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1976-10-27 第78回国会 参議院 災害対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十七日(水曜日)    午前十時四十分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         工藤 良平君     理 事                 上條 勝久君                 藤原 房雄君                 神谷信之助君     委 員                 上田  稔君                 川野辺 静君                 佐藤  隆君                 園田 清充君                 高田 浩運君                 前川  旦君                 原田  立君                 柄谷 道一君    国務大臣        国 務 大 臣        (国土庁長官)  天野 光晴君    政府委員        国土庁長官官房        長        河野 正三君        国土庁長官官房        審議官      紀埜 孝典君        国土庁計画調整        局長       下河辺 淳君        農林政務次官   片山 正英君        農林大臣官房技        術審議官     川田 則雄君        農林大臣官房審        議官       杉山 克己君        農林省構造改善        局次長      福澤 達一君        建設政務次官   梶山 静六君        建設省河川局長  栂野 康行君    事務局側        常任委員会専門        員        森  一衞君    説明員        経済企画庁総合        計画局計画官   広田 孝夫君        文部省初等中等        教育局財務課長  西崎 清久君        厚生省社会局施        設課長      水田  努君        農林省農林経済        局金融課長    若林 正俊君        農林省農林経済        局保険管理課長  船曳 哲郎君        農林省農林水産        技術会議事務局        研究総務官    川嶋 良一君        食糧庁業務部長  戸塚 金郎君        林野庁業務部長  須藤 徹男君        中小企業庁計画        部金融課長    松尾 成美君        気象庁予報部長        期予報課長    青田 孝義君        建設省都市局都        市政策課長    松原 青美君        建設省河川局治        水課長      小坂  忠君        建設省河川局砂        防部傾斜地保全        課長       大工原 潮君        自治省財政局指        導課長      関根 則之君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○災害対策樹立に関する調査  (冷害対策に関する件)  (台風第十七号による災害に関する件)     ―――――――――――――
  2. 工藤良平

    委員長工藤良平君) ただいまから災害対策特別委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  災害対策樹立に関する調査中、地震対策に関する件について、来る二十九日の委員会地震予知連絡会会長萩原尊礼君、東京工業大学教授力武常次君及び文部省緯度観測所所長東京大学教授坪川家恒君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 工藤良平

    委員長工藤良平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 工藤良平

    委員長工藤良平君) 災害対策樹立に関する調査を議題とし、冷害対策に関する件及び台風第十七号による災害に関する件について調査を行います。  この際、冷害及び水害に対する農林省対策措置について政府から報告を聴取いたします。杉山審議官
  5. 杉山克巳

    政府委員杉山克巳君) 農林省災害対策の概要について御説明申し上げます。お手元に資料をお配りしてあるかと存じますが、農林省災害対策本部の名をもって十月十五日に明らかにしたものでございます。  前書きをごらんいただきますと、八月以来北日本冷害及び西日本の水害に対しいろいろ検討してきた結果、現在までにとった措置、それから今後措置したいと考えている事項を整理してみたのがこの表でございます。今後関係省等との調整を要する点もございますが、農林省としてはこのすべてについてぜひ実現を図りたいというように考えております。  初めに、冷害被害に対する対策検討でございます。  項目として、第一に天災融資法発動がございます。右の説明の欄に十一月中発動というふうに書いてございます。十月十五日現在の作況を十一月二日、来週に発表いたします。その際、被害調査も取りまとめることにしておりますので、それに基づきまして手続を進め、十一月中に天災融資法発動するということにいたしております。個人八十万、そのほか金額それから一番右に金利が書いてございますが、これは天災融資法発動になった場合の経営資金貸し付け条件でございます。  それから二番目に、激甚災害法発動というのがございます。これも天災融資法発動と同時に発動するということを予定いたしております。貸し付け条件は、それぞれ限度額が引き上げられる等の内容があるわけでございます。  それから三番目に、自作農維持資金融資枠確保というのがございます。これにつきましては、まず総体としての融資枠確保すること、今回の冷害大変大きゅうございますので、当然、当初予定した所要額では足りなくなる、したがって全体としての融資枠確保する必要がまずあるわけでございます。それから個人個人の借り受け者、これもいろいろありまして、何遍も過去に災害をこうむっておる、すでに借り入れておって、限度額いっぱいあるいはそれに近く借りていて、新しく借りる余地がそのままでは少ないという人に対しては、これは特例を設けて限度額の引き上げをするということを検討いたしております。  それから四番目に、既存借入金条件緩和及び応急つなぎ融資というのがございます。まず第一に、公庫資金近代化資金等について償還期限等につき条件緩和を図る。「近代化資金等」とありますが、「等」ば改良資金そのほかでございます。それから二番目に、応急つなぎ融資。各種の制度上の融資手当てはどうしても若干の時日を要する、それまで待てないという向きに対してはとりあえずの応急つなぎ融資措置をとる。これらのことにつきましては、右にありますように、農林経済局長それから農蚕園芸局長名をもってそれぞれ十月五日、十月七日に関係機関に通達を出しております。対象といたしまして融資機関それから道、県、そのほか農業団体等でございます。なお、二番目の応急つなぎ融資の件につきましては道、県に対し指導と、それから援助をお願いいたしております。  五番目に、共済金早期支払いでございます。これは年内支払いを行う。それから年内支払いは必ず末端の農家に本払いが行われるようにするということでございますが、それまでの間におきましても必要に応じ共済金仮渡し――仮渡しというのは個々単位共済組合から農家に対する支払いでございます。それから再保険金概算払い。これは国が共済連に対する支払いでございます。これらを行っていく。  それから六番目に損害評価特例措置というのがございます。共済損害評価に当たりましては減収をどう見るかというのがなかなか大きな問題でございます。ことしの被害実情をできるだけ反映するという考え方に立ちまして、ふるい目の上に残った、通常なら収量と見られるものについても、そのうち被害のある分、程度の著しいものについてはこれを収量と見ないというような損害評価特例措置を行うことといたしております。  それから七番目に損害評価事務費共済金評価事務、きわめて大量に今回は発生することになります。それに伴って事務費も増加する。そういう事務費増加部分につきましては、国に若干保留分予算枠も残っておりますので、これを重点的に追加配分する。それから二番目に、共済団体等特別積立金がございますので、従来これは事務費等に使ってはいけない、使用規制をしておったわけでございますが、近年事故が少ないためこの積立金が相当多額に上っております。これについてはそういう規制を緩和して積極的に使用をさせることを認めるということにいたしたいと思っております。この額はきわめて大きゅうございまして、共済連共済組合合計しますと百八十億円以上に上ります。  それから八番目に被災地帯雇用確保の問題がございます。いわゆる救農土木事業でございます。これは労務比率の高い土地改良治山林道造林等小規模事業実施するということにいたしております。趣旨は地元における現金収入の機会を確保するということでございます。これにつきましては、すでに予算等もおおむねの枠が決まりまして、目下各県にその内訳を配分するよう事務を取り進めている段階でございます。  九番目に規格外玄米買い入れ措置。これは二つに分けまして、食糧として配給可能な米穀、これにつきましては、まず有利な規格で売れるものはできるだけそうしていただくということで、自主流通米として販売していただくということを考えております。しかし、まあそういうふうに、ことしのような場合自主流通米として売れるものは限られる、売れないものについては政府買い入れをするということで考えておるわけでございます。これにつきましては、すでに二十五日に、一昨日でございます、買い入れ規格及び買い入れの価格も決めまして、北海道東北に対しては告示をいたしております。それから主食不適のもの、主食として適さないくず米が相当量出回る、これが大量に出回れば農家としては買いたたかれるおそれがある。そこでそういうものが円滑に販売されるよう関係団体指導する。農業団体に一元的に集荷させ、需要者側、これは原材料用等に使われるわけでありますが、みそでありますとかあるいは菓子用加工等に使われるわけでございますが、そういう需要家側団体との団体取引について円滑に流れるように国としても指導するということでございます。  それから予約概算金利子減免等被害の著しい地域激甚被害者、こういうものについてはその利子減免措置が現在の制度でもとられることになっております。その制度に基づきまして減免を図る。それから元金の延納についても要望が強いのでございますが、これはその法律的な性格等からいたしましても直接に延納させるということは困難でございますので、現在ある集荷業者代位弁済仕組み、これを活用するということを考えております。  それから十一番目に自家飯米確保収穫皆無等自家飯米にも事欠くという農家がございます。そういう農家に対しては、まず第一に政府米通常配給ルートによって配給するということ。それから特に被害が著しいような場合は、現在の仕組みにおきましても都道府県知事それから市町村長を通じて直接売却する。通常販売ルートでなく、そういう公共団体を通じての直接販売があると、その代金については一年間の延納を認めているということがございます。利子は無利子でございます。こういう措置もとるということを予定いたしております。  それから十二番目に次季作用種子確保。一に、水稲種子確保について指導。今回の災害実情を見ますというと、どうも来年の種もみ手当ては県内だけでの調達は困難なところが多い。そういうものにつきましては県間調整を図る必要がある。国はそのため、各地域種もみ需給状況について現在調査をしております。できるだけ早く対応できるように種々指導を図っているところでございます。それから二番目に、その場合、単に需給調査指導ということだけでなく、実際に売買される水稲種代、その一部についても助成するということを考えております。これについては前例もありますので、それらも参考にして被害数量等をにらんでこれから決めてまいりたいというふうに考えております。  それから十三番目に飼料確保でございます。特に北海道等におきまして粗飼料が思うようにとれなかった。この冬の越冬飼料に事欠くというような畜産農家もございます。そういった向きに対しては、ほかの融通のきくような地域から粗飼料を回すというような需給調整を図るということ。それから、どうしても足りないという向き、しかも政府のお手持ち払い下げてほしいという向きには、手持ちの大麦もございますのでこれを払い下げるということも考えております。  十四番目に、防除に対する措置でございます。本年は病害虫の発生が非常に早い時期から懸念されましたので、いつもの年に比べて病害虫防除事業を相当活発に行っているということがございます。そのため経費もかかっております。農薬等についても見てほしいという要望がございましたが、消耗的な経費につきましては、先ほど申し上げました一番再生産の基本となる種子確保を重点に考えるということで、防除に対する費用につきましては、団体等指導経費、この掛かり増し分について既定予算を重点配分するということで対応したいと考えております。  それから十五番目に、試験研究充実技術指導徹底でございます。項目が四つ掲げてございますが、これはことしだけの対策というよりはむしろ今後の恒久策という性格が強いものでございます。まず第一に、冷害に関する緊急調査実施。これはすでにたび重なる調査団の派遣、さらには現在関係者専門家意見等を聞いてそういう調査をやっているところでございます。二番目に、異常気象対応技術確立に関する総合研究実施。これは本年度から五カ年間のプロジェクトをもって実施することを予定しておったものでございます。今回の冷害を非常に貴重な教訓としてさらにその総合研究充実実施を図るということ。三番目に、耐冷性品種の育成、四番目に技術指導徹底、こういったことを考えているわけでございます。  それから、次の二枚目に移りまして、台風第十七号災害に関する対策検討事項でございます。  項目として、1に農地、水路、農道、林道治山漁港等早期復旧というのがございます。対策といたしましては、第一に早期復旧を図る。そのために復旧計画作成指導応援体制確立早期査定ということを基本的な考え方として対策を講じているところでございます。それから査定を待っていられない再度災害防止、人命にかかわるようなことから緊急を要するものにつきましては、応急工事を認める、それから査定前着工も認めるということで早期復旧を実現しつつあるところでございます。それから二番目に、積極的な改良復旧実施。原則は従来から原形復旧ということになっておりますが、しかしそれでは再度災害の危険も大きいというようなところもありますので、できる限り積極的に改良復旧実施してまいるという考え方でございます。三番目に、査定設計書作成委託費補助検討事務量が多く市町村にとってもかなりの負担になっております。これらについては補助考えるということでございます。  それから、項目の二番目といたしまして、個人施設共同利用施設災害融資。これは農林漁業金融公庫資金融資として金利六・二%の災害融資制度がございます。これが激甚災被害者に対しては三年間は三%というような特例も受けられるということになっております。これを活用する。  それから、十七号につきましては激甚災害法発動。これは十月十二日政令第二百七十五号ですでに出しておるわけでございます。それから、この資料をつくりました十五日現在ではまだ出ておりませんでしたが、2の農作物等につきましても、十月の二十一日、同様、これは四番目の天災融資法発動と同じ日付でございますが、発動をいたしております。  それから、農作物被害につきましては、これは冷害の場合に御説明しましたこととほぼ似たような話でございますので、説明省略いたします。  ただ一つ、その十六番目に、家畜衛生対策被害地域に対して都道府県が行った家畜伝染病予防対策に要した経費の助成というのが、水害特殊性にかんがみまして一つあるわけでございます。  なお、この資料は、私どもまだ政府として正式に最終決定を見ない段階ではございましたが、関係する各方面、道県、市町村団体個々の農民、そういった方々に、やはり政府がどういうことを考えているか、農林省としてどんなことをいま検討しているかということをよく知っていただき御安心いただきたいという気持ちから、やや粗漏ではございますが早急に取りまとめたものでございます。  以上をもって説明を終わります。
  6. 工藤良平

    委員長工藤良平君) これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 藤原房雄

    藤原房雄君 いま冷害対策につきまして農林省から報告があったわけでありますが、十五項目にわたります検討事項につきまして詳細な御説明がありました。まあほぼ、関係団体の方やまた農家方々要望が盛られているようであります。詳細のことについてはまた後ほどお聞きしたいと思うんでありますが、八月に入りましてからの日照不足とか長雨ということのために今回のこういう五十年来、六十年来と言われる冷害に見舞われたわけでありますが、それに対して、東北では、山間地ではもう雪が降っておるという条件もございます。農林省でも一生懸命御努力なさって今日のこの取りまとめができたんだろうと思います。その点については心から敬意を表するとともに、いまお話がありましたように、来年の再生産、または農家方々が後継者問題とかいろんな問題を抱えておるわけでありますが、それにくじけずに営農にいそしむことのできるようなきめ細かな配慮、この実施、こういうことにもぜひひとつ御努力いただきたいと、こう思うんであります。  農林省関係についてはいま報告がありましたんですが、これに伴いまして、自治省に対しましても、当然、農業県であります東北六県につきましては、この冷害のために各地方団体から大変な財政上いろんな要望が出されておることはよくご存知だと思います。地方財政に対する対策、また具体的な問題としましては、国民健康保険税減免とか、また落ち込み等についての特別調整交付金、こういうものについても配慮してもらいたいと、いろんな問題について陳情があったろうと思うんでありますが、自治省として、このたびの冷害に対してとられた措置、ちょっと御説明をいただきたいと思うんですが。
  8. 関根則之

    説明員関根則之君) 自治省といたしましては、御承知のとおり、現在地方財政が非常に苦しい局面を迎えている中で十七号による災害が発生した後から追いかけるような形で冷害被害を受けまして、特に、もともと財政力の弱い東北各県におきまして財政的に苦慮をいたしておるような状態でございます。それに対しましては、今年度のとりあえずの災害対策につきましては、例年やっております特別交付税の枠の中で具体的な都道府県なり市町村財政需要に応じていきたいというふうに考えておる次第でございます。  今年度は、この春に法律の改正がございまして、特別交付税配分時期を十二月に繰り上げまして災害その他の財政需要には対応するという仕組みになっておりますので、現在各地方公共団体から冷害に伴います財政需要等につきまして資料の取り寄せを行っている段階でございます。十二月の時点で特別交付税配分によりまして地方団体財政上支障のないように措置をしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  9. 藤原房雄

    藤原房雄君 これはよく掌握なさっていらっしゃることだと思いますが、地方自治体といたしましては、財政の非常に逼迫した中で早急に対策を講じなきゃならぬという、特に東北北海道は間もなく雪がやってくるわけでありますから、施策が非常に急がれるという、こういうことで十分な自治省との間のお話し合いは適切に、また起債等についても早急にしなければならない諸問題があるわけです。時間がありませんから一つ一つ申し上げる時間がないわけでありますが、ひとつ地方から参ります問題については真剣にお取り組みいただいて対策を講じていただきたいと思います。  それから、文部省も、今回の問題については冷害に見舞われた方々子供の、子弟の問題ですね。また学校給食費とかそのほかについては市町村である程度財政援助をしなきゃなんないだろうというふうなことも検討していらっしゃいますし、来年進学する子供たちに対しての高校進学に対しましての育英奨学資金の弾力的な取り扱い等に、採用条件の弾力的な取り扱い、こういうことをある程度見ていただきませんとやっぱり断念せざるを得ないという子供さんが多いとか、そのほか特殊学校に就学していらっしゃるこういう方々の、それでなくても大変な経費がかかって大変なところへこのたびの冷害ということで、出かせぎにつきましてもなかなか思うようにいかない。そういう点で、これはもう人数とすればそんな何千、何万という数じゃないかもしれませんが、特に山間高冷地被害が大きいわけでありますので、ただでさえも大変なところにこのたびのこういう被害ということで何らかの御処置をしなきゃなんない。市町村でもいろいろ苦慮していらっしゃるようでありますが、文部省としてこれらの義務教育、さらにまた高校進学とか、こういうものに対してどういう冷害中心としまして指導なさっていらっしゃるか、またはお考えでいらっしゃるか、その点ちょっとお伺いしたいと思います。
  10. 西崎清久

    説明員西崎清久君) 私どもの方では、先生いまお話しのとおり、学用品費でありますとか通学費給食費にかかりましての、市町村が準要保護家庭に給与する場合の補助を二分の一で行っております。この点通常の場合ですと、三月に認定をいたしまして年末までに給与するわけでございますが、年度途中に冷害を含めまして災害等が起きた場合には、やはり年度途中で追加認定ができるような仕組みをとっております。そこで、私どももこの北海道中心とします冷害について九月の末からいろいろ計数調査をし、そして都道府県を通じまして実態の追加認定状況調査をいたしまして、現在のところ北海道ほか東北各県で約一万八千人程度該当者が出るのではないかというふうな計数をつかんでおります。ただ、今後もこの点については、まだ収穫が全部終わったというわけでございませんので、なお若干の追加が出るのではないかというふうなことで、もう少し計数の締まりぐあいを見ましてから予算の範囲内でできる限り追加援助できるようにこれを持っていきたいというふうに思っております。  それから、育英奨学の方はちょっと私担当課でございませんが、やはりこれは日本育英会とかいろいろな団体ございましてやっておりますので、先生の御趣旨はよく伝えるようにいたしたいというふうに思っております。  以上でございます。
  11. 藤原房雄

    藤原房雄君 さっき農林省からお話あったんですが、実際その現地へ行きますと、いろんな要望があったけれども、それはどうなっているのかということについて非常に一まあ周知徹底ということはなかなかむずかしいことです。農林省でいろいろ検討して、まあその地域地域でみんな特殊性がありますから、そういう点も配慮するということになりますと、いろんな画一的にいかない面もあるかもしれません。そういうことから今回のようにそれぞれの要望についての考えをまとめるということは非常にいいことだと思いますし、そういう点で文部省自治省それぞれいろんなことについて御検討なさっている。まあ何もこれ中間発表ということじゃ決してありませんけれども、やっぱり考えをまとめられて、地元の方々にその考えをまとまり次第いち早く知らせるということは、これはもう三月になれば当然進学の問題、いまからそのためにどうするかということも出てくるわけでありますし、お役所としてはなかなか大変な作業かもしれませんけれども、当人にとりましては、被害を受けた方々につきましては早急に決断を迫られる、そういうことであるということをひとつ念頭に置いてこれからの配慮をしていただきたいと思うのですね。時間ありませんので、個々の問題についてはいろいろお聞きしたいことはあるんですが、大綱的なことをお話しいただきましたので、次に移りたいと思います。  冷害問題につきましては、私も何度か現地を視察をしましたし、またいろんな方々とお会いして一いろんなことを議論しなきゃならぬと思うんですが、きょうは、与えられたわずかの時間ですから余り幅広い、広範にわたることはできませんので、何点かにしぼってお聞きするわけでありますが、やはり今回の冷害というのは、確かに異常な気象だということは、これは言えると思います。しかし、その異常な気象の中でやはり技術革新、技術の進歩によりまして確かに最小限度に被害を食いとめたという方々もいらっしゃるわけであります。そういうことを考えますと、異常気象のためにどうしようもなかったということではない。やはり事前の準備なり対策なりというものは一つの効果をあらわしておるという実証も私どもはしばしば話を聞いておるわけでありますが、そこで大事なのは、気象観測または年間の――年の初めといいますか、一年間の気象予測ですね、これが非常に大事になってくると思うのです。気象庁のこの年間の気象についての予報というものが、まあこれはいろんな条件がありますから大変なことだと思いますけれども、現在年間予報というものはいつごろどういう形で出されるかということをちょっとお聞きしたいと思うのですけれども
  12. 青田孝義

    説明員(青田孝義君) お答えします。  気象庁では現在ルーチンには、一番長い予報で半年間の予報。これは夏の予報に対しましては三月十日に、それから冬の予報に対しましては十月二十日に出しております。そのほかに毎月一回三カ月予報と、月二回一カ月予報をそれぞれ出しております。  で、いま先生がおっしゃいましたような問題、一年間にわたってどうのこうのという問題になりますと非常にむずかしい問題でありまして、一カ月以上の予報を出している国は、日本を除いてはほんの一部の国々しかありません。そういうふうに非常にむずかしい問題でありますので、気象庁としましても、いろいろ何とかその予報を先に延ばせないかということで、ふだんから研究調査あるいは開発をしている現状であります。
  13. 藤原房雄

    藤原房雄君 まあ私どももこの農業気象観測ということと気象庁のこの観測のあり方ということについていろいろお話は聞いておるわけですけれども、確かにこの気象観測というのはむずかしい面はあると思うんです。ことしにつきましても、やはり年の初めからことしは危ないぞというようなことはいろいろ聞かされておりました。それは公式な発表ではないかもしれません。そういうことは耳にするわけでありますが、あるいは気象庁というのは農業のために気象観測があるんじゃないと言えばそれまでですけれども、やはりこの観測なりまた予報というもの、予測というものが国家社会に大きな貢献をなすんでなければ、何たる予報かということになるわけでありまして、その国家社会のための一つとして、農業の気象観測というものも当然これは考えの中に大きく入れなきゃならぬ。この観測のむずかしさとか、他国にはもう一カ月以上ないんだという、そういうむずかしさというものはわれわれもよく知っているわけですが、ただ役所として公式の発表をした以上、それには責任を持たなきゃならぬということで、責任ある発表するためには、どうしてもこれだけの期間が必要であり、そんな長期のものはできないという、こういうことになりますと、どうしてもこれは萎縮するといいますか、大胆な発表はできなくなる。これは農業気象とタイアップして考えますと、夏の半年、夏についての発表が三月十日ということだと、これは相当自信をお持ちになって発表なさるのかもしれませんが、実際農家方々としまして、三月十日ごろの発表ですと、もう農作業も始まっておりますし、ことしはどういう品種をどうするかということについては、もう大体判断をした後ということになるわけですね。こういうことで、三月十日というのは、いろんな今日までの歴史的な中で気象庁の観測の発表があるのかもしれませんが、やっぱり農業気象観測という、日本の特殊性から言いまして、そういう点についてもひとつ十分配慮を払った観測というものができないのかどうか。気象庁ベースでの予測、それを農業関係者が利用するという、そういう行き方ではなくして、やはり農林省農林省としての一つの体験も持っておることはわれわれもよく知っておるわけですが、やはり気象庁としましても、この農業気象というものについて十分配慮を払った、すぐにこういうものが公で発表できないとすれば、何か連絡機関等を設けてやっぱりこれを調整をし、そういう方向に持っていくという、こういう努力、そういうことが必要でないかと思うんですが、そういう形はある程度あるようですけれども、もっとこういう大きな冷害があったときに、やっぱり真剣になって取り組んでいただいて、早くそういう体制を確立するという、予測の外れるのを恐れるのじゃなくして、やっぱり大胆な第一歩が必要じゃないかと私は思うんですけれども、どうでしょう。
  14. 青田孝義

    説明員(青田孝義君) そういう意味で日夜開発に苦心しておるわけでございますが、たとえば現在気象庁で開発について苦労している点は、一つは、資料が現在までは北半球だけの資料を使って予報をしておったわけですが、これはどうしても北半球だけでは足りないということで、本年度から南半球の資料も使っての予報技術の開発という点でいま進めております。それでも御承知のように、全球的に見ますと地球表面の三分の二は海であります。陸の方でも砂漠もありますし、あるいは高い山もあります。そういうところでは資料が入ってこないわけです。そういうことで、これは国際連合の下部機関である世界気象機関というのがありまして、それが中心になりまして、現在地球大気開発計画というものを進めております。そこで日本の気象庁としましても、これに対応して来年の七月に静止気象衛星を打ち上げまして、その資料を収集し、あるいはそれを処理するといった方向で、とにかく大気大循環の理解を深めよう、それが一番基礎的な問題であるというふうに考えておりまして、その方向で鋭意研究開発を進めております。
  15. 藤原房雄

    藤原房雄君 まあその土地その土地のきめ細かな問題になりますと、いろいろ責任ある立場として、気象データとかいろいろなものをもとにしなければならぬと、それはぼくらもよくわかりますけれどもね。まあいま言われておりますように、氷河期が来るんじゃないかとかいろいろなこと言われておるわけですが、長期的な、地球の全体的な観点に立ちまして、まあそういう大きなことは別としましても、大体の方向性というのはおわかりになるだろうと思いますし、特に半年以上先になると大変なことかもしれませんけれども、さっき申し上げたように、三月に種もみの選定を終わって苗代に入るということからいたしまして、そういう農業の環境条件というものを勘案して、やはりそれに資するような観測予報というものができないかどうか、そういう農業とのタイアップの上に立って予測、これは夏まではいかない、春先ということになるかもしれませんが、いずれにしましても、そういう日本の農業国の中で気象ということが非常に大きなウエートを占めるその予測、それが何に資するか、どの時期であればどうなるかという、そういうことを配慮して、農業気象という上にもそれが大きく貢献するような予報の発表時期その他について検討してはどうかということを私は申し上げているわけですけれども、それはある程度今日まで検討してきておることは私も聞いているわけですけれどもね、さらにひとつ今回のこういう大きな災害があったことを中心として、さっきお話ありましたこと等も考えあわせて、ひとつ積極的に進めていただきたい、こう思うんです。  それで、こういう異常気象も、予報ができたからといって、ことしは冷害が来ます――手をこまねいていたんではしようがないので、いろいろな技術開発、品種の改良等についても今日まで進まれてきたのでありますが、今回のこの被害で、私ども、いろいろなことがあるんですが、一つ申し上げたいことは、省力化、機械化ということがどんどんどんどん進んできたわけでありますが、ことしは機械植えした、機械で田植えをした、田植え機械を使った農家については被害が大きい。それは種苗のあり方等について、育苗センターが今後どういう形であるべきかという一つの大きな問題を投げかけていると思うんです。この問題は、考えますと、結局、悪い見方かもしれませんが、農機具メーカーに行政指導が追いつかぬというか、そこまで目が届かなかったといいますか、農機具メーカーの言いなりにこの機械化が進んできたという、一つは行政面の怠慢と言いますか、それがもたらした一つのこのたびの問題だったろうということも言えなくもないと私は思うんです。やはり新しい機械化という方向に進む、それにはそれ相応の農林省としての行政指導なり、またいろんな研究を踏まえての対処の仕方というのはあるんじゃないか。農林省でもこの点については十分御検討していらっしゃることだし、今後またいままでの種苗ではならぬということで、いろいろ検討していらっしゃることはわれわれよく聞いておるわけなんですけれども、この点の今後について機械が先行して、どんどん、どんどん、これ進む、そこから、ことしは異常気象だと言えばそれまでですけれども、その中にあって、やはり行政当局のなすべきことがあったろうと思うんですが、この点どういうふうに検討していらっしゃるのか。機械化が非常に進んでおります。これに対して農林省も、相当今後のあり方については決断をしていただきませんとならぬではないかと思うんですが、どうでしょう。
  16. 杉山克巳

    政府委員杉山克巳君) 先生御指摘のように、機械化、特に田植え機の進展、これは最近はなはだしいものがございます。一昨年が田植え機の普及率が三一%、昨年が六二%、ことしは恐らく七〇%台、東北のようなところでは八〇%台にも達している県があるというふうに承知いたしております。そういう機械化の進展に伴って栽培技術全体がどういうふうにこれを受けとめてきたかということになりますと、ことしの災害の態様を見ますというと、そこはいろいろ反省させられる面もあるわけでございます。ただ、機械化が、一般に機械化自体がいけないんだというようなことではなくて、機械化に対応するような、いわばソフトウエアといいますか、それを受けとめる側の全体の体制に今後も検討すべき問題がたくさんあると思います。たとえば、機械化に伴って、田植え機の普及に伴って、それに適するような苗が、きちんと健康なものが供給されているかどうか。機械化ということになりますというと、機械に田植え、そのほかの時期等も振り回されるようなことも出てまいるわけでございますが、そういう時期の問題、田植えの時期の問題などもどう対応していくかというようなこと、私、全体としてのこういう機械化の傾向をいけないとか、これをもとへ戻すということはできない問題だとは思いますが、そういう機械化が進展する中で、これを受けとめる個々の栽培技術、それに対するまた国の指導のあり方ということについては、今回の冷害の要因分析の中で、一つの重要な項目として検討を進めているところでもございますし、十分今後慎重に対応してまいりたいというふうに考えております。
  17. 藤原房雄

    藤原房雄君 先ほど冷害対策については、十五項目についての御説明がありました。まあ非常に要望についてきめ細かにいろいろ検討したようでありますが、しかし、これで農家が全部救われるわけではございませんで、やっぱりさらに現場の声を聞きますと、いろいろ問題があるようです。農林大臣は現行法で十分に対処できるという、こういうお話があったわけでありますが、これも現行法の中で最大限努力なさった結果がここに盛られておることだと思います。私ども考えるのに、今回の冷害というものについて、どういう認識をするかという、これ認識にもよるんではないか、これが非常に大きいんじゃないかと思うんです。十七号台風では確かに五十人近くの方が亡くなった。冷害で自殺なさった方が二、三人いらっしゃったようでありますけれども、それは冷害ということが主な原因であるかどうかということは私ども定かではございませんけれども、いずれにしても、非常に悲惨だという、そういう一つの象徴的なことだろうと私ども思うわけですが、しかし、この冷害は確かに台風のように多くの方を一時に死に至らしめるということじゃないかもしれませんが、実際これから多くの方々が大変な苦しい生活を強いられるわけであります。それだけに、きめ細かな対策が必要になってくるだろうと思うんですが、やっぱり農林省当局として、今回の冷害に対してどういう認識を持つか、これは農林水産委員会でも十分討議があったことだと思いますけれども水稲の作況指数という、この作況指数のとり方にもいろいろ県でとったのと、それから農林省と余りにも差が開き過ぎるということについての地元民の批判といいますか、農林省では深刻に受けとめていないという見方をしている。岩手県等では指数が一〇から違うわけですから、そういう気持ちを抱くのは当然かもしれません。これはまた十月のやつが間もなく発表になるだろうと思います。この指数のことについては私、多くを論じようとは思いませんが、とにかくこの冷害の現状というものを正しく認識し、深刻に受けとめて、さらにひとつきめ細かな対策を講じていただきたいと思うんです。  それと、この冷害の評価という問題についてなんですが、現行法で足りるんだという大臣のお話ですが、現在の共済制度のあり方、まあ三割足切り方式ということが農家方々に現実どういう問題をもたらすかということと、それから共済金の対象の四〇%減収と判定されても、収穫できたお米も青米とかくず米ばかり、品質が非常に低下しておるという、こういう現状からしましてね、共済金がわずかであるとともに、実際政府買い入れてもらう、買ってもらうお米が幾らもないという、こういうことで、この共済制度そのものについて、やっぱり今回のことを一つの教訓として検討しなければならない。これは共済というのは、自分で共済掛金を出すわけでありますから、本人、農家自身の問題でもありますし、そういう点については農家方々もいろいろなことで反省をしている面もあるんですけれども、それとともに制度自体についての検討というものも、これは農林水産委員会でもずいぶん議論になったことだと思うんですけれども、現行法で事足りるという大臣大みえを切ったような言い方をするんで、私、ちょっと頭にきて言うんですけれどもね、これはぜひひとつ現行法で事足りるということだけではなくして、今回この冷害を通しましていろいろな問題点が提起されております、ぜひひとつ御検討いただきまして、そして対処していただきたい、こう思うんです。ちょっとひとつ、所見がございましたらおっしゃっていただきたい。
  18. 杉山克巳

    政府委員杉山克巳君) 農林省としては、今回の冷害被害はきわめて深刻なものだというふうに重大に考えております。そういう考え方のもとにもろもろの対策検討し、精いっぱい努めているところでございます。  なお、大臣が現行法で足りると申し上げたのは、何も一切要らないというような意味ではなくて、できるだけの手当てを現行法の体制内でもとれば、それで農家に対してまあ万全といいますか、とにかく対応できるような措置は講じられるんだということを申し上げたわけでございます。現行法の問題についてはなお今後検討する問題何がしかあるかとは思いますが、先生がいま御指摘になられました農業災害補償法の足切りの問題につきましても、先般の国会におきまして法律改正を行って、足切り全相殺農単方式というものについては一〇%までという方式を採用することにいたしております。これは五十二年度からということになるわけでございますが、さらには実損てん補率を引き上げるというようなことで、かなり現在でもその共済方式の改善も図ってまいっているわけでございます。  それから、損害評価の問題につきましても、指数について、これは実際に被害をこうむった側とそれを客観的にどう見るかという側とのギャップは確かにありますが、これは私ども公平に実態を正確に把握するという前提でもって考えておりますし、さらに共済損害評価の問題につきましては、先ほども説明申し上げましたように、被害粒も、今回の場合は一定の程度以上のものは収穫に見ないような特例措置を講ずるというようなことでの実情に対する調整を図っているところでございます。
  19. 藤原房雄

    藤原房雄君 確かに農林省のこの評価というのはまあ坪刈り等で非常に統計的になさっているわけですけれども、部落とかそれから関係団体では全般的に見てやるわけですから、このサンプルの取り方とか統計のとり方とか、そういう点に違いがあるわけであります。それ、きちっと一致するなんということはこれはなかなかむずかしいことだということはわれわれよくわかるわけですが、いずれにしましても、部落評価とかそれから関係団体の評価とか、連合会の評価とか農業団体と、こうずっとやってきまして、それで農林省の統計局でおとりになる数値、最終的にはそこで修正される、こういうことを考えますと、農林省の統計部の評価というのは非常な権限といいますか、ウエートが置かれているという、そういう点からしまして、やはり現実と余りかけ離れている、余りというのはどのくらいの数値かわかりませんが、非常にそこの数値が違い過ぎると現実に合わないんじゃないかという、農民感情としてそういう危機感を抱く。そしてまたその農林省の評価というものは非常に大きな権限といいますか、ウエートを持たれておる。そういうところからくるだろうと思うのですね。その点について、共済制度の一部改正になったこともわれわれよく承知しているわけでありますけれども、今回のこの冷害等を中心としまして、これはひとつ事足れりとしないで、御検討をぜひひとついただきたいと思います。また評価等についても引き続き今回のこの大冷害中心として検討いただきたいと思うのです。  次に、もう時間ありませんので次に移りますが、就労の機会をぜひということで、これはもう市町村それぞれ関係団体で、出稼ぎの先とかいろんなことをやっているわけでありますが、何といいましても今回の冷害山間高冷地被害が大きいわけです。山間高冷地農家の方というのは、いままでどちらかというと国有林等林業に携わった方々が多い。そういうことから私ども調査に行きましても、ぜひひとつ林業関係の仕事をひとつしていただきたい。それから各地方自治団体でもいろいろ対策を講じておりますし、就労の機会を、できるだけ遠くへ行かぬで地元で仕事のできるようにということで配慮が払われているようでありますが、それに伴いまして、やはり林野庁としましても今度の救農土木費として、農林省、今回二百十億ですか、しましたけれども、この二百十億の中には林野庁の就労の機会をつくろうというやつは恐らく入っていないと思うのですけれども、どうですか。
  20. 杉山克巳

    政府委員杉山克巳君) 二百十億円は事業費の総額でございます。そのうち国費負担額が百十億円、農林省関係分が九十八億円でございます。その九十八億円のうちには林野庁関係が十一億円入ってございます。で、これはいわば追加的な財源措置、国費として措置する分だけでございまして、このほかに既定の国有林の予算の中で措置する事業、さらには公有林とか、森林組合が委託を受けて行いますところの造林、間伐等の事業、これに対する融資をもって救農土木事業と同じような効果を持つ、それ自体土木事業と言えるのかどうかという問題がありますが、雇用に役立つような事業を総体的に実施することにいたしております。
  21. 藤原房雄

    藤原房雄君 まあ東北の方へ行きますと、村の面積の半分ぐらい国有地というところがたくさんありまして、どうしても国有林に依存するといいますか、そこでお仕事いただかなければならぬということが非常に多いわけなんで、詳しいことを申し上げる時間もありませんが、ぜひひとつその機会をつくっていただくということと、それから間伐、枝打ちといういろんな仕事があるわけですが、林業改善資金とかそれから公庫融資、こういうことでぜひ地元に仕事をつくるような手だてをひとつやっていただきたいというのが地元の大きな要望です。それは当然農林省、林野庁の方にも吸い上がっていらっしゃるだろうと思うんですけれども、これは自分で山を持っていてやるならいざ知らず、自分は山持っていない方が就労するということになるわけですから、森林組合とかそれからまた町村林、公有林、こういうもの、また林野庁の国有林、こういうものが当然主体になるだろうと思うのです。そういうことで、この事業費、この復旧の土木ということと、それから山村地が非常に多い、高冷地が多いということで、林業に関するお仕事をぜひという、これはもう十分配慮していらっしゃると思いますけれども、もう少しこれは早くにやっていただきませんと、もう雪が降り出すということで、それからまた積雪の多いところではできない仕事もあるかもしれませんが、早くに手だてをしていただきたいものだと思うんです。  これはもう時間がなくてはしょって申しわけないんですが、国有林野の活用法というものができているわけでありますが、この活用法ができましても、現実は活用されてない。いろんな問題になるということは、これは農林水産委員会等においてもいろいろ指摘されておることですが、これをやり出すとちょっと時間がなくなって申し上げないのでありますが、この活用法がなぜ活用されないかというところにいろんな隘路があって、それはもう農係省当局としても十分に知っていることだと思うのであります。やはり東北の方へ行きますと、三頭、四頭という牛を飼っていらっしゃる小さい、そういうわずかな飼育頭数しかない方がいらっしゃるわけです。十頭以上たくさん飼っている方ももちろんいらっしゃいますけれども、この国有林を使わさしていただくときに、部落でお借りするときに、伐採をして、そして放牧できるような形にするために相当お金がかかり、そのために負担金というものを納めにゃならぬ。ところが頭数の少ない人はその負担金を払う能力がない。頭数の多い人はそれを払ってもある程度の採算ベースに乗る、こういうことで、現場へ行きますと、現実的でないいろんな面があるんで、林野庁としまして、ぜひひとつこういう山間部において酪農、また酪農振興というのは農林省の一つの大きな柱でもあるわけでありますけれども、これがたとえいま飼育頭数が少ないとしましても、ある程度それが酪農というものに力を入れることが農業、農家の安定収入につながるということになれば、だんだん頭数をふやしていくわけでありますから、畜産振興、酪農振興という柱を推し進めるためには、やっぱりいまのこの国有林野の活用法というのは現実的にちょっと改善が必要ではないか、手だてが必要ではないか、こういうふうに思うんですけれどもね。この点は本当はもう少しあれしたいところですが、時間がありませんからこれで終わりますけれども、いずれにせよ、林野庁の方で、これはいままでもいろんな角度から問題も出ておることでありますから、ぜひ検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  22. 杉山克巳

    政府委員杉山克巳君) 前の方のことについて若干まだ答弁不足のところがあったと思いますので一言申し上げますが、先生御指摘のような考え方で、救農土木事業は全くその方向に沿って私ども検討いたしているところでございます。それから時期的に急がにゃならぬということ、すでに国有林などは既定予算の中で措置できるものは一部その対策用にということで営林局に予算追加配賦して実施を指示しているというようなことまで努めているところでございます。それから国有林の活用につきましては、いろいろ現場の実情等もあって実際に活用が必ずしもうまくいってないという話、それからその問題点、原因の分析等についても私どもも勉強をいろいろいたしております。せっかく確かに活用法という法律があり、その趣旨もあることでございますから、できるだけその本来の趣旨にかなうような検討を今後十分進めてまいりたいと思います。
  23. 須藤徹男

    説明員(須藤徹男君) ただいま審議官からお答えいたしましたように、前段の問題につきましては、すでに既定経費の一部を配賦いたしまして、実施を指示しております。さらに治山等を主体といたします救済事業につきましては、現在鋭意検討をしておりまして、時期を失しないようにきめ細かく対処していきたいと思っております。民有林につきましても、先ほど先生からもお話がございましたように、林業改善資金あるいは農林漁業金融公庫造林資金、造林補助事業等の活用によりまして、公有林、公社造林あるいは森林組合が事業を受託する森林などにおきまして間伐、除伐あるいは枝打ち等の実施を図ることについて被害の実態、救農事業としての緊急性等を考慮しながら必要な措置を講ずる方向で検討を急いでおるところでございます。
  24. 工藤良平

    委員長工藤良平君) 最後に農林大臣のひとつ代理として片山政務次官の決意を。
  25. 片山正英

    政府委員(片山正英君) 今回の災害に対しましては、先ほど審議官説明しましたように、十五項目にわたりまして万全の対策をとってまいりたいと思います。  それから、国有林の活用の問題がいま先生御指摘がございましたが、活用法もすでに実施されております。なぜ円滑にいかないんだろうという、そういう御疑問でございましたが、私も一、二しか調査をしておりませんが、土地の合理化、最もよく使う、そしてそのことによって山村民が安定をする。こういう政策に対して、かつて解放した土地が必ずしもうまく利用されていない、むしろ放置されている。そういう点はまずいわけでございますから、そういうものと相まって土地の有効利用、そして山村民の安定、こういう線での協議が多少停滞しているところがあるというふうに思います。今後農林省としましても農林一体という政策の中で山村民の安定を図るべく大方針を立てているわけでございますが、先生のおっしゃる点を十分心に入れまして対処してまいりたいと、こう思っております。
  26. 藤原房雄

    藤原房雄君 趣旨は、もう本当に法律の趣旨はいいんですけれども、具体的な問題になりますといろいろ問題ありますんで、それは政務次官も専門家だからよく御存じと思うんですが、これはもう本当に現地へ参りますと諸問題がある。ぜひ一つ一つ御検討いただいてせっかくの法律が有効にひとつ働くようにやっていただきたいと思います。  最後に、これで本当に最後になりますが、これは二十一日の強風でリンゴが大分被害を受けて、東北六県じゃ六十億超している。これは東北六県だけじゃなくて、日本全体といいますか、北日本、東日本ですかね、異常な強風に見舞われたんですが、果樹共済というものもあって、いろんなあれがあるんですが、そういうむずかしいことは別にして、今回の被害の場合六十億を超すということになると天災融資法の適用になるんじゃないかというふうに私どもは認識するわけでありますが、これは先のことになっていろいろ御検討になるのかもしれませんが、そこらあたりの見通しというか農林省考え方と、それから冷害と果樹農家が必ずしも稲作どれだけやっているかということになりますといろいろ問題があるかもしれませんが、地域冷害で打ちひしがれている、そこにこのたびのリンゴの被害ということでありますから、これは十分な配慮がなけりゃならぬと、こう思うんですけれども、どうでしょう。
  27. 杉山克巳

    政府委員杉山克巳君) 冷害を受けている地域でまた重ねてリンゴの被害を受ける、そういうような実情は総合的に勘案して十分対策検討しなければいけないと思っております。おっしゃられるように、十月の十一日と二十一日、二回にわたりまして突風被害があり、その被害の額につきましては青森のほかにも北海道、岩手あるいは秋田といったようなところから連絡ございます。ただ現在の段階では道なり県なりの数字、被害額が出ているだけでございまして、私どもとしてはまだ調査これからするところでございます。まあ国の数字とそういう道県の数字必ずしも一致しないというようなことがしばしばあるわけでございますので、今後十分実情を把握して被害結果を待って対策検討するということにしております。
  28. 原田立

    ○原田立君 去る九月十二日未明から十三日にかけて有明海北部沿岸一帯を襲った台風十七号によるまず塩水害について質問いたします。  塩害による水稲被害は福岡、佐賀、熊本三県干拓地に広がっており、中でも福岡県山門郡大和町で大和干拓の二百ヘクタールの水稲が全滅したのを初め、隣接の谷垣、永田地区を含め被害総額約六億四千万円にも及び同町予算の三分の一という額に達しておるのが現状であります。ところで大和町役場の塩塚助役の話によりますと、激甚災害の指定と天災融資法の適用はほぼ確実であろうということであるが、大変心配をしているわけでありますが、この点どういうふうになっているか、まずお伺いしたい。
  29. 紀埜孝典

    政府委員紀埜孝典君) 十七号台風関係とお聞きいたしましたが、十七号台風関係でございますか。
  30. 原田立

    ○原田立君 九月十二日、十三日のものと台風十七号と両方、合計。
  31. 杉山克巳

    政府委員杉山克巳君) 台風十七号の被害は施設関係と農作物両方にわたっておりますが、先生お尋ねの件は農作物関係だと思います。この農作物被害につきましては去る二十一日に天災融資法の適用政令を公布、施行いたしております。そしてその政令の中で特別被害地域を指定することができる都道府県として福岡県、佐賀県、長崎県等十六府県を指定したところでございます。ですから県としては天災融資法の適用対象になる、そして同時に激甚の対象にもなるわけでございますが、ただ特別被害地域、県の中でのその地域の具体的な指定は、これは都道府県知事が農林大臣の承認を得て行うということになっております。知事からまだ承認申請が参っておりませんが、先生おっしゃる大和干拓の地域がそれに知事の申請として入ってくるかどうか、申請がありますればそれに基づきまして速やかに措置するようにいたしたいと考えております。
  32. 原田立

    ○原田立君 申請があれば措置をしたいということなんですけれども農林省として現場を視察したり調査したりしたことありますか。
  33. 若林正俊

    説明員(若林正俊君) 特別被害地域の指定は法律で要件が定められておりまして、当該災害によって被害を受けた農業者の中で特別被害農業者、当該被害による減収が平常の農業収入の二分の一以上という農業者でございますが、それが一〇%あるような地域都道府県知事が指定する、指定に当たって農林大臣の承認を受ける、こういう仕組みになっております。具体的に当該地域被害農業者の認定及び特別被害者認定市町村長に任されておりますので、特別農林省として当該地域を視察した上で指定するというような仕組みをとっておりません。すべて市町村長の個別認定資料を知事に提出し、それを農林省として確認をした上で承認をするという仕組みにしておりますので、自治体の責任において調査が行われ、申請が出てきますれば速やかに承認する所存でございます。
  34. 原田立

    ○原田立君 どうも返事を聞いているとまどろっこしい話なんですが、実はこれは大和干拓の稲なんですけれども収穫一〇〇%ゼロです。このことはテレビでも十分報道されました。新聞にも出ました。非常に重要な問題なんです。もちろん県から申請がなければ取り扱いしないんだという、まあそれは法律上そうなっているんだろうとは思うけれども、もう少し血の通った施策を講ずるならば現地だって局があるんですからね、当然調査さしたっていいじゃないですか。一遍ひとつ東京にばっかりいないで現物よく見て、それで答弁してもらいたいと思う。
  35. 杉山克巳

    政府委員杉山克巳君) 現物拝見いたしました。確かにこれは実のなってない空もみでございます。ただ、制度仕組みはやはり市町村長の判断を前提としてということになっておりますので、それを飛び越えて農林省が直接ここの地域を指定すべきだとか指定すべきでないというふうには直ちにはまいりません。先生がおっしゃられるような、そういう激甚なところであれば、私は当然市町村長都道府県を通じて申請してくるということになると思っております。被害の実態を当然反映するような措置を地元市町村なりあるいは都道府県はとるべきであり、私の方でも別段それを頭から辛くしぼろうとかなんとかということではございませんから、そういう指導もふだんからしておるわけでございまして、当然そういう対象として上がってくるのではないかというふうに考えます。
  36. 原田立

    ○原田立君 それでは県の方から申請が出てくる、それを承認するということを期待して質問を次へ進めます。  この県の方でありますけれども、これを前提に資金需要額の取りまとめを急いでいるようでありますが、実際農家に金が渡るのはいつごろになるかお伺いしたい。
  37. 杉山克巳

    政府委員杉山克巳君) 天災融資法発動水害の場合と冷害の場合とで異なりますが、冷害の場合につきましては若干先になるということは先ほど申し上げたとおりでございます。塩害につきましては現在融資枠はすでに九十三億円を政令に基づいて確保しております。この額でもって被害農業者の資金需要は十分対応し得るものと考えております。利子補給にかかる国庫補助についても、予算上の措置は十分これについては行うということで、すでにそういう資金枠なり予算上の手当てはできておるわけでございますから、これについて事務的な手続だけの問題ということになるわけでございます。できるだけ早くということで考えておりますが、先ほど申し上げましたような申請がいつどういう形で出てくるかということに伴って、できるだけ早く処理するということで対応したいと考えております。
  38. 原田立

    ○原田立君 ことしは十七号台風による被害は全国的であり、各県とも融資枠確保に血眼になっているようでありますが、各県とも十分確保できるようにすべきであると、こう考えるんですが、具体的にはどうなっていますか。
  39. 杉山克巳

    政府委員杉山克巳君) 冷害の方につきましては、まだ被害額、したがって融資所要額の確認というのはこれからの話でございます。十分当然確保できるように私どもも努力いたします。塩害の方、塩害といいますか、十七号台風関係の方につきましてはいま御答弁申し上げましたように、九十三億円ということで融資枠としては十分対処し得るものというふうに考えております。
  40. 原田立

    ○原田立君 大和干拓では二百ヘクタールのほとんどの水稲が白っぽく枯れ、堤防近くの雑草セイタカアワダチソウまで立ち枯れの状態で、改めて塩害の恐ろしさを知ったのでありますが、聞くところによりますと、今度の塩害は干拓地の堤防にも少なからず問題があるようであります。堤防関係どうなんですか。その一つは、干拓堤防前面に干がたがほとんどなかった。また堤防のつくり方でありますが、堤防の上部に波返しが取りつけられていない等いろんなことを現地の人は言っております。パラペット方式といいますか、波返しがついている堤防を採用しているところがわが国でも若干、瀬戸内海沿岸地帯にもあるわけでありますが、このような堤防は一体どのぐらい採用されているのか、また、今度の大和干拓地帯の堤防などは、それはなぜ取りつけられなかったのか、考えられなかったのか、その点をお伺いしたい。
  41. 福澤達一

    政府委員(福澤達一君) 今回の大和干拓の稲作の塩害に対する被害について、堤防の構造上の問題についての御質問と受けとめておりますが、干拓堤防の歴史を見ますと、過去におきましては直立パラペット方式という干拓堤防を私どもはやってきたわけでございます。しかし、その後干拓堤防の技術というものが進みまして、八郎潟の干拓とか、あるいは伊勢湾台風の干拓堤防とかというものの復旧を契機といたしまして、従来の直立型から傾斜型の堤防にしたわけでございます。これは干拓地特有の軟弱地盤というものを支える上におきましては、傾斜型の幅広い堤防というのがより安定性があると、こういう観点から新しい堤防は傾斜方式にかえてきたわけでございます。したがいまして、大和干拓は昭和三十三年から発足した干拓でございますので、新しい方式をとっております。それ以前の有明関係の干拓地は二十カ所程度ありますけれども、ほとんど直立型のものが多くてパラペット方式をとっておるわけでございます。したがいまして、今回の塩害の問題につきましては、私どもは必ずしも堤防のタイプが悪かったからああいう大きな塩害を受けたというふうには受けとめておらないわけでございます。大和干拓のすぐ隣に昭代という干拓がございますが、ここでも二メートル程度のパラペットを上につけておりますけれども、これもやはり相当の塩害を受けておるわけでございます。したがいまして、今回の十七号台風による塩害と申しますのは、異常な風による台風、しかも瞬間風速三十五メートルというような、そういう風だけの台風であるという特色がございまして、いままでにそういう例は余りなかったわけでございます。そのためにああいう異常な大きな被害を生じたというふうに受けとめておるわけでございます。したがいまして、この干拓の堤防のタイプということだけではなしに、こういう大きな被害を契機といたしまして、もっと広範的にそれを防ぐ道は一体どういうところであるかと、そういうことを今後とも検討をして、少しでもそういう被害を少なくするように努めていきたいと思っておるわけでございます。
  42. 原田立

    ○原田立君 まあ直立型のが多かったということで、またその波返しがついているような地域でも被害はありますよと、だからそんなの余り関係ありませんというのがあなたのいまの答弁の仕方だけれども、ちょっとひどいんじゃないですかね。現地の農民の人たち、あるいは関係市町村の人たちの異口同音に言われることは、もう少し波返しがあれば海水は堤防で戻され、そのような被害はなかったじゃないかと、こういうことを異口同音に言っておりますよ。だからあなた、そんなの余り関係ないんだなんて、そんな姿勢ではなしに、こういう要望は強いんですから、もう少しきちっと研究してその姿勢を改めてもらいたい。これは強く要望しておきたい。今後潮風害から水稲を守るためにも、さらに万全な施設を考えるべきだと思うのです。この点どのような見解ですか。
  43. 福澤達一

    政府委員(福澤達一君) 先ほども申し上げましたように、三十五メートルというような非常に強い風が直立型の堤防に激突いたしますと、そうするとそれによる非常に強いエネルギーが作用いたします。そのために一部は飛沫となりまして、二十メートルあるいはそれを超すかもしれませんけれども、非常に強い潮しぶきというようなものになると思われておるわけでございます。で、傾斜型の堤防と申しますのはそういう強い衝撃というものをできるだけ避けまして、そしてそういう潮しぶきというものが余り強い作用をしないようにエネルギーを減殺するというような点も考慮しておるわけでございます。ただ、今回の台風の実態を見ますと、たとえば大和干拓におきましては、二メーター五十の満潮位、これは九月の十二日でございますが、それが最高の潮位でございました。で、堤防の高さは七メーター二十でございます。したがいまして、約三倍近い堤防の高さがございましたけれども、その堤防の高さをものともせず非常に強いしぶきができ上がったということでございます。一方、たとえば昭代の干拓を取り上げてみますと、昭代の方は、やはり堤防の高さといたしましては七メーター六十でございますから、七メーター二十と余り違わないような構造の堤防の高さを持っておりますけれども、それにつきましても、やはり相当のしぶきがこれは上がりまして、むしろ考えられるより以上に相当強いエネルギーがそこに作用したのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、私どもこういう実態というものをよく踏まえまして、ただ堤防のタイプということだけにこの問題をしぼるべきじゃなしに、もっと広範にいろいろの角度からこういう塩害を防止する対応策というものを考えていくべきではないかと、こういうように受けとめておりまして、今後こういう塩害の大きな被害というものを契機といたしまして、少しでもそれを軽減するような各般の検討というものを総合的に考えるべきだというふうに思っておるわけでございます。
  44. 原田立

    ○原田立君 総合的に判断研究をしていきたいということだけれども、じゃ具体的にいま現在直立型のところ、そこのところを何か手を打つようなことを御研究はございますか。
  45. 福澤達一

    政府委員(福澤達一君) 堤防のタイプということだけではなしに、たとえば潮しぶきというものを消すという方法、と申しますのは、仮にこれが風だけではなしに雨も加わっておった場合には、こういう大きな塩害という被害がなかったというふうに受けとめております。したがいまして、その干拓地のある場所におきましては、有明海のこれはある干拓地でございますけれども、場所におきましては、幸いそこに水があったところは早速その水を稲にかけることによりまして塩害をある程度防止することができたというようなことも聞いております。したがいまして、適切なそういう水をうまく散水するというようなことが可能なようなことが果たしてああいう地帯においては行われるかどうかということもこれは基本的に考えてみなきゃなりませんけれども、そういう、とにかく稲に付着しておる塩分というものをどうやってぬぐい去るかというようなことも含めて総合的に検討したいと、こう思っておるわけでございます。
  46. 原田立

    ○原田立君 今度は雨が少なかったと、そのために塩害がひどかったと、それからまた風が強かったと、そのために塩害がまたひどかったと、そういう条件よくわかるんですよ。だけれども、またその一つの悪化した条件として堤防の取りつけ方、これなんかも一つの問題点であろうと思うんです。それについてはどう考えていますかと。いま古いのは全部直立型で、ぶつかってくればもうみんなはね返るところばっかりなんですから、そうじゃなくて、そこのところを何か改修するとかね、というような手だては考えておられるのかどうか。
  47. 福澤達一

    政府委員(福澤達一君) 今回のこういう被害を契機にいたしまして、二つのタイプがあるわけでございますけれども、そのタイプのいずれがよりよい成果が上がるかということと、それから今後その足らなかったものを一体どういうふうにしたらいいかというようなことを検討するというのも総合的な検討の中に含めての私のお答えと理解していただきたいと思うわけでございます。
  48. 原田立

    ○原田立君 大和干拓は昭和四十五年に入植者二十五戸によって作付が開始され、ことしで六年目。毎年反当たり七、八俵の収穫があったが、ことしは全滅で収穫がゼロ。五十一年産米の予約金百万円はほとんどの農家が使い果たしており、また国から受けた土地代金も農家二月当たり七千二百万円の借金で、その返済に困っている実情であります。さらに、増反者の中には毎日の飯米にも事欠く状態で、生活資金の確保に苦しんでいるようでありますが、これら被災農家に対しては現金収入の道を開く必要があると思うんであります。先ほど藤原委員からも救農対策を行えという、そういう意見がありました。私も同じように救農対策特別事業を新たに起こすことが必要なのではないかと、そういう用意があるのかどうか。また、これがむずかしいようであれば、これにかわる何らかの方法で就労機会のあっせん等、ぜひ温かい対策を講じてやるべきだと、こう考えるんでありますけれども、この点はいかがですか。
  49. 片山正英

    政府委員(片山正英君) 今回の冷害中心としまして非常に現金収入がない、したがって救農土木事業というのを冷害中心として一応われわれは対処したわけでございますけれども先生御指摘の有明沿岸地帯の被災地域においても大体同様の趣旨であろうと私拝察をいたします。したがいまして、救農土木事業の要請、十分調査の上善処してまいりたいと、こう思っております。  それから、お金の方は、先ほど言いましたように、国費で百十億で農林省関係が九十八億でございますが、それによって対処してまいりたいと、こう思っております。
  50. 原田立

    ○原田立君 水稲の塩害被害額は被災後日増しに拡大し、予想外の規模になったようでありますが、被災地では被害の評価が遅々として進まず、稲は腐ったまま放置されているが、刈り取り時期がおくれれば裏作への影響も出てくるため、農家方々は困っているのが実情であります。早急に被害の評価を終わらしてほしいと、こういう声が強いんでありますが、いつごろになったらばこれが終わるのか、それをお伺いしたいのが一点。  また、裏作物の作付等を指導して、少しでも被災による所得減を補てんできるよう早急な手だてを講ずべきだと思いますが、その見解はどうか。また、実際に指導は一体どうなっているか、その点お伺いしたい。
  51. 杉山克巳

    政府委員杉山克巳君) 大和干拓地域における損害につきましては、この評価事務はすでに終了いたしております。手続にかかっているところでございますから、間違いなく年内できるだけ早い時期にお支払いいたすようにいたします。  それからもう一つ、現金収入の機会云々というお尋ねでございますが、これにつきましては救農土木がそれに対する一つの答えでございます。先ほど政務次官から御答弁申し上げましたとおりでございますが、なおそのほかにも全般的に当然手を打つ必要があり、これは農林省直接というわけではございませんが、労働省それから関係の都道府県等にもお願いして、そういう向きに対する就労あっせん等には特段の努力をしていただきたいということをお願いをいたしております。
  52. 原田立

    ○原田立君 塩害による水稲被害は予想外に大きく、特に有明海沿岸の福岡県大和干拓、佐賀県川副町の大詫間、平和搦の潮風害による被害が甚大であり、収穫無収、未熟粒あるいは被害粒、この多発が予想されているわけでありますが、そこで規格外玄米及び等外米全量について政府買い入れ措置を講ずるよう強い要請が出されております。これら規格外玄米、等外米はどのように処理されるつもりでいるのか、その取り扱いについて具体的な対策をお伺いしたい。
  53. 戸塚金郎

    説明員(戸塚金郎君) いい規格外米の問題につきましては、御承知の先般北海道東北につきましては二十五日付で買い入れ措置を講じたわけでございますが、それ以外の冷害地域、あるいは西日本等の台風十七号の被害のひどい地域で発生をいたしました規格外米につきましては、特に西日本の水害地域の方は現在、遅場地帯でもございますので、大部分がまだ立毛中でございます。したがいまして、どういうような規格外の米がどの程度出てくるかということの把握がまだ十分でございませんが、それをなるべく急ぎまして、その出回り量の著しい、被害の著しい地域の米につきましては、主食用充当のものにつきまして買い入れ措置を講ずると、被害農家の立場も十分考えまして、時期を失することのないようにそういう措置を講じてまいりたいというふうに考えております。
  54. 原田立

    ○原田立君 米の予約概算金の返納延期及び利息の減免についてお伺いします。米の生産農家は事前売り渡し申し込み数量により、六十キロ当たり三千円の概算金を受領し、これが返納については米代金から返納充当することになっているわけでありますが、期限までに返納できない農家が今回たくさんあるのではないかと、こう思うわけでありますが、どのような対処をするのか。
  55. 戸塚金郎

    説明員(戸塚金郎君) 米の予約概算金は、いま一俵三千円の概算ということでございますので、米代金から見ますれば約二割弱でございますので、十俵の予約をされた方が二俵出していただければ、一応概算金の返納ができるわけでございますが、仮に二俵でも売り渡しができないという農家のものにつきましては一応現金でお返しをいただく。それは米の納入期限でございます――五月末が期限になっておりますので、来年の五月末までにお返しをいただくということになっております。ただ、いま先生おっしゃいましたように、なかなか資金的に困難な農家で返済もできないような場合には、指定集荷業者、実際には農協等が代位弁済をするという仕組みになっておるわけでございます。
  56. 原田立

    ○原田立君 その仕組みになっているのはいいけれども、これはあれでしょう、聞くところによると、年八・二五%の利率により計算した延納金を国に納付しなければならないと、こうなっているわけでしょう。それから災害を受けた場合ば、減収量が平年収穫量の百分の二十以上である郡または市として地域指定を受け、一定の条件のもとに概算金の利子減免を行うことに法律ではなっているはずでありますけれども、一定の条件のもとに利子減免を行うとあるが、これをもう少し詳しく御説明願いたい。以上二つ聞いているわけです。八・二五%の利率により計算した延納金を国に納付しなければならない、これは政務次官、八・二五じゃなくてもっとこれは利子補給をしてやる気持ちはありませんか。
  57. 片山正英

    政府委員(片山正英君) ただいま被害農家に対する予約概算金支払いの困難な場合の利子の問題については被害程度によってゼロもしくは三・二ですか、そういういろいろの制度がございます。したがって、その具体的な被害の内容によっての適用がございますから、それは事務当局から御説明を申し上げます。そういう制度になっております。
  58. 戸塚金郎

    説明員(戸塚金郎君) 返納に付帯をしていただきます利子は、いま先生おっしゃいましたように八・二五%ということでございますが、被害の著しい農家につきましては一定の基準で利子減免することになっております。いまおっしゃいましたように、被害率が平年収穫量に対しまして百分の二十以上の郡または市、その中で知事が農林大臣の承認を受けて減収額が百分の三十以上であるという市町村ということで条件をつけまして、その中の生産者は条件別にございますが、ゼロ、三・五%、六・五%という三段階減免ができることになっております。
  59. 原田立

    ○原田立君 それで有明海沿岸の塩害による減収のところ、収穫ゼロのところ、これなんかもそのところに当てはまる、適用されると、こう理解していいですか。
  60. 戸塚金郎

    説明員(戸塚金郎君) 先ほどから先生御指摘の大和干拓は、郡全体として百分の二十という条件を適用するかどうかはまだはっきりいたしません。なお隣接する柳川市等の市がたとえば百分の二十以上であり、それからその大和干拓の所属する町村が百分の三十以上というようなことに認定をされますれば条件に適合するということもあろうと思いますが、まだその辺の柳川市等の被害状況、明細は判明をしておりませんので、もう少し時間がかからないと的確なお答えができないということでございます。
  61. 原田立

    ○原田立君 また郡、市の地域指定要件を町村単位で指定できるよう緩和をする考えはないかどうか。それから今度の塩害により稲の収穫が望めない農家がかなりあるが、概算金の返納期限を米の生産が見込まれる時期まで延期してほしいとの切実な要望が出ているのでありますが、どのような救済対策を講ずるつもりか、見解をお伺いしたい。
  62. 戸塚金郎

    説明員(戸塚金郎君) 郡または市が百分の二十以上というのがいまの条件でございまして、こういう条件で実ば五十一年産米の予約を実施いたしました関係で、今年産米につきましては残念ながらそういうことで、条件適用いたしませんと条件ができないということでございます。将来の問題としてさらに検討せよということでございますれば、私どもとしても先生のお気持ちをくんで検討するのにやぶさかではないということでございます。
  63. 原田立

    ○原田立君 もう一つ、おしまいの方。返納期限を米の生産が見込まれる時期まで延期してほしいということ。
  64. 戸塚金郎

    説明員(戸塚金郎君) 返納の期限は先ほど申し上げましたように一応五月末ということになっておりますので、その時点でお返しを願う、農家がお返しがまだできない状況でございますれば、集荷業者であります農協等で代位弁済をしていただくという仕組みでございます。
  65. 原田立

    ○原田立君 そうすると延期はしないというわけですね。
  66. 戸塚金郎

    説明員(戸塚金郎君) 代位弁済制度の適切な運用で対処していきたいということでございます。
  67. 原田立

    ○原田立君 政務次官、延期してほしいという声が非常に強いのですよ。法律上からいけば違法になるだろうと思いますがね。これ十分考え検討してもらえませんか。
  68. 片山正英

    政府委員(片山正英君) 利子の点については先ほど申しましたとおりですが、お金そのものにつきましては御承知のとおり、いま御説明いたしましたとおり、集荷業者農協等の代位弁済制度が実はあるわけでございますから、それの活用によってやる、そのほかの資金問題については天災融資法等いろいろな資金援助がございますから、それによって対処していただきたいということでございます。先生のおっしゃる点は今後十分検討してまいりたいと思っております。
  69. 原田立

    ○原田立君 先ほどからの説明があるように、郡または市の指定ですね。だからたとえば七町、八町あるところは、その郡全体で言うとその単位までいかないけれども、その二つないし三町はもう激甚にもやられちゃっていると、こういう場合があるということも現実問題としてあるから、町村ごとに指定をするというふうな緩和の考えはないかどうか、こういうことを聞いているわけです。この点、政務次官から答弁もらうことになっているのだけれども、全然ないから答弁してほしい。
  70. 片山正英

    政府委員(片山正英君) 突然の実は御質問でございましたので、ことしの米についてはなかなか困難でございますが、今後十分検討してまいりたい、こう思っております。
  71. 原田立

    ○原田立君 鹿児島県川内川上流の湯之尾流域は県下一の水害常襲地帯でありますが、大雨や台風のたびごとに洪水のため温泉街が水浸しになり、国道も途絶するありさまであり、降雨量によっては軒端まで、それも年に数回繰り返し浸水するといった状態であります。そのため、地元からは湯之尾放水路並びに湯之尾分水路工事の早期着工を望んでいるのでありますが、湯之尾分水路工事については一体どういうふうなことになっているのか。聞くところによると、本年度から向こう八カ年間の工期で完了する予定になっているとか、あるいはまた八億円の予算がついているとか、こういうふうなことを聞いておりますけれども、現地の意見としては、予算をさらに追加して計画期間を短縮してほしいと、せめて五十五年ぐらいまでにはぜひやってもらいたいと、こういう強い要望があるのですが、それについてのお考えをお聞きしたい。
  72. 小坂忠

    説明員(小坂忠君) ただいまお話のございました川内川上流部分でございます、湯之尾を主にしました地域でございますが、まず、あの湯之尾の下流の方から菱刈のショートカットという大事業をずうっとやっておりまして、その一連の工事を進めてまいりまして、下流の方からやってまいりませんと、上流からやりますと下流に直ちに害が及ぶということで下流から順次大規模の工事をいままでやっておったわけでございます。それで、いまお話しの湯之尾付近の仕事でございますが、これは全体事業費が十八億程度かかるという大変お金のかかる仕事でございますが、五十一年度から始めまして用地買収に着手いたしたいというふうに考えております。ただ、非常にお金が莫大でございますので極力工期を詰めてやりたいとは思っておりますが、短期間に完成というわけにはちょっとまいらないかと思います。また、この湯之尾の滝、現在湯之尾の滝というのがございますが、その付近が環境的にも非常に価値のあると申しますか、何か「ちすじのり」とかいう天然記念物もございまして環境的にも非常に尊重されねばならぬというような意見もございますので、そういったことも含めて、その本川掘削の御要望も地元にあるわけでございますが、そういったことも勘案しながら実は計画――本川掘削が適当であるかどうかというような計画も実は検討中でございます。しかしながら、原則としては、私どもやはり放水路工事によってその付近の抜本治水を図りたいというふうに考えておりますので、ただいまお話ししました十八億ぐらいの経費を投じましてなるべく早く完工したいというふうに考えております。
  73. 原田立

    ○原田立君 十八億ですか。
  74. 小坂忠

    説明員(小坂忠君) はい。
  75. 原田立

    ○原田立君 私聞いているのは、八年間の工期で予算八億で何かやるというふうなことを聞いているんですけれども、いつの間にか十八億。十億ふえたんですか。私は湯之尾放水路、湯之尾分水路、このことに限って聞いているわけですよ。
  76. 小坂忠

    説明員(小坂忠君) 私いまお答えしましたのも湯之尾放水路付近の一連工事でございまして、十八億でございます。
  77. 原田立

    ○原田立君 五十五年ごろにはでき上がるようなふうに計画は詰められますか。
  78. 小坂忠

    説明員(小坂忠君) ただいま申し上げましたように、ことし五十一年度から用地買収にかかりますので、五十五年度までにはまあ大変むずかしいかと思います。通常、私ども現在の河川事業費の予算ベースでまいりますと、少なくとも五十八、九年ぐらいまでかかりそうだというのを何とか詰めて一年でも早く通水したいというふうに考えております。
  79. 原田立

    ○原田立君 一年でも二年でも早く詰めると、でき上がるようにすると、こういうふうに期待しておきましょう。  もう時間がありませんので最後これ一問にしたいと思うんですが、同じ川内川の羽月川の問題でありますが、この締め切り工事は洪水の調整遊水池として今日まで着工が引き延ばされてきた。したがって、洪水のたびに川内川羽月川からの逆流水により約百三十戸、二百ヘクタールの水田が長時間冠水する。本年六月の大雨、七月の九号、九月の十七号台風でそれぞれ洪水を起こし、冠水した水稲はもう全滅状態。建設省はこの地区を調整遊水池として指定しているようだが、本年の被害はもとより、何らかの補償を考えるべきだと思うんでありますが、その点についてはどう考えているか。あるいはまた、地元住民は締め切り工事を一日も早く実施するよう強く要望しているわけでありますが、これがだめならば訴訟しかないと、このように言っておりますが、実施する計画は一体どのように立てられているのかどうか、お伺いしたい。
  80. 小坂忠

    説明員(小坂忠君) ただいま御指摘の点でございますが、川内川の羽月川との合流点の川内川本川右岸部分だろうと思いますが、先生いまお話しの、調整遊水池として建設省が計画しておるというお話でございますが、われわれはそれは実は一年堤防として上流から完全に締める計画にいたしております。ただ、いまちょっとさっき触れましたが菱刈ショートカットと通称称しておりますが、一連の非常に長い区間にわたりまして大ショートカットを従来やってまいりまして、それの上流端が全部締まった暁でございませんと下流が締められないという事情もありまして現在まであいておったわけでございますが、本年度-来年度にかけまして上流端を極力急いで締めるというような処置によりまして下流端もなるべく早く締めたいというふうに考えております。
  81. 原田立

    ○原田立君 と、ここのところ、いま私指摘したところですね、これは早急に締め切られるということでよろしいですか、理解は。
  82. 小坂忠

    説明員(小坂忠君) そういう御理解で結構だと思います。
  83. 原田立

    ○原田立君 時間がないのでこれで終わりにしますけれども、実は、佐賀県鹿島市のことについて質問したいと思って通告しておりましたけれども、ちょっと時間がもうありませんので、また次の機会にさしてもらいたいと思います。  以上でございます。
  84. 工藤良平

    委員長工藤良平君) 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分に再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十七分開会
  85. 工藤良平

    委員長工藤良平君) ただいまから災害対策特別委員会を再開いたします。  災害対策樹立に関する調査を議題とし、冷害対策に関する件及び台風第十七号による災害に関する件について調査を行います。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  86. 神谷信之助

    神谷信之助君 まず、農業共済の問題についてお伺いしたいと思います。  農業共済の建物共済に火災と総合とがあるんですが、それぞれの加入者数、これが大体どのぐらいになりますか。
  87. 船曳哲郎

    説明員船曳哲郎君) お答え申し上げます。  五十年度で申し上げますと、建物火災共済は全国で五百七十八万四千棟、それから建物総合共済は全国で三十四万棟ということに相なっております。
  88. 神谷信之助

    神谷信之助君 火災共済の方が圧倒的に多いわけですが、この点、総合共済の方がおくれているからだろうと思いますが、総合共済とのずれ、この辺の原因についてはどういうように把握されていますか。
  89. 船曳哲郎

    説明員船曳哲郎君) 原因はいろいろあろうかと思いますが、私どもとすれば、やはり農家に対する積極的なPRといった点に欠ける点があるんではないか、このように考えておるところでございます。
  90. 神谷信之助

    神谷信之助君 補償給付ではどういう状況になりますか、火災共済と総合共済どちらが有利なんですか。
  91. 船曳哲郎

    説明員船曳哲郎君) 御案内のとおり、建物総合共済では、火災等の事故のほかに風水害等の事故も共済事故と相なっております。それに対しまして、火災共済では火災等だけが共済事故と相なっております。したがいまして、共済金が出る場合は総合共済の方が多いわけでございます。
  92. 神谷信之助

    神谷信之助君 総合共済の方が支払い共済金は多いわけですか、風水害が含まれるから。
  93. 船曳哲郎

    説明員船曳哲郎君) 私、ただいまお答え申し上げましたのは、共済金が出るチャンスのことを申し上げたわけでございます。
  94. 神谷信之助

    神谷信之助君 金額の方はどうですか。
  95. 船曳哲郎

    説明員船曳哲郎君) 金額的には、建物火災共済の最高限度は一千万円、それから建物総合共済の最高限度は二百万と、こういうことになっておったかと思います。
  96. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから、総合共済の方はチャンスは多いけれども共済金の支給でいくと二百万が最高限度になると、火災共済の場合は火災だけだという面でチャンスは少ないわけですが、最高限度一千万円、この点がどちらも一利一害がありますから、どちらがいいとか悪いとかいうことにはならぬかと思いますが、しかし実際にはなかなか総合共済に入っている人が少ないという状況が現実にあるわけです。今度の十七号台風災害で、家屋の流失その他の災害を受けられた方が非常に多いわけなんですが、こういった問題について当委員会でもこの個人災害に対する救済措置考える必要があるということで、すでに小委員会が設置をされて検討することになっています。しかし、小委員会検討されて個人災害に対する救済の制度を樹立をするまではこういった現実の制度を十分活用せざるを得ない、こういうことになろうかと思うんです。  そこで、具体的に一つ問題を提起をしますと、兵庫県の一宮町ですがね、これは御承知のように福地部落での山崩れ、山津波ですね、これで四十数戸が一瞬にして全部崩壊をする非常に大きい災害を受けたわけであります。埋没、流失、崩壊等罹災建物が百四十棟で一万一千四百九十一平米余り、それからそのうち建物火災共済加入が四十二世帯、七十三棟、六千二百九平米になっておるわけです。したがって、四十二世帯が建物火災共済の方に入っている。罹災者の九〇%が火災共済の方に入っている、総合共済に入っていないわけですね。ところが、今度の災害で罹災、火災で全焼したと同じようなあるいはそれ以上の被害を受けたわけです。火災の場合ですと、家が全焼しても家だけがやられるわけですが、今度の場合は山津波で土砂がずっと出てきていますから、したがって、建物のみならず土地自身が確保できるかどうかというのが非常に――これは後でもちょっと尋ねたいと思いますが、心配になっていますね。そこに住むことが、定住することが許されるかどうかという問題があるわけです。そうしますと、自分の持っている土地までもなくなってしまう、そういう事態になろうかとしているわけです。したがって、町もそれからまた町議会も、ひとつ総合共済には入っていないけれども、火災共済には入っているんだし、しかもこの共済制度は任意の共済ですから、加入者の保険金で運用しているわけですから、そういう点では見舞い金という形ででもそれに見合うような形での補償を出してもらいたいという要求が非常に強いわけです。そういうことで、県にも国にもそういう要請をしておりますが、この点についてそういう方法があるかどうか、ひとつ先に農林省の方からお答え願いたいと思います。
  97. 船曳哲郎

    説明員船曳哲郎君) 先生のお話のとおり、農業共済団体の行っております建物火災共済の場合には水害共済事故としておりませんので、共済金は支払われないわけでございます。ところで、このような場合におきまして、農業共済団体がその自主的な判断のもとに災害に遭った農家に対しましてお見舞いといたしまして若干の金品を交付することもあるようでございますので、私どもとすればこのような実態も踏まえながら、あくまで共済団体の自主的判断によるものではございますけれども、現地の実態の把握等には努めてまいりたいと、このように考えておるところでございます。
  98. 神谷信之助

    神谷信之助君 こういう異常な災害で、しかも家、建物のみならず土地まで被害をこうむるという状況ですから、したがって見舞い金の額もできるだけそれにふさわしい、十分とまではいかなくてもできるだけのことはしなければいかぬということなんです。そうすると、積立金の取り崩しということも当然考えなければいけない。この点になりますと、これは単位共済から県の連合会を経てそういうことをやるということになれば農林大臣の許可が必要になりますね。これは私の聞いたのでは耕地その他でもそういうことで許可をして、そして見舞い金という形でできるだけの援助をすると、相互扶助ですから、そういうことが了承されるならばやると、自主的にその機関がそのことを承認するならば、農林大臣としても積極的にそれを認めてこられたように聞いているのですが、この点はいかがですか。
  99. 船曳哲郎

    説明員船曳哲郎君) いまお話のございました任意共済特別積立金でございますが、これは損害防止事業の費用など連合会の行う保険事業に関し必要な費用の支払いに充てることができると定められておりまして、その取り崩し使用は連合会の自主的判断の問題であると考えますが、その取り崩し使用する場合には県知事から副申を付しまして、承認申請書が農林省の方に申達されてくることとなっておりますので、私どもといたしますれば、その県知事の意見等をも勘案いたしまして判断してまいりたいと、このように考えております。
  100. 神谷信之助

    神谷信之助君 そういうことですから、兵庫県の連合会及び兵庫県知事の副申が要るわけですね。そういう点で、ひとつ地元の方はそういう点を非常に強く要望しているのですが、どうも何かいろいろまだいきさつがあるようですけれども、ひとつこの点では過去の前例もあることですから、そういう申請が出れば積極的にそういう要求にこたえるという角度でこの問題の処理をしていただきたいと、こういうように思うのですが、その点はよろしいですか。
  101. 船曳哲郎

    説明員船曳哲郎君) 連合会の自主的判断のもとに県を経由して申請書が上がってまいりますれば、私どもは過去の例等もございますので、具体的に判断をしてまいりたい、このように考えております。
  102. 神谷信之助

    神谷信之助君 現実の問題はそういう形で、これは兵庫県だけでなしに、恐らく各地でも起こると思いますが、とりあえずそういう処理をしなければならぬという状況です。この問題を総合共済、火災共済、これらがお互いにもう少し有無相通じ合えるような仕組みなり何なりという点についても、われわれの方も検討する必要はあるだろうと思いますが、長官の方もこの点ひとつ問題として、検討課題としておいていただきたいと思います。  次の問題は中小企業の金融問題です。政府機関の中小企業金融公庫あるいは国金あるいは商工中金、こういう三つの中小企業関係の金融機関が災害の場合特例措置をとっていることは私ども存じておりますが、特に中小企業金融公庫ですね、これと国民金融公庫との関係であります。で、中小企業金融公庫の方は十年返済、三年据え置きで六・二%の特利を適用する、貸し付け限度額も一千万円ということになっています。しかし、これは資本金一億円以下または従業員三百人以下の企業ということになっていますけれども、実際には零細企業の方はこの対象にはならないと、そちらの方は国金の方を使うということになっています。国金の方を調べてみると、これは貸し出し限度額が昨年この災害委員会でも問題になりまして引き上げられました。ところが、これは二百万から四百万に上がったんですね。したがって、非常に貸し出しの限度額が低いんです。昨年上げたばかりだとはいえ、今日の事態になかなかこたえられるような状況ではないわけです。  で、先ほども申し上げました兵庫県の一宮町ですが、このがけ崩れ、山津波に遭ったところの地域というのは、町の中心といいますか、罹災者の六割が零細業者といいますか、工場が一つあるぐらいで、それも数十人程度の工場ですね。あとはいろんな小さい商店といいますか、そういうところなんですよ。そこで、今度土地がどうなるかというこの問題、まだ先行きがありませんが、仮にそこへもう一遍戻ってやるとしますと、家は建てなきゃならぬ、商売始めるのに設備資金から運転資金が必要です。しかし、貸し付け限度額が四百万円ですからね、こうなると、なかなかこれ、どうにもこうにもならぬという――利率を下げるという点では、そういう全財産といいますか、資産が流失をしているわけですから、特別の三分の利息、金利になるだろうと思いますが、しかし、いま限度額が四百万ぐらいではどうにもならない。だから、中小企業金融公庫の方が限度額一千万円、そして三年据え置き、十年返済になっている。だから、こちらの方も限度額をひとつ引き上げてもらう。まあ去年上げたばかりでなんだということになりますが、この引き上げるということ、同時に、これについての弾力的なひとつ運用の方法という点を考えてもらわないと、いまの状態では立ち直るということは非常に困難ではないかと思いますから、この辺について――中小企業関係見えていますか、ひとつお答え願いたいと思います。
  103. 松尾成美

    説明員(松尾成美君) ただいまのお尋ねの点でございますが、先生おっしゃるとおり、中小企業金融公庫が二千万円、これに対して国民金融公庫の場合は別枠千二百万というふうになっておりますけれども、実はこれ、もともとの根っこの方の融資が御存じのとおり、中小公庫が一億円まで、国民公庫は一千万円となっていることからこういう考え方をとったわけでございますが、ただいまお尋ねの、別枠にこれだけではどうにもならないという点につきましては、実は災害融資の場合にもこの国民公庫の根っこの方の一千万円、この額もお使いいただけるということになっております。ですから、全体として見ますと、直接に国民金融公庫の支店に参りますと、千二百万円まで融資対象になりますが、まあおおむねそういう比較的小さな企業の方の場合、融資額としてはこれで対応していけるんです。で、中小企業金融公庫の方はやはりこの根っこの方まで使いますと一億二千万円、これは御指摘のとおり、ある程度大きな企業の場合になじむかと思いますけれども、別に小さなものに貸さないというんじゃございませんが、御利用の便利というようなことからしますと、そういうことになろうかと思います。そういうことでございますので、確かに特利の三%はこれは激災法で去年上げていただいて四百万ということでございまして、これまあ法律事項でございますので、ちょっと運用ではどうにもなりませんが、その四百万の三%なり六・二%のお金と、それから千二百万のうち四百万除いた部分でございます八百万については八・九%という、これはまあやはり特利――政府系の無利子の金とかあるいは資金運用部のお金でございますから比較的長いお金としては金利は割り安になってると思いますが、これと全体薄めてお使いいただくということで、資金量としては対応していけるんではなかろうかというふうに考えております。
  104. 神谷信之助

    神谷信之助君 まあ町の中心部にそういう業者、零細業者が集まってるのがごっそりいかれましたからね、で、まあどうやってこれからの生活設計を立てるかというのがいま重大問題になってるんですがね。仮にそこで一軒なり二軒なりが次次に店を開いてみたところで、購買力が、昔のように集まってるところと違いますから、そういう点では金を借りてやりましてもなかなかいろいろな問題起こってくるんですね、すぐ返済をするどうのこうのという。したがって、この点では私はこの三分の特別被災者としての措置ですね、この点をできるだけ運用の面でも拡大をしてもらうということと同時に、据え置きの期間というのを相当長期に考える方法を講じてもらわないと、実際問題としてこの利用ができないという状況になると思うんです。この辺は一つ実際上の運用の問題も絡まりますから、そういう趣旨は十分生かしてひとつ指導してもらうようにお願いしておきたいんですが、よろしいでしょうか。
  105. 松尾成美

    説明員(松尾成美君) 極力そういうことで御趣旨に沿うように指導はしてまいりたいと思います。
  106. 神谷信之助

    神谷信之助君 その次は建設省の方ですが、あの一宮の災害について、国土問題研究会と日本科学者会議の兵庫支部が合同で災害の研究グループをつくって現地調査をいたしました。京都教育大学の木村教授が責任者として行われたんですが、その報告を見ますと、これの二次災害防止のための当面の措置の緊急なことと、それから向こうの特殊なそういう地質、弱い地質の状況、こういったものについての科学的な調査ですね。当面の対策としては、雨水とか地表水が崩壊面あるいはその周辺に浸透するのを防ぐための集排水溝、これをつくるなどの措置が必要だろう。それから恒久的な措置をとるためには、当面すぐ早急に表層地質の調査、それから電気探査、ボーリング等、それを細かく実施をして、地下水脈や破砕帯あるいは風化帯の分布、これらを調べて残存部分の崩壊をとりあえず防ぐという、こういうことをやる必要がある。その次には恒久対策として、あれが流れ出て川の流れがぐっと西の方に寄ってきてるんですかね、だから、その川をもとのとおりに戻してしまうのか、あるいは、そこいま盛り土がしたようになってる、そういう状態をならしていくのか、それともそこをもとのように土を全部除去するのか、いろんなことを考えなきゃならぬ。で、しかも危険――将来の安全問題がありますから、そこに定着ができるかどうか、定着ができないとすれば四十数戸をどこへ移すのかというような問題が今後の恒久対策として考えられる。こういう非常にむづかしい問題が山積をしておりますが、この点について建設省の方で今日まで調査をし、あるいはそれについて当面の緊急措置あるいは応急措置、あるいは恒久対策、これらについて検討されてる点があればまず報告をしてもらいたいというふうに思います。   〔委員長退席、理事上條勝久君着席〕
  107. 大工原潮

    説明員大工原潮君) 先生御指摘のように、一宮町の地すべりの問題につきましては、非常に範囲が広範であって、それからさらに地質の問題もいろいろ特殊条件ございます。したがって、現在までに建設省といたしましての調査は、土木研究所の砂防部長あるいは地すべり研究室長その他、順次現地を見さしまして、調査のあり方、調査の計画につきまして現在検討中でございます。で、先生御承知のようにあの災害につきましては、流出した土砂の二次災害防止という意味で、流出土砂に対する対処の仕方といたしましては建設省所管でやる、それから新規崩壊を起こすという上流のいわゆる崩壊斜面でございますけれども、それにつきましては林野庁所管ということで基本的には調整をいたしております。しかしながら、地すべりといたしましてとらえる場合には全体を含めて一連のものとして対策検討しなければいけないということで、調査計画等につきましても土木研究所あるいは林野庁の方の試験所等と合わせまして合同調査、その結果に基づいて調査計画をいままとめ中でございます。その結果が出た段階で恒久対策を決めていくわけでございますが、いま御指摘のように河川の土砂、排除いたす土砂量にいたしましてもかなりの量がございますし、それから上流の不安定土塊がまだございます。それらの処理につきましてもかなりの量が発生する予想がございます。あの地域、果たしてそれだけの土砂量がもとのように復旧するために処理する場所があるかどうかという点につきましては、ちょっといまのところ困難ではないかというふうに予想がされております。したがって、一応二次災害を起こさないような手法はどういう方法が一番いいかというふうなことで、河川災害あるいは道路災害それから住宅の復旧のあり方がどうあるべきかというようなことを地元の意向を踏まえまして、一応それらと切り離しては対策そのものは、恒久対策検討するわけですけれども、やはり跡地の利用その他も一応それらの条件を踏まえまして現在検討中でございます。
  108. 神谷信之助

    神谷信之助君 まあいまのお話のように、建設省とそれから林野庁にまたがることになりますから、これ、どちらもやって、どちらも連絡調整をしてやると言うんだけれども、やはりまたがりますとなかなか責任の所在が明確にならぬ。主としてはどっち、建設省がやるんですか、林野庁、どっちでやるんですか。どっちがやっぱり主になってがんばってやるかというやつ、あるいは国土庁の方でそれを災害対策室でまとめてやるのか、その辺はどのようになっていますか。
  109. 大工原潮

    説明員大工原潮君) 現在のところ、県を通じまして土木研究所の地すべりを担当いたします研究室、それが中心になりまして調査の計画を樹立しておるところでございまして、それにつきましては林野庁とは調整を図っておるところでございます。
  110. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると対策といいますか、恒久的な――当面の二次災害防止のための計画とそれから恒久的な対策、これらを含めては建設省の土木研究所がその調査立案、企画はやると、林野庁と調整をしながらやっていくと、そこが責任を持ってそこまではやるということですか。
  111. 大工原潮

    説明員大工原潮君) 当面の実施主体は県でございますので、一応県の土木部、それから林野庁の関係の農林部でございますが、それらを両方合わせました出先を現地につくったというふうに報告を聞いております。で、直接的にはそこが中心になって現地の検討をいたしておりますが、技術的な手法あるいは調査の計画等につきましては建設省が一応われわれといたしましては中心になってやらざるを得ないというふうにして、いまのところそういった情報は林野庁と相互交換しながら万全の措置をとっていきたいというふうに考えております。
  112. 神谷信之助

    神谷信之助君 これは将来は地権問題、いわゆる土地の権利問題も出てくる可能性もありますし、集団、集落移転の問題も出てくるであろうし、それから実際にやると相当膨大な財政負担を必要とする、こういうことになってくるんで、この点はひとつ、県は県としてやらにゃいかぬわけですが、町自身は向こうは非常に小さい自治体ですから町の力でどうにもこうにもならぬ。したがって、県が主になりながら建設省や林野庁が、政府の方がそれについての技術的指導財政的な援助、こういった点を十分にやらないとなかなか大変なことになる。とりあえず応急仮設住宅でやっていますが、いずれにしてもあれは二年以内の仮設住宅ですから、したがって少なくともこの一、二年の間には恒久的な対策を立てなきゃならぬ。それについての一番障害になってくるのは、そういう恒久的な防災体制の方途が見つかるかどうかということと財政措置が可能なのかどうかという問題が当然起こってきますので、これはひとつ十分その点建設省の方も腹を据えて援助をするようにしてもらいたいと思いますが、その点よろしいでしょうか。
  113. 大工原潮

    説明員大工原潮君) 先生御指摘のようにかなり規模といたしましても、建設省所管分でも十数億というふうに報告は聞いておりますが、各省庁ともそういった数字になろうかと思います。現在のところ財政当局に対しましては激特制度にのせるべく、林野庁もそうでございますが、建設省所管の分につきましても激特制度にのせてできるだけ事業も促進と、それから財政的な面につきましても考慮してまいりたいと考えております。
  114. 神谷信之助

    神谷信之助君 それじゃそれはひとつよろしくお願いしたいと思います。  次に、前回の委員会で余り時間がありませんでしたので、私の方から一方的に問題の提起だけをしておきました災害救助法の改善の問題、それから開発計画の見直し並びに規制の問題、こういった問題についてお伺いしたいと思います。  前回のときにも指摘をしたんですが、各県で対策本部を設置をした被災市区町村というのは九百五あるんですね。ところが、その九百五のうち実際災害救助法の発動された市町村というのはその六分の一に実質すぎないわけです。罹災世帯数で見ますと十二万世帯が罹災世帯になったわけですが、救助法の適用された地域の罹災世帯というのはわずか四割であった。したがって、災害救助法の第一条に「災害に際して、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、応急的に、必要な救助を行い」と、国が責任を持って災害にかかった人たちの保護、そうして社会秩序の保全を図ることを目的としてできているんですが、救助法が実際にはこういうわずかのところしか適用されないという実情にある、この点は非常に私は合理性を欠くと思うんです。災害を受けた市町村が国の援助を受けられる市町村がある、片一方では受けられない市町村がある。しかし罹災を受けた方は、これはたとえ一軒であろうと十軒であろうと同じやっぱり大きな被害を受けるわけですね。だから当面の応急のそういういろんな救助措置が、そういうように国の直接の援助の手が伸びるところと伸びないところとあるというのは、私はこれは非常に法のもとにおける平等の原則からいっても、この点では大いに矛盾があるんじゃないかと思うんです。したがって、これを私は、すぐにといってもなかなか無理でしょうが、災害救助法の発動災害程度にかかわらず都道府県知事が市区町村長の申請に基づいてやれるようにして、そうしてそういう不平等が起こらないようにするという措置に改めるべきではないかと思うんですが、この点についてのひとつ担当の厚生省の方の見解、さらに今度は、厚生省の方はきわめてそう簡単に政治的な判断をするわけにいかぬだろうと思うんですが、その答弁の上に立って災害についての政治的な政策立案の責任を持つ長官の見解をお伺いしたいと、こういうふうに思います。
  115. 水田努

    説明員(水田努君) お答え申し上げます。  神谷先生の御意見は前々から承っているわけでございますが、災害救助法に基づく応急救助、特にこれはいわゆる地方自治体を中心に国民の協力を得て総力を挙げて救済するという一つの一定の規模を想定して行うものというふうに私ども考えておりまして、御承知のとおりに災害救助法に限らず、災害時における各種の制度が一つの一定の線を持っていることは激甚災の指定その他を見ても明らかなとおりではないかと思うわけでございます。で、災害救助法の発動を全部知事に任したらどうだというのも一つの私確かに御意見かと思いますが、やはり地方自治体側としましては判断が恣意にわたっては逆にまた新たな不公平問題が生ずるので、やはり国が一つの明確な基準を持ってほしいというのは恐らく、われわれもそういう声を聞いておりますし、大多数の地方自治体がそういうことを恐らくは聞けば率直にそう申すのではないかと思っている次第でございます。先生御承知のとおりに政令で定めました一般基準以外に弾力条項がございますが、やはりこれにつきましても厚生大臣に協議して発動するという仕掛けにいたしておりますゆえんのものは、全国的に見て災害取り扱いに不均衡、不公平がないということを担保しよう、こういう趣旨のものと解しております。なお現在の基準は一切政令に書いてあるわけでございますが、これが私どもは一応適切なものだと考えておりますが、いわゆる必ずしもそうではないという御批判もあるわけでございますので、いかなる場合が不都合であるか、いかなる場合が妥当であるかというようにこれはいろいろ論議の分かれてまいるところではないかと思いますので、当委員会に設けられております小委員会等を通じまして、やはりここらあたりの問題の処在なり、あるいはわれわれ行政側の運用上その他の問題について改善すべき点があるならば私ども改善をさしていただきたい、このように考えておりますが、いずれにいたしましても私ども一応今日の災害救助法の発動の運用についてはおおよその妥当性を持っていて、そう著しく不公正があるというふうには考えなくていいんではないかと思っておりますが、また小委員会等で具体的にお決めになられます際には私ども協力してまいりたいと、このように考えている次第でございます。
  116. 神谷信之助

    神谷信之助君 歯切れが悪い。長官、もうちょっと歯切れよくやってください。
  117. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) これは私の方の所管ではございませんので言い過ぎますと責任問題が起きますからいまの程度の発言きり役所側としてはできないと思います。これは当然救助法は洗い直しをすべきところに来ているのじゃないかと私は個人的にそう考えております。私もずいぶん長い間、十数年間災害専門にやってきておりますものですから、そういう点でいろんなポイントも承知はしておるつもりでありますが、いま課長の方から話があったように、これは小委員会でひとつ詰めていただいて結論を出していただくということが過去のしきたりからいって大変いいんじゃないかと私思います。そういう点で衆議院の方の災害対策委員会にも今度の災害を契機としていろんな反省事項があるからそれをまとめてひとつ何とかしてほしいというふうに私の方から申し入れをしまして、いま小委員会検討中でございます。ひとつこちらも小委員会できておるはずでございますから、そういう点取りまとめて出していただきますれば、私の所管ではございませんが、できるだけ協力を申し上げて始末をしたいと考えております。
  118. 神谷信之助

    神谷信之助君 所管は厚生省ですからなんですが、しかし国土庁は災害問題についての関係各省の連絡調整もやってもらわにゃいかぬし、われわれは次の委員会では地震問題では国土庁をもっと強化をして権限も付与するぐらいやらにゃいかぬというふうに考えているぐらいですから、そういう点ではひとつ積極的にやってもらいたいと思うのですがね。きょうはそのほか救助の種類対象も、たとえばこの委員会でもしばしば問題になっておる屎尿のくみ取りとか清掃消毒ですね、あるいは畳とか家具なんかの取り除きとか、あるいは乳幼児の保育なんかも適用対象を広げるとかそういったいろんな問題を検討する必要があるだろう。実際に役に立つようにしてもらうということと、それからもう一つは、それだけに今度は救助法の適用いかんが激甚災の適用とも関連をしてくる。一県で一市町村が救助法発動していればそれで全県広がるというやつありますけれども、ただ一つのところしかないところもありますからね。だからそういったいろんな点が激甚災とも連動しますから、そういう意味で救助法の発動というのはもっと弾力的に、私どもはもう災害のいかんを問わず大体発動できると、一県とか二県とかそんな問題とは別ですから、いわゆる災害というものについては適用ができるような方途、それは当然考えないといろんなまた問題が起こってくるのじゃないかというように思うのです。この点はひとついま長官積極的に当委員会とも小委員会とも協力してがんばってもらえるようですから、ともに協力してやっていきたいというふうに思います。  その次の問題に入りますが、そこで最近の災害がいわゆる自然――たとえば前回のように年間の降雨量が短時日に集中的に降るというような自然的な原因もありますが、各委員からも指摘されましたように、開発による災害の激化ですね、こういうことも指摘をされておるところであります。その開発というのも宅地開発あるいは造成あるいはゴルフ場の問題、道路の問題それから農業構造改善事業による開発、そのほか非常に自然をいらうことによって変化する問題、それから人口が過密集中することによって変化する問題、遊水地帯がなくなって保水機能を喪失して起こる問題、いろいろ出てきます。したがって、いずれにしても開発の問題については十分検討し直さなければならぬところへ来ておると思うのです。  そこで、いま国土庁の方で新全総の総点検をやっておられる。これはこの間も指摘はしておいたのですが、八項目の点検項目が開発審議会で規定をされて、すでに六項目については点検が終了しております。この項目内容を見ますと、巨大都市問題、地方都市問題、それから計画のフレーム、土地問題、農林水産業問題、自然環境の保全、これが点検が済んだ項目であります。あと二つが工業基地問題と開発に関する法制度ということになっています。ところが国土総合開発法を見ますと、第一条には、国土の自然的条件を考慮して、いろいろ総合的見地からこの計画をつくれという、これが目的だということが出ていますし、第二条の国土総合開発計画の第一項の二号には「水害、風害その他の災害防除に関する事項」、これも国土総合開発計画の中に加えるべき重要な項目になっていますね。したがって、そういう点から考えますと、こういう開発が災害に非常に大きな影響を与えているということが最近の災害の事例で明らかになっているにもかかわらず、この新全総における点検項目に再開発と災害との関係ですね、この問題についての点検項目を加えてないということは、先ほど言いました法の一条、二条の規定からいっても、それから現実に開発によって災害が続発し、またひどくなっている、そういう現実からいっても、これは私は重大な問題があるんじゃないかと、こういうふうに思うんです。この項目は、この間の話では、開発審議会でお決めになったということですけれども、この点はひとつ国土庁の方でもこれは実質的にこの問題で研究もし、点検もすると同時に、開発審議会にも提起をして点検項目をふやしてもらう。そういう角度から見直しをしないと、そういう災害による教訓というものをわれわれくみ出さないと、これからの開発計画というものは立てられないというところまで来ているんじゃないかと、こういうふうに思うんで、この点についてひとつ見解をお聞きをしたいと思う。
  119. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) ただいま御指摘いただいた問題でございますけれども、昭和四十四年に閣議決定しました新全国総合開発計画は御指摘のとおりに総点検をしておりまして、六項目終わりまして、間もなくあとの二項目も終わる段取りで作業しております。ただ、その八項目に審議会で分けていただきます際の考え方といたしましては、その新全総の総点検の角度は、公害問題と防災問題の角度からもう一度洗い直したらどうかということが主要テーマでありまして、それを大都市の場合、地方都市の場合、あるいは農林水産業の場合ということで八項目に分けて、その公害と防災について点検するようにと仰せつかって、それで一応やってきたわけでございますけれども、最近の風水害の経験にかんがみまして、八項目の点検は八項目として早急に終わらせたいと思いますけれども、第三次全国総合開発計画をつくる前提といたしまして、国土に関する条件につきまして関係各省の調査も進んでまいりましたから、それらの調査を集めまして一度整理をいたしました上で、審議会等々にも御説明をした上で御指摘の点を考えてまいりたいというふうに考えております。
  120. 神谷信之助

    神谷信之助君 私、これは非常に大事なことだと思いますから、ひとついま局長のおっしゃったように早急に点検はやってもらうと、われわれも、そういうところからひとついろいろまた勉強しなきゃならぬと思いますから、よろしくお願いしたいと思います。  それから、その次の問題は国土利用計画ですが、これは政府の方の案ができて、そしていま各県でそれに基づいて各県の計画を樹立をするという、そういう段階に入っているようですが、この点、私、ずっと内容も見せてもらったんですが、言葉の上では、災害、防災の面も言葉としては入っているんですけれども、具体的にいま計画をつくる、その利用計画の中で、そういったものを、たとえば防災の観点から、どういう土地あるいは山林、これらを保有しなきゃいかぬのかと、そういう点についての計画を具体化をするとか、そういった点は余りないように思うんですね。その点では、やっぱり防災上の観点からの国土利用計画という点での、入っていると言えば入っているけれども、実際具体化はない、具体性はない。この辺もひとつもう一度見直す必要があるんじゃないか。特に国の方からこうやって方針が出ていますから、府県は大体それに準拠してやりますから、その辺について改めてつくり直すか、あるいはそういう見地をもう一遍強調して、そういう角度から、こういう点について特に留意をするようにというような指導をするか、そうしないと、私は、現在の国土利用計画案では、防災上の見地から言うと、きわめて不十分じゃないかと思うんですが、この辺はいかがですか。
  121. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 御指摘のように、国土利用計画は、全国計画と都道府県計画と市町村計画という三つで成り立っておりまして、今回初めてつくりましたから、御指摘のように基本方針的な計画にとどまっておりまして、私どもといたしましては、防災の観点というのは、かなり具体的な地域性をもって考えなければ実現しないだろうと考えますので、一応国の方針を今回示しまして、県の計画の際に、またいろいろと防災上の観点を考えていただいて、またそれを上へ上げていただきまして、全国計画は、その都道府県計画ができた段階でもう一度見直すことを閣議決定をしておりまして、見直しを条件に方針として示しておりますから、各県等から出てまいりました場合に、その点でさらに補強する点があれば、補強改正をさせていただきたいというふうに見ております。市町村計画にいきますのは、都道府県の方針が定まりました上で固めたいというふうに考えております。
  122. 神谷信之助

    神谷信之助君 その点では、いま日本列島は危険列島といいますか、災害列島の状態になっておると前回も報告がありましたが、たとえば建設省の危険個所というのは六万カ所ある、林野庁の方は十二万カ所、農地の危険個所は二千七十件、土石流の危険個所は三万五千カ所、地すべりの危険個所は五千カ所、老朽ため池は一万カ所以上というようになっているわけですね。しかも最近の災害を見ると、そういう危険個所と指定をしていないところでどんどん起こっておりますから、だからこれ以上ということですね。だから国土利用計画をつくる場合に、そういう意味で、こういう災害の面からの危険の状況、これを科学的にもう一遍点検をし直す、そういう点も指導して、市町村計画をつくる場合に十分そこも踏まえてやらせる。溜水、遊水地帯になっておったところにどんどん家をつくれば、これはしょっちゅう浸水してしまう。それを土盛りしたらそれで済むのかどうか、いろいろな問題が起こってくるでしょう。だからそういう点まで含めた指導なり援助なりをしないと、これは計画を幾ら絵にかいてみても、実際住んでみたら水はつくし、災害が起こる。これでは役に立たぬわけですね。この辺まで含めた、少しこうきめの細かい一いまは県段階でやっているんですが、実際にやるのは、市町村でぴちっと一番実情に沿ったものができるわけですから、そういうのに間に合うようなこういう実態の調査、あるいはそれに基づく留意すべき事項なんかの指導ですね、こういう点きめ細かくやる必要があるんじゃないかと思うのですが、この辺いかがですか。
  123. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) ただいまは国土利用計画法に基づく計画の手続だけ御説明いたしましたが、いま御指摘いただいた点では、国土庁発足をいたします際にそういう問題がありまして、国土情報整備事業という事業を興しまして、ようやく政府で一貫して航空写真を撮り始めるという事態になりまして、それから国土の条件についても、一キロメッシュで全国の事情調査をして各県の作業に供することができるようにという作業を始めておりますが、遺憾ながら、これがまだ数年かからないと完成しないという実情にありますが、極力急ぎまして各県の作業に使っていただくように指導したいと思います。
  124. 神谷信之助

    神谷信之助君 それで長官、私は、だからそういう精密な航空写真も撮ったりいろいろやらなければいかぬと、だからそういう点では民間にいろいろな研究機関もあるわけですからね、そういうのもいろいろ動員もし、協力もしてもらう。それから一番地元の、現場のそこに住んでいる人たちには、いままでのそこの地域における人間社会の生活の変遷なんかがわかっているわけですから、これは自然の条件と切り離してそういう生活が存在していないわけですからね。こういったものを踏まえながらやっていくということで、全部大きくやっぱり動員をして協力をしてもらってやる。こういう協力を国民的な規模でやれば、やっぱり危険地域だということが理解されれば、そこはのくとか、そういう問題が起こってくる。それをそういうなにに理解をして一緒に協力をしてもらうという道程を抜きに、言うなればお役所仕事で権威主義的にやっていきますと、それはなかなかそう簡単に先祖伝来の土地が立ち退けるかとかいったいろいろな問題が起きる。だから、この辺を私はよっぽど腹を据えて、民主的に国民の、その地域住民の意見を聞きながらやれるような、そういう計画立案作業、これを同時にやらないと大変だろう。  それから同時に、もう一つは、いま話を聞くと大分時間がかかるわけですね、全体のは。これは災害は、最近は毎年じゃんじゃん起こってきて、ことしのような大変な災害になってくるわけですから、その被害総額を考えると、それだけの被害総額、損失をし、日本の国民の富がそれだけ損失をしているわけですから、このことを考えれば、相当の投資を考えてやるということをやらないと、大体後追い後追いになるわけですから、この辺なかなか大変なことではあるけれども、長官もひとつ腹を据えてやってもらいたいと思うのですが、この辺いかがですか。大体いつまでどうなるか知りませんが、いずれにしても来年度予算に向けての問題が大きく出てくるのだし、そういうことですからね。
  125. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) 日本の国土をよりよく利用していくためには、狭い国土を守る以外方法はないわけですから、そういう点では、新しい役所で予算もなかなか取りにくい点もありまして、なかなか進みにくいと思うのですが、理解を求めて基本線をがっしりつかめるようにして、時間を短縮してやれるように積極的に努力いたします。
  126. 神谷信之助

    神谷信之助君 もう時間がありませんから、あと一括してお伺いしたいと思います。  一つは、これも前に指摘をして、前の金丸国土庁長官が、実は中央防災会議事務局にそのための専門の専門部といいますか、つくってひとつ検討するということを約束されているのですが、たとえば都市計画法あるいは都市再開発法ですね、事例を挙げたのはこの二つの法律、とりあえずは二つを挙げるのですが、防災上の見地から見ると適合性がないではないかという問題があると思うのです。都市計画法の第十三条は都市計画の基準を決めております。それを見ますと、「都市計画は、全国総合開発計画」、三大都市圏の整備計画、北海道総合開発計画、地方総合開発計画等々に適合するよう定めなければならない、「この場合において、」「公害防止計画が定められているときは、」それに適合したものでなければならない、こうなっています。だから、都市計画の立案は、そういう開発計画と適合すること、それから公害問題がやかましくなりまして、さらに公害防止計画がある場合にはそれに適合しなさいと、こうなっている。それから防災基本計画、これともやっぱり適合して都市計画が考えられていくことが必要ではないか。この点に法の不備があるのじゃないか。同時にもう一つ、二十三条に、「(他の行政機関等との調整等)」というところで、建設大臣が「都市計画を定め、若しくは認可しようとするとき」は、あらかじめ農林大臣、環境庁長官、通産大臣、運輸大臣の「意見をきかなければならない。」となっている。厚生大臣は必要があるときは「建設大臣に意見を述べることができる。」と、こうなっています。しかし、防災について総合的な責任を持っている国土庁長官とか、あるいは消防庁長官とか、あるいは場合によれば自治大臣ということですが、こういう人の意見は聞く必要がないことになっているのです。だから、この法自身がそういう防災の見地抜きに開発重点で、そして後公害問題が起こりましたから、そういう意味で公害防止計画、厚生大臣の意見を聞くと、こういうことになっているのですね。この点が一つですよね。  もう一つの問題は、都市再開発法であります。これは空間の高度利用が目的になっている。したがって、防災都市づくりのための再開発法ではないわけです。しかし、たとえば関東震災のようなのが東京周辺で起これば大変なことになる。とにかくあの石油コンビナートという危険物と住居とが隣接をしているわけですから、こういう状態は至るところに出てきますね。で、したがって、あるいは空間の高度利用も、いわゆる防災の見地からの問題というのが非常に重要になってくるわけですね。きのうですか、京大で行われている防災の学者の会議でも、例の大分の地震で問題になった、一階の空間の広い、壁面の少ない、そういう建築が地震には弱いというやつがイタリアの例を挙げて報告されていますけれども、そういう問題も含めて、この都市再開発という場合、単に空間の高度利用だけではなしに、防災都市づくりという見地からの再開発、これが当然含まれる必要がある。こういうようにこの法も検討し直す必要がないか。したがって、三条は、市街地開発の区域が「都市計画法第八条第一項第三号の高度利用地区内にあること。」というようになっていますが、これに都市計画法のたとえば「防火地域又は準防火地域」、この部分も加えてやっていく。それから防火地域に指定をしたら、それが不燃化物を中心にしてちゃんとそういう防火の役割りが果たせるような地域、都市再開発をする場合でも、そういう方向に向けてやらなければならぬだろうというように、防災基本計画あるいは防災との関係、これらとの適合性ですね、建築基準法の問題もそうでありますが、こういった関係を、いわゆる開発関係の法律というのは、そういうのはいまもう一度根本的に点検をする必要があるだろう。こういうことで、前金丸長官時代に指摘をしたわけです。で、当時長官は、金丸さんは、中央防災会議事務局の中にその専門機関を設けて、ひとつそういう見直しの根本的な検討をやるようにしますということだったのですが、おかわりになりましたけれどもね。長官がかわられても、行政は一貫性を持っているのだから、具体的にそれはそういう点で作業が進み出しているのかどうか、そういう問題意識を持ってその中央防災会議事務局の中でそういう作業を進め出してきているのか、この辺についてひとつ報告を求め、そして今後のひとつ決意を長官からもらいたいと思います。
  127. 松原青美

    説明員(松原青美君) 先生御指摘の都市計画法等に防災の観点が入っているのかという御質問でございますが、都市計画は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備等に関する総合的な計画でございます。したがいまして、都市防災の観点からも、たとえば防火地域等の地域地区の指定、広幅員の道路、大規模な公園等の都市施設の計画、あるいは御指摘ございました市街地再開発事業によります建築物の不燃化の計画等を定めることができることになっています。で、地域防災計画等によりまして都市施設の整備計画が決まりました場合には、それは直ちに都市計画として決定いたしまして、事業の進捗を図るという方向で指導しておりますし、再開発事業につきましても、たとえば江東の再開発事業は、防災拠点づくりの都市計画の再開発事業でございまして、あの中にあの付近の住民の人が安全に避難できる場所を確保する、こういうような計画になってございます。そういう点から見まして、現在の都市計画法あるいは再開発法におきましても、防災上の観点を十分入れた都市計画は必要に応じて決定されておりますし、それに基づいて事業の実施も進められておりまして、現在の都市計画法等で十分対応できるのではないか、かように考えております。
  128. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) これは私の持論ですが、ちょっと土地に関する法律が多過ぎるんではないか、それが各役所的にセクト的な形になっておることが狭い日本の国土を利用するのに非常に障壁になっているのではないかというような考え方で、実はこの国土利用計画法を創設するときに、それも織り込みたかったんでありますが、なかなかそこがむずかしくなりまして、事務的にこっちも時間もなくなりまして仕上げたわけでございますが、そういう観点から、金丸前長官からは正直言ってまだ正式には事務の引き継ぎは受けておりませんが、金丸君の趣旨を体しまして、私の方の――とりあえず都市計画は私の関係ではございませんが、建設大臣とも連携をとりまして、御趣旨に沿って私の方の国土利用計画法の中で始末ができるものとすれば、これはまたこれでこれから進めて考えてみたい。いずれにしろ、法律改正をしない限りこれはどうにもならないと思いますから、前向き検討してみたいと思います。
  129. 神谷信之助

    神谷信之助君 先ほど建設省のちょっと答弁は、そういうことはわかっています。私が指摘をした十三条や二十三条については、いま言ったような点が抜けておるという問題を指摘しております。具体的にそれは個別のところには入っているところもありますよね、都市再開発の問題。だからそれはわかっているんですが、大体、国土庁長官や消防庁長官の意見は聞かぬでもいいという都市計画づくりですからね、それはちょっとおかしいよというのを言っておるんです。この辺はここでもう時間がありませんから論争はしませんが、いま長官がおっしゃったように、ひとつそういう点で土地問題それから開発問題、これらの諸法について、本当にたくさんありますからね、だから整備もしながら特に防災の見地をどう貫くかという点をひとつ十分配慮して検討せられることを要望して、私の質問を終わります。
  130. 柄谷道一

    柄谷道一君 十七号台風及び冷害対策につきましては、去る十月八日の本委員会と十月十四日、農林水産委員会で質問を行いましたが、その質問の趣旨をくんで現行制度をフルに活用して対策を講じ、また今後も引き続き対策を講じられようとしております姿勢につきましては、国土庁、建設省、農林省に、私は野党ではございますが、率直に敬意を表したいと思います。本日は、その災害を今後いかに防ぐかというその視点に立って若干の質問を行いたい、こう思うわけであります。  まず、農林省冷害関係でお伺いをいたしたいと思いますが、本年度冷害はもちろん記録的な低温そして日照不足という異常天候によることは当然でございます。しかし、単にこれを天の責任に期するわけにもいくまいと思います。私は、この今回の冷害被害を大きくした第一の問題点は政府の銘柄米の奨励にあるのではないか、こう思うわけであります。農林委員会でも私はネコの目農政ということで大臣に対し御質問をしたところでございますが、食管法をなし崩しにいたしまして自主流通米制度を設けられました。最近においては米価決定に当たって大きな銘柄格差を設けられたわけでございます。こうしたことが背景となって、私は、政府の稲作研究において近年優良耐冷品種の開発普及がややおろそかにされたのではないか、こういう感じを持つのでございますが、まずその点をお伺いをいたします。
  131. 川田則雄

    政府委員(川田則雄君) 先生の研究の話に入る前に、いまお話がございました今年の冷害の実態について若干触れたいと思います。と申しますのは、今年の冷害を見ますと、北海道では高緯度の地帯あるいは太平洋岸の冷風が吹き込む十勝南部地帯、そういうところが被害を大きくしております。それから青森につきましては、やませが吹きます下北半島、また、やませが下北半島を越えて陸奥湾に吹き込む津軽半島の東側、それから同時に山間地の冷水のかかるところがひどくなっております。それから青森以南について申し上げますと、非常に特徴的なことが出ておりまして、たとえば秋田県の北でございますと百五十メートル以上のところが被害が多い。秋田県の南にいきますと二百五十メートル以上のところに被害が大きくなる。それから岩手県にいきますと大体二百メートル。山形県にいきますと三百メートル。そういうような実態でございまして、よく見てみますと、そういう地域によって特徴的な冷害があらわれておるというのが一つと、もう一つは、同じ地域でも、気象条件は同じでありながら、農家の栽培の仕方その他によってまた被害のあらわれ方が違うというのが特徴的に出ておると思います。  それで私たち、この前も先生から御指摘がございましたけれども、これについてどういうことがやはり地域により個人により差が出ているかということについて検討いたしておりますけれども、一つはやはり品種の問題だと思います。この品種につきましては、北海道と青森は耐冷性品種がほとんどでございますから、栽培法の問題が大きくクローズアップしてくると思います。それから青森以南につきましては、先ほど申し上げましたように、高緯度地帯、緯度の高いところの被害が大きいということでございますが、これにつきましてはやはり多収品種、たくさんとれる品種ですね、多収品種というのは御承知のように生育期間が若干長い品種でございます。そういう品種がやはりひとつ高冷地において問題があったのではないかということが一つ考えられます。それから、もう一つの問題は、やはり苗のつくり方でございます。苗のつくり方というのは非常に最近変わっておりまして、いまから三十年前ぐらいは平均温度が十五度にならないと植えられないような苗でございました。それから順次発達しまして、いまは十三度で植えれるというような状態になってきております。さらに十三度から十一度ぐらいの間隔で植えれる苗をやはり正確につくるという技術を今後定着させていかなければいけないのではないか。それから同時に、植えつけがおくれたところは被害が大きく出ておりますから、植えつけをおくらさないということも必要ではないかと思っております。それからもう一つは肥料の問題でございますけれども、御承知のように、今年は初めから終わりまで気象が非常に悪く推移いたしましたけれども、七月の下旬にちょっと天候が回復したことがございます。そのときにやはり追肥をやった。ふだんでも生育がおくれるような天候の状態のところに窒素追肥が入ったというようなことも一つは大きな問題ではないかと思います。それからもう一つは、これも御承知ですけれども、ことしは出穂がおくれまして、普通穂が出るのは三、四日でもって穂ぞろいになるのですけれども、その期間が長かったということで病害虫防除というものの徹底に相当苦労した。そういうことがことしの冷害の場所的、内容的な特徴ではないかと考えております。
  132. 柄谷道一

    柄谷道一君 十月四日に大臣官房技術審議官室が中間報告をされております。その中で品種、特に銘柄米と冷害の関係につきましては、四つほど理由を挙げまして「本年の作柄における品種差を現時点で一概に論ずることは難しく、更に、詳細な分析が必要である。」、こう結んでおられるわけでございますが、この詳細な分析――これ冷害は来年また襲ってくるかもしれないわけですね。のんべんだらりと時間をかけて検討すべき問題ではないと思うんですが、特にこの品種、特に銘柄米と冷害の関係、これに対する再検討の目途を大体どの辺に置いていま省としてはお考えを進めておられますか。
  133. 川田則雄

    政府委員(川田則雄君) ただいま冷害の実態の調査試験研究機関がもうすでに開始いたしております。それで先ほど申し上げましたように地域により個人により差があるというようなことも含めまして詳細に検討いたしまして、そして稲作問題検討会というようなことでその締めくくりをやりたいと考えております。そして調査は最低、出穂期や収穫期が非常におくれておる関係もありますので若干おくれますけれども、一月にはその検討会を開きたいと思っております。
  134. 柄谷道一

    柄谷道一君 同じくこの農林省の中間報告では、「ここ数年、冷害に遭遇した経験が乏しく、更に、昨年の史上最高の大豊作の翌年ということも影響したため、適品種の選定、健苗の育成、適期移植、施肥等の肥培管理、水管理等の基本的な技術の励行が現場で必ずしも十分に行われなかったきらいもあり、」それがまた冷害被害を一層大きくしたのではないかと指摘されているわけでございます。今後当然これらの点につきましては指導の強化とその徹底ということがきわめて必要なことになろうと思うんですが、ただいまの本年一月と言われます研究検討の中に、当然、これらの技術面における指導とその指導徹底のあり方というものについても議論が行われ、明年度にはこれが的確に実施されるような施策が講ぜられるものと信じてよろしゅうございますか。
  135. 川田則雄

    政府委員(川田則雄君) 農林省では、稲作につきましては毎年春夏作の指導要領というものを、暖候期の気象予報というのが三月の二十日に気象庁から出ます、そしてそれを受けまして、その年どのような指導方針でやるかということを次官通達で詳細なものを出しております。今年も先ほど申し上げました一月の末までにその検討を終えるということは、それと三月の二十日に暖候期の気象予報が気象庁から出てまいりますから、その二つを合わせて春夏作の指導要領ということで安全な稲作を指向した指導要領を出したいと思っております。
  136. 柄谷道一

    柄谷道一君 幸い米につきましては昭和四十三年以降の過剰傾向にあった、そのため今回の冷害が大きなパニックまでは発展しなかったと思います。しかし、今後こういた冷害が再発される、そしてこれが続くということになりますと、私は生産者のみならず消費者にも大きな不安を与える結果になると思うのであります。そういたしますと、当然政府は今後適地適作主義の徹底という政策が強く求められてくると思います。そのためには耐冷品種の開発普及はもちろんでございますけれども、この適地適作主義というものを普及さしていくための奨励、助成もしくはその価格政策というものがこれに伴ってこなければ適地適作主義の普及徹底ということがむずかしくなってくると、こう考えるものでございます。これらに対する方針をお伺いいたしたい。
  137. 杉山克巳

    政府委員杉山克巳君) 御指摘のように今回の冷害をいろいろ反省いたしてみますと、その限界的な能力を超えたところに米を入れておったんじゃないかということも見受けられる、あるいはその品種の選択においても必ずしもその地域に適しないいわゆる銘柄米、価格あるいは収量の点においてだけ有利な品種を入れたというようなことも見受けられます。でありますから、そういった地域に適した作目を入れるということ、さらには米なら米で地域に適した品種を選択させるということはきわめて重要な指導の方針というかあり方だというふうに思います。ほかの農産物の問題につきましては、先生御指摘のように米に比べて収益性等において若干劣る点があるわけでございます。そこらを生産性を上げ価格の面でも配慮する等、総合的な対策を講じて米から転換を図るというようなことで、目下水田の総合利用というような形での対策を進めているところでございます。今後はそういった農林省の政策一般の中にことしの冷害による結果、問題の所在というものも含めて検討してまいりたい、推し進めるようにしてまいりたいというふうに考えております。
  138. 柄谷道一

    柄谷道一君 次官、これお願いをいたしておきたいんですけれども、私はやはり今回の冷害を一つの契機として今日までの農業政策についても、いま御答弁がございましたように適地適作主義というものを今後徹底せしめて国民の総合的な食糧を確保する、これはきわめて重要な課題であろうと思うのであります。前回の農水委員会でも強く大臣に御要望申し上げておったところでございますけれども、ひとつ次官としてもこの冷害を契機にして今日までの農業政策の及ばざる点を補完しつつ新しい農政が展開されるようにこれはぜひお願いをいたしたい、こう思います。次官、いかがですか。
  139. 片山正英

    政府委員(片山正英君) 私も実は今回の冷害に大臣の命令で北海道から裏日本、約一週間農民の方々の実態の調査をしてまいりました。その中で、先ほど川田審議官が御説明いたしましたとおり、ことしはあの地帯何か伺いますと六十三年ぶりの異常気象だと、しかし北海道ではまあ五年ほど前に一遍経験がある、それから東北地方は二十年ぐらい前にやはり同じような経験があるということはございましたが、何せ六十三年ぶりの本当の異常気象であるわけです。その中でやはり取り扱い品種の問題、それから肥料の問題、それから植えつけ時期の問題等、いろいろ技術の解明をすべきところが非常にございました。したがって、これらはいま検討をしまして、冷害要因分析検討会というのをつくりまして、少なくとも先生おっしゃるように一月末ぐらいまでには結論を出しまして、来年度の稲作等については不便のないように支障のないように指導してまいりたい。そしてその中で、やはり銘柄米とかいろいろありますが、先ほど審議官がおっしゃいました総合食糧政策、そういう中で先生のおっしゃることを十分拝聴しながら対処してまいることをいたしたい、こう思っております。
  140. 柄谷道一

    柄谷道一君 ぜひそのように御努力をお願いをしたいと思います。  私は冷害を大きくした第二の原因として、田植え機の問題があると思うのであります。政府は稲作生産の合理化を図るという視点に立ちまして従来からその機械化を推し進めてこられました。で、最近におきましては売らんかなのメーカーのコマーシャリズムに押し流されて、その機械が稲作生産の安定確保にどのように機能し得るかということに対する研究が私は十分尽くされていないのではないか、こういう感を持つわけでございます。特に今回の冷害について見ますと、稚苗田植え機の使用によりまして田植え時期がおくれたことが冷害を大きくした一つの原因であると御答弁になっているところでございます。私はそのような視点に立ちますと、この機械化という問題についても、もちろん私は機械化のすべてを否定するものではございませんけれども、この技術の検討と相まって田植え機のあり方というものにつきましてもこの冷害を今後防いでいくという視点からもやっぱり研究が行われ、メーカーに対する適切な指導、そして農民に対する適切な指導というものが必要になってくると、こう思うわけでございます。御所見をお伺いします。
  141. 川田則雄

    政府委員(川田則雄君) いま田植え機のことがございましたですけれども、田植え機を使う稲作というのは、労働力が非常に減少した中で、普通であれば栽植密度が非常に減るところを栽植密度が減らないで済ましたということは、これは増収にとって非常に大きな効果を及ぼしていると思います。   〔理事上條勝久君退席、委員長着席〕 それで、御承知のように田植え機が出ましたのは四十五年でございます。その四十五年の当時、田植え機を使う稲作というのはこういうような形でやるんだというようなことを詳細に研究結果をまとめて通達もいたしておりますけれども、その後何しろ、御承知のように四十五年からいままでに七〇%、現在は七〇%が田植え機で植えられておるというような実態でございます。で、機械はただ植えるだけでございますから、たとえば苗をきちんとつくるだとか植えつけ時期をきちんとするということはこれは指導と技術でございます。そういう点で、先生御指摘のとおり、今後伸び切った田植え機の稲作というものを安全な稲作の方向に向けていくということについては最善の努力を払いたいと思います。現に私たち、稚苗でありますとどうしてもそれだけ生育期間が長くなりますから早植えをしなければいけないということがございます。ところが実際は、寒冷地等においてはそれだけの早植えが可能かどうかという問題もございます。そういうときにはもう少し大きな苗、いま中苗と言っておりますが、中苗を植えれるような形にいたしたいと。それからさらに、その中苗でも寒冷地の高いところ等では問題がある場合には、技術の開発を若干待ってでもいまのうちは従来の成苗植えして、そういうところの稲作というものをしっかりした形にいたしたいと、そのように考えております。
  142. 柄谷道一

    柄谷道一君 御答弁にございましたように、来年遅くても一月、これ二月に入りますとちょっと時期がおくれますので一月じゅうにと言われたんですが、なるべく早くいま私の指摘しましたような諸問題について農林省が的確な方針を樹立されることを強く求めておきたいと思います。  私、前回も御質問したんでありますが、そのような当面の対策とあわせて異常気象の対応技術の確立ということが大きく取り上げられております。農林省では、現行技術の検討と対応技術の開発というものをテーマにいたしまして、五十一年度から五カ年計画でこの研究開発が進められていると承知いたしております。五十一年度予算は一億五千万円であったと思うんでありますが、私は、この冷害の経験に徴しまして、この中期的な研究とその結論を得るということは、これは国家の立場からいたしましても非常に重要な問題として今回の冷害はその必要性を再認識せしめたと思うわけでございます。まだ初年度だけでございまして、あと四カ年この計画が残っているわけでございますが、さらに予算額を増額をし、この五カ年計画をたとえば三カ年計画というふうに期間も縮小し、さらにそのスタッフも増員するなどいたしまして、気象庁が発表いたしております長期異常気象という予報に対応する対策の樹立を急ぐべき時期ではなかろうか、こう思うのでございますが、そういうお考えはお持ちでございますか。
  143. 川嶋良一

    説明員(川嶋良一君) ただいま先生が御指摘のように、異常気象の対応技術の研究につきましては本年度から実施をいたしておりますが、実はこの研究を計画いたしましたのが、先年来の世界的な異常気象を踏まえまして、恐らくこういうことに対しましての研究というのは短時日になかなかまいりませんので早目にこういうことについては取り上げて対策的な研究をしていこうということで、かねて検討を進めまして、幸いにして今年度から研究を実施したわけでございます。で、本年度、実はこういうような研究でございますので研究室の中だけで研究をいたしますととかく実態と離れる点がありますので、早速北海道で現地検討会を開催するような計画を立てておったわけでございますが、たまたまこういうような事態になりまして、長期的なつもりでやっておりましたものが、実際に現実的な対応とマッチいたしまして、研究というものは常に心がけておらなければいけないということを痛感をしたわけでございますが、ことしのようなことを踏まえまして、これからますます異常気象が続くであろうというような警告がございますので、私どもといたしましては全機関を挙げまして鋭意努力したいと思っております。
  144. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは次官お願いをしたいんですが、この中間報告の締めくくりにも、基本に忠実な技術の励行によって悪条件の天候下でもある程度被害を軽減し得ると、こう結んでおられるわけです。この技術の開発なり忠実な技術の履行という問題は、来年一月までを目途とする応急の検討、これが一つですね。それからもう一つは、やはりこの異常気象に対応する中期的な方針の確立、この二本がこれから相並行しつつ強力に進んでいかなければならない。私は技術的なことは余りわかりませんけれども、この中期的な五カ年計画につきましてももう一度洗い直していただいて、これから異常気象が毎年数多く続いていくであろうという気象庁の警報も出ておる時代でございますから、洗い直しを行ってこの期間の短縮ができないものか、もし短縮を行うためにはどういう隘路の解決を図らなければならないのか、こういう点はひとつ政治家として次官十分に御検討の上農民に与える不安というものを一刻も早く解決するような施策を強力に推進していただきたい、こう思うわけでありますが、この御答弁を聞きまして農林省関係の質問は終わりたいと思います。
  145. 片山正英

    政府委員(片山正英君) 先ほど先生のおっしゃったとおり、短期的な当面の問題、それから今後の問題、確かに短期的な問題が、私は現地でいろいろ見せていただきますと、個人的の差が非常に多い。それはまあ無理もない点もあると思ったのは、前年はまさしく史上まれに見る豊作の年であったわけです。それと、今回がまたまれに見る異常気象のさなかにぶつかったものですから、そこに個人差がどうしても出ざるを得なかった原因があったようです。したがって、そういうものは今後の短期的の調査の中で解明をして、来年からそれに間に合わせていく。それから長期の問題につきましては、五カ年計画もまさしく考えていかなくちゃなりませんが、やはり技術問題を総合した研究、いろいろな角度からそれぞれの分野でやっておりますから、そういうもののいろいろな角度の総合したものでやはり対処していかなければならない。ただ五カ年計画というだけの問題ではない。そういう広い意味のひとつ検討をさせていただいて善処させていただきたい、こう思っております。
  146. 柄谷道一

    柄谷道一君 では次に、第五次治水事業五カ年計画につきまして御質問をいたしたいと思います。  一九四五年から五四年には、公共事業費の約二〇%が治水事業費でございました。それが、五五年から六四年になりますと、四ないし五%にまでその比率が長期継続的に低落をいたしております。その反面、高速自動車道、鉄道新幹線などの開発投資が大きくなりまして、それがいま公共事業の中心に座っているわけでございます。新経済五カ年計画をながめてみましても、七六年から八〇年度に道路建設のためには十九兆五千億円が予定されておりますが、これに対しまして国土保全関係の投資は六兆九千億円でありまして、約三分の一にしかすぎません。しかも、公共投資全体の伸び率よりこれはやや下回っているのではないかと思うわけでございます。このことは、国土保全よりも開発中心、産業中心の政策というものが依然として継続的にいま続けられようとしている、そのことが災害の多発、大規模化の原因にもまたつながってきていると思うわけであります。この公共投資の姿勢について、私はこの際政府全体としての洗い直しということがいま求められていると、こう思いますが、いかがでございますか。
  147. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) 柄谷先生の御意見に賛成です。そのとおりです。私、十数年になるんですが、建設行政一本やりでやってきた者としていつどこで、こういうことを申し上げては失礼ですけれども治山治水問題がこんなにおくれてしまったのかといま反省をしているわけです。いま御指摘のあったように、治水に関する新五カ年計画、来年度発足いたしますが、それに五十年代前期経済五カ年計画によりますと五兆五千億きり予定しておりません。ところが、後から出てきた下水道というのはいつの間にか七兆何千億になるというような状態でございます。ことに、治山問題については先ほど神谷先生から御意見のあったように、日本危険列島というほど農林省と建設省で調査した以外のところに今年度とんでもない災害が起きたというような状態、日本国土全部が災害地帯でないかと言われておるにもかかわらず治山関係は八千億というような微々たる金で一体何ができるかということを、いまごろ反省していては手おくれだと思うんですが、非常におくれていることは事実でありますが、この新五カ年計画、治山治水は来年度ですから、これは建設省所管でございますが、私たちの方でこれは何らかの措置を講じて建設省が要求している限り以上にひとつ持っていくように努力しようと思いまして、現在今年度の反省、台風災害を受けたその状況の始末をするのに反省をいたしまして各関係閣僚と話し合いをいたしておるところでございまして、先生の御指摘そのとおりでございます。何ともいままでの行政のやり方申しわけなかったと申し上げる以外に方法はないと思います。
  148. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま非常に心強い御答弁をいただいたんですが、私は、昨年建設省がつくり上げました第五次計画の試案は総事業費八兆五千二百億円、内訳は治水投資五兆九百九十億円、水資源開発施設一兆六千二百二十億円、砂防関係一兆五千三百三十億円ということになろうかと思います。ところが、この八兆五千億という五カ年計画に対して経済企画庁でつくりました新経済計画によりますと、治水と利水、これを合わせた投資配分は五兆五千億でございます。いま長官のおっしゃったとおりです。ということになりますと、仮にこの新経済五カ年計画というものに枠が縛られるとするならば約三〇%のカットをしなければならぬという結果が出てくるわけであります。しかも、私は、災害を防止するために五十年から採用されました激甚災害対策の特別緊急事業、これからの施行が期持されております都市河川における多目的遊水池事業、準用河川補助の拡大、急傾斜地事業の拡大等を考えますと三割もカットされていますね。十分な対策が講ぜられないことは火を見るよりも明らかであります。いま長官は、こういう実態を踏まえて全力を挙げて建設省要求プラスアルファのものを持っていきたい、こういう御答弁をいただいたわけでございますが、そういたしますと、当然新経済五カ年計画の見直しというものが、経企庁のこれは問題でございますけれども、行われるというふうに私は思うわけです。行われなければそれができないわけでございますから、その点、経企庁はただいまの長官の意向をくんでこれを見直し、練り直すお考えはあるのかどうか。きょうは大臣が来ておられませんので、申しわけありませんがひとつお尋ねいたします。
  149. 広田孝夫

    説明員(広田孝夫君) いま先生おっしゃったように、過去の公共投資におきましては治山治水、国土保全関係の投資が次第に下がってまいりまして、特に昭和四十年代に入りましてから非常に公共投資総額の五%そこそこになるというところまで落ち込んだわけでございます。そういうことを考えまして私ども経済計画を昨年つくりました場合に、かなりこれから――いままでは災害等が終戦直後に比べますとだんだん減ってまいったわけでございますが、最近またいろいろとその問題出てまいりましたことを十分認識いたしまして、今度は、新計画では先生御指摘のとおり全体の六・九%を配分する、これは従来の実績、昭和四十五年から四十九年までの過去五カ年の実績に比べましても、そこの間では六%にすぎなかったわけでございまして、これを六・九%まで上げるという計画にいたしたのでございます。で、これは経済計画の中での五兆五千億が非常に少ないではないかとさっき先生がおっしゃいましたけれども、この六兆九千億という数字は、全体の百兆の中で、全体の公共投資の伸び率は五カ年で約七%ぐらいの伸びを予定しておりますので、この治山治水関係では一三・三%強の伸び率を予定しておるわけでございまして、私どもも精いっぱい配分について努力したつもりでございます。なお、経済計画の初年度でもございますし、これを決めるに当たりましても各部門、特に道路なんかは、さっきおっしゃいましたが、全体の中でいままでのシェアよりもずっと配分を落としておりますし、そういうような関係がございまして、なかなかいますぐにこれをつくったばかりで全面的に改定するというところまではまだ考えておりません。
  150. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) 私の発言でそういう答弁になったんですから――それはちょっと事務当局では無理ですよ。そうですから、この問題やっぱり政治的に始末しなきゃいけないと思います。伸び率六%のやつを十何%にしたんだなんて言ったって、現実にそぐわない状態であればそれは一〇〇%でも二〇〇%でもするのがこれは常識ですから、そういう点ではどう考えてみても問題にならない数字であると、私自身そう、私の個人的な意見ですが承知いたしております。そういう観点で何らかの措置を講じて、百兆という公共事業の枠はそれ以上一銭も伸ばせないのかどうか、伸ばせばどうなるのかという問題も私まだ議論しておりません。そういう点で経済企画庁長官ともよく懇談をいたしまして、この災害を十二分反省すればこれは協力できる問題であろうと思います。何らかの措置を講じて予定どおりの数字だけを持っていきたいと考えておりますので、その点ひとつ御了承願いたいと思います。
  151. 柄谷道一

    柄谷道一君 ぜひそのようにお願いをしたいと思います。私は、いま治水のことを申し上げましたけれども、第五次計画の水開発計画では、一応五十五年の水需要を百二十三億トンから百五十六億トンと想定をしておられますけれども、これに対応する事業見通しはきわめて暗いわけです。供給能力を見てみましても既着工の百七十一ダムのうち八十七のダムの完成が見込まれる。こうしておりますが、これによる年間供給量は五十一億トン程度でございます。これは新規需要の半分にも満たないということになります。いまのところそれではこの不足分を補充する何らかの計画があるかということになりますと、まだ建設省ではその具体的計画が立っていないやに私は承知するのであります。そうなりますと、五十五年ごろの水不足というものは、これは避けられない事態が出てくるとも考えられます。私は、いま長官が申されましたけれども、この治水、そして利水、この両方の視点に立ってやはりわが国は今後いかにあるべきか、これは行政官庁ではなかなか答えられないことはいま長官の指摘されたところでございまして、これは本当に政治家がやはり国の将来を見通して新しい施策を今回の台風を契機として樹立していくのが、これはお互いの責任であると思います。ぜひ長官のいまの御答弁に沿った最大限の御努力をこれは強く期待を申し上げておきたいと思います。  次に、公共投資に占める治水投資の割合が相対的に低下している。これを回復する必要があることはいま指摘したところでありますけれども、私は、特定財源のない治水事業を今後どのようにして財源調達を図っていくか、この財政問題はこれまたきわめてうらはらになる重要な問題だろうと思うのであります。建設省では河川水利用税の創設についてこれは検討するとかいろいろ特定財源制度というものが検討されているやに漏れ聞くわけでございますが、その時間もありませんので、現状と、いつごろこういうものに対して結論をつけようとしておられるのか、簡潔にその方針をお伺いしたいと思います。
  152. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 先生おっしゃいますように、いわゆる治水事業を飛躍的に伸ばすにはどうしても私たちとしましては特定財源が欲しいということでいろいろ検討しておる段階でございます。それでいまおっしゃいましたように、水利用税とかそういう名前につきましてもいろいろ検討しておりまして、しかしながらこの問題につきましてはまた反響が非常に多うございまして、早速いろんな方面からいろんなことが耳に入ってくるといったような状態でございます。しかしながら、やはり基本的にこういう税金というものを水を使った場合原因者負担といいますか、原因者が汚した場合とか、あるいはそういうふうな観点において考えてみた場合に、どういうふうな財源があるだろうかということは現在のところ勉強しておるという段階でございます。  以上でございます。
  153. 柄谷道一

    柄谷道一君 いや、誤解ないように、私は河川水利用税がいいという意味での質問ではございませんで、現状とその検討の将来の展望をお伺いしたわけでございまして、これらはゆるがせにできない問題でございますから、その適、不適は大いに政治の場で議論されるとしても、やはり検討は真剣に私は進められるべきであろうと、こう思います。  次に、都市河川の整備の立ちおくれが著しいことは多く指摘されているところであります。たとえば利根、淀、木曽などにつきましても、戦後最大の洪水が来ても大丈夫だという区間は延長にしてその半分程度だと、こう言われております。さらに中小河川になりますとその整備率は一二%程度、つまり時間当たり五十ミリの降雨ですぐにはんらんしてしまうところは幾らもある、こういう指摘が前回もされたわけでございます。で、しかもこの中小河川のうち三分の二は都市河川です。都市河川の定義は非常にむずかしゅうございますけれども、大まかに言うならば、市街地及び市街化した地域を流れている河川だと、それは名前どおり都市の川でございますから、流域には当然これは市街化がされていることが前提でございます。ということは、断面を拡張する工事をしようとすれば土地を買収しなければならない、当然用地費は膨大な額を必要とする、こういう壁に今度はぶつかってまいります。したがって、都市河川の私は改修という視点に立ちますと、それは河川改修という単独目的のためには非常に金がかかり過ぎるとすれば、市街地改造もしくは街路造成といった他の都市計画事業とあわせてこれを実施していくという視点をとり、かつ実行していかなければ、きわめて危険度の高い中小河川の改修を行うということは、言うはやすくしてその実行は非常にむずかしいと思うわけでございます。今後の都市河川対策について建設省の御意見をお伺いしたいと思います。
  154. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 都市河川におきます水害というものは年々激化しておるということで、現在建設省におきましてもいわゆる都市河川の整備につきまして非常に努力しておるという実態でございます。それで、都市河川の整備といいますと、改修はいかにあるべきかという問題でございますが、ああいうふうに人家が密集した中を走る河川ということでございますので、まず川幅を広げるのが非常にむずかしいというふうに考えられます。したがいまして、川底を深く掘るということも考えると同時に、あわせまして、いわゆる遊水池を――上流部あるいは中流部におきます低湿地を利用しました遊水池というものを活用して洪水を調節するというふうに持っていきたいというふうに考えてございます。しかも、いわゆる遊水池にしましても単目的、いわゆる河川というか、治水だけの一つの目的じゃなくて、いま先生おっしゃいましたように、いわゆる多目的遊水池、高層の住宅団地をつくるとかあるいはその中に公園をつくるとか、あるいは流通団地とかそういうふうにいわゆる洪水調節を損わないで都市目的にマッチする施設をつくっていきたいと、一緒になってそういうふうな遊水池を整備していきたいと、そういうふうに考えてございます。
  155. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは建設省、特に国土庁長官とされましても――いまもちろん建設省直轄の一級河川が必ずしも安全であるとは言えない。まだまだこれは改修が必要でございますが、特に災害になりますと、都市河川が非常に大きな災害をもたらすわけでございまして、いま御答弁にもございましたように、これは多面的に現行制度を組み合わせて一日も早く都市河川の改修が行われるように、一工夫も二工夫もこれは加えるべき必要があるのではないかと思いますから、ぜひ真剣な検討を求めておきたいと思います。  それから次に、私は、河川行政はいま大きな転換期に直面しているのではないかと思います。今日までの行政は常に治水と利水の絡みの中で推進されてまいりました。しかも戦後は、利水のウエートが逐次高まりながら今日に至ったと思うのであります。今日、私は、現在の局面は治水と利水を一体化したいわゆる水の循環サイクルというものが求められている、そういう視点に立った新しい水行政の展開がいま要求されているのではないだろうかと、こう思います。しかも、この水サイクル行政の主役の位置を占めるものは私は治水であり、そしてそれが河川行政の中心に座るべきだと、こう思うのであります。で、ある雑誌によりますと、河川当局者の中には、河川事業は新しい水サイクル、都市対策の一分野として機能を果たせばよいというような意味のことを言われておるわけでございますが、これは私は補完的な姿勢に立っていると、こう思うわけです。この点、私は災害の総束ねをされております長官として、やはりこれからの河川行政の基本的姿勢はいかにあるべきか、これは真剣に建設省と国土庁との間で話し合いが詰められて、それこそ確たる方針に基づく治水五カ年計画を遂行していかなければならない、このように思うわけでございます。問題はきわめて抽象的に私申し上げましたけれども、それらの点に関する長官の御所見、いかがでございますか。
  156. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) 縄張り争いするわけではないですが、どうも私、御期待に沿えるだけの答弁できるかどうか問題だと思います。私個人としてはいろんな意見持っております。私も国会に出てきて約二十年近くになりますが、災害と建設以外はどこにも行かないで一本やりでやってまいりましたから、私自身は相当個人的見解は持っておりますが、非常に問題が重要でございますし、ことに河川行政も国土行政も国土行政の中の一環でありますから、そういう点で私の方に責任がないとは申せません。十二分に責任もあります。そういう観点から新しい国土をよりよく利用するために河川行政はどうあるべきかという問題を十二分に建設大臣と相談をいたしまして、新しい知恵をしぼって善処するようにいたしたいと思います。
  157. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は非常に生意気なことを申し上げましたけれども、今回の台風十七号が教えた教訓というものは、いま長官も申されましたように、これからの河川行政の基本姿勢がいかにあるべきかという問題について、私は政治に大きな課題を投げかけたものだと、こう思うわけでございます。まあそういう視点から、これは基本的な問題でございますけれども、建設大臣とも十分に腹を割って、これからわが国のあるべき河川行政のあり方、それは一つは防災上の視点から、一つは利水の視点から深く掘り下げられまして、国民が信頼でき得る河川行政がぜひ強力に推進されるようにせっかくの御努力をお願いしたい。  時間が参りましたので、私は最後に長官にお願いなり意見を求めたいわけでありますが、私ずっと資料を探してみますと、まあ敗戦の年から十年間、これはわが国の敗戦に追い打ちをかけるように毎年大きな台風が十年連続で日本を襲ってまいりました。四七年のキャスリン台風、四八年にはアイオン台風、四九年にはキティー台風、五〇年にはジェーン台風、五一年にはルース台風、五二年にはダイナ台風、これはアメリカがつけた名前でございますが、例年台風が日本を襲ってきたわけでございます。で、引き続きまして五三年には十三号台風、五八年には狩野川台風、そして五九年の伊勢湾台風、六一年の第二室戸台風、こう続いてきたわけですね。ところがその後、確かに六四年には二十号台風、六五年には二十四、二十五号台風は来ましたけれども、六〇年代後半から七〇年代前半で目立つのは羽越豪雨とか、全国を水浸しにいたしました梅雨前線豪雨などの記録が残る程度でございまして、私は、六六年から八年間記録に残るほどの台風が一度もなかったということは、むしろこれは異例に属することではないかと思うのであります。しかし、七四年から事情が再び変わりまして、その後毎年台風が襲ってきております。私は注目しなければならないのは、この六〇年代台風が平穏であったということ以上に、東京を中心とした首都圏がルース台風を最後に二十五年間も大型台風に直撃されていない。この八年間のわが国を襲った台風が八年間比較的軽微であったということと、非常に世論が沸き立つ首都圏に二十五年間台風の直撃がないということが私はどうも安心感といいますか、その災害対策に対する必要性というものに対して関心を弱めたということが否めない事実ではないかと、こう思うのであります。決してそうでなければ幸いでございますけれども、しかもこのような時代にちょうど高度経済成長時代がぶつかったものですから、安心感と開発ということが重なって、いま長官が申されましたように、わが国の公共投資事業のあり方がやはり、長官はいつの間にかと言われたんですが、大きく変貌していった。私はそういう背景があるということをお互いにこれは見落としてはならぬと思うのであります。しかし、冷害の際にも申し上げましたように、今後十年間異常気象が続き、わが国にはいろんな異常気象現象が起きてくるであろう。ここで私は改めて過去のわが国の災害史をひもときながら、本腰を入れた災害対策、特に災害の際に大きな被害を与える河川対策というものが真剣に見直されなければならない、こう思うわけでございます。いままでも非常に前向きの長官の御答弁をいただいておりますが、最後にひとつきわめて前向きの長官の御答弁を期待をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  158. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) いろいろ災害対策には手段があると思います。まあ全部河川を改良して山が地崩れがないようにすれば、これは一番いいわけですが、なかなかそういうわけにはまいりません。いままでの予算の出し方からいって、そう簡単に一挙に解決できるものではございません。そうですから、できるだけ小さな災害に持っていくように防災体制を整えていく以外に方法はないんではないか。ことに、先ほどもちょっと申し上げましたように、全然地崩れはしないだろうというその地域がとんでもない大きな地崩れをしたという実態、今度の長良川の問題も、危険水位でないのに堤防が決壊したというふうな、今度の災害ではいろんな過去かつてなかった体験を得たわけでございますから、いままでの常識的な考え方ではこれからの台風に対処するのは非常にむずかしいんじゃないか。そういう点で、私は先ほど新しい知恵をという言葉はそういう意味で使っておるのでありますが、それぞれの研究機関でいま建設省は検討しているという、建設大臣から同席している者が聞いているのでありますが、どのような検討ができるのか、私素人ですからわかりませんが、私たちの常識で可能な範囲内の点をこれにプラスいたしまして、できるだけ最小限度に食いとめられるような処置を講ずるように努力をいたしたいと思います。
  159. 柄谷道一

    柄谷道一君 終わります。
  160. 工藤良平

    委員長工藤良平君) 他に御発言もないようですから、本件に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十九分散会