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1976-10-07 第78回国会 参議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月七日(木曜日)    午前十時十五分開会     —————————————   委員氏名     委員長         田代富士男君     理 事         平井 卓志君     理 事         佐々木静子君     理 事         原田  立君                 岩本 政一君                 大島 友治君                 梶木 又三君                 斎藤 十朗君                 塩見 俊二君                 林  ゆう君                 前田佳都男君                 町村 金五君                 安井  謙君                 秋山 長造君                 小柳  勇君                 中村 英男君                 安永 英雄君                 橋本  敦君                 下村  泰君                 河野 謙三君     —————————————    委員異動  九月十六日     辞任         補欠選任      大島 友治君     木村 睦男君  九月十七日     辞任         補欠選任      前田佳都男君     大島 友治君  九月二十四日     辞任         補欠選任      秋山 長造君     栗原 俊夫君  九月二十七日     辞任         補欠選任      木村 睦男君     丸茂 重貞君  十月一日     辞任         補欠選任      林  ゆう君     中村 太郎君  十月二日     辞任         補欠選任      中村 太郎君     八木 一郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         田代富士男君     理 事                 大島 友治君                 平井 卓志君                 佐々木静子君                 原田  立君     委 員                 町村 金五君                 八木 一郎君                 栗原 俊夫君                 小柳  勇君                 中村 英男君                 安永 英雄君                 橋本  敦君                 下村  泰君    国務大臣        法 務 大 臣  稻葉  修君    政府委員        法務政務次官   羽田野忠文君        法務大臣官房長  藤島  昭君        法務省民事局長  香川 保一君        法務省刑事局長  安原 美穂君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     久保田眞苗君        警察庁刑事局捜        査第二課長    平井 寿一君        警察庁警備局警        備課長      若田 末人君        警察庁警備局外        事課長      大高 時男君        防衛施設庁施設        部首席連絡調整        官        来栖大児郎君        外務省アジア局        次長       大森 誠一君        厚生省公衆衛生        局精神衛生課長  榊  孝悌君        厚生省児童家庭        局障害福祉課長  山内 豊徳君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○調査承認要求に関する件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (派遣委員報告)  (大阪暴力団抗争事件に関する件)  (沖繩県における刑事特別法違反事件に関する  件)  (金大中事件告発に関する件)  (婦人の地位向上に関する件)  (登記所の統廃合問題に関する件)  (司法書士資格試験に関する件)  (戸籍法に関する件)  (暴力団事犯に関する件)  (特別養子制度に関する件)     —————————————
  2. 田代富士男

    委員長田代富士男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  秋山長造君、木村睦男君及び林ゆう君が委員辞任され、栗原俊夫君、丸茂重貞君、八木一郎君が委員選任されました。     —————————————
  3. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事大島友治君を指名いたします。     —————————————
  5. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても検察及び裁判運営等に関する調査を行うこととし、その旨の調査承認要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 稻葉法務大臣及び羽田野法務政務次官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。稻葉法務大臣
  9. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 去る九月十五日、三木内閣の改造に当たり、法務大臣に留任し、引き続き法務行政を担当いたすことになりました。内外の情勢が厳しい折から、改めてその職責の重大さを痛感いたしております。  私の場合には特に不徳不敏で、いよいよ言動に留意をいたし、誠心誠意努力をいたす所存でありますから、田代委員長を初め委員各位の御指導と御協力を切にお願い申し上げる次第であります。どうぞよろしく。
  10. 田代富士男

  11. 羽田野忠文

    政府委員羽田野忠文君) このたび法務政務次官に就任いたしました羽田野忠文でございます。時局柄、大任でございますが、稻葉法務大臣のもと、かつて法務委員をさせていただきました経験を生かし、よき補佐役として法務行政の一層の推進に努めてまいりたいと存じております。どうかよろしく御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げまして、簡単でございますが、ごあいさつといたします。お願いいたします。     —————————————
  12. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  先般本委員会が行いました司法行政及び検察行政に関する事項等実情調査のための委員派遣について、派遣委員から報告を聴取いたします。平井君。
  13. 平井卓志

    平井卓志君 第七十七回国会閉会後において、委員会より四国地方へ派遣されました委員を代表して、調査の結果を御報告いたします。  去る八月五日から三日間、田代委員長増原委員小柳委員安永委員橋本委員と、私平井の六名が香川県及び愛媛県において裁判所及び法務省関係各庁の管内概況並びに庁舎施設などの営繕状況について調査を行ってまいりました。  調査対象は、高松高等裁判所、同地方裁判所、同家庭裁判所高松高等検察庁、同地方検察庁高松法務局高松矯正管区高松刑務所四国地方更生保護委員会高松入国管理事務所松山地方裁判所、同家庭裁判所松山地方検察庁松山地方法務局松山刑務所松山少年院松山少年鑑別所及び松山保護観察所であります。  調査に当たり、現地の各関係機関などから終始懇切な御協力をいただきましたこと、並びに最高裁判所及び法務省から種々御便宜をお取り計らいくだされましたことを、厚く感謝申し上げます。  以下調査項目に従って申し上げます。一、裁判所及び法務省関係各庁の管内概況  裁判所における昭和四十八年度から昭和五十年度まで過去三年間事件処理状況を新受件数について見ますと、高裁において民事事件増加刑事事件減少傾向が見られますが、未済件数減少しないのが注目されます。地裁における民事事件調停事件は、全国傾向と同様、横ばいないし減少傾向にあり、ただ簡裁における調停事件漸増傾向にあります。家裁における家事審判事件家事調停事件増加傾向を示し、少年事件一般保護事件道路交通法違反事件とも横ばいないし減少傾向にあります。刑事事件は、全体として横ばいないし減少傾向にありますが、簡裁における略式命令事件各地とも毎年増加しています。  検察庁における刑事事件新受人員を過去三年間について見ますと、道路交通法違反事件増加により全体的に漸増傾向にあり、控訴事件の約三〇%が業務過失致死傷及び道路交通法違反事件であるとされています。  最近の犯罪の特徴として、高松地検管内では、自転車が普及し、自転車泥棒万引き等窃盗犯がきわめて多く、六十歳以上の老人の交通事故による死亡率全国第一位であること、松山地検管内では、県南部である南予地区にも近時汚職事件発生し話題となっていることなどが挙げられますが、近時社会情勢の変動を反映して権利意識も盛んになり、各種公害関係事犯告訴事件覚せい剤事件暴力事犯増加など内容が複雑多様化しているのが注目されます。  法務局登記、国籍、供託、訟務等各種業務における事件の動向は、量的には横ばい状況でありますが、質的には数年前に比し大きく変化し、きわめて複雑困難な事件、新しい法律問題を含む事件増加しており、たとえば国土調査法による地積調査及び土地改良による登記など特殊事件登記、渡川のハウス園芸塩害訴訟赤潮訴訟伊方原子力発電所訴訟などの訴訟事件、及び戸籍事務担当者の交代はなはだしく、経験年数三年未満の者が四八%を占める高松法務局における適正事務処理上の問題などが挙げられます。  このような現状から法務局における近時の管理体制各種事務能率機器導入等事務合理化促進にもかかわらず、職員勤務過重は限界にきており、大幅な増員以外解決の道なしとしてその実現が強く望まれています。  矯正管区内施設業務運営の点で特徴といえば被収容者の二四%約六百人が暴力団関係者で占められていることで、高松刑務所の場合三〇%以上に達するといわれています。なお、同刑務所は、管区内の分類センター施設指定されていますが、職業訓練も活発で年間約二億円の生産を上げており、松山少年院では、その収容処遇は、一年課程、六カ月の短期教育課程、及び交通事犯関係少年に対する短期処遇課程に分けられ、教科教育とともに農業、交通安全教育などの職業補導を行い、少年矯正教育多様化充実を目標に努力がなされております。また、松山刑務所においては、大井造船作業場への出役という開放的処遇が大いに成果を上げているということであります。  四国地方更生保護委員会管内における事件処理松山保護観察所について見ますと、環境調整事件減少しているとはいえ、保護観察事件は、全国減少傾向に反し逐年増加しており、特に交通事件対象者昭和五十年度は昭和四十八年度の二・五倍に達し、本年六月末現在、八名の保護観察官が常時千二百七件の保護観察事件を担当し、一人平均百五十一件に及んでいるほか、環境調整事件を、年間一人で平均百五十七件を処理している現状で、特に交通事件対象者に対する集中的処遇強化並びに定期駐在による保護観察官効果的処遇実施に努めていますが、現状からは過重な負担と考えられ、有効適切な保護観察実施のためには保護観察官の大幅な増員緊急課題であるとして各地要望事項として示されました。  高松入国管理事務所管内では、最近新居浜市及び坂出市の臨海工業地帯への入港船舶は年々増加し、外国船増加が顕著であります。また、近年瀬戸内海の汚染が進むにつれ、養殖業者愛媛南予地区に進出したため、同地区の非指定港香川県詫間町の未駐在港に小型韓国船などによる韓国からの稚魚、活魚類の輸入が活発となり、同事務所では、これら非指定港、未駐在港に対する臨船審査体制違反防止に慎重を期しております。  以上、関係各庁の管内概況でありますが、特に法務局並びに保護観察所職員大幅増員要望につきましては、今後委員会としても十分検討すべき重要な点であると存じます。二、裁判所並びに法務省関係庁舎施設及び宿舎  の営繕状況  まず、関係庁舎施設では、逐次改善措置が、られておりますが、建築年度の新旧を問わず、現状において老朽狭隘化を来し、早急に新営、増改築等の必要に迫られているものがなお多いのであります。  裁判所関係では、高松地裁高知地家裁及び松山地裁管内簡裁庁舎のほとんどは昭和二十年代の木造建てであり、簡裁同一庁舎である家裁管内出張所同様木造庁舎であり、高知地家裁中村支部昭和十一年建築木造庁舎であります。  検察庁関係でも、徳島地検を除く各地検管内区検庁舎の多くは木造建て老朽狭隘著しく、シロアリの被害も出ている現状であり、新営が望まれているものに高松地検土庄区検高知地検中村支部区検及び松山地検新居浜区検があります。  法務局関係では、問題多く、管内庁舎半数以上が借り上げ庁舎という状況で他の国家機関に比べ極端に多いのが特徴であり、このため借り上げ制度は早急に解消すべく借り上げ庁舎及び敷地の買収のための予算化が望まれております。また、木造建て老朽化した庁舎が多く、松山地方法務局の場合、管内支局三十二出張所の七六%に当たる二十九庁が木造建てで、建築後五十年経過したもの四庁、三十年以上経過したもの十庁を数える現状で、早急に耐火構造庁舎に改築する必要があるとされており、また、一般に近年事務量増加による保管簿冊増加事務能率器具導入等によって庁舎書庫等狭隘化が目立ち、職員執務環境改善の面からも庁舎施設整備拡充は緊急の問題であり、早急に解決が望まれるのでありますが、特に高松法務局観音寺支局徳島地方法務局管内上板出張所日佐和出張所海部出張所、及び高知地方法務局室戸出張所における新営並びに高知地方法務局庁舎における書庫増築要望されたのであります。  高松矯正管内四国地方更生保護委員会高松保護観察所及び高松入国管理事務所は、昭和五十二年度完成予定高松地方法務合同庁舎入居予定であります。  なお、高松地方法務合同庁舎は、法務省が旧合同庁舎敷地に約二十六億一千九百万円の予算昭和五十年着工し、昭和五十二年四月竣工予定の地下一階地上八階延べ一万八千四百二十二平方メートルの鉄筋鉄骨コンクリートづくり法務合同庁舎であり、入居予定は、前述しました四庁のほか、高松高等検察庁、同地方検察庁、同法務局四国公安調査局法務総合研究所高松支所及び矯正研修所高松支所の十庁とされております。  次に、宿舎整備状況についてであります。  検察庁関係では、各地検所管宿舎半数木造建て老朽化が著しく、特に松山地検検察官及び事務局長宿舎は、昭和二十四年以前の木造建て老朽宿舎で、シロアリによる侵蝕を見ているところもあり、宿舎建てかえが要望されております。  また、各地検管内支部区検職員宿舎が不足しており、人事異動の際苦慮しており、宿舎確保が望まれております。  法務局関係においても同様の事情にあるほか、高松法務局及び松山地方法務局の場合、宿舎の偏在が目立ち、高松では高松市、丸亀市に集中し、西部観音寺地区には支局長宿舎が一戸のみで、松山では県東部である東予地区宿舎が少なく、いずれも宿舎の設置が要望されている次第であります。  庁舎施設の新営、増改築及び宿舎確保など営繕整備充実に関する現地要望に対しては、格段の考慮が望まれるところであります。  以上をもって報告を終わりますが、詳細は調査室の資料に譲りたいと存じます。
  14. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 以上で派遣委員報告は終了いたしました。     —————————————
  15. 田代富士男

    委員長田代富士男君) ただいまの報告を含め、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  16. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、私から質問をさしていただきます。  まず、先日の日曜日に発生いたしました大阪暴力団事件、これはわずか二日の間に町のど真ん中で三件ものピストル乱射事件が頻発しているわけでございますし、それからこの暴力団事件紛争がさらに全国的にも広がっていこうというふうな機運が感ぜられるわけでございまして、各地暴力団問題がいま非常に問題になっているわけでございますが、そのことについてまず警察当局にお伺いいたしたいと思います。これは全国的にいろいろとこのごろは暴力団のしかもピストルによるところの紛争というものが大変に多くなっているようでございますが、いま申し上げました大阪で日曜日から月曜日にかけて、つまり三日から四日にかけて起こりました事件の経緯を、ちょっと簡単に、時間がありませんので簡単にお述べいただきたいと思うわけです。
  17. 平井寿一

    説明員平井寿一君) まず、最初事件でございますが、十月三日日曜日の午後一時過ぎに、大阪浪速日本橋筋の路上で、これは大阪にございます松田組糸日本正義団の会長の吉田という男が、配下の組員と買い物を終わって車に乗ろうという途中に、近づいた二、三人連れの男に拳銃数発を発砲されて殺害されたと、こういう事件でございます。なお、犯人は、逃走途中、追跡した他の組員にさらに拳銃数発を撃ったということで、当時人通りの多かった繁華街におきまして、通行中の市民等大変不安感を与えたと、こういう事件がまず起こっております。  次いで、これは十月四日午前二時ごろの出来事でございますけれども、大阪住吉区にあります、先ほど殺害された組員の親分でございますが、松田組の組長の自宅付近拳銃らしい音が聞こえたと。これは、現在のところ、本当に拳銃が発砲されたかどうか物的証拠などございませんので真偽のほどは不明でございますが、捜査中でございます。  さらに、十月四日の午後五時四十五分ごろでありますが、大阪住吉区にあります酒梅組という暴力団ですけれども、その下部の橋本組組員同士が借金のもつれからけんかになりまして、その一人が頭部に五針縫う負傷を負い、さらにその事務所に乱入した被疑者らが拳銃三発を撃って逃走した、こういう事件でございます。この事件につきましては、傷害を負わせ、拳銃を発砲した被疑者三人を逮捕して現在捜査を進めておる、こういう状況でございます。なお、この最後事件は、最初の白昼事件とは被疑者状況あるいは犯行の状況などからしまして関連性はない事件だと、このように認知しております。
  18. 佐々木静子

    佐々木静子君 私は、この最後事件関連性がないというふうに言われたわけですが、少なくとも第一の事件、これも防ぎようがなかったかということを残念に思うわけですけれども、突発的に起こったことだというふうに承りますと、その次の第二のその仕返しの事件ですね、これは容易に考えられたのではないか。どうも、今度の捜査全体から見まして、また取り締まり全体から見て、警察の方々の警備がなまぬるい、そういう声が市民の中で非常に強く起こっているわけなんでございますね。特に第一の浪速区の事件、これは灘波の高島屋のすぐ近くの一番大阪のど真ん中繁華街で、特に日曜日でもあり、人がたくさん通行しておった。私もピストルの弾が飛び込んできたといううちの人にも聞いたのでございますけれども、もう殺されるのではないかと恐ろしかったと、また、子供たちは、あのピストルの音で非常なショックを受けて夜寝ていてもおびえたような状態であると、そういうふうなことで、こういうことが次々起こったのでは、もうとても不安でかなわないという声が大変強いわけです。そして、すぐまたその近くの住吉区の第二の事件、第三の事件と、そして、それの取り締まりについて警察は余りにも弱腰じゃないかという批判の声が大変に強く起こっているわけです。この捜査についても暴力団人たちがせせら笑っている。それに対して警察の方は大変に及び腰であると、これではとても警察の方で守っていただけないのではないか、どうして強くもっとびしびしやってもらえないのだろうかという不満が大変に多く、特に子供さんを持っているお母さん方が、これでは安心して子供を学校に通学さすのも心配だとPTAの協議会でも大層心配しているわけでございますけれども、そのあたり、警察とすると、どういうふうにこの暴力団のばっこ横暴に対して具体的に取り組んでいきつつあるのか、ひとつ御説明いただきたいと思うわけです。
  19. 平井寿一

    説明員平井寿一君) ただいま先生御指摘ございましたように、確かに、こうした白昼、ど真ん中拳銃発砲事件を起こされる、また、大阪で最近相次いでこうした銃器発砲事件が起きておるということは、市民に多大の不安を与えているところでございまして、まことに遺憾であると考えております。大阪府警の方では、最近ここ数年でございますけれども、暴力団抗争事件が目立ってまいりまして、特に銃器使用事件が多いということから、昨年来こうした事案発生を防止するための厳重な警戒体制をしくと同時に、こうした事件に関連した暴力団組員徹底検挙ということを目指しまして体制強化して捜査を推進してまいったわけでございます。その結果、相当数暴力団員も検挙しておりますし、銃器も押収しているわけでございますが、なおかつこうした事件発生するということは、まだまだ取り締まり方法等についてもさらに検討し、強化すべき問題点があるのじゃないか、かように考えまして、この事件発生後も現在捜査本部体制強化いたしまして、捜査員警戒員合わせて約千四百人を動員いたしまして警戒検挙措置を講じているわけでございます。特に警戒措置といたしましては、ただいま御指摘のようにさらに報復事件可能性等も十分考えられますので、そうした危険な場所に対する捜査員制服部隊の張りつけ警戒を行うと同時に、また、大阪のみならず、周辺の兵庫県、京都などにおきましてもそうした波及事件のおそれありと考えまして、これら関係警察共同歩調のもとに自動車検問職務質問強化等を常時行う、こういう仕組みをいま講じておるところでございます。  それから何と申しましても、こうした事案を根本的に防ぐのは、やはり暴力団組員を徹底的に検挙いたしましてこうした事案を起こすもとになる組織の壊滅を図るということが何よりも重点であろうかと考えております。そういう意味におきまして、いま最大限度捜査員を動員いたしましてこれら関連団体事件捜査に当たらせております。まあ警察力を総動員して今後こうした方針のもとに取り組んで一刻も早く市民不安感を解消したい、かように考えておるところでございます。
  20. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひ早く市民不安感を除けるような状態にしていただきたいのですが、いまも伺っていると、相当この人員を強化したと言っていらっしゃるやさきに起こっている事件でこういう状態ですね。特にこの四日の日でございますね、取材中のカメラマンが大ぜいの暴力団に取り囲まれた、警官もそばに何人かいるのにそれを阻止しないで見ておった、そういうことでそのカメラマンがかなり暴力行為を受けて、そしてカメラを取り上げられ、危険を感じてフィルムを渡さざるを得なかった。これはつい先日も神戸でカメラマンが殺されるというような事件も起こっているわけでございまして、暴力団のこの不法な暴力というものを国民に広く訴えるという仕事をしている人たちに対するこの暴力行為を、じっと警官が横で何人もいるのに阻止しないで見ておったというようなことは、これはちょっと法治国家では考えられないのじゃないか。そのあたりのことは警察ではどのように考えているわけでございますか。
  21. 平井寿一

    説明員平井寿一君) ただいまのカメラマンがフィルムを抜き取られたという件でございますけれども、これは現在捜査を行っておりますが、まだ具体的な被害状況等がはっきりしておりません。ただ、暴力団関係者の自宅に出入りしているその状況をフィルムに撮ろうというところを何か押し問答があったようでございまして、実際には暴行その他の事実はいまのところないということでございますけれども、いずれにしてもその辺のトラブルがあってフィルムを向こうの方に持っていかれた、こういう状況があるようでございます。  おっしゃいますように、確かに付近に警戒員がおったわけでございますけれども、現地からの報告によれば、外側の離れた場所ではほかの車両、人間をチェックしていたためにやや認知がおくれた、こういうことでございますが、しかし、いずれにしましても、こうした報道人なり、あるいは他の場合でも一般市民の場合も考えられるわけでありますが、警察官が傍らにおりながらそうした暴力団の無法ぶりがまかり通るということがあっては、これは治安上大変大きな問題だろうと思います。要は、単なる取り締まり方針とか捜査の重点ということのほかに、実際に取り締まりに当たる警察官個々の暴力団に対します厳しい対決意識というものがなければ、真の取り締まりの効果をおさめられないと考えておるところでございますので、この点につきましては末端の警察官に至るまでさらにそうした厳しい対決姿勢の保持ということを徹底してまいりたい、かように考えております。
  22. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま言われるように、警察が、捜査官憲が、暴力団員に対する厳しい対決意識、そういうものが市民の側から見た場合に感ぜられない。むしろ暴力団人たち警察のめんどうはいろいろおれたちが見てやっているからななどというようなことを市民に向かってうそぶいているのに対して、どうもあるいはそんなこともあるのではないかと思われるような弱腰の警察官のやり方であるというようなことで、すべての方がそうだというわけではもちろんありませんけれども、大変に歯がゆい思いをし、不安な気持ちに襲われている。ぜひともこれはいまおっしゃった対決の姿勢をはっきりと打ち出していただいて、市民の不安を、特に婦人や子供などが、ピストルであれば男の方ももちろん恐ろしいわけですけれども、一日も早く不安な状態を除いていただきたいというのが市民の切な祈りだと思いますので、ぜひともそのようにお願いしたいと思いますと同時に、この暴力団の壊滅には警察の力だけではいろんな問題があると思うのですが、検察庁の方でできるだけ積極的にこれをバックアップしていっていただかないと、とてもその万全は期せられないのではないか。そういうことで、法務省のお立場でこの問題をどのようにいま取り組んでいらっしゃるかということを刑事局長に伺いたいと思います。
  23. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 佐々木委員指摘のとおり、暴力団のこのような銃器を使用した事件というものは、わが国が誇る治安の面からいきましても、国民生活に非常な不安を与えることでございまして、検察当局といたしましても、警察と緊密な連絡のもとに、今回起こりました事件につきましては厳重な態度で処理いたしたいと考えておるわけでありますとともに、御指摘のように、暴力団犯罪全般につきましては、やはりその根源を絶つというような徹底した捜査を厳正な態度で貫くべきであるということは、かねがね検察の重大な方針の一つでございますので、御指摘もございましたこの機会にさらにその思いを新たにして、警察当局と緊密な連絡のもとに、厳重な処理を図りたいというふうに考えております。  特に大阪地検管内におきましては、御指摘のございましたように、暴力団の数もふえておるようでございますし、組員の数もふえておるようでございますし、銃器使用の案件もふえておるようでございますので、特に大阪地検管内のこの動向には特に厳重な態度をもって処理する必要がある、かように考えております。
  24. 佐々木静子

    佐々木静子君 警察の方にぜひともいますぐわかるようでしたらお述べいただきたいのですが、検察庁の方でも結構でございます、数がふえているというお話でございますが、この一年間に、たとえば大阪府下と限りました場合、暴力団事件で何人ぐらいの人が現実に検挙できているのか、あるいは押収したピストルの数がどのぐらいなのか。これは大阪府警の調べとして新聞に報道されておりますところによりますと、この松田組とのなわ張り争いで押収したピストルというものは、これは先年一度に密輸された四百丁のうちの一丁とわかったと、そういうふうなことが述べられているわけなんですけれども、この四百丁ものピストルが一体どうやっていつ密輸されているのか。そこらあたりのところもそうすると、ほかの三百九十九丁というピストルはいまどうなっているのかということも大変心配な気持ちがするわけですね。そうした資料をいま警察の方でおわかりでございますか。
  25. 平井寿一

    説明員平井寿一君) まず、暴力団の検挙状況でございますけれども、御参考までに申し上げますと、全国では昨年一年間で五万三千五十八人検挙しております。大阪大阪府のみで六千二百六十四人の検挙、ことしは、六月末の上半期しか数字が出ておりませんが、全国では二万七千七百十一人、大阪では三千百二十二人、結局、大阪府は全国の約一一%ないし一二%ぐらいの検挙人員を見ておるという状況で、これは大阪暴力団も多いし、それから暴力団犯罪もかなりあるということをあらわしていると思います。  それから銃器の押収状況でございますけれども、拳銃でございますが、昨年一年間では全国で千三百三十丁の拳銃を押収しております。大阪ではこのうち三百十六丁、本年は、九月末現在でございますが、全国で千三百八丁を押収し、大阪では二百十四丁を押収している、こういう状況でございます。拳銃の内容としましては、モデルガンを改造したいわゆる改造拳銃というものが大変多いわけでありますけれども、いまお話のございましたような海外からの密輸銃と見られるものもございまして、ただいま御指摘大阪拳銃がそういうものかどうかはいまの捜査段階でははっきりしておりませんが、しかし、外国製の拳銃抗争事件に多く使われているということから、やはりかなり密輸されたものの一部がそういうものに流れているのではないか、かように考えまして、現在その追及捜査に当たっているところでございます。
  26. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま数字をお示しいただきまして、いろいろと御苦労して検挙していただいているということはよくわかるわけですが、こういう不安な状態を一日も早く除いていただくために、警察当局も、それから検察当局も、ひとつ大いに、いま刑事局長からも前向きで取り組むという御答弁をいただいておりますが、ぜひとも一日も早くこの無法状態のようなことを解消して、国民の不安を除いていただきたい。  大臣、そのことについてお考えをお述べいただきたいと思います。
  27. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 私、就任のときに、法務省省議メンバーと初めて会ったときのあいさつの中に、あらゆる法秩序の維持、あらゆる犯罪に対処する態度は真剣でなきゃならぬけれども、当時の情勢にかんがみて、まず暴力退治、それから公害違反に対する厳正なる態度、それから石油ショック当時のような千載一遇のチャンスだなどというやつは徹底的に征伐せい、こういう経済犯、公害犯、暴力犯に対して特に厳重な態度で臨むよう、重点をそういうところに置いてやってまいりましたわけでありますから、今後も暴力事犯に対しましては一層厳重な態度で臨む所存であります。
  28. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひとも今後ともよろしく厳重に取り締まっていただきたい、お願いしておきます。  次に、今度は先月の十六日から七日にかけまして沖繩で起こりました基地紛争の問題について、検察並びに警察当局及び防衛庁に対して質問さしていただきたいと思います。  沖繩県の中部の金武基地の恩納岳でございますか、ここで実弾射撃が行われた。これは以前からかねてから問題になっていたところのようでございますけれども、この実弾射撃の問題をめぐって住民の方々がその危険を感じて強い反対運動が起こった。そして、その反対運動に対して、いままでは、結局、この実弾射撃というものが中止をするというようなことが、これは昭和四十八年の四月ごろからずっとこうした問題が繰り返されているようでございますけれども、この九月の十六日から十七日にかけてでございますね、これは沖繩県警が大挙してヘリコプターでこの基地の中に緊急着陸して、そして基地に座り込んで反対運動していた住民の人たちを検挙した、そういうふうに私ども伺っているわけです。そして、それに対して、刑特法——日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法ですね、これを適用されて、それらの人たちを逮捕、勾留、そして今度は沖繩の基地闘争始まって以来の刑特法違反で起訴をされたというふうなことを聞いているのでございますけれども、その経過について安原刑事局長から御説明いただきたいと思うわけです。
  29. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 御指摘事件につきましては、いま御指摘のように、九月の十九日に那覇の地検におきまして、糸数隆ら四名に係ります御指摘の刑特法違反事件の送致を受けまして捜査の結果、十月四日これら四名を刑特法第二条違反として那覇地裁に公判請求をしたことは事実でございます。  その公訴事実は、これを要するに、被告人ら四名は、多数の者と共謀の上、正当な理由がないのに九月十七日から十八日にかけて合衆国軍隊が使用する区域であって入ることを禁じた場所であります沖繩県国頭郡恩納村所在の恩納岳山頂付近に入ったというのが公訴事実でございます。
  30. 佐々木静子

    佐々木静子君 この刑特法が適用され、非常に強い姿勢で捜査官憲が臨んでこられたということで、沖繩県の基地闘争、県民の基地闘争をしている人たちがショックを受けるというか、いやが上にも反基地闘争が逆に火を噴いているというふうなことも伺っているわけですけれども、この刑特法が適用されたのは沖繩では初めてですね。そして、日本ではこの刑特法による起訴というものがいままで何件あったのか、簡単に御説明いただきたいわけです。
  31. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 突然のお尋ねでございましたので、精査をしてまいりませんでしたので遺憾でございますが、手元にございます資料によりますると、昭和二十九年以来この法律違反で公訴提起したものは二十件ございまして、御指摘のとおり沖繩では初めてでございます。
  32. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは私の調べたところでは、沖繩ではいまもそれは初めてですね。そして、全国では、昭和四十三年の十月に広島で学生の基地乱入以来こういう法律による起訴というものはなかったように聞いているわけでございますが、まあいずれにしましても、あるいは仮にその間にあったとしても、大変に厳しい態度でいま捜査官憲が基地闘争をしている住民に対して弾圧的な姿勢で臨んでこられた。私はこの捜査状態を伺いまして、これは実際に直接捜査に当たったのは警察の方だと思うのでございますけれども、いまの暴力団紛争においては非常に及び腰で、もっと早く警察が来てくれたらと、あるいは来ても動いてくれればと市民ははらはらしているのに対して、これは四人の人を逮捕するのに千人近い機動隊員を動員して、強行的な、まあ逮捕といえば強制力の行為だから強行的ではあろうとは思いますけれども、大変な実戦さながらのような状態であった。そういうことで、なお一層沖繩の基地周辺の住民は非常な不安に陥っているわけですね。そういう事柄について、大体、基地の中から退散せよということを警察の方から通告されて、まあそれも普通何回も通告して、三回なら三回通告して、それでも退散しないから逮捕するというならともかく、これはもういきなり空からヘリコプターでおりてきて、照明灯をぼんぼん照らして、基地の中に入っている人間を、一人の人間を大ぜいの人間が寄ってたかって引きずり出した。まあそういうふうな状態で、これは逮捕されなかった人間でも恐ろしさの余りがけからころげ落ちてけがをした人間も聞いているわけで、まあこの人は逮捕されなかったわけですけれども、そういうふうな非常に住民の人権を抑圧した方法による強い方法による強い姿勢というものが打ち出されてきたのですけれども、そのあたりについて、警察はどういうわけでこの刑特法を適用して、それだけの大ぜいの警官を動員して、実弾射撃に反対している住民をそういう方法でまでして逮捕しなければならなかったのか、そのあたりの経過を御説明いただきたいと思うわけです。
  33. 若田末人

    説明員(若田末人君) 最初に、まあ暴力団事件関係でもございませんけれども、一般論といたしまして、法律違反がございました場合に、法の執行に当たります警察といたしまして、違法行為の未然防止なり、あるいは鎮圧、捜査に当たることは、御了解いただけると思います。この際、御指摘もございましたように、刑事特別法についていろいろな疑義があるということで一つの問題があろうかと思いますが、刑事特別法は、御指摘のとおりに、日米安保条約の第六条に基づきます地位協定を実施するために刑事関係法令について必要最小限度の特別措置を定めたものでございまして、何ら憲法には違反するものではないと私ども考えております。このことにつきましては、昭和三十八年に砂川事件の同じ刑特法違反の事件につきまして有罪判決が確定いたしておりますが、このことからも明らかだと思っております。そういうことでございますので、特にこの法律について私ども疑義も持っておりませんので、それに違反した事犯がございました場合には、捜査いたしますのは警察の当然の責務と考えております。  ただ、捜査をするに当たりまして、何か大ぜいで寄ってたかってというお話でございますけれども、この米軍の演習は安保条約等に基づいて米軍側といたしましては権利として実施をいたしておるわけでございまして、これは当然行われるように措置すべき、違法行為によってそれが妨害されるというようなことがございましたら、その妨害行動について、違法行為について、未然防止なり、あるいは事犯があった場合には捜査をするというのが警察の責務だと考えております。  そういうことで、周囲三十キロにわたります演習場でございますので、御指摘のとおり、千人近くの警察官を動員いたしまして、できることなら入らないように、違法行為が行われないようにということで、警察といたしましては最善の努力をいたしたわけでございます。しかしながら、三十キロに及ぶ大変広大なところでございますので、やむなく侵入をされたわけでございまして、これについては、そういう事前の措置をいたしますとともに、中に入りますと大変危険であるというようなことで、関係者に厳重警告をいたしまして、刑事特別法違反になるということも十分に警告をいたしておるわけでございます。そういうことで、警察といたしましては、未然防止に最善の努力を尽くした。そして、千人もの多数の警察官を動員いたしましたのはそのためのことでございまして、特に入りました者の逮捕について千人もの者が大ぜいで乱暴に当たったということではございませんで、捜査につきまして、逮捕等の行為につきましては、必要な限度の警察官が当たったというのが実情でございます。
  34. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはわれわれはこの刑特法自身が憲法違反であるという立場をとっているものでございますけれども、まあその論争はさておきまして、いま、法律に触れることがあればこれは当然検挙しなければならないと。まあ警察とするとそういう御説明を多分されるであろうというふうに思っておったわけですけれども、現地の住民の人たちあるいは労働組合の人たち現地警察の方に今度のこの刑特法の適用による逮捕、勾留ということについて抗議を申し込んだのに対してはそういう説明で、しかもこれは政治的に何とか考えてもらわなければ現地の一線の警察官とするとやむを得ないのだと。ですから、ただ法律違反があったから逮捕したのだという御説明のほかに、これはやはりそれ以上に何か非常に行き過ぎがあるのじゃないのでしょうか。いま基地基地と言われますけれども、この実弾射撃をしている場所は、これは基地ももちろんあるわけですけれども、その中に県道があるわけですね。県道一〇四号があるわけですね。それは生活道路で、その地域に住んでいる人たちはそこをずっといつでも使っているわけですからね。その県道を封鎖して実弾射撃の練習をする。これを、県道を封鎖するのに、県道といえば法律上の権利者は県の管理に属するものだけれども、沖繩県にも事前に承諾をとっておらない。いきなり軍が一方的に安保条約だ、やれ何だと言って県道を封鎖するわけです。これはやっぱりどう考えてもむちゃな話じゃないですか、そこで人は生活しているんですからね。そのあたり防衛施設庁はどんなように考えているのですか。そういうふうなむちゃくちゃな住民無視の政治、特に沖繩が復帰してからもう何年になると思っていられるのですか。占領中ならともかく、独立国の日本で、管理権者である県にも承諾を得ず、一方的にこれから実弾を撃つからということで県道を封鎖しても、住民は動かないのがあたりまえ、出て行くわけにいかないのがあたりまえじゃないですか。そのあたり防衛庁の方はどのように考えていられるのですか。
  35. 来栖大児郎

    説明員(来栖大児郎君) 実弾射撃の行われましたキャンプ・ハンセンは、安保条約の目的を達成するために地位協定に基づきまして米軍に提供いたしました施設区域でございます。防衛施設庁は、演習の実施に当たりまして、事前に、演習の日時でありますとかあるいは演習の内容等につきまして、沖繩県及び地元の金武村、恩納村に通知をいたしますとともに、演習場周辺あるいは演習場の中、いま先生がお触れになりました県道一〇四号線、この県道沿いに約三十キロにわたりまして保安さくをめぐらしまして、さらに演習場であることを示す標識等、これを約七百数十枚設置する等の措置をとりまして、場内に人が立ち入ることがないように安全措置を講じたわけでございます。また、かねて地元の金武村の方から強い要望のございました産業開発道路、これは大砲を据えております砲座の背後を迂回する道路でございますが、地元では産業開発道路と呼んでおります、この道路の建設を行いまして、県道一〇四号が射撃実施の間は交通規制が行われますので、その一般の通行に支障のないようにこの迂回道路をつくり上げておるわけでございます。  このように、演習の実施に当たりまして、地元住民の安全でございますとか、あるいは利便の確保につきましては十分に配慮いたしたのでございますが、一部の人々が実力阻止と称しまして演習場内に立ち入ったために、演習が実施できなかったばかりでなく、刑特法違反に問われたということはまことに遺憾でございます。防衛施設庁といたしましては、沖繩におけるこのような射撃実施の演習場はここだけでございます。さらに、米軍は演習を実施することの必要性を持っておることも理解できますので、やはりこれは演習の中止を申し入れるというようなことは考えられないわけでございます。ただ、しかしながら、今後の演習実施に当たりましては、地元住民の安全確保、利便の確保につきましては今後とも十分に配意いたしまして引き続き演習を実施したい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  36. 佐々木静子

    佐々木静子君 その引き続き演習を実施したいというのが困るわけですよ。これは幾ら安全を確保するといっても、住んでいるところの上で実弾射撃の練習をやられちゃ、それは安全を確保するなんと言ったって口先だけのことになることは火を見るよりもはっきりしていると思いますね。防衛庁の方は、日米安保条約、地位協定があるから、刑特法があるから、法律に触れるからと言われるけれども、米軍基地というものを考えたときにも、沖繩の全陸地面積の一二%が米軍基地であり、そして在日米軍の基地のうちの五〇%が沖繩県に存在している、そのこと一つを考えてみても、日本の国益のために日米安保条約は必要なのだという立場を仮にとるにしても、それじゃ沖繩の人が大変な迷惑じゃないか、実弾射撃まで今後もやりたいと、政府が。日本国民の住んでいるそこで米軍が実弾射撃をやるのを今後もやりたいと防衛庁の政府御自身がおっしゃるならば、ここに住んでいる人にとっての不幸はこの上ないわけで、刑特法というのは、この立法の趣旨から言うと、この地域の住民の安全を確保するために刑特法をつくったのだと、地域ではそのように防衛庁の方々も説明しているわけです。ところが、実際起こっていることは、地域の人たちが刑特法で非常におびえさせられている。そういうことを考えますと、やはり今度の非常に強圧的な捜査というものに対して住民の反感はつのるばかりではないか。これはマスコミなどの批評によりましても、捜査権力の住民に対する挑戦であるというふうな表現も使われているわけでございます。特にこの刑特法を適用して起訴したときの、これは沖繩の検事正の談話だと、新聞の上では拝見できるのですけれども、この公判のために検事八人をこれに当たらせて今後強力に取り組んでいくというふうなような談話が出ているのですが、それは事実なのか、また、被告が四人で事件としては一件なのに何のために八人もの検事を沖繩にこの刑特法の事件のために導入しなければならないのか、そのあたりが私ども納得いかないのですが、御説明いただきたいわけです、事実とすれば。
  37. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) そういう報告は受けておりません。恐らく八人などというのはとうてい考えられないと思います。
  38. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは何かこの件に関連してこの被告のほかにもいろんな人が参考人で調べられたり強制捜査を受けたと。これは警察あるいは検察庁のどちらでもおわかりの方にお答えいただいたらいいのですが、これも起訴した以上、別件の逮捕とか捜査とか、そのことはもちろん何もないわけなんでしょうね。何かそういうことで非常に住民の人たちは脅かされている。実弾が飛んでくるほかに今度は警察が乗り込んでくるというようなことでは全くたまったものじゃない。ひとつその間の、もうそういうことは起こらないのであれば起こらない、あるいは住民の人たちの思い違いであれば思い違い、その間の事情をどうなっているのか御説明いただきたいと思います。
  39. 若田末人

    説明員(若田末人君) 御指摘のことにつきましては、四名のほかには強制で逮捕されている事実はございません。ただ、強制と申しましても、ほかの捜索等がございますが、これは前後二回にわたりまして執行いたしております。これを行いました理由につきましては、この四名のほかにもまだ入っておりましたいわゆる刑特法違反の行為を行った者がおりますし、それからそういうことで現に警察官が現認しておる中で逃走をいたした者もございますし、情報によりますと、いろいろな団体の上部団体から指示を受けて入ったというようなことも一部出ておりますので、そういう者については共犯として捜査を徹底いたしまして事実関係を明らかにしていきたいということでございます。
  40. 佐々木静子

    佐々木静子君 住民の人たちが大変不安な状態にいるんですし、そういうふうな住民の人たちが非常に不安な気持ちでいるということは、知事並びに県議会でも満場一致で演習はやめてほしいというのがもう政党政派を超えて議会でもそういう意見が出ているわけで、議会からも演習中止の申し入れをしているくらいの状態なんですからね。警察は、一方では暴力団が暴行しているのは余り取り締まってくれない、一方では住民が何とか実弾射撃をするのをやめてほしいということで一生懸命になっている、それをやっている者をどんどんと片っ端から取り締まるというふうなことでは、やはり国民の批判は免れないのじゃないか。そういう意味で、いま不当な取り調べというようなことは一日も早くやめていただきたい。もう舞台は裁判所へ回っているのですから、起訴されたと同時に。特に私の聞いている話でも、これは弁護人がついているから余りるる申し上げませんが、接見禁止も裁判所が全部却下しているわけですね、今度の被告については。全く接見禁止は認めていないわけなんです。しかし、事実上はだれも会えていないんです。接見禁止だと。調べてみると、接見禁止は裁判所は却下しているわけなんです。接見禁止になった被告はないのに接見さしていないわけですね。そこら辺のところも、どうもこれは普通の事件と違う。警察の方の勇み足と、ちょっと行き過ぎじゃないか。ですから、何を守らなければならないかという観点に立ってひとつ今後とも住民の不安を一日も早く除くように御努力いただきたいということを特にお願いして、この件についての質問は終わりたいと思います。  それでは、いろいろとになりますが、今度は、当委員会でこの三年来にわたって何度も質問さしていただいてきた金大中事件について若干お伺いさしていただきたいと思います。  これは本年の七月三日付で、被害者を金大中氏とする強盗殺人未遂等事件、被告発人は金在権こと金基完、金東雲及び劉永福の三名とした告発状が提出されて最高検に提出されたと思うのでございますが、最高検察庁からさらにこの事件が七月六日付で東京地方検察庁へ移送されたという通知があったということを聞いているわけですが、この告発に基づく捜査はその後どういうふうになっているか、概略御説明できるようでしたら説明していただきたいと思うわけです。
  41. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 御理解いただいておりますように、捜査の内容を余り具体的に申し上げることは控えたいと思いまするが、告発事件でもございますのであえて申しますと、東京地検は、いま御指摘のようにこの告発状を受理いたしまして、さっそく内容を検討いたしますとともに、従来捜査に当たってこられた警視庁当局とも数回にわたりまして協議をいたしまして、警視庁当局から従来の捜査概況について説明を受けましたほかに、告発状に、今回の告発事実を認定する根拠、資料として、アメリカの上院、下院におきます関係委員会における証言等が列挙されておりますので、さしあたり外務省を通じまして捜査の資料としてその資料の入手方を外務省に依頼して、一部入手をしておるというのが現況でございます。
  42. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまおっしゃるように、事捜査のことですから余り根掘り葉掘り伺うわけにはいかぬ点もあろうかと思いますけれども、いま御説明にあったアメリカの資料、アメリカの下院国際関係委員会の国際機構小委員会でのドナルド・レイナード氏の証言の調書だと思うのでございますけれども、これは三月十七日にいま申し上げました国際機構小委員会で宣誓の上アメリカの国務省の元の韓国部長レイナード氏が証言したものだというふうに聞いておりますが、この三月十七日の資料、これは全部外務省から法務当局は入手しておられるわけでございますね。
  43. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 御指摘のとおりでございます。
  44. 佐々木静子

    佐々木静子君 その後の三月二十五日の小委員会の、これは秘密委員会というような表現がしてあるのですが、これも全部資料を入手していただいておりますですか。
  45. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 第二に告発状に記載してあります小委員会の秘密聴聞会の議事録も入手しております。
  46. 佐々木静子

    佐々木静子君 私も実はこの三月十七日の小委員会の資料は全部読ましてもらったのですが、秘密小委員会の資料というものは資料としてこちらにもいただくわけにいかないでしょうか、どうですか。
  47. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 何分にも事柄が秘密聴聞会の議事録ということでございますので、実は詳しくその入手に至った経緯、条件というものを承知いたしておりませんが、外務省当局等にもその資料の許される範囲というものを確かめた上で提出できるかをお答えしたい、かように思います。
  48. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは事情の許す限りこの二十五日の分はこちらに手に入っておりませんのでひとつお願いしたいと思うわけでございますが、それで、十七日のこの資料を読みましても、かなりはっきりと金大中事件の主犯者がだれでどういうことであったかということがレイナード氏の供述ではっきりと出てきているわけですね。私が新聞で見たところによりますと、これだけでは証拠にならぬというふうな談話が外務当局から出ていたと思うのでございますけれどもね。そのあたりもう一つはっきりしないのですが、これを見てもかなりに証拠になるのではないか。少なくとも、ロッキードも大変御苦労なさったと思いますけれども、コーチャンの証言にも匹敵するくらいに証拠になるのではないかというふうな心証を受けたわけでございまして、特に警察における当時から問題になっております指紋、物的証拠、これは私は指紋のほかにもいろいろと日本の有能な捜査官憲がお調べになったのですから物的証拠も恐らくはかにもあるというふうに考えておるわけですけれども、それらと聞いているところでは符合するように思うわけでございまして、私はこれは決してだめだという問題ではないというふうに思っているのでございますけれども、これは捜査をいま継続中、今後も続けていくというふうに承っていいわけでございますか。
  49. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) いま御指摘の資料の証拠価値の問題は、もう御理解いただきますように、いま申し上げる段階ではないと思いますので申し上げることを差し控えさしていただきますが、いずれにいたしましても、われわれといたしましては、主体となって今日まで鋭意努力を続けてこられた警察当局と十分な連絡をとりつつ、今後事案の真相の解明に努めてまいる所存であるというふうに東京地検から聞いております。
  50. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは私から申し上げるまでもなく、犯罪の起こされたのが日本の国土内であり、無論日本の司法権の及ぶ事件であり、しかも亜米利加合衆国ト締結セル犯罪人引渡条約などの条項にも今度の被疑者はぴったりと適合するわけでございますので、これはそれこそ幾らでも捜査協力を求めることもできるのではないかというふうに私は思うわけです。そして、この告発状によりますと、あとの金東雲と劉永福はソウルに在住しているので、まあ日本と韓国との間ではそういう協力関係は得られないとしても、被告発人の金在権こと金基完、これは現在アメリカ合衆国のロサンゼルスに住んでいる。これは捜査当局におかれても、あるいはこれは外務省に伺ったらいいんでしょうか、これは間違いないというふうに確認していらっしゃるわけですね。
  51. 大森誠一

    説明員(大森誠一君) 外務省といたしましては、金在権元駐日公使はすでに日本から離任しておりまして、その後の居所等につきましては把握はいたしておりません。
  52. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、告発状が出て、いま告発を受理していらっしゃる法務省の方に伺いますけれども、金在権という名前ではアメリカへ入国できないので、金基完という名前でロサンゼルスに現在住んでいる、この事柄は確認していらっしゃるわけですね。
  53. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 告発状にはさように記載しておりますが、まだそれを確認するという段階まではきておりません。
  54. 佐々木静子

    佐々木静子君 実は、私は、昨日私の聞いた情報ですけれども、この金在権こと金基完が、この二つと、また別の名前で、これはいま私の聞いた名前は言わない方がいいのじゃないかと思うのですけれども、ロサンゼルスにおることを突きとめたという情報を聞いておるわけでございまして、また別の名前でロサンゼルスの市内のかなり大きな邸宅に住んでおるということなんでございますけれども、そういう事実は捜査当局の方はまだお調べになっていらっしゃらないわけですか。
  55. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 御指摘のとおり、まだその段階に至っておりません。なお、佐々木委員からしばしば逃亡犯罪人引渡条約の御指摘がございましたが、いずれにいたしましても、この逃亡犯罪人引渡条約による引き渡しを求めるためには、わが国において逮捕状が出ておるということが要件でございますので、まだ逮捕状を求めるという段階にも至っていないということもございまして、確認ということも、それとの捜査の進展のぐあいによって確認ということも行われるべきものであろうと思います。
  56. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはきのう私の方へ入った情報でも、それが金在権本人に間違いないということを確認した人がいると。しかし、こういうことになってくると、この金在権氏こと金基完がまたほかの男になってアメリカで悠々と暮らしておったことが明るみに出れば、彼はすぐにまたソウルへ帰国するということも考えられないではない。そうなってくると、これこそこの事件はやみからやみに葬らなければならない。そういうことから考えますと、この事件は非常に緊急性があるというふうに考えるわけでございますので、大変に検察御当局はお忙しいと思うのですけれども、せっかくいろんな人が、この事件は少なくとも司法的には全く未解決事件で、これをやはり日本の名誉にかけてもきっちりと解決してほしいというのが念願で、それぞれそういうふうなことを考えている人が一生懸命になってこの真相究明を考えているわけでございます。もちろん、捜査当局も一生懸命に取り組んでいただいているとは思いますけれども、これで逃亡されれば、もうどうしようもないわけでございますので、ひとつ早急に手を打っていただきたいというふうに思うわけです。逮捕状が出ていないといいましても、逮捕状は捜査当局が出さなければ裁判所が積極的に出すわけにもいかないわけでございますので、早急に取り組んでいただきたい。  それからレイナード氏の証言あるいは秘密会の証言、これは秘密会の方は私は拝見しておりませんので何とも申し上げられませんけれども、この証拠価値の問題はともかくとして、レイナード氏に会っている人がずいぶんいるわけですね。特に新聞社関係などでも直接インタビューをしてもっと細かい事情を聞いている人もいるわけですね。これは、レイナード氏に、この調書だけではなしに、日本の司法権の及ぶ事件捜査のためでございますから、協力を求める。これはロッキード事件ばかりじゃない、これだけの大きな国際的な事件なのでございますし、その重要な事柄を知っている人がアメリカにいるわけですから、ですから、その人たちから供述を得る、そういうことももっと積極的に考えていただいたらいいのではないか。これをみんなが知っていることをじっと、しかも法律的にできることを日本の捜査官憲がしないということになると、先日のロッキードでは検察は国民の信頼に足りるという一応の高い評価を受けたわけですけれども、これをうやむやにもみ消しの方に回ったとまではいかなくても、うやむやに処理されたとなれば、やはり大きな失望を国民は持つのではないか。そういうあたりについて、検察当局はどう考えていらっしゃるか、また法務大臣はどのようにお考えでございますか。
  57. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) いま佐々木委員から被告発人の所在に関する情報あるいは取り調べにつきまして貴重な御示唆を得たわけでありまするが、どういう方法をとって真相解明に努めるかは、検察当局の判断に待ちたいと思っております。ただ、気持ちといたしましては、このような事件でございまするから、真相究明の意欲に欠けるところは決してあってはならないわけでございます。そういう意味で最善の方法を尽くすと思いまするが、何分にも御指摘のとおり関係人が外国におるという犯罪でございますので、きわめて捜査は困難であるということも事実であることも御理解いただきたいと思います。  なお同時に、この点、告発を受けましたのは検察庁でございますが、従来から警視庁が主体になって鋭意努力を続けてこられた案件でございますので、警視庁当局とも十分な協力を保ちながら真相の解明に努めるというのが検察当局の方針でございます。
  58. 佐々木静子

    佐々木静子君 それじゃ警視庁の方ではどういうつもりで取り組んでいらっしゃるわけですか。
  59. 大高時男

    説明員(大高時男君) ただいま法務省の方からお話がございましたように、最高検あてに提出されました告発状につきましては、警視庁の方が受領いたしまして、警視庁と東京地検と協議の上、現在捜査を進めつつあるという状況でございます。私どもといたしましても、事案の真相解明のために今後とも努力したいと考えておるわけでございますが、関係者はいずれも外国におるというような状況でございまして、大変困難な実情にある、しかしねばり強く続けたい、こういう気持ちでございます。
  60. 佐々木静子

    佐々木静子君 大臣は、その点について、これだけ国民の世論を呼んで、この金大中事件が田中内閣時代に政治的決着はついたというふうに一応言われておりますけれども、もちろんこの政治的決着の裏側にはいろいろな事実があったということを検察御当局は調べていらっしゃるかとは思いますが、私どもは私なりにそれが何であったかということをロッキード事件と並んでいま調べておりますけれども、しかし、司法的な解決は全くできておらないわけでございまして、これは法務大臣としてはどういうお気持でいらっしゃいますか。
  61. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 私の気持ちとしては、残念無念ということです、いまのところは。いまのところはですよ。しかし、警視庁も、それから検察庁も、ねばり強くこれからも捜査を鋭意続ける、こう言っているから、しばらくその熱心な捜査の継続に期待をしている、こういう気持ちであります。
  62. 佐々木静子

    佐々木静子君 大臣はロッキード事件その他でも国民の期待にこたえてくださる法務大臣ということで大変人気が上がっていらっしゃるわけでございますが、ひとつ、もうおれは貝になったなどとおっしゃらずに、ロッキード事件ばかりじゃない、この金大中事件についても、どんどんと積極的な政治力——政治力といいますか、積極的な前向きのお考えを述べていただきまして、そして国民の念願に沿うようにひとつ御奮闘いただきたい、そのように思っておりますので、ぜひともこの捜査が進みやすいように御尽力いただきたいというふうに思うわけでございます。いかがでございますか。
  63. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 先ほども申し上げましたとおり、不徳を省み、言動に留意しつつ、誠心誠意努力をいたします。
  64. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、大臣、御都合がありましたらどうぞ。いまのお話を伺ったので安心しましたから。  それでは続いて金大中の問題で若干外務省に伺いたいのでございますけれども、獄中の民主救国宣言に対する違反事件でいま拘置中の金大中氏の健康状態が非常に悪いということが日々のように伝えられているわけでございますけれども、そして、この金大中氏の主治医その他のあるいは医師団を日本からも韓国へ派遣してほしいという要請を外務省は受けていられるというふうに聞いておりますが、その問題はその後どういうふうに処理されておるのでしはう。
  65. 大森誠一

    説明員(大森誠一君) まず、金大中氏の健康の状態につきましては、現在同氏は何分にも拘置中の身でありまして、健康状態の詳細は不明でございますけれども、金大中氏は以前から神経痛の持病があったと聞いており、拘置所内の生活であるということもありまして、病状は余りよくなっていないように聞いております。いずれにいたしましても、金大中氏の健康状態がすぐれないというのはある程度事実のようでありますが、いますぐ生命にどうこうという、そういう状態ではないというふうにも聞いている次第でございます。  なお、先生がお述べになりました医師団の派遣云々というようなことにつきましては、外務省としては特にそういう申し出は受けていないと承知いたしております。
  66. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは在日韓国人八団体から外務省に対して要請をされたというふうに聞いておったのですけれども、それを受けていらっしゃらないとするとこれはやむを得ませんが、しかし、金大中氏が、いま言われたように韓国の法律によっていま刑事訴追を受けている。しかし、それであると同時に、いまも申し上げた日本の国内で起こった殺人未遂、強盗事件の重要な参考人であり、証人であり、被害者なんですから、日本の国内で起こった事件の被害者であり、参考人である金大中氏の健康状態というものに対して、日本の外務省としても、特にいままでの国会におけるいきさつなどから考えても、当然に相当な関心をお持ちにならざるを得ないのではないか。これが、もし、金大中氏がこのままの状態で獄中で大変心配されているように病気が悪化して急に亡くなったと、これでも外務省はほっておくつもりですか。
  67. 大森誠一

    説明員(大森誠一君) 金大中氏事件につきましては、御承知のように、昭和四十八年の十一月二日の日韓両政府首脳間のいわゆる外交的決着によって処理されてまいったわけでございますが、金大中氏の身柄につきましては、出国を含めて一般市民並みの自由があるという保証ということが出されていたということの関連もありまして、われわれといたしましてもこの件につきましては関心を持ち続けてきておるところでございます。しかしながら、今回の金大中氏の拘置というものは、韓国の国内法令によって処置されているという事案でございますので、この件につきまして私どもが韓国側にそういう健康状態等について照会するというようなことは適当でないというように考えている次第でございます。
  68. 佐々木静子

    佐々木静子君 私、関心を持っているという言葉がいかにもわからぬのです。関心を持っているのはだれだって関心を持っている。ところが、現地の大使館から問い合わさすとかそういうことは一切しておられないわけですか。これはこの間の予算委員会でも外務省のアジア局長からは非常に関心を持っているということは再々繰り返しておられますけれども、どうなっておるのですか。もうそれで何もしていないのですか。ただ関心を持っているということを国会向けに答弁されるだけで、もう後は殺されようが、煮て食われようが、死んでしまおうが、それはもう関係ないと、そういうことに突き詰めればなるわけですか。
  69. 大森誠一

    説明員(大森誠一君) 先ほど申し上げましたように、外務省といたしましては、関心を持ち続けておりますし、機会あるごとにわが方の関心というものは韓国政府側にも伝えているところでございます。先ほど申し上げましたように、金大中氏の健康状態につきましても、われわれとしても関心は抱いているところでございますけれども、現在の状況下にかんがみまして、これを直接韓国政府にただすという措置は控えているわけでございます。しかしながら、私どもといたしましても、われわれのできる範囲での健康状況というものについて知るということには努めているわけでございまして、そのようなことに基づきまして、先ほど申し上げましたような金大中氏の健康状態というものについて、われわれの知り得た点を御説明申し上げたわけでございます。
  70. 佐々木静子

    佐々木静子君 何かこう奥歯に物がはさまったような言い方で、はっきりと私は理解できないのですけれども、たとえば、いまも御答弁にありましたように神経痛がかねての持病である。日本もずいぶん寒くなってきましたけれども、韓国のソウルあたりは非常に寒くなってきているけれども、まだ冬物のはだ着は差し入れもさしてもらっていない。これは日本の外務省に言っても無理な話ですけれども、そういう状態にあって、これではもう生命がとても危ないのじゃないかということを金大中問題に関心を持ってきた多くの国の人々が憂慮しているわけでございますけれども、原状回復義務というものをはっきりと表明しておった日本政府として、ただ関心を持っているというだけであれば、私はこれはやはり恥ずかしいのではないか。だから、そのあたり、もう少し外務省は、いままでの経緯から考えても、しかも、いまも申し上げているように日本で起こった重大国際犯罪の一番のなくてはならない証人なんですから、それが消されるのをみすみす関心を持っているという国会答弁だけで終わらせるというようなことでは、私は、余りにもお役所答弁にすぎる、もう少し血の通った国民の期待に沿う行動をとっていただかないとこれは大変遺憾なことだと思うわけです。いま時間もありませんので、このあたりで金大中事件についての質問は終わりますけれども、また改めてこの金大中問題についてお伺いさしていただきたいと思います。  それでは、もう時間がありませんので、最後に婦人問題について若干御質問させていただきます。  これは昨年の国際婦人世界行動計画が七月三日メキシコの国連の会議で採択されましてより、この世界行動計画というものを国内の日本の法律の中にどのように生かしていくか、あるいは行政の上でどのように生かしていくかということが鋭意努力されてきたわけでございますが、総理府の方、この国内行動計画をいろいろと御検討いただいていると思うのでございますけれども、いまどういうふうな作業がどの程度進められているのか。また、聞きますところによりますと、国内行動計画といういま案は伺っているのですけれども、それが成文化の作業もかなり具体的に取り組まれているというような話も聞いておるわけですけれども、どういうふうなそれこそ計画になっているのか、私の質問時間は大変限られておりますので、概略を簡単にお答えいただきたいと思います。
  71. 久保田眞苗

    説明員久保田眞苗君) 国内行動計画の進捗状況につきましては、本年四月に概案を発表いたしまして、これは今後十年間よっていくべきところの筋書きの主要事項についてお示ししたものでございます。さらにこの概案に基づきまして各方面からの御意見も多々ちょうだいしておりますので、こういったものを踏まえ参考としつつ、ただいま本部の各省庁が連絡協議の場を持ちまして、これに肉づけをする作業を進めております。そういたしまして、予定といたしましては、この十一月の末ごろに成案を得るという予定で検討を進めておるところでございます。
  72. 佐々木静子

    佐々木静子君 企画推進本部で大変に御努力いただいているということは私もいろんな機会に伺っておるわけでございますけれども、いろんな団体からの意見をお聞きになったということでございますが、どのぐらいの団体から意見をお聞きになっていらっしゃるのか、お知らせいただきたいのです。
  73. 久保田眞苗

    説明員久保田眞苗君) 団体の数は、一つの団体でいらっしゃる場合もあり、また、幾つかがまとまっていらっしゃる場合もございますが、私どものお受けした要望は四十近くなっております。
  74. 佐々木静子

    佐々木静子君 私もいろんな婦人団体の国内行動計画の勉強会などに出席さしていただくのですけれども、そうした機会ごとに伺うことが、これがどうも私たちの意見というものを聞いていただけないのではないか、これは机の上のプランだけでお役所仕事で上から押しつけられたような状態で決められてしまう危険があるということで、これは現地の幾つもの婦人団体のどこへ参りましても、私たちの声は聞いてもらえないのかわからないということで、この趣旨には非常に婦人は喜んで賛成はしておりながら、この中身を決める取り組み方の問題としてまず自分たちの声が反映しないのではないかということが大変に心配されているわけなんですけれども、具体的に全国にたくさんの府県があると思いますが、全国の声を聞くためにどのような御努力をなすっていらっしゃるのか、具体的にお述べいただきたいと思うわけです。
  75. 久保田眞苗

    説明員久保田眞苗君) 十年の計画を比較的短期間の間に取りまとめるという任務を負っておりますので、全国津々浦々を回るということはできないのでございますけれども、私どもも地方二カ所ほど行って現地の方々の御意見を伺いましたし、また、中央でも、マスコミの関連、婦人団体の関連等につきましてかなり多く接触の機会を持っておるわけでございます。また、そのほか、本部の関係省庁におきましても、地方の出先機関を通じまして、婦人団体その他民間団体の声を伺うという機会を設けまして、私どももその結果を伺っておるというような次第でございまして、そのほか、先ほど申し上げました団体の方から積極的にお寄せいただく陳情書なども本部の関係にすべて配付をし、そして、私どもその内容を勉強しながら作業を進めておるという状況でございます。
  76. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはスタッフが限られておりますので大変に御苦労なことだと思うのでございますけれども、この十年間のこれからの日本の婦人のあり方を決める重大な問題でございます。これは単に十年の問題ではなくて、これから先の本当にこの機会にちゃんとしておかなければどうにもならない問題が非常に多いわけでございますので、大変御苦労だと思いますけれども、生の婦人の声をできるだけ多く聞くようにひとつ御努力いただきたいわけなんです。きょうも午後から大阪の幾つもの婦人団体が総理府にそのことで陳情に上がるわけでございますけれども、できるだけ多くの人たちの意見を聞いて、そして、それを取り入れていただきたいというのが一番の願いでございます。  そして、この計画案を見ますと、「法制上の婦人の地位の向上」「男女平等を基本とするあらゆる分野への婦人の参加の促進」そして「母性の尊重及び健康の擁護」「老後等における経済的安定の確保」「国際協力の推進」というふうに大別されているいろ御検討いただいておりますね。そのとおりでございますね。  そして、これも時間があればもっともっとゆっくり伺いたいのでございますけれども、そうした分野のことにつきましてお役所が任命された委員の方ばかりじゃなくって、民間でそれこそ一生をささげてこうした具体的な問題に実地に取り組んでこられた方がずいぶんいらっしゃるわけですし、また学者とか評論家とかの方々とは違う面において実践を通じていろんなことを感じておられる方々も多いわけでございますから、努めてそういう方々の御意見を真摯に取り上げていただきたいと、このことを特にお願い申し上げたいと思います。  そして、これは第四の「老後等における経済的安定の確保」の中に入るのじゃないかと思いますが、特にいま経済生活のしわ寄せが婦人の上に押し寄せてきておりますが、特に弱い立場に置かれている母子家庭などに対する問題でございますね。この母子家庭のお母さんがなかなか就職していくことが困難である。そういうふうなことで、いま母子家庭のお母さんの経済的な生活というものを守るためにいろんな運動が行われておる。これは全国的にも母子福祉協議会などが各地で大会を持って、何とか母子家庭のお母さんが就職できる、また、そして家計を維持するに足る収入を得るというふうな機会をどうあってもつくっていただかないとどうにもならない、そういう悲痛な要望が出ておりますけれども、そういうことは厚生省にももちろん伺わないといけないのですが、企画推進本部とすると、どのように具体的に取り組んでいらっしゃるのでしょうか。
  77. 久保田眞苗

    説明員久保田眞苗君) 企画推進本部といたしましては、この概案の主要事項の中にすでに「母子家庭等の生活の自立と安定のために必要な、就業、福祉に関する施策の充実を図る。」というふうに特に打ち出しておりまして、これに基づきまして厚生省、労働省が自立安定のために必要な貸付金制度あるいは雇用奨励金制度のほかにも、またこのたびはその母子家庭の実態を把握し、それに必要なニ−ドにこたえるような施策に特に力を入れていくというふうな姿勢をもって進んでおるところでございます。
  78. 佐々木静子

    佐々木静子君 具体的に本当は時間があればもっと伺いたいのですが、またの機会に譲りまして、私は昨年の秋の予算委員会で婦人の問題について質問さしていただいたのでございますが、その中で、これは独身の婦人の問題特に戦争によって四十代の後半から五十代前半にかかっての婦人のうち二百六十万ほどの人が結婚の機会をなくして初老を迎えている。まあこれは別に戦争犠牲者ばかりではない、ほかにもいま独身でいる女性の問題についての項が欠けるのではないかというようなことで、当時の総務長官も、健康の問題、経済生活の問題、住宅の問題、老後の病気の際の問題等をいろいろ努力しているという御答弁をいただき、特に住宅の問題について、日本の住宅政策の対象が二人以上の、夫婦と子供というものを単位にしたところの普通世帯に重点を置いてきたために、独身者が公営住宅に住む機会が奪われておる。そういうことで、いま特に四十代の後半、五十代になって定年を迎え、そして経済的にも非常に微力である多くの戦争犠牲者と申しますか、独身の女性が、住むところがなくて大変に困っている。そういう問題を質問させていただいたのに対しまして、当時の仮谷建設相がぜひともこの問題は積極的に取り組むと、また、当時の植木総務長官もぜひとも企画推進本部でこの問題は責任をもって取り組むという御答弁をいただいているのですけれども、こうした問題はその後企画推進本部で具体的に何かいい解決方法、そういうふうなことに取り組んでいただいているのでしょうか。いただいているとすれば、具体的にお述べいただきたいと思うわけです。
  79. 久保田眞苗

    説明員久保田眞苗君) 独身中高年の問題につきましては、まだ概案にもあらわれておりませんところから、関係の御当局との間で、特に住宅の問題等につきましては各方面からの御要望もございますので、御検討をいただいておるところでございますけれども、さらに一生懸命話し合いを進めまして、この独身中高年の問題が取り上げられますように努力したいと思っておるところでございます。経過はそのようなことでございます。
  80. 佐々木静子

    佐々木静子君 何か具体的に取り組んでいらっしゃることについて企画推進本部が関係しておられることはございませんですか。私の聞いているところでは、今度建設省でかなり大幅に独身住宅を、一DKでございますか、独身公営住宅を、ちょっと細かな数字は記憶しておりませんが、実現方に向かっていま大きく動いておるということを聞いておるのでございますが、企画推進本部とすると、そういうようなことについて何か御関係していらっしゃることばありませんですか。
  81. 久保田眞苗

    説明員久保田眞苗君) 直接的には、建設省なり、ただいま御指摘の一DKにつきましては住宅公団の問題かと思いますが、最近そのような拡大の方途がとられたし、またとられつつあるということが言えると思います。私の方といたしましても、他に法令を検討しなければならないという関係のところの問題もあるかと存じますので、そのようなさらに広範な施策の検討をお願いするという立場で進めておるところでございます。
  82. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、ぜひこれは、企画推進本部ができたけれども、結局、名前だけで、かっこうだけで、何にもやってくれないのじゃないかという不安を持って心配している人も非常に多いわけで、ぜひとも皆さんの期待に、せっかくできた概案でございますから、大いにがんばっていただきたいということを特にお願い申し上げたいと思います。  そして、法務省の民事局長がお越しでございますので、ちょっと最後にこの婦人問題に関連して伺っておきたいと思うのでございますが、ちょうど前の七十七国会で、これは法務省の民事局の方からお出しいただきました民法の一部改正、そして人事訴訟手続法等の改正などによりまして、これは民法等の一部改正案とまとめていただいて、そしてこれが成立しましたので非常に多くの婦人がいろんな機会に喜んでくれておるわけでございまして、そういう意味におきまして、もちろんこれで十分なわけじゃ全然ございませんが、婦人の地位向上ということの第一歩にはなったということで大変に皆さんが高く評価して喜んでくださっているわけでございますけれども、特に婦人団体がかねてより陳情いたしております妻の財産権の問題、これはいろんなかっこうで出てくると思いますけれども、夫婦の財産形成に対する寄与の問題、そして相続の上における相続分の改定の問題そういうふうな問題について、いま婦人の家事労働の評価と、それからまた婦人の老後の生活の安定などというようなことから考えても、ぜひ一日も早く実現していただきたいというのが多くの婦人の要望でございますが、その事柄に対しまして、民事局御当局とすると、いまどのように取り組んでいただいておるのか、また、次の国会にでもそういうふうな御成案を見ることができるのか、その見通しをお述べいただきたいと思うわけです。
  83. 香川保一

    政府委員香川保一君) ただいま御指摘の問題は、かねて私どもの法制審議会の民法部会身分法小委員会におきまして検討していただいておるわけでございますが、先生御案内のとおり、いろいろの考え方があって、それについて一体国民各層はどういう御意見をお持ちかということで、この前に中間報告を発表いたしまして意見をいただいたのでございますが、非常にバラエティーに富んでおりまして、率直に申し上げまして国民の皆さん方がどういう方向を志向しておられるかということはいささかつかみかねておるわけでございます。何分問題が単に形式的にたとえば相続分を現在妻の三分の一を二分の一に上げるというだけで事足りる問題でもなかろうというふうなことで、できるだけそれぞれのケースの実態に即したような相続関係が形成されないと、本当の意味の妻の地位の向上というふうなこと、ひいては婦人の実質的地位の向上も図り得ないというふうな観点から、現在法制審議会におきまして、家庭裁判所にあらわれたいろいろのケースをもとにいたしまして、それから外国の立法例の検討もほぼ終わりまして、現在いろいろな案についてさらに審議を重ねていただいておるわけでございます。  妻の相続分の関係は、いま申しましたように、単にその相続分を二分の一に上げるというふうなことももちろん検討の課題でございますが、もう少しきめの細かい、たとえばただいま論議されておりましたような住宅の問題もございますし、それから何といいましても生活をあれしていくための金の問題もあるわけでございまして、そういったきめ細かい相続関係をやはり法律的に確保しなければならないというふうなことで相当具体的な問題の検討に入っております。  それからもう一つお挙げになりました寄与分の問題でございますが、これは率直に申し上げまして、現行制度はもちろん、将来の問題としても、この寄与分の算定、裁定をする機関といたしましては家庭裁判所ということにならざるを得ないわけでございます。果たして現在の家庭裁判所の機能でもって私どもが庶幾しておると申しますか、本当の実態に即したような寄与分の関係が適切にしかも迅速に処理されるかどうかという問題が一つ施行の問題として大きな問題があろうかと思うのであります。ここのところが充実いたしますれば、これは当然ケース・バイ・ケースでやっていただくことでございますので、基本的な問題は解決するのでございますが、この点につきまして最高裁の家庭局ともいろいろ御相談申し上げ、そして東京家庭裁判所裁判官にも実は身分法の小委員会にも大幅に委員、幹事として入っていただきまして、その問題を検討していただいておるということなのでございます。見通しとしまして、まあできるだけ早く、いいことは早いにこしたことはないわけでございますが、ちょっと問題が拙速というわけにもまいらぬことでございますので、ただいまのところ、いつまでに成案ができるかということは、ちょっと私としても責任を持ってお答えしかねるのでございますが、率直に申しまして、従来の身分法小委員会準備会における議論というのは、どうしても事柄が大げさに申しますれば人生観、世界観の問題につながることでございますので、そういった理念的な議論がむしろ多かったことで今日までまだ成案を得てないというふうな傾向にあったことは否定できないと思うのでございますが、最近その点もいろいろお願い申し上げまして、もっと現実的な具体的な議論に入っていただいておりまして、相当テンポ早く成案が得られるのではなかろうかというふうに期待いたしております。
  84. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、時間もございませんので、私の質問はこれで終わりますけれども、ぜひとも、いまのお話にもありましたように、多くの婦人が期待していることでございますから、ぜひとも一日も早く、むろん民法のそれだけ改正したからよくなるというわけではございませんが、ともかくの要求として出しているわけでございますので、ぜひとも法務御当局においてもよろしく早い実現をお願いいたしたいと思います。  これで私の質問を終わります。
  85. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 午前の調査はこの程度にとどめます。  午後一時まで休憩いたします。    午後零時十一分休憩      —————・—————    午後一時十四分開会
  86. 田代富士男

    委員長田代富士男君) 休憩前に引き続き、検察及び裁判運営等に関する調査を進めます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  87. 原田立

    原田立君 私は登記所の問題についてまず最初にお伺いしたいと思うのでありますが、登記所の適正配置の問題に入る前に、過去十数年の慣行として行われてきた部外者応援の件でありますけれども、人手不足、あるいは仕事量の増大などから、ある程度はやむを得ず行われてきたというのが現状ではないかと思うのでありますが、一方では部外者の出入りからいろいろの問題点が数多く発生していることも事実であります。また、四十九年末には部外者応援の排除の問題も事実起きているわけでありますが、このような関係から、やはり基本的には部外者の応援というものは好ましくないというのが当然なのか、現在部外者応援の実態については一体どのようになっているのか、この点についてお伺いします。
  88. 香川保一

    政府委員香川保一君) いわゆる部外者応援、これはもう好ましくないといいますか、絶対やめるべきことであることは言うまでもないわけでございます。  ただ、登記所事務量に比較いたしまして、特に大登記所におきましては、施設の面あるいは人員の面でなかなか事務処理を適正迅速に処理するに対応するような状態に遺憾ながらなっていないわけでございまして、そういうところに謄抄本の申請者が急いで謄抄本を入手したいというふうなときに部外応援という形で謄抄本の謄写を手伝っていただくというふうな事態になってきておるわけであります。また、小さな登記所におきましても、土地改良登記とか土地区画整理登記、そういった一挙に何千件という事件がどっと市町村あるいは土地改良区あたりから、しかも小規模庁に持ち込まれるというふうなことで、これを早急に処理するのに、やはり人手不足ということから、さような市町村等の応援を得ておるというのが実態でございます。  私どもの調査では、本年は約千六百人ぐらい、つまり司法書士、土地家屋調査士からの応援が約九百人ぐらい、市町村土地改良区等からの応援が七百名ぐらい、約千六百名ぐらいの応援を得ておるのが実態ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。  実は、この問題は、もうおしかりを受けるまでもなく、絶対廃止すべき努力をしなければならぬわけでございまして、それにかえる方法としまして、これを廃止するための方策といたしまして、何よりも増員に年々努力しておるところでありますが、御承知の諸情勢のもとで増員措置が非常に厳しいということ、したがって、それにかわる処置といたしまして、賃金職員でもって部外応援を得ている部門の仕事をやらせるということ、あるいは部外の適切な団体に委託いたしましてその手で謄抄本の謄写事務だけやっていただくというふうなことに切りかえまして、徐々に部外応援を排除してまいっておるわけであります。昨年とことしの部外応援の実態は約百五十名から二百名近く排除できてきておるものと考えておるわけであります。いま試みておるそういう部外委託というふうな形での増員にかわる措置が適正に行われる自信がつきますれば、これを大幅に導入いたしまして、部外応援を断ち切りたい、かように考えておるわけでございますが、何分にも予算措置が前提になりますので、いましばらく御猶予願いたいということでございます。
  89. 原田立

    原田立君 法務省としては、前々から、望ましいことではないので改善するよう指導をしてきているということでありますけれども、また、好ましくないというふうに感じておられるようでありますが、いまもことしの実態のことをちょっと触れましたけれども、今後のずっと見通しですね、部外者応援体制改善、それはどのように行っていくのか、人員の面でも増員の必要があるのは認めるけれども、非常に厳しいんだと一種の弁解じみたお話だけでは改善にはならないと思うのです。その改善はどのように行っていくか、あるいは今後の見通しについてどうか、この点はどうですか。
  90. 香川保一

    政府委員香川保一君) ただいま部外応援の絶滅も含めまして法務局の整備ということで総合計画を検討中でございますが、それができ上がりますれば、それにのっとって対処したいと考えておるわけでありますが、今日の段階で申し上げますれば、率直に申し上げまして、千六百名ばかりの部外応援を断ち切るために、直ちにそれに見合う増員措置を求めること自体が、これは言うべくしてきわめて困難なことだと思うのであります。純増が、御承知のとおり、本年からも定員削減という大方針が打ち出されておる厳しい情勢下でございますので、増員と申しましてもなかなか三けた台の増員が実現するのも容易ならざる事態だというふうに思うわけでございまして、したがって、部外応援によって助けていただいておる仕事の実態が、先ほど申し上げましたように、複写機を使って原本から謄写するという作業が大部分でございますので、このような仕事は何も法務事務官の手を煩わしてやらなければならぬわけでもないと思うのでありまして、むしろ、いろいろの方法で、さっき申しましたような部外委託というのも一つの方法でございましょうし、あるいは繁忙時期だけパートタイム的に賃金職員を雇い入れてやるということも一つの方法でございましょうし、さような方法で部外応援の排除を図るのが実現可能性のある妥当な処置ではなかろうか、かようなことでいま申しましたような賃金予算、あるいは部外委託による委託経費の予算要求をいたしておりまして、年々相当額の増額をされておるわけでございます。
  91. 原田立

    原田立君 では、登記所の統廃合の問題についてお伺いしますが、登記所の統廃合は、大臣の諮問機関である民事行政審議会に諮問し、その答申に基づいて昭和四十六年度から五カ年計画で進められたもので、本年三月で完了したわけでありますが、五カ年計画とその結果については、一体どんなふうな成果になっておるのか、その点はいかがですか。
  92. 香川保一

    政府委員香川保一君) いまお挙げになりました民事行政審議会の答申におきまして、かかる基準に合致する登記所は統合廃止すべきだという答申になっておるわけでありますが、その基準に照らして統廃合相当の登記所を選びますと、約五百五、六十になろうかと思うのであります。しかし、その答申を得た時点におきましてはなるほど事務量としても一人庁程度しかないというふうな登記所でありましても、将来のいろいろのその地域の発展を考えますと、相当登記事件がふえてくる可能性があるというふうなところもあるわけでございまして、そういうふうな将来の事務量の増大も見込みましていろいろ選別いたしまして、約五百庁ばかり一応予定いたしまして五カ年の統廃合の実施を推進してまいったわけであります。その結果、五カ年間におきまして統合ができましたのが全国で三百三十九庁でございます。
  93. 原田立

    原田立君 三百三十九庁の統廃合が行われたと。  ところで、何か話によりますと、さらに三年延長して行うということでありますが、これはただいまお話のあった五百五十ぐらいの目標のうちまだ三百三十九庁しかできなかったと、その後の三年間延長してそれをやろうと、こうするのか、それとも、ほかに何かやろうとするのか。次の延長する三年間ではどのぐらいの統廃合をやろうとなさっているのか、その点はいかがですか。
  94. 香川保一

    政府委員香川保一君) 当初予定いたしました予定庁の統合、これは地元の御協力、御理解を得て実施してまいったわけでございますが、その間にいろいろ私どもといたしましても反省もし、再検討もしてまいったわけでございますが、しかし、そのような経緯を踏まえましても、先ほど申しました予定庁のうちの三百三十九を引いた残りの百五十ばかりの出張所の中には、客観的に見まして、しかも将来を展望いたしましても、どうしても存置するのが適当でないというふうなものがあるわけでございまして、しかも、地元の絶大な御協力によりまして統合いたしましたのと比較いたしまして地域によっては相当アンバランスを生じておるわけでありまして、まあ言葉は悪うございますけれども、なかなか地元の御協力、御理解が得られないで、いわば、まあ表現は悪うございますが、ごね得的な形で統合が今日まで実施されていないところもあるわけでありまして、これをそのまま放置することはいかにも適正でないわけでございますので、さような積み残しの中からさらに私どもも再検討いたしまして、約百庁ばかりを今後三カ年間実施したいと、かような考えでおるわけでございます。
  95. 原田立

    原田立君 約百庁ほどやりたいというようなことでありますが、三カ年延長したという基本的理由は、五カ年計画中では無理であるが、若干の時期はかかるけれども統廃合可能な、いわゆる五カ年間の落ちこぼれと言ったんじゃちょっと言葉がおかしいですけれども、そういうような意味合いで話し合いのできているところですね、それをその三年間で補おうという方向で考えているのだろうと思うのでありますが、この三カ年計画でもさらに強力に推進していこうという場合に、無理を生じさせてやるようなことがあってはならないと思うのですね。一人庁、二人庁、いろいろと法務省としてはお考えがおありだろうとは思いますけれども、やはり長い間のその土地土地における歴史的経過というものもあって存置しておいてもらいたいという声が強いのを、一人庁だから、前に計画したところだから、それはできなかったからやるんだとかというようなことで強行的にやるようなことがあってはならないのじゃないかと思うのです。そこら辺、再度お答え願いたいと思います。
  96. 香川保一

    政府委員香川保一君) 従来もさようであったわけでありますが、今後の三カ年計画におきましても、もちろんできるだけ地元にお願いいたしましてその御理解と御協力のもとで実施してまいるという基本的な方針には全く変わりはないわけであります。  市町村におきましても、長年施設の面等におきましてもいろいろ御協力を得て登記所がいわばかわいがっていただいたわけでございまして、地元におきましても、いろいろ理屈は抜きにした感情的なお気持ちもおありになることは十分わかるわけであります。それもまあできるだけ統廃合しなければならない必要性等々をいろいろお願い申し上げまして、その御理解のもとに進めてまいるということにいたしたいわけでございますが、しかし、実際問題といたしまして、いかようにお願い申し上げましてももう絶対まかりならぬという、いわばだれが考えてもここは統廃合しかるべき町であるにもかかわらず、うんと言っていただけない以上は絶対できないということもいかがかと思うのでありまして、その辺のところはなお努力いたしまして理解を示していただくようにはいたしたいと考えますけれども、うんと言っていただかなければ絶対やらぬというふうな性質のものでは私はなかろうかと思うのでありまして、十分御理解をいただくように努力はする、その力は尽くす必要はあろうかということは変わりございません。
  97. 原田立

    原田立君 先ほどの局長のお話の中にも全国的にかなりのアンバランスが生じているというふうなお話がありましたけれども、実態は一体どんなふうなぐあいになっているのか、その点はどうですか。
  98. 香川保一

    政府委員香川保一君) 細かな具体的な町はちょっと御勘弁願いたいと思うのでありますが、ある県によりましては、よその実施した県に比べてはるかに規模の小さく、しかも事件数のきわめて少ない登記所、これは約三十四のうち五つしかないわけでございますが、その五つの出張所が全部統合ができていないというふうな県もございます。それからある郡なら郡の中で、地元の非常な御協力を得て実施ができた、それよりもさらに小規模でしかも地元住民には何ら交通上不便もないようなところが地元の強硬な反対でまだ実施ができていないというふうなところがあるわけでございまして、さような状況を先ほど申しましたようにアンバランスが生じているというふうに申し上げたわけでございます。
  99. 原田立

    原田立君 配置の適正化の上と称し基準に当てはまるとして強行をするのはいけないと思うんですよ。また、いまのお話の中で、地元の協力によって行うことには変わりはない、こういうお話です。これは当然のことだと思うのです。だけれども、その一面、ごね得とか、だれが考えても本当はうんと言っていいようなところが言ってくれないとか、そういうようなお話がありますと、何かお伺いしていて前の話を否定なさるというふうにしか聞こえないわけなんです。いろいろな地域社会の関係から統廃合はやらないでほしい、こういう強い意見が地元からある、これは十分尊重してやっていってもらいたいと思います。  一方では仕事量の増大から利用者に多大な不便をかけているのが実態だろうと思うのでありますが、職員定員の関係から思うように増員できない、このような関係から、最初に触れた部外者の出入りというような問題が発生するのだろうと思うのでありますが、このような場合の対策として仕事量に適応した職員確保については先ほども非常に厳しい状況だというようなお話があったけれども、それだけでは現場の実際を解消していくことにはなりませんので、どのように対処していくつもりでおられるのか、これは局長の答弁の後に、大臣からも職員確保という問題についてどうお考えになっているのか、御決意のほどもお伺いしたいと思います。
  100. 香川保一

    政府委員香川保一君) 来年度予算要求におきましても、法務局職員の約千四百名ばかりの増員要求をいたしておるわけであります。これはここ数年毎年繰り返しておるわけでございますけれども、昨年は、昨年と申しますか、本年の増員の認められたのは純増が百二十名でございます。二百名を超すことがなかなか過去の実績から見まして容易でない状況でございますが、来年度はできるだけ努力いたしましてさらに大幅な増員確保に努めたい、かように考えておるわけでございます。
  101. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 増員についてはおととしも去年も自分なりに一生懸命にやったつもりでおりますが、なかなかうまくいきませんで、非力を恥じているような次第です。今後一生懸命にやります。
  102. 原田立

    原田立君 今後一生懸命やりますということぐらいしか言えないでしょう、実際問題。  それはそれとして、審議会から適正配置の基準が示されたからといってこの基準に合うものは統廃合するというような考えは間違いだと、こう私は思うのです。計画を進めるに当たっては、やはり第一義的に考えなければならない点は、先ほども何度も指摘しているように、地域住民の利便ということであろうと思うのであります。やはり、地域住民と十分なる話し合いのもとに進める必要があるし、地元とのトラブルなどは決してあってはならない、こういうふうに思うのでありますが、これはもう前々から言われている基本問題でありますけれども、この基本においては変わりはないのかどうか、その点はいかがですか。
  103. 香川保一

    政府委員香川保一君) もちろん登記所というところは国民に対するサービス機関でございますので、いまおっしゃるような基本的な理念には全く変わりはないわけでございます。
  104. 原田立

    原田立君 そうすると、基準にかなったからといってごり押しをするようなことはしない、どこまでも住民の合意にのっとって行っていく、こういうふうに理解していいですか。
  105. 香川保一

    政府委員香川保一君) 先ほども申し上げましたように、基準をそのまま当てはめますと、最小限六百ぐらいの出張所が該当するわけでございまして、まあ考えようによっては、たとえばある場所から都内の登記所まで行くのに六十分というふうな汽車の単なる時間だけ考えますともっともっとふえるわけでございまして、しかし、汽車がそこで一日に十本しか通っていないとか五本しか通っていないというような差があるわけでございますから、さような点もいろいろ勘案して、本来基準には合致しているけれども、これは先ほど申しましたようなサービス官庁の配置としては、地元に若干でも御不便かけるというようなところは全部除外してすでにおるわけでございまして、そういうふるいにかけまして客観的に見てだれが考えても統合しかるべきだろうというふうにお考え願えるような庁をむしろ対象にして統合を推進してまいってきておるわけでございます。
  106. 原田立

    原田立君 その姿勢で行くということですね。
  107. 香川保一

    政府委員香川保一君) そういうような考えでおります。
  108. 原田立

    原田立君 法務省では、事務量増加から、利用者へのサービス向上のために電算化の研究を数年前から進めているとお伺いしておりますけれども、その点はどのくらいの状況にまでなっておりますか。
  109. 香川保一

    政府委員香川保一君) 登記事務の処理につきましても、機械を一番フルに活用したものとしては、省力化等の観点から考えましても、電算化することが望ましいということは言えると思うのでありますが、ただ、技術的な一つの問題点といたしまして、いま登記簿に記載されておる文字は、地名、人名は漢字が非常に多いわけでございます。この漢字を果たして電算自身の入力能力があるかどうかという点が非常に問題でございまして、現在その点の検討をいたしておるような段階でございまして、その辺のところが、技術的な進歩とも相まって、いまのところ果たして大丈夫かどうかの自信は持っておりませんし、しかも、いま問題になりましたように全国に千百余りの小規模の出張所が点在しているわけでございまして、そういう山間僻地の出張所をも含めましての電算化とというふうなことが非常に困難であることは御理解いただけると思うのであります。まあ、あれやこれや考えますと、私の感じといたしましては、確かに将来の方向として電算化を今日から検討してまいらなければならぬと思いますけれども、五年や十年で電算化が全国的に完了するというふうなことは金の面から申しましてもとてもむずかしいことではなかろうかというふうに考えております。
  110. 原田立

    原田立君 局長ね、電算化を促進しろという意味で私はお聞きしているのじゃないですから、その点は間違わないようにしてください。  確かに、事務量は、登記の取扱量は乙号の場合、十年前の約二・八倍に達していることのようでありますけれども、都市部においては登記の申請から発行まで四日も五日もかかっている。これではサービスの低下を招くのは当然であり、何らかの対策が望まれるというわけでありますが、コンピューター導入の見通しはいまなかなかむずかしい云々というふうなお話がありましたけれども、その前に、プライバシーを侵害するとか、あるいは国家権力の介入の問題であるとかというようないろんな議論もあるわけです。だから、それらのことを考えて、また業界の意見等も聞き入れながら計画というものは考える。法務省単独でぱっぱっと決めて進めるというのではなしに、やっぱり業界の意見なんかもよく聞きながら、もちろん末端の役所の意見も当然聞きながら進めていく、こうしなければならないと思うのですが、この点はどうですか。
  111. 香川保一

    政府委員香川保一君) 現在でも、これが三年あるいは五年先に全国的にコンピューター化されてしまうんだというふうな誤解に基づきまして、いろいろ関係方面にも動揺があるように聞いておるわけでございますので、さような誤解に基づく動揺のないように私どもの現在進めておる実験過程というものを公表いたしまして、啓蒙と申しますか、御理解をいただくように努力いたしておるわけでございます。  ただ、プライバシーの侵害になるとかあるいは国家権力の介入じゃないかというふうな御批判があることは確かでございますけれども、コンピューター化いたしましても現在の登記簿の編成方式に変わりがあるわけでないわけでありまして、具体的に申しますれば、現在は不動産ごとに登記簿はできておるわけでありまして、これをいわゆる人的編成主義と申しますか、所有者ごとに登記簿を編成をし直すなんということは私どもとしては考えてもおりませんし、それはむしろ制度としては逆行することでございますので、そういうふうなことから申しまして、プライバシーの侵害とかあるいは国家権力の介入だという御批判の真の意味はどういうところをとらえておっしゃるのか、私にはちょっと理解はできないのでありますが、そういう問題も含めまして関係方面には啓蒙に努めておるところでございます。
  112. 原田立

    原田立君 いろいろと資料をもって主張している面の意見もあるわけでありますけれども、局長が、プライバシーの侵害とか国家権力の介入だなんてどうも考えられないと、悪い言葉で言えばそらっとぼけられるような御返事では、ちょっとこれは問題だと思うのですね。こういう意見があることをやっぱりしっかり踏んまえて物を考える、こうしてもらいたいと思うのですよ。どうも理解しがたい、理解しがたいと言って、ごり押しのようになさるのじゃないかという不安を強く持つのですけれども、どうですか。
  113. 香川保一

    政府委員香川保一君) 理解を深めていただく関係方面と申し上げるのは、司法書士等が一番最たるものだと思うのでありますが、かような方たちの仕事に重大な変更が生じまして、そのためにそういった仕事に非常に支障を来たすとか、あるいは彼らが十分な仕事ができなくなるような事態になるということでないことを、つまり現在の事務の扱いとさほど変わりはないというふうなことをまず知っていただくことが先決だと思うのであります。ただ、この点もコンピューターを導入していたしますと、現在の予想される方式としてコンピューターに適合するようなタイプで申請書をつくっていただかなきゃならぬという点が現在の手書きと変わってくる一番大きな点だろうと思うのでありまして、かようなところもございますので、将来の問題ではございますが、さような点については当然私どもといたしても十分配慮はするということは申し上げてあるわけでございます。その上に立ちまして、そういった理解が十分得られますれば、私はいま御指摘のようなプライバシーの侵害というふうな問題はあるいは素直に理解していただけるのじゃないか。人的編成主義に切りかえるというふうなことは毛頭私ども考えていないのでございますけれども、コンピューター化するということはつまり人的編成主義になることだというふうに言われている向きもあるそうでございます。これはむしろコンピューター化する場合に技術的に申しましても人的編成主義にすればますます複雑になるわけでございまして、登記制度の歴史から申しまして、そういうコンピューターでなくても、現在のようなやり方でも、世界各国の進歩してきたのは人的編成主義から物的編成主義に移行してきたわけでございますから、コンピューター化することによってまたもとの人的編成主義に戻るというふうなことはとうてい考えられないことだと思うのでありますけれども、人的編成主義になると、だれだれの持っている不動産といえば、その不動産の全財産が一遍に明らかになってしまうというふうなことでプライバシーの侵害と、こういうふうにおっしゃるのだろうと思うのでありますが、そういう人的編成主義に変えることは毛頭考えていないわけでありまして、この辺のところも口をすっぱくして御理解をいただくように申し上げておるわけなんであります。  国家権力の介入ということも、いかなる点が国家権力の介入なのか、その辺が私にはわからないわけでございまして、それをさらによくそうでないことを理解させるようにしろということでございますが、そういうことを言われる向きに対しましては、まずどういう点が具体的に国家権力の介入ということになるのかひとつお示し願いたいというふうにお願いしているようなことなんでございまして、その辺の事情もひとつ御賢察願いたいと思うのであります。
  114. 原田立

    原田立君 せっかく努力していただきたいと思います。  いまもお話がありましたが、司法書士の問題についてでありますが、若干お伺いしたいと思いますが、前々から言われている国家試験制度移行についてでありますけれども、制度移行に対しては・法務省内部にかなり強い反対があるやに聞いているわけでありますけれども、その点は一体どんなふうな実態になっているのか。
  115. 香川保一

    政府委員香川保一君) 司法書士の資格を付与するについて国家試験制度を導入するという問題は、衆議院の法務委員会、たしか昭和四十二年だと思いますが、におきましても決議されておることでございますし、司法書士連合会を中心としましてかねてから要望の非常に強い点であります。ただ、法務省部内に反対意見があると、それはどういうことかということでございますが、反対を申し上げておったのはほかならぬ私でございます。これは、私は趣旨におきましては決して反対ということではないのでありますけれども、単にペーパーワークによる国家試験を導入するだけにとどまるならば、将来の司法書士制度の発展を考えれば不十分でなかろうかと、それだけではやはり解決するというのはむしろ将来を考えれば危惧されるのじゃなかろうかというふうな意味で、国家試験に切りかえればそれで万事終われりという考え方は少し再検討する必要があるのじゃなかろうかと、かような意味で反対というふうに受け取られておることだろうと思うのであります。ほかには関係の方でそういうような反対というふうな声はございません。私どもといたしましては、何しろ国民にかわって裁判所検察庁法務局にいろいろの法律手続をすることが業である司法書士でございますので、できるだけ国民の期待に十分沿い得るようなりっぱな司法書士が育成される、そういう基盤として法制を考えなければならぬわけでございますので、さような将来も含めまして十分国民の期待にこたえ得るような基礎的な地盤をつくるという意味で司法書士法の改正を検討いたしておるわけであります。決して絶対にやらないというふうな意味での反対ではないわけでございます。現在、司法書士会の連合会と私どもの担当課におきまして、具体的にどのような内容にするかという具体的な話を詰めておる段階でございまして、附帯決議もあり、要望の強い点でございますので、国会におきましてもしばしばできるだけ早くやれというふうな御意見でもございますので、できるだけ早く詰めまして、私の見込みといたしましては、今度の通常国会にはちょっと間に合いかねると思いますけれども、来年末からの通常国会にはぜひ提案したいということで鋭意作業を進めておるところでございます。
  116. 原田立

    原田立君 前にもこの問題が議論になったときに、国家試験をもしやると、合格した人はみんな都会に集中してしまうであろうと。だから、国家試験そのものを否定なさるというようなことを聞いたことがあります。というのは、都市に集中してしまう、要するに田舎にいなくなってしまう。だから、いまのような任命制みたいなものがいいんだと。だから、国家試験などはちょっと考えものだというような表話か裏話か知りませんけれども、そんなような話を聞いたことが私はあるのですけれども、そんなようなことで国家試験移行については反対だというような、そんなところじゃないんでしょうね、香川局長も。
  117. 香川保一

    政府委員香川保一君) それはもう当然でございまして、国家試験にした場合に都市に司法書士が集中して田舎にいなくなるというふうなことは考えられるわけでございますけれども、それはやはり原則は国家試験にしながら、さような司法書士のいないところに配置する方法は別途考えれば済むことでございますから、さようなことになるからといって国家試験そのものに反対だというふうな考えは持っておりません。
  118. 原田立

    原田立君 司法書士の報酬の件についてお伺いしたいのでありますけれども、報酬改定についてはいろいろな意見もあるようでありますが、法務当局としては、今後のことでどのような見解を持っておられるか。また、司法書士の報酬についてはどのような位置づけをしておられるのか。いわゆる公共料金的なものとして判断なさっておられるのか。その点はいかがですか。
  119. 香川保一

    政府委員香川保一君) 司法書士の報酬は、最近改定されまして、最近と申しますのは五十年の六月一日からか、あるいは八月一日からだったか、ちょっとその記憶ははっきりいたしませんが、去年改定されたばかりでございます。その後、司法書士の、何と言いますか、絶対収入額と申しますか、さような点が従来に比べて低くなってきておるということは間接に聞いておるわけでありまして、これは率直に申し上げますと、現在、国家試験に類似したような全国統一的な試験を選考試験としてやっておるわけでありまして、年々相当数の新しい司法書士が生まれておるわけであります。そう言っては悪うございますけれども、寿命も伸びまして、自然淘汰がなかなかない、絶対数が常にふくれ上がっていっておるというふうなことで、総体としての司法書士の個々人の収入が相当減ってきておるというふうに聞いております。事件数から見ますと、横ばいないしはむしろふえておるわけでございますから、さような関係は主たる原因は人数が相当ふえておるということにあるだろうと思うのであります。さようなことも踏まえまして、ただいま、司法書士会の連合会におきまして、実態調査とともに今後の報酬改定をどのようにするかということを検討中であるというふうに聞いておるわけでありまして、具体的にこういう点は改定してもらいたいというふうな要望はまだ参っておりません。  もともと、この司法書士の報酬額は、法務大臣の認可になっておるわけであります。これは司法書士法というものをつくりまして、一つの業法として、たとえば登記所に申請書を出す場合には司法書士以外の人を代理人として申請書の作成を依頼してはならぬというふうに、いわば口は悪うございますけれども独占的なそういう業法になっておるわけであります。したがって、その報酬、つまりそれは依頼人たる国民が払うわけでございますから、さような意味から間接的にその報酬額いかんということは国民の利害に相当関係があることだと、かような趣旨から、いま申しましたように、報酬額は法務大臣の認可ということに法律がなっておるということでございます。そういうことを考えますと、いわゆる狭義の公共料金には該当いたしませんけれども、公共的な性格を有するものだということは言えようかと思うわけでありまして、したがいまして、司法書士の報酬額を改定いたしました昨年におきましても、やはり公共料金に準じた扱いということで、物価等の関係も踏まえまして関係各省に協議をして決めるというふうなことにいたしております。
  120. 原田立

    原田立君 登録免許税の総額についてお伺いしたいのでありますけれども、登録免許税のうち不動産の登記及び商業登記の登録免許税の年度別徴収額が昭和四十六年ごろからわかったならば教えてください。
  121. 香川保一

    政府委員香川保一君) 過去五カ年間の登録免許税、登記所で収納いたしました免許税額を申し上げますと、昭和四十六年は千六百二十六億円でございます。端数は切り捨てて申し上げます。四十七年は二千二百二十一億円、四十八年は二千七百三十五億円、四十九年は二千二百三十二億円、五十年が二千五百三十九億円。この中で四十八年が二千七百三十五億円ということで最も額が大きいわけでありますが、この年がいままでの登記事件が一番多かったピーク時でございまして、翌年四十九年は少し減りまして、五十年にまた上向きになってきておると、こういう状況でございます。
  122. 原田立

    原田立君 ところで、大蔵省では五十二年度予算組みの中で間接税の見直し改正を検討していると、こう聞いております。その中でこの登録免許税も対象にしているやに聞いておるのであります。この登録免許税の改正に対して法務省の見解は一体どうなのか。あるいはまた、実際の業務を取り扱う関係業界の意見については十分考慮する必要があるのは当然であろうと思うのでありますが、この点に関してお伺いしたい。二点です。
  123. 香川保一

    政府委員香川保一君) 登録免許税法は大蔵省の所管の法律でございますが、過去もそうでありましたように、この改正については関係各省に協議がされるわけでございますが、実は登記関係するこの登録免許税の関係部分は、昭和四十二年に全面改正されましてから全く改正されていないわけであります。そのようなことから、登記所の窓口から見まして、免許税の額が相当かどうかという一つの感触もあろうかと思うのでありますが、昨年から、各法務局、地方法務局に対しまして、登録免許税法の登記関係する部分の内容について意見があるかどうか、あるいはそれに関連するいろいろの徴収方法等についても意見があれば申し出てもらいたいというふうに連絡してあるわけでございまして、この中には、もちろん役所の方の窓口から見たそういう感覚と、それから申請人の代理人としてそれぞれの仕事をしておられる司法書士等のいわば国民の代弁者的な感覚もあるわけでございまして、さような関係方面の意見も踏まえて法務局から意見を聴取することにしておるわけであります。これはいまお話がありました大蔵省におきまして一般的に間接税を再検討するということの一環ではもちろんないわけでございまして、私ども独自にやっておることなんでございますが、恐らくは税制調査会におきましてこの問題が取り上げられました場合には私どもに当然協議があるわけでございますから、その場合には、いま申しましたような地方の出先機関、司法書士等も含めました意見というものを踏まえて対処したいと、かように考えておるわけでございます。
  124. 原田立

    原田立君 戸籍法の改正についてお伺いしたいのでありますが、去る十月二日の新聞に報道されておるわけでありますが、この法改正は前七十七国会で審議を行ったのでありますが、これが十二月一日からの施行に当たり、第十条及び第十二条の二項で定める法務省令の内容が、七十七国会のときには法務省令で定めるということであったのでその内容にまでは至っていなかったわけでありますが、もう煮詰まってきているのではないかと思うのでありますが、発表できる範囲内をお聞かせ願いたい。
  125. 香川保一

    政府委員香川保一君) 戸籍法の委任によります省令改正の点で、まず第一は戸籍法の十条二項の法務省令の内容でございますが、現在いろいろの市町村等の御意見も十分承りまして協議をしながらこの内容を検討している過程でございますので、確定的な案としては申し上げかねるわけでございますが、現在私どもで考えております案を御披露いたしますと、十条二項の法務省令の中身は、まず第一に、戸籍に記載されている者またはその配偶者、直系尊属もしくは直系卑属が請求する場合、この場合には当然請求の事由を明らかにしなくてもいい。それからその二番目といたしまして、国もしくは地方公共団体の職員または——まあ簡単に申し上げますと公法人の職員が職務上請求する場合。三番目は、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士または行政書士が職務上請求する場合。それから第四番目に、市町村長が相当と認める場合。こういうのが十条第二項の省令の内容でございます。  それから十二条の二の第一項の「法務省令で定める者」といいますのは、先ほど申し上げました十条二項の二号に入っております公法人の職員と同じその範囲の職員がまずこれに該当すると。それから二番目は、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、または行政書士というのがこれに該当するようにしてはどうかという案になっております。
  126. 原田立

    原田立君 十月二日最高裁第一小法廷において北九州市で起きた戸籍謄本の交付の問題で、特別抗告に対する却下決定がなされた件についてでありますが、この問題に関する当局の見解と、十二月一日施行の改正法との関係について、この点はいかがですか。
  127. 香川保一

    政府委員香川保一君) お示しの最高裁の判決は、高等裁判所の付しました決定に対しての特別抗告に対する最高裁の判断でございまして、これは御承知のとおり民事訴訟法の四百九条の二でございますか、特別抗告の許される規定があるわけであります。それによりますと、憲法違反を理由にする場合だけに限られておるわけでございます。したがって、今回の事件で特別抗告をしましたのに対しまして、最高裁判所は、これはいろいろ言っているけれども、憲法違反を理由とするものでないと。単に二審の高等裁判所の示した法令違背を主張するだけのものだから、したがって、特別抗告の要件に該当しないということで、いわば門前払いをした判決——決定でございます。したがって、最高裁としましては、中身についての実質的な判断は何らしていないわけであります。  さようなことでございますが、そのもとになっております高等裁判所の見解は、簡単に申し上げますれば、たとえば本人の承諾書がなければ一切謄本は渡さぬというふうな画一的なことにしておるのは戸籍法違反だと、こういうふうな見解に尽きるかと思うのでありまして、これはまことに法律論としてはそのとおりだと思うのであります。さようなことを踏まえまして実際の市町村の実情に合ったそういった戸籍公開の何らかの制限ができる道を開こうというのがこの前御審議可決していただきました民法等の一部を改正する法律の中の戸籍法の改正部分でございまして、したがって、先ほど御審議いただきましたような経過も踏まえまして今回の省令改正にも対処しておるわけでございますが、ケースごとに審査しないで、全く画一的形式的に窓口処理がされるということはやはり市町村の行政のあり方としても許されないことではなかろうかというふうに思うのであります。ただしかし、それならばケースごとに市町村において市町村長が判断して処理するということになるわけでございますけれども、実際問題としてこれは窓口事務の処理としては相当むずかしいことだというふうなことが十分予想されるわけであります。その辺のところを踏まえまして、適切妥当なといいますか処理をしてもらうためにどうしたらいいかということで、いろいろ市町村側の御意見も承って、省令でできるだけそういう中身に沿うようにしていきたいというふうなことなんでございますけれども、いずれにいたしましても、省令の規制の仕方も市町村のそれぞれの事情によって法の趣旨をいわば実現する弾力的な運用ができるように配慮しなければならぬというふうに考えておるわけでありまして、十分それがいくかどうか、実施してみなければわからぬ問題でもございますけれども、少なくとも法令上さような適切な弾力的処理ができないような、じゃまになるようなことはむしろ絶対避けなければならぬわけでありまして、むしろそういう形がうまくいくようにできるだけ省令の内容に盛り込みたいというふうに考えておるわけでございます。
  128. 原田立

    原田立君 地域によっては、市民の人権を守るという立場から、地方団体でみずから自主的に戸籍法の公開制限に関する取り扱い要領というものを実施しているところもあるようでありますが、この取り扱い要領も地域ごとで統一されているものではありません。この実態をどのように把握なさっておられるのかというのが一つ。また、このように地域で規制している取り扱い要領と改正法との関係についてどう対処なさるのか。また、地域差が生ずることと思うのはいま申し上げたとおりでありますけれども、そういうことでいいというふうに判断なさるのかどうか、この点はいかがですか。
  129. 香川保一

    政府委員香川保一君) 私どもの知り得ている限りで申しますと、いまお説のような戸籍公開制限要綱あるいは処理要領というふうなものを内部的に決めておられる市町村の数は約三百九十ばかりあると思います。これは改正されました新しい戸籍法のもとでのことではないのでありまして、旧戸籍法のときにおけるまあ市町村独自のやり方であるわけでありますが、したがいまして、その決めておられる要領の中身を逐次検討いたしますと千差万別でありますけれども、大体大まかに申し上げまして、戸籍に記載されている人の承諾書があれば無条件に出す、承諾書がなければ一切出さないというふうなところ、そういうふうに決めておられるところもございますが、このような場合に、先ほど申し上げましたような裁判例でそれはいかぬというふうなことになるわけなんでございます。しかし、そういう承諾書がなくとも、請求する人が絶対これは不当な目的に使用しないという誓約書を市町村に出した場合には、本人の承諾書がなくても出して交付を認めるというふうなところもあるわけでありまして、まあそういったのが大筋でございますが、そのほか細かくいろいろ決めておられるのは千差万別でございます。しかし、その趣旨は、結局、その戸籍公開制度を悪用してと申しますか乱用して他人のプライバシーを侵害するとかあるいは人権上問題になるようなことに使用されるということを防止しようという熱意からさような要領をつくって運用しておられるわけであります。したがいまして、新法のもとにおきましてもその趣旨には変わりはないはずでございますが、しかし、先ほど申し上げましたように、最高裁まで行ったのは今回の事件だけでございますが、そのほかに各高裁でいま申しましたような画一的な扱いは違法だという裁判所の判断が示されておりまして、かような判断は新法の公開制限についてもそのまま当てはまってしかるべき問題でございますので、それを踏まえて画一的な処理がされないでしかも十分人権上遺憾のないような処理がされるという方向でこの要領をそれぞれ改定していただくようなことをお願いしたいというふうに思っておるわけでございます。
  130. 原田立

    原田立君 時間がないのでこれで最後にしますが、武若享北九州市総務局長の話として新聞に載っている記事でありますけれども、「市のとってきた措置市民の基本的人権を守るためには絶対必要なものと考える。」「改正された戸籍法は十二月一日に施行され、施行規則もそれまでに決まるが、北九州市のとってきた措置が認められるようこれまでも働きかけており、規則に明文化してもらえるものと期待している。今後も同じようなケースでは戸籍謄本は交付しない方針だ。」との話が載っておるわけでありますが、このような交付制限に対する当局の見解はどうなのか。また、このような市当局の姿勢を支持するのか、それとも何らかの行政指導を行うつもりでいるのか、その点はいかがですか。
  131. 香川保一

    政府委員香川保一君) 先ほども申し上げましたように、とにかく形式的に承諾書がなければ一切いかぬというふうな扱いは、これはやはり戸籍公開制度の必要性から考えましても行き過ぎだろうと思うのでありまして、裁判所においても違法というふうに多く認定されていることでございますので、その辺のところは改めていただくようにお願いしたいというふうに思っておりますが、しかし、実際問題としまして、先ほど申しましたような窓口事務の処理の仕方としてなかなかむつかしい問題もございますので、もう少し実際考えておられる人権擁護の見地からの窓口処理としてきめ細かくいろいろ規定していただいて、本当に必要で、不当な目的の全くない、そういうものまで戸籍の謄抄本が入手できないというふうなことのないようにしていきたいと思うのでありますが、さようなことから、先ほど省令の中身で申しました十条第二項の法務省令の最後の項に、市町村長において必要と認める場合というのを、これはきわめて包括的な委任でございまして、法律的には若干問題はあろうかと思いますけれども、そういうふうな包括的な、これから先のところは市町村長にお任かせするというふうなことにいたしまして、実際は市町村長のその地域それぞれの特殊性も十分考慮された諸条例を制定していただく、そういう余地を残しながら行き過ぎのないようにしていただくということを考えておるわけでございます。
  132. 橋本敦

    橋本敦君 きょう、私は、まず最初に、最近の暴力団の抗争激化の事件に関連をして、住民の生命安全、これを守るという立場で警察並びに法務当局に質問をさせていただきたいと、こう思っております。  いま私どもの住んでいる大阪が、無法の町大阪、そしてまた不法な暴力抗争を繰り返す大阪戦争、こういう言葉で呼ばれるほどきわめてひどい状態になっておりますが、それがまた千葉県にも飛び火をする、こういう状況になりまして、この暴力団の抗争をどうやって断ち切るかということは、わが国の政治構造にも絡む大きな政治的な問題として重視しなければならぬ、こういう状況になってきていると思います。そこで、まず第一に、具体的な警察当局の姿勢と、そして事件の事実関係、これを明確にすることから質問をさしていただきたいと思うのですが、昨年、大阪は、第一次大阪戦争と言われる暴力団の抗争激化事件ピストル乱射事件がありました。まず、これに対して捜査の結果どういう結末を警察はつけたか、そしてその結果、今後の取り締まり態様として昨年どういう方針をお立てになったか、まずこの点から明確にしていただきたいと思います。
  133. 平井寿一

    説明員平井寿一君) ただいま御質問の昨年におきます大阪抗争事件でございますが、特にいまおっしゃられましたのは、昨年夏から秋にかけまして大阪市内を中心といたしまして山口組系統の暴力団体と松田組系統の抗争事件が相次いだ問題であろうかと思います。この状況を御説明申し上げますと、昨年の七月二十六日に、松田組系統の組員が山口組系統の組員三人を、夜中でございますけれども、豊中市のスナックで拳銃を発射しまして三人を殺害した、一人に重傷を負わせた、こういう事件発生しております。これをきっかけに両組織の間での抗争事件が相次ぎまして、以後八月二十三日、八月二十四日、八月二十七日、八月三十日、九月二日、九月三日、それから最後はことしの一月三日でございますけれども、都合八回にわたる両団体組員同士抗争事件がございまして、この間におきまして、死者が先ほどの三人を含めまして四人、負傷者二人の被害を出しております。  これに対しまして、大阪府警を中心に近畿管区内の各警察が共同の警戒警備体制捜査体制を組みましてその検挙に努めたわけでございますが、この事件におきましては全部で百四十二人を検拳し、拳銃五十八丁を押収しております。特にこの抗争事件は非常に根深いものがございまして、大阪という暴力団にとっては非常に活動資金源の多いところで、なわ張り争いの絡むものだけに、事態は楽観を許さないものがございます。そういう意味で、さらにこれら抗争事件の継続ということが考えられましたので、以後も引き続き大阪府警、兵庫県警または周辺の県におきましても夜間の危険個所の警戒警備、それから何と申しましても抗争を起こした両団体に対する検挙の推進、また、こうした検挙活動に対する市民協力要望ということを中心にいままで対策を進めてまいったわけでございますが、その結果、しばらく鎮静状態が続いたものの、先ほどお話がございましたように、今回再び、この事件に関連するかどうかはまだはっきりしておりませんが、そういうものを背景とした新しい抗争事件が起きたということを非常に残念に思っております。
  134. 橋本敦

    橋本敦君 今回の事件もやはり山口組あるいは松田組の抗争だということば、十月三日の白昼の事件から推定される、これは明らかではありませんか。
  135. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 今回の抗争事件で殺害された被害者でございますが、これが松田組系統の団体の幹部でございます。先ほど申しましたような抗争事件の相次いでいるさなかに起こったということから、そういう見方が有力でございます。ただ、現在、犯人がまだはっきりしておりませんので、その解明結果によってはっきり判断してまいりたいと思っております。
  136. 橋本敦

    橋本敦君 いまもお話しのように、山口組と松田組糸の抗争という推定は有力なんですね。  そこで、いま答弁でおっしゃったように、昨年のときからこれは実に根深い大きな背景のある事件だというとらえ方を警察はしていた、それは正しいと思います。それで警戒体制をしいていたし、現にこの十月一日からは暴力犯罪取り締まりの特別月間に入っている、こういうことですね。その入った二日後の三日に白昼でまさに大阪のど真ん中ピストル乱射事件が起こり、四日未明そしてその日の夕刻というように相次いでいる。そして、振り返ってみれば、十月一日の直前の九月二十二日にも大阪の港区で暴力団によるピストルの銃撃戦が行われている。この九月二十二日の件は御存じですか。
  137. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 聞いております。
  138. 橋本敦

    橋本敦君 したがって、こういう状況を見ますと、市民の側からいたしますと、警察は一体どうやってくれるんだろうか、去年に続いてことしもだ、暴力取り締まりの特別月間だと言っているさなかにまたこの事件が起こった。本当に警察は大丈夫だろうか、おれたちの生命、安全を守ってくれるだろうか、こういう不安を市民が持つのはあたりまえです。  特に伺いますが、この三日の事件で殺害されたそれ以外に、乱射された弾がどの辺にまで被害を及ぼしているか、説明していただけますか。
  139. 平井寿一

    説明員平井寿一君) この三日の事件では、商店の、これは電機問屋だそうですけれども、買い物に入った暴力団員に対して数発拳銃が発射されましたが、その後犯人が逃走するに際しましてそれを追いかけました被害者側の暴力団組員によりましてそこから五十メートルぐらい離れた場所で拳銃が三、四回発射されております。それによりまして、私どもの方で聞いておりますのは、付近に駐車中の自動車と商店の窓ガラス三カ所にその流れ弾と見られる弾丸が命中しているという状況だそうでございます。
  140. 橋本敦

    橋本敦君 あの雑踏の中で本当によくぞ人に当たらなかった、市民が殺傷しなかったと本当に冷や汗をかく思いでございますね。ここで明らかなのは、平穏な町の昼間、暴力団が襲われたからといってすぐ反撃してピストルを乱射する、つまり暴力団は両方とも拳銃で常時武装して携帯しておるという事実がこれで明白なんです。だから、組員を見れば必ずピストルを携帯していると思えとまで言われるぐらいにピストルの携帯、銃による凶暴な抗争というものが激化しているという事実がある。これはきわめて重視しなければならない。私は、いま、市民の被害がなくて本当に幸いだったと、こう言いましたが、実際にいままでの抗争ではいろんな被害が起こっております。たとえば、ここにあります警察庁発行の四十九年警察白書ですね、これを拝見いたしますと、どれくらいの被害があったかといいますと、四十八年中に暴力団構成員によって殺害された者の数は百五十三人、このうち殺された暴力団は四十八人で、暴力団構成員以外の一般人が百五人、何と驚くなかれ六八・六%の市民暴力団抗争で暴力団の数の二倍以上の市民が犠牲になっているという統計が警察庁がまとめられた警察白書でも明らかになっている。これは本当にこの暴力団というものの無法と暴力を市民のために断じて許してはならぬということを物語っていると思うのですが、これは四十八年中の白書による記録である。そこで、五十年、五十一年に暴力団抗争に関連をして亡くなったり負傷をしたりした市民全国でどれくらいあるか、いま統計がお手元にあるならばお示し願いたいと思います。
  141. 平井寿一

    説明員平井寿一君) いまお示しの資料でございますけれども、これは四十八年中に暴力団によって殺害された市民の数、こういう統計で出しておるものだと思います。これは必ずしも抗争事件ではございませんので、大半は一般暴力団の飲酒上のけんか口論とか、そういう事件の死者が多いわけでございます。以後の統計は五十一年度はまだ出ておりませんが、五十年度の数字だけで申し上げますと、五十年度に暴力団によって殺害された人数が百二十五人年間にございまして、このうち六十三人が暴力団員であり、六十二人が暴力団組織以外の一般の人間であると、こういう数字でございます。
  142. 橋本敦

    橋本敦君 したがって、五十年度もその比率はほとんど変わらないし、一般市民半数以上犠牲になっておるということがわかるわけですね。  そこで、課長、最近の暴力団取り締まりということに関連をしていろいろと苦心をされておると思うのですけれども、最近の暴力団の抗争の特徴は一体どこにありましょうか。
  143. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 暴力団抗争事件でございますけれども、これはここ一昨年、昨年と二年ほどかなり件数が増加してまいりまして、本年に入りましてからはやや減少すると、こういう傾向をたどっております。しかし、四十九年が年間七十七件、五十年が八十九件、本年が九月末までで五十三件、確かに全国で多発しておる状況でございます。  その背景といいますか、原因でございますけれども、一つ私どもの取り締まり上の立場で推定しておりますのは、最近の経済不況によりまして暴力団組織の資金源が非常に逼迫してまいった。  勢い、そうした資金源の、まあいわゆるなわ張り争いと言いますけれども、新しい分野の開拓をめぐる争いが相互間でふえてまいりました。こういう点が筆頭に挙げられようかと思います。それからもう一点考えられますのは、最近いわゆる広域大暴力団という各地に勢力を持ちます大きな暴力団の統制力が弱くなりまして、かつ、暴力団のトップクラスの交代期にもきておるということから、内部統制がとれないがために、下部団体同士がかなり抗争を巻き起こす、あるいはそうした大きな暴力団の弱体化に伴いましてほかの暴力団がそれにかなり対決姿勢を強めるというふうな問題もあるように考えております。主な背景として考えられますのはそういうことだろうと思います。
  144. 橋本敦

    橋本敦君 その点はわかりました。  そこで、もう一つ重要なのは、この対立抗争の中で実際の態様を見ますと、一人一殺主義、つまり短銃によるテロ化、これが非常にふえているというのが特徴だと私は見ておりますが、そうはお考えになっておられませんか。
  145. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 確かに御指摘のとおりでございまして、暴力団の対立抗争の歴史を見ますと、終戦後は、戦後のやみ市時代にかなり数が多く、また昭和三十七、八年当時に非常に事件が多発したわけでございますが、ああいう一ころの時代から比べますと、かつてのように暴力団員が相互に多数集結して集団の力をもって対峙すると、こういう行き方はやや影をひそめてまいりまして、これは世論の批判あるいは取り締まり強化等とも関連してくると思うのですが、そうした傾向から、最近では、確かにごく小人数が車で襲撃個所に乗りつけまして、拳銃、猟銃などの銃器を使用して相手方に負傷を負わせ、あるいは殺害する、こういう、言ってみればテロ的な、ゲリラ的なそういう活動というものが非常に目立っているという傾向が挙げられます。
  146. 橋本敦

    橋本敦君 したがって、それだけに、これの取り締まりということになりますと、いつどこで突然小規模のテロが行なわれるかもしれないという状況が出てまいります。大規模なお互いの抗争ならば事前に察知して兇器準備集合その他で取り締まる方法も予防処置もとれますが、いま非常にむずかしくなっているということにどう警察は対応していくかというこれがまた研究課題として大事になりますね。その点はどういう対策をおとりになるか後で聞きますが、いまおっしゃったようなテロ化とそれから武装化が顕著にあらわれているのは私は犯罪統計だと思うのですが、法務総合研究所がお出しになった五十年版の犯罪白書によりまして統計を見ましても、「特別法犯送致人員と暴力団関係者の比率」というのを見てみますと、銃砲刀剣類所持等取締法違反、これが暴力団関係者の件数が四十五年から四十九年の統計が出ておりますが、四十五年が一千四百五十六件であったのが、四十九年には二千三百十四件、倍とは申しませんが、八割方ふえておるという現状になっておりますね。五十年のこの統計が私手元にございませんが、五十年度で銃砲刀剣所持違反取り締まり、これに該当した暴力団関係の送致人員数はどれぐらいになっておるか、いまおわかりでしょうか。
  147. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 送致人員についてはちょっと手元に資料がございませんのであれですが、五十年中の暴力団からの拳銃の押収数でございますけれども、これは全部で千三百三十丁に上っております。
  148. 橋本敦

    橋本敦君 その押収数は、この五十年版の犯罪白書で四十九年で見ますと一千五十四丁ですから、四十九年よりもふえている。この統計で見ますと、四十五年の百六十六丁に比べますと大変なふえ方ですね。五年前は百六十六丁押収した。ところが、五十年になりますと、一千三百丁から押収しておる、こういう状況になっている。これは取り締まり強化が叫ばれながらいかに暴力団組織内部に拳銃がずっとひそかに進行して武装化が進んでいるかということを取り締まりの面から客観的に示している冷厳な事実ですね。  そこで、このような短銃が暴力団のところへどんどんひそかに出回っていくというルートは一体どこから入ってきているのか。モデル改造ガン、これはどこかで製造されていることはわかりました。主に輸入の面からいきますと、どこから入って、どういうような受け渡しが行なわれているのか、このルートは今日までの捜査で徹底的に解明されておりますか。たとえばハワイから四百丁入ったというあの衝撃的なニュース、これもありましたが、その行方はつかんでおられますか、その点の捜査状況を明らかにしてください。
  149. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 暴力団拳銃の入手ルートでございますが、確かに、一つは、拳銃総押収数の常時七割ぐらいを占めております改造ガン、これは国内での密造個所から入手しておる、かように考えられると思います。  それから問題の密輸ルートでございますけれども、最近の捜査状況から現在警察の方で問題にしております主なルートが二つございまして、一つが、アメリカからの、これは現在警視庁で捜査を続けておりますけれども、いわゆるハワイルートというものがあります。いままでの捜査では、ハワイ経由でアメリカ製の拳銃が、これは暴力団の組織員じゃございませんけれども、ブローカーによって空路日本に持ち込まれまして暴力団組織に売り渡されておる、そういうものが推定で約百七十丁ぐらいあるのじゃないか。そのうち現在四十丁まで押収しておりますけれども、残りについて引き続き捜査中でございます。もう一つ注目しておりますルートは、東南アジアルートと言いますか、これはタイ国が多いようでございますが、このルートにつきまして、現在、警視庁、大阪府警、愛知県警、神奈川県警で捜査しておりますが、数の多い主な例だけで申し上げますと、大阪で一昨年からいままでに検挙しておりますのが、二百三丁ほど密輸されておりまして、約百十丁押収しております。それからこれは神奈川でございますけれども、約八十丁が密輸されておりまして、現在五十三丁押収と、こういう状況で、これは引き続き捜査中でございます。
  150. 橋本敦

    橋本敦君 だから、いまのお話によっても、わかっているだけでの総数で何丁かがひそかに出回っていることになりますか。いま、私、ちょっと計算しなかったんです。輸入されたことがわかっていて押収されていない数ですね、約で結構です。
  151. 平井寿一

    説明員平井寿一君) いま申し上げました主な例から申しますと、まだ捜査線上に発見、押収されずに流れておると考えられますのは約二百丁ぐらいあるかと思います。
  152. 橋本敦

    橋本敦君 ですから、国内でひそかにつくられるモデルガン、それだけでもなかなか行方がつかみ切れないわけですが、輸入されたとわかっているだけで二百丁もの拳銃が恐らく暴力団の手元に出回っているであろう。大変なことであるわけですね。  そこで、このような一連の暴力団抗争事件、武装化の進行、テロ化の進行、こういう状態に対して、市民の側では、警察はなめられているのと違うかと、あるいは警察の深いところで暴力団関係者との癒着があるのではないかと、こういった疑問さえ市民は持っている。公然とそういう問題が論議をされるという状態になっている。たとえば、こういう新聞の記事があります。大阪府警が生田区の山口組系のある事務所へ捜索に行った。そのときに立ち会った暴力団組員がどういう言い方をしたかというと、いつもと態度がえらい違うじゃないか。それに対して、大阪府警は、おれたちは大阪府警だぞと、こう言って反論をした。ということは、裏返せば兵庫県警の取り締りなら話がツーツーでどこかでつくはずだが、きょうは違うんだということを物語っているやに見受けられるような新聞報道さえある。これが事実かどうか私はここで問いませんが、こういうような警察暴力団との関係を象徴的に証明したのが、あの大きな問題になりました兵庫の姫路署長藤田忠夫ですね、彼の事件だということになってくる。この藤田忠夫は、これは尼崎署の署長であり、そして姫路の署長にかわっていたわけですが、彼が長年にわたって暴力団との黒い関係があったという事実は、これはもう警察でも調査をなさっておるし、そしてまた、帰化事件に関連をして贈収賄があったということで逮捕までされる、こういう事件にまで発展をしていっておる、こうなっておりますね。そこで、この事件は、いかに兵庫県において取り締まらねばならない警察の首脳が暴力団関係と黒い糸で結ばれていたかを示す象徴的な事件、こんなことが起こるようでどうして暴力団取り締まりができるか、これは国民の声になってくるわけです。  そこで、端的に伺いますが、この藤田の事件について、彼が何年ぐらいにわたって暴力団とのつながりがあったのか。そして、彼がそのつながりの中で暴力団から受けた供応、物品が締めて金額にしてどれくらいのものをもらったというように調査の中で明らかになっておるのか。そして、この事件が現在贈収賄事件としてどういうように進行しておるのか、この点について御説明いただけますか。
  153. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 現在、警察暴力団取り締まりは、まあ昔のことはいざ知らず、最近は非常に厳しい対決姿勢で臨んでいるところでございまして、いろいろ誤った形で報ぜられるところもあるようですけれども、そうした変な癒着は一般的に私はないと考えております。  問題の藤田前署長の件でございますけれども、これの贈賄、いわゆる収賄の相手方でございますが、丸三興行というパチンコ屋なんかの風俗営業を営んでおります社長の陳伝鋒という男でございまして、これはかって山口組関係暴力団の幹部であったという人物でございます。昭和三十六年に組織を解散した以降は暴力組織から一応足を洗った、こういう形をとっているわけでございますけれども、この人物との交際を通じて藤田が物品を受け取っているということが判明しましたので、厳正に捜査してこれを収賄罪で検挙したわけでございます。  物品の受け取り状況でございますけれども、捜査した結果、判明送致しましたものは、昭和四十九年の三月から五十一年の三月にかけまして尼崎中央署長であったわけでございますけれども、四十九年の八月にこの陳という男と知り合いまして、その後、帰化申請の便宜を計らってもらいたいと、あるいは風俗営業取り締まりについての好意ある取り扱いをしてほしいというような依頼がございまして、それにこたえて、置き石というんですか、台湾産の銘石と、それからトラの木彫りの置物でございますが、合わせて約二百万円ぐらいの物品を受け取ったと、こういう事件で立件しております。
  154. 橋本敦

    橋本敦君 それは贈収賄事件としての賄賂の問題ですが、それ以外に、日常的に供応を受ける、あるいは自動車その他の供与を受ける、いろんなことが新聞に出ております。綿密に全部調査は済んでおりますか。
  155. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 刑事事件のほかに、警察官としての重要な綱紀違反という立場からも徹底した調査を行いまして、調べは全部済んでおります。ただ、お尋ねの暴力団との関連部分でございますけれども、この陳伝鋒という元暴力団幹部との交際関係が判明しておりまして、それ以外のものは現在のところ判明しておりません。
  156. 橋本敦

    橋本敦君 いずれにしても、警察署長が、山口組の舎弟であり丸三組という暴力団を組織してみずから対立抗争を起こし殺人までやったという前歴のあるこの陳と、二百万円相当の金まで受け取って便宜を図るということは、これは許しがたいことですね。いまあなたは、これは警察体制それ自体とは無関係な問題だと、こうおっしゃいました。私は決してそうは言い切れないと思います。たとえば、この藤田が、陳の長男が行った結婚式、これに彼自身だけではなくてその他の警察幹部も伴って出席をしておる。これは自民党の中西参議院議員か仲人をやられた結婚式ですが、この結婚式に藤田以外にどのような警察幹部が出席していたかおわかりでしょう。お話し願いたいと思います。
  157. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 私どもの方は暴力団犯罪捜査を担当しておりますので、行政処分の詳しい内容をちょっといま用意していないのですけれども、当時報告のあったことで記憶しておりますのは、署の刑事課長など幹部何人かを連れて出席しておる、こういうふうに聞いております。
  158. 橋本敦

    橋本敦君 そのとおりです。たとえば、暴力団取り締まりを直接担当する暴力団取り締まりの総元締めである同県警察捜査四課の当時の情報担当警部、これが出席をしている。これは坪田さんですね。そればかりではありません。警察官の綱紀を粛正するという立場にその当時はなかったかもしれませんが、監察官室長山本さんですね、この方も出席をしている。こういうような結婚式にこのような警察幹部がずらっと並ぶ。そして、この結婚式の同じ建物の中で別のところでは、同じ結婚式の祝宴を暴力団関係者だけが集まって大いに酒を飲んで大騒ぎをしている。別の部屋ではこの結婚式が披露宴として行われて藤田以下警察幹部が出席をしている。こういう姿を県民なり市民が見たときに、警察暴力団関係との癒着ということに思いをいたすのは当然ではないかと私は思うのです。長男の結婚式に、偶然たまたま知り合いがきのう知り合ったということで呼ばれて、さあ参りましょうというようなことじゃないです。いろいろな交際、つき合いがあるから行くということですね。私は、暴力団取り締まりが国民の声となろうとしているいま、警察の幹部が元暴力団の結婚式に出席をし、暴力団が集まって別の部屋で大騒ぎをしているその場に警察幹部がずらりと並んで行くというようなことは、これは不見識きわまる、あってはならぬことだと思いますね。  公安委員長はきょうはお越しでありませんから、取り締まりの同じ法秩序維持の責任をお持ちになる法務大臣の御見解聞きたいのですが、こういうことをやって、市民が、ああ、警察暴力団取り締まりをよくやってくれていると思うでしょうか、どうでしょうか。法務大臣、どうお考えになりますか。
  159. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 非常な誤解を生ずる事実だと思いますな。今後そういうことがあっちゃならぬと思いますね。吹き矢でも買ってきてふっとやりたいくらいに思いますな。
  160. 橋本敦

    橋本敦君 法務大臣ね、検察官もこの結婚式に行っておられるんです、検察官も。吹き矢どころじゃないんです。新聞にも堂々と出ているのですが、この問題の結婚式に、神戸地検尼崎支部の樫原義夫支部長検事、これが列席なさっているという事実がわかったと、法務大臣は御存じなかったと思うのです、いままでね、こういうことになると、今度は検察庁もこれまた大変な問題になる。不見識きわまると、こういうことになる。  そこで、私は法務大臣にお願いしたいのですが、樫原検事さんがどういう事情でここへ出席なさったのか、明らかにこれは今日から見て不見識なことだと言わざるを得ないのですから、どういう事情で御出席をなさったのか、そして神戸地検としてはこの問題がこういうように新聞に出て以後どういう処置をおとりになったのか、これを私はやっぱり報告していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  161. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 橋本委員指摘のことは、われわれにとりましても非常な驚きでございまして、詳細は手元に資料を持ち合わせませんので正確にはお答えいたしかねますが、当時直ちにその事情を調査いたしました結果、私の記憶しておるところでは、樫原支部長は着任早々でございまして、その陳なる者については全然面識がなくて、陳の友人である者と知人の関係にあった樫原支部長が知人から誘われて、警察署長なども出るから一緒に出てくれんかと頼まれて軽率にも行ったと、したがって、暴力団云々というようなことは知らなかったということでございましたが、いずれにいたしましても、結果として軽率のそしりは免れない次第でございまして、いま大臣も申されましたように、誤解を与えるきわめて遺憾な事案でございましたので、監督官庁としても厳重に注意をいたしたというふうに聞いております。
  162. 橋本敦

    橋本敦君 いま聞きましても、樫原検事さんが直接の親しい関係じゃなくて、陳の友人から言われて行ったと、こういうんですね、警察署長もたくさん来るからと。行かなくてもいいんですよ、そんな直接の親しい間柄じゃないのですから。ということは、私はやっぱり平素から暴力団に対する断固たる取り締まりをやるという姿勢と注意心に欠けるところがあると言われても仕方がないと思います。今後はこの点について十分御注意を願いたいと思います。  そこで、私は、こういう暴力団が実際警察体制をなめ切っているということで見逃せない一つの事実を指摘して警察庁の御見解を賜りたいと思うのですけれども、十月三日にこれが起こって犯人検挙はまだまだということですが、めどがついておりますか。
  163. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 捜査中の問題ですので詳しいことはあれですが、早急に犯人を検挙するという方針でやっております。
  164. 橋本敦

    橋本敦君 一刻も早く検挙してもらいたいというのが市民の声ですね。野放しにしておったらまた起こりますよ、抗争事件が。早急にということですが、めどがついているかどうかを伺いたい。早急にはわかります。結構です、早急にやってください。めどがついておるかどうか。不安なんです、市民は。まだついていないならついていないで……。
  165. 平井寿一

    説明員平井寿一君) いろいろな角度で犯人像を浮き上がらせながら捜査をしておるというふうに聞いております。
  166. 橋本敦

    橋本敦君 はっきりめどはついていないわけですね。
  167. 平井寿一

    説明員平井寿一君) めどがついたかどうかというふうな見方の問題になりますと、現在捜査という非常に密行的な仕事をやっておりますので何とも申し上げかねますけれども、まだ令状をとるということの段階には至っていない、こういうことでございます。
  168. 橋本敦

    橋本敦君 実際は警察は一生懸命おやりになっているんでしょうけれども、こういう状態なんですね。不安で仕方がないんですね。  もう一つ、課長ね、こういう事実はどうですか。新聞では報道されているんですが、この四日未明のピストル乱射があったときに、こういうことなんです。弾痕を探して検討しようと捜査員がやっておられた。そこへ組員がやってきて、おれたちが探してやると、こういって懐中電灯を持ってその辺を歩き回っておったと。しかし、捜査員たちは黙ったまま見逃していた。これで捜査と検証になりますか。その弾痕を探してやるといって懐中電灯を持って暴力団員がうろうろしている。薬きょうが落ちていたら、拾ってポケットにしまっちゃえばおしまいですよ。こんななめられたかっこうで警察捜査をなさっているということになりますと、市民はまた不安に思いますね。こういう事実があったと新聞は報じているんです。これは大問題じゃありませんか。こんななまぬるい、暴力団をうようよさしておいて、暴力団に手伝ってもらって弾痕を調べる、探す、こんなことを警察がおやりになっていいんでしょうか。この点はどうお考えでしょうか。
  169. 平井寿一

    説明員平井寿一君) その新聞記事は私ども見まして、もしそういう事実があればこれはおっしゃるとおり大変大きな問題だと考えましたので、早速調査しましたが、現地からの報告では、そんな事実はないと。現場が当時非常に混乱した状態でございましたので誤解を受けるような動きか何かあったかもしれませんけれども、そうした事実は絶対ないということでございます。
  170. 橋本敦

    橋本敦君 そうした事実が絶対ないと言、えるなら結構です。しかし、誤解を受けるような事実さえあってはならないと私は思いますね。  さらに、いままでの抗争事件ですと、ピストルを乱射し殺害をする、そして犯人の行方を警察が一生懸命お捜しになっていると、しばらくして組員ピストルを持って私がやったと自首をしてくるケースが案外多い。私は案外多いと見ています。いかがですか。
  171. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 確かに、そのようなケースは間々あるようでございます。
  172. 橋本敦

    橋本敦君 ここに問題があるんです、ここに。つまり、相手方を殺しておいて、暴力団の組織内部ではだれか犯人を出さにゃならぬと中でいろいろ話し合って、幹部の命令で、今度はお前がやったことにせよ、こう言って、やった者でないのに替え玉でやったと自首をさせられて、それが後に刑が確定した後あるいは公判の途中で替え玉だったとわかった事例さえある。お聞きになっていますか、そういう事例があったということを。
  173. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 過去にはそうした事例があったというふうに覚えております。
  174. 橋本敦

    橋本敦君 そういうようなことを許しておきますと、頂上作戦により暴力団の壊滅と言ったって、警察がなめられているということになるんですよ。これはなかなかむずかしい問題ですよ。だけれども、いやしくも相手方の幹部なり組員ピストルをもってテロで殺害するというのは、組員個人が自分の意思でやるというよりも、広域暴力団暴力団同士の抗争ですから組織戦です。やっているのは二人がピストルを持って手をやったかもしれないが、それの本質は何かといえば、暴力団の組織戦ですから、今度はだれがだれをねらい撃ちするか、必ず共同謀議があり、必ずそこで指示した者があり、必ずそこでそれを受けて実行した者があるという組織戦ですね。ここに目を向けて徹底的に捜査をやらないと、自首してきた者だけを話を聞いて、これは替え玉じゃない、事実この男だということを認定して起訴して終わってしまえば、暴力団に対する組織的取り締まりはできませんね。その点に目を向けて徹底的に捜査をやるという方針はもちろんお持ちと思いますけれども、徹底的にこの方針でやっていただけますか。
  175. 平井寿一

    説明員平井寿一君) まさに、いまおっしゃいましたように、暴力団対策というのは組織対策だと思います。暴力団の社会の体質というものは、これは非常に特有なものがございまして、いま拳銃を持って自首してくるというふうなことを言われましたけれども、一般の犯罪者が考えられないようなこういう行為もまた暴力団社会特有のものでございます。やくざ社会というものは、封建的な擬制血族関係といいますか、親子兄弟というふうなかつての封建家庭以上のきずながございまして、親分のかわりに犯罪行為を行って進んで出てくると、こういうふうな体質のある、一般の犯罪の物差しではかれないような問題がある。そういう特異な組織だけに、また社会に根強く巣くっておりまして、数々の悪質な犯罪行為を行っておる大変反社会的な団体であると思います。したがって、私らの方では、暴力団というものは単なる個々の構成員の刑事責任を追及するということが目的じゃございません。あくまでそうした反社会性のある組織の壊滅、組織自体をつぶす、これが目的でございまして、そういう意味での対策を、第三次頂上作戦と名づけておりますけれども、そういう形で進めておるのが現状でございます。
  176. 橋本敦

    橋本敦君 それが本当にいままでやられていないところに私は今日の事態があると思いますから、徹底的にその方針でやってもらいたい。  ところで、暴力団市民に迷惑をかける話を先ほど出しましたけれども、報道陣の皆さんというのは、暴力団を壊滅する上でマスコミの皆さんの果たす役割りは非常に大きいと思うのですね。この黒いタブーに挑戦して、そして暴力に敢然と立ち向かって、暴力をなくせという新聞キャンペーンをやるというのは、これはある意味では命がけですよ。ところが、この新聞の皆さんにこの大阪の場合でも写真を撮ろうとしたら脅迫的に行為を行って警官の前でフィルムを抜かしたというようなこともあったと、こういうことです。  私は、最近児玉の自宅を防衛する連中が新聞社の皆さんに暴行を加えているという事実は見逃しがたいと思うのです。いま報告してほしいのですが、児玉宅の前で新聞社関係その他の皆さんに対して行われた暴行事件は何件あって処理はどうなっておりましょうか。
  177. 平井寿一

    説明員平井寿一君) お尋ねの児玉邸、まあその周辺を含みまして付近における暴行事件でございますけれども、調査させましたところが、本年三月三十日から九月二日までの間に事件は四つ発生しております。四名検挙しております。これは、一つは児玉邸への抗議デモ隊員が警備中の警察官に暴行を加えたというのがありますが、これを除きまして、他の三事件はいずれも児玉邸周辺で取材中の記者に対する暴行傷害事件でございます。四人検挙しまして、現在私どもの聞いておりますのは、送致した結果二名が起訴されて、うち一名が罰金刑になっておるという報告を受けております。
  178. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、法務省に伺います。この四名について逮捕という強制捜査警察がやったのかどうか。それから検察庁がこれは二名を起訴して一名罰金だと、こう言いますが、略式だと思うのですけれども、報道陣に対する暴行を罰金の略式で許すというのは、一体これはどういうことでそうなったのですか。
  179. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 突然のお尋ねで、その事情について報告を受けておりませんので、いずれ正確に調べまして何らかの形でお知らせをいたしたいと、かように思います。
  180. 橋本敦

    橋本敦君 ぜひお知らせ願いたい。新聞記者の皆さんの取材といういま国民的課題を呼んでいる疑獄追及の中でやっている仕事に対して暴力をふるって、それで罰金で済まされるというのは、私は問題があるという気がしますので、その事案についての報告を求めます。  ところで、この四名について警察庁に伺いますが、この四名は暴力団とのつながりがあるかどうかは調査はできておりますか。
  181. 平井寿一

    説明員平井寿一君) この検挙した児玉邸の記者に対する暴行事件は三名でございます……
  182. 橋本敦

    橋本敦君 三名ですか、失礼しました。
  183. 平井寿一

    説明員平井寿一君) これにつきまして暴力団との関係につきまして調べたところ、暴力団とは直接関係はない、こういう報告を受けております。
  184. 橋本敦

    橋本敦君 児玉はいろいろ総会屋その他とも関係がありますね。そういう児玉関係の政治団体、総会屋、これとのつながりはどうですか。
  185. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 私どもで聞いておりますのは、一人が青思会の幹部である、それからいま一人が交和青年隊の隊員である、それからもう一人が日の丸青年隊の隊員である、こういうふうに聞いております。
  186. 橋本敦

    橋本敦君 いま言った交和青年隊、日の丸青年隊、そういうものは暴力的右翼団体ということで警察がマークしている団体ではありませんか。   〔委員長退席、理事原田立君着席〕
  187. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 右翼団体として活動しておる団体として警戒対象になっておるということでございます。
  188. 橋本敦

    橋本敦君 暴力性は全然ないですか、いままでそれは。
  189. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 私どもの方ではいわゆる組織暴力犯罪、暴力団犯罪の事件を担当しておりますので、そういう意味でのいわゆる前近代的やくざ社会というああいう団体とはやや次元を異にするということでございます。
  190. 橋本敦

    橋本敦君 つまり、あなたの御担当とは直接の所管でないので明確に私の質問にはお答えできないという筋がありますね。  そこで、このような暴力団の横行なり大変な抗争激化ということでの警察体制を伺っておるわけですが、藤田署長が起こしたようなこのような癒着、こういった問題は、藤田個人の問題だといって済まされない警察体制的な問題があると思うのです。この問題もはっきりさせなきゃならぬということを私は言っておるのです。  もう一つ、暴力団が温存され、そして甘やかされ、また警察をばかにするような態度で世間に横行するというような横暴を許す一つの問題で、有力政治家と暴力団との結びつきという問題を無視しちゃならぬと私は思うのです。新聞でもよく批判をされますが、暴力団の親分の葬儀に閣僚級の政治家の花輪が出たということが出たりよくいたします。そういうことは一切あっちゃならぬ。本件の場合の陳の長男の結婚式は中西先生が仲人をなさったわけです。これはどういう結びつきが政治的にあるかどうか私はここでは問いません。しかし、この陳が帰化申請をしているわけですね。この陳という男はどういう男かと言えば、いま課長がお話しになったように、堂々たる山口組の元舎弟であり、丸三組という暴力団をみずから組織し、抗争事件まで起こし、殺人事件までやったというような前歴の持ち主で、これが帰化申請をしておる。この帰化申請をする場合に有力な政治家が推薦人に名を出しているという事実を私は確かな情報でつかんでいるのです。民事局長にお伺いしたいのですが、この陳の帰化申請について有力な政治家の推薦状がついておると私は思います。その点明確にしていただけますか。
  191. 香川保一

    政府委員香川保一君) 陳伝鋒の帰化のあれは三回実は申請が出されまして、三回とも不許可にしておるわけでございますが、一回目が四十八年の秋でございます。それから二回目が五十年の夏に不許可。それから三回目が五十一年の九月でございます。この三回目に申請がありましたときに、弁護士、それから区会議員、それから参議院議員の方が一人、まあ七、八名推薦状がついておったように思っております。
  192. 橋本敦

    橋本敦君 いまお聞きのとおり、国会議員までがこのような暴力団関係者の帰化申請に推薦状を出している。私は端的に局長に伺いますけれども、この推薦人にいま通産大臣をおやりになっておる河本さんも推薦人になっておられるということを私はある筋から調査で聞いたことがあるのです。事実はどうですか。
  193. 香川保一

    政府委員香川保一君) 現河本通産大臣の秘書から、私どもの担当課の方に、電話で、二回目の申請の場合でございますが、あの申請事件の処理はどうなっているかというふうなお尋ねがあったそうでございまして、暴力団関係があると。不許可の理由はそれでございますが、さようなことで許可はむずかしいというふうに返事したということが記録に載っております。
  194. 橋本敦

    橋本敦君 いま法務大臣お聞きのとおり、河本さんも秘書を通じてどうなっておるかとお聞きになった。ということは、河本さんが陳もしくはその関係者からどうなっているか聞いてほしい、できればよろしく頼むという話を受けられたから電話をなさった可能性が強いのです。何にも知らないのに、神戸の尼崎の一人の男の帰化申請が法務省へ出ている、あれはどうなっているか、普通ならば御存じないはずですから、こんなことはなさらぬです。この一つを見ても、ある参議院議員、それから河本さんの秘書を通じての話、これを見ても、暴力団関係者が主要な政治家のところへ手を伸ばしていっておるということはわかりますね。河本さんは、暴力団ということがわかったので、だから不許可になった、ああ、それはしようがないということで、その後は何もなさらなかったというような局長のお話で了解はできるのですが、河本さんのところまでこの男が手を伸ばしていることは事実なんです。そうでしょう。だから……
  195. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) それはわからぬね。河本君の本人のところまで行っているかどうかはわからぬね。
  196. 橋本敦

    橋本敦君 ああ、なるほど。それじゃ、法務大臣、調べていただけますか。
  197. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) いいでしょう。
  198. 橋本敦

    橋本敦君 単に秘書の段階なのか、だれが言ってきたのか、河本さんが全然関知しないのに秘書がなさったのか、これはやっぱり政治的、道義的責任という問題で暴力団との癒着を断たにゃなりませんから。——あ、わかっている、それじゃとうぞ。
  199. 香川保一

    政府委員香川保一君) これは一般的に国会議員の秘書から電話あるいは来庁されましていろいろ話がある場合に、いわゆる先生のあれなのかどうかということは確かめることにいたしておりまして……
  200. 橋本敦

    橋本敦君 ああ、そうですか。
  201. 香川保一

    政府委員香川保一君) この場合は、秘書の方が地元から聞いてくれというふうに依頼を受けられたように存じてます。
  202. 橋本敦

    橋本敦君 ああ、そうですか。それじゃ、秘書のところまで陳は手を伸ばしたと、こういうことになる、河本さんを有力政治家と見て。こういうことは、法務大臣、幾ら河本さんが御存じない間の出来事としても、秘書自体が、やっぱり自分の先生が主要な政治家であるとなれば、やるべきこととやっちゃならぬことの区別は、これは地元からの要請があれば私は判断しなきゃならぬと思いますよ。それが秘書の責務だと思いますよ。そういうことも含めて、よく政治家と黒い暴力団との癒着花輪問題、いろいろありますが、現に河本さんの秘書のところまで手が伸びておるという事実をきょう指摘しますから、今後こういうことが一切ないように、政治家という立場での厳粛なやっぱり道義的モラルを暴力団ということに関しては確立するという問題は、私はやっぱり世論として大きくしたいと思うのですね。  この暴力団問題で最後警察庁にお聞きしたいのですが、このような抗争事件を何としてもやめねばならぬということで、私ども共産党大阪委員会も兵庫県委員会も、文書をもってそれぞれ県警、府警本部に断固たる取り締まりを要求してお願いしております。そこで、警察庁は緊急指示を全国に出されたという話も聞いておりますが、いつどういう指示をお出しになって、そして、具体的にどのようにこの問題をせめて市民の安全を守るという方針をいまお持ちなのか、これをはっきりとお示しいただきたいと思います。
  203. 平井寿一

    説明員平井寿一君) 三日の事件発生したその日のうちに、とりあえず電話伝送で全国に緊急指示を流すと同時に、翌日近畿管区内の各府県を大阪に集合させまして今後の対策などをいろいろと示達しております。  内容でございますけれども、従来から暴力団取り締まりはいろいろな方法でやってまいったのですが、この際、先ほど申されたような組織壊滅対策、こういう目標をより明確に定めまして、そのために、大阪も大変暴力団の数が多いところでございますが、各団体、その中でも特に組織の中心になる幹部級の検挙の徹底を促進する、それによってその組織を分断壊滅させていこうという行き方に持ってまいるのが一つでございます。  それから次には、こうした抗争事件が相次ぎますと市民層に大変不安を与えますので、その防止を図るために、機動隊はもちろんでございますけれども、外勤警察官の手持ち勢力を最大限に動員いたしまして警戒警備の配置を強めるとともに、常時街頭において必要な職務質問、検問などを行いまして不審者あるいは凶器の発見に努める、こういうことも考えております。  それから、三点目は、やはり暴力団組織を支えておる最大のものは資金源でございます。特に、最近は、金融業に乗り出したり、あるいは総会屋行為を行ったり、その資金の獲得の手口が大変知能化しております。こうした面の捜査をもっと強化いたしまして、これは必然的に首領クラスの検挙にもつながりますので、そうした資金源壊滅作戦をより強めようと。また、そのためには、検挙だけじゃなしに民間の方々の協力が何といっても必要でございます。そのために、市民との懇談の場、相談の場を多く持ちまして暴力の周囲からの排除ということをもっと促進するように呼びかけてまいる。  以上の点を主な点といたしまして現在その推進にかかっておるところでございます。
  204. 橋本敦

    橋本敦君 最後に伺いますが、いまのような基本方針に基づいて、具体的には、私は組員だと見たらピストルを持っておるというぐらいの状況になっておることを明らかにしたのですから、もう組員に対して警官がマンツーマン・システムで当分の間ぴしっと張りついて警戒をする。それから、短銃捜査については、これはもう専門的な専従班体制をしていて、輸入源、それからルート、これの徹底的解明を急ぐ。この二つは当面重点でおやりいただくべきだと思いますが、この方針はありますか、ありませんか。
  205. 平井寿一

    説明員平井寿一君) まあマンツーマンということはどうかと思いますけれども、少なくとも活動的な組員、あるいは危険性の多い組織構成員、こういう者に対しましては徹頭徹尾マークいたしまして、まあマークの方法はいろいろございますけれども、その行動を封圧し、また検挙する材料を発見してまいる、こういう方針をとるようにしております。  それから拳銃捜査でございますけれども、現在先ほど御紹介したような密輸拳銃の入手経路の遡及捜査を進めまして、これはもう根源までさかのぼって徹底して発見してこれを押収し検挙しようと。また、銃器自体、かなり広範囲に各組織の中であるいはその組織の関連者のところで隠匿所持されておるものという状況がうかがえます。これに対しましては、強力な情報収集活動を行い、その発見、防止に努めたいと、かように考えております。
  206. 橋本敦

    橋本敦君 ありがとうございました。以上で時間が参りましたので終わります。
  207. 下村泰

    下村泰君 今月の十月の一日から実施されております緊急一時保護制度、これからひとつお伺いしたいと思います。  この緊急一時保護制度ができるまで、長い間、重症心身障害児者を抱えた御家庭の御両親、在宅療養をなさっていらっしゃる方々の大変深い悩みでございまして、この緊急一時保護制度ができることをもう鶴首の思いで待っていたわけです。これがいよいよその皆様方の念願がかなってこの十月の一日から施行されることになったのですけれども、厚生省の方としては、これを実施するに当たって、どういうような方法でPRなさっているか、あるいはその指導要領、これをちょっと聞かせていただきたいと思います。
  208. 山内豊徳

    説明員(山内豊徳君) ただいま御指摘のように、国の施策といたしましてことしの十月分からこのような緊急一時保護事業を都道府県なり指定市が実施しました場合に補助をすることが始まったわけでございます。結果的には五十の県市で現在実施されているという段階になっておりますが、問題は、その県がこれを実施いたしましても、なかなか県内の地域によって取り扱いをしない施設がある、あるいはまた施設がそこに所在しないというようなこともございますので、いま県の形ではほとんどの県が実施に入ったけれども、県内で一人一人の家庭と施設の間の結びつきをよくするように御指導をしているところでございますが、いま御質問のこの制度の発足に伴っての指導と申しますか、進め方としましては、国が補助する場合の要綱というものを去る八月付で各県市に示しましたことと、なお民生部長会議あるいは担当課長会議などもそれ以前にございましたものですから、この仕事のやり方については口頭でもって全国会議としては二度ばかり、個別には何回でも機会をとらえて指導しておる現況でございます。
  209. 下村泰

    下村泰君 たとえば、受け入れ体制側の病院でありますとか、あるいは民間の施設でありますとか、それから助成額、この方の状況はどうなっていますか。まだスタートしたばかりで詳しいことはおわかりにならないかとは思いますけれども。
  210. 山内豊徳

    説明員(山内豊徳君) ただいまの数で五十の県市と申しましたが、その県市の中で幾つの施設がこれを受け入れているかは、実は調査したものを手元に持っておりません。ただ、国が助成します場合の考え方は、病院と施設で若干単価に差はございますけれども、一日当たり医療機関の場合六千五百円程度、施設の場合で二千二百円から二千八百円程度の単価を一応決めまして、それの二分の一を国が補助するという形になっております。したがいまして、ことしの予算額では一応国の補助額で三千万円ばかりを計上しておりますけれども、これが実際どのような形でいま使われているかについては、ちょっと正確な数字を手元に持っておりません。
  211. 下村泰

    下村泰君 それではここにすばらしい方法を実施しているところがあるんです。もし厚生省がこれをおわかりにならないとすれば、まことに厚生省として恥ずかしいことじゃないかと思うのですけれどもね。これは読売新聞の五月五日ですな、ちょうど子供の日を記念して特集したのだろうと思いますけれども、「身障児の緊急一時保護制度」と上・下にわたって書かれておるんです。これを拝見しますと、すでに、国以外のところ、つまり国でやる以外ですね、東京都、京都府をはじめ神奈川、千葉、埼玉、兵庫などの各県、それに横浜、川崎、名古屋、神戸、大阪の各指定都市など全国で二十三の地方自治体がやっている。東京都の二十三区の中で最も進んでいるのが品川、大田の両区です。品川の場合には、四十九年の六月からスタートしていますね。で、自分の区内の七団体に呼びかけて身体障害児者の実態を把握しまして、この制度を望んでいる家庭にあらかじめ登録してもらうんです。そうしておきますと、重障児の食事、排せつ、意思の疎通などの日常生活動作から、医療、健康、それに連絡方法などについて、いざ緊急事態になっても一々保護者に伺わなくても十分に手当ができる。現在までに約百七十人が登録しておるそうです。そして、緊急時の場合には電話一本でその日のうちに入院できるシステムになっている。ところが、現在国のやっている、まあまだ十月一日からですから、ああせい、こうせいとは言いません、幾ら厚生省でもね。ただ、こういうすばらしいことをやっている区が現在あるのですから、これをモデルケースにして、もし厚生省にその気があるならば、品川、大田の両区へおでかけになってよく調べて、そうしてこういう方法がなるほどと思えばおやりになっていただきたいと思います。  品川の場合には、いま申し上げましたように、病院体制、里親体制というものをつくっています。里親体制というのはどういうのかといいますと、福祉に対して深い理解のある方で育児に経験のある方、こういう方がお手伝いをしてくださるわけです。それをどういう方に今度分けているかと申しますと、障害内容には身体障害者の場合にはいろいろと内容が千差万別ですから、脳性小児麻痺の方もあれば、いわゆる身体不自由児者もあれば、あるいは脳性によって知恵おくれになっている方もいらっしゃいますし、それぞれ内容が異なりますので、つまり生活の場を必要とするお子さん方、いわゆる知恵おくれとかそういう方々の場合には里親に預かってもらう。それから同じ身体障害児者の中でも患者として扱われるべき方々、こういう方たちは病院の方に預かってもらう。品川の場合には都南病院というところに預かってもらう。都南総合病院、おわかりだろうと思います。四十九年の六月に発足しまして十一月の末日まで病院で扱った件数が十件で延べ日数八十七日、里親が八件で延べ利用日数が三十六日、その当時は登録が百名で里親が二十六名でした。それが今年度四月から九月までこの半年間で病院で扱ったのが十五件で延べ日数が百二十八日、里親件数が十三件、延べ日数が七十日、こういうふうに利用度が大変ふえているわけなんです。  この制度ができてから品川の中ではこういった身体障害児者を抱えて在宅療養をなさっていらっしゃる方々が大変お喜びになっているのですが、果たして厚生省がこれだけきめ細やかなことがこれから先指導できるかどうか、ちょっと承わらしてください。
  212. 山内豊徳

    説明員(山内豊徳君) ただいま先生御披露の品川区における例は、私ども率直に申し上げましてモデルとして十分検討さしていただいたものでございます。また、特に御指摘のとおり全国的にも一番進んだやり方であるとして評価しております。  御指摘のように、この制度で一番むずかしいことは、個々の家庭にいらっしゃるお子さんと施設のあらかじめの結びつきをしっかりしておきませんと、急にお願いすると運び込まれても、その子供状態を知らない場合に大変な手違いを起こすものでございますから、事前登録——言葉は悪いかもしれませんが、事前登録を十分やるということをやはり指導の眼目にしております。ただ、それについて本当にきめ細かく各県市で行われているかどうかについては、なお今後継続して指導する必要があると思いますけれども、もう一点、品川区の例として個人のお宅を指定する、いわゆる里親制度のことも十分承知しておったのでございますが、今後の検討課題ではございますけれども、個人に対する委託費については国の助成からは一応枠の外に外しておりますが、将来はこの方法も大いに採用しなければいかぬ一つの方法だと考えております。  それから読売新聞の記事にもございましたように、確かにこの制度はもともと地方自治体が始めた制度でございますので、御指摘のとおり、昨年の初めでは十七県市、昨年中にやっと二十三県市になりまして、そういった形で地方自治体がなさっていただく事業に国が経費の面でことしの十月から補助をするという形をとっておりますので、御指摘のとおり、県における仕事のやり方をある程度先進県をモデルとしながら指導しながら経費の助成を上乗せしていくという方向はとっておるつもりでございます。
  213. 下村泰

    下村泰君 いまのお話を伺っておりますと、地方自治体が前に行っておる、それにただ国が助成するだけだみたいな印象を受けるのですよね、いまのお話を伺っていると。ですから、よく福祉制度福祉制度と言いますけれども、ただ銭を出しゃいいのだ、そういう制度をつくってやりゃいいのだというようなやり方では、いつまでたってもこういう問題は私は解決しないと思うんです。人間と人間が生きている以上、人間と人間の肌と肌の触れ合いがなければ、こういう問題は解決しないのですよ。その点をよくひとつ含んでおいていただきたいと思います。  それからこういうのがあるのですがね。「児童福祉施設、重症児施設には余裕があるが、成人施設はいつも満員で利用できない」これは神奈川県のある方の御意見なんですが、こういった成人施設の方、こういうことに対する厚生省の御見解はどうなんですか、この制度で結構ですけれども。
  214. 山内豊徳

    説明員(山内豊徳君) この制度で成人の施設が非常に不自由しているということは、それは、とりもなおさず、現在の全国における心身障害施設におきまして、子供の施設については一応の需要を賄うものができたけれども、成人の施設は依然として少ないという事情の反映でございます。これについては率直に私ども十分でないことを認めざるを得ないのでございますが、過去五年間福祉施設の緊急整備計画などで一定の目標値を立てまして、国庫補助の目標も立てたのでございますが、ほかの保育所、老人ホームがほぼ一〇〇%近い達成を見ながら、なお成人の精薄施設につきましては国の目標値の三割、四割という線で終わっているわけでございます。したがいまして、緊急一時保護の問題ではございますが、同時に、基本的な心身障害児福祉施設の整備の問題として今年度予算を含めて成人施設に非常に重点的な指導をしているのが現状でございます。
  215. 下村泰

    下村泰君 まだ始めたばかりですからね。もっとも地方自治体ではそれぞれおやりになっていらっしゃるようで、どうぞひとつそういうのをモデルケースとして、品川区のこの任に当たっていらっしゃる方も、地方自治体の市区町村だからこういうふうにきめ細やかにできるけれども、国あるいは県の段階ではこれほど私らがやっているように細かにはできないでしょう、こう言っているわけですね。ここらの人にこう言われて、国側の方が、そうです、ごもっともですじゃ困る。冗談言っちゃいけない。国の方のシステムを上げればこれだけのことはできるんだというような対応性がなければ何の役にも立たないと思いますので、この件はまだまだ始まったばかりでございますのでこちらからお願いだけにとどめておきますので、ひとつよろしくお願いします。  次に、優生保護法でございますけれども、たまたま昨年十一月七日の予算委員会で前の田中厚生大臣にお伺いしましたところが、優生保護法で八カ月未満を一カ月短縮したいと私も思うというところから一カ月短縮されまして、いまは七カ月未満となっておりますけれども、さて、もうあれからだいぶの日にちもたつのですが、もっとも次官通達の出たのがことしの一月二十二日ですかと記憶しておりますが、それからまだ幾月もたっておりませんが、その後の状況というのが出ておりますでしょうか、どうですか。
  216. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) お答えいたします。  ただいま先生お話しのように、この一月の二十日付で事務次官通知の改正をいたしたわけであります。その後都道府県知事を通じましてこの趣旨の徹底に実は努めておるところでございますけれども、その自治体の実施状況につきましては、これは現在の施行規則で一年間でございますから、来年の一月末日までに報告するということになっておりまして、その実施の具体的なものについては現在はつかんでおりません。
  217. 下村泰

    下村泰君 中にはすばらしいお医者さんもいれば、中にはたちの悪い方もいて、中絶だけで病院を大きくして法の裁きを受けたという方も聞いておりますから、あるいはこういう次官通達が出ても依然としてまだ続けている方もおるというようなうわさも聞いております。  この次官通達が出されて施行するに当たって、厚生省は、各産婦人科のお医者さん、ことに日母医の方々ですか、どういうふうな御指導をなさったのでしょうか。
  218. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) この普及徹底につきましては、先生いまお話しのとおり、私たちとしても十分徹底を図りたいという気持ちでございまして、先ほども申し上げましたような各都道府県を通じましての行政レベルでの普及徹底を図ります一方、いまお話がございました日本母性保護医協会、これは指定医の全国的な団体でございますけれども、これを通じますとともに、また日本医師会等を通じましてもこの普及が徹底するように精力的にその趣旨の普及を図っているというふうな実情でございます。
  219. 下村泰

    下村泰君 その具体的な方法としてどういうふうな指導に当たっていらっしゃるでしょう。
  220. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) 具体的な方法といたしましては、実はブロック別に指定医の研修会を行っております。それからさらに、母性保護医協会が出しております、これは月報で出しておりますものがございますが、それを通じまして、これは全部の指定医のところに参っていると思いますが、そういう方法でやっております。それからさらに、それの徹底を図るために、それぞれのそのことを承知したということを実際に実はサインを各指定医から取るというふうな方法まで講じましてその徹底を図っております。
  221. 下村泰

    下村泰君 以前もこの法務委員会でお尋ねをいたしましたところが、厚生省のある方が、各ブロックごとに分けて御指導なさっているということをうかがいまして、実は東京都内の有名な産婦人科へ全部電話をかけまして、こういう御経験があるかと言ったら、あったような気がするというのが一番熱意のある返事で、あとは、そんなのがあるのかいとか、知らないなと、こういう返事ばっかりでございました。ですから、その点をもう一偏確かめておきたいのですが、どうでしょう。
  222. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) そのような御指摘が以前にも先生の方からございました。今回の徹底につきましては、いま申し上げましたように、もう個々の指定医がそれを承知したというふうなことを実際に確認するようなそういう方法までとりましてやっております。
  223. 下村泰

    下村泰君 しかし、中には大変こういうことに無関心な女性がおりまして、時によっては法的に処理できないような状態になった場合、こういう場合にはやはり緊急避難みたいなような名目、あるいは優生保護法に照らし合わせた方法で処理はされていますか、なさいますか。
  224. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) 私ども、今度のこの次官通知の改定で、いわゆる法二条に言います「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」ということについての解釈を示したわけでございます。したがいまして、私どもとしては、従来の八カ月未満というふうな形で行われているということは、これはあり得ないではないかというふうに考えております。
  225. 下村泰

    下村泰君 どうぞひとつ徹底的な御指導をお願いしたいと思います。  ところが、こういうことが、たとえば八カ月未満が七カ月になったからといって、六カ月までは処理できるというようなことになったからといって、それじゃ未婚の母が減るか、あるいは子捨て・子殺しが減るかといったら、これは減った傾向が全然ないんですね。いまだかってないんです。いまだに、ロッカーに赤ん坊を置き去りにするとか、あるいは嬰児の遺棄死体であるとか、こういう事件は後を絶たないように起きております。これをいつかお伺いしたときには、検挙率はほとんどゼロに近いような状態で、捨てる親がほとんどつかまらないんですね。こういうことが新聞記事になりますると、思い余った人がそれと同じようなことをまた次から次へとやっていくわけです。  実は、こういったことをされたのでは赤ん坊の生命がたまらぬということからでございましょうが、愛知県産婦人科医会の赤ちゃん縁組無料相談部、こういう組織ができたのを厚生省は御存じでしょうか。
  226. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) 承知いたしておりません。
  227. 下村泰

    下村泰君 それではどうぞ一部お持ち下さい。  これは愛知県の産婦人科の皆さんが集まりまして、こういう悲劇を少しでもなくさなければいけないというので、赤ちゃんを産んだけれども育てられない、育ててほしいという申込書と、それから夫婦生活をして何年もたつが赤ちゃんができない、だから育てたい、つまり養子縁組の無料相談みたいなものなんですが、これは法的には悪いことじゃございませんし、別に法に触れるようなこともございません。ただこれは橋渡しをするだけですね、民事局長ね。ですから、こういう制度ができて、これは私は第一歩だと思うのですけれども、ただ、この制度ができたからといって、すぐに子捨て・子殺しがなくなるとは思いません。で、こういうことを防ぐには、先般もお尋ねしたのですけれども、特別養子制度という制度ができるのが一番すばらしい方法ではないかと思うのですけれども、法務省の方はいかがでございましょうか。
  228. 香川保一

    政府委員香川保一君) ただいまお仰せの特別養子制度、これは実はあるいはその中身がいろいろおっしゃる方によって違うかもしれませんけれども、法制審議会の身分法小委員会におきましてこの問題が検討されたことがあるのでございますが、その当時は、やはり問題の事柄が民法の親族法、相続法の根幹に触れる問題でもございますので、いろいろ賛否両論ございまして、結論は留保されまして、今日まで結論が出ていないわけでございます。特別養子制度というのは、一つに言われているような他人の子供を実子と同じような法律上の扱いをするというふうなことは、これはとうてい民法をもってしてはいかんともしがたいことだろうと思うのでありますが、それをまあ一歩下がってと申しますか、養子制度の活用といいますか、何と申していいかあれでございますが、戸籍上養子ということにしないで実子ということで実質養子制度を運用するというふうなことを意味するといたしますと、これはやはりまた戸籍簿の真実性の問題、ひいてはその戸籍簿の記載によっていろいろ親族関係、相続関係というものが動くわけでございますので、やはりなかなかむずかしい問題があるということでございます。法制審議会におきまして、午前中も申しましたように、現在、相続法の改正問題に取り組んでいただいておるわけでございまして、私どもとしましては、この特別養子制度というものが先生を初めとしていろいろ大きく問題になってきておりますので、相続法の検討が済んだところで親族法の一つの問題としてこの問題を御検討願いたいというふうなことでお願いいたしておる状況でございます。
  229. 下村泰

    下村泰君 これだけの問題ですから、いかに法制審議会にお願いしても、そんなにすぐにできるはずはないと思うのでございますけれどもね。たとえば、現在における養子制度でございますと、これはどなたでもおわかりになると思いますけれども、いままで実の親であったと本人は思っていたものが、ある日突然、実は育ての親であって本当の親ではなかったと。じゃ、本当の親はどこにいるんだというようなことから非行に走ったり、あるいは本当の親を捜しに行ってそれきり帰ってこなくなってしまったとか、そのことによって今度は親子が断絶、いままで何も波風の立たなかった家庭に波風が立つとかというような悲劇はもういままで数限りなくあります。そうかと思うと、実子同様に育てて、これがある程度大きくなりました、財産も残りましたという段階になると、今度は、その財産をとられたくない、親子不存在確認というまた訴訟が起きてくる。これが年に三千件もあると言われております。そうすると、十万や十五万のそういう地にもぐっている家庭は幾らもあるということにもなります。  厚生省の方にこういう通知が行っていなかったと。厚生省の方として、じゃ、いままで御存じなかったわけですか。
  230. 榊孝悌

    説明員(榊孝悌君) はい。
  231. 下村泰

    下村泰君 ああ、そうですか。それはそれで結構でございます。でも、しかし、厚生省の方としても、これは別に何も文句のない筋のものでございましょうし、法務省としても別に何の文句の筋もないと思いますがね。ただ、ここにも書いてあるんです、こういうことが。一番最後の方のページでございますけれども、「すなわち赤ちゃんを生んだ親です。父が不明ならば不明と書いておいて下さい。母が未成年でも、この段階では問題ありませんから親権者や保証人など必要ありません。すなわち未成年の母でもハンコを押して出して下さればよろしい。」と、こういうふうに書いてあるんです。で、「ハンコはミトメ印でよろしい。」と。  ところが、これで養子縁組が済むならば、別にぼくは子殺しあるいは嬰子殺しというのは起きないと思うんです、これで済めば。ところが、ここにもございますように、未婚の母、未成年者ですね、ことに。こういう場合においては、戸籍に絶対子供を生んだということは載るわけですよ。で、この子供を生んだということの戸籍に載ること自体がみんないまのところもういやがるんですね。そのかわりその子供ば育てたくないと。まことにそれはまあ言いかえればわれわれの年代の常識から考えればまことに得手勝手であり、どうも考えられないことなんですけれども、しかし、戦前においてもそういう観念があったために親子がともに命を縮めたりとかいうような事件はやっぱり後を絶たなかったと思うんです。現在でも、結局、生み落としてこういう制度がこのままできて、子供を引き取ってもらって、満足に育ててもらって、あの子は養子だよと言われても、だれもそれに対して偏見を持たずに、みんながむしろ温かい目で見られるような社会情勢ならば、この制度はこのままですばらしいと思いますし、むしろこの制度で私は目いっぱいだと思うんですよ。ところが、養子という文字がついただけ、あるいは顔形が違うから、あれは親子が違うんじゃないかというような問題から、この養子という言葉に対して、事柄に対しても、大変な偏見がある。その偏見からいろんな事件が起きてくるわけですね。ですから、何とかして、諸外国でも行われております、まず親子断絶ですね。生みの親と生まれた子供をまず断絶させる。そして謄本には養子と載っても構わないんです、これは。ところが、まず実の親子の断絶をしてからいわゆる断絶養子制度という制度がいち早くできてくれないと、こういう事件は後を絶ちませんし、また、それができたからといって即こういう事件がなくなるということも考えられませんけれども、いま救うべき道としてはそういうことしか考えられないんです。十一月の七日に予算委員会でお話ししましたところが、法務大臣から私のうちへこういうお手紙が来ました。これは、稻葉法務大臣、覚えていらっしゃるだろうと思いますけれども、私がこの七カ月のことを質問しましたときに、法務大臣がもし私に質問されれば私は絶対に明白で殺人罪ですと答えますと、こういうふうな書簡をいただいているわけです。したがいまして、法務大臣もこれだけのお考えをお持ちなんでございますから、できれば一日も早く何らかの方法で人間の英知を集めて、まずまず断絶養子制度、その辺から入っていただきたいと思うのですけれども、そのくらいのことはまず民事局長からお伺いします。そのくらいのことはどうなんですか、その辺からは。
  232. 香川保一

    政府委員香川保一君) 親子の生みの母親と子供の親子関係の断絶、これなかなか勇気の要ることだと思うのでありまして、ただ、下村委員のおっしゃるのは、もちろんその場合に母親の健康の問題もございましょうが、子供の一つの幸福ということを中心にして考えますと、未成年の十五歳未満の子供を養子にする場合には、現行法でも家庭裁判所の許可が要るわけでございます。その場合に、これは全く私の思いつき的なことでございますけれども、母親不明のいわば捨て子のような場合と同じような扱いと言ってはちょっと言い過ぎでございますけれども、さようなことに準じたようなことは法律的には考えられないことはないと思うのでありますけれども、しかし、やはり子供の将来を考えました場合に、家庭裁判所の許可が子供の将来の幸福をおもんばかる一つのチェックではございますけれども、それと同じように、やはりどこのうちに養子にやるかということを選択してもらう何かの機関と申しますか、そういうものが一方にございませんと、なかなかこれは単に家庭裁判所の許可だけで子供の点は心配ないというほどの自信はないわけです。そういう意味で、さような方法、思いつきでございますけれども、そんな方法が一つ考えられないことはないなと。ただ、しかし、これもやはり養子という制度を利用してのことでございまして、さらに戸籍に実子の記載をしろとまでいうことになりますと、これはやっぱりそう簡単にはいかぬ問題じゃないか。その辺あれやこれや踏まえて法制審議会において御検討を煩わす予定にいたしておりますけれども、養子制度のいま申しましたような程度の活用と申しますか、その枠内での何らかの別途の方法を考えるということは、必ずしもそう絶対いけないというふうなことではないように思うのであります。しかし、養子だというふうに戸籍に記載することによって基本的に問題は解決しない。そうなれば、方法としては実子という以外にないのでございますけれども、そこまではなかなかよほど慎重に検討しなきゃならない問題じゃないかと、かように考えておるわけであります。
  233. 下村泰

    下村泰君 その方法を話しておりますと、とてもじゃないけれども短い時間でお話しできませんし、明治学院の中川高男教授の各国の視察をしてまいりました報告もいろいろ伺いました。方法論としては各国は各国なりに御自分の国情に合った方法を用いているわけで、一番上手に扱われておりますのがアメリカのカリフォルニア法案でありますけれども、そういう方法は幾らもある。しかし、わが国にはわが国に沿った方法があると思いますけれども、それをひとつなおなお御検討していただいて、一日も早くこういった方法によりまして、つまらないいわゆる既成概念によって生める子供が生めないというような状態になるのは悲しゅうございますので、先般も法務大臣にいろいろお伺いいたしましたけれども、法務大臣のここでひとつ特別養子制度に対する考えを少しでもお聞かせいただければと思います。
  234. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 下村さんはよく予算委員会やこういう法務委員会で提案をされますが、大変に同感な提案が多かったのです、私どもの経験によれば。今回のこの点についても、聞いたときは、ああ、そういう世界の趨勢かなあと思って感心して聞いておったわけです。いろいろこういうふうに人に聞いてみますと、法律上いまの現行制度の相続、親族法の関係に相当影響するようなことを言うておどかすもんですから、なるほどむずかしいものなんだなと。しかし、私は、水子のようなことが許されるべきことじゃないと思っているんですな。生命の尊重というなら、それはあなた、中で殺すのと、五カ月ぐらいで生まれるのがありますわな、これを殺せば殺人罪。いまのあなたの御提案によって七カ月以内とこういうふうになっている。そうすると、六カ月の末で中絶すれば、それは優生保護法によって中絶で殺人じゃないという。どうも真実でない、生命の尊重という点での判断からすると。そうして、そういうことがたくさん行われるものだから、日本人の寿命が延びた延びたなんて言うけれども、あの中絶の生命が六カ月ぐらいでさっとこう消されてしまうわけですから、そういうのを比較したら、そんなに日本人の寿命は延びていないと思っているのですね。そんなことも考えたりして、いろいろあって、これは疑問だなあと。しかし、生まれた子供を実子としてしまうということも、それはうそですものな。うそはどうもおかしいことになるなあと思ったりしまして、とうおいつ悩んでおると、こういうのが私の心境です。しかし、こういうことは大変な大きな問題になってきておりますから、かつて法制審議会民法部会で議論された当時とはまた事情が違ってきておりますし、改めまして審議会にかけて検討すべき問題ではあるなといういま心持ちでおります。
  235. 下村泰

    下村泰君 ありがとうございました。
  236. 原田立

    理事原田立君) 本日の調査はこの程度でとどめます。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十四分散会      —————・—————