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1976-10-26 第78回国会 衆議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十六日(火曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 湊  徹郎君    理事 今井  勇君 理事 片岡 清一君    理事 菅波  茂君 理事 井上  泉君    理事 角屋堅次郎君 理事 中川利三郎君       足立 篤郎君    加藤 紘一君       塩谷 一夫君    松澤 雄藏君       綿貫 民輔君    上原 康助君       柴田 健治君    竹内  猛君       芳賀  貢君   米内山義一郎君       瀬長亀次郎君    津川 武一君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       折小野良一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 大石 武一君  出席政府委員         農林政務次官  山崎平八郎君         農林大臣官房長 森  整治君         農林省農林経済         局長      吉岡  裕君         農林省構造改善         局次長     福澤 達一君         農林省農蚕園芸         局長      澤邊  守君         農林省食品流通         局長      今村 宣夫君         農林水産技術会         議事務局長   平松甲子雄君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         農林大臣官房審         議官      増田 甚平君         参  考  人         (全国漁業協同         組合連合会会長         理事)     及川 孝平君         参  考  人         (社団法人大日         本水産会副会         長)      高橋 泰彦君         参  考  人         (全日本海員組         合組織局次長) 麻生  久君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 十月二十六日  辞任         補欠選任   上田 茂行君     綿貫 民輔君   金子 岩三君     塩谷 一夫君   島田 琢郎君     上原 康助君   村上  弘君     瀬長亀次郎君   稲富 稜人君     折小野良一君 同日  辞任         補欠選任   塩谷 一夫君     金子 岩三君   綿貫 民輔君     上田 茂行君   上原 康助君     島田 琢郎君   瀬長亀次郎君     村上  弘君   折小野良一君     稲富 稜人君     ————————————— 十月二十五日  米穀政策確立に関する請願小平忠紹介)(  第六九四号)  中国産食肉の輸入禁止解除に関する請願(和田  耕作君紹介)(第六九五号)  米の政府買い入れ制限撤廃に関する請願外一件  (中澤茂一紹介)(第六九六号)  同(細谷治嘉紹介)(第六九七号)  同外六件(受田新吉紹介)(第七六九号)  同(小平忠紹介)(第七七〇号)  同(柴田健治紹介)(第七七一号)  同(竹内猛紹介)(第七七二号)  同(寺前巖紹介)(第七七三号)  同(中川利三郎紹介)(第七七四号)  同(山田芳治紹介)(第七七五号)  同(山中吾郎紹介)(第七七六号)  同外五件(枝村要作紹介)(第八三二号)  同外一件(角屋堅次郎紹介)(第八三三号)  同(久保三郎紹介)(第八三四号)  同外二件(坂口力紹介)(第八三五号)  外麦輸入削減に関する請願外三件(石井一君  紹介)(第六九八号)  同外七件(倉成正紹介)(第六九九号)  同外三件(田中覚紹介)(第七〇〇号)  同外四件(田村元紹介)(第七〇一号)  同(戸井田三郎紹介)(第七〇二号)  同(徳安實藏紹介)(第七〇三号)  同(中山利生紹介)(第七〇四号)  同(長谷川峻紹介)(第七〇五号)  同(平林剛紹介)(第七〇六号)  同(保利茂紹介)(第七〇七号)  同(細谷治嘉紹介)(第七〇八号)  同外三件(松浦周太郎紹介)(第七〇九号)  同外五件(山本幸雄紹介)(第七一〇号)  同(愛野興一郎紹介)(第七二七号)  同外五件(植木庚子郎君紹介)(第七二八号)  同(河本敏夫紹介)(第七二九号)  同外三件(小澤太郎紹介)(第七三〇号)  同外十四件(木村俊夫紹介)(第七三一号)  同(島田安夫紹介)(第七三二号)  同外八件(菅波茂紹介)(第七三三号)  同(田中龍夫紹介)(第七三四号)  同外二件(坪川信三紹介)(第七三五号)  同(戸井田三郎紹介)(第七三六号)  同(長谷川峻紹介)(第七三七号)  同外八件(藤波孝生紹介)(第七三八号)  同外七件(毛利松平紹介)(第七三九号)  同外一件(山崎拓紹介)(第七四〇号)  同外三件(受田新吉紹介)(第七五六号)  同(大西正男紹介)(第七五七号)  同(小平忠紹介)(第七五八号)  同(志賀節紹介)(第七五九号)  同(柴田健治紹介)(第七六〇号)  同外五件(田村元紹介)(第七六一号)  同(竹内猛紹介)(第七六二号)  同(寺前巖紹介)(第七六三号)  同(中川利三郎紹介)(第七六四号)  同(橋本龍太郎紹介)(第七六五号)  同(藤井勝志紹介)(第七六六号)  同(山田芳治紹介)(第七六七号)  同(山中吾郎紹介)(第七六八号)  同外九件(天野光晴紹介)(第八一七号)  同外八件(今井勇紹介)(第八一八号)  同外六件(枝村要作紹介)(第八一九号)  同(小川省吾紹介)(第八二〇号)  同外三件(小澤太郎紹介)(第八二一号)  同(大村襄治紹介)(第八二二号)  同外二十三件(片岡清一紹介)(第八二三  号)  同外一件(角屋堅次郎紹介)(第八二四号)  同(金丸信紹介)(第八二五号)  同外四件(金子岩三紹介)(第八二六号)  同(久保三郎紹介)(第八二七号)  同外十四件(近藤鉄雄紹介)(第八二八号)  同外一件(坂口力紹介)(第八二九号)  同外三件(田中龍夫紹介)(第八三〇号)  同(平林剛紹介)(第八三一号)  道頓堀場外馬券売場設置承認取り消しに関す  る請願神崎敏雄紹介)(第七七七号)  同(瀬崎博義紹介)(第七七八号)  同(林百郎君紹介)(第七七九号)  同(東中光雄紹介)(第七八〇号)  同(正森成二君紹介)(第七八一号)  同(増本一彦紹介)(第七八二号)  同(村上弘紹介)(第七八三号)  北海道昭和五十一年産米検査臨時特例規格の  設定に関する請願芳賀貢紹介)(第八一六  号)  米の政府買い入れ制限撤廃及び外麦輸入削減  に関する請願津川武一紹介)(第八三六  号)  同(米内山義一郎紹介)(第八三七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(海洋法会議の動  向等漁業問題)  農林水産業振興に関する件(さとうきびの価  格問題)  小委員長からの報告聴取  昭和五十一年産とうきびの最低生産者価格等  に関する件  領海十二海里の早期実現水産食料確保に関  する件      ————◇—————
  2. 湊徹郎

    ○湊委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  本日は、海洋法会議動向等漁業問題について参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、全国漁業協同組合連合会会長理事及川孝平君、社団法人大日水産会会長高橋泰彦君、全日本海員組合組織局次長麻生久君、以上三名の方々であります。  参考人各位に申し上げます。  参考人各位には、御多忙中にもかかわらず委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとう存じます。海洋法会議動向等漁業問題につきまして、参考人各位のそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、議事の都合上、まず御意見をお一人二十分程度順序及川参考人高橋参考人麻生参考人という順序でお述べをいただき、その後各委員から質疑がございますので、これにお答えをいただくことにいたしたいと存じます。  それでは及川参考人にお願いをいたします。
  3. 及川孝平

    及川参考人 本日は、漁業問題が非常に環境が厳しい折から、特に本委員会が私たち意見を聴取する機会を持たれましたことにつきまして、深く感謝を申し上げます。  実は、ただいま意見ということでございましたけれども、私は全漁連会長でございます。追い詰められておる立場でございますので、意見というよりもむしろ御陳情というような趣旨に相なるかも存じません。その旨あらかじめ御了承を願いたいと思います。  御高承のとおり、去る八月から九月にかけまして、国連海洋法会議が持たれました。私らも何とか今度の会議で一つの方向が出るのではなかろうかという期待を持ちまして、二週間以上も私は向こうにおりまして、会議模様を見たのでございますが、ほとんど何らの進展もなく、八月の終わりごろになりますと、水産関係各国代表はほとんどおらない、主として海底資源開発に関する問題のみが論議されておるというような始末でございまして、私たちも非常に期待を裏切られたような感じでございました。事実ほとんど進展をいたしておらず、むしろ逆に単一草案からまたぞろ蒸し返しが始まったというような印象を持って私は帰ってまいりました。日本においては大方近く海洋法が決まるから海洋法待ちというような表現がすべてのことに使われておりましたけれども、私はとてもとても海洋法などというものはそう簡単に決まるものじゃないという印象を持ってまいりました。なぜならば、われわれ沿岸関係の者にとつていま特に非常に重要なことは、いわゆる領海十二海里の問題でございます。一昨年の十二月九日に一万人集会を持ちまして、われわれは当時の窮状を訴えて、速やかに十二海里の宣言をするようにということを強く訴えたのでございます。そのときの政府のお考えなりからしますと、海洋法会議が持たれておるので、近く決まると思うので、わが国海洋法先取りするというような外交的立場に立ちたくない、しばらく待ってほしいというようなことに尽きたと思います。しかし、一方われわれの立場からしますと、とても海洋法を待っておられない事情が頻々として出てまいりました。  顧みますと、当時のことを私はあえて申し上げますけれども、私は国権の最高機関であるところの国会を構成する国会議員方々に対しまして、当時署名運動を求めました。衆議院四百八十一名中四百五名、八四%、参議院二百五十二名中二百十八名、八七%、合わせて衆参両院七百三十三名中六百二十三名、八五%の先生方の十二海里についての賛成署名を得たのでございます。また、各党に対しましても公式に見解の発表、われわれの十二海里要望に対する所見を求めました。それぞれの党から公文書をもって十二海里を即刻宣言すべしという御意見をちょうだいしております。多分去年でございますか、政府は特に閣議でもって十二海里というものの妥当性を認めて基本方針として決定したということで、われわれも一方安堵をいたしたわけでございます。しかしながら何となく歯切れが悪くて、どうも海洋法会議動向を模索して、見てというような感じが最後までついて回りました。しかしわれわれ漁業者は、政府立場というものもまんざら無視するような態度ではございませんでした。特に三木総理大臣がことしの二月でございましたか、委員会における答弁の中で、海洋法会議が年内に結論を出さない場合でも政府としては今年中に十二海里の方針問題処理をするという御発言がありまして、われわれ漁民は、非常に不満足ではあるけれども、政府としてもその考えかと思っておったのでございます。  ところが最近聞きますと、どうやら模様がおかしく、また海洋法会議に戻ったというようなことで、私たちからすれば、私も実は重大関心がありますので、海洋法会議での合意をこいねがいまして、この八月からニューヨークに参っておったのでございますけれども、行ってみますと、この海洋法会議というものはとても簡単にまとまりそうにない。特に、私は立場各国代表とも個別にお話し合いを持ちました。ところが、どこの代表も、そう簡単に決まるとだれも言いません。恐らく今後二回、三回の会合を持たなければなかなか大筋も合意できぬだろうというようなことでございました。そうすると、一体海洋法会議を待っていたらどうなるのか、海洋法が決まらなければ一生われわれは三海里のいまの領海の範囲に泣かなければならないのかと、非常に強い不満を私は感じておるのでございます。私たちといたしましては、それでもなお日本近海におけるわれわれの安全操業というものが確保されておればまだしも、皆さん方御存じのとおり一向に状態はよくなりません。  われわれは昨年の十月二十三日に発効した日ソ漁業協定に大きな期待を持ったのでございます。何とか日ソの間においてうまく相互の立場を理解し合っていけぬものかと思っておりましたところが、一向に事態は改善されません。間欠的には多少よくなったかなと思うときもありましまけれども、改善されません。協定に基づく損害請求件数は八百八十八件に及んでおります。しかるにいまだ一件の解決も見ておりません。われわれがこの協定期待をしたということは間違いであったかと非常に失望を感じておるさなかにミグ事件、あの事件以来ますますそのたたりが強くなりまして、まあ私たちは軽々には言いませんけれども、ミグ事件のツケが漁業者に回ってきたというような感じ漁業者は受けとめております。  このようにして、おとといでございますが、特に被害状況のひどい日高地区におきましては漁民大会が持たれ、こんな状態ではもう生きていけないということで悲壮な決意をいたしております。先生方も多分テレビ等でその状況を目に触れられたと思います。さようなことでございます。  今日、食糧問題という角度で漁業がもう一遍国政の中で見直されようとしております。その中において、いろいろなバラ色の話も承りました。農民や漁民にあすを楽しませるあるいは希望を持たせるということでなければならぬとか、いろいろ諸方面で言われております。しかしながら、漁民立場でこれを聞きますと、今日かくほど痛めつけられておる問題に対してすら何の具体的な解決策を持たない日本国において、将来のビジョンを幾ら言われましてもわれわれにはぴんとこないのでございます。このことだけは特に御銘記を願いたいと私は存ずるのでございます。いまこれほど困っておる問題を解決できない人が何で将来の夢について言えるであろうかというのが、率直な私たちの気持ちでございます。  私はそういう立場から、一刻も早く二百海里が制定されるよう望みます。従来わが国は国際的な外交的姿勢からして、世に先駆け、人に先駆けてそういうことをするということは、先取りはいかぬということを言っておりますけれども、すでにアメリカ初め先取りをみんなやっております。しかも海洋法会議の一番の提唱者であったところのアメリカがすでに十二海里、二百海里の法律をつくったじゃありませんか。カナダがこれに続き、メキシコはすでにこれをやり、恐らく続々として今後独自に海洋法先取りをしていくでしょう。何がゆえに日本だけは海洋法会議海洋法会議と言わなければならぬのか。しかもわれわれは、困っていなければあえて申しません。現実に北海道の沖から三陸沖にかけてがりがり荒らされて、一方われわれの漁船は小さいから操業すれば命にもかかわる、漁船がひっくり返ってしまうのでみんなが操業をやめておる。このような状況下において、なぜわれわれは海洋法会議と言わなければならぬのか。どこの国も二百海里、十二海里というものをやらないときに日本がやるのであれば、私たち考えさせられます。しかしながらすでにやっておるじゃないか。何がゆえにわが国は言えぬのか。しかも国会議員の八五%の方々から御賛同いただき、各党からもそれぞれその趣旨の御回答をいただいておるにもかかわらず、事態は一歩も前進をしない。私たち漁民感情は、一体政治とは何だ、国会議員先生方が八五%も賛成していることが実現できないということは一体どういうことなんだと、私たちは強く怒っておるのでございます。ぜひ私たちのこの窮状を御察知願って、しかるべく御措置をお願い申し上げたいと思うのでございます。  一方、私は全漁連会長でございますので、漁業関係者以外の方々に会いますと、及川会長大変だろうな、何ですか、二百海里ですわ、こう言うのでございます。その背景には、従来わが国では、攻める立場日本海外で魚が規制されてとれなくなるということの方に日本人全体のおおむねの関心があるようでございます。われわれは、せっかくわれわれの祖先が開発してきた世界の海の実績、そういうものをむざむざと放てきするということは絶対承服できません。あらゆる外交手段を通して、われわれの築き上げたところの実績というものを確保しなければならぬと思います。しかし一方、日本列島周辺についての立場考えますとき、まさに逆に攻められる立場でございます。  日本列島周辺に対するいわゆる関心というものは余りにも薄いような感じでございます。私たちは、ポスト海洋法という場合に、攻める立場と守る立場の二つを考えなければなりません。まさしく日本列島周辺は騒然としてまいりました。領海十二海里の問題はその最たるものでございます。私はこういう立場から、少しく守る立場ポスト海洋法という立場に立って考えてみますときに、日本列島世界でも有数なる周辺漁場を持っておるのでございます。これを今後、食糧問題という観点から深く見詰めて、これからの日本列島周辺の大規模利用開発計画を進めるほかはないと思います。もちろん、海外漁場確保という問題について、これをおろそかにしていいという結論ではございませんが、それにも増して日本列島周辺を大切にわれわれ日本人は守っていかなければならぬと思います。その場合に、幸いにして沿岸漁場整備開発法というような法律ができまして、公共事業をもっていわゆる漁場改善というものが行われますことは、きわめてわれわれも感謝しておるところでございますけれども、今日程度規模ではどうにもならぬじゃないかという感じもまた持っております。もっともっと大規模国家投資が必要ではなかろうかと思っております。  一方、日本列島周辺が大切だということは、日本列島周辺漁場環境というものをいかによく維持するかという問題でございます。腐った海には魚が住みません。したがって、これからわれわれといたしましては、どうしても日本列島周辺漁場環境というものを一層厳しく保持しなければならぬと考えております。幸いにして、先生方の御努力によって各種の公害立法もできました。また規制も逐次効果を出しまして、かなり汚染速度というものは鈍ってきた、以前よりは海の状況はよくなったという現象等もございます。しかしながら、まだまだ海の底はヘドロで埋まっております。これからこれをもとの海に返すということは大変なことでございます。ヘドロを掘り返し、りっぱな漁場をつくっていくということは大変な問題でございます。しかし、とにもかくにも汚染進行という点については、非常に速度が鈍だことは、諸機関努力に敬意を表したいと思います。  ただ、ここで特に私、汚染の問題についてたくさんございますけれども、時間の関係もございますので一言だけ申し上げておきたいのは、油です。日本の国は石油を三億トン近く使っております。これが日本に運ばれてきております。その結果、それがまた日本内地でそっちこっちに転送されております。この油の汚染という問題はわれわれ漁業者に対して大敵でございます。     〔委員長退席今井委員長代理着席〕 間もなく日本列島周辺は油で埋まってしまうのではないかとさえ危惧されます。しかも、わが国公害立法趣旨からしますと、加害者にいわゆる賠償その他の責任があるのであるというたてまえをとっておりまするから、原因不明ということになりますると、従来は漁民の泣き寝入りでございます。幸いにしておととし、経団連等の協力で油濁基金というものが財団法人として発足し、不肖私が理事長でございます。乏しいわずかの金でもって、経団連等寄付金で賄っております。しかし、これも実は二カ年で、ことし限りでございます。やがてこれを恒久的に制度化したいとわれわれ念願しております。農林省もそのことについて努力をし、いずれ立法措置その他についても考え、ておるところでございますけれども、これまた非常に抵抗感が強いようであります。  いま日本列島周辺では、日本人の企業の道徳性にもよりましょうけれども、非常にたくさん船が通るところに必ずしも油濁があるわけではございません。最近は東北の海、北陸の海、きれいなところにむしろ件数が多く発生しております。監視が行き届かないというところにたれ流しが行われております。このようなことを考えます場合に、われわれはそれ相当の行政的措置をとってもらわなければならぬと同時に、一番いいのは、そういうことが起こらないようにしてもらうことが一番いいのでございますけれども、起こった際に、それに対するきめの細かい救済措置をとっていただきたいということでございます。そのために、われわれはこれを制度化してほしいという強い要望を持っております。  なお、これに関連いたしまして、これは日本列島周辺ふらち者が油を流すのですからこれは犯罪です。ところが、犯罪にならないで日本列島を汚しておる者がおる。これは何かと申しますと、日本は三億トン近い原油を輸入しております。これがどんどん毎日毎日日本に入っております。これが、帰りにはぐっと船が軽くなりますから、バラスト水を入れて帰ります。そしてこれが途中でタンカーを洗っていくのでございます。その水を流して、クリーニングしていく。これが南の方からどんどん寄ってきまして、沖縄はもちろん鹿児島、御視察になればわかりますけれども、大きな廃油ボールが漂っております。これが海流の関係日本列島周辺にどんどん押し寄せております。これではどうにもならないのじゃないか。しかも外国船である。そこで、どうしても日本を出港する前にタンカーをクリーニングしなければ出港させないということに私はしていただきたい。そうしなければ、やがて日本国は油で埋まってしまうと私は思います。外国の中東でもどこでも、ダーティーな、汚れた船は入れない、入港させません。ですから途中で洗っていくのです。それを見逃しております。それはなぜか。それによってタンカー運用効率が下がるとか滞船しなければならぬとか、そういうようなことが理由のようでございますけれども、やろうと思えばできることでございます。したがって、こういう基本的な問題に取り組んでいただきませんと、原因不明の油濁に対する対策をわずかに講じたからといって、日本近海はきれいになりません。  私は、特に本委員会にこの事情を御進達申し上げまして、私の所見を終わります。
  4. 今井勇

    今井委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、高橋参考人にお願いいたします。
  5. 高橋泰彦

    高橋参考人 私は、大日本水産会会長高橋でございます。意見を述べる機会をいただきまして、ありがとうございます。  海洋法会議につきましては、ただいま及川参考人が述べられましたとおりの状況でございます。  ここで特に注目しなければならないことは、このような遅い海洋法会議進行にしびれを切らしまして、海洋法の成立を待たないで一方的に二百海里水域を設定し、または設定しようとしておる国が増加しつつあるという事実でございます。アメリカは本年四月漁業保存管理法という国内法を制定いたしまして、明年三月から二百海里の漁業保存水域なるものを設定しようとしております。さらに加えましてカナダも同様の措置を明年一月より実施しようとしておりまして、にわかに急迫した局面を迎えることになりました。すなわち、アメリカとカナダは国連による海洋法会議結論を待たずに二百海里の水域という国内法を定めて、従来この水域で操業してきた外国漁船を一方的に排除しようとしているのでありまして、このことは国際慣行を無視し、はなはだ遺憾であり、反対であると言わざるを得ません。  世界においても有力な立場にあるこの二カ国がこのような措置に出るということは、その影響力を世界各国に及ぼす結果となることは当然でありましょう。すでに同様の措置をとってきた一部の後進国の主張を支えたばかりではなくて、その後先進国を含め各国に二百海里水域の設定の体制を促進させつつあるということを認めざるを得ないのでございます。ソ連は現在漁業管轄水域の一方的な拡大には反対の立場をとってきておりますが、各国の相次ぐ二百海里水域の設定によりまして、その水域から締め出される外国漁船がソ連の沖合いに集中して操業するというようなことになりますれば、ソ連としては食糧自給という目的のために、何らかの自衛措置を講ぜざるを得なくなるということを私どもは恐れるものであります。  このように考えてまいりますと、アメリカ、カナダの今回の措置を容認すれば、海洋法の成立を待たずに全世界の海洋の生物資源が沿岸の各国によって距岸二百海里の水域ごとに分断され、それぞれの国の管轄権のもとに置かれるという事態が想定されるわけであります。そうなりますと、わが国漁業の総漁獲量の約四〇%以上の漁場が他国の管轄下に入るということになりましょう。  御承知のとおりわが国世界一の遠洋漁業国と言われてきておりましたが、それは日本本土から見た場合、遠い距離にある海での漁業であったのだということであって、実態は外国近海漁場に大半を依存していたということにほかなりません。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕  世界の国際的な漁場で活躍してきた日本の遠洋漁業は、この点にこそ最大の弱点があったのだということをいまさらながら痛感せざるを得ないのでございます。  さて、二百海里水域の設定によってこれまでの日本漁船実績のすべてを失うとは限りません。当該沿岸国政府の合意が得られるならば、わが国漁船操業が可能となりましょう。しかし、それは相手国の意向次第でやれるかもしれないということでありまして、従来の行き方とは全く違う性格のものであります。この点は大変大切なポイントだと思いますので、もう少し説明をしてみたいと思います。  御承知のとおり、主要な漁場と大切な資源については、わが国と相手国との間に漁業に関する条約または漁業協定を結んで、われわれはそれに基づく日本の法令に従って漁業をしてまいりました。そしてこの条約と協定は、それは公海であるということでございまして、両国の平等の立場で締結されたものであるということは言うまでもありません。相手の二百海里水域でのわれわれの漁業は、この平等な立場を失うわけでありますから、そこが問題であると私は思います。  さて、以上のように、漁業に対する国際的な環境が急速に悪化してきているのでありますが、私たちは何としても従前の漁業実績確保したいと念願しているものでございます。国民の健康を維持する動物性たん白質を自給するという要請に従いまして、従来の漁業実績確保し、経営体を安定させ、漁業従事者の生活を守りたいと願っているものであります。  私は、このような国際的な漁業環境の中で従来の実績確保するためには、一方的な措置に対して反対するとともに、根気よく交渉することが第一の道であると考えております。相手国が有利な立場に立つかもしれないという状況のもとでも交渉が大切だと思います。前段で申し述べましたことによりましても、今後の漁業はまず政府間の交渉がいかに重要であるかということを示していると思います。私は目下政府が最大の努力を払って困難な漁業交渉に取り組んでいることに対し深く感謝し敬意を払うものでありますが、その機能においても人員においても機構の上においても、来るべき漁業の危機を解決するためには不十分であると思います。もっともっと予算上の措置においても充実させる必要があると思います。  また、今後の交渉は、政府の当該機関だけに依存するのは適当ではありません。相手国の経済的な要請と相手国の漁業者立場日本漁船による漁業操業とを調整する必要があります。この面では、わが国漁業者代表と相手国の漁業者代表とで話し合い、交渉することが、実績を継続させる有力な方法であると思います。別の言葉で言いますと、政府と民間が一体となってそれぞれの分野で交渉するということが必要であります。この点についても政府の指導と援助が望まれると存じます。そして私たち漁業団体は、以上のような交渉と交渉後の実行についてその役目を果たし得るような機能と実行力を持つ必要があります。そしてこのことは、強い国民的な世論の支持のもとに、広く経済団体、農業団体、消費者団体の支援のもとに幅広く交渉を展開する必要があると思います。  なお、このような国際的な意見交換と交渉に努めても、なお相当の出血を見ることになりまして、場合によっては従来正当に操業してきた漁船の数を減らす必要に迫られることがあり得ると思います。このような漁業者の受ける深刻な被害に対しまして、政府は傍観すべきではありません。政府は対策を検討し、でき得る限りの施策を講ずべきでございます。  なお、これらの失われる漁獲量の補てんをする対策としての未開発資源の開発の問題あるいは海外における漁業協力の問題、日本周辺の沿岸、沖合い漁場における生産力の拡大の問題につきましては、及川参考人と同意見であることを申し添えたいと存じます。  御清聴ありがとうございました。
  6. 湊徹郎

    ○湊委員長 どうもありがとうございました。  次に、麻生参考人にお願いいたします。
  7. 麻生久

    麻生参考人 私は、いま委員長から紹介をいただきました全日本海員組合組織局次長麻生でございます。  遠洋並びに沖合いで働いております十三万五千人の漁船船員を代表して、船員の立場から海洋法問題あるいはまたこれにかかわる漁業問題さらにはまた船員の雇用問題、そういう立場意見を述べたいと考えております。  海洋法会議は、海を人類共通の利益に供そうではないか、こういうことで本来始まったものでございますが、その経過を逐一見ておりますと、先進国対開発途上国あるいは沿岸国対内陸国、そういう相互の利益が非常に激しく対立をいたしまして、残念ながら現在の段階ではこの行く先がどういうことになるか、必ずしも的確につかめない状況にあります。しかも、残念なことに、海洋法会議の現状は海洋分割の方向に進行中でありまして、この方向が海洋法会議結論として決まりますならば、海岸線が長い超大国はいまより以上の多くの利益を海から得るでありましょうし、あるいはまた逆に、貧しい小国は一層の不利益を生ずるという、本来意図した海洋法会議の方向と逆の方向に進むのではないのか、こういうふうな懸念さえ持っております。しかもこれを漁業問題という立場で見ますと、経済水域という障害、かきね、このために地球上にある水産資源の有効利用というものが逆に阻害をされる、こういう結果になるのではないかということを懸念をいたすものであります。  特に日本の場合は、漁業の生産規模におきましてその約半分が遠洋漁業規模を立てております。したがいまして、いま申し上げましたような懸念が現実の問題となりますと、漁船船員にとりましてはきわめて重大な雇用の問題であり、かつ職場の問題であるというふうに考えております。漁船船員の場合はそういうところに職場を持っておるわけでございますから、本来から言いますならば、従来どおり遠洋で、ないしはまた沖合いで仕事ができるような状況が将来的にも定着をする、このことが非常に望ましいというふうに考えておりましけれども、現在、世界での水揚げ量が七千万トン、日本が持っておる漁業生産の規模は一千万トン、すなわち世界の七分の一であります。世界人口は四十億、日本の場合には約一億一千万、したがって人口は四十分の一であります。したがって、現下の国際情勢から言いまして、果たして四十分の一の人口が七分の一の漁業生産というものを将来とも独占できるかどうかという点を考えてみますと、いささか不安な状況考えられるわけであります。したがいまして、われわれ船員の組合として海洋法会議の行方として望ましい方向というものは、適正に資源の育成と保護を行ないながら、あるいは沿岸漁民立場を配慮しながら、同時にまた、資源の有効利用を図るという立場で遠洋漁業国の実績というものを十二分に尊重しながら、この三つの原則の中で世界的な合意が早く生まれるということが非常に望ましいというふうに考えるわけであります。と申しますのは、一体これからどうなるのであろうかという不安をこれから長い間持ち続けるということは、漁船船員にとりましてきわめて不安であり、したがって、この漁業という仕事に生涯を投じていいのかどうか、こういう不安に終始つきまとわれるわけでございます。したがって、申し上げましたように、そういう方向で海洋法会議がまとまることを望んでいるわけでございます。しかし、先ほど触れましたように、現実はそういう方向に進んでおりませんで、依然として各国間の利害が対立をしておりますから、このまま放置をいたしますと非常に大きい懸念があります。  と申しますのは、もし海洋法会議が失敗に終わったとするならば、海洋無法時代の到来というものは必至でありましょうし、したがって、そういう意味から、各国はその国の都合によって一方的な漁業水域というものを次々と宣言をすることになり、そのことが海洋無法時代に突入をするということになるのではないかというふうな懸念を持っております。その懸念というものが現実には先ほどもお二方の参考人からの意見の中にもありましたように、アメリカやあるいはカナダ、そういうところが一方的に二百海里の漁業水域というものを現在宣言をし、来年の一月あるいは三月に実施に踏み切ろうとしているわけでございまして、このことは今日、日本漁業にとって、特に遠洋漁業にとっては最大の漁業問題であるというふうに考えておるわけでございます。  アメリカは御存じのように世界の超大国であります。非常に力も強いわけでありますが、同時にまた、アメリカ世界のリーダーシップを、どの国もアメリカが言っておることは本当に正しいというような立場のリーダーシップをとることをアメリカに対して望むわけでございますけれども、この漁業問題に関してアメリカやあるいはカナダがとっている態度というものは、少なくとも先進国あるいは世界の超大国としてとるべき態度ではないと考えております。こういう態度を仮にアメリカがいつまでもとり続けるというようなことになりますと、世界アメリカに対する信望というものは失墜をしてしまうのではないかというような考え方を持ちますし、現に漁船船員の立場では、このアメリカの態度に非常に強い憤りを持っておるというのが現状でございます。  仮にもう少しこのアメリカ問題を申し上げますならば、いまアメリカが言っておるようなことが現実になったとした場合に、約千二百隻の漁船、三万数千人の漁船船員がたちどころに職場を失うという現実に逢着をするわけでございまして、漁船船員にとりましてはきわめて大きい問題でございます。恐らくそういうことはないであろうというふうな希望は持っておりますけれども、そういう強い不安に、海洋法会議が始まったときから将来どうなるんであろうかというような考え方を持っていた漁船船員が、このアメリカ漁業保存管理法によってさらに大きくその不安を増大をさせているという現状でございます。  年をふるごとに日本漁業を取り巻く国際環境というものは厳しさを増しておるわけでございますが、そういう中で、漁船船員がこの国際漁業規制によって過去数年の間にどういう状況にさらされてきたか、そうして国際漁業交渉の結末によって職場から去っていった漁船船員に対してどういう施策がとられてきたか、その辺の問題につきましてこれから意見を申し述べたいと思いますが、この点が特に私がこの水産委員会の中で申し上げたい中心でございます。  昭和四十七年ぐらいからの統計を見てみますと、日本アメリカ関係で取り結ばれておりますブリストル湾のカニの事業がございますが、四十七年にはこのブリストル湾のカニに従事をしていた船員総数は千三百六十五人でございました。昭和五十年にはこの数が五百五十七人というふうになっておりまして、昭和四十七年の数を仮に一〇〇といたしますと、昭和五十年には四〇・八という状況に相なっております。あるいは、かつて日ソの間で締結をされておりましたカニの関係で、西カムチャッカ海域に出漁していた船員は、昭和四十七年には千百十四人いたわけでありますが、これもソ連との交渉の結果、昭和五十年にはゼロになっております。一〇〇とゼロであります。あるいはまた南氷洋関係の捕鯨問題で申し上げますと、昭和四十七年には捕鯨に従事をしていた船員は三千四百七十人ございました。ところが、いろいろの国際捕鯨委員会による規制によりまして、五十一年段階では千四百六十七人に激減いたしておりまして、昭和四十七年を一〇〇といたしますと、五十一年には四二・二という状況になっているわけでございます。  あるいはまた海洋法その他の国際関係の厳しい状況の中から、たとえば遠洋マグロ漁業でございますが、その規模が大きいというような観点からか、自主的に減船をしていこう、こういう動きも現在ございまして、千三百隻ございますマグロ船を二割、三年計画で削減をしていこうということになっております。二割は約二百六十隻でございまして、これを船員数に直しますと約六千人の船員が、その自主的な産業構造の変革といいますか、マグロ漁業規模の縮小によって失業の憂き目にさらされる、こういう状況にもあります。  申し上げましたような二、三の例のように、毎年毎年厳しくなってまいります漁業規制によりまして船員は職場を去っていっておるわけでございまして、現在遠洋並びに沖合いで働いておる船員諸君の気持ちは、いつこの状況が自分の身にふりかかってくるか、こういう不安でいっぱいであるわけでございます。そういう中で、雇用対策として船員にはどういう対策がとられてきたか、これもまた非常に重要なことでございまして、その辺につきまして、二、三陸上との関係におきまして考え方を申し上げておきたいと思います。  陸上労働者の場合には、雇用対策法という法律を基本法にいたしまして、職業安定法あるいは職業訓練法、さらには雇用保険法、こういう法律がつくられており、それらの実現に当たっては雇用促進事業団法という法律によって、それぞれ職業安定、職業訓練あるいは失業の救済、そういうことが行われているわけでございますが、海上、特に漁船船員の場合、陸上にそういう法律があるにもかかわらず、これに該当する法律は職業安定法一本でありまして、訓練法あるいは基本法である雇用対策法もなければ、もとよりこれらを実現する雇用促進事業団法というものはないわけでございまして、率直に船員の立場から考え方を申し上げますならば、憲法のもとにこれほど不平等な状況はないのではないかというふうにわれわれは考えておるわけでございます。  そういう現状からいきまして、私たちはいろいろと関係各省庁に対してお願いをしてまいっております。  その第一は、かつて炭鉱があるいはまた駐留軍の労働者が、石炭が石油にかわっていく段階で、あるいは駐留軍が撤退をしていく段階での規模が非常に小さくなっていきました。そのときに政府は、炭鉱離職者臨時措置法あるいは駐留軍の労働者に対しても同様の考え方でその失業の救済あるいは職業の転換、そういうことについて積極的に施策をとってきたことをわれわれは知っております。したがいまして、漁業労働者につきましても、数々の国際漁業規制によって、漁船船員に全くその責任がない状況にあって職を離れていくという立場から漁業従事者臨時措置法というものをわれわれは要求をしてまいりました。これもいろいろ問題があったようでございまして、現状では、本年の春の国会漁業再建整備特別措置法という法律の中で転換給付金を支給する根拠条文が初めてつくられたわけでございますが、これとても炭鉱離職者臨時措置法等に比べますと、中身はまだまだ十分とは言えないというふうに判断をいたしておりまして、したがって、われわれは現在船員雇用保険法という法律の制定を強く望んでおるわけでございます。  内容は、雇用の安定、失業の防止あるいはまた失業の救済というようなものを柱にいたしまして、陸上に見合うような雇用に関する法律の諸体系をこの中にすべて盛り込みまして、陸と同様に海の労働者に対してもそういう施策がとられるように現在強く望んでおるわけでございまして、どうかそういう、これから一体どうなるんであろうかというような非常な不安にさらされております漁船船員に対しまして、諸先生方努力によって、われわれが求めておるこの船員雇用保障法というものが早期に実現されるように強く望んでやまない次第であります。  そのほか、漁船船員の場合にはたくさんの雇用問題がございまして、一部には外国漁船船員を雇おうといったような動きも二、三年前にはありました。昨年、そういう事態の中で水産庁長官の通達によりまして、国際漁業規制によって漁船船員の雇用というものが非常に不安にさらされておる中で、そういうことはやってはいかぬ、こういう通達が出た関係もあってか、現在は必ずしもこういう傾向は顕著ではありませんけれども、依然としてそういう状況もあるわけでございます。  食糧自給体制ということがいろいろと言われますが、食糧自給体制というのは、日本の船で日本人の船員がそこで仕事をしてとること、これがいわゆる食糧自給体制の本筋であろうというふうに考えますので、一面、国際規制で不安にさらされておる漁船船員の雇用なり職場が、そういう外国人の漁船船員を雇うといったようなことで一層拍車がかからないようにこれまた特段の御努力をお願いしたい点であります。  以上、海洋法関係をいたしまして漁船船員の立場で申し上げましたことは、雇用、生活、職場、そういう点に非常に不安にさらされておるということを申し上げまして、私の意見にかえたいと思います。どうもありがとうございました。
  8. 湊徹郎

    ○湊委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 湊徹郎

    ○湊委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅波茂君。
  10. 菅波茂

    菅波委員 私は、自由民主党を代表して、参考人方々に御意見をお伺いしたいわけでありますが、まず、きょうは、参考人の各位から貴重な御意見をちょうだいいたしまして、心から敬意を表する次第でございます。  先ほどのお三人の意見の中にもありましたように、わが国の水産業を取り巻く最近の情勢には、経済水域の二百海里の設定、あるいはまた海洋法会議のあり方、動向、あるいはアメリカ漁業保存管理法の制定による国際的な規制強化等、きわめて厳しいものがあるわけでございます。このことはまた、わが国の国民の食糧確保の上から言っても大きな問題を実は抱えておるわけでございます。そこで、全漁連及川さんあるいはまたお三人にそれぞれちょっとお伺いしたいことがございますので、一括して私から御質疑を申し上げてみたいと思っております。  全漁連ということになりますと、漁業全体、特に及川さんの立場で言いますというと、沿岸漁業というものを中心としていろいろいま御意見を拝聴したわけでございます。私どもの方といたしましては、特に今年、沿岸漁業というものを中心として漁業三法というものをつくって、いささかなりともその一助になったのではないかというふうに考えておるわけでございます。しかし、法律は制定されても、そこにいろいろなまた問題点を実際上たくさん抱えていることは私も存じておるわけでございまして、漁業三法が本当に生きておるのかどうかというその振り返りの中で約一年、何か御意見がありますればひとつお伺いしたいと思うのでございます。また政府に、今日的な立場において、ポスト海洋法という問題も含みながら、一体どうしたらいいのであろうかという——いま御意見が十分あったわけでありまするけれども、重ねて経営者という立場で、一体いま何を政府がやるべきであるかというようなことをひとつもう一度お聞かせ願いたいと思うのでございます。  それから大水の高橋さんに伺いたいのは、海外漁業協力の積極的な推進とか多面的な外交がますます必要となってきておる段階であるわけでございますが、特に大水ということになりますと、アメリカの保存管理法についてもすでに、私も仄聞いたしておりますけれども、民間の外交という形で非常な努力をなすっておることも拝聴いたしておるわけでございます。こういう漁業の大転換期のこのときに、政府間の交渉だけでは今後のポスト海洋法というのはなかなかうまくいくものではない。私もアメリカに行ってまいりましたし、私もそう思っておるので、常日ごろ、いろいろな問題で大水が今日まででもかなり民間的な外交の責を果たしておると思うのでございますが、いまのこの段階で、たとえば一つの指針と言いましょうか、大水なりの一つの指針というものを一体どう受けとめておるのか。また政府に対しては、どういうことを民間外交という中で進めていかなければならぬか。特にアメリカ、カナダ、そういう国を見てまいりますと、立法がやはり議員立法でございます。御承知のとおり、今度のアメリカの保存管理法も議員立法でございます。したがって、かなり民間の声というものを聞く余地を持っておるというように私は思うので、一層また大水あたりのそういう外交というものは非常に必要となってくると思うので、今日の段階において、政府政府なりにポスト海洋法の、つまり政府間の一つの外交というものは施すわけですけれども、やはりアメリカの国情から見ても民間外交というのは、またソ連とは非常に違った様相を持っておると私は思うので、今日、一体どういうふうに政府が取り組んでいったらいいのか、もう一度お聞かせ願いたいと思うのでございます。  それから海員労働組合の麻生さんにお伺いしたいのですけれども、過去の漁業というものの中で、やはりしばらくの間、日本の経済が高度成長という一つの形をとってきた。その中で、魚価もわりあいと高く、しかも漁獲もどんどんふえておったという時代、利益も高水準で、やはり全体から見て漁業労働者も水産業というのは魅力があったと実は私は考えておるわけでございます。ところが、最近のポスト海洋法あるいは石油の高騰から、漁業というものは必ずしも魅力ある姿とは申せられないと思う。したがって、生活がやはり不安定にならざるを得ない。先ほどの御意見の中のクジラの問題もそうでございますけれども。したがって、今日までそういう魅力があったからこそ、私に言わせるならば、漁民方々の労働は非常に過酷であったという部面がないとは決して言えないと思うので、相当無理をなすっておった。漁民労働者の方はかなりの無理を承知でおやりになった。それは結局、魅力があったということではなかろうか。ところが、そのメカニズムがいま非常に大きく変わりつつあるわけでございます。こういうときに労働力が減少するということは、とりもなおさず漁業全体が、これは船に乗る人がなくなるということになりますと、いかようにしても漁業は困ってしまうわけでございますから、そういう点で一体どうこのことを受けとめておるのか。いまのお話の中でも、雇用法とかあるいはまた従事者の臨時措置法とかいろいろ意見も私は聞いて存じておりますし、またいまも申し述べたわけですが、こういうような大きな転換期、一つのメカニズムが変わってくるときに、一体漁民方々はいま今日何を望んでおるのかという点、法制的なことはいまお伺いしたわけでございますが、重ねてそういう点についてはまた麻生さんからももう一度お聞かせ願えればと存じております。  以上でございます。
  11. 及川孝平

    及川参考人 水産三法につきましての効果がきわめて大であったというふうにわれわれ評価をいたしております。ただ、先ほど菅波先生からお話があったことの中に含まれるのでございますけれども、漁業の金融という問題を考えますと、いかにも全漁連というのは沿岸漁業者というような立場に立たされまするけれども、実は今日の水産金融の中の七割が系統金融でございます。たとえば北転に行っておる連中もベーリングに行っておる連中も、一皮むけば金を借りるときはすべてこれわれわれの漁業協同組合系統組織の中で処理されていくわけでございます。それだけに遠洋の方々のこれからの動向に対しても、われわれは組織としてきわめて重大なる関心を持たなければならぬのでございます。これをまず冒頭お答え申し上げます。  それから、特に漁業再建整備法ができまして、七年間という長期の金が、まだ出ませんけれども、これからやっと出かかるというところへ参りました。ただその中で、振り返って考えてみますと、生きる見込みのある者に金を貸したのでございます。ところが、無理かもしれませんけれども、じゃ死んでしまったのはどうするかということは、それはどこに一体しわ寄せが行くかというと全部漁業協同組合に行っております。資材代金も取れない。貸付金も取れない。漁業組合が半身不随に陥るという状況もあり得るのでございます。したがって、ああいうものを何とか運用によって、死んでしまった漁民の後を見なければならないということをどうしたものだろうか、これは必然的に漁業組合に行きます。それらのことまでああいう制度を敷衍していただきたいということを私考えております。それでありませんと、生きておればいいのですけれども、最近漁業の倒産によって漁業組合が非常に不振をきわめるということが多いのでございまして、一人のため、一人の倒産のために多くの組合員が迷惑をこうむるということでございますから、これに対して同じような措置を講じてほしいものだというふうに念願いたします。  それから、今後のやるべき問題といたしましては、何せわれわれといたしましてもなかなか言いにくい面がございまして、なかなかこれから海外に行けなくなるのだという前提で物を言いますと、もうおまえあきらめたのかという話になりまするし、なかなかこれは言いにくい問題でございます。しかし、何といっても従来のように自由にとれないということははっきりしていると思います。したがって、どういうことになるかというと、やはり何というてもこの日本列島周辺というものをよく見詰めて、これからの開発可能な水域というものを十分に利用していく、そのためには、大きな国家投資が要ると思います。今日の沿岸漁場開発整備法程度の、今日二千億程度の予算ではどうにもならぬと思います。この点は国民食糧という立場に立ちますならば、大きな投資も可能である、漁師が生活に困るという角度で予算を考えたならば、予算に限界がある。しかし、国民食糧としてなくてはならないという認識、そういう位置づけをされるならば可能であろうと考えます。したがって、特に先生方にもお聞き願いたいのは沿岸漁場開発整備法のネックは何かといいますと、非常に海に関する学問というか技術がおくれております。金がないばかりではございません。これは技術的に解明できないような問題がたくさんありますので、むしろこの裏づけとして海洋の科学技術の振興、基礎調査、そういうものに大きな研究費等を投じていただきたいと私は思います。それがないと前進できません。  それから、もう一つの問題は、われわれが財界の人たちと話をいたしまするというと、いろいろ言いましてもイワシがあんなざまで、イワシがいっぱいとれてどうにもならぬのに、及川君、それがどうにもならぬでおいて、君何をたん白質と言えるのか、これは経団連あたりの人と話しましても、一般的に言われることでございます。したがって、これからいずれ魚というものは量的に少なくならざるを得ないという判断に立ちますならば、一方においてはいかにして魚の有効利用ということを考えるか、いわゆる加工技術の高度化なりいわゆる有効成分を余すところなく使うという加工の問題に大きな焦点を当てていかなければならぬと思います。現在の加工のおくれた体制、特に私は生産者の立場でございますけれども、加工とは対立的な関係じゃございません。加工なくして魚価の維持もなければ、漁業者のいわゆる円満な経営というものは私は成り立たないと思います。特に加工に対する対策がおくれておる。たとえば金融問題にしましても、しょっちゅうまま子扱いにされておるわけです。片っ方は水産業協同組合ですからわれわれはいばって何だかんだ言いますけれども、片っ方は商工組合とか言いますが、いろいろそこらを何とか考えて加工対策というものを真剣に考えていただきたいということでございます。そうして利用可能度というものを高めていくということでございます。  それからもう一点は、先ほども申しましたとおり、何といいましても、日本列島周辺漁場環境をよくするということでございます。このことが特に必要だと思います。最近こういう問題がございます。下水道整備ということを市町村長さんもあるいは都道府県知事さんも一生懸命でございまして、国もようやく下水道整備に要する予算はふやしてまいりました。ところがよく考えてみますと、これは場合によってははなはだ迷惑なことになります。と申しますのは、いままでは地下にしみ込んだのが全部海に流れてきます。そうしますと、いわゆる海の公害で、赤潮とか何かというのはすでにわかっております。これは燐と窒素の害である。ところが燐と窒素を除かないで、そうしてどんどん見た目にはきれいなものを流しますと、これはいよいよもっておかしな話になります。したがって、第三次処理といいますか、下水道整備をする場合には、どっちみち必ず海に流すのですから、そうするならば必ず燐と窒素というものは排除するというところをやられませんと、漁業公害のもとをなす。したがって、下水道整備ということにつきましても、われわれは賛成でありますけれども、終末処理をしなければどうにもならぬということを、特に機会が与えられましたので申し上げておきたいと思います。  たくさんございますけれども、もう時間がありませんので、これで……。
  12. 高橋泰彦

    高橋参考人 お答え申し上げます。  今回のアメリカの二百海里法案が突如として設定されたわけでございますけれども、この問題につきましては私ども大いに反省をまずいたしております。その第一は、アメリカ漁民アメリカ国会方面を突き上げたあの力を少し見損なったのではないかということが第一点。それから二つ目は、アメリカ国会の動きをどうしてつかむことができなかったかという反省で、後悔を含めて申しますと、もしその段階で、日本国会の議員の先生方が、向こうの国会の議員の先生方と交流できていたらこういうことにならなかったかもわからぬという点で、私ども大いに反省いたしております。  しかし、できてしまったものはいたし方がないわけでございますが、しかしこれを反省の種として、それから出発しまして、私どもはこういうふうに考えております。やはり従来の漁業の交渉のやり方と申しますると、極論いたしますと、外務省と水産庁が向こうの政府、行政当局と交渉して漁業条約をつくり、漁業協定をつくり、私どもはそれに従う、私どもは日本政府をバックアップしていく、こういうパターンだったと思います。しかし、現在の失敗のことを反省して得た考え方というのは、もはやそういうやり方ではだめだということであります。したがいまして、恐らく菅波先生もあちらへいらして体験されたと思いますが、もちろん外務省、水産庁はそうですか、私どもも、できますれば、国会先生方も向こうと交流する機会を多くしたい、そういうシステムをつくりたい、このように、後悔先に立たずと申しますけれども、これからでもおそくはないと私は思うので、そういう機会をつくりたい。しかもこのアメリカの二百海里法案を見ましても、日本漁船を一隻も入れない、絶対に排除するとは書いてないのでありまして、かなり交渉することによって入ることができる可能性があると思っております。しかし、これは先ほど申しましたように、両国対等の立場での漁業交渉ではありませんで、向こうの国内法をくぐっての交渉でありますから、一層われわれ民間人が向こうの漁業者とも腹を合わせて相談し、あるいは向こうの立場に立ち、あるいは経済的な利害も十分調節をしませんと、今後なかなかむずかしかろう、これが私どものいま考えておることでございまして、何かこれをシステムとして、国が財政援助するとか、あるいはやり方についてアドバイスをするとか、そういうかっこうを心からお願いしているものでございます。
  13. 麻生久

    麻生参考人 日本の食糧を考える場合に、御案内のように魚というものが欠くことができないというふうにわれわれは強く信じており考えておりますが、それを確保していくためにあらゆる総合的な施策が必要かと思いますが、財政金融その他諸政策でもって仮にそういうものが補われたといたしましても、この生産を支える漁船船員の育成というか、漁船船員に希望を与えるというか、そういう政策がない限り、私は将来にわたって魚の確保はできないというふうに考えております。そういう意味で、働いておる漁船船員が将来に希望を持ちながら、同時に生きがいを持ちながら漁業に従事をしていけるという政策が非常に重要だというふうに考えておるわけでございます。  そういう意味で、去年の十一月二十五日の朝日新聞の横浜版の記事でございますけれども、御案内のように去年は経済の成長が非常に大幅に落ちまして、求人倍率が全体的に非常に落ちた年でございますが、その有効求人倍率が〇・三とか〇・五とか言われておるときに皮肉な反対現象として挙げたのがこの朝日新聞の記事でございます。東京、神奈川、静岡、千葉の一都三県、ここに所在する水産高校の卒業生の就職状況をつづったものですが、本来この水産高校というのは水産に従事する船員を養成をしよう、こういうことでつくられた学校でありながら、銚子の水産高校の漁業科三十七人の卒業予定者のうちで漁船船員になろうというふうに希望した者が三人、これに対して求人者側は神奈川県三崎、焼津その他四十四社から八十人求人がある。何と有効求人倍率が二十七倍である。陸上の求人倍率が当時〇・三とか〇・五とか言われていたときに二十七倍という有効求人倍率がこの水産高校の場合にあった。ということは、いかに漁船船員というものが、漁業に身を投じようと考えて学校に行ったにもかかわらず、状況の激しい変化の中でおれは漁業で働いてもだめなんだという考え方を持った具体的な証拠ではないかと考えているわけです。  考えてみますと、確かに漁業労働というものは厳しい労働でございまして、それはそれなりに将来の希望さえ持てればしんぼうができると思うのですが、こういう状況になってつらつら漁船船員の労働条件その他を考えてみますと、特に法制上考えてみた場合に、いろいろ労働基準法その他労働関係の諸法規によって労働は保護されております。保護されておりますが、その中で、陸上で言う労働基準法に該当する船員法で漁船船員は労働時間、有給休暇、こういう基本的な労働条件の上でも適用が除外をされているという現実があります。あるいはまた、今日常識化されているとわれわれは考えますけれども、その常識化されておる最低賃金制度すらまだ日の目を見ておりません。あるいはまた、陸上には労働安全衛生法というように、労働災害を積極的に防止をしていこうという法律が厳然としてありますけれども、海の場合には労働安全衛生規則という規則でしかないという現状です。あるいはまた、失業保険の適用率でいきましても、大体三〇・六五%というような失業保険の適用率でしかないというように、法制上の保護というものもきわめて不備であります。したがって、環境が悪い中で、さらにそういう労働諸条件の法制上の保護を見てみますと、そういう諸問題があれば一層若い人の漁業離れが生じてくるのではないか。したがって、われわれはいま言ったような労働を保護する法制の積極的な推進をまずお願いをしたい。  それから第二点といたしまして、若い者にあるいはまたこれから漁業に生涯を託そうと考えておる諸君に対して、日本漁業規模というものはこれからどういうふうに展開していくのか、たとえば現在一千万トンの生産の規模がありますけれども、一千万トンの生産規模がこれから将来確保できないとすれば、どの程度規模なら日本漁業というものは成立し得るのか、まずそういう長期的なビジョンを描いていただいて、そのビジョンの中で、したがって漁業従事者がどの程度これから要るのだというような政策を樹立してもらう、そういう中で新規の学卒者も積極的に導入をしていくでありましょうし、というような将来の展望を具体的に立てていただく。これは陸上で言えば雇用対策法の中に雇用対策基本計画というものがあります。すでに陸上の場合には第二次の基本計画期間中でありますけれども、先ほど触れましたように海の場合にはそういう雇用対策法といったような基本法もありませんので、そういう雇用に対する将来的な計画もない。これでは幾ら何だって漁船船員は漁業に身を投じようという気持ちにはならぬかと考えますので、先ほど申し上げましたような労働保護の観点、それから同時に将来漁業に身を投じていいというようなビジョンと申しますか将来像と申しますか、そういうものを具体的に描いて早く示していただくことが漁船船員にとって希望が持てる形になるのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  14. 菅波茂

    菅波委員 以上で終わります。
  15. 湊徹郎

  16. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本日は、全漁連及川会長さん、大日本水産会高橋会長さん、全日本海員組合組織局次長麻生さん、大変お忙しいところわざわざ本委員会に御出席をいただきまして、先ほど来貴重な御意見を賜っておりますことに、日本社会党を代表してまずお礼を申し上げたいと思います。  本日、皆さん方をお呼びすることに相なりましたのは、先週の水曜日の朝の理事会の段階で私の方から各党理事さんの方にお諮りをいたしまして、それをぜひ来週やろうじゃないかということでお集まりを願ったという経過がございます。  と申しますのは、先ほど来お三方の参考人から非常に厳しい現在の情勢についてその対策の強い要請等もございましたが、ことしの春通常国会の段階で、水産三法を議論するときに関係者のお集まりをいただいたことがございます。そのときも貴重な御意見をいただいたわけでございますが、あの後第三次国連海洋本会議関係では、春の会議も終わっている、さらに夏の会議も終っていく。そして、新しい来年度に向けて厳しい情勢を迎えようとするこの段階で、さらに水産全体の指導的な立場にある大水、また沿岸漁業中心にこれから大きな役割を持っていかなければならぬ全漁連、さらにそこで働いておられる漁船員の関係については、これからの日加、日米加、さらに日米交渉というふうなものを展望してまいりますと、直ちに船員の厳しい雇用問題がぶつかってくるというふうなこと等もございまして、総選挙含みでありますけれども、この重要な時期にぜひ率直なしかも真剣な御意見を承り、これにこたえて本委員会としてもいずれ各党で相談をするわけですが、領海十二海里の早期宣言、さらにポスト海洋法をにらみながら、総合的な水産政策の推進といったような本委員会における決議もこの機会にやりたい、こういうふうな趣旨でお集まりをいただいたわけでございます。  私からも、菅波先生に引き続いて三参考人に若干御質問を申し上げたいと思います。  領海十二海里の早期宣言の問題については、特に及川さんからもお触れになりましたけれども、この点は数年来非常に大きな本委員会における問題でございまして、われわれ社会党としては国連海洋法会議結論を待つまでもなく、日本漁業者のための要望である領海十二海里を早期宣言すべきであるという立場で、昨年の九月二十六日に全漁連及川会長から各党あてに出されました領海十二海里の早期宣言に関する質問書に対しましても、わが党としては成田委員長と水産政策委員長の私の連名でこれに対する回答をやりましたし、回答大会でも常の見解をそういう立場で述べてきておるわけでありまして、この回答の中でも、わが常は漁民の要求を率直に受けとめ、これを緊急の課題として、海洋法結論を待たずに先行して領海十二海里の早期宣言を行うべきものであると考える、こういうふうに党の見解を表明し、その実現のために今日まで対応をしてきておるわけでございますが、これは本委員会理事会等で相談をしながら、本院の各党共通の意思を委員会として取りまとめたい、こういうふうに考えております。     〔委員長退席菅波委員長代理着席〕  そこで、全漁連及川さんは過般の夏の第五会期に出席された立場から、いろいろその受けられた印象等も含めてお話がございました。私、先般お伺いしたときもいろいろお話ございましたが、答弁の段階でさらに今後の問題について敷衍すべきことがあれば及川会長御答弁の際にその点にも触れていただきたいというふうに思います。  第一に、高橋さんにお伺いしたい点は、高橋さんの方から先ほど来これからのポスト海洋法に向かっての漁業界外交というものを推進するためには、もちろん政府レベルの政府間交渉もあるけれども、政府と民間一体になった形の交渉を強力に展開していく必要がある。われわれもそのとおりだというふうに考えますし、同時に菅波さんの質問に対して国会レベルにおいてもいわゆる漁業外交に資するようなそういう努力の要請もございまして、私どももそのことも重要であるというふうに考えております。来年度の水産庁の予算の重点要求項目の中で第一に掲げておるのは、ポスト海洋法対策の推進というふうなことで、水産庁の国際顧問の設置であるとかあるいは大型使節団の派遣であるとかいうふうなことが、新規に予算要求として出されてまいっておりましたり、あるいは既住の海外漁業協力財団に対する積極的な助成であるとか、あるいは新漁場開発のための海洋水産資源開発センターに対する積極的な助成の問題であるとか、新しくわが国経済水域対策の推進のための日本周辺漁業資源総合調査とか、あるいは沖合い漁場利用実態調査とか、あるいは外国船操業海域資源影響調査とか、こういうものを新規に始められようとしているわけですが、経済水域対策の推進なんというようなことをこれから取り上げようというのは、要するにこれからのポスト海洋法をにらむ場合にはもっと早期にという感じも率直に言ってしないわけではありませんが、そういった問題で遅まきながらポスト海洋法に対するわが国の対応策について積極的に取り組もうという気持ちが察知されるわけでございますけれども、そういうポスト海洋法に対する水産庁の重点予算要求という問題と関連をして大水の立場として、あるいは及川さん全漁連立場としてさらに御意見がありますれば述べていただきたいというふうに考えております。  それから、及川さんの方から先ほど触れられた問題の中で、国会ですでに法律が成立しております沿岸漁場整備開発法に基づく沿岸漁場整備開発計画というものが七年、二千億の予算で来年度は第二年目に入っていこうという段階であります。それに対する意見等もございましたけれども、これについてもさらに科学調査の問題は、水産三法議論の際にも及川さんから述べられた点でありまして、非常に重要な基本問題だと考えておりますが、これらの問題についてもさらに敷衍すべきことがあれば、及川さんからお話を願いたい、こういうふうに考えております。  それから、お触れになりませんでしたけれども、及川会長に関連する問題でありますが、来年度の予算の場合は、漁港の整備の問題については第六次漁港整備計画で新しくスタートするというふうな段階を迎えるわけでありまして、過般の長崎の大会は私ちょっと用がありまして行きませんでしたけれども、それからの問題に関連をして来年度予算との関連で御要請の点がありますれば、そういう問題にも触れていただきたいというふうに思っております。  さらに、菅波さんの御質問に関連して及川さんの方からお答えになりました水産加工対策の問題で、御意見のとおりだというふうに私思うわけでありますが、農林省も来年度は水産物処理加工技術の開発というふうな問題から多獲性赤身魚の高度利用の問題、あるいはオキアミの食用化の問題あるいは未利用深海魚の食用化問題、海洋廃棄物等の利用問題というふうなことで水産物処理加工技術の開発、さらに検討問題としては水産加工振興特別措置法等の立法の検討というふうなことも進めておるように承っておるわけでありますが、これらの問題に関連をして先ほど菅波さんにもお答えになりましたけれども、水産加工の問題で水産庁のこれから取り組もうとする姿勢との関連でさらに意見がありますれば、お触れ願いたいというふうに考えるわけでございます。  それから、公害の問題に触れられた点は、これはやはりこれから沿岸、沖合いの日本列島周辺漁場豊度を高めていくというためには、経済水域等の問題も含めながら積極的な沿岸、沖合いの振興対策をやっていかなければならぬという情勢に客観的にはあろうかと思うわけでありまして、その点で及川さんから触れられましたように、原因不明の油濁による被害漁業者の救済制度の確立という問題について水産庁が新しく法制化の検討に入る、またそういう意味の漁場油濁被害救済基金交付金制度というようなものの立法化の問題も進められようとしておるわけでありますけれども、全漁連立場として法制化の問題も含めた御意見がありますればさらに触れていただきたいというふうに思います。  それから、これは麻生さんの御意見とも関連をするわけでありますが、御案内のとおり、漁業再建整備特別措置法という問題は、過般の国会で水産三法の中で処理する点には党内でもいろいろ議論がございました。特に海洋国日本、水産日本としてカツオ、マグロ等を政令で指定しながら減船対策を進めるというふうな問題については、麻生さんの意見とも関連しますけれども、これはどうであろうか。ことに便宜置籍船等の韓国漁船その他の問題を抜きにして、日本自身がこういう減船を進めていく、他の方がそれを埋めてくるというふうなことになってきたならば、何の効果も発揮できないのではないか。外国漁業の規制に関する法律の中で政令指定にゆだねられたマグロ等の外国船漁業の問題と関連をして、党内でもそういうふうないろいろな議論があった経緯がございます。これらの問題で、水産庁の来年度予算要求の中では、減船スクラップ、そういうものに対する経費助成というふうなことが新しくここで組まれようとしているわけです。これは、過般この法案の議論のときに、私は直接助成の問題に対する法修正というふうなことを問題提起したわけでございますが、まず初年度はそういうふうな強い意向というものも踏まえながら、法律そのものとしては政府提案のとおり滑り出してどうかというような経緯等もありまして滑り出しましたけれども、減船を実際に実施していくという場合には、やはり直接助成を含む積極的な対策等が講ぜられないとなかなか進行し得ないのではないかという感じも率直に言って持っておるわけでありまして、漁業再建整備特別措置法のうちのそういった問題について、大水の高橋さんの立場として、日鰹連の意向等も踏まえながら、どういう御見解かという点について御答弁を願いたい、こういうふうに考えておるところでございます。  それから、水産高校の問題が出ましたが、現実に今日国際漁業の情勢あるいは漁業全般の情勢というものが必ずしも見通しが明るくない、厳しい情勢であるというようなことから、本来水産界に身を投じようとしておった学生諸君がその道を選ばずに他に行くという傾向が出てきている、これはわれわれとしても非常に憂える問題の一つだというふうに思います。その点ではやはり将来に対する明確な展望を明らかにするということが当然必要だというふうに思うわけですが、これは単に水産高校にとどまらず、国立、私立等も含めて大学の水産学部あるいは水産大学、あるいはまた商船専門学校というふうな、海に身を投じていこう、それに自分の生涯を託そうというふうな問題の、就職の行方というものを数年来見てみましても、同様なことが言える状況にあろうかと思うのでありまして、いわばこういったポスト海洋法等も展望しながら、これから大学、高校あるいは高専等も含めた水産関係の教育というものについてどう考えるのかという点については、及川さん、それから高橋さん、そしてまた麻生さんの方からもそういう点について御意見があれば出していただきたいというふうに考えております。  さらに及川さんには、先ほど数年来の北洋のカニの問題であるとかあるいは南氷洋の捕鯨問題であるとか、あるいはその他、昭和四十七年当時と今日を比較して、非常に大幅な船員の人員削減といったような深刻な事態についてもお触れになりましたけれども、これからの雇用安定の立場からの問題は、先ほど陳述の中で船員雇用保障法というふうなものの制定を基本にして陸と海の不平等のない法の総合的な措置を強く要請されたわけでありますけれども、これらの点に関連をして、当面、迫り来る日米、日加等々の問題に関連をして、全日本海員組合としては雇用問題から対資本の関係あるいは対政府関係ということで、緊急の問題として直接的にどういう要請を持っておられるという点についても、さらに御意見がありますれば触れていただきたいというふうに考えております。  同時に、来月の四日には東条会館で海員組合等の関係組合が中心になり、団体側にも呼びかけ、日本漁業考える会として、これからのポスト海洋法に対する総合的な施策を政治的にもあるいは国民世論としても高めていこうという運動を提唱されているという点については私どもも全くその趣旨に賛成でありまして、深く敬意を表するわけでありますが、それらの問題と関連をして、ポスト海洋法に向けてこれから国民運動といいますか、国民世論の喚起その他を含めて、全漁連及川さん、高橋さん、それから海員組合の麻生さんの方から、全体的なこれからの政治、国民世論というものに向けての御意見というものがありますれば、さらに触れてお述べをいただきたいというふうに思います。  この点に関してましては、きょうの朝日新聞の社説の「対米加漁業交渉を注視しよう」という段落の一番終わりのところに、「大日本水産会が農業団体に、海員組合などの労働組合が各政党や消費者団体に働きかけ、国民の食糧を守る運動の中で、自分たちの職域を守ろうとすることは、まったく正しい。一段と輪を広げるべきだ。」こういう結びが出ておるわけでありますが、こういった政治の舞台、さらに国民世論の喚起、その協力という面についてお三方からそれぞれ意見がありますれば、これらにも触れてお話しを願いたいというふうに思います。
  17. 及川孝平

    及川参考人 いま委員部の方からきわめて簡単にという御注意がございましたので、角屋先生もたくさんのあれでございますけれども、はしょって申し上げますので御了承願いたいと思います。  まず領海問題。特に私がきょう強調いたしましたのですが、十二海里の問題というのは二百海里とも違いまして、私たちは一般的にいままで何がゆえにこの領海問題というのが実現しないかということ、これは一つは、公式的には海洋法待ちというしか何もないのでございます。それで伝え聞くところによりますと、核問題であるとか、あるいは日本タンカーがマラッカ海峡を通れぬとか、それが理由だとか何とかかんとか言っておりますが、しかし政府見解として何が阻害要因であるかということについて私たちは承っておらないのでございます。いろいろと憶測を立てておる。しからばこれからは海洋法というものが——恐らくどなたであっても来年の五月に海洋法が成立するという、自信を持って答えられる方が一人もいないはずです。あったらお目にかかろうと思います。そういう段階であれば、もはや海洋法に籍口して海洋法会議待ちということでは理屈にならぬと私は思います。したがって、本当に何が原因で日本が十二海里宣言ができないのかということを詰めなければならぬと思います。私たち各党に対する質問状も発しまして、先ほど角屋先生からお話がありましたように態度を聞いております。その中にやはり何がゆえにというような問題に類することも含まれております。たとえば非核三原則の問題とかいろいろあるようでございます。しかし、政府から公式にはそんなことは一つも聞いておりません。こいねがわくは各党の御主張等も私どもはいろいろ聞いておりますけれども、いまこの現状に立って何とか政治家が知恵をしぼってこの窮状を打開してほしいということでございます。政治家が知恵をしぼって、漁民窮状を本当におわかり願ったならば、打開の道必ずありと私は信じます。国会を信じます。したがって、そういう立場でこれからは海洋法待ちというような弁解にとどまらず、何がゆえにという問題について明確に国会の場において論議を展開してほしいと私は思います。  それから、先ほど沿岸漁場開発整備等の問題がございました。これにつきましては、私はいまの沿岸漁場開発整備というものは、せいぜい日本の海域の百万平方キロぐらいの海域を利用するということでございます。二百海里の段階に入りますというと、少なくともわれわれは三千方ヘクタールぐらいの海を領有します。そうしますと、そのうちの三分の一、一千万ヘクタールぐらいを積極的に漁場として開発利用するという第二次の大きな計画が発足しなければいかぬ、そうでなければ国民のたん白食糧の不足欠減ということに対応できない。したがって、私は長くは申しませんが、少なくとも一千万ヘクタールの海域を利用する大計画をもう発足させなければならぬ、こういうふうに考えます。  加工対策でございますが、先ほども申しましたけれども、加工についてはなんとなく愛情が足らないといいますか、しかし加工なくして漁業生産がございませんと私は信じます。したがいまして、たとえば漁業協同組合系統あるいは漁業者に再建整備というような道が講じられたならば、私は加工業者に対しても講じていかなければならぬと思います。     〔菅波委員長代理退席、委員長着席〕 これはぜひ私はそのように検討願いたいと実は思っておるのでございます。  それから汚染問題につきましては、これは私のところも専門とするとろでございます。語れば何時間でもしゃべりますけれども、とにかくこの汚染問題につきましては、よくはなっておりますけれども、最初私たちは工業、いわゆる企業というものを征伐しました。しかし本当は何がもう一つの公害の原因かということを知っておりました。これははっきり言って生活排水です。この生活排水も同時にやりますと、だれが犯人かわからなくなりますから、われわれは攻撃目標としては企業を攻めました。しかしはっきりと生活排水の問題があることはわかっておりました。いまや、これからは生活排水の規制問題でございます。この問題に重点が置かれなければならぬと思います。そのために、先ほど申しました下水道のいわゆる第三次処理といいますか、終末処理で燐と窒素を除く、これをぜひやらなければ公害対策になりません。このことを再度強調いたします。  それから油の汚濁基金の問題でございますけれども、本来ああいう非常に騒々しい公害問題の中において、一種の政治的妥協で経済界が何やらわけのわからぬ、おまえが悪いことをするやつの仲間だからおまえが金を出せと——これは私自身個人的には何か割り切れません。何か悪いことをする仲間だから仲間に出せ、こういうことは私の法律観念ではなかなか理解できません。したがって、何かこれは制度としてつくってほしいという要望をわれわれは持っておりました。しかしこれは非常にいろいろまた財源その他で問題がむずかしいようでございます。しかしながら、このことは金額的にはいまのところ大した大きな問題ではございませんけれども、これは非常に難航しているようでございますので、特段の御配慮を願いたい。ただ、私はこの際特につけ加えたいことは、われわれは公害の問題で海をきれいにしていこうと孜々営々として努力した。しかしながら先生方、瀬戸内海において一万トンタンカーなり二万トンタンカー、三万トンタンカーがぞろぞろ通っています。もしこれが一たん沈没したらどうなります。かつての三菱石油のたった七千キロの油でさえあれだけの被害を起しました。そうしますと、もし今日の防災対策というようなものだとしまするならば、むしろを投げてしみ込ませたりしてやっておるんですね。それでどんなことになりますか。結局最後には薬をかけて沈めるしか方法がない。このような状態で恐らく瀬戸内海で数万トンの船がもし万一のことがあった場合には、これは全滅いたします。こういうことを考えますと寒けがいたします。営々として災害防止、いわゆる汚染防止をやって、法律でやったりしておりますけれども、画餅に帰するということに相なります。したがって、私はその防災といいますか、もし瀬戸内海とか東京湾とか伊勢湾とか、そういう内湾関係においてそういうことが発生した場合においては緊急対策ができる措置、ざっくばらんに言いますと、少なくとも一万トン級の船を配置して、これは海上自衛隊かどこかわかりませんけれども、一たん緩急があったら直ちに出動して急遽これを取り除くという措置をどうしても講じていただきませんというと、われわれは安心しておれません。そこで、この問題は、日本の人はよく災害が起こってから物を言いますけれども、水島の石油問題で非常に深刻にわれわれは教えられております。したがって、単に油濁基金というような小乗的なそういう問題だけでなくて、もっと大規模に石油対策というものを考えていただきたいと思います。  それから、漁業者の後継者問題でございまするけれども、まさしくおっしゃるとおり、私も水産学校の生徒を調べておりますけれども、非常に矛盾を感じます。国あるいは県は練習船をつくり、多額のいわゆる特殊学校としての投資をしている。金をかけている。その結果、いわゆる漁業者に向く者は一割もいないのでございます。みんな食品関係へ行ったり商社へ行ったりしておる。これはどういうことか。水産の後継者を養成するつもりでやった学校、それに国が金をかけた。それが結果として一〇%に満たない。この現実は何を物語るものであるか。いかに漁業に魅力がないかということでございます。私は、結局どんなにいろいろな美辞麗句を並べましても現実にこれを物語るものと思います。食糧問題とかなんとかいろいろ言いますけれども、食糧をつくるのは農民と漁民です。漁民と農民が明日の生活に対して希望が持てて、この職場におることについての誇りを持ち得るならば、黙っておっても私は食糧の確保はできると思います。これなくして何ぼお説教しましても、農業人口、漁業人口は減るばかりでございます。私はそのこと自体をもっていかに政策の立ちおくれであるかということを如実に物語って、何も言うことはないと思います。  それから国民世論の喚起の問題でございますけれども、これにつきましてはまことにわれわれも至らぬところがございました。私も最近考えて、私のところは全国から人が集まって、テーブルをたたいて、及川会長どうだと盛んにやっておりますけれども、もうわかっているから、もう言われなくたってこっちはわかっているんだ、だから、いかにしてこれを国民の皆さんにわかってもらうかという方法に問題があるんだということを非常にわれわれは考えています。  小さい例でございますけれども、少なくとも財界の人たちにはわかってもらいたいということで、われわれは経団連の首脳部と毎月定例的に朝食会をして、水産の問題を話し合い、土光さん初め、相当理解も深まってまいりました。これは大変なことになる。たとえば一例を申し上げますというと、あるところの水産統計を見ましたら、現在の日本の水産の自給力は一〇一%でございます。農林統計にそう出ております。こういうことで一体だれが漁業の問題を真剣に考えましょうか。そこで私、実はそのうちの四五%なりは外国からとってきているんです、それがいままさに危殆に瀕しているんだ、こういうことになっているんだという話をしますと、そうか、これは容易ならざる問題だということでございます。そのようにまことに啓蒙というか、その点が足らなかったということを非常にわれわれも考えております。したがいまして、もはやわれわれ漁師の生活の問題じゃなくて国民食糧の立場で物を論議するとなるならば、基本はやはり国民的コンセンサスを得なければ漁業振興はないというふうにわれわれもかたく信じて、諸種の政策をとろうということで、先ほど角屋先生からありました近く行われます水産振興会議というものも、集まるのは漁業者じゃありません。漁業者も来ますけれども、主としてそれを取り巻いたところの周辺の財界であるとか各種の関係、そういう方々漁業の現状を訴えて、これはいかに国家として大切な問題であるかということの御認識を深めたいということのために大水等とはかりましてその計画をしたわけでございます。確かにお説のとおり、われわれは国民的コンセンサスを得るというような方向で運動を進めなければとても抜本的な改革は望めないというふうに私ども考えております。
  18. 高橋泰彦

    高橋参考人 角屋先生の御質問に対して大部分及川さんから答えられたわけですが、残った問題について申し上げます。  まず、水産庁の現在立てておりますポスト海洋法対策に関する予算案の件でございますが、私どもはあの予算を拝見して決して十分だとは思いませんが、しかし少なくともこの程度の要求額はぜひ実現したいものだ、こういうふうに考えております。  それから漁業再建整備特別措置法の問題に関する御質問でございますが、先生御案内のように、その後国際的な環境が急速に悪化しております。したがいまして、当時考えられましたこの法律で十分であるかどうかについては、来たるべき減船に十分こたえ得るものであるかどうかについてさらに再検討を進める必要があろうというのが私の意見でございます。  以上でございます。
  19. 麻生久

    麻生参考人 角屋先生から質問がありましたことについて簡単にお答えします。  学卒者の教育方針の問題につきましては、総合的な水産業全体の規模の将来の姿というものの中から考えなければならぬ問題と思っておりますので、したがって官労使というか、そういうような国民の民意を代表するような形での委員会というものを構成をしていただいて、できるだけ早く漁業規模というものの将来の姿をつかんでいただいて、その中から学校教育方針というものも考えていくのが適当な方法ではないのかというふうに考えております。  それから当面をしている失業問題でございますが、この春の国会で決めていただきました再建整備特別措置法の中で言うところの転換給付金、これは中高年対策が中心でございまして、転換給付金そのものの水準もそう十分なものとは考えておりません。したがって、水準の引き上げ、それから単に中高年対策ではなしに、全体的にこういう形で泣く泣く失業していく漁船船員の諸君に対して十分な国の補償というものを考えていただきたいというふうに思っております。さらにまた、できますことならば新しい漁場というものも積極的に開発をしていただいて、むしろその方に重点を置いていただいて、引き続いて漁業というものの中で生活が営んでいけるような形のものを考えていただきたい。  三つ目といたしまして、皮肉なことに遠洋漁業では国際規制によって人間が余る、こういう状況があります。ところが沿岸、沖合いという漁業では逆に人が足りないという現象が現実に出てきておりまして、文部省の学校基本調査におきましても明らかにその事実は指摘できます。したがって、たとえば遠洋漁業で職を失った漁船船員諸君が沿岸とか沖合いの漁業に転換をした場合、これは住まいの問題であるとか技術的な問題であるとかいうことで非常に転換しにくいわけでございますけれども、漁業が動物たん白を確保する上で必要であるという観点に立つならば、そういうように、沿岸にかわって引き続いて漁業をやろうというような諸君に対しては、税制の面、年金の面で特別奨励制度といったようなものが考えられないものかというふうに考えております。  さらに、百万人の署名運動の問題につきましては、すでにお二方の参考人が述べられましたとおりでございまして、われわれ船員の立場でも今後引き続いて積極的にやっていきたいというふうに考えております。
  20. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もありますので、以上で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  21. 湊徹郎

    ○湊委員長 次に、中川利三郎君。
  22. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 最初に全漁連及川さんにお伺いして、その後で一括してあとのお二方にお伺いします。  まず及川さんでありますが、先ほどお話がありましたとおり、十二海里宣言については衆議院、参議院合わせて八五%の賛成であったということでしたが、わが常の場合は、この十二海里宣言には一〇〇%賛成しているわけでありますが、あわせて一月の閣議決定、さらには二月の三木総理大臣の言明等、いろいろな状況から見まして、その気になればすぐできるはずですね。これがいま言ったとおり逆戻りになってきた、また海洋法待ちになってきた、これはけしからぬということをあなたは先ほど力を込めて言うておりましたが、このような政府のあり方に対して、あなたは率直にどうお考えになるのかということをお聞きしたいのが第一点。  第二番目は、来月十一月の四日におたくの方では日本漁業危機突破の全国大会を開くということを聞いているわけでありますが、その中で、やり方としていままでのはち巻き方式のやり方ではなくて別の方式をとるんだ、こういうことでいろいろ私聞いているわけでありますが、具体的にどういうやり方でどういう効果を期待するのか、この新しいやり方というものについての御見解をお伺いしたいと思うのです。  三つ目は、全漁連はいま全国漁業者のリーダーとしての役割りを果たしているわけでありますが、かつてないこのような危機の中でリーダーとしてどういう役割りを果たそうとしているのか。この点を私が特に聞くのは、たとえば、こういう状況の中で来年の参議院選挙に水産業界の偉い人が自民党公認で出るというような話もありますし、こういう場合に皆さん方は、それはそれなりに別の問題だというふうにお考えなのか。本当に危機突破ということを意識しているならば、その原点からどうお考えになるかということを含めて一応の御見解を聞きたいと思うわけであります。  最後に、これは全漁連の方の最後でありますが、この前の漁業三法改正のとき及川参考人は、政府案ではカンフル注射にすぎないではないか、こういうことをおっしゃいまして、私も全く同感に思いました。同時に、そういう立場からわが党は再建整備法に対しまして独自の修正案を提起したわけでありますが、これは残念ながら受け入れられなかったわけであります。その後の漁業をめぐる情勢というのは、一層厳しくなりこそすれ好転しておらないのでありますが、カンフルではなくて本当の漁業再建のために政府に対してどうすべきだと考えているか、この点もあわせて率直に、しかも簡単にお答えいただきたいと思います。
  23. 及川孝平

    及川参考人 第一点につきましては、政府の態度について、はっきり申して私たちは非常に不満を持っております。怒りを込めて私は申しておるのでございます。  それから先ほど水産振興会議のお話、これは恐らく高橋さんの方が適当と思いまするけれども、私も大水の副会長でございますので……。実は、漁民の集会はいろいろな関係でなかなか間に合わないということもありまして、まず第一段といたしましてわれわれの立場というものを各界の方々に理解を願わなければいかぬのじゃないかという趣旨でございます。したがって、もちろん内閣総理大臣初め農林大臣、外務大臣の出席を求めたい。同時に財界の方々、消費者の方々、そういうすべての方々にとにかく聞いてほしい、非常にわれわれは謙虚でございます。聞いてほしい、そういうことから出発してまいりたいと考えております。  第三番目のは、なかなかこれは私もどうも答えにくいのでございます。  それから再建整備法のときにカンフル注射だ、まさしく当時の状況ではカンフル注射でございました。しかし、その後多少国内の状況も変わってまいりまして、いわゆる魚価が非常に低迷しておる。日本の産業の中において油の価格が非常に高くなった。みんなこれは困ったことです。しかし、いずれは徐々にそれが経済の中あるいは価格の中に吸収されてくるということが予想される。当時その状況が全然われわれ見られなかったものですから、私はあえてカンフル注射にすぎないとまで断言したのでございますが、その後魚価もどうやら、満足とは言いませんけれども業種によってはまあまあ、過去の赤字は別でございますけれども、現在においては一つのペイのラインかと思われるところまで実は来ているものもございます。全部が全部とは申しません。したがいまして、この再建整備の関係につきましては、先ほど高橋さんからも出ましたが、困難なポスト海洋法という、あるいはまたどういうことで日米会議等がおさまるのかわかりませんが、その成り行きによってはやはりもっと深刻にこの再建整備法の見直しをしていかなければならぬだろうというふうには考えております。  それから全漁連のリーダーシップの問題でございます。けれども、これは私のところの団体は漁業協同組合の中央団体でございますが、正直に申しまして、泣き言でございますが、なかなか意思決定、意思の集結ということはむずかしゅうございます。というのは、これは私、自己批判を含めて申すのでございますけれども、たとえば現実的に北の方の北海道とか東北とかの人たちは、今度の領海十二海里を目をさらにして真剣に考えますけれども、まだその目に遭っておらぬ人たちはわりあいにまあまあ他人事というようなことでございまして、地域的に漁業態様が非常に違います関係上、全漁連としての一致した力強い業界におけるリーダーシップということがなかなかむずかしいところもございますことを御理解願いたいと思います。しかし、それらを束ねまして何とかやっていきたいと考えております。われわれの仲間の中にはいろいろな考えを持った人、また政党でもいろいろな政党の方々もおりまするので、そう一方的なことはなかなかできぬような状態にございます。このことだけをお答え申し上げます。
  24. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 大水の高橋さんにお伺いしますが、先ほど及川さんが非常に答えにくい問題だと言ったことについてでありますが、たとえば大水の関係者が来年参議院選挙に自民党の公認でお出になるという話も伺っているわけでありますが、先ほどのお話にもありましたとおり、今日十二海里宣言の問題は日本漁民の死活にかかわる問題として提起されているわけであります。これは各党あるいは衆議院、その他内閣それ自体でも閣議で決まっておると総理も言っておる。これを妨害している者は一体だれだということは、私はここでいろいろ皆さんに言わせなくても自明のことだと思うのですね。そういう状況の中で全国漁業の大きなリーダーの立場にある皆さん方がどういう態度をとるのかということは、そういうこととやることの実態をはかる目盛りとしても重大だと私は思うのですが、やはりお答えできないのかお答えできるのか、その態度についてひとつお伺いしたいと思うのです。  二つ目の問題は、前の七十七国会漁業三法の参考人質問の際、おたくの森澤さんがおいでになりましたけれども、その際も、経済水域で二百海里にいたしましても、領海十二海里宣言にしても、日本政府の水産外交というのはきわめて弱体だ、弱腰だということを指摘され、同時に、もっと強く交渉してもらわなければ困るということを言うておられたわけですね。したがってお聞きしたいことは、その後半、年間の経過の中で具体的に政府はどんな手だてをとられたのか、皆さんの知っている範囲内のことで結構でございますので、お答えいただきたいと思うわけであります。また、あわせてそういう政府の態度、手だてに対する皆さんの御見解もお聞きできればと思うわけであります。  三つ目は、大水としまして今月の二十日に国際漁業委員会を開きまして、いま目の前に迫っておりますところの日加あるいは日米漁業交渉、さらには日米加の漁業委員会に対する対処方針を決めたといわれますけれども、どのようにお決めになったのか、そのお考え方をひとつお聞かせいただきたいと思うわけであります。  それから次に海員組合の麻生さんにお伺いするわけでありますが、いまあなたの海洋法の動きが当初の目的より離れて海洋分割、そういう状況になってきているという御指摘は、私はまことに同感でありまして、大変警戒すべき状況もあるということを考えるわけであります。その中で漁船船員の皆さんが大変な影響をこうむっていらっしゃる、心からこの点についても私は同情申し上げたいと思うわけであります。その中で、特に先ほどあなたが、こういう状況の中では漁船船員の雇用保障法、こういうものをつくらなければならない、また、その気になれはそういう制度が——陸上の関係と対比いたしましても憲法上の問題さえあるじゃないかという御指摘がございました。この点も全く同感でありまして、わが常といたしましても、できるだけこういう法案のいっときも早い成立のために御援助申し上げたいと思うわけでありますが、いまの雇用保障法の問題について海員組合としていままで政府とどのような具体的な折衝をしてきたのか、現状の到達点はどの程度になっておるのか、ひとつ御参考までにお伺いさせていただきたいと思うわけであります。  以上です。
  25. 高橋泰彦

    高橋参考人 お答えいたします。  まず最初の御質問は、十二海里の問題に対して大日本水産会としてはどういう態度であるかという御質問でございますが、私どもは、漁業立場から見まして十二海里の問題は賛成であるという態度をとりたいと思っております。  第二の御質問は、政府が最近の漁業交渉において非常に弱体ではなかったか、もうちょっと別の手段があったかどうかという御質問でございますが、率直に申しまして、私は政府としてはかなり強い態度で交渉をしたことは認めます。しかし、先ほど申しましたように、機構、機能、人員その他について十分とは思えません。これはぜひ拡充していただきたいと思います。要約いたしますと、決して弱い態度に出たわけではないんだけれども、十分な機能と機構を持つものとは思わないので、それは今後十分に強化していただきたい、こういうことを意見として持つものでございます。  なお、今後の交渉のやり方につきましては、先ほど来申し上げましたように、政府だけではなくて、及川参考人も言いましたように、あらゆる階層、農業団体、消費者団体、経済団体、とにかく国民的な支援を得て交渉する、そのような交渉の仕方が今後は絶対に必要であるというふうに考えておるわけであります。  それから二十日に開かれました大水の中の国際委員会で、この交渉の問題にはどういう対処方針を出したかというお尋ねでございますが、私どもは一つの声明を決定いたしました、その決定のポイントは、いま迎えようとしている日米、日加に関連する問題でありますが、まず今般アメリカで定められました二百海里法案を三月から実行しようとしていること、カナダにおいても一月から同様の措置をとろうとすること、これに対して反対であるということをはっきりと声明した内容がその要約でございます。  以上でございます。
  26. 麻生久

    麻生参考人 船員雇用保障法の問題でありますが、本年の七月に、労働行政の所管であります運輸大臣あてに、骨子をまとめまして要請書を出しております。当局の考え方では、基本的にこういう考え方については同意ができるという考え方でこれから各論についての検討に入りたいという答弁をいただいております。  以上です。
  27. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 時間がないからこれでやめるわけでありますが、先ほど大水の方に第一問に申し上げたのは具体的な御回答がなかったわけでありますが、その点が非常に残念でございます。  それから大水と漁業協同組合連合会との御答弁が、お人柄の関係もあると思いますが、それ以上に何か隔たりが感じられまして、結論及川さんの言うとおりというようなことでありますけれども、ニュアンスの部分において非常に何か大きな違いが見られるような点も感じているわけであります。そこら辺は何だかということもいろいろ詰めてお聞きしたいと思うわけでありますが、ちょうど時間が参りましたので、失礼させていただきますが、今後とも御三方ともに、いまの状況の危機的な問題を十分踏まえまして、私たちもできるだけがんばりますから、皆さん方もひとつ御健闘いただきたい、このことを申し上げて終わらせていただきます。
  28. 湊徹郎

  29. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 全国漁業協同組合連合会会長理事及川参考人、大日本水産会会長高橋参考人全日本海員組合組織局次長麻生参考人には貴重な参考意見を陳述していただきまして大変ありがとうございました。引き続き若干こういう機会に三参考人に質問いたしまして今後の資料にしたい、かように思います。  実は去る十月二十日に当農林水産委員会で、本日の皆さん方の意見を聞く前に、私もたくさんの問題を質問しております。海洋法問題、十二海里の早期宣言問題、最近における農林大臣の十二海里宣言に対する発表等がありましたので、それに対する追及等もいたしました。また、今後の海洋法会議の見通し、二百海里のいわゆる漁業専管水域の設定に伴ういろいろな今後の問題あるいは漁業労働者の将来の生活安定の問題等、たくさんの点にわたって追及してきましたけれども、その機会に、政府の答弁の中で、どうしても皆さん方の御意見をお聞きし、さらに皆さん方に強いバックアップをしていただかなければならないということを強く感じましたので、数点にわたって質問いたしたい、かように思うのです。  なお本日は、当委員会におきまして後刻、領海十二海里の早期実現と沿岸漁業者等の安全操業及び水産食料確保に関する件等について決議を行うということにいたしておりますので、今後ますます厳しくなるわが国漁業振興に当たっては、ひとつこの上とも強力に日本の食糧安定のためにがんばっていただきますように、冒頭申し上げておく次第でございます。  さて、第一番目は、何といっても十二海里宣言の問題を申し上げねばなりません。日ソ漁業操業協定が発効してもうすでに一年を経過しておりますけれども、ソ連による拿捕が相続き、ミグ25との関係で報復手段ともいわれるように、ますます最近はその数がふえております。特に北海道ではこの操業に対する反発が強くなりまして、御承知のように、北海道等の日本近海操業しているソ連漁船団の一部がサバやイワシの魚群を追って十二日から日高沖で操業しておりましたけれども、北海道日高支庁様似町の様似漁業協同組合では、去る十四日「網を破られたうえ、ぶつけられたら元も子もなくなってしまう」ということで、漁民大会を開いております。しかも網を一斉に引き揚げまして、無期限の休漁に入っている。漁民たちの話によると、ソ連漁船日ソ漁業操業協定に基づいて日本側が漁網に取りつけた標識を目がけて網を引いており、標識をつけたことが逆効果になっているということで、この漁業協定が何であるかということで、大変な憤りのもとに、ついに一年間の休漁に入るという、まことにゆゆしき問題も起きておることは皆さん御承知のとおりです。各参考人も憤りを感じているとおっしゃっていますが、われわれもそうであります。さらには衝突事故まで勃発するというようなこともありまして、まさにその度はエスカレートしてきている感じがしてなりません。協定発効後十月までにすでに二百四十九件にも及ぶ被害がありますし、金額にしても八千万円という大きな額に達している、北海道だけでもそのようにいわれております。こういったことから、私はこの十二海里宣言について、どうしても早くやらねばならぬと言うのだけれども、農林大臣は早急に宣言するというようなことを言いながら、私がこの委員会で去る二十日追及しましたところ、自分は余り詳しいことを知らなかったということで、安易にそういうことを言ったというふうな意味のことをおっしゃいまして、私はまことにあきれ返ったわけです。全漁連としても、また大日本水産会としてもこういった問題については強力に進めておられると思いますけれども、私は、この十二海里宣言はもう焦眉の急務である、津軽海峡のいわゆる国際海峡の問題等もいろいろ起きておりますけれども、これに対して強力に進めなければならぬが、皆さん方はどういうふうな運動をして政府に迫っておられるか、その点を、簡潔でいいから、ひとつ及川さんと高橋参考人からお答えをいただきたいと思います。
  30. 及川孝平

    及川参考人 実は私たちも、あるいはソ連側において一つの抵抗があるのではなかろうかと思いまして、ソ連の代表部にもわれわれ何遍も押しかけております。ところがソ連さんが言うには、何を言うんだ、おまえの方で十二海里を宣言すれば行かないよ、おまえさんのところでは何もしないではないか、日本政府に言いなさい、私たちから見ればまことに見透かされたような感じで今日まで来ておるので、何遍となくソ連に言っております。  それからまた、ここであえて人の名前を申し上げてどうか知りませんけれども、昨年の一月か二月ごろでしたか、私は宮澤外務大臣にもお会いしまして談判をいたしました。そのときの御答弁も、三月に海洋法会議が始まるのだから、及川会長、それまで見てくれぬかといったようなことだった。われわれは、苦しいけれどもやはり政府立場もあろうかと思いまして、それを寛容する腹構えを持ってきましたけれども、いま先生がおっしゃられたとおり、もはやがまんの限界に来ました。これは、われわれは何としても実現してもらわなければ困る。この背景に、何が拒んでいるかというような問題も私なりに理解はいたしております。しかし、その問題を論議していくならば、これは恐らくいつまでたってもできぬと私は思います。だから、漁民が苦しいのだから、その立場に立って政治家としての先生方に政治的決断をお願いする以外にないと私は思っております。
  31. 高橋泰彦

    高橋参考人 お答えいたします。  大日本水産会としても及川さんの意見に同意見でございます。
  32. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま及川参考人から力強いお話がありましたが、まさに政治的に解決すべきだということでわれわれも十分そのように自覚しておりますが、両々相まって、早急にやるべきだと思いますので、今後ともさらに努力してまいりますから、両連合会としてもがんばっていただきますようにお願いしたい。  さらに、ソ連政府に対して日本政府日ソ漁業操業協定の規定を相互に完全に守らなければいかぬということを私は並行して強く言っていかなければならぬ、こう思っておるわけですが、日本沿岸の漁業者の安全を脅かすために自粛をさせなければいかぬということは、先日の委員会でも私は申し上げたのですけれども、この自粛についてどういうふうに皆さん方は考えておられるか、政府に対してはどういうふうに強い要請をしておられるか、その点もあらためてお伺いしておきたい。及川参考人からお願いしたいと思います。
  33. 及川孝平

    及川参考人 私たちは日ソ漁業協定ができましたときに、少なくとも十二海里というものについては、遠慮しようというような、公式か非公式か知りませんけれども、そのように聞かされておりました。しばらくの間確かにそういう小康状態が続きましたことを認めます。ところが、先ほども申しましたが、私はあえてミグ事件の報復というようなことに一方的に片づけたくはございません。しかしながら、われわれの漁業者はこれはそのように受け取っております。しばし小康状態はあったので、われわれも海洋法会議との関係もこれありというような、少しばかり常識人になっておったわけでございますけれども、もうああいうふうなこと以来、拿捕の問題しかり、とにかく漁船操業もできない。向こうは何千トンというような船、こっちは二十トン、三十トンの船ですから、そういうことになりますと、もうがまんの限界でございますということだけ申し上げておきたいと思います。
  34. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一点及川参考人にお伺いしたいのは、この被害漁業者を救済するために皆さん方も国に要請しておられるが、これは、被害を受けた人たちとしては要請もしていかなければならぬし、拿捕された人たちについては早く帰国してもらわなければならぬということを心配しておりますけれども、その点についてはどういうふうに対策をとられ、どういうことを希望しておられるか、簡潔でいいですからお述べをいただきたい。
  35. 及川孝平

    及川参考人 私は政府の態度にも非常に不満でございます。損害を与えたのはロシアだからロシアからとれ、それはわかります。しかし、八百八十八件の件数があっていまだかつて一つも解決しないというこの現実の事態、これで一体そういうふうなことを言っていていいのでしょうか。そうであれば、日本政府が独自にわれわれ漁民に救済策を積極的に講ずべきものと思います。ソ連からとればいいじゃないか、そのために委員会をつくってあるんだと言ったって、それが実現できればいいが、現に実現は一つもしていないじゃありませんか。私はこれに対して非常に不満を感じますす。
  36. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間があと五、六分ございます。それで四、五点ちょっと各参考人に聞きますので、簡潔で結構ですからお答えいただきたい。  米国が二百海里漁業専管水域の設定を三月一日から行うということで、上下院の議決はしておりませんけれども、必ず日本にその承認を近く迫ってくることは、もう当然これは常識になっています。また、米国以外にカナダ、ソ連等であるところから、被害がまた北方漁業は大変なものになりますが、私は、この米国の二百海里の例をとっても、今後の一つの見通しとして若干お聞きしたいのですけれども、この二百海里の漁業専管水域の設定がなされますと、将来日本漁船の拿捕という問題が、これはアメリカでも起きてくる。そうしますと、現在は日本の裁判でやっても、将来は一方的にアメリカの裁判ということになるわけである、こう思いますが、その辺はどういうふうに麻生参考人は組合側として考えておられるか、その点簡潔にお答えいただきたいと思います。大変日本漁民にとって不利な状態になる、こういうふうに思うのです。  もう一つは、米国の二百海里漁業専管水域の設定がなされますと、漁獲量が、御存じのように日本の総漁獲量の一五%、約百五十万ないし百六十万トンが少なくなる。そうすると、日本の沿岸漁業で、とる漁業からつくる漁業ということが言われておりますが、当然そうでなくちゃいけませんけれども、この沿岸漁業で百五、六十万トンを補うとなると、これは大変な問題になる。相当な金と時間と労力がかかると思うのです。そうなると大変であります。しかし沿岸漁業の推進は図らねばならぬということで、この点は大水の高橋参考人にお聞きしますけれども、こういった点については、大水としてはどういうふうに政府には計画を立てて要請しておられるか、その点もこの際、大水の検討事項等を含めて、お答えをいただきたい。そのためにも私は、二百海里の専管水域は、これはいわゆる海洋法会議のコンセンサスを得てやるべきである、一方的にやるということはアメリカの横暴である、しかも日本の既得権を侵す、こういうふうに言いたいわけですが、その点についてもお答えいただきたい。  次は、麻生参考人にお聞きしますけれども、日本の国内の世論で、魚を大事にしない風潮がだんだんふえてきたということが言われております。御存じのように米国はいままで肉を食べていたのが、だんだん今度は魚に変わってきた。日本は、いままで魚が多かったけれども、逆にだんだん肉を食べるようになった。アメリカの方は、肉を食べると高血圧が多くなるから魚にということで、そのためにだんだんアメリカの方も漁獲量をふやし、二百海里専管水域を急いで設定するというような動きもあると言われております。また、いわゆる飼料の輸出と相まって、日本に飼料を売りつけるためにも、魚の水域を狭めて、そして魚獲量を減らしていくというような、いろんな裏話等もございますけれども、いずれにしても私は、こういうことは、魚を扱っている行政官庁としても、また皆さんとしても、魚を日本人が食べていくというPR、今後いういったことを強くやっていかねばならぬ、こういうように思うわけです。時間の関係で詳しく申し上げられませんけれども、こういった魚を食べていくPRということについて、組合の方はどういうふうに考えておられるか、お答えいただきたい。  もう一つは、備蓄の問題で、及川参考人に聞いておきたいのですが、お米には備蓄があるけれども、魚の備蓄ということが余り強力に言われておりません。これに対しても今後強い要請をしていかねばなりませんが、これらについても、どういうふうに考え政府に迫っておられるか、また皆さんどう考えておられるか伺っておきたい。  時間があとわずかでございますので、その時間の範囲で結構ですから、どうぞひとつそれぞれの立場から、簡潔で結構ですからお答えいただきたい。
  37. 麻生久

    麻生参考人 二つあったと思います。  一つは、裁判権の問題でございますが、その裁判権の問題を考える前に、日本漁業国として公正な世界漁業秩序をつくっていくという立場で諸外国との折衝をしていく必要があると思いますので、したがって、ある国が一方的に二百海里を宣言をする、それを押しつけられておるというような現実から、それをうのみにすれば、漁業先進国としての日本立場はさらに世界から非難をされることになると思います。したがいまして、そういうことがないように、従来のような行政協定の形で、たとえばアメリカとの間での漁業協定がこしらえられるというような形に持っていくべきではないかというふうに考えております。そうなれば、当然裁判権の問題は消滅すると考えておりますので、そういう方向で考えていくことが望ましいというふうに考えております。  それから、魚のPRの問題がございましたけれども、われわれは船員の立場でございますが、漁業というものをこよなく愛しております。したがいまして、将来とも日本の食糧というものが米と魚というような形で維持されていくことを望んでおりまして、このことは幸いにも国土庁の新全総におきましても、これからの食糧政策は米と魚で考えていくというような方針が出ておるようでございますので、われわれは安心をしておりますけれども、ただ、ほっておきますとぐあいが悪いという考え方を持っておりますから、労働者の立場ではございますけれども、魚というものがいかに大事かということを積極的にPRをしていきたいと考えておりまして、現に百万人の署名運動日本漁業を守っていこうという国民運動を起こしておりますことを申し添えまして、終わります。
  38. 高橋泰彦

    高橋参考人 お答えいたします。  御質問は、今度の二百海里法案でどの程度の被害で、それは沿岸漁業の開発で回復できるか、こういう御質問でございますが、御指摘のとおり、回復するためには、沿岸漁業でそれを補てんするためには、非常な時間と非常な費用がかかると思います。したがいまして、私どもとしては、それを国民食糧供給としてつなぐためにも実績は何らかのかっこうで引き続き継続してまいりたい、このような方針で臨んでおる次第でございます。
  39. 及川孝平

    及川参考人 ただいま高橋さんからおっしゃられたとおり、魚の資源をふやすということは物をつくることと違いまして、きょうやってあしたできるというものではございません。非常に長い間の時間を要するものでございます。したがって、将来の沿岸漁業というものは、相当大きな生産力を持つと確信いたしますけれども、それなら今度日米の交渉によって減った分をすぐあすからといっても、そんなことはとんでもない話でございます。したがって、日米交渉というものもきわめて重大な問題であると考えております。  それから備蓄の問題でございますが、これはだれが備蓄するかという問題でございます。漁師は日本人が困るだろうからといって、とったものを自分で蓄えておくわけにはまいりません。かん詰めとかいうもので余剰物資として政府が蓄えるならしかるべきだと私は思います。なかなか魚というものは穀物と違いましてもちもありませんし、私はやはり備蓄というものはとったものを蓄えるのじゃなくて、いつでもとる可能性を蓄えておくということではなかろうか、こういうふうに思います。
  40. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 三参考人には大変貴重な御意見をありがとうございました。  時間が参りましたので、以上で終わります。
  41. 湊徹郎

    ○湊委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  この際、午後二時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時四十四分休憩      ————◇—————     午後二時三十九分開議
  42. 湊徹郎

    ○湊委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について質疑を続行いたします。上原康助君。
  43. 上原康助

    上原委員 私は、政府委員の方が着くのが少しおくれるということですので、最初に大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、きょうは主にせんだって決定を見ましたてん菜糖の生産者価格との関連において近々決定が予想されておりますサトウキビの生産者価格の問題を中心にお尋ねをしたいと思うのです。  そこでまず最初に、国内の甘味資源の自給率の向上ということはこれまでもたびたび本委員会でも取り上げられ、また関係者からも強い要望が出されていることは御案内のとおりです。政府みずから生産目標も立てて、昭和五十六年までには国内自給率を二八%に持っていくということの決定を見ております。しかし、御案内のとおり年々向上するどころかむしろ後退をして、現在ではもう自給率一五%前後ないし一六%前後に落ち込んでいる。一体この傾向、このような動向農林省あるいは農林大臣としてどうお考えになっているのか。政府みずからがおつくりになった目標達成率というものを修正もせず、私たちはそのまままだその方針は堅持されていると見ているのですが、これに対する大臣の所見を承っておきたいと思うのです。
  44. 大石武一

    ○大石国務大臣 この甘味資源の長期的なあり方につきましては、ただいまお述べになったような方向においてこれを達成いたしたいと考え努力いたしております。  ただ、これは御承知のようにやはりいろいろな段階がございます。一遍に一直線に真っすぐにまいらないことが大抵は多いのでございまして、ただいまは多少後退している部面もあるようでございますけれども、長い面におきましては、そのような目的を達成することに全力を挙げて取り組んでまいる方針でございます。
  45. 上原康助

    上原委員 しかしそうはおっしゃっても、年々生産量は後退をしてきております。現段階では下降現象をたどっておってもその目標を達成するように努力をする、そういうお答えからすると、五十六年の目標達成率である二八%というのはまだ実現可能と大臣は見ておるわけですか。明らかに甘味資源全体について再検討すべき段階に来ているのじゃないかと私たちは思うのですが、いまのような状態では、とてもじゃないが二〇%前後も維持できないのじゃないか、そういう見方さえあるわけです。この点について改めて政府の確たる方針を明らかにしていただきたいし、もし二八%の自給率の目標をあくまで達成するということであるならば、具体的に年次ごとに、五十一年以降、五十二年以降どうするのか、はっきりもう一度明記をすべきだと思うのです。この点ぜひ明らかにしてください。
  46. 大石武一

    ○大石国務大臣 甘味資源の先ほどの方針は、これを目標として努力してまいる方針でございますが、これはあくまでも一つの努力目標でございます。できるだけそれを達成したいという気持ちで努力はいたしておりますが、それはそのときになってみなければわかりませんけれども、何とかそのようにしたいという願いと目標を決めて努力いたしてまいる所存でございます。
  47. 上原康助

    上原委員 目標を決めてと言いますが、どうもそれだけでは納得しにくいのですが、これから具体的にお尋ねする中でさらに進めていきたいと思います。  そこで、先般てん菜の価格が決定されたわけですが、生産者団体なり関係者の方々のトン当たり二万一千円以上の要求に対して、昨年よりもわずかに千円だけ上積みをした価格で一万七千円になったわけですね。これは先ほど指摘をいたしました政府の自給率向上の問題と支持価格政策の問題、あわせて農民に大きな衝撃を与え、不満を与えていることは御承知と思うのです。  そこで、なぜこのてん菜の価格を一万七千円に決定をしたのか。農民の切実な要求にこたえられなかった主な理由というのは一体どういうものなのか。その点を明らかにしてください。
  48. 増田甚平

    ○増田説明員 五十一年産のてん菜の最低生産者価格でございますけれども、これは御案内のようにパリティ価格を基準として決定したわけでございます。ただ、おっしゃいますように、てん菜の作付面積をふやすというようなことも考えまして、奨励金として三千九百円をプラスしまして、農家手取り額が一万七千円となるように決めたわけでございます。  なお、てん菜の作付面積を段階的に増加させようということで、市町村ごとに目標面積を定めまして、この目標を達成した市町村の生産者に対しましては、作付面積に応じて十アール当たり二千三百円の奨励金をさらに支払うということにいたしたいわけでございます。
  49. 上原康助

    上原委員 そこで基準価格の決め方なんですが、いまの最低生産者価格は、お答えがありましたように奨励金を含めて一万七千円ぽっきり、昨年と比較すると千円の増額になっているわけです。さらに、この価格の決め方はあくまでパリティ方式を採用しておられるわけです。したがってこういうことになったんだという御説明ですが、関係者はもとより、本委員会における附帯決議などを見ても、やはり農民や農家の再生産の維持ができるような方向での価格決定をやるべきだ、言葉をかえて言うと、生産費所得補償方式を採用すべきであるということを、今日まで強く要求されてきておりますし、そのことは甘味資源審議会の建議の中にもそのような趣旨が盛られていると私たちは受けとめているわけですが、てん菜あるいはサトウキビを含めて国内自給率を高めていくという大目標を達成するためには、やはり支持価格を生産費所得補償方式に移行するということが最も先決じゃなかろうか。なぜこの採用について政府はあくまで渋っておられるのか、そのことについてもこの際明確にしておいていただきたいと思います。
  50. 増田甚平

    ○増田説明員 現在の農産物の価格政策におきましては、御承知のように農産物ごとにいろいろ事情が違っておりますので、その特性に応じて価格支持の仕組みが定められておるわけでございます。したがいまして、行政価格の算定につきましても、そういった農産物ごとの特性に即して決めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。したがって、そういった特性を無視しまして一律に同様の方式をとるということにつきましては、いろいろと問題があるのではなかろうかということで、私どもとしては必ずしも適当ではないというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、今後とも農産物ごとの生産、流通の事情に応じまして、決められた算定方式をもとに物価、賃金等の動向を反映しまして適正な価格水準が形成されるよう努力してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  51. 上原康助

    上原委員 そうしますと、現在のパリティ方式というものを生産費所得補償方式に変えていくお気持ちなりお考えは全然ないということですか。
  52. 増田甚平

    ○増田説明員 農家の手取りにつきましては、これも御案内のように五十年産につきましては、サトウキビにつきましても、奨励金を含めまして手取りができるだけ確保できるようにということでやった経緯もございまして、私どもとしてはその結果、本年不幸にして災害に見舞われましたけれども、農家の生産意欲も向上しておるというふうに思っておりますし、現に作付面積もふえておるという状況でございますので、いまのところパリティ方式でやってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  53. 上原康助

    上原委員 その点は納得しかねるんですが、要するに農家の手取り額を実質的に高めていく、ふやしていきたい、それだからパリティであってもかなり生産費の補償を入れた額に近づいているんだというような言い方かとも思うのですが、そういたしますと、その奨励金の性格、一万七千円にするのに基準価格に三千九百円を加えたわけですね。この奨励金は、本来ならば最低生産費基準価格と見らるべきものじゃないですか。これをなぜその基準価格にせぬで強いて奨励金としているのか。むしろ奨励金の意味を含めるにしても基準価格にそれだけ上乗せをしていくというあり方が農産物の価格決定の本来とるべき筋じゃなかろうかと思うのですが、この点についてはできるだけ大臣の方から御答弁を求めておきたいと思います。
  54. 大石武一

    ○大石国務大臣 甘味資源と申しましても、われわれはサトウキビとそれから北海道のビートとは、その根本的な物の考え方としては相当違えるようにわれわれは考えて処理したいと思っておるわけでございます。したがいまして、いまビートの方のお話のようでございますが、ビートはやはり北海道の畑作農業の一つの重要な作物として育ててまいりたいと思います。しかし、これは輪作作物でありますから、たとえばバレイショとか他のいろいろなものがありましょうから、そういうようなものと適宜に組み合わせて総合的にそれが一つのりっぱな畑作経営となるような方向で進めてまいりたいというのがわれわれの願いでございます。そこでビートだけの特に奨励という意味ではなくて、大きな全体の、総合的な畑作の一環としての対策としていろいろな奨励金もいま考えておるわけでございまして、サトウキビとはちょっと方針が違うということでございます。
  55. 上原康助

    上原委員 サトウキビと方針が違う、これはいいですよ。それが前向きの御答弁なら、後で議論いたしますが結構です。ただ、私がお尋ねしたのは、ビートにしてもサトウキビにしても奨励金をつけてあるわけですね。それは本来基準価格として上乗せをすべきものじゃないのかということをいま指摘をしておるわけです。  それと、今回から「てん菜の作付面積を段階的に増加させることとし、市町村ごとに目標面積を定め、この目標を達成した市町村の生産者に対して、作付面積に応じ十アール当り二千三百円の奨励金を支払う。」一応基準価格に奨励金をつけて、さらにまた増反のための奨励金というものを十アール当たり二千三百円、これがトン当たり大体五百円ぐらいになるとかならぬとかいうことですが、したがって実質的に一万七千五百円になるんだということで、流通局長あたりは盛んにこれでりっぱな価格だということもおっしゃったとかいうことも聞いたんですが、とんでもないことなんで、この増反のための奨励金というものは今度新しく出てきた奨励金なんですね。そうしますと、この趣旨というものは後で議論するサトウキビの価格決定の方にも波及するであろうというふうに私たちは見ているわけです。しかし、いまの大臣の御答弁からすると、総合的な畑作輪作体系をもっと推進をしていくためにそういうものもつけたんだということになると、サトウキビは永年作目だからこれには該当しないというふうにも受け取れるのですが、この関連はどうなるのか。この質問と関連しますので、ぜひ明確にしておいていただきたいと思います。
  56. 大石武一

    ○大石国務大臣 先ほどサトウキビの話は申し上げませんでしたが、やっぱりサトウキビは沖縄の一番基幹的な作物でございます。言ってみれば内地の米のようなものだとわれわれは考えています。そのような方針でこの沖縄のサトウキビを扱ってまいりたいと思います。したがいまして、できるだけいい値段にすることも、価格を上げることも望ましいことであります。それにも努力いたしますが、それにも増して大事なことは、やっぱり生産性の向上だと思います。そういう意味では、生産性が向上され、基盤整備を中心としていろいろな努力をするというのがいまの私どもの考えでございます。
  57. 上原康助

    上原委員 私がお尋ねしていることには直接いまお答えになっていないのですが、きょうは時間も非常に限られていますので先へ進めます。  できるだけサトウキビの価格はいい値にしたい。北海道のてん菜とはその作付なりあるいは条件が違うということは、これまで大臣にお会いしたときもおっしゃっておったんですが、できるだけいい値というのは一体幾らの値段ですか。率直にお答えください。
  58. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 大臣の御趣旨は……(上原委員「大臣に聞いているんだ」と呼ぶ)ちょっと御説明させていただきますが、サトウキビはお話のように南西諸島及び沖縄におきます基幹的農作物でございますし、ビートは北海道におきます輪作体系の中の基幹的農作物でございますから、両方ともそれぞれ地域における重要な農産物であることには間違いがないわけでございます。したがいまして、私たちといたしましては、そういうそれぞれの重要性に着目をして適正な価格を決定すべきものであると思っておるわけでございまして、いま直ちにサトウキビの価格をここで幾らにするということを申し上げる段階ではございませんで、そういうそれぞれの作物の重要性に着目しながら鋭意検討をいたしておる次第でございます。
  59. 上原康助

    上原委員 できるだけいい値にしたい。要求はトン当たり二万二千五百円以上ですね。しかしてん菜の価格が決まったのはついこの間の九日で、奨励金を含めて一万七千円。雲泥の差があるわけですね、二万二千五百円と一万七千円では。去年はビートが一万六千円でキビが一万六千百円、わずかに百円しか上乗せしていない。そういう関連からすると、大臣が現地の各農業団体なり私たちがお尋ねすることに対してできるだけいい値にしたいと言うその心情はわかるとしても、現実問題として、要求価格にほど遠い非常に低い価格で抑えられるであろうという不安を私を含めて持っているわけですよ。北海道のてん菜の条件と違うと言うならば、沖縄の基幹作目であるサトウキビを具体的にどう守って生産性も高めていく方途を見出していくかというのは、やはり価格問題が先決なんですね。これに対して具体的にお答えにならないで、鋭意検討中と言うだけではちょっと承服しがたいのです。一体どういうような方法でいい値にしていくのか。農民の期待にこたえていくために、政府は、価格問題だけじゃなくて、いま基盤整備のお話もありましたが、それは次にやりましょう。それを含めて具体的にどういう処置を今回はやろうとしているのか、もう少し確たる答弁がいただけないと納得しかねます。
  60. 大石武一

    ○大石国務大臣 できるだけいい値と申しましたのは、われわれが現在の農政ででき得る可能な範囲においてのいい値段だということでございます。農民なり耕作者の要望に全面的におこたえできればこれはまことに喜ばれますけれども、いろいろな現実の行政の段階を考えますと、必ずしもそうはまいらないのが大体の通例でございます。米の問題でもそのとおりでございます。したがいまして、われわれは現在、仮に沖縄のサトウキビの問題を米のように考えると申しましても、価格だけで持っていったのではこれは限度があると思うのです。ですから、価格はいま申しましたように財政の許す範囲においてできるだけいい値段にしたい。同時にやはり生産性を高める。反当八トンのものを十トンなり十五トンにすることの方が私ははるかにすばらしいことだと思いますので、そのような方向で土地改良その他を中心としていろいろと生産性が高まってまいりますように働いてまいる所存でございます。
  61. 上原康助

    上原委員 基盤整備のことはこの次にお尋ねしますが、そうしますと、改めて聞いておきますが、このてん菜の価格を決定した際の、いわゆる作付面積を段階的に増加させる目的で設けた作付面積に応じる奨励金+アール当たり二千三百円、このような趣旨の奨励金というものはキビ価格を決定する場合にはもちろんお考えになっておりますね。
  62. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 てん菜は、御存じのとおり非常に残念なことでございますが、面積の減少を来たしております。したがいまして私たちといたしましては、何とかこの減少を食いとめるだけではなくて、両三年の間にこれを五万ヘクタール程度まで上げたい。五万ヘクタール程度まで上げますれば、現在の工場の操業率が九四%ぐらいまでになるわけでございます。したがいまして、これを段階的に上げるにはどうしたらいいか、そういう観点から年次的に目標を決めまして、それを市町村ごとにまた目標を決めて、その面積を超えたものにつきまして反当二千三百円を支払うということにいたしたわけでございます。  同様の考え方をサトウキビに持っていきますと、なかなか年間に三千ヘクタールふえるような状態ではございません。したがいまして、サトウキビの場合に、その生産性の向上を図るという大臣の申し上げているような観点からこれを考えますならば、その生産性の向上を図るために沖縄及び奄美にはどういう対策を講ずべきであるかという観点からの施策を考えるべきものではないか。したがいまして、今後のサトウキビの価格を考えます場合にも、たとえば昨年、三年間に十五億円を目途として生産性の向上を図るための特別な措置を講ずるということをいたしておるわけでございますが、そういう観点に立った施策の拡充といいますか、そういう検討がなされることが必要なのではないか。北海道と同様の手法を沖縄及び奄美のサトウキビに直ちに適用するのではなくして、大臣の申し上げました、生産性の向上を図る上からどのような特別な対策を講ずべきかという観点から検討すべきものではないかというふうに考えておる次第でございます。
  63. 上原康助

    上原委員 おっしゃるように、ビートの生産面積は年々極度に落ち込んできているわけですね。それの歯どめをするために新しい奨励金の方式、方法をとったということですが、キビは昨年よりはかなり増反になっているわけですよ。まあ、いずれにしても、それに見合うような何らかの方法をお考えになりたいような口ぶりですが、大臣は先ほどから価格政策だけではだめなんだと言われる。これは私も全面的に否定はいたしません。もちろん価格が最も重点であり、優先すべきものだというふうに私は思いますが、それだけで事足りませんし、あわせて基盤整備ということが非常に重要な課題であることは、これはだれしも否定しないと思うのですね。しかし基盤整備、基盤整備と言っても、あるいは生産性を高めなさい、省力化しなさいと言っても、資金対策まで含めてそういう条件が整って初めて農民の方々はそれに応じていけるわけですね。残念ながら今日の沖縄のキビ作農家の現状というものは、基盤整備をやりたくてもできない条件に置かれている。これを具体的にどう解決していくかというのが、もし価格政策とあわせてやるというなら早急にやるべきことだと私は思うのです。  そこで、基盤整備を具体的にやっていくにはその基盤整備をやる期間の休耕補償といいますか、あるいは休耕補償という言葉が適確でなければ基盤整備をやるその事業費なり補助というものを含めて考えないと、その間一年ないし一年半は生産農民の方々はサトウキビを生産できないわけですから、基盤整備の推進というものはなかなかでき得ないわけですね。せんだって農林大臣にお会いしたときも、それは必要な処置だろうということを言われたら横からまた局長の方が、いや、それはということで口をはさんでおじゃんになった。本当に具体的に基盤整備を推進していくにはどうなさるのか、この際この点も明らかにしていただかないと、ただ生産性を高めなさいとか省力化しなさいと言っても、実際問題としてそういう条件ではないわけですよ。この点はどうお考えですか。
  64. 福澤達一

    ○福澤政府委員 サトウキビの安定的な生産を図るためのいろいろの施策がございますけれども、農業基盤整備事業の推進が不可欠であるということはただいま先生おっしゃったとおりでございます。私どももそういう立場に立ちまして、このサトウキビの振興を図るための生産性の向上とか近代化を進めておるわけでございますが、具体的に一つの仕事、基盤整備の事業をやればよいというものではございませんので、まず農業用水の水源の確保をするとかあるいは畑地灌漑施設の整備をするとか、圃場整備をするとかあるいは道路の整備を図るとかそういう一連の基盤整備全体の姿というものを調整しながらこれを進めざるを得ないと思っておるわけでございます。しかし、沖縄は復帰以来まだ時間の経過も浅いことでございますので、確かに本土に比べましてその進捗状況というのがおくれておるのが事実でございます。したがいまして、私どもはその積極的な推進を図るために、この地域の基盤整備事業につきましては本土に比べまして採択基準も非常に緩和をしておりますし、また補助につきましても特別な優遇措置を講じまして、できるだけ早い期間に内地の水準に近づけるように努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  65. 上原康助

    上原委員 ですから、できるだけ早く本土の水準に引き上げるように努力する、全然努力していないとは言っていないのです。しかし、そのテンポがきわめておそいし、その基盤整備を推進していくには、何度も申し上げますように休耕補償的な性格のものを何らかの方法で考えていただかないといつまでもこういう議論にしかなりませんよと私は申し上げているわけです。米作に匹敵する基幹作目である、先ほども大臣からそういう御答弁がありましたが、そうであるならば、本土の米作の場合は一アール当たりやはり三万円の休耕補償を土地改良ということで出しているわけでしょう。一方においてはそういう制度があり、また補償があるにもかかわらず、一方では基盤整備をやらないとどうしても生産性も上がらない、省力化もできない、機械導入もできないという——圃場整備というものを含めてやるならば、米作と同じようなところまでいかないにしても、それに見合うような制度なり補助なり財政支出というものをやっていただかないと推進できないのじゃないですか。これはそういう形のものを御検討いただけますね。
  66. 福澤達一

    ○福澤政府委員 サトウキビを促進するためにサトウキビに対する基盤整備を実施する段階で休耕補償をというお話でございますけれども、これはいまわが国は米が過剰な基調の中にありまして、それをある程度ほかの作目に転換していかなくちゃならないという立場に立っての休耕補償というものと、サトウキビの生産性を整備するために休耕補償をしていくというものとは性格がちょっと違うのではないかと思っておるわけでございます。この基盤整備の中の圃場を整備するという事業につきましては、このサトウキビについて、本来これが地元の申請に基づく仕事でございまして、受益者の同意をもとにして実施しておる仕事でございますということと、それからこの休耕補償の問題につきましてもう一点は、ほかの作物との関係がございまして、キビの問題だけを取り上げてこれを行うということは、ほかの作物との関係でその均衡を失うというような点もございます。したがいまして、私どもは実質的にキビの畑作振興という問題ができるようないろいろの具体的な工事実施上の点を取り上げまして、できるだけそれによって影響のないように図っているわけでございます。たとえば圃場整備工事を実施する段階でその改植の時期を一緒にするとか、あるいは工事の発注を早くすることによりまして植栽の適期までに完了させるとか、あるいは受益者にその工事に参加させるような機会を与えるとかいうような問題、あるいは植栽のための農業近代化資金を充当するとか、そういう一連の具体的な措置によりまして、この問題に対して遺憾のないように私どもはしてまいりたいと思っておるわけでございます。  なお、予算面につきましては、まず予算の充実ということが一番大切な問題と考えておりますが、たとえば五十一年度の予算におきましても、基盤整備全体の伸び率は一二一・六%でございますが、沖縄につきましては一五四・八%の伸び率を示しておりますし、また五十二年度の予算要求につきましても、基盤整備全体では一三〇・二%の伸び率の要求をしておりますけれども、沖縄につきましては一六二・三%の伸び率の要求をいたしまして、基盤整備のおくれておる沖縄におきましてそのおくれを取り戻すための努力をしていきたいと思っておるわけでございます。
  67. 上原康助

    上原委員 そういう数字だけ、ただ予算要求の場合を挙げたって、それだけではだめなんだよ、そんなごちゃごちゃ言ったって。  これは大臣、行政当局の問題じゃないのですよ。やはり一つの政策として、沖縄のキビ作振興なり農業改善全体という、畑作全体の問題でもいいですよ、そういう形の何らかの方途というものをもっと具体的に、いまやっているような改善事業とかそういうことでなくしてやらないといけない問題ですので、ひとつ大臣の方からこの点は検討していただくと——どうしてもそういう休耕補償的な性格のものを考えていただかないと、いつまでたってもこれは推進できませんよ。その点については政治判断でやっていただくということ以外にないと思いますので、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  68. 大石武一

    ○大石国務大臣 私は、このサトウキビにつきましては何としても生産性の向上を図らなければならないと思います。そのためのどのような技術的な問題があるか、これは私わかりません。具体的にわかりませんが、その技術もできるだけ一番いいという技術をもってそれにこたえるべきだと思います。でありますから、もし仮に休耕補償的なものがどうしてもなければならぬというならば、やはりこれを考えなければならないのじゃないかと私は思います。
  69. 上原康助

    上原委員 われわれももっと具体的に詰めて提案を申し上げたいと思いますので、ぜひひとつ御検討いただきたいと思います。  時間があと二、三分しかありませんので、最後に、先ほど局長の御答弁で、昨年のサトウキビ価格の決定の際に、生産費を軽減すること、いまのこととも関連するのですが、今後三年間で十三億を目途として増額支出をする、てん菜のときの増反奨励じゃなくして、この面を奄美や沖縄の場合は今後継続して考えなければいけないのじゃないのか。この十三億、去年からですから、もちろん来年までですね、これをさらに価格問題と関連させて検討していきたいというふうに見たのですが、そういう御意思なのか。  いま一つは、台風被害にしても、台風七号の方が先ほどの皆さんの資料に入っていないのですね。これらを含めて、できるだけいい値にするために価格を決めていただく、こういうふうにお考えになっているのか、局長と大臣の方からあわせて御答弁をいただいておきたいと思うのです。
  70. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 大臣もお答え申し上げましたように、サトウキビにつきましては、価格も重要でございますが、同時に、生産性を上げていくということがきわめて重要なことでございますので、価格決定の際のそれとあわせての対策といたしまして、その生産性を上げるための特別な措置というものはどういうものが適当であるかということにつきまして十分検討いたしたいと思っております。  第二点の被害に関連する問題でございますが、奄美大島、沖縄ともに十三号、十七号によりましてそれぞれ被害を受けておるわけでございますが、そういう被害を受けますと、その年はどうしても工場の操業度が低下をいたしますし、また歩どまりも低下をするわけでございます。したがいまして、私たちは工場の砂糖の事業団におきます買い入れ価格につきましては、そういう操業度の低下、歩どまりの低下を十分勘案して適正な買い入れ価格を決めていきたい、かように考えておる次第でございます。
  71. 上原康助

    上原委員 最後に大臣の方から、価格決定については、台風被害の問題も、基盤整備の問題をぜひ含めて総合的に判断して、二万二千五百円以上の要求に見合うようになさいますね。
  72. 大石武一

    ○大石国務大臣 幾らに決定になるか、これは事務当局の温かい計算の仕方によって決まると思いますが、私、幾らかわかりません。しかし、できるだけいい値段になるように一生懸命に事務当局に努力させたいと考えます。  それから災害のこともできるだけめんどうを見るようにしなければならない、そういう方針でおります。
  73. 上原康助

    上原委員 終わります。
  74. 湊徹郎

    ○湊委員長 次に、瀬長亀次郎君。
  75. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま大臣が二、三分座をはずされることになっておりますので、事務当局にまず先にお伺いしたいと思います。  十月八日の農水委員会で十三号、十七号台風の被害の問題も今度のキビ価格決定に当たっては配慮してほしいということを私申し上げましたら、今村政府委員はこう答えております。「大臣も災害につきましては非常に全魂を傾けて対処をしておられるわけでございますから、私たちも大臣の意図を受けて災害の対策につきましては最善の努力をいたす所存でございます。」というふうに答えておられます。きょうの小委員会でも、台風十三号の被害、十七号の被害、これは被害量あるいは被害見込み金額ということになって、大体一五%減、金額にしても三十億程度になるわけでございますが、いま申し上げましたように、政府では大臣の意図を受けて災害の対策につきましては最善の努力をされるということですが、これは、被害に対してこうするということでなしに、私の聞いたのは値段ですね、価格の決定のときにそれを配慮してほしいということと関連しての御答弁でありますが、どういうふうに最善の努力を尽くされたか、ひとつお答え願いたいと思います。
  76. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 台風十三号及び十七号のサトウキビの被害は、十三号につきましては鹿児島県及び沖縄県の報告で統計情報部の被害額がまだ出ておりませんけれども、十三号につきましては沖縄で約十七億、それから台風十七号につきましては鹿児島で十九億、沖縄で七億という被害でございます。これにつきまして、まず災害融資でございますが、それぞれ県の要望を私たちは聞いておりますが、鹿児島県の要望としまして天災資金が約三億円、それから自作農資金が約四億円、それから沖縄県の要望としまして自作農維持資金が五億円、これは天災資金はごくわずかでございますので、自作農資金を借りたいということで自作農資金のみの要望と相なっておりますが、これらにつきましては私たちはできるだけ県の要望に沿うように措置をいたしたいと考えておる次第でございます。  それから第二点の買い入れ価格でございますが、現在歩どまりはどの程度低下するものか、それから操業度はどの程度低下するものかということを鋭意検討いたしておるわけでございまして、これら歩どまりの低下及び操業度の低下につきましては、今後決められます糖価安定事業団の買い入れ価格の決定の際に十分適正に反映するようにいたしたい、かように考えているわけでございます。
  77. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この小委員会で出された案では自作農維持資金が五億円というふうなことになっておりますが、私、そのことではなくて、今度二万二千五百円要求していますね。この要求している価格は台風がやってくる前のキビ作農家の要求なんです。これが台風によってこれだけ減収する、さらに金額にしても大体二十億以上、農作物全体として三十二億というふうに計算しておりますが、その大半はサトウキビである、こうなりますと、二万二千五百円の算定の基準が上回ってくることは当然であります。だから私は、この両台風の被害、これを配慮して値段を決める基礎にしてほしいということを言ったわけなんですね。だからあなたの方はそういった最善の努力をする考えだということを言っておる。もう大体わかっている。私もきのう帰ってきたのですが、大体反収が幾らぐらいになるんだろうか、歩どまりもどういうことになるだろうか、だから結局一五%減というふうなところにまで来ているのですね。あなたの方もその点をよう知っておられると思うのです。だからそういった四囲の事情を勘案して二万二千五百円というものを上回らないといけないというのが農民の真の声であり、要求になると思うわけなんです。そういう意味で、省内でどういうような検討がなされ、配慮がなされたのか、もう一遍お尋ねしたいと考えます。
  78. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 二万二千五百円は農家の方々の御要望でございまして、先生よく御存じのとおり、農家の方々の御要望のとおりに価格が決まることは最も望ましいことでございますが、そのような価格はなかなか決められておらないわけでございまして、そこのところを、上回るとか、二万二千五百円でないとおかしいという議論はなかなかむずかしい議論ではないかと思います。  それから災害を受けましたときに反収が減り、農家の所得が減るんだから、それを価格で見るべきだということも、それは一つの考え方でございますが、同時に、そういうことではございませんで、災害は災害としての対策の一定の処理といいますか、そういうことの対策を講じ、価格は価格として決めるという考え方もあるわけでございます。したがいまして、災害を受けたからそれを価格に直ちにその受けた部分を反映させるかどうかということはなかなか議論のあるところでございます。したがいまして私は、災害につきましては最善の努力を払うということは、災害があったから直ちに価格を二万二千五百円以上に上げるということを申し上げたのではございません。したがいまして、私たちとして現在検討いたしておりますことは、先ほど申し上げましたように、災害対策としての天災融資法及び自作農資金のできるだけの御要望に沿うということと、それからサトウキビを買いますときにその歩どまり操業度を十分買い入れ価格に反映するように措置していきたいということでございます。
  79. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 大臣が来られたので、さっそく大臣にお聞きしたいのですが、この前の農水委員会で、最初に、農民がいま切実に要求している価格はトン当たり二万二千五百円、これをやってほしいということにつきまして、大臣どうお考えかということを聞きましたら、大臣は、「大幅の値上げは果たしてどこまで可能であるかということについては自信がありませんので、余り大きなことは申し上げません。」と言われて、次は反収の問題を言っておりましたが、自信がありませんということでしたが、もう決定は間近いのでしょう。もう自信はついたんじゃないですか、どうですか。
  80. 大石武一

    ○大石国務大臣 せっかくいろいろな御期待をお持ちのようでございますけれども、値段の決定はいま中で相談をいたしまして月末には決めたいということにいたしておりますが、値段につきましても、先ほど上原さんにお答え申しましたように、いまの農林行政の許し得る範囲においてできるだけいい値段にいたしたいということでございますが、私はどのくらいの決定になるか本当はわかりません。というのは、私自身は砂糖の問題には余り詳しくありませんので、やはり省内の優秀な役人方の正しい判断を土台として、それを私が判断するほかありませんので、できるだけいい値段に決めるようにということでいま作業してもらっておる段階でございます。
  81. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それから、大臣に次の問題ですが、いまの値段の問題は自信がありませんので大きいことは言えませんということですが、値段とともに、「基盤整備が大事でございますから、基盤整備につきましては来年はできるだけ多くの予算を組んで、生産性を高めるように進めてまいりたい」と考えますということを関連してお聞きしたいと思うのは、私おととい農事試験場にも行きまして、基盤整備その他について専門家からも聞きました。いわゆる反収をふやす基礎的なものは何かという問題、これは一つには水の問題なんです。また一つには経営規模、たとえば省力化、機械化です。現に北、南大東島はサトウキビをつくって大農法をやっている。オーストラリアから持ってきた機械で、収穫で非常に実績を上げています。沖縄本島では一筆、一筆が小さいでしょう。やれ三百坪、やれ二百坪、あんな大きい機械を入れるともうたちまち土手にぶつかってどうにもならぬ。水はもう致命傷です。水の問題は生産力を上げる、反収を上げる、基盤整備をするという場合、たとえば宮古の地下水を調べました。地下水は豊富です。調べましたら塩分を含んでおる。この塩分が果たしてサトウキビに、干ばつになったときにやっていいかどうか、もう疑問視されているんですね。それほど塩分が入っている。沖縄本島では、現在飲み水すらちょっと干ばつになると、二カ月ぐらい雨が降らないと断水です。私の家など高いところにあるものだから、一日に二時間ぐらいしか出ないのですよ。あと空気が出る。そういったような現実の中で、反収をふやすという一番基礎的なものは水の問題です。もう一つは、いまの経営規模の問題。こういうふうなものについて、本当の農政の面から、政治的な面も配慮して、どういうふうに基盤整備、基盤整備あるいは反収をふやす、反収をふやす、一反七トンから十トンにすればこうなる、これは言いやすいのですが、沖縄の特殊事情はなかなかそうはいかないのです。そういう意味で、どのようにお考えか、一言ちょっと聞いてみたいと思う、これは基礎的な問題ですから。
  82. 大石武一

    ○大石国務大臣 私は、どのようなむずかしい条件があっても、それと取り組んで、それを克服することが一番大事だと思います。でなければ、いつまでも貧乏な農民をつくっておかなければならないことになります。でありますから、沖縄でサトウキビをつくる以外ほかに方法がないのだというならば、それは水の問題でも何でも——大体いままで余り検討しておらぬのでしょうから、もっと真剣に検討しまして、少しでも生産性が上がっていくように努力するのが、これは一番の方針ではないかと私は思うのでございます。そういうことでそれに全力を挙げたいと思います。  なお、機械力を使うことがいいか悪いか、これはいろいろ考えがあると思いますが、私は、大きな機械力を使ってやる方は、反当収量でそういうものについて余りいい、大きな面はない。要するに労働力が何とか省略されるとか、いろんな面はあります。反当収量の上では、いろいろな面から考えますと、必ずしも機械力だけが中心ではないと考えるわけでございます。
  83. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま大臣がおっしゃったのは大事な点だと思います。水の問題が反収を上げる場合に必要であるならば、徹底的にこれを究明し解決すると農林大臣は約束されたから、ぜひ、その意味でも、いわゆる農政の立場から沖縄の水問題に取り組むというふうに努力してほしいと思います。  最後に、パリティ方式の問題についてお伺いします。  生産費補償方式にしてほしい、パリティ方式はやめてほしいという要求について、なかなか聞かれないようですが、私この点をお答え願いたいと思いますが、パリティ方式では生産奨励金なるものをつけなければいけないことになっているのですね。事実、たとえばビートですか、七・八%アップして一万三千百円にし、プラス奨励金三千九百円、それで合計して一万七千円。なぜそうなったか。これはパリティ方式ではやはり、たとえばビートをつくる農民の要求を満たすことができないから、政治的配慮とかいうもので奨励金三千九百円をつけなくてはならないというこの事実は何を物語っておるか。やはりパリティ方式は無理だなあということをあなた方が言っているんだ。だからこそ、この前も申し上げましたように、甘味資源審議会でも、やはりパリティ方式は変えて生産費補償方式にしてくれということを大臣に答申をしておる。さらに、沖縄県、鹿児島県、これもそういった方向。ですから、この問題はよほど考えてもらわなければならない。あなた方自身が、これは来年あたりは考えなくちゃいかぬなということを、もうこのビートの問題で出されているのですよ。今度の場合でも、パリティ方式を変えることができないとすれば、まあビートに百円ふやすかな、しっぽを出そうかな、二百円ふやそうかなというふうなことにしか見通しがつかない。私が申し上げますのは、パリティ方式なるものがいかに矛盾に満ちておるか。ビートの値段の決定においてこういうふうな奨励金というものを出さなければ、農民の要求に沿うようなそぶり、姿勢をあなた方自身が示し得ないというところにこの矛盾がはっきり示されている。したがいまして、そういったものも含めまして、大臣パリティ方式は考えなければいかぬなというぐらいは言えるのじゃないですか。どうですか。
  84. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 お話しのように、ビートの農家の手取り価格は、最低生産者価格一万三千百円に奨励金三千九百円を加えまして一万七千円といたしておるところでございますが、これをもちまして直ちにパリティ価格の破綻であるというふうには私はなかなか言えないと思います。なぜかならば、その三千九百円というのは常に国が出すわけのものではございませんで、国と企業とで責任を持ちますけれども、もし企業がこれを出せるような状況であれば、企業にも応分の負担をしていただくというふうな性格のものでございます。現に三十九年のときには三千八百九十円は企業が出したわけでございますから、それをもって直ちにパリティ価格の破綻だというふうには私はまいらないと思います。パリティ価格をとるのがいいのか、生産者所得補償方式をとるのがいいのかということは考え方の分かれるところでございまして、生産費所得補償方式をとれば米のように価格が高くなるから、それがいいのだというふうにお考えの向きであろうかと思いますが、しかしたとえばサトウキビのようなものにつきまして生産費所得補償方式を米並みにとるということであるならば、これは非常に乱暴な議論でございまして、米の何倍も労働時間がかかっておるようなものについて直ちに生産費所得補償方式をとるということが適当であるかどうかということについては十分な検討を必要とするのではないか。同時にまたた、生産性の向上が将来にきわめて期待されるというふうな作物にそれをとることが、当座は別として、長い目で見てそれがいいのかどうかという問題、あるいはまた生産費所得補償方式をとります場合も、一体いかなる経営規模の、どういう労働時間の、どういう水準のものをもって生産費所得補償方式を行うのかという非常にたくさんの問題があわせてございます。したがいまして、私たちとしては直ちに生産費所得補償方式の検討に入るとか、あるいはまたそれをとる検討をするということを現段階で申し上げる段階ではないのではないかというふうに思っておる次第でございますす。
  85. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間が切れましたので、大臣に一言答弁をお願いしたいのは、私はパリティ方式が破綻しておると言っておるのじゃないのです。奨励金なるものをくっつけなければいけないというこの事実は、パリティ方式に矛盾が出てきておる、したがってこれは検討してもいいのじゃないかというぐらいは政府は言えるのじゃないかと私は思うのですが、大臣、そのぐらいも言えないのですか。
  86. 大石武一

    ○大石国務大臣 私はどのような場合にもすべて完全なものはないと思います。条件が変わってきますから、何かそれに対応するような新しい方式を常に努力して、それを調査してつくり上げていくということが一番正しい方法だと考えます。米の生産費所得方式は米の値段を決定する際の方式でございまして、サトウキビは米といろいろな基本的な条件が違いますから、これに同じようなものを適用するのが果たして妥当かどうか、これはやはり十分に考えなければならぬと思います。パリティ方式も私は完全とは思いません。たとえばパリティ方式が正しいとしても、もう少しよけい値段を上げた方が農民のためになる、それが妥当だと考えた場合には、やはりつけ足しをしなければならないかもしれません。こういうこともありますから、何にしろみな完全だとは思いません。やはり常に時代に何かしら合うように、そのときに一番正しい判断ができるような方法を考え出していくことが、われわれの仕事ではなかろうかと思うのでございます。
  87. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 もう時間が来ておりますので希望しておきます。完全なものはありません、知っています。大臣はサトウキビを知らぬようですから、勉強されて完全に近づけるようにひとつ奮闘してくださるよう要望して終わります。
  88. 湊徹郎

  89. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昭和五十一年産サトウキビの最低生産者価格等について農林大臣にお伺いしたいと思います。  昭和五十一年七月甘味資源審議会会長徳安健太郎氏が農林大臣に対して「甘味資源作物生産の現状にかんがみ、その増産を図り、国民食糧の安定に資することは刻下の急務である。よって政府は、下記事項の実施について特設の努力を払い、積極的施策を推進せられたい。」と五項目の建議を行っておりますが、農林大臣はこの五項目それぞれに対してどういうように検討されておられるか、またその対処方針をまず冒頭に承りたいのであります。
  90. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 私から細かい点をちょっと先に申し上げさせていただきますが、先生御指摘のように、甘味資源審議会からの五項目の建議がございますが、これはいずれも今後甘味資源対策の推進に当たって基本となる事項でございますので、現在政府としましても五十二年度予算の要求、あるいは五十一年産の甘味資源作物の価格決定に当たりまして、甘味資源審議会の御趣旨を踏まえて施策の推進に努めておる次第でございます。  まず第一の生産振興でございますが、てん菜は北海道畑作の輪作作物として基幹となる作物でございますし、またサトウキビは、何度も申し上げますが、鹿児島県南西諸島及び沖縄県の農業において米に匹敵する基幹的作物であることを踏まえまして、土地基盤整備の推進、試験研究の充実、それから機械化の推進等、生産対策の拡充強化に努めておるところでございます。  五十一年産の価格の決定についてでございますが、これにつきましては、先般奨励金を含めましててん菜について一万七千円の農家手取りの確保を図ったところでございますし、今後の生産振興とも関連をいたしまして、作付面積の拡大を図るという趣旨から、面積の拡大した場合にあっては、反当二千三百円の奨励金を支出するということにいたしておるところでございます。  第三番目の国内産糖企業の健全な経営の育成につきましては、てん菜、サトウキビの生産の振興を図り、経営環境の改善を推進いたすとともに、今後とも経営の合理化を図ってまいりたいと考えておる次第でございます。その企業の振興のために、私たちといたしましては、非常に財政負担のむずかしい折からでございますが、五十一年度のてん菜及びサトウキビ関係の私たちの価格関係だけの経費といたしましても、おおむね推算で三百三十億の財政負担に相なるというふうに見込まれておるわけでございまして、牛乳の不足払いが三百二十億でございますから、この財政負担というのは決して少ないものではないのではないかというふうに考えているわけでございます。  四番目の精製糖企業対策でございますが、これにつきましては、現在砂糖が自由化されているたてまえのもとにおいて、砂糖の輸入の調整及び国内糖価格の安定ということは非常にむずかしい問題でございます。しかし、現在のような状況のもとにありましては、精製糖企業の経営は非常に破局的な状況に直面するおそれがございます。そこで、業界におきましては、現在不況カルテルの結成につきまして鋭意検討を進めているところでございまして、政府としましても、今後この業界の協調を基盤といたします糖価安定対策の推進については積極的に進めてまいる所存でございます。  五番目の糖業制度の検討につきましては、最近におきます糖業をめぐる諸情勢が大きく変化しておる状況を踏まえまして、今後糖価の安定、国内産糖のあり方、事業団の機能をどうするかとか、そういう糖業をめぐります諸問題について、制度の見直しを含めた甘味資源対策全般の検討を行う必要があると考えておりまして、現在農林省出身者等を中心といたします学識経験者少数の検討会を設けまして、鋭意検討を取り進めておるところでございます。
  91. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長、いま最後に申された糖業制度全般について再検討を鋭意しているということですが、その中身はどういうふうなことになっておりますか。
  92. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 この中身をいまここで私が申し上げるほど煮詰まっておるわけではございませんで、まあ幅広く諸般の問題を検討いたしておるわけでございますが、非常に重要な問題はやはり国内糖価の安定という問題をどうするかということが基本的問題であろうと思います。そのためには、需給調整というのを一体どういうふうに持っていくかという問題でございます。そのさらにうらはらには、輸入の調整というものをどういうふうに持っていくか、それに関連しまして一体国内産糖きびをどういうふうにするか、さらにまた事業団の機能をどういうふうにするかという問題がずっと関連をしてまいりますので、そういう問題全体を踏まえまして幅広く検討いたしておるところでございます。
  93. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま局長が答えられたこの五項目の建議については農林大臣も十分知っておられると思いますけれども、ひとつ貴重なる建議がなされておりますので、これを踏まえて積極的に農林省の対策を講じられるように重ねてお願いしておきます。  そこで農林大臣に伺いますけれども、昭和五十一年産サトウキビの最低生産者価格について、沖縄から過日第一陣を初め本日まで第四陣、四回にわたって陳情が遠いところからはるばる来てなされておりますが、この沖縄の陳情団の皆さん方は、再生産が確保されるようにトン当たり二万二千五百円の価格にしていただきたいということで陳情に来ておりますけれども、この陳情があるということは大臣は御承知ですか。
  94. 大石武一

    ○大石国務大臣 過日は沖縄県知事の陳情も承っておりますし、いろいろと御苦労のほどをよく承知いたしております。
  95. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで私も、同僚からも質問がありましたけれども、やはりサトウキビの最低価格について当局の考えを改めさせるために質問せざるを得ませんが、御承知のように私たちの試算によりますと、生所方式でいきますと、農林省統計情報部による沖縄県のサトウキビ生産費調査について、四十八年は百六十五戸、四十九年は百六十一尺ことしは推定ですけれどもおおむね百六十戸としまして、三年平均をとってこれを資料としてずっと計算してまいりますと、家族労働費も一時間当たり八百八十三円四十八銭で評価がえするということになりますし、賃金についても一時間当たり八百八十九円七十六銭を適用するというように昨年の実績から見るとなります。また現物給与相当額を見ましても、これは〇・四八%を賃金に乗じて算出しますと八百八十三円四十八銭、こういう計算になってまいりますし、通勤手当相当額、さらには物材、雇用労働費、資本利子、地代こう見ていきますと、ただ単純計算で正直に計算しましても、結局価格決定年の評価がえ生産費の平均は十五万八千三百五円になりまして、平均収量の平均は六千八百九十七キログラムですので、これで計算すると算定値は二万二千九百五十三円になります。これはだれが計算してもこういうふうになります。これを、いま承知しておると大臣がおっしゃったように二万二千五百円ということで、端数を若干切って沖縄の生産者は今回生所方式で政府に強い要請を出しているわけです。沖縄のサトウキビが米にかわる大事な問題だということは、もう百も二百も皆さん御存じであるわけで、昨年度も二万一千六百九十三円要求し、五・八%アップでございましたがついに一万六千百円ということになりましたけれども、こういったことでは沖縄では再生産はできない、意欲も落ちるということになりますので、いろいろ理由はあるにせよ、やはり農民の要求しておるように鹿児島の南西諸島と沖縄については生所方式でしてあげる——パリティ方式も生所方式も問題があると言うけれども、そういう要望が強いのですからそういうことで認めてあげなければ、戦後三十数年あのように異民族の支配下にあって苦しんできた沖縄の皆さん方にも申しわけない。大臣の就任期間は短いかもしれませんけれども、最大の努力をして沖縄の皆さん方に何とかみやげを残すためにひとつ一踏ん張りしてもらいたいと思うのですが、大臣の所見を承りたい。
  96. 大石武一

    ○大石国務大臣 御意見のほどはよく理解ができます。私もできるだけその御希望に沿いたいと願っておりまして、できるだけ可能な最高の値段を決めるようにということを食品流通局によく話しておりますので、そのように進んでまいることを願っております。
  97. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 来年度予算のことでちょっと伺っておきますけれども、来年度予算の概算を見ますと、甘味資源砂糖類の対策予算要求額は、先ほど三百億とおっしゃったけれども私の計算では二百八十八億円くらいになっておって、前年度予算の二百七億八千万円に比べると三八・五%増となっておりますが、砂糖業界の直面する深刻な事態を抜本的に打開するものではなく、まことに不十分である、かように私は思っております。食品流通局計上の砂糖類対策費を見ましても、沖縄含みつ糖対策費に七億七千五百万円が計上されております。  この対策の内容についてちょっとお伺いしますけれども、御承知のように砂糖には分みつ糖と含みつ糖とがあるわけですが、この含みつ糖の方に対して国が三分の二、県が三分の一補助されておりますが、実際赤字であります。時間の関係ではしょりますけれども、国と県で原料の六、七〇%補助しておりますが、何とかこれを一〇〇%やってくれというのが現地の要請です。局長の方では、一〇〇%やると農家が惰農になって意欲を起こさぬから六〇%でいいじゃないかということをおっしゃっておりますけれども、私はそんなことは絶対にないと思うので、ぜひ一〇〇%見るように要求してもらいたい。  それから、時間がございませんからはしょってもう一点聞いておきますけれども、同じ予算の中で甘味資源生産振興対策費、これは農蚕園芸局の計上になりますけれども、沖縄サトウキビの原々種農場設置調査費というものがことし二百八十八万円組まれております。これは多年われわれや団体が要求してようやく初めて計上されたもので、調査費で芽を出したということは一応の評価はしますけれども、規模的にまことにお粗末で小さいものであります。聞くところによると、土地選定、場所等いろいろやらねばいかぬということでございますけれども、少なくともこれは五十三年くらいまでにはぜひやってもらいたいと思うが、その辺はどういう見通しを持っておられるか、ひとつお答えをいただきたい。  以上です。
  98. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 私の方から沖縄の含みつ糖対策につきまして申し上げますが、先生お話しのように国が大体五億円、県が二億七千万円ほど、この対策費として七億七千五百万円を計上いたしておるわけでございますが、私が申し上げますとおかしいのですけれども、実はこれは相当手厚い予算的措置でございまして、この金額をキビ代に直しますと、大体キビ代の七〇%は国と県とが金を出しておるという計算に相なるわけでございまして、これを一〇〇%にいたしますと、一〇〇%ただの原料を使ってなお含みつ糖が引き合わないということに相なるわけでございます。含みつ糖でもやはり用途があるわけでございますから、できる限りその用途に向けるように需要先ともよく話をすると同時に、なおこれを分みつ糖の原料として使う余地もないとは言えないと思います。そういう全体的な合理化を図りながら、国の方の手厚い措置を続けていくということが離島の農家に対する対策として適当なのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  99. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 サトウキビの原々種農場は現在鹿児島県の種子島にございまして、沖縄に対しましても原々種を供給いたしまして、沖縄県内で原苗圃を設置をして農家に配分する、こういうことをやっておるわけでございますが、沖縄県内にも独立の原々種農場をつくってほしいという要望が非常に強いわけでございますので、来年度初めて設置の可否を含めまして土地条件、場所、水、そういうようなものの調査をする予算を組んでいるわけでございますが、一年だとどうも無理だと思いますが、初年度の調査結果を待って、二年度以降どのように進めるかを検討したいというふうに考えております。
  100. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が来ましたので、以上で質問を終わります。      ————◇—————
  101. 湊徹郎

    ○湊委員長 この際、昭和五十一年産とうきびの最低生産者価格等に関する件について、いも、でん粉及び甘味資源等に関する小委員長から報告を聴取いたします。今井勇君。
  102. 今井勇

    今井委員 いも、でん粉及び甘味資源等に関する小委員会の報告を申し上げます。  本年産サトウキビの価格決定前に本小委員会を開会し、サトウキビの価格問題等について、審査を行うという先般の申し合わせに従い、本日、小委員会を開会いたしました。  最初に、政府からサトウキビの価格及び需給動向等について説明を聴取した後、懇談の形式で質疑を取り交わしました。  次いで、小委員間で協議の結果、次の結論を取りまとめ、これを委員会の決議とするよう提案することと決定いたしました。  以下、その結論を朗読いたします。     昭和五十一年産とうきびの最低生産者価格等に関する件(案)   甘味資源自給率の維持向上と沖縄及び南西諸島における農業経営の安定を図るために、さとうきび作の振興は現下の重要課題となつている。   よつて政府は、当面するさとうきび価格の決定に当たつては、台風等により大きな被害を受けたきび作農家の窮状を十分配慮のうえ、左記事項の実現に努めるべきである。         記  一 さとうきびの最低生産者価格については、最近における労賃、生産資材等の上昇を適正に織り込み、再生産の確保が図られるよう所要の措置を講ずること。  二 甘蔗糖の事業団買入れ価格については、製造経費の上昇を適正に織り込むとともに、台風被害による原料不足、歩留まりの低下等の諸事情を十分反映させ、適正な水準に引き上げること。  三 さとうきびの長期生産目標達成のため、土地基盤の整備、優良種苗の普及及び機械化作業体系の確立等の生産対策を更に強化すること。 右決議する。 以上でありますが、何とぞ小委員会結論を当委員会の決議とされますようお願い申し上げます。
  103. 湊徹郎

    ○湊委員長 以上で小委員長の報告は終わりました。     —————————————
  104. 湊徹郎

    ○湊委員長 ただいま小委員長から提案のありました案文のとおり決議することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 湊徹郎

    ○湊委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定しました。  ただいまの決議に対し、政府の所信を求めます。大石農林大臣。
  106. 大石武一

    ○大石国務大臣 ただいまの御決議につきましては、十分検討いたしまして、適切に対処すべく努力いたす所存でございます。     —————————————
  107. 湊徹郎

    ○湊委員長 この際、角屋堅次郎君外四名から、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の五常を代表して、領海十二海里の早期実現水産食料確保に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者から趣旨の説明を求めます。角屋堅次郎君。
  108. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の五党を代表して、領海十二海里の早期実現水産食料確保に関する決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     領海十二海里の早期実現水産食料確保に関する件(案)   最近における我が国水産業をとりまく国際環境は、第三次国連海洋法会議動向及びこれを先取りする米国等諸外国における二百海里経済水域の設定等極めて厳しいものがあり、今後、我が国が従来の漁業実績を最大限に確保し、水産食料を安定的に供給することは非常に困難な事態に当面している。   一方、我が国の近海においては、近時、外国大型漁船操業等により沿岸漁業者等は一部操業不能に追い込まれる等甚大な損害を被つているところである。   よつて政府は、左記事項の実現に遺憾なきを期すべきである。        記  一 沿岸漁業者等の多年の要望に応えるとともに我が国の国益に配慮しつつ、すみやかに領海の幅員を十二海里とするよう措置すること。  二 水産外交の強力な展開、沿岸漁場の整備開発、漁港の計画的整備、漁業資源の開発及び有効利用の促進、漁業従事者の雇用の安定等により我が国漁業の維持発展を図るとともに国民の必要とする動物性たん白質食料の確保に全力を尽すこと。  三 被害漁業者救済のために万全の措置を講ずること。   右決議する。  わが国漁業は、年間一千万トン程度の漁獲を上げ、国民食糧の供給に大いに貢献しているところであります。そのうち外国距岸二百海里以内の水域において、約四百五十万トンを漁獲しているところでありますが、排他的経済水域に関する第三次国連海洋法会議動向、米国における一九七六年漁業保存管理法の制定等、漁業をめぐる国際環境はきわめて厳しいものがあります。  すなわち、第三次国連海洋法会議動向は、わが国の水産業のみならず、国民生活に重大な影響を及ぼすものでありますが、海洋法会議も回を重ね、本年の夏会期である第五会期においても、当初の目的であった公式草案の作成まで到達できず、次期会期を来年五月に予定して、去る九月十七日閉幕いたしました。従前の会期における各国動向を見る場合、次期会期において、新しい海洋秩序の成立に向けて国際的合意が得られる見通しは暗いと見られ、かかる状況から広範な経済水域の設定等、海洋法会議動向先取りする国際的傾向がますます強まることが懸念されるのであります。  現に、世界の主導的立場にある米国は、一九七六年漁業保存管理法を制定し、来年三月一日から二百海里の漁業保存水域を設定することとしており、また、カナダにおいても、来年一月一日から二百海里の漁業専管水域を設定することとしており、二百海里の経済水域を設定している国は、すでに九カ国に及んでいるところであります。  特に、米国の漁業保存水域の設定は、この水域において百五十万トンを上回る漁獲を上げているわが国漁業に重大な影響を及ぼすことは必至であり、政府は、十一月四日から開催される日米漁業交渉、十一月一日から開催される日米加漁業委員会に向けて、わが国漁業実績削減が極力防止されるよう最善の努力をすることが望まれるのであります。  以上申し述べました国際環境の中で、今後わが国が、従来の漁業実績を最大限確保し、水産食料を安定的に供給することは非常に困難な事態にあります。そこで政府は、水産外交の強力な展開、沿岸漁場の整備開発、漁港の計画的整備、漁業資源の開発及び有効利用の促進、漁業従事者の雇用安定等により、わが国漁業の維持発展を図るとともに、国民の必要とする動物性たん白質食料の確保のため全力を尽くすよう強く要請するものであります。  また、領海十二海里の問題については、わが国は従来から三海里の領海を踏襲しているところでありますが、昭和四十三年ごろから外国大型漁船北海道沿岸から伊豆諸島周辺の海域において、本格的操業を続けており、わが国の沿岸漁業者等は、漁具破損、一部操業不能に追い込まれる等甚大な被害をこうむっており、沿岸漁業者等から領海十二海里の早期実施が強く要望されてまいりました。  これらの諸情勢を踏まえ、政府は、速やかに領海の幅員を十二海里とするよう措置するとともに、被害漁業者の救済についても万全の措置を講ずるよう強く要請するものであります。  以上が本決議案の提案の趣旨であります。何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  109. 湊徹郎

    ○湊委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  110. 湊徹郎

    ○湊委員長 別に発言の申し出もないようでありますので、直ちに採決いたします。  角屋堅次郎君外四名提出の領海十二海里の早期実現水産食料確保に関する件の動議のとおり決するに御異議ありませんか     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 湊徹郎

    ○湊委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  ただいまの決議に対し政府の所信を求めます。大石農林大臣。
  112. 大石武一

    ○大石国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨を尊重いたしまして、善処するよう一生懸命に努力いたします。(拍手)
  113. 湊徹郎

    ○湊委員長 なお、ただいまの両決議について、議長に対する報告及び関係当局への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼び者あり〕
  114. 湊徹郎

    ○湊委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう取り計らうことにいたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十一分散会