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1976-10-28 第78回国会 参議院 建設委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十八日(木曜日)    午前十時二十二分開会     —————————————    委員異動  十月二十七日     辞任         補欠選任      赤桐  操君     小谷  守君      川村 清一君     中村 波男君  十月二十八日     辞任         補欠選任      古賀雷四郎君     青井 政美君      増田  盛君     森下  泰君      望月 邦夫君     初村滝一郎君      神田  博君     稲嶺 一郎君      二宮 文造君     宮崎 正義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         竹田 四郎君     理 事                 坂野 重信君                 中村 禎二君                 沢田 政治君     委 員                 青井 政美君                 稲嶺 一郎君                 遠藤  要君                 上條 勝久君                 神田  博君                 寺下 岩蔵君                 初村滝一郎君                 堀内 俊夫君                 森下  泰君                 小谷  守君                 中村 波男君                 松本 英一君                 宮崎 正義君                 矢原 秀男君                 上田耕一郎君                 三治 重信君    国務大臣        建 設 大 臣  中馬 辰猪君    政府委員        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省計画局長  大富  宏君        建設省都市局長  中村  清君        建設省住宅局長  山岡 一男君        建設省住宅局参        事官       救仁郷 斉君    事務局側        常任委員会専門        員        森  一衞君    説明員        郵政省電波監理        局企画課長    永野  明君        消防庁予防救急        課長       持永 堯民君     —————————————   本日の会議に付した案件建築基準法の一部を改正する法律案(第七十二  回国会内閣提出、第七十七回国会衆議院送付)  (継続案件)     —————————————
  2. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  委員異動について御報告申し上げます。  去る十月二十六日、片山甚市君委員辞任され、その補欠として川村清一君が、また十月二十七日、赤桐操君及び川村清一君が委員辞任され、その補欠として小谷守君及び中村波男君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 建築基準法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 矢原秀男

    矢原秀男君 建築基準法の一部改正について質疑を重ねたいと思います。  まず最初に、遡及適用の件について御当局にお伺いをしたいと思います。  一つは、二十七日、きのうですね、大火大洋デパート倒産という報道もされたわけでございますが、やはり事前に手を打てば、公害のときもそうでございますが、企業もやはり公害にはお金がかかるからということで手が打てなかった。被害が出る、そうして実際にはかえって多額なお金がかかったというふうな実態があるわけでございますが、やはり人命立場であるそういう観点から考えると、予防的な予算措置というものが最善の最少の経費にかえってなるんではないかとい教訓をここに持っていると思うわけでございます。  この遡及適用の前に、私も生々しい一まず、なぜ建築基準法の一部改正であるとか、そうして遡及適用の問題が国会で取り上げられたかということについて思い起こしてみたいと思うわけでございますが、やはり大洋デパート火災の問題、それから大阪におきます千日前ビル火災、それから兵庫県の私の方でございましたら、昭和四十三年のいわゆる有馬温泉満月城火災、そういうふうに全国的にも大きな被害が出ているわけでございます。私も満月城のときには警察委員として現地に赴いて、そうして専門家の方以外に現場を私は私の立場から見て、これは大変だなという幾多の教訓を得たものでございます。また、千日前火災の場合におきましても、そこで御商売をされておられた方々国会県会大阪府会、いろんな関係方面に陳情されるときに真っ先に私がそこへ御相談にお伺いをさしていただいた。そういうふうなことで、今度のこの問題については非常に私も大きな期待を持っておったわけでございます。そうして国民の方々も、出入りが非常に多いそういうふうな病院ホテル旅館劇場百貨店、まあそんなことで大きな期待をされておりましたけれども非常に後退をした、こういうことで心配をされておられるわけでございます。  まず、防災施設遡及適用について伺いたいのでございますが、一つは、衆議院での修正をどう考え、どのように対処されるのか。それから二番目には、災害未然防止の上から、もし火災事故が起こり被害が生じた場合に、建設省案による政府原案が成立して遡及適用になる防災設備が施されていれば被害が減少していたとなると、これはどのような見解に立てばいいのか。修正されなければよかったということになるのではないか。そういう私は懸念を持つわけでございますが、まずこの点についてお伺いをしたいと思います。
  5. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 建築基準法の一部改正案を七十二国会提出いたしまして、いま先生のお話の通り、特殊建築物等に対する防災規定遡及適用につきましては、いまだ問題の解明に不十分な点があるという御指摘を受けまして削除されております。われわれといたしましては、これに関しまして、当委員会におきまして審議最初大臣から申しましたとおり、この改正案の中に盛られております工事中のいろいろな防災対策を含めまして現行基準法を十分活用し、消防当局とも協議をしながら十分防災体制確保に努めてまいりたい。なお、指摘をされましたいろいろな点につきましては、十分検討を加えまして次期国会にはりっぱな法案として提出をさしていただきたいと考えておる次第でございます。  なお、最初に御答弁をさしていただく機会を得ましたので、先生のお許しを得まして一言先日の答弁につきましてつけ加えさしていただきたいと存じます。よろしいでしょうか。——先日の二宮議員政府原案についての御質問に対する答弁中、一部舌足らずの点があったように存じますので補足して答弁さしていただきます。  政府は、第七十二国会におきまして建築基準法の一部を改正する法律案提案いたしましたが、その内容さき通常国会において建設大臣の方から提案理由説明により御説明したとおりであります。政府原案衆議院において一部修正され、その内容さき通常国会において衆議院の方から修正部分についての説明として御説明があったとおりであります。なお、本件のように衆議院において修正された議案については、送付案原案として審査されるというのが参議院の先例になっておると聞いておりますので、その先例に従って御審議をいただけるものと考えております。  先日の二宮議員に対する御答弁のうち、やや舌足らずの点につきまして、この席をかりまして補足をさしていただきました。
  6. 矢原秀男

    矢原秀男君 災害未然防止については、言うまでもなく、先ほども申し上げましたが、熊本の大洋デパート大阪千日前ビル火災によって、消防庁等とも十分に協議の上、法改正をそれぞれの関係省庁で行うようにと、このようになったと私は考えているわけでございますが、この点についてはどうなのか。  もう一点は、その場合に、四十九年に改正された消防法と当然関連された上での建築基準法改正であると思いますが、消防法適用猶予が五十二年三月で終了することを考えますと、防災施設遡及が外されたとなると、災害未然防止ということですね、これひとつ心配するんですが、どのような弊害が考えられるか、この二点についてお伺いします。
  7. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 今後この衆議院におきます削除遡及適用規定削除機会といたしまして、いままでの問題点を早急に詰めまして、関係省とも討議をいたしまして、来るべき国会提案をいたしたいとい考えに立っておるわけでございます。  それから遡及適用の点につきまして、消防法の方と、実は対象施設等につきましては、大体径庭を取って決めたわけでございます。消防法につきましてはすでに施行になっておりまして、スプリンクラー設置等がどんどん進んでおります。われわれスプリンクラー設置も非常に効果があると思っておりますので大変喜んでおるわけでございますけれども、同時にスプリンクラーだけでは完全じゃないと思っておりまして、追っかけて次のような、次の国会法案提案したいと、そのための技術的な問題についてはただいまも鋭意詰めておるわけでございますが、その際私どもが考えておりますことは、同時にまあ消防法規定等そういうような改修が実施されます場合にはもっと効率が上がっただろうということは、そのとおりでございますけれども、中身といたしまして、今後の改善案の中には構造方法によらないものも含めてまいろうと思っておりますので、十分消防法効果建築基準法効果と今後においても上げていくことはできるだろうと考えておる次第でございます。
  8. 矢原秀男

    矢原秀男君 ここで、大臣の御所見を伺いたいわけでございますが、衆議院において参考人として意見を述べられた東京大学の名誉教授星野さんの主張によりますと、スプリンクラー竪穴は車の両輪ごときものであって、相助け合って初めて有効であると言われております。私も同感でございますけれども、そこで車の片方だけが回っている変則的な防災対策が今回の衆議院修正によってしばらく続くことになりかねない状態にあるわけでございます。こういう点について大臣はどういうふうなお考えを持っていらっしゃるのか。
  9. 中馬辰猪

    国務大臣中馬辰猪君) おっしゃるとおりでございますから、次の改正案では車の両輪が動くようにということで考えております。
  10. 矢原秀男

    矢原秀男君 まあ私も先ほど申し上げたいろいろな大火の中で、やはりせっかくこれだけの遡及適用のものが、避難施設防火区画、非常用進入口、非常用照明装置等々、非常に全精力を挙げてきちっとされたわけですので、今国会で本当に有終の美を得なくてはならないというふうに私は思うわけです。細かい点になりますが、消防法改正設置遡及適用になったスプリンクラーについて伺いたいわけでございますが、このスプリンクラーはどの程度火災を抑えることができるのか。特に稼動温度と実際の火災の状況、給水、配管上からどの程度稼動能力があるのか、ちょっと技術的な数字を挙げてお答えを願いたいと思います。
  11. 持永堯民

    説明員持永堯民君) スプリンクラー設備でございますけれども、現在のスプリンクラー性能からいたしますと、管熱部温度が七十度以上になった場合に、六十秒以内に自動的に消火を行うという規格が決まっておりまして、そのような性能設備をつけるように指導しているわけでございます。スプリンクラー効果につきましては、いままで具体的に表面化していない場合もございますけれども、スプリンクラー設置した建物等におきましてはかなり、ぼやと申しましょうか、若干火が出た場合に直ちに消火ができたという事例もあるわけでございまして、消火上は非常な有効な性能を持っておると私ども考えておる次第でございます。
  12. 矢原秀男

    矢原秀男君 いろいろ死角のいろんな問題等もございますし大変だと思うわけですが、とにかくさらに万全の対応策というものを私技術的に考えにゃいかぬと思うわけです。また、今回の政府原案によりますと、遡及適用を受ける規定は、遡及適用でき得る規定の一部であり、せめてこれだけはという最低限必要と見られるものでしょう。たとえば百貨店等では、避難施設の各規定が十五項目挙げられているうち——十五項目ではないですね、避難施設だけで二十四まで挙がっておりますね。そういうふうに挙げられているうち、予定されていた遡及適用特別避難階段設置構造のみの一項目である。最低限必要であるものが削られたことに防災上どのような影響を生ずるかですね、具体的にお伺いをしたいと思います。
  13. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 政府原案考えておりました遡及適用中身といたしましては、避難施設、それから非常用照明装置、非常用進入口防火区画、この四点にしぼりまして、その中でも人命保護に特に関係の深い規定にしぼって遡及をいたしたいと考えておったわけでございます。建築基準法目的にございますとおり、生命財産保護ということが法の目的でございますけれども、したがいまして、いろいろな防災規定の中には財産を守るというようなことの観点から相当入っているものもございます。この際は、人がとにかく助かる、火事になったら人が逃げられるということを最小限の目標にしようということで相当しぼって、特に遡及適用というものが、いままでは法律既得権として認められておりましたものにさかのぼって適用するという大変なことでもございますので、そういうふうな人命安全確保にきわめて有効であって、まあぜひともやっていただきたいという点にしぼりまして考えたわけでございます。恐らくこれらの点が実施されますと、既存建築物防災性は飛躍的に向上するだろうと考えたわけでございます。
  14. 矢原秀男

    矢原秀男君 まず、病院ホテル旅館劇場百貨店物品販売業を含む店舗——地下街をちょっと外しておきますけれども、二十四項目は、避難施設防火区画、非常用進入口、非常用照明装置、この二十四の項目というものはすべて連動されて初めて効力を発揮するものなんです。そこに特別避難階段設置構造——八番目のですね、それだけを次回の国会ではいわゆる取り上げていくと、こういうように言われておりますけれども、そのそばに寝ていたり、そこでお買い物をされたりしているわけじゃないんですね。やはりたとえば、ホテル温泉街ホテル旅館等においては、また温泉街ではなくてもいわゆる駅前の高層ビル等宿泊機関——ホテルですね、そういうような場合でもやはり起きている場合であればいい。起きている場合でもやはり階段が狭いとか、廊下の幅であるとか、段階への歩行距離であるとか、そういう建設省でお挙げになっていらっしゃる政府案ですね。たとえば客席からの出口の戸の構造、必要なんです。廊下の幅も必要、階段への歩行距離、二人以上の直通階段設置階段及び踊り場の幅、屋外階段構造避難階段設置構造、そうして八番目に初めて特別避難階段設置構造というものが改正されて生きてくるんです。  それは私が先ほど申し上げた有馬温泉池之坊満月城ですね、通称。三十、いわゆる焼死が十八名、一酸化炭素中毒で十二名がやっぱりいろいろと事故を受けられた。そういう場合でもやはり夜の火災でございますから用意ドンでさあ逃げなさいというわけじゃないんです。そういうふうになってくるといわゆる政府で、いま大臣もおっしゃいましたし、政府の方もおっしゃいましたが、八番の特別避難階段設置構造というものは、事故が起きた、はい、ここですよというわけじゃないんです。不特定多数の人々の中で、思わぬときに火災というものがやってくるから事故が起きてくる。だから、いま申し上げた八番まで——一、二、三、四、五、六、七、八の項目が大事であるから、すばらしい政府皆さん方英知を集めて、今度こそは人命救助するのにこれだけは最小限間違いないと、こうなった政府案なんですよ。それを八番だけと、こういうふうに避難施設の中で次国会に上げるということは、やはりそこまでくる過程の人命救助というものの手段方法というものが全部削られておるんですから、これもし被害出てきたら、いままでも申し上げておりますが、大変なことになりますよ。  このときに助かった人を見たら、廊下に出た人は煙道、全部毒ガスですから皆やられてしまっている。助かった人は何かといったら、五階から助かった人はガラスを割って、といを伝って逃げているわけです。ですから、寝ている場合とかそういうときは、ああ廊下から何メーター行ったら避難する場所がございますよと言ったって、廊下煙道なんですから、ですからかえって廊下へ出ていく人は素人なんだと専門家が言っているんです。われわれは建物の中で廊下へ誘導されて、そこに避難口というものがあるといってわれわれはそこへ行くんですけれども、ホテルの場合でも。それは火災が起きて煙が巻いたら、廊下へ出たら死にに行くようなものだと言われているわけです。ところが、高層ですから窓を割って外に出ようとしても出れない。  ですから、私は単純な考え方ですけれども、何階からも、なわばしごのはしご段というものを一室ごとに置きなさいというふうな簡単なものまでここへ入れるのが本当なんですよ。建築基準法と言えば何か高尚なもので、人命と全然かけ離れた、現実と——そういう項すら何もないんです。専門家英知を集めたそういう建築の中にあったって、廊下に出ようとして皆死んでいる。助かったのは原始的な考え方の中から、いきなり窓を割って、といを下がって奥さんを背負って出ている。たまたまその人が大工さんであったからそういうふうな非常に冷静な判断ができた。そういう助かった事実があるんです。だから私は、建築基準法というものの中に、じゃ、なわばしごや何かがお家の部屋の中から一つ一つ用意されている、こういうことは余りにも単純であって原始的であるから、そういうものは建築基準法の範疇に入らないというふうに言われるのかわかりませんけれども、そのようにして助かっている。  ですから、この八番の特別避難階段設置構造、ここだけをやったって、そばに人はおるわけではないんですから、すべての中にばらまかれている、真夜中だったら眠っていらっしゃるわけですよ。ですから私は、避難施設の中でこの一項目だけは取り上げられておるということは、これは専門的に見ても、どの学者の方が来ても、また建設省がもちろん世界で一番の技術を持っていらっしゃいますけれども、見たってこれは不自然ですよ。もし皆さんが家族を連れて、夜休んでいらっしゃるときに火災が起きて、これだけできて助かるか、距離が離れておったら大変ですよ。なぜ、理論的な技術的なものも大事でございますが、現実的にそこにもし人がいらっしゃる場合に、人命救助というものに万全であるかどうかというきめの細かいことができないのかなという私は懸念を持っておるわけです。大洋デパートでもそうですわね。窒息二十三名、一酸化炭素中毒七十三名、あと五名、二名と、こういうふうに百三名の犠牲者が出ていらっしゃいますが、千日前デパートだってそうですね。一酸化炭素中毒九十三名、圧死三名、墜落死が二十二名。この墜落死の二十二名でも、なわばしごさえここにありますよというふうにかかってあれば、きちっとして、皆、窓はたたいて割ったけれども、後ろからはもう本当に言われない熱、そういうもので追われている。だから、どうしても飛び込んでいって死んでしまう。まあそういうふうなことで建築基準法改正遡及適用というものがいわゆる羅列をされたんです。  ところが、八番だけを次の国会でやりましょう、防火区画の場合は、国会にもございますわね、竪穴区画国会みたいなきちっとしたところは幅のスペース、竪穴区画もきちんとされています。しかし、こういうふうに避難施設の中で、八番の特別避難階段設置構造と、防火区画の場合でありますと、面積区画高層区画竪穴区画でしょう、異種用途区画、層間の区画、ダンパーの設置構造給水管等防火区画貫通部防火措置ですね。これらを皆合わせて初めて多角的な人命救助というものの最小限ができるのに、十四の竪穴区画だけを次国会にと。また非常用進入口の十九、進入口設置構造、非常用照明装置。これらはやはり今度の台風十七号の災害のときでも、現地に行っても食糧がなかったというのは、冷蔵庫にみんな買い物をした、電気がストップになっているわけです。ですから、火災やいろいろな問題についても非常用照明装置設置構造、これは一番大事なんですから、次国会ではなしに、火災が起きてから、大洋デパートも四十八年、千日デパートも四十七年、有馬温泉では四十三年、こういうふうなことで、いままでいろいろの都合があって延びたのが不思議であって、予防的な措置がこれは全部きちっとされなくてはならない。ですから私は、本当に皆様方が、事故が起きたときに、大洋デパート火災があったときに、現地からすぐ行かれたのか、これは一週間ぐらいぶすぶすぶすくすぶっていますからね。千日デパートの場合だってすぐ専門家火災——テレビ情報化ですから、そのときにすぐ飛んで行ったのか。有馬温泉だってそうですけれども、そうなると、やはりどうしても現地行政官に任しておく、台風災害だってそうですよね。どうしても災害が落ち着いたころから皆視察に行くわけです。  ですから、私は、本当に人命尊重立場政府案というものがすばらしい、きめの細かい最小限がこれでございますよと二十四項目地下街については十二項目、ですからもう当然どんなに遅くても今国会では人命保障立場皆さん方が技術的に検討されて、これがベターですとなったものが全部だめになっているのですから、そして次国会にかける、次国会にはたった——避難施設だけでも十一全部そろって初めてこの八の特別避難階段設置構造が生きてくるのに、八番だけをぱっと出そうとされる。こういう点について当局一言見解をお願いしたいと思います。
  15. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) ただいままでに先生がお挙げになりましたたとえば大洋デパート、それから千日前等火災の際には、火災直後、現場検証と歩を一にするくらいのことで、大臣局長担当者現地へ出かけて実情の調査はいたしております。  それから先生がおっしゃいますように、ここにございますいろんな避難施設防火区画等におきます数々の規定が全部そろうというのは確かに一番いいことだと思っております。ただ、提案いたしました法案の仕組みといたしましては、遡及項目といたしまして避難施設防火区画、非常用進入口、非常用照明装置を挙げましたけれども、その中から政令で定めるものを除くというスタイルでございました。ただし、今回の遡及適用につきましては、たびたび申しますとおり、既存のものへ対しまして遡及をするわけでございまして、新たな負担をもたらすという点もございます。したがいまして、特別避難階段だけではなくて、特別避難階段竪穴区画、それから進入口設置、非常用照明装置、この四点がやはり避難のために一番重要じゃないかという点に着目をして、政令規定する場合にはそういうものが対象になるような決め方をしたいと考えたわけでございます。なお、同時に改正されました消防法スプリンクラー設置等とも兼ね合わして考えたことは当然でございます。なお、先生がおっしゃいましたように、やはり煙の問題が今後の火災の中で一番防災上の重点になってまいります。竪穴区画をぜひともやりたいということを願っておりますのはそのためでございます。  それからさらに、先生先ほどおっしゃいました避難ばしごとか、なわばしごとか、いろんなものがございましたけれども、消防法の範囲内で相当なものが準備されておるというのが実情でございます。われわれといたしましても、さらに提案ししました基準法の中でも一たんでき上がっているものに対する改造でございますので、やはり代替構造といいますか、代替的なものも認めるような規定が入っておったわけでございます。ところが、やはり基準法でございますので、代替のためではございましても構造方法というものに限定をすることを考えておりまして、したがいまして、その他の適当な避難のための措置等につきまして、提案いたした法の中では、そういうふうなものが認められないではないかというのも衆議院で問題になりました点の一点でございます。そういう点も加味いたしまして、今後の立法に当たりましては十分検討さしていただきたいと考えております。  なお、原案の中には今度の大洋デパート等のように工事中のものにおける被害があったという点に着目いたしまして、検査済み証の交付前の建築物の使用制限、それから工事中の特殊建築物等の使用制限、工事中の建築物の安全上の措置等に関する計画の届け出等、工事中の災害防止に関する規定も盛り込んで原案提出いたした次第でございまして、その点に関しましては衆議院でもお認めをいただきまして、修正削除されておらないということでございます。したがいまして、そういうものを今後は大いに活用してまいりたいと考えておる次第でございます。
  16. 矢原秀男

    矢原秀男君 こういう火災の中から、私がいま申し上げているように、客席からの出口の戸の構造についても、やはり令百十八条をあなたたちは改正をして、戸を避難方向に開かれる構造とすることによって円滑な避難行動を確保したいというのがあなた方の御意見であり令百十九条では、廊下の幅もその避難が迅速に行えるだけの幅員を確保したい、これは皆死亡者やいろんな被害の中からあなたたちが最高のやはり検討をされた段階だったんです。階段へのその途中の歩行距離については、令百二十条を変えて法律的な強味を持たして、災害発生後、短時間に安全な階段に到達できるようにされたわけでしょう、それでそれが移動されると。四番目には、やっぱり二以上の直通階段設置も令百二十一条を変えて、そうして二方向への避難を可能ならしめないと大変なんだと。そうなってくると、五番目の階段及び踊り場の幅等の令二十三条を変えて、階段内における円滑な避難の流れというものを確保していく。そこまでではまだ不十分だから、六番目には屋外階段構造、百二十一条の二項をどうしても変えて、地方自治体やいろんなところへ任すのでなしに、耐久性、不燃性によっておる木造というものの禁止もしようと。それはやはり途中で特別避難階段のところまで行くまでに煙に巻かれて死んでしまう、そういうような懸念が出てきているからそういうことになっている。また、避難階段設置構造についても、百二十三条や百二十二条を変えて、そうして一定階数以上の建物については防火、防煙性の有する安全な階段確保する。そういう人の流れが客室やその中心から来て、初めていまあなた方が言われている八番目の特別避難階段設置構造が令百二十二条や百二十三条で変えられて、十五階以上、地下三階以下の階についてはバルコニーまたは付属の施設を有する安全性がきわめて高い階段確保で、最大限の初めて国として技術的にも万全の対策が打てたという八番までの過程が来るんですよ。  それを一番から七番までさあっと減って、そうして八番だけやればいいんだとい考え方、このそばに人間だけを置かしておいて、はい、さいなら、行きなさい——現場を見られたあなた方が安易にこういうことを考えられるということは、本当に人命のことを考えていらっしゃるのか。それは恐らく多数決で採決されることでございましょうから、民主的国家の中ではどうしようもございませんが、本当にその残された家族や——いまだって百貨店や何かはお客さんがいっぱいです。不景気だといったって温泉の高層ホテルの中にはいっぱいなんです。そうしたら継ぎ足し、継ぎ足しで建って、どこに避難階段があるのか、出口がどうなのか、寝ているときにもし火災があったらどうなるのか。しかし、これだけを次国会で成立したとしても、もし別な過程の中で、人の流れの中で事故が起きた場合にだれが責任を負うのかということになると、私心配するんです。ずっと十何年現場見ておりまして、皆さん方だって一緒だと思うのですよ。  それは、これの該当されるところも大変だと思いますが、いまの大洋デパートの例を、そうしてまた公害企業の例を見ても、予防措置は金がかかるようでも、政府のいろんな手当てと、そういうものがあれば、一番の軽減の最大の手段であっていいことなんですね。だから、いままで政府方々とお会いをしても、本当にこれ以上はない、最高のものだったんだというように漏れ承っているわけです。ですから、当局としては次国会に八の問題、そうして十四、十九、二十だけでは病院ホテル旅館劇場百貨店等々の該当の中から見て、本当は不如意なんでしょう。当局のきょうお見えになっている技術者のメンバーから見れば、世界で一番の技術を持っていらっしゃる皆さんから見れば、それは実際は不如意なんでしょう。もう一度御答弁をお願いしたいと思います。
  17. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 先ほども申し上げましたとおり、原案といたしましては、政令で定めるということにしておりましたので、遡及しようと思えば全部の規定遡及も可能なわけでございます。今後の立法につきましてどう考えるかにつきましては、まだ素案の段階でございまして御説明の段階でないと思いますけれども、そういうような点も十分考慮いたしまして、本当に人命の安全上当然に避難できると、とにかく逃げることが第一だという点にしぼって運用できるようなことを考えてまいりたいと思っておる次第でございます。
  18. 矢原秀男

    矢原秀男君 では、遡及適用の件については建設大臣、最後でございますが、今後の建設省避難防火施設の建設に対しての対策ですね、法制化及び行政上いろいろの諸問題が皆様からもいろいろと討議をされたわけでございますが、まとめて、こういう避難防火等施設の法制化や行政上、先ほどの御答弁と重複するかとも思いますけれども、重ねてこれら対処のことについて御意見をお伺いしたいと思います。
  19. 中馬辰猪

    国務大臣中馬辰猪君) 事は人命に関するきわめて重大な問題でありますから、私どもも非常に心配し、注意いたしております。必ず次の国会には御趣旨を全面的に取り入れて提案をして御審議を仰ぎたい、こういうふうに考えております。
  20. 矢原秀男

    矢原秀男君 じゃ、次に日照権についてお伺いをいたします。  日本の国も狭い国土の上でございますし、平野部がきわめて限られておりまして、地理的状況も加味して、国土利用については行政各省庁は十分の対策を講じていかなければならないところでございます。特に人家が密集せねばならない土地利用の状況を考えれば、当然やはり日照権の問題が起こり得ることは明らかでございます。今日までも非常にそういうことで裁判等も多く出ておりまして、解決したものもしないものもあるわけでございますが、今日まで政府といたしまして、事日照権に関してどのように取り組んでこられたか、まずお伺いをしたいわけです。
  21. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 昭和四十五年の建築基準法の一部改正におきまして、ある程度の日照が確保できるということも念頭に置きまして、そういう趣旨で第一種住居専用地域及び第二種住居専用地域につきまして北側斜線制限の制度を設けております。さらに、従来からございます高度地区の制度の積極的な活用を同時に併用いたしまして日照の確保を図ってきたところでございます。しかし、近年におきまして日照問題等が住環境問題の中で相当のウエートを占めてまいっております。したがいまして、この際は住居系のところにつきましてはやはり公法的な規制が必要じゃないかと考えて本改正案提出したものでございます。その他におきましても、再開発事業の施行、不良住宅地区改良事業の施行、最近進めております転がし事業等の市街地再開発等がやはりそういうものに対する対策の一助になろうかと考えております。
  22. 矢原秀男

    矢原秀男君 いずれにいたしましても、日照保護を、確認制度をとる建築基準法規定することが果たして妥当かどうか。またこれにより、先日の参考人の御意見の中にも、梶原弁護士さんでございましたか、主張にあったと思うんですけれども、今後行政抗告として日影基準を争うようになるのではないか、こういうお話も確かに耳にしたと思うんですけれども、日照紛争の多様化、それから長期化を懸念する、ちょっとそういう懸念もするわけでございますけれども、これらについては政府の見通しと対応、どういうふうにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
  23. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 今回の法律改正によりまして、建築確認申請に際しまして、建築主事は当該申請に係る建築物が、今回決められました日影に関する基準に適合するか否かを審査の対象とすることになります。その場合に、社会的に確立されたルールであるという前提でございますので、基準にかなう申請に対しましては確認を進めるということになりますし、そのために、まあいままでのように確認段階でいろいろと問題になっておりました点が、社会的ルールができるという点につきまして、相当大幅に紛争は減るだろうとむしろ考えております。なお、当該確認に係る建築物の建築に反対されるというようなことがありました場合には、確認処分を争う行政訴訟が今後提起し得ることになるということだと思います。  さらに、行政訴訟におきましても、日影に関する基準は、その行政訴訟が行われる場合の、判断をされる場合の有力な基準の一つになるだろうということは十分想像されますので、ケース・バイ・ケースで決められるものであるとは申しながら、そういうふうな基準がある程度設定されるという点におきまして審理の十分な迅速化が図られるのじゃないか。そういうような点におきましては、いままでの紛争の長期化よりもむしろ迅速化の方へ向くのじゃないかとわれわれは考えておる次第でございます。
  24. 矢原秀男

    矢原秀男君 全国でも日照紛争については、まあ軽微を除いて、建設省の資料によりましても、四十六年が九百九十六件、四十七年が三千二百二十五件、四十八年が六千八百六十八件、四十九年が一万一千八百九十三件、五十年が八千百五件ですか、こういうふうに資料には明記をされておるわけなんですね。今回の法改正でその多くが法的解決を生むことは十分考えられるわけでございますが、その反面、私懸念をいたしておりますのは、法律によって個々のつながりや協調、逆に亀裂を残すようなこともあるのではないか。まあ一〇〇%どうしても解決できないいろいろな問題もございますので、そういう点で政府の行政上の細やかな配慮というものがさらに一歩深く進められなくてはならない、そういうふうに思うわけでございます。それについての見解ですね、もう一度お伺いしたいと思います。
  25. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 今回の改正は、市街地におきまして一定程度の日照を確保するために良好な町づくりのルールとして公法的規制を行うというものでございまして、直接的に私人間の相隣関係に介入しようという問題ではございません。したがいまして、民事上の紛争につきまして今後もやはりいろいろな問題が起こると思っております。しかしながら、従来のように金銭的解決等によりまして長期の人間的つながりに対する亀裂等が生ずることよりは、ルールに従って行われるという意味でむしろ明朗になるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  26. 矢原秀男

    矢原秀男君 都市における日照問題の解決を図りながら、環境の良好な町づくりを進めていくためには、改正案の日影規制だけでは不十分だと私は思うわけです。現行の建築確認の制度を根本から見直して、全面的な建築許可の制度の採用に踏み切るべきではないかと思うわけです。また、西ドイツで実施されております街区ごと建築詳細計画の導入、これも検討すべきではないか。こういうふうに思うわけですけれども、ただいま申し上げた二点についてお伺いをしたいと思います。
  27. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 住宅地におきます日照、通風、プライバシー等のいろいろな問題がございます。確かに今回の町づくりルールの中では、日照に重点を置きまして日影の規制を考えというのが実情でございます。そういうものをやはり基本的に解決するためには、建築を従来の確認制度から許可制度へ持っていったらどうかということにつきましては、実はわれわれどものところにございます建築審議会の答申の中にも明記をされております。  今回の日影の規制につきまして受けました答申は、第一次の答申と銘が打ってございます。その第一次の答申の終わりの方に、今後至急といいますか早急に検討を要すべき問題の中の第一に挙がっているのが建築許可制度の問題でございます。しかし、建築許可制度につきましても、これは現在の建築主事制度の根幹にかかわる問題でもございますし、いろいろな他の法令との関係等検討すべき問題が非常に多うございます。引き続き建築審議会におきまして御検討いただいておりますが、そういうふうな方向を目指しながら検討を続けたいと考えておることは事実でございます。  それから詳細計画につきましても、これはやはり同じその答申の中の今後検討すべき事項の中に明記をされておるわけでございます。われわれもつい先ごろも西ドイツから専門家を呼びましていろいろな勉強会等も行っておりますけれども、これも引き続き検討を続けまして、なるべく早い機会にそういうものについても成果を得たいと考えている次第でございます。
  28. 矢原秀男

    矢原秀男君 過密都市において日照問題の解決を図るためには、日影規制等の建築の形態規制が必要だと思いますが、これだけでは根本的な解決は期待できないと思います。基本的には、今日高地価を背景にますます激化している宅地の細分化防止の措置がとられなければならないと思います。宅地の細分化を防止しながら住宅問題の解決を図る方策をとる必要もあると思いますけれども、そのための有効な施策というものは用意をされていらっしゃるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  29. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 先生おっしゃいますように、敷地の規模が過小であるという場合の日照問題は非常に問題だと思っております。現在まで再開発事業の実施もしくは転がし事業の実施、その他いろいろな事業の実施等についてそういうものに対処してきたわけでございますけれども、最近建築協定の制度、それから総合設計等によります容積の割り増しの制度、特定街区によります土地の有効利用の制度等々、敷地を大きく活用する人につきましてはいろいろなおまけと申しますか、有利な規制がだんだんできてまいっております。さらに、そういうものにつきまして融資、減税等の応援も行っております。それらのものを通じまして、敷地の規模ができるだけまとまるような誘導援助の方法は現在も考えておるわけでございます。ただ、敷地規模をこれ以下にしてはならないというふうな規制の問題につきましてはまだございません。そういうものにつきましては、これも先ほど申し上げました建築審議会答申の中の今後検討すべき課題の中に詳細計画の確立とあわせて提言されておりまして、引き続き検討を続けております。なるべく早く具体的な結論を得たいと思っておる問題でございます。
  30. 矢原秀男

    矢原秀男君 次に、今回の改正で商業地域が規定から外されていることについて伺いたいわけでございます。  これはすべての方々からもいろいろといろんな面から御質問ございましたし、一つは、政府の基本的考え方の中に、住居系とそれ以外の地域ではおのずと日照規制は異なるものであるとのように受け取れるわけですが、もしそうであるならば、それぞれの地域における日照保障についての基本的な考え方、これを伺いたいと思います。
  31. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) これもたびたび答弁してまいりましたけれども、住居系のところにつきましては、住居地としての環境を保全すべきところだということで定められた用途地域でございます。たとえば、商業地域でございますと、商業の利便を増進するために定める地域ということになっております。したがいまして、容積率、建蔽率等につきましてもおのずから差がございます。当面非常に問題が多くて、やはり早期に公的介入をしていかなければ将来の町づくりとして不適当であろうと思われます住居系の地域、特に住居の安寧を守らなければいけない地域というものを今回公的規制の対象にしたということでございまして、決してその他の地域につきまして日照が不要だというふうに考えておるものではございません。したがいまして、それらの地域につきましては、やはりまだ民法の相隣関係が確立されておりませんけれども、そういうふうなものが今後判例の蓄積によりまして逐次つくられていくだろうと思っておりますが、そういうものを、やはり判例の積み重ねによるそういうルールのでき上りというのをわれわれ期待いたしておるわけでございます。なお、その間におきまして、そういうふうな社会的な通念というようなものがだんだん生まれる機運が生じましたときに、そういうものをまた取り入れるということは将来の方向として十分検討に値すると考えておる次第でございます。
  32. 矢原秀男

    矢原秀男君 もう一点。では、商業地域における日照基準が設定されないということが、行政上のある目的を有しているのではないかという心配もあるわけでございます。つまり、都市計画上の行政運営の効果的手段として、商業用地域からの住居の締め出しにつながることをお考えではないのかなと非常に先の先を読んで懸念しているわけなんですけれども、そういう点ではどうなんですか。
  33. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 商業地域は、商業の利便を増進する、したがいまして、都市計画上もその都市の中でそういうことが予想される地域を指定されておるというのが現状でございます。また、そういう方向で指定さるべきものと考えております。そういたしますと、商業地域はその利便性等から容積率等の要素も他よりも大きくなっておりまして、したがいまして、全体として相乗作用といたしましては価格も自然に高くなっておるというのが実情であろうかと思います。そこで、日影規制のいかんによりまして、そういうふうなときに商業地域から住宅を締め出すというようなことを企図しているというようなことではないわけでございます。ただ、長い目で見まして、やはり商業の利便のためということで指定される地域でございますので、それなりにふさわしい地域になっていくということが期待されるわけでございます。そういう場合に、土地利用上、商業地域では建築物を立体化いたしまして、下層部を商業的に利用しながら上層部を住宅に利用するというふうな利用の仕方の方がむしろ今後望ましいとわれわれは考えておるわけでございます。
  34. 矢原秀男

    矢原秀男君 以上に関連して、具体的な事例をひとつ挙げてお伺いしたいわけでございますが、私も先般ちょっと気になったのは、参考人の方、あれはたしかどちらかの大学教授の方でございましたでしょうか、いろんな地域指定については行政体の方が悪いのであってというふうなちょっとお話もあったと思うんですけれども、たまったものでないのは住民の方々であって、市であろうとも、県であろうと、国であろうとも、やはり国民の居住に対して責任を持たなくちゃいけないことであって、日照とか日影の問題がいろいろと非常に不公上平なものになってはいかぬと思うわけです。  いま質問いたしますのは、政府は商業地域における住居の日照規制はあくまで相隣関係の問題として解決すべきお考えのように承るわけでございますが、昭和五十一年九月二日の読売新聞に、都内の新宿二丁目での高層ビル建設をめぐる建築主と住民との紛争に、新宿区の方が、商業地域だからがまんせよとの趣旨を住民側に宣告したと報道されたことがあるんでございますが、この件の事実関係と、法律が施行された場合の同様の紛争に対する影響は建築主に有利となると思うわけでございますが、そうなれば既存の住居に対する保護政府はどういうふうに考えるのか。いろいろといままでお述べでございますが、ちょっと明確に、端的に答えていただきたいと思います。
  35. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 先生指摘の新宿二丁目の件につきましては、新聞で拝見をいたしまして、実は私、直接区を呼んで聞いておりません。ただ、新聞で理解した程度でございますが、今回の改正案につきましては、商業地域内において日照が必要ではないと判断したものではございませんで、先ほど来その点については申し上げたわけでございますが、特に今度のような場合も私法上の相隣関係の問題として解決されるべき問題ではないかといまでも思っております。ただ本法の改正案は、私法上の相隣関係まで商業地域を指定をしなかったから否定をしたというものとは考えておりません。したがいまして、今後そういうふうな私法上の積み上げによりましていろんな部分が定まってくると思うわけでございまして、決して個人を犠牲にするという御指摘には当たらないものと考えております。ただ、区がこの新聞にございますような態度で言ったということは、私もちょっと心外でございまして、やはりいろんな意味のPRなり、あっせんなり、指導なりには当然努めるべきだというふうに思っておる次第でございます。
  36. 矢原秀男

    矢原秀男君 四十八年の十月に実施された住宅統計調査の結果によりますと、日照時間が三時間未満の住宅が三百六十万戸、全戸数の一二%に上っていることが明らかにされております。また、その大部分が大都市の密集地に存在をする木賃アパートでございます。しかるに今回の改正による日影規制が十メートル以上の高さの中高層建築物を対象に実施されることになっておるわけでございますが、これらの密集市街地に存在する低い層の住宅間の日照阻害に対しては何らの措置がとられていないと私は解釈をしているわけでございます。これでは都市における日照問題の解決につながらないのではないか。こういう懸念と、そうして木賃アパートに代表される密集市街地における低層住宅の日照の確保については、どのようなきめ細やかな対策を講じようとされていらっしゃるのか、その方針を明らかにしていただきたいと思います。
  37. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 先生のいまお話しになりましたとおり、昭和四十八年の住宅統計調査に当たりましては、われわれもこういうふうな日照関係のことについて何とか解決をしたいということもございましたので、特別に項目を加えて全国調査を行ったわけでございます。その際の調査結果は、先生のおっしゃいますとおり、大体一時間から三時間までの日照しかないものというのが三百六十万戸あったわけでございます。三時間から五時間までのものが六百十三万戸、五時間以上のものが千九百万戸というふうなのが当時の数字でございます。低層の地域におきまして、低層でしかも住宅が密集しているという地域におきます現在の日照の状況はどうであろうかというふうなことも別途今度は住宅統計調査を離れて調査をいたしております。今回の基準はいろいろな審議会の小委員会等において検討されたわけでございますが、現在の大部分の住宅の受けておる日照のおおむね三分の二程度が享受しているものは最小限確保したいというのがルールづくりの基礎になったということでございます。  そういうものに対するそういう場合の対策はどうかということでございましたけれども、従来の基準法の中に、たとえば道路幅からする斜線制限、それから建蔽率等のいろんな規定ございまして、個々の確認等の際にそういうものを励行してまいったわけでございますが、そういうものも一種の日照、通風等を考え規定の制度でございます。ただ、既存のところはどうするんだという点につきましては、これは既存のところにおきまして、そういうふうな日照の改善を図りたいという地区につきましては、やはり転がし事業、再開発事業、不良住宅地区改良事業等の再開発事業を地域単位で積極的に進めていくということによらざるを得ないと考えておる次第でございます。
  38. 矢原秀男

    矢原秀男君 まあ法律ができますと、なかなかそれを遵守していろいろと心配されてもうまくいかないという問題があるんですが、先般の参考人に来ていただきましたときに、東京理科大学教授の大河原さんの主張を引用させていただきまして東京都の方に質問したわけでございますが、東京のこの三時間から六時間を太陽シビルミニマムで数値として出している。一方、規制の際は、この基準を敷地境界線五メートルの高さにおいて確保されていらっしゃると。東京の冬至においては日影が建築物の高さの一・六倍伸びるから、少なくとも自分の敷地内に八メートル以上の空き地がないと、隣地に二階建てが建つことによる日照阻害を受忍の限度であることを認めていること、そういうふうなことでいろいろと疑問が投げかけられておられました。その問題とあわせて、日影による中高層建築物の制限の中で、敷地外五メートル以内の範囲におさめなければならない日影、午前八時から午後四時の間ですね、制限を受ける区域は。その場合に日影図をつくる水平面の高さが一・五メートルという図表が出ているわけでございます。ということになると、あれですか、一・五メートル以下、ゼロメーターから一・五メートルの間は日陰になってもやむを得ないという解釈なのか、その点ちょっとお伺いしたいと存じます。
  39. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 今度の日影規制の際に、測点を第一種住専地域で一・五メートル、一応一・五メートルといたしておりますのは、一階の窓ということを意識して定めておるものでございます。その場合あくまで排出する日影の基準でございまして、日影というのは朝から晩までずっとこう回っていくわけでございます。したがいまして、一日じゅう当たらないという趣旨ではなくて、何時間そういうものが複合して当たらないということを基準の中で取り入れているわけでございます。したがいまして、一・五メートルのところで測点をいたしましても、その日の一日のうちには下の方にも日が当たる場合があるということでございます。
  40. 矢原秀男

    矢原秀男君 いま私、数字を申し上げたわけでございますが、日陰世帯の。しかし、太陽が回るからといって当たる場合もあるでは、私法律をつくる場合ちょっと問題ではないかと思うんですね。これは政府のいま図を私持っております。ここにあるんですけれども、図表のそのままを私見て心配をしておるわけでございまして、私この立法権の問題でいろいろあるわけです。アメリカのように民主党や共和党を中心とする議員さんたちが当選をすれば、十七名の専門家が国からすべてその議員につくわけですから、立法府としての国会というものは成り立っているわけです。議員同士で委員会でやって、当局はもうその決まった段階のものを実施すればいいわけですから。しかし、日本の場合は、立法機関である国会といっても、実際は行政の政府の力をかりて、そうして皆さんに出ていただいていろいろと検討している、こういう日本の国会のあり方でございますけれども、私はいま政府の日照に対する日影の図表というものを見て、一・五メートルといえばやっぱり一階屋根なんです、屋根なんですわ。太陽がぐるぐるぐるぐる回っても、現在の一階だけのお家であるとか二階建てであるとかの軒並みを見ておりますと、いま日本の建築様式では大体一・五といえばやっぱり屋根に当たりますよ、大体。軒が出ているのですから、その際に。すぱっと図面どおりでなしに、屋根が出てるんですから、ここで一・五であっても軒先が出てますから、ですからまるまる一階は日が当たらないと解釈をしてもいいんではないかと思います。  ということになると、私は、これ素人考えでございますけれども、一階は日が当たらなくてもいいのかという、そういう率直な感じを持つわけです。いま局長がおっしゃいますのは、そうではないんだと、太陽の自転の中で当たるときもあるのだ、当たるときもあるのだと言う。いま商層化のそういうふうな中で、そこまで日照権というものを制限をされて、まじめな国民生活をされていらっしゃる、営々として。土地が高くなってるんですから家も求められない。そうしてやっと土地を求めてせっかく一階建てか二階建てを建てても、はたには大きな資本で中高層が建ってしまう。自然の恩恵を浴さなくちゃいけない太陽の日照に対して、健康の立場からでもそこまで制限を極度に受けなくてはならないのか。これは日本の国土の状況もありますけれども、そういうふうなことになると、私はいま日照の問題申し上げておりますのは、もっと拡大を、庶民のために、国民生活のためにすべきであるとい立場から質問を私はしているわけでございますが、政府皆さんの図表を見られてもそういうふうにきちっと出てるんですよ。その点、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。
  41. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 冬至の場合に太陽の位置を定めまして、それで一・五メートルの測点をするというふうな図表をつくることになっております。その辺の場合の日本におきます傾斜角度から見まして、われわれ普通考えまして、投影の角度はやはり一階の窓ぐらいというふうにいまでも考えるわけでございます。  それから、やはり下のところには日が当たらないのではないかということでございますが、実は一種住専についての試算を私きょう持っておりませんが、いまの二種住専につきましても同じような問題があるわけでございます。四メートルで二階の窓のところを基準にしております。そうしますと、一階は要らないのかという問題が直ちに出るわけでございます。したがいまして、その辺につきましての試算等を実は私もちょっと手に持っておりますので、同じような考え方でございますからその数字を申し上げさしていただきますと、たとえば二種住居専用地域で今回の中の基準が適用されている場合に、南側に五階建てのポイント型が立っています。その場合三つの基準がありまして、真ん中の基準を採用したとして検討してみますと、建築物が建築された場合に北側の敷地が得ることができる日照、これにつきましては南庭の幅に応じて差があるわけでございます。南側の庭が三メートルしかないという場合には二階は二時間半になります。その場合にもやはり一階も二時間半日が当たるということになります。南庭が五メートルある場合には二階が四時間当たります。一階が約三時間ということになります。それから南庭が七メートルの場合には二階は七時間半当たり、一階は約三時間半当たるということでございまして、いずれも二階を基準に規制をいたしましても一階にも全部日が当たるということになるわけでございますが、基準としてとらえるのにとらえやすい二種住専の場合には、二階の窓の辺を使ったということでございます。したがいまして、その測定の基準にいろいろ一・五メートル、四メートル等使っておりますけれども、決してそれ以下のところは日が当たらなくてよいという判断ではなくて、当たるんだけれども、やはり基準として決めやすいところをポイントに置いて基準をつくったというのが実情でございます。
  42. 矢原秀男

    矢原秀男君 関連して、自治体における制限の強化または緩和については前の委員会でも答弁ございましたけど、もう一度、私、御答弁をお願いしたいんですけれども、自治体における制限の強化または緩和について、これは条例、規制でいろいろつくってあるでしょう、地方でね。法律が制定されますと厳しい面が逆戻りをする場合があるのと、そして緩い場合はもちろん引き上げているわけですけれども、そういうような懸念性あるでしょう。そういうふうな場合で、自治体においての制限の強化または緩和について、これは局長、専門的にどうですか。
  43. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 今回の修正をいただきました案では、メニューを示しまして、その中で地方公共団体が条例で定めるということのスタイルになっておるわけでございます。したがいまして、いままでの自治体が条例等で定めておられるものもあるじゃないかというお話でございますが、われわれもいろんな例について検討はいたしております。おおむね、いままでのいろんな基準について見ますと、日影の問題に関する限り大同小異であるということが言えると思います。まあどちらかと申しますと、いままでの基準の中で、高い家が建つ場合には今回の規制の方が厳しいものが多い、低いときにはどうも従前のものが厳しい場合があるやに見受けられます。しかしながら、そういう点につきまして今回全体の中でメニューが示されますので、その中の選択ということで、たとえば一種住専でございますと三つの基準がございます。その中で一番厳しいものも選べる、それから一番緩いものも選べるというわけでございまして、十分自治体のお考えにマッチをした条例の制定ができるというふうにわれわれ考えておるわけでございます。
  44. 矢原秀男

    矢原秀男君 いま私がこの面で問題提起をいたしておりますのは、確かにこの改正案によれば、地方自治体は気候、風土の特殊性または土地利用の状況によって必要がある場合は条例で規制内容の一部を手直しすることができると、こうなっているわけです。だから、質問されても皆そういうようになっておりますと言われているわけですが、私が心配しておりますのは、それには注文がついているわけなんですね。「日影による中高層建築物の制限」には(い)、(ろ)、(は)、(に)、(ほ)と制限を受ける区域、第一種、第二種住居地域という枠があるわけなんですが、(に)の欄及び(ほ)の欄の時間についてのみ手直しが可能と、こうなっているんです。ですから、地方自治体における非常に特殊性を生かされているのかと言えば、(に)と(ほ)の段階だけにおいてのみ許されているのであって、肝心の日影図をつくる水平面の高さの日影の高さ等、そういうふうなところには手をかけてはいかぬというようになっているんです、逆に言えば。  だから、これは地方自治体のいろんな第一線における非常に条例や規制内容というものが生かされているように見えるけれども、肝心のところはびしっと枠がかかっているんですよ、枠が。ぼくはそれを問題にしたいんです。(に)については、制限を受ける区域で地方自治体がよろしいよと、改正をしてもいいんですよというのは、敷地外五メートル以内の範囲におさめなければならない日影。午前八時から午後四時までの間の、第一種の場合であれば四時間の日影。(ほ)の場合であれば敷地外十メートル以内の範囲におさめなければならない日影。午前八時から午後四時の間、二・五時間の日影。これは第一種ですね。二種の場合は二・五時間の日影。こういうふうに、この(に)と(ほ)だけを地方自治体での自由裁量に任している。しかし、肝心の政府がつくった日影図をつくる水平面の高さには問題があるんですわ。しかし、これが第一線の平均が全部全国に網をかぶされる。これを地方自治体の方ではいろいろケース・バイ・ケースで変えたいなという問題もやっぱり出てくるんですけれども、これは一切いじったらいかぬと、こうなっているんですよ。しかし、これで万全なのかどうかということなんですけれども、一言伺いいたします。
  45. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 確かにいろんな条例を決めていらっしゃる中にも、一・五メートルというのを採用しておられるところもございますし、五メートルというのもございますし、いろいろと差があることは事実でございます。しかしながら、やはり最後になりまして確保しなければならない日影の限度ということになりますと、おおむね大同小異であろうかと思っております。したがいまして、今回のようなやはり選択の範囲内で十分自主的に実情に合った規制がお願いできるというふうに信じておる次第でございます。
  46. 矢原秀男

    矢原秀男君 じゃ、日照権の件については大臣に最後に御質問いたしますが、日照に関する世論調査では、大都市の居住環境に関する世論調査、これは内閣総理大臣官房広報室で四十八年の三月やっていらっしゃるわけですが、日照時間の希望等についてもやはり四時間以上二二%、五時間以上二八%、合わせるともう五〇%ですね、四時間から五時間以上は必要としているのが。まあ六時間以上、七時間以上を合わせるとやっぱり二五%以上もある。やはりどうしても中京圏では六時間以上から七時間以上三五%ですね。東京都の区部においては四時間から五時間以上五八%、横浜から川崎が四時間から五時間以上五四%ですね。まあこういうふうに日照に関する世論調査というものを見ておりますと、日照権をどのようにして守るのかという問題が今後も出ると思います。  もう一つは、自然の恩恵である太陽のエネルギー、すなわち日照の人体に与える影響というものを高層建築による環境破壊の実態の中からいかに守っていくべきであるかということになると、一口に申し上げますと環境権としての日照権、まあこういうものを憲法体系上の位置づけの中からどうすべきかということは今後大きな問題になると思います。こういう点について、環境権としての日照権はいかにあるべきか、大臣としての所見をお伺いしたいと思います。
  47. 中馬辰猪

    国務大臣中馬辰猪君) 最近の判例を見てもまだ固まっていないように思います。ずいぶん日照権というものについての解釈や範囲等が裁判の中においてもまだずれているといいますか、固まっていない。しかし、方向としてはやはり日照に当たる時間が多いということは人類にとっては非常に幸福なことでありますから、法律上の定義は別としても、そっちの方向に行政を進めるということは当然であると、こう考えております。
  48. 矢原秀男

    矢原秀男君 非常に重要な課題だと思いますので、大臣を初めよく、まあ私たちもそうでございますが、やはり検討していかなくてはいけないと思います。  次に、時間がございませんのでちょっと飛ばしますけれども、私非常に気になっておりますのは、建築基準法改正案に対する参考人方々に来ていただきましたときに、法律専門家、弁護士の方々、東京都の行政担当の方々よりもどうしても気になりましたのは、後藤市長さんのお述べになりました意見の要旨でございます。これは住民生活の中から切実な声というものが出てきた発言だと思うわけなんです。ですから、私たち市民相談を常に受ける紛争処理の立場から見ても、こういう非常に目に見えないきめの細かい問題点についてやはり政府に対して一応尋ねておく必要があるというのが私の非常に気になっているところでございますので、お伺いをしたいと思います。  市長の話の中にも、この改正案は、全国三百有余の市町村が条例または要綱を制定して対処してきた各種の問題のうちのごく一部分である。すなわち、日照問題のみを解決しようとするものであるが、その意味では改正案は不十分ではないのかと。日照問題に限定して考えたとしても、この日影基準のみをもっていわゆる日照問題の全側面を解決することはとうてい不可能ではないのかとい懸念性を表示されておられました。そういう中で、御意見を述べられておりました一つの中に、要綱行政は総合的な行政にしてほしい。その一つは、全国三百有余の市町村が制定している条例または宅地開発指導要綱の一つは、開発業者に対して公共公益施設負担を要請し、都市構造に関するシビルミニマムを確保すること。また、ロについては、相隣紛争を円満に解決すること。ハは、団地、マンション等に入居してくる新しい住民に良好な住環境を保障することといった多方面のねらいを持っている。それは都市計画法上の開発許可制度でも十分に解決できず、建築基準法上の建築確認制度でも十分に解決できない諸問題に総合的に対処しようとするものであると。こういう前提の中でまず一つ御質問いたしますのは、仮に相隣紛争に限って考えてみても、問題は日照問題だけではなく、中高層建築物が周辺住民に及ぼす生活侵害は、日照侵害に加えて電波障害、風害、通風阻害、プライバシー侵害、照り返し、威圧感等々、工事騒音等工事中の生活侵害もある。要するに問題は、建築物が周辺の地域の状況と適合しているかどうかという総合的な問題であると、こういうふうに提起をされている。こういうふうな中で、今回の改正案の日影基準というものは、これらの総合的な問題のうちの相隣紛争の側面しか取り上げず、しかも相隣紛争問題のうちの日照問題しか取り上げていないと、だから市町村当局者としては、要綱をもって対処してきた総合的な問題の全般の中から明確な法的根拠を与えることを強く要望している。立法については、自治体の苦難の試行錯誤を踏まえたものであってほしいと、こういう切実な御要望があったわけでございますが、当局としては、これについてはどういう見解を持っていらっしゃるか。
  49. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) いま先生がおっしゃいましたような電波障害、それから風害等々、市長さんがおっしゃいましたとおり、そういうものがやはり住居の環境の安全のために非常に必要だということをわれわれも痛感いたしております。そのためにいろいろな勉強も当然続けていたしております。しかし、この市長さんが提出されました要綱に対する市の答申の中にも書いてございますとおり、やはりそういうものについて直ちに現在いろんな結論が得られているわけではないというふうに書いてございますけれども、そういうようなものの因果関係がきわめて不明確な時代に、やはり私権の制限ということにもつながるわけでございますので、非常に慎重に検討すべきだということでございまして、直ちにそういうものにつきまして、まだ立法化の段階には至っていないというのが現状でございます。今後もそういう点につきましては十分な検討を進めながら検討してまいりたいと思っております。  それから市長さんのおっしゃいます考え方の細目の中には、従来の構造についてはやはり確認のような制度がいいわけでございますが、用途制とか地域地区制に関するいろんな問題につきましては、確認よりもむしろ許可制度の方へ移行すべきじゃないかという点の示唆もあったというふうに私受け取っております。その点につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、建築審議会の中におきましても、都市計画で行っております開発許可という制度ともあわせ考えながら、将来確認を許可に切りかえる方向に模索をすべきだとい提案をいただいておりまして、今後引き続き検討を続け、なるべく早い機会に結論を得たいと思っておる次第でございます。
  50. 矢原秀男

    矢原秀男君 この点については、理事会においても附帯決議等のあれが委員長からも明示をされたように思っておりますので安心しておりますが、どうか当局も、こういう問題についてはやはり現場主義というそういう形の中でどういうふうに日照問題が起きているのか。で、電波障害の問題だって先般もNHKや郵政関係にお尋ねしましたけれども、本当は日本の高層化やいろんなものからの電波障害に対するこの解決というのは、技術者関係はわかっていらしゃいますけれども、それをすべてやっていけば膨大な金額がかかるから国としても一〇〇%の対処はされないようにいまなっております、残念だけれども。そのぐらい電波障害の一つにしましても大変な問題を抱えているわけです。  それはさておきまして、次に福祉対策の促進との関係について伺いたいわけでございます。  本年四月に京都市においては、デパート、映画館、図書館、病院ホテル、駅などいわゆる公共性の強い不特定多数の市民が利用する建築物について、身体障害者、高齢者、病弱者などお体の悪い、不自由な人たちがひとしくこれを利用することができるようにするとい立場から、それらの新築、増改築の建築主は設計の段階で市と協議をするという、いわば福祉の建築基準とも言うべき福祉の町づくりのための建築物環境整備要綱を策定をして実施をされたわけでございます。また反面、東京都では都立施設の障害者向けの整備要綱を、これはまた東京の町田市でもそうでございますが、建築物などに関する福祉環境整備要綱を策定されて実施されております。さらに、横浜でも同趣旨の要綱の策定準備を進めているようでございますが、そこでこうした地方公共団体独自のいわゆる福祉の建築基準とも言える要綱の策定実施についてどういうふうに評価をしているのか、これは大臣の所見を伺いたいと思います。  また、こうした考え方が現行建築基準法はもとよりのことでございますけれども、今回の改正案の中にも盛り込まれていないわけでございます。国としてもこうした施策を導入すべきではないかと思うわけでございますが、もしそれが法制上建築基準法で無理ならば特別立法と、こういうものも考えてよいのではないかと思うわけでございますが、これらもあわせて大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  51. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) まだ大臣に福祉の基準お目にかけたことございませんので、最初に私から状況を報告さしていただいて、大臣の御所見を述べさしていただきたいと思います。  建築物が生活と最も密接な関係を有します施設でございますので、特にデパート病院等の公共性が強い建物等につきまして、身体障害者等の体の不自由な人がこれが利用できるようにしたいというふうなことでいろんな福祉の規定等がきまっておるようでございます。これは当然に望ましいことだと考えております。ただ、その実現につきまして、第一には、公共性が強い建築物の建築主、それから設計者等が建築と福祉とのかかわり合いにつきまして大いに認識を深める必要があるというふうに考えております。そのために地方公共団体の要綱は非常に有効な役割りを果たしておられるというふうに考えております。  さらに、公共性の強い建築物につきまして、福祉とい観点からそういうことは非常に望ましいことだと、かように申し上げましたけれども、現時点におきまして直ちに建築基準法に導入することはやや困難ではないかと考えております。なぜかと申しますと、建築物の安全、衛生、防火、避難等に関し、最低の基準を決めるという規制的性格が多いのが建築基準法でございますので、その中で一律に全国的な建物にそういうものを決めるという点については、ややちゅうちょする点がございます。  また、たとえば立法は特別立法によってやったらどうかというお話もございましたけれども、やはり身体の不自由な方々の住んでおられる地域、あるいは用途に対応した利用頻度の究明、それから各種施設設備等の技術上の基準の整備等々まだまだ検討すべき問題が多いように思います。したがいまして、現在では試行的な段階としてとらえまして、要綱にも事例がございますように、公共建築物を主体として試行を試み、それを積み重ねていくということによって対策をとっていくのが当面は必要ではないかと考えております。したがいまして、建設省におきましても、福祉とい観点建築物の設計に反映させるという意味で、身体障害者の利用を考慮した設計資料というようなものの作成を行って地方公共団体等について指導しておるというのが現状でございます。
  52. 中馬辰猪

    国務大臣中馬辰猪君) 最近各地でそういう問題が多く要望が出ておりまして、一部いわゆる進歩的な市長さんといいますか、そういうところでは実行しておるところもあるようでございまして、公共物については大変これは結構なことでありますから、そういうことが実現できるように私どもも勉強して、具体的に可能であるような方向で行政を指導してまいりたいと、こう考えております。
  53. 矢原秀男

    矢原秀男君 ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  最後に、確認許可等の執行体制について御質問申し上げたいと思います。  今回の改正案では、建築確認を要する特殊建築物の拡大を初めとして、幾つかの点に改正の手が加えられております。それはそれで了とするわけでございますが、ただ問題は、そのための執行体制が果たして整っているのかどうかという点でございます。そこで、最近年次の、全国の年間確認数、建築主事の人数、一人当たりの確認数がどのようになっているか、お伺いをしたいと思います。
  54. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 確認件数でございますが、昭和四十七年度におきましては、建築確認件数が百三十八万七千九百四十三件、建築主事の数は九百六十七名、建築主事一人当たりの確認件数は千四百三十五件。それから昭和四十八年度が、確認件数が百二十八万百三十九件、主事の数が千十三人、一人当たりの確認件数が千二百六十四件。昭和四十九年度は、確認件数が百二十一万九百二十件、建築主事の数は千五十六人、一人当たりの確認件数は千百四十七件というのが実情でございます。
  55. 矢原秀男

    矢原秀男君 現行法の第十二条の特殊建築物についての定期検査の実績が余り芳しくないと漏れ聞くわけでございますが、その実情はどうなのかというのが一点と、もう一点は、現行法の規定、さらに今回の改正案規定が完全に実施されるためには相当数の建築主事の増員、ただいま御報告いただきましたけれども、建築主事の増員などの執行体制の強化拡充が必要だと私は思うわけなんですけれども、予算面ではどのように配慮されておられるのか、お伺いしたいと思います。
  56. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 先生から御指摘ございました現行法の十二条第一項の規定に基づきます定期検査報告の対象とする特殊建築物の報告状況でございますが、都道府県別に見ました場合には、現在準備中の山梨県を除きまして全国で指定済みでございます。法十二条第二項の規定に基づきまして定期検査の報告の対象としております昇降機及び建築設備の指定状況は、やはり昇降機につきましては準備中の山梨県を除く全国で、また建築設備につきましては東京、大阪を初めとするほぼ半数の都道府県が指定済みでございます。これの調査及び検査の報告状況は、東京都について見ますと、特殊建築物につきましては、昭和四十八年度から五十年度までの実績では、防災上重要な建築物であります百貨店につきまして約七割、集会場、映画館につきまして約六割の報告を得ております。昇降機につきましては、昭和五十年度の実績では設置されておりますエレベーターの件数約八割に当たる三万四千件の報告を得ております。しかしながら、いずれも六割とか八割ということでございまして芳しくない実情だと思っております。聞いてみますと、中小規模の建築物の報告状況が悪いためというようなことで御報告があるわけでございますけれども、まことに遺憾に思っております。さらに特定行政庁等を指導しまして徹底を期したいと思っておる次第でございます。  それからさらに、いろいろと今後につきましても執行体制の整備が必要であると思っております。実はこの法案提案いたしますと同時に、そういうふうな執行体制の整備が必要であるということで、自治省に対しましてもそういうふうな執行体制の拡充の要望をいたしました。昭和五十年度のときからすでに一部の実現を見つつあります。たとえば人口百七十万の県につきましては四名、人口百五十万の大都市につきましては三名、人口二十五万の都市につきましては一名、それぞれこういう事務のための行政事務のものが対象といたしましてふやされております。実際の実績等を見ましても、府県、大都市、その他の市におきましても、実情を見ますと、いずれもそれらの基準を上回る程度の人員を配置いたしております。ただ、おっしゃいますように、執行体制を整備をいたしまして励行をいたすことが今後の重要な点でございますので、十分この点の充実につきましても今後も努めてまいりたいと思っておる次第でございます。
  57. 矢原秀男

    矢原秀男君 今回の改正で新たにキャバレー、ナイトクラブ、遊技場等が建築確認を要する特殊建築物になったことは、これらの建築物の火災事故が比較的多い現状に照らして適切な改正だと思うわけでございます。  一方、キャバレー、ナイトクラブ等は客寄せのために短期間で内部の改装、こういうのを行うのを通例としておりますので、そのたびに確認検査等が必要となるわけでございます。ただでさえ業務量の増加に追われている建築主事の業務量の大幅な増加というものを来すことと、したがって、今回の改正を実効あらしめるためには事務量に対応した建築主事の増員等の執行体制というものは当然必要でございます。こういう面につきましても強化をしていただきたいと思います。  これに関連しまして、建築協定になるわけでございますけれども、建築協定の制度が地域の住民の合意によって環境のよい町づくりを進める制度であり、都市づくりの面からも大いに活用される必要があるわけでございますが、現在この協定締結の前提となる条例がどの程度の地方公共団体で制定され、またどの程度の地区で締結をされているのか、その普及の状況というものがおわかりでございましたら説明を願いたいと思います。
  58. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 締結年次別の建築協定の数を調べてみますと、昭和四十年以前が四、昭和四十年以降が二百二十、比較的最近のものが多うございますが、トータルで二百二十四の建築協定が現在結ばれておるわけでございます。
  59. 矢原秀男

    矢原秀男君 いま御報告あったわけでございますが、建築協定の制度は、市街地における良好な環境づくりに有効な制度として建築基準法制定当初、二十六年から法律上認められているものでございますけれども、御報告のように現在は余り普及をしておりません。  一つは、その原因は何か。二番目には、制度的な欠陥があるのではないか。三番目には、今回の改正でどの程度の改善が図られているのか。またあわせて、国民に対するこの制度のPRに欠けていたのではないかという心配があるわけなんですが、この諸点について簡単でいいですから見解を述べてください。
  60. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) やはり建築協定の制度は制度的には非常にすぐれた制度でございますが、あくまで私法上の契約ということで観念されておりますので、いままでは全体の同意という中で一人でも反対がありますとできなかった。特にどうしてもやろうという場合にも真ん中あたりが残りましてゲリマンダーのようなかっこうになってなかなか認可の対象にならなかったというようなことが非常にあったわけでございます。全員同意というのがやはりなかなか進まなかった原因の一つであろうかと思います。しかし、今回の改正におきましてやはり一人制というのもつくりましたし、それから底地の所有権者ではなくて借地権者もできるようにいたしましたし、共同処理の場合には過半の者が参加すれば結構だというふうに直しましたし、非常に協定が、従来の全員同意の壁の中でも、従来よりは相当協定が結びやすくなったというふうに考えております。したがいまして、今後そういうものにつきまして新制度の内容を十分関係方面のPRに努めまして、その御活用をお願いしたいと思う次第でございます。
  61. 矢原秀男

    矢原秀男君 いずれにしましても、この制度が一向に普及をしない原因の一つには協定の性格のあいまいさが指摘されていると思います。すなわち、この協定の性格が私法的なものに限られているために制定の効果に限界があるのではないかと思うわけです。この際、建築協定を町づくりに対する住民参加の一形式と性格づけ、公法的な性格を与えて、協定内容建築確認の対象とすること、及び協定違反に対しては特定行政庁が是正措置等を命ずることができるようにすることを真剣に検討すべきではないかと私は思うわけでございますが、そういう点はいかがでございましょうか。
  62. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 今回の改正案提案に当たりましても、実はわれわれもいろんな意味でそういう検討をしたわけでございます。たとえば、全員同意制ということよりも、やはり三分の二以上の多数決による協定の締結ができないか、そういう場合に定められた協定につきまして私法的契約以上の効果を与えられないか、いろいろ議論をいたしたわけでございますけれども、もしそういう性格のものであるならば、やはり建築協定ということよりは一般の公的規制にすべきであるということが議論のもとになりまして、従前のものを使いやすくするとい改正に今回はとどまっているわけでございます。しかしながら、そういうことでございましてもわれわれは相当効果を上げられると考えておる次第でございます。  さらに、私法的契約であるという点から、その違反につきましてやはり公法上の措置がとれないという点がございます。いろいろな建築協定ではその建築協定自体の中に違反をした場合の措置等についてお決めになっておりますけれども、それに背くような場合がございましても公法的措置はとれないわけでございます。しかしながら、そういうふうな地域の実情が非常によくなるということが前提でございますので、特定行政庁、建築主事等は十分そういう面につきましては指導なり、あっせんなりは努めてまいるべきだというふうに考えております。
  63. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時十分休憩      —————・—————    午後一時十一分開会
  64. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) これより委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  65. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 建築基準法の一部改正法律案に関して質問したいと思います。  遡及適用問題、それから日照問題、それから電波障害、風害問題などについてお聞きしたいと思います。  まず、既存建築物遡及適用削除問題でありますが、この問題はやっぱりビル火災という都市災害から人命をどう守るかということが中心問題であって、この遡及適用については、政府の当初の原案では、人命の安全を目的として、施設についても特別避難階段竪穴区画、非常用照明装置及び進入口の四種の施設に限定し、不可欠なものだけに限ると、そして猶予期間を三年から五年と設け、改修工事費に対する助成措置、これはもちろん十分とは言えませんけれども、そういうものも講じたということでした。ところが、これが削除ということになったわけですが、この削除された場合、人命の安全そのものに重大な問題が生ずる危険がないのかどうか。当初提案では、人命安全のために必要不可欠、緊急のものだけに限ったということでしたが、それが削除されたわけですから、そういう危険はないかどうか、それに対してどういう対応策を講ずるつもりか、これをまず冒頭お伺いします。
  66. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 先生御案内のとおり、改正原案では、避難施設防火区画、非常用進入口、非常用照明装置の中から特に緊急なものというものを選んで遡及するとい提案をいたしたわけでございます。実際問題といたしまして、普通、現在ございますいろんな既存の不適格の建築物等につきまして、その実態等についても調べておりますけれども、特にそういう点に重点を置く方が人命安全上必要だというふうにわれわれ考えたわけでございます。現実の問題といたしまして、建築基準法の性格は状態規定でございますので、既存不適格のままが現在では適法と認められているという状況でございます。したがいまして、本当に人が早く逃げるというために、今回われわれ考えましたような遡及措置はわれわれは一時も早くできることが望ましいと思っております。  ただ、それにつきましては遡及をしてやるというような非常に重要な問題でございますので、衆議院審議のさなかにおいて出ましたいろいろな問題を踏まえて、新しい立法を講じたいというのが現状でございまして、たまたま今回の提案いたしました改正案の中にも、工事中のそういうような特殊建築物に対しましていろいろな対策を考えておったわけでございますが、その点は今回の改正案の中でも残されております。したがいまして、その点も踏まえまして現行の建築基準法の活用によりまして、十分当面の対策には遺漏のないように進めてまいりたいと思っておる次第でございます。
  67. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今度の衆議院で行われたこの修正ですけれども、われわれこれ反対いたしました。これがたとえば百貨店協会などの意見の関連があったのではないかということを私は恐れておりますが、たとえばここに日本百貨店協会の建築基準法の一部改正についての防災に関する要望書というのがあります。議員にも届けられたものですけれども、この冒頭には、この「建築基準法改正案内容は、防災思想を必ずしも明確にすることもなく、いたずらに技術的規制の細目を義務づけようとするもの」だと、「甚だしく現実と遊離した細目を要求している。」と、そう述べられている。「全国的にも、歴史的にも極めて稀な防災上殆んど無防備に近い「熊本・大洋」の不幸なケースをもって、防災体制を整えた建物にも一様にあてはめて、実施しようとしている」と、こういうことが冒頭述べられているんですね。こういう百貨店協会の批判、きわめてまれなものを全部に押しつけようとしていて、「いたずらに技術的規制の細目を義務づけ」「甚だしく現実と遊離」しているという批判について、建設省側はどうお考えですか。
  68. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) われわれ衆議院の方で遡及適用につきまして削除されましたいろいろな点がございますが、そのうちの非常に重要な点は、遡及建築基準法の本法の中に取り込みますと、やはり将来におきましても日進月歩のいろんな技術がございますので、また将来規定が変わる場合が予想されます。その場合に、その新しい規定を従前の新しく既存不適格になったものに対してさらに遡及をするのかという問題が提起をされました。それにつきましてわれわれが法的に準備いたしましたのは、そういう政令を定める際に、その政令の中で遡及するかどうかを決定するとい提案をしたわけでございますが、そういうふうな現行法上適法であるものについて遡及をするというものについて、政令段階でそういうことを決定するのはおかしいと、もう少し遡及規定が何年何月何日施行の規定というふうに明瞭に示し、それを遡及する場合にはさらに法律によるべきだというような有力な意見が出ておりました。  そのほか、建築基準法の本法に取り込みますので、やはり代替施設等についても認めようとい規定がございましたけれども、そういう場合にも構造方法によるというような認め方をしたいと、同等以上と、現行規定と同等以上の構造方法によらなければ代替は認めないというふうな規定になっておったわけでございます。例を挙げて申しますと、たとえばビルビルがある場合に、避難階段をつくるのをやめまして、隣のビルの方に逃げられる空中横断の橋をつくるというような場合には、構造上同等以上と認める代替施設であるとわれわれ御説明をしたわけでございますけれども、最近も例がございましたが、ブリジストンのビルの屋上におきまして、ビル火災の際に、四百人ばかりの人が屋上に逃げました。たまたまふだんからそこに設置をしてありました隣のビルにかけられるような横断のための橋を引っ張り出して渡しまして、四百人全部が助かったという例もございます。ところが、そういうものがわれわれの準備しました答案の中では、代替施設としてどうも認められないというような点もございました。  それからさらに、第三点といたしまして、たまたまデパート協会等も主張されましたけれども、技術的な問題の中に、まだ遡及をしてまでやるということについては、こういう点についての改正をひとつ必要ではないのかというふうな具体的、技術的な提案もありまして、それらのものを含めまして今回の削除が行われたというふうに考えております。したがいまして、決してデパート皆さん方のおっしゃったために削除されたものだとは思っておりません。  それからさらに、デパート皆さんが技術的にきわめて防災のことは決まっていないのにとおっしゃる裏には、スプリンクラー設置が全部義務づけられて、デパート側では設置義務がない階段だとか便所にもすでにスプリンクラー設置している、したがって、そういうことの効果を見てからやったらどうだと、こういう御提案は確かにございました。しかし、われわれ全体の百貨店の状況を見ますと、確かにピンからキリまであるようでございます。したがいまして、大どころの百貨店等につきましては相当うまくいっていると思いますけれども、まだまだ遡及をした方がいいと思うところがたくさんあるわけでございまして、そういうものも踏まえまして次期国会には新しい提案をいたしたいと考えておる次第でございます。
  69. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも私の質問に正面から答えていらっしゃらないと思いますけれども、たとえばこの中の熊本大洋のケースですね。歴史的にもきわめてまれだと、ほとんど無防備に近いケースで、これはもう本当に例外的なケースだと、こう主張しているんですけれども、そう思っておりますか。
  70. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 大洋デパートの場合は、実はスプリンクラー設置もしてありました。それからいろいろな増段等につきましてもある程度避難の施設は備えておりました。ただ、あの場合の災害のありましたときには、まだ工事中でございますのに使用を始めまして、特にスプリンクラー等は作動しない状況になっておりまして、したがいまして、大洋デパートにつきましてもスプリンクラー等の設置がなかったわけではないし、いろんなことにつきまして全然例外的だと言われるほどではなかったと思います。しかしながら、工事中にありながら特殊な使用をしたという点は非常に問題でございます。その点を加味して今回の改正案の中にも工事中の一時使用、それから工事中の使用に当たっての計画の届け出等々三項目にわたりまして新しい規定を追加させていただいておるということでございます。
  71. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 熊本大洋の例は決して例外的でないと、いろいろ工事中ということはあっても例外的ではないとい答弁だったと思うんです。デパート協会の方はこの熊本大洋の例だけをここに挙げてありますけれども、原案の中での説明にもありましたように、今度の遡及適用問題、熊本大洋デパートだけでなくて大阪千日デパートビル、これからの教訓ということが大きく取り上げられる。デパート協会はこれに触れておりませんけれども、千日デパートビルの場合には、特に雑居ビルということがこの災害の大きな原因であったと思いますけれども、いかがでしょうか。
  72. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) お説のとおりでございます。いろんな人が使用しておりまして、管理問題などについて明確に行われていなかったというような点が非常に問題だったと思います。
  73. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 このデパートその他に対する遡及適用問題が大きな問題になってきたのは、私はやはり大阪の千日デパートビルの際に社会的にも大きな問題になった雑居ビルの危険性、ここからであったと思います。あの千日デパートビル災害はもうすでに広く知られておりますように、何と死者百十八人で、重軽傷も数十人出たわけですが、あの惨事の舞台となったこのビルディングは一階から五階が店舗で、六階が遊技場で、七階がアルサロですね。アルサロという典型的な雑居ビル、複合ビルだったわけで、この七階にあるアルサロの「プレイタウン」には火災が発生したときホステスとお客が百七十八人いた。ところが、アルサロというのは余り出入が自由だとお金を払わないでお客さんがいなくなってしまうこともあるので、出入はなるべく不自由にしてあると、特定の出入り口しか通れないというようになっているわけで、そういう点で、だから階段が二つ、非常階段一つあったわけですけれども、南階段の方はかぎがかかっていて出られない。非常階段の方は行ってみたけれども、物が置いてあってふさがっているということで非常に惨事を大きくしたわけです。こういう雑居ビルということが百人以上の死者ということになったわけで、当時の新聞にも、この千日ビル火災教訓から昭和四十七年五月十六日の閣議で野放しの雑居ビルについて総点検することが決まり、建設省、自治省、消防庁が協力して不良ビルの改善を推進していくという方針が決まったと報ぜられております。当時行われたこういう雑居ビルの総点検の結果を報告してほしいと思います。
  74. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 昭和四十八年の三月に総点検を実施いたしておりますが、そのときの複合用途建築物につきましては全国で六百四の査察を行っております。そのうち四百二十五件に対しまして改善指導を行い、それらのうちから四十九件に対し改善命令を出しております。その結果、四十八年のものにつきましては現在までにその改善報告が来ておりますが、全体で三百四十三件が改善されたという報告を受けております。その後も毎年春秋二回、建築物の防災指導週間というのをつくりまして、関係方面の御協力を得まして特定行政庁がこの期間内に複合建築物を含めまして特殊建築物に対する防災査察を行っております。本年も三月に行っておりますが、複合用途建築物につきましては全国で三百三十件を査察いたしまして、そのうち二百六十八件に対しまして改善の指導を行っております。その改善が終わったかどうかの報告はまだ受けておらないわけでございます。
  75. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いまの報告と重なると思いますけれども、私が建設省側からいただいた、このとき行われた特殊建築物等防災点検の結果報告概要というものによりますと、特殊建築物、複合用途建築物と地下街、渓流沿いの旅館ホテルなど、これについて点検を行ったと。四十七年、四十八年、二回の点検の総計は、点検実施建物数が一万六千六百八件ということになっており、そのうち欠陥があったとい建物は六八%、一万一千三百二十八件ということになっております。つまり、この点検の際に約七割が欠陥ビルであったということで、いわゆるこの雑居ビルについては六八%ということ、二千七百七十九のうち千九百四、欠陥があるということであります。この雑居ビルがこれだけ大きな欠陥があるということが当時の調査からもわかっているわけですが、この雑居ビルかどうかということは、たとえば建築確認の段階あるいは建築完了の検査の段階でわかるのかどうか、その点いかがですか。
  76. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 確認申請の段階では、その建物を実際にだれがどういうふうに使うかというところまでチェックができておりません。ただ、構造上明らかに別な区画で使いそうだとかいうようなそういった物理的な判定はある程度はできますが、確実にそれではこれが雑居ビルかどうかというようなことは、ある程度使用状況まで入らないとできないというのが現状でございます。
  77. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これだけ問題になる雑居ビルについて、建築確認段階などでは建築構造ですからなかなかわからない。そのビルができ上がった後で、キャバレーその他が入るときに——キャバレーが入ると、これをたとえば消防庁が、危ないところができたと、別に入るというようなことで、いろいろ後追いをしてつかんでいるという状況になっていると思います。  消防庁の方にお伺いいたしますが、消防庁としてつかんでいる全国の雑居ビルの数及び雑居ビルで起きた火災件数などについて報告していただきたいと思います。
  78. 持永堯民

    説明員持永堯民君) 雑居ビルの数でございますけれども、いわゆる消防法の施行令で決めております複合用途防火対象物でございますけれども、これはそれぞれ消防設備設置義務が面積等によって異なりましていろいろな数字があるわけでございますけれども、たとえばスプリンクラー設置しなければならないような雑居ビルの件数は二千百六十、あるいは屋内消火栓を設置しなければならないようなものは一万一千四百十四というような数になっております。  それから火災の件数でございますけれども、実は全国的な火災統計、私の方でやっております火災統計の上では、火災がどこから出たか、雑居ビルの中でもキャバレーもございますし、住宅もございますし、いろいろなものがあるわけでございまして、どこから出たかという意味での統計をとっておりまして、雑居ビルが何件あったかという数字は実は掌握していないわけでございますけれども、東京消防庁の管内について申し上げてみたいと思いますが、東京消防庁の管内におきましては、昭和五十年、昨年でございますけれども、申し上げますと、建物火災が全体で四千七百九十七件でございまして、その中でいわゆる雑居ビル——キャバレー等が含まれております雑居ビルというものが八百三十六件あったわけでございます。
  79. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いまのお話で、全国でつかんでいるのが約一万三千雑居ビルがあるということで、火災件数については東京消防庁の例しかないという報告でした。四千七百九十七件のうち八百三十六件、昭和五十年で雑居ビルで起きているとすると、これはもう相当な数で、つまり約二割近くですね、雑居ビルのうち二割近くが火事を起こしている。これは私は大変な数だと思うのですね。当時の新聞に出たものでもやはり同様のことが書かれていて、東京消防庁の例で言いますと、いわゆる四階以上の高層ビルの平均出火率というのは一%だと。ところが、雑居ビルの場合は昭和四十年でその十倍起きているというデータがあるのですね。昭和四十年で普通の四階以上の高層ビルの平均出火率の十倍雑居ビルは起きていると。いまのお話では昭和五十年で四千七百九十七件中八百三十六件、つまり雑居ビルがその中で二割占めているというので、この雑居ビル火災を生み出す率が、非常に危険だということがやはり証明されていると思うのですけれども、これは当然で、店舗の上の方にキャバレーだとかなんとかがあるということになると、どうしても防火体制が非常に不安で、出火率も多いということであります。  もう一つ消防庁にお伺いしますけれども、やはり昭和四十七年当時ですけれども、東京消防庁が、東京のビルの九割以上が防火上の問題があるということで、四十七年六月二十四日査察結果を発表しておりますけれども、東京のビルの九割以上が危ないという四年前の結果はその後どう改善されているでしょうか。
  80. 持永堯民

    説明員持永堯民君) 当時のデータを持ち合わしておりませんので、どういう分析されておられますかわかりませんが、恐らく九割以上と言いますのは、いろんな消防用の設備設置しなければならない、あるいは防火管理者を置かなければならないというような法律上の義務がいろいろあるわけでございますけれども、そのうちのごく一部のものを欠いておっても恐らくまだ不十分であるという含みでの統計であろうと思います。  その後の状況でございますけれども、その後の状況につきましても、いま手元に資料持ち合わせておりませんが、現在いずれにいたしましても御承知のように消防法遡及適用の期限も迫ってまいっておりまして、お話の雑居ビルを中心にしてデパート地下街等について相当精力的に査察を行い、あるいは指導を行っておる次第でございまして、いずれにしても改善の方向に向かっていると思っております。   〔委員長退席、理事沢田政治君着席〕
  81. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ですから、当時大阪の千日デパートビル火災で雑居ビル問題が大きくクローズアップされて、その当時もうすでに今回政府原案にあったような遡及適用問題ですね、これが世論の中でも出てきたわけであります。たとえば当時の朝日新聞、四十七年五月十六日の社説では、四十六年一月に施行した建築基準法改正による防災基準、これは既存ビルを含めてすべてのビルディングに適用すべきで、「そのための法改正も検討されて当然」だということを社説も主張しております。で、今度の法改正の中で、たとえば第六条一項一号に、新たにキャバレー、ナイトクラブ、遊技場ですね、これを加えたということは、こういう雑居ビルの危険性を広く指摘されてきた事態に照らして行われたものだと理解しておりますが、いかがでしょうか。
  82. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 当然そういう点も配慮いたしまして規定いたしたものでございます。
  83. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 こういうことで、今度の第六条一項一号に新たにキャバレー、ナイトクラブ、遊技場が入った。だから、今後は建築確認の段階でも、最初から雑居ビルでキャバレーが入りそうな雑居ビルについては、建築確認の段階でもきちんと確認できるということになったわけで、これは大変積極的な改善だと思います。せっかくいままで消防庁がつかんでいたのが、建築確認の段階で、これから建てられるものについては、雑居ビルについても見ていくということができ、建築基準法による雑居ビルの規制に道が開かれたにもかかわらず、今回の遡及適用削除によってこれまでのものについては結局手が及ばないという状況が生まれたわけで、これはやっぱり仏つくって魂入れずということになってしまっていると思います。先ほどの東京消防庁の数字からいっても、火災発生率が非常に高いこの雑居ビルについて、万一起きた場合にはまた再び貴重な人命が実際に多数失われる現実的危険を持っている雑居ビル問題ですね、この防災というのは放置していくことができないと思いますけれども、この削除後の段階でどうするおつもりでしょうか。
  84. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 全くお話のとおりでございまして、雑居ビルは管理者が複数おりますし、しかも営業時間がまちまちだ等のこともございまして、防災上特に考慮が必要だと思っております。したがいまして、消防当局とも連絡協調いたしまして、管理面を含めて十分現行法の範囲内で指導をしてまいりたいと思っております。現在パトロールの制度を持っておりますが、そういうものを励行すること、それからいまおるものにつきましても、今後用途変更に当たりましては確認が出てまいります。したがいまして、そういうものについても十分目を光らせること等によりまして、現行法の活用の範囲内で十分取り締まってまいりたいと思っております。
  85. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これもやはり当時の新聞なんですが、先ほどの建設省の行った総点検ですね、これを四十八年六月十八日建築審議会に報告したと出ていて、新聞の報道によりますと、この雑居ビルなどを、六八%欠陥があったんだけれども、具体的な欠陥個所としては煙の上階への侵入を防ぐ階段、エレベーターですね、こういう空調ダクトなどの閉鎖部分が不完全なケースが圧倒的に多いということが報告されていると書かれております。つまり、今回の原案にあった四つの中の一つ竪穴区画ですね、このやっぱり欠陥が一番多いんだということになっているわけで、いまそういう危険なところについてはいろいろ現行法を活用しておやりになると言われたけれども、このたとえば竪穴区画がちゃんとしていない欠陥がもう圧倒的に大きいというのですけれども、少なくともたとえば雑居ビルなどで竪穴区画もしっかりしていないと、そういう点で万一火災が発生した場合には非常に危険だというようなところについては、たとえば建築基準法の十条の著しく保安の点で危険があるというところについてはきちんと命令を出して、改善命令を出せるとい項目がありますが、こういう項目も活用して、たとえば竪穴区画などを改善させていくと、特別立法を待たずにですよ。そういうことができると思いますけれども、その用意はありますか。
  86. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 十分に現行法活用と申します中には、十条の適用も活用してまいりたいということは当然含めて考えておるわけでございます。
  87. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いまの点ですね、この遡及適用削除が、参議院では提案されてまだもちろん成立しておりませんけれども、万一こういう遡及項目削除されたままこれが成立するというようになった場合、しかもそれが、私が冒頭に述べましたような百貨店協会などのこういうまことに営利本位の、逆に言えばやっぱり人命の安全に対しての責任感を欠如した意見書だと、要望書だと私思いますけれども、こういうものの圧力で、もしこういう重大な危険をはらむ事態が進行し、このまま法律が成立するとしたら非常に重大な問題だと思います。まあ特別立法が成立するまでの間に万一雑居ビルその他で大災害が発生したら、それこそ重大な国会の並びに政府の責任問題にもなりかねない、そういうことを指摘しておきたいと思います。  次に、地下街問題ですね、これについて若干お伺いしておきたいと思います。  衆議院での審議記録を読みますと、いま地下街は道路占用ということで、特に地下道ですね、あの中の地下道は道路占用ということで法律的には処理されているということであります。この地下街はいわゆる道路法による道路というんじゃなくて、公道というんじゃなくて道路占用ということだというんですけれども、そうなると地下街防災問題ですね、これの主たる責任は道路占用者になることになると思いますけれども、多くの地下街、特に地下道が広く公道的に利用されている面が非常に多いんですけれども、ここでも万一火災その他が発生した場合にはかなり重大な危険が生まれるであろう。その際の道路占用者に防災上の責任を一応負わせているという現行体制で十分なのかどうか、この点不安を持ちますけれども、いかがでしょう。
  88. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 地下街につきましては、特別にもし災害が起こった場合には非常に大きな災害が予想されるところでございます。したがいまして、建築基準法規定の上でも特段に地下街のための特別の規定をいろいろ設けております。したがいまして、それらの規定を十分励行するということをやりましたならば、われわれは地下街におきましても安全が確保できると考えておるわけでございます。ただ、今後地下街のあり方につきまして、やはりいろんな問題が多うございますので、建設省のみではなかなか全体の監督が行き届きません。そこで、地下街中央連絡協議というものをつくっておりまして、これには建設省では都市局、道路局、住宅局、それから消防庁、警察庁、警察庁では交通局と警備局、運輸省では鉄道監督局、それから日本国有鉄道等が入りまして中央連絡協議というのを設けておりまして、いろいろな点につきまして厳しい基準を示しております。今後どこか一つがそれに反対をしてもなかなか認可にならないというふうな運用をしてまいるということで、厳しく取り締まってまいりたいと思っております。なお、既存のものにつきましては、やはり早急に改善をする要があるというところもあると思いますので、次期の法律の立案に当たりましては特別に十分な配慮を加えて、地下街にも十分な措置ができるようなことを考えてまいりたいと思っておるわけでございます。
  89. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 昨年の六月十八日の衆議院建設委員会での井上道路局長答弁で、ちょっとこういうことを言われています。「しかしながら、利用の実態から見て公道として管理するにふさわしいというものにつきましては、管理のあり方についてこれから検討を加えたいというふうに思っております。」と、これが意味するところですね、いままで地上の道の——というのはかなり地面の下まで行くと、地球のどこまで行くのかというような議論があったそうですけれども、どこまで行くかは別にして、とにかく道が下まで行くと、その道路占用だということで処理していたんだが、公道として管理するのにふさわしいものについては管理のあり方について検討を加えたいという検討の内容ですね。これはたとえば地下にも必要なものには、市町村道とかそういうふうに公道とするということをも検討しているのか、それともそういうことじゃなくて、公道としての管理の仕方について何らかの具体的措置を検討しているのか、それに伴って今後何らかの法改正が必要だと思われているのかどうか、その点お伺いします。
  90. 中村清

    政府委員中村清君) 私からお答えするのはあるいは適当でないかもしれませんが、つい最近まで道路局次長をやっておりましたので、過去の記憶で申し上げたいと思います。  当時の井上局長が申し上げましたのは、最近たとえば横断歩道橋というのがあります。これは雪国あたりでは冬になりますと実際はかさをさしてなかなか渡れない。むしろ地下道にしてほしいというふうな要望がいろいろございまして、これまでは、私の記憶に間違いがなければ、上の横断歩道橋をつくるお金と同等のお金を地下道をつくる場合に補助対象とする、その差額はたとえば地元あたりに持っていただく、こういうふうなことにしておったわけでございます。したがいまして、道路局長が申し上げたのも、そういうことを将来制度化するかどうかということについて検討する、こういうことであろうかと思います。  それからいま一つは、地下道について特に問題になりますのは、先生御存じだと思いますが、実は保安上の問題ございます。それとたとえば電灯代をどうするか、こういった問題がいろいろ派生して出てまいります。そういうことも含めて広く検討していく、こういう趣旨ではなかろうかと推測しております。
  91. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 地下街、地下道は今後も大都市でいよいよ広がっていくと思いますので、この防災上、保安上の問題というのは非常に大きな問題なので、法的処理も、法的措置も、対応もまだまだ十分でない点があるかと思いますので、今後ともそういう点での積極的な改善を要望して、重大な災害が発生しないよう対応していただきたい。この点の希望を申し述べておきます。  この遡及適用削除問題に戻りますが、建築基準法改正に盛り込むとい政府原案で提起されていた方法と、今回の修正によって行われようとしている特別立法、この方法との違いですね。どういう点が大きな違いになりますか。
  92. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) まだ部内で検討の段階でございますし、衆議院防災対策の小委員会の中で今後議論が詰められて骨子等も固められていく問題であろうということでございますが、建築基準法衆議院におきます審議におきまして問題となった点というのを先ほど二、三申し上げましたけれども、やはり一つ建築基準法の法体系の中から抜き出しまして、一回限りの遡及適用ということにせざるを得ないのではないかと考えております。   〔理事沢田政治君退席、委員長着席〕  それから代替方法につきまして、従来の構造方法のみの代替ではなくて、有効に避難できる代替措置というような場合につきましては、それも認めるような方向にすべきではないかと考えております。それから建築基準法の中に軽くしか入れられませんでしたけれども、やはり応援のことにつきましてもやや詳しく書くべきではないかと考えております。  それからさらにもう一点、現在私どもが検討いたしておりますのは、たとえば全国のいろんなデパート等の中から、北の方、南の方、三十ばかり選びまして、一つ一つを例にいたしまして点検をいたしまして、そこでどうやったら一番早く避難できるような方法があるかということについて、現在もそういうふうな勉強をわれわれ続けておりますけれども、そういうことをやってみますと、たとえば隣のビルと空中横断の橋でつなぐというようなことになりますと、従前の既存不適格であるものはさらに容積率がまた違反になるというふうな問題が出てまいります。それからさらに、たとえば吹き抜けの部分をどうも埋めてしまった方がやはり竪穴区画等の点からいっても非常にぐあいがいい、さらに避難上も便利だというような点がありまして、吹き抜けをやっぱりつぶすべきだというようなことが出てまいりました場合、これはやはり容積率の増加につながります。それからやはり敷地形状等から見まして、階段を屋外につくるというようなことにいたしました場合、これが道路の上に出てまいります。そういたしますと、道路の占用の問題が起こってまいります。それらの点につきまして、いずれも建築基準法の現行規定によりますと、主要構造部等に関する大規模な模様がえ等につきましては現行法にぴったり合わせるというのが規定になっております。それを今回一部の遡及ということで、避難に重点を置いた遡及ということをやらせようというわけでございますから、そういうものにつきましては、いま申し上げましたような諸点につきましても、やはり既存不適格のままでもできるようにしてやった方がいいではないかというような点が議論の対象になってまいると思います。それらのものを含めまして新しい法体系をつくってまいりたいと考えておるわけでございます。
  93. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも説明を聞いていると妙なことになってくると思うのですけれども、特別立法の方がやっぱり合理的なんだということを局長説明すればするほど、当初の政府原案建築基準法改正によって遡及適用してこの問題を重大不可欠な最小限の問題として解決したいとい提案にはやっぱり無理があったということを政府自身が認めているという結果になると思うのですが、当初の基準法改正による方法はやっぱり無理があったと、いまの段階では認めているのですか。
  94. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) それはそういうことではございませんで、われわれ提案いたしました案でも十分に活用できると思っております。思っておりますけれども、いま申し上げましたようなことは運用の点につきましていろいろと相談をし、もしくは特定行政庁等が審査会に諮って特別許可をするというような問題等でございますが、こういうふうな別途法にすることを機会に、そういうようなことを加味していったらなおよかろうと思っている点を申し上げた次第でございます。
  95. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 結局、そこの姿勢にやっぱり一番問題があると思うんですよ。冒頭申しましたように、最初政府原案提案では、本当に人命を守る以上必要不可欠だと、そのために非常に限定もしたと、猶余期間も設けたと、それで金融、資金上のいろいろの措置もやったと、それで説明書の最後の方には百貨店業界にも反対はないということまで書いてあるんです。ところが、衆議院でああいう修正案が出ると、それが通過して特別立法でということになりますと、今度は必要不可欠でどうしてもこれやらなきゃいかぬという形で提案していったにもかかわらず、いやこういう問題がある、こういう問題もあると言って、建築基準法改正によらないで特別立法にゆだねる方法、つまりこれは遡及適用そのものをやっぱりおくらせることになると思うんですけれども、それを合理化する説明を行っていると、そう受け取らざるを得ないですね。これだと、結局先ほど指摘したようなやっぱり百貨店業界のああいう圧力に屈し、解釈もそれに合わせて合理化しているというようなことになってしまうのではないかと。そうなりますと、人命の安全上非常に重大な関連のある、国民の命を守ることにつながるこの仕事に対して、その点の過小評価が忍び込んでくる危険があると思うんです。  ひとつ具体的にお伺いしたい。山岡さんが衆議院の小委員会説明した内容がありますね。これでもいろんな理由をつけているわけですけれども、たとえば四番目に挙げてあるのに、技術的問題がございましたと。一点、二点、第三点とずっと挙げてきて、四番目には技術的問題点がございますと。この第一は煙感知器の非火災対策でございますということで、煙感知器の非火災報についてはいろいろ問題が生じていると指摘があった、それで煙感知器非火災報対策研究会を設置いたしまして、実態調査、分析を行うと。なるべく早い機会に結論を得たいと思っておりますということで、技術問題まで遡及適用条項の削除の理由に持ち出しているわけであります。この煙感知器の性能問題について、対策についての研究、じゃいまどのように進んでいて、どこまで到達していて、一体いつごろめどがつくのか、この点はっきりお答えください。
  96. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 煙感知器は、ある一定濃度の煙がまいりましたときにそれを感知しまして、電気的にリレーしてシャッターを閉めたりドアを閉めたりするような機構になっております。煙感知器は、そのように煙を感知するということでございますが、これは火事の煙だけでなくて、いろんなたとえばたばこの煙だとか、あるいは百貨店の地下等で煙の試験をやって、そして魚を焼いた煙とか、そういったものにも当然感知いたします。事実私どもがいろんな調査をいたしましたところ、大体三千分の一ぐらいの確率で、火災でないのにいろんなそういった作動をしているというような例があるようでございます。ただ、その中を十分調べてみますと、もちろんそういった部屋を閉め切ったままでたくさんの人間がたばこを吸っていたとか、あるいはそこの煙感知器の下で魚を焼いていたとか、そういった管理上と申しますか、そういった問題点が非常にあるようでございます。もちろん機械そのものの故障的なものもこれは絶無ではございませんが、それよりもむしろ管理的なものの方が大きいようでございます。ただ問題は、そういった管理上の問題だから管理をよくしろというだけでなくて、やはりそういった少々の管理上の問題があっても、これは十分に火災だけを作動するような方法はないのか、その方がいろんな面からいいわけでございますので、そういった研究を重ねているということでございます。と同時に、現在ではむしろそういった一つの感知器だけでなくて、そいつを二つ以上の感知器と連動さして、確実に火災的な煙が来た場合にとらえられるんじゃないかと、またそういった検討を進めてきておりまして、私どもとしましては年内には十分結論を出し得るというように考えております。
  97. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それじゃ、この煙感知器問題は次期国会に必ず提案する特別立法ですね、それまでに必ず技術的結論が出ると、年内に、そう受け取っていいですか。
  98. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) そのように考えております。
  99. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今度の遡及適用というのは、先ほども話題になりましたけれども、消防法改正による遡及適用ですね、これとやっぱり本当は一緒に行うというたてまえで出発したはずです。  消防庁の方にお伺いしますが、消防法改正による遡及適用の実施状況はどんな状況でしたか。
  100. 持永堯民

    説明員持永堯民君) 消防法改正によります遡及の状況でございますけれども、いろいろな種類の建物がございまして、またいろいろな設備がございますので、代表的なものについて申し上げたいと思いますが、五十二年の三月までに設置をしなければならなくなっております百貨店、それから先ほどお話のいわゆる雑居ビル地下街でございますけれども、これについて申し上げますと、スプリンクラー設備につきましては、百貨店の場合は大体七〇%、それから雑居ビルの場合が五三%、地下街の場合が五五%、これは建物の件数で申し上げておりますけれども、そういった割合の進捗になっております。なお、日にちは昨年の四月現在でございますけれども、そういう状況でございます。それからこれを設置の面積で申し上げますともう少し広がるわけでございますけれども、ただいま申し上げた率は件数でございますので、そういうふうにお含み願いたいと思います。  次に、屋内消火設備について申し上げますと、百貨店につきましては約七二%、複合用途防火対象物につきましては約八五%、地下街につきましては約六五%というような数字に相なっております。
  101. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そうすると目標の、百貨店地下街は五十二年三月まで、スプリンクラーその他が五十四年三月まで、この目標どおりいっているでしょうか、若干目標よりもおくれる見通しでしょうか。
  102. 持永堯民

    説明員持永堯民君) 私どもといたしましては、なかなかむずかしい面もございますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたが、全国の消防機関を十分指導いたしまして、各消防機関においても現在この問題、もっぱら精力的に建物のオーナーに対して指導しておるという状況でございます。しかしながら、多分に不況という点もございますし、また先ほど来お話の雑居ビル問題等におきましては、なかなか権利関係が複雑になっておるというようなこともございまして困難を来しておる面はございますが、目標の五十二年あるいは五十四年までにとにかく十分な体制をとるように徹底した指導をしてまいりたいと思っております。なお、あわせまして、民間につきましては開銀なりあるいは中小企業金融公庫なり、そういった面の融資措置を開いておりますし、それから地方公共団体が持っております建物もございますが、それにつきましては地方債等の財源措置を行って実現を図りたいというふうに思っております。
  103. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 やっていきたいと言うけれども、いろいろむずかしい問題もあるということで、消防法改正によるスプリンクラーその他の設置も若干おくれている状況にある、本来これと重ねてやるはずであったこの建築基準法改正による遡及適用措置も、これが削除されることによってさらにおくれると、二重三重のおくれの重なりが生まれ得るわけで、こういうことのないように、事人命にかかわることなので厳重に建設省の努力を要請したいと思います。私ども遡及適用条項の削除には反対ですけれども、特別立法で行うようなケースになる場合にも特別立法を早急に実施することですね。それまでにも人命にかかわる問題なので、先ほども答弁がありましたように、たとえば建築基準法十条に基づく改善命令、こういうものを使って雑居ビルその他危険なところについては万全の措置をとっていただくようお願いしたいと思います。  大臣、最後に、この遡及適用問題について、やはりちょっと三木さんと似ている点があるようですけれども、ひとつ遡及適用問題についての決意をお伺いしたいと思います。
  104. 中馬辰猪

    国務大臣中馬辰猪君) 私の在任中に必ずまとめて次の国会に出す準備をいたします。これはお約束いたします。
  105. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それでは次に、日照問題についてお伺いしたいと思います。  今度の建築基準法改正、日照問題の部分は、これまでたとえば高度制限だとか北側斜線など日照問題についても若干の法的措置が行われてまいりましたが、それをかなり詳しく具体的に日影の基準まで設けて法律措置をとるという点についてはわれわれも評価できるものだと思います。しかし同時に、やっぱり多くの問題が含まれております。先日参考人の意見陳述もありましたが、あの際、意見陳述の中にもこの日照問題とどう取り組むか、この取り組む立場ですね、これがやっぱり基本問題として横たわっているということが浮き彫りになったと思います。日照問題というのは、過密都市における高層化あるいはマンションブームなどによって都市環境が悪化し、住民の日照権が侵害される、これに対して住民が立ち上がって環境権を守る運動を展開してきて、いわゆる日照権紛争というのが全国的な問題になってきた、裁判にも持ち込まれるというところから生まれたものであります。これに対してどのように法制化するかということが今回の改正案になっているわけですが、その際、住民の環境を守るということに重点を置く立場と、都市計画の立場、土地の高度利用の立場、これに重点を置くと。まあ二つの問題が絡まっているわけですけれども、重点の置き方の違いがやはりあらわれていると思います。私はこの問題でもやはり住民本位の町づくりということが基本であって、現在あるよい環境は守っていく、悪い環境は改善していくということが住民の利益を守るためにも、またこの都市計画、住民本位の住みよい都市をつくる上でもやっぱり出発点だと思います。そういう点で、この日照問題の取り扱いもあくまでやっぱり住民本位の町づくりとい観点で行うべき必要があると思いますが、そういう観点から幾つかの問題を取り上げてまいりたいと思います。  東京都の専門委員会の報告に「太陽のシビルミニマム」というものがあります。日照問題についてもシビルミニマムを設定していこうとい考え方そのものについてはどうお考えでしょうか。
  106. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) シビルミニマムの設定は、日照に限らず今後できるものであればつくっていくべきだというふうに考えております。
  107. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大体シビルミニマムでやっていこうというふうに受け取ります。東京都のシビルミニマム、「太陽のシビルミニマム」ですね、これの報告にはこう書いてあるんですね。平均的に言うと、よい環境の地区で五時間、中級の地区で二時間から三時間、悪い地区では〇・五から一時間ほどだと。これは現状ですね。これは平均の値だと。その地区の半数はこの値に満たないということ。で、考えるのは、平均値をとるとい考え方もあるけれども、シビルミニマムというのは本来現状を改革するための市民的政策公準という性格を持つ。そこで太陽のシビルミニマムの数値として三時間から六時間を提言する。この数値そのものは別としまして、現状の平均値をとると、平均以下の人が半分いるんだと。だから、平均値をシビルミニマムにするんじゃなくて、現状をもっと改革していくと。で、市民の政策公準、つまり政策的目的ですね、こういう考え方でシビルミニマムを設定するとい考え方が述べられておりますけれども、この考え方についてはどうでしょうか。
  108. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 東京都のシビルミニマムは、建設省考えておりました基準とは多少違う点がございます。これはまあ基準となります日が大寒日でございますとか、日影の複合の問題に関して盛られていないとかいろいろございますけれども、規制をねらった内容は余り変わって、おりません。ただ、われわれといたしましても、平均値をねらうということではなくて、実態調査の結果等を建築審議会の小委員会にいろいろと提出をいたしまして、二年半を煩わしまして御検討いただいたわけでございますが、そのときに実態調査の結果、大体東京、大阪等の大都市におきまして現在の守られている日当たりの時間につきましておおむね三分の二程度の人は現在享受しているというふうなところを目標に基準を設定したらどうかということが基本になったと私は聞いております。
  109. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 局長は平均値をねらうのではないと、そのことは言われました。それで、いま、現在住んでいる人の三分の二ですか。その三分の二という点をちょっともう少しお伺いしたい。何の三分の二ですか。いまの、現状の享受している日照時間の三分の二を保障しようとしているんですか、それとも住民の三分の二の人が受容している日照時間を基準としているんですか。
  110. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) いま先生おっしゃいました、後の方でございます。
  111. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それは一応聞いて、次にひとつ具体的にお聞きしたい。  今度の改正案では、敷地の境界線からの日影のはみ出し許容距離を五メートルとした。この五メートルとした根拠は何ですか。
  112. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 一応いろんな住宅地におきます平均的な敷地を考えまして、その敷地に平均的な住宅が建ったといたしました場合に、おおむね五メートルぐらいの南庭がとれるであろうというようなことを想定いたしました。これは測定の基準として一応五メートルというものをとったわけでございます。
  113. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ここで問題が起きるんですね。救仁郷さんは衆議院の去年の十二月三日の答弁で、昭和四十八年の住宅統計調査によると、全国の市部で一戸建て、長屋建ての住宅の平均の敷地面積というものが二百六平米、したがって、そういった二百六平米の住宅敷地に平均的規模の九十平米、亘平米の住宅が建った場合にどうなるかというので五メートルをとったというふうに言っていますが、そうなると、住宅平均の敷地面積と、平均面積ですね、これを基準にして五メートルをとったということになりますね。そうすると、先ほどの局長の平均をとるんじゃないんだとい考え方と大きな食い違いがあると思いますが、いかがですか。
  114. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 敷地面積の方はむしろ平均でとりました。日照享受時間の方は、その三分の二の方々が享受していられる日照時間ということでございます。
  115. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日照時間は三分の二と、敷地の方は平均でとったとい答弁。救仁郷さんにお伺いしますが、全国の市部で、つまり二百六平米というと大体六十坪ですな、大体六十坪というこういうのが平均だと言われるけれども、六十坪以下の住宅が市部で何割ぐらいあるかお答えいただきます。
  116. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 正確には、統計ここへ持ってきておりませんが、統計から調べますと、恐らく六割以上ぐらいが平均以下ではないかというように考えております。
  117. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ここに昭和四十八年の住宅統計調査報告の大都市圏があります。私これで計算してみました。そうしますと、京浜大都市圏、これは平均が全国の都市部のさっきの二百六平米と大体同じで二百三平米、二百三平米が京浜の大都市圏、ここで百九十九平米以下、これのパーセンテージでは、いま六割以上と言われましたけれども七二・五三%、つまり七割以上が二百平米以下なんですね。京阪神を調べてみますともっとひどい。ここは平均が百五十一平米で全国の市部の平均よりももっと狭い。そのために百九十九平米以下の住宅は七八・三三%、八割に達するんですね。そうすると、いま五メートルで平均と、平均の住宅の広さからいって五メートルというのを割り出したと言われたけれども、五メートル以上を日影規制するわけだから、五メートル以内の狭い庭しか持っていない住宅の場合には、この基準だと切り捨てられるんですよ。切り捨てられるというのが京浜の大都市圏で七二・五三%、これは三分の二になっちゃうんですね。京阪神では約八割、七八%、五分の四近くの住宅があなたの言う平均という五メートルというところからは落ちてしまうんですね。この点いかがですか。
  118. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 確かにこの基準から見ますと、基準を設定いたしましたときはそういうことが言えるかと思います。ただ、この基準を設定いたしましたときは、目標とする、何と申しますか目標時間のそのある地域で三通りぐらいあるわけでございますが、その中の中間値としてこの基準を設定しております。したがって、そういう小さい区画の多いようなところ、そういうところでは厳しい一つの上の、三段階各地区であるわけでございますが、基準を採用する、そういうことにより対応できるんじゃないかというように考えております。
  119. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは全く言い抜けですよ。あなたは先ほど、平均をとっていると、それで大体六割ぐらいあるだろうと思ったけれども——御存じない。京阪神では八割の住宅が五メートルに入っちゃうんです、五メートル以内に。それから京浜でも七割以上の住宅が入っちゃう。しかもあなた、いまそのために三段階ちゃんととってあると言われたけれども、三段階とったのは日照時間であって、この五メートルというのはどこでも同じですよ、一種住専だろうが、二種住専だろうが。この五メートルを、じゃ条件に応じて、たとえば京阪神については四メートルにするとかということが可能なら、いまの言い抜けもありますけれども、全くそうなってないんですから、五メートルは全部一律じゃありませんか。住宅局長いかがですか。
  120. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) いろんな数値が検討されたわけでございますけれども、五メートルは、先生おっしゃるとおり、いずこの場合でも同じでございます。同じでございますけれども、五メートルのところの南庭がない場合に、それではそのところは全部真っ暗になってしまって日が当たらないかというと、そういうことではございません。ちょうど隣がむしろ空き地であっても、五メートルのところに三時間以上の影を出さないというふうな規制をするわけでございますから、当然、基準の一つとして五メートルの時点をとらえた、複合の場合は十メートルの時点をとらえたということでございまして、その五メートルの中でも、たとえば三時間以内の日影ができるかもわかりませんが、さらにもっと近いところでも全然真っ暗ということはない。必ず日は当たるわけでございます。
  121. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ですから、私は最初から、太陽のシビルミニマムというところから議論を述べていったんです。現状をただ守るんじゃなくて、現状を改革すると、ミニマムですから。日本の国民の日照の問題についてのミニマムを政策的目標として設定しようと、現状よりもよくしようとい考え方で進んでいるというふうに局長も先ほど答えたでしょう。ところが、実際どうですか。現状をよくするどころか、現状で京阪神の場合には八割の人が、それから京浜の場合には七割の人がこの五メートルの基準では守られない、そうしたら現状よりも悪くなるじゃないですか。これはやっぱり私は切り捨てだと思うんです。結局、平均平均という形で——平均というのは、これはぼくは数字の魔術だと思うんです。やっぱり全部の土地を合わせて、それを戸数で割ると、こういう二百平米なんというのが出ますけれども、実際には大多数の人は、七割、八割の人がこれより低いんですよ。これはちょうど貯金の計算で、何か全国の勤労世帯が三百万円平均で貯金を持っているなんて数字が出て、あれ、おれのところはないなという、思う国民の方がはるかに多いというのがありますけれども、こういう機械的な平均という数字を使うところに実態から離れるところがある。あなた方の計算も、住宅統計調査の平均値をとった、平均値をとったと言って、実は実態の七割、八割の人が入らないところを平均値という形で基準として持ってきている。それで五メートルというところを設定している。これでは私は日照を本当に守るということはむずかしい、それから紛争を少なくすることもむずかしいと思う。  なぜなら、日照紛争で一番起きているのは、こういう過密都市の宅地が細分化されて、六十坪もないところ、一種住専じゃなくて、二種住専とかそれから住宅地域とか、あるいは近隣の商業地区とかあるいは商業地区とか、そういうところで日照権の紛争が起きているわけで、そんな六十坪以上、百坪とか、そういう家を持っている人よりも、二十坪、三十坪のそういうところに住んでいる人々が日照問題で大変なことになる。お金があれば別のところに移っていけるけれども、移っていけない。その過密のところに住んでいる人々、やっぱり貧しい人々が多いでしょう。そういうところでこの日照権の紛争で苦しみ、そして闘っている人が非常に多いわけです。そういうところを含んで、これを全部結局切り捨てて、平均平均ということで切り捨ててしまって、基準だと、これがシビルミニマムだとい考え方では、これは実態に合わないですよ。本当に住宅の実態がどうなっているかという庶民の生活の実態をよく見て、それを改善するという方向で日照問題というのは提起していかないと、本当に国民的なシビルミニマムをつくるということにならないと思う。  それで、一種住専の場合には大体恐らくこの六十坪ぐらいの家も多いでしょうし、大体十メートル以上の建物は建たないわけですから、まあわりに問題が少ないとしても、やっぱり二種住専となると、このいまの考え方は非常に私は大問題になってくると思います。これは細分化された住宅が多いし、二種住専ではマンションが建ってくる。二種住専では今度の基準では、先ほども議論になったように、大体一階でなくて二階の窓からなっているわけですね。そうすると、一階は考え方としては切り捨てられている。しかも五メートルあるわけでしょう。この五メートルよりも中に入った家はさらに切り捨てられる。それで、住宅局長ね、五メートル以内でもまるっきり日が当たらぬことはないと言われたけれども、それはそうでしょう。まるっきり日が当たらぬというんじゃなくて、だからこそ基準を考えているわけじゃないですか。そうすると、二種住専でも一階平家は切り捨てられた。二階も、五メートルより中のつまり庭の狭い家は、今度は二階も危なくなるということになると思います。  それからもう一つ、今度は建てる側の、影を出す方ですね、出す方についても一種住専では七メートル以下、二種住専では十メートル以下のいわゆる低層建築物による日照阻害というのも現実には生まれているわけです。そうすると、私は今度の基準というのは、まあ修正案で三種類になって地方自治体がどちらかを選べるということになったのは確かに改善点ですけれども、基準そのものが私が指摘したような非常に多くの部分の切り捨てになっているということで、この基準を機械的に押しつけていくと、やっぱり被害を受ける切り捨てられた住民が多くなるし、日照権紛争も絶えないと思うんですけれども、こういうケースについて具体的にどういうふうに解決していくつもりですか。
  122. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) いま先生が切り捨てとおっしゃいましたけれども、実はわれわれは切り捨てとは思っておりません。たとえば基準を、一種住専でございますと、五メートルの地点で地上から一・五メートルのところに三時間以上の影を出すようなものはセットパックをしてつくれというのが法の規定の趣旨でございます。したがいまして、その五メートル以内のところも当然日は当たりますし、二種住専の場合の四メートルと五メートル、両方が切り捨てだとおっしゃいますけれども、それもいずれもやはり日は当たるわけでございます。そういう場合に、そういうところにもどこに基準を求めるかということでございまして、四メートルのところを三メートルにしたり、五メートルのところを三メートルにしたり、いろんな手があると思います。それぞれで全体の排出の基準を決めますから、守ろうとする日が当たる時間というものが基準になりますと、どこかを一つ接点を決めてまあ基準を決めるということになるわけでございます。たまたま測定の時点をそういうところに決めたということでございまして、まあ第一種住専では三時間を、第二種住専では二階の居室で三時間程度以上の日照は確保したいというのがこの基準のねらいでございます。
  123. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そうすると、それは基準であって、たとえば時間については二種住専で三時間、四時間、五時間とまあ三種類あるけれども、五メートルというところも実情に応じて、たとえば地方自治体があるいは四メートル、三メートルというふうに実際にはそうなるように、それでそういうところの住宅にも日照が確保されるようなそういう運用の仕方は可能だと、そう言われるわけですか。
  124. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 修正法案ではそうなっておりません。一応いま申し上げましたように、そういうふうな計算をする基準の原点はそういうふうに決めたということでございますが、その結果のはね返りとして守られる日の当たる時間というのを想定してその点を決めておりますので、それをもし変えたといたしますと、逆な方の日当たりの方の時間、もしくは日影の時間を変えていかなければならないということになります。一つ建物ができまして、できる影は絶えず同じでございます。それをどこまでいけないかということの決める決め方の中にそういう基準を決めたということでございまして、まあいまの一・五メートルの高さで五メートルという基準で考えればいまの時間が出てくる、その中で選んでいただくという趣旨でございます。
  125. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 じゃあ、まあ条例を地方自治体がつくる場合に、この五メートルというのは動かせないけれども、この日影時間の規制の時間を運用することによって、実際にはたとえば時間は四時間だけれども、この五メートルというのを動かしたと同じ効果を生むことができると、しかし、条例で決める場合には、この五メートルを動かさないで時間の選択しかないんだということですね。
  126. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) さようでございます。
  127. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、こういう問題を実際の運用上、地方自治体がどう運用していくかということで、私が指摘したような、私いま切り捨てという言葉を使いましたけれども、この基準に含まれないというかな、その限界以下の住宅ですね。この住宅が、先ほども申しましたように、何遍も繰り返しますけれども、京阪神では八割近くあると、京浜地区でも七割以上あるわけですから、そういうところの日照を守るように、実際に運用の点でも行政指導を適確にやっていただきたいということを要望したいと思います。  次に、商業地域の除外問題ですね。これはまさに私は切り捨てという言葉を使い得る顕著な実例であると思います。調査室からいただいた資料を見ましても、たとえばこの中に載っている三十一自治体の指導要綱その他を持っておるところですね、そのうち二十八の自治体が商業地域を含めてやっておりますけれども、なぜ今度の改正で商業地域を除外したのでしょうか。
  128. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) これもたびたび申し上げておりますけれども、商業地域はやはり商業の利便を増進するということを念頭に置きまして指定される地域でございます。したがいまして、建蔽率、容積率等も高く定められております。で、公法上の日影規制を今回及ぼそうと考えましたのは、やはり住居系の地域の中におきまして、住居系の地域では住居の安寧を確保すべきところということになっております。その住居の安寧の確保の中に一番大きな要素の一つとしてやはり日影のことも考えた町づくりのルールが必要であろうということで、公法的介入をいたしますのは当面住居系に限るべきじゃなかろうかと考えたわけでございます。決して、こういうことが片やできましたので、商業地域の方は反対解釈でそんなものは要らないんだということだとはわれわれは思っておりません。そうではなくて、むしろ商業地域内のものにつきましては、実はわれわれの持っております公団その他につきましても、商業地域内に日照紛争を起こして裁判に係属中のものもございます。そういうもののやっぱりケース・バイ・ケースの判例の積み重ねによりまして、判例的な合意が行われた場合に、われわれとしてはそういうものは公法のルールに乗ってくるだろう、それまでの間はそういう判例の積み重ねを待ちたいというのがただいまの考え方でございます。
  129. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いまの判例の積み重ねを待つということですね、これが非常に問題になります。先日の参考人の意見聴取の際にも私質問したんです、梶原参考人ですね、弁護士の方の。あの方に対して、この商業地域が除外されたということになると、判例に対してどういう影響があるだろうかということを私質問しました。言葉どおりじゃないかもしれませんけれども、梶原参考人の言われたことは、つまり今回の日影規制には合致していると、しかし、日照阻害を引き起こすケースが起きた場合、裁判の場合に、損害賠償には恐らく余り影響しないかもしれないけれども、建築差しとめとか設計変更とかという判決については、これは出すことが恐らくむずかしくなるであろうということを梶原参考人は述べている。だから、商業地域についてはそういうことにやっぱりなるという意味のことですね。そうすると、山岡局長は商業地域については判例の積み重ねを待つと言うんだけれども、積み重ねられる判例が今度の法改正から商業地域が除外されることによって後退する危険が強いわけです。これまでも商業地域というのは非常に紛争が多くて、たとえば東京の場合、東京は日照運動が一番多いと、全国一だと。全国一で、昭和四十九年一月から五十年三月までに五千百三十一件起きている。この中で住宅関連ですね、近隣商業地域まで含めて、これが六〇%、商業地域は千四百四十三で二八%。すると、一種住専、二種住専住宅ですね、そういうところ全部比べてみても、この用途地域指定の中で商業地域の発生率が東京では最も多いですね。  これは山岡局長答弁で述べておられますけれども、そういう商業地域の紛争の中で、たとえばこれまでは恵比寿駅前の事件、世田谷の三軒茶屋の事件、あるいは港区の六本木事件、これは商業地域ですね。ここではやっぱり差しとめ判決が実際には出ているわけです。地域の用途指定よりもやっぱり住民の被害を重視するということでそういう判決が出てきているわけですね。ところが、もし梶原参考人の意見のように、今度の改正によって建築差しとめあるいは設計変更という判決はむずかしくなるのではないかという御意見が述べられたのですけれども、こうなると判例の積み重ねというのは悪くなるばかりじゃないかと、そう思いますけれども、いかがでしょうか。
  130. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 先生おっしゃいますとおり、商業地域におきましても日照紛争件数は相当ございます。四十五年以降の東京都におきます例を見ますと、一種住専が七百五十一、二種住専が八百四、住居地域が九百三十二、トータルで二千四百八十七件、それから近隣商業が五百七十三件、商業地域が千四百四十三件というふうなのを最近の手元の資料で持っております。ただ、この間の梶原先生がおっしゃいましたのは、商業地域においてということでございますと、商業地域には今回の建築基準法改正案では何ら基準を示しておりません。したがいまして、そういうふうな基準に縛られることなく、やはり公正な裁判がケース・バイ・ケースで行われていくと、そのうちにたとえばそういうふうな商業地域においても何時間程度の日照は確保されるべきだというようなことが社会規範としていわば相隣関係の中で確立されることを願っておると申しておるわけでございまして、ただ、商業系以外の住居系の地域の中では今回最低基準ということでございますけれども、一応の基準を示したわけでございます。そういうことになりますと、これも当然公法上の町づくりのルールとして示したものでございますので、直ちに私人間の日照紛争の裁判上の規範になるかどうかは私も断言できないと思います。特に基準法は最低基準ということでございますので、この基準には適合していながらなおかつ紛争が起こるというようなケースもあろうかと思います。しかし、そういう場合に、やはり住宅地におきます日照享受の状態をまあある程度想定をいたしまして、土地の高度利用と日照の確保の要請の調整を図ったというつもりで新しいルールをおつくりいただくというつもりでおりますが、そういうものが社会的合意を得られるものとして示されました暁に、裁判上住居系の地域の中におきましてそういうものが一つの指標に使われるということはあろうかと思います。ただし、商業地域につきましては一切そういうふうな基準を示しておりませんので、ケース・バイ・ケースの判決が今後も行われていくだろうと期待しておるわけでございます。
  131. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 なるほど、商業地域については一切基準がないから、裁判にはプラスマイナスは影響なくて、まるっきりないかどうかわからぬけれども、大体なくて、ケース・バイ・ケースで積み重ねられていくであろうということですね。で、基準の示されているところにおいては若干の影響があると、しかし、最低基準なので恐らく実際の被害については考慮されるであろうというお考えですね。
  132. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) さようでございます。
  133. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それでは、商業地域でもう一つの問題は、やっぱりこれも先日の参考人の意見陳述のときにも私質問しましたけれども、たとえば東京二十三区の場合、非常に商業地域が多いわけです。台東区などでは、ここにありますが、上野公園とそれから東北の近隣商業地域を除いて約六七%が全部商業地域に指定されている。これは台東区の建築部がつくった「わたしたちの日照を考える」というパンフレットですけれども、これを見ますと、全部商業地域だけれども、この中で日照問題というのは非常に多くて、特に過密なところであればあるほど現在の日照をさらにふやしてあげなければどうにもならぬということですね。そういう商業地域の中で日照を確保するために非常に大きな努力も必要だし、住民がもう切実に望んでいるという実情がかなり詳しく述べられている。  それで、こういうたとえば台東区などのような商業地域で今回これが除外されたということで、これはどうなるのかということ。この間参考人として陳述をされた東京都の建築局の方に質問したところが、これまでの用途地域の指定というのは日照問題を考えているんじゃないのだと、今度の建築基準法改正による地域指定はつまり見直さなければならなくなるのだという趣旨の答弁がありました。他の参考人の方の中にも、先ほど矢原委員指摘しましたが、地域指定そのものを変えていくということが必要なんだということを述べた人もあります。こういう点ですね、特に商業地域、台東区のようなほとんど全部が商業地域、これをいわゆる純化をもっと徹底させていくということになるでしょうけれども、用途指定を見直して今度の日影規制ですね、これが適用されるような見直しを行政指導の面でおやりになる用意があるのかどうか、この点をお伺いします。
  134. 中村清

    政府委員中村清君) お答え申し上げます。  用途地域に関します都市計画は、先生御存じのように都市活動の機動性ですね、それから都市生活の安全性、快適性、利便性、そういったことの増進という意味合いを考えまして、土地利用の総合的な計画としていまつくっております。手続としましては、御存じのように都道府県知事なりあるいは市町村が公聴会あるいは都市計画の案の縦覧という手続を通じてやって、その間民意を反映するということにしております。したがいまして、前段で申し上げましたように、安全性、快適性ということも配慮をいたしまして計画をつくっておるわけでございますから、住環境の確保といった点につきましては、当然その計画の中に織り込まれているというふうに私どもは考えております。したがいまして、今般日影規制の制限が行われまして、即用途地域の見直しということにはつながらないのじゃないかというふうに考えております。
  135. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 見直しにはつながらないと、じゃ台東区なんかの場合どうなりますか、こういうケースですね。
  136. 中村清

    政府委員中村清君) 台東区のお話が出ましたが、いま御指摘がございましたように、確かに台東区、大部分が商業業務施設が立地し、したがいまして商業業務施設の立地を許容すると同時に、ある地域におきましては、台東区の中のある地域においてはそういう集中立地をさらに助長すると、こういった意味合いで商業地域の指定をしております。商業地域の指定というのは、これは用途地域全般について言えることでございますけれども、現状それからその地域の将来の発展の動向、それをどういうふうに持っていくか。そういった意味合いから、現在の状況等を将来どういうふうに持っていくかということをにらみ合わせてつくっておる問題でございますから、いまの日照の問題が出ましたけれども、日照確保とい観点、これは私どもが前段で申し上げましたように、計画の中にも相当織り込まれておると思っておりますので、日照確保観点から直ちにこの商業地域をほかのものに変更するということについてはどうかなという気がいたしますし、商業地域をすぐほかの地域の方へ変更いたしますと、そこでまた建蔽率の問題であるとか、あるいは許容されざる業態がほかの地域に入り込むということになりましていろんな問題が出てまいります。現在そういうことでございます。
  137. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも都市局長は、商業地域、台東区についても何もおやりになるつもりはなさそうですが、住宅局長はいかがですか、こういう台東区なんかのケースについて。
  138. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 都市計画というのは、やはり台東区だけを考えておるものではないと私は思います。東京都全体を考えまして、その中で商業系のところはあちらへ集まっております。工業系の方はもう少し南の方に集まっております。それで、それらのことを加味いたしまして、都市全体の問題としての問題だろうと思いますので、私もやはりたとえば住居の安寧を図るべきところという住民の皆さんの同意によりまして、公聴会等による結論を経まして決まっている地域地区制、たてまえ論といたしましてはやはりそちらが先行して、その中でやはりいろんなものが追っかけていくというふうにまず考えるべきであろうと思います。しかし、全体の問題といたしまして、容積率設定等の際に若干そういう配慮の足らなかった点もあるというような参考人のお話もございました。それらの点は今後地方公共団体におきまして十分御検討なさる問題であろうかと思います。
  139. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 結局、いまのお話のように、地方公共団体がこの商業地域の日照を守る、日照紛争の解決ということについては責任を持つ以外にないと、商業地域は除外されていくわけですからね。もちろん台東区だけが問題じゃないけれども、これは一つの典型例で、大都市の場合、都心の地域には商業地域が非常に多い。そこでやっぱり日照紛争が先ほども山岡局長挙げられたように一番多いんですから、そこをどうするかということは、結局地方公共団体の指導要綱その他による解決の努力ですね、これがやっぱり非常に大きな役割りを果たさざるを得ないし、やっぱり果たすであろうという点ですね。この地方公共団体のそういう問題についての積極的な住民の日照を守る努力、これをよく尊重していただきたい、この点を要望をしておきたいと思います。  それから、もう一つ日照問題で、やっぱり衆議院中村富雄参考人指摘した問題ですが、今回の改正案の五十六条の3で、たとえば公園だとか児童遊園地、これに接する場合、建物の高さ制限を緩和できるとい項目があって、これが住民サイドの場合やっぱり問題だと、中村さんは中野の江古田の公園の例を引いて、せっかくの公園が大きなマンションが建って日影ができると、これに対する反対運動をやった体験などを述べておりますけれども、この点について見直してほしいという要望が出ておりますけれども、私もこの問題は大きな公園ばかりじゃないわけですから、特に都市の公園の場合、子供たちが大事にしている、子供たちだけじゃなくて、都市の場合、公園が日照を享受する場合に大事な役割りを果たしますので、住民のサイドから見直したらどうかと思うんですけれども、この点どうお考えでしょうか。
  140. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 私どもも同意見でございまして、公園は道路とか川とかそういうものとは基本的に性格を異にしているというように考えております。したがって、法案の中にございますように、道路とか川とか鉄道敷きがございましたら、ある程度その取り扱いは政令で指定するように考えてございますが、公園につきましては一般の住宅の敷地と同じように日影の規制の対象にするというように考えております。
  141. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いまの答弁、確認しておきたいと思うんです。  以上のように、私、今度の日影規制を評価しながらも、その中にまだまだ考えなければならぬ問題点、住民の日照権を守るためにはいろいろ考えなければならぬ問題点がたくさんあることを列挙をしました。たとえば境界線から五メートル以内のところに建っている小住宅の場合だとか、二種住専の低層住宅の場合だとか、あるいは一種住専で七メートル以下、二種住専で十メートル以下の建物による日影ができた場合の問題だとか、あるいは商業地域の問題などを挙げました。こういう問題を解決する場合、やっぱり少しでも切り捨てないようにしていく場合は、どうしてもこの地方自治体の自主的な行政の余地を残して、これを尊重して大きな役割りを果たしていただくということが非常に重要で欠くことのできない問題であると思います。  衆議院審議でもこの点がやっぱり最も問題になった一つでありますし、先日も武蔵野市長の後藤さんがこの点をかなり体系的に、また御自分の体験を通じて非常に力説されました。この点、これまでの地方自治体の多くが運用してきた条例だとかあるいは指導要綱と、今回の改正法との相互関係がかなり問題になります。山岡局長は、衆議院段階また参議院での答弁などで、条例に関して今度の法に抵触するものは廃止されるということを述べながらも、建築確認その他にリンクしない限りそういうものも直ちに廃止にはならないという点を言われたんですね。指導要綱や条例には、矢原委員も述べましたように、日照問題だけでなくていろいろ多面的な要素を考慮して、これで実際の運用が行われているわけなんで、その山岡局長の言われた建築確認にリンクしない、そういうものでない限り、地方公共団体の行っている指導要綱その他ですね、こういうものはやっぱり十分に生かしていくという姿勢が大事だと思いますけれども、その点いかがでしょうか。
  142. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 私どもの基本的な考え方は、やはり財産権の行使というものが建築の実施に当たります。したがいまして、憲法で定めておりますように、財産権の行使の内容につきましてはこれは法律で定めると決められております。さらに、条例の根拠でございます地方自治法等見ましても、固有の事務のほかに列挙しておるものがございます。固有の事務でも法律もしくは政令ができた場合にはこの限りでないというのがついております。特に列挙の二条の十八号がこういうものを決める根拠になると思います。それはやはり法律の定めるところによりそういうふうなものの制限ができるとい規定がございます。したがいまして、その他の何もない、法律の根拠がなくてもできる列挙事務と異なりまして、やはりこういうものを公法で決めまして、その下を受けてやはり条例ができるべきだというふうにかたく思っております。したがいまして、今回こういう基本ができますので、それに基づいて条例がつくられるだろうと思います。そういう場合に、法律の範囲内と違うようなことがもしできました場合には、その当該部分におきましてはネグるということになると思います。しかし、先ほども先生おっしゃいましたように、指導要綱の中身といたしましては、やはりその他のものもいろいろ決められておる例が多うございます。その中で、自治法の二条十八号に定める、法律によらないで建物の制限をするということにリンクをするようなものにつきましては私は元来違法であろうと、もしくは不適当であろうと思っておるわけでございます。したがいまして、それ以外に、そういうものについて大いに努めなさいとか、努めた方が望ましいとか、そういうふうな指導要綱的なものにつきましては、やはり直ちに違法と言えるものでもないし、物によりましては非常に有効なものもあろうというのがわれわれの考えでございます。
  143. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 リンクしないものである限り、何々しなければならない、努めなければならないという努力の方向でつくられている指導要綱というものについては生かしていけるということであると思います。この指導要綱の中で、やっぱり住民の同意方式というのがこれまでも役割りをかなり果たしてまいりました。指導要綱を持っている地方公共団体数が二百四十九あって、そのうち百六十一、つまり三分の二が住民同意制を内容とするというようになっております。われわれもこの住民同意制というのは、いわゆる完全同意といって一人でも反対したら何もできないというのはもちろん非現実的だと思いますし、いま行われている住民同意方式というのは、そういう完全同意制というのでなしに、やっぱり事前公示をやると、事前協議もやると、説明会も開いて、そして住民に納得をしてもらって、それでいくと。それでも解決しない場合には、調停だとか、あっせんだとか、そういうものにかけて、その調停に基づいてこれを解決していくというやり方であると思います。この点、武蔵野の後藤市長は、相隣紛争の円満解決には開発業者と周辺住民との協議の場を保障することが不可欠だと、そう述べているわけで、これは確かに問題を解決していく上で大事な原則であろうとわれわれも思います。そういう意味で、建築確認にリンクしない指導要綱、これが問題の解決に役割りを果たさせていくと。  そのためには、一方で今回のような基準を示しながら、地方自治体のその基準の範囲内での自主的な選択を尊重しながら、やっぱり住民と開発業者とが円満な協議の場をつくって、それで解決していくということのために、たとえば事前公示制、事業協議制、説明会開催、こういうものを含めたまあ住民同意方式ですね、いわゆる完全同意ということと区別された経験則からいっても有効性が証明されているこういう住民同意方式、多くの自治体がこれまで採用してきて効果を発揮している方向ですが、こういうものをやっぱり前向きに生かしていくことが非常に大事だと思うんです。それが住民の立場に立った行政となるかどうかということの一つのかぎだと思いますし、この点を誤ると、今回せっかくできたこの日影規制の基準が実は大きな禍根を残して、日照紛争の解決どころか、さらに困難な問題まで残していくということになりかねないので、日照問題の最後に建設大臣から、そういう地方公共団体がいままで運用してきた事前公示制、事前協議制などを含めた住民同意方式、こういうものを前向きに生かしていく用意があるという問題について、その用意についてお伺いしたいと思います。
  144. 中馬辰猪

    国務大臣中馬辰猪君) 従来、各自治体で積極的な環境保護のために行われたよい慣例というものは、なるべくこれを盛り込んでいきたいと、こう考えております。
  145. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 よい慣例を盛り込んでいきたいとい大臣の方針をお伺いしましたが、それを言葉だけに終わらせないようにぜひお願いしたいと思います。  最後に、私、この日照問題と並んで非常に大きな新しい建築公害として問題になっております電波障害問題ですね、これについてお伺いしたいと思います。  この電波障害、いま各地に発生して大問題になっております。御存じのように、特にこの超高層ビルによる影響が最大の問題。ここにテレビジョン放送難視聴対策調査会というところの報告書が去年の八月に出ておりますが、この報告書を見ましても、この受信障害が昭和四十九年の末で全国で四十四万世帯。これが昭和五十五年には九十万世帯になるであろうということが予測されております。建設省建築物の側面からこの電波障害問題にどういう対策を立てているのか、電波障害を最小限に防止する研究はどういうふうになっているのか。この点お伺いします。
  146. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 確かに最近の都市におきまして建築物の立体高層化に従いましてそういった電波障害問題というものが起こっております。一番典型的な例としては、例の新宿副都心の超高層ビル街における約二万世帯ぐらいの電波障害が起こっております。これにつきましては、ただいま先生から御指摘ございましたような調査会、これは郵政省の中に設けられておりますが、それに参加いたしまして、私どもも私どもなりの御意見を申し上げ、この対策に取っ組んでいるところでございます。ただ問題は、こういった今後都市では当然高層立体化ということが避けられない事態であるということは、これはもう御承知のとおりでございます。そういった中で、いわゆる今後のそういった放送のあり方というものがどうすべきなのか、そういったビジョンのもとにやはり大きなビジョンをつくるべきではないだろうかというのが私どもの考えでございます。ただ、現実にはそういった障害が起こっておりますので、現実に現在起こっている障害そのものは、私どものいろんな事業体の方でそれぞれの共同視聴アンテナをつくるとか、そういったいろんな方法をもちましてそれぞれ解決しておりますが、私どもとしては、やはり基本的には将来の都市におけるテレビ放送のあり方、方法を一体どうすればいいのかということを検討していくべきではないかというように考えております。
  147. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この電波障害というのはやっぱり建築基準法改正の結果生まれたものなんですね。例の特定街区というものができて、これは都市計画で高さその他決められるようになって、そこでああいう超高層ビルというものが続々と建ち始めたわけであります。二百メートル級の超高層建築物が出現した結果こういうものが生まれているわけで、だからまさに建築基準改正が生み出した一つ公害だ。ところが、この改正をして二百メートルの建物ができたらどうなるかということについて当時どのくらい研究しただろうかということがいま改めて問題になっているわけです。新聞報道などによりますと、たとえば新宿の副都心の場合ですね、当初電波障害が起きる地域はビルの高さの五倍ぐらいだろうと、そう思われた。中高層ビルの場合、五倍だったんですね。だから、超高層でもやっぱり五倍で済むだろうと思ったところが、なんと十五倍の地域に達したわけですね。私、先日、中野のこの一番問題になっているところを視察してまいりましたけれども、中野駅のところまでいっているわけですね、新宿副都心の電波障害地域が。こういう状況です。そうすると、建築基準法改正したときにどの程度研究したかわかりませんが、どうも当時五倍ぐらいのところというのが十五倍というんですね。思いもかけないことになっているんですけれども、当時二百メートルぐらいの建物を建てた場合、電波障害の影響ですね、どのくらい研究していたんですか。
  148. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 確かに御指摘のように、現在のあれほどの広範囲なあれになるとは、当然起こるとは考えておりましたが、従来の延長線上で起こるだろうということが、現実には御指摘のように思ったよりも広範囲になったということは事実でございます。
  149. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 だから、予測しなかったほどの非常に大きな被害が及んでいる。新宿副都心の場合はいま五むね建っておる。京王プラザ、国際電電、住友、三井、安田と。ところが、これが将来計画では十三むね建つことになっておる。西武新宿駅ビルを含めると十四むねになる。あの地域にビル群の壁ができてしまうわけですね。いまこの五むねで、有線ケーブルで合意した分だけで、五棟プラス西武新宿駅ビル含めて六棟ですが、これで有線ケーブルで合意した分だけでも約三万四千世帯というところであります。非常に膨大なものです。これはまあ新宿副都心が日本最大の電波障害の起きた場所ですが、これは直接の電波障害であって、反射波というのはまだもっとあるわけです。反射波というのは三方向に出ておりまして、東の方は銚子に向かっている、幅一・五キロです。東北の方は埼玉の草加の方に向かっている。それから南西の方は茅ケ崎、藤沢、こちらの方向に向かって反射波による電波妨害が問題になっていて、この埼玉、千葉、神奈川の反射波は、三方向の被害世帯を含めますと、郵政省の調査では十七万世帯に及んでいる。だから、あそこに五つのビルが建って十七万世帯が電波障害をいま受けている。このうち反射波についても全くその解決がつきません。これは新宿の副都心のビル群のSKKの方も、そこまでわれわれもめんどう見切れない、銚子の方まで持っちゃうとどうにもならぬのでというので、まるでお手上げの状況です。中野の方向でも、直接の壁の部分に東西に大体百メートルぐらいで補償が成り立っているようですけれども、その百メートルの外側はやっぱり反射波だというので、ぼくも見ましたが、テレビはもうゴーストが出ちゃってNHKなんかだれも見ない。だから「雲のじゅうたん」というのも、あそこら辺の人は見たこともないという話ですけれども、そういうふうなところでも解決しないんですね、反射波だからということで、そういう大変な状況です。  それで、私、すでに起きたものは、これは建設省の責任、遠く言えば研究しなかったという責任はありますけれども、これは補償の問題は建設省関係じゃありませんけども、こういう被害を少なくするということではやっぱりいろいろ考えなきゃならぬ問題点が御存じのようにたくさん出ている。たとえば新宿副都心の場合でも、いままあ六棟建っておるけれども、さらに十四棟までふえるわけですね。これが全部建っちゃって、中野方面に全部壁にならないように真ん中に少しすき間があくような配置ができればかなり違うとかいう配置の問題もある。それから建物構造などの問題もあるわけで、こういう今後の問題について、特に建築基準ということの関係考えるべき点が多々あると思うのです。特に超高層ビルについては構造上の基準が全くありません。建築基準法の三十八条ですか、あれに基づく認可ということになっているわけですけれども、今後構造だとか建築物、超高層ビルの配置その他について、電波障害を最小限に防止するための方策はどのようなものがあるかという点を御質問します。
  150. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 御指摘の点、非常にむずかしい問題でございます。果たして超高層ビル群の配置をどうすれば、どの地域にどういうふうなあれが、反射波とか、あるいは壁にならないかというような問題これは私どもも専門ではございませんが、恐らく相当複雑な問題ではないかというように考えられます。もちろんそういった方向の調査研究というような、指導というふうなことも必要だと思います。しかし、基本的には先ほど冒頭に私申し上げましたが、都市におけるそういったテレビ放送の技術そのものを一体どうしていくのか。たとえば大都市ではこれからどうしても立体高層化していく、そこの中でやはり大都市のテレビ放送のあり方というものが全部有線でいくべきなのか、あるいは最近いろいろ研究が進められております人工衛星によるテレビの受信を行うような方法にするのか、そういったビジョンの中で将来の都市における建物のあり方、それからテレビ放送のあり方というものを考えていくべきではないかというように考えております。
  151. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうもテレビの方に責任をかぶせちゃったようなお話ですけれども、それではやっぱりいかぬと思うのです。これはテレビの方でも有線だとか人工衛星だとか、それは研究する必要もあるでしょう。しかし、たとえば有線にしたら、有線ケーブルを引く上でこれはまた莫大な金がかかるわけで、放送局側にもかかるし、また受信者もそれぞれそういう点でやっぱり負担をしなきゃならぬという大問題が起きるわけで、そういうもので解決していくだろうということで放置しておられたのでは非常に困ると思うし、責任を回避することになりかねないと思います。大成建設と東工大とNHKの共同研究グループでこの問題についての研究を行っております。日本経済新聞、五十一年二月五日の報道によりますと、その実験結果を見ると、ビルの壁面に傾斜だとか曲面の工法を採用すると障害の影響を数分の一に減らせるということであります。茨城県竜ケ崎市で建物をつくって実際に実験した結果、壁面を湾曲させた建物は従来の平面に比べて反射波の強さが正面方向で十分の一になる。ホテルニューオータニのあの湾曲壁面ですね、電波の反射波を減らすために採用されたということですけれども、こういう建物構造ですね、これを湾曲壁面を使うことで十分の一になるというデータが出ている。十階建て百三十五メートルを湾曲させれば三分の一から三分の二程度に影響を縮められるということも出ております。また、先ほど引用しました郵政省の調査会の報告の中でも六十四ページに「反射障害を防止する方策として、建築物の壁面に電波吸収材をとりつけたり、電波を上空に反射させるよう金属網を設置し、あるいは建物の形状、配列を考慮するなどの方策も考えられる。」ということが述べられているわけです。そういう点でテレビの方に問題をそらさないで、こういう問題点建設省として検討しているのかどうか、検討していなかったら検討すべきだと思いますが。
  152. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 確かに技術的には先生のおっしゃいました建物に湾曲をつける、あるいは傾斜をつける、あるいは建物の表面の材料を電波を吸収するような材料を使う、いろんな技術が開発されているということは事実でございます。ただ問題は、そういった方法、もちろんこういった研究も進めなければならないと思いますが、ただ、とにかく東京じゅうの建物を全部曲がった壁面にするということと、それから、それにはそれなりのコストがかかります。それと別に、テレビの放送のあり方の方で解決したら、どっちがトータルのコストとして、あるいは生活のあり方として正しいのかというような検討もまたしなければならないんじゃないか。私どもは先生が御指摘になりましたように、決して建物の方の責任を逃れているのではなくて、それがいい方法であれば当然私どもも建物の方で費用の負担なり何なりすべきであるというようには考えております。ただ、それを国民経済的に考えまして、あるいは都市の生活環境ということから考えて、どういう方法が一番いい方法なのかということをあわせて研究しなければならないんではないかというように考えております。
  153. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は東京じゅうの建物を全部湾曲させろと言っているのではなくて、超高層ビルを問題にしているのです、一番大きいから。そう話を湾曲さしてはならない。この点で郵政省の方ですね、どういうふうに考えているか。どうも郵政省の方の責任に大分建設省の方は押しやりたいようですが、お考えをお伺いいたしたい。
  154. 永野明

    説明員(永野明君) 先ほど来テレビの受信障害につきまして非常な複雑な問題が生じておるという御指摘をいただいておりますが、私どももまさにそのとおりというふうに考えております。さような次第で、先ほど御指摘いただきましたテレビジョン放送難視聴対策調査会の報告書につきましても、昨年まで二年間関係の皆様と、学識経験者あるいは関係者の皆様方の御参加を得まして検討をいただきました結果でございます。私どもはこの報告書を受けまして、今日のテレビ受信の国民生活に占めます重要なことを考えまして、これをどのように実施していくかということを総合的に検討していくために、省内に事務次官を長といたしまして難視聴対策委員会設置して今日まで鋭意検討を行っています。  この報告書にはいろいろな技術的な提言が先ほど御指摘のように書いてございます。そういったものを全体検討はいたしておりますが、やはりさしむき一番有効な方法はテレビの共同受信施設の設置でございます。これを新宿の例に見られるように、当事者間の協議設置をしていただくということが一番有効と考えます。そういった際に費用の負担等につきましていろいろと紛争がございますので、先般三月、そういった際の当面の基準的な考え方を示す指導要領を策定をいたしております。  それからもう一つは、報告書の中で無線を使って解消する方法はないものかという点もございます。現在は使用いたしておりませんが、将来、衛星放送に利用するSHFという非常に高い周波数でございますが、これをこういった際に使えば有効に働くのではないかということで、SHF帯を使います放送局をただいま実験的にNHKに免許をして実験を進めております。こういった実験の結果を待ちまして、できるだけ有効にテレビの難視聴を解消していくことで実用化を図っていきたい、かように考えております。
  155. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いまビルの陰になる受信障害については、補償は原因者補償の原則に基づいてほぼ例ができつつあり、解決しておりますけれども、この方向望ましいと思いますが、反対波ですね、反対波の方はまだ手がついていない。これについてはどのように解決するつもりでしょうか。
  156. 永野明

    説明員(永野明君) 反射波につきましては非常に広範囲でございまして、確かに御指摘のように経済的な負担も非常に大きくなるということで、なかなか解決のむずかしい問題でございます。私どもも、報告書に指摘がやはりしてございますが、建物の壁面を、支障がなければ金網等で空へ向けて妨害波を乱反射させるというような方法もNHK等がこれは検討をしておりますし、現に工場等で余り美観を考えないようなところにつきましては実施して、そういったものを措置する例もございます。それから、先ほどからお話の出ております建物の形状等につきましても、将来の検討課題であるというふうに受け取っております。それからもう一つは、受信サイドのアンテナなりあるいはテレビの受像機なり、こういったものにつきましてやはり反射波と正当の放送波とこの辺を区別して受ける方策はないものかというような検討も現在しておるわけでございまして、そういった技術的な研究開発を将来進めていく必要があるというふうに思います。それからもう一つ、現在のテレビの受信の条件そのままでは解消できないにしましても、反射波の場合、比較的アンテナの位置を高くするとかあるいは方向を変えるとか、そういったことによっても解消する場合がございます。これは専門家の目で指導いたしませんと実際はできませんので、NHK等のサービス等の立場でそういったことの御指導もいたすというような方向をとってまいります。先ほどお話の出ました衛星放送が終局的にはこういった問題を解決する方法でございますけれども、ただいま申し上げましたようなことを総合的に検討を進めてまいりたい、かように思っています。
  157. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ちょっと大臣、これやっぱりお聞きのように、郵政省の方は実際に何万世帯も何十万世帯も問題が起きているので、調査会もつくり、対策委員会もつくってやっておると、建築関係に対する要望もいま述べられたんですね。ところが建設省の方は、先ほどからお伺いしても、どうも検討している様子がないんですな。対策委員会一つもできていないように思うんですね。これまでも研究中だとか、検討するとか、山岡さんも何回も言われているけれども、実際に対策委員会なんかできていないとしたら、対策委員会もつくって、電波障害あるいは風害ですね。こういう超高層ビルに基づく新しい建築公害について、これの研究を進めるべきだと思うんですが。
  158. 中馬辰猪

    国務大臣中馬辰猪君) よくわかりました。郵政省と協議し得る機関を設けて協議したいと思っております。研究いたします。
  159. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私、あと風害問題もやろうと思ったんですが、そろそろもう時間が参りました。で、この風害問題もちょっと簡単に言っておきますと、やっぱり新宿副都心ではかなりの風が巻き起こっていると言います。たとえば鹿島技研での実験結果ですと、地上で秒速八メートルの風が出ておる、それが超高層ビルの横では二倍の秒速十六メートル。それから三井、住友ビルの間の高架道路では瞬間的に二十二・四メートルの風が吹くことがある。二十二メートル、大変な風ですね。新聞の中では、一トントラックの車輪が風でちょっと浮いたというのを実際に見たというニュースまで載っているんですね。非常に大きな風がやっぱり出るわけで、これが次々建っていきますと、風害問題もまた新しい問題になりかねない問題であります。  これはやっぱり風害問題なんかになると風洞実験なども必要ですし、これもかなり問題になりましたが、目黒区の指導要綱では、六階以上かつ延べ面積三千平方メートル以上の建物は風洞実験の結果報告書を提出するという指導要綱ができて、これもかなり話題になっているわけです。電波障害にしろ、風害にせよ、やっぱり環境アセスメント、事前影響の評価、事前影響のやっぱり評価制度というものを確立していかなければならないわけで、何もそういうものを研究しないで、アセスメントもやらずにぽんと建ててしまったら、五倍ぐらいの高さの地域が影響するかと思ったら、何と十五倍になったとか、風害も驚くべきことになったと、後で困ることが出るわけなんで、こういう電波障害、風害の防止のための構造上の問題ですね。こういうものをやっぱり研究すると同時に、環境アセスメント的なやり方も、目黒におけるような指導要綱、こういうものもやっぱり評価すべきではないかと思いますけれども、いかがでしょう。
  160. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 高層建築物の建設に伴いますビルの風の問題につきましては、建設省も非常に関心を持っておりまして、方々の諸文献等につきましても十分勉強も続けておりますが、なお住宅公団と共同で現在もそういうものの検討を進めております。  ただ、先生おっしゃいますように、いろいろ風洞実験等を行いましても自然風等の関係等が問題でございまして、直ちにまだ因果関係についてはどうもはっきりしないというのが現状でございます。したがいまして、直ちにそういうものを規定の中に取り込むというまでにまだ踏み切るわけにはまいらないと思っておりますけれども、目黒区の要綱につきましても、先ほど実は私拝見してみました。ところが、中身を見ますと、やはりそういうものを出しなさいということが書いてあるだけで、だからどうということは何も決まっていないようでございます。したがいまして、恐らくそういうものが出ましても、目黒の区役所で、だからこうすべきだという判断ができる方はまだいないのではないかと思っております。したがいまして、やはりそういうふうなアセスメントの一環としてそういうものを将来積み重ねまして、大いに別な分野で活用するということは望ましいことでございますが、それをもって直ちにこの建物はどうこうというところまではまだやはり、いつも申します法律もしくは条例に基づく制限の中になければならないというような気がいたしますので、直ちにそれを建築の制限とリンクさせるという点についてはいかがなものかと思います。そういう意味の指導をしてまいりたいと思っております。
  161. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、電波障害と風害問題はさらに突っ込んでいくと、建築基準法の第六十条の特定街区そのものですね、これのやっぱり根本的な再検討までいかなければならないのではないか、そう思うんです。全国でも特定街区を採用した地域がかなりの数に達しているわけですね。先ほど都市というものは結局高層化されるという見通しを言われましたけれども、この二百メートル以上の超高層ビルが大都市にどんどんどんどん林立していくのが望ましいのかどうかですね。新宿副都心に続いて東京でも池袋で物すごいものがつくられ始めておりますけれども、これは電波障害だとか風害だとか恐るべき新しい建築公害を発生させるだけでなくて、都市問題としても非常に大きな問題を生み出すわけです。水の問題にしても、下水道問題にしても、ごみの問題にしてもそうです。で、あれはほとんど事務所ビルですね。事務所ビルをああいう都心に持ってきて、物すごい高いものを建てて、膨大な人口を発生させる。これはやっぱりゆがんだ都市集中の典型なんですね。だから、この特定街区による超高層ビル、これの林立が東京の新しい姿だというようにもし思っているとしたら、これは東京だけでなくて日本における都市計画の上で大きな問題を含んでいるんじゃないか。こういう点で私はやっぱり根本的な再検討が必要だと思いますけれども、そういう点、建設省はどうお考えになっていますか。
  162. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 私自身の考えでございますが、そういった二百メートル級のいわゆる超高層というものが、東京あるいは大阪に今後ともどんどんどんどんまだ建っていく、あるいは建つことが望ましいんだというようには考えておりません。ただ、特定街区は何も超高層を、二百メートル級の超高層化するということでなくて、むしろ現在ございます特定街区の中のほんの一部でございます、超高層は。もっと大部分のやつはせいぜい四十メーター、五十メーター級のビルで、周辺に空地をとって都市環境をよくしようとい目的のものでございますので、特定街区そのものの見直しということにはつながらないんじゃないかというように考えております。
  163. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 時間が参りましたので、おまとめいただきたいと思います。
  164. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 はい。  以上で、この電波障害と風害問題についての質を終わりますけれども、建設省側の答弁の中にもまだまだ未解決の問題がたくさんありますし、大臣も今後こういう問題、研究していきたいと、そのための体制もつくるというお話がありました。建築基準法改正問題というのは、日照問題にあらわれたように、また電波障害問題にあらわれたように、都市に住む住民の一人一人の生活に非常に深い関係がありますし、同時にどういう住みよい都市を今後つくっていくかという問題とも深くかかわっておりますし、多くの新しい問題がたくさんありますので、こういう問題を建設省が深く研究して、住みよい都市をつくっていく上で一層努力をしていただくことを最後に要望しまして、質問を終わります。     —————————————
  165. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、古賀雷四郎君、増田盛君、望月邦夫君、二宮文造君及び神田博君が委員辞任され、その補欠として青井政美君、森下泰君、初村滝一郎君、宮崎正義君及び稲嶺一郎君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  166. 三治重信

    ○三治重信君 まず第一に、衆議院改正された部門について御質問いたしますが、その第一が遡及適用の問題でございます。  いままでの建築基準法改正の経過から見ますと、三十四年と三十六年にこの防火施設や避難施設関係のことについて、適用範囲の拡大や特殊建築物としての適用というようなことで規定をされているわけですが、その場合にはこういう遡及適用の問題は余り議論にならなかったのですか。
  167. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 建築基準法がやはり構造、用途、設備、地域地区等に関する基本の最低基準を決めるとい規定でございまして、状態規定でございますので、やはり基準法は設定当初から不適格のものといいますか、既存のものにつきましては不適格既存建築物ということで、それ自体は新しい規定の適用については適法であるべきだという思想をむしろとっておりましたので、その当時遡及の話は一切起こりませんでした。
  168. 三治重信

    ○三治重信君 いま、そういう発言だと、結局規定されると、既存建物も全部新しいその基準を、新しく定めた基準は不適格ないままでの建物にも全部適用されると、施行されたら適用されると、こういう解釈だったわけですか。
  169. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) そうではございませんで、ただ、ある規定改正が行われますと、その日以後のものについてはそれが当然に適用されます。その日以前に建っておるものには遡及して適用はされない。ただし、その建物が大規模な模様がえ、修繕、それから大改築等を行います場合には新しい規定の適用がある、そのままでおる限りは新しい規定はさかのぼって適用はならないというのが従前の制度でございます。
  170. 三治重信

    ○三治重信君 そうであるのがいままでの法律改正のときの処理の仕方だと思うんですが、今度この遡及適用しようじゃないかと、しなければまた人命尊重やこういう大災害についての処理ができないと、こういうことで建築審議会の答申にもそれが盛り込まれているようなんですが、それを、この規定を入れられたのは、そういう非常に重大な災害が発生したと、また類似の建物も、またそういう施設も相当あると、こういう判断から踏み切られたことだと思うんですが、それについて、一つは代替措置をとることができると、こういうことがあるんですが、それが非常に抽象的な規定のために衆議院削除された。この代替の規制の質疑で、どうもはっきりしないじゃないかと、どの程度までその基準から、いわゆる実際の既存建物遡及適用するけれども、これから新しく建てる建物と同じようには敷地の上から、建物構造上からもいかぬが、その代替の措置というものはどの程度までできるんだと、こういうことの議論が十分にできないために、やはりもう少し再検討してほしいということが削除一つの大きな理由じゃないかと思うんです。また私も、もしもこれが改正されなくて、政府措置に一任と、こういうことだったらば、もう少しその具体的な内容について、政府の代替措置というものは、政令で定めるものというものは、具体的内容はどんなものかということは、十分質疑したかったわけなんですが、それについての案はできているのか。  また、先日の委員長の質問に対して、何と申しますか、この削除についての当局の態度について、きちんと答弁書が出ておるわけなんでありますが、この中を見ると、相当具体的に、成案というのですか、ある程度までの見当がつけられているんじゃないかと、こう思うわけなんですが、そういうことについてのいまのところの何といいますか状況について概略御説明していただきたいと思います。
  171. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 代替施設として考えておりましたのは、これはやはり建築基準法の現行規定構造方法と同等以上の効力がある代替施設というのが決められておりました内容でございます。当時考えておりましたのは、例を挙げて申しますと、たとえば避難階段特別避難階段等にかえまして、隣のビルと橋でつなぐ、これは構造方法一つ避難の方法になるというようなもの、それからたとえば防火区画等におきまして、やはり常時閉鎖のガラス戸とスプリンクラーを併用して一般の防煙シャッターと同様の効果を上げるもの、そういうようなものを実際の具体的なものとしてイメージしておったわけでございます。まあ建物によりましてケース・バイ・ケースでいろんな例がございますので、姿勢といたしましては、そういうふうなものが、新しいものが出た場合に、構造方法上同等以上と認める点については大いに活用してまいりたいという姿勢で御説明をしてまいったのが実情でございます。
  172. 三治重信

    ○三治重信君 それで、別に何ですか避難施設等の強化のための法律案次期国会提出されるという御答弁は、非常に私もこれで安心しているわけなんですが、その代替施設の中身をできるだけ何と申しますか、避難施設強化等のための新しく出される法律案の中に例示的と申しますか、予想される、既存建築物で非常にそれをやると問題になりそうだ、いわゆる今度の新しい新法から見ればちょっと問題になる、しかし、これはまあ法律で、その特殊便法として、この程度までは既存建物としては便法として認めざるを得ないというようなところを、重要なものについてはひとつぜひ新しい法律案に盛り込んでもらいたいと思うんですが、それはあくまでやはりケース・バイ・ケースだということの法律案になりそうなんですか。
  173. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) やはり代替の措置でございますので、たてまえはケース・バイ・ケースであろうと思います。しかし、中身といたしましては、同等以上の構造方法のみではなくて、同等以上の効果を上げる措置というようなところまで考えてケース・バイ・ケースの方向づけをしたらいかがであろうかと現在内部で議論しておるところでございます。
  174. 三治重信

    ○三治重信君 やはり既存建物を持っておられるところは、具体的に自分のところではそういうこの新しい規定によってどれくらい何といいますか経費やそれからそういう設計、建物変更しなくちゃならぬかということ、それが一々具体的にもう最後まで、何というんですか、いわゆる建築主事さんというんですか、特定行政庁の最終的な判断を得るまで見当がつかぬということでは、また今度みたいにどうも大変な改正だから反対反対と、こういうふうなことにならぬとも限らぬ。こういうふうなときには、これぐらいの改正——この範囲を示すことによって行政指導や、いろいろいまこの場で反対されたデパートとかそれから地下街とか、こういうような団体にやはり第一線なり事務当局説明されるのにある程度の幅を設ける対策をぜひひとつ設けて、それを法律案の中に入れてもらいたい、こういうようなことを希望いたします。  それから第二に、これは主に売り場面積だとか雑居ビルとか、こういうようなところの問題だと思うんですが、その建物はもう大きくできない。しかし、避難施設やそういう防災施設をつくることによって、それは必要だけれども、そうすると、今度はいま利用している面積を減らさなくちゃならぬ、相当。まあ何割かよくわかりませんけれども。そうすると、だれがその売り場面積なり利用面積を減らす犠牲者になるか。こういうことについても雑居ビルなりデパートだとなかなか利害調整がつきにくい。こういうことを聞いておるわけですが、大体これを既存建物によって、ケース・バイ・ケースで相当違うんだろうと思うけれども、そういう避難施設や防火施設をやることによってそういう利用面積、いま現に使っている利用面積はどれくらい制限されるのか。一割以上なのか、いや、ほんの二、三%で、そんなことは少しわがまま過ぎるという問題なのか。あるいはそういう一割以上も制限される場合もあるのか、どうですか。
  175. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 現在いろいろな建物につきましてケーススタディもやっております。対象が大体おおむねどういうものだということがわかっておりますのでケーススタディを行っておるわけでございます。その中で、やはりケーススタディの中におきましては売り場面積が減るものもございますけれども、むしろ吹き抜きを埋めるためにふえるものも出てまいります。いろんなケースがございまして一概にはやはり言えないような気がいたします。ケース・バイ・ケースでございますが、やはり全体としてそういうふうな見通しがなかなか立てがたいということだと困りますので、そういうふうなケーススタディをいたしましたところのモデル的なものにつきましては、こういうふうなときにはこういう改造をした例があるぞ、こういうふうな改造をする方が望ましいぞというようなものにつきましては、十分例を挙げまして方々にPRしていきたいと思っております。
  176. 三治重信

    ○三治重信君 それをひとつこの改正案をつくられてやる場合に、やはり入っている人は一定の利用している建物で利用面積を持っている、それがどれだけ制限されるかによって、その調整に対して大変なことになると予想せざる被害盲想というのがもしもあるとすれば、これはそれを事前に解消する措置はぜひとってもらいたい。そういう意味において、この利用面積が非常に削減されるんだという、その削減されるものをどこへしわ寄せするかという問題について相当心配している人がある、また実際の取り扱いに困っているところがある。こういうことを申し上げておきます。  それから次に、この費用の問題なんですが、私が一、二聞いている中で、ことに名古屋の地下街の問題だと、この遡及適用によって、栄の地下街では一建築専門家に聞くと十億かかる、駅前の地下街では遡及適用によって二十億かかる、そのほかに各店舗ごとのいわゆる防火とびらに対する負担が約一千万円だと、こういうことなんですね。これは専門家に見積もってもらったんだと言うけれども、少し膨大かもしれません。しかし、もしもこれが適用されるとそれだけの負担がくるんだ、そうすると、地下街の非常に狭い一店舗でも一千万円も負担がくるんだ、その上十億、二十億といっても、地下街でもみんな権利金で建てているみたいなもので、まだうんと借金はしょっているんだ、その上さらにこの改正によって、確かに避難施設というものは必要なんだろうけれども、そこへ新たに加えられるということは、これは商売上、何というか、実質上そこでせっかく入っていま商売している者が商売できなくなると申しますか、とてもじゃないがそれだけの負担をすれば赤字になる。こういうことを言っているわけなんですが、しかし、まあその必要なものについてやらなくちゃならぬことについては、それはもうそんなことは絶対必要ないと、こう言うつもりはございません。したがって、そういうことができるように、われわれ中小企業者やそういう金のない会社ができるような措置を、こういうことをやれとおっしゃるからには、こういうことができるような措置政府にぜひとってもらいたい。しかし、現在の金融制度じゃとてもじゃないがちょっと無理ですと。それについて、そういう工事や改善ができると、それが長期間かかって、その負担で——やはり政府の配慮で、負担が消化できるような配慮をぜひしてもらわないと、こういう問題はなかなか、はい、やりましょうということには規定ができてもならぬじゃないか。こういうものはやはり今度の改正案の中へ十分取り入れてもらえるものですか。
  177. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 提出いたしました政府原案の中にも、附則の六項に「資金のあっせん等」というのを設けておりまして、「国及び地方公共団体は、」「必要な資金のあっせん、技術的な助言その他の措置を講ずるよう努めるものとする。」というふうに規定をしておりまして、さらに猶予期間を設けたり代替措置を認めることにしたりしておりまして、実行しやすいような手だては十分考えたつもりでございます。ただし、ある程度の費用、ある程度の面積の減等は人命救助のためでございますので、やはりある程度は負担していただくというのがわれわれのお願いでございまして、しかし、そういうものにつきましてやはり応援もしなきゃならないということで、予算上の措置といたしまして、たとえば本年度でも法案が施行になることを予定いたしまして、約四億八千万ばかりでございますけれども、そういうものにつきまして応援をなさる都道府県に対して国が二分の一を補助するという出店者対策、それから改修計画書の作成の補助等につきましての補助金を準備いたしております。金融上の措置といたしましても、開発銀行、中小企業金融公庫、国民金融公庫、環境衛生金融公庫、医療金融公庫、沖繩振興開発金融公庫等におきまして相当額の融資額を準備しておりまして、税制上の措置といたしましても、一定の防火避難施設設置に対しまして、その設置年度におきまして所要経費の三分の一の特別償却を認めるというような法人税、所得税における特別償却の制度、それから一定の防火避難施設設置にかかわる不動産取得税についての課税標準の算定に当たりまして、当該防火避難施設の価格を控除するという不動産取得税の課税標準の特例等につきまして、関係方面と十分協議を済ましておった次第でございます。当然新しい法案考えます場合にも、そういう方向は十分継承するとともに、内容をもっとよく検討いたしまして充実さしていくように努力いたしたいと思います。
  178. 三治重信

    ○三治重信君 金融の措置を十分配慮をしているというお話ですが、いままでの普通の融資という金額ならいいわけですが、これは非常にたくさんかかる場合には、金額が非常にのす場合には、ぜひひとつ特別な長期なり低利の措置を新しい法案の中に組んでいただきたいと思うわけです。  それと関連して、ついでにお聞きしておきますが、これは新しくやるために相当膨大な費用がかかるから特別融資とかこういうことをやると、こういうことなんですが、建設省の方でもこれはまあ建築基準法というのは最低基準なわけなので、最低基準をいろいろやって違反建築やそういうものが見つかった場合なんかについての処置を、実際是正措置なんかの裏づけについてはどういうことをおやりになっているのか、実行を確保する方法ですね。
  179. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 現在でも十条命令等によります改修につきましては、開発銀行等の融資ができるように道を開いてございます。そういう点につきましても今後もふやすように努力してまいりたいと思います。
  180. 三治重信

    ○三治重信君 これは何と申しますか、本来から言えばきちんと法律どおりに施行しておって、そしてその是正命令を悪い場合にはする、あるいはそれを直せと、こう言えばいいわけなんですけれども、現実にこの費用が非常にかかるという場合には、なかなか中小企業や個人の場合にその裏づけとなる費用が出せない。それで結局、監督やそういう検査をしてもそれの実行、是正の実行確保ができにくいと、こういうことで、この点はまあ建設省の方の建築基準法建築物なんですけれども、労働省の労働基準法なんかでいきますと、やはり労働者の安全衛生を守らすためにいろいろ監督官が監督をして回る。しかし、これは現実に非常に環境が悪い、施設が悪い、これを是正命令出す。しかし、現実に中小企業の中で金がありません。これをそれだけやると、もうとてもじゃないが自分のところがつぶれちゃうからなかなかできにくいと、こういうことですったもんだ長年やっていたわけなんですが、それに対して最近そういうどうしても人命や環境改善上必要だと認めるものは、監督機関が是正命令を出したそのものについての裏づけは、もう中小企業の方でどうしても資金上無理だという場合には、その証明によって特別の融資の制度をつくってそれで是正さすと、こういう制度をつくっているわけなんですが、そういうものを今後少ない人員でこの建築基準法を維持していくために——なかなか現実にこの建築設計、建築計画どおりに実行されない場合が相当あると思います。そういう違反のものについて、そういう何といいますか、一部ほかのところではそういう不正、そういうことをやっているところが、不正機関があるわけです。建築基準法のそういう違反の是正のために、現在どの程度そういう処置について、どういうふうにまた将来もっと改善される気があるのか。  先ほど私も建築主事なんかの数や違反をどれくらいやっているのかということを聞こうと思っていたんですが、ほかの人が聞いたものですからそれは繰り返して聞きませんけれども、この問題は本当にやはり真剣に考えていただかないと。なぜ言うかというと、法律そのものはそのときどきによって逐次改善のステップをとっていくわけなんですが、その裏づけとなる建築主事が、それを実行できるようにやっていかないと、もしもそれが実行されない場合には是正される強行手段というか是正される手段をきちっととらないと、いわゆるざる法になってしまう。つくったものはりっぱだけれども、現実の一般の人が、どこへ行っても、いやこんなものをつくっても守られてないじゃないかと、あれでもできるならおれもと、こうなって結局一種の具体的に見えることが、違反があるところでは非常にきつく言われたけれども、自分がいざ建てるとなると、ほかのところはもうそういう違反のものが幾らでも建っていれば、おれのところも違反でやってもあと何とも言われぬじゃないかと、こういうことで事実上違反建築がまた新しく建っていくと、こういうのが現実に相当あるのじゃないかと思うんです。それについてひとつぜひ……。
  181. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 先生おっしゃいますとおり、建築主事が現在一年間に取り扱います件数は千二百件ないし千三百件というのが一人当たりの量でございまして、月に直しても百件を超すというのが実情でございます。しかしながら、それも最近のいろんな情勢を加味いたしまして、自治省等にもお願いいたしまして、地方の公共団体におきますそういうふうな人員の増につきましては相当の配慮をされてまいっております。今後もさらに努力いたすつもりでございます。なおかつ、そういうふうな是正命令を受けた者の是正の実行という点につきまして、細部のものまで全部がめんどう見れるということでないかと思いますけれども、大きいようなものにつきまして、従前のいろいろな融資制度のあっせん等につきましては、現行の道も開かれておりますが、そういうものの活用のみならず、今後におきましても十分予算の要求等におきましても反映をさせまして努力してまいりたいと思っております。
  182. 三治重信

    ○三治重信君 日影の問題については、衆議院の方で地方自治体が弾力的に運用できるように修正されておりますが、この点については、地方自治体の自主性を尊重するといいますか、現実の日本における北海道から沖繩までの日照を一律に制限規定するということも問題があるということで、幅を持たした改正が行われております。これについて私も賛成するものでございますが、ただ、実施上このものについて、地方の条例や今後日照の規制についての問題が相当出てくるのじゃないかと思うんですが、これについて建設省の方はもう地方に——非常に弾力的に相当幅を持って、法律で、その広い幅の中で地方自治体が勝手に決められるようになったのだから、もうそれで地方自治体適当にやってくれと、こういうことでは余りにも何と申しますか、またかえってこの困難といいますかが起きる可能性もなきにしもあらずだと思うのです。ことにそれが問題になりますのは、それは北海道とか沖繩とかいう地域が相当離れているということによって事情が違うということについては同意できるわけです。隣の町村とか余り離れていない同一県内とか、また県の名が違っても隣の市、郡というようなところで、この幅がまあ決められているから自由だということで、Aという市では非常にきつい、その隣のBというところでは非常に緩い、法律案の中の一番緩い案でいくというふうになると、また大きなトラブルが起きると思うのですが、そういう問題についてやはりどう考えておられますか。
  183. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 先生おっしゃいますとおり、指定がばらばらになるということも規定上は予想されるわけでございます。ただ、従来の例にもございますように、たとえば都市計画法等に、いずれも用途地域にリンクをいたしましていろいろ都市計画で選択をする問題がたくさん残っております。建蔽率、容積率等々でございます。そういうものの設定の際に地方公共団体の間で十分横の連絡、協議等されまして、やはりそういう点につきまして道路一本越えればがらりと変わるというようなことがないようにとられております。また、そういうふうにわれわれもお願いしたいと思っております。ただ、その場合、今回の日影の規制等につきましてはすぐれて容積率等に非常な関係があると思います。したがいまして、そういうふうなものを、定まっております基準値の中で、こういうときにはこの程度のものをしたらこういうふうな日影になりますよというふうな指定のメルクマールと申しますか、標準みたいなものを設定をいたしまして、こういうものを参考にしていただきたいというのを行政指導したいと考えております。さらに、いろいろと条例制定等につきまして協議会、相談等ございましたときには十分われわれも意見の交換を行いまして、先生が御心配のことがないような、そのかわり相当自主性も尊重されるようなりっぱな運用をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  184. 三治重信

    ○三治重信君 その日照規制の問題とも関連するかと思うんですけれども、先ほどの質問でも、何といいますか、最近地方公共団体が条例や指導要綱等を定めて、建築計画の事前の公開とか事前協議について相当行われている、こういうふうなことが討議されておりますが、この建築計画というものは、何と申しますか、法律で事前の確認といいますか、承認を得る特殊建築物についてこういう問題があるのか。それとも、もう個人の建築物、いわゆる設計ですね、設計書が全部こういうふうないろいろ条例、指導要綱で現在相当規制されているわけですか。
  185. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) やはり特定な対象を選んで、指導要綱の対象にされておるという例が多いと思います。
  186. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、これは個人の、自分の住宅、自分が住む住宅、個人住宅については、これはほとんどまあ何というか、地方公共団体の条例や指導要綱で建築計画の事前公開とか事前協議というものは除外されておると考えていいのですか。
  187. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) これは建築基準法の中に「確認の申請書に関する図書の閲覧」の規定がございます、九十三条の二でございますが。それから家を建てる場合には、工事現場におきまして、確認を受けた旨の表示、設計図書の備えつけの義務等が現行法の中でございます。そういうものによりまして、十分にそういうふうなことにつきまして他の方々でも御承知できるようなシステムができておるというふうに考えております。
  188. 三治重信

    ○三治重信君 だから、そういう建築基準法規定されている問題といいますか、その適用のある建物についての建築計画と、こう理解しているんですが、その範囲が相当広げられている、地方公共団体はこの指導要綱とか何かで範囲を建築基準法以外に広げているところが相当あるんですか、何カ所ぐらいあるんですか。
  189. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) その点はむしろ建築基準法の確認の範囲の方が広うございまして、地方公共団体の方が対処なさっているところの方が少ないわけでございます。ほとんどがそういうことでございます。
  190. 三治重信

    ○三治重信君 わかりました。それで建築計画というのは、むしろ私は何と申しますか、個々の問題よりか、その都市計画からいって、その地域全体の建築なり美観と申しますか、そういう均斉というものを全体的にどう決めると、こういうことかと思っておったら、この建築計画というのはどうも個々の建築物の建築計画だと、こういうことのようですが、しかし、何と申しますか、答申に出ている、四十九年の一月二十八日の「市街地環境の整備の促進のための方策に関する答申」の中にある「良好な建築計画に対する助成誘導」と、こういうところの建築計画というのは、もっと何と申しますか、市街地全体の均衡というんですか、また全体の計画というところじゃないんですか。個々のやはり会社なり個人の建築計画のことなんですか、これ。
  191. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) その節で述べられている中身は、いわば詳細計画のことだろうかと思います。これは現在西ドイツ等ですでに施行されているところがございますけれども、街区単位もしくはもう少し広い範囲におきまして建物の大きさ、高さ、空き地の大きさ等まで規定をする、事前にそういうものを細目の都市計画として決めておく、それに従って個々の家が建っていくというような制度が現在できております。そういうものが日本の現状のような非常に権利関係の細切れになっているところに適用できるかどうかというような点について問題はございますけれども、そういうふうなものは先生おっしゃいますように、やはり地域としてもしくは街区としてりっぱなな計画が立てられるということは非常にいいことでございますので、そういうものの採用を慫慂されたというのがその答申でございます。したがいまして、これにつきましては現在も小委員会等つくりまして検討を続けておるわけでございます。
  192. 三治重信

    ○三治重信君 そうしますと、この答申による建築計画というような問題を、地方公共団体が何というんですか条例や指導要綱をつくって、事前公開とか事前協議をやるという、そういう答申による建築計画ということではない、一般の言われる建築計画という場合には、この答申の建築計画というような概念で——地方公共団体が事前協議とか何かやっているのは違うわけですね。
  193. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) いま申し上げましたような計画の中身とは違うわけでございます。あくまで個々の建物建築の計画でございます。
  194. 三治重信

    ○三治重信君 そんならわかりましたんですが、私はそういう個々の建物や何かについてのいろいろ事前協議とか事前公開というものも非常に重要なことだと思うのですけれども、むしろ事前協議とか事前公開というのは、これは地域の住民の利害関係に非常に関係するものは、むしろ答申計画——答申の中に出ている、素直に読んだ建築計画。建築計画というとどうも地域的な、一定の地域についての全体の計画、建築物に対する計画というふうに理解されるわけですが、そういう方向を私もやはり建築基準法の中にぜひひとつ入れてもらいたい、また検討してもらいたいと、こう思う問題があるわけなんです。  それは何といいますか、これは大臣にもちょっとよく聞いておいてもらいたいんですが、この前も一度前大臣に質問したことがあったのですけれども、地価の非常な急騰によって土地がますます細分化されていくわけなんです。細分化されていくということは、結局その上に建てられる建物というものが非常に細分化されるということになる。したがって、その環境を改善しようと思っていろいろ建築基準法を改善していっても、もとになる土地がどんどん細分される。ことに最近東京の例をとると、二十三区内の中では十三坪とか、十五坪とか、そういうような建て売り住宅が売れていく。こういうことをどんどんやっていけば、これは建築基準法で一生懸命基準を直していっても、現実に不動産業者がどんどんいわゆる逆の建物や町並みをつくっていくかっこうになっていくのではないかと思います。これもまた都市再開発だなんだといっていろいろ計画をしていくというと、それにまた利害関係やなんかで大変な補償から何かえらい問題が出てくる。国、地方公共団体が大変な費用をかけることはもう火を見るよりも明らかだと思いますが、こういう問題をひとつ本当に地域の全体の住宅なり、その生活環境、こういうものを改善していくために、その地域には最低こういうふうなこの基準の建築物なり高さなり、そういうものは最低はこういうもの以上でなければならぬと、そのときに余り細分化されることを防御するようなことが必要だ。それは何といいますか、今度の改正案の中でそういうものを防ぐ、つまり細分化なんかを防ぐために新しい規定として住宅協定というものが入って、これは非常にいいアイデアであると思うんですが、やはり都市の密集地の中においては、特にそういうものを単に民間の協定ということでなくて、やはりきちんとした建築基準法で、こういう利用価値の高い高度に利用しなくちゃならぬ土地については、こういう計画以上のものでなければいかぬというふうにしないというと、もうとにかく何と申しますか、どんな小さいものを建ててもいいし、こういうようなことがいつまででも許されるということはおかしいと思うのですが、どうですか。
  195. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 過小の宅地がたくさんありますところで再開発事業を推し進めるということは一つの方向であろうかと思います。それから先生が先ほどおっしゃいました建築審議会の答申の中にも最後の方でございますが、最小限宅地といいますか、過小宅地の制限を考える必要があるという提言もなされております。これにつきましても将来の問題として十分検討しなきゃならないと考えております。現在のところでは余り小さい家につきましては減税の対象にしないとか、大きい家をおつくりになった場合には融資の対象にするとか、そういう意味の誘導的な措置を講じておるわけでございます。ただ、今回の改正におきましては、ただいま先生がおっしゃいましたような建築協定につきまして、一人協定の制度を設けまして、全員の合意による建築協定の一人協定の制度を設けますとともに、全員の合意による建築協定の締結を促進するための措置をいろいろとりまして、所要の改正を行いましたことによりまして、敷地の細分化防止のための建築協定が一層できやすくなったという点がございます。また、第二種住居専用地域におきます建蔽率、容積率制限を強化したことによりまして、過小宅地の利用を実質的に困難にしております。さらに、第一棟住居専用地域におきまして十メートルの絶対高さの制限を、敷地の規模が一定以上でありまして、敷地内に一定以上の空地を有する建築物につきましては十二メートルまで緩和するという制度を設けまして、敷地規模の拡大を誘導するということもできるようになっております。さらに、敷地規模が一定以上でございまして、敷地内に一定以上の空地を有する建築物につきましては容積率制限、第一種住居専用地域における絶対高さ制限、斜線制限の一般規制、それを解除するといういわゆる総合設計制度を定めておりまして、法第五十九条にまとめて一本にしておりますが、こういうものの活用によりまして、やはり敷地の有効なまとまった活用ということを奨励しようという施策もこの基準法の活用によりましてはできると考えておるわけでございます。
  196. 三治重信

    ○三治重信君 いまの協定を単に民間なりそれをつくった人だけでなくて、地方の自治体が何と申しますか、ひとつ中へ入ってこういうことを広めていくような手段というものは考えられませんか。この協定の相手方に、協定の保障にひとつ——この一人協定というものは地主なり一つのその土地に何か権利を持った人だけですね。そういうものを、やはり地方自治体もそういう協定の主になれると。
  197. 山岡一男

    政府委員山岡一男君) 建築協定制度は、いわば民間におきます土地所有者の皆さんがみずからの手で建築環境を守るというルールづくりのための規定でございまして、それを地方公共団体が認可をいたしまして、その実行を担保していこうという制度でございます。したがいまして、そういう建築協定の協定を結ばれるに当たりまして、技術的援助もしくは御相談に十分乗る、もしくは指導するというような点につきましては地方公共団体は大いに努めてまいると思います。そういうふうなことで今後も運用してまいりたいと考えております。
  198. 三治重信

    ○三治重信君 地方公共団体も指導していくだろうということなんですけれども、私も確信はございませんが、ひとつ一人協定ができるならば、一定の地域、あるところをデベロッパーによって開発して、この開発した住居地域について、これよりかよくなることがあっても悪くなることにならぬような、いろいろいわゆる住宅協定を結ぶため、そういうふうなときにも、それをやらぬという場合に、市町村長が、この地域は非常にいい計画で、せっかくつくったんだからひとつぜひ地方公共団体もこの地域のやつはもうこれを維持して、これよりかよくなることはあっても悪くならぬように、地方自治体も指導だけでなくして責任を持って当事者の一人になって——協定の当事者になれるという問題ができそうな感じがしますが、ぜひそういうものをやって自主的に、お互いに協定というのは約束なんだから、約束をした人がおる限りによってはそれは守られる。それからまた、新しく入ってきた人はその協定を守ると、こういうことによってその環境が維持される。そういうものに、やはり単に民間のやつというのは一つの型のものだけれども、もう一つ地方自治体もその一つの協定の当事者として、それが周りの環境について道路やいろいろの環境政策もありますし、市町村は当然責任を持つわけですから、当事者になれるようなことをひとつぜひ考えていっていただきたいと思います。  それで、要するに建築基準法はいわゆる単体規定とそれから地域規定というふうに皆さん方理解されておるわけですが、この単体規定についてはわりあいにわかりいいと思っていますが、皆さんわりあいに実行されると思うのですが、この地域規定については存外何というんですか、特別な専門家以外にはなかなかわかりにくいし、これを守るということは非常にむずかしい問題なんです。これを守っていくために、また地域規定がしっかり守られていくことによってのみ、この生活環境なり生活水準を向上さしていく上に、この建築基準法が果たす役割りというものは非常に強いんじゃないかと思う。ことに日本の人口の七五%から都市生活をする、都市生活するところにまた農村のように一人一住宅と、個別住宅でなくちゃということでは、やはり建築基準法の単体規定だけでそれが生活水準が維持されるということはぼくは不可能だと思うんです。どうしても地域規定をやり、そうしてその中で、都会においてはやはり共同住宅というものの中においてそういう住居の水準が上げられる方向へ、国民がもう個体の一世帯一住宅をといっても、別個の独立住宅を望んでいるんだからそれがいいんだということではなくして、また共同住宅についての利用や、またその中においての生活の環境をよくするのはどうしたらよくできるのかというふうなやはり共同住宅方式について——また土地も細分化されるということはだれも貸してくれないからそういうことになる。しかし、建物を持っている者は、人の土地の上にちゃんと土地を借りて建物が建てられるということになると地価の高騰も相当防げる。まあ地主は地主として置いておいて、そして利用を制限していく。こういうことをやらぬと、この建築基準法の改善というものはやってみてもなかなか現実にそれができない。だから、したがってこの地域規定の方で土地の所有者とは別個に土地の利用を単体的に規定していくと、こういう方向に建築基準法をひとつ検討をしていただくことを特にお願いして、私の質問を終わります。
  199. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  200. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認めます。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  201. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 速記を起こして。  矢原君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。  この際、本修正案を議題といたします。  矢原君から修正案の趣旨説明を聴取します。矢原秀男君。
  202. 矢原秀男

    矢原秀男君 ただいま議題となりました建築基準法の一部を改正する法律案に対する修正案についてでございますが、提案の理由及び要旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してございます。  御承知のように、今回の改正案の大きな柱となっておりました既存特殊建築物等に対する防火、避難施設設置等の義務づけに関する改正規定は、衆議院において、なお検討の余地があるとの理由で削除されましたが、この規定は、多数の死傷者を出しました大阪千日ビル火災や熊本大洋デパート火災事故調査報告を基礎にし、建築審議会の答申を受けて提案されたものであり、また建築物の防災対策の強化という、人命の安全に直接かかわりのある重要かつ緊急を要する事項に関するものであり、これを削除することは、悲しい教訓を一日も早く生かしてほしいという被災遺族の切実な声を無視し、また国民の期待を大きく裏切るものであります。  このような観点から、私は既存建築物に対する制限の特例に関する規定削除する衆議院修正に反対する立場を明確にし、また、人命尊重立場から一日もゆるがせにできない建築物の防災対策を強化するためには、提案された政府案を復活させ、その早期成立を期すべきであり、その上でさらに検討すべきものについては必要な措置を講ずることが真に国民の要望にこたえる態度であると考え、あえて修正案を提出した次第であります。  次にその要旨を申し上げます。  第一は、政令で定める用途に供する既存特殊建築物等で一定規模以上のものに対して避難、防火等に関する規定を原則として遡及適用することとし、特別の事情がある場合には建設大臣が認める構造等によることができることとしております。  第二は、これらの避難、防火等に関する規定遡及適用について三年または五年の猶予期間を設けることとしております。  第三は、遡及適用により必要となる改修工事等について、国、地方公共団体は必要な資金のあっせん等に努めることとしております。  以上が本修正案の提案の理由及び要旨でありますが、委員各位の御賛同をお願い申し上げる次第でございます。
  203. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) それでは、ただいまの修正案に対して質疑のある方は順次御発言を願います。——別に御発言もなければ、これより原案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  204. 沢田政治

    ○沢田政治君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました建築基準法の一部を改正する法律案について、衆議院送付案及び矢原提出修正案に反対の意見を述べるものであります。  御承知のように、今回の改正案は、建築行政上緊要の課題となっております一定規模以上の特殊建築物の防災対策の強化と、都市における日照問題の解決を図ろうとするものでありますが、その主たる柱の一つであります既存の特殊建築物に対する防災規定遡及適用に関する改正規定が、衆議院においてわが党の反対にもかかわらず与党の意思により削除されたことは、安全より採算を重視する企業経営者側の論理に立ち、建築物の安全対策を著しく軽視するものと言わざるを得ません。つまり、いかなる理由をつけても、二つの柱である一つの柱が欠落したことは否定できない事実として指摘いたしたいと思います。  次に、改正案のもう一つの柱であります日影による中高層建築物の高さ制限については、商業地域等が対象外とされていること、低層建築物間の日照問題が切り捨てにされていること、風害、電波障害等の防止対策が講じられていない等不満の点が多くあります。ただし、衆議院修正で、地方公共団体の自主的判断が尊重されることになった点は多少評価いたします。今後の円滑な運用を期待いたしたいと思います。  その他、改正案では、工事中の建築物の安全上の措置、第二種住居専用地域内における用途規制の強化、建築協定に関する規定の整備等が行われており、これらについても一応評価はいたします。  衆議院送付案全体としては、国民が最も期待しております建築物の防災対策の強化が骨抜きにされており、人命尊重を最優先させるべきであるとする立場からはこれに賛成することができないのであります。  次に、矢原提出修正案につきましては、衆議院送付の改正案質疑に入るに当たり、竹田委員長委員会を代表した質問に中馬建設大臣から、既存特殊建築物等避難施設等の強化のための法律案次期国会に必ず提出すると確約を得たところであります。したがって、現時点では国会提案されて以来二年半余を経た政府案の復活を求めることよりも、その後の諸事情を勘案して、より充実した内容の新規立法を政府に要求していくことが適当であると考えます。以上、矢原提出修正案については、その内容については異論はありませんし、同感でありますが、その取り扱いについて意見を異にするものであります。  これで私の討論を終わります。
  205. 中村禎二

    中村禎二君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております建築基準法の一部を改正する法律案に関し、修正案に反対、原案に賛成の討論を行うものであります。  都市における土地の高度利用の進展に伴い、日照紛争その他の都市環境を阻害する事態が随所で発生しております。  原案は、このような事態に対処するため、建築物による日影に関する基準の設定、第二種住居専用地域内における用途規制の強化、建築協定に関する規定の整備等の措置を行おうとするもので、まさに時代の要請にかなった適切な措置と思うのであります。  次に、既存建築物に対する制限の特例に関する修正案につきまして申し上げたいと思います。  既存建築物防災対策は、熊本大洋デパート大阪千日デパート火災の例にかんがみ、重要な問題であるとは存じますが、既存建築物に対する防災規定遡及適用につきましては、諸般の事情を考慮した結果、いまだ解明されざる問題点も残されておると考え、早期にその問題点の解明に努めることが先決であると考えます。  私は、こうした理由に基づいて、本法律案措置により良好な居住環境の確保が大きく前進することを期待し、また、建築物の防災対策については次期国会に特別立法が提案されることを期待して、原案に賛成し、修正案に反対するものであります。  以上で討論を終わります。
  206. 宮崎正義

    宮崎正義君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております建築基準法の一部を改正する法律案につきまして、矢原秀男提出の、修正案に賛成し、衆議院送付案に反対の意見を表明するものであります。  申すまでもなく、建築物の防災を促進し、利用者の安全を確保することは、建築行政に課せられた最も重要な課題であり、昭和四十五年の建築基準法の大改正による特殊建築物等に対する防火避難施設等の諸規定の整備強化は、それに沿ったものであります。  しかし、既存建築物には原則として改正規定が適用されないことが隘路ともなって、その後も大阪千日デパート、熊本大洋デパート等の悲惨なビル災害が後を絶たない状況にあります。こうした状況にかんがみ、政府提出原案には、既存特殊建築物等に対する避難施設等の設置を義務づける、いわゆる遡及適用規定が盛り込まれていたのであります。  この規定は、対象建築物の既存不適格の部分にすべて現行規定遡及適用するのではなく、建築物利用者の安全な避難を絶対に確保するために不可欠な避難施設防火区画、非常用照明装置及び非常用進入口の四種の施設に限定しており、しかも、やむを得ない事情がある場合は代替措置を認める、施行のための猶予期間を設ける、資金のあっせん等の助成措置を図るというもので、悲しい教訓を生かして適切な措置を一日でも早く講じてほしいとい被害遺族の切なる叫びと国民の期待にまさにこたえたものであったのであります。にもかかわらず、衆議院において、なお検討の余地があるという名目のもとに遡及適用規定削除する修正が行われたことは、はなはだ遺憾であります。  したがって、遡及適用規定について、政府案の復活を求める修正案に賛成し、これを削除した衆議院送付案に反対するものであります。  なお、日照問題については、衆議院送付案で、政府案の一律化を排して地方公共団体の自主性を尊重し、対象区域、日照時間について、法律で定める基準のうちから地方公共団体が条例で定めることができるように、その選択の幅を広くしておりますが、しかし、商業地域における日照問題、あるいは風害や電波障害等をめぐる問題についての解決策は依然として残されたままなのであります。これらの点についてなお検討が加えられるべきことを政府に要望し、私の討論を終わります。
  207. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっております建築基準法の一部を改正する法律案及び建築防災関係遡及適用復活の修正案に対する賛成の討論を行うものであります。  まず、衆議院削除された百貨店地下街等の既存建築物にも防火避難施設などの設置を義務づける遡及適用の復活は、デパート、雑居ビルホテル火災などで今日まで多くの人命が失われてきた事実にかんがみ、その防止対策上、欠くことのできない措置を定めるものであり、技術上その他若干の問題は残るにしても、まず人命安全最優先の見地から、この修正案には賛成すべきものであります。  次は、建築基準法改正案の主要な改正点である日影規制の問題であります。  今日の深刻な日照問題が、歴代自民党政府の高度成長政策のもとで、人口と産業を急激に大都市圏に集中したことに伴う中高層建築物の激増と、それにもかかわらず、都市住民の生活環境の悪化を防ぎ改善するための具体的な施策を欠如してきたことに起因するものであることは、すでに明白であります。  したがって、都市住民がみずからの生活環境、都市環境を守るために日照確保の運動を展開し、多くの地方自治体が条例や指導要綱を定めて、中高層建築に対する一定の規制を行ってきたのは当然であります。わが党もまた、大企業本位の都市政策を改め住民本位の町づくりに転換すべきこと、建築基準法についても日照の確保を明確に規定すべきことを一貫して主張してまいりました。  今回の改正案による日影規制は、このような住民運動や地方自治体の日照問題に対する到達点から見れば、決して十分なものではありません。日影規制時間、平家の日影を無視した地盤高の問題や敷地境界線から五メートル以内の日照の切り捨て、商業地域に対する日影規制の除外等々多くの問題点を残していることは事実であります。  しかし、それにもかかわらず、わが党が本改正案に賛成する理由は、第一に、衆議院における修正で、地方公共団体に日影規制を適用するか否かの選択をゆだねたこと、日影基準についても選択の幅を認めたこと、これによって地方公共団体の指導要綱を生かす道が開かれたことであり、第二に、用途地域制、高度制限、容積率等の制度を日影規制に加えて総合的に活用すれば、従来の法的規制よりは規制を強化し得るという点にあります。  したがって、この日影規制等の運用に当たり、政府が、特に地方公共団体の事前公示制、事前協議制、住民同意方式等を内容とする指導要綱を尊重し、用途地域の見直し、その他総合的な制度の活用を図るなど、少なくともこれが日影の許容基準となることのないように、日照確保に努めることを条件として賛成するものであることを明確にして、討論を終わります。
  208. 三治重信

    ○三治重信君 私は、民社党を代表して、衆議院において修正された建築基準法の一部を改正する法律案に賛成をし、同法律案に対する矢原秀男提出修正案に反対するものであります。  政府提出建築基準法の一部を改正する法律案に対して、衆議院において、既存の特殊建築物に対する制限の特例に対する修正は、建築物の高層化及びその用途の複合化に伴う防災的見地から、既存特殊建築物等で一定の規模以上のものに対し、避難施設等の規定を全面的に遡及適用することとした規定削除しましたことは、この規定によって、一つ建築面積に対して利用面積が相当制限されること、一つは膨大な建築費を要すること、これが費用負担についてその負担能力が問題とされることであります。  また、代替措置が特別な事情があるときは政令構造方法を定めることになっておりますが、その特殊建築物の敷地、構造等に関してやむを得ない事例について対処方法の具体的措置がとられなければ効果がないと思われます。来国会提出される特別立法の際には、このような効果的な対処の方法を十分盛り込んで提案されることを希望いたします。  また、日影による中高層建築物の高さの制限に対する衆議院修正は、日影基準の適用に当たって、建築基準行政を執行する地方公共団体の自主的判断を尊重しようとするもので妥当な措置考えるものであります。さらに、衆議院修正以外の政府提出原案は、おおむね妥当なものであると認め賛成いたします。  矢原秀男君の修正案は、衆議院において削除された特殊建築物の遡及適用を復活されようとするものでありますので反対をいたします。  建築基準法建築物等に対する最低基準を定めたものであります。政府は、最近の都市の巨大化、住生活の向上及び生活環境の複雑化等に伴って、その基準の取り扱う範囲の拡大と水準の向上に対し努力を払われんことを希望いたしまして、討論を終わります。
  209. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  210. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認めます。  これより建築基準法の一部を改正する法律案の採決に入ります。  まず、矢原提出修正案を問題に供します。矢原提出修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  211. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 少数と認めます。よって、矢原提出修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  212. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  213. 坂野重信

    ○坂野重信君 私は、ただいま可決されました建築基準法の一部を改正する法律案に対して、自由民主党、日本社会党、公明党、日本共産党、民社党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  その案文を朗読いたします。    建築基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行にあたり、次の事項について、所要の措置を講ずべきである。  一、本法の適正な運用を確保するため、必要な執行体制の整備拡充に努めること。  一、大規模な特殊建築物等のみならず、小規模な特殊建築物等についても、その防災対策の重要性にかんがみ、今後とも行政指導の強化に努めること。  一、日影規制実施のための条例の制定にあたっては、都道府県と市町村が十分協議し、その円滑な実施が図られるよう指導すること。  一、地方公共団体が条例又は指導要綱等で定める建築計画の事前公開、事前協議等については、当該地方公共団体の自主性に十分配慮すること。  一、日照紛争解決のため、相談、あっせん等に努めるよう地方公共団体を指導すること。  一、建築協定の積極的活用を図るため、その普及に努めるとともに過密地帯における日照確保のため、用途地域・地区、容積率、建ぺい率等の総合的な活用を図るよう指導すること。  一、風害、騒音、電波障害等についても有効な防止策の検討をすすめるとともに、日影規制と関係のある用途地域の検討を行う等、都市における良好な居住環境を確保するため、諸般の施策を強力に推進すること。  右決議する。  以上であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  214. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいま坂野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  215. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 全会一致と認めます。よって、坂野君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、中馬建設大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中馬建設大臣
  216. 中馬辰猪

    国務大臣中馬辰猪君) ごあいさつ申し上げます。  本法案の御審議をお願いして以来、本委員会におかれましては熱心な御討議をいただき、ただいま議決されましたことを深く感謝申し上げます。  審議中における委員各位の御高見につきましては、今後その趣旨を生かすよう努めてまいりますとともに、ただいま全会一致をもって議決になりました附帯決議につきましても、その趣旨を十分に体して努力する所存でございます。  ここに本法案審議を終わるに際し、委員長初め委員各位の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表し、ごあいさつといたします。ありがとうございました。
  217. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) なお審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  218. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十八分散会      —————・—————