○
政府委員(本野
盛幸君) ただいま
矢追先生がおっしゃいました
土光経団連会長の発言の具体的な点が正確にまだ入ってきておりませんので、こういう問題は、えてして、円問題もさようでございましたけれ
ども、やや針小棒大になってくるという点もございますので、ここら辺よく踏まえて
考えてまいりたいと思うんですけれ
ども、私
どもで見ておりますと、自主規制をやるということを経団連会長はおっしゃられるはずはないので、そういうことの必要もあるかもしれないという程度のことを言われたんではないかと推測しております。
そこで、より基本的なことを申し上げたいと思いますけれ
ども、近年、欧州それからアメリカとの間、先進国との間の貿易の赤字の幅の増大でございますけれ
ども、これは、御
承知のように、欧州の方では一九六八年までは
日本が入超でありましたものが六八年から出超ペースに変わりまして、当時六千八百万ドルぐらいの六八年の入超ベースがほぼ七三年を除きまして毎年倍増していくということで、欧州から見ればこれは大変な一つの構造的な問題があるんじゃないかということで、随時、ベアリングの問題とかテレビの問題とか自動車の問題についていろいろ言っております。その間、まあ業界同士でいろいろ話し合ったりしておりますけれ
ども、私
ども考えておりますのは、やはり
日本の物が売れるということは、
日本人がそれだけ
努力をして、いい物をつくって、それだけ向こうの消費者に需要があるから伸びるんであって、決して不公平なことをやっているわけではない。ですから、基本的には輸出というものは自由に伸びるべきものであるというふうに
考えております。その欧州との
関係で、七四年から七五年に入りますと、やはり不況の
関係がありまして若干輸出が減ったわけでございますけれ
ども、ことしに入りましてやはり一−七でまた伸びて、この赤字幅が十七億ドル近くになった。これは年間に延ばすとあるいは四十億ぐらいになるんではないかというふうに見られておるわけですけれ
ども、そういう
状況で、全体として非常にその幅が大きいということから来る一つのイメージがございますし、欧州ではいま景気の回復過程もようやく昨年の第二・四半期あたりから立ち直ってまいりましたけれ
ども、やはり強い国と弱い国があって、御
承知のように、イギリスとかイタリアはインフレ率も高い、賃金の上昇率も高いというようなことで非常に国際収支上も苦しい
状況にある。そういうことを背景にして、従来は、たとえば企業の収益が上がらないときに、その企業が中心になって何とか助けてくれということで
政府に駆け込むというパターンから、最近では労働組合も立ち上がりまして何とか輸入を制限してほしい、これは非常に実は新しい傾向かと思います。この点につきましては、サンフアンの首脳国
会議でも社会的な各層との、ソーシャルパートナーズとの協力が必要であるということが指摘されましたように、一つの新しい現象でございます。イギリスの場合一つ挙げてみますというと、やはりあすこのTUCはかなり前から輸入制限なしでは本当の英国の立ち直りはあり得ないんだ、そういう選択的な輸入制限をやるべきであるということをECの組合の協会の
会議でございますね、その連盟に行って吹聴してきたわけで、このTUCとの協力を得てやっとイギリスでは所得政策が実現できるという
状況がございますから、ですから、どうしてもキャラハン首相としてはある程度組合の見解を尊重をしなければならないということで、今度ECの場にそういう問題を取り上げていく。この十一月の末に欧州理事会で
各国の首相が集まります、そのときに、いまの輸入制限の問題が脚光を浴びるんではないかと私
ども思っております。どうもこういう
状況のもとでなかなかむずかしいんですが、赤字幅の問題、やはり
日本の景気が立ち直って輸入がふえるということによって
解決されるべきであるというふうに
考えております。この点欧州側におきましても、やはり基本的には
拡大均衡の形で
解決すべきである。それからEC側の人たちも基本的にはそういうことであり、せっかくこの不況下苦しいところをいままで輸入制限的な措置をとらないことでがんばってきたのに、ここで保護的な動きが出ることは非常に思わしくない。これはまた、さらに景気の沈滞とか国際経済の拡大に阻害要因があるので、これは何とかしたいということでわりと前向きの姿勢で対処しておりますけれ
ども、事態はかなり苦しいというふうに欧州との
関係では見ておるわけでございます。
それから、第二のアメリカに対する波及の点でございますけれ
ども、確かに最近鉄鋼の問題で、これは非常に量は少ないんでございますけれ
ども、なお、わが方の輸出カルテルが昨年末に結成されて対欧輸出が大体予想されたものよりも少し伸びてきた、それから若干形鋼とか棒鋼とか、高炉六社以外の側から出ておるものが欧州側において問題になっておる、これは弱いイギリスだけでなくて、ベルギーとかドイツとかそういうところでも鉄鋼輸出というのはやはり問題にされております。そういうことがあって、今後EC側と
話し合いを続けるということでございますけれ
ども、それに対して今度アメリカの方は、要するにECに対して押えられたものはアメリカの市場の方に流れ込んでくるんじゃないかというような懸念もございまして、通商法の三百一条ということで、あそこの特別通商代表に対しまして問題を提起いたしまして
調査をするということになったわけでございますけれ
ども、私
どもの方として、この推移はいまアメリカの
政府としても冷静に受けとめて公正な
解決が出るように期待しておるわけでございまして、私
どもの言い分についても十分先方に言っておるわけでございます。