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1976-10-13 第78回国会 参議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月十三日(水曜日)    午後三時四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         岩動 道行君     理 事                 戸塚 進也君                 中西 一郎君                 野々山一三君                 矢追 秀彦君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 糸山英太郎君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 高橋 誉冨君                 鳩山威一郎君                 桧垣徳太郎君                 藤川 一秋君                 宮田  輝君                 大塚  喬君                 福間 知之君                 藤田  進君                 村田 秀三君                 鈴木 一弘君                 近藤 忠孝君                 渡辺  武君    政府委員        大蔵政務次官   斎藤 十朗君        大蔵省主計局次        長        加藤 隆司君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    参考人        全国銀行協会連        合会会長    伊部恭之助君        公社債引受協会        会長       村田 宗忠君        慶應義塾大学教        授        大熊 一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和五十一年度公債発行特例に関する法  律案(第七十七回国会内閣提出衆議院送付)  (継続案件
  2. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  昭和五十一年度公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人方々には、御多忙中のところ大変御無理を申し上げ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  次に、これからの会議の進め方につきましては、まず伊部参考人村田参考人大熊参考人の順で、お一人おおよそ十五分程度意見をお述べいただきまして、その後委員方々からの質疑にお答えをいただくという方法で進めてまいりたいと存じますので、各位の御協力お願いいたします。  それでは、伊部参考人お願いいたします。
  3. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) 伊部でございます。ただいま委員長から御指名をいただきました全国銀行協会連合会伊部でございます。  本日は、財政特例法案につきまして、私ども意見を述べるようにとの御趣旨でお呼び出しをいただいたわけでございますので、特例国債を含みます国債問題一般についての見解を述べさせていただきたいと存じます。  御高承のとおり、日本経済は、この春ごろには二年有余に及びまする長期不況からようやく脱しまして、回復への足がかりをつかむことができたと見られておったのでございまするが、それもっかの間でございまして、夏場以降早くも景気中だるみの様相を呈してまいりました。今後も二歩進んで一歩退くというような歩調を続けるものと考えるのでございます。これは基本的には、石油危機の後遺症がまだ尾を引いているからにほかならないと存ずるのでございます。  すなわち、今日の日本経済は、資源の制約、環境問題、コストインフレ等を基本的な背景といたしまして、減速経済への移行を余儀なくされておるわけでございますが、これに伴いまして家計、企業財政の各部門とも引き続き厳しい調整を迫られているわけでございます。この間にございまして、インフレの抑制と景気の持続的な回復を通じまして、国民生活の安定を期するためには、政策運営面のよろしきを得ることがどうしても必要なことになるわけでございます。  こうした観点からいたしますと、五十一年度予算におきましては、限られた財源のもとで財政効率化を図りつつ、景気浮揚の面にも御配慮をいただいており、まことに適切な措置と存じます。  本予算では、七兆二千七百五十億円の国債発行が予定され、うち三兆七千五百億円は特例国債となることが避けられないとのことでございますが、これは長期にわたる経済停滞の結果、歳入が大幅に減少したためでございまして、まことにやむを得ないものと考えるのでございます。それだけに、現在財政特例法案成立がおくれ、心理的にも実態的にもその影響懸念されているという今日の事態は、私ども憂慮すべきものと考える次第でございます。したがいまして、先生方の御審議を経まして財政特例法が一刻も早く成立するようお願いを申し上げるとともに、これが成立いたしました暁には、私どもといたしましても、経済の安定と国民福祉の充実という見地から、国債引き受けにつきましては、できるだけ極力御協力してまいる考えでございます。  しかしながら、特例国債発行につきましては、国民経済的な観点から見まして二、三考慮しておくべき問題があるように存じます。  その第一は、インフレーションとの関係でございます。すなわち、国債発行による財政支出増加という直接的要因のほかに、それがいわゆるマネーサプライ、すなわち通貨供給増加をもたらし、さらにはそれの波及効果といたしまして総需要の増大が生じ、これが相まちましてインフレをもたらす懸念があるわけでございます。特にわが国国債は、その大半を銀行引き受けておりますが、理屈の上では、銀行引き受けた場合は、それと同額だけ銀行信用創造による政府への資金供与となり、財政支出増加を通じてマネーサプライ増加をもたらすことになります。これが直ちにインフレにつながるということはございませんにしましても、国債大量発行下におきましては、通貨供給、総需要のコントロールを初め、御当局政策全般にわたる適切なかじ取りが非常に重要になってくるのではないかと考える次第でございます。  第二は、国債大量発行によりまして、民間金融に支障が生じるのではないかという、いわゆるクラウディングアウト、すなわち公共資金によりまする民間資金圧迫の問題がございます。幸いにいたしまして、これまでのところ、こういった民間資金公共資金によりまして圧迫されておるというようなことは表面化してはおりませんが、これは民間資金需要鎮静化をしておることによるのでございます。しかしながら、この年明けとともに、企業資金需要増加傾向が表面化してくるというのが現在の一般的な見方でございまして、そこへ大量の国債が重なりますると、民間資金需要が圧迫されるのではないかという懸念が起こってくるわけでございます。確かにこうした状態長期間継続されますると、この問題も出てまいりましょうが、ここ当面の問題に限って申し上げますならば、私どもといたしましては、御当局の御協力のもとに企業個人、あるいは地方公共団体が本当に必要とする資金の貸し出しにつきましては、万全を期していきたい所存でございます。また、事業債消化にも従来どおり御協力を申し上げるつもりでございます。  第三の点は、国債の増発が金融市場に及ぼす影響でございます。国債発行によって民間から吸い上げられました資金は、いずれ財政支出の形で民間に支払われ、政府民間収支は均衡するわけでございまするから、国債発行は、金融市場にとっては、年度間を通じて見ますると中立的な作用をするというふうに申せるわけでございます。しかしながら、月々の動きを見ますると、国債発行財政支出の間にはタイムラグがございまして、必ずしも毎月収支とんとんというわけにはまいりません。つい数年前までは月間国債発行量がたかだか二、三千億円でございましたのに対しまして、最近では月によっては一兆円になんなんとする国債発行されておりまして、月々市場繁閑が増幅されるおそれが大きいわけでございます。特に財政法成立がおくれ、国債発行がずれ込んでまいりますると、金融市場の逼迫する年末以降にしわ寄せ発行される結果金融市場に不測の混乱が生ずる懸念もあるわけでございます。この点市場繁閑に応じた計画的な御発行を特にお願いをする次第でございます。  さて、以上るる申し述べましたように、本年度特例国債発行につきましては、経済金融面との関係から見まして全く問題がないというわけではございません。しかしながら、政策運営のよろしきを得ることによって、いずれも解決は不可能ではないのでございますので、国民生活と雇用の安定のため、景気の着実な回復を図るという現下最大国民経済的課題を実現していくためにも、特例国債発行は必要やむを得ないものと考える次第でございます。  ただ、財政法第四条のたてまえは、決してないがしろにすべきものではないと存じます。特例国債はあくまでも緊急避難的なものと考え、こうしたことが惰性に流れることのないことを前提といたしました上で、今年度国債についてもお引き受けをしてまいりたいと考えておる次第でございます。その意味では、特例国債が昨年度に引き続き、今年度先生方の慎重な御審議を経ておりますことは、この精神に基づくものと存ずる次第でございますが、特例法案は、予算案と表裏一体をなすものでございます以上、財政の円滑な運営を期するためには、できるだけ速やかにその成立を図ることがぜひとも必要と考える次第でございます。  なお、特例国債消化につきましては、建設国債とは別途処理されるように伺っておるわけでございますが、ぜひともそのようにお願いいたしたいと存じます。  最後に、国債大量発行に関し、私ども国債最大引き受け機関として本席をかりて申し添えさしていただきたいことがございます。それは国債発行に当たりましては、ぜひとも市場原理を尊重していただきたいということでございます。特例国債を含みます大量の国債発行が続きますと、国債引き受け金融機関といたしましては、それが運用資産として採算に乗り、かつ重要な準備資産として必要に応じて容易に流動化を図ることによりまして、経営の弾力性が維持されることが不可欠となるわけでございます。また、国債を魅力あるものにして消化層多様化を図る必要がございます。さらにはインフレとの関係から見ましても、常に国債発行の歯どめという点にも十分留意してまいらなければならないと思うのでございます。  こうした種々の条件を満たすために、そのためには国債流通市場整備するとともに、そこにおきまする市場実勢が尊重されるようにならなければなりません。そうなれば、国債商品魅力も向上し、消化層多様化も進むとともに、発行量への歯どめもできるでございましょう。これを要しまするに、国債発行プライスメカニズムにのっとって行われることが最も基本的な前提条件となるわけでございます。  これをもちまして私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  4. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 次に、村田参考人お願いいたします。
  5. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) 私、公社債引受協会村田でございます。委員の諸先生方におかれましては、平素来から金融資本市場の諸問題につきまして何かと御高配を賜っておりまして、この席をかりまして厚くお礼申し上げる次第でございます。  さて、本日は、昭和五十一年度財政特例法案につきまして意見を申し述べるようにということでございますので、二、三申し述べさしていただきたいと存ずる次第でございます。  何分にも背景をなしますところの経済現状でございますけれども、これがやや停滞ぎみでございますだけに、せっかくの景気回復基調財政面からもはっきりと裏打ちをするということが必要であろうかと、このように存じておる次第でございます。御承知のとおり、わが国経済は、昨年一−三月をボトムといたしまして、この一年半の間一応は順調に回復軌道に乗ってまいったかと思うのでございます。しかしながら、いま一歩その背景に立ち入ってみますと、今後について申しますならば、必ずしも手放しの楽観も許されないのではないかと、かように存ずるのでございます。と申しますのも、御高承のとおり、今回景気回復リード役と申しますか二つの要因、つまり、個人消費輸出であろうかと存じますが、それがどうやらその効果を一応一巡させてしまった、そういうふうな感じもいたさないわけではございません。個人消費につきましては、オイルショックの後に異常に高まりましたところの貯蓄性向という問題がございました。つまり、それに見合った大幅な消費の落ち込みがございました。景気回復の足を引っ張る要因になっていたわけではなかろうかと思われますが、それも現状ではすでに前の水準に戻っておりまして、したがいまして、個人消費伸びもそれに対応いたしまして、一応のところに落ちついてまいったのではないか、このように存ぜられますので、当面これ以上の期待もできにくいのではないか、かように存じております。  それでは、景気回復をリードしたいま一つの要因でございましたところの輸出でございますが、これはどうかというと、これも昨年が低かったために、何と申しますか、げたを履いているとでも申しますか、前年同期比ではなおかなりの伸びがあるわけでございますけれども、絶対額で見ますと、この三月をピークにいたしまして高水準ながらすでに横ばい状況に入っておるようでございます。一月以降の輸出の急増は、アメリカ景気回復に支えられたものであることは申されておるところでございますけれども、その後アメリカ経済も次第になだらかな上昇に移ってまいりました。それを考えますと、輸出にもそうそうこれ以上の期待をかけるわけにも一概にまいらない、このように存じます。景気中だるみ論が言われております現状の中で、今後とも順調な景気回復期待するといたしませば、どうしても消費輸出にかわる第三のリード役といたしまして、これが必要であろうかと思うのでございます。それに民間設備投資にも余り期待が持てない現状でございます。この役割りを担い得るものはと申し上げませば、財政ということに相なろうかと存ずるのでございます。この五十一年度予算一体をなしております本財政特例法案の速やかな成立によりまして、景気回復に水を差されるといったことが避けられますように、切に御期待申し上げる次第でございます。  申し上げたいことの第二は、本財政特例法案に関連いたしまして生ずる国債発行ペースタイムラグ資本市場との関連でございます。私ども国債を初めといたします公社債発行につきましては、かねてからできるだけ上期中に前倒しぎみに御運営願いたいということを御当局に要望してまいっておりましたわけでございます。それと申しますのも、下期に入りますと、民間資金需要回復してまいりました場合に、金融市場発行市場におきまして、公共資金民間資金との競合がかりそめにも起こることがないように、こういう念願からでございます。ただ、目下のところは、景気回復のスピードがやや鈍っております。設備投資足踏み状態にあるというふうなことから、当面はそうした意味の心配はまあまあなかろうかと、かように存じておりますのでございますけれども、しかしながら、この秋でございますが、季節的には金融が緩む時期でございます。こうした緩む時期を迎えながら、一方では特例国債発行ができないというようなやや変則的な状態が今後も続くといたしますと、特例国債の完全な消化につきまして、かなり困難な状況が伴う懸念がないでもない、このように存ずる次第でございます。幸いに九月、十月の個人消化につきましては、何とか個人消化予定額だけは、大幅にぶれることのないように御配慮をいただいておりますが、こうした意味合いからも、予算特例法案とは一体をなすものであるという点につきまして、今後とも格段の御配慮をいただきますならば、私どもの立場といたしましても、大変に幸いでございまして、お願い申し上げたい、かように存ずる次第でございます。  最後に、この席をおかりいたしましてただいま申し上げました国債個人消化につきまして、若干近況を御報告申し上げまして、諸先生方の御理解を賜りたい、かように存ずる次第でございます。  御承知のとおり、私ども証券界は、昭和四十一年に建設国債発行されまして以来、この十年間国債個人消化にはずいぶん苦労しながら努力を重ねてまいりました次第でございます。その額は今日まで、大した数字でもないのでございますけれども、累計で一兆八千億円、通算いたしまして発行額の約一一%、これを個人消化してまいったことに相なります。しかしながら、昨年、五十年度に限って申しますと、年度半ばから国債発行額は急に拡大いたしましたために、個人消化というものがそれに合わせて急に断層的にふえるというわけにはいかないものでございますために、前年度比七二%増の三千五十七億円を取り扱ってはおりますけれども、急に大量化いたしましたところの発行額全体の中で占める割合から申しますと、わずか六・八%という一時まことに苦しい時期がございましたわけでございます。こうした実情を踏まえまして、私ども国債個人消化拡大のための諸条件整備につきまして、種々お願いを申し上げてまいったわけでございます。幸い、昨年末における金利改定の際におきまして、国債発行条件を一歩市場実勢に近づけていただいた。その努力がなされましたこと、また、国債のPRなどにつきましても、御当局のいろいろの御努力もいただきまして、本年に入りましてようやく個人消化は着実な増加を見せるようになりました、ようやく好調をたどるようになったわけでございます。もっともこのところ努力はいたしておりますものの、やや消化状況横ばいになっておるというふうなことを若干懸念をいたしております。  具体的に申し上げますと、昨年四−九月ごろは月間個人消化は百八十億円程度でございまして、昨年末から逐次増加をいたしまして、本年度に入りまして月間六、七百億というふうに推移をいたしております。このように本年度に入りまして、わが国国債個人消化は、増加傾向を示しておるとは申しながら、それじゃこれでいいのかと申しますと、これを欧米諸国に比べますと、まだまだその間に距離がある、このように存ずるのでございます。  これを個人金融資産の中で、国債保有額がどのくらいを占めているかという比率で申し上げますと、わが国の場合は、まだたかだか〇・五%でございます。〇・五%にすぎないのでございますが、諸外国の例で申し上げますと、米国では三・九%、英国では七・一%、西独でさえも二・〇%といったことで、今後まだよほどの努力の余地が残されておる、このように存じております。この点私どもといたしましても、国債発行公募原則を貫くという意味から見まして、また、国民経済的に見ましても、個人消化拡大にもっともっと力を入れていかなきゃならぬのじゃないか、このように考えているところでございます。そのためのいろいろな環境整備、たとえば国債発行多様化とか、さらには流通市場整備といったことにつきましても、私ども努力はもとよりでございますが、なお今後いろいろとお願いも申し上げていかなければならぬことも多々あるのではないかと、かように存じておる次第でございます。委員の諸先生方におかれましても、何とぞ今後とも引き続きましてよろしく御理解と御支援を賜りますようにお願い申し上げる次第でございます。  簡単ではございますけれども、以上をもちまして私の陳述を終わらせていただきます、ありがとうございました。
  6. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 次に、大熊参考人お願いいたします。
  7. 大熊一郎

    参考人大熊一郎君) 慶應義塾大学大熊でございます。  私は、特例公債発行に関しまして、財政政策見地から若干のコメントをいたしまして御参考に供したい、こういうように考えておるわけでございます。  まず、特例公債発行と五十一年度の本予算との関係でございますが、本来これは不可分の関係にあるというふうに考えるわけでございまして、すでに本予算成立をいたしますと、この予算歳出に沿って、これを予定いたしまして、国民経済がすでに活動をしているわけでございます。したがいまして、特例債発行というものが、これが御承認いただけません場合には、重大な国民経済への影響があらわれることかと存じますし、また特例債発行の御承認が早ければ早いほど、心理的にも経済に与える影響はそれだけ少なくて済むのではないかというふうに考えるわけでございます。今日、わが国におきましては、国民経済はかなり大きな財政支出によって支えられており、また国民経済景気動向もこれに左右をされているわけでありますので、予算の実行が着実に行われるということが、やはり国民経済動向を左右する大きな要因になっているというわけであります。  ところで、今回の特例公債発行は、いわば歳入の、税収の不足を補うという意味で行われるわけでありますが、しかし、そういう意味では、この特例公債赤字公債と言うことができるわけであります。ただ、財政による景気補正ということは、これは近年各国とも著しく重要度を増してまいりまして、むしろ単に消極的に赤字を出すというよりも、景気回復のために積極的にそうした赤字政策をとるということが、理論的にも実際的にも認められてきているわけであります。しかしながら、これはもちろん財政支出増加あるいは減税によって行われるわけでありますが、その場合に、毎年赤字公債が、同額にせよ発行をされるということは、必ずしもこれは景気補正的な役割り財政政策に持たせる結果にはならないわけであります。つまりある景気が後退をいたしましたときには、特例債発行してでも景気回復をする、しかしながら、景気が一たん回復したならば——特例債は本来発行をしないで済むような景気状態になるのが理想的であるというふうに考えますと、毎年たとえ同額でも赤字公債発行し続けるということは、これは必ずしも景気対策にはならないわけであります。したがいまして、そういう意味から申しますと、やはり財政による景気補正という政策が有効に利用されるためにも、できるだけこの特例債発行幅が少なくなるような経済運営並びに財政運営がぜひ必要になるというふうに考えられるわけであります。経済運営と申しますのは、適正な成長を維持して、そうして税収を確保するということでありますし、また財政運営という意味では、できるだけ歳出合理化を図って、そうして、いわばできるだけ時によって景気補正政策が十分に実効のあるように歳出を通常は引き締めていくというようなのが、財政運営であるというように考えられるわけでありまして、したがいまして、できるだけそうした経済運営並びに財政運営に御留意いただくことを特にお願いいたしたいというふうに考えているわけでございます。  そういたしますと、今後このように大量な公債発行ができにくいような財政の体質ということも同時に考えていかなくてはならない。つまり、言いかえるならば、そうした大量の公債発行に歯どめがあるかどうかという問題であります。正直申しまして、理論的な意味の歯どめというものを、財政そのものに求めるということは、これは無理ではなかろうか。しかしながら、たとえば建設公債に限定をするというのは、これは一種の歯どめかと存ずるのでありますが、つまり、財政支出が物的な資産増加を限度として、公債によって資金を調達することができるというのが建設公債意味であります。しかしながら、特例債赤字公債といいましても、それに見合う経費の中には教育、社会保障その他重要な経費がそれによって賄われているわけでありますから、したがいまして、建設公債ならいい、赤字公債はいかぬというように、必ずしもそれが賄う支出面からこれを断定するわけにはいかない。だといたしますと、一体どこに歯どめを見出すべきかという問題があるわけでありますが、やはり私は、こうした公債発行に対する歯どめと申しますのは、他の参考人方々も強調しておられましたように、やはり公社債市場整備と申しますか、金利を弾力化いたしまして公社債市場を十分に整備をするということがこれが実質的にまた理論的に公債の歯どめというような意味合いを持つのではないかということでありますので、そういう意味で、今後の金融政策あるいは金融制度の改善に大いに留意をしていただきたいということもお願いをする次第であります。  本来、財政と申しますのは、単に景気補正意味合いのものではなく、やはり財政の収入あるいは支出には資源の合理的な配分あるいは所得の再配分というような重要な機能があるわけでありまして、そうした重要な機能を、民間経済との関係においてどのような形でどこまで果たすかということを考えるのが最も基本的なあり方であるというふうに考えるのでありますが、そういう観点から申しますと、やはり今後の適正な成長に合わせて、財政というものが一体どの程度国民経済の中に規模を占めるのかというようなことを十分御検討になった上で、その上でさらに場合によっては特例債発行するような景気の弾力的な補正政策財政に負わせるということが必要であります。  結論を申しますと、そうした今日景気補正という意味で、特例債発行ということはまことに時宜を得たものでありますが、しかし、これを慢性的に発行するということは、かえって景気補正役割りを鈍らせる。そういう意味で、やはり適正な成長率のもとで、財政国民経済に占める規模というものを資源の配分、所得の再分配という機能の観点から御検討になり、その上で適時弾力的に景気対策役割りを持たせる。これが筋ではないかというふうに考えられるわけであります。  なお、一つだけ先ほどの御参考人方々の御意見を聞いてつけ加えたいと思うのでありますが、やはり年々公債発行するということは、それだけ国民、民間における金融資産がそれだけ増加をするわけであります。で、したがいまして、その金融資産増加というものをいかに十分に利用するか、十分に利用すると申しますのは、そうした金融政策運営、あるいは金融制度の改善の上で、いかに十分に利用するかということを考えますと、先ほど単に歯どめと申しましたような意味の金利の弾力化、公社債市場整備ということは、また別途金融政策金融制度の正常化というものにもつながるということを申し添えまして私の意見とさしていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  8. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 質疑のある方は順次御発言を願います。  なお、大熊参考人は、午後五時まで出席の予定でありますので、お含みおき願います。
  9. 大塚喬

    ○大塚喬君 ただいま口述いただいた順序と質問の順序が若干変わるかと思いますが、お許しをいただいて、初めに大熊参考人からひとつお答えをいただきたいと存じます。  この赤字国債、これは財政一体のものである、こういう趣旨の発言がございました。私どももさきの国会から引き続いて、この財政特例法案審議を慎重に進めておるところでございますが、その理由は、安易な財源調達策として国債に依存することは、放漫な財政運営を引き起こし、インフレを促進するとともに、国債費の著増な財政硬直化をもたらす、こういうことで慎重な審議を続けておるところでございます。なお、この国債の額が財政収支試算によりますと、昭和五十五年度までには五十一兆になると、こういうことで、いずれも将来の国民の負担にかかわるものであります。しかも、私どもが再三にわたって償還計画、これを明示せよということで迫ったわけでございますが、どうも納得いただけるような具体的な償還計画というものが依然として現在まで私どもには示されてございません。で、こういう立場から、どうもこの財政特例法については、私どもとしてもこれ以上またさらにいろいろの角度から検討を加える必要があると考えておるところでございますが、大熊参考人にお尋ねいたしたいことは、政府が五月十二日に公債政策のあり方、これを明らかにいたしまして、その中で政府の述べておりますことは、「安易に多額の公債に依存することは、将来における国債費負担の累増をきたし、財政の硬直化を招くもとともなる。」こういうことを政府自体も認めておるわけであります。で、そういうことで、歳出の「安易な財政依存を排し、歳出合理化、重点化を図るとともに、所要の税収確保の方策について検討をすすめること」と、こういうことが書いてあるわけでございますが、大熊参考人として、いま私が申し上げましたいわゆる「歳出合理化、重点化」、さらにその「税収確保」ということについて、特に私どもが強く主張いたしたいことは、数多くの租税特別措置、これらの問題について洗い直しをし、十分な国民の期待にこたえられるような税収を確保すべきであると、こういうことを主張いたしておるわけでございますが、この「歳出合理化、重点化」、こういう問題と「税収確保の方策」、やはりこれが並行して出なければ、この特例審議にも、私どもは国民の期待にこたえられる完全な審議とはいかないものと考えておるわけでございまして、大熊参考人からこの点についての御意見を初めにお聞かせいただきたいと存じます。
  10. 大熊一郎

    参考人大熊一郎君) お答えいたします。  安易に公債発行するものではないという御意見は、全くそうでありまして、安易な公債発行ということは、景気対策としても、かえってその効果を薄めるということは先ほど申し上げたとおりであります。   〔委員長退席、理事中西一郎君着席〕  で、御質問は、歳出合理化と、それに対する税収の確保という問題でありますが、歳出合理化ということを同時に行うということは、まことにそのとおりでありまして、それをどこからどういうふうに行うかということは、これはいろいろと御説があるかと思うのでありますが、しかし、その合理化ということは、やはりある程度財政がなすべきこと、またなすべきでないことをはっきりと見分けまして、そうしてなすべきことに集中をするという身軽な財政というものをまず念頭に置く必要があるのではないかということであります。  それから、税収の確保ということは、これはもちろんこの安易な公債政策を排する場合には非常に重要であり、その場合の税収の確保を図るまず最初の条件は、できるだけ税制を公平化するということが必要になるわけでありまして、租税特別措置を含めて、税制の公平化ということをいかに進めるかということが前提になる。その上でわれわれは、このいわゆるタックスペイアーとして、どういう、どれだけの税負担はそれならばしてもいいかということの判断は、やはりそうした公平な税制の上に立って初めてできるというふうに考えております。
  11. 大塚喬

    ○大塚喬君 もう一度お尋ねいたしますが、具体的にその租税特別措置、この問題についてどうお考えになっておりますか。さらに、現在の税制の中で、まあ富裕税、財産税という問題もいろいろ論議があるところのことでございますが、この富裕税創設の問題あるいは付加価値税の問題こういう点については大熊参考人として現在どのようなお考えをお持ちでしょうかお聞かせをいただきたいと思います。
  12. 大熊一郎

    参考人大熊一郎君) ただいま御質問いただいたわけでありますが、この租税特別措置と申しますのは、これはある意味では、この経済政策上一定期間を限ってそうした政策をとった方が、この成長あるいは安定というようなために好ましいという政策であり、中には、これは必ずしも公平性を欠くと思われるものもあるわけでありまして、したがいまして、この租税特別措置と申しますのは、できるだけ毎年そうした経済政策の重点的な目標との観点から見直しをしていくということが望ましいあわ方である、こういうように考えられます。  それから、富裕税と付加価値税の問題がいま御指摘になられましたが、私は、むしろ私の判断では、現行の所得税を中心といたします現行の税制をできるだけ公平に的確に施行をするということが望ましいというように考えておりますし、また、したがいまして、富裕税については、必ずしも私は十分に検討をいたしたわけではございませんけれども、今日いまだ検討する時期ではなかろう、こういうように考えております。  それから、付加価値税に関しましては、付加価値税というものを国税として導入する場合、あるいは地方税として導入するのかというような観点もいろいろあると存じますが、私としては、やはりこれは地方税における一つの事業税のあり方として、特に地方の歳出というものは、景気のいかんにかかわらずこの受益があるわけでありますから、そうした地方の事業税の一つのあり方として考えるべきではなかろうかというように考えております。
  13. 大塚喬

    ○大塚喬君 個人ごとで申しわけございませんが、決算委員会と両方やっているものですから、初めにあとお二方の参考人からお答えをいただきたいと存じます。  御承知のように、中期割引債が近く実施されようという、こういう段階に至っておるようでございます。新聞報道等を、私どもがそれから受けるところによりますと、金融界はこの中期割引債の構想について反対をする構えを見せておるが、最近は徹底抗戦ということは得策ではない、条件闘争に作戦を切りかえよう、こういうような報道が、各紙でそういう趣旨の報道がなされておるところでございます。  初めに伊部参考人にお尋ねをいたしますが、この割引債という問題、全銀側としては、基本的には、この割引債ということについてどうお考えになっておるのか。で、これは新聞報道で、あるいは頭取の御意見が正確に反映されておるかどうかわかりませんが、こういう報道もなされておるところでございます。中期国債構想を持ち出す前に、現在の十年国債発行条件を弾力化するのが先決、これに手をつけないで、中期割引国債を出しても市場が混乱するだけだと、先ほど市場整備というような問題がございましたが、こういう問題の今後の起こり得る情勢等も加味して、この問題について全銀、都銀、こういう立場の代表として本日御出席をいただいておるものと考えるものですから、伊部参考人からこの点について率直なひとつお答えをいただければ幸せでございます。
  14. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) ただいま大塚先生の御質問、お答えを申し上げます。  先生のいま新聞記事によりまして御質問がございました金融界と申しますか、これ漠然とした言葉でございますが、いままでは中期割引国債には絶対抗戦で反対をしておった。ところが、最近は少しその考え方を改めて条件闘争に切りかえてきたという新聞記事があるが真相はどうかということと、それよりも前にまず、従来出ております十年の利付国債条件について検討すべきだ、こういうような御趣旨と考えますが、真相を申し上げますると、中期国債、中期割引国債が出るというような話はもちろん昨年の暮れあたりから出ておったわけでございますが、その具体的な内容、構想、あるいは限度とか、その趣旨とか——趣旨は、まず国民一般の個人消化を目的とすると、これははっきりいたしておりましたが、その他の問題につきましては、きわめてまだ不明確なままにそういう声がございました。これにつきまして、全国銀行協会連合会といたしましては、正式にそういうお話が御当局からあったわけではございませんので、正式に一堂にメンバーが集まりまして全国銀行協会連合会としての意見を討議し、まとめたことはございません。ただ、金融市場におきましては、いろいろな資金調達の方法がございまして、いわばこれは一般の商業界で申しますれば、いろいろな商品を仕入れて、売って、それで商売をしておるというようなのでございまするから、新しい商品がどういう形で出るかということにつきましては、いろいろなやはり議論がございました。しかし、徹底的に抗戦をするという、全国銀行協会連合会がそういうような考え方をまとめたことはいまだかつて一度もございません。したがいまして、最近はそれをやめて条件闘争に入るというようなことを全国銀行協会連合会でまた話し合ったこともございません。  それから、現在の発行条件——現在発行されております十年の利付国債条件をむしろ問題とすべきだということにつきましても、これは、やはり全銀協——全国銀行協会連合会を全銀協と申し上げますが、全銀協においてこの条件をどうしたらいいかというようなことを討議したことはございませんが、これはやはり金融界、証券界の一つの常識的話題といたしまして、先ほどから国債発行の歯どめとか、国債とはどうあるべきものでございますとかというような議論のときに、やはりこの日本の国債発行条件が、本当に日本の金融市場資本市場の中におきまして、マーケットメカニズムによってこれが動きまして、そして合理的な資金の動きがここから生じまして、抑えるときには抑える、発行するときは適当な条件発行でき、自然におのずからそこに調節ができるという機能が全くないというような議論は、よくあったことでございますし、現在もございますが、これは全銀協という協会でひとつその議論をまとめてどうというようなことではございません。  以上をもってお答えといたします。   〔理事中西一郎君退席、委員長着席〕
  15. 大塚喬

    ○大塚喬君 重ねてお尋ねをいたします。  十月二日、大蔵大臣から住友銀行頭取、それから三菱銀行頭取、それからこちらにおいでになっております村田参考人にも電話があって、中期国債発行について協力を要請された、こういう新聞報道がございました。  そこで、一点の質問は、その伊部参考人のお言葉だと思うのですが、新聞に出ておりましたことは、大蔵大臣が六項目についてその検討を約束したから、この問題については協力という方向に進むと、こういうことが新聞の報道にあったわけでございます。六項目という交換条件、そういうふうに受け取れるわけでございますが、六項目の内容というのは一体何と何と何なのか。全銀側としてはそれらについてどういう要望をお持ちなのか。そこのところをひとつお聞かせいただきたい。  それからもう一つ。割引債というのを、ずばり賛成ですか、反対ですか。  この問題について、ひとつお答えをちょうだいいたしたいと思います。
  16. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) 重ねて大塚先生の御質問にお答え申し上げますが、私はでございますね、大蔵大臣から電話を受けたことはございません。それからしたがいまして、新聞記者にこの問題につきまして話したことも全くございません。したがいまして、もし仮に私はその新聞見てございませんが、そういうことがございましたならば、それは全く事実と反することでございまして、私は何もこの問題について新聞に申したことはございませんのでございます。それから三菱銀行の頭取の全銀協の中村会長のところには大蔵大臣から、中期割引国債発行について事務当局からいろいろと案が出るからひとつ検討してくれと、こういうようなお話があったことを私は聞いております。そして、その当局から出ました中期割引国債の骨子と申しますのは、五年の期間の割引債であると、それから毎年発行限度を大体三千億程度とする、この初年度と申しますと本年度でございます。大体千億程度ということはこれは別に聞いたわけでございますが、最初は三千億程度毎年出す。それからこれにつきましては、やはり流通問題も考えまして、減債基金等をもってこれを買い入れるというようなことも考えると、それからもう一つは、当該国債流通市場の安定を図るために国債整理基金で買い入れると、それから金融機関の窓口における販売の実施について検討するとともに証券取引審議会に諮ると、それからこの基本方針に基づくいろいろな案につきましては、国債引受シ団等関係者と協議の上ひとつ決めよう、こういうことに聞いております。  先生の御質問はそれと割引国債そのものに対する……。
  17. 大塚喬

    ○大塚喬君 割引債そのものについてどうお考えか。
  18. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) これは全国銀行協会の私といたしましては、まだこの問題については全国銀行協会と協議をしておりません。それからシ団でこれから協議を始めるわけでございます。シ団の構成メンバーにもいろいろございまするし、それから全国銀行協会連合会のメンバーにもいろいろと意見がございましょうと存じまするので、この席で私全国銀行協会の代表としていまここで申し上げることはまだちょっと内容がございませんので、お答えいたしかねるということでお許しいただきたいと思います。
  19. 大塚喬

    ○大塚喬君 そういう協議が整わないということならば、あるいは銀行協会側としては御無理かと思いますが、個人的にはどうお考えなのかひとつ後でお聞かせをいただきたいと思います。  それから、あと私の持ち時間が少なくなったものですから村田参考人にお尋ねをいたします。  国債個人消化促進は急務だと、こういう持論をお持ちであることは承知をいたしておるところでございます。で、このたびの中期割引債について、証券業協会としては何か音なしの構え、何らの意思表示が新聞の報道には出てございません。この問題について証券業界としてはどのようにお考えになっておるのか、ひとつお尋ねをいたします。  それから、銀行の窓口販売について証券業界としてはどうお考えになっておるのか、証券業界の代表としての村田参考人からひとつ御意見をちょうだいいたしたいと存じます。
  20. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) お答えをさせていただきます。  個人消化の促進につきましては、先生御指摘のとおりに非常に重要なこととして考えてまいっておるわけでございます。割引中期国債でございますか、これにつきましては、ただいまシ団代表でいらっしゃいますところの伊部参考人から、銀行協会でも検討するがシ団でも検討するというお答えでございました。私ども銀行協会には所属いたしておりませんけれども、シ団の構成メンバーでございます。いずれシ団の中で検討が行われることと、かように存じております。にわかにここで端的にお答え申し上げるわけにもいかない点がございますけれども、まあ大体私どもかねがね申しておりますのは、これだけ大量発行になりまして、それで一種類の国債だけでいくのもこれは無理だと、大量発行になれば、やはり外国の例を見ましても、五種類、十種類とそれぞれいろいろな形で出しております。多様化を図るべきであるというふうにかねがねこれは申しておりました。その点につきましては、大体金融界といたしましても、またシ団といたしましてでも、そういう方向につきましてはほぼ大体コンセンサスがあるんじゃあるまいかと、かように存じております。まあ、中期割引国債と端的に申しますればいろいろとそれは御意見もあるかと思います。これはシ団の中で近々検討が行われることと存じます。近く結論が出るんじゃあるまいか、かように存じております。  それから、窓口販売でございますけれども、これも実は非常にお答えがしにくいのでございまして、まだどこからも窓口販売やりたいという御要望が、銀行さんの方から御要望が出ておるわけではございませんようで、私の耳には承っておらないわけでございまして、それを先回りいたしまして、私どもが窓口販売どうだこうだとこう申し上げるのも、これもちょっと早回りし過ぎる感じでございます。ただ、申し上げられますことは、かねて四十八年でございますか、証券取引審議会の答申がございました。その答申の中で窓口販売の問題が取り上げられておりまして、御高承かと存じますけれども、その内容はたしかこうなっておったかと思うのでございますが、審議会で窓口販売についての提案があったけれども、法律上では禁止はされておらないわけだと、禁止されておらないけれども、窓口販売というものなしに、長年にわたってそれなしでやってきているので、そこでおのずからそういう秩序が自然にでき上がっておると、この問題は、発行流通市場との問題、それから六十五条への影響の問題、それから郵便貯金制度との関連の問題、こういった諸問題の検討をして、その検討と合わせて検討すべき問題であると、したがって、今後の検討にまつべきものであると、このような答申が行われておりますわけでございまして、したがいまして、証券取引審議会におきまして、この問題がその方向に沿いまして、それを踏まえまして論議されるのはまことにこれはしかるべきことかと、このように存じております。  以上をもってお答えといたします。
  21. 大塚喬

    ○大塚喬君 最後に簡単に。  先ほど伊部参考人にお尋ねいたしましたが、協会側として結論が出ておらないと、あるいはそのとおりかもわかりません、存じません。個人として、その割引債ということについてどうお考えになっておるのか。泣く子と地頭には勝たれない、長いものには巻かれろということで、このことについて銀行協会側としてはそういうことで引き下がるのか。その場合に、その先ほどの条件ということは、銀行協会側あるいは住友銀行頭取として伊部参考人が何らかお考えになっておるのかどうか、このことを一つ。  それから村田参考人には、銀行窓口販売、このことを、基本的には先ほどのお考えでははっきりしなかったんですが、賛成なんですか反対なんですか、その点だけお聞かせいただきたいと思います。
  22. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) 中期割引国債というものについて、私個人的にどう考えるかという御質問でございますが、私は、個人といたしましても、法人といたしましても、こういう重要な非常に新しい金融手段が新しく金融市場に出るということは、長年銀行業務をやっておりまする経験から申しまして、これは関係者の十分なやはり協議がございませんと、中期国債そのものということよりも、やはりいろいろな意見の言辞はあるようでございますが、やはり関係者が一致して協力して国債引き受けシ団というものをつくっておるわけでございまするから、そのまず意見調整を中心にすべきものでありまして、まだ細かい条件等聞いておりませんので、それがどういうふうに相なるかわかりませんでございますが、まずもって、一応みんなが協力して一致した考え方の上に立つということが大前提かと存じますので、このことを答弁でお許しをいただきます。
  23. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) どうも、先生に窓口販売賛成か反対かと詰められますので実はもう……、お答えいたしますけれども、まあ仮に、その窓口販売をやりたいがどうだという提案があったと仮定いたしまして、その場合には、正直申し上げまして、それは結構だと言うのには余りにいろいろ、先ほども商取引の問題に絡みまして申し上げましたけれども、関連する問題が非常に多うございますのでにわかに賛成しがたいと、このように存じております。
  24. 福間知之

    ○福間知之君 大熊参考人が、時間がないようでございますので……。先ほどの口述の中でも触れておられましたように、財政というものが、経済の成長発展に補完的な、補正的な意味合いを持つという意味で、特に現状では重要だというふうな印象を受けたんですが、しかし、必ずしも先生のお考えの中に、だから、この大量の国債発行、なかんずく、昨年度に引き続き今年度、さらには五十四年度までかなり膨大な国債発行されるといういま大蔵当局の見通しなんですけれども、資源の最適配分あるいは資産、所得の再配分、社会的な不公正、いろんな面からいきましても、これだけ半長期的に国債発行されるということについては、かねがね国会でも重大視しまして議論が尽きないところです。まず概念的に、当面当局が示唆している中期財政収支によるところの公債発行予定、こういうものについて先生のお立場ではどういう感想を持っておられますか。  さらに二番目には、それに関連しまして、私ども委員会でも議論をしてきたんですが、現在の財政法で、もちろんわが国財政が単年度主義をとっているということははっきりしているんですけれども、この中期展望にも見られるように、仮に財政状態を想定した場合に、これだけのやはり国債発行は必要なんだ、前提としては経済の発展もある程度見込んでいる、これは中期経済展望によって六%程度見込んでいる、あるいはまた税収もそれに基づいて二〇・九%ふやしていく——この中身ははっきりしていませんが、そういう若干の裏づけはあるにしろ、公債発行に伴う最小必要限度の展望というものが出されているんですが、それだけではやはり不十分じゃないのかと。やはりここまでくれば、もう少し総合的に半長期の国家財政の展望というものを審議することなくして、これほど膨大な負担を後世にわたって、十数年にわたって国民にかけていくということは軽々には考えられない。財政の単年度主義というものについて、これはまだ見直すとか見直さぬとか結論は出ませんけれども、何らかの方法で国民に責任の持てる財政審議というものをわれわれはやる必要があるんじゃないか、こう考えておるんですが、この二点についてまずお伺いしたいと思います。
  25. 大熊一郎

    参考人大熊一郎君) お答えいたします。  私も、公債が、先ほど申しましたように年々累増するというような財政運営というものが必ずしも将来にわたって好ましいものではないということは申し上げたわけでありますが、しかしながら、同時に、そのそうした公債発行の持つ景気補正意味というものをやはり重要視せざるを得ないということがあるわけでありますから、やはり、その問題は、それならば、そうした景気政策をできるだけ弾力的有効に行うためには、やはり私は長期財政展望を持つことが必要であるというふうに考えます。しかしながら、そのためには、現在の中期経済計画というものが、やはり十分な検討を経たわけでありますが、それにしても、そうした安定成長の道というものを、この中期経済計画で決めましたらば、そうした安定成長というものを堅持するというような政策的な意欲というものが必ずなくてはならない。ただ、途中で実績と予測と違ったから直すということではなくて、できるだけそれを堅持するというのが、経済政策の本来のあるべき姿かと存じ、また、その中で中期の財政展望というものを描きますならば、これはかなり責任のある財政運営ができるのではないかというふうに考えております。そういう意味で、私どもは、学者の間では、そうした中期あるいは長期財政計画というものを問題にいたしまして、今回、来月の学会でもこれを一つの共通の大きなテーマにいたしておりまして、ドイツあるいはイギリスにおける計画というものを見直してみようというような状況におりますので、御説のように、そうしたできるだけ長期的な財政展望が持てるような政策的な努力というものが、これは単に財政のみならず経済政策全般として必要ではなかろうかというふうに私は考えております。
  26. 福間知之

    ○福間知之君 もう一点大熊参考人にお聞きしたいんですけれども景気回復を促進するためにも赤字政策というものをとることが、赤字政策というか、結果として国債発行を行うということが、理論的にも実際的にもいまや世界的に認められている政策だと、こういう一応概念が示されました。これは私も同感ではあります。その場合に、これは先生の御専門とまたきょうのそれと直接結びつきませんが、私どもは、特にこれによって——後ほどこれは触れたいんですけれどもインフレーション、物価高騰ということ等の危険はあるんですけれども、あわせて、勤労者の所得減税という問題をこういう情勢の中でも考えるべきではないかと、こういうことを私たちはいままで検討し、ある程度の主張をしてきているわけです。御案内のとおり、アメリカでは昨年に引き続きことしも減税は一定水準で行うと言っております。日本ではそれは当面当局は行わない、こう言っているんです。国債を出すような時期だから行えないのがいわば常識だと言わんばかりの見解なんです。それは一面において全くわれわれは無理解ではないんですけれども、しかし、半面において、いま先生がおっしゃられたそういう論理からしても、国債発行をしているから減税はできないんだという論理で終始しますと、これは私は先生のおっしゃっている論理も矛盾が来ると思います。やはり景気を浮揚することに結果としてはなり、さらには税収がふえるということ、そのためには、特に個人消費が国民総支出の中でも過半のウェートを持っているだけに、私は減税というものはやはり考えるべきではないのか、こういうふうに思っているんですけれども、どういうお考えでしょうか。
  27. 大熊一郎

    参考人大熊一郎君) お答えいたしますが、この特例公債発行するというのは、景気補正対策であるということでありますが、その場合に、景気の対策というものは、財政支出増加するのか、あるいは減税をするのかということが考慮された上で行われなくてはならないわけであります。で、問題は、したがいまして、景気を刺激をするというときに、減税というものがどのくらい消費を刺激するのであろうか、あるいは投資を刺激するのであろうかということについての、できるだけ客観的な検討というものがやはり必要ではないかというふうに私は考えるわけでありまして、したがいまして、何も特例公債発行による景気の刺激というものは、これは財政支出を伸ばすか、あるいは減税をするかというような形で考える必要がある。ただしかし、今日の状況のもとで、特例公債を年々大幅に発行することが好ましくないということが大多数の方の御意見であるというふうに私は承っておるのでありますが、もしそうであるならば、やはり一方で財政支出等の増加とそれと減税とを組み合わせる場合に、できるだけ財政支出合理化しながら減税をしていくということが現下においては望ましいと、こういうように私は考えております。  それから、一般会計予算のあるべき姿といたしまして、今日歳入歳出、仮に均衡予算でありますと、歳入側に税収が入り、歳出側に政府の公共投資、一般経費を含めた財政支出がそれに見合って計上されるわけでありますが、私はむしろ収入面には、明年度のたとえば税収の見込みというものが本来収入面に入り、それから支出面には、財政支出増加と減税とこの二つの項目が入るべきである。これがあるべき姿ではなかろうかと、そうすると、やはりどれだけの税収が予定をされた場合に、どれだけが財政支出に振り向けられたか、減税に振り向けられたかが、国民に十分知ることができる形になるかと思いまして、この点については私は、数年前に財政制度審議会に私の報告として提出をしたことがございますが、やはりそういうようにして考えるべきではなかろうかというのが私の考えでございます。
  28. 福間知之

    ○福間知之君 これは大熊参考人、もう一点最後にお聞きしますけれども、先ほども出てました中期国債の問題でございますが、前段に伊部参考人も触れておられましたように、わが国公社債市場の特殊性という面から、これを改善していかなきゃならぬという幾つかの課題が述べられておりましたが、私も同感でございますが、そういう現状の中で、たとえば金利も自由化されておらない、あるいはまたいわゆる郵便貯金という日本的特殊な国民の資産の形成といいますか、制度があって、貯蓄率二〇%云々といわれる非常に高度なものになっている。西ドイツで御案内のとおり貯蓄国債発行され、昨年度あたりではそれが国債の中でも二八%を占めている、こう言われているんですけれども、それに見合うのが私は日本の国民貯蓄であり、それから先ほど触れられておりましたように、国債のあるいは社債の保有率が一%に満たない。こういうこと、それを合わせますと、大体西ドイツに近くなるわけです。したがって、いまわれわれは仮に国債発行を余儀なくされるとするならば、やはり将来のこの金融市場公社債市場その他を近代化していく上でも、より魅力のある国債、たとえばいま当局が出している中期国債、これは私はもっと発行するなら大量に発行する方がいいんじゃないか。平年度三千億円、今年度は一千億というのは、何かまやかしのような気が実はするんです。それはさておきまして、魅力のある多様化したやはり商品をもう少し売りに出してもいいんじゃないか。ただ、そのためには前提としていまの市場との関係がありますが、これは大熊参考人にはまずどのようにお考えですか。
  29. 大熊一郎

    参考人大熊一郎君) お答えいたします。  このように財政公債発行が続きますと、大量の公債民間に滞留するわけでございますが、できるだけそれが個人消化をも増加をしたいということは、これはまことに望ましいことでありまして、われわれも個人の貯蓄あるいは金融資産の形態が、ただ単に銀行の預金とか郵便貯金だけに固定をされているというような状態は決して好ましいことではない。したがいまして、私は、個人保有をふやしますためにも、また個人資産の安全性、流動性を高めますためにも、できるだけ質のよい魅力のあると申してもよいかと存じますが、公債発行をする。つまりこの金融資産の中身を多様化し、そうして個人貯蓄の流動性、安全性を高めるということは非常に望ましい。そういう意味で私は、今回計画されておると伝え聞いております中期国債というようなものも、これはむしろそういう意味発行をする方が望ましいというふうに私は考えております。
  30. 福間知之

    ○福間知之君 ありがとうございました。  伊部参考人にお伺いしたいと思います。先ほど述べられましたような市場の原理をこれからは尊重して、公債発行に際しては当局も対処してほしいと、こういう強い希望が先ほど幾つか表明されました。その点についてたとえばアメリカ、欧米では、新規発行について条件が自由になっておるとか、あるいは公開市場操作などの場合についても、国債の種類をどう組み合わせたら、この金融政策上望ましいのかというようなことが行われているやに聞くわけでございます。日本の場合について、先ほどおっしゃられたいわばこの金融市場の原理というものを、しからばどういうふうに現状を改めてほしいとお考えなんですか。
  31. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) 福間先生にお答え申し上げます。  先生もいまおっしゃいましたとおり、欧米の特に米国あたりの非常に進んだ金融市場におきます、資本市場におきます公債、社債のあり方と、日本の社債、公債のあり方は非常に違うんでありますが、たとえばでございますね、いま私ども引き受けます十年ものの利付債は、表面金利が八%でございます。御承知のとおり九十八円七十五銭ですかということで、約八・二二幾らかというウエートで応募者利回りが大体形成されております。しかし、個人がこれを市場で売るということになりますると、大体額面が九十六円九十銭ぐらいになっています。それだけキャピタルロスが出るということでございまして、これは非常に、言いかえれば不合理なことでございます。せっかく買ったものが、売るときにはロスが出るということでございまして、これは大量に購入をいたしておりまする大手の機関投資家といたしましては、非常にこれは大きなキャピタルロスを発生するという問題を抱えておるわけです。  これをどういうふうにしたらいいかということは、機械的にこれをすぐいまキャピタルロスが出ないようにという、いろいろな他の商品との関連がございますから、どこから手をつけるかというようなことは、大分理屈っぽく議論になりますけれどもアメリカあたりでは——理屈を飛び越えますが、アメリカあたりは、やはり国債は入札というような制度で発行をいたしておりますから、金融市場で金がだぶついておると見まするならば、そこで大いに公債発行する。そしてタイトになったときには差し控える、こういうような公債発行形式をとっておりますが、それもただそれだけをすぐこの日本の市場でまねをしろと申しましても、金融市場の金利のあり方が、やはり需給を基本にいたしましたきわめて自然の流れにおいて動いておるということになっておりませんので、これは公定歩合あるいはいまの金利の決め方、預貯金の金利の決まり方等々非常に複雑な根の深い歴史的ないろいろな所産がございまするから、すぐそのまねをしろというわけにはまいりませんが、できれば、たとえば預貯金の金利の決め方を一元化して、きわめて弾力的にできるとか、また公定歩合制度を全く市場の情勢に反映して動かすというようなことによって、金融市場全体の体質を変えてまいりました上で、そういうようなことが行われることが望ましいと、こういうことでございまして、なかなか一朝一夕にはできませんが、しかし、そういう方向にやはり持っていくべきものでないと、いつもいろいろと不自然な問題が起こる、こういうふうに考えておる次第でございます。
  32. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 大熊参考人に、先ほど福間委員からのお話で、減税というようなことが出ましたが、私も、現在の日本の財政というものを考えて非常に心配をしておる者の一人であります。御承知のように、中期の経済見通しというものを前提にしまして財政的な見通しを立てましても、赤字公債がうまくいって五十四年まであるいは五十五年まで残るというような案が当委員会にも提出をされておるような状態でございます。ところが日本の財政の中身をいろいろ考えてみますと、非常に諸外国に比べて際立った特徴があるように思うのです。それは、一つは、GNPに比較しまして財政の規模というのが相対的に非常に小さいという特徴が一つあるわけでございます。試みに、私の記憶でございますけれども、五十一年度の中央、地方を通ずるところの財政ということを前提にしますと、GNPに比べて二六%ちょっとぐらいの程度の規模であると思うんです。政府支出がそういうことになっておる。  で、そういう姿を諸外国と比べるとどういうことかということを念頭に置きますと、ことしは非常に財政状態というものは悪いし、GNP自体が非常に伸び率が従来と異なっておりますので、いままでかつてないぐらい実は財政のウエートがGNPの中で高い年であった。私が少し予算をいじっていた時分の感覚では、これはもう二四、五%ぐらいの規模であったと思っております。それに対して外国の例を見ますと、どこの国でも三〇%を超えておるというのはもう常識になっておると思うんです。その中で、特に租税の負担率ですね。これを見ますと、たしか五十一年度予算では一八・三%ぐらいの数字であった。これは、景気状態が悪いものですから特に低かったんだと思うんですけれども、それでも記憶によるならば大体一九%台というのが通例で、景気のよしあしによって二〇%をちょっと超えるかどうかというのが常識であった。諸外国とそれを比べてみますと、諸外国の場合は、たしかイタリーあたりが高いときで二七、八%、一番少ないときでも二四%ぐらいの租税負担率になっておると思う。アメリカがたしか二七%ぐらいの負担率で、あとの先進諸国は全部三〇%を超えておる。つい先ごろ政権交代があったスウェーデンなんかの場合は、これはもう論を待たず、四五%を超えておるというような数字だと記憶しておる。このGNPの中に占める政府役割りが非常に小さくて、その小さいことの基本的な理由は、さらに租税負担率が非常に際立って少ないというところに私は日本の特色がある。これは、さらにそれに社会保険料負担というものを考慮に入れて計算しまして、日本の場合で二五%前後であるのに、諸外国で社会保険料負担を入れて三二%を切っておる国はないはずであるわけです。  そういう状態がいままではどうかというと、そういう状態ができましても、日本の経済というのは高度成長を占めておりますから、年々財政が大きくなる。所得が伸びる。したがって、租税も収入が多い。したがって、相当思い切った財政もやれる。そういう中で減税もやる。減税自体も、ある意味では私は、過去の高度成長に大変な力をかしてきた政策の一つであると思っておるわけです。ところが、御承知のように、最近経済状態というのは非常に厳しくなってきておるわけです。そういう中で、日本の租税負担率が非常に極立って少なく、財政規模も非常に小さい。そのためにどういうことになっておるかというと、ことしのごときは、いま論議になっておるような三兆七千五百億からの赤字公債発行する。そのほかに、建設公債はもうフルに発行しておるわけですから、先ほど参考人がおっしゃられたように、財政の機能というのは確かに景気調整のフィスカルな面の政策の機能というものはあると思う。しかし、所得の再配分なりあるいは資源配分なりというような形から見ると、だんだん国民の社会的な消費に対する要望というものが非常に強くなっておる。そういう時期に、本当にこういう財政規模でいいんだろうか。まして、そういう財政規模を前提にして、租税負担率がこんなに低くていいんだろうか。そのことが非常に私は、長期的に赤字公債を繰り越したり、根っこになっておる建設公債はもっともっと先まで行けたのに、まさしく財政がフィスカルポリシーをやろうにもできない状態になっているというところに、私は日本の財政の今日的な問題があるように思うんです。  そういう中で、さらにその中身を区分けしてみますと、経常支出の占める割合というのが諸外国に比べて非常に小さい。それはもうチープガバメントの証拠みたいなものだと思うんです。さらにまた、振替所得を見ますと、一ころはたしか私は四・数%という時代を経験をしておるんですが、現在はもうアメリカ並みの八%という振替所得になっておる。そういう中で、わりあいそれでも公共投資というんですか、固定資産形式のところの割合というのは諸外国に比べて高い。まあ、ある意味では非常に健康な考え方で財政が運用されておる。そういう健康な財政支出があるにかかわらず、なおかつ、こういう大量の公債発行し、赤字公債をさらにその上に積んで、しかも、それが今後三年も四年も残っていく、こういうことを考えると、もう過去やはり高度成長に甘えた減税政策というものの惰性というものが、非常な大きい影を現在の財政に落としておるんではなかろうかということを心配しておるわけです。  そういう観点からお願いをいたしたいのは、私のいま言ったような財政についての考え方というのは間違っておるのかどうか。それからもう一つは、そういうことを前提にして考えた場合に、本当にいまのこの財政の危機を乗り越えていくのに、本当に租税政策というものをどう考えなければならないのか、そういう中で、どうして財政固有の資源配分機能なり、所得配分機能なりというものと、それから景気調節機能というものをどういうぐあいに調和させて考うべきなのか、私は、基本は、もう少し財政をきちっとしなければ、およそ財政に与えられたそういう機能というものは動かない、そういうぐあいに判断をしておるのですが、その点について参考人はどういうぐあいにお考えなのか、御意見を承りたいと思います。
  33. 大熊一郎

    参考人大熊一郎君) お答えいたします。  わが国において財政支出のGNPに占める割合が低いということは、計数の上ではまさに御説のとおりだと思います。ただ、これは一つは、諸外国に類を見ない高度成長のある意味では結果であるということがあり得るわけでありまして、分母になるGNPがどんどんどんどん伸びれば、幾らGをふやしてもこれは追いつかないというようなことでありまして、高度成長の結果ではなかろうかということが感じられます。  それから、租税負担率にいたしましても、わが国の場合は比較的低い、これも事実だと思いますが、やはり低いにもかかわらず年々所得減税がなされてきたというような問題でありますが、これはわが国がやはり少し直接税中心主義になり過ぎている結果ではないかというふうに私は思うので、むしろ税負担率を高めるというような、あるいは税負担率をどういうふうに持っていくかというような場合に、間接税の問題をもう少し御検討をすべきではなかろうか。これはやはり間接税と直接税では国民の心理的な負担も違うわけでございますから、やはり税というのは計数で、経済論だけで割り切るというわけには決していかないので、やはりそういうことも考えて、わが国の直接税中心主義を若干改めるかどうかという方向で考えるべきではなかろうかというふうに考えております。  それから、今日までGNPに占める財政支出の割合が比較的低かったにもかかわらず、財政による景気調整というのが比較的うまくワークをしたという反面には、わが国においては、これはよその国と若干趣を異にいたしまして、公共投資というものをかなり景気調整の役割りに使っている。これは公共投資を景気調整の役割りに使うということは、これはある意味では、理論的には減税よりもかなり刺激の強い政策でありまして、そのために比較的GNPに占める割合が低いにもかかわらず、景気対策としてかなり刺激を与えていたのだというふうに考えるわけであります。ただ、先ほど私は冒頭に、赤字公債であっても、それを発行する裏づけになるのは、教育とか社会保障とか、やはり公共投資ではないが重要な経費である、こういうことを申し上げたのでありますが、やはり私は、今後長期的に見ますと、政府の果たす行政サービス、それからあるいは政府が当然負担をせざるを得ないような科学的な研究あるいは教育あるいは医療というような問題についての支出は、つまり当然そうした——これは公共投資では物的資産増加にはなりませんが、そういう意味政府のサービス支出というものは、これは趨勢的に拡大せざるを得ない状況にある。これはアメリカにおいてもしかり、いずれの国においてもしかりであるわけであります。そうなりますと、今後そうした経常支出が漸増をするということは当然考えていかなくてはならない。それからまた、振替支出にいたしましても老齢人口の増加ということを考えますと、この社会保険が成熟した場合におきましては、かなりの振替支出の増加になるということも考えざるを得ない。そういたしますと、ここで私は将来、そうした経常支出、振替支出が趨勢的に増加をするということを踏まえた上で、それはやはりGNPに占める比率がふえるわけでありますから、その点で私は今後の問題として、先ほどもちょっと述べましたことも含めまして二点御検討をいただきたい。  それは何かというと、今後の公共投資のあり方であります。従来のような形でこのシステム的なと申しますか、総合的な輸送にいたしましても、そのほかいろいろな面で総合的な検討なしに公共投資を個別に進めるというようなことでいいのかどうかという、この問題を一つ御検討願いたい。  それからもう一つは、先ほど申しましたような間接税の御検討、これもお願いいたしたいというのが私の考えでございます。
  34. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大熊参考人に最初にお伺いしたいんですが、先ほどからお話の出ておりますように、中長期財政計画についての問題であります。  財政を機能的、弾力的に運営していく新しい政策手段として景気調整基金の設置とか、あるいは赤字決済を禁じた現行決済制度の改革とか、こんなことが考えられておりますね。これについて、もし参考人としてまとまったお考えがあれば簡単で結構ですからひとつお述べいただきたいのが第一点です。  それから次は、この考えの導入というのは、財政運営の基本である単年度主義とか、あるいは財政法四条の改正にもかかってくる問題があると、こう指摘されております。この問題が財政民主主義との関係でどうなのか、これについてのお考えもお聞きしたいということです。
  35. 大熊一郎

    参考人大熊一郎君) お答えいたします。  まず第一点でございますが、私はやはりそうした中長期計画という青写真があるからこそ、短期的な景気補正がうまくいくのではないかということを基本的に考えております。それで、先ほどちょっと例をお出しになりました税制による景気補正の問題、たとえば景気安定資金等々でございますが、先ほど申しましたように、わが国ではこれまで公共投資によって景気補正を行ってくるというのがかなり一般的な考え方でありまして、いますぐこの税制による景気補正というものは、なかなか財政当局にいたしましても、国民にいたしましてもなじまない点が多々あるのではないかというふうに考えまして、これはやはり具体的にもう少し検討を詰めてみる問題ではなかろうかと、こういうように感じております。  それから第二点でございますが、やはり財政法と申しますのはこれはやはり経済学的な意味公債発行に対する歯どめではございませんけれども、ある種の歯どめにはなるわけでございますから、できるだけやはり現状におきましては、この建設公債発行というものをたてまえ、それから市中消化の原則をたてまえとし、そうしてそれでも今回のような、あるいは昨年の補正のような赤字が出ました場合には、十分国会において特例債発行を御審議するという現行の形でいいのではないかと、こういうように考えております。
  36. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 その点については、たとえば単年度主義が具体的に崩れていくとか、あるいは財政法の改正が具体的に俎上に上るとか、こんなことも指摘されているわけですね。参考人としてはそういったことはお考えになってない、こう聞いてよろしいのですか。
  37. 大熊一郎

    参考人大熊一郎君) 財政は、先ほど財政民主主義というお言葉が出たようでありますが、できるだけ慎重にそういう点は審議をしていただいた方がいいと存じますし、またその法律の問題よりも、できるだけ現実にかなった運営の問題でできるのではないかというふうに、ただいまは私はそういうふうに考えております。
  38. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 大熊参考人には御多忙のところ貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
  39. 福間知之

    ○福間知之君 伊部参考人にお伺いをします。  先ほども公述の中で触れておられましたように、この年末近くから、いわば民間資金需要というものの動意が起こってくるんじゃないか、そこでいわゆるクウラディングアウトの問題が出てくるということなんですが、具体的にはそういう傾向はいますでに出ているのかどうか。  それから、ここ数カ月前まではいわば物価と景気回復という面を両立さしていくという金融政策が大体とられてきたと思うのですが、最近はそれが少し変わってきて、とにかく物価抑制というふうな傾向になっているやの見方があるんですが、だとすれば、先ほど申した前提、第一段階の問題と絡んで少し民間資金が圧迫される。特に最近のように、今回のように、言うならば、国債発行が下期に集中をしていくということで心配があるわけです。すでに中小企業の中では、景気中だるみということによるのかどうかは別にして、いまなお月当たり千件以上も倒産が続いている。これは単なる資金繰りの問題だけではないにしましても、かなりその点が憂慮されておるわけですが、いかがなもんですか。
  40. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) 福間先生にお答え申し上げます。  まず、年末から民間資金公債発行によって圧迫されるんじゃないかという御質問でございますが、これは先ほども冒頭陳述で申し上げましたように、最近の財特法の御審議が進んでおりまするからそういうことはないと思うのでございますが、私どもが最初心配いたしましたのは、これがだんだんおくれてまいりまして、財特法の成立がおくれてまいりますると、非常に公債発行がだんだんと年末から来年の春先に集中してまいります。  ただいま市中の金融情勢をちょっと申し上げますると、この春ごろから景気輸出と、それから住宅建設でございます、個人の。これを中心に明るくなってまいりました。輸出は依然として強調でございまするが、一−三月に見たような勢いで伸びておるということではございませんので、やや中だるみである、こういう言葉も出るんでございますが、輸出景気が上昇してまいりまして、その輸出景気上昇が他の設備投資でございますとか、あるいは他の在庫投資になかなか波及をいたしませんで、したがって、一般の景気輸出が引っ張ってまいりまする力がそんなに強くないようでございます。したがいまして、輸出関連だけがいいのでございまして、他の業界に輸出が中心になって景気回復の波及をするということはございません。したがいまして、目下のところは、一般的に申しますると、市中の金融機関に対する、中小金融機関を初めといたしまして一般産業界の資金需要は低調でございます。設備投資もそうまだ、何とはなしに冷え切っております。  それから、輸出金融は、簡単にこれは輸出金融でつくものでございまするから、これもまた市中の資金需給にはそんなに大きなタイトの影響を与えておりません。したがって、幸いにしてこの財特法が成立いたしまして、十月ごろから公債が計画的に市中の状況に見合いながら出てまいりますならば、そしてその間に、もし先生の御心配になりますような市中、特に中小企業金融に、資金の量の面におきまして公共的資金の吸い上げによる圧迫が起こってくるようでございますれば、これは中央銀行が買いオペ等によりまして、やはりこの運用よろしきを得さえすれば、そう大きな心配はない、こういうふうに私は目下考えておる次第でございます。  それからもう一つ、物価と景気との両方の問題でございますが、もちろん常に物価を注視しながら景気の安定的回復を図るということが、これが一番根本の旗印であるべきは当然でございますが、一時卸売物価がやや少し騰勢ぎみが明らかになってまいりましたので、一般にこれでは金融が引き締まるのではないかという空気が、特に私ども関西におりますんでございますが、関西の経済界にそういう声が出ましたけれども、しかし、日本銀行金融政策そのものにつきましては、ただ非常にその卸売物価の騰勢を注意はいたしておりましたが、毎月毎月の資金需要に対する、私どもの信用供与の企業に対しまする日本銀行の考え方は中立的でございました。特に卸売物価の動静によって引き締めるということはございませんでした。また最近におきましても、卸売物価の騰勢情勢は十分見ておるようでございまするが、やはり景気は安定的に向上していく必要があるという立場をとっておりまするから、先生の御心配になりましたような、暮れから年初にかけましての中小企業等に対する公債資金の吸い上げが直ちに影響を与えるということはないと存じます。  余談でございまするが、公債発行とは別に電電、国鉄の問題が、これが中小企業に非常に大きなやはり影響を与えておりましたが、これもこの問題の解決と同時に、おいおいと中小企業に対するいままでの影響はなくなってくると、こう存じておる次第でございます。
  41. 福間知之

    ○福間知之君 じゃ最後に。時間が来たようでございますが、ただいま述べられたようなお見通しで、仮に国債発行が今日おくれているけれども、決まったらそれは引き受けなければならないという立場で、しかし、いま申したような点については、特に年末を控えていまするだけに、ひとつ日銀当局との関係においても、これは十分ひとつ協会としては配慮をされるべきでないか、こういうふうに要望を含めて申し述べたいと思います。  そこで、時間がありませんので、先ほどの中期国債の問題と少し関連しまして、報道によりますと、長期信用銀行とか、あるいは信託銀行等が、中期割引国債に対する態度としてはやや問題があるということで、しからば、いわば国債多様化というふうな面でどう考えているのか。これはお聞きをしたいんですが、一つの例が、現在の償還期限十年ものをいわば五年というぐらいの期間に中期利付債として発行するとかいうふうな考え方、あるいはまた満期まで売らないということを条件に元本のこの価値を保証する、税制上の措置として、優遇措置として貯蓄国債的な性格にするとか、そういうふうなことが代案といいますか、対案として協会の方では検討されているんですか。
  42. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) 先生にお答えいたします。  いま先生が仰せられました長期信用機関あるいは信託のように、長い金を調達して長い金を貸しております機関において、この割引国債に対して消極的反対、消極的な上に代案と申しますか、それにかわるべきものとして短期の五年の国債、それも貯蓄国債というような形で出しておる、そういうことを協会で協議しておるかというお話でございますが、実は協会におきましては、まだ一度も、これからの問題でございまして、一度も長期信用機関からも、それから信託からも、いわゆる全国銀行協会連合会全体の問題としてそういうお話を出されたことはございません。先生のおっしゃるとおり、新聞等にはそういうことが書いてございますが、私ども仄聞するところによりますると、五年ぐらいの短期の国債で、利付債で、しかも、市場性のないもの、こういうようなことではないかというふうに私は仄聞しております。これはそういうものを全国銀行協会連合会において検討しておるということではございません。そういうものが言われておるというようなことを仄聞しておるということでございます。
  43. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 初めに、伊部参考人にお伺いをいたします。  先ほどもおっしゃっておりましたが、これからの国債発行に対する銀行引き受けについてですが、特にこの十月は、財特法の関係でやはりかなり多額に出るというふうなことが新聞等に出ておりますが、まず十月、一兆二千億というようなことも出ておるわけですけれども、実際どうなるかこれはわかりませんが、かなり十月にたくさん出る。それから十二月は、やはり資金需要がたくさん出る。そういうときに銀行としてはどういうふうな負担になっていくのか、大体大ざっぱに計算いたしますと、いままで九月、これから十、十一、十二、一、二、三とした場合、四、五はちょっとペンディングしておきましても、わずかの期間でまだ相当、四兆円近く残っておるわけでして、その点についてこれからの負担がどういうふうに、それからいままでより負担が多いと考えられますか、それともいままでやってきた負担程度とお考えになって何とかいけると、こうお考えか、その点はいかがですか。
  44. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) 矢追先生にお答え申し上げます。  いま私ども承知しておりますのは、財政特例法成立を見ました上で、下期の特例国債発行額としましては、十月、十一月で約一兆円程度と聞いておるわけであります。十二月に二、三千億円を予定しておると、こういうふうに私どもはいま承知しておるわけでございますが、仮に、もしこの予定どおり十二月二、三千億円の発行ということになりますると、これは昨年は約四千億円昨年の同期に出ております。したがいまして、この十月、十一月もこの程度でございまして、そして暮れが先生のおっしゃるとおり一番問題でございますが、いま聞いておるような金額でございますならば、昨年の例に徴しまして引き受けは可能ではなかろうかと、こういうふうに考えております。それが御心配になる産業界あるいは中小企業にどういう影響を与えるかということは、私どもといたしましてはそんなに影響を与えることなしに引き受けが可能ではなかろうか、こういうふうに存じております。
  45. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 現在の資金状況ですけれども、先ほども少しお触れになっておりましたが、景気回復が余り伸びなかったために資金需要が少なかったのでわりあい資金はあったと、そういうことを強調されておりますけれども、それだけが、現在の資金がわりあい豊富なのか、それともやはり国債引き受けなければならぬという圧力ですね、そういうものがやっぱり貸し出しに大きな影響を与えてきたのか、あるいはまた金利の面が作用したのか、どれが一番——結局現在のような状況、もちろんそれは私景気停滞ということは大きな要素だと思いますが、公共債の発行というものがどれだけの圧力になって、貸し出しの窓口規制といいますか、そういったことに影響が出てくるのか、その辺のところをどうお考えになっておるかお伺いしたいんですけれども
  46. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) 矢追先生にお答えいたします。  最近の産業資金の需給関係がそんなにきつくない、緩いと、需要がそんなにないという原因に、国債を大量に引き受けなければならぬからか、あるいは他の採算の問題か、その他景気の問題かということでございますが、率直に申し上げまして実態は、やはり景気の実態でございます。先ほど申しましたとおり、住宅と輸出金融需要がございます。で、輸出金融は特別の措置がございまして、これは非常に楽に出てまいりますものでございまして、短期でございます。それから住宅金融も最近伸びておりますが、これは何せ全体の総量から申しますれば相当伸びておりまするが、全体の資金を圧迫するほどのものではございません。  それから公債は、先ほど来申し上げておりますとおり、公債引き受けをしなければならぬから他に回わす資金がないという、やはりクラウディングアウトという現象はいまのところは全く起こっておりません。全くこれは経済全体がまだまだ景気がいいと、少し立ち直ってまいったとは申せ、これはごく限られた業界でございまして、関西で申しますならば化学工業、石油化学工業あるいは機械工業、繊維工業というような巨大な産業は、依然として景気はまだよくないのでございまして、自動車関連あるいは弱電機関連等々が、いわば一組の中で二、三の優等生が非常にいい成績をとっておる、そして全体の平均点が上がったという状況でございまするから、全体の産業界の経済活動に要しまする資金需要というものは、事実そう旺盛なものではない、これが先ほど来申し上げております資金の最近の需給関係の実態でございます。
  47. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それでは次に、村田参考人にお伺いいたしますが、一つは、シ団のいままでの国債消化状況を見ますと、証券関係が比率にいたしますと一三・一%と、一応予測された一〇%より少し上回っておるのですが、この原因はどこにあるのか。それから今後このパーセンテージはふえていくと見ておられますか、その点をまずお伺いします。
  48. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) 大体平均いたしますと一一%ぐらいで、最近が、先生おっしゃいましたような一三・何%というふうな状況に相なっております。なぜそういうふうに上向いてきたかという原因の、理由の御質問かと存じますが、一つは、自分で申しましてはあれでございますけれども、四十一年から非常に苦労しながら、十年以上にわたりまして国債個人消化に努めてきたその積み上げというものが一つバックボーンになっておるかと存じます。  それからもう一つは、最近比較的好調になりました理由といたしましては、やはり先ほどもちょっと申し上げましたけれども、何といっても発行条件というものが、市場の実勢に近づかなければいかぬわけでございまして、これが実勢に近づいてくれば、消化は比較的楽になるということは一面の事実でございます。昨年その金利改定が行われましたときに、事業債との幅が、若干国債との差が縮まってまいりまして、これがかなりいい影響を与えてきたということが一つございますかと思います。  それからもう一つは、まあいろいろPRと申しますけれども、何もポスターに張られておるのが消化にいい影響を与えたということばかりでもないと思いますけれども発行当局におかれまして、何と申しますか、一般国民層、投資層に、大衆層と申しますか、そちらの方に何か自分の方から近づいていく、これはこれまでには余り率直に申し上げましても見られなかったことでございますけれども、その姿勢が打ち出されてきておるということが背景となっている。この点が私はかなり大きな効果を持っておるのではないかと思います。ほかにもあるかもしれませんが、大体主なところを申し上げますればそういうふうなことであろうかと存じております。
  49. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまお話ございましたが、そうなりますと、仮に来年度はどれぐらいの国債発行になるか、これはまあこれからの問題でございますけれども、今年度の実績を踏まえて、そのシ団の引き受けの中における皆さんのいわゆる枠というものが、いま一〇%というのが目安になっておりますが、それを一三に上げるとか、一五に上げるというふうなことは希望なさいますか。それとも一〇%の枠で結構と、その点いかがですか。
  50. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) 実は、その一〇%と申しますのは、四十一年にこの国債発行が行われまして、その時に、シ団の中でのお互いにシェアと申しますか、どのくらい引き受けるか、証券会社は、証券団は個人消化すると言うけれども個人消化どのくらいのめどでやるかというふうなことでございまして、そのときに大体めどといたしまして、その一〇%見当でしょうかということが、シ団内のシェアとしての、めどとしての一〇%ということなんでございます。それにも非常になかなか困難も先ほど申し上げましたように伴っておりましたけれども、何とかその辺には来ておるわけでございます。一体、私どもの問題意識といたしましては、シ団内で一〇%というので、一〇%やればいいのかというと、そうはまいらないというのが、私どもの考え方でございまして、要するにシ団の中のシェアというのは、これはコップの中の目盛りみたいなものでございまして、一体それでいいのか。もっと国民経済的に見てどのくらい個人消化をしたらいいのかということがより大切だと、このように存じております。ただ、まあ先ほどもお話のございましたように、インフレにつながるところのマネーサプライ、そういったふうなことに対して安全圏に置いておくためには、どの程度個人消化をしたらいいのかということが、もし数量的に把握されますならば大変幸いなんですけれども、これを把握することはこれは至難のわざでございます。先ほども御答弁申し上げましたように、外国の例などを見まして、やはりアメリカ個人消化比率が一六%でございますから、もっとそれに近づいていかなきゃならぬのじゃあるまいかと、このように存じておりまして、急にそこまでいけるとも存じませんけれども、まあ一三、四%ぐらいまではどうやらこぎつけてまいりましたので、来年のところ一五%ぐらいには持っていきたいものだなというふうに考えております。
  51. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、公社債市場整備についてお伺いいたしますけれども、この育成に本腰が入れられてきておるわけですけれども村田参考人の御意見、御希望として今後どういう点をどういうように改めたらよろしいか、特に一番力を入れなきゃならぬ点はどの点なのか。  それから、これは後で伊部参考人にもお伺いしたいんですが、現在の日本の金融資産がやっぱり有価証券等は非常に少のうございますね、外国と比べますと。大体全部銀行になっておる。そういった点で、その辺はいまの現状のままでよいのか、もう少し諸外国並みの方向へ変えていくのがいいのか、その点も含めてお伺いしたいと思います。以上です。
  52. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) ただいまの御質問の流通市場整備の問題でございますけれども、社債について申し上げますと、事業債について申し上げますと、昨年が一年間で大体五十兆の流通高でございました。ことしから来年にかけましては六、七十兆にいくんではあるまいかと思っておりますので、かなり事業債に関しましては流通市場整備されてまいったと、このように存じております。ただ問題は、国債であろうかと存じます。国債流通市場につきましては、ただいま大体——これでも大分ふえてはきたんでございますけれども月間千億ぐらいです。ふえてはきましたけれども、これを年間に直すと一兆二千億から一兆五千億ぐらいのもので、五十兆の事業債の出来高に比較いたしますと余りにも小さいのではあるまいか、かように存じております。  そのために何が最も必要かという先生の御質問へのお答えでございますけれども、やはりまず第一に挙げるべきものは、発行条件がより——非常に御努力は願っておるのでございますけれども国債につきましては高く評価しておるのでございますが、まあもう一息実勢に近づける御配慮を願いたい。大体一つの金利体系全体が動きますときには、国債もそれぞれの位置づけにおきまして改定されますが、もし市場実勢発行条件との間にかなり乖離がございますと、流通市場はやはり崩れてまいります。そういう時期には、全体の金利改定が行われる時期でなくとも、やはり勇断を持って対処していただけば大変幸いである、このように存じます。  それから、もう一つの理由といたしましては、国債流通市場にわれわれは本当に真剣に取っ組んでまいらなければならぬのでございます。発行条件がより実勢化してまいりますことと、流通市場の中で非常によくできますのは、流通市場を形成されてまいりますためには比較的期間の短かいものが流通の主軸になってまいりますものでございまして、国債につきましては、大部分が金融機関さんの保有にかかわるものでございます。で、オペレーションもございますし、比較的中短期のものが残存期間が少のうございます。これがもし何らかの方法によりまして、残存期間の比較的少ない、短かい国債市場に出てくると、やはり市場というものは需給統合の場でございますから、やはり供給も必要でございまして、そういうふうなものが出てくるようでございますと、そういたしませば、私は、現在でも国債流通市場の、何と申しますかポテンシャルは十分にあると、このように考えておるわけでございます。
  53. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) お答え申し上げます。  ただいまの先生の御意見のように、金融資産は、日本におきましては銀行預金がほとんどでございます。詳しいパーセンテージは頭にございませんが、たしか五〇%から六〇%が銀行預金である。それから、米国等におきましてはたしか二〇%前後、二〇%以下ではないかというふうに存じておるのでございまして、もちろん私どもといたしましても、金融資産多様化するということは、一国の金融市場経済の発展のために非常に好ましいことだと、そういう姿がやはり進歩した金融市場であり、資本市場であり、経済状況だろうとこういうふうに思っておるわけでございます。  それにはどうしたらいいかということが問題でございまして、そういう場合にまた銀行はどうするのかと、こういう問題もございましょうかと思うのでありますが、やはりそれには、まず前提といたしまして、いまお話のございました証券の流通市場整備されると、つまり証券が金融資産として非常に人に好まれると、選好されるというには、やはりキャピタルロスがなしで、常に売りたいときに売ると、必要なときには売れるというようなマーケットが必要であるという意味におきまして、流通市場整備というものが一つ大きな前提になっておりまするし、それからもう一つは、やはり金利の自由化でございましょう。やはりこれがアメリカのように、いろいろな金融資産がみんなのそれぞれの選好によって選ばれると、しかもそれが常に流動し、流通しておると、動いておるということの背後には、やはり金利がきわめて経済合理性にのっとって弾力的に機敏に常に動くと、これが必要ではなかろうかと、こういうふうに思っております。また銀行がそういう場合にどういう役割りを果たすかということになりますると、これはまた預金銀行からいろいろな銀行業務がほかに波及してまいりまして、そういう一つの経済金融資本市場に相なりますれば、また銀行としての機能が新しくここに発生してまいると、こういうふうに思っておるわけでございます。以上をもってお答えといたします。
  54. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最初に、伊部参考人にお伺いします。  前国会で全銀協の中村会長が見えまして意見をお聞きしました。そのときの中村会長の話では、国債発行によりマネーサプライを増大させるけれども、現在は——そのときですね、の需給ギャップのもとではインフレの心配は当面まずないと言っていいと、こういう御意見だったと思います。しかし、今日の景気回復の特徴を見てみますと、景気に先立って卸売物価が上がるということですね。それからまた景気回復のテンポを上回って卸売物価が上がっているという、こういう事実がございます。で、このままでは政府の当初見通しの達成は困難であるとさえ見られているわけでして、物価が再び重要な問題となってきたと思います。しかし、政府の方では、国内景気中だるみの問題と、それからもう一つ、IMF総会に示された黒字国の景気拡大の勧めもあって、財政支出の促進による景気拡大と、こういうことに重点を置いて、どうも物価を軽視しているような、こういう印象を受けるわけです。こういう事態を見てみますと、需給ギャップ説というものがどうも間違っておったんじゃないかと、このように思われるんですが、これについての全銀協としてのお考えをお聞きしたいと思います。
  55. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) 近藤先生にお答えいたします。  マネーサプライの問題でございます。最近のマネーサプライ動向でございますが、前年同月の伸びでは大体四十九年の九月が底でございまして、徐々にやっぱり上がってきておりまして、本年度初頭以降は一五%から二八%ぐらい横ばい、そういう状態横ばいになってると思っておるんです。こうしたマネーサプライの漸増傾向が、引き締め期間中に非常に圧縮されました企業の手元流動性が、財政支出輸出増加を通じて回復してきたということではなかろうかと、こういうふうに思うんでございまして、やはりこれは中だるみとは申しながらも、景気が明るくなってきたものの証左の一つというふうに判断をいたしておる次第でございますが、しかし、企業資金需要の方を見てみますると、総じて先ほどから申し上げておりますとおり落ちついております。で、借りる方も非常に慎重になってきております。そして金融機関の融資態度につきましても、その先行きをよく見て運用しておると。で、今後マネーサプライが急増して過剰流動性が発生すると、つまり金融機関が貸し過ぎをしやしないかという面でございますが、これにつきましても非常に慎重な態度でいま臨んでおりまするから、今後マネーサプライが急激に増進をいたしまして先生が御心配になるような過剰流動性が発生するというようなことはまずいまの段階ではないというふうに思うんでございますが、しかし先行き、今後こういう状態が進む過程でインフレがどうだろうかということが先生の御質問の御趣旨かと存じますが、そういうことに関しましては、いま先生のお話のように、卸売物価がいまの景気現状に比べて上がっておるではないかということから、今後のやはりインフレはどうだろうかと、こういうことであろうと思うんであります。  で、確かに最近の卸売物価は全体の景気の実勢からして上がっておりますが、これは主としてやはり基礎産業に非常に多いんでございまして、原材料が、やはり石油ショック後の後遺症の一つとして非常に抑えられておったコストが、だんだんやはりそれに耐え切れなくて上がってまいりました。それから公共料金のやはり値上がりというようなことでございまして、やはりコストを割るというようなぎりぎりの線から何とかしてこれを回復しようというような意味の値上がりが多うございまして、これが卸売物価に影響しております。で、私どもが心配いたしておりまするのは、こういうものがやはり心理的にインフレ気構えになりまして、買いだめでございますとか、あるいは在庫の積み増しでございますとかいうような動きが出てまいりますと、先生のおっしゃるようにこれはひとつインフレにつながるんではないか、そういう時点において中央銀行と私どもが緊密な連絡をとって、これにどう対処するかということが今後の問題であろうかと、こういうふうに思っております。
  56. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 次にお伺いしたいのは、今年度の公共債の発行は十二兆円を超えますね。そして、昨年の全国銀行の実質預金の増加が約十一兆円だったと思います。ですから、今年度の公共債の消化だけで私は大変大きな負担になるんではないか、そういう数字だけ見てみますとね。で、その上に景気回復に伴う市中貸し出しが多少ともふえますと、いわゆるクラウディングアウトの発生は不可避じゃないか、こう思います。それを避けようとすると、すでに発行してる国債の日銀買いオペは避けられないと思います。そして従来政府や日銀はこういう説明しとったわけですね。成長通貨の範囲で国債の買いオペをすると、こういうぐあいに言っとったんですが、果たしてそれが守り切れるのかどうか、この点についてまずお伺いしたいと思います。  それからまた、もう一つの問題は、景気回復に伴う税増収が、それがあるから政府に公共債の発行を圧縮してもらうという、これは前回の中村会長が言っておったことでありますし、日銀総裁もそう言っておったんですが、しかし、景気回復税収増加にはタイミングのずれがありますし、少なくとも今年度、年内見てみますと増収が期待できる状況じゃないわけですね。そうしますとこの措置もとれない。やはり年度内の物価上昇は大変危険な状況にあるんじゃなかろうか、こう思うんですが、こういった面からいかがですか。
  57. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) いま先生の御提示になりました問題は非常にむずかしい問題でございまして、それで、今後出てまいります公債発行額とそれから預金の増分との関係においてもなかなか困難な問題が出てきやしないか、こういう問題が一つございますし、それから物価の問題に、成長通貨に見合って通貨が出て物価に中立的な影響を与えてそれで済むだろうかと、こういうことでございます。  いまは金融情勢は緩和期でございまするので、従来の緩和期には私ども銀行の預金——ごく簡単に申しますならば調達資金と運用資金の差は、非常に調達面が大きくなりまして、いわゆる資金ポジションという言葉を使っておりますが、預貸率と申しますか、あるいはさらにむずかしく言えば預貸証率ということでございますが、要するに預金の方が多くて、貸出金が下がってきまして、この間の中央銀行から借りておりました金がどんどん返ると、これが非常に縮まってまいるということでございますが、現在は資金需要の方が、さっき申しましたとおり、非常に少ないんでございますから、それにまず対処できるということと、もう一つは、実は他の債券を売りまして、そうして資金のポジションを調達しているわけなんですね、他の債券を売りまして。それと同時に、やはり日銀の借り入れもふえております。でございますから、今後税収増加によりまして公債の償還があるいは発行が少なくて済むという理屈もいずれはくると思いますが、おっしゃるとおり、非常にそれにはギャップがございますし、その間どうするかという問題が、非常にやはり金融問題としては大きく浮かび上がってくるわけでございまして、この点については金融政策当局に、非常にむずかしい、しかし適切な政策を御要望するということでございます。  それでもう一つの問題は、国債は大量に発行して引き受けますが、引き受けた金は国庫から出まして、そしてまた産業界へ戻ってまいります。ですから、多少そのタイムラグがございますけれども、もう一遍また銀行の預金になって返ってくる、そういう面もございますことも先刻御承知とは存じまするが、これに大きな影響がございません。しかし、それにはタイムラグがございますから、その間をどうするかと、それで成長通貨をその間どうするかと、こういう問題がございます。それからもう一つは、引き受ける側の機関と、その流れた金を受け取るところとで地域的にギャップがございます。これをどうするかと、こういう問題もあるわけでございますが、こういう点もやはり適切な政策当局政策の発動を希望する次第でございます。
  58. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 特に年末に向けて、心配はないのかどうかですね。
  59. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) 今年の年末に関しましては、先生の御懸念になるようなことはないと存じております。これは、私どももそのつもりでひとつ努力をいたしたいと思います。いま、そういう懸念すべき条件は、いま発生はいたしておりません。
  60. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それから次に、中期割引国債の話ですが、先ほども指摘があったとおり全銀協は反対の態度をとっておったという話ですが、その反対の理由をいろいろ聞くところによりますと、まあ利子についての不公正税制を助長させるんじゃないかと、そういったことが言われておったように思うわけですね。その点間違いないかどうかということと、もしそうだといたしますと、現在の利子所得に対する源泉分離選択課税、そういう一つの特別措置がありますけれども、これについてどんなお考えをお持ちなのか、これについてお伺いしたいと思います。
  61. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) この全銀協が中期割引国債で反対をしておったということは、全銀協自体として公に機関に諮ってそういうことを決めて発表したということは絶対ございません。  それから、先生のおっしゃいまするその個人の利子の源泉選択による問題でございますが、これはいろいろな立場でいろんな議論が出るわけでございますが、先ほどのやはり税制による一つの政策を税の特別措置でやるという問題になってまいるわけでございます。この淵源はずいぶん古いんでございまして、最初はやはり消費を抑制し貯蓄を奨励するという一つの政策目的からこういう特別税制が出てまいりまして、その後もやはりそういう要請に基づいて、税率は上がりましたがそういう組織そのものは残っておるわけでございますが、全国銀行協会連合会といたしましての代表といたしましては、やはりこの制度は存続をしていただきたい、そして、やはり銀行のこの公債引き受けその他の原資を獲得するという面と、しかも、貯蓄を奨励するという面から、この制度の趣旨は依然として私どもといたしましてはぜひ存置していただきたいと、こういうふうに希望する次第でございます。
  62. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最後に、村田参考人に三点ばかりお伺いいたしますが、第一は、個人消化ということでありますが、現在の少額預金の非課税、それから郵便貯金の非課税、それから少額国債の非課税及び財形貯金の非課税制度がございますね。そういう制度のもとで、中期割引国債を買って有利になる階層があると思うんですね。大体それをどの程度のところににらんでおられるのか、それがまず第一点。  それから第二点は、中期割引国債消化先は個人だけに考えておるのか、あるいは、金融機関を除く法人が買うことがないのかどうか、この辺どうお考えなのか。  それから三番目には、中期割引国債が買いオペの対象になるかどうかという問題なんです。これは、先日銀行局長にお伺いしましたらば、理論的にはその可能性はあると、こういうことなんですが、それを村田参考人はどう考えておられるか。この三点お答え願いたいと思います。
  63. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) 少額貯蓄非課税の問題でございますけれども、一二%で一番有利になる層はどこかというのは、これはちょっとむずかしい問題でございまして、一つは、所得階層別の分布状況がひとつつかめておりませんこともございます。これは現在のまだ出ていないものについてではございませんけれども。  それから、そういうことでございますのと、比較が非常に困難な点がございまして、少額非課税と、それから片方で源泉選択税率と、この付利形態のものは御承知のように三〇%と、それから非課税と両方の制度がございます。それから、付利形態でない現在の割引金融債のようなものでございますと一二%一本、ということになりますと、一体どこが均衡になるのかちょっとつかみにくい状況でございます。これが正直なところでございます。  それから、第二の御質問……。
  64. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 消化先。
  65. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) 消化先が個人だけかどうかという、これは私どもが考えておりますのは、もしそういうふうなことに相なりますとすればでございますけれども、これはやはり個人だけでございます。そのほかのいわゆる雑法人と申しますか、これにはまず入らないだろう、このように存じております。  それから、したがいまして、買いオペの問題でございますけれども、これはだんだん量が、非常に残高が将来、まあ新種国債につきましても、どういうものにいたしましても、非常にふえてまいりますれば、これは金融調整の手段として御考慮の対象になるだろうと思いますけれども、それはまあよほどほど遠い問題だろうと、このように存じております。
  66. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 伊部参考人にお尋ねをいたしますけれども国債大量発行金融市場関係ということで伺うわけですけれども、言われましたように、いわゆるクラウディングアウトが表面化しているとは見られない状況だと思いますし、そういう資金需給関係だと思うんですけれども、そうは言っても、去年の暮れから今日まで大量の国債発行をしてまいりました。金融市場影響が出ていないかというと、どうも必ずしもそうも思えないという角度で、いささか素朴な質問になるかもしれませんが、二点ばかりお尋ねをしたいと思います。  最初にお伺いしたいのは、先ほど国債発行についてはプライスメカニズムを生かしてもらいたいという御主張がございました。で、理由としては、一つは、国債発行の歯どめということをおっしゃいましたけれども、これはなかなかプライスメカニズムを生かしても、歯どめになるかどうかということは疑問でありまして、というのは国債予算とは一体でありますから、若干発行条件が悪くなっても財政当局者は目をつぶってこれは発行せざるを得ないということですから、必ずしも歯どめになるかどうかは議論があるところだろうと思うんです。むしろ御関心があるのは、準備資産運用資産としての国債という面だろうと思うんです。ここでは確かに言われますように、国債として発行するわけですから、ほかの公社債との水準も考慮しながら妥当な線に決めてもらいたいと、まことにごもっともだと思うんです。ただ、それをもう少し進めて考えてまいりますと、ほかの公社債の水準も、いわば相互に影響し合いながら高めていくということになりはすまいか、これが金融制度なり金融市場にどういう影響を与えるんだと、これがお伺いしたい点なんです。貸出金利の動きを見てまいりますと、最近の資料でも確かに全国銀行全般でながめてまいりますと、あらかた金利は下がっているんでありますが、そこの中で長期信用銀行だけが、いま手元にありますのは五十年七月からことしの七月までですけれども、微増、強含みで推移しているわけです。で、これは長期、短期合計の数字なものですから、短期だけ抜き出して内訳を見ますと、長期信用銀行も下がっているわけであります。ということは、長期資金、これが強含みだという意味だと思います。言っている意味は、国債大量発行背景にしながら、金融債の発行条件が、いわば利回りが高い段階で発行してきたということではないかと思うんです。で、今日でさえこの状況であって、国債発行条件プライスメカニズムに従ってもらいたいということになりますと、金融債としてもより有利な条件ということにおのずからなってくるんじゃないか。そうなりますと、金を借りる側から見ますと、預金をもとにしている都市銀行、地方銀行から貸してくれるものならよっぽどいいやということになりはすまいか。いまでも下がっているわけです。ということは、プライスメカニズムに従って国債発行してもらいたいという御主張は、よく考えてみますと、金融債というものを長期資金調達の原資にしているいまの金融のメカニズムを、みずからいわばクラウディングアウトしていくと、そういう可能性を持っているのではないか。しかも、今日資金需要が大変緩んできたといいながら、この長期資金、いわば金融債を原資にした長期資金だけは貸出金利がじりじり上がっている。しかも、融資高を見るとむしろ減っているわけです。非常に今でさえ異常だ。いわんや御所論に従って考えたら、長信銀もって何となすという変革の窓口に立っているということを含めてお考えなんだろうか。はてさてこの問題どうしたらいいんだろうかということが御質問の第一点です。
  67. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) お答えいたします。栗林先生にお答えいたしますが、非常にそれはむずかしい問題でございまして、この流通市場整備ということから申しますると、やはりすでに常に証券が自由に流通するという姿を求めなければならない。それにはやはりそのときどきの市場の価格というものが合理的に決まりまして、それによって買い手と売り手が市場で物を動かすということに、証券を動かすということになるわけでありまして、現在、高度成長期の過渡的な低金利政策を経まして、いまだんだんと金利が——低金利時代には非常に政策的な低金利政策がとられてきたわけでありますが、しかし、四十年代後半に入ってからは、やはり経済構造に変化を生じまして、いつまでも低金利政策を続けることができない状況になってまいりました。このために金利は徐々に実勢に近づきつつあるわけでありますが、いまの金利が本当に実勢かどうか、これを何によって決めるか、ここに一番むずかしい問題があろうかと存じます。  これは非常に理屈っぽい問題になりまして余り実効はないんでございますが、私がきわめて端的に申し上げますならば、やはり弾力的に金利が自由に動くと、敏感に動くと、こういうシステムがまず改善されながらできていくということによって、何が適正なやはりいま利回りであるか、金利であるかということがおのずから決定されまして、それでものが動くということになるのが、やはり最も自然であり、そういう方向にものを考えてまいりますことが必要ではなかろうかと、まあこういうふうに思うわけです。今後大量の国債が出てまいりまして、できるだけやはりこの流通化を図るということとともに、個人消化を必要とする、個人消化の部分を広げていく、これは全くそのとおりで異論はないんであります。  先ほど来、ちょっと余談にわたりますが、割引国債発行につきまして、全銀協は反対をしておるということではないかということでございますが、これは全く賛成はいたしておりません。また反対のまだ決議をしたわけではないんでございますが、たまたまごく最近になりまして、いよいよ中期国債の骨格がこういうものである、十分これをシ団において検討してくれと、こういうことでございますので、引き受けシ団にはそれぞれのいろいろの機関が集まって国債を共同で引き受けておられるわけでございますから、ここで十分に慎重な、しかも、十分な検討を経まして、そうして合意の上で、発行者と十分な合意を得てこの問題を解決していくといういま段階でございまして、それはいま早速飛びついて賛成をするという意味でもございませんし、反対論を正式の場で公に全国銀行協会連合会として公表しているわけではございませんが、しかしこれは、今後シ団において十分に検討するといういま段階であることを先生方に御連絡申しまして、早速この問題は二、三日うちから真剣に始めるつもりでございますので、御了承いただきたいと思います。
  68. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまおっしゃいましたように、個人消化というのは、銀行の側から考えても決して間尺に合わない話ではないんだろうと思います。なおかつその個人消化で、中期割引債の問題も含めて取り組むと言っても、金融債を長期資金調達の原資としている金融機関の部分はどうするかという問題は残ってしまうんじゃないか、お答えづらいかと思いますのでお答え求めませんけれども。ただそこで、いま何が一番妥当な金利水準かというお話がありましたので、これも大変漠とした質問で恐縮なんですけれども、続けて教えていただきたいと思いますのは、いまここで三兆七千五百億円の特例債の議論をしておりますのは、実はいろんな前提がありまして、財政の単年度主義あるいは財政当局税収の見積もりに対して大変慎重である、あるいは仮に赤字が出た場合には、それは日銀に持って行っちゃいかぬぞと、いろんな前提条件があっていまあらかじめの議論をしているわけですから、制度の前提が変わってくると、いまの段階で特例債を議論しない、これは後回しということも決してむちゃな想定ではない。現実には合いませんよ、合いませんけれども、質問の一つの前提にはなるんじゃないか。いまこのことを伺っているのでありません。そこで、いまくどく申し上げましたのは、もし国債が、特例債と限定していただいても結構ですし、建設公債でも結構なんですが、大量発行というのがなかったとしたら、私は金利水準は、妥当であるかどうかは別にして、やっぱり下がっただろう。いまの金利水準は、先ほど申し上げましたように、都市銀行、地方銀行、信託銀行下がっておりますけれども、これは実は国債大量発行ということによって支えられた金利水準。そうすると、国債発行がなかったとしたら下がったであろう水準と、現在の水準の差というのは一体何なんだ、ここを伺いたいんです。  そこで、つけ加えて申し上げますと、まあいまの財政状態から考えますと、とても出さないでおれるものかということがあるかもしれませんけれども、いま民間企業が悩んでいるのは、金融費用であることは御承知のとおりですから、国債発行しない、よってもって金利が下がる、金融費甲が下がるということになると、そちらからの税収期待できる、決してこれは税収面からもむちゃな前提では私はないと思うのです。ただタイムラグはありますよ、ありますけれども、ただこうたってくると、じゃ、資金需給関係どうなるかというと、景気はすぐよくはなりませんから、新しい設備資金需要は起きないでしょうけれども、必ず起こってくるのは借りかえ需要、より低い金利を求めての借りかえ需要が起こってくる。ということは、金融業界の中に自然淘汰が起こる。私は、高度経済成長時代から減速経済に入ったんですから、金融の中でも自然淘汰が起きてもいいと思うんです。それをどういうぐあいに大きな障害なしに乗り越えるかは別な相談ですけれども、ただ結果として国債発行というのは、いかなる金融機関といえども、それぞれにつぶれないで利益を上げられる金利水準というのは結果として維持している。このことを一体どう思ったらいいんだ。逆に言うと、賢明な財政当局者の手腕のおかげで赤字公債から離脱したときに一体どうするつもりなのか、そこにつながってくる話にもなります。  そこで、もう一遍戻りながら、二つの金利水準を比べて考えますと、いま実は資金は緩んでいるというお話なんですけれども、なるほど高度経済成長時代から比べれば、いまは緩んでいるかもしれませんけれども減速経済という新しい物差しで見たら、いまでも資金はもう詰まっているんじゃないか。したがって、クラウディングアウトというのは、減速経済という新しい尺度で見たらもう出ているんではないんだろうかこれを伺いたい。
  69. 伊部恭之助

    参考人伊部恭之助君) 非常に先生の御質問は高度のむずかしい御質問でございますが、まず公債発行されないでいたならば金利はどうであったか、いまの金利とどういう関係になっておったかということでございますが、これにはいろいろな想定が必要でございますが、もし公債発行されておりませなんだならば景気一体どうなっているか、こういう問題がまず第一に頭に浮かんでまいります。そして、景気はさらにこれは停滞をいたしましていろいろな問題が発生してくるのではないか。それがまた逆に税収にはね返ってくるというような状態にあったのではなかろうか。したがいまして、景気停滞による税収の不足を埋めるという問題は、一応いまの問題とは別でございますが、建設国債というような国債発行によりまして、市中の資金を吸い上げましてそれを景気刺激に放出する。これはやはりあってしかるべきことであったと存ずるのでございます。それでもなお景気が浮揚できない特殊の事情が石油ショック等々でございまして、税収の不足をついに特例国債発行するという事態になりましたが、しかしその金利と、それからそういう公債が出なかった場合の金利——これは恐らく非常な不景気に相なりまして金利は非常に下がると思います。そこにおきまして、さっきおっしゃいましたように、金利の選好が始まりまして金融機関の間に非常な資金の移動が起こります。効率の悪いコストの高い金融機関が、やはりみずから不景気の中に飛び込んでいく、こういう状況になったであろうではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  それからもう一つの問題は、クラウディングアウト、これは先ほど申しましたように、いま金融が緩んでおると申しましたのは、これだけの国債発行引き受けまして、しかもなお非常に窮屈で、日銀に泣き込んだり、あるいは市中の貸し出しを断わったりするということではないんだという意味でございまして、非常に限定された意味の緩んでおるということでございます。したがいまして、決していま金融が本当に緩んで金利が下がるべき状態にあるという状態ではないと、要するに、これだけの公債発行しながらも、まだ市中金融は応じられる状態にあるということでございますので、その関係からは金利に先ほど私が申しました緩んだという意味の金利に対する影響はそんなにございませんということをお答え申し上げます。
  70. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 参考人方々には、長時間にわたり貴重な参考意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。お述べいただきました御意見は、本案の審議に十分役立たせていただきたいと存じます。本日はありがとうございました。  本日の質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十五分散会