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1976-10-20 第78回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十日(水曜日)    午前十時七分開会     —————————————   委員異動  九月二十四日     辞任         補欠選任      森下  泰君     長田 裕二君  九月二十五日     辞任         補欠選任      長田 裕二君     森下  泰君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         阿具根 登君     理 事                 原 文兵衛君                 宮田  輝君                 青木 薪次君                 小平 芳平君     委 員                 青木 一男君                 井上 吉夫君                 上原 正吉君                 金井 元彦君                 森下  泰君                 山内 一郎君                 内田 善利君                 沓脱タケ子君                 近藤 忠孝君                 三治 重信君    国務大臣        環境庁長官    丸茂 重貞君    政府委員        環境政務次官   今泉 正二君        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁企画調整        局長       柳瀬 孝吉君        環境庁企画調整        局環境保健部長  野津  聖君        環境庁自然保護        局長       信澤  清君        環境庁大気保全        局長       橋本 道夫君        環境庁水質保全        局長       堀川 春彦君        国土庁地方振興        局長       土屋 佳照君        厚生省薬務局長  上村  一君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        科学技術庁原子        力安全局原子力        安全課長     佐藤 眞住君        大蔵省主計局主        計官       岡崎  洋君        厚生省環境衛生        局乳肉衛生課長  岡部 祥治君        通商産業省基礎        産業局化学製品        課長       平河喜美男君        通商産業省生活        産業局紙業課長  小野 雅文君        運輸省港湾局計        画課長      小池  力君        郵政省電波監理        局放送部業務課        長        田代  功君        建設省都市局公        園緑地課長    三好 勝彦君        自治省行政局行        政課長      大橋茂二郎君        日本国有鉄道環        境保全部長    吉村  恒君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (PCB汚染対策に関する件)  (新幹線公害対策に関する件)  (緑地問題に関する件)  (開発事業等環境に対する影響事前評価に  関する件)  (原子力発電安全性に関する件)  (公害対策に関する件)  (大分県新産都市埋立地に関する件)  (公害問題に対する住民参加に関する件)  (水俣病に関する件)     —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る九月二十四日、森下泰君が委員辞任され、その補欠として長田裕二君が選任されました。  また、九月二十五日、長田裕二君が委員辞任され、その補欠として森下泰君が選任されました。     —————————————
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 委員異動に伴い、理事に一名の欠員が生じております。この際、理事補欠選任を行いたいと思います。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事宮田輝君を指名いたします。     —————————————
  5. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) この際、丸茂環境庁長官及び今泉環境政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。丸茂長官
  6. 丸茂重貞

    国務大臣丸茂重貞君) 先般、環境庁長官を拝命いたしました丸茂でございます。ここに就任のごあいさつを申し上げますとともに、環境行政に関し抱負一端を申し述べたいと存じます。  環境問題は、とりわけ国民の健康と生活に密着した重要な政治的課題であります。私は、環境庁長官として、この環境行政に取り組むことに大きな誇りと意欲を覚えますとともに、その責任の重大さを痛感する次第であります。  環境行政は、国民の健康の保護生活環境保全を第一義として、正常な大気や水、美しい自然など、豊かで恵まれた環境を確保し、これを後世の国民に伝えていくことをその最大の任務とするものでなければなりません。私は、環境行政に取り組むに当たって、まず国民の声に率直に耳を傾け、その理解協力を求めながら行政を行っていきたいと考えております。  ところで、環境庁も発足以来満五年を経過し、これまで環境庁中心政府国民一体となって、公害を防止し、環境保全を図るための真剣な努力が続けられてまいりましたが、今日、これらの努力は着実にその成果を上げつつあると思います。  しかし、一方においては、最近におけるわが国環境問題は複雑、多様化する傾向を見せておりまして、このような情勢に有効適切に対処するためには、環境行政はさらに新たな展開が必要であります。私は、これからの環境行政は、公害の発生と環境破壊を未然に防止するという基本的な態度に立って、科学的かつ長期的、総合的視点から計画的に推進することが何よりも肝要であると考えております。  私は、このような観点から、環境保全長期計画を早急に策定するとともに、環境影響評価制度化を急ぐなど、時代の要請に即応した新しい環境行政の確立に努めてまいりたいと考えております。  以上、環境行政に関し抱負一端を申し述べましたが、委員各位におかれましては格段の御指導、御協力を賜りますよう、切にお願い申し上げる次第でございます。  ありがとうございました。
  7. 阿具根登

  8. 今泉正二

    政府委員今泉正二君) 私は、先日来の改造の内閣によりまして環境政務次官を拝命いたしました今泉正二でございます。  私は、ごあいさつを申し上げるにつきまして思い出しますのは、先年、環境週間のときに、作家の井上靖さんが、日本は四季に恵まれ過ぎているために、ともすれば自然というものを見過ごしがちである。自分の旅行した一番好きな国の一つに砂漠の国イランがある。イランの人は、自分で水路をこしらえ、水を引き、そして自分で植木をつくり、それを大きくしてまた樹木までに発展させた。それをうちの中まで持ち込みたいという願いがかなって、じゅうたんというものを考え出した。私たち日本人は、こういう言葉を聞きますとともに、その恵まれた自然を生かして損なわないようにしながら、委員会先生方委員長を初め皆様方のお力を賜りながら、大臣と同じ考えを持ちまして、私も微力ではございますが、その使命をになう一員としてがんばる所存でございます。よろしくお願いを申し上げます。     —————————————
  9. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 青木薪次

    青木薪次君 青木であります。  私は、前回公害対策委員会の席上におきまして、PCBすなわちポリ塩化ビフェニールの化学的、物理的性質から、いろんな多様な用途に使われることになったんだけれども、特にわが国においては、一九五四年のときに国産化に成功いたしまして大量生産がなされてきたのでありまして、一時的には通産省もJISマークまでつけてその生産を奨励したことが実はあるのであります。いままでに使われた用途並びに製品について、ひとつ説明をしていただきたいと思います。
  11. 平河喜美男

    説明員平河喜美男君) 化学製品課長平河でございます。  PCB生産用途等についてお答えいたします。  生産につきましては、昭和二十九年から四十七年まで、五万九千トン強つくっております。それから用途でございますが、電気製品用三万七千トン、熱媒体用九千トン、感圧紙用五千トン、その他三千トン、輸出五千トン、合計五万九千トンでございます。
  12. 青木薪次

    青木薪次君 主な製品を挙げてくれと、こう言ったんですよ。
  13. 平河喜美男

    説明員平河喜美男君) PCB製品としましては、鐘淵化学カネクロール及び三菱モンサンとの、ちょっと商品名、正確な名を忘れましたけれども、この両社の製品がございます。
  14. 青木薪次

    青木薪次君 このPCB性質について、ひとつ厚生省からお伺いいたしたいと思います。
  15. 岡部祥治

    説明員岡部祥治君) 私、この物質性質等につきまして所管ではございませんので、あるいは若干説明不十分のところがあるかと思いますが、このPCBは非常に熱に強いものでございまして、さらに非常に難分解性のものであると承知しております。
  16. 青木薪次

    青木薪次君 いまの説明は、全く誠意がこもった説明とは思えませんね。私が申し上げましょう。化学的に安定して、しかも酸、アルカリ、水などに反応しない。水に溶けにくい。油や有機溶媒によく溶け、樹脂にもなじむし、しかも不燃性でもある。薄膜状に塗布しても乾燥しない。高温で金属・合金を腐食しない。熱安定性がよく、耐熱にすぐれている。電気的絶縁性がよく誘電率が低いなどの電気的特性、これでいいんですな。
  17. 岡部祥治

    説明員岡部祥治君) 先ほど申し上げましたように、私、直接の所管でございませんので。先生のおっしゃることは聞いております。そうだと思います。
  18. 青木薪次

    青木薪次君 直接所管でなくても、私は事前に質問の内容を申し上げたんですよ。そういう態度でいいんですか。  じゃ、日本ではどこに使用されているんですか。もう一度細かく言ってみてください。
  19. 平河喜美男

    説明員平河喜美男君) 電気絶縁性を利用しましたものとしまして電気用、これはトランス、コンデンサー等でございます。それから熱媒体、これは種々の工業用の反応の加熱等に使いますものでございます。それから感圧紙、ノーカ−ボン紙用等でございます。その他、塗料等についても多少使われております。
  20. 青木薪次

    青木薪次君 環境汚染食品などを通じて人体への影響が及ぶことが判明したのはいつごろですか。
  21. 岡部祥治

    説明員岡部祥治君) 私どもが承知いたしましたのは、昭和四十六年だと思います。
  22. 青木薪次

    青木薪次君 行政指導に乗り出したのが昭和四十六年というように理解いたしておりますが、どういう確固とした規制をされたか、説明をしていただきたいと思います。
  23. 岡部祥治

    説明員岡部祥治君) 私ども、先ほど先生に申し上げましたように、私、食品関係、特に動物食品担当をいたしておりますが、いろいろ実態調査の結果、食品中にPCBが検出されるというような各所の報告を受けまして、これに基づきまして食品からのPCB摂取をできるだけ少なくするというような観点から、食品衛生調査会にいろいろ検討をお願いいたしまして、昭和四十七年の八月に、食品中のPCBの暫定的な基準を定めたところでございます。
  24. 青木薪次

    青木薪次君 ノーカーボンとかそれから塗料接着剤その他の開放系規制をしたのはいつですか。
  25. 岡部祥治

    説明員岡部祥治君) その点につきましては、通産省規制を行っておりますので、通産省の方からお答えいただいた方が結構かと思います。
  26. 平河喜美男

    説明員平河喜美男君) PCB使用いたします塗料接着剤等開放系製品使用中止を要請いたしましたのは四十七年の一月でございます。
  27. 青木薪次

    青木薪次君 この閉鎖系はそんなに問題にならぬじゃないかというように一応言われておりますけれども、しかし、これがたまたま問題になっている例が非常に多いわけですね。いわゆる容器破壊とかなんとかというようなことがありましてね。そういう点から、比較的回収不能になるものが閉鎖系でもあるんじゃないか、そういう点についてはどういう処置をとられましたか。
  28. 平河喜美男

    説明員平河喜美男君) 閉鎖系につきましても、先ほどの開放系に引き続きまして新しいPCB使用を中止することに、やはり四十七年通達を出しまして処置いたしております。
  29. 青木薪次

    青木薪次君 食品中に残留するPCB規制についてはどういう処置をとられましたか。
  30. 岡部祥治

    説明員岡部祥治君) 四十六年の末以来、食品中に残留するPCB実態あるいはそれまでに得られました実験動物によります慢性毒性あるいは急性毒性、こういうものの結果を総合いたしまして、食品衛生調査会において四十七年の当初以来検討を続けました。一応一日許容量といたしまして、体重キログラム当たり〇・〇〇五ミリグラムを一日許容摂取量と定めまして、先ほど申し上げましたような、それまでに得られました食品中のPCB濃度等々勘案いたしまして、魚介類あるいは牛乳、乳製品、肉類、卵、あるいは容器包装等につきましてPCBの暫定的な基準を、四十七年の八月の十六日に設定したところでございます。
  31. 青木薪次

    青木薪次君 この食品中に残留するPCB規制の問題がいまいろいろと問題になっているわけでありますが、これらの中で、五十キロの成人が、一日この暫定的な摂取量許容分を二百五十ミクログラムとして、たとえば遠洋沖魚介類についてちょっとその数値を説明してください。
  32. 岡部祥治

    説明員岡部祥治君) 先生指摘のように、PCB暫定的人体許容摂取量を二百五十マイクログラムといたしまして、それで、先ほど申し上げましたように、それまでに得られたデータから見ますと、特にその魚介類以外の食品中のPCB濃度というものは、かなり魚介類に比べて低いものでございまして、それから摂取されるのが約七十マイクログラムと推定したわけでございます。したがいまして、魚介類に由来するPCBを百八十マイクログラムに抑えるということが必要であるということから、魚介類から摂取するものを百八十マイクログラムに抑えるために、魚介類全体といたしまして一PPmに抑える目標を持ちまして、さらに食生活実態から見まして、遠洋沖合い物内海内湾物摂取実態等勘案いたしまして、遠洋沖合い魚介類につきまして〇・五PPm内海内湾魚介類につきまして三PPmと定めたものでございます。
  33. 青木薪次

    青木薪次君 いま説明にありました遠洋沖魚介類を〇・五PPmとした、内海内湾を三PPmとしたということについて、遠洋沖の魚はたくさん食べる、近海の魚は余り食べないという論拠に立っていると思うのでありますが、実際問題としては今日だんだんつくる漁場というものが発達をいたしてきているわけでありまして、そういう点から近海物を非常にたくさん食べるようになったということでありまして、しかも魚は人体に入ったらなかなか排出されないというようなしろものでありまして、きわめて危険なものだというように理解をいたしているわけであります。そういう点から、これはあくまでも暫定基準値であるという立場に立って、近ごろ余り問題になっておりませんけれども、この基準値を設定されたときは相当問題化した事実があるわけでありますから、これからはこの暫定基準値については、特に外洋物内海内湾物とが六対一だなんということは絶対にありませんので、そういう点から、日本人たん白源として摂取するこの魚について、もう少し規制値を強くする必要があると思うのでありますけれども、その点いかがでありますか。
  34. 岡部祥治

    説明員岡部祥治君) この魚介類摂取状況につきましては、特に水産庁の実態調査等をもとにいたしておりまして、したがいまして、この遠洋魚介類というものと内海内湾の比というものを一対三と考えたわけでございまして、なお先生指摘のように、内海物というものがさらにふえてくるということも十分考えられると思いますけれども、先ほど申し上げましたように、内海内湾PPmという暫定的な規制値でございますけれども、その後、各県で調査いたしましたものにつきまして、特殊な、現在特にPCB汚染しておるというような地域で、自主的に漁獲の規制をしておるところ以外のもので現在流通しておるものにつきまして、ほとんどこの三PPmというものを超えるものはございませんで、かなり低い値になっておることをあわせて御報告申し上げたいと思っております。
  35. 青木薪次

    青木薪次君 この点は、いろんなPCB専門の学者の説もいま厚生省としても聞いておられると思うのでありますし、これからは特に魚による栄養摂取依拠率というものは多くなるわけでありますから、その点については十分慎重に対処して、人体をこういう汚染から守るということについて厳しくひとつ問題を追求していただきたいというように考えております。  それから各省庁の対策でありますけれども環境庁と経済企画庁、科学技術庁厚生省、農林省、通産省運輸省建設省、労働省といったような対策会議が今日も設置されているんでしょうか、どうでしょうか。いるとしたら、余り能動的に動いていないと聞いておりますけれども、長官いかがでしょうか。
  36. 堀川春彦

    政府委員堀川春彦君) PCB対策には各種ございますが、たとえばPCB入り感圧紙処理回収問題等につきましては、通産省においてかねてから専門委員会を設けて御検討であり、それには環境庁も加わっておりますが、去る五月に先生から、もう少しその回収問題について関係各省をよく督励をして実効の上がるようにという御指摘がございまして、それ以降、環境庁通産省厚生省運輸省担当責任者にお集まりをいただきまして、故紙回収処理の問題を中心といたしまして協議を重ねておるわけでございます。
  37. 青木薪次

    青木薪次君 いまのお話を聞いても、あんまり能動的に動いておりませんね。特にいま局長のおっしゃったPCB入りの旧ノーカボン紙は、昭和三十六年の製造開始から昭和四十六年の製造禁止に至るまで、約十一年間で十一万トン、一年に一万トン生産した勘定になりますけれども製造されたわけでありまして、官公庁等でこのノーカボン紙回収し、保管しているのはたった二千六百トン前後ですよ。あとは使用廃棄処分にしたり、あるいはまた故紙として再生されている。こういう状態になっているわけでありますが、この点について、所管省である通産省紙業課というんですか、どういうようにこれを把握しておられるか、説明していただきたいと思います。
  38. 小野雅文

    説明員小野雅文君) いま青木先生おっしゃいましたように、生産数量あるいは保管数量先生指摘数字のとおりでございます。  それから、ただその数字の差が十一万トンと二千六百トンということで、差が余りにも大きいではないか、こういうことでございますが、PCB入りノーカーボン紙が使われました伝票類といいますのは、非常に短期間の間に廃棄されるものが多うございますので、大部分はすでに廃棄されているんではないかというふうに思われております。ただし、現在このノーカーボン紙をつくりました四社及び官公庁が保管しております二千六百トンのほかに、各ユーザーがそれぞれ会計帳簿等、まあ保存文書ということで、ロッカーの中に保存されている分があるんではないかということで、これはことしの春から夏にかけまして、大変苦労をしまして各ユーザー調査をしたわけでございますけれども、なかなか正確な数字はつかめておらないというのが実情でございます。
  39. 青木薪次

    青木薪次君 課長、その辺が問題なんです。ノ−カーボン紙日本じゅうに、各所に散在して保管されているんです。このごろのように、また故紙原料の問題が起きてきましたね、そういうときには、ときどき少しずつ出すんですね。これは紙としては良質ですから、高く売れるんですよ。いま、むしろ一番われわれが使う家庭紙関係で、汚染関係があるとするならば、これはノーカーボン紙だけじゃないかというように実は言われているわけでありますが、この点については、最終処分については焼却以外にないじゃないか。焼却も千二百度C以上の高熱でなければだめだということでありまして、このPCBは煮ても焼いても食えないというようなものでありますから、相当重大な関心を持ってこれを集約する決意というものがなきやならぬというように考えております。  官庁が二千六百トン、銀行とかあるいはまた民間の事務所とか、あるいはまた故紙メーカーとか、あるいはまたユーザー一般にですね、これがずっと散在されて全国に保管されているんですから、この方法については、前回小沢環境庁長官にも強く要請しておいたところなんでありますけれども、これをキロ幾らということで買い取る以外に、これ収集する方法はありませんよということを私は言ってきたんです。基本的にはよくわかりますということでありますけれども、私どもの方の静岡富士市においては、特に家庭紙関係ちり紙業者全国の七割を生産しているんです。ですから、あの昭和四十八年の買い占め、買いだめ、石油ショックのときに、東京あるいはまた全国に、フル回転をしてこのちり紙その他トイレットペーパーをお分けしたというようなことも実はあるわけでありますが、このノーカーボン紙がどんどん回収されて、そして東京の足立区等における故紙メーカーのところへ行って、故紙メーカーがトラックに乗せて静岡県の富士へこう持ってくるということで、今度は現在の富士市のそれぞれのちり紙業者は、これはこの間参議院先議で決定いたしました廃棄物処理法によって、これはもう絶対に移動しちゃならない物に、有害物質に指定されたわけですから、これを下手に移動するわけにはいかない。しかし、スラッジにはどんどん出てくる、排水の中に出てくる、ちり紙にも検出されるということで、問題に実はなっているわけです。だんだん減ってはきました。減ってはきましたけれども、たとえば岐阜物とか四国物とかは大丈夫だといったら、今度はそっちがふえてきたりというようなことがありましてね、いま大変問題になっているわけでありますが、どうもこの問題に対する取り組みが非常に弱いという点が考えられるわけでありますけれども、その点いかが考えておりますか。
  40. 小野雅文

    説明員小野雅文君) 私、七月に紙業課長になりまして、五月の当委員会青木先生がいまの点を強く御指摘になって、通産省としてもっと力を入れるべきではないかというお励ましをいただいたということを聞いておりますので、七月以来非常に努力をしておるところでございます。  で、いま先生がおっしゃいました点は、一々大変私どもごもっともでございますので、いま広くユーザーに散らばっているノーカーボン紙というものについて、何らかの手を打たなければならないということで、先ほど申し上げましたように、銀行等あるいは保険会社等に、協会を通じまして、銀行協会等を通じまして、どのくらい持っているかという数量について調査をしたわけでございますが、各ユーザーの方でも、それぞれの倉庫に、あるいはロッカー等に入っておるものですから、なかなか数字がつかめないということで、実態がなかなかわからないのが正直なところでございます。  そういうようなことで、最近ではそれぞれの銀行を個別に当たりまして、どのくらいの量を持っているかというその把握に努めておるところでございます。  それからもう一つ故紙、このPCB入りノーカーボン紙故紙というのは、産業廃棄物に指定されましたので出てくるはずがないわけでございますが、現実にはやはり何らかのかっこうでまざって一般の故紙の中に入ってきているというのが現状であろうかと思います。これにつきましては、数度にわたりまして故紙業界あるいはちり紙業界にその選別方をお願いし、選別された故紙については厳重に保管するようにお願いしておるわけでございます。
  41. 青木薪次

    青木薪次君 通産省はどうもこのPCBのメーカーである三菱モンサントとか鐘淵化学の二社に遠慮しているのじゃないか、また、ノーカーボン紙の製造メーカーである三菱製紙とかあるいはまた十條製紙、神崎製紙、富士写真フィルム、この四社に対して、どうもやっぱり遠慮しているのじゃないか、また、このPCBの製造メーカーとノーカーボンの製造メーカー同士が責任のなすり合いをして、そうして肝心かなめな自分たちの落とし子、これを集めることについて非常に怠っていたという点が問題になっているわけです。これはひとり静岡県だけではありません。  そこで、前回のときに私が指摘いたしますと、小沢環境庁長官が、全くおくれているということで遺憾を表明いたしまして、環境庁長官中心となって厚生省通産省や各省庁との対策会議に持ち込みます、これは責任持ってやりましょうということになって、それで今度おかわりになった。丸茂長官になったわけでありますけれども、長官、これは非常に重大な問題ですから、ひとつ何とかこれを、旧ノーカーボン紙処理対策委員会というようなものもあるようですけれども、これは有効に何も働いていないんです、いま言ったようなことで。その点について長官のひとつ決意を聞かせていただきたいと思います。
  42. 丸茂重貞

    国務大臣丸茂重貞君) ただいま先生のお申し出でありますが、大体、まあ一番いけないと思うのは、PCBが非常に悪い悪いといって世間に喧伝されているようなときには、行政の姿勢も非常に厳しいような姿勢をとっておりますが、これが行政が厳しい姿勢をとった結果、多少よくなるということになりますと、どうも世間的に少し火が静まったような形になりますね。そうすると、どうも全般に緩んだというような印象を与えることは、いままでもあうたと思うのですね。いま先生の御指摘も、それに類したことがずいぶんあると思います。前長官がそういうお約束をしております。いま局長が言ったとおり、実態は先ほど申し上げたとおりであります。したがって、私としても前長官の約束したことは守らなくちゃならない、そう思っておりますので、そういう基本的な態度で、せっかくできた委員会が活動的に実行力を上げるようにできるだけこっちの方で指導してまいりたい、かように考えておるものであります。
  43. 青木薪次

    青木薪次君 その点は長官、ひとつよろしくお願いします。  それからPCB感圧紙の業界で処理協会を昨年の四月につくったんですね。処理対策とその処理のための資金づくりを相談しているんでありますけれども、これまたさっき言ったようなことで、責任のなすり合い。おまえのところはもうけたじゃないか、おまえのところはもうけたじゃないか、インク屋ももうけたじゃないか、紙屋ももうけたじゃないか。これでは一体どうなるかということなんですね。一番被害を受けるのは国民なんですね。国民なんです。  ですから、カネミ油症事件が勃発して第二次訴訟が提起されましたね、来年は判決ですね。この問題については私もまた次回に言及いたしたいと思っておりますけれども、少なくともこれらのPCB並びにノーカーボンの製造メーカーとの関係について、環境庁もそうでありますけれども、特に通産として強力に当たらなければこれはいけないんじゃないか。しかも、いま言った二社並びに四社は法的な責任はないんだということを言っているんですね。法的な責任がないから責任はないんだなんていう言い方は、私は全く産業人としてのモラルがないというように考えているわけでありますけれども、そういう点について、再度ひとつ紙業課長の決意を聞きたいと思います。
  44. 小野雅文

    説明員小野雅文君) 確かに、いま先生指摘いただきましたように、PCBでもうけたと考えられるのは、メーカーもそうですし、紙、原紙関係をつくりましたところもそうですし、それを印刷して事務用品につくりましたところもそうですし、それを使いましたユーザー銀行等もそうですし、まあたくさんあるわけでございまして、どこが一体その回収等の費用を持ったらいいのかという点は非常にむずかしい問題であろうかと思います。  しかし、それが解決するまでの間PCB入りノーカーボン紙回収をしないということでは、これはいつまでたっても回収態勢が進みませんので、私どもとしましては、非常に根のところと言いましょうか、わりあい数の少ないPCB原液及びPCBノーカーボン紙の原紙をつくっておりました四社、そういったところに、とりあえず代金の立てかえ等をさせるなりなんなりというふうなことを考えまして、回収についてはできるだけ早い機会に実現するように努めたいと思います。
  45. 青木薪次

    青木薪次君 先日、私は災害対策委員になって、伊豆の南伊豆町並びに下田市、その周辺を回ったんです。そのときに、あそこには鉱山の跡でカドミウムが流れてくる。いろいろ事情を、山奥の中へ入って災害の事情を視察しながら聞いたんです。原因不明な奇病があるということを私は聞きました。こういうようなことは、たとえばPCBの問題でも、御婦人の体内に入って、生まれてくる子供が口が曲がったり手が曲がったりする事例というものは各所にあるわけであります。この点は、私はただ単にこの国会で論議するという問題だけではなくて、やはりわれわれが人間の命と健康を守るんだという立場に立脚すれば、私はこの問題が最優先して国政段階で扱われるべきものであるというように考えているわけであります。  そこで、いま故紙の事情が、先ほどちょっと申し上げたんですが、変わってきたんですね。家庭紙とダンボールの故紙メーカーの不況や操短が続いているんです。いままでダンボールのくずはキロ十二、三円であった。それが今度は家庭紙原料などについても十五、六円でだぶついておったんですけれども、八月から九月に入って事情が変わってまいりまして、木材チップを原料といたしてまいりましたダンボール原紙メーカーが、水質の規制が厳しくなったために困って、故紙を使うようになった。そういうことから大手の板紙工場等におきましては、いままで家庭紙のみに使われておりましたところの色上と言うんですか、この使用を開始した結果、故紙の原価が上がってしまったんですね。したがって、この品不足が起こって、ダンボールのくずがキロ三十円、それから色上四十円となって、昭和四十八年のパニックに近いような状態が、いま故紙事情として現象があるわけです。で、大騒ぎの状態にありまして、いまこのためにまたPCBノーカーボンのいわゆる故紙への混入という問題が起きてきたんですね。いま自主的に相談をいたしまして、そうしてPCBの検出を民間でいまやっております。そうしませんと、これは責任がございますからね。ですからこの点について、保管中のPCB入りノーカーボン紙を、紙くずがないんだから、少ないんだから、ひとつこの際出してしまえという声さえ実は聞こえてきて不気味な状態にあるわけです。ですから、この事情について通産省はどのように理解されておられるか、この点をお聞きいたしたいと思います。
  46. 小野雅文

    説明員小野雅文君) 故紙問題につきましても、いま青木先生から御指摘いただいたとおりでございまして、大変価格が上がっておるわけでございます。で、一部にはPCB入りの旧ノーカーボン紙がまた入り始めたんではないかということが言われております。これにつきましては、ごく最近のところはわからないんですけれども、五月ぐらいまでの段階では、実際に排出されます水の中に含まれるPCBの量というのは非常に減ってきておりまして、非常に改良されておったわけでございますが、その後故紙価格が上がってきたために、先生が御指摘になったように、またノーカーボン紙が使われ出したんではないかというふうなことも言われておりまして、この辺につきましては、故紙業界の方にはそういうふうなものを十分に選び出して、価格が上がったからといって商品として売るようなことのないようにということで、十分指導しておるわけでございます。  それから、やはり先生指摘のように、故紙を使っておりますちり紙メーカーが、自主的に廃水の調査を始めておられるということでございますので、その辺の結果も至急入手いたしまして、もしか結果が悪いような方向でいっておるようであれば、至急その回収方法等についてもさらに一歩進んだ対策を講じたいというふうに思います。
  47. 青木薪次

    青木薪次君 まあ、新しい課長は非常に積極的な意欲が見えますし、紙屋さんはやっぱり通産省紙業課というものについては相当期待を持っているわけですから、従来のような逡巡と停滞というようなことを重ねることのないように要請いたしておきたいと思っております。そうしませんと、またこのPCB問題が発生いたしますと、ようやく見通しのつきつつある製紙スラッジの富士市内への埋め立てですね。あそこに公害反対市民協議会というのがあるわけです。これは強力に自分たちの命の問題としてがんばってきた。それから紙屋さんとの対立がものすごい状態に一時はエキサイトした。私どもは、そういう立場の中で、物のいわゆる道理というものはあるわけだから、本当にこの紙屋さんが公害発生源かどうかという点については、まあ市民の反対派の皆さんもよく考えなさいよと。それから、そうだからといって、紙屋さんは何でもかんでも廃水を出してスラッジをどんどんその辺に捨てていいということじゃないよと。その点は規制しなさいということで、私たちがいろいろ中に入って道理を説いて回ったんで、このごろ非常にいい雰囲気になった。ところが、またこのことを、行政官庁たるものが仕事をさぼってやらなかったというためにこの問題が発生したら、今度はもう収拾つかない状態になるということなんです。先ほど言ったように、煮ても焼いても食えないですから。このごろ静岡の薬剤等の教授がねじりはち巻きで研究した結果、千二百度の高熱でもってこれは必ずPCBは分解する、したがって、これをリサイクルじゃないけれども、とにかくこれを畑に入れてやればそこに堆肥が発生するというようなことで、いわゆるこれは日本の肥料事情等についてもいいじゃないか。いま土地が枯れてきている。したがって、その点をよくひとつ考えようじゃないかというような、積極的な民間団体におけるこういう盛り上がりについて、これが行政がついていかない、行政が怠慢だということであっては私は絶対いけないと思っておりまして、この点を考えて私たちも地元の指導には当たる決意ですし、また、そういう点からPCB入りのいわゆるノーカーボン紙処理については、これはやっぱり地元でなくて頂上作戦、川上作戦でやってくれ、上からどんどん落としてきたんじゃ幾ら地元でやってもだめじゃないか、これが現地の声でありますから、まさに公害発生源でなくて被害者であるというように私たちは考えているわけでありますから、この点については特にPCBの根絶のためにノーカーボン紙の完全除去に当たってもらいたい。しかも、ノーカーボン紙のメーカーやあるいはまたPCBの製造メーカー等の資金的な協力も得ながら国の責任処理するということを、前回の焼き直しのようになりますけれども、余り進んでおりませんので、環境庁長官からこの点を再度ひとつ決意として表明していただきたい、こう思います。
  48. 丸茂重貞

    国務大臣丸茂重貞君) 先ほど申し上げたとおりの決心と基本的な態度でまいりたいと、かように思っております。
  49. 青木薪次

    青木薪次君 それでは、PCBの問題はひとまずこの辺にしておきます。重大な問題ですから、一党派のものじゃございませんから、その点をひとつ十分気をつけてやっていただきたいと思います。  国鉄の環境部長、見えてますね。国鉄に対する騒音、振動、テレビ障害というようなことで大変問題になっているということを聞いております。私も現に知っているわけでありますけれども、その実情について、あるいはまた場所等について説明をしていただきたいと思います。
  50. 吉村恒

    説明員(吉村恒君) 開業いたしております東京から博多までの新幹線につきまして、方々からいただいております苦情の種類といたしましては、騒音、振動、テレビ障害、それから構造物によります日照阻害、あるいは落下物、それから軌道保守に伴いましての騒音問題、それから、トンネルからドンという空気の破裂音のようなもの、列車が入りますときに出ますトンネルの空気圧音の問題、そのほかに工事中に起因いたします渇水等に、種類としては分割されるわけでございます。御苦情をいただいております地域は非常に広範にわたっておりますけれども、五十年度末までにいただきました苦情の件数で申し上げまして、東京−新大阪閥で約三百八十件、新大阪−岡山間で二十件、岡山−博多間で約十件、合計いたしまして四百十件ほどでございます。この件数、毎年毎年と申しますか、持続的に御苦情をいただいておるものも一件に数えておりますので、件数からだけで、少ない、そんなはずないじゃないかという御指摘があるかもしれませんが、総数といたしまして整理いたしまして四百十件ございます。ことに、その中で一番著しいと申しますか、顕著なものといたしましては、名古屋地区におきまして、国鉄を相手取られて、名古屋地方裁判所に振動、騒音の進入禁止の訴訟が提起をされております。  以上でございます。
  51. 青木薪次

    青木薪次君 新幹線の公害は思いのほか影響が大きくて、機械化、近代化社会の中で非常に便利さというものが国民に与えられた。それから国民生活の向上にも役立っていると思う反面、住民はその陰に泣く者が非常に出ているんです。で、いま吉村部長の言われた名古屋付近、特に中日球場付近の民家は騒音公害で非常に困難をきわめています。新幹線訴訟の内容について、もう少し説明してください。
  52. 吉村恒

    説明員(吉村恒君) 訴えの内容は、原告らの敷地、住居内に、東海道新幹線の発生をする騒音、振動を減らせと、あるいは時間帯別に何時から何時までは何ホン、何時から何時までは幾ら幾ら、振動は〇・三ミリ以下ということを要請をされております。このような騒音、振動を進入させてはならないということ。また、被告は原告らに対しまして百万円を支払えというような内容の訴状でございます。これに対しまして、国鉄といたしまして、いま先生からもお話がありました点で、交通効用としては大変御愛顧をいただくとともに、公共的な役割りを務めていると信じておるわけでございますけれども、また一面、多くの方々に御迷惑をかけている事実を率直に踏まえまして、一方ではこれらの原告の方々ばかりでなしに、全線にわたります騒音、振動のための対策を進めると同時に、この裁判それ自身に対しましては、よく国鉄の事情を御説明を申し上げまして、公正なる御判断を仰ぎたいと思っております。
  53. 青木薪次

    青木薪次君 そこで、昨年七月に新幹線騒音の環境基準環境庁から告示されましたね。ことし三月に新幹線の鉄道騒音対策要綱が閣議了解されているはずであります。国鉄はこの問題について、実行不可能だというようなことを言ったということは、私はもってのほかだと思っておりますけれども、こういう点については、住民の生活環境を守ることがすべてに優先されなきやならぬというように考えております。ちゅうちょしたり逡巡することは許されないと思います。その姿勢でこの問題に取り組んでもらいたいと思いますけれでも、その現況についてどういうように考えておられますか。
  54. 吉村恒

    説明員(吉村恒君) 昨年の七月に環境基準が設定をされまして、それに基づきまして実施をいたすための手続といたしまして、ことしの三月に閣議了解を得まして、鉄道騒音の対策要綱を作成をいたしました。これで今後、この環境基準に示されました各年次、あるいはその数値を目標といたしまして努力をしていく所存でございます。  先生指摘のように、それらの審議の過程で、それらの実施の対策の困難性につきまして真意のあるところを申し上げたわけでございますけれども、大所高所の御見地から決められましたこれらの数値は、現時点としてはなはだ厳しいものではありますけれども、鋭意努力を進めていきたいと思っております。これらの対策は、音を発生いたします側、国鉄の構造物、あるいは車両等を対策をいたします音源対策、それから、これだけでは指針、基準等に示されました数値に達しませんので、さらに沿線家屋の方に障害防止対策を講じていく、この内、外二本立てで進めていっております。
  55. 青木薪次

    青木薪次君 振動規制が当面七十デシベルになりましたね。そこで、騒音との関係等についていろいろ問題点が相当多いようです。非常に苦労はされているということはよくわかっておりますけれども、ことし三月の環境庁長官から勧告のありましたこの規制について、どう対処する予定ですか。
  56. 吉村恒

    説明員(吉村恒君) 騒音の環境基準が先ほど申し上げましたように出ました後、本年三月、振動規制法の制定に伴いまして、その法律の並行するものといたしまして新幹線振動の緊急指針が出されまして、七十デシベルに抑えろという御指示をいただいたわけでございます。振動の防止という問題につきましては非常に困難が伴うわけでございまして、この種の技術開発の未発達、それから対策として実施をいたしますのに、すでに開業しております構造物その他の改良が非常にむずかしいという点から、実は非常に難渋をいたしておるわけでございますが、先ほど申し上げました騒音に対する対策と有機的に連合いたしまして、防音対策には防振対策を、周りの家屋に対します障害防止工には、音の問題と振動との両方を考慮いたしました施策にいたしたいと思っております。家屋に対します障害防止工の場合は、音の場合は比較的防音工がよく効くわけでございますが、防振工というのははなはだ不十分な点もございまして、これらの障害防止対策の中には、やむを得ない場合には移転を願う、その跡地も御要請があれは買い取るということか可能になっております。それらを運用をいたしまして、音、振動の両方に対する施策を講じていく所存でございます。
  57. 青木薪次

    青木薪次君 この暫定基準八十五ホン、それから三年以内に八十ホンにしなさい、それからいま環境部長のおっしゃった振動規制が七十デシベルということになりますと、その当局の立場から言うならば、手かせ足かせになってきた。しかしこれはやらなきやならぬ。しかも、この新しい技術開発や防音法を施したり、結果としたらいまのお話で移転立ち退きということになる。そうしてその場合には、いままでの騒音一点張りの関係と、ここに振動規制が出てきたという関係、それらの関係の中で、いわゆるその間にいる、いまロッキードで問題になっている灰色のとこら辺ですね、灰色高官じゃなくて灰色の基準、この辺の基準がいろいろ一とか二とか問題になると思うのですけれども、この辺は、その住民の立場、いろいろ財政事情もあると思いますけれども、積極的に取り組んでいるということを信用いたしまして、その辺の関係はどうなりますか。
  58. 吉村恒

    説明員(吉村恒君) 基準といたしまして、八十五ホン以上の騒音があります場合には防音工が必ずしもよく効きませんので、御移転を願うという施策を講ずる一例でございますけれども、講ずることになるわけでございますけれども、その際に、いま先生のお話のように八十五を超えたか、じゃ、ぎりぎりの八十四であるから動かさないというような辺につきましては、非常に微妙でございます。音の問題、振動の問題等も、その測定の方法がかなり微妙でございます。たとえば上下二十本の列車を測定いたしまして、その上位十本の列車の騒音あるいは振動値を平均をするというのが測定方法として規定されておりますが、きょうはかりましたものとあしたはかったものとは、実はおんなじ二十本、二十本を取りましても、場合によりましては数値が変わる場合もあるわけでございまして、いま先生の御心配のようにその数字ぎりぎりの辺となりますと、きわめて微妙なものであることは、われわれ実務の方としては大変心配をいたしております。その点、実際の施策に当たりましては、よく近隣の事情を把握をいたしまして、もちろん、その原則としての数値は数値として尊重はいたさねばならぬものでございますが、実施に当たりましては、いま申し上げましたような被害者の御意向をよく伺いながら、円満に処理をせねばならぬものと考えております。
  59. 青木薪次

    青木薪次君 いま既設の東海道新幹線並びに山陽新幹線ですね、博多まで含んで。八十ホン以上の家屋、それから七十デシベル以上の振動の規制対象、その全戸数、わかりますか。
  60. 吉村恒

    説明員(吉村恒君) 騒音の八十ホン以上の区域、すなわち今後三年間で施策をせよという御指示の範囲内にあるものが東京−博多間、学校、病院等を含めまして約一万八千戸と推定をいたしております。振動の方でございますが、七十デシベルの指針値に入るものは約一万戸と推定をいたしております。この音の一万八千戸と、それから振動の一万戸は、いずれも線路に近いところでございますので、数の上ではこの一万八千と一万とはほぼ全数重複をいたしておる。すなわち、騒音での一万八千戸の中に振動の七十デシベルを超える一万戸が入っておるという推測でございます。
  61. 青木薪次

    青木薪次君 そうしますと、音源対策とかあるいはまた振動規制対策というものについては、いまの部長の言った一万八千戸あるいはまた一万戸というものについて、現実はどれくらい進んでおりますか。
  62. 吉村恒

    説明員(吉村恒君) 音源の対策につきましては、東海道新幹線は設置当初に防音壁が設計施工されていなかったわけでございます。全長にいたしまして四百八十キロメートルの防音壁を至急追加施工するという計画を立てまして、五十一年度をもちましてその原計画の大部分を発注をいたしております。一部施工中のかっこうで五十二年に残るかもしれませんけれども、防音壁の設置に関しましては、当初計画をほぼ現時点で達成をしたと考えております。今後、さらに騒音の発生の実情、地元の御苦情の実態等を勘案いたしまして、この防音壁の設置は二次作戦を計画をいたしております。音の中で一番騒音の程度の高いものに鉄げたがございます。ことに道床砂利の入っておりません私ども無道床鉄げたと呼んでおりますが、これが非常に大きな音を出すわけでございまして、森田の架道橋でございますとか、名古屋の六番町の架道橋でございますとか、よく話題を提供をしているしろものでございますが、これら無道床鉄げたの防音工を施工する計画をいたしまして、全数で百八十六ヵ所ございます。これらのうちの約三分の一を現在施工を終わったところでございます。したがいまして、現時点でいわゆる周辺に非常に民家が接近をしております無道床鉄げたから始めまして、接近しております部分につきましては大体終わった。今後まだ百余残っておりますけれども、これにつきましては若干民家から遠いということでございますけれども、継続してこれらの無道床鉄げたの防音工をやっていきたいと考えております。  音源対策では、その値に達しないものにつきまして、先ほど申し上げましたように、障害防止対策を施工をいたしておるわけでございますが、先ほど音の点で一万八千戸と申し上げましたけれども、その中で五十年度までの累計が、施策済みが百七戸でございます。そのうち建物の防音工の施工をいたしたものが五十五戸、移転立ち退きをお願いをしたものが五十二戸、あわせて百七戸でございます。
  63. 青木薪次

    青木薪次君 そこで、次にテレビの電波の障害対策の進捗状況なんでありますけれども、新幹線としてはどういうような対策を進めているんですか。
  64. 吉村恒

    説明員(吉村恒君) 東海道新幹線をつくりました際は、建設後、開業後二年ぐらいの間にアンチナを高性能のものに取りかえるという手法を主にいたしまして、ごく一部共同アンテナ方式をとっておりますが、主にはアンテナの改良という方向で、いま申し上げました二年間ぐらいの間で第一次の施策を終わっております。山陽新幹線につきましては、これまたそれぞれ新大阪−岡山、岡山—博多という建設の段階に伴いまして、開業までに、あるいは開業後若干の日にちを置きましたときに、この方はむしろ共同アンテナを主にいたしまして施策を講じておるわけでございます。いずれも開業前後をいたしましたときに、第一次の施策は鋭意進めたつもりでございますが、それでもなおその後も御苦情が出ておりますので、それぞれの区間で第二次の施策を現在講じておるところでございます。東海道につきましては五万五千戸の第二次施策を講じております。山陽につきましても七万戸、合計いたしまして十二万戸のテレビ対策を実施しておるわけでございます。これらの施工につきましては、国鉄だけでできませんものですから、NHK等の強力な御協力を得て進めておりますが、なお今後ともテレビの障害防止につきましては、それらの御協力をさらに得まして進めていきたいと思っております。
  65. 青木薪次

    青木薪次君 いまNHKの協力を得てやっているということをお聞きしたわけでありますけれども、NHKは技術の標準を持っていると思うんですよ。思うんですけれども、NHKは特殊法人ですからね、やはりその指導についてNHKに任しておくということについては、これはいけないんじゃないか。  郵政省の方見えてますか。この電波監理の関係から、物を建てるからテレビ障害が起こる。これはもうついたものですね。そこで、いま国鉄ばかりじゃなくて、官庁関係と民間とのトラブルが起こってますね。それから、ビルを建てたりなんかしますとね、たとえば新宿とか都心の関係ですね、ビルを建てるとその付近の民家はテレビ障害が起こっているわけですね。それでも民間対民間のトラブルまで起こっている。私がいま郵政省から資料をもらったんでありますけれども、全くものすごい数が実はあるわけですね。したがって、そういう点から、この対策について単に原因者負担ということを言っているだけではこれはいけないと思うんです。何かテレビジョンの難視聴対策調査会というものがあるというように聞きましたけれども、これは一体何をやってるのかというように言わざるを得ない。標準的手続がないから私は混乱していると思うんです。無為無策に私は過ぎてはいけないというように考えているわけでありますが、先ほど郵政省から資料をもらったのによりますと、このテレビ関係の障害で問題が起きているのは、三万六千五百二十二件という全く物すごい数が実は問題視されているわけです。ビルだけで四十六万世帯、半分は京浜地区で、問題は新宿の方が多い。これは有線を引っ張ってそしてやるということで郵政省も指導要領を流しているかもしれません。いるかもしれませんけれども公害の場合等におけのPPmといったようなものをつくる必要があるんじゃないかというように私は考えます。たとえば、アンテナとか共同アンテナについての基準とか、あるいはまた悪くなり方の程度についてはどうするのか。程度が一とか二とか三とか四とかとあっていいじゃないかというように考えるわけであります。そういうことから、これからますます高層建築が林立してくる中におきまして、ビルから、あるいは一階増すごとには幾らといったような基金制度をつくってもいいじゃないか。これは、テレビは昔はぜいたくだったけれども、いまはもう日常品ですからね。この点について、郵政省の姿勢が非常に悪いというように考えているわけでありますから、ひとつ、ビルを建てた場合には当事者で話し合え、銭は原因者が負担せよ、こんなことを言っているのはこれは子供でもできるわけですから、この点について郵政省の見解を聞きたいと思います。
  66. 田代功

    説明員(田代功君) ただいま先生から御指摘のありましたとおり、私ども従来から、十分な電界強度が達せられている地域で、他の人為的な原因でその付近の電波が乱されてテレビが見えなくなった場合には、障害の原因を与えたいわゆる原因者が費用の大半を負担して解消措置をとっていただきたい、こういう方針で指導してきております。しかしながら、最近、特に大都市におきまして高層建築物等が非常にふえまして、原因者を特定することもむずかしくなっております。また、被害の地域も大変広くなっておりますために、従来のように個々の、一対一の原因者と住民との相談だけではすべて事が済まなくなってきております。このために、四十八年に、郵政省の中に部外の学識経験者を招きまして調査会を設けまして、これの抜本的な解消方策についての検討をお願いいたしまして、昨年の八月に一応の検討結果がまとまりまして、郵政省あてに報告をいただいております。その中でも、ただいま先生指摘のようないわゆる認定の基準、障害の基準といったものを、もう少し客観的に出すべきではないかという御指摘も受けております。テレビの受信障害の場合は、たとえばほかの法定公害なりと若干異なりまして、計量一的に数字で障害の有無をあらわすことは非常にむずかしゅうございます。現在私どもNHKの協力を得て指導いたしておりますときには、五段階の評価をいたしておりますが、これも専門家でないと、障害が実用にならない程度にあるかどうかという判定がむずかしゅうございます。これを客観的な数値であらわせるような方策をという御指摘も受けておりますが、現在のところまだできておりません。ただ、受信障害は技術的にはこれを解消する方策がございます。いまで言えば有線の共聴施設でございますが、技術的にはこの方策がありますので、関係者が必要な費用を持ち寄りまして、統一的にこの受信障害を解消する方向をとるべきではないかという報告を受けております。現在、郵政省の中におきまして、この報告をもとにこれから先の抜本的な解消策についての検討を進めているところでございます。  以上でございます。
  67. 青木薪次

    青木薪次君 いまの関係については、私はおくれているということを率直に認められたというように理解いたしておりますけれども、これはひとつ難視聴対策委員会等を中心として、早急にその標準的な基準について作成する努力というものを要請いたしておきたいと思います。またその経過を教えてください。  それからきのう、私は問題の運輸委員会で、国鉄当局、総裁、運輸大臣について厳しく追及したわけでありますけれども、運賃が上がらないことによって、十月いっぱいまでの段階で、二千六百五十億円が歳入不足になる。このためにけちけち運動をやっておりますけれども、これからずっと年末年始、年度末へ向かって、さらに列車の運転休止とか線区別に運転休止がある。このときに、一番収益の多い十一、十二、あるいはまた年度末というときにこういうことをするのはけしからぬということを言ったわけでありますけれども、私はこの点から、安全の問題とかその他に影響されることをきわめて重視をしていきたいと思っているわけでありますが、騒音並びに振動、テレビ障害といったような関係等について、国鉄当局はこの対策費をけちって、そうしてやらない、あるいはまた手心を加えるといったようなことが懸念されておりますけれども、その点はひとつ環境部長、いかがですか。
  68. 吉村恒

    説明員(吉村恒君) 国鉄の財政事情につきましては御高承のとおりでございまして、現状、各種の経費につきまして、大幅な支出の抑制を余儀なくされていること、いま先生御承知のとおりでございます。これらの中で、この公害関係の費用それから安全を保持いたしますための費用につきましては、万全を期しましてそれの確保に努めておるところでございまして、この二項目につきましては遅滞のないように進めていく覚悟でございます。すなみに、本年度国鉄の環境関係の予算でございますけれども、約四百六十億円でございますが、これにつきましては現時点でも確保をいたされております。ひとつ御了承いただきたいと思います。
  69. 青木薪次

    青木薪次君 その点は、安全、公害といったような対策についてはいま決意を聞いたわけですけれども、それはぜひ一銭たりともけちらないでやってもらいたい。内部の節約運動、これ結構です。しかし、国鉄の財政の危機というものが一般の国民にしわ寄せされないということのために、最大限努力することを要請いたしまして、私の質問を終わります。
  70. 宮田輝

    宮田輝君 一億一千万の国民が、そう広いとも思われないこの国土に住んでいるわけでございますけれども、私たちはそういう中で、やはり将来にわたって、高度の福祉のもとで質の高い環境を享受していきたい、こう念願しているわけでございます。私はきょうは、ことに人や車が多いと言われる都市の緑の問題、こういう点について伺いたい、こう思うわけでございます。  環境庁が発表いたしました、緑の国勢調査とよく言われますけれども、五年ごとに全国一斉に行うそうでございますけれども東京、大阪等の都市では緑のほとんどない地区、つまり植生度一という地区が九〇%近くを占めているということでございます。人間が健康で文化的な生活を営む与で、当然もっと緑をふやすべきではないか、こんなふうに思うわけでございますけれども、長官の基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
  71. 丸茂重貞

    国務大臣丸茂重貞君) ただいま宮田先生の御指摘の点は、環境行政の中での大きな柱の一つであります。申し上げるまでもなく、人間生きていく上に緑がどれほど大事か、これは日常生活の中でも、どのビルの窓、どのアパートの窓でも、たとえ小さいながらも植木ばちに植木を入れてみんなそれを愛している。私はこれが本当の人間の自然の姿だと思います。もちろん太古に、周りじゅうが緑だらけのときには、人間はそのありがたさはわからなかったと思うんですよね。ところが、こう高度に工業化してまいりまして、周りが全く緑がなくなっちゃうということになりますと、これはもういかに人間が生きる上に緑が必要であるかということを痛感させられている現状じゃないかと私、しみじみそう思います。  それにつきましても、私は数年前ですか、街路樹の問題ですがね、東京の街路樹、それまで歩道はペーブメントだったんですね。ところが大学紛争のときか何かでペーブメント一切やめちゃって、コンクワートべたにしたんですよ、歩道を。あれが街路樹にどれくらい悪い影響を与えやしないかと思って、その後も私、歩くたんびに注意して見ているんですが、いまのところははっきりと、水が足らないためにこういうふうになったなあと思われるようなことはないですが、長期的にはやっぱり街路樹にはずいぶん悪い影響を与えるんだと。恐らく私一人じゃなくて、東京にあるいは大都市に何とか緑がほしいという気持ちは、みんな、国民一致した気持ちだと。そういう具体例を引きましても、本気にそう思います。  そこで、環境庁といたしましては、とにかく健康で文化的な生活を営む、これは憲法で決められたことですが、やっぱりその中で緑というものはどれほど重要であるかということを政策で守っていかにやならぬ。その政策をやるのがわが環境庁だと、そう思っているわけです。  そこで、何としてもわが方といたしましては、自然環境保護というよりも、都市においてはむしろ望むべき自然環境をつくり出すと、そういうかっこうになっていくと思うんですね、これからは。その意味で、いまの官田先生の御質問は、われわれがみんな、長官以下環境庁が必死に考えておるところなんで、その辺を今後もどういうふうに効率的にやっていくかということが大きな宿題だと、こういうふうに考えておるわけです。  もちろん、いま申し上げたように、緑を通じて自然と触れ合うということは、人間にとって欠かすべからざる条件ですが、それと同時に、やっぱり都市の防災上も緑というものは、大きな緑化地域というのは必要じゃないかと、こういうふうに思うわけですし、また具体的な細かいことは素人ですからようわかりませんが、いろいろな異常気象を緩和するためにも緑というものは大きな役割りを演じているんじゃなかろうか。あるいは子供たちを初め、レクリェーションの場にも緑というものはどれほど大事かということを考えますと、やっぱりこの問題というのは、われわれ都市、特に高度工業化した社会のシンボルでありまする都市においてはいま失われているんですが、これをどう回復していくかというのが大きな使命だと、こういうふうに考えておるわけでありまして、環境庁は、こういう目的を果たすために、環境保全に対する長期計画をいま定めて、自然環境保全をするために目標を設定をして、その目標が一日も早く達成できるように考えておるわけであります。  ちなみに、建設大臣の諮問機関でありまするところの都市計画中央審議会だったですか、そこでいろいろな答申があったんですが、その中で、都市計画の中で、都市においてはできるだけ緑化地域が全地域の三〇%を占めるのがいいんだというような答申も出ていますので、建設省ともよく連絡しながら、いま申し上げたような意味合いでございますので、できる限り緑化に関しましては全力を上げたい、かように考えておるわけであります。
  72. 宮田輝

    宮田輝君 大変心強い感じを与えていただきました。環境庁いろいろ調査をやっていらっしゃるようでございますけれども、これ、去年ですか、東京、宇都宮、秩父で住民意識調査をおやりになった。その第一位の声というのが、身近な緑を求めるということだったと思うんです。週末にあるいは野山に出かける、そこでいい空気に触れ、あるいは美しい緑に触れるという乙とは当然大事ないいことには違いないんですけれども、やはり、私どもが住んでいるところ、あるいは働いているそのかいわいに緑がほしいと思うんですね。そういう人々の声を反映してか、この間の新聞によりますと、庭の緑を守る手だてを考えるための検討委員会を発足させるという報道があったんでございますけれども、これを簡単にちょっと御説明をいただきたい。
  73. 信澤清

    政府委員信澤清君) ただいま先生お話しのように、昭和五十年度に都市において確保さるべき緑の総量はいかにあるべきか、こういうようなテーマで、まず、住民の方々がこの問題についてどういう意識を持っているか、これを中心調査をいたしたわけであります。その結果につきましては、いま先生お話しのようないろいろな問題、他にもございますが、要約すれば、やはり緑の必要なことについてはだれも否定しない、特に身近な緑について十分配慮していく、そういった緑の問題を解決するためならば多少税金がふえてもいいと、こういうことについて、半数の方はお答えをなさっているわけでございます。いかに住民の方々の御要望が強いかということがこれでわかるわけでございます。  いまお尋ねの都市の庭木の問題でございますが、これは実は昨年に引き続きまして本年さらに継続して調査をやると、こういう内容のものでございます。昨年は、いま申し上げたように意識調査をいたしたわけでございますが、今度は行政のレベルでこれをどのように具体化するか、そういった、いわば、こういう目標を達成するための施策を具体的に検討すると。そのためには、やはりいろいろ、いま現在住民が求めている問題のほかに、いろいろな社会的な要因があるわけでございますね。そういった社会的な要因というものを中心調査をいたしたい。その中には当然、自分の庭に植木を植えたい、花を育てたいという場合に、行政としてどういう対応の仕方があるか、こういう問題を含めて検討したい、そういうことでございます。
  74. 宮田輝

    宮田輝君 先ほど長官から、建設省でもというお話がございました。実際に建設省がずいぶんおやりのようでございます。  建設省にお伺いをしたいんでございますけれども、都市公園等整備五カ年計画によって事業費九千億円を投じ、人口一人当たり二・八平方メートルだった都市公園の面積を、昭和四十七年から昭和五十年までの間に一人当たり四・二平方メートルまで引き上げることを目標に進められたということでございますけれども、結果は、残念ながらその四・二には達しませんで、三・四平方メートルに達しただけということでございます。東京の場合は、都市公園の面積が東京二十三区で一・六三ですか、それから大阪が一・九五、名古屋が三・六一というような数字が出ております。ロサンゼルスが一八・九、ワシントンは四〇・八と、いずれもこう、よその国は二けたになっているようでございますけれども日本の場合では都市公園の面積が二けたに達しているところは大都市では全くないという現状です。都市計画中央審議会が七月の二十九日に、都市において緑とオープンスペースを確保する方策としての緑のマスタープランのあり方について答申されました。実行に移すために建設省では今後どのような措置をおとりになるんでしょうか。緑地の量は、先ほどの長官のお話にも出ておりましたけれども、市街化区域面積に対して三〇%以上と考えるのが妥当であるというようなことが内容にあったようでございますが、これも簡単に御説明をいただきたいと思うんです。
  75. 三好勝彦

    説明員(三好勝彦君) ただいま先生指摘の点は、身近な緑を通し、都市公園の五カ年計画がその後どうなっているかという問題と、さらに都市計画中央審議会におきまして答申のなされました、緑のマスタープランについての今後の取り扱いという二点かと思うわけでございます。  御指摘のように、昨今の都市におきましては、急激な人口の集中なり産業の集中等ございまして、著しく緑が損なわれております。それに対処いたしまして、建設省といたしましては、第一次五ヵ年計画を一年繰り上げることによりまして、なお急速に緑を修復していく、あるいは新しく創出していくという仕事、並びに緑をどのように保全していくかという総合的な施策を考えているわけでございます。  まず第二次の五カ年計画におきましては、先ほど先生お話しのような、九千億をトータルの事業費といたしまして一兆六千五百億、約二倍の量にすることによりまして、五十一年度以降五ヵ年計画におきまして四・五平方メートルまで高めてまいりたい。このためには全国で約一万四千四百ヘクタールの公園緑地をつくり出すことになるわけでございます。いわゆる高度経済成長時代と違いまして、地価その他につきましても比較的安定している状況にございます現在、この五ヵ年計画はかなり計画どおり進められるものというふうに考えております。  また、緑のマスタープランについてでございますが、御指摘のような答申をいただきました後、——ここでちょっと簡単に答申の中身を申し上げますと、先ほどの市街化区域面積のおおむね三〇%の緑、何らかの制度的な担保あるいは社会通念上の永続性という担保が得られるものとして三〇%の土地を確保するべしということになっている。三〇%以上でございます。それに対し、さらに公園緑地等につきましては、長々期的な目標として一人当たり二十平米以上を確保するようにというのが答申の内容でございます。  これらにつきまして、現在建設省におきましては、この具体化について検討しているわけでございますけれども、特に全国の都市につきまして、都市ごとに緑のマスタープランをつくっていただくことを現在検討しております。それらを通しまして、規制の問題でございますとかあるいは誘導、さらには積極的な整備という総合的な施策を進めてまいりたいと考えているわけでございます。
  76. 宮田輝

    宮田輝君 二十平米の確保というのは大体いつごろの目標でございますか。
  77. 三好勝彦

    説明員(三好勝彦君) 大変長々期的なものでございまして、二十五年後の二十一世紀を一応のめどといたしております。
  78. 宮田輝

    宮田輝君 そういう世の中が早く来てほしいと思いますけれども、第一次の計画の成果というのも、途中で異常な経済変動があったということも要因だろうとは思いますけれども、緑が絶滅に近いという大都市の緑地を確保するために、やはり莫大な土地を国や都道府県が買い上げたりするというのはこれまた大変なことだろうと思いますし、技術的にもあるいは予算の面でも果たして可能であろうかというような素朴な疑問も出てくるわけでございます。都道府県がおくればせながら緑を確保していくための基本計画を立てて、それぞれ必要な事業を行う場合、国がその半分の費用を負担することになっているわけですね。
  79. 三好勝彦

    説明員(三好勝彦君) 地方公共団体が公園緑地を設置いたします場合に、土地の取得につきましての国の補助率は現行三分の一でございます。
  80. 宮田輝

    宮田輝君 土地が三分の一。
  81. 三好勝彦

    説明員(三好勝彦君) はい。施設につきましては二分の一でございます。
  82. 宮田輝

    宮田輝君 施設が二分の一。そこで、公園も当然大事なわけでございますけれども、先ほどのお話の街路樹の整備であるとか、あるいは個人の庭とかビルやマンション建設の場合の緑化協定とか、いろんな手段を活用することが必要だと思うんですけれども、それからまた、たとえばビルディングとかマンションの周りの空き地、これなんかは面積に応じてある数の樹木を植えることを義務づけるというようなことについては考えられないでしょうか。
  83. 信澤清

    政府委員信澤清君) いま建設省から御答弁ございましたように、都市計画中央審議会では最低三〇%ということを言っております。しかし私ども、実は大臣が先ほど御答弁しましたように、自然環境に関する長期目標と申しますか、長期計画を立案中でございますが、やはりその中で出てきております議論、それから先ほど来お話に出ております調査の結果を見ますると、やはり総体としては四割ないし五割ぐらいのオープンスペースを含めた緑地が欲しいと、こういうことでございます。この点については都市計画中央審議会でも御異存がございませんし、建設省も同じような考えでございます。都市計画中央審議会のおっしゃっておりますのは、先ほど御答弁にございましたように、公共的な施策によってとか、あるいは公共的に将来にわたって担保できるようなそういうスペースを三〇%というわけでございますから、したがって、私どもは、環境庁の立場も建設省の立場も同じでございまして、やはりいま先生お話しのように、宅地等を含めて全体的には四割ないし五割ぐらいの目標というものを持って進んでいきたい、こういうことでございます。そのための一つ方法としては、これは建設省の御所管でございますが、都市緑地保全法というような法律もございます。そういったものの活用によって一応対応するということではないかと考えております。
  84. 三好勝彦

    説明員(三好勝彦君) 都市の緑をふやす点につきましては、ただいま信澤局長からもお話がございましたように、建設省といたしましても、望ましい水準といたしましては、市街化区域並びにその一部周辺をとり含めまして四〇%ないし五〇%が望ましい水準だ。その中で公的あるいは社会通念的に永続的に担保されるような緑を含めて三〇%は確保してまいりたい。その間に差があるわけでございますが、その差に対しまして、建設省におきましては、本年六月の時点で都市緑化推進要綱といったようなものを定めまして、公共団体を通し実際に指導になるわけでございますけれども、公園緑地の整備のほかにたとえば道路あるいは河川等の公共施設の緑化でございますとか、あるいは民有の宅地に対しましての緑化あるいは緑化協定の推進といったような総合的な施策を進めているところでございます。
  85. 宮田輝

    宮田輝君 ちょっと申し上げましたその都市の民有地、恐らくそうでしょう、マンションとかあるいはビルディングとか、そういうところのオープンスペースといいましょうか、たとえば駐車場になっているというようなところ、車一台について木を何本とか、細かいことですけれども、そういうようなことは考えられないでしょうか。
  86. 信澤清

    政府委員信澤清君) 法律的に強制をする制度としてし得るかどうか、これはいろいろ御議論があるかと思います。ただ、実際問題として、そういうようなことについて住民の合意が得られること、そういう方向に持っていくということは、特定の地域については実は建設省がおやりになっているわけでございますね、つまり緑化協定というような形で。ですから、そういうような、先ほどもお話しの緑化の指導の内容の中には、そういう個々の具体的な地域ごとに緑化協定と、こういうふうなものを地方公共団体と関係の住民の方が結ぶと申しますか、約束事として決めていくと、こういう御指導も含んでいるように聞いておりますが、やっぱり当面はそういう方向でいくのが実際的ではないか。しかし、必要があれば、立法措置についてはこれは国会の問題でございますから、いずれ必要ならばそれについて御意見を伺いたいと、こういうふうに考えております。
  87. 宮田輝

    宮田輝君 天皇陛下御在位五十年記念事業として、国と地方公共団体が記念公園の整備を促進するということでございます。都市に緑を取り戻し、たとえば森のある文化施設をつくって、自然を失いつつある都市の住民が、そこを触れ合い、話し合いの場とするということは大変意議のあることだと思うのです。緑と文化を通して人間性向上に役立つ本当に大事な記念事業となると思いますけれども、普通昭和の森と言われております、昭和公園というんだそうですけれども、基本方針と、計画のあらましをお示しいただきたいと思います。
  88. 三好勝彦

    説明員(三好勝彦君) 天皇御在位五十年の記念事業の一環といたしまして、ただいま御指摘のように、国及び地方公共団体が記念公園を設置することについて、現在、関係の省庁と具体的な相談をしている段階でございまして、まだいわゆる計画なり構想、あるいは規模等が公にできない段階にあることを御了解いただきたいと思うわけでございます。
  89. 宮田輝

    宮田輝君 その公にできないということはわかるんでございますけれども、そういう考え方が出てきた背景と言いましょうか、都市公園の整備計画も、第二次もすでに始まっているということでございますけれども、都市にとって緑というのも大変大事だというのは、先ほどからのお話でよく確認されているところでございますけれども、国でもおやりになり、また地方公共団体でもおやりになるということでございますけれども、まあ大体こんな感じからこういうふうになってきたというあたりを。
  90. 三好勝彦

    説明員(三好勝彦君) お答えいたします。  先ほど来御指摘がございますように、日本の都市が非常に過密化の状態を進めているわけでございまして、そういう中におきまして緑を通して、あるいは緑を通してのオープンスペースとしての公園緑地というものが望まれているということに着目いたしまして、むしろ都市化を、どうやって早く緑を創出するかということの中に、過去の事例といたしましても、いろいろ国家的な記念事業でございますとか、国民的な意識によりまして緑の土地をつくり出すという仕事が行われているわけでございます。具体的には、明治百年の記念事業の一環といたしまして、国みずからがかなり大きいまとまった規模の公園を設置してございます。また、あわせまして地方公共団体が全国におきまして、約十ヵ所でございますが現在整備が進んで、大部分は完了いたしております。それと同じような趣旨におきまして、この在位五十年の記念事業というものが行われるべくわれわれは準備をしておるわけでございます。
  91. 宮田輝

    宮田輝君 環境庁がお調べになった全国一斉の緑の調査と言いましょうか、メッシュの地図がございますけれども、あれを見ても、東京の場合ぽこっと大きくあらわれているのが明治神宮の森でございます。これもまた、つくった森ということはよく知られているところでございまして、いつごろになるのか存じませんけれども、なるべく早く様子を国民に知らせていただいて、——国民の期待も大きいところだと思うんです。これは森をつくるとかあるいは公園をつくるとかということだけではなくて、私、最初に申し上げましたように、非常に緑と文化との結びつきとか、あるいは人間と文化との一つの広場になるというような意味合いが大きいと思いますので、りっぱな昭和公園をつくっていただきたい。  明治神宮の場合は、あれは何年ぐらいかかりましたでしょうか。
  92. 三好勝彦

    説明員(三好勝彦君) 私の記憶といたしまして申し上げますが、いまから約七十年前に造営に入ったわけでございまして、約十年ぐらいで完成したというふうに理解しております。
  93. 宮田輝

    宮田輝君 すると、今度の記念公園の場合は何年ぐらいと大体踏んでいらっしゃいますか。
  94. 三好勝彦

    説明員(三好勝彦君) おのずから規模等にもよるわけでございますけれども、当然に規模が大きくなりますと時間がかかるわけでございまして、そういう場合におきましてもなお第一期を五カ年と考え、第二期、第三期という過程を踏まえながら、少なくとも概成した部分から一般に使えるようなことを考えてまいりたいと考えております。
  95. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 ただいまの宮田委員の御質問に関連して一言伺わさせていただきたいと思うのであります。  私は、この御在位五十年記念公園というのは非常にいいことだと思っております。そこで、むしろこれは質問というよりも、こういうことをお考えいただきたいという要望なり意見になるかもしれませんが、東京都はこれは首都なんですね。そして、しかも東京都にはもっともっと緑が欲しい。これはいろいろな意味で、ここで言う公害の問題、環境の問題含めて、あるいは災害対策というような問題も含めて、緑が欲しい、そういう緑地が欲しいというのはもう都民のみんなの希望なんです。そういうようなことで、御在位五十年のこの記念公園としては、やっぱり東京都に、しかるべきところに大きなりっぱなものを設けていただきたいということは非常にふさわしいのじゃないかというふうに思います。ことに、たとえば具体的な希望もあるわけですが、すでに要望が出ているところもあるわけでございますけれども、江東区の木場、これが移転するんですよ。あの材木の木場がですね。埋め立て地に、新木場といってどんどんどんどん移転していっている。その後が非常に広いところを緑の公園にする。そしてこれは、御承知のように、江東区というのは災害対策上も非常にそうしう広場か欲しいところでございます。広場というか、緑地帯が。そういうようなことも十分ひとつ御検討いただきたいと思いますので、まあ一言だけ関連して御質問を兼ねて要望しておきます。
  96. 三好勝彦

    説明員(三好勝彦君) お答えいたします。  先ほどもお答えいたしましたように、国みずからが設置する公園あるいは公共団体等が行う公園等も含めまして、いま御指摘のような場所につきましても検討を進めてまいりたいと思います。
  97. 宮田輝

    宮田輝君 都市にも、緑をふやし鳥も呼びたいというのは本当にみんなの願いだと思うんです。環境庁は一層前向きに、たとえば都市を走る高速道路に防音壁というのがございます。ああいう防音壁や、道路そのものを緑化するというようなことは考えられないものでしょうか。まあ緑化すればそれだけ当然費用はかさんでまいります。つまり、利用者からすれば料金が上がるということにもつながると思うんですけれども、都市のあり方やそれから住民のことを考えれば、国民理解が全く得られないというものではないかもしれないと思うんです。いろんな問題がこれは絡んでくるだろうと思うんです。たとえば日照権という問題も出てくるかもしれません。しかし、道路建設に当たって、道路と一緒に緑がやってくる。つまり道路と一緒に緑がやってくるという、その地域の人々に喜ばれるような道路づくりというようなことは考えられないものでしょうか。  これはまあ一例でございますけれども環境庁も、それから建設省も、どうかひとつ心豊かな国づくりのためにより一層真剣に取り組んでほしいことを要望申し上げて、質問を終わることにいたします。
  98. 丸茂重貞

    国務大臣丸茂重貞君) よくわかりました。
  99. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      —————・—————    午後一時五分開会
  100. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  101. 小平芳平

    ○小平芳平君 これからの環境行政の大きな柱の一つとして、環境影響事前評価について私は質問をいたします。  長官からもごあいさつの中で所信を述べられておられましたが、私たちも、公明党としましても、事前評価についての法案を再三参議院、国会に提出をいたしております。で、政府の方でも、環境庁として前国会に法案を提出するやに伝えられておりましたが、環境庁案はできなかったのかどうか。その辺のいきさつを最初お尋ねしたい。それと同時に、また、先ほどの長官の御発言の中では、早期に提出するようにも受け取れるように聞こえましたが、見通しについて伺いたい。
  102. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 環境影響評価法案の制度化につきましての経過について、簡単に御説明申し上げますと、環境影響事前評価ということが非常に公害の未然防止上重要な問題であるという観点から、中央公害対策審議会の中にそれに関する専門委員会を設けていただきまして、検討を進めてまいりまして、昨年の十二月にその一応の取りまとめができたわけでございまして、環境影響評価制度のあり方についてというのを専門委員会から出されたわけでございますが、それを受けましてさらに中央公害対策審議会に環境影響評価部会という部会を新たに設けまして、それを引き続いて御検討いただいて現在までに至っているわけでございまして、また、環境庁といたしましても、法案をまとめるべくいろいろな問題点につきまして関係各省庁と協議を続けてまいったわけでございますが、遺憾ながら前国会までに調整をとるに至らなかった次第でございまして、提出に至らなかったわけでございますが、前国会終了後直ちに、特に関係の深い省庁で環境影響評価の連絡協議会を設けまして、いろいろ問題点の検討に当たってきて現在に至っておるわけでございまして、私どもといたしましては、ぜひこの検討を進めて実りのあるものにしていきたいというふうに考えております。
  103. 小平芳平

    ○小平芳平君 中公審としては、この五十年十二月二十二日の検討結果のまとめ——そうすると、これは専門委員会でまとめただけで、中公審としての意見なり答申はないわけですか、まだ。
  104. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) そのとおりでございます。
  105. 小平芳平

    ○小平芳平君 それじゃ環境庁が各省と話し合いのしようもないじゃないですか。
  106. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 大筋はこの専門委員会のまとめの線に沿いまして、さらに審議を続けていただいておるわけですが、審議を続けていただく過程におきまして、関係の深い省庁の意向というものもその審議にやはり反映させる必要があるということで、審議と並行して関係各省庁との調整を図ってきたわけでございます。
  107. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、いずれにしても答申を得てから環境庁案を作成し、国会に提案と、こういうことですか。それはいつごろになりますか。
  108. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 仰せのとおりでございまして、いま諮問して審議していただいている最中でございますから、その結論を待って法案の作成にかかりたいと、まあ、次の国会に間に合うようにやりたいと、鋭意努力をしておるわけでございます。
  109. 小平芳平

    ○小平芳平君 環境庁は、むつ小川原地区の開発について評価の実施指針ですか、こういうのをお出しになりましたですね。このむつ小川原の評価の実施指針というものはおおむね中公審の検討結果のまとめに沿っている、こういうふうに理解してよろしいですか。
  110. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) むつ小川原の環境影響評価の指針につきましては、おっしゃるとおり、この専門委員会の内容を反映させた打針になっておるわけでございます。
  111. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがって、この中公審のまとめは、評価の範囲、それから評価主体、それから評価の基準住民参加方法、こういう点について簡単に御説明してください。
  112. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 評価の主体は、これはまとめの方にも書いてございますように、計画なり事業なりを実施する主体が、まずみずから、その開発行為によって起きます環境影響について、その予測をし評価をしたものを評価者の案としてつくるということになっておりますが、そういうようなやり方を考えているわけでございます。  また対象は、これはやはり国がみずからいろいろな大規模開発——高速輸送機関とか、あるいは工場立地のためのいわゆる土地造成とか、道路とか、いろんな大規模開発行為があるわけでございますが、国自身が実施をするものだけでなく、民間の実施する行為につきましても、それがいろいろと許可、認可にかかっているような場合に、その許認可に際して環境影響評価を実施すると。それから、まあ個々の立地が総合されて、むつ小川原とかあるいは東苫小牧とか、そういうような場合には、そういう全体の計画をやはり評価の対象にしていくというふうなことでございます。  それから評価の基準といいますか、いろいろな評価の仕方といいますか、これは、むつ小川原のような場合にはああいうものをつくりましたけれども、まだいろいろな道路、空港あるいは鉄道、港湾等につきまして、標準的なものができておりませんので、そういうものをいま関係各省庁とこれから詰めていっておる段階でございます。
  113. 小平芳平

    ○小平芳平君 住民参加を落としておりますが、ついでに次のことと一緒に答弁してください。  結局、住民参加にしましても、義務づけられないわけですね。任意に住民の意見を聞く、あるいは環境庁長官の意見を聞く、地方公共団体の長の意見を聞く、こういうことであって、そこに何ら義務づけられるものはないという点。しかも、その判断は評価の主体が事業実施主体ですから、たとえば国なら国が、建設省なら建設省が事業をしようという場合には建設省が評価するわけでしょう。したがってこれは、これからの大規模開発事業にはこういう手続が必要ですよという、そういう手続を決めるだけであって、そのことによって規制されるとか、そういうことはないと、こういうふうに理解してよろしいですか。
  114. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 大規模開発行為というものは、当然に非常に地域性が強いわけでございますから、単に都道府県とか市町村の形式的な意味で、住民代表である知事さんとか議会とかですね、そういうところの御意見を聞くというだけじゃなく、その地域住民の意見を十分に把握をいたしまして、環境保全上の有効な具体的な御意見はよく尊重をして、それを中に取り入れていくというやはり手段がとられることが適切であるということで、これは一つ環境影響評価制度の重要な部分として私ども考えておるわけでございます。  で、またその意見の聴取につきましては、よく開発行為の内容がわかるように公表をして、よく説明会等を開いて説明を周知徹底させるとか、あるいは住民の方々の御意見のある方には意見書を出していただいて、それをよくしんしゃくするとか、あるいは公聴会を開いて御意見を聞くとかですね、そういうようなことで、実効性のある適切なものとするようにしたい。また、環境庁長官なり都道府県知事も、そういう住民の御意見というものも踏まえまして、その意見の中のよいものはやはり環境庁長官なり知事の意見の中にも取り入れていくというようなことで、実施主体、あるいは民間の場合にはそれを許認可する主務大臣に、重要な意見としてこれを申し上げるということでございまして、その実施主体が国である場合、あるいは許認可権を持っている主務大臣がいる場合には、いままで環境庁も、毎年六百件前後のアセスメントをいろいろな法令その他の根拠に基づいてやっておりますが、そういう意見は尊重されているというふうに理解していただいて結構だと思います。
  115. 小平芳平

    ○小平芳平君 結論は、いま申し上げましたように、大規模開発等に当たってはこれこれの手続が必要ですということを事前評価法案で定めようということが環境庁のねらいであって、そのことによって規制しよう、あるいは新しい規制がかかろうというふうなことはあり得ないと、こういうことですか。
  116. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) これは、規制の内容を強化するとか、そういう問題は、むしろ個別のいろんな大気保全法その他のあれでやられるわけでございますが、手続が適正にやられませんと、やはり取り入れられるべき意見も取り入れられないというようなことがあっても困りますし、手続を定めていくことの中でも、環境保全に十分な役割りを果たすための一つの大きな手段だというふうに考えております。
  117. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、その手段が必要ないと私が言っているのじゃないのです。ただ、私たちが考えたのは、規制の上から考えた法案にしているわけですが、環境庁が考えているむつ小川原の実施指針というものは、とにかく住民の意見を聞きなさいと。あるいは聞くに当たっては計画を公表しなさいと。公表した上で住民の意見を聞き、環境庁長官そしてまた地方公共団体の長の意見を聞きなさい。そうして修正することがあったら修正して公表しなさいという手続を定めようということだけでしょうと言っているんです。
  118. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 繰り返すようで恐縮でございますが、規制につきましては、やはり大気大気、水質あるいは騒音、振動、それぞれ規制関係の法律があるわけでございまして、それを適正にやっていかなければならぬわけでございますが、それが開発行為の進行の途上で手続的に適正に行われませんと、そういうことがとかくしり抜けになるおそれがあるわけでございますので、手続的にもそういう適正な開発行為の進行というものを確保していこう、こういう趣旨でございます。
  119. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、私が言っているとおりですと言えばいいじゃないですか、手続を定めようと。  それじゃ具体的に、原子力発電所のような場合はどういう事前評価をしますか。
  120. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 原子力発電所の立地につきましては、これは電源開発基本計画策定の際に、電源開発調整審議会で審議がされるわけでございますが、その際に、環境庁もそのメンバーに入っておりますので、その段階において環境影響評価がきちんとやられているかどうかを審査いたしまして、まあ主として原子力の安全性問題につきましては、これは科学技術庁の方で審議をお願いするわけでございますが、それ以外の温排水の水産生物に及ぼす影響とか、あるいは用地造成等に伴う主として自然環境の改変等の問題を中心にいたしまして、周辺の環境へ与える影響について十分慎重に検討を行いまして、その結果を踏まえてその審議会で私どもの意見を取り入れてもらうと、そういうやり方でやっておるわけでございます。
  121. 小平芳平

    ○小平芳平君 科学技術庁に伺いますが、たとえば放射性物質の放出、固型廃棄物、温排水というような、現在の技術では完全に防止でき切ってない汚染というものがあるということをお認めになりますか。  それが一つと、それからもう一つは、いま局長説明によりますと、原子力発電所の場合はこれこれしかじかの審議会でやっていると言いますが、その審議会の審議の結果、修正するなり案を変えたというような例がありますか。簡単で結構ですから。
  122. 佐藤眞住

    説明員(佐藤眞住君) 科学技術庁の原子炉の安全審査につきましては、先ほど環境庁の方からも御指摘がございましたように、電源開発調整審議会の場を経たものが科学技術庁の方に参りまして、原子炉の設置者、つまり電力会社が原子炉の設置申請を出すことになっているわけでございます。したがいまして、一般の環境審査につきましては、その電源開発調整審議会の場におきまして審査されるわけでございまして、私ども科学技術庁におきます審査は、その後の原子炉固有の、特に放射能の安全に関する審査が中心になるわけでございます。  それで、御質問の放射性物質環境影響あるいはその人体影響というふうなことで、これ自体が現在安全に処理されているかどうかという点でございますが、これは工学的に技術的に申し上げますと、原子力発電所からごく微量の放射性物質は出るわけでございますが、これを十分に環境影響を評価いたしまして、人体その他に対する影響がないように処置しているわけでございます。具体的には、このために許容量というものが定められておりまして、これは、各国の原子力規制ですべて共通の基準がございます。国際的に定められた基準がございますが、その許容基準に基づいて審査しているわけでございして……
  123. 小平芳平

    ○小平芳平君 簡単でいいです、簡単で。
  124. 佐藤眞住

    説明員(佐藤眞住君) 現在認められております原子力発電所は、すべてその許容基準を相当下回る環境対策をやっているというのが現状でございます。
  125. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ次、固型廃棄物。
  126. 佐藤眞住

    説明員(佐藤眞住君) 続きまして固型廃棄物でございますが、これは原子力発電所から、現在、低レベルの固型廃棄物が出るわけでございます。で、これは百万キロワットの原子力発電所で年間千本とか、そのような数字が出てまいりますが、現在これはサイトの中に、発電所の中に厳重な倉庫をつくりまして、その中に保管してございます。もちろん、保管と申しましても、その前に固化処理その他いたしまして、適切な容器の中に入れて保管しているわけでございまして、環境に対する影響は全くないわけでございます。
  127. 小平芳平

    ○小平芳平君 ちゃんと聞いてなくちゃだめじゃないですか。  第一は、その放射性物質基準内だということは、もう何回も委員会で私、やって、もういっぱいある、その記録は。世界的にどうのこうのという答弁はいっぱい持っているから……。しかし、それにもなおかつ環境に放射性物質が出ることを防ぐための技術を必要としていると。だから、出っ放しでいいんだったら十年、百年出てもかまわない。十年、百年出ても相変わらず基準内だということですか。それが一つ。  それから固型廃棄物も環境には影響ないと言っているけれども、けさの日本経済新聞の社説だってごらんなさい、「原子力の“ごみ”の捨て方」って、これこれしかじかの問題があると指摘しているでしょう。そういうことを、ただ安全です、安全ですって言ったって、それじゃ安心できない。  それから電調審でと言われますが、電調審で計画を変更した例がありますか。以上三点。
  128. 佐藤眞住

    説明員(佐藤眞住君) 第一点の、微量に出ているものについてどのように考えるかという点でございますが、私ども、先ほど申し上げましたように、現在許容基準を相当程度下回るということをめどに審査しているわけでございますが、なお別途、環境に対する放出の低減化の研究というのも進めてございまして、これはクリプトンであるとかあるいはその種の放射性物質事前に工程の中で除去すると、こういう技術の開発を進めているわけでございます。で、このような技術開発を進めながら、より安全にするという観点で、今後原子力発電所の審査に当たりましては処置していきたいと、こういうふうに考えているわけでございます。  それから第二の固型廃棄物でございますが、先ほど申し上げましたように、現在サイトの中に、発電所の敷地の中に安全に保管してあるわけでございますが、最終的には処分をするということが必要なわけでございます。で、現在、その発電所におきますこの保管能力は二十年とか、相当の保管能力があるわけでございますが、御承知のように、最終的にどうするかというところが現在問題になっておりまして、私どもこの最終処分の方向につきまして、ごく最近方針を固めたところでございます。その方針によりますと、この固型の低レベル廃棄物を安全に処理いたしまして、これを地中あるいは将来は海洋処分をするというようなことを現在考えておりまして、このための試験あるいは安全基準の作成等に取りかかりつつある現状でございます。  それから第三番目の、電調審にかかったものを、電調審の審査結果を変更したことがあるかという御質問でございますが、先ほど申し上げましたように、電調審での審査は一般環境審査でございまして、科学技術庁におきます原子炉の審査は、原子炉の特に放射性物質関係いたしますところの安全審査でございます。したがいまして、その間に関係が全く切れておりますので、現在まで、電調審にかかったものを科学技術庁で、電調審の決定を修正したということはございません。
  129. 小平芳平

    ○小平芳平君 柳瀬局長、電調審へ行って、環境庁が、この計画はこういうふうに修正すべきだという意見を言ったことがありますか。あるいはそれによって修正になったことがありますか。
  130. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 実態を申し上げますと、電調審にかかれば、環境庁が意見を述べればそれに制約されるということでありますので、その電調審を通らないといけないということで、事前環境庁にその案を持ってこられまして、それを環境庁の方で審査をいたしまして、必要な意見を言い、修正をし、そういう場合の修正はたくさんございます。それでまあ環境庁が、電調審にかかった場合に意見を言わなくても済むような形になってから提出されるというようなことが実態でございまして、その公式の場で意見を言うことは余りございません。
  131. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうすると、いま、たとえば石川県の珠洲市では、一千万キロワットですか、こういう原発の計画がある、あるいは青森県の下北半島でも大規模の原子力発電所の計画があるということで、非常に住民は、一方ではこういう過疎地域だから原子力発電所賛成だと言う人もいるし、中には反対だと言う人もいるし、局長として一千万キロワットというのはどう思いますか。
  132. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 青森県の下北半島あるいは石川県の珠洲市の原発の計画につきましては、構想があるということは承知しておりますけれども、まだ電源開発基本計画の案件になっておりませんので、内容については私どもまだ承っておらないわけでございます。
  133. 小平芳平

    ○小平芳平君 それはなってないでしょう。だけど、そこへ来てからじゃもう遅いんだ、いつだって。ですから、いままで一千万キロワットというような大規模原発は日本にないわけです。これからつくろうというんですが、そういうことが可能だと思いますか。
  134. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 先ほどちょっと申し上げましたように、事前に審査をするわけでございますが、それは幹事会というのがありまして、そこで関係各省庁がその内容を、出てきたものを見せていただくわけです。その段階で十分に審査をして、私どもの方では、先ほど申し上げましたように、安全性という問題はちょっと科学技術庁の方でお願いしているわけでございますが、自然環境の問題とか、あるいは温排水による水産生物への影響というようなものをまあ検討しておるわけでございまして、いままででも、鹿児島県の川内の原子力発電所等につきましてもいろいろと意見を言いまして、それを内容として取り入れてもらっておるわけでございまして、いまの下北あるいは石川県の問題につきましては、そういう案件が上がってきた段階でよく検討さしていただきたいと思います。
  135. 小平芳平

    ○小平芳平君 では、科学技術庁は、一千万キロワットというような原子力発電所が完全に建設され、運転されると思いますか。  それから、柳瀬局長には、上がってきてから検討するに決まってるんですが、上がってきてからじゃ遅いんです。先ほどのこのアセスメントにしましても、住民の意見を聞くっていうだけですからね。
  136. 佐藤眞住

    説明員(佐藤眞住君) ただいまの一千万キロワットの原子力発電所についてどうかという御質問でございますが、御指摘もございましたように、現在まで日本ではそのような大規模な原子力発電所は、まだ建設した経験はございません。したがいまして、私どもの安全審査におきましては、御承知のように安全審査会というのがございまして、専門先生方約三十人ほどに御参加いただいて審査しているわけでございますが、そういう大規模のケースが出てきた場合には、いろいろ技術的なデータ、特に地盤の問題それから環境に対する重畳効果がございます。一基百万キロでございますと、十基ということで、放出量も十倍になるわけでございますので、その放出量が重畳効果として、周辺にどういう影響を及ぼすかというようなところを重点に審査するということになろうかと思います。
  137. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 計画の内容がわかりませんことには審査のしようがございませんわけで、むしろ計画をいろいろと検討している段階で、環境庁がそこまで踏み込んで行ってやられれば、それは一番いいのかもしれませんけれども、まあなかなか残念ながらそこまでいろいろと体制も整っておりませんで、やはり計画の内容がわかってから、その内容について審査をするというふうな段取りになっておるわけでございます。
  138. 小平芳平

    ○小平芳平君 丸茂長官、ひとつ御答弁してください。せっかくの環境影響事前評価を法制化そうという、地方公共団体ではすでにつくったところもあるし、いま検討中というところがたくさんあって、これでもまた国が後追いになっている。地方の方が先に進んでいる。さて、事前にこの大規模開発について評価しようという手続きを定めようということ自体必要だと私たちは考えております。考えておりますが、先ほど来申しますように、評価するのは、判断するのは事業主体であって、大規模開発をやるその人が、自分がこの開発によってどういう影響があるか、どういう影響がないか、大丈夫かということを事業主体が判断するのだと、しかも住民の意見は聞かなくてはならないとか、公聴会をやらなくてはならないかというふうな義務規定じゃなくて、聞くことになっているという程度のことの考えのようですが、そういうことではちょっと足りないじゃないか、もう少し、せっかく事前評価しようと言うからには、もっと、たとえば公聴会を義務づけるとか、あるいは事業主体が、自分だけが判断すればいいというだけでなくて、もっと検討してもらいたい。
  139. 丸茂重貞

    国務大臣丸茂重貞君) 大規模開発については、すでにむつ小川原については、先生さっき御指摘のように、環境影響評価基準を出しております。したがって、これからも大規模開発については、あの基準を準用してまいりたいという方針は決まっておるわけであります。ただ、事業主体がアセスメントをやるということに、いま御指摘のような問題がありますが、環境庁が実施庁じゃございませんので、どうしてもそういうかっこうで、実施は都道府県でやらせますが、やらせる基準、評価というものは、環境庁が厳然として持っておるつもりでありますので、その際に、実施をやります都道府県が、御懸念の、自分に都合のいいような環境影響評価をやったというようなことがあったら、何回でもやり直しをさせる。それはもう基本的な態度であります。  いま住民参加問題等、具体的にどうかという話があります。これは環境庁がしばしば申し上げておりますように、アセスメント法案の中に、いずれかの形でそういうかっこうを盛り込みたいという意欲は持っておるのでありますが、先ほど局長から申し上げましたように、アセスメント法案、ただいま各省庁と連絡協議会をつくってやっておる最中であります。したがって、環境庁といたしましては、それらの各省庁といろいろ連絡協議会をやる際に、やっぱりこういう点とこういう点とこういう点は環境影響評価をやるために最大重要なことであるというポイントを置いて協議をさせておるつもりでございますので、いまの住民参加の具体的な方法等はアセスメント法案の中に盛り込んで、御懸念のあるところを何とか払拭してまいりたい、こういうつもりでおるわけであります。
  140. 内田善利

    ○内田善利君 初めて丸茂新長官にお伺いするわけですが、長官はお医者さんでもございますし、国民の健康を守るという基本姿勢に立って環境行政をしていただくと、このように考えておりますが、環境行政につきまして、水俣病のある患者が、自分たちは水俣病になった不幸の上に日本に生まれたという不幸を背負っておるということを叫んでおりますが、私は、公害の被害に遭われたそういう不幸な方々が、何とかして国の力によって救われるように、また、水俣病もいまだに治療方法は解明されておりませんし、カネミ油症の被害者の方々もそうですし、そういったことを踏まえて、国民の健康を守るという立場から環境行政をやっていただきたい。そういった立場で、開発についても環境保全ということには努力していただきたいと、このように思うわけです。  最近、公害訴訟が非常に多いわけですが、その動向を見ますと、住民の関心が、従来公害の結果こうむった被害に対する補償を求める、そういう姿から、最近は、公害の発生源になった施設の使用の差し止め請求、あるいは発生源となるおそれのある開発事業計画の中止を求める、そういったものに重点が移ってきております。それから、このことは環境白書にも指摘をしておりますが、これらの差し止め請求の対象が、空港とか鉄道とかあるいは高速道路、港湾、そういった公共的なもの、コンビナート、原油基地、原子力・火力発電所、そういった公共性を帯びたものが非常に多いわけですね。そういった事実を踏まえて、いま行われているそういったことは、人身被害に入る前段階での環境悪化、そういう原因をなくしていこう、除去していこう、そういうことで、明確にといいますか、もう実質的に環境権を請求するという根拠としているものが非常に多いと思うんですが、政府も、最近は、公害行政汚染の後始末から未然防止へと、ただいまも環境アセスメントの質問が出ておりましたが、強調されておりますが、環境庁長官は、この環境権といいますか、住民意識の動向をどのように受けとめ、今後の環境未然防止対策を講じていかれるつもりか、まずお聞きしたいと思います。
  141. 丸茂重貞

    国務大臣丸茂重貞君) ただいま御指摘のありました水俣病の患者さんについては、非常に不幸なことであり、まことに心から御同情申し上げるという気持ちでいっぱいであります。それであればこそ、やっぱりこういう病気を起こした原因は公害がもとであったということですから、環境庁といたしましては、まずそういう病気を出さないような予防的な措置、これが第一だと。不幸そういうことになった場合には、あらゆる措置を講じていまの嘆きを多少でも薄らぐようなことをやってまいらなきやならない、こういう気持ちで実はおるわけであります。  環境権の問題につきましては、これは私どもの解釈といたしましてはこういうふうな解釈をしておるんです。環境権というものは、よい環境を享受し、かつこれを支配し得る権利であると言われておりますが、現在のところ、その具体的な権利内容及び法的性格等については、なお必ずしも明確ではなくて、今後の判例、学説の動向を見守る必要があると存じておるところであります。環境庁といたしましては、大気、水質、騒音等に関する環境基準や排出基準の設定と、種々の公害防止施策の推進によりまして、関係機関と連携して環境保全を図ってきたところでありますが、その意味で、環境権と言われる国民が良好な環境を享受することを可能ならしめるために、行政面から努力を引き続いて払ってまいりたいと、こういうふうに実は考えておるわけであります。
  142. 内田善利

    ○内田善利君 その問題はまた後で詰めていきたいと思いますが、四十五年の公害国会で、公害対策基本法の調和条項が削除されたわけですが、その結果、公害行政の基本理念が変更を見たと思われたわけですが、その後、行政上に具体的にどのように反映されていったかということについては、むしろ私は疑問に思え、あるいは逆行していっているんじゃないかと、こういうことも考えるわけです。  と申しますのは、まず、自動車の排ガス五十一年度規制が延期になったこと、表向きは技術開発が進んでいないということが理由とされておりますが、その後の動きを見ますと、純粋に技術未開発によるものではなく、実際はもう開発されております。まだまだ環境行政がいまだに経済発展との調和を意識して動いていると、そのようにしか見られないわけです。後で申しますが、技術問題に籍口して実質的には調和条項を復活させようとしているんじゃないかと。本来、このようなレベルの技術は経済に従属するものであると思うんです。五十三年度の排ガス規制は予定どおりに実施されるつもりなのか。それと、固定発生源のNOxの総量規制、排出規制、と同時に、五十三年度環境基準の五十五年度の完成があやふやになったもので、五十三年度の総量規制があやしくなってきたと。これもすべて技術開発が、特に脱硝装置等が問題になっておるようでございますけれども環境基準の手直しが通産省あたりではされようとしている、総量規制も延期されようとしている、こういったことを考えてきますと、調和条項もだんだんだんだん後ろ向きになってきたと、そういうふうにしか考えざるを得ないんですが、このNOxの環境基準の達成は目標どおりにいけるのかどうか、また、総量規制は五十三年度達成できるのか、排ガス規制は五十三年度予定どおりに実施できるのか、この辺明確にお聞きしておきたいと思います。
  143. 丸茂重貞

    国務大臣丸茂重貞君) まず、第一の御質問でございますが、経済と環境保全の調和の問題ですが、これはもう四十五年に明確に経済と縁を切ってあるわけです。いまのお話を承りますと、そういう縁を切ったんだが、その後の動き方を見るとどうもそうではなさそうだと、むしろ、このごろの傾向だと復活しそうなんじゃないかという御指摘ですが、その具体例として引かれたのが自動車の排ガス規制ですが、自動車の排ガス規制SO2、NO2あるいはHC、いろいろあります。そのうちSO2はもうお約束どおり規制を達成いたしました。中でも一番むずかしいのはNOxでございます。で、NOxを、いまのお話でございますと、五十三年規制が達成できないんじゃないかとか、いろいろお話がありましたが、移動発生源からの規制はほぼ五十三年までにできる見通しがついております。  ただ、固定発生源の問題になりますと、固定発生源は、大きな工場だけではなくして、もろもろの中小の固定発生源もあります。それから、一体どこまでその工場から出たNOxが空気の中に溶け込んでおるか、いろいろ技術的な難点は確かにあるわけです。そこで、総量規制の問題になりますると——移動発生源、自動車の方はNOxの方が五十三年までにはお約束どおりでき上がると思っておりますが、固定発生源から出る総量規制については、多少いまのところ技術的な問題がありますので、これらの問題は後ほど局長から細かくお答えさせますが、私といたしましては、環境行政をお預かりしておる以上は、いま御指摘のようなことは一切させないという気構えでおります。  なお、通産省がどうこうという御指摘がありましたが、そういうことは一切私の方で承っておりませんので、この点はどうぞ御疑念を晴らしていただきたいと思う次第であります。
  144. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま、大臣からの大綱につきましてはお答えがございましたが、少し細かくお答えを申し上げたいと思います。  まず第一の問題は、この五十三年規制につきましては、これは四人の先生方専門委員会の報告がもう出ますので、それをごらんになっていただけば、非常な努力でこれは進歩をした、世界的に最高のものに入っておるということは、私は自信を持って申し上げることができるというぐあいに思っております。そういうことで、五十三年度規制は乗用車についてはできるという立場に立っています。それから、やはり技術は段階的に発展をしたしますので、いろいろな懸念、そういうものがあるということは否定はできませんが、日本がやった技術は世界でどこもまだやってない。諸外国のメーカーを聞いてみますと、もう日本のはるか後でございます。そういうところにあるという事実も、これまた御理解をお願いいたしたいというように思います。  次は、基準達成の問題と総量規制の問題についての御指摘でございますが、大臣もまず御指摘になられましたように、SOxの方の固定発生源の問題につきましては、日本は世界で最初に脱硫、低硫黄化対策をやりまして、これは高度成長の時代にやってしまっている世界唯一の国でございまして、五十二年度末にはこれはほぼ間違いなく環境基準を達成できるだろうということは、世界的にも現在驚異的な状態になっているという状態でございます。  そこで、問題がNOxの方になるわけでございますが、NOxの方の問題につきましては、先ほど経済の発展との調和ということの御指摘がございましたが、経済のことを考えておったならば一日平均〇・〇二というような環境基準は絶対決めることができなかったのです。これは物すごい基準でございまして、そういうしろものでございますが、これを達成するという段階になりますと、それをやるだけの技術と、やるだけの金が要るということの問題がございますので、移動発生源につきましても固定発生源につきましても、毎年技術評価をやり、その進歩をすべて明らかにし、費用効果の面も検討しながら、何とかして間違いなく達成をしようという努力を現在いたしておるところでございます。で、おくれるかという御議論が一部ございましたが、この点につきましては、前国会で私は、五年から八年という当初の目標は多くの場所では無理であろうということの実情を申し上げました。これはあきらめているわけではございませんで、絶対達成をしようと思っておりますが、無責任なことを担当局長としては言うわけにはいかないということでそういうぐあいに申し上げたわけでございまして、しかし最大限の努力をするには、五年、八年の期間がまだございますから、そこまでは五年八年ということで最大の努力をする、それから五十三年度にはいつ大体達成できるかということをほぼ明らかに打ち出していくということを現在やっているところでございます。そういうことで、この総量規制の方につきましては、一部の新聞に、環境庁がそれをあきらめて放てきしたと出ておりましたが、あれは誤りでございまして、あの新聞を見ましたとたんに私はその新聞に電話をいたしまして、このようなことは全くないということを明白に申したわけであります。SOxと違うむずかしい問題があることは事実でございますが、NOxについての総量規制ということは、五十三年度からできる段階のものをやっていこうという強い決意で現在鋭意準備を進めておりまして、今年度までいたしました調査結果も近く公表し、また、それに基づいて環境庁としてどういう方針で、スケジュールで五十三年度のそういうものをのせていくかということも明確にいたしたいということをいたしておるところでございます。  脱硝につきましても現在技術評価をいたしておりますので、十一月末を目途にいたしておりましたが、どうも十二月の初めまでにかかりそうでございます。それを発表いたしまして、それから第三次規制というものを何とか年内にしたいという努力をいたしたいと思っておりますし、総量規制はその次に五十三年度以降ということで、当初の目標どおり進めるということでやっております。
  145. 内田善利

    ○内田善利君 またこの問題については後ほどお聞きしたいと思っております。  その次に、大分の新産都市、それから工特の基本計画について質問したいと思うんですが、国土庁はことしの七月五日、「新産都市及び工業整備特別地域の基本計画の改定について」というのを出しておられますが、これを見ますと、「開発すべき工業の業種及びその規模等に関する工業開発の目標の大綱」、二番目に、「土地利用の大綱」、三番目に、「施設整備の大綱」などを明記するようになっておるわけですね。なっておりますね。ところが、環境保全の目標が全然明示してないわけです。一体、環境の開発については、あるいは環境保全目標についてはどのように考えておられるのか。これは明らかに開発優先の姿と見るわけですが、こういった新産、工特地域の環境保全の目標はどういうレベルを想定しておられるのか、まず国土庁にお聞きしたいと思います。
  146. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 新産計画につきましては、関係の財政特例法が五年延長されたこともございまして、ただいま改定計画を作成中でございます。まあこういったことになりましたのは、先生もよく御承知のとおり、一応計画自体は大体順調に進んできておったわけでございますけれども、工業出荷額あるいは人口、そういったものがまだ不十分な地域であると同時に、生活関連施設といったような問題がまだおくれておるということもございまして、そういったものを補完し、むしろ今後は、いままでの反省の上に立って、そういった生活関連施設等を踏まえた環境保全ということも考えた形での新しい計画をつくっていこうということで、ただいまお示しのございましたように、七月五日、この基本計画の改定についての指示をしたわけでございます。それにつきましては、法律の十一条にございますような事項のほかに、ただいまお話のございましたこの環境保全につきましては、特にこの法定事項ではないわけでございますけれども、この指示の中に、環境保全等について特に明白に記述をするように指示をしておるわけでございます。各地区においてこれまで講じてきた環境保全対策及び今後講ずる必要のある環境保全対策について地区の実情に即して記述すると、また、必要に応じて防災対策産業廃棄物処理対策等についても触れるようにということを書いておるわけでございますが、ただ、どの程度のレベルとたしか最後に言われたと思うのでございますけれども、これについてどの程度記述するかということにつきましては、それぞれの地区の事情もございますし、また中身についてはそれぞれの関係省庁もあるわけでございますから、いろいろとそういった方面の意向も聞いて、それぞれの地区で県の計画としておつくりになる際に整理をしてこちらに持ってこられるだろうというふうに考えておるわけでございます。
  147. 内田善利

    ○内田善利君 地方自治体は国土庁に基本計画を出しているわけですね。地方自治体から出ていますね。
  148. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 改定計画についてはいま作業中でございまして、御承知のように、県の計画は、新産業都市建設協議会というものがそれぞれ各県にございますが、そこの議を経て県の計画として正式に申請されるということになっておりまして、公式のものはまだ私のところには届いていないわけでございますが、特定のところを除いて、かなりなところが具体的に案を持って相談に見えておることは事実でございます。
  149. 内田善利

    ○内田善利君 相談に見えたときの判断基準環境保全の判断基準はどうなってますか、国の判断は。
  150. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 御承知のとおり、この改定計画というのは、非常に個々の具体的なものを羅列しておるというよりも、むしろ整備についての基本的な大綱というものを書いておるわけでございます。計画そのものがそういった形で出されておるわけでございまして、個々の施設ごとに積み上げて書いてあるわけのものでもないわけでございます。したがいまして、その中身について施設ごとにどうこうといったようなことではございませんで、全体の基本的な姿勢というものを出してもらうということになろうかと思います。しかし、その中身については、今後出されてまいります場合に、それぞれの関係省庁があるわけでございますから、やはり今後の改定作業を進める上においてはこういった点が必要であるということについては、それぞれの省庁の御意見も聞いて整理をしていくということになるわけでございます。
  151. 内田善利

    ○内田善利君 この環境保全等という、いま読まれたところを見ますと、具体的な目標とか、そういうものはないわけですね。そして、関係省庁がやる、こう言って逃げておられるわけですが、大分の今度の八号地の問題ですね。非常に現地では問題になっているわけですが、また、昭和四十八年ごろでしたか、問題になって中断しているわけですね。そういう八号地の問題について、環境保全対策といいますか、先ほども話題になりましたアセスメントですね、これはまだやってないのですが、この点についてはどのようにお考えですか。
  152. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) お示しのございましたように、いわゆる八号地の埋め立てにつきましては、いろいろな事情から中断をされておるということでございまして、今後大分において計画をつくられる際にもそういったことを十分踏まえて検討されておるわけでございますが、私どもとしてもいまのような事情がございますので、実は大分の計画につきましては、ほかよりもかなりおくれておりまして、まだ内々に事務段階で折衝してもらっておるという程度でございまして、まだ最終的に固まった案はないようでございます。それが固まり次第協議会にかけてこちらに持ってこられるということになろうかと思いますが、その中身につきましては、いまも申し上げましたように、この基本計画そのものがその中に一々の個所や何か挙げてやっているわけでございませんで、たとえば工場用地につきましては、臨海部等に内陸部とあわせて約千二百五十ヘクタールの土地を造成するといった程度の書き方であるわけでございます。そういったものを基礎にいろいろなものを想定してやっておられることは事実でございますけれども、一々のものについて書いてあるわけでございませんので、この点についてどうするというような具体的な問題は、今後事業を実施されるに当たって、たとえば港湾計画、埋め立て計画というものを実施されるについては、いろいろとそれに応じた環境アセスメント等も必要に応じてなさるであろうと思いますが、基本計画の中で個々にこうであるというような具体的なことを書くということは、このスタイルから見ましてもむずかしい形になろうかと思います。ただ、私どもとしては、環境保全ということはきわめて重要であるから、特にいまの八号地等につきましては前々からのいきさつもあるので、よく十分地元のコンセンサスを得た上で調整をして持ってきていただきたいということを前から申し上げておる次第でございます。
  153. 内田善利

    ○内田善利君 いま言われるとおりだと思うんですがね。何もやってないわけですね。環境アセスメントを何もやってないわけですね。いまおっしゃったとおりです。そういうことでありますが、計画段階で環境アセスメントはやらなければ意味がないと思うんです、計画段階で環境アセスメントをやらなければ。この点はいかがですか。
  154. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) いろいろな各種の建設事業を実施いたします場合に、環境保全に留意していかなければならないことは当然でございますし、私どももそう考えておるわけでございます。したがいまして、実施に当たっては必要に応じていろいろとアセスメント等もしながらやっていかれるわけでございましょうが、たびたび申し上げておりますように、この基本計画自体は非常に大きな大綱だけが書いてあるわけでございまして、具体的な事由がございませんので、それについて一々アセスメントを実施をしてということにはまいらない。それぞれの省庁と相談をして、事業を進められる段階において、必要に応じてアセスメントはやりながら、十分環境保全に留意して進めていかれるべきものだと私は考えますけれども、いまの大綱的なものの中にという形で、計画をつくる際に将来の予想を立てた形でのアセスメントをやるということは、いまの段階ではなかなか容易ではなかろうというふうに考えておるわけでございます。
  155. 内田善利

    ○内田善利君 昭和四十七年の六月六日の閣議了解事項は、計画の立案の段階で環境アセスメントをやるべきだと、こういうことになっているわけですね。「計画の立案」ということになっておりますが、自然環境破壊環境保全上重大な支障をもたらすことのないよう留意するものとすると、こういうふうになっておりますが、これとはそごしませんか。
  156. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 大変字句にこだわったようなことを申し上げて恐縮でございますが、四十七年の閣議了解事項は「各種公共事業を実施しようとするときは、計画の立案、工事の実施等に際し」云々というようなことでございまして、やはり実施する際の具体的な条件に基づいてのいろいろな検討というものが必要であろうという前提で、もちろん実施計画をつくるときは当然ながら、工事の具体的な実施に当たっても十分環境保全に留意しろというようなことであろうかと思うのでございまして、私どものような非常に大筋といいますか、非常に大まかな全体的な大綱を書く段階においては、一々の施設が全部明示されておるわけでもございませんので、それについて一々の防止策ということを書くということはなかなか容易ではないというふうに理解しておるわけでございます。
  157. 内田善利

    ○内田善利君 大分県の新産都市の二期計画の八号地の埋め立てなんですが、これは先ほどもお話ししましたように、四十八年に分離中断されております。その理由としては、地元のコンセンサスがないということ、それから漁協が混乱しているということ、漁協の混乱ですね。三番目が環境保全上問題がある。この三点が挙げられておるわけです。その後、四十八年、四十九年、五十年、計画の一部改定があって、六号地、七号地は環境アセスメントがなされておるわけですね。ところが、八号地はまだされていないわけです。そのいきさつを、運輸省来ておられますか——伺いたいと思います。  それと、今後の新産、工特に八号地が盛り込まれておるわけですけれども、国土庁はこの環境アセスメントはどう考えておられるのか、この点ですね。
  158. 小池力

    説明員(小池力君) お答えいたします。  大分港の港湾計画でございますけれども昭和四十五年に港湾計画を立てまして、従来、昭和三十七年あるいはそれ以前、昭和三十四年と港湾計画がございますが、いま先生指摘の八号地を含めましての工業用地造成計画、あるいは公共埠頭の整備計画は、昭和四十五年に港湾計画をつくってございます。それから先生指摘のとおり、四十八年になりまして、主として七号地につきましての計画の一部変更がございます。まず最初の四十五年の港湾計画の段階でございますが、それにつきましては大気汚染防止対策あるいは水質汚濁防止対策、騒音対策等、環境保全対策を県の方で立ててございます。  それから四十八年の港湾計画の変更に際しましては、これは先生指摘のとおり、七号地でございますけれども大気汚染、水質汚染、土地造成に伴います海流変化の予測、あるいは騒音悪臭の予測対策といったようなものを検討してございます。
  159. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 先ほども申し上げましたように、まだ大分県からは、協議会を経て公式にこちらへ出されておるわけではございませんので、中身がどうなっておるということは申し上げられる段階にはございませんが、私どもが聞いておるところでは、いわゆる八号地等も含めた形で県としては検討しておるというふうに聞いているわけでございまして、そういった意味では県の方等の意向を途中で聞いてみますと、八号地についてはそれを含めた形で検討はしておるけれども、これは具体的にその港湾計画に従って埋め立て等をするという場合においては、十分環境アセスメントも考えてしながら進めるんだというふうなことも聞いております。私どもの方にもいずれ来るわけでございましょうが、私どもの方としては、計画を持っておいでいただくときは、十分そういったいままでの八号地にまつわる経緯というのを踏まえて、地元のコンセンサスを得ながら、環境保全についての姿勢というものを明確にした上でひとつ持ってきていただきたいというような要望をしておるわけでございます。
  160. 内田善利

    ○内田善利君 局長はね、大分は御存じと思いますけれども、NOxの環境基準もほど遠いんですね。別府湾は赤潮がどんどんふえているわけです。そして大分には移転都市まで、三佐とか、地区には移転問題が起こっている。その上にさらに佐賀関の方向では、ほんの山の下に八号地があるわけですね、予定地が。そういったところで大変なところなんです、あそこの地域は。そういうところで八号地の環境アセスメントもまだやってないんです。私は佐世保の三菱重工業の風洞実験のところに三回も行きまして見ております。また通産省の、こちらの科学技術庁の方の風洞実験も見ておりますが、大分の方はやってないんですから、これは私が確認しておきます。また、大分の方もやってないということは知っております。そういうことなんです。それで、この八号地も含めて今度の計画の中でやろうとしておるわけです、それ御存じないようですけれども。この新産、工特法の指定地域が二十一地域にあるんですね。そのうちの二十地域がすでに公害防止計画の策定あるいは策定中なわけですが、こういった公害防止計画が策定されている、あるいは策定中である、こういう公害防止計画の環境保全目標をまず達成することが先決問題じゃないかと、そして開発計画はこの保全目標の達成を見きわめて、その上でその是非を判断すべきじゃないかと、このように思うんですけれども、この点は環境庁長官どのようにお考えでしょうか。
  161. 柳瀬孝吉

    政府委員(柳瀬孝吉君) 新産都市の基本計画の改定につきましては、これは八号地問題が当然いろいろと問題になると思うんでございまして、従来の経緯から言いますと、まああれを中断している理由の中の大きな問題が環境アセスメントの実施でございますから、埋め立て計画の実施に際しましては、これはもう当然十分なアセスメントがされなければ中断を解除をするということは適当でないというふうに考えておるわけでございますが、新産都市の建設促進法に基づきますこの基本計画の改定にそれをどう対処をしていくかということは、これはこの法律の所管庁である国土庁が御判断をしていただく問題と考えております。  ただ、そういう計画が出てきた場合には、私どもといたしましては、やはりこの環境保全上の必要な措置がとられているかどうかということを十分慎重に検討して、この御意見を国土庁の方に申し上げたいというふうに考えておるわけでございます。
  162. 内田善利

    ○内田善利君 環境アセスメントも、本当にしっかりやらないと開発の免罪符になりかねない。いままで、四日市にしても鹿島にしても水島にしても、環境アセスメントなるものはされていたわけです。ところが、環境アセスメントをやった上で開発されたけれども、あのように公害が発生しているわけです。ですから、今後決められる環境アセスメントというのは、相当強力な住民の参加のもとで、住民の意思を十分踏まえてやらなければもとの木阿弥になりかねない、そのように思うわけです。  済みませんが、もう一問質問したいのは、地元住民のコンセンサスについてお伺いしたいと思うんです。  国土庁は、昭和五十一年の九月二十五日の佐賀関町の町議会で行われました基本構想、佐賀関町の基本構想の可決、これは非常に重く見ておられるわけですけれども、その内容を聞きますと、反対派議員の質問をさえぎって、そして採決が強行されております。これは前にもそういうことがありまして、自治省の見解で、それは確かに自治法百七十六条の四項違反の疑いがあると、そういう見解が出ておるわけですが、また、今回このような問題が起こっておりますけれども、自治省はこの事実関係をどのようにつかんでおるのか、もしつかんでおられますならば、その見解をお伺いしたい。  また、国土庁の方にも見解をお伺いしたいと思います。
  163. 大橋茂二郎

    説明員大橋茂二郎君) ただいま先生から御指摘になりましたように、佐賀関町の基本構想の議決に当たりまして、議長が、質疑ありという挙手があるにもかかわらず質疑、討論を終結して強行採決を行ったということで、一つの問題の提起があるということでございますので、県を通じまして一応事情を聴取いたしましたのですが、県からの報告によりますと、同町の議会の議事録に徴しますと、質疑の有無、あるいは討論の有無というものを議会で諮りまして、その後におきまして議長が採決をし、可決ということの旨を宣したということの記録がございます。したがいまして、会議録を見る限りでは、その議決の効力ということについては一応問題ないというようなことを県として申しているわけでございます。ただ、この議事録以上のことになりますと、何分にも事実問題でございますので、ちょっと自治省の段階においてこの問題についての判断をするということは困難であるかと思います。  それから、先ほど申されました四十九年の場合でございますが、これにつきましても聞きましたのでございますが、四十九年の場合につきましては、質疑、討論という手続を全然しないでおいて採決に移る、こういうことでございますので、これは明らかに会議規則に違反しているということで再議に該当するという判断を県が示したわけでございます。本件の場合と若干事実関係を異にするのではないかというふうに考えております。
  164. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 佐賀関町の議会の議決の実情については、具体的な問題でございますので、私ども新聞等で見る程度の事情しかわからないわけでございますが、それはさておきまして、私どもとしては、こういったことは地元のコンセンサスが必要であるという前提のもとに、十分その計画を立てておられる県に対してコンセンサスを得る努力をしてもらうように頼んでおったわけでございます。その前提となるものはいわゆる地元のコンセンサスということでございますから、いろいろな関係方面があるだろうと思います。  ただ、本来佐賀関町の地先の問題でもございますので、議会における基本計画の議決というものは非常に大事なものだというふうに考えておるわけでございまして、結果的には大多数の議員の方が賛成しておられるということでございまして、地元のコンセンサスというものが、議決が全部であるとは私申しませんけれども、非常に大きな部分において合意があったというふうに見ておるわけでございます。ただ、その後もいろいろと問題があるという陳情等は受けておりますので、なおそういった点については、十分県としては関係者の方々とひとつ相談をして、円滑にいくように努力をしてもらいたいということは申し述べておるところでございます。
  165. 内田善利

    ○内田善利君 最後に長官にお聞きしたいと思いますが、開発と住民のコンセンサス、それと環境アセスメントの関係について所見をお伺いして私の質問を終わります。
  166. 丸茂重貞

    国務大臣丸茂重貞君) 先ほどすでに概要は申し上げたつもりですが、開発と住民のコンセンサス、環境庁といたしましては、やはり地域住民の意向を十分承らなければ円満な事業の発展はとうてい望めないんですから、これは従来もそうでありましたが、今後も重視してまいりたい。しかし、いまのところは制度上ございませんので、できたらひとつアセスメント法案の中にこの点を盛り込みたい、こういうふうに考えておるわけであります。  それから開発と環境保全関係は、もう冒頭申し上げてありますとおり、やっぱりいかなる開発も環境保全に優先するものじゃないと自然保護憲章にもありますが、環境庁といたしましてもそういう立場を原則的にとらなくちゃならない、そういうふうに考えておるわけでございます。
  167. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、きょうは水俣病についてお聞きをしたいと思っております。  で、きょう冒頭に丸茂新長官が、公害行政を進めていく上で、国民の健康の保護環境保全を目途として、しかも国民の声に率直に耳を傾けてということで所信をお述べいただいておりますので、まあ大変意を強くしてお伺いをしていきたいと思っている次第です。  水俣病が発見をされましてからすでに二十年になり、厚生省公害認定してからすでに八年、で、歴史的な水俣裁判の原告の勝利の判決が下りましてからもすでに三年半を過ぎるという状況になっております。しかしながら、水俣病の実態というのはいまなおきわめて深刻であります。で、私はたまたま昭和四十八年に第三水俣が問題になりましたときにも、現地に院の現地派遣として参りましたし、さらにまたことしの夏に、実は水俣病を熊本県と鹿児島県と、そうしてあわせて新潟県も含めまして調査をしてみたわけでございますけれども、そういう結果、やはりその深刻さというのを改めて認識をいたしたようなことでございますし、四十八年に熊本へ参りましたときと比べましても、基本的には解決をされていないという点で、きわめて重大な問題だというふうに認識を一層新たにした次第でございます。  で、昭和七年から実に三十六年の長きにわたって、チッソ水俣工場がメチル水銀を大量に排水として不知火海、また水俣湾に排出をし、たれ流していた。そしてその結果、海が汚れ、しかも魚が死に、それを食べた住民が、まあひどい人は命を奪われ、多くの人たちが中枢神経をむしばまれ、大変な苦しみに突き落とされているというのが実態でございます。で、いまそういう観点で熊本、鹿児島両県にまたがる状況を見てまいりますと、汚染された不知火海の沿岸を見ますと、熊本県側の住民というのが二十七万人、鹿児島県側が六万人、合計三十三万人の人口がおるわけでございます。そういった三十三万人の中での住民の検診というんですか、汚染にさらされている住民でございますけれども、検診をやられているというのはまだ四分の一そこそこ、なるかならないかというふうな状況でございます。ところが最近、私ども現地でも伺っておりますと、水俣市と芦北郡の三町が行った調査を見ますと、三人ないし四人に一人が健康でないという答えをしているんですね。これは単なる聞き取り調査のようでございますけれども。その中の多くが、手がしびれる、それから物忘れがひどい、それから体がだるくて大変疲れやすいなどと、水俣病の症状ですね、水俣病患者が持っておる症状、こういう症状を訴えているのであります。  で、水俣市と津奈木町の山間地住民を対象にした検診結果でも、水俣病の疑いがあるとされた人たちが、水俣市で二百十六人、それから津奈木町では八十一人おられるというふうなことが発表をされておりますし、すでに沿岸住民だけではなしに、有機水銀の被害というのが山間部の住民に至るまで影響を及ぼしてきているということが明らかになってきているわけでございます。したがって、そういった点でどうしてもこれは不知火海沿岸全体の住民の健康調査、こういったものがやられますと、これはもう恐らく有機水銀による被害の全貌というのが明らかになるであろうと思うわけでございますが、これがいまやられていないという点で、まあ実態が、全貌が明らかになってないということではないかと思いますが、これは何としても全貌を明らかにしていくということが行政の重要な責任ではないかというふうに思うわけでございます。  まあ、状況から言いまして、私、後具体的にお聞きしていきたいと思いますけれども、一方では全貌が明らかになっていない、しかも片方水俣病の認定業務というのが大変おくれている。これはもう在来からかねがね言われ続けてきておるとおりでございますが、ずいぶんおくれている。これまでに水俣病の認定申請をした人の数というのは熊本と鹿児島を合わせまして五千三百二十四名ですね。そのうち認定された人がやっと千六十四名。その認定患者の中で亡くなられた方が百七十九名。で、棄却になった方が三百六十九名で、保留ということになって認定をされなかった方が九百三十名。で、まだ、出してはおるけれども審査をされないで放置をされているという申請患者というのが実に二千九百六十一名。しかも熊本だけでも毎月平均五十名ぐらいの新しい認定申請の方が出てきている、こういう状態でございます。  そういう状況の中で、なぜそれでは、これはもう従来からかねがね言われてきていることですが、依然としてこういう認定業務の困難な事情というのは一体どうなっているのかという実情でございますけれども、これはもう当局は百も御承知のとおりでございましょうが、検診については、月に四十人しか検診ができない。で、認定審査というのは月に八十人、それぐらいはできると。まあこういう状況でずっといきますと、保留ということでもう一遍認定審査にかかるという人もそれに加わってくるので、このままでいきますと審査が終わるまで二十年ないし二十五年かかる、これが県の公式見解として言われているわけでございます。したがって、加害企業によって被害を受けた被害者たちは死ぬまで待てと言うのかということで、怒りの声が上がっているというのは当然でございます。そういう点で、まあ世界最大と言われた、特にメチル水銀の中毒というふうな公害による中毒症状というのは、これはもう世界じゅうでわが国だけだというふうに言われているような重大な公害でございますが、これがこういう実態で、しかも数年来ほとんど進まないで、同じ困難を抱えたままで放置されているというのは、まさに私はわが国公害環境行政の恥だと思うんです。どうしても早期に解決をする必要があろうと思うわけでございます。  そこで最初に——後、私は一つ、ずつ具体的にお伺いをしていきたいと思いますが、最初に、こういった客観的な情勢、実情を踏まえまして、水俣病対策をどのように進めようとしておられるのかですね、これは総論的にひとつ長官の決意のほどを最初にお聞かせをいただいておきたいと思うわけでございます。
  168. 丸茂重貞

    国務大臣丸茂重貞君) 水俣病の患者さんにつきましては、先ほども申し上げたとおり、まことにお気の毒だと存じておりまするし、環境行政の上から言うと、はなはだ残念な事態でございます。  いま御指摘の不知火湾の沿岸三十三万人の健康診断を早くやれと、こういうことでございますが、これはすでに熊本県が実施しました健康診断をいまのところ基準にしていろいろ対策を考えておるわけであります。三千三万人の健康診断をやるということになりますと、先生専門家だから御承知のとおり、なかなか技術者がおらないという点なんですね。水俣病というのは特殊の疾病ですから、これを的確に診断できるという技術者は残念ながらなかなか医学界にもたくさんおらない、これらが物理的な障害にはなっているだろうと、こういうふうに思います。ただ、物理的障害があるからといってそれを手放しにするという意味じゃありません。したがって、熊本県当局をいろいろ鼓舞激励しまして、できる限りそういう方向で何とかいたしたい、こう思っておるわけです。  それから、いまの患者さんですが、いま私どもは、環境庁としては全力を挙げて検診と、それから認定作業ができる限り能率を上げるようにというので一生懸命やっておりますが、これもいま申し上げた理由がやっぱり同じ理由で出てまいりまして、御指摘のように、まことに遅々たるものだという印象を与えているだろうと思いますが、それぞれ具体的にいろいろ突っ込んでまいりますと、やっぱり認定能力を持つところのお医者さんが非常に少ない。いまほとんど熊本医大にお願いしてありますが、あそこは地元ですから、特に水俣病に関しては研究が進んでいるところですから、大学としては比較的専門家が多いところです。そこで、熊本医大だけではとても技術者がたくさんありません。全国的にそういう技術者をと思いましても、なかなかほかの大学じゃ水俣病を専攻している大学生はそうたくさんありませんものですから、どうもはなはだそういう点は残念だと思っておりますが、実情はそういうことなんで、一生懸命やりたいという気持ちはあって、水かきの鳥じゃありませんが、水の下に入っている足は一生懸命かいているのですが、上はなかなか思うように進歩していないと、こういう印象を与えるのは大変残念だと思うので、引き続き努力をさせたい、こう思っています。  なお、細部は局長から答弁させます。
  169. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まあできる限り努力をしてということの御意見でございますので、少し具体的にお尋ねをしたいと思うのですが……。  私は、熊本、鹿児島、それから新潟を調査をしてみまして、特に公害患者、公害健康被害者の救済に取りかかる一つの大きな違いを発見をしたんです。その大きな違いというのは、熊本では水俣を中心に芦北郡を含めてというあたりの住民検診なんですが、新潟では阿賀野川流域を含めて全体の住民検診というのが二回ぐらいやられているんですね。こういうやり方をやっておるか、おらないかというふうなのが、非常にやはり被害者を救済していく上で大きな違いがあるなあということを私なりに発見をしたわけでございますが、そういう点で、熊本、鹿児島というのが、長官もお認めのように、なかなか思うようにいかないと、思うようにいかないということは被害者が救済されずに放置されている、こういう状態を何とかして前進をさせていきたいということを考えるわけです。長官、確かに健康診断、簡単にやれと言うけれどもそう簡単なものじゃないんだと、あんたわかるだろうとおっしゃったんですが、私もそうだと思う。で、少なくともやれることをやるという立場をとったらどうだろうか、その一つをまず考えてみたいと思いますが、少なくともその沿岸住民に対して聞き取り調査、もう二次、三次とか、ずいぶん手間暇がかかってそんなの簡単にできないということではなくて、これは専門家が指導して一定の人数を使えばやり得る可能性の十分あるやり方での聞き取り調査といいますか、そういったものの住民の状況調査というふうなものだけでもせめて実施できないだろうか、このことを考えるわけですが、そういうことがやはり被害の全貌を明らかにしていく上で大きく寄与する基礎データをつくっていくものになるのではないかというふうに思いますが、それについてはどうでしょう。
  170. 野津聖

    政府委員(野津聖君) 聞き取り調査一つ方法ではないかと私も理解するわけでございますが、やはりこれらの聞き取り調査の後に参ってまいります少なくとも一次、二次、三次というふうな形のものも踏まえての形での聞き取り調査というのがありませんと、いわゆる疫学的な問題としては非常にむずかしい面も出てくるんではないかというふうに思っております。ただ、先ほど御指摘もございましたように、水俣市あるいは芦北郡の医師会が市あるいは町の委託を受けまして、いわゆる市民あるいは町民の健康というものを中心としそ形での医師会活動、地域におきます医師会活動という形で、あるいは地域医療という立場で進められておるということにつきましては、私はやはり健康全体の問題として取り上げていく方法としては非常にいいことではないかというふうに考えておりますし、また、その結果につきましては実は私ども詳細にいただいておらない点があるわけでございますけれども、そういうのを踏まえながらいろんな対策を構じていくことも大事なことではないかと思います。  一つは、昭和四十六年度以降、一応熊本県といたしましても健康調査は実施はいたしているわけでございます。そういうふうな流れの中でございますし、また、実は四十九年に一斉検診という形で九州内の医師、あるいは医科大学の医師、あるいは国立病院の医師を中心としましての一斉検診という計画が実はあったわけでございまして、実施しましたところ、やはり非常に大事なことであります患者さんと医師との間の信頼関係というものが余り十分でなかったという問題、さらには、これは検診を担当されました医師の方々が水俣病に対します十分な知識を持っておられなかったというふうなこともございまして、現在私ども、これらの検診あるいは健康調査等はやはり十分な研究を積まれております熊本大学中心に実施されるのが一番いいのではないかというふうにも考えているところがあるわけでございます。したがいまして、この聞き取り調査も大変いい御意見をいただいたわけでございますけれども、やはり一つのデザインあるいはプランニングというものを十分詰めておきませんと、聞き取り調査だけで終わるということになりますと、次の対策という問題も含まれてくるのではないかというふうに私ども考えておるところでございます。
  171. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、それは当然次の対策が出てくるのはあたりまえですが、しかし何もやらぬよりはましだと。で、少なくとも住民検診に政府が費用を出して、一遍そういうことをやらしてみる、せめてそのぐらいのことをやってみるというふうなことをやることは大事だと思うんです。これは私が申し上げなくてもそのことの担当の皆さん方はよく御承知のように、特に公害患者、水俣病患者もそうですけれども、いわゆる生活の中での障害度というんですか、そういうものというのは、これは本当に丁寧に、その家庭内の家族の一人一人の障害度というのは家族が一番よく知っているわけで、そういうものから聞き出していくというふうなことがきわめて大事なわけですね。そういうことさえもまともにやられていないというところに問題があると私は申し上げておる。だから、その辺のことぐらいはせめておやりになれば、その中であと二次、三次の検診を将来計画としても立ててやっていくという一つのプランニングのベースをつくるということができるんじゃないだろうかと、せめてそれぐらいはやられたらどうですかというのが意見なんですが、どうもやると言わぬですけれども、やらぬですか。
  172. 野津聖

    政府委員(野津聖君) 私、ただいまの沓脱先生の御意見につきましては、一つ方法であろうというふうに考えるわけでございます。ただ、その調査等につきまして、いわゆる水俣病であるかないかという形での判断の問題ということになりますと、相当専門的な知識を持った形で処理をしなければいけないかと思います。それから、また県の対策あるいは県の現在の状況あるいはそれらを担当していただく方の状況等も考慮しなければならない問題かというふうにも思うわけでございますが、ただ、御指摘もございましたように、現在地域医療という面から水俣市、芦北郡の医師会がそのような調査もしておられるというふうなことでございますと、一つ方法論として、各地域におきまして同じような方法も考えることもできるのではないかというふうに思っております。いずれにしましても、一応県の状況等も十分把握しながら、また県の能力等も考えながら、県とも相談しながらいまの御提案につきましては対処してまいりたいと考えております。
  173. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 医師会がやったからそういう方法でということなんですがね。たとえば医師会に協力をしてもらうというのだったら、環境庁が計画を立てて、それで県を指導して医師会の協力を得るとか、やり方はいろいろあると思うんですよ。やるという腹を決めるのか決めないのかということがきわめて重大な問題だというふうに私は考える。  そこばっかりで時間とっていられませんから、次に申し上げたいのは、環境庁の姿勢というのが非常に末端行政の中では重要な影響を与えるということ。いまの問題もその一つですがね。たとえば、いまごろになってまだ、自分は水俣病と違うかなあと思っても、どないして認定申請をしたらいいのかわからぬという人がずいぶんおるというのですね。これを聞いて驚いたんですがね。そういう状況でほっといたんじゃ、やっぱりよくないと思うんです。少なくとも一人残らずの被害者を救済するというのが当然法のたてまえでもあり、これは法の審議の過程で国会でも附帯決議でもうたわれた本院の意思でもあるわけですが、そういうことをやるための認定申請の仕方も知らぬというようなことでは話にならぬのです。これは少なくとも環境庁が県に指導して、町政便りとかあるいは説明会とか、せめてそういうことでもやって、余りむつかしくないことで少しでもお役に立つことぐらいはひとつ督励をして行政指導でもやって、徹底をさせるというようなことをやったらどうですか。
  174. 野津聖

    政府委員(野津聖君) 認定申請の方法につきましての周知徹底が足りないという御指摘でございますけれども、現在におきましても、各市町村、いま御指摘もございましたが、広報紙等を通じまして周知徹底を図っているというふうな実態でございますが、いま、まだ十分でないという御指摘もございましたし、先般私、患者さん方とお話し合いしましたときも、どうもいろいろ別の意味もございまして申請を出したくないとかいう方もおられるようですけれども、そういう方にも、こういう申請を出されるということはということも含めまして、申請の方法等につきまして周知徹底が図られるようにしてまいりたいと思っております。
  175. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間の都合がありますので、幾つか申し上げたい点があるんですけれども、もう一つの、一番先ほども課題になりましたが、三千人ぐらいの方々が認定申請をして、いまだにイエスともノーとも結論がもらえないという方々が置いてきぼりを食らっていて、このいまのテンポでいったら二十年も二十五年もかかるというのは、県が公式に言わにゃいかぬという状況になっておりますが、この認定業務ですね、これを推進していく上でやはり幾つかの隘路があるわけですから、その一つ一つを、県の業務だからということで放置するのではなくて、せめて環境庁協力をしながら解決を一つ一つしていくということがきわめて大事ではないかというふうに私は思うわけです。  そういう点でちょっとお聞きをしたいのは、その一つは、まず第一に検診体制が弱いわけですね。月に四十人しか検診できない。それから認定審査は八十人できると、こうなっているんでしょう。だから、出してあるけれども検診を受けられないので認定審査会へ出してもらえない。しかも、認定審査が八十名だというふうなことですから、これは当然どんどん審査会ははけていくわけです。ところが検診を受けた人の数が足らぬようになってきて底をついていっているというふうな状況になるんですね。これを何とかして解決をしなければ、これは何としても迅速に被害者を救済するということ、この法の精神の趣旨を生かしていくということもできないわけですね。ここがやはり一番緊急課題だと思いますが、これは長官どうですか。これは困難だというふうに言われているだけですが、もう少し具体的に申し上げて長官の御見解を伺った方がいいかと思うんですけれども、検診が追っつかないということの最大の理由というのは、これはもう部長は百も御承知でしょ。検診センターの医者、常駐の医者が一人しかおらぬというんですね。それで、大学から大学の仕事の暇に来てもろうてやってもらうというふうなことが続いておるので片がつかぬというわけですが、これ何とか解決する方法はありませんか。
  176. 野津聖

    政府委員(野津聖君) ただいま認定にかかわります検診の御質問をいただいたわけでございますが、御指摘ございましたように、現在大学の先生方をお願いしまして検診を行っているわけでございますが、大体一カ月間の処理能力が四十名前後ということになってまいりますし、また認定審査会におきまして保留になりました患者さん方の再検診ということも実は入ってくるわけでございまして、熊本と水俣の汽車で約一時間半という距離というものもございまして、非常にむずかしい問題がございます。ことしになりまして、一人やっと検診センターに常駐医を確保することができたわけでございます。ただ、御専攻は耳鼻咽喉科という形の先生でございますけれども、これによりまして部分的な促進は図られたわけでございますけれども、これで毎月の認定審査会にかかります数は八十、しかも検診できます数が四十前後となりますと、いわゆる認定審査会にかかってくるということ自身がむずかしくなる面もございまして、やはり検診体制というものを整備するということが大事なことではないかと私どもも考えているところでございます。
  177. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、大事なことはわかっているんですよ。でね、私どもが四十八年に行ったときにも熊本の沢田知事が言っておられましたけれども、結局検診センターあたりの常駐医を何とかして確保したい、せめて五、六人でも。そういうことについて努力をしているけれども自分のところだけではどうにもならない、だから環境庁でもひとつぜひ御協力をいただきたいということを私ども直接伺いました。その後も文書でもってずいぶん要望がたくさん出されている。それで、これは時間の都合があるから私申し上げておきたいと思いますのは、すでに沢田知事から要望をされて、しかも知事は現地の住民からやいやい言われるというふうなこともございまして、本渡保健所ですか、保健所におられた先生を何とか一人常駐の医師に回しましょうと、こういうことで話ができたんですね。その先生がいま、いわゆる水俣病に詳しくないから熊本大学で二、三年研修をして、そうしてそこへ回しましょうということで研修に行っておられる先生がおるんですね。で、せめてその先生でも早いこと検診センターへ行ってもらえないかと、これは住民にしたらたまらないから。その先生、四十八年か四十九年でしたかな、四十八年ごろにその話が出て、四十九年の初めぐらいから行っているんだから、もうかれこれ三年近いんですね。だからその先生に話して、せめて一人でもふやしてもらえないかというふうな要望が出ているんですよ。そういう実情、たとえ小さなところでも隘路を打開するというふうなことが、やはりいま何よりも切実に求められておるわけですが、そういう点について、環境庁、ひとつ県とも相談をして、せめてその先生だけでも実らせるというふうな努力というのはできませんか。
  178. 野津聖

    政府委員(野津聖君) 現在、県の公害部に医師が配置されておりまして、この医師につきましては、水俣病対策業務の中から医療面に関しますいろいろな仕事を実施いたしております。患者の医学的調査等につきましてもこの医師が実施しておるわけでございまして、ただ、この医師につきまして、そのまま検診センターに行く予定であったかどうかにつきましては、私は聞いてないところでございますけれども、現在も研修を続けながら水俣病に関連の医療面という形で、この医師は一生懸命努力をしながら、仕事をしながらまた研修を受けているというふうな状態にございますわけでございまして、この医師その方自身について検診センターに行くべきであるとか、べきでないということは、御本人の意思もあるわけでございましょうし、また現在でもすでに十分水俣病の業務について、医療面の業務につきましては、公害部におきます唯一の医師として努力もして、業務も行っているというふうな実態がございます。したがいまして、私どもとしましては、この医師を含めた形で、検診センターにおきまして常時検診が行われる体制ということが大事なことではないかというふうに考えているところでございます。ただ、この医師につきまして、いま何とかというお話でございますけれども、これは御本人の意思もあるわけでございますし、また県の体制としまして、十分いまの公害部におきます唯一の医師としての業務も行っているという実態から見まして、この医師が果たしてどういう考え方で処理すべきかということは別の問題になってくるんではないかと思っております。
  179. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは私はその先生が、安武先生だそうですけれども、その先生がそちらへ行くことを望んでおるかおらないかという問題もあると思いますが、当初、保健所から熊大へ研修に行かせるときに、住民にはそういうかっこうで県としては話をしておられるわけですね。だから住民からそのことを早く実現してくれという要求が出ているということは、現地ではそういうふうな状況というのはあったんであろうと思うんですよ。その後、それは人間のことですし、あるいは仕事の体制等からいって、どうなるかわかりませんけれども、せめてその可能性のあるところを一つでも打開するという努力をしませんと、これは四十八年に行ったときにも同じだと、五十一年に来ても一緒だと、それではこれは行政責任としても恥だと言うているだけでは話にならぬというところに来ているから、どんなに小さな可能性でも追求をして解決に近づけるという努力をするべきじゃないかという意味で私は申し上げているんですよ。その点は誤解のないようにしていただきたいんですが、その他の努力、何かありますか。  たとえば、解決をしていく上でどうしても常勤医師を県が六名ほしいと言うてますよね。そのぐらい要るでしょうね。特殊な状況ですしね。一人や二人の方々だけではそれぞれの専門科を担当できないと思っていますから、六名ほしいというのは県知事の要請の中に出ておりますが、それを何とかして確保するために大学当局などとも相談をしながら、あるいは必要とあれば医師会などの御協力もいただきながらでも、もっと何とか、何年たっても同じでは話にならぬので、前進をさせるという点での人的確保の問題、同時に、財政的なやっぱり援助ですね、財政的な裏づけがなかったらこれは話だけになりますから、その点の両面が必要だと思いますけれども、そういう点はどうでしょう。
  180. 野津聖

    政府委員(野津聖君) いま御指摘ございましたように、常勤で常時検診体制がとれるようにするためには、大きな問題が二つあるわけでございますが、その一つは、一番基本的な問題でございまして、そこに医師を、特に水俣病に対しましての十分な知識と経験を持っている医師にそこに来ていただいて、検診業務を実施するということになってくるかと思うわけでございます。これにつきましては、県とも十分相談もしているところでございますし、また、先ほどわずかな可能性でも努力をすべきだという御指摘もあったわけでございますが、私どももわずかな可能性でも努力すべきだということで、県の方でこの先生はということがございましたら、私も、もし必要ならば私が行ってひとつ頭も下げ、また教授等にもお願いをしてまいりましょうと、こういう体制で何とかして医師を確保していきたいというふうなことを県とも相談しながらやっていきたいと思っておりますし、また、もう一つは、いわゆる医師確保等を含めまして、県としまして相当な予算を水俣病対策に投じているという実態があるわけでございまして、この問題につきましても、できるだけ県としての負担の過重ということがない形での処理をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。  いずれにしましても、とにかくこの検診センターという場所におきまして——現在は主として認定審査会の委員先生方に検診業務まで御協力をいただいているというふうな実態もあるわけでございます。したがいまして、どなたかに来ていただくと。ただ常勤でずっと一日じゅう、あるいは一週間じゅう、あるいは一カ月じゅうその検診業務だけということになりますと、また医師を確保するための逆の阻害の問題も出てくるかと思います。したがいまして、複数配置あるいは決められた日に来るというふうなことも前提としながら、いわゆる常時検診体制というものを詰めていく必要があるだろうというふうに考えますし、また、この検診を担当される医師と検診を受けられる患者さん方の間の人間関係というのが非常に私も大事な問題ではないかと思っております。ただ、非常に機械的な検診だけでということでなくて、患者さん方非常な悩みを持っているわけでございます。したがいまして、その点も十分聞いていただけるような、いわゆる人間関係がよくなると、人間関係がいいという形の医師を確保しなければいけないというもう一つの問題もあるわけでございまして、その辺全体を含めながら、県が実施します検診業務ではございますけれども環境庁としましてできるだけの応援をしましょうという形で現在進んでおるところでございます。
  181. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 常勤体制というのはなかなか大変だというのは私もよく理解できる。で、せめて二人でも三人でも常勤体制がとれて、そうして常駐体制ができるという協力体制を何とかして組まなきゃならぬであろうというふうに思うんですよ。で、人間関係は確かに大事です。私は現地で見て思ったんですけれども、患者さんたち、やはり周りの民間医療機関あるいは開業医の先生方に治療で常にお世話になっておるようですね。で、そういう先生方とは人間関係は決して悪くないんですよ。相互信頼で信頼していっているわけだから、どうしてもかっこうがつかなければ、長年にわたって水俣病の患者さんを診療しておられる先生方がずいぶんおられるわけですから、医師会の先生方協力も得られるような話し合いというのも含めて、せめて検診体制の常駐体制がとれないものかどうか。これは本気になってやってもらわないと、一体環境庁何しているんだと、二十年も二十五年も死ぬまで待てというのかと怒っているんですからね、患者さん。だから、その辺はせめて何とか打開するための努力をしてもらいたい。  それから、その裏づけになるのは財政なんですね。まあ私、五十年度の資料いただいて見て驚いたんだけれども、本来こういう業務というのは、一般会計などから金を出すというのは筋が違うということで、この法律制定のときにもわれわれ意見を述べておったわけですけれども、そういう点では、認定審査業務ですね、認定審査に要する費用でもずいぶんたくさん県が超過負担しているんですね。しかも、こういった検診その他の人的、物的経費ですか、これを、五十年度の資料をいただいて見て驚いたんですが、国が出しているのは、熊本県に六百四十四万五千円、鹿児島は八百九十二万七千円という状況なんですね。これは医師の体制を確保したりあるいは検診体制を確立をしていくというためには、当然金の裏づけがなかったら折衝もできぬわけですよ、実際は。だからそういう点では、この分野における財政補助というのは思い切って来年度はおやりになるということでなければ、話だけであって絵にかいたもちになると思うんですが、その点、環境庁の御見解どうですか。
  182. 丸茂重貞

    国務大臣丸茂重貞君) 検診センターに対する先生の切実な御忠告等はよくわかるんですが、環境庁といたしましても決して努力してなかったんじゃないんです。これは熊本県当局といままでもずっといろいろ折衝し、お願いし続けてきたんですが、なかなか検診センターの専属医というものが、簡単な言葉で言えば、なり手がない。第一の理由は、これはもう治療は持たないんですから、検診と認定ですから、それが第一と、それからもう一つ、余りはっきりはおっしゃらぬのですが、やっぱり医者はヒューマニズムの立場に立ちますから、認定に際しまして、それは冷厳な客観的な症状で判定していきますが、その際に、これは水俣病ではないという診断を下すときには非常な苦痛を持つらしいですな。これは私も医者としてよくわかるんですよ。できたら何とかと思って、片一方はどうも水俣らしいと言うてきているのを、めったに、八百同名も保留というか、該当をしないというかっこうで。どうもその辺が大きな隘路になっている。これは地元の医者連中といろいろ歓談の際に——正式の場じゃなくて歓談の際にいろいろ聞きますと、やっぱり医者の良心として一番心が痛むのは、どうも水俣病じゃなさそうだという診定を下すときじゃないかなということです。私はそれだけじゃないと思いますよ。待遇の面でも決して豊かなものじゃないですよ。  だから問題は、待遇を非常によくしたらある程度行きゃせぬかというこの問題と、いまのように本質にかかっている問題があるんですね、医者としては。これが交差する点がどの辺にあるかということなんです。実は私も裏から、この問題については医師会にもいろいろあっせん方を頼んだりやっておるんですが、どうも指摘されるところはいまのようなことであって、結局医業を捨てるわけですから。言ってみれば保健所の医師みたいなものですよ。その保健所の医師さえいまは充足できないんですから。そこへもってきて、いまのような、仮に該当しないというふうな診定を下す際には、それは心が痛むだろうと思う。そういうふうなことが加わって、なかなかそのセンターのお医者さんが充実しないんではなかろうかと。これは私の推測もずいぶん入っていますが、その辺じゃないかなという気がしています。しかし、だからといってほっといていいことはないんで、いま御指摘のように、やっぱりある程度財政的にはほかより、そういう大きな責任を負わせる仕事ですから、相当大幅に見てやらにゃいかぬだろうというふうな気はいたしますから、引き続き努力をしたい、こう思っております。
  183. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、ああいう三千人も認定患者が認定申請をして検診もしてもらえない、二十年も二十五年も放置されているというのを見ている方が医師としてのヒューマニズムが燃えるのではないかと、むしろ、そういう点では、長官がおっしゃられた医師としてのジレンマの問題などもあろうとは思いますけれども、被害者が放置されているという事態を見るだけで胸が痛むというのがやはり医師としてのヒューマニズムだと思うんですよ。そういう点では、このいわゆる常勤体制というのは、開業の先生あるいは大学の先生などが、それをやめていくということになるので、これは将来との関連もあって大変だということであれば、半年なり一年なりでもいいと思うんですよ。一年交代でもいいから、せめて出向のようなかっこうで常駐体制ができるような態勢を何とかしてこれは確保しないと、何ぼ困難や言うたって、二十年、二十五年、患者は死ぬまで待つのかみたいなところへほっておくということはできないと思う。その点は、ぜひ力を入れて解決のめどを切り開いてほしいと思うんです。  財政的な裏づけについても、これはもう当然長官よく御承知ですからね、状況は。そういう点で十分保障していくという立場をおとりになるということでございますが、これはたまたま大蔵省わざわざ来てくださっておりますので、まあそういうことで要求をされたら、これはきっちりつけてもらわにゃいかぬですね。財政大変困難やいうことで小さいところをけちったりせぬように、その辺はっきりしてもらいたいと思うんですが、どうです。
  184. 岡崎洋

    説明員(岡崎洋君) ただいま先生のお話の中にもありましたように、本件はすぐれて地方住民にかかわるお話でございまして、それだからこそ県が中心になっていろいろ仕事をしておられるところでございます。ただ、問題が非常にむつかしい、あるいは大変だということもございまして、従来から国も認定申請に係る業務につきましてはその円滑な実施を図ると、それに資するという意味から、相応の交付金等の補助を行っておるところでございまして、いまおっしゃられましたような内容につきましては、今後とも環境庁とよく御相談をして考えてまいりたいと思っております。  ただ、私が言う前から、先生、一般会計財政苦しいという状況も御存じのとおりでございますので、その辺とのバランスも保ちながら考えてまいりたいというふうに思っております。
  185. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 環境庁、この大変困難なところを本気になってもし解決しようということで、財政、せめてそのぐらいの、わずかに六百万そこらしか出してないんです、熊本でね、国から出しているお金は。これは二分の一補助ですからね。だから、そういう点で環境庁として要望されたら、大蔵省は、幾ら困難だといっても、こういうところはけちってもらっちゃ困る、こういう見解なんです。まあよろしいですけれどもね。これは環境庁、ひとつ思い切ってやってくださいね。どうです。
  186. 野津聖

    政府委員(野津聖君) 非常に重大な地域におきます大切な、特に公害の原点とも言われる仕事でございますし、また、御指摘がございましたような、三千名を超える認定申請者がまだ待機しておられるというふうな実態でございまして、これを解決するために十分熊本県とも相談しながら、有効な助成ができるような形にいたしてまいりたいと思っております。
  187. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ちょっと先を急がにゃなりませんのであれなんですが、あわせてお願いをしておきたいと思うのですが、これはかねがね県当局から、そういう検診センターというのを別につくってほしいという意向が環境庁に再々出されていたんですが、これはできなくて、いま市立病院ですか、市立病院の一角を利用しているようですが、今回国立の治療研究センターをおつくりになるんですね。五十三年度竣工の予定でしたか。で、そういうものができたら——これはまあ治療研究センターだから検診センターとは違うということで、まあ所管も違う。検診は県の仕事だというふうなことにもなって、なかなかうまくいかないようですが、せめて治療研究センターができたら、そこで検診センターをやれるような一貫したやり方ですね、検診もできる、治療研究もできるというふうな形で検診センターをもそこでやっていくというふうなことにはできませんか。これは、まあ五十三年に竣工だから先の話ですが、そういうことなども、現地の実情を踏まえて住民の要求に耳を傾けていただいて、最も都合よくいくようなかっこうで運用ができるようにひとつ検討していただきたいと思うんですが、その点どうでしょう。
  188. 野津聖

    政府委員(野津聖君) 水俣病の研究センターにつきましては、国立という形で、現在建物等につきましての検討を進めているところでございますが、ただ、御指摘ございましたように、現在のいわゆる認定申請に伴います検診という業務は、これは地方自治体の業務ということになっているわけでございまして、御指摘ございましたように、市立病院の裏を借りまして検診センターの建物、設備を持っているところではございます。ただ、国立の研究センターにつきましては、国でしかできないような業務をやってもらいたいという知事あるいは市長の御意見も大変強かったわけでございまして、私どもはその辺を踏まえた形で、研究センターの中身、建物等につきましても検討を進めてきたところでございます。ただ、この水俣病研究センターそのものの使命と申しますのは、やはり公害の原点であるという水俣病というものについての各種治療あるいは基礎あるいは疫学の研究を進めていく拠点といたしたいと考えておりますし、また、これらの業績が必ずや水俣病に苦しんでおられる患者さん方にはね返るべきであるというふうな前提に立っておりまして、この運営等につきましても、やはり地域に開かれた形で行うべきであろうというふうな考え方に立っておるわけでございます。ただ、業務そのものを整理いたしますと、申請に伴います検診業務は、これは地方自治体の業務という形になっております。したがいまして、私どもの国立の研究センターの業務がどういう形でフィードバックされるかということを中心としながら進めていく必要があるのではないかと思っております。クローズドの一つの研究施設であるという考え方でなくて、オープンの形で処理をしていきたいと思いますが、業務そのものはただいま申し上げたような差がございますので、そのまま取り込むということは非常に困難であろうと考えております。
  189. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、まあこれはそういう答弁をなさるのは初めから知ってるんですよ。そういうことをわかった上で、だから言っている。県の仕事を国の施設でやるのは云々ということを言わずに、むしろ現地の状況とか住民の願いなどに耳を傾けていただいて、ひとつ運用の妙を得るように御検討いただきたいと、こう言うておるわけです。まあそういうことですよ、私が申し上げた意味は。  それから、認定審査業務をおくらしているもう一つの大きな隘路というんですか、障害というのは、やはり認定基準の問題があろうかと思うんです。私は実際に現地へ行きまして、棄却になった、あるいは保留になっておるというふうな方々に、何十人かの方々にお目にかかってみて思ったんです。私は全く水俣病についての研究をしたことがないんです。水俣病に関しては素人なんですけれども、行ってみて思ったのは、たとえば、私は脳率中だということで棄却になりましたというのは何人かありました。あるいは、私は高血圧症だということで棄却になりましたというふうな方、あるいは変形性脊椎症だということで棄却になりましたという方々、何人か会いました。私はその人たちに会うてみて思ったんですけれども、私どももそれなりに、たとえば脳卒中の患者さんとか高血圧の患者さんとかいろいろ数多くいままで見てきたんですけれども、私どもが通常に内科の患者さんとして拝見をしておる患者さんとは少なくともその人たちは違うと、違うところがあるということを感じたのは事実です。そういうことをここで言うてもしようがないんですが、そういうふうに行って感じたということが一つです。しかも、汚染魚をたくさん食べたという経歴を持っておるということは前提にあるのですよね。家族の中に認定患者が一人ないし二人はおるというふうなこともありますよね。ところが、そういうふうに、いま申し上げたように、脳卒中だということで棄却だ、それから変形性脊椎症だということで棄却だ、それから脳動脈硬化症だということで棄却だ、あるいは高血圧症だということで説明がつくということで棄却だということになっておるんです。私はそのときに思ったんですが、とにかく発見されて十六年。まあ十六年、二十年、たれ流しになってから三十六年というんですから、これはあなた、何十年かかかっておるわけですからね、中毒患者というのは、いろいろな中毒による症状が各種各様に出ると同時に、合併症だって出てきてあたりまえだと思う。ない方が不思議ですよ、人間ですから。それを他の合併症があるからという、それで説明がつくからということで、疫学的な状況ですね、家族に認定患者がおる、過去に長期にわたって汚染魚を多食してきたというふうな、こういうものが度外視をされてしまうというふうな形になっておるように思えてならない。  こういうことをここで私は論議しようと思ってないんですが、私が調査に入ってみて、そういうふうに思ったんです。特に不思議だなと思ったのは、変形性脊椎症ですね。これは非常にたくさんの人たちが棄却をされています。鹿児島県で棄却処分になった百九十一名中三十七名の人たちが変形性脊椎症ということで棄却処分になっている。これは小ちゃな地域で実にたくさん変形性脊椎症が出ているわけですね。この問題も、これは認定審査会では一定の問題になっているようですが、時間の都合があるから多くを申し上げませんけれども、これは熊大の徳臣教授がやられた疫学的な調査でも、あの不知火海沿岸の変形性脊椎症というのは、まあ外国文献から言うたら十倍以上になっている。こういう状態というのは一体なぜ起こっているかというふうなことだって、水俣病との関係があるやなしやという問題だって、重大な問題だと思うんですよ。そういうことを一つ見ましてもいろいろ感じますので、認定基準の問題というのを相当これは環境庁として強く御指導いただかなければならないなというふうに思うんです。  というのは、一方では住民は納得せずに行政訴訟をやったり不服審査をやったり、ずいぶんやっていますね。これ、もう時間がないから申し上げませんけれども。そこで、私はきょうは細かいことを一々申し上げるつもりはないのですが、そういう点で、特に片方では、やっぱり自分は水俣病なのに認定されないと、ほかの病気で説明がつくといって認定されないのはどうも納得がいかないということで、多くの方々、百人以上の方々が裁判をしたり不服審査をしたりというふうなことが行われているというふうな事態というのは、これはやっぱり正常に審査業務が進行しているというふうにはなかなか受け取りにくいので、これは大変大事な問題であると思いますので、こういう状態を解決していく上でひとつはっきりさしておいていただきたいなと思うことが一つあるわけです。  それは、昭和四十八年の八月に環境庁の事務次官通達というのが出されておりますね。これは旧法時代の認定業務をやられている時期に出されているわけですが、こういう四十八年の事務次官通達というのは、いまもその趣旨、精神というのは、通達は生きておるのかどうか。生きておるなら生きておるという立場でやっぱりはっきりしてもらいたいというふうに思うんですが、その点どうですか。
  190. 野津聖

    政府委員(野津聖君) ただいま御指摘のございましたように、行政不服審査請求に対する四十六年の八月七日付での裁決に伴います事務次官通知が出ているわけでございます。ただ、この場合には、御指摘もございましたように、特別措置法、いわゆる救済法の精神にのっとってという形で、迅速な救済を目的とした形での処理という形での次官通知が出たわけでございますが、現在の公害健康被害補償法、これにつきましても、もうすでに十分御存じの点だと思いますけれども、この公害健康被害補償法におきましては、民事責任を踏まえて損害をてん補するという制度になって発足したわけでございます。しかし、このようなことが違いましても、いわゆる患者の救済というふうな基本的な精神につきましては、そのまま私どもは引き継がれているというふうに理解をいたしておるところでございます。
  191. 丸茂重貞

    国務大臣丸茂重貞君) ただいま沓脱先生の御質問、大分大事な点がありますので私の方から申し上げますが、まあ認定をする際に認定基準を改めたらどうだと、こういう意味の御発言だと
  192. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、そこまで言ってない。
  193. 丸茂重貞

    国務大臣丸茂重貞君) 言ってない。じゃ、いまの認定基準は是認されるということですか。ちょっと私聞き間違ったかもしれません。  そこでね、先ほど私抽象的に言ったんですが、認定に当たられる方々が認定しますね、そして合格した場合には問題はないですわな。不合格の場合に、後でいろいろいまのような、沓脱先生東京から行って診たところが、どうもこれは脊椎症ばっかりじゃねえぞというふうなことが家族に案外大きな印象を与えるわけですよね。そこで不服だから訴訟に入る。これは一つのいま許された方法ですから、それをとやかく言うんじゃありませんがね。そういうことがやっぱりあるもんだから、なかなかセンターに入ってくるお医者さんがないんだと、それを先ほど私がえんきょくに言ったんです。
  194. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それ、話が違う。それは検診センターです。
  195. 丸茂重貞

    国務大臣丸茂重貞君) だから、検診センターに入ってくれるお医者さんがなかなか確保しがたいというのは、先ほど私えんきょくに言いましたが、医師の良心がやっぱり痛むわけでしょう、それは。しかも、こんなことは釈迦に説法ですが、有機アルキル水銀が中枢神経、末梢神経、血管神経にどういうふうな影響を及ぼすかというのは、まだ医学的に十分解明されていませんね、これは。そうですね。そこで、そういう点を踏まえますと、たとえ認定基準によって認定をしましても、医者としてはもうどこから、だれから聞かれても胸を張って間違いないんだというあれはなかなか出ないと思うんですよね。そこで、その結果についていまのような訴訟のようなことが起こると。それはちょっとよほどヒューマニズムに徹した人か強固な意思を持った人以外は、なかなかそれは敬遠するような傾向が出てもやむを得ないんじゃないかと、こういう気がします。  そこで問題は、認定基準がもっとはっきりした形で決まればいいんです。だから、国立の治療センターをつくって、そこで少なくも治療を通じてどういうものであるかという本態をはっきりさせれば、認定基準ももっとはっきりしたものになるんじゃなかろうかという期待を実は持っておるわけなんですね。この点は深い御理解をいただきたいと思うわけであります。
  196. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 事務次官通達の精神を生かしてやるという点については、部長からも言明をいただいておりますので、私は細かい認定基準の問題などについて触れたいんですけれども、時間の制約もあるので、きょうはちょっとその点は触れようと思っていないんです。機会を改めて一遍また長官の御見解も伺いたいと思っているわけです。  委員長、もう二問ほどお願いをしたいんです。
  197. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) なるべく早く願います。
  198. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 で、幾つか差し迫った問題があると思いますので、最後にお伺いをしておきたいと思っておりますのは、一つは研究治療費の問題ですね。長い間認定申請をして、これから先二十年かかるか二十五年かかるかわからぬという状況になっておるという人たちに対して、現在指定地域に五年以上居住して、認定申請を一年以上経過している者に対して、国民健康保険法その他の法令の規定により医療の給付を受けた者の自己負担分を支給するというやり方で医療救済をやっておられますね。これ、一年以上ということになっているので、一年未満の人は医療救済されないわけですね。まあいろいろ申し上げたい点はありますけれども、端的に言いまして、これを何とか一年というようなことを言わずに、もっと期間を短縮するなり改善措置をとる方法が講ぜられないか。一年でなきやならぬという特別にかたい何らかの基準というのもないわけですし、何とかして一人でもたくさん救済をするという立場から言いましたならば、これをもう少し短縮をして、まあ一人でもたくさんの方々にせめて医療救済でもというふうなかっこうができないものだろうかと思いますが、これはどうでしょう。
  199. 野津聖

    政府委員(野津聖君) 現在の公害健康被害補償制度の基本的な考え方としましては、申請者の申請中の医療費につきましては申請者が負担をすると。また、認定患者となりました場合にはさかのぼって原因者の負担という形でてん補されるというふうなことが一つの原則になっているわけでございます。しかし、熊本県におきまして、先ほど来いろいろ御指摘もございましたように、未処分者が非常にふえてきたというふうな問題がございます。また、行政庁の実際の処分能力から見まして、なかなか早急に未処分者の滞留が解消されるということは困難であるというふうな面もございまして、これを放置しておくことは非常に大きな社会的な問題にもなりますし適当でないという観点から、いわゆる特段の措置としまして、暫定的に一定の要件に該当する申請者についてその医療費を補てんするという形で現在補てんしているところでございまして、要件としましては、もうすでに先生御存じのような四つの要件がかかっているわけでございますが、この要件の中で、申請後一年以上といいますのは、先ほど来申し上げましたように、審査の滞留というふうなものに伴います申請者の負担の軽減を図るという趣旨から決められたということでございますので、現在の段階におきましてこれを直ちに撤廃するというふうなことはちょっと考えることは困難ではないかと思っております。
  200. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 短縮は考えられないということですか。
  201. 野津聖

    政府委員(野津聖君) 当面の段階におきましては短縮は考えられないということでございます。
  202. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まあお金にしたらごくわずかですけれどもね。一千万か千四、五百万もあればこれは片づくと思うんですよ、全部でもね。一年たたないとという論拠というのはちょっとわかりにくいので、もっとやはり前向きに検討されるというふうなことができないのかどうか。ぜひそういうことを検討してもらいたいと、これは御要望申し上げておきます。  それから、最後にちょっとお伺いをしたいのは、熊本や鹿児島以外のところで住んでおる水俣病患者があるんですね。これは私、大阪でも調べてみたら九十五人おりますね。全国に散らばっている人が約三百人、この人たちが検診センターへ行って検診を受けて認定申請をしようと思ったら、熊本まで行かにゃならぬですね。行くについては当然交通費も宿泊費もかかるわけですが、せめてこのぐらいのことは何とかできませんか。これは本来政府が金を出すというのも筋違いですけれどもね。本当なら加害者負担のはずなんだけれども、いまこういう制度になっているからしようがないんですが、せめて宿泊費と交通費ぐらいは出す気ないですか。
  203. 野津聖

    政府委員(野津聖君) 水俣市まで行かれて検診を受けるということにつきましては、現在水俣あるいは泉にお住みになっておられない方もおられるわけでございますから、一つの考え方であると思いますけれども、現在の、いまも御指摘ございましたように、これをいわゆる公の負担によって行うということにつきましては若干問題があるのではないかと思っております。また、特に申請されるという前提に立って考えました場合に、その費用につきまして公が負担するという場合には、非常に限界があるのではないかというふうに考えておるわけでございまして、まあ現在の段階におきまして、これらの交通費につきまして公費で負担するということにつきましては、非常にむずかしいというふうに考えておるところでございます。
  204. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これね、七十七国会では、前長官は、こんな話初めて聞いたから検討さしてくれと言うて衆議院ではお答えになっているんですよ。でね、そのくらいはあたりまえでしょう。水俣に住んでないとその恩恵に浴せないというのは、被害を受けているのは日本じゅうどこに住んでおったって被害を受けているんで、そのぐらいのことはちょっと前向きに検討するべきじゃないですか。
  205. 野津聖

    政府委員(野津聖君) ただいま申し上げましたように、衆議院の公害環境特別委員会におきまして、前長官も検討するという御答弁を申し上げているわけでございますが、私どもそれを受けましていろいろと検討を進めてきているわけでございますけれども、現在、いわゆる公の負担の限界というふうな問題もあるわけでございまして、いろいろと検討しましても、現在のところはいわゆる公費負担とすべきであるというふうな結論に達していないというのが現状でございます。
  206. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それはしかし、けしからぬやないですか、そんな。せめてそのぐらいのことをやらないと、公害による国民の健康被害に対する保護ということの立場から外れてきますよ。それは出して、当然企業から金取ったらよろしいのや、政府が。何も公費負担にせにゃいかぬということない。立てかえ払いを政府がしておいたっていいですよ。そのぐらいのことをやるべきですよ。そんなごとやらへんかったら、あんた、公害行政何のためにやっているのやらわからへんです。何言うてんですか。もっとはっきりしてください。
  207. 野津聖

    政府委員(野津聖君) 検討は今後とも続けてまいりたいと思いますけれども、現在まで得ましたところの検討の結果につきましては、現在の制度の中では公費で負担するということは非常に困難であるということでございます。
  208. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ、これは一遍検討していただきたいと思うんです。こんなことをそうですがと言って引き下がれる問題じゃないですよ。それじゃ大阪におる被害者は大阪で検診できるような条件を整えますか。どっちかです。
  209. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと速記とめてください。   〔速記中止〕
  210. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起こして。
  211. 野津聖

    政府委員(野津聖君) 十分その点を踏まえながら検討を進めていきたいということでございます。
  212. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 じゃ、どうも済みません。あと私、一、二ありましたけれども、時間が大変超過をいたしましたので、これで失礼をいたします。どうもありがとうございました。
  213. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本日の調査はこの程度といたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時三十三分散会      —————・—————