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1976-10-01 第78回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月一日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 白浜 仁吉君    理事 井原 岸高君 理事 小山 長規君    理事 塩谷 一夫君 理事 澁谷 直藏君    理事 正示啓次郎君 理事 小林  進君    理事 楢崎弥之助君 理事 寺前  巖君    理事 山田 太郎君       伊東 正義君    江崎 真澄君       小澤 太郎君    大野 市郎君       奥野 誠亮君    金子 一平君       北澤 直吉君    倉成  正君       笹山茂太郎君    田中 龍夫君       田中 正巳君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    野田 卯一君       藤井 勝志君    保利  茂君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       阿部 助哉君    石野 久男君       岡田 春夫君    斉藤 正男君       田中 武夫君    多賀谷真稔君       安井 吉典君    湯山  勇君       中島 武敏君    正森 成二君       松本 善明君    坂口  力君       正木 良明君    矢野 絢也君       小平  忠君    塚本 三郎君       田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣         外務大臣臨時代         理       三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 早川  崇君         農 林 大 臣 大石 武一君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 石田 博英君         郵 政 大 臣 福田 篤泰君         労 働 大 臣 浦野 幸男君         建 設 大 臣 中馬 辰猪君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       天野 公義君         国 務 大 臣         (内閣官房長官井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      西村 尚治君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      荒舩清十郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田 正男君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 丸茂 重貞君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 天野 光晴君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         公正取引委員会         事務局経済部長 吉野 秀雄君         公正取引委員会         事務局取引部長 後藤 英輔君         警察庁刑事局長 土金 賢三君         警察庁警備局長 三井  脩君         防衛庁参事官  水間  明君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛施設庁長官 斎藤 一郎君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  勇君         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君         国土庁長官官房         長       河野 正三君         法務大臣官房長 藤島  昭君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省経済局長 本野 盛幸君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 中島敏次郎君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         大蔵省国際金融         局長事務代理  北田 栄作君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         文部省社会教育         局長      吉里 邦夫君         農林大臣官房長 森  整治君         農林省農林経済         局長      吉岡  裕君         農林省構造改善         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      澤邊  守君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         食糧庁長官  大河原太一郎君         林野庁長官   松形 祐堯君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省貿易         局長      森山 信吾君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省立地         公害局長    斎藤  顕君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         資源エネルギー         庁石炭部長   島田 春樹君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君         中小企業庁長官 岸田 文武君         労働省労政局長 青木勇之助君         労働省労働基準         局長      藤繩 正勝君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省河川局長 栂野 康行君         自治省財政局長 首藤  堯君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     —————————————委員の異動 十月一日  辞任         補欠選任   堀  昌雄君     斉藤 正男君   不破 哲三君     松本 善明君   矢野 絢也君     坂口  力君   河村  勝君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   斉藤 正男君     堀  昌雄君   松本 善明君     不破 哲三君   坂口  力君     矢野 絢也君   塚本 三郎君     河村  勝君     ————————————— 本日の会議に付した案件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 白浜仁吉

    白浜委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について、昨日に引き続き質疑を行います。正木良明君。
  3. 正木良明

    正木委員 私は、公明党を代表して、当委員会における質疑を行います。  冒頭に、法務省刑事局長にお尋ねをいたします。  昨日の当予算委員会における共産党の正森議員質疑の中で、わが党の竹入委員長の名誉にかかわる問題が出ましたので、お伺いをいたします。  選挙違反容疑告発を受けたのは大橋氏であって竹入委員長ではないこと、さらに京都地検で不起訴になり、さらに検察審査会審査の結果、再度京都地検で不起訴になったのも大橋氏であって竹入委員長でないこと、したがって竹入委員長はこの告発の当事者でもないし、何ら非難を受ける事実はなかったと承知してよろしいか、お答えをいただきたいと思います。
  4. 稻葉修

    稻葉国務大臣 そのとおりです。お説のとおり、貴見のとおりです。
  5. 正木良明

    正木委員 それでは、ロッキード問題について総理にお伺いをいたします。  本日の朝刊の報道によりますと、ロッキード疑獄のうち、丸紅ルート全日空ルート捜査を終結するということが報道されております。しかし、本事件の核心と言われる児玉ルートの問題がまだ未解明のままで、きわめて難航をいたしておるわけであります。同時にまた、ロッキード事件丸紅全日空ルート捜査を終結したといいましても、いわゆる灰色高官名公表という問題については、まだ問題が残されております。  そういう立場総理にお伺いいたしますが、たとえばこの解明を迅速かつ正確に進めていくためにはどうしても新しい証人喚問が必要であるというのは、一致した意見であると私は思うのです。ところが、ロッキード問題調査特別委員会証人喚問の問題が議論されておりますが、自民党委員皆さん方反対で、この問題がなかなか実現に至っていないということは非常に遺憾であります。このことは、昨日の予算委員会でもそれぞれ各党議員からの質問がございました。  そこで、問題の障害というのはロッキード委員会におけるところの自民党側態度にあると言って差し支えないと私は思うわけでございますが、同時にまた、総理は、法のもとにはあらゆる人が平等であって、どんな立場の人でも証人として呼ぶということについては反対ではない、しかしこれは国会の問題であるから委員会決定をしてもらいたいという御意見であり、したがいまして、ここで問題になるのは、総理個人としては証人喚問には賛成であるけれども、ロッキード委員会決定がなければどうしようもないのだという、政府側総括者としての総理と、同時にまた、絶対多数党の総裁としての立場をきわめて巧妙に使い分けられているような気がして仕方がありません。  したがいまして、私は、総理がやはりこの際、自民党総裁という立場から十二分の指導性を発揮されて、そうしてロッキード委員会におけるところの証人喚問について自民党委員の諸君も賛成するように働きかけられたらどうですか、これが当然のことであると思いますが、いかがですか。
  6. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 御指摘のように、これは原則としては、例外がないのですから、だれでも証人喚問できるわけです。しかし、御指摘のように、私が自民党総裁である、議院内閣制というものもございますから、したがって、私は幹事長に対して、やはり国民疑惑を受けることのないように、国民の要望に沿うて証人喚問という問題についても厳正に検討するように委員に伝えてもらいたいということを幹事長に特に注意をしたわけでございまして、私としてもそういう考え方でおりますから、そういう考え方をできるだけ委員に伝えまして、そうして国会の場において国民から見ても納得のいくような決定を下すようにしてもらいたいと思います。私もできるだけのことはやります。
  7. 正木良明

    正木委員 ここで総理にさらに確認をしておきたいのですが、もともとこのロッキード問題の発端というのは、アメリカにおいて現実の問題としてあらわれてまいりました。その後、やはりわが国といたしましても、わが国民主主義を守るためにも、徹底するためにも、この事件徹底解明が必要である。そのために、ことしの二月二十三日に衆参両院において国会決議が行われたわけです。しかも、この国会決議は全党一致で行われたわけです。全党一致であるということは、与党である自民党全面賛成であったということであります。しかも、この国会決議の中には、衆議院におきましては、また参議院におきましても、「徹底的かつ迅速に」という言葉が入っておりますし、同時にまた、資料国会に未公開資料を提供してもらいたいということもこの内容に入っているわけですね。  しかも、この国会決議を受けて三木総理大臣はきわめて良識ある態度に出られまして、いわゆるアメリカフォード大統領あて三木親書というものもお出しになりました。この中でやはり総理は、「この事件がうやむやに葬られることは、かえって日本民主政治の致命傷になりかねないとの深い憂いがいまの日本に広まりつつある。私もその憂いをともにする。」とおっしゃっています。「私は、関係者の氏名があれば、それを含めてすべての関係資料を明らかにすることの方が、日本政治のためにも、ひいては長い将来にわたる日米関係のためにもよいと考える。」とさえおっしゃっているわけです。これは非常にりっぱな態度であると私は思います。  この国会決議という異例のロッキード解明に対する両院の総意というもの、そうして政府としての三木総理大臣決意というもの、これを受けて実はあの五党首会談協定というものが生まれてきているわけですね。この中では、いわゆる刑事訴訟法の立法の精神を尊重するという言葉が入っておりますが、事実あのときに、御承知のとおり、これは四十七条ただし書きを指すものであるということはもうきわめて明瞭なことであると私は思います。したがいまして、ここで問題になることは、要するに、私は幹事長に言って自民党が積極的にこれに協力するように指令をしてありますとあなたはおっしゃるけれども、しかし、少なくとも最初の出発は国会決議であり、三木親書であり、五党首会談におけるところのこのロッキード解明に対する協定という一連の、しかもその間における三木総理大臣決意というものを考えてまいりますと、少なくとも三木総理大臣は、あの五党首会談には自民党総裁という自民党を代表する立場であの協定に参加をされているわけですから、これはやはり幹事長にどうのこうのということだけではなくて、あなたは総裁として他の四つの党の党首に対する信義からいっても、このロッキード委員会におけるところの証人喚問や、またそれに続くべき灰色高官公表という問題については積極的な指導力を発揮しなければ、これは五党首会談三木総理大臣自民党党首として出席した、そうしてこの協定にあなたは合意をしたということの裏づけができないことになると思いますが、いかがですか。
  8. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 最初国会決議の点ですね、この決議を受けて、正木君御指摘のような親書を私も書いたわけですね。アメリカから、ああいうふうにアメリカの持っておるすべての未公開資料を提供してもらいたいというのが国会決議でしたね。両院決議もあり、私の親書も、提供する決意を促した一つの原因になっていると私は思いますね。  なぜかと言えば、くどくど申し上げるまでもなく、地方裁判所の決定で第三者に提供してはならぬという判断が下されているのを、法的手続をとって、それを解除して日本に渡してくれたわけですね。しかし、それにはやはり一つの制限がついておるわけですね、捜査用だけに使ってくれと。そこで私は、正木君のような立場でどういうようにお考えになるか、それは一般公開できないのだから、それを断るということもできたでしょうし、かなり有力な資料であることは間違いないですから、やはり実務者協定で、これはそういう捜査用だけですよ、一般公開はしないでほしいという条件のもとでもそれをもらうことが、捜査の上において非常に有益であるという判断から選択をしたのですよ、その場合に。その選択は誤ってなかったと私は思う。現にアメリカ資料というものは、やはり捜査に有力な手がかりであることは間違いないですからね。事件アメリカで起こった。それから国会のそういう経緯をたどって資料が来て、相当な参考になったことは事実ですね。  それからまた、議長裁定の場合に公明党の竹入君も御出席になりまして、各党党首が寄ったわけです。あの第四項というものは、私はこのように解釈しておるのですね。道義的、政治的責任の有無を審議する場は国会とする、国会として、これに対して政府刑事訴訟法精神を踏まえて最善協力をするという約束を、私は総理として、総裁としてしたわけですね。これに対して誠実に私がそれを履行する責任を持っておるわけですが、刑事上の責任追及は、正木君お考えになっても、やることはやっていますわね。今度は残ってくる問題は政治的、道義的責任の問題ですね。これはやはり議長裁定の言われるように、国会の場というものが一番、議員全体の規律に関係する問題でもありますから、国会の場が一番これを審議するにふさわしいと思いますね。  だから、そこで政府が、灰色高官と言われるのは道義的責任政治的責任がある、こういう立場からそういう範囲を決められるでしょうから、行政府立場灰色高官範囲はこうでございますと言うことは、私は必ずしも適当でない。そこで国会の方でこういう範囲というものをお決め願うならば、いま事件捜査中ですから、全体済んでないのですから、全部終わったときには私は非常に事情は違うと思いますよ、しかし、まだ捜査しておって、丸紅あるいはまた全日空ルートだって児玉ルートと関連なしとは言えないですわね。捜査中であるにかかわらず、国会がお決めになった灰色高官範囲については個人名も含めて資料を提供いたしまして、国会の御審議に対して協力をいたしましょう、そのほかにおいても政府として協力のできることがあればできるだけ協力をいたします、こういうことを言っておるわけですからね。そのことは議長裁定に対して私も誠実に守っていこうという態度であるということは、正木君もお認めを願えると思うのでございます。  私は、きのうも御質問があって、そんなに国会に何もかも任してしまう。そうじゃないのですよ、できるだけほかにも協力するのですよ。一番の大きな協力は、刑事責任を追及する途上でいろいろな内容がわかっておるわけですから、そういうことで資料を提供するということが最善協力の中の大きな協力であろう。ほかにも協力いたしますよ。しかし、そういうことでお出しをしようということでございます。
  9. 正木良明

    正木委員 要するに、細かい詰めばまたロッキード特別委員会でやらなければなりません。私もこの問題に短い時間の中でたくさん時間がとれないのを非常に残念に思いますが、私がお聞きしたいのは、三木総理大臣がいわばりっぱな決意を持ってこの処理に当たられた、またいまも当たろうという決意を述べられておりますけれども、しかし世間人たちは、三木総理大臣自民党総裁じゃないか、総裁として自民党委員ロッキード委員会反対しているあの反動を抑えられないのか、このことが非常に大きな問題として、灰色公表の問題にしろ、また証人喚問の問題にしろ残っているわけです。  確かに三木総理大臣の最近の姿勢は、あなたは後退したことはないとおっしゃいますけれども、後退したと国民の目には映っております。したがいまして、自民党内のいろいろな紛争がございました。紛争と言っていけなければいろいろな百家争鳴の議論が闘わされましたけれども、しかし、常に客観的な見方をして、三木さんには国民支持があったと新聞判断をいたしております。その新聞の、要するに国民支持があなたにあったということは何かと言えば、二木さんならばロッキード問題を国民期待にこたえて徹底的にやってくれるだろうということじゃありませんか。  これが結果的にロッキード委員会であなたの指導力の欠如によって問題がうやむやになってしまうような形でしか国民の印象として映らないならば、これは昔から山高ければ谷深しのたとえどおり、あなたに対する期待が大きかっただけに、それを裏切られた国民のあなたに対する不信感は想像もできないぐらい深刻なものになるでしょう。それをあなたは総理として、自民党総裁として熟考しなければなりません。そうして決断しなければなりません。私は細かいことを申しませんから、このあなたの決意を聞きたいのです。あなたは総裁として、少なくとも他党の党首と約束したこと、またそうでなくても世間人たち自民党総裁として見ているあなたに、この問題についてあなたの決意どおりの結果が出るような指導力が発揮されなければならぬと私は思いますが、長い答弁は要りません、その決意だけを言ってください。
  10. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、今日までやることはやってきたと思いますよ。今後もいろいろな実績を通じて御批判を願いたいので、私の決意は少しも変わらないのですよ。ただ、正木君が言われたように、自民党総裁としていろいろ協力する面があるではないかということは、お説のとおりですね、議院内閣制ですから。ただ、自民党もこの真相解明しようということは党の一致した意見ですからね。必ずしもすべての意見野党と一致しない場合もあるかもしれませんよ。しかし、後ろにあるものは国民ですから、国民疑惑を持たれるようなことがあることは、やはり公党としてよろしくない。そういう点で、私も一方において総理であると同時に、自民党総裁として、党に対しても、これは非常に大事な局面にきておるわけですから、私もできるだけの努力をいたしまして、いやしくも国民自民党公党として疑惑を受けるようなことのないように努力をいたします。  しかし、それは委員会の方においても、野党の言うことのとおりに全部しなければ承知できないのだというのではなくして、議会政治でありますから、与野党の間でよく十分に検討をされまして、そして国民の納得するような線で一日も早くいわゆる灰色高官範囲についてもお決め願えれば、これに対して出す用意があるのですから、どうかそういう点で委員会の方もひとつ御協力を願いたいと思うわけでございます。
  11. 正木良明

    正木委員 あなたの得意中の得意ですから、答弁を長くおやりになりたい気持ちはわかりますが、余り時間がありませんので、三木さん、一言だけ申し上げます。  私は、矛盾点を言っているのです。あなたは、どんな人たちだって差別なく、例外なく、疑惑のある人は証人として出るのがあたりまえだとおっしゃっているでしょう。それがロッキード委員会証人としてこういう人を呼ぶべきであるということが提起されているのに、自民党皆さん方反対しているわけでしょう。これには自民党委員皆さん方とあなたの間に大きな考え方のギャップがあるということです。それを埋めるためにあなたの指導力を発揮しなさいということを申し上げているのであって、皆一生懸命真相究明のためにがんばっているのだ——私は、がんばっていないとは言いませんけれども、しかし少なくともあなたが思っていらっしゃることは、自民党の意思としてそれを徹底することが必要だと私は申し上げているのです。一言でいいです、どうですか。
  12. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それはやはり自民党自体としても、委員会の場で、自民党意見もあるでしょうから、よく検討をすることは当然でございますが、要は自民党姿勢国民疑惑を持たれることのないように、そういう態度をとるようなことに対して私も今後一層の努力をいたします。
  13. 正木良明

    正木委員 それじゃ次の問題に移ります。これは主として大蔵大臣、ときに副総理にお願いしたいと思います。  一つは、税制の問題でありますが、その第一に所得税減税の問題についてお尋ねをしたいのです。  われわれの年来の主張にもかかわらず、減税問題については、所得税減税はやらないということでずっと一貫してこられました。本会議答弁におきましても減税はやらぬということをおっしゃっておりますし、この委員会でもそうおっしゃいました。  しかし、私は、全国の勤労者、要するに個人所得者、しかも非常に低い収入の皆さん方意見として申し上げるのですが、減税をやらなかったために、ことしの七六年春闘によって賃上げが行われましたが、実質賃金は確保されていない、このことは御認識ですか。要するに、ベースアップは行われたけれども、所得税の累進税率並びに健康保険料、厚生年金の掛金等々によって事実上減収になっておる、実質賃金は確保されていないということは、御存じですか。
  14. 大平正芳

    ○大平国務大臣 税率が据え置かれたわけでございます。それにもかかわらず所得が名目上ふえたわけでございますから、したがいまして、計算上仰せのような結果になろうかと思います。
  15. 正木良明

    正木委員 こういうことは見過ごしていいものではないと思いますよ。要するに月給袋は、ここにいらっしゃる新聞記者の皆さん方も恐らくそうでしょう、軽くなっています。  たとえて具体的に申しましょう。大体ことしの春の春闘によって平均八・八%のベースアップと言われております。しかし、これは平均でありまして、それより低い五%の中小企業の従業員もあったでしょう。さらにはまた一〇%以上になったところもあるでしょう。そこで、国税庁の調査をもとにして話したいと思いますので、これを五%と一〇%ということでお話しします。  年収二百万円の人は、仮に五%のベースアップがあったといたしますと、ことしは二百十万円の年収になります。これはわかりますね。二百万円の五%の十万円を足して二百十万円になります。しかし所得税は、五十年が六千九百円であったのが一万三千五百円と六千六百円ふえるのです。所得税がふえます。住民税も一万四千五百七十円から一万九千円と四千四百三十円ふえるのです。その計が一万一千三十円の増になります。これは年間の単純計算ですが、厚生年金の掛金は五万七千四百五十六円から七万三千百六十四円と一万五千七百八円ふえるのです。同じく健康保険の掛金も五万七千四百五十六円から六万二千七百十二円と五千二百五十六円ふえるのです。この税金と健康保険料、厚生年金の掛金を合計いたしますと三万一千九百九十四円の負担増です。五%上がったけれども、五%のベースアップ分は、九%になんなんとする、また九%を超えると言われる消費者物価の上昇ではなから飛んでしまって、まだ四%は食い込みです。  さらに所得税と地方税と健康保険料と厚生年金の額で実に三万一千九百九十四円の負担増になる。二百万円の人が九%の消費者物価の値上がりというふうに単純に計算いたしますと、十八万円の落ち込みです。十八万円余分にかかるということですから、これを合計いたしますと二十一万一千九百九十四円ことしの負担増です。五%のべースアップによってふえた十万円をこの二十一万一千九百九十四円から引くと、実に十一万円の生活の切り詰めを強要されるのです。やむを得ずこういうふうになってしまうのです。望んだことではないのです。  幸い景気のよかった会社で一〇%ベースアップがあったとしましょう。一〇%のベースアップがあった人というのは、五十年度二百万円の一〇%ですから、二百二十万円の年収になるのです。この人たちも所得税と住民税の負担増が一万七千三百三十円、健康保険とそれから厚生年金の負担増が二万九百六十四円、先ほど申し上げたように、二百万円として物価上昇分九%として十八万円、これで二十一万八千二百九十四円で、二十万円が帳消しになってしまう。  要するに、低収入であればあるほど、この問題が深刻に全国の勤労者の世帯の生計費を圧迫しているということです。要するに、本格的な減税はもちろんのこと、物価減税さえ行わなかった政府は、事実上いわゆる低収入勤労者の世帯に対して大変な生活難を強いておるということになると私は思いますが、どうですか。
  16. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま正木さんが数字をもって挙げられた計算、事例は正しいと思います。私もよくそれを承知いたしております。あなたの言われるのは、いわば五十一年度という単年度の場合を対象といたしまして議論すれば仰せのようになるわけでございますが、私ども国民の負担というものを考えた場合、沿革的に、たとえば四十九年、五十年とここ二カ年にわたりまして所得税におきまして二兆円の減税を実行いたしたことでございますので、こういう大規模な減税が先行いたしておるわけでございます。したがって、こういう大きな減税を先にいたして、それが五十年度に完成したばかりでございますので、ここしばらく減税を一服さしていただくということは、中央並びに地方の財政が御案内のように大変な赤字でございまして、予定された収入が入らぬわけでございまするので、ここで、仰せのように所得税の減税あるいは住民税の減税に踏み切ることは、それ自体結構なことではございまするけれども、こういう客観情勢でございまするので、このような困難な時期はしばらく減税を思いとどまっていただいても国民の理解が得られるのではないかと考えまして、ことしは減税を見送らせていただいたわけでございます。あなたが御指摘になりましたような事実を私どもが無視しているわけでは決してございませんで、十分認識の上いたしておることでございます。
  17. 正木良明

    正木委員 要するに、ことしは財源がないから所得減税はできぬというお話なんですね。ここで問題になるのは、財源がありませんから減税はできません、減税はすでに過年度においていたしてあります。これはしかし、国民が納得する説得力ある言葉とは思えませんね。と申しますのは、やはりいまでも厳然として不公正税制が残されたままであるということであります。国民の重税感というものは、もともとそこにあるのです。  私どもが党を挙げて所得税の実態調査をいたしましたときに、約七〇%を超える人たちが重税感があるというのです。その重税感を持っておる人たちに、あなたはなぜ税が重いとお思いになりますかと聞けば、金額の重いという人はパーセンテージではそんなに多くなくて、税制が不公平だから重いと感じるという人たちが圧倒的なんです。要するに、おれは税金負担しているけれども、もっと軽くうまいことをやっておる人たちがほかにもたくさんいるから、私たちはこの税を重いと思うと言うのです。ということは、みんなは税金を納めることを——それはできるだけ少ない方がいいでしょう。しかし、納めることをある意味におけるところの義務と考えておる。しかし、片方で税制が不公平なために、本当にうまいことをやっておる者がおるのに、おれがどうしてこんなに真っ当に税を負担しなければいかぬのかというのが重税感のほとんどです。したがって、国民の重税感を取り除くためには、まず第一歩として何が必要かといえば、不公正税制を改めるということから出発しなければなりません。そうして事実上の減税をしていかなければいかぬのです。私は、この議論はそんなに非常識な議論だとは思いませんよ。  ですから、なぜそれをおやりにならぬのですか。財源がないと言う前に、どうして不公正税制を是正しようとなさらないのですか。あなた方はおやりになったとおっしゃいますけれども、まだまだ不公正税制は残っていることは事実なんです。このことは、われわれはもちろんのこと、野党皆さん方があらゆる機会においてこの不公正税制の是正ということについて政府に要求しておりますから、その細目については御存じでしょう。  最近、地方自治体の中でもそういう提言が多くなされています。たとえば全国革新市長会の「地方自治確立のための地方行財政改革への提言」、東京都新財源構想研究会の「不公平税制と財政構造の改革」、いずれも我田引水の議論ではありません。きわめて客観的に、きわめて公平に、事実をありのままに述べております。  このうち、東京都の新財源構想研究会の調査したものを見ますと、租税特別措置や法人税本法の中の各種引当金、こういう企業優遇税制による軽減税額は、四十九年度で、国の税収になる法人税で一兆七千九百八億円、地方の税収を加えると二兆五千八百三十七億円にもなっておる、こう報告をいたしております。しかも、この軽減税額のうちの七六%というのは、資本金一億円以上の大企業です。さらに資本金百億円以上の巨大企業が四割を占めておるのです、この優遇、この減免額の。それに比べて資本金一億円以下の中小企業の軽減税額は、総額の四分の一以下です。法人企業総数の四分の三を占める資本金五百万円以下の小零細企業に至っては、その軽減税額は総額のたった五%です。これは明らかに大企業だけを優遇した税制と言わなければなりません。私は、大企業をぶっつぶしてしまえばいいと言っておるわけではありません。こういう不公平をなくしなさいということを言っておるのです。  四十九年度の利子配当所得に対する軽減税額は、所得税で四千二百五十一億円、法人住民税で二千四百八億円、合計六千六百五十九億円になっておる。これは大蔵省や自治省の試算額の二・六倍に当たると報告をいたしております。  これらのことについては、私どもは年来、またことしに入りましてからも、通常国会におけるところの予算委員会矢野書記長が、また私が予算委員会や大蔵委員会でも再三にわたってその是正を求めてきたものでございますが、こういう不公平税制をなくすということ、これについてどうですか、大蔵大臣
  18. 大平正芳

    ○大平国務大臣 税が公平でなければならぬということは、御指摘をまつまでもなく税制の根本を貫く原理でございまして、現在の中央、地方を通じ、直間を通ずる税制はそれを具体化いたしたものでございます。この現在の税制に対しまして、これが不公正である、ここが不公正であるという議論は、多くそういう批判があることは私はよく承知いたしておるわけでございます。さればこそ政府は、毎年税制を見直しまして、各方面の頭脳、各方面の見識を吸収いたしまして税制の見直しを行い、国会の御審議を経て税制の改革を実行しつつありますことは御案内のとおりでございますが、こういう努力を無限に重ねていかねばいかぬと考えております。しかし、いかように税制を改正いたしましても、すべての納税者が満足できるような税制は不可能であろうと私は思うのでございます。できるだけそれの近似値を追求して、懸命に努力してまいるのが政治の実践であろうと思うのでございまして、今後も努力をしてまいることは当然のわれわれの任務であろうと思っております。  それから第二に、しからば具体的に租税特別措置、そういう不公平税制の是正についてどうやっているかということでございますけれども、もう御承知のように、通常国会におきまして私ども平年度千百五十億に上る不公平税制の是正をやらしていただいたわけでございます。今日、その結果七千五百億円ばかりがまだ租税特別措置の名において減税措置がとられておるわけでございます。個人所得税において五千億、法人税におきまして、法人税はすでに形の上で二千三百億ほど残っておりますけれども、交際費課税が強化されておりますので帳消しになりまして、現在すでに差し引き、法人課税におきましての租税特別措置法上の恩典は私はなくなっておると思うのでございますが、いずれにせよ、現在差し引き五千億程度の租税特別措置法上の減税措置がまだ残っておりますことは御指摘のとおりでございます。これにつきましては毎年厳しく見直してまいりまして、こういうことが当初予定いたしました政策の実現を終えた後までも既得権の上に眠るというようなことがないように見直していくつもりでございます。そのことは今後も努めてまいるつもりでございます。  しかし、いまあなたの言われた中には、租税特別措置ではなくて、いわゆる引当金制度、そういうものと特別措置と御一緒に並行しての御議論があったと思うのでございます。引当金というものは会計制度上認められておるのでございまして、税法上はそのうちどの程度までを課税所得と見るかという問題でございまして、その見方によりましていろいろな見解の相違が出てくると思うのでございます。東京都の調査会等におきまして一つの提言がなされていることは私も承知いたしておりますが、その根拠につきましては必ずしも私は承服できないわけでございますが、いずれにいたしましても、公正な会計制度として確立しておる慣行につきましては、企業の維持の見地からも、また税源を涵養する見地からも、税制といたしましてはできるだけ尊重していく立場に立つことは政府の当然の立場ではないかと思うのでございまして、要するに御提言のございました不公正税制の是正、そしてもって税法の公正、公平を図るという道標を追求することにおきましては、あなたに劣らず私どもも懸命に努力してまいるつもりでございますことは御理解をちょうだいしたいと思います。
  19. 正木良明

    正木委員 租税特別措置と各種引当金のいわゆる課税対象を外すという問題、これは会計規則によってそういうふうになっていると言いますけれども、やはり損金算入額をどうするかということについては、それは大蔵省の責任ですよ。ですから、どの範囲で損金算入と認めるかどうかという問題もこの中にあるわけでございますから、これは決して大蔵省の全くの責任でないというふうには言えないと思います。たとえば銀行の貸倒準備金の問題にしたって、これはもう議論があったわけですから、その点は、本当にきょうは時間がないので困りますけれども、よく考えてください。  それで、こういうふうに実質的に賃金がカットされるというような、要するに、減税がないために実際自分のふところに入ってくる収入というのがどんどん低下するという形で、こういう勤労者の状態の中で、さらに来年度は所得税の増税をするというような考え方を税調に審議を求めておるという話がありますが、どうですか。
  20. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま、もう正木先生に申し上げるまでもないことでありますけれども、三兆七千億を超える赤字公債の発行をお願いいたしまして税財政の均衡を辛うじて維持しておるような状況でございまして、したがいまして、建設公債と合わせまして国債の依存率は三〇%に及んでおる現状でございます。こういう状態は是正されなければならぬことはあなたもよく御理解いただけるところであると思うのでございまして、しかし、これが一朝一夕にできる相談ではございませんので、政府といたしましては、この五十年前半の経済計画上の財政需要というようなものを一応充足しながら、五十年代前半に少なくとも赤字公債から脱却いたしまして、わが国の財政を中央、地方を通じましてバランスのとれた赤字公債から脱却できる状態にまで持っていきますためには、どういうことを税に期待すべきかということを試算いたしますと、仰せのように、中央におきまして四十八年−五十一年の税負担の平均に比較いたしまして二%、地方において一%の税負担の増加を国民にお願いしなければならぬという試算になるわけでございます。これは決して私どもは好んでやるわけではございませんで、私ども健全な地方公共団体を持たなければなりませんし、健全な中央政府の財政を持ちたいと念願するのは国民ひとしく願うところであろうと思うのでございまして、中央、地方の赤字をよそに国民の生活が優雅に過ごせるという日本日本国民の多くは必ずしも望んでいないのではないかと私は思うのでございます。苦しみは国民政府も一緒に分かとうじゃないかというお気持ちが国民の中にはあることと私は期待するわけでございまして、ここしばらくの間、財政が正常に復するまで何とか苦しみを分かっていただけますまいかというのが政府の念願するところでございまして、税制調査会にもそういう意味合いで所得課税、消費課税、資産課税、税制全般を通じまして御検討をいまお願いいたしておるところでございますが、そういったことで、検討が済みますれば国会の御審議を得なければならぬと思っておるわけでございます。減税をしたいのはやまやまでございますけれども、いま当面これができるような状況ではございません。よき地方団体、よき中央政府を持つ意味におきまして、いましばらくひとつがまんをしていただきたいというのが私どもの念願でございます。
  21. 正木良明

    正木委員 政府も苦しいから国民も苦しみをともにしてほしい、それは、ぼくはある意味でよくわかります。しかし、ちょっと言葉が足らぬのですよ。国民の気持ちは、足らざるを憂えず等しからざるを憂えているのです。いいですか、大蔵大臣。苦しみをともにすることについて、苦しまなければならないのなら一緒に苦しんでもいいと思っているでしょうけれども、低収入の勤労者だけが苦しんで、苦しんでいない者が存在するという等しくないということ、平等ではないということ、不公平であるということに問題があるわけでありますから、これをひとつよく考えて、この税の不公正是正に全力を挙げていただきたいと思うのです。ましてや所得税の増税なんというのはもう頭から考えるべきじゃありません。  労働大臣には質問の通告をいたしておりませんが、一言だけ聞きます。私は、本来賃金というもの、またベースアップというものには、実質賃金を保障するということとある意味での生活向上分というのがプラスされていなければいかぬと思います。生活向上分なんというのはもうてんから飛んでしまって、さらに実質賃金さえ切り下げられるような結果になってくるというようなことであって、本当に勤労者の生活というのは守れますか。労働大臣どう思いますか、あなたは労働者の味方だと思いますから聞きますが。当然のことを常識的に言ってください。
  22. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 労働者の所得を向上させるということはわれわれの大きな仕事でございます。それがために少しでも職場を広げ、あるいは待遇をよくしていきたいということに努力をいたしておりますが、税の問題とこれとは、私の方では別に、低所得者の税をうんと上げるということならばいけませんけれども、高所得者の問題が出てきますので、そこらのところはこれは税務当局でいろいろ検討されることと思います。われわれはあくまで勤労者の所得の向上あるいは職場の拡大、こういったことに努力をいたしていきたいと思っております。
  23. 正木良明

    正木委員 わかりました。  そこでさらに、恒常的なインフレ、不況というものについて、その時期にかかわらずきわめて恒常的に安定した税収入を得るためにというので、消費税——今回の総理の演説では消費税という言い方をなさいましたね。消費税というのは、中身は付加価値税だとか売上高税なんというものを私たちはすぐ連想いたしますが、そういうことを言うと非常に刺激が強過ぎるので、消費税ということをおっしゃったのだと思いますけれどもね。そのほかには物品税もありますけれども。はっきり消費税と申しませんで、付加価値税だとか売上高税というようなものについて、これは結果的には最終消費者にかかってくる税でありますから、きわめて逆進性の高い税金であると思うし、これは全国の法人会も中小企業団体も消費者も反対をいたしておる。もちろん野党反対しておる税制でございますが、これはやはり導入しようというお考えはちょっぴりでもありますか。
  24. 大平正芳

    ○大平国務大臣 税は、御承知のように所得課税系統のもの、それから資産に課税する資産税系統のもの、それから消費課税系統のものと三つに大きく分けられると思うのでございます。いまあなたの言われる付加価値税というのは、恐らく消費課税の中の、ECで現に採用いたしておりまする一般的な消費税の一つの具体例を言われるものと思うのでございます。それで政府としては、いま税制調査会に検討をお願いいたしておりますのは、所得課税、資産課税、消費課税全体につきまして、これは国民の負担に甚大な関係がございますから、これ全体につきまして真剣な御検討をお願いするということでございまして、特定の税目を限って検討をお願いしておるわけではないわけでございます。したがって、いま言うところの一般消費税——総理一般消費税と言われたのは、付加価値税というのはEC型の一般消費税のことだと思いますので、政府一般消費税と言った方がいいのじゃないかと考えておりますけれども、そういうものを特に特定して御審議を願っておるというわけのものではございません。
  25. 正木良明

    正木委員 ではあるけれども、ここで私の態度をはっきり申し上げておきます。少なくとも公明党は、この付加価値税、売上高税というようないわゆる一般消費税の導入、これは最終消費者にきわめて重大な影響を及ぼすものでありますから反対である。したがって、この点よく考えておいてくださいよ。実際採用したら承知しませんよ。  そこで、次の問題に移ります。きょうは本当に時間がなくて問題が多くてあれですが、外国為替市場における円高傾向というのはずっと続いているわけですね。むしろ強まりつつあると言ってもいいでしょう。こういう中にあって、もちろん円が高くなるということは、いま二百八十七円ぐらいになっているのですか、輸出にも影響がありますけれども、しかし、メリットとしては輸入にあらわれてきますね。その為替差益というものが実際問題として消費者に還元されるということがない。これがいま一番大問題になっている問題でございますが、大体一月には三百五円であったのが五月は二百九十九円、八月は二百九十円、九月は二百八十五円から七円、こういうふうに推移している。これは輸入品に関しては、また基礎資材としての輸入物資、それから生まれてくるところの価格については、当然消費者に還元させることが必要だと私は思うのです。  そういう意味で、この円高傾向がはっきりしてから電力料金の値上げなどが行われておるわけでありますが、為替レートを三百円で査定して値上げを認めておりますね。現在、円高が三百円に対して二百九十円と見ても約三・三%円が切り上がっているわけです。逆に言うと、輸入する石油は安くなっているわけでありますが、八月に値上げを認可した後半、値上げの電力査定にはこれらを考慮に入れましたか、通産大臣。
  26. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 電力料金の値上げ、ガス料金の値上げに当たりまして、為替を大体二百九十六円ないし三百円で計算をしております。値上げの時期いかんによりまして若干の相違はございます。しかるところ、為替の動きは先ほど仰せのとおりでございまして、大分高くなっておりますから、その点経営に相当余裕が出てきておるはずでございます。ただしかし、為替の動きは、いまはここ二、三カ月大分高いのですが、円高傾向でございますけれども、私は変動相場制のもとにおきましては、ある時期にはやはり高くなったりある時期には安くなったりいろいろだと思うのですね。ことしの春までは相当安かった、円安の傾向が続いたわけでございますので、もう少し動きを見ないと何とも言えないと思うのですが、原則的に申しますと、円高傾向になれば当然輸入の物資は安くならなければならぬ、こう思います。
  27. 正木良明

    正木委員 ですから、確かに変動相場制で円高になるか、円安になるか、国際情勢というのはきわめて微妙でありますから、そのお気持ちもわかりますけれども、しかし、少なくとも円安になったときには、物資が上がったからというので企業はすぐ値上げの動きをするのです。しかし、円高になったから、輸入価格が安くなったからというので、それはもう口をぬぐったままで、そのもうけはふところへ入れてしまうという傾向が非常に続いているということは事実なんですね。だからこの点については、やはり具体的な計算の問題もありましょうし、その点についての監視機構というものも必要でしょうし、これはやはり通産省としては重大な関心を持たなければならぬだろうと私は思うのです。この点はひとつ通産大臣、お願いしますよ。さらにお尋ねがありますから、そのときに一緒に答えてください。  石油業界は、円高によって莫大な差益が見込めるにもかかわらず、石油製品の平均三・三%ないし四%の値上げを強行しましたね。特にこれから冬にかけて灯油の問題があります。灯油は、原油が上がっていない、黒字の中で値上げが行われているのですが、灯油の値下げ指導をする気持ちはありませんか。  ちょっと参考のために申しますと、灯油価格は十八リットルで、去年の十二月は七百三十九円、ことしの五月が七百四十六円、ことしの八月が七百七十四円。そうして石油業界は、円が安くなったとき、安くなるということは金額が上がるということですが、一円の円安で月間十七億円の損失をしたのだ、こう言っているのです。円が一円安くなる、そのことによって十七億円損失をする。そうすると、円が高くなったら一円で十七億円逆にプラスになるはずじゃありませんか。
  28. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 仰せのように、石油業界の場合は為替レートが非常に大きく影響いたします。いま一円の動きによりまして十七億の相違が出ると言われましたが、これは一ヵ月のことでございますから、一年に直しますと約二百億になるわけでございます。十円違えば二千億、こういうことでございます。昨年の十二月に標準価格制を設定しましたときには三百二円、こういうことを基準にして計算をいたしました。それから比べますと約十四、五円、円高になっておりますから、相当な余裕が出てきておるはずでございます。そういうこともございますので、特に国民生活に非常に深い影響のある灯油の価格、冬場を迎えまして値段の点については十分配慮をしてまいりたいと考えております。
  29. 正木良明

    正木委員 これはテレビで中継されておりますし、全国民が聞いていることでもありますし、特に東北、北海道ではもうそろそろ——もうすでに灯油をたいているでしょう。どうしても生活必需品です。どうですか、ここでもう一歩踏み込んで値下げ指導をするのだということを通産大臣から言っていただけませんか。
  30. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いずれにいたしましても、石油業界は最近の円高傾向によりまして、また先般の標準価格制の設定によりまして相当な余裕が出ておるはずでございますが、しかし、何分にも過去二、三年の間に相当な赤字経営になっております。この三月期の決算は合計で約千二百億ほどの赤字でございますが、しかし、それ以外に蓄積を非常に使い果たしておりまして、これが数千億になっていると思うのです。でありまするから、経営は一概にそれでよくなったとは言えませんので、複雑な要素がたくさんあるものですから一概には言えませんが、しかし、最近の傾向から推しまして相当の余力が出ておりますから、値段の点については十分配慮いたしまして値上がりしないように、できれば下げられるように指導してまいりたいと思います。
  31. 正木良明

    正木委員 非常に前向きの答弁で、ぜひお願いいたします。  それで、もう一つまた通産大臣に苦いことを言わなければいかぬのですが、卸売物価が非常に速いテンポで上昇してきた。これの前提条件は、詳しく申し上げるとよくわかっていただけるのですが時間が本当にございませんので……。ところが総理大臣は演説の中で、卸売物価は速いテンポで上昇しているけれどもやがては鎮静化するだろうという非常に楽観的な見通しをお立てになった。しかし、そういうものでしょうか。鎮静化の根拠というのをひとつ副総理、お願いします。
  32. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ことしの経済全体を見ておりますと、大体見通しの線を動いているのです。特に物価の面でありますが、その中で消費者物価については、まずまず目標八%、そこへいきそうだが、どうも卸売物価につきましては年度初め以降の上昇テンポ、それ前から始まっておりますが、これはちょっと見通しの線をやや上回る、いま前年比で六%台の上昇をしておる、こういう状態です。見通しでは四・八%というわけだったのです。  このままいきますと見通しよりはかなり上昇だ、こういうことになりますが、いままでの上昇を見てみますと、一つは、海外からの輸入圧力、輸入価格です。それからもう一つは景気上昇ですね、その過程の過渡的な現象という側面があります。それから、まあそれとも関連いたしますけれども、企業における値段のつけかえ、それから公共料金の改定、そういうものが上半期に集中して起こってきた、こういう状況かと思うのです。  しかし、これからのことを考えてみますと、ただいま御指摘の円高傾向、これはどういうふうになるかわかりませんけれども、しかしこれが定着するということになりますると、これはかなり物価水準に響いてくる、こういうふうに思うのです。それから、景気上昇の過渡的な摩擦現象、これも大体逐次解消されていく。それから、景気回復に伴うところの製品の値段のつけかえ、これにりきましては……(正木委員「つけかえというのは値上げということでしょう」と呼ぶ)そうです。それは私どもも注意深くそういうことはないような指導をしてまいりたい。  そういうことを考えますと、これからの卸売物価は逐次正常な形に戻っていく。現に最近におきましては非常になだらかになってきておる、こういうようなことでございますので、これは総理がそういうことを踏まえて、今後の卸売物価は鎮静化するという見通しであるということを申し上げた、そういう次第でございます。
  33. 正木良明

    正木委員 まあ大体大口の値上げが一巡したとか、素材値上げによる関連企業の波及は需給ギャップがあるのでとか、海外要因の問題とか、こういうふうにおっしゃいましたけれども、実は経済企画庁はこう言っているんです。副総理の役所経済企画庁は、五十年十二月から五十一年三月の卸売物価の上昇のうち、通産省による減産指導や不況カルテル対象品目は三〇%も上昇している、こういうふうに分析しているのです。要するに通産省が減産指導をしたり、そのことによって企業が減産をする、需給を操作する。しかし、こういう形で減産をして値上げできるという企業はきわめて限られるのです。鉄鋼、アルミ、合成樹脂、石油産業、要するにいわゆる寡占的大企業といわれるものであります。このしわ寄せが結局、中小企業や消費者のところへいくのです。  日本経済新聞に商品市況というのがございます。これは比較的権威のあるものとされておりますが、これがことしの十二月末の見通しというものを述べております。繊維が去年の十二月に比べて九・九%、鋼材が三一・四%、非鉄金属が去年の十二月に比べて二六・九%等々、見通しを述べておりますが、これがやはり二次製品、三次製品に及んでいくことはきわめて容易に想像できることです。このことで卸売物価がこのまま鎮静化するとは私はどうしても思えない。特に四・八%でおさまるなんということは思えない。すでにもう三・〇%食っているわけですから、もうあと一・八%しかこれは上げられない。上げられないと言ってはおかしいですが、その範囲で抑えなければいかぬ。月平均〇・二六%、これでおさまるようなことではないと私は思うんですよ。したがって、やはり通産省あたりが企業の側に立って減産指導をやる、こういう形で需給調整をやっていくという形での値上げというものに、私は、やはり十分注意をしてもらわなければならぬと思いますよ。十分注意どころじゃない。この問題はやめてもらわなければいけないですね。したがいまして、特に鉄鋼なんかは独禁法違反の疑いがあって、去年の九月に公取から警告を受けております。今回の値上げでも同調的な値上げじゃないかという疑いで調査を受けております。要するに、そういうふうな形で企業と政府が一体になって値上げのできるような企業というものは寡占企業なんです。しかし、その値上げによって、それを材料とするそのほかの企業、中小企業、零細企業というものは値上げをしようにも値上げに還元できない。そういう需給ギャップがある。そのことから考えると、それはもう何のための通産省の行政指導であるかということになってくるし、これは決して中小企業や国民の消費者のための指導ではないということにならざるを得なくなってきますね。  だから物価の値上げといいましても、これはいろいろのメカニズムが働くわけでございますから、その中でできるだけ市場の競争原理というものを生かすということで行っていかなければならないものを、きわめて通産省が企業の側に立って人為的にこの操作をしようとするところに、しかもそれが最終の消費者に対して大きな負担を負わせるというようなこと、また、中小零細企業が赤字経営を強いられてこなければならぬということ、ここらにやはり通産省の指導の大きな問題点があると思うのですが、その点、通産大臣、どうですか。
  34. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ことしの前半まで二、三の業種で減産指導をしておりましたが、景気も若干回復いたしましたし、減産指導によりまして物価に及ぼす影響等も考慮いたしまして、七月一日以降、すべての業種に対する減産指導は全部廃止しております。  なお、卸売物価についてのお話がございましたが、ことしの前半は景気の回復が非常に早いテンポで進みましたので、私どもも卸売物価の動向をやや心配しておりました。しかし七月をピークといたしまして八月、九月と順次スローダウンしておりまして、特に最近一、二カ月は海外のいろいろな商品が大幅な値下がりをしておりますので、私は、この卸売物価の今後の動向は十分注意をしなければなりませんが、現時点ではさほど心配することはない、かように考えております。
  35. 正木良明

    正木委員 次の問題に移ります。  十七号台風被害について、これは本部長である国土庁長官にお聞きすることが多いと思いますが、まあ一連の質問で大体のことがずっと浮き彫りにされてまいりました。それで、きのうの質問で、改良復旧に力点を置いてやっていこうということをおっしゃいました。これが事実可能であるのかどうかということについては、ちょっと財源の問題等がありますので、あやふやですけれども、もう一度確認をいたしますが、この災害復旧はあくまでも原形復旧ではなくて改良復旧という立場で進めていく、その決意をもう一度お伺いしたい。それが一つ。  もう一つは、この復旧に当たって査定設計書というのを地方自治体でつくらなければなりません。これは国の直轄河川等は——いま直轄とは言わない、一級河川等は、要するに国の直轄事業になるものは別でありましょうが、地方自治体が行うべき災害復旧には査定設計書というのをつくりますね。この問題についてはなかなか技術者が少なくて、きわめて集中的に被害を受けたところは大変困っておるわけなんですが、この査定設計書の作成ないしはその査定設計書に対する査定等については、どういう態勢でやりますか。  この二つについて。
  36. 天野光晴

    天野(光)国務大臣 第一問、きのう答弁申し上げましたのですが、本来なら改良復旧でいくのがこれは常識です。いろいろな関係で、いままでのしきたり上、原形復旧をやりながら可能な範囲内において改良復旧をやるというやり方をやってきたのでございますが、今度の台風災害を契機として、それを逆な方向に持っていくように努力したい。なかなか予算の問題も容易ではないようでありますが、初年度分については大丈夫だという大蔵省からの御回答もございますものですから、そういう関係で、ここらあたりから改良復旧を重点にしていくという方向に持っていくように努力いたしたいと思います。  それから、ただいま御指摘のございました技術者の不足の問題、これは不慮の災害でございますから、あれほどの大きな災害が出てまいりますと、地方自治団体に技術者が不足するのは当然でございます。そういう点につきましては他から援助を求めて大過なくやる、できるという方針を確認してございます。今度の場合は、その点大丈夫、支障のないように行える体制ができているものと承知いたしております。
  37. 正木良明

    正木委員 財源を尋ねます。  災害復旧事業に伴う多額の支出で地方自治体は非常に苦しくなる。そこで、恐らくこの災害復旧につきましては実行予算方式で超過負担はないと思うが、超過負担はありませんということを明言してください。  さらに、この国庫補助事業におけるところの地元負担分としての地方債が認められておりますが、これは公共土木については九〇%、農地、農林については七〇%、これについて、農林業者保護の観点から、七〇%しか認められていない農地、農林についてはもっと地方債の枠を引き上げるべきだと思うが、どうですか。  さらに、これは自治省になるかもわかりませんが、これらの地方債については交付税の基準財政需要額に算入されて、国からある程度手当てされておりますけれども、これをもっと拡充すべきではないかと思いますが、この一連の財源関係についてお答えください。
  38. 天野公義

    天野(公)国務大臣 災害関係につきましてお答え申し上げます。  今回の台風十七号により被害を受けました被災地方公共団体に対しましては、普通交付税の十一月定例交付額の一部を繰り上げて交付いたしますよう大蔵省と協議いたしました結果、十月二日に五百七十六億の繰り上げ支給をすることに決定をいたしました。  それから、被災公共団体が行う災害復旧事業につきましては、その地方負担額並びに単独災害復旧事業につきまして、地方債を充当することにより財源措置をする予定でございます。  なお、地方公共施設の被害状況、当該被災団体の財政事情等を勘案しながら、本年度の特別交付税の配分におきまして、予定は十二月交付でございますが、十分配慮することによって被災団体の財政運営に支障を来すことのないよう措置してまいる所存でございます。
  39. 正木良明

    正木委員 はい、わかりました。  国の予算としての財源でございますが、これは一連の質問がすでに予算委員会でございました。いわゆる公共事業予備費の一千五百億円につきましては、これはやはり災害に使うので景気対策の方には回せないというような意見のように私は承りましたが、これは小山委員も御質問なさいましたけれども、確かに予備費の中から出していく、そのときには公共事業予備費も何もそんな区別はないだろうというのは常識的であるかもわかりませんが、ただあの初めてことしの予算についた公共事業予備費一千五百億は、あくまでも景気調整のために行う公共事業ということでつけられた予備費ですね。したがいまして、これは小山さんおっしゃっておりましたが、災害は日本全国に実に平均に災害が起こったわけじゃない、きわめて一部地域であります。そうすると、そこへ集中されるところの公共土木事業というものについては、これはその地域は、私はいいとも思いません、大変な被害をお受けになったわけですからいいとは思いませんが、やはり他の災害復旧事業をやらない地域におけるところの景気回復のための公共事業というのは、これはもう全く空白になってしまうわけですね。ですから、どうしてもやはりこの一千五百億というものについては、そういう見地から、私は一千五百億全部でなくてもいいと思いますが、それはある程度、いわゆる災害復旧事業をやらないところにも公共土木事業を行うということで、景気調整のために支出するのが当然のことであろうと思いますが、その点どうでしょうか。これはだれですかな、大蔵大臣かな。
  40. 大平正芳

    ○大平国務大臣 昨日小山委員の御質疑に対しましてお答えしたところでございますが、ただいまの景気政策といたしまして、われわれの既定の経済政策の遂行、財政政策の遂行によりまして景気の回復はいまのところ可能であると考えておりまして、公共事業等予備費の活用にまたなければならないという判断は、いまのところ政府は持っていないわけでございます。しかし、いま御指摘のように、災害復旧並びに冷害対策というのは限られた地域でございまして、したがって、地域的な問題は依然として残されることは御指摘のとおりでございます。これらにつきましては、既定の公共事業計画の運営、運用によってまず対処しなければならぬと思いますけれども、さらに、政府がどういたしますかということにつきましては、今後の事態の推移を見ながら十分検討の上、対処をしたいと考えております。
  41. 正木良明

    正木委員 私は景気の問題については少し政府意見を異にいたします。そんなに順調に景気が回復しているとは思いません。またこれは特殊な製品に対しての輸出の伸長によって伸びている景気でありますから、きわめて大きなでこぼこがありますからね。だから私は、やはり災害復旧事業が行われないところには、この公共事業予備費を充当して公共土木をやるべきであるという考え方です。もしそれが必要がないというなら、あなた、さっき財源がないと言ったから、この公共土木事業予備費を物価減税幾らかできるのですから、年内減税の財源に回しませんか。どうです。これはまたこれなりの個人消費喚起という形で景気が刺激されますよ。どうですか。
  42. 大平正芳

    ○大平国務大臣 なかなかそういう離れわざはできないのでして、いま私ども今年度の追加財政需要というものをいろいろ検討いたしておるところでございますけれども、御承認をいただきました予算範囲内におきまして、この大災害の復旧対策を講じながら、冷害対策に遺憾なきを期しながら、この成立予算範囲内で何とかやりくりをつけてまいるということで精いっぱいでございまして、その間に減税をいたすような余裕は全く見当たらないわけでございます。
  43. 正木良明

    正木委員 政治家は善政をやらなければなりません。どうかそういう点で御再考をいただきたいと思います。  それじゃ次へ移ります。  今国会で非常に問題になりましたリンチ事件について少し聞きます。  特にいわゆる暗黒裁判だと言われた治安維持法下におけるところのリンチ事件ではなくて、戦後にも同様のものがあるということで、参議院本会議で稻葉法務大臣がその詳細については委員会で述べますという意味の答弁をなさっておりますので、これは委員会として受けざるを得ませんのでお聞きします。  この戦後日本共産党のいわゆる暴力的部内統制事件またはスパイ・リンチ事件のようなものについてどういうものがあるのか、ひとつ御報告いただけませんか。
  44. 稻葉修

    稻葉国務大臣 刑事局長からその事実、事例を御報告させます。
  45. 安原美穂

    ○安原政府委員 戦後におきまして共産党員によるいわゆる部内統制あるいはスパイに対するいわゆる暴力事件というものにつきまして、現在まで当省に報告を受けましたもので有罪判決の確定しておるものは総計四件ございまして、昭和二十七年の七月に神奈川県下で起こりました事件、あるいは二十八年の七月に兵庫県下で起こりました事件、それから二十九年の九月に神戸市内で発生しました事件、それから三十七年の五月に同じく兵庫県下で起こりました事件で、いずれも不法監禁とか暴力行為等処罰ニ関スル法律違反事件でございます。
  46. 正木良明

    正木委員 四件の報告がございましたが、重ねてお尋ねします。全部だと時間がかかってしまいますから、一番古い神奈川県下の昭和二十七年七月の事件、それから一番新しい兵庫県下の昭和三十七年五月の事件について、内容を御報告いただけますか。
  47. 安原美穂

    ○安原政府委員 最初に申し上げました神奈川県下の事件は、確定判決によって裁判所が認定した事実によりますると、元日本共産党員であった者に対しまして、共産党の機密を漏らしたということで査問、追及を行い、殴るける、あるいはネクタイで首を絞める等の暴行を加え、さらに同人をアジトに連行してジャックナイフ、木刀で脅迫し、監禁したという事件でございまして、これらの者はすべて判決は確定しておりまして、懲役六月、二年間執行猶予というような判決を受けております。  それから最後に申し述べました兵庫県下の事件は、これも確定判決によって裁判所が認定した事実によりますると、共産党内の分裂抗争に絡みまして、党員一名を糾弾すべく、地区委員会の事務所におきまして、す巻きにして海に沈めてやろうと脅迫したり、殴るける等の暴行を加えて反党活動の自白を迫り、強いて自己批判書を作成させるとともに、監禁をし、暴行により加療約十日間の傷害を負わせたという事件で、これも確定判決によりまして懲役八月、三年間執行猶予等の判決がなされておる事犯でございます。
  48. 正木良明

    正木委員 日本共産党は、いわゆる宮本委員長事件を、党組織を守るための査問行為であって、正当防衛であると主張しているようでございます。恐らく戦後のこの事件についてもそのような見解をお持ちになっておるのではないかと思いますが、これらの事例を含めて、共産党の言う組織防衛のための正当防衛というような論拠というのは成り立つのですか、どうですか。
  49. 安原美穂

    ○安原政府委員 たまたまただいま申し上げました第一の一番古い事件あるいは一番新しい事件におきまして、最初事件につきましては、いま御指摘のかような行為は正当防衛であり、緊急避難であるという主張がなされ、終わりの事件につきましては、かようなことは正当行為であるという主張がなされて、いずれも裁判所の認めるところとはなっておりません。
  50. 正木良明

    正木委員 これは法務大臣にお願いしたいのですが、この一連の事件についての資料を本委員会に御提出いただけますか。
  51. 稻葉修

    稻葉国務大臣 それは確定判決で、だれでも見れるのですから、どうでしょう、提出しなくてもごらんになったらいかがでしょうか。提出せよと仰せられれば提出いたしますよ。
  52. 正木良明

    正木委員 御提出をいただきたいと思います。  委員長にお願いします。この件については、ひとつ委員長の方でお取り計らいをいただきたいと思います。
  53. 白浜仁吉

    白浜委員長 承知しました。
  54. 正木良明

    正木委員 それで、さらに申し上げたいことがございます。  これは、共産党の副委員長の袴田里見さんの「党とともに歩んで」という本でございますが、この「はしがき」によりますと、これは一九六六年八月号の共産党の機関誌「前衛」誌上に第一回を発表してから、十八回にわたって連載したものを一冊にまとめたものであるというふうに書いてあります。  この単行本になりましたものの三百九十三ページの下段にこういうことが書いてあるのです。「網走で宮本顕治同志が釈放されたというのは、これは網走刑務所長のまちがいだったか、あるいは司法省から行った書類の不備だったのでしょう。そのまちがいがあったことがひじょうに助けになったわけです。同じ罪状の宮本同志を釈放してわたしをどうして釈放しないのかと、それでどんどん糾弾した。宮本同志が釈放されたということは新聞にも出たし、明瞭なことだった。所長もそれを知っている。それで、自分の責任出したって、所長個人責任ではない、自分の手落ちということにはならないだろうと思い、わたしを出したと思います。」ということが袴田里見さんの言葉としてこの中に載せられているわけです。  そこでお尋ねしたいのでございますが、再三法務省から宮本委員長の問題についての見解が明らかになっております。ここでは「まちがい」とかなんとかという言葉が出てくるわけですが、この袴田氏の釈放の法的根拠、その経緯を明確にしてもらいたいと私は思うのです。  三つに分けてお聞きしますが、袴田氏の釈放は一〇・四覚書に基づくものと見ているのか。二番目、袴田氏の資格回復は勅令七百二十号の適用によるものなのか。三番目、そうではなく、宮本氏同様連合軍の特別指令に基づくものなのか。これについて御見解を承りたいと思います。
  55. 稻葉修

    稻葉国務大臣 まず第一に、昭和二十年十月四日の政治犯等の釈放に関する司令部覚書、これに基づくものではありません。刑法犯を伴うものが除外されておりますから、一〇・四覚書に基づくものではありません。  それから資格回復の点につきましては、昭和二十年十月十九日の覚書、それに基づく勅令七百三十号によって資格を回復したものではありません。これも刑法犯を伴うものにつきましては除外されておりますから、七百三十号そのままでは資格を回復するはずはなかったわけです。  第三番目に、しからばなぜ資格を回復されたかというと、その一年半後の昭和二十二年四月末になって、司令部から特別の指示が司法省にあって、袴田氏及び宮本顕治氏の両名については七百三十号によって資格を回復されたものとして取り扱えという特別の指示に基づいて、当時の刑事局長から当時の東京地方検察庁検事正に対してその指示をいたしまして、検事正の方で、判決の原本の末尾に、それぞれ七百三十号によって資格を回復したものとみなす、将来に向かって刑の言い渡しかなかったものとみなすという文言で司令部の特別の指示に沿う措置をとった、こういうことでございます。
  56. 正木良明

    正木委員 次に、問題を変えます。  特に農林大臣にお聞きしたいのですが、異常な冷害が起こりまして、特に東北、北海道の農民の皆さん方は、また、関東では千葉、茨城を中心に東日本一帯にも冷害が起こっておりますが、大変心を痛めておるわけでございます。公明党といたしましても、早くからこの実態を積極的に現地調査をして、九月の八日には、官房長官を通じて三木総理に、十九項目にわたる強力な救済策の早期実施を詳細にわたって申し入れをいたしております。  現地に参りますと、いろいろ農民の方々からもお尋ねのあることは、また訴えられることは、大変な被害である、ことしは恐らく半分以下になるだろうというような言葉も再三に聞きましたし、秋田、青森両県においては、もう農業者の自殺者さえ出ているというような状況であります。  そこで、幾つかの問題について、救済策についてお聞きをしたいと思います。  天災融資法の適用、激甚災害法の指定、そしてこの融資資金の早期支払い、この問題についてはもう決まったのですね。まず、これだけ。
  57. 大石武一

    ○大石国務大臣 お答えいたします。  その根本的な方針については決まっておりますが、それはいろいろな災害の実態を確認いたした後でなければできませんから少しおくれますけれども、その方針にあることは間違いございません。
  58. 正木良明

    正木委員 いまやもう生活の維持費のために、冷害の被害を受けられた農民は牛や土地を売らなければいかぬという状況が随所にあるようです。それで、そういうことをしないで済むように、自作農維持資金の融資枠の拡大を、これを年内には全農家の手元に届いて新しい年を迎えられるようにお約束していただけませんか。  それからもう一つ、農業近代化資金というのがございますね。これは特に政府は直接の関係はないようでございまして、農協、市中銀行の問題でございますが、ただ、利子補給の問題で関係があります。これの制度資金の償還延期だとか、固定化負債の整理というものをお考えになっていらっしゃいませんか。  それから、これは小さいと言えば小さい問題ではあるわけですが、重要な問題でもあるのは、稲作の損害の評価、このための損害評価の評価委員というのが各市町村にいますね。大体部落に一人ぐらいずつそういう方がいらっしゃいますが、この評価委員の手当が九百十円なんです。それの三分の二を国が補助しているわけなんですが、これはちょっといまの時代から言うと、常識的に言って、一人九百十円というのは、これもひとつ良識ある大石大臣のあれで何とか引き上げていただけませんか。  それと、米の予約概算金の返済延期、利息免除、こういうのはどうですか。規格外米の政府買い上げ措置、さらに、これはきのうもちょっとお答えになっていらっしゃいますが、農産物の再生産用の営農資材、とりわけ種もみ、越冬用の家畜飼料、それから肥料、農薬、これなどの確保等、購入助成に特段の措置を講ずべきであると思いますが、どうでしょうか。長いですから、一応これで中休みしましょう。
  59. 大石武一

    ○大石国務大臣 初めの自作農維持資金の問題でございますが、これは激甚災害の指定によりまして、百万円までは借りることができます。もう一つは、先ほどの天災融資法の金も、激甚指定によりまして百万円まで借りられます。合わせますと、その現金は二百万円入ることになります。  御承知のように、これらの金は、これからの一年間の生活を落とさないようにしての生活資金が土台でございますから、これを基本として、農業の共済金の収入があればある程度の生活は維持できると思います。  そういう意味で、この自作農維持資金につきましては、いま急に融資額を大幅に上げようという考えはいまのところ持っておりません。  それから次は、農業近代化資金とか、あるいは改良資金とか、制度資金をいままでいろいろと借りている方がございますが、そういう方が災害に遭われました場合、これはとうてい返すことができませんから、これにつきましてはできるだけ返納の期間を延ばすとか、その他につきまして、できるだけの条件の緩和を図ってまいる所存でございます。  それから三番目の予約の前渡しですが、この金につきましては、金利につきましては当然延納も認めますし、あるいは、その被害の状況によりましては利子を免除することもできますから、これにつきまして、できる限りの温かい方法を講じてまいりたいと思います。  それから等外米の買い上げの問題でございますが、ことしは規格外、等外米の米が非常に多いようでございます。これにつきましてはいろいろな手段を講じまして、とにかく、全量につきまして政府責任を持って処理するようにしてまいりたいと思います。  その中には、たとえば自主流通米に移すものもございますし、それから政府が買い上げるものもございますが、いろいろな方法を講じまして、とにかく責任だけは持ちたいと考えております。  それから種もみその他の確保でございますが、これは当然であります。どんなことがあっても来年の再生産に支障があっては困りますから、この種もみの確保につきましては、各県でも努力いたしておりますが、農林省といたしましても、県間の調整などをいたしまして、できるだけの確実な確保をいたしたいと考えております。  その他、肥料とか農薬とかにつきましては、国内では生産が十分にあるようでございますから、それほど気を使わなくとも、これは十分に手配がつくものと考えておる次第でございます。  手当は確かに安いと思います。これにつきましても、いろいろな共済関係につきましては、いま前例もございますから、できるだけの国からの金を出したい、こう考えて、御趣旨に沿いたいと思います。
  60. 正木良明

    正木委員 農林大臣、非常に前向きであると私は思いますが、ただ、自作農維持資金ですね、これは天災融資法であるとか激甚災害法とかで合計すると二百万だと言うけれども、百万ずつはもうすでに限度額としてあるわけです。それじゃ被害を受けて、冷害を受けた農家は軒並みに貸してもらえるかというと、そうではありませんで、百万円というのは一戸当たりの限度額でございます。だから、限度額の百万円を、激甚と天災融資法の両方ならば二百万円になりますけれども、当然ここに査定があるわけでありますし、総体の財源枠、融資枠というのがあるわけですから、これが五十万円ずつだったら百万円にしかならぬわけであります。限度額は百万円ではあるけれども、その限度額を引き上げるということよりも、いわゆる生活資金になるわけでありますから、できるだけ要望にこたえるためには、むしろその融資枠をふやさないととても足りないのじゃないだろうか、このことを私どもは申し上げているわけでありますから、農林大臣の前向きの姿勢期待して、その御努力はしていただけるものとして、次へ移ります。  さらには、現金収入のために必要な救農公共土木事業ですね。これを少し具体的におっしゃっていただけないでしょうか。どういうことを考えていらっしゃるか。
  61. 大石武一

    ○大石国務大臣 現金収入を得させるために、できるだけ就労の対策を講じたいと思います。それにつきましては、やはりいろいろな事業が考えられますけれども、何と申しましても一番効果あることは、その支出される金の大部分が働く農民のふところに入るようなことが一番望ましいと思います。  そういう意味では、余り大規模な機械力を使うような工事ではなくて、できるだけ人手を要するような仕事、たとえば農道をつくりますとか、あるいは林道とか、あるいは間伐であるとか、あるいは枝おろしであるとか、その他区画整理であるとか、ほとんど人手で多く仕事をするようなことにできるだけ多くの仕事を進めさせてまいりたいと考えておる次第でございます。
  62. 正木良明

    正木委員 せっかくの御努力期待いたします。  さらに、冷害も大きな天災でございますが、台風の場合のあの災害というのは、天災でもあるが人災であるという部分が非常に大きいわけです。冷害ではなくて、十七号台風によって稲を初めとするところの農作物がやはり相当冠水をいたしておりまして、大変な被害を受けておりますが、これもいまおっしゃったような同様のものと考えてよろしいのでしょうか。また、お考えとしては別なものですか。
  63. 大石武一

    ○大石国務大臣 私どもの考えといたしましては、対策はもちろん同じようにやらなければなりませんが、ことに、災害に関しましては、来年の生産に支障があっては困りますから、このような耕地復旧であるとか、農業用施設の復旧だとか、こういうものをできるだけ急ぎまして、来年からの生産に差し支えのないようにすることが大事なことだと考えておる次第でございます。
  64. 正木良明

    正木委員 そこで、人災という面から言いますと、今度の十七号台風の大きな被害の中には、やはり乱開発というものによって今度の被害が誘発されている面が多分に考えられるわけであります。  ところで、今回の被災地である高知、それから岐阜県の安八町、それから兵庫県の赤穂、東京の練馬区もそうでございますが、これに共通している点は開発進行中の地域であったということですね。したがいまして、これは容易に想像できることでありまして、ああいう集中的な豪雨が来たときには、昔は山林だとかたんぼだとか畑だとかいうものが、一時遊水地といいますか、その雨水をプールして、そして徐々に川へ放流されるというような形をとっておったのが、いまそれがもう全部つぶされてしまって、開発されてしまって、直接川へ注いでくるから、あの集中豪雨のときには急激な水量増加になって、そうしてあの被害を生んだということになるわけですね。したがいまして、治水事業というものについては、ただ川を補強するということだけでは決して完全な治水対策とは言えないのであって、そのために、いわゆる乱開発というものをどういうふうに防いでいくか、そしてそれが直接災害につながらないようにどう対処していくかということがきわめて重要な問題だと私は思うわけでございます。  したがいまして、そういう意味から言って、防災の面から、新しい開発に対しては、事前の環境アセスメントというものが相当十分になされていかなければならぬと思いますが、その点、国土庁長官環境庁長官——環境庁長官には質問は通告いたしておりませんでしたけれども、お答えをいただきたいと思います。
  65. 丸茂重貞

    ○丸茂国務大臣 お答えします。  大規模開発については、従来地域住民の意向等がありまして、アセスメントについては相当以前から環境庁が監督できるような立場にあったのですが、小中規模の開発はなかなか行き届かなかった面が確かにあると思います。したがって、環境庁といたしますと、いま御指摘の点を防ぐには、やはりアセスメント法というものを通してもらわなくては十分な効果は上がらないというふうに考えておりますので、今後ともそういう観点に立って環境庁といたしましては環境影響評価を厳重にやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  66. 正木良明

    正木委員 長官は御存じだと思いますが、環境アセスメント法につきましては、わが党がその案をつくりまして、すでに提出をいたしておりますので、どうかそれをたたき台にしてりっぱな法律をつくってください。  これも総理、あなたが一番関心をお持ちの問題ですから、答えてください。
  67. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 正木君の御指摘は非常に大事な点だと思います。  近時、土地が高いですから、やはり乱開発が行われる。やはり、自然を甘く見ることはいけないですね。自然というものをあんまり甘く見ると自然の怒りが来るわけです。地域社会では、その地域社会のいろいろな知恵がありますね。自然に対して長い間のいろいろな知恵を持っているのです。自然に逆らわない、地域住民の古い生活の集積された知恵、こういうものも尊重しないと、あんまり自然というものを甘く見るということはやはり非常に問題が起こってきますからね。  これは大きな開発ではないですから環境庁が直接どうということはないですが、地方自治体、自治省とも関係があるのでしょうが、小規模な開発などにも問題があるのですね。山崩れとか、いろいろな問題が起こって被害が出るわけですから、これは各省とも連絡をとって、大規模なプロジェクトだけでなしに、小規模な開発についても、環境と開発とのかかわり合いというものに対してもっと厳重なアセスメントが必要だということは御意見のとおりだと思うのです。  これをどういうふうにやっていくかということは、地方自治体とも連絡をとって、その点はもう一遍考え直してみる。従来のものは少し安易に過ぎたというふうに考えますから、今後ともこの問題は少し取り上げてまいりたいと思います。
  68. 正木良明

    正木委員 非常にりっぱなお言葉だと思います。自然を甘く見れば、自然の怒りを買って災害が起こる。したがって、今度のロッキード事件について、国民を甘く見ると国民の怒りを買って政治不信を生むことになります。どうかひとつその点は十二分に心を戒められて対処せられるように期待をいたします。  以上で終わります。
  69. 白浜仁吉

    白浜委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  70. 白浜仁吉

    白浜委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。塚本三郎君。
  71. 塚本三郎

    塚本委員 私は、民社党を代表いたしまして、当面する日本の内外の政治問題につきまして、許される時間の中におきまして、政府の見解をただしてみたいと存じております。  まず最初に、実はきのう共産党の委員から、わが党とは直接関係がないのに、あたかもわが党が暴力事犯と関係があるがごとくに、国民に誤解を与える意図を持ってとしか思われないような発言をいたしておりますので、この点につきまして、わが党責任者の立場から触れてみたいと存じます。  それは、北辰電機という労働組合が、民社党と運命共同体の立場にあり、それが暴力行為を行ったというような形で、あたかも私ども自由と民主主義を地でいく党を傷つけるという意図を持って発言をなされたようでございます。私は聞いておりまして何のことかよくわかりませんでしたが、早速党の責任者の立場から、その労働組合の代表に来ていただきまして、事情を調査してみました。  北辰電機労働組合は、四十七年の三月に、労働組合組織でありました総評の全金の組織を、二千五百対二百という圧倒的な大差で、全員投票の結果、脱退を決定いたしておる労働組合組織であることがわかりました。その後、九カ月たちまして、四十七年の十二月にわが党を支持しておっていただきます同盟組織に加入をいたしました。ところが、その当時脱退に反対した二百名の中で、現在は約四十六名ほど、ほぼ共産党員及び民青の共産党支持者のグループが残っておるようでございます。この諸君を中心にいたしまして、二年後ですが、四十九年、労働組合の一時金の妥結をめぐりまして、実は組合が決定をせんとしたその集会を目指して、共産党の諸君を中心とする労働者の諸君が、妥結の金額が低いというようなことから会社に押しかけてきた。それを組合の自主性を守るために、組合員が入り口で——そのときには若干会社の役員も入っておったようであります。このことでいざこざを起こしたということが、暴力事件と共産党は宣伝をなさったように実は事実がわかりました。  私どもは、不景気のときには、会社の企業経理内容に従って、やはり全般が低いとするならば、組合もまたその企業の実態に応じて、理想的な要求どおりの賃上げあるいは一時金をとることができなくても、やはり将来に期待を残して、そして企業とともに歩くという組合運動は正しいやり方だと指導いたしております。したがって、それを行わせないようにと言って乱入する方が悪いのか、押しとどめようとする方が実は暴力なのかということを国民の皆様方にはっきりと御判断をいただいて——それはやはり労働者はよけいにお金をいただければそれにこしたことはありません。しかし、企業経営が危なくなるほどの要求が通らなかったからといって、反労働組織だと言って押しかけること自身の方がむしろ暴力じゃないか。そのためにわざわざ暴力と宣伝することを目的にして、テープレコーダーやあるいはカメラを携帯して押しかけるという共産党の諸君の、一連の企業破壊に結びつくような行為が続発をしているということでございます。  その後におきましても、このわずかの諸君は、お得意先に行って、うちの会社の製品を買わないようにとか、取引先であるお役所に行きまして、うちの会社の品物を買ってくれるなというようなことを、同じ組合員であって、いわゆる主義主張が違うからといってやられたのでは、それはひとり会社の問題というよりも——健全に労働者は企業とともに成長していきたいというわが党の考え方を御支持いただく同盟の諸君の行動を私たちは正しいと思っております。そのことに対して、なぜそんなことをするんだと言って一々問い詰めると、それが暴力だ、不法監禁だというようなことで、すぐ訴訟に持っていってしまっております。  幸いこの四十九年の問題は、共産党の諸君が言ったけれども、法務当局では不起訴になっておりますので、これは全然問題にはなっておりません。しかし、そのほか断続的に二十七件ほど、実はそういう話し合ったり、なぜそんなことをするんだと言ったことが、全部暴力行為として訴えられております。一言言っただけで全部裁判になって、もちろん全部不起訴になるとわれわれは思っております。しかし、それでも裁判になれば、いや警察で取り調べられれば、一日でも二日でも取り調べに応じなければならない。それだけでも大変な迷惑になるわけでございます。だから、本年の九月からは、一切もう彼らに口をきくな、口をきけばすぐ暴力だとかいう形になりますので、口をきくなというふうな指令を組合は出しておるという実情でございます。そういう意味におきまして、そういうようなやり方は、一々何でもかんでも裁判に持っていかれれば、不起訴にはなるでしょうけれども、その時間的なことが大変迷惑だというような形から、相手にするなというふうな形になっておることが実情でございます。  私たちは、労働組合の正しい慣行として、ときに資本家が憎いこともあるでしょうけれども、しかし、企業がだめになればやはり労働者もまたやがては失業しなければならない羽目に陥ると判断いたしております。したがって、景気のいいときにはたくさんの要求をし、景気の悪いときにはお互いにがまんして、そして企業の発展を労働組合も願うというのが正しい労働組合運動だと私たちは考えております。その見解に対して総理から、一言で結構ですから、所見を伺いたいと思います。
  72. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 塚本書記長から、いま労働組合に対する民社党の基本的な考え方を承りまして、やはり健全な労働組合のあり方は塚本君の言われるとおりだと思うのです。こういう考え方で組合を指導されておる民社党の方針に対して敬意を表するものでございます。
  73. 塚本三郎

    塚本委員 さて、先日の本会議におきましても取り上げられまして、昨日の当委員会におきましても共産党のリンチ殺人事件が取り上げられました。この問題は、共産党の諸君はすぐいわゆる政治問題として扱おうといたしております。事件の発端は政治問題でありますけれども、人を殺すということ、あるいは死に至らしめるということは、政治問題ではなくして自然犯罪なんです。基本的ないわゆる人間の問題でございます。あのようないわゆる治安維持法下において起きた事件でありますから、いま私たちは、けしからぬと言ってあげつらうことはこれは妥当ではないということを承知しております。しかし問題は、そのような事件があった、しかしあの当時はああいう時代であったからやむを得なかった、むしろあの文芸春秋におきまして作者の立花隆君が述べておりまするように、そのようにしてついに白状させなかったら自分たちがかわりにやられてしまうかもしれない、そう思うことも自然だと私たちは認めております。現にわが党の代議士であります和田耕作氏なども、同じような罪によって刑に服しておるわけでございます。わが民者党もまた治安維持法における犠牲者であり、被害者であり、現にわが党所属で本院にも存在しておるわけであります。そういうような立場において、やむを得なかったと私は言って認めてあげていいことだと思います。白状させようとして、実はその意思でなかったけれども、やり過ぎたのだと言っても私は許されると思います。いや、もっと議論を進めて、やらなかったらこちらが殺されてしまうかもしれないと思って殺した、こういうふうに言っても、今日から見るならば、そんなにひどかったなあというふうには——いいとは言いませんけれども、論理としてはそういうような時代であったということは革新政党の私たちも十分承知しております。それをやらなかったというふうに事実を否定するところに問題がある。  私たちはそういう意味で、治安維持法だとか天皇制裁判だとか、そういうことは彼らと同じように陰惨な時代であったと痛烈に批判をいたしております。だから、事実が何であったかということさえはっきりすれば、といいますることは、すでに本院の、いわゆる最高の責任者であった田中角榮氏が、自民党総裁であり総理大臣であっても、あの文芸春秋という雑誌の作者立花隆氏によって、いわゆる田中金脈として三十年昔にさかのぼって、総理大臣を辞任しなければならなかった。同じ雑誌の同じ作者でありまする立花隆氏が、返す刀で共産党の研究を、今度は三十年じゃない四十年さかのぼって実はその事態を解剖した。しかも、その是とするところの文芸春秋の立場も、それをうそだと言う共産党中央機関紙赤旗の立場も、春日一幸がこう言ったという議論が双方からなされておる。そうなれば、いわゆる今日的課題として、わが党の春日委員長が、事実は何であったかと問うことだけは、これは国民に対する責任だと私どもは受けとめたわけであります。だから、事実がそうであった、それで終わりだと思うのでございます。それを、その事実を、でっち上げだとか治安維持法を肯定するとか、あるいはまた特高警察の再来だとか、最近におきましてはロッキード事件と同根だと言って、われわれがロッキード事件を徹底的に追及しようと総理初め担当大臣を追及しておりまするときに、あたかもこちらが犯人であるがごとくに国民を惑わせておる。その体質が実は問題ではないかというふうに私は考えて、国民の皆さま方の御判断の中では、経済問題を中心にしてやっていかなければならぬのにかかわらず、国会は何をやっているんだという批判もありますけれども、いわゆる殺人の形になっておって無期懲役の判決を受けた人が現に一党の委員長じゃございませんか、現に副委員長じゃございませんか。そうしておいて、国会にさえも出ておいでになれないという形になっておるのはどういうことだというふうに国民は疑いを持っておるわけでございます。五つの政党の中で委員長、副委員長国会議員に出てこないということになれば、一体何だ、それが原因であるかどうかということは別にいたしましても、国民が疑っておることは当然ではございませんか。  そういうふうな状態でございまするので、私たちはこの実態を決着だけきちっとつけてまいりたい、かように論じてきた次第でございます。  そこで私は、結論として、いわゆるうそだとかでっち上げだとかおっしゃるけれども、小畑達夫氏が殺されて、そうして死体が発見された翌々日の共産党の中央機関紙と言われております赤旗の中に、きちっとこう自分で言ってみえるのです。政府だけじゃない、でっち上げだけじゃないのですよ。人のことは全部信じなくたって、共産党の諸君は自分たちの出した機関紙だけは否定することができないと思うわけであります。一九三四年一月十七日の共産党機関紙赤旗の中にきちっと出ておるのでございます。「鉄拳で奴等を戦慄せしめよ」、こういうふうな表題で「日本プロレタリアート党の前衛我が日本共産党の破壊を企む支配階級の手先、最も憎むべき、党内に巣喰ふスパイが摘発された。我々一同は、スパイ大泉、小畑両名を、死刑に價することを認め、彼等を大衆的に断罪することを要求する。」。死刑に値すると宣言し、大衆の名において断罪を要求すると、すでに死体が発見された翌々日に自分たちの機関紙でこういうふうに述べておられる。一切の報道機関を否定なさっても、自分たちの機関紙に対して否定するということまではなされないのではないか。  それから、同じように、これは共産党の諸君にもきわめて好意的な方で作家の松本清張先生の「昭和史発掘三十二号」という中にも、こういうようなことで、コミンテルンからの指令によって三項目が出ておりますが、その三項目目において「スパイは発見次第必ず消すこと——。最後の項目に当るコミンテルンの指令を、松村はどういう思いで受取ったであろうか。」。これは昭和六年ですから、事件が起こる二年前にすでにコミンテルンからスパイは消すことという指令を受けておるし、かつて共産党の責任者がいわゆる議論の席上で、コミンテルンからお金をもらったというような当時のことについて論及したときに、彼らは上部機関であり、日本は下部機関であるから、オリンピック委員会から日本の体育協会が金をもらって何が悪いという発言が新聞に載ったことがありますが、そういう組織、そしてそういう中においてスパイを消せという指令を受けておる、こういうことでありますから、私どもはもう法務大臣の御答弁だけではなく、事態ははっきりしたというふうに考えております。  そこで問題は、最後の決め手だけ法務大臣に御質問を申し上げます。  法務大臣は、宮本氏の復権につきましては、米軍のいわゆる力によって釈放された、そうしてまた復権を見たというふうな御説明がありましたけれども、超法規的だとおっしゃるけれども、超法規的なものを発動する前にはやはり間違った認識があった。その間違った認識のもとは何であるかというと、健康であるのにかかわらず、これ以上刑の執行に耐え得ずといういわゆるうその診断書を発行したこと、そのことを知らなかったがために、実は間違って復権をせしめてしまったというふうなことが私どもの調査資料によると明らかだと思うのでございますけれども、大臣、その点どうでしょう。アメリカが全部超法規的にやったのではなくして、そういうふうな超法規的なものを発動する前に、実はそういうようなうその診断書を前提としておるという事態があったのじゃございませんか。
  74. 稻葉修

    稻葉国務大臣 法務省の調査の結果をその点に関して申し上げますと、釈放とそれから資格回復とは別個な問題ですね。釈放されたのは終戦後の昭和二十年十月四日、連合国軍最高司令部の政治犯人の釈放等を命ずる覚書、これによって釈放されたことになっているのです。ところが、宮本氏のように、また袴田氏のように、監禁致死等の刑法犯を伴う者は右覚書による釈放の対象には該当しないものとされておりました。けれども、まあ当時は覚書に言う政治犯人の範囲が必ずしも明らかでなかったことなどの事情もあり、宮本氏を釈放することが右覚書の趣旨に沿うものであるか沿わないものであるかについて若干の疑義を存しながらも、さあどうしたものだろうという疑問を持ちながらも、まあどうもここでこれに直接当てはめて釈放するのは無理だ、しかし当時の情勢上釈放しないとまたうるさいことになるな、そういうような判断があったのではなかろうか。そこで宮本氏は健康状態を理由に釈放手続を行った。そうしたら宮本氏が釈放されたもんだから、袴田氏も刑務所長に、宮本が釈放されて、同じことをやっておれはどうしたのだというようなことでやるものだから、十日後十九日に意味もなく釈放された。どういうわけで釈放されたんだかわからぬな。これはそういうことです。
  75. 塚本三郎

    塚本委員 法務大臣、もうちょっと御勉強していただきたいと思います。  メリーランド州にアメリカの公文書館がございます。サンケイ新聞の増井記者が現地に行ってまいりまして、調査をしてまいりました。その当時、ケーディス連合軍総司令部の民政局次長あるいはGHQ担当者は、全員がリンチ事件はあったという見解を一致してとっておりますと、当時の担当者が言っております。そこでそのケーディスという人に、この公文書館を調べてきたサンケイ新聞の記者がこういうふうに聞いておるのです。「宮本氏の釈放は、病気を理由にした刑の執行停止の形をとっている。それは御存じだったか。」、ケーディス氏「それは確かか。」、こう言って、知らなかったものだから聞いたのです。増井氏が「日本で明らかになっている法務省資料ではそうなっているが、貴下はそれは本当に知らなかったか。」、こう言って聞きますると、ケーディス民政局次長は「全く知らない。私の理解では、刑法犯を同時に犯して判決を受けた政治犯人は、引き続き投獄できることは十分知っていた。」。だから本当ならばもう一遍戻ってきてもらわなければならなかったのだ。にもかかわらず、日本政府は釈放したままになっておった。再収監をしないままになっておった。そこで増井氏が聞いている。「病気を理由に刑の執行停止をしたというのであれば、それはスキャッピン九十三号と別個の問題になってくる。」、というのは復権の問題ですね。「つまり復権の法的根拠自体もなくなるということにならないか。」。  ここが一番問題なんです。ですからGHQは判断を間違えているのです。病気で出たということならば、健康を回復したら戻ってくるから、これは出してはいかぬし、復権はできない。ところが、病気でなくてうその診断書で出ているものだから、これはいわゆる政治犯だけだというふうに思っているわけです、病気で出たということで。(「うそかどうか」と呼ぶ者あり)いや、後からうそであることを教えてあげますから黙っておってちょうだい。そういうような形で、そういうことは知らなかったということをケーディス自身が言っている。「もし、病気が理由で刑の執行停止で釈放されたことが事実であれば、そのとおりだ。」、復権はできなかったとケーディス自身がぴちっと言っているのですよ。だから、あなたはわからぬとかおっしゃったのだけれども、もう少し御勉強いただいて、ずいぶん博学の御答弁をいただいておりまするけれども、それはやはり向こうが判断を間違えておるのです。その判断を間違えた原因は何かというと、いわゆるうその診断書によって出ているから、だからこれは刑事犯で出たのじゃない、こういうふうな誤解が実はあったわけでございます。「しかし病気を理由とした刑の執行停止であれば、別個の措置が必要であったろう。」とはっきりケーディス氏は言っている。病気で出してもらったということだったら、それはやはり復権はしなかったであろうとケーディスみずからが、わざわざサンケイの記者が行って聞いたら言っているのですよ。だから、やはりこの点はアメリカもいいかげんじゃなかったか。こちらもそういういわゆるうその診断書によって出したということなんです。ケーディスは「その意味でスキャッピン四百五十八号を適用したことは妥当とは言えないかもしれない。」と、自分で妥当性を欠いておったということをはっきりと言っておる。いわば宮本氏が釈放されたそのうその診断書によって、米軍も判断を間違えてしまったということでもって、超法規とかおっしゃるけれども、それもそういう力でやったけれども、もとはと言えばにせの診断書によってなされたのです。だから、うそだという話がありましたから、診断書を——私もある程度調べてきておりまするから、その診断書は前国会におきましては個人の人権の問題だとおっしゃったけれども、もはやたくさんこういう本の中に出ておるのですからこれは人権の問題ではありませんから、きちっと当院にその診断書を出していただきたい。  といいまするのは、当の宮本さん自身が病気だと言ってないのですよね。あの冨士真奈美という女優さんに対して、当時は実はイモがごろごろして、東京は食糧不足であったけれども、私は六十二キロ、普通の体重に戻ったのです、むしろ東京などにおいてはおみおつけの中に実がないくらいで汁ばかりですけれども、こちら網走監獄の中においてはごろごろあって体調が戻ったのですと自分でおっしゃっているのですよ。だからそれはやはりにせの診断書と言うよりしようがないじゃありませんか。療養食を食べたといういわゆる食事の経過も出ておりません。これ以上刑の執行を続けたならば生命、身体が危なくなるという診断でございますよ。だから病棟に入ったという記録が網走監獄日報に出ているはずであります。出てないじゃありませんか。だから、それは間違って出たんだ。私はこの事実だけをはっきりさせて、この問題は決着をつけていきたいと思います。きちっと資料出していただきたい。法務大臣、いかがでしょう。
  76. 稻葉修

    稻葉国務大臣 すでに巷間のいろいろな書物で病気の診断書の内容も出ていると言うけれども、それはどこでどうやって出たのかわからぬが、法務省の秩序としては、刑務所の診断書を外へ発表することはできないのです。正式にここへ要求されてもできないのです。というのは、刑務所の診察というものは、医者を信用していろいろなことを収監者が言うのですよ。そうして流行病みたいなものがあればちゃんとふろを分けたり、そういうことをやはり行刑上しなければいかぬでしょう。その行刑の適切な運営に今後支障になるようなそういうことを——診断書を平気で出したら今後の運営に困りますものな。それはちょっと御勘弁を願いたい。
  77. 塚本三郎

    塚本委員 出せぬとおっしゃるならいたし方ございません。それなら、いま言われている前後の事情から見て、その診断書がうその診断書であったという想定は、これは常識のある人ならば成り立つと思いますので、その診断書が事実と違っておるという想定だけはできましょうか。
  78. 稻葉修

    稻葉国務大臣 いまそういう時代にさかのぼって——さっきだからそのことを、まあ疑義を存しながらも、釈放する手段として、診断書で健康状態を理由に釈放手続を行ったものである、こういうふうに申し上げたわけです。だから、ここにあなたのような、病気に対するそういう疑義的な御質問が出るのだろうと思いますが、私はそれに対してとやかく言うのは、幾ら私ばかでもちょっと行き過ぎていると思うのです。そういうことを私が言うのは言い過ぎだと思うのですね。私は言い過ぎないように気をつけているつもりです。
  79. 塚本三郎

    塚本委員 わかりました。もう問わず語りで、時間がもったいのうございますから。実は、これは本質的な問題でありますから、幾つか問題を取り上げてみたいと思っておりましたが、本日は代表総括でございますから、この問題は、ほぼ事件の全容だけは明らかになったと思いまするから、これで次の問題に移らさせていただきます。  さて、ミグ25の問題につきまして、これは国民にとって、わが国防、安全、外交、こういう問題において大変大きな問題点を提起したものだと存じます。  ある週刊誌に実はこういう文章が載っておりました。一分ほどですから読み上げてみます。「たとえ家を捨てて出た不肖のムスコのしでかしたことであっても、ひと様の家へ無断で飛び込んで、罰も受けずに、希望通りの行く先へ無事送り届けられた以上、オヤジたるもの、まずは一言の詫びでもいれるのが世の習いというもの。それをまるで、こっちが誘惑したかのごとくいいふらしたり、麻薬を飲ませたなんて言いがかりをつける。そればかりか、家出ムスコが使った飛行機(ミグ25)をそのまますぐに返さない限り、今後、お前の家族にどんな災厄が起っても自業自得だぞ、なんて、まったく、暴力団も顔負けのような脅かしをするんだなあ。」こういうふうに某週刊誌に太字で書いたミグ25に対する批評が載っております。新聞報道等を見る限り、向こうから侵入してきた戦闘機に対して、日本がしかられっ放しの記事しか国民は見せていただいておりません。したがって、こういう週刊誌の言葉を読みますと、私は一国民として本当だぞ、こういうふうにうなずくのであります。この意見に対して、総理はいかが御判断なさいますか。
  80. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 函館の民間空港に突如として侵入して強行着陸をしたのですから、その意図がいろいろあるにしてもソ連としては——日本がソ連の立場でそういうことはあり得ないけれども、あれば遺憾であったと言うのが普通のことだと思います。
  81. 塚本三郎

    塚本委員 日本ならば遺憾であったと陳謝するが、よその国なら陳謝しないことが普通だと御判断ですか。
  82. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 普通と思いませんが、国際的な常識からすればそれは遺憾であったと言うべきだと私は思います。
  83. 塚本三郎

    塚本委員 しかられっ放しで、返すよ返すよなんてなぜ言うのでしょうか。謝ってから、態度を以後十分気をつけますとおっしゃったら、それは気をつけてちょうだいと言ってお返しをするのじゃございませんか。しかられたから返すなんて一体日本の外交の姿勢はどこにあるのでしょうか。そうお思いになりませんか。
  84. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 しかられたわけではありませんが、そういう理由もないわけですが、日本は強行着陸したミグ25に対する必要な処置、調査をいたしまして、その背景を調査して、その調査が済めば外交機関でどういうふうにして返すかということは話し合って返そうというのが日本の方針でございます。
  85. 塚本三郎

    塚本委員 返してあげることは当然なんです。いいことです。だけど向こうから文句を言われて、そうして返すなんというようなことを言う前に、先に翻りなさいと——これはどこの国だって独立国の常識だと思うのですよ。それを平気でやる、平気で返すよ返すよなんていうふうに、少なくとも報道機関を通じて国民の目にはそういうふうに映って、そうするとやっぱり軍備がないと情けないな、こういうふうにいわゆる短絡的に国民は受け取ってしまうのでございます。日本よりも武力の少ない国は百以上あります。にもかかわらず、こんなだらしのない応答の仕方をしておる国は私は珍しいのではないかと思う。これはやはり武力のあるないということに関係なく、御無礼なことをした以上は、きちっとこれから十分気をつけて、いわゆる警告をしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  86. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 返すよ返すよと何もこちらは言っておるわけではないわけでして、ちゃんとした必要な処置をとったならばこれは返還をしようということが国際慣例でもございますし習慣でもありますから、何も返すよ返すよと言って先方のごきげんをとるということではない。日本が必要な調査をいたしましたならばこれは返す、こういう国際慣行に従ってやるわけでございまして、その場合には再びこういうことのないようにという注意を与えることは当然でございます。
  87. 塚本三郎

    塚本委員 返すに当たりまして十分にわが国の防衛に役立つように調査をすること、私は当然だと思っております。私たちは徹底的に防衛的見地から調査をすることは大賛成で、当然だと思います。  しかしこのとき、これも私は詳しいことは新聞報道等しかわかりませんから、国民もそう思っておりますから、国民の気持ちも代弁しつつお尋ねをいたしますけれども、なぜ日本独自の立場において調査を行わないのか。御承知のとおり、米ソ関係が最もよくない、いわゆる対立的な関係にあることは日本国民の常識でございます。にもかかわらず、その対立関係にある一方のアメリカ協力を得て調査をするというやり方は、これは日本として主体性を欠いたやり方をしておるのではないか。  と言いますのは、日本が独自に調査をして、徹底的に分解をして、そして必要な秘密あるいはまたすべての問題、その資料日本独自の立場において握って、機体を返しておいて、その後で、日米安保条約によって日本を防衛してくださる協力関係にあるのだから、一〇〇%相手方に資料を提供して協力をすることは私は当然だと思うのです。だが、この対立関係にある国際環境の中で、いわゆる機体の解剖にまでアメリカ協力をいただいた、アメリカの飛行機でもって基地に運んでいただいた、こういう立場は、いかにもソビエトから言われて——まあ総理は主体性をもっておやりになったとおっしゃるけれども、ソビエトに対して主体性を欠くような行動であり、同じくアメリカに対しても、アメリカはどう言ってきたかわかりませんが、いわゆるマスコミ等を通じて私ども国民判断をする限りは、協力してやろうというふうに、向こうもまたついでに情報が欲しいという形に断り切れずにこれに乗ってしまって、双方ともに板ばさみで押された方になびいていく日本外交の姿というものを露呈してしまったように国民は受け取っております。  だから、けじめをつけて、けしからぬじゃないかと言ってソビエトに陳謝を要求して、それこそ陳謝の使節団ぐらいよこして、そしてきちっとしてからお返しをする。お返しをする場合に、日本立場においてこれを解剖して、日本としてのきちっとした調査をして、資料としてとっておいて、そしてお返しをして、それからさて日本の防衛のためにこれをどう役立てるか、これは日米安保条約に基づいて一〇〇%活用する、こういうけじめをつけるのが日本の自主的な外交の姿ではなかったかというふうに私は判断しており、国民も、私は各地に行ってそういう質問を受けまして答えますと、それをみんな納得をするのです。  外務大臣の代理も兼ねておいでになる総理から先に御答弁をいただいて、長官の方へお聞きしたいと思います。
  88. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これはあくまでも日本責任において、日本の主体性において調査をすることは当然でございます。調査もまた、われわれの調査は、なぜ領空侵犯したかという背景の調査であって、ミグ25の機密をどうこうしようという調査ではない。日本に領空を侵犯して来たというその背景、またそういう装置、そういうものがわれわれの調査の対象になっておる。これは技術も器具も日本だけでやりたいというのは、われわれとしても塚本君と同じ考えでございますが、何分にもああいうミグ25のような機体というものを扱ったような経験に乏しい日本とすれば、器具にしても技術にしても、日本の器具だけでは、たとえばいま運搬をアメリカにしてもらったと言いますが、函館の民間飛行場からいつまでもああいう飛行機を動かせないということになれば、民間空港の使用にも非常に影響しますから、動かすについても——動かすというのは、そのままこれを運航できませんから、よそへ調査をするために運搬するとすれば分解もしなければならぬ。そうなってきたら、どうしても器具とか技術というものは日本だけでは間に合わないのです。そういうことでありますから、必要最小限度において、日本責任と自主性においてアメリカの器具、アメリカの技術、こういうものに対して助力を依頼したわけでございまして、あくまでも日本が主体であるということに対してはいささかも崩してはいないし、日米共同などというものではないわけです。器具と技術、必要最小限度なものをアメリカから協力をしてもらった。運搬といっても、ないのですよ、あれを運搬するだけの輸送機というものを持っておりませんし、何もアメリカの助力を頼むようなことは好んでするわけではないのですけれども、やむを得ないのです。それなら、いつまでもあそこに置いておいたらいいかというと、そうではない。日本としてもやむを得ないから、アメリカのそういう意味における器具と技術に対して協力をしてもらったということで、何も日本の主体性が失われたとは思わないわけでございます。
  89. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私といたしましては、塚本委員のおっしゃいましたとおりに実は考えておりまして、まず第一には、ミグ25戦闘機が領空を侵犯いたしまして強行着陸をいたしましたことを許しましたことに対しまして、私はまことに責任を感じておるものでございます。したがいまして、今後低空からこういうスピードで入ってくるものをどういうふうに防ぐかということについて、いま防空の検討を命じておるというところでございます。しかしながら、それをやるにつきましても、その機体の調査をやらなければ防空を全うすることができないというふうに私は思いますので、徹底的に調査をいたしたいと実は考えて、ただいまそれをやっておるわけでございます。そして、それはあくまでも日本の主体性においてやるべきであるというふうに考えております。  しかし、参りました軍用機がどういう仕掛けになっておるか、たとえば自爆装置もあるかもしれない、あるいは場合によっては核装備を持っておるかもしれない、いろいろのことを調べなければ実はわからないわけでございまして、これを調べないままに返すということは、私の国民に対する安全上の責任を果たすことにはならないと思います。  それからいま一つは、たとえば核の問題にしましても、あるいは自爆装置にいたしましても、どうしてもわれわれのところで間に合わないという部面について、必要最小限度のものはかりるというようなことはやるべきであるというふうに考えておるわけでございます。しかし、全般といたしまして、この調査はやはり慎重にやらなければならない、外交上の配慮をやって行われるべきものであるというふうに考えておる次第でございます。
  90. 塚本三郎

    塚本委員 長官、続いてお聞きしますから……。  これは、最初は警察が出て出入国管理令違反だとか武器不法所持という形で、防衛庁が出ておいでにならなかったというのはどういう意味ですか。
  91. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 最初、民間空港に着陸をいたしました。その時点で、空港の方から私どもの方にも連絡がございました。私どもの方から参りましたときには、警察がこれを領置いたしまして、いわゆる犯罪捜査という面からの捜査を開始しておったわけでございます。
  92. 塚本三郎

    塚本委員 敵の軍用機であっても、犯罪捜査であって防衛庁が先に出られないという形になっておるのですね。  どうでしょう、長官。敵の軍用機が侵入してきても、犯罪捜査が先であって、防衛庁は直接向こうから発砲しない限りは手が出せないという形ですか。
  93. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 そうではございませんで、これが、たとえば私のところの警戒をいたしておりますファントムがとらえました場合は、これを指示いたしまして強行着陸をさせる、その後におきましてわれわれが調べる、あるいは警察当局とも連絡をしてやるということはあり得るというふうに思います。
  94. 塚本三郎

    塚本委員 防衛庁が出動したのは、いつの時点ですか。警察が手を切ってからじゃないですか。
  95. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 防衛庁は、警察の捜査の段階におきましても専門家を派遣いたしまして協力はいたしました。しかし今度の場合には、防衛庁に保管の責任が移りましたのは十日の夜のことでございます。
  96. 塚本三郎

    塚本委員 私は、法の運用としてやむを得ないというふうに思っておりますよ。だけれども、敵の軍用機が入ってきても、発砲しない限りは不法入国でございます、ピストルを持っておるから武器の不法所持でございますから警察どうぞ、警察が調べた結果、不起訴処分でございます、その次に防衛庁どうぞ、これがいまの法体系ですね。  一体、日本の防衛はどうなっているのでしょうか。警察が第一線で先に出るのですよ。これで大丈夫ですか。莫大な予算をかけてやっておりながら、警察が不起訴処分にしてからでなければ防衛庁が出られないなんて、これはやはり政府にお任せするだけではなくして、われわれはもっと真剣に議論しないと——たとえば、その間におきましてソ連の潜水艦が津軽海峡に何隻来ておったのか。函館市民が戦々恐々としておったことは御存じでしょう。どれだけのソ連の対潜哨戒機やソ連の潜水艦が津軽海峡あるいは日本の函館近辺に来たか、ちょっと御報告いただきたい。
  97. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 九月六日の夕方七時から八時にかけまして、ソ連の飛行機がわが方のレーダーサイトの中に入ってきております。アンノーン、識別不能の飛行機として入ってきております。これに対しましてはスクランブルで上がっていきまして、それは帰っております。さらに夜中に、これはそれまでには余りございません例でございますが、レーダーサイトの端の方を通ったという事実はございます。それから船は、潜水艦そのものが来たという情報はございませんけれども、あの辺にソ連の船が近寄ってきていたということはございました。  私どもの方といたしましては、飛行機に対しましては警戒態勢を強めましたし、函館にあります陸上自衛隊の駐とん地に対しても警戒態勢をとりました。さらに、津軽海峡の監視態勢をとりまして、大湊の艦艇、さらに横須賀から艦艇を出しまして、多いときには九隻程度で、あそこを通過しておりますソ連の艦艇に対して警戒をいたしておりました。それから常時対潜哨戒機が二機、津軽海峡の上を飛びまして警戒をしておりました。以上が、自衛隊のとった措置でございます。
  98. 塚本三郎

    塚本委員 総理おわかりのように、これは余りにも——私は怠慢だとかいうことを申し上げるのじゃありません、幸い三十年間平和で送ることができたことは、私どもは国民とともに喜びたいと思います。しかし、今回の事件で明らかになったことは、敵の戦闘機が入ってきても、それを防衛庁がスクランブルをかけただけで、そして着陸してしまえば、もはやいわゆる警察の領置内であって、警察がいろいろお調べになって、そこでこれは起訴するわけにはまいりませんといって警察がおりた段階で防衛庁が出てくる。もう少し言いますと、敵の軍艦が大砲を積んでだあっと来ても、発砲しない限りは、編隊でわが港に入ってきても、警察がこれは大変だと言っているだけで、防衛庁は手が出せない。発砲しなければ出せないという形になっているのでしょう。  もうちょっと具体的に言いますならば、敵の戦闘機が二機やってまいりました。そしてこちらも二機やってきた。そして向こうから発砲して一機は撃ち落とされた。撃ち落とされずにねらい撃ちされたやつが健在ならば応戦できます。しかし、こちらにおって発砲されなかったのは見ておるだけで、実はこれに応戦できないというような見解をとっておるようでございます。正当防衛以外にはこちらが手が出せないということになると、警察が先に出て、大砲さえ撃たなかったならば軍艦が接岸してみても警察の領分、こういうことになるのでしょうか。
  99. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 これはいろいろな状況によっても違うと思いますが、現在のような状況のもとにおきましては、ただいまお話にございましたような艦艇が領海を侵したときには第一義的には海上保安庁がこれを捜査する責任があるわけでございます。
  100. 塚本三郎

    塚本委員 海上保安庁というのは運輸省じゃありませんか。だから、もう事件がこれだけで済んだことは私は幸いだと思います。だからこの際、総理、民社党が増強せよとかどうこうということは結論の後の話でございますけれども、この問題を契機として、本院において日本の防衛はいかにあるべきかを真剣に議論する防衛委員会の設置を私たちがもうすでにこの数年提唱しているのです。そのことに対して歴代総理はお約束なさりながら防衛庁任せで、法からいったならば海上保安庁の運輸省関係の船が出てきてみたり、敵かどうかわかりませんけれどもよその軍艦が接岸しても、海上保安庁が恐る恐るというような形になったり、飛行機が着陸しても警察が調べてみて不起訴処分だから防衛庁どうぞ、参考のためで、防衛には役に立たぬじゃございませんか。こういうことをきちっと議論をして、本院でもって、内閣委員会というお役人の給与等を調べることが中心である委員会に一緒に割り込んでいくのではなく、やはり一億国民の安全のために安心していただく政治としての責任をとる必要があると私ども思うのでございます。総理、防衛委員会の設置をもう一遍きちっと国民の前でお約束なさったらいかがでしょう。
  101. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国の安全を保障するということの問題は、国政の中でも非常に重要な位置を占めるわけでございますから、われわれ自身も塚本君と同じ考えで、自民党はこの国会の中に特別の委員会を設けることに賛成でございますが、これはもう少し各党間の話し合いをするために自民党も精力的に各党間とお話をいたしますから、どうか塚本君の方の民社党の方もこの問題に対して御協力を願います。この問題は各党間の話し合いに持ち出して実現を期したいと考えております。
  102. 塚本三郎

    塚本委員 総理総理の御答弁は、いつでもごりっぱなんです。だけれども、その実行がなぜ伴わないのか。時に自民党総裁であられるのにかかわらず、あなたの仲間である自民党さんが賛成なさらなかったり、あるいはまた、国会の中で圧倒的に多数の自民党さんと少数ではあるけれども民社党とが合意したならば、ほかの方にも御納得いただけるようにここで御答弁をなさったならば、総理大臣として、自民党総裁として、これが実現のために全力を挙げていただいて、そうして、それができなければ、ここで国民の前でやすやすと御答弁なさってはいけないと思うのです。それを国民は、御無礼な表現だけれども、うそつきの三木と、こういうふうになっちゃうのですよ。総理はそのおつもりなんだけれども、総理が余りにも相手の意見を聞き過ぎるのか、ある程度でいわゆる決意をして実行しないと、こういう防衛の問題なんかは、過ぎてしまったいわゆるロッキードの事件はまだしものこと、これから来るであろう問題は、もっとやはり強引におやりにならないと、そうして、どうしていけないのだということを、いけない反対党の人たち意見国民に明らかになるようにしておいて、そうして、責任をおとりにならないといけないと思います。御無礼な表現を使って恐縮でございましたけれども、世間の諸君の声——御答弁は実にごりっぱです。しかし、それが裏打ちがされていないことを総理はやはり御自覚いただいて、もう一遍御答弁いただきたいと思います。
  103. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは塚本君御存じでしょう。委員会を設けるのは各党の合意というものが必要なんです。こういうことでありますから、これは私の意見だけで通るわけではございませんので、今後積極的に自民党としてもこの問題を各党間の話し合いがまとまるように努力をしようということです。これは、国会のこと自体は各党間の話し合いがまとまらなければ、常任委員会というものはなかなか設置できないような慣習になっておるわけでございますので、この問題は自民党としても各党間の話し合いに持ち出して、これを実現するために積極的に努力するつもりですから、民社党も御協力を願いますと申しておるわけでございます。(発言する者あり)
  104. 白浜仁吉

    白浜委員長 お静かに願います。
  105. 塚本三郎

    塚本委員 こんな重要な問題は、防衛庁自身の問題というよりも、あくまでシビリアンコントロールを主張する立場からするならば——やはり防衛庁が独自におやりになることは御苦労です。しかし、防衛庁だけが突っ走ってもらっては困るのです。シビリアンコントロールの立場からするなら、本院が責任を持つ。だから、それができなかったならば総理大臣として日本の平和に対して責任が持てませんぞ、それぐらいのことを国民に向かって宣言して、断固としてやるのだというぐらいの決意をなさるのが必要でないでしょうか。こそこそとやっていこうとしたら、シビリアンコントロールが崩れてしまいますよ。どうでしょう。
  106. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 こそこそとやろうとしておるわけじゃないのです。この国会国民を前にして、これはぜひとも必要だから、自民党も積極的に各党間の話し合いを進めるから、各党においてもどうか置くように協力してもらいたいということを言っているのですから、何もこそこそとこんな問題ができるわけではない。だから民社党の方においても御協力を願いますと、自民党も積極的に各党間の話し合いでこの問題を持ち出してまとまるように努力をするということ、私としても答弁するとしたならば、これ以上の答弁はやはりできません。
  107. 塚本三郎

    塚本委員 今度は本当に実行していただけるというような決意だと私は受けとめて、私たちも全力を挙げて御協力を申し上げますので、総理の在任中にぜひこれが実現するように御努力をいただきたいと思います。  そこで、同じ外交の問題についてさらに申し上げたいことがございます。  経済外交の問題でございます。ソビエトから言われて、表現は悪うございますけれども、強くきちっとできなかった。アメリカから協力の要請についても、まあそうではないと政府はおっしゃるけれども、国民は心配をいたしております。同じように、いわゆる外国に対する開発投資の問題等におきましても、福田総理も私は一度陳情を申し上げたことがあるから御存じでございますが、ついに法律でもって、いわゆるパプア・ニューギニアにおけるところの開発投資は取り上げられてしまいました。いろいろな難題をつけられてまいりました。世銀から金を借りるためには五一%の株が必要だという難題でございました。調査をしてみましたら、実際はそれはうそでございました。あるいはまた、企業に対する責任者を渡せという難題でございました。それも事務当局の協力によって切り抜けてまいりました。ついに相手方に難題が通らないと見たら、法律でもって取り上げてしまって、そうして開発をしておったところの役員たちや日本従業員は全部まる裸で追い出されてしまいました。そして日本でもらっている給料に対する税金まで払ってこなければ帰してやらないと現地では言われて、二万ドルすなわち七百万円ほど、盗人に追い銭のような形で本国から金を送って、実は追い出されてまいりました。大使館に相談してみましたら、厄介者が来たような形で応対をされてしまいました。その間、私は外務省の事務当局にずいぶん御協力いただいた。その間におけるところの一言一句といえども勝手に企業はやったのじゃない。外務省に文書までつくっていただいたり協力していただいた。その点は事務当局に感謝いたします。通産省も同じような御協力をいただいた。にもかかわらず、最終的にはこういう形で、政府の代表を派遣してくださいと副総理に申し上げた。出そうとおっしゃったけれども、実際は行っていただけなかった。もうこれは仕方がないから、いわゆる投資保険の適用をしてちょうだいという段階になった。追い出されて身ぐるみはがれて法律を適用されたのだから一〇〇%投資保険の対象になります。それは事務当局もお認めいただいておるのです。にもかかわらず、投資保険を適用すると他の企業に対する一切の融資がストップされてしまうので御勘弁をという気持ちが事務当局におありになるわけであります。私は、日本というものは、軍事やあるいはまたあらゆる外交だけではなく、経済の外交においてもこういう主体性を失った形でふらふらしておるとしか思いようがない。歯ぎしりかんで進出の企業は実は泣いております。総理、こういう事態を御存じでしょうか。
  108. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 経済外交に対して日本が主体性を持つことは当然でございます。経済外交の基礎にあるものは、やはり日本の国益というものを守り、国益をさらに発展させていくということですから、個々のケースに対していろいろな御批判もありましょうが、主体性のない経済外交というものはあり得ないことでございます。いろいろ個々のケースについては批判をされるような余地もありますが、この点はいろいろと気をつけなければならぬ点もあることは事実でございますが、常に日本の経済外交は主体性を持つべきであるということは申すまでもない。
  109. 塚本三郎

    塚本委員 副総理にお尋ねいたします。  経過は大分前のことですからお忘れいただいたかもしれませんが、二度にわたって私はお願い申し上げた件でございますけれども、相手方はいわゆるジョイントベンチャーですから、相手は政府なんですよ。こちらは民間会社なんですよ。日本政府が行かなければ、法律をつくって自由にするのですからどうにもならないのです。しかも、同国に対しては一番大きな投資のチームなのでございますから、政府の代表を出していただきたいと私は二度にわたってお願いして、副総理もお約束いただいたはずでございます。このときに私は痛切に感じたことが一つあります。  相手の国に言わせると、日本は経済協力をしたと言うけれども、何にも協力してないじゃないか、ひもつきの協力ばかりじゃないかと言って向こうの政府は怒っているのです。やはりそのときに、あくまでも民間投資は民間投資、これは向こうの自由にはなりません、日本政府から金を借りて投資しているのだから、返すまでは五一%の株を持っておらなかったら返す責任はとれません、だから、それは民間投資だから十分理解してください、そのかわり、いわゆる新興国あるいはまた開発途上国だから別個に経済協力はひもつきでなくてしてあげる、こういうことがなかったら、出ていった企業は全部かたき討ちをやられますよ。だから、世界じゅうから、日本はドル持っておっても経済協力をしない、しておるのは投資のときの金を貸しておるだけだ。だから、これも向こうは協力だというから、向こうの国会でまで日本の会社は実はひもつきしか協力してくれないのだ、日本政府はと、こうなってしまうのです。それは民間企業の投資というものと、そういった政府からの直接ひもつきでないところのいわゆる経済の無償供与、そういうことをきちっと分けておやりにならないと、各地において悲劇をこうむっております。その点、副総理、どういう御見解でしょう。
  110. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お説のとおりと思います。つまり、無償協力、これはそういう適当な案件があればやる。しかし、企業が進出する、それに対する政府の資金的援助、協力と申しますか、これはそれとは別個の問題であります。  ただ、御指摘のパプア・ニューギニアの問題です。これは適当な経済協力というか、無償援助とか技術援助とか、そういう案件がなかったのじゃないか、そのような感じがしますが、筋は塚本さんのおっしゃるとおりでなければならない、こういうふうに思います。
  111. 塚本三郎

    塚本委員 遅きに失したのですよ、副総理。私は、あなたからおっしゃっていただいて、基金の大来総裁においでいただくことまで指名で申し上げた。そのときに、いまおっしゃったように、無償供与は無償供与として、少なくとも日本が戦争で御迷惑をかけた国だから、一億ドルくらいはやはり無償供与のことをしてあげなかったらこの国は成り立ちませんぞ。だから、そういう意見等もあなたは実情調査して聞いておいでになったらどうでしょう。しかし、それと、民間企業は政府から金を借りて進出をするのだから、これに対しては無理を言いなさるな、使い分けてこの事態の円満な解決のために努力をなさったらいかがでしょう。私は、そういうことまで含めて、もし向こうの要望があるならば、春日委員長塚本書記長が副総理なり総理にお願いしてでもそれはそれで協力をさせていただこう、そういうふうにしていかなかったら、これは出ていった企業がかたき討ちされます。だから、そういう点を私は要望を再三にわたって申し上げたのであります。ついにそれがなされないままに追い出されて、大使館に駆け込んだら、迷惑者が来たというような状態で横向いて、そういうような扱いを受けて歯ぎしりかんできておりますよ。これはいわゆるTPPOだけじゃないのです。マレーシアにおいてもあるいはまた別のところでもパプア・ニューギニアと同じような結果になっておる。しかも、それであって身ぐるみはがれて取られてきながら、保険の適用さえもちゅうちょしておいでになるという状態じゃございませんか。むしろ、日本協力をすることは協力をする、堂々と政府の代表を直ちに派遣なさって、そのかわり民間を法律で乗り取るなんというやり方はいけませんということで、きちっと、いまからでも遅くないから、解決に乗り出されていただかないと、私たちはこれは黙っておれませんよ。強引に保険の適用を迫っていくという形になってさましたら、経済関係はまずくなります。直ちに事態解決のために、やはり政府の代表をお出しいただいて、その法律の適用をしてください、そのかわり、供与は供与、民間の開発は開発、最初の進出の協定を実現してくださいと政府立場から忠告を申し上げて、協力してあげることと、そして世界経済のパートナーという立場とを区別をなさっておやりになることが必要だと思います。事態を十分外務省、通産省、大蔵省御承知のはずでございますから、いまからでもそういうふうに乗り出していただくというお約束をしていただけませんか。いかがでしょう。
  112. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 非常にこれは込み入った事情のあるような問題のようですが、なお政府においても取り調べ、適当な対策があればそれを進めるということにいたします。
  113. 塚本三郎

    塚本委員 外務大臣がおいでになりませんから総理に申し上げますけれども、やっぱりそういうときに頼るのは日本の大使館です。大使館が、そんな法律をつくったら国際信義上まずくなるぞと一言ぐらい大使が首席大臣に向かって注意をなさるということが必要だと思いますよ。厄介者が来たという扱いをされて泣いて帰ってくるような進出企業。私が関知しておったからこれは申し上げられるのですけれども、恐らくこのテレビをごらんになった各地の進出企業はまた同じようなことを言ってくるだろうと私は思います。これは外務省としてやってあげなければならぬことをやってないものだから、できるだけさわらぬ神にたたりなしというような態度日本外交はなっておるのです。だから、防衛問題だけじゃない、経済外交においてもそういう状態があるということを十分御認識いただいて、福田総理とともに、とりあえずその問題を端緒としまして、私は後から二、三の問題等も御相談に上がりますから、速急に解決をしていただくようにしないと、ただこのまま保険の適用をすれば一切の融資はとまるのですよ。これは経済断交になるのです。だから、それはやっぱりまずいということをお考えになって、総理もその点外務大臣の立場から、副総理よりもっと前向きの答弁をお願いしたいと思います。
  114. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 福田総理のお答えいたしましたように、この問題は、実情というものを塚本君熱心に御発言になりまして、われわれとしても事情というものをよりよく理解することができましたから、そういう御発言も踏まえて、各省間で問題を掘り下げてみることにいたします。
  115. 塚本三郎

    塚本委員 ありがとうございました。ぜひそれをやってちょうだい。もう各省の諸君はずいぶん御協力いただいて、事務のレベルではどうにもできない。局長の諸君は全部知っているのです。五年間かかってりっぱに実が実って、いざ収獲のときに追い出されてきたのですから、こんな悲しい状態は——あるいは日本の国家として屈辱的な事態になった。  しかし、私は相手を責める気はありません。それは日本がなすべきことをなしていないんだ。事務当局がずいぶん御苦労なさってここまで来たのです。ですから、総理と副総理は十分チームを組んで善処をしていただきたい。お願い申し上げておきます。  ロッキード事件に移りたいと思います。  灰色の高官名の公表につきまして、国会の問題だとおっしゃるけれども、しかし私は、もうこの段階で、各党の代表が集まって公表の基準を決めて、そうしてきちっと公表するということを具体的に早くなさらないと、これは、人権の侵害ということは、公表されることによって受ける侵害だけじゃない、多くの波及的な悪い現象が出てきておるというふうに思いますので、直ちに——少なくとも児玉ルートの問題は第二段階になると思います。しかし、捜査が山を越えたという全日空丸紅だけは、これはやはりお金をいただいた方は、よかれあしかれ、どういう経緯であろうと公表していただくということのお約束をしていただきたいと思います。
  116. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、繰り返して申し述べておりますように、ロッキード特別委員会においても各党間で案は出ておるわけですから、これを各党間が歩み寄ってそうして一本にまとめることは不可能だと思っていないのですよ。国会で国政調査権を将来定着していくためには、これくらいの問題で各党間が一本にできぬというふうには私は考えていないのですから、早急にこの問題について各党間で意見の一致を見るように——一方、私は、自民党総裁として、自民党委員とも懇談をしたいと思っております。そうして、自民党もできるだけ早くこれをまとめて、国会にその資料を提供し、国会を通じて国民公表して、国民判断の材料を提供するということが好ましいわけでございますから、われわれも努力をいたしますから、各党間においても、どうか一本にまとめるということに対して御協力を願いたいと思うのです。
  117. 塚本三郎

    塚本委員 実は、刑事訴訟法四十七条の、いわゆる公益に必要な場合はその限りにあらずというただし書きによりまして、氏名の公表はやろうと思えばできることになっております。  なぜ私がそれを主張するかといいますと、最近こういうような文書が毎日のように近辺に配られておるのです。これは私に対する非難でございますけれども、「ロッキード事件でうかびあがった民社塚本氏の黒い金脈・人脈」。私はロッキード事件には全然関係のないことは、国会議員は全部周知の事実です。だけれども、こういうチラシがある党から配られますると、そうするといかにも——もらったとは書いてないですよ。だけれども、受け渡し人、丸紅の伊藤宏の名前を出して、「塚本三郎」として、ここへ矢印が書いてあるのですよ。そうすると、九九%もらったというふうに先走っちゃうんです。もらったと書けば、私は名誉棄損である党の責任者を訴えますけれども、もらったとは書いていないのです。だけれども、こういうふうな形を、近所に配られるだけではなくして、日曜日ごとに近辺に一々放送して回られますると、一体どういうことになるのか。むしろこれは選挙違反の問題かもしれませんけれども、しかし、たとえ一万円たりとも、いただいた方の名前を全部公表していただければ、その他の方はシロでありますということになるのでしょう。  私たちが一々こう言ってみたって——国会の皆様方は御存じですよ。だけれども、近所の余り御存じない方たちがこれを見たら、ああ塚本三郎児玉譽士夫というのと関係があったのか、伊藤宏と関係があったのかと。確かに、九段宿舎のすぐそばに彼のアパートのあることは新聞で承知いたしましたよ。だけれども、出す方は不見識な政党であり、そうしてまた詐欺の隣のような政党であることは私たちは承知しております。しかし、やはり国民の中ではそうは思わないのです。だから、これにたぐいするようなチラシがどんどん配られてごらんなさい。これは大変な問題になっているのですよ。私だけじゃないです。恐らく、この中においでになる皆様方だってしょっちゅうやられておると思うのです。だからこれは、この段階になったならば、もらった人たち起訴されない人たちの人権を守るよりも、全然関係のない、全く白紙の現職国会議員同僚諸君を守ることの方が大切になってきたと私は思っております。総理がきれいなことをおっしゃるけれども、もう実行の段階なんだから、これははっきりしていただかなかったら、そんな党が間違っておると言うだけではいけないのです。やはり個人の問題になると、言いわけするとまた弁解がましくなってまいりますので、これは速急に、もらった人たちは、よかれあしかれ、そのことを国民の中にきちっと政府の力であるいは国会と双方で公表していただいて、そしてその方たちは理由があれば選挙のときに弁明なさればよろしい。全く関係のない私どもまでこうやって写真入りでやられて、しかも一回だけじゃないのです。しかも、こんなものが子供の学校にまで配られてやられたらどうなりましょうか。子供の教育のためにも大変な問題になりますよ。あなたのおっしゃったことが実行されないことがこういうような事態にまでなっておることを認識して御答弁いただきたい。
  118. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 御承知のように、政府がやることは刑事上の責任を追及するということ。だから、塚本君も御承知でしょう、この間の党首会談による議長の裁定は、ロッキード事件政治的、道義的責任の有無については国会で審議するということとして、そのために政府があらゆる最善協力をせよという約束に私は同意したのですから、したがって、道義的、政治的責任の追及の場は国会である。その国会に対して、国政調査権のもとにおいてこれが追及される場合に、政府としては最善協力をするという約束をしたのですから、一番必要なことは、ロッキード特別委員会灰色高官範囲というものを早く一本にまとめていただいて、そうしてそこで道義的責任の有無というものが明らかになって、そのことが国会を通じて国民の前にも明らかになる。そうしないと、塚本君に限らずこういう事件が方々にあって、疑惑と揣摩憶測に満ちたこういういやな空気を早く私は一掃したいのですよ。もう少しすっきりした空気にするためには、どうしても道義的、政治的責任の所在というものは国会の場で明らかにするということが議長裁定でもございますから、そういう意味で範囲を一本化する。私も、いま自民党総裁として、自民党議員の連中とも近く懇談もしたいと言っておるぐらいですから、どうか各党協力を得て一本にまとめることに御協力を願って、いま塚本君の御指摘になったようないやな空気を一掃して、もっとすっきりした空気の生まれることを願っておるものの一人でございます。
  119. 塚本三郎

    塚本委員 これは防衛委員会以上にもっとやさしい問題だと思います。といいますのは、野党は全部こぞって全面公開を要求しておりますから、総理、あなたの仲間であります自民党さんさえ御協力いただけばできることです。しかも、自民党さんの中にだってこういうふうな被害を受けておる人がたくさんおいでになっておられますから、早急にこれをやっていただきまして、良心的な議員を守ることこそが人権の尊重になるのだ、いまやこういう段階に来たのだということを御認識の上で進めていただきたいと思います。  時間が少なくなってまいりました。次は、中小企業問題に移ります。  大蔵大臣、私は、前国会におきまして歩積み両建ての問題を論議いたしました。おかげで借り入れしておる企業に直接のアンケートを出していただきました。その結果、金融機関はあわてて、そのアンケートの中に不始末が露呈することのないようにと思って、銀行の責任者が一千万、二千万とお金を持って、預金者に対してこの金を使ってちょうだいと言って配って歩きました。初めてでございます。いい傾向でございます。あるいは持って返しにはこなかったといたしましても、あなたの預金は三千万円あります、自由にお使いいただいて結構ですと拘束を解放する電話をかけてくださった。その結果、中小企業者は大蔵大臣の御決断を大変喜んでおります。これからも毎年一回ずつはそういうアンケートをおとりになることによって、さらに大蔵大臣としてのその行政指導が徹底するようになると思いまするので、いわゆる強制預金、すなわち歩積み両建て等をなくするための施策の一環として、いま申し上げたように、直接にアンケートをおとりになることをお勧めいたしますが、いかがでしょうか。
  120. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御要請もございまして、ことし、金融機関からの報告ばかりでなく、借り入れ側に対しましてアンケートを出したわけでございまして、こういうことを引き続き毎年やれという御提言でございますが、(発言する者あり)御趣旨はよくわかりますが、部内でそういう方向で検討さしていただきます。
  121. 塚本三郎

    塚本委員 ぜひ前向きにやってください。幾つかの理論よりも、それさえやっていただいて、大蔵大臣が、どんなに中小企業が高金利に悩まされておるか、実態さえつかんでいただくというその挙に出ていただくだけで、こんなにも中小企業者は喜んでおります。さらに進めていただくために、年に一回ずつ、毎月やれという後からの御発言がありましたけれども、とにかく大蔵省の指導を徹底させるということでございますから、費用がある限りそれをおやりになることが、大臣としての忠実な姿勢であろうと思いますから、その点を強く要望いたしておきます。  さて、それとともに、最近、信用保証協会に対する保証料の問題が大変大きな問題となってまいりました。通産大臣に申し上げておきますが、いわゆる信用保証協会の保証をとれば安易に銀行は貸してくださるというようなところから、銀行に行きますると、相手方に対する信用調査や担保設定をやるのではなくして、保証協会へ行ってください。みんな保証協会に行ってしまうのです。もともとわが党がこの信用保証協会設立につきましてずいぶん力を入れましたのは、十分に担保がない、あるいはまた信用が薄いものを補完するために保証協会の制度なるものを設けたのであります。ところが、これが慣例化してしまいますると、十分に担保があっても、自分のところで調査をしてそうして設定をすることがめんどうなものだから、だから担保が十分にあっても、担保まで保証協会にとらせて自分はとらないのです。そしてお金だけ貸しておる、こういう形になる。そうすると、借りた方の中小企業者は金利の上に保証料が上積みになって、こんなものができたために健全な中小企業者は金利の負担がかさんでしまったという形になっておるのです。私どもが、そんなものは保証なしでいきなさいと言っても、そんなことができるでしょうか、こう中小企業者が言うような状態になった。担保があるならばいいじゃありませんか、そんなこと銀行は許してくれません、こうなんでございます。こういうふうに、できた法律が立法の趣旨とは違った形に悪用されております。  保証協会は、だからもう手いっぱいの保証をしておる。担保設定だけでも全然手が回らない状態だ。しかし、それでも私は、銀行がやるよりも保証協会という地方自治体がやってくださることは相当親切だと感謝すべきでしょう。しかし、それならばそれで、その分の金利だけは安くさせなかったら中小企業は何にもならなくなってしまうじゃありませんか。だから健全な諸君が困っておるという状態であります。したがって、この点を、保証をつける場合には保証料だけは引くということを強く指導していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  122. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ごもっともな御意見でございますから、大蔵省と十分相談をいたします。
  123. 塚本三郎

    塚本委員 十分ひとつ……。  あと一、二の問題といたしまして、中小企業の問題でもう一つ、最近大問題になっております基礎資材、建築のいわゆる鉄筋の問題でございますけれども、これがいま暴落しております。かつては十万円を超えました。いまは五万円台に下がっております。人件費や資材が倍になっておりまするのに、価格はいわゆる半分になっております。破産、倒産、私の選挙区でも一工場がつぶれました。皆さん、こういうような状態になっていることを考えてみますると、一つには、やはり不況カルテルをつくっていただくように公取に協力をお願いはいたしております。しかし、それとともに、やはりこれはいわゆる国民生活に、住宅の基礎資材ですから、だから安定するための備蓄制度を進めていく必要があるのじゃないでしょうか。ことしは幸いに非鉄金属に三百億といういわゆる備蓄の制度が進んでまいりました。レアメタルも進んでまいりました。これが高くて暴騰してみたりあるいは投げ出さなければならないというような形になるのは、やはり国民生活に直接に影響のあるところのものは低位安定を図るためにきちっとしていく必要があるという意味において、高くなったときには放出する、底値になって企業がつぶれてまた暴騰するという前兆のときには政府が買っておく。こういう備蓄制度というものは、国民生活に必要なときにはやはりやっていかなければいけない。かつてアメリカは食糧で困りましたけれども、食糧備蓄公団をつくったために、世界の食糧戦略の中で主導的な力を持つようになったのであります。日本だってそういうこと、いわゆる基礎的なそういう資材だけは備蓄をしておいたならば、いわゆる材料が暴騰したときにでもそれで値段を抑えることができるじゃありませんか。
  124. 白浜仁吉

    白浜委員長 塚本君、時間ですから結論を急いでください。
  125. 塚本三郎

    塚本委員 そういうような状態から、これに対して再検討してその道を開くという方向を進んでもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  126. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 さしあたっての問題としては、不況カルテルを再びつくるという動きがございますので、その動きを見守りたいと思います。  それから根本的には、平電炉業界の構造改善をやる必要があろうかと思います。やはり供給力が非常に大きいということですね。でありますから、備蓄ということよりも構造改善、これをやる、とりあえずは不況カルテル、こういうことで解決をしたいと思います。
  127. 塚本三郎

    塚本委員 おっしゃったとおり、不況カルテルと構造改善、そして備蓄……
  128. 白浜仁吉

    白浜委員長 もう時間ですよ、塚本君……。
  129. 塚本三郎

    塚本委員 半ということですから、もう二、三分、もう一つだけ。
  130. 白浜仁吉

    白浜委員長 いやいや、二十分までですから……。
  131. 塚本三郎

    塚本委員 それじゃ、もう一つ災害だけ。恐縮です。  災害の問題で一言だけ触れていきたいと思います。  今度大変な被害を受けました。その中で忘れていけないことは、これは人災だという声があるのです。私も調べてみましたが、長良川の決壊のごときは、決壊個所は昔池であった。池の下はやわらかい。だから、その上に堤防を築いておるから崩れたのです。あるいはまた片一方におきまして、先日はあの多摩川の問題にしましても、取水口の堤防が実はこちらに入っていって決壊しておるという形になっております。あるいは愛知県におきましても、天白川のごときは中が空洞になっております。こういうふうに……
  132. 白浜仁吉

    白浜委員長 塚本君、時間ですよ。
  133. 塚本三郎

    塚本委員 中があんこがへっこんでおりまするので、いつ何どき崩れるかわかりません……
  134. 白浜仁吉

    白浜委員長 約束の時間ですから、おやめください。
  135. 塚本三郎

    塚本委員 こういう点を十分に検討していただきたい。  要望だけ申し上げて、私の質問を終わります。
  136. 白浜仁吉

    白浜委員長 これにて塚本君の質疑は終了いたしました。  次に、安井吉典君。
  137. 安井吉典

    ○安井委員 初めに三つの問題を次々伺っていきたいと思います。  初めに東北、北海道の冷害対策でありますが、ことしは四十六年以来五年ぶりの冷害、凶作の秋を迎えました。政府は、口で食糧の自給率向上を言いながら、やることは米の生産調整、買い入れ制限、低価格の押しつけというふうなことであったと思います。田植え機から収穫のコンバインや乾燥機まで機械化は進みました。しかし、立ちんぼの稲を実らす機械はありません。しかし、機械を今まで無理して買わされた負債が重圧となってのしかかっている農業経営の現在の状況の中で起きた今度の冷害、だから問題は深刻だと思います。銘柄米の奨励が裏目に出た等のこともあるし、それらの原因を究明するとともに、農民の生活安定と再生産確保のための諸対策をできる限りきめ細かく進めていかなければならないと思いますが、農林大臣は次に聞くことにして、まず三木総理大臣のお考え伺います。
  138. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 食糧の自給率を高めるということは、これは政策の基本として大切なことでございます。しかし、安井君も御承知のように、これは食糧のどうしても輸入に依存せざるを得ない分もあるわけでございますから、そういうこともあわせて食糧の安定的供給を期さなければならぬ。  もう一つは、やはり日本の食糧の潜在的生産力と申しますか、それをやはり増強していくことが必要なんで、そのためには、やはり基盤整備のような事業をもう少し、いままでも力を入れておりますが、一層力を入れて、そうしてそういう生産力を培養していくということも、これから食糧自給というものとにらみ合わせての政策として非常に重要なものであると私は考えておるわけでございます。
  139. 安井吉典

    ○安井委員 わが党はいち早く現地調査を行い、緊急対策及び恒久対策二十二項目をまとめ、すでに政府に申し入れており、したがって詳細な論議は関係委員会でやってもらうことにし、ここでは、きのう以来の論議も私承っておりましたので、それにダブらないような四点について伺っていきたいと思います。  第一は低品位米、被害米を含めて、政府責任で買い上げる措置をとるということの言明は農林大臣からありましたが、農家の方は脱穀調製を進める都合もあるわけで、早く知りたいわけです。いつごろその内容が明らかにされるか、それが第一点。  それから第二点は、天災資金とか自創資金等の金融措置を十分講ずべきことは、いままでの主張でも明らかだし、政府答弁もありました。当然なことだと思いますが、しかし借りた金はいつか返さなければならない。やはりただでもらえる共済金のありがたみがこういう年こそあるわけであります。農業災害補償法は社会党の片山内閣、短命八カ月の所産です。三木さん、社会党が政権をもらえばもっといい法律をいっぱいつくりますよ。もっとも三木さんは片山内閣の閣僚でもあったようです。  その共済金の基礎である農災法の改正はことし行われたが、その改正は今度の災害には適用されないわけですね。そういうふうな問題をも含めて、ぜひできるだけ多くのお金が渡りますように、たとえば被害米の見方を緩める等、損害補償基準を緩和するような措置で農家手取りをふやすということ、それをぜひ考えるべきではないか、これが二番目の問題です。  なお、損害評価のための事務費や年内支払いの問題等については、農林大臣からすでに約束があったとおりであります。  第三番目には、昔から酪農には冷害なし、凶作なしという言葉があったが、ことしは干害がこの上に加わったわけですから、地方によっては牧草の生産が三〇%前後に落ちたというところもあって、冬越しの飼料がなくて牛を売るという、そういう話まで出ているわけですので、その越冬用の飼料の確保と購入金の助成、この問題をぜひやるべきであるということが三番目。  それから四点目は、政府は米の買い入れ限度数量を末端農家までおろしているわけですが、ことしは全国的に地域ごとに、農家ごとに作況のむらが大きいわけです。だから、もうこの際は、この限度数量の割り当ては撤回をして、全量買い上げという形を明確にすべきではないか。  以上四点について、農林大臣の御返事をいただきたいと思います。
  140. 大石武一

    ○大石国務大臣 お答えいたします。  ことしはいろいろと等外米、規格外の米がたくさん出る予想でございます。しかし、その全貌についてはまだ十分な調査がございませんので、できるだけ早い機会に、この実態をはっきりとつかみまして、買い入れの方針を決めたいと考えております。しかし、この買い入れの条件につきましては、前からも申し上げたかと思いますが、できるだけ全量政府において責任を持って米の処分ができるようにいたしたいと考えております。たとえば低品位米の中でも自主流通米に移せるものは、できるだけこれを移しまして、できるだけ農家の収入を多くしたいということ、しかし、それもできない場合には、あるいは余った場合には、もちろんこれは政府で買い入れます。しかし、さらに政府が買い入れることのできない、食糧とならないようなものに対しましても、やはり何とかこの処分ができますように政府においてあらゆる努力をいたす決心でございます。  それから、二番目の共済関係その他のこういうものの基準を緩めないかということでございますが、基準は緩めるわけにはまいりません。しかし、温かい気持ちでこういう法律を扱ってまいりますれば、必ず何らかの大きな効果はあると思います。そういう気持ちで、具体的にいま申し上げませんが、そのような気持ちで、基準は守っていきますが、できるだけ多くの農家が救済されるようには一生懸命努力してまいる決心でございます。  それから、三番目の越冬用の牧草あるいは飼料についてのお話でございますが、確かに北海道の一部ではそのような干ばつがございまして、越冬用のえさに困るところがあるようでございます。幸いにことしはてん菜がかなりいいできでございますので、そのビートトップをできるだけそこに適用するというようなことも中心といたしまして、この乾草の手当てに対しては十分な努力をいたしたいと思います。  なお、政府としましても、大麦の飼料は相当手持ちがございますので、必要な場合にはこれを回すこともできると考えております。  それから、四番目の、これは最初答弁と似ておりますので、できるだけ米を農民の手元で余らないあらゆる努力をして、まだその需給の状態がはっきりわかっておりませんから何とも言えませんけれども、できるだけ全量買い上げができるようにあらゆる配慮をいたす決心でございます。
  141. 安井吉典

    ○安井委員 いまの最後の問題ですが、限度数量の割り当てそのものを変えるという意味に受けとめてよろしいですか。
  142. 大石武一

    ○大石国務大臣 食糧庁長官から……。
  143. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 お答え申し上げますが、災害に伴う低品位米についての買い入れのために限度数量を撤廃しろというお話でございますが、われわれといたしましては、あくまでも買い入れ基準数量限度内で、売買が国との間で決まりました数量の範囲内で買うつもりでございますが、大臣がおっしゃっております意味は、本年は各県とも相当被害を受けておる、また地域によっても受けておりまして、いわゆる限度枠のゆとりが相当出る。したがいまして、そういうことによるいわゆる県間調整なり町村間調整、それは個々の生産者にも及ぶわけでございまして、そういう操作によって可能ではないか、また、そうしたいということを申し上げておるわけでございます。
  144. 安井吉典

    ○安井委員 私どもは買い入れ制限そのものに問題がある、こういう立場から問題提起をしているわけでありますが、この議論は、さらに関係の委員会でやりたいと思います。  次に、今度の国会に、私どもは予算補正が行われるものだと期待していた。ところが、政府はなぜか補正予算を組まなかった。この問題については、きのう田中委員から、公共事業等予備費の流用で災害対策を済ますことの不当性について論議があり、前国会で最も大きな財政上の議論になったこの問題にほおかぶりしたまま、ふだんならこの冷害と災害を含めて補正予算が組まれて、災害国会と銘打ったものになっていくぐらいなそういうふうな積極的な構えでなくて、こんな大きなものを閣議で流用を決めてそれだけで決まるという、そういう仕組みそのものに、私ども政府の構えに疑問を感ずるわけです。そして、災害の問題のきのうの提起のほかに、私は、地方財政への対策をやはり補正で処理すべきではなかったかということの提起をしたいと思います。  自治省に確かめてみますと、大きな自治体の財政需要になる災害対策も大部分は起債で賄うし、人事院勧告に伴う地方公務員の給与改定措置等も五%分はすでに見てあるので、不足分の九百億円ぐらいは、これは地方財政計画上の追加財源需要で十分賄える、だから補正は必要ないのだという説明をしておるようであります。しかし、御承知のように、地方財政の危機はいまだかつてない深刻なものです。こういう事態をとらえて、いまのような形式的な言い方で納得できないと私は思うわけであります。やはり今度の場合も、国の財政も災害対策で補正をすべきだし、同時に、地方財政対策も含めて補正措置が組まれるべきではなかったか、こう思うのですが、大蔵大臣、自治大臣、それぞれお答えをいただきたいと思います。
  145. 大平正芳

    ○大平国務大臣 補正予算を組んで今日の事態に堂々と対処すべきでないかという御議論は、きのう田中さんからもあったわけでございます。その考え方は、私、理解できないわけではございません。けれども、安井さんも御承知のとおり、補正予算を組みます場合におきましては、通例あらゆる追加財源について、また追加財政需要につきまして見当をつけまして、どうしても既定の予算で賄い切れない場合におきまして、そして補正を組む必要がどうしてもある場合に考えられることでございます。けれども、ことしの場合、なるほど大きな災害、冷害がございまするし、その他大きな財政需要がほかにないわけではございません。しかし、そういったものをいろいろ見当をつけてみるわけでございますけれども、ただいま御承認をいただいておる予算の中で賄いがつき得るのではないかと考えておりまするし、一方、財源でございますけれども、税の収入は、きのうも申し上げましたとおり、われわれの収入見込み額程度がどうやら確保できそうな状況でございまして、大きな自然増収を期待できる状況でないことでございます。したがって、財源を補正予算に確保しようといたしますならば、どういたしましても公債の増発をお願いするというようなことにならざるを得ないわけでございます。かたがた、ただいまの段階におきましてこの既定の予算で賄いがつき得ると私ども考えておりますので、また必要な災害対策、冷害対策は、中央、地方を通じましてこの予算でもって十分対応できるという自信を持っておりますので、補正予算考えていないということを御了承いただきたいと思います。
  146. 天野公義

    天野(公)国務大臣 安井委員のお気持ちはよくわかるわけでございますが、本年度の地方財政計画におきましては、年度途中での予期せざる財政需要に充てる経費といたしまして三千億円を包括的に計上しているわけでございます。これによって対処できるものと考えておりますし、また今般の災害復旧事業等に係る財政需要に対しましては、別途地方債をもって充当することといたしております。したがいまして、地方財政対策のために補正予算を編成する考えはいまのところはございません。
  147. 安井吉典

    ○安井委員 気持ちだけわかりますでは困るわけです。自治体の方は金が欲しいわけです。しかも大蔵大臣は、公債をよけい発行しろと言うのかと開き直られるわけなんですが、地方財政の方は五十年度の国税三税の伸びがあって、これに三二%を掛ければ約六百億円、これは黙っておけば五十二年度の交付税特別会計に入っていくわけです。前にも、そのときの財政の苦しいときは特例法をつくってそれを本年度の会計に入れた例があります。九百億円の給与財源の不足なら、六百億円これにあるわけですから、財源はあるわけですよ。私はそういう具体的な財源を提示して、補正予算をぜひ組みなさいとこう言いたいわけでありますが、これは今度の国会では政府が逃げ切っても、次の機会にはやはり補正予算を組まざるを得ないような時期が来るのではないか、私はそう思うのですよ。これから後も年度末まで補正予算を一切組まないでやれると、そうお考えですか。
  148. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ただいま予想される追加財政需要というものを念頭に置きまして、これを既定の予算で十分賄えるかどうかということを精細に検討いたしたのでございますが、財政当局の判断といたしましては、補正に依存することなく賄い切れるのではないかと考えております。
  149. 安井吉典

    ○安井委員 ぜひとも補正措置が必要だという主張を私どもは今後とも続けてまいりたいと思います。  ところで、前国会でも議論したわけですが、地方交付税法第六条の三では、地方財政の財源不足が著しくなった場合には制度改正もしくは国税三税の三二%の率の改正も考えるという規定があって、自治省は明年度この引き上げを要求するというような話も聞くわけでありますが、その点はどうなのか。そしてこれは大蔵省はどう考えているのか。地方財政の重大な危機に直面している際の総理大臣の考え方はどうなのか。三人の大臣にぜひ伺っておきたいと思います。
  150. 天野公義

    天野(公)国務大臣 明年度の地方財政につきましては、現段階では的確な収支の見通しは立てられないわけでございますが、いずれにいたしましても巨額の財源不足を生ずることは避けられないものと思われます。したがいまして、私といたしましては、地方団体が円滑に行財政の運営ができるよう、財源不足については必要と認める場合には地方交付税率の引き上げを含めまして万全の措置を講ずる所存でございます。
  151. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私といたしましては、交付税率の改定問題を検討するにやぶさかではございませんけれども、こういう中央、地方を通じまして流動的な財政状況にございます段階におきまして、制度の根本にかかわる交付税率を改定するというようなことにつきましてはどうも気が進まないわけでございまして、もう少し事態が落ちついた上で、中央、地方の事務の配分その他いろいろ税源の配分等も検討の上考えるべきものと思うのでございます。しかし、検討しないというわけではございませんで、自治省から検討の要請がございますならば、これを検討いたしますことにやぶさかではございません。
  152. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 大蔵大臣考えていることで尽きると思いますが、いまは政策の必要がないと考えておるけれども、必要に応じていろいろ対処していきたいという考えでございます。
  153. 安井吉典

    ○安井委員 そういう消極的な構えでは、今日の重大な自治体の期待にこたえるわけにはいかないのではないかと私は思うので、まだ時間がありますから、ひとつ十分検討してください。  それからもう一つ、沖繩県の問題でありますが、いまこの問題で大問題になっているものですから、この点をひとつ伺っておきたいと思います。  沖繩県のキャンプ・ハンセンにおける県道越し実弾射撃訓練の問題であります。この演習場では、実弾射撃訓練が昭和四十八年四月第一回の計画が行われてから今度は十四回目、そのうち五回が反対運動のゲリラ活動で中止となっています。九月十七日、アメリカの海兵隊は百五十五ミリりゅう弾砲の実弾射撃をする計画で、これに対し、県の当局を初め各自治体は反対、沖繩県の原水協など民主団体が現地で抗議集会を開く。警察やアメリカの海兵隊との衝突が繰り返され、ついに阻止団数十名が演習場に入り、着弾点でのろしを上げるというありさまで、結局、このゲリラ戦術に米軍は一発も撃てず演習中止と、こうなったわけです。  このようにして、沖繩で初めて刑特法の容疑で四名が逮捕、原水協等十二カ所の家宅捜索となりました。  この演習は、県道百四号線、それを越えて砲弾が飛ぶわけです。喜瀬武原地区住民六十七世帯約三百五十人の生活があり、喜瀬武原小中学校もあります。誤射や流弾で生活が脅かされ、仕事も手につかない。子供やあるいは大人も流弾でけが人が出たこともあります。山火事もありました。迂回道路が六億円もかけてつくられたけれども、遠いものですから、利用されず、通学、通勤にも支障を来しております。  問題は、その阻止団体が、阻止団の方は険しい山岳の森林地帯に入っていくが、着弾地点には不発弾がごろごろ、ハブもいる。ハブよけの硫黄——硫黄がハブよけになるわけですが、それまでも持って入って座り込むという、いわゆる決死隊であります。  沖繩県警は、勢力の半分の千人を割いてここに投入し、警視庁もヘリコプターを持っていった。しかし、周囲が四十キロもあるその区域に完全の警備はどだい無理です。前回の演習でも、学生が入って一人がけがをしたという事態もある。  ですから私は、こういう状況の中で行われた演習、また将来も行われようとする演習、そのことに問題があると、こう思うわけです。ですから、まず第一には、四名の逮捕は、違憲の疑いもある刑特法の逮捕、北富士や東富士では住民が演習場に入るケースがあったって刑特法というのはないわけですよ。沖繩はこれが初めて。この不当逮捕をやめるべきではないかということが一つ。それから、ここでさらにまた演習をやる気を持っているのか、米軍がやろうと言ったって、それをやめさせるのが政府の仕事ではないのか、住民に支持協力されないような基地は値打ちがないわけですよ、機能はもう初めからないわけですからね。やめさせるべきだということが二番目。そして三番目は、抜本対策としては、ここはもう実弾射撃場としてふさわしくないわけですから、沖繩の基地の返還がいろいろ行われているけれども、まずこの返還を実現すべきであるということ、この三つの点について、これは防衛とそれから外務にわたると思うのですが、伺っておきたいと思います。
  154. 天野公義

    天野(公)国務大臣 お答え申しげます。  キャンプ・ハンセン演習場は、わが国が日米安全保障条約に基づきましてアメリカ合衆国に提供した施設、区域であり、当演習場に正当な理由なく立ち入れば、刑事特別法第二条違反の罪が成立することは明らかでございます。したがいまして、犯罪の予防、鎮圧、検挙等を責務とする警察において、同法違反の現行犯を発見した場合、これを逮捕し、必要な捜査を行うのは当然のことでございます。  なお、具体的事実関係につきましては政府委員をして答弁させます。(安井委員「いや、事実関係はわかっていますからいいです」と呼ぶ)
  155. 斎藤一郎

    斎藤(一)政府委員 沖繩のキャンプ・ハンセンの演習実施についていろいろ紛争があるということで、その演習の中止もしくは返還を考えないかというお尋ねでございますが、御承知のように、沖繩のキャンプ・ハンセンは非常に沖繩に駐留する米軍のためには必要な、大変重要な演習場でございまして、したがって、この演習場はなお米軍が駐留する以上必要とする状況にございます。  そこで私どもとしては、この演習場が地元住民の生活なりあるいは安全なりに対していろいろな支障を来すことのないようにいろいろ配慮して、お尋ねのございました百四号線についても、迂回道路をこしらえて住民の利便を図る、あるいはまた爆撃音、そういうものについても防音措置あるいはまた被害の防止というふうなことに十分措置を講じてやってまいって、ただいまお尋ねの、中止を求めるということは考えておりません。  また、返還についても、この施設が唯一のこの種の訓練場であることを考えますときに、適地が必ずしもないので、当面これの返還を求めるということも考えておりません。
  156. 安井吉典

    ○安井委員 総理、いま申し上げましたように、とにかく小学校も部落もあって、それは県道であって、それを越えて砲弾を飛ばすというような仕組みは、沖繩本土並み返還だったが、本土にはどこにもありません。沖繩だけをそういう事態の中に置いておくというのは私は大きな差別だと思う。基地にはいろいろあります。いろいろあるけれども、この基地ぐらい復帰以来トラブルが多い基地はないわけですよ。こんなことをしていて、今度また演習をやろうとする、また阻止団のゲリラ活動が始まる。警察官を何千人ふやしたってあの広大なところを、周囲が四十キロもあるところを防ぎようがないですよ、それは。人命にいろいろな問題が起きる、そうでもならなければ政府はこの基地の問題を本当に考える気にならないのですか。いま外務大臣でもあられるわけですから、総理から、基地の返還の要求はたくさんあります。あるけれども、まずこの基地から要求を強めていくということ、私はそういう構えでやってもらいたいと思うのですが、どうですか。
  157. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 全体として沖繩の基地は整理していくという方向にあることは事実ですが、キャンプ・ハンセンはアメリカの演習地としてはきわめて重要な位置を占めておるわけでございますので、これを整理の対象にアメリカと交渉するというお約束はできません。ただしかし、この地域住民のことを考えて、安全とかあるいは生活、こういう点からできるだけいろいろな障害を取り除くために迂回道路をつくったり騒音の防止をしたり、いろいろしておりますが、さらに一層この安全、生活というものに対してはわれわれとしても施策を充実していきたい。しかし、基地そのものを整理の対象にするということはできないということを申し上げておきたいと思います。
  158. 安井吉典

    ○安井委員 こんな御答弁をいただいたのではきわめて不満です。きょうは一応の問題提起だけにして、他の機会にさらに政府のこの問題への真剣な構えを要求していきたいと思います。  そこで、ミグ25強行着陸問題について取り上げたいと思うのですが、ベレンコ中尉の亡命の扱い、日米安保条約との絡み合い、いわゆる防衛問題との絡み等は時間の関係で次の機会に譲り、いま当面している機体の扱いの問題を中心にきょうは伺ってまいりたいと思います。  外務省や防衛庁からたくさん資料をもらっていますから、経過等をくどくどお話しいただく必要はありません。問題点だけお尋ねもするし、お答えもいただきたいと思います。  九月の六日、函館空港にソ連のベレンコ空軍中尉が亡命のためミグ25で強行着陸をしたということはまさに突然の出来事で、函館市民を初め国民を驚かせたわけです。ただ、これに対してソ連側が早速抗議をしてきた。マスコミも事件を大きく扱うものですから、テレビも毎日あの函館空港の駐機場の写真が出る、国民事件の異常さに対する興味もそそられたろうし、しかし、招かれざる客が飛び込んで日本の方が迷惑しているのに、まるでこちらの方が国際条約の違反や背信行為をしているととられるような非難をするソ連の方も少し変だなあと、これが私は国民の平均的な感情ではなかったかと思います。しかし、そのうちにだんだん日本政府の方もおかしくなってきた。政府のミグ25の機体処理についての判断は二転三転しているように思います。  当時の報道を追ってみますと、当初は、亡命事件捜査は警察と検察の手でやり、防衛庁の加わることは外交上の配慮から抑えるという態度で、千歳から行った自衛官も追い返される。ところが次には防衛庁の巻き返しで、軍用機の特殊性に配慮し、検察当局を補助する鑑定人の立場で防衛庁も介入を許す、こうなった。さらに今度は防衛庁の要求は強まるばかり。断片的に伝わる情報を申し上げてみますと、防衛庁の主張、ミグの情報を得れば、日本は西側諸国の中で十年くらいは優位を保ち得る、未調査のまま返還したのでは、日本は西欧諸国から物笑いの種になる、みすみす手をつけないで返還するのはもったいない、手をつけないでもソ連からは徹底的に調査をやったと言われるに決まっている、西側、特にアメリカ期待が強く、形ばかりの調査では日米安保条約に悪影響を来す、日ソ関係だけを重視して日米関係を傷つけては意味ない等々、私はこれは軽率な、調子に乗ったはしゃぎ過ぎだ、こう思うのですが、このようにして機体の管理権は防衛庁に移されて独自調査の開始、国際相場で、切り刻んで徹底的な調査へとエスカレートしていく。そしてついに米軍のギャラクシーで函館空港から百里基地に運ばれ、日米合同調査と言われてもいたし方ないような状況までのめり込んでしまう。  外相兼務の総理伺いたいわけでありますが、ちょうどこの段階は三木派、反三木派の闘いの真っ最中で余り関心はお持ちにならないし、政府自体は何をしていたかわからぬというような状況だったと思うのですが、このような政府部内の無定見きわまるやり方、函館で何日もむだに日にちが過ぎていく。一体どういうことだったのでしょうか。
  159. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この問題は重要な問題でございますから、われわれもそういう、ミグ25に対しては、刻々と報告を外務省からも防衛庁からも受けまして、この対処というものについてはきわめて冷静に、慎重に対処しなければならぬということで、たとえばベレンコ中尉の亡命についても、亡命の意図をもって日本に強行着陸したのは明らかで、本人の陳述にもそれを述べておりますが、さらに念を入れてソ連の大使館員とも会って話す機会を持つことは必要であるという指示も行って、アメリカに亡命の前にソ連大使館員とも会ったわけでございます。  それからまた、日本はミグ25の機密を探ろうというのではなくして、やはりああいう強行着陸をした場合に一体どういう背景があるのかということは、これは機体について調査をするということは、ああいう事件のときには当然のことでございます。そういうことでもって必要な調査を始めようということになったわけですが、そのためには、民間空港でございまして、いつまでもああいう状態に置くわけにはいかない。これを運ぶためには、たとえば輸送の手段としても、日本としてはああいうものを運ぶだけの輸送機は持っていない。またこれを移動するについてはそのまま運航するわけにはいきませんから、これをやはり分断をするについてもミグ25にどういう装置があるのか、非常に危険でもありますから、全部日本の自主的な責任において処理するという方針はずっと貫いておるわけですが、それがどうしてもこういう問題について知識を持っておる者の、器具にしてもあるいはまた一つの技術にしても、そういう助力を仰がなければならぬ。第三国ということになりますが……(安井委員「経過はわかっている。政府の部内の構えがおかしいということを言っているのです」と呼ぶ)いや、そういうことで、アメリカが一番迅速に応じられるわけでありますから、アメリカ協力を、そういう必要な限度において協力を得たわけで、日米共同というような性質のものではございません。そうしてこれが調査が終わればこれはソ連に返還するという日本の方針に従ってグロムイコ氏に対しても小坂外務大臣から伝えたわけでございまして、政府の方針というものが、いろいろ新聞の報道などを通じて御指摘になりましたけれども、政府はああいう事件に対してその背景の調査をやって、それが済めば返還をする、こういうことで終始一貫をしてきておって、それもしかも日本が自主的な調査をやる、必要最小限度のアメリカに対しての器具あるいは技術の提供を受けるということで政府態度というものが貫かれておるというふうに私は信じておるわけでございまして、この問題の処理については、きわめて国際的な問題でもありますので、冷静な、慎重な処置をしなければならぬというので毎日のように報告を受け、必要な指示を行ってきたわけでございまして、政府の方針が二転、三転したというものではございません。
  160. 安井吉典

    ○安井委員 それは、もう総理は派閥抗争の真ん中にいたからよく知らないのですよ。当時そんなのはどうでもよかったんだ、ミグなんか、自民党の中では。とにかく初めから終わりまでぐるぐる回ってしまって結局官僚任せでこんなにめちゃくちゃな日にちがたったのだということは私は間違いないと思う。  ところで、日米合同調査ではないというけれども、機体の軍事的調査について米軍は協力する用意があるということを向こうの方から言ってきたじゃないですか。ミグ屋と称される米軍技術者は、こっちから呼ばないうちに押しかけてきたんじゃないですか。  それからもう一つ、調査団は一体何人ぐらい来たんですか、アメリカから。いまやっているのは。
  161. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これはもうあくまでも日本責任において自主的にやるという方針を確立をしたわけでございますから、こういう自民党の内部の問題でこの問題の処理がいささかも怠ったという事実は絶対にありません。この問題は、毎日のように連絡をとりながら適当に対処してまいったわけでございまして、そういう事実関係に対するのは防衛局長から申し上げる方が適当と思います。
  162. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 いま総理からも御説明いたしましたが、実はこの解体調査につきましては、一つには早い時期に函館からわが方の基地に運びたいと考えました。それからいま先生がいみじくも刻んだというお話がございましたが、実際にはそうではなくて、外交上の配慮を考えながら解体の程度というものも考えたわけでございます。したがいまして、そういう時間的な条件、解体の態様、そういうものの条件からいたしますと、いまの私どもの自衛隊にはその能力が足りないところがございます。すなわち輸送するに当たってはC5を借りるというようなことも必要でございました。それから限られた時間に安全に解体するためには米軍の協力も必要だと考えたわけでございます。いま、向こうの方から申し出があったと仰せられましたが、実は私どもの方でこのような能力がわが方にはないということを申し出まして、向こうが協力の用意があるというふうに言っておったわけでございます。  なお、解体調査に当たりまして米軍の協力を得ている人員というものは十名前後でございます。
  163. 安井吉典

    ○安井委員 在日米軍司令官ガリガン中将と防衛庁の航空幕僚監部防衛部長との間で、ミグの解体調査に伴う日米間の確認事項についてという覚書が取りかわされているようでありますが、私がいただいている資料では、その第二番目に、作業の過程で知見されたことは自衛隊のみに帰属する、そういう表現がありますが、これはそのとおりですか、防衛局長
  164. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 いまお述べになりましたのは、幕僚長とガリガン中将との間で確認事項としてはっきりさせた二番目の内容でございますが、知見されたものは自衛隊のみに帰属するということで了解が成っております。
  165. 安井吉典

    ○安井委員 知ったこと、見たこと、こういう意味だと思うのですが、大体解体するといったって日本の自衛隊には工具がないでしょう。ミグに合うような解体する道具、ネジ回し一つないんじゃないですか。全然違うんでしょう。それからまた、ミグをもちろんやった経験は一つもないし、初めから、自分でやるなんて、主体性だとかなんとかおっしゃるけれども、初めから解体する道具が一つもないんじゃないですか。どうなんです、それは。
  166. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 解体作業に必要でありました道具につきましては、ないものもありました、合うものもございました。ないものの中で、至急にこれをつくったものもございました。それからまた、米軍の器材を借りたものもございました。
  167. 安井吉典

    ○安井委員 だから私はもう、先ほど総理偉そうなことを言われるが、解体を自主的にやるといったって、何でやるのです、一体。道具、一つもないのですよ。それで日本独自にやる、アメリカとの共同作業ではないという。しかも作業によって知ったり見たりしたことは自衛隊のみに帰属するといったって、アメリカの技術者は目隠ししてやっているんですか。だから、こんなばかばかしい子供だましみたいな言い方で問題をごまかそうとしては私はいかぬと思うわけであります。ギャラクシーの輸送から始まって、機体処理の全過程で米軍の協力といったって、技術力の格差も大きいし、実質的にはアメリカ主導型の調査だ、そう言われても仕方ないような状況だったんじゃないですか。  そこで、このことによって得られたデータ、これはアメリカが、見るなと言ったって見たり知ったりしただろうと思うのですが、しかし日本に帰属するわけですね。これだけは明らかな協定の中の言葉であります。そうだとすれば、このデータはどういうふうな扱いをするのですか。これは機密事項なのか、公表できるのか、アメリカにはどうするのか、そういう点について伺います。
  168. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 調査の内容につきましては、たびたび総理防衛庁長官から御説明いたしておりますように、領空侵犯の事実の背景の事情調査というのが目的でございます。したがいまして、機密を探るというものではございません。しかしながら、その調査の過程においてあるいは機密のようなものも知る結果になるかもわかりません。したがいまして、この調査の結果を公表するというようなことは考えておりませんし、またその得た結果をどうするかということは、国益に照らして今後判断されるべきものだというふうに考えております。
  169. 安井吉典

    ○安井委員 防衛局長、ちょっとそこにいてください。  どのような内容の調査が行われているのですか。国際相場という言葉が使われているが、それはどういうことですか。
  170. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 先ほども申し上げましたように、領空侵犯の事実がございました。その背景になる事情を調査いたしております。したがいまして、今度起こりましたこの事実の調査のために必要な機体あるいは航法装置、そういったものの調査をいたしておるわけでございます。
  171. 安井吉典

    ○安井委員 もう一つ、いまミグの復元テストを行うというふうに伝えられておりますが、もとの姿にきちっと組み立て直してどういうことを調べるのです。
  172. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 函館におきましては電源がございませんでした。それで解体して持ってまいりましたが、復元といいましても飛べるような状況の復元ということではございません。これを完全に復元するということは、解体いたしますと大大的な復元作業というものが必要になると思います。現在は、火を入れるといいますか、発電機によりまして動力を入れまして、いま申し上げましたような航法装置の作動状況といったものを調査しているわけでございます。
  173. 安井吉典

    ○安井委員 飛ばすのですか。
  174. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 いま御説明しましたように、飛べるような状況に復元することは不可能でございます。
  175. 安井吉典

    ○安井委員 いつまでに調査を終えるつもりですか。今度のいわゆるシステムチェックで大体今週いっぱいで終わるという報道もありますが、今週というとあす二日ですね。それで終わるということですか。
  176. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 これは一つには外務省が返還の時期、態様等についてただいま交渉を始めておりますので、それに遺漏のないように、一応私の方ではできるだけ急いで必要な調査をやりたいというふうに思っております。
  177. 安井吉典

    ○安井委員 もう一つ伺いたいのは、このミグの調査によって防衛上のメリットはいかなるものと考えておられるのか。これはむしろ大臣かもしらぬがね。それから外交上のメリット、デメリットはどう考えておられるのか。これは外務大臣の代理でしょう。
  178. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 防衛上のメリットというよりは、現実に領空侵犯というものが事実に行われました。そして私どもの方のレーダーで百マイルに接近するまでこれを発見することができませんでした。したがって、低高度で長距離を飛んできたという事実があるわけでございます。それで、こういうものに対して今後私どもはどういうふうに対処していくべきかということを勉強したいというふうに考えております。
  179. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 このことは日本の意思というものは何にも働いてないわけですから、先方の軍用機が強行着陸したわけでございますから、このことが日ソ関係の基本に影響をあらしめてはならないということで、基本的な日ソ関係に悪影響を及ぼすことのないような配慮が外交上なされなければならぬということだと思います。
  180. 安井吉典

    ○安井委員 私は明確なメリット、デメリットを聞きたかったのだが、話をそらしてしまわれたようであります。  返還はどのようにするんですか。陸送をして日立港から十月十日ごろ送り出すという報道もありますが、それはどうですか。
  181. 橘正忠

    ○橘政府委員 ただいま防衛庁の方でも具体的な返還の方法についての技術的な詰めを考えておりますので、そういうものを基礎にしてソ連側と打ち合わせをし、わが方としての考えをまず伝えてその上で細かいところを打ち合わせをするという予定になっております。
  182. 安井吉典

    ○安井委員 けさの新聞で伝えられているのは誤報ですか、それともそういう方向でやっているということなんですか。
  183. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 私の方は、技術的に返還の方法について、船によって返す場合にどの程度の大きさまで解体をするのがリーズナブルかということを外務省の方と詰めながらそれを解体し、梱包し、そして必要なところまで陸送するというような形についてはどのぐらいの日数がかかるかということを検討いたしておりますが、これはいろいろな場合につきましていろいろな条件のもとに検討をいたしておりますので、外務省の方でその返還の時期、方法が決まった時点でどれを選ぶかというふうに決心をするつもりでおるわけでございます。
  184. 安井吉典

    ○安井委員 九月の二十九日ですか、ニューヨークでの小坂・グロムイコ会談、あの中身は読んでいて余り愉快な中身ではないわけでありますが、その中で、グロムイコ外相が、機体を返すといってもいつどのような方法で返すかということを言っていないではないかという話が報道されているわけです。だから、いまの段階まできたら期日と方法を早く明らかにするということが大切ではないか、こう思うのですが、返還交渉は全くやってないのか、いつから始めるのか。
  185. 橘正忠

    ○橘政府委員 小坂外務大臣がグロムイコ外務大臣とニューヨークで会談されました際にも、具体的な返還の時期あるいは返還の方法等、技術的な点につきましては追って外交ルートを通じて連絡をするということを伝えてあります。東京においても、同様の趣旨を在京ソ連大使に伝えてございます。したがいまして、先ほど防衛庁の方からもお話ございましたような技術的な点を詰めて、そういう具体的な細目の話というものを始める考えでおります。まだその段階でございます。
  186. 安井吉典

    ○安井委員 いま調査や返還の話し合い等について大体現段階の話が述べられたわけでありますが、先ほど塚本委員から防衛力とのかかわりの問題について問題の提起がありましたので、私はそれは将来の問題としてきょう触れる気はなかったのでありますけれども、ちょっと触れてみますと、航空自衛隊のレーダーで一たん捕捉をしたが、そしてまた千歳基地のF4EJファントムがスクランブルしたが低空侵攻であるために見失った。レーダーもスクランブルも何にもならない。非常事態に一体これでどうなるのかという疑問があることは間違いないと思います。しかし、低空で飛んでくるところの航空機に、現在のレーダーが有効に働かないのは、これは決して日本の自衛隊が悪いということではないと思います。どこの国でもこれは同じなんですよね。一九六九年十月、アメリカでもキューバからの亡命軍用機ミグ17が、突然米軍の全く知らないうちにフロリダ州のホームステッド飛行場に着陸して当時大きな問題を起こしたことがある。アメリカでも同じなんですよ。つまり、戦争状態とかあるいは戦争前夜なら国際情勢が激しくなっているわけなんですから、こんなことがわからないわけはないわけでありますけれども、平時に単独ですぽっと低空で入ってきた飛行機を捕捉できる国というのは世界にないわけですよ。私は、後で申し上げるような、日本の平和憲法のもとでは、千歳からスクランブルしたファントムがミグを見失ったということ、さっきはこれは大変なことだ、こう言われたけれども、私はむしろいまの段階で見失った方がよかったのではないか。亡命機ともし遭遇して何か事故でも起きたら、むしろこれは大変なことになっていたのではないかと思います。これは、時間がかかるので、いずれ別な機会に譲りたいと思いますが、私は、だから早期警戒機AEWの導入を急げとか、軍備の拡大をせよとかという論理にこの事件を直結していこうということこそが危険だ、こう思うわけであります。四次防でも四兆数千億円もの防衛予算を使って一体何になったのか、むしろ軍事力の増強で日本の安全を守ろうとすること自体が無意味であるということを今度の事件は証明したということではないかと思います。  私は、そういうことの議論は後にすることにいたしましても、ここでこの点だけは明らかにしてほしいのは、この事件事件の報告が長官に届いたのが一時間半後、最高指揮官である三木首相のところに届いたのが三時間も後であったというふうに伝えられているわけですが、これは一体どうなのか。情報の迅速正確な伝達だけでもこの際しっかりやるべき問題ではないか、こう思うのですが、どうですか。
  187. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 低空で入ってまいります飛行機に対して、平和時において、なかなか困難だということは安井さんおっしゃるとおりでございます。それだからといって、この領空侵犯をする飛行機をとらえなかったということにつきましては、私たちやはり自戒すベきものであるし、これに対する対応措置を考えていかなければならぬというふうに思いますし、やはり監視体制というものを常時やるということがこういう侵略機を防ぐことになりますし、現にスクランブル等を年二百回もやっておりますがために、ソ連といたしましても、この数年の間に領空侵犯しましたのは二回ぐらいだったと記憶をいたしておりますが、そういうことで注意をしておるということかと思うわけであります。  それから、情報が私のところ、なお総理のところにおくれたということにつきましては、まことにこれは遺憾なことだと思います。こういうような点につきましては、厳に体制を整えなければならないというふうに思っております。
  188. 安井吉典

    ○安井委員 後、関連の湯山君の質問がありますので、おしまいに私はこの事件をとらえて三つのことを指摘しておきたいと思います。  まず一つは、政府、特に防衛庁は憲法感覚を喪失していたのではないかということであります。今度の事件でミグ25を西欧諸国ならこうするとか、国際相場はこうだとか、NATOはこうだとか、こう言われるが、これらの国々は戦争憲法を持っているわけです。来るなら力で来いというのがそれらの国々であるし、日本は専守防衛という解釈を政府もしている平和憲法の国であります。ですから、西側の国と非武装憲法を持っている、平和憲法を持っている日本とは違うのだし、安保条約だってNATOと違うのですよ。そういう憲法感覚を喪失した対応に終始していたということは、これは大きな問題だと一つ思います。  それから第二番目は、この問題の処理について政府は、外交と軍事が内部で抗争した醜態をさらけ出していると思う。とりわけ、私はさっきデメリット、メリットという言い方をしたけれども、軍事上のメリットを追求する余り、外交上のデメリットをつくりつつある、そういうことになるのではなかろうかと思います。やはり平和憲法の国なんですから、外交で戦争が起きないような仕組みをつくっていく、侵略が他国からないような状態をつくっていくということが先決なんで、そのことを忘れて対応は間違ってしまうということ、このことの指摘が第二であります。  しかし、この事件最初の原因はソ連側にあった事件であり、ソ連側がミグの問題を日ソ間の各種の懸案と絡ませて、たとえば領土問題を初め、これまでの両国間の話し合いの成果を崩したり、日本漁船の拿捕を強めたり、日本に対していやがらせやおどしをもしソ連がやるのだとすれば、ソ連に対する日本の世論はよくなるとは思われません。国際世論も大国主義としてソ連に冷たいものになると私は思いますので、このような道をまさかソ連がエスカレートしていくとは思いませんが、この点は強くソ連に期待しておきたい点であります。  現在わが国は対ソ交渉の重要案件を抱えています。北方領土だとか、墓参問題だとか、北洋漁業の問題、北方水域の安全操業、経済交流、しかしそれは、どれもイニシアチブを主としてソ連が持っている問題です。わが国が軍事的に解決しようというのではなく、善隣友好の外交で解決しなければならない問題だと思います。  一方、ミグ25はもともとの原因は、これはソ連側にあるのだし、現物はいま日本にあるわけです。わが国がイニシアチブを持ち得る唯一の問題だと思います。ですから、私はこの両国間の外交の諸案件を整理して冷静に考えれば、国交回復後二十年間の友好関係を一挙に覆すことのないような外交路線の選択というのはおのずから明らかではないかと思う。現在の段階で言えることは、政府がやるべきことは返還交渉を急ぐことです。そうしてそれを転機として友好親善を強めて懸案解決に進むべきだと、こう思うわけでありますが、総理いかがですか。
  189. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 第一の問題は、やはりわが国は独自の憲法を持ち、これはよその国とは事情が違うわけでございますが、こういうのは非常に特殊なケースでございますから、こういうケースの場合に諸外国の例というものも一応に参考にすることは悪いとは思わないのですが、それを処理するについては、わが国の憲法のたてまえを踏まえて処理をしなければならぬということは安井君の言われるとおりでございます。しかし、しょっちゅう起こる問題ではないですから、国際的な慣行というものも一応の参考にはなる。  第二点の、防衛庁と外務省との意見が食い違ったということは、それは御批判は当たりません。これはしょっちゅう緊密な連絡のもとに意思を統一してこの問題の処理に当たるわけで、内部的に考え方の分裂があったということはございません。これは緊密な連絡をとって、一体のものとして当たっていることは事実であります。  第三点の、日本が善隣友好の外交をやらなければならぬということは当然のことであります。平和国家という日本のたてまえからしても、常に善隣友好の外交は必要なわけでございまして、今度のような日本としてははなはだ迷惑な事件でありますから、こういうソ連側からの起こった原因によって、日ソの間の戦後積み重ねられてきたこの友好関係の基本を崩すようなことが、ソ連自体としてもそのようなことはないと信じますが、ソ連の冷静な処置をわれわれは要望するものでございます。
  190. 安井吉典

    ○安井委員 一つだけ最後にお聞きをして終わりたいと思いますのは、二月二日のこの予算委員会におきまして、私の質問の冒頭、領海十二海里の問題を取り上げました際に、三木首相の答弁は、速記録もありますけれども、ことしじゅうにも海洋法会議で結論に達しないというときには、政府として処置する。私は念を押して、「年末まで三木内閣が達者かどうか、これはわかりませんけれども、」という前提で——達者でいたわけですが、「年末までにはどんなことがあっても決めざるを得まい、こういうお気持ちでいられるということは間違いないですね。」と聞いたら、「さように考えています。」というのが総理答弁だったが、きのうですか、参議院の答弁は全く違います。来年いつになるかわからぬという答弁なんですが、これは食言ではないですか。その点だけ明らかにしていただきたいと思います。
  191. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も、海洋法の会議は、海洋における国際的秩序をつくらなければいかぬということは各国でも認めておるわけですから、そういう熱意を持った会議でありますから、われわれとしても今年中にはこの問題は解決できるものという見通しを持っておったわけでございまして、私の見通しが少しやはり甘かったと実は認識せざるを得ないわけでございますが、海底の資源などの問題が起こってきて、このことが問題を複雑にしておる原因の一つになっておるわけですが、それでも五月の再開までの間に各国の間で非公式な話し合いをするということで、海洋法会議がこれは全然見込みが立たぬというわけではないわけですね。そういう形で終わっておるわけでございますから、できればこの国際条約のような形で世界全体の海洋の秩序というものができて、日本もまたそういう国際条約の線に沿うて海洋の秩序を守っていくという方が、いろいろな問題を考えた場合に一番好ましい形であるわけでございますから、したがって、これから非公式ないろいろな話し合いも進めるわけですから、いましばらくこの海洋法会議の見通しを立てて処理をしたいということでございまして、この問題は多少、私の年内には海洋法会議の結論は出るだろうと思った見通しの甘かったことは認めざるを得ませんが、もう少し海洋法会議の成り行きというものを見て対処をしたいという心境でございます。
  192. 安井吉典

    ○安井委員 これは甘かったということでないと私は思う。これは明らかに食言ですよ。そして、甘いというよりも、むしろ安保条約の、例の原子力潜水艦の津軽海峡通過の問題の方が漁民の生活よりも優先させるというその判断ですよ。漁民犠牲の姿勢、甘いというよりも、その姿勢が私はこういう形であらわれたのだと思う。これは後に残して一応終わります。  次に、関連を湯山君から……。
  193. 白浜仁吉

    白浜委員長 湯山勇君より関連質疑の申し出があります。安井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。湯山勇君。
  194. 湯山勇

    ○湯山委員 関連いたしまして、ロッキード問題の教育に及ぼしておる影響、これについて昨日もちょっと御質問がありましたが、これは私どもに対して、いろいろ報道等から今日の経過を見ておる教育関係者から、一体政府総理や文部大臣は特にこの影響がこんなに大きいということがわかっているかどうか訴えてほしいという声がたくさんあります。そのことをお訴えして、いろいろお尋ねしたいのですが、時間がありませんから、端的に申し上げます。  そういう中で出てきておる影響として取り上げられたものは非常に多いのですけれども、代表的なものを幾つか申し上げますと、一番簡単なのは、当委員会証人喚問をしておったときに、証人たちが、あるいは特に小佐野証人が全然記憶にありませんと言ったようなことが青少年の間ではやっている。これは総理も文部大臣も御存じだと思います。それからまた、先生たちに会ってみますと、道徳教育、こういうときに非常に困るというようなことや、私が会った少年院の院長さんもいろいろロッキード問題でわれわれもやりにくくなったということを申しております。  それは何かと言うと、一番その主なるものは、田中総理起訴の問題です。これは非常に大きなショックを与えている。と申しますのは、田中総理総理に就任されたときに、教育の場では、学歴偏重ということについて、こういうこともあるのだという例として総理のことを大分お話ししている。それからまた中学から高校へ進学する、それが九〇%で、就職者が一〇%あります。この子供たちの劣等感をなくしていく、払拭するために田中総理のことをよく話したものだ。それからその後、当時の田中総理から五切十省、五つの大切、十の反省、これを略して五切十省という言葉になっております。こういう提起がありまして、それを教育の場で取り入れたりしてやっておった。その人がいまのようなロッキードで逮捕された。教育の場では、児玉という人がどういうことをしておろうが、これは問題じゃありません。フィクサーかあるいは総会の元締めか。右翼の人がどんなことをしようが、それじゃなくて、この田中総理がこういうふうになったということは教育に非常に大きな影響を与えている。こういうことであるし、われわれが意外であったのは、この田中総理を初め、橋本元運輸相等々が保釈金で釈放されたということもまた教育の上では非常に影響を与えております。汚れた金を受け取った人がその金で釈放される。しかも二億円というのもあれば、二千万というのもあるし、そういうようなこと等々が非常に大きな影響を与えている。文部省自体もやはり影響を受けておるので、たとえば四十九年の五月の十三日に、当時、田中総理は五切十省を提起いたしました。それを受けて、速やかに対応して、一カ月余りたった六月の二十四日に、いまお見えになっていらっしゃいますか、奥野文部大臣が社会教育審議会に「青少年の徳性のかん養について」という諮問を出しております。それの内容は「最近では、青少年に対する道徳教育の不十分さが指摘されており、その対策として簡単で明白ないくつかの道徳律を掲げてその徹底を期することなどが提唱されている。」、これは明らかにいまの五切十省を指しております。簡単な明白な幾つかの道徳律、これを徹底さす。そこで「この際、青少年の徳性のかん養について、早急に検討を進め、その具体的方策を明らかにする必要がある。」、よって諮問する、こうなっています。これがいまの五切十省に一カ月後対応した諮問でした。しかし、その後、社会教育審議会は、二年余りたっておりますけれども、何ら答申は出ておりません。内閣もかわり、文部大臣もかわりました。しかし、何の答申もまだ出ていない。早急にというのがこうなっています。  こう見てまいりますと、この事件が教育に与えている影響というものは、われわれが大人の目で、あるいは刑事罰とかあるいは灰色とか、そういう目で見ておるものよりももっと深いものがある。というのは、教育というものは次代の国民の問題です。そう考えてくると、この影響というものあるいは直接間接の害というものを無視することはできないと思うのですが、私は特に文部大臣に、そういう重大な、放置できないような影響を与えているということをお認めになっているか、感じておられるかどうか、まずお伺いいたしたいと思います。
  195. 永井道雄

    ○永井国務大臣 まず、今回のロッキード事件というものが、わが国の学校教育に非常に影響を与えており、しかも、ただいま御指摘がございましたように、政治、行政の最高責任者の起訴の問題をはらんでおりますから、そうした意味合いにおいて非常に憂慮すべきことである、私はかように考えているわけでございます。  ただ、それにあわせて一言付さしていただきたいのは、この種の問題を教育上扱ってまいります場合に、いまの点は非常に重要でありますが、同時に、わが国には三権の分立というものがあり、検察、警察を中心といたしまして、二月五日以来非常な努力というものがあり、また、この国会におきましても、大人の社会でいろいろの努力をしてこの問題を解決しようとしている。さらにまた、政府もこれに対してどのように解決をすべきか苦慮をいたしておる。そればかりか、一般の世論というものが新聞等に報道されておりますから、この教育に当たりましては、憂慮すべき面、これは重要でございますが、他方、わが国の大人の社会においてこの問題を解決していくために建設的に努力している側面もある。こうした両面というものを踏まえて私は教育をいたしていくべきものと考えているわけでございます。
  196. 湯山勇

    ○湯山委員 文部大臣のおっしゃったことは、私もそのとおりだと思います。ただ、私はここで特に申し上げたいのは、現にそのような悪影響が及んでいる。将来にわたってこの影響をなくし、あるいは実際にわが国に二度とこういうことの起こらないような体制をとっていく、それにはどうしたらいいか。総理は、先般本会議におきまして、今度のロッキード事件の原因として、一つは選挙に金がかかることだと、いま一つは道徳心が欠如していると、二つお挙げになりました。その道徳心というのは直接、全部の責任ではありますけれども、そう指摘されれば、文部大臣はそれについてはやはり責任を感じなければならない。そこで、いろいろ御指摘がありましたように、ともすれば政党次元で扱われ、あるいは場合によっては派閥次元でこの問題が論議されているというような場合もあったことは否定できません。しかし私は、総理も御記憶になっておられるかと思いますけれども、大事なときに大事な国の方向を決めていく、あるいは教育の方向を決めていく、そのためには、政党人でない、そして議会人でもない文部大臣が必要な場合があるということを指摘して、そのときに、総理は当時副総理としてよくお聞きいただいた。また、私がいろいろ、総理大臣は直接細かい教育の内容なんというのは必要ないので、りっぱな文部大臣をつくることが一番重要だということを申し上げたときに、田中総理は多少憤然とされたこともありました。しかし私は、いまにして思えば、やはりこれは間違っていなかったと思います。それは、文部大臣は政党人ではないのです。そしてまた議員でもありません。したがって、こういうときにこの問題を教育の立場から、道義の立場からどうしていかなければならないということについては、あなたは積極的に発言をする、あるいはあなたの立場から総理に進言する、それは当然の任務であって、それができないような文部大臣であれば、それは私は任命した意義はないと思うのです。  そこで文部大臣に申し上げたいのは、そういうあなたの使命と、今日、次の世代、今日の教育の実態を考えてこの問題を真剣に考え、どうしなければならない、あるいはどうすべきだということについてお考えがあるかどうか。あるいはそれについて考えて、あなたの意思を表示する御用意があるかどうか。あるいはそのときには、ある段階ではそうしなければならないとお考えになっているかどうか、これを伺いたいと思います。  それから総理には、私がいま申し上げましたような観点から、こういう文部大臣を任命した総理のお立場として、この文部大臣の意見というものを積極的に求め、それを尊重するということはあなたの政治姿勢としては一貫したものである、こう考えますが、そういう御用意がおありになるかどうか。これについてお考え伺いたいと思います。
  197. 永井道雄

    ○永井国務大臣 私の役割りは二つに分かれるかと思います。まず第一に、私は三木内閣の閣員でございますが、総理大臣は、私が理解いたしますところでは、一党一派の立場に立つのではなく、この問題の解明というものを通してわが国民主主義に再び活力をもたらすという考えで臨んでおられるわけでありますから、私はこの立場支持いたします。これが一つであります。  第二の私の役割りは、文部大臣としてこの問題を教育的にどのように取り扱っていくべきであるか。このことでございますが、これにつきましては、実はこの問題は重要でありますが、この問題に限らず、私はわが国の教育における政治教育というものが大事であろうかと考えております。それは基本法八条にも記されているとおりでございますが、御承知のように八条に二項ございます。二項の方は、党派的であってはならない、いわゆる中立性を述べておりますが、一項の方では、政治的教養というものを十分に涵養をして、そして民主社会を建設するような教育を行うべきである、こういうことでありますので、本来ならば、かような事件のあるなしにかかわらず、そうした教育が行われなければならないわけでございます。  そこで、私はその意見国会においても述べましたし、最近文部省から関連して刊行いたしております「厚生補導」という刊行物にもその見解を述べました。また、衆議院、参議院のロッキード関係の委員会におきましても、この問題を真剣に教育的に取り扱っていくことが必要である、かような考えを今日まで述べてまいっております。同時に、昭和四十四年に文部省が刊行いたしております政治的教養と政治的活動についての高校生の教育の資料がございますが、それによりますと、特に八条一項の重要性がやはり強調されているのでございます。  他方、一つ事件が進行していく場合に、その結論にまでいまだ到達していない場合には、経過というようなものを多角的に検討して冷静に考えていくということが必要である。本件の場合には、申し上げるまでもなく、いまだいろいろな問題が経過的な状況にあるという面がありますから、私といたしましては、先ほども申し上げましたように、八条一項の教育の考え方が重要である、また四十四年の高校教育に関する文部省の資料も重要であるということを考えておりますし、また前者についてはすでに記しているわけでございますが、この問題の全体がまだ明らかになっていない段階においては、以上申し上げたようなやり方で教育に対応いたしていくことが妥当である、かように考えて今日までまいっている次第でございます。
  198. 湯山勇

    ○湯山委員 委員長、ちょっと総理の御答弁の前に。
  199. 白浜仁吉

    白浜委員長 簡単に願います。
  200. 湯山勇

    ○湯山委員 いまおっしゃったのはかなり抽象的だったと思います。私が最初お尋ねしたのは、実際にこれだけ憂慮すべき事態が起こっておるという事実をお認めいただいて、そしてそれに対していまどうするということはお考えになっていないということなのでしょうか。それとも、ほうっておけないということなのでしょうか。ここがちょっとはっきりしなかったので……。
  201. 永井道雄

    ○永井国務大臣 事実は存じておりますし、憂慮をいたしております。したがって、発言もいたしております。そしてまた、さらに必要であれば発言を続けなければならないと思っております。
  202. 湯山勇

    ○湯山委員 どうしようとおっしゃっているのですか。
  203. 永井道雄

    ○永井国務大臣 先ほど一番最初に申し上げたことです……。
  204. 白浜仁吉

    白浜委員長 簡単に願います。
  205. 永井道雄

    ○永井国務大臣 一番最初に申し上げたことの繰り返しになりますので、繰り返しません。
  206. 湯山勇

    ○湯山委員 総理に願います。
  207. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 湯山君の御指摘のように、これが教育に対しては非常に悪い影響を与えたと私は思います。ただ、もうこれは事件が起こったわけですから、ここでやはり真相解明する能力を持って、そしてこれを善悪のけじめをつけるだけの能力を示して、そしてやはり社会正義というものが社会の中に生きておるのだ、そういうふうなことが現実に示されて、しかもこれを教訓として、再びこういうことが繰り返されない対策が講じられるということが、やはりこの不幸な事件が与えた影響に対して、せめてものわれわれがやらなければならぬ問題点だと私は思っております。  また、永井文部大臣は政党人の立場ではないわけですから、常に、その意見というものは私も貴重な意見として耳を傾ける所存でございます。
  208. 白浜仁吉

    白浜委員長 これにて安井君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、田川誠一君。
  209. 田川誠一

    ○田川委員 わずか二十分しかございませんので、一々議論しておりますと質問が中断されますので、大きく三点に分けまして総理大臣にお伺いをいたします。  臨時国会の召集が大幅におくれたことは、与党内の事情が大きな原因になっていることはだれしも認めているところであります。このおくれに対しまして、三木総理大臣は今日まで行政の空白はなかったとおっしゃっております。そして、開会以来、国会を通じて国民に対しまして遺憾の意を一度もあらわしておりません。私は、国会召集のおくれ、自由民主党の紛争が長引き、これによって財特法など懸案事項の処理が大幅におくれたことに対して、総理大臣として、また自民党総裁として国会一言遺憾の意を述べることが礼儀であり、民主政治の基本ではないかと思います。そこで総理は、その必要が一体ないのかどうか、また国会開会はこの時期で適当であったか、それとも国会召集はほかの原因によっておくれたのかどうか、お伺いをしたいのであります。  引き続いて、質問事項続けていきます。  で、こうした姿勢が政界のみならず、世間の無責任の風潮に対しまして悪い影響を与え、国民政治不信を高めているものと私は心配しているのです。ロッキードの解明に対しましても、総理政治生命をかけるとたびたび言明されておられますが、刑事的な糾明に対しましても、政治的、道義的な究明にいたしましても、全貌が国民の前に明らかにされる可能性は、いまのような姿勢では非常に少ないんではないか。特に、政治的、道義的な問題につきましては、総理国会にお任せになろうとしておられる。きのうの小山委員質問に対しましてもまことにあいまいであって、行政府として国会との協議の中でただお手伝いをするというようにすぎません。行政の最高責任者として、これ以外に政治的、道義的な究明を解明する方法があるはずでございますけれども、一体あるのかどうか、お伺いをしたいのであります。  また総理は、昨日来の答弁の中で、ロッキード問題に関連して、政治の浄化は政治に金がかからないようにしなければならない、そのために政治資金法あるいは公職選挙法を将来改正したい、こういうふうに考えていらっしゃるということをおっしゃいました。しかし、法律や制度を改正しても、私たち議員の個々が従来の政治資金に対する考え方を改めていかない限り、幾ら国民協力や理解を求めましても、政治の改革を実現していくことはむずかしいのではないか。私たち六名が自民党を離れましたのも、議員として過去に対しまして深い反省を示し、その反省のもとに本当に出直していくということで離党という行動をとったのであります。私たちはこういう方針で今後も進めていきますけれども、総理は、いままでおっしゃられたことを行動をもって国民政治に対する不信感を回復するように、私たちはすでに自民党を離れましたけれども、積極的に取り組んでいくことを特にわれわれから望みます。  具体的なことにつきましてあと二つ質問をいたします。  日中平和友好条約の実現がずいぶんおくれております。このおくれた原因は覇権条項と言われておりますけれども、この覇権条項ももちろんそう伺いしたい。  私は最後に資料を要求いたします。  委員長にお願いしたいことは、一つ、延べ払いのバンクローンに関しまして、最近五カ年間の輸銀の各国別の融資状況とそれから約束額、実行額、融資残高などにこれを分けて詳細な数字を出していただきたい。  二番目には、外国に対して輸出入銀行の資金を供与する場合にどういう基準で定めているか、その基準。  それから三番目に、民間の金融機関や商社などがソ連圏に対して行っている融資の実態を、最近五カ年間のことをひとつ資料出していただきたい。  以上でありますが、輸銀融資の使途につきましては、この委員会に深い関係があります。しかも事柄が重大な問題でありますので、この問題を委員会で引き続いて調査できるように委員長に申し入れまして、私の質問を終わります。
  210. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私に対する質問は四点ばかりあったかと思いますが、第一点は、自民党の党内問題で臨時国会が、それを背景として各党間の話し合いもなかなかスムーズには進まなかったということでおくれたことは事実でございまして、参議院であったか衆議院であったか、それは申しわけなく思っておると申したのですが、改めてその点は申しわけなく思っておる次第でございます。  第二のロッキード問題については、田川君も御承知のように、これは刑事的な側面と政治道義上の側面があるわけですね。真相解明という場合、この両面があるわけであります。刑事上の責任の追及ということは、私も稻葉法相も政治的に関与しない、厳正にやってもらいたいという態度でこの刑事責任の追及がなされておる。今後は児玉ルートにこの重点が移っていく。政治道義上の責任問題の側面につきましては、これは議長裁定にもあったように、国会の場でそれを追及するということに党首会談を伴ってなっておるわけです。  これに対しまして、これは政府として最善協力をいたしましょう、たとえば世に言う灰色高官にしても、灰色高官と一概に言いましても、なかなか範囲というものはわかりにくいですから、国会でひとつこの範囲を決めていただければ、個人名を含めて資料を提出をいたしましょう、そして、国会資料を提供するわけですから、国会を通じて国民の前に真相を明らかにするようにしてもらいたい。資料の提供ばかりでもないのですよ。この政治的、道義的責任の追及に対してはできるだけ協力をいたしましょう。これは私は一方において自民党総裁立場から、ロッキード委員会のメンバーの人たちとも近く懇談をしようと思っておる。そうして真相解明に対する国民の要望にこたえられるように自民党としても対処するように私も話をしたいと思っておるわけでございます。全部国会に任しておくというわけではないわけであります。やはり真相を明らかにすることによって国民判断を求めるということは、こういう事件を将来防ぐ意味においても大事だと思うわけです。  第三点の、私が政治資金規正法や公職選挙法の改正をもう一遍やりたいという話であったと言いますが、私が第一番に挙げたのは、政治家が金を受けたり集めたり、金の授受に対しての一つの厳しい倫理観を持たなければだめだ、これは私の第一番の前提にしたわけです。この点がやはり世間一般、厳しいですからね。世間の持っておるような厳しい金の授受に対する倫理観、この倫理観が麻痺するということになれば、いろいろな法律をつくってみてもそれはやはりだめですからね。根本は、やはり公人としての金銭の授受に対する非常に厳しい倫理観というものが私はすべての基礎だと思うのです。しかし、いろいろ取り締まりのことも必要ですから、今度は初めての、政治資金規正法とか公職選挙法が改正された第一回の選挙でございますから、その総選挙の経験を通じて、もしもそういう必要があったらやぶさかではないということで、もう一遍やりたいということを積極的に言っておるわけではないので、その経験などを通じていろいろ不備な点があればもう一遍改正するにやぶさかでないと申しておるわけでございます。  次に、日中問題に関しては、田川君も御承知のように、この問題は日中国交正常化の当初から私はかかわり合ったわけです。まあこれが軌道に乗るのには、私と周恩来総理との会談というものも非常に大きな下地になったと私は信じておるわけです。日中の友好関係を維持、発展させていくことがやはりアジアの安定のために必要であるという私の考え方は変わらないわけです。ただその間、田川君の御指摘のような、私の真意を誤解さすようなものがあったとすればまことに残念なことでございます。そういう意味において、覇権の問題も共同声明の中にそれはすでにうたわれておるわけですから、これを後退することは許されない。こういう共同声明をさらに踏まえて発展をさせていくことが日中関係の将来でございましょうから、そういうことで、日中間に基本的な考え方の違いがあると思わない。日本はみずから覇権を求めず、第三国の覇権に反対をするというのは日本の平和外交の一つの原則でございますから、その間いろいろな誤解を生じたことは事実でしょう。小坂外務大臣が喬冠華外務部長官とも会うことになると思いますから、いろいろ話し合いをして、必要があるとなれば、小坂外相を派遣することにやぶさかではございません。  それからまた、ソ連との関係について、御承知のように、共産圏が相当、信用供与のために多額の負債を持っておることは事実でございます。こういうことがいろいろ国際的にも話題になっておる。その共産圏に対する、共産圏の経済協力に対する政府の基本的考え方は、一方においては、一つ日本の資源の確保あるいは輸出市場の確保という見地もこれは非常に日本の経済発展のために重視しなければなりませんが、一方において、田川君の御指摘のように、信用供与、それが相当に累積して、支払い能力というものが問題になってきておるわけですから、そういうので、信用供与するについても、いま言われたような内容、あるいはまた規模、延べ払いの条件、償還の可能性、こういうものを踏まえて、一件ごとにこれから慎重に検討しなければならぬ、こういうふうにいま考えておる次第でございます。  御要求になった資料は提出をいたします。
  211. 白浜仁吉

    白浜委員長 これにて田川君の質疑は終了いたしました。  次に、阿部助哉君。
  212. 阿部助哉

    阿部(助)委員 明後日の三日から十カ国蔵相会議が行われます。それで、次の四日からはIMF総会が行われるわけであります。  最近、円に対する批判というか圧力というものはいろいろ相当強いようであります。私が最近の経済指標を見てまいりましても、外貨準備高は百六十三億ドルとなりまして、石油ショック以前の水準に達しておるわけであります。私は、このようなことになったのは、ここに日本の皆さんの経済政策が少し狂っておるのじゃないだろうかという感じがするわけであります。それは、卸売物価は十四ヵ月連続上昇を続けております。大企業は値上げ効果で企業収益を急速に回復しつつあるのであります。ところが一方、労働者の生活、先ほど来御指摘がありましたように、賃金の方はさっぱり上がらない、物価は上がる、税金は重くなるという形で、購買力は当然のこととして減退をいたします。農民はまた低米価に抑えられた。そこへ追い打ちをかけるように冷害であり、この災害であります。そうして中小企業はと言えば、昨年の九月からこの八月まで、一カ月といえども千件以下の倒産の記録はない、全部千件以上の倒産を続けておるわけであります。全般にやはり購買力が低下しておるというその一つのあらわれとして、全国の百貨店の売上高は、前年と比べてみてもこれは幾らも上がっていない。物価に引き直してみれば、実質これは低下をいたしておるわけであります。そうして完全失業者も、これはおおよですけれども、それ以外に重要な問題があります。日中間のその根底に、これまで三木内閣の対中姿勢に対して、中国側がある種の不信感を抱いていることがむしろ大きなネックになっているのではないかと思うのです。これをぬぐい去っていきさえすれば、日中平和友好条約の交渉は一挙に解決していくのではないかと私は確信をしております。  中国側の不信感には思い過ごしもないとは言えません。しかし、せんだって来の外交当局者の言動を見ておりますと、中国側に不信の念を抱かせるような節々が見られます。たとえば、昨年の初めのころ、交渉の当初、外交当局者が、覇権という言葉は条約になじまないとか、あるいはソ連を刺激するとか、こういうことを言っておりました。そして、しばらくたちますと、今度は、条約の前文ならいいけれども、本文に覇権条項を入れると権利義務が生じてくる、こういうことも言っております。そうかと思いますと、最近のように、本文に入れて構わないけれども、覇権反対の条項は攻守同盟ではないとか普遍原則であるとかというような条件を出しておって、言わずもがなの注文をつけている。こんなことが、中国に対して、日本の外交当局は一体何を考えているのだろうかという疑念を持たせるようになった。また、前外務大臣の宮澤さんが、公式の席で台湾原則を曲げるかのような発言をされたり、外務大臣を訪問したアメリカのマンスフィールド上院議員に対して、米中国交正常化の促進に水をかけるような意見を述べた。こういう不用意な発言が日中交渉に気まずい雰囲気をつくっています。また、最も重要なことは、覇権条項を快く思っていないソ連側の態度によって日本側の交渉態度がぐらぐらしている。こういうことも不信感の原因となっております。  先日の本会議やこの委員会総理が述べられましたように、覇権を求めないということは、日中両国はもちろん、いかなる国にも当てはめるということである。これは日中共同声明第七項の覇権条項にもわざわざ、日中国交正常化というものは第三国に対するものではない、こういう前置きが示されて、覇権反対の表明がなされているわけです。外交当局の話し合いは、私どもの知るところによりますと、ある程度話し合いが煮詰まっているのでありますから、この際外交当局の最高責任者が虚心坦懐に話し合って、いままでのわだかまりをぬぐい去っていけば、一挙に交渉が妥結するはずであります。そのためには、小坂外務大臣が国連で喬冠華外相とお会いになるようでございますけれども、そうした合間を利用して中国側と話し合いをすることも結構ですけれども、早い機会に外相を北京に派遣する、このことが必要ではないかと思うのです。過去の日中交渉の例にありましたように、中国側との交渉は、変な小手先なことを弄しないで誠心誠意ぶつかっていけばおのずから活路が開けてまいります。総理の小坂外相訪中に対する考え方をお聞きしたいのであります。  それからもう一つは、これは要望になりますけれども、日中交渉のむずかしさは、ここにおいでの大平大蔵大臣もすでに経験されたように、自民党、与党内部の問題でもあるわけです。日中問題というのはよく日日問題とも言われておりますゆえんであります。せっかく交渉がまとまりましても、肝心の与党の内部で合意が得られなければ何にもならないのです。国連における小坂外務大臣の演説の中で覇権反対の意味を間接的に述べただけで、すでに与党の一部で強い反発が出ていることは、党内の取りまとめが大変なことをあらわしております。三木総理大臣におかれましては、先日来の党内の紛争に見られたようなあの異常な粘りと強固な決意をこのような問題にこそ発揮されることを私は特に望むのでございます。(拍手)  最後に、ソ連に対する借款、経済問題に関連して政府姿勢についてお尋ねをいたしますとともに、問題点を明らかにして、これに対する資料政府に要求いたします。  最近の日ソ貿易は、過去五年間で約三倍に拡大され、順調に進んでおります。相手国の政治体制がどうあろうとも、経済交流を活発に進めていきますことは、世界平和のために大変結構なことであります。しかし、ここで注意しなければならないことは、最近ソ連が異常とも思われるくらいに自由主義諸国から借款をどんどんふやしているということです。また、海外の情報によりますと、ソ連を初め東独、ルーマニアなどいわゆるソ連圏諸国が自由諸国から借りた金は、昨年一年だけで一挙に百億ドルもふえている。そして、昨年末の残高は三百二十億ドルにも達しておる。ことしじゅうには恐らく四百億ドルぐらいに迫るのではないかと思うのです。日本の金融機関ももちろん大きな役割りを果たしておりまして、日本輸出入銀行はこの春、鋼管、アンモニア、プラント類の輸出に絡んで四億六千万ドルのいわゆる銀行間の借款、バンクローンを与えております。ここ数年来輸銀がソ連に与えた融資額は、都市銀行の協調融資を含めまして実に二十億ドル、六千億円にも達しているわけです。この中には、いわゆる資金だけを供給するバンクローンもかなり含まれておる。このほか、都市銀行や大手商社なども海外にある会社などを通じまして直接間接にいろいろな形でソ連に貸し付けをしており、日本全体では巨額な数に達しております。恐らく、日本が世界の中で最高の貸し主になっているのではないかと私は思うのです。  ソ連がこうした外国からの借款を急激にふやしているのは、まあいろいろな事情があるでしょう。農業不振に伴う食糧の輸入の増加だとか、世界不況の影響をまともに受けたシベリア開発など、そういう理由がございますでしょう。日本が余裕のある金があってこれをソ連に融資することによって貿易が盛んになること、それ自体は決して悪いことじゃありません。しかし問題は、ソ連が外国から大量借款をしながら軍備におびただしい力を注いだり、資金窮乏の状態にありながら、ソ連圏諸国を初めアフリカや東南アジアの諸国に対してまでも海外援助に精力的に取り組んでいる、国際政治の舞台で発言力を高めようとしていることであります。このことは、NATOやOECD理事会、さらに総理出席をされましたサンファン会議でも、ソ連圏への行き過ぎた融資を総点検すべきじゃないか、こういう意見が出されたはずでございます。日本の財界の首脳は、この夏ソ連政府の招きでモスクワを訪ね、シベリア開発をめぐる新しい資金協力を要請され、いま検討中だと言われております。また政府も、この問題については積極的な姿勢を示しているようでございます。  そこで、これについて次のような重大な問題があることを私は提起いたします。そして政府の注意を喚起したいと思うのです。  第一番は、ソ連の返済能力の点であります。ソ連のような大きな国が、まさか借りた金を返さないという事態が起こることは考えられませんが、ソ連の対外債務は、一説によりますと百五十億ドルに達しておるようです。ソ連の最近の外貨不足や、金の保有高が百億ドル前後しかないことを考えますと、かなり冒険を冒して輸銀が資金供与をソ連に与えているということであります。それから、この輸出入銀行のように国民の税金を投入されているこの資金から、延べ払い資金の枠の三割近くもソ連に貸し付けているようなそうした偏った資金供与をしているのは、普通の民間の金融機関ではとても考えられないことなんです。  第二に、輸銀の銀行融資、銀行間の融資、バンクローンというものが相当部分占めているということです。日本からの資金供与がソ連の軍備増加やあるいはソ連を通じて第三国の援助資金に流入をしていないという保証が一体ありますでしょうか。
  213. 白浜仁吉

    白浜委員長 田川君、結論を急いでください、答弁の時間がなくなりますから。
  214. 田川誠一

    ○田川委員 第三に、わが国のエコノミックアニマルまるっきりむき出し態度です。こういうような態度に対しまして、一体総理はソ連圏、広く共産圏諸国に対する資金供与に対しまして、もっと見直しをする必要があるかどうか、この点をおそ百万人といわれる。特にその中で問題になりますのは、高齢者の失業者が七〇%もふえておるというこの現実であります。  こういう中で、輸出先行型で、自動車、家電を先頭にする輸出先行で景気の浮揚を図ろうとするところに私は問題があると思うのであります。当然これはよその国々から批判を受け、円切り上げをしろという圧力がかかるのはこれまた当然のことだと思うのであります。そういうことを考えて、私は、ここで政策の転換をすべきであると思うのでありますが、総理、いかがですか。
  215. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 輸出は伸びたことは事実でございます。それは世界の景気の回復というものが背景にあったわけですが、この輸出の伸びというものは、こんな状態がいつまでも続かない。今日では輸入が非常に伸びてきて、国際収支の上においても、貿易の黒字が四億ドルだったのが、これが十分の一に減ってきておるわけであります。輸出入の国際経済の中においては、一応好ましいような形になりつつある。輸出は、言われますけれども、経常収支全体からすれば赤字にもなるという状態でございますから、やはり日本は輸出というものが大きな経済発展の要素であるということは、これはもう否めないわけであります。しかし、その間に節度のある輸出でなければ、いま申されたような円の為替相場に対しても非常な誤解を生ずるようなことにもなりますから、この点は、節度のある輸出でなければいけないけれども、輸出というものがやっぱり日本経済の発展のためには必要な要素である。そうしてその状態は、阿部君の言われるような、これは日本の国内においても輸出だけで景気を引っ張っていくというような状態は、これはバランスのとれた問題でないわけですから、個人消費とか設備投資とかバランスのとれた成長に持っていかなければならぬという阿部君のお説は、私はそれはそのとおりだと思います。初め景気を引っ張っていく当初において、世界景気の回復に伴って輸出というものが牽引力になったという事実は、これはやはりそのときの経済事情からやむを得ないものだと考えております。
  216. 阿部助哉

    阿部(助)委員 節度のある輸出であるとかいろいろおっしゃるならば、このように圧力がかかるはずがないのですね。そこで政府の方では松川財務官を欧米に派遣してみたり、いろいろやっておるわけです。私は、やはりアメリカならアメリカは減税政策によって景気の浮揚策を図ってみたり、フランスはフランスなりに社会保障、年金を増額することによって購買力をつけ、そうして自分の国の購買力を浮揚させる、こういう中で景気策を立てておるけれども、日本の場合は、全くこれは労働者や農民を抑えつけることによって輸出ドライブをかけてきたというところに問題がある、私はこう思うのであります。  大体そんないまの程度で、大蔵省の国際金融局長ですか、藤岡君の論文も、これは大蔵省の広報雑誌ですが、これを見ましても、いま三木さんおっしゃったように、わざわざ経常収支のところに黒枠をつけて、これが大事なんですよというふうに注目はしておるようでありますけれども、素人ごまかしもはなはだしいですよ。問題は貿易収支なんですよ。アメリカが問題にしておるのも、私が問題にしておるのも、この貿易収支の日本の黒が一体どうして行われたのか。ある意味で言えば、外国はそれぞれ自分の国内で苦心惨たんして景気を浮揚しておる。それをいいことにして日本アメリカに家電や自動車を売り込んだ、こう向こうはおっしゃるわけでしょう。そこに圧力がかかると私は思うのです。  私は、大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、藤岡君がこれを書いておりますけれども、こうおっしゃっておるのです。これは九月号のファイナンスです。「輸出ドライブによる景気回復を意図したものではない」、こういう中見出しの中で、「今回の世界的不況に際し、国によっては、不況からの脱出のため、輸出に頼るという考え方を持っていたところもあると思うが、我が国が初めからそういう政策的意図を持っていたというのは間違いである。」、こうおっしゃっておるのですね。大平さん、このとおりですか、これは間違いないですか。
  217. 大平正芳

    ○大平国務大臣 わが国の貿易は、国家管理でございませんで、民間主体に運営いたしておるわけでございます。国が輸出をふやすあるいは減らすというようなことが、景気対策上フィスカルポリシーとして若干の仕事はできますけれども、本体はあくまでも民間主体としての経済活動の結果でございまして、政府が左右できるものではございませんので、そういう趣旨のことを藤岡君は書いたものと思います。
  218. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もう少し的確に答えてくれませんか。これは間違いじゃございませんかと、こう聞いておるので、間違いでないならないとおっしゃってくれればいい。間違いなら間違いとおっしゃってくれればいいのです。
  219. 大平正芳

    ○大平国務大臣 間違いとは存じておりません。
  220. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はこれはどうも間違いだと思うのですが、総理、いかがですか。
  221. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 こういう不況時ですから、国内における購買力というものが減っておるときですから、輸出というものに各業界が力を入れるという自然の勢いがあると思いますが、政府が輸出ドライブをかけたというふうにはわれわれも考えておらないわけでございます。
  222. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは見出しのことじゃなしに、見出しはこうつけてはあるが、この中身で、「我が国が初めからそういう政策的意図を持っていたというのは間違いである。」、こう言っておる。私はこの点を聞いておるのですが、いかがです。
  223. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 民間自身が輸出に非常に努力したということは事実でしょうが、政府が輸出というものにドライブをかけて、景気浮揚を輸出で図っていこうという政策的意図があったということは、私は言えないと思います。
  224. 阿部助哉

    阿部(助)委員 三木さん、いつから政策転換をなさったのですか。これは一月二十九日、この前の国会における予算委員会の一日目に私は質問をしておるわけです。そこで私は皆さんの不況対策に批判的な意見を述べてお伺いをいたしました。先ほど申し上げたように、もっと労働者の賃金を上げる、社会保障の充実を図る、そういう中で国内の景気浮揚を図るべきである、こういう立場に立って私が質問したときに、総理はこう答えておるのです。これは速記録ですよ。「やはり政策の選択としては、公共事業また輸出貿易、こういうものを中心として景気の回復を図ろうという選択をいたしたものであって、私は、この選択日本の国情に照らして、それは間違った選択であるとは思っていない。」。皆さんは公共事業——その公共事業も、私に言わせれば、もっともっとお困りになっている農民や何かに、昔であれば救農土木事業というような形で現金収入の入るような手が打たれたけれども、皆さんの公共事業の中心は本四架橋であるとか新幹線であるとか、ということに対して私は批判をしたわけであります。それに対して総理は、公共事業によって、そして輸出を伸ばすことによって日本の景気をやる、この政策選択は間違いでない、こうおっしゃっておる。ところが藤岡君のこの論文は、いま円に対する圧力が強まってきた、これをいかにかわすかという点で恐らく書いた文章であろうと思うけれども、総理の一月の本委員会における御答弁とこの論文とは明らかに矛盾しておるわけです。総理は、国民に向かってはこう言い、官僚の指導には別の手を使うという、食言的な二つの手をお使いになっておるのですか。
  225. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そうとは思わないのです。ドライブというものの解釈が……
  226. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だからドライブとは言わない。本文です。
  227. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はその論文を読まないのですけれども——読んでないのですよ。読んでないけれども、ドライブをかけたという……
  228. 阿部助哉

    阿部(助)委員 三行ぐらい読んだらわかります。政策的な意図はないとおっしゃっておる。政策選択をした……。
  229. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 あの場合、景気を浮揚していくために、公共事業をやり、一方においては輸出というものが世界景気の回復によって、輸出が非常に落ち込んでいましたからね、今後輸出を伸ばしていくということは当然に景気浮揚としてはとるべきで、特にドライブをかけたということでないけれども、必然に政策としてはそういう方向にいくということは、国内の購買力がまだ十分に起こってきてないわけですから、当然にそういう政策にいくが、特に私は、いまドライブと言われるから、特に政府が輸出ドライブのために非常にほかのことを犠牲にしてやったというような意図だったら、それは少し言い過ぎじゃないかと言ったので、やはりあの場合に、公共事業と輸出というものを、輸出を抑えるという意図は、そういう政策をとるべきじゃないので、大いに輸出が伸びることは自然の勢いだったと思いますから、特に政府が輸出をむやみにふやすためのドライブをかけたという意味かと思って、私は読んでないから、そういう意図は言い過ぎではないかと申したわけであります。
  230. 阿部助哉

    阿部(助)委員 総理の御答弁はどうもさっぱりわかりません。総理が一月、景気対策として私が指摘したときにはここで明らかにおっしゃっておるように、公共事業と輸出によって景気の浮揚を図る、この選択は間違いでない、こうおっしゃっておるのですよ。ところが、いま円に対する圧力が加わってくるとそういうことを言っておる。それは皆さんは、間違いでないと大蔵大臣もおっしゃっておる。そうすると、ここに問題があるわけです。私は、こんな態度で国際的な批判を避けるわけにはいかないというところに心配をするわけであります。大体こんなことで、大平さん、IMFの会議に臨まれて、円の切り上げというものを迫られる心配はないのですか。いかがなんです。
  231. 大平正芳

    ○大平国務大臣 阿部さんの御心配になられますように、円問題につきまして、確かに世界の一部にわが国に対する批判があることは事実でございます。そのことはよく吟味してみますと、私どもは誤解に基づくものであると判断しております。そういう誤解があってはなりませんので、いまお話がありましたように、先般も財務官を派遣いたしまして、各国に誤解のないように求めたわけでございます。  私どもは、為替政策につきまして世界から指弾を受けるようなことをやっておるわけではございません、またやろうといたしておるわけでもございませんので、IMFの会合がございますけれども、その点につきまして心配は別にいたしておりませんし、もし万一取り上げられましても十分対応できる用意をいたしております。
  232. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いまの段階であなたはそうおっしゃるけれども、これは新聞報道ですから、私は一応信用して申し上げるんだけれども、松川財務官とアメリカのヨウ財務次官との会談、そしてこの次官が会談の内容を発表した。それに対して、大蔵省は大変困ってまた文句を言っておるようでありますけれども、この中身を見れば、明らかに円の切り上げ、インフレではなしに為替操作によって、為替の変動によって黒字の処理をするということを話し合いをし、合意しておるのですね。こういうことを考えてくれば、あなたが幾らどう言おうと、客観的には円の実質的な切り上げになるじゃないですか。円の切り上げの問題は最後の最後までうそをついてもいいということになっておるようだから、あなたが本当のことをおっしゃるとは思わぬけれども、客観的にはもうこういうことまで約束しておる。  そこで三木さんにお伺いしたいのですけれども、これによりますると、あなたはランブイエやあるいはまたサンフアンで、このことを為替の変動によって処理をするということを約束しておると向こうでは言っておるのですね。(「固定相場なんかないよ」と呼ぶ者あり)いや、実質的にいまのような、外国から言われればいわゆるダーティーフロートをやっておる。円は不当に安過ぎるという批判を受けておる。そういうことであなたはやっておいでになったのですか。
  233. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はサンフアン会議で言ったことは、日本が円に対して不当な操作を行っておるわけではないという話はいたしましたけれども、そこでいろいろこういう問題があれば、これが大きな問題とならぬ前に、各国において大問題化する前に事前に調整しようではないかということが、一番大きなその会議の結論でもあったわけで、そういうことで、松川財務官なども、そういうふうに各国回って日本立場を理解させるために努力をしたわけでして、そういうことがサンフアン会議で主として論じられた問題でございます。
  234. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、そこで、一月に申し上げましたように、もう一度日本国内の自分たちの努力で、やはりそれなりの景気回復の努力をなさる必要があるんじゃないか。それには、やはり福祉の問題をもっと充実をする、そして労働者の賃金をもう少し適正に引き上げる。物価よりも上がらないとか、当然税金は重くなるとか、減税の問題だとかというふうな問題をもう少し私は国内においても真剣に取り上げる必要があるんではないか。私は、そういう点にもう少し重点を指向しなければ、あなたが当初、高度成長から安定成長へと言われたけれども、ただ周囲の客観情勢で高度成長ができないだけであって、その方向といい仕組みといい高度成長の時代と何も変わらないんじゃないかという感じがするわけです。そういう点で、減税措置あるいは社会保障の充実というところに私は力を注ぐべきだと思いますが、いかがですか。
  235. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 減税ということも、やはり国民の負担を軽減する意味において、絶えず財政事情をにらみ合わせて考えなければならぬ問題でもありますし、社会保障の充実ということは、これからの大きな政治の目標になることは明らかでございますから、充実の方向に持っていかなければならぬということはお説のとおりだと思うのです。
  236. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでは、ことしは減税をしなかった、そこで労働者は税金が増額をされておるわけです。来年度は、その分少なくとも物価調整減税くらいはおやりになるのですね。
  237. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 賃金の問題は、政府は御承知のように介入はしていないわけですから、自主的な判断に任しておるわけでございますから、特に政府が抑えておるわけではないわけですが、いま政府は減税という考え方は持っていないわけです。これは財政の特例法までしてこういう公債を発行しておるときでございますから、減税という考え方は持っていないわけですが、これは将来においては一つ検討すべき問題点ではございます。
  238. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これだけ毎年一〇%ばかりずつ物価が上がる中で、将来とも減税しないなんという手はありませんので、私は来年度の予算においては減税すべきである、こう申し上げたのであります。  あなた方が内閣を組織されてから、五十年代前期の中期経済計画ですか、それを見てまいりましても、実際に税金はうんと重くなってくるのですね。社会保険料もまた大きくなってくる。私、時間がありませんから、数字は持っておるけれども、挙げませんけれども、そういう形で、低福祉高負担という形でこれがやられてくる。しかもその理屈は、イギリス型になっちゃいかぬとかいろいろなことをおっしゃるけれども、まだイギリス型が批判されるほどには日本の社会保障は水準にいっていないわけでありますから、その辺をお考え願いたいと思います。  最後に一言大蔵大臣に申し上げておきたいのでありますけれども、昨日、わが党の小林委員質問に対して、特例法の問題で、大臣は、返済計画を、できれば非常に幸いでございますけれども、それは不可能なことでございます、こうおっしゃっておるのですね。私は困難なことも承知しております。不可能でございますと、こうおっしゃられたのでは、そうすると、皆さんは特例法を出すとき、また前の財政法にもありますし、この特例法自体に、皆さん出しておるこの法案の中に、第四条では、「政府は、第二条の議決を経ようとするときは、同条の公債の償還の計画を国会に提出しなければならない。」と、自分でこの計画を提出しなければならないと言っておって、それは不可能でございますとは、一体どういうことなんです。これは何としても私には合点がいきません。承知ができません。私はこれは訂正すべきだと思うのですが、いかがです。
  239. 大平正芳

    ○大平国務大臣 もっともでございます。私が申し上げた意味は、償還財源の計画、これは本委員会におきましても長い論争の対象になりましたことは阿部委員も御承知のとおりでございまして、小林委員が私に求められたものは、私の理解では償還財源の年次計画というものと受け取りまして、それは大変困難といいますよりは不可能というように申し上げたわけでございます。しかし、阿部委員指摘されましたように、償還計画というものは予算につけて出さなければなりませんし、現にわれわれは提出いたしておるわけでございまして、それは御指摘のとおりでございます。したがって、私がきのう申した答弁は非常に不正確でございまして、いわゆる年次的な償還財源の数字的な計画を十カ年にわたりまして具体的に提示することは非常に困難であるという趣旨のものであるというように訂正させていただきます。
  240. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は本当を言うと、この償還計画、これはもう少しきちんとしたものを出すべきだと思うのです。それは大変つらいことです。つらいことはよくわかるのです。しかし皆さんの計画によっても、五十五年ですかには五十兆円の公債を出すことになってしまう。それは全部国民の肩へかかるのです。その国民といっても、これはうんと特別措置とかいろいろな形で恩恵を受けておる大きな金持ち、大企業もあります。しかしまた、汗水流して働きながら、生活に苦しみながら税金を納めておる層もあるのです。そのとき一体、付加価値税のような大衆課税にこれを持っていくのか。みんなで苦労して納めるのはこれはやむを得ないと思うのですよ。だけれども、一方的に大衆課税でこれを返済しようとするのか、それともいろいろ批判を受けておる特別措置等をもっと整理することによって財源を確保しようとするのか、そこに大きな差があるわけです。だから、せめて大体どういう方向、どういう財源でこの返済に充てたい。しかし、それが十年間の間にまた変更ということも私は当然あり得ると思うのです、計画でありますから。だけれども、つらいけれども、それはお出しにならなければ、納める方の、五十兆円をしようところの国民の方はもっとつらいのですよ。そのつらい国民を盲にしておいてこの負担をかぶせるよりも、もっと明快に、こういう方向で行きますよということをちゃんとすることが私は償還計画の骨子であろうと思う。そのことが赤字公債の私はせめてもの歯どめだ、こう申し上げておるわけであります。それぐらいのものを私は勇気を出して出すべきであると思う。選挙を控えておるから、増税の話をするのはつらいだろうし、いやなことでしょう。しかし、これだけの財政の失敗を犯してこれだけの赤字を出し、そして私に言わせれば憲法違反であるところの、あの戦争の犠牲を払って赤字公債を禁止したにかかわらず、この戦争の犠牲を一挙にしてここで崩そうとする赤字公債の特例というものは、私は憲法違反だと思っておる。それだけ重大なときに、その負担の行き先もわからない、出さない。それで負担だけ国民にかぶせるなんということは、勇気の問題ではなしにひきょうだとすら私は考えるところなんです。それぐらいのものは、皆さん勇気を出して計画をお出しになるのが私は当然だと思います。幾ら私が追及しても皆さんなかなか出さぬようだけれども、もう一遍私は御検討を願いたいと思います。  あと私は、関連質問が石野さんからございますのでお許しを願いたいと思います。
  241. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 石野久男君より関連質疑の申し出があります。阿部君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石野久男君。
  242. 石野久男

    ○石野委員 関連して、私はエネルギーの問題でお尋ねしたいと思うのです。  二十八日の日に科学技術庁の調査委員会が報告書を出しました。それによりますと、エネルギー消費は十四年後に限界に来る。気温上昇が植生に影響を与えるし、二酸化硫黄による大気汚染の面から考えればそれ以前にリミットが来るんだ、こういうような報告です。この報告書によると、日本人の生活様式あるいはエネルギー使用についていま一度これは再考を要する事態が出てきている、こういうように思います。それに対応して総合エネルギー計画の総量を見直ししなければいけないのではないか、こういうように私は思いますが、総理はどういうふうにお考えですか。
  243. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 石野君が御指摘になったのは資源調査会の報告が基礎になっての御発言だと思いますが、資源調査会が、わが国のエネルギーの需要が、四十八年を起点でしたか、それが二倍、三倍になればこういう気温とかいろいろな影響が出てくる。われわれは何としてもやはり環境の保全というものが前提になって考えなければならぬわけでございまして、エネルギーの需要というものがふえていくことは間違いないし、六%程度の成長を見込んだときの基礎として総合エネルギーの計画というものも出されておるわけですが、やはりそれを推進するに当たっても、こういう資源調査会なんかの大胆な予測ということも頭に入れながら、常に忘れてはならぬことは、環境の保全というものを第一に考えて、その保全というものの上に立って総合エネルギー計画というものは立てなければならぬということは、われわれが政策立案の場合の大前提であるということは、御指摘のとおりだと思います。
  244. 石野久男

    ○石野委員 指摘のとおりだということは見直しをするという意味ですか。
  245. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま総合エネルギーの長期下車、昭和六十年度までですか、立てたわけですが、これはそういうことを前提にして立てられたわけですから、いまこれを見直しをするという必要はないわけです。その後のやはりエネルギーの計画を立てていく上においてはいろいろ慎重に検討しなければならぬが、当面立てました総合エネルギーの計画というものを変更する必要はない、こういうふうに考えております。
  246. 石野久男

    ○石野委員 総理は、この政府の機関である資源調査会の報告が、すでに十四年後になれば、いまの計画のままであれば昭和四十八年度の実績の三、四倍に達するのは昭和六十五年だ、だからこのモデル計算によれば気温上昇の面からは今後十五年もしないうちに限度に達し、二酸化硫黄による大気汚染の面から考えればそれ以前にリミットが来るということになる、こういう指摘をされておることについては、そのことにはもう全然配慮する必要がないというたてまえでいまのような答弁をなさっておられますか。
  247. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 全然配慮する必要はないというふうには考えないわけでございまして、その大胆な予測に対しては、十分このエネルギーの計画を立てる場合にそれも一つの頭に入れなければならぬことである、こういうふうに考えておることは事実でございます。
  248. 石野久男

    ○石野委員 この報告書は政府機関から出ておるものですから、われわれも非常に重要視します。従来、私たちは、原子力等の問題で特にこの温排水の問題等による温度上昇の問題が非常に重要だということを指摘しておりました。それがここにそのままの形で出てきておりまするから、これはエネルギー計画の上にも重要な問題が出てくるし、日本人の生活様式そのものについても考えなければならぬことを指摘しておりまするから、いまの総理答弁では私は十分納得しません。しかし、時間がありませんから、これは後でもう一度考えるべき問題だと思います。  特に私はきょうは原子力の問題で、エネルギーに関係してお尋ねしたいのですが、原子力については未解明の部分が多いので、特に放射能及び放射線の人類に及ぼす影響、危険性があるのだから、いたずらに開発に突っ走るべきではないということをわが党は主張してきました。原子炉の事故は本当に世界でも日本でも非常に多いのです。しかし事業体である原発などはできるだけそれを外部に発表しないようにしてきておりまして、原子力基本法のいわゆる公開の原則はもとより地方自治体との協定までも無視して事故発生の報告を怠っているというのがいままでの実情でございます。  原子炉の事故の中で私たちが最も恐れるのは燃料棒の溶融破損事故です。私はいまここに田原総一郎氏が書かれた「原子力戦争」という本を持っております。この本の末尾の方に美浜一号炉における事故の報告書が出ておるのです。この本は、私たちが最も恐れている燃料棒の溶融事故の問題をここで訴えておるわけです。  報告書の内容をここで私は簡単に申しますと、美浜一号炉はもともと蒸気発生器の細管のピンホールが認められ、また燃料棒の一部が変形しているのが発見されたために運転が停止された、こういうふうに言っているけれども、本当は燃料棒の溶融破損事故のため運転がとめられたのではないかという第一の疑問を出しております。第二の疑問は、関西電力が四十八年五月二十五日に朝日新聞、福井新聞に説明しているところによると、燃料棒の取りかえが行われたときの取りかえ数は四十二体だ、ところがそれから二年後の昭和五十年四月九日に電気新聞が、燃料ピットに収納されている美浜一号機の使用済み燃料は四十四体だ、こういうように発表しているのです。そこでこの間に二体の差があります。この食い違いはどうもおかしいという疑問の提起が第二。第三番目は、その食い違っている二体について田原総一郎氏のところに某氏から手紙が来ておる。その手紙によると、美浜一号炉の事故は炉心部に事故が発生し、秘密裏に処理されたらしい、こういうふうに書かれている。一つには、いまお手元にお配りしておりまする図をごらんになっていただくとわかりますが、第三領域のMの7、Aの6、Aの7に異常があった、こういうふうに報じているのです。それから公式には、燃料棒のつぶれによる扁平化と伝えられておるけれども、事実は右のうちの一体が溶融して燃料棒が三十センチぐらい切れてペレットが落ち、炉心を回っていたものだと思われる、こういうふうに書かれておる。その原因は何かというと、燃料集合体の外枠のバッフル板の溶接していなかった部分から水が入って、ジェット水流でやられた、もしくは熱中性子束がふえたものと思われる、こういうふうに書かれておる。もし田原氏の指摘するような事実があるとしたら大変なことです、率直に言いまして。これは徹底的に究明しなければならぬことだと思います。これまで燃料棒の破損事故については不明朗なことが非常に多かったのです。こういうような田原氏の指摘がありますると、これは徹底究明しなくちゃなりませんが、これは担当の通産大臣あるいは科学技術庁長官に関西電力からこの種の報告があったのかどうか、またこの事実をどういうふうに認識しているか、このことについて担当の大臣からひとつ御答弁いただきたい。
  249. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま御指摘になりました点につきましてお答えいたしますが、ただ、いまの「原子力戦争」というのはドキュメント・ノベルという形で発刊された小説のようでございますが、当時通産省といたしましては、四十八年春の第二回の定期検査に当たりまして、四十四体の燃料体を取りかえたという報告は受けております。ただ、いま御指摘のような、「原子力戦争」の中で述べられておりますような燃料棒の溶融事故については報告はなかったわけでございます。去る八月二十五日、先生の御指摘によりまして直ちに関西電力を招致いたしましてその事実の有無をただしましたところ、「原子力戦争」に記述されているような燃料棒溶融事故はなかった、こういう否定的な答弁をいたしておるわけでございますが、通産省といたしましてはさらにその事実を確認するため、現在調査を進めておるわけでございます。  その調査の考え方といたしましては、小説に書かれておりますような急激な溶融事故が発生したときには、少なくとも原子炉の冷却水の放射能レベルが高くなるであろう。二つ目には、問題の溶融燃料を納めてあるといわれる使用済み燃料プールの水の放射能レベルが高くなるのではないか。三つ目には、燃料体の漏洩試験の際に異常が認められるはずである。こういう観点に立ちまして、これらの項目につきまして当時の記録を調査いたしておりますが、現在までの分析結果では、「原子力戦争」に記述されているような燃料溶融事故があったとは考えられないわけでございますが、なお調査を継続中でございます。
  250. 石野久男

    ○石野委員 この問題は通産省からいま私は資料をもらっておるのです。しかし、その前に田原氏は溶融の事実があったとして疑義を指摘しているわけです。ですから私は、ピットの中にある放射能濃度がどうであるかということよりも、ピットの中に納められてある燃料棒の実態が、いま保管状態がどういうふうになっているかを見せてほしいのです。     〔澁谷委員長代理退席、委員長着席〕 これは、それを見ればもうこういうものは解明してしまうわけですよね。事実がないと言えばなくてわかるのですから。だから、その事実を見せる用意があるかどうかということについて先般科学技術の委員会で聞きました。なかなかアクティビティーが強いからそれは無理だ、こう言うわけです。それなら写真を撮ったらどうだ、写真は撮れませんと言うわけです。そんなばかなことはない。だからこれは大臣に、いま答弁がありましたが、もう理屈は抜きでいいですから、政府はこの問題について、疑義のあるこの燃料棒の保管状態を写真で示す用意があるかどうか。
  251. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 私たちといたしましても、御指摘のような疑いのある燃料体をそのままに放置しておくわけにまいりませんので、何らかの形で調査し、あるいは確認したい、かように考えておりますが、ただ、使用済み燃料プールの中でございますので作業条件に制限がある。そのために必要な調査用機材の手配なり据えつけ、あるいは用品の確保、被曝対策等を考慮しながら、どのような形で調査すればいいか現在検討を進めておるという段階でございます。
  252. 石野久男

    ○石野委員 検討を続けているということではなんですから、もし田原氏のはこれは小説だから意味はないということでしたならば、しかし田原氏にしても、これだけのものを「美浜一号炉燃料棒事故の疑惑」ということで報告書を書いているのですから、これはただ口先で言っているのじゃない、文章にしているのですから。これがこのまま通っていったら大変なことになるし、われわれだってほっておくわけにいかない。こういうことのないことを念願しますけれども、事実がこうだとするならば明確にやはりわれわれに示さなければいかぬ。もう理屈抜きで、現物をどのように保管しているか。保管の状況は、別にイギリスに再処理を依頼したわけでも何でもない、東海の再処理工場でやる予定だから、いま保管しているんだから、その実態をひとつ写真で示すようにすべきだと思うのだが、それはできないのですか。
  253. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 それを調査確認するため、あるいは御指摘のように写真の方法をとるかどうかは別といたしまして、いずれにしても確認をできるだけ早くやる方向で検討いたしております。
  254. 石野久男

    ○石野委員 あなた方の方から溶融事故について私の質問に対して資料が来ておるのですよ。この中には、いまのお話のように溶融の実態があればこういうふうになるんだというようなことがいろいろ言われましたが、この「原子力発電所からのCo60、Mn54の放出について」という安全局からの私に対する資料によりますと、発電所の定期検査時にはコバルト60、マンガン54等の放出量が増加する、こういうふうに書かれてあるんです。これは、われわれはいままで定期検査のときにこんなものが放出量が増加するなんということは余り聞いてないし、またこれがあたりまえだということになると、定期検査ごとに放射能がどんどん外にほうり出されることになって、大変なことなんですよね。それからまた、この資料の後の方になりますると、いわゆるPWRとそれからBWRとの構造的な問題でのいろいろな違いについて指摘されておりまするけれども、要するにPWRというのはこれは閉鎖型なんですね。第一次冷却水が外に出ないことになっているのでしょう。その出ないことになっているようなところから、何でこんな検査のときにコバルト60やマンガン54が出てくるのですか。そういう書かれておる経緯はどこから来ているのですか。これはどこか事故がなければ出てこないわけなんですが、どういうわけなんですか。
  255. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘の点、まず第一にコバルト60あるいはマンガン54が定期検査中に放出量がふえるというのはなぜであるか、それは問題ではないかという御指摘がございますが、御高承のとおりこのコバルト、マンガンはいわゆる腐食生成物というものでございまして、核分裂の結果生じます放射性物質とは別のものでございます。このコバルトなりマンガンが、たとえば先ほど御指摘のように、PWRは一次冷却系が閉鎖されておるから本来出ないはずである。これも原則的には御指摘のとおりでございますが、この出てまいりますコバルト、マンガンの量というのは非常に微量でございます。この運転の途中におきましてポンプ、バルブなどからの多少の漏洩があるわけでございます。そういったごく微量の漏洩、さらには定期検査のときにおきましてこういう一次系の機器を開放点検をいたすわけでございます。そのときに作業員の作業衣、作業用具などが多少汚染をいたします。これを洗たくして再使用いたしますために洗たく液に多少の微量の放射性物質が含まれる。そういうことで定期検査中には一般的にコバルト、マンガンの放出量が多少ふえるというのは事実でございます。これはもちろん非常に大量にこういうものが環境中に放出されますと問題でございますけれども、実際上は環境の安全を確保するための管理の目標値から比べても非常に少ない量、数百分の一から数千分の一というレベルでございますので……。(「簡単に」と呼ぶ者あり)
  256. 白浜仁吉

    白浜委員長 簡単に願います。
  257. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 はい。まず環境に影響はないということでございます。
  258. 石野久男

    ○石野委員 いまのような説明だけれども、もう一つ、放出廃液の核種組成という中で、BWRとPWRの核種組成が私のところに来ているのです。この資料も、いつどの炉でどういうふうになったかということがわかりませんから、これでは私ども検討は加えにくいが、この中で特に注意を必要とするのは、セシウム134、セシウム137が全体の量のうちの約五〇%出ているのですね。こういうようなものが出ているということになると、従来放出量にはちっとも心配要らないんだと、コバルトとかあるいは沃素とかいうものは一般に言われておりましたけれども、セシウムがこういう形で、特にPWR、いわゆる閉鎖式のものの中でこういうようなものが出てくるというようなことの説明がありますと、これはもう大変なことになると思うのですが、これは恐らく破損か何かなければこういう事実は出てこないんじゃないかと思いますけれども、どういうことなんですか。
  259. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 結論的に申し上げますと、セシウムがPWR系におきまして組成の約半分というのは事実でございますが、これは原子炉の燃料体にたとえばピンホールというふうなものがありまして、そこから放射性核種が多少漏出してまいります。それが原因でございます。ただ、この量は非常に微量でございまして、全体的に原子力発電所の安全性を損なうものではございません。
  260. 石野久男

    ○石野委員 この問題で関西電力は、事故がなかったということの証明で——実は田原氏たちが、この事実がもしあるとすれば、放射能がどこかへ、排水の中に出ているんだろうということを非常に疑問に思って調べたのです。その調べた結果が皆さんのところにやったこの小さな表なんですが、これによると中国の核実験があったためにというようなことで、美浜の放水口とそれから敦賀の放水口との両方でホンダワラの中の放射能、いわゆるマンガンとコバルトとの含有量の比があるのです。その比でいきますると、もし中国の核実験が四十八年七月四日あるいは八月二日の段階で行われたときにそういう事実があるんだとすると、この美浜と敦賀との関係が非常に奇妙な形が出てくるのですよ。美浜の方ではとにかくこのコバルト60が非常に多くなっているのです。それから敦賀の方はマンガンの方が多い。これは放射能の半減期の関係で美浜の方でこういうコバルト60が多くなっているということは、すでに炉心の中で事故に遭った冷却水をためておったものをこの時期に巧妙に流したのであろう、古いものがここへ流れ込んできたんだろうという想定をするわけです。それに一致するわけなんですよね。ですから、皆さんがそうやって幾ら隠しても、この美浜と敦賀放水口との両方におけるホンダワラの中の放射能比というものはどうもやはり解明のできないものがある。こういう点についてはどういうふうにお考えになるか、これをひとつ解明してください。  それと同時に、こういう事態があることについて、先般関西電力は、後で皆さんは調べたらしいのですけれども、当時はむしろ新聞に対しては四十二本の発表しかしていないのです。後でこれは四十四本というのがわかって疑問を持ったのですからね。事故のあった問題をひたすらに隠している。こういう実態はよくないと思うのです。先般私は、福島の炉で火災の問題を指摘した場合も全然報告がなくて、私の質問で調べたところが、やはりそういう事態が出てきている。だから、こういうことは許されないので、厳にこういう問題に対する政府の監視、監督が必要であるということを強調しなければいけないのです。これは所管大臣のはっきりした答弁をもらっておきたいと思う。
  261. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 原子力発電を推進していきます場合に一番大事なことは、安全対策と環境の保全だと思います。この二つの面につきましては格段の配慮を払っていきたいと思います。
  262. 前田正男

    ○前田国務大臣 お答えいたします。  ただいま通産大臣がお答えしたとおり、われわれも業者を十分に監督指導いたしまして厳重な報告を求めて、安全については最優先で考えていきたい、こう考えておるわけであります。
  263. 白浜仁吉

    白浜委員長 岡田春夫君より関連質疑の申し出があります。阿部君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡田春夫君。
  264. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 三十分しか質問の時間がありません。したがって、石炭問題を中心に、これに限って質問をいたしますが、その前に一問だけ総理大臣に伺っておきたいことがある。  それは、ついせんだってECの通貨評議会が行われまして、その席上で三回目のいわゆるランブイエの会議を十二月の末または一月、東京において開くことを検討する、こういうことが議題になりまして、そこには日本から財務官も出席をいたしております。そういう事実がありますだけに、総理がサンファンの会議において三回目は東京でやりましょうという提案をした、こういう事態が具体的にあらわれてきたんだろうということも考えられるが、まず第一に、総理大臣この点を御存じであるのかどうか。現実にこれは議題になっているわけですから。そして、もしこの提案があった場合総理大臣はどうされるのか。この点をまず伺っておきたいと思います。
  265. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その情報でございますけれども、私はまだ寡聞にして聞いておりません。
  266. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 前段はいまのようなことですが、サンファンの会議のことにお触れになりましたが、これはやはりこういうときですから最高の政治判断というものを必要とするので、各国の、こういう社会情勢の変化の激しいときですから、最高の政治判断というものが要る場合が多いわけです。各国の首脳部が緊密な連絡をとって、いろいろ問題があったら事前にひとつこれを防ぐために、今後連絡を緊密にしようということで——サンファン会議は自由諸国の中の主要なる国、先進工業国の集まりで、これはやはり世界全体で、共産圏も入れて、七カ国でGNPの六〇%を占めるのですから、これはやはり非常に重視しなければならない、この関係は。フランスのランブイエでやったわけですね。今度はアメリカがカリブ海のプエルトリコでやったから、私が会議に、今度はひとつやる場合にはアジアの日本でやろうではないか、日本はホストカントリーになる用意があるということを申しておいたことは事実ですが、これは、いつ開かれるとか、あるいはまた具体的な問題というものが起こるとか、あるいはまたそういう問題を話し合う必要があるというときに、必要に応じて開かれるわけで、今度はいつ開かれるということも決まっていないわけですから、日本の提案だけで終わっておるということが事実でございます。
  267. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 簡単にお答えいただきたいのだが、先ほど申し上げたECの通貨評議会の中でこういうことが事実議題になっている、私はこれは外電関係で入手をしている、そういうのが具体的になってきた場合に三木総理としてはどうされるのかということをさっき伺ったので、これの御見解を伺いたいと思います。
  268. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 大平蔵相も言われるように、私も聞いていないのですが、そういう情報が伝わっておる……(岡田(春)委員「しかしそういう提案があった場合」と呼ぶ)そういう場合には、その具体的な提案に従って自分は、日本としてはどうするかということを決めますが、むろんいろいろな国際会議というものは日本は常に積極的な態度ですから、しかしこれは問題が具体化してみないと、その場合にまだ具体化していないわけですから、具体化すれば日本はこれを積極的に検討をするということであります。
  269. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この点はもう少し伺いたい点です。たとえばIMFの会議がマニラである。その前にアメリカ、イギリス、全部日本経由で入ってくる。こういう点で具体的になってくると思いますから、いまから私申し上げておきます。  そこで、石炭問題に入ってまいります。国内のエネルギーの確保は、この間の石油危機という苦い経験からかんがみて日本の最大の課題の一つである。政府は昨年の暮れ、こういう点から新たな石炭政策を決めました。そして本年度以降十年間、二千万トン以上の国内炭を生産確保するということを本年度から実施をしている。ところが、この決定があった直後あるいはその前から、夕張、砂川、高島、幌内、こういう重大災害が相次いで起こった。そこでその結果、五十年度の実績は通産大臣も御存じのとおりに千八百六十万トンに落ち込んだ。しかも、ことしの実績も恐らくこの状態ならば一千八百万トンに達するかどうかわからないという状態である。まさに新しい政策は破産の状態に近づいているというのが今日の状態であります。  そこで、通産大臣にお伺いしたいのだが、この政策によって十年間の二千万トンの生産の確保というものが見通しとして確実にあるという確信を通産大臣はお持ちになっているのかどうか、この点からまず伺いましょう。
  270. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 石炭鉱業審議会の答申を受けまして、二千万トンを目標とする石炭の生産を維持したいというのがいまの基本的な方針でございます。残念ながら昨年は御承知のような大事故によりまして千八百六十万トンの生産でございました。ことしもその大事故の後遺症が残っておりますので、やはり昨年と同じ千八百六十万トンを目標にしておりますが、今後は新鉱の開発等を積極的に考慮をいたしまして、二千万トン前後のものは維持していきたい、こういうふうに考えております。
  271. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうすると、五十一年度は二千万トンできるというお見通しですか。千八百万トンせい、ぜいでしょう。
  272. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほど申し上げましたように、ことしの目標は、昨年度と同じ千八百六十万トンということを目標にしております。
  273. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 だから、初年度からもはや二千万トンの線は崩れたのです。私は来年度も、五十二年度の場合においても二千万トンに到達できないのではないか。そうなると、ここで政策を再見直しをする必要があると思うのです。こういう点は大臣も、この石炭問題についてずいぶん、北炭の問題いろいろ努力をしておられるからおわかりの点あろうと思いますが、もう一度見直しをしてみるということをひとつお考えになったらどうですか。
  274. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 生産が初年度から千八百六十万トンに、目標よりも約数%落ち込んだということは昨年発生した大事故によるものでございますから、すぐにこれで政策を見直して、二千万トンという目標を変更するということではなくして、もうしばらくの間、様子を見たい、こう思います。
  275. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いま大臣も言外に言われておられる点ですが、問題は、幌内を初めとする北炭の問題なのです。もし北炭が、新聞等で伝えられるように倒産をしたりするようなことがあるならば、恐らく国内炭の実績というのは一挙に一千五百万トンに落ち込んでしまう。二千万トンなんかとうてい問題にもならない。しかも北炭全体の倒産ということで、北海道の三笠、夕張を初めとする関係市町村、約十数万人おります。この住民がもう路頭に迷うという状態になってしまう。特に百四十万トンを掘っている幌内の全面復旧が可能であるかどうか、この点が重大な問題であります。  ところが通産省は、いままでもう一年もたっているのに、まだ会社の案ができないから方針が出せないとか、会社の案ができても、これは石鉱審、石炭鉱業審議会の専門委員会にかけて、その後で通産省が指導するのだとか、いろいろな理由を並べて、われわれから見ると納得のいかない、官僚の責任の回避を行っているとしかわれわれ考えられない。本当にこれは大臣、どうですか、本気で幌内の全面復旧をする気を通産省は持っているのか、どうなんです。どうも本音のところは、資金が不足であるという理由のもとに、結局は幌内を閉山さしてしまおうというのが通産省の本音ではないのか。大臣、一体全面復旧をやられるという、そういう意味で努力をしておられるのか、どうなのか。この真意をまずはっきり伺っておきたいと思います。
  276. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 北炭の再建計画がおくれておりますのは、これは理由があっておくれておるのです。その理由というのは、昨年十一月に幌内であれだけの大事故が起こりまして、御案内のように、全部水を入れまして火を消した、こういうことがございまして、後なかなか排水に時間がかかっておる、非常に予定よりも復旧がおくれておるわけです。そういうことで、政府の方といたしましても九月末までに再建計画を出すようにということを指導しておったのでございますが、復旧のおくれ等から会社側もだんだんと復旧計画の作成がおくれまして、現在のところ、遅くとも十月の中旬、今月の中旬には再建計画を出します、こう言っておりますので、その計画を見た上で政府の方としては善処するつもりでございます。
  277. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 その善処とおっしゃるのは幌内の全面復旧をお考えになっているのですか、どうなんですか。
  278. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 会社側がどういうふうな案を出してくるかまだわかりませんが、いずれにいたしましても、企業の経営責任というものは会社側にあるわけでありますから、通産省といたしましては、会社側が企業の経営責任ということを自覚して、そして労働組合側と十分協議をするように、かつまた主力銀行とも十分相談をし、そのほかの債権者やユーザーとも十分相談をして、国民の納得が得られるような案を出してくるように、こういうことを期待をしておるわけでございます。
  279. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 どうも全面復旧をされるというおつもりだということは言い切れないような感じがするのですが、その点はどうなんですか。
  280. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私どもは相当な生産量のある山でございますししますから、全面復旧ができるということを期待しておるのですけれども、ただしかし、会社側がその点をどういうふうに判断をいたしますか。資金計画等のこともあろうと思うわけでございます。そこで先ほど申し上げましたように関係者がたくさんございますから、その関係者意見や労働組合とも十分相談をして、そして実現可能な案を出すように、こういうふうに指導をしておるわけでございます。
  281. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 どうも大臣御自身でも歯切れが悪いとお感じにならないですか。全面復旧の方向で全力を挙げて努力する、その後、ただし、云々というお話がついてくるんで、これが非常に残念なんです。  ところが、大臣も御存じのように全面復旧の点については労使の間で基本的にもうすでに合意しているのです。これは御存じでしょう。九月の十六日、二十七日に基本的には全面復旧の方針を決めたのです。問題は資金がどうだという問題なんです。この資金はどうだという問題についてはむしろ通産省がちゅうちょしているではありませんか。  たとえば例を挙げると、これは総理大臣も聞いておいていただきたいが、あの全面復旧の方向を出していったのは北炭の会長である萩原吉太郎という人です。私、この人のことは必ずしも信用していませんよ。むしろロッキードに関係がある疑惑のある人物だというぐらいに思っていますよ。しかし、萩原氏が少なくとも全面復旧のために全力を挙げる、しかも資金のめどがあるんだと本人が言い出している。言っている。新聞記者会見でも言っていることは通産大臣おわかりのとおりなんです。ところが、どうですか。しかも、この萩原という人は代表権を持った会長なんです。会社の代表権を持っておる。この人に対して通産省はいままで会っていますか。会ってないじゃないですか。信用が全然できないとしても、こういうことを言っているのなら、呼んで、一体あなたの考えはどうなんです、資金のことはどこまで信用ができるのですかということをやはり通産省がやらなければならないじゃないですか。経営の責任は確かに会社にある。しかし、指導の責任は通産省にあるじゃないですか。そうすれば、呼んで、この事情は一体どうなんだと聞くのがあたりまえじゃないですか。通産省官僚、いまだに萩原に会おうとしてないでしょう。あなた、どうですか。この際、通産大臣、萩原吉太郎を呼んで、あんたの言っているのはどうなんだということぐらい聞いたっていいじゃありませんか。こういうことで事態の解決ができるならそれにこしたことはないじゃありませんか。そういう努力をなさいますか、どうですか。
  282. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 再建計画の進みぐあい等につきましては、会社側から絶えず連絡があるようであります。エネルギー庁の方へ連絡に来ているようでありますが、私の聞いているところでは、社長が大体来ておるようです。
  283. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いや、私が言っているのは、萩原に会ったらどうだ。あなただって御存じのように、社長と萩原との意見が違っていることだって、あなた御存じでしょう。(「違うのか」と呼ぶ者あり)違うのです。萩原の方が全面復旧をやると言っているのです。呼んで聞いたらどうですか。あなた、そんなむずかしいことじゃないじゃありませんか。大臣がお会いになれないと言うなら、エネルギー庁長官に、おまえ会えという指示を与えたらいいじゃないですか。
  284. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほど申し上げましたように、社長が連絡に来ておるようでありまして、そうして復旧計画もほぼまとまっておりまして、先ほど申し上げましたように、九月の末という目標が若干ずれておりますが、遅くとも十月の中旬、もう十日もすれば出すように言っておりますから、それを待っておるわけであります。
  285. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは大臣、伺いますが、復旧計画がまとまったというのは、これは労使の間で基本的に全面復旧がまとまったのです。資金の問題は別として、その方針で通産省はいいのですね。
  286. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 通産省として期待をしておりますことは、まず一番の基本は、労使の間で意見がまとまるということですね。それに対して主力銀行がやはりオーケーのサインを出さなければいかぬと思います。それから同時にユーザーとかほかの債権者がたくさんございますから、やはり関係者が、全部とは言いませんが主だったところはある程度合意をする、そしてその再建内容がやはり客観的に見まして妥当なものである、国民全体の納得を得られるものである、こういうものでなければならぬと私は思います。石炭を掘るのは大事だから幾らかかってもいいのだ、国民経済全体を無視する、そういうことでは困りますから、やはり国民経済全体という立場から物事を判断しなければならぬと思います。
  287. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 先ほどお答えがなかったんだけれども、萩原氏を、会長を呼んで事情を聴取をしていただけますね。そんなことはむずかしいことではないでしょう。
  288. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまエネルギー庁では呼ぶ準備をしておるそうです。
  289. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これはぜひ呼んで事情を調べてください。  もう一つ、河本さん、あなたに大変失礼ですが、北炭あるいは幌内の関係の住民や北海道の道民は、幌内の復旧に対してあなたの熱意を疑っているのですよ、本当のことを言って。率直に言います。たとえば、先日、台風の災害や冷害凶作の場合に、力があるかないかは知らぬが、建設大臣や農林大臣や北海道開発庁長官が現地に飛んでいった。ところが、河本さん、あなたは、事故が起こってからもう一年になるのですよ。二十四人の人が犠牲になっているのですよ。しかもまだ十三人が深部の坑底に眠っているのですよ。それなのにいまだにあなたはいらっしゃらないではありませんか。合同葬のときにもあなたはいらっしゃらなかった。それ以外にこの一年間、幌内の現場をごらんになって調査をしておられないじゃないですか。いままであなたがおっしゃることは、会社の計画が、再建案が出たら行きます、こうおっしゃっていた。そんなこと待っていられないですよ。指導の責任から言ったら、通産大臣、現地に一日でも早く飛ばれて、この現状をごらんになる必要がありますよ。北海道はこれから雪なんですよ。この寒いときに、あの犠牲者を初めとする関係者、どんなに苦しんでいますか。大臣、どうです、ここで私はできるだけ早く行くと言明していただけますか、どうですか。
  290. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現地の方から、いまお話しのように現場視察をするようにという強い要請がございましたので、とりあえず私のかわりに政務次官を先般派遣をいたしまして、詳細に事情は承知をいたしております。  それからなお、幌内の再建計画、北炭の再建計画というものは、単に一企業だけではなく地域社会に非常に大きな影響がありますし、たくさんの労働者もおるわけでございますから、非常に重大に考えておるのです。その点は誤解のないようにお願いをしたいと思います。  ただしかし、企業の責任者は会社の社長である。政府が経営しておるのではない。この点だけは私は常に言っておるわけです。でありますから、社長や会長が責任を持って納得できるような案をつくりなさい、その案ができれば政府の方としては現行の体制の中でできるだけの援助はするということは言っておるわけでございます。
  291. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私の伺いたいのは、大臣に現地へ行ってくれということなんです。確かに会社の経営責任はあります。しかし、指導の責任はあなた方にある。それなら現地に行くのはあたりまえじゃありませんか。政務次官の話も私は知っています。しかし、皆さんどうですか。大臣御存じのように、ことしの四月でしょう。四月から以降もう半年たっているのですよ。やはり大臣、なるべく早く、速やかに行くという言明をここでなさってください。
  292. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これは私は行くのをいとうわけでは決してございません。いつでも行きますけれども、ただしかし、やはり急ぐのは、現場へ行くということよりも、早く会社が計画をつくり上げて出すということだと思うのですね。ですから、毎日のように督促をしておるわけです。でありますから、行く用意はありますけれども、やはりある程度の会社の再建計画ができませんと、行っても具体的に話し合いをすることができませんので、それを待っておるわけでございます。
  293. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃ、こういうように理解してもいいのですね。行きます、しかし会社の再建案が出て、そのめどがついた段階で行きます、こういうように理解してもいいのですね。
  294. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 そのとおりでございます。
  295. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 結局は、いまお聞きのように、総理大臣、資金の問題なんです、最終的には。ところが、一体、政府が資金のための指導と援助を適切にやっているかどうかという問題なんです。私は、経営責任から言って、当然北炭の内部が一切、金を出せるものは全部出す、それができない場合には、北炭の系列としては三井関係でしょうが、三井関係からも協力させる、そういう段取りを追って、その後で政府も特別な融資なり何なりを考える、こういう筋で再建をしなければならないと思う。いま大臣言われたとおりなんです。一私企業の問題ではないのですよ、これは。日本の国内エネルギーの問題なんです。一千五百万トンにも減ってしまおうとしている重大な問題なんです。しかも、関係住民十数万も含めて、死活の問題になっておるわけです。やはり、こういう点では政府が思い切った指導を行う。もう一つは、足りない分は政府が特別な融資を考える。しかし、その場合に、きっと問題になるでしょう。そんなことを言ったって、萩原のいる会社だからどういうことになるかわからない。これはしかし別な問題ですよ。これは、監督指導を厳重にやるべき問題ですよ。これは徹底してやってもらいたいと思う。そういうことで、資金のめどをつけさせるような方向で、これは重要な問題ですから、総理大臣、ひとつそういう方向性について御確認をいただきたいと思います。
  296. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この問題は日本の総合エネルギーの観点から重要ですけれども、やはりこれは私企業でありますから、やはり企業自体が責任を持って案を立てる、このことでないと、これはもう重要だからといって全部政府がということにはならないわけですから、やはり企業としての責任というものを痛感して、それで再建する案を立てて、その再建案に対して政府はできるだけの援助をすることが当然だ、こう考えております。(岡田(春)委員「資金のめどはそういう方向で……」と呼ぶ)いや、その案が、再建案が立って、そうしていま申したように関連する人たちがおるわけですからね、金融機関も含めて、こういうもので精いっぱいの再建案を出して、この案というものが妥当であるならば、政府はもう全力を挙げて協力をすべきものだと思います。
  297. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 時間がもうなくなってしまいましたので、大蔵大臣に一点だけ。  今日の石炭政策は、私が言うまでもなく、石油石炭特別会計、これに基づいていますね。ところが、御存じのように、この制度は五十一年度までの時限立法ですね。問題は、来年度以降どうするかという問題がある。この問題について、この会計制度をとっていくのかどうなのか。少なくとも大蔵大臣としては、基本的な考え方は、来年度以降について、これほど石炭が問題になっているわけですから、この会計制度を基本的には踏襲したいというお考えなのかどうなのか。
  298. 大平正芳

    ○大平国務大臣 通産省と協議をいたしまして、対処いたしたいと思います。
  299. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いや、通産省とはもうやってもおりますし、通産省は会計制度を踏襲する考えなんですよ。だから大蔵省に聞いているのです。
  300. 大平正芳

    ○大平国務大臣 でございますから、通産省とよく協議をいたしまして、五十二年度の予算編成までには基本の方針を固めていきたいと考えます。
  301. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これではもう時間がなくなりましたので、一括して問題を伺ってまいりますが、一つは、総理大臣に伺いたいのです。  今日の坑内の採炭、これはほとんど深部採炭なんです。地下千メートルぐらいのところで掘っている。ですから、災害なんかも千メートルぐらいの地下で事故が起こっている。さっきの十三人の犠牲者もそのような地下にいるわけです。やはり保安の問題というのは人の命の問題ですから、最大の問題ですね。このことがエネルギーの問題に結びついていくわけです。そこで、私たちはこういう深部開発を初めとする総合保安の研究センターをつくれということを再三言っている。いまだに、これは大蔵省が悪いのか通産省が悪いのかわからないけれども、予算化できないのです。やはりこの研究センターの必要性を認識されて、こういう問題は人の命に関係する問題ですから、むしろ総理大臣が指示をすべきだと思う。どうやったら実現できるか、こういう問題として、総理大臣はこの問題について一定の指示を政府に対して与えてもらいたい、これが一つ。  第二は、これは通産大臣ですが、万一の重大災害に備えまして、今度は特別の基金制度をつくったらどうかというのがいま通産省で考えられている。これはもっともな話だと思う。これはぜひ実現をしてもらいたいと思うが、新年度に実現がされるのかどうか、というのが通産大臣。  それから第三点、これは労働大臣ですが、今度の新政策の中で賃金はこのようになっている。あなたはお読みになったと思うが、今度の決定された政策では、「賃金は他産業とのバランスを考慮し、地下労働の特殊性が十分配慮された適正な水準にしなければならない」と書いてある。ところが、労働大臣、北炭の場合どうですか。ことしの四月から今日まで会社から賃金が全然払われていないのですよ。夏の期末手当も出ていないのですよ。これで一体いいのですか。労働問題、合理化や何か、労働強化は通産省が企業を通じて指導している。労働強化をやらせる。賃金はいまだに払われておらないのですよ。労働者の方は困って、労働組合が中心になって労働金庫から借りているのですよ。このような実態をほうっておいて、労働省として、いいのですか。このような中で労働者が苦しんで働いている実態を考えるならば、これに対して適切な措置をとっていただかなければいかぬと思います。  この三つの点、まず総理には保安問題、第二の点は特別基金制度の問題、通産大臣、労働大臣からはいま申し上げた点、この三つを伺いまして私は質問を終わります。
  302. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 岡田君の御指摘のように、炭鉱の状態が非常に皆深くなっていくわけで、そういうことで、やはり六十年度二千万トンというものを確保するにしても、大きな前提は、坑内のやはり保安というものがもう大前提になる。その他環境あるいはまた合理的経営もございましょうが、やはり保安というものが第一番の問題である。こういうことに対して、保安というものはこれからそういう状況が皆悪くなるわけですから、エネルギー庁を中心として十分保安の確保については研究をいたさせます。
  303. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 大災害が起こりました場合に、やはり現行の制度では私は不十分じゃないかという感じがいたします。そこで、来年度以降の問題といたしまして、いまどうするか研究をしておるところでございます。
  304. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 お答え申し上げます。  いま北海道炭礦汽船の賃上げ問題あるいは支払いの問題につきましては、五月の十九日に、労使間でベースアップや、それからその支払いについて協議をされております。まあベースアップは一万二千円、そしてその支払い方法については追って協議をする、ということで話がまとまっておるようでございまするが……(岡田(春)委員「それ五月でしょう。五月なら、いまもう十月ですよ」と呼ぶ)そこで、その支払い問題については、全社の再建計画と絡み合っておるようでございまするが、労使間の協議が整っておりまするので、これからわれわれといたしましても、労働者が賃金がいただけないというようなことでは大変でございますので、極力会社側を督励し、いずれにしても、北炭の現在の現状でなかなか大変のようでございまするけれども、最大の努力をして御趣旨に沿うような方向に持っていきたい、かように考えております。
  305. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これで終わりますが、ただ通産大臣、先ほどの答弁でちょっと……。  実際、通産省の実態とは若干違うのですよ。特別基金の制度は新年度に実現しようということでもう進めていて、大体めどがついているのですよ。ここら辺、そういう点で明確にしておいていただいた方が、これはやはり今後の炭鉱、石炭産業の問題として重要ですから、あなたのおっしゃるように、そういう点を新年度から実現したいということで考えていると明確におっしゃっていただきたい。それで終わります。
  306. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、現行制度では不十分である、だから何らかの対策が必要であるということで、検討をしておるところでございます。
  307. 白浜仁吉

    白浜委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、質疑は全部終了いたしました。  委員各位には、二日間とも、長時間にわたり御精励を願い、まことに御苦労さまでございました。      ————◇—————
  308. 白浜仁吉

    白浜委員長 なお、この際、御報告いたします。  さきの国会で、本委員会において偽証の疑いで告発を行った若狭得治君及び檜山広君に関し、検察当局から、それぞれ議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反により公訴提起を行った旨の処分通知書が参りましたので、御報告いたします。  なお、両通知書を会議録に掲載いたします。     —————————————
  309. 白浜仁吉

    白浜委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後六時八分散会