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国務大臣(
永井道雄君)
教育課程が実際に
指導要領を変え、さらにまた新しい教科書ができますのは
昭和五十五年でございます。しかし、これに基づきまして移行措置に入りますのは
昭和五十三年でございます。というのは、現在の
指導要領の部分的な変更というものによって移行措置をするわけでございます。なおまた、
昭和五十二年、すなわち来年から
研究指定校というものの数を
相当ふやしまして、これは千をはるかに超える数でございますが、いろいろな形でやっていくということでございますから、
教育課程審議会のいわば目標といたしますところは、五十五年から動き出すというのではなくて、私は来年から動くように運んでいきたいと思っているわけでございます。また事実、
教育課程だけが変わりまして、さらにいい
教育になるというほど事態は甘くないと思います。そこで、それと他のものを連動させませんといけないわけですが、現在、国立
大学の共通入試、これは
昭和五十四年をめどとして進めていくということをいま国立
大学協会で
考えておられますので、私
どもは、それとそれこそ連動しながら予算編成をいたしておりますので、来
年度の
概算要求の中に入試
センターを設置するということを入れさしていただきました。これはおよそ三百人ほどの人が働きまして、そしてコンピューター等を置きましてもう五十四年から指導し得るということを目指しているわけでございます。ただ、これが五十四年から発足いたしますから、五十三年の移行措置というものとある程度並行するわけですが、さて
大学入試という場合に、これが国立に限定されますと問題がございます。
そこで、公立、私立をどうするかということでございますが、公立
大学協会からはすでにわれわれの方で国立の方がもう少し進んだ
段階においては協力
関係に入りたいというお申し出がございますので、それに運んでまいりたい。また私学の方につきましては現
段階では団体としてそういう要求はございません。しかし有力な
学校の中で学長がすでに数人、私に対してそうした
方向を
考えているということでございますので、これをどう連動させていくかということが
一つ。さらに、共通一時テ
ストの場合はやはり
ペーパーテストでございますが、二次テ
ストの
段階におきまして、たとえば実技あるいはエッセイ、それからいろいろな形の、たとえば音楽の場合は音楽を調べるというような二次テ
ストがどういう姿になるかということが非常に
高校以下の
教育課程と関連いたしましてまいりますので、その二次テ
ストをとう進めるかということがこの次の問題となってまいりまして、単に五十四年から共通テ
ストが発足するというだけではだめである。この問題に目下国立
大学協会においても取り組んでいただいておりますし、また高等
学校等からもいろいろな要望がございますので、これは国会などにおいても大いに御審議をいただきますとありがたいと思っていることの
一つですので率直に申し上げる次第でございます。
なお、第三番目の
大学改革でございますが、これは一番いわゆるラジカルな
考え方は、東大の入試をくじ引きにしてはどうかとか、東大解体論なんというのもありますが、まあ私はそういうやり方をとっていないわけでございます。一面におきまして少なくも私立
大学の底上げを
考えている。これは財政的に、これも国会でお決めいただいた私学振興助成法に基づくものでございます。ただ、その底上げを
考えていくときに、けさほどから問題になりました九州学院
大学のような
大学もあるわけでございますから、
相当の傾斜配分というものをやはり行うことが妥当である、ということは、一方で
相当伸びてくる私学があり、まあいわばやはり山もあり、高い山も低い山もあるという姿かと思います。さらに公立はなかなか、われわれとしてそれをどうこうというふうに国政上干渉しにくいものでございますが、国立につきましては、東大
中心主義ではなくって、まあ少なくも、現在の予算でも旧七帝大、現在そこには
相当の予算が配分されておりますが、そこにとどまらないように配慮をいたしていく。具体的に申しますと、まあ筑波
大学というものがもうすでにできておりますが、そのほかに広島
大学もまあ古くからの文理大、高師の伝統を持っておりますが、手狭にもなってきており、また優秀な
先生方を抱えておられますから、これは西条に移転して
一つの地方
大学の
中心になっていく。まあそのほか
大学全体という姿でないものでは、いろいろな
大学におきまして
大学院のコースを強化いたしましたり、あるいは学部、学科、そういうものを強化することもいろいろ進めてきているわけでございます。
さらに大事なことは、ただ
大学だけを尊重するという
考えを私はやはりこの際もう脱却すべきであるというふうに
考えますので、専修
学校というものを、これも国会のおかげでこの四月初めから発足いたしましたが、これはやはり意外に、つまり予想以上に要望がございまして、現
段階ですでに千を超える専修
学校を認可するに至りました。そしてその専修
学校の卒業生というものの就職率を調べますというと、まあ
大学並み、あるいはどちらかというと、元気がそれほどよくない
大学よりは、よろしいということは明らかでございますので、高等
教育懇談会におきましても、専修
学校は広い
意味の高等
教育機関であるというふうにお
考えをいただいているわけでございます。
さらに来
年度の予算との関連で申しますと、やはり峰をたくさんつくっていくということと、
大学の門戸開放ということが大事でございますので、懸案の放送
大学というものをひとつ来年からぜひ発足させたいということでございます。これは最終的には四十万人を収容し得るということを目指しているわけでございますが、従来のような
大学と違う。まあそういうふうな姿で、
大学改革という場合、
一つのものを変えて、非常にショッキングな形で
大学が変わるというようなほど、
わが国の高等
教育制度は現在単純なものではない。そういたしますと、その全体をやはり見通しまして、私学の強化であるとか、専修
学校、放送
大学、あるいは
大学間の協力というようなことを
考えながら、全体構造を変えていく。そこで、三つのものの連動
関係というのは、五十二年、五十三年、五十四年、年を経るに従いまして、私は連動
関係が起こってまいりますから、
試験地獄というものが一切合財なくなってしまうということはなく、やはり
試験というものは続くと思いますし、競争は続くと思いますが、現在のような
ペーパーテスト一辺倒というものからは次第に脱していくことができるのではないか。そうしてまた、現在よりはいわゆる実技というようなものが重んじられたり、あるいはもっと個性に合った各
学校での活動、これを内申に記録したものが上級
学校でも信用されるようになるのではないか、そうして競争も適正なものに移行し得るのではないかと
考えております。
ただ問題は、四番目の学歴偏重をどうするかということでございますが、これは
文部省がなかなか直接左右しにくい問題でございますから、労働省などともお話を続けてきているのですが、幸いたとえば本年の国民生活白書を見ていただきますというと、この十カ年間に学歴別から生じますところの賃金格差というものは、非常に狭まったということは明らかでございます。
わが国の経済がこれから低成長、あるいは安定成長という
段階に入ってまいりますと、いよいよその傾向は深まるのではないかという予測もあり、また、単なる名目だけの学歴よりは、本当に、実際能力を持っている人が尊重されるというような予測もございますので、私はそうした点からもいま申し上げた三つの
文部省としてやるべきものは一応出発の形が整ったということでございますが、この学歴偏重のことは、われわれの方から繰り返し呼びかけていくことによって、現在の事態というものは一層進んでいくのではなかろうか。また
文部省といたしましては、その呼びかけを怠ってはいけませんので、これも来
年度予算の中に、国民の学歴意識に関する
調査というものを含めさしていただきまして、これは
相当本格的な
調査を来年やりまして、これは発表する。国民の中にも
相当変化を生じているのではないかと
考えておりますので、これをぜひ来年は実施をいたしたい。
現状報告を申しますればさような
状況で進んでいるわけでございます。
〔理事
内藤誉三郎君退席、
委員長着席〕