○内藤功君 私は、日本共産党を代表いたしまして、二法案に反対の討論を行います。
まず私は、この
委員会におきまして、わが党の出した
再建案を含め、各党の提案を十分にフリートーキング等の
方法によって討論すべきであると強く主張してまいりましたが、今日までの間それが実現されていないということが非常に遺憾であるということを先に申し添えておきます。
以下、私は四点にわたり反対の理由を申し述べるものでございます。
第一は、
政府案が
国鉄の危機についてその根本的な
検討も加えずに、再び安易な、その場しのぎの
運賃値上げという従来のやり方を繰り返そうとしておる点であります。
政府は、
国鉄が
赤字に転落した
昭和三十九年以来、すでに三回の
運賃値上げを、
国民の大きな反対を押し切って進めております。その都度、
国鉄の財政はこれで健全化できるのだと強弁してきました。しかし、その結果残されたものは、六兆七千七百九十億円の
長期債務と、三兆一千六百億円の
累積赤字ではありませんか。
政府は、まずこのような財政と経営の破綻の根本原因を明らかにしなければならないはずであります。ところが
政府は、事実を挙げての私の質問に対しても、その根本の原因と責任を明確に認めないばかりか、逆に、しゃにむに法案の
成立を図って、五〇%を超えるこの
運賃値上げを
国民に押しつけ、しかも来年度についても同様な
値上げを明言するありさまであります。このような態度は断じて容認できません。しかも、当然即時
実施すべき義務のある仲裁裁定をてこにとって、法案の
審議促進と
成立を強引に進めてきた
政府の卑劣な術策は、厳しく糾弾さるべきであります。
第二の理由は、
国鉄財政、経営の抜本的再建の重大な条件である国と大企業の
負担の適正化、これについて
政府が何ら具体策を示そうとしていないという点であります。今日の
国鉄財政、経営の危機は、
政府が長年にわたって
国鉄に対し公共交通機関にふさわしくない財政制度を押しつけるとともに、
国鉄経営を大企業本位の高度成長政策に奉仕させてきた結果であることは、もはや議論の余地がありません。それは
政府が、公共企業である
国鉄に対し当然なすべき出資を怠り、しかも、大企業本位の列島改造計画に沿った莫大な設備投資を、
借金に次ぐ
借金で賄わせてきたことであります。
この結果、
国鉄の利子
負担は、
昭和五十年度におきまして、同年度の
赤字総額のほぼ半分に当たる四千億円にも上っておるのであります。そうして、この設備投資の資金をつくり出すために、過大な減価償却方式を
昭和三十六年から取り入れ、この十六年間に約八千五百億円の過大なる償却をなしてきたのであります。また、過去十年間の
国鉄赤字の約八割が、貨物輸送によって生まれていることにも明らかなように、
国鉄は大企業の貨物にはもともと低い
運賃に加えて、さらに営業割引など特別の割引を行ってきたのであります。
質問で明らかにしましたように、旅客
運賃は東京−名古屋間、四十一年から六六%も上がっているのに、トヨタ、日産などの自動車輸送
運賃はわずかに六・七%しか上がっていないというありさまであります。質疑の中で私は、これら
国鉄赤字の根本的原因を取り除いて、その仕組みを抜本的に改めることこそが、
国鉄再建の道であるということを一貫して主張してきました。
政府、
国鉄当局が私の提案を受け入れる熱意なく、また、みずからの具体的計画も示さず、ただただ
運賃値上げだけを繰り返そうとしていることは、財政再建どころか、財政破綻を一層激しくするものと断ぜざるを得ません。
第三の理由は、
国鉄貨物シェアの低下による収入減対策について、
政府が何ら具体的、根本的な
解決策を明らかにしていないことであります、現在陸上の総貨物輸送量に占める
国鉄の割合は年々低下し、貨物
運賃収入はここ数年来横ばい
状態となり、それは
国鉄赤字の一つの要因であります。しかもその原因が、
国鉄への出資は怠りながら、高速自動車道路の建設には莫大なる国費を支出するなど、
政府の自動車優先政策によるトラックの圧迫にあることが明らかであるにかかわらず、
政府は、私どものたび重なる主張を無視して、何らの具体的
解決策をとろうとしていないことは、言語道断と言わなければなりません。
理由の第四は、
政府、
国鉄が、従来の新幹線と大企業貨物輸送の増強に、依然として設備投資の大半をつぎ込みながら、他方では
地方路線の切り捨て、駅の無人化、ダイヤの削減など、
国民の犠牲を一層激しくしようとしていることであります。私は、
地方の通勤、通学列車の現状、無人駅の荒廃の実態、
身体障害者、視覚障害者の方に対する安全施設の欠如について、具体的な事実を挙げてその改善を求めてきました。
政府、
国鉄当局が依然として
国民への安全、サービス義務を無視した大企業奉仕の輸送政策を改めようとしていないことは、きわめて不当だと言わざるを得ません。
政府が真に
国民本位の民主的再建策を確立することを、私はここに重ねて強く要求いたしまして、反対討論を終わります。