運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1976-10-22 第78回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十二日(金曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長 大竹 太郎君    理事 小島 徹三君 理事 小平 久雄君    理事 中山 利生君 理事 稲葉 誠一君    理事 吉田 法晴君 理事 諫山  博君       奧田 敬和君    小坂徳三郎君       塩谷 一夫君    葉梨 信行君       福永 健司君    宮澤 喜一君     早稻田柳右エ門君    沖本 泰幸君       山田 太郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 稻葉  修君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         法務大臣官房長 藤島  昭君         法務大臣官房司         法法制調査部長 賀集  唱君         法務省矯正局長 石原 一彦君         法務省人権擁護         局長      村岡 二郎君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房同和対策室長 今泉 昭雄君         法務省刑事局刑         事課長     吉田 淳一君         法務省刑事局公         安課長     石山  陽君         自治省行政局選         挙部選挙課長  秋山陽一郎君         最高裁判所事務         総長      寺田 治郎君         最高裁判所事務         総局人事局長  勝見 嘉美君         最高裁判所事務         総局刑事局長  岡垣  勲君         最高裁判所事務         総局行政局長  井口 牧郎君         法務委員会調査         室長      家弓 吉己君     ————————————— 委員の異動 十月十九日  辞任         補欠選任   沖本 泰幸君     竹入 義勝君 同月二十日  辞任         補欠選任   山田 太郎君     沖本 泰幸君 同日  辞任         補欠選任   沖本 泰幸君     山田 太郎君 同月二十二日  辞任         補欠選任   大久保武雄君     奧田 敬和君   千葉 三郎君     葉梨 信行君   松浦周太郎君     塩谷 一夫君   竹入 義勝君     沖本 泰幸君 同日  辞任         補欠選任   奧田 敬和君     大久保武雄君   塩谷 一夫君     松浦周太郎君   葉梨 信行君     千葉 三郎君     ————————————— 十月十三日  犯罪被害補償法案原田立君外一名提出参法  第一号)(予)  刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正する法  律案原田立君外一名提出参法第二号)(  予)  同月十九日  集団代表訴訟に関する法律案原田立君外一名  提出参法第四号)(予) 同月二十日  民法及び戸籍法の一部を改正する法律案(青柳  盛雄君外四名提出衆法第一号)  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第八号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第九号)  民法の一部を改正する法律案佐々木静子君外  一名提出参法第五号)(予) 同月十八日  特別養子制度法制化促進に関する請願(小坂  善太郎紹介)(第六〇七号)  同(小川平二紹介)(第六二五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第八号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第九号)  裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関  する件      ————◇—————
  2. 大竹太郎

    大竹委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所寺田事務総長勝見人事局長岡垣刑事局長井口行政局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大竹太郎

    大竹委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 大竹太郎

    大竹委員長 内閣提出裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。精薬法務大臣。     —————————————  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  5. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。  政府は、人事院勧告趣旨にかんがみ、一般政府職員給与を改善する必要を認め、今国会に、一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職職員給与に関する法律及び沖縄国際海洋博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般政府職員の例に準じて、その給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案提出した次第でありまして、改正内容は、次のとおりであります。  第一に、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並びに検事総長次長検事及び検事長俸給は、従来、特別職職員給与に関する法律適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職職員俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣その他の特別職職員について、その俸給を増額することとしておりますので、おおむねこれに準じて、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並びに検事総長次長検事及び検事長俸給を増額することといたしております。  第二に、判事判事補及び簡易裁判所判事報酬並びに検事及び副検事俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職職員給与に関する法律適用を受ける職員俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。  これらの改正は、一般政府職員の場合と同様、昭和五十一年四月一日にさかのぼって適用することといたしております。  以上が、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  6. 大竹太郎

    大竹委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  7. 大竹太郎

    大竹委員長 両案に対し質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  8. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この裁判官法案に関連するわけですけれども、その前にちょっと大きな問題として、裁判官適格性の問題というか、そうした問題について質問をしたい、こういうふうに思うわけです。  実は、私も、けさの読売新聞ですが、これを見てびっくりしたわけですが、京都地裁の、名前が出ていますが、鬼頭史郎判事補ですか、この方が、総理大臣検事総長名前をかたって一時間にわたって電話をした。しかも、それが何か捜査報告に関連をしての質問であって、録音テープまで持っているというようなことが書かれておるわけですね。これはちょっともう裁判官としては、事実とすれば、全く常識外れで、理解ができないのですが、最高裁の方で、急な話であれですけれども、どの程度の事実関係を調べておるのか、調べた結果どうなのかという点をまずお答えを願いたい、こういうふうに思います。その後の詳細な質問は二十六日にまたやりたい、こう思うのですが、いまわかっておる範囲のことをひとまずお答え願いたい、こう思うのです。
  9. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 ただいま稲葉委員指摘読売新聞の記事につきまして、私どももけさ見まして、大変驚いた次第でございます。もちろんのことでございますけれども、私どもといたしましては全然知らなかったことでございます。早速登庁いたしまして、大阪高等裁判所を通じまして京都地方裁判所長に事の有無をただすように調査を命じたところでございます。したがいまして、それに関する事実が、鬼頭判事補がこのようなことをやったかどうかということにつきましては、現在のところ、もちろんまだ返答が返っておりませんので何とも申し上げかねる次第でございますが、事重大でございますので、できればあすにでも上京を命じまして、最高裁といたしまして本人に直接当たりまして調査いたしたいというふうに考えております。  きょうのところは、京都地裁調査に当たっているはずでございますが、先ほど申し上げましたように、現在のところ、どうであったかということにつきましては、まだお答えをいたす段階にはなっておらないような状況でございます。
  10. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 急な話ですからそれも無理もない、こう思うのですが、結局こういうことが、一体電話三木総理に話をしたというか、それが事実かどうか。それから録音をとっておったということが事実かどうか。それから何の目的でこういうふうなことをやったのかどうかとか、それから何かほかの人もいるとかいうことも出ているのですが、よくわかりませんけれども、「この問題が明るみに出たら、私一人だけの問題ではすまなくなる」、こう漏らしたとか漏らさないとか、これは真偽のほどは別ですが、そうした問題もよく調べていただいて、これは非常に重要な問題ですから、二十六日にもう一回審議があるわけですから、これは事務総長に出席していただいて、そこで調べの経過というふうなものを事実関係を明らかに報告をしてもらいたい、こういうふうに思うわけでございます。この点は最高裁としてはどういうふうにお考えですか。
  11. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 調査に当たりましては、ただいま御指摘のような事実関係有無について当然調査することになろうかと存じます。  ただ、事重大でございまして、果たして本人がどのようなことを述べるか、ただいまのところ私どもとしてはもちろん予測がつきかねますし、ただいま御指摘のような事実について、とても私ども理解の及ばないところでありますので、果たして次回の委員会の席上でどの程度まとまった御報告を申し上げられるかどうか、いまのところ何とも申し上げかねる次第でございます。
  12. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、このごろ中間報告がはやりますけれども、それは中間報告でもいいわけですね。本人を呼んで調べた経過というものを、事裁判の権威というか、ぼくも非常に驚いたのですよ、事実とすれば。事実とすればということは前提にしますからね。全くびっくりしたので、ちょっと常識的に考えられないことなんですが、もし事実とすれば、一体これどうなんです。そこまで聞くのは無理かな。
  13. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 何回も繰り返しになりますが、事重大でございますので、御指摘のとおり、事実とすればどうするのかという御質問には、ひとつお答えは差し控えさせていただきたいと存じますが、しかし常識的に考えましても、私ども最高裁当局といたしましても、本当に、先ほども申し上げましたように、とても理解できないケースでございますので、どうするのだ、こういうふうに御質問いただきましても、何とも申し上げかねるような状況でございます。
  14. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これはいまの段階ですから、急な話ですから、これ以上質問してもあれですが、だから、本人を呼んでいろいろ聞いた経過本人の弁明というか事実関係に対する認否とかいろいろありますから、言い分もあるでしょうから、私はこれは全部そのままだと言っているわけでございませんから、よく聞いて、その結果、ありのままのことをひとつ事務総長が出てきて、二十六日にはぜひそのわかった範囲内のことを当委員会報告してもらいたい。わかった範囲ですよ。そのことだけをひとつお約束できますか。
  15. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 私どもといたしましても、できるだけのことはいたしたいと存じますし、当委員会の席上においでもできるだけのことを申し上げたいというふうに存じています。
  16. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それでは、二十六日に質問を続行するということにさしていただきたい。  それから、いま言った裁判官の問題で、これは非常に抽象的な問題なんですが、最高裁が考えている好ましい裁判官というのは、一体どういうようなものを最高裁では好ましい裁判官というふうに考えておられるわけですか。
  17. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 私どもといたしましては、裁判官を区分けいたしまして、好ましき裁判官あるいは好ましくない裁判官といったようなものを、仮に内部的にいたしましても、そのような基準を立てて私ども仕事をやっているわけではございません。しかし、このようなことを申し上げるまでもありませんけれども裁判官はあくまでも憲法以下の諸法規と良心に従って仕事をしていただくわけでございますので、好ましいとか好ましくないというような基準は私どもは持ち合わせておらないというふうにお答えせざるを得ないと思います。
  18. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 下級審違憲判決を出すという場合が非常に多いですね。多いというか。そして、それが上級審で取り消される場合が相当あるわけですね。そういう場合で、それは最高裁としては、その裁判官の成績と言うと言葉が悪いのですが、そうしたものに影響をしてくるわけですか。これは違憲判決内容にもよる、こう思うのですよ。たとえば道交法申告義務がある。この申告義務は、自己に不利益な供述を強制されないといいますか、憲法との関係憲法違反だ、こういうことで盛んにというか、憲法違反判決を出した人がいますね。ところが、その人は現実には最高裁としては、再任拒否ではないけれども再任拒否に近い方向を示したのではないですか。そのことのためにその人はやめたのですか。そこら辺の経過はどういうふうになっているわけですか。名前は言いませんよ。名前はわかっているけれども名前は言いませんけれども、その辺どうなんですか。だから、明らかにもう上級審でひっくり返るような違憲判決を出す人、これは最高裁としては非常に好ましくないということになるのかな。これはどういうことなんですか。
  19. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 稲葉委員すでに、もちろんこんなことを申し上げるまでもございませんが、憲法上下級裁判所にも違憲審査権が与えられております。したがいまして、下級裁判所におきましても違憲判決が相当数出ていることは御承知のとおりでございます。ただ、違憲判決をしたことのゆえをもって当該裁判官不利益に処遇しているというような事実は全くございません。過去十年間の私ども事件局調査しました違憲判決個々の具体的な裁判官に当たりまして、いわば追跡調査といいますか、してまいりましたけれども、全体的に見まして決して不利益に取り扱っているというようなことは全然ないものというふうに信じております。  ただいま十年間の判決と申し上げましたが、実はもう少し前に違憲判決がございましたが、その違憲判決をした裁判所を構成しております裁判官の中で、最高裁判事になっておられる方もありますし、先ほど申し上げました、ここ十年間に違憲判決をしたその判決裁判所を構成している裁判官の中で、高裁長官になっておられる方もございます。
  20. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは違憲判決を出して、違憲判決上級審でも通った場合の話じゃないんですか。そういう点ぼくが言うのは、いまあなた何か追跡調査したというような話がありましたよね。言葉じりをとらえるようで悪いんですけれども、ちょっとよくわからないんですが、判決を出した、一体どうしてこういう判決が出たかとかなんとか、その経過とかなんとかを追跡調査するということ自身が司法権の独立を侵することになるんじゃないの。いま追跡調査という言葉意味がちょっとはっきりしなかったものですから聞くわけですが、ぼくが言うのは、具体的にたとえば道交法の問題で、ここにもありますが、これは報告義務の問題でしょう。これは全部ひっくり返っていますよね。こういうことを出した裁判官というのは、結局、再任拒否ではないけれども再任拒否と同じような扱いをされたんじゃないの、名前は言えませんけれども
  21. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げました追跡調査というのは、少し不正確であったかも存じませんが、もう一度正確に申し上げますと、過去十年間で私ども調査した限りで、違憲判決をした裁判官といいますか、違憲判決を下した裁判所を構成している裁判官の数が、判事五十三名、判事補十八名、個々の具体的な裁判官に当たりまして、その後、現在どういう地位におられるかということを調べた結果を追跡調査というふうに申し上げた次第でございまして、一審判決が二審でいわば取り消されたとかという趣旨内容に立ち至った調査をした趣旨ではございません。
  22. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはそうだと思うんですね、そんな内容調査したら大変な問題になるから。  そこで、話は法案に入りますが、今度の法案で、裁判官アップが八・三ですか、検察官アップが八%ですか、よくわかりませんけれども、それはどうしてそういうふうに違うんですか、全体のアップ率が。
  23. 賀集唱

    賀集政府委員 今回のアップ率は、ただいま稲葉委員指摘のとおり、裁判官について八・三%、検察官について八・〇%でございますが、その検察官の中には副検事が入っております。副検事は、若い方でどちらかというと今回は引き上げ率の低い方の方でありますから、本検事といいますか、検事ばかりを計算しますと八・四%に相なります。
  24. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この前は全体のアップが、いわゆる上に薄くて下に厚かったということが言われておって、今度の場合はそれを埋めるためかどうか知りませんけれども、上に厚くて下に薄いんだということが専門家の間で言われておるわけだ。これはどういうことを具体的に指して言っているわけですか。
  25. 賀集唱

    賀集政府委員 昨年は、御承知のとおり、民間のといいますか、役付の方でそれぞれ手当等のカットといいますか、自粛をいたしまして、それに見合って人事院勧告の方におきましても、指定職適用を受けているところは一律引き上げ率抑制になりました。ことしはそういう事情がございませんので、その抑制分を回復といいますか、そういう結果、その指定職に対応する部分だけ、ほかのといいますか、それより下の分よりもアップ率が高くなっておりますけれども、昨年抑制した、ことしは抑制しなかったという点を除外いたしますと、下の方の引き上げ率指定職に対応する方の引き上げ率とは同様でございます。
  26. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 裁判官なんかに会ってお話ししますと、ことに中堅の裁判官の話を聞くと、非常に中だるみだということを盛んに言うんですね。初任給は上がっているけれども、いわゆる中だるみというか、何年たった人かな、二年ぐらいたった人かな、そこら辺の人の給与がなかなか、低い段階のときに入ってきた人でその後それが是正されていないんだ、中だるみだということを盛んにでもないんですけれども言うんです。中年だから中年太りで中だるみかもわからないけれども、盛んに言うんですが、そういう点はどういうふうになっているんですか。そういう事実はないんですか、あるいは中だるみという事実がそのまままだ是正されてないということなんですか。ちょっとぼくもまだ具体的なことがわからないんですよ。
  27. 賀集唱

    賀集政府委員 中だるみといいますか、そういう話は私ども具体的には聞いておりませんけれども、二十年たった方は当然、裁判官ならば判事検事ならば九号以上で十年選手以上の方でございますが、それは一般職では指定職に対応するように組んでいるといいますか、対応関係に持ってきたわけでございます。  それで指定職の方と裁判官の方との給与の水準でございますが、これはかなり高いところに持っていっております。そういうわけで、一般指定職の方に比べますと裁判官の方はかなり優位にあると申し上げることができます。
  28. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 裁判官検察官と比べた場合、給与関係はどっちが有利になっているの、実際。だから発表するのを非常にいやがるんだけれども、これは余り聞くと人事院がうるさいから——うるさいを言うと語弊があるけれども、余り聞きたくないんだけれども、よくそういう話が出てくるんですが、どっちが有利になっているの、それは実際問題としては。
  29. 藤島昭

    藤島政府委員 私ども裁判所の側とそれから検察庁の検事の側と一つ一つ比べてやっているわけではございませんけれども、やはり同じ裁判官検察官でございますから、お互いにいろいろ昇給とかそういうことはなかなか関心をお持ちになっておるわけでございます。  そこで、私どもには内閣総理大臣と取り決めた昇給基準がございまして、その内容をここで明らかにすることはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、裁判官になられた方と検事になった者とがどちらかが不公平になるというような昇給の運用は、私どもはいたしていないわけでございます。ただ、裁判官の場合には定年が検事より長いということもございますので、給与体系の上では、上の方に参りますと裁判官の方が若干上の俸給がございますけれども、あとは大体同じように運用されていっていると私は考えております。
  30. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いろいろ聞きたいこともあるんですが、吉田先生がお聞きになるという前からのたてまえだったものですから、私の質問はこれで終わって、いまの、きょうの問題の報告その他に関連しての裁判官適格性の問題は、二十六日に残った問題も含めてやらせていただきたい、こういうふうに思います。
  31. 大竹太郎

  32. 吉田法晴

    吉田委員 裁判官検察官についても、一般職員の例に準じて給与を改善する措置を講ずると提案理由にございましたが、一般職員俸給引き上げ率、それから裁判官検察官俸給引き上げ率は、それぞれ違うと先ほど答弁ございました。なぜ違うかについてお尋ねをしたいと思います。  それからもう一つ、検察官の中で副検事については増加率が違うという話でございます。それを除きますと八・八%強になる——八・二とおっしゃったか、定かに覚えておりませんが、なぜ副検事増率が低いのか、それらの点について承りたいと思います。
  33. 賀集唱

    賀集政府委員 お答えいたします。  お手元に差し上げました資料の四十四ページからごらんいただきたいと思いますが、その前に、先ほど私、稲葉委員お答えしたときに、一般職引き上げ率の数字を申し上げませんでしたけれども一般職は、私ども調査いたしましたところ、七・〇%になっております。そこで、裁判官の場合は八・三%、検察官の場合は八・〇%になって、  一般職よりもことしは高くなっておりますが、それはこれから述べるようなことでございます。  四十四ページ、ちょうど真ん中あたりに二本線がございます。この二重線より上が認証官に当たりますが、それから下が認証官でない一般裁判官検察官でございます。そして、実は四十四ページの方には裁判官検察官以外の一般政府職員を掲げております。四十五ページの方には裁判官検察官を掲げておりますが、二重線からすぐ下に、「判○」とありますが、これは判事特号意味でございます。その下、「判1」「検1」、これは判事一号、検事一号でございます。「判1」  「検1」に対応する一般政府職員をごらんいただきますと、「指11」。「指」というのは指定職でございます。このように判事の二号は指定職の九号というように対応関係にございますが、ずっと指定職を見ていただきますと、八%台が次の四十六ページまでまいっております。これが一般職職員の中で指定職俸給表適用を受ける人の上げ率とそれに対応する裁判官検察官上げ率で、全部ぴったりと一致いたしております。  その次の四十六ページ、四十七ページにかけて、上の方の二重線、これは指定職意味の「指」からあとのところは指定職以外の行(一)の俸給表を受ける一般職員に対応する関係でございますが、これは一等級六号と一等級五号の間に簡裁判事五号、副検事二号が来ている、このようにごらんいただくわけでございます。この二重線から下をずっと読んでいただきますと、六・七%あるいは六・八%、四十八ページ、四十九ページに行くと一般政府職員の方は六・九%、これに対応しまして裁判官検察官、これは「補10」なんてありますが、「補」は判事補意味でございますが、やはり六・八、六・九、七・〇とか、こういうような数字が出ております。  それで、結局裁判官の方が一般政府職員の中の一般職よりも高くなったわけは、四十四ページから四十六ページにかけまして八%台に対応するところの裁判官検察官、これが多いといいますか、一般政府職員よりも裁判官検察官の方が指定職に対応する職員がかなりなパーセンテージを占めている、その結果、全部を通して平均いたしますと、裁判官の方が一般職よりも高くなっている、こういうことでございます。  それでは、同じ検察官の中で検事だけとりましたら、ただいま先生は八・二とおっしゃいましたけれども、八・四でございます。先ほど私、早口でございましたけれども、八・四%でございます。副検事を入れますと八・〇%でございます。その理由も、この表をごらんいただきますように、副検事の上の方は四十五ページの一番下の段どまりでございますが、副検事の一番上は判事六号、検事六号に対応するところでございますが、副検事一号からあとは判事七号、検事七号以下で、こういう八%台に対応するところの副検事さんが少なくてといいますか、特号と一号しかなくて、あとは六%台に対応する副検事の方がいらっしゃるものですから、副検事を込みにして平均しますと、検察官全体では八・〇%になった、こういうことでございます。
  34. 吉田法晴

    吉田委員 副検事だけの昇給率はお示し願えませんでしたが、それは幾らになりますか。
  35. 賀集唱

    賀集政府委員 具体的には計算しておりませんけれども、当然七%台になるのではなかろうかと思っております。
  36. 吉田法晴

    吉田委員 裁判官については、憲法上その地位が保障されるということで、給与の面でも特に考慮されると聞いておりますが、いまのお話で言うと、上の方は上の方で一般行政職の認証官あるいは認証官でない人たちについても対応して昇給させるということになっておりますが、先ほどお話がありましたように、初任給については、弁護士を開業した者と対比をして、検事になり手がない、あるいは判事になる者が多いようにということで調整手当がついておる。最初の初任給だけは調整手当がついているけれども、あとはついておらぬ。まあ調整手当についてはまた伺います。特に検事と副検事との問題については、昼から大臣がおられるところでお尋ねいたしますから、ここでは詳しくはお尋ねをいたしません。その裁判官についての給与上の特別の待遇、あるいは初任給は調整手当をつけたが、その後については特別の考慮はない。そのことは、よく弁護士を開業したら幾らになるかというのと比較をされるということになりますが、それらの点については今度の昇給の場合にはどう考えられたか、承りたい。
  37. 藤島昭

    藤島政府委員 判事補検事初任給調整手当、これは四十六年の四月一日から新しい制度として実施されたわけでございます。当時は、検事の場合を申しますと、任官者が非常に減ってきたわけでございまして、その理由、原因等をいろいろ検討いたしたわけでございますが、その一つに、新たに弁護士になる人と新しく判事補検事になる人との間の給与上の較差が相当あるということが判明したわけでございまして、そこで、最高裁判所と法務省と協力いたしまして、財政当局に初任給調整手当、ちょうど医師について当時認められておりました初任給調整手当を例にとりまして要求した結果、認められて、そのときの折衝で二万三千円が任官した当時、俸給に上積みされる、こういうことになったわけでございます。したがって、その後の毎年の給与改定の際に、この弁護士との対比において初任給調整手当の増額を要求すべきかどうかということを毎年検討しておるわけでございます。したがって、今度の改定に当たりましても、初任給調整手当の増額を当然検討いたしました。その結果、今度の改定案でまいりますと、判事補検事初任給が、いまの表にございますが、十二万二千百円、これが本俸でございます。そして、それに都市手当、扶養手当等を入れまして、さらに従来ついております二万三千円を加えて計算いたしますと、大体十六万五千円に計算上なるわけです。そこで、弁護士の方の実態を調べてみて、それ以上の弁護士の初任給といいますか、最初の収入がそれ以上であるならば初任給調整手当を増額要求するということになるわけでございますが、私どもとしては、大都市の弁護士会の初任の弁護士の収入を全部実態調査いたしました結果、全部を平均してみますと、現在大都市で働いております初任の弁護士の収入は平均すると十六万五千円ということに実態調査の結果なっておるわけでございまして、そういたしますと、先ほど私が申し上げました判検事の方の計算でまいりますと十六万五千円、実態調査の弁護士の収入も十六万五千円ということで、ぴったりそこで合っているわけでございまして、そのほかにボーナスなどはむしろ弁護士よりも判検事の方が多いということ。それから住宅などにつきましても、弁護士でございますと、民間のマンションなりアパートなりを借りなければならない。ところが判検事でございますと、一般の民間に比べてかなり低廉な額で公務員宿舎に入れるというようなことをいろいろ計算いたしますと、むしろ実質的には計算の上では初任の判事補検事の方が優位であるという結果になったわけでございまして、そういうこともございまして、今度も初任給調整手当の増額を要求しなかったということでございます。したがって、弁護士との比較におきまして、弁護士の方が優位に立っておるということが明らかになれば、その段階ではいつでも初任給調整手当の増額を要求する用意があるわけでございます。
  38. 吉田法晴

    吉田委員 私は自分で試験を受けて弁護士になったわけではありませんから、息子が二、三年前に弁護士になった程度で実情わかりませんけれども、しかし、検事になる人が少ないということは、これは事実だと思う。そこで、判事についての身分の保障と給与関係があると思いますが、いま調整手当を含めて初任給の実態調査をして、そして見合うようにと言われましたけれども、実際に判事になり手がそう少ないとは思いませんけれども検事になる人が——ロッキード事件等でことしはなり手が多いという話でありますが、しかし、去年までは少なかったことは事実。それに対して、給与上どういう考慮がなされておるかということをさっき尋ねた。調整手当のことは後で尋ねるつもりです。
  39. 藤島昭

    藤島政府委員 検事のなり手が少ないということでございますけれども、ことしの五十一年には七十四人という大ぜいの者が検事を希望してくれまして、これはロッキードが始まる前でございます。それとは関係がないと言えばないんでございますが、七十四名という非常にたくさんの人が検事を希望してくれております。したがって、検事のなり手が比較的少ないということでございますが、この原因はいろいろあると思うのです。現在の時代風潮と申しますでしょうか、自由業をあこがれるというような風潮、あるいは若い人のマイホーム主義といいますか、転勤を余り好まないというようなこともありますし、もう一つは司法試験制度のの問題があると思うのでございます。これは試験が大変むずかしいために、在学生からストレートに入る人がなかなか少ないわけで、どうしても三回なり四回なり受験する、合格したときの年齢が高くなるということがございまして、そういうことも弁護士の方に相当数が流れていく原因だろうと思うのでございます。もう一つは、やはり給与上の待遇の問題というものもございますので、そういう点も考えて、私ども先ほど御説明した初任給調整手当を新設したわけでございます。  検事一般給与体系につきましては、これは先ほど稲葉委員の御質問にもお答えいたしましたが、裁判官の場合と大体同じでございまして、私どもといたしましては、一般政府職員に比べて相当検事給与体系は優位に立っている、そのように考えておるわけで、給与の面ではそれほどいま問題がないのではなかろうかというように思っておる次第でございます。
  40. 吉田法晴

    吉田委員 さっき稲葉委員中だるみをうわさされているという指摘がございました。初任給については調整手当等がございます。調整手当のことはまた後で尋ねますが、その後の俸給表そのものあるいは給与体系そのものについては、いま官房長は、裁判官検察官給与の面で言えば一般職に比べて比較的いいと言われますが、必ずしもそうではないのではなかろうか。少なくとも印象として、説明の中にも、医者と比較をして判検事初任給が安いから、それは弁護士と比較をなさっておる。医者の場合には、開業医に比べて公務員の医者が給料が安い、あるいは勉強ができない、博士号がとりにくい、こういう事情があって開業をする者がふえる。勤務医でありましても、勤務の途中でやはり開業する率が多いというのはそういう理由によるのです。初任給については調整手当を考慮を願ったけれども、その調整手当が妥当かどうかということはまた後でお尋ねすることにして、本給について、これは絶えず判検事について誇りを持ち得るような、弁護士に比べてみてどうかということが内々比較されないような、一般行政職に対してその責任というか、先ほど京都の判事補の例が出ましたけれども、公正中正な任務が果たされるように、それからこれは行政職についても兼職は禁ぜられておりますけれども、より以上にそういう点について厳重に期待をしなければならぬところがあるでしょう。そうしますと、副収入というものが考えられないことになる。それは古い判事さんで学校の先生、訴訟法を講義する人が全くないとは言いませんけれども、きわめて少ないと私は思う。ですから、一人前の判事になるまでは、あるいは検事になるまでは、やはり待遇の上において相当考えなければならぬことは当然だと思うのです。それから管理職なら管理職、一般行政職で言うと管理職——管理職はどこからかということはありますけれども、裁判長等について考えられているのかどうか知りませんけれども、そういう一般処遇の面でやはり判検事についてはもっと考えるべきだと私は考えるのですが、それらの点がどういうぐあいになっておるか。私は判検事給与審議するのは初めてですからその辺は御了解いただきたいと思うのですが、御答弁願いたいと思います。
  41. 藤島昭

    藤島政府委員 判検事と弁護士との収入の対比でございますが、最初の初任の段階ではある程度把握が容易なのでございますが、その後弁護士の大変はやる人もあればそうでもないという人がございまして、実態というものがなかなか把握しにくいわけでございます。われわれはなるべく弁護士になった者との較差がないようにということで努力いたしておるわけでございまして、参考までに先ほどの資料の四十六、四十七ページのところをちょっとごらんいただきますと、上のところに二本線がございまして「判8」「検8」と書いてございますが、これが十年たって判事補から判事になる段階でございます。そこが在職年数十年ということになろうかと思います。その十年たった人間がどういう給与を受けるかということが、現行のところをごらんいただきますと三十万五千円、改正案で三十三万円、こういうことになっておるわけでございまして、一般に普通の民間の一流会社等に入って十年たった人がこれだけの給与を得ているかどうか。私も正確に調査したわけではございませんが、大変関心もございますのでいろんな人に当たって聞いてみているわけでございますが、少なくとも判事検事のこの給与はどこに出しても遜色のない金額であるというふうな結論に大体なっておるわけでございます。先ほど中だるみということが稲葉さんのお話しの中にちょっとございました。中だるみと申しますと、この十年ぐらいから上の、次の四十四、四十五ページの方にまいりまして、判事六号、五号、四号、このあたりになるのかとも思いますけれども、このあたりは、私の認識ではむしろ中だるみではなくて、一般政府職員に比べて一番優位性が高いところである、こういうふうに理解いたしておるわけです。大蔵省とか通産省とか、そういうところにも国家公務員上級試験に合格した人たちが入っておりますが、そういう人と、この司法試験に合格し修習課程を終えて判検事になった人の給与を比べてみますと、大体一倍半から二倍ぐらい判検事の方が優位になっているように思うわけでございまして、そういう面で、弁護士さんで大変収入の多い人も特定の人はいるかと思いますけれども一般的には民間会社あるいは行政官庁の職員に比べて判検事給与は優位に立っているというふうに私は考えております。
  42. 吉田法晴

    吉田委員 判事あるいは検察官として最初就任をしてから五年目というのはどの辺ですか、いま十年たって判事になるところ等は教えていただきましたが。
  43. 藤島昭

    藤島政府委員 先ほどの資料の四十六、四十七ページのところをごらんいただきますと、大体在職五年ということになりますと、検察官のところで申し上げますと、検の十四、十五と書いてあるあたりでございます。金額で申し上げますと、検の十四、検事十四号とわれわれ申しますが、これは現在が十六万六千二百円、今度の改正案では十七万七千五百円、検事十五号につきましては、現行が十五万四千六百円、改正が十六万五千百円、こういうことでございます。(吉田委員裁判官の場合は」と呼ぶ)裁判官の場合は、私ちょっとわかりません。
  44. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 判事補の場合ですと、大体六号ぐらいの見当になろうかと存じます。判事補六号でございます。
  45. 吉田法晴

    吉田委員 細かくやっている間がございませんからいま申し上げますが、先ほどからの答弁を聞いておりまして、私が自分で違う点に気がついた点は、さっき事務局は、額は十年ぐらいのところで余り違わぬのだ、そのほかに住宅がある、こういう話でございます。ところが、なるほど弁護士は住宅は自分で借用しなければならない。しかしこれは実際問題として、判事検事は税金からやはり逃れられない、一文もごまかすわけにはいかない。ところが、弁護士の方は仕事柄やはり判検事に比べてどうかということは、これは御承知のところです。ですから、ノミナルだけではなかなか比較にならぬということは申し上げられると思います。  それから、絶えず開業医と勤務医と比較するように、やはり弁護士、これは友達ですから、友達同士、同期の者がおりますから、おのずから話は出ているように思います。そうすると、中堅の、まあ十年たった前後で判事になった、この喜びといいますか誇りというものがあると思いますけども、その辺の給与の点について言えば、民間の、それはいいところもあるし悪いところもあります。中小企業もあるのですから、一概には言えませんけれども、しかし、比較するのは、民間のことよりも、やはりお互い同期の者で弁護士との比較というものが一番関心になっていることは事実だと思います。そういう意味で、もう少し考えてもらうべきだという気がいたします。  それから、もう一つさかのぼって、これは人事院にお尋ねすることだと思うのですけれども、上位の方は昨年昇給しなかった、給与の是正をしなかったから高くなっているのだ、一番高いところは一六%以上になっていますね。ところが、それは民間の事業と比較をしてみて去年はそうだったんだと思うのです。ことしも景気はどうかということは、これは私が言わなくてもわかっている。それで、昇給を全く辞退をするあるいは賞与を全く遠慮をするというのは、それは特異なところかもしれません。しかし、重役級でいってあるいは部長クラスでいって昇給やあるいは賞与を抑えぎみである事情は変わっておりません、と私は理解をする。その辺も、裁判官あるいは検察官と、それからその上級の点について言えば、お調べになった上でのことですか。それとも公務員の上級職は、最高裁長官内閣総理大臣と比較をする、あるいは最高裁判事は国務大臣と比較をするというようなことだけでおやりになっているのですか。それとも民間の実態は人事院調査したことで法務省は知らぬということかもしれませんけれども、その辺は御考慮になりましたかどうか、お尋ねしたい。
  46. 賀集唱

    賀集政府委員 裁判官検察官給与のたてまえがどうなっているかということから申し上げたいと思いますが、お手元の資料に条文を印刷したところがありますが、三十四ページでございます。その三十四ページに裁判官報酬法の十条がございまして、結局、生計費、一般賃金事情の著しい変動で一般職の方が増額になりましたら、その一般の官吏の例に準じて、私ども裁判官検察官のベースアップを行うことにいたしております。  そういうわけで、人事院勧告をもとにしてできます一般職特別職給与改定、それは勉強いたしますけれども一般の公務員におしなべて通ずるような生計費、それから一般賃金事情の変動によって一般職特別職の方が増額になりますと、機械的にといいますか、それぞれ対応する、判事の一号でございましたら指定職十一号でございますが、十一号が幾ら上がったかということを見まして、判事の一号はそれに同額といいますか、引き上げ幅を同じにしまして増額する、そういう自動的と申しますか、対応金額スライド方式でもって私ども例年ずっと伝統的に給与改定を行っております。
  47. 吉田法晴

    吉田委員 その問題に関連をしてあれしておりますと、昼から質問をする予定の問題と関連をしてまいりますから、後にいたします。  もう一遍聞きますが、調整手当の問題。四十六年四月一日に二万三千円と決めております。ところがその後、一般職政府職員のうち、医師あるいは歯科医師は毎年増額をされておる。その根拠を、先ほど十六万幾らという弁護士の収入と比較をして同額だったから増額を申請しなかった、こういう説明がございましたが、一般職員で言うと、医師、歯科医師の調整手当は毎年増額しておる。判事検事の点について言えば四十六年以来据え置きのままである。そうすると、いまのお話のように上の方の昇給率は、昇給率というか是正率は、一般職員の該当するものを検討も加えないでそのままに踏襲する。調整手当の方は、一般職員の医師、歯科医師の調整手当は毎年増額をされているというのに、法務省関係あるいは裁判所関係だけは遠慮をされた理由はどういうところにあるのか、伺いたい。
  48. 藤島昭

    藤島政府委員 医師の場合は、先生おっしゃいましたように、国家公務員である医師と民間の医師とのいわゆる給与の対比を常にやっておるだろうと思うのです。毎年改定をし増額しているということは、国家公務員である医師とそれ以外の医師との間に較差が毎年生じて、それを埋めるということで増額の要求をしていっていることと思います。判検事の場合は、先ほども申し上げましたように、私どもも毎年大都市に勤めております弁護士の収入の実態を、法務省で申し上げますれば各検察庁等を通して全部可能な限り調べておるわけで、いままでその増額の要求がないということは、初任の段階においては、判事補検事の収入とそういう同じ期の若い弁護士の収入が同じか、あるいは判検事の方が考え方によってはむしろ優位であるということになっておりますために、初任給調整手当を増額いたしたくても説明がつかないためにできないということで今日まできておるわけでございます。  それから、先ほどからも出ておりますが、じゃそれ以上の弁護士との対比ということでございますが、これは、実際、弁護士の中にも大変仕事のはやっている人もおりますし、比較的そうでもないという人もございまして、とにかく自由業でございますから、その実態がまことに把握しにくいわけでございます。同期会なんかございまして弁護士と雑談した場合に、おれの収入はどうだとか、そういう話は出るだろうと思いますけれども、そういうものを全国的に調査することがまことに困難ということで、そういう中堅クラス以上の判検事と弁護士との給与の対比ということは実際問題として困難であるために行えないわけでございますが、先ほども申し上げましたように、その段階の判検事給与というものは、決して民間あるいは一般公務員に対して劣っていないというふうに考えております。税金のお話なんかちょっと出ておりましたけれども、私どもは、弁護士がどういうような税金を支払っているのか、そういうことも全く——そういうものを含めてきわめて調査が困難な実情をひとつ御賢察いただきたいと思います。
  49. 吉田法晴

    吉田委員 報酬それから俸給以外の諸手当のうち、今回増額されたものはそれぞれ幾ら増額されたのか、それから減額されたものは何と何で幾ら減額されたのか、伺いたい。
  50. 賀集唱

    賀集政府委員 初めにお断りしておかなければならないことがございますが、報酬俸給以外に裁判官検察官が支給を受ける諸手当の改正は、当委員会で御審議をいまお願いいたしております裁判官報酬法、検察官俸給法の改正では直接の関係はないということでございます。と申しますのは、報酬俸給以外に裁判官検察官が支給を受ける諸手当の改正は、一般職給与法の改正で取り上げられまして、それが決まりますと、検察官の場合は自動的にといいますか、何らの手当てなしに、裁判官の場合には一般の官吏の例に準じて最高裁判所が定めることになっております。したがいまして、これから申し上げますのは、一般職給与法の改正ではどうなっているかということを申し上げたいと思います。  まず増額されるものは扶養手当、住居手当、通勤手当でございます。次に減額でありますが、額における減少という考え方ではございませんで、支給割合が減率になるもの、これは期末手当、勤勉手当でございます。
  51. 吉田法晴

    吉田委員 その各増額されたものについて言えば、幾ら増額されるのですか、減率されるものについて言えば、減率は幾らになるか、それをお伺いしたい。
  52. 賀集唱

    賀集政府委員 詳しく申しますと非常に細かくなりますので、ごく簡単に概要を申し上げますと、扶養手当では、配偶者の分として千円増額で七千円に、住居手当では、最高支給限度額が千五百円増額で一万五百円に、通勤手当では、同じく最高支給限度額が二千五百円増額で一万四千円になるというところでございます。そのほかいろいろな細かい基準がございますが、それは省略させていただきます。  その次、減率の方でございますが、期末手当、勤勉手当とも〇・一カ月分減でございまして、その結果、期末手当は年間三・九カ月分、勤勉手当は年間一・一カ月分と相なります。
  53. 吉田法晴

    吉田委員 四十六年に初任給調整手当が新設されてから裁判官の任官者数にどういう影響を与えたか承りたい。
  54. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 まず絶対数を申し上げますと、四十六年は六十五名、四十七年が五十八名、四十八年が六十六名、四十九年が八十五名、五十年が八十四名、五十一年が七十九名というような判事補採用の数になっております。  この数字を見ていただきますと、初任給調整手当の影響が果たしてどの程度影響したかということにつきましては、必ずしも数量的には確定できない面もあるわけでございますけれども先ほど法務省の官房長から申し上げましたように、それぞれの分野の志望者数の増減は、いろいろな要素が絡み合いまして、その年々ごとにある程度の出入りがあるわけでございます。判事補につきまして初任給調整手当の影響いかんというお問いに対しましては、必ずしも正確には予測できないけれども、私どもといたしましては、やはり初任給調整手当の存在が、ある程度といいますか、相当程度判事補の希望者の増員にいい影響を及ぼしているものと考えております。
  55. 吉田法晴

    吉田委員 裁判官の中途退官者の最近の実情について説明を伺いたい。あわせて、その退官の主な理由、それから、転任、待遇等がその主な理由になっているかどうか、あわせて承りたい。
  56. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 裁判官の中途退官者につきましては、例年、判事が大体二十五名前後、それから判事補が十名前後でございます。  その理由は、判事のうちの半数は大体公証人任命のためでございまして、あとの半数の判事判事補につきましては、弁護士開業という理由のようでございます。  後段にお尋ねの、裁判官にとどまりたくてもいろいろな事情でおやめになるその理由につきまして、これもお一人お一人、あなたはどうしておやめになるのかということを一々細かくは調査しておりませんが、裁判官である程度お勤めいただきまして、途中私的な事情等がありましてどうしても裁判官を退官せざるを得ない、と申しますのは、やはり裁判官につきましても異動を行わなければなりませんし、そうしますと、どうしてもその土地を離れるわけにはいかないというような私的事情の生ずる方もおられるわけでございまして、やむを得ず退官されるという方もあるいは中にはおありかと存じます。あるいは反面、積極的に裁判官をおやめになって、自由業である弁護士を開業して、いわば在野の法曹として活躍したいというような積極的な理由でおやめになる方もおありだろうと存じます。私どもといたしましては、裁判所の待遇が非常に低いからやめざるを得ないというようなことで、あるいは主観的にそうお感じになっておやめになる方はおありかもしれませんけれども、ほとんど大多数の方が定年までお勤めいただいているわけでございますので、そうお考えいただく方はごく例外ではなかろうかというふうに考えている次第でございます。
  57. 吉田法晴

    吉田委員 半数は公証人、半数は弁護士、いずれも裁判官よりも公証人の方があるいは弁護士の方が収入がよくなることは間違いない事実だと思います。客観的な事実として。だから、待遇に関係があるとすればほとんど待遇に関係があるのかもしれませんが、実質的には子弟の教育のために転任ができないということもありましょう。いわば、それが主な理由になっているのではないかとお尋ねするよりも、転任を理由にして、転任をし得ないからやめる人がおおよそどのくらいあるのか、何分の一ぐらいあるのかというお尋ねをした方がわかりやすいかと思いますが、そのことと、先ほど稲葉さんも尋ねておりましたけれども、私どもの印象では、違憲判決をやったり、最高裁から言えば好ましくない判決を出した人かどうか知りませんけれども、世間的に言うと、私どもから見ると、そういう判事判事さんをやめて弁護士になられる例が多いように見受けますね、正直に言って、一々名前は挙げませんけれども。だから、判決によって裁判所の中でといいますか、あるいは法曹の中でといいますか、裁判官でとどまることがむずかしくなる、あるいはいや気が差すのか知りませんけれども、そういう例は、私どもから見るとあるような気がするのですけれども最高裁としてはどういうように考えられますか。
  58. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 前段のお尋ねにつきましては、先ほど申し上げましたように、事細かに、一々退官を希望される裁判官にお会いして、その実情ないしお考えをお伺いして、それを書面にして私どもいただくというような形をとつておりませんので、真実どのようなお考えでおやめいただいているか、これを数字的に何分の一ぐらいがこういう理由、何分の一がこういう理由ということは、私どもとしてはつまびらかになし得ないところでございますので、その点ひとつ御了解いただきたいと思います。  それから後段のお尋ねでございますが、私どもといたしましては、先ほど稲葉委員お答え申し上げましたとおり、違憲判決をしたことのゆえをもって再任拒否あるいは裁判所にいわばいづらくなるというようなことを私どももちろん考えているわけでもございませんし、そのようなことはないものというふうに信じておる次第でございます。
  59. 吉田法晴

    吉田委員 前段のことに関連をして、退官者は一々、何年でやめられた、あるいは裁判長なのか、あるいは陪席なのか、それは統計がとってございますか。あるいは、統計をとりながらあるいは実態を調査しながら、どの辺に理由があるんだろうというような、これは裁判官の世話というか、管理と言うとちょっと語弊がありますから言いませんが、最高裁でそういう点は見ておられますか。見ておられるとすれば、細かいことは言いませんけれども先ほど来お尋ねしているような処遇とそれから退官との関係があるのかどうか、そういう点をもしお気づきならば、あるいは調べておられるならば、お教えを願いたい。
  60. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 五十年を例にとりまして申し上げますと、在職年数三十年以上の方が十三名、二十年以上三十年未満の方が十名、十年以上二十年未満の方が三名、十年未満の方が九名、合計三十五名でございます。  それから、重ねてのお尋ねでございますが、理由につきましては、特に私どもとして、依願免を願い出られる方につきましては、もちろんその地元の裁判所の所長なりあるいは同僚なりにいろいろ御相談がおありかと存じますし、あるいはその際慰留されて思いとどまる方もおありかと存じますが、私ども最高裁の人事当局におきましては、そんなに詳しい事情を一々お伺いして依願免の事例を——事例といいますか、やめていただくというような、そういう手続をとっておりませんので、いわばお尋ねの真実の理由といいますか、どういうふうな主観的なお考えでおやめになっておられるか、これにつきましては、先ほどから繰り返して申し上げますように、正確にお答えいたしかねるところでございます。
  61. 吉田法晴

    吉田委員 じゃ、それ以上聞きません。  最後に、裁判所の事務官から書記官に任用されるにはどのような方法があるか。それから毎年事務官から書記官に何名ぐらい任用されておるのか。書記官資格を持たない事務官は地裁、家裁の課長以上にはなかなかなりにくいと聞いておるが、実情はどうなのか、承りたい。
  62. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 まず、書記官の資格の取得の方法でございますが、すでに御承知かと存じますが、裁判所に書記官研修所という機関がございます。この養成部のいわば入所試験を受けまして、その修了をして書記官になる方法と、それから書記官任用試験というのがござ、いまして、その試験に合格した者が書記官になる、この二つの方法がございます。  次に任用数でございますが、毎年そう決まった数ではございませんが、大体二百三十ないし二百四十名ぐらいを任用しております。  それから第三点のお尋ねの、いわば事務官といいましても書記官の資格のない者がなかなか課長以上になれないのではないかというお尋ねでございますが、まあ現実には、たとえば課長及び検察審査会の局長をとりますと、ポストが九百二十三ございますけれども、そのうち書記官の資格を持っている者が七百九十名ございまして、確かに御指摘のとおり書記官の有資格者の率が非常に高うございます。これはしかし、数だけで事務官を冷遇しているとかということにはならないかと存じます。と申しますのは、やはり私どもといたしましては、職員の配置につきましてはあくまでも適材適所ということでございますので、その書記官の資格を有しているからということで上のポストにつけるというようなことでやっているつもりはございません。ただ、裁判所は御承知のとおり裁判事務が中心になって動いておりますので、裁判所司法行政事務も、やはり書記官事務を経験するということによって一層円滑に処理できるという面があるわけでございまして、どうしても書記官有資格者がいわば適材適所に配置されるような傾向といいますか、という形を呈することは、これまたある意味では当然のことであろうかと存じますが、しかし一方、書記官の資格を有しない事務官でございましても、先ほども申し上げましたように、もちろんそれに適する方であれば課長以上のポストに昇任させているような実情でございます。
  63. 吉田法晴

    吉田委員 給与に関する部分で、たとえば副検事検事となぜあんなに違わなければならぬのか、その他については昼から関連をしてお尋ねをいたしたいと思いますので、大臣がおられぬ場面での質問はこれで終わります。
  64. 大竹太郎

    大竹委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時三十一分休憩      ————◇—————     午後二時二十八分開議
  65. 大竹太郎

    大竹委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので順次これを許します。吉田法晴君。
  66. 吉田法晴

    吉田委員 大臣にお尋ねをしたいことを残しましたので、裁判官給与検察官給与に関連をして、それを初めにやります。午前中に引き続いて大変ですけれども、ひとつしばらくですから、おつき合いを願いたいと思います。  裁判官検察官給与を今度改定をするに当たっての給与の比較表を私どももらっております。それによりますと、一般公務員は七%、それから裁判官は八・二%、検察官は副検事が入っているせいもありますけれども八%。〇・二%の開きがある。そこで疑問を持ったわけですが、よく考えてみると、同じ仕事をしながら検事と副検事との間には待遇の違いがある。越えがたいかきがある。それから裁判所の方も、裁判官と書記官の間には、まあ戦前は書記官の中からも試験を受けて裁判官になる道がありました。それから書記官の中から簡易裁判所判事になることはできる。しかし、一般裁判官は司法試験を初めから受け直さなければならない。その点が戦前よりもむしろ後退をしている。順次聞いてまいりますが。こういう裁判所あるいは検察庁の中には民主化がおくれておって、そうして裁判の内容については裁判の批判は裁判でしかできないということで、行政行為についての裁判の判断はありますけれども、国会で質問をしても、それは裁判に関連をいたしますから答えられませんというのが恐らくここである答弁であろうと思うのです。  そこで、冒頭お尋ねしたいところですが、これは最高裁に聞きます。  第一点は、裁判所に、菊の御紋がなお裁判所の法廷の上にあるところもあります。あるいは裁判所の入口にあるところもあります。私は、新しい憲法のもとにおいては、旧憲法と違って、裁判は天皇の名で行われるんじゃなくて国民の名で行われるものだと思っておりますが、新しい憲法、新しい刑事訴訟法あるいは民事訴訟法のもとにおいては、裁判はだれの名で行われるのか、まず冒頭お答えいただきたい。
  67. 井口牧郎

    井口最高裁判所長官代理者 私がお答え申し上げるのが適当かどうかわかりませんが、現在ほかにおりませんので、私がお答え申し上げます。  現在の憲法のもとでは、裁判所は、主権者は国民でございますので、当然のことでございますが、国民の名において裁判をする、かように相なろうかと存じます。
  68. 吉田法晴

    吉田委員 裁判の内容に触れてお尋ねすると、現に進行中の裁判あるいは捜査中の問題は答えられませんというのが共通して言われる言葉です。私は、国民の名において裁判が行われるならば、国民からの裁判批判というものは新しい憲法のもとにおいてあるいは新しい刑事訴訟法のもとにおいてこれはなされなければならぬし、またなし得るものだと思っております。  この点について重ねてお尋ねをいたしますが、裁判批判というものが国民の名において、国民の固有の権利としてなし得るものかどうか。あるいは裁判官あるいは検察官といえども公務員ですが、これの罷免権というものは固有の国民の権利として、私は、審査法もございますけれども、国民の基本的な権利としてあるものだと思いますが、裁判所の御見解と、それから後の方は法務大臣にお尋ねをいたしたい。
  69. 井口牧郎

    井口最高裁判所長官代理者 ただいまのお尋ねの前段につきまして、私の方からお答え申し上げます。  裁判に対する国民からの批判、これは方法等いろいろ問題はあろうかと存じますが、原則的に許されるものと、かように理解しております。
  70. 吉田法晴

    吉田委員 趣旨がわからなかったので、もう一遍尋ねますが、検察官について、裁判官も同じことですけれども、公務員の一つであることは間違いない。それの任命、罷免の権利はこれは国民固有の権利としてあると思うのですがどうですかということを法務省に、できれば法務大臣にお尋ねしたい。
  71. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そのとおりでございますね。憲法にはそう書いてありますから。
  72. 吉田法晴

    吉田委員 憲法に書いてあることですから議論の余地はないと思うのですが、じゃ裁判所にお尋ねしますが、裁判批判の権利は国民にあることは原則的には憲法に認められているところですが、それでは、裁判批判の具体的な方法はどういうものだとお考えになっておるか、承りたい。
  73. 井口牧郎

    井口最高裁判所長官代理者 当然委員承知のとおり、裁判官法律と良心に従って裁判をいたしておるわけでございまして、それに具体的に支障にならない方法で裁判の批判をするということは許されるということに相なろうかと存じます。
  74. 吉田法晴

    吉田委員 具体的な方法を教えていただきたいとお願いをしたわけなんです。
  75. 井口牧郎

    井口最高裁判所長官代理者 大変むずかしいお尋ねでございますけれども一般的に申しますならば、裁判に対する理論的な批判、これは現に学者などによっていろいろな文章、雑誌、書物等で行われておりますけれども、そういう形での批判は許される。もう少し裏を返して申すならば、何らかの力によって裁判を左右するというような形でのものになりますれば、これは批判の限度を越える、現在私の方でお答えできますのはその程度でございます。
  76. 吉田法晴

    吉田委員 原則的に国民が裁判の批判をすることは許されると言われるから、具体的にはどういう方法ですかというお尋ねをしたわけです。  いま言われたところで言うと、学者の判例批判だけは許されるけれども、国民が持っております固有の権利、裁判批判の権利をどう発揮したらいいかということをお尋ねしたのだけれども、答えはなかったように思います。ございましたらひとつ教えてもらいたい。
  77. 井口牧郎

    井口最高裁判所長官代理者 多少舌足らずで申しわけございませんでした。私、学者の方々による批判を例として申し上げたまででございまして、学者だけが批判ができるというものでは毛頭ございません。そういう形で裁判の内容等に不当な圧力を加えるという形にならない限りにおいて、何も学者だけというわけでは毛頭ございませんので、さよう御理解いただきたいと思います。
  78. 吉田法晴

    吉田委員 力によって動かそうとするのは許されぬというお話でしたけれども、そういう誤解というかあるいは運動に対する誤解があるのじゃないかと思って後でお尋ねをするわけですが、国民の固有の権利として裁判の批判をすることができるならば、お答えのとおり、学者に限らず、あるいは新聞記者であろうとあるいは普通の国民であろうと、いかなる方法をもってしても批判はできると私は思っている。それを裁判中だからあるいは判決に関連することだから答弁することはできないと言われるのは、私は間違いだと思うのです。最高裁判事については国民審査法がありますけれども、その国民審査法については国民の意思がはっきりあらわれるようになってないからということで、改正について議員立法も出ている。それをここでいま言おうとは思いませんけれども、裁判中の問題だから答えられませんということで、裁判がどんなに間違っておろうと、あるいは論理的に矛盾があろうとも、それには答えられませんという態度は、少なくとも新憲法のもとにおける裁判所の態度としては私は間違っていると思います。しかし、答えが余り期待できるとは思いませんから、なるべく裁判に触れないで、裁判の判決に触れないであとお尋ねをしたいと思いますから、できるだけ教えてもらいたいと思います。  その問題は後にすることにして、一般問題として取り上げることにして、検察庁の問題についてお尋ねいたします。  私どもが一番最初、私は二十年ほど前に参議院で法務委員をちょっといたしました。その当時は、二十二年の憲法が発布されて間もなく、副検事という制度はなかったと思うのです。その後、検事だけでは足らぬものだから、あるいは検事のなり手がそうたくさんはないものだから、副検事という制度をつくって同じような仕事をされたんだと思う。副検事検事になる道、それから副検事の権限、それからむずかしい事件でなければ副検事にも調査、取り調べ等ができるという話です。まあ恐らく常識的に言えば、ロッキード事件等は副検事にはやらさぬ、こういうことかもしらぬと思いますけれども、しかし法制的にははっきりしておると私は思います。それで、本当に検事が足りなければ、処遇をよくして検事をふやせばいいのであって、何か一段低いような副検事をたくさんふやす。いまでは検事よりも副検事の方が多いようです。そういうことは、私は、憲法のたてまえからするならば、人の上に人をつくらず人の下に人をつくらずと言うなら、検察庁においても、検事の上に検事をつくりあるいは検事の下に違う検事をつくるということは許されることではない。もう一つ言いますと、交通事故とか軽微な事件の取り調べに当たっているようですけれども、事務官で検察官の代理をする人がおりますね。そういう中でそういう区別がどうして起こるのか。憲法の精神から言うならば、検察官について、検察事務に携わる者にそう人間らしいものあるいは人間以下のものがあるはずがないと私は思うのですが、法務大臣どういうようにお考えになりますか。
  79. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そうですね、検事はやはり検事ですね。副検事はやはり副検事。それは、捜査ですか、そういうものには犯罪の種類によっていろいろ捜査に難易があることはお認めであろうと思うのです。それで、検事の人数が足りない。したがって、まあ捜査のしやすい軽微な犯罪事件については副検事で足らす、間に合わすと言うのは悪いけれども、それで賄うという制度はあながち批判すべきものではないのではないですか。それは、むずかしい事件については国家試験を通ったきちんとした検事に扱わせ、ある程度の法律知識があればこの程度の捜査はできるというものについては、これは法律上ぴしっと区別はありませんけれども、事件に区別してやっているわけじゃありませんけれども、おのずから副検事制度をつくって以来慣例ができておるのじゃないかと思いますが、詳細は事務当局に答弁させます。
  80. 藤島昭

    藤島政府委員 理想といたしましては、犯罪の捜査を検察庁において行う者がすべて検事であるということは、確かに理想であろうと思います。ただ、先生御承知のように、検事につきましては、司法試験に合格し二年間の修習を終えた者、その中から検事を希望する者を選考の上採用しているというのが現実でございまして、司法試験は資格試験でございますので、そういう関係から、そういう必要から、たくさんの修習生を採用する、また、その中からより多くの検事の数だけを採用する、そういうわけにはまいらないわけでございます。やはりむずかしい試験に合格し、二年間の修習を終えた、そういう法律的素養の者を精選して検事として採用する、こういうことになっておるわけでございます。  副検事制度と申しますのは、ただいま先生仰せられましたように、戦後に初めてできた制度でございまして、戦後事件が相当激増するということで、当時の検事だけでは事件処理に手が回らないということから、比較的軽微な事件については、検察事務官の中から選考によって副検事を任命する、また、そうすることが検察事務官の待遇改善の面にも一役立つであろう、こういうことを考えて、副検事制度というものはできたわけでございます。また、検察事務官の中で若干の職員については、きわめて軽微な道路交通法違反というようないわゆる形式的な形式犯、こういうものを処理してもらうということで、検察官の事務を取り扱わせている者もおるわけでございますが、数としては約千人くらいになるでしょうか、そういう者についても、仕事の重要性にかんがみていろいう特別な手当などを支給して優遇は図っているつもりでございます。
  81. 吉田法晴

    吉田委員 制度の現状はわかっているのです。制度の現状はわかっているけれども、矛盾があり、後で具体的な例を挙げますけれども、これは進駐軍が来て公務員を使ったから、公務員制度が一番民主的な批判のらち外にあって、制度がそのまま残っておる。裁判で言えば、天皇の名で裁判をやっていたことはもうなくなったが、菊の紋は残っておる。裁判所の上とか庁舎の入り口だとか、あるいは裁判をやっている上にあるところもあります。あるところもありますけれども、依然として同じ法服は着ておりますけれども、それは権限のもとは違うのです。まるっきり違う。ところがやはり形式が残っておるだけに、裁判官の中にはあるいは裁判制度の中には古いものが残っておると私は思っておる。  たとえば、もう二十年にもなりますか、書記官の判決の浄書書き拒否事件というのがありました。これは結局は待遇の改善ということで終わったと思いますけれども、基本的に言うと、やはり裁判官裁判官、書記官は書記官、こういう裁判所の中における機構上の古いものが批判をされたんだと思うのです。外交官で言いますと、昔はフランス語で外交官試験に通った者が外交官、それ以下の者はまあ何任官か知りませんけれども、勅任官じゃない、奏任官とかなんとか言ったと思いますが、外交官ではなかった。ところが最近は、日本が国交を持っておる国がたくさんふえてきた。この間メキシコなんかに行ってみますと、フランス語で外交官になった者では通用せぬのです。あそこはスペイン語です。スペイン語のできる人でなければ大統領と腹を割って話ができない。ごく最近大統領が来られましたけれども、その大統領が訪日されるに至った下ごしらえはだれがしたかというと、大使じゃなくて、代理大使をしておりましたけれどもスペイン語のできる外語卒業の外交官。このごろアラブ諸国に行ってみますと、たとえば例をイラクにとりますが、八人ほど館員がおります。その中にアラビア語のできるのがたった一人。たった一人おりましたが、それが召還された。すると、アラビア語のできる外交官はイラクには一人もいない。クウェートに帰り寄りましたが、クウェートもアラビア語のできるのがたった一人。英語で片づく——それは上の人との間には英語で話が片づくかもしれません。しかし国民との間に外交をやろうといえばそれではいかぬ。だから、外交官について言えば、昔フランス語で外交官試験を通った者が外交官、それ以外の者はコシマ以下。特に現地採用なんというものは外交官扱いしないのです。全くしないのです。現地採用はしょうがないにしても、外交官の中にはやはり外交官である者と外交官でない者がある。そういう者が裁判所の中にありはせぬか、あるいは検察庁の中にもありはせぬかということで問題にしておるのです。  一つ例を引いて法務大臣の所見を承りたいと思うのですけれども、これは検察庁に入るときに私、世話したんじゃないのです。私が炭鉱会社におりますときに、私を慕って炭鉱会社に入ってきた。私は県会議員から参議院に出たものですから、そこにいなくなったものですから、そこにおける職員になる希望を捨てて検察庁に入った。検察庁に事務官で入ったのです。それで、亡くなったのは昭和四十九年の二月十九日、病名は肺炎で亡くなりました。死亡当時勤務しておったのは福岡地検田川支部の事務課長として検察事務官をしておった。で、宿直中に腹痛がひどいというので途中で、朝だろうと思いますが、かわってもらって、翌日死亡したのです。これは二遍結婚をしております。私のところに手紙が来たのはその後妻の方です。その後妻に八百四十四万円の退職金が支給されたが、そのことで前妻と息子が文句を言っていたということが書いてあります。これは法務省で調べていただいた。私がそれを知りましたのは——その前に、おととしの葬式にも知らせてくれなかったから間に合わなかった。去年の初盆にも行かなかった。そこでことし郷里に帰りました際に仏さんに参ってやったわけです。そして、去年も参ることができなかったから、灯籠一つ持って参ってやったのです。大変感謝をして、手紙が来た。その手紙に書いてある。主人の残した書類を整理していくうち、日記に、発病一週間前から体調悪しと書いてあった。小さい庁で、九名中二名が休んでおられたので、無理をして出勤していたようです。検察事務官が七名。これは手紙じゃありません。また、副検事二名。女子職員を除いての日直、宿直だものだから、休日の宿直も頻繁に回ってき、宿直の夜、その亡くなった前日の宿直の夜激痛で一睡もせず起きていたとかで、なぜ交代を頼まなかったのかと悔やまれます。これは奥さんの感想ですね。夜起こすのもと思ったのでしょう、同じ宿直でも、庁を留守にしたり、マージャンをやって夜を明かし、早退をしたり、勤務状態は必ずしもよくはな、無断退庁などと日記に書いてあった。余り対照的で、責任を感じて命を捨てたものだと思うと、怒りと悲しみに毎日を過ごしておりますと、こういう手紙。別なところに、死ぬ前二時間まで勤務のことを言い続けておった。田川の病院に入れたけれども、これは私立の病院でしょう、手に負えぬものですから、国家公務員の共済病院の浜の町病院という、九大の第一内科の主任教授をしておった操さんのところに入れた。しかし、もう手おくれで、その翌日には死んだわけです。入れたその日死んだんだろうと思います。そこで、一週間ほど前から病気になって体調が悪いというんなら、区検ですから、全部で九名いる。自分を除けば、忙しいかもしらぬけれども八名。八名の中で、事務課長が体が悪いのを無理をして出ているのはわかるはずなんです。その前日も二人の休んだ人もあったりして、一週間に二遍以上の宿直をしておったようですが、交代をなぜ頼まなかったかと奥さんが悔やまれるほど、周辺あるいは上の責任者が気がつかなかった。そして無理をして、終夜腹痛に耐え切れなかったけれども、夜中に起こすのはどうかと思ったのでしょう、起こさなかった。そして、同じ宿直でも、庁を留守にしたりあるいはマージャンをやって夜を明かして早く帰ったりする人もあるのに、命を落とすまでしなくてもよかったのではないかと、こういう話です。これは監督の責任の問題でもございますが、しかし、その後、後の問題はここで答弁を願うことになっておりますが、私は炭鉱におりました。炭鉱で、多いときには一万人からの従業員を扱いましたが、殉職をした人間あるいは殉職に近いこういう死に方をした人については、公傷病取り扱いができぬかと最善の努力をした。そういう努力をどういうようにしていただいたのか。それから、私の親戚の者が福岡県庁で、これはケースワーカーですけれども、連日連夜激務が続いて、夜遅く十時ごろにならなければ帰らぬというのが続いた。半年ほど続いた後に死にました。若い奥さんと三人の子供を残して死んだんですけれども、それに対しては、周辺の人たちが香典を集めてたくさんのことをしてくれました。それから、初め県庁に臨職で働けるようにしておりましたが、長く臨職が続けられなくなったら、森林組合というところにいま使ってくれています。そういう努力を区検としてあるいは法務省としてどういうぐあいにしてもらったろうかということを尋ねておるところでございます。  法務大臣に尋ねたいことは、そういう検察庁の中に、あるいは副検事という制度、あるいは同じ仕事をするけれども事務官というものがあって、軽い事件については取り調べをしたり、起訴することはできぬけれども——検事は恐らく起訴もできるでしょう。そういうものを許しておいていいかどうか、根本問題にさかのぼってお尋ねするわけですが、具体的な例について後で感想を承りたいと思う。
  82. 藤島昭

    藤島政府委員 ただいまの具体的なケースにつきまして、昨日初めて承りましたので、急いで人事課の方から福岡の検察庁に照会をいたして調査をいたしました。ただ、何といってもきのうのことでございますので不十分かもしれませんけれども調査の結果といたしまして、本人は、いま仰せのように福岡地検の田川支部の事務課長をしております。そして、四十九年の二月二日に福岡地検の田川支部で宿直勤務をしていた折に腹痛を覚えたわけでございますが、翌朝まで勤務をして自宅に戻りまして、その後自宅において静養をしながら医師の手当てを受けたわけでございます。しかし、病状が悪化いたしましたので、この宿直の日の二月二日の一週間後の二月十日から田川市の社会保険田川病院に入院いたしまして、その月の十九日に亡くなられたわけでございます。この死亡につきまして、公務上の災害ということになりますと、公務災害という認定ができる制度が確かにございます。公務災害と申しますのは、公務と病気による死亡との間に原因結果の関係、因果関係が明らかに認められる場合に公務災害の認定をする、こういうことになっておるわけでございまして、この認定をしなかった理由について、人事課の方でいろいろ現地に聞いてみたわけでございますが、御本人の病名は、胸膜炎からの急性肺炎を誘発いたしまして、これが原因で心不全によって死亡された、こういうことになっておるわけでございます。当時福岡の検察庁におきまして御本人が死亡前にどういうような勤務状況であったかということをいろいろ調査しているようでございますが、当時は事務課長でございまして、庶務関係を担当しておるということで、特に非常に多忙な、あるいは過酷な勤務というようには福岡の現地の方では見ていないようでございまして、大体退庁時間等も定時、五時半でございますが、定時にはずっと退庁をされている、そういうような毎日の生活を続けられていたようでございます。そういうことで、現地の検察庁としては、本人の病気による死亡と本人仕事との間でそういう因果関係がどうも明らかでないということもございまして、特に福岡の検察庁の方から私どもの法務省の方に公務災害の認定の上申がなされなかったというような説明を昨日受けたわけでございます。  それから、残された遺族の関係でございますが、検察庁におきまして、職員のうち不幸にして死亡したような場合には、御遺族の方のお申し出などがございまして、残された家族の状況、子供さんが小さいとかあるいは教育盛りの子供がたくさんいるとか、そういうような家族状況とか、あるいは経済状況、そういう資産の関係というようなものをお伺いいたしまして、お気の毒なケースについてはそれぞれ、検察庁で採用するといたしましても定食がなければ採用できない場合もございますけれども、それぞれの庁で何とか生活のめどが立つようなことを心配しているのが実情だと考えております。この件におきましては、御家族は奥様だけでございまして、死亡された際に特に奥さんの方から何とかそういう点についてめんどうを見てもらいたいというようなお申し出も当時なかったということでございまして、本人の葬儀その他につきましては、検察庁の職員がすべてお手伝いいたしまして、当時奥様の方から大変感謝されたお礼の手紙を検察庁の方でいただいておるというようなことを現地の方では申しておったわけでございます。
  83. 吉田法晴

    吉田委員 私は公務災害の取り扱いをするためにどれだけの努力をしていただいたかということを聞いたのです。いまのお答えは、本人からも申し出はなかったし、因果関係の証明ができなかったから公務災害死亡という取り扱いはできなかった、こういうお話です。きのうも申し上げましたけれども、作業場における死亡は、病気であろうとも公傷の取り扱いをするように努力しているのが民間の実情です。ごく最近は通勤途上の死亡も災害死亡として認めるようになりましたことは御承知のとおりです。死の原因あるいは致命的な原因になった病気の悪化が宿直にあったことは、大体この手紙をもらった段階で考え得ると思うのですけれども、そういう努力をどのようにしていただいたか、それを聞いてください、そういうことを申したのですが、無理でしょうか。
  84. 藤島昭

    藤島政府委員 職員の勤務中における死亡、あるいは勤務中でなくても、職員の死亡については、先生仰せのように、可能ならばできるだけ公務災害の認定をしてあげる、そうすることが残された遺族の方にもいろいろ経済的にも有利になるわけでございますから、確かにそういう考え方で、法務省としても現地の役所には、因果関係が認められるならば必ず法務省の方に上申するようにという指導はいたしておるわけでございます。  ただ、福岡地検の場合には、先ほど申し上げましたように、勤務状況がそれほど過酷な勤務状況に毎日あったということが、いろいろ調べてみますと出てまいりませんし、大体退庁時間にちゃんと退庁している、そう多忙な毎日を送っていたわけではないということと、それからどういうことからそういう腹痛になり、それがまたどういう関係で残亡に至ったのか、そういう細かい点は、私どもはきのうの電話で聞いたところで、まだ詳細なことはわからないわけでございますけれども、当時として福岡地検としては、仕事と死亡との間にちょっと因果関係は認められないというような判断をしたために、公務災害認定の上申を本省にしなかったのだろうと思いますが、その点につきましては、もう少し詳細に調査をしてみたいと思います。
  85. 吉田法晴

    吉田委員 私ならということを申し上げることは大変恐縮ですけれども、われわれの従来の考えからいいますと、これは原因は別にあっても、交通事故で通勤途上死んだとしてもそれは労働基準法上公傷死亡に取り扱うという解釈。通牒が出ていると思いますけれども、そういうことになっていることは御承知のとおりです。  私は手紙をもらって、宿直による激痛で一睡もできなかったというのと、それから死亡の原因は肺炎ということでしたが、肺炎なのにどうして一晩じゅう激痛を訴えたのだろうかと思いましたが、いまのあれでわかりました。胸膜炎かあるいは腹膜炎になっておったか知りませんけれども、それによる腹痛であることは間違いない。そうすると、その胸膜炎によって肺炎が起こった。これは激痛をこらえながら一晩じゅう宿直をして一睡もしなかった、そこにあることは常識的には考えられる。それを医者に証明してもらうかどうか。これはわれわれが判断したってしようがないです。実際は、田川の社会保険病院かあるいは浜の町病院かわかりませんけれども、いずれにしても医者の診断が必要なことはわかります。必要なことはわかりますけれども、私はそういう努力を法務省としてはすべきであり、検察庁としてはすべきじゃないかということをきのうから申し上げ、そしてその努力の跡と結果とをお知らせください、こう申し上げたのです。法務大臣どうですか。
  86. 稲葉誠一

    稲葉国務大臣 当該地検の努力が万全であったのかどうだかについては、なお官房長が調査をすると申しておりますから、調査をして御報告を申し上げます。
  87. 吉田法晴

    吉田委員 調査をして報告をされるのは、それは事務当局でなさるわけですが、私が先ほどから申し上げておるのは、われわれの常識をもってすれば、肺炎になったあるいは胸膜炎になった原因がどこにあったかわかりませんけれども、勤務の状態、腹痛をこらえながら一晩宿直をしておったそのことと胸膜炎がひどくなって肺炎になったということとは関係があるように思えるのではないか、それらの点については法務省としては本人に有利なように解釈してあげるのが当然ではなかろうか、あるいは残された遺族についても最善の努力をされることが福岡地方検察庁なりあるいは区検の責任者としての任務だろうと思うのですが、その点について法務大臣としてどう考えられますかというのです。
  88. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 お答えするまでもなく、おっしゃるとおりです。十分有利に、親切にその上司たる者が取り扱うべきことは当然であります。ですから、本当に親切にやったのかどうか調査をして、欠くるところがあればまた別な処置をしなければならぬというふうな意味で、よく調査をして御報告を申し上げますというのはそういうのを含めまして申し上げたつもりでございます。
  89. 吉田法晴

    吉田委員 中野可生個人の死亡に関連する事項は、調査をして好意的に取り扱えるものなら取り扱うというお話ですから、それで質問を終わります。  ただ、問題にいたしました裁判所における裁判官と書記官、それから検察庁における検事と副検事それから事務官の関係については、これは裁判所と法務省の両方ですけれども、私は再検討の要があると思うのですが、給与に関連をして、ことしの給与の改定でせよとは言いませんけれども、しかし、問題があることだけは事実のように思うのです。いま挙げたのは一例ですけれども。それから裁判所について言えば、書記官の浄書書き拒否事件、結末はどうなったか知りませんけれども、あのときに感じたのは少なくともそういう問題でした。ですから、概括的で構いませんけれども、検討をされる考えがあるかどうか、それだけ聞いておきます。     〔委員長退席、小島委員長代理着席〕
  90. 稲葉誠一

    稲葉国務大臣 常にいろいろな御批判を受けて、それに対してよく考えて、改めるべきことは改めていかなければならぬことでありますから、御指摘でございますから検討をせざるを得ないと私は思っております。
  91. 井口牧郎

    井口最高裁判所長官代理者 本日所管局長が出席しておりませんので、委員の御趣旨を十分伝えたいと思います。
  92. 吉田法晴

    吉田委員 時間のことを気にしながら答弁を余り聞いていなかったのですが、努力するということのようでしたからその問題はそれで打ち切ります。  あと残っておりますのは、実は加須市の市長選挙のやり直し判決に関連をして問いたいところですけれども判決内容に至りますと答弁をやられないと思いますので、なるべく裁判と関係がないように、お答えのできるような質問の仕方でお尋ねをいたしたいと思います。  まず、自治省の秋山選挙課長ですか、来ていただいておりますからお尋ねをいたしておきますが、二つのポスターを継ぎ合わせて一つのポスターとすることについては、私は違法だと思うのですが、御所見を承りたい。
  93. 秋山陽一郎

    ○秋山説明員 お答えいたします。  たとえば市長選におきまして、選挙運動用ポスターの規格につきましては、御承知のとおり、タブロイド型、長き四十二センチ、幅三十センチ以内、こういうぐあいに定められておりまして、これに違反をする場合には、選挙管理委員会におきまして撤去の命令ができる、こういうことになっておるところでございます。いまお話のございました場合のように、仮にこのポスターを二枚連続して張ったような場合、その書いてある内容からいたしまして、それがつながる結果一枚の大きなポスターを張ったことになる効果を上げるということになるような場合におきましても、やはり法定の規格に違反するというものといたしまして、選管において撤去を命ずるなどの措置をとっておるところでございます。
  94. 吉田法晴

    吉田委員 ありがとうございました。  その次は、これに関連をして法務省とそれから最高裁に伺いたいところでございますが、行政局長が来ておられますから行政局長に伺いたいと思うのです。  いま言われますように、二つのポスターを継ぎ合わせて一つのポスターをつくった、それは法定の規格に外れるということで違法だ、法定の規格外のポスターで、撤去を命ずることができる、こう言われております。私はポスターとしてはやはり違法だと思うのですが、その違法のポスターで、あることを主張しようとしたとして、その主張することは自由でしょう、主張することは自由でしょうけれども、それでもなお、やはり言論の自由ということが問題になるのかどうか。これは法務省と最高裁、両方に聞かなければなりません。
  95. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 国法に触れることが表現の自由とは思いませんね。
  96. 井口牧郎

    井口最高裁判所長官代理者 一般論として私どもの立場からお答えすることは、非常にお答えしにくいわけでございますが、恐らく委員指摘の、先ごろの第一小法廷判決判決文に即して申し上げますならば、ただいま自治省からもお答えがありましたように、規格外というものは、規格外で違法なわけでございます。ただあの判決で判示されているところを見ますと、それ以外に内容について規制をした点に公職選挙法上問題があったということを私どもは読み取っておるわけでございまして、ちょっとお答えにならないかもわかりませんけれども、私どもの申し上げられることは以上でございます。
  97. 吉田法晴

    吉田委員 それから先は少し微妙になりますから、井口行政局長判決に即してと言われましたが、その判決に即してお尋ねしますと、判決の具体的な内容に関するから答弁がしにくいというか、せられぬという答弁が返ってくると思ったから、即しないでお尋ねをしておるわけです。  それから同和対策室長も来ていただいておりますからお尋ねをいたしたいと思います。  同和対策と国民の協力という問題ですが、これは関係者に言わせると、多年の努力、同和運動、解放運動五十年の成果だと言いますが、私ども参議院議員をしておりまして、松本治一郎議員のそばにおって協力してまいりましたから、私どもの努力もあって同対審ができた。そうして同対審答申ができた。その同対審答申を具体化するために特別措置法というものができた。これは議員立法で、少数の議員を除きましてほとんど各党御協力いただいてつくったわけです。  そこで同和対策室長にお尋ねをしたいのは、同和対策と国民の協力という問題であります。その国民の中に裁判官だとかあるいは検察官も入るかどうかということをお尋ねいたしたいと思います。
  98. 今泉昭雄

    ○今泉説明員 同和対策事業特別措置法の三条には「国民の責務」といたしまして「すべて国民は、同和対策事業の本旨を理解して、相互に基本的人権を尊重するとともに、同和対策事業の円滑な実施に協力するように努めなければならない。」とございますが、この国民はもちろんすべての国民を指すというように解しております。
  99. 吉田法晴

    吉田委員 では、すべての国民の中に個々裁判官やあるいは検察官も入ると解してよろしいですね。
  100. 今泉昭雄

    ○今泉説明員 そのように私ども理解しております。
  101. 吉田法晴

    吉田委員 今度は同和対策特別措置法と言論の自由という関係ですが、これは関係書類の中に——どこにあったか、ちょっといま探しているところでありますが、特別措置法ができた経緯は私が申し上げるまでもございません。ところが、特別措置法に基づいて、ある地域あるいはある人を特別措置法の適用をされる地域あるいは人だと認定することは、そのこと自身が憲法に違反するおそれがある、だから、特別措置法は憲法違反の疑いがあるという見解が、あるところに出ている。言いかえますと、特別措置法に適用されるべき人だとしてあるいは地域として指定をすることは、憲法の十四条でしたか、思想、信条、門地によって人は差別してはならないということに違反するという意見がございますが、これについて同和対策室長としてどうお考えになりますか、お伺いしたい。
  102. 今泉昭雄

    ○今泉説明員 昭和四十年の同和対策審議会の答申の第一部の一番最初に、同和問題についてこう書いてあるわけでございまして、「いわゆる同和問題とは、日本社会の歴史的発展の過程において形成された身分階層構造に基づく差別により、日本国民の一部の集団が経済的・社会的・文化的に低位の状態におかれ、現代社会においても、なおいちじるしく基本的人権を侵害され、とくに、近代社会の原理として何人にも保障されている市民的権利と自由を完全に保障されていないという、もっとも深刻にして重大な社会問題である。」このような答申を受けまして、先ほど先生、議員立法とおっしゃいましたけれども、これは政府提案——もちろん各党のお話し合いのもとでされましたけれども、一応政府提案ということで議決された特別措置法でございますけれども、こういう法律が、先ほど申しました同和対策事業特別措置法ができておりますので、こういうような長年の歴史的差別に基づいております一定の地域の、同和地域の生活環境の安定、向上の対策というものは、別に憲法に違反しないのではないかと私どもは考えます。
  103. 吉田法晴

    吉田委員 それは、差別が事実あるということを前提にして、そしてその差別をなくするためにどうしたらいいかというのが、私は、同対審の中心的な課題であり、またそれを実現するための特別措置法の法律の規定だとも思うのです。その法律に基づいて特定の地域を対象として指定をするあるいは認定をすることが憲法の十四条違反だというのは、私は、寝た子を起こすなという議論と同じに、事実がないのに指定をするのは憲法違反の疑いがある、したがって、同和対策事業特別措置法が憲法違反の疑いがある、こういう根拠になっているのだと思うのです。そのしからざるゆえんは、いま御説明にもなったところでございますが、それをめぐって同和対策是か非かという、いわば二つのポスターを継ぎ合わせて違法のポスターをつくった。ところが、その違法のポスターによる言論の自由もやはり守られるべき言論の自由だとして——撤去を命じたことが基本的には二つのポスターが一つになっているというところに問題があると思うのですけれども、撤去をさせたということ、あるいはスローガンの訂正を命じたというところに問題があるという判決でありますが、少なくとも、そこまでいかないで、特別措置法に基づいて地域を指定する、あるいは人間を指定して、それに対して特別措置法で特別の施策をすることは、憲法の差別があってはならぬという原則に対しては適用がないものだと私は考えるのですが、その点はお認めいただけますか。
  104. 今泉昭雄

    ○今泉説明員 前段の方でございますけれども、いわゆる指定という行為は、現在は、たとえば都市計画の区域の指定のような行政行為は行われておりませんで、たとえば昭和五十年度に総理府が各省と一緒に行いました全国同和地域の調査等に当たりまして、その調査対象地区として報告のあった地域をいわゆる同和地域としまして、そこの地域に各省庁別の種々な同和対策が行われておるというようなことでございます。  この批判等につきまして、後段の御設問でございますが、行政官といたしましてはちょっとお答えしかねる問題ではないかと思いますので、御容赦願いたいと思います。
  105. 吉田法晴

    吉田委員 具体的な判決に関連する部分は言われない。指定はしていないが、報告のあったものに対策を立てる。同和対策室としてはその辺でしょう。追及はいたしません。それから時間もございません。  最後に、選挙課長にお尋ねをいたしたいと思いますが、選挙法にいういわば公正な選挙を保障するために選挙法というものがあるのだと思うのです。しかる限りにおいて、いろいろと問題になると思うのですが、それと言論の自由という問題とはどういう関係になるか、一般——具体的な問題になりますと答弁がしにくいと思いますが、「同和対策是か非か」と二つのポスターを合わせてなっておったわけですね。ところが、その二つのポスターをくっつけるということは規格外ということで、それは、さっきの話じゃありませんけれども、違法だということで撤去を命ずることができる。ところが、分けますと「同和対策中田」「是か非か十三」、こうなるわけですね。判決には、それぞれについて分けて書いたら、「同和対策是か非か」というのをどっちにも書くことができた。それを上告した方から言うと行政指導だ、こう言っております。行政指導に従って本人も撤去をした、あるいは二つに分けた。書き込むことができたのにそれもできなくなった、こう書いてあります。しかし、選挙法でいいますと、一つに継ぎ合わしたものは選挙法に違反するけれども、違法かどうかという判断だけだというのも、私もそうだとも思うのですが、そのほかの同和対策是か非かということがポスターだけであったのか、それを修正することもできなかったのか、あるいは選挙運動として同和対策が争われたのかどうか、これは事実問題だと思うのですけれども、少なくともそれについて余り判断はなかったようです。判断はなかったようですから、判決内容を引き合いに出して、それが判決が妥当であったかどうかということは私は問いません。問いませんが、ポスターが二つ一緒になって違法の状態になったものを、二つにあれせいということをしたとして、それが言論の自由を束縛することにはならぬと思うのですが、どうですか。一般的な話でいい。ほかのものを考えながら。
  106. 秋山陽一郎

    ○秋山説明員 違法な方法によります選挙運動が許されないことは当然でございます。したがいまして、違法な文書というものが存在する場合におきましては、選挙管理委員会において仮に撤去を命ずるとかいうような形におきまして選挙の公正確保の手段をとっておる、こういうことは御承知のとおりでございます。ただ、本件のケースにつきましては、最高裁の判示されるところに従いまして、すでに当該選管におきまして再選挙が行われたというところでございますので、これにわたる御意見は差し控えさせていただきたいと思いますが、将来におきまして、選挙の管理執行の面におきましては、問題の生じないように今後とも努力をいたしたい、このように存ずる次第でございます。
  107. 吉田法晴

    吉田委員 時間がありませんから、最後で終わります。  これは最高裁にお願いをすることですが、そこに、最高裁判決、それから高裁の判決、それから上告の申し立ての中にありますこと、それから被告訴人の意見等を対照して問題点は出したつもりです。その中の矛盾はどういうぐあいに見られるかはわかりませんけれども、大体見られたらわかると私は思うのですが、私が心配しますのは、この件についてはすでに判決のとおりに選挙がやり直された。そして中田重蔵さんという人は亡くなってしまっておりましたから立候補はできなかった。それで、それまでに現職であった、二期続いてやっていた市長がまた無競争で当選をしたので、実益はなくなっているわけです。法理をここで繰り返してやる必要は実はないわけですが、問題は、同和問題というのは大変むずかしいと私は思っている。ここで引き合いに出すまでもございませんけれども、最近、衆議院の法務委員会で安原刑事局長の発言に関連をして問題になった点があります。あるいは参議院の予算の室長について発言を問題にしたこともあります。それは本人に悪意があったとは思いません。思いませんけれども、しかし、言われたことは問題になることは事実です。  そこで、同和問題について、最高裁裁判官にわれわれが一々言うわけにまいりませんから、最高裁の事務官でも結構ですから、裁判所として、法務省がやられたように勉強をしてもらいたい、こういうことを希望をするわけです。だから、返事は要りませんが、最高裁だけでむずかしければ、法務省がこの間やられたように、同和対策の会長の磯村さんのお話を聞かれたということもございますが、同和問題について勉強を願いたいということを痛切に感じます。私がなぜそういうことを申し上げるかということは御存じのところだと思うのですが、これはぜひお願いをして質問を終わりたいと思います。
  108. 小島徹三

    ○小島委員長代理 諫山君。
  109. 諫山博

    ○諫山委員 前国会で、わが党の戦前のスパイ調査問題とロッキード事件がほぼ時を同じくして国会で論議されました。私たちは、この二つは本質においては同じ根から出た同じ問題だと理解しております。戦後三十年続いた自民党の金権、戦犯、売国政治を象徴的にあらわしているのがロッキード事件だ。そして共産党のスパイ調査問題、これは四十三年前に治安維持法をもとに特高警察がでっち三げた暗黒裁判、私たちこう思っておるわけです。この暗黒裁判を絶対的なもののようにして、その判決の当否を国会で論ずる、そして関係者の基本的人権を著しく侵害する、こういう意味で、まさに二つは同じ根から出た本質的に共通の問題であります。私たちは政治的にそういう理解をずっと以前からしておったわけですが、これが事実においてつながっていた。このことをみごとに証明したのが鬼頭裁判官の行動であります。私は、鬼頭裁判官の幾つかの問題について詳細に質問いたします。  刑務所が所有している身分帳、これは絶対に外に出してはならないものだ。裁判官であってもこれは見ることはできない。歴史学者が研究のために見せてもらいたいと言ってもこれは見せていない。正当な理由がなくして国家公務員がこれを外に漏らすことになれば、関係者の基本的な人権を侵害するだけではなくして、国家公務員法違反になる、犯罪行為だ、こう理解されるのですが、この点矯正局長どう理解していますか。
  110. 石原一彦

    ○石原政府委員 身分帳は刑務所で作成しているものでございますが、受刑者の刑の執行中における経過あるいは身上等につき詳細に記録いたしておりますし、もとよりそういう点から、人の名誉に関する事項、処遇に必要な事項、あるいはいわゆる面会、信書等、本来であれば秘匿すべき事項を行刑当局が知ることができるというような点を含みますので、その内容におきましては秘匿すべきものが多いということは御指摘のとおりでございます。したがいまして、秘扱いにいたしておりまして、正当な理由なく外部に漏れるということは原則としてはあり得ないというたてまえになっております。
  111. 諫山博

    ○諫山委員 外部に漏らすということは、関係者の基本的な人権に対する侵害であり、同時に国家公務員法違反であるという点はいかがですか。
  112. 石原一彦

    ○石原政府委員 外部に漏れたときの事情、理由等によるものと考えますので、一概に直ちに国家公務員法違反が成立するとまでは言えないと考えます。
  113. 諫山博

    ○諫山委員 正当な理由なしに漏らした場合はいかがですか。
  114. 石原一彦

    ○石原政府委員 一般的な御質問でございますので、仮定の点についてはお答えいたしかねるのでございますが、いわゆる国家公務員法違反の構成要件に該当するということになりますれば、犯罪が成立するということになろうと思います。
  115. 諫山博

    ○諫山委員 これは法律家であれば議論の余地はないわけです。矯正局長は漏れた場合と言っておるのですが、私は正当な理由がなくして漏らした場合という聞き方をしておるのです。これは当然のことです。身分帳がどのくらい慎重に取り扱われたかということをはっきり示しているのが松川事件に関する国家賠償事件です。松川事件が、結局国家権力の責任ででっち上げられた冤罪事件だった、このことは刑事事件で証明されただけではなくして、国家賠償請求事件でも確認されました。この裁判で、かつて松川事件の被告であった民事訴訟の原告が、自分たちの身分帳を裁判所に出してもらいたい、こういう要求をしたところが、法務省は頑強に抵抗しました。裁判所は身分帳の取り寄せを請求したけれども、検察庁としては、正式な提出命令が出なければ取り寄せには応じないという態度を示した。そこで、東京地方裁判所が取り寄せ命令を出したところが、取り寄せ命令にも抗告の申し立てをして抵抗する。結局、裁判所が検証によってようやく身分帳を見ることができた。これは自分の身分帳を見たいという原告の要求についてさえ政府がこのくらい強硬な立場で反対したわけです。しかし、結局裁判所としては、検証という形でこれを閲覧するということになって、こういう論争の中で、どういう場合に裁判所に身分帳を出すのかということで、法務省として通知を出しているはずですが、どういう立場でどういう場合に身分帳の提出に応じるということになっていましょうか、矯正局長から。
  116. 石原一彦

    ○石原政府委員 ただいま御指摘の松川事件の損害賠償請求訴訟におきまして、身分帳そのものの提出命令があったのに対しまして、検察庁ではございませんで、国側、訟務を担当する方から即時抗告をいたしました。その結果、結局、文書提出の申し立てというのはお取り下げになったようでございまして、その後、身分帳の一部について、御指摘のような検証が行われたようでございます。非常に松川関係の記録は厚く、全部を精査することができませんでしたが、ただいま申し上げた限りのところまでが今日まで調べたところでございます。  ところで、こうした関係もございまして、通常の場合におきましては、裁判所からの提出命令等がある場合には必要に応じて出すけれども、それも全部を出すものではない。簡単に申し上げますと、不当に関係人の人権、名誉を侵害するおそれがある場合、あるいは刑事施設の管理運営に著しい支障を生ずるようなときにはお見せするわけにはまいらぬ。必要がある場合にはそのうちの一部について特定していただけますればお見せするというのがたてまえでございます。また、このようにわが方では内部的な通達が発せられております。
  117. 諫山博

    ○諫山委員 ある裁判官が、研究のためと称して、刑務所に行って診断書を閲覧をする、謄写する、こういうことが許されましょうか。また、そういう申し出に刑務所側としては応ずることにしていますか。
  118. 石原一彦

    ○石原政府委員 ただいま前提とされました研究のためというのが、単なる個人のための研究であるか、あるいは職務上によるものであるかによりまして、結論を異にすると思います。
  119. 諫山博

    ○諫山委員 それぞれの場合に分けて説明してください。
  120. 石原一彦

    ○石原政府委員 ただ個人的な研究ということで、刑務所側といたしまして、身分帳の内容をお見せするということは、通常あり得ないことであろうと思います。職務上の研究ということで、それが裁判所先ほど申し上げました提出命令に匹敵するような場合であれば、あるいはお出しする場合があろうかと思います。  なお、これに付言して申し上げますと、それでは民間の場合には全然だめかといいますと、必ずしもそういうことではない場合もあろう。たとえば、交通事故で加害者、被害者がございまして、加害者が犯罪で実刑に処せられる。その場合における加害者もまた負傷したような場合に、あるいはそれが被害者に結局なるわけでございますが、そうした場合に、その傷の程度が保険請求上の必要性があるという場合におきましては、便宜を取り計らうということもあろうかと思います。しかし、実例があったかどうかにつきましては、私のところの記録を見ましたところでは、まだ判明しておりません。
  121. 諫山博

    ○諫山委員 そこで、鬼頭裁判官の問題ですが、きょう鬼頭裁判官の氏名が読売新聞で大きく報道されました。この鬼頭裁判官について、私はきのう最高裁判所と法務省に対して、名前を挙げて、宮本委員長の身分帳を漏らした本人だと思われる、写してきているということも明らかだ、調査をしてもらいたいということを要望いたしました。きのうの朝日新聞に某裁判官ということで報道され、どういうやり方で身分帳を鬼頭裁判官が写してきたかということが出ております。この点について法務省はどのような調査をされたのか、そして調査の結果はどうだったのか、説明してください。
  122. 石原一彦

    ○石原政府委員 特定の裁判官が刑務所におきまして閲覧し、メモをとったということを私どもが知りましたのは、昨日でございます。昨日の朝日新聞記事によりまして裁判官という名前がございましたが、昼近くになりまして諫山委員から、それはただいま御指摘裁判官であるということがございました。  それ以前に、私の方といたしましては、昨日の新聞に載っておりました矯正職員、これは二人でございますが、二人のうち一人を直ちに東京に呼びました。この方はすでにおやめになっている方でございますが、東京の近くに住んでおります。もう一人の方はいまだ北海道におられるので、朝日新聞の記事の内容を概略話しまして、十分記憶を喚起しろということをいたしております。  目下鋭意調査中であるというふうにお答え申し上げる次第でございます。
  123. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、鬼頭裁判官が網走刑務所に行って、新聞で報道されているような方法で身分帳を閲覧し、謄写したというこの問題については、記憶がないという関係者の説明になっているのですが、こういう問題というのは、忘れるとか記憶がないという性質のものではなくて、あったか、なかったかという回答しか返ってこないものだと思うのですが、その点はどうなっていますか。
  124. 石原一彦

    ○石原政府委員 私どもが当初この問題が出ましたときに聞いたときには記憶がないということでございましたし、昨日の新聞記事によりましても、記憶が明らかでない旨が記載されているところでございます。  そこで、昨日の新聞を見まして、片一方は呼び、片一方には連絡をとって、記憶を喚起するように指示し、またその調査を続けているところでございまして、一人ならいざ知らず、関係者は二人でございます。二人の場合に往々にして話の内容に差異が生ずるということはあり得べきことであり、私どもはこのケースにつきましては、慎重かつ詳細な調査をいたしたいと思っておりますので、その内容について申し上げますことは、いましばらくお待ち願いたいと思います。
  125. 諫山博

    ○諫山委員 最高裁の人事局長質問します。  きのうの午前中、鬼頭裁判官名前を挙げて、鬼頭本人について真偽のほどを調査してもらいたいという申し出をしたわけですが、調査の結果はどうでしょうか。
  126. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 諫山委員指摘のとおり、昨日の朝日新聞の記事の裁判官というのは鬼頭史郎判事補であるというお申し出を受けまして、早速大阪高等裁判所を通じまして京都地方裁判所所長に調査方を指示いたしました。実はきのうは非開廷日でございまして、会って聞く時刻が大分遅くなったようでございますが、ただいま私どもが受けている報告といたしましては、きのうの朝日新聞の記事に裁判官とあるのは自分である、網走刑務所に行ってたことは事実であるという報告だけを受けております。  なお、朝日新聞の記事の詳細については大分食い違うようであるという報告でございました。
  127. 諫山博

    ○諫山委員 網走刑務所に行ったのが鬼頭裁判官であるということはわかりました。  ところで、それを写真で写した。一部の写真は失敗したから、刑務所関係者に手で写して送ってもらった。こういうことも出ているわけですが、この点はどうですか。
  128. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げましたように、ただいま現在私ども報告を受けておりますことは、先ほど申し上げたとおりでございます。  ただいま御質問のような事項についても恐らく尋ねたものと思われますが、私どもその結果については報告をまだ受けておりません。  それから、すでに報道されておりますが、鬼頭史郎判事補に対しまして、これまた大阪高裁を通じまして、明日十時までに最高裁判所に出てきてもらうよう指示いたしまして、本人があした午前十時に最高裁に出てくることになっております。あす十時以降私どもにおきまして鬼頭史郎判事補から事情を聴取したいと思っております。新聞記事を示しまして詳細に事実を述べていただくつもりでおります。
  129. 諫山博

    ○諫山委員 鬼頭史郎が某裁判官とあるのは自分のことであると答えたそうですか、これは、新聞報道の微細な点にわたっては異論があるけれども、網走刑務所に行ったこと、そして記録を写してきたことは間違いないという感触と理解していいでしょうか。網走刑務所に行って写してもこなかったというのであれば、それはとんでもないという回答になるはずですが、朝日新聞の某裁判官とは私のことですと言うんですから、写してきたことは認めているというふうに解していいですか。
  130. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 詳細な事実関係につきましては、本人から事情を聴取してから申し上げた方が正確であると思います。ただいま御指摘の写してきたという御趣旨が、写真に撮ってきたのか、あるいは自分で見て書いたのか、あるいは書いてもらったのか、その辺の事実につきましては、あす以降の調査にまちたいというふうに考えておる次第でございます。
  131. 諫山博

    ○諫山委員 写し方はいろいろあると思いますが、写してきたということは当然の前提で呼んで  いるんでしょうね。
  132. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 報告を受けた側としての心証といたしましては、御指摘のとおりだというふうに考えております。
  133. 諫山博

    ○諫山委員 稲葉法務大臣に質問します。  宮本顕治氏の身分帳の一部だと思われるさまざまな書類、あるいは公判記録の一部だと思われるさまざまな書類、こういうのが本物かどうかというのは私たちにはわかりません、宮本顕治自身が自分の身分帳を見ることができる立場にはありませんから。しかし、それが巷間出回っておる、そしてさまざまな論評の材料にされておるということは御存じですか。
  134. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 身分帳が出回っているというようなことはあるべからざることですな。それはあったとしたら、事はきわめて重大な問題だと私は思いますね。
  135. 諫山博

    ○諫山委員 そういうことは知らない、あり得るはずがないということのようですが、私の手元に昭和五十一年一月二十九日付の東京新聞というのがあります。民社党の春日委員長にインタビューした記事です。「「ボクの調査能力を駆使して、一年半がかり……」自ら網走刑務所まで足を運んだりして集めた一件資料。」その中に「釧路地裁網走支部検事局あてに出された釈放申請書、別紙添付の病状経過報告書(吉田実刑務医官名)等によると、」云々というようなことが報道されて、一年半がかりで膨大な資料を集めた。この中には釈放申請書とか病状経過報告書が含まっている。こういう趣旨の談話です。そしてこの新聞には「刑執行停止ノ件」という、刑務所の内部にしかないはずの書類の写しが掲載されています。ちょっと見てください。——矯正局長は、こういうのが出回っていることを知っていましたか。
  136. 石原一彦

    ○石原政府委員 御指摘のように、一月二十九日東京新聞にその記事が出まして、まずこの筆跡が先ほど来の新聞記事に載っている矯正職員の筆跡に合致するかどうかという点を調査いたしたことはあります。
  137. 諫山博

    ○諫山委員 それは本物を写真を写したのではなくて、本物を手書きで写して、それを写真に撮ったというふうに見えるのですが、しかしこういうのが出回っていることは御存じですね。
  138. 石原一彦

    ○石原政府委員 出回っているというお言葉がよくわかりませんが、新聞に載りますれば新聞は配達されますので、新聞に載って配達されるという意味であるとすれば、出回っていることになろうかと思います。
  139. 諫山博

    ○諫山委員 私の手元に松本明重編「日共リンチ殺人事件」という著書があります。この中には宮本顕治氏の診断書と称するものが載っております。私も宮本顕治氏も、こういう診断書は見たことはないわけです。本物かどうかは知りません。しかし、こういうのが発表されているということは矯正局長は御存じですか。
  140. 石原一彦

    ○石原政府委員 存じております。
  141. 諫山博

    ○諫山委員 法務大臣御存じですか。
  142. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 知らぬですな、知らない。
  143. 諫山博

    ○諫山委員 週刊サンケイとかサンケイ新聞にも同じようなのが出ているし、民社党の春日委員長によれば、こういうのは自分が持っているんだというふうに語られていますが、このことは矯正局長は御存じですか。
  144. 石原一彦

    ○石原政府委員 ただいまのような詳細なお言葉で聞かれて、どうかと言われれば、ただいま伺ったというほかはございませんし、東京新聞にその趣旨があるので、それを読んだかとおっしゃられれば、それは読みましたというふうにお答え申し上げる次第でございます。
  145. 諫山博

    ○諫山委員 前国会、一月三十日ですが、衆議院の予算委員会で民社党の塚本書記長が次のような質問をしています。「私の調査によりますれば、網走刑務所には、釈放のために作成された診断書のほかに、真実の健康の診断書なるものが刑務所の中に現に残っておるはずでございます。」中略「私どもが調べてみると、そうではなくして、実は五等食が四等食になって、健康な人たちと同じ食事が与えられ」云々というような質問がされ、これに基づいて、矯正局長が答弁を拒否された。「本人の名誉に関することでございまして、」ということで、この点の説明を拒否されたという経過があるわけですが、こういうことが外部の人にわかるような仕組みになっているんでしょうか。たとえば、本当の診断書と釈放されるための診断書というのがあるとか、四等食が何等食になったとか、こういうことが外部の人にわかる仕組みになっているのですか。
  146. 石原一彦

    ○石原政府委員 通常であれば、わかるはずはないと思います。ただし御本人がそういうことをおっしゃれば、それはわかるはずだろうと思います。  なお、その点で五等食、四等食というお話が確かにございましたが、その点だけを御説明申し上げますと……
  147. 諫山博

    ○諫山委員 説明は要りません。わかる仕組みになっているのかどうかだけを聞きたい。
  148. 石原一彦

    ○石原政府委員 通常の場合は、御本人が言わない限りはわかることにはならないと思います。
  149. 諫山博

    ○諫山委員 いま私が言ったような、執行停止の件あるいは刑務所の中の診断書、そのほか釈放に関するさまざまな資料、これは刑務所の中から漏れる以外には漏れるはずがない。そして、こういうのが外に出ているとすれば、これは刑務所関係者が故意に外に出したのか、あるいは、故意とまでは言わないけれども、何らか責任に帰すべきことによって外に漏れてきたということ以外に考えられないと思いますが、これは法務大臣、いかがでしょうか。刑務所の中にあるのが漏れてくる、それが刑務所の全く責任外のところから出てくることがあり得るだろうかということです。
  150. 石原一彦

    ○石原政府委員 先ほど来、私は、通常の場合におきましてはないということを申し上げているのでございまして、その分につきましてお答えしない限りかえって間違ったことになってはいけませんので、いささか説明を加えさせていただきます。  本件が問題になりましたのは昨年末からことしにかけてでございますが、これまではいかなる経緯で宮本氏が釈放されたかという点を重点にして国会で論議になったものと思います。その過程におきまして、私どもといたしましては、仮に診断書が外に出たとするならばいかなる経緯によるものかということに十分留意してまいりました。その点を考えますと、宮本氏が網走刑務所を執行停止による釈放になりましたのは昭和二十年の十月九日でございまして、今日まですでに三十年間をけみしているのであります。その間は占領中ということもございますし、あるいはまた、先ほど申し上げましたような裁判上の必要その他から資料が外に出たということもないとは考えられません。そのために、私どもといたしましては、網走刑務所にある各記録、残存記録並びに現存者全部につきまして調査いたしましたけれども、その限りにおきましては、どこから出たのかがはっきりしなかったのであります。たまたま昨日の新聞記事以来、最近のことであったということになりましたので、今日そういうふうに私どもも考えて調査範囲をしぼっているのでございますが、過去三十年間におきましてあるいは出たかもしれないという疑いもまた払拭し切れないのではないかと思う次第でございます。
  151. 諫山博

    ○諫山委員 私が現在まで調べたところでは、外に出るはずがないさまざまな記録が現に出ている。このルートとして四つ考えられるのです。一つは、民社党を通じたルートです。民社党の春日委員長は、一年半がかりで集めた、みずから網走刑務所に足を運んだ、ふろしきいっぱい資料がある、こう言っているわけです。これが一つのルートです。これは民社党自身が公表しているルートですね。もう一つは、文藝春秋の立花隆論文にいろいろなものが引用されました。鑑定書あるいは診断書、あるいは刑事局長通牒というようなものが引用されております。これが一つのルートです。もう一つは、いま私が指摘しました松本明重の著書のルート。もう一つは、鬼頭裁判官を通じたルート。これが四つ別々なルートで四回にわたってさまざまな資料が漏れたものなのか、一つのルートから漏れたのがずっと広がって悪用されてきたのか、そこのところはわかりません。しかし、これはきわめて重大な問題であることだけははっきりしています。そして、現在私たちがそうではないかと想像できるのは、一つはやはり鬼頭裁判官の線です。もう一つは、民社党の春日委員長はみずから網走まで行ったと言っていますから、このルートというのも非常に考えられる。法務大臣、何か感想はありませんか。
  152. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 身分帳みたいな出るべからざるものが仮に出たとすれば、それは重大問題だという感想を持ちますな。重大問題であるがゆえに看過すべからざる問題である。よく調査しなければならぬ問題だ。直ちに厳正に調査せい、こうやってあるのは、私が重大な関心を持つからでありますね。
  153. 諫山博

    ○諫山委員 矯正局長質問します。  いま私は、少なくとも私たちがいま知り得る四つのルートというのを挙げました。これが別々に漏れて、つまり四回ぐらい刑務所から漏れてきたのか、あるいは一つの根源があって、これがずっと広がって利用されてきたのか、そういう点に矯正局長としては当然重大な関心を払っているはずだし、調査もしているはずだと思いますが、どうですか。
  154. 石原一彦

    ○石原政府委員 もちろん、大臣から厳正に調査せよという御命令を受けまして、あらゆる範囲において調査いたしているのであります。概括的に諫山委員は申されているので、個々に御説明申し上げることは差し控えますが、物によりましては決して刑務所だけが保管しているものでないものもあるのでございまして、すべての点につきまして刑務所に責任があるというのを前提としてのお話でございましたらば、その点は調査結果を待ってからの上にしていただきたいと存じます。
  155. 諫山博

    ○諫山委員 最後の点はまさに御指摘のとおりです。読売新聞でも、刑務所からだけ身分帳が漏れたとは書いてないのです。たとえば、宮本氏の公判、釈放、復権関係の資料などが鬼頭を通じて漏れてきた、網走刑務所などで入手したものだ、こう書いてあるから、恐らく網走刑務所だけではなくて、さまざまなところでさまざまな謀略的な工作を働かしたのではなかろうかということを私たちは推測いたします。  そこで読売新聞で非常に強調しているのは、このスパイ調査問題ではなくして、三木総理大臣電話をかけたという問題ですね。この点は最高裁判所は確かめたと思いますが、どうですか。
  156. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 読売新聞の朝刊を見まして、非常に驚いた次第でございますが、直ちに大阪高裁長官を通じまして、少なくともこの事実の有無はどうなんだというふうに聞いてほしいということを指示いたしました。ただいま報告を受けていますことは、電話の主は自分ではないという報告を受けております。
  157. 諫山博

    ○諫山委員 三木総理と話した電話のテープを、売り回っているのかどうか知りませんが、とにかく持ち回っているという記事も出ているのですが、この点はどうですか。
  158. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 現在私どもが受けております報告は、先ほど申し上げた限度でございます。先ほど申し上げましたように、明日出てまいりますので、十分調査をいたしたいというふうに考えております。
  159. 諫山博

    ○諫山委員 昭和二十年十月五日付の司法省刑事局長通牒というのがあるそうです。私は現物を見たことがありません。法務省に行って安原刑事局長に見せてもらいたいとお願いしたけれども、これは法務省の内部資料だからお見せできませんと言って断られております。ところが、この刑事局長通牒というのが文芸春秋の立花隆論文に引用されています。そのほかにもときどきこれが引用されます。当時私が聞いたのは、これは刑事局長から検察庁に出した文書である。だから外部の人には見せられないし、外部に漏れるはずのものではない、こう説明聞いているのだ。ところが現に漏れているわけですよ。そして政治犯の釈放がどうだこうだと論議されている。この国会でもその通牒の解釈をめぐって大論議された。私たちには見せないで、それが文芸春秋に引用される、週刊誌なんかでも引用される。とんでもないことなんですが、どういう経過でこうなったと法務省では認識していますか。当然調査しているはずだと思います。
  160. 石山陽

    ○石山説明員 ただいま諫山委員指摘の刑事局から当時発せられました部内通牒、それが外に出ているという問題につきましては、私どもも鋭意その当時から調査いたしておりますが、少なくとも現在までのところ、私どもが保管してあるという内部通牒関係からそれが漏れたという確証は全くございません。したがいまして、その経緯がいずれであるかという点については、今日までいろいろ調べておりまするが、何分三十年近く前のことでもございますし、まだその淵源を突きとめるに至っていないというのが現状でございます。
  161. 諫山博

    ○諫山委員 漏れたとすれば、法務省か地方検察庁、高等検察庁、最高検察庁以外には考えられないと思うのですが、その点はどうですか。
  162. 石山陽

    ○石山説明員 ただいまの点も含めまして、私どもでは検討いたしておりますが、何分にも当時発せられましてから三十年近くたちます通牒でございますので、その後の保管状況それから配付先その他の点を十分突きとめませんと、これが検察庁あるいは法務省という、法務省傘下の機関から直接出たものかどうかという点については、お答えいたしかねる次第でございます。
  163. 諫山博

    ○諫山委員 本来法務省、検察庁以外が持っておるはずのない書類でしょうか。法務省、検察庁以外にはないはずの書類だと思うのですが、その点はどうですか。
  164. 石山陽

    ○石山説明員 内部通牒という意味におきましては、先生の御指摘のとおりだと思います。
  165. 諫山博

    ○諫山委員 そこで網走刑務所の問題に戻りますが、最高裁判所当局としては、鬼頭裁判官が網走刑務所に行って何らかの形でそれを閲覧し、謄写してきたことは認めるという感触のようですが、これは写させる方も国家公務員法違反だし、裁判官だと名のってこれを写してきた側、これも国家公務員法違反の疑いはきわめて強いと思われます。この点で典型的な前例が西山記者の事件ですね。西山記者は、国家公務員法の秘密漏洩を教唆したということで、有罪の判決を受けております。当然これを見せた側、写させた側、さらにこれを写してきた側には犯罪行為の疑いがある。行政責任の問題としてだけではなくして、刑事責任という観点からこの点を明らかにしなければならない。まして、鬼頭裁判官の持ってきた資料が外部に広く出回ったという可能性もきわめて強いわけです。こういう観点で、刑事事件として捜査することを求めたいと思いますが、検察庁どうでしょう。
  166. 吉田淳一

    吉田説明員 本日の新聞のはっきりした段階におきまして、検察庁ではこの問題についてあらゆる点から検討を開始したと聞いておりますので、検察庁の検討の結果を待ちたいと思います。
  167. 諫山博

    ○諫山委員 参議院のロッキード委員会で安原刑事局長は、三木総理ににせの電話をかけたという報道どおりだとすれば、軽犯罪法違反であるし、偽計による業務妨害の疑いが強いという説明をされたそうです。そういう観点からいけば、網走刑務所の事件というのはまさに国家公務員法違反の疑いがきわめて強いということじゃないですか。
  168. 吉田淳一

    吉田説明員 きょう午前中の刑事局長の答弁は、検察庁で検討を開始したということを申し上げるに当たりまして、事実関係がまだ不明ではございますけれども、一応いわゆるにせ電話、しかも検事総長の官職をいわばかたったと申しますか、そういう行為であれば、軽犯罪法一条十五号の違反に当たるおそれがある。それからさらに、これは偽計による業務妨害というような点の疑いもあるので、そういう点もすべて含めて検討を開始したというふうに申し上げておるわけでございます。  御指摘の、国家公務員法の問題だと思いますが、これらのすべてにつきまして検察庁は現在検討を開始しておりますので、先ほど申しましたように、事案の内容との関係もありますので、その結果を待ちたいというふうにお答えしたいと思います。
  169. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、網走刑務所の事件についても国家公務員法違反の嫌疑で調査を開始したと聞いていいですか。
  170. 吉田淳一

    吉田説明員 そう申し上げたのではございません。検察庁では、本日の新聞のはっきりした報道によりまして、この点について刑事責任の有無について検討を開始した、こういうことでございます。
  171. 諫山博

    ○諫山委員 法務大臣は、宮本顕治氏の診断書などが漏れるはずはない、法務省は漏らした覚えはない、こう言っております。しかし実際はどうも漏れているんですね。漏らしたという言葉が正確かどうか知りませんが、とにかく鬼頭裁判官を通じて外に出てきた。だとすれば、やはりこれは法務省の責任だと思いますね。そして、このことによって宮本顕治氏の基本的人権、名誉は大きく傷つけられている、これは否定できないと思います。矯正局長も、診断書などが外に出せない理由として、本人の名誉に関するからと言っております。私は法務大臣に率直に申し上げたいんですが、刑務所から漏れているということは認めてもらいたい。そして、これはやはり刑務所として正しくなかった、法務省としても責任を感ずる、宮本顕治氏についてはこの点に謝罪するというだけの態度をこの席で法務大臣に示していただきたいと思います。
  172. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 重大な事件だから、重大なことだからよく調査せい、こう言っていま調査中ですからね。そうして、その調査の結果に基づいて、矯正局長調査の結果に基づいていろいろな、事と次第によっては検察の発動があり得る、こういう段階でございますからね。いま、現地の刑務所が漏らしたことを認めろ——漏らしたとは言わぬけれども、漏らさせられたというのかな。そういうことかどっちかでもいいから認めろと言われても、調査中だというのにそんなにせかぬでもいいじゃないですか。
  173. 諫山博

    ○諫山委員 「日共リンチ殺人事件」という本の中には、宮本顕治氏の診断書ということで引用されているわけですよ。本物かどうか知りませんが、これが著しく宮本顕治氏の名誉を傷つける立場で書かれていることは明らかです。  しかも、ことしの十月十七日に名古屋市で民社党の塚本書記長の演説会場で配布された「週刊民社号外」というのがあります。これを見ると「診断書は実在している。にせ診断書で釈放された。インチキムショ破りは明らかだ」、こう言って宮本顕治氏を中傷しているわけですよ。これは、民社党の春日委員長の新聞記者に語ったところによると、網走刑務所まで足を運んで診断書などを集めた。この資料に基づいて発言して、宮本顕治氏に「インチキムショ破り」だと言っているのですね。ここまで誹謗中傷が広がっている。そのもとが、刑務所にしかあるはずがない診断書が、どうも裁判所の感触では、少なくとも、裁判官の手に入った、見るべからざる裁判官がこれを見て写した、このことは間違いないようですよ、具体的に細かくどうなるかというのはあしたの調査で明らかになるそうですか。だとすれば、やはりこういうものが刑務所から漏れているその責任は法務大臣としては感ずるべきではないでしょうか。
  174. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 これは重大なことだから、責任を感ずるから、調べてみろとこう言っているので、あしたその鬼頭何とかいう裁判官が出てきてこっちの調査に応ずると言っているんでしょう。その前の日のいまここで、その本に書いてあるとか新聞に書いてあるとか、そういうことだけで——それを調査して裏づけをやって、十分な証拠に基づいて、それはこういうところに責任があったんだという報告をするのでなければ、法務大臣として言動の軽率を免れないよ。
  175. 諫山博

    ○諫山委員 著書とか新聞と言いますがね、名誉を傷つけているのは著書とか新聞で傷つけているわけですよ。最高裁判所があした調査するということですから、いずれこの調査の結果を待って、たとえば稲葉法務大臣の国会答弁で誤った点があれば取り消す、陳謝すべき点があったら宮本顕治氏に陳謝するというだけの態度を私はいまから要望しておきたいと思います。  そこで、鬼頭裁判官について少し突っ込んだ質問をします。  鬼頭裁判官というのは以前から話題の多かった人です。たとえば羽田空港で飛行機に乗るときに、所持品検査を受けるというときにいざこざを起こして新聞に大きく報道された。「羽田検問トラブル続発、犯罪者扱いと裁判官」、これには裁判官名前は出ていないようですが、これは鬼頭裁判官だそうですね。この事のいい悪いは別として、この人が鬼頭裁判官だったことは認識してありますか。
  176. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 当時の資料によりますと、当時の報道が裁判官ということでございましたので、私ども調査いたしました結果、その記事に言う裁判官鬼頭判事補であったことは私ども承知しております。
  177. 諫山博

    ○諫山委員 鬼頭裁判官は私行上にもずいぶん話題の多い人です。昭和四十五年ごろ、女性問題、しかも、これは単に異性関係があったとかなかったとかいうんじゃなくて、非常に非常識な女性関係のスキャンダルで、最高裁判所に対して鬼頭裁判官に対する二つの申し立てがあったと聞いているのですが、どうですか。
  178. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 最初にお断り申し上げますが、鬼頭裁判官の私行に関する問題につきまして、投書によるいわば申し立てといいますか、があったことは事実でございます。四十五年十二月ごろ、二通の封書が最高裁に参っておることも事実でございます。
  179. 諫山博

    ○諫山委員 私は、こういう問題を最高裁判所が適切に処理していたとすれば、今度のような不祥事は起こらなくて済んだのではないか、こういう問題に対して最高裁判所がその都度適切な措置をとっていたのかどうかということを明らかにする立場から質問しますが、この二人の申し立ての大体の内容を説明してください。名前は、プライバシーも関係しましょうから、触れなくて結構です。
  180. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 申し立て人と仮に申し上げておきますが、申し立て人の名前は、ただいま諫山委員指摘のとおり伏せさせていただきますが、実は投書の主が、この事件は鬼頭判事補にも知られたくないというような趣旨内容も含んでおりましたので、私どもといたしましては、鬼頭判事補のプライバシーの問題とも絡みますので、総合勘案いたしまして何らの措置をしなかったものでございます。  なお、冒頭に、当時鬼頭判事補について何らかの措置をとったならば、今度のようなことは起こらなかったのではないかというお尋ねでございますが、これもある意味では仮定的な質問でございまして、単純な因果関係から言えばあるいはそうだったかもしれませんが、果たしてそう言えるものかどうかについても、やはり問題があるのではないかというふうに思います。
  181. 諫山博

    ○諫山委員 この申し立ての内容は、男女関係のスキャンダルというだけではなくして、鬼頭裁判官の行為はまさに犯罪に値するような内容である、こういう指摘がされていたのではないかと思います。刑法犯に触れるようなことを女性に対して行っている。その点はどうですか。
  182. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 冒頭で申し上げましたように、少なくともただいまの段階で、ただいま御指摘の案件の内容につきましては、私どもの方から実はこうこうであったのだというような発言は控えさせていただきたいというふうに考えております。
  183. 諫山博

    ○諫山委員 この問題は最高裁判所としては調査しましたか。そして、鬼頭裁判官に対して何らかの措置をとりましたか。
  184. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 当時、鬼頭判事補は名古屋地方裁判所所属の裁判官でございましたので、名古屋地方裁判所に指示いたしまして、しかるべき調査をいたしました。その結果何らの措置はいたしておりません。
  185. 諫山博

    ○諫山委員 鬼頭裁判官については調査しましたか。あなたはこういう申し立てを受けているが本当か、あるいはこういう点改めた方がいいんじゃないかということはしていますか。
  186. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の点につきましては、投書本人といいますか、投書者が自分の名前鬼頭判事補に知られたくないという趣旨内容もありましたので、鬼頭判事補調査の対象として事情を聴取した資料はございません。
  187. 諫山博

    ○諫山委員 網走刑務所の問題にしても、あるいは三木総理電話をかけた問題にしても、鬼頭裁判官一人の行為であるのかどうか非常に疑わしいわけです。私たちは相当な背景があるに違いないと思っております。現に、網走刑務所について言いますと、鬼頭裁判官が網走刑務所まで行ってそれを写してきた、これはほぼ認められます。そして、それと同じものかどうか知りませんが、鬼頭裁判官が不当に写してきた資料と同じものが巷間出回っている。そして反共宣伝に利用されている。これは事実です。しかも、網走刑務所に行って、幾ら裁判官だといってもどうして刑務所の人が身分帳を見せたのか、写させたのか。調査によれば、写真で不備な点については後で手書きしてまで、それを謄写して鬼頭裁判官まで送ってやった。そうすると、これは刑務所長どころかもっと偉い人のオーケーがあったのではなかろうかというふうにさえ思われます。また鬼頭裁判官自身は、自分のやったことは正当だ正当だ、こう言っているわけです。  電話の問題について言いますと、きょうの読売新聞でもそのことが触れられています。たとえば、「この問題が明るみに出たら、私一人だけの問題ではすまなくなる」、こう言っているのですね。日刊ゲンダイでは、三木総理電話をかけるときの模様が、実に劇的といいますか、こういう表現で記載されているのですね。「一説には、三木首相が電話で話をしている同時刻に、三木政権の数名の要人にも仕掛人の側から電話があったという。これは三木首相と腹心たちとの連絡を断つのが目的だったらしい。だとすれば、かなり組織的な数名のグループが、この策動に参加したことになる。」網走の事件にしても、三木総理に対する電話の事件でも、明らかに背後関係がにおわされている。個人だけでできることではなさそうだということが推定できるわけです。この点で私たちいろいろ調査いたしました。考えもしました。その一つとして、ぜひ検察庁、裁判所で検討していただきたいのは、元裁判官をしていた飯守重任氏との関係です。飯守裁判官がいわゆる青法協狩りで大変非常識なことをした、そして最高裁判所から処分を受けた、これがきっかけになって裁判官をやめた、これはわれわれの中では非常に有名な事実です。そして、飯守重任氏というのは当時裁判官の中で最も右翼的で反共的な人だと言われておりました。この人が鹿児島地方裁判所の所長をしている時代、そしてまさに青法協狩りに乗り出したころ、鬼頭裁判官は飯守重任の部下として活動した、そして青法協狩りに一役を買ったというふうな情報があるわけです。そしてこの二人はきわめて関係が深い。現在でも勤務地が、飯守さんも京都、鬼頭さんも京都ですから近いという点でもあるのですが、単に友人というだけではなくして、同志とも言っていいような関係にある。そして、今度の問題でも飯守氏との関係がいろいろうわさされている。これはもう明らかです。この全容を知るためにはやはりここをもっと調べる必要があると思うのです。法務大臣としては全容を調べると言ってあるのですが、こういう点も調べられるつもりか。最高裁判所はあした鬼頭さんを呼ぶそうですから、この点までぜひ聞いていただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  188. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 重大なことだからと思って、さっき刑事局長に、検察庁でよく洗いざらい洗い出さなければこれは困るね、こう言ったら、いや、法務大臣から指揮されるまでもなくすでに捜査に乗り出していますからもう御安心ください、感心だなと……。
  189. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 飯守元判事鬼頭判事補関係ということでございますが、仕事上のかかわり合いとしては、先ほど指摘のように鬼頭判事補は四十五年の十月十二日から四十七年の三月三十一日まで鹿児島の裁判所判事補であったわけですが、飯守元判事は三十九年十二月五日から四十五年十二月二十四日まで鹿児島におられたわけでございまして、鹿児島時代でお二人がダブっているのは二カ月足らずでございます。  なお、この鬼頭判事補の二つのケースにつきまして背後関係云々という御指摘がございましたが、私どもといたしまして、飯守元判事との関係がどうだということにつきましては、現在のところ何らの資料ももちろん持ち合わせておりません。現実に飯守元判事鬼頭判事補がいわゆる御指摘の青法協狩りをやったかどうかということについても、私どもとしては全然知らないところでございます。
  190. 諫山博

    ○諫山委員 あす鬼頭判事補にいろいろ調査する内容について要望したい。  読売新聞では、三木総理との電話録音テープを所持していた、そしてこれを読売に持ち込んだということになっているわけですが、朝日新聞では、宮本顕治氏に関するさまざまな資料を、自民党の某派閥の事務所を訪れて日共宮本をやっつけるために先生の大きな政治力を使っていただきたいと言って持ち込んだ。これは鬼頭氏自身かかわりの者かよくわかりません。しかし、私たちの聞いているところでは、自民党の田中派と中曽根派に持ち込んだ。そして、そのときの名刺が田中派の事務所にあって、ロッキード事件の押収のときにその名刺も一諸に押収されているのじゃないかと言われているのですが、法務省、この点わかりますか。
  191. 吉田淳一

    吉田説明員 その点は聞いておりません。
  192. 諫山博

    ○諫山委員 これは裁判所にも法務省にもぜひ調べていただきたいと思います。学術研究のために診断書が欲しいなんてことはまず常識的には考えられないわけですが、いろいろな宮本顕治民に関する資料が出回っている。そして朝日新聞の報道でも、自民党の派閥の方にこれを持ち込んだ、共産党攻撃の材料に使ってもらいたいという形でこれが広められていった、こうなっているわけです。そうすると、民社党が持っているという資料と同じものだという可能性もきわめて強い。ですから、この関係をやはり徹底的に調べていただきたいということを最高裁判所に要望したいのですが、どうですか。
  193. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 明日、鬼頭判事補が参りまして、いろいろ事情聴取するわけでございますが、私どもといたしましては、当然のことでございますが、朝日、読売の両紙の記載記事を前提といたしましていろいろ尋ねるということに相なろうかと存じます。ただいまの御指摘のいわば質問事項につきましては、御要望として承っておきます。
  194. 諫山博

    ○諫山委員 とにかく、宮本顕治氏に対するさまざまな資料が出回っている、そして反共宣伝に使われているということは明らかですから、どういう経路でこれが刑務所から出てきて、どういう方法で広まったかということは、当然検察庁としては調査しなければならないと思います。かつて法務大臣は、宮本顕治氏の事件を究明するためにアメリカの公文書館にまで人を派遣してもいいというようなことさえ言ったことがあるのですから、この過程で当の宮本顕治氏の人権が侵害されているということになれば、それに劣らない熱意でこの経過を究明する、ロッキード事件の真相究明は非常に不十分だったと思うのですが、ああいう不十分なやり方ではなくして、徹底的にきわめ尽くすということを法務大臣に要望したいですが、いかがでしょう。
  195. 稲葉誠一

    稲葉国務大臣 法秩序の維持のためにいろいろな事件について徹底的に究明すべきことは当然じゃないですか。だから、厳重に矯正局長に徹底的に調査せよと言っているのです。  それから、ロッキード事件についての究明は不十分であったなんて、まだやっているうちに、済みもしないうちによけいなことを言わぬでもいいのだ。
  196. 諫山博

    ○諫山委員 最高裁事務総長質問します。  きょうの新聞、きのうの新聞を読んだ人たちみんなの感想は、裁判官にも大変な人がいるんだなと驚いているのですね。これはしかし、一裁判官の問題だけではなくして、たとえば鬼頭裁判官がしばしば公安調査庁に出入りをしていた、こういう話があるんですよ。あるいは鬼頭裁判官が、たとえば民社党の関係の人とかあるいは反共評論家として有名な弘津恭輔氏とか、ああいう人たちと絶えず連絡をとりながらこういうことをやったのではなかろうかというようなうわさもあるのです。こういう問題を考えますと、私たちは、鬼頭裁判官というとんでもない人がたまたま突然変異的に生まれてきたというのじゃなくて、相当問題のある根の深いものがあるのじゃなかろうかと思わざるを得ないわけです。いまどう考えていますか。
  197. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 事柄の真否は明日以降の調査にまつほかないと存じますが、それはともかくといたしまして、昨日来の新聞報道並びに今朝来各委員会で各議員の皆様方からいろいろ御質問のありましたところを通じまして、鬼頭裁判官について数々の疑惑が生じておるということは間違いのないところでございまして、私どもとしては、かような事態を深刻に受けとめ、裁判所として十分な調査をして事柄を明らかにしなければならない、かように考えておる次第でございます。  ただ、いずれにいたしましても、私どもとしては、これがいまお話しになりましたように、裁判所の全体的な問題というふうには受けとめておりませんで、仮に鬼頭裁判官にそういう問題があるといたしますれば、それは本人の問題であろう、全く私的に行っておることであろう、かように考えるわけでございます。
  198. 諫山博

    ○諫山委員 私、最後に要望します。  あす、とにかく最高裁判所本人を呼んで調べるそうですから、これを単なるとんでもない一裁判官の行き過ぎというようなことではなくして、私たちが初めから指摘しているように、やはり共産党のスパイ調査問題を国会の中で憲法に違反して論議し始めたこととロッキード事件というのが決して無関係ではない、私たちはこういう立場から、これを一裁判官の問題というのじゃなくて、きわめて重大なきわめて政治的な出来事として受け取っているのです。そして鬼頭裁判官の背後関係についても、たとえば公安調査庁とかあるいは反共的な一部の人たちとか、そういう人たちとのつながりも私は情報として指摘をいたしました。こういう点を広範に調査する、そして次の当委員会でその調査結果を説明していただくということを最高裁判所にまず要望したいのです。来週火曜日と水曜日に委員会が開かれます。これは急速を要しますから、この時点で何らかの調査結果を報告していただくということはどうでしょう。
  199. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 御要望の趣旨は十分に承りました。ただ、私どもこの問題を調査いたします立場は、あくまで司法行政の立場で行うわけでございまして、司法権プロパーでございませんので、強制力を持った調査権を持っておるわけではございません。したがいまして、おのずからそのとり得る手段に限界があるということを御了解いただきたいと思います。
  200. 諫山博

    ○諫山委員 法務省にも、幾つかまだ調査が進んでいない、特に網走刑務所では、記憶がないというようなおよそ非常識な説明しかされていないわけですが、ぜひ次の委員会までに経過を明らかにして説明していただく。できるなら、鬼頭裁判官の網走刑務所における行動だけではなくして、さまざまな漏れるべからざる資料が巷間流布されているという問題についてもできるだけ調査を進めて報告していただくということを要望したいですが、どうですか。
  201. 石原一彦

    ○石原政府委員 私の方の矯正職員につきましては鋭意取り調べるということを先ほど申し上げました。  実は私、来週矯正に御協力くださる方の大会が福岡であり、かつ宮崎の刑務所が落成するのでございますが、その出張を取りやめましてこの調査に当たる所存でございます。  なお、北海道にいる矯正職員は、先般落成いたしましたばかりの刑務所に勤めておりまして、現在きわめて多忙でございます。なお、職員の数も少ないので、こちらから人が行くか、あちらから来てもらうかという点につきましては追って決定いたしたいと思っておりますが、来週火曜はともかく、水曜日ごろまでには何とか一応の結末はつけたいものだというふうに思っております。  しかしながら、御承知かとも思いますが、私も昨日の新聞が当然北海道の当人のいるところに配達されていると思いましたところが、北海道の僻地でございますので、きょう初めて見たというようなことでございまして、新聞内容を詳しく電話で言いましても容易にわかりにくいという点もございますので、いささか時はいただきたいと思います。  なお、あらゆる資料について調べろという点でございますが、検察庁について調べるのを、まさか指揮権を発動しろという御趣旨ではないと承りますが、検察庁に御協力をいただかなければいけない点は、矯正局から刑事局にお願いし、しかるべく正当な筋を通して御依頼申し上げたいと思います。なお、矯正当局でわかる範囲のことについては最大の努力を尽くすつもりでございますが、とにもかくにも、三十年間のことを調べなければならないということでございまして、きわめて難事業であるという点につきましては、御了解を賜りたいと思います。
  202. 諫山博

    ○諫山委員 終わります。
  203. 小島徹三

    ○小島委員長代理 沖本君。
  204. 沖本泰幸

    沖本委員 本日の委員会は私で終わりになるわけでございますが、答弁者の方には長時間恐縮でございます。     〔小島委員長代理退席、諫山委員長代理着席〕  それで、席を外していただく順序で一応いまの引き続きをやらしていただいて、後、真田法制局長官に少し御質問して、それからロッキード問題に移っていきたい、こう考えております。  実は、きょうの読売新聞は、私も読んでびっくりしたわけで、これは先ほど来の御質問どおり、だれが新聞を読んでもびっくりする、一応大変な内容だと思うのですが、余り細かい点についてということよりも、もう先ほどからいろいろ議論がございましたから、二、三の点だけを伺っていきたいと思います。     〔諫山委員長代理退席、吉田委員長代理着席〕  まず人事局長、けさ稲葉さんの御質問に、実はきょう新聞を読んで驚いたんだ、それで早速取りかかった、こういうお答えだったわけです。私、そういうふうに朝——途中で中座しましたけれども、そう記憶しておるわけですけれども先ほどの諫山委員の御質問ですと、きのう一応諫山さんと最高裁の方とのやりとりがあったのか、きのうの朝日の問題点であったのが、人事局長は、きのうの時点のお話が諫山さんの質問から出てきたわけで、けさのお答えと昼からの諫山委員へのお答えとに食い違いがあるんですが、その点はどうなんですか。
  205. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 あるいは言葉が足りなかったかと存じますが、昨日の朝日の記事につきまして、諫山委員から、裁判官京都地裁鬼頭判事補であるというお話がきのうの昼ごろにございました。そのことを申し上げている次第でございまして、午前中に稲葉委員の御質問お答えしたことは、けさの読売の記事についてでございます。したがいまして、私としては取り違えたつもりではございません。
  206. 沖本泰幸

    沖本委員 そうすると、事件の内容についてはきのう御承知になった、こう理解していいわけですね。
  207. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 読売新聞の記事につきましては、けさほど私どもは初めて承知したわけでございます。昨日の朝日の報道、いわゆる網走刑務所のことにつきましては、きのうの朝日の朝刊で初めて承知したということでございます。
  208. 沖本泰幸

    沖本委員 そうすると、鬼頭判事補との電話のやりとりというのは、きのうの時点でなくて、きょうの時点だということになるわけですか。
  209. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、諫山委員から御指摘がありましたので、早速大阪高裁を通じまして地元の京都地裁電話をいたしまして、きのうの時点では網走刑務所事件のことについて調査方を指示いたしました。けさ朝刊を見まして、いわゆる三木総理に対する電話事件につきまして、さらに重ねてその点についても聞くようにという指示をいたした次第であります。     〔吉田委員長代理退席、小島委員長代理着席〕
  210. 沖本泰幸

    沖本委員 これは、法務省の方と最高裁の方、両方へお伺いするわけですけれども、まず法務省の方に対してですが、昼のテレビでもやっておりましたけれども三木総理は、参議院のロッキード問題調査特別委員会で、総理みずからこの謀略電話について具体的なことをお述べになったという点がはっきりしたわけですけれども、そのことについて総理と法務省との関係で、調査するように総理からそういう指示があったのかなかったのか。なかったけれども、法務省が自動的に具体的にこの捜査に乗り出したということになるのですか。どちらですか。
  211. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 どちらから言ってこちらが受けたという関係でなくて、ぴたりこの両方同時みたいなかっこうで、これは調査せんならぬな、こういう意思が一致しております。法務大臣、総理大臣、それから法務省の関係、その関係全部そういうつもりでおります。
  212. 沖本泰幸

    沖本委員 総理から捜査指示はあったわけですか、なかったのですか。
  213. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 捜査指示という法律語を使われましたが、そうではなくて、調査というか、調べろという言葉でしたな。調べようじゃないか、ねえ稲葉君。もちろんですな、こう言って……。
  214. 沖本泰幸

    沖本委員 これはお伺いしようと思ったのですが、諫山委員がお聞きになったので重複するわけですけれども、私の方からも、わかった時点から、重大な問題ですから、最高裁並びに法務省の方にわかった時点ずつ御発表いただける内容を、当委員会委員会のある日に、もう幾らも日にちありませんから、お調べになったできるだけ具体的な内容についてお知らせいただきたいということを御要望申し上げます。  これは以上でございますから、最高裁事務総長は結構でございます。ありがとうございました。  それから、次は真田法制局長官にお伺いいたします。  十月八日の当委員会で、諫山委員が御質問になって、「国会議員が国会の中で、裁判で争点になったリンチ的な行為が果たしてあったのでしょうか、なかったのでしょうか、この点について、総理大臣なり法務大臣に詳細に御説明願いたい、こういう質問をすることは、いまの答弁から見れば、国会なり総理大臣、法務大臣に憲法違反のことを求めているというふうにならざるを得ないと思いますが、いかがですか。」という質問に対しまして、真田長官は、「いまおっしゃったような質問をされること自体がやはり不穏当なのであって、」云々とお答えになり、さらに練山委員が、「国会の場でいまのような質問をするのは不穏当というにとどまらず、何か憲法違反を求めるというふうに見えると思うのです。もっとも、国会なり行政機関の場がそれに乗ってこなければ、憲法違反というのは完成しないわけでしょうが、それにしても、不穏当というにとどまらず、憲法違反を、求める発言だというふうに聞こえるのですが、そうじゃないですか。」という質問に対して、真田長官は、「確定判決の当否を国会が論議するということが司法権の独立を侵すのだという面を持っているという観点からすれば、やはり憲法にそぐわないと思います。」と答弁していらっしゃいます。  そこで、お伺いするわけですが、この答弁は、九月二十八日のわが党の矢野書記長の質問を前提にしての答弁なのでしょうか、それとも一般論として答弁をなさったのでしょうか。私は一般論としてお答えになったものと思いますが、真田長官の真意をお聞かせいただきたいわけです。
  215. 真田秀夫

    ○真田政府委員 十月八日であったと思いますが、当委員会で諫山委員と私との間にいま御指摘のような質疑応答があったことは私も記憶いたしております。私はかねがね、政府委員としましては、国会議員の方の特定の御発言をとらえてそれを批判したり非難したりするというような立場にないと心得ておりますので、またそういうふうなことがあってはならないと心がけております。ただいまお読みになった私の答弁の中にも、特定の議員さんの名前は一切出ておりません。おっしゃいますように、全く一般論としてお答えしたものでございます。
  216. 沖本泰幸

    沖本委員 そうなりますと、諫山委員がその後で、「念のために申し上げますと、「リンチ的な行為が果たしてあったのでしょうか、」「詳細に御説明願いたいと思います。」と質問しているのは公明党の矢野書記長です。」と述べ、あたかも前出の長官の答弁をもって矢野質問を不穏当あるいは憲法にそぐわないという印象づけをしております。しかし、政府委員は国会議員の国会における具体的な発言に対して見解を述べる立場にないことは明らかであると思われますから、この答弁は、矢野質問が不穏当あるいは憲法にそぐわないと言うたものではないと思いますが、この点はいかがでしょう。
  217. 真田秀夫

    ○真田政府委員 先ほどお答えしたとおりでございまして、決して特定の議員さんの発言をとらえまして、それに批判を加えたというものではございません。私は一般論としてお答えしただけでございまして、それと、それから矢野議員の御発言、実は私中身は知らなかったわけですが、その矢野議員の発言とを結びつけてどういう御批判をなさるかは、それは御批判者の自由でございまして、私の真意はもちろん一般論として申し上げたわけでございます。
  218. 沖本泰幸

    沖本委員 さらに長官にお伺いいたします。  一般論として伺いますが、確定判決がなされている場合、この判決に対して、確定判決で認定している事実について、事実認定の当否について論議することではなく、事実そのものを単に質問することは、憲法違反あるいは憲法違反の疑いがある、あるいは憲法にそぐわない、さらに不穏当な質問ということになるのかどうか、この点をお伺いしたいわけです。
  219. 真田秀夫

    ○真田政府委員 なかなか微妙な問題を含んでおると思いますけれども、おっしゃるように、判決の当否を論議しようというのではなくて、判決の中にはどういうことが書いてあるのかということを聞いたり、あるいは単に事実そのものを聞くということであれば、その限りにおいては憲法違反という問題はないのだろうと思います。
  220. 沖本泰幸

    沖本委員 衆議院法制局では十月十五日に、矢野質問は明確に憲法違反ではないという見解を示しました。真田長官はこの衆議院法制局長の見解の基礎にある憲法解釈に異議があるかどうか、お伺いしたいわけです。
  221. 真田秀夫

    ○真田政府委員 衆議院の法制局長の御見解は、私、この写しをいただいているのですが、この中に、「知りたいという要望は、過去の事実の有無そのものでありまして、その事実に関する裁判の事実認定の当否を問題としているとは認められません。」という個所があるわけですが、この個所が、先ほど私が申し上げましたように、当否を論ずるというのでなくて、単に事実を知りたい、事実を説明してくれということにとどまれば、それは憲法違反のものではないだろうというような御見解に立って衆議員の法制局長がお述べになったとすれば、その御見解にはもちろん異議を申し上げるような筋合いのものではございません。
  222. 沖本泰幸

    沖本委員 わかりました。結局、衆議院法制局の憲法解釈に異議がないということのようでありますので、矢野質問は、不穏当であるとか、憲法にそぐわないとか、ましてや憲法違反であるとか、こういうことではないということが明確になったと私は考えるわけでございます。長官、どうもありがとうございました。  では、法務大臣、大変長くなって、朝から強行軍で恐縮でございますが、事重大なので、ロッキードの方へ移らしていただきます。     〔小島委員長代理退席、吉田委員長代理着席〕 押し問答になるかもわかりませんけれども、重大な問題になりますので、一応お伺いしたいわけです。  ロッキードの中間報告に関連してですけれども、この中間報告に盛られて述べられた十八人の公表問題についてでありますけれども政府の方は、国民の知る権利にこたえる責任があることは言うまでもないが、総理や法務大臣が知り得た延べ十八名の氏名は、国民の知る権利にこたえるか否かの問題であって、ここのところが重大な問題になってくるわけですけれども刑事訴訟法の四十七条は、公表するかどうかというそれの根拠法ではなくて、国民の知る権利にこたえるに当たっては配慮するようにしなければならないんだ、こう考えるべきだと私は考えるわけですけれども、その点は大臣、どうお考えでしょうか。これは刑事局長がいらっしゃったら非常に……。
  223. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 貴見のとおりです。
  224. 沖本泰幸

    沖本委員 次にお伺いしたいのですが、国会へ資料を提出するということは別に角度の問題ではないのか、こう考えるわけです。憲法の第十五条の一項には、国民の権利として、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、國民固有の権利である。」と規定されております。このことを通してみても、情報を知り得た立場の総理並びに法務大臣が国民の知る権利にこたえる義務がある、決して国会だけの問題ではないというふうに私は考えるわけですけれども、この点、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  225. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 ちょっと御質問趣旨が把握しかねますが、その御質問はこんなふうに解していいのですか。国会は国会で政治道徳責任を追及する、政府も刑事責任追及ばかりでなく、道義責任を同時に追及する権限を持っているのではないのか、こういう意味だったら……。
  226. 沖本泰幸

    沖本委員 もう一遍……。憲法の十五条は、国民の権利という立場から、公務員を選定し及びこれを罷免することは国民の固有の権利だ、こういうふうに国民の権利というものを規定してあるわけですね。そういう立場から考えていくと、いわゆるその国民に対して、情報を知り得た立場の総理並びに法務大臣はこれにこたえる、この憲法十五条に対して、国民に対してこたえなければならない義務が生ずるのではありませんか、こういうことです。
  227. 吉田淳一

    吉田説明員 先ほど大臣が申し上げましたが、捜査結果の公表をするという問題につきましては、刑事訴訟法四十七条だけじゃなくて、刑事訴訟法全体の立法の趣旨というものを踏んまえて判断しなければいけないということだと思います。  御指摘憲法十五条で、国民の固有の権利として公務員の罷免その他の権限が与えられておるわけでございますが、やはりそれが捜査結果の公表ということになりますれば、刑事訴訟法四十七条ばかりじゃございませんけれども刑事訴訟法全体の立法の精神、それは人権の問題あるいは捜査と裁判に不当な影響があるかどうか、こういうことを十分配慮しながら行わなければならないものと考えております。
  228. 沖本泰幸

    沖本委員 その辺が非帯に技術論になっていくところなんですけれども、同時に考えていただかなければならぬのは、私も当委員会で大臣ともいろいろその点について御議論申し上げたわけですけれども、それはそれとして考えなければならない捜査の秘密であるとか、あるいは訴訟の進行のため、あるいは捜査続行のため、いろいろむずかしい問題はあるわけですけれども、それとは別に、国民の知る権利に対して最大限にこたえていかなければならないというものがもう一つあるんだということで、それが守秘の方にばかり入っていってしまうと、結局は国民の知る権利にふたをしてしまうという結果が起こってくる、それはそれなりに国民に疑惑を生じてくる、こういう事態が起こってくるということになるわけで、そういう立場から、国会は政治的、道義的な問題を追及していき、それを明らかにしていく。そういう立場で、総理もその立場に立ちながら、法務大臣もその立場に立ちながら最大限協力をしていく、国会もそれに全力を挙げでいく、こういうふうなやり方をしているけれども、なおかつ、国民全体という憲法の上に立った国民の知る権利にはもっと大きくこたえていかなければならない。それにはやはりむずかしい問題があるわけですけれども、そういう前向きに国民にこたえていくという姿勢が出てこなければ、それが国会で押されていくに従ってだんだん後退していってしまうと、結局は壁をつくって、その壁の中に入ってしまったという結果を生んでしまう、こういうおそれがあるわけです。そういうふうに私は考えるわけですね。  そこで、国民の立場から考えていけば、国民の知る権利というものは重大な問題であって、国民はそれを知りたいわけですから、それに対してこたえなければなりません。おこたえになる立場にありますよということになるわけです。その点はどうなんですか。
  229. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 わかりにくいですから、もっとわかりやすく私の方で答えましょう。この間、十三人ある、こう言いましたね。そうしたら、新聞には、十四人灰色高官と、こう出たんだ。私の報告は、灰色十三人なんて言ってないんだね。灰色であるか何であるかはそっちでお決めください、こういう流れでございました、そうして三十ユニットはこうなっています。五人に渡ってます。それから、渡っているのにどうして起訴しないかと言うから、時効が三人で、職務権限なしが二名でございます。こういう答えをし、九十ユニットはどうなったのかということは非常に国民の知りたいところですから、それは若狭や何かからもらった金と一緒に全日空の簿外資金の中に突っ込まれて、そのうちから五千七百五十万円が十三人に渡っております。しかし調べた結果は、国会議員の職務の対価とも認められない。それじゃどういう趣旨かというと、歳暮だの中元だの旅行のせんべつだの政治資金だのであって、それは航空機の売り込みとは関係があるとは認められなかった。こういう報告をしたのですから、それじゃそのうちどれが政治責任があるのかという判定は、議長裁定に基づき国会のロッキード調査特別委員会がお決めください。お決めくだすったら協力します。資料も挙げて名前も挙げます。こう言うんだね。  ところが、ああやって十三人と言っておきながら名前を言わなければ何にもならぬじゃないか、こういうあれですが、いま名前を言ったら、新聞とびしっと合って、法務大臣は十三人灰色高官というものを挙げておいて名前を言ったんだから、それが即灰色高官という判定を法務大臣がすることになるから、いまはだめだ、こう言っているんです。
  230. 沖本泰幸

    沖本委員 同じ問題で別のことを伺いたいと思うんですが、十三人に関して、せんべつとして百万円もらっている、あるいはお歳暮として百万円もらっているということなんですね。だけれど、国民の社会的通念から言うと、この額というものはそう低い額じゃない、こういうことになるわけですからね。これはけしからぬ、そこに国民の疑いというもの、それは国会議員全体に及んでいく疑いにかかってくるわけです。そういうことになるわけですから、そういう問題を、やはり国会を信頼していただくように、国政の場が、国民の信頼を取り戻すために皆真剣にやっているわけですから、そういう立場から言うと、国民のそういう社会通念的な疑惑に対してはできるだけこたえていって、疑惑を晴らしていくことの方がより大事であって、ただそれが特別委員会の場だけの問題ではないということになるわけですから、それに対して、政府はもっと責任をもってそれにこたえていってもらわなければならない、こういうことになるんですけれどもね。素朴な国民の考え、通念からいくと、大変けしからぬ、国会議員ぐるみで、委員会ぐるみでいいかげんにしているのと違うか、国民自体はこういう疑惑を持っているから、野党の方もよう追及しないんじゃないのか、大臣は何とかかんとかその辺みんな幕引きを総理大臣と一緒にやっているんじゃないか、こういうふうにとられてしまうわけです。そうすると、われわれ国会議員全部に迷惑がかかっていく、政治に対する信頼がますますなくなっていく、こういうことになるわけですから、そういうふうな素朴な国民の立場に対して、政府はどういうおこたえをしていかれるか、こういうことになるわけです。
  231. 稲葉誠一

    稲葉国務大臣 国民はよく事情がわからぬで、ただ十三人と言って、新聞にはそれが灰色と書いてあるんだから、十三人名前を具体的に言ったらいいじゃないか、それを隠しているのはおかしいじゃないか、こういう感情でしょうな。  それからもう一つは、その十三人は金銭の授受があることは明確に法務大臣は報告しているんだから、ほかは授受がないということの証明のためにも、そういう連中の名前を出した方がほかの救いになるじゃないか、これもそうですけれども、しかしどうでしょう、ロッキード事件というのはこの一月からわかったんですな。あの当時、これがロッキード事件というものがあって、トライスターの売り込みに関係していると思ってもらったとは思えないんです。そうすると、あの当時は、全日空であろうが新日鉄であろうが信越化学であろうが、企業から献金一切悪いという法律になっていれば別ですよ。同じものだもんな。たまたま後で悪い会社であるということがわかった全日空から、そういうものをもらった人だけが灰色、こういうふうに新聞とかみ合うから灰色、こういうことになって、それにうまく新日鉄からもらっていたのは何でもない、こういうんでは、国会議員の間に不公平を生ずる、そういうことは不公正じゃないかな、こう思うものですから、私どもは国会に、そういう関係で金銭の授受はありますが、こうなっておりますということを中間報告をして、後、道義的、政治的責任追及者である委員会がどういう判定をされるかはお待ち申し上げておりますと——このお待ち申し上げているのを、ちっともそっちの仕事はしないで、こっちに仕事をやれ、そういう道義的、政治的責任を追及する立場にない検察、法務の材料を、名前までも言えというのは、ちっと無理じゃないですか。まずそっちの国会の義務を果たして、ここまで決めたからさあ出せというんでなければ、話は進みませんな、皆政府の責任でやれ、そんなことを言ったって。それから、そちらでお決めになるのをお待ちしておりますと言うと、国会任せ、自分の政府はやらない、いかにも消極的権限争議みたいなふうに言いますが、こっちは権限がない、そっちに権限がある。消極的権限争議じゃないです。国会の方が怠けていると言っちゃ語弊があるけれども、そっちの方でしっかりやってください、幾らでも協力は申し上げます。これだけの中間報告をして——この中間報告を丹念に読んでとらんなさい、手がかりは幾らでもあるから。
  232. 沖本泰幸

    沖本委員 もう一つ議論はあるのですけれどもね。  それでは、総理は、中間報告で金を受け取った人の中には自分の名前は入ってない、三木はクリーンだ、こういうふうにお答えになったわけです。一部ではあるけれども、みずからの潔白を証明するために国民の知る権利にこたえたということになるわけです。そうすると、それを国会の責任に押しつけるということば理解できない、こういうことになるわけです。
  233. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 沖本さん、きょう参議院のロッキード特別委員会でその話が出ました。各党から二人か三人ぐらい出たと思います。それに対して総理は答弁をされまして、自分一人がシロだなんということを証明するためにやったものでないことはもちろんだけれどもと言って、るる説明をして、大体御納得をいただいたように私、記憶しております。これは総理のことですから、私がお答えする限りではありませんな。
  234. 沖本泰幸

    沖本委員 そういうことになりますけれども、結局、刑事局長は一疑惑を持たれた人は本人の発言を信頼する以外にない、こういうふうに述べていらっしゃるわけですね。だから、十八名の中には国会議員全部が含まれているというふうに言われても、これはしようがないということになるわけで、この中から総理だけが除かれた、恐らくこの議論もあったと思いますけれども、そういうことになるのですね。だから、えてしてそういうふうに考えられやすい。ですから、このごろは子供でも、テレビでロッキードはもう見飽きた聞き飽きたというふうに変わってきている。それはやはり不信に通じているということになるんじゃないかということにもなるわけです。そういう点から、プライバシーにかかわる問題あるいは人権という点で非常に重視しておられるわけですけれども、そのことが政治家の人権に触れるという点から考えていくと、政治家とか公人は、思想、信条を除けばプライバシーはないんだ、こういう意見もあるわけです。みずから証明しなければならないという点もあるわけです。ですから、そういう点からも、もう間もなく選挙があるわけですからね、これはもういろいろ議論されているけれども、やはりここは一番の問題になるんじゃないかと思うのですね。国民はそこで判断しなければならない。判断基準を出さなければならないということは、大臣もおっしゃっているし、総理もおっしゃっているわけです。ですから、その辺が差し迫った一番大きな問題にかかってくると思いますね。それは委員会が決めるとか決めないという問題よりも、差し迫った国民の知る権利に対して最大限に政府はこたえていかなければならぬということになるわけです。総理だけが自分は潔白だと証明して、ほかの十八人は全部国会議員の中にいるのだ、こういうふうに言われても、それはそれなりに政治家はもうだめなんだ、政治はだめなんだという不信の言葉に変わっていき、不信の考えに変わっていってもしようがないということになるわけです。やっていること自体信頼を取り戻すためにやつていることが、逆効果を生むようなことがあってはならないと思うのです。そういう観点から考えていくと、やはり真剣に考えていただいて、そんな委員会の方が早く基準を決めてくれればこっちはやるのだということをおっしゃっているわけですけれども、総理のお答えなんかから見ていくと、その辺がだんだん後退しているわけです。だから、与党の中の一部から、もう名前を出してもいいのじゃないかという御意見も出ているようなんです。そういうことですから、その辺を十分お考えになっていただかなければならないと私に考えるわけですけれども、こういう点について、やはりいままでのとおり大臣はお考えを変えませんですか。
  235. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 早く国民に知らしてあけたい。それには、法務、検察は刑事責任の追及権限しかないのです。道義的、政治的責任の追及者は国会だ。国会が何もしないで、ただ名前を発表しろ発表しろ、そんな乱暴な発表の仕方がありますか。さっき言ったことでわかるじゃないですか。国民もわかってくれると思うんですね。当時ロッキードだとか全日空だとかがこんなことをやっているなんということを思わぬでもらっている人までも、ぽかんといま発表すれば、非常な誤解を与えますな。ほかの会社から政治献金をもらってきた人は何でもない。事情を知らずに——当時事情を知るわけはないのだから、普通の政治献金もらっている人も、いま十三名私が発表したら、新聞は法務大臣が十三名の灰色高官を発表したというような書き方をしていすまからね、そういう間違った書き方とマッチして、国民が誤った判断に陥るから、それは人権を守る役所としてはできない。こういうのは、いかに国民から誤解をされようと、それから後退したなんと言われようと——一時そんなことにのめ入ってぽんと国民の人気を得るかもしらぬけれども、そういう不謹慎なことは法務大臣としてはできるものではありません。
  236. 沖本泰幸

    沖本委員 私は何も大臣が人気を得ていたくために述べているのじゃないのです。いままで十分大臣は有名になって日本じゅう知れ渡っているわけですから、その必要はないと思いますけれども、私が終始一貫当委員会で述べていることは、国民の素朴な立場に立ってずっとお聞きしていることは、大臣もよく御承知だと思うのです。そういう立場に立って、これが行政機関であるところの政府と国会の委員会等を通じてますます迷路に入ってしまって、国民の頭から遠ざかっていき、国民の信頼から遠ざかっていくような結果を招いていくことは、はなはだ遺憾であるということを言わざるを得ないわけです。いまのままでいくと、委員会基準を決めろと言っても、委員会でなかなか基準が決まりそうもないことは大臣がよく御存じなんです。なぜ決まらぬかということは大臣がよく承知なんです。それは選挙でもあって数が変わってくれば、すっすっと決まるかもわかりません。そういうことになるわけです。
  237. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 あなた、自民党が隠そうとしているから、多数を持っているから決まらぬ、こんなような意味質問をしておられますが、そんなことはないのです。あの報告をよくごらんください。野党の方からこの何ページのここにこう書いてあるからこうだこうだといって詰められれば、自民党の議員が幾ら何だと言ったて、理論にあくまでも抵抗してやっていけるわけのものではないんですから、それをちっともやらないで、法務大臣、十三人と言ったんだから名前を発表しろ、そんな乱暴なことがありますか。そうしてそれはいかにも国民に受けそうな議論なんだけども、私の説明によって、何度も説明することによって、国民はわかってもらえるものと思うんだ。国民の知的水準はそんな低いものではないと私は信てじいます。
  238. 沖本泰幸

    沖本委員 これはもう平行線をたどるばかりで、決める方はロッキード調査特別委員会でお決めになるわけで、各党ともその点では最大限の知恵をしぼっていろいろやるわけですけれども、会期は余り残っていない。こういうところで、最大の効果を上げていきたいという点があるわけで御質問してきたわけですから、決して自民党がそういうことなんだということではないわけです。いまのままの状態でいくと、そういうところへ行ってしまいそうだということになるわけですから、やはり大臣の立場としても、一人の政治家として、あるいは大臣の正義感に問うてでも、これは明らかにしていく立場から、最大の努力をしていただかなければならない。最大の努力をしているとおっしゃればそれまでのことになるということですけれども、これからも道を開くために最大の御努力をいただきたいというふうにお願いして、質問を終わります。
  239. 吉田法晴

    吉田委員長代理 それでは、沖本君の質問は終わりました。  次回は、来たる二十六日午前十時理事会、十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十二分散会      ————◇—————