○木島則夫君 私は、民社党を代表して、
公衆電気通信法の一部を
改正する
法律案に対し反対の討論を行うものです。
政府がいつも主張しているように、すべての公共料金を一律に、しかも長期にわたって凍結することが不可能に近いことはわれわれも
理解をしているつもりです。しかし、今回の
電話、電報料金の大幅な
値上げにつきましては、依然として九%台に推移してきた消費者物価をさらに押し上げ、国民生活をますます苦境に陥れるばかりでなく、次に
指摘をする理由から、国民を十分に納得させるだけの合理性、妥当性を欠いたものとして反対せざるを得ません。
私が反対する最大の理由は、今回の
改正案が収支の均衡を盾に単に料金
値上げだけを先行させ、料金体系の合理化改善を全く図っていない点であります。その具体例としては特に家計に与える打撃の大きい住宅
電話の基本料金であります。
改正案は、現行の二倍、つまり東京の場合、月額九百円を千八百円にするというものです。これは住宅用
電話と事務用
電話の利用価値及び負担能力の相違、全国即時自動化の現状における級局区分制度のあり方などについて抜本的に
検討することなく、固定収入源の強化という経営サイドの論理のみを一方的に国民に押しつけたものであります。
ここで問題になりますのは、住宅用
電話を
赤字と決めつけている点です。住宅用
電話は発信面からの収入こそなるほど少ないが、事務用
電話からの受信面を通じて総収入に大いに寄与している点も見逃してはならない現実であります。
私は、
電話部門の収支は一律の
値上げによらず、料金体系のひずみを是正することによって大幅に改善すべきだと思うが、今回の
改正案には盛られておりません。三分七円の市内通話料金の区域は大体半径十五キロぐらいになっているが、この中身は
大都市と地方では大変な差があります。たとえば市内料金区域に含まれている
加入電話数を見ると、東京二十三区三百十四万、大阪百九万、名古屋六十七万、岡山十五万、倉敷十万などで、同じ三分七円の市内料金でも便益には大きな差があります。この地域の差を考えて基本料には差があり、東京、大阪、名古屋の基本料は事務用千三百円、住宅用九百円、岡山、倉敷は事務用千百五十円、住宅用八百円となっておりますが、この差は便益の格差の巨大さと比べればきわめて小さく、
大都市の事務用
電話は安い市内料金でこの集積の利益をフルに利用しているわけであり、事務用
電話に対してはいまの数倍の基本料を考えてもしかるべきであります。要するに、総括原価は、利用者の便益に応じて公平に負担をするという料金決定の原則から、かなり外れている点も反対の理由として挙げざるを得ないわけです。
料金体系の矛盾として次に
指摘をしたいのは、距離別料金格差が是正をされていない点です。これは自動即時化によってコスト安になっていることからしても当を得ないだけでなく、欧米諸国と比べても割高であります。日本は、一区域内の通話料を一とすると、千キロメートル(東京-福岡間)は七十二倍、これに対し米国は十四倍、西ドイツは十五倍です。距離的錯覚を利用した料金体系が電電
公社に大きな利益をもたらしたと言っていいでしょう。
改正案は、技術革新の成果は
電話利用者にも還元されるべきであるという原則を全く無視したものであります。
次に、政府の責任を厳しく追及したいのは、福祉の視点からの温かい配慮がなされていないということです。心身障害者、寝たきり高齢者などにとって、
電話は現代社会を生きていくために不可欠であることからいいまして、
電話料の大幅な
値上げは日常生活の維持に深刻な影響を及ぼすことは明白です。福祉国家を志向するわが国において、福祉的な政策料金制度の確立が重要課題であることを銘記すべきです。
改正案に反対する次の大きな理由の
一つは、合理化に対する経営姿勢が熱意を欠き、依然として惰性に流れている点です。その典型的な例は電報部門に見出すことができます。
電報部門の収支
状況は年々悪化の一途をたどり、昭和三十年度の
赤字は約百億でしたが、ここ十年来、
電話の普及に比例して電報の扱い件数は毎年四百万から五百万通減り続け、去る四十年度には国民一人当たり年間〇・九通だったものが五十年度には〇・四通に減っています。要するに一通の電報を受けてから配達するまでに料金の十倍近くの費用がかかります。五十年度の
赤字額は千八十八億と三十年度の十倍以上にふくれ上がり、
公社全体の事業収支
赤字二千七百五十億円の四〇%を占めているほどです。このような最悪の事態をもたらした根本的な
原因は、電報利用の大部分が儀礼的、社交的なものになっている事実を直視して、電報事業の縮小またはその廃止を基本とし、
電話のない僻地のどうしても必要な電報などについては低い政策料金を設定し存続するなど、抜本的な対策を講じなかったことにあります。
私が特に主張したいのは、電報部門の
赤字の解消は不可能です。それならば現状でいかに
赤字幅を縮小できるかを真剣に考えるべきです。それには不必要な中継局を整理統合すること、これによって電報送達に支障のないことは電電
公社も言明しています。さらに配達段階での合理化を図るとともに、この際、特に申し上げておきたいことは、膨大な
赤字に悩む
公社が委託局に対して支払っている委託費、手数料のこの膨大さについて根本的に見直すべき時期に来ていることをはっきりと
指摘をしたいと思います。電報が推移してきた今日的
状況の中では、時として歴史的経過を断ち切る勇断も必要であることを強調いたします。
さて、今回の
改正案が収支の均衡を盾に料金
値上げだけを先行させ、料金体系の合理化改善を全く図っていない点は冒頭で
指摘しましたが、仮に
改正案が実施されたとして、収支の均衡はたかだか数年もつかもたないかという
程度です。この際、
公社のあるべき姿を明示すべきことも忘れてはならない問題です。それは
公社の経営をいかに図るかという根本の問題にもつながるからです。電電
公社のあるべき姿、ビジョンの明示されない
改正案はまことに不満でございます。
終わりに当たり、特に強調したいことは、電電
公社もいまのうちに抜本的な経営の刷新を図らなければ国鉄の二の舞を演じるということであります。言うまでもなく、電電
公社は独占公企体であり、国民は、料金が不当に高くとも、サービスに欠陥があろうとも、
公社以外に選択の道はなく、その料金は実質的には税金と同じ性格を持っているものです。このような
公社の企業としての有利性の上にあぐらをかいて真剣な
努力を怠るならば、第二の国鉄化は明白です。このような事態に立ち至らないよう、政府及び電電
公社に厳しく要望、
指摘をして、私の反対討論を終わるものです。