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1976-10-20 第78回国会 衆議院 文教委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 登坂重次郎君    理事 深谷 隆司君 理事 藤波 孝生君    理事 三塚  博君 理事 森  喜朗君    理事 木島喜兵衞君 理事 嶋崎  譲君    理事 山原健二郎君       臼井 莊一君    辻原 弘市君       長谷川正三君    村山 喜一君       山口 鶴男君    栗田  翠君       有島 重武君    高橋  繁君       受田 新吉君  出席国務大臣         文 部 大 臣 永井 道雄君  出席政府委員         文部政務次官  渡部 恒三君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省社会教育         局長      吉里 邦夫君         文部省体育局長 安養寺重夫君         文部省管理局長 犬丸  直君  委員外出席者         科学技術庁研究         調整局海洋開発         課長      加藤 昭六君         文部省学術国際         局審議官    澤田  徹君         運輸省航空局技         術部長     官川  晋君         参  考  人         (日本学校安全         会理事長)   澁谷 敬三君         文教委員会調査         室長      大中臣信令君     ————————————— 委員の異動 十月二十日  辞任         補欠選任   平林  剛君     村山 喜一君   神田 大作君     受田 新吉君 同日  辞任         補欠選任   村山 喜一君     平林  剛君   受田 新吉君     神田 大作君     ————————————— 十月十八日  病虚弱養護学校校地取得等に関する請願(塩  谷一夫紹介)(第五三一号)  同(馬場昇紹介)(第五三二号)  国立能楽堂早期設立に関する請願外八件(宮  澤喜一紹介)(第五三三号)  同外三件(原健三郎紹介)(第六五九号)  進学希望者高等学校教育保障に関する請願外  一件(平林剛紹介)(第五五七号)  同(松本忠助紹介)(第五五八号)  同外一件(辻原弘市君紹介)(第六六〇号)  信州大学経済学部の創設に関する請願小坂善  太郎君紹介)(第六〇八号)  同(小川平二紹介)(第六二六号)  私立大学学費値上げ抑制等に関する請願外一  件(辻原弘市君紹介)(第六五八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  文教行政基本施策に関する件(日本学校安全  会の運営及び学校災害給付問題)  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 登坂重次郎

    登坂委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  文教行政基本施策に関する件、特に日本学校安全会運営及び学校災害給付問題について、日本学校安全会理事長澁谷敬三君を本日参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 登坂重次郎

    登坂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  4. 登坂重次郎

    登坂委員長 文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高橋繁君。
  5. 高橋繁

    高橋(繁)委員 きょうは、特殊教育、特に聾学校養護学校が五十四年から義務制になります。その準備のことについて若干質問し、それから学校事故、最後に性教育、この三点にしぼって、時間の許す限り質問をさしていただきたいと思います。  まず、盲聾含めまして特に聾教育、これの早期発見早期教育ということについて、ずいぶん前からやかましく言われておりますが、現在、三歳児から幼稚部が置かれておる。早期発見にも問題がありますが、これは厚生省管轄でありますので省くといたしまして、出産をして、母子手帳そのものにも聴覚障害項目がないわけです。しかも一週間たてば小児科に移る、一週間までは産婦人科という、そういう問題もありますが、それは別として、現在三歳児から幼稚部が置かれておりますが、学校によっては二歳児から幼稚部通学をさしておるというところがありますけれども早期教育ということが大変大事なことは言われておるとおりでありますので、これを二歳児から幼稚部に入れるという考えは持っておりませんか。
  6. 諸沢正道

    諸沢政府委員 養護学校教育対象者のうち、特に聾者について早期教育ということが非常に効果があるということにつきましては、専門方々も認めるところでございます。     〔委員長退席、森(喜)委員長代理着席〕  そこで、いま御指摘のような御質問があったのと思いますけれども、国といたしましては、御承知のように昭和五十四年度から小学部中学部、つまり義務教育段階養護学校義務化ということを第一の目標に掲げて、その整備のために努力をしておるという段階でございます。もちろん幼稚部充実ということにつきましても、四十六年以来十カ年計画を掲げてその整備を図っておるわけでございますが、まず義務教育整備ということを先に掲げておりますので、御指摘の二歳からの幼稚部入学という点は今後の課題として検討さしていただきたいと思いますが、現段階では考えていない、こういうことでございます。
  7. 高橋繁

    高橋(繁)委員 すでに静岡県などでは二歳児からやっているわけですね。しかも県費で負担をしてやっているわけですが、そういう関係者から二歳児から入れて大変な効果があるということで、大変強い要望もあります。今後の課題として検討すると言っておりますが、養護学校義務化になるという前提からも、従来からありますこの盲聾学校について、きわめて効果のある二歳児から入れることが私は大変妥当だと思う。したがって、ひとつ緊急な課題として検討しておいていただきたい。  それから難聴学級ですが、小学校にはこれは児童数関係もあるかもしれませんが、きわめて多いわけですね。中学校に行きますと、数が約半分ぐらい減る。これはいろいろ関係もあるかもしれません。ところが、高校にはほとんどない。三十八年の文部省通達の中にも、難聴学級を設けるという通達が出ておりますが、その辺のなぜ高校にできないのか、つくらないのか、あるいはそういう必要がないのか、あるいは小学校中学校にかなりの差がありますが、その辺の問題についておわかりになればお答え願いたい。
  8. 諸沢正道

    諸沢政府委員 現在の学校教育法のたてまえでは、小中高それぞれに特殊学級が設けられる制度にはなっております。そこで、御指摘のように各種身体障害者、その障害程度特殊学校に通うほどでない子供さんについては、特殊学級を設けてそこで教育をするということで、軽度精薄等子供さんも、これが最も多いわけでございますけれども特殊学級教育するということで、小中学校特殊学級整備ということは、これまた十カ年計画を掲げて毎年その数をふやしておるところでございます。  ところで、高等学校特殊学級は、それではどうかという点でございますが、この点につきましてはいまの難聴者に限らず、各種軽度障害者高等学校における修学という問題は一つ課題でございます。しかしながら、現段階高等学校というものが、これはほとんど全入に近い形をとっておりますけれども制度としては選抜前提としておるということで、そういうお子さん方については、程度のかなり重い者につきましては養護学校高等部に行くというようなこともとられておるようでありますが、そうでない方は普通学級に進んでおられるというのが実態でございまして、この問題はいまの難聴者に限らず全障害者について言えることでございますので、今後高等学校教育のあり方とも関連してどういうふうに考えるかということはただいま私どもでも検討をいたしておる、こういうことでございます。
  9. 高橋繁

    高橋(繁)委員 すでにあるところもありますし、それは確かに全入制に近いがまだ選抜であるという理由もあるかもしれませんが、せっかく小中学校でやってきて、高校にそういう特殊学級があればぜひ進学させたいという子供がかなりおるわけです。もちろん一緒になって入学する子供もありますが、全然ないということはありませんので、これはいま局長が言ったように、あるところもありますので、検討をひとつしていただきたい。  次に進みますが、就学奨励費の問題、これは家庭収入所得に従って奨励費が違ってくる。この辺の段階といいますか、差別といいますか、町村の役場の所得証明をもらってきてやるということになっておりますが、この撤廃をしてほしいという父兄からの要望も強いし、また子供にとっても、ぼくと彼とはどうして違うのだというようなこともありますし、その問題。  それから、一緒質問してしまいますが、付添人の費用でありますが、これも、たとえば寮に子供を連れていくといった場合に、その場合は旅費が出る、半額ですか、付添人旅費ですね。それが帰りはもう出ないわけです。せっかく子供を連れて寮へ置いてくるわけですから、子供がいなくても帰りもそれは当然出すべきである。  それから、義務教育について寮に入っている場合、帰省は月に一回の旅費しか出ない。ところが義務教育の場合はせめて二回以上ぐらいは家庭に帰すことがかえって子供教育のためによろしいということで、それぞれの学校では週に一回は帰しておる。だけれども、かなり遠いところから来ておる子供がこの場合多いわけです。同じ県内でも、例をとりますれば、下田から沼津へ来るには、東京へ行くぐらい汽車賃がかかるわけです。そういうことで、そうしたものを含めて就学奨励費の改正を考えておるかどうか、それを一応聞きましょう。
  10. 諸沢正道

    諸沢政府委員 就学奨励費の交付の仕方は、ただいまお話がありましたように、教育を受ける者の家庭経済状況に応じて区分をいたしておるわけでございますが、これはまあ経済的に貧困家庭についても就学機会を確保したいという考え方から出たものでありますので、ある程度区分をつけることとしておるわけであります。しかし、実際現在では全就学児童の七〇%が対象になっておるわけでございます。  そこで、個々のケースにつきましてただいま幾つかの御指摘があったわけでございますが、たとえば帰省費につきましても、現在は年五回ということで予算の積算をいたしておりますけれども、これをもう少しふやしたいということで、来年は要求としては年八回というふうな要求をいたしておるわけでございます。そういたしまして、この就学奨励費支給費目というのは、御承知と思いますけれども教科書、給食、通学帰省職場実習寝具購入日用品等購入、寄宿舎における食費、それから修学旅行費学用品新入児童生徒用学用品通学用品というふうに、年々文部省としては一つか二つの費目をふやす、あるいは対象高等部幼稚部に及ぼすというような個別の努力を積み重ねて今日に来ておるわけでございまして、なお、現段階において御指摘のような点でまだ不十分の点もあることは認めるわけでございますけれども、一挙に全部整備するということも予算との関連におきましてむずかしい課題でありますので、今後も引き続き毎年その内容充実を図ってまいりたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  11. 高橋繁

    高橋(繁)委員 そこで、その特殊学校に対する予算配分ですけれども、こういう就学奨励費も含めて、運営費ですか、一括して幾らとこう配分するわけですね。それを、この就学奨励費は社会福祉的な分でありますから、全部子供に還元されていく。私は分けて予算的な配分をすべきであると思うが、そういうことになっているのか、どうですか。
  12. 諸沢正道

    諸沢政府委員 おっしゃるように、学校運営経費それ自体と最終的に父兄にいきますところの就学奨励費とは予算の性質も違うものでありますから、その実行上は当然学校へいく経費とそれから父兄にいく経費は分けて支出をあらかじめしておるわけでございます。ただ、経由として学校を経由することはございますけれども、その使途は初めからはっきり分かれておるわけでございます。
  13. 高橋繁

    高橋(繁)委員 これははっきりしないと、特殊教育に関する予算はこれだけふえましたよといっても、就学奨励費の方がふえてこちらはほとんど同じだというように理解をされる場合が多いんですよ。だから初めから、就学奨励費はことしはこれだけこの項目について増額したのですよ、運営費もこれだけになったのですよというようにならないと、末端では大変に困るという声がありますので、これはひとつ今後の問題として理解してください。  それから、養護学校は五十四年からになりますが、盲聾学校が開設されてもう歴史が古いのですけれども施設の問題です。特に体育施設をとってみてもきわめて貧困であります。小中学校は、戦後PTAが一生懸命にやりまして、あるいは後援会がやって体育館なりプールをどんどん設置をしておった。ところがこの盲聾学校については、生徒数が少ないし経済的にも大変弱いということで、現在、プールを例にとりましても三七%、ところが公立の小学校はすでにもう五二%、中学校は四七%、こういうふうに差があるわけです。特に聾学校については、私は医者でないからわかりませんが、子供プールで泳がせるということについて、呼吸の関係で発声に非常に相関関係があるのではないかという医者もいるわけです。ひどいところになりますと鉄棒一つすら学校にない。こういう施設について文部省は何も把握してないわけだ。調査を出せといってもわからない。それではほかのところから調査をとったのですけれども、そういったことで、盲聾学校についての施設というものはきわめて不完全だ、こういうものについて調査もし、実態も把握して、少ない盲聾学校であります、数えてみても全国にわずかしかないのですから、こういう体育施設について、今後英断を持って完備しなければならない。全部小学校プールを借りたり隣の中学校プールを借りたりして泳がしているわけです。そういう実情を把握して早急に手を打ってもらいたいと思うのですが、その辺についてどうなのですか。
  14. 諸沢正道

    諸沢政府委員 ただいま御指摘のように、私どもでも現在盲聾学校体育施設がどの程度整備されているかということにつきましては的確につかんでおらないわけでございます。プール等整備につきましては国が直接補助金を出している面もございますが、一般の校庭における体育設備等設置者負担において設けられるところでございます。いずれにいたしましても、御指摘のように、そういう障害のある子供さんこそ一層体育充実を図って身体面でのハンディキャップを克服させることは非常に大切なことと考えますので、われわれにおきましても今後できるだけ実態の把握に努めまして、御指摘の点について整備が図れますように努力をしてまいりたい、かように思うわけでございます。
  15. 高橋繁

    高橋(繁)委員 五十四年から養護学校義務化になるということでありますが、現在すでにある特殊学校ですらそういう実態なのです。  それから、就学指導委員会というのを五十四年の義務教育設置に伴って各市町村につくるようになっておりますが、これはちょっと統計が古いので、その後の状況を私つかんでおりませんが、都道府県が八一%、市が八七%、町が五〇%、村が三一%設置をされてない状況である。これを早くつくって義務化体制をつくりたいというのが文部省考えだろうと思うのですが、現状このような状況で果たして五十四年の養護学校義務制に間に合いますか。
  16. 諸沢正道

    諸沢政府委員 就学指導委員会設置状況はただいま御指摘のあったとおりでございます。  そこで、私どもはこの設置につきましては年次計画を立てて、五十四年度の義務制実施までには全都道府県市町村就学指導委員会が設けられるようにしてまいりたい、こういうことで進んできておるわけでございます。ただ、市町村、特に町村段階になりますと、この指導委員会構成員であるところの専門的な医者であるとか心理学者であるとかその他の方々を単独で確保することが事実上非常にむずかしいであろうということも考えておりますので、今後の指導としては、町村段階では二ないし三、四くらいの町村で共同して一つ委員会を設けるという方向でやっていただくように指導をしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、数としては全市町村の数と一致しなくとも、とにかく全部の市町村でそういう就学指導体制が整えられるように指導してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  17. 高橋繁

    高橋(繁)委員 現在、一部事務組合を置いて設置をする、あるいは何カ町村が共同して設置をするということは進められておるのですか。
  18. 諸沢正道

    諸沢政府委員 現在どのくらいそういうものがあるかということはまだつかんでおりませんけれども、先般の特殊教育関係課長会議等で各県においてそういう方向で現実的な処理をしてほしいということを要望し、また指導しておるという現状でございます。
  19. 高橋繁

    高橋(繁)委員 指導委員会はそういう状況ですね。  それから、身体障害者判別基準ですね。これは昭和三十八年の初中局長通達で出ておりますが、五十四年の養護学校義務教育に伴ってこの三十八年の通達のままでいくのか、この判別基準をさらに考慮するか、その辺はどうお考えですか。
  20. 諸沢正道

    諸沢政府委員 現在の判別基準は、大きくは学校教育法施行令の二十二条の二にあり、それを受けて三十八年の局長通達があるわけでございますが、一般的に申しまして、特殊教育、特に養護学校教育対象となる子供さんの障害程度というのは個人によっていろいろな態様があるわけでございます。したがいまして、この判別基準にしましても、いま通達にありますものはかなり抽象的にならざるを得ない。そこで私は、できるならもう少し具体的なものにしたいと考えておりますので、この点につきましては引き続き検討いたしまして、さらによい案が考えられましたならばこれを改善方向に持っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  21. 高橋繁

    高橋(繁)委員 その改善方向について、五十四年から義務教育になりますね。養護学校設置することについて反対の意見も中にはあるようですが、この判別基準が大変重要視されると思うのです。それまでに間に合わせるために新しいものを考えるのか、その辺どうですか。
  22. 諸沢正道

    諸沢政府委員 五十四年度養護学校義務制に間に合うように検討の結論を出したいというふうに考えておるわけでございます。
  23. 高橋繁

    高橋(繁)委員 養護学校義務化について、指導委員会設置状況についても、幾つかの町村事務組合なり共同でやるといっても、まだそれは把握しておらない。すでにある盲聾学校施設の状態についてはかくのごとしであるし、また判別基準も、ことしは五十一年、来年は五十二年ですから、早急に立てなければならない。こういう状況から見て五十四年度養護学校義務制というものはスムーズに出発できるのか、その辺について大臣の見解をお聞きいたしたいと思います。
  24. 永井道雄

    永井国務大臣 五十四年度義務化、これは目標でございますから、われわれはあくまでこれを達成したい考えでございます。これが第一目標であります。しかし何事も、一つ制度を完成した場合に、その内容がすべて満点であるというふうにはいきかねるのが実情でありますから、それに伴う問題というものが本日も御指摘がございましたようにいろいろあるわけです。体育施設もそうでございますし、あるいは判別基準、この問題は心理学者社会学者などがいままでずっと議論をしてきているところでございます。こうした事柄につきまして私たちは満点に近いように努力をいたしていく、そして第一目標というものの中身充実したものになっていかなければいかぬと考えておりますが、大事なことは真中の柱を立てることでありますから、とにかく義務制を実現する、そしてそれに伴う問題の方は一つ一つこれを取り上げて充実していきたい、こういう考えで臨んでいるわけでございます。
  25. 高橋繁

    高橋(繁)委員 まだ議論をしたいのですけれども、次の機会に譲ります。  きょうは学校安全会理事長さんに参考人でおいでいただきまして、ありがとうございます。  若干質問をいたしたいと思いますが、学校事故につきまして、日本学校安全会で見る限り年々その件数がふえてきておる。昭和四十五年には給付件数でいきますと七十万件、五十年には九十万件、死者が二百四十七名となっております。なぜこの学校事故が多くなってきているのか。いろいろな理由がございましょうが、安全会で掌握をしておる事故の原因について、どうしてこんなに多くなってきているのか。これは児童数の増あるいは多角化ということもあるかもしれません。その辺について簡単にお答え願いたいと思います。
  26. 澁谷敬三

    澁谷参考人 年々安全会給付件数がふえてまいりましたが、ただ、最近に至りましてほぼ横ばいのような状況になってきております。特に小学校高等学校比較事故が少なく、ほとんど横ばいになっておりますが、中学校高等専門学校比較的災害が多くて、ややふえる傾向にございます。これは中学校の場合はちょうど生徒が心身の発育の曲がり角の年齢段階にございます等のことが関係があるかと思います。高等専門学校の場合はほとんどが男子生徒でございまして、また体育施設等もかなり整備されておりまして、体育活動が相当活発に行われておる。  この負傷中身をいろいろ調べてみますと、教科あるいは特別活動におきます体育活動事故が一番圧倒的に多くなっております。  ごく簡単でございますが、大体の傾向でございます。
  27. 高橋繁

    高橋(繁)委員 いずれにしても多くなってきております。  これは比較にならないかもしれませんが、交通事故昭和四十五年をピークにして一万六千七百六十五名の死亡者がある。九十八万人の負傷者がある。五十年に至っては死亡者は六千名減って一万人、負傷者は六十二万人、減っているわけですね。  これは比較にならないかもしれないが、学校安全会目的は、私が申すまでもなく、学校安全の普及充実である。あとは見舞い金給付ですね。そういうことから考えると、学校事故を少なくするために、学校保健法では児童保健管理学校安全会では学校安全の普及充実。これができた当時の清水体育局長は、学校安全の中には安全教育安全管理を含めていると衆議院文教委員会でおっしゃっている。これはいまも変わりありませんか、体育局長
  28. 安養寺重夫

    安養寺政府委員 学校教育の重要な一つ役割りに、健康で明るい子供をつくるということがあると存じます。そういうことから、教科では保健体育あるいは体育という教科がございますし、教科外特別教育活動と申しましていろいろな学校行事学級指導等々がございまして、そういう中で保健、安全、こういう全般的な指導をそれぞれの観点から取り上げてまいっておりまして、いま御指摘のような趣旨においては鋭意努力を引き続いてやっておるというように御理解をいただきたいと思います。
  29. 高橋繁

    高橋(繁)委員 いや、そうではなくて、この日本学校安全会ができた当時に、この第一の目的である安全教育普及充実ということは安全教育安全管理を含めているというふうに局長は答えている。学校保健法では児童生徒保健管理学校の安全については日本学校安全会安全管理を含めているというふうにおっしゃったが、それに変わりはないかと聞いているのです。変わりありませんか、違いますかということです。
  30. 諸沢正道

    諸沢政府委員 変わりはございません。
  31. 高橋繁

    高橋(繁)委員 そうしますと、学校保健法には、第二条、第三条に、保健管理、健康の保持、増進に関し学校の責務を明確にしておりますね。ところが、学校安全会については、児童生徒についての法的ないわゆる安全管理というものは、安全会にもないし、どこにもないわけです。しかも、現状では日本学校安全会の仕事はほとんど養護教諭に一任されている。ほかの現場の先生は余りタッチしていない。あるいは学校安全会が特殊法人であるという問題もあるかもしれませんが、それなら学校安全に関する普及啓発費というものは業務費の何%ぐらいになっておりますか、理事長さん。     〔森(喜)委員長代理退席、藤波委員長代理着席
  32. 澁谷敬三

    澁谷参考人 安全会予算は、大きく分けまして業務経理の予算給付経理の予算に分かれております。ただいまのお尋ねは業務経理のことだと思いますが、昭和五十一年度の業務経理の予算は十一億二千六百万円になっておりますが、そのうち安全会は、本部と各都道府県に支部を置いておりますが、その人件費が八億七千万円でございます。それから一般的な管理運営諸費が一億三千五百万円でございます。学校安全の普及充実に関します事業費が七千三百九十一万円ということになっておりまして、この普及事業費はいわゆる普及事業費と出版事業費に分かれておりまして、いわゆる普及事業費は七千万円でございます。昨年はこの部分が六千三百万円でございましたので、七百万円の増額になっております。  以上でございます。
  33. 高橋繁

    高橋(繁)委員 普及啓発費が業務費のうちの約七千万円、パーセントで示せばわずかなものであろうと思います。  そういうふうに、当初出発した際に先ほど申し上げた特殊法人であるということからも問題があるかもしれませんが、いわゆる学校安全管理という面からいって、普及充実ということが学校安全管理に含まれているという局長の答弁からいくと、事故を少なくするための普及啓発費は安全管理を含めてきわめて少ない。これは事業が給付が主でありますから、そちらのほうに金がとられてないと言えばそれまででありますが、何か学校事故を少なくするための学校安全管理という法的なものがないと、私は事故が少なくならぬと思う。ますますふえていく。  これはここで結論は出ないと思うのですが、私意見だけ申し上げて、体育局としても日本学校安全会としても、この学校安全管理という面で今後どうしていくか、そして事故を少なくしていくということに努力しないと——交通事故は車の数が多くなっても、いわゆる交通安全教育ということがある程度徹底している。だから、少なくなってきておる。  次にちょっと具体的な問題で見舞い金、補償金などが、死亡者の場合、廃疾者の場合、これはもう私が申すまでもなく、全国で大変な訴訟ざたになっている問題があります。そこで、ある生徒が一人亡くなった。それで、地方自治体から一千万円の見舞金といいますか、補償金といいますか、出た。そうすると、学校安全会の死亡見舞金ですか、これは二百万円出ることになっておりますが、それは削られてしまうわけですね。これは第三十七条によってそうなっていると思うが、これは大変不合理であるという意見が各所から出されておる。結局、安全会の方は支給されない。それは地方自治体が半額持っていることにも理由があると思いますが、そこら辺を改正する意図はありませんか。
  34. 安養寺重夫

    安養寺政府委員 日本学校安全会法第三十七条の規定による給付の問題でございますが、民法なり国家賠償法等の規定によりまして、損害賠償制度により救済される事項以外につきまして、安全会は共済によってその損失をカバーするという制度でございます。したがいまして、損害賠償の関連の給付金と併給することは適当でないと思いますけれども、その余の意図、目的で出される何らかの支給とは、これは併給しても差し支えないのではないか、かように考えております。  具体的にいろいろ問題があるやに聞いておりますけれども、この点につきましては、現在町村会、市会、都道府県レベルでそれぞれの損害賠償の制度に関連する給付金の制度が始まったばかりでございまして、その関連をどうするかということの御指摘かとも思いますけれども、これは原則は原則でございますので、私どもとしましては、制度の趣旨、たてまえが違うということで考えておるわけでございます。
  35. 高橋繁

    高橋(繁)委員 中には市町村、自治体と父兄との示談で解決する場合がありますね。そういう場合に問題になってくる事柄であると思うのですね。この辺は今後ひとつ検討してください。  それから、先ほど言った安全教育普及充実ということで、災害調査の分析、あるいは児童生徒の重災害防止必携の作成、学校防災の必携等について学校安全会考えているようでありますが、その進捗状況を簡単に御説明を願いたい。     〔藤波委員長代理退席、委員長着席〕
  36. 澁谷敬三

    澁谷参考人 この安全会は、災害共済給付事業に関連いたしまして、全国の学校で発生いたしますあらゆる災害、事故実態を把握できる立場にございますので、学校から出されました災害報告書をいろいろ調査、分析いたしまして、学校安全の普及、充実に役立つような資料をつくる責任があるわけでございます。  一つには、毎月毎年度、その災害の発生件数を集計いたしております。その次には、どういう場合に、どんな場所で、どのような災害が起きているかを幼稚園、保育所、小学校中学校高等学校高等専門学校の各学校種別ごとに調査、分析をいたしまして、基本的な調査統計報告といたしまして隔年発行いたしております。  それから、昭和四十七年度から重災害、廃疾、死亡の具体的な事例、過去五年間あるいは十年間にわたります個々の具体的な事例を分析いたしました事例集をつくりまして、学校の現場で現実に起きた事故を踏まえて二度と同じような事故が起きないように先生方が学んでいただきたいということで、すでに小学校中学校高等学校それから幼稚園、保育所の災害事例集を作成発行いたしまして、関係学校に無償でお配りしたわけであります。本年度は特殊教育学校及び特殊学級関係の事例集をいま鋭意編集いたしております。  それから、それらの事例集は、具体的な事例から災害防止の教訓を学び取っていただきたいということでかなり専門的なものになりましたので、それらの経験則に照らしまして、来年度からはぜひずばりそのものの災害防止必携というものを、毎年度小学校から始めまして学校種別につくりたいと思っております。  それから、風水害、震災あるいは火災等の場合の防止問題につきまして、昭和四十六年に映画、スライドをつくったのでございますが、かねがねいろいろ資料を集めておりましたので、文部省関係各省、専門家の御協力を得まして、現在その防災必携の編集委員会をつくりまして進めておるところでございます。  その他、まだいろいろございますが、主なる点はそのような状況になっております。
  37. 高橋繁

    高橋(繁)委員 学校安全会の経理について五十年度のパンフレットから見ると、共済会の掛金収入が四十一億円、給付金は四十六億円になっており、五億円の赤字。ところが繰越金が十四億円ありましたので助かったわけですね。来年度はこれだけの繰越金は恐らくないであろうと思う。そうなってくると、いままで黒字で続いてきましたのが赤字に転落をする。当然値上げをしなければならないと思うのですが、値上げをどういう幅で、どれくらい考えておりますか、おわかりになればお答えを願いたい。
  38. 澁谷敬三

    澁谷参考人 年々医療費が上がりますので、また発足当初から十年ぐらいは件数も非常にふえておりましたので、安全会発足以来、三年目ごとに共済掛金を上げていただいておったわけでございます。今回は、昭和四十八年度に至りまして初めて事故が少し減る、あるいは横ばいになる傾向が出てまいりましたことと、社会保険との関連で給付率を変えたこともございまして、かなり余裕があったわけでございます。しかし医療費も年々かなり上がっておりますので、本年度末までは何とか繰越金で持ちこたえられるのでございますが、このままの掛金でまいりますと、過去のいろいろな経験その他から推定いたしまして、来年度以降年々赤字がふえまして、昭和五十四年度には約六十八億円ぐらいの赤字になる見込みでございますので、ぜひ来年から掛金を上げざるを得ないということで、運営審議会に諮りまして現在文部省にお願いをいたしておるところでございます。五割ないし六割程度、現在義務教育学校のかけ金は年間一人当たり百八十円でございますが、おおむね三百円前後程度くらいには上げざるを得ない。その他高等学校も五、六割といったような引き上げをお願いいたしておるところでございますが、なおその機会に死亡見舞い金、廃疾見舞い金の額につきましても、できましたらぜひ五割程度は上げたい、そういうようなことで文部省にお願いいたしまして、文部省におかれましては、大蔵省、自治省と現在折衝をしていただいております。
  39. 高橋繁

    高橋(繁)委員 五割方値上げをしたいということ、あるいは見舞い金制度も改正したい。そこで、半額は地方自治体の負担になっておりますので、現在人件費については国庫負担のようであります。だからこの際改正に伴っていろいろと学校事故の補償の問題、学災法を制定しましょうという、大宮市議会が音頭を取りまして、全国二百二十六自治体がこの学災法を制定することを決議しておる、そういう動きが片方にあります。内容についてはいろいろな検討がありますが、きょうはこれは抜きにしまして、現行の日本学校安全会法の改正をしたらどうかという動きもあります。あるいは諸外国の、アメリカあるいはフランス、西ドイツあたりにありますように、学校災害損害補償保険制度の新設をしたらどうかという動きもあります。そこで、大臣もこのことについては陳情を受けておりますので、文部省は将来にわたってこれをいつまでもこのまま放置しているわけにはいかないと思うのです。何らかの形で廃疾、死亡者に対する補償的な意味を含めたものをやらなければならないと思いますが、一体どういう方向に進むのか、種々検討はされている、あるいは大臣のお考えもあると思いますが、最後にこの問題についてのお考え大臣からお聞きいたしたいと思います。
  40. 永井道雄

    永井国務大臣 学校の災害あるいは死傷、これは統計を見ますと、なかなか憂慮すべき問題もあり、最近の統計などを見ますと、心臓関係の病気による死亡が多いのです。そこで、先ほど体育局長から申し上げましたように、何といっても大事なことは安全教育、それから安全管理、いわゆる予防的といいましょうか、そうした点について一層の配慮をいたしていくことだと思います。  さてその後に、そういうことをいたしましてもなお災害を生じた場合にどうするかということでございますが、これはその場合の法律上の責任の問題があり、いままでもいろいろその点配慮されてまいったことは御承知のとおりでございます。設置者に責任がございます場合には、国家賠償法等で損害賠償の制度を設けておりますが、昨年からは学校管理者賠償責任保険制度というものが設けられたこともこれは御案内のとおりでございます。それ以外の事故の場合、学校安全会が被災者の救済を行うための災害共済給付を行っておりまして、そういう形で給付内容改善を図ってまいりました。そこで、いま問題でございますのは、学校設置者が法律上の責任を負わない事故を含めて、学校管理下におけるすべての事故というものを無過失賠償責任の考え方に基づく補償をどうするかということだと思いますが、この補償の制度化という問題は、いままで申し上げましたような積み重ねの最後に残っている問題と考えられますので、これは慎重に検討いたしてまいりたい。いままでの積み上げというものをやはり重んじて、そして最終的には考えていかなければいけないことでございましょうが、現段階においては慎重に臨んでいく。それと同時に、初めに申し上げましたように、安全管理安全教育、この方向というものを強化いたすことが大変大事であると考えております。
  41. 高橋繁

    高橋(繁)委員 この問題はまた後に譲ります。参考人理事長さん、大変ありがとうございました。  次に、最近性行動、性に関する事故事故といっていいのかどうか、いわゆる売春、新聞記事に出ただけでも大変な数であります。同級生に売春を世話したとか、男を紹介してとか、女子高校生四人補導とか、月に新聞記事が二回や三回出ないことはない。あるいは御承知かと思いますが、山梨では女子高校生を中心とする百十名の不純異性交遊事案の補導、女子高校生等三十一名によるアパートにおける不純異性交遊事案、これは栃木、あるいは怠学して不純異性交遊などしていた女高生ら四グループ七十七名補導とか、広島であるとか、岩手、福島、島根、宮城、これは一応報道に出て、あるいは警察官が補導しただけでもたくさんのものがある。わかっていないものはまだ無数にあると私は思う。こうしたことが高校あるいは中学まで行われておる現状である。しかもその中で、特に女子高校生については退学という形でこれが片づけられておる。男子高校生はほとんど問題になっていない。女子高校生だけが取り上げられて退学という形でレッテルを張られている。なぜ私がこの問題を取り上げるかといいますと、実は私のところへ親が伴って相談に来た一件があります。この子供を見れば大変まじめなお嬢さんであります。ところが退学というレッテルを張られて、学校も転校したいと言ったけれども、これもできない。それでやむなく学校をやめてどこかの会社に勤めた。一生この子はこれで片づけられてしまう。しかも男女同権とはいうものの、女性だけが取り上げられて男子の高校生はほとんど助けられている、これが現状です。こうした日本における事件について、キンゼイ研究所のゲブハードという人がおととい日本に来て講演しています。きのうの朝日新聞に載っていました。日本の文化は非常に男性中心的だということが載っておりました。このような、申し上げれば数限りないことが行われていると新聞報道にありますが、このような現状について大臣はどうお考えでございますか、まず最初にお聞きをいたします。
  42. 永井道雄

    永井国務大臣 いま性をめぐるいろいろな問題がありまして、特に高校生のお話が多かったのですが、中学、高校という段階で、そのことから非常に苦い経験をせざるを得ない。そういう人が出てくることはきわめて憂慮すべきことであると思っております。これはやはりどう教育していくかという問題で、家庭との協力ということも必要でありますが、文部省の姿勢としましては、私が文部大臣になります以前、かなり前でありますが、大体純潔教育というような角度から比較的道徳の側面を取り上げていたわけです。しかし私が文部大臣になります前の年ですから昭和四十九年であったと記憶いたしますが、いわゆる純潔という道徳教育の角度だけでなくて、これも大事でありますけれども、もう少し科学的な教育というものを行っていかなければならないという線が非常に強く打ち出された資料が出ております。指導要領の方でもこれは中高で初めて始めるのではなくて、小学校段階などの理科でも性の関係というものをよく教えていく。詳細はいま申し上げませんが、それが中高の段階になったときに、いわゆる新規のむずかしさの中で性の問題とどういうふうに対処して考えていくべきものであるか。道徳も大事でありますけれども、そういう科学的な考え方、またある種のことが起こるとどのような結果を生ずるかということについての見通しであるとか、そういうことをなるべく教えるような方向に進んできているわけであります。  ただいま御指摘の男女に別がありまして、女性の方が、いわゆる女の子の方が後に尾を引くような被害を受けるということは全く不適当なことでありまして、当然男の子も女の子も全く平等な立場で教育し、仮に間違いがありました場合には、いわば平等な立場で指導いたし、間違いがあってまだ年若いわけでありますから、その後それぞれが再生、再起をしていくというふうにしなければならないと考えているわけでございます。そういう考え方で指導要領、教科書あるいは授業のやり方等の研修も行っておりますけれども、それがそれぞれの学校の教室で十分徹底しているかどうかということになるといろいろな問題がある。そこで先生の御指摘もあるわけです。  さらにこの問題は、いまでは学校だけで解決ができませんから、私は先ほど家庭と申しましたが、家庭のほかに社会全体との協力関係というものも考えていかなければいけないのではないか。そうしたことは社会教育局においてもいろいろといまその問題を検討いたしている段階でございます。
  43. 高橋繁

    高橋(繁)委員 性、性教育ということが日本人にそぐわないということもあってなかなか取り上げられない。私はよく英語はわかりませんが、アメリカではセクシュアリティというような意味で言われているようであります。対症療法的な補導と生活指導の強化ということでこの問題が処理をされておる。私はこれは考え直さなければいけないと思うのですね。教育の本質は人間を育てることでありますから、性教育も人間教育を基本にして出発しなければならないということはだれしもが当然言うことであると思うのです。いまも大臣がおっしゃっておりましたが、従来の純潔教育という用語にかわって性教育という用語が定着し始めている感が私はいたします。しかも全国各地であるいは地教委での各種の意識調査では、学校の教師、家庭の父母、特に母親の約八〇%以上が家庭学校それぞれ協力し合って性教育を行うことが望ましいと答えているわけですね。私も出たある母親の会合で、ある講師がこの性教育について話をされた。終わってからお母さん方に感想を聞きましたら、大変に参考になった、こんな話はいままでに聞いたことがない、わが子を小中学生に持つ母親としてきわめて貴重な講演をきょうは聞きましたと言って感激して帰っていきましたが、それほど家庭でも悩んでいるのですね。戸惑いを感じておる。地教委では性教育指導の手引き等を発行して、研究指定校まで設けて実践の手がかりを求めておる。父兄は、この問題についてはわからないから教師に依存をしておる。ところが学校でもほとんど系統的、組織的な指導というものは有名無実の状況になっておる。一部の熱心な個人的努力に依存されているのが現状であります。  そこで文部省は、以前に「思春期における生徒指導上の諸問題」というのを一九七四年に中学校編として出しておりますが、いわゆる生徒指導資料で現状における性教育が十分なのかどうか。先ほど文部大臣も言ったように、学校家庭、社会が一丸となってこの教育もしなければならない。現場教師は戸惑いを感じておる。適切な性教育を探ろうとして努力しておる。片方ではどんどんそういう被害者が出てくる。もうとまるところを知らない状況であります。  総理府で性教育協会に依頼して調査した「青少年の性行動」という本がありますね。これを見ますと、わが国の児童生徒の生理的、心理的な性の発達と成熟はますます低年化している、年齢が低下している、性行動は活発化している、解放化していると言えることがわかります。そういうことについて先ほど文部大臣指導要領云々というお話がありましたが、今後文部省として、こうした性教育について学習指導要領に実態に即応した内容を持ち込んでやっていこうという用意があるか。大臣も、若干申し上げましたが、そういう具体的な指導というものについて将来にわたってどうお考えか、お答えを願いたいと思います。
  44. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま御指摘になりましたのは、例の昭和四十九年三月の「思春期における生徒指導上の諸問題」というものでございます。これは私就任前なんですけれども文部省がつくった文書の中で一番よく売れたのです。十万部ぐらいだったと思います。わりに広く活用されていて、この資料の特色は、性の問題だけを取り上げないで、思春期には性以外のいろいろな悩みがあり、それと性の問題が絡んでくる。それをいわゆる純潔教育風のやり方でなくてケースに即して、そうしてそのケースを挙げましてどういうふうに考えていくかという式の資料として出しまして、実は週刊誌等にも取り上げられまして、週刊誌などでもこれをめぐって討論がございました。これは大変文部省として結構なことではないかと、実は私は文部省以外の立場からそれを書いた覚えがあるのです。  指導要領にこういうものを盛り込んでいくかどうかという御指摘でございますが、実は指導要領の中にも入っているわけです。入り方は性という形で取り出して、ただ性のことだけを扱うという考え方ではない。先ほどちょっと申し上げましたように、たとえば小学校の低学年の段階で動物の雄雌ですね、そういうふうなことを教えていく。そして生殖ということもある。実はそういうふうな段階も性教育というふうにとらえるべきであるという考え方でございます。これがさらに中高段階にまいりますと、保健体育はもちろんでありますが、理科の生物分野で繁殖とか遺伝の指導をやりますし、それから道徳では男女の関係、異性との関係、生命の尊重というようなことで、かなり広範になっているわけであります。  問題は、こういうふうに広範にちりばめてあることが一人の子供の頭の中で十分に消化されていくかどうかということに相なるわけでございますが、やはりそのためには私は、学校のそれぞれの先生も工夫しなければいけませんが、生徒指導主事の仕事というのはこの問題に関してかなり重要であろうかと考えているわけでございます。生徒指導主事のための講座をやっておりますが、そこで生徒指導主事がやはり学校の中で中心になって、いわゆる教育指導的な活動もしていただくという問題、これも非常に重要なのではないかと思います。  さらに、いわゆる民間の教育映画、教育テレビでございますが、こういうものも非常に最近はこうしたことに配慮をいたしてきておりまして、本年度は「生きものばんざい」という岩波映画社と毎日放送の共同制作のものが優勝いたしまして、それに総理大臣賞が出たわけでございますが、この「生きものばんざい」というようなことは主として人間以外の動物のことでありますけれども、非常に子供の視聴率も高い、日曜日であるというようなこともあるわけです。それで、こういうふうな理科的な考え方というものがやはりテレビなどにあるというものも学校でどう活用していくべきかというようなことも考えるべきであると思って、私は先般その会にもちょっと行ってみたりしたわけでありますが、にもかかわらず高橋議員の御指摘は正しいと思うのです。というのは、やはりこの性の問題が比較的年の若いところへおりてきて、これはいろいろな統計上明らかでありますし、さらにまた非常に開放的であるという以上に刺激的ないろいろメディアもありますから、そこで学校教育というものがともすればそれに、何といいますか追いつけない。また、そういうメディアの刺激を受けた青少年がおりますから、非常にむずかしい問題でございます。アメリカ合衆国等においては、私の認識いたします点ではわが国よりうまくいっていないと思います。非常に問題が多々あって処理ができないという状況であるようでありますが、それに比べますと、わが国は多少まだ問題がアメリカほど深刻ではないというところにあると思います。それであるだけに事前に大いに努力をしなければいけないわけですが、努力方向というのはいま申し上げたようなことでございまして、やはり指導要領にばらばらに入れているということは適当なことだと思うのですが、それをうまく先生が消化して、それぞれの子供に頭の中、体の中で性の問題への対処というふうになっていくように、まあ変な言葉ですが、相当武装をうまくやりませんと、むずかしい時代でありますから、そういう方向努力すべく、やはり先ほどからの政策というものを強化をいたしていかなければならないと考えております。
  45. 高橋繁

    高橋(繁)委員 この問題はやはり個人差のある問題でもあると思いますから、一応指導要領に基本的なものは載せても、後、個々の指導というのは大変な問題になってくると思う。  これで質問を終わりますが、いま大臣おっしゃったように、きわめて大事なことは現場の指導者ですね、これが最大に問題であると思うのです。先ほど申し上げたように対症療法的な指導あるいは生活指導の強化ということで片づけられて、退学でこれが決着をつけられる。そうじゃなくて、義務教育というものは人間性の、人間の教育である、だから科学的、客観的な研究なくして性教育を行えば、独断と偏見で全部べからず式でこれが処理をされてしまう、道徳の押しつけになるおそれがある。ある山梨の生徒も、本当に教えてくれれば私は助かったのにと、こう後で述懐をしておる。教えてくれなかった。やはり現場の教員の再教育を含めまして、医学の立場、先ほど大臣も若干お話をされましたが、生物学的な立場、人類学、社会学、心理学、教育学を初めとするそうしたあらゆる総合的な力を結集して、この教育に対して児童生徒を守るためにも、人間教育の一環としても、私はそれに対して文部省が、ある程度のそうした大臣の諮問なりあるいは何でも結構ですから、そういうものを検討する会をつくり、現場の教員の教育もあわせて、今後そういうことを考えるように提案をいたしたいのですが、大臣のお答えをお聞きいたしたいと思います。
  46. 永井道雄

    永井国務大臣 大分先ほど長くしゃべりましたので、もう繰り返しませんが、御提案の趣旨に沿って大いに努力をいたしたいと思います。
  47. 高橋繁

    高橋(繁)委員 あと有島委員安全会のことで関連で質問がありますので、お願いします。
  48. 登坂重次郎

    登坂委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。有島重武君。
  49. 有島重武

    ○有島委員 お許しをいただきまして、きょうはせっかく安全会理事長さんお見えになりましたので、また再度お呼び立てするのは恐縮だと思いまして、一つだけ伺っておきたいと思います。  最初に文部大臣に大体の方向を、どんなお考えであるか承っておきたいのですけれども、遊び場の少ない地域におきましては校庭開放ということが促進されておりますね。それからもう一つは、運動場の狭い学校というようなこともある。これはプールども含めまして、ほかの学校ないしは公園に行って運動をさせるというようなことがありますね。これは条件が悪いからこういうふうになっていくというようなこともありますけれども、図書館などの場合には、学校には確かに図書室をつくっていくということもある、支所を充実しろということもある、けれども公共図書館を共同利用していくという方向が大いに促進されてよろしいのではないかというふうに思われます。ヨーロッパなどでも、むしろいま公共的なそういう共同利用のものをつくって、学校がむしろその共同利用をやっていくことを文部省が奨励しておる、そういうようなところもあるのを私は見てまいりました。  それからもう一面、社会的要求というのは非常に多角的になってくる、学校教育そのものはその全部に応じることができない。むしろだんだん内容を刈り取ってといいますか、少なくして、より基礎的なものにしていかなければならない、そういった要求がございます。それからもう一面から見ると、生涯学習といいますか、生涯教育といいますか、そういった立場から言いますと、学校教育と社会教育と、その関連というものはますます緊密になっていくでしょうし、制度的にも相互乗り入れというようなことも望ましい方向ではないかというふうに私なども思うのですけれども、文部大臣はそういった大ざっぱな方向についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、それを承っておきたい。
  50. 永井道雄

    永井国務大臣 まず社会教育学校教育の相互乗り入れの問題でございますが、これは全く結構なことと思います。実は本年の初めからお願いしました視学委員の中に、体育関係の春日野親方とか川上哲治氏に入っていただいたのもそういう趣旨でありまして、地域社会と学校というものが、特別教育活動ということもありますが、それ以外の場面でももう少し接触をしていく、こういうスポーツ界の先輩に大分方々歩いていただきましたが、これまでのところやはり地域で非常な関心を示していただいているようであります。また学校の校庭開放につきまして通達を出しましたが、これもやはり社会教育という形で、朝起き野球会というようなものがずいぶん地域にできておりますから、そういう人たちが学校に来る、また学校に来て運動しているうちに非常に学校体育に関心を持つというような形で具体的に本年かなり進行してきたのではないかと思います。また子供たちが、自分たちの学校の校庭とかプールだけでなく、ほかのところも利用したらいいではないかというお説でございますが、これは毎日そういうことを行うというわけにはなかなかいかない、やはり学校のカリキュラムがございますから、当然どうしても自分の学校のものを利用するということでございましょうけれども、大都市などでは、たとえば区の運動会というような形で相互に利用している例もあるようでございますし、私はやはり、地域にもよりましょうけれども、いま先生の御指摘のような方向でそういう積極的な政策を進めていきます場合に、常に問題になりますのは責任者の問題。それで先ほど高橋議員がお聞きになりましたようにいろんなことをやりますが、さてそれでは安全は大丈夫ですかとかあるいは本当にスポーツの指導ができますかという裏打ちがありませんと、さあどうぞあっちへ行ってください、こっちへ行ってくださいということばかりでは無責任になりますので、その辺を配慮いたしながら大体御指摘方向に歩を進めていくということが妥当ではなかろうか、かように考えております。
  51. 登坂重次郎

    登坂委員長 有島君、結論を願います。
  52. 有島重武

    ○有島委員 それで、日本学校安全会目的というのは、突き詰めていきますと学校教育の円滑な実施に資するということが目的なわけで、ただそれが、大臣がおっしゃった学校等の管理下における児童生徒等の負傷、疾病、廃疾または死亡に関して、こういうことになっております。これがその望ましい方向の足を引っ張らぬように、将来これはもう少しいろいろな幅を広げて考え直す余地があるのではなかろうかというように私は思うわけです。いまここでもう議論はしませんけれども。それで大きな方向としては社会教育学校教育、また家庭教育、そういったものが渾然一体になっていかなければならない。その中にどこの管理下において行われたことであるかというようなことが非常に出てくると、その望ましい方向の足を引っ張るようなことになっては困るということです。これはそろそろ一度そういったことで検討し直さなければならない時期に来ているのではないかと私は思うわけです。そのことを一言だけ申し上げておきたかったわけであります。  では理事長さんからお答えを一言だけいただいて、それで終わりましょう。
  53. 澁谷敬三

    澁谷参考人 ただいま御指摘の場所が、たとえばプールあるいは市民図書館等、学校外の施設が利用された場合でございましても、学校の授業としてあるいは学校教育計画に基づく課外指導として行われます場合は学校管理下の範囲に入ることになっております。それから広く社会教育の活動の問題でございますが、実は数年前に文部省の監督のもとに財団法人スポーツ安全協会というのができまして、これはスポーツ活動におきます事故が多いものですからスポーツ安全協会ということになっておりますが、かなりその範囲を広く社会教育活動もほとんど取り入れておりまして、そこで保険会社とタイアップいたしまして、そういう社会教育活動、特にスポーツ活動中の災害、事故につきましての補償制度を始めております。それもこの日本学校安全会が扱ったらどうかという意見も当時あったのでございますが、安全会義務教育学校を中心といたしまして、高等学校、幼稚園、保育所、それを、とにかくまず給付事業はもちろんでございますが、学校安全の普及充実、こういう事業をとにかくもっと充実する責任がございますので、いま余り広くそこまで広げるのはかえって安全会の本来の目的に支障を来すおそれもあるというようなことで、安全会はこの学校の管理下の問題それから学校における安全教育なり安全管理に役立つ資料づくりということを中心としてやってまいりまして、純然たる社会教育活動の場合は財団法人スポーツ安全協会が、都道府県教育委員会の協力を相当得ております。もちろん文部省指導監督のもとでございますが、それが扱うというようなことになっております。安全会の事業もかなり軌道に乗りつつございますが、将来の検討課題には十分なり得る問題ではないか、そう思っております。
  54. 有島重武

    ○有島委員 御配慮まことにありがとうございました。終わります。
  55. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、受田新吉君。
  56. 受田新吉

    受田委員 私、文部大臣に国家百年の教育大計の基本問題に触れた質問をいたします。  私たちの党ですでに天下に公表しております教育国家建設という大目標、これはすでに七年前に文部省へもお届けしてあるわけです。その目標を裏づけるために、さらに二年前に、混乱の世相の中から本当に国民的自覚に基づくすばらしい国づくりをする教育体制をどうすべきかを重ねて宣言しました。そして、今回また、高度の倫理観に基づく教育国家建設を提唱しておるわけでございますが、大臣、あなたが幸い民間人として自由民主党政府の唯一の中立的性格を有する閣僚として御在任まさに二年になんなんとしていること、これはスタート以来、国民が大変期待をかけてきたことだし、また、大臣御自身も御努力をされてきておることを私認めます。  そこで、私が非常に懸念をしておることは、たとえばいま日本の国の現状に対して、教育勅語を復活して、そして、あのよい徳目を実践すべきであるというような声が出ておる。それを叫ばれる方々はいま現に社会的に大活躍をし、かつて教育勅語によって教育を受けた人々である。その教育勅語によって教育を受けた人々が現に腐敗、堕落の根源を築いておられる。教育勅語の教育効果のない実践をやっておるわけですね。だから、教育勅語を復活して本当にまたすばらしい国になるという理想とは逆に、教育勅語を提唱する人が、かつて教育勅語の教育を受けながら、教育勅語の徳目に違反するおかしなことをやっているというこの現実をどうごらんになりますか。
  57. 永井道雄

    永井国務大臣 私が文部大臣に就任いたします前から、教師は聖職者か労働者かという議論がありました。これに対する見解は、私は文部大臣になります前もいまも、教師は聖職者といいますか、一種の奉仕的な仕事をするものであり、また同時に労働者的なものである、両面を持っているという考えでございます。私は、今日問われておりますことは、政治家というのは公共的な厳粛な奉仕をする職業の人たちであるかという問題が問われているわけでありますから、国会においてそういう御議論が起こることは当然であり、また、国民の間にもそういう議論が起こらなければならない。これが教育勅語とどのように関連いたしているか、それについては、ちょっとその関連のところはもう一つ頭を整理してみないといけませんが、ともかく今日の事態の中で重要なことは、教師について求められていること以上のことが政治家に対して求められているという厳粛なる事実を、私は文部大臣として申し上げたいというふうに思っております。
  58. 受田新吉

    受田委員 私は永井先生にそこを期待してきたし、今後も期待したいのでございますが、現にそうした教育勅語を復活しよう、あの精神は非常にいいと、いま教育勅語を掲げて家庭に配っていく立場の方々がある。その方々の中に、教育勅語に違反した、政治を腐敗、堕落せしめ、不正を行い、そして国民のひんしゅくを買って政治不信を招いておるという政治家もある。そしてまた、教師としても、道義実践の範とするに不適当な人も出てきておる。これは私、非常に悲しく思うのです。  そこで、まず第一に、こうした新しい国づくりで道義心を高めて、国民的信頼の基礎に立つ政治、経済、文化、産業のあらゆる社会を築くために一番大切なものは、よき教師を選ぶことである。よき教師によって教育の荒廃が救われるという意味で、私は教員の養成制度というものへ一つの目を向けていかなければならぬ。明治時代の中期から昭和十六年まで、師範学校教育を受けた人々には兵役を免除したのです。兵役を免除してまで教育に専念せしめた。これは明治の非常に崇高な教育に対する熱意であると思うのです。あの厳しい大東亜戦争の最中にさえも、師範学校教育を受けた人は、第一国民兵役としてりっぱな体格を持った人でも、教育に精魂を傾けさせる制度であったのですね。それほどまで教育を大事にしてきた。教師を、教員の養成を大事にしてきた。それから、教師たる一般教養のほかに、教育実習の面において、二カ月ないし三カ月の長い期間の教育実習をなさしめたのです。そこで、教育教科の勉学とあわせて、児童生徒との間の接触による高度の人間性の培養ができまして、そこから教育信念に燃えた教師がスタートして、第一線の教育に当たってきた。あの大東亜戦争の前、支那事変が起こる前までの日本の教育には大変大きな成果があったと思うのです。昭和十二年の時点から急速に日本はゆがんだ国家主義に転換した。それについて大臣、私の意見に同感でございますか。
  59. 永井道雄

    永井国務大臣 敗戦国家というものは、えてして自信を喪失いたしまして、自己の過去はすべて間違っておったという考えに陥りやすいものであります。私はわが国にそうした意味における敗戦後遺症というものがいまもあるかと考えておりますが、そうした問題の一つに教員養成の問題があると考えております。  わが国の師範学校教育は森有礼初代文部大臣計画的につくられたものでありまして、森有礼文相につきましても、非常に複雑な御性格であった。最近お孫さんが亡くなったばかりでありますが、いろいろ思いをめぐらされた方でありますが、ただ、決して極端ではなく、最後には暗殺によって亡くなられました。  わが国の師範学校教育が、ただいまの先生のお話では、まず昭和十年前後というあたりから非常に間違った方向に向かった、これは私は大局的にそうだと思います。  そこで、師範学校教育は全部だめであるということになるのが敗戦国的な体質であると思うのですが、私はそれは間違いであって、方向は間違っておりましたけれども、実を申しますと、たとえば教員の養成方法において実習を尊重するとか、それから教育実態に即して研究をされる師範学校の先生方がいらっしゃるとか、また、学校に行かれるときに、校長になられると、単なる管理者というようなことより、むしろ自分の学校の校風をつくるべく。その方のお人柄を中心に、学校一つの人格的雰囲気をつくられた。かような事柄は、わが国の師範学校教育の中にひそんでいたきわめて重要な蓄積でございまして、私は戦後そうしたものもやはり一種の自信喪失の中で全部洗い流されてしまったように感じております。私は、間違った点があったということも否定いたしませんが、またそれは間違いを改めることは大事でございますが、単純に全体を否定し切れないほどの努力が明治以降にやはりあったということは、単に認めるだけではなく、主張いたしたい考えでございます。
  60. 受田新吉

    受田委員 私は、そうした過去の日本の教育制度等も含めた反省の中に大いに学ぶべきものがあり、日本の今日を築くすばらしい実績を積んだ面のあることを見逃さないこれからの教育行政であり、また教育活動でなければならないと思います。ところが、特に支那事変に突入して以後の日本の教育体制が極端なる国家主義へ転化させられたという、その結果が敗戦という痛苦をなめました。ところが、その後に続くものは天皇御自身が人間天皇を宣言されて民主的憲法ができた、こういう時代を迎えるとともに、またここに一つの反動的な、民主主義を逆にとらえた反動的な勢力が台頭した。教育の流れの中に右から左へという、つまり中庸を得る道にいささかもとる方向がたどられてきて、その中に教育の中立性を強くうたう法律もできたりして、今日の時点になっておるのですが、私は日本の国家百年の大計の文教方針を打ち立てるに当たって、過去のよさ、そしてまた過去のまずさ、そしてその後における日本の歩み方というものを常に大所高所から判断されて永井先生が文教行政を打ち立てていただいておると私は信じておるし、これからもそういう方向にあると思います。  そこで、一つの問題を提起します。  この間三塚委員からも御発言がありました、教育課程の答申に関する発言の中に、家族愛の提案があった。私、非常にこれには共感を持っておるのですが、道義の根源ですね。道義の根源と言えば孝である。孝は百行のもとである。これは私やはりすべての道徳の根源としては最も親子の絶対愛、反対給付を求めないこの絶対愛を根源にして、それがだんだん広がって兄弟愛になり、隣人愛になり、同胞愛になり、人類愛に発展していく、国境を越えた愛情まで広がるものであると感じます。そういうものが当然これにうたわれていいものであるし、今後それをもとにして学習指導要領等がつくられてしかるべきであり、また教科書等にもそれが明記さるべきであると思いますが、いかがでございましょう。
  61. 永井道雄

    永井国務大臣 私も家族愛は非常に重要であると思いますが、同時にわが国の家族愛には反省を要する点があると考えております。なぜかなれば、親子、兄弟というものが愛情を抱いて、そして愛情と信頼の中に暮らすことは結構でありますが、ともすれば親子、兄弟だけが大事であって、そして排他的になりやすい。いわゆる家族的エゴイズムというものになりやすいというおそれがあり、また個人の自主的判断などを十分に育てない側面も含まれている。したがいまして戦後わが国の家族主義というものが批判をされました。この排他的家族主義で育った人間というものがたとえば政党に入りますと、政党をつくらず徒党をつくる。このことはすでに尾崎咢堂先生が古く御指摘になったとおりでございますが、今日もなおかつ尾崎咢堂先生は同じように言われるでございましょう。したがいまして、私はそういうわが国の長い歴史を見通されました先人の知恵というものは尊重すべきであると考えますから、ただ昔の家族主義を復活すればよろしいというような考えをとりません。また、教育課程におきましても、人間の自主性あるいは国際性、開放性というようなものを非常に重んじておりますが、これは妥当なことである。そうしたものに家族愛というものがつながっていくようなそうした教育を行っていくことこそが真の家族愛である、かように考えております。
  62. 受田新吉

    受田委員 中国の言葉、それは幾つも道義の根源をつく言葉が日本に流れておるわけです。東洋哲学が日本に流れた。東洋の道義精神が日本に流れてきた。これは記紀に出ているとおり応神天皇十五年に百済の王仁が論語十巻、千字文一巻を持ってきて日本に学問を伝えたわけです。それから一つの日本的な、道義的な幾つかの道が開けてきたわけですが、それは中国から学ばされた論語を中心の四書五経、そういうようなものが日本の国民的道義精神として今日まで育ってきておる。これは否定しませんね。  そこで私が最近しきりに考えるのでございますが、孔子や孟子のような王道を唱えて、あの戦国時代に秦という強大な国に対抗する合従連衡策をとったり、あるいは遠交近攻策をとったりしたいろいろな渦巻きの中で、道義の高揚、王道を唱えてきた、これらの道を唱えてきた儒教者、哲学者が、いま中国では、彼らはそういう現実主義者であって、本当はあの強大な実権を持った、学者をなにしたり書をたいたりした、そういう秦の始皇帝のような、王道から見たら覇者のような印象を受ける者がむしろ逆にすかっとして正直でいいんだという思想がいまの中国に流れておる。そうすると先王の道、王道を提唱した行き方でなくて、むしろ秦の始皇帝のような立場で勇敢に、正直に所信に邁進したのが筋が通るなどという中国の見方が最近において行われておるのは、これは御存じでございましょう。
  63. 永井道雄

    永井国務大臣 孫文先生が王道か、覇道かという話をされたのは、大正十二年、神戸において行われた有名な演説でございました。先生も御承知のように中国において王道をとらなければならない。これはまた当時の日本は覇道に陥っているということでございました。この王道の思想というものは実は国民党もこれを継承しようといたしましたが、政治の世界において覇道というものがともすれば力を持つということがまた中国共産党によって批判をされました。共産党もこれまた王道を求めたのでございましょう。しかし、その後いろいろな変化が起こっておりますところを見ますと、人間の理想は語るはやさしくなかなか到達しにくいものであるということは、いずれの国において、偉大なる文明を持つ国においてもまたさようなものであるかという感懐を抱きますけれども、しかしこれは他の国の事柄でございますから、私として断定的にこのことについての見解を申し述べることはかえって当を失するかと思いますので、一般に人類の流れというものは理想を追い求めながら到達しにくいものが中国にもあらわれているのではないかというのにとどめたいと思います。
  64. 受田新吉

    受田委員 孟子の公孫丑上編にある、王道は徳をもって化する、覇道は力をもって制するという論述からきて王覇の弁が世論を沸き立たせてきたわけでございますが、いま日本の政治の現実にもこの王道提唱者の提案したものが本当に素直に受けとめられてしかるべきものが数々ある。日本化された一つの言葉としても守らなければならない。それは四書五経の中に各所に出ておる。礼記あるいは論語の顔淵編、こういうところに、政は正しくなければならない、子率いるに正しい道をもってすれば、下は礼せずといえどもこれに従うであろう、百姓はみんな従うであろう。政は正しくなければというように何回か出ております。政が正しくない、上正しからずんば、下礼すといえどもこれに従わずという言葉が各所に出ておるのです。これは素直にやはり王道を考えていく、つまり徳で人を化していくというこの見方は、われわれは素直に受けとめていい問題だと思うのです。学ぶべきものは素直に受けとめる。輸入した学問であってもそれが国際的に普遍性を持っている、日本はこれを国際人としても守っていく。さっきの孝の道、これは、すなわち一般的に道義の根源として孝を一つ取り上げ、その周辺に隣人愛があり、そして同胞愛があり、そして人類愛があるという愛情の展開という立場に立ったら、人類愛が先で同胞愛が後だというようなことでなくして、やはり身近なところから道義の実践をしていってだんだんそれを広げていくのが、つまり小さい子供たちにはお父さん、お母さんありがとうと言うところから、小学校から始まって、そして今度は友達にありがとう、そして世の中にありがとう、日本国民ありがとう、白の黒の、色でない、国際的な、人類ありがとうといところへだんだん発達過程で進んでいくもので、初めから非常に大きな理想へ展開できない、つまり教育のスタートはそうした身近な過程から始まって、それがだんだん広がっていくという発達過程を私は取り上げて、そして政治に達した時点では広い感謝、奉仕、こういうような豊かな情操を養成した道徳の体現者になる、これへいくべきではないかと思うのです。
  65. 永井道雄

    永井国務大臣 実は、文部大臣就任以前も重要な課題であると考え、特に文部大臣に就任いたしましてから、先生の御指摘の問題を考えたわけです。といいますのは、わが国に御承知のように修身あるいは教育勅語を復活したらどうかという議論の方が多々おられるわけでございます。そして教育勅語の骨格というのは、儒学が一つ、それからもう一つは、国学と申しましても平田神道以降の国学的なものが強いと思いました。そこで、私は文部大臣中に性急な結論を出すべきではないというふうに考えました。なぜかなれば、あの教育勅語のときにも、明治十二年から二十三年に至るまでおよそ十カ年にわたって、当時の日本人は討議を続けたわけでございますが、昨今は日本人は非常に性急でございまして、そして教育勅語がいいと言うとよく吟味をしないで主張したりする人も少なからずあるわけでございます。そこで私は文明問題懇談会を組織いたしました。そうしてこの儒学の問題につきまして、吉川幸次郎先生、貝塚茂樹先生などがその道の専門家であられますので、御出席を願ったわけでございます。その一部を引用して先生の問題にお答えしたいと思いますが、次のようなことでございます。  まず、わが国の国民生活を規定いたしておりますものは、儒学もありますが、しかし日本古来のいわゆる国学的伝統というものもあるということです。そうして吉川先生の、この文章中に出ておりますが、お考えでは、徂来の学ないし仁斎の学のごときものが大変徳川時代栄えましたけれども、しかし、どちらかと申しますと中国の儒学よりもかたくななものに傾斜する傾向があるのです。そして中国の儒学が持っておりましたおおらかさ、また、先生はユーモアというお言葉をお使いになりますが、そういうものはむしろ欠けておった。そして、かえってそうしたおおらかさやユーモアのようなものを持っていたのは、皮肉にも儒学ではなく国学の方の本居宣長などに強く見られたわけで、その辺にむしろ中国の王道的な考え方とつながるものもあるのではないかという御意見でございました。  そこで私は、明治維新以降の教育勅語は相当の役割りを果たしましたけれども、やはり幾分固陋なる側面を持ったという面があったかもしれない、断定はいたしませんが、こうしたことをまだ国会などでも少し御吟味願うと結構であるというような意味合いから、全議事録をすでに刊行いたしましたので、ひとつ文教委員会でも御購入を願いまして、そしてまず教育勅語の成立の由来から、儒学、国学の伝統を今後十年ぐらいかけましてこういうところで御討議を願って、そして国民の伝統と将来のあり方というものを考えていくのが妥当なのではないか。この種の問題につきまして性急に結論を急ぐということになりますと過ちを犯しやすい、ということは、明治の先輩のときでさえ十年をかけてわずか四百字に満たぬものを書いているわけでございますから、その下敷きとしてそういうものをつくったのは、実は先生の御疑問と非常に深く関連のあることです。ただ、現段階においては、私どものサービスのよくないせいもあるかと思いますが、十分読んでいただいておりませんので、ゆっくりお読みいただいた上で、またいろいろ儒学、国学、洋学等の関係、それとの関連において今後の日本をどのようにつくっていくかという議論が進んでいったら望ましいのではないか、かように考えております。
  66. 受田新吉

    受田委員 ソ連というお国、まあ共産主義国家でございますが、この国においても教育目標に孝という大きな徳目を押し出しておるわけです。そうすると、大体、自由世界、共産主義国家群、そういうところで、人間自然の情である身近なところからスタートして、それがだんだん広がっていくという方向をたどっておるものと私は思うのです。そうした国際的な通念、その中で、日本は最も典型的な道義の栄える高い倫理観の実践国として世界に模範になるようにしていくにはどうしたらいいかという問題をひとつ真剣にこの際教育課程の問題でも検討をして、日本の行く道義の道についての目標を示していく。それは、これを唱えると何か往年の国家主義的な基礎になるのではないかという、そういうような政治的な彩りをもう全然考えないで、素直に日本の現状の中からどういう形のお国づくりをしたらいいかということ、やはり基本は教育なのですから、教育で、百年の大計で一貫して動かないものをつくっていくという意味で私、いま一つの提案をしたわけでございます。  もう一つ、そういう教育の世界は、たとえ内閣がかわっても一貫していけるような形になるためには、そうした教育指導方針というものとあわせて教師そのものという意味で大臣もお考えになっておられるのですが、私たちの党が昭和四十四年に大学基本法をつくったときに、特に教師養成の大学院大学の提唱をして、そして大学院大学で教師たる理想を持った人をしっかりした基礎で養成しようという提案をしたわけです。だから一般の普通大学を終えた人の中から、さらに大学院大学の教員養成機関というものを設けよう、これは大臣、基本的に御賛成でしたね。
  67. 永井道雄

    永井国務大臣 大学院大学の内容をどのようにしていったらいいかというのは、まだ最終決定にまいっておりません。ただ、その御提案の中で賛成な部分、そしてまた賛成であって文部省もいま進めておりますことは、やはりどうも教員養成だけに限らず、大学、高校、中学、小学校という場合に縦並びにして、高校以下は非常に低いものという考えがありますが、特に教育の場合には高校以下こそが実践の場でございますから、ちょうど医学で言えば病院のようなものだと思います。ところがどうも大学で教えれば後教育ができるという考え方が強いですから、むしろ横並びにして、大学は理論をやりますが、高校以下は臨床の病院というような考え方で、本年度は東京学芸大学に教育実習センターというものをつくって、そこには大学の研究室出身の方は教官にはならない、現場出身の方がなるというお約束を得ました。明年、岡山にそういうものをつくります。また明年からは就任されました先生方の十日間の実習というものを初中局長もいろいろ計画を立てて進めているわけでございます。したがいまして、まず教員養成大学全貌について断定的なところまでまだまいっておりませんが、少なくも今日よりも実習、臨床というものを中心に置きまして、そして本当に実際にどう教育ができるか、観念論に終始しないような、そういう研究の方向というものは強化をいたしていかなければならない。そこのところは明確にそのように考えているわけでございます。
  68. 受田新吉

    受田委員 私、時間が進んでおりますので、縮めまして、いまの具体的な教師論にちょっと触れていきたいのです。  文部省が提案されて、いま一般職の職員の給与に関する法律の継続審議の改正案の中に、伏線としての主任手当というものが出ておるわけです。私、戦前戦後を通じて六年間学校長の経験をしております。一般教師の経験もしておる。主任ということも経験した。そこで、主任制度というものに対しての検討期間がある程度欲しいということで、昨年末に私から、主任制度を一年間ぐらい検討されてはどうかと提案したわけでございますが、大臣は主任というものは管理職にあらず、指導職であるという意味でこの法案をお出しになっておられる。一つの問題点は、大臣非常に苦労されて主任の範囲というものに一つの具体性を持たしてくださったのですが、教務主任ということになるとこれは教頭候補者と世間では見ておるわけです。学年主任、教科主任、進路主任、それから図書その他体育とかいろいろの、つまり教科以外の対社会的な主任とか、そういうものもあるわけです。そういうものに限界をつけるということは非常にむずかしいはずです。主任をつくるとするならば、一学年で二学級しかないところでも、主任というものを設けると主任、主任で半分以上主任になるわけですね。つまり主任と名がつくものを具体的に取り上げると、実際はそういうことになりますね。それをどう整理していくかということの一つの結論としてここへ法案をお出しになっておると思うのですが、この主任は将来広がって、いま申し上げたような学年主任にいく、そしてそれは二学級であっても一人は主任になるというような構想がおありなのかどうかです。
  69. 諸沢正道

    諸沢政府委員 大臣がお答えする前に、事務的にどういうふうに考えて進めてきたかということを御説明申し上げますが、確かに主任というものが現在それぞれの学校にございまして、その種類を一つ一つ挙げましたならば数十に上るかもしれないわけでございます。そこで私どもが主任の制度化ということをするに当たりましては、現在の学校における実態を見て、その実施率の非常に高い主任で、しかも学校教育機能を果たす上において非常に重要な、基本的なものという観点から文部省令におきまして基準として取り上げました主任は、小学校が教務主任と学年主任、中学校はそれに加えまして生徒指導主任、高等学校はそれに加えまして進路指導主任、大ざっぱに言いますとそういうふうにしたわけでございます。したがいまして、これを受けて各都道府県市町村でそれぞれの委員会規則で主任を制度化いたします場合には、いままで私どもが了承しているところでは、学年主任などについては、御指摘のように、一個学年の編成が二学級のところも学年主任を置いておるところも相当あるわけでございまして、その点はそれぞれの都道府県市町村の判断にお任せをしておる、こういうことでございます。
  70. 受田新吉

    受田委員 都道府県の判断ということになってくると、いろいろな主任が各府県で出てくるわけです。またこの主任制度を否定する都道府県もあるということで非常に複雑多岐に分かれてくる。  私ここでちょっと確認しておきたいのですが、例の学校教育法の一部改正の中で教頭職を専任化する法案について、私責任をとったわけです。その責任をとった理由は、教頭の仕事が非常に複雑多岐になって、校長を補佐し校務を整理する、その方に非常なウエートを置かなければならぬ。そのために教頭が教える学級は、たとえ一般教師の半分の時間であってもなおその教える時間が欠けてくる。そうすると教頭の受け持っている学級は、教頭だからりっぱな先生ということを前提にしても不幸な学級である。そこで教頭を専任にすることによって教頭の教える不幸な学級をなくするためにも、教頭数だけ枠外で増員せしむべしという趣旨を私この修正案の責任者として提案をいたしました。これは自民党の藤波先生も賛成をされ、西岡先生も賛成されて、つまり教頭の枠外に定数を大幅にふやすという前提で修正案を私提案したわけでございます。三万有余の教頭の中で、その三万有余の分だけを枠外で措置せよという私の提案であったわけですけれども、それに対して、教頭の教える時間は一般教師の半分しかないのだから、その分で増員を図るとしても一万一千か二千かになる、こういう御答弁がありました。そうしますと、その文部省の答弁の側から見ても、教頭の専任化に伴う教師の定数を改善する措置としては、一万数千を実行に移すということを急いでやらなければならないと、私はあの法案の趣旨からいったら当然それにいくべきであると思うのでございまするが、五千人の人数を五カ年計画でやるというその後における御意見を承ったわけです。これはいまでもそうでございますか。
  71. 諸沢正道

    諸沢政府委員 ただいま御指摘のような教頭の制度化を法律審議するに当たっての論議がありましたことは私ども承知いたしておるわけでございます。そこで、この春でしたかのこの文教委員会の席で御説明申し上げましたように、その教頭法成立の経緯を踏まえまして、学校における教頭定数の枠の増加という点について現在のところの案を御説明したわけでございますが、その案は、小中学校を通じまして十八学級以上の学校に対しまして、教頭の定数を五カ年計画で一名ずつ配分する、こういうものでございました。そのために必要とします定数は四千六百七十四名でございます。そこで、五十年度は千名の枠を配分し、五十一年度は八百名としたわけでございます。  そこで、どうして八百名にしたかということでございますが、この点につきましては、五十一年度の公立小中学校の教員定数の増の問題につきましては、全般的な財政事情その他もありまして、教頭定数にとどまらず、一般教員、事務職員、養護教諭、栄養職員とすべて若干の定数増の繰り延べをいたしましたので、その限度におきまして教頭も前年同額の千名とすることができず、八百名にしたという経緯がございますが、五年間におきましてはただいま申しましたような趣旨で五千名の増を図りたい、こういうつもりで現在おるわけでございます。
  72. 受田新吉

    受田委員 教頭を専任化することは、学校の大きさのいかんを問わず、教頭の職務は小さい学校は小さいなりに対社会的な指導をしなければならぬ。むしろその方が忙しい。地方では学校の先生が一番有識者である。先生、部落の懇談会があるがちょっと教育のお話をしてくださいというと、教頭が行ってごあいさつする。そういうことになれば十八学級というような基準でなくて、教頭を置いておるということによってこの学校教育上の支障が起こるのだから、それは学校の大きさのいかんにかかわらず定数をふやすべきである、こういう趣旨であったわけです。小さい学校の教頭は余り仕事がないのであるから、専任化されて、必要に応じて教育を引き続きやらすというのでは、あの法の趣旨にもとるわけです。法律を無視するということになるわけです。だから、それは教頭が、小さければ小さいなりに対社会的にも子供の校外指導においても大変苦労が多いということを踏まえれば、そのような五千名足らずで十八学級というような枠をはめることは教頭専任化法案の趣旨に反するということになると思いますが、私は修正案の責任者でありますだけに特にこれを明確にしていただきたいのです。
  73. 諸沢正道

    諸沢政府委員 おっしゃるように、十八学級以上と現在のところはしておるわけでございますが、この学校の教員の定数の改善という問題につきましては、文部省は五カ年を一区切りとして、その期間内に到達目標を掲げ、定数の充実を図って、現在は第四次の五カ年計画にかかっておるところでございます。ということは、つまり目標は一定に持ちましても、一挙に実現するということは財政事情その他もあり、なかなか困難でございます。  そこで、いま申しました十八学級以上に各一名というのは当面の目標でございます。したがいまして、五年間たちまして、この五千名という枠の拡充ができましたならば、その次の段階においてまた御趣旨に沿って検討したいというふうに私ども考えておるわけでございます。
  74. 受田新吉

    受田委員 文部大臣、前の奥野文部大臣のときにこれをやったのであるから、おれは彼がやったことについては責任が余り重くないというようなお感じではないはずです。いま局長の御答弁ですが、この教頭職というものは、学校の秩序維持という意味からは、教頭がやはりそうした対外的にも行動を起こして、学校の一般の先生にも負担を軽くしてあげて、一般の先生が教頭の補充教育に行くようなそういう悲惨なことをさせないで、子供も授業が欠けることがない、いつも先生が教えてくれる。それから一般の先生も、教頭から覆いかぶさった分の負担が軽くなった。父兄も安心できる。親から見ても教師から見ても子供から見ても筋が通るという立場で私はこれを修正提案をしたわけです。これは、ここにおられる藤波さん以下全部知っておられるわけです。そうでしたね。そのとおりです。それをいま五カ年が終わったらさらに考えるというお言葉でございます。これは五カ年区切りということでありますが、この専任化をされなければ増員計画はなかったのだ。しかし、専任化によっていまのような段階的に予算考えていくということでございますが、これをできるだけこの法の趣旨に従って、私自身が大所高所から国家国民のために教育のことを考えて修正させていただいた、これが実践されるように大臣努力していただけますね。
  75. 永井道雄

    永井国務大臣 私の就任以前の問題でございますけれども、非常に重要なことであり、またこの委員会において討議された事柄でございますから、これを尊重して、そうして実現をいたしますように努力をいたします。
  76. 受田新吉

    受田委員 これが実りを来して、一般教員も生徒子供の親も皆いい学校にしてもらえるという喜びを感ずる法律というものにしなければならぬのです。それから、これができ上がった、一応体制を整えた段階で主任制度というようなものを考えてはどうかという私提案をしたわけですが、すぐ永井先生の方でお出しになった。しかし永井先生は初め管理職にせよという、藤波先生もそういう御要望があったのですか。——ということであったとも聞いておるのですが、これはあくまでも単なる勤務調整の意味の手当にすぎないのだ、そして主任というものは適宜交代していくもので、その主任に任ぜられた者がずっと主任でいくということでなくして、これはその経験を重ねていくというところに意味があるのだという意味で考えていいことですか。管理的な要素は今後もやらないのだということが言えるのかどうかです。
  77. 永井道雄

    永井国務大臣 私、当初考えましたのは、全く、もう校長、教頭という二人管理者がいるのですから、そのほかに管理の人は必要はないという考えでありまして、それを連絡調整、指導、助言という言葉で表現いたしたわけでございます。そればかりでなく、私が願望といたしております。つまりここで去年の暮れ御討議をいただき、またそれ以後のことをいろいろ考えますと、先ほどからの御論議にもありましたが、校長先生といい教頭先生といい、これはいわゆる管理をなさいますが、管理という言葉の定義いかんによりますけれども、当然これは教育的ないわゆる先達でありますから、必ずしも授業という形態にはこだわることもないと思いますが、やはり教育指導的なことに相当力を入れていただく、そういうことが非常に必要である、私は当初もそれを申しましたが、その後、校長会等においても繰り返しそれを申し上げ、そしてまた少数の先生ともそのことを御懇談申しているわけです。でありますから、そういう意味においてこの主任の問題についていろいろ議論があったということから、かえって教育指導上の重要性というものが浮かび上がってくるということに相なりますれば最も望ましいのではないか。これは管理という方向は必要でありますが、校長、教頭にお任せするということでございます。
  78. 受田新吉

    受田委員 私もそのいずれをも経験した経験者でありまして、校長、教頭になったからといって、自分はもう一般授業などを考え、また一般的な高い教育実践の方はやらないのだという、そういういばったような不心得な校長や教頭は適切な教師ではありません。実際に教育の第一線に立つわけです。法律によって今度教頭が専任官になったのだから、おれは何も教育の実際の仕事はやらないのだぞといういばる教頭がおったら、それこそもう不適当きわまる教頭であって、われわれが法律で考えたのはそういう意味の教頭さんでなくして、引き続き従来と変わらない気持ちで、ただ法的に一応の秩序を保つ位置についただけで、気持ちは同じだという形でないと名校長でないし、また名教頭でないわけです。その趣旨は十分生かしながらいくならば、この主任というもの、これはどうせ法案はあちらへかかるわけですから、手当の問題については当委員会の所管外になるわけであるが、そういう制度を設けるということは当委員会の任務でありまするので審議の対象にきょうさせてもらったのですが、ただ、結論を申し上げます。お金を出すということは、これはやはり人間として非常に問題が起こってくるわけです。そうすると、制度があることは、制度としてそれが認められておることは、これは現実にあるわけです。それを、お金を出すということになると、人間というものはなかなかむずかしい要素が生まれるわけです。そういう問題があるから、この主任制度はちょっとの期間検討していかれてはどうかと昨年提案をしたわけでございまして、時間も参っておりますので、一応基本的な問題だけをいま提案しました。  最後に政務次官、渡部先生は栄誉ある文部政務次官になられたわけですが、所見をお述べいただきたい。
  79. 渡部恒三

    ○渡部(恒)政府委員 去る九月二十日、文部政務次官に就任をいたしまして、その重い責任を痛切に感じております。特に私は大臣以下の文部省の中で、たった一人の国民から選ばれた議会人であり、政党人でありますから、国民の皆さん方の広い意見、またそれぞれ国民を代表する政党の皆さん、議会の皆さん方との連絡を密接にして、先生方の御意見を十分に文部行政に反映させる。ただいまも受田先生の御意見を、また大臣との質疑を承っておりまして心に感銘する点も多かったので、そういう意見文部省教育行政に強く反映させていくために働いてまいりたいと思います。
  80. 受田新吉

    受田委員 文部政務次官に就任された方に私何回かお尋ねしたことがあるのですが、これは国家行政組織の基本問題でございまして、国家行政組織法に政務次官の任務がどう書いてあるかは御存じでございますね。
  81. 渡部恒三

    ○渡部(恒)政府委員 はい。政務次官の任務はいま受田先生からお話しのありましたように、国家行政組織法の第十七条に「政務次官は、その機関の長たる大臣を助け、政策及び企画に参画し、政務を処理し、並びにあらかじめその機関の長たる大臣の命を受けて大臣不在の場合その職務を代行する。」と出ておりますが、永井文部大臣を十分に補佐してまいりたいと思います。
  82. 受田新吉

    受田委員 「大臣不在の場合」とはいかなる場合でございますか。
  83. 渡部恒三

    ○渡部(恒)政府委員 その点私も前から考えておったのですが、「大臣不在の場合」ということになりますと、日本の国から外国に大臣が出張しておられる場合、これは明らかに大臣不在ということになるのですが、そのときは閣議において、政務次官が大臣代理にならないで、他の各省の大臣の方が大臣になりますから、そのときは大臣不在の場合の代理と法律的にはならないわけでありますから、私はそういう意味で政務次官盲腸説などというのも出てくるのではないかと思いますけれども、素直に解釈して、これは文部省大臣が九州に行ったり北海道に行ったりしておるときで重大な問題が起こった場合、やはり最高の責任者のそれぞれの命令を受けなければ行政の執行に支障を来すというような場合、事務次官以下の役所の皆さん方の相談に当たって決断をしていくということだろうと思っております。
  84. 受田新吉

    受田委員 これは文部省の法律解釈をされる担当、官房長ですか、官房長、代理と代行はどう違いますか。
  85. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 ただいま政務次官からもお答えいたしましたが、たとえば大臣が海外出張の場合でございますとかあるいは病気療養中で国会開会中であるとか、そういう場合等大臣の臨時代理が発令されまして、その際、海外出張等の場合でございますと海外出張前に大臣と臨時代理で、文部大臣の職務を行われます大臣との間で若干期間でございましても事務引き継ぎというふうなこと等も行われまして、その期間中は完全に大臣としての職務を行っていただきます。法的に海外出張の場合等に発令されます臨時代理はただいま申し上げましたようなことで行われております。  代行という関係は、事実上の問題といたしまして大臣が何かの御用である行為を行うことができないとかそういった場合等に、ただいまも政務次官からもお答えいただきましたように、大臣にかわりましてある御判断を願うとか、そういうことをやっていただきます際に大臣の職務を代行していただく、こういうふうに私ども理解をいたしております。したがいまして、正式に辞令をもって大臣の職務を代理して行われる、海外出張の場合等は私どもは最も経験しておりますし、また国会中大臣が御病気で休まれて、短期間でございましても国会の答弁に文部大臣としてお当たりになる場合には臨時の文部大臣代理の発令が行われる、こういうことでございます。
  86. 受田新吉

    受田委員 その臨時代理を置くのは内閣法の第十条に規定があるのです。「主任の国務大臣事故のあるとき、又は主任の国務大臣が欠けたときは、内閣総理大臣又はその指定する国務大臣が、臨時に、その主任の国務大臣の職務を行う。」という、この規定の方から来るのです。それで、もう一つ代行の場合は、いまの国家行政組織法の十七条の規定であるわけです。はっきり分離されておる。それをひとつ政務次官が御存じないという。いまの、どれかようわからぬ、疑義がいまあるとおっしゃったが、臨時代理というのは内閣法で総理大臣が任命するのです。政務次官の規定はこの国家行政組織法の規定でいくというわけになっておるのでありまして、その分離を官房長は説明されなければいけない。  それはそれとして、そういう法の根拠は違うわけですが、もう一つ代行の場合にはっきりしておきたいのですが、いま事務次官以下を、政務次官は大臣が不在のときにこれを、つまり不在というのはちょっと地方に旅行に行ったりするときです、海外に行くときは事故あることになるのです、そういうときには、国内の旅行をするときにはあなたが文部大臣の職務を代行されるというと、事務次官以下を指揮監督する権限があるのかないのかということです。これは非常に大事なあなたの——政務次官に就任されるときに先輩がどう教えてきたか、これをひとつ。
  87. 渡部恒三

    ○渡部(恒)政府委員 大変貴重な御意見をちょうだいいたしましたが、私ども、いままで常識的に考えておりましたのは、先ほども申し上げたように、海外に大臣が出張されたり、あるいは特別に病気でお休みになって他の閣僚中から臨時代理が出ておる場合はそれでよろしいのでありますが、そういうことでなくて、いも受田先生がおっしゃいましたように、大臣が国内で旅行中であるとかお休みである場合は当然大臣にかわる最高責任者がおらなければなりませんが、それは政務次官であり、したがって、そういう場合に事務次官以下の文部省の職員が私のところに相談をしに来た場合は私の判断で決断して指示をし得る、あるいは先生方からいろいろな問題で文部行政に関する御意見を承った場合、私の判断によってこれを指示することができると考えております。
  88. 受田新吉

    受田委員 内閣総理大臣が、そういう事故があった、つまり海外に行くときには、あらかじめ指定した大臣、あらかじめ指定せぬときは副総理でありますが、そういうことで総理大臣代理というものができる。国務大臣の重大な事故、つまり非常に長期間の病気とか海外旅行というときには臨時代理が出る。そのほかのときは政務次官が職務を代行するということになれば、事務次官以下は政務次官の言うことを聞かねばならぬということは、官房長、おわかりですか。
  89. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 大臣の職務を代行されるわけですから、私どもは政務次官の命によって、御判断によって仕事をするのが当然であります。
  90. 受田新吉

    受田委員 渡部先生、官房長がそうおっしゃるので、若い政務次官でも、副大臣というのはどうも心細いなあというようなことを考えなくていいのです。すべて職務というものは法の規定に基づいて決まっておるのです。内閣法、国家行政組織法、各省設置法、局長以下の任務は各省設置法にぴちっと書いてある。そういうことですから、あなたは非常に大事な責任者である。世に副大臣と言った方がいいという説があるわけですが、これに対して御見解を明らかにしていただきたい。
  91. 渡部恒三

    ○渡部(恒)政府委員 受田先生から大変りっぱな御意見をちょうだいいたしまして、私どもも改めて政務次官の任務の重さをいま思い知らされたわけであります。これからは自信を持って文部行政推進に当たって事務次官以下を指示してまいりたいと思います。ありがとうございました。
  92. 受田新吉

    受田委員 時間が来たのでこれで終わりにしますが、政務次官、もう一つ、あなたのところへ決裁のサインを求めに来ないで、あなたの頭越しに大臣に行く書類はありませんか。
  93. 渡部恒三

    ○渡部(恒)政府委員 就任後全部私のところに来ておるというふうに私は解釈しております。私の知らないところで別なのが行っておればあれですが、前任者等の話も聞いておりましたが、文部省は特に政務次官を非常に尊重し、大事にしてくれるところです。私は他の役所の政務次官の経験もありますが、文部省においては政務次官を非常に尊重し、よく相談をしてくれております。
  94. 受田新吉

    受田委員 政務次官、他の役所は政務次官を大事にせぬところがあるという非常に気にかかる言葉が一つあったのだが、文部省は非常によくやっておると言われた。政務次官の地位というのはそういうふうに法律に明記してあるのだから、ひとつ職務に精励されて、もっと文教の一番大事な、日本の行政の中心であられることを希望いたしまして、質問を終わります。
  95. 渡部恒三

    ○渡部(恒)政府委員 大変どうもありがとうございました。
  96. 登坂重次郎

    登坂委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時五分休憩      ————◇—————     午後一時四十五分開議
  97. 登坂重次郎

    登坂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について質疑を続行いたします。村山喜一君。
  98. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は本日、鹿児島県の国分市にあります九州学院大学の学園紛争の解決の問題について、大臣並びに関係者の御所見をお尋ねをしながら、いま依然として事態の解決を見守りながら、一日も早く学生の学習権が確立されることを待ちわびております関係者の人たちの声にこたえたいと考えるわけでございます。  すでに参議院の文教委員会におきまして、十月の十四日に久保亘参議院議員並びに宮之原貞光参議院議員がこの問題については追及をいたしておりますので、できるだけ重複を避けながら問題を詰めてまいりたいと考えます。  私は、この学園紛争が起こりましてから、九月の二十四日並びに同じく二十五日、十月の二日、十月の九日、そしてまた十月の十六日現地に駆けつけまして、学生やあるいは父兄会の人たち、教職員の意見を承りながら、実態に即して問題を取り上げて、大臣に所見をお伺いしておるところでございますので、大臣の方でも事情等についてはある程度理解をいただいているものと考えながら質問を申し上げたいと存じます。  大臣はこの十月の十四日の時点では答弁をなさっていらっしゃるわけでございますが、十五日以降の今日に至るまでの状況についてはある程度承知になっていらっしゃるだろうと思うのです。その中で、学生が理事長を詐欺で告訴をする、前代未聞の出来事が生まれております。また、いままで後援会であった父母の会が学校法人の理事者側の意見の代弁者になってしまって、実際の父兄の気持ちは伝えてないということで、この後援会を解散をすることを決定をして、新たに八百数十名の全国の父兄が集まりまして、そして十六日には父兄会が決議を行った、こういうようなことについては御存じであるのか、まずその点をお聞きをしてみたいと思うのでございます。
  99. 永井道雄

    永井国務大臣 この問題につきまして私が答弁をいたしました後に、学園の坂元理事長も上京されて事情を聴取いたしましたり、いろいろ文部省として調査をいたしましたことがございますので、これは詳細にわたることもあり、担当の管理局長から御答弁申し上げます。
  100. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 お答え申し上げます。  十月十五日に理事長の坂元恵義氏を文部省へ来ていただきまして、午後一時から夜半ごろまでその事情を聴取いたしました。その事情聴取いたしましたときにおきまして、坂元恵義氏と一緒に来られましたのは九州学院大学の航空工学科の主任教授永瀬教授、それから学生部長兼教務部長の西谷教授、それから機械工学科主任教授山田教授、その他学校後援会の会長さんも見えました。そういう方たちに来ていただきまして、私も出席いたしまして、担当課長以下関係者集まりまして詳細に事情を聴取いたしました。何分、参議院の文教委員会で御指摘になりましたこの学園に関する問題点は非常に多項目にわたっておりますので、それにつきまして詳細に事情を聴取したわけでございます。  それで、基本的態度といたしまして、単にこの上げられた問題について関係者の弁明を聞くということではなしに、客観的な事実を述べてください、状況によりましては、また実際の調査というようなこともありますという前提のもとに率直に意見を述べていただきました。そういうことで、そのときの事情聴取の重点は、国会で指摘されましたこの学園の運営についての問題点の数々、それが重点でございました。もちろん、同時に紛争状態にありますいまの大学の状況につきましても、概況は聴取いたしました。問題は、その二つであるわけでございまして、実は現在のところ文部省の立場といたしましては、指摘された学園の運営についての問題点ということに重点をしぼって聴取を行っております。もちろん、現地においては紛争状態が起こっておるわけでございまして、その点につきましても関心を持っておりましたが、そういうことでございまして、ごく最近のきょう、あすの状況がどうなっているかということにつきましてはまだ十分聴取しておりません。これからまただんだんにその辺は明らかにしていく必要があろうかと思っております。  なお、十八日で終わりませんでしたので、十九日、昨日も続行いたしました。しかしながら、理事長等はやはりいまの紛争状態の解決のために一度帰らなければならない、学生との団交の約束などもあるので、そのための準備もあるということなので、事情聴取を一応打ち切りまして、まだ聴取事項がたくさん残っておるわけでございますけれども、とりあえず理事長その他一行には帰ってもらいまして、当面の学生との団交等の事項を処理してもらうようにしたわけでございます。  概況はそのようなことでございます。
  101. 村山喜一

    村山(喜)委員 文部省が初めに、九月の三十日に坂元理事長の夫人、この方は理事でございますが、これを呼ばれて事情聴取をされた。その後、県の学事文書課長も呼ばれまして、そして事情聴取をされ、なお両二日間にわたりまして実態の把握に努められたわけでございますが、提出を要求いたしました資料が余りにもずさんで、そして、そこに資料を持ち合わせていないというような事情等もあって、さらに資料の整備等を進めて、その後再度文部省の方で呼ぶやに経過を承っているところでございます。  しかしながら現地の状況は、もうやはり今度卒業ができるだろうか、単位の取得の上において授業日数の関係から非常に無理をしなければならない、あるいは進学ができないのではないだろうか、あるいはまた就職のそういうような面において支障があるのではないだろうかというような一つ教育上の問題があります。私は、前々から文部省に対しまして、九月二十七日には学園紛争が起こりましてストライキに入っておりますから、佐野大学局長にもお会いをし、あるいはいま御答弁をいただいた犬丸管理局長にもお会いをいたしまして、そしてまた、十月の七日には文部大臣ともお会いをいたしまして、できるだけ早くこの問題は解決をしてもらわなければ、その時期を失するようなことになると非常に大きな混乱が発生をするということを御注意を申し上げながら、善処の要請を進めてきたのでございます。いまの段階では、そういうような状況の中で果たしてこれから先、理事長が帰りまして学生側の方と団体交渉をする、あるいは父兄会の方と話し合いをする、こういうような形をとるであろうということを御期待をされておるようでございますが、父兄会の全国総会がありましたときにも理事長出席を求めたところ、理事長はたった三分間出席をいたしまして、何らの説明を行うことなく、さっさと退場をしてしまう、こういうような状況の中で父兄会は満場一致で理事長兼学長の坂元恵義氏に対します不信任の気持ちをさらに強くした、こういうような状況の中にございます。  また学生側の方は、一日も早く文部省が現地の調査に来てもらいたい、そして調査に来るならば、いまピケを張っておるけれども、これを解除してその調査にこたえる用意がある、こういうことを言っておるわけでございます。  そこで私は、そのタイミングを失しないように文部省に行動を要請してきたのでございますが、まあ文部省というところは慎重な役所であるのでありましょうか、あるいは私学という学校法人に対して権力介入がましいことにならないようにという配慮であるのでありましょうか、今日依然として九月の二十日時点から生まれました問題が解決を見ないままに来ている状態にございます。  そこで私は、この際大臣に御所見をお尋ねしておきたいと思うのでございますが、聴取に応じました坂元理事長が言った言葉の中に、この学園紛争の原因は私に責任があるのではなくて、革新団体やあるいは革新政党がその背景にあって私を追い出そうとしている動きである、こういうことを言ったやに聞くのでございますが、私たちはそういうような角度からこの問題を取り上げているわけではございません。今日そういうような大学紛争というのは、まさにこのような状態をつくり上げた原因は、後ほど私が具体的な事実に基づいて指摘をしてまいりますが、まさにワンマン経営で理事会も評議員会もその学校法人としての機能を果たしていない、しかもうそ八百を固めて募集要項をつくり上げて、そしてそれによって生徒を詐欺のような形で募集をして、そしてむちゃくちゃな学校経営をやり、労働組合の委員長は首を切ることもう三代、いまもそれが裁判上の問題になっているものが四件もある、こういうような状態の中で学園の正常化が学校法人の経営のその体制の中から生まれてきた。しかも学生は全国各地から集まっておりますが、まあ実にりっぱな行動を整々としてとっておりまして、私はその姿を見て、一体反省をしなければならないのはだれかということは一目瞭然であると考えるのでございますが、文部大臣は、その理事長が言われそういうようなのが正しいという受けとめ方をしていらっしゃるのか、われわれは地域の教育の問題を憂え、そして日本における私学のあり方の問題の上からこの問題は真相を究明すると同時に、学校の再建をりっぱに果たしていくように文部省指導をされることを要請をしているのであって、われわれ自身もそのことから問題を提起しているのだというふうに大臣もお考えをいただいているのであろうか、このことについて大臣の御所見をお伺いをしておきたいと思うのでございます。
  102. 永井道雄

    永井国務大臣 私は理事長には直接お目にかかりませんでしたので、理事長の言葉は局長から報告を受けております。ただ理事にはお目にかかりました。その際、この大学の紛争の原因は革新政治勢力にあるということが述べられているということは事実であります。  そこで私は、大学の問題というものに仮に革新勢力が介入をいたしておるということであれば、政治的介入でありますからこれはゆゆしいことである。そこで真相を確かめますためにこの地方の御出身である自民党の中馬議員にも御意見を承ったわけであります。その結果、これは革新勢力の政治的問題ではないという御意見でありますから、私としては、現段階においては、そうした角度から村山議員も別に革新勢力の議員として御質疑になっているものでないというふうに理解をいたしております。そういう角度から考えてまいりますと、まだ全部断定はできませんが、恐らくはやはり問題が大学の中にいろいろあるのではないか、かように考えておりますので、そうした角度からの調査を進め、文部省が政治を離れまして中正な立場からこの問題の解決に当たりたい、かように考えております。
  103. 村山喜一

    村山(喜)委員 大臣の御所見をお聞きをいたしまして、ぜひ文部省が大学の教育に責任を持つ官庁として、中立的な立場の上に立って、問題点は大学の管理運営教育にある、その立場から指導、助言をされまして、その解決のためにどのような具体的な方法をもって臨んでいくのかということがいま大臣が言われた言葉を裏づけることになるであろうと私は思うのでございます。後ほどどういうような計画でこれからお進みになるつもりであるのかお伺いをしたいのでございますが、私が先ほども言いますように、もうこの問題は一日も放置をしておく段階にございません。十月の二十五日ごろはもう一つの山場になるであろう、解決のタイミングをそれ以降に持ち越したら時期を失するような不幸な事態が生まれるのではなかろうかと考えておるわけでございますが、それに対しまして今度文部省としてどのような態度でお臨みになるのか、お答えを願います。
  104. 永井道雄

    永井国務大臣 先ほど申し上げましたように、まず調査を進めてまいりますが、さらに現地へ係の者を派遣することを考えております。そこで調査の進め方、それからどのくらいの時点で係が参った方がよろしいか、どういう形で紛争の解決に当たるべきか寄り寄り考えておりますので、もう少し詳細な点は管理局長から御答弁を申し上げます。
  105. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 本件の問題点は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども二つございまして、いまの紛争状態にあって学園の教育、研究が中止されておるという状況をいかに早く収拾するかという問題でございます。第二点はその学校の従来からの運営そのものにいろいろ問題がある、これを是正していく問題、もちろん両者は絡んでいるわけでございますが、その前者の問題につきましては、私もかつて振興課長といたしまして私学関係の紛争にはたびたび関係したこともございますが、いわゆる紛争状態の中において両当事者が相対立しているという状況のもとにおいては、だれか第三者が一刀両断これを裁決するという状況にはなかなか来ない。そういうタイミングというのはなかなか急には来ない、またむずかしいということをよく承知しております。紛争によりましてはもう四年も五年も十年もかかるというような紛争もございます。その経過において何度かある立場でこれを調停しようと思ってもまた崩れるというようなこともございます。したがいまして、そういう紛争状態の中に入っていってそこで調停をする、そういう意味での現地に赴くというようなことにつきましては、これはよほどタイミングを考えて、もちろん一回で片づく問題ではないかもしれません、何回か行く。その行ったことが両者の対立をなくしていく方向に動くような形で時期を見てやらなくてはならない、こういうことでございますので、先ほど村山先生からも大変立ち上がりが遅かったというおしかりも受けたわけでございますが、そういう経験からもいたしまして時期を見ておったわけでございます。  ただ、特に国会で問題にされましたようないろいろな学校管理の不適正な問題、そういうような問題につきましては、これはできるだけ速やかにはっきりさせる必要があるということで、しかもこれは、是正措置そのものも、事柄によりましてはいろいろ時間のかかる問題もございますけれども、その黒白を明らかにするということはどしどしやってまいりたいと思っております。その二つの意味において、ある時期には時期を失しないように文部省から係官が出向くということも当然考えておるわけでございます。いまの段階ではまだいつ行ったらいいのかという判断までつきかねております。そういう状況でございます。
  106. 村山喜一

    村山(喜)委員 やはりタイミングを失しないようにお考えをいただいているのだろうと思うのですが、この場ででは何日の日に行くというところまでまだ詰まっていない。しかし一定のタイミングは、もう時期をずらすわけにはいかぬということも御承知をいただいているものだと考えます。そういうような意味で、できるだけ早く問題の解決ができますように、この点は特に大臣の方に要請を申し上げておきたいと思います。  そこで具体的な事実関係に入りますので、これは大臣からでなくて担当の局長から御答弁をいただきます。  いま大臣のお手元に五十年度の九州学院大学付属高校生徒募集要項、これを私はお出しをいたしました。そこの中に、参考事項、本校の特典として三項に、電子科は第三種電気主任技術者免除校、これは、第三種の電気主任技術者の試験には、一定のコース、単位を取得をいたしまして、卒業してから三年間その実技に従事しなければ受験資格がありません。それが第三種の電気主任技術者の免除校ですから、文章表現もおかしな表現でございますが、これを見ますと、この学校を出るとそういうような国家検定試験も免除されて、第三種の電気主任技術者の資格を与える学校だ、こういうふうに生徒父兄が受け取るであろうと私は思うのでございますが、そういうふうに読まれませんか。  その裏の方をあけてください。機械科。そこの特典は「(一)二級自動車整備工場認証校、(二)三級自動車整備士国家試験受験資格取得(実務経歴免除)」となっている。私は運輸省にこの問題を確認をいたしました。整備課でございます。  そこで、ここの学校は一種の養成施設に該当するか。これでは該当しておりません。二級課程の認定校であるか。認定校に指定しておりません。三級課程の認定校であるのか。それも該当しておりません。なお、この学校自体が運輸大臣の指定校に、自動車科の場合には指定校になっているか。指定校になった事実なし。こういうことでございます。  そこで生徒が、ここにございますが、三年生の、これはいま大学の機械科に入っている学生でございます。私は中学校のとき付属高校からの説明会でそのことを聞きました。そして普通高校にも県立の高等学校にも通っていたけれども、自動車コースに入ればそういう特典があることを聞いて、そしてこの学校に入りました。そして、昭和五十年に国家試験を受験をしようとしたら、認定校でないことがわかりました。こういうふうに、教育を行う学校がなぜうそをついて生徒を募集するのでしょうか、こういう訴えが、機械工学科の三年生の松田忠市君の手記がここにございます。大臣のお手元にもお届けしてあると思います。これは高等学校です。  高等学校は文部大臣の直接の管轄でないから、あえて問題だけ指摘をしておきます。  次にお尋ねをしてまいりたいのは、大学に関する問題でございます。  運輸省の航空局がお見えになっておいでになりますから、官川技術部長にお尋ねをいたしますが、この大学の募集のパンフレットを見てみますと、これまた誇大広告、偽りの広告でごまかしておるわけでございます。昭和四十九年度の募集パンフレット、五十年度の募集パンフレット、これには、「二等航空整備士課程を履修した者は、その国家試験の実技試験が免除される大特典がある。」昭和五十一年度の募集パンフレットには、「全国大学唯一のモデルスクールとして指定を受けている。」五十二年度の募集パンフレットには、「全国唯一のモデルグループ校に指定され、将来二等航空整備士国家試験の実技試験が免除されようとしている。」となっています。  私はこの募集要項を見ながら——航空科の六人の学生が理事長を詐欺で告訴をした。私はやはりそういう募集要項というものは、自分の学校が正確にそういうようなものについては責任を持つという体制でなければ、その募集要項に頼って学校に入学をする学生に対する学校の責任は果たし得ないと思うのです。そして、そういうようなうそ八百を並べて学生をつるような学校屋のような私学の存在を認めることは、文部省としてとるべきでない。大学の自治、私学の自治というものは、そういうようなものに対しても自治が保障されているとは考えないのでございます。そういう意味から、一体運輸省の航空局ではモデルグループとして指定をされているのか。実技免除を与えるための条件というものは一体どうなっているのか。そして、この学園の実態といたしまして指摘をされておりますが、ジェットエンジンはスクラップである。製図のドラフターは高校の産振教育のために国庫補助を与えて買ったものが大学の方に転用されている。風洞実験装置は送風機の部分しかない。航空機の機体整備実習をやる場合でも、特殊の工具がないので実習はできない。教員組織も、実在をしていない教授があたかも実在をしているかのごとく掲げられているが、それは非常勤講師である。しかも、よい先生でも理事長の気に入らない先生は追い出して、一年契約の雇用形態をとっているために、先生方は文句も言えない。月に十万円の平均の給与しか支払っていない。実習をする場合には、近くにあります鹿児島空港の実習の施設を持っているところまで出かけていって、そこで教育を受けている。こういうようなことが指摘をされております。  私は、そういうような状態にある場合には、モデルスクール、モデルグループとして指定をされる場合には、運輸省の航空局としてはそういう実技免除にたえられるような学校の状態であるのか、教授はどうなっているか、そしてまた施設はどのようになっているのかということを実地の検討をした上で指定をされるのが、正しい教育のあり方に沿う道だ考えているのでございます。そういうような上から、どのような措置をおとりになって今日に至っているのか、私はこのことを率直にお聞きをしておきたいと思います。
  107. 官川晋

    ○官川説明員 ただいま先生の御指摘になりました指定航空従事者養成施設は、航空法第二十九条第四項に規定されておりまして、これによりまして指定校に指定されました場合は、国家試験、本校の場合は二等航空整備士でございますけれども、これの実技試験が免除されるということになっております。  ただいま現在におきまして九州学院大学が指定をされたという事実は全くございません。ただ、モデルグループとして四十八年十一月一日に、現在の四年生をモデルグループに指定いたしまして、過去約三回学科及び術科の試験を行っております。  それから、指定養成施設の指定を受けるという申請をうちが受け取りましたときは、書面及び実地につきまして、航空法第二十九条第四項及びそれに基づきます施行規則の五十条四項にあります教育者あるいは施設、それから教育課程、訓練課程、そういういわゆるハードとソフトにつきまして書面審査及び実地検査を行いますけれども、一番重要なのは、その後モデルグループを指定いたしまして、これは整備士あるいはその資格、あるいは学校教育課程の進行、いろいろ勘案いたしまして、通例二年数カ月にわたりましてこのモデルグループを設定してそれの教育課程を見て、そして航空従事者の国家試験が三月、八月、十一月と定期的に試験されますけれども、その際に、学力及び実地についてテストをして、果たして指定されるに価値があるかどうかということを判定した後に指定するわけでございまして、当校がモデルグループに指定されておるのは事実でございますけれども、指定養成施設にはまだなっておりません。
  108. 村山喜一

    村山(喜)委員 モデルグループには入っているようでございますが、ここのそういうようなコースを出まして国家試験を受けたのは、この前は四名、二回目は一人しか通っていない。通っていないのはどこに原因があるかと言えば、そういうような施設教育、教授内容にある。私は、学生の素質の問題も問題があるのではなかろうかと思っていろいろ調査をしてみましたが、この航空工学科の学生の場合には、きわめてユニークな学科でありますために、全国各地から優秀な学生がわりあいに来ております。私はそれを見ながら、その能力なり、あるいは学習に対する意欲なり、そういうような面から学生を責めることは間違いであり、そういうようなことに対してうそ偽りを天下に公表をしながら、みずからの教育、研究の充実は怠ってそして売名的な行為に走っているその責任こそ、まさに追及をされなければならない点だと思っております。その点で、この問題は一応問題点を指摘だけしておきます。  次に、参議院の文教委員会で問題として取り上げられました学債についてお尋ねをいたします。  民法に触れていなければ問題はないというふうにお答えになったようでございます。しからばお尋ねをいたしますが、ここの大学の場合にはどのような学債を発行しているか、現物をお調べになったことがございますか。出しておりますか。私が学生諸君から聞いたのでは、領収証しか出していないというように聞いておりますが、そのことについてお調べになったのであるならば明らかにしていただきい。
  109. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 昨日来の事情聴取の段階で、その問題も聴取いたしまして、私まだ詳しい報告を聞く機会を持っておりませんけれども、その問題を指摘いたしましたところ、関係の書類、領収証でございますか、そういったものを添えてまた次回に報告に来る、こういうことでございました。
  110. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは証書を渡していないようであります。したがいまして、領収書だけでございますから、返済の期限も書いてございません。したがいまして、民法四百十二条によりましても債権者としての権利行使ができない。言うならば借りっ放しの寄付金、横領、私はこの点は民法の上において触れるのではなかろうかと考えざるを得ないのでございます。ある催促をした者は返してもらっている、しかしながら催促をしない者、就職をした者の中には、一片の領収書でしかありませんから、金を返してくれという交渉をしなければ返してくれない。こういうようなずさんなやり方を認めておくということは私は私学のあり方として適正であるとは思えないのでございますので、民法に触れていない限りは文部省としては介入する意思はないようにお答えになっておりましたから、一体そういうような現物、証書を渡しておるのか、いないのか。そうでないと、これはそういうような形の中において返さなければ学債という名におけるところの詐欺横領である、そのことを指摘しておきます。  次に延滞金の問題でございます。納入の期日が一日ずれたら延滞金を五千円取る、これはどこに規定があるのかということで調べてみました。九州学院大学学費納入規程第十二条の二、「五十一年度より実施をする、」そこで授業料を含めまして学校に納付するお金を学生が持っていく、その場合に、納入期を一日切りましたのであなたのは延滞金を取りますと、延滞金を先取りいたしまして、そして授業料はその五千円分だけ少ない授業料の領収書を学生に渡しております。一体、この延滞金というのは、性格は何でありましょう。私は一種の過怠金だと考えるのでございますが、そういうような規定をつくりました際には、評議員会の議を経てそのような規定に基づいて処理をするということを入学いたします学生並びに父兄に通知をしなければならないものだと思うのでございますけれども、評議員会でそのようなことを決めた事実がございますか。学生並びに父兄に対してそのようなことを事前に通知をした事実がございますか。  なお、授業料の性格についてもお尋ねをいたします。
  111. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 ただいま御指摘の延滞金の問題、一昨日来の聴取の際にもその点を問いただしておるようでございます。そして一応の向こうの弁明は、ほかにも例があるからというような弁明をしておったそうでございます。しかしながらそれは、延滞金を状況によって取る場合があるのかもしれません。その辺の例を少し調べて持ってこいということと、それから実際にどういう取り方をしておるのかということをさらに詳しく究明をするということになっております。もちろん延滞金の取り方によりましては非常に不当な、前回参議院で御指摘になったようなやり方ですとかなり不当な面があると思いますので、この点につきましてはさらにその辺の材料を得た上で適切に指導してまいりたいと思っております。  それから理事会、評議員会の運営につきましても事情聴取をいたしまして、これはかなり問題がある点がその際に明らかになりまして、もう少しその辺の運営をしっかりするように指導をいたしております。  さらに延滞金の問題等につきましては、議事録を持ってくるように命じております。
  112. 村山喜一

    村山(喜)委員 授業料の問題でございますが、これは授業を受ける対価として支払いをする。ところが授業はやらない、その募集要綱に掲げられましたそういう教授がいない、中身がない。その場合に、その学生はそれだけの授業を受けないことになります。その授業をやらなかったという立場から、学生の方がむしろ反対に学校法人に対して給付要求する、そういうような関係に立つと私は思うのでございますが、まあその問題はさておきましても、次に、入学手続要項にないのに私学振興協力金は取れるのか、この点についてお尋ねをいたします。  というのは、中身がいろいろあるようでございます。二万円、三万円、五万円、こういうような形で、あなたは二万円、あなたは三万円、あなたは五万円、この基準も明らかでございません。なお、補欠入学者からは五十万円取っております。ところがこの学校はほかの大学と違いまして、二次募集をやります。二次募集をやりました合格者からは十万円取るのでございます。だから、補欠入学者からは五十万円取って、そして二次募集による入学者からは十万円で済ませる。一体その取り方は妥当なのであろうかということを学生が問題にいたしております。こういうような問題から考えまして、一体そういうような入学手続要領にない私学振興協力金というものを学校側が一方的に取れるのか、納めなかった場合には延滞金という形で五千円の過怠金を取る、こういうような経営が無造作に認められているところに今日の禍根の原因があるのではなかろうかと思っているのですが、これはどういうふうになっておりますか。
  113. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 学生から徴収する納付金につきまして、特に入学あるいは在学を条件とした寄付金につきましては、これを入学要項、募集要項にはっきり出して、初めから納得の上で取るならば取るということを強く私ども指導いたしております。もちろん、全く自由意思に基づく寄付を受け入れること、これは私学である以上当然のことであろうと思いますけれども、少なくとも募集要項にも書かないで強制的な形で寄付金を取るというようなことはよろしくないという方向で、一般的な私学を私ども指導いたしております。  いま、この坂元学園のやり方につきましては、御指摘のようなかなり問題点もございます。その点を一昨日来の事情聴取におきましても指摘いたしまして、さらに材料をもって十分に説明するようにということを命じております。
  114. 村山喜一

    村山(喜)委員 まだ具体的に取り上げてまいりますと、いろいろ人事の問題にいたしましても、免許を持たない講師というような人たちが大学、短大の先生でございますというような形で、その授業が行われているものや、あるいは入学のパンフレットにはこういうりっぱな先生がおりますということが掲げられているけれども、実在をしていない人物をそこに羅列をいたしまして、そして募集をしているという事実が具体的にはたくさんございます。ここに資料として名前も持っておりますが、それを一々取り上げる時間はございません。  そういうようなやり方に対しましても、皆さん方は一遍大学を認めてしまえば、後はほったらかしでいい、大学を今度は閉鎖するときだけが文部省の権限だ、こういうような形になされ過ぎているのではなかろうかと思うのでございますが、その間の指導等については、今日までどのような指導文部省としてはここにおやりになったのでありましょうか。  私もこの坂元学園については、高校設立以来から、短大設置段階から今日に至るまで、私学を育成をする立場で協力をしてきました。四十九年の学園紛争がありました際にも、これから先はガラス張りの経営をやり学園の民主化を図って、本当に学ぶ学生のための学園として育てていきたいという理事長の言葉によりまして、私も具体的に御援助を申し上げる手を打ったのでございます。しかしながら、理事長が学生を裏切り、先生方を裏切り、そして先ほど大臣に言われておるように、これは革新勢力、革新団体が自分を排除するために仕組んだ芝居であるかのごときことを言って当面の問題をごまかしていこうとする、その人間、しかも米国国際大学から学位を受けたとして法学博士の名前を詐称しながら学生に臨んでいるその姿を見ましたときに、一体これで私学の経営者として、また学長として、校長として、園長としてその責任を果たしているものであろうか、私は千三百の学生や生徒が学んでいる私学であるだけに、この状態を正常な姿にしていくためには、文部省がやはりその大学運営についての責任の一端を持っている立場から、これらの問題に対して正しく対処してもらわなければならないことを訴えているわけでございます。そういうような実在もしない架空の教授や助教授名をかりて、そして詐欺的な行為で募集をするというようなことを見逃したままで今日まで至ったということについてはまことに残念であります。その点についてどのような指導をなさってきたのか、承っておきたいと思います。
  115. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 大学の設置の認可をいたします場合に、もとより設置基準に適合しているか、そうして実質的にも大学教授にふさわしい方々が教員組織としてそろっているかどうかを、現地にも当たりましてチェックをいたします。そしてそれに従って認可をいたすわけでございますが、認可をした後は、その大学が卒業生を出す時点までの間に一度大学設置審議会の方でいわゆるアフターケアと称する実地の指導をいたします。その時点で十分整備をされていない点については指導をするわけでございますが、その後さらに大学局の視学員によって指導が行われる場合がございます。この大学も四十八年に視学員が一度視察をしております。そういった手続を経ながらも、御指摘のように当初教員組織として掲げられていた教官の中に事実上就任をしなかった者がいるという点は御指摘のとおりでございます。その点はきわめて遺憾であり、大学側に対しても改めてその点の注意をいたしておりますが、その事情とそれから今後の整備計画等を至急に提出をさせて、教員組織が一日も早くりっぱに整備をされるように指導を強めてまいりたいと考えております。
  116. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間があと五分しかございませんのでそろそろ質問の集約をいたしますが、この理事長は、自分に逆らう者、忠言を言う者は遠ざけ、自分のきげんを取る者だけを理事長の側近と称してかき集めて、労働運動に対しても弾圧をやり、組合の委員長の首切りをいまやっております。これは教育問題ではございません、一つの労働問題でございましょうが、今日この大学の問題はそういう労働問題だけではなくて、大きな社会問題にまでこの鹿児島の地域では発展をしているわけでございます。  そこで、私も国分の市長にもお会いをし、鹿児島県の知事にも要請をし、あるいは警察の方にも要請をし、そして理事長がたくらんでいる警察権力の導入や、あるいは革新勢力が後押しをしているからこんな状態になったのだというようなでたらめなやり方を、事実をもって、そうではないということを立証をするために努力をしてまいりました。そして、事の事実が明らかになるにつれて、全国の父兄会も新たに結成をし直しました。いままでの後援会と称する理事長のお声がかりの父兄会から、その新たな組織をつくり直しました。そして、今日の状態を、教育の不在を憂えている父母や、あるいは一日も早く解決をしてもらいたいという学生の代表が、本日上京をしているようでございます。大臣は、この父兄代表と学生代表にお会いになりまして、話を承られる所存だというようにお聞きをしているのでございますが、それらの声をお聞きになった上で、これから大臣を初め文部省が、この事実関係を踏まえた上で的確な措置を早急に打ち立ててもらう、このことなくしては、今日の九州学院大学の紛争を解決する道はないと私は思うのでございます。このままにしておくならば、第二の告訴事件、さらに次々に背任横領の刑事事件等が出てこないとも保証できないと私は思います。それは、不正の事実が明らかになれば明らかになるに従って、そういう容疑が濃くなってくると思うのでございます。そのときに、一体これから学園の体制を立て直していくためにはどうすればいいのか、それはいまの理事会なり評議員会というものが、私学経営の実態の上から見まして、寄付行為の上から見まして、機能していない、そこに問題があるということを第一に指摘をしたいと思います。そして、そういううそ八百で固めたような学校経営が行われていくならば、教育の場は失われていくということになります。したがって、経営と学校教育、研究、そういうようなものが分離された姿の中で、それぞれその立場に立って機能が発揮されなければならないというふうに考えるのでございます。そして、学生たちの勉強をする、研究をする学習権というものが保障をされるように、そしてその職場の中の近代化が行われる中で、労働権が確立をされて、きちっとした職場関係体制が確立をされる、こういうような状態がなければ、もう多くの人はこの大学を見捨てるでありましょう。これではよくないと思うのでございますが、私は、そういうような四つの角度から、この問題については考え方を立てるべきだと思うのでございますが、大臣が現在の時点において言える範囲内のことで結構でございますが、大臣の御所見を承りたいと考えるわけでございます。
  117. 永井道雄

    永井国務大臣 初めに申し上げましたように、この大学の問題は一種の社会問題であって、別に政争ということではないということについて村山、中馬両議員の御意見が一致しているということを承っております。そこで文部省としましては、先ほど申し上げましたように、係官を現地に送りまして、まず紛争といいますか現在ピケを張っている状況でございますから、このピケを張っている状況を解除して学園の正常化を図るということが第一に必要だと思います。こういう場合の学校の一番の問題は、学生諸君が単位が足りないい、卒業ができませんというようなことになってしまうといけませんから、それを第一義にしてまいりたいと思います。  その他の、先ほどから御指摘がございました入学案内書の問題あるいは寄付金等々の問題につきまして、また理事会の構成などについてはかなり構造的な問題でございますので、まず当面の問題を解決して、そして次に学校の体質の改善というものについて指導に当たりたい、こういう順で私どもはこの学園の問題に対処したい、かように考えております。
  118. 村山喜一

    村山(喜)委員 大臣、これは学生が学友会の名前で父兄の皆様に訴えた手紙でございます。「文部省調査団が学校へ来て調査した後は一応ピケは解除する計画です。」これは判こも打って、ちゃんと父兄の皆さん方に出している手紙です。きょう大臣は学生にもお会いをされるようでございます。その点もしかとお聞きをいただいた上で、やはりこの問題は学生にとりましてはきわめて不幸な出来事だと考えております。したがって、大学側がみずからの管理、運営の不正にかこつけて、学生に責任があるという立場で処分をするようなことになるならば、これは社会正義の上から見ましても、教育的な立場から見ましても許してはならないことだと考えます。私は、その点は、やはり文部大臣はこの学生の気持ちをおくみ取りいただいた上で善処されるであろうということを期待をしておりますが、この点について大臣の御見解を最後に承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  119. 永井道雄

    永井国務大臣 学生諸君が、文部省から調査団と申しますか係が参って解決に当たる場合にはピケを解除する、そして学園封鎖を解く用意があるという連絡がすでにありますので、これは本日学生諸君に会いましたときに確認をいたしたいと思っております。そして確認をいたしまして、確認に基づいて行動いたしたいと思っております。それが第一歩で、そして現地に赴きましてから、先ほど申し上げましたような他の問題に対処していくというふうに運んでいく考えでございます。  処分の問題は、名前が挙がっておりますのは「等」ということになっているので、もう一つはっきりしないのですが、名前が、固有名詞が二人「等」でございますので、二人以上なのだと思うのです。「等」ということになりますと具体的に何人で、どういう事柄であるかということは、現地に参りましてもう少し調査をした上で私ども考えを決めさせていただきたい、かように思っております。
  120. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、栗田翠君。
  121. 栗田翠

    ○栗田委員 私は、最初、障害教育の問題について質問させていただきます。  五十四年からの養護教育義務化についてはすでにいろいろと論議もされておりますし、私自身も、第七十二国会でもこの問題を取り上げて、二回にわたって質問しております。それで、この問題で永井大臣にお伺いするのは初めてですけれども、五十四年からの障害教育、養護教育義務化という問題は、憲法や教育基本法に保障されています、すべての国民にひとしく教育を受ける権利を与える、これを国が保障していくという立場に立ってやられていくものだと思いますが、まず、この問題についての大臣の理念と御抱負を最初に伺いたいと思います。
  122. 永井道雄

    永井国務大臣 養護学校義務化の問題でございますが、これが義務化されるというのは、まさに御指摘のように、わが国において義務教育が行われているわけでございまして、そこで、その対象から外されてきておりましたような方々に対して、そうであってはならないという趣旨から、五十四年の義務化をわれわれは目指しているということであると考えます。それが基本的な考え方であります。  そこで、それを実施いたしますために必要な養護学校というものを設置して、受け入れ体制整備する。これが第一点でございます。  第二点といたしまして、そういう対象児童生徒の保護者に対しまして、適正で円滑な就学指導を行う体制を私どもは準備をする。そのために政府といたしまして、特殊教育拡充整備計画というものをまずつくって、これを推進して今日に至ってきているわけでございまして、いろいろな財政上の問題等も生じてきてはおりますけれども、当初の計画に基づきまして就学指導体制整備をいたしてまいりたい。  第三点といたしまして、これを整備をいたしていく上で、各都道府県の果たす役割りが大きいと思いますので、都道府県と政府との間に十分な連絡調整を進めて、当初の計画を果たしていきたい。  理念並びに運び方について基本的に考えておりますのは、以上の点でございます。
  123. 栗田翠

    ○栗田委員 そういうお考えから進めておられることですし、これは全国の教育者、父母たちの願いでもあるわけですけれども、そうしますと、五十四年からの義務化対象というのは、当然その考えに沿って、いま外されております障害児たちをすべて対象にしていくというたてまえでやるべきものだと私は考えますけれども、現在義務化対象はどの範囲になっておりますでしょうか。
  124. 諸沢正道

    諸沢政府委員 五十四年度から義務制を実施するに当たって、その義務化対象になる児童生徒を幾らと考えるべきかということは、一つの予想の数字に立たざるを得ないわけでありますが、そもそも、四十七年から年次計画を立てまして養護学校設置するに当たって、どういう数字を基本にしたかということは、御承知かと思いますが、もう一度述べさせていただきますならば、まず障害児の出現率というもの、これは昭和四十二年度の調査による結果でありまして、その出現率というものを最重度、重度、中度、軽度というふうに障害の度合いによって分けまして、その出現率によって予想される数字のうち、養護学校教育対象にすべき人間として、現在の施設対象となっております三万三千二百七十程度子供を引きますと、残りが三万七千くらいになるわけで、その三万七千という子供を収容するのには幾つ養護学校があったらよろしいか。そこで、養護学校の一校の平均規模を百五十人くらいというふうに想定いたしますと、もう二百四十三校設置する必要があるという計画のもとに、この計画は出発したわけでございます。  そこで、基本になるその出現率というのはそもそも妥当なものかどうか、あるいはその出現率によって出た数字を重度、中、軽度というふうに分けるその仕分け方が妥当かどうか、あるいは現実に収容定員掛ける学校対象児童生徒数というふうに言うても、現実の学校配置その他でいろいろ不都合が生じないかどうかというような問題は、私はあると思います。しかしながら、計画を立てます限りには一応そういう計数を頭に置いてやらざるを得ないということで、今日まで各県教育委員会にお願いをして学校設置促進方を図ってきたわけでございます。そこで、現段階におきましては、そのような計画に乗りながらも、各府県の教育委員会において、現実を見た場合にこの計画どおりでいいのかどうか、手直しする必要があるのかどうかというようなことも含めて、各県の御意見を聞きながら進めておるということでございますので、私ども考え方としては、この計画の基本的な数字にはそう大きな狂いはないというふうに考えておりますけれども、なお個々の県の事情を見ながら、その事態に対応できるような設置計画を促進するようにしていきたいというふうに考えております。
  125. 栗田翠

    ○栗田委員 いまのお答えで一つ伺っておきたいのですが、最重度、重度、軽度というふうに出現率を出されて、それで掛け算をなさったわけですね。掛けて出されたわけですが、これ最重度を外してありますね。出現率は、精薄〇・一九五、病弱〇・〇五七、肢体不自由〇・一一九。この出現率は、最重度の分は外れた数ですね。
  126. 諸沢正道

    諸沢政府委員 ただいま説明を落としましたけれども、おっしゃるように、最重度という子供さんが二万六千人くらい出るであろうというふうな予想であって、これが計画の上では一応養護学校の正規の教育対象にはならないであろうという前提でございます。しかしながら、それが即実際にそうするということではないのであって、その内容に応じて、また在宅訪問指導であるとかあるいは猶予、免除の問題等、どの辺を考えるかというのはこれからの検討課題というふうに考えておるわけでございます。
  127. 栗田翠

    ○栗田委員 そうしますと、最重度二万六千人は学校建設計画には入っていないということで、それは私も、実際に学校までは通えない程度の重いお子さんというのはいらっしゃるわけですから、それを無理に学校施設へ運んでいかなければいけないということはあり得ないと思っておりますけれども、しかし、いまのお話ですと、最重度のお子さんたちを対象とした義務化計画というのはまだ余り煮詰まっていないわけですか。その中身を少し詳しくお聞かせください。
  128. 諸沢正道

    諸沢政府委員 その辺の細かい数字の詰めは、先ほど申し上げましたように、まだいたしておりません。ただ、現在約三十県足らずの県でいわゆる訪問指導というのをやっておりますが、その訪問指導対象になっておる子供が約七千ございます。そこで、その訪問指導のやり方等もこれからもう少し詰めなければいけないわけでありますが、たとえば学籍を与えて自宅において療養しながら勉強するというようなことも考えられるであろう、それからもとへ戻りますけれども、いまの最重度の出現率自体がそもそも四十二年の調査の結果による数字でありますから、それが全面的に信頼し得るかどうかということは、もう少し各県の実態等も見なければわからないというようなことで、その辺の要素を考慮しながらもう少し考えていきたい、こういうふうに思っております。
  129. 栗田翠

    ○栗田委員 私、いろいろ資料を調べてまいりましたらば、就学猶予、免除の児童生徒の数というものがなかなか正確につかまれていないということがわかったわけです。実際に猶予、免除を出しているお子さんもあれば、何も出さないで学校へも行っていないというお子さんもかなりあるように思うのですね。  それで、これは静岡県の統計などを見ましても、学校教育統計調査報告書という静岡県の統計課がつくっておりますので見ますと、その免除、猶予をされているお子さんが五十年の五月一日現在で五百八十七人となっているのです。ところが、都道府県議長会に出されている資料は百五十六人なんですね。大変差があるわけです。  これは国としてもこういうものをずっと統計していくわけだと思いますので、まず、国の統計では一体どちらを基礎としていらっしゃるのかということや、それから、こういうふうに差があるということは、事態の深刻さをあらわしていると思います。実際に教育委員会でさえつかまれていないで、学校へも行かないし、免除、猶予の願いも出していないという、全くそういう制度に触れないところにいる子供たちがいるということですね。それの今後の対策などはどうなさるのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  130. 諸沢正道

    諸沢政府委員 私どもの方で昭和四十九年度の就学児童の数を見ますと一万四千九百三十一人になっておりまして、これは毎年やります指定統計によっている数字です。おっしゃるように、現実の問題として、届け出をしない親等がいろいろの事情であろうかと思うので、その点実態と狂いがあるということは想定されるわけでありますけれども、さらばといってほかに適切な数字もございませんから、私どもとしては、この指定統計によりながら、なお客観的に見て修正し得るような要素が考えられますならば今後それを考えていきたいというふうに考えます。
  131. 栗田翠

    ○栗田委員 実際には、学齢に達したお子さんの数というのは、その年に入学のいろいろな手続がありますからわかるわけですね。それで、各学校に実際に入る子供の数というのもわかりますね。そうしたら、その差というのは、学齢に達しながら学校へ来ていない子供たちということになるのではないかと思うのですけれども、そういうものの統計が余りきちっとないようですね。その辺はやればできるのではないかと思うのですけれども、一体どうなっておりますか。
  132. 諸沢正道

    諸沢政府委員 いまの学校教育法施行令のたてまえからいたしますと、市町村教育委員会は、明年の三月に学齢に達して学校へ行く子供については、十二月一日現在で十二月末までに学齢簿をつくらなければいけない、そしてその学齢簿に基づいて身体検査をやって、入学の二月前までにはどこの学校へ行きなさいということを指定する、その場合に、身体の障害があって普通の小中学校に行けない方については学齢簿は県の教育委員会へ送る、こういう運びになっておることは御承知と思います。したがいまして、御指摘のようなことがありまして、若干の人間についてその届け出をしないというような事実はあるかもしれませんけれども、先ほど申しましたように、私どもとしましては、そういう事実と指定統計というのが合っているはずだ、こういうことで進めざるを得ないわけでございます。
  133. 栗田翠

    ○栗田委員 そうですね。  ただ、さっき申し上げましたように、静岡県の統計で言っても、つかまれているのは百五十六人、ところが、一方で学校教育統計調査報告書を見ると五百八十七人、同じ年の同じ日でなっているわけですね。大変な差があると思いますし、全国的な統計から言っても、推計された数字と——推計ですから正確なものではないとしても、それと実際に猶予、免除が出されている数というのはずいぶん差があるように思います。この辺は今後、そういう制度の光の当たらない子供のないような対策というのは十分にやっていっていただきたいと思うわけです。  次に、すでに学齢を超えているお子さん、十五歳を超えてしまっていて、いままで猶予、免除になっていたお子さんたちが、希望した場合に義務教育を受けられるようにすべきだと私は思いますけれども、この義務化についてはどのようにお考えになっているでしょうか。
  134. 諸沢正道

    諸沢政府委員 御承知のように義務教育というものは、制度上は子供の六歳から十五歳までの期間が義務教育期間ということになるわけでございますから、養護学校についても、義務制が施行になればその年齢の期間の子供さんはこれを養護学校就学させる義務を負うわけですけれども、その年齢を超過した子供については、これは制度上は義務教育を施す義務はないと思います。しかしながら、趣旨からいたしますならば、おっしゃるように、そういう子供さんも、希望するならばできるだけ収容するということで私どもは今後県の教育委員会指導してまいりたい、かように思うわけでございます。
  135. 栗田翠

    ○栗田委員 次に、学校施設の建設の問題でございます。  文部省からいただきました建設の実態状況の資料を見ましても、初めの四十七年、四十八年、四十九年ごろまでは順調に設置が進んで、計画よりも設置実数の方が多かったのですけれども、五十年になりましたら三十八校の計画数に対して実際に設置されたのが二十五校、十三校も計画よりダウンしているわけですね。五十一年の統計をまだいただいておりませんが、これもかなり減っているのではないかと思います。まず、五十一年の数をお聞かせください。
  136. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 御指摘のように、最近は地方財政の状況を反映してでもありましょうか、実際の設置数が減ってきております。五十一年度も、私立一校を含んで二十五校という一応の設置計画があるというふうに聞いております。したがいまして、計画数の三十八よりもやや下回っております。
  137. 栗田翠

    ○栗田委員 こういう実態なんですね。それで心配になるのです。五十四年が近づいてきますのにだんだん年度がたつにつれて、設置計画数が多かったからということがあるにせよ、非常にダウンしてきておりますね。一体五十四年に間に合うのでしょうかということです。まず、その見通しをお聞かせください。
  138. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 養護学校設置につきましては、私どもも、予算的にはこちらでは用意しておるのだからできるだけつくってほしいということで県当局と話し合って、できるだけそれを促進するように話を進めております。それで、私ども、恐らく義務設置の時期が近づいたときにかなり多量に出てくるのではなかろうか、その間近になって少し促進されるのではないかということを期待いたしております。それで、予算的には十分こちらで措置できるように準備いたしたいと考えております。
  139. 栗田翠

    ○栗田委員 問題は、期待だけでそうならなかったとき大変だということです。五十四年から義務化ということがうたわれて、みんなが期待しております。しかも、こういう形で政府が進めてきていて、もしできなかったらこれは文部省の威信にもかかわるわけで、早く手を打たなければいけないと思うのです。  それで、いま計画に対して建設が減ってきている原因というのは一体何でしょうか。
  140. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 やはり一番大きな原因は地方財政の状況ではなかろうかと考えております。
  141. 栗田翠

    ○栗田委員 実際、私もそうだと思います。そうしましたならば、いままでとられている補助金制度などについても検討したり、それから、いろいろネックになっておりますところを文部省としても十分に調査をして、いち早く手を打っていく必要があるのではないかと思うのです。私も、いろいろな地方財政の危機の状態の中でどういう状態が出ているかということも調べておりましたけれども、たとえばそういう養護学校建設を進めていくという中で、それもなかなかうまく進んでいないけれども、ほかにも財政的な問題でひずみも出ているというような例さえも聞いております。  これはことしの九月十二日静岡新聞に出ていた記事ですけれども、「地震におびえる不自由児」ということで静岡市内にあります県立聾学校、盲学校二校の状態が新聞の記事になっておりました。この静岡市内の盲、聾学校といいますのは、どちらも私も知っておりますが、かなりひどい木造校舎なんですね。そして聾学校昭和十九年に建てられておりますからもう三十数年たっているわけです。それから盲学校昭和二十三年ですからかなり長く、同じぐらいの期間がたっておりまして、県立の学校では最古だと言われている。文化財か何かになるならいいけれども子供が実際にそこで勉強しているのにこんなに古くなってしまってどうなるのだろうかと思うような建物なのですね。昭和四十三年に県が耐力度の調査をしましたら、すでにどちらも危険校舎だということが言われたのです。しかし、まだ建て直されていないわけですね。床はめくれていますし、柱は腐って壁と離れているし、目の見えないお子さんや耳の聞こえない不自由なお子さんたちがこういうところで勉強していたらば、健康なお子さんたちよりもいろいろな問題が起こって気の毒だなと思う校舎です。それが最近地震の問題が出てまいりまして、駿河湾地震などということも言われるようになって、一たん地震が起こったらば逃げる前に崩れてしまうのではないだろうか、特に体の不自由な子供たちを安全に逃がすのにどうしたらいいだろうかと父兄学校側も大変心を痛めているわけですね。ところが、県の側がどうしてこれが改築できないかといいますと、「危険であることは十分承知しているが、オイルショック以来の不況、高校増設、五十四年からの養護学校義務教育化に伴う校舎の新築などで財政的な窮地に追い込まれている現況から、直ちに改築することは難しい」と言っているわけです。結局こういうことで、片方で養護学校建設、それも全体としては思うように進んでいないけれども、ほかにこういう形でのひずみも出てきているという実態があるわけです。そうなりますと、養護教育義務化するということでいま進めているためにほかの盲聾の方にこういうしわ寄せが来るのも、これもまた障害教育義務化の精神に反するわけです。高校増設などにしてみましても、これもまた切実な要求ということになってきて、大変な実態であると私は思っております。文部省として具体的に早速手を打って、その事情などもお聞きになり、具体的な対策をお進めになる必要があると思いますが、その辺はどんなふうにやっていらっしゃるのでしょう。
  142. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 養護学校につきましては、御承知と思いますけれども、四十八年から補助率を三分の二にしております。したがってできるだけ県の負担が少ないようにということで措置しております。さらに来年度の予算要求の中では、指定都市の場合にも、実際はまだ指定都市自体は設置義務者にならないわけでございますが、そういう問題と切り離して実情に着目して、いまおっしゃったような財政的な問題を考えて三分の二の要求をいたしております。それから先ほどおっしゃいました盲聾につきましても、これは単年度で、補助率は二分の一でございますけれども、約八億円来年度要求いたしております。盲聾のあれについても進めてまいりたいと思います。  それからそれ以外に、実際に県が事業をしないときには補助金が下っても使えないということがあるかもしれません。その辺のことについてはまず事情をよく聞いてできるだけ進めるということが第一でございます。それで、何かそこに一般財政的な問題以外に特殊な事情があるのかどうか、これはよく調べた上で、もし何かあって有効な方法があればこれは考えてみたいと思います。
  143. 栗田翠

    ○栗田委員 各県からの事情聴取なども具体的になさる必要があると思いますが、その辺についてはいかがですか。私必要だと思いますが。
  144. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 すでに各県から事情聴取して、今後の計画などについても聞いております。そうしますると、しり上がりに県の計画は上がっているようにいま見ております。したがいまして、そのとおり行きますれば何とか間に合うのではなかろうかという観測もあるわけでございます。
  145. 栗田翠

    ○栗田委員 計画だけでなく、特に困難なところを解消していくという立場でぜひやっていっていただきたいと思います。  そしてその中で一つ、いま学校の建物の建設は三分の二の補助がされておりますけれども、土地取得について補助がございませんね。この土地問題で特に都市部などは非常に苦労をしておりまして、そのために建てられないというところもかなり出てきております。土地取得について補助をおつけになるような計画はございませんか。
  146. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 土地につきましてはそういう事情がありますことはよくわかるのでございますが、これはいわゆる非償却資産でございます。一度取得すればこれが永遠に価値を持つ財産でございますので、そういうようなことが主な理由となりまして、従来からこれは起債措置でやるという原則が立っております。それでその原則を破って補助金までということはなかなかむずかしい問題がございまして、ここのところしばらくの間は従来の起債措置の強化ということで進めてまいりたいと思っております。
  147. 栗田翠

    ○栗田委員 大臣に伺いますが、いま各県からの事情聴取もしていらっしゃるということでございます。土地取得についてもいろいろなたてまえはありますけれども、要は、さっきも大臣の御抱負を披露されましたけれども、いま障害児たちが本当におくれていた教育実態を取り戻して、どの子も教育を受けられるという権利が行使できるように保障をしていくことだと思います。そうなりますと、土地取得の問題を初めとしていま各県が持っていますいろいろな困難な問題、これを全力を挙げて打開していかなければならないと思いますので、その辺についての大臣のお考え、それからもし具体策があればそれをお述べいただきたいと思います。
  148. 永井道雄

    永井国務大臣 具体策につきましてはただいま管理局長申し上げたとおりでありますが、確かに何といっても隘路は地方財政の逼迫ということでございます。そこが一番の隘路であるということは万人の認めるところでありますので、その間にあって私どもは全力を挙げて目標を達成いたしたい。なお、いままで申し上げた具体策以外によい方法を見つけ得る場合にはもちろんそうしたものを見つけて、目的の達成というものを是が非でも実現いたしたいと考えております。
  149. 栗田翠

    ○栗田委員 次に、学校建設もさることながら、先ほどの学校へ通えないほどの重度のお子さんたちのための施策というのもあわせて進めていかなければならないと思うのですけれども、その一つとして施設内学級の拡充ということがどうしても必要だと思います。私は四十九年四月二十六日、七十二国会で定数法の改正が審議されていましたときに、施設内学級の問題でちょっと質問をしたことがあります。いままでですと、収容施設などの施設内学級は学校特殊学級というような形で位置づけられている場合が多くて、そうしますと、先生の配置定数が養護学校より非常に少なくなるわけですね。ところが施設内に入っているお子さんというのは、養護学校へ通っているお子さんより重度の場合が多いわけでして、不合理ではないかということをそのとき指摘いたしました。そのときに岩間政府委員の答弁として、確かに指摘のような問題があることを感じているので実態に即するように直していきたいという御答弁をいただいております。その後これは検討されておりますでしょうか。特に今度の義務化に伴って施設内学級の拡充をしていく場合に、養護学校の分校という形で位置づけるべきだと私は思いますけれども、その辺はどんなふうに御検討は進んでおりますか。
  150. 諸沢正道

    諸沢政府委員 現在の特殊学級の一学級の学級編成は、現在の第四次定員改定計画では十三人を十二人に増しておるわけでございます。そして特殊学校につきましては、御承知のように通常の学級は一学級八人、それから重度重複障害の場合は五人というふうになっておりまして、御指摘施設内学級が一体どっちと考えるべきかということになりますと、確かに中度、重度の相当重いお子さんを収容している場合もあるわけでございますから、これは今後の検討課題としては改善考えなければいけないのではないかというふうに私は考えております。ただ、御承知のようにこの五カ年計画は五十三年までで一応終わることになっておりまして、この計画を、次の年次計画を五十四年度から立てることになりますので、そのときに当たりまして十分検討をしたいというような心組みでいまおるわけでございます。
  151. 栗田翠

    ○栗田委員 もうすでに、二年前にも検討のお約束がありまして、そしてこれは必ずしも義務化してからという問題ではないはずです。現在もう施設内学級があって、そこに先生が配置されていて、そこで実際に教育をしていく上で十三人とか、いま十二人というような数になってきますと、教育が十分できないし、先生方のいろいろな職業病のようなものも出るような実態になっているから、早急にこれはやっていただかなければならないのです。二年前に検討のお約束をいただいて、また五十四年とかというのでは、これは余りにのんびりしていらっしゃるし、当時のお答えはどうなったのかと思いますが、そういう点では早急に進めていただきたいと思いますが、その辺の御決意をもう一度伺いたいと思います。
  152. 諸沢正道

    諸沢政府委員 私がいま申し上げましたのは特殊学級における場合の改善の案ということで申し上げたわけでございますけれども考え方としては、それをそもそも普通公立小中学校特殊学級として置くのがよろしいのか、あるいは養護学校の学級の分室として考えるのがよろしいのかというような制度運用の面から検討すべき課題でもあるかと思います。そこで、そういう点につきましても、先般来の事情聴取において各県から意見を聞いておるところでございます。その前に、もちろん市町村学校と県立学校という設置者の違い等も出てきますので、いろいろ検討すべき課題もございますけれども、早急に考えなければならないような場合においては、いま申しましたように、その学級のあり方を特殊学校に移すというようなことも一つ考えられるのではなかろうかというようなことで、その点についても検討したい、こういうふうに思っているわけでございます。
  153. 栗田翠

    ○栗田委員 学級のあり方を特殊学校に、つまり養護学校に移すということですね、いまの場合。
  154. 諸沢正道

    諸沢政府委員 はい。
  155. 栗田翠

    ○栗田委員 早急に御検討をお願いしたいし、実施をしていただきたいです。言うまでもなく、幾度も繰り返しますが、養護学校に通っているお子さんたちよりも重度の場合が多いのですから、それはもう当然なことだと思います。大臣いかがですか、私の言っていることはごくあたりまえのことで、これは早急にやっていただかなければならないと思いますが、お考えを伺いたいと思います。
  156. 永井道雄

    永井国務大臣 実は先々週の日曜日、山梨県ですが施設に参りまして、そこの学級も見てまいりまして、お説の点は非常によくわかります。そこで、そういうところの先生の数をふやさなければいけない、また、これは具体的な問題になってくるわけですが、いま初中局長が御答弁申し上げたのは一つの方法であろうかと思います。
  157. 栗田翠

    ○栗田委員 次に学校建設に伴うその他の施設の問題ですけれども養護学校の場合、これは学校だけぽつんと建てて済むものではないと思います。これは、いまのように対象の範囲が広がっていけば一層その必要が出てきますけれども、たとえばすぐそばに付属して病院の施設がある必要もありますし、それから、いまの実情では県下に幾つかあるという状態ですから、通うのに大変不便をしております。当然寄宿舎の必要も出てくるわけです。それから、学校の中にたとえばいろいろな、理療士だとか訓練士だとか、そういう方たちも置く必要があるのではないかと思うのですね。これは文部省関係だけでなく、かなり厚生省の協力をいただいてそういうことを実施していかなければならないと思います。たとえばその病院の併設の問題なのですが、私は、学校を建てるだけでなく、こういうことを総合的にいまから計画的に進めていく必要があると思いますが、文部省としてはどんな対策をお持ちなのでしょうか。
  158. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 文部省の方で考えております施設の面から申し上げますと、養護学校の標準的な十八クラスの一校の面積、これは予算の積算にございます面積の中で、寄宿舎の分を、精薄につきましては二百九十四平米、それから肢体不自由児に対しては五百二十六平米、それから病弱児につきましては百五十五平米、これだけの分を見込んでございます。病院その他となりますとちょっと文部省所管ではむずかしいかと思いますけれども、寄宿舎の点ではこういう配慮をいたしております。
  159. 栗田翠

    ○栗田委員 特に病院が併設されていく必要というのは、子供たちの障害の状態から見てもずいぶん必要だと思っておりまして、これは所管は違いますけれども、やはり文部省として厚生省に協力を依頼されて、そしてそういう形で総合的に進めていくような努力をなさるべきだと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  160. 諸沢正道

    諸沢政府委員 おっしゃるように、確かに特に病虚弱の子供の場合等、病院が一緒にあるということが非常に大事な要件になります。そこで私どもといたしましても厚生省と今後さらに連絡をしてそういう方向で当然やっていかなければならぬと思っております。ただ、特殊学校をつくるということは一つの行政目的でありますが、同時にまた、病院は病院としてのその目的を持って設置するわけでございますから、その辺のところは現在各県の事情聴取もいたしておりますけれども、相互に協力するという立場でやっていくべきものというふうに考えてお願いをしているところでございます。
  161. 栗田翠

    ○栗田委員 次に通学手段の問題ですけれども、大変通学をするのに苦労をしまして、そのために、せっかく学籍を持ちながら、一度学校に通いながらやめていったお子さんたちの例なども出ているわけです。この通学手段というのは、国としてもいままで付き添いの足代ですか、こんなものまでは出されているというふうに聞いております。ところで一つこういう例があるのです。静岡県の浜松市にあります西部養護学校、ここで遠足に行くときにはマイクロバスに子供たちを乗せていきます。肢体不自由児ですから車いすに乗っているお子さんがたくさんいるわけですね。そこでマイクロバスの後ろにトラックを続けて走らせて、そこに車いすを乗せて、そして目的地まで行って車いすをおろすというようなことをやっているのだそうです。ところが、マイクロバスの方の費用は遠足の費用として出るのですけれどもトラックの方は全く予算化されていないわけですね。遠足というのは学校教育の中の一つの重要な一環でして、そういうものについて、必要欠くべからざるものであるにもかかわらず、車代も出ないし燃料代も出ない。父母が努力をして自分たちでチャーターしたり持っている車を提供したりということをやっています。こういうことについても国としてはやはり予算的に配慮をしていっていただきたいと思いますが、こういうことについて配慮をお願いしたいのですが、いかがでしょうか。
  162. 諸沢正道

    諸沢政府委員 いま御指摘のようなケースがどのくらいあって各県なり学校でどういうふうに処置をしているかということを、私申しわけありませんがよく存じておりません。ただ、お話を承りますと、そのような場合にトラックの経費を、仮に見るとしても何の経費で見るか、修学旅行の経費で見るのかあるいは校外活動での経費で見るのか、あるいは学校教育活動一般を見ますところのいわゆる校費、庁費のたぐいをもって見るのかというような問題もあるかと思います。そうしまして、この子供さんの経費として見る場合には、いまの修学旅行費その他、かなり細かにいろいろの予算を計上して実施をしておるところであり、また学校運営全般の経費として見る場合には、当該施設者においていろいろと配慮をしておる、こういうことでありますので、いまの御指摘の点、具体的にお答えできないのは申しわけありませんけれども、できるだけ子供がそういう場合にも負担が過重にならないで活動ができるようにということを考えながら、国の立場においてはいまの各種の修学奨励費の増額、充実というような点で努力してまいりたいと思うわけでございます。
  163. 栗田翠

    ○栗田委員 次に、訪問指導員の問題について伺います。  重度のお子さんたちにまで教育を受けさせていくということになれば、当然訪問指導員の充実をしていかなければならないし、いまの現状改善ということが必要になると思います。この訪問指導を行っている指導者の状態ですが、文部省からいただきました資料を見ましても大変いろいろなあり方があるのですね。教員として常勤の教諭の場合もあるし、非常勤で学校に籍を置いていらっしゃる場合もあるし、それから教育委員会指導員になっていらっしゃる、学校には籍のない場合、いろいろあるようです。特に数として見ますと、教育委員会指導員として非常勤になっていらっしゃる場合が一番多いようですね。それで、この訪問指導員の待遇ですけれども現状はどんなふうになっておりますか。
  164. 諸沢正道

    諸沢政府委員 訪問指導員もいま御指摘がありましたように、大要としては大きく分けると三つになるわけでございますけれども、学籍を持たして指導をしている場合には、大体常勤の先生が当たるということになっておるようでございまして、そうでなしに、いわゆる非学籍のまま巡回指導をする場合には、教育委員会の職員あるいは学校の非常勤の職員等が主として当たっておるという実態のように私どもは把握しております。  そこで、その待遇がどうかということでございますが、常勤の先生については申すまでもございませんけれども、非常勤の教育委員会ないしは学校の職員につきましては、これは非常勤職員一般の給与の例にならって、時間単価をもって積算されておる、こういうふうに心得ております。
  165. 栗田翠

    ○栗田委員 非常に県によっては違うと思いますけれども、全般的に見まして学校に籍を置かない教育委員会指導員は、非常に低い条件で指導に当たっておられる例が多いようでございます。私はこれは静岡県の例として調べてまいりましたけれども、非常勤の場合には時間単位千三百十円の報酬なんですね。時間給です。そして、一回に二時間ぐらい、一人のお子さんを週二回ぐらい教えてやっているのでしょうか。こういう状態で、週六十六時間を超えない指導ということをやっておられます。そうしますと、たとえば一人のお子さんに対しまして二時間づつで一カ月やったとしますと、週二回ですから、二時間を一回として週二回、だから週四時間です。そして二カ月を指導しますと八万三千八百四十円ぐらいしか報酬が出ないわけですね。こうなりますと、何人か持っておられるとしますと、大変報酬としては低い状態になっておると思います。特に非常勤、学校に籍を持たない非常勤の方たちは、健康保険、ボーナス、退職金などという普通保障されていますこういうものが全部ついていないのがほとんどです。ですから、大変身分も不安定で、多くの方は、教員であった方がお年をとられて退職をされて、それからこの訪問指導員になっている場合というのが多いのですね。ところが実際にはこういう重度の障害児を教えるというのはなかなか大変なことで、また体力も要る。しかし、こういう状態で教育をしている場合には、言ってみれば、教育の初めから手を抜いている。その教えている方が抜いているのではないですよ。待遇の方がほどほどでよいわという形で待遇しているとしか私には思えないのですね。実際に当たっていらっしゃる方たちというのは苦労をしてこの子をよくしようということでずいぶん努力をしておられます。しかし、実際にこういう待遇でしか保障されていない実態というのが非常にたくさんあるように思います。  片方で京都府などの例を見ますと、これは訪問指導員というよりは派遣教師制度とでも言った方がよいようなやり方をしていて、その訪問指導を希望するお子さんたちすべてを対象にして指導員が配置されていて、先生は必ず学校に籍を持って養護学校の教諭としてやっておられる、お子さんたちにも学籍を持たせておる、こういう状態のところも私の調査であるということがわかりました。  義務化に伴いまして学校の建設は進んでおりますけれども、同時にあわせて学校に通えない重度の障害児で、しかし教育を受けたいと希望している方たちはたくさんあるので、こういう訪問指導員の待遇も改善し、子供にも学籍を持たせて、そうしてどこかの学校にちゃんと何年生というふうに位置づけて指導をしていく必要があると思います。しかもこれは五十四年から急にやったのでは間に合いませんから、できる限りいまから充実させていく必要があるのではないかと私は思うのです。その辺について文部省としてはいまどんなふうにやっていらっしゃいますか。
  166. 諸沢正道

    諸沢政府委員 ただいま御指摘の一時間千三百十円というのは、これは率直に申しますと、私どもが積極的にその単価でやりたいというよりも、現在その場合に限らず非常勤の、大体学校の講師でございますね。そういうものの地方交付税法上における積算もそういうように統一されておるものですから、大体それに一致せざるを得ないというような事情にあるわけでございまして、そのことは、言ってみれば非常勤講師全体の単価の引き上げを今後努めていくべきことだというふうに私ども考えておるわけでございます。  そこで、いま御指摘のように、そういう訪問指導の教師の身分を常勤のものとすべきかどうかというのが一つ課題でございます。そうしてまたその訪問指導対象となる子供に学籍を持たせるかどうかということも一つ検討課題でございまして、義務化という前提に立ちました場合、私どもいろいろと検討もし、いろいろな方の御意見も聞いておるわけでございますけれども、やはり相当の者については学籍を持たした方がよくはないかという御意見でございます。そこで、そういうことを踏まえながらいま速急に結論を出すべく検討しておるということでございますので、少し検討の余裕をいただきたい。
  167. 栗田翠

    ○栗田委員 ぜひそのような方向で、先生方も安定した身分で、しかもしかるべき報酬も保証されて、子供たちも学籍を持つような方向でぜひとも進めていただきたいと思います。  いかに障害児の父母たちが子供たちの教育について考えているかということや、学籍を持たせたい、そうして本当に持っている能力を伸ばしたいというふうに望んでいられるかという実態を私は各所で見聞きしております。先日も国立東病院というのが静岡市内にありますけれども、そこで父兄の方たちにお会いしました。ここでは東病院に入院している——ここは重度の障害児者の施設ですけれども、百二十三名のうちでいま義務教育の学齢内にあるお子さん五十八名おりますが、学籍を持っておるお子さんが七人いるのですね。ところがこの七名学籍はあるのですけれども、実際には教育を受けてないのです。学籍だけある状態ですね。しかもいままで訪問指導を受けていた人でも、施設に入ったことで訪問指導が打ち切られているのが実態になっております。いろいろな方たちのいろいろな例を私は聞きました。そうしてこれはこれはと思うことがずいぶんありましたが、その中のほんの一つだけを申し上げておきます。  実際に障害教育実態が末端ではそういうふうにもなっておるという実情としてお話しますけれども、これは若い未亡人の話だったのです。そのお子さんは、学齢前から養護学校幼稚部に通っていまして、そのころはお父さん、お母さんともにそろっていたわけです。お母さんが障害児である子供の養育にその全部をかけて、その子供幼稚部に通わせていたわけです、連れて、帰っていました。かなり重度なお子さんですけれども幼稚部へ行っているときに、ぼくは勉強しているのだというので、座ることもできない重度の障害児ですけれども、特殊な囲いのあるいすに座って本当に一日一生懸命にやっている。そして、養護学校にも学齢に達して入学してからも、学校にいるときは、非常な苦痛の中でも、勉強しているのだということで、そのお子さんは生き生きと目を輝かせていたそうです。そして、教育効果というのも大変上がっていた。ところが、お父さんが亡くなられて、お母さんが子供につきっきりになっているわけにいかなくなりまして、仕方なく浜松市の天竜荘に入れたわけですね。この施設の中では学籍を持っていて、浜松養護学校から、学校に籍を置いた先生が訪問指導員として派遣されてきていたそうです。それで、教育を受けていたわけですね。ところが、その後お母さんの住んでいるところに近い静岡の東病院に移ったわけです。そうしたら、ここで切れてしまった。学籍をなくさないでほしいということで、お母さんが大変熱心に教育委員会へ行ったり、それから中央養護学校へ行ったり、いろいろな手だてを尽くすわけですけれども、なかなか進まないわけですね。それで、最後にどういうことになったかといいましたら、親が余り熱心だから一応学籍だけは、親の熱心さに負けて特例として置いてあげる、しかし、訪問指導などはあきらめてほしい、そして行事等にはできるだけ登校してそれなりの誠意を見せてほしい、こういうふうに言われたわけです。しかも、これも約束だけで、実際には、では学籍を浜松から移すという努力もちっともされない。そして最後に、幾度か交渉をし話もしていった結果、出てきた県教委側の回答というのは、気持ちはわかる、障害教育の問題善処したいと考えるという、大変抽象的な答えで、しかも電話で、就学の猶予か免除の願いを出しなさいと、こうなったわけです。  これなどかを見て、私はこのお母さんの話を直接聞きまして、ほかの親御さんたちもみんな似たり寄ったりの状態だというのですが、猶予、免除というのがこういう形でとらされるということは、本当にがまんがならないわけです。実際にいままで学校に行っていて、学籍があって、そのお子さんが教育効果があって、子供自身がぼくは勉強しているのだと言って大変一生懸命やっていた。それを施設に入れて、指導員の数が足りないから、それで、あなた施設に入っているのだから猶予、免除どっちか出しなさいと言われた、このお母さんは抵抗してまだ出さないのですね。籍だけあるのです。籍だけあるけれども、実際には籍があるだけだという状態になっているわけです。ここの国立東病院はわかくさ会という父母の会をつくりまして、まずこの七人の学籍のある子供たちに教育を受けさせること、それから学籍はすでになくても、教育を受けて伸びる可能性のある子供、みんないるのですから、そこに教育を受けさせたいという運動が進みまして、いま陳述が繰り返しやられているという実態です。静岡県当局も、この熱意に動かされて、やっと最近県議会で、試験的に訪問指導をやってみましょうということを言っているのだそうです。しかし、これは教育を受けられる範囲だとか可能性だとかという考え方になってくるのですね。一体障害教育はどうあるべきか、学校子供を合わせて、たまに学校へ出てきて、それでは誠意を見せなさいなどということでよいのか、そうでなくて、子供障害に合わせて教育というものがあるべきなのではないかと私は思います。これがいまの実態でございます。こういう実態の中で、いま障害教育が期待されているその広さ、深さというのは実に大きいし、また親御さんたちの願い、子供の願いというのがずいぶん深いものがあるのだということを私は繰り返し各地で見聞きしてきているわけですね。だから、そういう立場で本当に、大蔵省などなかなか動かないと思うのですけれども文部省としてはこの教育を進めていくために予算もとり、制度も、たてまえではなく、実質的に進めていくような形でのあらゆる努力をやっていただきたいと私は思います。この中で適正就学指導委員会などの問題もありますけれども、時間がありませんからきょうはその点は省きますが、こういうたくさんの子供たちと親御さんたち、そして厳しい条件の中で教育を続けようとしている先生たちや施設の職員の方たちというのがあって、その願いが込められているということでございます。大臣、その点でどうぞ文部省挙げてがんばっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  168. 永井道雄

    永井国務大臣 私も、たくさんではございませんが、特殊学級学校施設に参りまして、栗田議員が言われますように、何といっても一番の問題は障害児の必要に合わせた教育制度をつくることだと思います。また他方、そういうところで働いておられます先生方にお目にかかりますと、先生方もなかなか一生懸命にやっておられるのですが、制度的にうまくいかないところがあるというようなこともいろいろ承っております。  そこで、われわれの目標といたしますのは、何と言っても義務化というのは、これは大黒柱のようなもので、これを打ち立てなければいけないわけですが、それですべてが足りるわけではなく、まさにいま御指摘のように、たとえば御両親がそろっておられるときから未亡人になられますと、状況は変わってくる、そういうものをどうするかということもあるし、それから訪問教師と施設との関係、それから先ほどお話しのように病院と学校との関係等いろいろありますので、こうした事柄について実は先般も参議院でお話が出たわけでありますが、文部省も厚生省と相当連絡をいまもいたしておりますが、一層強化していくということが非常に必要なことの一つであると思っております。完全な理想的状態というものにはなかなか到達しにくいと思いますけれども、個々具体の問題に対応いたしまして、でき得る限りやはり一番必要な人の要求というものに応ずるように努力をいたしてまいりたいと思っております。
  169. 栗田翠

    ○栗田委員 それでは、障害教育の問題はこれで終わりまして、次に大学問題を少しやらせていただきます。  大学の予算不足というのは以前から言われておりまして、私大の危機を初めとして国立大学も大変危機状態になっております。ただ、全部これをやっておりますと大変なことですから、きょうは当面の緊急の課題について質問をさせていただきたいと思います。  国立大学の教職員の旅費ですが、研究旅費予算が五十年度に比べて五十一年度は〇・一%たしか減っているのです。こんな中で非常に旅費が苦しい状態になっております。ところで、まず伺いますが、この研究旅費の額というのは非常に複雑な決められ方をしていると思いますが、どんなふうになっていますでしょうか。
  170. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 御指摘のように、本来研究旅費でありますから、博士講座の場合も修士講座の場合も学科目の場合にも、教授であれば同じ単価であることが相当であるというふうに考えますけれども、実際には修士講座と学科目制の教授の場合と博士講座の場合の教授の単価とは違うというような形で決められております。
  171. 栗田翠

    ○栗田委員 大変細かい配慮といいますか不合理な差といいますか、そういうのがあるのにもかかわらず、また大きいところで抜けているような気もするのですが、大学の職員の旅費というのは、これはどうなっていますか。
  172. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 一律の単価による積算にはなっておりませんで、会議出席旅費であるとかあるいは研修会の出席旅費であるとか学内の連絡旅費であるとか、それぞれの事項に応じまして所要の経費を計上しておるわけでございます。
  173. 栗田翠

    ○栗田委員 そういう中で実態は非常に大変なことですね。いま所要の額を計上しているとおっしゃるのですけれども、実績に沿って出ているわけでないために大きな不足というのがあるわけです。そういうものは大学によって違うと思いますが、学校によっては全部の旅費プールされて、それから使われていくわけですね。そうしますとどんなことになるかと申しますと、これは、特に講座制の大学などの場合は多少いいのですけれども、地方大学であき定員のないところ、こういうところは先生の数ぴったりしかその旅費が来ないわけですから、余裕がないわけですね。これがどんどん足りない分が必要に応じて使われてまいります。いま学会というのは年に平均二、三回はあるわけで、必ずしも東京でやられるとも限らない。先日のように九州の方でやっていることもあるし、東北でやるということもあります。そうしますと旅費だけで、宿泊費なども含めて一回二万円から三万円ぐらいは飛んでしまうというのがいまの実情ですね。こういう中で大学職員の旅費というのも実は非常にかかっているわけです。  私、静岡大学の例を挙げてみますと、静岡大学の工学部は浜松にあります。本部は静岡にあります。本部会議を開くだけで職員は行ったり来たりしまして、これで結構旅費がかかります。事務職員の研修費というのもかかります。こういうものが全体のプールされた中から引かれていくわけですね。それから学長、学部長、事務長などの出張の経費もかかっていくわけです。静岡大学の人文系の例を一つ挙げてみますと、先生たちの基準旅費、そして四十八人の人数を掛けまして、そこからいま言った事務職員の旅費とか学部長旅費、教務出張の旅費、校外実習の旅費というものを既定の分だけずっと差し引いてまいりますと、残ったのを教授、助教授、講師それから助手、これに分けますと、一年間で一人二万五千円ぐらいにしかならないのです。こうしますと、一回学会なり何なり行きますともうなくなってしまって、あとの分は自費で出さなければならないというのがいまの本当の現状なんですね。こういうことでございます。この現状は御存じだと思いますので、こういう中で予算そのものはうんとふやしていただかなければなりません。概算要求ではことしよりはかなりふえているようですけれども、まだこういう現状であります。当面私たちは反対しておりますが、いま政府は国鉄運賃の値上げをしようと一生懸命やっています。こういう値上げをしたら大変な負担がかかってくるということがわかるわけですけれども、万一値上げされた場合、これは五割以上の値上がりになります。現在でさえこういう実態であるのに、運賃が値上げされたらどういうことになるだろうか。学会なんかに行かなければならないものもまだまだずいぶんあるということですね。当面こういう値上げをさせていく以上、補正予算を組んで、運賃値上げ分に見合うようなものを旅費の中でふやしていく必要があるのではないか、これは切実な要求になっております。こういう補正予算を組む必要があると思いますが、いかがですか。
  174. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 旅費あるいは光熱水料について各大学においてそれぞれ不足の状況があるということは承知をいたしております。各大学によってそれぞれ事情を異にしますので、各大学から十分に事情を聴取をして、私どもは既定の経費の中で的確に対応をいたしてまいりたいと考えております。
  175. 栗田翠

    ○栗田委員 国鉄運賃が上がることを予想してことしの旅費予算を組んでありませんね。いかがですか。
  176. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 予算の積算の内訳としては、一応の値上がりの見込みはあるようでございます。ただし、その実行についてどのように対応していくかというのは、先ほど申しましたように各大学の事情を聞きまして、その不足分について既定予算の範囲内でどのように対応していくかということになるわけでございます。
  177. 栗田翠

    ○栗田委員 おかしいですね。物価が上がっていますのに、五十年度に比べて五十一年度は大体研究旅費は一%減ているのですよね。それを国鉄の値上がり分も予想して積算してあるとおっしゃるのですけれども、今年度はさようなものは入っていませんでしょう、減っているのですから。
  178. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 教官研究旅費は、単価の改定につきましては五十年度の補正後の八%増ということになっておりますので、前年度より減っているわけではございません。
  179. 栗田翠

    ○栗田委員 ですけれども、去年の補正より減らされているのですね。五十年度の初めと五十一年度の初めを見ますと減っていますね。
  180. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 ほぼ同額でございます。
  181. 栗田翠

    ○栗田委員 〇・一%減っております。〇・一%減っているのがほぼ同額ということになるのかもしれませんが、減っています。ですから値上がり分を考慮しているとは言えないですよね。そうじゃありませんか。あと補正で八%ふやしたとおっしゃったけれども、最初が五十一年度の当初予算より減っているのです。ですから既定内でやれとおっしゃっても実際無理ですね。ただでさえ十分でない大変不足がちな研究旅費が、いままたもし五割以上も値上がりした場合には、足りないのは目に見えているのです。それじゃみんな教官の方たちが自費でやらなければいけないというたてまえになってしまうわけですね。矛盾しておりませんか。やはりこれはふやす必要があると思うのですが、いかがですか。
  182. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 基準経費全体について問題があるわけでございます。基準経費全体の中で各大学の不足の状況というものを考えまして、そして既定経費の中でのやりくりを考えるということでございます。
  183. 栗田翠

    ○栗田委員 そうしますと、旅費は足りないけれども、ほかの大学の予算の中でやりくりせよということですか。
  184. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 一つ一つの大学の中でやりくりと申しますよりも、国立学校特別会計全体の中で私どもが各大学の実情を聞いてやりくりを考えるということでございます。
  185. 栗田翠

    ○栗田委員 そうしますと、補正予算は組まないけれども、全体の中で文部省としては手を打っていかれるということですね。
  186. 登坂重次郎

    登坂委員長 ひとつ結論を願います。
  187. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 そのとおりでございます。
  188. 栗田翠

    ○栗田委員 具体的にはどこらを使われるのかということですが、いま省内調整費というのがありますね。普通とめ置き分と言われているのですが、これは文部省どのくらいいま省内調整費としてとめ置いていらっしゃいますか。
  189. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 予算執行上、不測の事態に対応いたしますために若干の金額を配賦の際に留保しておくということはあるわけでございます。
  190. 栗田翠

    ○栗田委員 どのくらいかと申し上げているのですが、はっきりお答えになりません。お答えになれませんか。
  191. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 その時点時点で異なるわけでございますし、いま資料を持ち合わせておりませんので、失礼いたします。
  192. 栗田翠

    ○栗田委員 私などが聞くところでは、一〇%くらいあるというふうに聞いておりますけれども、いま首を振っていらっしゃる方もあるから、それほどないということですか。でも相当額ありますね。五%でも三十億くらいありますし、不測の事態、国鉄運賃が上がったとかいうのは不測とは言えないでしょうけれども、これから上がる、私たち上げたくないのですが、上がった場合には当初予算になかった事態ということですね。そうしますと、この旅費の不足分などはそういうところから何とか手だてを講じていらっしゃるということでございますね。
  193. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 何とか工夫をしてやりくりをいたしたいということでございます。
  194. 栗田翠

    ○栗田委員 集中講義などで他の大学からいらっしゃる方の旅費も同様ですが、これは同じようにやってくださるものと思います。  最初お答えがありましたように、いま旅費の額が講座制、修士講座制、学科目制で細かく分かれております。何でこんなことをするのかということですね。なぜこれは違うのですか。
  195. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 これはまさにこれまでの沿革、経緯があってのことだと思います。ただ考え方としては、さっき申しましたように、同一職種の単価は同一であった方がよろしいというふうに私は考えております。
  196. 栗田翠

    ○栗田委員 そのお答えを伺いまして、ぜひともそういうふうにしていただきたいと思います。また概算要求を見ましても「学科目制単価等を講座制単価に改定」というふうに書いてありますが、中身を見ると完全には一致してないようですから、これはできるだけ早く改定をしていただいて、余り説明のできないような差はなくしていっていただきたいものと思います。  では、時間がなくなりましたので、あと一つだけ伺わせていただきたいと思うのです。  いま私立大学で非常勤講師が非常に多いのですね。私の調べましたところ、依存率が平均して約四七%、ですから五〇%ぐらいになるのですね。法政大学などは六七%ぐらい依存していますし、一般教養ですと七〇%ぐらいの依存度です。こうなりますと、私大というのは人数からいうと非常勤講師に支えられていると言っても言い過ぎではないぐらいな状態になっております。ところが、この非常勤講師の報酬は非常に少ないのですね。文部省は調べていらっしゃいますか。
  197. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 先生御指摘のように、私立大学においては非常勤講師の役割りが非常に大きくございまして、わが国の全体の非常勤講師の六〇%以上は私立の非常勤講師でございます。その給与でございますが、私どもの私学振興課で行った調査によりますると、大学の場合に一時間当たりの金額が二千七十七円、年間で大体百十七時間でございまして、一人当たり年間で二十四万三千四十五円、短大につきましてはその数字が二十四万九千円、それから高専が三十二万二千円、統計上では大体そのような数字になっております。
  198. 栗田翠

    ○栗田委員 平均して年間二十四万というとボーナスなど入れずに月二万円ということで非常に少ないし、他とかけ持ちの方もいらっしゃるわけですけれども、私などの調べましたところでも一こまずつやって月に七千六百円から七千八百円、一こまは九十分から百分、一週間に一回ですから、これは非常に安いのですね。一週間に一回百分ぐらいの授業をしまして平均千九百円ぐらいになるのですね。これは学生のアルバイト料より安いのです。たくさんアルバイトをしたり、かけ持ちでもしない限りは暮らせないということになりますと、教育を本当に支えていくことができない。非常勤の先生方はその点ではプロとしてプライドをもってやるということでやっていらっしゃるわけですから、実にその内情は苦しいのですね。専任の方と比べて約四分の一、ボーナスを入れると六分の一という実態なのです。これは本当に大変なことだと思います。  それ以外に、いろいろ見ますと、ボーナスがないこと、退職金がないこと、身分が不安定なこと、通勤費もないために、通勤費まで引きますともっともっと減ってしまうのです。それから健康保険もない。女子の場合には産休もない。奨学金の返還免除の制度も適用されない。学会へ出席するときの費用もない。こういうことで全部が自腹、これがいまの実態でございます。ここのところを何とかしなければならないと思います。  いま非常勤講師に対してどういうふうに考えていらっしゃるのかということと、実際に私学の経常費や何かに援助をしても、非常勤講師の給与そのものを上げていくような対策をいまどうしてもとらなければならないと思いますが、お考えを伺いたいと思います。
  199. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 私立大学教育条件の向上、教官の待遇の改善は、主体的には私学自身の御努力によってやっていただくということが中心になるわけでございまして、私学の自主性からして当然そういうことになるわけでございますが、私学の公共性に着目して経常費助成も行われておるわけでございます。経常費助成につきましては、私どもの大変大きな眼目といたしまして金額をふやしてきたわけでございます。一千億の大台に乗りまして、来年度も一千八百五十四億という大きな金額を要求いたしておるわけでございますが、その経常費助成の拡大を通じて非常勤講師に対するもろもろの待遇が改善されることを期待いたしておるわけでございます。
  200. 栗田翠

    ○栗田委員 では、これで終わりますけれども、来年度十分の一補助を行うような要求も出ているように思います。しかし、実際に私大そのものの経営がよくなることも必要なのですが、私大の経常費に全部組み込まれてしまって講師そのものの給与のアップにならないような扱い方では困るのです。やはりこれはそういうものという形で給与を意識的に上げていくという対策が必要で、一刻も早く給与そのものを上げて、それの半分ぐらいは助成できるようにということが私たちの主張でございます。その辺について局長のお考えを伺い、最後にこの私大の実情について大臣のお考えを伺って、私の質問を終わります。
  201. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 経常費助成は、ひもつきの補助金と違いまして給与費のために出すという性格のものではございません。しかしながら、給与費が経常費の大宗であることはよくわかっておりますので、その積算の根拠には給与費が大きな要素を占めております。それで非常勤講師の給与につきましてもその積算に入れるという方向で私ども努力いたしたいと思っております。
  202. 永井道雄

    永井国務大臣 私が教えた人たちもたくさん私大の非常勤講師をしていますので、先ほどからのお話はよく知っているわけです。実は国立大学の講師料も不当に安いので、それを質問なさらなかったのは不思議だと思っておりますが、国立、私立を通して本当におくれているのです。そこでこれを改善していかなければならないと思っております。しかし、特に私立の方が不利でございますから、来年度は概算要求の中にこの非常勤講師を積算項目に入れる、そういう線で私たちは努力をいたしていく考えでございます。
  203. 栗田翠

    ○栗田委員 それでは終わります。
  204. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、嶋崎譲君。
  205. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 朝から大変長い時間ごしんぼうされておられまして、いまから質問するのは申しわけないような気がいたしますが、よろしくお願いをいたします。  きょうは日ごろとちょっと角度を変えまして、日本の学術体制という問題に関連して、海と教育、海と科学技術等々の関連についていろいろ意見をお聞きしたいと思いますし、今後の学校制度のあり方についても二、三提案をしてみたいと思います。  海洋研究というのは、わが国の場合には海洋国日本で、昔から私たちは、われは海の子の歌を歌って育ったわけですから、海洋国日本という伝統は、水産業に関しては当然に世界一の技術や何かを誇っていますし、船舶もそうであります。その他海に関して非常に伝統のある国だと思います。ところが最近は、世界の海の研究が、日本のいままで伝統的に行われた研究からもっと広い視野で、新たな角度から諸問題が提起されていることは、大臣、皆さん、御承知のとおりであります。海についての説教をすることは一切省きまして、それは既存の前提として、常識といたしまして、海洋研究と学校教育並びに学術体制という問題について、二、三質問をしながら問題点を明らかにしたいと思います。  私は科学技術特別委員会のメンバーでもありまして、海洋をテーマにしております。原子力もやっておりますが。そこで、科学技術庁の海洋開発課長に来ていただいておりますから、科学技術庁の立場から見て、日本の海洋開発並びに海洋問題に関する行政のいわば中心的な庶務を取り扱っているという立場から、今日の海洋研究の行政的な対処の仕方についての実情を最初にお聞きして、大ざっぱなアウトラインを明らかにしてほしいと思います。全体の運営についての活動の面のアウトラインを簡単に説明していただいて、そして特に科学技術庁が担当、所管であります海洋科学技術センターの活動の現状と今後の問題を、時間が短いですから、なるべく短い時間で御説明を願いたいと思います。
  206. 加藤昭六

    ○加藤説明員 現在のわが国の海洋開発につきましては、内閣総理大臣の諮問機関でございます海洋開発審議会の四十八年の答申におきまして、わが国海洋開発の基本的構想及び基本的方策という答申が出ております。これにのっとりまして進められておるわけでございます。この答申に基づきまして、関係各省庁の官房長を中心といたします海洋科学技術開発推進連絡会議というものがございますが、ここにおいて海洋開発のための科学技術に関する開発計画というのを毎年策定しておりますが、これに基づきまして、科学技術庁、水産庁、文部省、通産省、運輸省、建設省等、関係各省が総合的な計画を推進しておるわけでございます。  当庁は、この計画の立案、推進に当たりまして、海洋開発審議会及び海洋科学技術開発推進連絡会議の事務局といたしまして取りまとめを行っておるわけでございますが、それとともに、海洋科学技術にかかわります試験研究の経費等の見積もり方針の調整、それから、海洋関係の特別促進調整費等を活用することによりまして、関係各省庁の海洋科学技術推進施策の総合的な調整を行っているところでございます。  また一方、非常に多数部門にかかわります先行的な試験研究等につきましては、海洋科学技術センター等を活用いたしまして推進しておるところでございまして、このセンターにつきましては、昭和四十六年の十月に海洋科学技術に係る総合的推進機関といたしまして、海洋科学技術センター法に基づきまして設立されたものでございます。  その主たる業務は、海中医学とかあるいは潜水医学とか、海洋工学、海洋環境保全等の非常に多数分野にわたります先行的な海洋科学技術の研究が一つでございます。また、高圧実験水槽とか潜水シミュレーターなどの非常に大型の共用試験研究設備の整備充実を図っております。これが第二でございます。また、高度な海洋科学技術者の養成を図るというための研修を行っております。これが第三でございます。そのほか、海洋科学技術にかかわります情報収集、提供等の業務を行っておるところでございます。これが第四でございます。  以上、主な四つの柱で、海洋科学技術センターは昭和四十六年以来活動を続けてきておりまして、現在事業規模は、民間の資金等も含めてほぼ年間約二十億、職員は約百名を擁しておるところでございます。
  207. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 いまの科学技術庁の説明を私なりに理解をして、問題の所在を整理しますと、昭和四十八年に内閣総理大臣あてに海洋開発審議会が答申を行っている。この答申は内閣総理大臣あての答申でありますから、日本の所轄官庁は、それに関連して、この答申に基づいた調査研究並びに開発を相互に分担してやらなければならぬということになるわけであります。そうした場合に当然文部省も、いわゆる海洋科学技術の基礎研究並びにその高度な科学技術の研究について、教育機関としてその任務を果たさなければならないわけであります。これが日本の学術体制の問題であり、同時に高等教育の中での海洋といえば、海洋学研究所に相当するような海洋学研究というものを日本の学術研究の中でどう位置づけようとしているかという点が、ここでの問題の所在になるわけであります。  ところで、その前に、いまの説明でもありましたように、海洋開発審議会が行った答申に基づいて、海洋科学技術開発推進連絡会議で毎年海洋開発の問題に関する計画立案が行われて、各官庁にそれぞれの研究や予算を分配しているわけです。その資料は後で科学技術庁の方から私の方に出してもらって——選挙に通ればですが、通常国会の中で、本来予算委員会で問題にすべき問題でしょうから、それはまた改めて体系的に、新たな角度で問題にいたしますが、そうした場合に、いままでの海洋に関する研究は、科学技術庁は一つの大きな、民間と協力してやっていますが、海洋科学技術センターといういわゆる研究所的なもので運営されている。農林省には、水産庁を中心とした水産海洋資源に関する、特に魚を中心にした共同増養殖等々に関連する諸研究が予算としておりていく。同じことは、通産省の場合ならば、海洋地質の問題として予算がおりていきます。建設省には海洋土木に関連して予算がおりていきます。こういうふうにして、国土庁に至るまで大体各官庁に、科学技術庁設置法では文部省は除外されておりますから、これは学術会議といままでの長い経過がございまして、少し学術会議は問題にこだわり過ぎていたために、今日文部省がこういう問題に対処するのにやりにくい実情があることも承知しております。  ところで、いま申しましたように、四十八年の答申に基づいて、海洋開発並びに海洋研究というものを非常に重要な国の施策にしなければならないという点がまず明確になって、そして実際に行われていることは何かというと、いままでの各官庁の系列の分捕り予算というとおかしいですが、毎年予算要求を海洋に関してはやるわけであります。それはどうなるかというと、大学との関係でいいますと、それが今度は大学の工学部と通産が結びつくとか、それから大学の農学部と農林水産が結びつくとかというぐあいにして、今度は各大学の、海洋研究とは言いませんが、海洋学というのはかなり学際の問題があって大きいのですが、いずれにしろ官庁ごとに計画が推進されているといいながらきわめてばらばらに事が処理されているという現状があるわけです。ところが、私が考えますのに、せっかく答申に基づいて推進会議が毎年度予算の立案をするときに、たとえば水産庁なら水産庁、それから通産省なら通産省、建設省なら建設省でそれぞれ海洋に関連のある研究や何かの委託調査や何かが出ていきます。そういう予算を全体くくってみると、海洋に関する開発並びに海洋に関する研究のお金は相当な額が出ていると考えられるわけです。ことし二百五十億くらいの要求になっているのではないかと思いますけれども、その中にもたとえば科学研究費みたいなおりるものは入っていませんから、この予算にもいろいろな一般会計と特別会計の問題がそれぞれありますから、この予算の仕組みはまた複雑で表面に出ている以外のものもかなりあると思います。つまりそういうふうに重要な一つのテーマをセクショナリズムというと悪いですけれども、各官庁ごとに分捕り予算みたいなかっこうになって、相互調整というものは実際は科学技術庁を中心にして行っていかなければならないだろうし、推進していかなければならないが、どうも日本における学術体制というものを考えたときに、そういうものを全体を見ながら計画立案をしていく、そういう機関ないしは財政的な裏づけになるようなものがわが国の場合には非常に乏しいという点が問題になると思うのです。たとえば私は海洋学というのは専門家ではありませんが、専門家たちに聞きますと、いまは大体四つの部門です。海洋物理、海洋化学、海洋生物、そしてあとは海洋地質という四つの関連が、大体その対象になるものを総合して海洋学という学問の領域があると聞いておりますが、いまや世界は、御承知のように二百海里経済水域が国際的な常識になってきて、日本の水産業が変わらなければならない、とる漁業から育てる漁業に変わらなければならないという事態が生まれております。余談ですけれども、私は早くから、去年くらいから日本海生けす論というのを主張しておりまして、先般もモスクワに行ってソ連の側の海洋研究所並びに漁業経済研究所の学者たちとも討論をしてきました。朝鮮民主主義人民共和国ともいまそれを連絡しているわけです。それはなぜかと申しますと、ちょうど琵琶湖が周りの市町村が共同で管理しているように、もし日本海が生けすであるとすれば、これを国際的に管理しなければならない問題がいまや国際的にクローズアップしてきていると思うのです。国連のいわゆるローマ宣言を初めとして、海洋汚染という問題が大きな問題になっているだけではなくて、海洋開発という観点からも、海底資源、海の資源、それからそのエネルギー等の問題で、海洋の活用というのは非常に重大になってきている。その場合に日本海というのは、私も調べ始めまして、日本の大学で日本海を研究している学者がいるか調べてみたら、本当にいないということがわかったわけであります。京都大学の河合教授その他本当に数名でございます。きょうは質問の時間が余りありませんから先に全部言ってしまいますと、東京大学で過去二十年間に海洋専門家は何人育ったと思いますか。京都大学で過去二十年間に海洋専門家は何人育っているでしょうか。東京大学では百名ちょっとです。そして京都大学では五十名そこそこです。これはフランスやイギリスやソ連やアメリカに比べてみて、海洋国日本というのに、いかに海洋研究というものがおくれているかということの一つの数字でございます。  そういうわけで、こういう観点から考えてみますと、科学技術庁が各官庁にずっと——科学技術庁がやるわけではないが、全体を調整しながら、海洋研究というものを各官庁の中で、それぞれの通産や農水やいろいろなところで取り扱っているわけですけれども、まず最初に文部省はこの答申を受けて、海洋問題について、わが国の学術体制としての海洋研究並びに学校教育における海洋の教育問題をどのように対処しようとしているかということについて、最初に大臣局長かにお尋ねをいたします。
  208. 澤田徹

    ○澤田説明員 わが国の大学におきます海洋の研究の現状につきまして最初にお答え申し上げますが、まず学部、学科での教育のほか、研究機関といたしましては、東京大学海洋研究所あるいは各大学に置かれます臨海実験所、水産実験所等を中心として各種の研究を続けておる現状でございます。また国際的には深海の掘削計画へ参加して、各国と協力して研究開発に努めるということで進められている現状でございます。ただ対象とします海洋の研究は非常に広い範囲にわたりますし、また課題も複雑多岐でございまして、現在この面の研究はその緒についたというのが実情かと存じます。  当面の大学サイドにおきます研究の課題としましては、海洋と大気の相互作用、海水の性質、分布、海洋循環と変動、波浪、大洋底の地殻構造、大陸だな等の斜面と海底の境界、あるいは海洋生物の生態と生産機構、あるいは海底鉱物資源、こういった課題につきまして基本的な基礎的な研究に重点を置いて進めて、総合的な体制で進めていく、こういう施策で臨んでおる次第でございます。
  209. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 国立学校設置法という法律で見まして、海に関係のあるところは、わが国は全部水産大学並びに県立の水産高等学校、そして海洋の特別な研究をやっているのは地球物理学、理学部であります。そして同時に、理学部の海洋地質等々、理学部に所属しているところは比較的多いと思います。ところがわが国の伝統的な大学における海の問題は、水産であり、運輸であり、昔は海軍でしょうけれども、そういう問題であったために、学校制度の中に、今日国際的な課題になっている海洋という問題を全体として取り上げていくものは、東京大学の海洋研究所ですね、極端にいうと、これ一つなのではないかといっていいと私は思うのです。私立大学では、東海大学に海洋学部と海洋研究所がございます。したがいまして重要なことは、これからの海洋研究というものを位置づけていくときに、まず県立水産学校と海洋という問題を結びつけていくことが必要ではないかという点をまず最初にお聞きします。大臣でも局長でも審議官でもいいです。
  210. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 水産関係の大学の学部の共同研究のあり方についても、一つの大学に限らないで、できる限り多くの大学が連携をとって共同的に利用すべきものは共同的に利用して研究を進めていこうということで、いま私ども大学の方へ働きかけをしているわけでございますが、その際に、水産高校についても検討していくということについては私どもいままで考えておりませんでしたけれども、その点についても検討させていただきます。
  211. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 時間がきょうはありませんから、問題だけ指摘しておきます。  県立の水産学校は県の水産試験場並びに臨海研究所等々と密接につながっております。ところが、これは本当に予算委員会で問題にしなければならない大問題なんですけれども、日本の漁業法という法律は古い法律です。ですから、いまの新しい魚の養増殖というような問題が起きてまいりますと、魚区をめぐって法律改正をやらなければ対応ができないというのが現状です。手前の方の八丁網と、それから先の方の定置網の関係やら、沖合い漁業と沿岸漁業の関係をめぐる領域の問題などが起きてきているのです。  それで、それはここの文教とは関係がないのですけれども、ところがどういうふうに教育関係するかというと、水産学校というのは主として魚、漁業を中心にした学校であります。ですから、いままでは、日本のとる漁業を前提にした学校の性質を持って、それに合わせた学校の性格を持っているのです。  ところが、これから先は育てる漁業という時代に入って、二百海里経済水域で、それで私は日本海生けす論を言っているわけです。共同で管理しているように管理しなければならない。特に日本海は昔は湖だったのです。これがことんと沈みまして、そして海になっていますから、たとえば海峡をとりますと、百三十メーターの深さでありまして、敷居の高い湖なんです。ですから、たとえば深海千二百メーターぐらいに行きますと、日本海には魚がいないのです。しかし、太平洋の千二百メーターには魚がいるわけであります。ですから、将来は太平洋の深海にいる魚を日本海に持ってくれば、これは育つ可能性を持っているのです。それは酸素の含有率から見ても、プランクトンの発生状況から見ても私はできると判断をしています。それはソ連の科学者や何かとやってみて、全く生けす論は一致してきたのです。  それでそういうふうに、日本海生けす論を前提にするかどうかは別としても、たとえば石川県の能登半島にある宇出津にある水産学校というのはいままでの水産学校なのです。ここでは若いころ遠洋漁業をやるに必要ないろいろなことをやったりしていますが、年とってからの養増殖なんかの問題についてはいままで全然学校教育の中にないのであります。ところが、これからはもし日本海が生けすだとして、汚染をとめながらこれを、魚を育てるつまり畑というふうに考えますと、今度は海の物理的性質というものをとらえていなければ養増殖はできないのであります。同時に海の持っている海底の性質というもの、地質を調べてみなければ、その養増殖の問題に、これはプランクトンの問題に関係してきますから、出てくるわけです。そういうふうになってまいりますと、水産学校で、仮に魚というものを考える場合にも、いままでのとる漁業から育てる漁業に変わったときには、当然海洋という問題の研究や教育とその漁業が密接なつながりを持たなければならない時代になってきているわけであります。  特に魚というものは、今度二百海里経済水域になれば日本の領海が大変有利になりまして、世界で十一番ぐらいの大きさになると言われていますけれども、沿岸の漁業資源の問題だとか海底資源の問題だとか、そういう問題について今後大変な研究が行われなければならないわけであります。片一方で開発が進みますと、今度は魚が問題になってくるわけです。ですから、そこに開発と資源保護という問題について、次の世代を担う水産業者になる人や海を生涯の仕事にしようとしている人たちは、そういうものを学んでいかなければこれからの水産業や海に立ち向かっていくことができないのであります。  そうしますと、いままでの全国の重要な地点にある県立の水産学校というものはいまのままでいいのかどうか、これが、特にこの審議会の答申があって以降、国がこの海洋という問題を大きく、世界におくれまじ、そして新しい、日本は海洋国ですから、それに対応した体制をつくっていくということになりますと、まずその水産学校というもののあり方そのもの、それから商船大学、水産大学、こういういままでの伝統的な学校教育のあり方、その専門の領域のあり方について再検討しなければならない時期に来ている。そういう意味で、きょうは私は一般質問ですけれども、立法府の立場で、今後行政の中で検討して、財政措置その他の問題もいろいろ考えなければなりませんし、講座をふやしたりいろいろむずかしい問題がたくさんあります。県立と国立の問題があったり、いろいろいたしますが、そういう意味で、県立の水産高校というもののあり方について今後研究をして一定の方針を早急に出すということについて文部省側が努力していただきたい。まだそれについて方針がないとすれば、これをひとつ課題として提起しておきたいのであります。  その際に、全国の幾つかある県立の水産学校で重要なところ、まあ九州は天草とか、いろいろな列島があるからでしょうが、大学なんかにも水産学部が多いのです。太平洋沿岸にもあります、それから北海道にもありますが、日本海沿岸に水産学校という県立のものがありますが、まだ大学がないわけです。そういう意味で、日本海側に今後海という問題を考える研究所とか、研究センターとか、そういうものを考えていくことが将来必要であろうと判断をしているわけです。そうしたときに、いままである県立の水産学校というものを国立にたとえば昇格するようなところが全国に幾つかないかどうか。そして、国立に引き上げてみて、そこに、直ちに大学にしなくとも、海洋研究のセンターみたいなものをつくっていくというようなことを検討することが必要ではないか、これは私が勝手に考えていることであります。  いずれにせよ、県立水産高校のあり方の検討と、そしてそれに関連して海洋研究というものを高校レベルで問題にしていく場合の学校のあり方というものについてひとつ検討していただきたいという点が第一点でございます。  第二番目は、全国の大学を見ますと、御承知のように全部水産学部であって、そして海洋は理学部の中の講座であります。したがいまして、これを共同的にやれるのは、東大のいまの海洋研がただ一つであります。しかし、アメリカに行きましても、フランスに行きましても、国立の海洋研究開発センターみたいなものがありまして、そして大学の付置で海洋研究所というものが、ハワイに行ったってありますし、それからペンシルバニアに行っても、そこらじゅうに大学に持っているわけです。フランスでもそうです。ですから、そういう意味で、海洋研究所というものがいま東大だけにあって、そして総合的に研究できるそういうものがないという今日の現状の中で、今後海洋の共同利用の研究所ないしはそういうものをつくる必要があると考えるわけです。  そこで、きょう学術会議が開かれていますが、今度の学術会議に生態学研究共同利用研究所というのが提案されております。そのうちに総理大臣に答申があると思いますけれども、つまり、学術会議が提起している問題の意味というのは、いまの問題と非常に深い関係があるわけです。それは何かといいますと、いままでの大学はそれぞれの大学ごとにそれぞれの学部の中の講座に研究者がいる。ところがそれが、これは国立だけじゃないのです、ぼくが言っているのは。公立、私立含めて、その専門家たちが横につながる、職能的な共通の場で一つのテーマに即して研究ができる、つまりそういう共同利用研究所というものが構想されなければならぬと思うのです。せっかく大学院に関する法律の改正をやってきているわけですから、海洋に関連してもそういう意味の共同利用研究所というようなものをつくることが、日本の学術体制考えていくときに——海洋法はぼくは一つの例として言っているので、海洋法でなければならぬと言っていません。学術会議で言っているたとえば生態学研究の共同利用研究所、学術会議で今度方針を出しているこういうあり方ですね、これがつまり日本の学術研究のあり方を大学の側から自主的に進めつつ国がそれに対応していく、そういう一つのあり方ではないかと考えるわけですが、そういう意味で、生態学研究所の内容は私まだ専門家には聞いておりませんけれども、海洋というものをとらえてみた場合に海洋学研究所、後で科技庁にも聞きますけれども、大体科技庁から聞いているのは、海洋科学技術センターというのは、学校の基礎研究と、それから実際の、たとえば通産がやったり水産庁がやったりする応用部門ですね、これの中間が海洋科学技術センターの任務ですね。ですから、ここには巨大施設に関連して共同利用できるものもつくるしということが行われていますが、これは半官半民です。まあ、だんだん国の金の出し方が多くなってきておりますが、こちらを充実するのも一つの方法でありますが、各大学にある学部、講座というものを横断につないで、そして共同利用研究所というものを構想していく、そういう中で、基礎研究を一方でやりながら、全体の海洋研究の日本の水準を高めていくような、そういう成果を実現していくような道を開くということが必要なのではないかという、この点も検討をしていただきたい課題として申し上げるわけでございます。  それで、今日の海洋に関する科学技術研究の現状を見ますと、要するに、国際的な基礎研究それから実際の研究、こういうものを二本で消化して、基礎研究と実際の研究というものを二本柱にしていくという体制が大変うまくいっていないと思うのです。これは何も海洋だけではありません。原子力もそうだし、宇宙開発もそうです。大体、ビッグサイエンスに関連するものは全部企業と官庁の方が先行していって、そして大学の方がおくれている。そして、大学はせいぜい講座ごとに専門家がそれぞれの役所に結びついている。これが産学協同だとかなんとか言われる一つの背景にもなっていると私は思うのですが、そういう意味で、海洋研究を一つの材料にして申し上げると、いまの大学にあるいわば講座ごとの研究、講座を一方で強化していくということと同時に、これにはだから二つ問題があるわけで、各大学の中にあるたとえば水産学部、これは県立の水産高校と同じように、水産学部というものがそのままでいいのか、もしくは理学部に関連して横断につないだ海洋学部的なものをつくった方がいいのか、そういう大学内部における研究体制の問題についての検討と、それからそれを横断につなぐ共同利用研究所等々の問題、こういう問題について少し研究を進めていただきたいということでございます。私も私なりに学者や何かの意見を聞いて考え方を固めていきたいと思いますが、その点を申し上げたかったわけでございます。  それで、海洋に関して一つの例として申し上げた日本の学術体制の問題点についての考え方ですけれども、こういう場合も、大学の研究費が非常に底が浅いものですから、官庁から委託された研究並びにその業者、またそれと結びついている企業の研究に、学者が大変動員されやすい仕組みになっているのが今日の現状だと思いますが、そういう意味で、ひとつ海洋という問題を学校教育の中で積極的に取り上げていただきたいと思うのです。時間がありませんから、これはまたいずれ体系的に問題を出していろいろ質問させていただきますが、きょうはこの辺にこれはとめておきます。  問題だけ二つ提起しておきますから、検討していただきたいと思うのです。
  212. 永井道雄

    永井国務大臣 大変重要な御指摘をいただきまして、感謝をいたします。  実は、この春先からいまの問題を文部省内でも考えておりまして、やり方がいろいろあるので、必ずしも嶋崎委員の御指摘のようなやり方が妥当であるかどうかということも幾らか考えました。  といいますのは、たとえば水産高校あるいは水産学部と海洋学部、そういうものを制度的にただ合わせていくというやり方で、現在海洋学が直面しておりますような物理、化学、生物、地質にわたって、終局的には養殖というものを強化いたしていかないと、経済水域との関係においても妥当でない。しかし、ただ制度を合わせるというだけでは、生産的になかなかなり得ないということもあるかもしれません。そうすると、むしろ総合研究というふうな姿で、現在の制度に分かれている人たちを、たとえば科学研究費の活用というようなやり方でもって結びつけていくことはできないかということを、この春先から学術国際局で検討いたしておるわけでございます。  しかし、承りまして非常に参考になりましたが、やはりそういう水産高校というふうなものも活用するということもまた検討課題として入れていきたいと思います。たまたまわれわれが考えておりましたことをきわめて明断に御指摘いただいたので、一言感謝を申し上げます。  なおまた、海洋に限らず、淡水魚の問題もあわせて考えていくべきではないかということで、寄り寄り話を進めておりますので、そうしたことについても今後御教示をいただきたいと思っております。
  213. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこで次に、ちょっとテーマを変えまして、いまの受験地獄ですね、これに関連して、大学格差、格差と、いまこんなに議論されていることはない。それに関連して、また国大協の例の統一試験の問題等々が問題になっておりますが、この中で見落とされているのは公立学校です。公立学校の存在理由は何ですか。公立の大学、それぞれの地方自治体が持っておる大学がありますね。東京都の場合都立大学とか、金沢の美工大とか、そういう公立大学と称せられる大学の存在理由は何でしょうか。
  214. 永井道雄

    永井国務大臣 私は嶋崎さんのような法律の専門家でないですから、沿革的に考えるほかないのですが、国立大学というものはやはり国家に計画があって、いろいろ学問、教育の発展のためにできてきたわけですが、公立大学というものが整備されたのは大正八年の大学令以降でありますから、主として医科大学というものが当時整備されまして、その後いろいろな公立大学ができた。  当初の要求は、私が理解いたしておりますところでは、やはり国立とは違いまして、その地域の要求というものにこたえる学問、教育、研究の機関であった。現状においてはその地域にとどまらないことになってまいりましたから、相当の変貌を遂げている、かように理解いたしております。
  215. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私もその理解なんです。つまり公立の地方の大学は、その特殊な地域社会に貢献をする性質を持っているからこそ、公立の大学というものをつくった。たとえば金沢の美工大で言うならば、金沢は美術工芸について非常にすぐれた伝統を持っているから、そこに美工大というタイプの大学ができたし、東京都立大学というのは、公務員を比較的養成する性質を持った大学としての性格があると思う。これがいま都民大学という形で新たな東京都立大学構想が問題になっております。その他、それぞれの地域に属した伝統や文化というものとかかわり合いを持ってこれができてきたと思います。こういう公立大学の特殊性があるにもかかわらず、大学という全体の中で考えてみますと、私立の方は私学助成が問題になり、国立は国立でいつまでも非常によく議論される、法律問題になりますから。ところがこの谷間になっておりまして、公立大学というのは、大学格差の問題を考えても、教官の定数から事務職員から、教育研究の条件が大変悪い。特に最近の地方財政の危機に結びつきまして公立大学というのは大変苦しい状態に置かれてきている。そういうことから、きょうは時間がありませんから長々と質問しませんが、一言だけお聞きします。  公立学校整備法といわれるような法律を、経常費補助を含めての私学助成と同じような意味で——もう準備しつつありますけれども、公立学校の方では一遍出してみたり引っ込めたりして大変ちゅうちょしているので、問題点がいろいろあることも私存じておりますが、公立学校整備法といわれるようなものを、昨年度の予算では経常費補助が初めて問題になってきておりますだけに、そういう準備があるかどうか、この点についてます最初聞きます。
  216. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 御指摘のように、国立大学あるいは私立大学比較いたしまして、公立大学に対する政府としての施策が非常に講じにくいという状況にあると思います。もとより地方交付税によって財源措置はしているわけでございますけれども、たとえば身障者の問題を取り上げてもなかなか直接にそこに手の届くような施策が講じにくいという点がございます。何らかの改善の方途というものを考えなければならないというふうに私たちも考えておりますけれども文部省が公立大学についての特段の助成法、整備法というふうなものを考えているということはいまはございません。
  217. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 昭和四十一年ごろに公立大学協会で一度準備をしたことがあるのですよね。そして、四十九年ごろからまたごそごそ動いているわけです。確かにおっしゃるような財政の仕組みの問題、それから補助の仕方の問題等々、隘路があることは承知をしております。ただ、公立大学の持っている今日の経営状態といいますか、それから研究教育の状態等々を考えますと、これは放置できないものだと思います。これに対する緊急な措置をどうするかについて、次の国会あたりまでにその方針を考えてほしいと思います。私は、公立大学整備法案みたいなものを諸問題を検討した上で何らか準備をしてもらいたいと思うのですけれども、それがいいかどうかも含めて、公立大学協会の人たちの意見を聞きながら緊急な対応を講じていただきたいということを申し上げたいのでございます。四十一年に準備したのがなぜ挫折したのか、四十九年ごろ準備していて何が問題なのか、そこも公立大学協会の試案みたいなものやその過程を十分御審議していただいて検討していただきたいということも提案として申し上げておくわけでございます。それについて意見を聞きましょう。
  218. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 公立大学の場合には、公立医科大学についての経常費助成一つをとっても非常にむずかしい状況にございます。したがって、御指摘のような立法措置というものが果たして具体の課題として取り上げ得るかどうかについてかなり問題があると思いますけれども、公大協側のの意見も聞き、御指摘のように是非を含めて検討させていただきます。
  219. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 もう一つだけ質問しましょうか。  最近の大学格差の問題に関連して、企業が指定校制度というのをとっているのは御存じですか。
  220. 永井道雄

    永井国務大臣 承知いたしております。
  221. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この指定校制度、これも結局就職問題に関連して、この指定校制度というのはある意味では、企業というのは学生の選択を学校に任せて、そして大学側や学校側に格差があることを前提にしてこの大勢を促進する役割りを果たしていると思います。  最近、特に理工系で問題になっておるのは、大学卒よりもマスターを出た方がいいというので、学部からマスターまで上げて、そしておたくの大学はマスターを出た人が欲しいのだというのでくくっていくわけですね。そういうことからたとえばどんな問題が起きてくるかというと、大学院の制度考えたときに、たとえば大学側としては、このごろは理工系の場合には学部の大衆化の状態から少し専門化させようとすると、マスターまでは一貫したい、それで学部とマスターを一貫教育みたいにやりたいということになりますと、学生がマスターに希望すると全員マスターに入れてやってもいいという考え方が出てくるわけです。ところが企業の方は指定校制度にしていて、そんな学校制度をつくられては困ります、学部からマスターに行くのは限られた人間であって、その限られた人間から就職学生をいただくのですということになりますと、外から大学内部の、たとえば学部と大学院のあり方について企業が圧力を加える役割りを指定校制度はとっていくことになるわけですね。つまり理工系の場合ですと、たとえば希望があれば全員マスターにとりたいと思っているのに、いやその制度は困る、少数にしていて選んで採用したい、こういうことで指定校制度学校制度のあり方が関連してくるわけですね。そういう動きが全国的に出てきているというふうに私は思います。これはもちろん、私立の場合にも大手私立であったり、国立の場合でもいわゆる旧制帝国大学系統などにそういうのがあらわれている傾向がありますけれども、いずれにしてもいまの指定校制度というものが今日の大学格差というものをみずから認め、そして格差を促進している一つの要因であると判断ができると思うのです。これをやめさせるということはどういうものかどうか。これについて検討したことがあるのかどうか。私も、どういうふうに対処するのが一番有効であるか。一つ制度を廃止しても裏道でまたいろいろなことが起きますから、全体で判断しなければなりませんから、制度論というのはそう簡単に結論は出せませんが、この指定校制度が現実の大学の格差と密接な関係があるという点を考慮して、この問題にどう対処したらいいか、これについて文部省はいまどう考えているかお聞きしたいです。
  222. 永井道雄

    永井国務大臣 これにつきましては、私は就任以来の課題でございまして、昨年の四月と思いますが、まず指定校制度という考え方があるかということについての実態調査を行いました。これは経済同友会に委託調査をいたしました。完全に指定をしませんで、ほかからも採るというのを一応除外いたしまして、そして完全に指定をするというのを指定校制度というふうに定義をいたしますと、経済同友会の当時の調査対象約五百社でありますが、回答が参りましたのが五〇%程度ですが、その五〇%程度の会社のうち一五%ぐらいが指定校制度をとっていたというふうに記憶をいたしております。そこで本年の初めに文部省から各業界団体に対しまして要望書を出しまして、指定校制度をとってもらっては困る、これは原則として学校は、企業の就職というのは開放的でなければいかぬということで協力をしてほしいということであります。ただ、この問題については文部省だけでできませんので、六月か七月ごろだったと思いますが、労働省と連絡会議を開きまして、労働省もこの問題について協力をしてほしいということを要望いたしまして、労働省と文部省との間で意見の一致を見ましたので、意見の一致について新聞に発表いたしまして、両省あわせてこの方向でいくというのがいままでの経緯でございます。ただ考え方といたしまして、そういうふうな政策をとりますが、事実上、学校にいろいろな意味でのいわゆる格差というのがあることも否定できないことでありまして、企業側としてはそういう完全開放試験というふうなものを行う場合の事務上の煩瑣とか、いろいろそういうことを理由としても挙げているわけであります。そこで、やはり文部省はこの問題に対応いたしますために、先ほどから申し上げましたようなことで、約一年半にわたって企業に働きかけてきておりますが、文部省としては、やはり大学間の格差是正を具体的にどのように行っていくことができるかということが非常に重要でございますから、これは私学助成を強化するとか、あるいは私学助成の場合にも相当思い切った傾斜配分を行う。これは非常に格差是正に矛盾しているようですけれども、私はそうではなくて、むしろ私学のうちのある部分が相当育ってくるということの方が、かえって企業もオープンシステムをとりやすくなってくるという認識に基づいているわけでございます。  なお、国立につきましては、地方大学というものを重視する方針を、これは財政上もとってきておりまして、そういう方向でなかなか一挙にその姿が実りあるものになりませんけれども方向といたしましては、これも過去数年にわたっての政策の基調はそこに置いてきて進んできているわけでございますから、要するに大学間の格差というよりは、むしろ多様化の方向、つまりいろいろな大学がいろいろな特色を持っている、また企業も特色を持っておりますから、そうした意味において採用するというのは、格差に基づく指定校というのとは違いまして、むしろ適材を適所に生かすということでございましょうから、そういう方向に向けて努力をしていく。以上申し上げました今日まで進めてきた政策というものを今後一層強力に進めていきたいというのが指定校制度に対するあらましの考え方でございます。
  223. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 何か、是非どっちにもとれるようですが、制度そのものはやめるというように努力しているわけですね。  もう時間は、十分までですから、あと一つだけ質問します。  これも格差是正に関連して、私学助成法という法律ができて、私学助成をやる場合に、いままで人件費の補助を中心にしてやってきましたね。現在の人件費補助の単価の決め方はどういう決め方ですか。
  224. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 私立大学経常費助成の積算の基礎には、人件費、それから教官経費、学生経費その他がございますが、そのうちの人件費の面につきましては、実態調査による平均給与を基礎にいたしまして、それに調査時点から該当年度までのアップ率、実際の給与のアップの見込みを見込みまして、それに教員の数をかけます。これは単価でございますから、そういうことでございます。そして、あとはそれを、いわゆる積算率が二分の一ということで、二分の一をはじき出すわけでございます。
  225. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこで、いまのことで再度お聞きしますが、その平均給与というのは、何に基づいてどう決めるのですか。
  226. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 統計の数字が出てまいりますから、その数字は前年のものが出てまいります。それに基づきましてその予算対象になっておる年度の間にどのくらいアップするであろうかという予測のアップ率を掛けまして、そういう形で積算いたしております。
  227. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 たとえばさっき栗田さんも質問していましたが、私立大学には国立大学を定年になっておやめになって、六、七万で行っている人もいるわけですね。そういう非常勤もあれば、その他の非常勤もあるわけですね。そうすると大学の必要な人件費といわれる人件費の平均を出すときに、そういう要素は加味しているのですか、加味しないのですか。どんなふうに平均給与の数字の中に入れるのですか。
  228. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 そういう要素は加味しないで、専任給与費につきましては専任の教員の給与だけを積算いたしております。
  229. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ことしの要求の額は幾らですか。
  230. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 今年度は大学につきましての要求の基礎単価は、大学につきましては四百三十九万八千円でございます。それから短大につきましては三百二十五万六千円、それから高専が三百六十二万七千円でございます。
  231. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この四百三十九万という平均の数字を出す統計の数字は、五十二年度予算のときには五十年にやっていませんか。
  232. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 五十一年五月一日現在の統計の数字にアップ率を掛けております。
  233. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 だから事実上は、全部二年ずつおくれているわけですよ。
  234. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 そのおくれを取り戻すためにアップ率を掛けておるわけでございます。
  235. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 アップ率は何を基準にしていますか。
  236. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 まず人事院勧告でアップになりますね。その比率を掛けまして、それからさらにその当該年度内のアップ率を見込みまして掛けております。その両方の比率を足しております。
  237. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうすると予想率も掛けているのですか。
  238. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 そうでございます。
  239. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そんなことはないでしょう。
  240. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 数字を申し上げますと、五十一年度中のアップ率、これが人勧の数字でございます。六・七一%。それに五十二年度のアップの見込みです。これは見込みでございますから五%というのを積みまして……。
  241. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 その平均給与は社会保険の負担分が入っていますか。
  242. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 基本給だけでございます。本俸と期末勤勉手当その他でございます。
  243. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 時間がないからここでやめますが、その平均給与の出し方、それからアップ率、それにことしの予算要求をするときにはいつの時点の何をとってどういうふうにするか。それの数式を提出してください。  それからその人件費助成の場合に、平均給与八掛けの二分の一ではないですか。
  244. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 単価につきましては八掛けということをいたしておりません。ただ、全体のこの数字につきまして八五・五%という執行率を掛けております。これは大学の中でも、たとえば完成途上のもの、認可されてまだ途上のものには補助をしないとか、あるいは部分的に募集停止をしているとか、そういうようなものがございますので、そういったものを見込んでその分だけは切り落としております。
  245. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうすると、回答がさっきの栗田さんの質問と違いますね。非常勤講師その他については、助成の中には今度入らぬのではないですか。
  246. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 ただいままで御説明いたしましたのは専任給与費についてでございます。専任給与だけについて、専任給与の単価に専任教員の数を掛け、それで非常勤職員につきまして別個に積算をするということを考えております。
  247. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 では、その数式を出してください。また今後の検討の材料にさせていただきます。
  248. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 後ほどその細かい数字をお届けいたします。
  249. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これで終わります。
  250. 登坂重次郎

    登坂委員長 次回は、来る二十七日開会することといたしまして、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十一分散会