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1976-12-22 第78回国会 参議院 決算委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十二月二十二日(水曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員異動  十二月八日     辞任         補欠選任      田渕 哲也君     三治 重信君  十二月十七日     辞任         補欠選任      三治 重信君     木島 則夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木  力君     理 事                 遠藤  要君                 世耕 政隆君                 望月 邦夫君                 大塚  喬君                 峯山 昭範君                 塚田 大願君     委 員                 青井 政美君                 石本  茂君                 河本嘉久蔵君                 寺下 岩蔵君                 永野 嚴雄君                 堀内 俊夫君                 案納  勝君                 久保  亘君                 小谷  守君                 志苫  裕君                 矢原 秀男君                 加藤  進君                 木島 則夫君                 下村  泰君    国務大臣        法 務 大 臣  稻葉  修君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局人事局長   勝見 嘉美君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        法務省民事局長  香川 保一君        法務省刑事局長  安原 美穂君        法務省矯正局長  石原 一彦君        厚生省年金局年        金課長      高峯 一世君        会計検査院事務        総局第二局長   高橋 保司君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国家財政経理及び国有財産管理に関する調  査  (法務省所管決算に関する件)     —————————————
  2. 鈴木力

    委員長鈴木力君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十二月八日、田渕哲也君が委員辞任され、その補欠として三治重信君が、また十七日、三治重信君が委員辞任され、その補欠として木島則夫君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 鈴木力

    委員長鈴木力君) 国家財政経理及び国有財産管理に関する調査を議題といたします。  本日は、法務省所管決算関係について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  お手元にお配りしてあります昭和四十八年度法務省決算概要説明及び決算検査概要説明を、参考資料として本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鈴木力

    委員長鈴木力君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 久保亘

    久保亘君 三木内閣はいよいよあすでその任務を終わろうとしておりますが、私は、三木内閣の評価は別にして、いま三木内閣がやっておかなければならないことがあるのではないか、そういう立場稻葉法務大臣お尋ねをしたいと思うんであります。  それは、三木内閣は、ロッキード事件徹底解明内閣の最大の使命としてやってこられたんでありまして、国民に対してしばしばこの事件徹底解明に基づく真相報告を行って、主権者である国民の適切な判断ができるようにしたいということを繰り返し主張されてきました。しかしいま、十月十五日の捜査に関する中間報告を最後にして、三木内閣はその責任を果たさずに消え去ろうとしております。それで、稻葉法務大臣にぜひ、この内閣が持っていたたった一つと言ってもいいその使命を果たす意味で、このロッキード事件に関する法務大臣の率直な報告や見解を求めておきたいと思うわけです。  最初に、十月十五日、捜査に関する中間報告国会ロッキード問題調査特別委員会に対して行われたのでありますが、十月十五日以降、総選挙をはさんですでに二カ月を経過しようといたしております。この二カ月の間に、あの中間報告の中で課題として残されていた問題だけでも多くの本のがありましたし、それらについて捜査が継続して進められてきたはずでありますから、今日の段階におけるこの中間報告につながる新たな捜査に関する報告最初に求めたいと思います。
  6. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 十月十五日の中間報告では概略、大ざっぱに言って丸紅ルート全日空ルートについては、刑事責任追及についてはおおむね解明ができましたという報告と、第三のルートである児玉ルートについては、解明が不十分であるという結論になっております。その後、捜査当局は鋭意見玉ルート解明について究明を進め、捜査を進め、国会における小佐野賢治氏の証言に絡んで衆議院予算委員長告発もありましたから、そうして私も刑事局長委員各位追及に対し、議院証言法違反容疑捜査については起訴の条件になっていることにかんがみ、国会告発を待って捜査を進めるのが望ましいということでありましたんですが、その後そういうことがありましたから、鋭意捜査を進めておる段階であります。そう遠くない時期に議院証言法違反容疑について起訴、不起訴ということが決定されるものと私は思いますが、この間衆議院の総選挙等もあり、自分もまたその候補者でありましたから、その間の経緯につきまして刑事局長から、もし久保さんの必要があれば答弁させます。
  7. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 前回の中間報告の後における捜査概況につきましては、ただいま大臣の申されたとおりでございまして、児玉ルート捜査といたしましては、さらに昭和五十年度における児玉譽士夫所得税法違反容疑、及びこれとうらはらの関係にあります外為法違反容疑で現在もなお捜査中でございますし、さらに、新たな事態といたしましては、先ほど大臣の申されましたように、十一月四日に告発を受けました小佐野賢治議院証言法違反につきまして、十二月八日に至りまして五カ所の捜索を実施する等、議院証言法違反容疑を深めて現在鋭意捜査中であるというのが概況でございます。
  8. 久保亘

    久保亘君 それでは、いま主として御報告のありました児玉小佐野ルート捜査について少しお尋ねいたしますが、最初に、議院証言法違反国会告発をいたしましてからずいぶん期間を置いて、十二月八日にようやく強制捜査に踏み切られたその理由は何でしょうか。
  9. 安原美穂

    説明員安原美穂君) この理由と申しますのは、要するに十二月八日強制捜査に踏み切るまで、地道な捜査を続けて自然の過程として十二月八日に至ったということでございまして、特にそのためにその間の捜査を遅延させておったということではございません。
  10. 久保亘

    久保亘君 小佐野に関する強制捜査に関しては、法務大臣指揮を仰がれて行われておりますか。
  11. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 重要なポイントにつきましては、たびたび申し上げておりますように、指揮監督権をお持ちになる法務大臣に御報告を申し上げておりますが、このことにつきましては、その直前に、本日五カ所にわたって議院証言法違反容疑強制捜索を行いますということは御報告を申し上げております。
  12. 久保亘

    久保亘君 議院証言法違反によって告発を受けた場合のそのことに関する捜査というのは、他の場合にはかなり早い時期に行われておりますし、また人によっては、国会告発を待たずに強制捜査が行われたものもありました。しかし、小佐野ルートについて、総選挙の終了を待って行ったのではないか、こういう感じがするんでありますが、その点は法務大臣として、特別にそのことについて意見を述べられたことはありませんか。
  13. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 捜査の技術に関することでございますので、その点について特に配慮をしたことはございません。この事件の出発の当時から、三木総理も私も、一切の政治的介入を排し、厳正公平、不偏不党の検察庁の立場を尊重してまいっておりますから、そういう総選挙を終わるまで待てとか、あるいは総選挙を前にやっちまえとか、そういうことを言うはずはありませんのであります。
  14. 久保亘

    久保亘君 それではその問題はおきまして、小佐野強制捜査関連をして、この問題については稻葉法務大臣が総選挙後、新聞記者インタビューを行われましたその内容等から考えてまいりますと、この小佐野捜査児玉小佐野ルートについては、PXL問題についても議院証言法違反捜査を行っているけれども、その調べの範囲はそこまで当然に行われているものと考えられるんでありますが、これ、刑事局長お答えの方がよいと思いますので、PXL問題について中間報告では、「現在までのところ犯罪容疑が認められてはおりませんが、いわゆる児玉ルート捜査過程において、これらの問題についても犯罪容疑が認められるならば、検察当局としては、当然厳正な態度でその捜査処理に当たる」と、こういう報告が行われておりますが、その後の児玉小佐野ルート捜査に当たって、PXL関連をする容疑事実の有無取り調べているのかどうか。そして、PXLに関する容疑は十月十五日の中間報告段階から進展があるのかないのか、その点について御報告をいただきたいと思います。
  15. 安原美穂

    説明員安原美穂君) PXL問題に対処する検察の方針は、先ほど久保委員お読み上げのとおりの中間報告内容どおりでございまするが、その後新たな進展があったという報告は受けておりません。
  16. 久保亘

    久保亘君 そういたしますと、稻葉法務大臣のあのインタビューの中では、少しその点については違ったニュアンス発言があるようであります。また例によって、新聞はおれは知らぬと言われるのかもしれませんけれども、しかし、これは一対一のインタビューの記録でありますから、あなたの演説を取材したのとは少し違うんじゃなかろうかと思いまして、その中には、このルートにはPXL問題も入っている、その捜査結果の説明はいずれしなければなるまい、こういうようなことをお述べになっているようでありますが、法務大臣としては、この児玉小佐野ルート捜査の中では現在もPXL問題が進展しつつあると、こういう御判断でありますか。
  17. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) ロッキード事件全貌を徹底究明して、その全貌国民の前に明らかにすることは私の責任だと思っておりますが、今日、児玉小佐野ルート捜査が進んで、そうして全貌を明らかにする段階にまで至らずに明後日は退任するわけでありますんです。しかし、検察当局は鋭意捜査をしておりますから、中間報告にもありますとおり、その児玉に入った金の使途等解明がまだ十分と言えない状態にあると。しかしながら、検察当局としては、「従来どおりロッキード事件捜査本部の体制のもとに、今後も捜査上の障害を克服して、いわゆる児玉ルートについて、できる限り迅速にその真相解明するよう捜査を続行中」でありますと。なお、いわゆるPXL問題については、現在までのところ犯罪容疑が認められていないが、いわゆる児玉ルート捜査過程において、これらの問題についても犯罪容疑が認められれば、検察当局としては、当然厳正な態度でその捜査処理に当たるものと確信をしておると、こういうことを申しておりますね、中間報告で。  その後告発があって、強制捜査に踏み切りましたから、小佐野賢治問題について。ですから、前々この児玉ルートは正確に言えば児玉Xルート、あるいはもっと具体的に言えば児玉小佐野ルートであると、こういう点に進捗してまいりましたわけですね、捜査が。したがって、児玉の病状及び小佐野の病状等回復して、強制的に捜査を進めることができる段階になれば、当然あるいはPXL解明までもできることを非常に私としては強く期待しておると。だって、そういうそこのところまでいかなけりゃ、国民疑いを持っているという点についてどうなったんだということが追求されて、全貌を公表するということにならなけりゃ、この事件責任を果たしたというふうに思えないんです。  しかし、まあ私が常に申し上げておるように、一山、二山、三山のところが、二山半というところまではとにかく来たと、そうしてあとは軌道に乗っていると、いまね。軌道に乗っているから、後の内閣がどんな内閣になろうと、検察当局態度が、こういう鋭意捜査処理に当たっているという態度がぐらぐらしたり変更したりすることはないと、私などよりももっと有能な人がたくさんおられるわけですからね。しかも、いままでのことにつきましても、どっちかと言えば、検察当局が主体です、何といっても。そうして法務省としては、有能な、勤勉な、善良な安原刑事局長もおることですから、必ずそういう方向に私は行くことを強く期待している。心置きなくあしたは退任したいと、こう思っております。(笑声)
  18. 久保亘

    久保亘君 いま刑事局長の方は、捜査の事務的な立場報告をされたんで、法務大臣の方のお答えをお聞きいたしておりますと、PXLに関して、このロッキード事件解明しなければならぬ、しかし、現在では児玉小佐野ロッキード病のために強制捜査ができないので、取り調べができないので、そのためにどうもそこへ入っていくのが非常に困難なんだと。しかし、PXL問題は、何としてでもこのロッキード事件のかかわりを解明をして、国民にはっきり知らせなければならない問題なのだと、こういう点では法務大臣はしっかりした認識をお持ちになっておるわけですね。
  19. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 現在、東京地検ではいわゆる児玉ルートについて鋭意捜査中でありますけれども、現在のところ、いままでの過程において、PXLに関して犯罪容疑が認められているという報告はないのであります。ただ、中間報告にも言っておるように、丸紅ルート、それから全日空ルートに関しては、PXL問題については容疑がありとは認められないということを報告してございますね。もし容疑が、事実が出てくるとすれば、それは第三のルートであると、児玉小佐野ルートであると、こういう意味でああいう報告をしてございますわな。そうして、いま鋭意捜査中であるけれども、現在の段階においては犯罪容疑があると、こういうふうに検察当局認識をして報告をしている、そして私はそれを受け取っているということではありませんと、こういうことでございます。
  20. 久保亘

    久保亘君 ただ、この事件の全体を解明していくという立場に立てば、PXLの問題は、丸紅全日空ルートでその犯罪容疑の事実は出てこなかったけれども、児玉小佐野ルート追及していく中では、当然PXLの問題を避けて通ることはできない、こういう点では、中間報告の考え方というのはそういうことだというふうに理解してよろしゅうございますね。
  21. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) そう御理解願って結構だと、私自身は思っております。
  22. 久保亘

    久保亘君 次に、小佐野捜査関連をして捜査容疑事実は偽証罪偽証疑いですね。しかし、実際にはいま言われるように、この偽証を突破口として広範な捜査を進められているものと思うんです。  その場合に、単に児玉小佐野というルートだけではなくて、いまや彼の果たした役割りがコーチャンの回想記などやその他いろいろな問題を私ども検討してみるときに、児玉小佐野ルートというだけではなくて、小佐野政界との関係における新しい一本のルートを設定しなければならないような状況も考えられるようになってきているのではないか。そのことが、稻葉法務大臣が非常に大胆に述べられて、入り口や座敷に上がっただけで引き返すわけにはいかぬ。偽証罪による在宅起訴だけでは済まないと思うがという質問に対して、それはそうだ、それだけで引き上げることを前提に捜査に入ったわけじゃない、こういうことをあなたおっしゃっておりますが、そのことはこの小佐野取り調べ進展によって、当然そこから新たな贈収賄罪が考えられる。その点についてもいまその犯罪容疑があるとかないとかいう問題じゃなくて、そういう点についても十分捜査に当たっては考えながら捜査をしていかなかればならない問題だと考えて、あのインタビューでは述べられているんでしょうか。
  23. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 偽証罪容疑大久保を逮捕し、捜査したときは、本人が健康体でありましたから、身柄を拘束してやりましたけれども、この場合は二人とも非常に重病なものですから、身柄を拘束するというわけにもいかないということで、そこで突き当たっていると。しかし、本来健康体であるならば、単に偽証罪というのみならず、それに絡んで大久保の場合と同じような方向にいくことは、当然だれでも考えられることですね。そういう意味でその発言になっていると御理解願いたいと思います。
  24. 久保亘

    久保亘君 まあそういうことでありますと、やがてこの児玉小佐野ルートについては身柄拘束による捜査が可能になれば、新たな贈収賄ロッキードに絡む新たな贈収賄事件に発展する可能性を持つものだと私どもも思うわけです。だから、その辺のところでは、あなたもこれは断定をされているわけじゃないでしょうけれども、小佐野捜査は、金の出ようによっては政界に波及するだろうと、こういうことも述べられているわけであります。そういう意味では、児玉小佐野ルートというのが、いまや新たにそこから派生する一本の小佐野ルートをつくるに至る、こういうことで、この事件はきわめて重要であると思うわけです。  そこで、小佐野強制捜査に踏み切られた後、この捜査の一応の決着は大体どこでつけられるのか。いままでいろいろなところで述べられているのでは、一月二十七日の田中角榮公判までには一応この捜査決着をつけて結論を出したいと、こういうことのようでありますが、そういうことで進んでいるのかどうか、そして、小佐野賢治捜査に伴う起訴の見通しはどういうふうになっているのか、その点をひとつ御説明いただきたいと思います。
  25. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) その点に関しては、選挙中何かこう報告があったかどうだったか、そして開票のときにひやひやしたものですから、もう忘れましたね。ですから、引き続いて残る、引き続いて残ってこれを徹底的に究明する——私はもう明日やめるんですが、引き続いてやる刑事局長からその点について説明させます。どうぞお許し願いたいと思います。
  26. 安原美穂

    説明員安原美穂君) すでに公になっておりますように、小佐野賢治偽証容疑につきましては、ロサンゼルスの空港で二十万ドルを受け取ったというようなことが認められる容疑があるにもかかわらず、国会で、その金銭の授受は一切ないというような証言をしたというようなことを中心としての偽証容疑強制捜索をいたしたわけでございますので、鋭意その点について捜査中でございますが、起訴の見込みということにつきましては、なお捜査中である段階でございますので、いまこの段階起訴できるんだというふうに申し上げるのは差し控えたいと思いますし、いつ終わるのかということにつきましても、捜査は相手のあることでございますので、いつ終わるかということを申し上げるべきではないと思いまするが、たてまえ上、できるだけ早く容疑の認められる者につきましては適切な処理をするということがたてまえでございますので、いつまでということではなくて、できるだけ早くこの点についての容疑有無を明確にして、起訴の適否を決めるという方向で進んでおるということで、御理解をいただきたいと思います。  なお、一月二十七日には、田中角榮総理収賄被告事件等公判があるわけでございまして、その段階において、検察官訴訟法の定めに従いまして冒頭陳述ということを行いますと、そこでいかなることを検察官は今後の公判で立証していこうとするかという骨組みを、事実に即して申し上げるという段階に相なるわけでございまして、そういう意味で、徐々に証拠関係等弁護人被告人に開示していくというようなことにも相なりますので、その関連するような事件につきましては、できるだけそういうことで自然に捜査内容が公になっていく段階までに、密行をたてまえとする捜査はできるだけ終わらしてしまうというのが、捜査の便宜からいっても当然のことでもございますので、一月二十七日の公判ということまでには、何とか全貌検察の能力の範囲内において、全力を尽くして究明をしていきたいという方向で進んでおることは事実でございます。
  27. 久保亘

    久保亘君 それでは次に、十月十五日の中間報告の中で、課題として残されましたいまの児玉小佐野ルートの問題以外のところで少しお尋ねをしていきたいと思うんでありますが、一つは、「田中の収受したと認められる五億円の使途についても鋭意捜査をいたしましたが、その個別的な使途を明らかにすることはできなかった」、こう述べられておりますが、この点に関して、国会質疑の中で安原刑事局長の答弁のニュアンスは、少し——全然わからなかったという意味ではないようであります。そして、この個別的な使途は明確にできなかったとしても、田中に渡った五億の金が田中からどこへ行ったのか、そのことについては検察当局としてはおおむね掌握をされている、そして、これは公判に当たって明らかにされるものだというような意味のことを述べられておりますが、その点については、いまここでお述べになることがむずかしければ、それは公判廷においては明らかになる問題だと、こういうふうな理解をしてよろしゅうございますか。
  28. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 中間報告の際にも申し上げましたように、またそれ以前にもしばしばお尋ねを受けまして、五億円の使途はどうなっているのかというお尋ねがございましたので、五億円というものが賄賂であるという検察当局判断を支える資料としても、それがどう使われたかということを捜査することは必要であろうということは申し上げたわけでございますが、その後の報告によりますと、先般も申し上げましたように、その五億円という金が行きそうなところ、田中総理の主宰せられる政治団体とか、あるいは後援会系統とか、あるいは自由民主党そのものとかいろいろ行くであろう、行ったのではないかと推測されるところで、検察当局でわかっておるような団体等につきましては、鋭意その会計責任者等につきまして捜査をいたしましたが、さような公になっておる団体には行っていないということだけは、消極的な意味において、そういうところには行っていないということは明らかになったわけでありまするが、具体的にどの人に渡ったかということは、結局究明ができなかったということは、国会でも申し上げたとおりでございます。  要は、検察期待を寄せられる国民期待に何とかこたえたいというのが検察当局の熱意でございまするが、検察万能ではございません。と同時に、金という番号のついてない物の行方というものを捜査することは、きわめて困難なことでもございまして、結局万能でない検察としては、その行方を具体的に究明することができなかったということを正直に告白を申し上げて、遺憾ながらはっきりできなかったと報告をした次第でございます。それにつけましても、久保委員お尋ねは、五億円の概括的な具体的な、名前はわからなくても、使途については公判廷で何らかの陳述が行われるのかというお尋ねでございますが、これはこれからの公判における冒頭陳述内容にわたることでございますので、法務当局を代表いたします私として、検察官冒頭陳述内容をここで申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  29. 久保亘

    久保亘君 十月の十五日、上田哲委員の質問に答えられているあなたの答弁は、「五億円の趣旨が請託収賄であるということを立証するための資料は十分に収集いたしますとともに、これを近く開かるべき公判廷において明らかにしていく事柄でございます」、その質問は、五億円はどうなったのかという質問なんです。そのように答えられて、そして、いまそのことを明らかにすると将来の裁判に影響するということで報告の中には盛り込んでいないんだと、こういう答弁を局長はされておるわけです。  これ、議事録を私はいま見て質問をしているわけです。だから、当然に五億円のその個別的な細かい行き先はわからなくとも、大体これは何に、という目的で使われていったかというようなことについては承知をされているのではないか。そうでないとするならば、受け取ったことだけわかって、その五億円どこかで蒸発した、こういうことになれば、この一月二十七日に始まる田中角榮公判の維持が大変むずかしくなるんじゃありませんか。それはそういうふうにお考えになりませんか。だから、当然検察当局としては、その金が田中角榮を通過してどこかへ行った、細かくはわからぬが、大体何の目的に金を使ったんだということについては、承知をされた上で起訴をされたものではないんですか。
  30. 安原美穂

    説明員安原美穂君) いつも申し上げますように、五億円の使途というものが具体的に明確になるということが贈収賄罪捜査の完璧を期するという意味においては、百点満点の捜査をするという意味においては、そこまでが明確になることが最も望ましいわけでありまするが、先ほど申しましたように、そういう使途は明確にならなかったという意味において、百点満点とはいかぬにいたしましても、その使途が明確にならなければ、その授受された金銭の立証自体ができなくなるということでもないわけでございまして、遺憾ながらその点につきましては見解を異にするものでございます。
  31. 久保亘

    久保亘君 本人は、その金がどこへ行ったかあなた方わからぬから、機関紙「越山」に、私は、政治献金は一切受け取っていないと。それはもちろん賄賂だから、政治献金は受け取っていないと言っておられるんだと思いますけれどもね、受け取ったのが賄賂で政治献金ではないから、政治献金は受け取っていないという論理は一応成り立つと思うけれども、しかし、完全に本人は否定されておりますね。本人が完全に否定されているものが、その五億円、どうももらったらしいがどこへ行ったかはわからぬ、いまもどこか田中邸の一角にその五億円はあるのかどうか、それはわからぬ、こういうようなことになりました場合には、公判の維持というのは非常に困難になるのが私どもの常識なんですがね。その辺はいまお答えがしにくければ、大丈夫だと、こういうことはお答えになれますか、公判維持については検察側としては十分な自信を持つということなんでしょうか。
  32. 安原美穂

    説明員安原美穂君) いろいろ御示唆を賜りましたが、検察当局報告によりますると、この事件の公訴の維持については万全の自信を持っているということでございますので、その言葉に期待をいたしたいと思っております。
  33. 久保亘

    久保亘君 次に、この中間報告の中で、三十ユニットの刑事訴追を免れたその五名について触れられておりますが、そのうち一名は田中角榮でありますから、あとの四名については、その後国会判断と要求に基づいて氏名を公表されたわけです。その四名の人たちについて、国会がその資料を必要としたのは、政治的道義的責任を明らかにする、こういうことであったと思う。で、国会の政治的道義的責任があるという判断に基づいてあなた方は事実を公表された、氏名を含めて。であるとするならば、これらの人たちの政治的道義的責任というのは、これから国会において明確にされなければならない問題だと私ども思っております。法務大臣は、政治的な問題としてこの氏名を公表をしたことによって、政治的道義的な責任が終わったとはお考えにならないと思うんでありまして、この政治的道義的責任究明は今後行われるべきものだというこの考え方については、御理解いただけますか。
  34. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) しばしば私から申し上げましたように、法務・検察当局の職責は刑事責任追及であって、道義的政治的責任追及などということを検察がやったら、それは行き過ぎである。検察ファッショと言われても仕方のないことである。政治的道義的責任追及国会の任務と、それに対して御協力を申し上げるという義務を議長裁定によって負うた。したがって、しばしば申し上げましたように、国会がいかなる標準で、基準で道義的責任がある。政治的責任があると、こういう御判断で、こういう基準で道義的政治的責任があるとわれわれは判断するから、それに必要なこういう資料を出せということについては御協力を申し上げて、ああいう一種の基準をロッキード対策特別委員会において委員長から、そういうふうに判断するからその人名、金額等を言えと、こういう御判断でございましたから捜査の結果を御報告申し上げた。しかしそれは秘密会において御報告申し上げた。決められるのはあくまでも国会であり、それを公表されるのもあくまでも国会であって、われわれの任務外のことであるということをこの際また改めて申し上げ、今後、あれによっていかなる道義的責任政治的責任追及をこれからなお展開していかれるかどうかは、国会の御判断でおやりになるべきことではないかと私は思っております。
  35. 久保亘

    久保亘君 そこへ法務大臣稻葉じゃなくて政治家稻葉、国会議員稻葉修さんとしての判断が必要になってくるわけでありまして、あなたは選挙を終わってから、期せずして、あなた、選挙では捕らえた方と捕らえられた方とが選挙区を隣同士でやられたわけですよね。そして結果は国民から見ると大変遺憾な結果が生まれた、こう思っておるんです。そう思わない人もいるかもしれませんよ。しかし、われわれはそう思うんです。捕らえられた方が、これは灰色じゃなくて黒であり、しかも三十ユニットに対して灰色であり、黒と灰と重ねたらどんな色になるのか知りませんが、そういう人が圧倒的な票で当選をする。  なぜそれじゃ捕らえた方のあなたは九十三票で上がったか。この問題について私は選挙技術を論ずるのでなくて、ロッキード事件解明というのについて、総選挙の前にやるべきことを三木内閣、それから法務大臣、そこのところで少し手控えた。少しじゃなくてかなり手控えてしまったために、国民が十分なロッキード事件に対する判断の材料を持ち得なかった。そのことから起こった現象とは考えられないのかどうか。これは選挙を戦われた政治家稻葉修としての感想を私は聞きたいと思うんです。
  36. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 現在法務大臣であるわけですね、まだ。その法務大臣は、検察当局指揮監督者として刑事責任追究の責任を負うておるという任務にいまあるのに、その任務を離れた後の衆議院議員あるいは政治家としてのおまえの感想を言えと言われても、こういう厳粛な参議院の決算委員会のこういう公の席上でそういうことを申し上げるととは、まあ差し控えさしていただけませんでしょうか。
  37. 久保亘

    久保亘君 いや、それはあなたが言わないと言われれば結構ですが、ただ、あなたは自民党の敗因は何かと聞かれて、灰色の者たちが謙虚に遺憾の意を表するんじゃなくて居直ったためだ、それが一つの敗因だということを言われておりますね。だとすれば、私はこれは稻葉さんでなくてもよかったんです。非常に象徴的な選挙が行われたわけです。捕らえた者と捕らえられた者とが隣り合わせて選挙をやったわけです。そして、その結果がまた一つの今度の選挙に対する私たちに重要な判断の材料を提供してくれた、こう思っておるんですよ。そういう意味では、あなたが言われるように私も、ロッキード事件にかかわった人たちの政治的道義的責任というものが徹底的に、三木さんがしょっちゅう言ってきた徹底解明、日本の政治不信を解消するためには、ロッキード事件を全部明らかにして国民に十分な判断をしてもらう以外にないんだと言っておられる、そのことをやらなかったために起こった問題ではないか、そうお考えになりませんか。
  38. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 自民党の敗北といいますか、人によっては、過半数いたんだから必ずしも敗北でないと言ってみたって、それはしようがないんです。私はやっぱり敗北は敗北として認めるべきだ。それはロッキード事件に関する犯罪捜査刑事責任追及が完全でなかった、はなはだ遺憾であると、責任者として。それは何としても、中心人物が重病であるという点はあったにいたしましても、現実の問題として残念である。それが解明されていれば、もう少しは当選者も多かったんじゃないかと率直に思うんですよ。しかも、まあそれにしても二山半ではあったけれども、自由民主党がもう少し反省して、ざんげして——さんげしてというか、そういう、まあ具体的に申しますれば、私ども、努力したこういう検察陣容を控えておる法務当局の者としてざっくばらんに言えば、ああやって国会も挙げて灰色ということについてあすこまでおやりになったんですから、道義的政治的責任追及をおやりになったんですから、そうしたらやっぱり、自民党の執行部も離党勧告をするとか何か方法があったんじゃないか、本人が聞くか聞かぬかは別として。そういうようなことは考えていますな。
  39. 久保亘

    久保亘君 わかりました。  それで、いまのことに関連して私聞きたいのは、その灰色高官として氏名を発表された人の中で、おれを取り調べたと言った検察官の罷免要求を行う、それから自分に賄賂を贈ったと供述をした者については告発したと、こういうことを選挙中に言っておられた方があります。そうすると、これらの人たちの検察官罷免要求とか、あるいは検察側が証拠の一つとした贈賄側の供述ですね、その供述者に対する告発というようなことが実際に行われておりますか、そのことの有無をお聞かせいただきたいと思います。
  40. 安原美穂

    説明員安原美穂君) そのような事実は全然ございません。
  41. 久保亘

    久保亘君 すでに行ったような話もありますし、それから検察官罷免要求はもう早くから言われておりまして、断固としてやるという大変強いけんまくで選挙中もそれを主張して回られた方もあります。そういう事実が全くないということになれば、いよいよこれらの人たちは、今度はロッキード隠しから選挙中自分の立場を逃れるためにそういう主張をしておいて、終われば、今度は罷免要求をしたり告発という立場をとれば、その審議やその公判を通じて事実が明らかになることを恐れて、終われば今度は黙して語らずと、そういうことで政治的道義的責任を逃れていこう、こういうようなことは私は許せないと思う。  だから、こういう人たちについては政治的道義的責任というのが、いまも稻葉法務大臣が言われたように、政党としてももう少しきちんと問われにゃならぬ問題だと思いますから、引き続きこの問題については、いま検察側は国会の要求に基づいて事実を公表されたんですか、その政治的道義的責任について、国会が徹底的にこの問題は証人喚問等を通じて追及していかにやならぬ問題だろう。これは私の意見を申し上げておきます。  それから、九十ユニットについては人権の問題もこれあり、これは氏名の公表はできないということで臨時国会を終えたわけです。ところが考えてみると、この九十ユニット十三人のうち三人は公表されているわけです。これは三十ユニットと連結した者についてはすでに公表されたと同じ結果になっております。だから不明の者は十人しかいないわけであります。  そうすると、九十ユニットにかかわった人たちが全く同じ条件であるとするならば、同じ扱いでなければならないとするならば、十三人のうち三人だけは氏名が公表されて、その事実も公表されて金額も公表されたことになる。十名の者についてはそれを公表できない、そういう論拠はなくなってくると思うんですが、九十ユニットについても当然に氏名を公表すべきものではありませんか。
  42. 安原美穂

    説明員安原美穂君) しばしば久保委員が御指摘されるのではなはだ私どもとして困ることは、検察当局はあくまでも氏名は公表したことはございません。  たびたび大臣申されておりますように、検察の役目は刑事責任追及でございまするから、政治的道義的責任追及の役目ではない検察が発表すれば、政治的道義的責任があるということの判断に立ち至るような環境下において、公訴を提起しなかった人の氏名を公表するということは絶対に避けるべきだというのが一貫した方針でございまして、したがいまして、国会でこれは政治的道義的責任があるんだという基準、いわば刑罰法規で言えば構成要件をお決めになった上で国政調査に協力するためにできるだけ協力しろということであれば、議長裁定もこれあり、秘密会においてその氏名と事実を申し上げる、しかし、それを公表するかどうかはあくまでも国会の御判断でやっていただきたい。その場合には、国会当局としても、その事柄が道義的責任の存在を天下に公にする以上は、その事実の確定について適正な手続を踏んだ上でおやりいただくことをお願いいたします。  私どもは検察の権限を越えるようなことはいたしかねますということでございまして、三十ユニットにつきましてはトライスターの売り込みに関係があるものとして、衆参両院のロッキード特別委員会で政治的道義的責任があるという基準に合致するから協力しろということでございましたので、秘密会を要求いたしまして、その氏名と事実を申し上げた。そして、公表するかどうかは国会の御判断でやっていただきたいということで、衆議院ではその氏名を公にされるとともに、その灰色だとされている方の弁解を聞いて、それも公にされたということでございます。  そういう意味におきまして、九十ユニットにつきましては、三十ユニット同様、検察としては公訴を提起していない者につきまして、それを公表するということは絶対にこれを避けるべきだという方針、何ら変わりはないわけでございまして、仮にそのことについて資料を提供する機会があるとすれば、まず九十ユニットに該当する人が政治的道義的責任があるんだということにつきまして国会御当局で御認定をいただいた上で、政府当局に協力を要求される段階においてどうするかを考えたいというふうに考えておる次第でございます。
  43. 久保亘

    久保亘君 いや、そう言われますけれども、すでに三十ユニットの関係者で九十ユニットにも重複して関係する者はこれこれこれであるということを発表された上で三十ユニットの氏名を公表されましたから、九十ユニットに関係する者三名は、これは検察当局の発表と同じ結果で明確になっておるわけです。それはそうですね。その点はそういうふうにお考えになりませんか。
  44. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 三十ユニットにつきましては、検察当局捜査をした結果の一応の判断を申し上げたわけでございまして、公表されたのは国会の御判断でございまするから、その結果、検察の言った事柄をそのまま公にされたという意味において、国会御当局では検察報告を公表してしかるべきだと御判断をなさった結果でございまして、結果的には検察が発表したことと同じようなことにはなっておりまするが、あくまでも手続なり、その過程におきまして国会当局の御意思と御判断において発表されているという意味において、きわめて重大な点において検察が発表したとは違う点がございます。
  45. 久保亘

    久保亘君 わかりました。九十ユニットについて、国会の政治的道義的責任があるという判断に基づく要求があれば発表できるということでありますから、これはこちら側の問題として承っておきます。  ただ、事実としては、三十ユニットに関係をした者で九十ユニットに関係した者は、九十ユニットの中身も明らかになっているわけでありますから、そういう意味では十三人のうち三人は発表された者と同じ結果になっておる。この点については明確にしておかないと、今後人権上の問題という論拠はもうすでになくなっておるわけですから、これは十三人のうち三人だけが出ているということでありますから、国会審議の議事録を、これも推論によったのではなくて、国会の議事録をずっとつなぎますと、明確にあなたの方で指摘されたことになっておるわけです。だから、その点についてはそういうことで、ひとつもう少しこれは御検討いただかにやならぬ問題だろうと思います。  それから、中間報告関連して、最後に児玉小佐野については、小佐野については、たとえば家宅捜索などをおやりになった。児玉は臨床尋問をやられてきた。小佐野も臨床尋問をやられてきたんですが、十月十五日以前と以後に分けて、児玉小佐野の臨床尋問は何回行われたのか、御報告をいただきたいと思います。
  46. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 捜査当局に聞けばわかることかもわかりませんが、いまのところそういう日を分けて報告は受けておりませんが、今日までに児玉につきましては六十数回の取り調べをやり、小佐野につきましても二十回になんなんとする取り調べをやっておるというふうに報告を受けております。
  47. 久保亘

    久保亘君 そうすると、児玉小佐野の病状が児玉小佐野ルート解明に当たって最大の障害である、こういうことを言われておりますが、この障害は、現状もなお取り除くことのできない非常に困難な状況にありますか。  それから、定期的に検察側も健康状態を専門家に検討させられておるのかどうか、その点をお答えいただきたいと思います。
  48. 安原美穂

    説明員安原美穂君) いま申し上げました取り調べの都度、事前にそれぞれの主治医の判断を経て、そして主治医に別室に待機してもらって取り調べをしておるという状況でございまして、児玉譽士夫につきましては、きわめて重い脳血栓後遺症がございますし、小佐野賢治につきましても、狭心症、高血圧症でございまして、聞くところによりますと、取り調べ中も最高血圧が二百四十から二百十という状態になるそうでございます。通常勾留いたしますときに、血圧が二百を超すと大体勾留執行停止になっておるというような状況でございますので、拘置に耐え得るような状況ではない。何分にも事柄がきわめてシリアスなことの取り調べでございますので、こういう健康状態ではなかなかシリアスな取り調べは困難であるということは常識として御理解いただけるんじゃないかと思います。
  49. 久保亘

    久保亘君 これは稻葉法務大臣お答えいただきたい。むしろ三木内閣立場ということでお答えいただけばいいと思うんですが、中間報告の中に、「政府としては、この不幸な事件を契機として、この種不正事犯の再発を防止するため、関係各分野において立法措置を含む所要の方策につき積極的な検討がなされるべきものと考え」る、こういうことを述べられておりますが、政府自体の再発防止措置の検討は、この中間報告以後二カ月余りにわたってどのように進められてきたのか、そして、今日どういうものが具体的に用意されつつあるのか、その点をひとつ御報告いただきたいと思います。
  50. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) いわゆるロッキード問題の規模、それから関連する分野、単に法務検察当局だけでなく、いろいろ関係する分野があるわけですが、それを考慮いたしますと、政府として方策を検討する範囲は多岐にわたると考えられ、今後関係分野において、広範にわたりこの種不正事犯の再発の防止のため積極的な検討がなさるべきものと考えられます。  法務当局といたしましては、現在刑法全面改正の作業を行っておりますが、その中で、すでに収賄罪の法定刑の引き上げ、これが実現されれば公訴時効の期間が延長されることに相なります。周旋第三者収賄罪の新設などを検討しております。また、多国籍企業の不正行為の防止については関係省庁と協議しつつ国際間の捜査、司法共助体制及び犯罪人引き渡し条約の整備などを考慮しており、今後これらの点についても十分な検討を行いたいと考えております。
  51. 久保亘

    久保亘君 それらの検討は具体的に何らかの機関を通じてかなり進んでおって、新しい内閣にその作業がスムーズに引き継がれる段階まで来ておるわけですか。
  52. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) ロッキード問題の徹底解明ということについて、次の内閣がしっかりやってほしいという三木総理の提言もこれあり、かつて三木内閣の副総理をしていられた次の総理と目される方も、当然にそういう提言をきわめて妥当な提言だと、こう言うておられますから、引き継がれるものと私は確信いたします。単に解明のみならず、再発防止ということは、私ども法秩序維持担当省としてはきわめて望ましいことでございますから、久保さんのおっしゃるとおりに、当然引き継がれるべきものだと私も考えます。
  53. 久保亘

    久保亘君 ところが私どもは、三木内閣稻葉法務大臣のもとでも、いわゆる三木・稻葉コンビでもこのロッキード事件解明は、あなたの党内のいろいろな紛争などによって必ずしも順調に進まなかった、国民期待にこたえられなかった、こう思っているんです。しかし、それにもかかわらずあなたは、三木・稻葉コンビであったからかなりよくやれたと思うという言い方でもって、この挙党協が、もしこれは福田さんがなるかどうかわかりませんよ、しかし挙党協を中心とする内閣が生まれた場合には、ロッキード事件解明が三木・稻葉コンビが考えていたような方向で進んでいくだろうかというある種の危惧を逆説的に表明をされているのではないかという気持ちで私は読みました。  これは大変意地の悪い言い方かもしれませんけれども、しかし、それを裏づけるようにあなたはこういうことを言われたんです。七月の二十七日を境にして非常に自民党内がおかしくなり、ロッキード事件解明の矛先が鈍ってきた、しかも拘置期間が切れて目白に帰ってから——目白に帰ったんですからだれかわかりますね。目白に帰ってから急に動きが妙なことになった、保釈後だ、どうも出てきてから影響力を及ぼす活動があったようだ、こういうことを言われております。そういう動きの中で挙党協が生まれて三木おろしの一劇が始まり、そして臨時国会の会期末近く、ああいう状態でロッキード事件解明を求める国民の声を無視して、事件は一時たな上げされた形で総選挙に入っていったわけです。  で、そういう点では私は、あなたがそういう前提を置いて三木・稻葉というのは非常にこの事件解明にはやりやすかった、こう言っておられることは、今後に対する深い危惧が残っているのではないかという感じを持つわけなんです。その点は大丈夫ですか。
  54. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) とにかく第一の山、第二の山については刑事責任追及が行われ、起訴も行われているんですから、第三の山は、遺憾ながら中心人物が先ほど刑事局長が言ったように重病であって、身柄拘束してシリアスな取り調べができないという段階で停とんしているけれども、健康が回復すれば、どういう人がなってもここまでくれば逆流するとかそういうことは考えられませんね、私。  まあ、いろいろな私の談話みたいなことを言われましたが、しかし私どもは三木さんも総理だったから、法務大臣としてはやりやすかったと思っています。とにかく一切の政治的介入をしないからと言うんですからね。ですから、前総理の逮捕状を請求する、許可願えますかというようなときに、本来ならば総理とか副総理とか、関係する大蔵関係あるいは警察担当大臣とか、そういう人に、まあこういうことになっているが、私はこれは許可すべきものだと思うけれども、法の前の平等性を崩すわけにいかぬから御了承願いたい、こういうようなことをやってやれないことはありませんけれども、まあ三木さん全部任せると言うんだから、私の独自の責任において、いろいろなことは聞きましたが、起訴の確信があるかとか、起訴した後の公判維持の確信はあるのだろうかなというようなことは聞きましたけれども、それならばよろしいと、その日の朝総理に電話で報告したというような態度をとれたのは、三木さんの姿勢が徹底究明という厳然たる態度であったからやりやすかった。そういう意味では三木・稻葉コンビというものはやりやすかったかもしらぬ。  まあその後、いろいろな動きがあったように私には感ぜられますけれども、それにしても橋本、佐藤の起訴までいきましたしね、それから、不起訴にはしたけれども、時効になった者これだけ、それから職務権限なき者これだけということもわかりましたし、相当な解明が進んだ。ただ遺憾ながら児玉小佐野ルートについて解明がおくれたのは、やはり国際犯罪であるもんですから、捜査当局も日米協力——向こうも非常な抵抗をしましたからね、国際協力をもって抵抗してきましたから。クラッター、エリオットの証言拒否だとかいろいろなことをやってきましたから、時間が長くかかって、ついに総選挙前に、一番国民判断を求めるチャンスまでに第三のルートまで解明できなかったことを、先ほど申し上げましたようにはなはだ遺憾であったと、こう申し上げているんでありまして、ここまでくれば、三木・稻葉ラインとか安原ラインとか布施ラインとか、それは布施・安原ラインというのは残るんでございますから、そしてそれは独立性、中立性をもって厳然としていままでやってきた実績に徴してひとつ御信頼いただいて、もうこの辺で御解放願いたいと、こういう次第でございます。
  55. 久保亘

    久保亘君 検察当局の今後の取り調べを私はいまから予測してどうこう言うわけじゃありません。しかし、私は非常に気がかりな点は、あなたが言っておられるそのこととあわせて、もし挙党協の推挙する首班が生まれた場合どういうことになるか。原則的にはおれも徹底解明だということを言ってこられたけれども、一方では、私は具体的には何も聞いておらぬから知らぬと言っておられます、ロッキード事件については。まあ悪い言い方をすりゃ、あれは三木と稻葉がやっておることで具体的なことは知らぬと。中間報告も閣議では紙切れ一枚か一枚半ぐらいで稻葉法務大臣報告したんで、出たのを見てえらい中間報告は分厚いもんだなと思ったというぐらいの話なんですよ。そこに一つ問題がある。それと、挙党協を支えた長老の代表的な人が、今度の総選挙のときに三十ユニットのある灰色高官の後援会に出席をされて、福田内閣ができれば彼は大臣を約束されているという推薦の演説をされたというのを私は読んだ。  そういうことになってまいりますと、もうとてもじゃないが、あなた方でも私たちは非常に大きな不満を持っているのに、ロッキード事件いよいよ幕引きへ向かって進むんじゃないかという国民の疑念が残るので、最後にこの問題について私がどうしてもあなたの責任を問いただしておきたいのは、こう言われたんですよ、中間報告のときにね。ロッキード事件の政治報告もいずれはやります、これはあなたですよ。いずれはやりますと。そして国民の知る権利にこたえた、判断の場は、総選挙ということは国民の意思表示、判断表明のいい機会ですから、政治家として言うならば、それまでにはひとつこの捜査について報告ができるようにしてもらいたいものだという希望を強く持っておりますと。これはあなたの言われたことですね。  それから、三木総理大臣もこういうことを十月の二十二日に言われておるわけです。「捜査が完了した後においてロッキード真相というものは初めてわかるわけですから、」いま捜査が完了していないときに、これは中間報告は全部とは言えません、しかしまだ総選挙の前の時点で総選挙に臨む場合においては、その時点における一つの、時点を踏まえた何らかの報告をする必要が起こるでしょう、こういうことを総理大臣も言っておられる。あなたはいま私が申し上げたようなことを言われた。ところがこの約束は、党内のどういういきさつがあったか知りませんが、これはついに日の目を見ずに終わったわけであります。そして国民は、非常にあいまいな中間報告を受けて総選挙判断をしなければならないということで終わったわけであります。  しかし三木内閣は、稻葉法務大臣は、この総選挙が終わってもなお事件解明を徹底的に続けて、そして捜査を完了したら全貌を明らかにして、国民判断を仰ぐに足る政治報告を行いますということを言ってこられたわけであります。残念ながらあなた方は、実質は明日をもって、形式的には明後日、閣僚の座を去られるわけでありますから、その約束は、もし自民党内閣が引き続き政権を担当するという場合には、同じ自民党だから心配ないという理屈もあるかもしれません。しかし、これまでのロッキード事件をめぐる党内の政権抗争を私どもが見てまいりますと、これはわれわれ野党ならずとも、国民も深い疑念を持たざるを得ないわけです。  そこできょう三木総理大臣の御出席を願えませんから、稻葉法務大臣に、ぜひ自民党内閣責任としてこの場でやってもらいたいことは、ロッキード事件全貌解明する政治報告は、これは内閣がかわろうとも政府の責任としてわれわれがやりかけた方針に基づいてきちんとやりますということと、それから今後の事件捜査に関して、こういう問題については絶対に政治的な配慮を行ったり捜査を鈍らせたりしてはいかぬという問題があると思う。だから、ロッキード事件をこれまで担当された責任者として、いよいよその責任の座を引くに当たって、自分がいまやらにゃならぬ責任国民に約束してやれなかった問題、そして、次の内閣に政治生命をかけて引き継いでおいて、それを絶対にやらせにゃならぬ問題というものがあるだろうと思う。そういうことについて法務大臣の確固たるひとつ決意を表明しておいていただきたい。責任を持ってやっていただきたいと思う。
  56. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 久保さんのおっしゃられることはきわめて大切なことであり、私もあなたの意見と違いません。  徹底究明がされた暁には、ロッキード事件というものはこういう事件であったということを総理として国民に公表すると。遺憾ながら、選挙がこういう結果になりましたものですから責任をとってやめるけれども、今後の内閣はそういうふうなことをやってくれということを提言して引き下がるわけであり、かつ、この総選挙の結果について自由民主党も今度はよく反省をして皆さん、こんなこっちゃやっぱり国民から批判されるなということをよく踏まえて、党の結束をかたくして、総理提言である徹底究明のために今後これを継続して、全貌解明後はこれを公表するということに私どもも責任を持たなければなりませんし、総理——いまの総理ですよ、も党員として残られるわけですから、責任を持つべきであり、また新しい内閣も新しい党の執行部も、この選挙の結果を見れば、いかに病気とはいえ、第三のルート解明できずに国民判断を仰いだことが敗北の結果であり、かつ党内のそういう点についてのいわゆる分裂選挙なんというものが、何だかロッキード解明について徹底的にやろうというものについて水を差すというような印象を国民に与えて敗北したんだという点についてもよく反省をして、当然七月には参議院の選挙もあるわけでありますから、もしそういうようなことについておかしな態度でぐにゃぐにゃわけのわからぬことになれば、さらに大敗北になるということくらいは皆知っておりますから、きちんとやってくれるものと確信をいたします。私どももきちんとやってもらわなけりゃならぬ、党に残ってそういう責任を果たさなけりゃいかぬと、こういうふうに思っております。
  57. 久保亘

    久保亘君 ただ、あなたのいまの自民党敗北の原因に対する見解は私は少し違うんですね。もし第三のルートもきちんと解明をしておったら、さっきあなたがざんげ、さんげと言われたが、自民党は本当に散華しただろう、華と散ったに違いないと私思っているんです。それでその点は少し違うんです。しかし灰色高官などが居直って当選をするというようなことは、解明が不徹底に終わって国民に十分な判断をしてもらうことができなかったという点については、私はあなたと意見が一致するわけです。いま言われたようなことをぜひ私はもう少し具体的な問題として、三木さんがただ政治的遺言の中に、ロッキード事件徹底解明をやらにゃいけませんということを書いて渡されたって意味がないと思うんです。そうじゃなくて、私が内閣責任においてやるべきであったロッキード事件解明に対する政治報告、これは次の内閣が速やかに行うべき課題であるということを明確にしてもらいたい。  それから、その政治報告を次の内閣ができるだけ早く行う任務を持っているということと同時に、その政治報告に至る間、徹底的に児玉小佐野ルート解明のためにいかなる政治的介入も行わず、検察当局徹底解明を行わせるということ、それから、この事件関係をした者の政治的道義的責任については、国会において今後証人喚問等を含めて十分にその政治的道義的責任が明らかにされるものと考えると、そうされなければならないというような問題について、三木さんはそれこそ自分の政治生命をかけてやってきたんだから、政治生命をかけて次の首班に政治的遺言を残すべきだと、こう思います。ただ、ロッキード事件解明は徹底的にやりましょうと、そんなありきたりな言葉でやられたってだめなんです。だからいま私が言いました、事件全貌国民に明らかにすることができる、そして今後のこの事件の再発を防止するための取り組みとか、そういうものを含めた、そして汚職の構造に迫る政治報告、これを必ずやりますということが一つ。  それからもう一つは、事件捜査については一切の政治的介入を行わず、徹底的な解明を行わせる、そして政治的道義的な責任国会責任において明らかにされるよう協力しますと、証人喚問も含めて。そういうことをぜひ私は責任を持って言い残してやめてもらいたい、こう思うんですがね。
  58. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 久保さんの挙げられた具体的な御要望については、私、ごもっともだと思うんですね。ただ、中には総理とか法務大臣とかでなく、国会がやるべき任務の具体的な提言もあなたからございましたから、それはひとつ国会においておやりになっていただきたい。しかし、自民党の内閣がこの問題について、三木内閣が他の内閣にかわったために政治的不介入の原則を崩すとか、そういうことがあっては断じてならないという点については、全く同感です。
  59. 久保亘

    久保亘君 それでは稻葉さん、法務大臣をおやめになりましたら、この事件の政治的道義的責任解明について、もしこの国会が、参議院等が協力を求めます場合には、あなたに許された範囲で、そのことに対しては積極的に御協力いただけますか。
  60. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 法手続上許されたことについて協力を惜しむものでないことは、当然なことでございますな。
  61. 久保亘

    久保亘君 たとえば、いかなる形式をとるかは別にして、もしわれわれが今後の捜査や政治的道義的責任追及などに関してあなたにいろいろ意見を求めたり、この事実関係について供述を求めたりすることが必要になった場合には、当然御協力をいただけるものと考えてよろしゅうございますか。
  62. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) よろしゅうございますな。証人喚問等がございますれば、必ずしも拒否するものでもございませんしね。しかし、まあしばらく休ましてください。(笑声)
  63. 久保亘

    久保亘君 時間がなくなりましたので、最高裁見えておりますか。——あと志苫委員の方からまたいろいろ御質問があると思いますが、最高裁が鬼頭判事補について訴追要求を行われたんでありますが、この訴追要求の根拠を少し詳しく説明をしていただきたいと思います。
  64. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 鬼頭判事補を訴追いたしましたことはすでに御承知のことと存じますが、その根拠というお尋ねでございますが、すでに御承知のとおり、いわゆる三木総理に対して検事総長名で電話をしたそのテープを読売新聞社に聞かせたということを理由といたしまして、訴追要求をいたしたものでございます。
  65. 久保亘

    久保亘君 そのテープを読売新聞社に聞かせたと、理由はそれだけで訴追要求を行われているわけですか。
  66. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 仰せのとおりでございます。
  67. 久保亘

    久保亘君 この鬼頭判事補の問題については、そのテープを聞かせたというだけではなくて、国会での偽証による告発とか、それからそのほかにもいろいろな事件があって、そういうものを総合的に最高裁としては判断されたんじゃないんですか。そのテープを読売新聞社に聞かせたと、それだけがその訴追の理由ですか。
  68. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 先ほど申し上げたとおりでございます。ただいま御指摘の国会における宣誓拒否の問題につきましては、すでに国会から告発がございまして、検察の方で捜査を進められておることでございますので、最高裁判所といたしましては、その点について訴追の理由と根拠ということにはいたしておらない次第でございます。
  69. 久保亘

    久保亘君 それじゃ検察当局の方で、国会告発に基づく取り調べの状況を御報告でさましたら報告してください。
  70. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 十一月の十三日に議院証言法違反、具体的には宣誓拒絶の罪の疑いで参議院ロッキード特別委員委員長及び参議院法務委員委員長の名で告発がありまして、東京地検では現在、そのほかにも鬼頭判事補につきましては民間の方から公務員法違反、職権乱用の罪ということで、いわゆる刑務所の資料入手に関する告訴、告発もございますので、あわせて目下捜査中でございます。
  71. 久保亘

    久保亘君 それじゃ時間が参りましたので、私の質問をこれで終わりますが、稻葉法務大臣、長い間大変御苦労さまでした。ただ、私が先ほど申し上げましたことについて、海部さんが、三木首相は壮烈な最期ということをしばしばテレビなどで言われておりますが、私は壮烈な最期になっておらぬと思うんで、いま申し上げましたようなことをきちんとして、せめて何か一つぐらいは壮烈という名にふさわしい退陣をやってもらいたい、こういう点で、ひとつこれまで健闘されました法務大臣の方からも、内閣全体の責任として強く主張していただきますようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  72. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) しかと承知をいたしました。
  73. 志苫裕

    志苫裕君 先ほどの法務大臣自身の発言の中にも、あすかあさってはもうおやめになると、こういうことでありますから、大変どうも御苦労さまでした。しかし、断っておきますが、労はねぎらいいたしますが、必ずしもほめるというわけではないわけであります。で、わずかな時間の間にいろんなことをお伺いするのも恐縮でありますが、いま久保委員からもいろいろお尋ねがありまして、幾つかの見解や判断が述べられておりますが、できるだけダブらないようにして、若干まず法務大臣にお伺いをいたします。  選挙の結果は、自民党に厳しい国民の審判が下ったわけでありますが、三木総裁などによりますと、その原因はロッキード事件あるいは分裂選挙等に求めておるようでありますし、また、先ほども幾つかの判断大臣自身からも示されておりますが、私、ロッキード事件に限って言えば、やっぱり事件を隠そう隠そうとする動きがあったとか、あるいは解明がいいかげんでうやむやであったとか、そういう印象を国民が持っていたし、そういう判断を示したものというふうに思うわけであります。  先ほども大臣そういったお話ありましたが、ずばり聞きますが、まあ確かに選挙直前の大事な時期に国民判断材料を完全に提示し得なかったという責任を感じておられるようであります。その理由というものの中に、もちろん児玉小佐野の病気もさることながら、いわゆる三木おろしであるとかロッキード隠しだと言われたいわばそういう騒動、これが大きく作用をしていますか。
  74. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 二頭選挙であるとか分裂選挙であるとか言われる状態があったということが、大きく選挙を不利にしたという判断を持っております。
  75. 志苫裕

    志苫裕君 くどいようですが、そうしますと、党内のそういった問題はロッキード解明をする上でも影響を受けたと、こう理解をしてよろしいですか。
  76. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) ロッキード事件刑事責任追及の妨げになったとは必ずしも思わないんです。私は、そういう三木おろしとか何とかいうことに左右されて手かげんをした方がいいだろうなんて指揮した覚えもありませんからね。これはもう厳正公平、不偏不党にあれだけのところまではとにかくいった、しかし、国民の知る権利について十分こたえ得なかった非力さを非常に責任を感じておると、こう申し上げたわけでございまして、それにいたしましても、前にも言いましたように検察当局は一生懸命にやっているんだから、それの最高責任者である法務大臣の所属する政党が何だかふらふらごたごた、ぐちゃぐちゃしているということは、それは愉快ではありませんわな。どういう程度の心理的影響を及ぼしたかは存じませんが、まあ検察当局としてはやるところまではよくやった、信頼するに足るといまでも思っておりますし、これからも信頼していかなければならぬ、新しい後継内閣もそういう態度でやってもらいたいものだと、こういう念願を強く持っておる次第であります。
  77. 志苫裕

    志苫裕君 まあとにかく法務大臣一生懸命にやろうとしておるのに、それの所属しておる政党がぐちゃぐちゃ言っているのはおもしろくなかったということはよくわかりましたが、次に、私も実は新潟県ですが、いわゆる黒色、灰色と言われた高官が当選をしたわけです。で、有権者の選択の基準がどこにあったのか、なかなか複雑でわからないんですが、当選をしたことは事実です。しかし、それで政治上道義上の責任を免れた、免罪になったということには当たらないという先ほどの議論がありました。そうしますと、それらの黒色、灰色も選挙中そう言ってましたが、同時に、ロッキード事件は総選挙決着をつけるんだということを自民党の総裁も言ってましたわな。これはどういう意味を持ちますか。
  78. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) この総選挙の結果によって、法務・検察当局の追求した刑事責任が当選したから御破算になる、それは全然ありませんわね。そういうわけのものではない。しかし、三木総理が言っていたように、総選挙決着をつける、ロッキード事件の。それは全貌解明された上での話であって、もう一生懸命にやって、少なくとも刑事責任追及については児玉小佐野ルートまでも解明して国民判断に訴えて決着をつける、こういう希望を言われたわけでありますが、遺憾ながらああいう状態になって総選挙に入ったわけでありますから、総選挙の結果によって、当落によって決着がついたというふうには私は考えませんですな。
  79. 志苫裕

    志苫裕君 よくわかりました。  そこで、余りくどくど聞くあれもないですが、とにかく辞任を前にしておるわけでありますが、歴史的な大事件を所管をした大臣です。恐らく感慨深いものがあろうと思うわけでありますが、まあいろんな語録も生んだようでありますし、またわれわれも、人間稻葉の人間性なり哲学の片りんにも触れたごともしばしばでありましたが、私は改めて、去るに当たってという所感を聞きたいわけです。率直に申し上げまして何が満足であり何が不満であったのか。あるいはまた、ロッキード事件では何が残っており、何をしなければならぬと考えておるのか。まあ言うなら言い残すことはないかどうか、改めて所感を尋ねたいわけであります。
  80. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) まあずいぶんしゃべりましたからね。国民は、大体あいつの能力はこの程度であるとかおわかりになってるんであって、いま私の至らぬ点を反省しております。もう少し閣議等におきましても、この事件の重要性にかんがみ、早くロッキード対策特別委員会の成立に努力したり、予算委員会と切り離して、そういう点について中途半端な主張であったなというような点については、非常にいま反省しているんです。  それから、八月末、ここまで来れば、橋本、佐藤の起訴まで来れば、あと児玉ルートでございますから、児玉ルート解明は、病気ですから、これを片づけなければ臨時国会開かさぬというようなことは困るじゃないか、それはそっちの方でやったらいいじゃないか、それはそっちに、そういうような点について強い主張をもっとすべきであったというような反省をたくさん持っております。しかし、総選挙の結果を踏まえ、自由民主党員もこの程度の敗北でとどまったのは、自分の勝手なことを言うようですけれども、この程度の敗北でとどまったのは指揮権なんか発動をしなかったからまあよかったんで、指揮権の発動でもしとりゃ、もっとぺっしゃんこにやられたに違いないんです。そういう判断は持っておりますね。  したがって、去るに当たって、自分の能力に至らぬ点、努力の足らぬ点、いろいろありますけれども、検察当局はよくやってくれた、信頼するに足る職域である、こう私も思いますし、国民も、なかなか検察当局は信頼するに足るんだと、検察当局に対する従来の、造船疑獄等幾多の事件についての国民の何かこう不安、そういうものは一切払拭されて、国民検察当局をいま信頼してくれている、そういう点はきわめて満足である。わが国の今後のこういう事件の一般的社会防衛に非常に役立ったというふうに思うておりまして、敬意を表したい、こういう感慨であります。感慨でありますね。まあそんなところでございまして、しばらくひとつ休養さしていただきたいと……。
  81. 志苫裕

    志苫裕君 いろんな感慨をお伺いしましたが、少し具体的なことに入りますが、私は、いませっかくの感慨を述べておるのにけちをつけるようで恐縮ですけれども、検察当局はよくやってくれたし、国民もそう思っている。田中逮捕という率直に言いましてショッキングな事実があったですね。いままでの自民党の政府や検察当局の姿勢を見ているとまさかやるまいという、肝心のところでほいとこうやったという意味で、一時期確かにそういうものがなかったとは言えないと思うんでありますが、しかし、その後の続きが、いきなり党内の大変な爆発のようなところに火が点火をしまして、事実上すっと選挙前に、一番大事なときにうやむやになったという外的な作用も働きまして、そういう点では必ずしも信頼をずっとつなぎとめているというふうには考えないわけであります。その点はしかし、これからの解明への努力が再び改めて国民の評価を受けることでありますから、一応私の考え方だけを述べておきます。  次、小佐野賢治強制捜査関連をして、先ほども久保委員の質問がありましたので、私も若干お伺いしていきます。  まあ令状、捜索令状、強制捜査の令状の被疑事実は、先ほどもお話がありましたが、四十八年の十一月の初め、二日と言っておりますが、コーチャン社長の指示を受けたクラッター日本支社長からロサンゼルス空港で二十万ドルもらったのに、もらったという事実を検察当局は突きとめておるのに、もらったことはないとうそをついておるということ等でありますが、その二十万ドルというのはどんな方法で日本に持ち込まれたわけですか。
  82. 安原美穂

    説明員安原美穂君) まさにその点がただいま捜査中でございますので、申し上げるわけにはまいりません。
  83. 志苫裕

    志苫裕君 捜査中で申し上げられない……。仮に、仮にですよ、仮に違法な形で持ち込まれても、これは時効になるわけですね。
  84. 安原美穂

    説明員安原美穂君) いま申し上げましたように、どういう方法で、いつ、わが国に持ち込まれたかというようなことを含めて捜査中でございますから、その事実の明確になった段階において、場合によっては外国為替管理法違反というようなことも考えられるわけでございます。
  85. 志苫裕

    志苫裕君 この、ロサンゼルス空港で二十万ドルを収受したという事実といいますか、これは、検察当局としてはいつごろ、どういう方法でその事実を突きとめたわけですか。私は聞きにくいことを聞きますが、恐らく言えぬかもしれませんが……。というのは、後でちょっとお伺いすることとかかわり合いますので、差し支えない範囲で答えてください。
  86. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 御推察いただいておりますように、いま捜査中でございますので、いつごろということは、先ほども申しましたように、目下捜査中でもあり、申し上げるわけにはまいりませんが……。それから、どういう方法で探知、収集、知ったかということも、これはまさに証拠そのものを開示することになりますので、遺憾ながらお答え申し上げるわけにはまいりません。
  87. 志苫裕

    志苫裕君 だめなことでも少し聞いていきますが、それではちょっと角度を変えますが、小佐野を、先ほどそれについては二十回程度というふうなお話でしたかしら、いろいろ調べていると。大まかでもよろしいんですが、調べるには、被疑者として調べる場合もありますし、参考人としていろいろ聞くこともあるわけですが、小佐野を被疑者として検察当局が調べられたのはいつごろからでありますか。
  88. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 十一月四日、国会から偽証告発があった以後は、偽証事件に関しましては被疑者ということで取り調べを進めておるわけでございます。
  89. 志苫裕

    志苫裕君 十一月四日に告発があったので、偽証事件に関しては被疑者として調べている、偽証事件に関しては。しかし、先ほどあなたは、まあいつごろ、どんな方法というお話をしませんでしたが、四十八年の十一月の初めごろに、十一月の二日ごろに二十万ドルの収受があったという事実認定というものがあって、初めて偽証が成り立つかどうかという段取りにいくわけでありますから、この四十八年の二十万ドル授受があったということを皆さんの方で突きとめられたのは、国会偽証告発する以前の段階じゃないんですか。
  90. 安原美穂

    説明員安原美穂君) いずれにいたしましても、こういう被疑事実を公にして強制捜索をする以上は、的確な証拠に基づいて判断したものでございますが、いっその証拠を入手したかということは、ある意味において証拠の内容を開示することにも連なってまいりますので、いまの段階で申し上げることだけはひとつ御猶予願いたいと思います。
  91. 志苫裕

    志苫裕君 前か後かは、国民も十二月八日の強制捜査の時期判断が適当であったのかどうかということに実はかかわりを持つ。そういう意味で、この二十万ドル授受という事実を突きとめられたのがやっぱりその以前であったか、その以後であったかということぐらいは、これは報告があっても、別に捜査やあるいはそれから後に来るであろう公判等に支障があるとは考えられません。
  92. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 実際問題として、このような証拠関係がどういう証拠で、いつ入手したかということを私自体知らないわけでございますが、いまお尋ねの質問を聞いて私の推測いたしますに、選挙前にわかっておったにかかわらず、選挙が終わるまで待っておったのではないかというようなお疑いのもとにお尋ねのように拝察をいたしますが、検察当局は、ロッキード事件に関する限り専任の検察官を従事さしめておりましたわけでございまして、選挙のために手をとられてとか、あるいは選挙に悪い影響を与えるからというような配慮はもう一切ございませんでしたことを、神明誓って申し上げます。
  93. 志苫裕

    志苫裕君 先に神明に誓われたんじゃ私も聞きにくいんですが、しかし、いろいろ先ほど法務大臣じゃないが、逃げる方も日米協力でということで、いわゆる嘱託尋問等がずいぶんおくれました。しかし、ありがたいことにそれも実現をして、そこではたとえば嘱託尋問のいろんな成果が得られ、世上言われておるクラッターメモなるものも恐らく入手をできたはずだと思う。仮にその時点で、この二十万ドル収受の非常に重要な手がかりが得られたというようなことでありますと、私は、十二月八日の強制捜査がいわゆる偽証にだけ限ってその時期に行われるというよりも、その金銭の授受そのものに絡むさまざまな容疑も含めて、もう少し早い時点で強制捜査ができたのではないかという推論も成り立つわけでありますね。それにしても選挙というものがはまり込んでおるだけに、強制捜査の時期が何ともタイミングがずれておる、意図的であるという批判や推論を呼ぶのも、これは避けがたいことだと思うんであります。天地神明に誓われてはおりますけれども、先ほど、鋭意いま証拠を固めてきて十二月八日になったと言うんでありますが、しかし、時期判断はやっぱり選挙が絡んだんじゃないですか。
  94. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 何度も申し上げますように、きょうこの委員会へ来て、なるほどそういう疑いも受けることもあるのかと思ったぐらいに私どもは全然そういうことは報告も受けておりませんし、考えたこともございません。
  95. 志苫裕

    志苫裕君 どうもこれはまた禅問答になりますね。でも一応そういう疑問だけは提起をしておきます。いろんなところでは選挙判断したとこう言いますからね。小佐野選挙と何の関係があるのだというふうにわれわれは考えたぐらいでありましてね。  いわゆるロッキード資金で不明の十八億円のうち五億円、それをさらに分ければ四億四千万円と六千万円になるようでありますが、これが児玉経由で小佐野に渡ったのではないかとか、あるいはさらに小佐野からしかるべき政府筋にも、政府高官筋にも流れたのではないかと、こういうニュアンスがコーチャン回顧録等にも見られるわけでありますが、とにかく四十八年の五、六月ごろに、盗難金の補てん分として四億四千万円がロ社から児玉に渡った。その分については外為の面では時期的に見て時効になるようでありますが、所得税の関係刑事責任追及は、まだ時期的に見て可能なはずでありますけれども、それはどうなっておるでしょうか。税務当局との連絡はありませんか。
  96. 安原美穂

    説明員安原美穂君) いま志苫委員お尋ねは、だれの税金の問題でございましょうか。
  97. 志苫裕

    志苫裕君 児玉
  98. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 児玉でございましたか。児玉につきましては、昭和四十八年、九年の所得につきましては、すでに処理済みでございまして、ただいま五十年の一億一千数百万円に上る収入に関しまして、所得税法違反疑い捜査を続けておるという段階でございます。
  99. 志苫裕

    志苫裕君 じゃ私はちょっと聞きますが、そうするとこの四億四千万円ですね、これの税法の関係はだれになって、いつの年度のものになるわけですか。
  100. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 四十八年度の所得税の脱税を捜査する過程におきまして、その収支の一環として四億四千万円というのを織り込み済みでございます。
  101. 志苫裕

    志苫裕君 それから、これは新聞記事ですが、東京国税局は、例の二十万ドル云々のころのあれでありますが、今度は小佐野に対して脱税による刑事告発と重加算税等を含む課税処分を検討中と、こういうふうに言われておりますが、そういった当局との連絡はありますか。
  102. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 二十万ドルの受領が小佐野の所得になるということになれば、当然税法上の問題は出てくるかと思いまするが、現在のところ国税当局とはその点について特別、脱税に関する問題としては連絡は聞いておりません。
  103. 志苫裕

    志苫裕君 法務大臣、先ほど久保委員も質問しましたが、十二月十日付の日刊紙によりますと、稻葉法務大臣小佐野強制捜査関連をして三木首相にいろんな報告をした。その中で贈賄の疑いもあり、とれについても捜査中というふうに報告したと報じられておるわけでありますが、事実でありますか。贈賄の疑いとは何でありますか。
  104. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 私と総理大臣の、十二月十日の私の報告は、向こうから求められたから一応の報告をしまして、議院証言法違反疑いが濃厚だそうですと、そうすると、どういう点についてと言うから、金銭の授受は一切いたしておりませんというような証言はどうもうそらしゅうございますなと、そうすると、その金はどこへ行ったということになると、贈賄の罪も出てくるかもしれませんねということを申し上げておきましたから、私の感覚で。
  105. 志苫裕

    志苫裕君 それはその程度のものですね。小佐野の点については以上で結構でありますが、いずれにしてもいわゆる灰色部分、時効だとか、その他の法律的には別に追及を受けないという部分が当然のことながら小佐野児玉に関しても、あるいはそのルートに関してもこれから判明をする可能性がありますわね、当然。先ほど、たとえば外為、二十万ドルがどういう方法で持ち込まれたか、場合によっては外為になるかもしらぬし、事は終わっているかもしれないというような答弁がありましたから、そういう意味での灰色部分というのは、これからの捜査で出てくる可能性はあります。これは灰色部分を名前も含めて公表せよ、しないで、一部出たり出なかったりしておりますが、当然これからの捜査の中で明らかになっていくであろう灰色部分も公表の用意がありますか。これは当然すべきだと思うのです。いかがですか。
  106. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 御趣旨は、要するに、検察当局といたしましてはたびたび申し上げておりますように、刑事責任の存否を明確にして訴追をすべきものは訴追をするということでございまするから、刑事責任の存在が明らかになって、公訴を提起すべきものについては当然のことながら公にされるわけでございますが、犯罪の嫌疑が認められないような捜査の結果が出た場合におきましては、その不起訴の部分について公表するということは差し控えるというのが一貫した方針でございます。
  107. 志苫裕

    志苫裕君 それは局長、おかしいんじゃないですか。たとえば、灰色高官名を公表せよといういろんなやりとりの中で、仮に名前は何にしても、A、B、C、Dで幾らもらって、幾ら使ったとか、せんべつに幾らもらったとか、あるいは名前がほぼわかる形で百万円がどうとか五百万円がどうとかと、しかし、これは時効でオシャカになっていますというふうに、それなりに報告をされています。これから出てくるであろう可能性を持つ小佐野、あるいは児玉の分について、本人はもちろんのこと、そのかかわりのある部分についてもそれと権衡を失しない公表、報告があってしかるべきじゃないですか。
  108. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 具体的な問題として小佐野賢治に限るならば、この告訴、告発のあった事件処理の結末ということは、すでに告訴、告発のあった問題でございますので、このケースに関する限りは公にするということはお約束できると思います。
  109. 志苫裕

    志苫裕君 いずれ、これは先のことですから、また先にやりましょう。  次に、いわゆる鬼頭問題について二、三お伺いいたします。最高裁おいでになってますね。  まず私は、鬼頭判事補という人そのものについてちょっと最高裁にお伺いをしたいわけです。この問題が発生以来、いろんなマスコミ機関を通じまして鬼頭という人がいろんな形で紹介をされます。映像に映ります。それを見ていますと、鬼頭なる人物は一体どういう人物なのか、まことにえたいの知れない、摩詞不可思議な存在のような気がしてならぬのであります、素朴に申し上げまして。  私、実は手元にも、いままでのこの問題が発生する以前の鬼頭判事補の訴訟指揮や言動に関する名古屋、東京、鹿児島、京都などの弁護士会の調査による報告書も持っています。一読をしてやっぱり感ずるのは、ずいぶんこれは変わった人だなあと、何かこう常軌を少し外れているなという感を深くしますし、率直な表現をさしてもらえば、こういう人に裁判で持たれたんじゃたまったもんじゃないという、そういう気持ちにも襲われるわけでありますが、最高裁としては本問題が起きる以前に、鬼頭判事補なる人物について、いわゆる問題を感じたことはなかったのか、あるいはその種の報告や指摘に接したことがなかったのか、この点ひとつ率直にお伺いしたい。
  110. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 鬼頭判事補のことにつきまして、御指摘のとおりいろいろなことが報道されております。この問題が表面化する前に、その前の時点におきましてある程度のことは私どもも承知いたしておりました。法務委員会等で申し上げたとおりでございますが、たとえば名古屋地裁時代におきまして、法廷における裁判長とのいざこざがあったというようなこと、あるいは女性問題等を引き起こしたことにつきまして、すでに報告を受けておったことはございます。
  111. 志苫裕

    志苫裕君 ある程度のことは知っていましたということになると、実は薄々知っていて、変なことにならなきゃいいがなと思っていたことが、実は別の形でぽんと出てきたということにもなるわけで、知っていて何か有効な対処が講じられなかった側にも問題なしとせずという気もするんですが、そこで、たとえば最高裁は京都の地裁の所長に対して、鬼頭判事補には刑事裁判はひとつ担当をさせないようにと、こういう指示を行ったことがありますか。
  112. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) そのような事実はございません。  立ったついでに申し上げたいと思いますが、裁判官がどういう事務を取り扱うか、私どもは事務分配と申しておりますが、事務分配ということは地方の独立と密接に関係いたすところでございまして、どの裁判官がどういう事件を取り扱うかにつきましては、当該裁判所の裁判官会議で決定いたすことになっております。京都地裁におきましても、鬼頭判事補は五十年の四月に赴任しておりますが、裁判官会議におきまして鬼頭判事補の分担事務を決定いたしておりまして、最高裁から具体的な裁判官にこういう事件を担当させる、あるいはさせないというようなことは絶対にございません。
  113. 志苫裕

    志苫裕君 絶対にございませんと言うんだから、私はそれ以上のことは聞きませんが、しかし、ある程度のことは本人について知っていた。  それでは、私、裏返して聞きますが、鬼頭判事補が京都地裁で刑事事件を担当したケースがありますか。
  114. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 刑事事件は担当していないはずでございます。
  115. 志苫裕

    志苫裕君 皆さんの方で、この人には刑事裁判は担当させないようにということは言ったことないということですから、それはそれで信用する以外ありませんが、しかし、一面では偶然かどうかは別として、刑事事件は一件も担当していない、民事ばっかりということもあるわけでありますが、ある程度のことを知っておられた鬼頭判事補について、ある程度の措置といいますか、ある程度の指示といいますか、ある程度の手だては講じていたわけですか。
  116. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 鬼頭判事補に対しまして措置は全然いたしておりません。  ここでまた申し上げさしていただきたいと存じますが、御承知のように、裁判官の身分上の問題につきましては身分保障との絡みがございまして、十分慎重にやっているつもりでございます。もちろん身分保障、職務の独立ということに隠れて得手勝手なことをしていいということにはもちろんならないわけでございますけれども、裁判官の身分に対して私どもがいろいろ措置する場合には、十分慎重に考えているところでございます。  実は、鬼頭判事補の先ほど申し上げました女性問題につきましては、当時関係者に当たりまして十分調査いたしたところでございます。ところが、問題の、問題といいますか、相手方の女性から、あくまでもこれは表ざたにはしてほしくないというような申し入れがございまして、そのような事情もありまして何らの措置をしなかったわけでございます。
  117. 志苫裕

    志苫裕君 女性問題、女性問題と言いますが、私は余り女性問題は、言うならきわめて素朴な人間的な弱点に触れるような問題は、極端に言えば大した問題じゃないというふうにさえ考えるわけで、そんなことは別に重視をしているわけじゃないんでありまして、実は私もいろんな調査報告書を勉強さしてもらったわけでありますが、ずいぶん訴訟の指揮とかそういう問題やその他の言動について、どうもこれはというものを率直に感じたものだから、そういう問題についてもある程度のことは知っていたんじゃないかというふうに思ってお伺いしたわけであります。  いずれにしても、後ほどまたにせ電話事件あるいは身分帳の漏洩問題で聞きますが、どうもやっぱりこういった裁判官が、ある程度気がつきながらも放置をされてきたということが、結果としてまさに裁判といいますか、司法の尊厳というものをずいぶん傷つけてしまいまして、法治国で裁判が信用できなかったら、これはもう行くところがないですからね。国会なんか多数、少数でたまにはやったりやられたり、あるいは間違ったから直すというようなことがありますけれども、裁判ではそんなことになったらこれは大変な問題で、ここに頼る以外にないわけでありまして、それを傷つけたという責めはずいぶん大きいというふうに思うわけでありまして、そのことの指摘を申し上げて、最初にちょっと身分帳の方から少しお尋ねします。  これは、最高裁自身の自律的な問題としていろいろお調べになっておる部分もあるし、告発を受けて検察当局にかかわる分もありますから、それぞれどちらから答えてもらってもいいですが、鬼頭判事補の入手したいわゆる宮本身分帳のコピーの流通経路について、事情聴取とかあるいはいろんな意味での調べ、そういうことの中で明らかになったことがあれば御報告を願いたい。
  118. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 私どもの事情聴取におきましては、鬼頭判事補が網走刑務所に参りましていわゆる宮本身分帳を入手いたしましたことについては、彼自身も認めているところでございますが、その入手した資料を外部に漏らしたことはないということでございまして、私どもといたしましては、それ以上本人から供述を聞き出すことはできなかったのであります。先ほど久保委員からのお尋ねもございましたが、私どもが訴追請求をいたしましたのは、いわゆるにせ電話のテープを読売新聞社に聞かせたということだけでございますが、先ほど御指摘の網走刑務所の問題につきましても、私どものできる限りの調査はいたしたつもりでございますが、それ以上の事実を解明することはできなかったのでございます。
  119. 志苫裕

    志苫裕君 検察当局、何か答弁ありますか。
  120. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 網走刑務所におきまする身分帳が閲覧されまして、そのうちの資料が外に出たかどうかという調査は私の方でいたしております。  先ほど、身分帳の流通経路というお話がございましたが、当初われわれが知りましたことは、身分帳の中にある宮本氏の診断書を見せた、そうしてそれを後に至りまして、写真が撮れなかったから筆写して送ってほしいということであったわけであります。ところが、最高裁の勝見人事局長国会報告における御報告を聞いておりますと、二、三点のものを写してもらったということでございまして、私の方では診断書以外にもあるのかというようなことを調べておりました。その調べている過程におきまして、これは四十八年の七月三十一日であったと思いますが、という記憶でございますが、網走刑務所の職員がその身分帳の部分の二点といいますか、三点といいますか、その部分を筆写して、写して鬼頭判事補に送ったという点がはっきりいたしました。そのはっきりいたしましたというのは、網走刑務所に保管されておりました「雑件綴」、これは雑書つづりみたいなものでございますが、その中にコピーがあったのであります。そのコピーを発見いたしましたので、私どもといたしましては、これまで衆議院あるいは参議院でお尋ねのありました点も含めましていろいろな資料と比べてみました。その結果、本年の一月二十九日の東京新聞に「刑執行停止ノ件」と題する部分が写真版として載っておりましたが、その筆跡及び字の配列のことから、そこは同一であるという判断に達したのであります。  それから、なお衆議院等でお尋ねを受けました点は、文芸春秋三月号の立花さんの論文はどうかというお尋ねもございました。ところが、立花論文につきましては関係個所がきわめて少ない点でございまして、その出たコピーに基づいたものかどうかは判断がつきかねます。  そのほか御指摘を受けました点は、松本明重氏の「日共リンチ殺人事件」という本に載っております資料でございますが、この点は詳細に申し上げることは避けますが、簡単に申し上げますと、実は松本氏の本を見ておりましたときに、原本がかたかなであるところが平がなになっていたところが二個所ございます。  それから、かたかなのロというか口というかはっきりしないところが一個所ございました。この点につきましては、かねて印刷の誤植であるか、あるいは何らかの間違いであるか、われわれとしては不審を抱いていたのでありますが、網走刑務所から発見されましたコピーと比べてみましたところが、原本がかたかなであるにかかわらず、コピーが平がなであったので、それがそのまま印刷されたと思われること。  もう一点は、かたかなのロというのを平がなで「に」と書きまして、この書き方が悪いとロないし口と読めるわけでございますが、それがそのまま印刷されたということから、鬼頭判事補に渡された資料が何らかの経路で「日共リンチ殺人事件」の資料になったのであろう、こういうふうに判断したのであります。これが新しい事実でございます。
  121. 志苫裕

    志苫裕君 最高裁の方にもう一度お伺いしますが、その診断書のほか二、三の部分といういまの法務省の答弁なんですが、最高裁としては、鬼頭判事補が網走の刑務所でコピーをしたり、写真撮ったり、あるいは後から送ってもらったり、さまざまな方法で閲覧をし、あるいはコピーをとり、あるいは送ってもらった一切の資料は何と何と何であるかというととは確認できているのですか。
  122. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 私どもの事情聴取に対しましては、網走刑務所から入手した資料内容を言うことは、これを一つの外部に漏らすことであるからそれは言うことはできないということでございまして、私どもといたしましては、どういう資料を入手したかにつきましては解明できておりません。  それから、先ほど身分帳を鬼頭判事補が入手したというような趣旨で申し上げたかと存じますが、これはあくまでも写しでございますので、正確にさしていただきたいと存じます。
  123. 志苫裕

    志苫裕君 いや、私くどいようですが、何と何を入手したかは最高裁の方では掌握をしていないということなんですか、掌握をしているが発表をできるものではないという意味ですか。
  124. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 先ほど申し上げましたのは、鬼頭判事補がそういうことを理由として私どもにも何と何を入手したということを言っていないという趣旨でございます。
  125. 志苫裕

    志苫裕君 ここの問題については、最近公然と取り上げられたものには少なくとも三つのルートがありまして、一つが文芸春秋の立花論文、一つが民社党春日委員長国会における代表質問、それからさらに松本明重氏の刊行物、この三ルートが表に見られているわけでありますが、そのほかにまだありますか、お調べになったか、あなたたち。検察当局どうですか。
  126. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 私、検察でございませんので、法務省の矯正局長でございますので、少々お見知りおき願います。  私の方で調べましたのは、先ほど申し上げました三点でございまして、それ以外の点につきましては全然承知いたしておりません。
  127. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと時間が詰まってきましたんで少し早目に聞きます。  後でまた、今度はにせ電話についても聞きますが、この三つのルートについてこれは検察当局にお伺いをしたいところでありますが、文芸春秋社については、先ほども矯正局長の方では関係個所が少なくて判断しにくいということであります。客観的にはやはりルート一つだというふうに見れるわけですが、この文芸春秋社に入った入手経路、仲介者の有無などをお調べになっていますか。  さらに、春日氏が示したコピーが鬼頭が入手したものと同一のものであると言われるわけでありますが、春日氏から事情をお聞きになっていますか。  三番目に、三つ目のルートである松本明重氏は、いろんなグループとのつき合いがあると言われておる人でありますが、松本氏及びそのグループの人々に事情を聞いたり調べたりしたことがありますか。この三点についてお伺いいたします。
  128. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 冒頭志苫委員からは春日委員長に、いわゆる春日ルートだというお話でございましたが、私どもは一月二十九日の東京新聞に出ました写真版との同一性を判断したのでございまして、それが東京新聞に春日委員長から渡されたものであるかどうかということは、確定いたしかねます。  なお、私どもの調査の対象は、先ほど最高裁人事局長が申しましたように、鬼頭判事補は資料を渡していないということであったと、しかしそれはおかしいではないかという御指摘が国会であり、私どももさように考えたので、何らかの形で出た疑いがあるのではないかということで調べたのであります。その結果、鬼頭判事補に渡した筆写物のコピーをもとにしたものが、東京新聞と松本明重氏の「日共リンチ殺人事件」という刊行物に載ったということがわかったのでありまして、果してどういう経路で渡ったかという点は、まず鬼頭判事補自身に聞いてみなければわかりません。その点は最高裁でおやりになっていることでございますので、私どもはいわば手をつけていないというのが実情でございます。  なお、松本明重氏あるいは東京新聞については、当時の情勢からすでに鬼頭判事補から直接もらったものではないというような談話が新聞等に出ておりました関係上、私の方で聞くことはいたしておりません。
  129. 志苫裕

    志苫裕君  まあ東京新聞、さらに松本明重氏——結局、そう言いますと、突き詰めて言えば、鬼頭判事補以外には聞いていない、事情も調べていないということになるようでありますが、ちょっとこの問題はしょりまして、次のにせ電話のことを聞きまして、また一緒に聞きます。  にせ電話事件について申し上げますと、週刊新潮がこの問題を最初に取り上げたとされておりますが、事情聴取が行われていますか。資料等の領置をしてますか。
  130. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 新潮社に対しても調査協力依頼を申し上げたわけでございますが、実際上積極的な協力を得られなかったのでございます。その意味におきまして、新潮社からは何らかの資料をいただいておりません。
  131. 志苫裕

    志苫裕君 これは検察当局もあるんでしょう。
  132. 安原美穂

    説明員安原美穂君) もうすでに新聞にも報道されておりますように、鬼頭判事補につきましては、にせ電話事件関係者であることは間違いのないところでございまして、被疑者であるかどうかは別といたしまして、関係者であることは間違いがないということで、すでに四回にわたって取り調べを進めております。と同時に、これまた新聞に報道されておりますように、読売新聞社から二回にわたりまして、いわゆる総理に対するにせ電話のテープと、それからいわゆる告白テープというものを最近読売新聞社から押収をいたしております。なお捜査をいたしておりまするが、これ以上のことはまだ捜査中でございますので、申し上げるわけにはまいりません。
  133. 志苫裕

    志苫裕君 読売新聞からいろんな資料を領置したということは、新聞等で報道されていますから私はあえて聞かないわけですが、捜査中云々というのですが、あるかないかぐらいは答えなければ……。  そうすると、私もう一度聞きますが、週刊新潮からは何らの事情も聞いていませんか。もう一つ、先ほど身分帳の問題を聞きましたが、にせ電話のテープについても、文芸春秋社にテープが持ち込まれたという事実はないかどうか。そういう点について捜査当局は関心を持っておるかどうか。この点いかがですか。
  134. 安原美穂

    説明員安原美穂君) きわめて複雑な事件でございますが、真相究明に努めるべく、あえて新聞社に対して押収をしたというような捜査当局態度でございますので、いま御指摘のような、週刊新潮についても同じような記事が載ったことは当然捜査当局も知っておりますので、十分な関心を持っており、必要とあれば、何人といえども取り調べをしたり協力を求めたりということは当然するものと思っております。
  135. 志苫裕

    志苫裕君 週刊新潮には元警察官僚のA氏から持ち込まれたという説がありますが、調べの対象になっていますか。
  136. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 先ほどお断り申しましたように、真相究明のための捜査中でございますので、個々の人間について調べたとか調べないというようなことは申し上げるわけにはまいりません。
  137. 志苫裕

    志苫裕君 調べた、調べないということは申し上げられないということでありますが、時間がありませんらもう結びますが、実は、いわゆるにせ電話事件、これは通称宮本身分帳と言いますが、この漏洩問題との間に、たとえばテープだとかコピーの流通経路、そういうものに非常に共通したところが多いというのが特徴だと思うんです。もちろん、鬼頭という人物がどっちにもおるわけですから、これは共通するにしましても、それにしても、テープが結果して出てきた場所とか、あるいは資料をもとにして書かれたかなと思うような刊行物が出てきた場所とかというようなところがどうも似てる、同じ。というところを考えると、背景が同じなのではないかというふうにも考えるのでありますが、これは検察当局の感覚といいますか、所感を聞きたいと思います。
  138. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 志苫委員御指摘のとおり、にせ電話事件に関しましても、資料入手事件と同様に鬼頭判事補が関係があるというふうに思われておるわけでございまして、御指摘のように、必然的に同じ人間の行動というものについては関連を疑わしめる点がないわけではないと思いますので、検察当局も事柄の真相究明するという意味において、背後関係等も必要とあれば調べるものと私は考えておりますが、これ以上印象を申し上げることは、かえって捜査に対する介入にもなりますので差し控えたいと思います。
  139. 志苫裕

    志苫裕君 テープといい身分帳といい、この種の資料を世間に向かって発表をしたそれぞれの当事者は、独自の信念なり判断なりがあって行ったものだろうということは言えますが、同一の資料がそれぞれの当事者の手に届けられるに当たっては、その資料がどう用いられて、どのような効果を生むだろうかということを綿密に計画をしたり見通した者がおらなければ、これはどうも成立をしない出来事だと思うんです。いろんな絵解きにはどうしてもぽかっと穴があいていまして、その穴のところに何か仮定のものをはめ込んでみると前後がよくつながるという話がよくありますが、その仮定のものにやはり綿密な見通しや計画を立てた者がいるというふうに判断をすると話の前後がつながる、こういう出来事のように思うわけであります。  先ほど背景が同じではないかということを両事件について聞きましたが、私がいま申し上げた綿密な見通しや計画を立てた者、あるいはグループというようなものが存在をしなければならぬはずだと思うんでありますが、捜査当局もそのような認識を持ちますか。
  140. 安原美穂

    説明員安原美穂君) その捜査当局の印象を申し上げる段階ではなく、また、申し上げるべきではないと思いまするが、いずれにいたしましても捜査当局使命真相究明でございまして、予断を持って捜査をしてはならないわけでございます。したがいまして、真相究明のために必要なことであれば、あらゆる手段を尽くしてそれをきわめるべきものと思っております。
  141. 志苫裕

    志苫裕君 じゃこれはそれでいいですが、最後に突拍子もないことを言いますが、内閣調査室の関係者から事情を聞くべきだと思いますが、それは参考にされますか。
  142. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 真相究明のために必要な人が、仮に内閣調査室におるとすれば調べると思いまするが、先ほど来申しましたように、まだ予断を持ってこの事件というものの全貌事件をながむべきではないわけでありますので、今後の事柄につきましては、また捜査の事柄でございますので、調べるかどうかということを申し上げるわけにはまいりません。
  143. 鈴木力

    委員長鈴木力君) 午後一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      —————・—————    午後一時三十五分開会
  144. 鈴木力

    委員長鈴木力君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  145. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 午前中、同僚委員からも特にロッキード問題について御質問ございましたが、法務大臣、本当に二月から一年間、このロッキード問題を抱えて、特に法務当局責任者として大変御苦労なされたわけでございますが、大臣はあと数日、数日ももうないかもわかりませんが、その地位をやめられると、こういうふうなときに、私は、この一年間のロッキード問題を考えてみまして、ここでやっぱり総括的に大臣のお考えを聞いておいた方がいいんじゃないか、そういうふうな考えからきょうは質問をさせていただきたい、そういうふうに思っております。  まず初めに、今回のロッキード事件の中で、午前中にも問題になりましたが、大臣がかねがねからおっしゃっているところの第一の山、第二の山は一応ある程度解明できた。最後に残った第三のルートの問題ですけれども、この問題につきましても、児玉小佐野両氏は病気でございますし、この解明ということは非常に私は大変な状況にあると認識をいたしております。それも、しかし、先般の衆議院におきます小佐野偽証告発という問題を受けまして起訴することも現状では不可能ではない、そういうふうな状況になってまいりました。しかし、私は考えてみますと、この二人の方は実際問題病気が回復するかというふうに考えてみますと、回復の可能性というのは、どうもわれわれが現在見まして、何も急に考えたわけではないんですけれども、大分前々からですし、なかなか簡単に治りそうな形勢じゃないわけでございますね。そういうふうに考えてみますと、この第三のルート解明というのは、これはもうなかなか簡単に進捗するということは考えられないんじゃないかと、私はこういうふうに思うわけです。  しかし、この問題についても法務当局では鋭意捜査を進め、重大問題の解明に努力をしていると法務大臣も午前中もいろんな角度から答弁ございましたけれども、そういうふうに考えてみますと、第三ルート解明という問題について、大臣、これはやっぱり自信はありますんでしょうかね。もし自信があるとすれば、これはたとえば児玉小佐野の病気の回復ということ以外に何らかの自信があっておっしゃっているのか、あるいはその病気の回復ということを待ってということなのか、ここら辺のところもあわせて御答弁をいただきたい。
  146. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 児玉小佐野ルート解明内容でございますが、ロッキード事件は日米間にまたがる大きな疑獄事件贈収賄事件として、その第三のルート児玉小佐野ルートということになりますとね、外為違反であるとか脱税であるとか、そういう点である程度児玉に関しては起訴されておりますわな。目下、小佐野については偽証罪が成立するかどうか、その点についての捜査が進められておると。そうして、その可能性は五分五分と。もう少しいいかもしれませんが、まあ五分五分。そういうところまではとにかくきましたが、この事件全貌贈収賄事件が一番大事なんだという点になりますとね、入りはわかっても出がわからないと。その出は厳重な取り調べをせんならぬが、その厳重な取り調べに応じ得る、耐え得る健康状態ではない。その健康状態がそれじゃ耐え得る状態になり得るかどうかという見込みになりますと、峯山さんおっしゃるように私も感ぜられますね。  したがって、贈収賄の点までも解明するにはなかなか困難である。しかし、このロッキード・エアクラフト事件について、こういうところまで彼らは関与しておったという、そのところまではそう長い期間でなくて行き得るのではないかというふうに私としては感じを持つわけです。そこまではどうしても行き着かなけりゃいかぬと、こういうことで行き着き得るのではないかという段階まで来て、まあお役御免ということにしてもらいたいと、こう思っておるわけですね。  そうして衆議院には委員会がいままだ構成されておりませんから、参議院のこの委員会が国会の最終の委員会になろうと思いますが、その最終の委員会まで、最後の最後まで誠心誠意私のロッキード問題に関する所見を申し上げて任務を終わることができますことは、最後までお呼び出しを受けて最後まで努力をするということは光栄至極なわけですな。ことに、私にとりましては、法務大臣就任以来、参議院の決算委員会には大変ごやっかいになってまいりましたから、この熱心な委員長初め委員各位ロッキード問題の、新しい国会が開かれる前、三木内閣の終えんにおける総決算をここでつけていただきますことは大変光栄であります。  そういう意味で、ただいまの峯山さんの御所見には、私も、第三のルートにつきまして、そういうところまでしかいまのところ見込みがない、すべては両人の健康回復待ちという頼りない状態であることははなはだ遺憾に思うんですね、そういう点は非常に心残りです。心残りですけれども、これいつまで待っておってもとてもだめで、児玉の病気、小佐野の病気が治るまで法務大臣に留任して待つなんていったら、いつまでやらされるかわからない、それは困るんですね、この辺でひとつ……。ですから、いまおっしゃられた見込みにつきましては、私も、峯山委員と同じような見込みを持っております。
  147. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、私もロッキード事件委員会も担当いたしまして一生懸命努力をしてまいりましたんですけれども、私は、このロッキード事件の反省として、きょう、これから何点か申し上げたいと思っております。  しかし、午前中の答弁とただいまの答弁と合わせましても、結局、現在まで解明されたもの以外に、実際のところ、ロッキード事件そのものが国民の前に一つも明らかになってない。何となく犯人を見つけるみたいな感じのところだけがクローズアップされて、いわゆるロッキード事件全体の構造汚職としての中身が国民の前に明らかになってないんじゃないか。だから国民選挙に当たりまして一票一票入れる場合でも非常に判断に苦しむ。たとえば灰色だということで公表された人たちも、国会においてさえ弁明の機会が多少与えられましたですね。あのときにも、弁明の機会のそこだけがテレビでクローズアップされまして、私は真っ白けだと、一切そういうことにタッチしていないということで強烈に反論をされました。それに対して証人喚問等はなかったわけですから、具体的な詰めは何にもできないままに終わっているわけですね。そうしますと、結局は国民自身が本当に政治的道義的責任解明するためのいわゆる材料というものが十分に提供されていなかったと、こう思うわけです。  さらに、私は、その点とあわせて、今回の事件そのものが何ら法務当局としては——これから裁判がずっと行われますから、その都度幾らかは解明して中身も出てくるでしょう。しかしながら、国民立場からいけば、そういう点が明らかになっておりませんからわからないわけですからね、ですから、非常にその解明されるという点が少ない、わからないということ、もっと悪い言葉で言えば事件そのものがやみからやみへ葬られている感じがするわけです。しかも、私は、さらにこの児玉ルートの問題がいわゆる児玉小佐野の二人が病気でどうしても取り調べることができないと、いま大臣のお考えどおりであるとすれば、私もそう思っているわけですけれども、これで結局終わりということですな、これは結局。これから明らかになる点はなるとしても、これ以上進捗しないというんじゃ実際問題困るわけですわ、これね。  そこで、私が先ほどお伺いしたのは、児玉小佐野の病気の回復ということ以外に何か明るい見通しはないのかと、要するに病気の回復を待つ以外にいわゆる児玉ルート解明のやり方というのはないのかと。私はもちろん専門家じゃございませんから、要するにその中身のやり方というのはわかりませんけれども、やはり私は優秀な検察陣がそろっておりまして、この二人の病気が治らないとどうしようもないというんじゃもうこれはこれ以上進まないわけですよね。大臣が先ほどおっしゃいましたように、贈収賄事件という今度の事件、その点をやっぱり解明しないと解明したということにならない。大臣おっしゃるように、入りの方の外為とか、そういうようなのは付属として——付属と言ってはおかしいですけれども、一部としては解明されましたから、その点はある程度新聞報道でも明らかになっておりますからわかるわけですが、肝心の点がまだ解明されていない。  そこで、私は、検察当局としては何らかの方法はないのかと。もう少し、たとえば先ほどからこのロッキード事件は鋭意解決せにゃいかぬと、三木総理の遺言みたいな話もありました。あの中でもロッキード事件解明せにゃいかぬと、こう言っているわけです。言っているその中身というのは何かというと、先ほどもいろいろ話がございましたけれども、この第三のルートでしょう、第三のルート解明せにゃいかぬ、こう言うているわけです。そうすると、第三のルートはそれじゃ児玉小佐野が病気だから解明できないというんじゃ何ぼ言ったって進まないわけですからね。私は、この病気の回復ということが一つありますね、それ以外に、何らかのいわゆる解明の方法はないのかと、ここら辺のところについては、検察当局、どういうようにお考えなんですかね、これどうです。
  148. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 児玉小佐野関係につきましては、少なくとも児玉に二十数億の金がロッキード社から流入しておるということは公表の資料等で明らかになっておるわけでありまするから、この入った金の出を究明するということは、当面、検察に課せられた重大な使命であるということで鋭意努力をしておるわけでございます。  そういう意味におきまして、いまお尋ねのことに関連いたしまするが、やはり金の流れというものを究明する上においては、本人の供述というものがきわめて重大な証拠になるということは、これはもう常識でございます。その点につきまして、今朝来申し上げましたように、本人の病気ということはきわめて捜査の重大な支障、障害であることは言うまでもないわけでありまするが、なおまだ捜査中でございますので、これを解明する方法にほかに何があるかというようなことは、捜査の方法にもわたりますので、いまの段階で申し上げるわけにはまいりません。
  149. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうでしょう。それは具体的には言わなくて結構です。  あるのか、ないのか、これはどうです。
  150. 安原美穂

    説明員安原美穂君) あるかないか自体が、また、秘匿すべき秘密であろうと私は思います。
  151. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これね、まあ私は先ほどの法務大臣の答弁から推しはかりまして、局長ね、やっぱりいま局長の答弁にもございましたようこ、この両人の、本人の供述というのがきわめて重大ないわゆるその取調べのキーになると、こういうふうに答弁があったわけですから、当然それしかないんじゃないか。もうほかに方法があるとしても、あれば当然やっておりましょうし、進めていらっしゃると私は思うんですけれどもね、言わないだけなのか、あるいは全くないのか、それはそこのところの判断はできませんが、午前中からの質問や大臣の答弁を聞いておりまして、九〇%方もうやることはやった、あとは本人の病気回復待ちと、こういう感じがするわけです。あと一〇%の可能性は残しまして、そう思うわけです。  そこで、お二人の病気の問題ですけれどもね、これは、局長、午前中の質問の中で、血圧が二百以上に上がれば身柄を拘束しない、こういう答弁を局長やりましたですね。私は、これはこの点だけを——確かに血圧が二百以上に上がるということは大変なことでしょう、医学上で言えば。医者じゃありませんからわかりませんが、大変なことですね。ところが、やっぱりそういう取り調べの前には血圧を上げる方法というのは幾らでもあるんだそうですね、へそ曲がりな人が考えればあるんだそうですよ、やっぱり。そうしますと、私は何回かいままで大臣にも質問をし、答弁も受けてまいりましたけれども、こういう病気の人たち、これはやはり病院に収容して、逆に言えば警察病院なりそれぞれのしかるべき病院に収容して、そこでしかるべく手当てをしながら、そういうふうな、もっとわかりやすく言うと、身柄を拘束して、そしてちゃんとした取り調べをやるべきじゃないか。そうでない限り、それはもういつまでも在宅で、先方の都合を聞きながら取り調べるというんじゃ実際問題本末転倒している。これが通常のやり方になってしまいますと、これからの事件で肝心のポイントになってくると、みんな血圧が上がって、いわゆる取り調べができない、あるいは収監できないということになりますね。そういうようなことになっては困りますし、そこら辺のところはもう少しやっぱり強制的にやるべき方法があるんじゃないかと思うんですが、こういう点についてはどうお考えですか。
  152. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 児玉小佐野につきましては、病気のことを申し上げると、しばしば国会で、喜多村医師なり山口医師だけではなくて、公平な第三者の医師の診断を受けるべきではないかということの御指摘がございました。それはそれなりに正しい御指摘だとは思いまするが、他面におきまして、児玉関係について申し上げますれば、喜多村医師だから、取り調べのときにも横に付き添って、その合間に研究を続けながらも検察に協力して立ち会ってくれておるんだというようなこともございまして、この喜多村医師を信頼しないというような前提で、第三者の医師に診させるというようなことが果たして捜査を円滑にさせるかどうかというようなところに検察当局の苦慮もあるわけでございます。そういう意味におきまして、決して検察小佐野なり児玉に対して甘い態度ではなくて、医師が信頼すべきものかどうかということも十分に判断の上で、現在のような捜査方法を続けておるわけでございますが、峯山委員のような御指摘もございますので、何らかの機会には、第三者の医師に診断させるということも検討したいということは検察当局も申しておりまするが、さしあたりは、いまの方法がいまの二人の健康状態に即して最も妥当な方法であるという判断のもとに捜査がなされておるというふうに報告を聞いておるわけであります。要するに、勾留等の方法を用いれば、恐らくは命にかかわるであろうという判断捜査当局は持っておるわけであります。事件真相究明も大事でありまするが、人の命は地球より重いということも考えなければならない問題であるという深刻な苦境にあるわけでございます。  そこで、病院等に入れてはというお話でございまするが、病院に行くか行かぬかは本人らの自由でございまして、勾留の方法として最初から病院に入れるという方法はないんでありまして、勾留をした上で刑務所の病室等に入れるということはありまするが、最初からもう病院に入れなきゃならぬというような場合に、あえて勾留をするということは前例のないように聞いておりますし、なお、先ほど私はつい血圧が二百以上に上がれば勾留をしないんだということを申しましたが、本人についてしないというのでなくて、従来いろんなケースにおきまして血圧が二百を超すような場合には、人命のために勾留の執行を停止するというのが従来の基準であるように聞いておるので申し上げたわけであります。  なお、御指摘のように、急に血圧を上げるような特殊の、何と申しますか回避の方法を、擬装手段をとっておるというようなことも聞いておりません。
  153. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ、局長、ちょっと方角を変えて質問してみますが、これは要するに身柄を拘束するという問題ですね。これはたとえば小佐野さんにしてもそれから児玉さんにしても、当然、これは本人が病気でなければ身柄を拘束して取り調べるような状態なんですね、これはどうなんです。
  154. 安原美穂

    説明員安原美穂君) これは勾留をすべきではないかという御議論に対して、勾留をし得るような容疑があっても、いまの健康状態はそれを適当としないような状態だということを申し上げた、いわば一般論のようなことでございまして、いま捜査の機微にわたる問題として、いまや小佐野児玉については、その拘束を客観的にする嫌疑の状態にあるのではないかというお尋ねでございますが、その点は捜査の機密にわたることでもございますので申し上げかねますが、児玉等につきましては、あの程度の税法違反であるということになりますと、従来の慣例でも、勾留をするというような基準に当たるようなケースであろうと私は思いますし、小佐野につきましても、すでに強制捜索に踏み切っておる段階であるとすれば、通例は身柄の拘束をするような基準に当てはまるケースではないかと、私の判断でございます。
  155. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それで結構です。  いずれにしましても、この病気という問題が非常に大きなネックになっている。しかも、そういうような中でロッキード事件捜査は非常に難航している。しかも、そういうような中で二人の拘束ができないということになれば、これはやみからやみに葬られる可能性まであるということは、これは明らかだと思うんですね。  さらに次に、私は大臣にお伺いをしたいんですが、いまのは捜査対象が病気ということで非常に捜査の障害になっているということなんですけれども、今度は、捜査する側ですね。これは捜査する側の状況、政治状況というのが私は非常に大きな問題になってくる。これは稻葉大臣が、現在まで、特に政治不介入、こういうような方針を貫かれてまいりましたし、三木さんもそういう姿勢で来たわけですね。そこで、これだけのいわゆる二人が貫いてこられた政治情勢というのが、今後、新しい内閣によって貫かれるかどうかということになりますと、これは非常に私はやはり問題があると、こういうように考えざるを得ないわけですね。  現実に、この自民党の党内の圧力という問題についても、大臣がたびたび委員会等で発言していらっしゃいますように、ありとあらゆる圧力をはねのけて大臣自身も今回の法務当局指揮をとってこられたと私は思うんですね。そうしますと、端的に言いますと、午前中にもお話ございました、ああいうような三木総理総理をやめるに当たっての所信を、まあ遺言という言葉で言いましたけれども、こういうふうな言葉を残さなければならない。これは当然あたりまえのことなんですよね。たとえばロッキード事件に関するところにつきましても、「私は、ロッキード事件究明に全力をつくして取り組んできた。しかし、まだロッキード事件児玉ルート解明が残されている。真相究明は徹底的に続けられなければならない。そして、究明が終わった段階で、その全容を国民の前に明らかにしなければならない。」そして「また、 ロッキード事件を契機として、政治腐敗防止の措置を抜本的に講じなければならない。自民党が、金権体質と派閥抗争を一掃しないかぎり、国民の信頼を回復することは不可能である。」というところがロッキード事件に対する遺言と言われるところですが、こういうふうな遺言を出さなければならないという情勢ですね。こんなことを言わなくても、自然に、あうんの呼吸で本当は引き継がれていくのが当然だと私は思うんです。しかしながら、それがそういうふうに簡単に引き継がれそうにないように見受けられるわけです、外から見ていますと。  現実に、少なくとも三木・稻葉ラインというような強烈な姿勢が今後の内閣に引き継がれるかというと、そうじゃないというふうに考えられるわけです。そうしますと、先ほどの話と関連をいたしますが、要するに捜査する対象そのものが病気で、どうしようもない。しかも、今度は、引き継がれる、捜査する立場の人たちが、三木・稻葉ライン以上にロッキード事件を強烈にやろうとお考えになっていらっしゃるかどうかというと、そうでもない。そういうぐあいになってまいりますと、これはロッキード事件そのものが完全に幕引きというか、もうきょうの委員会で終わりみたいな感じにしてはならないと私は思っていますけれども、政府の姿勢はそうじゃない。もう完全に幕引きというような危惧というのが現実にわれわれひしひしと感じられるわけです。それでは私は実際問題、大臣、これはいかぬと思っているわけです。そこで、そういうふうに考えるわけですけれども、大臣、この問題について、そう心配しなさんなと大臣はおっしゃられるかどうか。ここら辺の問題について、今後の法務大臣がどなたになるかわかりませんけれども、大臣が引き継ぐ私は本当のポイントになることだと思うんですよ。そういうような意味で、大臣の所信をお伺いしておきたいと思います。
  156. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 峯山さん、大変好意ある御心配を、お言葉と警告をちょうだいしましたが、衆議院議員選挙の結果を政治家としてどう踏まえるかということは、後継内閣及び今後の党が、自由民主党を再生しなければならぬと思っている党員の気持ち、そういうものを踏まえますと、あれだけやってみたが、えらい国民の批判を受けた。ことに三木おろし即ロッキード隠しみたいな印象を国民に与えた。そういうことも手伝って大いに影響してこの衆議院選挙のこういう国民の批判になったということも大体明らかであり、来年の参議院議員選挙を目前に控えて、これに取り組む自由民主党の政権担当政党としての責任はきわめて重大でございますから、そういう点について反省を新たにするものと私は思いますな。反省を新たにしなければ、私は必ず保革逆転する。そういう危機感を持って対処すべき、いま党は現状にあるんだから、三木さん要らないことを言ったとおっしゃいますけれども、過去の様子を見ますと、あれは要ることであると御判断なすったんでしょう、必要なことと。そうして、この選挙の結果を踏まえて、さらに党の反省とその出直し改革、いろいろなことを言っておられますが、それとも関連して、ロッキード問題は徹底的に取り組んでもらいたい、真剣に取り組んでもらいたい、こういうふうに言われることも、決して、あながち要らぬことでも私はないと思いますね。  ですから、私、引き継ぎ事務のあるときには、後任の法務大臣によくそのことをお頼み申しまして、この事件の少なくとも解明し得るところ、すなわち、これは贈収賄事件も重い犯罪ですけれども、法定刑から言いますと、議院証言法違反の罪というのは非常に重い犯罪ですから、それについてとにかく、何といいますか、私が俗によくたたかれましたしたたか者ね、そこまでいったと、証言法違反の起訴まではいったということになりますれば、ああいう病状でありますから、いま刑事局長がるる説明したようなこの捜査の性質から言って、これは病気回復があれば非常にしやすくなると、なくってもしかしいろいろな方法がありそうなものだという御指摘に対しても刑事局長は否定しておらぬのですから、そういう方向で鋭意捜査を継続し、多少時間がかかっても姿勢を崩すことなく、徹底究明の姿勢を崩すことなく、後継内閣はやってもらえるものと、決してきょうのこの委員会でロッキード問題に対する、政府に対する国会追及がこれで事実上終わりになるんじゃないかということは、私、そう御心配になる必要はないかと思いますね。  昼前の委員会でも、私、将来もこれが継続されて、もし当時の責任者として法務大臣証人として出てこいと言われれば、決して拒むものではありませんということまでも申し上げているのでございますから。そして、よく刑事責任追及と政治的道義的責任追及とを国民は、どうも選挙などでいろいろ国民と接触しましても、ごっちゃにしているようでございまして、そこのところは峻別して、道義的政治的責任追及担当者である国会の皆さんが第三のルートについてもいろいろ追及さるべき機会があるのではないか。したがって本日のこの決算委員会ロッキード問題に関する私に対する質問をもって総決算終わりと、こういうものではなかろうかと思いますがな。あなた、せっかくあなたからそういうふうにあきらめムードみたいなものを聞こうとは、よもや思いませんでした、私。
  157. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 あのね、私はね、私が幕引きしようという感じは全く持ってないんです、私はね。いままで解明しようとして努力をしてまいりましたし、そうでなくちゃいけないわけです。  私は、これから質問まだ続けてまいりますから、大臣ね、いまついでですから一言申し上げておきますけれども、私の考えは、大臣の先ほど午前中にも答弁ございましたが、第一のルート、第二のルート、そして第三のルートとあるわけですけれども、第一のルート、第二ルートのこの二つですら私はまだ解明されたなんて全然思ってない。先ほども言いましたように、国民の前に明らかになっておりませんし、まだ問題点が幾つもある。私はこの点は後で指摘をいたします。それはそのとき答弁いただけば結構ですが、まだ解明になっていない第三のルートでさえこういうふうな状況である。すなわち捜査する対象やする側、両方ともに問題がある。そうすると、私は現実に幕引きということになるんじゃないかと、それでは困るから、困ると言っているわけです。  そこで、私は、大臣、もう一点この点をお伺いしておきたいと思うんですがね、私はロッキード事件をことしの二月ロッキード事件が起きましてずっと担当してまいりました。このロッキード事件による政治不信というのは、私は、長年の日本の政治史の中でも、この政治不信はいまその極に達しておると、そう思うんです。だから、政治不信のその原因となったこのロッキード事件ですけれども、ただ単に、私は自民党が全面的に悪いなんて思ってません。やはり政治家全体が不信を持たれているわけですから、政治家全体が反省をしなければいかぬ、こういうふうに考えております。  そこで、私は大臣に一言やっぱりお伺いしておいて、次に移りたいと思うんですけれども、自民党の皆さんは実際反省しているんですかね、大臣大臣は自民党の党員ですから、私は大臣としてでなくて結構です。自民党はこの問題についてどう反省をしているか、どうお考えですか。
  158. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 非常に反省している人もあるし、さっぱり反省してないのもありますな。平均して反省が足らないと私は思います。
  159. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は確かにそう思うんです。大臣新聞の談話を一々私取り上げるつもりはありませんけれども、この談話の中身から見ましても非常に反省していない点が多いし、している人、していない人というふうに大臣はそう言いましたけれども、党としても、先ほど午前中にも多少触れましたが、灰色高官を公認しているわけですから、現実に。そこら辺のところも私は何らかの措置が当然必要である、こう思うんですよ、大臣、どうですか。
  160. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) ロッキード調査特別委員会で御公表になった、いわゆるこれこれは政治的道義的責任があると判断を下されて、そうして公表になった、そのことは国会の意思でございますからね、そういう国会の意思を踏まえて自由民主党が少なくとも公認を取り消すとか、あるいは離党勧告をするとかいう措置はあってもしかるべきもんだと、こういう意見を言った段階もあるんですが、何しろ党内においては影響力きわめて微弱なものですから、それが実らなかった責任は非常に重大だなと私は思いますね。しかし、党全体がそういう点で、私がさっき言ったように、平均して反省をしておらぬ、遺憾である、もっと反省しなけりゃまた参議院でべら負けするぞと、こういうことをいまここで断言をしておくわけですな。
  161. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次に、いま第二点まで申し上げましたので第三点に移ります。  第三点目といたしまして、総括的に申し上げて、特に検察当局、警察当局ですが、このロッキード事件に対する取り組み、私はこの事件が発生してからは、ことしの二月以降は相当本格的に取り組んできたと思いますよ。そう本格的に取り組んできたであろうと考えています。しかし、こういうふうな事件に対する取り組みですね、これが非常になまぬるいんじゃないか。  これはもっと大臣具体的に申し上げますと、このロッキード事件というのは、国会ですでに昨年、少なくともことしの二月からさかのぼること約半年以上も前に、国会でこのロッキード社の対日売り込み工作という問題が取り上げられているわけですね、現実の問題として。さらには、当時すでにその人が質問した半年以上も前です、二月の半年以上前、いまから言うと一年以上も前ですが、当時、新聞ですでにロッキード社のトライスター売り込みについて巨額な金が流入していたと、日本にね、そういう新聞報道が現実にあるわけです。こういうふうないわゆる情報というものに対して捜査当局は一体何をしたのか。やっぱり捜査当局自身も、われわれ国会もそれはそれなりに反省はせにゃいかぬ。今後、こういうふうな問題を二度と起こさない、また起こしてはならない、また起きた問題は解明しなくちゃならないという反省のもとに考えますと、こういうふうな問題について、私は、検察当局、警察当局の姿勢そのものがかねがねから弱いんじゃないかと、こういうものに対する姿勢が。  そういうような意味では、コーチャン証言が出て大きく世界的に波紋を起こしてからあわててこの問題に取り組んだ、こういうんじゃやはり私は検察当局が世界に類を見ない優秀な人たちがそろっていて、こういうような問題の解決にいつも世界の先陣を切ってやっていると、かねがねそういうことは聞いているわけですけれども、今回は、少なくとも自分のところの国でこういう問題が多少指摘をされながら、そういうふうな取り組みがおくれたという反省はあるのかどうか、こういう問題については一体どう考えているのか、今後もやっぱり起きる問題ですし、今後こういう問題を起こさない、またこういう問題が起きたら早急に自分の国で取り上げていくという問題、あるいはそういうような観点から考えても警察、検察当局はこういう問題についても当然反省し、取り組みの姿勢というものを考え直さなくちゃならないということになるんじゃないかと思うんですが、この点はどうです。
  162. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 田中金脈のときに本当にもっと突っ込んだ捜査をすべきであったという批判及びこれに対する反省はあります。そしてロッキード問題についても、ただいま御指摘になった点についての反省はもちろんあります。  ただ、これが公表されてからの、表に出てきてからの取り組み方については本当に真剣なものがあって、それが証拠に日本の場合はここまでとにかく半ばといえども解明したが、イタリアだのそれから西ドイツだのその辺から比べますと、これに対する検察法務当局の取り組み方ははるかに、たとえば日米捜査当局同士の実務取り決めのごときは、ああいうこともやればやれたんだなということをイタリアの検察当局がいまごろになって言っているというようなことを聞きますが、そういう点からいうとやっぱり取り組み方は真剣であったと言うて、今後もそういう真剣な取り組み方を、今後こういう事件がもし不幸にして起きたならばやらにゃいかぬという覚悟のほどはかたいものがあるということを申し上げておきたいと思うんでございます。
  163. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、当然私はそうだと思うんですが、重ねて私は国際的な犯罪、そういうような見通しが当然考えられる、こういうような問題が国会で取り上げられ、新聞等で報道された場合は、警察なり検察当局も当然そういう問題に対する取り組みを真剣に考えるべきだと、こう思うんですが、この点をもう一回再度重ねてお伺いしておきます。
  164. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 国際間の問題でありますから、国際的に協力してやらなけりゃ事態の解明はできませんわね。そういう点において今回の事件に関し、日米司法当局、捜査当局の協力的な取り組み方についてはレビ長官からつい先日私のところに手紙が来ておりますが、一つのいい例を開いたと思う、今後もこういう事件解明については国際協力を進めていかなけりゃいかぬということを言うてきておりますが、私は、そういう点では、今後は何かそういうにおいがしたら直ちに取り組むという迅速果敢、国際協力の緊密なる実を上げていく、そういうことにせんならぬなということは私自身もそう考えておりますし、これに苦労をした——飲まず、食わず、眠らずとは言わないけれども、日曜も返上してやって苦労したあの検察当局は痛切に骨身にしみるほど感じているというふうに聞いております。
  165. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぜひいま大臣がおっしゃったその姿勢で今後も取り組んでもらいたいと思う。現実の問題として、田中金脈以来、当決算委員会でもこの問題等相当突っ込んでやりましたんですが、大臣先ほど言いましたように、田中金脈のときもう少し突っ込んだ取り調べをしておれば何らかのあれが出ておったと、そういう反省を後で聞いたって何にもならないわけでございまして、現実にいま大臣が答弁ありましたように何かのにおいがあったら、敏速果敢に取り組んでいただく、そういう姿勢であっていただきたいと思います。  そこで、そのにおいですが、たとえばロッキード社と同じような秘密代理人を置いて日米間で現実にその報酬等も出して、そしてこのロッキード社と同じような売り込み作戦を現実にやっていると、そういうふうなにおいが現実にもう日本国内にふんぷんとしてあるわけですね。  具体的に申し上げますとボーイング社の問題ですが、このボーイング社の問題すら秘密代理人が日本に現実にいると、その人数すら指摘をされております。そしてその人たちには報酬が支払われていると。そうしますと、報酬が支払われているとすれば、外為法違反というのが、これ現実に表へ出てない問題ですから出てきますね、この容疑というものが出てまいりますね。そういうような問題や、そういうふうな可能性というのは現実に指摘をされるわけですが、こういう問題については、犯罪そのものは具体的に表に出ておりませんけれども、その犯罪容疑が現実にあるわけですね。あり得るわけですね、もう少し言いますとあり得るわけです。そうしますと、捜査当局は、こういう問題についても、いま大臣の決意のとおりであるとすれば、当然、私は取り組むべきであると、こう思うんですが、この点どうです。
  166. 安原美穂

    説明員安原美穂君) いまのボーイング社云々のことは報告は受けておりません。  なお、お言葉ではございまするが、何かの広報機関あるいは雑誌、新聞等に情報が出たからといって、すぐ犯罪捜査に着手すべきだという御議論であれば、それはいささか捜査権の乱用にわたることでございます。御指摘はあくまでもいかなる情報にも検察当局は鋭敏な神経を働かせということであれば、そのとおりでございまするが、すぐ捜査権を発動すべきではなかったかという御批判であるとすれば、ロッキード問題に関しましてもすぐに捜査を発動すべき場合ではなかったからやらなかっただけでありまして、犯罪の嫌疑を持ちながらやらなかったということではなくて、嫌疑を抱くまでに若干の日時を要したものと御理解をいただきたいと思います。
  167. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、私はね、局長ね、局長の後の問題についてはどうも納得できない。このロッキードの問題も昨年から現実に出ていますね。嫌疑を持つに至らなかったと言いましても、至らなかったということは検察当局がそれだけ無能だったということになるんじゃないですか。やっぱり私は当然もう少しこの問題は早くキャッチできてよかったと。要するにコーチャン証言であれだけ明らかにならなければどうしようもなかったというんじゃ日本の検察無能と言われてもしようがないじゃないですか。そこら辺のところは私はもう少し反省があってしかるべきだと言うんです。そういう反省があってしかるべきで、私は、捜査そのものに全面的に立ち上がれと言うているんじゃないんです。  当然、それだけの鋭敏な神経を働かせて捜査に着手——捜査の中身は私は専門家じゃございませんからわかりませんが、いずれにしてもそういう点について神経を働かせてそういう問題と取り組む。そしていち早くこういう問題を、未然に防ぐということはできないにしても、こういう問題を外国から資料を提供してもらわなければどうしようもないというふうなことじゃなくて、国内からこういう問題が起きているから外国に対して資料を出せというふうな、いまの状態と逆な状態が多少出てきてもいいんじゃないか。そういうふうな点は、私はそれなりにきちっとした反省のもとに立ち上がらないと、あれはあれでよかったんだと、出てきてからちゃんとやったんだという、そういう考えじゃ今後どうしようもない。だから、私たちも物を言うときにやっぱり一つ一つ自分自身はどうだったのかと反省の立場に立って私はきょうは質問をしているつもりですけれども、そういうふうな立場に立ってこういう問題に取り組まないといけないんじゃないか。  これはボーイング社の問題だけじゃないんですよ、たとえばもう一つ言いますとLNGの問題すらそうですね。この問題も相当すでに日本の政府高官へ賄賂が贈られているというふうなことは報道されているわけです。それは局長が言うように、あれは報道だけで私は真実はわからないと、それはそうかもわからない。そうかもわからないけれども、こういう問題をどうするかということについて、これは事実なのかどうか、事実であるかどうかわかりませんね。しかし、そういう点については、やはりそういう点にも頭を働かせ、あるいはそういう点にも調査をしてみると、そういうふうな敏感なあれがないといけないんじゃないか。  それだけじゃありません、まだありますね、KCIAのいわゆる非合法対日工作、こういうような問題も現実にあるわけです。現在、刑事局長、少なくとも先ほど大臣がおっしゃったこのにおいという点からいきますと、これは全く無臭じゃないですよね。少なくともこの三つの事件というのは、これから私は大きな問題になると思いますよ。ただにおいだけじゃなくて、もう多少においが発散している感じです。そういう点からいきますと、私は、当然、ただ報告を受けていないと、局長ね、報告を受けてないというんじゃなくて——報告を受けてないんでしょう、きっとね。けれども、それはそれでいいとしましても、何らかの形で私は当然取り組むべきである、そう考えるわけですが、たとえばもっと逆な言い方をすると、局長がしょっちゅう言う、何らかのやっぱり関心を持ってこういう問題は読むべきであり聞くべきであり、見るべきだと私は思うんですが、どうです。大臣局長、両方の答弁をお伺いしたい。
  168. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 峯山委員の御指摘が、検察当局は無能であったというようなお言葉があり、あるいはお言葉の端々に急いでやらなかったことは積極的意欲に欠けるところがあったというような御批判であるとすれば、検察当局としてはその御批判にはいささか不満がある。問題は、今度のような国際犯罪のような場合を含めまして、こういう隠微の間に行われる犯罪についての情報を的確に把握する組織というか制度というようなものにつきましては、今回の事件を通じて国際司法捜査共助を充実していかなきゃならねあるいは特捜事犯についての情報網をもう少し確立すべきだという反省はございます。  重ねてお願いを申し上げますのは、検察当局は私は無能であったとは思いませんし、意欲に欠けておったとも思わないということを重ねて申し上げさせていただきたいと思いますと同時に、いま最後のKCIAとかボーイングというような問題につきまして常にそういう意味においては関心は持っておるはずでございますが、いま関心を持っております、捜査を始めることにいたしますというようなことを言うのは、かえって捜査の妨害になるから、そういうことを公開の場所ではなかなか言えるものではないこともひとつ御理解をいただきたいと思います。
  169. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 刑事局長の申したとおりであります。
  170. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、私は、局長、もう一遍これはお伺いしておきたいんですが、これは今回のような事件の場合、日米司法共助とありますね、先ほども答弁に出てまいりましたが、そういうふうなことは非常に大事だと思うんですね。今回の、大臣先ほどおっしゃいましたように、一つの大きな成果だと私は思いますね。しかし、こういうふうな大犯罪なんですから、これはやっぱり捜査当局がただ外国の情報待ちで動き出すというんではなくて、少なくとも日本の検察当局が独自のいわゆる捜査能力といいますか、そういう点で私は当然こういうような問題について取り上げるべきであり、立ち上がるべきだと、そのことはやっぱり一言どうしても言っておきたい、こう思うんですが、どうです。
  171. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 先ほども申し上げましたように、今後の組織の問題といたしましては、いま御指摘のように、情報網の確立、充実ということについてはさらに努力をしなければならないと思います。ただ、国際間の犯罪でございますので、やはり国際協力というのがきわめて重要でございまして、先ほど大臣も御指摘のとおり、先般、レビ司法長官からは、今回のケースを先例として今後とも捜査協力について緊密にやっていこうという御返事をいただいておるわけでありまして、この方面につきましてもさらに充実を図っていきたい、かように考えておりますので、よろしく御支援を願いたいと思います。
  172. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 先ほどと重なりますが、もう一回お伺いしておきます。  このボーイング社の問題ですね、これは要するに、こういう報道も現実にあるわけですけれども、刑事局長報告を受けていない。先ほど、こういう問題は捜査に入っているとかそういうことは言えないということですけれども、問題を具体的に三つ指摘をいたしましたけれども、これはやっぱり関心は持っているわけでしょう。
  173. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 常々申し上げますように、いま御指摘のことは、何か新聞で私も見た記憶もございますが、そういうふうに特に新聞の報道等につきましては、検察当局は関心を持っておるのはあたりまえでございます。
  174. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ、この点はこれから当然この三つの問題については少なくとも新しい内閣のもとで、また新しい委員会等で相当大きな問題になるであろうと私は考えております。  そこで、大臣、先ほどの保留になっております第一の山、第二の山ということで、第一の山、第二の山があたかもすべて解明されたみたいにみんな感じてますし、現実の中間報告等でも私はそういうふうに思いました。そこで、大臣はこういうことをおっしゃっていますね。要するに児玉ルートー第三のルート解明していきますと、必ずPXLの問題が出てくる、要するにそれでPXLという問題は児玉ルート解明されるかどうかにかかっていると、こういうような意味発言をしていらっしゃいます。そうしますと、この児玉ルート解明していくとPXLの問題が出てくる、要するにそれを解明することになると、こういうふうに大臣判断をされた根拠は何ですか。
  175. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 私は、中間報告でも申し上げましたとおり、丸紅ルート全日空ルートに関する限りはPXLの売り買いを通じて、あるいは売り込みを通じて贈収賄という犯罪容疑は出てこなかったと、こう報告しているんです。児玉ルートが進んでいくとあるいは出てくるかもしらぬ、必ず出てくるなんていうことは言っていないんですね。PXLも非常に疑わしい事件であると、疑わしい、疑いを皆さんがお持ちになるのも当然です、国民も持つのも当然だと、しかし、第一、第二のルートでは出てこなかったが、それは第三のルートで出てくる可能性がある、こういうことを申しましたが、いまでもそういうふうに思っておりますね。
  176. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣がおっしゃっているその出てくる可能性があるというのは、要するに第一、第二のルートPXLは出てこなかった、出てこなかったから、このPXLという問題は非常に大きな問題でもあるから、一般的に第三のルートがあと残っているわけだから、これを解明すれば出てくるであろうと判断されていらっしゃるのか。または、現実に児玉ロッキード社との契約がありますね、売り込みに関して。そういうこともあるので、これありだ、要するに出てくる可能性があると判断されていらっしゃるのか、そのどちらですか。
  177. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 後者でございますね。
  178. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 後者ですね、私もそうだと思うんです。  そこで、後者であるとすれば、児玉ロッキード社の契約——児玉ロッキード社の契約というのは、もうすでに御存じのとおり、PXL五十機を売りますと二十二億五千万円の賄賂をもらうと——賄賂という表現がいいかどうかわかりませんが、こういう契約ですね。これがあるから、要するに第三ルート解明すれば、このPXLの問題が出てくるであろうと判断をしていらっしゃるわけです。そこで、その契約に基づいて大臣判断されたと同じように、丸紅に対しましてもこういう契約は現実にあるわけです。大臣はこれは御存じございませんか。いま現実に知らないとすれば、私はもう大問題でございまして、それじゃ、安原局長、答弁を願いたい。  一九七二年十一月一日のP3シリーズに関する丸紅ロッキード社の契約があるということ、コンペンセーションとして現実に五十機で計算してください。五十機で二十二億五千万円というコンペンセーションになるということについては、すでに当委員会で何回もあるわけですね。大臣御存じないようですから、一遍詳しく。
  179. 安原美穂

    説明員安原美穂君) そういう契約があることは承知しておりますし、大臣もお聞きであったと思いまするが、そういう契約があることについては、たしか峯山委員を初め数人の委員から御指摘があったということは十分に記憶しております。
  180. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いま局長がおっしゃるように、現実の問題としてこの一九七二年十一月一日の契約によりますと、丸紅ロッキード社がこのPXLの売買に関しまして、児玉の契約の約一年前に丸紅がそれまでの契約と全く違った契約、それまではたとえばP3AシリーズとかP3シリーズとかいうことで、たとえば百機売りましてもそのパーセントは要するに一%とか二%とかいうその手数料の契約になっておったわけです。もうこれは大臣御存じだと思いますよ。ところが、この一九七二年の十一月一日、これは要するにコーチャンが日本に参りまして、そして現実に田中さんやみんなといろいろ話し合いをして、そのすぐ直後にこの契約が結ばれているわけです。こういう契約が結ばれて、われわれ参議院のロッキード委員会では特にPXL問題を専門にやっていたわけですから私は言うわけですけれども、第一のルート、第二のルート解明されたとは言いましても、現実に丸紅ロッキード社は五十機を売買いたしますと二十二億五千万円といういわゆる報酬を支払いますと、賄賂を支払いますという裏契約が現実に出てきているわけです。  なぜこういう契約を結んだかという問題についても、当参議院のロッキード委員会で相当問題になりました。ということは、それは田中取り調べる以外にないと、最終的な結論はそうです。参議院のロッキード委員会が要するに田中総理を証人として喚問しなければならない最大の理由は、ロッキード問題のポイントは全部田中さんが握っているということになっているわけです。そうしますと、こういうぐあいになってまいりますと、わが参議院の方といたしましては、まるっきし、第一の山、第二の山というのは解明されたと言いましても、いままでこれは全く不自然なんです。このことは検察当局も認めていらっしゃるはずです。  そうしますと、第一の山、第二の山が解明されたと言いましても、少なくとも丸紅がなぜこういう契約を結んだのかという問題が解明されない限り、第一の山、第二の山を解明したことにならない。そのことが全くこの中間報告に一言も触れられてない。これは一体どういうわけなんだということで、われわれロッキード委員会でもずいぶんやりましたけれども、その点に対する答弁はございませんでした。そういうふうな意味で、私は、ロッキード事件はまだ解明されてない。ここら辺のところもやっぱりはっきりした説明がなければ解明されたことにならないと、こう言っているわけです。ですから、大臣が、午前中の質問でもそうですが、先ほどの質問でもそうです、第一の山、第二の山は大部分解明したと。大部分解明したかどうかわかりませんけれども、確かにそうでしょう。ロッキードのトライスターに関してはそうでしょう。しかしながら、もう一つの大きな問題のこのPXLに関しては、児玉ルートと同じように解明されてないと私は言いたいわけです。この点がまず一つ。  それからもう一点、時間が余りなくなってまいりましたので重ねて申し上げますが、田中総理を現実に検察当局は、これは安原局長かもわかりませんが、取り調べていらっしゃるわけですね、現実の問題として。それでこの田中総理に対して丸紅の請託があって、現実の問題として田中丸紅に対して、このPXLについてはいわゆるオライオンを買おうというふうな意味のことを漏らしたかどうかわかりませんよ、わかりませんが、そこら辺のことが多少なければこういう契約を結んだとは言えないわけです。そういうふうな意味で、ここら辺のところの解明というのが全くなされてないわけです。なぜかと言いますと、田中さん自身が参議院のロッキード委員会にもどこにも出席されてないからできないわけです。そういうふうな意味も含めまして、ここら辺のところはどういうふうにお考えなのか。現実の問題として私はこの問題はまだ解明されてない、こういうふうに指摘をしておきたいんですけれども、どうです。
  181. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 第一の山、第二の山というのをもっと的確に申すれば、ロッキード社から丸紅なり全日空に入ったと検察当局で認めた金員の流れについて、大部分の解明を終わったということを言うにすぎないのでありまして、何々が全然ないという証明というのはなかなかできないので、こういうことをやった結果こうであったということの意味において、ロッキードから流れ込んだ金の解明ということは、大部分、丸紅と全日空に関する限りこれはできたというのが大臣のおっしゃる第一の山であり、第二の山の解明が終わったということであろうと私どもは考えておるわけでありまするが、いま御指摘のPXLの問題につきましては、この中間報告が主としてと申しますが、ほとんどすべてがいわば犯罪捜査の結果を報告いたしたものでございます関係上、あの中間報告書にもありますように、PXLについては、検察当局は、いろいろの国会等における御指摘があり、いわゆる逆転劇というようなものがあって、世間に疑惑を招いておるという意味において、関心は持っておるけれども、現在までの捜査のところ、犯罪の嫌疑を抱くという段階に至ったという報告は受けていないと申し上げたわけでございます。
  182. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、そうであるとすれば、私は少なくともそのお金の入りにつきましても、丸紅の分については、まるっきし全部解明されたとは言えない。やっぱりPXLに関してはこういう契約がある以上、なぜこの契約がこういうふうに結ばれたのかということが解明されない限り、お金の中身はたとえばトライスターだけのものかどうかはわかりませんよ、実際問題ね。今後取り調べていくうちには、あのときにこのPXLの問題も何らかの話があって、関連が出てくる可能性は現実としてあるわけですから、そういうような意味では、私は、大臣が言う第一の山を全日空とすれば、第二の山の丸紅は、いまだこの問題が残っていると、少なくとも。そういうふうに私は言えると思うんですがね、大臣、どうです。
  183. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) それは違うんじゃないでしょうか。その金の流れは、これだけ来て、そうして丸紅から今度は日本の政治家にこういうふうに渡ったと、こういうことをトライスターに関してはわかったと、しかし、PXLについてはそれが幾ら入ってきて、まだPXLについてはトライスターのようにうまくいったという判断ロッキード社もしてないんじゃないでしょうかね。そうじやないですか、まだ。ですから、向こうが金を出すわけもなし、それがだれだれ、丸紅なり全日空会社なりに入ったという犯罪捜査の結果はなかったと、だから犯罪になるような解明はしにくい、こういうことですから、トライスターの場合とPXLの場合、丸紅及び全日空ルートに関しては違うんじゃないでしょうか。したがって、その点については、PXLについては犯罪容疑を見出すに至らなかったという中間報告になっているわけではないんですか。
  184. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、私はお金に色をつけるわけじゃないんですがね、それはできないと思うんですよ、実際問題ね。ですから、そういうような点から考えてみましても、現実にこの丸紅自身がこういう契約を結んであるわけですからね、現実にこういう契約があるわけです。そのときに当時丸紅の檜山会長は現実に檜山会長と田中会談の後にこの契約を結ばれているわけですから、やっぱり檜山さんは田中総理発言を、要するにこの契約を結ぶ根拠にしていると私は思うんですよ。  そういう点から考えてみますと、お金そのものは確かにトライスターのお礼として、あるいはそういうような関連として払われたかもわかりませんね。しかしながら、その中へは、それがすべて一〇〇%トライスターのものであったのか、あるいはPXLの問題が多少含まれておったかもわからないということも私は言えると思うんです。そこのところは完全なシロとかいう問題じゃないと私は思うんですよ、やっぱり。そういうような点からいきますと、このPXLの契約の問題については、どういうふうな取り調べを行い、どういうふうな答弁があり、どういうふうなあれがあったということは、われわれ全然わかりませんからね、私は。わかりませんから、その中身があれなんですが、しかし、少なくともそういうような問題については、私はやっぱりいろんな疑いがあるし疑惑が残る。丸紅の第二の山が解明したと言いますと、トライスターもPXLも全部含めて解明したみたいに感じますよ、実際問題。われわれも感じますし、一般の人たちも、第一の山、第二の山が解明したと言うと、やっぱり丸紅のこの契約の点も含めて解明したと、現実にそういうふうに感じるわけです。だから、そうじゃないと。やっぱり丸紅の契約の問題は残っていると。それは、ほかのいろいろなごちゃごちゃした問題は結構です、少なくともこういうような問題も解明すべきであると、私はこう思うんですけど、どうです。
  185. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) そういうPXLの売り買いについてこれだけの謝礼をするという契約があったということはお説のとおりですけれども、それが犯罪を構成する裏づけ、それの契約に基づいて現実に謝礼がきたとか、そしてだれに渡ったとかいうことについては、丸紅ルート犯罪捜査の結果は出てこなかったと、こういうことでございまして、その点は、いずれ公判で、御心配になるような点については、どうしてこれについては犯罪容疑なしと判断したか、トライスターについてはこういう犯罪がこういうふうにしているじゃないかという証明がだんだんできてくるんじゃないでしょうか。
  186. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、それはわかります。わかりますから、もう時間ございませんので詳しく言いませんが、少なくとも丸紅のこの契約そのものはそれは犯罪のあれはない。けれども、やっぱりこの契約が行われたその前後の状況や何かから見ますとね、それまでの契約の中身とこの契約とはまるっきし中身が違うわけです、商取引のやり方自身も違うわけですね。そうしますと、なぜこういうような契約を結ばざるを得なかったかという、その裏はやっぱりこれは解明する必要がある。なぜかと言いますと、PXLそのものが、それまで決まっていたものが白紙還元になったり、いろんな状況があるからです、全般的に。ですから、そういうPXLの問題を解明するためには、やはり丸紅のこの問題が残ってくるということです。この点はわかっていただきたいと思います。  それで時間ございませんので次に移りますが、これは大臣に一言お伺いを——お伺いと言うよりも意見を聞いておきたいと思います。  これは議院証言法の問題なんですけれども、これはわれわれ相当いろんな角度からこの問題は今後議論をしていかなければいけないと考えております。そこで、今回のように病気で議院に出席ができないというケースが現実に出てきているわけですね。たとえば児玉の臨床尋問というのを衆議院の方で行いました。ところが、実際問題、あの臨床尋問をやりましたけれども、大臣委員会で答弁されましたように、あれはうそ八百であると——そんなえげつないことを言ったかどうかわかりませんが、それに近いような発言大臣はいたしました。しかし、それで結局あんなうそ八百言ってもどうしようもないというのが現実なんです。  そこで、私は、少なくともこの議院証言法というのは多少手直しをする必要がある。これは少なくとも、たとえば刑事訴訟法の百五十八条に規定がありますように、要するに裁判所の外でもいわゆる取り調べができる、あるいは本人のいるところへ担当の者が行って取り調べをする、そういうのがいろいろあるらしいんですけれども、われわれも、少なくともこの議院の中だけではなくて、院の外へ行きましてね、そしてその場所でいわゆる尋問を行うことができる、そういうふうな改正というものを考えたらどうかとわれわれ考えているわけです。そういうふうな意味から、現実にあの児玉の尋問もやりましたけれども、ああいうような中身になってしまってはどうしようもないし、法的意味もない。そこで現実の問題として、ある程度の、いろいろな問題ありますよ、人数とかいろいろな問題、速記者とか、いろいろありますけれども、そういうものは別にして、院の外でもそういうことができるようにしたらどうかと、そういうふうに私は考えているわけです。  それで、この問題について、特に大臣は刑事訴訟法にも非常にお詳しい大臣とお伺いしておりますので、こういう問題についてはどういうふうにお考えか、一遍お伺いしておきたい。
  187. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) そういう取り調べにつきましては、議院証言法の規定と刑事訴訟法の規定とは相違のあることは御指摘のとおりであります。そして議院証言法においても、刑事訴訟法の規定、同法第百五十八条にあるようなふうに改正したらどうかという御意見のようでございますが、その御意見の事柄は、まあ本来法務省所管に属するものではありませんけれども、議院証言法に基づく証言国会外においても行わせ得るように法改正をすべきか否かにつきましては、国会当局において検討されてしかるべきものではないかと。このロッキード事件に関与をいたしました、そうしてロッキード調査特別委員会にしばしばお呼び出しを受けてその推移も見せていただいた私としては、国会において十分お考えになってしかるべき事柄ではないかという感想を申し上げるにとどめます。
  188. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 時間参いりましたので、もう一点だけお伺いして終わりたいと思います。  そこで、免責の問題ですが、これ大臣に一遍お伺いしておきたい。  この問題は、とにかく証人が出てまいりましても、一つは本当のことを言わないという問題がありますね。本当のことを言わないのは、これは議院証言法違反偽証告発もできますし、それぞれあれがあるわけですが、存じませんとか記憶にありませんと言いますと、これはどうしようもないわけですね。さらにもう一点は、先般、鬼頭判事補の問題で宣誓を拒否すると、こういうことになってくると、これは国会での証人喚問というのは全く用をなさないようになってしまう。これでは私たち非常に困るわけでございまして、国会がどうしてもその事案を解明する、そういうような問題から考えてみますと、要するに犯人を捜す、あの人は何百万円もらって灰色だどうだこうだということに非常に熱心で、事件そのものの中身、全貌が明らかにならないというのではやっぱりどうしても困るわけです。そういうような意味で、私は、アメリカのように免責の制度というのを採用することはできないか。  たとえばコーチャンがあの議会で全部しゃべる、中身を正直に全部しゃべってしまう、しゃべってしまったそのかわりに、そのしゃべったことに対しての責任は問わない、そういうふうな意味での、いわゆる証言したその中身がこれは刑事裁判等で証拠として使われない、こういうふうな保障、あるいはその証言が証人の犯罪関連ある場合には、その犯罪について訴追を受けない、少なくともそういうふうな意味の免責処分ですね。そういうようなことを何らかの形で検討してもらわないと、国会でいわゆる国政調査権で幾ら証人を呼んでやっても今後いろんな問題が出てくる。これはいろんな角度からそれぞれ専門の場所で検討しなければならない問題でしょうけれども、大臣とこういう問題を議論するのも全くきょうがこれで最後になりそうですから、大臣の所信を一遍お伺いしておきたい、そういうわけです。
  189. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 峯山さんからいま御指摘をいただいた点はきわめて重要ですね。今後の再発防止の意味から言っても非常に重要ですね。それから、今後もしこういう事件がまた起きた場合の迅速なる捜査のためにもきわめて重要な御意見と承ります。ただ、ただいまのところ、そうしてそれについては相当省内においても検討いたしました。議論もいたしました。三木内閣ロッキード問題関係閣僚連絡協議会においても法務省の見解を述べました。ただいまのところの見解を以下申し上げます。  米国では、もともと刑事手続における証人尋問において証人が自己負罪拒否特権が認められておりますが、当該手続を主宰する者が証人に対しその証言を不利に用いないことを条件に証言を強制し得るものとしており、この刑事免責の制度は、贈収賄事件や組織犯罪等において比較的小さな役割りを果たしたにすぎない者や、小さい犯罪を犯した者についてこの免責を与えることによって証言を強制し、さらに責任が大きく悪質な上級の犯罪者の訴追や重大犯罪についての証拠収集、訴追を容易にするためのものであって、他の準司法的な委員会等においても採用されていると聞いておりますが、この制度には各種の問題点のあることも指摘されているところであって、わが国の国民性、習俗等から見てこの制度を現在直ちに導入することについては問題があると。むしろ、ただいまのところは、どっちかというと消極的な姿勢でありますことを遺憾ながら申し上げておかなければなりません。
  190. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 以上で終わります。ありがとうございました。
  191. 塚田大願

    ○塚田大願君 先ほどからロッキード事件真相究明についていろいろ大臣の所信が問われまして、大臣もいろいろ御答弁あったわけでございますから、私は、ごく簡単に一つだけこの問題について大臣の考えをお聞きしておきたいと思うのであります。  先ほど午前中の答弁では、大臣は、今後のこの問題の究明は非常に有能な検察当局があるから大丈夫だと、信用してよろしいと、まあこういうふうにおっしゃった。私はそれはそれでいいと思うんです。ただ、やはり政府、内閣の問題になりますと、どうも歯切れが悪い。稻葉さんは後継内閣がやってくれるだろう、あるいは期待しておるという程度でありまして、大分ニュアンスが違うと思うんですね。  そこで、先ほどからもいろいろ出ましたけれども、先般の新聞対談で稻葉さんがいろいろおっしゃっている中でやはり共通しているものがここにも出ている。たとえば、このインタビューの会談では、稻葉さんは、側隠の情のある人が総理大臣になったり法務大臣になったりしては真相究明ができないんだと、こういうことをおっしゃっておるわけですね。やはり稻葉さんの頭の中にはそれが非常に強くあるんだと、それがきょうの答弁の中でも私は出てたんじゃないかと思うんですけれども、こういう状態では本当に今後国民期待しているロッキード事件究明というものはできません。やはり、私は、稻葉さんが仮に法務大臣をやめるにしても、自民党の中の大物でありますから、幹部でありますから、稻葉さんは私は影響力はないんだなんと言って謙遜していらっしゃるけれども、そうはいかないと思うんですね。やはり今度のロッキード事件の担当大臣として陣頭指揮されたわけだから、これは私の生涯をかけてやるんだ、政治生命をかけてやるんだというふうにならなければ、私は、今後の内閣はどういう内閣、あるいはどういう法務大臣か知りませんけれども、とにかく、少なくともいまの時点でこんなあいまいな状態で事が糊塗されてしまうような状態は絶対に防ぐという決意をはっきり述べてもらう必要があると思うんですが、その点どうでしょう。
  192. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) この総選挙を通じて、私としては、あなたから御指摘されるまでもなく手痛い経験をしているわけでありますから、そうして先ほども峯山さんに申し上げましたように、事態を深刻に受けとめ反省していると——このロッキード事件のこういうことについて。これじゃ政党が国民に信頼を得るゆえんじゃない、また政治全体の不信を招く大きな原因であるという点について強く反省している者と、さっぱり反省しておらぬ者とある、平均して自民党について言えば反省が足りない、こういうように申し上げたのは、私の手痛い経験から身につまされた切実な叫びであるわけです、これは。したがいまして法務大臣を退くからというて、後は、いままであれだけしゃべりやがったやつがロッキードの「ロ」の字も言わなくなったなどというようなことは毛頭ございません、そんなことはありません。これをもちまして答弁にかえます。
  193. 塚田大願

    ○塚田大願君 その稻葉さんの威勢のいい発言を信頼して、ひとつこれからもしっかりやってもらわなきゃいかぬと、こういう注文をつけておきたいと思うんです。  次いで、小佐野問題について一つだけ聞いておきます。  ロサンゼルス空港の二十万ドルの問題で、このロッキード小佐野への五億円というやつが大体はっきりしたと思うんですね。つまり入りの方は大体究明されたと言ってもいいと思うんですが、問題はやはり出の方だと思うんですよ、ところがこれが余りはっきりしない。小佐野政界にいろいろ働きかけをしていたということはもういろんな形で出ているわけであります。で特に多数の国会議員が小佐野から献金をもらっておるという事実も、これはもうはっきりしておるでありましょう。したがって小佐野自身がこの献金リストを持っておるということもほぼ大体一般にはもう承認されているところでありますが、この小佐野献金リストに本当にメスを入れるということがいま非常に重要だと思うんですが、この点についてはどういうふうにやっておられますか。
  194. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 小佐野賢治の献金について犯罪容疑があるとして捜査をしておるという報告は受けておりません。
  195. 塚田大願

    ○塚田大願君 これは大臣に聞きたいんですけれども、もう小佐野がかなり方々で、おれはだれだれに金をやっておるんだというふうなことを言っていて、そしてリストがあるということは一般に新聞報道などで言われておるんですけれども、今度の強制捜査の中でそういうものがあったろうと思うんだが、もしあったとすれば、これに対して徹底的なメスを入れなきゃいかぬことではないかと思うんですけれども、どうでしょう。
  196. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) せっかくの御質問でございますけれども、そこのところはいま重要な捜査段階でございまして、見つかった見つからない、そういうことを法務大臣の口から言うことは犯罪捜査に非常に支障がございますので、御勘弁を願いたいと思います。
  197. 塚田大願

    ○塚田大願君 じゃ、その問題もいろいろ聞いても、ここではみんな捜査中という口実で事態が究明されない。これではやっぱり国会の権威といいますか、審議にも影響することでありますから、私は、なるほど確かに検察当局はいろいろやって、もうここで一々言ったら捜査に影響があるとかいう慎重な態度からできないところもあるかと思うんですけれども、それはわかりますが、しかし、やはり国民がこれだけの関心を持っておる、そしてこういう公式の場でも質問がたくさん出る、そういう状態の中で、私は、法務省の姿勢としては、できるだけやはり納得のいくような答弁、木で鼻をくくったような答弁ではまずいと思うんですよ。そういう点を今後十分注意しておいていただきたいと、こう思います。  そこで、きょうは私の時間も余りありませんので、鬼頭問題についてお聞きしたいと思うわけです。  で、鬼頭問題について、特に網走刑務所における宮本委員長資料の不法入手、この事件については午前中も質問がありました。で、その際、法務省矯正局長から答弁もございました。午前中の答弁は十一月二十五日の局長の発表メモ、大体それに沿ったものだと思うわけでありますが、この先ほどの報告と、それから十月二十七日衆議院の法務委員会で行われました中間報告、これをあわせて考えてみますときに幾つか疑問が出るんですよ。その疑問についてひとつお答え願いたいと思うんです。  まず第一に、網走刑務所の程田所長が一度鬼頭から電話があったときに断っているんですね。四十九年の七月二十三日、それは法務省または管区あるいは裁判所の正式書類がなければそういう調査は困ると、こういう回答をしておる。ところが翌二十四日になりますと、札幌矯正管区第二部長からの電話で、何とか取り計らってくれ、こういう仲介の電話があった、そしたら一遍にその所長がそれに協力をした、そしてあの資料を提供した、こういう経過です。  これはちょっと素人だったらこの程度で納得するかもしれませんけれども、専門家だったら、行刑に明るい人だったらこれはちょっと納得しがたいと思うんですよ。それは当然そうでしょう。身分帳というものがどんなものであるかは、これはもう法務省はよく御存じだ。局長の通達が四十年に出て、四十一年には松川裁判のあの国家賠償訴訟で東京地裁がその身分帳を要求したことに対して法務省は拒否をしているくらい非常に厳重に保管をされておるそういう身分帳です。それが一所長の判断で、電話一本でころっと態度が変わるというのは、こんなことあり得るのかどうかということだ。その辺の事情はどうなんですか、もっと正確に話していただきたいと思う。
  198. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) ただいまのお答えを申し上げる前提といたしまして、程田所長と管区との間の交渉をやや詳細に申し上げなければならないと思います。  程田所長は、塚田委員御指摘のように、最初の電話が七月二十三日ありましたときに断りました。しかしながら、この程田所長に対する鬼頭判事補からの電話は、当初から身分帳を見せてくれという話があったのではないのであります。ただ終戦直後の政治犯収容者の書類を調査のため伺うということでありました。で、そのためにいま御指摘のようにお断りを申し上げたのでありますが、そこで翌日恐らく鬼頭判事補は矯正管区に電話をした模様であります。その電話を受けましたのが森律夫と申します第二部長でございます。現在、森部長につきましては再度調査中でございまして、まだその言葉のやりとりの詳しい点をそのまま申し上げる段階には至っておりませんが、森部長に対する話でも身分帳を見たい、あるいは宮本顕治氏について調査したいという言葉は出ていないのであります。  で、通常、刑務所を参観されますときになかなか現地が御承知しないというような場合には、管区のお口添えを願うというケースが非常に多くございます。これは一般の学者の方でございましても、また国会議員の方でございましても、あるというぐあいに私は承っております。そういうことで、管区で電話を受けたのでございますが、管区の森部長が程田所長に言いましたことは、鬼頭判事補がそちらに行くだろうから、その話をよく聞いて、許せるものなら許してやれというふうな電話の内容であったわけであります。と申しますのは、身分帳初めいろいろな事柄につきまして刑務所長の判断並びに裁量の範囲はきわめて多いのであります。それに対して管区から指揮命令の関係でいたすものではございません。しかのみならず網走は、私は国会でも申し上げたのでございますが、まあ観光刑務所といいますか、多くの方が実に行かれる。しかもこれは四十八年の七月で夏でございますが、夏の参観者はきわめて多いのであります。そういうこともございまして所長に電話したということでありまして、私自身も国会答弁で管区の口添えという言葉を使いました。使いましたが、それは身分帳をそのまま見せる、見せてやれという趣旨の口添えではなかったと現在までの調査結果では出ておるわけでございます。  それからなお、身分帳につきまして御指摘のように、松川事件におきまして提出命令が出ましたのに対しまして、法務省といたしましてはこれに反対であるという意見を表明いたしました。それは、すでに御承知だと思いますが、身分帳の中には、診断書その他受刑者あるいは未決勾留者の身体状況についてのものが入っていることの以外に、通常ならば検閲を許されない書信というものもいわば検閲をするわけでございますが、その内容を書いたものも入っております。それから、一般の方が面会に行かれたときに面接されたその話の内容も入っているわけでございまして、身分帳そのものをそのまま裁判所に出すという意味での提出命令は、受けられないということであったのであります。しかしながら、松川事件におきましてもその後事項を特定いたしまして、検証という形をとって、松川事件の被告の一部の方の診断書につきましては、裁判所にお見せしているのであります。  それから、さらに申し上げますと、身分帳には、全部が秘匿すべき事項ではございませんで、秘匿すべき事項とそうでない事項があるのであります。すなわち身分帳の表紙には、いつどういう罪名で入所したか、勾留中でございますれば、いかなる勾留更新決定その他があったか、それからどういう理由で釈放されたかという形式的な事項がございます。この事項につきましては、裁判所あるいは検察庁、あるいは警察等から捜査事項照会というような文書が参りますと、それに従って御回答申し上げている内容でございます。現に鬼頭判事補が最初に知らしてくれと言ったのは罪名あるいは入所年月日等でございまして、通常の文書の照会がありますればお答え申し上げる内容であったのでそれを説明した。  ところが、その所長が説明したときにはメモにとらずに、後にメモにとらしてくれと、こういう話であった。そこで、所長は忙しいので、当時の南部という庶務課長にいま説明したことをメモにしてくれということで、別室に案内した。ところが、南部庶務課長が電話等で中座したすきに、ほかの分も見、かつ写真を撮ったというのが事実でございまして、私どもも先般の国会におきまして、衆参両院におきまして何らかのプレッシャーといいますか、圧力が矯正管区にあったのではないかということから、その点は慎重かつ徹底的に調べましたが、そのような事実はないと私は断言できます。
  199. 塚田大願

    ○塚田大願君 まず第一に聞きたいのは、森部長に対する事情聴取、これは衆議院の十月二十七日でありましたか、そのときの中間報告でも、ただいま森部長に対しては事情聴取をやっていますというお話だったんだが、いまのお話聞くと何だかまだやっていないような返事ですが、どうもその辺おかしいんじゃないですか。これが一つ。  それから、まあいろいろ当時の電話の経過があって鬼頭が来た、刑務所としては気軽く何となく案内をしたと言うんだけれども、問題は、そういう門外不出の極秘の身分帳なんかを見せた。しかもそれがすきをねらって写真を撮られたと言うんだけれども、どうもこれもまことにうまくでき過ぎている話であって、第一その程田所長は前に正式の文書を持ってきてもらわなければ困ると鬼頭判事補に答えているぐらいですね、断っているぐらいですね。だけども、それが翌日来たら途端に全部何もかにもさらけ出してしまった。どうもそれではつじつまが合わないですよ。第一、私も刑務所の事情はかなりよく知っております。私は戦前、治安維持法で八年ばかり監獄舎におりましたから、細かいことまで、もう刑務所の職員よりよく知っているようなところがたくさんあります。こんなことは余り自慢にはなりませんけれども。ですから、行刑の面ではたとえばちり紙一枚、ようじ一本をもらおうとしてもこれは大変な手続が要るんです。あの監獄法施行規則によれば、とにかくそういうことは全部法務大臣まで報告が行くようになっておるんですね。そのぐらい厳しいんです。ところが、法務省としてはもう宝のようにしまってあるそういう資料を一判事補が来たら全部そこで出しましたと、こんなことはばかばかしくてだれも納得できないです、刑務所の中の事情をよく知っている人なら、行刑に詳しい人なら。  したがって、そこで問題になるのは、いまも局長が言ったように何らかのプレッシャーがあったんじゃないか、法務省の高官から口添えがあったんじゃないか、紹介状があったんじゃないかということが一般に言われているわけです。ですから、いまのような説明ではとてもじゃないけれどもわれわれは納得できません。やはりそこに何らかの政治的なものがあった、裏があったというふうに勘ぐらざるを得ないんですけれども、そこはどうですか、もう一回答えていただきたい。
  200. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) この事件が十月の二十一日と記憶いたしますが、新聞に報道されました以後、法務大臣から徹底的に真相究明せよという御指示もございまして、私どもといたしましては、当時国会中ではございましたが、全力を挙げて調査に邁進したのであります。むしろ私といたしましては、二年前のきわめて古いことでございますが、あるところまで調査がいったことにつきまして、特に共産党からはおほめをいただいてもいいのではないかというふうに思うぐらいに自信を持っております。しかるに、いまのようなお話でございまして、はなはだ私としても遺憾に存じますし、最終的には意見の平行線をたどることになるのではないかと思いますが、私の方で調べた結果を、前の国会でも申し上げてありますが、重ねて申し上げさせていただきたいと思います。  私は、この事件についてお尋ねを受けましたときに、刑事コロンボの捜査みたいなものだということを衆議院で申し上げたことがあります。いわば犯人がすでに特定いたしまして、その犯人が通常の裁判官ではあり得ないことをされたということから結末がついてしまっている。それをわれわれは跡を追って調べるのでありますが、そのようなことではなくして、いやしくも裁判官が刑務所に参りまして、先ほど申し上げましたように通常ならお答えを申し上げていいというときに、これを断ることができるでありましょうか。私が申し上げるのは、先ほども申し上げましたように、文書で回答を求められた際にお答え申し上げることを最初言っているのであります。しかも、文書が来なくて御本人がみずから来たのであります。  かつ、この鬼頭判事補が来られるまでには東京から電話がかかってまいりました。そこで、南部庶務課長は八王子の支部まで電話した。で、鬼頭裁判官という方はおられるかと言ったら、そういう方は在籍しておりますが、きょうはおりません、どこに行っておられますかと、そうしたら北海道で、あしたあたり網走に出るでしょうという話であったと。で、果たせるかな翌日網走にお見えになって、名刺も出されたということであります。しかも言われたことは、職務上の参考として研究したいという話がありまして、その内容も、何度も申し上げますように、通常、文書の照会がありますれば出すべきことの内容であったのであります。かつまた程田所長によりますれば、二、三日じゅうに伺うというのに翌日来たと。それから南部課長は、前日電話を受けたという記憶でございますが、そのとおり来たということになりますと、緊急の調査ということでおいでになったと思ったと。  ということになりますれば、なるほど文書の照会状なくしてお見せしたという点については、あるいは説明したという点につきましてはいささか粗漏があったというふうにおっしゃられれば、その点は私どもも認めているのでございますが、通常の過程におきましてこれをお断りするという状況はきわめてむずかしいことであったと思います。もし断るということになりますれば、今後裁判官、検察官が緊急な用がありまして、身分帳のいわゆる表紙部分に書かれている事実を知りたいというときにも、断らなければならないような結果に相なるのではないかということを恐れるのであります。
  201. 塚田大願

    ○塚田大願君 いまの局長の答弁ですと、文書でなくて本人が来たからと。こんなのは理由にならないでしょう。それは現に鬼頭みたいな男が裁判官にいるんだからね。裁判官は絶対なんだ、オーソリティーなんだということでもう無条件降伏みたいな話なら別ですけれども、法務省にはちゃんとそういう規則があって、規律があって、しかも、所長自身が文書でなければ困ると言っているほどの、前の日に言ったそのことが、翌日何らの保証なくて本人が来たから見せましたというんでは、これはやっぱりだれも納得しませんよ。局長は疑われて大変遺憾だなんて言っているけれども、これは疑わざるを得ないじゃないですか。私ども絶対にそれは妥協しませんよ。いまの答弁で納得はしません。どうしたって矛盾がある。  ですから、もう少しこの問題出しますよ。たとえば網走刑務所で南部課長が、自分が立ったすきに写真を撮られたと、こう言っていますね。ところが鬼頭は、十二月四日の毎日新聞でしゃべっているんですけれども、自分が撮った写真には書類が風で飛ばされるのを防ぐためにちゃんと職員の手が写っているじゃないか——こういうふうに書類を押さえている——まあこうまで言っているんです。私はそのすきにこそどろぼうみたいに写真撮ったんじゃないんだ、刑務所の協力でちゃんと堂々と撮ってきたんだと、こういうふうに言っているんですよ。これは一体どういうことになるんですか、やっぱり刑務所側は積極的に手をかしたということではありませんか。  それから、手書きの資料、後で郵便で送ったという例の資料です。これについては、局長のこの間の衆議院での報告見ていても、所長と課長の食い違いがある。局長自身認めている。これが一つですね。  それからもう一つは、南部庶務課長は、鬼頭がメモを見せてくれと言ったときに非常に自分はちゅうちょしたと、こう言っていますね、局長報告では、ちゅうちょをしたと。また、これは新聞報道でしたかね、鬼頭が写真を撮っているのを見て非常に気分が悪かったとも言っている。たしか局長報告の中にそれあったと思うのです。その当事者の課長が大変不愉快な気持ちで、とにかくしょうがないからやっていたと、こうまで言っているんですね。ところが、それが済んで一週間ぐらいたってから今度は診断書の手書きを送ってくれと言われたら、これまたすぐ手書きの診断書を刑務所は送ってやったと。まことに矛盾だらけですよ。どこに一体法務省の規律あるいは行刑上の規則があるのかと言いたいぐらい、今度のこの事件を見ると支離滅裂です。だから疑いを持つのは当然でしょう。その疑いを全部あなたがきれいに、納得のできるように論理的にも具体的にも説明がない限り、これは疑われても仕方がないじゃないですか。いまの質問についてどうでしょう。
  202. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 二点の御質問であろうと思いまして、まず最初に、写真を撮るときに手をかしたかということについてお答え申し上げます。  この点につきましては、塚田委員の御指摘を待つまでもなく、すでにこの事件を取材する記者の方が私のところにお見えになりまして、さようなことを申されました。したがいまして、この点につきましては慎重に調べましたが、現在までの調査ではそのよう事実は認められません。しかのみならず、矛盾という言葉を塚田委員お使いになりましたが、私は、鬼頭判事補の供述を考えてみますと、やはり矛盾があるように思われるのであります。  と申しますのは、写真を撮るときに手をかした者があると。その写真はあるんだということであります。あるんならば、後でフィルムの巻き上げに失敗したから手書きのものを送ってくれということは論理的に出てこないのではないか。御自分が持っておられるんですから、何もわざわざ刑務所に頼む必要はないであろう。しかのみならず、鬼頭判事補はそういうことを部外の方に言われたようでありますが、しからばその写真を出してほしいと私どもは思うのであります。本人が出さずにやると。しかも、まあ塚田先生に反論するわけではございませんが、何か矯正側に都合の悪いところは鬼頭判事補の言を御信用されておっしゃって、そうでないところは反対におっしゃられるのは、私としましても非常に迷惑に考えるのでございますが、どうも鬼頭判事補がそういうふうに言ったということは承っておりますが、調査の全過程から見ますと非常に矛盾があるように私は思います。したがってこれは、鬼頭判事補の言う言葉が果たして真実であるかどうか疑いを持っているというふうに私は考えるのであります。  その次は、手書きの資料でございますが、この点につきましては、まず南部庶務課長は所長の指示を受けたと称し、程田所長はどうも指示した記憶はないということでありまして、その矛盾は現在も遺憾ながら解けておりません。いずれかの判断をしなければならないのでございますが、現在これまで調査した結果を取りまとめ中でございまして、その段階におきまして、あらゆるこれまで集めました調査結果を彼此検討いたした上で何らかの結論を出したいと思っております。しかしながら、先ほどちゅうちょしたという点でございますが、これはほかのところを見したときにちゅうちょしたということではなくて、電話がかかってきたので一、二回中座した、そうして帰ってまいりましたところが身分帳の写真を撮っていたと。よほど理由を尋ねようと思ったんだが、すでにぱちぱち写していたのでいまさらそんなことを言っても始まらず、東京地裁八王子支部の判事補という肩書きに押されて黙っていたと。こういう供述であります。この供述のときの態度はきわめて真摯なものがございまして、私どももこの南部課長の供述の部分はきわめて信憑性が高いものと考えております。  しからば、後になぜ手書きのものを送ったかということでございますが、程田所長が鬼頭判事補に最初説明したところは、先ほどから何遍も申し上げておりますように、文書が参りますればお答えを申し上げる入所年月日あるいは罪名等、言ってみれば形式的なところであったわけであります。それにつきまして、その後において写真を撮られてしまったというような、何といいますか、弱みといいますか、という感じを恐らく南部課長は持ったに違いないということ。そこで後で写真が撮れなかったので手書きをくれと言ったときに、そのまま鬼頭判事補から言われたところを手書きで出したというところでございまして、この点につきましては、先ほど来御指摘の通達から考えますれば、正規な手続を踏んでおりません。したがって、内部的な規律に違反する点は、これは遺憾ながら認めざるを得ませんが、当時の南部課長の気持ちになってみますれば、これを手書きにして出したということは、またある面ではやむを得ないしんしゃくすべき事情があったのではないかというふうに考えているのでございます。
  203. 塚田大願

    ○塚田大願君 まず第一に局長、私は別に鬼頭の言っていることを信用しているわけじゃないんです。一般の新聞に堂々と出ていろいろそれが風評になっているから、その真偽を確かめようということで、だからこそ質問をしているわけですよ。だからそう言ったら、何か法務省には不信で、鬼頭の方は信用しているんだろうなんて、全くそういった変な勘ぐりはやめてもらいたい。  それから、手書きの資料ですね、これはいまもう局長が認められたんだが、私どもは何も職員の何といいますか、手落ちといいますか、そんなことを追及しようと思っているわけじゃありません。問題はそういう事態が起きるその基礎といいますか、バックといいますか、そこにやはり非常に大きな疑惑があるので、職員がそこまでやらせられてしまうその根拠ですね、バック、それに対して私どもは大変大きな疑惑を持っているわけだ。先ほど午前中の質問でも、そのにせ電話とその資料入手、これはやっぱり一つのものじゃないか、何かあるんじゃないかという疑問が出ましたけれども、だれしもそう思うのはあたりまえなんですよ。思わなかったらおかしいです、まして政治家として。ですからそういうことでありますので、私どもはいまの答弁では十分納得はできません。もっともっとこれは機会を見て質問をしたいと思いますが、その現場の問題でなくてさらに話を進めまして、この宮本委員長の身分帳を含む資料が鬼頭判事補の手に入って、これが春日民社党委員長に渡った。先ほどの最高裁の答弁では、それは東京新聞のことであって、春日委員長と言っているわけじゃないと、あるいは法務省捜査中でございますというようなことを言っておりましたけれども、この問題についてお聞きしたいんです。  鬼頭判事補は四十九年の夏、網走刑務所から帰った直後、神田の中央大学の生活協同組合——学生生活協同組合ですか、ここのコピーセンターで身分帳を含む膨大な資料をコピーしたという事実があったというのが、毎日の夕刊に数日前に発表されましたけれども、これはやっぱりちゃんと調べておられるのかどうか。つまり、人に渡すのにはどうしたってコピーが必要でしょう。そしてそれがちゃんと夏に中央大学の生協のコピーセンターでやられたという証拠が出ていますけれども、それが調べられているのかどうか、そして、そういうものがどういう経路で流されたのか、やっぱり徹底的に調査する必要があると思うんです。鬼頭は、私はそんなことをしていないと、こうしらを切っているわけだけれども、これは徹底的に調べてみる必要があるし、また、春日委員長にも渡ったと、これは法務省のと同一のものであるということになっている以上、やっぱり春日委員長にも事情聴取する必要があると思うんだけれども、それがされているのかどうか。していないとすればなぜしていないのか、その辺をお聞きしたいと思うんです。
  204. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) まず、中央大学生活協同組合コピーサービス店の件でございますが、赤旗の十月二十八日付にただいま御指摘のような記事が報道されまして、参議院の法務委員会におきまして共産党の橋本委員からこの事実が指摘されたわけでございます。そのコピー店の所在につきましては、十一月二日の衆議院の法務委員会におきまして、やはり共産党の諫山委員から住所それから店の名前が明示されまして、早速私どもから調査に出向きまして、当該店の店員から事情を聴取いたしました。その調査結果によりますと、鬼頭判事補が四十九年の七月下旬から九月中旬にかけまして三、四回来店した、全部で四百枚から五百枚程度の原稿等をいずれも一部ずつコピーしていった、コピーしたもののほとんどが手書き原稿であるというような調査の結果を得ておる次第でございます。  なお、御指摘の毎日新聞の報道につきましては、最高裁判所の調査の結果がそのようであるようにも受け取れますが、詳細に見てみますと、私どもの調査の結果を報道されたものでなく、独自の調査による報道だというふうに考えております。
  205. 塚田大願

    ○塚田大願君 法務省どうですか、その春日氏……。
  206. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) いわゆる網走身分帳事件につきましては、私ども最高裁の人事局長と詰めて話したわけではございませんが、おのずから調査の分担ができたような結果になっておりまして、刑務所側でわかる範囲のことは私どもで徹底的に調査をするということで、鬼頭判事補とそれをめぐるものにつきましては、最高裁の人事局でやっていただくというようなことになっておりまして、したがいまして、現在の毎日新聞の報道は、その前に赤旗にも報道されておりましたが、私どもといたしましては法務省を通して調べるといたしますと二重にも相なりますので、最高裁側にお任せしたままで、私どもの方として特別の調べはしておりません。
  207. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 民社党の春日一幸委員長につきましては、十一月二日に私どもの事務次長が議員会館に参りましてお尋ねを申し上げまして、談話として次のような要旨のことをいただいております。鬼頭判事補なる人物には関係がないという御趣旨の談話をいただいております。
  208. 塚田大願

    ○塚田大願君 いまの答弁は、まあその程度しか調べてないんだということに尽きると思うんです。これはやっぱりもっと、国民がこれだけ疑惑を持っている問題なんですから、徹底的にこういう問題ははっきりする。それこそ刑事コロンボが明快にひとつ解決をしてもらわなければ困ると思うんです。  次にお聞きしたいのは、春日委員長が鬼頭判事補から受けたそういう資料をもとにして、ことし一月二十七日の衆議院の代表質問でいわば前代未聞の反共質問をやったわけです。ところでこれも新聞報道ですから、あったかなかったかをお聞きしたいんだけれども、鬼頭判事補はこの春日氏の質問について、春日委員長は事前に自民党の田中派の関係者と接触をしていた、情報を交換していたし、前の日には法務大臣とも質問について打ち合わせをしていたというようなことを十一月の十一日の読売に発表しているんですね。だからさっき出ましたようにこれは異常な人物でありますから、この人物の言うことを信用しているわけじゃないけれども、こういったことが新聞に報道された以上、それがあったのかなかったのか、これ、一言でいいと思うんですが、お聞きしたい、大臣
  209. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 私はございません。
  210. 塚田大願

    ○塚田大願君 まあこういうことが、以上のことがいろいろあったわけでありますけれども、春日委員長はあの衆議院の本会議の代表質問の直後に、自分で調査をしたんだと、こういうふうにみえを切っておられた。ところが、今度のこういう鬼頭問題が起きましてからいろいろ弁解的なことを言っておられるんですね。あの資料は同じものが二カ所ぐらいから入ってきたとか、あるいは資料の中には郵送されてきたものもある、郵送主は定かでない、あるいは仮に鬼頭氏が写してきたものだとしても、われわれが鬼頭氏に網走に行って調べてこいと言ったわけではないと大変微妙な言い回しであります。とにかく、自分で調査したという最初発言とは大変違って、いわば弁解的なものになってきているんですが、そういうだれから送ってきたかわからないといったような資料、こういうものを利用して、使って、まあ言うならばこれは怪文書と言ってもいいでしょう。どこから来たかわからぬ、だれも責任を持ってくれないというふうな文書を国会で持ち出して質問をする、このこと自体が大変私は不見識なことだと思うんです。  同時に、この場合に稻葉大臣に聞きたいのは、そういう資料に基づいた質問に対して、稻葉さんは当時いろいろ肯定的な答弁をしておられるんですね。なるほどごもっともでありますとか、あるいは要求資料に対してはできるだけ提供しますとか、稻葉さんはそういう答弁をしておられるんですけれども、こういうやり方というのは、今日になってみりゃ大変法務大臣としては不見識なことであったと私は考えるんですが、その点稻葉さんはどういうふうにお考えですか。
  211. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 国会における正当な資料の提供につきましては、国会の意思を尊重してこれに応ずるのが行政当局の任務だと私は考えますね。したがって、でき得るものにつきましては、また資料のそろい得る、可能なものにつきましては提供いたしますという返事をし、その後可能になった範囲内においてこれを国会において明らかにするということも、国会を尊重する立場にある行政府の当然の任務だと私は考えます。
  212. 塚田大願

    ○塚田大願君 いや、私が聞いているのは稻葉さん、当然の資料はこれはまあ行政府としては出すべきものは出さなきゃならぬ。これは義務でしょう。が、今度のこの宮本委員長の問題についてのあの質問、資料というものがいま論議されたようなこういう経過で鬼頭が手に入れたものであるということが今日判明した段階において、あの当時の質問に対して稻葉さんが、いやごもっともな質問でございますというふうな答弁をしておられるんだけども、それについて私がいま稻葉さんにお聞きしているんですが、そういう点であなた自身、法務大臣として大変不見識であったというふうに認めませんか。
  213. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 全然認めません。
  214. 塚田大願

    ○塚田大願君 まあ、稻葉さんはロッキード問題で大変いろいろ苦労された。それはわれわれとしてもよく知っているんだが、この問題について、あるいは以前の憲法改正問題なんかについては大変反動的な姿勢を持っておられたんで、それはよく知っていますから、別に私の方驚きませんけれども、私はやっぱりこういうことが事態が明らかになった以上、法務大臣としてはしかるべき反省があってしかるべきではないかということを感じます。私が法務大臣だったら、ちゃんとそこははっきりさせるつもりです。私の間違いであった、勘違いであったというぐらいのことは言いたいと思うんですが、それはいいでしょう。ここでそれ以上あれしてもしようがないんで、時間も来ましたので、最後に最高裁にお聞きしたいと思います。  鬼頭がこういうやり方で資料を入手し、そして外部に流していた。これはもう大体事実関係を見ればはっきりしていることであって、こういう裁判官はまあ論外ですわな。したがって、この鬼頭の罷免訴追請求の理由にやはりこの資料問題、身分帳問題、これを追加すべきだと思うんですが、いまだに新聞などではいろいろ出ていますけれども、実際には最高裁はそれをまだやっていらっしゃらないようですが、それはどういうわけですか。
  215. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 鬼頭判事補が政治的意図のもとにいわゆる宮本資料を閲覧しまして、その写しを入手した上で外部に漏らしたということになりますれば、裁判官弾劾法に言うところの裁判官として威信を著しく失うべき非行ということに当たるというふうに考えられますが、先ほどからいろいろお答えがありましたように、そのことを立証できる明らかな資料が、現在のところ私どもといたしましてはないわけでございます。そのような明らかにできる資料が出てまいりますれば、あるいは訴追請求理由として追加することを検討しなければならないというふうに考えておる次第でございます。しかし、先ほども申し上げましたように、現在におきましては、鬼頭判事補が言われているような意図のもとで流した資料というものが、まだ的確な資料というものが私どもの方では解明できておりませんので、現在のような状態になっているというふうにお考えいただきたいと存じます。
  216. 塚田大願

    ○塚田大願君 最後に一言。  いまの答弁ですけれども、この事件が明らかになってかなりもう日時たっておりますよ。そして最高裁も鬼頭をかなり何回か調べられたわけですが、先ほどの答弁聞きましても、どうも鬼頭が言わないから、その辺ははっきりしないんだというふうな大変消極的な姿勢に聞こえるんです。いまのお話でも、それだけのはっきりした資料がないんだとおっしゃるんだが、その資料を、これだけかなり事態が究明されておる段階で、そこをもう一つ明らかにするということが非常に大事な時点に来ていると思うんですが、ところが、なかなか最高裁が言を左右にしてそれを踏み切ろうとなさらない。ちょっとそこにも疑惑は出るんですね。  御承知のとおり、いま法曹界の中ではいわゆる司法の反動化の中で、最高裁はひたすら鬼頭を隠そうとしている、かばおうとしているんだ、なぜならば、それは自分たちにはね返ってくるからだというふうなうわさすらあります、これは御存じかどうか知りませんが。そういう時点で、もう一つ本当に積極的におやりになる意思があるのかどうか、これを最後に確かめて私の質問を終わりたいと思うんです。
  217. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) すでに御承知のとおり、私どもといたしましては十一月十九日鬼頭判事補に対する訴追請求を行っております。裁判官に対する最も厳しい措置といたしまして、弾劾法により訴追請求以上のものはないというふうに考えておる次第でございまして、お尋ねにありましたように、どういう理由で訴追したかということのお尋ねでございますが、私どもといたしましてはいわば最も厳しい措置をとっておることを考えていただきますると、鬼頭判事補を最高裁がかばっていると何をもってそういうことをおっしゃるか、私ども了解に苦しむところでございます。  なお、網走刑務所の問題につきましては、先ほど法務省の矯正局長からもお話がございましたように、まず、入手の段階におきましても、すでにどのようないきさつで入手したか、どのような形で写しをとったかという点につきましても、いまだに事実がいわば確定されていないと言ってもいいのではないかと思います。先ほど矯正局長の答弁にありましたように、それについての資料、事情聴取の結果を取りまとめ中であるというようなお話でもございます。  なお、その後すでに御承知のように、いわゆる手書きの資料が民社党に渡っている資料と同一である、同じものであるというような中間的な発表もございました。それから、先ほど来御質問がありましたように、果たしてどういう形で外に流れたのか、鬼頭判事補自身が全く明白な意図を持って、いま問題にされております三つのルートに流したのかどうかということ等につきましても、それを解明できる資料はまだないわけでございます。  なお、ついでに申し上げさしていただきますと、録音テープ——例のにせ電話事件の方につきましても、最高裁判所といたしましては、いわゆる録音テープを読売新聞社の者に聞かしたということだけをとらえて訴追請求をしているわけでございますが、果たして電話の主が鬼頭判事補自身であるかどうかについても、いまいわば検察の方で捜査が行われているというような実情にあるわけでございますので、私どもといたしましては決して鬼頭判事補をかばうというようなことでなく、この事件のために設けました調査委員会はいまもなお解散せず存続しておりますし、このような情勢下におきまして、直ちに網走刑務所の問題についても訴追請求の理由として追加するかどうか、さらに、にせ電話の声の主がやはり鬼頭判事補本人であるということを理由として追加請求することは、いまのところまだそこまでは踏み切れない状態にあるということを御理解いただきたいと存じます。
  218. 木島則夫

    木島則夫君 ことし一年は、まさにロッキードに明けてロッキードに暮れようとしておりますけれど、その間、法務当局責任者として先頭に立たれた法務大臣の御努力に対しまして、私は本当に御苦労さまでした、御苦労さまでございますとまず冒頭申し上げておきたいと思います。  選挙の結果は御承知のとおりでございます。で、黒、灰色を含めまして——もちろん国民の厳しい審判に遭って議員でなくなられた方もおりますけれど、ほとんどの方々は選挙を通ってこられた。当事者の周辺あるいは一部の人々の間では、潔白がこれで証明されたとか、もう洗礼を受けたんだと、こういう空気を醸成しております。この事実に対して、法務大臣はどういうふうな受け取り方をまずされているか。  そして、こういうことがこれから行われる公判維持あるいは捜査の上に影響がないかどうか。私はあってはならないと思いますけれど、その二点についてまず伺っておきたいと思います。
  219. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) まず最初に、在任の最終日に当たって御慰労のお言葉をちょうだいしまして、恐縮千万であります。  選挙の結果は御承知のとおり。これによって、当選したからといって刑事責任が御破算になったり、また、刑事責任はもちろん政治的道義的責任ありと国会判断されたことについて、その判断が間違っておったというようなことには断じてなるものじゃないという私は判断をいたしております。まだそういう責任は残るもの、残るんであるというふうに判断をいたしております。
  220. 木島則夫

    木島則夫君 私、もう一つの点について御質問をしているわけでございますけれど、そのことが今後の公判維持あるいは捜査の上に影響はないでしょうねと、これは念のために伺います。
  221. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 全然ございません。
  222. 木島則夫

    木島則夫君 小佐野捜査について二、三点簡潔に伺います。  どうでしょうか、一月二十七日の田中公判までに決着というのは確かな見通しでしょうか。
  223. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 小佐野賢治につきましては、現に偽証罪捜査中でございますが、午前中申し上げましたように、一月二十七日には田中総理等の贈収賄事件公判も開かれるわけでございまして、その際には、いろいろと冒頭陳述で立証しようとする事実を詳細に検察官が述べる予定でございますし、それに伴いまして証拠書類の閲覧等も始まるというようなことに相なりますので、そうなりますると、関連事件の証拠関係なり検察官判断なりが公になっていく段階でございまするから、そういう段階でなお捜査を継続するということにはいろいろと支障も生ずるわけでございますので、検察庁当局の希望といたしましては、でき得るだけ一月二十七日までに決着をつけたいという希望と、ある程度の見通しを持って捜査をしておるわけでございます。
  224. 木島則夫

    木島則夫君 刑事局長の非常に慎重な表現の中にも、私は一月の二十七日までに決着ができるという自信のほどを伺ったわけでございます。そうなりますと、小佐野捜査進展につれましては当然政界に波及をする、こういう感触で受け取ってよろしゅうございますね。
  225. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 捜査中の事柄でございますので、その点について申し上げることは控えさしていただきたいと思います。   〔委員長退席、理事大塚喬君着席〕
  226. 木島則夫

    木島則夫君 法務大臣にお伺いをいたします。  法務大臣は、二十万ドルについてだれかに渡っているに違いないという意味のことをお述べになっていらっしゃいますが、これについての裏づけ捜査というものは、まあ捜査中だからというお答えが返ってくるに違いありませんけれど、相当やっぱり私は自信を持って捜査を進めているという感触で受け取っていいんでしょうかね。
  227. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) もし二十万ドルを受け取っているという確かな証拠があって、もしそういうことが事実であるとすると、二十万ドルくらいのものを自分のポケットに入れるような資産の人ではない、そんなものはだれかに行く目的でもらっているんだろうと推定するのがあたりまえじゃないでしょうかという個人の感触を申し上げたんで、そういうところで捜査行っているぞと言っているんじゃないですね。ですから、そういう点につきましてはもっと正確に刑事局長に答弁してもらいます。
  228. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 二十万ドルをロサンゼルス空港で受け取ったという濃い疑い検察当局としては持っていることは、すでに公にしておるところでございますが、その金の使用状況ということにつきましては捜査中でございまして、法務大臣一つの個人としての推測を申されたわけでありまするが、それが申すわけにはいかない。せっかく大臣の御指示でございまするけれども、現段階では申し上げるわけにはまいりません。
  229. 木島則夫

    木島則夫君 こういう私語を差しはさむのはどうかと思いますけれど、大臣、あと下村氏の御質問を残して、最後の答弁なんですね、きょうは。恐らく、おっしゃりたいことはここまで出かかっていると思うんですよ。で、いまはそのことを暗に刑事局長にきっとお投げになったと思うんでね。刑事局長、それは個人の感触だというようなつれないお答えではなしに、もうちょっとひとつ前進したお答えが得られませんか。
  230. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) つれない答えではないんですね。それがやっぱり検察当局を預かる直接の刑事局長としての当然の答弁だというふうに、まあ好意を持ってお聞き取りを願いたいと申し上げます。
  231. 木島則夫

    木島則夫君 よくわかります。  選挙の結果、特に同じ新潟で、先ほど同僚の委員からも御質問がございましたけれど、片や捕らえられた方がトップ、片や捕らえた方がすれすれというか、正反対というこの事象を考えますと、どうしても割り切れないものがあるわけですね。これは選挙技術の問題もございますし、新潟という地域性も当然考えればうなずけるところもなくはありませんけれど、私は、こういうふうな結果が出た一つの原因は、一つ三木内閣のとったロッキード事件究明が甘かったんじゃないか。三木さんは、事ごとにおっしゃっておったことは、ロッキード解明選挙というものは別々のものではなくて、これはワンセットなんだということをしばしば口にされておりましたね。私はそういうふうに受け取っております。委員会でも確かにそうおっしゃった。だから、片方はロッキード事件、片方は選挙という別々のものではないとするならば、国民ロッキードの結果を見てやはり選挙というものに臨んだに違いない。その結果は、ある程度それが影響をしたという結果に出ておりますけれど、非常に意地悪な見方をいたしますと、国民判断の材料が余りにも少な過ぎたというその不満が、いま言った片やトップ、片や正反対という結果に出たんではないかという辛らつな見方をする人も実はいるんです。どうでしょうか、やっぱりこう、徹底を欠いたという御反省の上に現在お立ちでしょうか。それとも、いやそうじゃない、周囲の事情でやむを得なかったというようなお気持ちでございましょうか、率直にその辺を伺いたい。
  232. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) ちと説明が必要でございますがね。やっぱり、最も高い、険しい第三の山がこういう状態のまま選挙に入ったということに対する手痛い批判を受けたというふうに厳粛に受け取りますな、私。  それから、三区と二区との間でああいうことの開きができたのは、やっぱりいろいろ技術もありますし、それから、候補者本人が二十日間ぴったりいるのといないのとの違いがあったり、いろいろありますわな、そういう点。しかし、私は自分なりに一生懸命に訴えて、そうして、すれすれとは言いながら、この重い九十三票の差で当選さしていただいたことをありがたいと思っておりますね。心だに誠の道にかなえなば、祈らずとても神は助けむという気持ちですな。
  233. 木島則夫

    木島則夫君 法務大臣を初め法務当局の御努力にもかかわらず、実際は、選挙の前に本当は第三の険しい山に分け入って、ある程度究明ができておればという大臣の声は、私は非常に率直に伺ってとらしていただきたいと思うわけでございます。ところが、それができなかった。つまり不徹底にならざるを得なかった大きな原因というのは、捜査上の技術の問題、制度の問題、法律の問題も大きな壁であったかもしれないけれど、もう一つ、どうしても見逃すことができないのは、自民党の中の私は内紛だと思いますね。これが非常に大きな壁であったと、そして、この壁が大きく作用したということも見逃すことはできないだろうというふうに思うわけです。  で、法務大臣に対する新聞社のインタビューの中でもこういうふうにおっしゃっていますね。つまり、三木さんが総理だったからこそやれたという、こういうニュアンスのことを法務大臣は端的におっしゃっております。捜査のあるいは制度的な問題も非常に険しい問題ではあったかもしれないけれど、むしろ私は、自民党の中の問題の方が捜査を不徹底にさした大きな原因だというふうに思うんですけれど、これとあっちとはどっちが重いかという二者択一的な質問にとられると困りまずけれど、大臣はその辺のニュアンスをどんなふうにおとりになっておりますか。
  234. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 率直に言って、徹底究明、心からそういうふうに、それが自分の政治生命だと言うている総理大臣のもとで、捜査当局指揮監督する立場にある法務大臣がやりやすいことは確かですわな。まあ政治的に大きな影響のあることは慎重に、あるいはそれ以上に政治的配慮があってしかるべきだなんと言う総理大臣のもとでやるのはやりにくいですわな。それは当然だと思います。  それから、分裂選挙は自民党に非常に不利に働いたということも、これはだれしも認めるところでしょう。そうして、次の政権がどうなるかわからぬというような空気で選挙をやるのでは、それはなかなか不利な選挙を戦わざるを得ない。そうしてその分裂の原因が、いいかげんにロッキード——いいかげんにとは言わぬけれども、政治的配慮を加えるべきものだとかいうのと、いや加えるべきでないという、この考えの違いが分裂選挙一つの要素であるというふうに国民が受け取ったとすれば、そんな不利な選挙はない、それは非常に不利に働いたものだというふうに私は判断をいたしております。
  235. 木島則夫

    木島則夫君 三木さんがおやめになるに当たりまして遺言という形で、自民党の再建のための一つの大きな柱として、このロッキードの徹底究明を挙げておいでになるわけですね。同じ党内であるならば、同じ自民党という党なら、何も、遺言とか証文とかというような形で、わざわざこういうことを一つの大きな柱として私は本当だったら据える必要がないんだけれど、これを据えざるを得ないところに私は、やっぱりロッキード徹底解明を書いた一つの大きな体質があるわけで、いわゆる新しい内閣もあした、あさって早々に、発足をされるという、つまり、これからロッキード究明が本当に三木さんの言葉どおり徹底解明されていくかどうかというかぎになるものですから、私は多少しつつこいとは思いますけれど、この辺を実は伺ってみたいと思っているわけです。  いかがでしょうか、法務大臣がここまでかかって下ごしらえをされてきたロッキード事件解明の土壌というものがそのまま受け継がれていくかどうか、私は非常に疑問に思うんですね。さっき同僚の委員の方がこの種のことを御質問をされたら、悲観をされていると、初めから投げてかかっているという意味のことをおっしゃったけれど、私は、決してそうではなくって、このロッキードの問題というのは国民的関心事であり、これをやっぱり究明をすることが民主主義の本来の目的にかなうという意味で、多少しつっこいかもしれないけれど法務大臣、 いかがですか。あなたがせっかくここまでかかって下ごしらえをされてきたこの究明の土壌というものが、いわゆる新しい内閣にそのまま引き継がれていくかどうか、国民の皆さんもここのところを非常に心配をされておりますよ。私もその一人です。率直に聞かしていただけませんか。
  236. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) さあ、私は引き継がれていくものだということを非常に信じておりますね。その理由は、選挙の結果を見れば明確なんですから、引き継がなけりゃ参議院選挙に負けるというくらいの意識はみんな持っていると思いますし、ことに総理大臣になられる人は、かつては徹底的究明、徹底的究明とわれわれと同じことを言っておられた。ただ、何といいますかね、政権交代ということの御都合で、多少やんわりされたかもしらぬけれども、この選挙の結果を見て、そうしていよいよ自分が衝に立って、との確立された土壌を引き継がないなんてわけにはいかぬ。そういう空気にある際だから、特にやめる総理も、この土壌を引き継いでいってくれよ、それが自民党の再生の道につながるんでございますよ、どうかひとつ頼みますよと、このくらいのことは、まあ私、よけいなことを言わぬでもいいということを申し上げたこともありますが、しかしおっしゃることもおっしゃったからといって悪いことじゃない、こういうふうに思います。そして結論として引き継がれることを確信をいたします。
  237. 木島則夫

    木島則夫君 国民の声の中には、この暗いロッキード事件の渦中にあってあなたの姿を見ると、あなたの言動を見ると非常に明るいものを感じる、新しい内閣内閣は変わるかもしれないけれど、引き続きやってほしいという声がずいぶんあるんですね。おこたえになる気持ちはないですか、全然、おこたえにというのは、万難を排してやってもいいという気持ちないですか。
  238. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) まあこの辺で勘弁してもらわなけりゃ命がもたない。健康がもたないです。そんなに人間というのは生身ですから、持続して緊張をずっと続けるわけにはいかないんです。大体釣りにも行けないで碁も打てない、相撲も見れない。こんな私の楽しみを奪って、そしてまだこれから半年も続けるといったって、それは無理でございますよ。
  239. 木島則夫

    木島則夫君 何かいまちょっと言葉をお漏らしになったんですけれど、別に半年という意味は余り重要な意味じゃないんでしょうかね。とにかくいま私は、大変非人間的な御質問を申し上げたんですけれど、それだけ法務大臣に対する期待が大きかったということをひとつ聞いてほしいんです。そして、身がもたないとおっしゃるけれど、それは日曜も返上、祭日も返上、よくわかってます。私もいわゆるロッキード委員の一人として、法務大臣の言動についてはつまびらかに存じ上げているつもりです。その心労の大きな原因が本当の外の問題ではなくて内の中にある問題だとすれば、これこそ大変な問題だと、これはまた自民党の方がいらっしゃる前でしつこくお聞き取りになるかもしれないけれど、実はここのところが一番これから問題なんです。だからしつこいけれど、政権担当政党である以上、当然伺う権利もあるだろうし、また、国民がそういうことを希望をしている以上、当然それにお答えにならなければいけないだろうという意味で伺っているわけです。  いまおっしゃった、とても身がもたないということは、とても法務大臣になってやれる党内の体質ではないというふうに解していいのか。派閥がある以上、一つの派閥の中から出たらえらいことになるというお気持ちなのか。もう一つ法務大臣にはなかなかこんな状態ではなり手がないよというところまで憶測していいのか。多少先走った質問で恐縮でございますけれど、ひとつどうでしょうか、その辺お明かしいただけますか。
  240. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 私、何にも隠すことない、何にも隠すことありません。私の心境は、そういうロッキード徹底究明のいままでの政治姿勢を今度の新しい内閣及び新しい党の執行部といいますか、そういう人たちが貫いていってくれることは、私当然だと思っているんですね。また必ずそうなると。おれも徹底究明だと、まあどうなるかわかりませんけれども、福田さんになるというのが大勢でしょう。
  241. 木島則夫

    木島則夫君 そうですね。
  242. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) そうですね。その福田さん、おれも徹底的に究明なんだと、そうして自分が今度総理になっておかしくなったら、それはもうえらい非難を受けることぐらいはよく御存じでしょう。あんな利口な人が急にへなへなになったら、これは何のためにおれによこせ、お前やめろと言ったんだかわからないじゃないですか。どうですか、そうなりませんか。それで私が引き継がなくても、党内にたくさんの、この辺にもたくさん人材が豊富ですよ。この法務大臣の、いままであなた、私に対して御苦労であったと言われるのは、よくまあ才能もないのに努力したなと、こういう意味もあるのですから、もっと才能のある人はいるんですから、ですからそういう点で私は、これ以上法務大臣の職責にとどまってまた忙しい思いをするのは御勘弁願いたい、こういう率直な気持ちを何の隠しもしないで申し上げておるというふうにお受け取り願いたい。
  243. 木島則夫

    木島則夫君 新しくスタートをする内閣の中における法務大臣は、後事を安心して託せる方が当然なるだろう、そういう前提のもとでこの辺でもう勘弁をしていただきたいというふうに、率直に素直にとらせていただきます。  だけど、しつこくて恐縮です。なかなか法務大臣になり手がないという声も聞かないわけではないんです。大体こういうロッキード事件というような問題が起こってきたから言うわけではありませんけれども、前々から文部大臣法務大臣というのは民間から起用したらどうかという声があるんですね。今度の一年間の本当に御苦労をされた法務大臣の体験の中から、いっそのこと民間から起用したらどうかという、こういう提言に対してはどういうふうにおとりでございますか。
  244. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 自由民主党は、いま非常によく融和し、結束して、まあどうなりますかわかりませんけれども、対立候補者が出なければ投票を用いる必要もないじゃないかという見通しさえも出ているぐらいに融和し、結束しているんですからね。そういう状態でありますから、私はやめて新しい人がなってこそ初めて、かえって決意を新たにしてこれと取り組むという、新しいこのロッキード問題と取り組む姿勢が出てくるんで、またこれは新鮮でいいんじゃないですか。もうずいぶんはしゃぎ過ぎるなと言われるくらいいろいろしゃべりましたから、もうこの辺でしゃべるの勘弁してください。
  245. 木島則夫

    木島則夫君 委員会がもうしばらくで終わりますから、もう少しひとつおしゃべりくださいまし。  さっき、これは他意があっておっしゃったことではないと思いますけれど、あと半年もこういう大臣の職をやったら大変だという意味のことをおっしゃいましたけれど、その半年というのは別に特別の意味はないんでございますか。
  246. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 参議院議員選挙が済めばまた改造があるんじゃないか、それまではというような感覚がかすかに体内にありましたな。
  247. 木島則夫

    木島則夫君 党内の問題を、あれこれ私がここでもって議論を申し上げて失礼なところがあるかもしれませんけれど、これはさっきから申し上げているように、ロッキード事件がやっぱり国民的大関心事であると同時に、政権担当の自民党として当然なさなければならない責任範囲にあるものですから、やや私は執拗にこの問題について、つまり新しく発足をする内閣が、はっきり申し上げれば大きな壁として立ちふさがった方々も大部もういらっしゃるという、この体質の中でロッキード究明というものが本当なされていくかどうか、国民の一人として、また野党の一員として私は憂うるものですからいろいろ申し上げているわけでございます。  どうでしょうか、問題の方々の復党というものが、党に復する、いろいろ陰で議論をされているとかお話がされているということを聞いております。いかがでございましょうか、こういうことは当然許されないことなのか。先ほどお答えの御答弁の端々に、自民党はもっと責任を感じなければいけない、その責任一つとしては、当然党が離党勧告ぐらいすべきであったという趣旨の御発言があったところがら見ると、とんでもないというニュアンスでこのことをお受け取りになりますか。絶対許しがたいということでしょうか。もし、もしもこういうことが可能なような事態になったときに、もう大臣ではなくなるかもしれませんけれど、稻葉議員個人としてはどういうふうな対処の仕方をなさいますか。
  248. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 木島さんに大変失礼ですけれども、世間でうわさされているような空気は自民党内じゃありませんね。復党したいとも言っていないし、また、復党したいと言うたら復党させるかなんという議論をいま全然やっておらぬのです。  それはそれとして、したがって、その前提が違いますことは前提が違うこととして、私自身の考えとしては、総理もそういうことをたしか記者関係か何かに言いましたわな、裁判の結果を待たなきゃだめだと。まあ第一審だけでもいいから、裁判の結果シロと出れば考えようもあるという意味で、裁判の結果が出るまではそういうことは話にならぬ、こういう筋合いのものであると私も思います、私個人としては。
  249. 木島則夫

    木島則夫君 先ほど、体がたまらないから、本当に物理的にも身体的にも大変だからもうこの辺でということで、国民の熱烈な要望、留任をしてほしいという、そういう要望に対してはきちっと意思表示をいまなすったわけでございます。一議員となられても当然この問題にかかわっていらっしゃるだろうと思います。決意のほどを伺います。
  250. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 党の一隅にあって、非力を振りしぼってこの問題の究明には尽力すべきことは当然でございます。
  251. 木島則夫

    木島則夫君 そのお気持ちでひとつ、徹底的にこの問題に関心を持ち続けていただきたいと思います。本当に御苦労さまでございます。  最後に、しばしば鬼頭事件についてここで論議がなされておりますので、私は簡単に意見だけを申し上げて質問を終わりたいと思います。  鬼頭事件について問題の一つである宮本身分帳事件が、主として宮本氏のプライバシーを守る権利としてここで問題にされているように伺っております。資料の出所、そのルートについての疑惑は当然究明されなければならないと思いますし、また、プライバシーを守る権利というものも当然これは守られなければならない。これはもうあたりまえのことでございます。しかし反面、やっぱり真実を知る国民の権利というものもまた大事に尊重をされなければならない、そういうふうに思っております。したがって、この際政府は、本件がこんなに問題視をされている以上、宮本氏釈放の理由が何であったか、宮本氏を釈放した事実関係国民の前に明らかにするために、しかるべき資料なり、しかるべき裏づけを御提出になった方がいいのではないか、このことを意見として添えて、私の質問を終わりたいと思います。  法務大臣、御苦労さまでございました。
  252. 下村泰

    ○下村泰君 午前から午後にわたりまして長い時間、私もこの末席で伺っておったんですけれども、最後の最後まで、もうほとんど大臣きょうでおしまいでしょうね、これは。最後の最後まで、何ですか追い詰められてぎりぎりやられておるお姿を見ると本当にお気の毒だと思います。けれども、先ほどから各委員の口から出ておりますこのロッキード問題がいかに大きな問題であったかということを考え合わせれば、最後のお務めをしてもらわなければならないというのは当然の姿だと私は思います。で、私、このロッキード問題に関しては一言も質問をする気なかったんでございますけれども、皆様方のお話を伺っていると、皆様方のお心の中にやはりどなた一人一人全部同じような感覚を持っているんですね。   〔理事大塚喬君退席、委員長着席〕  今度稻葉法務大臣がかわった場合には恐らくうやむやになるんじゃなかろうか、これから先が。いままでの経過を見ておりますると、ある一つの大きな派閥が変な圧力をかけてきたりというような姿は、一般庶民でも新聞の活字から読み取れるということをみんな認識していますよ。そうしますとこれから先、もし大臣がかわった場合には恐らくそうなるであろう。それから今回の選挙の中で、候補者の演説の中に、これだけ自民党は出血をしたんではないか、出血をしてみそぎを受けた、みそぎをした、洗礼を受けたと、出血をしたなんて、まるでパチンコ屋のおとっつあんみたいなこと言っているんですがね。そんなような感覚でこの選挙が終わって、これからの政治活動を考え合わせると、大変やはり庶民の感覚で考えていることが一番正解であるというような気がするんですけれども、どうでしょう、こういうところは。
  253. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) いわゆる黒や灰が一人残して皆当選してきた。そのかわりそういう選挙区外のところでいろいろ非常な影響をこうむって落選したという面も多くあると、世間でも言っているし、私もそういうように感じますね。そういう意味では、この選挙の結果について庶民の批判は厳しいということを感じ取ったと思うんです、自民党の党員は。感じ取らなけりゃまことに鈍感なもんではないかと思いますね。しかし、感じ取っているというふうに受け取られます。私はそういうように受け取っています。したがいまして、法務大臣を明日やめるについて、申し上げたいことはたくさんありますけれども、そういうことは皆さんよくおわかりで、私、数々御慰労のお言葉もいただき恐縮千万だと思っています。元来のほほんだからあんまり感情をあらわにいたしませんけれども、まことに恐縮です。まあ才能が、人間の利口、ばかは別として、よく努力はしたな、それは認めてやるということだけでも非常にありがたく思っています。しかし、私はやめたからといって、決して皆さんの御心配になるような党状ではありません、いま。非常にそういう点について、選挙後は、選挙中は反省のない者がたくさんあったために反省をしている人までやられたけれども、また、反省が足りなかったためにやられた人もいるけれども、そういう結果を踏まえて、三木・稻葉ラインの消え去ることによって、この事件がうやむやに終わってしまうんじゃないかという皆さん方の御心配は、杞憂であると私は思っております。したがって、もう非常に安んじて後事を託し得るという心境にございますことを、明確に申し上げておきたいと思います。
  254. 下村泰

    ○下村泰君 法務大臣は、もうとにかく早くこの場を逃げたいというようなお気持ちの方がいっぱいだろうと思うんですけれども、それで法務大臣は当事者であるから一層厳しさを感じていらっしゃるんだと思います。九十三票という差というのは、読み方によっては苦しんだと、苦しんでさんざんな目に遭ったというふうにも読めましょうし、あるいは苦労してみごと当選というふうにも読めましょうし、これはまあいろいろと判じ方はあると思うのです。それだけに法務大臣は当事者であったからこそ、いま自民党は厳しく反省してますと、こうおっしゃっているのですね。ところが、実際に果たして自民党の党員全員がそれほど深刻に受けとめているか。受けとめていませんね、私らの方から見ると、さほどには。  ですからこの事件が、もしこの通常国会が開かれることによって、また五月の末まで通常国会が開かれた段階で、この問題が先ほど私が申し上げたようなうやむやな形になっていくとすれば、来年の参議院選挙はえらい打撃を受けるというような結果はもう目に見えていると私は感じるのです、私自身庶民のはだとして。あらゆる階層に私は入っていきますからね。ですからよくそういう声を聞くんです。それがきのうまでは大して政治に関心のなかったような方たちまでがそういうことを口にしているという現実を、皆さんさほどに厳しく感じていらっしゃらないように見受けられるのです。ですから法務大臣は、もちろんもうこれから普通の議員、いわゆる肩書きの取れた方になるんですけれども、その点をよほどくどくかみしめ砕いて皆様方にお伝え願いたいと私は思います。いかがでしょう。
  255. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) まことにごもっともなる御忠告で、そういうふうに自分もやって、そうして国民の厳しい批判を素直に受け取って、党が再生するように一党員として努力をしていかなけりゃならぬなあという点については、人後に落ちるものではありません。
  256. 下村泰

    ○下村泰君 それでは、次の話に移りますけれども、十一月二十三日の新聞報道によりますると、少年法の改正の中間報告を決定したと出ておりますけれども、これは法務省にもう答申なされましたでしょうか、どうでしょうか。
  257. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 少年法の改正につきましては、法制審議会に諮問がなされたのが昭和四十五年の六月でございますが、以後少年法部会といういわば専門的な部会で審議がなされまして、自来、去る十一月まで審議がなされた結果、法務大臣の諮問いたしました法務省の少年法改正要綱についての答申があったのではなくて、いろいろ検察官の関与を中心とする青年層の設置の問題をめぐりまして、いわゆる十八、十九歳を子供でもなく大人でもない青年として扱う、それについては、刑事訴訟法の手続で検察官が当事者として関与するようなたてまえの青年層設置をめぐりまして、主として裁判所、弁護士会と検察官あるいは法務省との間に厳しい対立が続きましたので、昨年の一月に至りまして、このように意見が対立しておっては、仮に多数で諮問の答申をしても円滑な法の運営は望まれないというような意見が委員の間に出ました。何とか法務・検察、裁判、弁護士という法曹三者を中心として、これが大方の意見の歩み寄れるような意見を答申して、さしあたり改正を必要とする事項については、いわゆる中間答申というものを大方の意見の一致するところでしてはどうか、そしてさしあたりの改正をして、根本的な問題をさらに審議を続けるというような方向でどうかというような意見が出まして、昨年の二月ごろからいわゆる部会長の中間答申に関する部会長試案というものが提案されました。  それを、第五十二回の部会からこの間の六十九回の部会まで約十八回にわたりまして審議を続けた結果、その部会長の提案の一部を修正した中間答申で、少年法部会としては総会に報告すべきだという結論が全員一致でなされまして、そして少年法部会の中間答申というものが、会長である法務大臣になされたということが十一月二十三日の新聞報道のことでございます。
  258. 下村泰

    ○下村泰君 その答申はもう法務省の方には出されたのですか。
  259. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 法務省と申しますよりも、これは先ほど申しましたように、法制審議会には総会というものと部会というのがありまして、部会がそういう専門的な事項を審議して、それを中間答申としてこういうことを答申すべきでございますということを総会に報告いたしましたので、いまの段階は、総会において部会の答申が是か非かという審議がこれから始まるという段階でございます。
  260. 下村泰

    ○下村泰君 私はもう法律の専門家じゃありませんから、よくわからないんですけれども、これが新聞の報道によりますと、五十二年末に開かれるであろう通常国会——法務省はこの答申を受けたらば、法案を作成して、そして五十二年末の通常国会に、明けたときにこれを提出して、決定させようというような空気があるように伺っておりますが、これは事実でしょうか。
  261. 安原美穂

    説明員安原美穂君) いま申し上げましたように、部会の答申がございましたが、総会の答申がどういう方向に出ますかがわかりません。仮に部会の答申のとおりで、さしあたり改正をするのが相当であるというような答申が総会から正式になされました場合におきましては、法務省事務当局は、従来の慣例に照らしまして、総会の答申を尊重するたてまえからいきまして、その内容に沿った法律改正案を作成するというのが従来の行き方でございますので、恐らくはそういう方向に行くと思いまするが、いっそういう答申がなされるかということも、これは法制審議会のことでございますので、私どもとしては簡単に自分で決めるわけにはまいらない問題でございますとともに、今度の中間答申というものが、いわばすぐ法律に直せるというようなものじゃなくて、やや大綱的な要綱的なものでございますので、これから法案をつくるにつきましては、さらに細かい技術的な仕上げをしていく。その段階において、もう一度少年法部会にその法律の案を報告いたしまして御意見を聞くというようなことも考えておりまして、さしあたり改正を要する問題として答申があったものでございまするから、できるだけ早く国会に提案したいとは考えておりまするけれども、いま御指摘のように、五十二年の国会に提出するというようなことを確定的に決めておるわけではございません。
  262. 下村泰

    ○下村泰君 ところが、この審議をする過程で、日弁連から推薦されている弁護士会の委員でありますとかあるいは幹事の方々が、昨年の十二月の十六日ですか、以後、あるいはことしの一月に辞表提出したり何かして抜けていますね。そういう方たちが抜けているのにもかかわらず、なぜそんなにこの案を上げていかなければならないのか、そこのところをお聞かせください。
  263. 安原美穂

    説明員安原美穂君) このように中間答申の方向で審議を進めるということにつきましては、弁護士会の委員である三人の方も賛成をされ、五十二回の会議から五十九回の会議まで、問題になりました少年法の部会長試案の少年の権利保障と検察官の関与の問題、それから十八歳以上の年長少年についての特別取り扱いという一連の関係のある一項、二項につきまして、約八回にわたりまして審議を重ねました結果、各段階におきまして弁護士会の委員も入って審議を進めて、八回の審議を重ねた結果、第一項と二項とにつきまして部会長の提案を受け入れるべきかどうかという採決をしようとする直前になりまして、弁護士会の三委員が、主として検察官の関与に反対という立場から反対の意見を常に表明してこられて修正案も出たわけですが、そういうものも採決をして否決をしたわけでありまするが、そういうことで十分に審議を重ねた結果、弁護士会の委員だけが五十九回の採決のときに反対、その他の委員は全部賛成ということで採決をして、弁護士会の提案が否決されたという事態が昨年の暮れにありました。  そのことにつきまして弁護士会の方で、これは審議が不十分であるという理由で、部会の委員として、審議が不十分なこのような部会の運営である以上は、委員としては務めかねるということで辞退をするというようなお申し出があったわけでありまするが、先ほど申しましたように、審議が不十分であるということはとても考えられない状態でございまして、同じ一、二項の問題につきまして八回にわたって審議をしたということで、その他の委員はその採決の延期には反対をしておる、賛成をしたものは一人もなかったというところから見ても、十分に審議が尽くされておったというのが部会の認識でございます。  そういう意味におきまして、その後も御指摘のように、こういう法曹三者に関連のある問題でございますので、弁護士会の委員がさらに復帰してくれることが望ましいということで、弁護士会の委員の復帰を交渉するという意味において、三回にわたりましては復帰を待つということで部会は審議をストップいたしまして、そうして復帰を待つと。審議をストップするか、あるいは審議をするといたしましても、資料説明程度で三回ほどの部会を実質審議なしに復帰を待ったわけでありまするが、依然として弁護士会の方では、一、二項の採決を白紙に戻してやり直すのでなければ戻らないというお考えを変えるわけにいかないということでございまして、そういうことでは客観的にほかの委員が審議を尽くしたとして採決しておるのに、結局自分の意見が通るまでは審議を尽くしたことにはならないというお考えと言わざるを得ないということでございまして、部会の他の委員がそれ以上待つわけにはいかないということで、それ以後は弁護士会の委員の復帰を待ちながらも、出席を不在のままで六十九回の部会に至りまして部会長の提案を受け入れた、全員一致で採択したということでございます。  この点は、部会のお考えが、かくなる上は弁護士会の三委員がいなくてもやむを得ない、結局、自分の意見が通るまでは十分の審議を尽くしたことにならないというようなことでは、民主主義のルールによる審議のルールに反することでもあるというようなお考えで、これもやむを得ないということで採決がなされたわけでありまして、私どももこういう部会のお考えは、弁護士会の委員がおることは好ましいと思いまするけれども、自分の意見が通らなければ審議を尽くしたことにならないというような考え方が通るといたしますと、これは少数による立法の拒否にも連なる問題でもあるということでございまして、この部会の御判断は、遺憾ながら遺憾な事態ではありまするけれども、正当であるというふうに私どもも考えておる次第でございます。  ただ、私どもの聞いておるところでは、総会の審議が始まりますならば、弁護士会の委員も総会にはおられるわけでありますので、審議に加わられるのではないかというふうな記事も弁護士会関係新聞等に出ておりますので、総会が始まりました場合には、改めて弁護士会の委員の御参加を得て審議を進めることを期待しておる次第でございます。
  264. 下村泰

    ○下村泰君 大変詳しく御説明いただきましてありがとうございました。しかし、大変これは大きな問題でもございますし、それから、実際に家庭裁判所にいらっしゃる当事者の方々に言わせると、現行制度でも十分なんだというようなお声も聞きますし、これからまだまだ審議される問題でもございますので、きょうはこの辺にさせていただきます。  次、厚生省の方来ていらっしゃいますか。——これも十一月二十三日、毎日新聞「読者の広場」というところに載っていた記事なんですけれども、ある公務員の方が投書なさいまして、それには、「喜寿を祝う年になってやっと日本国籍をもつことが認められた元在日朝鮮人が、新しい戸籍抄本を手にして市の窓口を訪れた。七十歳を越えた妻がすでにもらっている老齢福祉年金をもらいたいと。答えは、予想もしない冷酷なものであった。「帰化した場合、その人が七十歳に達しても日本人でない場合は受給権はない」というのである。裁定請求手続きもさせられない老人の表情は怒りに青ざめ、印鑑をにぎりしめた手が悲しみにふるえていた。二十歳のころ日本に労働要員としてかりたてられて以来、大正、昭和と五十有余年、苦しい生活をつづけてきたこの老人にとって、年金権の差別の壁は家族の念願でもあった帰化の喜びを奪うほどのショックを与えられたのである。」こういうようなことが載っておるんですけれども、この点に関して厚生省はどの程度までおつかみになっていますか、この問題を。
  265. 高峯一世

    説明員(高峯一世君) 御質問の点につきましては、老齢福祉年金という制度は、十五年前に国民年金がスタートいたしました際に、年齢の関係でお入りになっても受給資格を満たせない、こういう方々のために、七十歳に達した場合に、それから全額国庫負担で福祉年金を出すということで設けられたものでございます。そういう経緯がございまして、受給資格の発生いたします七十歳の時点において日本国民であることということが条件とされております。したがいまして、ただいま御紹介のありました事例につきましては、七十歳の時点におきまして日本国民でないということでございますので、遺憾ながら受給対象とはならない、こういうことでございます。
  266. 下村泰

    ○下村泰君 この人調べてみたんですが、鈴木金一さん、これは帰化後のお名前なんですね。で、明治三十三年四月十五日生まれで七十六歳。釜石市の唐丹町小白浜というんでしょうかね、百八十二というところにお住まいなんですね。本人は現在、腸のぐあいが悪くて入院しておりますので、詳しい事情が聞けなかったんですけれども、ほかに何か厚生省としてこういう場合の救済方法というのはあるんですか、何にも考えられませんか。
  267. 高峯一世

    説明員(高峯一世君) 福祉年金に関しましては、現行の制度では福祉年金を支給することはできないことになっております。したがいまして、その他の福祉の措置をいろいろ活用するという道もあるかと思いますが、これはもう少し具体的な状態を伺いませんとわからないと思います。
  268. 下村泰

    ○下村泰君 厚生省当局として、こういう場合の救済方法、ほかの何らかの該当する方法があるならばひとつよろしくお願いしたいと思うんですが、どうでしょう。
  269. 高峯一世

    説明員(高峯一世君) 年金のサイドでなくて、福祉の観点から関係の部局に連絡をいたしまして、いろいろ努力いたしたいと思います。
  270. 下村泰

    ○下村泰君 ありがとうございます。結構です。  それで問題は、今度は法務省の方になるんですけれども、外国の方で帰化なさる方、先ほども、六法全書なんて余り私は読んだことないんですけれども、いろいろ読みましたところが、それに該当する方は、これこれこうならば帰化ができるということなんですけれども、大体どのくらいかかっているんでしょうかね。たとえば、資格を調査する、早ければ半年だというし、大体一年間ぐらいがあたりまえだというんですけれども、これはどなたかお答えしてくださる方いますか。
  271. 香川保一

    説明員(香川保一君) 日中国交正常化に伴いまして、主として台湾関係の帰化申請事件がふえまして、それまでは大体年間約三千件足らずのものが六千件を超えるような状態になりまして、このときを契機にしてその後年々六千件あるいは五千数百件の件数が維持されてきておりまして、さような関係で十分な事件の急増に対する人員配置等の体制整備ができなかった関係もございまして、それまでは、大体長くかかりまして七、八カ月で事件処理されておったんでございますが、一年を優に超すような事案も目立ってまいりました。  そこで、事務手続の簡素化と申しますか、あるいは人員の増加等にも配慮いたしまして、現在のところ六カ月内に処理できないものは特別に上申をさせることにいたしまして、個々的なケースをチェックしながらできるだけ迅速に処理されるようにということで、鋭意努力いたしておるんでございますが、大体の感じを申し上げますと、一年前に比較いたしますと、全体のまず二割近くが一年ぐらいかかっておりましたのが、現在では約半分、一割弱ぐらいが一年ぐらいかかっておるというふうな状況になってまいりまして、実際問題といたしまして調査をいたします場合に、事業によりますが、いろいろ複雑な事情もある案件もございますので、一律に六カ月内に全部処理するということは、これは法律的にもまいらぬことだと思いますけれども、できるだけ迅速に処理するということでやっておりまして、いましばらくお待ち願いたい。私どもの目標としては、できるだけ早期に、まあ遅くなっても六カ月内に処理がされるということをめどに鋭意努力中でございます。
  272. 下村泰

    ○下村泰君 できるだけひとつ速くやってあげられるような体制にしてください。と申しますのは、たとえば、六十九あるいは六十八ぐらいで申請をして、もたもたされて二年たってしまったといったらこういうような状況が生まれてこないとも限らない、こんなふうな私は考え方をするものですから、ひとつよろしくお願いします。  さて、先般、大阪の守口というところで奥さんが胃がんで亡くなった。遺品を整理していたら、天井裏から嬰児の遺棄死体が六つも出てきたという事件があります。これでいま警察庁の方の統計を調べていただいたんですけれども、嬰児殺被害者数というのですかね、嬰児殺しの被害者数、五十年が死亡が百九十五件で重傷が五件で、軽傷が六と、合計二百六件。五十一年、ことし十一月末日までで百四十八殺されているのですね。重傷とか軽傷入れますと百五十五件。これ以外にもやれロッカーであるとか、やれ川に捨てられた、やれ今度はたんぼの中に埋められたとかいうような事件はもうほとんど枚挙にいとまがないと見て、しかも、検挙率はほとんどないというようなのが現状なんです。毎度毎度申し上げておりますけれども、こういう事件が起きるたびに思うことは、子供が欲しくても産めない方、あるいは生まれてこなければいいのに生まれてきてしまった不幸な子、しかも両親が余りにも経済的に恵まれていないために、下手すると殺してしまうというような事件がもう次から次に起きておるんです。前々から法務大臣にもいろいろな形でお願い申し上げておりますけれども、もう時間が来ました。  いわゆる例の特別養子制度でございますけれども、中川善之助先生が生きていらっしゃれば大変私どもにとってはありがたいと思ったのですけれども、お亡くなりになりました。まことに悲しいことなんですけれども、少なくともどうでしょうか、法務大臣に以前お答えをいただいたのですが、なお継続審議として法制審議会の方へ諮問をしていただけるかどうかということを一言お聞きしたいのですが、いかがでしょう。
  273. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 法制審議会の民法部会は、現在相続人、相続分について検討してはおりますが、この検討が終了した後には、養子制度全般について検討する機会を持つようでございますから、その際、特別養子制度についてもぜひとも再検討が行われるよう配慮してまいりたいというのが、ただいまの法務大臣としての所見でございます。が、この法務省のいまの方針は、私がやめましても、国家意思として次の法務大臣に継続されていくことは当然であるというふうに私は思っております。  なお詳細は、もし必要あれば民事局長からつけ加えて答弁していただきましょう。
  274. 香川保一

    説明員(香川保一君) この特別養子制度あるいは実子特例法と言われているものは、前に法制審議会の民法部会におきまして一度論議されたことがございます。そのときに、何分本来は現行の養子制度で処理すべきものを、それではいろいろ不都合も生ずるというふうなことから、実子でない者を実子という形で処理するような方法の制度を設けるということでございますから、民法自体の問題、それから戸籍法の問題もいろいろございまして、結論を得ないまま、後日またひとつ検討しようというふうなことで、結論が留保になっております次第でございます。ただいま大臣が申されましたように、より国民的世論として早急に再検討すべきだといわれております相続法の改正に、現在鋭意取り組んでいただいておるわけでございまして、これが終了いたしますと、ただいまのスケジュールでは、その次に養子制度をやろうということに相なっておりますので、その段階で当然この問題ももう一度再検討を、議論されると、かようになろうかと思います。
  275. 下村泰

    ○下村泰君 もう時間でございますので、これで終わらせていただきますが、いずれまたこれは民事局長の方から詳しく、一体いつごろになるのかというようなことも改めて伺いたいと思いますが、どうも法務大臣、短いようで長く、長いようで非常に中身のあった大臣の在職年限御苦労さんでございましたと一言申し上げて、終わらせていただきます。
  276. 鈴木力

    委員長鈴木力君) 他に御発言もないようですから、法務省所管決算関係についての質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十五分散会