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1976-10-12 第78回国会 参議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月十二日(火曜日)   午前十時二十一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         岩動 道行君     理 事                 戸塚 進也君                 中西 一郎君                 野々山一三君                 矢追 秀彦君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 糸山英太郎君                 河本嘉久蔵君                 高橋 誉冨君                 鳩山威一郎君                 桧垣徳太郎君                 藤川 一秋君                 宮田  輝君                 大塚  喬君                 福間 知之君                 村田 秀三君                 鈴木 一弘君                 近藤 忠孝君                 渡辺  武君                 野末 陳平君    国務大臣        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君    政府委員        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        大蔵政務次官   斎藤 十朗君        大蔵省主計局次        長        加藤 隆司君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  岩瀬 義郎君        大蔵省証券局長  安井  誠君        大蔵省銀行局長  後藤 達太君        大蔵省国際金融        局長       藤岡眞佐夫君        国税庁直税部長  谷口  昇君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        外務省経済局国        際経済第一課長  賀来 弓月君        外務省経済協力        局外務参事官   大鷹  正君        通商産業省立地        公害局公害防止        企画課長     森   孝君        自治省税務局固        定資産税課長   栗田 幸雄君    参考人        日本銀行総裁   森永貞一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和五十一年度公債発行特例に関する法  律案(第七十七回国会内閣提出衆議院送付)  (継続案件) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  昭和五十一年度公債発行特例に関する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 村田秀三

    村田秀三君 財特法の審議に入ります前に、別に意図して経企庁長官をお呼びしたわけじゃございませんけれども大平大蔵大臣、前大蔵大臣お二人の顔を見ておりまして、何かしら今日の政局を思い見ないわけにはいかないというような、そういう感じに実はなったわけであります。そういう質問するのは私本当は得手じゃございませんけれども、そんなわけで、当面の問題についてそれぞれお考えのところあればお答えをいただきたいわけでありますが、国民の関心は総選挙、総選挙の前に自民党大会、この大会において、いままでもずいぶん新聞をにぎわしておりましたところの人事問題というものがあるのかないのか。幹事長は、山梨で昨日、記者会見をいたしまして人事問題はないと、こういうことを言っておられたようでありますが、その点について、それに至るのか至らないのかは、挙げてここにおいでのお二人の存念いかんによって定まっていくような感じもいたします。したがいまして、その点についてこのような機会でまことにぶしつけではございますけれども、それぞれお考えを承ってみたい、こう思います。
  4. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 自由民主党におきましては、今月下旬に党大会を開くことになっております。その党大会は、総選挙に臨む体制を整備する、こういうことが目的であります。その体制の中に、いわゆる人事問題、これが入ってくるかどうか、これはこれから大会準備委員会において決定すると、こういうことでございまして、ただいまのところはまだ不確定である、こういうふうに御承知願います。
  5. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私も同様な判断をいたしております。
  6. 村田秀三

    村田秀三君 私は、人事、そしてましてやみずからのことは、他が引き回してくれるというのが純粋な意味でのこれは人事問題に対するとらえ方であろうと思うんでありますけれども人事問題に入るのか入らないのか、これは挙げてここにおるお二人の決意いかんであると、こう私は思うわけであります。そういう点について人事問題大会にはしないと、私、野党でございまして、自民党党内人事に口を差しはさむことはいかがかと、こう思うわけでありますが、総選挙考えてまいりますると、これは相当な影響があるわけでございますので、人事問題大会にはしないと、幹事長が言われているように挙げて総選挙大会にすると、こういうどちらと理解していいわけですか。それを一つ伺いいたします。
  7. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま申し上げましたとおりでございまして、そういう大会議題につきましては、これから大会準備委員会において決定すると、こういうことでございまして、人事問題が論議されるかされないか、これはただいまのところは未定である、こういうふうに御承知願います。
  8. 村田秀三

    村田秀三君 それではぶしつけでございますので、これ以上は深追いをいたしません。  福田経企庁長官にお伺いをいたしますが、戦後のわが国の財政公債が導入されましたのは、四十年になって二千五百九十億円の歳入欠陥予想されたときであります。そのときの大蔵大臣は、現在の経企庁長官でございまして、その意味では、当時歴史上の大蔵大臣と言って決して過言でないと思います。私も、当時予算委員でありましたので、当時の記憶を呼び起こしまして、改めて会議録をずうっと読んでみました。故人になられました木村禧八郎先生、そして当時の福田大蔵大臣の激しい議論、それが生々しくよみがえってくるような感じがいたしますと同時に、当時の長い集中した議論というものが、公債論議の原型になっているような感じをこれまたいたしたわけであります。福田さんは現在日本経済動向を定めるその担当責任者でもあるわけでありますが、当時の財政担当大臣として将来のことも予測して、その基準なり、あるいはその他配慮すべき点も考慮されておったようにあの会議録の中では受け取られるわけですね。あれから十年たちました。この五十一年度において公債予算上の依存率は二九・九%、非常に高いものでありまして、私の考えといたしましては、これは異常な状態である、そういうふうに見てまいりますると、公債を導入した最初の大臣といたしまして、当時将来考えるべき点、配慮すべき点等も考慮されておったそれらから考えて、まず、異常であるのか異常でないのか、どう率直に言ってお考えになっておりますか。ひとつお伺いをしたいと思います。
  9. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私が十年前、十一年前に大蔵大臣をいたしました。そのとき初めて戦後公債が本格的に財源として使われるということになったんですが、あのとき私は今日のような状態は全く予想しなかったんです。まあ歯どめということを考えておったんですが、一つは、これはいわゆる建設公債的なものでなければならない、それからもう一つは、これは公債が完全に市中において消化されるものでなければならない、こういうことであります。しかし、今日におきましては、建設公債はフルに出すと、こういうことになり、その上三兆七千億円の建設公債の枠を超えた公債を出すと、こういうことになったんです。全く今日の財政事情というものは、これは当時といたしましては予想しなかった性格のものである、こういうふうにお答えしてしかるべきものである、こういうふうに思っております。まあ非常に異常な事態でありますので、とにかくこの異常な事態を早く克服することは、これは財政見地ばかりじゃない、これは国家経営上非常に重大な急務になっておると、こういうふうに考えております。
  10. 村田秀三

    村田秀三君 予想もしなかったところのこれは状態である、こういうことはお認めになられたようであります。そこで、思い起こしますことは、当時歯どめ論議というものがありました。どうも、この歯どめ論議というのは、私ずっと読んでみましてすかっと制度的になされておらない、きわめて抽象論である。つまり市中消化が完全であればインフレが起きないからいいのであるというような、そういうような言い方と、同時に、その経済活動規模において予算規模を定める、その財政規模が歯どめなんだ、こういう言い方をしておったと思うのであります。この問題については、今日、日本経済情勢そしてこの五十一年度財政あるいは五十二年度以降財政収支施策というものが、経済五カ年計画前提に立ってなされておるわけでありますから、今日の日本経済の動きに合わせ考えてみて、五十一年度財政規模というものは、果たして適切であったのかどうかということについて御所見をひとつ伺ってみたいと思います。
  11. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、今日の社会、今日の経済の全局からながめてみまして、五十一年度予算その規模は大体において適正であると、こういうふうに考えておるわけであります。つまり、その財源として公債、特に赤字公債を多額に使用すると、こういうことにはなりますが、その赤字公債によって喚起される物の需要、そういうものが、これは国民経済全体の規模の中において物の需給の均衡を乱すという、そのものではない。それは経済政策全体として、そういうことにならないような配慮をするという、この前提があるわけであります。経済政策全体として決してバランスを破った形のものでないと考えまするがゆえに、財政規模は非常に膨大化したと、そういうこと自体が、これが経済秩序を乱すものではないと、こういうふうに考えております。
  12. 村田秀三

    村田秀三君 非常に抽象的な議論でありますが、それは経企庁長官にお伺いする分としてはその問題はその程度でございますが、また当時のことをこうずっと振り返ってみて、当時、特例法歳入欠陥を補てんするという立場でこれはとられたわけですね。で、当時、この償還計画をめぐってやはり相当議論をされておったようであります。そこで、私が考えますのには、将来これを税によらざるを得ないと、こういうようなことを言っておりまして、まさにそのとおりだと思うんでありますけれども、この特例法というのは、まさに財政法一般財源公債に求めてはならないという規定をしておりますために、あえて歳入欠陥を埋めるために特例法が必要である、こういう説明であったと、こう思います。当時を振り返ってみましてそうであるのかどうか、これお答えをいただきたいと思います。
  13. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 当時を回顧してみますと、あれは四十年の年度中に歳入が予定よりも非常に不足すると、こういう状態になったわけです。そこで、それに対応いたしまして、あるいは歳出をそれだけ落とすというような方法が観念的には考えられたわけでありますが、これは景気対策見地からできない、なすべきじゃない。そうすると、他に財源を求めなきゃならぬというと、当時の状態とするとこれは公債しかもう考えられなかったんです。そこで、その公債をいかなる性格公債発行するかということになるわけでありますが、法律的に言いますと、当時建設公債を出しておりませんでありましたものですから、建設費を引き当てとした建設公債発行することが可能であったわけであります。ですから、特例法をあえて出す必要もなかったとも言えるわけであります。しかし、あえてそのとき建設公債発行しないで歳入補てん公債発行する、そのために特例法を御審議を願うということにいたしましたのは、これは政治的にみまして、戦後初めて公債発行するんだ、本格的な公債発行に踏み切るんだ、しかも、年度途中においてはからざる環境の変化のためにそういうことに追い込められたんだと、これは特別の法律を出して、そして国会の御審議を願った上公債発行をした方がよかろう、こういうふうに判断いたしまして、あえて特例法の御審議をお願いすると、こういうふうにしたわけであります。したがいまして、翌四十一年からは特例法を用いないんです。建設公債財政法にいう建設公債という方式で財源を調達すると、こういうことにいたしたわけでございます。
  14. 村田秀三

    村田秀三君 当時は、建設公債というものは抱えておらなかった、出してよいものを出さないで、そして歳入欠陥を補てんするという意味で、財政法の禁止している問題に手をつけるのであるから特例法を提案したんだと、こういうわけなんですね。で、ずうっと実は議論を見てまいりまして、揚げ足を取るようではございまするけれども、「公債は将来は国民税負担に帰するわけでございますが、当面、国民負担にはならない、さようなことから、」「その自動的な抑制力が働き得ない、」すなわち、乱に流れやすい、放漫になりやすいから注意しなければならない、こういうようなことも言っておられます。  それから、歯どめ論というものがございまして、先ほども歯どめ論の結論として、当時の大臣答弁は、先ほど私が申し上げましたように、国民経済活動に見合った財政規模が歯どめの作用をける、こういうふうにしか理解できないわけですけれども、やはりこの歯どめを制度的にきちっとしておらなかったのが、先ほど来大蔵大臣予想もしないような公債を抱える状態になった一つの原因だと、こう私は思うわけでありまして、何かしら制度的にこれを確立しなくてはならないのではないか。改めて考えてみますと、財政法四条に一般財源公債を充ててはならないということをきちっと書いてあるわけですから、この書いてあるのが、やはり私は一つ大きな歯どめであるということを考えます際に、つまりは当初予算の中で一般財源歳入予想される不足について公債発行するということは、これはやってはいけないことなんだという考え方が、つまり当時の大蔵大臣考え方の中にはあったと、こう私は見受けたわけでありますが、さように考えてよろしゅうございますか。
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大体そういう考えであります。当時の考え方としては、ことに非常に大きな前提として公債発行して、財政規模が拡大いたしましても、国民経済全体の秩序はそれで紊乱されない。これは大前提ですが、その大前提の下で歯どめといたしまして、建設公債でなければならぬ。つまり、一般財源であってはならない、こういうことですね。それから同時に、完全消化されなければならない。こういう二つのことを厳重に考えておったんですが、その中で、建設公債でなければならないと、こういう歯どめですね。それが今日の事態においてはまあこれを守ることができない、こういうことになってきて、その建設公債の枠をはみ出して、一般財源として公債を使用しなきゃならぬという非常に異例な事態になってきておる、こういう考え方でございます。
  16. 村田秀三

    村田秀三君 それでは財特に関連する部分は終わります。  それから、先日の参議院予算委員会の中で、福田長官は、公明党の質問に対して、デノミは実施する考えがあるというような意味発言をされたと新聞には出ております。表現を見ますとデノミ前向き姿勢、数年内にも実施、五十五年前後か、こういうことを各新聞は書いておるわけですね。その点についてもう一度経企庁長官の当時の発言内容ですね、伺ってみたい、こう思うわけです。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今日の円は、まあ戦前に比べまして、その価値がかなり下落をいたしたといいますか、非常にまあ計算単位として、数字的に非常にまあ額の高いものになってきておるわけであります。そういうような状態は、これは国内的に見ますと、これは計算上の便宜、そういうようなことから見て、まことに不経済的なものであると、それから同時に、対外的に見るときには、これはいま仮にドルに対する円の価値ということを考えてみると、これは二百九十円内外だ、こういうようなことになっておる。国際社会で三けたの対ドル通貨単位というのは、イタリアのリラとわ日本の円だと、こういうような状態で、どうも国際社会における円の威信という上から見ましても、まことに好ましからざるところである、そういうようなことを考えますと、これは適当な機会に円の呼称を変更いたしまして、いわゆるデノミを行う、こういうことが妥当ではあるまいか、そういうふうに考えておるわけであります。しかし、いわゆるデノミということは、これはいろいろ誤解を生むおそれがありますので、かなり国内経済があるいは社会全体といいますか、落ちついた環境の中でこれを実施する必要があると、こういうふうに考えておるのでありますが、とにかくただいま申し上げました事情で、速やかに、なるべく早く日本社会日本経済の安定をさせ、そして締めくくりといいますか、そういうような立場においてデノミネーションを行うということは私はぜひやらなければならぬことである、こういうふうに考えている次第でございます。
  18. 村田秀三

    村田秀三君 適当な時期に適当な条件と、こういうことでありますけれども、まあ五十五年とか、あるいは四、五年とかと、こう表現されておりますけれども、今日の経済情勢、これをそのまま類推したとして、五十五年度財政収支試算をもととして考えてみましても、一三・数%の伸び率を常態として、これは存在するわけですね。そういう状態でもやはり適当な時期、判断をなされるものかどうか、この点についてお伺いいたします。
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ五十四年でありますとか、五十五年でありますとか、そういう年限につきまして予算委員会お答えしておるわけじゃないんです。その年限につきましては、これは報道機関の方も推測が入っている記事じゃないか、こういうふうに思いますが、要するに経済社会、非常に安定した機運になりまして、そういう財政上の処置をいたしましても、いささかも不安は生じないと、そういう時期を選んでやるべきだと、こういうふうなことを申し上げておるわけであります。その時期が一体いつごろになるかということは、もう少しこれは経済全体の推移を見なければ見当がつかないという状態じゃなかろうかと思います。
  20. 村田秀三

    村田秀三君 大臣、急いでおられますので、あとは結構だと思いますが、まあ私の考えをひとつ申し上げて、これは後ほどの財特議論に稗益させたいと、こう思いますけれども、この安定した状態、こういうものの理解ですが、物価上昇が停止したというふうに私どもとしてはそう考えるわけでありますけれども、そういう状態のときでなければやってはいけないんじゃないかと思いますことと同時に、デノミを実施した場合のことを想定いたしまして、私はどうしても物価上昇という傾向というものはこれは起きると、こう思うわけです。そういうことを考えてみますと、軽々とこれはやってはならないんじゃないかと、こう実は思うわけでございますけれどもインフレに、つまり物価上昇をこのことによって発生しないという、そういう保証というものがなされるのかどうか、その点について一点ひとつ考え方を聞いておきたい。
  21. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この措置は、実質上は予想というか、全然経済影響はない問題なんですが、この措置国民全体に影響のある、形式上影響のある問題なんです。そこで、国民全体がこの措置というものは一体どういう性格のものだということをよく理解しなければ、またはからざる影響が出てくるかもしらぬ。そういうようなことで、経済の安定、社会の安定、そういうことがどうしても前提になるわけでありますが、同時に、このデノミネーションを実施するというようなことになれば、その時点においてこれはかなり徹底したPRをする必要があると思うんです。これは実質上何らの影響のない問題である、形式的に通貨呼称の変更にとどまる問題である、こういうPRですね、これはもう本当に徹底させる必要がある。同時にまた、過去の各国でやったデノミネーション、そういう事例を見ますと、物価を引き上げるというような結果になったケースもあります。しかし、そういうことにならないように技術的な歯どめの方向というものはいろいろとあると思うんですが、そういうことをいろいろ工夫をいたしまして、物価には影響ないんだという形において実現しなければならない、かように考えております。
  22. 村田秀三

    村田秀三君 大蔵大臣にお伺いいたしますが、この公債の問題、財特の問題は、これまでもずいぶんと議論をされてきております。でありますから、同じような議論をせざるを得ないものと私はもう当初から思っておるわけでありますが、きわめて素朴に考えられる問題、素朴な質問、こういうことでひとつ御理解をいただきたいと思います。まあ、そういう意味でまずお伺いをいたすのでありますが、せっかく経企庁長官が来ておったわけでありますから、この五十一年度、またこれからの経済見通しを聞くのが当然であったかとも思いましたけれども、別な問題で時間がなくなりました。  そこで、大蔵大臣にお伺いをするわけでありますが、五十一年度十月になりましてすでに半ばを過ぎたわけでありますが経済の実態それから税収動向、これらが当初見通し対比いたしましてどうであるかということについてまず伺ってみたいと思います。  私の考えは、十月五日発表の、通産省発表でございますけれども輸出認証統計速報、これを見ますと、史上最高六十六億ドル、前年対比三五・六%の伸びであって、輸出は高水準に横ばいの様相を呈するであろう、こういうことが言われております。また、七月の鉱工業生産指数は、四十五年を一〇〇といたしまして一三一・四、前年対比一五・一%の伸び、これは日本経済のピーク時と言われました四十八年、一二九・三%を超える情勢、さらに、大蔵省が十月二日明らかにした法人企業統計、その四−六月の売り上げは前年同期比一六・二%増、営業利益も二七・八%増と順調に企業収益は回復している。また九月三十日大蔵省発表の八月税収実績は、法人税が大幅に伸びて、徴税進捗率は三七・九%、前年度よりも二%上回っている、こういうのであります。この統計はうそではないとこう思いますが、大蔵省として把握されております、見通されました経済成長率一三%、この経済成長実績あるいは企業収益動向から見ましても、税収は当初見通しよりも相当好転するのではないかと素人判断をするわけであります。先般当委員会において、どなたかが質問されましたそのお答えについては、税収予想はそう大きな見通しの狂いはない、こういう言い方をしておりましたけれども、これらの数字から見ますと相当私は税収予想以上に自然税収があるのではないか、こう予想するわけでありますが、いかがでございましょうか。
  23. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 税収の全体の推移につきましては、先週当委員会でもお答えをいたしましたところでございますが、本日の村田委員の御質問は、特に法人収益との関連での御指摘がございましたので、その点につきましていまの私どもの見方を申し上げてみたいと思います。  おっしゃいましたように、法人企業統計で、売り上げ収益に好転の兆しがある、また八月の法人税収が対前年比で約二割増加しておる、それらのことから申せば、景気の緩やかな回復に伴って法人税収予想以上に入るのではないか、そういう御指摘だろうと思います。  法人収益との関連でまず申し上げますと、企業統計で見ます場合の売り上げなり収益につきまして、ある程度明るい数字があることはこれは事実でございます。ただ、問題は、実は企業統計の方では、主として経常利益を御承知のようにベースにしたいろいろな計数が一番表に出てまいります。法人の税収の方は、経常利益のほかに特別損益とかいろいろなことがございまして、申告所得になるわけでございます。これは釈迦に説法でございますから余り詳しく申し上げませんが、したがいまして、非常な落ち込みの後で経常収益がある程度上がってまいりましても、落ち込みのときには無理をして手持ちの株を売るとか、土地を売るとかいってやっと配当を維持するという会社がかなり多いわけでございまして、そういう会社がかなり数が多い。極端に申せばいわば大部分であった時期を経過してきておりますので、経常利益が増加いたしましても、まあ株も売らず、土地も売らずにやっと配当ができるという状況にきつつあるというのが、大ざっぱに申すと現状である、収益的には。そうしますと、申告所得としては実は余りふえないわけでございます。つまり、ぎりぎり配当できるだけのものを所得としてかせいでいるという状況がございます。それが一点。  もう一つは、八月分の法人税収は確かに前年の八月に比べまして一二一・六%という非常にいい姿をいたしておりますが、八月末までの累計ではいまだに一一〇・三%でございまして、この数字ではまだ予算に届かないわけでございます。今後若干よくなるかもしれませんが、八月分が非常にいいのは、実は御承知のようにトヨタがこの月に入っておりますし、これまでに非常な高収益でございましたのでこれに助けられたと、しかし今後毎月トヨタのような会社が、あれだけの大きさであるというわけでもございませんので、全体としましては申し上げましたように、法人税収につきましても、まだ予算をオーバーするというような姿にはなっておらないということでございます。
  24. 村田秀三

    村田秀三君 その議論をいろいろ聞きましてやりましても、これは感じの問題だけでございますので、これはどうしようもないわけでありますが、ただ、私のような素人がそういうことを言うのは、あるいは不遜かもしれませんけれども見通しを立てる、見通しを立てて予算を編成するその途中にきましても、その年度税率一〇〇%を満たし得るとか、あるいは落ち込むとか、あるいは自然増収は幾らであろうかというようなことをすでに想定できるのではないかと、こう思うのです。その想定というのはやっておられるわけですか。
  25. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 毎月の収入はもちろん把握いたしておりますし、それに基づいてその都度年度内が一体どうなるであろうかということを私どもなりに一生懸命見るわけでございますけれども、ただいまの状況では前回当委員会で申し上げましたように、まあ何とか当初予算ぐらいまでにはいってくれるのではないか。もう一遍当初予算まで届かなくてまたいろいろなことをお願いしなくてはならぬということは何とか避けられるのではないかと、しかし自然増収が予想されるというような状況ではとうていないというのが、いまの私どもの見方でございます。
  26. 村田秀三

    村田秀三君 これは素朴な疑問でありますけれども、この年度中においてすでに、もちろんこれは確定をできるというふうに判断することもできませんし、また確定すること自体が問題であります。そこで落ち込んだ場合、税収が落ち込んだ場合には、また特例法という形になるわけですか。
  27. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 落ち込んだ場合にどうなるかという問題でございますが、金額、項目、その辺の内容がどうなるかという点がわかりませんと、どういうことになるかということは一義的には申し上げられないと思います。
  28. 村田秀三

    村田秀三君 それじゃ特例法税収の落ち込みですね、税収の落ち込みがあればどの部分、あるいは金額、それはわからぬと思うのですが、どの部分が落ち込んだ場合、そして幾らくらい落ち込んだ場合、その場合は特例法によらざるを得ないと、こういうことになるわけですか。
  29. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 仮定の問題なので非常にお答えにくいわけでございますが、過去の例で申しますと、先ほど御議論がございました四十年度の場合でございます。あの当時、二千五百九十億落ち込んだわけでございますが、この場合には特例法によらざるを得なかったと、それから昨年の補正予算の場合、約三兆八千億ほど落ちたわけでございますが、特例法が二兆二千九百億、そういうような措置をした例はあるわけでございます。したがって、そのときにおける予算規模、それから落ち込みの金額、それから落ち込む税目にもよる場合がございます。たとえば特定財源など落ち込みますとどうするのかというような議論も別途あるわけでございます。したがって、一義的にはなかなか申し上げにくいという問題でございます。
  30. 村田秀三

    村田秀三君 いや、私が聞いておりますのは、全く前年度あるいは四十年のように歳入欠陥、その歳入でもさまざまございますけれども、本当に一般財源を賄うことができない、そういう金額の落ち込みがあった場合には、やはり特例法を提案なさるわけでしょう。しつこいようですが、その点だけをひとつおっしゃっていただけばいいわけです。
  31. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) いま例で申しましたのは補正予算年度途中の場合でございます。年度途中の場合には過去にそういう例があった、それから三月末の例があるかもしれません。その場合には、そのときに国会があるのかないのか、そういうような問題もあるわけでございます。年度途中でございますと、特例公債を出したこともありますし、それから建設国債の増発をやって、いわゆる財源の入れかえをやったこともあるわけでございます。したがって、その税収の落ち込むことがわかる時点あるいは大きさ、そういうようなものによってその扱いは変わらざるを得ないわけでございます。
  32. 村田秀三

    村田秀三君 これはまあ私のような素人が余りにも大きな問題に取り組んで議論をしても仕方がないような気がいたしますが、しかし、私の理解としては、いまの答弁を聞きましても、その場合は当然特例法によりますと、こういう素直な答弁が聞けないのが残念でありますけれども、結局はそうだと思うのですね。  そこで、先ほど企画庁長官にも伺ったのでありますけれども、当初予算に不足する財源公債で求める、このことはどう考えてみても、これは財政法違反であると、建設公債にも若干の異論私はあるわけでありますけれども、しかし、当初予算から公債をもって収入に充てるということは財政法違反である。このことを私は引き出したかったためにいまのような質問をいたしたわけでございますけれども大蔵大臣はその点はどうお考えになりますか。
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国が債務を負う場合、これは国会の議決を経て、法律によらなければならぬわけでございます。財政法は仰せのように、四条公債を、四条におきまして例外を認めておりますけれども、いわゆる特例債は認めていないことは御指摘のとおりでございます。したがいまして、政府といたしましては、単行法をお願いいたしまして御審議をいただいておるわけでございまして、これは違法な措置とは考えません。  それから第二の問題でございますが、年度の途中におきましてと申しますか、ことし歳入が予定どおり入ってまいりませんで、欠陥を生じた場合特例公債の増発によるかということでございますけれども、三兆七千五百億円という金額を限りまして特例債の発行をお願いしておりますのがいまの政府の態度でございます。で、政府といたしましては、これを認めていただきました授権の範囲内におきまして年度内の財政の切り盛りをいたす決意でございます。で、なるほど税その他の歳入が予定どおり入らないものが中にあるかもしれません。また予定よりも多く入るものがあるかもしれません。これは三月末にならないとわからぬわけでございますけれども、しかし私どもは、いまの段階におきまして、足らない場合は特例債の増発でお願いするつもりであるなんていうふらちな考えを持っていま法律を、特例法をお願いしているつもりはないんでございます。どんなことがございましても、この範囲内で予算の切り盛りをいたさなきゃならぬと決意いたしております。決意いたしました以上は、歳入歳出を通じましてこの許された、御承認を得ました予算歳入歳出の管理を、執行を通じましてその範囲内において処理ができるように財政の切り盛りをやってまいるという決意でございまして、ただいまのところそんな事態を全然考えていないわけでございます。
  34. 村田秀三

    村田秀三君 もちろんいま特例法審議をしておりまして、また欠陥がございましたら特例法を再度出しますと、こうは言えないと思いますね。しかし、考えてみますと、どうしても私わからないんですが、この歳入欠陥を補てんする、そういう意味でならば、ある程度了承できるところもあるわけですね。ところが当初予算から財政規模を線を引いて、そして歳入税収その他いろいろ工面をしてみたけれどもどうもそれを賄うことができない。そうすると、それは歳入欠陥ではなくて、歳入不足が予想されると、こういう表現だろうと思うんですね。だから歳入不足を予想されたものを公債で補てんをするという考え方というものはこれはあり得ないんじゃないか、財政法の精神からいっても、仕組みからいってもあり得ないんじゃないか、私はどう幾ら考えてみても、まあそういうことにならないんですね。不思議で仕方がない。だから単年度主義でやる、まあこれだけの経済活動を促すためにこれだけの財政規模が必要である、どうしても不足するならば、その不足を公債によらずしてどうやって補てんするかということを考えるのが、これは私は大蔵省じゃないかと、こう思うんですね。あるいはまた逆な意味で言えば、その不足分はカットしていく、歳出の面で。こういう考え方に立たない限りは、私は、この際限なく公債に依存するという姿が解消しない、こう実は思うんですね。だから、当初から歳入不足を補てんする意味公債発行する特例法、これは明らかに財政法に私は違反する法律だと、こう思うんですが、その点はどうでしょうか。
  35. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この間村田さんの御質問でございましたか、諸外国の立法でその問題がどうなっているかということがございましたけれども、わが国のように厳格に、いわゆる特例債の発行財政法で禁止しておる国はないわけでございます。だから、わが国は立法政策といたしまして、いま村田委員がおっしゃったような非常に厳しい態度を、戦前、戦後のインフレの悪夢を想起いたしましてわれわれの先達がこういう立法を考えられたことと思うのであります。で、財政法にそういう道が、特例債を発行する道が認められていないということはもう申すまでもないことでございます。したがって、私どもは先ほど申しましたように、別の単行法の立法をお願いいたしておるわけでございまして、これは今日が初めてでなくて、これはこれまでも何回か例があることでございまして、国会の議決を経ればそういうことは合法的であると政府は考えておりますし、国会におかれてもそういう御判断のもとで今回まで何回か政府のそういう特別立法を御承認いただいたことと思います。
  36. 村田秀三

    村田秀三君 これはまあ四十年、四十一年当時の議論を見てみますと、まあ木村先生は、この財源公債に求めるという習慣をつけると、取るべき税も取らないということになって、そして際限なくこれは公債が膨張してくる、財政規模も膨張してくる、こういう言い方をされておりました。  先ほど福田経企庁長官も言いましたように、予想だにもしなかった事態、こういうことでありまして、私はこれ何としてでも歯どめというものをひとつ真剣に考える必要があるだろう。そのためには建設公債についての内容は若干の議論はあったといたしましても、それはまず認められるとしても、とにかく予想される財政規模の中の歳入不足分というものは、公債によらずして他の方法、つまり徴税の見直しであるとか税の制度の見直しであるとか、そういう点に努力をしていくという、そういうことがこの段階では改めて必要じゃないか。それでなければ、いま大臣がおっしゃったように外国の例なんかも引きましたが、もしも当初予算の中における一般財源の収入を公債によってもよろしいという、それは法律を提案して特にやってもらうんだということがことしもあり、来年もあり、四、五年続くなどということであるとすれば、この財政法というのは死んだも同じではないか。だったらいっそそれこそ財政法などというものを改正してしまった方がいいじゃないかという暴論さえも私は出ると思うんです。これはやはりどうしてもこの歯どめとなっておる財政法、その財政法の精神と実態に即したやはり財政規模というものを考えていかねばならないんじゃないか、こう私は思います。重ねてしつこいようでありますけれども、その考え方がいわゆる大蔵省当局になかったならば、それこそ際限もなく、これは公債財政、そしてまあ言ってみれば税収のうち一〇%も公債の利息を払っておかなければならぬというような状態になってしまう、こう思うんです。で、その点について、改めて、さらにしつこいようでありますけれども、きちんとしたやはりお答えをいただかなければならぬ、こう思います。つまりは、当初予算における歳入不足、これを公債でやることは、これは財政法は許してはおらないんだという、このことをひとつさらにお認めをいただきたいと、こう思うんです。
  37. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) お説はまことにごもっともでございまして、私も全く同感でございます。したがいまして、私、政府といたしましては、この財政法の基本の原則に対して、そのような是正を国会にお願いいたしておるわけでは決してないのであります。財政法の厳しい原則はあくまで貫かなければならぬと存じております。したがって、財政法の改正というようなことは毛頭政府は考えていないわけでございまして、特例債の発行という異例中の異例の措置を講じなければはらぬことが起きる場合、その年度に限りまして、金額をしぼって国会の御承認を得ると、単行法をもって国会の御承認を得るということしか考えていないわけでございます。これは財政法の原則を尊重するがゆえでございます。  それから第二に、申すまでもなく、財政運営の基本は、特例債の発行に初めから依存するというイージーなやり方であってならないということでございまして、これは村田委員のおっしゃるとおりだと私も思うのであります。これは歳入についていろんな工夫をこらし、歳入確保の道を特例債以外求めなければならぬことは当然でございますと同時に、歳出につきましても、一層厳しい選択を求めなければならぬわけでございまして、両々相まちましてそういった事態をできるだけ早く解消いたしまして、特例債というものに依存しない財政、それから脱却した財政を早く取り戻さなければならぬと考えておるわけでございまして、それを財政運営の基本に据えておるわけでございます。財政当局といたしましては、いま仰せのとおりの精神で財政処理に当たっておるわけでございます。
  38. 村田秀三

    村田秀三君 それでは、後ほど関連してまたその点にも触れてみたいと思いますが、建設公債、よく建設公債と、こう言うのでありますが、この五十一年度予算書を見てまいりますと、公共事業費のほとんどが公債で賄われておるわけですね。で、昭和四十年まではこれは一般財源から公共事業費も賄われておったと、そして四十一年から建設公債というものが導入をされて財政の大転換だという、そういうことでの議論も私ずうっと見てまいりました。あの財政法でいうところの公共事業費、それから貸付金であるとか出資金、特例としてそれを認めておるわけですね。本当は特例がそれなんだと私は思うんですよ。ところが、それがつまり特例であるがゆえに四十年までは厳密にそれを運営してきた。ところが、建設公債は、公共事業に使用するならば、そういう公債はいいではないかということで、それがあたりまえ、正常なものとして理解をされてきた、そして逐年これは増大をしております。そして五十一年度予算書の中では、それこそほとんどこれは公債金で公共事業は賄われておる。私は、非常にこれは不思議なといいますか、私らの感覚といたしましては、まさにこれまた異常のうちに入るんじゃないかと、こう思いますけれども、百歩譲りまして、それもやむを得なかろうと、こう思ったといたしましても、同じ建設公共事業でも、道路であるとか港湾であるとか、そういうものであれば、私もある程度理解をいたしますけれども、たとえばよそのことを言いますというと、これ差しさわりがありますが、あえて申し上げますけれども、衆議院、参議院の施設費もこの公債金で賄われておるわけですね。実は私もこれを見まして、いまさらのように不思議に思ったわけでありますが、先ほど言いましたところの公共事業、そして財政法特例としてその三点を掲げたという問題から合わせ考えてみるならば、建設公債というのは税金によらないで償還できる、そういう費目に使用することが非常に大切ではないかと、こう思いますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  39. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 財政法第四条の第一項の本文は、まさに御指摘のように非募債主義をうたっております。それでただし書きにおいて、公共事業費、出資金、貸付金の財源については、公債発行することができるということが書いてあるわけでございますが、その趣旨は、従来からわれわれの考え方といたしましては、建設的な、あるいは投資的な経費、すなわち、経費支出の見合いが国民とか国家の資産として将来に残り、その利益が国民全体が享受できるものであって、かつ、それが回り回って国民経済の発展に資するものを選定するという考え方に立って選んでおるわけでございます。御指摘の衆参両院の施設費も確かに入っておりますが、この経費はただいま申し上げましたような基本的な考え方に沿うものであるというふうに考えておるわけでございます。
  40. 村田秀三

    村田秀三君 どうもこの衆参の施設が経済活動に裨益して将来国民の利益になるとはどうしてもこれ考えられないわけですね。どうでしょうか。これ素朴な話ですよ。正直言いまして、そうじやございませんか。もしも若干関係するとすれば、その施設を建設した業者が事業量が拡大して、それによって利益を多少得た、だから幾らか税金を納めた、この関係だけじゃないでしょうか。どうですか、もう一度ひとつ本当のところを答弁してください。
  41. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 衆参両院の建物は一回できますと、長い時間にわたって国民がその利益を享受できるわけでございます。それが結局は将来の経済の発展につながり税源の涵養になるというふうに考えて、決して不思議ではないというふうに考えるわけです。
  42. 村田秀三

    村田秀三君 りっぱな建物に入っておりまして、そういう物の言い方をしては国民に申しわけないと、こう思いますけれども、衆参の建物をりっぱにしたから国民の利益になるなどということはとうてい考えられないですね。言ってみれば、野原で会議やったっていいんですよ、極端な物の言い方をすれば。原始的にはそうだったんじゃないですか。極端な物の言い方をすれば、そういうことだと思うんですね。だから、国民からすれば、これはもう財政規模を拡大をして、それに対する歳入がどうしても調達できない、限度いっぱいこれは理屈をつけて、そしてやってしまえというのきり、これは理解できない。だから、よしんばいろいろ議論があったといたしましても、道路では自償性、自動回収性、税金によらないで将来償却できるかと言ったら決してそうではないわけでありますから、私は問題あると思うんですね。問題ありますけれども、百歩譲っても、つまり厳密にそれはひとつ限定をして、そしてこの建設公債なるものも逐年漸減をしていく方向をとらなくてはなるまい、こう実は思っておりますが、大臣はどうでございましょうか。
  43. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その点、全く村田委員に私も同感でございます。いま主計局の方から説明をいたしましたのは、公共事業あるいは出資金、貸付金等を建設公債の対象経費としてカウントしてよろしいと、そういうまあ制度の説明を申し上げたわけでございます。けれども、だからといって建設公債がイージーに認められていいという筋合いのものでは私はないということは、村田委員が御指摘のとおりだと思うのでありまして、これが財政法でまた例外として認められておるものにすぎないものであるということもまた御指摘のとおりだと思うのでありまして、私どもといたしましては、建設公債といえども公債に間違いはないわけでございます。したがって、財政の均衡を維持してまいる上におきまして、本来の税収その他税外収入の確保に努め、歳出の厳正な洗い直しを通じまして、できるだけ公債に頼らない、建設公債も含めまして公債に頼らないような財政にするように努力してまいるのが財政運営の基本でなければならないと思います。
  44. 村田秀三

    村田秀三君 その決意のとおりに運営されることを私は期待をいたします。そうでないと、まさに四十年、四十一年のころ、将来をおもんぱかって議論されましたとおりにいまこれは動いているということでありますから、この言葉どおりに厳正にひとつやっていっていただかなければならぬと、こう私は思います。  そこで、当時のことを振り返るわけじゃございませんが、償還計画ですね、これは今度の場合もずいぶんと議論をされまして、議論の結果、いろいろなことが確認をされたようであります。この償還計画というものについて改めて私はお伺いをしなくてはならぬと、こう思いますが、その点ひとつお答えをいただきたいと思います。
  45. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 財政法四条には、償環計画という条文があるわけでございます。特例公債法の場合も、四十年度の場合、それから昨年五十年度の補正の場合、やはり償還計画の提出の規定を置いたわけでございますが、ただいまお願いしております五十一年度特例法におきましても、償還計画の提出の条文を入れてあるわけでございます。
  46. 村田秀三

    村田秀三君 もうわかっている話でございますから、余りなことは申し上げませんが、これは十年で償還する、それで借りかえはしない、これが償還計画になるわけでしょう、そうですね。
  47. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 四十年、四十一年の公債発行の際に、御承知の償還計画をめぐりましていろいろ議論があったわけでございます。そこで、われわれの方といたしましては、財政制度審議会で基本的にこの条文の性格、あるいは国会の御議論というのを踏まえまして検討いたしました結果、ただいまのような先生御指摘の、何年に幾らを借りて、何年に幾らを返すと、そういう償還計画というものでいいんではないかというような考え方が示されまして、自来それによっておるわけでございます。
  48. 村田秀三

    村田秀三君 これもなかなか理解できない事柄だと私は思うんですが、これは国家財政だから一般の会社、家庭のこれは経理とは違うんだと、まあそう言われてみればやむを得ませんけれども、四十一年度予算審議の際に木村禧八郎さんが、四十一年度七千三百億これは建設公債発行する、そうすると、前年、欠陥補てんとして特例法で出されました二千五百三十億ですか、この額がつまり七千三百億円の中に含まっているんでしょうと、こういう議論をしているわけなんですね。まあ昔の話と違いましていまの話に置きかえても結構なわけでありますけれども、昨年発行されました公債は、ことし発行されておる建設、それから特例公債の中に含まれて引き継がれておるわけですか。ずいぶん愚問なようにも聞こえるかもしれませんが、それはどうでしょうか。
  49. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 非常にむずかしい御質問なわけでございます。ある年に公債が出ると、その公債によって予算規模ができておるわけでございます。そういう意味合いにおいて、翌年に出た公債というのは、規模が上がったところで公債が出ておりますので、木村先生の御質問は、そういうような考え方でおっしゃっているんだろうと思います。  ただ、そういうことでなくて、本年、五十一年に出ました三兆七千五百というものと、昨年出ました二兆二千九百というものは、決して重複はしていないわけでございます。五十年に出たものは五十年、五十一年に出たものは五十一年、ただ、いま申し上げましたように、規模が上がった分で考えれば、当然それが前提になっておるのではないかという御議論かと思いますが、基本的には別のものだと思います。
  50. 村田秀三

    村田秀三君 まあ私もあれを読んでずいぶんと素人考えをしてみたわけですが、まあいまおっしゃられたように、つまり去年の公債がことし発行される公債の中に含まってはいないんですね。借りた金はたな上げしちゃって、そして歳出としてその利子分だけを予算に計上された、こういうことなわけですね。  そこで、まあ考えたわけですが、このいまの日本の国の会計制度といいますか、財政制度というものを、もっとわかりやすくできないかということなんですね。どうも大福帳式じゃないかと、こう思うんです。私も専門家じゃございませんから、まさに自分が考えた素朴なこれ疑問なわけですけど、本来であればこれは赤としてずっと帳簿上残っていくわけでしょう。累積公債、これは負債として残っていくわけですね。そして、つまり先ほどの建設公債、これは資産として永久に残るんだから、これは財産である。その考え方からするならば、これは資産、公債金、これは負債である。資産として手元に残りましたと。このバランスと、それから収入と支出というもの、その上に立って計上されるというのが本当の予算じゃないかと、こう実は考えてみたわけなんです。それはまあ大蔵大臣でなくとも結構なんですが、そういう考え方というものが、これは国家財政会計の中にあってもよろしいんじゃないかという、そういう感じをしているわけですが、それはどうですか。
  51. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 財政法考え方は、その年の歳出というのはその年の歳入で賄いなさいとか幾つかの原理、原則があるわけでございますが、御指摘の複式簿記を導入したらどうだろうという議論はかねてあるわけでございます。で、どこの国でもいろいろそういう議論をやっておるわけでございますが、一般会計、要するに普通会計に関する限り、そういうような方式をとっておる国はありません。ただ、国鉄とか電電とか、ああいうような企業経営的な予算統制をやっております場合には、そういうようなやり方をやっておるわけでございます。ただ、一般会計におきましても、御承知の財政法の二十八条の参考書類といたしまして、債務残高の調書とか、そういうようなものは国会に提出いたしておるわけでございます。
  52. 村田秀三

    村田秀三君 非常に見にくいですね、こう一覧表になって出てくると。まあ私のいまの考え方からすれば、五十一年度予算規模というのは二十四兆プラス二十三兆、こういうかっこうで出てこなくちゃならないんじゃないかなという感じがするんですよ。これは借金でございまして残ったのは幾らでございます。そうして、バランスされて、これは健全経営、これは財政でございますと、こう言われるならば私はある程度わかるような気がいたします。それを見ると、なるほど二十三兆も国債あるのかと。二兆円も利子払っているのかと、これはだれが払うのだという国民の疑問もあります。指摘もあります。大蔵省は締めてかかります。こういうふうになってくるんじゃないでしょうか。だから私は歯どめ論、これは本当の歯どめというのは財政法なんだということを先ほど申し上げましたし、同時にこの会計制度、財政制度というものを変えれば私は大きな歯どめになっておると、こう実は感じたものですから、そういう物の言い方をしてみたわけでありますけれども大臣はいかがでございますか。
  53. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま国の会計を、そういうキャッシュベースでなくて、資産負債のベースで組み立て直すということ、一つの大きな着想だと思います。しかしこれが各国においてもとられていない、わが国においても今日まで採択するに至っていないのにはそれだけの沿革理由があってのことと思うのでございます。しかしながら、その資産負債の増減状況を念頭において財政の切り盛りをしなけりゃならぬことは仰せのとおりでございます。また国会の御審議に当たりましても、そういったことが充足されなければならぬこともまた当然のことと思うのでございまして、国有財産の増減の問題でございますとか、各種の資料が国会に提出されまして御審議を願っておるゆえんのものも、そういうところに配慮いたしたものであろうと私は思います。しかし、これをもっとコンパクトに、しかも、非常に理解しやすい形において考えられないかという御提案でございますが、とっさの御質問で、まあかしこまりましたと言っていまお引き受けするわけにもまいりませんけれども、確かに検討に値する御提言だと思います。御質問は承りまして、財政当局といたしましては検討を続けさしていただきたいと思います。
  54. 村田秀三

    村田秀三君 それでは、まあ償還計画とも関係するわけですが、償還財源ですね。目の子でこれ申し上げて恐縮でございますが、今回の公債は十年目に返すと、途中で政府が買い入れるということもこれはあるかもしれませんが。そうしますと、財政収支試算によれば、五十五年の国債費というのは相当多額にこれ上っておりますね。まあこの試算は試算であるからという前提にもちろん立って申し上げるわけでありますが、国債費比率は一〇・二%、予算の一〇%以上これ返すことになるわけですね。それからこの中の利息は四兆円、減価償却よりも利子の方が多い。そのときの税収は三十五兆五千億、大まかに言いまして一一%、まあ利子分だけでも税収の中から、その年の税収の一一%これ利息に回すということになりますね。これを仮に最終償還年の六十一年に推定をしてみる、類推をしてみる計算は私はやってはみませんでしたけれども、しかしこの額から目の子で申し上げるならば、よしんば五十六年度以降、これは建設公債というものはあるものだと想定をせざるを得ないわけでありますけれども、恐らく税収の何%になりますか、利子だけでも一四、五%になっていくんじゃないかという感じがいたします。加えて、つまり三千七百五十億プラスするとすれば、膨大なこれは数字になるわけですね。これもそのときに償還をすると、こういうことですから、何か償還財源というものをきちっと確保しなければならないんじゃないかと思うんですね。だから、十年目で償還しますというのは、償還計画じゃないという議論がこれはあるんじゃないかとこう思いますが。これは改めて私お伺いいたします。これはどうするんですか、一体。全くこれは素朴な疑問です。
  55. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 建設国債の場合と特例公債の場合とで御承知の借りかえをやらないという、やるやらないという差があるわけでございますが、特例公債の場合は四十年債の場合も七年目までに現金でお返ししておるわけです。それから昨年の補正予算特例債、それからただいまお願いしております五十一年特例債、昨年は大蔵大臣が口頭で四十年の赤字公債と同様に十年までに現金でお返しする、本年の場合は国会審議もありまして、法律でその旨が、借りかえをしない旨が書いてあるわけでございます。それで、全体の公債の問題になるわけでございますが、償還財源計画というものは再三申し上げておりますように、将来の経済動向あるいは財政収支の状況、税収の見積もり等々非常に不確定要因があるものですから、はっきりこれがかくかくしかじかで積み立ててと、こうなりますという御説明ができないわけでございますが、例の三本柱というやつで定率の一、六の分、それから剰余金は特例公債がなくなるまでは全額入れるというやつ、それから必要に応じて予算繰り入れをやるという考え方、この三つの考え方特例債には対処いたすと。それで先ほどの、今度の五十年補正予算で出ました特例債の十年後の国債費の御議論でございますが、これは過般のこの委員会におきまして、渡辺委員から御質問がありまして、仮定を置いて計算したものでございますが、仮に五十六年度以降、各年度において公債発行額が財政収支試算の五十五年度発行額と同額で推移すると、六兆五千二百でございますが、これで横ばいでいったといたしますと、六十年度に元利償還費の割合は一一・二%、それから六十一年度には一一・四%というような数字になっております。ただいま村田委員御指摘の五十五年一〇・二%というのから見まして、まあ急増というようなことには、仮定の問題はいろいろありますが、そのような感じになっております、数字的には。
  56. 村田秀三

    村田秀三君 数字的には、私も仮定の話をしたわけでありますから、固定して考える必要もありませんけれども、減るということにはならないわけで、これふえることだけですね。その額は大変な額になるわけでしょう。だから、それをどうするんだとこう聞いているんです。一遍に返す、これはそのときに税収、ばかっと取るということにはなかなかいかないんじゃないですか、その時点で。それで聞いているんです。まあしかし、同じ答えが返ってくることは予想いたします。  そこで、四十年、四十一年にも同じ論議がなされているのですね。そして当時大蔵大臣福田さんは、そんなに木村さん、心配することない、経済も成長するのであるし、財政規模も恐らく倍になるだろう、倍になった際の二千五百九十億なんというのは大したことございませんとこう答えているのですよ。私はここが問題だと思うのですね。四十年から四十七年までの物価上昇率を見ましたら四四・四%、これは公式な統計ですから。実はもっともっと私は消費者感覚としては上がっておったのじゃないかとこう思います。貨幣価値というのは、通貨価値はこれは半分ですね、極端な言い方をすれば。財政規模はどうかといいまするというと三倍になります、ちょうど三倍です。四十一年度の四十七年は三倍になっている。三倍になっておって、確かに通貨価値は下落をしている。二千五百三十億はこれは一千二百億くらいの計算しかできないわけでありますから、これは非常に楽に返せるということになりましょう。これは個人の問題からしても同じだと思います。いまの月給で家を建てて、毎月ローンを払うのは大変だと思っても、五、六年たったらそれは大した苦痛ではなくなってくるという、まさにこれと同じ現象は国家財政の中にもあるんじゃないかと思いますね。だからいま言った、とても経済情勢がどう動くか、あるいは財政規模がどうなるかということが予測できないから、これは細かい償還計画というものはちょっと予想ができないのです、予測ができないのですと、こういうことで、もしもそのまま動いていくということであれば、インフレを期待するという、そういうものは存在すると断言してもいいんじゃないかと思うのですが、はっきり言って。これはどうですか、大蔵大臣
  57. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大変恐ろしいことでございまして、公債、借金をするものが得をするということがインフレの特徴でございまして、政府が大いに借金するという場合に、最大の利得者が政府であるなんということは、いい政治じゃございません。仰せのとおりでございます。したがって、公債に依存する財政を改めなければならぬということは、財政政策の基本でなければならぬことは私がたびたび申し上げておるとおりでございます。そういう方向に財政執行の運営の基本を置いて努力してまいるつもりでございます。
  58. 村田秀三

    村田秀三君 そういう考えは毛頭ないのだ、あるという答弁をいたしましたら、これは大変なことになりますから、そう言うのが当然だろうと思いますね。だとすれば、やはりその言葉どおりに、今回は無理であっても、来年度以降はきちっとしたものを私は出す必要があると思うのです。本当にインフレ期待じゃなくて、デノミなんかも関係があるんじゃないかという感じがします。これは経済の安定、条件整備いろいろある、それは確かでありましょうけれども、やったら私は少なくとも末端流通の底では、相当私、インフレ的要素というものは出てくると思いますね。デノミをやってインフレになる、それはインフレじゃないという言い方にあるいはなるかもしれませんけれども、とにかく私は物価上昇というものは極端に底辺ではあらわれてくると、こう実は想定するものですから、ひねくれたものの言い方かもしれませんけれども、これほどこれ、抱え過ぎちゃって償還のしようがない。デノミでもやってひとつインフレを起こして、そうして償還を楽にしようなどと下心があるんじゃないかというふうにひとつ疑ってみるほかないということになるわけでしょう。だからそうじゃなくて、やはり経済の運営も、財政の運営も、国民が信頼しておるという姿をやはりつくり上げていかねばならぬとこう思うんですね。だとすれば、この償還計画というものは木で鼻をくくったようなものの言い方ではなくて、やはり出す必要がある。たとえば十年で償却をするということであれば、その十分の一を毎年特別会計に積み立てるなどという方法をもって、私は、国民が安心して国債を買えるようにしなくてはならぬじゃないかと、こう思うんですね。市中消化ということが叫ばれておる今日の事態であればなおさらのこと、私はその必要がある。償還計画、償還財源というのがやはり一番問題じゃないかと、こう思うんですが、来年度また特例債を予定しておるようでありますけれども、あるいは建設公債も膨大でありますが、そのひとつ償還計画なり、償還財源について、きちんとめどを立てるということをひとつお約束できませんか、大臣
  59. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは衆参両院を通じて論議の焦点になった問題でございます。償還計画と申しますと、ただいま御提出申し上げているように十年国債でございますから、十年後に耳をそろえて払いますと、また払わざるを得ない、これは法律上の義務費でございますから、どのようなことがあっても政府はそのとおりしなきゃならぬわけでございますので、これ以上の償還計画はあり得ないわけでございます。しかし、いま村田さんのおっしゃるのは、償還財源計画ということになるわけでございますが、これにつきましては、まず第一に特例公債発行中の期間、時期をお考えいただきたいと思うんでございます。特例公債発行中はそういう積み立てる財源が仮にあるとすれば、それは特例公債を、発行予定額から落としていくことを考えなければなりませんので、特例公債発行しておる期間におきましては、そういうことは考えられないと思います。特例公債がなくなりまして以後は、公債償還財源として、これこれの金額を国債整理基金特別会計に繰り入れていくという歳出を立てるということでいくべきか、そういう財政の切り盛りの仕方が、財源の運用の上からいっても適切なものなのか、それとも財政全体から見まして一番適切な財政政策を実行いたしまして、償還年度におきましてきちんと償還が可能な財政状況をつくり上げていくのがいいのか、そこは要するに政府の財政政策に対する国会初め世間の信用の問題だと思うのであります。この政府は信頼できないから、ひとつ初めから積み立てさしておこうということでございますならば、あなたのおっしゃるように、そういうことを義務づけていくということも一つの方法かもしれませんけれども、政府としては、与えられた財源を最も有効に使うという厳粛な責任を持っておるわけでございますし、一方において発行いたしました国債につきましては、約定どおり元利とも払ってまいらなければならぬ法律上の厳粛な義務を持っておるわけでございます。その二つはどうしても果たさなければならぬわけでございまするので、これは要するに政府に対する信頼をいただいて、そういった問題については、まま、どんどん狂いなくやるに違いないということについて御信頼をいただくかどちらかだと私は思うのであります。こいねがわくは、その点につきましては、政府を御信頼いただきたいと思うのであります。私ども国債に依存する財政というものからの脱却ということに対して、一生懸命に努力をいたしまして、五十年代前半には、何とかそういう状況をつくりあげて、国会方面においても、なるほどやっぱり政府が約束したとおりの事態は曲がりなりにできたというようなことにいたしたいものと、せっかく努力を重ねておるところでございますので、政府を御信頼いただきたいものと私は思います。   〔委員長退席、理事中西一郎君着席〕
  60. 村田秀三

    村田秀三君 それでは、この五十二年度税収見通し、二十兆円、二四・三%の伸び率、こうなっております。五十一年度は十六兆一千四百億円、一七%の伸びと、こういうことから考えてみまして、飛躍的な伸び率といってよろしいかと思うのです。で、この見通しはあるのかどうか、これをひとつお伺いしたいと思うのです。もう来年度予算の編成期でもありますから、税制について、税調にいまかかっておるというようなお話も聞きますけれども、かなりなこれ伸びです。そうしますと、経済が膨大に、積極的に活動するか、あるいは税制を変えるか、これきりないようにも思うわけですが、どうお考えになっておりますか、これをひとつお伺いしておきます。
  61. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) ただいま村田委員のおっしゃいました数字は、財政収支試算のケースIの方の年次別の内訳を御指摘になったものと考えますが、財政収支試算をお出しいたしましたときに、ややくどく申し上げましたように、ケースIの年次割りと申しますのは、五十五年度の目標額を経済計画にのっとって想定をいたしまして、これをいわば機械的に各年に割り振ったものでございまして、五十二年度の歳出の具体的な数字なり、税収のその他の具体的な数字がこのとおりにならなくてはならぬという性格のものではないわけでございます。その点をまず申し上げました上で、ここにあります二十兆六百億という数字がそのまま出るかどうかということになりますと、これは平均的な過去の経験から申しますと、なかなかこういう数字にはならないだろうということ、これまた申し上げたわけでございます。と申しますのは、この機械的な計算前提になっておりますGNPの伸び率が一五%でございまして、専売納付金を含みますここでいう意味での税収がGNP一五に対してこれだけふえるということは、弾性値という表現をいたしますれば一・六二にならないとこうならない、過去の経験で申せば平均して一・六二というような弾性値はこれは期待できないということだと思います。ただ弾性値と申しますのは、年ごとに異常に大きく振れるものでございまして、傾向としてこの試算で見ます限り、ある時期にかなりの負担の増加をお願いせざるを得ないということを申し上げておりますが、五十二年度に一体どの程度の税収になり、どの程度増収を考えないと予算が組めないのかということとはおのずからまた別になるわけでございます、具体的な数字としましては。景気回復期には平均的な弾性値よりも高い弾性値があらわれるということは、特定の税目については言い得ましょうし、それらすべてを含めました上で、具体的に予算編成に入りますと、もはや私どもも弾性値計算というのは用いておりません。やはり税目ごとにできる限り最近の実績をもとにしまして、そこから先は政府の経済見通しに乗って税収を見積もることにいたします。したがいまして、五十二年度がどういう税収になるかということは、五十二年度経済見通しがどうなるかということにかなり大きくかかわってまいるわけでございます。五十二年度経済見通し自身が実はまだ政府部内でまとまったものが何もございません。その意味ではまことに申しわけございませんが、五十一年度税収が先ほど申し上げたような程度の腰だめしかできない、政府の経済見通しが五十二年についても全くないという現状では、五十二年度税収はどのくらいになるかということは、まだ政府として申し上げられるような時期でないということで御理解をいただきたいと思います。
  62. 村田秀三

    村田秀三君 皆目見当がつかぬ、こういうことですが、そういうものなんでしょうかね。十一月に入ろうとしているわけですね。しかし、いまからもう準備しているんじゃないんでしょうか、いろいろ。全然準備されておらないわけですか。
  63. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 結論的に申し上げますと、まだ積み上げ作業ができる状態でないわけでございます。したがいまして、いまの段階でございますれば、申し上げたようにGNPを幾らと予測するかとか弾性値はどのくらいになるだろうかという腰だめの検討は、それは計算としてはできますけれども、それが具体的な予算編成の手がかりになるほどの確度を持ったものにはとうていならないわけでございます。やはり九月決算の姿がある程度見え、それから年末の給与所得の姿がある程度わかり、それらを踏まえました上で積み上げてまいるということでございますので、早くても十二月に入りませんと、なかなか積み上げ作業というものには移れない。これは例年そうでございます。
  64. 村田秀三

    村田秀三君 それじゃ、まあそれは後日に譲りましょうか。ただ、大蔵大臣がしばしば言っておられますけれども国民所得の二%程度の負担増は、国民の皆さんにお願いするという発言をされておったように記憶するんですが、そういうことございませんか、大蔵大臣
  65. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いや、そうではございませんで、財政収支の試算を作案するに当たりまして幾つかの前提があるわけでございます。で、歳出で、中期の経済計画でいま政府がもくろんでおりまする、いろんな公共投資でございますとか振りかえの支出でございますとかいうものを、経済計画で示されておるとおり実行するということ、それから経済の成長率をどう見るかというようなこと、いろいろ前提があるわけでございますが、そして五十年代前半に特例債から脱却するということを実現してまいるに当たりましては、まず税収社会保障——税負担社会保険の負担でございますけれども、これについての税及び税外負担については国民所得に対する比率を四十八年から五十年度の平均に対し計画最終年度までに三%程度引き上げることを予定する、それを国が二%、地方が一%ということ、これは経済計画概案の方に示されたとおり申し上げたわけでございます。
  66. 村田秀三

    村田秀三君 やはり将来と言ってみても、これは五十五年度までのいつの時点でということはいま定かには言われなかったようでありますけれども国民に対して負担をしてもらうという考えには変わりないわけですね。いままでよりも負担増をお願いするということには変わりないと、こう思うんですね。そうしますと、じゃ、その負担増、どういう形で負担をしてもらうかという問題があろうかと思うんですが、それはどういうふうに考えておりますか。
  67. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) ただいま大臣からお答えいたしましたとおり、閣議決定になっております五十年代前半の経済計画によりまして、さらにこれを一般会計ベースにいわば翻訳いたしましたものが、この財政収支試算にあらわれているわけでございまして、一般会計ベースで申し上げますと、五十五年度国民所得として予想されるものに対する負担率は、四十八年度から五十年度までの平均に対して一般会計ベースでは二%程度の増加をお願いしないと、ここにありますほどの公共投資をふやし、振りかえ支出をふやし、なおかつ特例債をなくすということができないであろうということでございまして、私どもが現在、税制関係の当局として負わされております課題はそこにいわば尽きるわけでございますので、これを受けまして、本年六月以降税制調査会に御審議をお願いいたしておりまして、税制調査会で、まず大蔵大臣から非常に厳しい情勢であると思われるので、現在ある税制を一度全部洗い直していただきたいというふうにお願いをいたしてございます。洗い直しの前提といたしまして、ただいま申し上げましたいろいろな計画なり試算なりをまず御説明いたしまして、こういう状況なので、五十五年までに何らかの時期にかなりの負担の増加をお願いせざるを得ないだろう、その場合にどの時期かということは、これはそのときどきの経済情勢景気情勢、またそれに対応すべき財政のあり方によりましょうから、いまから余り機械的に何年に幾らというふうに考えるのはむしろ適当でないであろう、やはりしかし税負担としては非常に大きな問題であり、ひいては税体系にも響く問題であるので、ひとつまず現在ある税目のすべてについて、それぞれについていまよりも負担をふやしていただく余地があるかどうか、それを研究していただきたい。それでその作業の過程で、いまある税目では限界があるということであれば、そこで改めて新しい角度から何らかの新しい考え方があり得るかどうかを御検討願いたいということになりまして、現在は第一部会と第二部会という二つの部会に分かれまして、まず現在ございます税目を個別に、いわばしらみつぶしに検討を開始していただいております。その場合に、数字的に申せば、ただいま申し上げた二%云々と申しますのは、これは全部税制改正によって出てくるわけではございません。その中にはいわゆる自然増収分も当然にあるわけでございます。ただ自然増収分というのが数字的にどれくらいになるかということは、これは実は確たることはわからぬ。ただ念頭にそういうものを置きながら、どうしても先ほど申し上げましたように、自然増収だけではどうやら平均的に見て足りないのではないかと。自然増収を全部歳出に振り向け、特例債を漸減することに振り向けても、なお足りないんではないかというのが現在の税制調査会での検討の基本的な考え方として、ほぼ御異論のないことになっております。ごく一部の委員では、そういう状況であるならば、何も五十五年度特例債脱却と言わなくてもいいではないかと、もっともっと先まで赤字公債出したっていいじゃないかと、増税よりその方がいいやとおっしゃる委員がないではございませんけれども、大部分の委員の方は、やはり五十五年度までに特例債から脱却するというのは、政策の重要な柱として今後も税調の審議を進めようということでいま各論の御研究をいただいております。
  68. 村田秀三

    村田秀三君 先ほど来の議論からしますと、私の意見としては、もう来年度から特例債などというのは用いないという方針の方が一番これは正しいんだと思うんですよ、何といっても。それじゃいまの財政規模を極端に減少させるわけにもいかぬ。じゃどうするんだと、こういう問題、むしろそういう観点に立って物を考えていくのが私は筋道じゃないかと思うんですね、どうなんでしょうか。大蔵大臣の先ほどの答弁からいたしますならば、やはり五年間も特例債を抱えなくてはどうにもならぬというのは、これは財政法というものは死んでしまっておるという、そういう理解をやはりきちんと立てて、では幾ら足りないのか、それをどうするのかというのがやはり、まあ同じ考えでやる、それが五十五年度と五十二年度の違いと、こう言えばそれまででありますけれども、どうもやはり大蔵省考え方というのが少しどうも理解しがたい点があるんですね。それはそれとしておきますけれども、これは果たしてそうなのかどうか私まだよくわかりません、わかりませんが、大蔵省発表しておりますこれまでのものは、租税特別措置による減税額は約四千九百二十億、地方税では三千八百五十七億円である、これは自治省が発表しておると、こういうのであります。東京都の新財源構想研究会、この報告書、私どものところにも来ておりますけれども、厳密に現在の制度の中で洗い直してみても、法人関係では二兆六千億円、個人配当・利子所得では六千七百億円、株式譲渡所得では約二千億円、これは脱漏しておると、こう言われておるのですね、ずいぶんこれ、本当なんでしょうか、どう考えますか、これ大蔵省としては。
  69. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 法人税関係の国税、地方税全部を合わせまして約二兆六千億、いわゆる企業優遇税制で軽減されているというのが東京都の新財源構想研究会が発表された数字でございます。これは税制調査会にも御披露をいたしました。税制調査会の各委員の方から、この積算の内訳についてかなり多くの疑問が出されております。ごく簡単に申し上げますと、貸倒引当金などの引当金を企業優遇税制としているのは、これは見方が余り違い過ぎて、このままに受け取るわけにはいかないではないかという御指摘がございました。この分が大ざっぱに申しますと、約七千億の違いでございましょう。それから法人の受取配当が現在法人税法上の益金になりませんが、これも企業優遇であるとして計算しておられるが、これは企業優遇というようなものでないので、これを軽減であり、不当な優遇であるとするのはおかしいという御指摘もございました。この部分が約二千億円がございます。それから御承知の配当軽課税率というものがございますが、それは法人税と株主の所得税との調整の一つの方法として設けられているシステムなんで、そこの議論をどう考えるかということで詰めるべきであって、これを企業優遇税制とするのは一方的に過ぎるという御指摘もございました。この分が約二千億円ございます。それから東京都の資料をお持ちだそうでございますので、その中に欠落軽減分と称する約九千億がございますが、これはどうも中身がよくわからない。よくわからないけれども、その説明を、この文章の方の説明を読んでみると、収用の場合の圧縮記帳とか責任準備金とか、そういうものをベースに全国的に伸ばしたものであるようだが、これはやはり企業優遇税制というようなものではないんで、おかしいではないかという御指摘もございました。そういうものを別に数字的に、いま私が申し上げました数字は東京都の数字を項目ごとに申し上げたわけでございまして、税制調査会として何千何百何十何億はおかしいとか、そういう御議論があったわけではございませんが、御指摘のあった項目をいわば差っ引いてみますと、二兆六千億と言われておりますものは、まあ大体六千債ぐらいというところまで縮まってまいります。六千億というのが国税と地方税と全部でございますが、それと私ども予算委員会にお出ししております特別措置による減収額とがぶっかってくる、私どもの出しているのは法人税分だけでございます。それにしましても、私ども計算法人税分よりも、まだ若干その東京都の計算の方が大きく出ているとは思います。   〔理事中西一郎君退席、委員長着席〕 しかしその誤差は、二兆六千億と、私どもがお出ししている約、四十九年度ではございませんで、これは五十一年度で、いろいろ整理合理化した後でございますので、そういうところも違いますけれども、私どもの出している数字との大差は見かけのような非常に大きなものではない、むしろその立場の相違と申しますか、物の見方の相違から出てくるものが非常に大きいわけでございます。  それから、キャピタルゲインにつきましては、そういうおっしゃったような数字がここに出てきておるようでございますが、この積算の根拠も実はよくわかりません。私どもとしては、キャピタルゲイン課税はもしいまよりも課税範囲を広げましても、その場合は同時にキャピタルロスも税制上しんしゃくせざるを得ないだろうと思いますから、キャピタルゲインの課税範囲の拡充で非常に税収が出てくるというようなことはどうも考えられないのではないかと思います。
  70. 村田秀三

    村田秀三君 いろいろとお話を伺いました。いずれにしても、まあ東京都は公式にこれを発表なさっておるわけですから、物の見方、それは角度を変えて見られておるという、そういう点も理解はいたします。しかし、やはりこの税の見直し、可能な限り見直しをして、そして脱漏、脱税などということのないようにしながら、まあひとつやっていっていただきたいと、こう思います。  それから、最後になりますが、自治省の方来ておりますか。きのうの新聞でありますか、まあ朝日新聞その他、ほとんどの新聞に出ておりましたけれども、特別土地保有税、建設省、国土庁の要求としてそれをひとつ緩和せよと、こういう要求がなされておると、それから自治省としては、まあ反対をしておると、こういうことでかなり大きく、これほど大きくやはり関心が持たれておるのかなと思うほど新聞は取り上げましたね。で、その内容をひとつ説明をしていただきたいと思います。どういう意味合いで国土庁やあるいは建設省は税制緩和を要求しておるのか。それから自治省の態度、これをひとつ。
  71. 栗田幸雄

    説明員(栗田幸雄君) 御案内のように、特別土地保有税は昭和四十八年に国税の法人に対する土地譲渡取得の強化と並びまして、土地の投機的な取得を抑制する、あるいは土地の供給を促進するという目的で創設されました市町村税でございますが、最近土地の価格が安定化してくるような傾向をとらえまして、デベロッパーの一部には、この特別土地保有税を基本的に見直すべきだという意見が出ているわけでございます。自治省といたしましては、地価が鎮静化の方向にあるとはいうものの、今後こういった傾向が果たして長期的あるいは安定的なものかどうか十分見きわめる必要があるということもございまして、この特別土地保有税につきましては、基本的な枠組みは今後とも堅持すべきだ、このように考えているわけでございます。で、国土庁なり建設省からこの特別土地保有税につきましての緩和の要望が出ておりますが、これはまあ具体的な問題になりますが、現在特別土地保有税に徴収猶予の制度がございますが、その徴収猶予を優良な宅地に供給する場合に適用になるわけでございますが、それをどの段階で適用するかと、その徴収猶予をどの段階で適用するか、つまり徴収猶予の始期をいつにするかといったような点につきまして、できるだけその始期を早めてもらいたいという要望があるわけでございまして、この点につきましては五十二年度の税制改正に関連をいたしまして、その実態なり、あるいは運用面も含めまして慎重に検討してまいりたい、このように考えているところでございます。
  72. 村田秀三

    村田秀三君 慎重に検討してみるということは、それはもうこの要求は受け入れられないというふうに、こう理解していいですか。
  73. 栗田幸雄

    説明員(栗田幸雄君) いま申しましたように、その実態なり、あるいは運用につきまして種々検討すべき問題がございますので、そういったようなものをよく分析をして結論を出すということでございまして、いまの段階ではっきりこうというところまでは至っていないわけでございます。
  74. 村田秀三

    村田秀三君 そうすると新聞に書かれている内容とは若干、自治省の態度としてはまだ固定されてはおらないようでありますが、私は希望しておきますけれども、四十九年に国土利用計画法が創設をされました。その意味というのは、当時、列島改造ブームに乗って土地の投機、暴騰、こういうことがあったために、これはひとつ歯どめをかけなけりゃならぬという立場に立ってあの法律が創設をされ、そしてまた特別土地保有税という税も創設されたと、こう私は思うんですね。そういう意味からするならば、まあ現状よく法律の目的に沿うてこれは安定の方向をとっておると理解した方がいいわけでありまして、だからといって、税を緩和して投機を行ったこれらの業者を保護しなくてはならぬ、利益を保証しなくてはならぬという考えはおかしい、こう私は思います。したがって、そういう立場で自治省はひとつ対処をしていただきたいと、こう強く希望をいたしておきます。  それから、大蔵大臣に関連する問題でありますけれども、まあいまのような建設あるいは国土庁の要求があるとすれば、恐らく業者からの要望を受けての話だろうと、こう思います。そうすると、まあ非常に困っているからひとつ何とかということであるならば、法人の土地譲渡益に対する重課税、この税のつまり課税対象となる基準、この基準を変更せよという要求もまたあるんじゃないかという感じがいたします。これは大臣でなくても結構でございますが、ありますか。
  75. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 法人の投機的な土地取得につきまして、税制面でもこれをチェックするための工夫が必要だというところから、おっしゃいました法人が四十四年一月以降に買いました土地を売りますと、普通の法人税のほかに二〇%の特別の税を納めていただくということで、いま政府はこれを土地譲渡重課制度と申しておりますが、これにつきまして業界等からの御要望の一つは、いまの仕組みの中に適正利益率というものがございまして、これを廃止してほしいという御要望が出ております。それで、適正利益率と申しますのは、実は御存じだと思いますが、この機会にちょっと申し上げておきたいのは、山の中の土地を買い占めましてこれを売るというときには、適正利益率というようなものは関係ないわけでございます。とにかくもうけがあればそれは普通の法人税のほかに二〇%払ってくださいということでございます。適正利益率というものが関係してまいりますのは、開発許可をもらいまして、ちゃんと公共的な整備もしまして、それを公募して売ると、最終需要者に。そのときになおかつ適正利益率を超えないで売ってくれれば、それはリーズナブルな値段で最終需要者に宅地が入るんだから、それは法人税だけで結構ですと、二〇%の税の方はよろしゅうございますという仕組みなんでございます。したがって、山の中を買い占めた方々を、適正利益率をどうかすれば、そこを助けてしまうという問題ではそもそもがないわけでございます。優良宅地供給についていまの適正利益率というものがあるがために売れない、かえって最終需要者に宅地が手に入るのが阻害されるというのが要望の主張の根拠になっておるわけでございます。私どもとしましては、話も十分伺いますし、私どもから資料要求もいたしますし、別途の調査もいたします。もし本当にそれが阻害要因になっているんならそれは直すべきであるし、急いで直しましょうということで作業をいたしております。ただ、国土庁、建設省の方の要求は、適正利益率の制度そのものはなお残しておいてほしい、現状でそれを外してしまうと、場合によって地価が上昇する危険がないとは言い切れないから、もう少しその仕組みは残しておいてほしい、ただ現在政令で決まっております適正利益率というものを実情に合うように修正はしてほしいという要望にいまなっているわけでございます。私どもも、基本的には税制というのはいわばピンチヒッターだと考えておりまして、土地政策の基本はやはり土地官庁でつくっていただく、私どもはそれを間接的に、ごく補完的にお役に立つ以上のものはできないというのが基本的な考え方でございますので、土地政策の担当官庁から、適正利益率はそのまま仕組みとして残しておいてほしいと言われます場合に、なおかつこれを残す必要はなしということまで主張するつもりはございません。したがいまして、いま研究いたしておりますのは、適正利益率というものがいまのままでよろしいのか、あるいは実情に即するように合理的に考えた場合には、そこに手直しが必要かということの勉強を続けておりますが、何分この実態調査なども必要でございますし、かなり技術的にはむずかしい問題でございますので、まだ大臣にも御報告をするに至っておりません。もう少し時間をいただきまして、結論が出ますればまた御報告いたしたいと思います。
  76. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      —————・—————    午後一時二十八分開会
  77. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十一年度公債発行特例に関する法律案の審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁森永貞一郎君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  79. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 休憩前に引き続き、昭和五十一年度公債発行特例に関する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  80. 青木一男

    青木一男君 私は、物価との関係等において円のデノミネーションについて若干の質問をいたします。  私は、昭和四十七年四月、参議院予算委員会で、円のデノミネーションについて水田大蔵大臣及び佐藤総理に質問したのであります。当時、世情のデノミ論議は旺盛をきわめ、新聞、雑誌の上だけでなく、著書も続々出版され、デノミ実施に備えての財産対策などを競って書いたのであります。株式市場ではデノミ株などという言葉もでき、特定株式と土地への思惑的投機が誘発されたのであります。そして、水田大蔵大臣の大阪発言がこの風潮の火に油をかける形となりましたので、私は予算委員会で詳しく政府の方針をただしました。そうして、大蔵大臣も総理もはっきり現状においてデノミ実施の意思のないことを明言されたので、これを機として世情のデノミ論議は鎮静に帰したという沿革があります。数日前、参議院予算委員会で円のデノミについて質問があり、福田副総理も大平大蔵大臣も、現状ではできないが経済が安定すればデノミは実行すべきものであるという意味の積極的発言があったように伝えられ、世情では再びこの論議が起ころうとしております。  そこで、まず大蔵大臣からデノミ実施についてのお考え、実施のお考えがあるかどうか、やろうと思えばできるのかどうか、またやるとすればいかなる時期か、そういう点について簡単にお考え伺いたいと思います。
  81. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私の了解するところでは、デノミネーションは、通貨呼称の変更であって、本来、経済の実態に影響があるべきものとは思いません。しかしながら、経済は大変心理的なものでございますので、こういうことをやりまして経済の実態に影響を及ぼすようなことがあっては、かえってこれは経済を撹乱するおそれがありますので、よほど注意しなければならないことであると思います。しからば、現在の状態はどうかと思いますと、経済の安定、通貨価値の安定に全力投球すべき時期でございまして、デノミネーション考えるような時期ではないと考えております。
  82. 青木一男

    青木一男君 これからの私の質問に対しては大蔵大臣からでも、政府委員からでも便宜御答弁を願います。  大蔵当局が現状において実施の考えのないことはわかりました。しかし、その真意が誤り伝えられて、往年のデノミブームを再現し、各種の思惑取引を助長することは百害あって一利ないと思います。そこで、デノミの与える利益の方面、不利益の方面、大蔵省が何ゆえにデノミを実施しないかという理由を明らかにして、誤った先走った思惑の発生を予防したいと思います。  まず、デノミの目的またはメリットについて伺います。  円の為替相場の切り上げ、切り下げは、外国貿易等を通じて直ちに産業、経済影響する。デノミは、ただいま大蔵大臣の述べられたように、貨幣の計算単位の変更にすぎないから、本来産業、経済国民生活の基本には影響のないはずのものである。いまや物価の安定、経済の安定は政治の至上命令であって、この目的のために政府もここ両三年苦心惨たんを重ね、いまやようやく安定の方向に向かっているのである。したがって、デノミネーションがこの大きな目標に向かってプラスになる性質のものであるならば、大蔵省も積極的実施について考慮する価値があると思うが、デノミの実施は、物価安定、経済安定の見地からは余り貢献するところがなく、むしろ新しい混乱の種をまき、物価の便乗値上げの誘因となる危険すらあります。いまや日本だけでなしに、世界を挙げて物価は騰貴の傾向にある。わが国でも物価安定と言っても、物価上昇の程度を低くすることで満足せざるを得ない状態にあります。便乗値上げの誘因となる危険性のある施策は避けねばならない。現状のもとで大蔵省デノミを実施しないと考えておるのは主としてこの点にあると思うが、大蔵省の御見解を伺いたいと思います。
  83. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 先生の御指摘の一番問題点は、むしろせっかく安定したときにならばデノミをやっても差し支えないではないかという御議論に対して、せっかく安定したのにそのデノミというのをちょこちょこ行えば、さらにまた再び混乱が起きるというような御着眼があるのではないかと思います。私もその辺はデノミのいま御質問の利点、あるいはメリット、デメリット、いろいろ言われておりますけれども、これは結局なかなか学者の中でも意見分かれておりますし、私どもも、デノミというのを単に貨幣呼称の単位とだけに限定して議論すれば、それはもう明らかに何でもないことのようでございますけれども、やはり便乗値上げとかそういう問題が、御指摘のような問題があるので、大臣も先ほど申し上げましたように、経済の安定したときを見計らってやるということに、こう申し上げたわけでございますが、そこで安定したときになったならばもうデノミの必要がないではないかということでございますけれども、そこのところが実はデノミの一番必要性を言われる点でございまして、私どもデノミをいま実施したいという政策を持っているわけじゃございませんけれども、自国の基本通貨に対する国民の信認の回復といいますか、あるいは自国通貨の対外的な信用と申しますか、そういうようなもの、あるいは計算単位が非常に簡単になるというふうなことをデノミのメリットとして挙げておりますが、これはどの程度にそれを強く意識するかということに問題があるんではないか。私どもはやはり自国の基本通貨というものの信認というものが失われては、やはりそれがやっぱりインフレに対しての影響は私は逆に一つあるんではないか。したがいまして、まあ国際的な比較において物を言う必要はございませんけれども日本とイタリアだけが三けたであるというような対ドルレートを見ました場合に、それが果たして円単位で三けたであるから、その円単位の三けたの数字は国民が非常に円に対しての割り安感というか、あるいはインフレ感というか、そういうものを持つようになるのかどうかということも、これは論点が分かれるところでございますけれども、やはりその基本通貨の信認の回復ということを考えれば、やっぱりデノミというのは一つのメリットではないかというふうに一応考えておるわけでございます。ただ、それをいつの時点でということになりますと、それはなかなかその時期の判断なり、また国民に対して、私は個人的にはデノミはよっぽど国民に教育をして、デノミというものとデバリュエーションとかその他いろんな知識が混同しているような状態であるならば、デノミはやるべきじゃないし、またやはり相当デノミの勉強なり教育というものが必要であろうと。しかし、その教育をするほどの価値があるのかどうかということについては、先生のおっしゃる点は確かに一つの問題であると思います。
  84. 青木一男

    青木一男君 デノミの目的またはメリットについてですが、世上の通説によれば二つある。一つは、計算の簡素化であり、他の一つは、いま理財局長の言われた国際的貨幣単位の威信の問題である。世界主要国の通貨単位でアメリカのドルに対して三けたであるのは日本とイタリアだけである。貨幣価値の単位が余り低いのは威信の上からも困る。これが従来とられておるデノミのねらいでありますが、このほかになおデノミのメリットとして大蔵省考えている点がありますならどうか伺いたい。
  85. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 一番基本は、インフレの進行というものは、これはもう世界的な傾向でございますけれども、やっぱり通貨に対しての国民の信認の回復というものをある意味におきましては、心理的にもそれをつかむ必要があり、また与える必要がございます。  したがいまして、政府がそういうふうに判断をした、いわばいまデノミをやってもいいというように判断するということは、それは自国通貨に対する自信あるいは日本経済に対する自信あるいは国民に対して政府がそういった態度を示すという意味においては、先ほどデノミのデメリットと申されましたインフレ、便乗、そういうものとは逆に、一つどもとしてはあるのではないかと。それを契機としてやはり自国通貨に対して、まあこれは先進国につきましては基本単位と補助単位というのを大体持っております。日本においても基本単位と補助単位がございますけれども、いま何銭というのを子供が全く理解しないほどの状態でございますし、一円の単位というものはむしろ非常に等閑視されております。一円で買えるものがないというような状況でございます。  ただ、考えなければなりませんのは、すでに円と銭との分け方を知らない国民がかなりおりますので、そういう点においても通貨に対してさらにデノミが将来の長期にわたってまだ行われないというような状況を想定いたしますと、恐らく国民の中でそういう円を知っておっても銭は知らないという層は確かに多くなってくるだろうと思います。  しかしながら、そういういろんなことを並べますけれども、結局何がメリットかといえば、それは政府が自国の経済に対して一つの自信を持って、そしてそれを対外的にもそれを示すという、そういった時期、そういった判断というものがやはりインフレ経済に対して一つのターニングポイントと申しますか、そういうものとしては私はあるのではないかと申し上げたい。
  86. 青木一男

    青木一男君 百分の一のデノミを行えば、大きな計算では零が二つ省けて計算が簡素化されることは事実である。しかし、それは財政、金融、貿易、大きな商取引等の取り扱いの問題であって、国民の日常生活の上では余り関係がない。円の価値が下がったといっても、大臣や私どもの月給はポケットへ入るのでありますから、不便を感ずる程度ではありません。  佐藤総理は、国民の若い世代の人々は補助貨を見たこともない、なれた貨幣制度を変える必要はないと言われた。百分の一のデノミを行えば必然的に銭という補助貨を必要とし、円の計算のほかに何銭、何十銭という計算をしようとしますから、国民の日常生活からいえば簡素化ではなく、むしろ複雑化すると思う。理財局長もこの点のメリットを余り挙げないところを見ると、大した重きを置かないように思いますが、改めてお伺いします。
  87. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 先生の大変デノミに対して御造詣の深い御議論をいただきまして、私は一々御答弁申し上げておりますと、私は大変デノミに積極的な態度というふうになっておるわけではございませんで、先生の御質問に対しましてちょっとお答えしておりますと、だんだんそのデノミのいいところというようなことを盛んにえぐり出すようなかっこうになりかねませんのでございますが、私も大臣が先ほど申されましたように、そういういろんな問題を検討したところで、やはりもちろんデメリット、メリットを検討した上で、安定した時期に一つ考え得ることではあって、頭からもうデノミはだめだというふうに決めてかかるべき問題ではないのではないだろうか。その時期と問題点というものを常に頭に入れておく必要はあるんではないかということを一般論として申し上げておる、大臣も先ほど申されたわけでございまして、その時期が現在でないことはもう大臣が先ほど明言なさったとおりでございますし、まだ私どもはその時期がいつごろであるかということを想定するわけでもございませんけれども、ただデノミは全くもう政策としてもまずいということで、もう一切政策当局の中に、頭の中から消してしまえというほどの問題だとは私どもは思ってないということでございます。よろしゅうございましょうか。
  88. 青木一男

    青木一男君 計算の簡素化になるかという点。
  89. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) それは必ずしも計算の簡素化になるとは考えません。それは円の下の方に銭ができるわけでございますから、それは変わりませんけれども、ただ、これも気分の問題でございますけれども、一ドル三百円というのは、一ドル二百九十九円になってもそれほど余りあれでございませんけれども、一ドルが三円が二円九十九銭になったら心理的には相当やっぱり違うのかなと、台が違ったなという感じがするのかなというような、きわめてデリケートなものが、この通貨論争にはございまして、外国でもそういう点についてはやはり単位、また基本単位と補助単位というものをつけた方が、通貨の信認が得られるのであるという解釈もかなりございます。それは計算の便宜さとかなんとかいうことを、これはもう先生の御指摘のようにおんなじでございますけれども、そこをどういうふうに評価するかというのは、大変むずかしい高度の御判断まで入るべき性質のものかと考えております。
  90. 青木一男

    青木一男君 計算の簡素化が必ずしも結論としてデノミによって実現するとは思われません。それで残るのは円の威信の問題であります。先ほど来大蔵当局は繰り返しその点を言っておりますが、いまのように対ドル相場三けたというのは確かに低いのでありますが、これは終戦後日本経済が再出発するときに、日本経済が壊滅状態に陥り、インフレ現象が支配したというそのことの遺物であります。私は、大蔵省の役人時代、この円の価値の問題あるいは為替相場の問題、こういうことに取り組んでほとんど私の役人生活は終わったと申してもよろしい。でありますから、もとの円に対する郷愁というような点から言えば、私は何人よりも強いのであります。しかし、これはあくまでも国民感情の問題であり、円の価値が低いからと言って、日本経済運営上あるいは国民生活の上に著しい実害が出ているとは私は思わない。たとえば円の価値が低いからと言って、これをべっ視して浪費するというような傾向は余りないと思う。これは貯蓄が堅実に増進しておることが、これをよく証明しております。ときとしてはもっと国内消費を増加せよという声も出ておるほどであります。この円の威信の問題、特に円価の低いということによる実害があるかどうか、その点をもう一遍ひとつお伺いしておきたい。
  91. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) きわだった実害というものを摘出するのは非常に困難かと存じます。
  92. 青木一男

    青木一男君 大蔵大臣も副総理も、物価が安定し、経済が安定した暁にはデノミを実施すべきだというようなお考えのようでありますが、その安定時期とは一体どういう時期を予想するのであるか、わが国の財政の現状は連年何兆円という巨額な赤字公債発行し、常にインフレの要因を内蔵しておる。したがって、物価の安定、経済の安定には、まずその前提として財政の安定がなくてはならない。まず、赤字公債発行を必要としない均衡予算の実現が第一歩である。政府の希望的計画によっても、それは昭和五十五年以降のことである。その後においても毎年巨額の歳計剰余金を蓄積して赤字公債を償還しなければならない。その仕事が完了して、初めて健全財政が実現し、物価経済の安定も期待できるわけであります。したがって、円のデノミを可能とする物価経済の安定というのは、この財政の安定を前提とし、相当先のこととなると思いますが、これは大蔵大臣のお考えをお聞きしたい。
  93. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり心得ております。
  94. 青木一男

    青木一男君 次に、わが国の経済は、国内に資源のない関係上、外国貿易を中心とする国際経済依存度の非常に高い国であり、したがって、外国の影響を高度に受けるのであり、この点からも物価の安定はなかなか容易でない事情であります。したがって、デノミを可能とする物価経済の安定は、この関係からも短期間に期待することはできないと思いますが、この点もあわせて伺いたいと思います。
  95. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) お説のとおりに考えております。
  96. 青木一男

    青木一男君 デノミを行う場合には、貨幣法を改正し、新円一円をもって通貨の単位とし、新円一円は旧円百円と等価であることを規定しなければならない。そうして旧円表示の債務は、百分の一の券面額の新円をもって弁済すればよいということを規定することになります。十万円の月給は千円となり、五十万円の貯金は五千円となる。関係者は減俸されたという感じを持ち、あるいは貯金が減ったという感じを持ちます。これに対して政府はすべての物価が百分の一となるのであるから、損得はないと説明するわけであります。しかし、政府は単に説明だけではなしに、現実に物価をそのとおりにする政治的責任が加重されることは覚悟しなければなりません。問題は、物価が果たしてそのとおり下がるか、一本百円の大根が一円で買えるかという問題になるのであります。フランスでドゴール大統領のとき、フランのデノミを実施したのであるが、そのときは法律で便乗値上げを禁止し、違反者には三百万フラン以下の罰金、五年以下の禁錮という厳罰をもって臨んだけれども、違反の続出を免れなかった。便乗値上げと通常の原因による値上げとの区別も容易でなく、取り締まり官を何倍にふやしても全国の商店の取引を一々取り締まることはできません。ドゴールの回想録によると、当時フランスは、長年にわたるアルジェリア戦争等の影響によって、その財政経済は破産寸前にあった。そこで、憲法を改正して大統領の権限を強化し、財政経済の一大改革を行った。その一端としてデノミを行い、これによって、信用を失っておったフランスの信頼を回復し、対外的にフランスの栄光を回復しようとした非常手段であったのであります。わが国の経済の現状も、円の信頼も、当時のフランスに比較すべくもありません。いまでは日本の円は、国際的にも非常に高く評価されております。せっかく安定した物価経済に、平地に波乱を起こすような危険を含む措置を、厳しい罰則まで設けて実施することは、政府も容易に踏み切れないと思います。いわんや水田大蔵大臣は、補助貨の準備だけに七、八年を要すると言われた。したがって、物価経済安定が相当長い期間続かないと実施できないわけであります。また補助貨の準備、あらゆる帳簿類の印刷の仕直し等に数千億円を要するという計算が行われております。したがって、政府が物価経済が安定したならば実施したいという願望も、厳しい罰則などを設けずに、物価デノミの程度に応じて自然に下がる確信ができたときという意味でなくてはならないと思います。それには国民理解がそこまで進み、世論が積極的にこれを要請し、支持するという空気にならないと実行できるものではありません。すなわちいまはデノミを実施すべき時期でないのみならず、政策として取り上げる時期でもないと思う。大蔵大臣の御所見を伺って私の質問を終わります。
  97. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御所見ごもっともでございまして、私も同様に考えます。現在大蔵省といたしましてこれを政策的に取り上げるつもりはございませんし、そのまた準備もいたすつもりはありません。
  98. 藤川一秋

    ○藤川一秋君 私は、まず中期割引国債につきまして、ごく単純な御質問を政府にしたいと思います。  中期割引国債の骨格というのを見ますと、発行額については当分の間年度間三千億円程度とする。となっておるわけですが、この当分の間とは二、三年と解釈していいか、四、五年と解釈していいか、また三千億程度というのはどの程度の問題か。
  99. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 中期割引国債を新しく国民の、国債個人消化の多様化という目的のもとに出すわけでございますけれども、これは何せ新しい試みでございます。したがいまして、これを国民経済の中に定着させるために、ある程度時間がかかる。それからまた財政当局としてもいろいろの慎重な態度でこれに対して臨まなければなりません。したがいまして、この当分の間という点は、私どもはやはりこの文字どおり当分の間ということで、それが三年とか、五年とかというふうに初めから決めてかかっているものではないわけでございます。  それから、三千億円というのは、これは額面ベースでございますが、現在の個人消化、これはずっと十年来全体の発行額の約一割程度を消化してきたわけでございます。これに対して個人消化、大体ほとんどその一割から抜け出ないで、最近ちょっと個人消化がふえてきておりますけれども、その傾向をさらに伸ばしていくという希望は私どもございますので、その辺からも割り出しまして、今年度間の三千億程度というのは、一応私どもの当面の目標であるというふうに考えております。
  100. 藤川一秋

    ○藤川一秋君 国民に国債をなじませるといいますか、個人消化の率をだんだんふやしていくということは望ましいことだと思うのです。そうだとすれば、なぜ、もっと早くこういう魅力のある国債というものを出さなかったのかということが一つと、売れ行きがいいのならば、国債を何も制限していかなくても、どんどん発行したらいいんじゃないかと、こういうふうに考えます。それはどうです。
  101. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 国民に対して、国債も一つの金融商品でございますが、これを国もいままで十年債を一本出しております。預貯金から始まりまして、信託、保険あるいは有価証券、国民の金融資産というのはたくさん数あるわけでございます。したがいまして、そういう中に国から新しい金融資産を登場させるわけでございますから、やはりそれはそれおのおのに魅力があり、特徴があり、そしておのおのかなりのバラエティーがあるところに、また国民の魅力が出てくるということでもって進んでいくべきものでございまして、国側は圧倒的な——国というのは、国債は一番信用の厚いものでございますから、御存じのように金利も一番低く一応定められておりますけれども、やはりこれから新しく出していきます国情が、そういった現在あります一つの金融商品としての資格の中に、特別際立った魅力を生じさせるということは、これまた問題であろう。したがいまして、混乱なく、しかも新しい魅力として登場する商品という形を考えていかざるを得ません。そして、なおかつ、国債というものに国民が魅力を感じ、なじんでもらうということでございますから、私どももかつて長い間、世界各国とも大体三種類ぐらいの商品を持っておるわけでございます、国債だけで。日本だけ一種類というのはどんなものであろうかということでいろいろ検討してみましたけれども、必ずしもなかなか名案が出てこないというような状況が続いてきたと思うのでございます。ただ、ここで申し上げますのは、大量の国債を発行するということが現実の問題になってまいりまして、しかも、これはこれから長い目で見ますと、国債政策というのはこれは大変なことである。同時にこれを国民に愛されるような国債に育てていかないと、これは御用金になってしまうということに対しては、やはり時間をかけて国債の市場をつくっていくということから始めていかざるを得ません。したがいまして、そういういままで申し上げましたようなことを背景にしながら、私どもはやはり公社債市場の中に国債が定着していけるような、そういう足がかりを持ってみたい、こういうふうに考えておるのでございます。
  102. 藤川一秋

    ○藤川一秋君 それから、当該国債の流通市場の安定化を図るために、国債整理基金により買い入れを行うことを考える、こういうようになっておるわけですけれども、いま御説明がありました一般国民に魅力のある発行条件ということが一つのねらいになっておるわけなんです。そうだとすれば、値下がりするために買うということは、たてまえ上おかしいのではないかという気がしますけれども、その点はどうでしょうか。
  103. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 国債整理基金が市場の安定のために出場するというのは、現在の十年債においても行っておるところでございます。それは、ですから、私どもはこの割引金融国債につきましても、いま同様な基本的な考え方に立っておるわけでございますが、割引債だけが、たとえばほかの金融商品がみんな値下がりする、あるいは逆に言えば金利が上がるというような時期に、一つだけは常に絶対に支えられておられるというような、そういうことを考えているのではございません。私ども国債に対して従来から個人消化の基本的な政策としてとっておりますのは、やっぱり国債買ったらもうこりごりだというような状況にないようにすることが一番発行者としての心を配るべきことでございますので、円滑な市場の流通が行われれば、それはもう何もそこに国が出ていく必要はないけれども、個人の国債保有者が著しく損をすることのないように、これは投機のものではございません、ある程度安心して国債が持てるようなそういう市場づくりのために適宜出ていくということでございます。初めからある線を引っ張りまして、そこで買い支えるというようなことを考えているわけではございません。これは市場安定化のための方策でございますから、大蔵省だけの問題ではなくて、金融界、証券界、各方面の意見を聞きながら慎重にやらなければなりませんが、現在の十年債におきましても、この基本的な考え方をとっておるわけでございます。別に骨格ということでわれわれが入りましたのは、市場の安定化のために国がこの国債についても相当慎重に構えているということを示しているということでございます。
  104. 藤川一秋

    ○藤川一秋君 それは一面の大事をとった言い方だと思うのですけれども、一部の専門家筋ではこの割引国債はプレミアムがつくのではないかというようなことさえ言われているわけであります。そうだとすると、いまの十年国債として証券市場で扱っているものが売れなくて、これが一方的に売れていくというような現象が起こり得るかどうか。現在、十年もの国債の一般証券市場で売れている年間の額、それらをひとつお答え願いたいと思います。
  105. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) いまの数字は後でちょっと御説明いたしますが、プレミアムがついて売れるというようなことというのは、私ども考えられませんのは、債券はいずれも皆結局、価格、利回りで先生御承知のように買うわけでございますから、特にプレミアムがつきますということは、買う方から言いますると債券を高い値段で買ったということになります。利回りは非常に低くなります。したがいまして、その利回りの点を考えますればもうすでに魅力のないものになってしまうわけでございます。私は、株式は別といたしまして、一般の債券につきましてはそういう仮に何か非常に人気が出ましたといたしましても、それは一般の流通市場の利回りというものと著しく乖離するというようなことはまず生じないというふうに考えております。  それから、現在、個人消化されております金額は、五十年度で三千五十七億。大体五十年度の初めごろは、月平均が百五十ないし百八十億ぐらいでございました。三月ごろから五百億程度にふえてまいりました。五十一年度は、月平均、月別に申しますと四月から五百五十あたりから出てまいりまして、七百二十二、七百六、七百三十六、七百十六、九月が六百七十七、それで大体七百台をピークにいたしまして、ややいま売れ行きの傾向が頭打ちになっております。
  106. 藤川一秋

    ○藤川一秋君 それから、大蔵省は来年度利子・配当課税、これをある程度是正するというようなことを聞くんですが、三〇%を三五%ないし四〇%、割引金融債は一二%のものを一五%というようなことを聞いておりますが、この割引国債についてもそういう段階になれば当然そういう率が変わってくる——税率ですね、というふうに考えてよろしいでしょうか。
  107. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 私どもいま考えております割引国債は、骨格をシ団に示して検討をいたしてもらっておる最中でございますから、これがいつごろから実現するかという点はまだ未定でございますが、前提はもちろんいまの割引金融債というものがすでに市場に出回っております。それと税法上の扱いは同じ扱いであるというふうに一応前提といたしておりますが、そういう関係の税制が変わりますれば、当然に国のものも同じようになるわけでございまして、税法上特別のことを考えておるわけではございません。
  108. 藤川一秋

    ○藤川一秋君 もう一つついでにお伺いしたいのは、きょうの新聞にも載っておりましたようですが、郵便貯金の架空名義といいますか、それを追及したらどうかというようなことが載っておるわけであります。口数にすると二億三千万口あるので、確かに架空がなければそういうことにはならないと思うわけですけれども、そういうことになればおのずから国債の購入というようなことに国民の意思が向かってくるというように考えてしかるべきだと思うんですが、その点はどうでしょうか。
  109. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 郵便局は郵政省が監督いたしておる機関でございますので、郵便貯金法によりまして預入限度は三百万円、それイコールまだ無税でございます。したがいまして、まだ付利の方法も、通常の利付貯金よりも定額預金と申しますか、そういう魅力のある商品を売っているわけで、非常に郵便貯金の伸びが著しいことは、一般の金融界から見まするとかなり伸びが比較的に郵便貯金の方が多いなというふうな感じでございます。ただ、いまおっしゃいました口数でございますが、これは二億何口とかいう口が日本人の人口の倍だとかという話とは必ずしも一致いたしませんで、郵便貯金の場合には、定額貯金というのは預けるごとに証書を一枚出しますので、五万円預けると五万円、翌月五万円預けるとまた五万円という、これは二口の勘定になります。したがいまして、そういう計算をしていくという点は、一時、非難が行われました銀行の三倍も二倍も口座があるというころとは事実は一応違っておるように思われます。ただ、郵便貯金に対しましては、そういったことだけでなくて、何かとにかく預金が集まると、貯金が集まるということに対して現状で完全な名寄せが行われているのかどうかという点について疑問を投げかける向きもございますので、それは郵政省の方でもこれに対してはすでに説明はいたしてくれておりますけれども、郵便貯金の側でも。今後そういった実態が、完全な名寄せが実際上行われているということが前提でなければ、これは法律からいきましても筋が通らない話でございます。その点は郵政省が恐らく郵便貯金に対しては監督いたしてこれからも進んでくれるものと信じております。
  110. 藤川一秋

    ○藤川一秋君 次に私は、IMFの会議が終わったことにつきまして、これに関連しましてひとつ大蔵大臣質問をいたしたいと思うのでございますが、後で日銀総裁が見えて鈴木先生が御質問なさる。専門的なことは後にしまして、概念的な御質問をいたしたいと思うわけでございますが、例のランブイエ会議といいますか、あれ以降、主要国が主になってインフレを防止しながら経済の安定を図っていこうという世界経済の困難さというものがあるわけであります。そういうことから原理、原則的な合意といいますか、そういったことにとどまらざるを得なかったというふうに聞いておるわけですが、特に私が聞きますところでは、日本に対する注目は確かに多かった。それは日本が黒字国であるということで、それに対して日本の為替政策あるいは開発途上国に対する援助問題、そういったことが関連して考えられるわけだと思うのであります。  そこで、お尋ねしたいのは、日本の外貨準備高百六十億ドルというのは、私は必ずしも多い額ではないと思うわけでございます。それは銀行勘定による外債その他が同額ぐらいあると思うのですが、そういうことを考えに入れますと、多いというふうな非難を直ちに受ける段階ではないと思うのですが、それについてどうお考えになっておるか。
  111. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) いま御指摘のとおり、日本の外貨準備は百六十億ドルを超すに至りましたけれども、商業銀行の対外債務がグロースで三百億ドル程度あるわけでございます。もちろん商業銀行は対外資産も持っておりますので、それを差し引きますと負債超過が百五十億ドル程度になろうかと存じます。したがいまして、そういうことを考えますと、外貨準備は百六十億であるから直ちに多いということは言えないと思います。ただ、米国等で先般少し批判がございましたのは、為替市場に不当に介入をして、故意に円安にすると、そのために買い介入をして外準がふえていくということは好ましくないというふうなことでございまして、それは私どもはIMFのフロートのガイドラインあるいはランブイエの申し合わせに従って正当な介入しかやっておりませんので、その問題は別といたしますと、いま申し上げましたように外準の額だけは特に高いということはなかろうかと存じます。
  112. 藤川一秋

    ○藤川一秋君 それから、円の切り上げを迫られるというような状況になるかどうか、あるいはまた日本製品に対するボイコットですね、EC諸国なんかはいま四十億ドルぐらい入超でしょうけれども、そういうものに対する日本製品のボイコット問題が起こってくるかどうか、それらの見通しについてちょっと。
  113. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) まず、円切り上げの問題でございますが、今度の、先週行われましたマニラにおけるIMF総会等を通じましても、特に日本に対して円レートを切り上げよというふうな声はなかったわけでございます。御案内のように、最近国際収支には世界的に見て大きな不均衡がございますので、赤字国も黒字国も応分の努力をしようというふうな話があったわけでございますが、特定の通貨に対してどうせよという話はなかったわけでございます。  それからこの問題も根源をたどってまいりますと、やはり貿易問題にも関連しておるわけでございまして、最近円切り上げが、円安批判が起きました背景には、特定商品が特定地域に輸出が急増しているという現象があるわけでございまして、その辺はやはり摩擦なく日本輸出を伸ばすように配慮することは必要かと思いますが、いま直ちに日本商品に対してボイコットしようというふうな国際的な動きが出てきているというわけでもないと存じます。
  114. 藤川一秋

    ○藤川一秋君 第二世銀、IDAですか、それに対する第五次増資あるいはそれにかわるべき日本の出資というようなことを考えておられるかどうか。
  115. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 第二世銀、すなわちIDAにつきましては、その資金源が来年の六月をもって切れるというふうな事情にあるわけでございまして、その後の資金源を確保するために、先般来国際的な話し合いが行われておるわけでございます。きょう、あす京都で出資国の会議が始まっておりますが、私どもの気持ちといたしましては、来年の六月に資金が切れまして、その後IDAが業務を停止するということはぜひ避けたいということで、積極的な態度でこの会議に臨んでおるわけでございます。
  116. 藤川一秋

    ○藤川一秋君 外務省の方いらっしゃいますか。——日本の海外投資につきまして、それは地域別、種類別、あるいは金額別、どの程度になっておるのかちょっとお知らせを願いたいと思います。
  117. 賀来弓月

    説明員(賀来弓月君) 昭和五十年度末現在のわが国の海外直接投資許可実績は、許可累計額の総額は百五十九億四千三百万、これを地域別に見ますと、北米が全体の二四・六%、アジアが二六・五%、次に中南米が一八・一%、それから欧州が一五・八%、中近東が六・一%、それから大洋州が五・八、アフリカが三・一%となっております。これを業種別に見ますと、製造業が全体の三二・四%、それから鉱業、マイニングでございますが、これが全体の二五・九%、それから商業、これが二二・九%、それから金融保険業は八・二%ということでございます。
  118. 藤川一秋

    ○藤川一秋君 こういうふうに多くの業種に投資が行われてきたわけでございますけれども、その効果についてどういう判断をされておるのでしょうか。
  119. 賀来弓月

    説明員(賀来弓月君) 近年投資受け入れ国においては海外投資といったものが、その国の開発計画あるいは工業化計画の政策及び目標に合致して行われるように、そういう要望が非常に強くなっております。わが国の海外投資も若干の問題がございますが、資本的には相手国の係る政策及び目的に従って行うと、大変評価をされておる。で、その効果についてでございますが、主としてわが国の方から見た場合、資源の安定輸入に役立つ。それから還元資材、資本財の輸出が促進される。それから、わが国の将来のために消費市場を育成するという効果。それから、海外直接投資を通じて当該国とわが国との間の友好関係、特に善隣関係が促進されるという効果があるわけです。  それから、これはもう御案内のことで、特に私が申し上げる必要もございませんが、投資受け入れ国の方から見ますと、その当該国の開発政策あるいは工業化政策に貢献し、そして、その当該国の国民の生活水準を非常に上げるという点、さらに、海外投資の付随的な効果といたしまして、技術移転が行われる、原地人の人材開発が行われる、そういった効果があるかと存じます。
  120. 藤川一秋

    ○藤川一秋君 民間投資につきましてはそれなりのリスクでやって、商業ベースでやっておると思うんですけれども、政府の投資につきましてはやっぱり相当な効果の測定というものが必要ではないかというふうに考えるわけであります。私は会計検査院の担当官に聞いてみたんですけれども、そういう測定はやってないというようなことでございます。何らかの方法でそれを測定する機関はあってもいいんではないかというふうにいま考えておるわけですけれども、ともかくきらわれる投資というようなものは極力避けていくべきだと、ゴー・ホーム・アメリカみたいな、アメリカの投資がきらわれたというような現象もあるわけで、日本もエコノミックアニマルで東南アジアその他いろいろな現象が起こっているわけです。むしろきらわれて投資をするというような現象は今後避けていきたい。  それから同時に、継続的なものについては、途中で効果の測定がなければ継続していいか悪いかというようなことをどうやって判断なさっておるのかというようなことについてちょっとお伺いしたいと思います。
  121. 大鷹正

    説明員(大鷹正君) いまおっしゃいました政府の経済協力の効果測定をやっていないというお話でございましたけれども、実は、昭和四十三年度から毎年効果測定調査団というのを各国に派遣して、わが方の経済協力の効果を測定しております。現にいままで効果測定調査団を派遣した国としては、パキスタン、フィリピン、マレーシア、インドネシア等アジアの国が非常に多いんですけれども、ことしもパキスタンにわが方の経済協力の効果測定調査団を派遣する予定でございます。
  122. 藤川一秋

    ○藤川一秋君 先ほどのIMFの動向その他からいっても、わが国の海外投資というものは今後ますますふえてくる傾向にあると思うんです。少なくともそれが最大の効果をおさめるように格段の配慮を願っておきたいというふうに考えます。終わります。
  123. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 中期割引国債について若干お伺いしたいんですが、御承知のように、財特法は先国会からずっと続いているわけでございますけれども、この国債の性格が中期債は割引債という形になると、ところが、いま審議している財政特例法案による発行予定をされている国債の条件は、償還期限十年一括償還、金利が年八%、それがもしこの特例法が成立した後で勝手に現在の利付国債、予定されている利付の国債から割引国債に期限が変わるというふうになっていく、そういうことは、財政特例法それ自体の軽視、並びに審議の軽視ということになるんではないかという、その辺が非常に疑問なんでありますけれども、その点いかがでございましょうか。
  124. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 財政特例法案を含めまして予算では国債の発行限度をいただいておるわけでございまして、その発行限度の中で財政特例法が通りますれば、財政特例国債が出される、その国債の中にいま現在は予定されておるのは十年ものの国債一本でございますが、いずれいまシ団に示しております骨格をもとにしました新しい国債が、これはまあいつ出るかまだ未定でございますけれども、出るようになりました暁には、その発行を行うことにつきましては、国債に関する法律に基づきまして大蔵大臣にその権限が与えられておるわけでございます。国債の発行条件その他国債に関する問題はすべて大蔵大臣の権限でできることになっております。ただ、もちろんそういうことではございますけれども、こういう骨格をもとにいたしました新しい国債が、これはいま慎重に取り扱っておりますので、時期はわかりませんけれども、大体決まりました場合には、恐らく適当なときに当委員会でもまた御説明を申し上げる機会があるものと考えております。
  125. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いままで出た国債は割引債ですか、大体利付債の方ですか、どちらが多いんですか。
  126. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 国債としては利付債だけでございます。
  127. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、当初予定のこの法案によるものも利付債が予定だったわけでしょう。それが突如として割引債で行う、それだけでちょっとごまかしをされたような感じがするわけですし、その点をはっきりしてほしいのと、割引債で行う理由をひとつ言ってほしい、予定しているという。
  128. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 先ほど申し上げましたように、これはまあ法律がございますので、国債の発行形態あるいは条件というようなものは、それは国債に関する法律に基づきまして大蔵大臣がこれを決めてよろしいという規定になっておるわけでございます。それを年度途中で新しいたとえば国債を発行する、あるいは年度途中で新しい条件を変えると、これはまあ昨年におきましても十年ものの国債条件を十一月に改定いたしたわけでございます。これは国債に関する法律に基づきまして大蔵大臣が行える権限でございます。したがいまして、種類とか発行形態とか、あるいは時期とかいうものは大蔵大臣の権限になっておるわけでございます。で、予算発行限度額は決めていただいております。ということで、私どもとしては、年度途中において発行することがチャンスがありますれば、それは発行させていただけるものと考えております。  それから、割引債をとりました理由でございますが、これはこの委員会でもたびたび申し上げておきましたけれども、やはり個人消化に一番促進になるようなものということでいろいろ検討してまいりまして、最後にしぼりましたものが貯蓄国債的なものと五年ものの利付債と五年ものの割引債ということで三つにしぼってきたわけでございますが、そのうちでまあ割引債が一番よかろうということでこの骨格に入れましたのは、他に同種商品がなくてまあ新鮮でありますということで、割引形式をとるということは、先ほど先生の御質問のように初めてでございます。それからほとんどは個人消化に限定されるということが一つの魅力でございます。これは期間損益の関係あるいは経理上収入の平準化を図るために法人の場合には毎年利子の入る利付債でないとなじみません。したがいまして、そういう点からも個人向け、あるいはまあ個人オンリーということが言えるかもしれませんが、個人向けであって公人がまず買うことはあるまいと、それから貯蓄目標が明確で手続が簡単であるというようなことが、まあ国債でございますと、税金を無税にしてもらうにいたしましても、十年ものを免税の手続などいたさなければなりませんが、それがわりに簡単にいろいろ手続を要しないで自動的に複利運用ができると、こういうようなことでございまして、そういう点を私どもとしては一つの新しい国債の魅力として登場させる、こういうことを考えたわけでございます。
  129. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 日銀総裁がお見えになっておりますが、お忙しいところをありがとうございます。マニラの総会に行ってこられたことなんで、そのことから若干お伺いをしたいと思います。  今度の総会で、IMFの専務理事が黒字国、赤字国の両方の責任問題等を取り上げて、日本等ではわが国の為替政策に批判的ではないかというような声もあったわけでございますけれども、この会議でそのウィッテフェーンIMFの専務理事が、フロート制の監視体制を強めるということを強調した、こう伝えられております。これは日本の、まあ日銀の行う円介入がやり玉に上がったのではないか。こういうことは余り質問したくないことでありますけれども、そういう監視体制の内容とかやり方等、こういう点なんか提案がされたのは一体どういうようなことが裏には、裏にはといいますか、そのやり方にはあるのか、そういう点がもし御承知であればまず伺いたいと思います。
  130. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) ことしの一月にジャマイカで暫定委員会で合意を見ましたIMF規定の改正案第四条にサーベーランス、監視体制の必要が書いてあるわけでございます。これはむしろIMFの方が義務としてしなくちゃならぬということになりましょうか、それについて特別の原則、スペシフィック・プリンシプルスを決めるというような規定もあるわけでございますが、その問題につきましては、目下IMFの理事会で検討中の問題でございますので、IMF当局からは今度のマニラ総会では格別具体的な内容の話はございませんでした。むしろ各国の方からこのサーベーランスのあり方について厳格、画一的なものでなく弾力的なもので、むしろケース・バイ・ケースに配慮、処置されるべきのものであるというような意見がたくさん出ました次第でございますが、IMFそのものといたしましては先ほど申し上げましたようにまだ理事会で検討中のものでございますので、具体的に意見の表明はございませんでございました。
  131. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それはその場ではそうでしょうけれども、大体どんなふうな内容かということは前もってもうすでにある程度おつかみになっていらっしゃるだろうと思うんですね。その点を伺いたかったわけです。
  132. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) これは情報でございますけれども、理事会ではいろんな考え方の討議資料みたいなものは出されておるようでございます。まあ大別しますと、たとえば外貨準備の現在額であるとか、あるいは介入額であるとか、そういった外形標準によってこの監視体制を発動する、あるいは勧告をするといったような機械的な動かし方と、いやそうじゃなくて、やはりトレンドを重視しなければならぬ、それについてはやはり厳格な機械的な規則は適用され得ないのであって、やはりその場その場におけるトレンド、ケース・バイ・ケースの問題にゆだねるしかないという、そういう両方の考え方があるわけでございまして、まだ議論の最中でございまして、帰一いたしておりません。私どもはいま申し上げました後のケース、要するにケース・バイ・ケースに考えられるべき問題であるというような立場を堅持いたしたいと思っておる次第でございます。
  133. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 まあここのところ、いま暫定委員会の話もありましたので、暫定委員会あるいは今度の総会ずっと通じてでありますけれども、わが国が国際収支黒字国としても今度の伝えられる空気で為替の切り上げで対処するとか、あるいはフロート制の運用でダーティーなのかどうなのかという点の、いまあった監視体制をとるというような、そういう空気がある。これがこれからの東京の市場に対しての日銀総裁の決意がございましたけれども、それにもかかわらず介入に対して相当大きな影響を与えてくるんじゃないか。そういう点の御心配なり懸念はいかがでしょう。
  134. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) まあ御案内のごとく、四十八年の三月からフロート制下にあるわけでございまして、フロート制下におきましては、まあ市場における為替需給の状況に従いまして円の為替相場が形成されておるわけでございます。私どももその本来の変動相場制の趣旨に即しまして、日本経済が強くなり、国際収支がよくなれば円が強くなる、その逆の場合には円が弱くなるといったようなことは、これは受け入れておる次第でございまして、ただ、偶然いろいろな事情が重なり合いまして、たとえば思惑的な動きもございましょうし、臨時的な資金移動もございましょうし、いろいろなことから非常に乱高下的に為替相場が動く場合なしとしない。その場合には、日本のように対外取引の大部分を外貨建てによっております国といたしましては、やはり影響するところ非常に大きいわけでございますので、この乱高下をなくするように、いわゆるスムージングオペレーションをいたしておる。それが俗に言われる介入でございますが、したがいまして、私どもといたしましては、今後も変動相場制の本来の趣旨に従って為替市場を運営していくのはもとよりといたしまして、時に起こるそのような乱高下に対してのみ介入するという立場をとっております次第でございますので、今後において何らの影響を受けないのではないかというふうに信じておる次第でございます。
  135. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 今度のIMF総会での総裁の演説要旨を伺っておりますけれども、このあいさつの中で、管理されたフロートの維持というふうに見出しはついておりましたけれども新聞には。そういう、それを強調されておられますけれども、それは納得されたかどうかですね、相手が。  それからこの中で、「国際的投機資金の移動やリーズ・アンド・ラグズにより、為替市場の需給関係が実勢から異常に遊離したり、わい曲されることに対して、通貨当局が必要な防衛措置をとることは当然である。」、こういうようにはっきりとお述べになっておられます。この述べられたことと、それから指摘のあった国際収支黒字国の責任論という点でずれが出ているんじゃないか。日銀総裁の主張なさったことば私は当然なことだろうと思う。当然のことだということであっても、やはり問題が貿易収支が黒字だと、そういう際の運用についての批判ということですから、それと言われた乱高下に対して云々というか、いまの演説の要旨を引っ張った中の管理されたフロートの維持ということでは、何かすれ違いが出ているんじゃないかという感じもするんです。その点で批判がなかったのかどうか、どう認識されておられますか。
  136. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) この乱高下を防止する投機的な事態に対処するリーズ・アンド・ラグズ云々等のことは、仰せのごとくいわばまあ当然のことでございまして、その点について各国の総務の演説の中で特に批判がましきコメントは全然ございませんでした。  黒字国の責任という問題でございますが、暫定委員会のコミュニケにもございますように、これは黒字国、赤字国双方にこの国際収支調整への責任があるわけでございまして、それは赤字国と黒字国との間でシンメトリカルであるべきであるというようなことが議論されたほか、赤字国といたしましては国内需要を抑制し、資源を対外セクターに振り分け、経常収支赤字を持続的な資本流入及び援助の範囲内にとどめるよう国内政策をとるべきであるということを言っており、黒字国につきましてはちょうどその反対になりますが、国際収支ポジションの強い先進工業国は、反インフレ政策の限度内で国内需要の適切な拡大の持続に努めるべきである、そしてその赤字国、黒字国両方を通じまして、為替政策は調整過程において適切な役割りを果たせるようなものとすべきであるというようなことが述べられておるわけでございまして、私どもといたしましても、この三点の意見につきましては全然同感でございます。先ほど来お話のございましたこのスムージングオペレーションのための介入政策とは何ら矛盾をしてないというふうに確信いたしております。
  137. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 この管理されたフロートという内容、中身、その点がこれははっきりしてないんじゃないかという心配をちょっとするわけですが、たとえばこの総裁の演説要旨を見てまいりますと、「各国はその経済状況に応じて、時に黒字を出し、時に赤字を出すことになるであろう。その調整のためには、国内経済政策が節度をもって運営され、かつ時機を得たものであることが最も重要である。また、為替相場も各国の経済力に応じて変動するもので、これが国際収支調整に果たす役割も同様に無視できない。」、まあこういう言い方で言っているにとどまっていまして、この管理されたフロートという内容、中身の細かい点というのが出てこない。もう少し詳しく国際収支の調整それから管理されたフロートとの関係、この辺がはっきりしないとちょっとぼくわからない点があるんじゃないかと思うんですが、お答えをいただきたい。
  138. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 実はその管理されたフロートという言葉は、私どもは使ってないわけでございまして、まあいわば新聞用語とでも申し上げましょうか、恐らくその意味するところは、この乱高下的な為替変動に対処して時に介入することもあるということをとらえて管理フロートと言っておるような感じもいたしますが、どうもこの言葉の語感が少し誤解を与えるような感じがいたします。ことさらに為替相場をあるいは高くあるいは安く管理するというような誤解を与えがちでございまして、私どもとしてはこの管理フロートという言葉は使いたくないわけでございます。変動相場制下におきましては、特定の政策目的のために、あるいは高くあるいは低く為替相場を人為的に管理するということはいささかも考えていないわけでございますので、その言葉そのものが少し適当でないんじゃないかという、そういう感じを持っておりますことを御了承いただきたいと思います。
  139. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの国内経済政策が節度を持って運営され、時機を得たことが重要だと、だから常に為替相場も各国の経済力に応じて変動しろと、こういうことになりますと、やはりいま言われた特定の政策目的のためと言うけれども、特定ではないけれども、国内の経済政策ということで、自分の方では特定と思わなくても、向こうから特定に見えるような場合も全世界的な為替レートの関係が出てくる場合もあるだろうと思いますが、その点はいかがでございますか。
  140. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 今春来ヨーロッパの通貨には御承知のようにいろいろな変動が起こっておるわけでございますが、それをせんじ詰めますと、結局はその国における経済政策の巧拙と申しましょうか、あるいは正しいかどうかという、あるいは節度があったかどうかと申しましょうか、その結果としてはこのインフレ率が大変に違ってきておる、そのことのあらわれだと思うわけでございまして、単なる介入によってその体制をいかんともすべくもなかったということが、今日のポンド、リラあるいはフラン等の暴落の原因だと思うわけでございます。つきましては、この介入政策の以前に国内政策をより節度をもって運営する、財政の赤字を縮減する、そして国内資源をできるだけより多く海外にシフトさせる、そういった国内政策の節度がまず要請されるということは、これは各国とも今度の会議でも同感の意を表明されたところでございまして、私どももそうあるべきものだというふうに信じておる次第でございます。
  141. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 総裁がレートを全然固定しっぱなしだとか、そういう意味を私は考えているわけじゃないんですけれども、変動相場制である以上レートが変わることは当然ということは基本的姿勢にございますですか。ありますですか。
  142. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 変動相場制でございますので、為替市場における需給に従って為替相場が決まるのは、これはもう当然のことだと思っております。問題は、そういう為替相場をもたらす日本経済の運営そのものが当を得ておるかどうか、そこに根本問題があるわけでございまして、私どもといたしましては、日本経済に関してはその辺のところは節度を持って運営されてきておるというふうに考えるわけでございますけれども、市場にあらわれたところでは、もう為替需給の決定するところに従って為替相場が決定されるのは当然のことだと思っております。
  143. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 先ほどから乱高下云々という短期資金の移動によるレートの変動ですね。それも云々されておるわけでございますけれども、それならそれで実績としてそのことをやる姿勢が大事だし、しかし、いままではどちらかといえば、外貨準備の増減で切り抜けるということが多かったように思うんです。そこら辺は問題がありませんか。
  144. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 為替相場の情勢、乱高下があるかないかということに従って、あるときは外貨を売り、ときには外貨を買うというようなことが行われておるわけでございますが、外貨を蓄積するためにこの為替を安くしておると、円の相場を安くしておるというような発想は全然ございません。
  145. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 やはり国際的な批判を受けやすい、のは、わが国の金利が自由化されていない、こういうことが大きな原因じゃないか。国内的にも国際的にもというか、自由化が国内的におくれておるわけですから、で、海外のいわゆる資本移動あるいは海外からの資本移動やそういう海外との間の問題についても、日本だけの都合でいろいろ物を考えるというやり方、だから円安批判ということは、一つは、金利が自由化されていないから、日本なら日本へどんどん金利の高いときには流入してくるわけでございますし、そういう点、この自由化ということをするという局面を考えないと、これは対外的な問題よりも対内的対策の方をきちっとやらなければ、かえって通貨当局としても対外的にやりにくくなるんじゃないかと思いますが、その点はどうですか。
  146. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 基本的には私も金利の自由化が理想であると思っております。ただ、いまの日本の金融機構ないしは金融情勢から考えますと、一挙に自由化もできませんので、できるだけこれを弾力化していくというのが、先般行われました金融制度調査会の結論でもあるわけでございます。その具体的な内容につきまして目下金融制度調査会でも審議中でございますが、私どもといたしましても、できるだけ弾力化していくように、そういう背景が整ってまいりますように、今後といえども努力をしてまいるつもりでございます。お説のように、国内の金利が引き締め緩和の過程において高かったというようなこと、あるいは逆に外国の金利が少し反騰したというようなこと、そういうことが外資の動きに影響がないわけではないわけでございますので、根本としてはやはり自由化ということでございましょう。そういう方向に向かって、さしあたっては弾力化ということによる努力をしてまいりたいと思っております。
  147. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この間の委員会で、マニラのお話をちょっと質問したのですが、特に日鉄総裁の演説の中で、日本国内経済に対する触れ方が少し少なかったのではないかと、率直に申し上げまして大蔵大臣はそういうふうに思うというふうにおっしゃったわけですけれども、そこで、この黒字に対していろんな批判等が出ておりますけれども、OECD等の見通しでいけば、決してそうたくさんの黒字は出ないという線も出ておりますし、その辺の説明はもう少しやられてもよかったのではないか。公式でやられなくても、非公式ではいろんなお話をされたと思いますが、それに対する各国の反応はどうであったのか、これが一つ。  それからもう一つは、いま円高ぎみですけれども、いままでの円高、円安といいますか、見てみますと、何かサイクルみたいなものがあるような気もするわけですけれども、将来の問題として円安になる可能性というのはあるのかどうか、その点は総裁としてどういう見通しをお持ちなのか。  それから次に、先ほどいろんな幅の問題が出ておりましたが、大体どの辺のレートでいま保たれていけば、日本経済のこれからの景気回復、インフレを抑えながら景気回復をしていく場合、いわゆるレートは現在二百八十六ぐらいですか、この辺はどうなのか。じゃあ、どの辺の幅になればその点は大きな変動と見るか、その辺、三点にわたってお述べいただきたい。
  148. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 総会における演説でございますが、余り長く時間を費してもいかがかというようなことでございまして、少し舌足らずの点もございましたが、暫定委員会あるいはたまたまあの期間中にございましたOECDの第三作業部会などでは、それらの点は委曲を尽くしまして説明もいたした次第でございまして、各国とも景気がスローダウンの場面に入ってきておりますけれども、じわじわとゆるやかに回復する基調そのものは失われていない、これは各国とも同じでございまして、私どもといたしましては、いろんな機会にそういう点を説明をしてまいった次第でございます。  将来、円安になる可能性があるかどうかということでございますが、これも先ほどから申し上げておりますように、日本経済の今後の推移、なかんずく国際収支がどう動くかということにかかっておるわけでございまして、四十八年からの為替相場の推移をたどってみましても、二百六十五円というような相場のときもございましたが、三百円を超えたときもあるというようなことで、きょうは二百九十円、少し円安の傾向に動いております。そういうふうに、その日その日の為替市場における需給によって動くわけでございますし、中、長期的に見ますれば、今後日本の国際収支がどう動くかということによるわけでございますので、いずれとも断言はできないわけでございますが、私どもといたしましては、今後とも日本経済が健全に運営をされまして、国際収支も調和を保った健全な姿で運営されることをひたすらこいねがっておる次第でございます。  円レートは一体どのくらいが適当かというお尋ねでございますけれども、これはもう私の立場もございますが、能力から申しましてもどのぐらいがいいということはなかなか言いにくいわけでございまして、うかつにへたな推見など申し上げますと、それがまた投機の種にならぬとも限りませんので、その辺のお答えは差し控えることをお許しいただきたいと思います。
  149. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 国債に関係して一問だけ申し上げますが、時間がなくなってきましたから、いままで日銀は公共債の大量発行、これが通貨供給量の過剰になるということを指摘しておりますけれども、その中で、国債発行条件の弾力化で通貨供給量増大につながらない資金吸収措置を検討すべきだと、こういうことを言っておられる。日銀のおっしゃっている国債発行条件の弾力化、それによって資金の供給量過大にならないように吸収しようというんですが、それはどういうことを具体的に指しておられますか。
  150. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 大きく申しまして二つあると思います。  一つは、そのときどきの経済情勢、金融情勢に即して国債発行量を時期的に調整をしていただくという問題だと存じます。金融が非常にタイトになって民間資金の需要が非常に大きいというようなときに国債の大量発行が重なりますと、それだけでもいろいろな影響を起こす次第でございますので、そのときどきの金融の繁閑に即して発行量を決めていただきたい。特にこの税の自然増収の状況いかんによりましては、一たん決められました国債発行枠もできるだけ圧縮していただくといったような御配慮をお願いを申し上げたいと思います。  もう一つは、そのときどきの金融情勢、なかんずく金利情勢に即して国債の発行条件も弾力化していただきたいということでございます。発行のたんびに入札にでも付して金利を決めるということであれば、理想でございますけれども、そうもまいりますまい。財政計画もあるわけでございますのでそこまではいき得ないと存じますが、そのときどきの金利情勢を十分御勘案いただきまして、発行条件を市場の実勢に即して機動的、弾力的に御決定いただくようにということをお願いしたいと思っております。
  151. 渡辺武

    ○渡辺武君 今度のマニラ会議では、黒字国日本に対する風当たりが大分強かったという報道がなされいるわけです。特にウィッテフェーンIMF専務理事が、黒字国に責任があると、黒字国が努力せよという趣旨の演説をやられたと、前回大蔵大臣もそのような趣旨のことを言っておられましたけれども、その席に、アメリカのサイモン財務長官も出席しておられたはずで、新聞記事によりますと、このウィッチフェーン専務理事の演説に賛意を評したという趣旨のことが出ているわけですが、アメリカの財務当局の態度はどうだったのか、それをまず伺いたいと思います。
  152. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 特にアメリカがこの日本のとっておる政策姿勢についてウィッチフェーン氏に賛意を評したかどうか、その辺のところは明らかにいたしておりませんが、私、どうも先ほど申し上げました暫定委員会のコミュニケにございます。黒字国、赤字国の責任論、その間における為替相場の果たすべき役割り、その三点につきましては、私どもも全く同感であるわけでございまして、その点についてはアメリカ政府当局と日本との間で意見の相違があったというふうには感じておりません。
  153. 渡辺武

    ○渡辺武君 最終的なコミュニケは確かにそうだったと思いますね。アメリカもそれに賛成したということでありますが、そこのコミュニケに到達する以前に、簡単に言えば黒字国責任論というのがアメリカ側の立場だったんじゃないかと思いますが、その点どうですか。
  154. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) サイモン長官とは演説が行われました後にも会見いたしまして、いろいろ意見の交換をいたしましたわけでございますけれども、一時、相互に意思の十分なる疎通を欠いておったけれども、先般、松川財務官も訪米されて、日本事情もよくわかったというような話があったわけでございまして、アメリカの財務当局といたしましては、私ども政府並びに日本銀行がとっておりまする為替相場政策につきましては、何らの異議を唱えていないと私は確信いたしております。
  155. 渡辺武

    ○渡辺武君 総裁はこのマニラ会議で、黒字国、赤字国双方が努力せよ、いわば双方に責任があるんだという趣旨の演説をされたように承っておりますし、IMFのコミュニケにもその立場が盛られているわけですね。黒字国の責任ということについて言えば、わが国のことでもありますからそれなりの評価はできるわけですが、赤字国の責任、これを総裁どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。特にアメリカは、経常収支が黒字のときにも、かなり国際的に軍事援助も出しておりますし、それから経済援助も出している。民間資本の対外進出も非常に大きいということで、総合収支の方の赤字が大きいわけでありまして、いわばドルのたれ流しということが、アメリカの赤字の根本原因の一つになっているわけですが、そういう点について、この赤字国にも責任がある、言うなればどんなふうにお考えになっていらっしゃるか、その辺を伺いたいと思います。
  156. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 今般のいろいろな会議を通じまして、赤字国の責任としてほぼコンセンサスが得られました点は、先ほども申し上げたのでございますが、一遍の介入によって為替相場をどうこうということはとうてい果たすべくもないわけでございますので、根本はやはり国内需要を抑制し、資源を対外セクターに振り向けて国際収支をよくする、そしてその結果まだ赤字が残るかもしれませんが、その赤字は持続的に期待できる資本の流入ないしは援助の範囲内にとどめるような、そういう節度ある国内政策をとるべきである。これが第一でございます。  さらにそのほかに、為替レート政策も調整過程においては適切な役割りを果たすべきであることも同意されたわけでございますが、それにはやはり限界があるわけでございまして、たとえばポンドを例にとりましても、ポンド相場が下落を続けでおるわけでございますが、それによって輸出がふえ国際収支がバランスするというような意味での循環が起こらないで、かえって国内物価が高くなって、そしてその結果さらにまた国際収支が悪くなるという意味の悪い循環が起こっているわけでございますので、為替相場に政策の果たすべき役割りには限界がある。そこでやはり、根本的に国内経済政策を節度のあるものに運営することが何といっても一番大切なことじゃないか。そういうことが今般の会議で見られたコンセンサスであると私は理解いたしております。
  157. 渡辺武

    ○渡辺武君 総裁お時間がないそうでありますので、最後に一問だけ伺いたいと思いますが、今度のIMFの協定の改正案の中にも、確固たる監視を行う、というような言葉が入っておりますし、いまは、国際的に変動相場制は今後も続くだろう。したがって、この変動相場制のもとで何らかの国際的な原則、もしくは国際的な監視機構をつくらなきゃならぬという意見が非常に強いと思うんですね。先ほど総裁の、従来それまで日本政府の、日本の実情がよくわからなかったような、アメリカが。というような趣旨のことをおっしゃいましたけれども、この黒字国責任論の立場に立って、国際監視機構をつくれとか、あるいはまた国際的な原則を立てろとかいうことを従来特に強く主張していたのは私はアメリカだと思うんですね。いまのような、つまり少し日本が黒字になってアメリカに輸出が急増するというようなことになると、早速日本にかみついてくる。そうして日本政府も表向きはアメリカの要求に従ったんじゃないと言っているけれども実質上円がいま二百八十六、七円という天井にずうっと張りついている。事実上円が切り上がっているというようなことになっているわけですから、現在の日米関係を前提条件として国際的な監視機構等々を考えてみますと、日本の主権に対する侵害が起こりやしないかというおそれが非常に強いと思うんです。この点についてどういう御見解をお持ちか、お伺いいたします。
  158. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 監視をどういう方法でやるのかということは、先ほども申し上げましたように、目下IMFの理事会で検討中でございますので、まだ具体案を得ていないわけでございますが、いま御承知のようにIMFは、八条国、十四条国に対してそれぞれコンサルテーションというのをやっておるわけでございますが、恐らく為替の関係でも定期または臨時にコンサルテーションが行われて、必要があれば勧告が行われるということではないかと思っております。その勧告は、無論強制的なものであってはならないと思うわけでございまして、受けました国がそれに従った方がいいと思えば従うし、それに従えない事情があればそれを述べて、さらにコンサルテーションを続けるというような、そういう性質のものになるのではないかと思っております。私どもといたしましても、いまおっしゃいましたような主権の侵害に当たるようなことには賛成できないわけでございまして、それらの点を今後よく検討をしてまいらなければならないと思っております。  なお、この監視の規定を含みましたIMFの規定改正案につきましては、先般国会で御審議の上御了承を得た次第でございますので、その点もつけ加えて申し上げておきたいと思います。
  159. 岩動道行

    委員長岩動道行君) じゃ、日本銀行総裁はお引き取りください。
  160. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 国債についてですが、前国会でこの委員会が行われたときに、財特法案の審議の際には、赤字国債の大量発行、これが民間資金、民間への貸し出しへの圧迫ということになって、いわゆるクラウディングアウトが懸念されるということで非常に論議を呼んだわけですが、現在はさほどの心配はない、こういう判断だろうと思います。そうすると、現在は金融市場は資金剰余の傾向、しかし、これから先これが可決された後には毎月のように消化をしなければならなくなってくると思います。税収伸びが大幅にあって、予想以上に収入があれば別でしょうけれども、そうじゃないとすると、やはりクラウディングアウトが今後年末あるいは明年の初め等起きてこないとは言えないんではないかという感じがするわけですけれども、その点のおそれ等についてはどうお考えでしょうか。
  161. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 俗にいわれますクラウディングアウトの問題というのは、これはやはりその時期の金融環境、資金状況というようなものがいろいろ複雑に対応し合いますので、どういう事態がきたときにそういうことが重なるか、あるいは起きてくるかということはなかなか判断がつきかねる問題でございます。しかしながら、常識的には国債の大量発行が行われるその時期に、そのときの金融が非常に逼迫するような資金タイトの状況があれば、一応その前提として想定できるわけでございますけれども、これはとかく国債が大量に発行されるとインフレにすぐつながるとかいうような議論と同じように、これは財政当局ももちろんでございます、そういう状況の中において国債の発行、量の調節をいかにしてやっていくかということと、それからやはり日本銀行が金融当局といたしましてその金融環境に対してどのように対応していくかという対応の仕方あるいは民間金融機関がそれに対してその処理の仕方というものをあわせて考えていくべき問題で、それはあたりまえのことでございますけれども、その都度同じような姿が出てくるわけじゃございませんが、それを踏まえて政策当局が対処していく以外には方法がございません。  そこで、実は私どもそういう御指摘も、特例法が通りませんとだんだんと押し詰まってきて大量の国債を発行するということは、特に年末を控えて問題でございますので、できるだけ早く法案を通していただいて、一日でも早くいまの環境の許す範囲内において消化を促進してまいりたいということをお願いしてきたところでございまして、常にそういう状況を前もって対処していく慎重な態度とそれから対策は一応私ども持っておるつもりでございます。
  162. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 先ほどの質問の続きで、割引債で行う理由の一つには、個人消化云々ということを言いました。これはマル優を超えてしまった人に対しての消化が期待できるという理由は入っていませんか。
  163. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 先生の御指摘の点は、割引債がいろいろ個人の金融資産に与えられた税制上の恩典といいますか、そういうものを受けた者だけが割引債を買うのだというような前提に立ちませんと、なかなかそういうことには必ずしもなりませんのですが、実はこれは金融資産の多様化といいますものは、先ほどから何遍も申し上げておりますように、各個人がどこに魅力を感じるかということからくるものでございまして、それに対してこたえていってやるものを割り当てを大きくしてやるということも一つの方法だということでございますから、中期割引国債が仮に出るというふうにいたしますと、それはもうすべての免税措置が全部卒業した卒業生だけがそれを買うのだということでございますと、これは先生の御指摘のような問題がございましょうけれども、それではいまの割引金融債でも同じようなことが言えるわけでございます。これは一年ものでございますけれども、私どもが非公式に調べたところによりますれば、大体一件当たり五十万円以内の購入者というのが、大体購入者の六〇何%というのを一応占めているというような記録もございますので、やはり三十万とか十万とか五万とかいうような小口の貯金者が、これはむしろ簡便であるということと、一年後に満期になれば目標の貯蓄額が得られると、こういう形で買っておるという方もかなりあるわけでございます。したがいまして、私どもは中期割引国債を出すに当たりまして、これが完全なある一定の者の優遇措置だというふうに考えておりません。
  164. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 先国会来ずっとこの財特審議の際に、国債についての消化の方法は個人が望ましい、個人消化が望ましいということが言われてきました。この個人消化の個人ということですね、これは一体大蔵省考えている個人消化の個人というのはどういうものを指しているんですか、先ほどは法人の話もありましたけれども
  165. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) これは特に私どもが中期割引国債を取り上げました理由の中に、これが純然たる個人ということを申し上げましたのは、決算の経理上、会社でございますと、これを毎期毎期ちゃんと決算上あらわさなければならないわけでございますけれども、割引債でございますと、これは毎年毎年そういう計上ができないということから、法人が買いましてもなかなか法人のいわゆる資産保有になじまないという点においては、純然たる個人が大体中心になり得るだろうというふうに判断したわけでございます。
  166. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 ですから、その個人消化ということになれば、非常に少額の国債を買う方が多くなって、大衆化された国債としていくのか、あるいは私がいまさっきも指摘したような一部高額所得者とか資産家とか、そういう人が税金逃れの対策として国債を買うという、そういう個人消化という、そういう意味ではないかという心配もあるわけです。その点はいかがですか。そういうものを期待してはいないかどうか。
  167. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 世界の例をよく申し上げまして恐縮でございますけれども、各国ともいろいろ工夫をしながら資金調達を行い、かつ、市場の発達したところでは特にそうでございますけれども、むしろ個人が、もっともっと日本人よりも金融資産に対するマインドが高いものですから、そういう対応の仕方はわりに素直に行われるわけでございます。私どもは、日本の個人消化というものをいま見てみました場合に、最近まで、先ほど数字を申し上げましたが、去年のいま時分までは月平均百八十億ぐらいしか売れてなかったものが、最近非常に国も一緒になってPRをいたしましてかなり消化をしてきたわけでございますけれども、やはり国債を個人になじませるというか、そういういろんなパイプを通じて国債というものを国民に買ってもらうというか関心を持ってもらうということから始めませんと、いつまでたっても国債が何となく邪魔者扱いにされておる。これは十年国債に対しても言えることでございまして、これだけ財政の中に国債が相当大量に入ってまいりますということになりますと、これは中期割引国債だけじゃなくて、いまの十年国債につきましても、もっともっと国民に買ってもらう魅力あるものにしていかなければならないわけで、それは国債の持っておる特色というものを生かしながら、それを国民に買ってもらうということでございますから、その意味において、国債を個人消化させていくということについてはだれも異論がないわけで、その方法として割引国債という一つの魅力のあるものを出していくことによってだんだんと国民の中に国債を定着させていきたいという政策の一つだというふうに判断していただければ、将来にわたりまして私どもこの国債だけでもってあとは考えないというんじゃなくて、個人消化についてはさらにもって前進した考え方をいろいろとっていきたいと、それにつきましても大事なことは、国債の市場というものができるだけ早く満足なものができていくということも大事なことでございますし、先ほど御指摘のございましたクラウディングアウトの問題等もやはり民間資金等の競合関係というものは、市場がかたわでございますとより著しく出てくるわけでございますから、市場がやはりだんだんと育っていくというために個人の資金も国債に参加してもらう、そして国債の市場がだんだんできていくということが大事じゃないかという着眼があるわけでございます。
  168. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 時間が余りないようですから、ちょっと減税について伺っておきたいのです。これは大臣お答え願いたい。  大蔵省は、昨年もやらず、ことしもやらず、また来年もやらない、こういうことなんですけれども景気面から見ていくと、必ずしもこれは減税をやらないということがいいかどうかという点は非常に疑問があります。ことしの経済運営の見通しとして、目標として、景気の着実な回復と雇用の安定、それからもう一つは、景気が回復してもインフレにならない、再燃しないことという二つを目標にしておられる。それで半年たって現在見てみますと、第一の、景気が果たして、目標だった景気が本当に回復したかと言えば中だるみであるとか失速だとか、こういうことが言われている。一つを見れば、政府では、このところ景気拡大のテンポは落ちているけれども、しかし、今年度の政府見通しの五・六%という経済成長の線に沿って、その軌道に沿って回復過程をたどっている、こういう見方をしている。しかし、この五・六%という成長率以上に大きくなるなんということはあり得ないし、よく見てみると、いままでのところの軌跡からたどっていって五・六%になると言っても、その中身を見ると一体どういうふうな姿かと、これはもう明らかに輸出偏重型ですよ。これはまあ間違いないところだと思いますが、その点は大蔵大臣どうつかまれてますか。
  169. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ、マクロ的に見まして、政府の申し上げておりますように、成長率が政府が見込んでおる水準をほぼ達成できるであろうということは言えようかと思いますけれども、しかし、御指摘のように、内面に入ってみますと業種間のばらつきは大変ございまして、均衛のある成長というようなものでは決してないことは御指摘のとおりでございます。内容的に問題が多く内包をいたしておりますことは、鈴木委員が御指摘のとおりと私も思っております。
  170. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 まあしかし、政府は順調だとこう言っているわけですね、いまのところは。国民総生産一つ見ても、総支出でも同じですけれども、政府の見通しは百六十八兆円、これが、四月から六月間の政府の発表した国民所得統計がございます。それから逆算して見通していくと百六十一兆円ということで約七兆円も下回るようになってきます。六兆五千億、約七兆円下回ってきている。これでは順調だと言えない。こういうように、国民総支出が七兆円も当初計画を下回るだろうと思われているところへ、その中身を見ると、たとえば個人消費支出が三兆七千億円足らなくなる、九十六兆のところが九十二兆くらいになりそうだということで三兆七千億、国内の総資本形成で三兆三千億円というふうにどうも下回りそうな感じでございます。こういうのを見ると、これはもう四月ないし六月の期を年率に換算して計算をしてくれば自然にこれ出てしまいますので、すぐわかるのですけれども、これを見ると需要不足型の経済運営だと、つまり当初計画よりもはるかに需要が不足しているのじゃないかということが言えるのじゃないかと思います。ですから、その点で、やはりどうしても七兆円も出てくるようなそういう需要不足を、何としても解消しなければ、われわれとしても国民全体としても不況感というのはぬぐい切れないだろう。それをよくしていくには、賃上げの抑制をし過ぎたためにこうなったのか、そうならばそれは直さなければならない。もう一つ大きな、物価調整減税すらやらなかったということ、そうして大幅な結局増税になった。そこへ年金がふえた。そのほかの健康保険の掛金もふえる。可処分所得の額が圧迫をされてきた。もう一つずうっと消費者物価がこう上がっておる。こういう点から考えると、どうしても減税をするべきだということが当然だろうというふうに考えられるわけですけれども、ですから、財政が苦しいということはよくわかっております。わかっているだけに、せめて、まあ来年はぜひやってほしいんです。この来年はぜひやってもらいたいという点についてはどうかということと、もう一つは、できないならば、ことしの十二月に、せめてボーナスだけでも、可処分所得がふえてない、減ってきているときなんですから、ボーナスの分についてだけスポット減税をことしの十二月に考えたらどうか、こういうように思うんです。そうでないと、減税はいたしません、ぶっ通しでございますと、資本主義国型というか何というか、財政がどこまでもすべてであるというようなふうになってしまう、そういうやり方はやめて、やはり臨時所得の一回限りのボーナスですから、ことしの十二月のボーナスについては特にそれだけは減税をするという、スポット減税ということを実施するべきじゃないか。そうして個人消費支出を伸ばさせるとか、こういうことを考えるべきじゃないかと思うんですが、その点についてお伺いして終わりたいと思います。二点ですね、来年の減税とスポット減税。
  171. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 減税をやるかやらぬかという設問でございますので、いまのような財政状況では大変むずかしゅうございますというようにお答えせざるを得ないわけでございますが、しかし、財政問題として第一考える場合に、減税しても大丈夫であるということでございますならば、私とても減税に反対であるわけじゃないわけでございまして、歳出の調整、歳入の調整を通じまして、減税財源が出てまいりますならば、減税する政策を採用するにやぶさかでございませんで、問題はどういう政策にプライオリティーを置くかという政策の選択であろうと思うのでございます。来年度にいたしましても、またことしのスポット減税の提案でございますけれども、つまりそういうことをやることが何ものにも増してファーストプライオリティーであるんだという論証が鈴木委員においてなされなければならぬと思うのです。それをやるのでございますならば、それだけの財源をファーストプライオリティーであればつくらなければならぬわけでございますから、そのためにはどうして財源をつくるかという御相談をせにやならぬと思うのでありまして、ほかのことはほかのこととしてやらにゃいかぬけれども、これもやらにゃいかぬというのでありましたならば、私としては、にわかにそれに賛成できないという立場を従来から申し上げておるところでございます。
  172. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 時間がオーバーしたんですけれども、開き直られたような御答弁でございますので、言わなきゃならないと思うんですけれども、やはり先週ですか、私は税のいまの増収状況というものを伺いました。昨年末においても二千百億円も国債を発行しないで済むというようになったわけです。そういう傾向にあるならば、私はスポット減税をすることによって、その財源はありますということを言いたいし、あれば恐らく大蔵大臣考えは、あればあるだけ御質問のようにいわゆる国債を減らす方に使いますからないと同じでございますと言いたいのだろうと思いますけれども、逆にスポット減税やって十二月に消費を拡大すれば、私は税としては逆に今度戻ってくるんじゃないか、そういう点もございます。そういう点で、やはり二年もというのは長いです。二年続けてと、まあ先の方は決めてないようでございますけれども新聞等ではもう来年の減税はないというようにうかがっている。物価調整減税もないなら、せめてそういうスポットだけでもやるべきじゃないか。これは当然のことで、私はあれもこれもなんて言っているわけじゃありません。これもこれもということでございますから。もう一度お願いします。
  173. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) なおよく検討さしていただきます。
  174. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大蔵大臣に、今日の財政危機を切り抜ける基本的な姿勢についてお伺いしたいと思います。  いまの鈴木委員の所得減税をしないということとかかわりがあるわけですが、いままでの予算委員会等の答弁におきましても、今後数年にわたってしないという、こういうことであります。これは大量の国債発行から脱却するということ、それからそして財政危機突破の増税の道であるということなんですが、その一つの選択として私は所得税の実質増税で臨むのだ、そういう態度としか考えられないのです。というのは、税負担の増大は避けられないとしますと、この増税をどういう税体系で具体化していくのか、それから税制の全面的な見直し、今後の長期的な税制のあり方、こういったものを検討した上で、そして一つの選択、一つの方法が出てくると思うわけであります。  現に、六月二十二日の税制調査会におきましても、三つのことを確認しております。  第一は、法人、個人の所得課税それから資産課税、消費課税の三つのグループに分けて、それぞれ根本的な洗い直しを行う。  二番目には、長期的な税制のあり方について年内をめどに具体策をまとめるが、結論が出るのが遅れるようなら中間報告を出す。  三番目には、来年度の税制改正は、こうした長期税制を背景にして検討するという、こういったようなことが論じられているのですが、そういったことが出てこないうちに、所得税減税しかも物価調整減税も無理だという、しかも今後数年にわたって行わぬという、そういう見解が出てくるのは一体なぜなんだろうかということなんですね。何か意図があるんじゃないか、こう思わざるを得ないのですが、御答弁いただきたいと思います。
  175. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 税制調査会での今後の運営について、おおむねただいま近藤委員のおっしゃいましたような点について委員の間に、合意というのはおかしいのかもしれません、別に決をとっているわけじゃございませんから、合意というわけではないのであろうと思いますが、大体そういうことでやろうかということになりまして、現在はいわば各論を毎週部会で御議論願っておるわけでございます。そこでの御議論の中心は、再々申し上げておりますように、五十年代前半の経済計画なり、これを一般会計ベースに翻訳した中期資産なり、そういうものを一応参考としながら、今後ある時期に負担の増加をお願いしなくてはならぬとすれば、どういう税目にそういう余地が残されているのか、それを現行税制をまず洗い直すということで御議論を願っておる、したがって、これはある意味ではお気にさわるのかもしれませんが、審議の方向が、負担の増加を求めるとすればどの税だろうかということに集約されていることは、これは事実です。所得税の取り上げ方も、したがってそういう取り上げ方になっておる、中期税制としましては、その問題と、その五十二年度に何がやれるのか、あるいは何をなすべきかということとは、税調の作業としては、少くとも一応別のこととして扱われておりまして、税制調査会では、五十二年度の具体的な税制改正は、もう少しいわゆる中期税制の審議が進んだところで取り上げていこうかというふうになっているわけでございます。ただいま御質問の後半でおっしゃいました、五十二年度にはなかなか物価調整減税をやれるような財政状態ではなさそうであるというのは、これは税調の御審議を経た上での議論ということではなくて、私どもなりに、来年度予想される財政事情考えてみると、物価調整減税もなかなかお約束できるような状態ではなさそうだという、私どもなりの見通しの方を申し上げておるわけで、税調でそういう御議論が出て、結論が出たということとは違います。
  176. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうだと思うんです。そうだと思うんですが、そうであるにもかかわらず、要するに全体がまだ審議され、検討されていないのに所得減税無理だと、実質的な増税が——所得税の増税がむしろ積極的に打ち出されているんじゃないかという、こういう感じがするので、それがなぜなんだろうか、こういうぐあいに思うわけです。  そしてこれは、その後九月十五日の日経新聞にも出ておりますが、この税調で所得税増税も検討されているというこれは承知しています。ただ、その所得税増税の前提としてはやっぱり三つの点があると思うんですね。一つは、不公正税制を一掃して、各階層の所得を完全に掌握する必要があるというのが第一点。  それから第二点は、所得税の増税効果や新規の税負担者がどの程度ふえるのか。要するに、この所得税増税によりどういう層にどれだけ課税されるのか、この辺も検討すべきであるというのが第二点。  それから第三点については、もっと根本的に増税すべきかどうかについて審議を重ねた上で初めて所得税増税の方向が出てくる、これは税調でありますけれども、私は大蔵省としても同じような検討があってしかるべきだと思うんですが、それがない。しかし、まあここでいま私が指摘した三点については、大蔵省としても当然だと思うんです。それぞれの点について大蔵省及び大蔵大臣としてはやはり一定のお考えを持って、そしてその上で所得減税は無理だというこんな考えを出しているわけですか。この点についての考えを聞きたいと思います。
  177. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 先ほど申し上げました各論の検討のトップが、第一部会としては所得税であったわけでございまして、これは所得税という税の大きさ、重要さから見て、いわば当然にそれがトップにきたということであろう。私どもの方から議論のたたき台としてお出ししました論点は、大ざっぱに整理いたしますと三点になろうかと思うんです。あるいは四点と申し上げたらよいのかもしれませんが、第一点は、今後税負担の増加をお願いしなきゃならないという前提を置いた場合に、それを所得税に求めてもよいという考え方と、いや所得税にはやはり負担の増加に限界があるので、所得税で負担の増加を求めるのは無理ではないかという考え方対比いたしまして、どちらの方向で今後の御検討を願うかという問題提起をいたしました。  問題点ごとに申し上げますと、第一の問題につきましては、先週金曜日でございましたか、お答えいたしましたように、私自身が若干意外であると感じたほど、負担の増加を求めるとすれば所得税にその余地ありということでいいではないか、という御意見があって、所得税には限界があるから、増税するならほかの税だという御意見は、少なくともその日は正面切っては出て来なかった、というふうに申し上げていいと思います。しかし、もちろんそれをもっていま合意ができたというふうに申し上げるのは全くの言い過ぎだろうと思いまして、所得税につきましてはなお回を重ねて検討が行われると思います。  第二の論点につきましては、いわゆる物価調整減税はぜひ必要であるという考え方と、所得税の負担というものはやはり各層の負担を過去の経緯、国際的な比較というもので考えて、最終的な負担を求めれがいい、というのが基本であって毎年物価の動きにつれて、必らずいわゆる調整減税をしなくてはならないと考える必要はない、という考え方を両方対置して出してございます。これについては正直に申し上げて余り御議論はございませんでした、その日は。余り御議論が出ておりません、その問題は。ただ、物価調整減税はぜひともやれという御議論が出るかと実は思いましたが、出ませんでした。しかし、やらないでいいという御議論も強く出たわけではございません。  第三点としましては、仮に将来負担の増加を求める余地ありとした場合に、それはいまよりも累進度を高める方向なのか、それともいまの累進度というものはほぼそれでいいと考えるのかという問題提起をいたしてございます。これにつきましては、現在の累進度は、国際的に見ても相当なものであろうという御判断の方が多かったように受け取れますけれども、これもまた結論を出すというようなことはいたしておりません。  第四点が、租税特別措置に関連しまして、いわば基本的な考え方としてこれを全廃すべきであるという考え方と、これに対比いたしまして、やはり個々の措置の政策目的とそれの及ぼす効果、またそれによってもたらされる不公平というものを考えながら、政策目的と公平の度合いとのバランスをとる場合に、従来以上に不公平を少なくするようにということにウエートを置きつつも、やはり個別に考えていくと、個別に漸進的に考えていくという考え方対比してお出ししてございます。この点につきましては、後者の判断をとるべきだという御意見の方が多かったように受けとめております。で、  申し上げましたように、ただいま私どもの問題提起は、いわば中期的な視点から、今後仮に増税ということをお願いせざるを得ないとした場合に、所得税についてどういう角度からお考えを願うべきかということを問いかけておるわけでございまして、五十二年度に具体的にどうするかという問題提起は全くいたしておりません。その意味で、五十二年度議論はまだ出ていないと申し上げるべきかと思います、税調は。
  178. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大変重大な状況に来ておるようですが、そういう税調のそういう検討とは別に、大蔵省としては来年はやっぱり所得減税無理だと、こういう一点の考えをお持ちなんですから、それはそれなりの資料なりそれの検討はしておると思うのです。そうしますと、やはりその所得減税しない結果、どの階層にどれだけ負担がいくのかという、こういう検討も当然あってしかるべきだと思います。そこで、私は先日の委員会で資料要求をいたしました。この所得税減税を実施しないことによる増収効果、さらに新規税負担がどうなるか、こういう資料要求をしたんでありますが、大蔵省の方のお答えは、給与所得者の年収と、その増加率というものを大蔵省が決めるわけにいかないのだ、そこで出せないのだと、こういうことなんですね。しかし一定のそういうお考えをお持ちである以上、私はここでやっぱりどれだけこういう増収効果、新規税負担が及ぶのかという当然の計算なり考えがあってもしかるべきだと思うのです。この点はどうなんですか。   〔委員長退席、理事中西一郎君着席〕
  179. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 税制改正をしない場合のことでございますから、ただいまの税法で収入が幾ら、家族がどうなっているということであれば、いまの税法で計算ができる話でございますから、問題は、ことしから来年にかけて何%伸びるという仮定を置くかというところに問題のポイントがあるんであって、その意味では、政府が委員会に、私ども計算として何%伸びる場合は幾らというふうにお出しすることは、いかにも当方が何らかの伸び率考えているかのようになってしまう。それはやはり避けさせていただきたいので、税法で税額表などございますから、いまの税法で計算していただきたいんでございますけれども、もし御質問にお役に立つために、こういう前提ならどういう計算になるかと言って、どう申しましょうか、下請的な作業はそれはやらしていただけますと、ただそれを大蔵省計算ですと言ってお出しするには、前提の扱い方が余りにもデリケートではございませんでしょうかということを申し上げておるわけであります。
  180. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、その数字は、大蔵省一つの選択や判断としてではなくて、計算上出てくる可能性があるんじゃなかろうか、こうも思うわけです。それで、これは「五十年代前期経済計画策定関係資料集」というのがございますね。そこの2の「物価」のところを見てみますと、「物価」の中の「(2)消費者物価、雇用者所得、労働分配率等の推移」というのがございます。そこで、その一番冒頭に出ておりますのは「消費者物価年度比」、これは、それによりますと、五十一年から五十五年度平均は六カ四分の三だから六・七五ですね。また約七%ぐらいというぐあいに見ることも可能かと思います。そのお隣の「雇用者一人当り雇用者所得」というところが、これは空欄になっていますね。しかし、その下には四十一年から四十七年度平均としては一四・二%、こういうのもございます。私は、ここのところを経企庁の意見なども聞き、計算可能じゃなかろうかと、その数字を出してもらいたい、こういうぐあいに考えておるわけです。さらにそのお隣を見てみますと、「雇用者所得前年度比」で、これは五十一年度から五十五年度平均は一二・五%になっておりますね。ただ、これは全体でありますから、やはり一人当たりの雇用者所得を出す必要があろうかと、そうして、そのことによって今後どのぐらい課税されるのだろうか、これを出すことが私は可能であると思うのです。そういった意味でこの数字をお知らせいただければと思うのです。
  181. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 同じことをお答えすることになりましてまことに申しわけございませんが、この場で御議論をずっとお聞きいただいている委員の方々には、なるほどそういう前提が委員の方から出てきてそれでつくったんだなということになりましょうけれども、正式資料として印刷すれば非常に多数の部数をお配りするわけで、それに一々いわく因縁が書いてあるわけでもございませんので、私どもが申し上げておるこの前提のつくり方がかえって問題になりはしないかという趣旨を何とか御理解いただきたいので、近藤委員の御質問の役に立つように作業をしてみろということであれば作業はいたしますけれども、それは御質問にお使いいただけないだろうかと、資料としてではなくて、というのが私の気持ちでございますけれども、この点はなお委員長のお裁きにまちたいと思います。
  182. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ですから、いままでにつくっていただいて、私にそっと教えてもらえば、これは私の意見としてこうなるじゃないかというふうに言えたんですけれども、いままで出してもらえなかったということになるわけであります。  そこで、いまの質問の段階ではその数字が出ないものですから、そこで、私どもの方の数字でこれは計算する以外にないと思います。そこで私は、ここで使われております雇用者所得前年度比一二・五%、これで毎年一二・五%給料上がると、こういうぐあいに計算してみますと、五十五年には名目賃金は五十一年の六割増になるのですね。そうしますと所得税の方は八・九二倍になるんです。およそそうだろうということは御推察がつくと思うんですが、これは給与所得者の場合で、夫婦と子供二人の標準家庭——世帯の場合、こうなりますと、八・九二倍、約九倍という所得税というのは大変な負担だと思います。現に本年は、昨年と比べてみましても、所得税減税がなく、そして住民税均等割り三倍引き上げがあったわけでありますから、この場合にもこれは二二%アップとして計算してみたんですが、やはり標準世帯で年収二百万、そこで計算してみますと、やはり昨年の二倍の税負担をしているわけですね。そしてさらにその上、これは所得税でありますけれども、約九倍も税負担がふえるとなりますと、これは大変な問題じゃなかろうか。やはり特に標準家庭に税負担がふえる、こういう重大な問題を持っているのじゃなかろうかと、こう思うわけです。大臣、こういう数字をいまお聞きになって、それでもなおかつ所得減税はしないと、できないと、そういうお考えなのかどうか、御意見を賜りたいと思います。
  183. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) ただいまお示しの数字は、どのレベルの収入を基準にして判断するかというレベルのとり方によりましては、そういう姿が恐らく出てくるケースはあるであろうと思います。と申しますのは、要するにそれこそが所得税の累進性を示しておるわけでございまして、その時系列でお考えになってそうなるということは、同時にいまの同じ時期で、標準世帯の六割多い収入を持っておられる方は、いまの御計算であれば約八倍の所得税を負担してくだすっておるということを言っておるにすぎないと思います。その意味では、たとえば二百万の年収の標準家庭の方のいまの所得税は、恐らく一万一千円ぐらいでございましょう。その五倍の一千万円の方は百三十万ぐらいは負担していただいておりましょう。したがって、五倍以上の税を負担しておるという言い方は、それはできるわけです。いまの所得税というものはそういうものになっている。したがって、その累進度をよしとするのかという問題とあわせて御議論いただきませんと、時系列で比較するということは、同時に垂直的公平がそういうふうに負担されておるということを意味するのではないかと私は思います。
  184. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は一つの数字を示したわけであります。ですから、この委員会の討議の経過の中の一つとして、大蔵省といたしましても、私の資料要求どおりここに一つの数字をはめて、そしてその計算は可能なわけでありますから、そういうものとしてひとつ当委員会にお示しいただいて、私の言ったいまの数字と対比して、その上で議論をしてもらいたいと、こう考えますが、いかがですか。
  185. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 正式の資料としてお出しすることが適当かどうか、委員長の御判断にまちたいと思います。
  186. 中西一郎

    ○理事(中西一郎君) 理事会で中身をもう少し詰めて検討をしたいと思います。
  187. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いま言った数字も出てくるわけでありますし、だからこそ、私は経済企画庁に、別の要素もあろうかと思いますが、やっぱり減税論が出てくるわけであります。各紙もやはり物価調整減税は実施すべきだという、こういう強い論調も社説等で挙げられている、こういう事態であります。  そこで、この所得税減税を五十一年度しなかったその理由としては、当時説明されたことは、もちろん財源不足がありますが、それ以外に景気刺激のための減税は効果がないということ、また物価調整減税はもう必要がない、こういったことを挙げておられたと思いますが、そのとおり間違いないか。そしてそれは、いま当面、来年度にかけてもそのことは同じなのかどうか御答弁いただきたいと思います。
  188. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 御指摘になりました点の中で、経済政策景気に対する対応の仕方として、公共投資を考えるのか、減税を考えるのかという選択の問題として、五十一年度財政を編成するに当たっては公共投資による景気対策を重視して予算を編成さしていただいたということはおっしゃるとおりだと思います。  物価調整減税の問題につきまして、もう一つの問題として、累次にわたる実質的な減税の結果、現在の課税最低限から申しても、収入に対する負担割合から申しても、日本の所得税というのはほかの国に比べて率直に申せば安いのですから、せめてここしばらくはがまんしていただきたいということを理由に挙げておると、これもそのとおりだと思います。  五十二年度についてどう考えますかは、まだ私から判断を申し上げるような時点ではないように思います。
  189. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 判断を言う段階じゃないと言いますけれども、もうすでに所得税減税はむずかしいという、そういう方向もかなり出されておるわけでありますから、そしてまた、そんなに時期も変わっているわけじゃないわけでありまして、私は、答弁できないはずはないと思います。  ただ、一応昨年の段階の説明に対して私なりの考えを申しますと、たとえばこの景気刺激のための減税云々の問題ですけれども、これは私は所得税減税の問題は、景気刺激の問題より以前に、生活費非課税の問題があると思うんです。生活費非課税を貫くために、やはり物価調整減税は必ずやっていくということは私は必要だと思うのです。先ほど大臣は、鈴木委員の質問の中で、それに変わる財源の問題を言いました。しかし、これはもともとその部分を財源として考えていること自体問題があると思うんです。これは、むしろまず生活費課税を貫くというその立場があるかどうかというのが第一点です。  それから、景気刺激の問題にしましても、経済企画庁から言われているとおり、やはりそういう角度からも必要だという、こういう意見もあるわけであります。  それからもう一つ、これは所得減税すると、貯金に回って景気刺激にならない。そういう意見も言われておったようでありますけれども、もしそうであるとすれば、利子所得に対する減免措置こそまさにこれはやめるべきだと、こういう議論にもなるわけですね。これらの議論もあわせてひとつ大臣のお考え、お伺いしたいと思います。
  190. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 来年度をどうするか、まだ私から申し上げるのはそういう状態でないと申し上げました趣旨は、先ほど来の御質問の中に、景気に関連しての御指摘があったもんですから、それについては来年度経済見通しもわからないし、財政としてとるべきスタンスが少なくとも私は完全に決まったとも思えない、現状において。その角度からの判断はまだ申し上げられないんではないかという趣旨でございまして、その問題を離れて財政事情だけから申せば、それはとても所得減税を考えられるような財政事情ではないと思われる。それはかなりはっきり申し上げていいんだろうと思います。  それから、景気対策としての問題につきましては、公共投資の拡大の方を選択したということについていろいろ御議論があることは十分承知いたしております。ただ、アメリカで同じように所得税減税で景気対策にしておるのに、なぜ日本でできないかという点についての御議論もございました。しかし、それはいま御質問がございませんでしたからあえて申し上げませんけれども、それは財政の仕組みの背景とか、貯蓄率とか、個人投資の大きさとか、財政支出の構造とか、いろんなものが絡まり合ってどちらをよりよしとするかという判断を国ごとにするより仕方がないんではなかろうかと思います。それから、一般論としまして貯蓄性向がかなり高いときには、それは公共支出よりも減税の方が刺激効果はより少ない。これは一般論としてはほぼ定説ではなかろうかと、そのように考えております。
  191. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は冒頭に、大臣に所得税減税しないということを打ち出していることについて、何か意図があるんじゃなかろうか、そういったことを聞いたのにはやはりそれなりの理由があるのです。先ほど言ったように、大変高い税負担になりますね。さらに、単に税金だけではなくて、国民健康保険税等の負担もずうっと高くなってきますね。そうなりますと、そういう所得税、あるいはその他の負担がずうっと高くなってきますと、国民の中に、こんなに高いんだったらば、むしろ付加価値税でいいんじゃないかと、こういう考えが私は出てくると思う。その辺をねらっておるんじゃなかろうか、こういう気がしてならないんですが、大臣のお考え聞きたいと思います。
  192. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは風が吹けばおけ屋が喜ぶというようなもんで、そういう論理でございまして、私はそんなに込み入った意図はございません。
  193. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは私が勝手に言うことではなくて、ある有力なる学者もそういう推測をしておるということをつけ加えておきたいと思います。  そこで、所得税減税にはなかなか積極的でない大蔵省が、実は企業増税にはやはり大変消極的である、こういう傾向がありますね。これも税調における大蔵省説明聞いておりますと、税調での検討の中で、この企業増税については、特に法人課税の負担水準等について、これをどんどんふやしていくことについては消極的な見解を述べられたと、このように聞いておりますが、これは事実でしょうか。
  194. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 法人税は、第一部会の第二回の各論の会合のときに取り上げていただきました。その場合の問いかけも、先ほど所得税の場合に御披露いたしましたのと同じように、今後税負担の増加を求めるとすれば、法人税に求めてよしとする意見と、これに対比いたしまして、法人税は国際競争力その他の考慮も払うべきものであって、今後の経済情勢動向を予測すると、法人に負担の余地を求めるというのは、余り負担を求める余地はないんではないかという御意見と対比してお出ししてございます。税制調査会の、これまた中期の問題として、所得税と同じように来年どうするということでなしにお出ししてあるわけでございますが、税制調査会の中の大方の空気は、なお負担の増加を求める余地がありとする方向で、もう少し議論を詰めていっていいんではないかということであったように私としては受けとめておりますが、これもくどくて恐縮でございますが、その都度決をとるというような運営はされておりません。まだ何回かそこへ戻ってきていろんな御議論が出てくるだろうと思います。
  195. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 企業に対する数たくさんの優遇税制、それが今日の財政危機を招いたものだということは、ずうっと指摘をしてまいりましたので特にそのことを繰り返しはいたしませんけれども、しかし、こういう面の、本当にこれを正しく見て、正しく課税をしていくという、それを行うことが実は私は赤字国債を今後なくしていく一つの大きな道であるとこう思うわけです。  そこで、具体的にひとつ、公害防止準備金等、公害設備等に関する税制問題に私はその問題点を見てみたいと思うわけであります。  それに入る前に冒頭にお伺いしたいのは、これは五十一年七月二十八日に出ました「財政制度審議会建議」そこの十一ページに健全化の問題等について書いてありますが、こういう指摘があります。「本来、私経済にゆだねるべき分野まで、あるいは財政が関与すべき分野であつても公正と効率の観点からみて適切な範囲をこえて、過度に財政に期待する傾向があること、」これをやはりなくしていくことという指摘がございますけれども、私は多くの企業優遇の措置の中に、こういったものがあったと、こう思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  196. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 本来、私経済にゆだねてしかるべき分野について公的な助成が多過ぎるのではないかという角度からの検討は、今後とも歳出歳入両面につきまして、私どもも検討の一つの指針にすべき問題であると考えております。租税特別措置につきましては、先ほど申し上げました部会の御検討をお願いいたします一つの柱として、これまた全廃すべきであるという御意見と、やはり政策目的と不公平とのバランスをとるに際しては、従来以上に公平を害さないという配慮に重点を置きながら、個々の措置に応じて整理合理化を推進すべきであるという考え方対比してお出ししておりまして、その日の部会の空気は、全廃は適当でないということであったように、私としては受けとめております。
  197. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、具体的な問題として、この公害関係の優遇税制が、いま指摘された問題に全くぴったりであるということを指摘したいと思うのです。その前提として、——通産省見えていますね。通産省にお伺いいたしますが、この企業が、公害防止設備に対する優遇税制上の措置をどのように受けているか、こういった調査をしたことはございますか。
  198. 森孝

    説明員(森孝君) 産業公害防止の見地から、公害防止設備投資の動向が非常に重要であるということは私どもは常々考えておりますので、公害防止の設備投資につきましては、通産省所管業種の一億円以上の企業につきまして設備投資の動向を調べておりますが、それによりまして具体的にどういう減税が行われたかというところまでは調査をいたしておりません。
  199. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは本年七月三十一日の日経によりますと、通産省では八月ごろまでにいま言った公害優遇税制の関係の調査を終えて、調査結果を来年度の税制調査会の検討資料として大蔵省に提出する考えであると、こういう記事がありますけれども、これに関係するような調査あるいは税の当てはめまでやっていなくても、企業がどの程度利用しているかという、その前段階の素材でも結構ですが、そういう調査をやっておるのかどうか、この点どうですか。
  200. 森孝

    説明員(森孝君) 先ほど申し上げましたように、設備投資につきましては、業種ごとに一億円以上の企業に限られておりますけれども、設備投資の内容につきまして調査をいたしております。その他のコスト等につきましては、残念ながらわれわれの方でも明確に調査するというのは大変むずかしいので、現在そういうものをまとめるところまでに至っておりません。
  201. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そういたしますと、その資料は大蔵省の方に出しているわけですか。また、その資料は私の方にいただけますか。
  202. 森孝

    説明員(森孝君) この設備投資の調査は、公害防止の関係、特に資金面の不足がないようにということで、資金確保の面及びいろいろな公害防止投資の促進措置を検討する際の参考ということで使っておりまして、大蔵省にも集計の結果はお伝えしてあると思います。
  203. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大蔵省のどちらですか。
  204. 森孝

    説明員(森孝君) 公害防止に関して関係がございますのは財投と税制でございますから、理財局と主税局の方だと思います。
  205. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ですから主税局長、そちらにその関係の資料がいっておるそうですから、それについて、そのまま生でなくてもそれは結構だと思いますね、それに対して今度は主税局の立場からどういうぐあいにこの優遇税制を利用してきたのかという、この関係の材料、これは作成すればできると思うんです。また、作成するのはそちらの仕事だと思うんですが、どうでしょう。
  206. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 通産省で調査されたのは、各企業にアンケートを出しておつくりになったというふうに私聞いておりましたが、各企業が公害防止準備金というものをどういうふうに積んでおるかというのは、これは法人企業統計に出てまいります、実績として。御利用いただくことはできるかと思います。
  207. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 その状況につきましては、資料などを正確に調査した上で私は意見申し上げたいんですが。  そこで申し上げたいのは、この公害関係の税制が大変問題があるということです。しかも、その中でも特に公害防止準備金が特に重大な問題があったということは、これはつい最近のエコノミスト、本年の十月十二日号の、泉美之松さん、吉國二郎さん、高木文雄さん、いずれもこれはあなたの先輩ですね。これらの人々の対談が載っかっていますね、座談会。ここで言いたい放題と言えば言い過ぎかもしれませんけれども、思う存分言っておるんです。この思う存分言っている中でこう言っているんです。まず高木さんが口火を切ったんですが、「公害防止準備金というまことにへんな制度ができちゃった。あれはおかしな制度ですな。まったくまずかった。」、泉さんがそれを受けて「公害防止は公害防止施設の償却を認めるだけでよかった。防止準備金はいらないんで、」云々ですね。吉國さんは「初めは特別償却だった。それをもう一つ進めちゃったんだな。」と、こうなっているんですよ。となりますと、これはまさに国の財政を預かる大蔵省の中枢の中で、この制度はまずかったという自白ですね。単なるまずかったで済む問題じゃないと思いますね。その結果大変な国税の収入ができなかった。そういう問題をこの問題は持っておるんです。となりますと、私はこの一言を見ても、その利用状況等々、これは資料を見た上で、私は正確につかんだ上でこれはまた質問しなければいけませんけれども、この一つ事態を見ても、これはもう即座に、この制度を置いておくこと自身がまさに問題です。こんな制度を片や置いておきながら、片やさっき言ったような大変な給与所得者の増税、これではとても国民が納得しませんし、さらに赤字公債発行などとても認める気になれない。私はそうだと思うんです。ですから、まずこの公害防止準備金初め、公害関係の優遇税制ずいぶんあります。五つばかりありますけれども、私はこれは少なくとも十億円以上の企業については、これは全廃すべきだと思いますし、こういったことは私は一つや二つじゃなくて、もっとあると思うんです。これは全面的にこういう見直しをして、その上で初めて赤字公債を認めるかどうか、所得減税の問題もその上で私は初めて出直すべきだと思うんです。いままで大臣全然答弁されなかったけれども、ひとつまとめて御答弁いただきたいと思います。
  208. 中西一郎

    ○理事(中西一郎君) 時間がきましたから、意見を簡潔に。
  209. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 増税をお願いするにいたしましても、特例債をお願いするにいたしましても、その前提といたしまして、現行税制の中の不公正を是正してまいるということが前提でなければならぬことは近藤委員が御指摘のとおりでございます。さればこそ、政府としてもそこに力点を置きまして、毎年毎年鋭意その見直しに努力をいたしておるところでございます。先国会におきましても、相当思い切った見直しをやらせていただいたわけでございますが、今後もそういう見直しは精力的に続けてまいらなければならぬと考えています。
  210. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ最後に。  この問題は、私は氷山の一角だと思います。たまたま三人がしゃべって出てしまったところに、いわばしっぽが出たようなもんですけれども、私はこれは随所にあると思う。そのことは私どもの党がずっと一貫して主張もしてきたところですね、特にこの公害防止準備金についても指摘をしてまいりました。ですから、そういう指摘に対しては、本当に謙虚に見直しをすべきである、このことを申し上げて質問を終えたいと思います。
  211. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 特例公債の問題についてお尋ねしますけれども、この財特法について大臣も、それから大蔵当局も九月の上旬には成立をさせてもらいたいとたびたびおっしゃっておられました。九月に特例公債発行しようとしますと、一番常識的には八月の末に法案が通っていなければいけないわけですから、九月の上旬もしくは九月の十日というのは、それ自体相当無理をしたタイムリミットの設定であったと思います。残念ながら今日現在ですでに一月以上おくれてきたわけですけれども、こういったことが、今後特例債を消化するに当たってどういう悪影響になってくるんだろうか、この点をひとつ具体的に伺いたいと思います。
  212. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 栗林先生は先般特例債の発行がおくれることによって大変経済に及ぼす影響が大きいのじゃないか、大変御心配をいただいておるわけでございますが、実は私ども九月は、資金余剰月として約八千億程度発行を予定いたしておりましたのがだめになりましたし、もう十月もすでにここまできておりますので、どう考えましても十月を平常のベースで発行をするということはかなりむずかしい状況でございます。しかしながら、九月の分を何とか十月に少しでも乗せていきたいというふうに考えて、まあこの法案が通りますのを待ちまして、間髪を入れずその準備に入りたいというふうに考えておりますので、あらかじめまあシ団等にはまだいまはっきりお会いいたしておりませんけれども、募集期間が短かくなっても何とか対応できるようにということを頼んでおるような状況でございます。しかしながら、もともとこれは不自然なやり方でございまして、先ほど先生が御指摘のように、毎月前月の下旬にすでにその翌月の発行額並びに準備が完了しているという状態というのが正常でございますから、すでに十日を過ぎておるということは、十月ですら危ない状況でございます。したがって、あとの残りをこれから十月、十一月とやってまいりますと、十二月の年末はどうしても資金的には苦しい時期でございますから、御指摘のような問題が出てくる可能性があるわけでございます。ただ、それを何とか避けていくためには、まあ十月、十一月極力多く発行していきたいということでございまして、幸い金融環境はいまのところ、先ほど御議論がありましたような民間資金との競合という点ではまだまだ大丈夫だというふうに判断しておりますので、財政金融当局といたしましては、そういうおくれを取り戻すだけじゃなくて、経済に、もともとこれは景気を浮揚させるための予算前提としたものでございますので、その影響がないようにできるだけ慎重に配慮していく以外にはございません。いま目立って何か支障ができているかという点については、具体的に申し上げるものはございません。
  213. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いずれ来年の三月までの見通しと絡むわけですから、具体的にここでどうこうということはなかなかわからないとしても、いまのお話ですと努力をしながら消化に努めていきたい、こういう御趣旨だと思うんです。そこで三兆七千五百億円という総枠の問題も実は絡むんですけれども特例債がどこまで発行できるかという議論のときに、その枠というのは経済の実態に応じておのずから決まってくる、こういう回答が前国会でもあったと思うんです。そこで十月、十一月何とかシ団の御了解を得ながらということは当然なんですが、経済の実態に対して悪影響を与えたか与えないか、いわばどの辺がその限度なんだろうかというものを決めるめどというのは何に置かれているんですか。
  214. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) これは公式みたいなものがあるわけではございませんが、まあいろいろそれを避ける方法としては、たとえば国債が発行できない場合に、財政資金が間に合わないときに、短期的に大蔵省証券を発行するとかいうような形で泳ぐような場合がございまして、まあ摩擦とか、あるいは行き違いとかいうようなものを消化していく方法はいろいろあると思うんでございます。しかしそれは対症療法でございますが、しょせんはとにかく三兆何がしかの金額の大量の国債をいまからとにかく出さなければならないということだけは、これは年度末までに、これは事実でございますから、それをまあ一つは毎月毎月の大体季節的な金融の繁閑とか、あるいは景気の状況の判断とかいうものを見ながら判断していく以外にないということでございまして、あらかじめやはり私ども非常に資金の繁忙である十二月という、その十二月の年末がどういうふうな状況になるかという点が一つ心配でございます。これはあるいはこの前の国鉄の問題でもそうでございましたけれども、中小企業関係に影響がどういうふうに出てくるかというような問題もございます。したがいましてこれは単に理財局ということだけでなしに、大蔵省全般として経済の動きを着実に、慎重に見ながら判断していく以外にないわけでございまして、お答えにならぬかもしれませんけれども、いまのところはそういう慎重な構えでおりますということで御了承いただきたいと思います。
  215. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 慎重な構えはよくわかるんでありますけれども、ごく常識的に考えますと、資金余剰を公的資金として吸い上げていくという作用だと思うんですが、資金余剰というのは一体具体的に幾らかといっても、これは手にとって見ることはできない。しかし、そこでいろいろ慎重に構えたけれども、資金余剰を超えて強引に資金を吸収せざるを得なかったとか、あるいは以内であったとかいうことば、いまおっしゃった慎重という判断の中に入ると思う。そこで何を尺度にして慎重だと御判断になるんでしょうかと聞いているんです。
  216. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 一つは、せっかく盛り上がってきた民間資金の需要があるとすれば、まだ必ずしも強いとは言えませんけれども、そういうものを殺してしまうことがないように判断しなければなりませんし、それから日本銀行が見ました場合に、やっぱり資金需要の強弱というものは、たとえば同じ金融界の、金融界といいますか、金融市場の中でもいろいろ強弱がございましょうから、そういうものへの影響というものを判断していかにゃいかぬ。それから財政資金の場合につきましても、やはりそれは季節的なものがございます。したがって、それをもうあらゆる角度から見ていく以外にないということだと思います。   〔理事中西一郎君退席、委員長着席〕 たとえばことしの初めでございますけれども、まあ特例法のために赤字国債を大量に発行せざるを得ないということで、一−三月もしあれが、いまから考えましてその民間資金が非常に需要が強いというような状況であったならば、恐らく非常に発行困難であったというようなことが考えられると思います。したがいまして、これからの経済推移というものは私どもとしては非常に関心があり、かつまたそこを見きわめていかなければなりませんけれども、国債に関する限り、ちょっと申し上げますと、むしろその金融環境が緩んでいるあるいは民間の資金需要が弱いときの方が出しやすいというか、助かっているというか、そういうようなことがございます。しかしそれでは、全般的な経済政策としてはいわゆる当初の所期の目的を果たしたと言えませんので、やはり資金需要が強くなるべきときにそれを殺してしまうようなわけにはいかないだろう。したがって先生がいつも御指摘のように、なるべく早くその余剰月に国債を出しておけという御指摘がございましたけれども、そういう御判断が私は正しかったんだろうと思います。しかし、いまここでそう言いましても、もう十月に入っておりますので、これは現実であり、この現実を踏まえてそれを処理していく以外にはないんでございまして、どうしてもやっぱり抽象的でございますけれども、いま慎重という言葉でその万全を期していきたいというふうに考えております。
  217. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 一つの見方から伺いますと、まあいろいろ各方面の状況を聞きながら判断するんだというお話なんですけれども、一々アンケート調査するわけにもいきませんし、恐らく銀行経理でどうなんだということを聞きながら、その感触で判断をされるということだと思うんです。そうすると、いわば銀行面から見たいまの資金の流れがどうかということが議論になるだけであって、いまの経済実態から見て今月発行している、あるいはこの下期なら下期で発行する特例債が妥当であったかどうかということはなかなか具体的に判断をする条件ができてこない。そんなことを考えながらあれしてみますと、恐らく金利の動きというのが、いま資金需給関係がどうなっているかということに対する先行指標の役割りをするんではないかと思いますけれども、この点はどうなんでしょうか。
  218. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) それは金利が先行する場合もあるかと思います。しかし、金利だけの判断には必ずしも私はよらないんではないかというふうに判断いたします。日本銀行、まあこれは財政当局、金融当局と申しますか、その両方の、まあたとえば財政が散布いたしまして、それを金融で吸い上げるというような調節をやっておるわけでございますから、量の問題と、それからいまおっしゃる質の問題と、両方が交っておると思います。したがって、それをどういうふうに判断するかということは、やはりその指標ももちろんでございます。触角を出していろいろ調べる、あるいは企業の手元流動性とか、そういうものに至るまで細かく見ていくということを一方でやりながら、これは日本銀行の手を煩わすことも多々あると思いますし、民間資金、金融機関の手を煩わすこともあると思いますが、同時にまた、金融だけではなくて、企業サイドの面との、最近は企業金融と申しますか、そういう企業の資金繰りとか、そういうものをながめていくとかというようなことも必要でございます。したがって、これだけもう複合的になってまいりますと、もうかなり、公式論ではなかなかいかない。しかし、影響を結果として判断するのか予知するのかということで、予知はなかなか——結果でいろいろ判断されますけれども、非常にむずかしい年末を控えておりますので、複雑な状況をいろんな角度から見ていく以外には——何遍も恐縮でございますか、そういうことだと思います。
  219. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 では、ちょっと過去にさかのぼって御判断伺いたいと思いますけれども、金利で見ますと、全国銀行の平均貸し出し金利、これは去年の七月、たまたまことしの七月が最近の数字なものですから、七月以降とってみても、これは下がってきていると思います。これに対して、コールレートを見ますと、横ばいとはいいながら、微増傾向にあります。それから、全国銀行の平均貸し出し金利は下がっているといいながら、長期信用銀行——たまたま長期資金だけ抜いている資料がないものですから、長期信用銀行で右代表で見てまいりますと、これは上がっているわけです。で、長期資金も含めて昨年暮れ近く預金金利の引き下げ等もあって、金利水準は下げようということが当時の大蔵省のお約束でもあったと思いますけれども、長期資金はなかなかそういう動きになってない。それから金融債にしても事業債にしても、利回りはむしろ上がりぎみであります。こういう傾向というのは望ましい傾向だったんだろうか。私が伺いたいのは、これまでずっと特例債、建設公債も含めて発行してまいりました。で、資金の動きから見ると、企業の感触もそう詰まってはいないとはいうんですが、金利の面で出た姿というのは、コールレートが上がってきているということは、銀行の資金繰りがやっぱりちょっと窮屈になってきたということのように思えますし、それから長期資金あるいは金融債、事業債の利回りが上がってきたということも、すでに実は表にはっきりは見えないけれども、クラウディングアウトの懸念がにおい始めてきた、そう見る方が普通だと思いますけれども、この点はどうでしょう。
  220. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 私ども予算の当初の感じでは、下期は相当資金が強くなり、金利は大体上がっていく傾向にあるだろうというふうに考えておりました。そのテンポからいくと、いまおっしゃった傾向は、やや、まだそれほど強くない。しかし、強くないけれども、若干強含みだという感じはあるかと思います。ただ恐らく、微騰というか微落と申しますか、その程度のところを若干推移しながらいくんではないなという感じがいまいたしておるわけでございますけれども、いまの状況から判断してもうすでにクラウディングアウトが始っているというふうに私どもはまだ見ておりません。
  221. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 長期貸し出し金利等については、昨年の議論もありましたから、いまの御解見、そのままそうですがとは聞けませんけれども、百歩譲って、おおむね横ばいの傾向の微増であれば、当初想定したとおりであるという御見解だとしますと、今後今年度下期の特例債を発行するに当たって、こういう金利水準の動きについても、当初想定したような、いま、若干強含みとおっしゃいましたけれども、そうではなくて、これもまたノーマルな姿で進んでいくことがいわば一つの重要な判断基準になる、前提になる、そう理解してよろしいんですか。
  222. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 景気が戻ってくるということから判断するということに尺度を置けば、おっしゃるような傾向が出てくるのが当然であろうと思います。それはちょっと私いま、全国銀行の貸し出し約定平均金利は、まだ、これは八月まででございまして、ややまだ下がっております。本当にわずかでございますけれども。ですから、コールは七から六・七五に下がっております。まあ恐らくその辺は傾向として横ばいと申しますか、微騰か微落か、その辺のところを行き来しているというのが本当の現状だと思いますけれども、いまおっしゃるように、本来は少しずつやっぱり資金需要が強くなってくる傾向になければならないはずではないかと思っております。
  223. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私が伺ってますのは、いまの点少し補足しますと、全国銀行の金利は下がっている、さっき申し上げましたように。ただ、コールを見ますと、三月が七・〇、四月が六・七五、いま御引用の数字です。八月が七・二五、また上がりました。で、多少でこぼこしながら、と言いながら強含みだという傾向だと思うんです。また、長期信用銀行を見ても、これは五十年七月、五十一年一月、ことしの七月と、やっぱり一貫して増加傾向にある。このことをいまこの際問題にしません。ただ、これから景気が回復していくことを期待しつつ財政運営を進めていくわけですから、そういう中でこの金利の動きがどうなるかということも、大蔵省として一つの尺度ではないか。この点、御異論ないと思うんです。  そこで、私が聞きたいのは、冒頭に戻りまして、仮にそういう尺度も判断材料の一つであるとしたら、これ見たらとってもじゃないけど三兆七千五百億あかん、となったときに、どう対応しますか。これが、本当は特例債今年度下期どうするかということが持っている根本問題じゃないか。そんなこと絶対ないということは、景気は別によくならないということと同義語ですから、そうなると、むしろ来年の予算編成を心配しなければいかぬわけですけれども、なかなかそういう状況ではないし、また、そうであっては困る。そのためにもこの三兆七千五百億円急がれているわけですから。そう考えていくと、やはり資金需要は強含みになる。そこの中で、九月発行すべきものができなかった。十月も、とても半人前のかっこうをしている。これを皆さんの責任というつもりはありません。ただ、そうやっていって、あくまでも現実の資金の流れに悪影響を与えない、このいまのコールレールとか長期貸し出しを含めて大きなそのことによる悪影響を与えないという前提に立って見ると、あるときもしかしたら、恐らく決断に困る立場に立つことがあるんじゃないか。そのときに、残された道というのはお持ちなんでしょうか。
  224. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 国債の消化が、御指摘のような金融環境に支配される、影響を受けるということは、もう当然でございます。したがいまして、極力いままだその可能な時期に、できるだけたくさん国債を発行しておくということがまず第一に必要なことでございます。これに対しては、九月分をいま十月に鋭意幾らかでも上乗せしていくかというような努力を払っているところでございますが、なお、いま御指摘のような事態がきたときに、一体手があるのかという御質問でございますが、これは広い金融市場全般の問題といたしまして、日本銀行ともよく調整をとりながら、この環境の中で消化に努力していく以外にはございません。その環境が悪くなったからといって、ただそれだけで国債の発行をやめてしまうわけにはいかない環境にございますので。この問題はもう、実は先生の御指摘のように、この大量発行下における国債発行の宿命的な問題でございます。したがって、常に叫ばれておりながら、実はこういう重大な問題を半年もほうっておかれたというところに、実は私どもとして非常に残念である。しかしながら、それをいま言っても始まりませんが、しゃにむにこれを出して民間資金のクラウディングアウトを現出させない妙手があるのかとおっしゃいましたら、それはないように努力する以外にないとしか言う方法がございません。これはもう努力する以外にはございません。
  225. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこで、重ねて伺いたいんですけれども、いま日銀当局とも相談をしながらとおっしゃいました。この金利の動きについては日銀が一番神経を使っておるところだろうと思います。  そこで、財政面の要請からすると、資金需要がどうあろうとも三兆七千五百億円は、これは全額発行しなければいけない宿命にある。そのときに金利の方はおかしな数字をつくるわけにいかぬ。そこで、日銀の公開市場操作にゆだねながらどうやって渡っていくかということしか私はないと思います。なるほど日銀の公開市場操作ということになると、わかる理屈のように思いますけれども年度を通して実質経済効果から見たら日銀引き受けの公債を出したことと何ら違わなくなる。そういう経済効果にいま私が言っている場合にはなるんです。
  226. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) それは日本銀行が金融市場をにらんで行う手段でございますから、それが直ちに国債の引き受けにつながるというようなことに、これは短絡して申し上げては恐縮ですが、というふうに必ずしも結びつくとは私は言えないと思います。それは理屈のつけ方によって、あるいはいろいろ御批判を伺うことが間々あるんでございますが、やっぱり市中消化の原則というものは私どもは貫いてまいらなければいけない。それが、その結果として日本銀行がそれに対して新しく金融市場に対してどういうアクションをとるかということは、これはまた別の日本銀行の判断でございます。
  227. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いや、くどくて恐縮です。日本銀行としてそういう判断でやるわけですけれども、ただ、それを全部ひっくるめた経済効果として見てみると、とにかくそれだけ資金余剰がないのにこちらは出さなければいかぬ。金利の面にも悪影響を及ぼすわけにはいかぬ。そうすると、金利ということを考えながら、九月の資金余剰が八千億円に対して、日銀が市場操作で入ってきたと同じように、またその裏返しをことしやると同じようにやっぱりやってくるだろう。それはその月々を見ればもっともなんだけれども年度を通して見ますと、その分だけ日銀からよけいに資金が市場に流れてくるという経済効果を持つことは間違いない。それは日銀引き受けの公債を出したということと、経済効果の面で同じことにはならないだろう。なりますとも言うわけにはいきませんし、いろんな前提条件がありますという御議論でしょうから、これ以上先には触れません。ただ、大変聞きづらいんですが、大臣、そういう状態にいま追い込まれたと思う。で、抽象的には国会全般の責任なんでしょうけれども、臨時国会そのものの開会がおくれたことがこれをもたらしたことは間違いない。  そこで、こういう状態について内閣としては三木さんが当然責任をお感じになるべきだと思うんですけれども、それはそれとして、所見を一言だけ伺っておきます。
  228. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 繰り言を申してもいたし方がございませんので、今日の時点におきまして、最善を尽くして今年度予算の執行に狂いのないように歳入歳出ともやってまいる決意で当たるより仕方がないと考えております。  それから、政治責任の問題ですけれども、これはそれぞれの立場におる者が天に問うて判断すべきことと考えております。
  229. 野末陳平

    ○野末陳平君 先ほど大臣お答えになりましたけれども、国債発行をする、あるいは増税を考えるにしろ、その前提として現行税制の厳しい見直しというのはこれは当然だと思うんですね。税制調査会でもそういう議論がかなり厳しくあったようですが、同時に、税制調査会では徴税上の不公平といいますか、不公正といいますか、その問題もかなり議論があったと。特にサラリーマンの立場から見ると、納税者間における捕捉率のアンバランスとかいろいろ問題があると思う。税調で徴税上の不公正についてどんな議論があったのか、ちょっとそれを簡単にお聞かせ願いたい。
  230. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 税制調査会の中で、ある委員の方から俗にクロヨンなりトーゴーサンなりということを言われておるけれども、一体税務当局はどう考えておるんだ、資料がないのかというお話がございまして、資料というのは、これは国税庁はもちろん所得の捕捉に万全を期して行政をさしていただいておるわけなんで、本当は十であるはずのものがいまは六にしかなっておりませんというふうな資料はそれはないわけでございます、ということはお答えをしたわけでございますけれども、それにしても税務執行の現状について一遍いろいろお話は聞いておきたいというお話になりました。その場合には、ただいま申し上げました捕捉の問題が片側にあり、もう一つは、総合課税をよしとする議論について一体どういう体制があればそこまでいけるのか、そういうことも含めて一度執行の現状を聞いてみたいというお話がございまして、たまたま本日きょう二時からあったわけでございますが、本日の部会に国税庁から出席をしてもらいまして、現状の御説明を申し上げたはずでございます。ただいま直税部長が来ておりますが、御質問がございますればなお詳細は……。
  231. 野末陳平

    ○野末陳平君 それではその説明も含めてですが、国税庁として徴税上の不公平についてどういう見直しをされたか、あるいはどういう点を特に是正すべきだというお考えになったのか、その辺をお伺いいたします。
  232. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) ただいま主税局長からお話し申し上げましたとおり、本日税制調査会で国税庁側から特に申告所得税を中心にいたしまして税の執行の現状を御説明をいたしまして、さらにそれについていろいろと御議論をいただいたと、こういうことでございますが、私どもが基本的には税の執行に当たっては、あくまでも適正、公平ということを念頭に置いているわけでございますが、御承知のとおりに、きょう説明をいたしましたのは、昭和四十年と比べまして五十年までの現状の変化を説明しながら、一方において私どもはこのように手はずを整えいろいろ努力をしているという結果を御説明をし、今日こういう状況にあると、問題点としては、たとえば資料の充実であるとか、あるいは税制改正上どうしても理論的にこれが公平であると言われます場合に、執行の上においてもそうでなければ、それが確実でなければ結果的になかなかむずかしい状況になる。したがって、税制上いわば総合課税の場合でもそれが公正を求められて、同時に執行の側もめんどう見てもらうようなそういう制度にしてほしい、こういうことを申し上げました。
  233. 野末陳平

    ○野末陳平君 どうも抽象的でわからないので、少し具体的に、じゃ、いまのことを捕捉率についてまずお聞きしたいのですが、これも非常に感じで、よく言われていることなんで、実態は事実よくわかりません。しかしやはり、自主申告をするたとえば事業者なんかは、節税の手段というか、あるいは抜け道というか、その辺は表現はちょっと微妙ですけれども、事実サラリーマンに比べて、源泉で一〇〇%捕捉されるという立場から見るとかなり甘いところがあると、これは当然思われるんですね。国税当局が世に言うトーゴーサンとか、あるいはそういうクロヨンとか、納税者間の捕捉率のアンバランスというのはないんだということでいまのお答えなのか、それとも実態はある程度やむを得ないと、これを完璧にするのはちょっとなかなか執行上はむずかしいんじゃないかとか、その辺のことがちょっと知りたいですね、抽象的でなくて。
  234. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) ただいま野末委員の御質問の中にありましたトーゴーサンであるとか、クロヨンであるとかいうのは、私どもからいたしますと、できるだけどの階層に対しても所得が公平に行われるように配意をいたしておるわけでございまして、したがいまして、クロヨンであるとか、トーゴーサンであるとかいうようなことは、私ども一つのごろ合わせであるとは思いますが、実際にはそのような状況にはない、このように思っております。ただし、先ほど申しましたように、昭和四十年と比べまして、五十年の間に課税物件が非常にふえております。それに比べまして税務職員がほとんどふえていない、そういう状況から、先ほど申しましたように、いろいろ努力がありますし、同時に一方調査の問題について申し上げますと、調査上、たとえば、今日では経済取引が非常に広域的であり、しかも複雑である、こういうような事情から、どうしても調査が困難でございます。したがいまして、そういうものも捕捉をしながらやっていくわけでありますけれども、一方において、何といいますか、たとえば、現在におきましてはわれわれの調査に対していろんな意味で妨害があるという場合もないわけではありません。そういった意味で、非常に手間がかかる場合もありますが、私どもは、先ほど申しましたように、税の適正公平ということが任務でございますので、それに向かって努力をしておる、こういう状況でございます。
  235. 野末陳平

    ○野末陳平君 国税庁の努力はそれで当然。だけれども、納税者のかなりの部分を占めるサラリーマン、給与所得者というのは、この捕捉率のアンバランス、おれたちだけが源泉で一〇〇%持っていかれてという、いわば不満感というのは、これはまたぬぐいがたいと思うんですね。それはあなた御自身も認めるだろうと思うんですよ。ただ、それをどうしろうといわれても、これは非常に困ることも事実なんですが、私がここであえてお聞きしたいと思ったのは、サラリーマンだけ一〇〇%捕捉される。だからほかのも一〇〇%捕捉されるのが当然だと、これはなかなか理想は当然そうであってもむずかしいので、サラリーマンのいわば不満感というか、おれたちだけがかなり損しているような、本当は一〇〇%捕捉は当然にしても、損しているような、その辺の不公平感をどういうふうにするか。どうしたらその不公平感を幾らかでもそれをいやすことができるか。その辺が課題じゃないかと思うんですがね、大臣。そこで、一体じゃどうすればいいか。現在税制の不公平部分を厳しく見直すということと同時に、やはりそういう納税者の感じというか、その部分にもある程度見直しをしないと、このままでほっておくと、やはり今後大臣が増税をおやりになりたいとしてもむずかしい、あるいは減税が全然できない、財源がないからしようがない、こういうような言い方だけじゃ通らないような納税者の気分だと思うんですよ。  そこで、国税庁の報告はわかりました。しかし、このサラリーマンほとんどが抱いている不公平感をどういうふうにしたらいいんでしょうね、大臣。というのは、ぼくも困っちゃうのですよ。本当にまじめな話、おれたちだけがと、こう言われた場合、納得させる説明というのが非常にむずかしいのですね。じゃ、これほっておいていいのだろうかというと、しかしぼっておいてこういう不満感がどんどんエスカレートするのも好ましいとは思えないし、やはり非常にむずかしいとは思うけれども、彼らを納得させるような説明をする義務がこちらにもあると思いますので、大臣だったらどうなさるか、その辺もお聞きして次に進みたいのですが。
  236. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) われわれは税金を納めるために生きておるわけじゃございません。われわれは一つのなりわい、職業を持って妻子を養い、そして同時に社会にも奉仕し、同時に所得があればこれに対して国や地方公共団体にも応分の務めを果たすという仕組みになっておるものと思うんであります。したがって、職業がまず本体なんでありまして、サラリーマンと自家営業者どちらがいいかというような問題を私に問われても困るのでございます。それぞれ特徴があるわけでございまして、サラリーマンは損得はございませんけれども、営業者の場合はまる損する場合もあるわけでございますし、危険を冒してやっておられる、営業者の場合はそういうこともあると思うんでございまして、どちらがいい悪いの問題ではないと思うんでございます。さればこそ税金が安いからそういう商売につく、税金が重いからそういう商売は忌避するということにはなっていないと思うんでございまして、しかし、野末さんがおっしゃるようにこれはやっぱり具体的な公正が実現されなければ納得が得られないことは申すまでもないところでございます。それをどうして実現するかということでございまして、いま直税部長から御報告がありましたように、徴税当局といたしましては、具体的公正を徴税面からどうして確保するかに全力を挙げるべきだと思います。いろいろ批判がありましょうけれども、徴税当局としては最善を尽くして、与えられた徴税費と与えられた徴税要員、与えられた徴税機構の中で、与えられた権限の中で、可能な限りその具体的公正を図るように努力すべきであろうと思います。  しかし、同時に現に非常に大きな不満が野末さんがおっしゃるようにあることも事実でございますから、それをどのようにくみ上げてまいるか、これは立法政策の問題もありましょうし、あるいは行政面の配慮もなければならぬと思うんでございまして、立法的にどのようにこれを取り上げていくか、あるいは行政面でどのようにくみ上げていくか、これが私どもの任務であろうと思うんでございまして、サラリーマンに対する控除制度、そういうものにつきましてもなお一層周到な検討を加えていく必要は私はあるのではないかと思いまするし、いま源泉で完全に掌握して徴税ができておるわけでございまして、それは国にとって大変ありがたいことでございまして、そういうことも頭に置いて、やはりどうすればこの不満についてこたえ得るかという点は確かに検討しなければならぬし、鋭意検討しなければならぬ問題点であろうと私は思います。具体的にどうすればいいかという知恵は私なかなか思いつきませんけれども、確かに深刻な問題点であるという問題意識を常に持って事に当たらなければならぬと思っております。
  237. 野末陳平

    ○野末陳平君 大臣、いまのお答えの中で、サラリーマンの控除についても何か検討を加えなければならぬというようなことをちょっとおっしゃいましたが、給与所得控除のことですか、具体的に何か頭に置かれていまお答えになったのでしょうか。もし具体的なものがあるとすれば、サラリーマンの控除について何を検討しようとお考えか、ちょっと。
  238. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) やはり私ども立法の原案を担当いたしております立場としますと、把握が所得の種類ごとに違うんだということを前提にして制度をつくるということはできないと思います。と申しますのは、やはり所得着すべてが同じ程度の把握であるということはあり得ない。事業所得者でございましても、一生懸命夜遅くまで帳簿をつけて青色申告をしてくだすっている方が現にたくさんおられるわけでございまして、その方々のお立場からすれば、御自分の所得は一〇〇%正確に記帳し、申告しておるという前提でお考えになっているはずなんで、したがって、制度の前提としてその所得の種類ごとに把握が違うと、だから、この所得には特別の控除を与えるというような仕組みというものは、これはつくれないし、またつくることは適当ではないだろうと思います。したがって、給与所得控除の中に把握控除というような要素を取り入れていくということは、これは制度としては成り立ち得ないのではなかろうかと、ただ、現実に、どの程度の給与所得控除が概算控除と言いながら、どの程度の下に厚く上にだんだん減っていく控除というものが、現実の問題としていいだろうかということを積み重ねていまの控除ができ上がっておるということもまたある程度ある意味では事実であろうと思います。  その次に残されております問題は、やはり適宜私が代弁させていただきますが、国税庁が限られた人員と経費と機構の中で、どうすれば一層把握度を高めていくことができるか、それは申し上げたように、一生懸命記帳してくだすっている青色申告の方をどうやってふやしていったらいいかという問題であり、それにしてもなお抜けるかもしれないグループについて、全部を調査することはとうていできないわけでございますから、どのように重点的に調査をすればよろしいか、調査の結果、それがほかの納税者の方にいい申告内容として響いてくるようにするにはどういうPRが必要か。また、納税協力をいただくためには何が考えられるかということで、じみちにやっていくよりしようがないのではなかろうか。その意味で、国税庁が私どもの部内でときどき泣いておりますのは、せっかく一生懸命調査をしてある数字を出すと、何だと、こんなに抜けていたのか、それじゃおれはもう税払う気はしないよと、こう言われてしまうので、それはもう泣くにも泣けないということを盛んに言っておるわけでございます。
  239. 野末陳平

    ○野末陳平君 サラリーマンの問題に移しまして、いまだに必要経費についてこだわる人が、当然なんですけれども、いろんな意味を聞かれるんです。去年もこの委員会でぼくもちょっとお聞きして、その後サラリーマンの必要経費というのは、いまの概算による給与所得控除の中で大体おさまるのか、それともはみ出るか、いろいろ計算するとまあおさまる場合の方が多いですね。そう言うと、何かいかにもサラリーマンの必要経費は十分いまの概算給与控除の中で処理されているから問題ないんだと、こういう結論のようですけれども、しかし、一方においてまた、いまだにそれはおさまるかおさまらないかの問題じゃなくて、実額の経費を踏まえた確定申告というものを望むという人が当然またいるわけですね。それでこそいわゆる申告制といいますか、事業者と質的に同じ立場に立つわけですから平等になるわけですね、ある意味において。ですから、やはり、ぼくは、いまの概算控除の中で処理できる人がほとんどかもしれませんが、やはり確定申告の実額控除を望む人たちに対して確定申告の道を開くのは、これもやはり当然じゃないかなと、こう思ったりして、これが併用していくやり方ですね、源泉徴収と実額控除の併用を実現の方向で検討するのが、これからの時代にふさわしい、納税者を、特にサラリーマンを納得させる当然の行き方ではないか。結果的というか、邪道かもしれませんが、それによってサラリーマン自身が持つ不公平感も幾らか緩和されると思いますし、その辺、毎年、いやそれはおさまっているのでそれはなかなかむずかしいと、そういうお答えをもらうのですが、しかし、やはり実現の方向で検討すべきがやっぱり正しいと、どうしても私はそう思えるんですが、いかがでしょうか。
  240. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) かねてからの御指摘でございますし、私どもも将来に向かっての非常に大事な検討項目であろうと思います。思いますが、そう申し上げながらなかなか具体的な措置に踏み切れないのは、やはり、ぎりぎり詰めて考えますれば考えまするほど、給与所得者の必要経費というのは一体何なんだろうかというところが非常に線が引きにくい。しかし、そこに何らかある程度共通に適用できるような線の引き方がない限りは、それは申告していただきますと言いましても、いたずらに、言葉は悪いかもしれませんが、数多くのトラブルを起こすだけかもしれないんで、必要経費とは何であろうかということが、もう少しはっきりしてくるまでは、なかなか制度として踏み切れないのではなかろうか。そういうむずかしいもののような気がいたしております。
  241. 野末陳平

    ○野末陳平君 いや、実際むずかしいと思うんです。むずかしいと思うんですが、ただ、納税者というのは非常に自分だけのことを考えて主張するというか、不満を漏らすといいますか、だからそれを無視するわけにもいかないんで、こんな話があるんですね。  ついでに意見をお聞きしたいんですが、通勤用に、住宅が非常に遠隔地にあったり、交通の便が悪くて通勤用に車がどうしても必要だというサラリーマンがいるわけですね。すると、そのサラリーマンは車で通うんですが、これは認めてもらえないわけですね。概算控除の中でこれは処理しろということになっている。だけれども、商店は、一台買っても、二台買っても、まあ何台買ってもというわけじゃありませんが、商店の場合は当然それは商売上必要なんですから車は必要経費なんですが、この二つを比べると、通勤にやむを得ず買う、おれのはこれは必要経費だ、かせぐために絶対必要なんだということを主張された場合、ぼくも、いや、それはあなたね……と言い切れない。やはり、住宅事情によっては車が必要経費として認めざるを得ないようなケースも生まれてくるというふうに考えまして、こんな場合、どうなんでしょうか、サラリーマンは近くても、あるいは自分の好みで車で通ってくる、そういう人に認める必要は当然ないと思いますが、住宅事情を勘案した場合には、車も必要経費になり得るということはおかしいでしょうかね、どうなんでしょうか。
  242. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) その問題も実は私の申し上げた難問の一つでございまして、概算控除でなくて実額を引くという考え方の国におきまして、通勤費というものは、そもそも収入を得るための経費ではないという考え方すらあるわけです。その問題が一つと、それから日本の場合には、ちょっと正確な数字を覚えておりませんが、圧倒的に多数の給与所得者が、片や通勤手当をもらっておられる。しかし、通勤手当はいろいろな経緯があって、これは非課税である。必要経費の議論を仮に解決しまして、必要経費であるという立場をとった場合でも、それならば通勤手当は課税対象に入れないとおかしくなってくるという問題もございますね。それから車で通っておられる方の場合に、やはり具体的に、仮にそれは経費であると考えましても、一体それでは、かかっただけが全部経費なんだろうかという議論もある。ある程度、言葉は非常に悪うございますが、これはいわばおしかりを受けるかもしれませんが、自分の好みの部分が入っていないかというところがございまして、それは、やはり自動車通勤の場合に通勤手当をどう出したらよろしいかという問題と実はうらはらなんです。通勤手当の方は、昔は、一般職公務員の場合は自転車並みの扱いで、これはおかしいではないかということで、いまのところは、たしかその経路、それだけの場所を仮に普通の交通機関で通ったとすれば、これは幾ら幾らかかるだろうかというふうな基準で通勤手当を出すということになったと思いますが、何かそういうものをまた持ち込まないと、かかればかかっただけ全部経費である、同じ収入を得るために、というわけにもまいらないんではないかという非常にむずかしいところがございまして、くどくて恐縮でございますが、なかなか簡単にはいけないと思います。
  243. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあそれを言い出したら今度、商店とか事業者が日曜日に車で家族で遊びにいくのはどうだかんだと、いろんなことになっちゃってお互いに非常にむずかしいと思います。  時間も来たようですから、大臣に、じゃ、一言お聞きしたいんですが、まあ、増税も大分、何といいますか、もうやむを得ないというような空気がかなり出ているようなんですが、所得税の面で、大臣は増税の余地がまだあるとお考えになるかどうか。間接税を強化することと、所得税を幾らかでも増税することと、どちらを選ぶか。どちらかを選ばなけりゃならぬわけですけれども、とりあえず、所得税に増税の余地が一体少しでもあるとお考えかどうか、その辺を最後にお聞きしておきます。で、そのお答えでまたあとで……。
  244. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 非常にむずかしい御質問で、理論的に言えば、法人税なんかが諸外国に比べて、一応五〇%ぐらいの課税になって、負担になっておりますので、国際競争の関係からいっても、先ほどお話がありましたように大変むずかしい状況ですが、所得税の場合は、まだ若干そういう意味では負担が低いとも言えないことはない。しかし、日本の場合は、直接税が非常に重くて間接税が比較的軽い国でございます。直間の方からいきますと、もう少し工夫をして直接税を低くして間接税の方へもう少しウエートをかけた方がかえっていいじゃないかという議論もありまするので、そうすると、所得税なんかをお考えになるのはむしろ間違いじゃないかという議論にもなります。しかし、もともと財政需要を満たす手段でございますから、財政需要ができるだけ少なくて済むように私ども配慮せなければならぬわけで、増税要因をつくるというようなことをできるだけ慎しまなければいかぬわけでございますので、私の口からまだ増税の余地があるなんていうことを申し上げるのは非常に不謹慎な話なんでございまして、大変むずかしい御質問であると。一口になかなか答えにくいというお答えで御了承願います。
  245. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十二分散会      —————・—————