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1976-10-21 第78回国会 参議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十一日(木曜日)    午前十時十五分開会     —————————————    委員異動  十月二十日     辞任         補欠選任      前川  旦君     川村 清一君      粕谷 照美君    目黒朝次郎君      田中寿美子君     久保  亘君  十月二十一日     辞任         補欠選任      川村 清一君     田中寿美子君      久保  亘君     宮之原貞光君      向井 長年君     柄谷 道一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         戸田 菊雄君     理 事                 玉置 和郎君                 森下  泰君                 浜本 万三君                 小平 芳平君     委 員                 石本  茂君                 今泉 正二君                 佐々木 満君                 高田 浩運君                 久保  亘君                 田中寿美子君                目黒朝次郎君                 柏原 ヤス君                 沓脱タケ子君                 星野  力君                 柄谷 道一君    国務大臣        労 働 大 臣  浦野 幸男君    政府委員        人事院事務総局        職員局長     中村  博君        厚生省医務局長  石丸 隆治君        林野庁長官    松形 祐堯君        労働大臣官房長  桑原 敬一君        労働大臣官房審        議官       松尾 弘一君        労働大臣官房審        議官       吉本  実君        労働省労政局長  青木勇之助君        労働省労働基準        局長       藤繩 正勝君        労働省婦人少年        局長       森山 真弓君        労働省職業訓練        局長       中原  晁君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        警察庁刑事局捜        査第一課長    鎌倉  節君        行政管理庁行政        管理局管理官   山本 貞雄君        林野庁職員部長  馬場 道夫君        中小企業庁指導        部組織課長    松田 岩夫君        運輸省自動車局        業務部長     向井  清君        運輸省自動車局        業務部旅客課長  桜井  勇君        労働省労働基準        局監督課長    倉橋 義定君        労働省労働基準        局労災管理課長  田中 清定君        労働省労働基準        局安全衛生部長  山本 秀夫君    参考人        雇用促進事業団        理事長      堀  秀夫君        雇用促進事業団        理事       広瀬 忠三君        勤労者福祉促進        協会理事     三重野一雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (白ろう病に関する件)  (日本赤十字社姫路病院労働紛争に関する件)  (丸金証券株式会社労働紛争に関する件)  (雇用促進事業団及び勤労者福祉促進協会の業  務運営に関する件)  (婦人労働問題に関する件)  (タクシー運転手労働問題に関する件)  (じん肺対策に関する件)  (雇用問題に関する件)     —————————————
  2. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十日、前川旦君、粕谷照美君及び田中寿美子君が委員辞任され、その補欠として川村清一君、目黒朝次郎君及び久保亘君がそれぞれ選任されました。  また、本日、川村清一君及び向井長年君が委員辞任され、その補欠として田中寿美子君及び柄谷道一君がそれぞれ選任されました。
  3. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 労働問題に関する調査を議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、いわゆる白ろう病振動病についてきょう御質問したいと思います。  労働大臣、それから林野庁長官、御承知のとおり、去る今月の十七、十八、十九日の三日間に、命を返せ、白ろう病三千名告発キャンペーンがありました。全国から労災認定者約五百五十人が出てきて、これは国有林民有林両方労働者ですが、街頭で訴えをいたしましたし、それから各省にも交渉にそれぞれ参りました。この人たちは病人なんでして、そういう人が東京にわざわざ出てくるということは並々ならないことなんであって、それはもうやむにやまれず出てきたものだということは御承知だと思います。過去にも、水俣病、イタイイタイ病、カネミ油症、みんな患者自身が出てきて街頭で訴えなければ政策が進まないという、これは私は全く政治の貧困だというふうに思わざるを得ないんでございます。全く恥ずべきことだと思います。  ところで、今回のキャンペーンでは、十九日に全国の三十八名の告訴人によって福田前林野庁長官、それから松形林野庁長官白ろう病になることがわかっていながらチェーンソーを使わせたということ、それは未必の故意であるということで傷害罪最高検察庁に訴え、告訴をいたしました。こういうことはどう思うかなんて聞きましても、十九日の朝の「スタジオ一〇二」で林野庁長官が、振動病対策を進めている際に告訴するとはまことに遺憾であるといったような言葉しか出てこないと思いますので、私はそういう感想は伺いません。ただ、事態がこれほど深刻になって、そういう手段をとらなければ対策が進まないということ、まあ日本の国土の六七%が森林であって、そしてその森林伐採に当たっている労働者が次々と振動病にかかっていく。そしてしかもその人たちは老齢化しておりますね。後から若い労働者が入ってこないという状況。これは労働者自身の命と、それから暮らしと雇用を守らなければならないという、その悲痛な要求であると同時に、これに対してはやっぱり下手をするともう林業労働者はなくなって枯渇してしまうんじゃないかと、こういうこともあるんですから、非常に深刻に受けとめていただきたいと思います。  私はこれの御感想は聞きませんが、もうすでに今日までに衆参両院でわが党の議員からずいぶん質問がされております。きょうは大変私に与えられた時間は短いですから、いまの現在のような状況の中でどのように事態を打開し、振動病を防止し、治療し、森林労働者の命と生活権と、それから首ですね、雇用が非常に不安定である。これを守るために一体政府告訴という段階に入ったいま具体的に何をしようとしているのかという、具体的な措置の一点にしぼって幾つかの質問をしたいと思います。  その前に、初めに、このように長く対策がおくれた。もう三十四、五年から病気が始まり、四十年代ではどんどん振動病にかかっている人が出てきている、そういうような状況なのに、その対策をおくれさせたのは、私は第一に当局の認識に問題がある、この問題に対する認識の問題があると思うのですね。それで、第一最初に、振動病にかかっていると思われる者の数の把握ですね、これは国有林ではすでに労災認定患者二千九百八十四名、民有林林業統計によっても九百一名、五十年度ですね。四十九年は四百二十四名ですから倍増しているわけです。しかし、この数は非常に民有林の場合は、二十万からある林業労働者、ことに伐採に当たっている人というのは相当の数がある。その中で数の把握は、まあ認定患者はたった九百一人、国有林の中でもう三千名近い人が労災認定をされているのに。だから、国有林労働者の数とその発生の比較をしてみますと、民有林の場合の労災認定者も少ないんですが、事実上異常を体に感じていながらそれが発見されていない、つかまれていないと思うのですが、林野庁長官、どのくらい全体として民有林の中には振動病にかかっている人がいるというふうに把握していらっしゃいますか。現在国有林チェーンソーを使っている労働者は五千人以上、その中ですでに二千五、六百人が異常を訴えているわけですね。民有林の場合どのくらいいるというふうに把握をしていらっしゃいますか。
  5. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) お答え申し上げます。  冒頭に先生がおっしゃいましたように、大変レイノー問題といたしまして異常な事態でございまして、いまなおまた出ておるということにつきまして、私ども大変遺憾な気持ちでおるわけでございます。なお、御質問ございました民有林振動病認定でございますが、おっしゃったとおり三月現在で九百一名ということでございますが、チェーンソーの数はいままで累積いたしますと民間では約十八万台程度あると思っておりますが、これは販売されたものの累計等でございまして、実際これを使っておるという伐木造材等に従事している方々は四、五万人というふうに私ども考えておるわけでございまして、その中でいろいろ労働省の委託によるいわゆる六千人健診というようなことで、このような数字が出ておりますけれども、急激にふえつつあるということは実態があろうかと思いますが、私どもの方で確実につかむという数字を申し上げるまでの調査ということはできていないというのが実態でございます。
  6. 田中寿美子

    田中寿美子君 それだから対策が進まなかったんですね。いま長官も四、五万人はチェーンソーを使っているだろうと、民間で。ですから、国有林振動病が発生している比率で換算してみると、二万とか三万ぐらいは振動病にかかっている者があるんじゃないかと推定はできると思うのですね。ですから、そのくらいの数を把握しないで対策というものが進むはずがないということです。  それから、私たちは一番対策のおくれている理由として、不安定雇用のいまの体系といいますか、いまの体制ですね、それが一番の理由じゃないかと思うのです。それは異常を感じて、そして治療の必要があっても、治療どころか健康診断も受けられない、そういう状況なんですね。だから、それというのも、もう御存じのことですから私の方から時間の節約で申し上げますけれども振動病にかかっているということがわかれば雇ってもらえない。民間の小さな雇用主もあるし、大きな雇用主もあるわけだけれども。だから、首にかかわっているし、生活にかかわっているということですね。だから、こういう不安定な雇用一つは大きな原因になっていると思います。そして、その雇用主の中には非常に零細なものもたくさんある。それでその対策は非常におくれているというふうに考えるわけなんですが、毎年のようにこの死亡者を出しました屋久島に関して、南日本新聞なんかでは特集記事をずっとやっておりました。それから、去年も高知で特集記事をずっとやっている。白ろう病の問題は非常に重大な問題に地方でももうなっているわけなんだけれども、その中でいろんな自殺した人の手記白ろう病を苦にして自殺してしまった人の手記、あるいは一命をとりとめた人の手記、それから白ろう病で非常に苦しんでいる人たち手記長官もお読みになったかどうか。それらで、こういう報道の一部からとってみますと、お医者さんに言わせると、こういう新聞で見ますと、実際診察した医者は専門医というのは少ないですから、だからとにかく振動工具を使わせないことだけしかないというようなことを言っている。あるいは患者さんの手記の中には、思い余って睡眠薬自殺を企てたというようなことがある。あるいは認定されれば仕事がなくなるというふうなことを言っている。それからもう夜がこわい、夜になると耳鳴りがして眠れないと、だから夜のくるのがこわいというような、これは自殺者手記の中にありますね。それから、奥さんの手記の中に、痛い痛いと言いながらチェーンソーを担いで出かけていく夫を見るのは実につらいというような、こんなのはとてもどれ一つ取ってみても、命と暮しと首と、この三つが絡み合っているから仕事をやめるわけにいかないという状況に追い込まれている森林労働者状況ですね。こういう状況をなぜ今日までそのままにと言ったら、いや私の方はこうしましたというふうにおっしゃるかもしれないけれども、これまで一体どのように対策を講じてきたのか。まあ私は行政の怠慢だというふうに思うのですけれども、それを問題にせざるを得ないのですが、どういうふうなことをしたというふうにおっしゃいますか。
  7. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) お答え申し上げます。  ただいま先生からお話ございましたように、林業伐木造材事業体と申しますか、きわめて零細でございまして、はっきりした数字はつかめないんでございますが、全国で約三万体近いものがあるんじゃないかと、こう言われておるわけでございまして、きわめて零細な経営基盤でございまして、加えまして林業労務というのは季節的でございますし、またそれが農業との兼業というような形でございます関係から、いろいろその就労実態というのがなかなかつかみにくい、しかも多種多様であるというようなこと等がございまして、そういうことが一つのネックとなりましてこの振動障害対策の徹底を図るとか、あるいは社会保険その他の対象につかまえにくいという点がございます。したがって、私どもとしても、従来から先生承知林業構造改善事業等を通じまして経営基盤の強化を図るということ、そして、事業体をもっとしっかりしたものにするということをとると同時に、就労の安定と申しますか、そういうことが必要だということで、五十年度からでもございますけれども、その前からいろんな手段はとっておりますけれども、五十年から森林パトロール予算等を確保いたしまして、労働安全とかあるいは労働確保等についてのパトロールをいたしますと同時に、本年度からは林業を中心としているような地域に、三百四十名でございますけれども労務改善推進委員というものを配置いたしまして、先生のおっしゃるような指導をし、そして、雇用関係改善と安定ということで助言、指導をいたすように私ども努力しているところでございます。
  8. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう最初通達を出してから六年半たっているわけなんですね。それで、四十五年の二月、これは労働省の方の通達でしょうか、四十五年二月、五十年十月、そして林野庁はことしの八月三十一日に通達を出していらっしゃると。で、私きのう各省の方とお話をしていたら、労働省もあわてて十月十四日にこの八月三十一日の長官通達に合わせて対応したものを出されたというんでけさいただきました。これは中央行動が、相当キャンペーンが激しくなって告発告訴にまで及んだということで急いで出されたものだと思うんですが、いまおっしゃったようなことの指導はほとんど効果を上げていない。それは社会党調査団がことしの五月に静岡水窪に行きましたときの報告がございますけれども、実に行政の怠慢だと思わざるを得ないんですね。たとえば時間規制ができない、できないでいるわけです。時間規制というのは、実際に行ってみると、現場に入ってみると四時間から五時間続けてやっていると。それは労働省側の方から見ますと単価が非常に低い。だから、どうしても四、五時間は使う。そうしないと生活できないというようなこと。それから、やっぱり雨天にならない限りは体が悪くたってチェーンソーを使いっ放しというようなこともある。それから、規制通達があるということだけれども、何も聞いたことがないと、実際の現場労働者は。それから指導や注意はどこからも聞いたことがない。パトロールをつくったとおっしゃるけれども、来たこともないと、そういうようなことを労働者たちは答えております、実際に社会党調査団に対して。それから、森林組合の方は知っているはずなんですね。多少は知っているけれども事業主もそれから労働者も全く知らない。基準局も県も町も何もやってくれてはいないというような答えが返ってきております。それから、基準局も県も労働者への指導はほとんど林災防に任せっ放しで、直接指導するということは皆無だと。また林災防が実施する講習会というのも操作方法だけに重点があって、労働安全の方にはちっともほとんどないと。だから、こういうことすらあるんですね。三月三日に静岡県の水窪で行なわれました講習会では、民間には二時間規制というのはないんだから、振動を体に受けないように木の方に機械をかけて切ってくださいというようなことを講師が話をしていると。そして、その場では監督署が立ち会っているんですね。これでも何もしないというようなこと。つまり、私はこれ林野庁労働省両方の責任だと思うんですけれども、こんなに、初めて通達を出してから長い期間がかかっているんですが、これに対して私は大変行政が怠慢であった。通達行政であったに過ぎない。このごろになって少しあわててきたというような気がいたします。  そこで、私は時間がないから、具体的に今後どういうふうな指導をなさるのかという点をお伺いしたいわけなんですけれども、五月十一日に衆議院の社労委員会島本虎三議員林業労働法制定を要求しました。これは社会党が総合的な林業労働法をつくっているわけなんですが、それに対して労働省遠藤所管局長、実はきょう所管局長に来ていただきたいということをきのう申しましたけれども、おいでにならないそうでございます。私はもしも国会軽視じゃないかというふうに思っているんですけれども選挙運動にでも行っているならこれは困ったことだなと思います。で、遠藤所管局長島本議員に対して、その法制化には賛成できないと。現行法でも十分な措置ができると。だから、十分措置できる方法というのは一体どんなことで具体的に措置できるか。これはまず労働省の方に伺います。
  9. 吉本実

    政府委員吉本実君) ただいま先生の御指摘のございました点でございますが、林業労働につきましては先ほどからのお話もありますように、作業の季節性だとかあるいは経営基盤が非常に脆弱であるといったような点で、雇用の面でもいろいろ問題があるわけでございます。ただ、雇用関係が必ずしも明確でないというようなところも非常に多い。したがいまして、それを前提とする、施策の対象とすることがやはりなかなか困難な事情がございますので、やはり基本的にはそういった雇用対策前提条件整備を促していくことがやはり基本ではないか。そういったことをやりながら、他方私どもとしましても、先ほど先生指摘のように必ずしも十分でございませんが、雇用条件改善指導を行うなり、あるいは従来から行っております通年雇用促進を図るといったようなことをやりながら、またせっかく農林省でも先ほどお話ありますような林業労働就業対策事業というものを始めておるわけでございます。そういった成果もながめながらよく連絡をとって雇用の安定に努めていこうと、こういうふうな形で申し上げた趣旨でございまして、決してすべてそれで万全であるというような意味ではないというふうに思っております。
  10. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあ島本議員は、港湾労働法ができ、建設労働法ができた。その後は今度は林業労働法だというふうに言ったときに、遠藤局長がそんな法律の必要はないと、十分現行法のワク内で条件整備を図っていきますと、ちゃんと答えているわけです。いまのお答えは非常に抽象的で一つ具体策になっていないわけなんですね、条件整備を促しますというんではですね。  それで、もう少し具体的に伺いたいんですけれども職業安定局労働基準局と、両方協力して基準法十五条の採用時の労働条件明示というその義務ですね。これを使用者労働者を雇うときに、労働時間その他について文書を取り交わすと、そういうことを実行させるようにできないのかどうかということです。法律が要らないというなら、実際にそのようなことをさせるということができませんか。
  11. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 林業労働実態につきまして、先ほど先生もるるお述べになりましたが、林業が非常に山間僻地で行われているというような実情、あるいは有期事業といいますか、非常に季節的要因が強い。零細経営である。あるいは屋外労働でありますから監督が十分にいきがたい、あるいは一人親方か雇用労働者かわからないというような非常に複雑な労働形態であることは、先ほど来お述べになったとおりでありまして、私ども鋭意やっておりますけれども、実際問題としてなかなか対策効果を上げにくいという点は私どもも頭を痛めておるところでございます。  雇用の安定に関連しまして、いま労働条件明示について御示唆があったわけですが、先般の建設雇用の立法におきましてもそういう考え方を打ち出したわけでございますから、でき得べくんば私どももできるだけ雇用条件というものをはっきりさせるという意味で有効ではないかというふうに思います。  ただ、これを実際に行っていきます場合に、いま申し上げたようにいろいろな前提がございますので、これはやはり労使の協力も得、また関係官庁、地元の自治体等協力も得ながら、やっぱり広範な対策を進めるということでやらないと効果が上がらないというふうに思うわけでございます。
  12. 田中寿美子

    田中寿美子君 だからね、職業安定局長島本議員に対して、雇用関係があるかないかわからないという状況の中で、大変困難だけれども、でも法制化しなくたって現行法の枠内でちゃんとやっていけますというふうに答えているんですから、それをやる方法というのは、労働者が雇われるときにきちんとその労働条件明示するところの文書の取り交わし、契約ですね、これをやらない限りいつまでたっても林業労働者は救われないと思います。いま基準局長は、それは有効な方法だと言われた。それをするのにはいろいろの条件整備が必要だと言われた。その条件整備のためにこれは私は林野庁労働省両方とも協力してほしいと思うわけなんですが、少し時間の関係で急ぎますけれども、もう一つは具体的な方法として、じゃこの現行法の枠内でやっていけると言われたのだから、ちょうど港湾労働者たちが要求しておりますような共同雇用制をとることができないかどうか。これは林野庁長官にも伺うわけですが、一人の労働者が年間いろいろ何人もの使用者のもとで働くということがあって、その雇用関係が非常に複雑になっていく。そこで、そういう雇用される労働者の方もそれから使用者の方も幾人もあるわけだから、それを共同雇用制にして、そして一括した契約ですね、通年契約みたいなものを実施させる方法はないかどうか、そういうことをさせる気はないかどうか、まず林野庁長官いかがですか。
  13. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) お答え申し上げます。  ただいまの港湾労働者と同様な形における共同雇用というようなことを例示して申されたんでございましょうけれども、実は先ほど労働省の方からお答えがございましたように、雇用調整計画を定めるということが前提でございますが、それにいたしましても、先ほど先生指摘のようなかっこうで、零細規模であったりあるいは農業との兼業であったり、季節的であったり零細性があったりと、広い全国に散らばっているということから、この共同雇用方式前提とも言うべき雇用計画というものの策定がなかなか困難であるということで私ども考えておるわけでございまして、その前提条件として先ほどお答え申し上げましたような雇用関係明確化雇用の安定ということで、パトロールあるいは改善員を配置してそういう現在の状態をもう一歩でも前進させる、そういうことの整備をいま図っておるという段階でございまして、私どもは現段階ではなかなか困難ではなかろうかと考えておるわけでございます。
  14. 田中寿美子

    田中寿美子君 労働省いかがですか。
  15. 吉本実

    政府委員吉本実君) 先ほど林業労働実態につきましていろんな複雑な要素があるということ、先生の御指摘のとおりでございまして、そういった点の上に新たに新しい進んだ観点からの雇用制度を導入するということにつきましては、やはりそれの基盤整備をもっと図っていかないとなかなかいけないのではないか、このように思っておりまして、一つの大変な貴重な御意見だと思いますが、私どもそういった実態の上で対処してまいりたいと思います。
  16. 田中寿美子

    田中寿美子君 審議官は基盤整備、基盤整備ばっかりおっしゃるし、林野庁はやっぱり雇用調整計画が先だと、こう言っているといつまでたったって解決できないわけなんです。だから、できるところからやっていくだけの意欲がほしいと思うんですね。たとえば、一括雇用契約をできるような地域から林野庁が請負単価なんかを指定する、そのときに一定の労働条件のもとで働くことを保障させるような、そういう単価を決めさせるということを何人か年間雇われる労働者に対して契約させる、雇用主とそれから労働者の間で契約させるということは、地方的にはたとえば北海道の北見佐呂間町で実行しているわけなんですね。一括雇用制をやって、そしてそこの労働者は町営の集団住宅に住まわせるというようなことすらやっているわけだから、やれないことはないと思うんですね。ですから、そういう意味共同雇用制度をできるところから試みにでもやっていくという、それぐらいの態度がありませんと、全部これは前提条件雇用関係明確化させることが前提です、前提ですと言っていたら一つも手につかないと思うんですが、何かこれを一歩でも進める気はおありになりませんか。
  17. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) 先ほどお答え申し上げましたような実態でございますけれども、たとえば全国に相当数の森林組合がございまして、先生冒頭おっしゃいました日本林業労務者二十万人ぐらいのうちの約六万人程度が森林組合の中の労務班を形成しているメンバーでございます。これは森林組合の強化対策といたしまして、私どもこれの通年雇用的なものができるように、そしてまたそれを安定した雇用の場にできるように、地域ぐるみで森林組合一つの範囲の中で努力いたしておるわけでございまして、この共同の雇用というような一つの類型ではないかと思っておりますが、現在私ども森林組合の強化対策という中で、そのような大体似たようなことで雇用の安定を図ろうという努力を現在重ねているところでございます。
  18. 田中寿美子

    田中寿美子君 今回の行動で、労働省交渉の中ではいろいろな約束をしていらっしゃるわけなんで、時間があればそれ一つ一つ確認したいんですけれども、時間が少ないものですから、それではいまおっしゃったようなことは、森林組合を中心にして地域ぐるみで一括雇用とか通年雇用の方針を進めつつあるというふうにおっしゃいました。私はそれをもっと具体的にどんどん進めるべきであるということを申し上げて、そしてもう一つ具体的な方法としては、これは基準局の方だと思いますが、登録制の実施ができないかということです。これもいままでいろいろの人が触れているわけですけれども伐採労働者の資格要件として安全衛生規則に一定の職業訓練を受けるということを定めて、それを登録するというやり方ですね。チェーンソーと言ったって、非常に大きな木を切る場合なんかというのは、そう簡単に二時間程度の講習でだれでも使えるというような状況にしておいたんではいけないと思うんですね。ですから、やっぱりある意味の技術者として訓練をして、訓練を受けた者は手帳を登録する、そういう方法はどうですか。
  19. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 現在チェーンソー取扱者につきましては、チェーンソーの適正な取り扱いについての正しい知識を有することが必要でありますので、現在特定の伐木事業に従事する者に対しては特別の教育を義務づけております。特定の伐木事業と申しますのは、直径七十センチメートル以上の立木、直径二十センチメートル以上のかかり木等の伐倒でございますけれども、そういうものに対して義務づけておりまして、これは労働安全衛生法に基づく規則で義務づけておりますが、この中で、チェーンソーの取り扱い、点検整備振動障害防止の事項を行うこととしているわけでございます。実際教育は林災防が行っておりますが、昨年までに三万八千百三十一人が実施を受けておるということでございまして、その名簿は各林災防の支部にございますので、これがいま先生御提案の登録ということに直接つながるかどうかでございますが、一応の控えがあると、こういうことでございます。そのほか、御承知の巡回健康診断をやっておりますが、この名簿もございまして、伐木作業者が相当程度それぞれの現場においては把握をされておるというふうに私ども見ております。  それから、これは林野庁の方の関係でございますが、林野庁でもチェーンソーによる伐木作業従事者についての教育をおやりだというふうに聞いております。そういうことで林野庁ともども十分な教育、それによるそういった有技能者の把握というようなことをやっていきたいというふうに思います。
  20. 田中寿美子

    田中寿美子君 きのう林野庁の方から伺ったところによりますと、今後三カ年計画でチェーンソー使用者を再教育して手帳交付を考えているというふうに言われたんですが、それ事実ですか。
  21. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) ただいま労働省からのお話がございましたようなこと等もございますし、私ども従来からいろいろな技能診断とか、あるいはシュミレーターを据えまして訓練を続けておる実態でございますけれども、このような実態でございますので、特別な教育をしたいということで、来年度予算要求を現在いたしておるところでございます。
  22. 田中寿美子

    田中寿美子君 予算要求中でそういう方法をいま考えつつあるということなんですが、私は安全衛生規則に一定の職業訓練を受けたというその資格要件みたいなものをつくって、そして林業労働者に交付するというような内容にそれをしてほしいというふうに思います。そこで、これは時間の関係で要望だけにしておきますけれども林野庁の出された通達ですね、五十一年八月三十一日、この「国有林野事業の実行に係る民間事業における労働安全衛生確保対策の推進について」というこれが出て、それが八月ですから、これは恐らく札幌で地方裁判所に告発が行われた前後じゃないかなというふうに思うんですがね、林野庁長官告訴されているような状況になりつつあるというので、大変林野庁もスピードを上げて対策をとりつつあられるように私は思うんですけれども、八月三十一日に通牒を出して、これに対応して労働省からも、出ていないと思っておりましたら、きのうの話では十月十四日ですか、本当に中央行動を行う直前にあわてて労働省も出したという感じがするんですがね、これは両省の話し合いでやってこられた、これまで出してきた通牒によっての指導は、もういまからお尋ねしても通達行政だったような感じがしますので、これはやめにして、この新しい通達で今日まで八月から約二カ月あるんですけれども林野庁としては何をやっていらっしゃいましたですか。
  23. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) この通達を出すに当たりましては、林業界に与える影響が相当に大きいということでいろいろ検討した結果、このような踏み切り方をいたしまして、局長会議なりあるいは営林局では営林署長会議等を開きまして、これが趣旨徹底ということについてはそれぞれの機関を通じましてそのような努力をいたしておるわけでございます。
  24. 田中寿美子

    田中寿美子君 結局、まだこれまでは何もやってこなかったということで、趣旨徹底の期間だったということになると思うんですが、この中では造林事業を請け負わせたり立木を販売したときには民間事業で、労働安全確保を従来も指導してきたけれども、これからもっと重要性を認識されたようで、大分具体的にここには出ておりますね。最近の労働災害、職業病としての振動病の発生の増大というものをようやく重視してこられたような文書になっております。それでその対策の強化が必要だと、そこで労働省基準局と協議済みでこの通達を出しましたということですね。労働省は二カ月間これ出さないで、つい最近出すようになった、それはどういうことなんですか。協議済みでこの通達林野庁から出ているんですけれども労働省からは二カ月後つい最近出たわけです。
  25. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 林業振動病対策につきましては、予防面あるいは補償面につきまして、昭和四十五年以来累次の通達を出して指導をしてまいっております。それからまた、林災防関係団体を督励しながらやってきておりまして、林野庁が今回こういうことを出されましたので、私どもはさらに現場の連絡を密にするという意味通達を出したわけですが、その間少し時間があり過ぎるではないかという御指摘につきましては、できるだけ早く対応したつもりでございますけれども現場でも十分承知しているということで事務連絡をいたしたわけでございますが、なお今後とも両省の緊密な連絡につきましては、さらに意を用いて徹底した対策を立てていきたいというふうに思います。
  26. 田中寿美子

    田中寿美子君 それじゃ通達の中身のことで少しお伺いしますが、営林署と労働基準監督署との間に連絡協議の場を設けるというふうになっている。場というのはどういうことですか。協議委員会とか何かそういう組織にしないで、適宜に場を設けるのかいうこと。それからもう少し続けて伺いますが、その場という、この場では、請負契約及び立木販売契約の相手方に関する情報交換と、この民間事業での労働安全衛生の確保の対策を検討するとなっておりますね。それから連絡協議は年度当初に行うほか、必要に応じて適宜行うと。これ年度頭初というと、今回はいつ持たれるの、年度当初まで待っていたら四月なんですけれども、連絡協議の場というのは、これ随時設けられるもので、ちゃんと組織的でないから、そういうことになるのじゃないかと思うので、これは連絡協議会とか何かいう、委員会とかいうことにできないかどうかということです。それから請負契約、立木販売契約のときに、振動障害防止のためチェーンソー使用時間規制の規則の確保について法令や指導を守らせる、熟知徹底させるというようなことが書いてあります。特に請負のときには、さらに別の下請に請け負わせるときにも、これをちゃんと伝達をさせるということになっておりますね。それから請負契約契約事項の中には、労働安全衛生に関する諸法令や通達での指導事項を遵守させなければならないということを明記させると、こういうふうに大分言葉だけで言いますと、相当いままでと違った具体的な書き方がされているのですけれども、以上の五点ですか、これが実行されなければ何にもならないわけなんですが、実行性はどういうふうに……。  労働省の方の通達けさいただいて見ますと、これも営林署に連絡することというふうになっているのですね、お互いに両方から。その責任はちょっと逃れながら連絡し合う、情報交換をするというようなことになっていて、基準局の方は監督して違反が出たらこれを処罰するというところまでいくべきだと思うのですが、この辺を両方から伺います。
  27. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) ただいま御指摘の場の持ち方、あるいは回数等についてのお話で、冒頭のお話でございますが、私どもできたら四半期ごとぐらいにお互いに連絡を持ち合いたいと思っているわけでございます。この通達のそうしたら担保はどういうことだと……
  28. 田中寿美子

    田中寿美子君 場というのは何ですか、連絡の場、会議じゃないのですか。
  29. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) 連絡ということで、場の協議会とか、各営林局におきまして統一したことはいたしておりませんので、監督署と営林署と大体同じような場所の町の中にございますので、常時連絡をとっているということで、ただこの通達によりまして、お互いの丸太の生産請け負いの業者の相手方とか、あるいは事業場所とか、事業期間というようなものが、いままでは監督署に実は連絡してなかったということでありまして、これが監督署に連絡をすることによって、場所、相手というようなことがわかるということだけでも大変な前進だろうと思っているわけでございます。そうして監督行政というものは、これは労働省の方でおやりいただいておるわけでございまして、私どもはそこに間違いがあってはいかぬというようなこと等の指導をしながら、そうしてどうしてもそれがおかしいというような風評等が聞こえるとか、あるいは私ども山を見回ったときに守っていないじゃないかというようなこと等が発見できました場合は、監督署に直ちに連絡をとりまして、監督署の方からいろいろな監督指導をしていただくというようなこと等によりまして、そういう連絡を十分とることによりまして、しかも最後の方に書いてあるわけでございますが、このような相手方を来年度選ぶ場合は、何回注意いたしましても守れないような人は除外することもあり得るよというようなことを私ども考えておるわけでございまして、伐木造材等を業としている者が来年の相手に選ばれないかもしれないというようなことは、大変厳しい私は措置であろうと思っておるわけでございまして、先ほど八月以来何をしておったかということでございますが、業者を集め、そして営林署ごとにこれらの通達の徹底を図るというようなこと等も当然やったわけでございます。
  30. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 通達を出しましても、実際にそれが現場に徹底して守られるということが大事でございまして、これはなかなかまた実際問題としてむつかしい、行政でもいつも頭の痛い点でございます。  それから、各省連絡を密にしてと、いつもお答え申し上げますが、各省間の連絡を本当の意味効果的にするということもなかなかむつかしい問題でございます。しかしながら、私どもも従来、たとえば建設業について賃金不払い等については建設省と、あるいは自動車運転者の問題につきましては運輸省と通報制度をやっております。林業につきましても、いま長官からお答えがありましたように、それぞれ現場では密接した官署でございますから連絡はあるわけですが、それをさらに徹底する意味で、いわば常時連絡の場をつくるということが非常に意味があるということで、今度の通達になったわけでございます。個別の事業場のチェックを私ども年間二千件近くやっておりますが、しかし何せ先ほど来のような事業の実態でございますから、どうしても集団指導というようなことに頼らざるを指ない。しかし問題があるとすれば、やはり個別事業場に行かなければならない。そこで、問題のある事業場は何かということをどうやってつかまえるかというのがポイントでございます。そういう意味では、こういう連絡の場というものは非常に有効ではないか。これはぜひ生かして私どもはいきたいと思っております。
  31. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうなんです。そういう連絡の場を持つということは非常に大事だと思いますし、だからこれを実効あるものにしなければいけないんですけれど、三万からあるところの業者に対して一体どうやって指導するのか、監督するのかということを私は疑問を持っているものですから、今度は一片の通達に終わらないように、いよいよもう深刻になってきている状況も、とにかく振動病を未然に防がなくちゃいけないということと、それから異常のある者はどんどんこれは治療に回したりしなければいけないし、それから生活の問題もあるし、雇用関係の問題もあるということですからね。林野庁としては、さっき林野庁長官がおっしゃったように、違反した業者には今後契約をさせないというのが最大の処罰だというような言い方なさったと思いますけれども、もっと自分の林野ですから、積極的な行動をとってもらいたいと思うんですが、基準監督署ですね、年間二千件からの監督というのは、これは林野だけの意味ですか。まあ監督官三千人でしょう。それで全国のものすごい数の事業場に対して、一体そういう監督ができるのかどうか。そして個別の業者の監督指導をこれまでしたことがあるのかどうか、ちょっと伺います。
  32. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 現在監督官の定数三千七十でございまして、事業場は約二百九十万というふうに言われております。個別の事業場を監督したことがあるかという御質問でございますが、これはもとより私どもは年間十八万件ぐらいの個別の事業場を監督いたしておるわけであります。それ以外に、それでもとうてい全部をカバーできませんので、集団指導その他のいろんな手法に頼って監督指導を行っているわけでございまして、ただ問題は十八万件やってもなかなか尽くせないということでございます。そこで、いわば何といいますか、問題のある事業場に行くということが一番効果があるわけです。従来はしたがいまして零細企業、中小企業に問題があるということで、われわれそこにウエイトを置いてやってまいりました。この点は変わらないと思います。しかし、最近は職業性疾病の問題が非常に重大化しまして、先般のこの委員会でも御議論が出ましたように、昭和電工でございますとかあるいは日本化学工業でございますとか、一流の大きな企業でもわれわれはやはり臨検監督をしていかなきゃならない。塩ビの三井東圧もしかりでございます。そういうようなことで実際問題として相当私ども苦しい。そういう意味で年々増員等もお願いをしておりますが、なお一層私どもとしてはこの点は努力をしなきゃならぬというふうに思っています。
  33. 田中寿美子

    田中寿美子君 先ほど例に出しましたように、静岡県に社会党調査団が行ったときに、山へ入ってみると、個々の労働者はちっともそういう時間規制のことなんかも知らなかったり、あるいは知らされていなかったりということがあって、監督官も立ち会っていても黙っていたというようなこと、つまりその監督官がもう一遍山に入ることは不可能なんじゃないか。失礼ですけれども、よくきょろ監なんて言われて、監督官というのはちょっと事業場に入ってきたら、きょろっと見てそれでいなくなってしまうと、こういうようなこと、状況。三千七十人とおっしゃいましたが、それで二百九十万の事業場に対する監督官の数というのは私は非常に少ない。いつも労働行政の中では基準監督行政はむしろ軽視されているんではないかと思うんですが、これは行管の方にも伺いたいんです。定員の削減、四年計画、第四次の計画で、平均三・二%の人員削減というのが出されておりますが、労働省の場合に、あるいは私は厚生省なんかにもそういう必要なところがあると思うんですが、増員させなければならないものもあると。そういうことについては行政管理庁は十分了承して人員削減計画の査定に当たられるのか。それから労働省の中で監督行政に対して大幅の増員の要求をしていられるのかどうか、この二つをお伺いします。
  34. 山本貞雄

    説明員山本貞雄君) お答えいたします。労働基準監督官につきましては、その業務の重要性と特殊性にかんがみまして、定員削減計画におきましても手厚い措置を講じておりまして、実際問題といたしましても定員削減は実施していないわけでございますが、これとともに増員面におきましても定員事情の厳しい中におきまして十分な配慮を加えておるわけでございます。  また、労働基準監督官とは別に、労災問題の重要性にかんがみまして、特に安全衛生問題につきまして技術的にいろいろ指導していく、監督官を助けて指導していくということで、安全衛生専門官を従来約五百名増員してまいったわけでございます。今後ともこの姿勢には変わりはございませんが、労働基準監督官につきましては今後ともその重点化と効率化によりまして、監督行政の実を上げていただくことを期待しておるわけでございます。
  35. 田中寿美子

    田中寿美子君 基準局長どうですか。
  36. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 先ほど申し上げましたようなことで、私ども大変つらい状態にあるものでございますから、来年度もいままでのペースでなく、大幅な増員をぜひ認めてほしいということで、行政管理庁その他にお願いをしているところでございます。
  37. 田中寿美子

    田中寿美子君 労働大臣ね、予算要求のときにそれを一生懸命に努力なさいますか。
  38. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) いま二百数十万の事業場があると、またそのほか森林だけでなくていろいろとやっておりますが、現在三千七十人の定員ではこれはなかなか監督ができません。しかも、最近はいろいろな病気の問題等もありまして、もっともっと事業場を監督していかなきゃならないということで、いま予算要求をいたしております。幸い、いままでこうした情勢下にありましても定員の削減はされておらない、年々少しずつはふえておりまするが、しかし、いままでのような考え方でなくて、もっともっとこうした監督を厳しくしていかなきゃならないということで、これから予算折衝に入りますれば、できるだけ多くの監督官の増員を努力いたしていきたいと思っております。
  39. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう時間が超過しましたので、最後ですけれども林野庁長官ですね、この問題は自分の所管の場の問題なんですね。ですから、この通牒をお出しになって、労働省と協議しながら本当にみずから安全衛生規則を破ったり、時間規制も守らなかったり、有害な工具を使う者を監督したり、それから、改善させるためにもつと強力な指導ができないかどうかということを一つ。そして、要するに振動病を予防して、そして特に民有林林業労働者は、もちろん国有林労働者も含めてですけれども、命の破壊を食いとめ、それから雇用を安定させるということ、それから、またこのことはいま林業労働者を枯渇させないためにも国としても必要なことなんですわね。ですから、その行政に対して、行政の強力な措置、この通牒は相当具体的だから、これを実行するための効果あらしめるような実施をやっていただきたいと思いますが、そのあなたの決意はどうですか、最後に。
  40. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) 先ほどお答え申し上げましたように、契約の相手方とか事業場所あるいは事業期間というようなものを監督署に連絡するわけでございまして、私ども確かな数字を記憶しておるわけじゃございませんけれども、このような丸太生産の契約をしている個所数は全国で二、三百カ所でございます。そういう関係から監督署の方でも十分これを監督していただけるんではなかろうかと思っておるわけでございますけれども、特にこのような、御指摘のような事態でもございますので、私どもそういう丸太生産の場合、林道のところに製品を集めて、それを一本一本職員が行きましてこれを検収するわけでございますが、ある程度まとまりますと、そういう機械とか、あるいは切り方がどうであるか、あるいは誤伐、盗伐等が行われていないかとか、そういう山の巡視もいたしますので、なるべくこのような事態でございますから、そういう機会をとらまえまして、二時間規制等の徹底というようなものは本当にしっかりやらないとこういうことになるということで、私どももしっかりやってまいりたいと、このように思っておるわけでございます。
  41. 田中寿美子

    田中寿美子君 それじゃ要望。  林野庁の方が数はたくさん森林にはいらっしゃるわけで、末端には担当主任もいるわけですね。ですから、監督署に連絡して監督していただくというのじゃなくて、みずから主体的にこの出された通達が実行できる努力をしていただきたいということを最後に要望しまして、私、質問を終わります。
  42. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 林野庁長官にお伺いしますが、私は今月の十九日、民有林国有林の方、全国から五百五十名ほど集まって、社会文化会館で集まった方々に御苦労さんと握手をしたり、帰りの際にも握手をしたんですが、地方から来た方と握手をすると非常に手にいっぱい汗をかいているんですね。この手に汗をかくというのはどういうことなんですか、長官教えてください。——手に汗をかくんだよ、長官、ほら、おまえわかんないじゃないか。
  43. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) お答え申し上げます。この振動障害の所見の中にいろいろあるわけでございまして、先生も十分御承知いただいておりますように、冷たいとか、あるいは発汗とか、あるいは手が湾曲するとか、指が湾曲するとか、いろんな症状がございまして、ただいまおっしゃるようなことも一つの症状でございます。
  44. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 長官が厚生課長に耳打ちしてどうなんだということを聞くようなことでは、あなた自身が白ろう病実態というものを知らないということですが、どうですか。
  45. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) お答え申し上げます。先ほど先生が御指摘ございましたように、約六百名近い方々が上京されましていろんな訴えをされた、きわめて緊急な事態でございまして、私も現場をずっと過ごしてまいってきた男でございますので、その実態等については承知いたしておるわけでございますが、いまなおこのような認定者が出てくるということについて大変遺憾に思っているわけでございます。
  46. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 いや、私が言っているのは、あなたが先ほど田中委員質問に答えて、非常に関心を持っていると、重大な関心を持っていると、そういうあなたが白ろう病という、あるいは振動病の問題についてどの程度の認識をお持ちかと思って私は冒頭質問したんですよ。  もう一回質問しますが、あなたは高知県の朝倉病院とか、あるいは北海道の上士幌の阿部病院とか、あるいは高知県の宿毛の病院とか、非常に振動病に対して熱心な研究をしていらっしゃる民間のお医者さん、そういう方々の実態についてあなたみずからが足を運んで重病人に接したことがあるかどうか。あるとすれば何月何日どこでこういう方に会ったと、それを具体的に、あったならば御答弁願いたいと、こう思うんです。
  47. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) ただいまお挙げになりました医院なりお医者さん、私その場所、名前というようなことは承知いたしておりますけれども、現実にそのお挙げになりましたお医者さんにお会いするとか、現場の病院に行ったとかいうことはございません。
  48. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 これだけ問題になっているのに、その担当長官が自分が本当に子供のようにかわいがらなければならない、いわゆるチェーンソーを使っている林野の労働者が苦しんでおる実態ということは、まだ会ってない、見たこともないというあなたを相手にこの振動病の問題について議論するというのは、私は非常に不本意だと思うんですよ。少なくとも前の田中厚生大臣などはやっぱり植物人間なら植物人間によく会って、十分にその実態を見た上でどうするかと、こう思うんですが、いままで行ったことがないということは、時間がないから行かなかったのか、振動病に対する本当に誠意がないから行かなかったのか、その辺のあなた自身の姿勢についてもう一回お答え願いたいと、こう思うんです。
  49. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) 誠意がないとか、そういうことではございませんので、そのような機会がなかったということでございまして、私も営林局長等をやっております関係から、自分の管内のそういう方々とはもちろん会っておりますし、具体的にそのためにそこに参ったということは先ほど御答弁申し上げましたようにないわけでございますが、このような重大な問題であるということの認識は十分持っているつもりでございます。
  50. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 実際に四期、五期の苦しんでいる患者さんの実態を見ないで、言葉だけで言ったんでは議論にならないじゃないですか。私がここでいろんなネタを持ってわれわれが目で見てきた問題をお話し申し上げたって、あなたの実感に映らない以上は、これは論議はかみ合いませんね。私はそう思うんですが、これは無理でしょうか。
  51. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) お答え申し上げますが、いろんな問題あるいは予防、治療あるいは補償の問題とか、あるいは入院されている方々の実態とか、そういうことは組織を通じて十分私聞いているつもりでございます。
  52. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 まずいまから議論始める前に、あなたは、じゃ、この前全国から集まってきたんですからね、スタジオ一〇二であれだけ長時間全国の電波に乗って問題視されて社会問題化している、そういう段階ですから、最短の距離の段階で私がいま申し上げた白ろう病を本当に熱心にやっている民間の病院にじかにあなた自身が行って患者に会って、病人の状況を聞いて問題点と真剣に取り組むと、そういうことについてまず目黒議員に約束できますか、いつごろ行きます。
  53. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) お答え申し上げますが、なるべく早い時期に、どこでも適当な場所を選びまして、私見てまいりたいと思っております。
  54. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 あなたね、あなたの使われている方々三千何名という方々、民間の九百何名という方々が自分の命が危ないかもしれないという状況の中で、しかも佐々さんであるとかあるいは竹邑さんとかいう方々が現に亡くなって、あんたのところで公務上疾病の大事な議論をしている段階でしょう。その段階では、私は何をさておいても、まず実態把握すべきだと、そういうふうに私は行政の姿勢として思うんですが、いかがですか。それで大体いつ行くと、今月なら今月中行くと、それで社会党調査団なりあるいは全林野との団体交渉に自分のはだを通して交渉に臨むと、そういう積極姿勢はどうしても出てこないですか。そんなに林野庁忙しいですか。
  55. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) なるべく早い機会にそのような機会を持ちたいと思うわけでございます。  なお、この間上京された方々、国有林民有林を通じてでございますけれども、五十名の方と私一時間半に及びましていろいろ話し合いをしたわけでございまして、どうしても一日も早くということでございますれば、担当官その他をお挙げになりました場所に派遣してみたいと思っておるわけでございます。
  56. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私は担当官を言っているんじゃないの。あなたが、行政の最高責任者としてあなたが行きなさいと言うんです。患者の目に直接接しなさいと言うんです。遺族の家庭に直接行ってみなさいと言っている。私も国鉄に約四十年近く勤めていますが、国鉄で業務上の疾病が起きた際に、そんななまぬるいことではすぐ汽車がとまりますよ。あなたは行政長官としてもう少しやっぱり患者に対して温かい私は思いやりがあってほしい。要望ですが、本日の委員会が終わるまで、何日ごろ行けるか具体的に提示してもらいたい、これはそう要請しておきます。委員長いいですか。
  57. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 速記とめてください。   〔速記中止〕
  58. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 速記起こしてください。
  59. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) 御承知のような国会とかいろいろございますので、いまここで何日ということは答えられないわけでございますが、いろんな事案等もございますので、先ほど申し上げましたように、なるべく早い機会に現地へ参りたいと、このように御了解いただきたいと思うわけでございます。
  60. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私はね、なぜこういうふうにこだわるかというと、おたくさんの方は、私も九月、高知県の朝倉病院に行ったんですけれども、竹邑さんの公務疾病の問題についてどういうふうになっているんですか。その問題との関連があるもんですから私はこだわっておるんです。じゃ竹邑さんの公務疾病の認定についてはどういう状況になっているかお知らせ願いたいと、こう思うんです。
  61. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) この振動障害によりまして奈半利営林署のいま御指摘の竹邑さんあるいは下屋久営林署の佐々さんが不幸にして亡くなったわけでございまして、まことに遺憾でございますが、現在必要な資料等について集めておる段階でございまして、特に私聞いている範囲では、全国的にいままでチェーンソーだけじゃございませんけれども、鉱山におけるいろんな振動機械もございますし、土木工事におけるものもあるわけでございますが、そういうことの原因で亡くなったということば聞いてないのでございまして、まさにこのお二人のことは新しいケースでございまして、医学的分野にもわたる問題でございますので、いま専門家の意見等を聞いて処理したいということで、資料の収集なり、慎重な検討を続けておるわけでございまして、一日も早くこの結論を出してまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  62. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 主治医の五島先生が、これは完全に振動病による死亡だ、しかし解剖すればより明確になったのだろうけれども、遺族のいろんな要望があって解剖できなかったのは残念であるけれども、ずっと主治医として一年有半、二年近く扱ってきた経過から見ると、これは振動病によるやはり死亡だ、主治医がそういう認定をし、そうして当局のお医者さんもそれを認めておる。それを扱った朝倉病院の病院長もそれには同意をしている。この三人のお医者さんが認めておるのに、なぜまだ疑問があるんでしょうか。私は少なくともロッキードじゃありませんが、児玉に対する喜多村医師の問題については、あなた方は政府機関としてはやはり主治医の認定が正しいのだといって、社会党の要求に対してはびた一文譲らないでしょう。そして国会喚問の証人出席を拒否し続けているんじゃありませんか。それはやっぱり主治医としての判断を最優先させる。児玉の場合には主治医の判断が優先して、竹邑さんの場合には五島先生という主治医の判断、病院長の判断が優先しないという理屈はどういうからくりなんですか。
  63. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) 私ども先ほど申し上げましたように、大変新しいケースであるということと、医学的分野にもわたるということで検討いたしておるわけでございますけれども、これは使う方、あるいは使われる方にとっても不幸な事態でございますから、こういう死に至るというような初めてのケースということで、医学的な分野からもそこにメスを入れて、十分慎重に、認定者の三千人という方もいらっしゃるわけですから、この方が死に至る病気であるということは大変不安を持たれるだろうと思うんです。したがって、私どもは各方面からの医学的な専門的なスポットを当てながら検討したいということでございまして、先生指摘のように、死亡診断を書かれました病院の主治医の先生の意見を尊重するつもりでおるわけでございます。
  64. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 この「振動障害の治療の手引き」というのは、これは林野庁が出したんですか。これ、おたくが出したんですか。
  65. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) この治療の手引書でございますけれども、これはその最後に書いてございます——林野庁で設けておりますが、林業労働障害対策研究委員会というのを、専門のお医者さん方でございますけれども、四十九年から研究会を開いておりまして、その先生方の討議の結果発刊していただいたものでございます。
  66. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 この先生と共同作業をやっているこういう本は御存じですか。「振動病の診断と治療」、こういうこの本は御存じですか。
  67. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) 的場先生等のお書きになった本であろうかと思いますけれども
  68. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 このおたくの研究会の的場先生ね。この的場先生と共同作業をやっておる高松先生、久留米大の。この久留米大の高松先生も、これは私と一緒に九月に朝倉病院に行きまして、私は学がないからこういうむずかしい診断書はわかりませんが、この診断書全部見てもらって、的場先生と共同作業をやっておる高松先生たちも含めて、やはり今回の竹邑さんのやつは振動病による死亡だという認定が正しい、医学的に一致した、しかし、解剖できなかったのは残念だったけれどもということを、おたくの研究機関の諸君の皆さんもこれ認めているんですよ、竹邑さんのやつを。そこまで林野庁の委嘱を受けている研究会の学者メンバーさえも認めておるのに、なぜまだこだわっているんですか。どういう措置になっているんですか。
  69. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) この六人の研究委員会の先生の中には、ただいまおっしゃったような高松先生はお入りになっていないわけでございますが、少なくとも高松先生も専門家でいらっしゃいますし……
  70. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 共同研究者、この本の共同研究。
  71. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) この六人の先生方等もいらっしゃるわけでございまして、先ほど申し上げましたような多くの人たちの不安というものが、大変私どもそれを除去するのにどうしたらいいんだということを真剣に考えなくちゃならぬという立場からいたしまして、現在検討いたしておるわけでございますし、先ほど申し上げましたように、そのような診断をお書きになられた主治医の意見は私どもは尊重しながら早急な結論を出そうと、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  72. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 聞くところによると、この前十五日、林野庁関係者を呼んで聞いたところが、東北大の吉永先生とか、山口労災の石田先生とか、それから北大の斉藤先生、いま言った久留米の的場先生、こういう四人の先生を呼んで、いま言った五島先生の診断書が一体正確であるかどうか、医者医者の診断を診断するなんということを考えているということを聞いたんですが、これはどういうことなんですか、これ。
  73. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) 職員部長をもってお答えさせます。
  74. 馬場道夫

    説明員(馬場道夫君) ただいまの先生から御指摘ございました四人の先生方というお話でございますけれども、これの先生方につきましては、まだ私ども正式に決定しているわけではございません。一応私ども候補として内々考えておる方でございまして、まだ正式の決定ではございません。この研究委員会に入っておられます的場先生等にいろいろ御相談をして、最終的には決めたいというふうに考えておるわけでございます。
  75. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 これは労使関係のあり方の、幸か不幸かわかりませんが、われわれ国鉄の場合には、公務上疾病は団体交渉で決めるんですよ。これは労使が一番知っているんですからね。ですから、あなた方が主治医を尊重する尊重すると言っていながら、まだ時間を延ばしている。あれ八月ですね、亡くなったのね。もう九、十でしょう。佐々さんは十二月ですか、もう十カ月ですね。あなた、遺族の立場になってみなさいよ。私はこの前、奥さん見て目も向けられなかった。遺族の立場になって考えてやんなさいよ。振動病認定を受けて二年も三年も病院におったんでしょう。それでこの竹邑さんなどここにありますとおり、おたくに来ていると思いますが、午前五時三十分、車検の関係で出ていったと、病院から許可を受けて。ところが、その車検の自動車関係のところがちょっと冷房が効き過ぎて、いわゆるレイノーを起こしたと。それで帰ってきてぐあいが悪くて寝ておって、それで七時十五分に意識不明、顔面蒼白になって、レイノーを起こして蒼白になって、それで八時四十五分に亡くなったと。三時間前まで、自分が車検の問題で自動車会社に行くまで、本人がよもや三時間後にあの世に行こうなどということは夢にも考えないですよ。これは三期から四期のところですよ。ところが、三期、四期という病人がいっぱいいるんですよ。ですから、三期、四期の方々は——ちょっと長官聞いてください。私が行ったとき、三期、四期の方々は、私がいつ竹邑さんになるのかと、国会議員先生方、私はいつ竹邑さんになるんでしょうと、あの家族の方々と本人の目、患者の目と家族の目、私はこれをやっぱり林野庁長官に、あなた現ナマを見ない限りこの苦しみなんかわからないと、こう思うから、公務上疾病にそんな時間を使い過ぎるぐらいなら、現地に行って本人と、まさか埋めたやつを掘ることできないから、その遺族と、三期、四期、五期で朝倉病院で本当に迷っている患者とその家族と、それを現実に見なさいというんですよ。そう見ないと、あなたは医学的にどうのこうのああのと言って、職員部長は、四名の方についてはまだ委嘱してないなんて逃げているけれども、結局は尊重する尊重すると言って、この四名の意見を吸い上げて、主治医はこういう意見だったけれども、より以上の専門家の意見はそうではなかったから、公務上疾病、死亡にするわけにはまいりませんという結論を導き出すためのわなではないですか。遺族としてはそういうふうにしか見えないですよ。  私が長官であったならば、やはり振動病であると主治医がそう言ったんだから、まず公務上の疾病に認定をして、今後再び死亡事故を繰り返さないためにどういう研究とどういう対策が必要かと、そうするのが行政の筋道じゃないですか、私はそうなんですよ。問題があるならやればいいじゃないですか。現にこの本、労働省で出している本、どこ見ても確固たる治療方法がないというんでしょう、いまだに。非常に模索しているんでしょう、どの本読んでも、振動病というのは。ですから私は、やっぱり長官あなた自身が現地に行って直接見なさいと言うんです。国会はいいですよ。全林野関係など国会ないから。あした飛んで行って、会って、すぐ飛行機で飛んでくればいいんだから、一日あればいいじゃないですか。問題は、あなたがそういう気になっているかどうかと、その姿勢が問題だと、私は。だから早急にやっぱりあなたがあしたならあした行って、現地で会って、この問題について認定を下す、そういうことをきちっとしなさいよ、どうですか。
  76. 馬場道夫

    説明員(馬場道夫君) 高知の竹邑さんの件でございますけれども、私ども先ほど長官が申し上げましたように、主治医の所見はこれは尊重するわけでございますが、そういう考え方でおるわけでございますけれども先ほど申し上げましたように、新しいケースでございますので、私ども、臨床を主とした先生方の御意見も十分聞きながら、早急に結論を出したいという趣旨でございまして、私ども、おっしゃるように排除するために先生方の意見を聞くというような考え方ではございませんので、御了承いただきたいと思うわけでございます。
  77. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 だから、いますぐ認定して、今後再び再発しないためにいろんな方々の意見を聞いてきちっとすると、そういう体制はとれないんですか。現に認定されて病院におって、主治医がおって、病院長が認定して、あなた方の的場先生と共同作業をやっている高松先生も診ておって、あとそれで不足だというのは私はどうにもわからないです。どうにもわからない。だから、児玉の場合はそれが通って、竹邑君の場合は通らないという、その主治医に対する認識はどうなんですか。これは厚生大臣いないかな。厚生大臣ならいいんだけれども、お医者さんの常識としてはその点はどうなんですか。これは医務局長がおったら慣行として聞かせてもらいたいな。主治医の診断をさらに診断するなんということは、お医者さんの常識として通るんだろうか、そんなこと。私は、いままで私が社会生活で聞いている範囲では、確かに私ども機関助士廃止でいろんな研究発表を聞きました。で、死亡という問題になりますと、やっぱりそこに立ち会った主治医の判断、解剖所見というのが優先するのがたてまえじゃないですか。いまこの四人の先生方が仮に頼んでも、本人はもう骨になっているんですからね。そのときの状態を全部知っているのは、主治医と立ち会った当局の医者以外ないんですよ。だから、その方々の意見というのをなぜ信用できないんですかね、今回の林野庁に限って。私は何ぼいってもこれはこだわりますよ。
  78. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) お答え申し上げますが、先ほど来申し上げておりますように、私ども主治医の御意見は尊重するということを申し上げておるわけでございまして、そういうことを前提にしながら専門的な意見というものを私どもは検討していただこうということでございまして、先生のおっしゃるように、私も佐々さんの奥さんにもお会いいたしましたけれども、皆さん方のお気持ちというのはよくわかるわけでありまして、そういう意味で主治医の意見は尊重するということを申し上げておるわけであります。
  79. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 もう一回、尊重するなら遺族の立場になって物事の処理をして、しかる後に再び繰り返さないためにやると、そういう踏み切りは遺族の立場に立って踏み切るべきじゃないですかと言っているんです私は。そこの人間の気持ちがわからないんですかね。私はこの目で見ているからそれぐらいはやっぱりやるのが政治の責任だと思うんですよ。後、再発防止のためにやるというなら、それはそれとして私は林野庁なり厚生省として協力してやることはいいですよ。この際はやっぱり長い間営林署に勤めて振動病にかかって死亡した……私も五十四ですが、やっぱりいろんな病気持ってますよ。また、機関車に乗ったために胃腸が悪くなっている、それはやっぱり自分の職業病ですよ。それを因果関係を重箱のすみをつつくようにほじくり出して、ああでもない、こうでもないと言ってつけるのは、ちょっと本人と遺族に対して酷じゃありませんか。現に四期、五期で入院している病人に非常に不安感を与えませんかというんですよ。尊重するならもう一歩踏み出しなさいよ。どうしても踏み出せないんなら、あしたあんたは飛行機で行って、高知の朝倉病院に行って患者に会って、そしてまた一日考えてどうするかと、そういう気持ちになって私はもらいたい。そこが行政の責任じゃないですか、政治じゃないですか。最後のこれは長官自身の決断ですよ。(「目黒君は汽車とめるばかりじゃないんだ」と呼ぶ者あり)そのとおり。
  80. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) たびたびお答え申し上げておりますように、私どもも一日も早くという気持ちでいっぱいでおるわけでございまして、そのために先生が御心配になっておりますように、三期、四期という方々の不安を除くためにも、いろんな医学的な分野からそれを検討したいということを申し上げておるわけでございまして、そして、その経緯を踏まえまして今後の対策、あるいは治療対策、あるいは補償対策というようなもの等も十分これは考えていかなくちゃならぬという姿勢を持っておるわけでございます。
  81. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私は、やっぱりまだ下がれません。したがって、答弁納得できませんから、私の提案はあすにでもすぐ現地に行って現地の意向を十分聞いて、やっぱり次の委員会まで二十八日ですか、二十八日の委員会まで本件問題に対して林野庁が決断をすると、そういうことについてひとつ要請すると同時に、長官の現地派遣等についてはすぐ理事会でも相談をして、自民党ともよく相談をして、やはり私はこの問題については早急に決断を下すことが白ろう病振動病に対して新しい活路を開く出発点になると、こう思いますから、これは私はあくまでもまだ撤回いたしません。したがって、二十八日の次の委員会までぜひ決断をしてもらいたいということを再度要求します。
  82. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) ただいま次の委員会までにこの結果の決断を出せということでございますが、まだ私どもその二十八日までに決断を出すというまでのテンポにはできないんじゃないかと思っておるわけでございます。と申しますのが、まずこの医学的分野の各専門の先生方にもいろいろお集まりいただかなくてはなりませんし、単にこれは排除するという気持ちで私どもこういう検討をしているわけじゃないわけでございまして、非常に大事な意見の場であろうと思うわけでございまして、真剣な取り組み方をやろうというわけでございますから、しばらくの猶予を私どもいただきたいと、かように思うわけでございます。
  83. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そのしばらくの猶予が、私はもう九月現地の高知の営林局長、四国の営林局長から聞いているの、もう。しばしの猶予、しばしの猶予ということを言ってからどれくらいたちますか。書類が本庁に来たのはいつですか、書類が本庁に来たのは。大体一週間から十日ぐらいできちっと本庁にやりますと。ですから、しばしの猶予ってもう十分時間があったんですよ。時間があったのに結論が出ないというのはためにする議論じゃありませんかと、こうなるんですよ。ですから、あなたがしばしの時間くれということは、いわゆる尊重する尊重すると言ってながら、前の内閣総理大臣みたく絶対私はもらいませんもらいませんと言って、小菅へ行ったらもらいました、出てきたらもらいません、ちょうど田中前総理と同じじゃないですか。(「そんな偉くないよ」と呼ぶ者あり)いや、それ以下であってもいいけれども、もう少し……じゃあ、いまの言ったやつは理事会でひとつ後で、私は提案しますが、引っ込めませんから、理事会で相談して、自民党ともよく相談して早急に結論を出してもらいたい、こう思うんです。  それから、その認識がありませんから、私はおたくさんが十九日全林野の皆さんから告訴されて、あなたはテレビに出てきて心外だということを言っておりましたが、あなたが心外だと言うならば、私はこの経過を教えてもらいたいと思うんです。いわゆる認定患者の推移ですがね、四十年には九名、四十一年百七十七名、四十二年百二十六名、四十三年百七十六名、四十四年五百五十八名、四十五年百二十五名、四十六年六十五名、四十七年九十名、四十八年四百三十六名、四十九年七百八十九名、五十年四百八名、こういう認定患者のずっとカーブね、このカーブの状況から見ると、心外だなんという言葉は出てこないと思うんですが、どうですか。まことに申しわけなかったと、対策が不十分で申しわけなかったと、こういう言葉が出てくるのがあたりまえじゃないですか、患者がすごくふえているんだから。どうですか。
  84. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) もう先生指摘のような数字認定者がふえている事実がございます。したがって、冒頭中し上げましたように、しかもいまなお出ておるということについて遺憾なことであると申し上げたのでありますが、林野庁といたしましては、すでに昭和四十四年でございますけれども労働組合との間で使用機械あるいは使用時間等につきまして、就労対策につきまして一定の取り決めを行っておるわけでございまして、その後もそれを強化した取り決めを行いながら振動障害対策には真剣に私どもなりに取り組んできたわけでございまして、心外だということは少なくとも刑事事件としての告訴告発ということは大変残念なことであって、私どもも思いがけないことであったというようなことが、心外という単語を使ったわけでございますが、今後も私どもはいろいろな対策を、現在組合からもいろいろな提案が出ておるわけでございまして、誠意を持って現在検討中でございますので、今後ともそのような努力を続けてまいりたいと思うわけでございます。
  85. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) いま目黒君の提案については、理事会で協議、決定をいたしますから、さよう御了承願いたいと思います。
  86. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そうすると、心外だという言葉の表現が寸足らず、舌足らずであって、おたくがチェーンソー労働者に使わした、使わした結果、振動病という多数の病人を発生させたと、この行政上の責任を感じているわけですね。
  87. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) お答え申し上げますが、国有林でございますから事業者としての労働者の安全と健康を守る責務というのはあるわけでございまして、当然でありまして、そういう認識のもとに諸対策を進めてきたわけでございます。
  88. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そういう遠い言い回しじゃなくて、結局、現在三千名近くの認定患者が発生したということは、林野庁チェーンソーを使わしたと、その行政上の結果論として出てきたものであるから、その責任はおたく感じているわけですな。チェーンソーを使わしたと、その責任は重々おたくにあるということを確認していいですか。
  89. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) 先ほどお答え申し上げましたように、労安法に決められております責務上から見まして、大変遺憾なことであるというふうに私どもは思っておるわけでございまして、そのために予防対策あるいは治療補償あるいはそれぞれの対策をお互いに相談しながら、取り決めながら進めてまいったわけでございまして、今後も私どもはそのような対処をさらに前進させてまいりたいというような気持ちでおるわけでございます。
  90. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 なかなか行政上の責任と言わないね。こういうことはどうなんですか、これは昭和四十四年十一月発行の林業試験場「場報」、これに「行政と試験研究の連けい」と題する当時林業試験場機械課部長の梅田三樹男氏の文章の中に「……林業の試験研究には、概して長期間を要するものが多いために、急を要する行政側では、何時の間にか、試験研究をあてにしなくなったというか、これまた一種の不信感が生れ、折角の研究報告すら精読されていないと思われるフシがある。」ここからが大事なんですよ。「機械化部で例をあげれば、現在、行政で問題になっているチェン・ソー等の振動騒音については、今から十年前の三十四年にすでに作業研究室で測定を行って、この種、振動機械では作業員に手足の蒼白現象(今日でいうレイノー現象)の起りうることを報告して」あると、ちゃんと研究の段階で、現在の振動病白ろう病が発生するということをおたくの研究機関自身が認めておったじゃありませんか。認めておってチェーンソーを使用させ、そしておたくの方から積極的にしたのではなくて、三十四年に長野地方本部ですか、長野営林局、長野地方本部という組合側から問題を提起されてけんけんがくがくの上でやっと職業病として認定した。問題の出発はチェーンソーという機械そのものについて、おたくの研究機関がわかっておった、こういう事実からすれば、私は刑事上の責任については裁判所で争うとしても、今日の病人を非常に出したという行政上の責任はりっぱに林野庁にあるのじゃないですか。どうですか。
  91. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) ただいま私告発されている立場でございますが、いまその告発されている中身についての林業試験場機械化部長梅田さんの例示が行われたわけでございますが、現在告発されていることでございまして、このことにつきましては今後しかるべき判断が行われるものと期待いたしておりまして、いまここで云々するということは差し控えさしていただきたいと思うわけでございます。
  92. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 あなた、いつの間に稻葉法相になったの。稻葉法務大臣みたいなことを言うね。私はこの雑誌、これは現実にあるものですからね。持っていきますか。現にこの「場報」に載っていることについてどうですかというのですから、これは林野庁の研究室でわかっておりましたと、わかっておりましたけれどもどうにもなりませんでしたならどうにもなりませんでしたと、こう言えばいいんじゃないですか。おたくの研究室が発表しているのだから、だれも責めようないね。余りそう稻葉法務大臣にならないで、捜査上の秘密じゃないのだから、本当に申しわけなかったと率直に認めればいいのじゃないですか。
  93. 松形祐堯

    政府委員松形祐堯君) 私、冒頭に申し上げましたように、大変深刻な事態でございまして、このような事態が起こったことば大変私遺憾なことであると申し上げておるわけでございまして、行政の責任者として本当に遺憾な気持ちでいっぱいでおるということでございます。
  94. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時から再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  95. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き労働問題に関する調査を議題とし、質疑を続けます。
  96. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 時間もないようでありますから簡潔に質問をいたします。  林野庁の方に対しては、午前中の主意を踏まえて、今後十分努力してもらうということを要請いたします。  それで、労働大臣にお伺いしますが、白ろう病とか振動病の問題がこれだけ社会問題になったのに比べると、これを受ける行政側が非常に私は労働省林野庁、厚生省あるいは各地方自治体、民有林、こういう関係で非常にこうばらばらになっているんですよね。何とか受けざらの一元化、こういうものについて、全国から集まった段階でも、労働省、厚生省あるいは林野庁、農林省あるいは人事院などなどにおのおの要請してまいりましたが、先ほど田中寿美子先生質問にもあったように、受けざらの一元化、できれば立法化、こういうものについて特段の配慮をしてもらいたいという要望があるんですが、いかがでしょうか。
  97. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) ただいま目黒さんから御指摘のありました職業病という病気が、これはいままでもあったでしょうけれども、非常に全国各地に多発をいたしておるわけでございます。これの対策は、これはもっと力を入れていかなきゃならないことは当然でありまするが、ちょうど先週の閣議の後で、農林大臣とそれから労働、厚生、三省で一遍集まって、そうしてこの対策を、これは白ろう病ももちろんであるけれども、職業病全体についてお互いに意見の交換をして、これをもっと前進させなきゃいけない。これの予防なりあるいは治療なり、こうした問題についてもっと積極的に出ていかなきゃならないから、まあ日にちを決めて、三省で一遍打ち合わせをしようじゃないか、こういうことになっております。まあ大変こういう問題が起きてからそういうことに気がついておったんでは申しわけないけれども、いまからでも遅くないというので積極的にこの問題と取り組むつもりでございます。
  98. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 十八日の各省交渉の際に、一番お金を握っている大蔵省にも行ったんですが、大蔵省の斎藤政務次官は、お互いの話し合いの中で結論として、民有林対策がおくれ労災認定者は少な過ぎる。それから、二番として、地方中核病院に白ろう病の診断治療のための補助を落とすのも一つ方法であろう。それから三番目には、林野庁だけでなく労働省、厚生省と協力をして大蔵省の担当主計官を通じて具体的に進むように協力したい、こういう非常に前向きのお金を握っている大蔵省の政務次官が発言しているわけでありますから、それらを生かすように特段の配慮を要請して、振動病に対する私の質問を終わります。ひとつよろしくお願いします。  それから大臣関係で二つだけ、時間がきたようでありますから簡単にお話し申し上げますが、一つは兵庫の姫路の日赤病院。二年来の紛争が続いておりまして、私も現地に行っていろいろ見てまいったわけでありますが、この日赤姫路病院というのは、四十万人の姫路市でありますが、国立病院がベッドが五百、日赤病院がベッドが五百と、非常に地域住民にとっては大事な私は病院だとこう思うんです。この病院が、率直に言って病院長と副院長の、われわれではちょっとわからないですが、お医者さんの学校の派閥の争いなどがありまして、なかなか窓口が一元化されない。労働組合問題が常に院長の話でまとまれば副院長の線で崩されてしまう。どうも実権を副院長が握っているというような、非常にややこしい学校の間の関係どもありまして、だれに話していいかわからないくらいこじれておって、私も現地に行ってびっくりしたんですが、そういう病院の態勢もありますが、非常に労使関係が悪い。しかも地方労働委員会のあっせんが入っても、組合側はこのあっせん案をのんでいるんだけれども、病院側は依然としてそれをボイコットしている、最終的にこの新聞にも出ておりますとおり「涙ぐみ退院する患者も」と、いわゆる労使関係がうまくいかないために第二病棟に入院している方々を無理やりと強制退院させる、こういう社会問題が発生しておるんですよ。したがって、私は日赤の本社の皆さんにもいろいろ電話をしたり、国会で問題になる前に事態収拾をしてほしいと再三要請をしてきたんですが、時間とともに事態が悪くなっている。したがって、この問題に対する労働省の考え方と厚生省の考え方を要領よくひとつ述べてもらいたい、こう思うんです。
  99. 青木勇之助

    政府委員青木勇之助君) お答え申し上げます。  いま目黒先生指摘のとおりに、昨年秋口から労働問題をめぐりまして労使紛争が起こっておりまして、その間地労委のあっせんも二回程度かかっておりますし、また昨年の墓れには先生の方へ組合の方も来られて先生からの御指摘もあり、当局側を呼びましていろいろ事情を聞いております。しかし、何分地労委あっせんにかかった事案、まあことしの分は一時金の問題でございますけれども、この問題につきましては当局側の回答と組合側の要求が一致しないというような面がありまして、なおあっせん打ち切り後も数回団交が持たれましていろいろな詰めが行われたようでございますが、なお未解決ということでございます。いずれにいたしましても、労使関係の問題は個々の企業におきまする紛争事案につきましては、まあこれはもう申すまでもないことでございますが、労働委員会なりそういう権限のある機関があっせんの労をとるという仕組みに相なっておりまして、それがうまくいかなかったという点は非常に残念でありますが、労働省といたしましてはいずれにしても労使間で話し合いがさらに自主的に続けられまして、円満に解決することを期待いたしますと同時に、なお紛議がこじれるというようなおそれもあります場合、県の労政機関等を通じましてしかるべく指導をいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  100. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) われわれといたしましては、本問題は地域住民の医療を確保するという観点から非常に重大な関心を持っておるところでございまして、特に地域住民の医療が阻害されないような観点からいろいろ県の方とも連絡をとっておるところでございまして、たとえば兵庫県あるいはその地区の医師会等とも連絡をとりながら、特に地域住民の医療確保に努力いたしておるところでございまして、この紛争そのものにつきましてはただいま労働省の方から御答弁がございましたように、われわれといたしましても早急に解決されることを期待しておるところでございますが、とりあえず現地、現状の把握に努めますとともに、事態の推移を慎重に見守っておるところでございます。
  101. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 この病院の入院患者を押し出すということは、もう最悪の事態を越えておると思うんですよ、病院という立場から見るとね。しかもこの方々は退院しても行く病院がないんでしょう、行く病院がない。いわゆる自宅に帰るしかない。非常に私はそういう問題から見ると人命に関するぎりぎりの限界に日赤問題が行っている、こういう認識をせざるを得ない、こう思うんですよ。ですから、単に労働問題ということでなくて、もう住民の生命の問題という立場から、いま厚生省の局長の答弁ではちょっとやっぱり事実認識に欠ける点があるんじゃないか。もう一歩入って、日赤もいろいろ特殊団体なんですから、具体的に政府に指導力があるわけでありますから、もう一歩ひとつ前向きの答弁ができないかと、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  102. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) ただいま先生指摘のように、本病院におきまして二病棟の閉鎖が行われておるというような点については、やはり日赤病院という公的使命から考えまして非常に遺憾なことだと考えておるところでございまして、まあ紛争そのものに介入はいたしませんけれども、そういった医療を確保するという点から、われわれといたしましてはできるだけそういった近隣の医療施設等にもお願いを申し上げて、医療に欠陥の生じないように努力いたしております。
  103. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そういうことであれば、私はこの本委員会にやっぱり日赤の病院長と組合の代表の関係者を一応参考人として呼んで、やっぱり事態を深刻に受けとめて早急に解決するという点で、二十八日、次の委員会あたりに関係者を参考人として呼ぶことを提案して、後で理事会で諮ってもらう、このようにお願いしたいと思います。  最後に、労働大臣ね、十月の九日、丸金証券の不当労働行為と暴力行為の問題で私が質問書を出しておるんですが、この内容はきわめて、職制を使う、暴力団を使う、警察が介入する、組合員を殴るける、あるいはガードマンの労働争議への介入などについては、私の郷里の全金本山事件などを含めて、相当労働行政でガードマンの投入については厳しく行政指導をするとお互いに確認しているんですが、ガードマンを導入してやる、きわめて悪らつな問題でありまして、しかも証券会社がこういうことをやるのは一体社会的にどうかという点で、大蔵省の行政指導についても見解を求めているんですが、これがおくれている原因は何なんですか。で、今後どういうふうにするつもりか、ひとつその見解だけ聞いて、時間がないようですから私は終わります。
  104. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) ただいま御質問の丸金証券に関する質問の主意書の回答につきましては、今月の三十日の閣議を経て提出することになっておりまするが、そのおくれている理由というものは労政局長から説明させます。
  105. 青木勇之助

    政府委員青木勇之助君) 丸金証券につきましては、いま先生指摘のとおり警察の問題とか関係各省にまたがる問題でございますし、できるだけ事実関係を的確に把握する必要があるということで現在いま鋭意調査中でございまして、まことに遅延いたしておりますことについては申しわけないのでありますが、ただいま労働大臣お答え申し上げましたように三十日にはまとめて提出いたしたいと、そういうことで御了承願いたいと思います。
  106. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ただいまの提案については理事会で協議して、扱い方については決定をいたします。  速記とめてください。   〔速記中止〕
  107. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 速記を起こしてください。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところを御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  それでは、これより質疑を行います。
  108. 久保亘

    久保亘君 私は、雇用促進事業団が勤労者財形貯蓄を原資とする勤労者の持ち家融資制度について行っております勤労者福祉促進の事業に関連してお尋ねをいたしたいと思います。特に参考人の方々には御多忙中を御出席をいただきましたが、ぜひ的確なお答えをいただきたいと考えております。  最初に、この持ち家融資制度は、弱小な中小零細企業に働く勤労者並びにその雇用主であります事業主にとっては大変有利な制度でありますから、この制度が有効に活用されるということは大変望ましいことだと考えております。特に零細な事業主の場合に、事業主が直接この融資事業にかかわることは大変むずかしい点もありますから、そういう意味では法に定められた事業主団体としての協同組合が心要な役割りを果たすということもまた意義のあることだろうと考えております。しかし、その場合には、あくまでもこの協同組合は運営が健全であり、勤労者の福祉促進に法の精神に基づいて確実に役割りを果たすということが大前提としてなければならぬ、こう考えております。そういうような立場でお尋ねをいたすわけでありますが、最初に、雇用促進事業団の方にお尋ねいたしますのは、財形持ち家融資の年度別計画と実績を総額で御報告をいただきたいと思います。四十八年度以降で結構です。
  109. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 堀参考人
  110. 堀秀夫

    参考人(堀秀夫君) 事業団の行っております財形融資の状況につきましては、四十八年度は貸付決定額が五億八千九百六十万円でございます。そのうち辞退が八千百七十万ありまして、差し引きしまして五億七百九十万円、これが四十八年度でございます。それから、四十九年度は貸付決定額が三十億八百九十万円、辞退が十二億六千九十万円ありまして、差し引きしまして十七億四千八百万円。それから、五十年度は貸付決定額が九十四億七千六百三十万円、辞退が六億五千八百十六万円、差し引きまして八十八億千八百十四万円。なお、五十一年度は九月末日現在でございますが、いままで貸付決定いたしましたのが十六億八千七百二十万円、辞退が八百七十万円、差し引きまして十六億七千八百五十万円。  なお、この貸し付けにつきましては、その決定に当たりましてその原資調達のために銀行から借り入れたり、あるいは事業団債を発行してこれを賄うということになっております。その事業団債の発行の予定額が、四十八年度は百億円、四十九年度は百三十億円、五十年度は百三十億円、五十一年度は百三十億円という予定になっております。これはいわば最高限度額といったような性質のものではないかと、このように考えます。
  111. 久保亘

    久保亘君 この非常に長期で低利な、しかも持ち家の九〇%、実額の九〇%を融資するという制度でありますから、ほかにはちょっと例を見ない、非常に有利な制度であります。それが百三十億の枠に対して四十九年度で十七億、五十年度がふえて八十八億、五十一年度は前期で十六億、こういう消化状態であることは、これは一面から言いますならば、この制度がなかなか一般に理解されておらない、こういう点に問題があるのではなかろうかと思うのでありますが、そこで私が最初にお尋ねしたいと思っておりますのは、勤労者福祉促進協会労働大臣の認可による社団法人として四十九年に組織されておりますが、この勤労者福祉促進協会の主たる任務は何であるのか。職員数は何名か。それからこの協会の運営のためにどのような収入が考えられているのか。それらの点について、この協会の専務理事であります三重野さんにお尋ねしたいと思います。
  112. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 三重野参考人
  113. 三重野一雄

    参考人三重野一雄君) お答えいたします。  ただいま先生、専務理事とおっしゃいましたが、実は私、ことし五十一年の四月から専務理事でなくて普通の理事になっておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと思います。  社団法人勤労者福祉促進協会は、ただいま先生の御説明のとおりに、勤労者の財産形成の法律が制定されまして、その法律に基づいて勤労者の財産形成を進めていくわけでございますが、特に財産形成という新しい事業でもございますし、非常に自由に活動できるような団体といっては語弊がありますけれども、やっぱりそういった公益法人を設立して、さらに推進を図っていく必要があるんじゃなかろうかと、そのことによって、なかんずくこの財形の融資の促進もあわせて進めていくと、そういうようなことを含めて、特にその普及宣伝、それから研修会、講習会の開催とか、それから各種の出版物を配付するとかというようなことによって、この制度の普及を図っていきたいということで、四十九年の十月に労働大臣の認可を得たわけでございます。  現在の職員数は七名でございまして……
  114. 久保亘

    久保亘君 いや、いいです。それじゃ私がお聞きしましよう。  勤労者福祉促進協会の職員は七名、雇用促進事業団は、担当の理事がきょうお見えになっておりますが、いらして、その下にそれぞれの担当の職員がおられて、事業団全体としては全国で四千六百名余りの職員がおられるはずでありますが、私は、この勤労者福祉促進協会というのがやろうとしている仕事は、本来は雇用促進事業団自体がおやりになるべき仕事ではないのか。で、四千六百名の人たちでやれない仕事をどうして七名の協会がおやりになれるのか、非常に疑問に思っております。現在はこの勤労者福祉促進協会は、いま専務理事は三重野さんおやめになっているということでありますが、じゃあこれは普通の理事だということで結構だと思いますが、会長が中労委の公益委員をされております大宮さん、元労働省の部長さんですね。それから理事長さんは大坪健一郎さん、この方も元労働省の部長さん。そして専務理事を務めてこられた三重野さんが元やはり労働省の方であります。こういう方がこの促進協会の役員としておられて、顧問には元労働大臣の長谷川さん、それから労働省局長でありました住さん、労働省の次官であり厚生大臣もされました齋藤さん、こういう方が座っておられて、雇用促進事業団のこの持ち家融資制度の普及のためにいろいろやっておられるということでありますが、この協会は、促進事業団が運営のために事業主または事業主団体に融資をした資金の一%を事業診断料ということで徴収されているのではありませんか。それはどうです。
  115. 三重野一雄

    参考人三重野一雄君) お答えいたします。  一%と申し上げますのは、これは一千万未満の融資については一%、それから一千万以上の融資については基本料の〇・五%、それからこのいわゆる事業主の団体につきましては、相当多額なあれになりますし、その辺を勘案いたしまして〇・二%ということで診断を実施しております。
  116. 久保亘

    久保亘君 そうでしょうか。そしたら私、大変疑問に思いますが、この首都圏財形住宅協同組合が融資を受けましたというよりは、融資の計画を雇用促進事業団と相談をいたしまして大体内定をするに至りますと、福祉促進協会の方から住宅協同組合に対して診断手数料の請求が出されているんじゃありませんか。そして、その請求は、いま言われたように〇・二%とかいうようなものじゃなくて、雇用促進事業団が一番最初に受け付けたときの金額の一%で請求されているように思います。私がここに手にしました請求書は、勤労者福祉促進協会理事長大坪健一郎名でもって、首都圏財形住宅協同組合あてにことしの三月十日にまだ決定をしていない融資に対する手数料を請求されております。三月十日に請求されましたのは、診断手数料その一、四百六万八千円、二番目に二百十九万円、三番目に三百十五万三千円、そして一番下にはまだ事業団が決定もしていない融資の対象からすでに二百万円は診断料として入金済みであるという内訳になっております。そして、その入金済みのものを差し引いて七百四十一万一千円の請求書が首都圏財形住宅協同組合に出されているわけであります。それであなたにお尋ねしたいのは、この勤労者福祉促進協会の専務理事であったあなたが、理事長名をもって首都圏財形住宅協同組合の専務理事であるあなた、どっちもあなたが専務理事だ。そこへ請求書を七百四十一万一千円、まだ決定もされておらない融資について事業診断手数料として請求されている事実はありませんか。
  117. 三重野一雄

    参考人三重野一雄君) お答え申し上げます。  私、首都圏の住宅協同組合の方の専務になりましたのは五十一年の五月の二十五日でございまして、それまでは首都圏の方には関係してございません。で、いま先生申せられました点について若干私の方の手違いがございまして、最初にいわゆる事務代行手数料というのが先にみんなの頭に入っちゃいまして、事務代行手数料という形で請求がなされたために……請求もいま先生のおっしゃられたような形で請求がなされております。これは私の方の決算を見ていただけばおわかりと思いますが、私の方では、協同組合の方からのやはり相当強力なる御援助がございましたので、確かに五十年度については賛助会費をちょうだいしておりますが、事務代行手数料については、私の方はいま申し上げたようなことでちょうだいしております。
  118. 久保亘

    久保亘君 そうすると、あなたがさつき言われました事業主団体の場合には融資額が多くなるので〇・二%だということはありませんね、これは実際の融資額の一%を上回っておるんです。というのは、最初に話があった時点の額に対して一%診断料として、まだ決まらぬうちに請求されておるわけですよ。そうして、その内金みたいなものは決まる相当前に徴収されている、二百万。これがあなたのところから発行された、あなたが専務をされておったところから発行されて、いまあなたが専務をされております協同組合が受け取った請求書じゃありませんか、ナンバーも入っております。そういうことから見ますと、この勤労者福祉促進協会というのは、たった七名の職員をもって四千六百名の事業団体が融資をする仕事のそばにくっついておって、そして、この非常に有利な制度を、資金はだぶついておる、資金の枠はまだうんと余裕がある、しかし、なかなか制度としてややこしくてむつかしい、そこのところをうまく利用しながら、非常に多額の手数料を吸い上げて——本来の仕事は事業団がやる。あっせん普及をやっているという名目で、融資のときに口きいてやって一%の手数料を取るというだけの団体になっているんじゃありませんか。しかも、現在の理事長さんは、今度総選挙に出られるとかで東京にはいらっしゃらないですね。九州にお住まいで、そして、その理事長の職についておられるようですし、会長さんはこれは中労委の公益委員さんですね。しかも、この方がまたこの協同組合の理事長もされておる。それで、これを見ますと、役員が、促進協会は会長が大宮さん、協同組合は代表理事が大宮さん、そうして、いまはかわったと言われますが、ここは専務が三重野さん、こっちも専務が三重野さん、それからもう一つ、後で問題にいたしますこの協同組合に寄生をいたします株式会社財形持家促進センターも取締役が三重野さん、それからもう一人こっち側の取締役の望月さんという方が社長、そして、その下の取締役の長谷川さんは首都圏財形住宅協同組合の事務局長的な仕事をされていると聞いております。また、もう一人の東中さんという方は促進協会の幹部であると聞いております。そうすると、この三つが完全にぐるになってこの持ち家促進の勤労者のための融資資金に寄生しているということになっているわけですよ。これは私は大変問題だと思うのです。で、いま私がこれ持っておると申しましたこの請求書の写しは、そういう意味で一%、まだ決定もしないうちに手数料を事業団体に対して請求をしているという証拠であり、そうして、事前に徴収をしているということもこのことによって明らかであります。こういうような促進協会のあり方というものは、これを認可をされております労働省としてどういうようにお考えなのか。——大臣どこに行かれましたか。
  119. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 速記とめてください。   〔速記中止〕
  120. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 速記を起こしてください。
  121. 久保亘

    久保亘君 それでは、労働省側の意見をひとつ時間がありませんからできるだけ手短にお答えいただきたい。
  122. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 労働省は、先ほどお話がありましたように四十九年の十月一日にこの法人の設立の許可をいたしております。それは申請書によりますと、目的が勤労者の福祉促進に関する調査研究、あるいは財形制度の普及宣伝、あるいは勤労者の福祉促進に関する相談及び指導、こういうことでございますので、民法の要件に適するということで認可をいたしました。それから予算等を見ましても、いまお話に出てますような手数料収入というような点は問題はございましたけれども、一般的には出版広報費等が歳入の主なものでございます。そこで、私どもとしては先般来この手数料の点は、少なくとも五十一年度予算編成についてはよく検討し直すようにというような指導を加えておるところでございまして、この法人自体の目的には別に不適当なところはないというふうに考えておるわけでございます。
  123. 久保亘

    久保亘君 そうでしょうか。本来雇用促進事業団が広報も事業主に対する啓蒙も指導もやらにゃいかぬのですよ。そのために雇用促進事業団は四千六百名も職員を抱えてやっておるわけです、仕事を。それをどうしてたった七名の職員のこういう協会をつくらせてそういう仕事をやらせなければできないという理由がありますか。そこが私にはわからぬ。しかもいま言われるところによれば、一%の事業診断料を徴取していたことはやっぱり問題がある、だからこれは今後改めさせるようにしたいということでありますが、そういう問題を持って運営されているような協会が、この制度の勤労者の立場に立った普及のために必要なのかどうか。それは本来事業団がおやりになることじゃありませんか。労働大臣と事業団の理事長からお答えいただきたい。
  124. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) これは、労働省といたしましても雇用促進事業団といたしましても民間といたしましても、この住宅を普及する必要があると思います。この内容、運営についていま御指摘がありましたが、私はまだよくその内容存じておりませんので、もし不都合な面があるならば直ちに改めさせるように指示いたしたいと、かように考えます。
  125. 堀秀夫

    参考人(堀秀夫君) 事業団は財形融資制度の啓蒙宣伝のための所掌業務を持っております。なお四千六百人というお話でありました。総員はそうでありますが、この大部分は職業訓練校あるいは勤労者福祉施設の職員に当たるものでありまして、財形関係は財形部というのを一部置きまして、担当理事一名、職員が十六名、それから相談員が十二名、合わせて二十九名でございます。ただし、これらの人員はまあ不十分ではございますけれども、これらの人員をもって能率的に仕事をやる。私どもの方といたしましてはこの財形融資のPRの責任はもとより事業団にあると、このように思っております。協会につきましては、できますときにはもちろん私ども関係がございません。ただ、まあいまお話もありましたとおり、財形融資制度が発足してまだ余りだっておりません。PRも不足でありますから、まあ民間の社団法人でそういうようなことをPRする業務を持つということ自体は、私は多々ますます弁ずですからまあ意味があると思いますけれども、事業団とはこの協会は何ら関係ございません。
  126. 久保亘

    久保亘君 何ら関係はないかもしれませんが、この事業団の東京支所とこの協会は同居して同じところにおられるわけですね。そして何も関係はないかもしれないですが、役員の構成、顧問の構成を見ますと、これみんな労働省の幹部。そして雇用促進事業団はもとより労働省関係の事業団ですね。これ、関係がないはずはありません。非常に深い関係がある。だからこそ労働省の前部長がここの理事長の職にあって、いま衆議院選挙の立候補準備を一生懸命やっておられるわけです。こんなばかなことはないと私は思うんですよ。これが本当に勤労者福祉促進のためにこの協会が全力を挙げて仕事をせにゃならぬのなら、そういう仕事のできる人たちがその職務につくべきだと思います。しかも事業団の場合には、いま人数を言われましたが、支所を全国にお持ちですね。これらの支所もそれらの仕事に携わっておられる。だから事業団のこの仕事に携わる広がりと量は大変厚いものがあるんです。それをこういう協会が一%診断料を抜くということはどういうことになるかといいますと、これは一%抜かれた分は住宅を最後に受け取ります勤労者の負担に積み重ねられるというのが一般的常識になりましょう、ほかから出てくることないんですから。この一%がなければそれだけ安くいくんです。そういうことを私はこの問題で指摘をしておきたいと思うんです。  次に、協同組合が生まれて、この協同組合が零細な事業主に成りかわって持ち家促進のための融資の仕事をやってくれる。しかも、この債務は協同組合が負うてくれて事業主にはその債務を生じない、これは返還の事務だけであるということになれば、この協同組合は大変有効な組織であります。しかし、この有効な組織がどうして福祉促進協会に診断を頼んで一%払った上に、ここへできました財形持家促進センターという株式会社をここへ同居させて、そしてこのセンターはどういうことをするかといいますと、この協同組合が建物を購入したり自主建築をやったりしますと、建設業者から企画料と称して三%ないし一〇%のリベートをこのセンターは取得しているわけです。そういう仕掛けになっているわけです。協同組合は民法による公益法人ですから、これは利益を上げることはできません。どこで利益を上げるかということのために別会社として持家促進センターをつくったんじゃありませんか。これが五十年九月九日に協同組合ができて、五十一年の五月十二日にこの持家促進センター、ことしの五月につくるんです。役員はさっき申し上げましたように、この協同組合と促進協会にかかわりのある人たちばっかりで役員を組織して株式会社ができるわけです。三重野さんもこの取締役ですが、この持家促進センターをつくられた目的は何ですか。
  127. 三重野一雄

    参考人三重野一雄君) お答え申し上げます。  いま先生お話がございましたように、事業協同組合を当初設立したときには、財形持ち家融資制度の中に低額譲渡分譲契約ですか、と標準譲渡契約と、そういうことを事業主がしなければならないというようになっております。協同組合を設立したときにはいわゆる標準譲渡契約によって組合員の方から何がしかの金利の負担を受けて、何がしかの金利の負担をいたしますと事務費三%相当は組合の方で正当に計上することができる。そうすれば一応それで何とか運営はできるんではなかろうかということで設立したということでございますが、実際に設立してみまして組合員の方々に話してみましたところが、事業主や組合員の方々がそれめんどう見るなんてとてもできないという大きな壁にぶち当たりまして、それじゃほかのいわゆる方法はないものかと、いろいろ検討を加えましたけれども、結局、低額譲渡分譲方式によらざるを得ないというように結論に達したということでございます。そういうことになりますと、何かやはり協同組合のわずかな職員ででも事務がやれると。しかも、これだけの非常に複雑な事務を進めていくために何らかの手だてということをしていかなきゃならない。そういうことで窮余の一策と申しますか、それでは持家促進センターというものをつくって、そこでその持家センターと組合との間に相互のいわゆる契約を交わしまして、こういう事務処理をあんたのところでやってくれというようなことでやっていったらどうだろうかということで、協同組合の理事会で検討した結果、それでいいじゃないかというようなことに、そういうふうになったために、持家促進センターというものを設立するに至った。ところが、ただいま先生の御指摘ございました持家促進センターの方が、いわゆるそういうことによって組合の維持管理についての何らかの運営援助をするということになりますために、非常に誤解を生じやすいじゃないかということで、私が赴任になって就任をしまして、私就任をしてすぐこれ検討を加えなさいと言って、検討を加えさせ、すぐ加えさせましたが、当初からその検討を加えてはおったものの、なかなか金融機関からの協力が得られなかったということは、やはりまだ協同組合というものはできて間もございませんし、実績もございませんし、そういうようなことで、その時点ではなかなか協力が得られなかったんですが、その後一応融資の決定も受け、それからある程度先行きの見込みも立ってまいりましたんで、金融機関の方としてもその話に乗ってくれまして、いわゆる標準譲渡契約の中にございます頭金二分の一に対する七・五%の十年間の融資を組合がやるという方法をとっていけば、これは何とかやれる。それはどうやってやれるだろうかと。これは一にかかって金融機関の御協力、融資がなければならない。組合に対しての融資がなければならない。やっとそこで基本的に金融機関の方もその話について了解が得られましたので、急遽といいますか、その時点で七月一日をもって事実上の業務停止を行った次第でございます。
  128. 久保亘

    久保亘君 余りはっきりしない説明ですが、このセンターは、要するに協同組合が受け取ることのできないリベートを、協同組合にかわって受け取る株式会社として設置されたもののようですね、いまの御説明聞きましても。だから、この会社は協同組合が融資を受けて購入をしようとするある事業体、ある業者がっくりましたマンションを買い取る場合に、その業者と協同組合が融資についての覚え書きを交わしますと、すぐ持家センターがこの業者との間に協定を結んでおるんです。その協定によれば覚え書き、つまり建設業者と協同組合との間の覚え書きによって融資の実行が事業団から行われた場合には、企画料としてこのセンターに建設業者は三%を払いますという協定を結んでおるんですね、両方の代表者で。これとこれが融資の契約を結び、そしてこれが融資の契約を結び、ここに購入契約が成り立ちますと、この融資の金がおりてくると自動的にこっちに三%いくような仕掛けになっている。これが自主建設の場合にはもっと大きな企画料が行くようになっている。このセンターをつくられたのは大変私は法の網をくぐるやり方だと思うんですが、いまいろいろ手だてが講ぜられたので、五月十二日につくって、七月一日には事実上業務を閉鎖したと言われた。しかし、非常に不思議なことに、私がこの問題を労働省にも指摘をいたしました。そうしましたら、この業務を停止いたしましたというあなた方の事業休止届というのは、芝の税務署と港の都税事務所にきのう出されたんですよ、きのう、休止届は。しかも、日付をさかのぼって書いて、これでよかったと思っていたら、受け付けた税務署の方が判を押したら、きのうの日付が出てきた。きのう休止届が受け付けられた。だから、そういうふうな便法をとって、ぐあいが悪くなると閉鎖したんだという言い方は、私は余り正当な言い方じゃない、こういう感じがいたします。そして、この三つの団体が完全に役員が重なっておりますね。首都圏協同組合の募集の書面を見ますと、あなたは財形持家促進センターの取締役ということで、ここの役員になっておられるように書いてある。これは本当かどうかしりませんよ。あなた首ひねられたけれども、そう書いてある。望月さんはここの社長なのに、こっちの理事になられるときには三貴エージェンシーという会社の社長ですということで入っておられる。あなたがこの株式会社を代表してここに入っておられるということに、あなたのところから出された印刷物に書いてある。だから、そういう点でもいろいろ問題があります。もう時間がありませんから次へ行きます。  次にですね、首都圏財形住宅協同組合というのは、私が申し上げましたように、零細な事業主にかわってこの融資制度を有効に活用しようとするんですから、私はこの組合自体は決して望ましくないとは申しません。こういうような法律に許された方法をもって、これが勤労者に譲渡されていくことに役立つならば結構だと思う。ところが、この協同組合自体が、いま首都圏財形住宅協同組合の場合には経営が非常に不健全じゃありませんか、その経理内容を見ても。膨大な先行投資が、建設事業費として先行投資されているんならいいですよ。でき上がってからたった一年しかたたない協同組合が、経常費の負債を五千万以上持ってるんじゃありませんか。それどうですか。
  129. 三重野一雄

    参考人三重野一雄君) お答え申し上げます。ただいま先生指摘の一億九千万の負債の内訳だと思いますが、その中身は約一億四千百万については、これは事業団からの融資が受けられれば、組合の方がそれだけのものを取得しなければならない、いわゆる一応事業費としてそれだけのものが組合の負債になるという計上でございまして、いまのところは全く負債も何もございません。その面事業費の負い目についてはございません。それから、事務費の借り入れの五千三百万円でございますけれども、これは経費の借り入れに対して資産の部がございまして、たとえば事務所を借りているような保証金とかそれから什器、備品というようなものでございます。それから前渡金といいまして、これは前に前渡しているだけですから、当然いわゆる資産に肩がわりになりますが、それらが約三千三百万ございます。実際の負債は大体二千万程度になろうかと思いますが、この負債の内容はいままで五十年の八月から、五十年度の決算して、もちろん負債になっておりますが、それからずっと押せ押せで、いわゆる人件費と日常経費等がこれらのいわゆる負債等の累積されたものというようになっておるわけでございます。
  130. 久保亘

    久保亘君 いま言われた五千三百万の経費の負債ですね。あなたはそう言われるけれども、私が持っております資料では、ことしの五月にできた促進センターが去年の九月にできた協同組合に二千七百八万七千四百六十五円貸しておることになっている。資本金が二百万かそこらのこの株式会社ができてから一カ月半後には事業を停止した、もう廃業してしまった会社が、ここに二千七百八万貸しておるんです。それから、ここのこの二千七百万貸している会社の社長さんが、個人でまたここへ一千万貸している。それからこの社長さんの、今度はまた個人の会社が一千万ここへ貸しておる。私は非常に不健全な経営だと思う。それで、そういうふうに事業費の先行投資もまだ融資が決まるかどうかもわからぬところまで含めて、合わせて一億九千四百四十三万の債務をこの協同組合は持っております。そのために大変困難な経営に陥っているという事情をまず前提に置かなければいかぬと思うのであります。  そこで、私がこれからお尋ねしたいと思いますことは、協同組合がやりました二つの仕事一つは市原の小田急建設がつくりましたグリーンマンションを買い取って分譲するという仕事。もう一つ、いま川崎市の元木町に教安寺の土地を、借地権を買い取りまして、ここに三十六戸の十三階建てのマンションを建設中であります。この二つがいま協同組合がやっている仕事なんです。ほかはやってないんです。この二つやっている仕事の中の一つ、この川崎市の元木町の財形マンションの融資についてお尋ねをしたいと思うんです。  この融資が申し込まれましたのは、ことしの二月であります。ことしの二月に協同組合、当時理事長は伊藤敬介という人のようです。この方が二月に申し込みをされております、事業団に。そのときに土地と建物合わせて四億六百八十四万五千円の申し込みをされた。これに対して、先ほど協会が手数料を四百六万八千円請求したんです。一%ですね。ところが、その後事業団はいろいろと検査をされまして、三月の二十四日に土地資金として申し込みを一千万円ぐらい上回る一億七百七十八万四千円、建築資金として三億八百九十七万四千円、合わせて四億一千六百七十五万円を貸付内定をされております。それからまたいろいろと設計の審査が行われまして、六月の八日に最終的なものとして土地資金一億四百十五万、建築資金二億六千五百九十五万、合わせて三億七千十万がことしの六月八日に決定になっております。そして、この教安寺の土地百七十坪は三億七千十万円の抵当権を設定をいたしております。限度額三億七千十万と決定されております。ここに土地資金が一億四百十五万と決定をされ、その二十日後、ことしの六月二十八日に地元の銀行を通じて一億四百十五万が協同組合に対して融資になっております。ここまでは間違いないかどうか、事業団の担当の理事さんにお尋ねしたい。
  131. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 広瀬参考人
  132. 広瀬忠三

    参考人(広瀬忠三君) お答えいたします。間違いございません。
  133. 久保亘

    久保亘君 そうすると、私が理事さんにお尋ねしたいのは、この土地代として決定をいたしました一億四百十五万の中から、土地の整備費の融資が幾らかございますね。その整備費の融資が幾らになっておりますか。
  134. 広瀬忠三

    参考人(広瀬忠三君) お答えいたします。土地整備費の融資額は四百七十五万でございます。
  135. 久保亘

    久保亘君 そういたしますと、九千九百四十万円が借地権の代金として教安寺に支払われた、こういうふうに理解すればよろしゅうございますか。
  136. 広瀬忠三

    参考人(広瀬忠三君) お答えいたします。私ども事業団の方から土地代金として、これは借地権の設定費用でございますが、融資されました金額は九千九百四十万円でございます。これは実際の借地権の設定経費のおおむね九掛け、こういうことでございます。
  137. 久保亘

    久保亘君 そうすると九千九百四十万円掛ける九分の十がその教安寺に支払われた金額になりますね。そういうことですな、それでよろしゅうございますか。
  138. 広瀬忠三

    参考人(広瀬忠三君) そのとおりでございます。
  139. 久保亘

    久保亘君 九千九百四十万円掛ける九分の十、いまちょっと計算ができませんので、ざっと一億一千万余りになろうかと思いますが、一億一千万余りが協同組合と地主であります教安寺との間で、土地の借地権譲渡の契約として執行されたというその最終的な認定は事業団はされておりますか。
  140. 広瀬忠三

    参考人(広瀬忠三君) 事業団としてはこの種の資金の請求は、金融機関を通じまして事業団に参るわけでございます。金融機関も内容をチェックしております。私どももその内容が的確であると判断をいたしましたので、資金交付いたしました。いたしました結果、そのとおり地主に支払われているかどうかということも確かめました。で、その教安寺の領収書によりますと一億一千八百七十五万円という金額の領収書が六月二十八日付で発行されております。
  141. 久保亘

    久保亘君 一億一千八百七十五万円の教安寺発行の領収書を事業団は確認されているということでありますが、私どもが教安寺の責任者に伺っていろいろ調査をいたしました。そういたしますと、教安寺はこの地上権は九千万円で譲渡した、こういうことになっているのであります。九千万円で譲渡した。九千万で譲渡したということになれば、融資の限度額はいっぱいいっぱいにいって八千百万であります、九割ですから。ところが一億を融資されておるんです。教安寺の住職野呂幸延氏は九千万円でも大変いい値で取引できたと思っているという気持ちをお持ちのようであります。その根拠になりますのは、五十年の三月十五日付で藤田観光の三木安正氏が鑑定をいたしました評価額が、五十年三月十五日付で八千九十五万八千二百四十円と出されております。そしてこの鑑定書は四月十日付で正式に三木安正氏から発行されているはずであります。八千九十五万の評価額が九千万でそれが教安寺と協同組合との問で取引されたんでありますから、教安寺はそのことに対して不満はない。ところが、その融資されたのは一億に近い。教安寺が発行している領収書は一億一千八百七十五万円になっておる、こういうことでありますが、私どもの方で現地で確認をさせましたものによれば、大宮五郎氏の名前による念書が教安寺にあります。この念書によれば借地権は九千万であると書いてある。そして、現金は四千二百四十一万四千円しか教安寺は受け取っておらぬのであります。四千二百四十一万四千円を現金で教安寺に渡す、残りは約四千八百万近く、九千万の中からの残り、それだけはこの十三階のマンションの一階のピロティー部分を教安寺の所有とすると、その建設費で相殺するとなっております、念書は。九千万円で買います。大宮さんが署名された、捺印された念書です。九千万で引き取ります。四千二百四十一万四千円は現金で渡します。九千万の残額はあんたの方に、お寺の方にやるこのマンションの一階部分の建設費として相殺する、念書にそう書いてある。そこでさらにこの教安寺側は、じゃあどうして協同組合に一億一千八百七十五万円の領収書があるのか。それを事業団がどうして確認したのか。こういうことになると、言い分は融資の都合上領収書がもう一枚必要なので書いてもらいたい、こういう要請を受けて書いたというわけです。そうすればこの融資は明らかに事業団が真実の金額を把握し得ず、誤った査定によって実際の取引額をはるかに上回る融資を行った。しかも協同組合はその融資金のうち四千二百万だけを現金で渡しておいて、後は建設費として相殺だということで、その金はどうなったのかという疑問があるのであります。六千万円以上の金がどこへ行ったのかという疑問があります。その疑問にこたえるものとしては、協同組合で事務局の責任者が印鑑を押して出されたメモによれば、川崎市元木町の金の流れと、このごろはやりの言葉ですね、金の流れという表題をつけたものがございまして、これによればいろいろなところの、たとえば三貴エージェンシーに借金がありましたからここへ返しました。望月に借金がありましたからここへ返しました。促進協会に払わにゃならぬ金がありましたから、ここに前後数回にわたって六百四十万円払いました。協同組合の職員や役員の給料や賞与に使いましたとかいうのがずっと書いてある。これは私は実際にこの金を扱ったんじゃないからわかりませんよ。わかりません。しかしそういうようなことがずっと書かれてあります。そのほかにこの協同組合の参与の地位にある人が、また新たに協同組合がその事業を起こそうとしているところの土地をあっせんをしたから、その手数料だということで二百万円払ったということも書いてある。そういうことになってくれば、これは事業団が融資をいたしました金が過剰に融資をされたということだけではなくて、今度は目的外に流用されていったということになりはしないだろうか。こういう点で大変疑問が残るわけであります。もしこの残り部分、実際の融資額と教安寺に現金で払われた分の残り部分六千百七十三万六千円、これから土地の整備資金を四百何十万かこれを引きます。引いても六千万近くのものがある。この金が仮にピロティー部分の建設費と本当に相殺していたとしても、なお一千万以上の残金が出ているはずであります。この残金が一体どこへ行ったのか、こういう点についてきょうは時間がありませんから説明を求めることができないかもしれませんが、雇用促進事業団としては、私がいま指摘しましたような地主側の見解、あなた方が出されたもの、念書、こういうものを総合的に考えてみて、この問題については厳重な再調査をやる必要があるということをお考えになりませんか。
  142. 堀秀夫

    参考人(堀秀夫君) いま担当理事から説明をいたしましたが、事業団としての融資の決定あるいは資金の交付、これは取引銀行でその資金の所要量を審査いたしまして、その地主からの印鑑も添えて、捺印した証拠書類を添えまして、契約書等もつけて出てまいりまして資金を交付いたしました。しかし、そのほかにただいま伺いますと、裏の何か問題があると、こういうことのような感じを受けるわけでございます。私の方といたしましては、その裏の取引があることは非常に不明朗でございますから、こういう点につきましては早速調査をいたしたいと思います。それによって必要な措置あるいはもしそれが事実であれば、融資の減額とかその他必要な措置は講じたい。いずれにいたしましても、よく調査を十分いたしたいと考えております。
  143. 久保亘

    久保亘君 私もこれが願わくば勤労者の福祉促進という趣旨を裏切らない正当な手続による融資であることを願ったんです。しかし、今日まで私ども調査をいたしましたところでは多くの疑問が残るんであります。しかも融資額はいま事業団が言われたとおりの数字である。そしてその領収書は事業団が確認をされておる、教安寺発行の。ところが教安寺の責任者は、私の方は九千万以上では売っておらぬと断言しておる。そして念書もある。その念書も見せてくれました。大宮五郎さんの理事長名で出された念書であります。だから、そういうことから考えてまいりますと非常に問題があるし、それから実際には四千二百万余りしか現金が渡されていない。後は建設費との相殺となっておる。これが念書にあらわれておって、一体その建設費がどうなっておるのか。それはこの施工者である第一建設に正確に支払われいるのか。その辺のところでこの融資資金が転用、流用が行われているのではないか。特に先ほど指摘いたしましたように、この協同組合が経費でもって五千万を超す負債を抱えているという異常な状態にある。しかも、その負債が特定の個人並びにその個人の経営する会社からこの金を借りている。こういうような関係になっている。その後出された融資金は細分されて持家センターの口座に入ったりいろいろあるという話も聞きます。しかし、そこのところは私どもは正確に確認できませんが、しかし、いまのような教安寺と事業団の言い分には明らかに食い違いがあるのでありますから、その辺を厳重に調査をされたいと思うんであります。  時間が参りましたので、最後に協同組合の監督官庁であります中小企業庁並びに福祉促進協会あるいは雇用促進事業団指導すべき立場にある労働省から、この持ち家融資制度をめぐるいろいろな問題をお考えになった上で、今後この融資制度が有効に法の精神に沿って勤労者のために使われていくようにするために多くの制度上の改善、それから厳しい指導が必要ではないかと思いますので、その御見解をお聞きしたいと思うんです。ただ、私どもが耳にしましたところでは、いろいろ批判をするようであるが、この協同組合ができたためにどんなに安い住宅が勤労者の手に入ったかという反論があるようであるが、同じ一般の分譲マンションとするとはるかに安いという話があるようでありますが、あたりまえであります。九割、低利、三十五年返済などという資金を協同組合を通過して一括建設会社は九割そっくり受け取って、そして頭金についても協同組合が支払ってくれるんであります。そうすれば一割やそこら分譲価格が安くなるのは当然のことであって、この制度を生かすならば、そういうことが起こるのは当然であって、それを協同組合がいろいろ苦労してやっているんだから、少々の問題があってもそういうことは大したことではないという見解であるとするならば、私は大変な間違いであると思っております。そういう点をひとつお含みの上で、中小企業庁と労働大臣の見解を伺って、私の質問を終わります。
  144. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) ただいま久保さんから融資の問題について伺い、私もいま聞いてびっくりいたしているわけでございます。事業団から出る金がいろいろな協同組合を通じ、あるいはセンターを通じ、しかもそれが貸借の関係、まあ非常に複雑に扱われておるということを見まして、やはりこれは財産形成のために、勤労者の福祉のためにやった、大きな目的でやっておる以上は、本当に勤労者のためにならなかったら何にもならない。しかし、その間の扱い方について、私もよくまだこのことが頭に入りませんけれども、いまの説明を聞いておる限りについては、何と複雑な状況になっておるんだということをいましみじみ感じておったわけでございます。この問題よく担当の局にも命じまして、もっとはっきりと解明をしまして、これがもし勤労者のために不利な状況になっておるとするならば、これはもちろん直さなければなりませんし、また不正があっては、仮に不正があったとするならば、これは徹底的に処理をしなければならないというふうに考えまして、いまの御指摘の点については今後十分注意をし、検討をするように指示をいたします。
  145. 松田岩夫

    説明員(松田岩夫君) ただいま労働大臣からすでに御答弁がありましたわけでございますが、私ども協同組合制度、この中小企業の皆様方が相互扶助の精神のもとに協同組合をつくって、その地位の向上を図るという協同組合制度を担当しております者といたしましても、直接、この首都圏財形住宅協同組合、これを認可いたしましたのは、先生御案内のように東京通産局及び建設省でございますが、そういったところを指導しております立場といたしまして、こういった関係官庁、さらにこの持ち家住宅制度を所掌しておられます労働省等とも連絡をとって、私どもといたしましてもしかるべき措置を、調査その他必要な措置をとってまいりたいと思っております。
  146. 久保亘

    久保亘君 参考人の方々、大変お忙しいところ御答弁いただきありがとうございました。
  147. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 参考人の方々に一言御礼を申し上げます。  本日は御多忙のところを御出席いただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表してここに重ねて厚く御礼を申し上げます。
  148. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私は、旅客輸送関係仕事に従事する人たち労働問題についてお伺いしたいと思います。  航空機に乗っているスチュワーデスの人たちについてですが、腰痛を訴えている人が非常に多いということを聞きました。確かに多いようであります。監督をなさったということですが、労働、安全衛生法規の点からどういう結論が出ておりますでしょうか。
  149. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 腰痛の問題は、最近の職業性疾病の中でも重要な問題でございますが、御承知のように昔は港湾労働でございますとか、そういった重筋労働の中に発生をいたしましたけれども、最近では重症心身障害児の施設に働かれる御婦人の方、あるいはいま御指摘のありましたようなスチュワーデスの方というような方々にも腰痛の問題が出る、こういうことでございます。で、重量物の取り扱いに起因しますこの問題につきましては、労働省といたしましては従来から重量物取り扱い作業における腰痛の予防についてというような関係通達を四十五年、五十年と出しておりまして、作業姿勢、作業方法の適正化あるいは作業時間、休憩時間の適正配分、予防体操の実施、健康診断の実施というようなことを指導をいたしておるわけでございます。  それから、業務に起因いたしまして腰痛になられます場合には、これは労災の認定対象になるわけでございまして、最近でも昭和五十年につきまして見ますと、全体で休業四日以上の労災認定患者腰痛症は五千百三十四名となっております。これは残念ながら病名別、男女別の報告はございませんけれども、全体としてはその程度の規模になっております。現状は以上のようなことでございます。
  150. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いまお聞きいたしましたのは、航空機に乗っているスチュワーデスの人たちの腰痛、これに対して監督はなさっていると思うんですね。その監督をなさった結論、特に衛生的な面からどういうような結論になっておりますでしょうか。
  151. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 羽田の空港関係が非常に多いわけでございまして、東京労働基準局監督を五十年にいたしております。ただ、これは腰痛だけではなくて一般の労働基準全体について監督をいたしましたのですが、労働時間及び割り増し賃金の違反が多い、あるいは航空機の気象状況、故障による時間外労働が多い。それから、シフト制の勤務体系が労務管理上の問題として伏在をしておるというような点が指摘されております。なお、腰痛、職業病等の対策は予防対策を中心とした健康管理体制が不十分であり、今後の環境改善とともに積極的な指導が必要であるということで、私どもとしてはなお監督指導を強めなきゃならぬという認識でございます。
  152. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いまお聞きしてみますと、具体的な指導がまだ適切になされていないんではないかと、こういうふうに感じますので、私もたまに飛行機に乗る、特に国際線に乗った場合のことを思い出して、素人ながらの目であの飛行機の中でのスチュワーデスの働き方、またそこで見られる環境、こういうものを考えますと、とうてい地上で考えられるような問題じゃない厳しいものがあるように私は思います。申すまでもないんですけれども、高度一万メートルというそういう高さ、富士山の倍以上のところで十時間、それ以上かもしれませんけれども働いていると、非常に気圧が体に全体的に影響するということは当然です。またある人の意見によりますと非常にあの中は乾燥している、乾燥しているために脱水症というような状態になると。これが非常に疲れやすい体になってくるんだと。まあ時差のことは当然体のリズムに大変な影響を及ぼすということはだれでも言っているわけです。東の方へ飛んでいけば一日といってもそれは非常に短い。反対に西の方に飛んでいけば一日という感覚が非常に長くなるわけですね。特にこの狭いところで立った仕事を続けていると、揺れる場合が非常にあるわけですね。そういうところで食事の重いものを、食器を運んで片手で奥の方のお客様にこう出している、まあこういうような状態。また、地上で考えている一日とは全く違う勤務なんです、あれは。羽田から飛んでいきますと、ほとんど夜の勤務になる、東の方へ飛んでいった場合ですけれども。そして一泊できてもそのときは自分の体の状態はちょうど昼のような状態になっているために、ホテルで寝ていても昼寝程度の休息しかとれないと。またそして次の勤務に入ると、そうするとまた夜の状態で勤務する。ホテルに泊るときは昼のような状態のときに寝ていく。まあヨーロッパ一回りして五日間のうちたった二泊で帰ってくるというようなことも聞きましたけれども、こうした厳しい状態というものを考えましたときに、腰痛というものが起きないのが不思議だと。スチュワーデスが非常に腰痛を訴えているということが話題になっておりますけれども、その女性ばかりじゃなくて、あそこに働いている男性の方たちもいるわけですね。むしろあのスチューワーデスの人たちよりも、一緒に働いているパーサーの方がはるかに無理をしているというようなことも聞いたわけです。こういう点、もう少し実態調査していただきたい。作業環境の改善というものは幾らでもある、また勤務条件の改正なども必要と私は思います。特に会社の方はどうしても利潤の追求であって、作業環境の改善や勤務条件の改正はおろそかになりがちなのはやむを——やむを得ないとは言えませんけれども、おろそかになっているのが現状なんですね。そういうときにこそ、監督署労働者の安全と健康を守るために、具体的な点を指摘して指導すべきじゃないかと思うんですね。非常にそういう点監督署の手が足りないとか、もっと緊急を要する問題点などが続発している。だから、そういうことは自然と後回しになるというような、そうした言いわけがましいお答えをお聞きしたくないわけですね。ぜひこの点具体的な指導をすると、そして環境改善をやると、勤務状況について勧告をすると、そして会社が進んでそうした改善や改正に取り組まなければならないように、ひとつ強硬に言っていただけないでしょうか、言っていただきたいと思いますね、いかがでしょうか。
  153. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 航空機の業務に従事されます、特に女子の方々は、深夜業も特例措置が講ぜられているというようなこともございますし、いまお述べになりましたような、なかなかきつい労働であろうというふうに私どもも思います。そういう意味で、先ほど申し上げたような監督指導も行っておるわけでございますが、できるだけ監督署といたしましても必要な調査指導をやっていきたいと思います。ただ、先ほどもいろいろ林業労働について関連して御議論がありましたように、零細中小企業というものにどうしても重点的な監督をしなければならぬ。なかなか一流の大企業あるいは一流の労働組合をお持ちのところは、でき得べくんば労使でよく交渉されまして、労働協約等によって労働条件を定めていくようなことが、あり方としては一番望ましいと思います。しかしながら、実情よく私どもも伺っておるところでございますから、重ねてまた調査もし指導もしていきたいというふうに思います。特に、私ども労働基準法の違反がありますれば、これは厳重に措置をしなければなりませんし、また一般的な労務管理についても指導をしてまいりたいと思いますが、いま先生がおっしゃいましたように、女子の航空機の労働はどうも過去におきましては大変華やかな職場というようなことで扱われてまいりましたけれども、どうもいわゆる美人のスチュワーデスというだけでは通りませんで、むしろがっちりした方でなければいけない。たとえば腰痛なんかでも、いわゆる美人型の柳腰型の人よりも、むしろがっちりした体格の方が望ましいというようなこともあるわけでございます。そういったことにつきましても、われわれは専門家の意見も聞きながら、関係の労使にも十分指導し、また世間の理解も深めたいというふうに思うわけでございます。
  154. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 大いに御理解くださった御答弁を期待していたわけですが、ややそれに近いようなことをおっしゃっていながら、その口の端から柳腰が悪いとか、英語のうまいのだけを採ったからそういうことになったのだと、もっとたくましい女性を採るべきだなどというふうにおっしゃっておりますけれども、私はそういう考え方じゃまずいと思うのですね。この点について、後ほどもう少し具体的にお聞きしょうと思っておりましたが、そちらからそういう御意見が出たものですから、そういう考えじゃ一体労働省というのは労働者の味方なのか、企業側を守る立場に立って言っているのか、ちょっと私も疑問に思います。あくまでも働く者の立場に立って、たとえ美人であろうと、柳腰であろうと、航空会社はそれを承知で採用したわけですから、採用した以上はその会社が成り立つような利潤を上げているんですから、そのスチュワーデスたちが働いているからこそその会社が成り立っているわけです。もうかりさえすればみんな病気になっても構わない、柳腰が悪いんだ、美人型が悪いんだというようなことではならないと思うんですね。揚げ足取っているようなふうにお取りにならないで、もう少し現場実態を見ていただきたい。たとえば休憩室が一体あるのかないのか、ジャンボのような大きな飛行機はつくった、三百人もお客は乗せるけれども、その広い飛行機の室内にスチュワーデスの休憩室もつくらない、全部お客で満席にしている。じゃ一体スチュワーデスはどこでどんなかっこうして食事しているのか、そういう点お気づきだと思うんですね。休憩室というものはあるとお思いですか。また、ちゃんとしたものをつくるべきだとお考えか。具体的に飛行機会社の方に注意するなんて言わないで、あなたがどう思っていらっしゃるか、具体的なお答えを聞いた方がその姿勢がよくわかると思いますので、お答えいただきたいと思います。
  155. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 誤解があるといけませんので重ねて申し上げますが、現在雇用されておられる女子従業員の方々に問題があるとすれば、それは私どもは会社の責任なりあるいは役所の指導の不足というようなことについて十分反省もし、努力もしなきゃならぬと思っていますが、ただ先ほど私が言いましたのは、むしろ先生が強調していらっしゃるように、航空機の中での女子の労働というものは世間で見ているようななまやさしいものではない、相当きついものであるということについて、関係労使はもとより、一般に十分な理解を徹底させる必要がある、その点について一般の認識はまだ甘いんじゃないか。私どもが時に監督指導に入りまして痛感いたしますものですから、その点に触れまして、ややわかりやすいような意味で具体的な話題を提供したようなわけで、誤解がありますればそれは恐縮でございますから、訂正させていただきますが、そこで、今後の採用についてはできるだけやはり、これは何もスチュワーデスだけではございません。最近御承知のように頸肩腕症候群でありますとか腰痛でありますとか、こういう近代的な神経症状を伴う疾病が非常にふえておりますが、これについてはやはり基礎体力の問題というようなことがよく医師の間でも論じられております。その点について触れたわけでございますけれども、そこで休憩室の問題ですが、そういう激しい労働でございますから、できるだけ十分な休憩施設が望ましいことは言うまでもございません。ただ、航空機は御承知のような構造でもあり、なかなか十分なことが望めないと思いますけれども、できるだけ交代勤務、それから交代しているときの女子の収容施設というようなものについては十分なものが提供されてしかるべきであろう、そういった点も私ども重ねてまた調査をしてみたいというふうに思うわけでございます。
  156. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この問題はスチュワーデスだけじゃなくて、列車などに乗っている食堂のウエートレスの方たちにも当てはまると思いますが、この点いかがでしょうか。
  157. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) それはまあ列車もあるいは船舶もそういう事例がたくさんあるだろうと思います。この間も衆議院の社会労働委員会で地下街の労働につきまして御指摘がございましたが、やはり世の中これだけ進んでまいりまして非常に複雑な様相を呈してまいりましたから、労働実態もその場所なり時間帯なり、そういったものが非常にいろんな問題を含んでおります。私どもはそういった時代の変化に鋭敏に対応するような努力を怠ってはならぬというふうに思っていますが、なお重ねて十分勉強させていただきたいと思います。
  158. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 腰痛の認定基準についてお伺いしたいと思います。腰痛は重量物取り扱いや不自然な姿勢の作業に多いということは事実ですが、必ずしも一般的な重量物取り扱いではなくとも腰痛は現実に多発しているようでございます。もう少し現実に合った認定基準にするべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  159. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) スチュワーデスなどの労働者に発生しました腰痛については、いわゆる災害性の腰痛、つまり業務上の何らかのけがに起因するものでない腰痛の問題でございます。そういうものでも毎日数時間も引き続いて不自然な姿勢で作業を行ったとき出てくる、こういうような業務に起因したことが明らかであるというものについては、現在すでに認定基準で業務上の疾病として取り扱い、労災補償も行っております。最近の事例で申し上げますと、羽田を抱えております大田の基準監督署におけるスチュワーデスの腰痛の労災補償状況を申し上げますと、四十九年は五十八件、五十年は四十九件、五十一年はきょう現在で二十四件ということで、具体的に腰痛の業務上の認定もいたしておるわけでございます。なお、こういった種類の災害性の原因によらない、つまり非災害性の腰痛を含めて現在腰痛の認定基準の見直しを行っておりまして、専門家会議を重ねてまいりましたが、大体結論に近づきましたので、近々に現行認定基準をさらに具体化し、腰痛の認定が従来より一層迅速に行えるような新しい認定基準を通達する運びになっております。年内にはこれを実施したいと思っております。
  160. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 認定基準については、もっと幅を広げるというお話を伺いまして非常に期待するわけでございますが、特にこの災害性の原因によらない腰痛として認めるものを、この基準によりますと二つに分けて考えられているようでございます。そうしてこの原因の一、そしてもう一面からというこの二つをいろいろ考えてみますと、一つの方はやっぱし非常に重い二十キロ以上の物を持った場合、もう一つの場合はそれほど重い物を持ち続けたんではないけれども、業務に長く勤めていたために起きた場合というようなふうに分けているようでございますけれども、これでは余りにも範囲が狭過ぎる。実際に該当する者はやっぱしわずかにならざるを得ない。そういう点で今度基準の範囲をもっと広く考えていきたいということでございます。災害性の原因によらない腰痛として認められるものは、私はもっともっと多発しているんじゃないかと思います。しかし、基準が二つの場合というふうに限っているから非常に少なくなっている。そこを何とか広げていこうというお考えですね。たとえばスチュワーデスの腰痛などはこの基準にすら当たらないで、腰痛として認められるものでありながら認められないでいるのが現状じゃないか。先ほど大田の監督署の認められた者の数が出ておりますけれども、五十八人が四十九人、そうして二十四人と非常に減っているような数字でございますけれど、むしろふえているのが当然なんじゃないか。基準の範囲がそういうふうに狭いためにやはりこういう結果になっているんじゃないか。範囲を広めるとおっしゃっていることに、くどいような質問を申し上げているようですけれども、その点もう少し広めるとしたらどういうふうに広めようとしているかということまで、もしお示しいただければお聞かせいただきたいと思うんです。
  161. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 先生も十分御承知のとおり、腰痛という症状は中高年の男女ともかなり多発する症状でございまして、まあいわゆるぎっくり腰とかいろんなものが世間にあるわけでございます。その中で、その要因が業務に起因しているというときに初めて労災補償として事業主の責任と、あるいはこれを保険で担保する、国の支給対象と、こうなるわけでございまして、その限界が非常にまあむつかしいわけでございます。一般に余りない疾病で業務上であるということが非常に明らかな場合にはそういう悩みがないわけですが、かなり中高年の方々に多発する症状で、しかもいまおっしゃいますようにやはり業務も相当これに関係があると、こういうところで争いになるわけでございますから、かねてから非常なその限界については問題があったわけでございます。そういうことで現行の認定基準を、先般来専門家会議を重ねましてようやくいま結論に到達をしたということでございますから、いままでのものをさらに具体的に迅速に認定ができるようなふうな内容にいたしたいと思っておりますが、なお最終決裁を経て出す段階に至っておりませんので、内容につきましてはもう少し先になって御説明をさしていただきたいというふうに思います。
  162. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、この腰痛の認定についてまあ会社側の姿勢について、ちょうど先ほどお話のように個人的な問題だと、あるいは体力がもともとない者が、体力がなければできないような仕事をしているからこの腰痛の者が多くなるんだと、新聞にこの間取り上げられたわけですけれども、「本人の体質、運動不足からくる体力低下などの要因もあり、業務面から起きたと医学的立証はできないので、職業病扱いにはしない」とけ飛ばしておりますけれども、おかしいと思いますね、こういう態度は。それどうお思いになりますか。
  163. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 労災補償は労働基準法事業主の責任になっておりますけれども、御存じのように三公社等は別でございますが、通常の労働者はいますべて労災保険の適用がございますので、監督署では国の行う労災保険の事業者としてその業務上外を認定するわけでございます。恐らく、いま先生がおっしゃいましたのは、そういった監督署認定とは別に、それをさらに上回ったいろんな処遇を会社に求められます場合に、会社が業務上であるかないかというようなことについて労使で争いが生ずるというようなときの事例かと思います。監督署といたしましては国の専門家の結論に従いました認定基準によりまして、先ほど御説明しましたようなことで、たとえば大田の監督署でもああいうふうに認定をしている、だんだん減っているじゃないかという御指摘ですが、五十一年はまだ途中でございますから、必ずしもそういう判断もできないと思いますが、業務上だと認められればこれを認定する。しかし先ほど来申し上げておりますような大変むつかしい判断の問題でございますから、まあ請求者と認定者との間に若干のそごが出てくる、それがいろいろ問題になるということはこれは避けがたいことでございます。それについては、御承知のように制度といたしましては労働保険審査官あるいは労働保険審査会というようなところにずっと争っていくという道も開かれておるわけでございます。
  164. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 まあ予防策、また腰痛の起きた人に対する回復策、こういうものが考えられなければならないと思います。それには体操をしなさいとかいうようなことを言っているようでございます。腰が痛いのをがまんして体操しなさいと言っても、それは学校の先生が子供に手を挙げて、なんて言えば、それは挙げるかもしれませんけれども、大人でもあり、そうした体操しなさいぐらいでは、そう簡単に予防になるとか回復のためにとかというところまでは徹底しないと思うんですね。そういう点で、理想的な休養としてのレクリエーション的な楽しくやる、それがおのずと予防になる、またかた苦しい体操でもって回復させるなんというんじゃなくて、やはりそこにやりたいというふうな気持ちでやらせるような体制の組み込みというものが大事だと思うんですね、環境の中に。組合などがリハビリ室をつくってほしいというような要望を出しているようですけれども、リハビリ室をつくったとしても、そのリハビリ室に腰を押さえてみんなが行くかといえば、恐らく通り過ぎていっちゃうと思うんですね。それよりもプールとかテニスコートとかそういうようなものをつくる方がむしろ予防策であり、回復策につながると思うんですね。自然のうちにみんながやっていくというような、そういう方法で考えられなきゃならないんじゃないか。今後の勤労者の福祉増進というような点に特に私はこういう姿勢が必要だと思うんですね。その点いかがでしょうか。
  165. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) なかなか示唆に富んだ御提案だと思いますが、何せ非常に医学的な判断も伴います問題でございますから、ちょうどここに医学博士の私どもの安全衛生部長がおりますので、お医者さんの方から一言申し上げさしていただきたいと思います。
  166. 山本秀夫

    説明員山本秀夫君) まあ中高年に限りませんで、大変若い方にもひょっとするとすぐに腰を痛めるという方が多うございます。重労働をされる方、重たい物を扱う方、あるいは重症身障者の看護をされる若い方々に腰を痛めることが多いわけでありますが、われわれの経験によりますと作業を始める前、それから途中の休憩時間、あるいはまた終わった後、このラジオ体操程度からもう少しきついものまでありますけれども、それぞれやっております。そうしますと、いままで腰がどうとかいろいろありますが、その訴えが大変減ってきたという経験を私ども幾つか聞いております。そういうことで楽しくやることは一番御指摘のように大事なことだと思いますので、プールもテニスも結構だと思います。けれども、ごく短時間でありましても調整体操というものを中心に入れましてやはりおやりになるということが腰痛を予防するということと、それから起こった腰痛が次第に回復してまた職場復帰するというときに、ことに必要であろうかと思っております。したがいまして、通達の中には必ず腰痛を起こすような職場の業務につく方々は、体操をやって足腰を鍛えるようにということを言っているわけです。これは決して事業者のためにそうする方がいいとかなんとかというのじゃなくて、御当人たちがこのような腰痛を起こすことは大変に不幸なことでございますので、そういうようにして励行した方がよろしゅうございますよということをお勧めしているわけでございます。
  167. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、母子家庭の母あるいは中高年婦人労働問題についてお伺いいたします。  婦人労働者が被雇用者総数の約三分の一を占めております。その多くはきわめて不安定な職場、雇用条件にあると思います。その具体的な例としてパートタイム雇用というものがありますが、この点についてお聞きしたいのですが、パートタイム雇用、パートタイマー、これは一体どういうものを指すのか、定義というものがありますならばお伺いしたいと思います。
  168. 森山真弓

    政府委員(森山真弓君) パートタイマーという言葉はいろいろなところで使われておりますが、必ずしもその意味がはっきりしてない場合が多うございます。御指摘のとおり、パートタイマーという言葉は非常に一般的でございますが。で、私ども行政対象として考えられますパートタイムの場合には、やはりその対象を特定しなければなりませんので、一つの定義を持っております。私どもの場合には、パートタイム労働者とは一日、一週あるいは一カ月の所定労働時間が当該事業所の一般労働者より短いものであるというふうに一応定義いたしまして、ですから、事業所の方でパートタイマーさんですと言うものと、この行政対象になるパートタイマーとが必ずしも一〇〇%一致していない場合もございます。
  169. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 まあ、フルタイマーと同様に、あるいはそれ以上の時間労働をしながら、身分上パートタイマーと呼ばれている者がおります。そこで、あくまでパートタイマーとは働く時間が短い、一般よりも短いものを指すのだという局長さんのおっしゃったように、私もそう思います。ただ、それだけなのか。働く時間が短いという点が違うんだと。そうならば身分的な区分、いわゆる臨時あるいは日雇いとは全く別なものだと、こういうふうに明確にしていただかなければならない。そうしてこれを徹底していただく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  170. 森山真弓

    政府委員(森山真弓君) 確かに、先生がおっしゃいますとおり、所定労働時間が他の労働者よりもその事業所の中で短いということだけが、パートタイマーのパートタイマーたるゆえんでありまして、それは労働行政において把握しておりますパートタイマーの定義でございます。したがいまして、婦人少年行政またその他の労働関係行政におきましてパートタイムのための政策をいたします場合には、そのことを徹底し、その人たちのための行政を展開するべく努力しているところでございます。
  171. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 婦人労働を守っていただく婦人局の局長さんですから、この周知徹底というものは声を大にし、局長さんが口をあけばパートタイマーというものはこういうものだと、それがそのとおりなっていないということを言い続けていただきたいと思うんです。そのほかに頼っていくところはないと思うんですね、この婦人労働者人たちは。局長さん非常におとなしくて、そういう点、多くの男性の中でやっていらっしゃるので、非常に御苦労とは思いますけれども、私たちも一緒にこの点何とか徹底させていきたい。婦人労働者がパートタイマーという非常にいい労働の姿で働くならば、もっともっと働く婦人というものがその力を発揮できるんじゃないか。パートタイマーの形というのは、非常にこれはよく運営されればすばらしいなと思いますので、ぜひ周知徹底を図っていただきたいと思います。その点でひとつこのくらいの結果を出しますというぐらいに、婦人年でもございますから、御決意をひとつ元気いっぱいに述べていただきたいと思うんですけれども
  172. 森山真弓

    政府委員(森山真弓君) 先ほど来申し上げておりますように、私どもはパートタイマーというものはこのようなものだということを理解しておりますし、また、労使あるいは婦人の皆様方にも折あるたびに申し上げているところでございます。ただ、パートタイマーという一般的な普通の言葉が必ずしもそれとは同じでなくて、非常に安易に使われているということが、婦人の意識あるいは労使双方の考え方にある意味のニュアンスを加えているということは確かでございまして、パートタイマーというものはこういうものでありますから、それ以外の点では普通の労働者とちっとも違わないので、労使ともにそのつもりでやってほしいということは、これからも続けてPRをしていきたいと思います。
  173. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この間、私の家に広告が入ったんですね、パートタイマー募集と。勤務時間というと「午前八時…午後五時」なんて書いてあるんですね。これじゃあパートタイマーじゃないじゃないか。それをビラに刷って配っているわけですね。こういうところを見つけたらその事業所へ行って、あなたこれは違いますよと、こんなビラを出したらとんでもないというぐらいに、労働省婦人局長さんからじかじかにお電話があったなんていえば、いや目が届いているぞというので、相当そういう点では効き目があるというか、まあ効き目があるなんて言うのはいけないけれども、周知徹底ができるんじゃないかと思うんですね。何か刷ったものに書いて出しておくというんじゃなくて、具体的にやっているところへぴしっと一発やるぐらいのそういう仕事も、私は婦人局長さんならできると思うんですね。また、婦人局長さんこそやるべきじゃないかと。  まあ大臣も、何か頭うなずいていらっしゃいますけれども、やっぱし労働大臣労働者の最大の味方でございますから、こういった婦人労働の非常にいい条件として、これは制度化されるところまでやっていただきたい。制度化されるまでもなく、パートタイマーというのは、婦人局長さんがさっきおっしゃったようにこういうものなんだと、時間が短いだけなんだということを、大臣、どこかでやっぱし言ってくださいよ。テレビか何かへ出て言ってくださると非常に徹底するんですけれども
  174. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) パートタイマーの定義につきましては、先ほど婦人少年局長が申しましたが、まあ私もパートタイマーの問題は、先般のテレビの対談のときもちょっと質問が出ましたが、このパートタイマーというのは、私の経験ではこれは経営者も非常にありがたい労働者であります。また働く人も非常に便利だ。たとえば十時に出てきてそして三時に帰っていくとか、あるいは九時に出てきて四時に帰っていくとかいうことですですね。ただ、これ労働賃金の問題が、そういう特定な短い時間だから、こう安くされるというような懸念がありまするけれども、これはもう御婦人一つの職業として、時間的に朝主人を送り出しておいてからそれから出かけていく、それから主人のお帰りになる前に家へ帰って夕飯の支度をする、そこで中間的に賃金がいただける、まあ非常にこれ定着するといい制度だなと思っておりまするが、しかし、いま柏原さんがおっしゃったように、朝の八時から夕方の五時までといったら、これパートタイマーと言えるかなという感じが私はいまいたしておりましたが、しかし、まあこれも一つの定義は定義としてありまするけれども、やはりこれは非常に労働力を要求しておる今日の社会におきまして、何らかの定義をつくって、そしてもう少しはっきりした方向に持っていくことが好ましいと思いまするが、私、まだ十分そういうことを勉強いたしておりませんので研究させていただきます。
  175. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 また、パートタイマーの賃金、休日、休暇その他の労働条件は、契約的に明確にされていない場合が非常に多いようなんです。先ほど局長さんがおっしゃったように、安易に使われている。パートタイマーにもフルタイマーと同じく労働基準法が適用されるはずだと思います。適用されなければならないと思うんです。それが実行されるように監督指導、これの強化、これは先ほど繰り返して私が言っているような質問でございますけれども、この点いかがでしょうか。   〔委員長退席、理事浜本万三君着席〕
  176. 森山真弓

    政府委員(森山真弓君) パートタイム雇用というものがわが国におきましてはまだ日が浅うございますので、いろいろと徹底しない面がありますことは確かだと存じます。一般的の認識も非常に浅く、まだ諸外国の先輩諸国に比べますとその辺のシステムが確立していないということは言えると思います。労働条件の面でも御指摘のようないろんな問題があると存じます。パートタイム雇用の問題につきましては、数年前婦人少年行政といたしましては婦人少年問題審議会で御建議をいただきまして、パートタイム雇用であってもそれは時間の点を除いては全くりっぱな労働者であって、その辺についてほかのものと変わってはいないんだということは審議会においてもそのような認識でございますし、それに基づきましていろいろな御建議をいただいておりますので、関係行政機関とも緊密に連絡をとりまして、その後進めているところでございます。  女子のパートタイマーの保護、労働条件の向上というようなことにつきましても、関係行政機関と連絡をとりながらやっているところでございます。たとえば、安定行政におきましても公共職業安定所に専門のコーナーを設ける、あるいは特別の講習会をするというようなことをいたしまして、職場適応がうまくいきますように配慮しておりますし、今後ともいろいろな方法でパートタイマーの労働条件の向上には努めてまいりたいと考えております。
  177. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 悪い方ばかり申し上げておりましたけれども、パートタイマーに労働基準法が適用されて非常によくいっているというようなところを御存じでしょうか。
  178. 森山真弓

    政府委員(森山真弓君) 先ほど来申し上げておりますように、パートタイム労働者労働者でございまして、労働基準法の適用は同じようにされて、どこでもされているはずでございます。
  179. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 まあ、各種保険も原則として適用されるものと思いますが、その点はいかがですか。
  180. 森山真弓

    政府委員(森山真弓君) 強制適用の保険はもちろんのこと、それ以外の保険もできるだけ加入するように勧められております。
  181. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 パートタイマーの採用についてですが、多くは縁故関係、または広告、こういうようなものによって行われているようですが、職安を経由したものが非常に少ない。そういう点で職業紹介体制の充実を図るべきだと、こういうふうに思いますが、これについてもちろんそうだとおっしゃると思いますけれども、この職業紹介体制の充実はどんなふうに今後図ろうとしていらっしゃるか、そうした点がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  182. 吉本実

    政府委員吉本実君) ただいま先生指摘のように、職業安定所におきましても、先ほど婦人少年局長からお話がありましたような、特別のコーナーを設けていろいろやっていくということでしておるわけでございまして、また、先ほどお話のように、いわゆる職業安定機関を通じないいろんな問題につきまして、できるだけルートに乗せるように、また、その中にいろいろ問題のあるところについては、それをいろいろな関係で情報をキャッチしまして積極的な指導もするようにしていきたい、こんなふうに思っております。
  183. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 変なことを聞くようですけれども、なぜ広告などによる募集が行われているか、その点をどういうふうに理解していらっしゃいますか。
  184. 吉本実

    政府委員吉本実君) いわゆる雇用関係につきましては、採用についてはいろんな形があるわけでございまして、職業安定機関を通ずるのをなるべく私どもの原則としておりますが、それ以外の機関でも差し支えございませんし、また、募集のやり方につきましても一定の仕組みを持ってやっているわけでございます。したがって、一般的には広告でもって募集すること自体が必ずしも悪いとは言えないわけでございまして、それでただいま申し上げましたように、もしそういった点でいろいろ問題があれば、そういった情報を得次第いろいろな指導に当たっていく、こんなふうにやっているわけでございます。
  185. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 なぜ広告などによる募集が積極的に行われているか、これに対してどういうふうに理解していらっしゃいますかと、こういうふうにお聞きしましたのは、職安を経由したものが少ないわけですね。しかし、この職安を経由した方がいいわけです。いいのにそっちの方へ来ない。非常に少ないわけですね。広告なんかで行く人が多い。何か広告で募集する方がうまみがあるというか、何かねらいがあるんじゃないのか。そういうことがおわかりにならないと、職安を経由してくるのが少ない、その原因もわからないと思うんですね。そうして、職業紹介体制の充実はどうすればいいかということは、そういうところからまた新しい発想が出てくるんじゃないかと思います。ですから、縁故や広告でどんどんパートタイマーを採用している。それと競争するように職安経由の問題も取り組まなきゃならないわけですね。向こうはこういううまみがあってやっているんだなと、よしと、じゃこっちはそれに先手を打とうというようなものがないと、もう向こうは広告で来るんだからしょうがないよ、縁故は縁故だものどうしようもないじゃないか、規則でそれを取り締まる方法もないし、なんてのんびりしたことを言っていないで、職安経由のよさというものを新しい体制でもってつくっていきませんと、やはりいつまでたっても先手、先手でやられてしまうんじゃないかと思うんですね。職安経由の問題は依然としてパートタイマーの採用の上から大きな実績を上げられない、こういうふうになると思います。
  186. 吉本実

    政府委員吉本実君) 先生のおっしゃる意味もわからないわけではございませんが、現在の全体の雇用市場の中で、先ほど申しましたようないろいろなやり方があるわけでございますから、その中で職安につきましてもやはり先生のおっしゃるような積極的な内容を持ったような仕組みをなお検討しまして、この問題の解決にさらに積極的に当たりたいと思います。
  187. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 パートタイム雇用実態をつかんでいただきたい、調査研究をぜひ行っていただきたい、パートタイム雇用というような制度をつくっていただきたい、制度化する必要があると、こういうふうに強く考えている一人でございますが、その点局長さんいかがでしょうか。また、大臣はそれに対して希望のある御意見をぜひ聞かしていただきたいと思います。
  188. 森山真弓

    政府委員(森山真弓君) パートタイム雇用実態把握ということにつきましては、何度か私どもの方でも調査をいたしましてその結果が出ておりますが、それが何年か前にもうなりますので、これからも調査の機会にそういう実態把握していくよう努力いたしたいと存じます。  それから、パートタイム雇用の制度について確立をする必要があるという御指摘につきましては、確かにそのようなこともあるかと思います。それにはまず最初先生がおっしゃいましたように、パートタイマーというものがどういうものであるか、そしてそれがどういう保護を受け、どういう権利があり、どういうまた責任があるかということをみんなが十分認識するということがまず大事だと思います。パートタイム雇用というものがごく最近、まあこの数年ぐらい非常にはやってきたものでございまして、まだ日本雇用社会の中で十分定着しておりませんので、日本の産業社会の中でどのようなやり方がよろしいかということは、もう少し時間をかけて煮詰めていきたいというふうに考えます。
  189. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) 先ほど申し上げましたように、このパートタイマーの制度が非常に経営者も喜ばれておるし、またそこに働く人も喜ばれておる。まあそれは賃金やいろいろな問題がありまするけれども、制度としては非常に喜ばれておる問題であると思います。そこで、職安を通じてなるべくそうした方々をあっせんすることが一番好ましいと思います。ところが、パートタイマーに行く方はなかなか職安に一々どういう仕事があるかということを聞きに行くことは大変だと思います。さらに広告を見て、ああこの仕事なら私は行ってもいいというようなことで、選択が非常にしやすい、広告を見てですね。まあそういうことから、どうしても広告に頼る面が非常に私は多い面があると思います。しかし、それはそれとしましても、このパートタイマーの方々が働かれる場所をたくさんつくるということ、あるいはその制度をしっかりするということは、先ほど局長から申しましたように、われわれも十分これからの日本労働問題について検討していかなきゃならない問題だと思っております。十分勉強させていただいて、御趣旨に沿うような方向に持っていきたいと思います。
  190. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 時間がなくなりましたので、もう一つの問題点、中高年層の職業訓練の問題をお聞きしたいのですが、時間がありませんのでただ一つお聞きしておきたいのは、雇用促進のための職業訓練とは言っても、就職のための訓練です。まあ就職先の開拓、確保、これが非常に重要なポイントであると思います。まあ訓練のための訓練で終わってしまうというおそれがあるわけなんです。そこで、公明党が寡婦雇用促進法の中で身体障害者あるいは中高年雇用促進するための雇用率、これがあるように、母子家庭の母などにも雇用促進するための働く場、これをつくる対策がぜひ必要であると考えますが、これはいかがでしょうか。
  191. 吉本実

    政府委員吉本実君) 御指摘の寡婦の雇用対策につきましては、いろいろ従来から家庭環境を十分配慮しまして、いろんな職業紹介なり、さっき先生のおっしゃる求人開拓に積極的にやっております。また寡婦等の雇用奨励金制度も発足して間もないわけでございますが、こういったものも十分活用して雇用促進に努めておるところでございます。ただ、先生がおっしゃいます特別の雇用率を設けての促進法を制定するということにつきましては、やはりその寡婦の実際の条件の整備を図ることが前提にあろうかと思いますし、また寡婦だけについての雇用率をつくることは、この十月一日から発足いたしました高齢者の雇用率制度との重複の問題もございますし、法技術的にも困難なところがございますので、やはりなかなかその点はむずかしいのではないかというふうに考えます。
  192. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 時間がありませんので、もう一回くどいようですが、母子家庭の母などにも雇用促進するための働く場をつくる対策、それはぜひ必要とお考えですか、そしてそれに対してどんなことを考えていらっしゃるか、もう少し具体的なお答えを期待しているわけですけれども
  193. 吉本実

    政府委員吉本実君) ただいま申し上げましたいろいろな施策を講じていくということが一つございますが、さらに職業訓練を行う場合におきましても訓練手当の問題もございます。こういった点についても、新しい来年度の予算等につきましても積極的に取り組んでいきたいというふうに思ってございますし、またいろんな相談機能等についても強化していこう、こんなふうに思っております。
  194. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 もう一言、いま訓練手当のことを考えているというお話がございましたので、念のためにちょっとお聞きしておきたいんですけれども、職業転換給付金制度、この中に訓練手当というのがございますね。そこに母子家庭の母というふうな項目も将来は入れるというようなお考えでいらっしゃるわけですか。
  195. 中原晁

    政府委員中原晁君) 寡婦の方でありましても、中高年の方でありますれば現在当然職業訓練手当がもう出ておるわけでありまして、問題は中高年の年齢にまだ達しておらない寡婦等の場合でございますが、これにつきましては、先ほど来からの先生の御意見、それからいまの寡婦の方々の実態、現状、こういう点を十分踏まえまして、私どもとしてはそういう点を勘案した検討をしたいと思います。
  196. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、私は大阪におけるタクシー労働者の問題についてきょうはお伺いしたいと思います。去る六月の二日に、これは読売新聞に報道されたのですけれども、   〔理事浜本万三君退席、委員長着席〕 「タクシー運転手 路上で集団とばく」、大変に大きな新聞報道がなされたわけでございます。で、これにはこう書いてある。「大阪府警浪速署は、タクシー運転手が大阪市浪速区内の路上でサイコ口とばくをしている事件を内偵していたが、二日早朝、とばくにふけっていた十一社、十七人の運転手を一斉に検挙した。運転手らは午前零時ごろから近くの路上に車を〃放置〃、午前八時ごろまでサイの目が出るたびに「勝った」「負けた」と大騒ぎ。多いときには二十数台のタクシーが集まってきており、同署ではかなりの数の運転手がこの〃とばく場〃に加わっていたとみて調べており、大阪陸運局も調査をはじめた。検挙されたのは大阪市東住吉区矢田枯木町、幸福交通運転手」Kら、「ちどり、八千代、サンキュー、ゆたか、太平、正和、菊花、青空、平野、第一など十一社の運転手十七人。」こういうふうな記事が報道されたのでございます。この報道に代表されますように、腐敗行為が大多数のまじめなタクシー労働者とその家族の人たちに非常に大きなショックを与えておるわけでございます。ある労働者の子供は学校で、おまえのお父ちゃんタクシーの運転手か、ばくちしているのかということが言われるというふうなことで、大変家族が衝撃を受けているわけでございますが、こういう事態というのはもう断じて放置できない問題だというふうに思うわけでございます。  また、一部タクシーの運転手の街頭賭博というかっこうで、これも御承知だと思いますが、「大阪空港とばくタクシー」という、これはまた五月十八日に写真入りで報道をされているわけでございます。これによりますとこういうふうに書かれている。「国際線乗り場 札を握って白昼開張 法外な料金で客引きも」、これは見出しがそうなんです。中身を見てみますと、「豊中署同空港派出所の調べによると、とばく開張の運転手らは午前十一時前後から集まりだす。」それから「昼前後になるとタクシー乗り場は二列縦隊で約五十台が常時客待ちしており、とばくは午前十一時半ごろから午後一時すぎまで車内のシートや、タクシーの列の最後尾、あるいはタクシー間の車の陰で日によって場所を変えながら続けられている。とばくはサイコロの目が多いか少ないかで、五百円、千円とやりとりをしている疑いが強い。」  さらに、この記事の中にこういうことが書かれている。「一月下旬、京都の男の人から大阪空港事務所にきた投書によると「私は友人三人と国際線ロビーで運転手に声をかけられ、京都駅まで一万円とられた。別の友人に聞くと空港−吹田インターから高速道路で京都駅という同じコースで五千数百円だった。こんな運転手がいることは日本の恥です」と憤慨」をしてきている。  「また、よく釜山へ出張するという大阪市東区の貿易会社」の方が、「私も一度乗ったところ、ジグザグまがいの乱暴運転をされたので国内線のタクシー乗り場しか利用しないのです」こういう記事が出ているわけでございます。警察庁、この事件は捜査をされましたか。
  197. 鎌倉節

    説明員(鎌倉節君) ただいまの五月十八日付読売新聞に出ました事件につきましては、所轄の豊中警察署におきまして情報を入手いたしましたので、検挙すべくすぐ内偵を開始したのでございますが、容易に検挙することまでには至りませんでした。そこで、内偵活動と並行いたしまして財団法人大阪タクシー近代化センターの責任者、それから空港において営業しておりましたのが十業者でございますので、それぞれの責任者を同署に出頭を求めまして、厳重な警告を行ったところでございます。警察としましてはこの種の賭博事犯につきましては厳重な取り締まりを行うつもりでございます。
  198. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 運輸省にお聞きをしたいんですけれども、客引きをやって法外な料金を吹っかけるというような、こういうやり方というのは許されておりますか。お調べになりましたか。
  199. 向井清

    説明員向井清君) 先生いま御指摘になりました料金の不当収受という問題は、もちろん業法に違反いたしておりますし、いわゆる輸送秩序の維持という面からしますと重要な問題でございます。これにつきましては、当該大阪空港地区におきましてかねてより輸送秩序確立協議会というものが設けられておりまして、陸運事務所、警察、それから近代化センター、空港事務所、あるいは業界の協会というものが相寄り相協力いたしまして輸送秩序の確立を図るという体制になっております。この機関が、先生いま御指摘のございました五月十八、九日以降活発な活動を開始いたしまして、指導違反行為の取り締まり、それから特別現地指導ということで鋭意努力いたしてきてまいった次第でございます。  それからさらに、輸送秩序維持のためには、やはり輸送需給の関係から円滑な施設の整備ということが必要でございますので、当該大阪空港におきますところの近距離タクシー乗り場というものの整備を近く増強するという方策を講じております。  それから包括的な問題といたしましては、先ほど指摘ありましたような新聞報道を機会といたしまして、タクシーそのものの経営姿勢のあり方というものも非常に大きな問題になった折からでもございますので、関係団体あてに陸運局長からタクシーの法違反、不当行為の取り締まりに関しますところの通達というものを出しておる、こういう措置をとりまして鋭意事態改善に努めておる、こういうような次第でございます。
  200. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 賭博行為というのが、さらにまあいま報道された以外にも実はあるわけです。しかも、私は大変重大だと思いますのは、会社の中で、しかも仮眠所で、労働者の仮眠所ですよ、仮眠所で会社役員が胴元になって連日のようにばくちをしているというふうな状況がある。したがって、給料日になりますとどうなるかと言ったら、二百万、三百万という金が動くわけです。労働者によりますと給料をもらう日にはゼロか、あるいは千円ぐらいしかもらえない。だからその月生活できないから、その月の生活費は給料日に前借りをするというふうな状況になっておるわけです。したがって、そういう労働者というのは車を運転しておっても、まあ目が血走っているわけですよ。安全運行もへちまもないですわ。こういう状況がある。その会社はどこかということを申し上げますとね、大阪府守口市藤田四丁目の東光交通株式会社。胴元になっておると言われておる役員は二口彦五郎という取締役、ここでどういうやり方をしているかといいますと、連日のように労働者の仮眠所で仮眠をしようとする労働者を追い出して、見張りを立てて、そして二口取締役を先頭にしてやっているというわけでございます。給料日は二十八日だそうです、毎月ね。ですから二十八日、二十九日ごろは大変大きな金が動く。大体給料日は数百万円の金が動くんだということなんです。警察庁はこういう動向、御存じですか。
  201. 鎌倉節

    説明員(鎌倉節君) この種の運転手の賭博だけではございませんが、全国でこれまでに二千四百三十七件、九千六百六十一名を検挙いたしております。大阪府警におきましてもそのうち二百九件、八百八名を検挙しているところでございますが、非常に総数が多うございますので、具体的な事例につきましては端緒をつかみ次第厳重に捜査をしていくつもりでございます。
  202. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いま私が申し上げた件については把握しておられますか。
  203. 鎌倉節

    説明員(鎌倉節君) 具体的な事例については報告を受けておりませんが、調査してみたいと思います。
  204. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは困るんですね。こういう状態というのを労働者黙って見ていないんです。ですから、見かねた労働者が何回も守口署に通報している。最近では十月の六日ごろに会社に来られた警察官に言っているんです、直接。刑事課の人であったので、その人に言うたら手帳にメモをして帰っていっている。それで何にもしていない。一体何事ですか、それ。これではまじめな労働者は警察に対して不信を持ちますよ。厳重に捜査するべきです。どうですか。
  205. 鎌倉節

    説明員(鎌倉節君) 犯罪の端緒がございましたら捜査をするのは当然でございますので、そういう事案がございましたら厳重に捜査をしていきたいというふうに思っております。
  206. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは通報しても放ってあったというふうなことですから、厳重に捜査をしてもらいたい。そうして当然ですね、これは必要な処置をやってもらわなきゃならぬと思う。  運輸省にお聞きしたいんですがね。仮眠をする労働者を追い出して会社の役員が先頭になって賭博行為にふけるというのは、こんな業者、よい業者だと思われますか。労働者を仮眠もさせないというようなことで、安全運行てなこと、こんなもんあれでしょう、たてまえだけじゃないですか。これは厳重に調査をして、事実が明らかになれば厳しくこれは処分をするべきであると思うのですけれどもどうですか。
  207. 向井清

    説明員向井清君) ただいま御指摘の件につきましては、犯罪行為に対する司法処分ということとは別に、やはり道路運送法上の安全運行の確保、安全な経営の確保ということからしましても、先生いま御指摘のように仮眠所の施設を確保するということについての規定が運輸規則にございますが、これが施設の整備のみならず、目的どおりきちんと使われておるということも重大な問題であることは確かでございます。これは広く申しまして、やはり御指摘のような問題があったということは、タクシー事業者の経営姿勢の問題というものに関係してまいるかと思いますので、運輸省当局といたしましても経営姿勢の問題であるということに着目いたしまして、今後調査を進めまして、その間におきまして今後の処置というものを慎重に考えてまいりたいというふうに思っております。
  208. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 以前からタクシーの労働者労働条件改善の問題というのが、たびたび問題になってきております。運輸省では安全運行という立場から御指導をなさってこられた。その上に立って四十二年の二月九日付のいわゆる二・九通達ですね。これが基準局長名で出された。その以後この基準で御指導されてこられたわけですけれども、四十九年のタクシー運賃の改定のときにも、これの値上げに際して四十九年の九月の二十日には物価対策閣僚協議会、それから交通関係閣僚協議会として、これはわざわざ文書を出しておられる。「六大都市タクシーの運賃改定について」ということで文書を出しておられて、その中で第(5)項に「タクシー労働の実情にかんがみ、労働条件改善を図る。」ということを五項にわざわざお書きになっておるわけです。  労働省にお伺いをしたいのですけれども、このタクシー労働者労働条件改善状況はどうですか。
  209. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) ハイタクの自動車の運転手の労働条件につきましては、いまおっしゃいましたように交通事故との関連も重視いたしまして、四十二年の二月に二・九通達を出して主として労働時間、それから特に賃金形態その他仮眠施設等もありますが、そういう点に重点を置いた指導基準をつくりまして年々指導をやってまいったわけでございます。その結果は、労働時間関係におきましてもだんだんと改善が進められまして、現在ではまだ不十分なものもございますけれども、全体としては徐々に労働時間も低下してきているというふうに見ております。ただ、個々の企業によっては大変不十分なものもあるということでございますから、そういうものは今後とも厳重な監督指導をやってまいりたいと思います。  それから、いわゆる刺激給の改善につきましては、御承知のように一番刺激的な累進歩合給制、これはもう絶滅を図るということでやってまいりました。当初から見ますと一四・七%ございましたのが、四十八年九月の調査でございますが一・五%に減りましたし、それから累進歩合に続いて刺激的だと見られております積算歩合制、これは二七・二%から一五・三%というふうに非常に減りました。そして刺激性の少い、いわゆる一律歩合というものが四一・二%から七六%へとふえておりまして、改善は順調に進んでおるというふうに思っておりますが、なお最近の状況につきましては近くまた一遍調査をしてみたいというふうに思っておるところでございます。いずれにいたしましても、いまお尋ねのような関係閣僚協の了解もございますし、私どもとしては運輸省との通報制も持っておりますし、今後とも手を緩めることなく改善を進めていきたいというふうに考えるところでございます。
  210. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いま局長がおっしゃったように、改善方に努力を努めていると。数字おっしゃられたですけれども、賃金形態では累進歩合制というのは二・九通達後一年以内に廃止すると言うておられたんでしょう。それが一・五%まで減ったとおっしゃっている。だからいわゆる積算歩合給、これは当分やむを得ないけれども、これは廃止をしていこうという方向ですね、それが一五・三%。これ四十三年のとき、発足当初すぐの調査ですね、これが二七%が一五%になったとこういうわけですけれども、かなり率が高いと思う。労働時間の問題でも、これはいま漸次改善をされておられるとおっしゃいましたけれども、おたくからいただいた資料では、労働時間の違反というのは、昭和四十五年では四九・九%が、五十年の統計では四六・五%ということになっておるわけでございますし、割り増し賃金に至ってはむしろ逆にふえておるわけですね。四十五年には二六・三%が五十年には三二・八%というふうにむしろ悪くなっておる。そういうふうなことだけではなしに、さらにもっと新しいやり口で、表に出ないかっこうで、新しいやり口での刺激的な賃金形態あるいは労働時間の大変な逸脱というふうなものが出てきているということが、私ども大変問題だと思っているわけです。これ、後で申し上げますけれども、そういう点で労働省といたしましては二・九通達の趣旨を徹底的に実施させていくという点では、一層の指導というのが大事ではないかというふうに思うわけでございます。ですから、労働省は、だんだんよくなっておるとおっしゃっておられますけれども、ずいぶん逆にいろいろな問題が出ておるという点を若干具体的に申し上げていきたいと思うわけでございます。  一つは、大阪の全自交の労働組合の調査によりますと、これは大変な状態なんですがね、労働基準法に明白に違反する長時間労働で、深夜まで走っていたタクシーが五日間の調査で一万二千台、これは全自交大阪地方連合会が今月の十六日に大阪市内での深夜午前三時以降の違反営業タクシーなどの実態調査の結果を明らかにした。そして大阪の労働基準局を訪れて、違反行為を野放しにすることなしに厳重な処分をしてほしいということを申し入れているわけです。それから全自交の調査によりますと、深夜の違法営業の現状を総点検するためにやったものですが、今月の五日から五日間、約五百人の組合員の協力を得て、市内の主要ターミナル二十カ所で実施をして、深夜、午前三時から六時までの間に通過したタクシーの場所、時刻、会社名、車番、ともに空車、仮眠中、客待ち中などの項目を記入するという方法で行った。その結果、百二十社のタクシー一万二千台が深夜にわたる長時間営業などの違法行為を行っていることが明らかになった。そのうち二十社は全社が違法行為をしていました、こういう報告をしておるわけでございます。  そこで、運輸省にまずお聞きをしたいのですけれども、なぜこんなことがまかり通るのか、ひとつ御見解を承りたい。
  211. 向井清

    説明員向井清君) ただいま御指摘の件につきましては、ごく最近陸運局並びに本省におきましてもおおむねの事情を把握したという段階でございますが、確かに先生指摘のようなことが大幅に行われておるとすれば、これはいろいろな道路運送法上その他業法上の違反というものを生じますことは当然考えられますので、そこをひとつどう押さえるかということにつきまして早速調査を開始する。特にそのうち問題のあるものにつきましては、個別に呼び出して非常に厳重な調査をしてみたいと、このようなことでこれから陸運局とその方法等について打ち合わせてみようと思っておるところでございます。
  212. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 労働省はどうお考えになってますか。
  213. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 二・九通達の徹底ということでやってまいりましたが、確かに先生指摘のようになかなか改善のテンポがわれわれが当初考えたほどにはいかない。大分よくなってきているとは思いますが、問題が多々あるであろうということはわかります。ただ、反論を申し上げるわけではございませんが、先ほどお挙げになりました数字につきましては、まあ監督官の名誉のためにも申し上げますけれども、いわゆる業務統計でございますから、比較的労働条件が悪いとにらんだ業者を選びまして、そこを重点的に監督するということになれば、当然違反率が高まるわけでございますので、一概には申し上げにくい。しかし、おっしゃるようにいろいろ出ております。そこで、なお運輸省との通報制度というようなものももう一遍見直しまして、なお成果が上がる方法がないか、私どもも二・九通達ももう十年以上たちますので、一遍よく研究してみたいと思います。
  214. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それね、いま私全体的ないわゆる違反と思える深夜走行の調査の結果を申し上げましたが、もう少し具体的に申し上げてみたいと思うんです。たとえば巴タクシー、これは先ほども賭博問題では改善方を図るということで持ち込んでおるという、いわゆる大阪タクシー近代化センターの理事をしておられる西井理一さんという方が、理事ですよ、巴タクシーというのは。その巴タクシーではこの五日間見ますと、六日の日には十一件、七日には十三件、八日には十六件、九日には十件、十日は二十五件、合計七十五件ですね、午前三時以降に走った者がおるわけです。これはたとえば五十一年十月八日午前五時、それから車両番号は大阪55いの35の80、それから場所は京橋、方向は西向き、状況は空車、それから状態は走行というふうに明確に調査がされておるのが巴タクシーというところでは出てるんですね。それからもう一つ相互タクシーですね。いわゆる社長さんは多田清さんと言われて大阪タクシー協会の会長さんですよね。それから、この方は全国の副会長をやっておられるし、かつてはいわゆる政治献金でなかなか勇名をはせた方でございますが、この相互タクシーはどうなっておるかというと、同じく十月六日には十六件、七日には三十三件、八日には四十八件、九日には二十七件、十日には二十四件、合計百四十八件、同じことなんですね。こういうことになっておる。まあ大体大阪のタクシー近代化センターの理事だとかあるいはタクシー協会の会長さんの会社が、率先垂範してこんなことをやっている。これは困るんですな。さらにもう一つ太平タクシー、ここは大阪で有名ないわゆる薬師寺グループと言うんだそうですけれども、ここの関連会社、賭博常習開帳をやっていると先ほど指摘しました東光交通と同系列の会社なんですけれども、ここの会社というのは百二十一台持っている。ところが、その百二十一台中ほとんど全車が深夜走っている。これはもうおもしろいですよ、これ見たら。六日の日は五十二件、七日の日は百七件、八日は九十件、九日は百九件、十日は八十一件、合計四百三十九件ですね、五日間で。百二十一台ですね、百二十一台のうち百九件が、これ車違うんですよ、全部違う車を違う時間に違う場所で現認をしている。うそや思うたら調べてもろうたらいいです。ですから、百二十一台中百九件がそういうことになっているということは、ほとんど全車が深夜皆走っていると、こういうことになっているわけですね。だから、こういうことが平気でやられているというふうなことでは困るんですね。特に業界の指導の責任を持たしておると言われている近代化センターの役員だとか、あるいはいわゆる自動車協会のタクシー協会の会長の会社だとか、こんなことがやられたんではこれは一体運輸省何のために監督しているのかわけがわからぬのですね。安全運行もヘチマもないでしょう、夜通し走っているというようなことでは。一体どう指導なさいますか。
  215. 向井清

    説明員向井清君) 先ほどお答え申し上げましたように、先生指摘のような具体的な事業につきまして調査を進めるということでございまして、そういう具体的事例の上に立ちまして、いままでの安全行政上の足らざる点等を補いながら、一層安全行政の充実に努めてまいりたいということで、先ほど申しましたように具体的事例についての厳重な調査を行いながら、その辺の具体的な方策を煮詰めてまいりたいと考えております。
  216. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 こういうことを私御指摘を申し上げているのは、ほかでもないんですけれども、業界の指導責任を持つような、あるいは業界を代表するような方々の会社の中でこういうことがまかり通っているということになりますと、これは陸運局一体何しているのかわからぬということになるわけですから、こういうことを野放しにしちゃならぬと思う。そういうことを考えながら思うんですけれども、こういうことが、こういう状態で起こってきているというのは、一つは私はこれは運輸省の姿勢に問題があるんではないかというふうに思うんです。端的に申し上げますと、御承知のように昭和四十五年の三月から、先ほど局長も言っておられましたけれども、相互通報制度が発足をしましたよね。これは相互通報制度というのが発足したというのは、労働条件改善と安全運行のために労働基準局と陸運局とが法違反があったら相互に通報し改善をさせるということを目的で発足をした。ところが、この三年間調べてみた。そうしますと、基準局の方からは三年間に五十四件陸運局に通報しておる。ところが、大阪の陸運局から基準局に通報したのは一件もない。労働省からもろうた資料には五十年度十件と書いてあったから再度確認してみたら、大阪の陸運局は一件も通報してないと言うている。本人が言うてるんだから間違いない。一体これで全然問題がないのかどうかということですよね。だから、陸運局の姿勢というのはきわめて重要な問題点だと、ここに問題があるんではないかというふうに私は思うんですよ。どうですか。
  217. 向井清

    説明員向井清君) ただいまるる御指摘がありましたように、タクシー事業の監督現場における運行状態の監督指導ということにつきましては、片ややはり労働関係諸法令の問題、勤務時間とかその他給与の問題というようなことが非常に大きな要素をなしておる。これは当然労働省側の御監督、御指導によるわけでございまして、それに対応してわれわれ運輸省側といたしましては、道路運送法に基づきますところのいろいろな規定、あるいは省令であります運輸規則に基づきまするような規定というものの違反があるかどうか。その精神としては安全運行の確保ということになるわけでございますが、それを厳重に監督していかなければならない。そのために、いま御指摘のような通報制度というものが設けられておるわけでございまして、全国的に見ますと、いま御指摘がございましたが、運輸省から労働省側への通報というものもかなりな件数が行われておりますが、確かにおっしゃいました大阪陸運局の問題につきましては、諸種の事情がございまして、いままでどうもはかばかしくその制度が動いていなかったという、進んでいなかったということは事実でございます。これにつきましては、最近になりまして、出先でございますが、出先の両省のサイドで問題を煮詰めまして、具体的にこの通報制度が動くように措置をするということで話し合いが進んでおりますので、近くこの通報制度につきましては、御指摘の線に沿っての十分な機能を開始することができるというふうに考えております。
  218. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 相互通報制度が動いてなかったと、大阪では。それじゃ問題がなかったのかというと、問題ありますよね。  一、二問題点を出してみたいと思うんですけれども、たとえば梅田交通という会社がある。ここの会社は会社のへいに沿って仮眠やら洗車やらをやっているのです。ここは通学や通園道路なんですよ。そこで仮眠やら洗車やら路上駐車をやっているわけですが、先日、大阪の陸運局の課長さんらがこれを現認しまして、一時改善をされた。ところがまた、最近ではもとのもくあみになっている。ここは仮眠施設がどうも不備らしいんですがね、不備だということで、この写真は大阪の陸運局にちゃんともう提出済みだそうです。私は、路上駐車あるいはそこで仮眠をしたり、あるいは路上で洗車をしたり、しかもそこが通学路だ、これはやはり社会的にも問題だと思う。これは調査をして、直ちに改めさせるようにしてもらいたいと思うんです。どうですか。
  219. 向井清

    説明員向井清君) いま御指摘がございましたこの梅田交通の件につきましては、陸運局としてはすでに現認をいたしておりますし、調査も開始いたしております。ただ、その調査そのものが必ずしもはかばかしく進んでおらないという面がございますので、この調査の遂行につきまして、さらに実効の上がるような手段等を本庁の知恵も出しまして、調査の結果に万全を期したいということで進めておる段階でございます。
  220. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 運輸省にお聞きをしたいのですが、タクシーのいわゆるタコメーターと言われている走行記録計、あのタコメーターのかぎというのは一体だれが持っているのですか、だれが持つことになっているのですか。
  221. 桜井勇

    説明員(桜井勇君) タコメーターにつきましては、自動車運送事業等運輸規則に規定がございまして、一定の地域につきましてはタコメーターによる記録をしろということと、それからタコメーターの管理を運行管理者の責務として規定がしてございます。それで運行管理者の責務といたしましては、タコメーターの適正な管理をするということで、適正な記録を見ていくということでございますので、具体的なかぎをだれが持つかということは具体的には決めておりません。
  222. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、かぎは運行管理者が持たなくてもいいわけで、運転手に持たせていてもいいというわけですか。その辺はっきりしておいてください。
  223. 桜井勇

    説明員(桜井勇君) いま私が申し上げたのは、運行記録計による適正な記録をするということでございますので、そういった観点からタコメーターのかぎにつきましては、たとえば非常に長距離の運行をする場合に、タコメーターの中のシートを取りかえなければいかぬというようなケースもございますので、原則的には運行管理者がかぎというのは管理しているというのが普通の形だと思いますけれども、すべての場合に運行管理者がかぎを持っているということにはならないと思います。
  224. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 原則的には運行管理者がかぎを持っていると。労働者が持っておって勝手にチャート紙を改ざんするというようなことをやってもよろしいと書いてないでしょう。そんな規則になっていますか、どうですか。
  225. 桜井勇

    説明員(桜井勇君) 運転手がかぎを持ち、しかもチャートを改ざんするということは、運行記録計による適正な記録が行われていないということでは、私どもの運輸規則上は問題であります。
  226. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 運輸規則上そんなことを決めてないでしような、幾ら何でも。原則として運行管理者がキーは持っているということでしょうね。  それで、時間がありませんから、もう後わずかなんで具体的にちょっと申し上げたいんですが、さっきの賭博行為をしていたという十一社の中にも名前が連なっているんですけれども、大阪で有名な薬師寺グループというのがあるんですね。これは六社なんですよ。ゆたか、東光、第一交通、阪和、三日月、太平という六社です。この六社はどんなことをやっているかというと、全自交の組合員以外の労働者に全部キーを持たしているんです。それで改ざんをさして、実際の走行時間を少なくするようにしている。キーを渡して操作しているということだそうですよ。これは労働基準局からも二件通報されているはずなんです。労働省、このことは御存じですか。
  227. 倉橋義定

    説明員(倉橋義定君) 大阪基準局管内におきまして、いま先生指摘のありましたようなチャート紙の改ざんが労基法の関係監督をしているうちに発見されましたもので、これを陸運機関に通報いたしております。
  228. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 二件は労働省もちゃんと通報しておる。これは相互通報を書いていますよ、私がいただいた資料でもね。陸運局も知ってないといかぬのだけれども、通報制度は自分のところがしないぐらいだから、もらったのも底抜けになっているのと違いますか。こういうことをやられたら夜通し走れますがな、太平タクシーみたいに。全車夜通し走っても、タコメーターのかぎを持っていたら、自分でかぎをあけて走ってないようにタコメーターとめたら、この走った時間何ぼでも改ざんできるわけです。こんなものそういうかっこうで夜通し走り回るけれども、データ見たらちゃんと時間内におさまっているというふうにすることはできるわけです。こんなことは安全運行上問題になりませんか。こんなのは放置できないと思うんです。  私は、先ほど賭博の問題を出しましたのは、賭博の問題というようなかっこうで、賭博ですってしまって給料日には何にもなくて翌月の生活費は借りなければならぬ。金縛りですわ。お金借りているんだから、連動やれと言われてもいやだと言われないでしょう。休日出勤しろと言われてもいやだと言えない。そういうふうな形で金縛りをやるというふうなかっこう、片方では違法をあおるというふうなやり方、これは大変だと思う。こんなことを野放しにしてはならぬと思う。全自交の労働組合では、労働条件の向上と安全運行という立場で大変な労力をかけて点検運動などに取り組んでおられるわけですが、こういう点では私は非常に評価するべき活動だというふうに思うわけです。特に自分たち労働者生活権の向上、労働条件の向上をということと、安全運行というたてまえを第一義的にとらえながら、特に仲間の労働者が腐敗させられていくというふうなことを防止するというたてまえを、立場をとって、非常なエネルギーを費やして、しかも法を踏み破るというふうなことがあった場合には、これは行政官庁に対して指導監督をお願いにいくというふうなことなどをやっているというふうな、この労働組合自身のこういった自発的な活動というのは非常に大事にしなきゃならないものじゃないかというふうに思うんですよ。こういう点で、大阪の業界でもいろいろ言われておりますが、良心的な業者の中では、いま私が申し上げたような事例というものが横行しているというのを見て、こんな状況を放置しておいたらまさに悪貨が良貨を駆逐するようなことになる、大変なことだ、違法がまかり通るというふうなことになってしまうじゃないかと言って心配をしているわけですが、私もこんな状態というのは絶対に許しちゃならぬと思うんです。したがって、私が取り上げました事件や会社、東交とか薬師寺グループと言われるような六社、こんな違法をそそのかすようなやり方というふうなものをこれは何としても厳重に調査をして、そうして法違反があれば厳重に処分をするべきだと思うんです。また、賭博行為があったと言って冒頭に申し上げました十一社の中でも、特に安全運行管理上問題のあるところ、それから労基法の違反をしているところ、二・九通達の違反の疑いのあるというふうな場合、これはもう調査をして厳しく改善を求め、行政上の処分も厳重にやらなきゃいかぬと、こういうことをやるべきだと思うんですけれども、ひとつ運輸省の御見解を伺いたい。
  229. 向井清

    説明員向井清君) ただいま先生からお話出ました中に、労働省側からの通報に基づいて当局側の対応はどうなっておるかというお話があったんでございますが、陸運局側といたしましても通報を受けました件数全部につきまして、それぞれ内容は違いますが、何らかの処分、処置はいたしております。  それから、ただいま先生指摘ありましたいろいろの調査に基づきますところの通報というものに基づきます情報、これはやはり非常に貴重なものだと考えられますので、それらにつきましてやはり調査をし、その中の問題のあるものは、先ほどちょっと触れましたように、個別に呼び出しまして厳重に調べるというような段階を経つつ、やはりその間に各種法規の違反というものを摘発し、それに対する措置もとっていくと、こういうようにいままでより一層監督指導の体制を強めていきたい、このように考えております。
  230. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 労働省どうですか。労働省、特に私大事だと思いますのは、運輸省と協力をしてやってもらわなきゃいかぬというふうに思うんですよね。そういう点で、時間の都合もありますから、最後に労働大臣にひとつお願いをしたいと思いますのは、こういった状況、これは私大阪を中心にしての状況を、これは一端を申し上げたわけですが、タクシー労働者労働条件の向上という立場で今後の御方針、それをひとつお伺いをしておきたいと思います。
  231. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) タクシー労働者の賃金の算定方法というものは、相当改善はされてきたと思います。また、労働条件も相当改善はされてきましたと思いまするが、しかしまだ大阪の時点をいまいろいろとお聞きしましてなかなか大変だなと、賭博の問題からあるいはタコメーターの問題、いろいろの指摘があって、そんなことやっているのかなということをいま思ったわけでありまするが、しかしこれはひとり大阪だけでなくて、やはり労働賃金の算定の方法等においてもなかなか無理しなけりゃ一定の所得が得られないというような算定をやっておるところもあるやに聞いております。しかし、これも相当改善されてまいりましたので、さらにこれを労働省とそれから運輸省とよく連携をとって、こうした違反のないように、あるいは特にお客を乗せる仕事でありまするから、事故のないように十分監督をしていきたいと思いますし、さらに二・九通達もこれも相当徹底はいたしておりまするけれども、まだまだそういう指摘が出てくるようでは大変でございますので、今後とも厳重な態度でこれに臨みたいと、かように考えます。
  232. 星野力

    ○星野力君 私はじん肺の問題について質問いたしたいと思いますが、短い時間の中でできるだけたくさんのことについてお聞きしたいと思いますので、むずかしい質問をいたしませんから、御答弁はひとつ簡潔にお願いいたします。  大臣にまずお聞きいたしますが、失礼な質問かもしれませんが、話の順序としてお聞きいたしますが、じん肺という病気について大臣どのように御存じでございましょうか。
  233. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) 最近、労働関係の中でこうした病気の問題——白ろう病とかじん肺とかという問題は非常にやかましく言われております。特にじん肺問題も白ろう病に劣らない大変な病気だと思います。いろいろ仕事が複雑になってまいりますると、非常にほこりの立つと申しまするか、いろいろな問題が人体に及ぼしておる。これに対しては徹底的に究明して、そうした病気を撲滅するようにいま努力をいたしておるわけでございます。
  234. 星野力

    ○星野力君 私は炭鉱などをたくさん抱えた地域に住んでおったことがございますので、じん肺患者というのには比較的にたくさん対面はいたしております。しかし、じん肺というものを医学的に説明する素養はございませんが、いま大臣も言われましたようにこれは大変な病気だと思います。  そこで、具体的な質問に入りますけれども、じん肺患者というのは全国的に見てふえておるのか、減っておるのか、数字がございましたらごく簡単でよろしゅうございますからお聞かせください。——時間がかかるようでしたらいいですよ、数字のことは言っておりませんでしたから。
  235. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 後ほど調べまして……。
  236. 星野力

    ○星野力君 後で詳しい数字ありましたら見せていただきたいと思うのでありますが、古いこれは数字と思いますが、労働省のお調べになったもので、認定された患者が昭和四十七年度に約二万五千人、四十九年度に三万二千人余り、こういうのを承知いたしております。二年間で二八%ふえております。これは実際とはかけ離れた非常に少ない数字だと思いますが、そういう数字を拝見したことがあります。このスピードでふえてきたなら、現在五十一年推定は四万人を超しておるのではないかと考えられます。  ところで、増加しておることは間違いないと思いますが、増加の原因をどういうふうにお考えになっておられますか。
  237. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) ただいま先生おっしゃいました数字は、正確にはいま調べてからまた御報告申し上げますが、恐らくじん肺健康診断の結果の有所見者数だと思います。御承知のように、有所見者のうちで特に症状の重い者で療養を必要とする者、これは労災保険の対象にいたしまして医療を行うわけでございまして、その数字と有所見との間にはかなりの差があると、こういうわけでございます。  それから、じん肺は確かに昔は限られた——金属鉱山でありますとか石炭山でありますとか、そういうところにあったわけでございますが、最近は一般に窯業でありますとか、あるいは当委員会でも先般小平先生が御指摘になりました昭和電工のアルミ製錬工場、あるいはこれも先般来問題になっておりますような、大分県のトンネル掘削の専門技能労働者の中に見られますじん肺というふうに、非常に地域的にも業種別にも非常に広範なものに見られるようになりました。これは絶対数がふえているかあるいは医学的な治験が進んだか、いろんな理由があると思いますけれども、そういうような状態だと見ております。
  238. 星野力

    ○星野力君 いま幾つか原因挙げられたわけでありますが、そのほかに新幹線のトンネル、地下鉄のトンネルあるいは地下街の工事、造船とか自動車の組み立ての電気溶接、そうしたいわゆる高度成長の中で粉じん職場というものがふえてきておるということがひとつ大きな原因になっておりはしないかと思うのであります。  東北新幹線の建設工事の現場で七百人の労働者、出かせぎ労働者調査したら、その二〇%に当たる百四十人がじん肺患者であったということが、たしか一昨年ですか、問題になったと思いますが、しかしそうした原因、それからいま局長が挙げられました原因だけでなしに、いろいろまだ考えなきゃならぬ原因があるのではないか。内地では炭鉱はほとんどなくなりましたが、旧産炭地でじん肺患者認定がふえておる。それからまた、旧産炭地でなくて全国に散っておるわけでありますが、そうした旧炭鉱労働者の中でふえております。旧北松炭田地帯という長崎県の北の方でありますが、江迎労働基準監督署管内になりますか、五十年末でじん肺に基づく認定が四百人を突破したと。五十年度だけで百人に上っておるということも報道されております。  それから、いまお話のありました全国の窯業地でもふえておると言われております。たとえば伊万里労基署管内といいますとこれは有田焼、伊万里焼の本場でありますが、ここの窯業従業員の約一〇%、三千人ぐらいおりますからその約一〇%が認定患者と。ただ、ここではいまのところ重症者は比較的に少ないということが言われておりますが、数はふえておる。原因は複雑と思うのでありますが、原因調査を正確にやる必要があるかと思われます。今後の対策のためにもそれが必要じゃないかと思いますが、その点についてどうお考えになっておられますか。
  239. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) じん肺の対策につきましては、御承知のように労働安全衛生法で予防面、それから健康管理面は特にじん肺法という特別法でやっておりますし、労災補償の面は労災保険法、労働基準法で保障いたしておるわけでございますが、じん肺法は昭和三十五年に実施になりましてから大分日にちもたちました。いま先生がお述べになりましたように、いろいろ客観的な事情も変わってきておりますので、私どもはできますならば次の通常国会にじん肺法の改正案を提案したいというふうに思っておりまして、いまじん肺審議会、それからさらに非常に専門的な領域でございますので専門家会議、これを並行いたしまして大車輪でいろんな問題をいま詰めていただいております。そういう中で私どもは新機軸を出してまいりたいというふうに思っております。  それから、先ほども例に挙げられました新幹線のトンネル工事のような事例でございますが、私も先ほど申し上げました大分県のあの事例のような、転々と渡り歩く建設労働者の中のじん肺、こういう問題につきましては既存のようなやり方では十分目的を達成できないということもございますから、そういった面も新しい健康診断のやり方を考えてみたいということで、いま予算要求などをしまして勉強中でございます。
  240. 星野力

    ○星野力君 いま局長が申されたこの大分県の問題ですが、大分県は昨年も全国で結核の一番多い県に、率でございますか、第一の県になったのではないかと思いますが、県内の結核患者の三分の一が佐伯市とそれからその周辺の南海部郡八町村、いわゆる南部と言われる大分県南部に集中しておるようであります。この大分県の南部地区はこれという産業もなく、耕地も少なく、農業でもやっていけない、漁業をやってもやっていけないという事情で、昔から出かせぎの多い土地であり、現在も年間一万人ぐらいがこの地域から出かせぎしておると言われております。ここの出かせぎの特徴は、先ほどお話がちょっと出ましたが、隧道——トンネル工事への出かせぎが非常に多いということであります。いわゆる豊後土工、土地の言葉では豊後どっこと言うそうでありますが、明治以来の日本の主なトンネル工事で豊後土工の手にかからないものはないなどということが語り伝えられておりました。ここでじん肺患者がどっとこう出てきたわけですね。と申しましても、急にばたばた病人になったということではないと思うんであります。いままで隠されていた病人が最近になって表に出てきたということだろうと思うんでありますが、最近と申しましても、正確に言えばこれはことしの春ごろ以来のことではないかと思うんであります。この大分県南部のじん肺患者実態について、そこに、簡単でよろしゅうございますが、何か資料をお持ちでございますか、ありましたらごく簡単にお述べいただきたい。
  241. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) この問題は、たしか通常国会で衆議院の社会労働委員会でも取り上げられたと思いますが、いまお話しのように三月ごろに学会に土地の保健所長さん、三浦先生から報告がされまして、これが西日本新聞に取り上げられまして社会問題化したような事例でございますが、私どもも早速対応いたしまして、まあ御承知のようにいまおっしゃいましたような労働形態でございますので、大半は労災保険を受けておりましたけれども、しかし労災保険の対象にならないといいますか、受け損じた人もかなりあったわけであります。そこで六月二日には千葉先生という中央じん肺審査医を派遣いたしまして、要請のありました九十五名について地方のじん肺審査医それから保健所長さん共同で、レントゲン写真を見たりというようなそういう審査を行いました。その結果も連絡をしてあるわけでございます。それからさらに八月二十七日には千代谷中央じん肺審査医をやはり派遣をいたしました。それから地元の大分の産業医の研修会に講師として行っていただきまして、じん肺の診療、治療というようなことについて四十人の地域のお医者さんに講義をしていただいたというようなわけでございます。なお、大分県でも県議会等でこの問題が取り上げられまして、先般七月でございましたか、大分県知事も私のところに参られまして、いろいろ地元の御要望等も出されたわけでございます。私どももできるだけのことはやりたいということで、いま鋭意検討中でございます。
  242. 星野力

    ○星野力君 患者の数ですね、重症者を含めてどのくらいあるかという、そういう数字はそこにお持ちでございますか。
  243. 山本秀夫

    説明員山本秀夫君) 佐伯保健所長さんが療養を要するというふうに御診断があったものが四百四十人ほどございまして、その後いろいろいまの千葉審査医その他の地元の審査医、御相談をされまして、三百五十人という方が管理四、療養を要するという状態になって、認定済みでございます。それから残った方々も順次申請をしておられます。最近、ごく最近のことはちょっとわかりかねます。
  244. 星野力

    ○星野力君 私の方にあります数字は重症者——重症者というのは健康管理区分の四の人を指すようでありますが四百四十一名、それを含んで千三百六十名というのがこの五月、六月ごろの数字として示されております。私、その後はこの数字は若干大きくなっておると思うんであります。それらを含めて潜在患者を入れると三千人ぐらいになるだろうということは、大分県の資料にも書かれております。先ほどお話しございましたが、全国のトンネル工事現場を一カ所を三カ月あるいは半年というふうに転々として渡り歩いておるこの豊後土工の場合、居住地で発病しましても認定を受けるのに非常に困難である。どこの事業場で発病したかを確かめるのが困難だ。確かめ得たとしても事業場所在地でないと認定手続ができないと。私ここへ二度行って保健所の三浦先生にもお会いしましたし病院にも行きましたし、また在宅の患者人たちとも会ったんでありますが、患者や家族と話してもこの点についての要求が一番強いんであります。先ほど次の通常国会に改正案をと申されたんですが、いま申しましたようなことも含んでその人々の要求としましては、居住地大分県の労働基準局でも認定を受けられるよう措置するとともに、じん肺患者の多発地である佐伯——南部地区に認定医を配置し、正確かつ迅速に認定を行ってもらいたいと、こうなっておりますが、それにこたえられるような改正をお考えになっておられるかどうか。
  245. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) いま御指摘の点は、特段に法律を改正する必要はない施行規則の問題でございまして、ただ施行規則ではたてまえ上は事業場の所在する監督署がこの事務を扱うということになっております。しかし、特に豊後土工の場合は長年各地を渡って働いていらして故郷へ帰ってきたというようなことから、必ずしも十分に労働法規のことに詳しくないというような方もおられまして、ある程度の数の方が労災保険の対象から漏れているというのは先ほど申し上げたとおりでございます。そういう問題がございましたので、私ども全国会議等でも指示をいたしまして、最寄りの監督署に御相談があれば十分指導申し上げまして、所轄の監督署との間の労災保険給付の連絡をするような体制をとっておりますので、その点は遺漏ないというふうに思いますが、なお現地を督励して十分対応のできるようにいたしたいと思います。  それから、地方じん肺審査医の増員の御要求もあるわけでございますが、これはじん肺審査医がいまいらっしゃるわけでございまして、大分基準局におられるわけですから、地域によってということは、これはどこの県にもそういう御要望ありますけれども、どこでも労働基準局に審査医を置いております。現地の事情もよく検討して考えたいと思いますが、先ほど来申し上げましたように、むしろ中央の非常にレベルの高い審査医を二回にわたって現地派遣をしておるというようなことで、私どももできるだけ実情に合った措置は今後も考えていきたいと思っております。
  246. 星野力

    ○星野力君 いまの局長の御答弁は、事実上現地の労基署が窓口になると、こういうふうに理解してよろしいだろうと思うんですが、それはそれで結構だと思うんです。ただ、そうなりますと、地元の労基署の職員の仕事が非常に多くなるかもしれませんが、その辺の御配慮もこれは必要かと思います。そうでないと実際にできないということもあると思います。  それからお医者さんの問題ですが、大分県にもおるといいましても、いま申しましたのは大分県の一番南の地域、おるのは一番北の地域ですね。あれは中津かどっかじゃないかと思いますが、もっと山奥のようですね。どっかあの辺だと思います。これじゃ実際の要求に応じないんですから、考えていただきたいと思います。  それから、発病の事業場を確かめるのが困難というのは、大分県南部のいま申し上げた人々だけでなしに、先ほど申しました旧北松炭田地帯などでもこれは同じであります。御承知のように炭鉱はなくなりました。大手の炭鉱なら廃鉱後も従業員の名簿なんかが保存されておるんでありますが、したがって労災申請の手続もやりやすいわけでありますが、北松は御存じのようにもう小山の多い地帯でありました。特に次々閉山されていく中で、一つの山で失職して次の山へ行く、そこもまたつぶれてしまうというようなことで、終わりの方はもうどこで発病したかなんというのは認定するのは非常に困難な状況にあると思うんでありますが、しかも北松地帯は潜在患者を含めるならば、大分南部の三千人よりも多いのではないかという推定さえ行われておるんでありますから、ここに対しても十分いま申し上げたような配慮ある措置をお願いしたいと思います。  それから、いま申しましたような事情で就労証明のできない場合漏れると申されましたが、そういう場合もあるわけでございますね。なかなか簡単にはいかないという場合があるんですが、じん肺患者というのは実際目の前にあるんでありますから、そういう就労証明なんかがおくれておりましても、患者である限り差別なく救済措置がとられなけりゃならぬと思いますが、そういう点についてはどうでしょうか。
  247. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 通常の場合ですと、事業主が定期健康診断を行うことが義務づけられておりまして、その結果によって管理区分が示され、必要な場合には療養をする、あるいは配置転換をするという措置がとられるわけですけれども、しかしそれが十分に守られないと、そのうちに特に離職されたような場合、そういう問題が起こるわけでございます。  そこで、じん肺法の十六条には随時申請という制度がありまして、労働者がそういった希望を有する場合には労働基準局に申請していただきますれば、それによって管理区分を決定し、必要な措置をとるというような規定もございますし、現にそれが活用されておる例もあります。私どもはいろんな手だてを講じまして保護の万全を期したいというふうに思いますし、現行法でなお不十分な点があれば近い将来に改正もいたしますので、いろいろ手を打っていきたいというふうに思います。
  248. 星野力

    ○星野力君 いま例として挙げました大分県の場合、それから長崎県の場合、これは離職したらということでなしに、離職した人がほとんどなんですね。大分県の場合も、後でこれは時間があったら触れたいと思いますけれども、現にトンネル工事に出かせぎするという人は、いま居住地に帰っておっても、これはなかなか体が悪いと思っても、診断も受けなければ、そういう手続をとろうともしないという傾向もあるわけであります。  それから、最終の粉じん職場がわからない場合の休業補償の額の決定はどうなるんですか。
  249. 田中清定

    説明員田中清定君) そういう場合には客観的な資料が特にございませんけれども、必要な同僚の証明なり、その他の推定をして平均賃金を決定するということで計算をいたしております。
  250. 星野力

    ○星野力君 その証明があればいいんですけれども、証明があるぐらいならこれは額を決定することできるわけですが、たとえば証明という中には証言というようなことも入るのかどうか。
  251. 田中清定

    説明員田中清定君) 先生のおっしゃいました証明というのは、事業主の証明ということだろうと思いますが……
  252. 星野力

    ○星野力君 あるいは同僚の。
  253. 田中清定

    説明員田中清定君) 事業主の証明が得られない場合でも、客観的に平均賃金の算定ができればそれを用いるわけでございますし、その場合に同僚の証言も信ずべきものがあればこれを採用していくということでございます。
  254. 星野力

    ○星野力君 労災休業補償から傷病補償年金ですかに切りかわるときですね、三級該当者などはいままでの補償額よりも減額になる可能性というのがあるのではないかと思いますが、あるのかないのか、そういう場合には何か救済方法があるのかないのか。
  255. 田中清定

    説明員田中清定君) 御承知のように、現在休業補償給付の額は給付基礎日額の六〇%、今回の法改正で来年四月から実施いたします傷病補償年金は、症状の程度に応じて一、二、三と三等級に分けまして、一級の場合には八六%、二級の場合には約七六%、三級は六七%ということで、法定給付の面ではいずれも給付額が引き上げられるわけでございますが、現在御承知のように休業補償には二〇%の特別支給金が上積みされております。この部分を合わせますと八〇%に相なります。また、傷病補償年金につきましては、今回の改正と相まって新年度から特別給与を基礎とする特別支給金がさらに上乗せになりますので、一般的には大部分の方は給付額の引き上げになるわけでございますが、ボーナス等が非常に低いというような方の場合、特にただいま申しました三級の方の場合には、計算上は休業補償プラス特別支給金よりも下回るケースが理論上はあり得るということでございます。しかし、そういうことでは受給額が新年度からダウンするということになりますので、そうならないように経過措置を設けまして、現在の受給額を下回らないような措置を講じていくということで予定をしております。
  256. 星野力

    ○星野力君 いま私が問題にしております、大分県などのじん肺患者というのは、これは職場復帰の望みがないだけに、いまの問題については非常に関心が強いわけであります。ボーナスという話もありましたが、この人たちはもう離職したまま重症認定を受けておるわけでありますから、ボーナスなんかありゃしない、あるはずがないんであります。これは、経過措置で現在よりは下回らないと、こういうことですね。
  257. 田中清定

    説明員田中清定君) その点は、立案の過程でも労災保険審議会でいろいろ御議論がございました。また、先般の法改正の国会審議に当たりましても種々御質問があり、そういう不利にならないような措置を経過措置として講じたいと、こういうことでお答え申し上げてきたわけでございます。御指摘のとおりでございます。
  258. 星野力

    ○星野力君 先ほど局長の方から、健診など新しいやり方でということを考えておるとお話ございましたが、出かせぎ労働者や旧炭鉱労働者のじん肺健診を国がやるべきではないかということであります。事業主がやるといういまの仕組みでは、この人々にはだめなんです。これは御存じだろうと思う。今度のこの問題につきましても、大分県でも若干の予算、調査のための予算を計上しまして、八月十二日、十三日、旧盆の休みに帰郷者もある曲というその時期をねらいまして、県から医師を派遣して健康診断をやったわけでありますが、これは聞いてみますと九百七十二人受診したと。出かせぎ経験者だけだと七百九十七人。そのうちじん肺と見られる者が四百七人、その疑いありが百十五人、合計五百二十二人ですね。区分四が新たに十四人発見されたと、こういうふうに聞いております。肝心のまだ働こうという人は受診したがらないわけですね。管理四になったらもちろんのことでありますが、管理二、三になってもこれから働けなくなる、もう体のぎりぎりまで働いてというのがあの人たちの状態でもあるわけですから、なかなかこういうやり方でも成果が上がらない。それにしましても今度はたくさん受診したわけでありますが、いままでに比べますと。  それから、佐伯市なんかも小さな市で貧弱な財政の中から、九月の定例市議会には百九十四万円余りの衛生費の補正を計上いたして、この対象は主としてじん肺でありますが、検査などに努力するということですが、こういう自治体に任せるんじゃなしに、やはり国が責任を持ってやらなきゃいけないんではないか。先ほど局長が申されますように、法施行以来すでに十六年たっている。豊後土工などについて言いますと、今日まで見過ごしてきた国の責任というものもあると思うんです。当然国がこれは乗り出さなければならない、そう考えるんであります。ことに、聞いてみますと、じん肺というのは年をとればとるほど症状がひどくなると。だから、できるだけ早く見つけて療養させるのが国の義務だ、こういうふうな意見も聞いてまいったわけでありますが、その辺どうですか。国の健診ということ。
  259. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 先ほどお答えしましたように、現行じん肺法では常時粉じん作業に従事する者につきましては、もとより事業主の責任と負担において所定の健康診断をしなければならないということになっておるわけでございます。しかしながら、建設業のような転々と労働者が短期に移動するというようなことになりますと、責任がある事業主が必ずあるはずでございますけれども事業主においても観念が薄い。それから労働者の方も、いまおっしゃいましたようないろんな思惑からなかなか受診されない。結果的には非常に必要な特殊健康診断が漏れてしまう。これが一番問題でございますので、私ども事業主の責任は責任といたしまして、何らかの、たとえば建設業について申し上げれば、建設業の災害防止協会というものもございます。そこに思い切った国の助成を加えることによって、第三者といいますか、国がといいますか、そういうものが健康診断に乗り出すという必要があるんじゃないかというふうに思って、いまよりより予算要求中でございます。これは財政当局の判断もあることでございますから、予算編成のときに一番問題でございますけれども、われわれはそういう問題意識を持っておるわけでございます。  それから、今回の佐伯地区の問題につきましては、先ほど申し上げましたような一応の援助もいたしております。しかし、もう離職されて非常に長い時間が経過するというようなことになりますれば、これは、かつて労働者でありましたと同時に、地域住民という性格も持っておるわけでございます。私どもは厚生省とも相談いたしまして、地域の医療機関、地方公共団体相ともども効果的な対策をどうやったら進めることができるかというようなことで、労働省の役割りの範囲でやれることは十分やってまいりたい、よく関係のところと相談をしながら進めてまいりたいというふうに思っております。
  260. 星野力

    ○星野力君 時間が大体来たようでありますが、もう一問——一問半くらい(笑声)ひとつお願いしたいと思います。  まとめて申し上げます。じん肺の専門病院をつくってほしいという要求が非常に強いわけでありますが、この問題についてどういうふうにお考えになっておるかが一つです。佐伯市の上尾病院でありますか、へ行ってみましたが、百何十ベッドかのほとんどが重症のじん肺患者で占領されておる。そういう状況でありましたし、また長崎県の江迎病院にしましても約五十人が入院しており、また五十人ぐらいが通院加療しておるという状況でありました。じん肺に経験を積んだ医師あるいは施設を持った病院というものが非常に少ないんではないかと思います。こういう要求、専門病院をつくってほしいという要求が出るのは当然だと思います。それから、先ほど地方じん肺診査医のお話もありましたけれども、全体として専門医の養成が少ないんじゃないか。専門医の養成ということについてどういうふうにお考えになっておるかというのが一つであります。これが二番目。それから三番目には、区分三の患者にも応分の補償を行うべきではないかという問題であります。それについてどういうふうにお考えになっておるか。いま申しましたトンネル掘りの労働者なんかの場合ですと、区分三に認定されても職場転換の余地がないわけでありますね。よく言っておるんですよ、われわれは切り羽を掘るしか能がないんだと、太陽の下ではこれは仕事のできない人種だと。そういう仕事をしてきておるわけですから、なかなか職場転換ということがあの仕事の性質から言ってもむずかしい。もう区分三に指定されたら、全然補償はないけれど、事実上そこでもう終わり、こういう状態であります。それが三番目。  それから認定を受けないまま死亡した場合、レントゲン写真とかカルテとかあるいは職歴などによってじん肺患者であったことが推定されたならば、遺族補償を行うべきであると思うが、どうか。  それから最後に、先ほど局長申されました、次の通常国会を目途にして法改正を考えておられるというんでありますが、いま私がきょう申し上げたものの中にも、いろいろこの法律の矛盾という点も露呈されておると思うんでありますが、考えておられる法改正、ごく大筋でよろしゅうございますが、また私がいままで提示しました問題に関連するものがありましたら、ぜひそれも含めて構想をお示し願えないか。これはまだ審議中だから言えないということじゃなしに、方向は持っておられるんだから、労働省としての考えはあるんですから、その点を述べていただきたいということであります。
  261. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) じん肺の専門病院の問題でございますが、これは私どもは労災病院というものを全国に三十四持っております。その中の三カ所は、これはもう本当のじん肺の専門病院でございまして、栃木県とそれから北海道の岩見沢、それから愛知県旭労災病院、こういうものを持っております。それ以外に、たとえば九州の労災病院なんかでも、かなりのじん肺患者を収容して専門的な治療を施しております。お尋ねの問題は、豊後の土工に関連して大分にもと、こういう御主張だろうと思いますが、その御意見は知事さんからも伺っておりますが、私ども患者の数なりその性格なりから見まして、労災に委託病棟という制度がありまして、労災保険から支出をいたしまして既存の病院にそういった専門病棟を付設するというのが現実的であり、またそういう施設を何か所かやってまいっております。そういうアイデアを出しておりますが、県の方でも、それじゃどういう受け入れ病院をそれにしたらいいかというようなことで、いま寄り寄り検討をされているようでございまして、私どもとしてはそういった意思を持っておりますので、いずれ話し合いがつけば、何らかの解決策が得られるんではないかというふうに思っております。  それから、専門医の養成の御指摘でございますが、労災病院はほかの病院に比べてこの点はかなり専門医を抱えておると私どもは自負いたしておりますけれども、何と申しましても職業性疾病の予防なり治療についての専門医が非常に足りないということは、もうわれわれ痛感いたしておるわけでございまして、各大学にもお願いをしておりますが、御承知と思いますが、労働省におきましても産業医科大学というものを北九州につくるということで計画を持っております。一日も早くこれが発足して、そういった専門医が大量に養成されるということを私どもも望みたいところでございます。  管理区分三の問題につきましては、じん肺法では管理区分四の者が「療養を要するものとする。」と、こうなっておりますために、管理区分三はもういかなる場合にも療養の対象にならないという誤解が従来からございましたけれども、管理区分三といえどもやはり療養の必要があり、療養の効果がありというような場合に、これは療養の対象にしていくということが望ましい、そういう必要があればわれわれは管理区分四でなければ絶対に療養の対象にしないという考え方は持っておりません。この辺も今度の改正のときに、管理区分ということと療養ということを形式的に結びつけるだけでいいかというような点を、一つの問題点としていま検討をいたしているわけでございます。  死亡についても、因果関係の究明ができますれば、それはやはり対象になります。その辺の究明が、まあ先ほどエックス線の撮影が残っていた場合はどうかとか、いろいろお述べになりましたけれども、それはやっぱりケース・バイ・ケースで判断をせざるを得ませんけれども、因果関係の立証ができれば、それは対象になるべき性質のものだと思います。  改正の方向でございますが、いま、先ほど申し上げましたようなことで審議中でございますけれども、何せ非常に専門家の先生方が御論議でございまして、いろいろな学説が分かれておりまして、なかなか帰一するところを知らないということでございますけれども一つは、先ほど申し上げましたように、予防面で何らかの独立の規則と言いますか、レギュレーションを一つつくる必要がある、粉じんの抑制について、ということを考えております。  それから、管理区分なりあるいはじん肺の定義なり、そういった面についてもいま専門家の間で検討がなされておりますし、それから配置転換とか職業訓練とか言いましても、先ほどお述べになりましたように、実際問題としてなかなかむつかしい側面がある、これを何らかのてこ入れでもう少し効果的にやる方法がないかというようなこととか、まあいろいろ専門分野の問題も含めていま検討中でございます。  最後に、先ほど数字をちょっと安全衛生部長から。
  262. 山本秀夫

    説明員山本秀夫君) 古い昭和三十五年にこの法律ができましたんですが、三十六年ぐらいの統計、これ大ざっぱでございますが、療養を要する人間が約八百人くらいというふうに御理解いただきます。それから漸次、事業場に現に雇われている人間につきましては、管理四がふえておりませんし、減ってきておるというのですが、退職をした方々から発病されるという方がふえまして、昨年、五十年では合計いたしまして千五百五十七人の方が療養を要するということになっております。
  263. 星野力

    ○星野力君 残りの半間ですが、私、予防面についてお聞きしたいと思っていたんですが、時間なくなりましたからやめますが、大臣まあお聞きのように、じん肺問題の一端がきょう出ておるわけでございますが、大臣もせっかく労働大臣に就任なされたのでございますから、ひとつじん肺についても御研究いただいてですね、これは大変な病気だと思うんです。いま数字を挙げられましたけれどもね、これはふえておりますし、潜在したのが出てきますしね、研究くださいまして、今後じん肺の対策、また患者の救済、これに御努力願いたいと思うんですが、大臣の御意見を伺って終わります。
  264. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) じん肺の問題につきましては、私は聞けば聞くほど広範囲な問題だということを痛感いたしております。私も、私の近くに瀬戸というところがあって、ここでじん肺の問題が非常にやかましく言われておる。また私の選挙区にも岡崎というところがあって、これは石屋さんの町で、けい肺の関係もありまするが、じん肺問題がやかましくなっておる。ということはごく最近なんです、そういうことが大騒ぎになってきたのは。ここ二、三年の間に非常にそういう声が出てきておる。いままで割合にそうした特定なところだけがじん肺患者だというふうに思っておられたのが、全国的に非常にそうしたじん肺問題が大きな声になってきております。まあいろいろな施策を講じておりまするが、法改正の問題あるいはいろいろな救済制度をつくって、この問題は本当におろそかにできない、積極的に取り組んで、まあひとりじん肺だけではない、ほかの産業のいろいろな病気もありまするけれども、特に範囲が広いということもありまして、十分に検討して御趣旨に沿いたいと思います。
  265. 星野力

    ○星野力君 どうもありがとうございました。
  266. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 委員異動について御報告いたします。  本日、久保亘君が委員辞任され、その補欠として宮之原貞光君が選任されました。     —————————————
  267. 柄谷道一

    柄谷道一君 労働大臣にお伺いしたいわけでございますが、政府の公式統計による雇用関係の諸指標は依然として憂慮すべき状態でありますけれども、私は雇用情勢の実態はこれらの指標に示されたものよりもはるかに深刻なものであり、産業界には現実にきわめて大量の過剰労働力が抱えられている、これは識者の一致して指摘されているところであります。  私はこの内容を詳細に考えてみますと、まず従来わが国にはレイオフの慣行がない。したがって、企業内終身雇用制が根強い労使慣行としてわが国に普遍しておる。第二番目には、経営者の中に景気が間もなく回復するであろう、こういう期待感があった。第三には労使関係への配慮、これは当然あった。そのために内部に過剰労働力を抱えつつ推移してきたというのが実態ではないかと思うのでありますが、不況が長期化し、深刻化し、企業の業績そのものも決算内容を見てもわかりますように低迷悪化を続けております。といたしますと、企業の耐久力が限界に近づきつつあるということを物語っているのではないか。さらに、今日は未曾有の急激な経済転換期の渦中にあります。わが国の各産業は低成長経済に対応した構造的体質転換をきわめて短期間のうちに行わなければならない、こういう問題に迫られております。特に、国際競争の激しい産業におきましては、産業並びに企業体質の抜本的体質転換ということを早急に行わない限り、漸次産業企業は衰退するほかはない、こういう状態にいま差しかかっているのではないか、このように私は判断するわけでございます。したがって、このまま推移するとするならば、わが国にはいま内部に抱えている過剰人員が一挙に吐き出される、そのためによる大量失業の発生、労使紛争の激化、これはもちろんでございますが、企業活動の停滞による景気回復のおくれをもたらし、また、国際競争力の低下、ひいては国民経済の活力低下など、日本経済全般にわたって低迷悪化を強いられる結果になるのではないか、このように思うわけでございます。労働省の発表いたしております公式指標以外のこれらの要素を含めた雇用の現状とその展望について、大臣としていかなる御所見を持っておられるのか、まず、お伺いをいたします。
  268. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) 日本の経済が石油ショック以来非常に総需要抑制でだんだんと失業者がふえてきた。そこで、景気刺激策をやるということでやや景気が上向きになってきた。百二十上二万人あるいは百三十万人の失業者だと言われておった時代から、ことしの七月には九十九万人まで減ってきたわけであります。ところが、一向に景気の浮揚が効果がまだしっかり出てこないということで、非常に企業が採用の手控えをいたしておるというようなことから、先般の発表ではまた百三万人という姿になって、公式な線では百三万人ということになったわけです。ところが、アメリカを見ますると、アメリカは八百万の失業者があると言われております。これに比べますると、日本は百万そこそこだから少ないじゃないかという声も一部にはあったけれども、いま御指摘のありましたように終身雇用ということから、アメリカの統計と日本と比べますると、少しそれは違うんじゃないか。非常に企業が苦しいけれども、そのうちに景気がよくなるだろうというので、いろいろ借金を背負いながらこのままの人員を抱えておったんじゃ会社が赤字になるということを承知しながらも、そのうちにそのうちにということで期待をして、本来ならば人員を整理したいのを抱え込んでおる、この人たちがある人に言わせれば百万人はおる。そうすると両方で二百万人じゃないか。あるいはいやそんなじゃない、六、七十万だろうという人もありまするが、これは潜在的な失業者でありますから、しっかりした統計はとれませんけれども、いま統計に出てきておる百三万人の失業者で、これだけだと断定のできないいろいろな要素が私はあると思います。  そこで、いかにして雇用の市場を高めるかということ、それはいろいろな問題があると思います。労働条件の問題もありまするが、やはり、景気をある程度浮揚するということが一番手っ取り早い一つの求人を消化する大きな道であろうと思うわけでございます。でありまするから、いかにしてもある程度の景気を浮揚させなければいけない。ところが、これはあんまり手を入れますると、今度はインフレという線も出てまいりまするので、非常にむつかしい問題がありまするけれども、とにかくいま失業者の面だけをながめますると、表へ出ておる百三万人だけで事は済まないんじゃないかということをわれわれは腹の中に置いて、これらの就業問題を検討し、努力をいたしていきたい、かように考えております。
  269. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま大臣は公的に発表されている失業状態より、量は別として、さらに深刻な要因をわが国の産業は抱えているということを言われたわけです。  ここで、もう一点私お聞きしたいのは、従来の失業というものの構造を考えてみますと、余剰人員が、主として在庫調整のための操短等による一時的余剰人員、あるいは季節工、臨時工、主婦、パートタイマー等を中心といたしておったのに対比いたしまして、今後発生してくる余剰人員は、低経済成長に対応して企業体質の転換を図るための本格的なものに移行してくるおそれがある。たとえば、不採算部門の大量整理あるいは固定費節減のための間接部門の縮小、さらには管理職のカット等の形態が増大してくることが憂えられるわけでございます。したがって、これを放置いたしますと失業者層も従来の兼業者ないしは家計補助者層を中心としておった失業状態から、専業者、世帯主、男子中高年齢層、基幹職種従事者など、いわゆる生活維持の中心層に主体が向けられてくる。こういう憂いがするわけでございます。このように、私は量的な深刻さとあわせて失業構造の内容、質というものが今後変化してくると見られるわけでございます。いわゆる何らの対応なく時代を、情勢を推移するのだ、この点に対する大臣御所見いかがですか。
  270. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) 御指摘のとおりでございまして、ただわれわれ今後手をこまねいておるわけではございませんので、やはり職場というものを確保するためにどうしても産業を大きく伸ばしていかなきゃならない、そうして職場を確保していかなきゃならない。ところがいまおっしゃったように、いろいろなこれからの新しい経済体制の原因が、雇用を困難な原因が出てきております。こういう問題についてはやはり日本労働時間の問題やあるいは休日の問題やいろいろなものを勘案しながら、それじゃ大ぜいでみんなで働ける場所をつくる、一人の人がずうっと残業までやってたくさん仕事をするというふうじゃなくて、なるべく多くの人に職場を分配できるような慣行をつくっていかなきゃならぬじゃないかと、こんなふうに考えておりまするが、これは私の私見でありまして、いままだ労働省へ来てほやほやでございますので、常日ごろ考えておることの一端を私は申し上げたわけでありまして、労働省には労働省のまたいろいろな施策もあると思いまするが、私のいま考えておる問題はそういうことを感じております。
  271. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、大臣ですね、今日の雇用不安の特質、これは従来の経済成長の一時的減速によって生ずる過渡的な性格のものではない。特色としては次の三つがあるんではないかと私は思うんであります。その第一は、わが国の経済が今日スタグフレーションの状態下にある。高度成長期のように経済規模の拡大が容易に望めない。そういうことから企業は事業計画の再検討に迫られている。その結果、いま大臣が言われましたように、新規採用の手控え、解雇、一時帰休、残業規制等、多様な雇用調整策が大規模に広範に進行している、ここに一つの特色がある。  第二には、企業発展国の追い上げなどによる輸出市場の総体的縮小及び資源の制約などから、その規模の縮小を余儀なくされている産業が出てき出した。  第三には、中高年齢者や心身障害者など就労困難者が整理の対象にされたりいたしまして、雇用の確保がますます困難になってきている。こういう特色を私は持っているということに着目しなければならぬと思うんです。したがって、端的に言うならば、これらの特質はまさにわが国の経済が従来の高度成長から低成長経済に転換することを余儀なくされ、その結果、労働力不足基調で推移してきたわが国の雇用構造が根本的に転換を迫られているところから生じてきている。したがって、単なる経済規模拡大によって解決されるものではない。雇用政策もこうした観点から私は把握しなければならないのではないか。すなわち、今日の低成長経済において労働力過剰傾向が定着する中で、完全雇用水準を維持し雇用の安定を図るためには、従来の経済成長追随型の雇用政策から、新しい理念と原則というものが確立されて、それの上に立った雇用政策の展開がいま求められている時期である、こう私は信ずるのであります。  抽象論ばかり申しておってもしょうがありませんが、大臣の所見を伺いまして、後具体的問題にひとつ入っていきたい、いかがですか。
  272. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) 御指摘のように、経済成長だけで職場を確保するということはこれから望まれぬじゃないかという御指摘でありまするが、まさにそのとおりだと思います。それだけに、それじゃ経済成長をとめてしまってはまたこれは大変でございますので、一方では経済成長もある程度進めながら、この職場というものを先ほど申しましたように、大ぜいの人に職場を与えるためのいろいろな施策を考えていかなきゃならない。というと、まあ輸出もそれはなかなか伸び悩んでおることも事実でありまするけれども、また一面伸びていける産業もあるわけでございます。そうしたことを勘案しながら、やはり職場のいままでの服務あるいは労働時間あるいは休日、こういったようなものも勘案しながら、なるべく広く多くの人に職場を与えるということにやはり企業の方にも理解をしていただく。またその一人の人が長い時間働いて、そうして高賃金を取るということでなくて、みんなで職場を分かち合うという、こういう一つの精神的な面にも大いに啓蒙していかないと、なかなかこの日本中一億一千万、しかも六千万人以上の人が職場に安定就業できる状況にはなかなかならぬじゃないかと思って、まあそういうことも十分研究していきたいと思っております。
  273. 柄谷道一

    柄谷道一君 私はいままで申し上げましたのは、新大臣の新しい雇用政策の展開というものを期待するが余り、従来の惰性的雇用政策では、これからの時代に対応していくことが困難だということを強く指摘申し上げたわけでございます。本年六月の十八日の閣議で、雇用対策基本計画が策定されております。私その内容を熟読してみました。いま大臣が言われましたように、理念としていろいろなことが述べられているわけですが、その理念を今後具体的政策の中でどういう形で生かしていくか、もうそれが語られるべき時期に来ていると、こう思うわけです。  そこで、時間に制約がございますので、私は本日は二、三の問題に触れたいと思うのですが、一つは高年齢者の雇用安定策についてでございます。  雇用基本計画によりますと、六十歳までは企業の定年延長の促進により雇用の安定に努める。六十歳から六十四歳までは定年後の再雇用、勤務延長を含めて再就職を促進する。六十五歳以上についてはこれらの者の能力に対応して社会参加の機会の確保に努める、こう計画には書かれております。私は従来のような方針でこの行政を執行していっても、なかなかこれらの体制を実行に移していくということはむつかしいのではないか、こう思うわけです。まあ人口、労働力の高齢化に伴いまして、私は定年延長という問題は、雇用の安定と福祉の面から社会的性格をいま帯びていると、こう思います。そこで、六十歳までの定年延長につきましては、私はたとえば昭和五十五年四月一日までに完全実施を図るという時期的な目標を設定して、それを達成するための立法措置がいま必要ではないか。単なる奨励措置だけではこの定年延長ということを通じての高年齢者の雇用安定策を推進することは不可能であると、こう思いますが、法制定の用意はございませんか。
  274. 吉本実

    政府委員吉本実君) ただいま先生の御指摘の定年制の問題でございますが、御承知のように日本的な雇用慣行にやはり深く結びつけられた問題でございますから、その解決にはなかなか関係者の御努力が、積み重ねがどうしても必要ではないかというふうに思っておるわけでございます。ただいま御指摘のような一つの方策も一つの案と考える次第でございますけれども、この十月一日から施行いたしました中高年の雇用率というものを、現在の段階では努力目標でございますが、現に発足したばかりでございます。これらの周知を十分図りまして、その成果をながめながら後の施策も考えていきたい、こういうふうに考えております。
  275. 柄谷道一

    柄谷道一君 私はまあ行政措置としての目標の設定だとか、これを推進するために定年延長奨励金、継続雇用奨励金、雇用奨励金など、まあ企業に対する助成を今後充実していきながら、まあ定年六十歳になるように努力をしていこう、これも一つの物の考え方でございますけれども、もうその時期じゃないと思うんですね。まあぜひこれは本日法制定を行うという答弁はなかなかできないだろうと思いますけれども、私強くここで希望しておきますので、やはり法制化を通じてこれからだんだん高齢化をしていく、しかも今後の産業構造の転換の中で再雇用がきわめて困難な状態にある中高年齢者の雇用をいかに守るか、このことに対しては大臣、真剣に大臣としても御検討を願いたいと、こうこれは希望いたします。  それとあわせまして、私は高齢者雇用安定給付金という制度を新たに考える必要があるのではないか、このように思うわけです。制度の内容についてはいろいろの工夫がございますけれども、そういう制度創設に対するお考えがあるかないか、私はあることを期待するのでありますが、いかがでございましょうか。
  276. 吉本実

    政府委員吉本実君) ただいま先生指摘の高齢者の雇用安定給付金制度、具体的に十分お聞きしないといけないとは思いますが、私どもも現在、先ほど先生のおっしゃられるこれからの経済成長というものがダウンする中におきまして、それを見越したいろんな景気の調整あるいは産業転換等々行われる中においての雇用安定ということを図ることが最大の施策でございますので、私ども実は雇用安定基金制度を現在創設すべく考えておるのでございますが、ただいま御指摘のような制度につきましても、それとあわせて十分その中で検討させていただきたいと思います。
  277. 柄谷道一

    柄谷道一君 わが党は、過般、雇用保険法の制定に対して、まだ完全ではないということは自覚しつつも、一歩前進であるという観点からこの制定に賛成をいたしました。その雇用保険法が失業防止面において成果を上げてきたことは率直に評価いたします。しかし、この制度はもともと事業活動の縮小を余儀なくされた場合、それに対応すべくいわゆる設計されたものでありまして、いわば生産調整、操短による一時的大量の余剰労働力発生状態を想定をして、これを失業を防止するためにいわゆる法制化されたものである、こう思います。しかし、いま審議官が言われましたように、今後の産業構造の転換ということに伴って生じてくる問題は、現在の雇用調整交付金制度をもってしては対処することができない。私はこの点を前大臣にも強く本委員会で希望を述べまして、安定基金制度を明年の通常国会に提出すべく努力したいという前向きの御回答をいただいたわけであります。そこで、その後労働省は、いま雇用安定基金の大綱についてという構想を固められたということを聞いております。私は、この景気変動等雇用調整事業のほかに、事業転換等雇用調整事業を新たに加えて、これらの状態に対応していこうという姿勢につきましては評価するわけでありますが、内容は果たしてこれで満足かどうかということになるといろいろ問題がある。いわばこの原案はもう必要最小限の幅の私は大綱であろうと、こう思うんです。ところが風聞いたしますところ、この最小限の大綱すら大蔵省ではいろいろ渋って、この実現が困難視されるやの風聞も聞きます。大臣、率直に伺いますけれども、この大綱は間違いなく最小限のものとして明通常国会に出ますね。
  278. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) いま労働省といたしましても、私、就任以来一番最初重点施策として聞いた問題でございます。その後私もそういうことを意識しながら、それとなく大蔵省の方にも折衝いたしておるわけでございまするが、私の感触では、これからとんでもないやつが出てくれば別ですけれども、私の感触としては来年は法制定ができるというふうに思っておりますし、またつくらなけりゃならないという決心で、これからも鋭意努力をいたしていきたい、かように考えております。
  279. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣がいつまで大臣をやられるのか私承知いたしませんが、ひとついまの答弁にありましたように、これは労働大臣のやはり政治的生命をかけて、これからの産業の変革に対応していく新しい制度を創設するという気概で、これはぜひその実現のために御努力願いたい、こう思うわけです。  そこで、これに関連して、同じく基本計画の中には「産業権造の変化等に対応する雇用対策」の中で、地域雇用問題への対応ということが一項大きくうたわれている。私はきょう時間の関係で多くの実例を申し上げる余裕がないんですけれども、たとえば兵庫県の西脇市ですね、それから福井県における勝山市、大野市、それから新潟県における十日町、栃尾、見附、五泉、これは地場産業として繊維産業以外に見るべき産業がない、いわゆるそういう産業で地域が成り立っている都市でございます。  一方、繊維産業は、いま通産省の方で構造改善のための政策委員会が持たれておりますけれども、そこで語られていることは、紡績が約百三十万錘過剰設備があるとか、織布については三〇%の過剰設備があるとか言われている。その構造改善を行わなければ、国際競争力の中に打ちかちつつ産業を守ることができないという議論がいま闘わされているわけです。そうしますと、この雇用安定基金制度の中に盛り込まれている構造改善を見越しての再訓練というような問題も、これらの地場産業においては一企業の力をもってしては何ともできない。そこで、繊維産業が衰退すれば地域そのものの衰退につながってまいります。ということになると、私は県も市もかみ、公益、労使もこれに参加し、国も適切にこれを指導しつつ、地域の産業計画、その地域がたとえば脱繊維を図るとするならば、どういう産業をその地域に振興し、それによって雇用を守りながら地域の発展維持に対処していくか、こういう地域ぐるみの計画が策定されなければ、私は深刻な社会問題に発展すると思うんです。ということになると、私はそういう地域産業計画ということの確定と相にらみながら、その地域の産業労働者を新しい計画に即応して次の産業への就労を図っていくという、まさに立体的対策ということが必要だろうと思うんです。これがないと私は大変だと思います。今回の雇用安定基金制度の中に、こうした地域の産業対策との関連というものも織り込んだ基金の運用というものが、当然これはとられてしかるべきではないか、こう私は思いますが、大臣いかがですか。
  280. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) いま御指摘のありましたように、繊維産業を例にとられましたわけでありまするが、これは日本の今日の産業構造の中で伸びていけれる産業と、それからもうある程度縮小しなければならない運命の中にある産業とがあるわけであります。その中で繊維も大きな一つのやや縮小していかなければならない産業の一つ、まあそのほかにも造船という問題があるわけでありまして、いままで日本の産業あるいは日本の経済を大きく育ててきた繊維産業あるいは造船産業、こういったものが大きな打撃を受けること、そのほかにも個々の将来を大きく望めない産業がたくさんある。それじゃ、これから新しく、たとえば十日町にしても、あるいはそういう繊維産業の地域が何か新しい今度は伸びていける産業を受け入れるかということになると、これもそれじゃどれが伸びていく産業であるかということの選定は、非常にむつかしい問題だと思います。しかし、このままにしておけば、その地域は本当に地域問題あるいは人道問題にもなることでありまするので、われわれといたしましてはこういう問題も十分含みながら対処していかなきゃならないというふうには考えておりまして、非常にむつかしいことです。ただ、ここで軽く御答弁申し上げて、それじゃそうという問題じゃなくて、もっともっと深刻に考えてこれに対処する努力をしていかなきゃならない、かように思っております。
  281. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま大臣言われますように、そういう視点に立ちますと、一労働省だけの側面で解決できない問題なんです。通産省とも緊密な連携が必要であります。自治省とも緊密な連携が必要であります。そういう立体的なやはり体制の中から今後の雇用対策というものを検討され、来年の通常国会に出るであろうこの安定基金制度の中からは、そういう対応策の受けざらとして、その地域の産業の転換というものに対してもこの基金が有効に機能するという配慮を、ぜひこれは大臣念頭に置かれてその作案を詰めていただきたい、こう思います。  そこで、時間が参りましたので、最後に二つほど聞いて質問を終わりたいと思うんですが、一つは、この労働省の基金構想大綱を見ますと、いわゆるその事業主から保険料、現在の千分の三を千分の一余分に取ってその基金にしていこうという発想であります。しかも、現在の三事業の一環として特別会計の中で処理しようという発想だと受けとめます。  第一の問題点は、この大きな雇用政策の転換期に、国のこれらに対する財政支出という問題がこの基金制度の中に見込まれていない、余りにも経営者任せという姿勢ではないかと思います。私は、これに対して国としてもしかるべき財政支出をこの基金に投ずるということが必要でありますし、しかも、この安定基金制度の運用というものは非常に労使とも重大な関連を持つわけでございますから、独立の制度として公益・労・使というものが参加してこの運営に当たる、そういう機構の確立がぜひ必要である、こう思いますので、その点に対する所見をお伺いいたしたい。  もう一つは、国としてのこういう基金制度と相並行して、企業の内部に雇用安定準備金制度を創設するということが、この大綱の中に書かれているわけでございますが、しかし、こういう制度を創設をして、しかも企業外に積み立てるというような場合には、これはたとえば損金として落とすとか、税制上何らかの措置をとるとか、そういったメリットがなければ、単に労使の団体交渉でそういう制度を創設せいと言っても、経営者にはなかなか一つのメリットもなければ、この労働省の構想が生きてこないというふうに思うわけです。当然、大蔵省は財政不如意の折から、こうした問題に対しては強い抵抗をするであろうことは予想されますけれども、ぜひとも、これまた大臣の力でこの制度を創設をするという力強い答弁を求めたいと思います。  この二つをお聞きいたします。
  282. 浦野幸男

    ○国務大臣(浦野幸男君) 基金制度は経営者だけにその負担をかける、国は何もやってないじゃないかということについては、私の気持ちとしてはおっしゃるとおりな気持ちがあるわけでありまするけれども、いまのところ、その制度のたてまえ上、企業が積み立てる、基金をつくるということになっております。これからいろいろとこれも検討される問題であるし、あるいは企業だけでいいのかなという心配もありまするが、いまのところでは企業だけでやっていくということになっております。  それから、積み立てた別なお金を税制の面でめんどうを見たらどうかと。これはいま強く税調の方へも出しておりまして、そういう方向で進めていきたい。確かに抵抗がありまするけれども、これを促進する意味におきましてもぜひそういう方向でいきたい。折衝いたしております。
  283. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間の関係で、さらに詳しくお伺いしたいと思っておりましたが、これでやめます。  しかし、私冒頭大臣に申し上げましたように、現在の雇用状態、雇用事情というものは、公式統計を越えるはるかに深刻な量的かつ質的な側面を抱えている。このためには、やはり思い切った発想の転換を行って、これらに対応するという労働大臣を中心とする労働省の施策とその実現がなければ、これから大きな問題を惹起していくということはもうくどく申し上げる必要もないことでございまして、ぜひ私の趣旨を十分に明年度の法提出までに吟味願いまして、可能な限りこれを取り入れて、現実にこれらの問題に有効に対応し得る法案が提出されることを強く求めたいと思います。また、その内容につきましては、法案提出の時期に私の質問、意見を述べたいと思います。  以上で終わります。
  284. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十七分散会