○沓脱タケ子君 私は、きょうは水俣病についてお聞きをしたいと思っております。
で、きょう冒頭に
丸茂新長官が、
公害行政を進めていく上で、
国民の健康の
保護と
環境保全を目途として、しかも
国民の声に率直に耳を傾けてということで所信をお述べいただいておりますので、まあ大変意を強くしてお伺いをしていきたいと思っている次第です。
水俣病が発見をされましてからすでに二十年になり、
厚生省が
公害認定してからすでに八年、で、歴史的な水俣裁判の原告の勝利の判決が下りましてからもすでに三年半を過ぎるという状況になっております。しかしながら、水俣病の
実態というのはいまなおきわめて深刻であります。で、私はたまたま
昭和四十八年に第三水俣が問題になりましたときにも、現地に院の現地派遣として参りましたし、さらにまたことしの夏に、実は水俣病を熊本県と鹿児島県と、そうしてあわせて新潟県も含めまして
調査をしてみたわけでございますけれ
ども、そういう結果、やはりその深刻さというのを改めて認識をいたしたようなことでございますし、四十八年に熊本へ参りましたときと比べましても、基本的には解決をされていないという点で、きわめて重大な問題だというふうに認識を一層新たにした次第でございます。
で、
昭和七年から実に三十六年の長きにわたって、チッソ水俣工場がメチル水銀を大量に排水として不知火海、また水俣湾に排出をし、たれ流していた。そしてその結果、海が汚れ、しかも魚が死に、それを食べた住民が、まあひどい人は命を奪われ、多くの人たちが中枢神経をむしばまれ、大変な苦しみに突き落とされているというのが
実態でございます。で、いまそういう
観点で熊本、鹿児島両県にまたがる状況を見てまいりますと、
汚染された不知火海の沿岸を見ますと、熊本県側の住民というのが二十七万人、鹿児島県側が六万人、合計三十三万人の人口がおるわけでございます。そういった三十三万人の中での住民の検診というんですか、
汚染にさらされている住民でございますけれ
ども、検診をやられているというのはまだ四分の一そこそこ、なるかならないかというふうな状況でございます。ところが最近、私
ども現地でも伺っておりますと、水俣市と芦北郡の三町が行った
調査を見ますと、三人ないし四人に一人が健康でないという答えをしているんですね。これは単なる聞き取り
調査のようでございますけれ
ども。その中の多くが、手がしびれる、それから物忘れがひどい、それから体がだるくて大変疲れやすいなどと、水俣病の症状ですね、水俣病患者が持っておる症状、こういう症状を訴えているのであります。
で、水俣市と津奈木町の山間地住民を対象にした検診結果でも、水俣病の疑いがあるとされた人たちが、水俣市で二百十六人、それから津奈木町では八十一人おられるというふうなことが発表をされておりますし、すでに沿岸住民だけではなしに、有機水銀の被害というのが山間部の住民に至るまで
影響を及ぼしてきているということが明らかになってきているわけでございます。したがって、そういった点でどうしてもこれは不知火海沿岸全体の住民の健康
調査、こういったものがやられますと、これはもう恐らく有機水銀による被害の全貌というのが明らかになるであろうと思うわけでございますが、これがいまやられていないという点で、まあ
実態が、全貌が明らかになってないということではないかと思いますが、これは何としても全貌を明らかにしていくということが
行政の重要な
責任ではないかというふうに思うわけでございます。
まあ、状況から言いまして、私、後具体的にお聞きしていきたいと思いますけれ
ども、一方では全貌が明らかになっていない、しかも片方水俣病の認定業務というのが大変おくれている。これはもう在来からかねがね言われ続けてきておるとおりでございますが、ずいぶんおくれている。これまでに水俣病の認定申請をした人の数というのは熊本と鹿児島を合わせまして五千三百二十四名ですね。そのうち認定された人がやっと千六十四名。その認定患者の中で亡くなられた方が百七十九名。で、棄却になった方が三百六十九名で、保留ということになって認定をされなかった方が九百三十名。で、まだ、出してはおるけれ
ども審査をされないで放置をされているという申請患者というのが実に二千九百六十一名。しかも熊本だけでも毎月平均五十名ぐらいの新しい認定申請の方が出てきている、こういう状態でございます。
そういう状況の中で、なぜそれでは、これはもう従来からかねがね言われてきていることですが、依然としてこういう認定業務の困難な事情というのは一体どうなっているのかという実情でございますけれ
ども、これはもう当局は百も御承知のとおりでございましょうが、検診については、月に四十人しか検診ができない。で、認定審査というのは月に八十人、それぐらいはできると。まあこういう状況でずっといきますと、保留ということでもう一遍認定審査にかかるという人もそれに加わってくるので、このままでいきますと審査が終わるまで二十年ないし二十五年かかる、これが県の公式見解として言われているわけでございます。したがって、加害企業によって被害を受けた被害者たちは死ぬまで待てと言うのかということで、怒りの声が上がっているというのは当然でございます。そういう点で、まあ世界最大と言われた、特にメチル水銀の中毒というふうな
公害による中毒症状というのは、これはもう世界じゅうで
わが国だけだというふうに言われているような重大な
公害でございますが、これがこういう
実態で、しかも数年来ほとんど進まないで、同じ困難を抱えたままで放置されているというのは、まさに私は
わが国の
公害環境行政の恥だと思うんです。どうしても早期に解決をする必要があろうと思うわけでございます。
そこで最初に——後、私は
一つ、ずつ具体的にお伺いをしていきたいと思いますが、最初に、こういった客観的な情勢、実情を踏まえまして、水俣病
対策をどのように進めようとしておられるのかですね、これは総論的にひとつ長官の決意のほどを最初にお聞かせをいただいておきたいと思うわけでございます。