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1976-10-27 第78回国会 衆議院 大蔵委員会税制及び税の執行に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員会昭和五十一年十月十三日(水曜日)  委員会において、設置することに決した。 十月十三日  本小委員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       宇野 宗佑君    越智 伊平君       唐沢俊二郎君    瓦   力君       齋藤 邦吉君    野田  毅君       坊  秀男君    森  美秀君       武藤 山治君    山中 吾郎君       横路 孝弘君    増本 一彦君       広沢 直樹君    竹本 孫一君 十月十三日  森美秀君が委員長指名で、小委員長選任さ  れた。 ————————————————————— 昭和五十一年十月二十七日(水曜日)     午前十時五分開議  出席小委員    小委員長 森  美秀君       越智 伊平君    佐藤 観樹君       武藤 山治君    増本 一彦君       広沢 直樹君    竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵大臣官房審         議官      山内  宏君         国税庁長官   田辺 博通君         国税庁次長   山橋敬一郎君         国税庁税部長 谷口  昇君  小委員外出席者         人事院事務総局         給与局次長   角野幸三郎君         総理府人事局参         事官      柳  庸夫君         行政管理庁行政         管理局管理官  佐々木晴夫君         大蔵省主税局税         制第一課長   矢澤富太郎君     ————————————— 十月二十七日  小委員瓦力君及び野田毅君同月十五日委員辞任  につき、その補欠として瓦力君及び野田毅君が  委員長指名で小委員選任された。 同日  小委員越智伊平君及び唐沢俊二郎君同月二十二  日委員辞任につき、その補欠として越智伊平君  及び唐沢俊二郎君が委員長指名で小委員に選  任された。 同日  小委員横路孝弘君同日小委員辞任につき、その  補欠として佐藤観樹君が委員長指名で小委員  に選任された。 同日  小委員佐藤観樹君同日小委員辞任につき、その  補欠として横路孝弘君が委員長指名で小委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制及び税の執行に関する件      ————◇—————
  2. 森美秀

    ○森小委員長 これより税制及び税の執行に関する小委員会を開会いたします。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  先般、私が当税制及び税の執行に関する小委員会の小委員長に就任いたしました。何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)  税制及び税の執行に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤(山)小委員 長官に通告はしてないのでありますが、せっかく銀行局長から国税庁長官におなりになった最初の小委員会における質疑だと思いますので、いままでは銀行行政全般を担当していた田辺長官が、今度は税の方でいかに脱税を巧みにやるかということ、郵便貯金銀行架空、偽名、無記名、それらの預金で逃避をしているかということを痛感をしているのじゃなかろうか、こう実はお察しをするわけであります。長官に就任して、そういう銀行預金の無記名架空というようなものを存置することが一体やむを得ないことなのか、この辺でもう徴税当局としては一区切りつけてほしいものだと思うのか、その辺の感想をちょっとお聞かせ願いたいのであります。
  4. 田辺博通

    田辺政府委員 国税庁といたしましては、いろいろな情報、資料を八方手を尽くしまして調査をして、そして適正な課税を行うべく万全の努力をしているわけでございます。御指摘預金につきまして、架空名義とか無記名預金がその調査に対して支障を来しているのではないか、こういう御趣旨かと思いますが、これは税務の面からだけ申しますと、恐らく納税者番号というような番号をもってすべての人が預金を出し入れする、こういうようなことは税務の面から見れば非常に便利なシステムであると思います。ただそのようなことが社会全体の貯蓄に対する物の考え方、あるいは社会的な風習と考えて、どのように社会心理といいますか、国民の心理に影響を与えるかというようなこともやはり十分に考えなければならないことでございますので、預金ばかりではなくて、問題はいろいろな資産形態がございますので、そのようなものとのバランスも考慮しなければならない、こういう問題ではなかろうかと思っております。
  5. 武藤山治

    武藤(山)小委員 どうも歯切れが、中身が悪いですね。新聞によると、けさの新聞ですか、きのうですか、郵貯大蔵省調査に手を入れたとでかでかと読売新聞にも報道されているのでありますが、どうもその辺の真偽のほどが疑わしいので、いまちょっと尋ねてみたのでありますが、実際はどうなんですか。郵便貯金脱税してやせぬか、そういうことの調査というものをいま本気で始めたのですか。
  6. 谷口昇

    谷口政府委員 ただいまの御質問についてお答えをいたします。  郵便貯金に対しましては、私ども先生方承知のとおりに、実は納税者所得調査、あるいは法人税の場合、所得税の場合でございますが、そういう所得調査に際しまして、郵便局調査する必要があると思われる場合に、郵便局を必要に応じまして従来からも調査をさせていただいております。そういうことに関連をしまして郵政省の協力を求めてきておりましたが、最近もそういうお話をしておる、そういう状況でございます。
  7. 武藤山治

    武藤(山)小委員 それでは特別に無記名がどのくらいあるとか、あるいは脱税らしきものが相当金額あるだろうという疑いをかけて全国的な特別調査に入った、そういうことじゃないのですね。脱税があった場合にはいままででも郵貯でも調査をしましたよ、今後もしますよ、そういう意味ですか。
  8. 谷口昇

    谷口政府委員 先生いま御質問のとおりでございまして、実は私どもは特別にこの機会に大口の郵貯脱税があるとか、そういうことを特に意識をしたわけではございませんで、従来から郵貯に対してはそういうふうに調査をしてきておりますけれども、そういう姿勢で、お話をしておる、そういうことでございます。
  9. 武藤山治

    武藤(山)小委員 実は小委員会ですから、きょうは細かい質問を一点だけやろうと思って通告してありますからその本論に入らなければなりませんが、どうもその前に大蔵省姿勢を問いただしておかぬと、どうも安心ならぬ。いまの大蔵省税当局はやはり何か無責任体制のような気がしてならぬのであります。来年度の税制改正をどういう点とどういう点をひとつ根本的にやってみようという答えがいまだ述べられない。一体どうしたらいいんでしょうか。まあ税調任せで、いまやっております、では中身はどうなんだ、いやまだ中身についてはと、これでは主税局役割りを完全に果たすことはできない。やはり主税局が、来年度はこういうものとこういうものはどうしても徹底的に私たちは手をつけて、増税なら増税、こういうものは減税、そういうものの一つの目安ぐらいは、いまの段階主税局が持ってないなんということはないと思うのですよ。持っているけれども、何か税調に全部かぶせて、税調が答申をしたらその範囲内のことを無難にやればいい、どうもこういう感じがしてならぬのですね。もうちょっと主税局責任体制でぴしっと答えられないのですか。  いま来年度の税制について山内審議官などが特に気を使っている税目で、こういう点は増税しようと考えていることを述べられる段階ですか、どうですか。
  10. 山内宏

    山内政府委員 委員すでに十分御承知のところでございますが、現在の段階ではまだ予算全体の骨格が十分明らかでございませんし、それから来年の経済見通しについてもまだ明らかではございません。そういう段階にございますので、例年同様でございますけれども、現在の段階ではなお来年の税制改正のおおむねの骨格というものはまだ浮かび上がってこないわけでございます。ただ御指摘のようにもちろん来年どういうふうにすべきかということは、いまの時期でありますので、いろいろな考え方をそれぞれ持っておりますけれども、こういう形でいきそうだというふうな意味での、大蔵省全体のある程度まとまった考え方にまではまだ到達をしておらないわけでございます。  ただ、この際一応考えられますことは、これは毎度申し上げておることでございますけれども財政収支試算あるいは中期経済計画との関連からいたしましても、来年度はたとえば所得税一般減税というものは恐らく不可能であろうかというふうに事務的には考えます。と同時に、これまた毎回申し上げておることでございますけれども特別措置整理改廃につきましては、これは従来以上に力を注いでやっていかなければならないというふうに考えております。この点につきましては、やはりかねがね当院で御説明申し上げておりますように、法人関係特別措置につきましては期限の到来するものを中心に重点的にやっていきたいというふうに考えておりますし、それから個人関係、特に利子配当につきましては、これは私どもとしてはぜひ何らかの形で改善の方向を見出したいというふうに考えておる次第でございます。それ以外の点につきましては、先ほど申しましたように、全体の大枠がまだ定かでございませんので、具体的にどういうふうな方向にいくかということはちょっと申し上げかねる状態でございます。
  11. 武藤山治

    武藤(山)小委員 その質問本論じゃありませんからこの辺でやめますが、たとえば昭和五十年度年収二百万の低所得者の場合を考えても、ことし減税やらなかった、来年も減税やらないとなると、一〇%のベースアップがあったと仮定した場合に、五十二年度の税負担は、計算を具体的にしてみて、五割ふえますね。五十年度と来年度と比較したら、五割の重い税金だという感じを持ちますね。ですから、低所得者は、とてもいまの政府のやっていることはわれわれ庶民大衆に苛斂誅求だという感じが一層強くなる、五割増ですから。具体的に数字をちょっと見ますと、たとえば五十年の年収二百万の人が去年のベアと今度のベアと合計して二百四十二万円ぐらいの年収になる。そうすると、所得税だけを見ると、五十年に一万一千円で済んだ人が四万七百円の所得税を取られる、そういう計算が出てきている。だから、低所得者の少なくとも三百万以下ぐらいなところは、財政事情いかんを問わず、やはりこの際調整的に減税はやらなければならない、そうわれわれは考える。それが当然の政府の施策であってしかるべきである。ところが、どうもないそでは振れない、減税はやれない——一時はやってみようかと、こう言ってみたり、また主税局長などに陳情すると、赤字国債をどんどん発行してもいいという前提なら減税できますよ、しかし、それは社会党さんは赤字国債反対をしているんだから、それで減税をやるという答えはできないしと。しかし、いまの税目の中あるいは税制度の中で租税特別措置以外でも、やはり本則の中でも改善できるものは、引当金だとか準備金だとかの中で触れるべきものはまだまだあると私は思うのです。そういうようなものも徹底的に洗えば、二百五十万以下ぐらい、三百万以下ぐらいの可処分所得がかなり窮屈になる層については考えてしかるべきじゃないか。     〔小委員長退席佐藤(観)小委員長代理着席〕 これは大臣が決めるとか主税局長が決めるというよりも、問題は税法全体をにらみ合わせてまとめている山内審議官あたりが本気にならぬことには、上の方で減税のあれが出てくるはずがない。やはり事務当局がそういう考え方に立って前向きに検討しなければだめだと思うのです。それを土台にして主税局長なり大蔵大臣は政治的な発言をしているわけですから、ぼくは山内審議官の五十二年度予算編成に対する税制問題の取り組みというものは日本を動かす最大の力を持っている人だと思うのです。そういう意味で、ひとつあなた、税全般を見直す際に、ことしは思い切った敏腕をふるってみる覚悟はありませんか。どうですか、あなたの心境は。
  12. 山内宏

    山内政府委員 来年度の税制改正を考えます際に、現在のような赤字財政のもとでございますので、これはどういたしましても今後四年間と申しますか五年間と申しますか、赤字財政から脱却できる時期、脱却をしなければならない時期、その時期を頭に置いた上でのいわゆる中期見通しを立てた上での税制改正を来年度としては考えざるを得ないという点が、例年税制改正とかなり違う点であろうかと私ども考えておるわけでございます。私どもも、御指摘のとおり、所得税の低所得層に対する減税、これは、財政これを許せばやりたいのはやまやまでありますし、それからその金額がいかほどかということに相なりますると、これは先生指摘のように、たとえば来年度だけのことを考えますと、これは全く到達不可能な数字ではないかもしれないと思いますけれども、先ほど申しましたように、五十五年度までのことを頭に置いて中期的な税制ということを考えまする際には、これはどうしても所得税にある程度の負担を考えてまいらないと、制度全体としてうまくバランスが合ってこないということを非常に強く感ずる次第でございます。そういうことでございますので、例年のようにといいますか、従来のように、赤字公債を抱えない財政の場合とそこが非常に違うというふうな点は、ひとつ御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  13. 武藤山治

    武藤(山)小委員 その論争をしていると時間がなくなりますから、個別問題でひとつ通告してある災害発生した場合の税制上の措置、それについてひとつお尋ねをしたいのであります。  ことしも水害、台風災害、冷害、こう災害が大変発生しておりますが、税制上、その場合に申告期限延長あるいは納税猶予、まず災害損失以前の問題、そういう二点については法的には現在はどういう処置をとることになっていますか。
  14. 田辺博通

    田辺政府委員 これは御承知と思いますけれども国税通則法規定がございまして、まずとにかく応急措置としまして、申告期限だとかあるいは納税期限、いろんな期限がございますが、その期限延長制度がございます。これはかなりの規模の災害が起こりますと、国税庁告示でもって地域指定いたします。その指定された地域に居住している納税者は自動的にその期限延長になる、こういうことになっております。それからまた地域指定から外れたといいますか行わない場合におきましても、その当該納税者の具体的な事情に応じまして、これは当然というわけにはまいりませんが、申請によりましてその期限延長することができる、こういうことになっております。
  15. 武藤山治

    武藤(山)小委員 その場合に期限延長は、地域指定を受けた場合の期限延長は幾日間、何カ月間、地域指定を受けなかった場合の延長はどのくらいまで、それからことしの災害地域指定を受けた行政区域ですか、あるいは税務署管轄数でいくんですか、どういう範囲かわかりませんが、そういう地域指定状況はことしは一体どういうことになりましたか。
  16. 田辺博通

    田辺政府委員 まず最初延長期限の点でございますが、これは国税通則法第十一条によりまして、いまの地域指定をすると否とにかかわらず、その理由のやんだ日から二カ月以内に限り延長する、こういうことになっております。  それから、ことしそういった告示をした例といいますか具体的な点でございますが、これはいままで七回に分けて告示を行っております。その最初は五十一年の七月十七日でございます。その次は九月二十二日に三件ほど行っております。その次は九月二十七日に一つ、十月十五日に一回、十月二十五日に一回、こういうぐあいに合計七回やっておりますが、その指定範囲は、第一回目のは静岡県の集中豪雨でございまして、静岡県の一部、それから二、三、四、五、この告示台風十七号による被害地域指定でございまして、これは相当範囲な各県にまたがっております。それから第六回目のものは静岡県の集中豪雨でございます。それから七回目のは、同じく徳島県の集中豪雨被害地域であります。
  17. 武藤山治

    武藤(山)小委員 その場合の期限二カ月延長というのは申告の場合で、納税の方の猶予も同じですか、二ヵ月ぽっちしか認めないのですか。
  18. 田辺博通

    田辺政府委員 いま申しましたのは、通則法十一条によります申告納付等期限のとりあえずの延長と申しますか、そういうシステムでございまして、もう一つは、おっしゃいます納税猶予、つまり納付すべき税額が確定しておるけれども、その財産等相当損失を受けたという場合に特に納税猶予をする制度がこれは通則法の四十六条にございます。この規定によりまする納税猶予は、これは地域指定すれば自動的に延長できるというものではございません。具体的にその申請を待って延長するわけでございますが、その納期限延長は一年になるということになっております。
  19. 武藤山治

    武藤(山)小委員 その一年間の猶予をしてもらうためには、税務署長に対してかなり厄介な書類を出さぬとそう簡単には猶予は認められないんですか。
  20. 谷口昇

    谷口政府委員 ただいまの御質問の問題でございますけれども、先ほど長官答えましたように、納税猶予措置を行います場合には、震災、風水害等によりまして財産相当損失を受けた場合、あるいは国税を一時に納付することが困難な場合には、個々の事情に応じて先ほどの四十六条一項または二項の規定によりまして原則として一年以内の期間納税猶予をしておりますが、私どもは今後ともこの制度の活用を図っていきたい、このように思っております。  そこで、その場合の問題でございますけれども災害等により財産相当損失を受けた場合の納税猶予の問題でございますが、この場合は、災害がやんだ日以前に納税義務が成立している国税で、その納期限損失を受けた日以後に到来するもののうち、猶予申請の日以前に納付すべき税額が確定しているもの、それから予定納税に係る所得税中間申告に係る法人税で、その納期限がその損失を受けた日以後に到来するもの、そういったものでございます。それからもう一つは、災害を受けた日から二カ月以内に申請が必要だ、こういうのが条件になっております。その結果、猶予期間は先ほど長官が述べましたように納期限から一年以内ということでございます。それから参考までに、その猶予期間に対応する部分の延滞税は免除になります。こういう状況でございます。
  21. 武藤山治

    武藤(山)小委員 次に、実際に災害損失を受けた、その場合には、次の申告のときにその当該年度所得から実際の損失額控除できるという制度にいまはなっているのですね。それは間違いないですね。
  22. 谷口昇

    谷口政府委員 ただいまの御質問でございますけれども、御承知のとおり所得税法雑損失規定でございます。これは、住宅、家財、預金、現金などの資産損害を受けまして、その損害額がその年分のいわゆる合計所得金額の十分の一を超えますときは、その超える金額所得金額から控除する、こういう雑損夫控除規定がございます。その他災害減免による規定もございます。そういう状況でございます。
  23. 武藤山治

    武藤(山)小委員 そこで、青色申告をしていた被災者の場合は、三年間は赤字繰り越しできるわけですか、白色の普通の申告者はそういう繰り越し三年間という特典は全然なくなるわけですか、どうですか。
  24. 谷口昇

    谷口政府委員 お話しのとおりでございます。     〔佐藤(観)小委員長代理退席、小委員長着席
  25. 武藤山治

    武藤(山)小委員 山内審議官田辺長官、いまのお話災害という不可抗力で自力ではどうにもならない、自己責任ではない、そういう場合、やはり白色申告者でも、もう農民なんというのはほとんど白色申告ですよ。ですから、白色申告の場合でも三年間繰り越しができる、そういう制度にこの辺で改める必要があると私は痛感する、これが第一点。  それからもう一つは、自然災害による損失を受けたときには、当然所得発生どころではなくて、所得が逆に全くマイナスになるわけですから、この損失は当然さかのぼって繰り戻しできるようにすべきだ。法人の場合、赤字決算になったときには前の年の納税額を還付するわけでしょう。繰り戻すわけでしょう。災害の場合なんかは、私は普通の法人赤字発生理由よりももっと深刻な、自己責任以外の原因なんだから、当然これはいまの法律ではそういうことが許されていないので、この辺で国税庁主税局は十分この辺のことを検討をして、繰り戻し制度というものがどうして不当なのか、なぜできないのか、そういう点のきちっとした検討結果を私は報告願いたいのですよ。きょう答弁できれば、前向きに答えられるならきちっと答えていただきたい、こう思うのです。
  26. 谷口昇

    谷口政府委員 武藤議員に、先ほどの答弁のうちで若干訂正さしていただきますが、白色申告者の場合、事業用資産災害損失につきましては、その事情も配慮いたしまして特に三年間の繰り越し控除は認めております。繰り越しの戻しはだめでございますが……。
  27. 武藤山治

    武藤(山)小委員 戻しの問題。
  28. 矢澤富太郎

    矢澤説明員 ただいまも直税部長から御答弁申し上げましたように、白色申告者につきましては、事業用資産災害損失につきましては特に三年の繰り越しを認めておるところでございますが、戻しの問題につきましては、青色申告であれば帳簿がある、それに対して白色申告の場合には帳簿の整備あるいは計算の正確さ等にもやや問題があろうかという点もございますので、繰り戻しまで認めることはいまのところなかなかむずかしいのではないかという考え方を私どもはとっております。
  29. 武藤山治

    武藤(山)小委員 だから君じゃだめなんだよ。ぼくは名指しで審議官長官にもっと高度の判断で質問しているわけなんだよ、将来の検討材料にならぬかどうかと。いまの制度はわかっているのだ。
  30. 山内宏

    山内政府委員 現状はただいま一課長が申し上げましたようなことでございます。法人につきましても、白色の分については同じような理由で現在のところは繰り戻しを認めておりません。これについて繰り戻しを認めるかどうかという問題は、委員指摘のように一つあるわけでございますけれども、私どもの現在の気持ちといたしましては、やはり青色申告制度そのものが非常に簡易な制度まで用意をいたしておりますので、できるならばそういう青色申告制度に乗っていただいて、いまありますような恩典を十分に受けてもらうということを期待いたしたいわけでございます。  なお、繰り戻しについて検討せよということでございますけれども、いま申しましたように帳簿がないという点がかなりバイタルな障害要因になろうかというふうに考えます。
  31. 武藤山治

    武藤(山)小委員 審議官帳簿がないというのはこじつけなんだよ。税務署にはちゃんと過去の申告書があるのだから、過去の申告書で全部わかるのですよ。また税務署にない場合は、市民税申告申告をしているのだから過去の収支はわかるはずです、繰り戻せという場合の例は。だから、帳簿がないから全部だめだなんて、過去の申告書を見れば大体その人の中身というのはわかるのですし、災害の場合は故意、過失じゃないところに問題がある。いままでの法体系法体系であっても、こういう自己責任以外のものについてはやはり税でもってある程度考えなければならぬのじゃないか、これは前向きに検討してしかるべきじゃないか。時間がないから宿題としてまず一つ提起しておきます。  その次に、いまの制度災害が起こって現実に損失を生じなければいろいろなそういう法の保護が発生しないのだ。ところが実際には、災害が起こる可能性がある危険区域、これが全国にたくさんあるのだ。大体みんなは税金を取ることばかり考えているから余り関心ないと思うけれども、がけ崩れ、土砂崩れ、そして家を移転しなければならないということを市町村からある程度指示されている戸数、全国でどのくらいあると思うか、大ざっぱに——わかんねえだろうなあということになるのだ。そのくらい皆さんはつくった法律なり規則以外のことについてはむとんちゃくなんだ、無関心なんだ。これだけ災害で騒がれていても、そういうことすら大蔵省に通告が来てないのだな。こんなことでは国民の立場に立ったら腹が立つよ。やはりこれから災害が起こり得る個所について、そういうものを国土庁なり建設省が主税局に注文しないのも怠慢で、国民的でないんだ。日本の政治というのはそこが特徴的であり官僚政治だといわれるゆえんなんだけれども、それを論じてもしようがない。しかし、現実に私は国土庁に、一体どのくらい危険区域指定される個所がいまあるのかと聞いてみたら、がけ崩れ、そういうようなものの危険だけでも全国で六万カ所あるというのだ。これは水害の危険のあるところを除いてです。これ以外にまだ完全に土砂が、全壊にはならぬが半壊くらいまでの危険なところを入れたらもっとあるというのですよ。戸数にしてどのくらいが想定できるかと言ったら、人家戸数にして九十八万戸くらいになるというのです。現実にそういうがけ崩れだけで人家に危険がありそうだというのが九十八五尺それ以外に地すべりと水害、そういうものも加えると、国民の中には大変心配し、不安を持ちながら生活している人がいっぱいおるわけなんです。だけれども、それは好きで勝手にそこに家をつくったんだから、おまえの自己責任だ、そういうことに資本主義ではなるかもしれぬけれども、しかし、そういう予防を国は、建設省なり国土庁は市町村にいろいろ指示している、危険区域で人命を救助するために事前に防災をやりなさいと。そうすると市町村は、あなたのところのこの区域は危ないからどこかへ移転をしてくれ、そういう指示を市町村から受けているわけですね。  そこで税制問題になるんだけれども、その家が危険でないところへ越す場合に、いままでの家屋敷が売れたならば買いかえ資産税金がかからない。いままでの家屋敷が売れて居住用財産を新たにつくったのならば免税措置になりますね、居住用財産の買いかえで、いまは。自分の家屋敷を売って、また家屋敷をつくった場合は免税でしょう。——じゃ、それを聞いてみよう。主税局、それはどうですか。
  32. 矢澤富太郎

    矢澤説明員 先生のおっしゃるとおり、居住用財産譲渡の場合には三千万円の特別控除がございます。
  33. 武藤山治

    武藤(山)小委員 免税というのが悪ければ三千万までの控除だな。だから税金がかからない。大体三千万あれば庶民の家はできる。ですからその場合は問題がない。ところが、災害を受けるであろうという現在の住居は買い手がないわけだよ。売れないわけですよ、危ないからどけというのだから。そうすると気の毒なのは、この人は移転する場合には全く別な借金をするか他の財産を処分するか、災害とは別なたんぼなり畑を売って家をつくる以外にない。そういう場合に、税制上、居住用財産の買いかえと同じような何らかの措置を新たに講ずる必要がある、私のいま質問をしようとしている問題はこういう提言なんだ。現実にそういう問題は幾つも起こっているんだ。ぼくのところにも現実にそれで泣いている農家の人が一人来ているわけだよ。そういう場合についていまの税法は何にも恩典がないんだよ。だから、どうしても災害で市の指示で移転を迫られるような場合、買いかえ資産と同じような何らかの新しい制度を考えてやる必要があるのじゃないか。自己の財産を処分した場合には、その処分した土地の譲渡所得税を建物、宅地に転じた分だけは相殺勘定にしてやるとか、あるいはどうしても半強制的に移転を強いられる場合の第二の措置として、住宅金融公庫から金を借りるあるいは銀行からローンで借りた、その場合の金利は、普通の源泉所得者であろうと、そういう場合の金利の控除を完全に認めるとか、災害防除対策として税制上何か前向きに考えてやってしかるべき段階ではないか、これについての皆さんの見解はいかがですか——これは偉いところで答弁しないと、君じゃ、いまのところはこうなっていますだけで、そんな現状認識の話をしているんじゃないんだから、政治家の発言なんだから、やはりそれは高度な判断で答えてもらわなければ——山内審議官、将来局長、次官になる人がこういうことを考えなければ日本の税制はよくならない。
  34. 山内宏

    山内政府委員 いま武藤先生指摘の問題につきましては、従来からなかなかできなかったという点につきましてそれぞれやはり理由があるわけでございます。現在のやり方、現在の制度の仕組みを見てみますと、何らかの意味で強制的に譲渡を実現させられるというもの、たとえば収用でありますとか、そういった場合にはこれは強制的に譲渡を実現させられて、それによって生ずる譲渡所得、これについてのめんどうを見るというシステムはあるわけでございますが、いま先生のおっしゃいましたように、譲渡するものについては別に譲渡所得が出ない、しかしながら何かつくりたいので別のものを売ってそこで譲渡所得が出た場合の譲渡所得の減免というお話でございますので、従来の発想を相当切りかえませんとなかなか受け皿として成り立ち得ないというふうに考えます。  また、先生指摘のローンについて、経費で引いてやったらどうかという御指摘もございますが、これにつきましても従来から、こういった特殊の問題に限定されておるわけではございませんが、たとえばサラリーマンが家を買った場合のローン控除を認めろといったような問題が従来再々出ております。(武藤(山)小委員「全然違うのだ、あなた、災害のことなのだから。市から言われた場合だから、そんなのは例にならないよ。」と呼ぶ)事柄の起こっている事情は違うと思いますが、それを税制で受け取ってそういった形をつくるにつきましては、やはり本来生活に従属するところの経費をどういうような形で見ていくかという、非常に大きな越えなければならぬ境があるように考えられます。そういう意味で、厳重に勉強しろという御指摘でございますので、私どもといたしましてもいやでございますとはなかなか申し上げられませんので、非常に難題だとは思いますけれども、私どもも御趣旨をそんたくいたしまして勉強させていただきます。ただ、直ちに結論が出る、あるいは比較的近い将来に結論が出るということを御期待願いますならば、それはノーの結論の方になってしまうおそれがありますので、ひとつ、まことに恐縮でございますが、温かい目で見守っていただきたいというふうに思います。
  35. 武藤山治

    武藤(山)小委員 審議官、建設省なり国土庁は市町村に対して、ここは危険区域だ、市町村もこれはなるほど人命に危険である、そうして行政指導上どこかに移転してくれよと文書でもって本人にも移転を勧告するわけだ。本人の意思じゃないんだよ。自然災害から逃れるためにそういう行政上の指導を受けているのだよ。その前提を忘れちゃいかぬのだよ。もし本人が申し出れば全部認めろなんて私は乱暴な議論をしているのではない。そういう行政庁から正式に移転を要請されている場合については、建設省の何局なりあるいは国土庁の何局なりが表明をした場合とか指示した場合とか、そういう条件をつけてもいいと思うのですよ。そういう場合の移転について、居住用財産の交換というのが本来できるのだけれども、売れない場所になっちゃっているわけだね、危険だと指定をされちゃうから。だとしたら、自分の他の財産を売って家屋敷を求めても買いかえ資産と性格は類似しているのではないですか。どうです委員長、そんな乱暴な議論じゃないでしょう。むずかしくてわからないですか。この議論はそんなにむずかしくないですよ。だから、そういうほんのちょっとしたことを検討するということで、そうむずかしい、こんなことをうっかり約束したら審議官の首が吹っ飛んじゃうほどの大問題じゃないのですよ。だから私はそういう問題について、現実にいま起こっている人の問題をもう少し前向きに解決する方法はないのか、こういうことできょうは取り上げたのです。  全国にそういう悩みを持っている人がいっぱいいるのですよ。たとえば常襲水害地帯、いつも床上浸水をしてしまう、どうしてもこういうところでは移転をしよう、そういう場合など、やはり国土庁なり建設省が指定をし指示をしたら、全くばらばらでなくてそれに歩調を合わせるのが行政府のあるべき姿じゃないのですか。そういう指示のあったものについてぐらいは買いかえ資産と同様な取り扱いをしてしかるべきではないのか、私はそういう感じがしてならぬのです。  もう時間ですからやめますが、最後にもう一回御意見を聞かしてもらって——何か、いまメモが来たようだから。それは違うのですか。何かいいメモでも来たのならと思って……。
  36. 山内宏

    山内政府委員 余りろくなメモではございませんのでこれはちょっと省略させていただきますが、いまの点につきましては、重ねての御質問でございますが、私どもがいまお話を伺っております限りで考えてみますと、現在の長らく住んでおった家を売った場合に譲渡所得を減免するというやり方とは違って特殊な事例の場合でございますけれども、今後みずから住んでいこうという家をつくる場合にその財源を工面した場合の所得の減免ということになろうかと思います。そういう意味で、再三申し上げて恐縮でございますけれども、従来のわれわれが考えてきた居住用住宅の優遇措置とは一種違った考え方にならざるを得ないと思います。その辺のところは、非常に困難だと思いますけれども、重ねての御要望でもありますので、十分慎重に検討させていただきます。
  37. 武藤山治

    武藤(山)小委員 何年かかっても、四、五回また質問しますから、どういう勉強をしたかをまた聞かせていただきます。  終わります。
  38. 森美秀

    ○森小委員長 佐藤観樹君。
  39. 佐藤観樹

    佐藤(観)小委員 限られた時間ですから、きょうは数点にわたって、国税庁の職員の処遇の問題に限ってお伺いをしておきたいと思います。時間的な関係もありますし、答弁される方の関係もありますので、なるべくたやすい問題から片づけていきたいと思うのです。  まず総理府に関係する問題ですが、これは何も税務署の職員に限らず、出勤の時間を十五分なり二十分なり延ばす時差出勤をすることが許されております。本来なら総理府の方からお伺いするのですが、時間がありませんので、私もまとめてあれしまして、まとめてお答えいただきたいと思うのです。その根拠法規になっているのは、政府職員の勤務時間に関する総理府令、これは最終改正が昭和三十七年になっているわけですが、その第二項で、「通勤のため利用する交通機関が著しく混雑する地域に所在する官庁に勤務する政府職員の勤務時間は、主務大臣が内閣総理大臣の承認を得て別に定めることができる。」ということになっておりまして、交通対策本部が交通機関が著しく混雑するという地域指定をしたところに官庁が所在をする場合には、原則的には八時半の出勤時間を若干ずらして昼休みをその間縮めるというやり方をしているわけでありますが、この前、特に異動の多い、ほぼ二年に一遍ぐらいずつ税務署をかわらなければならない税務職員の方々からこういう御指摘をいただいたのです。  それは、私の地域のことばかりじゃありませんが、私の地域が一番土地勘がありますので私の地域の例を言いますと、私の名古屋市の西側に津島市という市がありますが、その津島市から名鉄線に乗って名古屋市内の税務署に勤務しているときには十五分の時差出勤が認められた。ところが、その名古屋市を越えて刈谷なり知立なりあるいは岡崎なりに勤務に行く場合にはこれが認められない。同じように混雑するところを通り、同じようにさらに長い通勤時間をかけて行くにもかかわらず、時差出勤が認められておらない。あるいは別の例で、名古屋市内から、いま守山区に国税庁の職員の寮がございますけれども、この守山の宿舎から名古屋市内に勤めるときは時差出勤が認められるけれども、名古屋市外の税務署に勤めに出るときには時差出勤が認められていない。これは確かに不合理なことだと私は思うのですね。  考えてみますに、それでは時差出勤をしたことによって国家的な損害なりそういうことが起こるだろうかということになりますと、長い時間、なお一層勤務時間をかけなければならぬ。それから、混雑も、全くほかの人と同じような混雑時間にならなければならぬという体力的な消耗を考え、それから、片や交通対策という面のラッシュの緩和ということを考えますと、こういうような地域についても時差出勤を認めてもいいのではないか。いや、逆に認めた方がラッシュの緩和という意味におきましても、あるいはそこに勤めに行かれる方々の精神的、肉体的な疲労度というようなことから考えますと必要なのではないか。特に国税庁の職員の場合には、平均二年ぐらいで異動しておりますから、署をかわっておりますから、その意味ではこの矛盾が他の機関よりも非常に激しく起こってくるわけですね。  そこで、やはりこれは時差出勤を認めるべきではないか。ただしその場合に、では、その署の近くに住んでいる方も、つまり名古屋市外の署で、その近くに住んでいる方もいらっしゃるだろうし、名古屋のあたりはまだいいけれども、中国地方、四国地方なんかに行きますと、異動の範囲が非常に広くなりますから、その意味では、この矛盾というのは非常に大きくなっていく。その意味で、税務署の新しい異動が行われた後の構成を考えてみた場合に、たとえば四分の三がそういった大都会を越えてこなければ勤務ができないというような場合とか、何かその辺はもう一度考えていただいて、やはり原則的に時差出勤を認めるという方向で行くべきではないか、こう思うわけであります。  そして、これは具体的には総理府に関係しますので総理府にお伺いいたしますが、まず第一点は、先ほど私が読みました政府職員の勤務時間に関する総理庁令の第二項というのは、あくまで「通勤のため利用する交通機関が著しく混雑する地域に所在する官庁に勤務する政府職員」となっておりますので、いま例に挙げました、名古屋市に官庁が所在をしなければ、これはいま申しましたような時差出勤というものは可能にならない、そう読むのが当然だと思います。したがって、逆に言えば、私がいま申し上げましたような時差出勤を認めるということになれば、この庁令は変えなければいかぬことになるのだろうと思うのですが、その点の確認が第一点であります。  それから第二点目は、いま私がるる申し上げましたように、もちろんこれは交通対策本部との関係もあるわけでありますけれども、名古屋市外にあっても、非常に異勤が激しい国税庁の職員の場合には、大都会を、つまり交通対策本部が「交通機関が著しく混雑する地域」と指定したところをまたいで勤務しなければいかぬというような場合に、時差出勤することによって一体どういう障害と申しますか、検討する場合に一体どういうことがむずかしい問題として起こってくるのだろうか。私が先ほど申し上げましたように、そこに勤めていらっしゃる、特に国税庁職員という、非常に頭も使わなければいかぬ、体も使わなければいかぬという方々の事情を考えますと、しかも二年に一遍ぐらいずつ税務署をかわっていくという実情を考えますと、そういった体力の消耗はなるべく避ける方が、これは国民の利益に合致することでもありますし、ラッシュの緩和という面から考えても悪いことは何もないのではないか、こう思うわけでありますが、もし何か障害があるとするならば、一体どういう障害があると皆さん方の行政ベースで考えているのか、この二点についてまずお伺いをしておきたいと思います。
  40. 柳庸夫

    ○柳説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、現在一般職の職員につきまして政府職員の勤務時間に関する総理庁令に基づきますところの時差通勤に伴う勤務時間の特例が認められているわけでございます。この庁令の趣旨は、先生指摘のように交通対策本部で推進をいたしております大都市地域における通勤通学時の交通混雑緩和対策の一環としての時差通勤通学対策につきまして、国家公務員としても協力するという趣旨から設けられている規定でございまして、現在までに東京都、大阪市、名古屋市、福岡市の四地域が交通対策本部で地域指定をされておりまして、その地域内に所在する官庁所属の職員につきまして、それぞれの省庁の実情に応じた勤務時間の特例が定められてまいっております。  そこで、先生指摘のように、個々の職員の通勤の実態といたしましては、この大都市の地域を越えて通勤されていらっしゃる方もおられるわけでございますけれども、あくまでも現行の時差通勤対策というものが全体として大都市地域におきますところの特定時間帯の交通機関の混雑を緩和しようというような趣旨で設けられておりますので、そういうことからいたしまして、個々の職員の事情としてはよくわかりますけれども、それを個々の事情を考慮してそういった方についてまでこの特例の対象にするということにつきましてはいろいろ問題があるのではなかろうかというように考えられるわけでございます。  お話しのように、仮にそういう職員まで対象にするということになりますと、現在の総理庁令第二項の規定の仕方ではちょっと無理があるのではないか、確かに改正の必要があろうかと思いますけれども、そういう改正をしてまで対象にするかということにつきましては、これはやはりあくまでも国家公務員についてだけの特例でございますので、民間やあるいは生徒児童の通学、そういったものをひっくるめました全般的な交通対策の一環としてやっておりますので、民間あるいは通学しておられる方についてもそういった実態がどこまであるのかというような実情の把握が必要でございましょうし、あるいはまた、当該地域の地方団体がそういった施策に協力することを望んでおるかどうかというようなことの把握も必要でございましょうし、いろいろ問題があるのではなかろうかというように考えているわけでございます。
  41. 佐藤観樹

    佐藤(観)小委員 一応いま参事官から言われたあれというのは私もわかります。これは単に個々の問題ではなくて、地域全体の問題として考えなければいかぬし、特に私がここで取り上げるのは、税務署の職員の場合には非常に異動が多いので、住居地から署まで通うのに、私が具体的に例を挙げたように名古屋市内から市外に出ていく、これがラッシュの時間にぶつかる。それから名古屋市外から名古屋市を通って名古屋市外へまた出ていく、通過しなければいかぬ、こういうような例が非常に多い。したがって、確かに、私は単なる通勤時間が長くなるからという個々の人のことを考えてくれと言っているのではなくて、全体的な交通ラッシュの緩和という観点からいっても、あるいは国税庁職員の疲労度をなるべく軽くするという意味においても、これは考えられることではないだろうか。これは確かに参事官が言われるように、民間との関係それからその地域との全体的な関係がありますから、その点は私も理解いたしますので、その意味で、前向きにひとつ具体的に検討してもらいたいと思うわけであります。これはおたくだけの話ではなく、おたくの庁の中にある交通対策本部とも関係してくる問題ですので、そこと連携をとりながら、いま参事官が言われた件は私もわかりますので、それも含めてひとつ前向きに検討してみていただきたい、こう思うのですが、いかがでございますか。
  42. 柳庸夫

    ○柳説明員 先生おっしゃいますように、あくまでも、この時差通勤通学というものは全般的な交通対策の一環でございます。その副次的な効果といたしまして、個々の職員についてもラッシュ時を避けることによりますところの肉体的な疲労を防止するというような効果もあるわけでございますが、あくまでも全般的な交通対策というものが主眼でございますので、そういった観点から、お話しのように、交通対策本部も関連してくる問題でございます。またこの問題はただ名古屋だけのことでございませんで、他の地域についても同様の問題があろうかと思いますので、私どもといたしましては、これは大都市地域全体におきますところの一般的な通勤の実態というものも考えながら、ひとつ今後の検討課題にさせていただきたい、かように考えます。
  43. 佐藤観樹

    佐藤(観)小委員 それから、いままで余りこの問題は指摘をされなかったのですが、国税庁にお願いをしておきますが、要するに交通混雑な地域に官庁が所在する、税務署があるところはいいですが、いま言ったように、そこを通過する問題については余り考慮されなかったので、二年に一遍ずつ変わってしまうので調査の方も大変かと思いますが、いずれにしろ、先ほど参事官からお話があったように地域は四つですから、四つの地域で、その地域を通過して勤めなければいかぬ職員の方々が一体どのくらいいらっしゃるのか、その辺の——私もかなり個々人を知っていますが、ああ、あの人もそういえばそうだな、岐阜から名古屋を通ってさらに三河の方に行っている方もいらっしゃいますし、特に個々に挙げますと私も頭に上がるわけですが、人数ということになりますと、まだ私自身が把握しているわけではないので、ひとつその点調査をしていただきたい。このことを要望しておきます。総理府結構でございます。  その次は中高年の方々の処遇の問題なんですが、実は四十以上の職員の方々が全部の職員の方の五二・三%を占めているということは私も前に指摘したとおりでありますけれども、この前も全国税務署の職員の方々が私の方に陳情に見えまして、つまり東京、大阪を除く地域は非常に高い率がいわゆる中高年層と言われる方々なわけですね。十一月一日現在の局別の——本当は税務署別に一度少し考えて調査をしてみていただきたいのですが、とても時間がありませんので、局別の、年齢別の職員構成を調べていただいたわけです。  この手元の資料によりますと、もう時間がありませんから私の方から読み上げますが、四十五から五十四の間が阪神が四四%、札幌が三三・一%ですが、これは四十から五十四まで入れますと五三%、それから東北の仙台が四五%、金沢に至っては五七・五%、広島が四七・三%、高松が五三%、福岡が五四%、熊本が四八・一%、これにさらに四十歳から四十四歳あるいは五十五歳以上を加えますと約一〇%から一五%上乗せをしていかなければならぬという人員構成になっているわけですね。このことの本質については、戦後の混乱期に平年度ベースの七倍も採られたということが基本にあることはもう申すまでもないことでありますけれども、特に東京、大阪、名古屋、個々にもっと見れば、田舎の署と言ったら怒られるかもしれませんが、そういうところに行けば行くほど中高年層、つまり四十以上あるいは四十五以上の方々が非常に多くなってきている。そしてそこで訴えられることというのは、やはりその後についてこられる若い方々が、上の方々の処遇を見ていると、税務署に入ってよかったのだろうか、二十年も三十年も勤めてもどうも上のポストが詰まっているものだからやはり将来に余り魅力がない、こういうことで若い人が多い東京の局なりあるいは大阪の局なり名古屋の局なりになるべく行きたいというような方もいたり、あるいは逆に長男の方々が東京や大阪へ出られているので、逆に地元へ帰りたいとか、こういうようないろいろな要求やら不満が署にうっせきをしていると思うのであります。  いまちょうど予算の編成期に入っておりますので、この中高年の方々の処遇のより一層の改善ということは、この二、三年に片づけないともう結局事実上何もできなかったということになってしまいます。特に、人事院においても、この二、三年間中高年の処遇改善につきましては大変な御理解をいただいているわけですが、なお一層御理解をいただかないと、時間が過ぎちゃって、皆さんやめられちゃってからこれはやるわけにいきませんし、やはりこの中高年の方々の処遇の問題、特に特三等級を事実上どれだけふやすかという問題は、これは次に続いてくる方々が、税務職というものが魅力があるかどうかという問題とも関連をしてくるわけであります。その意味におきまして、一体いまの実態を、新しくなられた田辺長官はどういうふうに見られているか。前長官でありました中橋さんなり安川さんもこのことについては非常に御理解があったわけでありますが、その辺の認識については田辺長官がどういうふうに考えられ、なおかつこれは人事院あるいは主計局とも関係してくることでありますが、その辺については田辺長官としてどういうような働きかけというか具体的な交渉というか、なさっていらっしゃるのか、まずそのあたりをお伺いしておきたいと思います。
  44. 田辺博通

    田辺政府委員 先生指摘になりましたとおり、私就任以来いろいろ勉強してみますると、非常に困難な環境のもとに仕事をしております税務の職員の処遇の問題、特にわれわれ徴税組織の伝統といいますか、将来に向けての活力ということが大切なんでございますが、そういう意味におきまして、現在御指摘のとおりいわゆる中高年層が非常にふくれてきておりまして、これがこれから峠に差しかかっていく、こういう時期でございますので、何とかしてこの人々に対する、また後に続く人々に対する士気の高揚ということがやはり一番大事なことだと感じておるわけでございます。したがいまして、それに対応する対策としましては、もちろんこの底辺の人数が中高年層が非常に多くなっているわけでございますので、昔に比べると、ある一定以上のポストにつくポストの数が限られておりますから、その分母と分子との関係で非常にぐあいが悪くなっている。いままで以上の——まあ昔の人だったら、同じような年限たてば課長になっておったとかあるいは室長になっておったとかいうようなことと比べると、全く悲観的な状況になるということもやむを得ないと思います。したがいまして、これは組織の問題と絡みまするので、組織はなるべく簡素にしなければならないと思いますけれども、やはり何か特別の官といいますか、これを設けまして、これは従来から先輩の努力もありますし、また人事院等の御理解もございまして、かなりの数、いわゆる特別調査官等のポストがふえてきておりますけれども、私どもはこれからもまたいわゆる特三等級以上のポストをもっともっとふやさなければ、これはとても足りない。また、ポストのみならず具体的な級別定数を確保するという点につきましても最大限の努力をしてまいりたいと思っているわけでございます。
  45. 佐藤観樹

    佐藤(観)小委員 大体長官の認識はわかりました。  それで、私はこの問題、いま申し上げましたように、また長官からもお話がございましたように、解決をするのを二、三年のうちにしなければ意味がなくなる。また、そうしなければいけないだろう。しかしその後は、これは事実上特三等級以上の方々の数を減らしていく、これは私はある意味では当然だと思うのです。したがって、この間は一種の特別期間というんですか、何というんですか、長いこと本当に一番苦労なさった時代に署で働いていただき、そしてそれが入ったときとほとんど変わりないポストであるということでは、これは報われないことだと思うので、この問題の解決は二、三年のうちに片づけるということと、もう一つはそれが過ぎたら、これはひょうたん型の人員構成になっていますから、減らすことはあっていいことだ、またそうしないとおかしな構成になってしまうと思うので、それを踏まえて私はお伺いしたいのです。  そこで、いま予算編成の時期で、国税庁あるいは主計局、人事院と級別定数の交渉が行われていると思うわけであります。いつも角野人事院給与局次長には当委員会に来ていただいていろいろと御質疑をし、また特に人員の多い国税庁職員の中高年層の処遇の改善の問題については御理解をいただておるわけでありますけれども、端的に言って、人事院の立場から言えば他の省庁のこともありますし、いろいろな観点から考えていかなければいかぬことは当然なことであります。時間の節約におきまして、四十九年度に特三以上の増加した数が四百四十六、五十年が五百九十六、五十一年が七百五十四、こういうふうに特三等級以上の定数を増加していただいたわけで、その意味では大変人事院にも御理解をいただいておると思うわけであります。これはこれから全体的に人事院として考えなければいかぬことはわかりますが、この問題の特殊性にかんがみ、五十二年度についての姿勢と申しますか、数字を言うことはなかなかむずかしいことでありますし、これはおたくだけの話ではなくて、主計局とも関係してくることでありますから、この問題について具体的な数字は結構でございますけれども、大体いままでの四十九、五十、五十一の平均伸び率程度は、ある程度考えてやってしかるべきではないか。この問題は、いま申しましたように二、三年のうちに解決しなければいかぬという特殊性にかんがみるならば、いままで四十九、五十、五十一と御理解をいただいた伸び率はお考えいただいてもいいのではないかというふうに考えますが、御理解のある角野次長、いかがですか。
  46. 角野幸三郎

    ○角野説明員 現在、来年度予算に伴います等級別定数の改定作業の真っ最中でございまして、国税職員の関係につきましては、いま先生おっしゃいましたように、現在なお職員構成の異常な形になっておりますこともよく存じておりまして、一般職の公務員の中でそういう異常な形を持っております職場が幾つかございますが、その中の問題の職種である、こういう意識で、数年来等級別定数の改定に際しましても、官職の評価だけではなくて、と言いますとちょっと言い過ぎになりますが、職員の処遇という面から考えまして、専門官制度あるいは統括特三、そういう方向で大変努力いたしてきておるつもりでございます。  いま私申し上げようと思いましたら、数字が先に出まして大変張り合いがないのでございますが、ほかの五十一年の改定作業の中の伸びの中でも抜群な経緯をたどっておると私は思っております。実は税務職員は、ほかの職種といいますか行政とのバランス、水準差を維持しておりまして、三等級が四等級、特三は三等級という関係に相なっておりますが、行政のそれぞれの対応いたします職員に比べて、職員構成は別でありますけれども、いずれにしても、人員構成の等級別の形では相当高いところに評価が上がっておるということは申し上げられると思います。現在作業の最中でございますが、そういう問題意識は十分持って来年度の策定をこれから検討したい、そういうふうに考えております。
  47. 佐藤観樹

    佐藤(観)小委員 非常に微妙な時期ですから、それは確かに表現もむずかしくなってくるとは思いますが、もしお答え願えるならば、最低——最低と言わない方がいいのかもしれませんが、大体毎年考えている程度ぐらいのことは、できれば私はいままで四十九、五十、五十一と御努力、御理解をいただいた伸び率の延長ぐらいでいっていただきたいと思うわけであります・いずれにしろ、非常に微妙な時期ですので、給与局次長としてはなかなか御答弁がむずかしいと思いますが、できる限りそれに沿った数字を出していただいて、国税庁職員、特に中高年の方々、一番御苦労なさった世代の方々に報いていただきたいという希望をここで申し述べておいた方が、むしろ後々のためにはいいんじゃないかと思いますので、そういったことで強い要望として出しておきたいと思います。  それに関連をするのでありますけれども、今度は人員確保の問題であります。  これは行政管理庁が所管をする問題でありますけれども、八月二十四日に「昭和五十二年度以降の定員管理計画の実施について」というのが策定をされました。それで私も当委員会指摘をしたことがあるのですけれども税務署の職員の方々というのは、よくこれでがまんしていらっしゃるなと思うことの一つに、休みがなかなかとれない、日曜、祭日を返上して仕事をしなければならぬ。つまり、二十日間休みがあるけれども、実際には毎年ずいぶん休暇を残していらっしゃる。この前に言ったのでありますけれども、六日から十日残している方々が二七・二%、十一日から十五日残していらっしゃる方が二七%、十六日から二十日が二〇%、三十日以上も残していらっしゃる方が八・五%。六日から二十日まで残していらっしゃる方が七四%、つまり四分の三の方は仕事の関係でほとんど年次休暇を余さざるを得ない、これは四十九年の数字でありますけれども。  それからもう一つは、仕事がとにかく忙しいものだから、持ち帰って仕事をしなければならぬということで持ち帰り仕事をしているのが四〇・三%、その理由としまして、課を変わったなどによっての経験不足というのが二四・七%、それから一件当たりの割り当て日数が少な過ぎるという方が三二・一%、それからいろいろな意味での調べる期間が少ないのでという、期限の制約等で三八・七%。経験不足ということはいろいろ後で補う点もあろうかと思いますけれども、いずれにしろ、一件当たりの日数が——特にこの前も東京でも訴えられたことがありますが、東京は非常に本社が多いということになりますと、地方まで出張していって調べなければいかぬということで、特に東京は、下手をすれば一件当たり三十日も三十五日もかからなければ調べ上げられないという、これは私もある程度理解はできると思うのでありますが、そういったようなことで日数が非常に足りない。それを合計しますと七〇%ぐらいの方々が持ち帰り仕事をしていて、そのうち、とにかく一件当たりの日数が少な過ぎるということが数字で出ているわけですね。このことは、裏返して言えば要員が少な過ぎるということになってくると思うのであります。まず長官として、この問題についてはどういうふうに御認識なさっていらっしゃるか、その点お伺いしておきたいと思います。
  48. 田辺博通

    田辺政府委員 これからの財政状況等を考えますと、一般的にはいわゆる行政組織の簡素化、行政経費の節約ということはやはり大きな命題だろうと思います。ただ、国税庁の職員の数ということを考えてみますると、ここ十年をとりましても、二十年をとりましても、納税者数が非常に多くなっている。つまり要調査件数というものが非常に激増をしております。しかしながら、手前みそではございませんが、定員はほとんどふえていない、こういうことで、結局その間は種々の合理化あるいは能率の向上ということで穴を埋めてきていると思うのでございますけれども、御指摘のように、なかなか休暇は限度まではとれない人が多いとか、場合によっては持ち帰らなければ仕事が間に合わないという点も出てきていることも否めないわけでございまして、特に現在は、先ほども指摘になりましたように、年齢構成がいわゆる逆さひょうたん型の中高年齢層が多いわけでございますので、このひょうたんのふくれておるところがあと十年もいたしますると完全に抜けてしまう。そのときには、いままでと同じような採用のテンポを持っておりますると、むしろ定員が激減する、こういうことを迎えるわけでございます。したがいまして、やはり私どもはあくまでも課税の公平、適正な執行を行うという責務を遂行したいわけでございますので、件数の増加に応ずる人員の増も必要だと思います。また、やや暫定的な措置として、いまの逆さひょうたんのふくれが解消するまでの間は、相当数の新規採用をもっていまから補っておきませんと、将来非常に問題が起こる、こういう二つの認識から、一般論からしますとなかなか言いにくいことではございますが、国税庁の職員の定数につきましてはできるだけ純増、定員増加を図っていただきたい、こういうことで要求をしているわけでございます。
  49. 佐藤観樹

    佐藤(観)小委員 長官という立場からいうと、それは言いにくいかもしれませんが、ただ国税庁の職員の場合だけは——もちろん事務の合理化、簡素化、これはしていかなければならぬ。国民に対してのサービス面からいって当然のことと思いますけれども国税庁の職員の場合には、ある程度人数をふやせば、税の徴収の合理化というか、公平化という面におきまして、その人数にかけた分以上の国税収入というのは入ってくるわけです。だから、長官はなかなか直截には言いにくい、私だから言うのだけれども、その意味では、よく角野さんにもあるいは主計局にも言うのだけれども、特に上級の級別定数をふやしていただいて、あるいはポストもふやしていただいても、銭からいくと一号俸上がったって三百円か四百円しか変わりないのだし、それから全体の予算でいくと、全部級別定数をふやしていただいても、いろいろ計算してみますと一億くらいにしかならぬのです。だから、それなら本当に国税庁の職員の方々が一生懸命快く、気持ちよくむずかしい仕事をやっていただいた方が、国家的利益の観点からいって、そういった意味で他の省庁と違う大きなところは、皆さんがやる気になっていただければ、これはある程度仕事が、いまも一生懸命やっていただいているけれども、なお一層国税収入にも関係をしてくるという意味では、私は他の省庁と国税庁の職員の人数という問題は若干違うと思っているのです。しかしそう直截には、長官としては幾ら何でも照れ臭くて言えないでしょう。しかしその御認識は十分わかりました。  そこで関連してくるのは、今後の行政管理庁が関係してくるこの削減計画との関連なのでありますが、具体的に四十九年度、五十年度、五十一年度の純増、人員のネットの増を見てみますと、四十九年度で国税庁の純増が百四十、五十年度が百二十七、五十一年度が八十七、こういう数字になっております。確かに大蔵省全体では四十九年度がマイナス六十八、五十年度がマイナス六、それから五十一年度がマイナス九十四というのを見てみれば、国税庁は純増でありますからそれなりには考えておられると思いますけれども長官も言われたように逆ひょうたん型になって、あの中高年の方々がこの三、四年、五、六年で全部いなくなってしまったことを考え、あるいは経験等が非常に必要な国税職員、非常に高度な専門知識を要するということを考えると、せっかく中高年の方々の貴重な経験というものを次の世代に伝える、伝えるというと変な言い方ですが、経験をやはり生かしていくということが必要だろう。そうなってくると、やはりある程度、一時的には簡素合理化という面においては若干多過ぎるというふうに感じられるかもしれないけれども、それは相応にやっていかないと、中高年の方々がやめてしまってから、やれ人数が足りないから大変だということで、かねと太鼓をたたいてやってみても、これは長期計画からいくといかぬことだと思うのです。  そこで長官にまずお伺いしたいのは、四十九年度、五十年度、五十一年度、これは長官の時代ではないとはいうものの、国税庁職員は確かに少しずつふえてはいますけれども、私も素人だからあれですが、このくらいのベースで、果たして長官の言われたようなことが十分なのだろうかと疑問に思うわけです。その点についてはいかがでございますか。
  50. 田辺博通

    田辺政府委員 御質問ございましたので率直にお答えさせていただきますが、結論から申しますと、どうもこの二、三年のような定数増加の程度では、将来問題が残ってくるのではないかという感じがしております。と申しますのは、定数がこういう伸び方でございますから、結局新規採用がそれによって制約を受けるわけでございますが、新規採用の数が、かつては大体二千人ちょっとぐらい年々新しい若い人を補給しておったわけでございますけれども、ここ数年来それが次第に減少しておりまして、昨年はたしか千人程度のものになってきております。このような状態をなお続けてまいりますると、いまの逆さひょうたんのいわゆる中間のくびれ、三十年代の層というものが非常に薄いわけでございますが、これは、いまから十数年前に定数の漸減を行った時代がございまして、そのときに極端に新規採用者が減ってきておる。まさにその年齢がそのまま移動いたしまするとそういう状態になるわけでございますので、将来にそういうことが起こらないように、何とか相当数の新規採用を確保するという観点から申しますると、もう少し定数を増加していただかないとそれができない、こういうふうになるわけでございます。
  51. 佐藤観樹

    佐藤(観)小委員 そこで、行政管理庁にお伺いしたいのでありますが、先ほど申しました「昭和五十二年度以降の定員管理計画の実施について」、ことしの八月二十四日に閣議決定をした中で「大蔵省」というところを見ますと、五十一年度末の定員が六万七千四百三十八人、そして削減目標数が二千百二十四というふうになっているわけでありますが、これはいろいろな皆さん方の専門的な見地からはじかれた数字だと思うのでありますが、この内容というのは、いま長官が言われたようなことの観点と関連をして、四年間でこの二千百二十四の削減目標数は一体どういうことになるんだろうかということなんですが、その点については、どういうふうに考えられて、こういう数字が出てくるんでしょうか。
  52. 佐々木晴夫

    ○佐々木説明員 お答えします。  定員管理計画は、行政経費の増大の抑制、行政の合理化等を図るために、行政機関につきまして、総定員法で定めます五十万六千余の総定員の枠の中で各機関の定数の再配分を行う、そのためのいわばメカニズムであるというふうに御理解をいただきたいわけでございまして、先生承知のとおり、先般その第四次としまして、五十二年度以降につきまして、四年間三・二%の削減目標数をそれぞれの機関について定めたわけでございます。同計画における大蔵省の削減の率という点につきましては、先生いまその数字を一応申されましたけれども、全機関の平均がいま申しましたように三・二%でありますのに対しまして、大蔵省は三二五%、若干これは低目に設定をいたしておるわけでございます。この中身につきましては、もちろん積算過程におきまして、各業務の特殊性、たとえば大蔵省の場合、特にいまの税務職員の特殊性等を一応勘案しまして、それぞれ積算をしてまいったわけでございますけれども、この配分自体につきましては、これは各省庁においてさらに種々の御事情に従いまして配分をされるということになっております。私ども伺いますところによりますと、国税庁につきましてはさらに下げまして、三・〇九%ということでもって今後四年間に削減をしていかれるという御予定であるというふうに承っております。もちろん、この率につきましても、大蔵省御当局におきまして、いまの税務職員の特殊性等を十分考慮してこられたのだと考えております。
  53. 佐藤観樹

    佐藤(観)小委員 そうしますと、田辺国税庁長官が言われたこのままの推移、つまり毎年この二、三年間は六百人から八百人ぐらい、千人未満の方々の増員しか事実上なっていないわけでありますけれども、増員は増員、そして四年間の削減目標は削減目標、特にこの国税の場合には三・〇%ということで、増員の方は増員の方、削減の方は削減の方とは言うものの、やはり片方に削減があれば、純増ということになればそれだけ増員の方は少なくなってくる結果になるわけでありますが、いま田辺長官が言われたこの全体の、また国税庁職員の逆さひょうたん型の人員構成、先々のことを考えますと、大蔵省全体あるいは特に国税庁という、先ほど私が内部的に申し上げました持ち帰り仕事の量とかあるいは休日がとれないとか、これだけ、三年も四年も職員の方も声は出しておりますけれども、中高年層の方々の処遇の改善の問題の方がどうしても先に来ているものですから大きな問題になってしまっておるわけでありまして、そういう内部を見たときに、どうしてもかなりの人員増加をしなければいかぬという特殊事情にある国税庁に対して、行管としては今後の増員要求に対してはどういうふうに見られているわけですか。
  54. 佐々木晴夫

    ○佐々木説明員 お答えします。  先生言われますとおり、国税庁の業務の特殊性としましては、この十数年間、経済成長につれまして、課税対象が極端に著しく増大してまいったという事情がございます。定数がこれに対応していないというお話でございますけれども、これは私どもの立場で見ますと、国税庁に、一方でこれは当然のことながらその削減計画等を一応受けまして、事務の合理化をお願いしてまいった。たとえば、税務業務につきまして、電子計算機で処理するとか、それから各局につきまして定数の再配分を行うとか、そのようなことをいろいろとやってこられたのと対応いたしまして、定数の面につきましても私どもいまの総定員法の枠の中で、ないし削減計画の枠の中で、できる限り税務職員の増加について努めてまいったというふうに考えておるわけでございますけれども、今後につきましても課税対象の増大、それから業務の、たとえば経済取引の広域化あるいは複雑化、これに対応します業務の困難性、このあたりを十分考慮しつつ増員措置につきまして検討してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  55. 佐藤観樹

    佐藤(観)小委員 時間でありますので、いまの行管の御答弁を理解いたしまして、最後に一点だけ、時間がありませんので、これは人事院の方に質問をしておいて、できれば文書かなんかで答弁をいただければいいし、ないしは、ことしの寒冷地手当はもう支払い済みでありますから、私がもう一回国会へ出てきたときでもまた改めて詰めることといたしまして、簡単に申し上げておきますと、一つは寒冷地手当の基準額の問題ですが、これは角野さん御専門で御存じのように、昭和四十三年北海道の甲地については八五%の定率分があったわけですが、これを四五と四〇に分けて、その当時の四五%分を定率分にしたわけですね。したがって、その額が二万六千八百円ということで、定額分はこのままずっと据え置かれてしまっている。これは四十三年からどんどん給与が上がってきているのに、定額だということでずっと据え置かれてしまってきているということはおかしいのではないかという点が第一点であります。  それから基準額に加算すべき事項でいわゆる灯油代でありますが、確かに昔は石炭である程度夏場の安いときに買ってためておいて冬に使うということで支給も八月になっていたわけでありますけれども、しかし、いまは御存じのように灯油にかわりつつある。消防法の関係もあって、そうそうこれは大量にためておくというわけにいかぬし、じゃあ八月なり一番安い時期に買えるかというと買えないというようなことを考えてみますと、ここのたとえば寒冷地手当の甲地、扶養親族のある職員の場合の六万二百円というのは一体どういう積算根拠ではじかれたのだろうか。私どもの手元に個々人の税務職員の方々がはじかれた数字があるのですが、平均が千九百九十七リットルになっているわけなんですね。あるいはこれ掛ける通産省の産業政策局が調べた店頭価格、配達価格及び配達料、あるいは購入先別、つまりガソリンスタンドか、米屋か、生協かというような購入先別の平均価格、こういったものを単純に掛け合わせてみても、どうも甲地の扶養親族のある職員の六万二百円というのは安過ぎるのではないか。しかもその中には、石炭の場合にはある程度だるま型のストーブで間に合ったけれども、いま灯油の場合には燃料費のほかに器具が非常にかかる、しかも償却が、五年くらいしか事実上もたない、さらに煙突が要る、分解掃除の代金が要る、こういうものをはじき出してみますと、これは五年償却ということでやってみた場合でも、むしろ燃料費の半分近くも年間かかるということが出ているわけなんですね。その面では石炭の時代と灯油にかわった時代と、この寒冷地手当というのはずいぶん変わってきているのではないか。その辺の配慮というのが十分されてないのではないかという感じがするわけであります。  大変残念ですが、時間が過ぎてしまいましたので、これはひとつ何らかの形で御回答いただく、来年のあれまでに間に合わせるよりいたし方ないことでございますのであわてませんけれども、来国会でもひとつまたやらしていただきたいと思いますので、どうかひとつ十分御検討願いたい、こういうことを申し添えて私の質問を終わります。
  56. 森美秀

    ○森小委員長 増本一彦君。
  57. 増本一彦

    増本委員 限られた時間ですので、私は二つのテーマでお伺いしたいと思います。  一つ税制調査会の現在の作業の状況とこれからの作業の問題。それからもう一つのテーマは田中前首相のいわゆる五億円の賄賂の課税の問題です。逐次お伺いしますのでお答えをいただきたいと思います。  新聞などに伝えられるところによりますと、税調の第二部会が今月の十九日の会合で現行税制については一通りの検討が終わったというようなことが言われているわけです。この現行税制検討状況と、それから検討をしてきた結果どういうことになっているのか、どこにどういう問題があるのかという点をひとつ税調の作業と絡めて御報告をいただきたいと思います。
  58. 山内宏

    山内政府委員 御存じのとおり、税制調査会は目下部会を二つに分けまして、それぞれ分担をして審議を進めていただいております。第一部会と第二部会でございますが、そのうち第一部会の方は所得課税を中心にやっております。具体的に申しますと、所得税法人税が主体でございます。それから第二部会はそれ以外の問題でございまして、主な問題としては資産課税と消費課税ということに相なります。  お尋ねの第二部会につきましては、現在までのところ三回審議をやっていただいておりまして、合同部会と合わせますと、いわば部会では四回やっておるということに相なります。いまお話しのように、十月十九日が第二部会の第三回の会合でございましたが、それまでにおきまして、大体現在、現行の間接税、国税、地方税を含めまして現行の間接諸税につきましていろいろな問題点の総ざらいをやってみたわけでございます。  そもそも現在税制調査会が主たる任務として御議論いただいておりますのは、中期経済計画ないしは当院に御提出しております財政収支試算、こういったものを頭に置きまして、赤字財政から脱却をする、それも五十五年度までに脱却をするためには、税収確保の観点からいってどういうことをなすべきかという問題に重点をしぼって御議論をいただいておるわけでございますので、現在までの第二部会の運びにつきましても、現行制度を見直す際には、いま申しましたような点が重点になってまいっております。そういう点を重点にしていろいろ御議論を賜ったわけでございます。その際いろいろ御議論が出ておりますが、この調査会の性格上、まだ結論をとる、採決をするといったような方向には進んでおりません。そういう意味合いで、いろいろな議論が現在のところ出ておるという状態でございます。  特に、たとえば物品税を中心といたしました現在の個別消費課税制度、これにつきましては、いま申しましたような観点から見ます限りは、やはりいろいろ問題があって余り大きなものは期待できないなという感じが一般的に強かったように思います。それから資産課税につきましても、現行の資産課税、これは具体的に申しますと国税の場合は相続税、富裕税でございますが、これにつきましても金額的にそう大幅な期待ができないであろうという御意見が多かったように受け取っております。それ以外の流通課税の点につきましても、これはインデクセーションが必要であるというふうな御意見もかなり出たわけでございますが、そうかといって、事柄の性格上インデクセーションだけでは金額的にこれまた期待できないといったような御感触が比較的強かったように思います。先ほど申しましたように決をとっておりませんので、それ以外の御意見もいろいろ出ておりますことはあわせて申し上げさしていただきます。  そういうふうな状態で、現在のところはまだ結論らしきものには向っておりませんが、とにかく一応十月十九日で、大ざっぱな現行税制の総洗いがかなり進んでおる、現在の状態ではそういう状態でございます。
  59. 増本一彦

    増本委員 報道によりますと、たとえばもう一度ここで自動車関係税の増税をするという意見が出ていたり、あるいは登録税や印紙税の増税とか、さらに相続税についてももっと強化すべきだという意見もあるようですけれども、その具体的な、いま申し上げたそれぞれの税目の議論の中身をちょっと紹介してください。
  60. 山内宏

    山内政府委員 道路財源について申し上げますと、まずああいった形で特定財源として引き続き、たとえばガソリン税なるものを今後考えていってもいいのかというような点が一つ。それからいま御指摘のような増税をすべきだという具体的な御意見がどの程度あったかというのは私も十分に申し上げかねますけれども、やはり今後の道路計画等との関連で、いわばインデクセーション的に問題を処理しなければならぬのじゃないかというふうな御意見がございました。  それから資産税につきましては、これは先ほど触れましたが、事柄の性格上金額としてそれほど大きい負担をお願いをすることはなかなかむずかしいという感じが強かったろうかと思います。  それから印紙税、登録税につきましては、これは先ほどもちょっと触れましたが、いわゆる階級定額税制でございますので、そういったことに関連をいたしまして、やはり随時インデクセーション的な見直しが必要であろうというふうな御意見がございました。と同時に、本来流通課税でございますので、税率そのものを余り高くするわけにはいかないではなかろうかといったような御意見も出ておりました。  それ以外の間接諸税につきましては、先ほど申しましたように、本来であるならば、できることなら、たとえば従価税制の方に持っていくのが本来の筋であろうというような御意見、あるいは酒税に関連をいたしましてたばこの専売納付金の問題が出まして、これについても本来ならば専売納付金というふうな形ではなくて、たばこ消費税にした方がいいのではないかというふうな御意見、あるいはそうした場合に、やはりたばこの定価が法定制度になっておる限りはどうもなかなかうまく動いていかないので、その点について検討すべきではないかというような御意見、あるいはそれに関連をいたしますが、たばこについても従価税を採用すべきではないかというふうな御意見、そんなような御意見が現在いろいろ出ておる段階でございます。
  61. 増本一彦

    増本委員 そういう御意見は御意見として、いま出てきたようなそれぞれの税目について増税していこうという方向の意見もありますけれども主税局としては来年度税制改正の中で、これは政策選択の問題になるわけですが、これらのいまお話しになったような税目についてやはり同じような増税方向をお考えなんですか。
  62. 山内宏

    山内政府委員 いまの審議を願っておりますのは、あくまでも中期税制として審議を願っておりますので、直ちにこれが来年度の税制改正に結びつくとはわれわれは考えておりません。ただしかしながら、来年度の歳入歳出両面からの予算を考えてみますと、けさほども武藤委員の御質問に対して申し上げたところでございますが、現在のところまだ客観的な諸情勢がいろいろ決まっておりません。たとえば歳出の規模でありますとかあるいは来年の経済の見通しでありますとか、そういったものが未確定でございますので、いまの段階で、現在第二部会において検討中の諸税目について一切増税をやらないかというお尋ねでありまするならば、これは全く未定でありますというふうに申し上げさしていただきます。
  63. 増本一彦

    増本委員 赤字国債の審議のときに、今年度の三兆七千五百億を予算総額全体に占める割合でも圧縮をするし、それから総額としてもこれを来年度は圧縮したいというのが大臣の答弁でしたね、あなたもいらっしゃったと思うのですが。そういうことでいくと、どうしても税収を増税によって確保していくということはどう予算が決まろうと、仮にいま概算要求の方向で出しておられるあの伸び率でいくにしても、別に国税の収入をふやさなくちゃいかぬということになるわけでしょう。だから、全く未定というよりも、来年度どの税目をやるかは別にしまして、それらの細かい検討はこれからまた伺いますけれども、ともかくこういうように議論されている税目を中心にしてやはり増税方向というのは、主税局としても政策選択の中には当然はっきり方向としては決められているはずなんですよ。だから、未定だというのは私は答弁としてどうもいただけないですが、その辺ちゃんとはっきりお答えをいただきたいのです。
  64. 山内宏

    山内政府委員 これは真実まだ決めておりません。と申しますのは、たとえば来年の経済見通しによりましても非常に自然増収の額が変わってまいりますので、その辺なかなか微妙なところがあろうかと思います。ただ私どもといたしましては、これまたけさほどの武藤委員の御質問のときに申し上げましたが、税収とは直接のかかわり合いはございませんけれども制度全体を、税制全体をきちっとしたものにしていくという意味特別措置整理改廃相当根本的に引き続きやっていきたいというふうに思っております。
  65. 増本一彦

    増本委員 いま一つ増税の問題で報道されているのは自動車関係税とそれから印紙税、登録税ですね。たとえば登録税の場合ですと、この十年間定額部分については一・六倍くらいしか上がってないのに——しかも特にお医者さん、弁護士さん、それから公認会計士というような人たちの登録の場合には十年間二万円の登録税がそのままになっておる。定率部分についてはそれぞれ価額が上がってきますからそれに応じて上がって四倍以上にはなっている。だから、ここいらの不均衡をなくして、一千億くらい増収を図りたいというような報道もあるわけですね。そこいらのところはどうなんですか。主税当局としてもあるいは主税局税調とのコミュニケーションの過程でも具体的にやはり問題としては出ているわけですか。
  66. 山内宏

    山内政府委員 中期税制を見直すという意味での現在の第二部会ではいま御質問のような趣旨の議論がございました。と申しますのは、定額税あるいは階級定額税についてはある程度のインデクセーションをある時期には行わなければならないのではないかというふうな御意見はかなり強くございました。ただその問題は、あくまでもそういう前提の御議論でございますので、それが直ちに来年度どうこうなるというふうな趣旨の議論ではございません。私どもといたしましてもその点は分けて考えておりまして、来年度一体どういうふうになるかというのは、先ほど申しておりますように全く未定でございます。
  67. 増本一彦

    増本委員 では、この際申し上げておきますけれども、この報道によりますと、いま一つやり玉に上がっておるのが弁護士、医師、公認会計士などの新規登録の場合の二万円をもっと引き上げたいというお話もあるようですが、一つはこういうときに私考えてもらいたいのは、新しくなる人ですから、やはりここの部分については十分それなりの根拠を持っているわけです。だから、十年間値上げもしないで来ているわけですね。前の事務次官の高木文雄さんがやめられて弁護士になるという場合とは違うわけですよ。大部分の人は、たとえば弁護士で言いますと、一年に三百人以上が司法研修所を卒業するわけでしょう。そうして新しく弁護士になるという場合には、お金ないですものね。入会金やその他考えたら、これは皆相当な借金をしてやるわけです。国税庁なんかよく御存じだと思いますが、大体三年から五年ぐらいたたなければ弁護士としてちゃんとした経営ができるだけの所得が得られないというのもあります。だから、そこらのところは十分それぞれ配慮をして、一つはこういう問題に対処をしてもらいたい、こういうように思うのです。  そしてもう一つ、たとえば銀行や証券会社の支店などの登記の場合、これは五万円でしたかね。登録税は五万円ですよ。こういうのが五万円という場合には、これはもっと店舗の拡張や何かがあるわけですから、こういうところはもっと配慮をする必要はあると思います。それと、一律に、定額部分は十年間低いから、それでそれを引き上げなくちゃならぬということに短絡的に結びつけるのはこの際十分に厳格に考える必要がある、こういうように思いますが、そういう方向検討を願えますでしょうか、どうですか。
  68. 山内宏

    山内政府委員 まだそういう具体的な細部についての議論は全くいたしておりません。これは税制調査会だけでなしに、われわれの部内におきましてもまだそこまで議論はいたしておりません。先ほど申しましたのは、あくまでも全体的な物の考え方ということで申し上げた次第でございます。そういう意味で、今後具体的にいかなる増税をいかなる時期にやるかということが決まりました暁には、いろんな意味でまた各方面の御意見も伺いつつ具体的な結論を得たいというふうに考えております。
  69. 増本一彦

    増本委員 それから自動車関係税で、増税の問題は問題として、これはこれまでにもいろいろ議論してきましたけれども、もう一つ、特にこれを目的財源から一般財源にしてしまおう、あるいは公共交通体系全体の整備のための財源に使おうとかというような、そんな意見までどうも税調の中でも出ているようですね。その辺の議論の中身と、それから具体的に大蔵省としてはどういうようにお考えになっているのかですね。  私は、たとえば道路財源で揮発油税とか地方道路税、いまこれの配分を見ましても、国は非常に大きく取って八五ぐらいですか、地方に一五ぐらいしか行っていない。むしろ地方道路整備ということがいま要望も非常に強いですね。地方自治体からもいろんな陳情や請願が、大蔵省その他にもいろいろ来ているはずですね。だから、そういう辺の配分を、この道路整備の計画や政策とのかかわりで、むしろもっと地方に厚く見ていくというような方向での検討こそ、いま現行制度の中でもやっていける点であるかというように考えているわけですが、その辺のところまで含めて、ひとつ皆さんのお考えを伺っておきたいと思うのです。
  70. 山内宏

    山内政府委員 ガソリン税につきましても、問題の所在の一つは、従量税であります関係上インデクセーションの問題というようなことがございます。それからもう一つは、いま御指摘の特定財源にいかように運用していくべきかという問題でございます。  後の方の話について申し上げますと、これは委員指摘のとおり、税調内部だけではなくて世間一般にも、ガソリン税についてはもっとほかの財源にも充当したらどうかという御意見がいろいろございます。しかしながらまた一万、現在の道路財源という観点から見まして、現在のガソリン税が必ずしも多過ぎるということにも相なっておりません。そこで私どもといたしましては、やはり今後の道路計画がどういうふうに進んでいくのかということとの相関関係で考えていかざるを得ないと思いますが、そういう意味では、新しい道路計画の改定のときにこの問題については改めて議論いたしたいというふうに考えておる次第でございます。  それから地方税源、地方財源の再配分の問題についてでございますけれども、この問題につきましては、単に道路財源だけを取り出して国と地方とがどうこうというのは必ずしも適当ではないと思いますので、もっと広く、あるいは税源だけに限らず財源全般の国と地方との再配分の問題として別途議論を進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  71. 増本一彦

    増本委員 それから、第一部会の方で所得課税の問題を議論されているようですが、経団連の方で二十二日ですか、来年度税制改正ということで意見書を出しましたね。皆さんもごらんになっていると思うのですが、企業課税の強化に反対をするということで、あるいはまた土地重課を廃止しろというような要望を出しているわけですね。私は、いまの税制全体の行くべき方向から見ると非常に逆行する意見を提起しており、まことにずうずうしい限りだと思うのですよ。皆さんの方ではこの意見書に対してはどういうようにお考えですか。
  72. 山内宏

    山内政府委員 第一部会におきます法人税あるいは法人課税全体の負担の御議論の際には、法人税あるいは法人課税が法人所得の中においてかなりのウエートを占めておる、それから税制全体の中でも法人税というのはかなり大きなウエートを占めておるという点の御指摘がございました。同時にまた他方、そうかといってやはり法人税の場合は、ある意味での国際的なバランスの問題というのを頭に置かなければならないわけでございますので、そういう観点から見て現在の法人税がどうであろうかという御意見もございました。  総体的に申し上げまして、私どもの得ております感触といたしましては、所得税は諸外国に比べてウエートとしては非常に低い。それから間接税も同様に諸外国に比べて非常に低いわけですが、法人税はまずまず諸外国に比べてかなりいいところまで達してはおるというふうに言わざるを得ないと思います。ただ、しかしながら、そうかといって全く増徴の余地がないかということになりますと、これは必ずしもそうは思いません。たとえばドイツも最近引き上げを行っておりますし、アメリカもわが国の総合税負担に比べて何がしかは高いということを言わざるを得ないわけでございますので、そういう余地は十分残されておると思います。ただ、先ほども触れましたように、かなり国際的な問題でもございますし、それから景気情勢そのものとの兼ね合いもかなり強く関連をしております税金でございますので、具体的にいつ、どういう形で引き上げを議論するかということになりますと、いま申しましたような点を十分慎重に考えながらやっていかなければなるまいというふうに考える次第でございます。
  73. 増本一彦

    増本委員 そこで、一つは、皆さん方やそれから第一部会で、いまそれぞれ非常に議論になっております所得税減税、この点についてはどういうように考えているのか。  それからもう一点は、あと時間がありませんのでかためて申し上げますが、来月の二日からいよいよ中期税制検討に本格的に移っていくのだということが、これも報道です、恐らくそうだろうと思いますが、その際に、新税制構想の資料を作成して税調に提出をする、こういうことも報道されていますが、かねてから、税調に出されるこれからのそういう資料についてはわれわれにも提出をしてもらって、一緒に勉強しながらもっと大いに税制論議をしていき、そして全体としてのコンセンサスも明確につくり上げていくようにしようじゃないかということで提起をしておるわけですね。そういう点からもひとつ皆さんの方で、何か報道によると、せっかくの中立的な立場で客観的にたたき台として資料を出すのだというようなお話ですが、そういう資料だったらなおさらですから、ひとつぜひ当委員会の方にも提出をしてもらいたい。     〔小委員長退席佐藤(観)小委員長代理着席〕 この二点ですね。所得税減税と資料提出の問題、この二つについてお答えをいただきたい。
  74. 山内宏

    山内政府委員 まず所得税の問題でございますが、これは客観的な判断として、現在の課税最低限あるいは税率といったようなものが総合的に考えてどのような地位にあるのかという点の議論が非常に多くございました。その点から申し上げますと、まあこれは釈迦に説法になりますけれども、課税最低限、それから国民所得の中の個人所得に占める所得税の割合、住民税も含めますが、そういったものを考えます場合には、かなりわが国の所得税は余裕があると申しますか、そう高いものではないということは認めざるを得ないわけでございます。かつまた、わが国の場合は、神経質と言うと言葉が悪いですが、非常に厳密に物価調整減税をやってきておりますけれども、諸外国の場合同様なことを比較してみますと、諸外国の場合はそこはかなり大ざっぱでございまして、わが国のようにたとえば過去十年あるいは五年をとってみましても、十分に物価の上がり追いついていく調整はやっていないのが実情でございます。わが国がその点は非常によくやっておりますし、アメリカも、わが国ほどではございませんが、やっておる。しかしそれ以外の諸国はむしろ物価の上がり方がひどいというふうな事情も御議論がされました。そういうことで、私どもといたしましては、もちろんそれは、税金は安い方が好ましいわけでありますし、特に物価調整減税のようなものはやれる状態にあるならばこれはぜひやりたいという気持ちは持っておるわけでございますけれども、少なくとも今後において赤字財政を克服するためには当分の間はかなりそういうふうな負担の現状にもございますので、やはりある程度がまんをしていただかないとしようがないのではないか、がまんをしていただかなければならぬのではないかというふうに考えております。     〔佐藤(観)小委員長代理退席、小委員長着席〕  それから二番目の資料の点でございますが、前回の第二部会の際に、従来までに各方面において議題にされております新税構想、これは国会において御議論をいただいたものも含みますが、そういったものとか、あるいは過去において税制調査会が検討した新税構想とか、そういったものを、名前だけでもいいから、とにかく一つの議論の前提として取りまとめて出してみてくれぬかという御要望があったのは事実でございます。ただ、それを御指摘のように来月二日に行いますかどうかについては全く未定でございます。  いま御提案のございましたように、この問題は今後の国民負担にかかわる大きな問題でございますので、これは今度やります問題に限らず、従来から第一部会、第二部会に分けて御議論願っております問題はすべてそのような問題でございますので、その議論に関しましては、当然国会の御意見も十分承った上でしかるべき結論に到達をいたしたいというのは、私どもも御指摘のとおり思っております。したがいまして、今後必要の場合、御要望いただきますならば、その都度調査会の資料その他、私どもの方で用意できるものがございましたら御希望に沿いたいというように考えております。
  75. 増本一彦

    増本委員 所得税減税は非常に消極的なお答えなんですけれども、来年度の増税を含めてどうするかというのは、今後の経済状態がどうなるかということによって、その見通しも明確にした上でなければできぬというさっきのお話でしたでしょう。それとのかかわりで、この所得税減税だって同じようなことが言えるわけでしょう。いま個人消費支出をもっと伸ばすべきだ、それ以外に、いま全体として中だるみと言われているこの景気を回復していくことができないじゃないか、こういう議論がある。その点については前向きに受けとめるような意見が政府部内からも出ている、そしてそういう答弁も国会でなされている面もあります。ですから、そういうところを踏まえて、所得税減税についてだけは、これは既定方針でやらないというようなかたくなな態度というのは、前半の審議官の答弁とは明らかに違うわけですね。これだけがなぜ固定して減税しないということが言えるのですか。
  76. 山内宏

    山内政府委員 最初に申し上げましたのは、増税するのではないかという御質問でございましたので、その増税の点についてはまだ来年の予算の枠としては決まっておりませんので、未定でございます。  所得税減税できるかどうかということに相なりますと、これは来年の問題だけに限らず、やはり今後五年間の長期を見通した問題として減税をやれるような状態になるのかどうかということになろうかと思いますが、、私どもがそろばんをはじいて考えます限りでは、来年度の財政状況のいかんにかかわらず、所得税についてはこの際は減税をがまんしていただきませんと、とてもしかるべき租税体系が確立しがたいのではないかという感じを非常に強く持っております。  ただ、いま御指摘のように、別途景気刺激の観点から減税をやってはどうかという御意見のあるのも承知いたしておりますが、そういった形で消費を刺激するための減税ということに相なりますと、その規模というのは何兆という大きな規模でないと恐らく意味がないのではあるまいかと思いますけれども、そういう大きな規模の減税をこの際もしやるということになりますならば、これは従来政府が公約をしてまいりました五十五年度までに赤字財政克服とか、先ほど委員指摘のように、赤字の絶対額を年々埋めていくとか、そういった約束とは恐らく全く両立し得ないものであろうと思いますので、私どもとしては全くとり得ない考え方ではあるまいかというふうに考えておるわけでございます。
  77. 増本一彦

    増本委員 それでは物価調整減税というのはどうなんですか。これは物価の推移を具体的に見て、まさに経済と密着したところで判断するという性質の問題でしょう。その点についても、審議官はというか、主税局は、大蔵省当局は非常にかたくななんですか。いまと同じですか。御意見はどうです。
  78. 山内宏

    山内政府委員 物価調整減税の点について申し上げますならば、いわゆる物価調整をやるということが政策のどの程度の地位に位するかということの問題であろうかと思います。私どもはやはりあくまでも赤字克服ということが現在の財政に与えられております、あるいは税制に与えられております一つの最重要の項目かと思いますので、それに対しまして、果たしてこの際物価調整減税をやり得る余地があるのかどうかという点での判断をいたさざるを得ないわけでございます。あくまでもこれはすべてのものに優先をして物価調整をやるべきだということに相なりますならば、それはそれとして一つ考え方かと思いますけれども、私どもといたしましては、先ほども申しましたように、過去長期にわたって非常にきめの細かい物価調整をやってまいった結果、諸外国に比べましてその点については決して遜色がない状態になっておりますので、赤字克服という最優先課題と見比べた場合、やはりこの際は物価調整減税といえども少しがまんをしていただけないものであろうかというのが私どもの真意でございます。
  79. 増本一彦

    増本委員 時間ばかり食いますので……。しかし、それを含めて検討してください。  ちょっと残り時間が少なくなりましたけれども、田中前首相が収受した五億円の賄賂についての課税問題について、参議院の大蔵委員会で先般議論がございましたね。一体いま国税庁としてこの課税問題について、あのときの議論では、まず第一は、いままでのは賄賂というものは有罪になれば追徴されるから課税をしてなかった、しかし金額が多いからこれは検討をする必要があるというような趣旨の答弁が、これは山橋さんでしたか、一つでしたね。それからもう一つは、もし課税するとしたら、所得の性格ですね、これが一時所得なのか雑所得なのかという問題がある、この点についても法律上詰めた検討をしなければならぬというところで、一応参議院の大蔵委員会での議論はそこまでの段階でとまっていたと思うのですが、その後進展があったのか、いまこの問題の検討作業は大体どこまで進んでいるのか、その点を報告してください。
  80. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 お答えいたします。  先生お話のように、先般の参議院の大蔵委員会でお答え申し上げましたとおり、この問題は、一つは刑法上の必要的な追徴没収との関連の問題 一つ所得税法上の所得区分の問題というふうに大きな問題があるわけでございますけれども、第一点の問題につきましては、先生承知のとおり必要的追徴没収でございますので、有罪となりますれば必ずこれは利得というものが没収あるいは追徴されるという形でございます。  したがいまして、公訴の提起ということは、言ってみれば国家意思として将来その利得を必ず没収する、こういう一つの意思表示でございますので、この得ました利得について、片一方におきまして税法上の課税をするということが、いわば国家意思の整合性の問題として妥当であるかどうかというふうな問題が一点、実は大きな問題としてあるわけでございます。この問題が公訴の維持という問題にどのような影響を与えるかという点も実は検討する必要があるというふうにわれわれは考えているわけでございますが、一方においてそういうふうな問題が一つございます。  それからもう一つは、いままで実はその賄賂についての課税問題というのは大きな問題として起きてないわけでございます。しからば所得区分としてどういう所得区分にするかということにつきましても、実は定まった一つの取り扱いがございません。したがいまして、この際もしその賄賂について課税をいたしますとするならば、その所得区分はどういう所得区分であるかというふうな問題が実は一つあるわけでございまして、この点につきましては、法人からのいわゆる収入ということになりますと、所得税法上は一時所得あるいは雑所得というどちらかの範疇に入ろうかというふうにわれわれは考えているわけでございますが、この一時所得になるか雑所得になるかというふうな問題につきましては、この賄賂というものが一時的な収入であることは確かでございますけれども、それが一時所得であるためには、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のいわゆる一時の所得であること、もう一つは労務その他の役務あるいは資産の譲渡の対価としての性質を有しないという二つの性格が必要でございます。したがいまして、一時の所得であるという点においては確かにそうでございますけれども、役務の対価であるかどうかという問題は実は非常に微妙な問題であろうかと思います。したがいまして、もし役務の対価ということで実体がそういうふうに認定をされますればそれは雑所得であろうし、もし役務の対価というふうに税法上認定ができないということになりますればそれは一時所得であろうとわれわれは考えているわけでございまして、この所得区分の問題は実体解明の問題と実は密接につながっておりまして、実体を解明した段階でこの所得区分は決まってくるものとわれわれは考えておるわけでございます。  いずれにいたしましてもそのような二つの大きな問題がございまして、現在その二つの問題を含めて関係当局ともいろいろ協議を重ねておりまして、現在のところまだ協議続行中あるいは検討続行中、こういう段階でございます。
  81. 増本一彦

    増本委員 一番最初の問題が皆さんの認識でいくといわば入り口のところなのでしょう。つまり追徴没収されちゃう、公訴提起によって五億円を追徴没収するぞという国家的な意思表示がなされている以上、そうするとこれは将来利得がなくなっちゃうものだからいま課税するのはどうか、ここでの整合性の問題が出てくる。ここで一定の前向きの結論が出れば、あとの一時所得か雑所得かという所得区分の問題は、いまお話しになったように所得の実調の中で得られた資料で判断すればいい問題です。いままでに明らかになった事実関係の範囲内で見れば雑所得か一時所得、これ以外にないわけだから。この点では、最初のいわゆる国家意思の整合性と言われている追徴没収さるべき賄賂に対して課税するということで前に進むのか、それとも従来やってきたとおりをそのまま踏襲して、これは課税の対象にもならないということでとまってしまうのか、その辺のところはどうなのですか。第一の問題です。
  82. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 御指摘のとおり、その点が非常に重要な問題だとわれわれ考えているわけでございまして、公訴提起をいたしまして、これを必ず追徴没収するという片一方において国家意思がある、しかしながら、片一方においてそれを利得として課税するという、いわば二つの国家意思がそこで別々に存在するという形になるわけでございますけれども、実は論理的にもあるいは法律的にもこれをどういう考え方で調整していくかという問題が一つあるわけでございます。一方においてそういう必要的な追徴没収があるけれども、ただ裁判が非常に長くかかる、したがって中途において公訴の棄却あるいは免訴というような問題が起こることになりますれば、その利得を課税という形にしろあるいは追徴没収という形にしろ取るという手段がないではないかという議論も片一方にあるわけでございます。そういう議論も踏まえまして、われわれとしてはどういう措置をとるかということを現在鋭意検討している最中でございまして、前向きあるいは後ろ向きという方向が決まっているわけではございません。
  83. 増本一彦

    増本委員 いまお話しになったように、一つは公訴提起から最終判決がおりるまでの間には相当期間かかるでしょう。一審だけじゃなく三審までいくかもしれませんね。しかし、その問題があるから、その間の存在する利得について課税する、もし裁判が長びけば除斥期間との関係で今度は課税できなくなるというおそれもある。それも一つの要請ですよ。  もう一つは、刑事裁判なり刑事訴訟そのものの要請からいくと、田中氏についてこういうことを言うのはちょっと私もいやなのだけれども、一般的な要請としては、あくまでも被告人の地位でいる限りは無罪の推定というものがありますね。そういう前提に立てば、これは国家意思との関係でいっても、全般的には刑事訴訟法上そういう要請があるわけでしょう。だから、その問題との絡みでいけば、逆に、賄賂性云々ということもさることながら、そこで一定のお金なり財物が流れた、そのことに着目して、そのことだけで課税をするということは、全体の法律上のシステムそのものからいって別に矛盾するものじゃないですね。そうでしょう。だって、将来追徴されるかどうかという場合に、追徴されないといういわば一定の——これは刑事訴訟法上の推定ですよ。具体的に田中さんについてどうかという推定じゃなくて、一般的に国家意思としてそういう法律をつくったときに、そういう推定に基づいて刑事訴訟法の構造ができているわけだから。そういう点を考えれば、大体、将来必要没収されるであろうなどということを前提にして、ここがとば口で、ここがうまく理論的に解明できなければ、理屈がつけられなければ課税ができないという性質のものではない。何でそんなところに国税当局がかかずらっているのか。むしろそういう一般的な法律理論からいってもきわめておかしいことじゃないか。税務税務できっちり、もらったお金が雑所得か一時所得か、これは調査すればどっちかの所得区分になる。しかし、所得を得たということは明らかなのだから、そのこと自体に着目してやればいいので、その結果、最終的に国家判断で有罪になったという段階では、その時点で起きた事実として、後の救済をどうするか、法律上の救済があれば救済するし、救済がなければ、制度上そういうものがないだけの話ですから、それはそれでいいという性質のものじゃないですか。だから、前向きも後ろ向きもじゃなくて、文字どおりそういうことがあるのだったらそれは課税をするということはいわば純粋にやらなければならないことじゃないか。それ以上のことをいろいろ配慮するというのはおかしいことじゃないかと私は思うのですよ。どうです。
  84. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 先生のいまのお話もわれわれの議論の中に十分入り得る一つお話であると思います。確かに税法には税法の論理がございますし、その論理を貫けばいいという議論もあるわけでございます。ただ、公訴の提起をされている事案でございますので、その公訴にどのような影響があるかという実体的な問題もわれわれとしては判断をせざるを得ないという点もございます。そういう点もすべて含めましての問題についての結論を早急に出していきたい、こういうふうに考えているわけでござます。
  85. 増本一彦

    増本委員 しかも四十八年に二億五千万円ですか受け取っているわけでしょう。これは通常のあれでいけば三年だから、五十二年の三月十五日で除斥期間が切れちゃうわけでしょう。だから、どっちにしても早急に解決して、実調もやり、判断を早くやらなければならぬ、そういうときにいま来ているわけでしょう。この点が一つですね。  それから、いまちょっと次長のお話の中で、公訴提起があったので、それとのかかわりでこれからの課税の問題がどういう影響を与えるかということも考慮しているというお話があったので、こういうことを皆さんの方で恐れているということはないのですか。たとえば調査をし、仮に課税をする。そうすると、田中の方では異議申し立てをやり、審査請求をやり、協議団にかけていく。それから行政訴訟までやる。そうすると、国が被告になって、皆さんが被告になって課税処分の取り消しの訴訟までやることになるでしょう。刑事裁判の進行と行政訴訟の進行との兼ね合いで、先に手の内の方が明らかになるといかぬ、それから向こうの抗弁が、政治資金だとか政治献金だというような抗弁をどうも予想しているというようなことから、刑事裁判の進行とのかかわりで手の内が明らかになるから、ここいらのところも含めて課税処分することそのものもちゅうちょをするとか、慎重にならざるを得ないとか、そういうようなほかの、いわば課税問題から見たら全くのよけいなことですわな、そういうことまで判断をして逡巡しているというような、何かそんな感じを持つのですが、最初の、だからもう期限が来ているんだから早く実調をやれという点についてはどうなのかということと、そういう余分なことを考えているんじゃないかということもあるものですから、その二点についてはっきり答えてください。
  86. 森美秀

    ○森小委員長 約束の時間が過ぎましたので、答弁は簡単にお願いします。
  87. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 除斥期間の問題は、先生おっしゃったとおりに四十八年分については五十二年三月でございます。われわれとしても十分その点を念頭に置きながらこの問題についての結論を出していきたいと思います。  第二番目の問題として、御指摘のような将来の起こり得べきいろいろな問題について、われわれがいろいろ配慮をしてこの問題にちゅうちょをしているというふうなことはございません。
  88. 増本一彦

    増本委員 結局、五億円の使途がわからないと言っているのですね。こういうのは実調で初めてわかるのですよね。そうでしょう。税務署調査によってわかる部分というのは非常に多いわけですね。それを公表されるかどうかという点では皆さんと私たちの間で守秘義務の問題で議論のあるところですけれども、しかし少なくともそこのところが捜査機関によってわからないという以上——しかも四十八年までについては田中金脈のあのときでずっと調査をしたのですね。したけれども、脱漏していてわからなくて、皆さんの方も気がつかなかったという問題でしょう。あのときにわかっていたら、ロッキード事件というのはアメリカからじゃなくて日本で文字どおり明らかになったはずですよ。ごまかされたわけだな、税務調査の過程でも。全くその関係は伏せておいて、そうして今日までぬけぬけ来たわけですね。だから、そういう点もあるのだから、ともかく早く結論を出すとしたら実調をやらなくちゃいかぬし、その中で起きている問題として資金の、あと受け取った金の流れの経路も含めて徹底的に調査をやるということだけは——これは田中金脈のあのときにわれわれはもう一度再調査をやれ、やめるのはけしからぬということであれだけ言ったのにやらなかったわけですね。そうしたら今日こういう問題が起きているという点からいっても、実地調査だけは、これは質問検査権を行使してがっちりやってもらいたいということを要求して、私の質問を終わります。
  89. 森美秀

    ○森小委員長 広沢直樹君。
  90. 広沢直樹

    広沢委員 私は、まず国税庁にお伺いいたしたいと思います。  きょうは長官も次長も御出席でありますので、まず最初に、先日私、国税労働組合の全国会議の皆さんといろいろ話し合う機会がありました。そこで、先ほど佐藤委員からも詳細に質問がありましたように、現在の国税職員の実態といいますか、徴税実態等についてもいろいろ議論をしたわけであります。確かにいま、先ほども問題になりました税務職俸給表の改善の問題あるいは中高年層職員の処遇改善の問題また特別専門職の大幅な増員、それから上級等級定数の拡大、こういったものは緊急にやらなければならない、こういう事情にあることは先ほどの議論でも明らかになったとおりでありますし、私も同意見であります。  そこで、同じ議論を繰り返しても仕方がありませんから、ここで一つだけお伺いしておきたいことは、過般十月十二日、税制調査会の第一部会に徴税報告をいたしております。それがいみじくも新聞に出ているわけですね。「所得追跡に赤信号」、「税務署職員足りぬ」と、こういう大きな見出しで出ているわけであります。この問題は税調の中で、税務署所得の追跡が不完全で、これが税の不公平感の一因になっているんではないかという強い声が多かった。確かにいまは増税ということが一つの大きな問題として取り上げられておりますね。その前提としては、不公平をなくさなければならないということが一つの大きな議論になっておるわけであります。それなくして一般的な増税を図るということは、当然国民のコンセンサスなんか得られるものではない、こういうことになっておるわけでありますが、具体的にその第一部会に徴税報告をなさった内容について、簡単にひとつ御報告いただきたいと思う。
  91. 谷口昇

    谷口政府委員 お答えを申し上げます。  先般、ちょうど十月の十二日でございましたけれども税制調査会がございまして、その際、国税庁から税務執行の現状について話をしろということでございました。  実は、これはいきさつがございまして、第一回の税制調査会の第一部会のときでございましたか、そのときに、いろいろとこれから税制調査の審議をするのだけれども、その場合にやはり税務行政の実態についてもよく知っていないとなかなかむずかしかろう、こういう話がある委員から出まして、その委員質問によりまして、先ほど申しましたように、十月十二日私どもが出てまいりまして報告を申し上げた、こういうことでございます。  そこで、その中身でございますが、税制調査会に対する説明は、大きく分けまして、申告所得税を中心にいたしました税務行政の実情と国税当局としての要望の二つに分けてお話を申し上げました。先ほど申しましたように、第一部会でございますので、主として申告所得税ということが中心に話があったものですから、ここに申し上げますように申告所得税を中心として申し上げたわけでございます。  そこで、申告所得税を中心とした税務行政の説明の内容でございますが、申告所得税納税者数の状況、それから所得階級別納税者数の状況及び納税者の都市への集中状況、そういうものを第一番目にお話を申し上げました。その次に、申告所得税の事務担当職員の事務量の増加、こういう問題についてお話をいたしております。三番目でございますけれども昭和四十九年分税務調査の結果、すなわち、調査件数であるとか、あるいは増差所得であるとか、あるいは増差税額とか、こういったものについてお話をいたしております。それから第四番目でございますが、税務調査が年々困難性を増しているという、そういう税務を取り巻く環境について御説明をいたしております。第五番目でございますが、そういった状況の中で、所得税事務運営の基本方針としては、青色申告の普及育成それから調査の重点化と指導の充実と、諸施策を推進いたしますと同時に、内部努力として執務体制の合理化を図っていく、そういうことを申し上げております。  それから、もう一つ大きな柱であります国税当局としての要望事項につきましては、税制の簡素化であるとかあるいは課税資料の収集に当たりまして各官庁の協力を得たいということ。三番目に利子所得とかあるいは配当所得の総合課税制度を考えていただきます場合に、執行面での問題についても配慮をしていただきたい、こういうようなお話を申し上げました。  これが大体の内容でございます。
  92. 広沢直樹

    広沢委員 要するに、端的に突き詰めて言いますと、いわゆる事務量とその要員の不足、こういうことが一つの大きな問題になってくると思うわけであります。  先ほどもお話がありましたけれども、定員と職員一人当たりの要処理件数の推移、これは組合の資料によって見ますと、三十九年から四十九年の十年間で相当な処理件数がふえている。ところが定員がほとんど変わっていない。したがって一人当たりの要処理件数が一・五倍にこの十年間でなっている、こういう状況である。さらに実態調査の推移を見てみましても、これは四十年度と四十九年度の比較でありますけれども、実際にはその実地調査の件数も減らざるを得ない。これはそれぞれの経済規模が変わってきた、あるいは企業体の内容が変わってきたということも問題があろうかと思いますが、要するに、そういう実地調査をした結果は約八割近くが更正決定をする、そのうち不正のものが数十%ある、こういうことで、決してこれは減るのでなくてふえてきている状況にあるわけですね。  こういうような状況から勘案してみますと、やはり正確ないわゆる納税指導ということも大事でありましょうし、あるいはまたそれに基づく実態調査も適切に行われなければならない。しかし定員はほとんど変わらずに、これだけどんどん法人数もふえ、あるいは所得申告者数もふえていく状況ではほとんど手が回らない。先ほどいろいろ指摘がありましたように、いわゆる休暇の問題にしても持ち帰り仕事の問題にしましてもだんだんひどくなっているという状況にある。したがって、そのすべての負担が現在の税務職員の双肩にかかってしまっているということで、非常な過重を強いられている。このような状況で、いま言うような具体的な実態調査は進まない。調査すると何らかの形で更正決定がなされるという状況であればこれは大変な問題じゃないかと思うのですね。  そこで先ほどから定員増の問題とか、あるいはこういう一つ一つの問題をどう改善していくか、もう少し意欲的にできるような処遇の改善をどうするかという問題についていろいろ議論がありましたけれども、これは早急に図っていただかなければならぬということを再度私からも強く要望申し上げておきたいと思うのですが、当局、きょうは長官が御出席でありますから、これに対する基本的な考え方を再度私はお伺いしておきたいと思うのです。
  93. 田辺博通

    田辺政府委員 申すまでもなく、国税庁の任務はあくまでも法律に従った適正、公平な課税を実行することでございます。その執行面における事務量の増加に対応する手段としては、われわれとしてはいろいろな手段で事務の合理化を図る、あるいはまた人手を食わないで機械化できるものはできるだけ機械化するというような方法を講じてまいる、またいろいろな知恵をしぼりまして先ほどおっしゃいましたような調査対象の納税者の選定について、特に増差がありそうだというものを選定して効率的な仕事をするということをやっておるわけでございます。しかしながら、大数的に見まして、先ほど来申し上げておりますように、国税庁職員全体の数をもう少しふやしてもらわなければやはりある種の限界に到達しておるのではないか、こう考えておるわけでございます。  それから、先ほど来申し上げておりますように、現在の職員の年齢構成というものがいわゆる逆さひょうたん型になっておりまして、四十歳以上の高年齢の人が非常に多い。この人たちは戦後の非常に混乱した世相のもとで、いわゆる税の執行行政の立て直しのために非常に困難な状況のもとで苦労を重ねた方々であります。それによって相当の成果を上げることができたわけでございますが、ここへ来まして、ポストの数と人数とが合わないということで将来に対する希望を失いつつあるのではないか、こういうことでは将来、これからまた税務行政を担ってまいります次の世代の士気にも影響しかねない、こういうことでございますので、いま御指摘のありましたような処遇の改善の問題も含めましてせっかく努力をしてまいりたいと思っております。
  94. 広沢直樹

    広沢委員 この問題はまた後日、日を改めて一つ一つそれぞれの関係当局と話を詰めてまいりたい、このように私は思いますので、その点は強く改善要求をいたしておきます。  国税庁はもう結構であります。  次に、減税の問題について主税局の方にお伺いしておきたいと思います。  大蔵委員会におきましても、また予算委員会におきましても、このたびは財源不足あるいは赤字国債を発行するような大変な財政危機の中であるから減税はしない、それは物価調整減税も含めて今回は減税は見送りたい。これは五十二年度見送るとすれば二年連続になるわけですね。しかし、物価調整減税と一般的な所得減税とは違うと私は思います。したがって、いままでの経緯を見ますと、四十年以来こちらまでの期間をとってみましても、不況期におけると否とにかかわらず、やはりある程度の減税をする、いわゆる物価調整減税というものは行われてきておるわけですね。確かに、四十一年ですか、特例公債を出さなければならない財政赤字が出てきたわけでありますが、その時分でも物価調整減税だけはやっている。その後この減税問題については、大臣に対する質疑の中でも、やはり物価調整減税だけは当分続けていかなければならないと。それはいろいろな理由があると思うのですね。ですから、そういう意味からすると、当然物価調整減税というものは考えてしかるべきじゃないかというように考えるわけですが、この一般的な所得減税と物価調整減税との違い、それについては主税局自身はどういうふうに考えておられるのか、まずその点からひとつ伺ってみたいと思います。
  95. 山内宏

    山内政府委員 お説のように、物価の上昇によりまして本来、租税制度が考えております以上に、累進制度の結果実質的な税負担が上がることを防止したいというのが物価調整減税の趣旨だろうと思います。そういう意味では、物価調整減税を超えた一般的な減税が実質的にも減税でありますのに対しまして、物価調整減税の場合は、いま申しましたような意味合いで意図せざる物価の上昇に対応する税負担増加の要因を取り除きたいということであろうかと思います。私どもといたしましても、もちろん財政がこれを許しますならば、物価調整減税程度はぜひやりたいという気持ちの点においては、恐らく委員ともそう隔たらないと思うのでございますけれども、ただ、私どもといたしましては、来年度の財源問題だけでなくて、やはり五十五年までを見通した財源あるいは期待をされる租税収入の確保、そういう観点から見ますならば、現在のような大幅な赤字財政のもとでは、なかなかそういう財政状況はつくり得ないのではないかという感じがいたすものでございますから、そういう観点から物価調整減税といえどもこの際はひとつ何とかがまんをしていただけないだろうかということを申し上げておる次第でございます。  そう申しますのは、一方、いま申しましたように赤字財政という現状がございますし、他方には現在の所得税水準がここで物価調整減税をやらないからといって、諸外国と比べて、あるいは従来のわが国の税負担に比べて非常に過酷なものになるかどうかということになりますと、それは何とかがまんをしていただいても、願えないものではないのではなかろうかというふうに考えますので、その点も含めてお願い申し上げておる次第でございます。
  96. 広沢直樹

    広沢委員 それは財政赤字のときに減税をしろと言うのは、一般論としては無理な話だと言えぬことはないですね。しかしながら、物価調整減税というのは、過去の議論の中でも、説明によりますと、いま審議官がお答えになったような一般減税とはちょっと違うわけですね。やはり国民生活の全般を考え、国民経済を考えて、そしてこれだけはいまの累進構造の税制の中で調整をしていかなければならぬだろうという面を配慮された立場で物価調整減税というのを行ってきた。外国がやっているから云々というわけじゃありませんが、諸外国においてはやはりそのための、実質的な増税の事態を防ぐために自動的に所得税の物価調整を行う制度というものをつくっているところもあるのですね。わが国でもやはり、制度はありませんけれども、そういう意味合いで毎年ずっと過去においても不況のときも、景気ですからいいときも悪いときもありますが、それも物価調整減税だけはやっていくのだという方針で説明されてきたし、実質的に行ってきたわけですね。ですから当然これは現在の不況期において——不況の原因というものはここで議論するまでもないことですね。やはり不況であるから税収が減る、税収が減るから赤字になるのだ、それを埋め合わせるために国債を出すのだ、だから早く景気を回復させて税収を確保していかなければならない。税の面、財政の面から見た話をするとそうなるのですね。ですから当然これは、景気を上げていくためにも一般的な減税も考えたらどうかという議論さえもあるわけですから、当然のところこの物価調整減税というものを考慮すべきではないか。  そこでそういう観点から考えた場合に、大蔵省当局として実際にどれだけの実質収入が国民の所得に食い込んでいるかという計算をしたことがありますか。というのは、調整減税をやらなかった場合はこれは一律に増税になるわけですね。累進的になっていますから当然のことですね。ところが、税だけではなくて保険料とかすべてのものも上がりますし、先ほど言ったように物価調整減税ですから物価も上がる。その実質を引いた場合、実質所得というものがやはりマイナスになるのではないか。われわれはわれわれなりにあらゆる場合、ゼロ%のベアの場合とか、あるいは五%の場合とかあるいは一〇%の場合、それぞれ計算をしているのですが、少なくとも一〇%以下のベアの場合であればこれは前年度の実収入よりまた減ってしまう、食い込んでしまうという状況が出てきているわけですね。それは、平均のベアが八・八%でしたか、それは平均でありますから、それ以下の場合は非常に多い。ですからそれに物価調整減税をしないということは、そういった方々によけいにかかってくる。いわゆる収入の低いほど生活に食い込んでいくという形が出てくるわけですね。ですから当然そういう意味合いを含めても、物価調整減税は一般的にやらないで特に低所得者に合わせてやっていくとか、そういう配慮がなければいけないのじゃないか、こう考えるわけですね。それもいま財政赤字だから仕方がないということだけの通り一遍でそれがいけるかどうか。やはりいま景気が停滞している一つの大きな原因というのは、御承知のように消費支出がなかなか上がってこない、国民総支出の半分以上を占めているわけですから、そこが上がってこなければ景気が本格的な回復に向かわないのじゃないか。それが停滞の原因の一つにも、中だるみの原因の一つにも考えられているわけでしょう。そうなっていきますと、心理的に考えていってもそうですし、実際の生活面から考えたら大変な問題ですね。ですから当然やはりこの際考え直していくことでなければ困ると思うのです。そうでなければ、今後物価調整減税については当局内においていまのような観点から考えてみるということで再考願うということでなければ、大変な問題じゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  97. 山内宏

    山内政府委員 物価調整減税をやるべしという御意見は、これは裏返して考えてみますと、実質的な意味合いを含めまして所得税については増税をやるべからずということに結びつくだろうと思います。私どもは今後五十五年度までの間を通じまして租税負担率を地方税も含めて三ポイント上げなければならないという一つの要請を受けておると思うわけでございますけれども、そういたしました場合に一体何が、どういう税目がそこへ入ってくるのかということを考えますると、やはり私どもといたしましては、先ほどからるる申し上げておりますように、比較的水準としてはノーマルと申しますか、穏やかと申しますか、であるところの所得税にも何がしかの負担をしてもらってもいいのではないかという感じがどうも抜け切れないわけでございます。と同時に、所得税という税目がいかなる税目であるかと考えてみますと、これは本来ほかの諸税目に比べまして所得の再配分とかいうふうな意味合いで税金の中では一番すぐれた税金であるということもこれは否定し得ないものだと思いますので、そういった三ポイント引き上げの要請を頭に置きます限りは、やはりこの際所得税にも何がしかの役割りを持ってもらってもいいんではなかろうかというふうな感じがいたしますので、そういう意味を含めまして物価調整減税をやらないということをお願いをいたしておるわけであります。
  98. 広沢直樹

    広沢委員 これは議論を繰り返しておってもここで結論が出る問題ではありませんけれども、当局としては、物価調整減税については一般減税とは違って別な意味を持っているわけでありますから、やはり十分配慮していかなければならないと思います。また、いままでのような、審議官のお答えのような考え方であるならば、将来にわたって新しい問題として提起しても考え直してもらわなければならないのじゃないかと思うのです。  私はいままでずっと大蔵委員会にいて、大蔵委員会の議論の中では物価調整減税というのは国民生活を配慮して云々ということであって、ああいう高度経済成長の中の異常な物価高の中で、何とか税制面からも国民生活を守るため考えようという配慮のもとに毎年毎年やってきたわけですね。それは先日も大蔵委員会の中でも議論になっておりましたが、大蔵大臣は、それだったら、ほかに財源を探してくださいよみたいな話をしておられたのですが、それは幾らでもやりようがあると思うのです。大体物価調整減税をするとしたら、仮にするとしたらですよ、大体財源はどれぐらい要るとお考えになっていらっしゃいますか。計算なさっておりますか。する気がないから全然やってないですか。
  99. 山内宏

    山内政府委員 これは物価の上がり方とか、それから調整をどの程度のところでとどめるかとか、いろいろ前提が変わりますので具体的に申し上げるのはいかがかと思いますけれども、ごく大ざっぱに申し上げますならば二千五百億とか三千億とかいったようなオーダーのものであろうかと思います。
  100. 広沢直樹

    広沢委員 それでありますから、その二、三千億の財源というのは、いろいろ問題になっておりますような不公平ないまの税制、そういうものを改めるとか、先ほどもちょっと国税庁との話にもありましたように、やはり適正な税負担を求めるとか、そういうようなことででもこれはカバーできていくのじゃないかと考えるわけです。ですから、当然当局においてそういう努力というものがなされなければならないと思うのです。私は、一般的な減税をここで大幅に行えと景気対策の上からは言える面もあろうかと思います。しかしそれはそれとして、議論している暇がありませんからそれはおくといたしましても、少なくとも物価調整減税だけは今後考えていくような形にしていかなければならない。すなわち直接税を中心とした累進税率構造をとっている以上は、そうしていま言うような物価とかいろいろな情勢が考えられるならば、税制面においてもその点だけは配慮するようなやり方というものは必要じゃないか、こう思われますよ。ですから、五十一年、ことしから来年へかけて赤字になってくるということになれば、いま急にいままでの考え方が少し一もう赤字で大変なんだということの一つの大きな大蔵省考え方で、何もかもいまお金は出せないのだという、そういうイメージづくりをやっているような感覚に受け取れるのです。しかしそれはそれとして、大変なことはよくわかるのですが、そういう政策的な意味も含めての話でありますから、十分御検討いただきたいと思うのです。これは、また時間があるときにゆっくりこの問題は詰めていきたい、こう思います。  約束の時間がなくなってしまいましたから、もう一つだけ簡単に伺っておきたいのです。  一つは、いま税調において五十二年度の税制改正について検討を加えておる、さらに中期税制について検討している、こういうことですね。そこで、私は前にも申し上げたかと思いますが、諮問する以上は、具体的に大蔵省としてどういう意向であるという方向づけだけはやはりしっかりしていなければいけないのではないか。ただむやみにどうしたらいいでしょうかというような聞き方というのはないと思うのですね。ですから、その点どういう考え方を基本的に持っておられるのか。それに対して税調としてはいろんな意見がついてくるだろうと思うのですよ。だから、大蔵省としての五十二年度税制改正に対する、具体的に言うと、増税を考えているものあるいは減税を考えているもの、この二つに分けてどういう考え方になっているのかということが一つ。  それからこれも先刻議論になっておったことでありますが、五十年から五十五年の間、赤字国債を発行しないようにするために増税を図っていかなければならない。これは中期財政見通しというのを発表されていますね。それによりますと、少なくとも五十二年度に大幅な増税をしなければむずかしいんじゃないか、こういうことでありますが、五十二年度は、いままでの新聞やその他のいろいろな話を総合してみましても、大体大幅な増税は見送りになるんじゃないかということが言われていますね。この点どうなのか。仮に見送りになるとしたら五十三年あるいは五十四年——五十五年で赤字国債を発行しないようにするという大蔵省の方針なんでありますから、五十三年度にはそれこそ手直し程度のやり方では不可能ですね。大幅な増税をしなければならないという形が出てくるんじゃないか。したがって中期的な考え方大蔵省としてどういうような考え方でおるのか、その点を御説明いただいて、時間でありますから終わりにいたしたいと思います。
  101. 山内宏

    山内政府委員 五十二年度の改正につきましては、先ほど申しましたように目下のところまだ白紙の状態でございます。と申しますのは、経済の見通しそれから歳出の状況、こういったものも不明確でございますので、まだ私どもの方としても自然増収がどの程度になるかといったようなことも含めまして未定でございます。したがいまして、現在までのところ五十二年度でいかなる改正をやるかという形の具体的なものはまだ持ち合わせておりません。  ただ、先ほどから申しておりますように、これは即税収を目的ということにはなりませんが、特別措置の根本的整理縮減ということはぜひやっていきたい、昨年に引き続いてやっていきたいと思っておりますし、それから具体的なめどが立ちませんけれども所得税減税はなかなかむずかしいという程度のところでございます。一体いつからと、こういうことになりますと、これは例年のことでございますけれども、大体十一月の末から十二月の初めごろにかけてかなり具体的な形のものが出てこようかと思います。  それから第二番目の財政収支試算お話がございましたが、これはあくまでも中期経済計画を前提に置きましてその数字を並べておるものでございます。先生承知のとおり経済計画には年次表はございませんので、財政収支試算の方も一応最初と最後を直線でつなぐというふうな形での年次表をつくってみておりますけれども、これはそれ自体としては余り意味がございません。したがいまして、いま期待されております全体として税負担のアップ三ポイントをいついかなる時期にどういう税目でやるかということにつきましては、現在のところなお未定でございます。まさにそのことのために現在税制調査会を中心にしていろいろ議論を重ねておるわけでございます。しからば来年直ちにどうかなるかと、こういうお話でございますならば、これも先ほど申しました五十二年の改正との兼ね合いでもって、現在のところはまだ何らの前提を持っていないというふうに御承知いただきたいと思います。
  102. 森美秀

    ○森小委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後一時五分散会