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1976-11-02 第78回国会 参議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十一月二日(火曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員異動  十月二十八日     辞任         補欠選任      稲嶺 一郎君     神田  博君  十月二十九日     辞任         補欠選任      神田  博君     稲嶺 一郎君      野口 忠夫君     和田 静夫君  十一月一日     辞任         補欠選任      矢追 秀彦君     山田 徹一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高橋雄之助君     理 事                 亀井 久興君                 秦野  章君                 増原 恵吉君                 戸叶  武君     委 員                 大鷹 淑子君                 木内 四郎君                 矢野  登君                 亘  四郎君                 寺田 熊雄君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 和田 静夫君                 山田 徹一君                 立木  洋君    国務大臣        外 務 大 臣  小坂善太郎君    政府委員        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省条約局長  中島敏次郎君        外務省条約局外        務参事官     村田 良平君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁警備局外        事課長      大高 時男君        法務省刑事局参        事官       川崎 謙輔君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (政府外交方針に関する件)  (金大中事件に関する件)  (韓国艦艇による日本貨物船臨検事件に関する  件)  (防衛計画大綱に関する件) ○日中平和友好条約締結促進に関する請願(第二  〇一四号)(第二六一四号)(第二七〇四号) ○日中平和友好条約締結促進に関する請願(第  二七〇二号)(第二七〇三号)(第三四八一号) ○大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国の自主的平  和統一促進に関する請願(第二七〇七号) ○日ソ善隣友好条約締結及び世界軍縮会議の開  催等に関する請願(第三一三八号) ○継続調査要求に関する件     —————————————
  2. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十月二十九日、野口忠夫君が委員辞任をされその補欠として和田静夫君が選任されました。  また、昨一日、矢追秀彦君が委員辞任され、その補欠として山田徹一君が選任されました。     —————————————
  3. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 国際情勢等に関する調査を議題とし、これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 戸叶武

    ○戸叶武君 きょうは外務大臣がおかぜを引いているので委員長がいたわってくれと言うので、なるたけ答弁は短くて結構ですから、耳の方は非常に発達しているようですから、どうぞ私たち考え方をやはり耳に受けとめてもらいたいと思うのです。  私は、文化人類学立場から人間の顔というものに非常に興味を持っていますが、その中で最近は耳の研究に全力を注いでおります。やはり聖徳太子の像をかくのにしても、耳を非常に美しくふくらみのある形でかくとこれが聖徳太子ということになるのですが、やはり耳が貧弱だと一国の政治を指導するのには物足りない。だから「聡明」の「聡」も「耳」ですが、外務大臣の耳を見ると、なかなかいいかっこうのようですから、聞く耳は持っているのだと思います。  きのう実は請願の問題で多少、内輪のことは発表しちゃいけませんことが礼儀かもしれませんが、非常に食い違いがある点を、理事なり委員の中での議論は差し控えますが、外交防衛の問題は一国の運命にかかわる問題ですから、それを含めて、やはり外務大臣の、外交権を持っているところの政府外務大臣役割りというのは非常に重大だと思いますから、外交権はおれが持っているから勝手だというのでなくて、せめて聞く耳だけはやはり持ってもらいたいと思うのです。それは請願の問題でも、請願権というのは主権者である国民にあるんです。何でもいいからという非常識なものまで国会に持ち運んではいけませんけれども国民世論形成の中において、少数派であってもまともな請願というものは受けとめるだけの寛容さがやはり国会にもあり、また外交防衛、特に外交の問題で責任を持つ内閣にもなければいけないと思うのです。  私はイギリスで少しばかり勉強していたときに、イギリスの学者が言うガバナビリティですか、とにかく統治能力というのはどこにあるかというと、自由を尊重することだ。それから聞く耳を持つことだ。それからやはり常識的であって非常にプラクティカルに物を処理していく能力を持つことだ。特に英帝国といわれたときにいろいろな無理がありましたけれどもイギリス世界帝国を形成したときにおいても、この聞く耳を持につだけの雅量はいつも持ったのです。聞いただけで物を実行しないじゃないかという批判はありますけれども、インドの革命家——私も二十二年ほど前に約四ヵ月ほとんど全土を歩きまして、いろんな演説会や集会に招かれましたが、司会者が一時間、閉会の辞が一時間、客は二十分か三十分ぐらいしかやれないのは、イギリス統治下におけるイギリス統治方式というものは、支配しているんだから支配されている連中の言うことを一応聞くだけで、聞くだけでも心が晴れる思いがするんだから、それだけはやろうという雅量があったんですけれども、このごろの自民党並びに政府はそういう聞く耳を持たないで、ややもすれば全体主義的な能率を上げるんだという形において強権政治方向へ、ファシズムの方向へ向かっているんで、それを能率と考えるのは、行政官の有能な人ばかり集まって、あと法律分野の秀才という——この間変な男が裁判官からも出ましたが、ああいう自分が頭がいいと錯覚しているんだからどうにもならないこういうエリート、大衆が愚であるからエリートが前衛党的な役割りで引っ張っていくんだ。このばかげた右と左からの全体主義に包囲されている日本において——アメリカ大統領選国民興味を余り持たないのは、あんなずうずうしい悪いやつばかりを大統領にしちゃしょうがないという気持ち。日本だってそれが底辺にある。それが政治からひとつ国民を遊離させている原因だ。もっと私たちはこの機会に、本当にわれわれは外交防衛の問題でこんな政府と野党とかけ離れた状態じゃなくて、腹を割って、そしてこの祖国日本をどうやって守り抜くか。それだけじゃなくて、日本だけのエゴイズムじゃなく、アメリカなりあるいはソ連なり中国なり、それぞれの権謀術策がはなやかに展開されています。しかし、東洋的な哲学というのは、権謀術策の徒は権謀術策によって倒れる。光明に背面なし。明るい光を求めることが政治の要諦であるということは、政治から宗教までおしなべて本当はあったはずなんです。それが政治権力と結ぶと政治イデオロギーも、あるいは科学の名において、特に社会科学などという名を使って一個のイデオロギー的な独断が横行する傾きもあるんです。  この程度にしますが、とにかく小坂さんは円転滑脱な人で明るい方にかけては人後に落ちない方でしょうが、ひとつかぜを引いたのを機会に若干沈黙を守って、そうして本当に権謀術策の小細工の政治じゃなくて、イデオロギー民族国境が違っても世界人々の心を打つような真心愛情を持った、思いやりを持った外交政策展開していかないと大変なことが私は起きると思うんです。この三年間に世界がひっくり返るようなことが私は起きてくると思うんです。朝鮮だって容易じゃないです。朝鮮に火がついたならば、ベトナムよりもイスラエルよりも、あるいは東ドイツと西ドイツの関係よりも非常に厳しい私は問題が発生するんじゃないかと思うんです。  そこで、知識人人たちが、いま隣の朝鮮半島のことを非常に心配しております。そしてこれらの人が国際の平和と繁栄のためにインドシナ地域における平和と民族統一が達成されたその上に立って、朝鮮民族統一悲願というものもやはり達成させてやらなければならない。このことは一九四五年以来の南北分断と厳しく対立する一つ考え方であるが、朝鮮民族にとってはいろんな相互不信感があるにしても、やはりアジアにおいて南北朝鮮平和的統一というものができるならば、アジアにおける一つ安定勢力というものが、ここにモデル地域が曲がりなりにでもでき上がってくるんだと思います。抽象的な観念ではなくて、やはり国連においてもこの問題をとらえて、昨年の第三十回国連総会でその趣旨を内容とする決議案が採択されたのであります。私たち全部挙げてこれを歓迎したじゃないですか。歓迎してもそれが実らないところに今日の政治外交の貧困があるんです。これをどういうふうに実らせるか、そういう外交方向づけに対して、一言でも二言でもいいから、簡単に御回答を願います。
  5. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私の不注意からかぜを引きまして大変に御迷惑をかけておりますことを、まずおわびを申し上げたいと存じます。  ただいまの御意見はまことに傾聴いたしますわけでございまして、何と申しましても外交権政府にあるのだから独断専行しかるべしというふうには毛頭私は考えないつもりでございます。のみならず、国民を代表される皆様の御意見をよく承りまして、その中に十分真心を持ち、また愛情を持って、外交方向を定めていかなければならぬと存ずる次第でございます。  わが国は、言うまでもなく、平和国家を標榜しておるわけでございまして、あらゆる問題について自己の欲望、野心というものを振りかざさないということがわが国の特徴でございますので、その平和哲学の上に立ちまして、超大国を初めとする世界各国の胸を打つような平和への何か哲学展開できればと存じておる次第でございますが、ただいまの御説はまことに傾聴いたしました。
  6. 戸叶武

    ○戸叶武君 いま日中平和友好条約政府決意いかんによって調印される段階にきていると思うんです。  そこで、一番問題になっているのが覇権問題の取り扱いです、きょうは時間がありませんから内容には触れませんが。もう一つはやはりソ連側が、日本中国との平和友好条約が結ばれると日本中国側に片寄ってしまうんじゃないか、ソ連仮想敵国として考えるような方向へいくんじゃないかという危惧を持っているので、そこにいろんな柔軟な働きかけを中国にし、日本に対しては第三者から見るとずいぶん厳しいいやがらせをやっているとしか見えないのであります。これは中国においては周恩来さんと十六年前に三たび私は長時間語りましたが、やはりお互い相互信頼を深めて信義というものを強めて、イデオロギー国境民族に若干の差異があっても、お互いに助け合っていくようにしよう。これは若き日に彼が中国を出て、日本大正六年から大正七年の嵐の時代日本に留学し、その後フランスに留学したり世界を見てきている。ソ連においても一九〇五年の革命失敗後におけるレーニンが、やはり国外に出て世界を見て、そこにソ連革命の中においてもレーニンだけの柔軟な、断固とした意思は持っているけれども幅の広い、他民族に対しても愛情を持った革命的指導者は私は少ない。それはボルガ河畔の他民族の苦悩を知って、それを教育した教育者の父親から影響を受けたし、その中に立って、ツアーの専制政治に対して科学者が憤りを持ってテロリストの群れに入ったという悲劇も身内に感じてあの人間形成をされたんだと思います。  私は一番心配なのは、最近ロッキードもそうだ、あるいはロッキード以上に韓国腐敗政治によってアメリカ指導者日本指導者も腐れただれているんじゃないかという不信感世界から受けている。これを払拭できないまま選挙に突入するけれども、私はこんなことをやっていたら、アメリカでも大統領選挙に対して国民の熱が上がってないというのは、政治が腐敗しているからである。外交防衛謀略の具に使われているからである。こんなことでいかに血を流しても、いかに金を使っても、私は果てしない阿修羅の世界を現出するだけだと思うんです。そういう意味において、やはり私はアメリカ独立の際に、あのいろいろな理論家が出た中において、無名な思想家がコモンセンス、常識ということが革命にとっては非常に大きなものだということを伝導して成果を上げたことがありますが、私は日本政治がもっと常識的になり、われわれの生活と心と結びついて、そうして私たちがこの国を守ると同時に、世界平和共存に対して、本当に拡散防止条約批准以後において日本が見違えるようになった、捨て身の平和外交展開して、祖国だけでなく全人類のとにかく悲願を達成しようという勢いを示してきた、これが全世界を揺すぶる私は日本外交路線じゃないかと思うんです。  どうぞ、あなたのところは善光寺さんもあるんで仏心が幼いときから私はついていると思うし、すでに坊主と同様に頭もなめらかになっておりますから、この点で、やはり私は本当にあなたは外交中枢の要職にあって外交権を持っているんだ。しかも国会がこのざまである。政党が、あの醜類を包含しての何とも言えない国民から憤りを持たれている派閥集団結合体になっている。こういうときに外交の一線からでも本当に未来に希望を持たせるような光が差してこないと、青年はニヒリズムになり、専制政治に対するテロリズムの発生というのもやたら起きてこなければならない。和のなかった時代に、天皇も謀略のために殺されるというような時代に、不安の時代に、それだけじゃない、日本聖徳太子が和を求めたんで、和の世界に和を求めたんじゃない。いまこそ聖徳太子時代以上に冷酷非情な教育政治、それから健康管理の医療の問題、厚生の問題、みなあるが、ます外交事柄は、拡散防止条約批准以来、憲法に従って日本平和外交をやり得るという基本的なものがつくられたんですから、外交権を持っているからといって三百代言的論理の中に埋没しないで、本当に外交世界人々の心をかち取るという形において展開していかれるかどうか。このごろの歴代外務大臣は大分みんなあか抜けしてきて聡明さがあるけれども日本政治は聡明さよりもはったりと暴力、ずうずうしいやつが政治をじゅうりんしている傾きがあるんで、その辺で、考え方はいいが頼り切れないお坊ちゃんにすぎなかったなどと言われないように、私は毒舌ですが愛情を持って小坂さんに望みを託するんですけれども、健康と同時にその決意いかん、それを承って私は結びとしたいと思います。
  7. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいまの御意見もまことに傾聴をいたしました次第でございまして、理論はもとより必要でございます。しかしながら、現実をいかに見るかということも必要でございまして、その間に調和をとっていくということが高度の常識ではないかというふうに私も常々考えておるのでございまして、常識に沿うて事柄を円満に運ぶべしと、そのことは日本のみならず、世界の平和のために通じるような、そうした考え方を打ち出して、そして日本外交のために大いに働け、しこうして、今日の政治をさらに昇華させるために大いに努力すべし、しかも、理論だけじゃなくて実行が非常に大事なんだから、そのつもりでしっかりやれという御意見につきましては、身にしみてありがたくお受けいたす次第でございます。
  8. 和田静夫

    和田静夫君 二時間の時間をお願いをしたんですが、四十分ということでありますから、大変限られた論議しかできません。  私は、議会に籍を置いてから一貫して地方行政委員会警察行政という側面から、アマチュア論理をずっと展開をしてまいりました。私は、この国の政治にとって大変必要なことは、プロフェッショナルに対してアマチュア論理がどういう形でかみ合っていくか、それか尊重をされていくかということだと実は常日ごろから考えております。そういう意味では、外交問題のアマの立場で、特にきょうは金大中拉致事件とその後の外交的な処理を中心としながら、少し蒸し返しになる面がありますが、歴代外務大臣衆参両院における外務委員会答弁というものをずっと読み返してみて、現実が大変違っている。その全く違っている側面を浮き彫りにしながら、二、三の質問展開をしたいと思います。  七三年の八月に金大中氏が東京からソウルへ拉致された。その年の十一月一日に政治決着なるものがつけられて、昨日でちょうど三年を経た。そこで、金大中氏の生命が大変危険だと言われている。現在彼はソウルのどこにいるのか、その生存、その健康状態、どういう方法で把握をされているのか。その情報は、入手経路の関連で確実性を持っているのか、その辺についてまず所見を承ります。
  9. 中江要介

    政府委員中江要介君) 金大中氏は、いまソウル拘置所の中に生存を確認されているかという御質問に対しましては、生存しておられるということはこれは間違いなく確認されております。ただ問題は、私どもも果たして健康状態がいかがであるかという点は、これは新聞に金大中夫人の談話として報道されて以来関心を持ち続けておるわけでございまして、この金大中氏の拘置所内における健康状態について、いろいろな方面から、いろいろな方法で、その健康状態を知ろうと努力はもちろんしておるわけでございますけれども、これにはいろんな情報がありまして、やっぱり相当悪いんだと言う人もありますし、いえ、そうではなくて、きわめて健康だと言うのもありますし、これはその立場立場でいろいろおっしゃっているんだろうと思いますけれども、少なくとも私どもがいままで得ました情報の中では一番信憑性が置けるものによりますと、年来の持病の神経痛拘置所の中でよくなっているわけはない。しかし、そうかといって生命にこの一両日とかあるいは数日のうちに何かが起きるというほど重体でもないということで、一時食欲が減退したとか、あるいはその後拘置所内の食品も自分で購入して食べられるようになったとか、あるいは差し入れされたものを食べているとか、いろんな情報があるんです。そういうものを総合いたしまして、私どもとしてはいまのところ生命に危険な状態ではない。しかし、非常に健康である、あるいは通常の人ほど健康であるという確信もない。  じゃ、そういう情報をどこから得ているのかという点なんですが、これは政府立場はいままで申し上げておりますように、公のルートで金大中氏という人の健康状態いかんということを確認することはなかなか相手が、そういうことでこういうわけだというふうに言えない立場にある。つまり日本側としては、外交経路でそれを確認するということはなかなかむずかしい。しかし、金大中夫人あるいは拘置所関係者あるいは弁護士その他いろいろ関係の方は、金大中氏周辺の方はおられるわけでございまして、そういう人たちから非公式の形で私どもとしてはできる限りの情報の収集はやっている。その一人一人につきましては、これはその方々の立場でありますので、ちょっと公の場では申し上げにくい、こういうことでございます。
  10. 和田静夫

    和田静夫君 七月八日に金大中夫人三木総理にあてて手紙を寄せられたようでありますが、一民間人からの手紙とは意味が異なると思うんです。三木総理返事を送られたでしょうか。
  11. 中江要介

    政府委員中江要介君) これは総理の方で御処置なさる問題としておりますが、いままでのところ、私どもの承っておるところでは返事はなさっていないと、こういうふうに聞いております。
  12. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣総理にアドバイスする立場にあると思いますが、この返書についてあなた自身は積極的に何かアドバイスされるおつもりはありませんか。
  13. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 問題は金大中氏の健康でございますので、いろいろと手を回しましてその健康について情報を得たわけでございますが、その情報につきましては、いまアジア局長が申し上げましたように、どうも思わしくないという情報もございますし、それから、健康人の非常によい健康状態にあるというふうには言えないけれども、別に特段の異状はないという話もございますし、すべてのそういう情報金大中夫人から出ているんだ、だからあまりそれにどうも日本政府として乗ることはいかがなものかというような意見もあるとか、いろいろな立場もございまして、もう少しこれは状況を見た方がいいんではないかというふうに私は考えております。
  14. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、いまのところはその総理返書というものを外務大臣は、個人としても外務大臣としても必要とは認めていない、こういうことですか。
  15. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 返書を出す方がいいか悪いか、忠告するに由なしという状態でございます。
  16. 和田静夫

    和田静夫君 政府は繰り返して、金大中氏の身柄に関心を持っているとあらゆる速記録で読むと答えています。十月八日の衆議院の外務委員会論議によりますと、ことしに入って外務大臣レベルで三回問い合わせをしているということの答えがあります。何月何日にどういう方法で行われたんですか。
  17. 中江要介

    政府委員中江要介君) ことしに入りましては、一月に韓国駐在西山大使から韓国総理大臣及び外務大臣に、それぞれ別個でございますけれども外交的決着の際の了解について再確認をしている。それから六月に宮澤前外務大臣から朴東鎖外務大臣本件を再確認しております。八月に韓国駐在西山大使から同じく朴東鎮外務大臣に再確認しております。それから先般ニューヨークで小坂外務大臣から朴東鎮外務大臣との会談の際、本件を再確認している、こういうことを指して申し上げておるわけでございます。
  18. 和田静夫

    和田静夫君 十月二十五日の読売の記事によりますと、政府金大中氏が民主救国宣言事件で刑が拡大すれば、出国できないのもやむを得ないという見解を韓国側に伝えたということなんですが、この真偽はいかがですか。
  19. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私どもそういう事実は承知しておりません。
  20. 和田静夫

    和田静夫君 議論をまあ蒸し返すことになりますが、あえてもっと初歩的な表現でお尋ねをいたしたいのは、金大中氏はなぜいまもって日本に来れないんですか。
  21. 中江要介

    政府委員中江要介君) これは先生も御記憶がおありと思いますが、金大中事件が起きました年の暮れからその翌年の初めにかけては、旅券の申請があって、韓国外務部でこの旅券を発給するかどうかということで、発給されれば国外に出られるという、わりあいいい傾向、趨勢にあった時期が一時あったわけでございますけれども、その後、この旅券が出ないままで例の韓国側の、金大中自身ではなくて一般的に緊急措置令が次々と出されて出国がむずかしくなった。しかし、日本政府としては外交的決着の際の了解が守られねばならない、一般韓国人並みに自由であるならば一般韓国人と同じように旅券も出してもらいたいし、旅券が出れば日本もあるいはアメリカにしましても査証は出せるわけでございますので、そういう点でアプローチしておったわけです。  ところが、その後金大中氏のかつての選挙違反裁判の係属がありまして、その選挙違反裁判が一応の判決が出ました。まあこれに対して控訴しているという状況のところへ、御承知の三月一日の民主救国宣言事件という事件が起きました。この事件は金大中氏事件の後で起きた事件でありますし、金大中氏事件を外交的に決着を見ましたときにも、あの拉致された以前の日本及びアメリカにおける行為については、これはもう問わないという了解はあったわけですけれども、拉致されまして韓国の中に入ってから、その後起きた事件についてまで日本外交的決着のときの了解を理由に、その韓国の国内法に基づく措置を修正なり停止なり廃止なり、そういうことを求めるということはできない。したがって、この三・一民主救国宣言事件に関する限り、その範囲内においてはこれは日本政府としてそのものを直接取り上げることはできないということで、いま韓国がその民主救国宣言事件についての裁判を続けている限り、それをやめて出国をさせろということはできない話であるというのが現状で、そういうことが重なりまして金大中氏はいまだに韓国から出国ができないと、こういうふうに了解しておるわけでございます。
  22. 和田静夫

    和田静夫君 四十八年の十二月十日の衆議院予算委員会で当時の大平外務大臣は、「一つは、出国を含めて同氏は自由であるという、自由を保障するということ、それから、別件で訴追逮捕を受けるようなことはないという保障を得ておるわけでございまして、そのことがどのように今後履行されるかということにつきまして、終始重大な関心」を持つ、こういうふうに答えられているんです。  そこで、別件で訴追逮捕しないという保障を得ているというのはどういう保障なのですか。それはなぜ破られたのですか。
  23. 中江要介

    政府委員中江要介君) その別件逮捕の問題は、先ほど私ちょっと言及いたしましたように、金大中氏事件を外交的に決着を見ましたときの四つか五つの項目の中の一つ金大中氏の自由ということであったわけで、その金大中氏の自由に関連いたしましては、先ほど申し上げましたように、一般市民と同様に出国を含めて自由と、つまり一般市民より厚くも薄くも取り扱わない。その取り扱いに関連いたしまして、日本及びアメリカに滞在中の言動について責任を問わない、別件逮捕がないということの趣旨は、拉致されました以前の言動、これはアメリカ及び日本にずっといたわけですので、その間のことで韓国に連れ戻されたことを、まあ利用してというか、それをいい機会として、別件でアメリカ日本で行ったいろいろの反政府的活動についてさらに訴追するということはしないということであったわけでございまして、さらに、その場合でもただし書きが一つありまして今後反国家的な活動をしなしこと、これから金大中氏が韓国で反国家的な活動をしないということを条件として、日本及びアメリカに滞在中の言動については責任を問わないと、こういう了解になっておりまして、この別件逮捕の中に、韓国に帰ってから、韓国で新たに何らかの違法な行為、あるいは不法な行為によって訴追されるということまでも、この了解のときに何もかも一切問わないということになったわけではなかったわけでございますので、別件逮捕はないという当時の認識と、民主救国宣言事件でいま訴追されていることとは相矛盾しないというのが私ども考え方でございます。
  24. 和田静夫

    和田静夫君 第一次、第二次の外交的決着があってから後なんですが、ことし三月のいま言われる民主救国宣言事件までの間に金大中氏が本当に自由であったとお考えですか。
  25. 中江要介

    政府委員中江要介君) これも再三議論のあったところでございまして、まあ日本から韓国に行かれた人で金大中氏に会った人もございましたし、あるときは在韓日本大使館の天皇誕生日のパーティーにも金大中氏はあらわれて、わが方大使と歓談したという場面もあったわけでございまして、全く自由がなかったというふうには私ども思っておりませんけれども、こういう人物でありますので、韓国政府がどういうふうに見守っていましたか、これは向こうの問題ですが、私どもとしては、自由が著しく拘束されていたというふうには考えていなかったわけです。中には、そうは言うけどなかなか面会がむずかしいとか、会おうとする人がついてきてなかなかフリーな話ができなかったとか、そういう経験、体験をお話しされる情報は私ども聞いておりましたけれども、その程度のことで、それ以上に身柄がフィジカリーに拘束されているという状態ではなかったと、こういうふうに了解しておりました。
  26. 和田静夫

    和田静夫君 金大中氏が、たとえばアメリカへ行くために旅券を申請をされた。しかし許可がおりなかった。また、政府も周知のとおりに二つの選挙違反事件で起訴がされている。七四年六月には出廷をさせられている。そうすると、別件で身柄拘束をはかる、こういう韓国政府には、当然この時点において日本政府は何かの行為がなされなきゃならなかったと私は思う。大平外務大臣の言われた保障というのは、この時点では明確に役に立ってはいなかった。そうでしょう。
  27. 中江要介

    政府委員中江要介君) この大統領選挙違反事件というのは、金大中氏が日本アメリカに出国する以前からの問題で、すでに韓国で何回か公判が行われて、それが金大中氏が病気療養ということで出国が認められて一時中断されていたものが再開されたんだと、こういうふうに韓国側は説明したわけですが、日本側としては、この事件についての私どもの認識に基づいて、そういうことで事実上外交的決着の際の了解がうやむやにされるということでは日本政府としては相ならぬことだということは、その時点でももちろん先方に強く言っておるわけですし、その後も、折に触れて申し上げているのはそういう趣旨でございますが、韓国側はそれに対して、その外交的決着の際の了解事項は再確認する、これをうやむやにするとか、これに反するという意図は全くないけれども裁判という司法権の態様としてのかねてからの大統領選挙違反事件についての手続は、これは、それはそれとして続けられなきゃならないし、それ自身が行政府として干渉できる性質のものでないんだということで、裁判手続はそのまま進行しているというのが現状でございます。
  28. 和田静夫

    和田静夫君 時間があればここのところは大変論議をしなければならぬところなんですがね。政府は、たびたび金大中氏の自由回復について公言をしておられるわけです。  そこで、金大中氏の身柄に関心を持つということは、結論として金氏が事実上出国できること、日本に戻ることでなければならないと私たちは素朴に思う。また、よく言われる原状回復こそが私はその核心だと思うのだが、原状回復というのはどういうことなんですか。
  29. 中江要介

    政府委員中江要介君) この辺が、どうも私どもの説明がいつも不十分なせいか、なかなか十分な御理解を得にくい点だと思うのですが、原状回復というのを外交問題として相手国政府に迫まるというときの原状というのは、その違反行為、国際法上の違法行為が行われなければ恐らくそういうもとの状態が続いたであろう、そういう状態に戻すということだろうと思うのですが、そういう意味では、日本に帰ってこられようと、あるいはアメリカにいらっしゃろうと、ヨーロッパに行こうと、あるいは韓国にとどまろうと、要するに金大中氏が自分の希望する意思に基づいて滞在なり居住移転の自由が保障されていれば、それが一つの違法事件がなかりせば、あったであろう金大中氏の状態であっただろう、こう思うのですが、それはそれといたしまして、そういう原状回復を求めることがこの事件の決着そのものであるかどうかという点につきましては、金大中氏が拉致されたということが日本の国内法に違反した、日本の国内法を犯した、だから主権侵害だというように一般には見られますし、そういうふうに言われているとしますと、それはちょっと外交問題として取り上げるには、まだ十分な考えの整理というのはできてないように私どもは思うわけで、国と国との関係で主権侵害という場合には、やはり相手の公権力が日本政府の同意なくして日本の法秩序を犯した、あるいは犯して行使されたということがないと、これはそういう主権侵害という意味での国際法上の責任は追及し得ない。もしそれが、そういうことがはっきりいたしまして、国際法上の責任を追及し得るようになりますと、いま申し上げました原状回復というのが、権利として日本韓国に要求し得る立場になる。これが私ども一つの立論でございます。そういう観点からいたしますと、原状回復ということを日本政府韓国政府に要求し、その実現を図ることが本件の解決であるというふうになりますと、これはちょっと前提のところで、主権侵害の有無について、その疑いはきわめて濃厚だということは私どももそう思ったわけですけれども、解明されなかったという現実でございます。
  30. 和田静夫

    和田静夫君 主権侵害の論議なんというのは、金東雲の指紋の検出が日本の警察によってなされたときに、公権的なものが働いていたということは、われわれの認識としては当然受けとめているところです。いまその論議をしようとは思いませんが、七三年の十月の下旬に外務省の条約局が、自由意思の回復があれば原状回復が充足されるという意見もあるという解釈を、まあ考え出されたんでしょうな、考え出した。それをわざわざあなた方は韓国側に伝えていますね。この入れ知恵の奇妙な提案があった。あったのですぐ七三年の十月二十六日に金大中氏はKCIAの軟禁から解かれた。なぜ外務省はそんな働きかけをされなきゃならなかったのですか。
  31. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私の記憶では、原状回復とはこういうことだということを韓国側に伝えたという事実を承知しておらないんでございますけれども……
  32. 和田静夫

    和田静夫君 後宮大使が当時明確に韓国側に伝えていますね。私はきょうは呼んでここへ来てもらおうと思ったんですが、時間的な余裕がなかったからきょうは省略をいたしましたがね。
  33. 中江要介

    政府委員中江要介君) ちょっとその事実を私承知しておりませんので調べてみますが。
  34. 和田静夫

    和田静夫君 後宮大使がこういう形のことを韓国側に伝えたということは、外務省の訓令によるものだろうと私は少なくとも判断をいたします。そこにさかのぼって調査の上明確にされますか。
  35. 中江要介

    政府委員中江要介君) 当時は、公権力の行使があったかどうかということが一番の争点であったわけでございまして、公権力の行使を前提として、それの解決の一環である原状回復についてどう考えるかということを本省から出先に訓令したはずはないと私は思いますが、なお御質問でございますので、よく調べてみます。
  36. 和田静夫

    和田静夫君 これは私の調査確実性を持っておるということを私は申し添えておきます。その返答いかんによっては、後宮さんに来てもらって具体的な詰めをやる、こういうふうに取り計らってもらいたいと思います。  金大中氏には一時的に自由意思の回復があったように見えた。見えたけれども、現在生命の安全さえ脅かされている。原状回復についてはいまのところ望みがない。これでは政治的決着が欺瞞だったということに私たち素人の目から見ればなる。政治決着によると金大中氏の身柄をどうすることだったのだろうか、非常に不思議だ。出国を含めて自由、別件で訴追逮捕されないという大平さんの言明はどうなったんだろうか。それは救国宣言事件があったからだと言われるが、私はそれまでの間彼が自由であったとは思わない。ここのところがいままた調査を約束された問題と深くかかわることになります。そもそもこの第一次、第二次の政治決着と呼ばれているもの、それには文書が交わされていないんですか。
  37. 中江要介

    政府委員中江要介君) 第一次の政治的決着に関連する文書といたしましては、朴大統領から田中当時の総理あての親書というのがございます。第二次といいますか、金東雲書記官の嫌疑に関する部分については、七月二十二日の口上書というものがございます。外交的決着の際の了解事項、五つの点についての了解事項というのは、これは特に改めて文書にしたものはございません。
  38. 和田静夫

    和田静夫君 これぐらい重要な事件について、相手方からの親書があった、あるいは口上書があった、それだけでもっておさめられるということについて、私は大変不思議なんです。  たとえば後宮大使の当時の記者会見の模様を再現をしてみますと、文言についてはこれからペーパーでもって確認をしていくんだと、こういう形のことがありました。その間、田中総理も大平外務大臣も外遊中である。そして田中総理が帰国をする。途端に文言のペーパーによるところの確認はなくなってしまって政治的決着へという形に行く、こういうふうに一連なっているんですよ。なぜ正確に外交文書の交換がここでなされなかったのだろうか。最近、金大中事件政治的解決をめぐって何か黒い霧問題が、衆議院の最近の外務委員会でも三億円事件などということが取りざたされていますが、いま私はそのことを言おうとはしませんが、そういう疑惑を呼ぶもとになるのも、明確に文書によるところの決着というものがないからじゃないでしょうか。これは外務大臣、どうお思いになりますか。
  39. 中江要介

    政府委員中江要介君) 最初のそもそもの政治的決着のときに文書を特につくるべきではなかったかというお立場につきましては、この事件はそもそもが日本政府のかかわりなく起きた事件で、もっぱら韓国側に、それが公権力であれ、あるいはそれ以外であれ、被害者も加害者もみんな韓国の方に行ってしまって捜査の方がその後非常にむずかしくなったという経緯からも明らかなように、韓国側が一方的に日本に大変な迷惑をかけた事件であったという認識はこれは共通していたと思うんです。ですから、日本としては、韓国の最高の首脳である大統領から日本総理あてに遺憾の意を表する親書が寄せられるということが、これが高度に政治的な一つの行為として評価される問題だと。あと、それだけでは日本はまだ足りないんだと。それに関連して、いま御質問にありますような金大中氏の問題、あるいはその責任者の処分の問題、あるいは今後こういうことをしないということの約束、そういったものが幾つかあるわけでございまして、その部分は、そういう大きな最高度の親書による遺憾及び陳謝の意を表明されたに関連して、韓国の金鍾泌当時の国務総理日本に来まして、そしてその大統領親書を渡しかたがた、その際の総理間の話の中で了解されていったことで、当時の政治的な判断といたしましては、そういう細かいことをまた一々文書にするということまでもないと、総理同士の約束だからこれは忠実に双方が守る、それが日韓の信頼を回復するゆえんだと、そういう実は認識であったわけで、それだけにその了解事項についてはその後いつも注意を喚起し再確認し続けてきていると、こういうのが実態でございます。
  40. 和田静夫

    和田静夫君 私は、こういう重大問題で文書が交わされないということはもう素朴に言って理解できません。理解できないばかりじゃない、そこに明確な文書によるところの確認がないから双方の主張なりあるいは解釈が食い違ってくると思うんです。なぜ文書をつくらなかったんだろうかというのは大変疑問です。これはまあ疑問のままきょうは残しておかざるを得ませんが、大変疑問に思っているし、その疑問の上に立って、いまいろいろ疑惑を呼んでいる問題の調査を進めるということになりますが、特に後者の問題ですね。五十年の七月二十二日には金東雲に関し韓国から口上書が来た。しかし、決着には文書としては何もない。これなんか全く納得ができませんよ。日本の警視庁は明確に指紋について摘出をして、それについて答えを迫っているという状態が一方にある。そのことを踏まえればますます納得できない。大平外務大臣は、当時、内外に納得のいく筋の通った解決、こう答えています。あるいは、国際的に納得できる世論の支持の得られる解決をしたい、そう繰り返し答弁しているんです。この答弁というのは、外務大臣、現時点で全く全うされているとお考えになりますか。
  41. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあいろいろな御意見があると思うのでございますが、われわれといたしましては、やはり、この事件に関連して金東雲の指絞があったというわけであるけれども、金東雲は韓国へ行ってしまった。そこで、われわれは韓国にいる金東雲をいろいろ取り調べる権限はないわけでございますね。そこで、韓国に依頼をいたしまして調べてもらった結果がどうもはっきりしたものがない。したがって、われわれは主権を侵害されたということに足る確証が得られなかったという問題があるわけです。それを国際的に納得し得ると判断するかどうかということでございますけれども、どうも韓国にいる人を日本が調べなけりゃこれは国際的に納得できないというわけにもいきませんものでございますから、これはある程度やむを得ないんじゃないかというように思うわけです。ただ、刑事事件といたしまして、わが警察におきましてはこの事件を引き続き調査するということをやっておるのでございますし、先般聞きますと、何か二十三人の捜査官が現在もこの事件を捜査しているということのようであります。この二十三人が、ちょっと違っていたら私の記憶違いでございますが、大体そんなふうな数と承知しております。
  42. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣、率直に言ってどの点がどう十分でないとお思いになりますか。
  43. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いや、どの点がどう十分でないというよりも、ある程度やむを得ないという問題があろうかと思うんです。いま和田さんの御質疑されている立場に立てば、指紋があるんだから完全に犯人を割り出したらいいじゃないか、そしてもっと快刀乱麻を断つごとく解決したらいいじゃないかという御意見かと思うんでございますけれども、とにかく本人は韓国にいるわけでございまして、われわれはこれを調べるに由なしということでございますので、どうもこれはいかんともしがたい。そこで、この金大中氏に関しましては出国を含めて一切韓国の市民と同様の自由を保障すると、こう言っておるわけでございますし、それから韓国の最高の権力を持つ大統領が親書をもちまして、多大な迷惑を日本にかけた、これは先ほども答弁ございましたように、全くわれわれはこれには関与していないことでございまして、ただ場所がたまたま日本であったということであるわけなんで、それに対して非常に迷惑をこうむっているというわけでございますが、それに対して迷惑をかけたことは陳謝を、遺憾の意を表する、こういうことでございますし、それから再びこのような事件を起こさないという旨を大統領の親書でよこして、将来再発をしないという覚悟を表明しておるのでございますので、われわれとしては、これよりちょっとこの際の解決方法はないんじゃないかと、こう思うんでございます。ただ、民主救国宣言というものが三月一日に出まして、直ちに金大中氏の身柄は拘束されたわけでございますが、これは全く韓国の国内問題でございますので、われわれはこれをいいとか悪いとか、そういうことは言い得ない立場にある、こう思うんでございます。
  44. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣、宇都宮徳馬さんの辞職理由の中の主要な柱の一つになっていますこの金大中事件についての理由について、これを是とされますか否とされますか。これは三木さんと外交的に最も近いところにいた人が、三木さんその人に対して痛烈な批判を浴びせて議員を辞職されたわけですね。
  45. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私の立場からは、批判を控えさせていただきます。
  46. 和田静夫

    和田静夫君 法務省、こういう犯罪の場合、国際的に考えられることというのはどういうことでしょうか。私が素人なりに考えれば一つは原状回復、二つ目は犯人の処罰、三つ目は謝罪、四つ目は再発の防止、こういう四点が少なくとも満たされる必要があると思うんですが、いかがですか。
  47. 川崎謙輔

    説明員(川崎謙輔君) 私どもの所管事項について申し上げますと、本件はわが主権の属する国内で起こった事柄でございますので、その犯人につきましてはわが国が当然刑事裁判権を持つと、こういうことでございます。
  48. 和田静夫

    和田静夫君 いまの答弁をもとにして、少し引き続いて深めたいと思います。  そこで、この政治決着の基礎にあるのは両国の捜査なんですが、金東雲元一等書記官の指紋等について日本の捜査当局は確信を持っておられる、これはいまも変わりませんね。
  49. 大高時男

    説明員(大高時男君) 金東雲元一等書記官の指紋につきましては、犯行の行われましたホテル・グランドパレスの二二一〇号室から採取した遺留指紋と日本の官庁が保存いたしております指紋とで完全に合致をいたしておりまして、これについては自信を持っております。
  50. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、金東雲を容疑者として考えておられる。
  51. 大高時男

    説明員(大高時男君) 容疑濃厚と考えております。
  52. 和田静夫

    和田静夫君 それを否定するところの証拠、材料は出ていない。
  53. 大高時男

    説明員(大高時男君) ただいま申し上げました以上のものは把握していないという状況でございます。
  54. 和田静夫

    和田静夫君 そうなりますと、韓国からの口上書なるものの回答というのは警察当局の疑惑にこたえておらない、捜査の参考にはならない、こう理解しておいていいですね。
  55. 大高時男

    説明員(大高時男君) 警察の方におきましては、本件が何と申しますか、被害者、参考人とも韓国にいる。先方において取り調べてわが方に全部通知していただくという形で参ったわけでございますけれども、昨年の七月二十二日に、金東雲についても調べてみたけれども嫌疑を立証するに十分なものがなかったという簡単な通告がございましたわけで、私どもが求めておりました詳細な説明というのは得られなかった、こういうことでございます。
  56. 和田静夫

    和田静夫君 大平さんは四十八年九月六日の参議院外務委員会で、わが党の羽生議員の次のような確認に対して次のように答えております。すなわち、「韓国がどういう結論を出そうとも、最終的にはその判断の基準は、基本的には日本の捜査当局の見解である。」という羽生議員の質問に対して、大臣は、「そのとおり承知しております。」と答えています。ところが、現実には韓国の一方的な通告に対して日本の捜査当局の見解が基準にされないまま政治的決着となっている。外務大臣、この態度の変更というのはなぜ起こったんですか。
  57. 中江要介

    政府委員中江要介君) 大平外務大臣がおっしゃいました趣旨は、私は国際刑事事件としての本件の究明という意味ではいまも変わりがないし、これは日本で起きた誘拐拉致事件でございますので、日本の捜査当局があくまで日本の当局の判断として最終的な真相究明に引き続き努力しておられる、こういうふうに了解しておるわけでございまして、外交的決着というのは、これはまさしくその名の示しますように、刑事事件としての事実解明は続けるけれども、それを日韓間の外交全般にどの程度の重みを持っていつまでもそれにこだわるのかどうかという意味、そういう観点から決着をつけたということでございまして、その真相を明らかにすることをこれで全部やめにしたということでは全くないことは御承知のとおりだと思います。
  58. 和田静夫

    和田静夫君 現在捜査継続中と言われているわけですが、法的にはどういう状態ですか、この捜査継続中ということは。
  59. 大高時男

    説明員(大高時男君) 警察におきましては、昨年の七月に一応ああいう口上書が参ったわけでございますけれども、捜査というものはいろんな条件、あるいはまた困難、こういうものに逢着しつつ、その中で真相の究明を行うというのが筋でございますので、本件につきましては、韓国側の協力が得られないというのは大変に捜査をむずかしくするわけでございますが、一方、私どもが事件発生以来いろいろ収集いたしました資料あるいは情報関係者、こういうものからさらに新しい被害者でございますとか、あるいは逃走の手段、こういったものを何とか割り出したいということで引き続き捜査を続けておる、こういうことでございます。
  60. 和田静夫

    和田静夫君 これだけの大問題ですから、もう時間が来たようでありますからやめますが、当然早い時期に何らかの私は法的決着というものがつけられなきやならないと考えるんですが、そういう認識については、これは法務省ですか、どうですか。
  61. 川崎謙輔

    説明員(川崎謙輔君) 恐らく本件につきましては犯人の特定、検挙ということを最終目的に、今後とも鋭意捜査が続けられるものだと、こういうふうに考えております。
  62. 和田静夫

    和田静夫君 資料の要求だけひとつしておきますが、韓国経済調査団という官民合同の調査団が今月末にも韓国を訪問する予定というふうに報道されていますが、この目的、メンバー、スケジュール、それらは資料で出していただけますか。
  63. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私どもも新聞報道以上のことはまだ承知していないという段階でございますので、具体化していないということで、ただいまの時点で資料と言われますと、ちょっと困る、こういうことでございます。
  64. 和田静夫

    和田静夫君 具体化をしていない。そうすると、いま調査してみなくても具体化していないからという意味ですか。調査すれば何かが出る可能性はあるということですか。
  65. 中江要介

    政府委員中江要介君) いえ、調査いたしましても、官民合同となれば当然私どもも相談を受けるべき筋合いでございますけれども、まだそういう相談もございませんし、調べるまでもないという状況だと、こういうことでございます。
  66. 和田静夫

    和田静夫君 私、きょうは非常に短い時間ですから十分なことはできませんが、金大中拉致事件をめぐる問題につきましては、機会あるごとに追及を続けますが、特に私は日本関係の強い朝鮮半島の問題であること、あるいは外交の基本的な関係、ルールが国民的なアマチュアの観点から見れば踏みにじられていると考えられること、この問題を抜きには私は日本外交を論ずることはできないとまで実は思い詰めているのでありますが、政府も、いずれ近い将来、金大中氏事件の真相がどっちみちこれは明らかになってくるんですからね。明らかになってくるのでありますから、そのときになって私たちの判断は誤っていました、私たちは弱腰でありました、私たちはばかにされていましたというような反省がなされるのでは私はどうにもならぬと思うんです。その意味で、その場しのぎでなくて真摯に対応していっていただきたい。これは意見を開陳をしておきます。
  67. 立木洋

    ○立木洋君 最初に一点をお尋ねしておきたいんですが、先日当委員会で問題になりました、公海上における日本の船舶に対してのいわゆる韓国護衛艦の臨検という事件がありました。これはもう先般来問題になりましたので、詳しくは内容を言いませんけれども、それに対して、当時、政府の側としてはよく調査をしてしかるべき処置をとりたいというお話だったわけですが、その後どういう措置をとられたのか、また、その結果どういうふうになっているのか、ちょっと知らしていただきたいと思います。
  68. 中江要介

    政府委員中江要介君) これは、前回の当委員会で問題の指摘がございまして、当時私どもは、海上保安庁から正式の報告が参りましたならば、その権威ある報告に基づいて、果たして国際法違反があったかどうかを判断し、必要があればしかるべき措置をとる、こういうたしか趣旨の御答弁を申し上げたわけでございますが、その後、海上保安庁が事情聴取をした結果を公の報告として外務省に通報してまいりましたところを外務省において検討いたしましたところ、これが明らかに公海自由の原則に違反するという結論に達しましたので、十月二十九日でございますが、韓国政府に対し口上書をもって抗議をしたということでございます。  この口上書の趣旨は、まず第一点として、ただいま申し上げましたように、今回の韓国側の幾つかの行為は公海自由の原則に反する国際法上の不法行為であるから厳重に抗議するという点が第一点。第二点は、こういうことが再び起こらないように再発防止を要求しているという点でございまして、第三点は、今回の不法行為によって、目下調査中でございますが、何らかの損害がありましたならば、その受けた損害に対して賠償を請求する権利は留保しておくと、この三点を主たる内容とする口上書、抗議の口上書を先方に渡しますと同時に、これは韓国側の海軍が関与しておりますので、海軍の当局に対しても口頭でもって同様の申し入れをしたわけでございます。これは二十九日のことでございまして、先方はきわめて重大な抗議の文書を受け取ったわけでございますので、当然のことながら上司に報告して検討をするという反応でございましたか、その場で、いや、そうではないという反駁はなされなかったというふうに報告を受けております。
  69. 立木洋

    ○立木洋君 引き続いて、きちっと対処していただきたいということを要望しておきます。  それから、二十九日に閣議で決定されました「防衛計画の大綱」についてですが、最初に大臣に一、二点お尋ねしたいと思うんですが、これは基盤的防衛力というふうなことになっておりますが、この基盤的防衛力ということは基本的にどういうことなのか。以前とどういう意味でどういう点で変化があるのか。これはもちろん閣僚のお一人として、国防会議のメンバーとして、その点どういうふうにお考えになっておるのか。その点、まず最初に大臣に一言お尋ねしておきたいと思います。
  70. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 従来四次防までやってきたわけでございまするが、回を重ねるごとに非常に量的にはふくらんでまいる。しかし、質的な点でもう少し細部の検討が行われるべきではないかというような考えから防衛庁長官が提案されたのでございまするが、いまわが国をめぐる国際社会の現状から見まして、単独でもってその国の防衛力を確保するということはむずかしい。やはり国連憲章にございまする集団自衛権を発動することがどうしても必要である。そういう点から、わが国の場合は日米安全保障体制によってわが国の安全を確保するということが賢明な道である、こう考える、その考え方を一方に持ちながら、わが国の防衛力を整備していく、そういう考え方と承知しておるわけでございます。しかし、そういう考え方を持ちながら、一方、国際情勢安定化のための努力、またはわが国周辺の国際政治構造並びに国内情勢を変化させないという努力、現状を大きく変化させないという努力、またしないという前提に立つという考えで、私はその基盤的防衛力の構想というのは妥当なものである、かように考えておる次第でございます。
  71. 立木洋

    ○立木洋君 もう一点だけ。大臣御承知のように、七〇年来、アメリカとしては日本の防衛力の整備あるいは兵器の近代化等々の要望がなされてきたわけですが、そういう要望を組み入れたものなのかどうなのか、その点について。
  72. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) アメリカの要望あるなしにかかわらず、わが国としてはやはり防衛力を国力に相応して強化していく必要があるというふうに考えるわけでございます。特に近代兵器がいろいろ改良進歩いたしておるわけでございますから、その線に沿いまして、量をいたずらに害えるよりも、質の拡充といいますか、質的な進歩を十分取り入れていく必要がある、かように思っているわけでございます。
  73. 立木洋

    ○立木洋君 防衛庁の方にお尋ねしますが、最初いま大臣にお尋ねしましたが、基盤的防衛庁力という考え方ですね、これはつまり、いままでは対処防衛力構想といいますか、敵の意図、敵と言っても仮想敵国でしょうが、あるいはその力に応じた防衛力というふうにされてきたわけですね。ここの内容、三の「防衛の構想」のところを見ますと、「侵略の未然防止」というところには、「いかなる態様の侵略にも対応し得る防衛体制」というふうなことになると、どうもいままでと同じではないかという感じもあるわけです。その基盤的というのが防衛力の概念としてどういうものなのか、もう少し説明いただきたいと思います。
  74. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) ただいま「防衛の構想」のところで御質問がございましたが、防衛力というものはやはり国の安全と独立を守る力でございますから、終局的にはどのようなものにも対応できなきゃならないわけでございます。しかしながら、先ほど外務大臣も御答弁がございましたように、日本アメリカとの安全保障体制によってそれを完成するという方針を従来からとってまいったわけでございます。その中で、従来は日本の周辺諸国の軍事力の能力、それが意思と相まちまして日本に来るであろう可能性のある侵略の事態というものを想定いたしまして、それに必要な防衛力というものを日本が独自で整備していくという方向で努力してまいったわけでございますが、今回のこの基盤的防衛力というのは、その前提になります国際情勢の判断におきまして、量的に対応できるものを持つということよりも、一応すきのない、いわゆる奇襲的あるいは小規模の侵略に対応できるような厚みのある防衛力をつくっておいて、これが中核になって、必要なときには量的にも伸ばせるような、その基礎になるような防衛力を整備することによって平和が維持されるであろうという判断のもとに方向が変わったというふうに私どもは考えているわけでございます。
  75. 立木洋

    ○立木洋君 この大綱を決定したときに防衛庁長官が談話を発表されておりますが、これは、「「防衛力はどこまで増強されるのか」といった国民の声に具体的に答え得る」ものである。つまり、「防衛力の目標ないし水準を明示することにより、」というふうに述べられている。そういう点から、何といいますか、無制限に防衛を拡大するんではないというふうな意味合いがそういう表現からは取れるように一部の新聞などでは書かれてありますが、また他方では、この大綱の中で見てみますと、いわゆる防衛の質的維持向上を図る、あるいは外国の技術水準の動向に対応できるようにという、いま言われた基盤的という点で質という問題が強調されたわけですけれども、実際にそういう質的な向上を図るというのは、量的な拡大を伴わなくてももちろんできるわけですけれども、しかし、それは事実上防衛力として見た場合には、実際には増強、増大という内容を持っているのではないでしょうか。
  76. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) その増強という言葉が当たるのかどうかわかりませんけれども、防衛力そのものが整備されていくということは間違いございません。といいますのは、自衛隊自体の現状をごらんいただきましてもわかりますように、過去二十数年閥に、自衛隊は米側からもらった古い兵器で発足いたしまして、四回の防衛力整備計画におきまして、装備の点につきましてはいろいろ改善し、優秀なものを装備いたしております。そういった意味で、四次防まではそういった質の改善と同時に量の増強、そういうものもあわせてやってきたわけでございます。  御承知のように、四次防をやりますときに非常にこういった点が議論されました。したがいまして、四十八年の二月に、防衛庁は量的には大体こういう形のものをいわゆる平和時というときには持つということが国際間の均衡を維持する上の一つのめどではないかということで、平和時の防衛力というものを国会で御説明いたしました。これは結局最終的には白紙に返ったわけでございますが、あのときの考え方に基づきまして、防衛庁では一応四次防が終った時点において、量的には大体概成されたという判断をもちまして、その中身を変えていくということでございます。  それならば、中身を変えるということは非常にお金がかかるし、また、防衛力としても上がるのではないかという御意見があると思いますけれども、軍事技術というものは世界じゅうがやはり進んでいるわけでございます。したがいまして、それに対応する性能を持った装備品というものは当然必要になってまいりますが、一方におきまして、この大綱でもお決めいただいておりますように、そのときどきの財政経済事情に見合った整備をするということになっておりますので、防衛費として与えられた予算の中でそういう改善の努力を続けていくということを考えているわけでございます。
  77. 立木洋

    ○立木洋君 増強というのは、端的に言えば強さを増すわけですから、これは質を向上すればやはり力が強くなる、強さを増すということになるだろうと思うんですね。その点で先ほどもちょっと大臣にお尋ねしたんですけれども、七〇年来以降、アメリカ側としては特に日本の防衛力の整備、兵器の質の向上ということが要望されてきた。そういう点は当然日本の防衛庁としても、そういうアメリカ側の意向も考えに入れながら考えられてきたということですか。
  78. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それは全く結果は逆でございまして、私ども関心というのは、やはり日本の周辺にあります各国の軍事力というものを参考にいたしているわけでございます。したがいまして、その中でわれわれとしてはどういう点に力を入れなければならないかということを過去の整備計画の中でもやってまいりました。もちろん日米安保体制でございますので、アメリカとも話し合うということはございます。そしてまた、アメリカ自身日本に対する関心を持っているというのは事実でございます。しかしながら、アメリカからここをやれあすこをやれというようなことは全く言われません。私どもの判断に基づきまして整備計画というものはつくってまいっておるということでございまして、整備計画ができました段階におきまして、それなりにアメリカに説明するということはございますけれども、向こうからのサゼスチョンというようなものはないわけでございます。
  79. 立木洋

    ○立木洋君 この点は議論したいところなんですけれども、これはもう時間がないから次の機会に譲りますが、いま協議を進めております日米防衛協力小委員会ですね、これとこの防衛計画大綱というのは何らかの関係があるのか、あるいはないのか、その点についてはいかがですか。
  80. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 御承知のように、「防衛計画の大綱」というものは従来の長期計画、すなわち三年ないし五年ごとの計画にかわるものとしてお決めいただいたものでございますので、日米協力小委員会とは関係はございません。
  81. 立木洋

    ○立木洋君 政府としては、その基本は日本の力だけでは防衛できない、やっぱり安保体制の枠内で、そういう考え方は基本に据えられている。そうするならば、この問題も余り突っ込んで議論はできないわけですが、しかしこの計画大綱の中に、「情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至ったときには、円滑にこれに移行し得るよう配意された基盤的なものとする。」、つまり、日米防衛協力小委員会では、山崎局長が盛んに言われる対象は主に五条、とすると、重大な情勢に変化が生じて、いわゆる共同作戦をとらなければならなくなる。そうしたことを考慮に入れなくて、それに円滑に移行し得るように配慮された基盤的なものという考え方は、これは成り立たないのではないか。当然共同作戦計画ということも考えに入れながら、そしてアメリカから出されておるいろいろな協議の中で行われる意見だとかあるいは要望だとか、あるいはこの問題に対するいろいろ示唆だとかというふうな点は、当然日本の防衛庁としても考えに入れておかなければならない問題にはなるんではないだろうか、事実上その共同作戦計画を検討する防衛協力小委員会で検討は検討でされる、それはそれだと。しかし、日本の防衛大綱は防衛大綱だと。重大な事態が起こって共同作戦態勢をとるというときに、それに円滑に移行し得る配慮をされた基盤的なもので全くなかったということになったら、そこには矛盾があるわけですから、やはりそういう意味では私は関連があるだろう、そういう点ですが。
  82. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生がおっしゃいましたように、そういった意味と申しますのは、この大綱に基づきまして基盤的な防衛力というものを防衛庁はつくっていくわけでございます。それに基づきました上の日米防衛協力ということになってまいることは間違いございません。
  83. 立木洋

    ○立木洋君 その点ももう少し議論したいわけですが、次に、「核の脅威に対しては、米国の核抑止力に依存するものとする。」と、こういうふうに述べられておりますが、アメリカの現在の核政策、これがどのように展開されていくというふうに判断されているのか。そのアメリカの核政策がどう展開されるかということに対応して、どういうアメリカの核抑止力に依存をするという考え方なのか。この点についていかがでしょう。
  84. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 御承知のように、自衛隊は核の力というものを持っておりません。したがいまして、わが国にいわゆる核の攻撃を受けた場合に、これに対して報復力として核を使用することはできないわけでございます。したがいまして、強大なアメリカの核抑止力に依存しておきまして、日本が核攻撃を受けたときには、その報復力としてアメリカが核戦力を行使するということを依存しているということで表現しているわけでございます。
  85. 立木洋

    ○立木洋君 もうちょっとそこをお尋ねしておきたいんですけれども、言うならば、アメリカの戦略核に依存するのか戦術核に依存するのか、それともその両方なのか。
  86. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま申し上げましたように、核を持っていない日本が侵略の際に核を使われた場合に、その核の抑止力に、アメリカに依存するわけでございますから、戦略核並びに戦術核の場合も皆無ではないと考えております。
  87. 立木洋

    ○立木洋君 次に、「侵略対処」のところに、「侵略につながるおそれのある軍事力をもってする不法行為」ということが述べられてありますが、この「侵略につながるおそれのある軍事力をもつてする不法行為」というのはどういうふうなことが想定されるのか。全く抽象的に述べられていて、いただいたんでは五ページの最初から三行目のところにございますけれども、どういうことが想定されているのか。全く抽象的にただ述べておるのではないだろうと思うので、具体的にどういう考えでこれを述べられておるのか。
  88. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) この「防衛の態勢」の二番目に、「間接侵略、軍事力をもつてする不法行為等に対処する態勢」というのがございますが、ここに、この具体的なものとして説明があるわけでございまして、「国外からの支援に基づく騒じようの激化、国外からの人員、武器の組織的な潜搬入等の事態が生起し、又はわが国周辺海空域において非公然武力行使が発生した場合には、これに即応して行動し、適切な措置を講じ得ること。」、それから、「わが国の領空に侵入した航空機又は侵入するおそれのある航空機に対し、即時適切な措置を講じ得ること。」、こういう点が具体的な説明ということになっております。
  89. 立木洋

    ○立木洋君 いま言われた「領空に侵入した航空機又は侵入するおそれのある航空機に対し、即時適切な措置を講じ得ること。」ということがここに特に明記されている点はどういう理由からでしょうか。まあミグ25等々の関連があるのかどうなのか。また、あのことをどういうふうに検討されてこういう明記をされたのか、また、どういう対処を考えておられるのか。
  90. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 御承知のように、この領空侵犯というのは平時における事態でございます。しかしながら、この航空機攻撃というのは、平時の侵入というものが直ちに軍事力を行使するものに瞬間的に変わり得る可能性があるものでございます。したがいまして、この領空侵犯に対しましては世界各国ともそれに対する対応措置を持っておりまして、わが国も昭和三十四年以来、逐次この領空侵犯の措置というものを米側から日本が自主的に実施するようになりまして、現時点におきましては御承知のように二十八カ所のレーダーサイト、それから九基地におきますアラート態勢、これをもって領空侵犯に対応する措置を講じているわけでございます。  で、この間のミグ事件との関連でこういうことになったかとおっしゃいますと、その点につきましてはそうではございませんで、従来からこの防空態勢の中におきまして、平時における領空侵犯措置というものはとってきておりまして、このことはやはりその「防衛の態勢」の1に書いてございます「警戒のための態勢」の一つの形態として、私どもは防衛上必要な措置だと考えているわけでございます。
  91. 立木洋

    ○立木洋君 次に七ページの真ん中のところに、「指揮通信及び後方支援の態勢」という問題が述べられて、「迅速かつ有効適切な行動を実施するため、指揮通信、輸送、救難、補給、保守整備等の各分野において必要な機能を発揮し得ること。」、こういうふうに述べられておりますが、この各分野において必要な機能を発揮するという場合ですね、つまり有事の際の日米共同での対処という場合にも有効に働くようにするということまで含めて考えておられるのかどうなのか。
  92. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) そこまで細かく詰めたわけではございませんけれども、従来の四次防までの経験からいたしますと、どうしても正面の勢力の整備というものが重点的に行われました。したがいまして、いま持っております装備品というものを有効適切に使う背景といいますか、後方の態勢、有機的に行使する能力というものが必ずしも十分でなかったという反省に立ちまして、小さな防衛力であっても、この有効性を確保するためにはそういった意味の背景の充実というものが特に重視されなければならないということを整備の基本方針としてお示しいただいたものでございます。そのことは、有効な能力を自衛力として行使できるということは、やはり日米安保体制の有効性を確保する上にも大切なことであるというふうに理解いたしております。
  93. 立木洋

    ○立木洋君 次に、八ページの終わりに海上自衛隊の問題が出されておりますが、ここでは、「常時少なくとも一個護衛隊群を即応の態勢で維持し得る一個護衛艦隊を有していること。」と、こういうふうに述べられてありますが、いわゆる海上自衛隊の各護衛隊群というのは常時即応態勢をとっているのかどうなのか。特にここで一個護衛隊群を即時態勢下に置くという問題ですね。これは軍事的にどういうことを意味しているのか、その点について。
  94. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 艦艇の乗組員の教育訓練というのは非常に時間がかかります。したがいまして、現在四個護衛隊群を持っておりますけれども、一個護衛隊群ないし二個護衛隊群というものは、その乗組員の教育というものが重視されております。そして、さらにその上の段階になりまして、船は隊を組んで行動をいたしますので、そういった隊訓練というものを重視して訓練を行っているわけです。そして、その上で一個護衛隊群というものは応用訓練といいますか、非常に練度の高い訓練をやっているというのが実情でございます。もちろん何年間に、たしか四年だったと思いますが、四年に一回は特定修理といって半年もかけて修理しなければならぬという問題もございますが、四個群を持っておりますけれども、訓練周期からいくならば、本当に有事即応といいますか、戦闘を行い得る練度を完全に持っているというのは一個護衛隊群ぐらいがせいぜいでございます。そういった意味で、四個護衛隊群の中で常に一個護衛隊群だけは有事即応の体制を持つような護衛艦隊にしておけという御趣旨でございます。
  95. 立木洋

    ○立木洋君 この別表のところの陸上自衛隊なんですが、一個機甲師団を一個機械化師団と一個戦車団と合体してつくるというふうな趣旨のようですが、普通、師団編制の場合には九千師団と七千師団ですか、という編制があるわけですが、この一個機甲師団というのはどういう師団なのか。あるいは師団の枠の外につくられるのか、その中なのか、それからどういう兵力の編制になるのか、そのあたりはいかがでしょう。
  96. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 従来十三個師団というふうに申しておりましたけれども、その中の北海道にございます第七師団というのは、いわゆる機甲師団とは言いませんですが、機械化師団と申しましょうか、非常に機動力のある師団ということで、戦車の定数も他の師団に比べますと多うございます。そういう七師団を母体にいたしまして、従来北海道にございました戦車団と合体いたしまして、戦車を三倍ぐらいにいたしまして、非常に機動性を持たせる師団にしたいと思います。いわゆるこの七師団というのは、従来の九千師団、七千師団の振り分けで申し上げますと七千師団の方でございます。人員の方はむしろ多少これよりは減るぐらいになるかと思いますが、いわゆる七千師団のものでございますが、機動性を持った戦車の定数が非常にふえる師団というふうに考えております。
  97. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど防衛費というのは予算の枠内でと、もちろんそうでしょうけれども、いままで政府は防衛費というのはGNPの一%以内でというふうな表現をたしかされておったと思うんですが、坂田長官のあれによりますと、防衛費の支出はGNPの一%程度、以内から程度というふうになっておりますけれども、これは程度と言えば、一%程度と言えば以内ではなくて以上になることもあり得るわけですから、そうすると、防衛費はやはり事実上支出をふやしていくというふうな考え方を防衛庁としてはお考えになっておるのかどうか。
  98. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 私どもの方としては、支出をふやしていくということは特に考えておりません。しかしながら、防衛庁長官が数次御説明申し上げましたのは、防衛力というものは最初から一%以内でやらなければならないのだという前提に立って整備するものではないだろう。いろいろな経済財政事情を考えながら必要最小限度のものを整備していく、その結果が一%以内であることもあるだろうし、あるいは一%になることもあるかもしらぬけれども、従来の防衛費の考え方からするならばそんなに大きなものではないという判断を持っております。したがいまして、最初から一%以内の枠の中で配分をするという考え方はとらないということを申しておるわけでございますので、一%を超えてふやすというような、特にそういう希望を持っているということはないわけでございます。
  99. 立木洋

    ○立木洋君 最後に。  きょう個条的に幾つかの点をお尋ねしたわけですが、いまお答えになった内容からしても幾つか重要な問題点があると思いますし、この点については、今後機会があったときに十分に私の方の見解も述べながら指摘をしたいと思いますが、きょうはこの程度にとどめておきます。
  100. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 本調査についての質疑は、本日はこの程度といたします。     —————————————
  101. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 次に、請願の審査を行います。  第二〇一四号日中平和友好条約締結促進に関する請願外七件を議題といたします。  まず、専門員から説明を聴取いたします。服部専門員。
  102. 服部比左治

    ○専門員(服部比左治君) 今国会中、外務委員会に付託されました請願は、お手元の表のとおり全部で八件でございます。  まず二〇一四号は、日中共同声明の立場に立って、日中平和友好条約を早急に締結されたいというものであります。  次に二七〇二号は、日中共同声明の原則に基づき、特に第七項のいわゆる覇権条項を条約の本文に明記して、速やかに日中平和友好条約締結されたいというものであります。  次に二七〇七号は、現在中断されている南北調節委員会の再開と南北の対話を呼びかけ、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国との自主的平統一が速やかに実現されるよう努力されたいというものであります。  最後に二一三八号は、日ソ善隣友好条約の即時締結、日朝、日ヴイエトナム平和条約の早期締結、核実験全面完全禁止条約、大量破壊兵器禁止条約の即時締結、非核地帯の全世界への拡大及び国連による世界軍縮会議の速やかな開催を要請するものであります。  以上でございます。
  103. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  104. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 速記始めてください。  それではお諮りいたします。  第二〇一四号日中平和友好条約締結促進に関する請願外回件名二件は、議院の会議に付するを要するものにして、内閣に送付するを要するものと決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。  次に、第二七〇七号大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国の自主的平和統一促進に関する請願についてお諮りいたします。  本請願は、議院の会議に付するを要するものにして、内閣に送付するを要するものと決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次に、第二七〇二号日中平和友好条約締結促進に関する請願外回件名二件及び第三一三八号日ソ善隣友好条約締結及び世界軍縮会議の開催等に関する請願は、保留と決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  109. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢等に関する調査につきましては、閉開中もなお調査を継続することとし、本件継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十一分散会