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1976-10-29 第78回国会 参議院 運輸委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十九日(金曜日)    午前十時三十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         上林繁次郎君     理 事                 岡本  悟君                 中村 太郎君                 瀬谷 英行君                 三木 忠雄君     委 員                 木村 睦男君                 佐藤 信二君                 橘  直治君                 永野 嚴雄君                 福井  勇君                 青木 薪次君                 加瀬  完君                 杉山善太郎君                目黒今朝次郎君                 内藤  功君                 和田 春生君                 松岡 克由君    政府委員        運輸省鉄道監督        局長       住田 正二君    事務局側        常任委員会専門        員        池部 幸雄君    公述人        大阪市立大学経        済学部教授    中西 健一君        亜細亜大学経済        学部教授     細野日出男君        明治大学商学部        教授       清水 義汎君        日通総合研究所        監査役      大森 誠一君        新日本婦人の会        東京都本部副会        長        井上 美代君        日本観光旅館連        盟専務理事    井原 豊明君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改  正する法律案(第七十七回国会内閣提出、第七  十八回国会衆議院送付)     —————————————
  2. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) ただいまから運輸委員会公聴会を開会いたします。  本日は、国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案について、六名の公述人方々から御意見を拝聴いたします。  一言ごあいさつを申し上げます。  公述人皆様方におかれましては、御繁忙中にもかかわりませず、本委員会のため御出席を賜り、まことにありがとうございました。委員会を代表して、衷心より深く御礼申し上げます。本日は忌憚のない御意見を承り、今後の本案審査の参考にいたしたいと存じております。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、六名の公述人方々から、お一人十五分程度の御意見を順次拝聴し、一たん本公聴会を休憩いたします。午後一時から再開し、約二時間の予定で委員の質疑にお答えいただきたく存じます。  なお、本日の会議の趣旨は、皆様方の御意見を承ることでありますので、私どもに対する御質問は恐縮ながら御遠慮願いたいと存じます。  また、会議を円滑に進めてまいりたいと存じますので、御発言なさるときは、委員長を呼び、許可を得てからお願いいたします。  それでは、これより順次御意見をお述べ願います。  まず、中西公述人にお願いいたします。
  3. 中西健一

    公述人中西健一君) 大阪市立大学中西でございます。  私は、今回の運賃値上げ法案に対しましては、運賃値上げに全く反対をするということではなくて、すでに御承知のとおり、昨年の十一月に特急、急行、寝台料金、あるいはグリーン料金というものがすでに上がっております。そして、今回の運賃値上げはことしだけではなくて、来年度また予定されておるということで、値上げ率というものが大幅に過ぎるんではないかということと、それから、現在の国鉄は単に運賃を上げるというようなことでは再建というものがむずかしい。国鉄再建をどうして進めるかという観点から運賃の問題も当然取り上げなければならない。ところが、残念ながら国鉄再建に対するところの方策が明らかになっていない。そういう点で、現在の運賃値上げ法案には反対立場をとる者でございます。  それでは、国鉄再建はどうあるべきかということにつきまして、簡単に私の考え方を述べさしていただきたいと思います。  まず第一点は、国鉄再建、あるいはもう少し広く言いまして交通政策の基本的な原理といいますか、そういうものとしていわゆる市場メカニズム市場機構にゆだねていくか、あるいは国が交通ないしは国鉄に対して積極的に介入していくか、つまり市場の自由な競争原理でいくか、それとも計画化原理でいくかという、この原理的な問題がございます。  私は、国鉄の場合にも市場メカニズムにゆだねることのできる部分については、できるだけ市場の自由な作用にゆだねていくべきであるけれども、市場機構にゆだねることができないか、あるいはまた、市場機構に任せておいてはうまくいかない、そういう分野については、国が積極的に介入をして計画化を図っていく、そういったような市場原理と、それから計画化原理というものをどう組み合わせていくのかということが、これからの国鉄再建におきましては非常に重要な問題ではないかというように考えております。またこれは、現在の先進資本主義国における鉄道政策、ないしは総合交通政策の基本的な原理にもなっておるというように考えるわけでございます。  そして二番目には、御承知のとおり、現在の国内の輸送におきまして国鉄シェアというものは、旅客で三〇%、貨物では一三%程度に縮小しております。したがって、かつての国鉄陸上交通の独占を持っておったような時代と同じような厳しい規制国鉄に課しておくということはこれは間違いだというように考えます。国鉄を縛っているところの規制というものはできるだけ緩めていく、そして、国鉄に営業的な自主性といいますか、そういうものを与えるべきである、そういったような観点から、現在とられておりますところの運賃法定主義というものについては、必ずしもこれに固執する必要はない。特に貨物運賃につきましては、私は運輸大臣の認可も必要ではない、これは国鉄決定権をゆだねるべきである、こういう考え方をしております。  それから三番目といたしましては、運賃値上げを全く否定をし、そして赤字をすべて財政からの助成によって補助するということは、これは理論的にも間違っておるというように考えます。  なぜかと言いますと、そういう形で財政にすべてを持っていくということになりますと、当然のことですけれども財政も苦しくなる。そして増税か、そうでなかったならば赤字公債発行、ないしはほかの予算へのしわ寄せという問題が起こってくるということが第一点。第二点は、財政——言葉をかえて言いますと、国民税金負担をするということは、国鉄利用度というものが人によって当然違います。だから、たくさん国鉄を利用する人も、それからごくわずかしか利用しない人も、それが税金によって助成されるということになりますと、いわゆる負担の公平を欠くという問題が出てくるわけです。そして三番目は、すべてを、赤字のほとんどを財政助成をするということになりますと、いわゆる国鉄企業意識といいますか、これを非常に弱めるということになって、安易な親方日の丸意識、こういうものを助長するという弊害にも連なっていくというように考えます。  したがって、私は財政からの支出というものは、原則として過去の国鉄が抱えております約七兆円に及ぶところの負債については、これは一切政府が処理する。それから、新線あるいはまた改良工事のうちで通路部分ですね、通路施設に関係するものについては、経済学でいうところの公共財という認定をして、全額を政府出資、もしくは政府によるところの元利負担をする。それから三番目としましては、いわゆる公共負担というものが現在では国鉄の経営にかぶせられておりますが、これはすべてそれぞれの政策当局負担をする。つまり国鉄に課せられておるところの公共負担国鉄に見さすということではなくて、それぞれの当局がそれについては支出をするということと、それから地方交通線でございますが、地方交通線の中でどうしても助成をしなければならないという分については、これも政府の方でめんどうを見る。今度は、地方交通線につきましては百七十二億円ですか、交付金が出るようになったわけでございますが、これはもう少しふやしてもいいんじゃないかというように考えております。  それからその次は、新しい線路の建設というのは私は一切やめるべきじゃないかというように考えます。そして、在来幹線複線化、電化というものをもっと進めるべきであるということと、それから新幹線でございますが、新幹線につきましては、御承知のとおり騒音の問題だとか、そういうものもあるわけですが、これからの鉄道というものを考えてみますと、航空ないしは自動車に対抗できる近代的な鉄道として新幹線以外には考えられません。ですから私は、新幹線というものは全国的に約五千キロぐらいのネットワークをつくるということは必要ではないか、これは国土のバランスのとれた発展を図るという意味から考えましても、新幹線全国ネットワークは必要だというように考えております。  それからその次ですが、国鉄赤字の中で、約三分の二を占めるというように言われておりますところの貨物輸送でございますけれども、この貨物輸送については、先ほど申し上げましたように、現在一二、三%程度シェアまで落ち込んでおりますが、これを私は主要品目であるところの穀物、肥料、紙・パルプ、化学薬品、セメント、石油、野菜・果物といったような、現在国鉄輸送しております主要な貨物に限定をして、約一〇%程度シェアを維持し続けるということが必要ではないか。そのためには、現在国鉄貨物輸送施設というものはかなり老朽していったり、あるいはまたまずいところがありますが、これを合理化投資近代化投資を行うことによって、貨物輸送施設というものをもっと近代化するということが必要だろうというように思います。  それから、地方のいわゆる赤字線でございますが、これについては、将来の自動車輸送の伸びといったようなものを考えますと、これを現在のまま完全に維持するということは、莫大な財政的な支出をしなければ不可能だろうというように考えますので、私は、地方赤字線については一定の基準を設け、そして、その上に地域の実情というものを考慮しまして部分的に路線の廃止をする、そして、バスへの代替を行うということがやはりこれは必要ではないかというように考えております。御承知のとおり、私鉄はすでにこの十年間に約一千二百キロの路線を廃止しております。国鉄も、全然この地方ローカル線を廃止しないでいくということは、恐らく不可能ではないかというように考えるわけでございます。  それから次には、国鉄は現在全国に莫大な施設を、あるいは土地を所有しておりますが、これをもっと積極的に利用して、私鉄がやっておりますように、いわゆる開発利益というものを国鉄に還元できるような制度、法的な処置というものをする必要があるんではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  それから最後ですけれども、国鉄のコストの中で非常に大きなウエートを占めておりますのは、御承知のとおり人件費でございます。これは一人一人の賃金が高過ぎるということではなくて、いわゆる現行賃金体系のもとで、国鉄職員年齢が非常に高くなっておるということから人件費がふくらんでおるわけでございますが、聞くところによりますと、今後十年間に、国鉄職員の約半分に近い二十万以上の人が定年退職していくということだそうです。ですから、この国鉄年齢構成のゆがみというものを正すいい機会であるというように考えますので、この十年間に要員の合理的な配置、それから採用、こういうものを行って、できるだけ人件費を抑制していくということが必要ではないか、こういうように思うわけでございます。  以上、私の考え方をごく簡単に述べさせていただきました。
  4. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) どうもありがとうございました。     —————————————
  5. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 次に、細野公述人にお願いいたします。
  6. 細野日出男

    公述人細野日出男君) 私は、亜細亜大学経済学部教授細野日出男でございます。年齢は七十四歳、専門公益事業論交通論でございます。  私は、両法の改正原案につきまして当面賛成いたしまして、至急の成立を望むものであります。  まず第一に、国鉄運賃法改正案について所見を述べさしていただきます。  一番としまして、タイムラグということを申し上げたいんです。  タイムラグというのは時間がおくれる、時間的におくれるということでございますが、自由物価インフレにつれましてどんどん先に上がります。ところが、国鉄運賃電電料金等規制物価は、公共統制を受けるところの規制物価として当然にレギュラトリーラグ、取り締まり、規制のための時間的おくれというものが出てまいります。自由物価がどんどん上がってしまいまして、国民公衆のふところはさびしくなってしまって、そこで、大分おくれましていわゆる公共料金が上がりますから、当然国民はなかなか払いにくいということでもって大いに反発し、抵抗を感ずるわけであります。  ですから、規制はできるだけ適時に速やかに行う、タイムラグをできるだけ少なくするということが必要であります。前回の国鉄運賃、四十九年十月に施行されました現行運賃というものは、国会法案が提出されましてから施行実施されるまでに二年半かかっております。この間に、国鉄は約七千億円ほどの減収をこうむっているわけであります。その前にもそういうタイムラグがございますので、三兆一千六百億円という累積赤字のうちの相当大きな部分タイムラグによって起こったものだと考えられます。  それからその次に、規制物価というものには、タイムラグのほかにもう一つプライスラグ値上げ幅のおくれということがついて回るようであります。  それは、国民公衆運賃値上げ政府行為だ、政府がいけないんだ、政府が先に立って上げるのだという感覚を持ちまして、政府に反発するわけであります。つまり政治的に反発する、政治行為として反発するということになりますので、政党政治が直接に運賃料金のようなものを規制しておりますと、国会法定主義にせよ、政境大臣決定にせよ、政党消費公衆一般国民公衆、すなわち政治上の有権者の人たちの票というものを気にすることになりますから、どうしてもこれはタイムラグのほかにプライスラグも起こってくるのであります。三割値上げ必要なところを、二割に抑えるというようなやり方というものがどうしても起こりがちでございます。こういうものが積み重なりまして、国鉄運賃というものは現在、物価体系から申しますと相当安いレベルのところにあります。  このタイムラグプライスラグによりまして、国鉄運賃値上げということがおくれますと、国鉄赤字になる。その赤字というものは実は財政負担に帰します。運賃負担してもらうか、財政すなわち納税者負担に帰するか、どちらか。民間企業ならば株主負担し、株主負担し切れなければ債権者負担するということでございますけれども、国鉄の場合は破算の心配がないのでございますから、幾ら赤字になりましても、いわゆる親方日の丸で破産ということがありません。しかしながら、国鉄関連産業がたくさんございまして、国鉄から受注を受けるところの電設業とか、機械製造業だとか、こういったような大変な大ぜいの人数を抱えている民間企業の中に困る者がたくさん出ている。中には破産する者も出ているというようなことは、これは一つの大きな社会問題になるわけでございますから、国会諸公はその点も十分にお考えになっていただきたいと思います。  以上のタイムラグプライスラグが働く結果、物価体系というものから見ますと、公共料金、いわゆる利用公衆の方が多くて生産者の方が少ない、消費者が多くて生産者が少ないという性質の公共料金というものは、一般物価レベルにおきましてひどく低くなっているのであります。戦前の標準年でありますところの昭和十一年を一としますと、国家財政はまさに一万倍、国家予算は一万倍に膨張しております。日銀の銀行券発行高は七千二百倍ぐらいにきております。例のフィスカルポリシーという立場から申しますと、これは非常に大きなインフレ要因になっているわけであります。しかし、実際の物価は、消費者物価指数は、ことしの七月のところでもって大体一〇九七というような数字が出ます。しかしながら、自由物価はこれよりも大体みんな高くなっております。  一番高くなっているのは土地の値段であります。八千倍から一万倍ぐらい、あるいは都市近郊の農地なぞは、一万倍よりもずっと上がっているといったような状態であります。消費物価の中でも、食料品系統というようなものは非常に上がっております。外食なども非常に上がっているのであります。米は規制物価一つでありますけれども、これは生産者が非常に多数の農民でありますために、政治的な圧力が強いということで比較的上がっております。標準米価は千二百倍ぐらいのところでありますけれども、自由米なんというものは千八百倍以上というような値上がりをしております。床屋の料金だとかパーマの料金のようなものは、一番上がっているものの一つでありまして、二千五百倍から三千倍ぐらいに上がっております。  こういうふうに上がっているものが非常に多いのでありますが、労銀なんかがやはり大いに上がっている。これは、昭和十一年の一般労銀資料が発見できませんので、昭和十一年との比較は国鉄しか私は資料を持っておりませんが、国鉄の場合は、昭和十一年の損益勘定負担人件費というものは、一人当たり月八十一円八十三銭となります。ところが、五十年度の決算におきましては、一人当たり二十六万七千円というような数字が出ております。倍率から言いますと三千二百六十四倍というような数字になります。これは、先ほど中西教授が言われましたとおりに、年功序列型の賃金体系でもって、年齢構成が四十五歳以上が非常に多くなっているというようなことからくるわけです。もう一つは、退職金というものが昔に比べますと非常に上がったということが響いておるのであります。  まあ、運賃だとか電話などは、一番安い方の物価でございますが、電気なども公共料金の中では一番安い方の物価でございます。国鉄運賃は今度値上げになりますけれども、旅客は、現在一キロから八十キロまでのところを十一年と比べますと三百二十六倍であります。今度の改正では五百六倍になる。しかしながら、遠距離逓減が七段から二段に縮小されましたために、遠いところはだんだん高くなりまして、東京−大阪間の例をとりますと現在は四百六十五倍、今度の値上げでもって七百十一倍になります。一千キロのところをとりますと現在で四百十三倍、値上げでもって六百四十九倍、これは一般消費者物価指数の約一一〇〇というのに比べますと四割六分から六割五分ぐらいというようなところでありますから、この値上げというものが、理論上は消費者物価指数を特に押し上げるということにはならないと思うのであります。  これはつまり、消費者としましては、現在の生活をそのままにしておって、そうして値上げがくれば、これは困るに決まっているのでありますが、高過ぎる物は買い控える、自由物価を抑えるのはそれより方法はないのであります。そういう高くなってい過ぎるものをよく認識してこれを抑える、抑えて、その余剰でもって上がった公共料金の分、上がらないで苦しんでいる公共料金の分を吸収するという心がけをしていただくことが大事だと思います。  なお、貨物運賃は、今度の値上げでも四百三十三倍程度にしかなりません。しかしながら、これは中西教授も言われましたとおり、いまの安い運賃でも鉄道貨物はどんどん減っているのであります。私は、中西教授とその点同意見でございまして、貨物運賃はむしろ国鉄総裁に任せる、自由化する。イギリスはすでにそれをやっているわけでありますが、その必要があると思うのであります。  それから、基本運賃は安いのでありますけれども、グリーン車料金だとか、特急料金だとか、それから寝台料金とか、こういう付帯料金というものは議会の規制を受けません。大臣限りでありますけれども、これはどんどん上がっております。この方の倍率は非常に高い。ことに寝台料金なんていうものは非常に上がっております。上段一円だったものが四千円になる。四千倍といったようなことになります。ですから、これは長距離客が皆高くなり過ぎたものを負担するということになります。長距離客負担が非常に重くなるということは、運賃体系上考えなければならない点だと思います。  なお、対策といたしましては、赤字線赤字サービスの縮減、それから、ペイしない新建設改良というものはこれは縮小する、縮減するということが必要であります。たとえば、収支係数五〇〇以上というような地方線赤字線というものの整理というようなことは考えなければならない問題と思います。また、貨物地方線サービスを廃止するといったようなことも考えなければならないかと思います。要するに、国鉄としては幾ら運賃値上げということをいたしましても、つるべの水をくんでざるにあけているような、ざるに目がたくさんあいているんであります。そこへ運賃値上げをいたしましても、ざるの目からみんなこぼれてしまう。このままでいきますと、とめどもなく運賃値上げしなければならないし、また、とめどもなく国家財政負担にしなければならないというようなことになりますので、国会諸公としては、このざるの目をふさぐということに十分の御配慮を願いたいと思うのであります。  最後に、国会へのお願いでございますけれども、総合交通政策を樹立されることが、国会交通における最大の御任務かと考えます。官僚任せ——運輸省建設省のお役人に任せておいたのでは、例の官僚のなわ張り争いが作用いたしまして総合交通政策はできません。これは三十一年以来このことは立証されているのであります。これはどうしても国会の方でやっていただかなければならない。  もう一つ国鉄運賃については、国会でなさるべきことは国鉄運賃の決め方を決めるということであります。運賃決定のようなことは一つ経済裁判であります。個々のケースの決定裁判事項です。それに対しまして裁判官は、国会でつくられた法律に基づいて裁判をしているのであります。経済裁判たる運賃規制のようなものは、これは国会でつくられた法律によって経済裁判官に当たるものがやるということがいい行き方だと思うのであります。で、これは運賃決定原則というものを決められることが一番大事である。いまの国有鉄道運賃法の第一条に原則らしいものは四つ挙げてありますけれども、これは二番の、原価を補償することというのが非常に大事な原則でありますが、原価とは何ぞやということがさっぱりわからないことになっております。しかも、これは運賃法制定以来もう三十年近くなりますけれども一度も守られていない。財政法第三条という法律は猛烈に守られているわけでありますけれども、この国有鉄道運賃法の第一条二項の二号というものはまるきり守られていないわけです。このことも国有鉄道運賃法運賃基本法として改正なさることが一番望ましいと思うのでございます。そうして、その行政機関としては、政治的に中立な専門的な行政機関アメリカ流独立規制委員会のようなものを考えますが、こういうものをおつくりになるということが必要だと考えております。これは国会議員諸公は外国へ始終御研究においでになるのでございますから、外国の制度を十分お取り調べを願いたいと思うのであります。  次に第二に、日本国有鉄道法改正案でございますが、これは「経営の健全性の確立」という章を新設し、財政再建促進特別措置法にかわらしめるということを言ったのでありまして、この財政再建特別措置法はその都度改正というようなことを必要とするものでありますから、今度は国鉄法に盛り込む、で、この特別措置法の方は廃止するということは、これは妥当なことだと考えます。従来の国鉄法にはほとんど赤字というものは考えておりません。出ても、後の、次年度以降の黒字でもって埋め合わせができるという立場なんであります。  ところが最近は、国鉄赤字というものは恒常的に万年化して、しかも非常に金額が大きくなる。ですから、これはどうしてもこの赤字をどうするかという問題を国鉄法に盛り込まなければならないものでございます。今度のでは、長期資金の無利子貸し付けとか利子補給、特定債務の整理特別勘定をこしらえるとか、特別の配慮をするとかいうような項目が盛り込まれておりました。いずれも適当だと考えます。必要だと考えますけれども、しかしながら、私はもう一つお願いしたいことは、国鉄法におきまして、国鉄経営における政治の責任と経営の責任というものを明確化するということであります。  以上でございます。
  7. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) どうもありがとうございました。     —————————————
  8. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 次に、清水公述人にお願いいたします。
  9. 清水義汎

    公述人(清水義汎君) 明治大学の清水でございます。  私は、国有鉄道運賃法に対しまして、現在審議されております内容に反対立場意見を申し上げたいと思います。  まず第一に、現象面から申し上げまして、現在の国鉄運賃には非常に大きな矛盾が出てきたということであります。  そのまず第一点は、運資と料金の問題であります。  この運賃が審議されますときに、他の物価指数と比べまして運賃倍率というものが低いんだという主張がたまたま行われますが、現在国民旅客運賃負担をしておりますのは、運賃料金を合わしたものを払わなければ列車には乗れないというのが現実の姿であります。しかも、この料金の場合には、国会の審議の対象から外されておりますために、料金がきわめて運賃よりは安易に上げられてしまう。しかも、ダイヤ改正のたびごとに優等列車の増発という形で特急、急行がどんどんふえておりますので、現実に中長距離の旅客の場合には、特別料金を払わないで乗れる列車はほとんど機能していないというのが現実の姿だと思います。しかも、運賃国会にかけて、料金国会の審議対象から外しているということは、国鉄の基本的な営業収入の基礎は運賃である、料金は使用料としてさほど大きなウエートを占めてないということで、私は運賃法から除外をされているのではないかと理解をされる。  ところが、現実に東京−大阪間の新幹線を見ましても、運賃部分が二千八百十円、料金部分が二千七百円という形になっております。在来線を見ましても、上野−小千谷間が運賃部分が千二百八十円、特急料金が千二百円。これが近距離になりますと、在来線でありましても上野−宇都宮間が運賃五百七十円で料金が九百円。新幹線になりますと、熱海−東京間が特急料金が千百円、運賃が五百七十円。いわば運賃の倍の使用料を払わなければ乗れないという、きわめて奇形的な運賃体系が出てきたということであります。ここで論議されます運賃というのは基本運賃のことを言っておりますが、国民にとりましては、料金運賃を合わせてが運賃であります。こういう矛盾をそのまま放置した中で、現在の運賃体系だけをいじくるということにはきわめて問題があるというのが第一点であります。  第二の点は、他の交通機関との運賃の関係がきわめてでこぼこが出てきたということであります。  これは、国会に提出されました国鉄資料を見ましても、たとえば新宿−小田原間が私鉄が四百円、国鉄の場合は現行で四百四十円であります。これは改定案になりますと、国鉄が六百八十円で私鉄が四百円。大阪−三ノ宮間を見ますと、現行私鉄が百八十円で国鉄が百七十円。改定になりますと二百七十円という形で国鉄が上がってまいります。大阪−京都間の並行路線をみましても、これは国鉄四十三キロ、京阪五十キロの営業キロでありますが、現在国鉄が二百二十円、私鉄が二百二十円、営業キロでは京阪の方が多いわけでありますが、この金額が同じである。ところが、改定案になりますと、これは三百四十円という形で、いわば常識的には国鉄の方が私鉄よりも少なくとも安くなければならない。高くなるということは常識的に考えられないんですが、現実には私鉄より高い国鉄運賃ということになってしまう。  また、航空運賃との比較を見ましても、現在東京−大阪間が五千五百十円でありますが、これが改定案では八千三百円になる。そうすると、一万四百円という航空運賃ときわめて接近をしてまいりますし、この場合もグリーンのA寝台車を使いますと、国鉄鉄道の方が飛行機より高い。これはグリーン車のA寝台を利用いたしますと、改定案では一万四千三百円というふうになってまいります。それから東京−博多間を見ましても、グリーン車のA寝台を利用いたしますと二万三千円、飛行機の方が二万百円、それから東京−仙台間を見ましても、グリーンでまいりますと改定案が八千九百円、飛行機が八千百円、いわば航空機とそれから今度は国鉄運賃というのが、きわめて運賃の金額の面では激しい競争関係に入ってくる。このことは、上級旅客を従来までは航空機にとられておりましたけれども、一般旅客までますます転移をしてしまう。しかも国内航空機については、エアバスの導入等でますます大量輸送性が高まっておりますので、この辺でまた新たなる矛盾が一層激化をするという点が他の交通料金との関係で出やしないか。これは現象面でございます。  そこで第二は、一体この運賃というものを考える場合に、国鉄という企業の中で出された損益計算書の帳じりだけでどうするかという議論をしていいか悪いかという問題であります。私は、損益計算書の内容から見ますれば、当然大幅な赤字でございますし、これを埋めるのには営業収入をふやさなきゃならぬ、これは何も議論をする必要がないぐらいきわめて簡単な問題であります。しかし、重要なことは、交通政策運賃政策との関係の整合性にもう少しの配慮が必要ではないかということであります。  一体、今日の国鉄赤字の原因というものを見ますと、単に国鉄の経営者の経営のやり方が悪かったというふうに私は言えないと思います。むしろ国鉄の内的な要因よりも、国鉄を取り巻くところの外部要因の方が、きわめて国鉄の経営を悪化をさしてきたというところに基本的な問題があるのではないかと思います。もしそうだといたしますと、国鉄赤字経営の失敗は経営者の失敗ではなくして、交通政策上の失敗と言わなければなりません。それを前提にいたしますと、交通政策なり運賃政策の転換がないままに賃率の改正をしても、基本的な解決にはならないということであります。  そういう角度から物を考えますと、今日の交通の混乱、国鉄の危機の最大の要因は、私は競争政策の矛盾に起因するというふうに考えております。確かに大手荷主にとっては、交通機関相互間の競争には大きなメリットがございます。莫大な設備投資をして輸送の近代化をやることも、産業資本にとっては大きなメリットがございます。すなわち、競争政策や莫大な設備投資は流通経費の削減、それからピストン輸送体系の確立によって、交通機関を倉庫としての機能を持たしてしまうということであります。そのことは当然産業資本の回転率を高めてまいりますから、産業資本は、当然交通に対しては規則的な、しかも低廉な、しかも大量な輸送を求めるわけであります。この形を別な表現からいたしますと、産業に従属した日本の国有鉄道というよう表現もあながち否定できないわけであります。このことが特に貨物運賃については典型的にあらわれたということであります。  しかも現在、この貨物の問題を議論いたしますときに、七百万台というトラックの輸送の問題を除いて国鉄貨物運送の問題は議論をできないと思います。七百万台のうち営業用のナンバーを持っているトラックは約五十万台弱であります。いわば自家用トラックを含めた激烈な競争の中で、この国鉄は当然貨物輸送体系は大混乱を起こしてきた。それが今日の一三%までシェアが下がったという基本的な背景であります。確かにそのことは、日本の産業資本の発達に大きく寄与したかもわかりません。しかしその反面、国鉄の経営は苦しくなる、そして、大衆旅客運賃にそれが全部転嫁をされてきたというのが、過去二十年間の私は歴史的な事実関係ではないかと思います。  そういうことを考えますと、今後の交通政策運賃政策との関係の中では、特に調整政策の確立が必要だということであります。いわばそれぞれの交通手段の特殊性と、それから一定の条件の中での競争関係というものを確立いたしませんと、全く自由な競争の形に置いてまいりますと、小回りのきかない国鉄の場合には、きわめてその輸送範囲と守備範囲が限定をされてしまうということであります。  特に調整政策の中で必要な点は、私は二点あると思います。一つは外的要因の除去であります。それからもう一つは環境問題、省資源エネルギー問題を、日本の長期のエネルギー対策等も含めて効率的な輸送体系をどうするかという角度からの調整政策であります。こういう観点を抜きにして、私は国鉄再建論、あるいは赤字論というものを議論をしてきたところに問題があるというふうに考えております。  それから三番目は、公共料金政策と運賃政策との整合性であります。  諸先生方御承知のように、最近自由諸国におきましても、交通部門に対するところの一般会計からの補助率というのは非常に高まっております。また、交通そのものを独立採算制という角度からだけでは見ないという角度も高まっております。アメリカですら国家大衆輸送法の制定が行われたことはすでに御承知だと思います。  そこで、先般十月二十三日に、国民の足を守る会が東京国鉄問題民間広聴会を開催をいたしました、これは広く聴くという意味の広聴会。そこで国鉄の幹部の方が御出席になりまして、国鉄の収入をどういう形でバランスをとっていかなければならないのかという御説明がございました。非常にわかりいい説明でございまして、一億人の日本の国民というものを国鉄の必要の経費、こういうものを一億で割りまして、一人頭幾らにしたらわかりいいかという数字ではじき出されたのでありますが、これで見ますと、現在運賃収入というのは国民一人当たり一万七千七百円である、それから一般会計から補助を受けるのが三千六百円である、それから運賃値上げ分で見られるのが五千三百円である。その他もろもろの数字が出ておりますが、この数字一つ見ますと、これは大体日本の場合には収入の中に占める国家助成の比率というのは数%である。ヨーロッパが一五%から三〇%、わが国の三倍近くであります。一般会計の三千六百円をこの三倍にするという形になると約一万円になる。そういたしますと、運賃値上げ分は、ヨーロッパ並みにすれば値上げは必要なくなるという数値が単純計算の中では出てまいります。そこで、いわば補助、助成政策というものの基準、原則、こういうものも運賃値上げの問題なり運賃改定の問題と絡めて、やはり基本原則をぜひひとつ国会の方でもお立てをいただきたいというふうに考えるわけでございます。  限られた時間でございますので、最後にもう一つお願いをしたいと思います。それは、現在法定主義も廃止をしていきたい、国鉄運賃問題に弾力性を持たせたいという議論がされております。現行では国会における審議が中心になっておりますが、その中でも公聴会という制度があり、あるいは参考人から意見を求めるという制度が持たれております。この制度は私はきわめて大事なことである、必要な制度だと理解をいたします。ただ、ここで公聴会のあり方についてぜひお願いをしたいと思います。  一般の認識では、公聴会が始まると、法案の打ち上げの前段のセレモニーだという声も聞かれております。もちろん法案についての賛成論、反対論、同数で出てまいりますので、従来の公聴会の公述の中では、賛成論の意見は確かに反映されておる。それがいけないということは私は決して申しません。しかし、賛成論の中でもいろいろな条件がつけられた議論がたくさん出ております。あるいは、反対論の中でもいろいろな議論が中に含まれているというふうに私は理解をいたします。そういう公聴会の議論がこの国鉄運賃改定問題の中で、もし私の理解が誤りであれば訂正をさしていただきたいと思いますが、余り従来まで採用されたということを具体的に私は知りません。ぜひ今後、この国鉄運賃の議論をする制度の改定の問題とあわせまして、公聴会のあり方について抜本的に御検討をいただきたい。一つは、広範に国民意見を聞いていただきたい。第二は、公聴会意見が諸先生の正しい御判断の中で、たとえ特定政党意見とそれがかみ合わないとしても、それが常識的に、あるいは客観的に必要であれば、十分それが活用でき得るような形でこの公聴会を御利用いただきたいということを最後に申し上げまして、私の意見を終わらしていただきたいと思います。
  10. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) どうもありがとうございました。     —————————————
  11. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 次に、大森公述人にお願いいたします。
  12. 大森誠一

    公述人(大森誠一君) 日通総合研究所の非常勤監査役の大森誠一でございます。  初めにちょっとお断りしておきたいのですが、この研究所は日通の投資は受けておりますが、別機構の独立会社で、研究機関としての公正な研究活動をいたしております。また、常々関心を持っております流通問題の中での、生産から消費に至る過程での包装、荷役、輸送、保管の機能活動のいわゆる物的流通の立場から見た国鉄貨物輸送の問題を主として、法案への賛成の意見を申し述べたいと思います。そういった形で、私自身が輸送関係の技術者でございますので、貨物関係を中心としての意見ということで御了承願いたいと思います。  法案提出の目的は、当然のことながら国鉄経営改善であり、その必要とする最終目標は、国鉄業務の能率向上と公共の福祉の増進にあると考えます。そのために、従来の累積赤字の一部を二兆五千億円に見合う債務をたな上げし、地方交通線の補償百七十億円の財政援助を行い、フレッシュな経理のもとに運賃引き上げによる収入増加を図って、再建のスタートを切ろうとするものであると思うんであります。  論議の焦点は、そのような措置のいいか悪いかの是非と、それが実現した場合、国鉄経営は果たして回復し得るであろうかの問題点であろうと思います。私は、今後国鉄労使の問題の正常化と、貨物輸送についての企業マインドに沿った経営改善策が国会、行政、国鉄のそれぞれの立場で御指導されることを期待して、回復する可能性を信じております。  まず、財政的援助措置については、公共料金抑制のもとに特に貨物料金が押さえられていたこと、産業構造の変化、トラック輸送への極度の需要転化、労働問題発生等の国鉄経営の不備も手伝ってこのような累積赤字を生じたので、いまさら、これを何によって回収しようとしても、国が出す以外方法がないと考えられますので、会社更正法的な処置としてやむを得ないことと考えます。しかし、関係者としては、これよりも留意すべきことは、民間企業であればすでに破産し、従業員の給料も支払うどころではない事態にまで落ちたことを肝に銘じ、その要因を究明して、再びその誤りを犯さないことであろうと思います。  次に、運賃改定についてでありますが、現在の収入のほとんどが人件費に費消されてしまうという実態は、民間企業立場からは、どうして今日までそのように放置され、従業員も危機と感じなかったのだろうかと奇異な感がいたします。人件費の内容については門外漢にはわかりませんが、何らかのメスを入れる必要はあるとしても、当面の問題としては値上げを認めざるを得ないと存じます。特に、貨物運賃については原価の三分の一にしか達していないだろうということを聞きますと、各種民間輸送企業の人件費は五〇ないし五五%程度以下に保持することに努力していることから考え、値上げ反対は言えないことと考えます。  次の問題としては、トラック輸送なり海運の伸長する中で、国鉄貨物は現在より減りこそすれ、ふえはしないという一般的な考え方が生まれますが、さらに、引き続きベースアップ、その他による出費の増大をその中で賄い得るだろうかの問題がありますが、私は、貨物量は一時的に減っても、ある条件が満たされるならば、努力次第によってはふやしていく可能性も大いにあるということを、物流問題研究の立場から信ずるのであります。その条件とは、まず値上げ国鉄管理職員層並びに従業員はどのような受け取り方をするだろうかということであります。経営改善、国鉄再建への協力姿勢の引き金として真剣にこれを受け取ってくれるか否かの問題であります。もし、そのような空気が醸成されないとするなら、せっかくの措置は一時しのぎの問題になると思います。  次に、公共性と企業性の相克矛盾した国鉄経営を、貨物輸送については思い切った割り切り方をすることにあると思います。すなわち、企業性を大いに発揮した中で少しでも貨物がふえて、トラック輸送による道路交通公害、特に人命尊重の上からの安全問題の救いの道になるとすれば、それだけ国民福祉に寄与し得ることになるので、公共性は守られるという考え方であります。鉄道輸送の長所として挙げられるエネルギー節約とともに、交通安全の問題こそこれからの福祉志向社会において最大の関心事と思います。  鉄道は無人で、百五十キロのスピードで十三キロを安全に走ったという実績を持っております。すなわち、技術の力で相当程度までは安全確保は可能であります。トラックは、道路整備が行われ、信号が設けられても、個々の運転者を信頼する以外に道がありません。百万キロ走行当たり事故件数の比率は、鉄道一に対してトラックは一二・六であります。まして自動車専用道路のない地方にある国道、県道の道路交通の不安全、欠陥道路は随所に見られ、ますます大型化するであろうトラックの走行に問題発生は目に見えるような気がします。私は、水俣公害問題のように、なぜ早く気がつかなかったんだろうかの悔いが、トラック万能論について、近い将来反省が行われるような気がしてなりません。  企業性発揮の方途としての考え方として、国鉄輸送商品のメーカーであることに徹し、通運業者は、その販売代理店ないしは販売店として最大の努力を尽くすという考え方はいかがでありましょうか。その際、代理店への手数料、販売拡大のための便宜供与の措置が必要であり、代理店は新商品開発への情報提供と販売市場拡大の責任を負うものであります。この辺の関係が、国鉄側にも発想はあっても今日まで制度的な規制、あるいは企業性への割り切り方ができなかった諸種の障害があったと思われます。  第三に、貨物輸送についての新技術の開発は困難であるという考え方の排除であります。技術といえばメカニックな精密な機能を連想しますが、物流技術はむしろ簡単な装置で、トータルシステムとして作動し得るものを求めています。私は、コンテナ、パレットを輸送手段として、いわゆるユニット、バルキー輸送方式を可能とするシステム輸送の開発の道はまだまだ残っていると考えます。また、それを都市内物流近代化システムと整合化させることにより、総合交通体系的な輸送調整の方式が自然とつくり上げられ、都市問題、物価問題解決の道にもつなぎ得ると確信いたします。その意味では、国鉄貨物がわが国輸送政策のオピニオンリーダーとしての位置づけが可能と存じます。ただし、現在の輸送線路容量の限度と駅のスペースの限度がありますので、それは十分わきまえて考える必要があると思います。  第四に、国鉄の経営管理手法への私見でありますが、なぜ国鉄貨物が伸びなかったかの原因に、ストライキ問題、あるいは旅客優先ダイヤなどがありますが、そのほかに国鉄経営管理の中心が、安全、確実を最重点とする内部作業管理に重点を置かざるを得ないことにあったと思われます。その人たちにどろ臭い営業感覚を求めることは無理であり、制度の中では処理し切れない問題もあったと思います。したがって、先ほども申し上げましたように、それは通運業に任せ、包括的に自由裁量のとり得る道をどの管理段階の中で認めるかの検討が必要だと考えます。  第五に、前に申したことと若干重複しますが、物流改善手法を対荷主との間で実現すると同時に、国鉄貨物部門の中で、省力化対応の諸施策を推進することが必要だと思います。民間各企業の物流改善は、現在経営の重点項目となっており、特に少量、多様、地方への貨物輸送に悩んでおります。したがって、国鉄貨物の対象をロット物、あるいは専用線貨物に限定する要はなく、大衆、消費者物資をロット化して輸送する手段は、研究の余地があると考えます。もちろん、ロット化して発送し得る着地の選定とか、到着後の配送問題についての経営的考察は必要でありますが、そういうことも考えられると思います。また、大都市間輸送のほかに地方都市、市町村向けの集約混載、省力化輸送手段の開発も、貨車積載重量の最低トン数を引き下げることなどによってある程度可能となると考えます。地方からの返路貨物として農産物を組み合わせる農協等出荷団体との物流的な組み合わせも考えられます。  第六に、具体的な物流改善の発見と現場就業者の苦労話、提言を聞き入れるために、第三者によるカウンセラーのような制度を設けること、あるいは現場単位での収支、差益のわかるような業績管理システムの開発を考えられてはいかがかと思います。  以上、国会の重要な場で、諸先生方への法案審議の参考発言でなければならないところを、大分どろ臭い話を申し上げましたが、多分に国鉄当局の方へお願いする内容のものがまたありました。しかし、現場的なささいな問題であっても、いわゆる商売人として輸送商品を売ることにより、国鉄貨物数量をふやすことを考えるなら、そのような小さな問題が隘路となっては再建問題も成功いたしませんし、そのささいな問題をたどっていけば、大げさな言い方で恐縮ですが、国政にも関連することもあると存じまして申し上げましたことをお許し願いたいと存じます。  最後に、このことにも関連しますが、一言で申し上げては御理解しがたい問題もあるかもわかりませんが、総合交通体系政策の趣旨が、次に申し上げる物流技術の手法で多少でも可能であるという気もいたしますし、またそのことは、国内産業経済の近代化の上にも役立つと存じますので申し上げたいと存じます。  それは通産省、運輸省ともどもに進めておりますJIS規格による縦千百ミリ、構千百ミリのパレットによる物流モジュール化の問題であります。簡単に申し上げれば、一間という長さが柱の間隔、畳、かわら、たんす、建具面積の基準に国内共通に使われたごとく、輸送をもとにして行われる経済活動並びに効率的な商品開発の基礎に、このパレットサイズ及びパレットを利用しようとする考え方があることであります。詳しくは申し上げる時間はございませんし、また、そういう場でもございませんので、一応、国会の先生方に御記憶にとどめていただければ望外の喜びと存じます。  以上で終わります。
  13. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) どうもありがとうございました。     —————————————
  14. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 次に、井上公述人にお願いいたします。
  15. 井上美代

    公述人(井上美代君) 私は、新日本婦人の会東京都本部副会長井上美代です。私は主婦の立場から、今回の国鉄運賃値上げ反対する立場から公述をさせていただきます。  いま、私たちは、打ち続くインフレ、不況の中で失業や雇用の不安、それから昇給の停止など、非常に深刻な生活の危機に直面しております。九月の中小企業の倒産は、昨年十二月に続いて史上二番目の記録をつくり、年末に向けてこれからの生活がどうなるだろうかと不安になってきております。十三万円のローンが払えなくなって親子が心中する家庭、月三日しか仕事がなくて、血を売って暮らす日雇いの人々など、都会での貧困者はふえ、貧富の格差が広がっております。  NHKの受信料が六月に値上げされ電気代、お米、灯油、小麦粉、そうしたものもいつの間にか上がりまして、住民税も医療費も引き上げられました。すでにレジャーや衣類、食費を削っている私たち国民の生活にとって、これからの生活がどうなるだろうかと、本当に深刻に悩んでおります。加えて公共料金の中でも横綱であると言われておりますこの国鉄運賃値上げが、最も大きく諸物価値上げにはね返ると考えられます。もしこれが値上げされますと、航空運賃を上回るものが多く出て、航空運賃値上げのチャンスとなるし、ひいては私鉄運賃、大企業製品値上げにも直接つながっていくことは確実だと思いますので、絶対に値上げをしないでいただきたいと私は考えております。  これまでも、国鉄値上げのたびに主張してまいりましたが、今回も、いただきました資料運賃改定申請理由のところに、「サービス改善に努め、安全、正確な輸送を安定的に提供する」と言っていますが、私たちの毎日の生活を見てみると、ラッシュは依然として解消されず、無人の駅はふえ、客車は貨物に優先され、公害はあたり構わずまき散らされております。殺人的ラッシュ問題は、首都圏で生活する私たちにとって朝夕を不快にし、通勤で失うエネルギーも大変なものです。いま働く婦人がふえ、男性も合わせまして三人に一人が婦人労働者です。そして、その中で六二%は結婚した婦人です。子供ができても働き続ける婦人が多いため、出産までのほとんどの九カ月間をあのラッシュ時に通勤をしているのです。  先日も通勤の途中、ホームの階段で押されて転んだことが原因で流産した女性の話を聞きました。生まれてくる子供のため、できるだけ窓側に行かないよう、また金具のところで押されなくても済むように、必死でおなかを守りながら通勤しております。くつを奪われ、ハンドバックがなくなり、時計やネックレスがはずれてしまうことはたびたびです。働く婦人に流産が多いのもラッシュの混雑と無関係ではないと思います。  こうしたラッシュをしり目に、車内には国鉄の車内広告がぶら下がっていました。国鉄の一番の願いは安全とか、これほどの赤字になったのは、として、その赤字のトップに運賃改定の抑制を挙げ、大きな文字で、運賃改定の実現に皆さまの御理解と御協力をと呼びかけ、九月の下旬に出ましたものには、このままでは毎日三十三億円の赤字がふえ続けますと、利用者だけに何か責任があるような誇大広告とも言える広告が中づりのところに出ておりました。なぜ国民だけがこんなつり広告で赤字赤字だともっともらしく宣伝され、その気にさせられ、犠牲にならなければならないのだろうかと、私はこの広告を見ながら深く考えさせられました。  一方、都心から目を離して郊外の方を見てみましても、問題は決して解決していません。立川から奥多摩まで走る青梅線では、国鉄の合理化によって無人駅が非常にふえております。朝、小中学生だけでも三百人ぐらいが乗りおりをしております二俣尾駅では、跨線橋に屋根がないために、雨の日はかさを子供たちが差します。そのため、目をつついたとか、かさが触れたとか、毎朝けがやけんかが絶えません。冬になりますとさらに悪く、下が凍りついて老人が滑る事故も何回も起きております。これに対しても国鉄は、まだ住民の要望にこたえ切れておりません。  そのほか、電車とホームの間が三十センチ以上もあいていて、落ちてけがをするというところや、青梅より西の方におきましては、石灰を積んだ大企業用の貨物がありますが、これが単線になっておりますので優先をしますので、暖房もきかない、新聞も読めないような暗い電車の中に押し込められた乗客にそのしわ寄せがいっているという現状であります。こうした状態は、府中から浦和の方へ走っている武蔵野線でも同様であります。このように国鉄は、国民への約束も果たさず、赤字がふえたからといって値上げという形で国民にしわ寄せをすることは、どうしても納得がいかないのです。  また、新幹線の問題では、沿線住民に多くの被害が及ぼされております。大田では去年の八月、住民の手で調査がされていますが、一年前に建てた家が戸が閉まらなくなったとか、電話の声が聞こえないとか、家族の話ができない、テレビの画面が遮断される、夜中に布団の上に飛び起きてしまうというような被害の訴えが深刻に出され、去年十一月のスト権ストのときは、八日間思いがけなく熟睡、安眠の爽快さを味わえて本当にありがたかった、もう人間ががまんできる限界ですよと訴えております。この二十四時間測定の結果は、すべて八十ホン以上を超えた結果が出ております。  いま、東北新幹線建設も急がれているようですが、大宮では桜木町団地を分断して通過させようとし、一方、熊谷市では日立金属、秩父セメント、新日鉄の敷地を今度は急カーブで避けて通るという国鉄の差別的態度に、大宮の住民の反対の怒りは大きくなっておりまして、いま膠着状態であると聞いております。そして、その方たちは、生活に新幹線は必要ないのだと言われておりますが、こうした住民の方々の声も当然ではないだろかと考えます。長くもない一生を、公害に悩まされながら幕らす人々の犠牲の上に、なぜ国鉄は莫大な借金をしてまで新幹線建設するのでしょうか。私は、新幹線のばらまく公害は放置したまま、国民のふところをねらった運賃値上げ新幹線建設するということには、絶対に反対でございます。  もう一つ申し上げたいのは、今回の値上げが、必ず私鉄運賃値上げとなって響くということでございます。新宿−八王子間は、いま私鉄で百九十円、国鉄で二百円です。値上げされますと国鉄が三百十円。来年さらに値上げをされますと四百六十円になります。百九十円と四百六十円というこの差は、私鉄の大幅値上げにつながることはどなたの目にも明らかではないでしょうか。この意味からも、私は今回の値上げ反対をいたします。  さて、六〇年代の政府の経済政策の結果、過密、過疎現象が進み、多くの農村から労働者として、また出かせぎ者として多くの人口が都市へ移動いたしました。その結果、ふるさとへの旅をする人は非常にふえておりまして、いまやこのふるさとへの旅は生活の一部になっていると私は考えます。私も九州佐賀にふるさとを持っている者です。郷里には年老いた父母がおります。先日、私は京都まで出てきた父母に付き添って西本願寺を訪ねました。父母は、死への旅立ちの準備をしに出てきたもので、帰敬式などという初めて知る、先短い老人たちの厳かな儀式などを経験いたしました。そして、育て上げた子供は遠く都会に出、年寄りだけがひっそりと暮らしているそんな様子を両親の後ろ姿に見たとき、ふるさとへの電話が、また、年一、二回の帰省がどんなに親を慰めることだろうかと強く思いました。しかし、今回の国鉄運賃値上げは平均五〇%以上で、史上最高の値上げ案と言われているだけに、私たちのふるさとへの思いも遠くに押しやられ、親孝行もできなくなるのではないだろうかと考えます。  現在東京−佐賀間は、新幹線の普通で現行往復一万九千百二十円です。私のように幼い子供を抱えておりますと、いつも気違いのように正月、お盆の一番込むときに切符を求めますので、普通券が出ないと、ばたばたっともうグリーンも構わずに出してもらわざるを得ず、グリーンを買うつもりもないのに買わざるを得ないことがたびたびあります。グリーンでは現行往復か三万五千百二十円、値上げされれば一人五万三千六百円で、飛行機より一万三千円ほども高くなるようになります。大抵家族で帰りますので、わずかなおみやげを買って、考えてみましても最低二十万ぐらいのお金がどうしても必要になってくるんです。給料は、低成長時代だと、不況を理由にして一〇%にも満たない賃上げですので、人生の最後も近い年寄りを抱え、ふるさとを少しでも近づけたいと願う私たちの気持ちと国鉄の姿勢が余りにもかけ離れていることに、私は深い憤りを感じます。国鉄値上げは、孫たちに会えると楽しみにしている年寄りの夢を壊し、一生の思い出になる   〔委員長退席、理事瀬谷英行君着席〕 中学生、高校生の修学旅行への負担を重くし、通学定期の引き上げは、公立が足りず五〇%以上を私学に頼っている東京では、家計の大きな負担増になります。こうした国民生活の破壊を政府はどのように考えていられるのでしょうか。  私がこうしてお話ししましたのは、私がいろんなところに行きましてお話を伺ったり、見たりしたことをお話しさせていただいておりますけれども、国鉄も、設備投資を決してここで打ち切るというわけではなく、今後まだいろいろなところに設備投資をしていくと考えられます。しかし、これを国民負担で切り抜けるのではなく、国鉄は国が責任を持って、公共交通機関なのだから、真に国民のための国鉄にするためには、政府は借金に次ぐ借金で賄う独立採算制を押しつけるのではなく、出すべきものは国からの支出として補償していかなければいけないと思います。国が国鉄への支出を避け、航空だとか、港湾だとか、高速道路などに重点的に政府資金を投資してきたことが今日の赤字の原因をつくっているのではないだろうかと考えますので、この点、諸先生方、徹底的にそのあり方を検討し直していただく必要があるのではないだろうかと考えます。  また政府は、財政再建計画の中で、国鉄労働者の五万人合理化を基本理念の一つにしているようてすか、これは労働者への労働強化となるだけではなくして、今後一層国民へのサースの低下となってあらわれてくることが考えられます。すでに寝台車の車掌補をなくし、次いでグリーン車などのひじカバーを外し、山手線などの減車、運休、ついこの間は「みどりの窓口」の時間規制などがとられようとしております。こうしたことを考えると、運賃という形だけではなく、すべての赤字のしわ寄せが国民にはね返ってくることになります。  以上述べましたように、国民国鉄労働者には全く責任のない赤字を、二年連続の大幅な運賃値上げと合理化で切り抜けようとしている値上げ案を、私はどうしても認めることができません。たとえこの法案が通過しても、現在のやり方を続ける限り、真の国鉄再建というのはあり得ないと思います。そして、今後も値上げと合理化だけが一方的に強いられるだろうと思うんです。  国民のすべてが、本当に安心して利用できる国鉄にするためには、国は税金の使い方を本当に国民本位に切りかえて、国が出すべきものは出して、設備投資をどこにするのか、こういうことを諸先生方民主的に決めていただき、幹線だけではなく、日本のどんなすみずみに住んでいるそうした住民のところでも、確実に国民の足としての交通機関が確保され、そして、国民へのしわ寄せをしないような国鉄の基本姿勢に変えてくださることを切にお願いいたしまして、私の陳述を終わらせていただきます。
  16. 瀬谷英行

    ○理事(瀬谷英行君) どうもありがとうございました。     —————————————
  17. 瀬谷英行

    ○理事(瀬谷英行君) 最後に、井原公述人にお願いいたします。
  18. 井原豊明

    公述人(井原豊明君) 井原でございます。公述をさせていただきます。  ただいま御審議をされておられます運賃法と国鉄法の一部改正法律案は、累積赤字によりまして国鉄財政はまさに破局の危機に直面をいたしているわけでございまして、これを打開し、国鉄財政を立て直し、さらに健全化を図るための措置でございます。私の所属する団体の立場からいたしまして、賛成の立場に立つことは非常に困難ではございますが、しかし過去四十四年、四十九年の運賃改定の際に、やはり同じように国鉄財政の危機が叫ばれたわけでございますが、今日当面いたしております国鉄財政の危機は、まさに本音の、従来と本質的に違う危機だと解釈をいたしまして、そういうように理解をいたしまして、ごく最近発表されました一部列車の編成の縮小、あるいは間引き運転等、かつて国鉄として打ったことのない新たな手を打たざるを得ないような危機に直面をいたしておると理解いたしまして、やむを得ないものといたしまして賛成の立場をとるものでございます。  しかしながら、現在のわれわれの状態は、四十八年の石油危機以来の長期不況からやや立ち直りを見ておりますこのときに、国鉄といたしましてかつてない高率の運賃改定が行われますことは、利用者の負担増による影響を考えますと、われわれはまことに忍びがたいところではございますが、国鉄の健全な運営がなされなければ国民生活の安定がないということに思いをいたしまして、今回の措置に賛成するに当たりまして、諸先生方、また国鉄当局に若干の要望を提起いたしたいと存ずるところでございます。  まず第一に、今回の国鉄法の改正は、国鉄財政を圧迫いたしております過去債務のうち、二兆五千四百億円を実質的にたな上げするための助成金二千四百四十一億円、また工事費補助金九百七十六億円、地方交通線の運営費の一部として特別交付金百七十二億円、また合理化促進特別交付金として五億円など、合計三千五百九十四億円を予算面で助成金として計上をされておるわけでございまするが、これは国鉄財政再建の足がかりができるわけでございまして、本年度は国の財政赤字であるわけでございますので、   〔理事瀬谷英行君退席、委員長着席〕やむを得ない条件があったことと思われますが、今後さらに、これらの助成金の増額につきまして御努力をいただきたいと存ずる次第でございます。  なお、この法案は、六月一日実施目標としていたようでございますが、今日まで五カ月延びましたために、その収入減は二千六百五十億円とされております。また、この法案の通過が前提でございます予算である関係上、工事経費につきましても二千億円程度、また物件費、人件費につきましても五百六十億円が支出抑制せざるを得ないような状態になっていると新聞紙上で拝見いたしておるわけでございますが、このため東北新幹線工事等が全面的にストップされておるわけでございまして、この関連業界二万六千社、二百万を超す従業員を擁するわけでございますが、これらが大きな打撃を受けているということでございます。これはまことにゆゆしき社会問題ではないかと考えておるわけでございます。また、車両修繕費の抑制によりまして列車編成両数の減少とか、あるいは一部列車については運休せざるを得ないとのことでございますが、一日も早く本法案が採決されまして、国鉄財政再建策でございます国鉄法が実施されまして、平常なる運転その他ができますように強く要望するところでございます。  また第二に、地方ローカル線の運営問題でございますが、国鉄におきましては数年前に廃止線を発表いたしたわけでございますが、なかなかそれぞれの地方におきましては猛反対がございまして実施されていないわけでございまして、また、赤字額の四分の三はローカル線から出ていると承っておるわけでございますので、将来地方支線区の運営をどういうような運営形態をとるのかということを明確にしていただきたいと思いますし、また、これが明確にならない限りは、やはり大きな赤字が累積されていくのではないかというように懸念するわけでございます。しかし、本年度の予算面では初めてこの特別交付金百七十二億円が計上されておるわけでございますが、今後国におかれましても、この拡充につきましてさらに御努力を賜るように要望いたすわけでございます。  第三に、運賃法定制度の検討でございます。先ほど公述されました先生方からもお話がございましたように、累積赤字の大きな原因は、国鉄運賃政治的に、あるいは政策的な理由のために抑制されてきたことにあると思われるのでございます。このあり方につきましては、早急に検討をされるように要望を申し上げる次第でございますし、もし政策的に抑制する場合におきましては、この抑制した相当額を国が負担するよう措置しなければ、国鉄財政の均衡は得られないのではないかというように考えるものでございます。  第四に、国の方針で実施する公共割引につきましては、それぞれの内容に応じまして、基準あるいはあり方等につきまして御検討をいただき、割引による負担分は国において負担すべきであろうと考えるものでございます。現在の赤字国鉄がこれを負担することは、まことに不合理だと考えるわけでございます。  第五に、私どもが最も国鉄に要望いたしますのは輸送力の増強でございます。過去十二年間におきます赤字経営という困難な財政事情の中におきましても、企業努力によりまして新幹線の博多開業、あるいは電化区間の延長、主要幹線の複線化、動力車の近代化、車両の改善等、輸送力の増強を図る施策を推進されたことは高く評価するところではございますが、しかし、最近の旅行は、特に余暇を利用する観光レクリエーション旅行は、国民生活の一部となっているにもかかわりませず、これに対応した弾力的な輸送力がないため、旅行シーズンにおいては各主要幹線の列車は混雑をきわめ、これがため旅行意欲を減退させている現状を解消するように輸送力を増強されまして、列車の増発によって旅行者の増加に対応して、快適な旅行ができるよう特段の施策を講ずるよう要望するものでございます。  第六に、強力な営業施策の推進についてでございます。今回の運賃改定は、国鉄にとりましても初めてとも言える大幅なアップであるだけに、どの程度の利用減があるのか、また、その利用減がどの程度の期間続くものか、見当がつかないのでございます。しかしながら、相当の落ち込みが予想されることは明白でございます。観光事業の主導的な立場にある国鉄といたしまして、これによりまして観光客が減少することを最小限に食いとめるよう新たな営業施策を講ぜられ、観光需要の喚起のため特段の努力を強く要望申し上げたいと存ずる次第でございます。  第七に、列車はダイヤどおり正確に運行されることを強く要望いたします。かつての国鉄は安全、正確を目標といたしまして、すべての列車はダイヤどおり正確に運行されてきたのでございますが、それによって国民に信頼され、また、国鉄もそれを誇りとしてきたはずでございます。ここ数年間繰り返されてきました違法な争議行為によりまして、その都度列車ダイヤは混乱し、あるいは完全に列車の運転を停止するなど、われわれ国民はこのためどれほど大きな、経済的にあるいは心理的に被害をこうむっているか、はかり知れないものがございます。一日も早く労使間の諸問題を解決されまして、労使が相互に信頼し、力を合わせて、かつてそうでありましたように、正確にダイヤどおり列車が運行されるよう、強く要望するものでございます。  最後に、私どもは、国鉄が現在の当面しておられます経営の危機を打開されまして、国民鉄道といたしましてその重大な使命を達成されますことを期待するものでございます。  以上で公述を終わらせていただきます。
  19. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) どうもありがとうございました。  以上で公述人意見陳述は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  20. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 運輸委員会公聴会を再開いたします。  これより公述人に対して質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  21. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 亜細亜大学の先生にちょっとお伺いしますが、国鉄再建に関係して一番責任者になるのが国鉄総裁ですけれども、その国鉄総裁に日本の財界、政界を含めてなかなかここ四、五年、国鉄総裁の人事になるとてんやわんや大もめするんですが、今回の高木総裁の任命についても、三木総理じきじきに出て頭を下げたと。なぜ国鉄という大企業が政界、財界の方々から進んでやってやろう、やってみようと、そういう意欲がない具体的な背景はどういうふうに受けとめておられますか、感じで結構ですからひとつ聞かせてもらいたいと、こう思うんです。
  22. 細野日出男

    公述人細野日出男君) やはり政治の介入ということが強くて、実業界的な人では、おれたちにはとても手に負えないという感覚が非常に強いんだろうと思います。私など、やっぱり企業ですから、実業家の百戦練磨の人がやるということが一番いいんじゃないかと思うんですけれども、自分たちが手下を一人や二人連れて入っても手に負えないということを申しますね。やはり政治的な負担が非常に重いから、思うとおりにはやれないということが原因だと思います。
  23. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 国鉄は、公共企業体という表現が示すとおり、公共性と企業性と二つを兼ねている特殊な事業体だと、私はこう思うんですがね。いま先生の、政治が介入するということは、裏を返せば公共性を守るために十分議論を尽くして国民の審判にこたえる、そういう公共性を一面持っている。その公共性という問題がなかなか財界の方、経済界の方々に十分な納得ができないか、あるいはできてもむずかしいか、そういうところにあるんではないかということを、私もちょっと別な面から考えるんですが、この公共性と独算制というものについてはどんなお考えでありましょうか。
  24. 細野日出男

    公述人細野日出男君) お答え申し上げます。  私は、本来の意味の公共性と企業性というものは調和できるものだと考えます。しかしながら、公共性というのが損してでもやれという意味ですと、企業性とは両立しない部分が出てくるということだと思います。で、実は私鉄でも民営のバスでもやはりみんな公共性あるわけです。しかしながら、それは損してでもやれということまでは、つまり黒字線の黒字で、黒字サービスの黒字で赤字サービス赤字が吸収できれば独立採算になるわけです。ですから、国鉄には赤字線と黒字線とありまして、平均原価的なものが中くらいのところにあった。黒字線の黒字と赤字線赤字がイコールになったというときに独立採算というわけですけれども、だんだんコストが上がりまして平均原価が上がってきますと、黒字の方の三角が小さくなっちゃうわけです。面積が小さくなります。そして、赤字の方の面積がどんどん大きくなる。それを直すにはどうしたらいいかといいますと、料金を上げるか、その他の収入をふやすということをやるか、もう一つは、赤字線をある程度縮減するかということより方法はないんだと思う。  現在の日本の国鉄の状態では、やはり政治の方で政治的に公共性というものを、政治が損してでもやれという意味の公共性が非常に強く入ってきておるということと。ですから、それは政治の方の責任でもって財政補給をしてもらうということをやらなければやっていけない。つまり私は、いまの国鉄は完全独立採算はとてもできないけれども、経営者にこれだけの責任があるということにした範囲のものについては独立採算をやる、つまり部分独立採算ですね。で、損してでもやれ的な公共性を強調されたために出る赤字で、黒字でカバーできない分は、政治が責任を負うということをやっていただく必要があるんだと思います。
  25. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 先生の答えを一言に聞けば、採算の成り立つところでやって、出た黒字の消化される範囲で公共性を生かして、その及ばないところについては政治がめんどうを見るべきだと、簡単に言えばそうですね。
  26. 細野日出男

    公述人細野日出男君) そうです。
  27. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そうすると、いまいろいろ赤字建設とか、当然赤字であるということがわかっていながら新線を建設をして、それで国鉄に運営を任されるというような地方ローカル線があるわけですね。この地方ローカル線は、たとえば新幹線の例をとっても、新幹線運賃も限界だと、そういう限界の段階で地方ローカル線のめんどうを見るということは、やっぱり国の政治の部面でめんどうを見るべきだ、こういう基本的なお考えであると、こう承っていいでしょうか。
  28. 細野日出男

    公述人細野日出男君) はい、お説のとおりでございますが、国鉄赤字線というもの、つまり国鉄はどの線区、あるいはどのサービスででも引き合わなければいけないということではないわけです。総合採算ができればいいということなんですけれども、昭和三十二年から三十八年まではその総合採算ができておったわけですね。それから後悪くなったということは、つまり公共性ということでもって引き合わない投資がふえたということと、それからいま一つは、高度成長に伴って人件費的コスト、あるいは買う物が非常に上がったというところにあるわけですね。
  29. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 中西先生、ちょっとお伺いしますが、いま三十九年から赤字になったという、効率のない投資という御説明があったんですが、それと同時に、自動車であるとか、港湾であるとか、航空であるとか、他の交通機関との競合をどう調整するかという共存育成といいますか、そういうものについて国の政策として失敗があったのか、なかったのか、あるいは三十九年から四十年段階でこういう手を打っておけばもっとよかったんではなかろうか、こういう、たとえば自動車との競合などについていろいろ文献が出されているようでありますが、そういう競合調整との関係があったら参考までにお聞かせ願いたいと、こう思うんです。
  30. 中西健一

    公述人中西健一君) これは非常に私はむずかしい問題だろうというように思うんですよ。と言いますのは、先ほども公述の中でちょっと述べたんですけれども、結局この調整の仕方に、あるいはまた、総合交通政策というものに、各交通機関の自由な競争に任せておいて、おのずから行くところへ落ちつかせるというやり方と、これは私なんか市場原理というような言い方をしておりますけれども、それからもう一つは、そうではなくて、政府が積極的に政策的な介入をしまして、国鉄旅客の国内交通に占めるところのシェアはたとえば五〇%なら五〇%維持すると、それからバスはどれくらい、航空機はどれくらい、それからマイカーですね、どれくらいという形でもう決めてしまっちゃってやるという計画化原理とでもいいますか、こういう二つがあると思うんですが、この後者の場合は、私は社会主義国ならともかく、日本のような資本主義国でそういうような形で輸送分野をぱしっと決めてしまうということは、これは事実上不可能なんじゃないか。  で、決めてしまうということになりますと投資ですね、国鉄にどれだけの投資をして、道路にどれだけの投資をするかという投資の問題、それから運賃の問題ですね、それから助成の問題とか、こういうようないろんな面にまたがるわけです。ですから、そういうふうに考えていきますと、自由に放任するということはもちろん間違いですけれども、国がやれる政策的な範囲というのは、私は社会主義国とは違ってやはり限られておるというように考えるんです。  それで、それじゃ国鉄が三兆一千億の赤字を抱えるような状態にまでなっているわけなんですが、それまでに国が何らかの手を打つべきじゃなかったかということで、国鉄なり、あるいはまた、政府国鉄に対する政策の失敗があったんじゃないかという御質問でございますが、これは失敗と言えば、私はもう少し早く、三十九年から慢性的な赤字になるわけですが、少なくとも三十年代の、そうですね、半ばぐらいにやはり将来の鉄道のことを考えて、そしてもう少し政府が積極的な形で助成をするとか、あるいは鉄道のあり方はこうだということで、道路投資を抑えるというような形はとれたんではなかろうか。そういう意味では、必ずしも昭和三十年代後半から現在までの国鉄に対するところの政府の政策なり、あるいはまた、国鉄自身の経営政策というのが完全に成功した、非常に上手であったということは言えないと思います。
  31. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 日通総合研究所の大森先生、おたくは日通で、国鉄貨物と一番の関連のある立場ですが、国鉄シェアが一二%いっぱいだと、これを拡大するなり、今後開拓するなりという点から考えた際に、通運業と国鉄の関係という点、あるいは貨物輸送の技術開発という点で考えられる点があったならば、この際教えてもらいたいと、こう思うんです。
  32. 大森誠一

    公述人(大森誠一君) お答えします。  まず一番、先ほどもちょっと触れたんですけれども、国鉄貨物を伸ばそうという一つ考え方は私は非常に大切だと、こう思うんですが、しかし、現状とそれから過去の経験から見た場合にやはり限度がある。それは、まず現在の国鉄路線の立地しているところが明治以来からの一つの立地である。ところが産業構造の変化で、立地されている一番大きな需要者という大量バルキーのものは、新しい土地の広いところに避難して行く、都市から離れつつある。また、都市の過密防止の問題からも、政策的にもそれが進められていくというような形で、国鉄とは直接なじまない場所に行ってしまうということで、そういうものを国鉄の中に無理に持ってこようということは一つの限度があるんじゃないかということと、それから、そういう過去の過密地帯に路線が敷かれているということで、既往の貨物駅なり、量のことはちょっと私は専門でございませんので避けますけれども、貨物の駅のスペースというのが非常に狭隘になっている。したがって、そこに近代的な施設を設けて、そうしてふえてくる貨物量を処理しようというのはやはり限度があるんじゃないか。  それは、ちょっと物理的な考え方で申し上げて恐縮なんですけれども、従来手荷役とか肩作業でやっておったような仕事が今後も、いわゆる人海戦術が認められるとするなら、あるいは家庭の主婦が押し入れの中に荷物を一つ一つきれいに整理して入れるというようなことで、狭い場所でも比較的上手な場所の使い方ができるということはできると思いますけれども、しかし、これからは人海戦術は許されない、不可能だということになると、どうしても機械化処理をする。機械化処理ということは、ある程度のスペースと、それから立体的な場所を必要とするというようなことになりますと、既往の場所でそれを広げていくというのはやはり限度があるんじゃないか。  それから、国鉄の線路容量というものから考えた場合に、なるほど、国鉄新幹線によって従来路線があくから、そこへ貨物輸送をふやしていけばいいんじゃないかというふうな、部分的には私はたくさん出てくると思いますけれども、しかし、やはり一番貨物量の多い太平洋メガロポリスの関係の、ベルトラインの関係のところでは、そういうことが通勤対策とか何かで許されるかどうかは問題があるというようなことで、大体考え方としては、従来の年間二億トンというようなところが現状としては限度じゃなかろうか。現在は一億四千万トンです。  したがって、その六千万トンをふやす対象をどういうところに持っていくかというところが、やはりこれからの国鉄と通運業者とが相タイアップして、いわゆる企業性を発揮してやっていくということになると、最も、先ほども触れました一般の荷主さんがわれわれに対して言われる要求は何かと言いますと、大都市間の輸送のいわゆる大衆貨物ですね、あるいは商品貨物、こういうものはトラックでも間に合う。また、トラックの方がいい場合がある。しかし、問題は地方へ、そのトラックが営業的には採算とれないから、顔を背けているという、そういうところへ向けていく荷物がやはりあるんだと、そういうものはひとつ国鉄さん運んでもらえないだろうか、あるいは、これはまあ日通というのは、私は先ほど冒頭にお答えしたように、決してそういう立場で申し上げたくないんですけれども、いまそういう御指摘あったので多少申し上げるんですが、日通であろうと通運業者であろうと、そういうものに、そういうところへ向ける努力をしてくれないかということなんです。  しかし、それがまたやはり通運業者の立場から見れば、企業採算の問題からは出血のスタイルではできない。そこで、それを妥協して、しかも合理的に進めるのは何かと言いますと、やはりバルキーカーゴーはもう絶対に真理として合理化輸送の対象だと。それじゃ大衆貨物、消費貨物をバルキー貨物に変換する一つの技術、テクニックというものを考え出そうじゃないか。それがいわゆるユニット化ロードという物流的な用語の考え方でございます。そういうものの一番かさの高いといいますか、大きい輸送単位でできるのがコンテナだと思います。そういう意味では、コンテナあるいはフレートライナーは成功していると思います。ただしかし、コンテナにも入らない、量の零細な、各地方へ行く荷物をどう処理するんだということになると、やはりパレット単位——千百、千百といいますと、ちょうどこの机の少し大きいぐらいの大きさになりますが、そこへまとめて輸送していく。恐らく、それでもまだそこにいっぱいになるだけのものにならないという荷主さんもあるかと思います。私は、それは通運業者の知恵で、ボックスパレットに入れて、それを混載しながら、同一方向のものとしてまとめるというやり方があります。  それは、技術的にはそういうことも考えられるんですけれども、なかなか実行できないということは何かと言いますと、都市内にそういうものを個々に集荷に行くとか、あるいは逆に配送の立場になると、その個々の小口、小口の取引で、駅までの取り扱いでやろうとすると、やはり小さいロットのものになってしまう。そうなりますと非常にコストがかかる。だからそういう意味では、都市内の繁華街、あるいは適当な場所に集荷デポなり配送デポを設けて、そこでロット化する。そこまではできれば荷主さんに持ってきてもらう。そこからは、ロット化されたら駅へ運んでいき、駅からは着地までやはりロット化輸送、パレットロードとしてのバルキーカーゴーとして扱う、いわゆる一種の物資別輸送だと、そういう体制をこれから考えていけば私は可能性があるんじゃないか、こういうように考えます。
  33. 青木薪次

    ○青木薪次君 清水先生にお伺いしたいと思うんでありますが、先生先ほど、内的な要因と外的な要因がある。で、内的な要因もさることながら、外的要因というものが非常に今日の財政危機を招いた原因だと、こうおっしゃったわけですが、私も実はそう思います。尽きるところ、総合交通輸送体系というものができなきゃならぬというように考えているわけでありますが、このことが非常に政策的に、しかも、産業構造の変化にただ単に追随するというような形で、日本のこの輸送体系というものは行われてきたと思うんであります。いまの赤字の一番大きなのは、もちろんこれは赤字ローカル線もあるわけでありますが、これは二千二百億、それから幹線系といえども六千六百億ですか、合わせて九千百四十七億ですから、そういたしますと、その幹線系の赤字の中で一番大きいのは貨物輸送だということが言えると思うんでありますが、貨物輸送は中長距離の貨物輸送ということを国鉄が主眼としてやってきた。  ところが、これを、じゃ一体、そのこと自体についても交通輸送体系というやつができていないから非常にばらばらだと、その結果トラックに、自動車輸送にその中心を置かれている。このことが、今日のエネルギー政策についての将来の問題となっているし、公害問題や、交通安全問題等については大変な問題になっていると思うんでありますが、この点について先生はどういうように区分されるべきか、役割りというものについて各種の輸送機関の中でどういうふうになされたらいいのかという点について、ちょっとお伺いしたいと思います。
  34. 清水義汎

    公述人(清水義汎君) いわば御質問は、総合交通体系の哲学とビジョンをどういうふうに置くかという、こういう趣旨だと思います。  この総合交通体系の中で役割り理論は出ておりますけれども、既存の交通部門、経営形態の違いもございますけれども、これら交通企業をどう新しい角度から位置づけていくかというこの基本が不明確だと思います。あえて言うならば、いわばこの企業体として考える、企業としてどう生存し得るかという、こういう問題のアプローチだと思います。  従来の交通経済学なり交通政策論というのは、確かに対企業を中心にした、研究対象にした学問であり、政策であったと思うんですね。現在必要なのは、この交通の必要条件をどう確立をしていくかというところに、交通政策の対象とビジョンを置いていかなければならない。いわば交通の必要条件と申しますのは、もちろんおわかりのように安全無公害性、それから給付性、それから経済性の問題、この三つをどう安定させていくかということだと思います。  そうしますと、幾ら体制の中におきましても、いわゆるパブリックコントロール、公共統制というものと、それから保護政策というもの、それから部分的な競争というものと、これを適当に調和をしていかなければならない。いわば競争の原則だけではすでに問題が来ていることは明らかでございますし、先進諸国をごらんになりましてもわかりますように、第一次世界大戦後のあの不況の段階で、大多数の民営企業は公営化していった。これはなぜか。いわば、他の企業に比べて交通部門は自由競争の段階が比較的早く矛盾が出てきて終結をしたという意味だと思う。この点は、やはりこの総合交通体系の中に、まずきちっと植えつけていかなければいかぬ。道路は公共財でございますから、道路を含めてこの交通企業の中にも、どの部分まで公共財としてきちっと据え置いていくか、この辺がまず第一に必要だ。  第二は、この輸送調整の問題でありますけれども、一つは、この経営形態をこれでもって一元化していくというような形は簡単にいかないと思います、現在の体制の内部で。しかし、少なくとも運輸調整という形の中で、一元的なコントロールはできるんじゃないか。いわゆる道路交通行政と軌道、空、こういうものを一元的にやはり交通政策なり交通行政としてとらえていく、こういう点がまずできるんではないか。これは、たとえばドイツにおけるところのハンブルグの運賃プール制、これなんかも私は一つの一元化の形態だと思いますが、そういう形が都市交通なら都市交通で考えられる。  それから、貨物の問題につきましては、現在御承知のように、所有台数十台以下の企業が過半数なんですね、トラック部門。いわば零細企業の前近代的なこの企業形態の中で、ダンピングを前提にした競争が行われる。この競争をどうしてやめさせるかということを考えずに、国鉄の私は貨物輸送の問題はできない。もちろん、距離の問題はあると思います。都市内輸送自動車、それから、五百キロぐらいを基準にしてそれ以上は鉄道、あとは自動車との競争関係はある程度温存をしていく、それから、遠距離の路線トラックについては免許を与えない、あるいは運賃面で調整運賃で一定の荷を国鉄の方に向けさせるようなやり方をしていく、こういうことが考えられるわけであります。と同時に、トラック業者については、これは荷の引き受けと代金の授受をセンターを設けて一本化しませんと、各企業ごとに荷受けとそれから運賃の授受をやっている段階では、これはもうダンピングの防止のしょうはないと思います。  これは実は九州で調べてみたんですが、大手でいくとトン当たり一万円、Bクラスになるとこれが八千円から七千五百円に下がる。それからCクラスの業者になると五千円でも行くと、ただし十トン車に二十トン積ましてくれという、こういう交渉になるわけです。この辺が一般の直接生産部門と違って、十トン積みで十万円で運ばなくても、十トン車に二十トン積めて十万円もらえば何とかなるんだと。このいわば特殊的な条件が交通部門の、特にトラックの場合にはあるんですね。そうなりますと、この辺をきちっとやはりシステム化していくという中で考えていかなきゃならない。  それからもう一つは、そんなことを言ったって、自由諸国の中で計画化というものはできないじゃないかという論議が確かにございます。私は、生産の無政府性ということが今日の非常な矛盾になっている基本的な原因だと思いますが、しかし、生産の無政府性全部を克服できないにしても、たとえば産業立地に対して強い行政指導が入ってくる。それから、交通のような部門を計画化することによってある程度生産、流通の無秩序性に対して秩序化の方向へ持っていくと。いまや私は資本主義の理論にしても、社会主義の理論にしても、従来のオーソドックスな考え方が一定の壁にぶつかってきていると思うのですね。社会主義諸国でも資本主義的な手法を技術的には使っている。それから、資本主義社会におきましても社会主義的な手法を技術的に使い得る場合がある。こういう中で、はっきりと自由諸国だからできない、社会主義的な手法は一切だめなんだというふうにもならぬと思うのです。そういう意味で、完全自由競争の形から秩序ある競争といいますか、いわば部分的な計画化の方策というものを交通政策に導入することが、これからの総合交通政策の中できわめて重要なことである、かように考えております。
  35. 青木薪次

    ○青木薪次君 時間がありませんから、あと一問だけ大森先生にお伺いしたいと思うのですが、物流の近代化ということがよく言われておりますし、それにこたえる輸送の機関においては、条件を整えなきゃならぬというような点を先生は特に強調されているように思います。いま清水先生の話も言及したんでありますが、国鉄貨物輸送というものについて、これを撤廃してしまえと言う人から、現状でいけと言う人から、さらに拡大しろと言う、三つの意見があるわけでありますが、今日、いま清水先生の御指摘にあったように、トラックが過積み、いわゆる運賃のダンピングをやる。そうして労働条件は、これまたきわめて悪いという状態の中で、これまた競争の条件が違うと思うのでありますが、その中で、非常に戸口から戸口へといったような、いわゆる輸送上のサービスの点が特にこれを適合するということになれば、先生もおっしゃっているようにコンテナとかパレット化とか、こういう点も相当重視しなきゃならぬということなんですが、その前提がある。  やっぱり、エネルギー問題とか、公害問題とか、交通安全問題とか、こういうものを考えずして——これまた交通輸送体系にも言及するわけですけれども、そういうものを考えずして、ただ、諸先生も指摘されたように、貨物輸送は法定化廃止どころか運輸大臣の許認可も要らない、総裁の独自の判断でやれと言っても、そういう前提が実は私は必要だと思う。いまの国鉄にそのことができるかどうかという点については、先生もこれはできないことじゃなくてできると、こういう立場なんですけれども、その点についてちょっと説明してもらいたいと思います。
  36. 大森誠一

    公述人(大森誠一君) お答えします。  単に物流合理化とかいったような一面的な見方で国鉄貨物をふやす、あるいは国鉄貨物を今後運営していくという考え方だけでは足らないじゃないか、もう少し社会的ないろんな問題を考えながら、国鉄貨物輸送というものをやはり進めていかにゃいかぬじゃないかという御見解のように承るのですけれども、私も全くそのとおりだと思います。現在のいわゆる国鉄一つの長い体質といいますか、そういうものの中ではとても、現状より貨物をふやして少しでも社会的な面での他の、トラックがふえて公害を起こすとか、いろんな問題を処理しようというだけの力に飛び込んでいけないんじゃないか。だから、その点はよほど腹をくくって進めていかなければ、年間二億トンという線まで持っていくことさえ困難だと、恐らく現状維持ができりゃまだいいんだというようなことになりかねない。そこのところをひとつ、これからの新しいスタートの際には行政御当局の御指導もぜひそういう面に目を向けていただきたいという感じがするんですが、ただ、それではお答えにはならないような気がひとつするんですけれども。  それじゃ、これからいわゆる安定成長経済だと、あるいは低成長経済の時代だと言うけれども、一応三全総の目標としては年間六%の成長率を見込んでおられるということは、なるほどいままでは不況で荷物は減りましたが、しかし、年間六%の伸長率というのは、やはり相当な輸送量の増加を図っていく。具体的には、六十年ですか、一倍半とか二倍だとか言われていますけれども、しかし、前に総合交通政策がとられたときの見通しは、非常に景気のよかった高度成長の伸び盛りのときだったから四倍半ないし五倍だというような数字が出てきて、それに対応するためにはどういう政策をとらなきゃいけないかという、いわゆる受けざらの日本の輸送環境というもの、これを何とか急速にそういうものを受け得るような体制にやろうという、私は政策御当局の非常に御苦心があったために、道路整備とか、あるいは国鉄のいろんなターミナル施設というものに非常な力を入れられたというような感じがするんですけれども、しかし、四倍ないし五倍にはならないとしても、二倍にはなるかもわからぬ、あるいは一倍半は少なくともなるだろうということになりますと、現状からはやはりふえるんだと。  そうすると、ふえる中で、二億トンという数字は、過去一つの実績があったんだから、その面までは努力をしてやっていったらどうか。ただし、今度はそのふえる受けざらとしての道路環境、あるいは海上輸送の問題ということは、なかなかまだこれから問題がある。特に私が一番危惧するのは、これからの一つの社会志向としては福祉傾向たと言いますし、さらに人間生涯の中ではモビリティー、モビリティーは、乗用車で運転して動くという一つの快楽を追求するといいますか、レジャーを楽しむ。さらに自然を求めて地方へ出かけていく。そういう中でいわゆるトラックというものは、そういう中にまたまさにトラック企業としては、今後の合理化ということを考える唯一の道は、先ほどの過積という問題は法的にいろいろセーブがかけられるとしても、やはり大型化という方向にいくと思います。  そうなりますと、限られた狭い道路と、そういうレジャーでふえてくる乗用車との競り合いというものをどういうふうに調整するんだということは、まさに私は政策論としては非常に大事なところじゃないか。そういうところは私は、今度は実際の被害者が地方にあらわれてくると思うのです。それは住民の声としても出るでしょうし、あるいは地方自治体としては、安全道路をつくるための投資は地方財政ではとてもできないんだと、国に援助を求めたい、しかし、鉄道線路があるんだということであれば、鉄道線路を利用して自動車、いわゆる道路は通行車、あるいは地方の経済振興のためにレジャーを誘致するならレジャーに優先させる、しかし、貨物鉄道に回そうというような選択が出てくると思います。その選択の中で地方自治体がどちらをとるか。あるいは多少の地域的運賃の引き上げというものも起こり得るかもしれない。それでもあえて貨物鉄道に流した方が地域振興のためには有利だという一つのそろばんがはじかれるならそういうことをおとりになればいい。恐らくそういったような賢い選択の手段がいろいろ現実の人間の知恵として出てくるんじゃなかろうか、こういうような感じがします。そういうようなちょっと私の感触で、お答えになったかどうかわかりませんが、お答えしたいと思います。
  37. 中村太郎

    ○中村太郎君 中西先生にひとつお伺いいたしたいと思います。  先ほど先生は、値上げ法案に対しましては、値上げ幅が大きいということ、それからもう一つは、値上げだけで解決すべき問題ではない、むしろ国鉄再建策の方が先行さるべきであるというような御意見がありまして、再建案につきましてはいろいろりっぱな御教示をいただいたわけでございます。  ただ、前段の値上げ幅が大きいという点につきましては、先ほど細野先生が言われましたように、いままでの値上げは例のタイムラグとそれからまたプライスラグ、このために大幅になってきたんだということを御指摘なさったわけでございますけれども、ここで値上げ幅を縮小しても、その次の段階ではもっとより多く幅を上げなければならないんではないかと私は思うんです。しかし、その値上げ幅なり値上げをそれまでにりっぱな再建策の中で吸収できるような、そういう名案ができりゃこれは別でございますけれども、やっぱりどういうような計画を立てましても、戦前の物価指数から見ましても人件費が約三千倍、運賃が三百倍ですから、このギャップは基本的な姿勢として埋めていかなければ、再建案というものは乗っかってこないんではなかろうかというような感じがするんですけれども、いかがでございましょうか。  それから、細野先生にお伺いします。  先ほど、経常経費の中で人件費の占めるウエートは非常に高いという御指摘でございました。確かに私鉄と計算比較しても、非常に生産性が上がっていないという点は指摘されるわけでございますけれども、一体企業的に見た場合、国鉄輸送収入に占むる人件費の割合というのはどの辺が望ましいのか。現在では御承知のように、九六%云々と言われておるわけでございますけれども、その比率というのはどの点が妥当であろうかという点と、そうだとすれば、その比率をいま国鉄に当てはめた場合、一体どういう具体的な合理化策があるであろうかという点で、お考えがあればひとつお伺いいたしたいと思います。
  38. 中西健一

    公述人中西健一君) 御指摘のとおり、国鉄運賃の問題につきましては、戦前の物価国鉄運賃との関係だとか、あるいはまた値上げのおくれとか、そういうことはあるわけでございますが、この国鉄運賃問題というのは、確かに国鉄の経営を安定させる、収支のバランスをとるという観点からは必要であるわけですが、それだけではなくて、やはり旅客の場合ですと国民生活に与えるところの影響、それから貨物の場合ですと産業界に与える影響、こういうようなものもやはり考えて国鉄運賃というのは上げなきゃならないんじゃないかと、こういうふうに考えておるわけです。したがいまして、そういったような観点から言いますと、先ほど申し上げましたとおり、すでに昨年の十一月に料金のかなり大幅な改定というのは行われております。そして、今度だけじゃなくって、この閣議了解になっておりますところの再建対策要綱によりますと、来年度もまたかなり大幅な引き上げをしなきゃならない。二年間で収支の均衡をとるということになっておるわけですから、私は、そういうあれではいささか短期間の間に大幅な値上げになり過ぎるんじゃないか。  国民生活に対する影響というものも非常に大きくなるということと、それからもう一つは、これは各公述人も御指摘になっておられましたとおり、現在の国鉄は、昔と違いまして独占性というのはほとんど持っていないわけなんですね、国内輸送におきまして。したがって、独占性を持っていないということはどういうことかといいますと、われわれの言葉では、この国鉄輸送に対する運賃の弾力性が非常に大きくなっているという言い方をするわけなんですが、上げ幅を大きくしますと、国鉄から逃げていく貨物、あるいは旅客というものが大きくって、運賃を上げても収入がどの程度ふえるかということで問題がある。それよりも、むしろ上げ幅を細かくして、そうして、どう言ったらいいんですか、多少時期をずらして上げる方が、増収という点から言うといいんじゃなかろうかと、こういうように私考えておりまして、先ほどの公述の中ではそういう意味の意見を述べさせていただいたと、こういうことでございます。
  39. 細野日出男

    公述人細野日出男君) お答え申し上げます。  人件費が全体の営業の費用のうちで何%くらいであるかということは、やっぱり統計的に歴史的に見ていく以外に、どれぐらいが妥当であるということはなかなか言えないと思います。  それからもう一つは、似たような企業の割合というものと比較して見ていくということでありますが、私鉄国鉄と比べますと、国鉄人件費の方がずっと近ごろは割合が高くなっております。これは私鉄に比べまして国鉄の方が高年齢層が多いということと、それから、退職金のようなものが戦前に比べますと非常にふえたということが響いているんだろうと思います。常識的な線しか申し上げられませんけれども、まあ戦前は長いこと、人件費というのは四〇%から五〇%の間というようなところでおさまっておったんでありますが、五〇から六〇ぐらいというようなところが何とかおさめるべき線ではないかというふうに私個人としては考えております。特別のスタンダードというものを理論的にはじき出すということは、非常に困難なことだと思っております。
  40. 木村睦男

    ○木村睦男君 井上さんにちょっとお聞きしたいと思うんですが、午前中に、利用者という立場、特に婦人の利用者という立場でいろいろお話を承りましたんですが、今度の国鉄再建の、運賃値上げを含めての再建計画ですが、実は私はせんだってまで運輸大臣をしておりましたので、私もその責任者でございますが、こういう案をつくったわけです。  そこで、当時、皆さんのような方にいろいろと御意見を聞く機会を持ったんでございますが、そこでも御意見を聞いておりますわけですけれども、要するに、五十一年度の国鉄の全体の経費が二兆七千億この案でかかることになっておるわけですね。それで、運賃収入がもし運賃値上げをしなければ大体一兆——昨年並みで言いますと一兆六千億から七千億ですから、経費と、いままでの運賃のままでいきますと約一兆円の赤字になるわけです。まあその赤字を埋めるために、今度五割運賃改定をすることによって、もう五千三百億ほどは運賃値上げで賄うと、残りの欠損を補助なり、あるいは借金なりで賄っていくということでこの案の骨子ができているわけです。  そこで、衆議院におきましてもいろいろ議論があったんですが、とにかく国鉄をここで倒してつぶすわけにはいかない。存続するためには、要するに一兆円近くの赤字を何とか見てやらなきゃいかぬ。で、いまその中の五千三百億というものを利用者の荷主やお客さんに負担してもらうというのがこの骨子ですが、それに対して、それは非常に利用者に高い運賃を押しつけるものであるから、これは政府がめんどうを見たらいいではないかという御意見が非常に強いわけです。  そうすると、もう少し分析していきますというと、国鉄というものが一つの公共性のある鉄道事業であるということが前提にはなっておりますけれども、運賃値上げをもしやめれば、五千三百億という金は出さぬわけにはいかないので、政府が出さなきゃいかぬ。政府が出すということは、国民税金からそれだけもらわなきゃならぬということになるわけなんです。さらに砕いて言いますと、この五千三百億という必要な資金を利用するお客さんに、いままで五百円のところを七百五十円払ってもらって賄うか、あるいは五千三百億ですから、まあ一億一千万、一億と見て、赤ん坊から老人まで一人頭毎年五千三百円ずつ国鉄再建税というようなかっこうで税金でいただくというかっこうになるわけです。そこで、国民の利用者の方として、どちらをとる方が国民としてはより合理的であり、あるいはよりベターであるかということの御判断ですがね、その辺をちょっとお聞かせいただきたいと思うんです。
  41. 井上美代

    公述人(井上美代君) 私は専門家ではありませんので、専門的なことはあれですけれども、いま二つの問題を示されまして、まあ市民感覚としてということだろうと思うんですけれども、どちらをとるかというふうに二者択一ということでいま御質問が出ましたんですけれども、私は、これがもし料金としてこういうふうに出されてきましても、私たち国民の生活に非常に大きな圧迫となるわけです。また、それが税金としてかかってきましても、これはいますでに払っております税金だけでもかなり大変な現状ですので、これも私たち国民としては、税金で取っていいとか、それからまた運賃ではいいとかと、どちらも生活のいろんな面からやっぱりできないというふうに思うんです。それで私も、先ほどの公述の中でも申し上げましたんですけれども、いろいろな国民から、いろいろな企業から集めました税金によって国のいろんな運営がなされているわけなんですけれども、この税金の使い方の問題をこうした諸先生方が検討をしていただきまして、国民の生活が維持できるようなそういう政策の中で、税金をどう使うかということをやはり民主的にといいますか、そういうふうに御検討をいただきたいと、そういうふうに思うんです。だから、どちらをとるかというふうに言われましても、私はどちらも何かいただけないといいますか、そういうふうに思うんでございますが……。
  42. 木村睦男

    ○木村睦男君 ちょっと時間が来ましたが、簡単でよろしゅうございますから中西、細野、清水の三先生にお答えいただきたいんです。  これで二年間で再建ができた以後のことですが、いずれにいたしましても、今後の経済の変動等で、あるいは一部は運賃改定しなきゃいかぬ、あるいは一部政府負担しなきゃいかぬ。これは公共企業体という性格から見まして、一つの何といいますか、経費のうち、たとえば七割は運賃であと三割を国の助成なり、あるいは借金なりというようなことのそのシェアがある程度原則論的にできれば、今後国鉄の経営の上で非常にやりやすい面が出てくると思って、いろいろ御意見を聞いておるんでございますが、三先生、簡単でよろしいから、それらの点についてちょっとお触れをいただきたいと思います。どういうふうなシェアをもって経費を支弁するかということです。運賃によるものが幾らぐらい、あるいはそのほかが幾らぐらいというふうにちょっと教えていただきたいと思います。
  43. 中西健一

    公述人中西健一君) これは、たとえば運賃で七〇%、それから国の助成が三〇%と、こういうようなことはなかなか言えないと思うんですね。私は先ほど申し上げましたように、そうではなくて、いままでの借金についてはこれは政府が処理する。それから、これから新しくつくる通路の施設でございますね、これについては政府の資金でやる。それから政策割引でございますね、学割だとかいろいろなのがありますが、こういうものも当然これは公共負担ということで、国鉄はやらない。これをやった後は私は運賃で賄うのがいいんじゃないかと、こういう考えです。
  44. 細野日出男

    公述人細野日出男君) お答えいたします。  やはり中西教授も言われるとおり、何%ということを具体的に決めてしまうことは非常にむずかしいと思います。やはり赤字の源泉を洗いまして、それを積み上げていくということでもって、これは政府財政負担である、これは利用公衆負担であるというふうに分ける積み上げをやってみなければ出てこない問題だと思っております。ただ、財政も打ち出の小づちを持っているわけではございませんので、政治的な公共性ということのための補給をこれから無限にふやしていくことができない。財政はすでに相当行き詰まっている。ですから、無限にふやしていくことはできないということだけは事実でございますので、国会諸公としては、この国鉄政治負担が野方図にふえないというようなブレーキをおかけになることをお願いしたい次第でございます。
  45. 清水義汎

    公述人(清水義汎君) 私は、負担率の問題には前提条件がございます。いわば一つは、慢性的なインフレーションのような形で諸物価が値上がりをしていく、そしてその場合に、国鉄のような運賃物価の値上がりによって原価が上昇しても、それが今度は公共料金政策という見地から政府がそれを認めないような場合、これについては差額を当然一般会計で負担をする、これが第一の条件です。  第二は、公共負担については、関係各省の予算の中に織り込んでしまうということが一つ。  それからもう一つは、利用者負担にいたしましても、単に取りやすい旅客運賃から取るというのではなくして、先生方御承知のように、ガス料金には責任使用制が導入されておりますね。使っても使わなくても一定料金を取るという形であります。国鉄の場合でも、当然第一次五カ年計画以降の計画というものは、日本の高度経済成長に伴って、特に太平洋岸ベルト地帯における輸送力の増強、いわば生産の拡充に伴う輸送力の増強政策として、京浜及び京阪神を中心に大規模な国鉄の投資を行ったわけであります。そういう点から考えますと、これらの産業資本の要請による輸送力増強施策については、使用のいかんを問わず一定の設備費の負担をさせるべきではないか。現在ガス料金については、一般の庶民が責任使用制でそういうシステムをつくっているわけでありますから、その点を第三の問題としては考えるべきである。  それから地方線については、これは赤字部分についてほとんどの部分をやはり負担をすべきではないか。しかし、地方線といいますのは、私はもちろんそれは行政路線として、社会的必要路線として線区ごとに認定をした路線についてはそういう処置をすべきではないかと、こういう意味でございます。  それから、もう一つの補償の面といいますのは、交通施設に対する一般会計からの負担でございますが、レールから下の道床部分については、これはフランス国有鉄道と同じように国有財産として今後は考えていくべきではないか。これもやはり保護政策の一環として考えるようになると思いますけれども、年々の負担増になっております。  それから第二は、車両購入費について一定地、一定の路線の特定路線についての車両の購入費に対する助成であります。現在これは先生御存じのように、バスにつきましては、過疎バス対策という形で車両購入費の補助等をいたしておりますが、そういう点を国鉄の線区によってやはり考えるべきである。これは現在御承知のように、ヨーロッパの都市交通等におきましても修繕費、それから車両の購入費等について補助を出しております。これと同じような方向をやはり考えるべきではないか。  それから、資本費と経営費というものの上限と下限というものが政策論であると思いますが、年間経常経費と、それから国民運賃負担との比率の問題の上限は、一応私はハンガリーあたりが一つのパーセンテージではないかと思います。ハンガリーの場合には、原価の五〇%を利用者負担、五〇%を国家財政負担と、こういうふうにしておるんです。それから、下限はこれも先生方御承知のように、アメリカの一九七二年以降の国家大衆輸送法の改正によります経営助成の比率と条件、これが下限の条件になるんではないか。そういう中で、日本の経済力、それから日本的な条件、国有鉄道の特殊性、そういう中で具体的な数値がはじき出されるんではないか、かように考えます。
  46. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 最初に、清水公述人にお伺いしますけれども、先ほど青木委員からも質問のあったように、やはり交通総合政策の問題が一番大きな問題だと私は常に考えるわけです。それで、国鉄の現在置かれている立場、もう独占性をなくした今日の国鉄が、現在の交通総合政策の中でどういうふうに位置づけをすれば一番妥当と考えていらっしゃるかですね。特にいろいろバス、トラック、あるいはまた貨物輸送一つとってみても、海運であるとか、フェリーですね、俗に。こういう問題との総合調整、運輸調整という問題があろうと思うんです。こういう問題を具体的にどこから手をつけてやっていけばやりやすいかという、まあ言いやすくして一番やりずらい問題はこの総合交通政策だと思うんです。この問題について、ます清水公述人にお伺いしたいと思います。  それから、同じように、総合交通政策の樹立を特に国会でやるべきであるという細野先生の御意見がございましたが、これは確かに役所でやれといっても、なかなか私はできない問題だと思うんです。この問題に対してどういうふうに具体的に、先生の御意見として手順を踏んでいけばいいかということについての御意見をあわせてお伺いしたいと思うんです。
  47. 清水義汎

    公述人(清水義汎君) わが国の国内輸送を考えますときに、日本的な特殊性としてまず挙げられますのは、平地面積が非常に少ないということ。非常に人口密度が過集中が大都市に行われているということ。それから道路占有率がきわめて低いということ。それから世界史上まれに見る短期間の中に爆発的なモータリゼーションが起こり、現在種々の弊害が出ている。こういう一つの受けざらである日本の現状というものを土台にして考えた場合に、この交通政策で大事なのは、あらゆる交通機関を平等に併存してやるということは、これは不可能に近いと思います。それで、日本の場合にどの交通機関を基幹として考えていくか、いわば基幹部分と補完部分と分けて考えていかなければならぬと思う。  陸上交通については日本の地理的な条件、日本の経済力、それから資源の問題、それから産業立地等の問題等を考えますと、私は、基幹部門として国鉄を位置づけるべきだという議論でございます。そして、補完部分として航空機なり、それから自動車を配置をしていく。そして、補助手段としてマイカーというものを位置づける。大ざっぱに言えばそういうことだと思います。もちろん地方の小都市、あるいは地方交通等によってはそういかない場合もございます。これはバスであるとか、あるいは自動車がむしろ基幹にならなければいかぬ場合もあるかと思いますが、幹線輸送全体を大きな線で描いた場合、いま申し上げたような形の位置づけが私は至当ではないかというふうに考えております。
  48. 細野日出男

    公述人細野日出男君) お答えを申し上げます。  私、昔アメリカの大学院で交通政策を、交通を勉強しておりましたときに、指導教授でありましたジョンソン先生が、アメリカやヨーロッパは交通政策で非常に失敗をしている。つまり、自動車を野方図にはびこらせて国民経済のために、国民社会生活のために必要な鉄道というものをだめにしてしまいつつある、これは一九二八年から三〇年の間です。しかし、日本を見ると、日本はその点大変うまくいっている、これからの日本はその点やはり気をつけてやっていかなければいけないぞということを言われましたことは、非常に印象に強く残っております。それで私は、昭和三十一年でありましたが、日本交通学会でもってやはり総合交通政策の樹立、ことに道路・自動車鉄道というもののシェア、あるいは配置というものをどういうふうにするかということを決めなければいけないんだということを主張いたしましたけれども、討論がずいぶんございましたが、そのときに、いや、自動車ぎらいでは困るというような反論をされまして、それが実はそれから二十年たちまして、日本はまさにアメリカやヨーロッパと同じ前車の覆轍の後を通りまして、鉄道がすっかり自動車にやられてしまっているというような状態になっております。  しかし、営業用の自動車というものは、これは同じ公益事業でありまして、運輸大臣規制下にありますので、これは総合規制がうまくやれれば相当うまくやれるはずなんであります。企業の許認可、あるいは料金の認可というようなことでもってうまく調整することができるはずなんであります。ところが、自家用の交通というものはこれがきかないのであります。自家用というのは、自動車において徹底的に発達してしまいましたので、自家用の乗用車、自家用のトラックというものをどうするか。ことに自家用のトラックの方は、これは白トラなどと申しまして、行きは自分の会社の荷物を運ぶけれども、帰りは運賃ダンピングをして少しでも小遣いをかせいでくるというようなものが非常にはびこっておりまして、これがなかなか取り締まれていない状態でございます。こういった点をもっとしっかり取り締まらなければならないということと、それから実は道路の主管が建設省である。その他の交通関係は運輸省が主管しておる。道路は非常に大事な交通手段になっているわけなんでありますが、これが対立しているというようなことでもって、重複的な競合的な面というものが多分に出てきております。  これは昭和三十一年でしたか、交通審議会が開かれまして、内閣総理大臣が会長をやられ、建設大臣運輸大臣が副会長をやった大きな審議会ができましたけれども、そのときに、結局一年近く研究調査をした結果、結論が出せないでしまった。なぜかといいますと、両省の対立ということ、それ以来二十年間、この問題はほとんどタッチされないできているんです。運輸政策審議会というのが五、六年前からできましたけれども、これはあくまでも運輸省系の政策審議会でありまして、建設省はまあお客さんになったかどうか、自分の方の仕事ではないというようなことでいるわけでございまして、こういう日本においては、特に官庁、官僚の行政に関するなわ張りというものが非常にやかましいというような状態でございますので、行政の上に立つ政治国会というものが調整をされなければ総合はできない。  もう実は、時すでにすこぶる遅しなのであります。しかしながら、いまからでもやらないよりはましであると思いますので、国会がこれをやっていただくことを希望するわけでありますが、国会にはしかしながら、下部機構としての十分な調査機関を持っておられません。ですから、やはり国会直属的な調査機関をこしらえられまして、行政府の直属ではなくて、国会の直属的な調査機関をこしらえられて御研究になることが望ましいと思うのでございます。  お答えになったかどうか、わかりませんが。
  49. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 清水公述人にお伺いしますけれども、先ほどこの補助、助成の基準をつくるべきである、こういうふうにいま木村委員にも一部御答弁されておりましたけれども、今回の国鉄再建に当たって、国鉄の努力、あるいは運賃値上げだけではどうしても解決できない問題が数多くあるわけです。また、過去債務の問題等もあります。今後の問題としまして、補助基準を先生のお考えとして、何を端的に助成をしていけばいいとお考えになっておりますか、この点についてお伺いします。
  50. 清水義汎

    公述人(清水義汎君) もちろんこの保護政策をとります場合に、財政支出原則からいきまして、それが最も効率的に影響をしなければ、これは税金のむだ遣いになるわけであります。ですから、そういう意味で私は、もちろんの条件というのを抜きにしてしまって、単に一般会計から国鉄へ金を出せばいいんだというふうには考えておりません。いわば、企業を取り巻く外的な要因を整備をして、そして交通そのものが、やはり交通そのものの特徴からいきまして、市場に対する占有性をある程度キープした上で、そして公共性を維持するために一定の補助、助成をすべきである、そういう前段的な条件の中で私の意見を言わさしていただきたいと思うんですが、その場合に、まず端的に言えますのは、建設費については全額国費で行うべきだということだと思います。これはもう資本費の助成でありますけれども、全額国費で行うべきだ。ただ、その場合に考えなきゃなりませんのが、現在の地下鉄に対するような建設助成では何にもならなくなるわけであります。あれは御承知のように、数年間の分割で助成を行っておりますから、結局それは建設助成にならなくて、実質的には利子補給のような形になってしまう、こういう点がありますので、   〔委員長退席、理事瀬谷英行君着席〕 やはり、本当に建設助成になるような助成の仕方がまず必要である。  それから第二が、私は人件費だと思います。非常に公共事業の場合に人件費が云々されますけれども、現在国鉄の現状を見ておりましても、合理化の問題はほぼ限界に達したというふうに見ております。すでに合理化が相当進展をしておりますために、安全運行維持のためには運転の半日休止をやるとか、あるいは休んで保守をしなければ運転できないというような状況が来ております。それから大都市の駅を見ましても、ラッシュにおけるところの要員の配置、これも非常に少のうございます。あの案内はほとんどテープでやっておりまして、人が飛び込もうと何しようとあのテープでは除去できない、こういう状況がございます。そういうような見地から考えますと、これ以上の要員の削減というのは、逆に安全を阻害をする危険性が出てくる。  それから同時に、公共的使命を持っている国鉄が、国鉄労働者の利用者に対する接客態度、その他を含めてのサービスの向上ということを考えますと、質のいい労働者が安心して働けるということがきわめて重要な要件だと思います。そういう点では、社会的に平均化された賃金の保障という意味で、その点につきましてはやはり一般会計から補助をしていくということを考えませんと、これはちょうど公務員に対する賃金、これに準じたような形で、人件費に対しての保障というものは大事なものだと。大きく分けますとその二つの点が必要だと思います。  そして、なお経営費の助成につきましては、先ほどと重複を避けますが、木村先生からの御質問にありましたようなああいう角度から、諸外国等の例を参考にしながら経営費の助成というものの基準を日本的な形で定めるべきである、こういうふうに考えます。
  51. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 もう一つ清水公述人にお伺いしますけれども、この料金問題ですね、運賃料金の関係、最初に現象の問題としてお取り上げになっておりましたけれども、この料金がいま約三〇%ぐらいを占めているわけですね。この問題、運賃料金を含めて法定主義に移行した方がいいというお考えですか。それとも、私たちの考え方は、できれば五十一年、五十二年で収支均衡が合えば、法定主義原則として貫くけれども、対前年度の物価上昇率ぐらいは認可運賃で——大臣認可でもいいんではないかという考え方も私たちは持っているわけです。これにまあ料金等も加えてまいりますと、確かにこの法定主義が強化されるような結果になるのではないかというような点を私も考えるわけでありますけれども、この点についてのお考えを伺いたいと思います。
  52. 清水義汎

    公述人(清水義汎君) 私は、法定主義の問題につきましては、公共料金の一環としての国鉄運賃が、公共料金政策とも整合性を持たしたような形で、それができ得るような新しい仕組み、制度、こういうものの保障があれば、現行の法定運賃制度というものに対して必ずしも固執することはないと思うんです。しかし、それにかわるべき、より近代的な制度というものが明確にならないままで、これをこの法定主義から解放しろという形については、きわめて危険を感じるということが第一点であります。  それから第二は、この料金というのは何かということを、この際はっきりすべきではないか。これは、ヨーロッパにおきましても料金システムはございますけれども、運賃料金との関係で、わが国のような旅客営業収入の増収策としてこの料金制度を、極端な言い方をいたしますと、利用しているというような形はあってはならないと思います。しかも、施設の面をフル回転させておりますから、従来より比べて、この料金を支払いましても、列車が発車する間際でなければ列車に乗り込めない。従来でございましたら、御承知のように、発車定時の二十分か三十分前ごろにはもう列車が入っていて、少し早目に行けばそこに座れるわけでありますけれども、最高級の優等列車と称する新幹線ですら発車間際三、四分前にようやくドアがあく。それまで旅客は待っているということで、本来の料金としてのサービスが完全に行われていない。もっと極端な例は、百円安ければ立っていてもこれも料金だというような形になっております。そういう意味では、この料金というものの限度をきちっと置いて、やっぱり使用料だと。ちょうど温泉場へ参りますと入浴料を取られますけれども、旅館代より入浴料が高いという形では、これは国民のコンセンサスは得られないと思います。  そういう意味で私は、料金制度は現状のままでいいと思いますけれども、ただその場合には、運賃料金の概念と位置づけをはっきりすべきである。むしろ私は、この運賃改定の際に料金のあり方を昔へ戻して、料金をうんと少なくして、そしてその部分運賃の中へ入れて、物価指数等も考えて、この運賃がどうあるべきかという議論をした方が正しい比較論ができる、こういうふうに考えております。
  53. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 中西公述人にお伺いしますけれども、国鉄土地利用と開発利益を、特に開発利益国鉄への還元の問題を具体的に考えるべきであるという話をされましたけれども、具体的に先生はどういうふうなお考え方を持っていらっしゃるか、参考にお聞かせ願いたいと思います。
  54. 中西健一

    公述人中西健一君) 国鉄は、全国で非常にたくさんの土地だとか、あるいは施設というものを持っておるわけですが、私たちの見るところでは、その利用といいますか、そういうものが従来の国鉄が独占性が強かったような時代の非常におおらかな経営のやり方をずっと続けてきておる。そしてまた、国鉄がいろいろな鉄道輸送以外の仕事をするということについて、法的な制約があるわけなんでございますね。最近は多少それが緩和されてきつつあるということは言えますが、まだまだかなり縛られておるということで、私は、そういうような施設を利用することによって、ちょうど私鉄開発利益を還元しているというような形にも持っていくべきじゃないか。それが多少とも国鉄の現在の財政の危機というものを緩和する方向になるんじゃないかというように考えておるわけですが、具体的なものとしましては、たとえば名古屋にターミナルビルというのが最近できました。あれは国鉄だけではなくて、私もちょっと正確にどこが出資しておるかわからないわけですが、国鉄とそれから交通公社ですね、そして……
  55. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 名古屋市。
  56. 中西健一

    公述人中西健一君) 名古屋市ですか。こういうようなところが一緒に出資をしてあのターミナルホテルというのをつくって、下は何か高島屋に貸しておるとかしておるわけですが、ああいうものを私はもっと全国の、まあこれは大都市になると思いますけれども、つくるということも一つの具体的な方策じゃないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  57. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあこの問題が、名古屋のターミナルビルも三百室つくる予定が二百室しかできなかった。やっぱり民間の圧迫という問題があるわけですね。ここらの調整も非常にむずかしい問題で、国鉄も、公共性という強いたてまえからいろいろ縛られているというふうな感じがあるわけですね。したがって、増収を図る面で、ビルの問題もありますけれども、やはりさらに国鉄開発利益を得るという具体的な方法というのは、土地利用だけしかないような感じに一般的にとれるわけですね。したがって私は、先生にさらにいいお考えがあればと思っていろいろお伺いしているわけでありますけれども、これは別問題にしまして、あと貨物ですね、約一〇%ぐらいのシェアが妥当であると、こういうふうに公述されているわけでありますけれども、一〇%ぐらいのシェアといいますといまより微減ですね。その方が国鉄貨物輸送約四千四百億ですか、赤字を補うためには、やはり一〇%ぐらいであれば妥当である、この線であればまあ貨物輸送国鉄シェアとしては妥当であると、こういうようにお考えでございますか。
  58. 中西健一

    公述人中西健一君) これは、私の言い方が多少正確性を欠いておったというように思うんですけれども、貨物の問題は、先生方も御承知のとおり、アメリカですと、アメリカの国内輸送に占めている鉄道シェアというのは、旅客の場合はもう一%を割っておるわけなんです。ほとんどこれはもう、ですから微々たるものなんですね。ところが、貨物は二二%か三%ぐらいのシェアをたしかアメリカの場合は占めておったと思います。それからイギリスでも、旅客鉄道の占める割合が八%ぐらいしかないんですが、貨物ですと一七%か八%ぐらい占めております。だから、わが国の国鉄とはまるっきり貨物旅客の関係が逆になっておるわけでございますね。  これにはいろいろ理由がありまして、一口で言いますと、やはり日本との産業立地の違いだとか、それから地下資源がわりにあるわけですね、アメリカの場合ですと。そういう鉄道に向いた貨物が多いというような関係もあるわけなんですが、日本の場合には、私が一〇%くらいというように申し上げましたのは、結局現在の一二%から一三%ぐらいの現状維持をすべきじゃないかということでございまして、私の方の考え方では、これ以上貨物シェアを伸ばすということはおそらく不可能に近いのじゃなかろうか。昭和三十年ぐらいでしたか、五〇%ぐらいの国鉄貨物輸送シェアがあったのですが、二十年たつ間に一二、三%に低下することになったわけです。これを伸ばすということは、結局内航海運の貨物をとるか、それからトラックの貨物をとるか、いずれかしかないわけなんですが、両方ともとても私は国鉄の方に貨物が移ってくるということは、これはもう不可能だと。  したがいまして、現在の状態を維持するということのためにも、国鉄はずいぶん努力をしなければとても現状を維持することはできないということで、そのためには運賃の問題もございます。あるいはまた、貨物関係の施設をもっと近代化するというようなことも必要になるということなんですが、ただ、一部に言われておりますように、もう国鉄貨物を全廃したらどうかということですね、これは確かに国鉄経営という点だけを考えてみますとその方が合理的かもわかりません。ですが、それじゃその国鉄貨物を全廃した場合に、内航海運にちょっといって、あとほとんどはトラックにいくわけですが、果たして日本のようなこの狭い国土で、これ以上トラックがどんどんふえるということがいいか悪いかということになりますと、おそらくマイナスの面が大きい。したがいまして、そういう意味で国鉄は、現状を貨物の場合には維持するためにいろいろ努力をすべきであろう、こういうことを申し上げたのでございます。
  59. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 井原公述人に一点だけお伺いしたいのですけれども、今回の国鉄運賃が、この法案が通りまして値上がりしますと、国民は旅行しようとすると、たとえばいままで熱海まで行っておったお客が、運賃が上がるために小田原程度で終わろうと、こうなってきますよ。そうしますと、たとえばこれは一つの例でありますけれども、熱海の旅館に行かなくなってくる。これがかえって旅館の便乗値上げを誘発するのではないかという心配を私はするわけですけれども、この点については、全国的に見た場合に、国鉄運賃値上げに伴う旅館の移動傾向が相当出てくると思うのですね。それによる便乗値上げというものが出てくるのじゃないかということを私予想しているのですけれども、この点はどうですか。
  60. 井原豊明

    公述人(井原豊明君) お答えを申し上げます。  この運賃値上げによりまして近距離の旅行がふえるのではないかというのは、われわれも想定いたしておるわけでございます。しかし、遠距離のお客さんが少なくなったところが便乗値上げをするのではないか、つまり、少ないお客様で経営を成り立たすというようなことのような考えが出ますけれども、むしろ逆に、お客さんが少なくなりますと、お客さんにどうしても来ていただかなければならないという考え方から、やはりお店それぞれの個々の経営者の合理化、あるいはお客様に何としても来ていただかなければならないという熱意、お客様をお呼びしなければならないと、こういうことになりまするので、便乗値上げということは絶対に考えられない。むしろ、この運賃値上げの場合だけでなしに、最近はお客様の方で低額志向に向いておりますので、それに対応するように各経営者は努力をいたしておるわけでございます。   〔理事瀬谷英行君退席、委員長着席〕 ただ、先ほどお願い申し上げましたように、国鉄さんにおきましても新しい営業施策を打ち出していただきまして、やはりお客さんを遠方にまで旅行さすような営業施策を打ち出していただきたい、こういうように考えておるわけでございます。
  61. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 もう一つは、近距離の方もやはりぐっとふえてくるでしょう。それによってそちらの方がまた上がるという理由も考えられるわけですな。この問題もどう考えるか。これはやっぱり全国的に、便乗値上げをさせないという何かいろんな取り決めはやっているわけはないと思いますけれども、こういう点で私は、たとえば小田原なら小田原、熱海に行っていたのが小田原に来るからぐっと上がるという、そういうふうな傾向が出てくるのではないかという点も心配するわけです。
  62. 井原豊明

    公述人(井原豊明君) 比較的近距離のところに多くのお客さんが集まられるので、やはり収容力その他を勘案して、需要供給の関係で料金が上がるのではないか、こういうような先生の御質問のように存じますけれども、決してそういうことはないと思いますし、ただ、料金その他の一つの指導面につきましては、公取の関係ございまして、非常にむずかしい条件があるわけでございますが、われわれ団体といたしましては、そういうことのないように、さらに十分注意をしてまいりたいと思いますけれども、現在のところ、便乗値上げというようなことは全然考えておりません。
  63. 内藤功

    ○内藤功君 清水公述人に若干お伺いしたいと思います。  まず、運賃法定主義の問題でございます。  財政法三条の特例法などができた時代と比べて、国鉄の独占性というものが著しく薄れたということが強調され、私はことさらにという感じもするんですが、強調され、運賃法定主義の功罪のうちの罪の面が非常に今日強調されている向きもあると思うんですが、私はやはり問題を全面的に見ると、特に、国民生活を相次ぐ高物価から防衛するという上での機能的な役割りというものも見ていかなくちゃいかぬのじゃないかというふうに思うんですね。  法律家的な言い方をしますと、憲法の八十三条以下に決めている財政民主主義というものに、この制度の根っこをずっと手繰っていくとそこに行くんだろうという考えもいたしますし、また、私どもやっぱり消費者の方とお会いして、いろんな独占物価というものをどっかで抑えることは、国家機構の中でないんでしょうか。せめて国会というところが調査権なり、あるいはその他の機能で抑制することができないのか、そういうものもない。そうすると、国会において審議をする法定主義というものは、これは国鉄がこういう財政状態ですから、いかにも罪の面が強調されるんですが、果たしてこの罪の面だけを言っていいのであろうかという気がするわけです。これが一つ。  それから、料金というものがいま国会の審議から外されて次々と大幅に上がっていく、先生のお話のとおり。その上に運賃というものが外された場合にどうなるであろうか。そんなことを言っても、私鉄はちゃんと認可制度でもってそれほどひどくないじゃないかと言いますが、私鉄は不動産部門も含めて、わりと国鉄に比べれば安定している方だ、それと同じことは言えないであろうというようなふうに考えておるんです。私は、運賃法定主義の撤廃ということは、こういう点から非常にいま疑問がある。国民生活防衛擁護という点からも、財政民主主義の観点からも非常に問題があろうと思っておるんですが、それが一つ。  それから、関連をしてさっき先生が、これにかかわるべき近代的制度がないのにやってよいかという点に疑問を感ずるというふうにおっしゃった。しからば、言われるところのこれにかわるべき近代的な制度というのは、いまの日本の所与の条件の中で現実的に考え得るものであるというふうにお考えか、あるいは、そういうものはないんだけれども、仮に出てくればという意味で言われるのであるかというような点。  もう一つ済みませんが、もう一つ料金運賃法定主義については、旅客の場合と、それから貨物の場合を分けて、少なくとも旅客についてはやっぱり維持していくべきじゃないかという考え方もあり得ると思うんですが、先生のお立場を含めて率直なところをお聞かせ願いたい。
  64. 清水義汎

    公述人(清水義汎君) 何か運賃法定主義が、国鉄経営悪化の罪の面が強調され過ぎていやせぬかという御指摘であります。私も、国鉄の経営というもので、運賃に弾力性がないという形が今日のような事態に立ち至ったということは、現象と本質とを混同した議論ではないかと思います。いわば確かに、病人にたとえますと、いま国鉄は高熱を発しているわけであります。それでは高熱を発していれば、熱冷ましをうんと飲ませればいいじゃないかという議論が先行すると非常に危険だということでございます。熱は下がったけれども死んでいたという場合も出るわけであります。運賃が弾力性に富まなかったという一番大きいのは、物価上昇に追いつかなかった、こういうことだと思います。  そうすると、物価上昇とは何か、これは慢性的なインフレーションだと。インフレーションというのは決して自然発生的なものではないということであります。きわめて政治的な、政策的なものから出てくるものであります。その辺のところを抜きにして、結果論だけで物価上昇に追いつかない公共料金、あるいは国鉄運賃という考え方については私は同意しかねますし、その意味においての運賃法定主義がむしろ罪の面が強いという主張については、私は疑義を感じております。  それから第二は、料金運賃というものを一緒に法定主義から外したらどうか、従来のやり方でいきますれば大変なことになると思います。これは可能な限り上げていくという形になりますし、従来は、私鉄なりそのほかが運輸審議会で審議をされた上、運輸大臣決定を待つという、こういう仕組みがとられておりますけれども、その一つのやはり大きな歯どめになったのは国鉄運賃であったと思うのです。従来航空運賃なり海運の運賃決定をする場合に、いつでも基準になるのは、国鉄運賃決定というものが中心になって、そうして他の交通料金決定が行われているという形が従来の歴史的な経過であります。そういうような重要性を持っている。これが外れますと、一体どういうことになるか、どこへ線を合わせるかということになってまいります。いわば基準がなくなってしまう。  運賃法定主義というのが、今日ではやはり国会で御審議いただくというきわめて権威ある存在になっていたからこそ、それが一つのわが国の交通運賃料金体系の基礎としての大きな作用をしておったわけですが、これが同列になりますと、きわめてこれは問題が出てくる。しかも、公営交通国鉄の場合だけが法定主義をとっておるのは、いわば公共性についての強さの問題、これがあったと思うんです。そういう意味では私は、料金運賃がワンセットになって、無条件で法定主義を外されてしまうということになる危険は感じておりますし、それから、貨物旅客を分けての論議でありますけれども、これもいわば市場原理に基づいた貨物運賃という形になりますと、自動車のダンピング輸送に対抗できるような国鉄貨物運賃なんということになりますと、これがますます赤字がひどくなって、結果的には国鉄貨物をやめた方がいいというような結論になってしまう危険性も感じます。  そこで内藤先生は、それにかわる制度があれば云々ということを言ったではないかという御指摘でございます。私は、法定運賃制度をいまなくすと言っている以上、運輸省もあるいは政府も、単純に外そうとまさか思っているとは思いません。これは常識的に、単純に自由にしていくのがよろしいなんという考えはよもや持っているとは思いません。であるとするならば、当然権威ある政府、運輸省の考えることでありますから、よりこれよりも民主国家としてすぐれた制度を考えておられるだろうという仮説であります。ただ私は、その内容を知りませんので、内容を知らないでいいとも悪いとも言えませんので、それがあるならばということでありまして、もしないんであれば、私は法定主義を外すことについてのデメリットの方が大きい。特に物価政策上その形の方が大きい。それから同時に、パブリックコントロールがきかなくなってくる。その運賃の調整もきかなくなってくるということを憂慮いたします。  以上でございます。
  65. 内藤功

    ○内藤功君 ありがとうございました。  もう一点、清水先生にお伺いしたいんですが、いままでもお話の中にございましたが、特に、端的に言って西ドイツ、フランス、それからイギリスも入れてよござんすが、この主として三国の政府の国有鉄道に対する助成の問題については、いろんな資料もありますし、国鉄の監査報告書に見られますが、先生がごらんになって、お調べになって、これは日本の、わが国のこれからの将来の中で、何らかの形でやっぱり入れてくるべきだと思われる点がございましたら、一、二お挙げ願いたいと思います。
  66. 清水義汎

    公述人(清水義汎君) これは学者間によって評価が違うと思いますけれども、私は、ヨーロッパの交通政策なり保護政策が必ずしも成功したというふうに実は見ておりません。むしろ失敗の例の方が多い。これは西ドイツの場合でもそうであります。特に、自動車との競争政策の中でこれに歯どめを打つことについては、ほとんどが失敗をしております。そういう意味では、これは理想的にいいということは言えないと思います。  ただ、共通してよりベターだという点で言えますのは、この公共料金政策の面から国鉄値上げ申請をカットした場合、その差額部分については一般会計から見るという点が一つ。それから、フランスの場合には道床部分、レールから下の部分は全部国有財産として企業財産から外して保有をしていくという面が二番目の点。それから三番目は、大体国鉄の経営支出の経費の一五%から三〇%ぐらいの間でそれぞれの国が保護政策、助成政策を強化している、この点であります。そういう意味では、この助成政策の比率を、わが国の場合にはきわめて最近では経済力もついてきておるのでありますから、補助率を上げていくという意味については参考にすべきである、かように考えております。
  67. 内藤功

    ○内藤功君 ありがとうございました。  もう一点だけお伺いいたします。これは多少言葉の問題で、えらく理念的な問題にもひっかかってまいりますが、私はいま深く疑問に思うんですが、一体この受益者負担という言葉でございます。言葉の厳密な意味、それから先生方の理論的、学問的な意味において果たしていま使われておるだろうか。公共企業体が赤字になったんでございますから、受益者が負担するのは当然でございますという議論がまかり通る向きがあるわけなんですが、公共企業体、公共企業における受益者負担というのは、言葉の本来の意味は何なんであるか、法学上の本来の意味がそのまま正確に使われておるんであろうか。ちょっとおわかりにならないかもしれませんがこういう疑問なんで、これはお話になると長くなると思いますが、端的にわかりやすくお答え願えたらお願いしたいと思います。
  68. 清水義汎

    公述人(清水義汎君) これは学者によって必ずしも一致した概念ではございません。私は、受益者の問題についてこういうふうに概念を規定しております。  よく、受益者イコール利用者という考え方がありますが、利用者と受益者とは違うというのが私の概念であります。受益者というのは、この交通の開発行為によって、たとえば開発利益の還元であるとか、あるいは自己の企業なり経済活動について大きなメリットを受けるとか、こういう者が受益者である。利用者の場合には、今日の交通部門についてはいわば利用者であり消費者であって、受益者という概念からは外して考えるのが至当ではなかろうかというのが私の概念規定でございます。
  69. 内藤功

    ○内藤功君 そうしますと、いまのお話ですと、いまは受益者負担、受益者負担と言われておりますのは、むしろ言葉の本来的な意味から言うと、私のとり方が間違っていたらまた御訂正願いたいんですが、むしろ利用者負担のことを言っていると、こういうことでございますか。そういうとり方は間違いですか。
  70. 清水義汎

    公述人(清水義汎君) 最近よく、企業なりあるいは国鉄当局がおっしゃっております受益者負担というのは、利用者負担のことだというふうに私は見ております。本来の受益者である産業資本の方の負担率は、まだ少ないんではないかというふうに考えております。
  71. 内藤功

    ○内藤功君 以上で終わります。
  72. 和田春生

    ○和田春生君 和田春生でございます。  いろいろと大変貴重な御意見を拝聴させていただきまして、特に中西先生、細野先生、そして清水先生の場合、賛否のお立場はいろいろございましても、交通政策ないしは国鉄対策について政策的な、また、国鉄に対する御注文、こういう点では多くの共通の点もあったようでございまして、大変そういう点では参考にさせていただきました。ただ、与えられました時間が大変わずかでございますので、もっと深くお尋ねをしたいことがあるわけでございますが、最初に一つ、いまも内藤委員から出されておりましたけれども、運賃法定主義の問題について三先生にそれぞれ御意見を承れれば大変幸いだと思います。  私も実は、貨物運賃につきましては現在の法定主義から外した方がいいという考え方を持っておりまして、それは、たとえばトラック輸送よりも国鉄輸送の方が企業としてメリットがある、そういうところに対しましては、コストとメリットの兼ぬ合いで相当ぎりぎりまで現在の運賃よりも高く取れるという場合もありましょう。あるいは空の貨車で走るんならば、そこで一定の貨物輸送した方が、運行コストはかかるわけでありますから、国鉄経営にはプラスをする。そういう非常に経営の戦略上から貨物運賃については法定主義を外す。ただ、民生安定上、その他非常に重要な輸送部門については、これは一定の運賃率を運輸省の監督指導のもとに決めるということでもよかろうと思うんです。というのが実は私の考え方なんですが、ただ、旅客運賃については、法定主義がいいか悪いかという制度的な問題よりも、実ははなはだ政治的に私は考えております。  といいますのは、たとえば地方交通線赤字補助、あるいは公共負担に対する政府助成とか、あるいは資本費、新しい投資に対する国家の財政補助とか、そういうものがきちんとしていない状況のもとで運賃法定主義というものを外しますと、これは大蔵省、運輸省、国鉄というこの力関係から、全部運賃の方に持っていかれてしまう危険があるんではないか。現に昨日の質疑の中でも大蔵省は、過去債務に対しての負担はもう五十一年度で終わったんだと、あとは単年度の収支均衡ということだから、五十二年度以降に生ずる赤字運賃の方で賄ってもらいたいということをこの席上で言っているわけでありますから、結局それがどんどん国鉄当局に、赤字が出たんなら運賃で賄えばいいじゃないかというふうにおっつけられていく、それが結果して利用者に転嫁をされる、あるいは国鉄離れを促進をして、国鉄にとっては大変不幸なことになると、こういうようなことになりはしないか。  そういうふうに考えますと、やはり一種の政治的な歯どめとして、そういう国鉄が自立性を持つという諸条件の基礎工事が整えられるまでは、運賃法定主義というものはある程度において必要ではなかろうか。国会においてそれを決めるということがないと、先ほど言ったようなことになるんではないかという懸念も持っているわけでございますが、そういう制度的としての、倫理的というよりも、政策的な面までも含めまして、国鉄運賃を定める方法はいまどうあるべきか、こういう点につきまして、それぞれ三先生お触れになっておりますが、ごく一部でございましたので、そういう基本的な考え方について御意見承れば大変幸いであると、こういうふうに思います。
  73. 清水義汎

    公述人(清水義汎君) 法定主義という問題につきましては、いま和田先生御指摘のように、やはり国会という国民意見を支配的に代表する場でこれがチェックされていくということは、少なくとも今日的段階においては一定の大きな役割りを持っていると思うんです。これは私鉄運賃審議等におきましても、運輸審議会という機関が現在ございますけれども、恐らく国会の運輸委員会で議論をされるほどの密度をもって議論はされない。せいぜい参考人なり公述人に呼ばれて、一定の期間簡単に意見を聞いた上で五人の運審の委員で決められる。そうなりますと、いわば審議の内容が密室の論議になってしまう、これを非常に恐れるわけであります。それから、特に先生御主張になったようなきわめて国民経済的な、あるいは公共的な見地からこういう議会の場で論議をしていくということは、よっぽどの条件とかわるものがない限りやはり維持をしていかなきゃならぬのじゃないか。  ただ、貨物運賃の問題で若干先生と私、意見が違いますのは、いわば法定主義を外す、貨物を外そうという形の考え方には、やはり何らかの形で貨物輸送に対する自由競争の原理の導入、この自由競争の原理の作用している交通市場国鉄も競争力を持たしていこう、こういう考え方だと思います。ところが、この貨物輸送に対する競争関係が、先生御指摘のように路線トラックとそれから地場、まるっきり違うわけですね。路線トラックの場合には寡占化、独占化の傾向が進んでおります。これはトラックターミナルを持たないとやっていけませんが、これと違って、別に地場運送の方は、相変わらず零細、中小という形で実質的に路線と競合関係に入っている。それから特に、自主流通米等を見ますと、東北の方では白ナンバーの持ち込み契約でこの輸送をしている、これが競争の実態なんですね。  いわば国鉄路線トラック業者との競争関係というだけならいいですけれども、もっと底の厚い、きわめてバラエティーに富んだ競争が行われている。そういう中で、やはり貨物運送というものを秩序化していくという方向を考えないとどうにもならない現状の中で、これだけ外しても、いわばたてまえからいう市場原理の導入と、自由競争によるところの輸送の効率化とサービス向上という面よりも、別なデメリットの方が多く出やしないかという点で、どうも私はそういうような危惧がありますので、やはり法定主義というものを当面は維持すべきであるという考え方の方が強いということでございます。
  74. 中西健一

    公述人中西健一君) 公述人に対する御質問の最初に、目黒先生じゃなかったかと思いますが、細野先生に対しまして、国鉄総裁のなり手がないというのはどういう理由かということを御質問になって、細野先生は、これはやはり政策的な介入が非常に強くて、国鉄総裁が自分の経営的な手腕を発揮する余地がなかなかないということで、引受手がないんじゃないかというようなあれがあったわけでございますが、いわゆる法定制度というもの、これを外すということになりますと、議員の先生方にとっては確かに寂しいことだろうというふうに私は思うわけでございますが、先進資本主義国運賃を法定している国というのは、私の記憶では、日本を除きますとイタリアぐらいじゃなかったかというように思っております。ほかはみんな、運賃国会法律改正して決めるというところはないんでございます。  これは、なぜ法律で決めるということになったかといいますと、やはり昔の国鉄というのは独占性を持っておった、独占性が強かった。その独占の上にあぐらをかいて高い運賃を決めたりということをすると非常に困るからということで、国会でチェックをするというところから運賃法定制度というものができたわけなんですが、何度も繰り返して申し上げますように、現在の国鉄というのはもう独占性はほとんど喪失しております。そういう情勢でございますので、法定主義をやめまして仮に運輸大臣の認可ということにしても、私はそれほどの弊害が起こるということはないというところで、外国の鉄道というのは法定制度をやめてしまったのだというふうに理解をしております。  ただ、貨物とそれから旅し客というのは、これはやはり分けて考えるべきであって、私は旅客運賃については認可制にしてもいいとは思いますが、法律で決めても別にそれでもいいということでございます。ただ、貨物につきましては、これはいま清水先生御意見を述べられましたが、私は多少清水先生とは意見が違っておりまして、貨物の場合にはトラックとの競争、あるいは内航海運との競争関係があるわけですが、この競争の主要な側面というのは、これは運賃よりもむしろサービスの質の面で競争しておるわけなんです。そのサービスの質の面でいわば鉄道というのがトラックに及ばない、負けているということで、どんどんトラックに貨物がとられているということで、運賃におけるところの競争というのはそれほど主要な側面を占めておるわけじゃないんですね。ですから、国鉄に対して当事者能力といいますか、あるいはまた自主性を与えるという観点から、貨物運賃については私はもう自由にして、国鉄総裁が有利なというように考える、国鉄貨物輸送の販売を促進できるようなそういう個別に荷主との特約運賃、それにした方が国鉄にとっても有利でないかというように考えますし、また、そういったような特約運賃にしましても、必ずしも国民経済的にいろいろな弊害が起こってくるというようには考えておりません。  そういうような理由から、私は、貨物については国鉄総裁が決められるという、そういう制度にした方がいいのじゃないかと、こういうふうに考えております。
  75. 細野日出男

    公述人細野日出男君) 私は、国会というものは、法定制度を外されましても権限が、国会が全然見なくなられるということではないと思います。国会は、やはり運賃基本法のようなものをこしらえることによって本家本元は握っておられるということ。  もう一つは、財政の方から補給をするという問題は、当然国家予算の問題になります。予算審議というところでもって、国会は非常に大きな権限を持っておられるわけであります。ですから、国会法定主義をやめても、野放しにするということでは全然ないということでございます。  ただ、先ほど申し上げましたとおり、運賃規制といったようなものは一つ経済裁判である。すなわち、利用者の利益というものとそれから年産者の利益——利益と言うとなんですが、生産者がペイするかしないかという問題、これは利害対立の問題になるわけでございます。この利害対立の問題に判定を下す機関として国会というものが適当しているかどうか、個々のケースについて。原則国会がお決めになることが当然であります。それから、財政補給も国会がお決めになることが当然だと思います。しかしながら、個々のケースを決められるということは、その原則に基づいて政治的に中立な、しかも専門知識を十分に備えた委員及び調査機関を持った独立規制委員会といったようなものにお任せになるということの方がすぐれていると思っているのであります。  中西教授が言われましたとおり、世界的に国営企業の価格というものを国会法定をとっている国は、アメリカの郵便料金というものが主でありまして、いまイタリアのお話がございましたが、イギリスなどは実は運輸審判所という一種の行政裁判所がやっておったわけでございます。ところが、それがイギリスでは、ここ十年赤字がやはり続きますので、国鉄自主性に任してしまうということをやっております。それからドイツの国鉄では、二割までの値上げ国鉄総裁に任せるというようなことをやっております。しかし、日本ではやはり経済裁判所的な中立専門委員会でもって、これは行政的な委員会でございますが、そこで審議するということ、個々のケースについては国会が決められた運賃基本法に基づいて判定をするということをされるのがいいと思うんです。  国会で、運賃法定主義一つの欠陥は、政党政治が直接規制するということの方の欠陥と申した方がいいのかもしれませんが、国会というものは会期がある、その会期以外のときに起こったら何もやれない。それから、会期が終わってしまえば廃案になってしまうということであります。政治的なハプニングが起こりますと、たちまち延びてしまうということになります。ロッキード問題が起こった、あるいは自民党の総裁問題が起こったというような、国鉄運賃に直接関係のないハプニングが起こりますと、たちまちのうちに一日延びれば十八億円の運賃増収を取り損なう。まあ前からの赤字と合わせると一日三十三億円の赤字だと言っているんでありますが、ロッキードの賄賂の金額よりも大きな金額が一日になくなっちゃうというようなことになるのでございます。ですから、国会というものは会期の制限がある、政治的なハプニングが起こったらだめになるというようなことがございますので、やはり国会は個々のケースを審議されるには向かない。  昭和二十二年に財政法をこしらえますときに、進駐軍、アメリカ軍の係官がアメリカの郵便法、アメリカでは郵便料金法律で決めている、日本では鉄道運賃や電話料金を決めないのはけしからぬというようなことでもって、日本にこれを押しつけたというふうに私は記憶しておりますが、それ以来もう三十年近くになりますけれども、先ほど申し上げましたとおり、タイムラグが起こりプライスラグが起こります。実はこれは国会だけでなく、政党大臣が長をしておられる省、大臣に任せるという場合でもこれは起こるのであります。  たとえば、国鉄ではありませんが、電電の料金というものは、さきおととしぐらいに改定する必要があったのであります。ところが、自民党政府はまだいかぬと言うて抑えられる。ですから、四十九年に、それまで順調な経営をやっておりました電電がおととし赤字を出しました。去年また大きな赤字を出し、第二の国鉄ができるんじゃないかと言われておりますけれども、それは国会自身が抑えられたんでなくて自民党政府、郵政大臣が、まあまあまだ出すなと言って抑えるというようなことにもなるのであります。  ですから、やはり私は、経済裁判の性格をもっと御認識になりまして、裁判というものは中立的な立場で、専門的な知識を集結して、そこで公正な判定を下す、その判定の基準になるものは国会のお決めになる基本法であり、運賃の決め方であり、それから予算審議であるというふうに考えておる次第でございます。  以上です。
  76. 和田春生

    ○和田春生君 ありがとうございました。  今度は、大森先生にちょっとお伺いをいたしたいと思うんですけれども、よく自動車国鉄の関係を議論をされるときに、自動車が悪者になる。自動車あるいは道路に余りにも力を入れ過ぎたから国鉄が割りを食ったという意見があるわけです。確かにそういう面がありまして、日本の総合的な交通政策の面で整合性に欠けておったということは十分認められると思いますけれども、それ以外にたとえば、貨物の場合でも旅客の場合でもそうですが、自動車はそれ自体が完結した輸送サービスを提供する。国鉄の場合には、レールの上だけは輸送するけれども、完結した輸送サービスは提供されないわけでありまして、ドア・ツー・ドアという面で非常に欠陥があるわけです。  そういう中で、物流の面を大森先生強調されましたけれども、もしそれに適応していこうとすると、パレットが例に挙げられましたが、コンテナでもパレットでもやはり積みかえが必要になってますから、かなりそういう面に対する大きなヤード、あるいは徹底的な機械化、合理化が必要になるんではないか。あるいはまた国鉄は、線路と、それから列車と、乗務員をつけてリースをして、輸送の主体それ自体は運送業者である、こういうようなかっこうにならざるを得ないような面もときには出てくるんじゃないか。そういうふうな面で、国鉄一つの完結した輸送サービスに近い形で業務を引き受けるためには、駅あるいはコンテナターミナル、あるいはパレットのヤード、いろんな問題で相当巨額の投資、土地の取得を含めて要るんではなかろうか。そういう点のコストの関係で果たしてどの程度までいけるんだろうか。大変複雑な問題があると思いますが、そういう点についての御感触をひとつ承れないかどうか。  もう一つは、船の輸送の場合、御承知のように、最初は船自体で輸送しておったんですけれども、カーフェリー、あるいはラッシュ船、あるいはプッシャーバージというふうに、輸送手段それ自体が輸送手段を運ぶという形によって非常に革命的になる。たとえば、四国の生鮮食料物をトラックが積んだままカーフェリーに乗って大消費地に向かってくるというような形になったわけでございます。鉄道の場合にもたとえばピギーバックと言われてますが、豚の背中ですか、鉄道自体がそういう輸送手段を運ぶというようなことによって改善の余地があるんだろうかどうだろうか。最近興味は持ち出したんですが、余り深く研究しておりませんので、そういう運送ないしは輸送の実務を研究されている立場から、そういう点について若干の御意見を承れれば幸いだと、こういうふうに思います。
  77. 大森誠一

    公述人(大森誠一君) お答えします。  前段の、新しい合理化施設に相当な費用がかかるんじゃないかというお話でございますけれども、私は、駅頭の施設の問題であれば、それ相応な駅の規模に合わした体制で、現状を少しさわる程度で可能になってくるんじゃないか。そういう意味で、先ほどからある限度があるんだと申し上げたのは、そういうことなんでございます。必要以上に施設をしようとしても、現在の国鉄の立地という問題は、それほど思い切った用地を取得することはできませんから、だから、その範囲内でやれることをやっていこう。ただできるだろうと、いま多少想像的な問題ですけれども、本当に踏み切っていただけるような国会なり、あるいは国鉄当局なり、あるいは運輸省の御指導で実験的におやり願えることができるんなら、ヤードの問題では一つあると思うんです。  ヤードを、いろいろ入れかえする作業をコンピューターで自動処理をするということがいま一部行われています。これは現在では最も進歩した一つ輸送手段、輸送技術のように考えられていますけれども、従来やった仕事をコンピューターに渡すということじゃない。もう一つ、貨車を入れかえせずに荷物だけを積みかえて方面別仕分けをするという、そういうやり方もあるんじゃないか。これは大井の埠頭のコンテナヤードで若干そういう機械を現在お使いになっています。ただし、この場合は配送関係、集配関係とのトラックの関係での積み込み、積みおろしに使っておられるようですけれども、当初の計画は、やはりあの中でヤード入れかえじゃなしに、コンテナを列車方向別に積みかえてやっていこうという、そういう方法があったわけです。そういうような形を採用していけば私はまだ余力が出てくるんじゃないか。そこで、スペースは少なくても処理できるということは、結局回転率をいかにして上げていくかというこの駅頭の作業の問題です。  そこで、問題になるのは、駅頭の施設もある程度それに合わせたスペース、あるいは多少の施設は必要としても、もっと大事なことは、都市内の物流体系のあり方とか都市交通問題のあり方と、いろいろ運輸省でも論議されている問題でございますけれども、やはり都市内に多少まとまったそういうものを処理できる、駅頭で全部飲み込んで処理するんじゃなしに、なるたけ消費地に近い、あるいは実際使われる荷主さんのおられる間近なところへ早く持っていって、駅をなるたけ空にしていくといったような技術問題があると思うんです。これが先ほど申し上げたように、総合交通体系の趣旨をそういう形で今後広げていく道があるんじゃなかろうかと申し上げた一つの問題でございます。  それから後段の、船とカーフェリーの問題ですけれども、ピギーバックは、日本では国鉄でもいろいろ御研究になったんですが、やはりトンネルというものがあって、アメリカ式の貨車の上にトレーラーをそのまま載せるということになると、高さが高くってトンネルにつかえると。そこで、カンガルー方式といいますか、少し車輪を線路の方へ落として、そしてひざを折ったような形で、身長を低くしてトンネルを通過していこうと、こういう方法もあるんですが、これになりますと、積み込みに相当、あるいはそういうものの今度はもとへ復元する装置なんかに人手や機械力が要るということになります。時間的ロスもある。結局、それはかわるものはフレートライナー、あるいはコンテナ輸送というものが全くピギーバックと同じ、アメリカのピギーバックに対してボックシーバックといったような言い方をして使っておるんですけれども、私はそれで解決できるんじゃないか。  ただ、それも戸口から戸口の、ドア・ツー・ドアというトラックとの競争に負けるんじゃないかということは、確かにある部分ではあると思うんですが、しかし私は、いま国鉄貨物がトラックに逃げていったという問題は、そういう問題も若干はあるでしょうが、それよりもやはり、いろいろいままで起こっておる労働問題とかなんかで、荷主は、国鉄輸送の最もいままで信頼しておった安定輸送、あるいは確実な輸送というものに不安を感じて、二度と寄りつかないという形が強いと思う。ですから、私は先ほど非常に精神論めいたことを申し上げたのは、そういう考え方国鉄の従業員なり、一体となった人たちが本当に割り切ってもらえない限りは、やはりいろんな手段を尽くしても国鉄からは荷物は逃げていくんじゃなかろうか、そういったような考え方でございます。
  78. 和田春生

    ○和田春生君 どうもありがとうございました。
  79. 松岡克由

    ○松岡克由君 井上さんに質問、というよりも教えていただきたいと思うんで、私もいろいろと意見を伺っていましたんですけど、最も庶民の立場から苦しさを訴えているというのはすごくわかるんです。私も、私ばかりでなく私の周りを含めて、また家族もそうだし、親もおります。もう値上げ反対なんです。こんなばかな値上げなんぞしてもらっちゃ困る、庶民はまいっちゃうと。本当のことを言えば、もう国鉄ばかりでなくって、値上げ全部やめて値下げしてくれと。ぼくの給料が上がるのはいいけども、とにかくそういうものを上げてもらうのは困ると、そう言ったわけですよ。  私はいろいろそういう連中を連れて、非公式ですが向こう側と会ったんです、値上げで。いろいろ聞いたわけですよ。すると、値上げしなきゃならない理由に、赤字があって国鉄も金が必要だと。それで、列車も輪ゴムで動いてんじゃないと言うんですね、向こうは。やっぱりいろいろ金がかかると。それ、金かかるんだったら国でめんどうを見ろって、さっきおっしゃったと同じことを言ったわけです、ぼくも。国が悪いから、政府が悪いからあんなことになったんだから、国が当然めんどう見ろと言ったら、国でも出していると言うんです。出せる限りは出しているが、もう限度があるから、あとはめんどうを見てくれと言うんですね。さっき、前運輸大臣が言ったと同じように、税金で取るか、後から利用者で取るか、どっちかにしてくれと言うんです。それから、冗談言うな、どっちもいやだとね。そんなもの大企業から取れと言ったわけですよ。そうしたら、大企業も無限じゃない、有限だと、つぶすわけにいかぬから、これも限度があると、こう言うんですね。  赤字が大体どのくらいあるのかって言ったら、つまり累積赤字が三兆一千億、それからいろいろ長期借入金を入れると六兆七千億、ざっと十兆だと。十兆ぐらい何だ、そんなもの国の予算から持ってこい、そうすれば値上げしないで済むじゃないかと、こう言ったわけですよ。そうすると、向こう側の言うのには、五十一年度の予算が二十四兆ぐらいだから、そこから十兆出せないと言うんです。出しなさいと、そんな十兆ぐらいの金。豆腐の十丁じゃないんだと言うんです、向こうがね。十兆出すとあとの予算が全部だめになって、文教とか、社会保障とか、それから厚生とか、環境、これは公害もきますね、そういうのがめちゃくちゃになっていいのかと言うんです。よくないと言ったんですよ。何でもかんでも出したらどうだと言ったら、それは出せない、これでもう精いっぱいだと言うんです。  だからぼくは、そういうのは全部、何でもかんでもこっちは値上げ反対だから、国でめんどう見ろと言ったら、それは身勝手な意見だと、こう言うんです。これはぼくが言ったんです。そのときに周りにいたやつが、どうせわれわれは身勝手なんだと、おれたちは身勝手なものなんだと、身勝手だけれども、値上げはいやなんだと言ったら、身勝手な方はしょうがないから、これは意見が別れますねと、まあ帰ってきたわけですけれどもね。  井上さんの場合は、来ていらっしゃるんで、論理的な発言だと思うんで、意見が全く同じなんで、ひとつ身勝手でなく、国鉄再建の資金をどっから持ってきたらいいのか教えていただくと、今度追及するときに非常にぼくもプラスになるんで、教えていただきたいと思うんですけれども。
  80. 井上美代

    公述人(井上美代君) 私は、松岡先生に教えてあげるなんという、そういうことはおこがましいし、そういうあれでもありませんので、そういうことはできませんけれども、まず、国鉄赤字につきまして、いまの予算から国がすぐ出せばいいじゃないかというふうにおっしゃったということですけれども、私はそういうふうには申し上げてはいないんです。  それは、確かに私は婦人の立場としても、教育の問題や福祉の問題、それから婦人の地位向上の問題、そういう問題について一定の予算をもっと多くとっていただきたいということで、大蔵省や文部省や労働省に、いろんなところに行っておりますので、そういう意味では、そんなのまで削ってまで予算から赤字を全部こっちへよこせというようなことは申し上げてはいないんです。でも、いまのままで、先ほどからこちらの公述の諸先生方もおっしゃっておりますように、国から補助として出している金額というのは、外国の場合なんかと比べても非常に少ないということが言われているんですけれども、そういうことも考えて、日本の国鉄がどういうふうにあればいいかということは、ぜひ先生方に御研究を願いたいというふうに思うんです。  戦後、独算制に変わっていったわけなんですけれども、そういう独算制の枠の中でやっぱりそれをすべて、最初ずっと赤字はなかったわけですね。三十九年ごろからですか、赤字が出てきますのは。そういう赤字運賃値上げということでずっとやってこられたということにやっぱり問題がありますし、そしてまた、社会がこれからどんどん発展していくと思いますし、その発展していく中で、いろんなもっと設備投資資金を入れなきゃいけない問題も出てくると思うんですね。そういう資金を入れなきゃいけない問題が出てくるときに、いまの国鉄の体制のままであれば、赤字を一時、幾らかいま持っている赤字を何十年かたって解消できたとしても、そのときには、すでにまたほかの赤字が積み重ねになっているということがあると思うんです。  そういう意味で、国鉄のあり方をいままでのこの戦後三十年間のあり方と違って、これからの日本の将来、いろいろな近代社会の中での、どうあるべきかということを総合的にやっぱり考え直していただいて、そして、いままでの制度というのが非常に私たち庶民から見ましたら大独占といいますか、そういう大きい企業に非常に有利にできているように私は感じるんです。だから、その辺をもうちょっと私たち庶民の方にも顔を向けていただけるような、そういう政策にこう変えていただけたらというふうに思っておりまして、その辺のことにつきましては、具体的にはもう諸先生方いろいろぜひ御研究をして、私たちの意をくみ取っていただいてぜひ改善をしていただけたらと、こういうふうに考えております。
  81. 松岡克由

    ○松岡克由君 もう一つだけ。新幹線の問題も、やっぱし同じように私の友人たちも悩んでいる。  さっき大田——大田区の方ですね。私も、太田と言うから呑竜様かなと思ったら、そうじゃないんでね。あっちは通ってないんで。大田区ですよね。私は大田区なんです。ちょうど沼部のあの辺なんですよ。鵜の木というところですけれどもね。友人があの辺にいるんです。これはもうすごいんだ。ガァーっと揺れてね。それで、もうテレビは見えなくなる、電話は聞こえなくなっちゃう。本当にストライキになるとほっとするんですよ。そうすると、ストライキやってくれないかななんて無責任に思うくらい、何かほっとする。さっきおっしゃったとおりなんだ。そうすると、もっと静かにできないのかと。あの新幹線、あれ以上また静かにできないんですね。といって、山の中走らせちゃうと、これ、もう人の運搬にはだめなんですね。  すると、どうしたらいいのかという問題で悩んでいるんですけどね。まさかその人に引っ越してくれって言うわけにいかぬし、それじゃ新幹線をとめちゃってくれりゃありがたいんだけれども、個人的にはありがたいけども、やっぱしそれも困るし。その辺をどうしたらいいのか、ちょっとひとつ最後意見を聞かしていただきたいと思います。
  82. 井上美代

    公述人(井上美代君) 私、松岡先生の御質問が、何かやっぱり御専門の方にお聞きになった方が、いいお話がお聞きになれるんじゃないかというふうに思うんですけれども、全く素人の私をつかまえていろいろ質問をしてくだすって、私非常に光栄には思っているんですけれども。  この新幹線につきましては、何といいますか、公害をこうして野放しにしたままつくられるというところに問題があるんだと思うんです。だから、やっぱり新幹線の公害をこんなに振りまかないで、そして、新幹線のように速いといいますか、乗り心地もいい、料金も安いというような、そういう列車が開発されれば、私たちは本当にそれにこしたことはないのでございまして、その辺はもう諸先生方の御専門の、技術的にも高度な先生方の御研究に期待する以外にはないんじゃないかというふうに思うんですけれども。
  83. 松岡克由

    ○松岡克由君 はい、どうもありがとうございました。  そのほかの先生方、本当にお忙しいところありがとうございました。いろいろと応待を聞いてますと、私もいろいろと質問したことと(「それは委員長の仕事だ」と呼ぶものあり、笑声)——大変に意を強くしまして、私どもの思っていることとやっぱり共感することが大変ありましたので。あとは委員長に任せますから。
  84. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私、皆さん方の内容のこととは違いまして、清水公述人から公聴会のあり方のお話がございました。そこで、最後公聴会のあり方について、清水公述人としては、どういうふうにされたらよろしいのかということをお聞かせ願いたいと思うんです。実は私も公聴会が、いま清水公述人のおっしゃった中に、最後法案成立のセレモニーになっていると、こういう意味のことを言われましたね。確かにそういう感じがあるんです。公聴会というのは最後のセレモニーじゃなくて、この公聴会をもとにして、その委員会の審議が行われるようなかっこうにした方がいいんじゃないかというふうに私も思っているんです。  だから、公聴会をむしろ先に持っていって、皆さん方の意見というものをもっとたっぷり聞かしてもらって、それをもとにして、審議の参考にできるようなかっこうにしていくという方がいいんじゃないかという感じを私も持っているんです。ところが実際問題としては、いままでのやり方は最後に持ってくるんですね。九回の裏に応援団が出てくるような、こういうかっこうではうまくないんじゃないかという気がいたしますので、たまたま清水公述人からそういうお話がございましたので、具体的な御意見をお聞かせ願いたいと思いますが。
  85. 清水義汎

    公述人(清水義汎君) 私は、公聴会そのものの制度はぜひ続けていただきたいと思っておりますので、それを前提にして申し上げたいと思います。  まず、審議に入る前段に公聴会を持っていただきたい。これは時期設定の問題であります。それから第二は、この公述人の選出について、非常にいまのところは限定がございますので、もうちょっと幅の広い、階層別に公述人の参加人員をふやして、一日に終わることなく、三日なり四日なりの期間をかけて、あらゆる階層から意見を聞くような形にお考えをいただきたい。それから三番目は、どうも私は法律は素人でございますので理解しにくいんですが、公述人と参考人と二つの制度が今日ではございます。参考人といいますのは、主に専門家が呼ばれていろいろ意見を言うと。公述人というのは、これは一般の国民の中から公募で選ばれるというシステムをとっております。私は、公述人と参考人をできれば一本化して、いまあらゆる階層という中に、いろんな考えを持った学識経験のある者、あるいはあらゆる職業の者、それから年齢別、性別で意見を聞くような形をとっていただけないか。  そしてもう一つは、公述をする場合に、いまのわが国の制度では、公述人が質問をすることを禁止をされております。私は、公述制度というものの一つのやはりあり方というのは、民主主義という一つ原則なり制度の中であるシステムだと思います。そうであれば、公述人がやはり関係者に質問をして、そして疑問がそれで解消すれば、それはそれなりの意味があると思います。それから、質問をして、疑点を晴らした中で意見を言うということも一定の意味があると思います。そういう意味では、一般国民の先生方は代表でありますけれども、広く大いに民意を問うという意味で、部分的にはディスカッション的なものを含めた公聴会のような制度も御検討いただければありがたい、これが私の、公聴会というものの今後あってほしいなと思うビジョンでございます。
  86. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 以上をもちまして、公述人に対する質疑は終了いたしました。  一言ごあいさつを申し上げます。  公述人皆様方には、長時間にわたり、高度なお立場から貴重な御意見をお述べいただき、また、委員の質疑にもお答えくださいましてまことにありがとうございました。  拝聴いたしました御意見は、今後の当委員会の審査に役立つものと確信してやみません。ここに委員会を代表して深甚なる謝意を表する次第でございます。  皆様方におかれましては、御自愛の上、今後一層の御活躍をお祈り申し上げます。  どうもありがとうございました。(拍手)  これにて散会いたします。    午後三時二十八分散会