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1976-10-26 第78回国会 参議院 建設委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十六日(火曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員異動  十月二十二日     辞任         補欠選任      中村 波男君     前川  旦君  十月二十五日     辞任         補欠選任      前川  旦君     片山 甚市君  十月二十六日     辞任         補欠選任      小谷  守君     赤桐  操君      片山 甚市君     川村 清一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         竹田 四郎君     理 事                 坂野 重信君                 中村 禎二君     委 員                 遠藤  要君                 上條 勝久君                 神田  博君                 望月 邦夫君                 赤桐  操君                 片山 甚市君                 松本 英一君                 矢原 秀男君                 上田耕一郎君    政府委員        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省住宅局長  山岡 一男君        建設省住宅局参        事官       救仁郷 斉君    事務局側        常任委員会専門        員        森  一衞君    参考人        東京都市計画        局建築指導部長  武田 豊明君        武蔵野市長    後藤喜八郎君        横浜国立大学教        授        入沢  恒君        東京理科大学教        授        大河原春雄君        弁  護  士  梶原  茂君     —————————————   本日の会議に付した案件建築基準法の一部を改正する法律案(第七十二  回国会内閣提出、第七十七回国会衆議院送付)  (継続案件)     —————————————
  2. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十月二十二日、中村波男君が委員辞任され、その補欠として前川旦君が、また十月二十五日、前川旦君が委員辞任され、その補欠として片山甚市君が選任されました。     —————————————
  3. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 建築基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本法律案につきまして、本日はお手元に配布いたしております名簿の方々参考人として御出席をいただいております。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には御多忙中のところ御出席いただきまして、まことにありがとう存じます。皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、本案審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  なお、議事運営といたしましては、武田参考人後藤参考人入沢参考人大河原参考人及び梶原参考人の順序で、お一人二十分程度御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、武田参考人お願いをいたします。
  4. 武田豊明

    参考人武田豊明君) ただいま御紹介にあずかりました武田でございます。  私は東京都の建築行政一般に携わる仕事をしておる者でございます。昭和四十五年ごろより目立ち始めました日照住環境の問題、現在、都におきましては最も重要でかつ緊急を要する行政課題となっております。本日の貴重な機会をおかりいたしまして、都の具体的な対応策、それからそれに対します考え方などにつきまして順次その経過を追って説明申し上げ、御参考に供したいと思うわけでございます。  それでは、東京都におきます日照問題の諸対策と題しまして、まず一番目は日照紛争におきます行政対応策でございます。都におきましては、すでに実施しております具体的な対応策、次の四つの事項がございます。以下、順次そのあらましについて御紹介いたしたいと思います。  まず、紛争調整事務事務組織整備でございますが、昭和四十七年首都整備局内建築紛争調整室が設けられました。建築確認業務の部門と別個に主幹、副主幹以下数名のスタッフでこれらの陳情、紛争対応することにいたしました。これは建築確認以前にできるだけ円満な解決を得られるよう相互当事者調整を図ることがその目的でございます。一方、二十三区におきましては、区長が弁護士それから学識または行政経験者等いわゆる第三者に調停委員を任命いたしまして、それぞれ専門的な立場からその調停に当たらせておるわけでございます。それぞれ紛争深刻化を未然に予防し、相応の成果を上げておるものでございます。  次に、二番目の事前公開制度でございます。高さが十メーターを超える建築計画につきましては、確認申請提出以前にあらかじめその内容現場に掲示させる、そのような一種の行政指導でございますが、現在全都域で実施されております。これは着工の段階までに付近住民の方が全然知らなかったというようなことのないように、また、そのこと自体が問題を深刻化するということのないよう、あらかじめ付近住民の方のおおよその了解を期待したものでございます。  次に、都市計画的な対応といたしまして、地域地区指定がえがございます。これは昭和四十八年三月の高度地区指定、それから同年十一月の用途地域全面指定がえのこの二つが挙げられます。高度地区は、北側からの斜線制限で隣地への日影制限する地区でございます。これは激増します日照紛争に応じまして、都では区部、三多摩を通じて全用途地域指定面積の八五%の区域にわたって高度地区を広範に指定いたしました。引き続きまして、用途地域指定がえに際しましては、住環境の保全を目標として、都域広範囲にわたりまして第一種住居専用地域——メーター制限がかかる地域でございますが、これを指定しまして、その周辺地域容積率をできるだけ低く抑えるということにいたしたわけでございます。  以上の地域地区指定等方法によりまして、その結果、住居系地域紛争発生の比率、これは著しく低下いたしました。たとえて申しますと、東京都扱いの処理件数だけでも四三%から二七%に下がったわけでございます。紛争の絶対件数も、紛争件数自体も、地域改定前後の十五カ月間、それぞれ前後十五カ月間の統計では約三分の一へ激減いたしております。正確に申しますと九百件から三百五件まで下がっております。  次に、最後に書いてございます建築指導要綱でございます。最も直接的な各自治体対応策としましては中高層建築指導要綱が挙げられます。区と多摩市町村部分では確認権限の有無という差異がございますし、多摩周辺市町村におきましては開発指導という角度の相違もございまして、その要綱内容にもそれぞれ差異がございます。市町におきましては、二市を除き、建築行政を行っていない市町はすべて住民同意を義務づけ、建築行政を行っている区におきましては同意または了解を得る努力規定していることが対照的でございます。本来、指導要綱というものは建築行政建築指導の方針を明文化したものでございまして、将来の町づくりの指針または地域環境基準ということは一応無関係であるところに問題があるわけでございます。最近二つの区におきまして日影基準が定められました。その運用が注目されているところでございます。  以上のような当面の行政対策とは別個に、都においては、基本的な解決策の検討といたしまして、太陽シビルミニマムに関します専門委員会を設けまして、知事都民日照基準値とその保護対策について当委員会に諮問いたしました。シビルミニマムと申しますのは最低日照基準値設定でございます。翌年六月の最終答申によりまして、二時間から五時間までの目標値が、各地域ごとにそれぞれ目標値が示されました。保護対策としましては、条例によって、その地域の実情に応じて日照基準を定め、住民の発意によって決定するということがその内容でございます。この内容骨子は、現在審議中の改正法案骨子を基本的にはほとんど同じ考え方でございます。  次に、直接請求条例提出でございますが、以上のような基準設定動き、国及び都におきます基準設定動きに反対します一部の都民から、昭和四十八年、十七万余の署名をもちましていわゆる日当たり条例が都へ直接請求されました。確認以前に関係住民の四分の三以上の同意を得なければ建築できないということがその基本的な内容でございます。この条例案に対しまして知事は次のような意見をつけまして、これを都議会へ諮っております。その知事意見は三点ございます。まず一点は、住民がよるべき基準がなければ紛争は激化するということが第一点でございます。二点目は同意のみによる結果は必ずしも日照保護という結果にはつながらないということが二番目でございます。三点は、現に日照を受けられない都民への配慮がなく、再開発阻害となるということが第三点でございます。そのほか、違法性が濃く実行困難な規定があるということを指摘いたしまして、これを都議会へ付議したわけでございます。  これを受けました都議会では、同条例審査特別委員会を議会内に設けまして慎重に審議を重ねましたが、まず、よるべき基準がないままに同意のみを義務づけることについては法的な安定性を欠く。さらに、法の一般原則に反する疑いがあるということと、請求人の主張する住環境の確保には修正法案内容が最も好ましく、国法というものが最も望ましい強い保障であるという考え方が支配的でございました。次に、修正法案と都の基本的な考え方について申し述べたいと思います。  まず、日影基準設定でございますが、都民の快適な住環境を確保するためには太陽シビルミニマムが必要である、このことは都における一貫した思想でございます。日照日影の裏表の相違はございます。しかし、基準が不可欠であるということについては直接請求条例、つまり日当たり条例について知事意見にも重ねて表明されております。  次に、地区指定方法でございますが、住民の望む環境基準住民みずからが選ぶという民主的な手法、これは修正法案条例規定部分にもうかがわれております。基本的に賛同するものでございます。  最後に当たりまして、最近特別区議長会及び同建設委員長会の連名で、日照問題等早期解決のためには、法規制の促進について国への積極的な働きかけ等なお一層の配慮お願いするという趣旨の要望書が都へ寄せられておりましたことを御報告いたしまして、説明を終わらせていただきます。
  5. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ありがとうございました。  続きまして、後藤参考人お願いいたします。
  6. 後藤喜八郎

    参考人後藤喜八郎君) 武蔵野市長後藤でございます。  参議院の皆様方の前で法改正についての意見を開陳できますことを大変うれしく存じます。昭和四十六年以来マンション規制をし、裁判で訴えられ、あるいはトラブルが起き、職員もこの係をすることはまことに大変でやせる思いをしております。一言で申し上げますならば、各地方自治体の長がその環境を保全するために地域に合ったような条例設定できると、こういう法的根拠をひとつ与えていただければ多くの問題は解決していくと存じておりますので、何とぞそういう意味で、合法性だから市長は何を言うのかということによって日照問題が紛糾している現状を打開していただきたいと、このように冒頭に申し上げたいと存じます。  お手元にお配りいたしましたのが、武蔵野市の現在の要綱条例化すべきであるということを骨子にいたしました、市民によって構成された、またこの中に専門家もおりますけれども、委員会答申でございます。また、建築基準法改正案に対する武蔵野市の意見の要旨もお配りいたしております。以下、順次御説明さしていただきたいと存じます。  マンション問題の経過その他につきましては、先生方がすでに知悉いたしておるところでございますので省略さしていただきます。  初めに当たりまして、どういう経過であったかということを要約さしていただきます。  第一に、武蔵野市において昭和四十六年以来マンション等を主対象にした宅地開発指導要綱を運用してきた経験に基づきまして、改正案のうち日影基準関係の問題を中心に意見を述べさしていただきます。  今回の改正案は、日照公法上の規制によって保護しようとする姿勢を示している点で評価しております。また、日影基準規制を適用するか否かの選択地方公共団体裁量にゆだね、日影基準についても選択の幅を認めるように変わってまいりましたこと、それから地方自治体の判断を尊重するという方向で修正されました点も評価いたしております。さらに、ちょっと細かいことになりますが、従来弊害が多かった過半適用制度を廃止されている点も評価いたしております。しかしながら、改正案は、全国三百有余市町村条例または要綱を制定して対処してきた各種の問題のうちごく一部分、すなわち日照問題のみを解決しようとするものであり、この意味改正案は不十分である、こう考えております。また、日照問題に限定して考えましても、ここに提案されている日影基準のみをもって、いわゆる日照問題全面的な解決をすることはとうてい不可能である、このように経験上断定いたしております。  次に、要綱行政は総合的な行政であるということをこの際改めて強調いたしたいと存じます。  第一に、全国三百有余市町村が制定している条例または宅地開発指導要綱は、4として、開発業者に対して公共公益施設負担を要請し、都市構造に関するシビルミニマムを確保することにいたしております。たとえば、マンションがどんどんできることによって私たち天までスプロールするということを申し上げております。従来のスプロール平面スプロールでございましたけれども、マンションはいままで二軒ぐらいの家しかなかったところに二十軒もできるというふうなことであります。しかも、とりわけ商業地域近隣商業地域等につくられた場合におきましてはほとんど空地がございません。したがって、平面スプロールでできた東京が、今度は天に向かってスプロールしてしまった場合に一体それはどうなるだろう。  当初は日影の問題だけ、日照の問題で論争されましたが、逐次行政はこれに学校保育園、下水、上水、清掃、もろもろの公共施設の提供が不可能になる。保育園を一戸建てるに当たりましても、二軒動かして保育園を建てるという日本最過密の、大過密都市武蔵野市が天までスプロールしたために、この間建てかえた鉄筋コンクリートの学校がすでに不足してしまった。こういう場合で、今後このようなところにマンションがどんどんできれば学校は二部授業になり、校庭がなくなるというふうなことができてまいりました。こういう点を考えまして、公共公益施設負担というものは当然要請すべきものである。一つには、マンションに入ってきた子供たちのために、きょうは便利な吉祥寺だが、五年たったら入る学校が二部授業というようなことになったらば、マンションに入る人のためを考えても無制限に建てることの問題が現に痛感されております。以上のような点を考えております。  次に、相隣紛争を円満に解決することが必要であります。さらに団地、マンション等に入居してくる新しい住民に良好な住環境を保障する——ただいま申し上げたことでございます。といった多方面のねらいを持っているのが要綱行政でございます。それは都市計画法上の開発許可制度でも十分に解決できません、現状におきましては。さらにまた、建築基準法上の建築確認制度、大変むずかしい状況でありますが、いまの建築基準法は多くの点については現状のむずかしさに対応して相当融通がきくわけでありますが、そのために多くの問題を持っております。そうした建築基準法制度でも十分解決できない、そうした狭間にある問題を総合的に対処しているのがいまの要綱行政でございます。  そして、仮に相隣紛争に限って考えましても、問題は日照問題だけではございません。中高層建築物周辺住民に及ぼす生活侵害は、日照侵害電波障害風害あるいは通風、プライバシーの侵害、照り返し、威圧感等さまざまであります。さらにまた、工事騒音等工事中の生活侵害もあります。要するに、問題は建築物周辺地域状況と適応しているかどうかという総合的な問題解決指導要綱は包括的に扱ってきております。そして今回の改正案日影基準は、これらの総合的な問題のうちの相隣紛争の側面として取り上げております。しかも相隣紛争問題のうちの日照問題と限定して取り上げているというのが特徴であろう。そして先ほどから申し上げておりますような不十分さを痛感いたしております。  第四に、市町村当局者としては、要綱をもって対処してきた総合的な問題の全般について明確な法的根拠を与えることを強く要請しております。立法は自治体の苦難の試行錯誤を踏まえたものであってほしいと思っております。このことは多くの問題をこの五年間にわたって苦汁に満ちた五年間を経験いたしてまいりました。したがいまして、今回の法改正によりまして、二度とこういう問題が——全面的にはできないと思います、しかし根源的に対処し得るようにしていただきたい。このように考えて、試行錯誤を踏まえたものであってほしいと申し上げますのは、全国が画一で、かくあらねばならないと、かっとこう一つで、一刀両断というものでなしに、それぞれの自治体において苦労して積み上げてきた実績の中から、それぞれの単位自治体市町村対応する余地裁量余地というものを十分配慮してほしいということを意味しております。  次に、相隣紛争円満解決には開発者周辺住民との協議の場を保障することが不可欠でございます。当初つくりますときは、マンション騒動の起こりと申しますと、法律に合ってんだ、建築基準法に合ってんだ、知事が認めたのを何で隣の人は文句を言うのだと、建て始めたところから問題が起きました。そして最後に市役所に来て、双方が来て、市長室マンション騒動の場と、るつぼとなりました。困り果てていますと、業者の方は、それほど市長さんこのビルがおきらいならば、お買いになって好きなだけ削ったらいいでしょう、更地にしたって文句はありません、法律に合っておりますから文句を言われる筋合いはないというふうなことで、これが終始いたしました。今日でもこの日照権に対して多くの業者方々は理解と協力を示しておりますが、一部には以上のようなことを申し、文句があるなら裁判でやろうじゃないか、これでおしまいだというふうな、耳をかさないといったような方もおります。こういう点でございますから、相隣関係紛争ということを考えますと、基準一つ解決できないというふうに判断いたしております。そこで、相隣紛争は客観的な基準設定するだけでは解決しないことを再度申し上げておきたいと思います。なぜならば、日照については社会的に合意が得られつつございます。しかし、新たに電波障害とか風害、先ほど申し上げたような問題等々が起きてまいっており、客観的な基準設定するにはいまだ無理だというふうな点でございます。  次に、それでは日照については客観的基準値設定し、基準値に合うものは合法で、それでも日影——日陰になる人はがまんせよと言えば済むかというと、決してそうではございません。公法上の合法なら私法上も合法とは限らないという点は、今日の各種裁判日照権を認める方向において動いております。そして建築基準法には合っているけれども、なおかつ近所の人の了解を得るとか補償の金を払うとかというふうな点が言われております。金を払うということで権利を、太陽を金で売るとよく言われておりますが、今日これよりほかに、建ち始まったものを壊すこともできませんので、最後は何らかの金で勝負をすると、交通事故を金で勝負するのとよく似たようなことであります。お金で勝負というのは私たちも好むところではございませんけれども、現状やむを得ないというふうなことを考えております。以上のような、公法上は合法であるけれども、私法上はさらにそれを保護されているという点を考えましても、一定の基準だけですべてが解決するものではない、こう判断いたしております。  建築基準法上の合法な適法建築物の場合でも、それによって甚大な日照侵害を受ける人は損害賠償請求をなし得る。この問題は私人間の問題なので、損害を受けた人は裁判をして救済してもらいなさいというふうなことを言われております。現に建て主からそういうことを言われておりますけれども、今日の住民意識の中で、自分たちのいままでの権利日照阻害を受けたために生活が困難になると同様に、売ろうとしてもそんな日陰な地所はいままでどおり買えない。いままで五十万していたところを三十万でも買わないというふうなことになると、前の人は大変天国、裏の人は地獄に回るというふうなこと。それぞれを考えて裁判は裏の日陰の人を守ろうという方向に進んでおります。以上のような点がございますので、裁判したらいいじゃないかという、私法私法でということでは地方自治体、とりわけ現場を預っております市町村長は勤まらない、こういう点でございます。自治体市民間の争いを防止するとともに、市民間に生じてしまった相隣紛争を円満に解決するために努力をせざるを得ない、こういうのがいまの現場を預っております私たち市町村の苦渋であります。  次に、従来の要綱が、事前公示制事前協議制説明会開催住民同意方式等を採用してきました。こうした相隣紛争の円満な解決のためであります。これが行われなかった、要綱でこれを規定しなかったときは、もう建ち始めてから何が建つのかを知って、それから騒いでももう後の祭りというふうな状況であります。これをやりましたために、四角なものでは北側が大変だというのでコ型にして、真ん中のところを削って、北側の人の太陽を少しでも考えようといった建て方をした人もありますし、八階といったけれども五階にしようと、こういうふうにして削ったところもございます。事前公開制がないときにはこのようなことが行われず、紛争はこじれにこじれて暴力ざたになる。現に自動車の下にくぐり、あるいは阻止してけが人まで出ようとする、警察まで出てくる、こういう事態が発生してまいりました。こういう点で事前公開制、いま申し上げたような説明会開催同意方式というものは今後において必要であると、改めて強調申し上げたいと存じます。  今回の改正案によって日影基準が法定される結果、逆に部分的なものだけを法定してしまいますと、これから漏れたものは、ちょうどいままで建築基準法に合ってるんだから何が悪いというように、今後部分的な法制化をしますと、これだけは守る、だけれど、これは法律にないんじゃないか、市長は何を言うのだというふうなことになろうかと存じますので、こういうふうに逆用されないことを私たちは願っております。そういう意味で、事前公示制住民同意方式等が違法だと解釈されるようなことがあったら大変でございますので、そういうことのないようなことをこの法律の中で規定していただきたい、こう考えております。  そこで、日影基準について定める地方公共団体条例上で、日影基準適用方法だけではなく、それにあわせて相隣紛争一般に関するいま申し上げたような解決手続についても定め得ることを明確に規定していただきたい。細かく規定していただく必要はありません。このほかのいま申し上げたようなことを市町村で行うことができる、この一行を入れていただけばよろしいと考えております。この点を強く御要請申し上げ、法文上どうしても明記することができないならば、その趣旨をぜひとも附帯決議でもしていただきたい。このことが各自治体で、これができたおかげで逆に問題が起きてしまうということを憂えております。ぜひともこの点を御留意賜りたいと存じます。  次に、建築に伴う相隣紛争の問題は、地域的諸条件に左右されるところが大きい市町村レベルの問題であります。改正案では、日影基準の適用の可否等地方公共団体条例で決め得ることになっております。したがって、都道府県の条例でも、市町村条例でも、どちらでも決められるというふうに私たち解決いたしております。しかしながら、この条例が都道府県によって制定され、それが都道府県内の全市町村に一律に適用されることになると、市町村はこれによってまた拘束されてしまいます。しかしながら、日照問題等の相隣紛争は、あるいはその他の問題は地域の特性によることがきわめて大きいわけでございます。市町村レベルで日影規制の適用の可否、具体的な基準値選択を行うことが適切である、こう考えております。丸の内と武蔵野市と同じようにはできません。同じ武蔵野でも吉祥寺の駅前と亜細亜大学の近くの大学町の近くとはまた異なることがございましょう。こう考えてまいりますと、自治体レベルというのは市町村レベルというふうに置きかえて考えていくべきである、こう考えております。  これは、この証明といたしまして、従来の宅地開発指導要綱、あるいはその種の条例がほとんどすべて市町村レベルで制定されていることでも明らかであります。都道府県段階でこの条例等を、要綱等はつくられておらないと考えております。したがって、改正案でも、日影規制に関する条例の制定権能は、建築確認業務をみずから所管している特定行政庁であると否とにかかわらず、原則としては市町村に帰属することを明確にしていただきたいと存じます。  第四として、日影基準にも幾つかの疑問点がございます。  日照について、要綱によるにしろ、条例によるにしろ、法律によるにしろ、一定の基準設定する必要を認めます。日照問題を住民同意方式のみにゆだねることは不適当になってきていると認めております。今日の多くの自治体要綱都市計画上、用途地域別に目標とすべき日照時間を定めているのもこのためであります。  第二は、そして日照に関する基準値の一種として改正案に提案されているような日影基準に、それなりのそういう意味で合理性があると私たちも考えております。しかしながら、この日影基準のみをもって唯一の日照関係基準とすることは不適当であると考えます。たとえば、この基準では敷地境界線から五メートル以上の範囲に滞留する日影時間を問題にしております。敷地境界線から五メートル以上離れたところに住居の南面が位置している、言ってみれば南側に庭が五メートルある、空地が五メートルある。そこで、そういう住居は都会地には大変少ないものであります。すると、中高層建築物北側にある住居は、ほとんど五メートルございません。そういう人たちは完全に日照を奪われて、全く文句が言えないということになってしまいます。それが受忍の限度だということに強いられることは、大変北側居住者にとっては困った問題であり紛争の種となろうと考えております。  次に、またこの基準では、第二種住居専用地域等では地盤高四メートルの高さで測定することになっております。つまり二階の窓の下であります。こういうふうなことを考えますと、第二種住居専用地域現状から見て、二十三区は別として、私ども各地方自治体に参りますというと平屋もたくさんございます。これらの人々の一階の日照は全く問題にされていないという不合理がございます。さらに、日陰になる相手方の建物の部分が事務所、商店あるいは住居というふうなことによって扱いに差のある方が合理的だと考えております。そういう点を考えて、この画一的な基準によって問題は解決されない部分が非常に大きく取り残されている。  以上のような諸点を考えますと、日影基準にそれなりの合理性があるということを認めております。自治体によっては、討論してまいりましたけれども、これでは解決しないんじゃないかと、こういう自治体も訴えております。むしろ日照——日影などと言わないで、太陽を守るんだというふうな、ここまできてもう日照というふうな言い回しでなぜできないのか日照を守るということを前面に押し出して、そのことでいくべきではないかというふうなことを多くの市において言われております。したがいまして、合理性は日影に認めておりますが、これのみをもって日照関係の基準とすることは、具体的なケースでは著しく不合理な結果を生むと、こう考えております。それゆえ、この日影基準を使うにしましても、それに目標日照時間基準、これまで多くの自治体要綱で定めてきたものであります。そして効果を上げてきたものであります。これを組み合わせて活用することが適当と考えます。日影日照、両方を組み合わせる、これによって万全とはいかないかもしれませんが、ベストとまいりませんでしょうが、ベターな方法を選ぶべきだ、こう考えております。したがって、繰り返しになりますが、自治体がそうした各種の手法を組み合わせて活用する余地を法令上にも明確にしていただきたい、こう考えております。ここのところが非常に肝心なポイントであると考えております。  第四、また改正案では、測定地点、時間帯、適用対象建築物の高度については全国一律に規定して、商業地域には日影規制を適用する余地を全く認めておりません。しかし、都市によっては商業地域にも日影規制を適用する方が適当な場合もあり得る。また、適用対象建築物の高度についても市町村裁量余地を認めるのが適当と考えております。全国的な数字を出しますというと、ほとんど住居地域において問題が七割以上あって、商業地域にはないと申されておりますが、武蔵野市の例では、近隣商業地域商業地域においてその大部分が問題になっております。東京まで三十五分、全市下水道化、全道路舗装、しかも鎌倉並みに空から見ると緑がある武蔵野でございますので、そういうところをねらってマンションがラッシュしてまいりますと、商業地域マンションをつくって、商業地域ではなしに商業地域がいま住居地域に変わろうとしております。こういう意味商業地域が住居地域になってしまう、大型マンション、いま二百世帯のマンションができようとしております、これは産業地域のど真ん中であります。商業地域でなしに住居地域になってしまう。商業地域容積率六〇〇を利用しながらマンションを建てて、最高有効住居地域を形成するということがいまの問題の一つでもございます。用途の不純、また地域地区指定をいたしましても、何も商業地域の中には住居をつくっていけないという規定がありませんから、商業地域、化して住居地域になる、こういうふうな状況を踏んまえてみましても問題が起きています。以上のようなところで市町村裁量余地を認めていただきたい。  次に、最後に時間帯の問題に触れます。改正案では午前八時から午後四時の間の日照を問題にしておりますが、午前九時ごろまでの日照、午後三時以後の冬至の日照は有効な日照と認めるには余りにも弱々しい日照である。時間はあるけれども実際太陽は薄いということであります。多くの自治体要綱が午前九時から午後三時までの間の日照を問題にしてまいりましたのもこのためであります。したがって、時間帯のとり方は午前九時から午後三時の六時間とすることに合理性を認めていただきたい。また、実態がそのようになっております。  結びといたしまして、以上大きな問題からかなり技術的な細かい問題にも触れ、経過等は一切抜きにして法案における問題点のみを指摘いたしましたが、もう一度要点を要約さしていただきます。  第一の要点は、総合的な問題に総合的に取り組み得るような全括的な根拠規定を設けていただきたい。日影だけの問題ではなしに、いままで申し上げましたもろもろの問題をこの根拠の中に入れていただきたい。  次に、相隣紛争問題に対する対処方法は、市町村条例で定めることが最も適切であるということをお認めいただきたい。都道府県段階で決めましても、先ほど申し上げたようなすっかりでき上がった町と、これからできようとする町の違い等は一律一括には無理である。北海道と沖繩という言葉をよく使っておりますが、同じ東京の中でも困難である、こういうことを申し上げたいと存じます。  三は、日照問題に限定したとしても、日影基準とその他の方式との併用を認める規定を設けること。もう一回申し上げますと、日照問題に限定したとしても、日影基準とその他の方法——日照の併用です、その他もろもろの問題をかみ合わせていく、組み合わせていくという規定を設けていただきたい。  第四として、日影基準の活用についても、市町村条例による選択の幅をもう一段と拡大していただきたい。  以上の諸点が法案修正をして法文上に明記されることを期待いたしております。ぜひやっていただきたいと思いますが、これがどうしてもできないという場合には、少なくともこうした趣旨を盛り込んだ附帯決議をしていただきたい。法制化していただきたい、条文に入れていただきたい。しかし、どうしてもだめならば附帯決議をしていただきたい。さもないと、これを手にとって今後はまた新たなる紛争が地元でも起きますし、自治体と建て主との間、三角関係でさらに激しい論争が、紛争が起きることは目に見るよりも明らかだと信じております。  何とぞ、少々時間が長くなりましたけれども、以上の点を御配慮いただいて、法改正に錦上花を添えていただき、市民の安心した住環境を確保していただきますようにと、重ねて全国の多くの要綱に悩んでいる市町村を、また市民を代表して意見を陳述させていただきました。  ありがとうございました。
  7. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) どうもありがとうございました。  次に、入沢参考人お願いいたします。
  8. 入沢恒

    参考人入沢恒君) 入沢でございます。  私、大学におりまして、専門は主に都市の土地利用計画に関する都市計画の研究をいたしております。本日はそういった観点から、すなわち都市計画の観点から居住環境、この点に関しまして、本日の議題であります日影によります中高層建築物規制に関して若干の参考意見を述べてみたいと考えております。  実は私、昭和四十七年に建築審議日照基準専門委員会がつくられまして、四十八年の八月には「日照確保のための建築規制基準についての中間報告」というのが専門委員会で出されておりますが、その主査をいたしまして、私の考え方はほぼその中に尽きておりますが、本日は若干私見を交えまして、その考え方をさらに説明したいと、こう考えております。  最初に、居住環境、特に日照が問題でありますが、この日照を中心とした居住環境、これと都市の土地利用計画の関係、これにつきまして若干述べてみたいと思います。  御承知のように、大都市は特に人口、企業が集中しまして、確かに居住環境はだんだん悪化しておりますけれども、特にこの居住環境の悪化という問題は土地の問題に非常に関連しております。緑がないとか、日照が足りないとか言いますが、すべてこれは単に中高層建築物だけでありませんで、むしろあいた土地がないと、こういった点でだんだんと自然環境といいますか、自然的な環境が悪化しているという現象でございます。そのために良好な市街地の環境をつくる。特に日照を中心とした住環境、こういった点を考えますと、やはり建物の周辺に空地を十分とる。そのための建築規制、さらに土地利用の規制、その点の強化は当然必要でございます。今日の都市におきます土地利用計画上の最大の問題は、いま申しましたように人口がどんどん増加する、それによりまして住宅の需要が増加する。さらに、住宅におきましても住宅水準、特に住宅の規模が拡大いたしますれば建築の容積はだんだん増してまいります。これと日照を含めました居住環境との調和をどうするかという点が非常に大きな問題になっております。  このように考えてみますと、日照にかかわります居住環境と申しましても、実はこの日照の量というのは有限でございます。無限のように考えますけれども、われわれの住んでおります地上に降り注ぎます日照の量というのは土地の面積とイコールでございます。比例します。この点、日照を一方では非常に要求する住民の声が多いわけでありますが、一方ではなるべく限られました土地にたくさんの人が住みたい、住宅需要がふえますれば、どうしてもそこにバランスといいますか調整が必要でございます。ただ、よく考えてみますと、平面的に考えますとそうでございますが、ここで建物を立体化して考えますと、日照の量に建物の水直面といいますか、窓の面におきます日照時間で考えますと、ある一定の日照時間を確保する条件のもとにおきましては、建物を高層化すれば、すなわち戸数をふやせば、ある限度まで可能でございます。  ただ問題は、階数を三階にしましたからといって同じような日照条件のもとでは戸数は三倍にふえない。階数の増加に対しましては戸数の増加率がだんだん逓減してまいります。そういった問題はございますけれども、ある程度建物を中高層化すれば、水平の土地に降り注ぎます日照の量は、立体化によりまして、ある程度同じ条件を満足しながら住宅の戸数とか建物のボリュームをふやすということができます。結局のところ、日照環境、この土地の面積とは非常に密接な関係がございまして、都市におきまして十分なる日照条件を確保すると考えますと、根本的には大都市問題でよく言われますように、人口を抑制するかまたは住宅の建設を抑制するかと、それによりまして過密化を防ぐということになりますけれども、これが過去の経緯から見ましても事実上むずかしい問題でございます。  それでは二番目に、建物を立体化しませんで平面的にどんどん市街地を拡大すればどうかという問題になりますけれども、これは御承知のように遠距離通勤とか公共施設の効率が非常に悪くなる、こういったような問題を生じております。こうしますと、特に大都市におきまして人口は密集する、住宅建設の需要が非常に高いという場合におきましては、ある程度地域を定めまして建物の中高層化、こういった点は必要ではなかろうかと考えております。ただ、この場合に問題になりますのは、日照時間をどの程度確保して建物の中高層化をするかという点になろうかと思います。これにつきましては後に回して、次にいわゆる日照権という問題でございます。  日照権はまだ法的にははっきりと認めておりませんけれども、実はしばしば言われております日照権といいますのは、私の考えでは土地の私権に基づく日照権ではなかろうかと考えております。確かに万人共有する日照権と申しますと、だれでも日照は必要でございますけれども、現在盛んに議論されておりますのは、土地を持っている方、家を持っている方の日照権でございます。ただ、先ほど申しましたように、日照の量ははっきり申しまして土地に比例して有限でございます。これをいかにバランスよく多くの人々に分かち与えるかという点が非常に大事でございます。土地の問題でもそうでございまして、限られた土地をいかに多くの人々に分かち与えるか、そのために建築規制等を通じまして土地の利用の規制がだんだん強化される傾向にございます。これが世界各国の都市の実情でもございますし、わが国もだんだんと土地の利用の規制が強化されておりますが、日照の問題もやはり同じでございまして、無限にわれわれは日照を享受することはできません。個人の所有権にかかわります土地の上に降り注ぐ日照というのは、私の考えでは絶対的な日照権ではございませんで、当然制限を受ける日照権ではなかろうか、こう考えております。このように考えますと、一見矛盾したことを言いますようでございますが、一方におきまして日照確保をしようとすれば、他方におきましてある程度日照制限されざるを得ない。また、制限という言葉が悪ければ限度がございます。  次に、日照確保のためにそれならばどうしたらいいかということでございますが、結論としまして、今回のように公法としまして建築の集団規制によってこれを確保するのが一番適当ではなかろうか、こう考えております。確かに日照紛争はいわゆる相隣関係、私権対私権の問題でございますけれども、私の考えます日照という問題は都市の居住環境、単なる隣同士の私権対私権の争いではございませんで、都市全般の居住環境をいかにすればいいか、この日照を通じて考えたい、こう考えております。今日の都市の環境悪化を考えますと、単に個人間の日照紛争があると否とにかかわらず、ひとつ日照を代表的な環境の指標としまして、居住環境の確保が集団的に都市全般の環境を考えるという点から必要があろうと考えております。  日照の確保は先ほど申しましたように空地の確保につながります。このように考えますと、日照の問題は、結局は都市全般の居住環境の確保、さらにそのためには集団的に、または地域的に建築の形態規制を通じまして土地利用の規制を行うということが必要でありまして、当然これは公法に係る問題で、現在ございます建築基準法の改正というのが最も適当ではなかろうか、こう考えた次第でございます。現在、日照に関する確かに法律制度はほとんどございません。そのために地方の自治体におきましては、いわゆる要綱行政といいますか中高層建築指導要綱、そういったようなものによりまして行政指導が行われております。確かにその点考えますと、法制化の必要がないではないかとしばしばこれまでも論争がございました。しかし、私の考えますこれまでの地方自治体要綱を見てまいりますと、若干の矛盾点がございます。一番大きな点は、土地の所有権に係る問題を単なる要綱でそれが果たして可能であるかどうか、これが非常に問題でございます。財産権に係る問題を単なる要綱でそれを規制できるかどうか、これはやはり疑問ではなかろうかと考えております。  次に、しばしば出ます問題は同意の問題でございます。多くの要綱を見ますと同意制がうたってございますけれども、私権対私権におきまして一方的同意というのはやはりまずいんではなかろうか。一方の救済措置がないという点が問題でございますし、また同意の場合も判断基準がはっきりしてない。多分にやはり住民と申しますのは感情的な問題も入りまして、場合によっては非常に過酷な条件を出しまして同意をするといったことがございまして、先ほどございましたが、金によって解決するという問題ありますけれども、先に金を要求しまして同意するといった傾向がなきにしもあらずでございます。そういった点で、むしろ金を要求しました結果、それによりまして同意の結果、居住環境が逆に非常に悪くなると、こういった例もしばしば見られる例でございます。  以上が考え方の前提でございますが、次に細部の技術的な問題に入ってまいります。  一番最初に、日照量は、よく言われますが、われわれは日照時間でとらえております。簡単なために日照量を日照時間でとらえますけれども、どの程度あればいいか。またこれを、当然個人差とか地域差ございますが、基準をつくっていいかどうかと、こういった問題がしばしば議論になります。われわれは一日に日照時間がどの程度あればいいかという点は非常にむずかしい問題でございます。現在の自然科学ではなかなかこれはつかみがたい。一番関係ありますのはわれわれの健康でございますけれども、われわれが一日に何時間日に当たればいいかと言いますと、これははっきりした根拠はございません。医学的に言いますと、十数分でもいいといった説がございます。また、一年じゅうを考えますと、特に冬季において、冬至の日において何時間ということはなかなか医学的には決めがたい問題でございます。また、経済的にも日照は暖房費とか採光の問題とかいいましていろいろございますけれども、これも実はなかなか決めがたい問題でございます。採光、暖房といいますとほかにも代替するものがございますので、果たしてそれが適当かどうかなかなか決めがたいわけでございます。  むしろこの日照の問題はきわめて心理的効果といいますか、そういった点で非常にわが国民の生活になじんでいる。むしろこれを重視すべきではなかろうかと考えますけれども、先ほど申しましたように、われわれが都市に生活する限りはお互いの建物によりまして干渉を受けまして、そこには無限の日照時間というのはあり得ない。冬至におきましても一日八時間日が当たっておりますけれども、そのうち何時間にするかというのは、なかなかそれを全部八時間要求するわけにはまいらないわけであります。これはやはり日常のわれわれの過去の生活習慣、また現在享受しております居住環境、さらに今後の土地の利用度、そういったもろもろの点を総合的に勘案して日照時間の基準は決めるべきではなかろうかと、こう考えております。もちろんこの場合におきまして、過去方方の地方自治体日照時間の基準を決めておられますが、こういった点は十分に参考になると考えております。また、こういった日照時間の基準は非常に個人差があります。また、地域差がありますが、それを決めるのが適当かどうかという問題でございますが、先ほど申しましたように、たとえわれわれが同意する、しないにしましても、何かここに判断の基準が必要でございます。全く基準がありませんで、個人差でこういった日照基準のよし悪しを申しましてもなかなか結論がつかないとすれば、ある程度市民住民のコンセンサスといいますか、現在、日照を享受している現状、そういったものを踏まえまして日照時間の基準を決める、コンセンサスのもとに決めるということが必要ではなかろうかと考えております。  次に、私どもの考えましたこの日影規制によります中高層建築規制方法でございます。これまでも地方自治体におきます日照関係の規制基準を見てまいりますと、大半が日照時間確保方式と申しますが、先に日照時間——たとえば冬至におきまして一日に四時間とか、そういったような決め方でございますが、これをやりますといろいろ難点がございます。たとえて申しますと、先に家を建てた方が勝ちといいますか、後に建てますほど、先に建てました住宅の日照時間を確保するために建てがたくなる。単なる一戸だけならいいんですけれども、だんだんとたくさんの建物が建ちますと、最後の建物は絶対に建たないと、いわゆる複合日影といいますか、たくさんの建物を重ねられますと非常に大きな日影部分を生じます。そうしますと、一軒目が建つ場合はまだいいですが、二軒、三軒となりますと、三軒目、四軒日あたりは絶対に建たなくなる、こういった現象がございます。  それから計画的な住宅団地のような場合には、最初から計画的に建物の配置をいたします。そのためには日照時間方式はいいんでございますが、現実の市街地におきましては敷地は非常に大小ばらばらでございます。また、住宅の配置もその敷地内に任意にやっております。こういった場合に日照時間確保方式は、先ほど申しましたように先に建てていたところが勝ちである、こういった非常な矛盾、不公平を生じております。この点からむしろ家を建てる場合には自分の建物の日影規制する、周辺に与える日影規制する方が至当ではなかろうか。さらに、こういった点からも日照時間確保方式よりも日影規制方式の方がより合理的である。決して最善ではございませんが、よりすぐれている、合理的である、こういった考えから日影規制方式をわれわれは考えたわけでございます。さらに、この日影規制方式では、先ほど申しました数棟の建物の日影が重なり合って及ぼす影響、いわゆる複合日影、こういった点もある程度解決できると考えております。この辺におきましても、日照時間方式よりも日影規制方式の方がより合理的ではなかろうか、こう考えて提案したわけでございます。  次に、しばしば問題になりますのは規制対象地域の問題でございます。修正案を見てまいりますと、いわゆる商業地域、工業地域、こういった地域規制対象地域から除外されておりますが、しばしばこれが問題になります。商業地域でなぜ規制対象から外したかと申すわけでございますけれども、これは物事の判断が逆ではなかろうかと。私は土地利用計画の専門でございますので申しますと、商業地域指定の仕方がまずいんじゃなかろうかと、こう考えております。または工業地域指定の仕方が問題ではないか、まずいんではなかろうかと、こう考えております。現実見ますと、非常に各都市とも商業地域の面積が必要以上に大きい。また、それによりまして容積率指定も非常に高いわけでございます。商業地域指定しますと、最低の容積でも四〇〇%ということでございますが、私が現実に商業地域を見てまいりますと、なぜこういうところを商業地域にしたのかと、近隣商業地域でもいいではないか、または住居地域でもいいではないかと、こういったところがむしろ住民の要望によりまして商業地域指定されている、こういった現状でございます。むしろ今後商業地域指定は非常に商業の専用化といいますか、そういった方向に向かうべきではなかろうか、こう考えております。  時間がありませんので、最後に、さらに若干補足いたしますと、規制対象地域を今後指定する場合におきましては、いま申しましたように、あわせまして用途地域制の再検討、さらに容積率の再検討ということをぜひ行う必要があるんではなかろうかと考えております。はっきり申しまして容積率二〇〇%以上では日照は確保できません。容積率三〇〇%、四〇〇%指定しながら、一方では十分日照時間を要求するのは非常な矛盾でございます。ですから、日照時間を十分に確保したければ容積率をせめて二〇〇%、さらによければ一五〇%以下に下げる、こういったことが必要ではなかろうかと考えますと、先ほどもお話がございましたように、この規制方式だけでは日照問題は十分に解決されません。でありますから、そのように容積率の低下、さらに現在ございます高度地区制度の再検討、より厳しい高度制限をかける、さらに必要に応じましては、住民が非常に日照時間を要求すれば、やはりこれも現在ございます建築協定、こういったものを十分活用すれば、この規制方式だけでは不十分な日照問題を補うことができるんではなかろうかと、こう考えております。  それと、もう一点申しますと、既存の土地、建物に関する日照問題が盛んに言われておりますけれども、残された大きな問題は、東京におきましては住民の約四分の一が住んでおります木造賃貸アパートの問題がございます。むしろこのあたりに問題があるんではなかろうか。日の当たりません住宅がずいぶんだくさん木造賃貸アパートにはございます。ですから、今回の法改正によりまして、こういった一般の土地に対する日照問題も必要でございますけれども、住宅そのものにいかに日照、日当たりをよくするか、このためには今後住居法または住宅法のような法律を制定しまして、住宅の基準といいますか、その点の制定がなければ完全なる日照問題の解決にはならないかと考えております。と同時に、住宅だけではありません。敷地の問題でもそうでございます。非常に少さな敷地におきまして敷地いっぱいに住宅建てれば、これは当然日が当たらないのはあたりまえであります。そこで日照権を主張しましても、これは周辺方々に迷惑を与えるということでございまして、住宅のある程度最低基準を決めると同時に、敷地の最小基準もやはり決める必要があるんではなかろうか、こう考えております。これは今後の検討課題でございます。  いま申しましたように、今回の私どもが考えました日影規制方式、決してこれでは日照問題すべてを解決するわけではございません。ただ、過去にございます日照基準確保方式とか、そういった点よりはより合理的であろう、それからこれを補うためには都市計画上、用途地域の再検討、容積率の再検討、さらに今回の法律改正におきましてありますように、第二種住居専用地域におきまして最低の指定容積率が四〇%を、さらに二〇%、一〇%というように下げておりますけれども、第二種住居専用地域だけでありませんで、近隣商業地域または準工業地域指定容積率もやはり下がる必要があるんではなかろうか、こう考えております。  簡単でございますが、以上でございます。
  9. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) どうもありがとうございました。  次に、大河原参考人お願いをいたします。
  10. 大河原春雄

    参考人大河原春雄君) 私、大学で都市計画とそれから住宅問題、それから建築関係法令を研究しておる者でございます。本日は日照問題に限定をされておりますので、建築関係法令を研究している者の立場として意見を申し上げたいと思います。私の意見はただいま意見がございました入沢参考人と非常に重複することがございますが、その点はあらかじめ御承知おき願いたいと思います。  まず最初に、日照阻害を防止する法規制といたしましては、敷地あるいは建物の日照時間を一定時間以上とするといういわゆる直接規制の問題と、それから隣接あるいは近接する建物による日影の時間を一定時間以下にするという間接の方法と、二とおりあると考えられます。それで、直接日照の時間を確保するという規定をするためには、その隣接する敷地のみならず、周辺の敷地内の建築物の高さとか、あるいは敷地境界線からの距離をすべて一定の限度内にしなければならないことはもちろんでございます。たとえば、いまほどお話がありましたように、隣接の南側の敷地に建てられた建築物によって一定の日照時間がありましても、その後、西側とか東側にたとえ平屋の建物が建ちましても日照が確保されないという状態が十分予想されます。すなわち早い者勝ちということになりますので、そういうことは法制上とるべき態度でないんじゃないかというように考えられます。一方、現在の都市の現状とかあるいは市民の経済能力から見まして、都市内では一般的に木造の二階建て程度の住宅による日照阻害は受忍の限度内と考えられますので、三階建て程度以上の建築物による日影規制を対象とするのが一番常識であろうと考えます。以上申しましたように、日照確保を直接に規定することは非常に困難でございますので、現在の改正案にありますように、一定の高さを超える建築物が隣接地に与える日影を時間及び範囲によって規制をするというのが最も妥当だろうと思います。しかし、これによってもやはり隣接地に日影が非常に多く及ぶとか、あるいはまた日照がほとんどないということが予想されますので、それは後に申します区域全体を再開発の事業等によって再開発をして解決をすべき問題だろうというふうに考えられます。  次に、関係住民同意の問題でございますが、一般的な常識といたしまして、自分の隣地にある程度の高い建物が建つのを賛成する人は恐らく一人もいないだろうと思います。そうなりますと、どうしてもある程度の建物が建ちますとそこに個人的感情が出てまいりますし、また金銭による解決という状態が生じてまいりますので、やはり用途地域別により一定の条件を満たしたならばこれを認め、その条件を満たさないものにつきましては建築審査会の同意をとるというような方法によって解決するのが一番至当な方法じゃないだろうかというふうに考えられます。  次に、この改正案によりましても日照紛争はやはり残ると考えられます。したがって、建築主事を置く地方公共団体日照紛争調停委員会、これは仮称でございますが、等を設けましてその紛争に当たることにすべきじゃないだろうかと考えられます。それを特定行政庁へ持ってまいりますと、建築主事が日照紛争に追われまして肝心な一般の行政が非常におろそかになっている。現状でもそうでございますが、それを避けまして、それによって解決をすべきじゃないだろうかというふうに考えられます。その一つの案で考えられることは、紛争をと申しましても、単に日照問題だけではございませんで、やはり通風とかプライバシーとかいろいろな問題が出てまいりますので、構成員については慎重を要するだろうと思います。これは私の私案でございますが、紛争が起こる可能性のあるものにつきましては、たとえば着工許可証の発行とか、あるいは紛争処理委員会調停に応じて調停案が出るまでは着工しない旨の一札を取るとかというような措置も必要だろうと思います。また一方、紛争が起こった場合には「反対者も必ず調停に応じなければならないものとして、仮に反対者が調停に応じない場合でも紛争処理委員会を開きまして、その調停案によって今度は逆に着工を認めるというような、非常に行政的な細かい問題でございますが、そういう措置も必要じゃないだろうかというふうに考えられます。  それから次に、条例の問題でございますが、現在の法案によりますと、建築審査会を置かない市町村でも日照等に関する条例を制定するということになっておりますが、そうなりますと、建築行政を担当しない市町村建築基準法に基づく条例を制定をいたしますと、そこに建築行政が私は二重行政になるのじゃないかと考えます。たとえて申しますならば、その条例によって仮に紛争が起きるといたします。そうしますと、どうしても建築審査会に訴えられることになります。すると、建築審査会はその関係のない市町村と申しますか、特定行政庁でない市町村建築審議会を置きませんから、その紛争までを扱うということになりまして、そこに非常に混乱を来すのじゃないかと思います。したがって、日照等の条例案をつくるならば、そういう市町村は都道府県と協議をして特定行政庁になればよろしいのであります。特定行政庁にならずに単なる条例をつくるのは、私は非常に無責任な行政になるんじゃないだろうかということを痛切に感じております。したがって、現在でも都道府県は相当行政事務でいっぱいでございますので、そういう市町村はどんどん特定行政庁になって責任ある条例をつくり、責任ある建築行政を私はやっていくべきだろうというふうに考えます。  それから次は、細かい問題でございますが、この法律によりますと、既存の不適格な敷地につきましてもう少し慎重な考慮を私は払う必要があるんじゃないかというふうに考えております。  それから次に、この法律案によりますと建築物だけが規制の対象になっておりますが、私は日照阻害建築物のみならず高架工作物、たとえば高架鉄道であるとか、あるいは高速道路であるとか、そういうものも相当日照阻害になっていると思います。したがって、そういうものもいますぐはむずかしいと思いますが、将来はやはり日照阻害の防止のためにそういうものも規制の対象にすべきじゃないだろうかというふうに考えられます。この案によりますと、高架工作物内にある、たとえばいろいろな店舗だとか物置等がございますが、そういうものは規制の対象にならないようになっておりますが、私はそれは非常におかしいのじゃないだろうか、やはりそういうものも規制の対象にすべきじゃないだろうかというふうに考えております。  それから次に、この案によりますと、たとえば前面道路幅による容積率制限の強化とか、あるいは第二種住居専用地域内の建蔽率、容積率の強化、これは非常に結構な改正案じゃないかと思います。  それから地域等が二以上にわたる場合の建蔽率とか容積率の算定、これは従来から問題になっている問題でございます。皆さん御承知のように、敷地の過半が属する地域地区指定によるということになっておりますと、たとえば敷地が両方にまたがった場合に、敷地を縮小すればかえって建蔽率、容積率が多くなるという矛盾がございまして、これは従来から非常に問題になっておる規定でございますので、改正は遅きに失したという皮肉を言うわけじゃございませんが、非常に結構左改正じゃないかというように考えております。  それから次は、日影の及ぶ範囲が地域等の内外にわたる場合の措置、これも当然な規定でございます。この規定が活用されますと、私は商業地域内における紛争というのは大部分解決できるんじゃないかと思います。商業地域内の確かに紛争がございますが、これは商業地域同士の問題でございませんので、商業地域の裏に住居地域等がございまして、そこに影が及ぼすというので商業地域の問題というふうに言われますが、今度の改正案によりましては、商業地域内に建物が建って住居地域への影を落とす場合には、住居地域に建っているものとみなすという規定になっておりますので、商業地域内にある問題は私は恐らくほとんどが解決されるんじゃないだろうかというふうに考えております。したがって、非常に結構な改正じゃないかと考えております。  それからこの改正案によりまして、日影規制か新しく加わってまいりますので、従来の指定、すなわち地域別による指定によります日影の関係は相当変わってまいりますので、相当地域の改定等が必要であろうと思います。従来の用途地域指定の場合の関係住民意見は参酌しておりますか、そこまで考えておりませんので、今度の改正によりましてやはり用途地域の改定等が早晩行われると思います。その場合には、そういうこともよくお話をして慎重にやるべきだろうと思います。逆な言い方をしますと、現在でも出ているのでありますが、日影ばかり考えまして何でも第一種住居専用地域指定をしてもらって後からしまったという例も間々聞いておりますので、そういう点もよくお考えを願いたいと思います。  それから次に、先ほど申しましたように、日照阻害を防止するには新築する建物等の相隣関係規制するだけではもちろん不十分でございまして、そういうことだけやりますと、かえって土地の有効利用を妨げたり、あるいは建築物の形を不自然なものとするおそれがございますので、現在、法制にありますような特定街区の指定とかあるいは総合設計等を活用いたしまして、街区全体として環境の整ったものとすることはもちろん、特に住宅地を対象とする市街地再開発事業を進めいいように都市計画法も改正し、あわせて現在道路等の公共施設に国の補助金がございますが、それのみならず、建築物に対する国とかあるいは公共団体の財政援助もあわせて考慮をして、非常に環境のいい都市にすべきじゃないだろうかというふうに考えております。  以上、非常に簡単でございますが、意見の開陳を終わりたいと思います。
  11. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) どうもありがとうございました。  最後に、梶原参考人お願いいたします。
  12. 梶原茂

    参考人梶原茂君) 私は東京弁護士会の梶原でございます。  東京弁護士会は昭和四十五年、公害対策委員会を設置いたしまして、大体百人ぐらいの委員で構成しておりますが、大気汚染、水質汚濁、騒音振動、食品公害、それから日照部会と、五つの部会を設けておりますが、私は日照部会にずっと所属して日照問題に取り組んでいるわけでございます。  本年度の当面の日照部会のテーマといたしましては、日照損害補償の算定についてもう少し正確にしたらどうかと、それから最近非常に指導要綱が各地にたくさん出まして、昨年末、武蔵野市の指導要綱がたまたま裁判所に係属した事件にかんがみまして、指導要綱の法的な性格と限界というような問題を研究したらどうだろうかと、それからもう一つ電波障害、こういうことをさしあたっては私ども部会の研究課題にしておるのであります。  それから私は、四十七年、文京区に高層建物に伴う相隣間紛争調整制度が設けられまして、この五年間区民の紛争の和解あっせんに努めておりますが、この調整委員会の機能につきましては、後ほど改正案が今後の紛争にどういうような影響を与えるかの項で陳述したいと思います。  私どもが調整委員として実際問題に当たっておりますと、被害申し立ては、先ほどから参考人の陳述にありますように、単に日影だけでなく、あるいは通風、テレビ障害、威圧感、最近では風害の問題まで持ち出されておりますし、その他工事中の騒音振動と多岐にわたって複合公害として持ち出されてくるのであります。そういう点で、私どもこの日照という問題を、単に日照権と学者は指摘——端的に日照権という権利を構成する方もありますが、私はむしろ環境権の中の一つであるというように理解しております。環境権というのは、御存じのとおり、まだ裁判所では定着しているのではありませんが、最近の公法学会のシンポジウムでは、大体日照問題についての環境権というのはこのごろ通説であると言っていいのではないかと思います。  冒頭にこのような見解を申し上げますのは、これから述べます私の見解もこういう考えに基づいているところがあるからであります。現在、後藤参考人が触れておりましたように、全国の三百くらいの自治体がすでに何らかの形でこの高層建物に対する行政指導要綱を持っているようであります。この多くの指導要綱の中の大部分指導要綱は、大体日照基準日照確保を前提とした指導要綱になっております。ところが、あえて改正案基準規制を取り入れた。実は私は入沢参考人とともに日照基準委員会に参加し、日照基準答申した一人でありますので、このような現実を差しおいて、なぜ日影基準答申したかということについて、日照確保基準日影基準の利害得失を二、三摘出したいと思います。  日照基準の場合は、端的に被害、あるいは周辺の建物の日照を確保するという点では確かにすぐれた制度であります。しかし、土地の形状とかあるいは建物の形状、あるいは居室の窓というのも千差万別のこういう土地、建物の形状変化に基準日照を確保するということは、現在の各自治体における行政執行の事務能力としてはなかなかむずかしい、処理が困難だ、それで結局周辺住民同意ということにつながらざるを得ないのであります。恐らくは、日照基準法制化した場合は、事務処理能力としてはなかなかむずかしいので、勢い周辺住民同意に持っていかざるを得ない。同意ということは大変民主的で都合のいい言葉でありますが、行政の側からすれば一種の行政責任の逃避でもあります。また、個々の点の同意ということでは面の居住環境というのは確保されない。それで、都市計画あるいは再開発計画というのが失われていくという欠点がありまして、行政の面から見れば、都市計画行政の放棄ということにつながるのではないかと思います。こういう点に日照基準規制の非常に困難な点があります。  日影基準の方は、すでに事務当局から御説明があったと思いますが、隣地の空地を五メーターと想定しておりますので、五メーターない場合は隣接建物の日照は確保されない。したがって、今後日影基準には適合しても日照は確保されない問題がかなり多いのではないか。現実に二種住専の都内の場合は、南面に五メーターを有する事例は比較的少ないようであります。そういう点から見れば、なお日影基準によった場合は日照阻害の問題は起こるのであります。この点につきましては後ほど今後の日照紛争に与える影響のところで若干見解を申し述べたいと思っております。  次に、改正案指導要綱に与える影響でございますが、この点につきましては、私の研究のレジュメ「指導要綱の限界」というのをお手元に差し上げておきましたので、指導要綱の法的性格というようなものにつきましては、御質問があれば後ほど説明申し上げたいと思いますが、現在、東京都特別区の指導要綱につきましては、大体十四の区が指導要綱を持っております。その中で日影基準が、先ほど武田参考人のお話だと二になっておりますが、私は実は世田谷区だけしか把握しておりませんでした。日照基準が二、付近住民同意は四、そから了解努力というのが四区ほどあります。それから一定規模以上の建築者に風洞実験報告を義務づけている区が一つあります。なお、指導要綱の強制裏づけとして、もしこの指導要綱に従わなかった者は区が非協力だという区が一区と、道路使用の制限が一区あります。それからまた、指導要綱には建築主事または建築確認担当者がこの指導要綱を遵守せよというような内容規定をしている区が一区あります。  そこで、この日照基準確保をうたっている指導要綱は、改正案はもう端的に日影基準としているので、これはやはり法律に抵触するということで条例化できない、日照要綱条例化でできないし、日照確保基準指導要綱はやはり日影基準に改めざるを得ない。もちろん二十三区の場合は、今後制定されるでありましょう東京都の条例がどのようなものができるかによって大変影響が違ってくるわけでありますが、東京都の条例もある程度の制定の限界がありますので、大体現在の改正案に沿って意見を申し上げます。  次に、改正案による基準の上乗せ、横出しの問題がどうなるかという点であります。規制基準改正案は、規制基準あるいは対象地域について地方自治体に大幅に委譲しているということで、かなりそういう点では弾力的に、地方自治体は特殊事情に応じてこの法律内容から条例化できるという弾力的運営ができるようになっておりますが、たとえば、先ほど問題は、商業地は規制規準の中では対象から除外しているわけでございます。商業地をあるいは条例指定できるかという法律的な解釈になりますと、かなりむずかしい問題でありますが、実は水質汚濁防止法は政府が対象地域指定することになっておりますが、政府の、中央の指定外の地域を実は地方団体で指定した際のその有効か無効かということについては、有効だという見解が示されているわけであります。そういう点から、あるいは商業地域について容積率が低く、実質的には住居あるいは近隣商業に近いような地域地域住民の完全なる合意があったような場合、条例商業地域指定した場合は、その条例はやはり私は無効でないというような解釈をしたいのであります。しかし、こういう無理な地方自治体は施策をとらないで、むしろその場合はゾーニングの改正をやって、あるいは住居地区なり、あるいはは近隣商業に見直しして対象地域にする方が改正案としての趣旨に沿った行き方ではないかと思います。そういう点で改正案は、用途地域が適正にゾーニングされているということによって初めて日照紛争の予防効果を発揮するものでありまして、現在の用途地域は、その点においてはやはり見直す必要があるんじゃないか。  現在、東京都の二十三区の用途地域指定は四十六、七年ごろの作業に基づきまして、四十八年の年末に指定されているわけでございますが、当時の用途地域の作業の中で、現在のこの規制基準日照が何時間享受されるとか、何時間規制になるというようなことについての住民意見と、あるいは合意というものは全くなされておりませんし、その後、騒音あるいは振動規制も現在の用途地域にリンクして規制基準を定めているわけでございます。そういう点で現在の用途地域そのものは、こういう生存にかかわる、生活にかかわる問題についての考慮がなされていない。そういう点で私としては、この改正案が実施後、なるべく地方自治体はこの改正案参考に、もう一度地域住民に諮って、地域住民の合意に基づくゾーニングができれば、いまのような同意ということは、そういう点で地域住民地域に関する合意によって解決できるんじゃないかというように考えております。また、ゾーニングについては、やはりもう少し用途の純化というような方向に持っていっていただきたい。これはなかなか現在の大都市ではむずかしい問題でありますが、日本の地域ほど商業と住居、工業と住居と混在しているところは、世界各国の都市にはないほど混在しています。こういう点で、やはり日照問題は今後もなお起こる可能性があるわけでございますが、そういう点でなるべく地域住民の合意に基づくゾーニングの決定がこの際望ましいと考えております。  それから改正案日照紛争に及ぼす影響でありますが、現在、東京都特別区の二十三区では日照調整委員という、これは弁護士等建築学識者により委員を二ないし五名ほどぐらい委任しまして、建て主と付近住民との紛争あっせんに当たっております。大体週一回とか、あるいは十日に一回双方の出頭を求めて和解あっせんをいたしておりますが、この和解あっせん率は大体七、八割に達しておりまして、そういう点では日照紛争にかなりな成果を上げております。私はこの五月から、この二十三区の調整委員会の連絡協議会というのがありまして、連絡協議会の世話人を仰せつかっているのでありますが、なるべく私ども調整委員としましては専門をまあ勉強して、権威をもって区民に対して教示したり、あるいは和解案を提示する。また、できるならば二十三区のこの調整の取り扱いについても、ある標準をもって区間のアンバランスはなるべく、特殊事情はさておいて、一つの標準をもって取り扱っていきたいというような考えで、連絡協議会で年一回問題を持ち寄って検討しております。高層建築に伴う日照紛争が単に日照紛争でなく、もろもろの公害を含んでいるという点では、むしろその紛争の処理はこういうような行政サイド、建築行政の補完として行う方が性質上効率がいいように考えておりますので、この調整委員制度もできればこれは法制化と申しますか、あるいは条例などで制度化していくことをお願いしておきます。  なお、今後日照紛争裁判にどのような影響を及ぼすかという点でございますが、従来日照基準行政指導は、もちろんこれは現在の建築基準法確認対象にならないわけでございます。でありますから、隣接の日照被害者は建築確認処分に対しての処分取り消しについては訴えの利益を有しない、原告適格を有しないということで建築審査会では申し立てを認めない。却下するとか、あるいは先ほどの武蔵野市のマンション事件におきましても、東京地裁の八王子支部の決定によりますと、付近住民の訴訟参加はやはり訴えの利益がないということで却下しているのであります。ところで、今度の日影基準になりますと、これは当然建築主事の確認対象になりますので、建築主事の処分がもし隣接建物の被害者が不服である場合は訴えの利益がありますので、今後は行政事件の抗告訴訟としても十分争い得る、原告適格者になり得るという点が変わってまいりまして、従来は損害賠償とかあるいは建築行為の差し止めという民事事件で争われていたものが、行政事件としても日影の利害関係人として争い得るという点で変わってくるのではないかと思っております。なお、日影基準が出ますと、一応これは裁判所では、現在大体違法性の判断は受忍限度論によっておりますが、この受忍限度論の判断の要素になるということは間違いないところであります。  現在の指導要綱の輩出の背景は、結局建築基準法がこういう生活空間秩序行政に対する対応規定を欠如していたことと、やはり中央がこういう問題について放置していたいわゆる怠慢の責は免れないと思います。そういう点からやはり一日も早くこの規制基準案を成立さして実施してほしいと思うんであります。基準規制そのものにつきましては、先ほど諸参考人が指摘しておりますようにかなり欠点もありますし、十分な日照保障の確保ができない問題はありますが、これは用途地域の見直しなりあるいは自治体の事情に応じて弾力的に条例化していくということで、ある程度はそういう点は補整できるのではないかと思いますので、一日も早く規制基準の成立と実施を期待しているものであります。
  13. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳を終わります。  なお、各参考人及び委員各位にお願いいたしますが、東京都の武田参考人には都合により、もう時間が切迫しておりますが、正午ごろ御退席したいということでございますので、まず武田参考人に対する質疑を集中して行い、その後に他の参考人に対する質疑を行うよう取り運びたいと思いますので、御了承を賜りたいと存じます。     —————————————
  14. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、小谷守君が委員辞任され、その補欠として赤桐操君が選任されました。     —————————————
  15. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  16. 片山甚市

    片山甚市君 武田参考人にお伺いしますが、非常に御苦労を願って日照権問題、基準について行政を行っておるんですが、東京都の中高層建築指導要綱、こういうもので現在までいわゆる指導をされてきましたが、今回の問題は日影基準でございますから、先ほど入沢参考人もおっしゃったように、日照日影基準は土地の私権の制限によるいわゆる日照の保障になろうかと思う。いままでそういう意味指導要綱によってやってきたことが、この法ができることによって、どのように有利になるというか変わってくるのか、これが一つ。  二つ目に、この基準によって、従来市民意見を聞く方法をとってまいりましたことが参考人からもいろいろお話ございましたが、どのように紛争をなくし発展をさしていくことができるのか、特に公正な住民の意思を守りながらも実施ができていくようなきっかけになるのか、まずお伺いいたします。
  17. 武田豊明

    参考人武田豊明君) お答えいたします。  まず、この改正法が成立した場合の都において行われております中高層建築指導要綱、これはどのような変化を起こすのかということが第一点でございます。先ほど私の説明の中で言葉が足りなかったかと思いますが、東京都におきます中高層建築指導要綱というものは、都のレベルでは現在つくっておりません。各地方公共団体、区及び市町村の方でつくっておられます。具体的に申し上げますれば、先ほど梶原参考人の方から説明ありましたように、二十三区中十四の区、それから三多摩市町におきましては三十の市町村ございますが、その中で日影に関します要綱規定しておりますのは、宅地開発要綱等含めまして二十五ございます。そのような内容は先ほど後藤参考人の中から説明ございましたように、ひとり日影のみだけではなくたくさんの内容を含んでおります。通風だとかあるいは電波障害だとか、場所場所においてそれぞれ工事危害の防止方策、処理の問題とか、たくさんいろいろ各地域によって要望しております。これらの地域環境という観点を中心としました包括的な行政課題、これを指導要綱という形で現在指導しているわけでございますが、この法律の改正によりましては、当然一つ日照日影に関します具体的な国法という基準が定められますので、その内容については住民のコンセンサスを得まして、具体的にその地区日影時間の組み合わせを今後それから決定していくわけでございますので、それ以外の点につきましては、しかし十分この指導要綱の存在価値と申しますか、現在の行っております機能が引き続かれるんではないだろうかと思います。  それから市民の意向を、この指導要綱で相当紛争防止に効果を上げてきた、この今後の発展についてはどう思うのかということでございますが、これは指導要綱等につきましての東京都の論評は非常にむずかしゅうございます。むしろこれは適当な参考人の方の御意見をお聞きになった方がよろしいのではないかと実は思うわけでございます。失礼いたしました。
  18. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 今度東京都で太陽シビルミニマム、非常に私も評価をしているわけでございます。そこで、具体的に時間が限定ございますので質問申し上げたいのですが、日照基準についてでございますが、東京都の太陽シビルミニマムを三時間から六時間とされております。そうして第一種の日照保全の地域が五時間、第二種が四時間、第三種が三時間、第四種二時間、こういうふうになっている中で、規制の際にはこの基準を敷地境界線上五メートルの高さ、こういうふうにされておるわけでございます。そこで私は、本日お見えでございます東京理科大学教授の大河原先生の「用途地域制・高度地区制と日照保護」の論文の中で、先生が東京都の太陽シビルミニマムに関することについて述べられておりますので、それを引用さしていただきまして、まず御答弁をお願いしたいと思います。  あとまた、この点については大河原先生にもお伺いをしたいと思うのですが、その一つは、「太陽シビルミニマムに関する専門委員」の答申の中で、「「太陽シビルミニマム」の数値として三時間から六時間を提言している」、これは「一方規制の際はこの基準を敷地境界線五メートルの高さにおいて確保させることにしている。東京の冬至においては前述のように日影建築物の高さの一・六倍伸びるから、少なくとも自分の敷地内に八メートル以上の空地がないと、隣地に二階建が建つことによる日照阻害を受忍の限度であることを認めていることである」と、こういうことについて指摘をされていらっしゃいますが、それに対する見解を述べていただきたいと思います。  それから先生は引き続いて、「「太陽シビルミニマム」と称して日照確保時間を強調するのは、一般住民を迷わす結果となりかねない。中高層建築物だけを対象とすることを表面に出すことを避け、日照阻害をうける敷地の利用用途とも無関係に、また規制対象を建築物等と定義し、一方紛争処理共同基金は中高層建築物建築主等のみの拠出金によるとし、一定規模以上の建築物等の建設者に対する事前の公示等によって問題解決がボカされているといえよう」。こういうように大河原先生がおっしゃっていらっしゃるのですが、私もこの日照の問題については、これは自然の恩恵であって、日本という宿命的な土地条件の中で、厳しさを増して住民運動等も起きているわけでございますが、専門的にこの日照の都の太陽シビルミニマムの三時間から六時間の設定、そうして専門の大河原先生がおっしゃっておられます東京都の場合の冬至においてのいま私が申し上げたことでございますが、そういうふうなことについて東京都としてはどういう見解等を持っていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  19. 武田豊明

    参考人武田豊明君) 先ほど冒頭の私の説明の中で、太陽シビルミニマム知事の諮問を受けましてこの答申を出されたということでございます。この答申が出されましたのは昭和四十八年六月でございます。最終的に建築審議会で出ましたのはそれ以降でございますが、この考え方につきましては、私はこのように理解いたしております。  まず、敷地境界線の高さ五メーターというものの基準のとり方、それから日照、つまり太陽の光を受ける時間というものを三時間から六時間というような範囲に定めた内容でございます。  まず、この太陽シビルミニマムとして、日照を受ける権利として建物を規制するという場合の考え方が、これは従来の建築基準法ないし高度地区考え方で、自分の自己敷地内で関係する基準を何らか模索すべきであるという考え方から、従来とられておりました高度地区におきます敷地境界線における立ち上がり五メーター、それから斜線制限というような基本的な考え方骨子となったのではなかろうかと思います。したがいまして、当該立ち上がりの高さから考えますと、冬至における日照勾配、太陽高度の倍率から見まして一・六倍、つまり八メーター高度の空地が自動的に得ることになると、そういうような物理的な結果が生ずるわけでございます。改正法案におきましては、日影という角度から、つまり日照の裏返しの角度からそれぞれ定めておりまして、影の及ぶ敷地境界線外側への五メーターないし十メーターという境界線に落とす影の規制ということで、これは日照を受ける角度というのと日影規制するというそれぞれ規制角度の違いから出てくるのではなかろうかと思います。  次に……、恐れ入ります、二番目の御質問の要点だけで結構でございますから、もう一方についてお願いいたします。
  20. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 どうも済みません。  規制対象等の建築物、そういう定義の中で、紛争処理共同基金というものが中高層建築物建築主等のみの拠出金によっているので、一定規模以上の建築物等の建設者に対する事前の公示等によって問題解決というものがぼかされてくるんではないかというの二番目でございます。
  21. 武田豊明

    参考人武田豊明君) お答えいたします。  紛争処理基金という提案につきましては、私はシビルミニマムの中には見当たらなかったと思いますが、何か私の記憶違いかとも思いますので……。
  22. 赤桐操

    赤桐操君 武田参考人にお伺いをいたしたいと思います。よろしいですか、時間は……。
  23. 武田豊明

    参考人武田豊明君) 恐れ入ります。はい。
  24. 赤桐操

    赤桐操君 簡単ですから。  今度の改正によりまするというと、大変地方自治体の方に、地方公共団体条例で定める分野が広がってきておりますね。したがって、任された面が大きく出てきておる、こういうことが言えると思います。そこで、日照問題をめぐりまして、従来の規制してきたものと、これからのものとは若干変わってくるわけでございますね。そこに従来からやってきたものとの関係がかなり出てくるんじゃないだろうか、緩和される場合がありますけれども。そういう問題に対しての対処はどういうふうにしたらいいかという問題が出てくるんではないかと思います。  もう一つは、行政区画によって自治体自治体の境目が出てきますけれども、そういう場合には地方自治体に大幅に任されていますから、この範囲内ではありますけれども、違いが出てくるという場合があると、こういう場合の対策等が憂慮されると思うんですが、これについては何かお考えを持っておられるかどうか伺っておきたいと思います。
  25. 武田豊明

    参考人武田豊明君) お答えいたします。  従来の規制地方公共団体条例の制定権等が委譲されたと、したがって、従来の規制方針と今後はどのように違うかという御指摘だろうと思います。従来の日照に関しますのは、すべて確認行政とは別個に紛争調整解決という方向の補完的な業務でございまして、問題はこの改正建築基準法が成立した場合に、少なくとも日照等の問題についてはいわゆる適正な地区指定が行われますれば、これは住民のコンセンサスを得たものでございますから、その点に関しては指導の要綱ではなく、正式な行政行為としてこれは指導できるのではないかというふうに考えております。  次に、各地方自治体の境界線における日照部分差異はどうするのかということでございます。これは実は東京都におきましては、この改正法案に基づきます条例の制定、それから指定方法、これにつきましては今後鋭意プロジェクトを編成しまして、方法等について検討するわけでございますが、この条例を各基礎的な地方公共団体でつくるのか、つまり区市町村レベルで条例化するのか、あるいは都道府県レベルである都という立場で条例をつくるのかという二つの問題があるわけでございます。これは特定行政事業である地方公共団体と、そうではない地方公共団体差異がございますので、これは東京都においては非常に大きなまず基礎的に検討しなければいけない問題でございます。  いま御指摘の点でございますが、まず区部、つまり特定行政庁でございます区部等につきましては、当然大都市の東京行政の一体性という見地から、これは都のレベルである程度調整をせざるを得ないのではなかろうか。これは同じ住民選択した地域と時間の種別でございます、かつその組み合わせでございます。これは形式的に都が最終的に決めるにいたしましても、そうして都の条例という形でつくることにいたしましても、地元住民の意向、地元地方公共団体の意向を抜きとしましては現実には指定できないわけでございます。まず、そういう基礎的なものから定めて決定いたしますこの条例内容でございますが、これがたとえどのレベルの条例であってもこの点は同じでございますが、地域境界の差異等につきましての調整というものは当然上位団体、それを包摂する上位団体が調整に当たるべきであろうということは、都市計画のゾーニングと全く同じ方法をとらざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  26. 赤桐操

    赤桐操君 もう一点……。
  27. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ちょっと、武田参考人に時間がございませんので、御遠慮願います。
  28. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 時間がございませんから、簡単に願います。  一つだけお伺いしておきます。商業地域問題が参考人から発言されました。後藤参考人は、商業地域よりむしろ住居地域になりつつある、マンション等の問題。それから入沢参考人は、商業地域が除外されているのはむしろ逆で、地域指定を見直す必要があるのではないかということを言われました。大河原参考人は、商業地域に建つ建物の住居地域に及ぼす影は住居地域に建つものとしてなるので、今度の改正案で大丈夫です、結構だという発言をされた。それから梶原参考人は、商業地域についてはまず条例地方自治体がつくれるかと、これは水質汚濁防止法の例からいっても認められるのではないかという御意見を言われました。東京都の場合には非常に商業地域が、特に二十三区は多い。たとえば台東区などは上野公園を除いて東北部がちょっと近隣商業地域で、あと全部が商業地域になっているということですので、これはほとんど今度の改正法案では日影規制が及ばないというところになる。これは非常に東京都にとっては大問題だと思うのですね。いま武田参考人は二十三区については東京都の条例である程度考えなければならぬのではないかという趣旨のことを言われたと思いますけれども、東京都として今度の改正案のこの商業地域問題ですね、どうお伺考え方で対処しようとしているのか、この点いういしたいと思います。
  29. 武田豊明

    参考人武田豊明君) お答えいたします。  商業系地域日照問題等につきましては、先ほど指導要綱の使命というものはまだ残るんではないかという中の一つに入ると思います。ただ問題は、東京都の現在指定しております商業地域の性格は、従前の用途地域というものを基準として指定しております。これはむしろ用途を規制するという目的からある程度指定したという経緯がございまして、現在ここで審議されておりますような個々の宅地相互間の日照という相隣関係については必ずしも十分ではございません。そういう角度でこの地域地区を新たにこの条例に基づきまして指定するということになりますと、初めてそこで居住環境をどの程度確保すべき地域であるかという基本的な見直しが要請されると思います。  たとえて申しますれば、御指摘のような商業地域の一部にあっては、むしろ近隣商業地域指定が最も妥当ではなかろうか。同じようなことが住居系地域についても言えるわけでございます。それぞれ各一段階規制の強い方向へ見直す。それは容積率の現在指定しております種別、その容積率についても全く同じでございます。したがいまして、建築基準法に基づきますこの規制時間と地区の組み合わせというものにつきましては、全く都市計画法に基づきますゾーニングの指定と同じ手順、作業と、そのような形で行われますので、そのようなフィードバックが当然起こり得るのではなかろうかというふうに考えます。
  30. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) それじゃ武田参考人、大変お忙しいところをありがとうございました。  引き続いて、他の参考人に対する質疑を行います。
  31. 片山甚市

    片山甚市君 後藤参考人にお伺いするんですが、日影規制は、日照権のことが、一日に何時間以上日照が確保さるべきだという住民の要求から始まって、相隣関係として、相隣紛争としてその周りの関係が起こり、問題はそういう日照問題だけでなくて、後藤参考人がおっしゃったように中高層建築物周辺住民に及ぼす生活侵害学校の話も出ましたが、電波障害風害、通風阻害、プライバシーということで総合的な対策が必要だと、こういうようにおっしゃっておるんでありますが、その中でもこれは、今度の日影規制というのは、建物を建てる立場から法の許可を得たということであって強行されてくる、こういうことがないために、地方自治体としていまの苦労された諸問題に今後どのように対処していったらいいか。これは法的な基礎ができたんであるから、もう少しまとまった条例、あるいは先ほどのお話ですと附帯決議等によって具体的にしてもらいたいというお話がございましたが、まずお伺いいたします。
  32. 後藤喜八郎

    参考人後藤喜八郎君) 原則的に私は前々から環境保全に関する法律、それは一項目の法律でよろしいと、地方自治体の長は、それぞれの市町村環境を保全するために努力しなければいけない——憲法的なものでありますが、そういうふうなものをしていただけば、あとは条例に従って、ここは、武蔵野は人口が日本で五番目に過密な都市である、したがってこれ以上学校も何もふやすことができない。保育園をつくるにも、三軒移っていただいて五百坪買った。こういうふうな町であるならば、それに合ったような環境をつくっていくべきだ、こういうふうな思想に基づいて行うことが最も適切である。マンションを誘致したい市もあるでありましょう。人口が減ってしまうからというふうなこともあるかもしれない。私どものところは基本構想において、もうこれ以上人口が詰まったらどうにもならないんだというので、大変いいように思われている武蔵野市が、何というかパンク寸前のところにあるという点を考えると、ここに合った条例をつくらなければこの武蔵野市を守ることができないんだ、こういう考え方が、せっぱ詰まっておりますから、よその市よりもはるかに強く感じられております。したがいまして、今度のこの法改正におきましても、日照については——日影と呼んでいろいろ御議論のあるところでございますけれども、日影についてはこうだと。しかし、いままでやってきた総合的な諸施策について条例をつくって市町村において行い得る、こういうふうにしていただかなければならないと私は信じております。  そしていまでも——東京都は帰ってしまいましたけれども、東京都は、建築確認をいろいろお願いして、時間を持ってもらっておりますけれども、いよいよになると確認をしてしまいます。すると業者は、建築確認がおりたのになに市長文句を言う、まして権利のない隣の人が文句を言う必要がない、こういうふうな言い方をしております、今日。すべて合法性だ、法治国だから法律に従え、指導要綱などは、そんなのは市長が勝手につくった恣意のものである、こういうふうな規定の仕方をしていまでもやっておるわけであります。したがいまして、今度はこの論法でまいりますと、日影については法的根拠ができたけれども、そのほかのことは武蔵野市が恣意において行うことであるからそれは守る必要はないんだというふうなことになりますと、今度は日影も、いままでやってまいりました指導要綱行政という万般にわたる大きなものを全部否定しちゃって、日影のところだけこうクローズアップする。日影も、いままで申されましたように、前に庭のないような人たちは、それで直ちにちっとも日が当たらなくても文句が言えなくなるという弱点をこの改正案は持っておるわけでございます。  したがって、そういう弱点を克服しつつ、なおかついままで実績としてみんなで話をしたいろいろ問題ございます。市もこれにかかわることは全くいやなものの一つだと思いますが、しかし、住環境武蔵野というところを子孫に向かってよく残していき、マンションに住む人たちもいい快適な環境で育ったなあと子供に喜ばれる、年をとってもよかったなあと言われるような、そういう環境をつくっていくことをわれわれの前の政治家が怠りました。それで今日のごちゃごちゃ東京ができた。ごちゃごちゃ武蔵野ができたわけでありますから、もうこのごちゃごちゃはこの辺でわれわれがピリオドを打って、もう少しきちっとしたものをつくっていくべきときが来た、これが政治家の使命だ。じゃによって、全国下水道協会副会長の私が下水道に生コンなどを入れたりいたしたというのも、そういう政治の決断が迫られているのだ。残念ながら——済みません、こんなことを言って。国会の先生方は生コンを入れながら涙してこうやっているこの実感もわかないし、東京都もまたちょっと一段高いですから、私たちがそうやって暮れの真っ最中にそういうことをやっておる実感がわかない。市民が本当に言ってくる。業者は攻めてくる。市民にも業者にも羽交い締め食って、両方からダラ幹市長と言われて、なおかつ太陽を守ろう、近所を守ろう、町をつくろうというこの苦労を法制化の中ににじみ出していただきたい。そういうわけでございますので、どうぞ包括的にとにかく地方自治体ができるという条項をどこかに入れていただきたい。これで私はもっといろいろ議論が出ると思います。もっと市長は苦しむと思いますが、そういう法的根拠があるならば、それを根拠にして市長が苦しむことがあすの日本をつくることであり、あすの武蔵野をつくることだ、そういう使命に燃えて困難に向かっては立ち向かいます。
  33. 片山甚市

    片山甚市君 私は、後藤さんのところの同じく武蔵野市民税を払わしてもらい、しばらく暮らしたいいところであります。その環境が保てるようにと思いますから、もう一度ひとつお伺いします。  日影基準の適否の解答は地方公共団体条例で決めることになっておる。したがって、都道府県の条例でも市町村条例でもなし得る。だが、この条例が都道府県によって制定され、それが都道府県内の全市町村に一律適用されることになると、市町村ではこれに拘束されてしまうことになる。そこで、お話がありましたように、宅地開発指導要領が従来市町村レベルでつくられたように、今回の日影規制の適用の可否、具体的な基準については市町村に十分に力を与えて、国会の審議の中でしてもらいたい——これは先ほどからお話がありましたように、北海道からいわゆる沖繩までの太陽の流れ方による斜線、受け方が違うように、それぞれ置かれた条件が違うだけに、この問題についてどのようなことについて特に力を入れて審議をしたらいいか、それについて御意見がございましたらもう一度お伺いします。
  34. 後藤喜八郎

    参考人後藤喜八郎君) くどいようですけれども、その自治体の実態に合ったように規定してほしいと申し上げます。これが根本原則でございます。たとえば東京都のようにすでにでき上がったところもあるし、西多摩の奥の方にこれからという町もございます。したがって、同じ武蔵野でも、吉祥寺駅周辺のように商業地域としてすでに東京都内においても有名な商店街になったところもございます。そのすぐ隣に、五メートルも離れないところに今度は最高住宅地区でもあるわけで、こういうぐあいでございますので、東京都一括という大きな枠ではどうしても武蔵野市に合わない。武蔵野市によく合ったのは青梅に合わない、台東区には合わないということでございますので、そういう意味武蔵野市は武蔵野市の基準をつくらしていただきたい、そうすれば一番よく合う。この基準をつくるのも大変な議論もあり困難でありますけれども、それは自分の町のことでありますから、自分でどんな苦しみをしても、市民参加の中に決定していこうと思っております。何とぞ東京一円——いま武田部長もおっしゃっておりましたけれども、二十三区は一円だと。こうなると、台東区に合ったやり方は恐らく世田谷区に合うかどうかわからない。日本橋に合ったものが京橋に合うかどうか——日本橋と京橋は合うと思いますが、少なくとも大田区の方と合うかどうかということは問題かと思います。したがいまして、ぜひともこの際、地方自治体等は、本件の発祥、源と紛争の丁々発止とやっておりますところは全部言ってみれば市町村、区であります。したがって、起こった原因も、起こった現状も、未来も、市町村がしょって立たなければならない。また、市町村は本当にこの町がよかれと思って苦悩しながら徹夜でやってまいりました。こんな苦悩はしたくないと思いますが、でも将来を思うと、徹夜をしてでも自分の町ならばこそできます。そういう意味でぜひもろもろの条例法律の中に市町村においてできるように、日影だけでなしに、その他の問題についてもさきに横出しだとか上積みだとか出ましたが、公害の問題もそのようにして出てまいりました。日照の問題もこうやって生まれてまいりました。ぜひとも認知していただいて、生まれました市町村に、育てろよと、そして苦しんでもりっぱな町をつくれよと命じてもらえば、私たちはそれをもとにして今後とも苦難の道を歩きながら住みよい町をつくっていく、こう思っております。
  35. 片山甚市

    片山甚市君 恐れ入ります。入沢参考人にお伺いいたします。  先生は日照問題の権威者でございますから、私からお聞きするのは少しなまぬるい話ですが、先生のお話にありました日影規制についての対象地域指定する場合には、用途地域指定を再検討する必要があるとおっしゃり、その中で今回の法改正では第二種住居専用地域内の指定容積率の低下または住居系地域内の前面道路幅員による容積率の低減の方法規定されましたが、一般に容積率が高過ぎる、それで四〇%とか二〇%、さきの話をされましたが、近隣商業地域、準工業地域においても指定容積の低下を図るべきだと考える。これは特に商業地域あるいは準工業地域の中に住宅もぼつぼつあるということもございまして、特にこの用途についての御見解をもう一度お話をいただきたいと思います。
  36. 入沢恒

    参考人入沢恒君) それでは、お答えいたします。  まあ規制対象区域、用途地域と関連づけるという方針になっておりますが、そのもとになります用途地域の現在の法律規定内容、いわゆる日本のこれまでの都市が混合地域的であったために、現在でも規制内容は非常に緩いということがございます。たとえば用途の混合でございますが、現在でも商業地域でも住宅は自由に建てられる、工業地域でも自由に建てられる、そういった点がありますが、まあだんだんとこの点は専用化されまして、この前の改正では八種類ばかりの用途地域ができておりますが、むしろこれからの問題は、こういった日照環境の問題が起こりますと、容積率の問題の方が大きな問題ではなかろうか。今回第二種住居専用地域は、これまで三〇%が最下限でございましたが、一〇%までいったと、これは非常にいいことだと思います。  たとえば現実に例を挙げてみますと、港区におきましては、あそこの住居系地域におきましては大部分、九九%以上が第二種住居専用地域であります。第一種住居専用地域は港区ではわずかに一ヘクタール程度しかございません。最近、ここ数年そのために住民容積率全部三〇〇%程度となっておりますために日照問題が起こりまして、最近では第一種住居専用地域にしてくれとか、または容積率を下げたいと、こういった運動が相当起こっております。現在では最低限三〇〇%でございますので二〇〇%超えておりますが、さらに一五〇%、一〇〇%になれば、その点でも非常に日照問題は解決されると思いますが、単にこれは第二種住居でありません。近隣商業地域もそうでございます。現在ではやはり最低が三〇〇%になっておりますが、これがやはり一〇〇%ぐらい下げてもいいのではなかろうかと。近隣商業、せっかく地元の商店がありましても、法律の最低が三〇〇%と、これは相当高いわけです。いっぱい建てまして三階建て、そういった近隣商業必ずしもありません。実際の身近な商店にしますと、一般の住宅並みでございます。そういった点から、今回はそういったことになっておりませんが、やはり将来は検討する必要があるとこう考えております。  それから商業地域もそうでありまして、最低の容積率が四〇〇%ですか、非常に高いわけでございます。先ほど申しましたように、二〇〇%の容積率といいますとそろそろ日照問題が起こってまいります。まあいろいろ計算しますと、まず四時間日照程度を確保しようと思えば一五〇%が限度でございます。用途地域また容積地域指定する場合に、先年、昭和四十七、八年ごろですか、東京都がいわゆる住民参加方式をとりましたけれども、その当時まあPRが不十分だったせいかもしれませんけれども、住民方々が自分の土地の値段が下がるというよりも上がることを望みまして、容積率は高くしたいと一方では言いながら、いざ中高層建築ができますと日照問題が起こりまして、困ると、非常に矛盾したのが、一般住民の感情といいますか、でございます。その辺にやはり矛盾がございますので、その点やはり今回この日影規制区域を、地域指定する場合におきましては、住民に納得させまして、日照が欲しければやはり容積率を下げるか、または用途地域をなるべく住居系に純化するか、そういった方法が必要ではなかろうかと思います。
  37. 赤桐操

    赤桐操君 大河原先生にお伺いをいたします。  第七十条によりまするというと、「建築物に関する協定をしようとする者は、その全員の合意によって」を「建築協定を締結しようとする土地の所有者等は」と改めることになりました。さらに、その後に、第一項の次にさらにつけ加えられている条項が出ております。これによっていわゆる建築協定というもののかなり実際の面の促進を図るという考えが盛り込まれたと思うんでありますが、率直に申し上げまして、従来この建築協定というのは、非常に大切なものなんでありますが、なかなかいままでの規定では実施が困難でありました。これが今度のこれによってどういうように具体的に前進するであろうかというように実は考えるわけでありますが、この辺のところを御説明いただければありがたいと思います。
  38. 大河原春雄

    参考人大河原春雄君) さっきの意見の開陳にございませんでしたけれども、ちょっと申し上げたいと思います。  建築協定につきましては、皆さん御承知だと思いますが、戦前本郷の駕籠町にそれに準じたものがございました。もちろん建築基準ではございません。それはたとえば生けがきをつくるとか、建物を下げるとか、二階とかございましたが、法的裏づけはございませんでした。戦後こういうのができまして、私どもは非常に歓迎をしたわけでございますが、残念ながら全員の同意ということになっておりますと、やはり区域によっては全員の同意というのは実際問題不可能でございます。たまたまできましたのは、たとえば分譲地をつくりまして、一人の建て主の方が全部分譲する、前もって一人で協定をしまして、そしてこれを全部守らすという意味において非常に有効でございました。ただし、今度は一人協定というのが出てまいりましたから非常に結構でございますが、区画整理法みたいに三分の二というようなことをやりますと、そこに主権の侵害とかいろいろな問題が出てまいりますので、私としてはやはり三分の二程度の同意でやるべきじゃないかと思いますけれども、なかなかむずかしい点がございますので、現状ではやはり現在の改正案のところでおさまるのも現状としてはやむを得ないんじゃないだろうか、将来は三分の二に持っていくべきじゃないだろうかという感じを持っております。
  39. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 まず一点は、入沢先生にお願い申し上げたいと思うんですが、いまの意見の開陳の中では出なかったと思うんですが、先生のお説の中で、中層あるいは高層の建築物による日照阻害のおそれが生じたために、両地域北側斜線制限の手法が加えられたわけでございますが、基準法にですね。この建築基準法規定されております北側斜線制限が市街地の現況の最低限に追従いたしておりますし、全国画一の規定では緩い制限内容であるため、十分な日照を保障し得ないという先生の御懸念もあるわけでございます。これが一点ですね。  もう一点は、同じく北側斜線制限の手法についてでございますが、北側の敷地境界線を基線にした場合に、直接建築物の高さ、形態を制限する簡明な方法で一般にもわかりやすい、欠点があるとのお説でございますけれども、この二点については今回の改正法の中ではどういうふうに盛り込まれておられるのか、そういうふうな点もお願い申し上げたいと思います。  それから大河原先生にお願いをしたいわけでございますが、国の案でございます建設省の建築審議会の日照基準専門委員会提出した日照確保のための建築基準答申の中における日照の量、そうして規制内容規制方法から見て、先生は法的な規制としては妥当な点もあるけれども問題点もあるというふうにお説を述べていらっしゃるわけでございますが、今度の一部改正法の中でどういうふうに加味されておられるのか、お述べをいただきたいと思います。  それから後藤市長さんにお願い申し上げたいんですが、現場のいわゆる市民の御相談という具体的な中で、私はほんとに生きた問題点が羅列されたことを非常に肝に銘じたわけでございますが、今回の建築基準法一部改正の相隣紛争に対する効力についてでございますが、これは先ほど社会党の先生から御質問がありましたので、私はこの一点はちょっと抜いていきますけれども、いずれにいたしましても、日照侵害とか電波障害、そして風害、通風阻害、プライバシーの問題等々多極にわたって問題等がございますが、私も全般的ないろんな立場から解決していかないと日照を含めたすべての問題が解決はできない、こういうように思うわけでございますが、本日申し上げたい一点は、ただいま大河原先生が「イ」の中で言われたことにつきまして市長さんの御意見をお伺いしたいんですが、大河原先生が「イ」の中で、「建築審査会を置かない市町村日照等に関する条例を制定すると、建築基準行政が二重行政となり、混乱をまねくので、条例を制定できる地方公共団体建築審査会をおく公共団体に限定されたい」。まあこういうふうに、私も当然だなと非常に感銘を受けてお聞きをしたわけでございますが、具体的に市長さんのこれはもう全国の中で初めて条例制定されて真っ向から取り組まれたそういう立場の中で、大河原先生のこのお説に対しまして、市長さんの方から、もしこれが道理とすれば、何か、これにかわる対応策等も意見の開陳ございましたらお述べをいただきたいと思います。  以上でございます。
  40. 入沢恒

    参考人入沢恒君) ただいま北側斜線制限の問題が出ましたが、この制限方法でございますが、私ども普通これを仕様書方式と申しております。非常に包括的に、この部分から建物の高さが出てはいけない、そういったかっこうで、採光とか通風、それから日照、そういった問題を、これまでもそういった環境を守ってきたわけでございますが、なかなかこの北側斜線制限という斜線制限の方式は非常に簡明でございます。また、一般の方々にもわかりはいいわけでございますが「一般市街地で見られますように、非常に建築形態をきつく規制しまして、いわゆるピラミッド型といいますか、ああいったような建築形態、必ずしも好ましくない形態をしております。われわれが日影規制方式を考えましたのは、そういった非常にわかりやすい斜線制限をもっと強化すればいいじゃないかということも考えたわけですが、非常に建築形態、使いがたい建築になるというおそれがありますので、むしろわれわれは実行基準と呼んでいますけれども、実際に日照が確保されるか、そのためには日影規制をどうすればいいかというかっこうでつくりましたのが日影規制方式と称しているものでございます。具体的に日影規制区域を、先ほどお話ございましたように、指定しません第二種住居専用地域には今度の修正案で北側斜線制限が残されました。非常にいいことと思いますが、先ほど申しましたように、非常にこれは大ざっぱといいますか包括的な制限でありまして、これだけではきわめて不十分でございます。  ただ、現在高度地区制というのがございます。これによりましてもやはり北側斜線制限は非常に強化できます。東京都、横浜市等におきましては、法律でありますこの北側斜線制限以上にこの高度地区制を利用しましてさらに厳しい斜線制限をやっております。これは幾らでも厳しくできる、住民の合意ができれば行政当局は幾らでも北側斜線制限を厳しくできますが、この点をやはり活用すれば、現在あります北側斜線制限法律上にありますよりも厳しいことができまして、住民の合意さえ得られますればさらに厳しい制限はできると、こう考えておりますので、この高度地区の活用がうまくいけばいいんじゃなかろうかと、こう考えております。  以上でございます。
  41. 大河原春雄

    参考人大河原春雄君) それでは、先ほどの問題点でございますが、先ほど申しましたように、条例の制定権それからこの法律、私は改正案には全面的賛成でございますけれども、やはり紛争が残るんで、そういう問題につきましては、国としてはやはり再開発方法とかあるいは特定街区とかいろんなものをもっと活用すべきじゃないだろうかというのが問題でございまして、法律案そのものには別に不賛成ではございません、全面的に賛成でございます。  御質問になかったんですが、ちょっと私から一、二弁解を申し上げたいと思いますが、実は私、学校の先生になる前に東京都の都市計画部長をやっておりまして、全面的にこの建築基準法によりまして容積地区を裁定する前に、東京だけで容積地区を裁定したわけでございます。採用したわけでございます。その際のところを少し申し上げますと、日照問題等の問題のまずい点が出てくるんだと思いますが、その際に考えましたことは、一つの案といたしまして、東京現状といたしましては、木造の二階建て程度の建物による日照阻害が受忍の限度じゃないだろうかという前提を一つ置いたわけでございます。そういたしますと、どうしても北側というふうに考えますと、北側メーターで、それから北側の斜線が、そのときは東京日照によりまして一対一・六の割合にしたわけでございます。それがその後の法律改正によりまして、いわゆる日照と採光とが少しごっちゃになりまして変な数字が出たわけでございます。そこで混乱を来たしたのであって、たとえば一対一・六という割合にしますと、日照の問題がことしは余り問題が起きなかったんじゃないかという点が私は非常に残念に考えております。  それからもう一つは、容積の問題でございますが、皆さん御承知のように旧建築基準法におきましては容積制度がございませんので、住居地域においては建物の高さが二十メーター商業地域では三十一メーター、それから建蔽率が六割とか七割となっておりましたので、住居地域を例にとってまいりますと、二十メーターと申しますと大体六階ないし七階のアパートが建つわけでございます。そうしますと、建蔽率が〇・六になりますから、〇・六に七階と掛けますと四・二、それから六階となりますと三・六になるわけでございます。したがって、その際に住居地域につきまして、たとえば十分の二十と指定をすればもちろんよろしかったんでありますが、そういう指定をしようとしたところ、やはり住民の方は既得権として当然三・六ないし四程度があるんだと。したがって、そういうものを指定をされたのは反対であるという猛烈な反対がきたわけでございます。それから商業地域についても同様でございまして、商業地域はやはり九階の建物が建つわけでございます。九階にたとえば建蔽率が九割ということになりますと、九、九、八十一で八・一になると。それを十分の七十とか十分の六十に指定をしたならば既得権の侵害であるというわけで非常に反対がございまして、やむを得ず妥協して住居地域が十分の三十とか四十とかが出てきたわけでございます。その後日照問題が非常にやかましくなってまいりまして、その際思い切って十分の二十とか十分の十五とかという指定をすればよろしかったんでありますが、これは非常に残念でならないわけでございます。先ほど入沢参考人から言われましたように、日照の問題は本当に解決するならばやはり十分の十五、すなわち一・五が限度であって、十分の二十はやむを得ない場所であって、理想的に言えばやはり十分の十程度が一番よろしいんで、やむを得ないところは十分の十五程度が住居系の地域については私は至当じゃないかと思います。  それから、ついでに申し上げますと、いわゆる住過密の問題でございますが、過密の問題は私は何も建物の高さが高いから過密になるとは決して考えておりません。御存じのように、東京のいわゆる人口密度と申しますのがヘクタール当たり大体百三十人程度でございます。それからパリにしろ、それからニューヨークにしろ、大体やはりそういう程度でございます。といって、あちらが非常に高い建物が建っておりますのは、やはり公園があったり道路があったり、それから敷地いっぱいつくらないところに問題があるわけでございまして、何も高さを制限をするからいわゆる人口密度が減るという問題では決してございません。その点はやはり慎重に考えまして、容積地区をうまく応用しまして、空地をあけ、そして建物をある程度高層化していくということが私は将来の都市のあり方じゃないかというふうに考えております。
  42. 後藤喜八郎

    参考人後藤喜八郎君) 二重行政に確かに——二重行政といいますか構造に二重のものができる。同じ標準値でやる市もできれば、最大値で行う市もできるというふうな意味で二重の基準を設けることがあり得ますけれども、必ずしもそれは、それを二重行政と呼ばなくてもいいのではなかろうか。今日的に考えて、この紛争の問題で、武蔵野市の紛争の問題が東京都に御迷惑をかけているというのはどこでかけているかというと、東京知事と三多摩市町村市長会において話をして、指導要綱のあるところは指導要綱に従ってこれこれをいたしますというふうな確認が各市町村にあります審査委員会にかけられ、審査委員会がオーケーを出して、出したところについて確認をおろしてもらいたい、こういうふうになっております。したがいまして、二十日、二十一日以内にというのを、それがとれない場合は半年もかかるというときに、今度は建て主の方からは、二十日以内に出すべきものをなぜ出さないんだというので、東京都の指導主事の方へ向かってなぜその確認をおろさないんだということを苦情を持ち込むわけであります。そこで、訴えるとか訴えないとかというふうな問題が出てくるので、紛争そのものには武蔵野市の紛争東京都は何らタッチいたしておりません。すべての紛争は市の中で紛争委員会を設けて解決しております。したがって、そういう意味では二重行政になる心配はございません。  むしろ地方自治体市町村においてこれこれができるということになれば、東京都は、そのことは市町村へおいでください、当方の扱うことではございません、こう言ってしまえばよろしいわけであります。そして苦しいながら市町村が受けて立ってしまう、こういうことになりますので、むしろ形の上では二重にも三重にも見えますが、責任体制は市町村にきて、一重行政でぴたっと解決できる。こういうふうに考えますので、形の上の二重三重であって、実質は市町村が責任体制が確立いたしますから、むしろ東京都としてはその方がむずかしい問題は来なくなると考えております。私はそういうふうに簡単明瞭、きわめて、自治体にやれよ、よさも悪さも全部自治体にやれよと、こう言って任せれば、いまの自治体はかなり苦労しておりますから、自分で何とかしのいでいき、市民も苦労しておりますから、何とかしのいでいける力が私は市民にもあるし、市町村にもあると信じております。どうぞ市町村を信じていただきたいというのが偽らない気持ちであります。  それから、さっき先生もおっしゃっておりましたけれども、商業地域がございます。いま武蔵野でできておりますのは、近隣商業地域に商店を建てないんです。近隣商業地域容積率がよくて二〇〇だとかがありますから、そこヘマンションを建てるわけでございます。で、商売は一軒もない、商業地域が公的なマンション地域になってしまう。ですから、吉祥寺をごらんいただいた方があるかと思いますが、吉祥寺のあの繁華街の真ん真ん中に突如として十三階建てのマンションが建ってきたわけです。なぜかというと、ここは商業地域ですから容積率がすばらしくいいので、ここヘマンションを建てるのが、駅には一分間、デパートには二分間、そして公園には三分間——井之頭公園には三分間、高いところはまことに快適で、神奈川県まで見えますというようなことを言えば、私ども買いたくなるような、そういうところです。そこで商店をつくるのでなしにマンションをつくっておる。商業地域と称する住宅地域がここに出現しているわけです。  ですから、建築確認その他の用途地域の問題でも、用途を純化しろと、こういうことを言っておりますし、そういうことは頭の中では法律をつくる方々が考えたんですが、まんまとそれはマンション業者の人たちによってマンション化されてしまう。純化どころか、隣にデパートがあって、隣に今度は住宅ができるという住商混在がいま過激化して、平面が天に向かって——私はそれを天に向かってのスプロールと、こう呼んでおります。以上でございますので、やはりここにも全国を一律的におさめなきゃいけないというむずかしいお考え方地域に合わないわけです。そういうことで、用途地域の問題も、商業地域におけるところの建物については商業地域が目的なんだ、そこに働く人の住宅だけでは仕方がないので、十軒分のところを二軒は住居になっても仕方がないという一項目が入っていれば住居は純化するわけでありますが、それが入っていないので商業地域が住宅化してしまうという欠点がございります。以上、そういう点をひとつお願いしたいと思います。  ぜひ、くどいようでございますけれども、この法律改正に当たりましては日照の問題、何といっても一番つらいのは、日影と呼んでも日照と呼んでもいま私たちはそんなこと何もこだわりませんが、何としてもこの家に日がちっとも当たらなくなってしまうのを何とかしてくれろと、こう言ってくるわけであります。業者の方は、法律に合っているんだから文句を言うことはないじゃないかと、こうくるわけであります。片っ方は生活権と、こう言ってくると、業者は営業権と、こう言ってくる。市長生活権と営業権の中にあるサンドイッチのハムのようになっております。それが一つの建物で二年もやっているところがある、こういうぐあいでございますので、日影の問題を出しながらも、しかし、市町村によっては日照の問題で対処することもでき得るんだ、こういうことを一言入れておいていただけばいいし、プライバシーその他の問題、環境保全について市長は最大の努力をせよと、そう一項目この中に入れていただけば、それを根拠にして私は基本的に解決できると思う。問題一つ一つはいろいろ出ると思いますが、この根本法が一つありさえすれば解決できる。ぜひとも市町村環境を保全せよと申し上げたものの中に抱括したものとしてそういう条項を一項目法律を、どこでも何の法律でも、都市計画法でも建築確認でも何の法律でもいいから入れていただくことが問題を基本的に解決していくものだ、これなしにはどんなに五メートルを三メートルにしてみたところで解決しない。なぜかというと、大もとの法的根拠が問題にされているわけです。法的根拠市町村に与えていただきたい、市民に与えていただきたい、こう申し上げているわけであります。
  43. 坂野重信

    ○坂野重信君 自民党からないようですから……。武蔵野市長さんも非常に苦労されているようですけれども、きょう、いまやっているのは、これは日照権のといいますか基準法の法律を主体としていろいろ御議論願っているのですが、余り基準法だけに理想を求めても非常にむずかしいんじゃないかと思います。先ほど入沢先生からもお話がありましたが、日照権の問題、日影の問題等にしましても、広く考えると、やっぱり都市計画の一環として考えていきませんと、建築基準法だけでもって理想を求めてもなかなかむずかしいと思いますし、市長さんのおっしゃるように、ひとつそういう条項をどこかに入れるということも確かに必要だと思いますが、さっき大河原先生からもお話がありましたように、単に高度、容積率だけを考えてみましても、やはりスペースなり建蔽率の問題を考えないと、都市計画の一環として一つの問題だけを切り離してやっては全体的にもうまくいかぬと思います。特に新しい町をつくる、あるいは新しい建築をする場合、既成の市街地に対してはやっぱり都市の再開発の問題だとか、そういう別の観点から総合的に持っていきませんと、必ずむずかしい問題が出てくるんじゃないかと思います。その辺の用途地域の問題、高度地区の問題、建築協定の問題、都市計画の問題、いろんな問題を総合的な立場でやっぱり考えていくということにすべきだと思いますが、単に建築基準法だけを理想的なものをつくって、それによってやっていこうとしてもなかなか事柄はむずかしいと思いますけれども、その辺の考え方を、特に入沢先生からさっきお話がありましたから、これの御見解をひとつ改めてお願いいたします。  それから、いまのお話で、たとえば道路の問題、大河原先生から話がありましたけれども、たとえば高架鉄道等についても、日照阻害を防止するような措置をやるべきだ、このことの話もありましたけれども、実際に既成市街地の中にこういう構造物をつくるということになりますと、ただ単に日照だけを押さえるということになっていきますと、新しいそういう構造物は一切できないのではないか、こういうようなことにもなるおそれもあると思いますので、その辺の総合的な立場というものをやはり考える必要があるのではないかと思います。その辺のひとつ御意見をお伺いいたしたいと思います。
  44. 入沢恒

    参考人入沢恒君) 非常にむずかしい問題でございますが、先ほどからしばしば申しましたように、日照一つ取り上げるというよりも、やはりわれわれの居住環境、都市全般、都市計画的な面からやはり取り上げるということが必要でございます。それはおっしゃるとおりでございまして、現在の制度がそれに対して十分かどうか。先ほどからしばしば申しますように、用途地域規制、その中にあります容積率とかまた別にあります高度地区とか、そういった制度をうまく運用すればと、一応現在でも手段はございます。都市計画と申しますと、そういったいわゆる土地利用、建築規制、そういった面もございますし、一方では再開発事業とか区画整理事業、そういった事業的な面もございますが、基礎になりますのは、いま申しましたやはり一番必要なのは、狭い都市でありますので、これをいかにうまく使うか、その基礎になりますのはやはり土地利用の規制強化、一般にこう言いますと、一般住民の方からはずいぶん反論が出ますけれども、これなくしてはやはりうまくいかないであろう。現在でもその制度は、今回の日影規制地域、こういう制度によりまして相当あるわけですが、これがなかなかうまく活用されてないという点、先ほどから申しましたように、なかなかうまく活用されてない点が問題でございます。  先般の都市計画改正以後、住民都市計画に関する参加という点が盛んに言われておりますし、現実もそうでございますが、ただここで問題は、やはり住民の方の声のままに都市をつくりますと考えますと、非常にやはり矛盾があるという点でございます。住民もまた先ほど申しましたように、自分の土地は、なるべく売るときには地価を高くして売りたい、そのためには容積率の高い方がいいと言いますが、住んでいる場合におきましてはなるべく日照、採光、通風、そのためには低い方がいいと言います。その辺が非常に矛盾しております。ですから、容積率指定する場合に非常に高く望む、そして具体的には日照問題が起こると、今度は周辺に高い建物が建ちますと反対する、そういった矛盾が現実でございます。ですから、住民参加とか住民の声を聞くということも必要でございますが、やはり都市計画といいますと、その声を聞きながらやはり都市全般を考えたらどの程度——たとえば下水道とか道路幅員とか交通機関の輸送量、そのあたりからやはりボリュームを決めるということが必要であります。ところが、先ほども大河原参考人がおっしゃいましたように、ある点、住民の声に妥協したとおっしゃいますが、これがこの結果になったわけでございます。  昔、初めて東京都が容積地区指定する場合に、その前に私ども容積地区という制度を研究したことがございます。東京都に当てはめますと、たとえば住宅地ではございません丸の内あたりでも、いろいろの地下鉄の輸送力とかそういった点から考えますと、現実は一〇〇〇%までになっておりますが、私たちの理想的な計算では半分の五〇〇%が現実であるとか、それから東京都全体を見ましても、先ほどもありましたように第二種住居専用地域が非常に広く指定されております。私の考えではこれは半分でも十分ではなかろうか。現在の第二種住居専用地域とか近隣商業地域とか指定されます容積率いっぱい現実にとりますと、東京の人口ははっきり計算しておりませんけれども、恐らく倍以上入るのではなかろうか、こう考えられます。この点、土地利用計画とこの地域制との関連、非常にむずかしいわけでありますが、完全にイコールではありませんけれども、現在の土地利用計画をやはり実現する手段としてはこういった地域地区制しかございません。これはやはり非常にきつくしませんと、都市の基本的な計画、土地利用計画には、理想的な土地基本計画にはなかなかうまく合致しないと、こう考えております。  以上でございます。
  45. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 きょうは非常に各参考人の方から貴重な御意見を承りましたけれども、きょうの各参考人の御意見の中からも浮かび上がってきている大きな問題は、この日照問題というのは、結局大都市における土地利用の高度化と、住民日照権を含む環境権をどう守っていくかということが最大の問題で、きょう参考人方々の中にもいろいろニュアンスの違う、力点の置き方の違う御意見がありました。その点から、具体的な問題としては、たとえば東京都を初めとする自治体にある指導要綱の評価だとか、その中で特に住民同意制度ですね、これに対するいろいろ評価の違いが浮かび上がっております。その点、時間もありませんので、各参考人方々に私一問ずつ質問したいと思います。  この住民同意制は、地方公共団体指導要綱を持っている二百四十九のうち、住民同意制を内容としているのは百六十一と、全国三分の二にすでにあるわけですが、これについて入沢参考人は、これは法制化するのは不適当だと、われわれも必ずしも法制化賛成しませんけれども、この同意制度の中には、不当な要求があった場合にはかえって環境を悪化させる例などもあるということを言われましたし、大河原参考人も、個人的感情が出たり、金銭による解決でまずい点が多いという点を指摘されました。後藤参考人は、武蔵野市長としてのこれまでの体験の中から、住民同意を基本内容として解決していくことが、実は環境を守り住みよい都市をつくる上にも役立つという点について体系的に御意見を述べましたが、後藤参考人からは、この大河原参考人入沢参考人からの指導要綱についての批判でもね、住民同意制についての批判、それを実際の運営の経験から一言意見をお伺いしたいと思います。  それから入沢参考人には、都市の中高層化というものは土地の高度利用の点からは不可避だと、その点で、土地につながる私権としての日照権についてもある程度の制約は不可避的だという御意見がありましたし、いまも住民の要求にはいろいろ矛盾があるという御指摘もありました。ひとつ具体的にお伺いしたいんですが、後藤参考人からあった、たとえば敷地から五メートルの範囲にある家ですね、これは三階以上のものが建ったらまるっきり日照がなくなっちゃう、一日目が当たらないというようなケースについても、中高層化は不可避的というので、この場合の日照権放棄はやっぱりやむを得ないというようにお考えになっているのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。  それから大河原参考人については、この紛争問題についての解決の仕方のところで、先ほどのような批判を述べた上で、一定の条件を満たしたものは認め、条件を満たさないものは建築審査会の同意によって解決すべきだ。さらにまあ紛争調停委員会を設けるという御意見もありましたが、建築審査会の同意によってこういう問題を解決をしろと、関係住民同意を要件とするのはまずいという御意見ですと、後藤参考人が言われたような、結局問題の解決にはやはり協議の場所、こういうものがないと、こういう複雑な問題というのは解決できないという点についてどうお考えになるのか、住民業者との一切の協議の場所なしに、建築審査会での条件を満たしたという判定だけでやりますと、やっぱりどうしても官僚的な上からの解決ということになって、実際には解決にならぬ、かえって紛争を長引かせることになるのではないかと思いますので、そこをお伺いしたいと思います。  それから梶原参考人には、裁判問題で、今後この改正案が成立した場合影響があるだろうという点で、たとえばいろいろ御指摘になりましたが、受忍限度についても今度判断の要素となるであろうと言われましたが、先ほど私の質問しました商業地域日照紛争というのは非常に多いわけですね。それが商業地域が外されている。たとえば商業地域における紛争だとか、あるいは後藤参考人が述べられた五メートル以内でまるで日照がなくなっちゃう、しかし日影基準に合っているというような場合の裁判にも、今度の法律改正が判断基準に影響されるとなると、住民サイドからはかなり不利な裁判結果になるのではないかという危惧がありますけれども、この点について御意見をお伺いしたいと思います。  以上です。
  46. 後藤喜八郎

    参考人後藤喜八郎君) 公開をして協議をする、そうしてとことんまで詰めて妥協していくというふうなことで判こをもらってこいと、こう言うと、判こを何が何でも感情的に押さないという人がございますから、完全同意制というのをやりますと、一人でも反対があったらできないということになります。そうしてそれが今度は金をつり上げるという結果になったりして問題が起こって、業者からいたく、金もうけ主義じゃないか、市長が金もうけに手をかしたんじゃないかというふうなごね得を誘発する、そういうことを経験いたしましたので、いまはやる、そうしてどうしてもとことんやってみてもうまくいかないというときには紛争調整委員会にかける。それで紛争調整委員会がいままでのところいろいろとその客観的なデータを出しながら討論してみる。そこで、まあそのぐらいでは仕方がないんじゃないかというふうなことで決着をつけていく、こういう方向をいまとっております。したがいまして、問題なのは、先ほど大河原先生でしたか、どなたでしたか、その紛争調整についての決着を調整に従ってもらわないと困るわけなんです。ところが、いま紛争調整いたしますけれども、それに従わないという人が出た場合の処置に困っているわけであります。したがって、紛争調整についても紛争調整委員会を設けなければならないというふうなことで、それもまた法制化していただくことができればたいへんありがたいことだと、こう思っております。  問題なのは、こういうマンションを真四角につくって、後ろの人がどうしてもいま言った五メーター以内で日が当たらないということがございます。大変ではございますが、真ん中をあけないで後ろをあけて、そうしてこれによって日が真後ろの、これは大きなマンションですから、住宅はこのほんの一部であります、後ろの方々を守るというふうなことをいたしております。それから高さが高いのを低くして日照を守るというのもいたしております。市の方では学校を建てるときに、昔でしたら下辺のところにずっと横に学校を建てていくべきものであります。それを、こちらに幼稚園がある、小学校の子供も大事だ、幼稚園も守れというので、斜めにこういうふうにすることによって、多少は高くつきましたけれども、御近所を守りました。また、後ろの地主さんがこの地所を出した方であります。学校に地所を出して自分が日陰になるなんて、それも困るというので、地主のことを考え、幼稚園の子供のことを考えて斜めの学校をつくった。こういう場合に公開制事前協議というので知恵をしぼりますというと出てくるわけでありますし、いろいろと出てまいります。したがって、基準だけではなしに、公開し、協議をし、話し合いをし、よりよいベターな方法を選んでいく。どうにもならないときには紛争調整にかける、こういうふうな手だてをとっていけば、かなりのところまでは解決していくものでありますので、そういう意味で全員からとるということについて、私どももやってみまして、全員からとらなければいけないというのは問題だというふうなことを認識いたしておりますから、いまこれらについても、このお手元にお配りいたしました答申の中でもいろいろと考えろというふうなことが出ております。  さらに、先ほどからのお手元に配りましたこの答申の中に、行政庁として自分もやれとか、特定行政庁としてやれとか、また自分だけでできなければ、数市の市が連合して一部事務組合特定行政庁なんて考えてもみなかったことであります、そういうこともあるではないかというふうなことも出ております。用途地域の問題、高度の問題、そういう都市計画手法等も十分勘案していかなければいけない。以上のように法律的な問題では都市計画の問題、建築確認の問題、高度地域の問題というふうなものと地元の話し合いの問題。自己だけ主張しないで、お互いに譲れるものは譲っていこうという近隣善隣の精神に基づかなければいけないんじゃないか。さらに、未来の子供のために、きょうのことだけでなしに未来を考えようということ等、行政の立場も考えようということ等、もろもろの総合的なことをしなければ日照権のこの法律一個でもってすべてがよくなろうとは思っておりませんので、ぜひ次の法改正におきましては、またわれわれ法の実施に当たりましては最大の努力をいたしますが、先ほど申し上げましたような商業地域においてマンションがどんどんできて住居地域になってしまうというふうなことは、これ根源的には法改正を必要とするし、それが一番近道だと考えております。  以上のようなことで、同意制にいたしましても、完全同意制ということによればその弱点が出てくる。したがって、ある程度のそこには調和というものがございましょう。そう考えながら、同意制と基準とをあわせ行うことが私たちはりっぱな成果をおさめ得るものだと、意見書の中にも書いてありますし、信じております。
  47. 入沢恒

    参考人入沢恒君) 非常に狭い敷地の場合に日照の問題はどうなのかという御質問でございますが、そういったような、順番に話しますと、非常にきわめて狭い敷地があります。現在低層住宅でありますれば、現在の手法におきましては第一種住居専用地域指定しまして、また容積率、建蔽率、こういったのをなるべく厳しくするという方向によって別にそこに中高層建築が建たないようにすればいいわけです。ただ、きわめて極端に狭い、最近のように三十平方メートル、二十平方メートルぐらいの敷地に分化されますと、これはどうしても自分の敷地にいっぱい住宅を建てますと、当然これは他人、周辺の隣地の人々の空間を利用せざるを得ない。環境がよくならないわけであります。自分がそのように狭い敷地におりながら全部そこを建てまして、周辺の敷地に自分の環境を望むというのはこれは少し行き過ぎだろう。こういった場合にはどうすればいいか。根本的に言いますと、余りにも現在のわが国の土地の所有権が強過ぎるといいますか、それによりまして人人は小さな敷地を求める。むしろ大事な点は、狭い土地でございますので利用権こそ大いに活用されるべきであろうと考えますと、そういった方々が二、三軒寄りまして、自分たちで共同住宅をつくろうではないかとか、そういった発想はできないものかと考えます。非常に三十平米にいっぱい建てるという思想そのものが現在の都市の環境にむしろマイナスでございます。さらに、環境というのは日照だけでございません。最近問題であります災害問題がございます。小さな三十平米、五十平米に木造の住宅を建てること自体がむしろ環境に反する行為ではないか、極論すればこういったことでございます。  それから、いま申しましたように、環境といいましても、日照は盛んに言ってございますが、私がちょっとここで補足したいのは、住む権利といいますか、いわゆるこれまでの居住権でございますが、私は住居権と言っております。われわれが快適な住宅に住む権利、この快適はまず住宅が基本でございます。住宅を抜きにしまして周辺環境云々ということも考えられません。環境権の中にも優先順位があるのではなかろうか。一番最初、まず住宅があることでございます。それからその住宅の周辺のそういった日照とか、緑があるとか、いろいろ順位があるだろうと思います。ただ、環境権の中で日照権だけ取り上げて云々いたしますと、余りにも厳しければ、むしろ現在満足な住宅のない人は一体どうなるかと、私はこれを住居権と言いますが、これがむしろ先ではなかろうかと、こう考えております。  以上でございます。
  48. 大河原春雄

    参考人大河原春雄君) 私から申し上げたいと思います。  一点の御質問の付近の住民との話し合いでございますが、この問題につきましては、容積地域制の問題につきましては、現在の建築基準法考え方は、高さの超過をしたものは、従来は建築審査会の同意で公聴会は要らなかったわけでございます。それを引き継ぎまして公聴会を省略してございます。しかし、環境問題というふうに考えれば、やはり用途地域制におきまして、それに抵触する建物をつくる場合には公聴会をやることになっておりますから、あるいはその条文を応用して公聴会を開くということを義務づけるのも一案じゃないかというふうに考えております。  それから建物の高いのが建つという問題でございますが、これは近隣商業地、これは私は法律の問題でなくて用途地域指定の問題でございますので、市町村が申し出まして、それによって用途地域の改定によって私は改正すべきじゃないだろうかというふうに考えております。  それから先ほどの条例の問題でございますが、私の申し上げたいのは、非常に日照問題に御熱心ならば私は特定行政庁になるべきじゃないかということを言っているわけでございます。したがって、特定行政庁にならずにやりますと、やはり都ならば都の条例指定を受けますから、それじゃお困りになるでしょうから、それほど御熱心ならば、私は特定行政庁になって、都のそういう条例を受けないような単独の条例できますから、そこで私は解決をすべきじゃないかということを主張しているわけでございます。決して市長さんの言われることに私は反対しているわけではございませんから、念のために申し上げたいと思います。  それから先ほどちょっと御質問で抜けておりましたが、都市内の高速道路を認めるべきじゃないかという御意見でございますが、御存じのように、欧米では都市内の高速道路というのはもちろんございますが、全部ハーフカットになっております。したがって私は高速道路が必要なことは十分認めますが、何も高架にする必要ないじゃないか。現にパリのセーヌ川で——パリだって必要だといってセーヌ川の川の下につくっておりますから、私は都市内の高速道路はハーフカットですべきじゃないかということを主張しているわけでございます。都市間の高速道路はもちろん高くても結構であります。都市内は少なくともハーフカットにすべきじゃないか。ちょうど高架鉄道をやめまして地下鉄と同じようにハーフカットによって、あるいは河川敷を使うなりいろんな方法があると思いますが、それによって私は日照問題等を避けるべきじゃないかということを主張したいわけであります。
  49. 梶原茂

    参考人梶原茂君) 商業地域と、それから日照基準には適合しているが、なお日照阻害を起こす、そういう関係では、改正法は今後の裁判救済の面においては不利になるんじゃないかという御質問であったかと思います。  もともと裁判そのものがケース・バイ・ケースで、行政と違ってミクロ的な対症療法でございますので、今後の実際提起される事件について、ここで私から予測はなかなかむずかしいんでございますが、大体、現在裁判では違法性の判断の重要な判定としては、地域制の問題と被害、侵害と、これを二つの柱としているわけでございます。ところが、この地域——用途地域制について現実に私どもが裁判所で疎明する場合は、写真とかいろいろ住専地域とかいうような問題で現地の状況を疎明するわけでございますが、現在の東京都内のゾーニングは必ずしも裁判所に信頼されていないという問題がありまして、裁判所は現状建築状況あるいは高層化状況を踏まえて、むしろ用途地域はある程度の参考にして、現実に現状に重点を置いて地域制の判断をしているようでございます。  そういう点で、たとえば渋谷区の恵比寿では商業地域で設計変更の決定を下した事例もありますし、今後、商業地域を改正法が除外したことによって商業地域日照侵害裁判で認めていかないというようなことは私は考えられない。むしろあるいは工事の差しとめとか設計変更はだんだんむずかしくなっていくかと思いますが、ニューサンス、生活妨害の点においては、やはり商業地域の人も裁判所によれば人格権という判断に立っておりますので、そういう点では、損害賠償の点においてはやはり商業地域においても十分主張し得るんじゃないかと考えております。もともと非常に高層化する地区と、あるいは実際は商業地域でありながら、住居地域に匹敵するのを建蔽率の関係で商業地域指定されているようなところでは、十分私どもはやはり日照権の主張はできるんじゃないだろうかと考えております。  それから今度の日影基準には適合しながら日照阻害が起こる、これは今後かなり多い問題だろうと思います。これもやはりケース・バイ・ケースで、抽象的には申し上げられませんが、ただ、日影基準で適合している場合には、なかなか工事禁止のやはり差しとめの決定を得ることはむずかしくなっていくんじゃないか。その場合でもやはり日照被害があれば損害賠償というような点で可能じゃないか。これは私は民法の不法行為の違法段階説と言いまして、やはり差しとめするのにはかなり違法性の加重したものでないと、差しとめによって得られる利益と失われる損害とを比較検討して、やはり差しとめによって失われる損害の方が大きいときは差しとめを認めないという違法段階説をとっているものですから、そういうことになろうかと思いますが、従来のようにやはり一律に仮処分として、工事禁止の仮処分は日影に適合している場合はかなり困難になるということは一応言えるかと思います。
  50. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 他に御発言もなければ、これにて参考人に対する質疑を終わります。  参考人皆様方には、本日は御多忙中にもかかわりませず、長時間にわたる貴重な御意見をお述、へいただき、また各委員の質問に対しまして懇切な御答弁を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして謹んでお礼を申し上げます。  本案に対する審議は本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後一時二十三分散会