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阿部(助)
委員 明後日の三日から十カ国蔵相
会議が行われます。それで、次の四日からはIMF総会が行われるわけであります。
最近、円に対する批判というか圧力というものはいろいろ相当強いようであります。私が最近の経済指標を見てまいりましても、外貨準備高は百六十三億ドルとなりまして、石油ショック以前の水準に達しておるわけであります。私は、このようなことになったのは、ここに
日本の皆さんの経済政策が少し狂っておるのじゃないだろうかという感じがするわけであります。それは、卸売物価は十四ヵ月連続上昇を続けております。大企業は値上げ効果で企業収益を急速に回復しつつあるのであります。ところが一方、労働者の生活、先ほど来御
指摘がありましたように、賃金の方はさっぱり上がらない、物価は上がる、税金は重くなるという形で、購買力は当然のこととして減退をいたします。農民はまた低米価に抑えられた。そこへ追い打ちをかけるように冷害であり、この災害であります。そうして中小企業はと言えば、昨年の九月からこの八月まで、一カ月といえども千件以下の倒産の記録はない、全部千件以上の倒産を続けておるわけであります。全般にやはり購買力が低下しておるというその
一つのあらわれとして、全国の百貨店の売上高は、前年と比べてみてもこれは幾らも上がっていない。物価に引き直してみれば、実質これは低下をいたしておるわけであります。そうして完全失業者も、これはおおよですけれども、それ以外に重要な問題があります。日中間のその根底に、これまで
三木内閣の対中
姿勢に対して、中国側がある種の
不信感を抱いていることがむしろ大きなネックになっているのではないかと思うのです。これをぬぐい去っていきさえすれば、日中平和友好条約の交渉は一挙に解決していくのではないかと私は確信をしております。
中国側の
不信感には思い過ごしもないとは言えません。しかし、せんだって来の外交当局者の言動を見ておりますと、中国側に不信の念を抱かせるような節々が見られます。たとえば、昨年の初めのころ、交渉の当初、外交当局者が、覇権という
言葉は条約になじまないとか、あるいはソ連を刺激するとか、こういうことを言っておりました。そして、しばらくたちますと、今度は、条約の前文ならいいけれども、本文に覇権条項を入れると権利義務が生じてくる、こういうことも言っております。そうかと思いますと、最近のように、本文に入れて構わないけれども、覇権
反対の条項は攻守同盟ではないとか普遍原則であるとかというような条件を
出しておって、言わずもがなの注文をつけている。こんなことが、中国に対して、
日本の外交当局は一体何を
考えているのだろうかという疑念を持たせるようになった。また、前外務大臣の宮澤さんが、公式の席で台湾原則を曲げるかのような発言をされたり、外務大臣を訪問した
アメリカのマンスフィールド上院
議員に対して、米中国交正常化の促進に水をかけるような
意見を述べた。こういう不用意な発言が日中交渉に気まずい雰囲気をつくっています。また、最も重要なことは、覇権条項を快く思っていないソ連側の
態度によって
日本側の交渉
態度がぐらぐらしている。こういうことも
不信感の原因となっております。
先日の本
会議やこの
委員会で
総理が述べられましたように、覇権を求めないということは、日中両国はもちろん、いかなる国にも当てはめるということである。これは日中共同声明第七項の覇権条項にもわざわざ、日中国交正常化というものは第三国に対するものではない、こういう前置きが示されて、覇権
反対の表明がなされているわけです。外交当局の話し合いは、私どもの知るところによりますと、ある程度話し合いが煮詰まっているのでありますから、この際外交当局の最高
責任者が虚心坦懐に話し合って、いままでのわだかまりをぬぐい去っていけば、一挙に交渉が妥結するはずであります。そのためには、小坂外務大臣が国連で喬冠華外相とお会いになるようでございますけれども、そうした合間を利用して中国側と話し合いをすることも結構ですけれども、早い機会に外相を北京に派遣する、このことが必要ではないかと思うのです。過去の日中交渉の例にありましたように、中国側との交渉は、変な小手先なことを弄しないで誠心誠意ぶつかっていけばおのずから活路が開けてまいります。
総理の小坂外相訪中に対する
考え方をお聞きしたいのであります。
それからもう
一つは、これは要望になりますけれども、日中交渉のむずかしさは、ここにおいでの大平
大蔵大臣もすでに経験されたように、
自民党、与党内部の問題でもあるわけです。日中問題というのはよく日日問題とも言われておりますゆえんであります。せっかく交渉がまとまりましても、肝心の与党の内部で合意が得られなければ何にもならないのです。国連における小坂外務大臣の演説の中で覇権
反対の意味を間接的に述べただけで、すでに与党の一部で強い反発が出ていることは、党内の取りまとめが大変なことをあらわしております。
三木総理大臣におかれましては、先日来の党内の
紛争に見られたようなあの異常な粘りと強固な
決意をこのような問題にこそ発揮されることを私は特に望むのでございます。(拍手)
最後に、ソ連に対する借款、経済問題に関連して
政府の
姿勢についてお尋ねをいたしますとともに、問題点を明らかにして、これに対する
資料を
政府に要求いたします。
最近の日ソ貿易は、過去五年間で約三倍に拡大され、順調に進んでおります。相手国の
政治体制がどうあろうとも、経済交流を活発に進めていきますことは、世界平和のために大変結構なことであります。しかし、ここで注意しなければならないことは、最近ソ連が異常とも思われるくらいに自由主義諸国から借款をどんどんふやしているということです。また、海外の情報によりますと、ソ連を初め東独、ルーマニアなどいわゆるソ連圏諸国が自由諸国から借りた金は、昨年一年だけで一挙に百億ドルもふえている。そして、昨年末の残高は三百二十億ドルにも達しておる。ことしじゅうには恐らく四百億ドルぐらいに迫るのではないかと思うのです。
日本の金融機関ももちろん大きな役割りを果たしておりまして、
日本輸出入銀行はこの春、鋼管、アンモニア、プラント類の輸出に絡んで四億六千万ドルのいわゆる銀行間の借款、バンクローンを与えております。ここ数年来輸銀がソ連に与えた融資額は、都市銀行の協調融資を含めまして実に二十億ドル、六千億円にも達しているわけです。この中には、いわゆる資金だけを供給するバンクローンもかなり含まれておる。このほか、都市銀行や大手商社なども海外にある会社などを通じまして直接間接にいろいろな形でソ連に貸し付けをしており、
日本全体では巨額な数に達しております。恐らく、
日本が世界の中で最高の貸し主になっているのではないかと私は思うのです。
ソ連がこうした外国からの借款を急激にふやしているのは、まあいろいろな事情があるでしょう。農業不振に伴う食糧の輸入の増加だとか、世界不況の影響をまともに受けたシベリア開発など、そういう理由がございますでしょう。
日本が余裕のある金があってこれをソ連に融資することによって貿易が盛んになること、それ自体は決して悪いことじゃありません。しかし問題は、ソ連が外国から大量借款をしながら軍備におびただしい力を注いだり、資金窮乏の状態にありながら、ソ連圏諸国を初めアフリカや東南アジアの諸国に対してまでも海外援助に精力的に取り組んでいる、国際
政治の舞台で発言力を高めようとしていることであります。このことは、NATOやOECD
理事会、さらに
総理が
出席をされましたサンファン
会議でも、ソ連圏への行き過ぎた融資を総点検すべきじゃないか、こういう
意見が出されたはずでございます。
日本の財界の首脳は、この夏ソ連
政府の招きでモスクワを訪ね、シベリア開発をめぐる新しい資金
協力を要請され、いま
検討中だと言われております。また
政府も、この問題については積極的な
姿勢を示しているようでございます。
そこで、これについて次のような重大な問題があることを私は提起いたします。そして
政府の注意を喚起したいと思うのです。
第一番は、ソ連の返済能力の点であります。ソ連のような大きな国が、まさか借りた金を返さないという事態が起こることは
考えられませんが、ソ連の対外債務は、一説によりますと百五十億ドルに達しておるようです。ソ連の最近の外貨不足や、金の保有高が百億ドル前後しかないことを
考えますと、かなり冒険を冒して輸銀が資金供与をソ連に与えているということであります。それから、この輸出入銀行のように
国民の税金を投入されているこの資金から、延べ払い資金の枠の三割近くもソ連に貸し付けているようなそうした偏った資金供与をしているのは、普通の民間の金融機関ではとても
考えられないことなんです。
第二に、輸銀の銀行融資、銀行間の融資、バンクローンというものが相当部分占めているということです。
日本からの資金供与がソ連の軍備増加やあるいはソ連を通じて第三国の援助資金に流入をしていないという保証が一体ありますでしょうか。