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1976-10-14 第78回国会 参議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月十四日(木曜日)    午前十時十分開会     —————————————    委員異動  十月十二日     辞任         補欠選任      星野  力君     河田 賢治君      柄谷 道一君     向井 長年君  十月十三日     辞任         補欠選任      片山 甚市君     志苫  裕君      河田 賢治君     星野  力君  十月十四日     辞任         補欠選任      星野  力君     野坂 参三君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         戸田 菊雄君     理 事         玉置 和郎君                 森下  泰君                 浜本 万三君                 小平 芳平君     委 員         今泉 正二君                 小川 半次君                 佐々木 満君                 高田 浩運君                 徳永 正利君                 粕谷 照美君                 田中寿美子君                 柏原 ヤス君                 沓脱タケ子君                 向井 長年君    国務大臣        労 働 大 臣  浦野 幸男君    政府委員        労働大臣官房長  桑原 敬一君        労働省労政局長  青木勇之助君        労働省労働基準        局長       藤繩 正勝君        労働省婦人少年        局長       森山 真弓君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        文部省初等中等        教育局審議官   奥田 真丈君        文部省初等中等        教育局地方課長  浦山 太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (婦人労働問題に関する件)  (高年齢者雇用対策に関する件)  (労働災害に関する件)  (スト規制に関する件)     —————————————
  2. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十二日、柄谷道一君が委員辞任され、その補欠として向井長年君が選任されました。  また、昨十三日、片山甚市君委員辞任され、その補欠として志苫裕君が選任されました。     —————————————
  3. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 労働問題に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  4. 粕谷照美

    粕谷照美君 去る十二日に労働大臣労働行政における一般的な所信表明をお伺いいたしましたけれども、本日、私は雇用における男女平等の問題について、どうしても大臣所信をお伺いしておかないと質問ができないように思いますので、お願いをしたいわけですが、十月三日に読売は、労組幹部にももっと女性を、朝日は、結婚退職などを改めよ、そして毎日は「女性職場せばめる〃法の保護〃」「深夜勤務クレーン運転…」というキャンペーンのもとに、就業における男女平等問題研究会議報告書の出たことを報じておりますが、内容が詳しくされておりませんので、職場に働く婦人たちは非常に不安を感じているわけです。そのことも含めまして、大臣が一体どういうお考えでいらっしゃるかということを最初にお伺いいたします。
  5. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) お答え申し上げます。  女子保護規定につきましては、現在、労働基準法研究会検討をいただいておるわけでございます。そこで労働省といたしましては、研究会議の結果とその報告建議内容につきまして、研究会にも御報告を申し上げ、研究会での検討に反映されるようにいたしていきたいと考えておりまするが、また労働基準法研究会検討結果が出されれば、これを中央労働基準審議会にお諮りをいたしまして、また婦人少年問題審議会の御意見を伺いまする等の方法によりまして、慎重に検討いたしてまいりたいと思います。男女平等等の支障となることが明らかになった措置につきましては、漸進的に解消すると同時に、必要な保護についてはきめの細かい対策を講じてまいりたいと存じております。
  6. 粕谷照美

    粕谷照美君 大臣、私がお聞きしたいことにきちんとお答えをいただいていないように思うんですよね。雇用における男女平等というのは、もうどうしても必要なんだと、やらなければならないんだというお考えをお持ちだから、簡単だと思うんですよ、答えは。持っている、持っていないということで結構です。お持ちになっていらっしゃるかいらっしゃらないかということと絡まりますけれども、お持ちになっているとしたならば、具体的にどのようなことをやられるのかということをお伺いしたかったんです。
  7. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) 御質問趣旨、基本的には差別があってはならないというふうに思っております。ただ、いまいろいろな法規によりまして母子の問題、いろいろな問題がありまするが、こうした問題をどう取り扱っていくかということを十分検討しまして、基本的には平等であるべきだということは、これは私もそう思っております。しかし、それにただ平等といいましてもいろいろな問題が絡んでまいりまするので、そうした問題をできるだけ検討して善処していきたい、かように思っております。
  8. 粕谷照美

    粕谷照美君 では、後で質問をしましたら最後にまたお答えをいただくということにいたしまして、内容に触れてみたいというふうに思います。  最初に、この報告書の中から具体的な問題をお伺いするわけですが、女子に対する保護規則保護法則をどうするかということが、この報告書論議の大きな中心だというふうに私は考えておりますが、この保護規定の中には「労働科学科学技術の進歩、女子職業能力向上等に伴って、」「合理的な理由があるとは言い難いものもでてきている。」、こういうふうにして例を挙げているわけですが、このことは保護規定を外したいという考え方が含まれているように思うわけです。で、私自身は大変このことがやっぱり問題になるというふうに思いますから、まず最初に、危険有害業務では具体的にどんなものが挙げられる、考えられるのか。それは大体二つに分けられていると思いますが、たとえば免許をとればというふうな問題だとか、あるいは危険が減少したと考えているというものが挙げられているわけですが、もっと詳しく説明をいただきたい。
  9. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 具体的に最終結論を得なければならない場は、労働基準法研究会あるいは労働基準法審議会であると考えますけれども、この研究会男女平等問題研究会議の中で出ました議論といたしましては、ここにございますように、ただいま先生がおっしゃいましたような免許を取得して就業できる業務あるいは危険性がほとんどなくなった業務というようなことで、幾つかの例が話に出ております。  それは何かという御質問かと存じますが、たとえば一定の技術を習得して免許を取得すれば就業できる業務というもので、現在女子であるためにその免許の取得の資格がないということになっておりますものは、たとえば特級ボイラー技士あるいは一級ボイラー技士、二級ボイラー技士あるいは特別ボイラー溶接士普通ボイラー溶接士ボイラー整備士など、これらは全部ボイラー及び圧力容器安全規則第九十八条あるいは百五条、百十四条等によってそのように規定されております。また、クレーン運転士移動式クレーン運転士デリック運転士、これらもクレーン等安全規則によりましてそのような業務となっておりますし、その他幾つか個々挙げてまいりますとほかにもございますが、いま申し上げたようなものが代表的なものではないかと考えます。  また、法規制が強化されまして危険性が減少した業務というものの中に入るかと思われますのは、たとえば「高さが五メートル以上の箇所で墜落により労働者が危害を受けるおそれがあるところにおける業務」というものが現在、女子年少者労働基準規則第八条第二十四号の中で決められておりまして、そこでは女子就業することができないになっておりますが、最近、その後できました安全衛生規則の中でいろいろ高いところの作業については詳細な規制が決められておりまして、これらの規制をきちんと守らない限り、そのようなところでの作業は行われないという前提になっておりますので、そうなりますと、以前できましたこの女子年少者労働基準規則第八条第二十四号の規制は、すでに法規制が強化されて危険性が減少した業務の例に当たるのではないかと、そのようなお話が出たわけでございます。
  10. 粕谷照美

    粕谷照美君 二十七業種ほどあるわけで、その中から大体その程度のことしか出されないわけですね。そうすると、あとはもうやっぱり危険が非常に満ち満ちているというふうなことになるわけですか。
  11. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) いま申し上げましたのは代表的な例、また、このお話の中でたびたび出てまいりました例を申し上げましたわけでございまして、個々一つ一つにつきまして本当に危険でないかどうかというようなことは、さらに専門的な検討が必要であろうと考えます。
  12. 粕谷照美

    粕谷照美君 まあ、これからずっと研究をされていくという立場に立っていらっしゃると思いますけれども、その中で、たとえば危険が減少したと考えられるというのは、安全衛生法ができて、そのために非常に危険が減少したんだというお考えに立っていらっしゃるのではないかというふうに思いますけれども、一体その安全衛生法ができて本当にその危険が減少したのかということについて討論が行われたんでしょうか、どうでしょう。
  13. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 男女平等問題研究会議の場におきましては、特に安全衛生専門家という方がお集まりになっていらっしゃるわけではございませんので、男女平等の見地からどのような措置が必要かという観点からいろいろな面を検討された一項目でございます。したがって、先ほど来申し上げておりますように、一つ一つ業務につきましては、安全衛生の面から法律上は先ほど申し上げたようなことが申し上げられますけれども、実際問題としてどうかということは、さらに深い検討が必要であろうと思います。
  14. 粕谷照美

    粕谷照美君 私はたとえば六価クロムの災害のことを見ましても、あるいはチッソ五井工場災害に関しての安全調査会のこの報告なんか見ましてもね、やっぱり十六時間も労働者を危険な個所で働かせていたなどというようなことが書いてありますので、安全衛生法の中にあります作業環境の測定というものは本当に正しく行われているのだろうかという疑問がやっぱりこの中で出てこなければならなかったのではないかというふうに思いますし、また健康診断というものが本当に正しく法の趣旨に従って行われていたのかどうなのか、おざなりであったのではないだろうかというような疑問点もやっぱり話し合われたのではないかというふうに思いますし、さらに作業時間などというものもきちっと厳しく規制されているはずなんですけれども、そういう点についても点検が行われていたのかどうなのか。だから、大丈夫だからそういうようなものは外してもいいんだというふうな考え方のお話し合いが行われたのかどうかということについてもお伺いしたいと思います。
  15. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) この研究会議報告書先生のお手元にあるかと思いますが、これをごらんいただけばわかりますように、さらに必要な保護については「これを拡充し」というようなことがございます。ですから、先ほど来必要のなくなったもの、あるいはこれから必要なもの、いずれにつきましても、御説明しておりますようにさらに深い検討専門的な見地から必要であるということを指摘していらっしゃるわけでございまして、それは労働基準法研究会あるいは基準法審議会その他専門的な方々のお知恵を拝借しなければならないのではないかと考えております。
  16. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、大体わかりましたが、合理的だ、あるいは科学的な根拠があるというのは、これからの検討にまつということであって、そうすると、その大体めどといいますか、労基法改正に至るまでのめど、その辺はいかがなものですか。
  17. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 労働基準法の問題でございますので、私の所管ではございませんのですが、私といたしましてはこの男女平等問題研究会議報告書、それから数日後に出ました婦人少年問題審議会建議趣旨に沿いまして、労働基準法研究会あるいは労働基準審議会その他におきまして、研究ができるだけ早く行われるということを希望している次第でございます。
  18. 粕谷照美

    粕谷照美君 労基法研究会というのは大分前からもうできていると思うんですけれどもね。その中では、じゃこの点についてはどのような研究がいままでに行われているんですか。たしかこれは昭和四十七年に発足をして、三年間ぐらいで大体めどをつけたいというふうになっているわけですね。そうすると、もう五十一年ですから四年たっているわけでしょう。その辺のところはいかがですか。
  19. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 労働基準法は、女子保護のことだけではなくて、非常に労働条件の各般にわたる大きな分野にまたがる法律でございまして、その根本的な問題からまたすみずみの問題に至るまで広く研究をしておられるわけでございます。その結果、安全衛生法あるいは賃金支払確保法その他の結論が出まして、幾つかの成果が出ているわけでございますが、現在、一昨年からでしたか、この女子保護については検討が始められておりまして、いままだ継続中でございますので、まあ先生方研究でございますので、私どもの方からいつごろまでにどうしていただきたい、あるいはどうなるであろうというようなことを申し上げることはいたしかねるわけでございます。
  20. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、その次にお伺いします。  重量物取り扱い項目について、具体的にどのようなお話し合いがありましたか。
  21. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 重量物取り扱いにつきましては、余り細かいお話が出たというふうには記憶いたしておりませんが、これもまた一つ検討課題ではなかろうかと思います。これも含めてすべて女子保護と言われますものにつきましては、この際すっかりいろいろな光を当てて研究をするべきではないかという姿勢が示されているわけでございます。
  22. 粕谷照美

    粕谷照美君 それではお伺いしますけれどもね、この女子労基法については、第二小委員会で一昨年から研究をされているとおっしゃいましたけれども、ここの中で大体いままでどのようなことが研究をされて発表されているんですか、まとまっているんですか。その辺を該当者がいらっしゃいましたら具体的に伺いたい。
  23. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 女子の問題につきましては、非常にむずかしい複雑な問題がございまして、特に医学的な研究を必要とする面が多いものでございますから、医学的専門的立場から見ました研究をさらにお願いしようということで、この研究会議からさらに付託されまして、お医者様の集まりであります専門家会議医学的専門的立場から見ました女子特質ということについての御研究を一年ぐらいかけてしていただいたわけでございます。それがたしか一昨年報告をいただいているところでございますが、それは女子の身体的な特質、それに伴う、それに付随する問題を挙げておりまして、それを参考材料一つということにいたしまして、研究会議がさらにほかの面も検討していただいているという状態でございます。
  24. 粕谷照美

    粕谷照美君 ですから、その医学的な専門家会議が行われていまして、その報告書が出ていますけれども、その重点というのは、一体この報告書あるいは建議書とかかわって、どういうふうなことが重点的に出されていますか。
  25. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 「医学的・専門的立場からみた女子特質」ということで、第二小委員会の方に報告されました専門家報告内容ということでございましょうか。——それは、簡単に御紹介申し上げますと、母性保護に関する事項危険有害業務就業制限に関する事項労働時間及び深夜業の規制に関する事項等について、簡単に分けて申しますとそのように分かれるかと思います。  母性保護に関する事項につきましては、母体及び胎児及び出生児保護をねらいとしまして、妊娠中及び分娩後に起こりやすい障害とその防止並びにその処置について考察しているわけでございます。  それから、月経をめぐる問題については、女子特有生理的周期に絡んで就業を困難ならしめる事態の本質と処置考え、かつその期間中の就業の問題について考察しているわけでございます。  さらに、危険有害業務就業制限に関する事項につきましては、さまざまな性質作業負担作業環境条件に対する生体反応における男女の差、妊娠中の女子における有害因子に対する感受性の高さ、胎児への影響及び将来の母性機能に対する有害因子影響などについて考察しております。  三番目に「労働時間および深夜業の規制に関する事項」につきましては、長時間労働や深夜勤務影響女子において男子よりも一深刻であることを立証している資料が少なくないこと、及びこの関係については女子の本性ばかりではなくて、現在のわが国の女子の置かれている社会環境影響も無視できないこと、そのようなことを考察しているわけでございます。
  26. 粕谷照美

    粕谷照美君 重量物については、余りこの御論議がなかったというふうにおっしゃっていますけれども労働省そのものとして、じゃ一体どのように考えていらっしゃるのですか。
  27. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) これは非常に専門的な問題でございまして、私申しわけないんですけれども、そのことについてお答えできる立場ではございませんので、労働基準局あるいは安全衛生部の方で専門にやっておられることでございます。
  28. 粕谷照美

    粕谷照美君 大変腰痛症なんかも多発しているわけですからね、これを外すのか外さないのか。これから研究するとおっしゃってもある程度の流れというものがわからないと、私どももまた意見もなかなか申し上げられないというふうに思いますから、基準局の方がそれ専門だとおっしゃるんでしたら、基準局来ていらっしゃいますか。——そうですか、それじゃ後で答えてください。  じゃ、内容にも触れてもう少し別な観点から伺いますけれども、時間労働制限あるいは休日労働禁止、深夜業の禁止について、範囲はどの程度のことを考えていらっしゃるのですか。それから、これから審議をされるというふうに思いますけれども、たとえばその際の科学的な根拠というものを、やっぱりどういうふうに考え審議をされていこうとするのかをお伺いしたいというふうに思います。たとえば深夜業そのもの日本労基法と違って、たとえばILOの八十九号条約では午後十時から午前の七時までと、こういうことになっていますし、先進工業国の諸外国労働時間というものは、深夜業の時間というのは一体どのようになっているのか、あるいは週の労働時間はどういうふうになっているか、昼食休みの時間というのは日本と比べてどうであるか、あるいは有給休暇、夏休みというのはどのようにとられているか、週休は一体どういうふうになっているか、そういうようなことなども含めて考えていらっしゃるのかどうかということをお伺いしたい。
  29. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 当然、具体的に法律あるいは規則改正ということになりますれば、いま先生が御指摘になりましたようないろいろな項目につきまして外国資料あるいは医学的な知識その他を動員いたしまして十分に検討し、慎重に結果を出さなければいけないと考えておりますが、先ほど来申し上げておりますように、いまのところはこの研究会議報告におきまして基本的な考え方と言いますか。方向が出ておりますところで、具体的な審議検討はこれからということでお許しいただきたいと存じます。
  30. 粕谷照美

    粕谷照美君 それじゃ、婦人少年局長はしょっちゅう諸外国へいらっしゃるわけですけれども、いま私が言いました、たとえば深夜業をやった女子労働者帰宅条件というものが、諸外国ではどのようにして保障されているのかとか、あるいは大体一週間の労働時間はどの程度であって、週休はどの程度だというようなことについてお伺いしたいと思います。
  31. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 手元に十分な資料がちょっとございませんが、ここにありますものでお答えさしていただきますと、深夜業につきましては、先生おっしゃいましたようにILO条約におきましては夜の十時から次の朝の七時までの間の継続七時間を含む継続十一時間の女子の使用を原則的に禁止するというのが八十九号の条約内容でございます。それから西ドイツでは二十時から六時となっております。それからフランスでは二十二時から五時の時間帯を含む継続十一時間の夜間労働禁止しています。それから、ソ連では二十二時から六時までというような例がございます。ただILO条約につきましては、現在、昨年の六十回総会において、またその後の動きがございまして、ILO条約の一部女子に関するものについては、やはり男女平等の見地から検討し直さなければいけないということが決まっておりまして、その中に深夜業のものも入っていると聞いております。
  32. 粕谷照美

    粕谷照美君 帰宅条件ですね、たとえば二十二時で終わった人たちが、日本のようなところでは一時間半ぐらいの通勤で帰っていくなんというようなことがあるわけですけれども、そういうような条件は諸外国ではどのように保障されているかということについてお伺いしているんです。
  33. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 申しわけございませんが、その点につきましてはちょっと資料がございません。把握いたしておりません。
  34. 粕谷照美

    粕谷照美君 じゃ、そのような資料も含めて後で出される、あるいは検討されるというふうに思いますから、ぜひ多方面にわたっての研究をお願いしたいというふうに思います。  じゃ、大体話し合った内容というものはわかりましたけれども、いろいろありますけれども、深夜業を認めなさいという意見も非常に出ているということで、ここのところが問題になったわけですが、深夜業を禁止をしないということで、一体どんな職種でどれだけの人たち管理職に抜てきされる、あるいはそういうことを外すことによって、婦人が男の人たちと肩を並べて平等に働けるというふうに労働省としてはお考えになっていらっしゃいますか。
  35. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) いまおっしゃいました問題につきましては、非常に影響するところが微妙と申しますか、また大きいとも考えられますので、慎重に考えなければいけないと思いますが、いままで深夜業というものが規制されておりました職種の中に婦人がどのぐらい働いており、そしてその中でどのくらいの婦人管理職あるいは専門職あるいは深夜業をやらなければならないようなポストに進出、昇進しようと考えているか、またその可能性がどのぐらいあるかというようなことを、あわせ考えなければなりませんので、その推測は非常にむずかしいと思います。影響が大きいということは十分認識いたしております。
  36. 粕谷照美

    粕谷照美君 お答えが何かすれ違っていて、私の聞き方が悪いんでしょうかね、ちょっとお伺いをしたいというふうに思いますけれども。  それでは、管理職になったら深夜業が必要なんだという考え方に立ったならば、そういう人たち適用除外がいまでもあるわけですからね、外すということで間に合うのではないかというような討論が行われたのか行われなかったのかということも、ではお伺いします。
  37. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 管理職のことだけではございませんけれども、職務の性質上長くその仕事につき、その中で専門的に伸びていこうと思う場合に、どうしても深夜にわたることをしなければならないというような職務があるんじゃないか、代表的な例としては管理職というようなものはそういうことが多いんじゃないかというようなことで、管理職になりたい、またその能力もあるという人が、深夜業ができないためにその機会を摘まれるということは残念ではないかという議論は出たわけでございます。
  38. 粕谷照美

    粕谷照美君 日本の場合はね、深夜業ができないから管理職にできないというよりは、管理職にするということの条件として、平でいるときにもやっぱり深夜業やる。やっているからあれは管理職にできるんだという、こういう逆手にとられるというおそれが非常に出てくるわけですよね。逆にまた、平でいるときに深夜業をやらせて、本当にじゃあそういう中から管理職が進出していけるのかということについては、私は非常に厳しいというふうに考えているんですけれども、その辺の分析はいかがですか。
  39. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 確かに先生がおっしゃいますとおり、深夜業をするかしないかということだけで昇進昇格が決まるとか、ふえるとかいうようなことはないと思います。ほかにもっといろいろむずかしい深刻な問題がたくさんございまして、これを多少変えたからといってそれが直ちに昇進昇格、あるいは管理職がふえるというようなことに単純に結びつくというものではないと思いますが、これも一つの要因ではないかというお話が出たわけでございます。
  40. 粕谷照美

    粕谷照美君 それじゃこれはもう相当の期間かけて研究、討議をしていくということにならざるを得ないんじゃないかというふうに思いますが、そのときにはやっぱり現場で働く労働者たちの意見というものが、徹底的に調査をされなければならないというふうに思いますけれども、そういうチャンスを保障するというお考えにお立ちですか。
  41. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 当然そういうことを考えて慎重に対処していきたいと思っております。
  42. 粕谷照美

    粕谷照美君 なぜ私がそういうことをお伺いしたかといいますと、報告書の中には、そういうことは非常に問題があるから、長期の展望に立ってやらなければならないんだという、そういう報告になっていますし、また建議の中にも、そういう長期的展望の中にも入っていながら、もう一つどうして矛盾した部分が入るんだろうかというふうに思うんですけれども、優先して積極的にやらなければならないというところにこれがまた入っているんですね。どちらが正しいんだかわからないというふうに思ったものですから、十分慎重にやられるということをお伺いして私は安心いたしましたから、次の方に、時間の関係がありますから移りたいというふうに思います。  それで、文部省来ておられますか。——文部省にちょっとお伺いいたしますけれども、あなたはこの報告書をお読みですか。
  43. 奥田真丈

    説明員(奥田真丈君) 報告書と申されておりますのは……
  44. 粕谷照美

    粕谷照美君 就業における男女平等についての報告書ですけれども
  45. 奥田真丈

    説明員(奥田真丈君) はい、拝見しております。
  46. 粕谷照美

    粕谷照美君 それじゃ、この報告書の中で、一体なぜ男女の平等の問題が出てきたのかという、その背景と問題点に触れておりますね。一つは、固定的な役割り分担の意識が根本にあるからだ。二番目には、家庭や学校の教育に触れて、特に高校における家庭科の女子のみ必修ということが問題なんだ。こういうことを言っているわけですが、社会通念を是正するには、教育の各段階で固定観念にとらわれない教育や進路指導が行われるべきだということを言っております。現状の反省も含めまして、教科書の内容についてのこの問題、あるいは教育課程の改定に当たっての考え方、進路指導に当たっての考え方なんかをお伺いしたいというふうに思います。
  47. 奥田真丈

    説明員(奥田真丈君) 労働省に設けられましたこの「就業における男女平等問題研究会議報告書」というもの、十月二日付のものは私も拝見しておるわけでございますが、ここに述べられておる事項の中で、特に学校教育関係に関する事項というものをずうっと見てまいりますと、いま先生御指摘のような事項が当たるのではないかと思っておりますが、この中で社会通念の是正として男女の役割り等についての固定的な社会通念があるが、それを特に教育においてはその社会通念の形成の重要性にかんがみて、これについての配慮をしろというような趣旨のように読んでおるわけでございますが、今日の学校教育におきましては、一言で言ってしまえば、ここに述べられておるような事柄については十分配慮しながら教育が実践されておると思います。特に男女相互の間の理解や協力の問題については、その学習を学校教育全体で、あるいは学校教育の場である学校生活全体を通じて留意するようになっておるわけでございます。したがいまして、現在の学校教育の教育課程におきましても、このことは実施されておると思うわけでございますが、具体的な事例を一、二申しますと、たとえば社会科の学習におきましては、家族生活というような大きな単元を学習事項を設けまして、そうしてそこで家族員相互の理解と協力が大切であることを注目して、それをねらいとして学習するんだということを国の教育課程の基準でございます学習指導要領に明示しておるわけでございます。したがいまして、この現行の考え方は、今後教育課程の基準の改善をいたす場合も提唱いたしますと同時に、さらに今回こういう研究会報告等に述べられておる事柄等も十分に意識いたしまして、将来の学習指導要領改定の際にはその資料として利用していきたい、こういうように考えておる次第でございます。
  48. 粕谷照美

    粕谷照美君 文部省は文部省自体としては配慮をいままでしてきているし、問題はそうないというふうにお答えになるのは当然だというふうに思いますけれども、世の中は非常に大きく動いているわけです。特にこの問題が大きく出されてくるようになってからの文部省の姿勢というものは、私は非常に足りないんではないだろうかというふうに思います。特にこういう運動をしていらっしゃる高校における家庭科の男女必修を進める会、あるいは教科書の中をきちんと見直していこうという、こういう運動を進めていらっしゃる方々の意見ども文部省の方に上がっているというふうに思いますから、それらの意見を十分に取り入れられながら、いま教育課程は中間答申だというふうに思いますけれども、最終答申が行われるまでにはきちんとそういうようなことの意見も十分踏まえられるようにお願いをして、今後の御努力を期待したいというふうに思います。  基準局、先ほどの質問お答えが出るでしょうか。来ていらっしゃいますか。——いらっしゃらなければもう少し先に進みます。
  49. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 先ほどの重量物関係のことでございますが、専門的には申し上げましたように労働基準局の所管でございますけれども、非常に専門的な事項でございまして、労働基準局の担当者及び今後さらにほかの専門家とも相談いたしまして、結果を出していきたいというふうに考えますので、そういうことで御了解をいただきたいと存じます。
  50. 粕谷照美

    粕谷照美君 いまのところでは全然変えるということを考えていないというふうに理解をしてよろしいですか。
  51. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) ちょっと聞こえにくかったのでございますが。
  52. 粕谷照美

    粕谷照美君 いまの段階では、まだこの重量物については討議もしていないし、ここのところを変えるという段階には至っていないというふうに理解をしてよろしいんですか。
  53. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 研究審議はこれからする予定でございまして、変えるか変えないかという結論も、その審議の結果を待って出ることだと考えます。
  54. 粕谷照美

    粕谷照美君 では、最後に質問をしたいというふうに思いますけれども、この報告書を受けて建議が出され、さらに建議を受けたというよりは、それと同時に婦人少年局で独自に婦人労働旬間というものを設けられてパンフレットをお出しになった。このパンフレットでもって、これから婦人労働者あるいは使用者側に徹底的に職場における男女の平等を進めるということについて指導が行われるというふうに思いますけれども、そのパンフで大変気になっているところがあるわけです。こんなことの指導で十分に男女平等が進められるのかどうなのかという点についてお伺いしますが、五ページを読んでいただきまして、「女子であることを理由とする差別的扱い」として、「法に抵触するおそれのある例をいくつかあげてみましょう。」と、こうありまして、六ページには「初任給について」、「昇給について」、「手当について」、  「賃金表について」、「退職金について」、こう出されているんですよね。私はこの六ページにあるものは全部労基法違反だというふうに思うんですが、このおそれのあるということでよろしいんですか。
  55. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 労働基準法の第四条は、五ページの下にございますように「使用者は、労働者女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱をしてはならない。」と書いてあるわけでございまして、余り細かいことあるいは詳細には言っておりませんので、個々具体的な事例は非常にほとんど各企業別あるいは事業所別に違うと言ってもいいぐらいさまざまでございます。したがって、それぞれの具体的な事例がこの法律に違反であると断定できるかどうかということは、非常に個々別々に慎重に研究してみなければいけませんし、六ページに挙げました例もごく簡単に書いてございますので、これらの例が直ちに第四条の先ほど申しました条文にすぐ違反すると、ここに書いてあるようなものは直ちにそうであると断定はしにくいわけでございます。
  56. 粕谷照美

    粕谷照美君 非常に重要な問題だというふうに思うわけです。婦人少年局婦人労働課長高橋久子さんのこの「婦人労働法律問題」という本を見てみますと、この六ページのところにあります、たとえば「初任給について」「職務内容、学歴などに差がないのに、男子七万七千円、女子七万円とするなど、初任給に男女別の差を設けること。」という項目については、彼女のお書きになったのはこういうふうに書いてあるわけですね。「同じ職務内容の初任給で、男子〇万〇千円、女子〇万円と賃金格差を設けたり、あるいは、就業規則によって」云々とこうしながら、「このように、学歴、技能、職務内容等の要素による差ではなく、単に性別によって初任給に差を設けることは、労基法第四条に違反するものである。」と明確に断定をしていらっしゃるわけです。で、その他事例二、三挙げまして、全部労基法違反だというふうに出ている。それとこの六ページの項目とがもうほとんどと言って同じわけなんですから、私はこういうことはやっぱり労基法違反なんだということをきちっと労働省が指導しないと、おそれがあるんじゃまあやってやろうかと、こういうことになりはしないかというふうに思うんです。だから本当に労働省の姿勢というものを大事にしていただきたい。私の要求はこのパンフレットを書き直してもらいたいというぐらいの希望を持っているんですが、そのくらいのお考えありますか、いかがですか。
  57. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) ここに違反の、法に抵触するおそれのあると書いてありますのは、そういうことだと考えてもいいと、しかし個々別々にはいろいろとほかにも考えるべきことが、調査すべき点があるかもしれないのでという趣旨でございまして、お読みいただきましたその本にもございますように、こういう条件があります場合は非常に違反する可能性がある、おそれがあるということでございます。個々別々には、企業別に調べなければならないということを慎重に書いたまでのことでございます。
  58. 粕谷照美

    粕谷照美君 じゃ、指導のときにはこれはもう具体的に労基法違反ですと、しかし具体的にはいろいろ問題がありますから慎重に審議をしなければならない、こう逆に指導されますか、いかがですか。そのことをお伺いします。
  59. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 私どもの気持ちとしては、そのぐらいのつもりでございます。
  60. 粕谷照美

    粕谷照美君 じゃ、まあ要望として気持ちは是非そういうふうにお書きになっていただきたい。気持ちはあるけれども、書いていることが逆だということじゃ本当に困っちゃうわけです。  以上のことをいろいろ質問いたしましたけれども、私の質問したかったことに答えていただけなかった部分もありまして、大臣にはよくおわかりにならなかった部分もあるんじゃないかと思いますが、以上のような流れの中で、大臣所信表明を最後にお願いしたいと思います。
  61. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) 非常にうんちくの深い御質問をお聞きいたしまして、私もいま一生懸命勉強の最中でございまして、大変むつかしいことだなあと思っていま聞いておりましたが、私は男女平等という問題につきましては、世間でもいろいろ言われておるし法的にもそういうふうになっておりまするが、さて、これを実際に平等の線へ持っていくということは大変むつかしい問題だなあと、しかし、むつかしくてもそれを一歩でも近づけていかなければならないというふうには考えております。これからもさらに御趣旨を体しまして勉強さしていただいて、平等の線に一歩でも近づくように努力をいたしていきたいと思います。
  62. 粕谷照美

    粕谷照美君 大臣の力強いお言葉を聞いて私も安心いたしましたけれども、本当に今度また是非選挙にはお勝ちになってまた大臣になっていただきまして、是非文部大臣に対してはそういうふうにしてもらいたい、あるいは使用者側に対してはこういうふうにやっていただきたい、労働組合にはあなた方の意見はどのようなことがあるかという、こういう積極的な行動をお願いをして私は質問を終わりたいと思います。     —————————————
  63. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、星野力君が委員辞任され、その補欠として野坂参三君が選任されました。     —————————————
  64. 田中寿美子

    田中寿美子君 大臣、いま粕谷さんのおっしゃいましたように、もし男女の平等の問題を一生懸命におやりになればまた当選なさいますので、労働大臣にもおなりになると思いますのでがんばっていただかなくちゃなりません。  いま粕谷議員がお聞きになったことで答弁も大変不満足だったという気がしますのは、大変森山局長用心深くてうっかりしたこと言わないようにしていらっしゃると思うんですが、実はこの問題、粕谷議員が主として保護のところをやること、私は雇用問題をと二人で分担しましたから、そっちの方に余り深入りしていると時間がなくなりますけれども、なぜこのようなことを私どもが一生懸命で言うかと申しますと、先般決算委員会で市川房枝議員が重量物制限はもうそろそろ取り外してもいいんではないとか、それから深夜業は取り外さないと管理職になれないのではないかという質問をなさいました。私は議事録をちゃんと読んでみると、そういうふうに取り去れと言っているのじゃなくて、取り去ることを検討してはどうかと、働く婦人意見を十分聞いてやるべきで、官側が勝手にやったり、使用者側が勝手にやってもらっては困るというふうなこともちゃんと入っておりますから、十分それだけのことは入っているけれども、新聞はすぐさっと婦人の方は取り去るべきだと、それが婦人の職場を狭めるものだというふうな書き方をしたわけですね。ですから、大変みんなに大きな波紋を巻き起こしているわけでございますので、きょうはもう少しちゃんと婦人少年局あるいは労働省あるいは労働大臣は基本的には差別があってはならないと、基本的というのを一生懸命おっしゃいました。具体的には特別扱い、特別の措置を行われているものについては検討してあるものは外すべきであると。それから、あるものはもっと保護を拡大するべきものもあるというようなことが両方書かれているわけですね。それで、いま私は重量物のことをちょっと関連しておりますので、続いてちょっと申し上げたいと思いますが、基準法研究会の第二小委員会ではずっと長く女子保護の問題、労働時間の問題を検討していらっしゃって、そして専門委員に委嘱して医学的な見地から研究していらっしゃいましたね。その報告書が出されている中で、私は市川さんが重量物はもういまでは機械化が進んでいるから女の人もそんな重い物を持つはずはない、だからそろそろ外していいんではないかとも思うがという発言があるわけで、それで重量物のところを見ましたところ、あの専門委員報告の中にいろいろの場合をずいぶん細かく検討していらっしゃって、たとえば十キロから十五キロの重量物を運搬するともうそこで女性の肉体は子宮下垂を起こす、そのようなことがたくさん書いてあるわけですね。ですから、その二十キロ以上継続して扱ってはいけない。それから、断続なら三十キロ以上は扱ってはいけないといういまの基準法の基準というのは、私は大変何というか、ずいぶんゆるやかな基準なんであって、その基準を取ってしまう必要は一つもない。もし仮に機械化されていて重量物を扱わないならそれで結構ですけれども、私は継続という場合に、二十キロ以下でも何遍も何遍も繰り返して重い物を持って歩く現場を一体どういうふうにごらんになるのか。私幾つかの現場を指摘したいと思うんですけれども、たとえば汽車の中で、ローカルの汽車でしたらお弁当なんかをたくさん積んで運んでいる女の人、物すごく揺れたり物すごく込んでいる中であれを動くというのは大変なことだと思うんですね。ですから、そういう現場の、あるいは下部の労働婦人保護をするためには、うっかり外してもらっては困るということを申し上げておいて、そのことについての議論はしておりますと、私の方ができなくなりますから。  それからもう一つ、深夜業のことについても粕谷議員がお尋ねになったんですが、この就業における男女平等についての会議報告書も、それから婦人少年問題審議会建議にも、両方とも深夜業なんというものについては緩和しないと管理職になれないという問題が出ているわけですけれども管理職のことばっかり考えていただくと困るので、管理職の人は粕谷議員も言われましたように深夜業の除外例のところで外せばいいのであって、法律本法をさわってもらいたくないということなんですね。それから、たとえば新聞記者のことを市川議員も言っていらっしゃいますが、婦人記者の方々の意見を聞いてみますと、深夜業ができないということが口実になって、ほとんど第一線記者にはされないとか、そう言いながらあれがあることがむしろ使用者としては便利なんであって、女性を家庭欄とか婦人欄に閉じ込めておいて、社会部とか第一線の報道の方に回す気はさらさら使用者の方にはないんで、これは大変微妙な問題であって、もしもどうしても深夜業をしてまで第一線の記者になりたいと思う者があるならば、やはりそれは深夜業の除外規定のところでやれるじゃないか、だからやすやすと本法の規定をさわってもらいたくない。深夜業というのは男も女もしないのが私はたてまえであるべきだと思うんですね。深夜業を午後の十時から五時までとるというのも、もっと朝七時までというような八十九号条約に準ずるようにむしろ広げるべきであるというふうに思いますので、基準法研究会についてはまだ結論が出ていない、それで婦人少年局長としては答えられないというふうにさっきから何度もおっしゃっておりますが、きょう基準局の方の法律関係の方も要求していましたし、職安局長も要求していたんですけれども委員長おいでになっていないようですが、どういうわけなんでしょうか。
  65. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) いま呼んでますのでもうすぐ来ます。
  66. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは、婦人少年問題審議会の十月五日の建議、これは「雇用における男女の機会の均等と待遇の平等の促進に」ついてというふうになっておりますね。こちらの方は就業における男女平等についての研究会なんです。私はこの二つの関係を伺いたいんですけれども雇用というのはこれは採用も含めた言葉だと思う。英語で言えばエンプロイメントですね。それで百十一号条約は「雇用及び職業」ときちんと書いてありますよね。だから、採用の段階から含めて、採用されて後の労働雇用条件全体を含めてILO百十一号条約というのはきちんとそう書いてある。婦人少年問題審議会建議は「雇用における」というふうにしてありますから、これには私は採用まで含めてあるというふうに思います。こっちは「就業における男女平等について」ですから、就業してから後のことに集中されていて、一点採用のこともちょっと載ってはおりますけれども、これはどういうわけかということなんです。つまり、いま一番問題なのは、採用——雇い入れの際の不平等であって、もう初めからシャットアウトされているわけですよ、女は。それでも大臣やっぱり本質的平等でしょうかね。最初から就職したいと思っても受験も許されない。女子を除くなんというようなそういう採用の仕方をしているんですよ。それ、やっぱり本質的平等でしょうかね。
  67. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) 御指摘の就業という問題ですが、これは職場及びその入り口である採用を意味しておるというふうに考えておるわけでございます。したがって、研究会では採用を含めた職場における男女平等問題調査研究が行われておると、こういうふうにわれわれは解釈いたしております。でありまするから、就業という意味がそれは確かに文字どおり言えば職場についてからの意味になるわけでありまするが、この入り口の採用ということもこの中に含まれておると、こういうふうに御了解いただきたいと思います。
  68. 田中寿美子

    田中寿美子君 それならば、これは「雇用における」、こっちも「雇用における」となっているんですから、なぜ「就業」とわざわざなすったかということですね。これは森山局長、昨年国際婦人年のメキシコ大会の宣言とか決議、それからILO六十回総会の宣言や決議があります前に、私、三月の段階だったと思いますが、予算委員会の分科会で、雇用平等のことについてお尋ねしました。そのときに雇用の平等のための特別の委員会でも設置する意思はないのかと言ったら、局長はいま就業における男女平等についての研究会を発足しておりますというお答えがあったんですね。これを「就業」と特になさったのはどういうわけか。私はどうしてもこれはその採用のところを避けるという意思が働いていると思うんです。全体の報告がもう本当にそうですからね。
  69. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 実はこの名前を「就業」といたしましたのは、先生のおっしゃいますのとむしろ逆でございまして、   〔委員長退席、理事浜本万三君着席〕 雇用というあるいは職場というふうに申しますと、その職場なり雇用に、入ってからというふうに誤解されはしないかと、そういう趣旨でなくても、もっと広いものだということがはっきりするように就業と言った方がよかろうという考えで「就業」という言葉にしたわけでございますが、その後この昨年のILOの総会におきます決議その他で、建議の名前と同じように、雇用における男女の機会の均等と待遇の平等というような言葉が使われるようになりましたので、なるべくそろえた方がよかろうというので、実は建議はことしっくりましたものですから、それでこちらはそういう名前になっているんでございますが、中身は私どもとしては全く変えているつもりはございません。同じ気持ちでございます。
  70. 田中寿美子

    田中寿美子君 それじゃわかりました。今後やはりそういう、もっときちんとするならば、雇用及び職業におけるというそのILO条約の言葉と同じように合わせていただきたいと思う。私ども雇用という場合には、雇い入れから始まって雇用されて後の全部を指して、いわゆるエンプロイメントですね、というふうに考えたいと思いますので、今後特に問題のあるのはその採用の部分なもんですから、念のため申し上げておきたいと思います。  それで、採用に関してなんですが、一番これがむずかしいところである。それで採用条件を男性に限定するとか、それから女性の学歴、年齢、職種で区別するというふうに、これにも書いてある初めから求人においての差別を行うということに対して、どういう措置がとれるかということですね。これはこの研究会議でも討論されたと思いますが、どういうふうに討論されましたでしょうか。
  71. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 確かに雇用あるいは職場に入ります一番最初の入り口で女子を採らないとか、あるいは非常に厳しく制限されるというようなことがございまして、それがまず一番最初の不平等のスタートであるということがこの研究会議におきましても論じられたわけでございます。しかし、それを解決する方法といたしましては、ただ女子を男子と同様に全く平等の機会を与えろということをうたうというだけでは実際に効果が上がらないと考えられますので、その裏づけといたしまして女性が男性と同様にその能力を十分に発揮できるように、そのほかの文法をいろいろと措置をとらなければならないということから、ここに挙がっておりますようなことが言われているわけでございまして、まず基本的には社会通念の是正あるいは行政指導の強化、職業訓練、職業指導の充実、社会環境の整備、それから保護の範囲の明確化あるいは関係者の努力というようなふうになっているわけでございまして、採用の平等もこれらのこととあわせてやって初めてできるのではなかろうかと考えます。
  72. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、この問題は積極的な方策をとらなければいけないと思いますが、その問題もう少し後にいたしまして、じゃ採用された後の、就業上のいろいろな差別というのは、ここにも掲げられておりますし、これは一番女子労働者が苦しみをなめているものですね。それでしばしば訴訟が行われておりますよね。たとえば結婚退職なんというのは男性にはあり得ないことでしょう、結婚したらやめなさいなんということは。それから若年定年ですね。ひどいのは女性が三十五歳で男性は五十五歳なんというひどい定年制がある。それから、共働きをしている人がある程度高い収入を得るようになったときには肩たたきが行われて、あなたのところもうだんなさんが相当の地位なんだからおやめなさいというようなことが職場では行われるわけですね。それから昇進、昇格の格差がついていく。だから、賃金なんかこういうふうになっていきますよね。大きな格差が出てくる。そういう問題に対して、それからまあ妊娠、出産で退職を勧奨する、そういう問題に対してはこれまで幾つかもうやむを得ず訴訟に訴えているわけですね。その訴訟では大抵訴訟した方が勝っております。で、これは民法九十条の公序良俗に反するとか、憲法十四条の法のもとの平等と、こういうことで勝っているわけなんですけれども大臣ね、これは新聞でもごらんになっておわかりだと思いますけれども、はなはだしいものがあります。たとえばこの前、日本テレビの女子のアナウンサー、三十九歳、容姿が衰えたということを理由で配置転換、この人はアナウンサーとして非常に能力が高い。非常な厳しい試験をパスして入った人ですね。それで男のアナウンサーは、ちょっと失礼ですけれども、頭がすだれのようになっていても、それからやかんのようになっていても、これは名アナウンサーいっぱいいますよ。なんで女だけ容姿端麗でなきゃならないか。こういうものすごい就業上の差別あるんですよ。これは仮処分を申請して勝ちましたよね、村上さんは。勝ったけれども、その後どうされているかというと、職場から干されているんですよね。いまアナウンス部にも置かれていないし、それから審議室というところに置かれ、何かだれもおらないところに机といすを与えられて、給料だけはくれる、こんな非人間的な慣行が行われているわけですよ。だから、こういうものに対して行政指導ということをすべきだというようにこの報告書にもある、建議書にもある。一体どういうふうに行政指導なさるつもりですか。
  73. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 判決というものにつきましては、判決が出ましたらばそれを当事者が守るということが当然のことだというふうに思います。一般的には判決に対して従われるのが普通であると考えます。もし、それが従われないというようなことがございますと、それは行政指導の前に裁判の執行の問題ではないかというふうに私は考えますけれども。そして、もし類似のケースにつきまして判決が幾つか出ているということがございますと、たとえば先ほど先生も挙げられました若年定年でありますとか結婚退職というようなことにつきましては、以前のこういう判決が出ておりますと、あなたの場合もそれに非常によく似ているから、判決が幾つか重なってこれはもう常識になっているのですからということを有力な材料といたしまして行政指導をしているわけでございます。
  74. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう少し新しく行政——これは行政指導の強化をしなきゃならないと書いてあるわけですから、いままでやっていたようなやり方じゃなくて、その同種類のものは一切してはいけませんよというようなガイドラインを労働大臣出せませんか。裁判でまあそういういまのような事件があった、そうしたらほかも同じような事例はよろしくないと、そうするなという相当強い指導はできないんでしょうか。   〔理事浜本万三君退席、委員長着席〕
  75. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) 先ほどから、まあ日本テレビの容姿端麗でないから別の職場へ持っていくというようなお話がありましたが、これはそれぞれその会社において向き不向きもあるでしょうし、いろいろありまするが、ただ、そういう理由で特別な肩たたきをやるとかあるいはいろいろな差別待遇をするとかいうようなことは、これは私は厳に慎まなけりゃならない。また、われわれ行政指導というものがなかなか広い範囲でありまして、うまくいかない面もありまするが、これはさらに研究をしまして、もっともっと社会的に世間の理解が得られるように行政指導をやっていきたいと、かように思います。強化していきたいと思います。
  76. 田中寿美子

    田中寿美子君 せっかくここの報告書にも行政指導の強化、建議書にもそうありますので、従来のやり方じゃないさらに強い、私たちの考えでは判例で勝ったような事例はもう禁止してもらいたいわけですけどね。そういうことを少し検討してみてくださらないと、国際婦人年のいま婦人の十年の第一年目なんです。十年の計画の中で一体どこまで、まず入り口の採用される段階でシャッターを落とされて、入ってしまってまたあらゆる面でこんなふうに差別をつけられたんでは、やっぱり女の人は本当に働く意欲をそがれていって、その能力だって衰えるのはあたりまえですからね。ですから、十年間の間にぐっと進めるためには何を新しくやろうかという意欲をぜひ持っていただきたいと思います。  そこで、その次にお伺いしたいんですが、このILOの六十回総会の決議の中にも、それからメキシコの決議にもありますけれども婦人がそのようにいろいろと機会の均等を妨げられて差別を受けている。それに対してその苦情処理、調停、提訴、法廷への請求のための手続を含むところの機関を設けるべきであるということがありまして、それで三者構成から成るところの苦情処理機関というようなものを設けるべきである、そしてILO百十一号条約、つまり雇用及び職業、さっきから言っております雇い入れの段階から職場にある段階全部を含めて、その性差別をしてはいけないというこの百十一号条約を批准することというような決議がありますね。それで、まあこれは大臣のお考えを聞きたいわけだけれどもILO百十一号を批准する気持ちがあるかということと、それから苦情処理の機関を設置する考えがあるのかということですね。
  77. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) 御指摘のILO百十一号条約につきましては、労働基準法等の国内法令の規定との関連が非常にあるわけでございますので、いろいろとまだ問題もありますので、現在日本では批准をいたしておりませんが、しかし労働基準法については、現在、労働基準法研究会において研究をお願いいたしておるわけでございます。その結論をもって検討していかなきゃならない。ただ、検討ということだけでなくて、前向きにひとつ善処していきたい、かように思っております。
  78. 田中寿美子

    田中寿美子君 報告書の方には「苦情処理機能の強化」と書いてありますよね。機関の設置とは書いてない。苦情処理機能というのは、私は基準局だとか婦人少年局だとか、いろんな窓口のことをおっしゃっていると思うけれども、そんなことらぐいでは容易に解決できる状況にありませんので、それで苦情処理機関を設置してほしいと思うんです炉、この建議の方にはこれは抜けておりますね。建議の方は少しその辺は後退しちゃって、そこまでは言えないということなんでしょうか。
  79. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) この研究会報告書の最後に「苦情処理機能の強化」というのが先生おっしゃったとおりございまして、建議にも「優先的に行うべき事項」の中の(5)で、「雇用における男女平等の促進を図るよう、婦人雇用管理の改善について労使の相談に応じ、助言、指導を行うため関係行政機関の機能の強化が必要である。」というのがこれとうらはらになっているわけでございます。
  80. 田中寿美子

    田中寿美子君 大変ぼかされていますね。ですから、国際婦人年で労働婦人に関しては雇用の機会の平等ということは非常に大きなウエートを占めているわけで、それに一歩進めるためにどうしても苦情処理機関を設けるべきだと私は思うのですが、そこでこの前、私昨年の予算委員会の分科会で、少し早かったんですけれども雇用平等法あるいは雇用平等委員会、イギリスやアメリカにありますね、ああいったようなものをつくる気はないかということを申し上げて、そしてそのときにはもっと漠然としたお答えだったんで、今度のはまだ少しは進んでいるわけなんですけれどもね。それで、そういうものが必要だというふうにお考えにならないかどうか。ILOの総会にも労働省から婦人を派遣なさいましたし、それからメキシコ会議には森山局長みずから政府代表としていらっしゃったわけですね。ですから、日本はそれに賛成してきているものでありますので、苦情処理のために機関を設置する、あるいはそのための法律制度、さっきから言います訴訟というのは大変お金もかかるし、時間もかかるし、勇気が要ります。職場の一人の女性がそういう目に遭ったときに訴訟を起こそうとすると、周りの人がたくさん支えてくれなければできないんですね。そうじゃなくて、やっぱり行政的な措置で早く苦情を処理し、救済してほしいというのが私たちの考えなんですね。ですから、そういうのができればそこへ持ち込んでいって調べてもらうという、そして不当なことがあったら、これはいけませんよという勧告をするような、そういう機関をつくる意思がないのかどうか。
  81. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) この研究会報告やそれから建議をごらんになっていただきましておわかりのように、婦人少年行政といたしましても、この方向で取り組んでいきたいと考えているわけでございます。この趣旨に沿いまして、さしあたって相談体制を強化いたしまして、職場の実情や苦情の把握に努めるということをまず力を入れてやっていきたいと思いますし、特に男女平等についての行政指導の充実ということを、先ほどお読みいたしました(5)の御趣旨を体しましてさらにやっていきたいと考えます。  いま先生はアメリカ、イギリスの例をお挙げになりましたんですが、アメリカ、イギリスの機能についての資料も多少ございますし、またほかの国のもいま研究しているところでございます。国によりまして特別にこういう苦情処理機関というものを設けないでほかの方法でやっているところもあるようでございまして、具体的な処理の仕方としてどのようなやり方がいいかということは今後検討していきたいと思います。さしあたりましては、現在持っております相談機能の強化ということが必要ではないかと思っております。
  82. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまの相談機能は必ずしも機能していないと私は思います。それで強制力もないわけですからね。  それで、私たちは実は雇用平等委員会法というのを社会党でいま案をつくっております。これはイギリス、アメリカのように絶対平等論に立たないです、私どもは。イギリスやアメリカその他の雇用平等——スウェーデンなんかも雇用平等の考え方は、もう男女全く平等にしろと。だから出産の産休ですら、何といいますか疾病休業と同じように扱うという考え方に立っておりますけれども、それはさっき粕谷議員も質問していらっしたように、週の労働時間が短くて週休二日で、年休は三週間も続けざま夏休めるというような国と大変違います。ですから、私たちはそういう絶対平等論をとらない。本質的平等、さっき大臣がおっしゃった基本的な平等の立場に立つんです。社会党の案では私たちはやっぱり三者構成の、ですから労働者代表、使用者代表、公益代表から成るところの雇用平等委員会、反称ですけれどもそういうものをつくって、その三分の一は女にする。それから、その委員会の持つ権限としては事業所の調査権、それから申告によって調査をして、それで不当な不平等があったらこれについてまず説得をする。やめなさいという説得をする。説得に応じなかった場合には勧告権にする。それでも聞かなかった場合には訴訟をする手続を援助する。弁護士をつけたり何か、一切援助する。そういうことを骨子にして、いま雇用平等委員会法案というものを作成しておりますが、次の通常国会に提案したいと思っておりますけれどもね。それは皆さん方の考えていらっしゃるよりずっと先に進んだやり方かもしれませんが、やっぱり働く人の間からこういう声が出てこないとぐあいが悪いんですね。  で、職業安定局の方がいらっしゃいますですか。——いらっしゃいません。じゃ、基準局——きのう政府委員の方にはちゃんと基準局長、職業安定局長というふうに要求してありましたんで、委員長、ちょっと注意してください。そういう要求はきちんと伝えてもらいたいと思います。今後こういうことがないように注意してください。  それではいいです。それではILO百十一号条約を批准する考え方がどの程度あるかどうか、まず、それをお伺いしたいと思います。
  83. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  84. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 速記を起こしてください。
  85. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、ILO百十一号条約につきましては、労働基準法その他国内法令の関係で問題が残っておりまして、まだ批准してないわけでございますが、労働基準法については基準法研究会その他の手続を経ましていま研究を続けているところでございますので、その結果によりまして検討をしたいというふうに考えております。
  86. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで、私、基準局法規関係の方にお尋ねしたいということをきのうも申し上げておいたんですけれどもILO百十一号条約というのは、さっきから申しますように、雇用及び職業における均等待遇ですね、差別に関する条約なんで、そういう差別をしてはいけないという条約なんでございます。それで、これに関して、もしこれを批准するとすれば、国内法がそれに沿っていないということが問題になると思いますので、労働基準法あるいはこれはさっきから言う雇用平等法というようなものを新しくつくるか、基準法の三条、四条のあたりを改正しなければならないんではないかというふうに私は考えるんですけれども、基準法の第三条は「(均等待遇)」の条項ですね、そこは、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」という条項ですが、そこのところに「国籍、信条又は社会的身分及び性別」というふうに入れるか、私どもその点は大変いろいろといま研究している最中なんです。で、そこに「性別」というのを入れた場合に、法律的に見たら基準法の中にある女子保護が不平等と解釈される、取り去らなければならないというふうに、前に遠藤職安局長は私にお答えになっているんですが、そういうふうに解釈すべきものなのかどうかということです、それが一つ。  それから、もし第三条に「性別」というのを入れて性別で差別しちゃいけないということにしたら、次の四条の同一賃金の原則ありますね、「(男女同一賃金の原則)」、それが要らなくなってしまうのかどうか、その法的な解釈を聞かしていただきたいんです。
  87. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 労働基準法の第三条に性別というものをつけ加えますと、同じ法律の第六章の中で、女子に対する特別措置がある、これをどのように考えるかということがまだ十分に詰まっていないといいますか、これから検討しなければならない課題でございますので、それが何らかの結論が出ませんと、三条に性別を入れるということができないというふうに、まあ逆に言えば言えるわけでございます。したがって、いろいろなところで研究していただいているのもそれが一つでございます。  それから、あと三条に性別を入れると四条は要らないかどうかということでございましたか、それは非常に具体的な法律の問題になりますので、基準局長からおっしゃっていただいた方がよろしゅうございましょうか。
  88. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) ただいまの後の件でございますが、精密に何といいますか、法令審査的に内部で議論したわけではございません。いま突然の御質問でございますが、一般的に言いますれば性による差別を禁止すれば、特に四条はその特則みたいな関係にございますので、必ずしも必要はないのではないかというふうに思います。  そこで、先ほどの問題でございますけれども、前にどういう答弁がありましたか別でございますが、確かに百十一号条約は性による差別というものを規定いたしておりまして、それに反する場合には批准困難ということになるわけでございますけれども、確かに男女の問題につきましては、つまりどういう必要があって、保護の目的があって特則が置かれるか、そのことと、いわゆる男女の性差別ということとの関係はやはり合理的に解釈をすべきで、形式的に一概に割り切るということは必ずしも適当ではないというふうに私は思います。
  89. 田中寿美子

    田中寿美子君 私もこの問題について少し学者さんたちの意見も聞いたり法律家の意見も聞いているわけですが、三条に性別を入れたからといって母性という機能を持っているところの女性に対して与えられている保護が、必ずしも反するものではないという解釈をする学者もいらっしゃいます。ですから、私はその辺を労働者が今後基準法研究会の中でどういう討論をしていかれるのか、いままでも討論があったはずだと思うのですね。そういう意見を出された学者があったかどうかを、これはひとつ森山局長に聞きたいと思いますし、それから四条はILO号条約の同一賃金の条約を受けております。受けているというよりはあれとちゃんと対応しておりますので、大変重要な規定なんですね、女性にとっては。事実上男女同一賃金の原則の違反だらけで、これは監督も余りやられていないし、それから女子労働者の方からの申告も余りないのじゃないかというふうに思うのですけれども、ですから、これはやっぱり強調したいところなんで、その両方を生かしながらいい知恵がないかということを私がいま考えているわけですけれども、どういうふうにお考えになりますか。
  90. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 初めの点について申し上げます。労働基準法研究会の学者の先生方がどのようなことをおっしゃったかということについて、個別には私ちょっと十分承知しておりませんのですが、先ほど来お話に出ております婦人少年問題審議会建議にも必要な「母性保護については、きめ細かな対策を講ずるべきであり、このことを理由として婦人労働者を差別すべきでないことはいうまでもない。」とはっきり言っているわけでございまして、基本的にはこの姿勢ではないかというふうに思います。
  91. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで私たちは、たとえば労基法の三条に「(均等待遇)」のところに性別も入れてただし書きをつけて、ここでまた念を入れて「ただし、現行法にある女子保護は差別とみなさない。」というふうな言葉を入れたらどうだろうという考え一つ持ちました。それから、あるいは労基法四条の方に「使用者は、労働者女子であることを理由として、賃金について、」というところ、そこに雇用上のたとえばずいぶんあるいろいろな問題をここに入れたら、三条とまたダブるかどうか知らないけれども、念を押すことになるので、そういうやり方もあるのじゃないかというふうに考えたわけなんです。  この前、私が予算の分科会でお尋ねしたときに職安局長は、そういうふうにすることは女子に対する就業制限が邪魔になって、三条に性別を入れることは矛盾するというふうにお答えになったのですけれども、いかがでしょうか。これは雇用の問題にも関係してきますから、私は職安局長の御意見基準局長と両方の御意見を聞きたかったわけで、いま私たちもこれについていろいろ働く婦人なんかとも相談しながら検討中なものですから、御意見を聞かしていただきたいのですが。
  92. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 労働基準法の現行の法文ができましたときには、先生がおっしゃいますような問題意識がそれほど強くあったとは思われませんので、現在の法律の中でそのままあそこに性別ということを入れるというのは少し無理ではないかというふうに私としては思います。しかし、先ほどから申し上げておりますようにきめ細かな母性保護をもっとやるべきだと、必要なものは十分やるべきだという姿勢に立っているわけでございますので、それが男女の差別だというふうに考えるべきではないという見地から言いますと、結局労働基準法の中での母性保護の部分をどのように考えていくかというところに帰結するのではないかと思います。そこの詰めが重要だというふうに考えているわけです。
  93. 田中寿美子

    田中寿美子君 重要なことはよくわかっているのですけれどもね。だから、母性保護をどう解釈するか、妊娠、出産という言葉はこれにもみんなある。だけれども、母性というのは妊娠、出産だけが母性じゃないと私は思います。それこそ女の人は生まれたときから母性の肉体を持っている、生物学的に言えば母性なわけでして、だから若いまだ結婚していない女性がさっき申し上げましたように十キロないし十五キロの物を——おたくの専門委員会報告にそういうことが書いてありますから、運搬して歩くときにすでに子宮下垂を起こすと、そのようなことは母体を妨げるのではないかというような事例が幾つも書いてあります。ですから、直接妊娠、出産に関係したことだけを母性と考えるのは非常に問題じゃないか。だから、その辺はよく検討していただかなければならないと思うのです。それで、私どもは三条に性別を入れた場合には現行の保護が差別とみなされないという解釈をしてもいいのではないか、そういう法律学者もいらっしゃいますので、そういうふうに考えているわけなんですが、それでさっきの雇用平等法とか雇用平等委員会法のことで、職安局長おいでになりますので、この前のときに就業制限が邪魔になっていまの三条に入れることはどうもぐあいが悪いというお答えと、それから雇用平等委員会なんというものは持たなくたって、訴訟の方法もあるし行政不服審査の方法もあるというふうなお答えをなすったのですけれども、職業安定法における男女の平等、これは当たりまえ、これは官側が男女に対して職業紹介をするときに差別したりしては困りますので、職安法そのものには差別してはならないという条項がちゃんと二条−四条に入っている。だけれども、私が言っておりますのは、先ほどからもう雇い入れの前にすでに求人の段階で差別がある社会通念とか社会慣行があるので、それを何とか揺り動かすために方法はないかということで、たとえばイギリスやアメリカがやっているような雇用平等委員会とか雇用平等委員会法とか、あるいはスウェーデンはそういう法律を設けていないけれども、実質的に指導して男の職場にも女が入り、女の職場にも男が入るというふうなことをやっているわけですからね。何かそういう方向をとることがいまもうすでに求められているのではないかと思うんですが、ですからさっきの基準法の三条の「(均等待遇)」のところに「性別」を入れる問題と、雇用平等委員会を設けるということについての御意見をもう一度伺いたいんです。去年から一年以上たっているわけですが、少しお考えが進歩したかどうか、つまり国際婦人年で大分問題になってきましたので。
  94. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 一年ほど前に田中先生から雇用の平等のことについてお尋ねがございまして、御答弁申し上げた記憶がございますが、そのときに職業安定法では、いま御指摘のございました職業安定法の三条、「(均等待遇)」いう条項がございまして、「何人も、人種、国籍、信条、性別、」ということが入っております。男女によって職業指導あるいは職業紹介、そういった差別を受けることはない。したがって、行政機関としては当然同じように扱わなきゃならぬということが義務づけられております。したがいまして、求人を受け付けます際に職業紹介、指導をやりますことは当然でございますが、求人を受け付けます際に求人指導といたしまして、男子に限るとあるいは女性はだめだというような求人につきましては、その内容が公共の福祉に反するあるいは合理的な理由がないという場合には、そういう求人は受け付けない、求人の内容の変更について指導をいたすわけでございます。ただ、先ほど先生からも御指摘がございましたように、いろいろな就業上の制限がございます。たとえば一日二時間以上残業は禁止されているとか、週六時間以上はいけない、あるいは安全衛生見地から、母性保護といったような見地から勤務内容就業制限する、こういったことで、その業種なり職種なり作業内容によっては女性の採用ができないような職種があるわけでございます。そういった場合に女子は採用できない、男子に限ると、こういったことはままあることでございます。そういった点をなおかつ求人内容についてクレームをつけるということは、これは私どもとしてもなかなかできないわけでございます。そういった点を除けば、男子と女子取り扱いについて差別をするというふうなことは、求人の側に対しても厳正的確な指導をいたしておるわけでございます。  そこで、お尋ねになりましたポイントは、こういった男女の性による平等取り扱いについて基準法の三条のことを申されてお尋ねでございますが、実は私は基準法のことについて御答弁申し上げたことはなかったのじゃないかと思っております、記録を確かめてみますけれども。むしろその問題よりも、私どもはこういった職業安定法上の均等待遇による平等の取り扱いと、求人側に対するこういったいろいろな制約を前提にした上での求人指導ということに重点を置いて、今後雇用の面での平等の取り扱いということを適正に運営してまいらなければならぬのじゃないかと、こういうふうに考えております。
  95. 田中寿美子

    田中寿美子君 この前私お尋ねしたのは、基準法の三条に関連してお尋ねしたんです。それでお答えも、職安法の三条で「(均等待遇)」ということで、何人も性別によって差別を受けない、そうなっていると。私が基準法の三条の「(均等待遇)」のところに「性別」を入れてはどうかと、そのときは私はそう思っていたわけです。いま少しまた検討していて、果たしてそこに入れるべきか、入れるならばよほど解釈をきちんとしておかないと危いという心配が出てきているものですか御意見を聞いているわけなんですけれども、それに関連してのお答えで、就業制限があるので無理ではないかというような言葉があったものですから、そのことを、さっきから雇用の平等、雇用平等のために苦情処理機関を設けるとILO会議でも去年そういう決議がされておって、そのために私は雇用平等の委員会雇用平等委員会のようなもので救済が必要ではないかということを申し上げたわけなんですが、そのとき行政不服審査というやり方があるではないかという御答弁だったんで、まあこれはなかなかやりにくいことですから、だからちゃんとしたそういう窓口があれば、婦人がわりあいに自分たちもどんどん申告もし、実情も調べ、そして自分たちの意欲だとか能力のために否定されるのはこれはやむを得ないとしても、もう入り口のところでまるで締め出されているというような状況をなくしたいというのが私たちの強い願いなものですから、このようなことを申し上げたわけでございます。ですから、大臣、女性が意欲が少ないとか短期間でやめてしまうとかいうことを理由にして採用しないんだとか、最近女子の大学卒業生が就職しようと思ってもほとんど求人がないという非常な嘆きを持っているわけですね。だけれども、そうしたら前任者が悪いからと、こういうことは私はやめなければいけないことじゃないか。雇用の平等というのは、前任者が悪くても本人はどうかわからないわけですから、そういう意味で平等の機会を与えるべき措置をとってほしいということでございまして、いま行政の機能を強化するとおっしゃいましたが、単に機能の強化だけじゃなくて制度そのものを検討していただきたいということを最後に申し上げまして、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  96. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) 御指摘の機能を強化するということだけでなくて、制度そのものをつくってそれに対処してもらいたいという御要望でございまするが、現在のところ私まだよくわかりませんけれども、現在の機能それぞれな施設がありますので これを十分検討して、そうして御趣旨に沿うような力を発揮するようにまず努力していきたい、こう思っておりまするが、しかし御指摘もありましたので、こうした問題も十分検討させていただきたいと思います。
  97. 田中寿美子

    田中寿美子君 最後に、じゃ御要望いたします。  国際婦人年というのはだてにあったわけじゃないんで、今後十年間の間に日本の女性はどれまで平等になり、またどれほど能力を伸ばして、社会にも参加するし、家庭生活も男女が一緒になって守っていこうかという、そういう目標を持っているわけでございますので、やはり年次計画を立てていってもらわなければ、これは婦人少年局長は一生懸命にやってくださるはずだと思いますので大臣はそれを積極的に取り上げていらっしゃるようにお願いしまして私の質問を終わります。
  98. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  99. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 速記を起こしてください。
  100. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は雇用問題、特に高齢者の雇用問題についてお尋ねをいたします。六月十八日、閣議決定の雇用対策基本計画を見ますと、二十二ページに高齢者雇用対策ということについて、本当に事こまかに述べておられております。特にこのイとして六十歳までについては、ロとして六十歳から六十四歳については、ハとして六十五歳以上についてはと、こういうふうにこれは政府は決定をしているわけでありますが、どうも現実問題、高齢労働者は一たん退職したら再就職がなかなかむずかしい。再就職しても待遇がきわめて低い、こういう状況にありますが、果たして労働者としてはこうした基本計画に沿った施策が実現可能であるというふうにお考えか、あるいはどういう努力をなさろうとしていらっしゃるか、最初概括的にお尋ねをいたします。
  101. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) いま御指摘のように、中高年齢層の方々の就職というものは非常にむつかしいわけで、特に今日肉体的にも相当に年齢も延びておる時代に、五十五歳で退職させるということはどうかということで、御承知のように法律で六十歳まで定年延長という問題を出したわけでありまするが、これは六%雇用——義務ではございませんけれども、努力規定としてつくったわけであります。しかし、最近年々これ調べてみますると、五十五歳が五十七歳になり五十八歳、九歳と各企業とも非常に年齢が延びております。でありまするから、われわれといたしましても、六十歳までという問題をこれは各企業にも理解を深めて、そうして義務ではありませんけれども、できるだけ責任体制を持っていただいて、そうして六十歳定年までは延長したい。しかし、さらにそれ以上という問題もありまするけれども、いまの努力目標としては六十歳を定着させたいということで努力をいたしておるわけでありまするが、最近情報を聞きますると、各企業とも非常に理解は深まってきておりますので、この目的、六%という目的はまず達成できると、特殊な例は別としましても達成できるものと思って努力をいたしておるわけでございます。
  102. 小平芳平

    ○小平芳平君 五十五歳定年ということは、いつどこから起きてきたことか、どういう根拠があって五十五歳定年というようなことになったのか、そういう点はいかがですか。
  103. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 現在、一般的に行われております五十五歳定年は、実は戦前から定年制が設けられております企業におきましては、通常五十五歳という定年の年齢が一般に行われておりました。これは先生も御承知のとおり、戦前日本人の寿命が大体五十歳未満であった当時の五十五歳定年でございます。現在すでにもう男子の平均寿命が七十歳を超えているという状態で、国民全体の、また労働力の高齢化、こういった状態が進んでおります中で、依然として五十五歳定年が行われておりますということにつきましては大変不合理であると、私どもかように考えておるわけでございます。そういったことでいま大臣からお答えございましたように、先般閣議決定いたしました第三次雇用対策基本計画におきましても、当面六十歳まで定年を延長するという基本方針を立てまして、それに必要な法則的な措置あるいは予算上の援助措置、行政措置を講じておるわけでございます。実情を申し上げますと、ことしの一月現在で定年の状況を見ますと、全体の中で五十五歳定年を依然として実施しておりますのは四七・三%、それから六十歳定年を実施しておりますのが三二・三%、調査企業の中ではこういう割合になっております。四十八年末の調査と比較いたしますと五十五歳定年が五二%ございました。それから比較いたしますと、この二年間の不況の中で非常に雇用情勢の厳しい中でも、なおかつ五十五歳の定年が若干ずつは引き上げられてきている。六十歳定年はやはり依然として三二%程度でございまして、わずかの伸びではございますが、それぞれ五十六歳、五十七歳、五十八歳と、一年、二年ずつ逐次定員が延ばされてきているという実情でございまして、先般前国会におきまして成立いたしました中高年特別措置法によります五十五歳以上の高年齢者雇用率が定められることになりまして、この十月一日から五十五歳以上の高年齢者雇用率は六%ということに定めまして実施に移しておるわけでございまして、こういったことを予算的な行政上の援助措置とあわせまして、今後五十五歳をできるだけ六十歳に定年を近づけていく、こういうことでせいぜい努力をしてまいりたいとかように考えておるわけでございます。
  104. 小平芳平

    ○小平芳平君 ここでいま局長もちょっとお触れになったように、五十五歳定年ということは局長いま戦前と言われましたが、戦後直後の労働協約締結のころにもう各方面に広がっていったという傾向もあるのじゃないかと思いますが、そういう点詳しく調査したわけではありません。いずれにしても五十五歳定年ということは、現在と全く時代が変わっているという点を注目していただきたい。そうして私は、ちょっと基本計画を見ましても、「労働能力が低下した人達に対する年金等社会保障施策の充実とあいまって」となっております。で、確かにこの年金等社会保障施策の充実とともに、また働く場所を確保できるようにということは、そうした高年齢者の生活を保障していく、生活していくために必要ということがうたわれております。ところが、もう一つの面からこの点を考えてみた場合には、そういう所得の面から五十五歳定年は不合理だということ、個人の本人の所得の面からもそういうことが指摘されるのですが、別の面から考えてみますと、現在は平均寿命が伸びたという点、人口構造が老齢化してきたという点、あるいは教育が高度化した、したがって実際働き始める年齢が、少なくとも高校卒、大学卒が相当数を占めるようになったというような点からしても、五十五歳で切っちゃって、後は働き場所がないということでは、一体労働力をどこで支えていくかという観点からも検討すべきだと思うのですが、いかがですか。
  105. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 全く御指摘のとおりでございまして、単に平均寿命が延びたから、それに比例して延ばせということでなくて、従来戦前あるいは戦後の長い期間から非常に大きな変化がありまして、五十五歳になりましても労働能力はそれなりに、私どもが子供のころ五十になった人が、相当年配者の人たちが、実社会人としていろいろな面で能力的に劣っていたということから考えますと、はるかに現在の五十五歳あるいは六十歳の人たちの能力なり意欲というものは高まってきていると思います。それから収入——生活の面におきましても、従来、過去の当時の状況と非常に違ってきておりまして、そういった点からも五十五歳定年というのは、いまなおかつ半分近く行われているということはきわめて不合理だと、私どもはかように考えておりまして、そういった観点からも定年制は六十までは是が非でも延ばすようなあらゆる努力をしていかなきゃならぬと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  106. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで、あらゆる努力ですが、先ほどもちょっと触れられました雇用率の設定、それから定年延長奨励金、で、雇用率の設定の方はこれからというところですね、これからどういう効果があらわれてくるかというところですが、定年延長奨励金、これなどは新聞の解説などを見ましても速やかに倍以上にふやすべきであるという提言もなされておりますが、こういう点はいかがですか。
  107. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 定年延長奨励金は四十八年度に新設いたしたわけでございますが、確かに御指摘のように額も非常にわずかであるということで、逐年増加してまいりましたが、来年度はこれを一挙に倍額近くまで引き上げるつもりでいま努力をしておるわけでございます。ただ問題は、御承知のように定年制を設けておりますのはほとんどが大企業でございまして、中小企業の分野では定年制を設けておるところはきわめて少ない。にもかかわらず、四十八年、四十九年度におきましては、この定年延長奨励金は中小企業に限って適用されておったわけでございます。これではせっかくの定年延長奨励金制度を設けました効果がきわめて薄いということでございまして、五十年度に初めて大企業にまで広げることにいたしました。大企業、中小企業を問わず、主として定年制度延長を呼びかけなければならない、協力をしてもらわなければならない大企業に広げたことによりまして、五十年度は若干延びておりますが、なおこういう不況下で定年の延長がなかなか思うように任せず進んでおりませんが、来年は大幅にこの奨励金の額を引き上げることによりまして、少しでもこの延長の効果が上がるように努力をしたいと、かように考えておるわけでございます。
  108. 小平芳平

    ○小平芳平君 これはある政府機関の研究会で労使の代表の方から出された意見ですが、この定年延長ということは五十五歳というような定年制は全く時代に合わない、速やかに六十歳なら六十歳に延長すべきであると。しかし、それにはやはり実際労働組合の立場から見ても使用者の立場から見ても、じゃあ即刻延長した場合どういうことが起きるかという職場ごとに具体的ないろいろ問題が起きるわけです。そういうことをまた気にしていたのではいつまでたってもスムーズに進まない。なかなかスムーズに進まないから、ただ定年延長ということは労使に任しておくというんじゃなくて、もっと政府が強力に推進すべきだ。政府の方から強力な推進する姿勢が出てくれば、労使ともそれに体制を組まざるを得ないくらいの、そういう姿勢が必要じゃないかという意見もあったんですが、こういう点についてはいかがですか。
  109. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 私どもは、先ほど大臣からも基本方針をお述べいただきましたように、当面六十歳までの定年延長ということでいろいろな措置を講じてまいっておりますが、ただ問題は、この定年制の延長という措置考えます場合に、いま御指摘のようにいろいろ企業、職場の中で問題がございます。この定年延長を阻んでおりますネックとなっております問題が二、三点ございます。最も大きな問題は、定年を延ばせばそれだけ賃金が高くなる、ベースアップなり定期昇給なりといったようなことが慣行として行われておりますので、それだけ賃金コストアップになる。これはこういったこの二年間の不況の中で雇用情勢が非常に厳しくなってきておりますと、ただでさえ雇用の伸びが思うようにいかない、こういう状態の中で定年を延ばしてこういった高年齢者雇用をふやすということにつきましては、企業それぞれの立場から考えますと、コストアップということは非常に大きな制約になっているわけでございます。それに加えて、定年を延ばしますとそれだけいわゆる退職金の額も累増してまいります。こういったコストアップといった問題と、それから具体的に職場の中の問題としましては、定年を延ばせばそれだけいわゆるそれぞれの段階に応じた管理職——部課長とか係長とかあるいは職長だとか、そういった管理者的なポストにある人たちがそのポストを占めるということによって下の若い人たちのポストをふさぐ、こういうことになりまして、このコストアップの問題と、それからポストの問題とが具体的に定年延長の問題につきまして労使で話し合いをされる場合に大きなネックになっている、こういうことが従来定年延長のなかなか進展を見るに至らなかった最大の原因でございます。そこで、私どもといたしましては、法制的には高年齢者雇用率を努力義務として制定することによってプッシュする。それから、定年延長奨励金あるいはいろいろな行政指導を強力に進めることによって定年延長を進めていく。と同時に、私どもと労使の話し合いで定年延長をできるだけ六十歳まで延ばしてもらいたい。その際に問題になります二つの問題、これにつきましては従来からの実績なりいろいろの今後の動向等もにらみ合わせながら、定年を五十五歳から六十歳まで延ばす場合に、一つは賃金は横ばいないしはそれぞれの人の能力に応じて若干の低下はやむを得ない。むしろ実情に応じてそういう賃金についてのいわゆる年功序列型賃金に対して改善を加えるべきである。それから、退職金は五十五歳の時点で精算、凍結する、あるいは支給をしてしまう——一括支給する。そういうことによって実際の実情に合わないコストアップの原因を除去する。それから管理職、こういったポストを外すことによって、具体的な現実に起こっております職場内でのいろいろなトラブル、そういったものを解決する、こういうことによりまして労使話し合いでできるだけこういった障壁を取り除くことによって定年を延ばしてほしい、こういう具体的な指導をいたしておるわけでございます。一部には異論はございますけれども、関係労働組合四団体にいろいろとこういう具体的なお話をしておりますと、労働組合の側からも積極的に組合からこういう提唱はできないまでも、労使の話し合いでそういった点につきまして話し合いを進めながら定年を延ばしていきたいと、こういう御賛同も得ておるようなわけでございまして、今後ともこの二つの定年延長に伴う大きなネック、これを解決、除去することによって定年延長を進めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  110. 小平芳平

    ○小平芳平君 遠藤局長、一生懸命進めておられるという姿勢はよくわかります。いまお話の中にありました退職金、これはやはり労使それぞれの立場から退職金についての意見が出されますが、この点については労働省はどういうふうに考えておられますか。
  111. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 定年延長というものがどんどん進みまして、公的年金の受給開始年齢と、定年年齢との乖離というものがなくなっていくということ、それから公的年金の水準が改善されるということ、こういうことが実現をしてきますれば、老後の生活を維持するという側面の退職金の機能というものは大幅に縮小することになるだろうというふうに思われます。しかし、退職金は御承知のようにわが国独特とも言っていいくらいの非常に日本的な制度でございますので、単にそういった機能だけじゃなくて、長年企業で働いてくれた人に対する慰労というような意味もありましょうし、あるいはまた実際の機能の側面から見ましても、老後の生活だけじゃなくて住宅を取得する、あるいは子弟の教育、結婚費用等々に実際に使われているという例もございますから、言ってみれば非常にわが国独特の一種の財産形成といった側面も持っているのじゃないかというふうに思うわけでございます。したがいまして、今後年金制度の完備等に伴いまして、いま申し上げましたように老後生活保障という意味は薄れましょうけれども、いろいろないま申し上げたような観点から総合的に今後も検討していかなきゃならぬ。いずれにしましても各方面の御意見を十分に承って検討を加えるべき問題ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  112. 小平芳平

    ○小平芳平君 確かにわが国独特の退職金制度でありますゆえに、老後生活保障という一面とともに、たとえば政策面の立ちおくれ、たとえば住宅問題、もうすでに退職金引き当てに借りているとか、あるいは退職金の支給を受けたら住宅を確保しようとかいう、そういうまあわが国独特の制度であるとともに、わが国独特のそういう政策面の立ちおくれの上から言っての要素も決して見落とすわけにいかない、見落としてはならない、これはよろしゅうございますね。
  113. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) まさにいまおっしゃいましたような側面があるわけでございまして、私どもも住宅を建てましたが、退職金をまるまる引き当てにして建てているような状況でございまして、それはもう各サラリーマンみんな共通だと思うのでございます。ですから、先ほど申し上げました財産形成的な側面というものについても十分配意しながら検討をしていかなきゃならぬというふうに思います。
  114. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、けさの新聞にもちょっと出ておりましたが、雇用安定基金というこの構想について、最初簡単に御説明をいただきたい。
  115. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 一昨年の暮れに成立いたしました雇用保険法の中で、雇用調整給付金という制度が新しく設けられました。これはもう御承知のとおり、不況期にできるだけ余剰人員を失業という形で企業からほうり出さないために、企業で抱えてもらう、その間のいわゆる一時休業といったような雇用調整策を積極的に助成するために、その休業期間中の賃金補助をいたす制度でございます。これによりまして昨年一年間に延べ二千八百万人、金額にいたしまして六百億を超える雇用調整給付金が支給されました。これによりましてこの一年余の間に、実数に直しましておおよそ三十五万から四十万人の人が失業という形で職を離れることがなくて済んだ、私どもはかように考えておるわけでございます。で、この不況期の雇用調整策としては非常に効果を上げることができたと自負いたしておりますが、今後、これからの日本経済はいままでの高度成長期と違いまして、成長率が六、七%と低下してまいりますと、この高度成長の期間中でさえも三年ないし四年置きに不況の波が襲ってまいっております。こういった際は非常にその不況の期間も幅も小さく、その影響度も少のうございますが、これからのいわゆる安定成長下のこういう不況という事態になりますと、雇用の面に及ぼします影響が非常に甚大であろうかと、こういうふうに考えられますので、この雇用調整給付金制度では必ずしも十分でない。さらに一層こういった制度、内容を充実させることによって、この不況下の雇用調整策に万全を期してまいらなければならない、こういうふうに考えておりました。そこで、こういったこれからの不況期における雇用調整策として、この雇用調整給付金制度をさらに一層拡充、内容を充実させることによりまして失業の防止を図っていきたい。そのためには、不況期には大体、おおよそ試算いたしますと一年間に千七、八百億から二千億くらいの資金が必要になろうかと、かように試算されております。そこで、現在の雇用調整給付金制度のようにその年の予算だけでこれを賄うことは非常にむずかしゅうございます。そこで、来年度雇用安定基金という新しい制度をつくりまして、平年度一定の額を積み立てておきまして、その積み立てられた額を不況の年に集中的に弾力的に運用できるような制度をつくっていきたい、こういうことでございます。この雇用安定基金によります事業は二つに大きく分けられまして、一つは、いま申し上げました不況の年に、不況の期間中に一時休業その他の雇用調整のための資金の交付でございます。もう一つは、現在各方面でいろいろと要請が出ております造船業のような、いわゆる産業構造の改変に伴います構造的な不況、こういった業種では一時的な不況期間中の過剰雇用とかいったような雇用調整だけで済まない問題がございまして、まあ構造的な改善を迫られている業種におきましては絶対的な過剰人員を抱えるということになってまいります。こういった過剰人員のいわゆる職業転換、業種転換ということが必要になってまいりますので、一時的な不況の場合と違いましてかなり中長期にわたってこの雇用調整のための援助措置が必要になってまいります。こういった一時的な不況対策とあわせて、こういう構造不況に伴う雇用調整策にも備えなければなりません。この二つの事業を、この新しい構想の雇用安定基金制度によってできるだけ失業を出さないでスムーズに業種転換、職業転換を図っていこうと、こういう趣旨のものでございます。  この雇用安定基金制度に関連いたしましてもう一つは、過去一年間の雇用調整給付金制度の運用の際にも見られた問題でございますが、一部におきまして、せっかく一時休業雇用調整給付金の適用によって失業を防止することはできたけれども、結局はその期間が切れたとたんに、企業の経営が成り立たなくなって倒産をせざるを得ないという事態も皆無ではございませんでした。つまり、国から二分の一なり三分の二の賃金補助をいたしましても、企業の自己負担分というものがかなりやはり相当な負担になるわけでございます。そこで、この雇用安定基金制度によりまして雇用調整策のための措置を強化いたしますと同時に、こういった雇用調整による国の援助に対する裏負担といいますか、企業の自己負担分につきましても、企業の自主的な準備金制度をつくることによって、不況の際に企業がその負担に耐え得るような措置をとる必要があるんじゃないか、こういうことで雇用安定基金とそれの裏になります企業の自主的な準備積立金制度、こういうものをつくることによって、不況期の切り抜けあるいは構造的な不況業種における過剰雇用の業種転換、職業転換対策に万全を期してまいりたいと、おおよそこういった構想でいま事務的に詰めておるわけでございます。
  116. 小平芳平

    ○小平芳平君 非常に早口で言われるから、また非常に専門的で何かちょっとよく総体的なのみ込みはしかねるわけですが、具体的には労働省として法改正として出すわけですね。その具体的な内容はどういうことになりますか、簡単で結構ですから。それはいまおやりになろうという事業ですね、その財源とそれからやろうという事業をもう少し、項目だけ簡単に挙げたらどういうことになりますか。
  117. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) この新しい雇用安定基金制度を実施いたしますためには、次の通常国会に法律改正案を提出いたす予定で準備を進めております。その法律改正の中身は、法律項目は、雇用保険法の一部改正とそれから労働保険特別会計法の一部改正、こういったことがその主な項目でございますが、この雇用安定基金制度の事業内容の主なものをかいつまんで申し上げますと、ただいま申し上げました雇用安定基金制度によります事業は二つございまして、一つは景気変動等いわゆる一時的な不況の際の雇用調整策でございます。その内容は、不況期の雇用調整に伴いまして、企業がその不況期間中一時休業しなきゃならぬ、そういう一時休業期間中の賃金に対する三分の二ないしは二分の一、こういった賃金補助が一つでございます。それから、雇用調整期間中に単に休業させるんでなくて、その期間中従業員に対して、労働者に対して一定の再教育訓練、こういったような措置をとる企業がございます。こういう際に、その訓練期間中の賃金の補助、それから教育訓練に必要な経費の補助、こういったことが予定されております。それからもう一つは、雇用調整のためにいわゆる移転を伴った配置転換、こうすることによっていわゆる失業させないでスムーズに転換をさせようと、この余剰人員をほかの部門へ配置転換をしようと、こういう配置転換に必要な経費の補助、こういったことがその三つ目でございます。それからもう一つは、こういう不況期間中に先ほどから、御指摘になっております高年齢者雇用の確保ということが非常に大きな課題になってまいります。そこで、一定の条件を満たしてこういった高年齢者を採用いたしましたものにつきましては、一定の期間、採用に伴う賃金の補助をしていこうと、こうすることによって高年齢者雇用の確保を図っていこうと、これが雇用安定基金の第一の景気変動、不況下の雇用調整策でございます。  それから第二は、先ほど申し上げましたような、造船業のような構造不況に伴う絶対的な過剰人員に対する雇用調整のための助成策でございます。  その一つは、いま申し上げました不況期の事業内容と同じようなものでございますが、一つは、こういった雇用調整期間中に企業が職種転換、職業転換をスムーズに行うために教育訓練を行います。その際の期間中の賃金補助と教育訓練に必要な実費の補助でございます。それから二番目は、これも景気調整の際の措置と同じでございますが、過剰人員を一定の期間休業させる、職種転換をいたしますまでの期間休業させる場合の休業期間中の賃金補助でございます。それから四番目が、移転を伴います配置転換を実施いたします場合の配置転換に伴う費用の補助、それから五番目が、これは一時休業と違います点は、絶対的な過剰人員を系列間の企業あるいは全然別個の企業に出向という形で雇用を確保していく、その際に賃金がダウンするといったような事例がございますが、その際いわゆる前職賃金を保障するというような形で、その差額を助成することによってスムーズに職種の、職業の転換を図っていこうということでございます。この二番目の、いわゆる事業転換に伴います雇用調整に対する援助措置の場合は、一時的な不況の場合と違いまして、二年ないし三年、そういったある一定の長期的な助成策が必要であろうかと、こういうふうに考えておるわけでございまして、雇用安定基金によります制度の事業内容は大きく分けましてこの二つのものに分かれる、かように考えております。
  118. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、内容についてはまた別の機会に詳しく伺うことといたしまして、この財源については、雇用保険法による雇用保険料の料率を千分の三を千分の四に引き上げる、こういうことですか。
  119. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) ただいま先生御指摘のように、雇用保険の保険料の千分の十三のうち千分の三は、いわゆる雇用三事業ということで使用者の全額負担になっております。これで新しい雇用安定基金制度を賄っていくことができるかと申しますと、若干不足するような計算でございますので、いまその点を事務的に詰めてまいっておりますが、この新しい雇用安定基金制度を運用いたします場合に、どれくらいの原資が必要になるか、こういったことと考え合わせながら、この千分の三の使用者負担の保険料を千分の一程度引き上げていくということも、現在検討いたしておるわけでございます。
  120. 小平芳平

    ○小平芳平君 この雇用保険の三事業については、出発のときに非常に性格が違うという意見があったことも重々遠藤局長御承知のとおりですが、なおかつそこをふくらませ拡大していくという方向であくまで行かれるか。その場合、見通しとしては政府としてそういう方向で決定されますかどうですか。見通しですね。労働省としてはそういう方針であっても政府部内としてはいかがでしょう。
  121. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 私どもはそういう方向で準備を進めておりますが、政府部内関係各機関とも十分事前の調整をしながら進めていかなければなりませんが、方向としましてはより現実的であり、より合理的な方法であろうかと、かように考えておるわけでございます。この雇用調整給付金制度を含みますいわゆる雇用三事業につきましては、先生ただいま御指摘のように、雇用保険法の御審議の過程でいろいろと御意見があったことも私十分承知いたしております。この一年間法律が施行になりまして、この実績がOECDなりILOなりあるいはアメリカ、ヨーロッパ諸国にもかなり喧伝されておりまして、実は先般、先週ヨーロッパから帰ってまいりました国際会議でも、イギリスやアメリカでもこの雇用保険法によります雇用調整給付金制度が非常に関心を持たれておりまして、ヨーロッパの非常に雇用情勢の厳しくなっております中でも、こういう合理的な方法をとるべきではないかというような意見もかなり強く出されておるようでございまして、いろいろと学者の御意見等もございますけれども、私どもといたしましてはこれからの安定成長下の雇用調整策として何らかの施策の強化が必要になって参ります場合に、最も合理的な方法ではないかというふうに考えておりまして、こういうことで政府部内の調整を十分万全を期していきたいと、かように考えておるわけでございます。
  122. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、その点についてはまた別の機会に譲ることといたしまして、次に労働災害の問題ですが、じん肺について伺いたいんです。  労働省は、じん肺の健康管理区分の認定申請があったその場合、いま私がその終着点を申し上げますと、昭和電工大町工場から申請のあった八百十一人のじん肺所見者について健康管理区分の決定がなされたんですが、申請と決定とは大変なけた違いになっているんです。そういう点は報告を受けておられますか。それについてのお考えはどうですか。
  123. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 昭和電工大町工場におきまして、かねてからじん肺の問題がございます。七月に所轄の長野労働基準局に健康管理区分の決定申請が出てまいりました。八百十一名でございます。その決定状況を申し上げますと、エックス線写真の像でじん肺所見のある者が七十七名でございます。これは管理一、六十二名、管理二、十三名、それから管理三が二名、管理四はないと、こういう結果になっております。  この点について、大変申請と決定との間に乖離があるではないかという御指摘でございますけれども昭和五十年の全国のじん肺健康診断の結果を見ますというと、申請者数が二十万三千でございまして、その結果エックス線写真の像でじん肺所見がある者が一万九千でありまして、九・四%でございまして、その点から見ましても特に長野の例が大変少ないということではないというふうに私ども考えております。長野の例では九・五%でございます。
  124. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、これは局長も御承知のように、わざわざ、いろんな労使間のいきさつがあって、結果、労働科学研究所の佐野先生がこの健診をなさったわけですね。それで、とにかくいままでは全くないと言ってみたり、二人だけあったというふうに言ったりしていたいろんないきさつがあったんですが、佐野先生の方では八百十一人の申請をすべきであるということで出された。しかし、決定は先ほど言われたように七十七名ですか。そうなりますと、これは会社の方も困るし組合の方も困るし労働者はもっと困るんですが、一体配置転換しなくちゃならないのか、配置転換しなくていいのか、療養をしなくちゃならないのか、療養をしなくてもいいのか、全くそれで迷うんですが、そういうことはもう迷うのが当然だという答弁ですか、いまのは。
  125. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 管理区分は先ほど申し上げましたような決定がなされたわけでございますけれども、御承知のようにじん肺法では管理区分によってそれぞれ健康管理のやり方が規定されておりまして、管理四というのはなかったわけですけれども、管理四に該当するような者はこれは療養が必要である。それから、管理三につきましては配置転換を必要とするということがじん肺法の三十一条に規定をされております。それから、管理三、管理二につきましては、通常のじん肺の特殊健康診断は三年に一遍となっておりますものを、この管理二、管理三につきましては、毎年やらなければならないというふうに、それぞれ健康管理上の規制がございます。それに従って対処していただかなければならぬ問題でございます。いまお挙げになりましたこの佐野先生がごらんになった結果と非常に違いがあるではないかという御意見でございますけれども、私どもは、この処理は長野の基準局のじん肺審査医、二名おられます。その方が、しかも全国的な指導基準によりまして、じん肺審査ハンドブックあるいはじん肺の標準エックス線フィルムというものを十分研修を受けられた方が客観的にごらんになっての判断でありまして、結局その食い違いということはじん肺の定義なりあるいは読影に当たっての特定所見の評価の比重というようなものについて、見解の相違があるということによるのではなかろうかというふうに思っております。ただ、私どもは現行じん肺法につきましてもいろいろ問題がございますので、いま寄り寄り検討いたしておりまして、こういった専門的な諸点につきましても専門家会議でいろいろ御議論をいただいておりますけれども、現行法制のもとではさような結果に相なったということでございます。  なお、申し上げるまでもなく、地方の労働基準局長の決定にもし不服があります場合には、行政不服審査法によって労働大臣に申し立て、そしてまた中央の審査医の判定を受ける機会というものがあるわけでございまして、現に私ども、年間でも相当の数のそういった事例があるわけでございます。
  126. 小平芳平

    ○小平芳平君 いま局長説明されましたように、たとえば管理区分四は療養が必要だ、そこで佐野先生結論は管理四が三名となっているわけです。それが決定では管理四はゼロとなってるんです。果たしてこの三名の方は療養が必要なのか、療養が必要でないのか。そしてまた管理三の人は申請は十六名、決定は二名。したがって、十四名の人は配置転換が必要なのか、それともそのままその職場で働いていて差し支えないのか。こういう点が非常に現場では困る、労働者は御本人も不安になるし、会社自体も配置転換するかしないかということで考え込んでしまう、そういう結果になっているわけです。
  127. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 先ほどもお答えいたしましたように、現行じん肺法の定めるところによりましての地方労働基準局長の決定は、先ほど御説明しましたようなことに相なっておるわけでありまして、そして管理区分に従います処置といたしましては、これまた現行じん肺法の二十三条によって療養の必要のある者、それから配置転換の必要のある者等々が規定をされているわけでございます。  そこで、お尋ねの点は、そうは言うけれども、佐野先生に見ていただいた者はかなり管理四もあるし、管理三も数が多い、そういうものについて具体的にそれじゃどういうふうに措置したらいいか、労使当事者は困るじゃないか、こういう御指摘だと思いますが、私どもはじん肺法はこれは国の法律でございますから、いわば最低の基準でございます。その結果に従って労使が具体的にどう対処されるかという問題は、またおのずから何といいますか手厚く対処されれば、それはますますベターであると、こういうことになろうかと思いますけれども、しかしながら、先ほど申し上げましたような食い違いが非常に大きいものでございますので、私どもといたしましては地方審査医の判断結果によって、地方の基準局としても労使双方に十分御説明しながら、御納得のいく指導をしてまいりたい。なおそれでも十分御了解が得られなければ、不服審査の道もあるということを先ほどお答えしたような次第でございます。
  128. 小平芳平

    ○小平芳平君 納得いく指導と言われましても、さっきから再三申し上げるように、一体この三名の人は療養が必要か、十四名の人は配置転換が必要か必要でないか、そういうことで非常に困惑しているということを申し上げているんです。ただ納得しろって言われたって、じゃどっちへ納得したらいいか、その中間をとるというのがむずかしいわけです。  それはそれとしまして、前回私がこのじん肺の問題を取り上げたときも、また先ほども局長が答弁されましたが、じん肺法自体にも問題があるから、いまどういう検討をしておられるんですか。
  129. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 先生御承知のように、じん肺審議会という三者構成の審議会がございます。ここでも昨年来、何と申しましてもじん肺法、大変もう制定以降時間が経過いたしておりまして、その間にじん肺の発生の様相というものもかなり変わってまいっておりまして、広範になっております。それからまた、医学的な理解というようなものもかなり進んでまいっております。そういうような状況にかんがみまして、現行じん肺法をやはり改正すべきではないがという御意見が非常に高まっておるわけでございます。労働省といたしましても、できますならば次の通常国会に改正案を出したいということで、いま相当大詰めの検討審議会にお願いをいたしております。  それからまた、法制的な側面だけじゃなくて、非常に専門的、技術的な側面がございますので、専門医等網羅しました専門家会議を別途招集いたしまして、そこにただいま、たとえばそのエックス線写真の像の読影の方法でありますとか、あるいは国際的な基準との関係でございますとか、そういう専門的な問題についても御検討をいただいておる。で、次の通常国会に提案ができますような段取りで精いっぱいこれから詰めていきたいというところでございます。
  130. 小平芳平

    ○小平芳平君 佐野先生からの御意見は、そのじん肺に対する御意見を大量に私もいただいてあるんですが、いまここでそれを一々申し上げる時間もありませんし、また私も専門家ではありませんからそれはいたしません、いたしませんが、大臣、いまお聞きのように、専門のお医者さんが診断をしまして、しかもいろんないきさつがあって、ちょっと説明し切れないんですが、結局、いままでは患者はいないということできたんです。しかし、患者がいないというお医者さんの診断には納得できないというところから、佐野先生という専門のお医者さんをわざわざ長野県へ来ていただいて、いろいろ健診をしていただいた結果、その結果、専門の佐野先生の御意見は管理三、配置転換必要が十六名、管理四、療養が必要が三名と、管理二、管理一とずっとあるわけですが、三と四だけ申し上げると、そういう結論になって申請を出した。申請を出したら、いま局長が答弁されておられますように、配置転換は十六名中二名、療養はゼロ、必要ないと、こういうことはちょっと、お医者さんって、専門家って言われますと、それはもう私たちから見れば皆さん全部専門家で、お医者さんで、ちょっと私たちがいいとか悪いとか言う領分じゃないように感ずるわけです、感ずるわけですが、そういうふうに違っているという実態は、非常にうまくないと思うんです。ですから、いま局長の言われるような線を、大臣、ひとつ強力に進めていただきたい。
  131. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) いま御指摘の、ある専門家に見せた意見と、また別の医者の見た場合の意見と食い違いがある、その食い違いというものはどちらが真実であるかということはなかなかわかりにくいわけでありまするが、私もいまこのじん肺の問題は通産におるときにもたびたび質問が出ましてよく承知をいたしておりまするが、大変な問題だと思います。これはいまいろいろと専門家を招集して法律改正して、そしてそういう食い違いがあったり、あるいは患者に御迷惑をかけたりすることのないように、ひとつ的確な判断のもとにこれからも処理していきたい、かように考えますので、御了承いただきたいと思います。
  132. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう一つ伺って終わりますが、この前、基準局長から御答弁があったんですが、クロム障害に関する専門家会議の中間報告です。このクロム障害に関する専門家会議の中間報告は、つい最近になって資料をいただきまして読みましたが、結論としてどういうことでしょうか。結論として私がお尋ねしたいことは、六価クロム以外のクロム化合物による障害というものはどういう結論になっているか。それから、クロムによる内臓障害についてはどういうふうになっているか。その二点についてお尋ねします。
  133. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) クロム障害につきましては、その中間報告先生もお読みいただいたということでございますので御理解がいただけるかと思いますが、昨年来の六価クロムは非常に重要な社会問題でございまして、私どもも急遽専門家を集めまして研究をしていただいたその結果でございますが、中間報告とありますように、この間の報告でもってもう一切終わったということではございません。世界各国を通じましてもこの問題はいろいろ議論のあるところでございますから、今後とも各国の情報あるいはいろんな疫学的な手法等の発達、そういうようなものを考慮いたしまして今後とも検討したい、とりあえずことしの一月の段階での結果はかようなものである、こういうことでございますので、今後ともいろいろまた判断が出てくるかと思います。しかし、いまお尋ねになりました、それじゃひとつこの中間報告の結果どうなっているかと、こういうことでございますが、お読みいただきましたように、これはクロム酸鉛の製造作業、それからクロム色素製造作業、こういうものに分けて検討をいたしておりまして、クロム酸鉛の製造作業の従事労働者の肺がん、これはその発生率が非常に高いということをはっきり言っております。それからまた、同作業従事労働者の上気道のがんは、その発生の蓋然性は必ずしも低くはないと、こういうことでございましたので、御承知のように、この報告を受けて認定基準も改正をしたわけでございます。  それからクロム色素製造作業従事者の肺がん、これは疫学的報告は少ないが、その発生とある種のクロム化合物に対する職業的暴露に関連がある、こういうことでございまして、私どももそのような結果について対応したわけでございます。事案があれば禀伺の上認定をする、こういう態度をとっておるわけでございます。  そこで、六価クロムについては一応問題にしたのだけれども、三価の問題はどうかということでございますが、いま申し上げましたように、この報告は六価、三価ということで分けて検討したわけじゃなくて、およそこのクロム障害に関連する現在の発症例なりあるいは内外の情報なりを全部一応当たりまして、その結果、現段階ではかような結論、こういうことに一応なっておるわけでございます。
  134. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、それでは困るわけですね。ただ六価が問題である、三価の方はまだわからないということで、中間報告ならやむを得ないかと思いますが、このソ連の労働衛生・職業病研究所の「クロム合金鉄生産における発ガンの危険性」、この資料はお持ちだと思いますが、そういうことも参考にしてもっと積極的に究明していただきたい。
  135. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) この専門家会議でもそのソ連の研究報告は一応爼上に乗ったようでございまして、これは先生御承知のように、クロムフェロ合金製造作業従事労働者の肺、食道及び胃のがんというものが高年齢層で対象に比して増加しておるということでございまして、しかも暴露物質としては難溶性の三価及び六価クロムその他の物質であった、こういう報告でございますけれども、これにつきましては専門家会議では、現時点ではこのような労働者におけるがん発生と業務との関連性については、なお将来の疫学的研究の進展を待って考慮すべきものである、こういう一応答申をいただいております。私どもとしてはなお今後の研究にまちたいというふうに思っておるわけでございます。
  136. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時から再開することとし、休憩いたします。    午後零時四十七分休憩      —————・—————    午後二時六分開会
  137. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、労働問題に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  138. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは本題に入る前に、まず最初浦野労働大臣にお尋ねをしたいと思います。  大臣は就任されたのは九月十五日でございますね。就任の前の九月四日に愛知県の足助町の役場で開かれた演説会で、次のような演説を行っておられる。これはわが党に対しても聴衆の中からけしからぬということで実は幾つも通報があったわけでございますが、その中身は、田中角榮前総理が外為法で逮捕されたが、外為法違反というのは形式犯で、たとえば足助のたんぼで立ち小便をするようなものだというふうなことを言っておられる。そのことは「日刊ゲンダイ」、これにも報道されておりまして、地元選挙民に向かってこう演説している。田中逮捕はちょうどあんたたちが田舎で立ち小便をするようなもので大したことはないと、こういうことを言っておられるようでございますけれども、ロッキード疑獄というのは、御承知のようにいま国民的な最大の追及の課題である。そうして日本の政治の民主主義が問われておるというきわめて重大な問題であることはもう周知のことでございますけれども大臣はロッキード疑獄についてはこのような御認識でおられたのか、またこのような御認識で大臣のいすにおつきになられたのか、その点について御見解を最初にお伺いをしておきたいと思います。
  139. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) それはちょっと意味が絡ましてあるような感じがします。私はいろいろな法律説明をしたわけです。皆さんが立ち小便をしてもこれは形式犯であるけれども法律に触れますよと、いろいろな例を出したわけです。そこで、田中さんは前総理大臣であって、そうして外為法という法律で逮捕されたんだが、総理大臣という立場の人が形式犯の外為法で逮捕されるということは私はどうも納得がいかなかったと。やはりそれぞれの罪状があるだろうからそれが適当であって、外為法でやられたということに疑義を持ちましたということは言いました。ただ、立ち小便とこれと同じだという、そういう意味のことを言ったわけじゃございません。
  140. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、それと別だとおっしゃるんだけれども、これは言われたとおりのことなんですよ。田中角榮前総理が外為法で逮捕されたが、外為法違反というのは形式犯だと。だからたとえば足助のたんぼに立ち小便をするようなものなんだと、こういうふうにおっしゃったということは、いまロッキード疑獄で最大の問題になっているのはお金で、しかも外国の大企業からお金をもらって日本の政治を動かしたという疑惑があるということで問題になっているんでしょう。そのことと立ち小便と同じ認識になさって、しかも選挙民に向かってそういう御説明をなさるということは、これはロッキード疑獄についての御認識がどうなのかという点での、ロッキード疑獄に対する認識のほどを伺いたいということですよ。どういうふうにお考えになっているか。
  141. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) いや、私は記憶をいたしておりまするが、田中逮捕は立ち小便しておるようなものだと、そんな私も軽率なことは言っておりません。皆さんが小便されるとこれは違反になりますと。しかし、田中という人が逮捕されるときに、外為法の違反であれだけの前総理大臣という人が逮捕されたということについては私は疑問を持つと。もう少しはっきりした、罪状がはっきりして、それで逮捕されることが適当だと思うと。しかし、ロッキード問題はこれは徹底的に究明しなきゃならないということは、これはわれわれも前々から言っておることでございまして、つまり外為法で逮捕されたということについて私は疑義を持ったということは言いました。
  142. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 言いましたじゃなくて、そういう認識で大臣のいすにもついておられるのかといって私も問題にしているんですよ。そういう軽々しくお考えになっておられるということになりますと、これは質問をしていく上で大変だと思うから聞いているんですよ。その点はそれじゃロッキード疑獄究明に対してどういうふうに御認識になっておられるのか、その点御見解を伺っておきたい。
  143. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) ロッキード問題は、御承知のように、日本の政治問題との関連でこれはあくまで三木総理も言っておられるように究明しなきゃならない。当時私は大臣就任前でありまするが、当時私はびっくりしたわけなんです。外為法で逮捕されたということで、もう少し明解な犯罪なり何なりがあって逮捕されるということならどうかと思うが、外為法で逮捕されたということは私は意外だという意味のことを言ったわけでありまするが、しかし、内容がわかってまいりまして、いろいろといま起訴されておりまするので、外為法であろうが何であろうが、これは私は政治家としてそれはどんな違反を起こしてでも、どんな問題でも法に触れたことをやればこれはいけないということをいま思っておりまするが、ロッキード問題は軽く考えてもいいなんということはゆめゆめ思っておりません。
  144. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 その問題は御見解を伺っておくに一応とどめます。  本題に入りますが、きょうは午前中にも触れられましたし、私も、ちょうど労働婦人旬間——勤労婦人旬間ですか、働く婦人の旬間が近いという段階で、特に働く婦人の社会的地位向上を目指し、男女平等を文字どおり実現をしていく上で婦人の方がどうあるべきかという立場でひとつ質問をしていきたいと思います。  すでに、就業における男女平等問題研究会議報告書、それから婦人少年問題審議会建議というのが十月の初めに相次いで出されてまいっております。そういったものを通じまして、特に昨年の国際婦人年を契機にしてわが国でも取り組まれております国内行動計画をいよいよ策定するという段階に迫っておりますけれども、そういう中で、今後の婦人の十年という非常に長期の展望を目指しての対策検討というのが進められてきておるのは御承知のとおりでございますし、私どもも拝見をいたしておるわけでございます。  特に、限られた時間ですので、はしょってお話を伺っていきたいと思うのですけれども、それらの建議とか報告書の中で、いずれも、男女平等を保障していくために男女が平等の基盤でその能力を発揮するためにということが前提になりまして、その男女平等の支障をなくしていくような、支障となるような特別の措置、これを解消するように努めたいと、検討すべきであるという、そういった趣旨のことが述べられております。そういった点を踏まえまして労働省としてはどのように、何を検討したりあるいは努力をするのか、どの部分についてどうなのかというふうなことが労働省として、すでにポイントされておられますならば、その点についてお伺いをしたいと思うわけです。
  145. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 午前中以来申し上げておりまして、先生もお聞きになっていただいていたと思いますけれども男女の平等を実現いたしますためにいただきましたこの建議におっしゃいますように、特に長期的展望のところでは、「科学的根拠が認められず、男女平等の支障となるような特別措置は終局的には解消すべきであるが」という言葉がございますし、優先的に行うべき事項にも同趣旨のことが書いてございます。これはこの前の方をごらんいただきますとおわかりになりますように、婦人労働者について現在行われております特別の措置について申しているわけでございまして、その主な部分、大きな部分は、労働基準法その他婦人のための法律規則に書かれているもののことを言っていると解釈しております。  労働基準法につきましてだけ申し上げますと、第六章を初め婦人について特別の保護、特別の措置というものが規定されておりまして、その部分についてはどれということではなく、すべて再検討をしてみなければいけないのではないか。十分検討をいたしました結果、その中でいま申しましたような条件に該当するものがあれば、それは終局的には解消していかなければならないという御趣旨だと考えております。
  146. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、基準法の六章を中心に一つ検討している。それから、基準法——法律そのものではなくて政省令ですね、その部分についてはどうですか。
  147. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 女子年少者労働基準規則その他関連の規則につきましても同じでございます。
  148. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは全部を見直すということですか。具体的には何か焦点を定めてということじゃないんでしょうか。
  149. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) この研究会議報告書の中にございます、ここに説明——説明といいますか、示唆がしてあるわけでございます。研究会議報告書の九ページに(5)としまして、「女子に対し今後必要とされる保護の範囲の明確化」という項目の中で、先ほど来申し上げておりますようなものが挙げてあるわけでございます。で、これらのものを具体的にどの法律の第何条かとおっしゃるのかと思いますが、それは労働基準法の六章その他婦人に関する特別のものでありまして、特に例を挙げて申し上げますと、たとえば免許を取って業務をすることになっております業務、あるいは安全衛生の面から新しい法律で新しい措置が行われているもの、それらが当面の対象になるのではないかと考えております。
  150. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは私はせっかくこの十年ということで婦人の社会的地位向上、特に男女平等が実現をされるようにということで、これは国会決議でもすでににしきの御旗が立っているわけですけれども、ところがそういった点が踏まえられずに、むしろ逆に私ども出版物等拝見しておりますと、たとえば保護規定についてのいまの御検討の問題も含めますが、保護規定についてたとえば時間外労働の問題、深夜業の問題、危険有害業務というふうな問題というあたりがかなり具体的に論議がされてきているわけですね。で、私どもその点が一つは非常にいま置かれている日本の働く婦人の実情から見ましてこれは危険なことがあるんじゃないか、大変だなという危惧を感じるキャンペーンというんですか、言葉というのがずいぶんたくさん散見をするわけですね。たとえば、これは婦人少年協会から発行されている文書を拝見しても、結局保護規定について検討するべきことというのは時間外と深夜業、危険有害と、そんなところだと、それから保護規定母性保護というのはもう出産を除いたらほかは撤廃してしかるべきだと。それ以外のところはむしろ男女の平等を阻害する制度だからつぶしてしまう方がいいというふうな御見解などが出て率直に言われているんですね。こういうのを拝見しておりますと、これは大変なことだなというふうに思うんですが、そういう点ではこれは労働省としてはこういうふうに言われておりますが、これらの点についてはどういうふうにお考えになっておられるのか。これは概括的で結構です、細かくは結構でございますから、その点を最初にお伺いしておきたい。
  151. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) その点につきましては、研究会議報告書にもまた建議の方にも特に念を押して書いてあるわけでございまして、必要不可欠な母性保護につきましてはきわめて細かな対策を講ずるべきであるということを言っておりますので、その趣旨でやっていきたいと考えております。
  152. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、これは私はなぜ危険だというふうに言うかといいますと、たとえば東京商工会議所がことしの七月に「昭和五十二年度労働政策に関する要望」というのをお出しになっておるんですが、その中に「就業形態の変化等に即応する労働基準法の整備」という項目があって、「労働基準法の規定の再検討もしくは解釈の明確化をはかられたい」というふうな形でもって、特にこの労働基準法の規定の再検討というふうな点がそういう経済団体からも出てきているという点で、これは大変だなという、大問題だなというふうに特に強く感じるわけでございます。その点はどうですか。
  153. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 先ほどから出ております婦人少年問題審議会と申しますのは、使用者側の代表も入っておられます三者構成の審議会でございまして、そこで先ほど来申し上げておりますようなことが合意されたわけでございますので、私どもとしましてはこちらの方の皆さんの御協議の結果でありますこの建議を尊重していきたいというふうに考えます。
  154. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私はなぜこういうことが大変だというふうに申し上げているかというと、具体的に日本の働く婦人がいま置かれている実態から見まして、こういう実態を十分踏まえた上でこんなことが言われておるのかというので非常に心配をしておるわけです。で、どういう実態があるかということは、これはもう総括的には労働省の文書等でいろいろと報道されておりますが、私具体的にいまちょっとさわってみてもこれくらい実例があるということで、一つ具体例を出してみたいと思うんですがね。たとえば、これは三和銀行の問題ですが、三和銀行の男女差別賃金です。ここでは女子の行員二十五名の連名で三和銀行頭取赤司俊雄氏に申し入れをした文書があります。これちょっと読んでみますと、短いですから、どういうふうに書かれているかというと「男女差別賃金是正のお願い 私達女性は、一人の人間として誇りをもって生きる願いをこめて、三和銀行の職場で日頃誠実に働き続けてまいりました。そして、仕事の面で、女性の労働の価値は男性のそれと同等であることに確信と自負をもって懸命に働いております。しかし、昭和四十九年十月一日より実施された「給与改訂」の際、当時の二級二号、三号書記の当該者のうち男性にのみ各々本俸五千円、八千円の引上げがなされました。そしてその後女性についてはこのような引上げもなく是正されないまま今日に至っています。」こういうことで、「即刻この差別を実施日に遡及して是正されるよう強く要望いたします。」という文書が提出をされております。これは初任給を引き上げたんですね。で、引き上げたから先に入っていた人たちが中だるみになったから、この是正措置をやったわけですね。だから、何というんですか、初任給どんどん上がりますよね、インフレと物価高、インフレの情勢ですから。先に入った人の中だるみを直すときに男の人だけを是正をして女の行員には是正をしていない。こういう限りでは、これ妥当な賃金改定の姿だとお考えになるかどうか、私が申し上げた限りで。
  155. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) いまの具体的な例につきましては初めてお伺いしましたので、ちょっともう少し事情を調査してみませんと、はっきり何とも申し上げられないと思いますが。
  156. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 で、本件はこれは明後日、十六日、現地の基準監督署に申告することになっています、提訴することになっていますね。ですから、ひとつこれは基準局長も十分調査して、こういう私が申し上げた限りでは妥当でないとだれでも思うですね。そういう状況を不法な妥当性のないやり方だということであれば、これは厳格に是正をさせるようにひとつやっていっていただきたいというふうに思うんですが、これはどうでしょう。
  157. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) ただいまおっしゃいましたような点につきましては、婦人少年局長からもお答えしましたように、事実をよく調査しました上で、御承知のようにきちっとした規定があることでございますから、法違反があればこれは是正をさせなければならぬというふうに思います。
  158. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 賃金の例でもう一つ具体例を申し上げてみたいと思うんですが、これは「婦人労働の実情」というので労働省から毎年発表されておりますが、これによりましてもいま男女の平均賃金の差というのは、いただいた資料によりますと男子一〇〇で女子がやっと五四という水準になったんですね。まあこれは長期的に見れば大分差が縮まってきつつあると、こういうことですよね、従来は五〇%以下でございましたですから。賃金格差が発生する基本的な要因という形でこの「婦人労働の実情」という労働省の文書にも、これは一つは「就業分野の相違」、二つは「勤続年数の違い」という点を挙げておられるわけでございます。確かにこれも大きな要因の一つではありますけれども、しかし、それだけではなくてもっと基本的なところがあるんではないかというふうに考えるわけです。で、この「わが国の賃金制度と婦人の賃金」のところで、「女子労働者を短期・補助的労働力として固定化し、能力開発や昇進・昇格の機会を限定するなど、女子労働力を男子労働力に比して、一般的に低く評価するというような風潮がまだ残っており、このことが女子労働者の賃金の賃金水準を低くしている面をもっているものと考えられる。」というふうに総括されているんですね。非常に遠慮がちだと私は思うんですけれども、実態はもっと厳しいと思うんです。  私は一つ日本生命ですね、生命保険会社の最大の大手ですが、日本生命の例をとってその厳しさをちょっと申し上げてみたいと思いますが、日本生命では、高校卒の人たちが入社をするときにはこれは賃金差別ないんですね。ところが、四年目になりますと、もう四年目からちゃんと男性賃金のグループ、女性賃金のグループというふうに同じ仕事をしておっても格づけがこういうふうに分かれていって、四年からずっと分かれていくんですね。ですから、その結果は給料の差がもう明確に出ている。時間をとってもなんですから、そういうことになっているんですが、日本生命の組合でもこう言っているんですね。これまあ大変穏健な組合ですけれども、こういう分析をしている。昇格基準線がスタートの時点から男女、学歴別にグループ化し、たとえば女性で能力のある者で男性と伍していくような人でも女性グループの域を越えられないと、これは労働組合の評価ですよ。銀行でも大体私ども調査の範囲ではほぼ同様な処遇の仕方というのが一般的になっている。これは、単に就業分野の相違だとか勤続年数の違い、そういうものだけでは説明できないと思うんですね。ましていわんや、同じ仕事を同じようにやっているわけですから、熟練度の差異というようなものでもないわけですね。全く合理的な根拠がないんですね。同じ仕事をしていて、そうして熟練度も同じ、むしろその段階では女子の方が能率が上がるんじゃないかというふうな状況ですよね。ところが、四年目からはずっと賃金差別ができていく。だから、これを説明する合理的な根拠はないわけですね。ですから、労働省いろんな調査をしておられますけれども、これによりましても、これは労働省の、大分古いですが、企業における婦人の地位に関するアンケート調査、これを拝見しましても婦人女子の賃金というのはずいぶん低い、差があると答えた者が七五・三%だと。男子より低いという者が九六・八%だというふうに答えているように、非常に賃金差別というのがやられてきているわけですが、こういうケースのどこに問題があると思われるか、この辺のあたりというのは、私は本当に職場で賃金差別をなくしていく上で非常に大事な点ではないかというふうに思いますが、どういうふうにお考えになりますか、こういう日本生命のような実例。
  159. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) いま挙げられました日本生命の具体的な例がどうであるかということは、先ほどの銀行と同様実態を調べてみませんとはっきりしたことは申し上げられないかと思いますが、一般的に申しまして、男女の賃金にかなりの格差が残っているという点につきましては、先生がお読み上げいただきました私どもの方の資料に書きましたとおりに、いろいろなことが入っておりまして、あそこに挙げました年齢の違いかと学歴の違いとか、勤続年数とか就業分野の違いとか、そういうものが無数に絡み合ってできてきているのではないかと思います。さらにその上に、職場における婦人自身がそのことをもっと十分認識をしていただいて、いま先生がお挙げになったような事例のように、御自分の職場の中での問題点を監督署なり婦人少年室なりに積極的に御相談をいただくというようなことがもっとあってほしいと私どもは願っているわけでございます。
  160. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ですから、私はこれは単に自然発生的にできた賃金差別ではなくて、まさに意識的な政策上の賃金の開きだというふうに、男女格差だというふうに考えるわけです。ですから、こういう点調査をされて、それで合理的な根拠がなければやはり労基法に基づいて是正をさせていくというふうなことが必要ではないかと思うんですが、そういう点はどうです。
  161. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 事実を調査いたしまして、労働基準法に違反しているということがはっきりいたすものにつきましては、当然厳重な監督指導を行うということでやっております。
  162. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは私もう時間の都合があるからたくさん申し上げられないんですけれども、ことしの夏に大阪の基準局へも行って申し上げたんですけれども、たとえば二十七歳で——男子はどんどんそれ以上昇給率がちゃんと賃金体系に書いてある。女子は二十七歳でとまり、二十七歳以上は全部同じ賃金が書いてある。そういう賃金表を公然と使っているという企業もありますよ。調査して善処させるようにということを申し入れてあるんです。  そういった問題がございますので、見つけたら言っているけれども、それは間尺に合わぬのですよ。本当に労働省としていまの課題を実現していくためには、本当にどういうふうにこれをチェックし、行政指導を強化していくのかというあたりが一つの重要な課題。後でまとめてその点については伺いたいと思う。  それからもう一つは、これは定年制の問題ですね。きょう午前中にも定年制の問題いろいろ御意見を伺っておりますが、これは前回私、丸紅に関する問題をちょっと申し上げたんですが、早速労働省の方の御指導で指摘をいたしました諸問題については、これは改善をされたようでございます。ところが、まだ問題になっておりますのは、定年制が男子五十五歳、女子五十歳なんですね。それで参考に私十大商社をみんな調べてみた。他の商社は全部そういう差別はございません。丸紅だけがこの差別になっている。それからしかも、その五十歳の定年制というのはいかに不合理かということなんですが、ことしの三月に定年退職をしたHさんという方、邦文タイピストですがね。退職をした翌日、同じ部屋で同じ場所で同じ机でタイプを使っていままでやってきたと同じ仕事をやっている。変わったのは何が変わったかというと、丸紅のネームのついていない上っ張りを着たことと、給料が六割になったということだけだと。仕事の指示は丸紅の社員がやられる。で、どういうことになったかというと、身分はいわゆる丸紅の一〇〇%出資の丸紅サービス株式会社ですね、それの社員になっているわけですよ、翌日からね。だから五十歳定年でやめさして、翌日から丸紅サービスという自分のところの子会社の社員にして、同じ机で同じタイプを使って仕事をさせるというようなやり方、これはどうなんですかね、労務提供という形で法に触れるのではないかというふうな気もするようなやり方で、まあきょうはそのことが中心ではありませんけれども、五十五歳と五十歳にしておるけれども、依然として使っているんですよ、しかもコストダウンして。こういうやり方が起こっておりますけれども、こういうふうな点については定年延長も言われているんだし、当然これは指導をするべきではないかと思いますが、これはどうですか。
  163. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 丸紅の労働条件につきましては、以前先生に御指摘いただきましたものを早速指導いたしまして、それらにつきましては効果があったようでございます。その際、いろいろほかのことも聞き合わせたわけでございますが、いま御指摘のようなところまではちょっと目が届きませんで大変申しわけなかったんですが、なお実情を調べまして必要があれば指導いたしたいと思います。
  164. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 で、これは退職の問題というのは、いろんなケースがあるんですね。私どももいろんな職場で働く婦人人たちの御意見を聞きましたけれども、たとえば日本板硝子では、これは一つ一つ申し上げませんけれども、たとえば日本板硝子では人員整理をする一番初めの項目というのは何かといったら、有夫の婦人となっているんです。有夫の婦人というのは既婚婦人ですよ。それから高齢者と、こうなっているんですよ。首切りのトップの基準というのは既婚婦人なんです。こういうことになってきているという問題。それからパートですね。パートタイマーで働いておる人たちというのが、一番先に婦人が首を切られるという問題。これは前にも私、ダイキン工業の話を申しましたけれども、そういうことで首切り整理という場合には一番最初婦人がやられるというふうな問題ということも、これは決して軽視できない、まさにこれは男女差別の一例だと思うんですよ。特に有夫の婦人なんて、ちゃんとこれは文章に書いてあるんですからね。首切りの第一ランクですよ。こんなことがまかり通っていて、いや、指導していますというふうに言われたんでは、これはやっぱり企業の姿勢をわれわれ疑いますと同時に、企業に対してやはり労働省がもっと基本方針を貫くたてまえからいったら、こんなことはやめさせるべきだというふうに思いますが、これは後でまとめて伺いますから——それぞれの実例についてその感を深くするわけです。  それからさらに残業の問題ですね。私ども働く婦人の仲間を集めていろいろ話を聞いてみますと、サービス残業という言葉を聞いてしょうがないんです。サービス残業というのは何だろうと思ってよく聞いてみたら、いろんな職場にありますが、たまたま非常に女子労働者の多い百貨店の例をとってみますと、これはT百貨店です。これはどういう状況になっておるかというと、そこで勤めておる正社員ですが、勤務状態はどうかというと、大体残業ゼロの月というのがあるんだそうですがね。残業ゼロの月がどういう勤務になっておるかというと、毎日最低三十分ないし一時間の残業をしておる。それで残業ゼロの月なんだけれども、残業手当らしき手当というものを、これは千円程度くれる。で、六月の具体的なものを見ましたら、連日一時間五十分残業しております。手当千百二十一円です。それから七月とか十二月というのはこれは百貨店は御承知のように中元だとかお歳暮で最大の繁忙の時期ですね。そういうときはほとんど連日夜九時ないし九時半まで残業しておるんだそうですけれども、それ全部残業手当にしますと、当然残業規制の現在の規制に引っかかりますから、規制の範囲内の時間にするんだそうですね。そうして残業手当は月に一万二千円程度いただける、こういうことになっていますね。それじゃそういう状態がなぜ労働省がお調べになる機会がないかというと、これは組合ももちろんないんですね、労働組合も。で、労働省も申告せずにもう何とかしてこの残業をなくしてほしいと、残業のなくなるような職場になってほしいということを願いながらがまんしているわけです。こういう状態、一体どう思いますか。これは私がたまたま調べたT百貨店だけじゃありません。その後調べたんではほとんどの百貨店が似たり寄ったり。どう考えられますか。
  165. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) いま先生がおっしゃられましたような事例、そのとおりの事実であるとしますと、なかなか問題ではないかと思います。百貨店は非常におっしゃるように繁忙期とそうでないときといろいろございますし、繁忙期はまた特に忙しいというのは外から見てもみんなの目に触れるところでございますが、そのようなことがあるかもしれないと思いますが、現実には具体的に調べてみなければはっきりしたことは申し上げられないと思います。
  166. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これはぜひやっぱり調べていただきたいと思います。  それから、もう一つこういう問題があるんですね。これは出産退職とか結婚退職というのはやらしてはならぬといって、労働省も通達もお出しになっておるわけですけれども、依然としてやはりそういった問題は散見されます。たまたま関西経営者協会という経営者団体なんですね。その経営者団体の事務局に勤めておられる方が出産退職を勧告されているんですね。それで、いや私は働きたいんだといって本人は言うものだから、一年間仕事を与えないで、そんなもの子供を産んで働いている人はないんだと。だから、あんた出産後も勤める人はいないんだから、子供ができたらみんなやめるんだから、あなたもやめなさいということを連日勧められる。いや、私は働きたいから仕事をさしてもらいたいんだと言ったら、ここだけが職場じゃないんだと、働きたかったらよそにもあるじゃないかと。あげくの果てに、定数はないんだからあなたの仕事はないんだというふうなかっこうで一年間余り続いているんですね。産休が済んでからですよ。産休に入る前から、私はお産が済みましたら続けて働きたいのでよろしくお願いいたしますと何回も言っているんだそうですよね。それで、あげくの果てに、余り気の毒だというので、労働団体や民主団体の支援団体の方々が経営者団体に行って話をしたそうです。そこで初めてことしの——産休後初めて出たのが去年の九月八日ですから、産休に入ったのは去年の六月ですよ。ことしの八月の十三日に支援団体の人たちが一緒に話しに行って、やっとそれじゃ仕事をしてもらいますということになったんだそうですよ。だから、やめさせるということは強行はしなかったようですけれども、一年間毎日大変な思いをさせられているのですね。気の弱い方だったら恐らくもうしょうがないからやめている。で、あなたに仕事をしてもらいましょうということになったら、今度は一人、午前中も田中先生言っておられましたけれども、一人の職場へ入れて、そしてほかの人とは一切関係のない仕事だけを、今度はもとの職場に返さずにやらせるということをやっている。私はこんなことはいっぱいあると思うんですけれども、事は経営者団体の事務局でこういうことが起っているということが非常に重要だだと思うんです。関係協の会長さんは一体だれがやっているんだろうと思って調べたら、日立造船の永田社長ですね。副会長は南海電鉄の川勝社長。副会長は何人もいらっしゃいまして、京都経協の会長の第一工業製薬社長の圓城社長です。それから兵庫経協の会長の住友ゴムの会長の下川会長。こういう大企業の経営者団体の中で、その事務局でこういう問題が起こっているというふうなことは、それじゃ自分たちそれぞれの企業で一体何をやっているんだろうかということに疑いを持たざるを得ないことになるんですよ。そういう点で、こういった当然もう労働省としてはそういうことはあっちゃならぬという点で通達まですでにとうに出しておられるような問題でも、いまなおかつこういうことが続けられている。これはね、産前産後休暇をとって職場へ帰って来たら原職復帰をきちんとさせて、気持ちよく仕事をさせてあげてこそ、気持ちよく仕事のできる環境を与えてこそ、これは母性保護につながりますけれども、休みはとらせるけれども、出て来たらどうなるかわからぬというようなことでは、たとえば産休をきちんととらせるというふうに規則はありますと言ってみたところで、こんなこと母性保護にならぬですよ。その点どうですか。
  167. 森山真弓

    政府委員森山真弓君) 結婚退職制あるいは妊娠出産退職制というものが現にまだかなり残っているということは先生御指摘のとおりでございまして、私ども数年来一生懸命力を入れてやっているつもりでございますけれども、どうも力が足りませんで、徹底しないうらみがあることは事実でございます。統計などで見ましても、男女別定年制を決めておりますところがまだ二七%、二十数%残っておりますし、結婚退職制その他もまだ幾らかあるということが数字にも出ているわけでございます。そういうものが発見されますと、そういう情報がありますと、私どもといたしましては一々そのようなことがないようにということを指導いたしているわけでございますけれども、非常にたくさんのケースでもございますし、また大小さまざまいろんな職種もございまして、十分一〇〇%把握してそれを一つ一つなくしていくというのには相当の時間も必要でございますし、また相当大きな啓発活動も必要であるというふうに考えておりまして、先ほど来申し上げております建議の中にも若年定年制、結婚妊娠出産退職制等については、年次計画を樹立する等早急の改善を図れということがございますし、この意を体しまして、まず実態を十分把握しまして、その中で重点的な指導をするということによって逐次なくしていきたいと考えております。
  168. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私はこういうものが、こういうことがどこから来ているかという問題をやっぱりはっきりさせないと、実態を把握すると同時に、そのよって来る原因というものを明確にするということが、これを解決していく上できわめて大事だと思うんですね。そういう点で、私労働省ずいぶんいろいろとお仕事をしておられるんで、いろんな文書を拝見しておるんですけれども、これはたまたま昭和四十九年三月に報告書ができ上がりました婦人に関する諸問題の総合調査報告書、あれは総理府でやられましたね。あの二百二十三ページに「女子管理に対する企業の態度と労働組合」という項目の第一節に、「雇用管理の現状」というのがまとめられているんですね。これを見ますと、こういうふうに書かれているんですね。「我が国の企業においては伝統的人事管理の制度が二重構造になっていて、男性用、女性用と分けられているのが特色である。女性用の人事管理制度の特色は、次のとおりである。(一)未婚の若い人を採用し、ほとんど教育訓練をしない。(二)仕事の分野を単純作業ないしは補助職などに限定している。(三)結婚・出産を機会に退職を促し、回転をはかる。(四)低賃金で、いわば女性を消耗品とみる管理方式である。  これに対し、男性用の人事管理制度は、年功序列、生涯雇用方式である。この伝統的な人事管理制度は、女性の職場進出という角度からみて、二つの致命的な問題点を孕んでいる。」というふうに指摘をされているんですが、こういう点を見ますと、自然発生的じゃなくて、明らかに雇用者側、資本家側の姿勢が問題だというふうに思うわけです。そういう点で、特に御承知のように婦人の社会的進出、職場の進出というのは非常に急速に増大していますよね。これ私多くを申し上げませんけれども、すでに全労働人口の三分の一を婦人労働者が占めている。しかも、そのうちの六割は既婚者です。これは未亡人等あるいは離別した人を含めまして既婚者が六割以上を占めているという現状の中で、当然学歴も高学歴になってきている。将来とも、これは婦人の社会的進出というものはますます前進をするというのが趨勢でございますよね。こういう中で基本的にいま考えなければならないのはですね、私幾つかの実例を挙げましたのは、ごく氷山の一角、たまたま見つかったという実例を挙げたにすぎないわけですけれども、こういうふうに全労働者の三分の一を占め、しかも既婚者が六割も働くというふうなのが常態になっておる日本労働者の中で、労働行政として本当に婦人の社会的地位を保障し、男女平等を保障していくというためには、原因がどこにあるか。まさにこれは自然発生的ではなしに、雇用者である資本家側の姿勢がこういうところにあるんだという点を明確にして、これを是正させるために労働省がいまある法律あるいは規則その他による法規制を厳格に守らせるということをまずやらないと、こんなものはなくならない、ここをどうするかというところが一つの重要な問題点だというふうに思うわけですが、局長は各分野を十分調査してとおっしゃっていただきましたが、そういう点を含めて、大臣、どうですか、その点はっきりさせていただきたいと思う。
  169. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) ただいまいろいろと丸紅あるいは銀行関係あるいは高島屋、いろいろ聞いてみまして、聞いておりますると、私たちがこう一般に世間を見ておりますると、御指摘になったようなことを間々見受けるわけで、決してそこだけではないということも私はいまそういうふうに受けとめて聞いたわけであります。しかし、今日職場における男女平等の問題、これはもう徹底的に実行していただくような方向に持っていかなきゃならないことは間違いありませんけれども、ただ婦人という立場で、いろいろ産休の問題、あるいは先ほど午前中にも御指摘がありました重量物の問題、あるいは高層建築物の問題、いろいろ婦人の職場にも制限がある、こういう制限を撤廃してしまえという意見もあるようでございますし、いやそれは残しておかなきゃいけないという意見もあるようでございます。しかし、こうした問題等は別にいたしましても、なかなか法律をいかに厳格にしましても、実際に使用者の人たちが、またこれを実行する立場人たちがその気になっていただかないと、法律はたくさんできた、あるいは違反も摘発するといっても、今度今日の基準局の陣容だけではなかなかうまくいかないような感じがいたしております。しかし、そうかといって、それはこのままにしておくわけにいきませんので、御指摘になりました点、これはあらゆる機会を通じまして今日もPRして、いま御指摘のように御婦人が三分の一、しかも既婚者が六〇%、今日日本の社会あるいは経済の上において御婦人の力がなければうまく経済が回っていかない、あるいは企業も回っていかないというような現状の中で、相変わらず古い考えの延長が続いておるとするならば、これは徹底的にそういうものは究明し、あるいは改革をさせるように努力をしていかなきゃならないと思います。まあ私新米でまだよくわかりませんが、御指摘の面については非常にうなづける点がありまするので、今後婦人局あるいは基準局各方面を督励して徹底していきたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  170. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは私は男女平等を保障するために邪魔になる保護は取り除けという御意見が片方にあることを十分に知って言っているんです。取り除けと言われるけれども、いまある法律だってこのぐらい野放しなんです。だって残業規制というのは法律事項でしょうが。しかし、先ほど私百貨店の例を申し上げたけれども、無制限にやられている。こういう状態でもしこの規制はずしたら一体どうなるかということの方が私は心配だと思う。だからいまの状況で、いまある法規制保護規定がどのように厳格に実施されているか、これをさせるか、ここにメスを入れるということがいま男女平等の条件を保障していく、条件づくりをしていく場合に一番大事な点だと、この点を申し上げている。それならいま重大な一つの重要な問題点になっておる専門職とかあるいは管理職の方々だとかいう方々の一定の制限条項が邪魔になるので昇進が妨げられている、こんなのは何とかしてほしいという御意見、これも私は女性の社会的進出が非常に大きくなってきている中で当然考えなければならない問題点の一つだと思っているわけです。これはいまだってあるわけでしょう。御承知のように残業や深夜業は全労働者、これは本来しなくて、規定の所定の時間働けば豊かに生活できる、先進ヨーロッパ諸国ではどうもそんなふうに見えますが、外国のような姿に早くなるべきだと思いますが、しかし産業の構造によっては全部同じようにはいかないわけでしょう。だから、いまだって看護婦さんでも交換手の方でもあるいはアナウンサーとかそういう特例的な方々、特別な方々は特例としてそういうことで就業の道も昇進の道も開いているわけです。こういった点については基本的な点を明確にしながら、そうしてそういう特殊な部門についてはどういうふうに隘路を切り開くかという点ではこれはあれだと思うのですね、できるだけ国民的な合意の得られるような民主的なやり方で社会的条件を整えていって、これは特例措置を拡大するというふうなことを、道を開いてそのことが昇進の妨げだという口実にされないというふうな条件は、これは考えていかなければならないというふうには考えているわけですが、その点は御意見聞きましょうか、ちょっと。私はそういうふうに思っているんです。これは時間がありませんので、そういう観点から言いまして、あとちょっと文部省に聞きたいんですが、実はさっき触れました婦人に関する諸問題の総合調査報告書、これ四十九年三月、これの二百十一ページに管理的職業従事者の中に占める女性の割合というのが四・八%で、アメリカの一五%に比べてはるかに低い。しかし、二十五年に対する四十五年の伸びは五・六倍でということで、女性の管理者、管理職の割合も見てみると、会社役員は伸びているけれども管理職の女性はむしろ減っている、歴史的に見たら。女教師時代と呼ばれている今日、小学校で女教師の割合が過半数を占めているにもかかわらず、校長は一・一%、教頭は二・七%にすぎず、昭和二十五年に比較してその割合は増加していない。大学の学長も国立大学では女性は一人もなく、教授云々というふうになっているわけですが、文部省にお聞きしたいのは、この調査報告こうなっているんですが、任命権というのは地方教育委員会かもしれませんけれども、こういうふうに問題になってきておるときですよ、特に昇進の道というふうな問題をどうするかということが一つの課題にもなってきているわけですから、これはひとつ二十五年前と変わってないと言われているんですが、こういう状態というのを改善していくように、ひとつ地方の教育委員会等に必要な指導を出すべきだと思いますけれども、そういうお考えはどうですか。
  171. 浦山太郎

    説明員(浦山太郎君) 校長、教頭等への昇任と申しますか、これが本人の能力、適性に応じてやるべきであって、性別による差別をやるべきではないと、こういうことで従来から私どもの方で指導してきてまいっておるわけでございます。いま先生がお挙げになりました率は、恐らく小学校で昭和四十七年度の率であろうと思いますが、四十七年度から八年、九年、五十年度と、率といたしましては大体増加の傾向がございまして、校長、教頭の合計で申しますと、先ほどおっしゃった合計の率が四十七年度で一・九%でございます。それが五十年度では二・三%まで増加をしているというのが数字にあらわれているわけでございまして、私どもといたしましても管理職としての適格性を有する女子教員がこのような管理職に昇任するということは、大いに結構なことであるということで、指導を今後ともしてまいりたいと思っております。
  172. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これはそういったいまの論議をお聞きいただいたと思うんですけれども、そういう立場でひとつぜひ進めていただきたい。特に要望しておきます。  最後に、特に大臣にお願いをしたいと思いますが、これは御承知だと思いますけれども、昨年の国際婦人年を契機にいたしまして衆参両院で国会決議やっているんですね。この決議の中にこういうふうに書かれている。「このように婦人を差別的に取扱う慣行を是正するとともに、特に母性としての社会的責務に照らし、十分な保護を確立するために、すべての適切な方策がとられるべきである。政府は、国際婦人年を契機として、婦人に対する差別撤廃、婦人の地位向上に関する国際連合の宣言、決議、条約及び勧告を国内の施策に反映し、これを実現するための行動計画を策定し、実効を上げるために全力をつくすべきである。右決議する。」という文章なんですが、これは後半の文章ですが、こういうふうに決議をされているのですが、私はこの十年というのは、この国会本会議決議ですね、この決議の精神に基づいて努力が進められるべきであるというふうに思うんです。そういう立場からいたしまして、特にまた私どもの党からも国内行動計画に対する御提案も申し上げましたと同時に、各党からも労働組合、民主団体、婦人団体からすでに総理府には二十数団体から要望が出されておる国民的な要求というのはすでに出てきていると思うんです。そういう立場で、いま問題になっておる婦人の社会的地位向上の問題、男女平等を保障していくために必要な保護行政をどうしていくかというふうな点については、ひとつ十分国民的合意が得られるという立場で、各団体からの申し入れ等の内容をひとつ具体的に御検討もいただき、そういうものを盛り込んでいただくという立場でやはり検討を進められるべきではないかというふうに思うわけでございます。時間がもうありませんので、私そういう立場で少なくとも各党、各団体の申し立てを重点を申し上げようと思ったんですけれども、わが党の部分についてだけ申し上げておきたいと思いますが、これは労働基準法を改悪するということをやめて、婦人労働者の深夜労働禁止や残業規制の諸規定は厳格に実施するとともに、全労働者に週四十時間、週休二日制の労働時間短縮を行う。同時に、これを保障するためにこれは衆議院で四野党共同して出しております全国一律最賃制を、これはどうしても実施するというふうなことで労働環境を整備する、保障するということが何よりも大事だ。こういう方向でなければ、これは平等というものをにしきの御旗にして、本当に婦人の置かれておる実情を無視した保護の撤廃ということがやられたら、日本の働く婦人というのが大変な事態になるという点をひとつ十分御理解いただいて施策に生かしていただきたい。最後に大臣の御見解を伺いたいと思います。
  173. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) ただいま御指摘になりました最低賃金の問題だとかあるいは就労時間の問題、こういう婦人関係の問題はいろいろありまするが、こういうことを踏まえて、現在労働基準法研究会検討していただいておる最中でございます。労働省といたしましては、婦人問題研究会議報告建議内容についてさらに労働基準法研究会にも御報告をいたしまして、これの検討が反映されるように努力をいたしていきたいと思っております。また、労働基準法研究会検討結果が出されましたら、これを中央労働基準審議会にお諮りをいたしまして、またさらに婦人少年問題審議会の御意見を伺う等いろいろと方々の審議会にかかるわけで手間をとりまするけれども、できる限り精力的に努力をしまして慎重に検討し、男女平等の支障となることのないように、明らかになった措置についてはこれを解消すると同時に、必要な保護についてきめの細かい対策を講ずるようにいたしたいと思っております。特に、昨年の国際婦人年以来こうした問題が、私が労働省に行ってわずか一ヵ月足らずでありまするが、非常に数多くの陳情やあるいは審議会の答申等を勉強させていただいておりまして、これは大変だなあと私も思っております。御指摘の問題についてはさらに勉強しまして、本当に名実ともに男女平等という問題、職場における男女平等という問題が非難を受けないような結果をつくり出すように努力をいたしていきたいと思っております。
  174. 向井長年

    向井長年君 労働大臣就任早々質問いたします。時間が余りないようでございますから簡潔にひとつお答えいただきたいと思いますが、労働大臣労働省の使命は簡単に言えばこれは何ですか。政策はいいですよ、簡単に労働省の使命というものはどういうものであるか。
  175. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) 国民の皆さんが全部が職場につけれるように働く雇用の関係を十分に努力をする、さらにそれじゃ職場についただけではいけないから、この職場についた方々の福祉の問題を十分に推し進めていく、これが一つの大きな目玉だと思っております。
  176. 向井長年

    向井長年君 戦前は労働省というのはなかったんですよ。戦前は労働者というよりも経営陣の方に力があって、労働者は非常に低く見られておったわけですね。発言権もなかった。こういうことだったと思うんですよ。そこで、労働省の使命というものは私は労働者の社会的地位を高める、いまも婦人の問題ありましたけれども、そういう立場とやはり労働者の優遇の立場から行政が行われなければならぬ。基本はここにあるんですよ。問題は、具体的にいろいろな問題ありましょうが、基本というものはやはり労働者の社会的地位を高めるということ、そして労働者の優遇という立場からその行政を行う、それに従って労働者はそれぞれ社会的責任を持つということでなければならぬと思うんですよ。これは私は労働省の使命だと思うんです。これは大臣よくこれからそういう立場からあらゆる政策を進めていただきたいと思います。そういう中で、実はこれはまあ労働大臣にお聞きする問題じゃないかもわかりませんが、大蔵大臣にもどれわが見質問いたしましたが、いまやはり国の大きな問題として減税問題、これをとらえておりますが、大蔵大臣は減税は今度はできないと、財政的に困難でできないと。しかし、自民党の方では選挙も近いので若干検討しなければならぬというようなことも言っておるようでありますが、私はそういう問題は根本論でございますけれども、しかし、いまサラリーマン、労働者が重税に悩んでおるでしょう、物価のこの高騰の中で。そういう中で物価調整減税というようなものが、これは私はあってしかるべきだと思う。これに対してやはり大蔵がやることであるけれども、先ほど冒頭に申しました立場から、労働省としても物価調整減税というものは推進していかなければならぬじゃないかという感じがいたしますが、この点どうでしょう。
  177. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) 今日の国の財政の状況等を見ますると、なかなか大蔵当局は減税については非常にシビアな考え方を持っておるようでございます。しかし、われわれ労働者立場を現実にながめておりまして、やはり賃金が少しぐらい上がっても物価で追い越されてしまう。むしろ、物価の方が高くなっていくというような結果が出てしまっては減俸につながってくるわけです。そういうような意味からいきましても、やはり主張すべきことは主張して、私も党の方の税調をずっとやっておった体験もありまするので、党の方の実情もよく調べて、そして労働省としてはできる限りの所得減税をしていただけるように努力をしていきたいと思っております。
  178. 向井長年

    向井長年君 直接の減税もありますし、やっぱり間接的な減税もあるんですよ。たとえば物価は上昇する。しからばこれに対して配遇者の控除額、あるいはまた扶助控除額、こういう基礎控除をこれによって引き上げるということも大きな減税なんですね。したがって、こういう問題はやっぱり労働省も相当強く大蔵省にもやらなければならぬのじゃないかという感じを持って、私はこの問題を労働大臣に聞いておるわけですが、今後全般の減税、それにあわせてやはり物価上昇調整減税という、この立場で今後は大臣も取り組んでいただきたい、これは要望しておきましょう、よろしいですか。
  179. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) 御指摘の問題につきましては、十分検討しましてこれと取り組んで折衝してみたいと思っております。
  180. 向井長年

    向井長年君 労働省の五十二年度の労働政策の重点ということで、雇用安定基金制度の創設というものを意図しておるようでありますが、これは非常にいいことでございますけれども、これは失業を積極的に予防するという立場で、この問題を基金制度を創設するということですが、これはそのとおりですか。
  181. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) そのとおりでございます。
  182. 向井長年

    向井長年君 これは基金を、私は他の方でも基金制度の問題をいろいろ取り組んでまいりましたが、やはり資金問題でしょう、金でしょう。一つの構想を持っておられると思いますけれども、大蔵当局との折衝の中で相当これはまた厳しく出てくる問題があると思いますが、この点は十分やはり基金創設を考えるならば、大蔵に対しても労働者保護あるいは失業予防、こういう立場で積極的に私は取り組まなければ実現はしてもなかなかこの問題困難になるんじゃないかという感じがいたしますが、この点どうです、話し合いついていますか。
  183. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) いま御指摘にございましたように、雇用安定基金制度を創設するにつきましては、財源的な対策処置をどうするか、それから法制上の問題といろいろございますので、政府部内におきましてもそれぞれの関連官庁と十分事前の事務的な詰めを行っておる次第でございまして、私どもといたしましては何としてもこの制度を完成させたいと、かように考えて努力をいたしておるわけでございます。
  184. 向井長年

    向井長年君 確かにその意気込みも結構だし、われわれも大いに協力し合って実現のために努力したいと思います。野党の皆さんは、言うならば督励をする方にあるんですよ、これはね、たとえば。労働者保護という立場から考えてもね、そういう立場で、他の方でも私は基金をつくるときに相当大蔵省といろいろやり合いましたけれども、なかなかそう簡単なものじゃないですよ。これだけはやはり大臣ね、今度は特に大臣は大蔵大臣派でございますから、ひとつ総力を上げてぜひ実現するようにこれは努力していただきたいと、こう思います。  そこで、私はとっぴなことばっかり言いますが、労働大臣、憲法二十八条は何ですか、知っていますか。
  185. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) よくわかりませんけれども、いま隣で聞いたら、労働者の団結権、交権、こういったものだそうでございます。
  186. 向井長年

    向井長年君 素朴で結構です。そんな知ったような顔をせんでもいいんですよ、知らなきゃ知らないでいいんで、これから勉強してもらえばいいんで、憲法二十八条というのは労働基本権問題ですね、そうでしょう。労働基本権とはしからば何だ。まず団結権でしょう、団体交渉権、団体行動権、この三つですよね、この三つが言うならば労働基本権ですよ。労働省労働基本権を守らなければならぬ立場にあるわけ、そうでしょう。したがって、こういう立場から私は若干質問をし、労働省の言うならば決意のほどを聞きたい。経過みたいのはどうでもいいです、もう。時間もございませんから、経過はよく存じておりますから。  たとえば、昭和二十八年にいわゆる労働組合の争議、これがどろ沼闘争になった。極左思想の中から、まあ言うならば革命の一つの手段として使われたことは事実なんです。これは私だけじゃなくて、ここにおる社会党の浜本君も知っているはずだ。それは石炭、そして電力、この二つの組合が極左思想化の中でどろ沼闘争を繰り返した。こういう中で、社会的に国民生活、こういう点から考えて、これはいかぬということで、このスト禁止、言うならばスト規制というものが出されたんですよ。しかも、これは三年間の時限立法でこれが行われたということ、いいですか。時限立法というのは本来これは労働基本権としてあるべきだ、しかしながら社会不安を起こす、国民生活に支障を来す、こういう中からある一時期間だけはひとつ停止しようという形の時限立法であったはずなんです。こういう状態が今日なお延長せられ、恒久立法となって今日きておるという経過、これに対して労働省は代々労働大臣がかわっておりますけれども、どういう取り組み方をしてまいりましたか、今日まで。したがって、これは私は特に申し上げたいことは、その石炭あるいは電力の労働組合の皆さんが、その後スト規制法が恒久化されて、その後あの動労とか全逓とかいうんじゃなくて、違法ストを今日までやってきたことがあるか、二十何年間。そういう実態をあなたたちは見、知ってるはずだ。そういう中でこの労働基本権問題とこの時限立法の問題に対してどう取り組んでおるか、また、どう取り組もうとするのか、この点私は聞きたい。
  187. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) 御指摘のように電気あるいは石炭、ストの禁止が行われておりまして、これが時限立法でさらに延びまして、これが期限のない法律に切りかえられたことは御承知のとおりでありまするが、確かに御指摘のように電気、あるいはまあ石炭は部分的でありまするが、このストが禁止になってから一度のストもありません。これはやはり組合の皆さん方がこの電気、石炭が国民の日常生活に及ぼす影響というものを非常に深く理解して、こうしたストなしで今日まできたわけでありまするが、さりとて労働の基本権から考えますると、それじゃ何もやらないから基本権問題とどういう関係になってくるかということになりますると、これはわれわれも静かだからそのままにしておいていいということではないということから、現在スト規制調査会で検討をいたしていただいておるようであります。検討が長いという御指摘があるかもしれませんが、私といたしましては同調査会において十分な検討を重ねていただいて、そうしてしかるべき結論を出していただくように督励をいたしていきたいと、かように考えております。
  188. 向井長年

    向井長年君 組合が社会的ないわゆる混乱があるからやっちゃいかぬということは、これはみずから考える問題です。そうじゃなくて、法律規制しておるんでしょう、いま。規制しておるから法治国家においては法律を破っちゃいかぬということでしょう、まず第一に。その認識があるということですよ、そうでしょう。社会的責任というようなものはまた別にあるけれども法律規制しておるからこれはやるべきではないというのがまず精神にあって、そして、もしやった場合においてはどうなるだろうというのが社会的責任なんです、いま現状はね、そうでしょう。  したがって、私は、いま調査会とかいろいろなことを言われましたが、もう約三年間ですよ、田中内閣当時ですよ。そしてこの問題については、当時、あれはまだ加藤労働大臣やったわ。それから次々とかわって、三人ほどかわっておるでしょう、そして長谷川、それからいま大臣だ。調査会に委託しておるというけれど、本来私は労働省においてこの問題をいかに、冒頭労働者の権利、憲法二十八条、この上に立っていかにあるべきかという、労働省において一つの試案というか、あなたたちがまず一つの起案を持って、そして諮問をされることはいいですよ。何も姿勢なしに調査——調査会何やるんですか。そういうことが私は根本的に間違っているんじゃないかと、今日そういうことをやられておるそうだけれども。だから、私はそういう調査会の結論というようなことは聞こうとしてないんです。それよりも大臣以下労働行政に携わっておる皆さん方がこれに対してどういう姿勢をとろうとするのか、基本的に何をとろうとするのか。憲法二十八条で保障されている、過去何十年間は法治国家において法律を守ってきておる、その組合は良識を持っておる。そういう中であなたたちは何を考えて進めようとするのか。調査会に任しました、調査会が検討されています、それを受けて考えます。そんなことで労働行政ですか、それで。そんなもの労働行政じゃないでしょう。大蔵の場合においての減税の問題でも税制調査会いろいろやられて、そして一つの起案を持って大臣諮問として各省に出してある、あの米の問題、そうでしょう。農林大臣一つの諮問機関として農林大臣一つの起案を持って政府はこうしたい。しかし、社会的に学識経験者の皆さんどうでしょうというて諮問しておるんでしょう、皆。あなたたち手ぶらで、やろうという気があって諮問しておるのか、それともやるべきではないという立場から諮問しているのか、さっぱりわからぬじゃないですか。どういうことなの、これは。今日まで三年間かかってきておるけれど、その姿勢があるのかないのか、私はまず聞きたい。
  189. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) なかなかこの電気、石炭という問題が非常に重要なものであるだけに現在禁止法律がある。しかし、これはいままではいままでの法律としてこれからどうすべきだということは、労働省側というよりも、そういうスト規制法の調査会という専門的な調査会がありまするので、調査会、調査会と言ってそれは手ぬるい、とおしかりを受けるかもしれませんが、とにかくこの調査会で精力的にひとつ検討していただいて結論を出していただくということをわれわれは期待いたしておるわけでございます。
  190. 向井長年

    向井長年君 期待をしておるって、あんた少なくとも労働省としては時限立法って何だ、一体これは。時限立法というのは、一時とめる、しかし正常になればこれは憲法に従う趣旨でこれはなくなるというのが時限立法の性格でしょう。恒久立法に延長したですね、一遍、三年間延長した。それからまたそうなった。その間にそういう憂いがあったんですか。憂いがなかったでしょう。なかったにもかかわらず延長し、そして恒久立法に取りつけてしまったんだよ、今日ね。そういういわゆる歴史を持っておるんですよ。そういう歴史を持って、今日なお何十年間たって、組合というか労働者も成長している、社会的責任も持っている。いま電力がとまった場合に、社会混乱ですよ、そうでしょう。通信もとまればあるいは輸送もとまる、食糧もどれは供給できない、こんな事態ですよ。そういう中で、あえてストライキをやるとだれも言ってない。労働基本権というものは確と憲法で保障され、もうあるべきではないか。少なくとも労働基本権というのは憲法で保障されたあれで、労使が対等の立場で物事を平和的に解決するという立場労働基本権というものはあるんですよ。片手落ちですよ。一方には経営権というのもあるわけだ、そうでしょう。労働者労働権、そしていま言われた団体行動権というものがあるわけだ。これによって力のバランスの中から物事はすべて平和的に解決しようというのが目的でしょう。労働調整法、労働大臣まだ読んでないんでしょう、あなた。労働調整法の三十七条、三十八条知っていますか、知らないでしょう。恐らく労働大臣、言うても知らないです。——いまごろそんなもの開かぬかてわかっているでしょう。そういう公益事業であるがために予告期間を設け、もしやる場合ですよ、あるいは緊急調整期間を設けて、やってはいかぬという禁止条項まであるんですよ、調整法というものは。これはこれだけの間にまた平和解決せいよということなんだ、これは。そこまで手を尽くした法律が生まれておるにもかかわらず、その後何ら検討もせずして、私が三年前に田中内閣のときに予算委員会でどうだとこうやったときに、田中総理は、それを撤廃するという方向によってひとつ検討いたしましょう、調査いたしましょうということで、加藤労働大臣のときにあれができたんでしょう。そして三年間たっていまだに——聞いてみれば、調査会はあなた専門的と言うが何も専門じゃない、知らない。そんなこと知らないんですよ。知らないために、わからぬから労使に検討してくださいと言って検討さしておるんですよ、現在。労使は相反するんですよ、この問題は。経営者がストライキやってくれとだれも言いませんわ。ストライキ権与えてやってくださいとだれも言いませんわ、そうでしょう。そういう中で話し合いをしてストライキ権をつくるようなところ、世界どこへ行ったってありませんわ、これは。そういうことが私は初めから根本的に労働省としてはできないことをしようとしていると言うんです。なぜもっと積極的に労働省みずから取り組まないかと私は言いたい。どうなんですか、大臣、就任やからちょっとわからぬけれども局長どうですか。
  191. 青木勇之助

    政府委員青木勇之助君) スト規制法の制定経過その他もう先生十分御存じでございまして申すことありませんが、いずれにいたしましても昨年の十一月に調査会の方で法制定当時以来もうものすごい技術革新等がございまして、電気も水主火従から火主水従、しかも原子力発電その他、しかもコンピューターの導入による操作、いろんな革命的な進歩に相なっておりまして、公益側を代表されまする学識経験者の方々、実情調査あるいはヒヤリング、いろんなことをされたんでありますが、やはり実態に一番よく即して物事が判断できるというのは、現実に日々仕事に携わっておられる使用者であり労働者の方々であるということで、調査会の先生の方から、ひとつ労使でいろんな問題点について検討してもらえないかというような御判断がございまして、現在七つのワーキンググループに分かれまして、水力、火力、原発の発電、それが三つ。それから給電、配電、送電、変電、この四つをいまやっております。火力についてはかなり進んだ議論が行れております。  そういうことで、調査会の方といたしましては結論をできるだけ早く出したいという、出すためにもそういう煮詰めが必要であるということで、鋭意御努力を願っておる段階でございます。  先生のおっしゃいまする労働基本権の尊重、これはもう当然のことでございます。一方最高裁の判例等におきましても、公共の福祉との調和、国民生活あるいは国民経済との調和の問題、そういうものをも踏まえて、先生方、労使の参与委員を入れまして検討中でございまして……
  192. 向井長年

    向井長年君 時間ないからもういいわ、そんなこと。  局長大臣よう聞いておきなさいよ。過去においてはこれはスイッチオフをしたんです。安全を保つためにスイッチオフをした。この行為がいけないんですよ、今度は。いいですか。それが禁止されておる、今度は。憲法の趣旨からいくならば罷業権、職場放棄できるんですよ、これは。もしそれが違反だったら、これは裁判で闘ったらあなたたち負けですよ。それはそうですよ。自分たちが担当している仕事を職場放棄してスイッチオフをすればこれは消すことになりますから、これは違反にひっかかるでしょう、規制法に。規制法にひっかかったって十万か十五万以下の罰金じゃないの、これ。何だって言うの。これ。本当は国鉄とか動労とか全逓見てみなさい。禁止したってもうどんどんやっておる。処分された。処分されても一年か二年たったらまた復勤してしまう。こんな状態ですよ。あなたたちは知っているでしょう。それでもわれわれは職場放棄できるけれども、最高裁で闘えばこれは勝ちますけれども、そんなことは良識持ってしない。しないものはいいわでほうってあるのだ、あなたたち。そんなこと許されませんよ。調査会、調査会って、これは隠れみのだ、あんたら、私から言えば。労働省みずからが一つ考え方を持つべきじゃないか。先ほど言った労働基本権の立場から持つべきでしょう。それを持たずして調査会だ、労使だと、そんなことやって結論がどう出てくるの。しかもそれは私は学識経験者だけで専門的に持っているのだというのなら話はわかるけれども、労使で持たして、労使でストライキ権やるかやらぬか、内容どうだの、技術的にどうだのとそれは事務的に考えても、経営者陣は反対するのはあたりまえですよ、こんなもの。そうでしょう。そういうことをあなたたちは黙って見て、そしていややってます、やってます、そんなものじゃ姿勢じゃないですよ。労働基本権を守るためにはあなたたちは最善の何を尽くさにゃいかぬでしょう。たまたま調整法というものがあるんですよ。この調整法というものは、やっぱり公益事業に適用されている。しかし、同じ公益事業でも私鉄なんかやっておるんですよ。禁止されてないですよ、私鉄なんかあれは。それは若干性格が違いますよ。違うけれどもそうなんだ。だから調整法におって言うならば十日間の予告、これでは解決つかないね。そうすれば緊急調整条項が発動できる、三十八条で。そうするとまた五十日間ストライキやれない。これはなぜかというと、その間に平和解決を促進しろということだ。そこに一つ法律の基本があればそれに従ってあなたたちはやるのはあたりまえ。これが短いというのだったらこれを修正すればいいんだよ。改正すればいいんですよ。場合によれば、もし組合が非常識であって、それでもやるんだといえば禁止条項をつければいいんですよ。そうでしょう。社会的に著しい混乱を起こすとなれば総理大臣の名によって禁止命令を行うことができるということになれば禁止できる。それに対して違反したやつは場合によっては刑事罰でもいいですよ。もっと厳しく考え労働基本権というものを重要視したらどうですか。私は、その点についてあなたたち余りにもおざなり過ぎる。大臣は今度就任してこれから勉強されると思いますけれども、私はこれ何十年間言うてきたんだ、これ。いいですか、何十年間言ってきて、ちょうど三年前にようやく腰上げて取り組み出した。取り組んだらまた隠れみのに隠れておる。許されませんよ、これは。しかも、それが良識を持って社会的責任をやはり労働者も持たなければいかぬ、そんなことぐらいいま自覚していますよ。自覚しているがためにようストをやらないんですよ。それだからといって、そんなところに逃げておってはいけないということ。こういうことをあなたたちどう考えるのか、もう少しきちっとした労働省の姿勢を私は聞きたいんだよ。調査会の報告なんか要らない。姿勢をどうして今後持っていくか、この姿勢をひとつ聞きたい、答弁願いましょう。
  193. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) いう労働基本権の問題を十分考えながら、いま向井先生から御指摘になったようなことを踏まえて調査会は調査しておる。少し長いという確かに御指摘を受けます。当時田中総理がこれを前向きで非常に検討するという答弁を——私も答弁の内容を見せていただきました。あの趣旨に従って、いまこれは検討の過程においては、ただいま向井先生から言われた問題がいろいろあるようでございます。まだ十分私も頭の中に入っておりませんが、私もこういう立場に立った以上は、御趣旨に沿って、調査会の方がどういう結論を出すか、いま調査会に委託しておいて、さあ、こっちでかれこれ言うこともどうかと思いますので、とにかく調査会の方の各般の調査の結果を待っていきたいと、かように思っております。しかし、いつまででも待っているということではありません。督励はいたします。
  194. 向井長年

    向井長年君 大臣就任して日浅く、勉強のさなかだと私は見ておりますから、あえて大臣には、今後の姿勢というものを十分認識してかかっていただきたいという要望をいたしますが、しかし、労働省局長はそうはいきませんよ。あなたは今日までそういう中で携わってこられた責任である以上は、少なくとも労働省みずからが、何も外部に発表するんじゃなくて、一つの案というものを持つべきですよ。私が先ほどからちょうちょうと言うような、それを理解したならば——しないというならば反発してください。幾らでも反発してください。結構ですよ。理解したならば、まず、先ほど若干触れましたが、労働基本権、憲法に従ったこの立法精神に基づいてやはり労働法があり、調整法がある。しかし、現在の調整法ではまだこれは不十分である、まだ不安が少しでも残る。それならば調整法の改正というものがあってしかるべきなんだ。それが前向きなんですよ。これをやらずして調査会へ出しました、調査会の結論を待ってじっと手つくねてます。何もあなたたちが一つ持ったからといって、直ちに外に出すわけではない、あるいはまた、国会に出すわけではない。一つ考え方、精神、労働行政の一環としてのこの問題は、みずからあなたたちが一つの心構えを持たなければならぬ。この心構えは、私の言ったやつに反発がありますか。あれば聞きましょう。なければ持つという形になりますか。調査会は調査会でやってもらったらいいじゃないですか。その点を私はお聞きしてこの問題を終わりたいと思うんですが。
  195. 青木勇之助

    政府委員青木勇之助君) 先生の労調本三十七条、三十八条、そういう仕組みもあるということも私ども十分承知いたしております。調査会の先生方もそういう仕組みのあるということ、十分御承知の上で検討を進めておるわけでございまして、いま先生がおっしゃいましたことについてかれこれ駁論するとか、そういうことは毛頭考えておりません。そういうことを踏まえて御検討願っておるという実情でございます。
  196. 向井長年

    向井長年君 実情を聞いているのじゃないって、私は。調査会のやつはやってきたら結構ですよ。いまやっているんだから、何もそれをやめよと私は言ってなんだから。あなたたちが行政の責任者として、私の言ったことに対して反発しようとは思ってないって。することあるんですか。あればしなさいよ。ないんでしょう。あったらしたらいいんだよ。ないとするならば、その姿勢というものをあなたたちみずから持ちなさいと。調査会で待つことはよろしいよ。調査会やっているんだから、これいいや。しかし、持つことが私はまず大事じゃないかと。持たずして結論は出てきませんよ。本来、私が冒頭に言ったような、場合によればあなたたちは、こうしたいと思う、どうだろうという諮問の仕方もあるんですよ。それを何にもせずして、どうでしょうと、これ出しているだけのことや。そうでしょう。そうすれば、内々でもあなたたち労働省内で検討して、こうあらねばならぬなというぐらいのことはあってもしかるべきだ。その意思があるのかといって私は聞いている。
  197. 青木勇之助

    政府委員青木勇之助君) 労働省といたしましては、やはり労政に携わっております以上、常々そういう点については、各般の検討はいたしておることはもう当然でございまして、先生の御意見、そういうものをも十分踏まえまして、われわれとしては今後さらに検討を続けてまいりたいと、こういうふうに思っております。
  198. 向井長年

    向井長年君 最後に。浦野大臣、そういうことなんですよ。これ二十八年からだったら何年たつんですか。いま五十一年だ。その間、法治国家において法律を守って、良識を持って対処してきた。電力の労働者はおまえら賃金いいじゃないか、あんなもの失業がないし、いいじゃないかと言われるかしらぬが、いま電力の労働者の場合、あるいは炭鉱しかりですよ、むつかしい。こういう中で決して賃金よくないですよ。考えてみなさい。平均年令、労働省これ労働者の平均年齢、大体企業に働いている人たちの平均年齢どのくらいになっていますか。四十歳を超えておるんですよ、平均年齢が。そして現在の賃金レベルがどうですか、各産業と比較したときに。うんと安い。これを考えていろんな要求をされるけれども、世間並みでちゃんと抑えられている。これは片手落ちですよ。何もストライキやる、やらぬの問題じゃない。そういうところに問題の何があるわけですから、したがって、これは正常に戻して、そういう中から労使が対等の立場で物事を平和的に解決する、ストライキというものはやるべきではない。もしストライキ権あったかて、あるにいたしましても、社会的責任というものは労働者も持たなければ。こういう中から判断すべきことであって、それが現在二十数年間来ておるんでしょう。これを頭に置いて労働省はこの問題については、労働行政を早急に立てられるように私は要望して終わりたいと思う。
  199. 浦野幸男

    国務大臣浦野幸男君) 御趣旨を体しまして、私も、二十数年間こうしたストライキがなしで、いままで従業員の方々が社会的影響を配慮してのこともありますし、それだからこの問題はおざなりにしておいていいとは決して思いません。これから、調査会で調査いたしておりまするが、調査会は調査会の一つ結論が出ると思いまするけれども、われわれはもっとそうした問題に真剣に取り組んで、そうして長い間の問題の解決に努力をいたしていきたいと、かように考えます。
  200. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十八分散会