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1976-10-08 第78回国会 参議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月八日(金曜日)    午前十時十五分開会     —————————————    委員異動  十月八日     辞任         補欠選任      和田 春生君     栗林 卓司君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         岩動 道行君     理 事                 戸塚 進也君                 中西 一郎君                 野々山一三君                 矢追 秀彦君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 糸山英太郎君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 高橋 誉冨君                 鳩山威一郎君                 桧垣徳太郎君                 藤川 一秋君                 宮田  輝君                 大塚  喬君                 福間 知之君                 吉田忠三郎君                 鈴木 一弘君                 近藤 忠孝君                 渡辺  武君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  大平 正芳君    政府委員        経済企画庁調査        局長       岩田 幸基君        大蔵政務次官   斎藤 十朗君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        道正 信彦君        大蔵省主計局次        長        加藤 隆司君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  岩瀬 義郎君        大蔵省銀行局長  後藤 達太君        大蔵省国際金融        局次長      北田 栄作君        国税庁次長    山橋敬一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        外務省アメリカ        局外務参事官   内藤  武君        外務省経済協力        局開発協力課長  松浦晃一郎君        大蔵大臣官房秘        書課長      禿河 徹映君        大蔵大臣官房審        議官       佐上 武弘君        水産庁海洋漁業        部長       松浦  昭君        通商産業省貿易        局輸出課長    名取 慶二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○租税及び金融等に関する調査  (財政及び金融等基本施策に関する件)     —————————————
  2. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  本日、和田春生君が委員を辞任され、その補欠として栗林卓司君が選任されました。     —————————————
  3. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事栗林卓司君を指名いたします。     —————————————
  5. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  6. 福間知之

    福間知之君 おはようございます。  まず最初に、私は、いま御案内のとおり先国会からの大問題として、ロッキード事件解明が今国会でもロッキード特別委員会中心にして進められております。特に当委員会として関心を払わねばならない問題の一つといたしまして、先般の田中総理収賄問題に絡みまして、大蔵省当局は、最近五億円に上る史上空前収賄金額に対して課税措置をとるやの方針を決めたと聞いておりますが、果たしてそうなんですか。
  7. 山橋敬一郎

    政府委員山橋敬一郎君) お答え申し上げます。  ロッキード事件関連いたします五億円の金品授受の問題につきましては、検察当局におきまして現在収賄事件として公訴の提起が行われているところでございますけれども収賄ということでございましても、それが金品の収受ということになりますれば、税法上は利得ということに考えられますので、課税上の問題を生ずるというふうにわれわれは考えておるわけでございますが、ただ御承知のとおり収賄ということになりますと、刑法上は必要的な追徴没収ということで、将来有罪確定が行われますれば、これは没収をされ、利得がなくなるということでございます、こういうふうな状況がございますので、この問題の税法上のいろいろな取り扱いをどのようにするかというふうな問題が一つございます。  それから、またもしこれを利得と考えた場合に、所得税法上いかなる所得に属するものであるかというふうな問題が一つございまして、この所得の種類を確定する問題、また刑法上の追徴没収という問題との関連をどういうふうに考えるかというふうな、税法上のいろいろな取り扱いの問題を検討すべき問題が数多くございます。また同時に、何所得にするかというふうな問題につきましては、この実態解明をし、その中身を見、その金銭の授受の態様あるいは趣旨というものを十分考えたところで、この何所得に該当するかということをまた判断しなければならないというふうに考えておるわけでございまして、税法上の取り扱いの問題、実態解明を含めまして、今後鋭意検討を進め、課税上の適正な処理を行ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  8. 福間知之

    福間知之君 いままでは、したがって、おっしゃるように刑法上の有罪確定が行われれば没収されるから事実上の課税は行われなかった、あるいはまた、時効が五年ということであるから、それ以上に期間が延びれば事実上課税はできない、こういうことがあったわけですね。それでは今回のこの事件の持つ性格、社会的な意味から言っても非常に公正を欠くではないかという立場で、まあ大蔵省当局としても、いまおっしゃったような何らかの性格づけをして、いままでと違った所得、たとえば雑所得とか、もっとはっきり言えば賄賂所得とか、何かはっきりして、いわば刑法有罪確定に至らないまでに、あるいは時効に至らないまでに課税をする、徴税をする、それが国民のいわば考え方でもあり、社会的公正を貫くゆえんだと、こういうように考えておられるんじゃないかと私は推測をするんです。したがって、より具体的にいまおっしゃった内容説明を願いたいし、さらに、まだ検討中だとおっしゃいますが、じゃ、いつごろそれを結論をつけるのかというめどについても考え方をお聞きしたい。
  9. 山橋敬一郎

    政府委員山橋敬一郎君) お答え申し上げます。  過去におきまして、賄賂という問題につきましてどのような処理が行われてきたかというふうな問題についてお話がございましたが、過去におきましては、特に統計をとっておりませんので正確なことはわかりませんが、先生お話のとおり、おおむね賄賂について課税をした事例はないようでございます。まあ、ただその理由といたしましては、おおむね、少額なものでございますと、一時所得特別控除というふうな問題がございますし、また、ほとんどの賄賂につきまして、まあことに公務員犯罪中心でございますが、これは有罪になっておりまして、有罪確定いたしますれば必ず没収追徴というふうな問題が出てまいり、経済的成果がなくなるというふうなことで、そういうふうな趣旨で後日その訂正をしなければならないというふうな観点から、この賄賂についての課税を行っていなかったというふうに私たちは考えておるわけでございます。  今回の問題につきましては、先ほどお話申し上げましたとおり、相当やはり公判が長引くであろうというふうな問題、あるいは非常に賄賂自体が高額であるというふうな問題から、従来のような考え方でいいのかどうかというふうな問題が確かに一つございます。ただ、片一方、やはり収賄罪という形で起訴をされておるというふうなことで、これは必ず将来追徴没収をするという前提で実は起訴をしておるわけでございます。そういういわゆる経済的利得というものを剥脱をすることを前提として片一方において起訴をしているということに対しまして、課税面でその利得というものをとらまえて課税をするというふうなことが果たして公訴の維持というものに微妙な影響を与えるか与えないかというふうな問題も実は考慮しなければいけないという点があろうかと思います。しかしながら、この問題につきましては、先ほど申し上げましたように非常に高額なものでもございますし、あるいは裁判そのものが非常に長くかかるかもしれないというふうな問題もございます。中途におきまして免訴あるいは公訴の棄却というふうな問題も起こり得る可能性もあるわけでございまして、そういう点からいって、やはり適切な処理をしなければならないのではないかというふうな考え方もまた一方にあるわけでございます。  そういうふうな点を考えまして、現在課税上の取り扱いの問題につきまして、税法上の取り扱いにつきまして鋭意検討を進めているわけでございます。もちろん、その検討過程におきましては、いわゆる税法上の除斥期間、いわゆる時効というふうな問題も十分念頭に置きまして、その問題の検討を鋭意進めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  10. 福間知之

    福間知之君 鋭意やっていただかなきゃこれはなりませんし、恐らく、裁判経過は、公判経過はどういう推移になるかわかりませんけれども、予断はできませんが、いままでのところ明らかになっていることを一つとして、これは受託収賄だというふうな件名が挙げられるわけですね。当然田中総理の方は、いままで伝えられているように政治献金だ、こういうふうに主張するに違いないと考えられるんですけれども、したがって、裁判はおのずから長引く。一審で終わらないとも限らない。したがって、いわばいままでのようにそういう汚い金をもらい得してしまうというふうなことにならないように、可及的速やかに国税庁としての具体的な処置を明らかにしなければならない。裁判の方は、そういう一連の政治家としての行為ですね、その結果としての賄賂、そういうもの全般にわたって公判が続けられていくわけであります。国税庁当局はそこまでは介入する立場じゃありませんから、しかし、社会的に不公正な手段でもって多額の金品授受したということ、しかもそれが地位なり一つ権限なりを行使し得る立場にあって、法律上受託収賄とみなされるという、そういう金でございまするので、適切にやはり短い期間結論を出して徴税をすべきではないかと思います。でなければもらい得になってしまうということになると思うんです。  それから、関連して、きのうでございましたか、衆議院の側では十五日にいわゆる灰色高官中間報告でその員数などについて報告をする、こういうふうになったようでありますが、これはもちろん与野党間で氏名の公表をめぐって意見がなお対立をしているところであるにしろ、少なくともそういう事実が、複数の高官に事実が存在するんだという発表がされるわけですから、これに対してはどうなんですか。金額の多寡は問わず、やはり政治家立場権限という地位を利用した収賄ということになり、道義的、政治的責任を追及されるという立場なんですから、当然税務方針としても対象になるんじゃないですか。
  11. 山橋敬一郎

    政府委員山橋敬一郎君) お答え申し上げます。  最初の御質問の、五億円の問題につきましてなるべく早く処理をしろという御趣旨お話でございますが、われわれといたしましては、除斥期間等を踏まえまして鋭意その検討に努めたいというふうに考えておるわけでございます。  それから第二番目の問題といたしまして、いわゆる灰色高官課税上の問題でございますけれども、これは、いわゆる灰色高官と言われておられる方々の金品授受実態というものをわれわれまだつまびらかにしておりません。したがいまして、その実態がつまびらかになりました段階税務上の処理というものをどういうふうに考えるべきかということを考えるのは当然のことというふうに考えております。したがいまして、実態をつまびらかにした段階におきましてわれわれはその課税上の問題というものを十分検討いたしまして適正な処理をいたしたいというふうに思います。
  12. 福間知之

    福間知之君 最後に、先ほどの問題ちょっと念を押しておきたいんですけれども、時期ですね、当局としてのその追徴没収をする時期というようなもの、特に前総理に関してはすでに検討が進められていると思うんですけれども、ある程度明らかにできないんですか。
  13. 山橋敬一郎

    政府委員山橋敬一郎君) お答えいたします。  時期というふうな御質問でございましたけれども実態解明にどの程度期間がかかるかというふうな問題につきましては、まだわれわれとしては予測はできないわけでございますけれども、いずれにいたしましてもいわゆる除斥期間いわゆる時効というものは四十八年分の所得でございますと五十二年の三月の十五日でございます。したがいまして、そういう除斥期間というものを十分頭の中に置きながら、われわれとしては鋭意検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  14. 福間知之

    福間知之君 じゃ、質問内容を次に進めていきたいと思いますが、私は、いわゆる大蔵省の発表した中期財政展望に基づくところの収支試算によって今後の税制との関連について少しく御質疑をしたいと思います。  試算によりますと、国税総額は今年度ほぼ十六兆一千四百億円余りとなっております。これはまあ五十五年度には三十五兆五千八百億円にならねばならないだろうという想定になっているようですが、そうでございますか。
  15. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 正式に資料として御提出しました収支試算にそのとおりの数字が入っております。ただ、この場合の税収と申しますものの中には、一般会計所属租税のほかに専売納付金も入っております。
  16. 福間知之

    福間知之君 その国税総額内訳というものはしかしまだ明らかにされておらないと思うんですが、おおむねどういう内容を考えておられるんですか。
  17. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) その点は、まず結論の方から申しますと内訳は算定がございません。と申しますのは、この五十五年度の三十五兆五千八百億という数字を使うこと自身に内部でも相当議論がございましたけれども、しかし全く数字なしにはすべての問題の議論の土台ができないではないかということで、経済計画で予測されております国民所得に対する比率を用いて出しておる数字でございまして、五年先の内訳というふうなものは、余り前提が多過ぎてどうにも策定のしようがないんではないかということでございます。
  18. 福間知之

    福間知之君 しかし、すでに五十五年度までに年率平均でほぼ二〇・九%の増収を見込んでおられますね。それはいまおっしゃられた中期経済計画に依拠していると思うんです。その中期経済計画に依拠して一つの推計した数字として考えられるのは、一つ所得税で今年度が六兆四千億余りなんですが、それが五十五年度には十四兆三千二百億余りになる。さらに法人税では本年度が四兆六千億円程度と考えられるのが八兆七千億円余りになる、その他の国税含めましてですね。五十五年度には恐らく三十兆円見当が見込まれる、こういう一つ試算があるようですけれども、まあ大きな違いが予想されますでしょう。
  19. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 政府には先ほど申し上げましたようにその内訳試算がございません。ただいま福間委員のおっしゃいました数字は、あるいは東京都の新財源問題構想研究会でございましたかがそういうような試算をしておったかというふうな記憶がございますが、まあ先ほども申し上げましたように非常にラフな前提を置いてやればできないことはない作業でございましょうけれども、ちょっと議論前提に使うには余り前提が多過ぎるという気がいたします。
  20. 福間知之

    福間知之君 しからば年率で二〇・九、約二一%程度増収というのは、それはどういう根拠からなんですか。
  21. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) これは収支試算をお出ししましたときにいろいろ御説明を申し上げていたかと思いますが、これだけの税収があるであろうということでなくて、これぐらいの税収が出てくるような負担率で全体を考えないと、公共投資の実質百兆円を期待し、振りかえ支出が国民所得比一〇・八まで上がり、なおかつ特例債をなくすという全体の姿にならない。したがって、これだけの増収が出てくるような負担にしていただけるなら、このような対策目標が達成できるのですがというように、そちらから推してきている数字であって、税を積み上げて出てきた数字ではないわけでございます。
  22. 福間知之

    福間知之君 それにしましても、私いま一つ引用した三十兆円見当が五十五年当時では恐らく考慮されるであろうと仮定した場合に、これはかなりの、したがって、それに至るまでの間増税対策前提にならなければならない、そういうふうに思うんです。もうすでにいままで大臣初め、いわばもう増税時代に入ったかの印象を受ける御発言が見られるわけでございますが、問題は、私はここで特に申し上げたいのは、その金額一銭一厘どうのこうのじゃなくて、いわば社会的公正という立場から、その増税というものの政策を具体化する上でどう対処すべきなのかということについて、お互いに真剣に胸襟を開いて議論をしなければならぬのじゃないのか。たとえば、現在の個人所得税あるいは法人税の相互のウエートかなり変わっていくだろうというふうに思うんです。すでに先般の税調の第一部会で、いわば個人所得税、地方税等含めて諮問がなされておりますね。また税調の第一部会の大方の意向はどうやら所得税増税やむなしという意向だとも伝えられておるわけです、真偽はわかりませんが。だとするならば、その場合に、じゃ法人税に対してはどうなんだ、あるいはかねがね言ってきた消費税付加価値税等どうその場合考えるんだろうか、非常にこれは国民がいま注目をしている最大の問題だと思うんですよ。ロッキード事件ももちろん必要ですが、私はむしろ当委員会はこういう課題について真剣に議論をすべきだし、大蔵省皆さん当局も、いわば税調任せというふうな無責任な態度はやめて、胸襟を開いて私ども議論をすべきではないのかと、こんな気がするわけです。  そこで、大臣、閉会中の審査でございましたか、恐らくあれは七月でしたか、税調会長代理さん、お見えになって参考人として御意見をお聞きしましたね。そのときには、当委員会委員長が途中で二回ばかり制止するほど激越した、激しい口調で例の社会保険診療報酬に対する不適正な現在の課税制度をもう二年も前から税調が答申をしているのに、三木総理すらそれを実行しようとしないというふうに言い切ったものです。かなり激しい口調でここで意見を開陳された、大演説ぶたれた、私、記憶に残っているんですけれども、そういう問題ですね。あるいはまた、われわれもかねがね言ってきた大企業優遇税制なるもの、そういうものを思い切って是正をすべきだと、こういうふうにいわれてきたわけですけれども、そんなこととも絡み合わせて、いわば税の社会的公正ということ、高度成長時代におけるわが国税制というものの持っている意味合いを見直していくと、特にこれほど財政が逼迫し、赤字公債を出さなければならぬということですから、なおさらのことなんです。私は、税制全般を見直していくという、そういう意味で特に個人所得税ウエートが非常に高くなっていくと、こういうことについて国税庁の方では率直なところ、どういう一つ展望を持っておられるのか、お聞きをしたいんです。
  23. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 私どもが昨年来、どういう考え方税調審議をお願いしているかということでお答えいたしたいと思いますが、ただいまの福間委員の御指摘の中にございました、いわゆる不公正税制是正というものにつきましては、実はことしになって問題を持ち出したのではなくて、去年の夏、税調に問題を持ち込んだわけでございます。去年の夏はまだここにございますような収支試算もなく、経済計画もないという状況ではございましたけれども、やはり漠然と将来何らかの租税負担増加をお願いせざるを得ないと思われると、数量的にどの程度かわからないけれども、とうていこのままでは財政が立ちいかないと思われるので、その場合には何としてもまず歳出面でむだを排除すると同時に、歳入面では不公平だといわれておる制度を全部洗い直して、まずそちらから入っていかないと一般的な負担増加をお願いするには適当でないでしょうということを申し上げまして、去年の八月からいわゆる不公正税制整理についての審議を始めていただいたわけでございます。その場合に、問題は、しかし不公正であるかないかという問題についてお立場により、人によってずいぶん考え方が違っておりますから、だからどういうものを政策税制と考えるのか、政策税制以外のものとして考えるべきものは何かということからまずやっていただきまして、これは資料としてもお出ししてあったと思いますが、政策税制とそれ以外のものにまず分けまして、政策税制と目されるものについてできるだけ縮減を図っていこうということで半年かかってやっていただいて、法人関係特別措置については私どもなりにかなり整理を五十一年度の改正でやらしていただいた。それで終わったとも思っておりませんから、今後とも法人関係特別措置につきましては、主として期限が到来するものを中心に同じ考え方縮減に努めてまいりたい。個人関係特別措置につきましては、実は金額の非常に大きいものは少額貯蓄の非課税でございますとか、生命保険料控除でございますとか、そういうものでございまして、金額的に大きなものは余りございませんけれども、それにしてもおっしゃるように資産所得課税についてはなお縮減と申しますか、恩典の縮減というような角度からの審議を続けるべきであるということで、まあ荒っぽく申せば、ことしの一般的な租税負担増加をどこに求めたらいいかということをお願いする半年以上前に、税調としてはもうやり始めていただいておるし、ある程度成果も出つつあるしというふうに私どもは考えておるわけでございます。もちろん、その作業を引き続き行っていくと、しかしそれだけではどうしても足りないでしょうから、一般的にいまある租税の中でなお負担を求めていいものがあるかないか、それを御議論願いたい。まずそれをやりました上で、現行の税制では負担を求めるにおのずから限度があるということになるんなら、何か新しい税というものもあり得るでしょうかどうかということを御検討願いたいということで、現状は、現在ございます税のそれぞれ全部につきまして、今後なお負担増加をお願いしてよろしいでしょうかどうでしょうかという問いかけを毎週一回開いていただいて逐次やっているという段階でございます。その過程におきまして、所得税については一度、これは一番大事な税でございますから第一部会のトップに持ち込みまして御議論を願っております。問題の出し方としましては、所得税はやはり中心的に一番公平を期するにいい税なんだから、今後とももし負担増加を求めるとすれば、所得税中心であるべきだという考え方一つございます。しかし、これに対してやはり所得税というのは相当伸びる税であるし、物価調整減税をやれという声もあるので、今後の増収所得税に求めるというには限度があるじゃないかという御議論もございます。それについて御討議を願いたいというふうにお願いをしてございます。で、そのときの部会では、率直に申してある程度私自身も意外であったと新聞の人などに申したこともございますが、やはり今後負担増加を求めようとすれば、それは所得税中心だという考え方は、非常に合理性があるという御意見の方が強かったと、しかし、だからそれじゃ増税所得税だということを税調がお決めになったわけではございません。所得税としてまずそういう議論をしておいて、それから法人税もやろう、第二部会では間接税もやる、全部やってみた上で持ち寄ってみて、中期的にはどういう組み合わせで考えるかというところに最後の議論を持っていきましょうということでございますので、現在まだ、どれかの税を取り上げましたときに、その税の増税というものが決まったとか、決まらないとかいうような運び方ではないわけでございます。したがいまして、法人税につきましても昨日も申し上げましたが、五十二年度にどうするかということではむしろなくて、この中期計画で見ておる五十五年までの間で、法人の負担というものをいまよりも上げる余地があるでしょうかという問いかけと、そうではなくて、いまの法人税が減っているのは景気が悪くなって減っているだけで、景気がよくなれば戻ってくるのだと、そのほかにさらに新しい負担を求めるかどうかということは、国際競争力であるとか、あるいは法人企業の負担がふえれば逆に経済がシュリンクしてしまうとかいう議論から、法人負担にこれ以上求めることは必ずしも適当でないという意見と、現に世の中に両方あるわけでございますから、その両方を並べて御議論を願っておきたいと、その場合にやはり大勢としては、今後ある期間を置いて考える場合に、法人の負担に若干いま以上のものを求める余地はあるではないかという空気でございますが、しかし、具体的にそれを考えるのはやはり景気情勢とか、全体の財政の姿をあわせて考えるわけでございましょうから、そういう、大勢がそういう空気であったということは、すなわち五十二年度に法人税増税をやっていいということではない。いま、そういうような空気と手順で議論が進んでおります。
  24. 福間知之

    福間知之君 わが国における個人所得に対する所得税負担率というものが欧米諸国に比べて低い。かねがねこれは言われてきていることですし、あるいはまた課税最低限がかなりもう高くなっているということも言われていますし、私たちもある程度それは認識をしている、事実問題として。あるいはまた直間の比率も、大臣もきのう触れていましたように、七、三ぐらいで外国とは逆立ちしているんだというふうなこと、そういうことを考えてみますと、加えて、基本的には税収が伸びないという見通しの中で当然増経費が、節約はするにしても出ていく、これをどうするかということですから、これは所得税だけをとる、あるいは法人税   〔委員長退席、理事中西一郎君着席〕 だけをとって云々する議論は、これはもう一知半解の議論だと思いますし、そういう態度は私はとりませんけれども、いずれにしても所得税が増大するということについては、それぞれできればやられたくないと考えておるわけです。これはあなたもそうです。私もそうです。大臣だってそうだと思う。やれないでいければそれにこしたことはない。問題は、したがって、どうしても避けられないとするならば、その他の税項目との関係でいかに公正を期すべきか、これが一番いま問題だと思うのです。  私は、かねがねいわばそういうことを本格的にやらなきゃいかぬ時期が来るという感じを持っておった人間の一人なんです。海外諸国も何十回か私、歩いていますけれども、ただ日本の場合には、少し情勢が変わったら取ってつけたように、何か高福祉高負担というような一つの標語が生まれてみたりする悪しき傾向があるんですね。現状というものを本当に正しくひとつ分析をする、情勢の将来の転換に対してそれにどう対応するかという、そういう議論というのが比軽的少ないんですね。頭から現状をまず肯定してかかるがごとき習性があるわけですけれども、私は、この税制に関してはそうあってはならぬと思うんです。そういうことをやっておれば、いつまでたっても日本のこの工業化社会に見合った税制というのは生まれてこないと思うんで、そういう点で、所得税についても見直す時期がきているということは、一般的にこれは私はそう認識のずれはないと思うんです。問題は、いかにそれを公正化していくのかということと、特にことしは十六年ぶりに減税をやられなかったということで、実質的に増税である、物価調整減税もない、その上に今度の収支計算目論見では、さらに増税を加味しようということですから、私は、いま一番これが論議をするには大事な、また必要な最初の機会だと思うんですね。いまのお話でも、すでに昨年夏ごろからそういうことを考えながら、税調にも対応してこられたということですから、その態度にすでにあらわれているわけです。しからば、大蔵当委員会等においても、これは小委員会というのか専門委員会というのか、何かやはりそういう情勢に対応する審議の機関というものが必要になるんじゃないかと、こんな感じがしているわけです。  ところで、最近では税調のこの第二部会が例の酒税とかたばこ税、そういうものについても、従量税から従価税への転換を図るべきだと、こういうふうな意向があるようですけれども、ある程度具体的にはやはりそういう議論までも出ておるわけですか。
  25. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 間接税関係は第二部会で御論議を願っておりまして、第二部会の第一回目は、全般的な一般論のようなことで御議論がございました。その場合には、やはり今後間接税になお負担増加を求める余地があるんじゃないかという角度で各論を詰めてみようということでございました。各論の第一回が、ただいま福間委員おっしゃいました酒、たばこを含めまして嗜好品課税と、それから個別物品サービス課税をやっていただきました。そのときに、ただいま御質問の具体的な酒、たばこにつきましては、問題提起としまして、酒の税負担というのは長期的に見るとどうしても自動的に下がっていくという要素があるので、今後それを自動的に下がるのを調整するということが必要なのかどうか、あるいはさらにいまの負担水準よりももっと実質的に上げていいという考え方があっていいかどうかという問いかけが一方にあり、片方では、よくこの委員会でも三百日かかった審議でおしかりを受けましたように、この酒、たばこというのは大衆課税であると、だからそれの増税はいかぬという御議論と両方ございますが、という問題提起をしたわけです。それにつきまして、酒の方はやはり負担増加を求める余地があり得るだろうと、あり得るだろうが、その先にやはり自動的に下がっていくというのは何とかしないといかぬのじゃないか、それならばむしろ従価税を考えたらどうかという御議論が出ました。それに対して一部の委員から、その従価税というのは前から言っているのになぜできないんだという御指摘もございました。これは実は従価税がなかなかできないのは、主として清酒の問題でございます。清酒は非常に中小企業メーカーが多いものでございますから、しかもコストの方は別の事情で毎年のようにお米の値段は上がると、そうすると、コストが上がった分を転嫁しようとしても、なかなか転嫁の力がない。それに加えてコスト・プラス税まで転嫁しようということは、なかなかむずかしいんだという意見があって、なかなか清酒にはその従価税というものが入りにくいんでございます、特級の一部を除きまして。これは現にございますけれども、というような説明もあったりいたしまして、しかし、それにしても、それじゃできるものからやったらどうだと、清酒じゃなかなかむずかしいというなら、それは時間をかけて勉強してもいいし、ほかにできるものがあるでしょうというような御議論で、一応そこまでで終わっているということでございます。  それから、たばこにつきましても、これはたばこ消費税が地方税としてある程度従価税的に働いておって、それが先に持っていくと、で、残りの専売のかせぎの中から、コストが上がった分を差っ引いて、残りが専売納付金になっておると、いわば定額税であるという以上に自動的に下がる要素がある、その問題と、やはりたばこの値上げをお願いしたときに、専売は利益があるのに値上げとは何ごとかという御指摘を盛んに受けた。それはやっぱり利益から納付するというのがわかりにくいからだろうと、それは利益から納付するんじゃなくて、税なんですといって、国の方もたばこは消費税ですと言わないとわからぬじゃないかという御議論があって、むしろ一般会計に納付してもらう専売納付金の部分、これは税の部分だと私ども考えておりますが、それはやはり税として構成したらどうかというかねてからの御議論がまた出てまいりました。これに対して一部の委員からは、しかし、それはうまくいくのかねと、税は税で決めてしまって、地方のたばこ消費税も決まったとおり入れていくと、国の税も決まったとおり一般会計に入ると、そうすると、葉たばこの値段を上げたら専売公社はパンクするじゃないかと、そこのところは値段はどうするんだという御議論があって、それがやはり税を決めて、さらに値段は別に国会で決めていただくということじゃうまくいかないんではないかと、税として決めるなら、もう値段の方は別の話だとならないと、うまくいかぬのではないかというほど突っ込んだ御議論も出ております。しかし、これも結論は出ておりません。
  26. 福間知之

    福間知之君 私、やっぱりいみじくもそういう嗜好品税というようなものがまたぞろ頭をもたげ出しているということは、反面において、従来の物品税率の改正、品目の拡大等では、これからの財政需要の幾ばくかをカバーする上できわめて不足であるというふうな判断があるのではないかと、こういうふうに思う。しかし、本当は単に酒、たばこじゃなくって、いわば消費税全般というものを見直さなければならぬと考えているに違いないと思うんですね、税調側も。まだ皆さんの側からもそう積極的に、いわゆる消費税——付加価値税を含めた消費税というようなものをそう爼上に上せてられないから、税調の方も余り突っ込んでないと思うんですが、どうもそこらのニュアンスが私はやっぱりあると思うんですね。やっぱりこれは暗にそういう付加価値税なるものを認めて、気持ちの中ではもう容認しているというふうな気がするんですがね、それは採用する場合、EC型か、シャウプ勧告型か、いろいろ御議論のあるところでしょうし、われわれが考えても大変なこれは問題で、簡単にはもちろん実行できないと、こういうふうには考えますが、そこらはどうなんですか、本当のところは。
  27. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 先ほどお答えいたしましたとおり、各論の第一回では、嗜好品課税のほかに個別物品サービスの消費税というグループも御検討願いまして、具体的には物品税と入場税と通行税がテーマになりました。物品税につきましては、従価税になっている郎分が多いんで、自動的に減るという要素は余りない。   〔理事中西一郎君退席、委員長着席〕  しかし、どうもこれだけ消費がふえ、消費内容が高度化しているという流れの中では、この物品税収というものはそんなに伸びない。これはなぜであろうかということが御議論中心でございまして、それはやはり課税範囲が狭過ぎるのかもしれない。それからあるいは一時期税調にあった負担水準論、大体メーカー価格の二割程度、小売り換算すれば一割程度という負担水準が、いろいろな事情もあって現在は一割五分程度に下がってきておる。これは税法上の負担率です。税法を直してそう下げたんですが、そういうメーカーで平均一割五分程度、小売り換算すると七、八%以下というふうに下がってきているが、これはひとつもう一遍もとに戻って二割、一割というぐらいまで上げる余地がないかどうか。その場合に一番目の議論と二番目の議論が重なり合いまして、要するに、いまの物品税というものは個別の物品をねらい撃ちにしておる。そうすると、消費者の方には実は負担感がないかもしれないけれども、納税義務者になっているメーカーの方には、非常に一種の負担感なり不公平感があるんではないか。なぜ私のつくっているのはこういう税務署にも調べられる、納税もし、やらなくちゃいかぬのですかと、ほかに似たような品物があるじゃないですかと、そういう意味でのアンバランスの感覚がどうしてもあるものだから、このねらい撃ちされている物品の税率を上げますよというときの抵抗感が強いんではないか。それはその物品を買っている人の負担感というものとは別の問題であるという御議論も出まして、それから考え方としては、できるだけ課税範囲を広げる方向はないのかどうか、物品税という枠の中で、という考え方一つ出てきてはおります。それにつきましても、しかし物品税の枠の中で課税物品を広げるということは、非常に新しいタイプの物品が出てくれば、これはやらなくちゃいけないでしょうし、バランス上やるべきものはやらなくちゃいけないでしょうし、従来からそういうことは積み重ねとしてやられてはおります。それ以上にいまの不公平感というのは、やはり非常に高額の品物がいろいろな理由で課税を廃止されてきている。具体的に話に出ましたのは、たとえば一着百万円を超える、二百万円というふうな着物であっても物品税がかからない。あるいはたんすの中でも非常に質のいいはずのキリのたんすはかからない、それをどう考えるんだという問題ではないかという御指摘があります。そうすると、一度課税をやめた物品をもう一度取り戻すということになるんでございましょうが、それが現実にできるのかねという御議論もあって、まあその辺でとまっております、御議論が。したがって、先ほど申し上げましたように、いまの税制の持っている問題をずっと洗った後で、もう一遍いまの税制に戻っていただいて、もう少し詳しくやっていただくか、あるいは感じとしていまの税制の中では幾らがんばってみても間接税系統はそう出てこないかもしれないという場合に、何か新しい考え方があり得るかという方へ移って行かれるか、それはもう少し先の段階になろうかと思います。
  28. 福間知之

    福間知之君 いまのお話にありましたように、たとえば物品税という一つの税目一つとってみて、それを掘り下げて議論をしていく、いわばミクロの議論になりますと、おっしゃるようないわば利害対立、相克する議論に当然のこととして発展すると思います。私は、いままでの議論がやっぱりそういう傾向で終わっているんじゃないか。とすると、マクロの一つ議論をやって、それを大前提として、たとえば先ほどから言っている不公平税制をなくす、あるいは低成長時代に見合った税制にする、海外の工業諸国に比べてみて日本はどういう点で相違があるのか、これからのひとつこのあり方はしたがって現税制を基本的にはどういう方向に是正を進めていくべきかという、そういうマクロの恐らく私は議論はあると思うんですが、あると思うんだけれども、現実には所得税じゃ、物品税じゃ何だというミクロの議論にずうっと進めていくと、それ自体で一つの壁にぶち当たってしまって、結局は余り抵抗のないほどほどの手直しということになってきていると思うんですよ。これは大蔵大臣が、昨年の臨時国会でも衆参両院で、予算委員会や当委員会でもおっしゃっているわけですけれども税制は直さにゃいかぬ、高度成長時代税制はやはり一遍見直していかにゃいかぬ、思い切ってそれはやっていかにゃいかぬと、こうおっしゃっているんですよ。ところが、いまお聞きしましても、当局としては税調にお願いしているということが表に出ているだけで、本当はもう少しわれわれとかみ合った議論というものがやりたいんだけれども、乗ってもらえないというふうな歯がゆさが実はあるんです。いずれにしても、それはいま言ったって始まらないかもしれませんが、税調でせっかく御審議願っておるんだから、中期計画に見合ってひとつやるということ、もちろんですけれども、さしあたってもう来年度の予算編成、その裏づけとなる歳入の中の大きな項目として、この所得税法人税等が考えられるわけです。あるいは消費税が考えられるわけですけれども、それらについては当委員会がさらに税調と並行して私は鋭意議論をしていただきたい、やらなきゃならないと、こう思うんです。特に最近、新聞紙上の報道ですけれども、経済団体、たとえば同友会あたりも、いわば全般的に税の負担率を高めるということを前提にしながらも、法人税、特に企業の交際費などの増税はとにかくやむを得ないのじゃないかというふうな方針も出しておるようです。あるいは負の所得税というようなものもある程度考えていいんじゃないかと、こんな方針を出しているようです。また、経団連の土光会長あたりは、企業増税反対だと、所得税をふやすのは非常に妥当だなんというようなことをおっしゃっているようです。また関西の同友会の方では、経済関西産業労使会議ですかでは、労使でいわば税制対策を決めて、十二日には大蔵大臣に要望に来ると、こういうふうに伝えられているんですけれども、その中には多分に物価減税その他所得の減税等の要請が入っているようですけれどもね。そういうふうに私はいま真剣にみんなが考えておるというふうにこれを受けとめるわけです。したがって、私ども立場ではかなりこれは突っ込んだ議論を行って、国民各階層に対して説得性のある一つ考え方をやはり提示しなければならぬと、またそれが義務だと思うんです。その場合には、私はあえてその甘いものだけを食べ込んでしまうというんじゃなくって、やはり勇気を持って是正すべきものは是正しなきゃいかぬということでお願いをするという姿勢でなければいかぬと思っておるわけですけれども、そういう点で、この減税あるいは税制問題については今後の財政計画との関係で不離不即、密接不可分という立場でさらに議論を発展をさせていきたい、こういうふうに考えますが、きょうはその他少し質問をしたい内容がありますので、その程度にしておきたいと思います。  ところで、これは大蔵大臣にお聞きしたいんですが、昨年の国会でも、いわば経済の安定あるいはまた財政の安定というために、安定基金の構想というものが持てれば持ちたいんだが、いまとてもじゃないがそういう時期じゃないと、こういうふうにおっしゃったわけです。私は非常にこれは関心を持っておりまして、ドイツにおきましては一九六六年の後半からかつてない大きな不況に見舞われ、六七年度の予算編成は非常に難航いたしました。また、オイルショック以降の七四年の大不況におきましても、国債の大量発行というものが避けられなかった。そういうふうな経験の中から、例の西ドイツにおける安定基金構想というふうなもの——経済安定成長促進法というような法律が生まれ出て、財政支出の抑制、あるいは増税を含む中期経済財政計画等が作成されたと聞いているわけですけれども、その後西ドイツの場合、これはどのように機能しておるのか、効果的に作用しているのか。これはわかっている範囲で結構ですけれども少し触れていただきたいと思うわけです。特に私は、それは一つの参考でございますが、すでに中期的な財政収支計算なるものが出されておりますことにかんがみましても、これからのわが国の財政のあり方については、やはり単年度主義というのは私は基本にすべきだとは思いますけれども、それだけではいけないんじゃないかと、たまたま私これを考えておったんですが、けさの日経新聞でしたか、大蔵省方針で何か報道されていましたけれども、私は、あれをそしゃくしておりませんけれども、文字だけざっと拾い読みしたんですけれども赤字公債を早くなくしていくということとうらはらに、しかし、ここ数年は発行を続けなきゃならぬと、こういう一つ状況、一方において支出の適切な節減、合理化、一方において合理的な増税政策というようなものが、いわば歳入、支出含めまして考えられなきやならぬというわけです。そうしますと、その収支を含めた、より具体的な中身を伴うミニ中期計画といいますか、私は大体三年程度が妥当じゃないかなと思うんですけれども、そういうものを当年度の該当年度の本予算に対する付随的な参考の一つの中期計画として御提示を願う。これは議決はするはせぬはともかくとして、やはりそしてこの政府なり議会が、それをある程度審議の上で前提として含んでいくと、こういうこと。これはもう五年じゃ長いし、十年じゃもちろん長い、何となく抽象的な感じで申し上げているんですけれども、三年ぐらいがいいんじゃないかなと、こんな気がするんですけれども、そういう点も含めて、先ほど申したドイツやアメリカ等では、すでに半長期的な中期的な財政計画がもう現実に行われていると、こういうふうに承知しているんですが、日本もいよいよそういうことを考えなきゃならぬのじゃないか。私はもちろんですが、わが社会党も単年度主義ということを従来から堅持しています。それは法律の定めるところです。それを曲げるという考えはありませんけれども、けさの新聞ではそういう財政法の部分の改正をも必要とすると、考えてはどうかというようなことが書いてありましたけれども、それらを含めて、この単年度主義だけではいけないという考え方。しからばどうするか。そういう必要性というものをどう考えられておられるかですね。
  29. 佐上武弘

    説明員(佐上武弘君) まず先生の御質問でございますところの西独の経済安定成長促進法の実施状況等について若干御説明申し上げますと、ちょうどいまから十年前の一九六六年に西独は戦後最大の不況に悩み、日本と同じように大変な税収の欠陥が起きると同時に、歳出面については非常に硬直化いたしまして、一種の破綻に近い状況になったわけでございます。先生御指摘のとおり、その問題を打開する方策の一環といたしまして、一九六七年の六月に経済安定成長促進法を与野党ともにこれを承認をしたということは御案内のとおりでございます。  その中でやはり骨子になりますのは景気の非常な過熱が起こる、あるいはそれを抑えるために引き締めを強化すると大変な停滞が起こるといったような景気変動が非常にぎくしゃくするというのはよろしくない。やはり全体を通じて長期にわたって安定をする必要があると同時に、また安定だけではなくて成長をしていかなきゃならぬ。そのために財政金融は何をなすべきかというような問題意識が出たわけでありますが、その中核をなすのが、おっしゃいますようにこの法案の五条第二項にございますように、景気調整準備金制度というものを設けたわけでございます。  この考え方は、たとえば歳出面で申し上げますと、景気の過熱のときに歳出の繰り延べをいたします。そういたしますと、その繰り延べが、その額を中央銀行にございますところのその基金の中に投入する。さらにまた、景気が過熱しておりますと、所得税あるいは法人税につきましてはその税額の一〇%を限度といたしまして増税を機動的にするようなことができる。さらに、投資活動が非常に活発であって、物価に刺激を起こすというような場合は、その償却を一部または全部を停止するというようなことを規定いたしております。歳出面及び税制面の機動的な運用、それによってできました収入は景気調整準備金の中に景気過熱時にはいわば凍結する。そのかわり不況になりましたならばその逆でございまして、歳入を入れておりましたところの、積み立てておきましたものを取り崩して歳出に機動的に充てると同時に、さらに、申し上げました所得税法人税については税額の一〇%を限度として減税することができる。あるいは償却資産につきましては投資を促進するために一定の金額を控除をするという手段を持っておりましまして、景気政策上ぎくしゃくしないようにする形になったわけであります。  で、実績でございますけれども、一九七八年ごろから景気が非常に回復いたしまして、七〇年代になりましてかなりの過熱の状況を示してまいりましたので、法人税及び所得税についてかなりの付加税を、一〇%でございますが徴収いたしまして、そしてそれを景気調整準備金に組み入れております。  さらに一九七三年、御案内のとおり通貨危機が起こりまして、マルクを目がけて外貨が流入することによってかなりの過剰流動性が生じたわけでございますが、その際は安定国債という名前で歳入調達の手段としてではなくて、別の形でその安定国債を、二十五億マルクと記憶いたしておりますが、それを発行いたしまして、そしてそれを吸収した民間分の過剰流動性をひとしく景気準備金の中に組み入れるということをいたしたわけであります。これは連邦のみならず州にも、地方団体にも両方適用されるわけでございますが、御案内のように、石油ショックを中心といたしまして西独もかなりの景気停滞に陥ったわけでありますけれども、その際にその備蓄いたしましたかなり金額をこれを取り崩しまして、それぞれの歳出分に充て、そうして浮揚効果も持たした。その意味においては、ヨーロッパの中で西独も、いわば財政運営について、財政金融政策が、あの不況時においてかなり好況時にためておったバッファーによって円滑に吸収できた。大変な赤字公債が発行されたというふうに言われておるわけでございます。  そこで、先生の御指摘の問題は、政治的な御判断の問題もありますので大臣からお話があると思いますけれども、私ども事務的に考えますと、やはりその考え方それ自体には、私は、非常に先生が御指摘のように興味と関心があることは事実でございまして、これは十分に検討いたさねばならないわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、第一には、歳出をたとえば繰り延べして、そして歳入の中に入れる、そのかわりまた不況時に歳出に出すという歳出権の問題、あるいは税率を行政府に一定の限度で移譲して、そうしてそれを景気の繁閑の次第によって機動的に発動するということになりますと、あるいは租税法律主義その他のような問題として、財政民主主義あるいは国民全体の合意というものが得られるであろうかと、これは現行法制下において十分に検討せねばならない問題だと思うのです。  もう一つは、先生まさに御指摘のとおり、巨大な実は赤字公債を抱えておりまして、こういった現状で一体景気準備基金とか、あるいは景気安定資金といったような別途のものを置いて、そうしてそこに財源を積み立てておくということと、一体どういうふうな整合性のある考え方になり得るだろうかという問題もございます。  第三番目には、おっしゃいますように、現在の財政法の基本をなすものは会計年度の独立でございます。そういった面から申しますと、年度間にわたって行政府が、もちろんそういう措置をとります際には、とって後一定期間にもし国会が拒否しない場合は同意したものとみなすということで、事後的な国会のコントロールはございますのでございますけれども、先ほど申し上げましたいわばそういう行政府への権限移譲の問題、あるいは多年度主義といったものが現行法制に親しむかどうかというような点の問題点はあろうかと思います。しかしながら、先生御指摘のように、まあ何よりも現段階におきましてはこの特例公債から一日も早く脱却して、健全な姿に戻すというのが現下の焦眉の問題でございます。それと並行しつつこうした構想をどういうふうに考えていくか、私どもに与えられた大きな課題だというふうに考えております。
  30. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 現在の財政制度は御指摘のように単年度主義をとっておるわけでございます。しかし、これを長期的な視野を持って計画し運営していくという必要性がございますことは、福間委員の御指摘のとおりだと思うのでございます。元来私は、われわれが現在に処するということは、未来を考えなけりゃできないことでございますので、いずれの場合におきましても、未来の展望を持たないで現在の問題を処理している場合はないと思うのでございます。ただ、それにやや計画性を持たせるということが御提言の趣旨だろうと思うのでございますが、しかし、それはそれなりに長所もございますけれども、また弱点もあるわけでございまして、一応そのように決めるとそれだけ財政自体のフレキシビリティーが失われるわけでございますし、一度決めてしまうと大変既得権化してしまうわけでございます。たとえばいま公共事業費などでも、たとえば道路財源みたいに特定財源を持っておるものと、最近非常に治山治水の経費に対する要望が強まってまいりましたけれども、これを、それじゃこの時勢の要求に応じて大いにふやそうといたしましても、もうちゃんと特定の財源を持っておる方面からはなかなかそれを譲ろうとしないわけでございますので、一遍設定した制度というのはなかなかむずかしく将来を規制してしまうわけでございますので、そういうデメリットもやはり考えておかなければならぬと思うのでございます。しかし、そういうものを考えながら、長期的視野をどう導入するかということにつきましては、必要もございますし、また、現実に私どもはその検討も進めていかなければならぬと思います。ただ、今日のような場合、大量に公債を発行しなければならぬというような場合におきましては、公債を発行しなければならぬ事態におきましては、そういう安定資金をその中から割愛してまいるというようなこと自体が大変自己矛盾的なんでございまして、一応こういう危機から脱却した段階におきまして腰を落ちつけて検討すべき課題ではないかと、いまの場合におきましては、こういう不正常な状態の段階におきましては、本格的な導入というような問題につきましては、私としてはやや消極的に考えております。
  31. 福間知之

    福間知之君 まあ、私はそれを制度として現在の単年度主義を変えてしまえと、こう言っているわけではないんですけれども大臣も大体おっしゃっていたように、また私も申したように、やはり一つの参考といいますか、目安といいますかね、そういうものがなければ、これは、私たち野党ではありますけれども、やはり審議そのものに一貫性が薄まるし、それから無責任にならないかと、こういうふうな感じがするわけでございまして、たまたま私は、けさの新聞、これ日経新聞ですけれどもかなり積極的意欲的なことが書かれているんですよ。むしろ私個人としては、非常にこれ興味を持っておるわけです。現に五十年度もそうでした、五十一年度もそうです、来年度も恐らくそうなんですが、連続で赤字の公債を発行せなきゃならぬというふうな事態になっている。一方において当然増経費が三兆円近くになるだろうと、新規の新しい政策などは実現がむずかしいかもしらぬなんていうようなことがささやかれている中でございます。また、先ほどいろいろと述べたような増税方針が日程に上っているというふうなことですから、国民は、私は不安でたまらないだろうと思うのです。  今日の景気状況にしても、まあマクロでは確かに鉱工業生産指数その他統計指数では回復基調になっていますけれども、ミクロでは一千件以上の企業が倒れてしまっている。そういうものに対してのいわば経済金融政策、産業政策というようなものも実はまだ十分じゃないという、非常にもうとにかくいま国民各層は不安で仕方がない。いま大臣、ちょっと哲学的表現を使われて、未来といえども現在の上にあるんだと、あるいはまた、現在も未来を考えた上で初めて成り立っているんだと、こういうこと、私もそれは同感なんです。ならばこそ、先ほど言ったような今日の財政状況のピンチというようなものを迎えた上ではだ身に感じているわけですね。ここの展望で何とか安定したもの、何とか明るいものをひとつ見出したい、こういうことが私、大方の国民の期待じゃないかというふうなことを感じてまあ申し上げているわけです。これはここで結論が出るものではありませんし、われわれ野党も大いにひとつこれ検討しようじゃないか、尊敬する大蔵大臣のことですから、まあ気持ちはわかってもらえるんじゃないか、こう思っているんですが、ひとつしかるべき時期に、五十二年度予算編成も始まっています。シーリング方式ですでに審査が始まっているわけですから、一度しかるべき機会に、しかるべき立場の者が話し合いをする、こういうことを望んでおきたいと思います。  次に、銀行局の方にちょっとお聞きをしたいのですけれども、仮にまあいま言うところの特例公債の発行というものが実現するとしますと、いまからですから、今年度の後半にかなりの膨大な額が引き受けられなきゃならぬと、シ団関係を通じて引き受けられなければならぬ、こうなるんですけれども、いわば大量の国債発行と過剰流動性の心配ですね。それに関連してマネーサプライの伸びがどの程度であればデンジャーゾーンを割らないのかと、オーバーしないのかと考えておられるかということ。特にいま、いままでは金融政策一つの判断としまして、いわば物価と景気というものを両立させていく、こういうことでなかったのかと。さらにそれは、最近においては一般的に物価の上昇傾向が少し強まっているという立場から、物価抑制のために抑制をしていく、引き締めをしていく、金融政策の判断として。そういうことになっているような感じがするんですが、どうなんですか。
  32. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 最初の御指摘の、ことしの後半に国債が大量に出るという場合に、まず過剰流動性の心配等はないのかという点でございます。まあ過剰流動性という問題をどういう指標によってとらえるかということでございますけれども、私ども金融関係のこの政策を考えるに当たりまして、現実のいろいろな金融指標の動きを見てまいりますが、その中で注目すべきものは、金融機関の貸し出しの状況でございますとか、あるいはいろんな金融の動きの反映として出てまいりますM2、俗にM2と申しておりますが、そういうマネーサプライの関係の動きを見てまいります。で、このM2がどういう原因によって増減していくかというところはまあかなり複雑でございまして、国によっていろいろ違うのでございますけれども、日本の場合には銀行の貸し出しの動き方というところが従来の経験でございますと一番大きな要素に相なってまいります。で、先の、このM2の動き等についての先の見通しというのは大変困難でございますし、まだわが国では十分分析、検討が行われておりませんで、実はただいま日本銀行におきまして特別の研究を進めておる段階でございますので、余り断定的なことを申し上げる自信はないのでございますけれども、しかしまあ予想されます赤字国債の発行量と、それから現在の企業その他の資金需要、それからこれに対応してまいります金融機関の貸し出し態度等々考えてみますると、現在、M2の増加率は前年比で大体御案内のように一五%台というような増加率の推移を示しております。で、まあなかなか長期的に見通しがむずかしいのでございますけれども、ことしのこれから暮れにかけまして、この三カ月程度は先般日本銀行が各銀行に窓口指導その他の数字のめどを示しておりますが、そういうものをもとにして考えてみますと、ほぼ同じ程度増加率に推移するのではなかろうか、こういう感じがいたしております。したがいまして、当面諸般の情勢から考えまして、いわゆるこの過剰流動性というような問題が心配になるという情勢ではないと思っております。  で、御質問の中にございました、どの程度になればどうかということでございますが、やはりマネーサプライの数字の動きは、政策判断の一つの材料ということでございまして、その他企業の動き、企業の手元流動性の状態でございますとか、金融機関の貸し応じる態度の問題でございますとか、いわゆるもとになる貯蓄の動向でございますとか、いろいろなものを総合的に判断をしないと判断がつきにくいところでございまして、M2自体について何%になるとどういうふうに政策を考えるというようなところまで実は基礎的な検討がまだいっておりません。私どもはやはり一つの材料として判断をしてまいりたい、こう思っておる次第でございます。  それから、それでは当面の金融政策として抑制的に考えておるんではないかという御指摘でございますが、私どもそういう考え方はいたしておりません。これは日本銀行とも常時打ち合わせをいたしてまいっておりますが、現在の景気も一応上昇カーブにございますけれども、いろいろ跛行的な現象が見られるというような点もございます。他方、御指摘の物価に対するこれは十分慎重に見ていかなければならないという要請も両方ございますので、当面われわれは現在の金融基調でいくのがいいんではないか、そういうふうに考えております。  ただ、先般新聞等にも報ぜられましたが、十−十二月期の窓口規制の枠につきまして、これは前年の枠に比べますと若干の減少した枠を日本銀行が指示したように聞いております。で、これはもう御案内のように、窓口規制の枠を考えます場合に、各銀行から日本銀行は市中の資金需要の動き等を聴取をいたしまして、そうした上で判断を加えて決定をしておるものでございますが、その資金需要の動き等が大変ただいま鎮静をいたしております。平静でございます。したがいまして、この十−十二月期の枠というようなものも、そういうところで十分賄える、こういう判断の上に立ちまして示されたものであるということでございます。特に昨年よりも抑制的に金融の面でやっていこうと、こういう考え方をとっているわけではございません。ただいま申し上げましたように、現在の金融基調を維持してまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  33. 福間知之

    福間知之君 特段に引き締めるということではないと、こうおっしゃるわけですね。しかも、いまの御説明の中にもありましたように、いわゆる窓口規制、逆に言えば銀行の窓口における貸し出しの量というものがM2というものと深い関係があるということ、これは私どもわかる。さらに金利等も関連があると思うんです。大きないまの一五%程度の伸びであれば間違い、問題はないんじゃないかというお考えのようです。私もその一五がいいのか、一七がいいのかわかりませんけれども、要するにそれはわが国の場合は窓口規制という面でしか考えられないと、調整を図る上では。貸し出し量を調整していくということが唯一の最大の手だてのように思うんですけれどもね。その前の判断として、現在は、たとえばいまおっしゃったように、民間の資金需要がそう大きく動いてない。それは何か、これは設備投資の動意がまだ本格化してないということじゃないのか、景気が全体として中だるみしているといわれているのも、そして資金需要が余りしたがって大きくないというのも、そういうところにあるんじゃないか。さらには仮需要が増大していって、インフレムードになっていくというふうな徴候もまださほどないというふうに私も感じてはおるんですけれども、国債が発行された場合に、これはいろいろ外国と違うんでという事情はいままでの議論でわかっているんですけれども、年末を迎えているだけにどうなのか。私は一番心配するのは物価上昇なんです。時間がありませんので多く申し上げられませんが、何も国鉄の値上げ、電電公社の値上げが行われるからという意味じゃないんですよ。そういう意味じゃないんですよ。それだけじゃなくって、どうもまだ価格の上昇という底上げの機運というのは潜在的に強いと、こう私は感じておりまするから、それが年末にかけてそういう公共料金の値上げとも連動して果たしてどうなっていくか、そこへ通貨の供給量というのはふえていくということになれば少し心配じゃないかなと、こういうふうなことでお聞きをしているわけです。と同時に、仮に五十二年度に向かってこれから景気をさらに浮揚させていくという姿勢で政策を推進していきますね。そうすると、かねがね言われていましたように、今度は一方において大量の国債の消化と、さらにはまた景気回復に伴う民間資金需要の増大というものとの競合ですね。これはクラウディングアウトと一般に言われているようですが、そういう問題にまでこれからの私は国債発行というようなものに伴う金融政策というものを適切にしていかなきゃならぬと思うんですが、来年度に向かってそういう心準備をなさっておるかどうか。
  34. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 基本的に先生の御指摘のような考え方であるべきだと思います。具体的にどういうふうにしてまいりますかはまだ今後の、特に来年度の景気の動向その他大変未確定要素が多いわけでございますから余り具体的に申し上げられませんが、要するに第一点、景気の情勢、つまり金融情勢でございますとか、企業あるいは金融機関の資金事情とか、こういうところにマッチした方向での国債発行ということが前提になりますれば、やはり基本的には財政の規模なり何なりというのが、景気動向のふさわしいものとして決められるわけでございますから、全体としてはクラウディングアウトという問題は出てこない、こういうふうに思います。ただ時期的にやはり資金の需給の資金余剰とかあるいは資金不足とか、こういう幅は経済の拡大に伴いまして次第に大きくなってまいります。そして企業の動き方というのが必ずしも予測しがたいところがございますので、そういうところにつきましては、金融当局といたしましては、情勢等を慎重に常時注目をいたしまして、いままで以上に機動的に、弾力的に金融政策、いまお話のございました窓口規制のほかにもちろん金利政策あるいはオペレーションあるいは準備率というようなあらゆる金融手段というのを情勢に適合した上で考えてまいる、こういう姿勢で臨んでいくという考え方でおります。
  35. 福間知之

    福間知之君 まあ当然そうだと思うんです。問題は、やはり先ほどの御説明の中にも触れてましたように、貸し出しがマネーサプライの調整弁になっている、またそのことに伴う弊害、そういうことは私先ほど申したようなことなんですけれども、今後年間に四兆あるいは五兆余りの国債の残高を有すると、こういうふうなことになるわけでございますので、特に都銀等の資金繰りというものが、あるいはまた資金繰りだけじゃなくて、結果として収益というようなものにも圧迫の傾向が出るという危険も考えられるわけです。何も私、銀行もうけさすためで言っているわけじゃないんですけれども、まあ金融が円滑に流れていくという上での考え方としてそういうことが考えられる。先ほどサプライの伸び率が一五%程度になってそう問題はない、こういうお話でございましたし、仮に一五%、一六%程度の伸びだとしまして、特例公債の発行が仮に行われて、それも十分に消化して、銀行の貸し出しの増加は、一説によると一割強ぐらいだろうと、こういうふうに言われているわけです。恐らく日銀の判断は先ほどしたがって貸し出しを大きくこの際変更しない、年末に向かっても。こういう判断がそこから出ていると思うんですけれども、私は五十二年度の設備投資の拡大ということを前提に考えれば、果たしてどうなのかなというふうに思うわけでございます。仮に、日本では外国ほどそう深刻に考える必要ないかもしれませんが、都銀が国債の市中売却というふうなことをも行って民間資金の需要に対応していく。こういうふうな事態もないことはないわけであります。で、日本の場合にその金利というものの自由化ができておりませんから、非常にその点マネーサプライの調整が円滑に市場を通じてなかなかできない。こういう傾向があると思うんです。で、毎年公債が発行されて、かなりの額が発行されていくという立場で考えれば、さらに経済の規模が高度成長までとは言わないけれども、やはりかなり拡張して、ある程度拡張していく。また通貨の発行量も一兆数千億円というのがコンスタントに出されていくというふうなことでございますので、やっぱりM2というものについては、ますますこれは単にインフレーションを抑えるというだけじゃなくて、経済活動の景気の安定的な拡大というふうなものとの関係で非常にむずかしい立場に立たされて議論が行われると思うんですけれども、前国会でも申し上げたんですが、やはり金利の自由化等について金融制度調査の答申等も読ましてもらいましたけれども、これから先どういう施策をとっていかれようとしておりますか。特にこれは郵便貯金との関係でもむずかしい面があると思うんですけれども
  36. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) いま御指摘になりました金利自由化問題というのは、先般の金融制度調査会でもいろいろ御議論をいただきました。これはわが国の現状は、すでに申し上げるまでもなく、ほぼ与信面は自由化されております。受信面の方が自由化がなかなかむずかしい。こういう状況でございますが、今後金利機能を活用してまいるということが、金融政策的には大変重要な要素であると私ども考えております。そのためにこの自由化ということは、一つの理念としてございますけれども、しかし、現実の問題といたしましては当面は大変むずかしい要素をはらんでおります。いま先生の御指摘の中にもいろいろの角度からのむずかしいというところ御指摘がございましたが、まさにそのとおりだろうと思います。したがいまして、私どもは当面金利が弾力的に動くようにして、そして機能を発揮していくという角度で物事を考えてまいりたいと存じております。そういう意味で、一つの問題は、いまも御指摘のございましたような預貯金金利についての決定の仕方なり動き方という点にとてもむずかしい問題がございます。それから金融市場なり資本市場なりのいろいろ売買条件の動き方というようなところがなお未整備の部分等もございまして、なかなかいろいろの問題が残されておるというふうに私ども感じております。そこら辺をどういうふうにこれから金利の弾力化に向かいまして進めてまいるかというところをただいまいろいろ勉強しておるところでございまして、まだ具体的にこういうところからこういうふうに手をつけてまいりたいと申し上げるところまで実は勉強がまだ進んでおりません。今後鋭意勉強を進めてまいりたい、こう思っております。
  37. 福間知之

    福間知之君 最後に。  ぜひこれは検討していただきたいし、特に先ほど触れたように、国債が大量に発行されていくという上から、国債管理政策という面から見ましても、やはりその前提条件が、そして金利自由化という問題がかなり重要性を持っているんじゃないかと、こういうふうに思います。まあこれは大蔵省当局、あるいは各金融界との関係で利害がかなり錯綜をしますから、それだけにむずかしいとは思うのですけれども、日本における債券市場というものを育成していく上で、また必要なときに公債の発行ということが円滑に行える上で非常に重要なことだし、海外諸国に比べておくれている一つの部門だと思うので、検討をせっかくやっていただくことを要望しておきます。
  38. 中西一郎

    ○中西一郎君 私は、限られた時間の中で、まず初めに原則論なんですけれども、海外経済協力についての外務当局なり大蔵大臣の基本的なお考えを伺って、その上で、実はあすですか、九日の日にアルゼンチンからオスという経済大臣が来日されるらしい。そのことに関連して具体的なテーマの進捗状況その他について伺いまして、なお若干時間があれば、これは大蔵大臣、聞いていただくという意味で、負の所得税のことに若干触れたい、かように考えています。  まず基本的な問題としまして、世界的規模の春闘だという人もあるわけですけれども、別段季節を限らないわけですが、第一回、第二回、第三回、第四回とUNCTADの会議も持たれて、だんだんそれが北といいますか、先進諸国に対して結束を固めておる、そういうような情勢の中で、日本の経済というものが、世界の経済の枠組みの中でどういうふうに生きていくんだと、そういうことが問われ直されておると思うのです。いつだったか、これは私正確には覚えてないんですが、大蔵大臣がある機会に、いまの世界の百数十カ国というのは、それぞれ一本のザイルでつながっておるんだと、そういう運命共同体みたいな関係にあるということで、経済協力のことに言及されたことを記憶いたしておるんですが、確かに相互依存関係というのは大変高まってきている。で、国内で雇用の問題、景気の問題、いろいろあって大変なんですけれども、しかし、長期的に考えるとこの経済協力、援助の問題も含めまして、先進国の一員である日本の役割りということだけでなしに、日本経済が将来どうなっていくかということに絡んで、この国際協力という問題を、その重要性を十分認識していかなければならない時期にきておるんではないか、そういうふうに思うのですが、それに関連して全く個人的といいますか、大臣のかねての御所見をひとつここで原則的に披瀝していただきたいと思うのですが、お願い申し上げます。
  39. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、世界の中で日本経済がどうして生き延びていくかということは、第一日本が世界の中で必要であり、またそれだけ信用される存在であり続けなければならぬと思うのであります。  そこで、一つには貿易関係がございますが、この関係は売り買いの関係でございます。で、貿易の円滑な拡大を通じて、お互いに有無相通じていくということで世界の発展に日本が寄与してまいるということでございますが、この関係におきましては、日本はガットの精神にのっとりまして、無差別自由な貿易を拡大していくということでありたいということを標榜いたしております。これは大変むずかしいことでございますけれども、現実には輸入の規制その他いろんな関税あるいは関税外の障壁がいろいろ多いわけでございますけれども、そういったものをできるだけ排除しながら、より自由な、より無差別な状況に持っていく一つのプロモーターとして日本はやっていかなければならぬのじゃないかと、したがって、日本自身はそういう意味で最近やや保護主義的な傾向が国内にも見えますけれども、これはよほど慎んでいかなければ、日本の存立のためにも大事なことではないかという感じがいたしております。  それから第二の領域でございまする経済協力の問題でございますけれども、これには国際機関を通じての問題と、それからバイラタラルな二国間の問題とがあるわけでございます。わが国は国連を初めといたしまして、多くの国際機関に名誉あるメンバーとして加盟いたしまして、それなりの分担をいたしておるわけでございまして、この体制は崩してはならないと考えております。  それからバイラタラルな関係におきましては、いろいろ経済協力の面でいろんな問題が提起されておるわけでございますが、われわれといたしましては、できるだけその要請にわが国の国力の許す限り、またこれ、どうせ外国とのおつき合いでございますから、先進諸国がどういうおつき合いをしておりますか、それに比較いたしまして見劣りのしない、少なくとも見劣りのしないおつき合いはしていかなければならぬのじゃないかと考えております。最近政府援助が若干比率が落ちて、日本に対する批判があるようでございますけれども、これはまあ一時、賠償なんかがもう全部終わった段階でございまして、一時的にそうなっておりますけれども、私は実はこれからしばらくたちますと、相当背負い切れないほどの援助のつけが回ってくるんじゃないと考えております。何となれば、政府間でいろんな話が行われておるばかりでなく、民間の団体または民間の会社等を通じましていろんな話がたくさん行われておりまして、外国ではそれを日本の話と受け取っておるわけでございますから、それはやはり基金とか輸銀とか、結局政府の信用に関係してくることに結局はなってくるわけでございまして、恐らく政府援助というものは相当累増してくるのではないかと考えておりますが、いずれにいたしましても、国力の許す限り、こういった開発途上国に対するものはとりわけ配慮していくべきじゃないかと思います。ただ、大事なことは、そういうことを約束をいたしたり、バラ色のことを申し上げたりすることが芸ではないんで、やっぱり約束したことは実行しなけりゃならぬわけでございますので、約束することに非常に勇気が、約束することなんて簡単なことなんでございますが、約束するときにはこれは必ず実行するんだということでないと、下手に約したらいかぬと思うのでございます。したがって、約すれば果たすんだという、このそこの自信を持ってやらないと、後で約束をしたけれども思うとおりにならなかった、あるいは時期がおくれた、あるいは金額が少なくなった、あるいは条件が悪くなったということになりますと、これは大体初めから約束しなかった方が得なんで、ですから、そのあたりは日本が今後国際経済協力の面で一番心しなければならないことじゃないかと考えております。
  40. 中西一郎

    ○中西一郎君 いまのお話伺いまして感じたんですけれども、各省、それから外務省等中心になっていろんなプロジェクトがいま積み上げられつつある。確かに後になってうまくいかないというような約束を急いではこれまたならないし、慎重な調査等も必要だと思うんですが、外務省当局もし数字が頭に浮かぶならば教えてほしいのですが、ODAの〇・二五%というのはいつごろ達成できる見通しであるか、あるいはGNPの一%という目標も別にございますが、そういった目標に達成できてOECDで余り非難されないというようなことになり得るのはいつごろだろうと考えておられるか、一言で結構ですが。
  41. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 御質問の点に関しまして簡単に御説明いたします。  先進国の集まりでございますOECDの中に援助問題を検討いたしますDACと呼ばれます委員会がございまして、そこでは毎年各国の援助政策検討しておりますが、つい先般その委員会が開かれまして、日本の援助政策についても検討いたしました。これは七五年の実績について検討いたしましたが、その際は、日本のODAと呼ばれております政府開発援助がGNPに占めます比率が〇・二六%が〇・二四%に日本は落ちましたので、DACの全体の平均もはるかに下回っておりますので、その場でかなり批判が出ておりましたが、日本といたしましては、今後できる限りの努力をいたしますということで日本の現状を説明してございます。  全体の空気といたしましては、毎年、いま申し上げましたように、援助政策をその場で検討いたしますので、七六年の実績につきましては来年検討することになっておりますので、来年、七六年度の実績がどうなるかということを非常に注目しているということで、来年に延ばされたということになっております。そのいま申し上げましたDACの状況会議が十月の後半、同じようなメンバーでパリで開かれますが、そこでは援助問題全般について検討されることになっておりますが、いまの御質問の具体的にいつかということはなかなかむずかしいわけでございまして、外務省としてはできる限りODAの比率を上げるように今後とも関係省と協議して参考にしていきたい、こういうふうに考えております。  それから、GNP全体に占めます資金の流れの比重につきましては、一時民間ベースの協力が進みまして一%を超えたことがございますが、現在日本の比率は一%を七五年の実績ではかなり下回っておりますが、国際的に見ますと、むしろGNPの一%よりもODAがGNPのどのくらいの比重を占めるかということがかなり重要になっておりまして、GNPの一%を早く達成しようという声ももちろん原則としてございますが、当面はODAの比率を高めるということがより重要であろうと、そういうふうに考えております。
  42. 中西一郎

    ○中西一郎君 いずれにしましても、これは援助をされる側の国のことでもありますと同時に、援助する日本にもはね返ってくる問題でもございますので、できるだけ早くODAの〇・二五等の達成について努力をしていただきたいと思います。  そこで、先ほど申し上げましたアルゼンチンの問題に入るんですが、実はこれは九日の日にオス経済大臣が見えるというお話をしました。実は当委員会委員長岩動さんが、七月ですが、アルゼンチンへ行かれまして、向こうの副大統領その他主要の閣僚にお会いになりまして、日本政府当局に対していろいろ連絡もされ、要望もされておるところでありますが、岩動さんのお考えも踏まえて若干の質問をしたいと思うんです。  で、一つは外貨事情、アルゼンチンの方は一応の危機を脱したと、経済的にも政治的にも安定の兆しが見えるというようなことでありますが、西独などはドル資金援助で七、八千万ドル、相当巨額の話に応じそうである。これはほとんど確定ではないかというような情報も実は入ってます。そこで、日本側が、これは東京銀行が幹事銀行だそうですけれども、民間ベースで向こうとの折衝に入っておるようですが、余り低い金額でお茶をにごすということになると、さっき大蔵大臣お話がありましたが、人並みといいますか、につき合うというようなことの点を考えると、見劣りしないおつき合いと言われたんでしょうか、そういうことを考えると、西独と並ぶぐらいのことは日本としてはやっていいんじゃないかというふうに思うわけです。交渉の過程にあることだと思いますから、余り具体的なお答えはいただけないかもわかりませんが、そういった交渉についての考え方、基本的な考え方について外務省から伺いたいと思います。なお、国際金融局から次長さんがお見えになっているはずですが、次長さんからも伺いたいと思います。
  43. 内藤武

    説明員(内藤武君) いま先生が言及なさいましたアルゼンチンのマルチーネス・デ・オス大臣が、中銀の理事その他多数のメンバーを引き連れて現在やってきておりまして、非常にその申されましたところのシンジケートローンについて交渉中でありまして、全般的なアルゼンチンと日本との関係につきましては、先生がおっしゃいましたように、この三月にペロン政権が倒れて現在のビデラ政権になりまして、政治的な安定を得るべく非常に努力をし、かたがた経済についても再建策を強力に推進しまして、幸いにして国民の協力を得てその効果は着々と上がりつつあるということで、特にペロン政権の時代にやや左がかかった政策であったという点もありまして、西欧諸国においてはアルゼンチンの将来についてやや危惧があったわけでございますけれども、その点において現在の政権がとりつつある路線と、あるいは経済政策というものについても非常に信頼が回復いたしまして、その意味で諸外国、欧米はこのアルゼンチンのこの政権を盛り立てなければならぬと、そういう立場から今回の金融協力につきましても非常に好意的に、アメリカそれから欧州諸国などは非常に強力な支援態勢をとっておるということでございます。  で、先ほど申されましたように、西独に関しましてはわれわれの得ておる情報によりますと、約七千万ドルくらいの金融援助を先方が言ってきたのに対して、西独はアルゼンチンの将来をも見越してこれを九千万ドル米ドルに上げたというような情報もございますし、その他諸外国、非常に強力にやっておりますので、わが方といたしましても、今後これから伸びつつあるアルゼンチンとのいろいろな協力関係を進める上において、かたがたアルゼンチンが非常に日本に協力を期待しておる漁業関係の協力などにつきましても、今後の協力の素地をつくるという意味において、アルゼンチンが考えておりますカナダとか西独とかその辺のレベルと余り低くないレベルにおいて今回の話を取りまとめることができ得れば非常に有力であろうというように考えて、そのような意向で関係当局といろいろ御協議しておる次第でございます。全体的な点ですが。
  44. 北田栄作

    政府委員(北田栄作君) ただいまお話ございましたように、アルゼンチンは対外短期債務の長期化というような観点から、かなり金額のものを海外の市中銀行からシンジケートローンを得るという交渉をしているのは御指摘のとおりでございます。わが国に対しましても、日本の市中銀行団から七千五百万ドル相当額程度のシンジケートローンの希望があるということを聞いております。われわれといたしましては、先ほどからもお話がありましたように、できるだけ協力するという考え方でございますが、まだ日本の銀行から正式なお話を聞いていないのでございますが、民間銀行がアルゼンチン側の要請に応じまして、シンジケートローン供与の意向を示します場合には、これが円建てローンでございますならば、好意的に検討をしたいという心構えでおるわけでございます。ただ、いずれにいたしましても、この問題は民間の銀行が主体でございますので、その意向を尊重する必要がございます。その金額等については銀行等とも十分相談をいたしたい、このように考えております。
  45. 中西一郎

    ○中西一郎君 お話聞いていまして思うんですが、円建てということのほかに、ドル建てもその中の相当部分要請してきておるというふうに聞いておるんです。そういう点も含めてこれから折衝が行われるんでしょうが、西独に比べて見劣りはしないようにひとつ努力をしていただきたい、これは要望でございます。  いまお話が少し出たんですが、時間がないので漁業の関係に入りますが、アフリカの方でやっておった調査船がいまアルゼンチンの方に向かっておるか、もう着いたかという話を聞いています。向こうの漁場の関係は大変魚のよくとれるところと余りとれないところと何か中間地帯とか、いろいろ海域に区分があるらしい。日本から行く場合に、調査なさるんでしょうけれども、行く方の採算ベースということも考えないと、技術協力だけしてお魚とれない、とっても売れないとか、あるいは日本はこれずいぶん長距離の航海になるというようなことも考えますと、運賃がかさむ、いろんなむずかしい点もあろうと思うんです。しかし、日本のこれからの漁業資源のことを考えると、海洋法の関係もあるし、何とか新漁場はやっぱり開発した方がいい。そういう点で苦労は多いと思うんですけれども、現状でどういう方針でおられるかということを水産庁の方から伺いたいと思います。
  46. 松浦昭

    説明員松浦昭君) お答えをいたします。アルゼンチンの政府は新政権以来、外資の導入を図りながら漁業開発、特にパタゴニア水域の開発を進めたいという強い意向を持っておりまして、このためにわが国に対しましても日アの合弁企業を中心にしまして、水産関係の要請をしてきていることは事実でございます。特に、八月に海洋水産資源開発センターの安福理事長を中心にいたしまして、わが方としてはミッションを派遣いたしまして、向こう側といろいろ話し合った次第でございます。基本的に申しまして、水産庁の態度といたしましては、ただいま先生もお話しになりましたとおり、北方の水域でなかなかむずかしい事態が生じてくるわけでございますので、さような意味で南方の水域というものに十分に目を向けていかなければならぬ、こういう事態でございます。さらに、このアルゼンチンのパタゴニア水域はかなりメルルーサあるいはミナミダラの資源がたくさんあるということは知られておりまして、かなりの豊富な資源があるということはわかっております。そこで、この水域での将来の漁業活動というものにはわれわれも期待をいたしているという次第でございます。ただ何分にも企業の進出ということになりますと、民間企業を中心にいたしまして、そのリスクで進出を図っていくということになりますので、このためにはただいま先生のお話しになりましたように、何分にも日本からの距離が非常に遠いフエートの大体三倍くらいになるんじゃないかと思いますが、そういう水域で果たして経済的に引き合うかどうかという危惧の念もございますし、また資源状態につきましても、アルゼンチン側が非常に強く言っております南緯四十六度以南の水域はミナミダラが中心でございまして、この水域では寄生虫問題等もございまして、やはり南緯の四十度から四十六度というところのメルルーサの資源もひとつ一緒にとらしてもらうというようなことを考えませんと、なかなか企業的に成り立たないのではないか。また同時に加工船等も持ってまいりまして、ミール、魚油、あるいはすり身加工といったような可能性も十分にチェックをしてみなければならぬという地帯でございます。そこで、まず何と申しましても基礎的に海況、魚況あるいは漁業資源の豊度等十分に調べまして、その上に企業化試験をいたしまして、この企業化調査に基づきまして、合弁企業の段階に入っていくということを考えたいというふうに思っておる次第でございます。  そこで、先生もお話のように、まず基礎調査のことでございますが、すでにわれわれこの点につきましては着手をしておりまして、先ほど申しました海洋水産資源開発センターの第一オリエント丸、二千二百トンの船でございますが、この船をすでにアフリカ水域からアルゼンチンの水域に回航いたしておりまして、十月の十四日にはブエノスアイレス港に着きます。これで一月末まで基礎調査をやりまして、引き続きまして企業化調査に入りたいというふうに考えておる次第でございます。ただ、かつてこの水域では一度わが方の合弁をやりまして、うまくいかなかった事例がございまして、万が一将来またうまくいかないというようなことがございますと、せっかくの日アの関係にもひびが入るということでございますので、合弁の条件等につきましても十分にアルゼンチン政府と交渉していって、間違いのないような形でやっていくということで、入念な交渉をいたしたいというふうに考えております。
  47. 中西一郎

    ○中西一郎君 外務省、水産庁のお話、大要よくわかりました。  先般九月ですか、ブラジルからガイゼル大統領が来ました。日伯関係は双方大変よかったという合意に達した、金額も大変大きいわけですが、お隣りのアルゼンチンとしては、やはりブラジルの方に対して羨望の念を持っておるかもしれないし、日本にやっぱり大きな期待を寄せておるのではないかと思います。このことはいまの国際金融局、外務省で考えていただいておる資金援助、また漁業の新資源開発、両方に絡むわけですから、せっかくの機会でありますし、両方の国がよかったなという結論が得られるように、さらに努力をしていただきたい、要望をいたしておきます。  次に、先ほど申し上げたことなんですが、大蔵省の所管がどこだということを私まだつまびらかにしていませんし、十分な検討が進んでおるかどうかも知らないのです。けれども、最近数カ年の間にある政治家が提言したこともありますし、経済企画庁の中期経済計画の中でも、言葉としては出てきました。最近、経団連の報告の中にも出てきましたが、所得税と逆の話で負の所得税のことで一言要望かたがた申し上げておきたいのです。というのは、財政制度審議会あたりでそういうことをひとつじっくり取り組んでみられたらどうだろうかということをかねて考えていまして、事の成否はそう急いでもしようがないと思いますが、しかし、中期経済財政計画の中で、後半に大変むずかしい問題がある。それまでの二、三年で間に合うかどうか、これもむずかしいんでございますけれども、こういう話があるんです。  これは日本で書物はもう発売されていますが、フリードマンの「自由と資本主義」という本があります。で、その中に出てくるんですが、アメリカでもいろいろ福祉政策をやっておる、やっておるんだけれども、それを達観してみると、三分の一は行政費、事務費に充てられておる。で、あとの三分の一は、そういうお金なりサービスをしなくてもいい人のところへそのお金やサービスがいっている。要するに富める人たちのところへいっている。あとの三分の一が本当にそういうサービスやお金がなければ暮らしていけない人たちのところへいっている。そういう意味合いで、いまの福祉政策というのは見直さにゃいかぬのじゃないか、行政の能率の上からそういうことを言っています。で、さらに言っておることは、こういう話は最近は余り聞きませんが、一時日本でも、テレビを持っておるから生活補助はやらないとかいうふうなこと。これは最近日本でもあるんじゃないかと思うんですが、一定の収入、就職して収入が上がってくると打ち切られてしまう。で、そういう収入を得れば援助が打ち切られるということは、その職業の選択といいますか、収入を得る道を選ぶ自由を奪っておるんじゃないかと、こういう指摘をしているんです。で、われわれはこの自由社会を守ろうとしている。そのときに個人の重大な自由という権利をそういう形ででも奪うことはよくないんではないかと、こういう指摘をしています。で、そのほかこれについて、いろいろなことを申し上げなければならないことではあるんですけれども、これ以上の時間がないので申し上げませんが、そういったことで、一部研究しておられるということは承っておりまするけれども、いまより以上にひとつ一歩踏み込んで、議論が多いですから、負の所得税なんかは言うべくして行われないという議論もございます。そういう意味で、これを取り上げる取り上げ方などむずかしいと思うんですけれども、これは、大蔵大臣にもし御所見があれば伺いたいし、一歩踏み込んでやろうということであれば、そういう大臣の決意も伺えれば大変幸いであると思うんですがいかがでございましょう。主計局次長さんでいいです。
  48. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) ただいま中西委員からもお話がございましたように、大蔵省部内で担当部局がどこであるかと、まあそういう状況にございまして、二年ほど前までは主税局で勉強しておりました。二年ほど前から主計局の方へ移ってまいりまして、これは、主税の方でいろいろ勉強しておりますと歳出面の問題ではないかということがだんだんとわかってまいりまして、二年ほど前からわれわれの方で勉強いたしておりますが、ただいま先生御指摘のメリットが幾つかあるわけでございます。最切におっしゃった諸施策が統合されてむだが省かれると、それから能率が上がるというような御議論があるわけでございます。それから就職の自由というような問題、勤労意欲をかき立てることになるというようなメリット、それから課税最低限と生活保護との間の中間層が現在救われてない、それが救われるようになるではないかと、国民全体の連帯感が喚起されるではないかというようなメリットがあるわけでございます。ところが、同時に非常にデメリットもございまして、一つは、所得だけでそういう施策をやることになるわけです。現在、御承知の低所得とか老人とか身障者とか母子家庭とか、所得以外の要件でもいろいろなきめの細かい施策が行われているわけですが、そういうようなきめの細かさがなくなる、それからほとんど所得のあると思われる人を全部調べなければならない。例の背番号問題、そういうようなものが波及していくと、そうすると社会の自由というようなものが阻害されるんではないかというような議論があるわけです。それから現在の徴税費をかなり上回る行政コストもかかる。先ほどのフリードマンの本には確かにコストが節約できるということが書いてございますが、他面、またコストの増加要因もあるわけでございます。それから目下のところは議論の域をまだ出ておりませんで実施している国は見当たっておりません。そんなようなことで、われわれ決して頭から無視をしてはおりませんで、それぞれ、そういう文献なり議論なりを検討はいたしておりますが、現実的にはなかなか、行政面でもそれから制度の仕組みを考えた場合でもいろいろ問題があるんじゃなかろうかというのが現在の認識でございます。
  49. 中西一郎

    ○中西一郎君 時間ありませんのでこれ以上は申し上げませんが、最後に、大蔵大臣から海外経済協力の問題あるいはアルゼンチンの問題そしていまの負の所得税、一括してで結構なんですけれども大蔵省政府として検討に値する問題であるというお答えがいただければ大変ありがたいです。
  50. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) アルゼンチンの問題は、十二日の朝私もお目にかかることになっております。  御提案がございましたシンジケートローンの問題につきまして、いろいろお話を伺って役所としてできるだけのことはいたさなければならぬと思っております。  それから、経済協力一般につきましては、先ほど私申し上げたとおり、国は政治と同じでございまして、信なくば立たずでございまして、やっぱりなすべきことはやらなければならぬと思いますけれども余りはでなことを言うて実が伴わないようなことはやりたくないと考えております。  負の所得税問題これはいま主計局の方から研究過程お話がございましたけれど、これから先もなお検討を続けてみたいと思います。
  51. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 午後一時まで休憩いたします。    午後零時三十分休憩      —————・—————    午後一時十三分開会
  52. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  53. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 冒頭に、大臣に一言お尋ねいたしておきます。  それは、昨今非常に心配されました台風十七号を中心にいたしました全国的な災害の関係がございますが、御承知のとおり、大臣の御郷里である小豆島などでは百年に一回の大災害だといわれております。ところが、昨今、私どもの静岡県の伊豆の災害でもそうでございますが、今度の災害の特徴は二年連続災害、三年連続災害ということで、特に中小企業、商店街等の受けた打撃は、もうとても言葉で言いあらわせる状態ではございません。特に災害の関連の法律そのほかで融資を受けられる限りは融資を受けてがんばったが、今度の災害でまた再びやられてどうにもならない、こういう状態で、もう中小企業も店を閉めなきゃならない、工場やめなければならない、こういう深刻な状況に追い詰められていることが、現況と伺っております。  そこで、そうした連続災害等で本当にもう大変な被害をこうむった方々のために、せめて国金、商工中金、中小企業金融公庫等、特別のやはり枠の心配をしていただく、あるいはまた、従来災害で借りておったところの資金の若干のやはり返済期限の延長と申しましょうか、据え置きと申しましょうか、償還の延期と申しましょうか、そういう特別な対策、さらにはまた一歩進んで、そうしたそれも受けられないというような方々のためには、国でもって何か地方公共団体等を通じての貸付策、まあこれは国でもって特別の金を、ひとつここで市町村を通じて長期で貸してあげましょうというような、進んでそういったような新しい施策も含めて、本当にこれはもう万全の施策をしていただく必要があると思うわけでございます。ただいま申し上げましたような点について各官庁とも鋭意努力されているようでございますが、大蔵大臣としても、やはりいま申し上げたようなことを中心にして最善を尽くしていただきたいと考えておりますが、その点についての大臣のお考えを承っておきます。
  54. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) きょうの閣議におきまして、今回の災害によりまして被害を受けました中小企業者等に対する災害融資の特別措置についての決定が行われました。大蔵省といたしましては、本措置を最大限に活用いたしまして、被害者の救済につきまして周到な努力を精力的に払ってまいるつもりでございます。  制度の改正につきましては、去年一部改正が行われたことは御承知のとおりでございますけれども、本年は立法上の措置ではなくて現制度の最大限の活用によって事態に対応しようということで、行政的には万全の措置をいま講じておるところでございます。  今後この実施の過程におきまして、いろいろ御注意を賜り、私どもが落ち度がないようにいたしたいと思いますけれども、この上とも御指導を願いたいと思います。
  55. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 ただいまの答弁で了承いたしますが、ただ繰り返して申し上げるようでございますが、二年、三年連続して災害をこうむった、すでにもう担保等も全部入れてしまって、これ以上出すものはない、こういう状況の人たちがかなり多いということにつきまして、ぜひ御配慮の上でひとつ格段の政策をしていただきたい。御答弁は結構でございますから御要望申し上げておきます。  次に、昨日の当委員会におきまして、鈴木一弘議員から国鉄等の財政問題に関連をいたしまして減額補正という問題がございまして、新聞等にもありましたように、大蔵大臣から今後法案の成り行き等を見た上で減額補正ということもあり得るか検討すると、こういった御答弁もあったわけでございますが、一方、私の方からの補正予算、一般公共事業等についての補正予算につきましては、はなはだ消極的なお話があったわけでございます。しかし、どうしても私はこの点について、さらにもう一つ、もう一歩進めて大臣なり当局のお考えを承っておきたいので、あえてもう一遍申し上げるわけでございますが、まず主計局にお尋ねいたしますが、各官庁、いわゆる一般公共事業を抱えた官庁からは、この千五百億の公共事業等予備費という問題について全国的にかなりのところからこれに期待すると、この間も申し上げましたように、四十七年度の公共事業と五十年度の公共事業が全く事業費において同じだと、こういうような現状の中で、どうしても国民の生活をよりよくしていくためには、一般公共事業の推進も非常に大事でございます。そういう点について、主計局に対して各役所等からも相当強い働きかけなり、あるいはまたお願いなり、あるいは問い合わせなりあったと思いますが、その実態を簡単に御説明願いたいと思います。
  56. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 主として災害に関連いたしまして議論をしておるわけでございますが、十七号台風が参りまして、被害額が非常に大きいために、そのような経済問題の方の議論はだんだんと消えてまいりまして、われわれの方は、経済認識については昨日大臣が御答弁になりましたような認識を持っておりまして、その議論をやっておりましたところ十七号台風が参りまして、そのほか東北、北海道の冷害問題が出てまいりまして、各省の方からは特段の議論がなく、本日の閣議でも公共事業等予備費から合計九十三億の予備費支出を決定されたと思いますが、そういう状況にございます。
  57. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 大臣、昨日の議論をまた蒸し返すようで、はなはだ私としては不本意でございますが、もう一問だけ承っておきたいのでございますが、一般公共事業につきましても、全国的規模から考えますと、全国的立場から考えますと、地域によりましては非常に大きな期待を持っていたと、こういう地域もあるわけでございます。そういうこと、あるいはまた今後の景気動向というものも必ずしも安定しておらない。また私の見方では、中小企業等、非常なやっぱりまだ地域的にも落ち込みの激しいところもある。こういうことを考えてみました場合に、災害を最優先にすることは当然のことでございまして、もうそれはそれでやっていただいていいわけでございますが、今後の景気動向とか、あるいはまた税収の今後の伸びとか、いろんな角度をお考えになっていただいて、場合によっては補正ということもあり得ると、こういうお考えになっていただけるかどうか、もう一度ひとつ済みませんがお尋ねしておきます。
  58. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 災害に関連いたしましては、救農土木事業を起こして災害地における現金収入確保の道を考えろという声が各省から出てまいりました。それにつきましては、いま農林省、国土庁を中心に計画が進んでおるようでございまして、大蔵省としてはその実現——これは従来例もあることでございまして、従来は大変収穫率が低い場合が多かったわけでございますけれども、今回の場合そういう考え方につきましては私ども賛同いたしまして、予備費をもってこれに充当して差し支えないんではないかという考えを持っております。  それから第二の問題でございますが、公共事業等予備費に関連しての景気対策としての公共事業費の追加問題でございます。この問題は、仰せのように、予算編成の段階におきましては、そういうことが主たる理由でこの費目が設定されたことは御指摘のとおりでございます。  その後の景気の判断でございますけれども、春から夏にかけて非常に順調に景気は回復過程をたどったわけでございますが、夏から秋にかけてはやや足踏みの状態にあることもまた戸塚さん御承知のとおりでございます。しかし、政府も、政府全体の判断といたしましては、ただいまの状況というものは景気の回復が軌道に乗って着実に進んでいるということには間違いないんじゃないかという判断をいたしておるわけでございまして、財政の追加支出によりまして、これを刺激しなければならない事態であるという判断はただいまはいたしてないということも、またたびたび両院において政府側が御答弁申し上げているとおりでございます。問題は、いま十月上旬でございますが、今年度の後半に景気がどうなりますか、これは私どもとしては景気が順調に回復が軌道に乗りまして、政府が予想いたしておりますような経済成長も低率ながら確保されるのではないかというように一応見ておりますけれども、これはこれから先のことでございまして、必ずそうなるという保証は別にありません。したがって、これから先どのようになってまいりますか、これは推移を見なければなりません。今朝の閣議でも天野国土庁長官から、いま戸塚さんがおっしゃったような趣旨の要望が私に対してなされたわけでございます。私といたしましては、これからの事態の推移がどうなりますか、これをよく見た上で考えなければいかぬわけでございまして、絶対に補正を組まないとか補正を組むんだとか、そんなことをいま決められる段階ではない。これからの推移を十分見きわめた上で政府としては適実に対応しなければならぬことは当然の責任でございますので、推移を見さしていただきたいと思います。
  59. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 では、デノミの問題についてお伺いいたします。  昨今の参議院の予算委員会におきまして、福田副総理から、数年後においてデノミがあり得るではないかというような前向きの発言があったということが新聞紙上に報ぜられ、かつまた、そのことが株式市況等にも非常に敏感に反映しておりますことは御案内のとおりでございます。そこで、所管の委員会でございます大蔵委員会の中で、もう一度大蔵大臣にデノミについての見解を承っておきたいと思いますが、時間の関係でその前にちょっと一括当局、まず理財局長から、最初にデノミ問題について、大蔵省としての現在の研究あるいはまあ準備という言葉がいいかどうかわかりませんが、要するに、どの程度の研究をなさっていらっしゃるのかという問題さらには、デノミの長所と短所をどのように区分けしていらっしゃるかという問題、さらには、もしデノミを実施するというようなことが決まった場合といいますか、そういう場合には一体どのくらいの準備期間というものが必要になってくるのであろうか、この程度の問題につきまして理財局長から御答弁をいただき、最後に大蔵大臣から、いまの大蔵省として、大蔵大臣としてデノミ問題についてどのように考えていらっしゃるか、これについて御答弁をいただきたいと思います。
  60. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 予算委員会でも大蔵大臣お答えになりましたときに、適当な機会にデノミを行うということの考え方というのはこれは一つ考え方であるというような御答弁があったわけでございます。私どもは事務当局といたしまして、勉強や研究をしていないとは申しませんけれども、これをいまそういうふうな、先生の御指摘のようなスケジュールで何か準備をいたしておるとか、あるいはそういうことはございません。ただ、デノミ問題というのはとかく日本ではデバリュエーションというものと混同されて、非常に心理的ないろいろな影響を与えたり何かするような傾向がございます。極端に言えば、デノミ株というのがすぐ上がってみたり、下がってみたり、そういうこともございますので、財政当局といたしましても、デノミ論というのは、本当はこれは大変技術的な問題にむしろ中心がございまして、にもかかわらず、非常に慎重に取り扱っておるわけでございます。したがいまして、ただ技術的に利害得失を述べろということでございますならば、これはまず単位が簡単になりますわけですから、それだけ計算単位が減ることによりましていろいろな事務の簡素化とか、合理化ができるとか、あるいはよく言われております対外通貨の関係では対ドルのレートが三けたである国はイタリーと日本みたいな、先進国ではもう二つだけになっておるというようなことから、対外的な威信が回復されるのだとか、あるいは自国の基本通貨に対する国民の信認の回復が得られるとか、こう言っておりますけれども、これとはまた逆に、今度はその通貨単位が縮まりましたことによりまして便乗値上げが起きるとか、いろいろな不便が生じてくる、あるいは便乗的ないろいろな行為が行われるとかいうことでございますから、私どもはいまここで大蔵省の、問題ということで申し上げたことですら、そこのところ余りにも強調されますと、何かいよいよ検討に入ったとかいうようなことにもなりかねませんので、大変慎重にいたしております。ただ、事務的答弁を少し離れて申し上げますと、フランスなんかはデノミをやりましたときに、これは新旧両通貨をしばらく併用させていたというようなことがございまして、デノミというのは単なる貨幣の単位の呼称の変更であるというふうに単純に考えて、もっと国民に訓練といいますか、あるいはなれさせるというか、そういうような期間が必要なのではなかろうかというふうな感じがいたします。そうでございませんと、デノミというのは、いかにもデバリュエーションと混同されたり、いろんなものと混同されることによって、かえって国民に不安な心理を与えるというのは好ましくないことではないか。しかしそういう決意をする段階は、恐らくいま大臣からもお答えがあると思いますけれども、いまのような、経済のまだ安定していないときにやることではなくて、やっぱり適切な時期を選ぶべきであるし、それまでに国民かなり勉強してもらうという期間が必要なんではないかというふうに考えておりますので、準備期間という点におきましては、私はむしろそういうものが要るのではないかという感じがいたします。
  61. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 結論を簡単に申し上げさせていただきますと、政府の当面の最大の任務は、経済の安定、欲を言えばインフレなき経済の安定成長というものを確保することでございます。これが任務なんでございまして、最近のような動揺が激しかった局面をようやくにしていま鎮静の段階に来ておるわけでございますので、一生懸命に全力投球いたしまして、この経済の安定を図るということ以外にもう何も考えていないというのがいまの政府の姿勢でございます。で、デノミネーションというふうなことが何らかの摩擦とか不安とかを伴うことなくできるような事態、将来そういう事態ができれば非常に幸せだと思うわけであります。問題は、それまで経済をどのようにして安定させることができるかという、大きなわれわれは任務を持っておるものでございまして、それに全力投球させていただきたいということでございます。
  62. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 それでは時間がないので、通告したことが全部できないかもしれませんから、最後になるかもしれませんが、ひとつ大臣に大事なことを承わります。  大臣大蔵省の中の個人的なお集まりの中の雑誌で、ファイナンス七月号、「霞ケ関三丁目の大蔵官僚はメガネをかけてドブネズミといわれる挫折感に悩む凄いエリートたち」こういう題名の大蔵省のある幹部の方がお書きになった随想といいますか、この一文をお読みになりましたか。
  63. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) そういう文書があることは聞きましたけれども、まだ読んでおりません。
  64. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 時間があれば、これ全部読みたいんです、大事なことですから。しかし、ありませんから簡単に一、二分で要旨だけ申し上げますと、「霞ケ関の官庁街を本拠とする公務員の一群を世間では“ドブネズミ族”と呼んでいる。黒っぽい背広に身をつつみ、気ぜわしげに動き回っているさまがドブネズミそっくりということなのであろう。その中でも大蔵省は、メガネをかけた秀才ばかりの俗に“エリート”といわれる人達で、これこそ正に“メガネをかけたドブネズミ族”と言うことになる。」という前置きをいたしまして、大蔵省に入られたばかりの方々を「若きネズミ達」ということで、この若きネズミたちといいますが、そういう若い方々がいろいろ先輩から教えを請うようなお話が幾つか出てくるわけです。その中で大蔵省というところは、「“先輩、後輩、同期の人達が、家族的な雰囲気で皆仲良く助け合って仕事をしていること”」は非常にいいと若い人たちは言う。しかし「“悪い点”については、“拘束時間が長く、自分の時間が持てないこと”」これが一番つらい「“希望する点”は“仕事をもっと能率的に片付けて自由な時間を持てるようにして欲しい”」これが若い大蔵省へ入られる方々の一致した御意見だそうでございます。その中で「今の中央官庁の公務員の拘束時間は余りにも長過ぎる。それも基本的な政策論議に夜のふけるのも忘れてというのであれば救いもあろうが、現実には、気ばかり遣うがあまり生産的でない国会答弁作業で毎夜十一時、十二時まで残っているのだから、子ネズミ君ならずとも毎日々々ボクらは国会のォー、答弁で残されて、イヤになっちゃうョー。」というタイ焼き君のかえ歌みたいな心境にもなろうというものと、こういうふうなことがございまして、「国会が国権の最高機関として、必要に応じて行政をチェックする権限を有していることは当然であるが、三権分立を建前とする我が国の制度において、行政には行政の固有の責務とルールがあることも、これまた認められてしかるべきであろう。行政は決して政治の従属物ではない。立法府と行政府が、それぞれ車の両輪として、円滑に機能してこそ、国民のための能率的な政治が保証されるのではなかろうか。」というようなことから、最後に結論に入ってくるわけでございますが、これからの大蔵省の、本当の国の中枢をあずかるお役人さんとしては、なるべく自由な時間が欲しい、その自由な時間というものを「勉強会に使われるかも知れないし、音楽会や演劇鑑賞に、または友人との魅力的な交際に使われるかも知れない。家族とのくつろぎの時間になることもあろう。そうした多様な欲求を持つということは大変良いことであり、健全なことだと思う。」と、そういうことを書いてあるわけでございます。そして、しかし大蔵省のお役人というのは非常に国家的な大事な仕事をしているんだと、こういうやっぱりお互いに誇りを持ってやらなければならない。「どうせ重い責任を背負って生きていくのなら、うつむいて、苦しそうな顔で歩むよりも、胸をはり、明るく天を仰いで進む方が、よほど男らしいのではあるまいか。少なくとも大蔵官僚が〃唄を忘れたカナリヤ〃」イコール使命感を忘れたエリート「になることだけは避けねばならない。」こういう一文でございます。  これは、いろいろこのことについていろんなお役所の方々にも意見を聞いてみたり、大蔵省の方にも聞いてみましたが、これはただ一官吏の意見ということでなくて、非常に多くの方々がこうした考えに共鳴をしているというようなことも実は私知ったわけでございます。同時に、大蔵省でははなはだ残念なことでございますが、若い将来を期待されている方が不幸なことにもなるというようなことも一、二最近において聞いている。こういう状況の中で、やはり国会との問題については、若干私どもも考えなければならぬ点もあろうし、また誤解されている点もあろうかもしれない。これはまた、これとの問題として、少なくとも大蔵省に働く、中枢に働く職員の方が、健康的で、これは精神面も肉体面もともに健康的で、しかもある程度のゆとりの時間を持って、そのゆとりの時間を勉強したり、あるいはまた家族とのくつろぎをする、非常に私は大事なことではないか。家内や子供の顔を見れないというのは国会議員だけでたくさんでございまして、そんなことまで大蔵省の方にやってもらうことは私はどうかと思う。  そこで、現状について秘書課長にまず伺い、最後に大臣にまとめてお伺いをいたします。  秘書課長さんに現状を伺いますが、私が見る限り、大蔵省の外を通りますと、年じゅうを通じて電気がごうごうとついて深夜勤が行われている。これは、予算編成期とかそういう特別の時期であるならばやむを得ないけれども、このごろでは年がら年じゅう大蔵省にはそういう現象があらわれていると思うが、現状はどうか。私は、必ずしもこれは好ましい慣例とは思いません。やっぱり昼間なら昼間必要な時間に働いて、夜は体を休めた方がいいんじゃないかと思うが現状はどうか。同時にまた、能率的に勤務して休養できるシステムというものをやっぱりこの際確立する必要があるのではないだろうか。こういうことについて秘書課長はどう考えていらっしゃるか。  最後に、大臣にひとつぜひこうした問題について、ただ働け働けと。われわれ議員でもただ働け働け、間違ったことがあったら違うんだと、こっぴどく国会でしかるということだけじゃなくて、やっぱりそういう人間らしさといいますか、ゆとりもあり、しかもまた精神も肉体も健康でやれるというような、そういう勤務環境というものをつくってあげなければいかぬのじゃないか。一番の最高責任者たる大蔵大臣が、職員の方を集めてそのくらいのことについて、いろいろまあ体をしっかりひとつ休めなさいというような、そういう管理もしていただく必要があるんじゃないか、指導の必要があるんじゃないか、こういうふうに思っておりますが、以上その点について大臣にはこの随想の御所感も含めてひとつ御意見を承りたい、お願いいたします。
  65. 禿河徹映

    説明員禿河徹映君) 私ども大蔵省の勤務の状況についてというお話でございますが、大蔵省の仕事は御存じのとおり、そのときどきの経済とか財政とか金融の状況にすべて結びついたことを仕事の内容といたしております関係上、経済なり財政、金融の動向いかんによりまして、どうしても勤務が忙しくなるという点は否めない点だと思います。最近の状況につきまして、先生お話ございましたが、確かにそういう関係から予算時期以外にも職員の超過時間というものはややふえておる、そういうことは言えると思います。恐らく数年前に比べて、平均の月の超勤時間は数時間ないし十時間近くふえておるのではないかというふうな感じはいたしております。ただ、私ども職員が時間的にも精神的にも余り余裕のない生活をしていくことは決して好ましいことでもございませんので、たとえば勤務時間につきましては、四十八年から各局の代表を選びまして勤務時間管理会議というものを設けまして、できるだけ超勤時間を減らすような工夫をこらすとか、あるいは事務の合理化、機械化ということに努めまして、たとえば高速の複写機の設置とか、あるいは省内の同時連絡電話の設置とか、そういうふうな機械化による事務の合理化というふうなことにも実は鋭意取り組んでおるような次第でございます。まだ決して完全と思いませんけれども、一応それなりの効果は上がっておるものと考えておりますし、私どもこれからなおそういう点で十分考えてまいりたい、かように考えております。
  66. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 私も若いときに大蔵省におったものですけれども、当時は無定量な勤務義務に服する時代でございましたし、オーバータイム、つまり超過勤務手当なんかのない時代でございましたけれども、大変夜おそくまで仕事をし、あるいは徹夜で仕事をすることも多く、あるいは人によりましてはそれを趣味にしておる——まあそこに青木先輩もおられますけれども、(笑声)われわれ趣味と考えられておるのではないかと思われるような人がないわけではなかったと思うのであります。しかし、いまその筆者が言われるように、短い人生でございますし、やっぱり人間性、人間味豊かな生きがいのある人生を送らなければいかぬわけでございますから、こういうだらだらした勤務はいけないと思います。予算編成にいたしましても、歴史は夜つくられるというので大体話がつくのは真夜中、ちんちんと草木も眠るころ、そういうことが毎年毎年行われておったんですが、そういうようなことはよくないことでございまして、いま若き筆者が言われるような、人間味を回復した勤務体制ということが私望ましいと思うのです。  ただ、幾つかの制約があるんです。一つ国会でございます。国会は最高機関であられて、各党が非常な緊張した打ち合わせの態勢の中で、いつ開かれるかということは行政府の関知できないことでございますので、全くずいぶん国会のために時間を、そのために時間をずいぶん空費することが行政府は多いと思うんでございます。したがって、こいねがわくは国会におかれまして、そういうことはやむを得ないといたしましても、出てくる政府委員なら政府委員、人数を決めていただくとか、ごく——全部もう大臣から局長から次長から課長から補佐に至るまで、ずっとみんな待機してというようなことでなくて、何かもう少し人間味豊かな、人間味を回復する勤務体制に、国会も御配慮いただくということをひとつお願いしたいと思います。  それから第二は、日本は夜でも地球の裏側は昼のときがあるんです。昼でございますから、そこでいろいろのことが起こりまして、夜対応せにゃいかぬ仕事がございますし、そういう人間味豊かな生活を保障しようとしても、公務の関係上どうしてもできない場合があるわけでございまして、それは万々やむを得ないことでございますので、そういう場合は欣然やっぱり公務優先で、勇躍公務についていただかなけりゃならぬと思うんです。そういう点につきましては私も各管理職の諸君にそういう点は、戸塚先生の愛情を持った御勧告の趣旨をよく伝えて、実践するようにお伝えしたいと思います。
  67. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、先日来から行われましたIMF・世銀年次総会について少しお伺いしたいと思います。  まず初めに、暫定委員会のコミュニケが出されましたが、この中にある、国際収支ポジションの強い工業国は、インフレ抑制政策の効果を妨げない範囲内で国内需要の持続的かつ十分な拡大を確実に図るべきであると、こういうコミュニケがございますが、これを踏まえまして、わが国にこれを当てはめてまいりました場合、現在の財政運営といいますか、状況下、あるいはまた景気の動同等で、これが十分満足される状況にあるのかどうか、まずその点について大臣の認識からお伺いしたい。
  68. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 経済一般だから、これ、佐上君から先に。
  69. 佐上武弘

    説明員(佐上武弘君) まず事実関係から申しますと、確かにIMFの専務理事の一般的な発言といたしましては、赤字国は総需要管理政策を徹底して、インフレを抑えるということを、そして国際収支の改善をし、資源をもっと輸出に向けるようにしなければならないというふうに申しておりますし、先生御指摘のとおり、黒字国においては物価の上昇がない限度において需要喚起をすべきである、こういうようなことを言っているわけでございます。  そこで、その際、森永日銀総裁がやはりおられまして、記者会見におきまして、ウィッテフェーンIMF専務理事がそういう議論をしているがどうか、という問答が、記者会見の問答がございまして、私どももそのあれを拝見いたしたのでありますが、そういう発言をしているけれども、自分の見るところでは景気はいま回復過程にあり、特にそのために総需要喚起政策をする必要が自分はなくて、このスタンスでしっかりといまの軌道を、財政金融の政策の軌道を進めていけばいいのだ、というふうに回答されたように聞いておるのでございます。  追って先生から企画庁の方に、現在の経済の動向その他、御質問があるように承っておりますが、午前を通じまして大臣からも私からも申し上げたと思いますけれども、いまの段階におきましては、私どもは、世間では中だるみ等いろいろの議論がございまするけれども、私どもの想定してまいりましたいわば景気の軌道を走っているように思います。大臣が申しましたように、もとよりこの四月から九月まで、まだ六カ月でございまして、それから以後、十月から来年の三月まで不測の事態が起こるというようなことがまあなければ、私どもの見ているところでは着実な回復路線を進んでいくんじゃないだろうかと、こういうふうに判断しておりますから、ただいまお願いをいたしております財政特例法のすみやかな制定、あるいは国鉄あるいは電電の二法の成立というように、年度当初にお願いを申し上げました不況克服予算の骨格をなすまず諸立法の早期成立をお願いをし、着実にその路線を進めてまいりますれば、この際特にわが国が黒字国であるがゆえに、その内需喚起の特別の措置を講ずべきではないというように判断をいたしております。
  70. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 経企庁にお伺いをいたしますが、これは午前中も話がありましたし、またいまも審議官の方からお話がありましたが、経企庁としては現状はどう認識をされておるのか、特に中だるみであるのか、あるいはまだ景気の回復過程がまだまだこれからなのか、その点について特にデータを見ますと、まだまだ問題は、個人消費の伸びにおいても、あるいは特に設備投資などはまだまだでありますし、あるいは失業、倒産、輸出も、まあ九月は非常に伸びたようですが、七、八は少しかげりもあったわけですから、そういった点から判断をして、経企庁としてどういうふうに把握をされておるか、その点いかがですか。
  71. 岩田幸基

    政府委員(岩田幸基君) 最近の景気の現状でございますが、ごくかいつまんで申し上げますと、御承知のように昨年の末から輸出の急増、それから個人消費、あるいは住宅投資、政府支出といったような内需が非常に盛り上がりまして、今日まで順調に景気は回復してきたわけでございますが、ごく最近輸出の伸びが若干鈍化をいたしまして、また御指摘のように設備投資の出方が少しおくれているというようなこともございまして、景気回復テンポは幾らかスローダウンしているのではないかというように見ております。ただ、個人消費を初めといたしまして、国内の最終需要は引き続いて増加テンポを続けておりますし、それからまた、昨年と違いまして在庫調整が進んでいるということで、企業の在庫圧迫感が非常になくなっている。それからまた、企業の利益もこの三月決算から九月決算にかけてかなり大幅にふえるというような見通しもございますことから考えまして、景気の回復基調は非常に底固い基調を順調に歩んでいるというように考えております。ただ、御指摘のように、まだ回復はしていると申しましても、水準は生産におきましても、あるいは操業度におきましても、あるいは企業の利益におきましても、景気後退以前の水準にはまだ回復していないというようなことがございますために、企業の倒産もまだ高水準を続けておりますし、完全失業者、その他労働需給の改善もおくれていることは事実でございます。しかし、こうしたものは本来景気回復におくれてくるわけでございますから、いずれこうした点でも徐々に改善が進んでいくんじゃないだろうかというように考えております。
  72. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、森永総裁の演説の中身でございますけれども、先ほども審議官言われたように、インフレに対する警戒、財政運営というようなことを言われておりますが、その後の国際収支問題、これは大事な問題ですから、かなり内容においても説明されておるのはよくわかるんですが、もう少しやはりわが国経済を認識させる点について、この景気回復の問題、それからまあインフレを招かない、そういったことに対してもう少し具体的なやはり中身が必要だったんではないかと、ちょっと私はこの内容だけでは、この後また触れますけれども、いわゆる黒字国責任論が言われ、あるいは円に対する批判等が出てきておる折から、もう少し内容が豊富であってもよかったんではないかと、こう思うんですが、これはまあ大蔵大臣どう思われますか、代表として本当であれば行かれておるところですが、行かれませんでした。
  73. 佐上武弘

    説明員(佐上武弘君) いまの先生の御指摘は、やはりインフレ抑制、物価安定というのが経済政策の基本ではないかと思うんだが、それに対して政府はもっと真剣に取り組んでいるのかどうか、こういうふうに理解をいたしておりますが、これはもう前国会財政演説におきましても、やはり物価の安定というのは、あの狂乱物価という経験を経た国民の世論でございますから、もうあらゆる総力を使って安定に努力をしなければならないということは当然でございます。しかしながら、遺憾ながらエネルギー資源、特に石油の高騰以後二年にしてようやく鎮静化はしてまいりましたが、近ごろ卸売物価につきましては、昨年の十一月ごろから木材、鋼材、電力というようなものの値上がりと相待ちまして次第に上がって上昇の基調にございます。七月には対旬比一%という事態になったわけでございますけれども、九月に入りまして以来海外の資源がロイター指数も示すように次第に下がってまいりまして、円高の基調にもございますために、最近になりますと漸次鈍化をいたしまして、九月中旬には御案内のように四十三旬ぶりにマイナス、わずかではございますが〇・一マイナスといった状況になりつつありまして、まあ次第に騰勢が鈍化しつつあると思うのであります。  消費者物価につきましては……
  74. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうじゃなくて、私の聞いておるのは、森永総裁の演説の中身ですね。これでいいのかということですよ。これはちょっと説明足らぬのじゃないかと、こういうことなんです。要するにマニラで世界の代表に対して日本経済の現状を訴えられたのは結構です。内容についてはこれはこれでそう私は悪いとは思いませんが、基本は、ただもう少しインフレの抑制についてもっとやっておるということ、あるいは財政面を、ただ赤字脱却だけしか言われておりませんので、もう少し景気回復の問題とか、ずっとサンファン会議とかランブイエとか続いているわけですから、その辺でもう少しこの内容が、中身があってもよかったんではないかと、その点どうお考えになっているかということです。
  75. 佐上武弘

    説明員(佐上武弘君) わかりました。
  76. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおりでございます。そういう点も言及したかったんでございますけれども、与えられた時間の関係もございますので、多少はしょったきらいがあると思います。いま御指摘の点につきましては、もう少し世界の理解をいただく意味におきまして、もっと詳しく申し述べるべきであったという矢追さんの御指摘につきましては私もごもっともと存じます。
  77. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それで次に、いま申し上げたように、特に日本の名前も出てきておりますし、円安、円高の問題、要するに円に対する批判の問題ですけれども、まず一つお伺いしておきたいのは、現在の輸出と輸入の状況、それから先ほど在庫についてはちょっと言われましたが、在庫との関係ですね。特に輸入の面、それから物価への影響、そういった点でいわゆる現在の輸出、輸入の状況を通産当局とそれから大蔵当局からお伺いをしたいんです。
  78. 名取慶二

    説明員(名取慶二君) 輸出の現状につきましてまず御説明申し上げます。  わが国の輸出は、昨年の十一月を底としまして回復基調に転じたわけでございますが、その後も好調に最近まで推移しておりまして、本年の五月以降は特に前年同月対比二〇%以上というふうな伸びを続けてきております。四月から八月までの実績で見まして全体で二百七十七億ドル、前年の同期に比べまして二一%増というふうな状況でございますが、地域別に見ますと米国、西欧等が前年非常に落ち込んだ関係もございまして、伸び率としては非常に高くなっております。また東南アジアにつきましても昨年の約一一%増というふうな状況でございます。  また、商品別には自動車、家電製品というふうな耐久消費財関係がまず著しく回復いたしまして、自動車につきましては、前年の四六%増というふうな状況でございますが、さらに最近になりますと、鉄鋼とか化学、肥料以外の化学品というふうな基礎的資材につきましても、回復が見られてきております。ただ下期になりますと、上期におきまして重要な要因の一つでありました海外での在庫補てんというふうな面は一応一巡したと見られますことから見まして、依然その高い水準で輸出は推移すると見られますけれども、その増勢という点では上期に比べやや鈍るのではないかというふうに見ております。
  79. 北田栄作

    政府委員(北田栄作君) ただいま通産省からのお話がございましたとおりでございますが、わが国の国際収支は、経常収支について言いますと、石油ショック後昭和四十九年には非常に大きな四十七億ドルの赤字を出しまして、五十年には七億ドルの赤字ということでございましたが、先ほどもお話がありましたように、本年に入りましてからわりあいに輸出が好調になっておりまして、一−八月でようやく十二億ドルの黒字ということに転じたようでございます。これはいまもお話がありましたように、貿易収支が海外環境等の好転に伴う輸出の増加とか、あるいは原材料在庫水準が高いことがあって、輸入がわりあいに伸び悩んだというようなことがあって、かなりの黒字が出たということが中心でございます。しかしながら、今後は、先ほどからもお話がございましたように、輸出の伸びの増加、あるいは景気回復の伸展に伴う輸入の増加というようなことが見込まれますほか、また貿易外収支の構造的な赤字ということもございますので、経常収支の黒字は徐々に縮小していくものであると、こういうふうにわれわれは考えておるのでございます。
  80. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま言われた黒字がかなり縮小していくと、これは大体時期的にはどういうふうに、細かいことの予測はむずかしいんですけれども、どういうふうに考えるか、たとえば来年の三月ぐらいには相当減ってしまうとか、その辺はいかがですか。
  81. 北田栄作

    政府委員(北田栄作君) まあ輸出入の見通しは的確にいつどういう水準になるということは、われわれも判断しかねるのでございますが、OECDで先ごろ推定いたしました数字によりますと、わが国の経常収支は一九七六年の上期に二十七・五億ドルの黒字、下期に十二億ドルの黒字、一九七七年の上期に二億五千万ドル程度の黒字と、こういうような見通しを立てております。われわれは数字自体がそういうふうになるかどうかということは、確信を持てないのでございますが、傾向としては、そういったような的をそうはずれていないのではないか、こういうふうに考える次第でございます。
  82. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうしますと、現在特にアメリカを中心として日本に対するいろいろの批判がありますが、その批判の大体の傾向ですね。どういう点が批判されておるのか、それはどういう理由で妥当である、あるいは妥当でない、その点ひとつ整理しておっしゃっていただけますか。
  83. 北田栄作

    政府委員(北田栄作君) 先ごろアメリカの新聞等で、いろいろ対日批判があったわけでございますが、これの要点は、日本が大きな国際収支の黒字を出しているのではないか。それは為替レートを人為的に操作をして、輸出ドライブをかけているのではないか、こういったような趣旨の批判でございます。これはただいま申しましたように、貿易国際収支につきましては、目下のところ黒字でございますが、先ほど申しましたように四十九年、五十年については赤字でございますし、ことしやっと多少の黒字を計上したばかりでございます。したがいまして、黒字を長期的にため込んでおるというようなことでもございません。またその為替レートの批判につきましても、これは事実の誤認に基づくものでございまして、こういった批判はわが国の国際収支や、為替政策に対する認識の不足から誤解から生じた面があるというふうに思われるわけでございます。したがいまして、政府といたしましても、いままでわが国の実情をよく内外に説明いたしまして、理解を得るように努めてきたところでございます。こうしたこともございまして、最近ではアメリカにおきます対日批判も鎮静化しつつあるように思われますし、また今回マニラにおきましてのIMF総会で特にそういったところが非難されたというふうなことは聞いていない次第でございます。
  84. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 一番最初に言われた日本政府の介入の仕方が非常にダーティであると言っておるわけですけれども、現在は介入はしておられないと思いますけれども、その点はどうなのか。  それから、いわゆる言われている管理フロート、こういうものはどういうふうな姿であるべきなのか、これはなかなか発表することはむずかしいかもわかりませんけれども、今度もウィッテフェーン専務理事は、「黒字国はインフレ再燃を招かない範囲で総需要の拡大を図るべきである。また、長期資本輸出や開発援助の拡大並びに必要な範囲での為替相場の上昇により調整を行うべきである。」と、まあこう言っておるわけですが、この点のいわゆる調整というものと、いま向こうで言っておるダーティな介入、そういった面をわが国としてはどうクリーンなフロートであるということを言うためには、大体どの辺に押さえておくべきなのか、その辺のことを大体大ざっぱで恐縮ですけれどもお答えいただきたいと思います。
  85. 北田栄作

    政府委員(北田栄作君) わが国の為替相場の運営の方針でございますが、IMFのフロートのガイドラインというものがございます。これにフロート制度の基本方針が書いてございますが、そういったガイドライン、及び昨年の秋にランブイエで主脳国が合意をいたしました、そういった国際的な合意に基づきまして運営をいたしておるところでございまして、すなわちフロート性をとっております為替相場の形成は、原則として市場の需給にゆだねるということにいたしておるわけでございまして、特に介入によりまして特定の水準にこれを維持するとか、あるいは円高にするとか、円安にするとか、そういったことを意図的にやることはいたしていないわけでございます。ただ、経済活動、取引の安定というような面から乱高下はこれを防止するというたてまえで運営を行っているわけでございます。  それから、ウィッテフェーン専務理事がIMF総会で、いまおっしゃいましたように、国際収支上強い立場にある工業国は、「インフレ再燃を招かない範囲で総需要の拡大を図るべきである。また、長期資本輸出や開発援助の拡大並びに必要な範囲での為替相場の上昇により調整を行うべきである。」ということを申されておるわけでございますが、これは黒字国につきまして、他の調整手段と並べまして、為替相場による調整の必要性を一般的に述べられたものである。需給関係を反映した、そういった為替相場の需給、実勢による上昇というものを無理に抑えて、一定のところに意図的に抑えてはいけないというようなことを言われたものと解しておるわけでございます。この演説の内容は、そういった意味で従来の国際的な合意に沿ったものでございまして、特にいま特定の国というか、日本を非難するとか、そういったようなことではないというふうに解されます。わが国は従来そういった線に沿って運営しておる、そういったことと少しも矛盾するものではない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  86. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それから、今後円投機があるとかないとか、いろんな懸念されておりますけれども、大蔵当局としてはこれから投機というものはさっきの、もしOECDの予測どおりにいくとすれば、そう考えられないと思いますけれども、その点はいかがですか。  それからもう一つは、投機であるのかないのか、そういった点は見分けることが可能なのか不可能なのか、その点いかがですか。
  87. 北田栄作

    政府委員(北田栄作君) 相場の先行きということについては申し上げかねるわけでございますが、最近のヨーロッパあたりの国際通貨情勢を見ますと、主要通貨の強弱二極化の現象が顕著となっておりまして、ドイツのマルクが上昇し、英国のポンドとかイタリアのリラが下落をするというような傾向を呈しておりまして、円の相場につきましては七月から九月ごろまではドイツマルクが上昇いたしますと、それにつれて円が上昇するというような傾向が若干ございました。しかし、最近におきましては、東京市場の円の相場というのは非常に安定的に推移をいたしておりまして、特にそういった欧州通貨の影響を受けていないようなふうに考えられるわけでございます。こういった最近の安定した動きから見まして特にこういう円投機があるというふうには考えていない次第でございます。  それから、投機かどうか見分けられるかという点でございますが、これは明確にこれが投機であるとかないとかということは非常に困難なことかと思いますが、やはり全体的な状況を見ましていろいろリーズ・アンド・ラッグズとか、短期資金の動き、そういったようなものを総合的に見まして、その時々刻々の動きを把握して乱高下というようなものをケース・バイ・ケースに具体的に判断するというようなことであろうかと思います。
  88. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、この為替レートの今後の方向ですけれども、やはり変動相場制、フロートというものが続いていくと思われますが、これからの先を見通した場合、果たしてフロート体制でわが国としてはいいのかどうか、また固定へ戻るような可能性はあるのか、その点についてどういうふうな見通しがあるかお伺いしたいと思います。
  89. 北田栄作

    政府委員(北田栄作君) わが国といたしましては、長期的には安定的な、しかし、調整可能な平価制度をとることが、事情が許せば望ましいというふうに考えておるところでございまして、今回のIMFの協定改正にもそういった観点が織り込まれておるわけでございます。しかしながら、現在の非常にいま流動いたしております世界経済情勢のもとにおきましては、やはりそういった変動に応じまして弾力的な為替相場運営ができるような仕組みということが現実的であり、また望ましいのではないかというふうに考える次第でございます。したがいまして、当面はやはり変動相場制でいくということにならざるを得ないのではないかというふうに考える次第でございます。しかしながら、この場合でもやはり経済活動とか取引の安定というものを十分考慮する必要がありますので、そういった為替相場の乱高下を防止するというようなことは当然の義務である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  90. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 SDRについて余り今回はそう議論になっていないようでございますけれども、これは現状はいまどうなっておるのか、これはどのぐらい利用されておるのか。特に大きく分けて先進国あるいは途上国の傾向、また日本についてはどういうふうになっておるか、その点ちょっと御説明いただきたい。
  91. 北田栄作

    政府委員(北田栄作君) SDRでございますが、一九七〇年から七二年の三年間に約九十三億SDRが創出されたわけでございます。したがいまして、細かく申し上げますと、七六年八月末現在のSDRの累積配分額は総額九十三億一千四百八十万SDRでございます。そのうち、先進国につきましては六十九億六千六百八十万SDR、開発途上国が二十三億四千八百万SDRでございまして、日本の累積配分額は三億七千七百四十万SDRでございます。これまでに開発途上国が使用いたしましたのが、純使用額で九億二千百八十万SDRとなっておりまして、先進国の受け取りが純受け取りで四億七千五百三十万SDRでございます。日本といたしましては八千二百八十万SDRの受け取りと、こういうことになっておる状況でございます。
  92. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 もう時間ですから最後に大蔵大臣にお伺いをいたしますが、今回こういう会合が行われまして、日本の国としてのこれからの財政運営あるいはまた来年度予算編成、こういったものを含めて大臣の所信をお伺いしたいんですが、景気の回復は、いまいろいろお話ありましたように、ある程度回復基調とは言いながら、先ほど私が申し上げたように現状は非常に問題が多いわけであります。特に設備投資を中心としたあるいはまた公共投資主導型というようなそういう景気回復、もちろんこれは私は絶対、全部反対ではありませんけれども、もう少し個人消費の面を伸ばしていかなきゃならぬのじゃないかとも思います。というのは、やはり今度のIMF総会でも一番強調されたのは、先進国においてはインフレの抑制ということが私は最大限に言われたと思います。そういったことでやはりインフレを抑えながら、国内でどれだけの景気回復をしていくかという非常にむずかしい課題でありますが、この点についてやはり景気回復のいわゆる一番の旗頭——旗手というものは、いままでは設備投資でありましたが、それはなかなか、非常にむずかしい現状の中で、やはり個人消費というものを相当考えていかなきゃならぬと思います。その点について減税はやらないとおっしゃいますけれども、もう少し減税の面は考えていいんではないか。年度内にできればやるべきではないか。少なくも物価調整減税、これは先ほど言われておりましたけれども、その点について重ねてお伺いをしたい。これが一つ。  それから、来年度予算の編成のあり方ですが、そういうふうな国際情勢の中にあってどういうふうな編成方針で臨まれるのか、来年のことを言うとまだ早いと言われると思いますけれども、特に私が主張したいのは、いままで私もずっと予算を通じていろんな質問をしてまいりましたが、依然としていままでの予算の組み方から余り出ていない。いろいろ政府は新しい時代への転換を言われておりますけれども、現実にやはりいままでと同じような概算要求が出てきて、その幅をどうするか、その辺だけでありまして、質的な転換という点がなかなかできない。やはり予算編成のあり方の中でそれをやらなければ、私は本当にできないと思いますので、まあ福祉の問題、いろいろ言われております。きょうも新聞によりますと、何か教科書の無償配付をやめるとか、そんな話も出てきておりますし、特に来年度予算の編成に当たって、大きな質的な変化というものについてはどうお考えなのか、その点を含めましてお伺いをして終わりたいと思います。
  93. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) インフレを避けながら個人消費の充実、拡大を図って、景気の着実な回復を図るべきであると、そのためには所得税減税というものをもう一度考えてみるつもりはないかという御質問でございます。まあ、個人消費が経済を支える最大のエレメントであるということは申すまでもないことでございまして、これが着実にあったまってこないと、景気の回復が所期できないということは仰せのとおりでございます。わが国の場合、ことしの初めからずっと個人消費も着実に伸びてきておるように私ども統計数字の上ではそう見ておるわけでございまして、いまの経済政策というものをまじめに遂行してまいりますならば、それによって矢追さんの言われる個人消費の充実ということが期待できるのだというように私どもは考えておるわけでございまして、減税等によってこれを招来するということまではまだ考えておりません。減税は、いまの財政事情で申しまして、確かに歳入の不足を来すわけでございますから、それが文字どおり最大の重点施策でございますならば、別途歳出面あるいは歳入面でほかに何かこれを補完する、これにかわる何か歳入を補てんする道があるか、あるいは歳出を節約する道があるか、何か手だてを考えて、これでどうだという御相談であれば、これまたわれわれとしては検討するにやぶさかでございませんけれども、ただ無条件に所得税減税というものを景気対策としてどうだという御相談に対しましては、依然として私どもは消極的に考えておるということでございます。  それから、来年度の予算の編成でございますが、仰せのとおり予算編成のやり方、手順に別に新しい工夫はございません。何となれば、その支えている意識構造そのものが余り変わってないわけなんです。人間そんなに利口にならないわけなんです。本当にこれは矢追さんのおっしゃるように、相当意識革命が先行いたしまして、本気になって対処しないと、えらい事態だと私は考えるんです、本当は。だけれども、予算に飛躍なしと昔から言われておりまするし、われわれの生活、われわれの慣習、われわれの制度、いよいよマンネリ的でございまして、なかなかこれからの脱皮がむずかしいわけでございまして、そんなこと、いろいろ心の中で思ってみましても容易じゃないことでございます。でございますから、大きく望んでも、これは結局空回りに終わるわけでございますので、まず政府は、編成の前提どいたしまして、概算要求のシーリングを含めまして、原則として一〇%の範囲内において一般行政費を押さえ込んでの要求にしてもらいたい。その他につきましては一五%以内で抑えてくれぬかということでございますが、幸いに各省庁の同調を得られたわけでございます。過去一カ月余り、ヒヤリングをやりまして、概算要求の実情をよく聞きました。聞いていま整理をいてしておるところでございますが、これをどのように査定いたしますか、これは大変困難なことだと思うのでございますけれども、よほど心を鬼にして査定しないと、来年度の予算、これはえらいことじゃないかと思います。何となれば、特例債を減らす最初の年にしたいということでございますので、歳出面にわたりまして相当徹底した見直しを制度を含めて考えなければならぬと思っております。歳入面におきましては、たびたび御答弁申し上げておりますように、税制全般にわたりまして、いま調査会の方と御相談をいたしておるところでございます。きょうも福間さんからもいろいろな御指摘がございまして、政府税制調査会に審議をしてもらっておるというようなことばかり言うておるじゃないかということでございますけれども、事柄が重要なだけに、われわれといたしましては、政府が先走ってやっておるようではいけないわけでございまして、国民と一緒に、この大きな歳入予算の編成にかからなければいかぬわけでございまするので、衆知を集めて当たらなければならぬので、全体の税制について、ひとつ周到な検討をお願いするということで、いまどの税目をどうしてくれというようなことでなくて、いま検討をお願いしておるわけでございまして、予算編成の段階までには、とりあえず五十二年度で何からどこまでひとつ打開ができるかという見当はぜひつけなければならぬと考えております。いずれにいたしましても五十二年度予算は、財政健全化への第一歩にしたいということで、ひとつ精いっぱいの努力を傾けてみたいと存じておりますので、この上ともひとつ御指導を願いたいと思います。
  94. 渡辺武

    ○渡辺武君 最初に、きのう近藤委員がお願いしました資料要求にさらに一点つけ加えてお願いしたいと思うのです。  前の七十七国会の予算委員会大蔵省から、法人の所得金額、それから法人税負担割合、これを一億円以下と一億円以上という大まかな分け方で、資本金階級別に出しているわけですけれども、あんまり刻みが大き過ぎて実情がよくわからないという点がありまして、これは衆議院の大蔵委員会だったと思いますが、もう少し刻みを細かくして出しましょうという御答弁もあったと思いますので、この刻みをもう少し細かくして出していただきたいと思うのです。その刻みについて私どもの方の考えを申し上げますと、一つは一千万円以下と、それから一千万円超五千万円未満、それから五千万円超一億円未満、それから一億円超十億円未満、それから十億円超五十億円未満、五十億円超百億円未満、それから百億円以上という刻みで御提出いただきたいと思います。どうでしょうか。
  95. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) これは参議院の予算委員会にお出ししました資料B−15をもっと細かくという御要求だと思います。ただいまおっしゃいました割り振りでつくれますかどうですか、この表をさらに資本階級を細かくしてということでございますれば、勉強いたしましてできるものをお出ししたいと思います。
  96. 渡辺武

    ○渡辺武君 委員長、よろしくお取り計らいください。
  97. 岩動道行

    委員長岩動道行君) それでは、理事会においてお諮りするようにいたします。
  98. 渡辺武

    ○渡辺武君 次に、田中角榮前総理の脱税容疑の問題について伺いたいと思うんです。  私、八月十日のこの委員会でこの問題について伺いましたときに、田辺国税庁長官が、まだ捜査中で必要な資料や情報が手に入っていないと、これを捜査当局から提供されれば検討したいという趣旨のことを答弁されておりました。特にこの金の性質、これがまだわからないんだと。それから所得の種類——一時所得雑所得かという点もまだわからないというようなことを言っておられました。きょうほかの委員の御質問に答えられた国税庁の御答弁では、刑が確定した場合に、これは当然没収になるので、したがって、課税処分をしていいかどうかという点についても検討しているんだというような御答弁が前の御答弁に加えてあったわけですね。しかし、もう田中角榮は起訴されておりますし、五億円の使途もほぼ解明されたという新聞記事もあるわけです。したがって、どうも児玉のときと比べてみるとばかに消極的だなあという印象を免れることはできないと思うんですね。これは、私は国民満足しないと思うんですよ。それで、刑が確定して五億円が没収されれば、後減額更正をやればいいわけですから、だからとにかく厳しい態度で臨んでほしいというふうに考えます。その点どういうおつもりなのかまず伺っておきたいと思います。
  99. 山橋敬一郎

    政府委員山橋敬一郎君) お答え申し上げます。  午前中福間先生の御質問に対しまして私お答え申し上げましたが、一般に賄賂課税ということでございますと、賄賂といえども経済的な利得ということでございますれば、これは税法上の課税の対象になるということはこれは当然でございます。ただ、それが刑事措置によりまして必要的追徴没収になるということでございますと、経済的利益がなくなるということでございますので、そういう点も十分頭の中に入れながら問題を検討しなければならないということを申し上げたわけでございます。また、もし仮に課税ということになりますれば、税法上の所得区分としてはそれがどういう所得になるかという問題もまたこれを検討しなければならないということでございまして、その税法上の扱い方というものにつきままして十分なやはり検討を加えて一つ考え方を固め、さらに実態を究明をいたしまして、これを明らかにいたしまして適正な処理をする、こういうふうなつもりでおるわけでございます。児玉の場合に比べて少し緩いではないかというふうなおしかりがございましたけれども、われわれといたしましては実態を十分解明したところで適正な処理を行いたいということでございます。そういう点では何人といえどもこれを平等に扱っていきたいというふうに考えているわけでございます。
  100. 渡辺武

    ○渡辺武君 それじゃ伺いますけれども、捜査当局からはこの田中の五億の問題については資料や情報の提供を受けましたか。
  101. 山橋敬一郎

    政府委員山橋敬一郎君) 個々の具体的な問題について資料の提供を受けたかどうかというふうな御質問でございますので、ちょっとお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、この前の当委員会の席上におきまして、法務省当局から、一般に刑事訴追にかかわるところの資料課税資料として提供するということについては、法の体系上いろいろ問題があるというふうな御答弁があったわけでございます。そういうふうにいろいろむずかしい問題を実は控えておるわけでございますが、われわれといたしましては検察当局と緊密な連絡をとりながら、いろいろな面で実態解明に努力をいたしていきたいというふうに考えているわけでございます。
  102. 渡辺武

    ○渡辺武君 いや、いきたいというのはこれからの話ですか。もうあなた、検察当局の方では起訴しているわけですよ。それまでの自信を持った資料があるはずです。十分に連絡はいままでもとっておったですか。それとも、いままではとっていなかったがこれからとるということですか。
  103. 山橋敬一郎

    政府委員山橋敬一郎君) お答え申し上げます。  検察当局とは従来も緊察な連絡をとっておったわけでございますけれども、今後もいろいろと緊密な協議を遂げながら処理をしてまいりたいと思うわけでございます。ただ、御指摘の資料につきましては、この前法務当局からいろいろなむずかしい問題があるという御意見もございました。われわれといたしましては、そういう点も踏んまえまして、いろいろな情報収集というふうな問題に努めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  104. 渡辺武

    ○渡辺武君 まあ言いにくい範囲もあるのかもしれませんが、いまの御答弁だと、まあ大体資料、情報はあなた方の手に入っているというふうに理解できるように私は受け取りました。  そこで、考えられることは、先ほどおっしゃった利得といいますか、これの性格ですね。これも検討したいと言うんだけれども、これはおのずから明らかじゃないですか。だって、田中角榮は、これは丸紅を通してロッキード社の金を受け取った。賄賂として受け取った。だからこそこれは受託収賄罪で起訴されているわけでしょう。そうすると、法人から賄賂として受け取った場合は、普通課税上はどういう処分になりますか。大体所得税の対象になるのが普通じゃないですか。これは贈与とはみなされないでしょう。どうですか。
  105. 山橋敬一郎

    政府委員山橋敬一郎君) 通常、賄賂ということでございますと、その金のいろいろな授受段階におきますところの経緯、それからその授受趣旨というものによって、いろいろな実は態様があろうかとわれわれ考えているわけでございます。通常、先生のおっしゃいますとおり、法人からそのような金品授受があった場合には所得税法上の所得になるというふうにわれわれも考えるわけでございますけれども、しからば、それがいわゆる一時所得になるのか、あるいは雑所得になるのかというふうな問題につきましては、その金の授受趣旨、その経緯というものを十分見きわめまして、その上で判断をする必要があろうかというふうに考えているわけでございまして、われわれといたしましては、その所得所得税法上の所得区分がどういう区分に当たるのかという点が実は問題であろうというふうに考えておるわけでございます。
  106. 渡辺武

    ○渡辺武君 これもまた専門家の御意見としてはちょっといただきかねるですな。私ども素人が考えてみましても、田中角榮は受託収賄罪で起訴されている。受託収賄罪というのは、これこれこういうことをしてください、はい承知しましたということで賄賂を受け取ったわけでしょう。その賄賂所得税課税対象になるとするなら——つまり、一定の役務を提供するという、そういうことで受け取った金ですから、これは一時所得と考えるのはおかしいですよ。当然これは雑所得で考えなきゃならぬことじゃないですか。いままでも政治家が受け取った金については雑所得処理してきましたと、これは参議院の決算委員会でもそういう御答弁が国税庁の方からありましたよ。それと同じ処理になるんじゃないですか。課税の常識からいったってそうなるんじゃないですか。
  107. 山橋敬一郎

    政府委員山橋敬一郎君) お答えいたします。  所得税法におきましては所得の種類というものをいろいろな区分に分類をしているわけでございますけれども賄賂がいま申し上げましたように一時所得及び雑所得以外の所得に該当するということは一応考えられないわけでございます。しかしながら、一時所得であるか雑所得であるかということにつきましては、一時所得であるためには営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得であることが必要でございますし、また、労務その他の役務、または資産の譲渡の対価としての性質を有しないものであること、こういうことが必要であろうかと思います。通常賄賂といいますと、通常一時の所得であるという要件は満たしておるわけでございますけれども、二の役務の対価としての性質を有しているかどうかということによりまして、一時の所得であるか、あるいは雑所得であるかということが大体区分できるのであろうかというふうにわれわれは考えておるわけでございますけれども、この役務の対価というものを具体的にどのように実は考えるか、判断をするかというふうな問題は、これは実態を十分見きわめたところでわれわれとしては判断をいたしたいというふうに考えているわけでございます。そういう意味合いにおきまして、これがいわゆる一時の所得に当たるか雑所得に当たるかという問題は、実態、その経緯、その趣旨というものを十分見きわめて判断をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  108. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう時間がないから何だけれども、とにかく捜査当局は、これはもう受託収賄罪として起訴しているわけですね。そうすると、一定の役務ということになりますかな。役務の提供をすることを約束してその対価として受け取ったわけですね。そういうことだから、私はやっぱり当然これは雑所得というのが普通の解釈から言ってもすぐ出てくる考えだと思うんですね。で、捜査当局と十分に連絡し、協議していると言うんだけれども、その点までまだわからないでもたもたしているというようなことでは、まことに意外ですね、これは。  それからもう一点聞きたいんですが、もし仮にこれを雑所得だというふうにみなした場合、政治家の場合ですから必要経費というのがいろいろ広がってくるということにもなろうかと思うんですが、田中の五億円の使い道ですね、これについてはどうですか、国税庁としては独自に調査しましたか。
  109. 山橋敬一郎

    政府委員山橋敬一郎君) 先ほど申し上げましたように、この賄賂課税についての税法上の取り扱い方をどうするかという問題、さらにその上に立ちまして実態解明をした上でその処理の判断をするということでございます。したがいまして、実態解明段階におきまして、収入されたものがどのように流れていったかということは、当然われわれとしても関心を持っているわけでございまして、この点につきましても今後実態解明の一環として、究明をいたしてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  110. 渡辺武

    ○渡辺武君 それで、これは四十八年、四十九年両年度にわたって二億五千万ずつもらったということになっているわけですが、田中の四十八年、四十九年の申告所得の中にこれは入っておったですか。それともいないですか。
  111. 山橋敬一郎

    政府委員山橋敬一郎君) お答え申し上げます。  田中前首相に関しまして金脈問題等でいろいろの実は御議論がございまして、四十六、四十七、四十八年分の問題につきましていろいろと御報告を申し上げた経緯がございます。しかしながら、この四十八年分の所得につきましては、この五億円の収入につきましては、この申告の中には含まれておらなかったというふうに考えております。
  112. 渡辺武

    ○渡辺武君 四十九年はどうですか。
  113. 山橋敬一郎

    政府委員山橋敬一郎君) 四十九年につきましては、それが含まれているかどうかということを現在まだつまびらかにしておりません。
  114. 渡辺武

    ○渡辺武君 四十九年わからないと言っても、四十八年には入ってなかったということは明らかですな。そうだとしますと、大蔵大臣までやって税の専門家を恐らく顧問として使っている人だと思いますが、その人がなおかつ申告所得の中にそれを入れてないということは、明らかに意図的なものだと見ても差し支えないと思うんですよ。だとすれば、これはやっぱり脱税をするという明確な意思を持って申告所得から除いたというふうにしか考えられないと思うんです。そうなってくると、私は、所得税法二百三十八条の適用、これによって脱税容疑で起訴するということは可能だと思います。その点どうですか。
  115. 山橋敬一郎

    政府委員山橋敬一郎君) 田中総理が受け取った五億円の問題につきましては、いま申し上げましたようにいろいろな課税上の問題点、それから事実関係の今後の確認という問題がございまして、われわれといたしましては、必要な事実関係を十分確認の上で税法適用上の判断をいたしまして適正な課税処理を行っていく所存でございます。ただ、個々の事案につきまして、脱税事件として査察調査を行って告発の対象にするかどうかということを具体的に申し上げることは差し控えたいと思いますが、一般論として申し上げますと、収賄罪起訴をされた事案につきまして、脱税犯としての責任をも追及するかどうかということにつきしては、先般来申し上げておりますように、収賄罪には刑法上必要的没収、追徴の定めもございまして、こういうことも十分考慮に入れて慎重に検討する必要があろうかというふうに考えているわけでございます。いずれにいたしましても、脱税事件として告発するかどうかにつきましては、個別に従来も検察当局と協議を行っておりまして、本件につきましてもその必要があれば、検察当局とも十分協議をいたしたいというふうに考えているわけでございます。
  116. 渡辺武

    ○渡辺武君 大蔵大臣、一言最後にこの問題について伺いたいんですが、その収賄の刑が確定すればこれは没収になると、五億円は。だから、課税上のこの処分についてどうしようかということで迷っているんだというふうないま御答弁があったんですが、確かに過去はそうだったと思うんですが、しかし、今回の事件金額から言ってもべらぼうなものだし、前総理大臣というその政治的、社会的な責任から言ったって大変なこれは事件だと思うんですね。当然政府としてやっぱりこういう問題については厳正な態度で臨まなきゃいかぬと思うんです。過去がこうだったから今度もどうしようかと思って迷っているんだというようなことでは、私は国民納得しないと思うんです。したがって、やっぱり賄賂を取り得だというようなことにしないように、国税当局としても、大蔵省としてもこの問題については厳正な態度で臨むべきだと思いますが、どうですか、
  117. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 御指摘をまつまでもなく厳正に処理いたさなければなりませんし、そういう決意でおります。
  118. 渡辺武

    ○渡辺武君 次に、拘束預金について若干伺いたいと思うんですが、大蔵省の指導でいま各金融機関がこの拘束預金をどういうふうにしてなくしたらいいかということでいろいろ検討しているということでありますが、どんなところまでその検討が進んでいるか、お答えいただきたいと思います。
  119. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 拘束預金の問題につきましては、本年三月に大蔵省としては初めて各企業に対しまして直接御意見を伺うようなアンケート調査をいたしました。六月の上旬にその結果を取りまとめまして御報告したところでございますが、その内容を私ども見まして、やはりいろいろ今後の対策を考えていく必要がある、こういう感じを持ったわけでございます。したがいまして、その直後に私の名前で各金融機関、各協会に対しまして、従来指示しておりました事項の完全な励行と、それからさらに加えまして、具体的なこの拘束預金——過当なる拘束預金をつぶしていくための具体策の検討を指示をいたしました。私どももその後内部でもその検討をしてまいりました。それから各協会等でもそれぞれ検討をしていただいてまいっております。その結果をただいまさらにあわせまして検討を続けておるところでございますが、その内容につきましては、実は今回のアンケート調査の結果から特に感じましたのがいわゆるにらみ預金問題でございます。これは専門的には見返り預金とか見合い預金とかいわれておりますが、要するに、はっきりした拘束の法的な手続をとらないで、事実上預金者から見てどうも払い出せないと考えている預金でございます。そういうものが金融機関と預金者との間でしばしば認識の相違等もございましてその苦情の種になっておるわけでございまして、したがいまして、そういうところへ焦点を当てて考えたいというのが一つのポイントでございます。したがいまして、ただいま議論の出ております点は、まだちょっと詰まっておらないのでございますけれども、そういうにらみ預金というようなものをなくする方法をどういうふうに具体的にしていったらいいかという具体的なやり方の問題、それからそういう、いずれにしましても、要するに両者の意見が違ってはっきりしない部分でございますので、これを苦情相談所その他、もう少し第三者的なところでそういう個々の問題の苦情を処理するのはどういう方法をとったらいいかと、このあたりを中心といたしましてただいま検討しておるところでございます。
  120. 渡辺武

    ○渡辺武君 大蔵省としては、債務者預金大体四〇%ぐらいあるだろうと、そいつを二〇%程度に減らしたいという方向だと伺っておりますけれども、いまどうですか、金融機関がいま検討しているそういう拘束預金をどうするかという問題で、大体その二〇%というのは達成できる見通しありますか。
  121. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 債務者預金と申しますのは、非常に広い意味では、銀行から借金をしております人の預金のすべてでございまして、現時点で、借入金に対しまして合計いたしますと四十数%に相なっております。ただ、その中で問題となりますのは、はっきり拘束されておりますものと、それから先ほど申し上げましたにらみ預金的なものとでございますが、その両者は合わせますと、先般のアンケート調査の結果では一四、五%でございます、借り入れたのは。これはアンケートでございますから、そういう性質のものとしてお聞き取りをいただきたいんでございますが、その程度数字になっております。それから公正取引委員会が毎年二回やはりアンケート調査をいたしておりますが、最近の結果では、一番広く概念をとりました拘束預金の割合が一六、七%、やはり十数%のあたりが実態ではないかと、こういうふうに考えております。やはりそれを低くすべきではないかという御指摘だと思いますが、恐らくは、はっきり拘束するものというのを手続を明確にいたしまして、そうしますと、はっきりされた拘束預金の額というものは先ほどのアンケート調査では実は三・六%でございますけれども、これは若干上がるだろうと思いますが、その十何%に当たるところは下がってくるだろうと思うんです。全体の広い意味での十数%のところを極力無理のないように下がっていくというので一番望ましい姿ではないかと思っておるのでございます。
  122. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がないので一言だけ希望を申し述べさしていただきたいんですが、新聞なんかを見てみますと、いま銀行の取引約定書ですね、あれに、手持ちの預金で預金者の銀行から負っている債務ですね、これを相殺するという、銀行の権利として出てますね。そいつを今度は預金者の権利として借入金を預金で返済できるようにするんだということで、何かこうにらみ預金を解消するというような記事が出ているんですが、もし、これが事実とすれば、私は、これはやっぱりまだまだ不十分じゃないかと思うんですね。と申しますのは、いずれにしても、これはやっぱり預金者が預金をしておくということを前提条件として、そうして借金の返済のときにはそれと相殺できるんですよということを言っているにすぎない。だからやっぱりにらみ預金的な性格を持った預金を前提条件としていると。問題は、金を借りても預金をしておかなきゃならぬと、だから、金利は言ってみれば、四〇%という数字で仮に計算すればずいぶん高い、二倍近い金利払うことになるということが問題なんでね。その辺をひとつよく検討していただきたいというふうに希望を申し述べて、時間がないから次の質問に移ります。  大蔵大臣、さっきもお話出てきましたいまの円高の問題ですね。円安の問題と言っていいのか円高の問題と言っていいのか、とにかく円の問題。日本がアメリカから大分やられたと。しかも、この間のIMFの暫定委員会でもいわば国際紛争の焦点に立ったというような状態になったと思うんですね。これいろんな原因があろうかと思いますが、時間がないのでひとつ伺いたいんですが、この国内的な要因はどこにあるとお考えですか。
  123. 北田栄作

    政府委員(北田栄作君) 先ほど申し上げましたように、アメリカの対日批判というのが新聞等にございましたのですが、これはあくまでもわが国の国際収支や為替政策に対する認識不足といいますか、誤解に基づくものでございまして、われわれといたしましては、そういったわが国の実情をよく十分説明いたしまして、理解を得るということに努力したわけでございます。したがいまして、現在ではアメリカの中でも、先ほど申しましたが、そういった批判は鎮静化しておるように思います。また、マニラにおきますIMFの総会におきましても、そういったことが特に対立点になったとかといったようなことはございません。したがいまして、われわれといたしましては、そういった実情というものが十分認識されたものと思いますし、決して不当なことをやっているのではないということは、今後も常に十分必要な範囲では理解を求めるようにしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  124. 渡辺武

    ○渡辺武君 私の伺ったことほとんど答弁になってないんですよ。つまり、いま安定的に推移しているんだと、先ほども答弁ありましたが、二百八十六、七円、つまり一番の天井に張りついたまま推移しているんですよ。これは安定というかどうか、乱高下がないという意味では安定でしょうけどね。とにかく一番の天井に張りついてずっと推移しておる、こういう状況でしょう。つまり、日本が対米輸出を猛烈にふやして、アメリカもびっくり仰天するような対米貿易関係では輸出超過になっていると。それを背景にして若干国際収支も改善してきたと、こういう事態ですね。それが円を高くせざるを得ないような状態にして、そうしてもう天井に張りついたままでいま推移していると、こういうことだと思うんですね。私いろいろ国際的な問題も伺いたいんですが、こういう事態になった国内の原因ですね、これをどこにあると考えていらっしゃるのか、これを伺いたいんです。  それで、時間がないから私の意見先に申しましよう。私は、これはやっぱり政府及び大企業のいまの不況対策、ここに根本の国内的要因があるというふうに見なきゃならぬじゃないかと思うんですね。総理府の勤労者家計調査見てみましても、いま物価が高いと、税金も高いし社会保険料も高くなった。これが原因で四月から七月までの総理府の家計調査による実質家計収入は、これは前年よりも下がっているんです。赤字になっているんですよ。そうして、百貨店の売上高なんかを調べてみましても、物価指数でもって割って調べてみますと、昨年よりもこの六、七、八月ごろは下がっているという状態、つまり国内市場が非常に狭いんです。だから、自動車だとか家庭用電気だとか、それから最近では、あなたいまおっしゃったように鉄鋼だとか化学製品だとか、こういうものが国内の市場で十分に消化できないもんだから、輸出に輸出にと打って出ていくと、そこから対米輸出あるいは西欧諸国へのものすごい輸出の拡大となって、そうしてこうした国際的な反撃受けているというのが実情じゃないでしょうか。ベースアップは八・八%だ、ところが電気料金は二〇%以上も値上げすると、こういうような状況だから、いま言ったような状態が出てくる。国内の国民からの厳しい批判も出てくると同時に、国際的にも批判が出てくる、こういうことになっているんじゃないかと思うんですね。その点大蔵大臣どうですか。
  125. 北田栄作

    政府委員(北田栄作君) ただいま相場についてのお話がございましたが、相場につきましては、フロートでございますので、原則として市場の実質需給にゆだねるということで、特に介入によってどの程度に水準を維持するとか抑えるとかというようなことは一切やっておりませんので、いま申すような天井とか、そういったことはどういう意味かちょっとよくわかりませんが、市場の需給によって形成されているということでございます。  それから、先ほど対米の輸出の急増ということがございましたが、これは一つにはまあ日米の景気の回復にずれというものがあったかと思います。アメリカの景気回復が非常に早かったためにそういった意味で日本からの輸出がかなり急増したものがあることはそのとおりかと思いますが、それからまたアメリカにおきますたとえば自動車の在庫の積み増しが非常に行われているというようなこともありまして、かなりそういった特定の物品についてかなり急増いたしましたが、こういったことも日本の景気回復に伴ってまあ調整されてくると思います。また在庫積み増しにつきましても、それが一定の水準に達しますと、まあ今後は鈍化するということで、貿易収支の面でもだんだん調整が行われていくものと、こういうふうに期待をしておるわけでございます。
  126. 渡辺武

    ○渡辺武君 最後に一問だけお許しをいただいて一言だけ、大蔵大臣答えてくださいよ。  いま申し上げましたように、やっぱり国内の市場がまだ狭隘だと、輸出に打って出なきゃ景気の回復できないんだというような状態があるから、こういう事態が起こってきていると思うんですね。ですから、いままでのような景気対策は改めて、やっぱり国民の生活を向上させるということを中心とした景気対策に切りかえて国内市場を広げるということが、この問題の基本的な解決の道だと思うけれども、そういう点どうお考えになるか。  それからもう一点、森永日本代表の演説をずっと読ましていただきましたけれども、いま国際的に大きな問題になっている、つまり為替の変動制のもとでいま国際的な監視機構をつくるとか、あるいはまた国際的な、何といいますかな、規制する何か法則的なものをつくらなきゃならぬとかいう意見が大分出ていますね。IMFの総会で恐らくこれは問題になると思うんですが、その点一言も触れておられない。いまのような日米関係のもとで国際監視機構をつくる等々のことをやったら、私は日本の主権の侵害になるかと思う。日本政府意見はどうなのか、その点も伺いたい。
  127. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 景気対策は、国内市場の拡大ばかりでなく、海外市場の拡大もやらなきやならぬと思います。国内市場と海外市場というのは別に考えられないんで、相当しっかりした国内市場を持っていないと海外市場への進出もできないし、海外市場が安定した市場を持っていないと国内市場に関する充実、国内経済の充実した展開もできない関係にありますことは、経済にお詳しい渡辺さんでございますから御如才ないと思いますけれども、したがって私は、結論としては内外の市場の拡大をもって景気に対応したいとお答えしたいと思います。  それから、為替市場に対する管理政策でございますけれども、私どもがいままでやってまいりましたこと、またこれからやってまいろうとしていることは、国際的な約束、合意というようなもの、みんな力を合わせて世界経済が縮小均衡に向かわぬようにやろうじゃないかと、お互いに節度をもってやろうじゃないかということは、十分踏まえた上で為替市場の運営をやってきているわけでございますので、ちっとも指弾を受ける性質のものでもないし、今後もこの道を踏みはずすようなことはいたさない、日本の名誉と信用のためにそういうことをいたすつもりはないわけでございます。  いま、マニラの方で何か提案があったようでございますが、そういう技術論につきましては事務当局の方から答弁させます。
  128. 北田栄作

    政府委員(北田栄作君) IMFの新協定のもとにおきましては、為替相場におきまして各国が自由にどういう相場制度をとるかという選択をゆだねておるわけでございまして、たとえばフロートをとるとか、それから共同フロートをとるとか、あるいは固定相場をとるとか、そういったのを各国の選択にまかせておるわけでございます。それに伴いまして、そういった加盟国の為替相場政策の確実な監視を実施し、またそういった為替相場政策に関する全体的な指針とするための原則というものを採択するというようなことがIMF協定の新協定の中に盛り込まれておるわけでございます。したがいまして、今後こういった点についていろいろIMFの場で検討をされていくことになるだろう、こういうふうに考えておるわけでございます。そういった場合に、やはり加盟国はどういう為替相場制度をとるかということは、いろいろあり得るわけでございますから、そういったいろいろの相場制度全体について、適用される原則とか、あるいは仕組みというようなものは、やはりある程度弾力的な概括的なものでなければ非常に困難であろうというふうに思われますし、それが望ましいんじゃないかというふうに考えておる次第でございまして、いずれにしましても、監視ということにいたしましても、各国の個別の事情等を十分考慮した弾力性を備えたものでなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。  監視の機構等につきましても、いろいろの議論があるかと思いますが、私どもといたしましては、そういったようなことに十分生かされるような機構が望ましいというふうに考えておりまして、今後検討をしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  129. 栗林卓司

    栗林卓司君 私は、物価調整減税のことでお尋ねをしたいと思いますけれども、これは野党だけではなくて、与党も含めて関心と要請が強い部分でありまして、大臣とすると財政の責任者でありますから簡単に与党というわけにいかぬということなんだろうと思います。  で、ことしが三兆七千五百億円の赤字公債を出す、来年は大体似たような数字赤字公債を想定せざるを得ない、こういう財政状態を考えておりますと、なかなか減税論というのはこれはのるものではないと思います。そこで、そうは言いながら、所得税減税ができないものかというので、景気対策を絡めた御議論がわりあいに多いわけですけれども、私はそうではない角度で大臣の御意見をちょっと伺いたいと思うんですが、不況になってまいりますと、税収の伸び率の中で源泉所得税が占める寄与率が高まってくると思います。例を挙げますと、たとえば五十年度決算と五十一年度予算比べてみますと、源泉所得税が四兆円に対して五十一年度予算が五兆二千億円ですから、三割ばかりふえた勘定になりますし、申告所得税は一兆五千億円が一兆二千億円、いろいろ景気の変動もこれありというので、これは減っております。それから物品税の方は、いま不況といってもスタグフレーションですから、価格は上がってまいりますけれども、量としてはなかなか期待し得ない。結果としてこれも七千億円が七千億円で横ばいになっている。法人税はといいますと、五十年度決算が四兆一千億円ですけれども、五十一年度はわずかに四兆六千億円、一割増しぐらいしか見込めない。これは何も五十年度決算と五十一年度予算の関係だけではなくて、不況期に入ってまいりますとありがちなことだと思います。源泉所得税の方は不況になったからといっても失業がすぐ出るわけではありませんし、それやこれやで税負担能力が大きく低下いたしません。したがって、源泉所得税税収に占める寄与率が高まってくる。私は、これは一面やむを得ない現象だと思います。  そこで、去年、ことし、来年と続いてまいりますこの非常に苦しい財政状態の中で、したがって、源泉所得税に相当多くを依存しなければいけないという議論は私はわからないではありません。ただ、そのときに、実質賃金に食い込んでまで負担をしてくれというのは、政治論としてどうなのか。そこで、物価調整減税だけをいま抜き出してお尋ねをしているわけです。当然いま不況であちらもこちらも大変なんだから、源泉所得税を払っている皆さんについてはずいぶんと負担していただきたいということは、私は、一つ考え方として理解はいたしますけれども、その負担を求める限度というのは、実質賃金の水準にまで食い込んで負担をしてくれというのは政治論としてどうなのか。また、不況期を切り抜けていくときの国民負担の度合いとしてどうなのか。もともと不況が全部日本国政府の責任であるとは言いませんけれども政府政策にかかわる部分がずいぶんとある。それを考えると、政府とすると、これは与党とか野党とかということではなくて、応分の税負担を求めるとしても、実質賃金の水準にまで食い込むことは、これは避けましょう、物価調整減税というのは当然のこととして、これは取り分けて実施をしていこうというものが私は政治論じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  130. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) まあ源泉所得税の納税者が、不況の場合に相対的に多くの税の負担をしておるということは御指摘のとおりでございます。逆に言えば、不況のときでも安定した収入を確保できておる階層であるとも言えるわけですね。それで、これは、税というのは収入に対しまして、所得に対しまして一定の税率で賦課するわけでございますから、特に不況のときに税率を重くするというのであれば、その御批判は私は端的に当たる思いますけれども、直ちに——比重が重くなっているということ自体はそうとがめられるべき性質のものではないと思います。しかし、実質所得に食い込んでおるということが政治論として望ましいことでないということは、もう全く御指摘のとおりであると思うんでございます。しかし、国民経済全体を考えてみますと、たとえば原油を例にとってみましても、同じ分量の原油を入れるにつきましても、百億ドル以上の全く外貨を払わなければならぬという日本でございます。で、これは原油ばかりでなく、これについてはほかの日本の輸入品もだんだん上がったわけでございます。もっとも、これがいつまでも上がるわけではなくて、まだ日本からの輸出品が新しい物価体制にだんだんと調整されていきまして、これが薄められていくことと思うんでございますけれども、輸入物価水準と輸出物価水準を比較してみますと、どうもやっぱり輸入物価水準が高くて、輸出物価水準が低いという鋏状価格差の中で日本経済があえいでいるわけでございますから、よほどの技術革新、向上、あるいはいろいろ経済的な措置がうまく措置されない限り、どうしても実質賃金は全体として下がらなければならぬ筋合いになっているんではないかと思うのです。一応、したがいまして、こういう時期に実質賃金を下げるのはけしからぬといわれたら、そのまま往生するわけですけれども、しかし、それはもう政府といたしましてもいたし方のないこういう環境なんでございまするので、それをタイドオーバーするところのいろいろな手だてをやることについて政府が怠慢であるということだったら、いろいろおしかりをちょうだいしたいと思いますけれども、そのこと自体をつかまえてこれはいけないというおしかりに対しましては、直ちに私はまいりましたとシャッポを脱ぐわけにはいかぬと思います。
  131. 栗林卓司

    栗林卓司君 いま大臣、大変率直におっしゃったと思うのですけれども、例の石油の原油値上がりというのは、平たく言うとそれだけ日本が貧乏になった、これはもう率直に事実として認めなきゃいかぬ。そういう異常な事態においては、実質賃金の維持というけれども、それもこれも含めて約百四、五十億ドルが余分に出ていくわけですから、波及効果を含めて九兆円前後の有効需要減になる。ということは、見た目はインフレ、実質は貧乏になったと、それをわきまえなければという御議論はよくわかります。ただ、そうは言いながら、では原油高騰による経済的な阻害要因というのは現在どうかというと、経済白書の指摘では、その原油高騰によるデフレ要因——貧乏になったということですが、デフレ要因は急速に減衰しつつあるという指摘なんです。で、私もそうだと思うのです。これをたとえば年度内物価調整減税あるいは去年の分をという議論をいまここでしますと、なるほど、大臣の御指摘も私はわかる気がするんです。ただ一方、財政状態を見ますと、赤字公債を脱却するのにそれは昭和五十五年だ、よってもってそれまで引きずられる話なんだろうかというと、そうではない。やっぱり来年の予算編成を含めて物価調整減税どうするかということは、依然として今日的政策課題であることを失わない。先までしょうがないんだという話ではない気がするんですが、いかがですか。
  132. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いまの御質問は、全く私はそのとおりだと思います。いつまでも資源危機の状態が続いているわけじゃなくて、それに対する調整過程はもう相当時間の経過を見ておるわけでございますから、もうそろそろ私は泣き言を言っておれない時期が来つつあるのじゃないかと思いますので、仰せのように、実質所得がマイナスに立ってくるというような事態は、これはやはり政策的な貧困を意味することになりかけておるのじゃないかという御指摘は、確かに私はそのとおりだと思います。
  133. 栗林卓司

    栗林卓司君 それで、いま財政の当面の責任者として大臣の一番の御心配というのは、今年度税収が一体どうなるかということではあるまいかと思うのです。で、すでに繰り越しを持っておりませんから、仮に税収が不足しますと、これはよほど厄介なことになるのが今年度の私は財政だと思う。そのときの取り越し苦労をいまからしてみても始まりませんけれども、だけども、まずまず大方のところは、先のことがわからないので、五十年度の水準で税収見積もりをしたわけですから、したがって、若干の黒字幅も期待できないわけでではない。といって、いまそれを聞かれてもそれは困ると、いまのところはわからぬということを言うしかないというお立場だと思います。しかし、これはいずれわかってくる。それを理解しながら、来年度の予算編成も進んでくるということになるわけですから、いま先ほどお答えになったこととあわせて、今年度の税収も十分勘案しながら実質所得の減という、先ほど来おっしゃっております重要な生活課題の一つであるわけですから、当然、政府税調の見解これありとしても、来年度の検討課題として十分対象にし得る。重ねて伺っているかっこうになりますけれども、この点をお尋ねしたいと思います。
  134. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) でございますから、今度は財政全体の問題といたしまして、歳出歳入全体を含めまして、その中の政策のプライオリティーを考えて、いま御指摘の実質賃金がマイナスに立つというようなことになってくることは許せないと、それをまず排除することがファースト・プライオリティーに位置づけられなきゃならぬと仮にいたしますならば、歳入歳出を通じましてそのことを可能にするような条件をやっぱりつくらなきゃいかぬのじゃないかと思います。ほかのことはほかのことでほうっておいて、これだけはひとつ、物価調整減税だけはという議論でなくて、全体のコンテクストの中でこの議論をしていただきたいとぼくは思うんです。で、それをやるなら、どうしてもやらなければいかぬという本当のファースト・プライオリティー・ポリシーという問題であるならば、これはひとつ遠慮しようじゃないかというような配慮が来年はぜひ必要、ぜひ考えていただかなければならぬような年ではないかというふうに私はそう思います。
  135. 栗林卓司

    栗林卓司君 それでは、重要なワン・オブ・ゼムということで、その問題はここで切りまして、関連してあと一つだけお尋ねしたい気がしますのは、自然増収が期待できない、しかも前々年の繰越金持っているわけではない。しかもこれから若干残りましても、それは全部公債発行減額に充てていくんだという時代の予算というのはどうやって組んだらいいんだろうか。というのは、歳入欠陥が出たら、それこそ厄介になるわけですから、といって固め固めの歳入を組むわけにもいかぬ。巨額の予備費をあらかじめ置いといて、万が一そこで調整に使うんだと、これもとうていできた仕事ではない。これまではちょっとしゃにもの狂いでやってきたんですけれども、ここでふっと考えてみると、歳入欠陥が出ても対応一切できないんだという中で、仮に剰余金が出たら全部公債発行減額に充てるんだということで財政運営できるんだろうか。これは来年以降、実は目の前の問題になるんじゃないかという気がするんですけれども、ですから、ことしでも三兆七千五百億円、来年度は中期見通しでは三兆二千億円とおっしゃっている赤字公債の早期解消をしなければいけませんけれども、なんともきつきつの財政になっちゃったと、そういった面からだけ追いますと、追っていくと、プライオリティーが高ければとおっしゃっている物価調整減税も、行政とするとそれはおつかなくてする気がしなくなっちゃうというぐあいに、行政が政治目的を無理に引っぱっていくことになりはしないかと。そこで、これは御見解を伺いながら、きょうもう時間ですから、次回に譲ってまた伺いたいと思うんですけれども、なるほど、これまでは剰余金は全部公債発行減額に充てると、こうやってまいりましたけれども、歳入欠陥が出た場合に、税収の場合。その都度また赤字公債をくっつけた補正予算論議をしなければいかぬと、これができるとはちょっとなかなか期待ができないという意味では、少し、たまたまきょう同僚議員も質問しましたけれども、日本経済に出た、トップ記事ではありませんけれども、ちょっとこれ真剣に考える時期に来たんじゃないかと、この点だけまず御見解を伺っておきます。
  136. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおり、もう非常に狭い土俵で相撲をとらなければならぬわけで、ちょっとやるともう勇み足になるわけでございます。そこで全く神経質にならざるを得ないわけでございます。いま栗林さん御指摘のごとく、全くそのとおりでございまして、途中でいよいよ背に腹かえられなくなりまして、公債の増発をお願いしなければならなくなりましたと言って、のこのこ国会に出てくるわけにもまいりませんので、その点は十分配慮しながら予算をやらなければいかぬわけでございますので、よほどの真剣な検討が必要だと考えておりまして、政府も一生懸命に努力をしてみたいと思いますけれども委員各位におかれましても、一層高い立場からの御指導を願いたいと思います。
  137. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十五分散会