○
加藤(紘)
委員 第三班の
調査結果を
派遣委員を代表して申し上げます。
第三班は、
湊委員長を団長に、竹内
委員、津川
委員、林
委員、折小野
委員と私の六名から成る
調査団を構成し、去る十月三日から五日までの三日間、宮城県を振り出しに、山形県、福島県の順に、今年の
異常気象がもたらした
農作物被害の
状況について
調査を
実施してまいりました。
さきに第一班、第二班の
報告にもありましたように、本年は実に数十年ぶりという
異常気象に見舞われたわけでありまして、このためわれわれの参りました三県におきましても、多くの
農作物の
生育に
被害をもたらしております。中でも、
水稲については、七月以降の
低温による発育のおくれに加え、八月に入っても
低温と
日照時間の不足による
生育の停滞が見られ、また九月以降においても
低温による
登熟の阻害があり、例年ならすでに稲刈りの大半が終わっている今日でも、これを刈り取る状態となっていないのが共通した
実情でありました。
収穫期を迎えた
農家では、文字どおり途方に暮れているというのが
実情でございます。
われわれが
調査に参りました
被害地は、三県いずれとも山間部の高
被害地のところでありまして、
収穫が全く
期待できないというところも随所に見受けられたのでございます。このような
被害農家では飯米用の米もとれず、あすの生計を維持することさえ困難視されており、きわめて深刻な事態を迎えております。このようなことから、われわれ国会の
調査団が来るという知らせが伝わるや、視察地はもとよりでありますが、隣接する村々から
被害農家の皆さんが沿道に集まられ、祈るような気持ちでわれわれを出迎え、
青立ちの水田を前にしてその窮状を切々と訴えられたのであります。
以上は、
調査の
状況報告でありますが、次に順を追って各県の
被害状況を御
報告申し上げます。
まず、宮城県でございますが、九月二十四日の
調査結果に基づきますと、
水稲作付
面積十一万九千五十九ヘクタールのうち、いまだ
出穂していな
いものが四十三ヘクタール、
出穂しても
青立ち状態のものが千七百二十ヘクタール、傾穂してもほとんどもみが黄色とならな
いものが実に五千六百九十六ヘクタール、傾穂してもみの三〇%から七〇%まで黄色になったもの四万五千四百八十ヘクタールという結果が出ており、五分作以下の
市町村がかなり出るとのことでありました。さらに、九月に入ってからの
いもち病の
発生が
被害を一層大きくして、二重の打撃を受けている
実情であります。例年なら、すでに大半の
地域で稲刈りが終わっているか、あるいはいまが最盛期というところでありますが、このような
生育遅延で本年は刈り取り割合がいまだ〇%ということに相なっております。また、われわれが
調査に入りました川崎町では、
青立ち、
いもち病の二重禍に苦しめられ、どの水田も
農業共済の
損害評価を求める白旗が立ち並び、その光景はまことに惨たんたるものでございました。
次に、山形県の
被害状況について申し上げます。
これは、九月二十八日の
調査結果となっておりますが、
水稲作付
面積十万一千八百七十八ヘクタールで、すべてが何らかの
被害を受けており、これを
被害率別に見ますと、九〇%以上の
被害面積一千七百六十三ヘクタール、九〇%から三〇%までの
被害面積一万二千八百九十九ヘクタール、三〇%未満の
被害面積八万七千二百十六ヘクタールとなっており、その作柄は八五%から九〇%になるということでありますが、豪雪地帯の最土
地域では七〇%から七五%という
作況指数となっております。以上は県全体の平均的な数字でありますが、
地域によっては、
収穫皆無、三分作あるいは五分作と深刻な事態となっている町村がかなり予想されているのでありまして、われわれが
調査に参りました西川町、朝日町、白鷹町では、このような
天候不順による
冷害は
昭和九年以来ということであります。当時は娘を売ってしのいだものが多かったそうでありますが、今年の
冷害は、その
異常気象による
冷害にまさるとも劣らない惨状でありまして、
農家の
被害はまことに甚大なものとなっております。
またちなみに、私たちが参っておりません庄内
地方、比較的
被害が少ないと言われておりますけれども、いわゆる山間地におきます立川町、羽黒町、朝日村、櫛引町等におきましては、山間部では内陸と同じようにかなりの
被害が出ておるということも
報告されておりまして、たとえば羽黒町の場合には、昨
年度約五百俵を
政府に売り渡した
農家が、ことしは売り渡し予定がゼロとなるなどの
被害が県の
農業委員会から
報告されておりました。
次に、福島県の
被害状況について申し上げます。
福島県では、県全体の作柄予想は平年比八三%ということでありますが、
作況指数七〇%以下の地帯は全県下にまたがっており、
標高三百メートル以上の山間地の
稲作はその高さにほぼ比例して
被害を高めている状態でありますが、県内では中通り、浜通りに
被害が集中的にあらわれているのであります。また、ここでは通常の防除以上の防除体制をとっていたにもかかわらず、
いもち病が
発生し、
農民は二重の苦しみを味わっている
実情にあります。われわれが
調査に入りました浪江町、葛尾村、都路村を通じて言えますことは、県の奨励品種はもとよりでありますが、寒冷地向きの品種でさえ目を覆うばかりの惨たんたる成育
状況であり、
収穫皆無の心配をする
農家がきわめて多いのではないかということでございます。
被害農家の人々は、もみずりしてみればさらに
被害は大きくなるのではないかとの不安でいっぱいであるとの暗たんたる訴えに気持ちの引き締まる思いをしたのであります。
これは山形県、福島県に共通して言えることでございますけれども、
農家の人々が、ことしは刈ってびっくり、そしてもみずりしてなおびっくりという言葉が各地で聞こえました。以上から、だんだんその脱穀調製を進めていきますと、
被害の
状況がまた大きくなるのではないかなというのが私たち
調査団の一致した気持ちでございます。
以上が、各県の
被害状況の
概要でありますが、今回の
調査を通じ、
現地の皆様から数多くの
要望を賜ってまいっております。これは、第一班、第二班の
調査団に伝えられました
要望とほぼ各地とも一致いたすものと思います。その主要なものを御
報告申し上げてみたいと思います。
まず、金融対策の
要望についてでありますが、その第一は、
被害農家の
農業経営の維持向上と、
農家経営の安定を図るために、
天災融資法並びに
激甚災害法の
早期発動の
措置でございます。
その第二は、
被害農家の経営を維持するために
自作農維持資金の
災害枠を設定し、必要とする融資枠を配分されるとともに、
貸付限度額の引き上げ等、
貸付条件の
改善についての
要望でございます。
その第三は、
異常気象による
被害農家が広範囲にわたり、かつ
各種資金の償還残高を有していることが見込まれるので、すでに
貸し付けてある資金の
条件緩和が円滑に行われるよう
特段の配慮をされたいということでございます。
次に、
農業共済金の
早期支払い及び
助成措置の
要望について申し上げます。
その第一は、
各種共済事業にかかる
政府の再保険金
支払いが
早期かつ完全に行われるよう財源
措置等に万全の
措置を講ぜられたいということであります。その第二は、連合会の保険金
支払い、組合等の
共済金の
支払いに必要な資金の融通について、
農業共済基金が円滑に対処できる
措置を講じられたいということであり、その第三は、これは各地でかなり、細かな話だけれども重大な話だといって
要望された点でございますが、
農作物共済、特に
水稲共済の
損害評価に
特例措置を認め、現行一・七ミリのふるいを一・八ミリとして、落ちたものについては
共済金の
支払い対象とするようその
基準を改めていただきたいということでございます。第四は、
冷害に伴う
損害評価に要する経費について、例年にない出動体制をしいておりますので、
農業共済団体等に対し
損害評価の事務費の追加交付の
特別措置を講ぜられたいということであります。
また、
収穫皆無田等に対し見舞い金の交付の
要望があったことを申し添えておきます。
次に、一般的な食糧対策について申し上げます。
その第一は、
等外米及び
規格外米について
政府において全量買い上げされるよう、しかるべき
措置をとられたいということであり、その第二は、米穀の予約概算金の返納に係る利子の
減免、返納金の一時凍結の
要望であり、その第三は、
災害等によって米作
農家に飯米の不足が生じた場合の
政府米貸付制度の創設の
要望でございます。また、
稲作の再
生産確保のため、種もみの確保に万全を期することが強く
要望されたのでございます。
最後になりましたが、救農対策として
土木事業等公共
事業の増大の
要望について申し上げます。
これは
被害農家の賃金収入の道を開くための緊急
措置の
要望であり、
土地改良事業、林業
土木事業及び一般
土木事業の公共
事業の新規または繰り上げ
実施の
要望であります。特にこれら
土木事業の選択に当たっては、いわゆる手作業が多い工事を優先して、一般土工労務費が
被害地に十分に渡るように配慮していただきたいとの声が強かったのが私たち非常に印象に残ったところでございまして、特に林道開設等の
事業が実際においては
被害地において救農土木としてはメリットが大きいのだという声が随所で聞かれたのが印象的でございます。また、山間部では、積雪地帯の
地域性を満たした
事業の
実施が強く求められたのでありますが、これもいま述べたことと同様のことでございます。
その他、果樹、
野菜、畜産等についての
被害対策も強く
要望されたのでありますが、余り長くなりますので割愛いたします。
われわれ
調査団は、このような要請に対し、
冷害対策として過去にとった
措置の実現はもとよりでありますが、
被害程度の
地域的な格差もあり、それぞれの事情に応じたきめ細かい対策を練り上げることを
現地の皆さんにお約束してまいったのであります。
また、
委員会におかれては、
北海道、
東北地方の
調査結果を踏まえ、十分御相談の上、強力な対策ができるよう強く
政府を督励してくださることをお願いし、簡単ではありますが、御
報告にかえさせていただきます。(拍手)