうに考えております。  それから、大変失礼でございますけれども、先ほど鬼頭判事補の海外旅行の点についてのお尋ねでございますが、実は海外渡航の申請に対する許可申請書についてお尋ねがあったわけでございますが、この点につきまして鬼頭判事補は八月中に実は香港に四日間行っておったと、それで問題の電話のあったと言われる八月四日に戻ってきたと、こういうようなことを述べておったわけでございます。その晩京都の官舎に帰って疲れておったのでぐっすり寝込んで、恐らく何時ごろということが確定しておりませんけれども電話が鳴ったことがあった時刻が仮に夜遅くであるとすれば自分はもう疲れてぐっすり寝ていたので、自分電話をするはずはないというふうなことを言っておったことをつけ加えさしていただきます。
  214. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 裁判所の方の調査と矯正局の方の調査と、いまこう進んでおりますがね、一定の段階がくれば、合同会議をやるかは別として、両々相まって真相究明をしなければなりませんから、密接な協力関係を持って真相を究明したい、こういうふうに思います。
  215. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間がありませんから、終わります。
  216. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十一分散会      —————・—————