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参考人(
村田宗忠君) 私、
公社債引受協会の
村田でございます。
委員の諸
先生方におかれましては、平素来から
金融資本市場の諸問題につきまして何かと御高配を賜っておりまして、この席をかりまして厚くお礼申し上げる次第でございます。
さて、本日は、
昭和五十一
年度の
財政特例法案につきまして
意見を申し述べるようにということでございますので、二、三申し述べさしていただきたいと存ずる次第でございます。
何分にも
背景をなしますところの
経済の
現状でございますけれ
ども、これがやや
停滞ぎみでございますだけに、せっかくの
景気回復基調を
財政面からもはっきりと裏打ちをするということが必要であろうかと、このように存じておる次第でございます。御
承知のとおり、
わが国の
経済は、昨年一−三月をボトムといたしまして、この一年半の間一応は順調に
回復軌道に乗ってまいったかと思うのでございます。しかしながら、いま一歩その
背景に立ち入ってみますと、今後について申しますならば、必ずしも手放しの楽観も許されないのではないかと、かように存ずるのでございます。と申しますのも、御高承のとおり、今回
景気の
回復の
リード役と申しますか二つの
要因、つまり、
個人消費と
輸出であろうかと存じますが、それがどうやらその
効果を一応一巡させてしまった、そういうふうな感じもいたさないわけではございません。
個人消費につきましては、オイルショックの後に異常に高まりましたところの
貯蓄性向という問題がございました。つまり、それに見合った大幅な
消費の落ち込みがございました。
景気回復の足を引っ張る
要因になっていたわけではなかろうかと思われますが、それも
現状ではすでに前の水準に戻っておりまして、したがいまして、
個人消費の
伸びもそれに対応いたしまして、一応のところに落ちついてまいったのではないか、このように存ぜられますので、当面これ以上の
期待もできにくいのではないか、かように存じております。
それでは、
景気回復をリードしたいま一つの
要因でございましたところの
輸出でございますが、これはどうかというと、これも昨年が低かったために、何と申しますか、げたを履いているとでも申しますか、前年同期比ではなおかなりの
伸びがあるわけでございますけれ
ども、絶対額で見ますと、この三月をピークにいたしまして高水準ながらすでに
横ばいの
状況に入っておるようでございます。一月以降の
輸出の急増は、
アメリカの
景気回復に支えられたものであることは申されておるところでございますけれ
ども、その後
アメリカの
経済も次第になだらかな上昇に移ってまいりました。それを考えますと、
輸出にもそうそうこれ以上の
期待をかけるわけにも一概にまいらない、このように存じます。
景気中だるみ論が言われております
現状の中で、今後とも順調な
景気の
回復を
期待するといたしませば、どうしても
消費、
輸出にかわる第三の
リード役といたしまして、これが必要であろうかと思うのでございます。それに
民間設備投資にも
余り期待が持てない
現状でございます。この
役割りを担い得るものはと申し上げませば、
財政ということに相なろうかと存ずるのでございます。この五十一
年度予算と
一体をなしております本
財政特例法案の速やかな
成立によりまして、
景気回復に水を差されるといったことが避けられますように、切に御
期待申し上げる次第でございます。
申し上げたいことの第二は、本
財政特例法案に関連いたしまして生ずる
国債発行ペースの
タイムラグと
資本市場との関連でございます。私
どもは
国債を初めといたします
公社債の
発行につきましては、かねてからできるだけ上期中に
前倒しぎみに御
運営願いたいということを御
当局に要望してまいっておりましたわけでございます。それと申しますのも、下期に入りますと、
民間資金需要が
回復してまいりました場合に、
金融市場、
発行市場におきまして、
公共資金と
民間資金との
競合がかりそめにも起こることがないように、こういう念願からでございます。ただ、目下のところは、
景気回復のスピードがやや鈍っております。
設備投資も
足踏み状態にあるというふうなことから、当面はそうした
意味の心配はまあまあなかろうかと、かように存じておりますのでございますけれ
ども、しかしながら、この秋でございますが、季節的には
金融が緩む時期でございます。こうした緩む時期を迎えながら、一方では
特例国債の
発行ができないというようなやや変則的な
状態が今後も続くといたしますと、
特例国債の完全な
消化につきまして、かなり困難な
状況が伴う
懸念がないでもない、このように存ずる次第でございます。幸いに九月、十月の
個人消化につきましては、何とか
個人消化予定額だけは、大幅にぶれることのないように御
配慮をいただいておりますが、こうした
意味合いからも、
予算と
特例法案とは
一体をなすものであるという点につきまして、今後とも格段の御
配慮をいただきますならば、私
どもの立場といたしましても、大変に幸いでございまして、
お願い申し上げたい、かように存ずる次第でございます。
最後に、この席をおかりいたしましてただいま申し上げました
国債の
個人消化につきまして、若干近況を御報告申し上げまして、諸
先生方の御
理解を賜りたい、かように存ずる次第でございます。
御
承知のとおり、私
ども証券界は、
昭和四十一年に
建設国債が
発行されまして以来、この十年間
国債の
個人消化にはずいぶん苦労しながら
努力を重ねてまいりました次第でございます。その額は今日まで、大した数字でもないのでございますけれ
ども、累計で一兆八千億円、通算いたしまして
発行額の約一一%、これを
個人に
消化してまいったことに相なります。しかしながら、昨年、五十
年度に限って申しますと、
年度半ばから
国債の
発行額は急に拡大いたしましたために、
個人消化というものがそれに合わせて急に断層的にふえるというわけにはいかないものでございますために、前
年度比七二%増の三千五十七億円を取り扱ってはおりますけれ
ども、急に大量化いたしましたところの
発行額全体の中で占める割合から申しますと、わずか六・八%という一時まことに苦しい時期がございましたわけでございます。こうした実情を踏まえまして、私
どもは
国債の
個人消化拡大のための諸
条件の
整備につきまして、種々
お願いを申し上げてまいったわけでございます。幸い、昨年末における
金利改定の際におきまして、
国債の
発行条件を一歩
市場実勢に近づけていただいた。その
努力がなされましたこと、また、
国債のPRなどにつきましても、御
当局のいろいろの御
努力もいただきまして、本年に入りましてようやく
個人消化は着実な
増加を見せるようになりました、ようやく好調をたどるようになったわけでございます。もっともこのところ
努力はいたしておりますものの、やや
消化状況が
横ばいになっておるというふうなことを若干
懸念をいたしております。
具体的に申し上げますと、昨年四−九月ごろは
月間個人消化は百八十億円
程度でございまして、昨年末から逐次
増加をいたしまして、本
年度に入りまして
月間六、七百億というふうに推移をいたしております。このように本
年度に入りまして、
わが国の
国債個人消化は、
増加傾向を示しておるとは申しながら、それじゃこれでいいのかと申しますと、これを
欧米諸国に比べますと、まだまだその間に距離がある、このように存ずるのでございます。
これを
個人金融資産の中で、
国債の
保有額がどのくらいを占めているかという比率で申し上げますと、
わが国の場合は、まだたかだか〇・五%でございます。〇・五%にすぎないのでございますが、諸外国の例で申し上げますと、米国では三・九%、英国では七・一%、西独でさえも二・〇%といったことで、今後まだよほどの
努力の余地が残されておる、このように存じております。この点私
どもといたしましても、
国債発行に
公募原則を貫くという
意味から見まして、また、
国民経済的に見ましても、
個人消化拡大にもっともっと力を入れていかなきゃならぬのじゃないか、このように考えているところでございます。そのためのいろいろな
環境整備、たとえば
国債発行の
多様化とか、さらには
流通市場の
整備といったことにつきましても、私
ども努力はもとよりでございますが、なお今後いろいろと
お願いも申し上げていかなければならぬことも多々あるのではないかと、かように存じておる次第でございます。
委員の諸
先生方におかれましても、何とぞ今後とも引き続きましてよろしく御
理解と御支援を賜りますように
お願い申し上げる次第でございます。
簡単ではございますけれ
ども、以上をもちまして私の
陳述を終わらせていただきます、ありがとうございました。