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1976-10-29 第78回国会 参議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十九日(金曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員異動  十月二十七日     辞任         補欠選任      糸山英太郎君     後藤 正夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         柏原 ヤス君     理 事                 源田  実君                 藤川 一秋君                 森下 昭司君                 中尾 辰義君                 小巻 敏雄君     委 員                 亀井 久興君                 永野 嚴雄君                 福井  勇君                 赤桐  操君                 杉山善太郎君                 加藤  進君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       前田 正男君    政府委員        科学技術庁計画        局長       大澤 弘之君        科学技術庁原子        力局長      山野 正登君        科学技術庁原子        力安全局長    伊原 義徳君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    説明員        警察庁刑事局保        安部公害課長   浜田 栄次君        運輸大臣官房政        策計画官     塩田 澄夫君        消防庁危険物規        制課長      矢筈野義郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (原子力行政に関する件)  (核燃料物質国内輸送安全対策に関する  件)  (放射性廃棄物処理に関する件等)     —————————————
  2. 柏原ヤス

    委員長柏原ヤス君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十月二十七日、糸山英太郎君が委員を辞任され、その補欠として後藤正夫君が選任されました。     —————————————
  3. 柏原ヤス

    委員長柏原ヤス君) 科学技術振興対策樹立に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 福井勇

    福井勇君 原子力関係科学技術庁に新しく前田長官が就任されて、うわさに聞きますと、どうも技術系出身としては初めてだというふうに伺っております。前田先生という人はなかなか大臣になれないなあと言っておったんですが、技術系のためにおくれたということを聞きまして、ははあそうだったかということで納得がいきました。  私はそのことを引例に出しましたのは、ほかのことが言いたかったんです。それは日本科学技術そのものを、国会全体、与野党とも全部通じて科学技術を軽視して今日まできたという一つのあらわれがそこにもあらわれておると思います。たとえば科学技術庁が創設された初期のころでございますが、政治家としてはりっぱな御婦人がございました。しかし、科学技術のことについては全くこれは御存じない方でありました。非常にりっぱなほかの方面、厚生あるいは文教その他では屈指の御婦人でございましたが、科学技術の方のことはてんで御存じなかった。そういう方が科学技術大臣になられた。そういう間違った任命を当時はしたわけです。当時その大臣は一部の非難に対して予算をとってくりゃいいでしょう、予算を、と言って開き直られたことを覚えております。腕のある御婦人大臣であったので、予算はがっちりと取ってこられました。それですっかり頭が下がってしまったということがありますが、とにかくそういう素人の——またその後各大臣が任命されても、科学技術庁大臣というのはまあ伴食大臣といいますか、世間で申します、まあそういうようなことがよく口に上りまして、科学技術者の末席におる私たちとしてもおもしろくなかったのであります。しかし、今度前田さんがなられて、技術系の初めての大臣だというので、世間評判がいいし、私もわが意を得たりということで心から祝福しているわけでございます。  うわさに聞きますと、衆議院科学技術対策特別委員会——参議院も後ほど申しますが、ほとんど超党派科学技術の面では、各委員会特別委員会のうちの模範的な運営をされておるということを聞いております。私は参議院の方の科学技術対策委員会の方でまだ日が浅いので、りっぱであるとかどうとかいう批判がましいような生意気なことは申しませんが、ほとんどそうであろうと、名委員長のもとにりっぱに運営されておるという気がいたします。  そこで前田大臣に質問をいたしますが、私は与えられたのは三十分でございますけれども、気に入らなければまたのときに保留さしてもらって、三十分でも一時間でもまたお尋ねをするということを保留さしてもらいますが、きょうは委員長から三十分だぞという御命令でございますので、その以内にいたします。主として私は原子力関係のことをお尋ねいたします。横におられる伊原さんなどはこれはずいぶん、前田大臣以前ぐらいから原子力関係のことにタッチしておられまするから、あるいは伊原さんに答えてもらってもいい場合もあろうと思いますから、その点は御自由に願います。  昭和二十九年、吉田内閣の当時に日本原子力最初予算がつきました。これは第五次吉田内閣文部省予算に上げて、大達文部大臣のときでありました。すでに、二十九年ですからいま五十一年、本当に長いことでございました。当時、まあ新聞社の方もお見えになるかもしれませんが、世間では中曽根さんがその予算文部省へつけたというふうに記録されておりますが、それは駒形工業技術院長と、——これからちょっと鼻についたようなことを言いますが、当時文部政務次官福井勇とがつけたのが本当であって、そのことを記録に残したいために発言しとるというような、ちょっと鼻についたことも申し上げます。これが本当です。  そこで、その当時は原子力先進国と言われるところの、たとえば最初平和利用に初めてつくったイギリスコールダーホールヒントン卿が難行苦行してつくったコールダーホールその原子力発電所を、その二十九年以後からたびたび科学技術庁の人や産業会議の方や、与野党を問わず衆議院参議院の方も見に行って、そのモデル東海村へ持ってきたことは御存じのとおりであります。当時はヒントン卿を初め、あるいは——ヒントン卿は数回日本へ来てもらったです。それからイタリアのローマ大学アマルディ博士原子力のこれも先達、ドイツのハイゼンベルグ、デンマークのニールスボアー、それからフランスの当時の原子力委員長ペラン博士、こういう人たちをことごとく日本へお招きして、そうして日本の新たなる平和利用の面に対するいろいろの示唆を受けた。議会も民間産業会議もそのときにできて、非常にピッチが上がった。——私がこれから何を言おうとしておるんだということを先に申しますが、そういう非常に急ピッチで上がってきて、そうして当時コールダーホールと前後して米国のヤンキー原子力発電所、それからインディアンポイント、これらのものをたびたびモデルとして——モデルに視察に行って、そして東海村の基礎ができた。非常にピッチが上がったです。国会産業会議民間電力会社ピッチが非常に上がった。ところがこの三、四年、五年、まあこのごろのはやりの言葉で言うとスローダウンとかいう、私たち明治時代だからそんな言葉は言いたくないわ。まあ非常に低調になってきた、スローピッチになってきたという気がしてならないのです。一「むつ」の問題だけじゃありません。  そこでこの石油ショックの前後から世界は、日本が特に石油ショックに大きな影響を受けたことは御存じのとおりでありますが、世界各国ともこの石油のあのショックのときに、これは大変だというので、エネルギー対策を再びピッチを上げて検討を加え、そして原子力に新たに目をつけるようになったのでありますが、日本はどうでありますか。いま申し上げたような、もっとたくさん申し上げたいけど、時間がじきになくなってしまうので、省略して、言いたいことを十分の一ぐらいに省略して申し上げるわけでありますが、本当ピッチが下がってしまったと。もっともそれはそうでしょう。原子力発電所一つつくろうとしても東京電力が、中部電力が、関西電力がそれぞれつくろうとしても土地の問題で、世界各国にはその支障がないのに、日本ではそれの問題だけでも五年、十年とおくれてしまう。このエネルギー対策をいまこそやらなきゃならぬ。それで科学技術庁遠慮会釈なくもっと大蔵省に言って、言ってといって実力者前田長官が来られたのですから、大蔵省予算の門をもっと開いて、国民啓蒙運動をもっと政府がやるべきだと。もっともいままで政府自体では、科学技術庁では至れり尽くせりの啓蒙宣伝はしておると必ず答えます。なるほど努力しておるということはよくわかります。わかりますけれども、まだ足らぬ。それは世界各国原子力先進国と比べて日本がいかに難儀土地柄であるということを考えますというと、もっと予算をつけて、そうして民間原子力関係土地の係争問題まででもいろいろ助力を、手を差し伸べて、いろいろな問題を解決してやるということにしてもらいたいと思います。  たとえば「むつ」の問題を一つ取り上げても、これは前の佐々木長官から難行苦行して、国会でも難行されて、一福井がここで三分か五分で右から左に解決するなんという、そんなおこがましい、そんな考えは持っておりませんけれども、国民にもっと知らさなきゃならぬと思う一例を申し上げますれば、いま日本海でも、太平洋岸でも、「むつ」の港のあのすぐそばまででも、ソ連原子力潜水艦アメリカ原子力潜水艦も、もう何十隻となく遊よくしておる。まあ原子力商船としては「サバンナ」も失敗したかもしれません。「むつ」も失敗しかけたかもしれませんけれども、原子力潜水艦は三千トン、五千トンというものが地中海にも、大西洋にも、日本海にも、陸奥湾のすぐそばにも、そこらじゅう遊よくしております。しかも、それはほとんど害がないとされて、ソ連アメリカも、それから原子力潜水艦はもちろんフランスも持っております。イギリスも持っております。それらは全く安全な計数を出して運航しておると私たちは確信をしております。そういう原子力アレルギーというものをやっぱり、技術家出身大臣が来られたのですから、ひとつ払拭してもらうような努力をぜひこの際していただきたいと、大きな期待国民は持っております。それを願いたいものであります。  原子力の問題としましても、コールダーホール時代から見れば、二十年もたって変わってきて、新型転換炉やあるいは再処理工場などのことでも頭が痛いことで、いろいろその工場土地選定の問題でも困難はありますけれども、いま前段に申し上げました一つ国民原子力アレルギーをもっと取ることによって解決が一歩先んずることができるというふうに私は思います。  そこで、総括的なことを申し上げましたので、どれを答えたらいいかということを大臣は迷っておられるかもしれませんので、答えてもらう中心点を申し上げます。  気に入らないと言うと、先ほど申し上げたようなただし書きをつけますが、世界各国から新しい原子力の進み方について、昭和二十九年から三十年ぐらい、三十五年ぐらいに至るような、現在の科学者を呼んで——あした呼んでくれとは言いません。新しい一つの行き方について五人か十人日本へ呼んで、そうして啓蒙運動をしてもらうという何らかの方針をとる意思があるかどうか。しかし大臣は、前田長官といわず、ここ二、三日か十日のうちに首になっちまうかといううわさ新聞に出ておりますけれども、前田大臣のことじゃありません、一般的なことで。しかし、日本のいまの文部大臣前田大臣はずっと残るであろうと。永井文部大臣評判がいい。野党の方も、まあ永井文部大臣はいいなと言って、皆さんが言っておられるということを聞いておるし、私も。前田大臣技術者としてはまあ三、四回の内閣はやっぱり続けてもらわにゃならぬといううわさが濃いので、十日ばかりでやめてもらう人に私は頼みはしませんが、そういううわさのある大臣でありますし、技術者期待がありまするから、いまそういう啓蒙運動のために努力をしてもらう御意思があるかどうかということが一つ。  それから今日の科学技術庁は、そこにいられる伊原君を初めとして、科学技術庁の飛躍してきたその内容、いろいろ資料収集は、アタッシェの力が非常に大きかったと。私はその努力は、いずれもりっぱなアタッシェが行っておりました、いままで。一人も、いま出ておるような、裁判官のようなくずはなかった。それでアタッシェをもう倍か三倍ぐらいにして、これも難儀なことですけれども、それは前田大臣の力ならできると思う。もう二、三倍にふやして世界先進国アタッシェを送って、そうしてこの科学技術の飛躍を図っていただきたい。  それからエネルギー対策について、現在各電力会社が自分の会社の力で、原子力発電所にしても水力発電所にしても、難行苦行して、その開発に非常な困難に逢着しておるんです。九州電力から北海道電力まで全部。そういうことについて、エネルギーの将来を考えるというと、政府が知らぬ顔しておるというのはおかしいと思う。知らぬ顔とは言いませんよ。若干のことはやっておるといって、総理大臣に聞けばどうこう、こうこうやっておると、きっと答えますけれども、私たちはそんなことは承知できません。もっと積極的に科学技術庁が音頭取って、関西電力なら関西電力、君の方、今度の松江の発電所について難行苦行しておるなあと、これはひとつ与野党そろって解決するように手をかそうと。中部電力だったらまた伊勢の海岸の方においてもう五年も前に竣工しておるべき予想のある原子力発電所ができない。また、東京電力も同様のことです。そういうようなことでありますので、ひとつ発想の転換をして、こういう点では与野党一致しておる科学対策委員会ですから、大臣の意向がそういうことで積極的にひとつ取り組む気持ちがあるかどうか。あいまいな答弁であれば一番先に、これは三度目でありまするから委員長に頼むときに一時間ばかりいただいてどんどん追及する覚悟でありますが、以上のことについて大臣の御答弁を求めます。
  5. 前田正男

    国務大臣前田正男君) 大変科学技術原子力について御理解ある御意見、御説明でありまして大変心強く、また同感の意でございます。ぜひひとつ科学技術発展のために、また原子力のためにもいろいろと御指導を願いたいと思うんでございますが、その中で最初に具体的なお話がありました啓蒙の問題につきましては、これは国民の方に十分な理解協力を得ることがぜひ必要でありまして、できるだけわれわれも努力しておるところでございますけれども、御説のとおり必要があればまた外国の方も来てもらって、ぜひひとつこの啓蒙宣伝には十分な対策を講じていかなければならぬと思っております。ちょうどこの二十六日が原子力の日でありまして、政府新聞その他に広告も出しましたり、いろいろな対策を講じて御理解を願っておるわけでございますけれども、さらにひとつ努力をしたいと思いますし、お話のように必要があれば外国の方にもひとつぜひ来てもらって、原子力についても御理解を得たいと思っておるわけです。  二番目のアタッシェ成果につきましては、これはもう大変な成果でございまして、私たちが一番初め原子力の問題で基本法の制定のために超党派で参りましたときにも、いまの向坊東大教授アメリカの大使館のアタッシェにおりまして世話になったんですけれども、その当時からもうこの方が一番アタッシェの初めじゃないかと思いますが、わが国原子力科学技術発展には非常に効果があったと思います。これは科学技術の性格上各国と十分な協力をして、また各国の情勢をよく認識して進めなきゃならぬ性質のものでありますので、十分にこのアタッシェ活動期待しなきゃならぬと思います。毎年一人ずつぐらいでありますけれども、いまふやしておるわけでありまして、できるだけひとつ来年も二人の増員の要望をお願いしておりますけれども、できるだけひとつこれはふやしていきたいと思うんですけれども、ただ科学技術庁だけじゃなしに、一応外務省との問題もございますし、また大蔵省の問題もありまして、そう急速にやりにくいと。おっしゃるとおりまことに残念でございますけれども、しかし、着実にひとつふやしていって、このアタッシェの非常に有効な活動というものをぜひ期待し、またアタッシェに行きました人がこちらに帰りまして、われわれの科学技術庁の中を初め、各省においても大変その経験を生かして、現在のわが国科学技術政策推進に大いに活躍していただいております。そういう点から言っても、人材養成という意味から見ましても、ぜひひとつまた人材の活用という意味から見ましても、アタッシェはなるべくひとつふやしていきたい、これは私も同感でございます。  それから最後のエネルギー対策全体といたしまして、今後の不足していきます部分を補っていきますものとしては、当面原子力がその主力であることは御承知のとおりでございます。そのほかにサンシャイン計画等いろいろとございますけれども、何といいましても、やっぱり原子力がその主力であることはやむを得ません。また現在の事情から見まして、石油産出国世界各国エネルギー需要量に見合うだけの増産をするという可能性は非常に少ないわけでございますから、石油の値段もだんだんと上がっていきますし、石油自身需要に見合うだけは十分に手に入りにくくなってくるわけでございますので、何としても原子力でこれを補っていくということが、国民の生活の安定を確保する上におきましても必要なことだと私たちは思っておるわけでございます。しかしながら、この原子力の問題についてはわが国はいろいろと特別な立場にもおりまして、まず何といたしましても国民皆さん安全性理解してもらうということが一番大事でございまして、原子力はいろいろと問題ございますから、二重三重の安全装置をしておりますし、また安全審査その他にも多数の手間をかけておりますし、またいろいろの緊急措置だとか、あるいは警報だとか、いろんなものをつくって、安全は万全を期しておるわけでありますけれども、しかし、やはりこれが御理解を得なきゃならぬわけでございます。したがいまして、政府といたしましてもこの点については「むつ」の問題を初めいろいろな問題がございましたので、国会皆さんの御協力を得まして、科学技術庁にいままでの原子力局から安全局ということしの一月に新しい局ができました。従来政府の官庁で新しい局をつくるというのは大変むずかしいんでありますけれども、国会皆さん方初め、国民の世論を受けまして御支持を得て新しい局ができたわけでございます。これに伴いまして私たち安全研究予算を従来からだんだんふやしておりますけれども、四十七年ごろから比べますと、すでに約六倍くらいの予算をふやして百五十億ぐらいの予算をことしはつけておりまして、安全研究には力を入れておるわけでございます。しかしながら、さらにこのエネルギーの問題をこの際大きく取り上げるというために、どうしても国民皆さんの安全について御協力を得るためには、基本的に原子力政策行政をもう少し検討した方がいいじゃないかという、こういう御意見がございまして、総理大臣のところに原子力に対します行政懇談会私的諮問機関ではございますが、できまして、いろいろとこれはまた各方面の方に御協力願いまして、いろいろ貴重な意見をいただきまして、それをいろいろの御討議の結果集約されてまいりました。そうして、それはことしの七月に一応の提言がなされておりまして、これを受けまして政府はこれを尊重するという方針のもとに、まず第一に原子力委員会を二つに分けまして原子力委員会原子力安全委員会、こういうものにいたしまして安全審査を十分にやろうということを考えておるわけでございまして、すでにこれは五十二年度の予算科学技術庁から要求をいたしておる次第でございます。いずれまた国会皆さん方の御審議を受けまして、これはぜひひとつ実現するようにお願いをいたしたいと思っておる次第でございます。  さらに、そのほかに安全の行政一貫性でありますとか、あるいはダブルチェックの問題であるとか、いろいろの御提言がありまして、これらを実現していくということについて、政府部内でこれがための行政連絡機関を設けまして、いまこれを各省以下どういうふうに実現するかということで努力しておるわけでございます。しかし、私が就任いたしましてからさらに考えますことは、この安全性を確保していくためには、実は使用済み燃料以後の問題等が、いわゆる核燃料サイクル全体といたしまして多少おくれております使用済み燃料以後の問題も促進しなきゃならぬ。あるいは先ほどお話がございましたとおり、各電力会社等がいろいろと住民の方たちの御理解を得て発電その他をやっていこうとしておりますけれども、なかなか困難な問題もございます。すでに電源三法等ができまして地域開発協力することになっておりますけれども、まだ十分な点が進んでおりません。それからまた、将来にわたりましての新しい新型炉あるいは増殖炉等の問題の研究等も相当進んでおりますけれども、これも次々と対策を講じていかなきゃならぬ。こういういろいろの問題がございます。そこで、原子力安全委員会を設ける機会原子力全体の構想についてもひとつ基本的に安全を重視して、また、その安全の立場からおくれていると言われております部門も促進して、そして全体の原子力政策が必要なエネルギー政策にも対応できるようにひとつ進めていかなきゃならぬのじゃないかと、こういうことで、一応安全委員会予算要求いたしました科学技術庁がそれに伴いますいろいろの原子力政策についての構想をまとめる必要があるんじゃないか。そしてそれを政府各省とか、あるいは政府の幹部でありますとか、あるいは与党とか、その他各党の方にも御理解を得なきゃならぬわけでございますが、そういうふうな構想をまとめる必要があるんじゃないかということで、総理大臣その他の御了解を得まして、実は予算要求をいたしております科学技術庁大臣立場原子力関係権威者方たちに基本的な構想方針を承る場をつくりたいということをお願い申し上げましたところ、各界の方とも皆非常に気持ちよく御賛同賜わりまして、第一回の会合を二十一日に開きました。次回は十一月六日の予定をしておりますけれども、基本的な構想の大綱をお聞きいたしまして、この安全委員会が実現し、それに伴います原子力行政、あるいはまた原子力推進の仕方、あるいは安全上からも問題があると言われております使用済み燃料以下がおくれている点を促進すると、こういうようなことで、国民皆さんに安全に対しまして政府が力を入れているということを理解を得るためにもそういう原子力政策全体の構想をまとめていきたい。そうしまして、これらをできたならば今年末か、あるいは来年正月に少しかかるかもわかりませんけれども、五十二年度予算の決定する機会にできるだけひとつ反映していきたい。もちろん五十二年度予算だけで解決できる問題でありません問題も残りますから、それはまたそれで次の政策にひとつ反映していかなきゃならぬかと思うんでございますけれども、五十二年度予算の決定のときにも、そういう基本的な意見をもとにいたしまして、政府として国民理解を受けるために安全性中心にいたしました強力な政策をひとつ進めていかなければならぬのじゃないかと。また、それに続きましていろいろの原子力政策を進めていくし、福井先生からお話がございました各電力会社等がやっております開発の困難な問題についても電源三法だけじゃなしに、それはもちろんでございますが、電源三法を今度は大分と内容をもっと地方の方に役に立つように運用を改めることに五十二年度はいたしておりますけれども、しかし、さらにこの開発の困難な問題については政府もできるだけひとつ、どういう点で協力できるかというようなことも含めまして基本的に構想を練っていく。そして将来にわたりまして、ひとつ日本の国家として必要なエネルギー対策についても原子力が十分に対応できるようにしていかなければならないのじゃないかと、こういうふうな考え方でおるような次第でございますので、どうかひとつよろしく御指導、御鞭撻をお願いしたいと思っておるわけであります。
  6. 福井勇

    福井勇君 大臣答弁が長過ぎてしまったもので、私の時間がなくなってしまったので、内容は大変結構でございますから、その点については不満がありませんが、私の時間をとられてしまったので、この次にいたしますが、一言。  各電力会社エネルギー対策について、特に原子力政策の問題について成田空港の二の舞にならぬように政府から特に手を差し伸べていただきたい。どこの電力会社なんてそんなけちなことは言いません。日本エネルギー対策の将来のために、高みの見物を、まあそうはしておりませんけれども、前田大臣になったらやっぱりよくやっているなあというふうに特に希望して、きょうの質問を終わることにいたします。
  7. 赤桐操

    赤桐操君 私は大臣にちょっと科学技術関係の安全性の問題を中心といたしまして、若干お伺いをいたしたいと思います。  長官は、去る原子力の日のちょうど二日ほど前、二十四日に青森で、「「むつ」放射線漏れは当たり前」であると、これは読売新聞に報道されております。さらにまた、「放射線騒ぎおかしい」と、こういう形で日経に出ておる。朝日新聞では「実験だから当然」だと、こういう形で報道されておりますけれども、ある原子力講演会の席上でこういうお話をされたそうでありますが、この真意をまずひとつ伺いたいと思います。
  8. 前田正男

    国務大臣前田正男君) ただいまの点につきましては、講演会の席でございましたので、言葉足らずの点がございまして、翌日知事のところを訪ねまして、知事初め新聞記者の方たちにもその場で私から真意を申し上げまして釈明さしていただいたわけでございますけれども、われわれといたしましては、その当時これは最善であると、そう思って出航したと思うのでございます。もちろんどこか悪いところがあるなら当然出航を見合わして修理して行かなければならぬわけでございますから、これで大丈夫だと思って出航したわけでございますけれども、しかし、やっぱり実験でございますので、そういうふうな事故が起こり得る可能性があるというようなことを申し上げたわけでございます。しかし、そういう事故の起こる可能性があり得ますので、警報装置その他をつけまして人体とか環境に影響を与えないようにしなき辛いかぬと、こういうことでございまして、われわれといたしましてはできるだけひとつ最善の安全を、努力してそういうことを確かめて処置すべきでありますけれども、実験でありますから事故も起こり得るということを申し上げたわけでございます。
  9. 赤桐操

    赤桐操君 この原子力船「むつ」が、一昨年の秋であったと思いますが、放射線漏れを起こしまして、当時国民的な受けとめ方は大変な実は高い関心の問題であったと思うのであります。日本の場合は依然として今日被爆国としての立場にあるわけでありまするし、今日なおこの悲惨な状態が続いているわけでありまして、こういう状況の日本という国情の中におきまして、この原子力問題、特に保安をめぐる問題について、これはまさしく未解決の緊急課題だと、こういうふうに私は考えます。特にこの人体に及ぼす影響、放射性物質が長期間にわたって人間の体に及ぼしていく影響などにつきましては、今日現実の問題としてこれは未知の部分が多いと思うんですね。わが国が唯一の被爆国としてこの体験をしてきたわけでありますが、それでもとうていこれがどう将来遺伝を起こしていくのか、あるいはまたその他のいろんな問題を発生していくかということにつきましては、これはまさしく未知の問題だろうと思うんですね。こういう状態の中で、なるほどお伺いいたしますれば、実験上いろいろの問題が起こる可能性はあると、こういうことで言われたと思いますけれども、しかし、かりそめにもそういう形が国民の側に伝えられて今日一層その不安をあおるという状態が出てきたということについては、これはやはり大変大きな長官としての責任を伴う問題ではないかと私は考えてます。  ちょうどこの「むつ」の問題が発生したときの状態を私も振り返ってみたんでありますが、当時は森山長官であったわけでありまして、この問題については当時の田中首相に早速報告がなされまして、首相の周辺にも、私的な諮問機関を設ける、こういうことで大変大わらわな状態を呈したと思います。いろいろその後経過をしてまいりましたけれども、ともかく当時の状態というものは、総理を初めといたしまして、この問題に対しては直ちにひとつ処置をすると、こういうことで決断をしたはずであります。それほど大きな問題であったわけでありますね。原子力技術というものはどだい先導的な技術であるだけに、これは全く無事故であり、無故障の安全性の確立というものが強く求められておるべき筋合いのものだと思うんですね。原子力三法ができ上がりまして、これに伴って科学技術庁が発足した、三十一年の五月十九日に発足をしたわけでありますが、以来これでちょうど満二十年を経過いたしております。しかし、当時からこの二十年の間にいろいろと政府もその原子力の問題をめぐって努力をされたと思いまするけれども、そしてあるときにはバラ色の夢まで国民に抱かしてきたと思いますが、しかし、国民の側の受けとめ方というのはそうではなくて、年々不安と不信感というものが増大してきている、こういうように私どもは受けとめておるわけですね。  そこでひとつ私は申し上げたいと思うんでありますが、こうした中で、これはアメリカあたりの場合と日本とはこれは完全に違うんですね。これはアメリカのいろいろな人たちと話し合ってみても、日本国民の受けとめているこの問題の受けとめ方とアメリカの側ではもう根本的に違っておるんです。その日本立場で私たちはいま政治的にこの問題に取り組んでいるわけでありますから、そこで私はこの種の技術については大変なこれは実は安全性を求められているものだと。したがって、言うなればこれは安全性の哲学のもとに繰り返し繰り返し慎重な実験を行って、その実証によって内容を高めていくというものが本来の私はあり方だと思うんです。長官はこれはもう科学者としましてそういう考え方をお持ちだろうと私は思いますけれども、そうだとすると、今回の御発言はいささか不用意であったんではないか。そしてまた、ずいぶん国民の側にとってはちょっと逆なでされた感じがしている。大変率直な言い方をすれば、「むつ」が少々の問題を起こしたって実験の途上なんだから仕方がないんだと、こういうように受けとられれば、これは居直った物の言い方として受け取られますし、さらにまた科学技術へのこれは明らかに挑戦ではないか、こういう形で受けとめる層もあると思います。  要するに、こうした形の中で発生した今回の問題については、ともかく最高責任者としてこれは相当の責任を感じておられなきゃならぬと思うんです。そういう立場で世論は長官に求めていると思いますけれども、長官のひとつお考えをお示し願いたいと思います。
  10. 前田正男

    国務大臣前田正男君) お説のとおりでございますので、私も言葉が足りなかった点は遺憾であるということで釈明をさしていただいておるわけでございますけれども、しかし、私たちはこの原子力につきましては安全が第一であるということから二重、三重に安全装置もつくりますし、また原子力の許容量につきましても、国際的の許容量より厳しく日本は設定いたしてやっておるわけでございまして、さらに、そういうふうにして最善を尽くして努力しておりますけれども、やはり実験でございますから、そういうふうな事故も起こり得るわけでございますので、そういうときには十分に人体とか環境に影響の与えないように警報装置をつくりまして、そしてその対策を進められるようにしなきゃいかぬ、こういうことでございます。  自分たちは安全、信頼性をできる限り予測して、それに十分の対策は講じてやりますけれども、それで安全だということでいないで、やっぱり実験ですから、事故も起こり得る可能性があるので、そういうときにはやっぱり人とか環境に影響を与えないように十分な警報装置、そういう警戒装置もしておかなくちゃいけないんじゃないか、こう思っておるわけでございます。  私たちといたしましては、おっしゃるとおり、技術の発展というものはやっぱり段階を経なければなりませんので、できるだけひとつ将来のことも考え、またわれわれの可能な限りの予測を立てて安全というものについては十分に対策を講じなきゃいけませんし、それもまた原子力は普通の機器と違いまして、特に二重、三重に安全装置をつけるということでやっておるわけでございます。やっておりますけれども、しかしながら、やはり実験でございますので、そういうふうな事故も起こり得ますので、起こりましたときに対策として警報装置その他で万全を期すと、こういうふうな仕方でいかなければならぬと思っておりまして、先生のおっしゃるとおり、これはひとつ慎重にこういう問題を処置して、安全に対しては国民皆さんの御理解を受けるようにひとつ努力しなきゃならぬ、こう思う次第でございます。
  11. 赤桐操

    赤桐操君 私は、長官の科学技術観といいますか、安全性尊重の哲学観といいますか、安全の哲学と申しますか、これをやはりこの際真剣にひとつ求めたいと思います。  同時にまた、今回の発言によりまして、国民各層各界におきましては相当の不信感あるいはまた不安というものを持っておると思いますので、その解消の方策を具体的に樹立をされる必要があると思うんですね。いまもし樹立をされているとするならば、それについてひとつお示しを願いたいと思います。
  12. 前田正男

    国務大臣前田正男君) この問題につきましては、すでに御承知のとおり、政府でこれがための調査会を設けまして具体的に検討を進めまして、それに基づきましてこれがために十分な修理の体制を整えますと同時に、将来の原子力船のあり方につきましても、原子力船の懇談会を設けまして検討をいたした次第でございます。その意見を尊重してやっていくつもりでございますけれども、私は、しかしこの修理に当たりましてはそういうふうなことでお願いをいたしましても、修理を引き受けていただく長崎県佐世保に対しましてはなかなかやっぱり御理解を得るのにむずかしいわけでありますので、政府といたしましては、佐世保に入港しまして修理が終わりまして出港するまで出力試験をしない、出力上昇試験をしない、すなわち放射能は出さない、放射線に対する御迷惑をかけないと、こういう方針で佐世保において修理をする、こういうことでやっていきたい。そうしてその修理に三年ほどの時間をかけまして、出力上昇試験をやらなければ修理が完全にできたかどうかわからぬじゃないかという学者の御意見もございますけれども、われわれはその間にいろんな研究、実験等も、あるいはいろんなこの評価のための方式とか、いろんな理論等もございますから、そういうものも十分駆使いたしまして、そしてすでにある程度原研では実験的なことをやったわけでございますけれども、そういうものを生かしまして、時間をかけて完全に修理をすると、そういう考え方でおる次第でございます。
  13. 赤桐操

    赤桐操君 そこで私は核燃料物質国内輸送の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  核燃料が輸入されてまいりましてからの搬入実態についてはどういうようになっておるのか。具体的に申し上げまするというと、日立港から陸送をされてから三菱原子燃料会社への搬入の過程の中での問題でありますが、その実数、方法、乗務員への教育実態、関係各機関への連絡、周知徹底、こうした問題は具体的にどんなふうになされてきておるのか、まず伺いたいと思います。
  14. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) ただいまの先生の御指摘の点は、天然ウランあるいは濃縮ウランでまだ使用されておらないものを外国から輸入いたしましたものを、それが燃料加工工場にどういうふうに輸送されるかという御質問、特に三菱原子燃料会社という御質問でございますが、具体的に日立港から三菱につきましてただいま手元に資料を持ち合わせございませんので、至急調査いたしまして御報告いたしますが……失礼いたしました。日立港からは現在のところは輸入の実績、輸入し搬送したという実績はないそうでございますが、一般論といたしましてこのウラン、未使用のウランにつきましては特に安全上、非常に問題になるということはない性質のものでございますので、既定の法規に従いまして十分安全性を確保して輸送をいたしておるわけでございます。
  15. 赤桐操

    赤桐操君 いま日立港からの実績がないと言われましたね。どこから入るんですか、これは。
  16. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 主として東京港からと承知いたしております。
  17. 赤桐操

    赤桐操君 東京から入るならば、東京港から陸送されてくる経過があるでしょう。それを説明してください。
  18. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 一般的な手順といたしましては、通関手続を終わりました後で警察に御連絡をいたしました上で、法規に定めます輸送の基準に従いまして所定の工場まで輸送されるわけでございます。  具体的に三菱原子燃料にどういうふうに運ばれたということにつきましては、ただいまちょっと回数その他についての資料の手持ちはございませんので、必要でございましたら、追って御報告さしていただきます。
  19. 赤桐操

    赤桐操君 この資料はひとつ至急に調査をしてお願いいたしたいと思います。  それから東京港からこの三菱原子燃料会社へ搬入される、そこから国内各それぞれのところに陸送なり、海送なりをされていくと思いますね。この搬出していく場合の輸送の実数、方法、乗務員の教育訓練実態及び乗務実態、同じように関係機関への周知連絡の状況、こういうものについて明らかにしてもらいたいと思います。
  20. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 三菱原子燃料株式会社は茨城県東海村にあるわけでございますが、ここで燃料を製造加工いたしまして、これを各地にございます原子力発電所に陸送をいたしております。その陸送の回数につきましては、たとえば四十七年、四十八年ごろからの実績でございますと、四十七年が四回、四十八年は十二回、四十九年が十六回、五十年が十三回、これは失礼いたしました、PWR関係の燃料でございます。また、BWR関係も四十七年が十九回、四十八年で十一回、四十九年で九回、五十年で七回、こういうふうな数になっております。  この輸送をいたします場合には、先ほど申し上げましたように、関係諸法規に基準がそれぞれございますので、輸送容器の基準、これを十分満たした容器を使いまして、また、輸送に際しての安全上の規制の条件を十分満たしました上で目的地の原子力発電所まで輸送が行われる。その際、通過をいたします予定の都府県の警察関係及び消防関係の方に輸送計画の実態につきまして、これは業者の方から自主的な届け出が行われております。で、この届け出の趣旨は、もちろんこの輸送自身はきわめて安全なものではございますけれども、万一をおもんばかりまして関係方面に十分その輸送の実態を御承知いただくと、こういう趣旨でございます。なお、輸送に当たりましては、万全を期しまして放射線に関する専門家も添乗させまして、さらに放射線測定機器の整備等もいたしております。
  21. 赤桐操

    赤桐操君 最近の例で、東海村の三菱原子燃料株式会社から愛媛県の四国電力の伊方原子力発電所へ輸送された件がございました。これはこの九月の十四日から十六日にかけて、さらに二十六日にかけて、最近行われたようであります。これは東海村からどういう経路を経て、この四国の伊方原子力発電所まで輸送されたか、その経路をひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  22. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 伊方原子力発電所への新燃料の輸送につきましては、第一回目が八月二十九日から三十一日にかけて行われまして、第二回目が九月十四日から十六日、さらに第三回目が九月二十六日から二十八日と、三回に分けて行われております。その経路といたしましては、東海村の工場から茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県、ずっと通ってまいりまして、山口県の徳山港まで陸上輸送いたします。そこで、そこから船に積みかえまして伊方原子力発電所に備えられております専用の岩壁まで海上輸送をいたしまして、そこから発電所に搬入をいたしたものでございます。
  23. 赤桐操

    赤桐操君 端的に言うと、東海村から国道六号線を通って千葉県の我孫子、柏、流山、松戸、こういう繁華街を経て東京の葛飾、青戸、世田谷、これを経て東名に入ったわけですね。それでいまお話のようなコースを経て入ったと思うんでありますが、これは輸送会社はどこがやったんですか。
  24. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 日本通運と、それから上組という二社が関係しております。
  25. 赤桐操

    赤桐操君 このような輸送というのが始まったのは、これは最近では第一回が八月、第二回が九月十四日から六日、第三回が二十六日と、こうなっていますが、これは最近の話であって、かなり前から行われたと思うんですが、いつごろからこの輸送が始まって、どのくらいのものが運ばれたんですか。この点、ひとつおわかりでしたら明らかにしてもらいたいと思います。
  26. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 先ほど申し上げましたように、PWR燃料、BWR燃料それぞれあるわけでございますが、三菱原子燃料はPWR用の燃料を製造いたしておりまして、これを東海村の工場から搬出をし始めましたのは昭和四十七年からでございます。  数量についてただいまのところ正確な資料ではあるいはないかもしれませんが、たとえば昭和四十七年度の四回の輸送につきましては、集合体の数では合計三十体となっております。
  27. 赤桐操

    赤桐操君 それではその資料も正確なところを調べてひとつ提出をしていただきたいと思います。よろしいですね。  次に、四十七年から輸送がなされているわけでありますが、かなりのものが輸送されたと思うんですね。それでこの輸送の場合の行政上の監督指導、これが大きな問題になってくると思うんでありますが、いろいろ各省にまたがっておる問題だろうと思いますけれども、この点はどういうようになっておりますか。
  28. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 核燃料物宵の輸送につきましては、原子炉等規制法に基づく規制がまず行われるわけでございますが、そのほかに、これは輸送関係ということでございますので、運輸省の関係諸法規にも当然関係してくるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、運輸省と十分密接な連絡をとりまして、この輸送につきまして安全上特に万全の措置を講ずることにいたしております。なお、実質的に警察庁、消防庁関係にもいろいろ御指導、お世話をいただくわけでございますので、そちらの関係方面にも十分密接な連絡はとらしていただいておるわけでございます。
  29. 赤桐操

    赤桐操君 海上保安庁の方は関係ないんですか。
  30. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 海上輸送につきましては、先生御指摘のとおり、海上保安庁が関係してまいるわけでございます。
  31. 赤桐操

    赤桐操君 そこで、いろいろこれからひとつお尋ねをしなきゃならないんですが、千葉県の例を私のところでいろいろ調べてみると、大体十トントラックが十台ぐらい並んで——十台余と言っておりますな。荷台は全部ほろで覆われている。一般の人にはそれが核燃料であるかどうかということは、これはわからない。それで、そういう形の中で、大体我孫子から柏、流山、松戸、繁華街をずうっと通って東京に入って東名に入ったと、こういうことになっているわけなんですね。で、これは第三者が見てはだれもわからないわけですね。それから警察関係とか消防関係、あるいはまたいまのお話によれば運輸関係、総合的な関連がおありのようでありますが、そういうところの人たちも、ただ通告を受けた程度であって、これに対する立ち会いをするとか、あるいは誘導をするとか、いろんな規制を周りにしていくとかということも何らしていなかったようでありますね。たとえばパトカーがついて、いま危険物が通過するから御用心を願いたいと、こういう行為もしなかったようだし、あるいはまた交通規制をお巡りさんが出てきて、特にこの六号線は激しい状況にございますけれども、それを押さえるということもしていない。ただ、十台余の車が一つの編隊といいますか、組織をつくって並んで通過をして行ったと、こういう状況なんですね。しかも、これを運転して行ったその会社というのは日通であるわけですね。千葉県や茨城県や東名ぐらいの間は。そこの先はだれがやったか私は知りませんが、この辺はとにかく——あるいはまた日通ともう一社がやったようでありますが、いずれにしても、そういう形で運転をする人も別にそういう意識で運転したんじゃないと思うんですね。一般的な形でもってこれは取り扱われたと思います。なるほど科学技術庁の方の御答弁によれば、規定のとおりに扱いましたと、こういうことだろうと思うんでありますが、しかし、これだけのものが四十七年から今日までどれだけ運ばれたか知らないけれども、これは後で報告をいただくことになっておりますが、それがさっぱりどうも一般にはわからないかっこうの中で始末されてきているということは、これはいささか私は大きな問題じゃないかと思うんですが、この点はどういうように感じておられますか。
  32. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) いわゆる危険物の輸送につきまして、これは安全の確保を絶対条件とするということ、これは御指摘のとおりでございます。ただ、現在御指摘を受けております使用前の新しい燃料、これは御高承のとおりウランでございまして、ウランという元素は地殻の中にも普遍的に存在する物質でございます。放射性ではございますけれども、それほど強い放射性を持っておるわけでもございませんので、たとえば人間が手に持っても別に安全上差し支えがないという程度のものでございます。そういうものでございますし、さらにこれが被覆をされた形で、さらに安全上の基準を満たした容器に入れて運ばれる。さらにこれは低濃縮ウランでございますので、臨界管理という問題がございます。この点も十分に臨界にならないような措置をとりました上で運ぶわけでございます。したがいまして、やはり輸送の実態、その危険度の実態に応じて先ほどの先生御指摘のような危険物の通過というふうなことについての規制が必要であろうかと思われます。したがいまして、たとえばこれが使用済み燃料になりますと、先生御指摘のようなそういう十分の交通規制なども必要かと思われるわけでございます。  なお、この輸送の回数といたしまして、ただいま私が手持ちで持っておりますのは、昭和五十年が六十二回、五十一年が現在までに七十四回ということになっておりますので、これはおおむね概数でこの程度とお答えさしていただければと思います。
  33. 赤桐操

    赤桐操君 科学技術庁の方へ千葉県から問い合わせがあったと思いますが、それに対するお答えとして、陸送の安全性の問題についてのお答えとして、これは野菜かなんかを運ぶのと同じようなものなんだ、こういう回答をされたそうでありますが、これは私は、あなたいま手に持っても大丈夫だと、こう言われておるけれども、事実そういうような考え方をお持ちなんですか。
  34. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 野菜を運ぶのと同様という言い方は妥当ではないと思います。ウランという放射性物質の放射線の人体に与える影響ということから申しますと、手に持っても特に障害を与えるようなものではないという計算上の問題はございますが、しかし、このウランにつきまして、だから全然安全上の配慮なしに野放しで輸送していいというものではございません。そういう観点からいたしまして、法規に基づく厳密な規制は行われておるわけでございます。たとえば、これは非常に特別の容器に収納されるわけでございますが、その容器につきましてもいろいろ強度試験というふうなもの、あるいは耐火試験等も行われることになっております。そういうふうなことでございまして、技術上十分の安全を確保した上で運ぶということでございます。
  35. 赤桐操

    赤桐操君 陸送の安全性は大根か菜っぱを運ぶのと大体同じようなものだということは事実回答されたようですが、本当なんですか、それは。
  36. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) その具体的な回答文書を私いま持っておりませんが、もしそういうふうに受け取られたといたしますと、容器で十分密封しておるということ、さらに、輸送についての基準も十分的確に守られておるという観点からいたしまして、一般の輸送貨物と特に非常に違った取り扱いをする必要はないものであると、こういう趣旨の御説明を申し上げたのではなかろうかと思います。
  37. 赤桐操

    赤桐操君 野菜を運ぶようなものだと、こういうような解説をしたことは事実なんですね。私はほかのことを聞いているんじゃない。こういうことを言ったということが本当かと聞いているんです。
  38. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) ただいまのところ、そういう説明をしたという報告を受けておりませんが、先生の御指摘でもございますので、どういう御説明を申し上げたかは調査をいたしたいと思います。
  39. 赤桐操

    赤桐操君 昭和四十七年の七月二十三日の午前二時四十分、柏市明原一の一の二十一地先で、すなわち国道六号線の線上でございますが、通称柏駅前西口交差点と、こう言っておるんですが、ときわ相互銀行というのがございます。この銀行の前で当時核燃料輸送中のタンクローリーが追突をされた事件が発生いたしました。タンクローリーの運転者と同乗者がむち打ち症になりまして一カ月から約四週間のけがをした、こういう事実が発生いたしておるわけであります。昭和四十八年に追突した運転手を業務上の過失傷害で書類送致をされておるようでありますが、追突したのは同じ隊列を組んでいた会社の車であったと。長官御存じですか、この事実は。
  40. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) ただいまその詳細を承知しておりませんので、もし事実でございますかどうか、至急調査をいたしたいと思います。
  41. 赤桐操

    赤桐操君 あなたの方では御存じないと言われるけれども、千葉県の警察の調書で調べたものですから、あなたの方もひとつ真剣に確認してもらいたいと思います。  そこで、十台余りの車がこうして七十回以上通っているわけですが、この中でこういういまのような具体的な事故が発生しているわけですね。これは私は大変な問題だと思うんですよ。もし仮にここで衝突の結果、あるいはまた何か他動的な原因によって火災でも発生した場合どういう事態に発展するであろうか、あるいはまたタンクローリーが投げ出されていま想像もつかないような事件、事故として大きくこれが発展した場合に一体どういうことになるであろうか、こういうわけなんであります。大体事故というものはそういうものであって、安全局長の立場としては万全の措置を講じてやっておると言われることはよくわかりまするけれども、さめた気持ちでこういう問題を見詰めなきゃならぬと思います。そうすると、いまの柏市における事故の例に示されておりまするとおり、私はやはりこうした事故がこれから将来発生するということについての想定をきちっとしてかからなければならぬ問題だと思うんです。よろしいですか、安全局長。こういうようになってまいりますと、それこそ私は大根か菜っぱを運ぶような問題じゃないのですな、これは。大根や菜っぱなら投げ出されても問題じゃないけれども、少なくとも核燃料を輸送している自動車です。それがいまのような形でもってどんな事故に発展しないとも限らない、こういう状況に置かれているということをあなたはお認めになりますか。
  42. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 先生御指摘のように、核燃料の輸送について十分慎重に行わなければならない、これは御指摘のとおりでございます。ただ、この危険の度合いというものに応じて的確な対処をすべきであると思うわけでございまして、必要な度合いを著しく越えてまでいろいろな対策を講じるということが果たして適当であるかどうかという観点が一方あるかと存ずるわけでございます。追突ということにつきまして、私どもはいままで一回も事故はなかった、事故があったという報告は受けておらないわけでございますか、万一の事故、先生御指摘のような事故は、事故と申しますか、車の追突というのはあるいは将来あり得るかもしれないと思いますが、そういうことがありました場合でも、核燃料がそれによって周辺の環境に影響を及ぼす、環境を汚染するというふうなことがないということを確認した上で、輸送を強化と申しますか、輸送が行われるわけでございます。そういう観点からいたしまして、精神といたしましては先生御指摘のように、十分安全を確保するということは御指摘のとおりでございますが、いままでその安全性は十分確保されておると思いますし、今後とも先生の御指摘の御趣旨に沿いまして、十分安全な輸送を確保してまいりたいと考えております。
  43. 赤桐操

    赤桐操君 いまそうおっしゃるけど、あなたこれ警察の調書なんですよ。千葉県議会においての質問の中においても答弁が出ておる内容なんですよ。これはひとつ念のため申し上げておきますから、御調査を願いたいと思います。  まあいずれにしても、私はそれは一応ひとつ調査をしてもらうことにいたしますが、この程度の事故であれば確かに問題にならないで済むと思いますが、これは火災を起こす場合もあるだろうし、追突が激しければ核燃料物質が飛散する場合もあるだろうと思うんですね。そういう場合においても別にこれは差し支えありませんと、こういうことなんですか。
  44. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) ただいま問題になっております原子力発電所に用います燃料、これは燃料を焼き固めたものでございます。ペレット状に焼き固めたものでございまして、摂氏千度以上の温度で焼き固めたものでございますので、これが飛散するという性質のものではございません。まあいわば焼き物、陶器のような形のものでございます。それがジルコニウム合金の被覆管のさやに詰まっておりまして、それをさらに十分安全性が確保された容器に入れておるわけでございます。そういうものでございますので、こういう核燃料につきましては、衝突火災が起きましても環境中に飛散するということはないわけでございます。
  45. 赤桐操

    赤桐操君 火をかぶったときどうするんですか。火災を発生してまる焼けになったときどうなりますか。
  46. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 火災の可能性といたしましては、その輸送しております車の燃料が火災の原因かと思われますが、そういう火災の場合でも核燃料が環境中に飛散するということはないと考えます。
  47. 赤桐操

    赤桐操君 いずれにしても、事故というのは私はいまこういう状態の中で想定できないものだろうと思うんです。そうした中でいま行われている輸送方式というのは、これは大根か菜っぱを運ぶと同じようなかっこうでやられているというわけなんで、大変な実は私は問題だろうと思います。  そこで、東京都あたりには消防署では放射能検出員が万一に備えて出動できる体制があるそうでありますが、沿道のそれぞれのローカルの署にはそうした準備は私はないと思うんですね。それで、さらにまた消防署の職員としてもそれだけの技術的な訓練は受けていないと思うんですよ。そういう状況の中で仮に事故が発生したような場合には、これは大変な問題に発展するだろう、こう思うんです。で、そういういまの状態の中で何らの交通規制も行われない。さらにまた、厳重な管理監督のもとに行政指導が行われていかない。地方自治体の長も動いていることを知らない。こういうようなことは、これはやはり私は許されないことであろうと思うんですよ。核燃料の問題はそうではないと思うんです。そういう意味で私はこれからこの問題をめぐって少しく、科学技術庁としても真剣にこの輸送問題の安全性の問題をめぐって考えなければならないところに来ているように思いますが、どうですか。
  48. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 一般論といたしまして、先生御指摘のように、核燃料物質の輸送の安全性が確保されなければならないというのは御指摘のとおりでございます。私どもも先生の御指摘の線に沿いまして、今後その安全性の確保というものを図る所存でございますが、ただ先ほども申し上げましたように、的確な対応をとるということが基本であると考えますので、その危険度に応じて十分な対策をとってまいりたいと考えております。
  49. 赤桐操

    赤桐操君 私はかつてこのコンビナート法の制定の問題に前国会まで取り組んでまいりました。この中でまあ私はつくづく感じたんでありますが、その発端をなすものは、この法律をつくるに至った原因は水島の事件であります。油の流出事件であります。で、わずか一昼夜の間にあの広い瀬戸内海が油で覆われる、こういう事件に直面をいたしまして大変あわてたわけであります。これがちょうど一昨年の暮れ押し詰まったときに私たちは現状視察に参りましたが、これが大体問題の発端となりまして、そのときにつくづく感ぜしめられたのは、たとえば陸上から流れた油が海上に行ったとき、その海上の管理はどこがやるんだ。われわれが考えれば、ただ海上保安庁がやればいいんだと考えるのですが、簡単にそういう仕組みではなさそうであります。あるいはまたその境目の責任はどちらが負うんだということになると、これもそう簡単ではない。これがわが国におけるところのコンビナートをつくって先行させながら、これだけの高度経済成長の基盤としてつくり上げてきたそのコンビナート全体に対する管理のあり方だったんですね。要するに、これにかかわる各省というものは四つ、五つある。それがみんなそれぞれの立場で、縦割り行政で行ってきているわけです。こういう状況の中で、この水島の問題に対してはそれぞれの各省がしり込みをしておってなかなか本格的な段階に入らなかった。そのうちに事態はどんどん進んでしまった。地元からは大変な陳情が出てきても、あれよあれよと言っているうちに終わりになってしまった、こういう状況であったんです。はなはだしきに至りましては、瀬戸内海のあの広い中でひしゃくで漁師の人たちや、あるいはまあ海上保安庁の人も一緒になりまして油をすくい上げていると、こういうだらしのないやり方だったんですね。コンビナートというものをつくるならば、当然それに対する安全の問題や、あるいはまた一朝有事の場合の対策というものが当然あってしかるべきだったと思うんです。しかし、コンビナートは大変な勢いでつくったけれども、そうしたものは全然なかった。それが水島の事件で大きく爆発した、こういう経過であったと思います。この例で、私たちはコンビナート法の制定を、これは私自身が地方行政委員会要求してこれはでき上ったわけでありますが、このコンビナート法の制定に発展をしたわけなんですね。要するに、この点の規制——点的規制から面的な規制に、縦割り行政から総合的な行政に、こういうことでこのコンビナート法というものはでき上ったわけであります。内容的には私どもが考えたものより大変後退したものでありましたけれども、特にまた海上関係がまだでき上っおりませんが、いずれにいたしましても、そういう形に一歩前進したことは事実である。この問題とよく私は似ていると思うんですね、この輸送の問題が。先ほどのお話によりますと、これは関係各省というのは運輸省が入っているし、警察関係が入っておるし、さらにはまた消防庁が入っておる、海上保安庁が入っておるのですね。入っているけれども、どこが輸送の一番大きな責任を持ってリーダーシップをとるのか、監督指導のまず第一線の任務を果たすのか、これわからないんですよ。事故が発生したときにいわゆる輸送会社が責任を負うのか、あるいはその燃料の株式会社が技術員を乗せておるので、その技術員が采配を振るのか、あるいはまた事故が発生すれば当然消防署や何かも出なければならぬだろうし、警察も出動しなければならないけれども、警察にはどんな権限があるのか、消防署にはどんな権限があるのか、私は全然これは明示されていないと思う。こういう状況の中で実はいま今日まで四十七年以降ですか、ずっと続けられてきたと、こう思うんです。これからも続けようとしているわけですね。一体これでよいのかと、こう思わせられるのですけれども、この点大臣いかがですか、お考えは。
  50. 前田正男

    国務大臣前田正男君) 現在まで原子炉等規制法に基づきまして、それに基づく総理府令あるいは運輸省令等で安全が図られておるわけでございます。そして警察、自治体等には必要な連絡をしておるわけでございますし、十分な安全は確保されておると思いますけれども、しかし、この輸送の関係もさらに実態はだんだんと進んでくるわけでございます。変化もありますし、また国際的にも機関において輸送の規則を改定しておりますので、こういうものに応じましてひとつやはり科学技術庁、運輸省において現在の法令、それから政令とか、省令とか、そういったようなものを改正することを、十分に対策をよくしていくということが必要だと思いますので、そういうことは現在両省でさらに検討をしておることでございます。
  51. 赤桐操

    赤桐操君 ちょっとここでひとつ私は結論的にいろいろ御要望したいことがありますが、ついでに各省にちょっと伺いたいと思うんでありますが、運輸省関係の方来ていらっしゃいますか。——あなたの方では、念のために伺いますが、この核燃料の輸送について特段のいろいろ権限なり、あるいはまた指導とか、そういう一つのあれを持っておられますか。
  52. 塩田澄夫

    説明員(塩田澄夫君) お答え申し上げます。  核燃料輸送につきましての運輸省の権限といたしましては、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づきまして、放射性物質車両運搬規則という省令がございまして、この省令に基づきまして若干の権限がございます。また、海上につきましては、船舶安全法に基づく危険物船舶運送及貯蔵規則がございまして、それに基づきまして若干の権限がございます。
  53. 赤桐操

    赤桐操君 警察関係は来ていらっしゃいますか。——ちょっと伺いたいと思いますが。
  54. 浜田栄次

    説明員(浜田栄次君) 警察関係は特別法としては特別な義務規定はございませんけれども、一般的ないわゆる安全と事故の防止という点におきまして関与いたしております。
  55. 赤桐操

    赤桐操君 続いて伺いますが、たとえばパトカーで誘導しようとか、あるいは何かのその間その車、編隊が通るときには、一隊が通るときにはぴしりと交通規制をしてとめてしまうとか、そういうようなことを今日までおやりになったことはありますか。
  56. 浜田栄次

    説明員(浜田栄次君) 警察に届け出が慣行的、自主的に業者からなされてまいります。警察はそれを受けまして、一応警察庁の場合には関係通過府県に対しまして連絡をいたします。それで、プルトニウムでありますとか、高濃度のウランでございますとか、非常に危険性が高いあるいは毒性の強いもの、こういうものにつきましては先生の御指摘のように、いろいろと一般の関心が高いわけでございますし、また、こういうものは事故が起きました場合には社会的反響が非常に大きいものですから、こういうものにつきましてはパトカーをつけます。そして安全な誘導をいたしましたり、交通規制をやったりしております。これまで八回ほどパトカーをつけた事例はございます。
  57. 赤桐操

    赤桐操君 ちょっとこれはひとつ消防庁の方いらっしゃいますか。——お伺いしたいと思うんですが、たとえば私のところの千葉県の例で申し上げますと、柏とか松戸、我孫子、こういうところにこの種の特技を受けた方はおりましょうか。
  58. 矢筈野義郎

    説明員矢筈野義郎君) 放射線の漏れあるいは放射能の障害に対する特別の専門的な技術職員というのは、地方にはほとんどいないと考えてよろしいかと思います。
  59. 赤桐操

    赤桐操君 実はコンビナート法の制定のときに、私はかつて川崎市を何回かお訪ねして調べたことがあるんです。川崎市では長い年月をかけて人材の養成をし、大学を卒業しただけではとうていこのコンビナート地帯のいろいろの管理や指導はできないということでもって、さらに横浜市の各大学と連絡をとりながらそこに勉強をさせるために派遣をする、あるいはまたそこから教授を呼んで特殊の訓練をしていく、こういうことを長い間にわたって続けられてあの川崎市のコンビナート対策を樹立されておったわけであります。これがいま、その後でき上がりましたコンビナート法に基づく——まあこれがコンビナート法の下敷だったと思うのであります。したがって、川崎市の先行した状態に全国をいま引き上げようというのが現実の実態だと思うんですね。このときに調べてみましたけれども、残念ながら、もちろん千葉県でもそうでありますが、全国の各県でそういう状態に消防庁あるいは消防署の機能というものが高められた地域というものはまことになかったと思うんですね。まして、やっぱりこの種のウランとか、こうした核燃料問題等をめぐっての技術を持っている人、高い力を持つ人、そういう人は配置されていないのは当然だろうと思うんです。わかりました。  そこで私は、いま大臣が御答弁になりましたが、こうした物の輸送、核の原料物質、さらにまた燃料物質及びその原子炉の規制等に関するところの法律で取り扱われておることは、これは当然でございますが、輸送というものは、いまいろいろと私が申し上げてまいりましたし、それぞれの各省から伺って明らかになったと思いますが、これはもっとこの種のものに対しては総合的な、そして体系化された輸送のあり方というものがこの際考え直さなければならない時期に来ているのではないだろうか。それからさらにまた、都道府県及び市町村、こうした自治体の関与する余地というものをきちんとやはり設けるべきではないだろうか、こういうように私は考えるわけであります。そして、当該消防署に規制権限を与える等、いろいろの処置をこの際やはり考えなければならない時期に来ているように思うんですが、この点については大臣いかがでしょうか。
  60. 前田正男

    国務大臣前田正男君) これは先ほどちょっと申し上げましたように、現在の総理府令、運輸省令、関係の告示等の改正を実態に応じて、あるいはまた国際機運に応じてやっていかなければならぬと思っておりますが、その内容につきましては、まだこれいま検討中でございます。ただ、現在も法規上十分に安全が図られておると思っておりますし、またそれに必要な規則等は十分にできておると思いますけれども、しかし変化に応じたものを考えていかなければならぬと、こう考えておるわけでございます。
  61. 赤桐操

    赤桐操君 核燃料物質等の輸送につきましては、この際ひとつ大臣に私は要望いたしたいと思いますが、総合的な、そして体系化された輸送方式をひとつ全面的につくり上げる、こういう観点に立って、いままでもやってきたところをひとつ再検討願いたい。そしてなるべく早期にこれらのものをつくり上げて、国会に提出するなり、いろいろ科学技術特別委員会等に御相談を願いたい、こういうようにお願いをしてこの問題を終わることにいたします。  次に、放射性の廃棄物の処理問題をめぐりまして、若干お伺いいたしたいと思います。放射性廃棄物については、これはまあきわめて強い放射能の高レベルの廃棄物と、それから中レベルといいますか、低レベルと申しますか、そうしたものに分けられておるわけでありますが、この高レベル廃棄物というのは、一体わが国ではどのくらい今日までに蓄積されてきておるんですか。さらにまた、低レベル廃棄物についても高、中、低これらの廃棄物について蓄積された状態、今後の昭和六十年次までの見通し、こういうものについて概略で結構ですから、お示しを願いたいと思います。
  62. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) わが国におきます現在までの放射性廃棄物の蓄積量でございますが、高レベルにつきましては、現在わが国にはまだ発生しておりません。それから中レベルにつきましては、発生量はごく微量でございます。低レベルでございますが、これが昭和五十年度末におきまして二百リットル入りドラムかん換算で約八万四千本が蓄積されております。これが昭和六十年度には約百三十五万本程度になるというふうに推定されております。
  63. 赤桐操

    赤桐操君 高レベルの廃棄物もやがてこれは出てくると思いますが、この特に高レベル廃棄物というのは、この中にはプルトニウム239のように大変放射能の半減期二万四千年というようなしろものもあるわけでありまして、長期にわたって放射線を出す物質が含まれているわけでございます。言うなれば、こうした廃棄物については、半永久的にわれわれ人間の生活から隔離しなければならない、こういうようにまあなってくるわけでありますが、さらにまた、低レベルの廃棄物の場合においてもいまお伺いすると昭和六十年次までで百三十五万本になると、こういうように言われているわけでありますが、これも中、低レベルなりの大変いろいろな問題を含んでいるものだろうと思います。そこで原子力委員会が最近明らかにいたしております放射性廃棄物の処分についての基本方針、これをめぐりまして若干御質問をいたしたいと思います。  この方針によりますと、高レベルの廃棄物は固体化して地底深いところに処分をするとか、さらに低、中レベルの廃棄物については海洋と地中の両方の投棄処分を併用していきたい、こういうようになっておるわけでございます。それから高レベル廃棄物の対策についてはここ三ないし五年のうちに方向づけをする。さらに昭和六十年代から実証試験に入る。低、中レベル廃棄物対策については海洋への試験処分が昭和五十三年ごろからとられる予定になっている。そして陸地処分中貯蔵は昭和五十年代後半に本格的実施を目標としている。地中処分は昭和五十年代半ばから実証試験を行う。その後本格的な処分に入っていくと、こういうように私は理解しておりますが、そういうことでよろしいですか。
  64. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) そのとおりでございます。
  65. 赤桐操

    赤桐操君 そこでお尋ねしたいと思うんですが、今回公表されたこういうような形の高レベル廃棄物の地層内処分でありまするけれども、これはアメリカソ連の上空を飛行機で飛びますと、五時間や六時間、八時間くらい飛行機で飛んでも延々と砂漠が続いている、あるいはツンドラ地帯が続いている、あるいはまあ本当意味における樹海といいますか、森が続いておるということなんですね。それでアメリカなんかにしてもニューヨークじゃあんなでかい建物がありますが、地震がないということで、大変建物については余り日本みたいに銭がかからないわけでありますが、こういうようなところならば大変広大なところであるし、どうも地層も日本みたいにややこしくないらしいし、なるほど私はその地層内処分ということについての発想は出てくると思うんですね。それで、一体日本のようなこういうちょっと飛行機一時間乗れば北海道の札幌まで行ってしまうとか、あるいはまた沖繩まで行ってしまうとかいうようなこんな状態の中で、さらに幅は全然これはもうないわけですね。上空へ上がりゃ両方見えちゃうと、こういうような状況でありますから、こういうところで一体地下水の関係とか、特にまたいま大変この前の科学技術特別委員会で問題になりました地震の問題、こういったようなもの、こうしたものを考えたときに、そういう発想というものは、一体日本の中でこれは現実化できるものなのかと、こういうことが私どもはまず出てくるんですけれども、この点ひとつお伺いしたいと思いますが。
  66. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 高レベル廃棄物の永久処分につきまして、日本の立地条件が必ずしも米国、ソ連に比べて十分ではないのではないかというのはまさに先生御指摘のとおりでございます。ただ、ここで御理解いただきたいと思いますのは、高レベル廃棄物と申しますのは、発生する量が非常に少ないものでございまして、たとえば原子力発電所百万キロワット規模のものを一年間動かしておりまして、その結果出てまいります量、これは最終的に原料を固化いたしましたときで大体二立方メートルから三立方メートル程度と言われております。その程度で量は非常に少ないものであるということが一つございます。それからいま一つ、確かに米国、ソ連に比べますと、日本はなかなかそれほど楽ではないと思われますが、同様の事情にございます国がヨーロッパのイギリスなりフランスなり、こういう国あるいはイタリアなどがあるわけでございます。そういうふうな国におきましても、やはりこの地層処分ということを鋭意研究いたしております。私どもも日本の条件が十分恵まれないということは承知はいたしておりますけれども、そういうやや不利な条件のもとにおきましても十分な調査をいたしまして、できるだけ早く適地を見つけて適当な処分方法を開発し、これを実証していささかも不安がないということを十分に確認した上で地層処分ということを行いたいと、こういうふうに考えております。そういうふうなことで世界各国ともいろいろ情報も交換いたしておりまして、万遺漏なきを期したいと思っております。
  67. 赤桐操

    赤桐操君 大分時間がなくなってきましたので、少しピッチを上げたいと思いますが、安全局長もぴたりとした回答はなさっておらないわけでありまして、大変問題がある問題だろうと思うんですね。私も多くの友人の中に地質学者がおるんでありますが、こういう人たちに聞いてみましても、まず冒頭から首をかしげると、こういう状態であるわけなんです。大体日本のようなところではこうした発想は無理であったから、いままで私は出てこなかったと思うんです。それがなぜこの段階で急に今回のように公表に踏み切ったのだろうか、こういうことを実は私どもはちょっと疑念に思うのですがね。
  68. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 廃棄物の処理、処分につきましては、いままで何もしていなくて、ここで突如この方針が出たということではございませんで、従来から原子力委員会の御方針を受けまして、科学技術庁初め関係省庁でいろいろな調査なり研究は行ってきたわけでございます。で、この段階で特に原子力委員会方針を打ち出されましたのは、いろいろな観点がございますけれども、一つには先ほど申し上げました高レベル廃棄物について、先ほど申し上げましたように、日本にはまだないわけでございますけれども、東海村の再処理工場が近く運転を開始するという段階になってまいりましたということが一つございます。いま一つは海洋処分につきまして、これもいままでいろいろ調査をいたしました結果、近く実証試験というものを行い得る段階に達した、こういうふうな背景もございます。それから、世界的に申しましても、非常にこの問題が各国で早急に解決をすべき問題であるということで、非常にその問題意識が高まってきておるのも事実でございます。そのようないろいろな背景を踏まえまして、原子力委員会として御方針を御決定いただいたものでございます。
  69. 赤桐操

    赤桐操君 いま海洋投棄の問題を触れておられますけれども、これ大変大きな問題だと思うのですね、特に日本の場合におきましては。どだいこの海というものは生き物であります。私も海辺で育った人間でありますが。海は生き物であると言われておるだけに、私はこれは大変な問題だと思って実は受けとめておるわけでございます。それに特に世界の学界ではどうもこの海洋投棄について疑問が出てきているのではないか。アメリカは過去海洋投棄をやったようでありますが、最近中止していると私は聞いております。これは安全局長の方ではもっと正確に把握しておられると思いますね。そういうような状態になってきているのですね。それなのにどうして日本が海洋投棄、しかもアメリカ国民よりは日本国民の方がはるかに海のお世話にならなければならない。海に頼ってわれわれは栄養源を取らなければならない。たん白も五十数%が魚介類でございますから、その海に投ずるということは一体どういうことなんだと、こういうように考えるのですがね。ひとつお考えを聞かしていただきたいと思うんです。
  70. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 米国が海洋投棄を現在中止いたしておるというのは事実でございます。それから、日本の場合になぜ海へ捨てるかということでございますが、これは海洋投棄につきまして国際的な考え方というのがございまして、ある条件のもとで海洋投棄をするということは特に環境に悪い影響を与えないという国際的な合意ができております。特にその技術上の基準につきましては国際原子力機関において検討がなされました結果、一つの基準ができております。わが国といたしましては、当然その技術上の基準を守りまして実施するわけでございますが、先生御指摘のように、海を汚さないということは非常に重要であるということはまさにそのとおりだと存じます。したがいまして、私どもといたしましても海を汚さないという基本的な考え方をもとにいたしまして、安全性の確保は十分図る、そういう意味で事前の調査を十分いたしまして、さらに安全解析をいたしまして、さらにはいきなり本格処分をするのではなくて、まず実証的な試験をやるということで段階的に一歩一歩詰めてまいりたいと考えております。
  71. 赤桐操

    赤桐操君 この「試験的海洋処分の環境安全評価に関する報告書」ですか、原子力安全局から出ておりますが、これは局長さんのところから出たんですか。
  72. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) さようでございます。
  73. 赤桐操

    赤桐操君 そこでちょっとお尋ねしたいんですが、この海洋投棄の場所ですな。これは二十一ページに出ているA、B、C、Dでよろしいんですか。
  74. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) このA、B、C、Dは、昭和四十七年度から三カ年をかけまして調査をいたしたときの候補海域でございます。私どもといたしましては、この中から適当なものを選びたいと考えておりますが、ここでなければいけないということではございません。ただこの辺が従来の調査の結果、適当な地点であろうというふうに考えられておるわけでございます。
  75. 赤桐操

    赤桐操君 そうすると、適当な地点なんですな。  そこでちょっと伺いたいと思うんですが、このBあたりは房総沖——銚子あたりから何キロぐらいになるところですか。
  76. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 約九百キロメーターぐらいであるかと承知いたしております。
  77. 赤桐操

    赤桐操君 そうすると、房総沖八百ないし九百キロのあたりに海洋投棄の場所が求められると、こういうように認識してよろしいわけですね。一応適当なところだと、こう考えておるわけですね。
  78. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 候補海域の一つでございます。
  79. 赤桐操

    赤桐操君 それで推定すると、大体八百ないし九百。A、B、C、D、いずれにしても大体千五、六百くらいのところで投棄されるというように理解されることになります。この房総沖大体八百キロから千五、六百のところでこういうものが投げ込まれていくということになりまするというと、この辺は私は率直に申し上げますが、カツオからマグロの漁をする宝庫だろうと思うんですよ。回遊魚がこの辺はどんどん通っているところだと思うんですね。昔の南洋委任統治地。あの周辺に至るまでの間というものはそういう地域だろうと思うんです。たとえば私は銚子の出身でありますが、銚子あたりの漁船にしても、この海岸にある漁船はみんなこの辺へ行くんです。そしてとってくるんです。その魚はみんな東京へ上がるんですよ。それをここにおられる皆さんも召し上がると、こういうことになるわけですね。そういうところへ適当な地点を選ぶということなんですね。これはちょっと私どもにはぴんとこないんですが、どういう考えなのか、ちょっともう少し真意をお聞かせ願いたいと思うんですがね。
  80. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) まず御理解いただきたいと思いますことの一つに、低レベルの放射性廃棄物と申しますのは、量は多いわけでございますけれども、放射能としての量、キュリー数で換算いたしますと、これは非常に少ない数字のものでございます。それから、これを処分いたします海洋の深さでございますが、五千メートルとか六千メートルとか、そういう深さのところに処分をすることを考えております。それに対しまして、一般に私どもの口に入ります魚はそれほど深いところに生息しておるものではないということでございまして、その魚の生態なり、どういうふうにえさを食べるかというふうなこともいろいろ研究をいたしまして、そういうところへの影響が実質上ないように配慮をいたして処分をする。しかしながら、実際上影響はないと思われますけれども、さらに安全を期しましていろいろ厳しい条件での安全評価をいたしまして、その安全評価をいたしました上でも環境に影響を与えることがないということを確認いたした上で、試験的な段階を経て実施をいたしたいと考えております。
  81. 赤桐操

    赤桐操君 ソ連の学者は、すでに四、五千メートル下の海底においても水は流れているということを実証しておりますね。したがって、私はこれは相当の年月を経ながら動いていくと、こういう前提に立たなきゃならない。それで、しかも五千メートル下といったら大変な圧力ですよ、水圧は。大気の圧力と水圧が両方重なるんです。これは計算すればすぐ出てまいりますが、私はこれは大変な圧力だと思うんです。それに耐え得る容器を、パッケージをつくってそれを海洋に投棄していくと。しかし、それは私は長い間に移動もするだろうし、あるいはまた障害も起こすであろうと、こういうことは当然海の中のことですから想定をしておかなきゃならない。しかも、その地点が大体房総沖八百から千四、五百と、こうなってくると、これはわが国の漁業関係者だけではなくて、国民全体の大きな問題となろうと、こういうようにひとつ私はとりあえず指摘をしておきたいと思うんであります。  それで、時間がありませんので、ぼつぼつまとめたいと思いますが、要するに、これからそういうかっこうで、御説明をどれ聞いてみても、一応データ主義に基づいて数字も並べておられまするし、一通りの資料としては出しておられるわけでありますが、実態論になってくると残念ながら私どもを納得させるものにならない、国民を納得させるものにはならないと、こういうように私は考える。  そして、最後にひとつ伺いたいと思うのは、低、中レベル廃棄物の本格的な実施は早くて昭和五十年代後半、高レベルの廃棄物の場合においては昭和六十年代からようやく実証段階に入るということであるとなれば、これは昭和五十年代は廃棄物対策は結果的にはもう手つかずと、こういうことになるわけでありますね、事実上は。この昭和五十年代の廃棄物対策への具体的な手だてというものがそこで問題になってくると思いますが、これは一体それまでの間どういうようになさるおつもりか。まさに現行でいくというと、これはよく言われておりますが、トイレのないマンションだと、こう言われておりますけれども、これはどこにも持っていきどころのない問題になってしまうんじゃないかと。海洋投棄の問題もこれは不適格であったと。地底に埋めることも日本の場合には困る。まさかアメリカの、あるいはどこかの砂漠の下やツンドラの下に持っていって入れてもらうわけにはいかないことだろうし、そうなってくるというと、いまこうした形で国民皆さんに一応アピールするようなものをお出しになられても、結果的にはやった結果がどうにもならないということになってきたときには一体どうなるんだと、こういう問題も出てくるわけでありまして、その辺を含めまして、最後にひとつお答えをいただきたいと思います。
  82. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) ただいま御指摘の点、特に高レベル廃棄物について六十年代から実証試験であるから、その前は何にもやらないのではないかという御指摘でございますが、五十年代にやることは非常にたくさんございまして、なぜそれでは五十年代から実証試験をしないかと申しますと、まず実証試験に至ります前のいろいろな研究開発、さらに適地の調査等があるわけでございます。それから、実際問題といたしまして、高レベル廃棄物が出てまいりましても、これはすぐ処分できる形になっておりませんで、当分の間は液体状のままタンクの中に貯留いたしまして崩壊熱か減るのを待つと、それからさらにこれを固化するというふうな期間が必要なわけでございます。また、それに関連するいろいろな研究開発、実証試験が必要でございます。そういう必要な試験を十分行いました上で着実に仕事を進めてまいりたい、そういうことで実証試験が六十年代と、こうなっておるわけでございます。なお、その安全評価につきましては、先ほどの安全局での評価のほかに、これは海洋投棄につきましてでございますが、原子力委員会の専門部会におきましても十分御検討いただくことになっております。
  83. 赤桐操

    赤桐操君 私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  84. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 十月の二十六日には、これは原子力の記念日というわけで、科技庁では新聞に大きなPR仮を出されておるわけですね。「私も二〇歳 原子力も二〇歳」と、こういうことで、発電用の原子炉は幾重にも安全装置をつけさせて、建設から運転管理まで、検査の場合も、監督の場合も十分にやってあると、「より一層の安全をめざして」法令の面でも、監督の面でもやっておるというようなPR版があるわけであります。確かに日本の原子炉の問題は始まって二十年ですけれども、しかし実際にこの運転が始まって、その効果が確かめられるという状況になってからはやっぱり日が浅いと言わなければならないわけであります。こういう点ではまさに未知の領域、こういうふうにバラ色と言い切れるものかどうか、これは国民だれでもが心配しておる問題です。アメリカの場合には戦争中から始まって、日本よりもやはり十年以上の長い年月がアメリカの上では流れておる。そのアメリカで何が起こるのか、次々に問題が起こっておるわけであります。いままでの考え方の見直しというのは絶えず迫られる問題である。同じ二十六日、これはアメリカの二十六日でありますけれども、ワシントン二十六日発のAP共同でもって、読売新聞の記事に注目すべき記事が記載をされておる。アメリカ原子力規制委員会——NRCですね、健康安全基準局長のマットソン、この人が、原子力産業の従業員とがんの死亡率についてアメリカ政府の委託研究の結果を発表しておるわけですね。「政府のきめた放射線被ばく安全基準よりも低い被ばくでもガン死亡率が増加する」というデータの発表をやっておるという記事があります。わずかな記事ですから、具体的にどういうことであるのか、それは詳しくわからないわけでありますが、ここではすでに一九四四年から始まっておる政府原子力施設の従業員の死亡データを三千八百八十三人分について集めて、その中で四百七十三人は許容量以下の被曝であったにもかかわらず、がんによって死亡しておる。特にこういうのは確率が大体用いられるのかと思うわけでありますが、その六%の二十九人ばかりはもしこの施設で働くことがなくて、被曝という機会がなかったらがんにはならなかったというふうな、そういうレポートも出したというような記述があるわけです。この件について御承知なら御見解を願いたいと思います。
  85. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) ただいま御指摘の読売新聞の記事につきまして、これは私どもさらに詳細を知りたいと思いまして、現在在米大使館を通じて詳細の調査を依頼しておるところでございます。したがいまして、現時点におきまして私どもの見解を申し述べることは時期尚早かと考えるわけでございますが、ただ先生の先ほど御指摘ございましたように、この種の統計的な処理というのはいろいろ処理の方法等によってある程度の違いも出てまいるかと思います。そういうふうな点も含めまして十分調査をいたしたいと考えております。
  86. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 一面ではこういう問題が次々に出てきておる。米政府がこういう問題について委託をするということ自身が、この一つの生体に及ぼす放射線の影響というのが非常に今日現実の問題になって、許容線量の見直し問題とかかわって何年か続くアメリカ中心的な課題になっておるということだと思うんですけれども、日本の場合にはセカンドランナーというのか、これについて一向PRをされる場合にもこういう情報の提供には非常に欠けるものがあるわけですね。うかうかすると、後発の国が被害の方では先進国になるというようなことだって憂慮されなければならぬと思うわけです。ここで特にこの原子力の日に関係してPRにいそしまれる科学技術庁について、少し古い資料ですけれども、出して見解をただしておきたいと思うんです。私この小学校の「新国語」六年の上というので、これ光村図書出版の学習指導書持っておるんですけれども、ここのところにこれは昭和四十六年に出した五年前のものです。大体原子というものをどういうふうに書いておるのか、指導書の考え方としては文章の組み立てに注意し、確実に読みとらせて、中身をしっかり身につけさせるというんですけれども、原子力発電という部分がありまして、原子力発電の三つの特長というのを挙げておるんです。簡潔にしますが、「第一の特長は、原子力発電なら、必要な燃料が非常に少なくてすむ」。「第二の特長は、電気料金が非常に安くなる見こみがある」。安くなることによって「産業全体に大きな変化が起こってくる」、こういうことが書かれてある。「第三の特長は、地下資源としての石油や石炭には限りがあって、燃料として使うことがそういつまでも続けられない」。その心配があるのに対して、「原子力の燃料のウランは、豊富にあると考えられている」、こう申しまして、石油や石炭は「あと数十年たてば、つきてしまうだろうといわれている。ところが、これをウランによる原子力に切りかえると、一万年ぐらい持つ」と、「原子力は、今後、人類に石油や石炭に代わるエネルギー」として一万年保証してくれるというようなことが書かれてあるわけです。これはただのPRじゃなくて、子供の頭にたたき込む教材なわけですけれども、こういう状況について、これ五年前の教材なんですね。今日どのように直されているか、あるいはそのとおりであるのかは調べてみる必要がありますが、とりあえず価格の問題ですね。大へん安い電気をこれによって供給して値段が下がるのかどうかというようなことと、それからもう一つは一万年本当にこれが続くのかどうか、これはあなた方は教科書の検定をされる立場にはないでしょうけれども、このことが科学的に正しいのか、これ覚えておけば正しい知識を持つことになるのかどうか、お伺いしておきたいと思うんです。
  87. 山野正登

    政府委員(山野正登君) ただいまの記載について私拝見したことはないので、その教科書の内容について云々することはできませんが、いま御指摘のこの値段の点につきましては、細かい数字は私いま手元にございませんけれども、現在の各電力会社の施設計画等によります数字を見ますと、石油火力発電に比べまして原子力発電の方がキロワットアワー当たりの単価が安いということは事実でございます。それからまた、今後石油なりウランの値上がりがございましたときにも、大ざっぱに申し上げまして石油火力発電の場合と原子力発電の場合を比べますと、その中のコストに占める燃料費の割合が、原子力発電の場合は大体二割程度でございますのに比べて、石油火力の場合は五割ないし六割というふうなことになっておりますので、将来燃料費が値上がりをいたしましても原子力発電の方が有利である。値上がりに対して全体のコストアップの要因になる程度は低いということは言えようかと思います。  それからいま一つ、今後どのくらいウランが使えるかという問題でございますが、ウランといえども、もちろんこれは有限でございますので、その一万年というのはどういう計算に基づくものか知りませんけれども、大体現在の軽水炉ばかりでまいりましたときに、今世紀末までにどの程度の天然ウランが要るかということにつきましては、これはいろいろな説がございますが、大体世界全部で七百万トン程度要るであろうといったふうなことも言われておるわけでございます。それに対しまして現在確認されておるないしは推定されておる埋蔵量と申しますのは、ポンド当たり三十ドル以下のもので見まして三百万トン足らずでございますので、今後この埋蔵量がどんどんふえていくといたしましても、大体先ほど申し上げました七百万トンないし一千万トンというのが今世紀末までに見込み得る数字であろうということでございますので、もし軽水炉だけでまいりますれば、それほど長い期間原子力発電を使うというわけにはまいらないわけでございます。しかしながら一方、現在の軽水炉に比べまして、ウラン燃料を数十倍有効に使える新しい型の発電炉というのも日本初め各国で研究開発が進められておりまして、これが今世紀末までに実用化されれば相当期間にわたってこのウランを利用しました分裂型の原子力発電というものは続き得ると思います。
  88. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 簡潔にやってください。いまの答弁は、特長として今後電気料金が非常に安くなる見込みがあるという見解を持っておるということですか。端的に答えてもらいたい。  それから一万年というのは正確だということですか。それとも正確でないということなんですか。
  89. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 今後どんどん安くなると申し上げておるわけではございません。石油火力に比べて安いということを申し上げておるわけでございます。  それから一万年については私論評する立場にございません。
  90. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 科学技術の関係者が教科書に書いてあったら、この辺は事柄の内容について意見が言えないというのは奇妙な話だと思うわけですね。電気料金が安くなる見込みがあると書いてあるのは、あなたの答弁によれば、料金が安くなると書いてあるんですよ。このことは少なくとも正確な表現だとは言えないということはお認めになるでしょうな。  それから、少なくとも一万年というような話は、今日の常識で、資源の枯渇問題はウランも例外としないというのが今日言うところであって、こんなものはまあいわば荒唐無稽な話だと、それはまあ先のことはどうなるのかわかりませんよ。これは鉱物資源の量として書いているのですからね、こういう点においてもこういう記述が書かれることは、これはこの中身は正確でないというのはお認めになりませんか。
  91. 山野正登

    政府委員(山野正登君) その一万年というのはどういう計算をしてあるか、内容を拝見しないと正確、不正確……。
  92. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 計算は書いてないんです。そう書いてあるんですよ、答えは。あなたの子供も習うんですよ、これは。
  93. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 私の現在の感じで申し上げれば、一万年というのは不正確ではないかと思います。
  94. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 実際には、この昨今の場合で安全性の問題とあるいはチェックの問題、これらについて「むつ」問題あるいは原発のトラブルの連続発生の問題等について大山委員会その他の委員会の諮問を受けて抜本的な見直しという話も出ておったわけですけれども、ひとつのとられたこの措置は、原子力局の新設あるいは規制等、それから開発の分離というような形式措置をとられた後は、もっぱらこれからの開発について立地が困難になっているのは国民理解の不十分さからきておるというので、PRに精を出すというようなことを言われておるわけですね。しかし実際にはPRは、こういうふうにして教科書で不正確なものを、企業のPR文書と同一内容のものが教科書で書かれてきたわけであります。かようなものは直ちに是正をされなければならないし、恐らく是正をされておるのかと思いますけれども、基本的に私はその姿勢が、一部の手直しを除いて、今日の原子力行政の中にも温存されているということを言わねばならぬと思います。ああいう歴然たる教科書の記述についてのただいまの答弁一つを見ても、この点については明らかなことじゃないかと思うんです。  特にアメリカ原子力規制委員会の記事に関してでありますけれども、放射線被曝安全基準よりも低い被曝でもがん死亡率が増加をする、こういうことはすでにこのデータが出なくても当然予想されることだ。それを数字的に確かめるためにむしろこの委託研究が行われたんだというふうに私は理解をしておるわけであります。この点につきましては、去る昨年の予算委員会の際に、私は分科会で科学技術庁に対してこの件について、特に許容量の問題というものについてアメリカのベアレポート、いわゆるベアレポートです——BEIR、電離放射線の生物学的影響に関する諮問委員会、これが出しておるレポートの内容なんかも指摘して、この許容量とそれから生体、人体に与える影響について問題を指摘しておいたと思うわけですけれども、ここで特にお伺いしたいのは、安全基準による許容量とは何かということであります。一体許容量というのはどういう性格を持っておるのか。許容量以内なら、その限りの中ならまあ安全無害と、こういうような意味であるのかどうか、ここでひとつその性格を正しく言ってもらいたいと思うんですね。
  95. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) ただいまわが国におきまして原子炉等規制法あるいは放射線障害防止法で採用いたしております許容量という考え方は、その基本は国際放射線防護委員会の定めました勧告、それに基づいておるわけでございます。その考え方によりますれば、ある量以下で身体的な障害なり、あるいは遺伝的な、あるいは後発的ないろいろな影響というものがほとんどないというふうな、そういうあるレベルというものが放射線の利用との、利益とのバランスにおいて十分考え得るであろう、こういう考え方が基礎になっておると思います。
  96. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 その許容量の決定、これは七〇年以前のものですね。そしてここで決められた許容量というものは、その内容は、いわば放射線量はゼロでない限り、当然幾らかであれ被曝は予想される。しかしながら、一方そういうリスクに対してベネフィットが、便益が供与されることを見て、そのバランスの上に容認量を定める、限界量を定める、がまんの限度を定めるというようなことで問題は決定されておる。しかしその後において、特にアメリカで七〇年以降、がんの問題との関連、あるいは血液病との関連等で多くの学問研究も行われれば、実験データも上がってきておってですね。特に個人の被曝線量の問題を越えて、国民の総被曝線量の問題が指摘されておるのが今日の特徴だと思うわけです。そこのところから考えてみれば、当然今回アメリカで行われておるような実験はゆえのあることであり、そうして日本でも追及をしなければならない問題であると思うわけです。ところがそれらの問題について、調査をいたします、検討いたしますだけで、ほとんどその点についての方法、情報の提供がないという点は非常に問題だと思うわけです。  いずれにしても、こういう状況の中で、不十分な状況把握の中で定められた安全基準による許容量のもとに、これは国民は許容量以内だから大丈夫だというPRのもとにいま立ち働いておるわけです。現在わが国に稼働しておる原発施設における労働者の被曝、この限界量の中で、限度の中で管理をされているというふうに私は見ておるわけですが、福島、敦賀の具体的な労働者の年間被曝線量というのはどういうふうなものになっておるのか、ひとつ年次別に概数を簡潔に言ってもらいたいと思うんです。まだ稼働し始めてから日も浅いことですから、すぐに言えるでしょう。
  97. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 先ほどの答弁を補足させていただきますが、ICRPの考え方といたしましては、放射線の持つ潜在的な危険性は認めるが、原子力や放射線の利用は人類にとって必要なことであるから、得られる利益から見て、その人や社会が容認できる程度を許容量とし、具体的には現在の知識に照らして、身体的な障害または遺伝的障害の起こる確率が無視できる線量を許容線量としておるということでございます。  そこで、このいろいろな研究が米国その他で行われておるわけでありますが、先ほども御答弁申し上げましたように、特に晩発的な障害というふうなものにつきまして統計処理がなかなかむずかしいというふうな問題もございますし、たとえば英国の資料といたしまして、英国の原子力公社等での過去十三年にわたります延べ三十五万人の従業員の傷病歴を調べた結果では、原子力施設の従業員のがんの発生率が英国国民の平均発生率よりも低いというふうな、そういう報告もございます。そういうふうなこともございまして、非常にこの問題は統計処理上むずかしい問題でございます。  そこで、具体的に福島につきましての発電所の従業員がどのくらい被曝をしているかということでございますが、福島第一につきまして、これは単位は人レムでございます。四十五年度が一〇、四十六年度が二二〇、四十七年度四八二、四十八年度八六五、四十九年度一一〇八、五十年度一七四五、こういうふうになっております。  それから敦賀につきましては、四十四年度が二九、四十五年度二五〇、四十六年度四二二、四十七年度六〇二、四十八年度六三二、四十九年度九二三、五十年度一八七六と、こういうことになっております。
  98. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 労働者の年間被曝線量——マン・レムとか人レムとか申しますが、これが年次的に年を追って増加の傾向がある、非常に急カーブだと。このことは非常にまあ重要な問題だと思うわけです。まあ、私の見たところでは、これはこの問題について研究をされておる安斎育郎先生の、この問題に触れた一つの研究内容を見るわけですけれども、運転開始以後数年間で福島一号炉の場合です。まさにいま言われますように倍々ゲームのように総被曝量がふえてきておるわけであります。非常にこのマン・レムを縦軸にとって年数を横軸にとれば、非常に急カーブになるわけですね。ちょうどこの研究では、アメリカのナイン・マイル・ポイント炉というのと合わせて掲載されていますけれども、これ同型炉で、出力はアメリカのナイン・マイル・ポイント炉の方が大きいわけですね。それにもかかわらず非常に激しい勢いで被曝線量がふえておる。敦賀の場合には幾らかカーブが寝ておりますけれども、おおよそ傾向としては同様な傾向がたどられておる。何もアメリカならりっぱなわけじゃなくて、オイスター・クリーク炉というようなのを見ると、福島一号炉と大体平行線で、長いからもっと先にとがったカーブを描いておりますけれども、これが原子炉の持つ被曝量の問題であります。いまの答弁でも、この総被曝量と許容量の問題というものは、容認できる程度がどこなのか。今日の現在の知識に照らして、これだは浴びても病気になることが証明されないという姿で決定をされておりますけれども、これは現在の知識と学問研究が進むに従って、そういう境界線というのはないわけですね。個人についてもこの容量であれば、これは病気が出ないのでなくて、病気の出る確率が一万分の一であるのか、一千万分の一であるのか、あるいは十万分の一であるのかという問題だと。言いかえれば十万人に一人病人が出るのか、一万人に一人病人が出るのかと。また千人に一人病人が出るのかと。一人や三人ならまあがまんしようと、こういうふうにして決められておる線でありますから、この点については被曝総量の問題は特に注意をされなければなりません。この問題について、被曝規制のためにどういう措置がとられておるのか。そのもとになる被曝をするチャンスと申しますか、これはどこで被曝をするのか。安全の上にも安全で、一切漏れないんなら被曝はしないはずなんですけれども、こうして被曝総量というのは避けがたく、労働者に対しては非常に濃密にふえてきておるわけですね。この問題について、簡潔に言うていただきたいと思うんです。
  99. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 原子炉の基数が増加することに伴いまして、作業従業員が増加して総被曝線量が増加する傾向にあるというのは事実でございます。ただ一人当たりの平均被曝線量の変化につきましては、これは発電所によって多少の違いはございますが、必ずしも増加傾向であるということではないようでございまして、現在発電所平均で年間〇・三レム程度でございます。これは許容線量の五レムに比べますと十数分の一ということでございます。しかしながら、この被曝線量はできるだけ少なくするということが必要でございますので、私どもといたしましては現在作業の自動化、遠隔操作というようなこともいたしまして、被曝線量の低下をいたしたいと。特にこれは定期検査のとき、あるいは補修作業をいたしますときにいろいろ被曝線量が平素のときよりもふえるということもございますので、その修理作業の自動化等に努めてまいりたいと考えております。
  100. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 自動化、遠隔操作等が進めば、いわば総量は年を追って減らなければならぬわけですけれども、実際には年を追って、しかも倍々ゲームでふえている。実際の現地から取った資料で、安斎先生の挙げておる数字を見ますと、被曝しておる場所というのは、これは運転作業に当たっている者よりも補修作業等に当たっている者の被曝量が非常に多いというのが特徴だ。そうしてそこへは、これは季節労働者とか臨時雇いの人も含めて、まあ人海戦術で、一人当たりの被曝量を減らそうとするために大ぜいの従業員を充てておりますから、非常に多数の人が被曝をしておる。しかし一人当たりのものは許容量の範囲内でということで、その範囲内におさまっておるけれども、そういう状況でどんどんふえておるということですね。しかも出力を上げるにもかかわらず、その場所が非常に手狭であるために濃密にこの被曝が行われる。こういうような根本的な点が改善されないというと、この被曝量は減らないということを意味しておるものだと思うのです。この点はいままでのところ、安全チェックというのは、個人の被曝量が限界を超えなければいいということでやってこられたわけですけれども、これはどうなるんでしょうね。もし百人に分担させたら、それで安全になるのか。しかし生体に対する影響は個人によってまちまちですからね。やっぱり確率でいけば総量が同じですから、やっぱり多くの人の中でこの影響を受ける可能性が存在をする。これが今日段階での生物学的な影響と放射線被曝の関係になっているんじゃないでしょうか。そこのところについて、さらに念を押しておきたいと思うのです。
  101. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 的確なお答えになるかどうか不明でございますが、先生の御指摘が、一人当たり平均の被曝量だけではなくて、人口集団全体の中で、人レムということを考えなければいけないという御指摘でございますれば、基本的にはそういう御指摘のとおりかと思われます。ただし現在のところ、原子力施設で働いております方々の被曝の総量が大体五千人レム程度でございます。この量がどういう意味かと申しますと、日本人が自然放射線を受けております量が人口集団といたしまして、一千万人レムとか、一千百万人レムとか、その程度かと思われますので、それに比べますと無視し得る程度に少ない。まだ幸いにしてその程度であるということでございます。しかしながら、その程度に少ないから、それでいいということではございませんで、私どもといたしましては、さらにこの被曝線量の低減化について引き続き努力をしてまいりたいと考えております。
  102. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 いまの御答弁日本国民のトータルマン・レム、これに対して割合が低いということを言われているわけですか。何%ぐらいになっているんですか。
  103. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 〇・〇五%程度かと思われます。
  104. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 あなたの御答弁で、現在時点で日本国民の自然放射能を含むトータル被曝線量、これを一千万ミリレムというふうに置くと、大体その〇・〇五%程度に当たるのが現在の運転中の原子炉によって被曝をする労働者の被曝総線量だと、こういうふうに聞いてよろしいですね。
  105. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 自然放射線によるものに比べてその程度と考えております。
  106. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 私は技術関係の方とか、学者の方にその関係を伺うと、確かに国民の総被曝量の一%に達しないというレベルであれば、具体的な影響の顕在化ということは、これは念頭に浮かべなくてもいいかもしれない。しかし、これが一%に達してくるということになれば、まあ部分的には職業病が発生をする。まさにアメリカでは、今度の計画はよく調べなければなりませんけれども、一つの職業病としてのがんとか、そういうものがこの産業の労働者の中に長年存在をしてきたということを意味しておるわけですね。しかし、こういう点では職業病と言うべき血液病や、それからがんというものの影響が顕在化してくる。そのボーダーラインとして一%というような線を聞くわけですね。こういう点は局長もそういう認識でおられるわけですか。
  107. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 私自身その一%という数字で承知しておるわけではございませんが、ある限度以上になりますと、問題が顕在化してくるであろうということは御指摘のとおりかと思われます。
  108. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 ある限度がくれば問題が顕在化をしてくる。それが一%であるのかどうか。私はここで技術的な討論をする用意はありませんけれども、現在すでに〇・〇五%というような数字も、目安と申しますか、概算で出てきておる。これがどんどんふえていくということになれば非常に問題だ。これはこの答弁を通じてもそういうことが明らかになっておると思うのですが、これはふえるのじゃありませんか。六十五年で六千万キロワットで、現在稼働中のものが十二基であるのに対して、まさに十二基をふやそうとし準備中のものが四基。これは一基できるたびに多数の労働者、五百人とか千人とかいう労働者が、本人一人ずつは許容量内であっても、総計大きな被曝を拡大していくわけですね。これが六十年段階になって、いまから三十基ふえるのですか、四十基ふえるのですか。こういうことになれば、一基当たりごとに大きな被曝総量の増加がある。まさに六十五年を待たずして倍増しになれば、一%というような被曝量は超えてくるということは予想できるわけですけれども、その点はどうでしょう。
  109. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 発電規模がふえるのと正比例をしてそのミリレムの数値がふえるということにはならないと思われます。またそうならないように今後被曝線量低減化についての努力をいたさなければならないと思っております。  なお、これは一九七二年の国連放射線科学委員会の報告によりますと、全世界で考えまして、紀元二千年において世界の人々の受ける線量と申しますのが、自然放射線から百ミリ、核実験によります放射性降下物から五ミリ、医療被曝で十ないし五十ミリ、それに対しまして原子力発電からは〇・一ミリという程度である、こういう推定がございます。これは従業員だけではございませんで、全住民を含めての数字でございます。このような推定もございますので、全体的計数的に考えますと、この原子力開発利用の安全性は十分確保されると見通されておると、こう考えております。
  110. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 まあ、炉の数がふえても数に正比例して被曝量がふえるものでないと言われるような点は、抽象的に言われるのでよくわからないわけですけれども、それは被曝の原因がこの数のふえることと関係のないところにあるのならそうなると思うのですが、私が把握しておるところでは、現在の被曝の原因の最大のものは、炉が鉄でつくってあって、その鉄製の一次系の機器、炉内の構造物、こういうものの中で金属が腐食をする。いわばその中でのコバルトに対して中性子が当たりますと、そうすると放射性コバルトになって、それが一次水の中に入り込んでくる。こうしてずっとパイプなんかの方に回って、そこのところから作業中の者が被曝するというようなことになるのですから、今後建てるのは鉄でないもので炉をつくられるというようなことになれば、こういう原因は消滅をいたしますから、被曝線量も減ってくるというようなことは考えられますけれども、どういうことなんですか。最大のいまの被曝の原因はどうなっておるのか。今後建てる、今後つくっていく炉というのは、その原因を消滅さした炉をつくっていくというようなことが言えるのかどうか。私の把握するところでは、大体数がふえたらふえただけ正比例をして被曝線量は当然ふえてくる。出力でも落とせば話は別ですけれども、それが百万キロワットというものがフルで運転をしていくということになれば、いまにも増して総量がふえていくというのは当然なことじゃないかと思うのですが、原因についてはどうなんですか。それからそれの手当てについてはどういうことを考えておられるわけですか。
  111. 伊原義徳

    政府委員伊原義徳君) 先生御指摘のとおり、放射性のコバルトなどを含みますいわゆる放射性クラッドというものが従業員の被曝の主な原因であるということでございます。したがいまして、このクラッド発生量をなるたけ減らすということで、たとえばコバルトの含有量の少ないステンレス鋼を採用するとか、あるいは水処理を適正にいたしましてクラッドを発生しにくくする、あるいはさらに遮蔽をふやす、さらにはその設計全体を十分合理的なものにいたしまして、被曝なり、そのクラッド発生をさらに少なくするといういろいろな手だてを考えるわけでございます。さらに作業の自動化、作業条件の適正な管理その他、それらを含めまして少なくとも一人当たりの平均の被曝量がどんどんふえることがないように、これをできる限り減らす方向に持っていきたいと考えておるわけでございます。
  112. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 大体時間が来ておりますので、終わらなければならないわけでありますけれども、私は現に働いておる労働者の状況、これに対する手当てという方で労働組合その他で聞いてみますと、設計上の手直しの問題は、それはいまから行われるのか知りませんけれども、現地でやっておることは、作業計画を打ち合わせして教育訓練をやって、そしてやった後での作業の反省をする、こういうことで被爆をしないように手袋を何重にもするとか、マスクをするとか、事柄の性質を知るとか、そういう手当てばっかりなんですな。そしてもっぱら後は人海戦術で一人ずつの被曝時間を短くするということにかかられている。しかし、放射量が多いのに、それを十人で受けるのか、百人で受けるのかということは、影響の期待値をはじいていく上では、今日では同じことだという考え方を当然見なければならぬ。それがあればこそ、局長の方でも、先ほどの日本国民の総被曝量と、そして現在の労働者の被曝量の比較のデータも持っており、これを伸ばさないようにしようとされておるわけですね。その意味国民に隠されちゃだめだと思うのです。いま言われたように、これを根本的に設計の点から考えていくということになれば、当然鉄製の炉をステンレスにする。しかし、これを企業がやるですかね。やらせるということを言われるのかどうか。コストはものすごく高くついてくる。ここに大きな一つの設計問題を通じての見直しの必要があると思うのです。それは受ける不利益と言いますけれども、コストが高くついたって、国民的に見たら、がんになって入院をして治療をする、そういうものの合計の金額でも勘定すれば、これはバランスとれると思うんですけど、こういう問題。あるいは作業の場所を広く設計していくというようなこともやって、そして、被曝の機会を減らす必要がある、こういうことは既設の炉については一体どうするのか。見直しがなければできぬのじゃないでしょうか。さまざまな問題がありますが、燃料の被覆材料だとか、酸素の放射能生成物を下げようと思えば熱効率を少々下げても口の数をふやしたり、いろんなことをやらなければならぬでしょう。こういうことを十分に行っていかなければ、いまのとおりにやっていけば、今日の巨大計画を進めれば被曝総量は現在の何倍にもなっていく、このことはいまお認めになったと思うわけですね。こういう状況について、私どもはかねてから被曝低減化のためには技術開発が完全に行われなければならないし、そのことについては計画自身が設計上も含めて見直され、公開をされる必要がある。あわせて安全行政は抜本的に強化をされなければならない。開発と規制の形式的な分離でなく、それらの具体的な問題についてチェックの手が及ぶというような状況にすることでなければならぬと思うんです。  そういうふうに考えてみますと、私は、二十になりましたという原子力記念日というのは、このPRの文書に書かれているように、バラ色であってはなるまいと思うわけであります。この点について一言大臣の御答弁、せっかく座っていただいておるわけですから、大臣の御答弁を聞いて終わりたいと思うんです。
  113. 前田正男

    国務大臣前田正男君) 先ほどから答弁しておりますとおり、なるべく作業を自動化したり、遠隔化したり、特に修理によりますところの問題が非常に問題でありますので、修理等をなるべくひとつ被曝が少ないようにするということが得だと思いますし、特に設計その他についてできるだけの改良、標準化ということは、いま実は私たち安全研究のための予算も非常にふやしておりまして、それによって安全研究というものが出てまいりました場合に、それをもとにいたしまして軽水炉の改良、標準化ということを安全研究をもとにして進めていきたい、こう思っておりまして、いまお話しのように、なるべくひとつ安全なものにしていかなきゃなりませんし、また、安全に対します行政の方も、先ほど来お話ししておりますとおり、局ができたばかりではなしに安全委員会もつくりまして、さらに一貫した安全行政ができるように徹底していきたい、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  114. 柏原ヤス

    委員長柏原ヤス君) 他に御発言もなければ、本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後零時五十三分散会