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寺田最高裁判所長官代理者 このたびの
鬼頭判事補の問題は、私
どもとしてまことに遺憾に思っておる次第でございます。具体的な事案の
内容、詳細はわかりませんけれ
ども、現在判明いたしております限度でも、これは
裁判官としてはきわめてふさわしくない行動であることは間違いないわけでございまして、しかも、こういうふうに、二千数百人の
裁判官の中でただ一人の
判事補でありましても、かような行動に出る者がありますと、それが
一般的には
裁判官全体に対する信頼感を世間から失わせるという一つのもとともなるわけでございまして、そういう
意味におきまして、私
ども裁判官常に相戒めて、一人の不心得者もないようにしなければならない、かように
考えておるわけでございます。
鬼頭判事補の行いました行為の中で、にせ
電話をかけたかかけないかはともかくといたしまして、にせ
電話に
関係した、こういうような事実をとってみますと、いま
青柳委員からもお話がございましたように、これはきわめて特殊な
裁判官の特殊な行為だというふうに私
どもとしても受けとめたいし、恐らくそうであろうと確信するわけでございますが、しかしながら、今回の問題をきっかけにしてあらわれてまいりましたいろいろな問題点、これは
鬼頭裁判官自身の処分等については、あるいは間接的なことになるかもしれませんけれ
ども、たとえば札幌に出張した機会に網走まで許可なく足を延ばしたとか、あるいは海外に旅行する場合に何らの許可を得ないで三回も行っており、しかもそのことが相当長期間、いわば今回の問題が起こりますまで上司等に知られなかったとか、あるいは相当遠隔のところから通勤しており、開廷時間等にもほかの
裁判官と違うところがあったのに、それがよくわからなかったとか、その他もろもろ、いわば今回の
事件をきっかけとしてあらわれてまいりました問題点は、これは果たして
鬼頭判事補の特殊な問題としてそのまま見過ごしていいものであるかどうかという点には、私
どもとしてやはり反省しなければならない問題があるのではないかと
考えておるわけでございます。
もっとも、そうであるからといって、これを直ちに、どういう方法で
裁判官というものが自粛する、正しい行動をとるようにしていくかということにつきましては、いま
青柳委員からもお話がございましたとおり、憲法上保障されました
裁判官の地位というものとの関連がございまして、私
どもも直ちに今回の
事件からストレートに何らかの規制をするということを
考えるわけでもございませんけれ
ども、しかしながら、また同時に、毎日マスコミで伝えられまするところを国民の
皆様方が一体どういうふうにお受け取りになっておられるであろうか、
裁判官というものはかくもふしだらなものかともし万一おとりいただくようなことがあるとすれば、これまたゆゆしいことでございます。その辺の兼ね合いは十分慎重に
考えながら、すべての
裁判官が誤りなく行動できるように十分検討いたしたい、かように
考えておる次第でございます。