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1976-10-14 第78回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月十四日(木曜日)    午前十時十七分開会     ―――――――――――――   委員異動  十月八日     辞任         補欠選任      玉置 和郎君     稲嶺 一郎君  十月九日     辞任         補欠選任      宮崎 正義君     塩出 啓典君      向井 長年君     田渕 哲也君  十月十四日     辞任         補欠選任      野坂 参三君     星野  力君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         高橋雄之助君     理 事                 亀井 久興君                 秦野  章君                 増原 恵吉君                 戸叶  武君     委 員                 伊藤 五郎君                 稲嶺 一郎君                 大鷹 淑子君                 矢野  登君                 亘  四郎君                 寺田 熊雄君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  小坂善太郎君    政府委員        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省条約局長  中島敏次郎君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁警備局外        事課長      大高 時男君        法務省刑事局公        安課長      石山  陽君        通商産業省通商        政策局南アジア        東欧課長     西村 保孝君        通商産業省通商        政策局北アジア        課長       照山 正夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦  貿易規約及び食糧援助規約有効期間の第三次  延長に関する議定書締結について承認を求め  るの件(内閣提出) ○千九百七十六年の国際コーヒー協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出) ○国際情勢等に関する調査  (中国政変説日中関係に関する件)  (日中平和友好条約問題に関する件)  (日中・日ソ間貿易の趨勢に関する件)  (海洋法及び日韓大陸棚協定に関する件)  (金大中事件に関する件)  (ロッキード問題に関する件)  (米国における広島原爆投下再現ショー問題に  関する件)  (ミグ25事件に関する件)  (韓国における人権問題に関する件)     ―――――――――――――
  2. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る八日、玉置和郎君が委員辞任され、その補欠として稲嶺一郎君が選任されました。  また九日、宮崎正義君及び向井長年君が委員辞任され、その補欠として塩出啓典君及び田渕哲也君がそれぞれ選任されました。  また本日、野坂参三君が委員辞任され、その補欠として星野力君が選任されました。
  3. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の第三次延長に関する議定書締結について承認を求めるの件  及び、千九百七十六年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件(いずれも本院先議)  両件を便宜一括して議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。小坂外務大臣
  4. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいま議題となりました千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の第三次延長に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  一九七一年の国際小麦協定は、本年六月三十日まで有効期間延長されていましたが、この議定書は、同協定有効期間をさらに二年間延長するもので、本年二月ロンドンで開催されました関係国政府間会議において採択されたものであります。  一九七一年の国際小麦協定は、小麦貿易規約食糧援助規約との二部から成っており、小麦貿易規約は、従前の国際小麦協定に比し、価格帯供給保証等のいわゆる経済条項を欠いておりますが、小麦の市況の安定化のため加盟国情報交換、協議を行うこと等を規定し、食糧援助規約は、開発途上国に対する食糧援助について規定しております。この議定書は、この両規約の実質的な内容に変更を加えることなく、その有効期間をさらに二年間延長することを定めており、小麦貿易規約有効期間の第三次延長に関する議定書食糧援助規約有効期間の第三次延長に関する議定書との二部から成っております。  この議定書締結することは、小麦貿易に関する国際協力の促進が期待されること、開発途上国の食糧問題の解決に貢献することとなる等の見地から、わが国にとり有益であると考えられます。なおわが国としては、食糧援助規約有効期間の第三次延長に関する議定書に基づく食糧援助を米または農業物資で行う方針であるので同議定書にその旨の留保を付しました。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百七十六年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定は、一九七四年九月に採択されました議定書によって延長された千九百六十八年の国際コーヒー協定に継続する協定として、一九七五年の十一月から十二月にかけてロンドンで開催された国際コーヒー理事会において採択されたものであります。  この協定実質的内容は、大綱において千九百六十八年の国際コーヒー協定を踏襲するとともに、現状に即した改正が加えられております。すなわち、各加盟輸出国に対し主として輸出実績及び在庫量を基礎として輸出割り当てを配分した上で、一定の価格を基準として輸出割り当て制の実施及び停止の操作を行うことにより、コーヒー需給均衡及び価格の安定を図ることを主たる目的としております。また、常に各加盟輸出国輸出量及び在庫量確認を行う等十分な供給を確保する仕組みについても規定しております。  一九六二年以来国際コーヒー協定に参加してきたわが国が引き続き千九百七十六年の国際コーヒー協定に参加いたしますことは、コーヒーが重要な輸出品目である多数の開発途上国経済発展に協力する積極的な姿勢を示す意味からも、また、コーヒー消費国であるわが国としてはこの協定のもとでの国際協力コーヒー安定的供給に資すると期待できることにもかんがみ、きわめて望ましいと考えられます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につきまして、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 以上をもって説明は終わりました。質疑は後日に譲ります。     ―――――――――――――
  6. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 次に、国際情勢等に関する調査議題とし、これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 秦野章

    秦野章君 いろんな都合で、きょう簡単に外務大臣に一、二お尋ねをしておきたいと思うんです。  この間うちからの中国政変関連して、外務省がいままで言明されたり国民に向かって言っておられることは、中ソの問題も余り変わらぬだろう、それから中国日本関係でも余り変化はないだろう、こういうふうにおっしゃっているわけですけれども、一体その根拠は何だろうかと、いろいろ私どもも考えさせられますけれども、どういうことでございましょうか、まずそれから。
  8. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御承知のように、中国毛沢東主席によって新生した、新生中国始祖毛沢東主席であるということになっておりまして、いわゆる毛思想というものが非常に広く強く指導者の間に入っている。国民にもそういうことであると言われております。  そこで、毛沢東主席の死後もこの考え方は踏襲せられるであろう。この考え方は、ソ連に対しては非常に対立的な立場をとる、日本に対しましては日中友好ということを言っておりまするので変わらないであろうということでございます。
  9. 秦野章

    秦野章君 確かに、いわゆる毛路線といいますか、基本的なそういう路線は変わらぬだろうと思いますよ、言葉としての。たとえば第三世界に対する中国考え方とか、あるいは覇権主義とか、そういった外交の大きなスローガンといいますか、言葉としての外交毛路線国内問題でも自力更生といった基本毛路線言葉としては全く変わらぬだろうと思いますけれども、しかし、果たしてそれが、言葉としては同じであっても中身が全然変わらぬということはないんじゃないのか。なぜならば、毛沢東はあくまで始祖として今後も中国路線基本として残っていくわけでしょうけれども、その基盤になっている毛主席が亡くなって中国政治基盤というものが徐々に変わっていくという、むしろそういうふうに見た方が私は歴史的に見ても当然だと思うんですよ。いわゆる実務派というものがだんだん台頭してくるということはやっぱり歴史流れじゃなかろうか、専門家もそう言っているし、われわれも長く中国というものを見てきてそういう方向に、少なくとも大衆路線というか、そういう方向に行かざるを得ないだろう。  考えてみると、毛主席が今日あるということは、あの人の偉さでもあると同時に、また大変なやっぱり独裁者であったわけですから、いろいろ問題があっても毛主席だったら何でも抑えられるわけですな。これからはどっこいそう簡単にはいかぬのじゃないか。もう毛主席のような、一見不合理とも思われるようなことをやられても、毛主席ならそれは断固として抑えてこれた。しかし、これからはそうはいかぬだろうということになると、そういう意味でも変わらざるを得ないだろう。歴史的に見て一九三四年か五年、四年でしたかね、遵義会議、それから延安の七回党大会、それから林彪のあの失脚前後の状況を言っても、かなり毛主席というものは自分の考えで押し切ってきた。これは歴史的に見て、民主集中制という共産党独特の行き方の中でも、必ずしも民主集中制というものがこういうものだろうかと思われるような節がないではなかった。しかし毛さんならやってこられた、毛主席ならもう断固としてやれたんだ。しかし、それがこれからはなかなかそうはいかなくなるだろうという一つ政治の何といいますか姿が出てきたんだと思うのですね。そしてむしろそういうことが、実際の勢力で言うならば実権派というか実務派というか、そういう人たちの方に移っていくであろう。どうもこれは歴史的に見て当然じゃないのか。私はこの前の外務委員で中ソ論争は変わらないだろうと、まあ変わらないだろうという御答弁であったけれども、やっぱり変わることがあり得るんだ、むしろそっちの方があるんだと、なぜならば、やっぱり基盤が変わってくるんだから。そういう見方の方が私は常識的ではないかというふうに思うわけですね。  そういうふうになってくれば、もちろん毛沢東覇権主義なんていうものはその中身が変わるわけはないのですけれども、そうなりゃ日本としては好ましい方向に行くのか好ましくない方向に行くのかと言えば、とにかく実務派大衆路線というものが伸長していくことが必ずしも好ましくない方向じゃなくて、日中友好の問題にしても平和条約締結の問題にしても、中ソ問題と関連が無論あるわけですな、デリケートな。しかし、いずれにしても日本としてはいい方向に、いささかでもそこにいい方向に行くだろうという期待とか希望みたいなものを表明をした方かむしろ私は得――得と言うのはおかしいけれども、やっぱり歴史流れでもあるし、いいことではないのかと思うのですよ。だから、変わらぬだろう変わらぬだろうと言っているとあんまりよくもならないみたいなことになっちゃうんだけれども、むしろそこに少しずつでも希望というものを――変わるといったって中国のことですから急速な変化はないかもしらぬが、しかし、中国の内部で急速な変化の側面と徐々にしかいかぬという大きな流れ両方――トータルとしてはしかしやはり徐々には変わるんだ、そういうものだろうと。その展望の中で日本はいい外交をやっていくんだ、日中ともうまくなっていくのだろうというふうにどうも見れて仕方がないんですが、こういう解釈についていかがですか。解釈というか、私はそういうものだと思うんだけれども。
  10. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 秦野さんのお考えは十分傾聴いたしました。ただ、私の立場としていますぐにコメントするということはいかがなものかというふうに思うわけでございます。われわれの立場とすれば、日中関係を友好ならしめんとした毛主席考え方は依然として健在であるし、その路線を引き継ぐという人がいま主流を占めておるわけであるからこれは変わらぬであろう、そういうことでいきたいと思うんです。まあしかし、それが長い将来にわたってフレキシブルになるのかどうかという問題はまたどうもにわかに言いにくい。むしろ変わりたてであるだけ硬直するという面があるんじゃないかというふうにも思いますし、その点はちょっと時間を置いて、政府としては、それは議員のお立場で何をおっしゃるのはこれはもう結構でございますけれども、政府責任者の私からはそういう公式的なことを申し上げる以外にないというふうに思います。
  11. 秦野章

    秦野章君 政府立場としての御発言でもちろん結構なんですけれども、政府立場としてもいい方向にいく可能性がやっぱりあるんだと。同じなんだ同じなんだというよりも、そこに幾らかでもやっぱり希望的観測を少しでも述べるということは政府立場としてもむしろいいんじゃないですか。まずいですか、それは。
  12. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) われわれの立場とすれば、日中は非常に大事な関係であって、今後のアジアについても日中友好というのは大きな比重を占めるものであるから、できるだけこれを友好親善の方に持っていきたいという希望を常に表明しているわけですね。その希望が達せられるであろうというふうに期待しているという立場をとっていたいと思います。
  13. 秦野章

    秦野章君 その希望は大変いいことだし当然のことなんだけれども、問題は現状認識の問題なんですけれども、その認識の問題で変わらぬだろう変わらぬだろうというよりは、やっぱり現状もたぶんだんだんと変わるであろうと。日本にとっても都合のいい――都合のいいというか、いい方向に変わるであろう、少しずつ変わっていくんではないか、われわれもそう期待するし、また事実そうではなかろうか。そのことが一体日本政府としてそういうような表現を、大きな期待じゃないですけれども、少しでもやっぱりそこに前向きの気分が出た方が外交関係にとっていいんじゃないですか。いかにも何というか、まあ官僚的答弁ならそれでいいかもしらぬけれども、官僚的といっても、よく見ていけば少しはよくなっていく可能性があるんだ、われわれにとっても希望なんだということが少しは出ないといかにもおもしろく――おもしろくないというのはおかしいけれども、何だか変わらないだろう変わらないだろうと。変わらないだろうと言ったって、やっぱり私はむしろ少しずつ変わっていい方にいくであろうと。われわれもこの際旧来の、いままでの日中平和条約締結方向には、その気持ちはちっとも変わらぬけれども、客観情勢認識としてそのわれわれの願い、われわれの考えというものがやっぱりだんだん通っていくというような環境になっていくんではなかろうかと、少しでもね。そういうふうに言った方が私は政府としてもいいような気がするんだけれども、やっぱりだめかね、どうですか。
  14. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあだめかいいかということですが、どうもよくなるというといままで悪かったようなことにもなりますし、その辺微妙であるわけです。ただまあ非常に排外的な、あるいは理論左派といいますか、そういうものが非常に国内の問題だけに目を向ける、あるいは考え方の統一ということだけに目を向けている面から、いわゆる実務派といいますか、いろいろ政治仕組み経済仕組みや、そういうものを重視していく、それは結局中国の建設を進めていく。これはまたあんまりやると鄧小平副首相のように、これは走資派なんていう批判も受けるわけです。そういうことがだんだん、何と言っても政治というのは国民の幸せを希望するということが政治のもう根本ですから、これはどういう形、社会主義であろうと共産主義であろうと、やはりわれわれと同じように国民の幸せを願うということが政治根本であることに変わりはないと思うんですね。そういうことに歴史流れがいくということはこれは非常に自然なことだ。ただ、いま十日に何かクーデターだか何か失敗した、政変があった、ここでどうなるんだというようなことを私の立場から申し上げることは差し控えた方がよろしいと考えておりますと、こういうことです。
  15. 秦野章

    秦野章君 ちょっとしつこいようだけれども、たとえばいまおっしゃったように国内の安定とか、そういうことは確かに実務派は大変大切に考えるでしょう。しかしそのこと一つ考えても、お言葉を返すようだけれども、やっぱり国内の安定を考えるには、たとえば日中の貿易の問題なんかだって展望としてはむしろいままでよりはよくなるんだと、国際的に孤立して自力更生一本槍という、一種の農民闘争継続革命のようなことでいつまでもがんばるということはだんだんできなくなってきているというのが中国現状だと思うんですよ。そういう方向に進むということについて、もちろん急激な変化なんかありっこないですけれども、しかし、そういう方向に向かっていくことがやっぱり流れではないのか。まあ大臣おっしゃるように、私もそんな急激な変化なんかあるわけもないし期待することも間違いには違いないけれども、変わらない変わらないんじゃなくて、やっぱり変わりつつあるんだ。その変わる方向というものはやっぱりそういうものだろうと。実務派というのは何といったって言うならば教条主義に反する立場ですから、国内の問題もまた国外の問題と関連を不可分にやっぱり考えていくだろうと思うんですね。だから変わらない変わらないというようなことが政府姿勢として一番いいのだという考え方には私はどうも納得がいかない。まあこれ以上言いませんけれども、何か硬直したような姿勢のように思えるんですがね。だからだんだんそれは悪くはならないはずだ、いい方向に行けばといっても悪くはならぬはずだというぐらいな希望、まあ希望というのか、国民もみんなも少なくとも気持ちの上だけでもいいんじゃないか。こう思うんですが、いま一遍いかがですか。
  16. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御意見傾聴いたしますと申し上げておきます。
  17. 秦野章

    秦野章君 じゃ最後に一つだけ。  この間の文華派が何か掃除されたような感じを受けた。デーリー・エキスプレスのニュースが一番最初だったと思うんですけれども、外務省としてはある程度事前にわかっておりましたか。
  18. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ある国の外交官からそうした内輪話を聞いたという電報が十日の日に入っております。しかし、これは内輪話であって確認はできない。またああいう国ですから確認する方法がないわけですね。依然としてそういうことになっているわけです。そのある国はデーリー・エキスプレス関係の国であります。
  19. 秦野章

    秦野章君 その内輪話というのはどんな話ですか。
  20. 中江要介

    政府委員中江要介君) 内輪話と言われたのはやはり確認されてないという意味で、内容はその後外電でロンドンからキャリーされたような内容であったわけです。
  21. 秦野章

    秦野章君 結構です。
  22. 戸叶武

    ○戸叶武君 いま前の方から追及がなされたように、隣の国である中国がどういう方向に向かって歩んでいくかという模索、それからその方向キャッチはいまのところ非常に重要なことだと思います。いま外務大臣が答えられましたように、イギリス外交筋では十日にそれをキャッチし、イギリスのデーリー・テレグラフとフィナンシャル・タイムズでは、江青夫人ら急進派クーデター未遂事件を十二日には報道しているのであります。こういうところを見ても、遠くの方の国のイギリス外交官キャッチが早くて日本の方は非常にのろい。何だか近いものの方が遠いところにあるような感じでありますが、こういう点も、情報化時代に、日本外交活動というものはもっと、遠くのイギリスキャッチする前に日本キャッチできるような配慮はなされないものかどうかをまず第一にお聞きいたします。
  23. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) よく国の順位などと言って、日本総理大臣の弔電が一番後だとかいろんなことが出るわけでございますが、やはり先方とすれば国交か、日本国交正常化しているわけですが、完全な外交関係があるといいますか、平和条約といいますか、両方の国の条約ができている国と、日本のように国交正常化しているんだけれども今後の友好条約ができてない国と分けているような節があるわけでございます。  イギリスなどの場合は、これはたまたま非常に古くから中国国交がありまするので、これはむしろ今度の場合なんかは全く個人的な関係だと思いますが、古くからいる外交官で非常に先方のそういうことをよくわかる人と個人的な接触がある、深い接触がある人がいたということではなかろうかというふうに思います。
  24. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本の雑誌でも、御承知のように中央公論や文芸春秋では、早くからこういうことが起こるであろうという予測記事を堂々と出しているんです。そういうふうに、日本のジャーナリズムでも、やはり中国関係に深く根をおろした人たちにおいては、当然起こるべきものが起きたという形の受けとめ方をしておるのでありますが、外務省ではその程度の受けとめ方はかねがねしておったのでしょうか。
  25. 中江要介

    政府委員中江要介君) 政府立場からいたしますと、外国国内情勢の行方についてどういうふうに予測していたかということはなかなか言いにくい問題でございますし、特に中国の場合は、いま大臣もおっしゃいましたように日本と近い国でありますし、非常に微妙な関係にありますだけに、ちょっと、どういうふうに予測していたかという御質問に正面からお答えするということはむつかしいかと思いますが、もちろん当然のことですけれども、いろいろの可能性について外務省といたしましても、諸般の情勢を収集分析しながら、どの国についても一応の見通しを立てた上でなければ外交政策はそもそも遂行できないわけでございますので、その努力はいたしておるということを申し上げておきたいと思います。
  26. 戸叶武

    ○戸叶武君 私の質問は、いたしておるという答弁を求めたのでなくて、いたしておったかという答弁を求めているのでありまして、そういう構えができてなければ、問題が急に起きてもそれに対処する姿勢というものが、二通り、三通りの予測は立てていたというが、これは昔の朝鮮あめの当てっこじゃないが、そういうどっちか当たるという行き方でなくて、大体この方向歴史の波は動いていくという方向把握というものが、日本社会科学は硬直しておって教条主義になっておって、イデオロギーに邪魔されて生きた動きをキャッチできないということをすでに外国でも批判しておるのでありますが、三木内閣になってから、特に小坂さんになってからだいぶナイーブな線が出ているんですが、柔軟な形で、やはりその国の流れの行き方、方向だけは敏感にキャッチするという体制を早く日本外務省もとってもらいたいと思います。  そこで、この問題で停滞したくありませんが、問題は、やはり文明史観と哲学を持たない民族は滅びると言いますけれども、中国共産党の歴史はまだ五、六十年にすぎませんが、中国四千年の興亡の流れを見ておりますると、強力な統一国家の強化がなされたときに、毛沢東すらも晩年讃美した秦の始皇帝の統一国家がまたたく間に崩壊していった。中国はいま崩壊するとは思いません。その例はそのまま当てはまりませんけれども、やはり余り強力な強権国家になると、それだけでは民は窒息してしまう。もっと自由な伸び伸びとした国家体制をつくり上げなけりゃならないという動きが出てくるのは当然だと思います。ただ、私たちがこの全体主義国家にくみしないで民主主義的な政治体制を求めているのは――このころは日本の共産党も変わっておりますけれども、やはり右であろうが左であろうが、軍事的なイデオロギー的な強権、権威、そういうもので押しつけていくとなかなか、そのまま戦時中の張り切ったような状態で国民を率いていくのはむずかしくなるというのは歴史の教訓でございます。私は、そういうふうな意味を含めて先ほど秦野さんも質問しているんだと思いますが、大地に根をおろした、大衆に根をおろした、前衛党的なものがひとりよがりで国民を引きずるというんでなくって、民の憂いを憂いとし、民と一緒に模索して新しい揺るぎなき一つの国家体制をつくろうという空気が、実務派というかどういうふうな形であらわれるか、中国のことをわれわれが的確に表現すると誤解を招きますが、中国にもそういう息吹が私は出てきたんだと思うんです。  問題は日本です。よその国のアメリカがどうだソ連がどうだ中国がどうだと、そっちばかり向いてそっちの気に入るような方向外交を引きずっていくというのは下の下です。問題は、みずからの外交姿勢や主体性がどうつくられているかというのが今後の外交基本だと思いまして、核拡散防止条約批准を機会に、日本は本当に徹底したみずからの自主独立の考え方を持って、相手の立場をも配慮して平和中立外交に踏み切っていくんだという宣言をしたと回しで、これを小坂さんは国連において、われわれのあいさつの前にいち早くその態度を表明しておりますが、そういう点においてはなかなか聡明な方だと思います。ただ言っただけでこれを実行に移さなければ意味をなさないのですが、問題は、先ほどの問題が詰まってきたと思いますが、日中平和友好条約が正式に結ばれてないということが、イギリスなんかよりも日本中国との間に何か紙一重隔てたようなものがあるんだ、それを取り除かなければならない。それを取り除くために、政府間における日中共同声明が発せられてから四年、この間に実務協定が海運、漁業、航空、貿易となされているのです。もう覇権問題の取り扱いを抜きにしては何ら障害になるものが日中平和条約締結にはなくなったんです。問題は政府の決断一つにあると思うのですが、惻隠の情というのは、相手の国が若干混乱しているから、もっと落ちついてから物を決めようなどというけちな考え方でなくて、私は中国方向はさっき外務大臣が的確に言ったように、揺るぎなき方向づけはいまできていると思うんです。ソ連との対立はあります。あるのは事実です。それを助長させる必要はないが、日本日本として中国立場が異なって、中国と平和友好条約を結ぶが無用な摩擦はソ連ともしまいという構えが日本の自主的外交の本旨と思いますが、そこいらの関係を配慮して練達の士である小坂さんは日中平和条約を結ぼうというところに踏み切っていると思うんですが、問題は流れの中におけるタイミングです。社会科学というが、やはり生きた科学としての政治経済、特に外交の問題はタイミングを逸しては何にもならないのです。政治は芸術です。そういう意味において総合の哲学であると同時に芸術です。タイミングを逸して、火事が終わってから半鐘を鳴らしたり、あるいは拍子木を鳴らすような田舎芝居のような外交をやっておっては日本の生きた外交は躍動しないと思うんです。その点に対して、私は、一つの信念を持っている小坂さんからいつ幾日にやれというのを聞くのじゃないが、どういう形で日中平和友好条約締結を促進していくか、その基本的な態度を承りたいと思います。
  27. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 戸叶さんの御指摘のように、まさに外交をいたしますのはタイミングであるというふうに私も思う次第でございます。わが国益を踏まえ、そしてアジアにおける将来を考えてみまする場合、日中友好毛沢東氏の言うような子々孫々にわたって続けていくにはどういう形にしたらいいかということを考えてみますると、やはりこれはできるだけ双方が長きにわたって満足できる形のものでなきゃいかぬ。しかもそれは、共同宣言の原則と精神を踏まえたものでなけりゃならぬ、こういうふうにしばしば申し上げているわけでございまするが、私どもは、この際、相手がどういう事情にあるからどうであるかというような言い方でなくて、こちらは友好条約を結びたいと従来から主張しておることでもあり、その線に沿うて、相手にいまその意思がないというならこちらは待つ以外にありませんけれども、その姿勢を進めていって、適当なる時期を見るというのがいいんではないかというふうに思っている次第でございます。
  28. 戸叶武

    ○戸叶武君 一転して、私は、日本貿易現状について、通産省の当事者並びに外務省経済関係の当事者から、まず第一に通産省関係の当事者から承りたいと思うのでありますが、日本の国は御承知のように資源に恵まれておりません。しかし、日本の一番特徴的な資源は人的資源だと思います。日本民族の能力、労働力、こういうものが大きな私は民族的な資源と思うのでありますが、問題は他のソ連やアメリカのように、石油なり石炭なり鉄なり、そういう資源には恵まれておりません。結局、外国からそういう原料を買って、日本の技術、日本の労働力によってこれを加工して外国に買ってもらう。われわれは武器を持たないけれども、民族の持っている技術、労働力、文化、そういうものを通じて今後の外交路線を推し進めていくという決意を拡散防止条約以後においては明確に打ち出しているんです。その裏づけとなるものは、やはり貿易関係の消長というものが非常に密接な関係を持っていると思います。  第一に通産省の当局の人に承りますが、中国は昨年の秋以来輸出輸入の伸びがとまっている模様であります。昭和四十八年には輸出が六億一千万ドル、輸入が四億九千万ドル。その翌年の四十九年には輸出が十九億八千万ドル、輸入が十三億ドルというふうに伸びておりましたが、昨五十年以降は、輸出が二十二億六千万ドル、これらを最高として急にダウンしてきた傾向が顕著なるものがありますが、その原因は石油ショック以後における影響だけでしょうか、何かほかに理由があるか、それを数字を挙げて御説明を願いたいと思います。
  29. 照山正夫

    説明員(照山正夫君) 若干数字を申し上げましてお答え申し上げます。  いま先生御指摘のように、日中間の貿易量は国交正常化後きわめて順調に発展いたしてまいりましたが、七五年の輸出が二十二億、輸入が十五億ドルをピークといたしまして、おっしゃいますように今年に入りまして、ことしの一-八月の数字でございますが、五十一年の一-八月は輸出が十三億三千三百万ドル、輸入ば八億一千七百万ドルとなっておりまして、これは昨年の一-八月に比べまして輸出で一八・七%、輸入で一二・五%のそれぞれ減少となっているわけでございます。  その理由と申しますか、背景事情でございますが、私どもが理解いたしておりますのは、輸出につきましては、昨年下期から本年の春にかけましての鉄鋼あるいは肥料といったわが国の対中輸出の大口商品の商談の成約量の減少、あるいはことしの中国における地震等の国内的な問題に起因すると見られます商談のおくれといったようなものの影響、それから輸入につきましてはわが国国内景気の回復が非常におくれている、そういった問題がその背後にあろうかと思っております。
  30. 戸叶武

    ○戸叶武君 ソ連貿易の方も一昨年の昭和四十九年は輸出十一億ドル、輸入十四億ドル、昨五十年は輸出十六億ドル、輸入十二億ドルと、その後はぐっと伸びがダウンしておりますが、やはりソ連の輸出輸入の主たる物は何か、ソ連にはプラント輸出や機械類の輸出が多いとのことでありますが、このソ連との貿易の停滞はどういうところに原因があるか、外務省の方で答えられないときには通産省の方でお答えを願いたいと思います。
  31. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 具体的な詳しい計数については通産省の方から御説明いただきますが、日ソの貿易は比較的伸び率には若干の増減はございますが、ほぼ一貫して増加の趨勢をたどっております。本年におきましても一月-八月の間で輸出が十三億ドル余り、輸入が七億ドル余り、合わせて二十億ドル余りでございまして、前年に比べて一一%の伸びを示しております。したがって、昨年の日ソ貿易の総額、往復合わせました総額が約二十八億ドルでございますが、それを上回る三十億ドル程度今年の貿易総額がなるものと見込まれております。
  32. 戸叶武

    ○戸叶武君 そのソ連の伸びというのは、私がやはり種目を挙げてとお願いしたのは、ソ連のシベリア第二鉄道の建設なり、シベリアその他における床開発地域の開発というものが進んでいるので、プラント輸出や機械類の輸出がわれわれが想像した以上に増加しており、日本の大企業との貿易関係がスムーズにいっているからではないかと思いますが、その主な伸びている種目を挙げてもらいたいと思います。
  33. 西村保考

    説明員(西村保考君) 先ほど外務省局長の方からお答えがありましたように、日ソの貿易は近年総額では年々順調に拡大いたしてきております。数字は先ほど局長からもお話がございましたとおりでございますが、なお内訳に入ってみますと、輸出と輸入とで若干傾向が異なっております。  わが国のソ連に対する輸出につきましては、七五年、昨年は一昨年に比べまして、わが国の全体の輸出が伸び悩みを見せました中でも四八%余りの増加を示しております。ただ輸入の方はそれに反しまして、七四年に比べまして対前年比八二%余りということで減少を示しております。  いま御指摘の、特にどういうものがふえているかというお話でございますが、輸出の中で特にふえておりますのは、機械機器類、あるいは鉄鋼製品、化学製品といったものでございます。これらの品目はいずれも従来からわが国のソ連への輸出の主要な部分を占めている品物でございます。
  34. 戸叶武

    ○戸叶武君 けさのテレビで、中国から鉄鋼関係の大量の注文を受けているというようなテレビ放送がなされておりますが、日本の鉄鋼関係の産業、特に鋼材がすぐれているのは、戦後における、日本の製鉄所が破壊されたが、国の援助や何かも受けて大幅な設備投資がなされ近代化がなされて、技術的にもすぐれていた関係から鉄関係の鋼材、いろいろなものがアメリカにも殺到していくようになってきているんですが、やはり日中関係貿易を正常化しようという務めを、一九六〇年に私は安保改定阻止国民会議訪中代表団の団長として行きましたときも、主として高碕さんといろんな細かい打ち合わせをして行きましたが、帰ってきてから専門家としての高碕さんに、とにかく武漢の製鉄所や何かを見てきたが、日本の新日鉄の、もとの八幡の鉄鋼所やいろんなものをわれわれは見ているからそれほどびっくりしていないが、なかなか規模は大きいが、日本の鉄と中国との進歩の差はどのぐらいあるかということをそのときに聞いたら、素人が外観から見たのではちょっとわからないが、問題は薄板の生産の問題である。中国日本のところまで追いつくのには後三十年はかかると自分は見ているというふうな高碕さんの答えでした。中国において屡承志さんと三回ほど、長期にわたって国家間の貿易のルートをつくり上げよう、要するに友好商社貿易というような形のものより、やはり国家計画経済を樹立している中国との国家間貿易のルートというものが正規に開かれなきやならないというのが私らの考えでして、そのためにはやはり国家計画経済をやっても資本の蓄積の余りない中国、原料はあるが、約束は守れるが延べ払いでなければやっていけないというところには、高碕さんのような人だけじゃなく日銀出身の岡崎嘉平太さんのようなりっぱな人を相談相手にして、日中関係貿易面における正常なルートをつくらなけりゃいかぬということを私は説いたのでしたが、そういうところにいま私はきていると思うんです。やはり中ソの関係が一枚岩の時代、兄弟党たるソ連から突き放された段階、単なる領土問題だけでなく、もう一つは藤山さんが言っているように、軍艦を注文したら、軍艦をつくらなくてもソ連の軍艦で中国は守ってやる、基地を与えてくれ、これはアメリカが日本にやったような方式ですが、中国は発展途上国であって完成されない近代国家ではあるが、やはり植民地支配にもう何とも言えない苦労をしておるので、いかなる国からも軍事基地なんかを求められてもしまいという覚悟を決めておったのでそれを断ったのでありますが、日本中国の置かれている立場は違います。われわれは日米安保条約破砕ということで安保闘争では闘い抜いたんですが、簡単に安保条約が廃棄されてはおりません。しかしながら、アメリカの軍部の意図したような海外派兵なり日本の再軍備強化というものは、安保闘争が国民の中に定着して一九六〇年のあの国民的な抵抗運動となってそれは阻止し得たと思うんです。社会党はいろんな点で批判政党のそしりを受けておりますが、国民とともに組んでこの国の平和憲法を守り戦争はしまい、再び国際的紛争を戦争手段に訴えないと覚悟した以上は、それを貫く精神が国民の中には定着しておるのです。このことがわれわれは唯一の誇りです。  しかし、あの拡散防止条約の闘いの中から、私はやはり小坂さんの国連演説を後で読んで、やっぱり自民党の中にも三木さんなり小坂さんなり、どうも自民党というのは余り信用ができないけど、どこまで、平和憲法を守り、戦争と暴力革命を排除して本当に民主的な政治運営をしてこの国の平和改革を断行し、世界の平和共存に貢献しようという悲願に燃えている人がどれだけ自民党にいるかわからないけれども、少なくてもいいから、総理大臣なり外務大臣の要職を占めた以上は、やっぱり日本国民は本物だった、にせものじゃない――外交は信義です。中国とわれわれが結んでも中国日本の受けとめ方は違うんで、いたずらに私はソ連を日本が敵視することは愚だと思います。感情をあおることも愚だと思います。われわれは固有の領土返還に対して原則は堅持するが、領土問題の中に埋没してしまって、それをショービニズムの武器として排他主義的な愛国心をあおってソ連との関係を悪化するというようなことをもって、その方が選挙には有利だなどと考えているような考え方はやはり私たちは断固として排していかなきゃならないと思います。それには日本外交防衛の自主性を確立することでありますが、そういう意味において、小坂さんは今後において核兵器をなくすること、軍備を徹底的に縮小させること、日本だけが発展途上国の国際世論を背景として、三木さんはどうも世論を背景としてサイズが少し小さ過ぎるが、あなたは外務大臣で、三木さんより大きな一つのスケールを持って、そして日本外交進路というものを一つ一つ積み上げてもらいたいと思いますが、今後どういう形で前進していくつもりですかね具体的には。
  35. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 数々の御叱正をいただきまして感謝をいたしますが、私はやはり日本の進路というものは平和に徹するということであると考えております。日本は憲法によりまして国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄しております。この立場は、核兵器といわず通常兵器といわず徹底的に守らにやならぬと思います。しかし、自分が守ると同時に他にもそれを守ってもらうような努力をする、そのことが世界平和への道ではないかと思います。  私は、このたびいろいろ議論がございましたんですけれども、大国が開発途上国に兵器、武器を輸出することを自粛してもらいたいということを申しました。これは非常に反響がございまして賛成――まあ当初はそんなことを言うと非常に問題発言になって、いまそのために自分の国が安全なのにと言う国が出やしないかという意見もございましたが、やってみた結果は非常に賛成がございました。むしろこれを具体的にどうすればいいかということを相談していこうじゃないかというような機運が出てまいりました。私は日本という国は非常にりっぱな国で、やっていることについては戸叶先生御指摘のように非常に多くの国が現実を見、称賛をしておるわけなんでございますが、われわれは自分がやっていることの中で、まあよくないこともありますけれども、いいことはひとつ自分はあくまでも守ると同時に、他人にもそのことを勧めるということが必要だというふうに思っておるわけです。  例の日中条約で覇権の問題がございますけれども、私は先般から申し上げているように、これはもう一つの哲学であって、不戦ということを考え、力によって他国を支配下に置かないというこの日本人の哲学なんでございますから、それはあくまで正しいことは正しいと主張していくという態度によって考えていったらいいんじゃないか。要は御指摘のように日本が中心で、日本の国益を踏まえ、日本を中心としてその正しいことを世界に推し進めていくという気持ちでありたいと思っておる次第でございます。
  36. 戸叶武

    ○戸叶武君 時間が来ましたので答えを求めないで問題を一、二点だけ提示して、後の田君なり羽生君の関連質問なりの際にでも答えてもらえればいいんですが、私はいま戦争と暴力革命は憎みます。きょうも赤軍の奥平が逮捕され日高が自殺したというのを新聞で見て、暗くなる思いがします。  そういう形において、日本の今後の動きというものは非常に大切で、私は中途半端で触れると天皇の問題は誤解を受けますけれども、天皇五十年の祭典でも、右翼で尊敬する私の友人の一人の津久井龍雄君が朝日新聞に投書して憂慮しているように、天皇を政治的に関与し利用したというように少しでも誤解を招くような面があると、やはり最近のむちゃくちゃであるけれどもテロの発生なんというものは、いまこの日本のテロリストを刺激している面が確かにあると思います。私はテロリストを弁護する気持ち一つもありませんけれども、日本憲法で規定された天皇の位置づけは民族統合の象徴です。政治責任の主体じゃないんです。そこいらのけじめをしっかりとこの平和憲法に定着させないと、私は前に中曽根君といまの稻葉君がイランの皇室と日本の天皇と同門といって要らぬことを言ったから厳しく批判したことがありますが、私は考え方はきわめて穏健派ですけれども、余りにも政府のとっている態度というものは、何でも利用しようという形がかえって一つ日本の平和憲法の精神にそぐわない面も出てくるんですから、防衛の問題にしても何でも行き過ぎないようにお願いしたいし、最後の一点は、やはり金大中さんの待遇とこの間のミグの航空機に乗って日本に逃げ込んだソ連の中尉の取り扱いなんかにも、だれが見ても何かぴんとこない、非常な差別が行われているような、日本の主権を侵されてもそれに対してははっきりとした後片づけもできないというような、何か気まずいものが日本人というのは一体何考えているのか、スフィンクスならなぞの魅力があるが、これはナンセンスだという感じを一般に持たれると、国際外交基本は信義ですから、やっぱり貫くものを持って折り目正しく筋は立てるという習慣を外交ではつくってもらいたい。後でこれは他の人の質問があったらそれに関連して答えればいいんで、私はこれで質問は打ち切ります。
  37. 田英夫

    ○田英夫君 時間が少ないようですから、簡単に問題点だけ伺います。  海洋法会議の問題なんですけれども、海洋法会議関連で言えば、特に日本の場合は漁業関係で決定次第で非常に重要なことが出てくるわけですが、きょうはその問題とは離れまして、大陸だなの規定がどういう方向に決まるのか。ニューヨーク会期の後の外務省でつくられた小冊子によりますと、いわゆる単一交渉草案の改訂版というのが出ておりますが、大陸だなの規定も大体この方向に決まっていくというふうに考えていいんでしょうか。
  38. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 大陸だなの今回の会期における議論につきましては、いま先生御指摘の単一草案の改訂版に即して論議は行われておりましたが、一般的に申しまして論議の主たる焦点は、その単一草案にもございます大陸だなの範囲の問題、大陸だなの外縁の定義をどう考えるかという問題と、それからその草案にもありますように、二百海里を超えて大陸だなの自然の延長がある場合に、その自然の延長二百海里を超える部分の開発から生ずる収益についての、いわゆるレベニュー・シェアリングをどういうふうにするかという点についての論議が焦点であったというふうに理解しております。
  39. 田英夫

    ○田英夫君 そうしますと、まあいわゆる延長論ですね。それと日本政府の態度はカラカス会期の段階で、いわゆる基線から二百海里の範囲内というふうに提案をされていると思いますが、その態度は変わっていないのか、そして全体の方向としては延長論に傾いているというふうに言われていますし、現に単一交渉草案というのはその方向を示していると思いますが、その点はいかがでしょうか。
  40. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) わが国立場といたしましては、先生いま御指摘のとおり、沿岸からの特定の距離を基準にすべきであるということで、具体的には二百海里までとすべきであるという立場を崩していないわけでございます。  会議の大勢という点につきましては、遺憾ながらわが方がとっておりますような特定の距離基準説というのはどちらかといえば少数説になって、むしろいまおっしゃられましたような自然の延長論という論議が非常に勢いを得ておるという事態でございます。
  41. 田英夫

    ○田英夫君 私は、実はその日本政府案を昨年も予算委員会や外務委員会質問をして取り上げたんですが、これは論理的にはむしろ正しいと思います。つまり、二百海里のいわゆる排他的経済水域、これはやはり二百海里ですから、それと大陸だなの範囲とを一致させておけばこれは余り問題が起きないと思うんですが、私はなぜこれを質問しているか、当然御推察のとおり日韓大陸だな協定があるわけですけれども、延長論になってきますと、中国自身も実は延長論を主張しているわけでありまして、あの海域というのは中国、両朝鮮というところの大陸だなの範囲に入ってくる。それで日本はむしろ海溝になっておりますから全く権利がなくなってくるという関係を生ずるのではないかと思うんですが、その辺のところはどういうふうに理解しておられますか。見通しというか、海洋法会議の成り行きによって、もし延長論になったら日本は主張の根拠を失うんじゃないかと思いますが。
  42. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 海洋法会議での論議は、先生御承知のとおりまだ最終的なところまでいっていないわけでございますが、一般的に申しまして、いま申しましたようなまさに自然の延長論が非常に多い。問題は、いまの自然の延長論ということで、大陸だな外縁のへりをどういうふうに決めるかという技術的な論議が実は行われておるという状況でございまして、日韓の大陸だなの問題に関しまして申し上げれば、わが国としては、そのような海溝があるにしても、日韓両国は同じ大陸だなにまたがっておるというたてまえをとりまして、中間線の立場をとっているわけでございますが、遺憾ながら韓国側はそのような立場に立っていないということで、結局、両方の権利主張のオーバーラップする部分については現実的な共同開発というか、解決を図るということで、そこの法的立場はそれぞれ損なわないという理解をもっていまのような現実的な処理を行うということになっているわけでございます。
  43. 田英夫

    ○田英夫君 それはそうおっしゃらざるを得ないんですけれどもね。衆議院ですでに日韓大陸だな協定の審議が始まっている。政府・自民党はこれを審議を促進しようという態度をとっておられるわけですけれども、いままさに海洋法会議で先ほどから申し上げているような方向に決まろうとしている。もし延長論の線で、これが大勢ですから、決まったとなったら、日韓大陸だな協定そのものの根拠はもう完全に覆るわけですね。ただ日本の国益というような立場考えた場合に、いま結んである協定を急いで批准して発効させてしまえばそれでいいじゃないかという考えがあるかもしれませんけれども、それは国際的には非常におかしなことになりますし、現に中国も朝鮮民主主義人民共和国も昨年強硬な抗議を発しているわけで、そういう中でこの日韓大陸だな協定の審議を急ぐということは全くおかしいわけです。大体ああいう結び方をしたこと自体が見通しを誤っていると思いますし、これはいずれ、まあ参議院には来ないでしょうけれども、この問題については十分に衆議院のわれわれの仲間が質問をすることになると思いますので……。
  44. 中江要介

    政府委員中江要介君) 条約局長から海洋法会議の一般的な答弁がございまして、それに即して田委員の御質問が日韓大陸だな協定という、特定の大陸だなについての御質問ですので私の方から補足させていただきますと、海洋法会議の落ちつく先がどういう形であれ、いまの東シナ海に横たわっております大陸だなについては境界画定の問題として出てくるわけでありまして、自然の大陸だなだけでは終わらないわけです。どっちみち境界画定の問題になる。境界画定につきましては、これは当事国間で話し合いによって最終的に中間線にするなり妥協線にするなりということがゆだねられるというのが、これはもう恐らく間違いのない落ちつき先だろうと思うのです。  日本と韓国、あるいは日本中国の間で境界を画定するときに、前提としていま条約局長が言いましたように、一つの大陸だなに二国があって分ける、境界を画定するのか、それともこれは一つの大陸だなではなくて、先ほど先生のおっしゃった海溝のあるところまでが一つの大陸だなで、そこから先は大陸だなでないんだという考え方をとるか、この点は実はまだ国際法的にも、また地質学的にも問題のあるところで、十分争い得る問題、前提条件だと、こういうふうなことでありまして、数年前から日本と韓国との間で議論をしておりましたのも、実はその国際法的にも地質学的にも問題がある大陸だなについての理論闘争であったわけです。  その境界画定についてあくまでも争うことが賢明なのか、日本も韓国も五分五分の理があるのであれば、その重なった部分について共同開発をして、むしろ資源を有効利用するのが得策であるのかという政治的な判断が後者の方になされたというのがいまの協定でして、この協定海洋法会議の見通しを誤ったとか、あるいは海洋法会議で何かが決まれば完全に理論的根拠を失うというようなものでは全くないというのが私どもの考え方であるわけです。
  45. 田英夫

    ○田英夫君 もしそれが本当のお考えだとしたら大変なことになるんじゃないですか。中国あるいは北朝鮮と交渉されるわけですか。先に日韓大陸だな協定発効しておいて、そうして後で中国に、あなたの方の主張もあるだろうけれどもうちはこういうふうに結びました、よろしくと、そんなことが通るわけはないですからね。これはまあ時間がありませんので疑問を投じて、私は非常に強い疑問を投じておきます。  もう一つ次の問題に入らなければならないんですが、予算委員会でも取り上げた問題ですけれども、引き続きこれも非常に疑問がありますのでお伺いしますが、金大中事件関係者として三人の韓国のKCIAを日本の五十人の弁護士さんたちが告発をされましたが、確認をしておきますが、法務省おいでになりますね、これは東京地検で担当者を決めて捜査に入ったと理解してよろしいですね。
  46. 石山陽

    説明員(石山陽君) ただいま田委員仰せのとおり、東京地検の方におきまして、ただいまその点について捜査に入っておるというふうにお受け取りいただいて結構でございます。
  47. 田英夫

    ○田英夫君 そこでそのうちの一人、金在権こと金基完という男が、この告発状によるとアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスに在住をしているというふうにすでにここで指摘をしているわけですが、この点は確認されたでしょうか。
  48. 石山陽

    説明員(石山陽君) 告訴状によりますると、ただいま御指摘のように、元韓国駐日公使でありました金在権、あるいは金基完という名前を使っているようでございますが、この方がアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスに在住しているということで告発なされておりますが、現在これらの所在につきましては警察、検察、ただいままでのところではそれをどこにという具体的な確認はできていないというふうに聞いております。
  49. 田英夫

    ○田英夫君 これは当然捜査をされる以上は、本人の所在を突きとめ、本人に接触をされ、調査、捜査をされると思いますが、そう考えてよろしいでしょうか。
  50. 石山陽

    説明員(石山陽君) 田委員仰せのとおりでございますが、具体的な捜査の進め方でございますので、検察庁がいわゆる周りから攻めるといいますか、直接単刀に本人から聞くという方法をとるか、これはしばらく検察のやり方にお任せいただきたいと思いますが、いずれ被疑事実が固まり、本人が共犯者の一人であるということが確認できれば、その段階ではもちろん本人からも聞かなければならぬ段階がくるものというふうに考えております。
  51. 田英夫

    ○田英夫君 外務省もこの金基完がロサンゼルスにいるということはまだ確認していませんか。
  52. 中江要介

    政府委員中江要介君) 確認しておりません。
  53. 田英夫

    ○田英夫君 これは偽名でアメリカに入って、大変大きな家へ住んで、住所、電話番号までわかっているわけですよ、われわれでも。ですから、これはもうやる気があればすぐに突きとめられることだと思いますが、この間も予算委員会で申し上げたとおり、いままでの状況ではやる気がないからわからないだけじゃないかという気がしてならないのです。  そこで、警察庁に伺いますが、前から問題になっている金東雲の指紋の照合、これはもう完全に、この場で二年前に確認をいたしました、三年前ですか、事件直後に確認をいたしましたが、これはきわめて確度の高いものだというお答えを当時の刑事局長からいただいているわけです。この捜査報告書、鑑定書を含めまして、この金大中事件の捜査報告書を当委員会に資料として提出をしていただきたいと思いますが、それはできるでしょうか。
  54. 大高時男

    説明員(大高時男君) 御承知のように、金大中事件につきましては、警察は現在でも捜査を続けておりますし、また、地検の方に告発状が出されまして以降、地検と緊密な連絡をとりつつ、現在までの警察の捜査等について説明すると同時にへ告発状に記載されております事項も参考にしながら自前の捜査を続けておるわけでございます。したがいまして、私どもの方では現在もなお関係者が来日するチャンスがあれば、これは常に話を聞いていきたいし、また金東雲についても来日するチャンスがあればこれはぜひとも問いたださなければいかぬ、こういうふうに考えております。したがいまして、私どもとしては今後とも捜査を続ける以上、私どもの握っております捜査資料についてはお出しするのは差し控えさせていただきたい、かように考えるわけでございます。
  55. 田英夫

    ○田英夫君 それは大変おかしなことでありまして、昨年の八月に政府は韓国政府との間に、金東雲を含めてこの問題についてはシロだという韓国側の主張を入れてこの問題は終わったということをはっきり宮澤外務大臣当時に、いわゆる口上書なるものを交して決定をされているわけですね。捜査は終わったんじゃないんですか。日本政府が二つあるんですか。
  56. 大高時男

    説明員(大高時男君) 捜査の問題につきましては、御承知のように今回の事件は被疑者あるいは関係者とも外国にいるという非常にむずかしい条件で捜査をやっておるわけでございますけれども、利ともの方としては、韓国の協力が余り期待できないという状況にはなりましたが、われわれの力でもってなお今後捜査をしてまいりたい、かように考えておるわけでございまして、決して捜査をやめたということではございません。
  57. 田英夫

    ○田英夫君 これはもう速記録に残りましたけれども、重要な問題になりますよ。政府は、つまり外務省というのは日本政府ですから、政府は昨年の八月の口上書で金東雲を含めた捜査は終わったということにしたんじゃないですか、韓国との間に。にもかかわらず、警察の責任者は捜査を続けているとおっしゃる。だから日本政府は二つあるということになる。
  58. 中江要介

    政府委員中江要介君) 金大中事件の処理については二つの側面がございまして、一九七三年の十一月二日にいわゆる外交的決着を見たというときには、その名の示しますように、外交的には、つまり日本と韓国との外交経路を通じての本件の追及なり意見の交換というものはあのときの外交的決着の条件及び了解によって決着をつけた。外交関係金大中事件という国際刑事事件のためにいつまでも渋滞させておくことは得策でないという判断からそういう決着をつけたわけですが、そのときにもはっきりわが方が態度を留保しておりますのは、あの時点では主権侵害の事実について確証が得られなかったために、韓国の公権力の行使によるわが方の主権侵害という立場ではなくて、その部分については今後の捜査の過程で新たな事実、つまり主権侵害があったということを立証するに足る十分なる事実が出てくれば、これは改めて日韓間でその時点で再び外交上の問題となり得るという立場を留保しておるわけで、そういう意味で金東雲についての口上書が来ましたときには、その金東雲の指紋にまつわる容疑というものについて韓国側の捜査結果を再三請求して、一度来てそれが不十分ということで突き返して、二度目が来たのが昨年の七月の口上書であった。あの口上書によって、金東雲について韓国側が捜査を続けて、その結果としてとった処置は、日本としては不満足ではあるけれども、しかしもうこれ以上追及するというすべもない。いま警察庁の方から言われたように、日本独自の捜査の結果新たな事実が出れば別ですが、韓国との間で外交的に取上げるということは金東雲についてはこれでおしまいということをはっきりさせたわけで、あらゆる捜査を、特に日本側の捜査を打ち切ったということは、当時からもそうですしいまも言ったことはないと、こういうふうに思っております。
  59. 田英夫

    ○田英夫君 金東雲の捜査を打ち切ってないとはっきり外務省も言われるとなると、昨年夏の口上書というものは韓国側の一方的な言い分であって、日本政府が了承したわけではないということになりますね。
  60. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私ただいま申し上げましたように、日本側の捜査とは関係なしに、金東雲については指紋という有力な証拠を韓国側に提示して、本人の身柄が韓国にあるわけですので、韓国の司法当局あるいは捜査当局の捜査の結果を待つということでおったわけですが、その部分についてはもうこれ以上外交的に追及するということはやらないということで日韓間で話をつけたわけで、そのことは日本側が金大中事件全体を捜査しているという姿勢とは直接関係がないといいますか、そのことは日本側の捜査継続には影響を及ぼすものではない、こういうふうに了解しておるわけです。
  61. 田英夫

    ○田英夫君 全く苦しい答弁で、答弁される方がお気の毒だと思いますよ。  大臣、こういう状況のままで、これはもうどう考えても日本国民は納得しっこないんで、昨年夏の口上書、韓国側の捜査の結果は日本政府は納得できないけれども金東雲の捜査は終わったと、いや終わってないといまおっしゃる。これは納得するわけがないんですけれども、時間が来てしまって、これはゆっくりひとつ時間をいただいて徹底的に政府のお考えの矛盾を突かなければならないことになりますよ。  最後にもう一つ韓国の問題で伺っておきますけれども、七月末に韓国に対する日本からの経済援助をやるための日本韓国両民間の合弁によるコリア・インダストリアル・デベロップメント・コーポレーション、KIDCというものを設立をするということが決まったというふうに、これは韓国側の新聞が報じているわけですけれども、政府はこれを御存じでしょうか。
  62. 中江要介

    政府委員中江要介君) 外務省では承知しておりません。
  63. 田英夫

    ○田英夫君 これは金大中事件後、非常に問題になりました韓国に対する経済協力という問題、それを政府がやるとどうもいろいろ刺激が強いので民間に移していくという方針に切りかわってきたようで、どうやらその具体的な動きというふうにわれわれは受け取っているわけです。これも時間がありませんからこれ以上できませんけれども、最後に一つ伺いますが、日韓閣僚会議はことしはどういうことになりますか。
  64. 中江要介

    政府委員中江要介君) まだ具体的な日程については話題に上っておりません。
  65. 田英夫

    ○田英夫君 重要な問題が時間切れで伺えないのは大変残念でありますけれども、きょうはこの程度にしておきます。  終わります。
  66. 塩出啓典

    塩出啓典君 最初にちょっと確認をしておきたいと思うんでありますが、いわゆるロッキード事件に関するアメリカからの資料の問題について、外務省日本政府が公開をしてもいいのかどうかと、こういう問い合わせをした結果、米国の司法省から拒絶された、こういうようなことがけさの朝刊の各紙に載っておるわけでありますが、こういうことがあったのかどうか、ちょっと事実を確認しておきたいと思います。
  67. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) ロッキード問題に関しましてアメリカとドイツとの取り決めができて、それに日米取り決めと若干違う表現が用いられておるということもありまして、この点に関連してワシントンからいろんな新聞報道がなされたわけでございます。アメリカの司法省のスポークスマンも、その点に関して日米と米独との間で取り扱いを違える考えはないというふうなことを言ってるようでございます。ただ、それに関連しまして再交渉とか再協議という話も報道されておりますので、現在のアメリカの考え方がどうかということを日本外務省としても念のために問い合わしたわけでございますが、その際米側が申しておりますのは、米側としてもまだこのロッキード問題については捜査及び調査を続行中でありますので、米側の捜査の支障にならないようにするため、また、人権に対する配慮等の点からして、米側の捜査完了前において米側資料の公表について話し合うことははなはだ困難であるというふうに言ってまいったわけでございます。
  68. 塩出啓典

    塩出啓典君 これは外務省として独自の判断でそういう問い合わせをしたのか、あるいは内閣からの要請があってしたのか。
  69. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) この問題に関しましては、関係方面とも打ち合わせた上で問い合わしたわけでございます。
  70. 塩出啓典

    塩出啓典君 それはどういう形で問い合わせして、向こうの、新聞では司法省になっておるわけでありますが、たとえば文書で、手紙を出して回答がきたとか、それはどういう形で行われたんでしょうか。
  71. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) これは在米大使館の館員が米司法省の責任ある地位にある人に対して口頭で問い合わしたものでございます。
  72. 塩出啓典

    塩出啓典君 その中で、一つは米側のこの問題についての捜査が終わっていないと、もう一つは人権を配慮してこれを出しては困るという、そういう内容だったわけですが、これは間違いないのかどうかですね。  それと、人権というのはアメリカにおける関係者の人権のことなのか、あるいは日本における、日本においてもいわゆる灰色の公表ということが人権を守るためにできないという論議もあるわけですけれども、このアメリカの言う人権というのはどちらの方の人権なのか、これはどうなんでしょうか。
  73. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 人権に対する配慮ということは、三木総理の親書に対するフォード大統領の返書の中でも触れられておりまして、いわば日本であれアメリカであれ、捜査をする場合にはその捜査完了までは関係者の人権に対して配慮をするということは当然のことであるという観点から触れられたものと了解しております。その人権がアメリカの人だけに関するのか、日本の人も含めて言っておるのかという点ははっきりとはしておりませんけれども、一般的な常識的な問題として、捜査が終わるまではそれに関係している人々の人権について配慮するということは当然であるという考えに立って言われているものと考えます。
  74. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうすると、いまのいろいろなお話から、アメリカにおけるロッキードの関係の司法関係の捜査が終われば、さらに人権の問題もどうなんでしょうか、日本国内における人権のことを配慮してアメリカが公表するなという、ことは、ちょっと常識的に考えてもこれは日本政府の判断に属する問題で、アメリカ人の人権を守るためにその範囲内のものは公表してもらっては困るという、これはある程度筋は通ると思うんですけれども、日本関係のある人たちの人権の問題についてはこれは日本政府独自が判断すべきものである、これが常識ではないか。したがって、その範囲内であれば向こうの捜査終了後であれば何らこれは問題はないんではないか、こういう感じがするんですけれども、その点はどうでしょうか。これは将来の問題で想定になるかもしれませんけれども。
  75. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) この点は先ほどから申し上げましたように、フォード大統領の親書の中でも触れられている問題でございまして、いわば日本であるとアメリカであるとを問わず、捜査と  いうものは正義の実現のために行われるわけでございますから、その正義を実現するためには広く人を調べるということはどうしてもあるし、その関係資料を広く収集するということもあるわけでございますけれども、そういう捜査の資料を当然吟味した上で結論を出すわけでございましょうから、そういう過程においていろんな人の名前が出てきても、その点については明らかにしないというのは捜査のいわば常識であるという考え方に立ってアメリカは言っておるんであろうと思います。したがいまして、その人権が日本側の人々の人権も含むかどうかということはアメリカは別に明らかにはいたしておりませんけれども、普通のそういう捜査といいますか、正義の実現のための常識的なプロセスとしてその点を配慮しておるんだということを言っておるものと考えております。
  76. 塩出啓典

    塩出啓典君 次に、最近アメリカで広島に投下した原爆のショーをやったわけでありますが、これに対して、私は広島に住んでおるわけでありますが、非常に被爆者の感情を逆なでにし、広島市長あるいは労働組合、被爆者団体等が一斉に抗議の電報などを打っておるわけでありますが、こういう問題について外務大臣としてはどう考えるか、それを承っておきたいと思います。
  77. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 塩出さんのおっしゃいますように、私もこの新聞を見まして非常に不愉快に思いました。主催者がだれであるかということも見たわけですが、民間である。しかし、よし民間でありましても、あれだけの災厄を与えて、そして今日に至るもまだ罹災者が絶えないという、こういうぬぐうべからざる衝撃をわが国民に与えておいて、それを原爆の再現などといってショー扱いする。はなはだ不謹慎であり不愉快千万であるということを思いまして、アメリカ大使館に対しまして、こういうショーがいかなる趣旨で行われたかということを含めまして、事実関係調査するとともに強く反省を求める抗議をしておきましたわけでございます。
  78. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) いま大臣の仰せられましたように、本日在京米大使館に対して、日本側として強く遺憾の意を表して申し入れをしたわけでございますが、アメリカ大使館の方でも実はこの点は早速調べておりまして、確かにこれは民間団体の主催した航空ショーではあるけれども、日本国民の感情を顧慮しないようなこういうショーが行われたことについては、アメリカ政府としても非常に遺憾に考えておるということを申しております。
  79. 塩出啓典

    塩出啓典君 新聞報道では、米軍の爆薬班が出動していわゆるキノコ雲の形を再現した、こういうことを書いておるんでありますが、これは米軍がそういう民間のショーに、主催は民間のようで、詳細はわかりませんけれども、それに米軍の爆薬班が出動したということは事実なんでしょうか。
  80. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 実は、その点につきましての報道がございましたので、早速聞いたわけでございますが、アメリカもその点は調べておりまして、これは米軍の爆薬処理班がやったということは誤報であるということでございます。米軍のそういう部隊がそういうふうなキノコ雲を演出したという事実はございません。
  81. 塩出啓典

    塩出啓典君 非常に、日本人とアメリカ人というのは民族も違いますし、考え方にいろいろギャップもあり、やはり日本への原子爆弾投下そのものに対する考え方もわれわれと同じようにはいかない点もそれはあると思うんですけれども、しかし、やはり今後とも被爆国であるという立場に立って、私はアメリカに対してもまた世界各国に対しても、そのことを伝えていく一つの責任があるんじゃないか。先般核防条約に対してもわが国はいろいろ検討の末配慮をしたわけでありますが、そのときに当委員会でも、核兵器禁止の原点はやはり広島の原爆の悲惨さの認識にあるわけですから、たとえば原爆資料館を国連につくるとか、あるいはまた、世界各国からいろんな人が来た場合でも、東京と京都だけじゃなしに広島も見せるとか、これは決していやがらせというんじゃなしに、やっぱりもっと崇高なより高い目的のために、そういう点にもっと政府は努力すべきである。現在のところはそういう努力は余り政府はやってないわけですね。むしろ広島市とかそういう民間団体あたりの方が一生懸命PRやっておるわけで、私はそういう点についてももっと積極的にそういう面も推進していくべきじゃないかと思うわけですけれども、その点外務大臣のお考えはどうでしょうか。
  82. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私も同様に考えます。これはひとつ御趣旨のとおり私は思いまするので、いろいろ方法を検討してみたいと思います。
  83. 塩出啓典

    塩出啓典君 今回、いまさっきもお話がありましたが、国連総会で兵器の輸出の禁止を提案をされたということは、非常にわれわれも一歩前進として評価しているわけでありますが、いま言ったような問題もひとつ推進をしてもらいたいと思います。  ミグ25の問題も、いよいよソ連に返還をするということで大詰めを迎えたわけでありますが、非常にこの問題を通して、どうも日本外務省姿勢というものが、何となく防衛庁とかあるいはアメリカ政府とかいうものに押されて、結局非常に不明朗な形で事件が処理されてきた、実はこういうような感じがするわけであります。一つはやっぱり防衛庁の立ち入りを認めるという問題です。それから二番目にはやはり米軍の、アメリカ政府の援助を受け入れるという問題でありますが、こういう問題について外務省としてはどういう態度をとってきたのか、その点、この問題についての外務省考え方というのはどういう根拠のもとにこうしたというのか、それをちょっと聞きたいと思うんです。
  84. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) ミグ25の事件が起こりまして、外務省としては、当然まず国際的あるいは国際法の見地から見てどういう処置をとるのが認められたところであり、また妥当なところであるかという判断を基本にして対処いたしました。この種の事件日本としては初めてでございますけれども、西欧等においては過去においても何件かございます。それからまた、こういうものについての国際法上の基本的なルールといいますか、そういうものもございます。したがいまして、このように、人については亡命でございますが、今度の事件そのもの自体は、領空を侵犯し強行着陸したという基本的な性格も持っております。したがいまして、国際法あるいは国際的な事例からかんがみて、当然まず機体については、ただいま申し上げましたような事案でございますので、これを保管し調査をするということは認められておりますし、かつ、各国においても実施をしているところのように思います。ただ、このような事案につきましては、最終的には機体を返還しておるように思われますので、そうした点をまず念頭に置いて本事件を処理いたしました。  したがいまして、そういう国際的な枠の中で国内的な法制あるいは国内的な体制から見てどこの省がどういう手順で処理をしていったのが適当であり妥当であるかということを、関係各省、政府全体としても常に連絡をし協議をして処置してまいった次第でございます。ただいままでそうした所要の保管と調査というものを行うに当たりましては、本件が軍用機であり軍人ということでもございますので、そうした方面の国内における担当である防衛庁というものが担当すべき部面も当然あってしかるべきものだと考えております。そうしたことで所要の保管と調査を終えて、先生お話しのとおり、去る九月二十八日にニューヨークで小坂大臣からグロムイコ外務大臣に対しても返還の用意があるということを伝えるという運びになって、現在その具体的な技術的な打ち合わせをしておるという状況でございます。
  85. 塩出啓典

    塩出啓典君 これは私が外務省から先例として七件、ソ連、ポーランド等からスウェーデン、デンマーク、西ドイツ等にいわゆる軍用機が亡命をした例を示されたわけで、いずれも全部返還をしておるわけですけど、ただ、この実施については、これでは亡命の意図と事実の確認、領空侵犯の状況の究明、こういうことが書いてあるわけですけど、その点はどうなんですか。国際的な慣例として、今回自衛隊の調査というのはやはり国防的見地からソ連の機密を探るという目的もなされたようにわれわれは理解しているわけですけど、そういうものは国際の慣例であるのかどうか。簡単にひとつ……。
  86. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) これは防衛庁からお答えいただくのが一番適当だとは存じますが、防衛庁での保管、調査に当たりましても、政府としては、防衛庁の調査というのは今回の領空侵犯、強行着陸という背景状況の解明ということを目的とした調査であるということを明確に確認をし、そういう目的に沿って防衛庁も調査を行ってまいった次第でございます。
  87. 塩出啓典

    塩出啓典君 わかりました。  それから、アメリカ人がこの調査に参加したという問題は、外務省としてはどういう見解を持っているんですか、こういうのは外務省の権限外ですけど。
  88. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) これも直接には防衛庁の方からお答えすべき性質のものかとも思いますけれども、外務省としても、防衛庁において先ほど申し上げましたような本件についての所要の保管と調査を行うに当たって、どうしても防衛庁、自衛隊の能力で不足がある場合には、これを補うのに最小限度必要な外部からの人員なり機材というものを借りる、それはただし、あくまでも日本側あるいはそれを保管、調査の責任に当たる防衛庁においての自主的な判断において必要な最小限度という判断で行ったところでございまして、米側においてわが方の不足を補うところの協力といいますか、人員、機材を提供するという用意がございましたので、それを受けて調達をして行ったということでございます。
  89. 塩出啓典

    塩出啓典君 時間もありませんので次回にしますが、外務大臣、今回のこういう処理の仕方はいろいろすっきりしないものがあるわけですね。そういう意味で、われわれの感じとして、どうも外務省がもうちょっとしっかりして、やはり対外的な関係というものも配慮して、国際の慣例に従い調査するのはいいにしても、米軍がああいう形で参加をし、それで調査した結果がアメリカのニューズウイーク誌あたりへどんどん書かれる、こういうようなことは非常にまずいわけで、いまの欧亜局長のお話でも、何かこう防衛庁の問題で防衛庁がやったんだから外務省は知らないんだ、そういう感じ答弁ですけど、そういうことでは今後困るわけで、やはり過去においても主戦論的な考え方というのは非常になかなか強硬なわけですけど、しかし、常に外務省というのは外交という立場に立ってもっと強力にいろんなリーダーシップを発揮していかにゃいけないんではないか、こういう感じがするんですけど、その点についての考えを聞きたいのです。
  90. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 外務省がリーダーシップをとっておけというお考えは私は全く同感でございますが、この問題は、ミグ問題は実は先方がある日突然に領空権を侵したんで、日本国民政府も好まぬところでございます。こういうことが二度とあっては困るわけでございますけれども、あった以上は、やはりこれは領空侵犯に対して国際法あるいはまた国際慣例上許されることはきちっとやりませんと、かえって日本立場というものが微妙になる、非常に日本というのは何でもおどかせば言うことを聞くというような、そういうことをいささかでも外国に与えると、これは日本外交のために非常によくないというふうに私思うんでございます。ただ、これ調査が終わりましたらできるだけ早く返して、返すのも、あれはソ連側にしてみればこれは戦闘機でございます、最新鋭の戦闘機の戦闘機乗りが亡命したという事件でございますから非常に痛いわけでございますね。その痛い傷口に余り触れるようなことをしないでそっと返すという態度をとる方がいいんではないかというふうに私は思っておりますわけでございます。こういうことは二度とないことを希望いたしますことを申し上げてお答えにしたいと思います。
  91. 星野力

    星野力君 主として外務大臣にお聞きします。  第三十一回国連総会における小坂外務大臣の演説を拝見しましたが、その中で大臣は南部アフリカ問題に言及しておられる。わが国は人種差別反対の立場に立ち、南部アフリカ問題の平和的かつ速やかな解決のためできる限りの努力をするということを述べられておられますね。南ア共和国、ローデシアに対しまして国連の決議が採択されており、それらの決議に基づいて加盟諸国は両国に対して外交関係の断絶とか経済断交などをやっておるわけでありますが、それらの国連決議は、アパルトヘイトや人種差別が国連憲章の人権尊重の精神に反しているという考えの上に立っているものと私は理解しておるんでありますが、大臣もさように考えられますか。
  92. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日本は人種差別反対ということはいち早く言い出したわけでございます。星野議員も御承知のように、ベルサイユ会議のときから言っておるわけでございます。この考え方がなかなか徹底しませんでおるわけでございますが、最近になりまして非常に国連の中ではもう一般的な考え方になっておる。しかし、南ローデシアあるいはザンビア、そういうところではそういうことでありながらまだ解決していない。したがって、この解決についてはぜひひとつ国連として解決にもっと強力に乗り出すべきである。しかも、南アフリカにおいては流血の惨事が相次いで起きている、そういうことは非常に遺憾なことで放置されてはならないというふうに考えておりまするわけでございます。
  93. 星野力

    星野力君 そういう人種差別はいけないという思想の根底には人権擁護という考えがある、そう理解しておるんですが、大臣もそういうふうにお考えになるかと、こういう質問なんでございますが。
  94. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さようでございます。
  95. 星野力

    星野力君 人権擁護のためには外交関係の断絶、経済断交、こういうこともやらなければならないということだと思います。  後、対韓国外交について若干お聞きしたいんですが、韓国の今日の政治体制、これをどういうふうに大臣は見ておられるのか、日本政府は韓国を自由陣営の一員にしておられるようでありますが、金大中氏や元の大統領のユン・ポソン氏あるいはキリスト教会の長老などが連座しておりますところの民主救国宣言事件、それから詩人金芝河の裁判、また多数の在日韓国人留学生が韓国で続々逮捕され、死刑などの重刑に直面しておるというこの事態を見ますと、あそこに自由があり民主主義があるとは考えられないのであります。そのような政治状況を大臣はどういうふうにお考えになられるか、それをお聞きしたいんでありますが、韓国の政治状況は韓国の国内問題であり、批判したりコメントしたりする立場にないなどと言われないで、見解をお聞きしたいと思うんであります。  アメリカの下院の外交委員会が民主救国宣言で朴政権の人権抑圧政策を批判し、被告全員の無罪釈放を促す決議を採択し、またアメリカ政府、直接にはキッシンジャー国務長官の名前だったと思いますが、韓国政府に対してその非民主的な人権抑圧に警告を発したということは御存じのことと思います。そういう事情でございますんで、ひとつ率直に意見を日本外務大臣も述べていただきたいと思うんです。
  96. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) わが国政府、しかも外交責任者として他国の政情あるいはその政策の内容についてコメントする立場にないというふうに他の機会に私申し上げましたけれども、どうもそれを変えるわけにはいかないと存ずるわけでございます。  韓国の状況のほかに、私ども非常に近いところでこの朝鮮半島全体の状況を見ますると、いろいろな状況があるわけでございます。北の方は共産主義を信奉し、南の方は民主主義、自由主義を初めから信奉する、そういう立場で対立しているわけでございますが、まあ私ども日本日本としての平和と自由を享受するようなそういう体制をつくることに専念すべきであって、他の国の政情、内容等についていろいろ申し上げることは差し控えたいと考えておるわけでございます。  なお、ただいまアメリカのお話もございましたが、私がどうもなりたてで知らないのかもしれませんが、キッシンジャー国務長官が韓国に対して批評をしたという話は私聞いておりませんわけでございます。
  97. 星野力

    星野力君 いま私が引用しましたアメリカ政府の韓国政府に対する警告というのは大臣御存じないそうですが、局長、私の言ったこと間違っておりましたでしょうか。
  98. 中江要介

    政府委員中江要介君) 星野先生の御指摘のキッシンジャー長官が韓国の政治体制、特に人権の問題について発言しましたということで私どもの承知しておりますのは、対外援助法との関係でそういう意見を述べたということは聞いております。
  99. 星野力

    星野力君 アメリカには対外援助法などの法律があるということもありますけれども、これは法律のあるなしにかかわらず、一国の外務大臣が韓国に対してそういう警告をはっきり発しておる、こういう事実でありますね。日本外務大臣がやっていけないということはないんです。ことに、アメリカと韓国の関係もいろいろ密接かもしれませんが、日本としては直接日本でいい政治をつくると言われましたけれども、日本でいい政治をやっていく上からも韓国の問題というのは重大な関係のある問題なんです。今回の国会は、ほかのところでもってコメントする筋合いでないということを言われたんで翻すことはできないと言われますけれども、次の国会に外務大臣としておられたら、ひとつはっきりとした態度をとっていただきたいという注文を申し上げておきます。  韓国の状態というのは、思想を理由にして逮捕をし裁判にかける。支配者の気に入らない者、おどしゃ買収に応じない者に対しては大統領緊急措置九号とか反共法とか、いろいろのものを使って極刑、重刑思いのままにやっておる、その間に暗殺をやられたと思われる問題もありますが、そうして金大中氏や詩人金芝河氏などが犠牲者になつておるわけであります。見ますと、戦前の治安維持法下の日本に非常によく似ております。国連憲章の前文の冒頭でうたわれておるのは、御承知のように基本的人権と人間の尊厳の尊重ということであります。それが韓国ではちりあくたのように踏みにじられておる。南アフリカ共和国やローデシアに関する国連決議でも明らかなように、人権擁護のためには外交断絶、経済断交さえやらざるを得ないのであります。まして、日本政府は金大中氏の生命に責任を負わなければならぬ立場にある。金大中氏は獄中で健康を害しておるそうでありますが、これは死んでしまったならば原状回復は永久にできないわけであります。  ことしの七月でしたか、金大中夫人から三木総理にあてて金大中氏の人権回復を訴える手紙が来ておりますですね。三木総理なり外務大臣なりがその手紙に対して何らかの応対をなされたのかどうか、お聞きしたいんであります。
  100. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私の聞いておりますところでは、一般に数多く参ります一つの陳情の案件としてその趣旨をお読みになって理解されたということで、特に応答、返答するということはしないというふうに対処されたと聞いております。
  101. 星野力

    星野力君 大変残念なことだと思います。  ここに日本政府に対する要請文がございます。外務省にもいっておると思いますが、前文にはこう書いてあります。「われわれは、日本政府が内政干渉ができないことを口実にして韓国の現状を黙認することなく、人間の尊重と基本的人権という人類の普遍的原理にもとづき、国民的主権を尊重することを前提にして、韓国政府にたいして、左記の事項につき、あらゆる外交政治的措置をとるよう要請するものである。」と、そして八項目にわたりまして、たとえば金大中氏ら民主救国宣言関係者の自由を確保すること、金芝河氏ら政治思想犯として逮捕、投獄されている人たちの即時釈放と人権回復を図ること、韓国で重刑を判決され、あるいは求刑されている在日韓国人、在日韓国人留学生に対して人権尊重の立場から早急に適切な措置をとること、それらについて納得できる解決が図れない限り、韓国政府に対する経済援助を中止すること、その他ありますが、そういうことが書かれております。署名しておられるのは、全国の大学教授、作家、芸術家、いろいろの部門の著述家、宗教家、医師、社会運動家など、現代における日本の良心を代表するといってもいいような知識人二百三十三人であります。代表には国際基督教大学名誉総長の湯浅八郎先生、立命館大学名誉総長の末川博先生、同志社大学前総長の住谷悦治先生、この三氏がなっております。政府は、こういう要請にこたえなければいけないと思うのであります。この人たちだけのこれは行為ではない、広範な国民のこれは要望でもあるわけでありますから、こういう要請にこたえる必要があると思うのでありますが、その点についての外務大臣の御意見をお聞きしたいんです。
  102. 中江要介

    政府委員中江要介君) いま星野委員の御指摘の要請書か何かの文書は外務省はまだ存じておりません。しかし、韓国の問題についていろいろの意見があることは、私ども、もちろん平素から承知しております。いまお読み上げになりましたような意見を持っておられる方も多数ございますし、それと異なる意見を持っておられる方もあるわけで、政府としては一貫してどういう姿勢でいくかということは申し上げるまでもございませんが、一九六五年に関係を正常化いたしました一番近い隣国である、そして歴史的にも文化的にも過去長いつながりのあった朝鮮半島との関係、これを何とかいい関係に持っていきたいという発想から、まず一九六五年に大韓民国との間に関係が正常化されまして十年余りたったわけでございまして、この隣国との間に不信の情、不信感を醸成することは極力避けなければいけないし、むしろ信頼関係を強めて友好協力関係を持ちたい。しかし他方、これだけ密接な関係が官民ともにあるわけでありますので、いろいろの問題が起きます。いろいろな問題については、お互いに独立国同士として主権を尊重し、内政に干渉しないという原則のもとで、その範囲内でもし問題があればそれを友好裏に解決していく。韓国との関係を大事にして、その上で朝鮮半島全体との関係を良好なものに将来は展望していきたい、こういう考え方でございまして、この考え方についても理解を得ているという確信のもとに、個々の問題については外交関係外交経路のもとでできる限りのことはやってきた、こういうふうに思っておるわけでございます。
  103. 星野力

    星野力君 先ほど国連決議、南部アフリカについての国連決議の問題を申し上げましたが、一見内政干渉に見えるようなことでも、人権擁護の立場からはあえてしなければならぬということでもあると思うのであります。しかし、普通の国と国との交際で主権の侵害や内政干渉があってはいけないことは言うまでもありませんが、韓国との関係はまさに主権の尊重、お互いの内政不干渉という立場からももっときちっとした処置が必要であり、毅然とした日本政府外交が必要である、こういう問題だと思うのです。いま申し上げました問題について外務大臣からもちょっと御所見拝見したいんです。
  104. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 詳しくは中江アジア局長から申し上げたのでございますが、われわれ外交をつかさどる者といたしますと、やはり先方国内の事情で起きたことについては容喙できないと、人権擁護である、あるいは人権が棄損されておるという判断も、これは本当に色の違う人種の間で少数の白人が多数の黒人の人権を無視しているというような現実の事実と、若干韓国の場合、判定の仕方が違うように存ぜられるのであります。  もう一つ非常にいやな記憶を呼び起こさなければならぬのでございますが、韓国側においては、かつて日本の統治下にあった、三十六年間日本の圧政に悩んだということを言うのでございまして、また日本がその韓国の内政に干渉してくるのかというふうな感じ方が、他国の場合と違うように私は思います。そういう点については非常に慎重に考えていかなければならぬのではないかという一点がありますことを申し添えさせていただきたいと思います。
  105. 星野力

    星野力君 大臣は衆議院の委員会で金大中氏に日本から医師を派遣することを検討すると言われたように承っておりますが、そうでございますかどうかということ。
  106. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 衆議院の委員会で医師の派遣の問題が理事会の問題として取り上げられるという話がその日にございました。私に対する質問は、あの問題についてはどうするんだということでございましたので、私は人道問題としての見地で――政治問題としての決着はついておるし、外交的にはもう了解があって、それ以上のことは――われわれの了解を決定したんでございますからそれを超えることはできないが、やっぱりヒューマニズムというものはあくまで存在するんだ、そういう見地で何かができるならばというふうには考える。ヒューマニズムの見地からお気の毒な情勢であればそれについて考えるということを申したので、医師の派遣ということを直接クォートしたわけではございません。
  107. 星野力

    星野力君 派遣の問題はそういう事情わかりましたが、仮に派遣されるとしますと、その派遣される医師がどういう診断を下してくるにしましても、金大中氏の生命に対して日本政府はこれまで以上に大きな責任を持つことになるのではないかということを考えるわけであります。人道上の立場からと言われますけれども、すべての問題がこの問題については政治的に利用されるということも考えなきゃもちろんいけないわけであります。そうしますと、朴政権の牢獄にある金大中氏の生命に、日本政府としてその生命に責任を持てるかどうかという問題があります。私は、この問題では金大中氏を、医師を派遣してもよろしいですが、派遣した上で日本で治療できるように交渉すべきであると、こう思うんですがいかがですか。そこまでひとつ考えませんか。
  108. 中江要介

    政府委員中江要介君) これは、まず医師団の派遣そのものについて、外務大臣が先ほど御答弁になりましたように、まだそういうことを具体的に頭に描いての答弁ではなかったとおっしゃっておりますし、将来どういうふうに発展するかは私も存じませんけれども、金大中氏を日本に連れてきて治療するというその考え方には、相当いままで日本がこの事件について韓国政府との間でいろいろ交渉し、決着し、了解し、さらにその了解を確認してきているというその経緯から見まして、非常にむずかしい問題がたくさん含まれているということをとりあえず申し上げなきゃならぬかと、こう思います。
  109. 星野力

    星野力君 この問題もう少し申し上げたいんですが、ごらんのように時間が参りましたので、そのほかの韓国に対する経済援助の問題についてもお聞きしたいと思いますが、これはこの次の機会にひとつゆっくりしょうと思います。  ただ一点、最後にお聞きしておきたいのは、例の八月十八日に起きました板門店事件、大分日時もたちますが、いろいろの情報もあの問題についてお持ちになっておると思いますが、スチルウェル在韓国連軍司令官が六日に辞任を前にして記者会見を行った。その席で例のポプラの切断――ポプラ切断作戦と言っておりますが、ポプラ切断作戦は北の出方によっては朝鮮半島に緊張激化を招く危険性があった、こう述べたということを、私これは新聞報道だけで詳しいことは知らないんでありますが、そういうふうに報道されておりました。そのとおりとするとこれは非常に重大な発言だと思うのであります。日本としても無視できない発言だと思うんでありますが、それについて情報を持っておられるのか、あるいはアメリカ側に照会なされたのか、それをお聞きしたいわけであります。  あのスチルウェル将軍の発言では、ポプラ切断については事前には北側に何も通告を行わなかったと、こうなっておりますが、そうしますと、これは非常に挑発的な行為をやって北の反応、出方をテストしてみた、そう見れるわけでありまして、これは非常に危険な実験、火遊びといいますか、一種の瀬戸際的な作戦であったとも言えるわけでありますが、やたらにこんなことをやられてはこれは大変であります。日本としても迷惑至極、どういうふうにお考えになりますか。どういう情報をお持ちでありますか。それから、それについてどうお考えになるか、この点をお聞きしたいんです。
  110. 中江要介

    政府委員中江要介君) 第一点の、情報といたしましては私どもも新聞報道で報道されている以上のものを持っておりませんし、また、それを確認するといいますか、特に求めているということもございません。  それをどう見ているかという問題ですが、これは御承知のように、あそこは国連軍と北朝鮮軍及び中国義勇軍という軍事当局の間での休戦協定というもののもとで辛うじて一応の安定が保たれているということで、私どももあの地域がアジアにおける一つの不安定要因であるという認識は持っておりますし、それに対して当事者である国連軍なり北鮮軍なり中国義勇軍というのはどういうふうな思惑でどういうことをしているかということについては、第三者的に客観的な事実を見る以外に立ち入ってどうこうということはできない立場でございますが、私どもが得ておりますところでは、あのポプラの木というのは監視所からの休戦ラインを守る、共同警備区域を守る任務を遂行するのに邪魔になる枝であったのでそれを切り払うということであったということで、国連軍が挑発的にそういうことをしたというふうには受けとめておらないことが一つと、もう一つは、北朝鮮軍側のそれに対する反応が、あのときに国連軍将校二人がなたでしたか何かで撲殺されたというところに見ますように、感情的な不測の事態というものはやはりあり得る不安定な地域であるというふうに私どもは見ております。
  111. 星野力

    星野力君 いまの中江局長の御発言、私はそれでは済まない問題だと思うのです。命令を下した司令官自身が、北の出方によっては緊張の激化を招く危険性があったんだと、そのことを承知でこれはやってみたんだと、こう言っておるんですね。これは遠くヨーロッパやアフリカの問題じゃなしに、隣りの朝鮮半島の問題でありますよ。しかも、わざと事前には通告しなかったんだということまで言っておるそういう問題です。日本にとってもこれは重大な関係のある問題、これを照会もしない、それ以上情報の入手にも努めなかったというのでは、これは外務省としても非常な怠慢ではないかと思うのですが、これからでもこの問題についてもっと確かな情報を入手する努力はなさるべきだと思いますが、これは大臣どうですか、ひとつおやりにならなければいけませんよ、これは。
  112. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、東西の対立という関係が緊張緩和の方向に向かっておるということではありますけれども、局部的には対立が相当に激しい面もあるという今日におきまして、やはりそれをどう判断していくか、結局対立の中にも戦火が起きなければいいわけでございますから、その起きないという判断のもとに強硬に出る場合もあるし、起きては困るというのでそれをまた他の方法で起きないようにする場合もあろうし、そこは判断の問題であるというふうに思うんでございまして、ただいまの話はその判断の結果、これでおさまるという判断を下した結果であろうと考えておるわけでございます。
  113. 星野力

    星野力君 今後こういうことが二度と行われないという保証はないんですよ。今度は相手の出方が弱かったからこれでよかりたのだ、これで済んだということですけれども、こんな瀬戸際作戦的なことを繰り返されたらたまったものじゃございませんよ。そういう意味からも、この問題済んだ問題としないで、せめてアメリカ側に照会するなりきちっとした情報をとるなり、これをやっていただきたいと思うんです。どうでしょうか。
  114. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御意見として承っておきます。
  115. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 本調査についての質疑は、本日はこの程度といたします。  これにて散会いたします。      午前零時四十二分散会。      ―――――・―――――