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1976-10-13 第78回国会 衆議院 大蔵委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十一年九月十六日)(木曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。    委員長 田中 六助君    理事 塩川正十郎君 理事 村岡 兼造君    理事 森  美秀君 理事 山下 元利君    理事 山本 幸雄君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       宇野 宗佑君    大石 千八君       金子 一平君    鴨田 宗一君       瓦   力君    木野 晴夫君       小泉純一郎君    齋藤 邦吉君       野田  毅君    林  大幹君       原田  憲君    坊  秀男君       宮崎 茂一君    毛利 松平君       保岡 興治君    山中 貞則君       高沢 寅男君    広瀬 秀吉君       松浦 利尚君    武藤 山治君       村山 喜一君    山中 吾郎君       横路 孝弘君    横山 利秋君       荒木  宏君    小林 政子君       坂口  力君    広沢 直樹君       内海  清君    竹本 孫一君       河野 洋平————————————————————— 昭和五十一年十月十三日(水曜日)     午後一時五分開議  出席委員    委員長 田中 六助君    理事 塩川正十郎君 理事 村岡 兼造君    理事 森  美秀君 理事 山下 元利君    理事 山本 幸雄君 理事 山田 耻目君    理事 増本 一彦君       越智 伊平君    鴨田 宗一君       唐沢俊二郎君    木野 晴夫君       小泉純一郎君    林  大幹君       原田  憲君    坊  秀男君       宮崎 茂一君    毛利 松平君       山中 貞則君    高沢 寅男君       広瀬 秀吉君    松浦 利尚君       武藤 山治君    村山 喜一君       横路 孝弘君    横山 利秋君       荒木  宏君    小林 政子君       坂口  力君    広沢 直樹君       竹本 孫一君    河野 洋平君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         大蔵政務次官  高鳥  修君         大蔵政務次官  斎藤 十朗君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理 道正 信彦君         官         大蔵大臣官房審         議官      佐上 武弘君         大蔵大臣官房審         議官      山内  宏君         大蔵省主計局次         長       松下 康雄君         大蔵省主計局次         長       加藤 隆司君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省関税局長 旦  弘昌君         大蔵省理財局長 岩瀬 義郎君         大蔵省理財局次         長       吉岡 孝行君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         中小企業庁計画         部長      児玉 清隆君  委員外出席者         農林大臣官房審         議官      関根 秋男君         建設省河川局河         川計画課長   稲田  裕君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 九月二十日  辞任         補欠選任   大石 千八君     唐沢俊二郎君 同月二十一日  辞任         補欠選任   保岡 興治君     越智 伊平君 同月二十八日  辞任         補欠選任   金子 一平君     黒金 泰美君 同月三十日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     阿部 昭吾君 同日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     横路 孝弘君 十月一日  辞任         補欠選任   坂口  力君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     坂口  力君 同月五日  辞任         補欠選任   黒金 泰美君     金子 一平君 同月六日  辞任         補欠選任   坂口  力君     石田幸四郎君 同日  辞任         補欠選任   石田幸四郎君     坂口  力君 同月七日  辞任         補欠選任   唐沢俊二郎君     長谷川四郎君   瓦   力君     倉石 忠雄君   木野 晴夫君     園田  直君   松浦 利尚君     下平 正一君 同日  辞任         補欠選任   倉石 忠雄君     瓦   力君   園田  直君     木野 晴夫君   長谷川四郎君     唐沢俊二郎君   下平 正一君     松浦 利尚君 同月八日  辞任         補欠選任   瓦   力君     原 健三郎君   木野 晴夫君     長谷川 峻君   宮崎 茂一君     安倍晋太郎君   広瀬 秀吉君     楯 兼次郎君 同日  辞任         補欠選任   安倍晋太郎君     宮崎 茂一君   長谷川 峻君     木野 晴夫君   原 健三郎君     瓦   力君   楯 兼次郎君     広瀬 秀吉君     ————————————— 九月十六日  銀行法の一部を改正する法律案広瀬秀吉君外  九名提出、第七十一回国会衆法第四一号)  昭和五十一年分の所得税臨時特例に関する法  律案武藤山治君外四名提出、第七十七回国会  衆法第九号)  所得税法の一部を改正する法律案武藤山治君  外四名提出、第七十七回国会衆法第一〇号)  有価証券取引税法の一部を改正する法律案(武  藤山治君外四名提出、第七十七回国会衆法第一  一号)  法人税法の一部を改正する法律案武藤山治君  外四名提出、第七十七回国会衆法第一二号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案武藤  山治君外四名提出、第七十七回国会衆法第一三  号)  土地増価税法案武藤山治君外三名提出、第七  十七回国会衆法第一四号) 同月三十日  税制改正に関する請願外四件(田邊誠君紹  介)(第三五号)  税制改正に関する請願外四件(小林進紹介)  (第三六号)  同(佐野進紹介)(第三七号)  同(田中武夫紹介)(第三八号)  同(楢崎弥之助紹介)(第三九号)  同外二件(堀昌雄紹介)(第四〇号)  同(湯山勇紹介)(第四一号)  同(阿部哉君紹介)(第五六号)  同(阿部哉君紹介)(第一三四号)  同(森井忠良紹介)(第一三五号)  米軍基地跡地利用に関する請願赤城宗徳君  紹介)(第六〇号)  企業組合に対する課税適正化に関する請願(  山本幸一紹介)(第一三一号)  同(吉田法晴紹介)(第一三二号)  付加価値税新設反対に関する請願佐野進君紹  介)(第一三三号) 十月五日  府中市の米軍基地跡地地元利用に関する請願  (長谷川正三紹介)(第一九一号)  同(福田篤泰紹介)(第二五〇号)  支那事変賜金国庫債券償還に関する請願(竹  中修一紹介)(第一九二号)  同(武藤嘉文紹介)(第一九三号)  税制改正に関する請願瀬野栄次郎紹介)(  第一九四号)  高等学校新設のため国有地無償貸し付けに関  する請願長谷川正三紹介)(第一九五号)  拘束預金禁止に関する法律制定に関する請願  (天野光晴紹介)(第二四九号) 同月七日  企業組合に対する課税適正化に関する請願  (藤井勝志紹介)(第三六七号)  府中市の米軍基地跡地地元利用に関する請願  (小山省二紹介)(第三六八号)  支那事変賜金国庫債券償還に関する請願外二  件(上村千一郎紹介)(第三六九号)  同外二件(小泉純一郎紹介)(第三七〇号)  同(伏木和雄紹介)(第三七一号)  同外一件(船田中紹介)(第四三七号)  同外一件(河野洋平紹介)(第四七六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  小委員会設置に関する件  国の会計税制金融及び国有財産に関する件      ————◇—————
  2. 田中六助

    田中委員長 これより会議を開きます。  まず、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国の会計に関する事項  税制に関する事項  関税に関する事項  金融に関する事項  証券取引に関する事項  外国為替に関する事項  国有財産に関する事項  専売事業に関する事項  印刷事業に関する事項  造幣事業に関する事項の各事項につきまして、今会期中国政に関する調査を行うため、議長に対し、国政調査承認要求を行うこととし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中六助

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 田中六助

    田中委員長 この際、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  先刻の理事会で協議いたしましたとおり、それぞれ小委員十四名より成る  税制及び税の執行に関する小委員会  金融及び証券に関する小委員会  財政制度に関する小委員会  金融機関の週休二日制に関する小委員会を設置することとし、各小委員及び小委員長委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田中六助

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、小委員及び小委員長は、追って公報をもって指名いたします。  なお、小委員及び小委員長辞任の許可並びに補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 田中六助

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  また、各小委員会において参考人出席を求め意見を聴取する必要が生じました場合は、参考人出席を求めることとし、その人選及び出席日時等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 田中六助

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  8. 田中六助

    田中委員長 この際、先般大蔵政務次官に就任されました高鳥大蔵政務次官斎藤大蔵政務次官より発言を求められておりますので、順次これを許します。高鳥大蔵政務次官
  9. 高鳥修

    高鳥政府委員 去る九月二十日大蔵政務次官を拝命いたしました高鳥修でございます。  時局重大な折から、微力ではございますが、一生懸命務めたいと存じます。何とぞ先輩各位の御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げます。(拍手
  10. 田中六助

  11. 斎藤十朗

    斎藤(十)政府委員 このたび、はからずも大蔵政務次官を拝命いたしました斎藤十朗でございます。  このむずかしい時局にかんがみ、自重自戒し、職責の遂行に誤りなきを期してまいる所存でございます。高鳥政務次官ともども、よろしく御指導のほどお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  12. 田中六助

    田中委員長 国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  13. 高沢寅男

    高沢委員 きょうは大臣もいらっしゃいますので、私は大臣また岩瀬理財局長吉岡理財局次長お答えをお願いしたいと思いますが、最近大蔵省が決められました米軍基地跡地処分の方針、いわゆる三分割有償方式、これについてお尋ねをいたしたいと思います。  私たちはこの三分割有償方式というやり方には反対でございまして、そのやり方を是正していただくために今後いろいろなこともまたいたしたいと思いますが、きょうはそういうことの前提として、このやり方について大蔵当局がどういうふうなお考えを持っておられるかをお尋ねするということでひとつお聞きをしたいと思います。  私、最初にお尋ねしたいことは、この三分割有償方式というやり方行政措置として進められる、その行政措置とそれから国会のいわゆる立法措置との関係について最初お尋ねしたいと思うのでありますが、昭和四十八年の七月に国有財産法それから国有財産特別措置法改正が行われたわけであります。その改正の中において、人口急増地域小中学校義務教育施設に対しては土地無償貸し付けができる、あるいはまた高等学校の場合に対しては五〇%の減額譲渡ができる、こういうふうな内容改正が行われました。また公園用地についてはこれも同様に無償貸し付けができるというふうなことになったわけであります。そしてまたこの規矩に基づいて、実際にそういう無償あるいは五〇%の減額譲渡、こういう措置もとられてきているわけであります。しかも、私非常に重要だと思うのは、その法改正がなされたときに、附帯決議もあわせてなされているわけであります。この附帯決議は、わが党の武藤委員が提案をいたしまして、決定されている附帯決議でありますが、その中にこういうふうな柱があるわけであります。「米軍提供財産返還後の処理については、国民の福祉に役立つ公用・公共用に優先的にあてることを原則とし、できるだけ住民の意思を反映させ地域の再開発、住民福祉向上等に資するよう配慮すること。」こういう重要な柱が附帯決議として確認されているわけであります。  この附帯決議の精神、あるいはまた小中学校用地無償貸し付けができる、高等学校は五〇%減額譲渡ができる、公園用地無償貸し付けができるというような法律内容も、これはいずれもその地元住民あるいは地元地方公共団体立場というものを非常に配慮された措置であった、こう考えるわけです。この措置が進められてきたところへ、今度は今回の三分割有償方式というものが出てきて、そしてこの三分割有償方式という行政措置によって、昭和四十八年七月の法律改正でなされてきたこの内容が、ここでもっていわば否定されるというようなことになるとすれば、行政措置立法措置との関係は一体どうなるかということになると思うのです。私は、もし大蔵当局が今回のような措置がどうしても必要であると考えられるならば、むしろそういう内容立法措置を出してきて、国会でそういう立法措置が承認されるという上に立って事を進めるというのが、こういう問題の処理原則的な態度じゃないか、こう考えるわけですが、この点については、基本的な問題でありますから、ひとつ大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 いわゆる三分割案に対しまして、原則的に反対だというお立場のようでございますけれども、まず大蔵省立場を聞いてやろうということでございますので、その点は感謝します。  それから、第二点といたしまして、立法行政との関係でございますけれども、今度大蔵省の方で考えましたことは、既往の立法にさわるものとは考えていないわけでございます。あなたもいま言われましたとおり、無償とすることができる、あるいは二分の一までまけることができる、この「できる」ということは、行政府にそういう裁量のリミット、限界をお示しいただいたことでございまして、行政府がそこまでどうしてもやらなければならぬということは立法していないはずでございまして、行政府がその範囲内において、具体的に妥当な判断を、裁量を許されたものと私ども考えておるわけでございまして、今度の三分割案はそういう意味で、行政権裁量限界内で作案いたしたもので、立法権を侵すものというようには考えておりません。  それから第三の問題でございますが、有償原則有償の色を濃く出したことでございます。もとより私どもも、国の財政が大変楽でございます場合におきましては、長い間基地の存在によって御不自由をかけた地元でございますから、可能な限り地元の方々のために図って差し上げたいのはやまやまでございます。けれども、今日米軍基地整理統合ということは、私も長くそういう関係の仕事をいたしておったわけでございますけれども、むしろこのように基地周辺経済事情が緊張してまいりました段階におきまして、何としても米軍施設を集中することによって基地整理を促進する、そこで出てまいりました空間をできるだけ地元並びに国家、公共の用に振り向けるということでないといけない時代が来たのではないかということで、盛んに米軍にもそういう理解と協力を求めてまいったわけでございます。そのことにつきましては、原則的に米軍側理解を示したわけでございますけれども、そのかわりに、その施設のリロケーションによる費用日本側で持っていただくということを米軍側が期待するのも、また無理からぬことであったと思うのでございます。したがって、いわば相当の代償を払わなければならぬ整理統合であったということでございます。一般財政事情が非常に楽でございますならば、そういったことは当然一般会計が食掛いたしますのが順序であろうと思うのでございますけれども、御案内のように、財政事情が非常に窮屈なときでございますから、こういう時期に、事情の許す限りは有償でひとつお引き取りをいただくということができまいかというように考えました私ども考え方にも、御理解を賜りたいものと思うのであります。
  15. 高沢寅男

    高沢委員 その有償考え方についてまた後でお尋ねをしたいと思いますが、ただその前に、いま大臣が言われた、「できる」ということはここまで到達できるといういわば枠を示して行政はその枠の中でやれるということなんだということですが、今度の大蔵省措置によれば、米軍基地跡地に関しては、もう無償小中学校への貸与はできなくなるのです。二分の一は時価で買いなさい、こうなるわけでしょう。残りの二分の一は五年間無償で貸します。これは、いままでは無償で借りられた小中学校が、今度は、ならせば時価の五割で買うという形になって、しかも五年間無償で借りる二分の一の土地も、後で有償で引き取らなければいかぬということになってくるわけですから、そうすると、この法律でここまでやってよろしいという、そのここまでということが、今度の措置では全然届かなくなるということになれば、これは法律の「できる」というその趣旨そのものが否定されることになるのじゃないか。だとすれば、それはやはり法律改正をするのが筋だということになるのじゃないでしょうか。そこだけもう一回お尋ねしたいと思います。
  16. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 いま大臣が御説明をなさいましたとおりでございますが、優遇措置を決めました規定というのは、大蔵大臣裁量を認めているものと解されまして、すべての場合に最高限優遇措置適用すべきものというのではございません。そこで、現在の返還財産につきましては、一括して大量な返還財産返還されたわけでございますから——従来はこれに対して、実はきわめてばらばら価格が行われておったというのが実態でございます。そこで、実は今度の米軍財産返還につきましては、移転経費というものを当然に伴っておりますので、それが非常に高くついたところと余りかからないものとを別々に処理するよりも、統一価格で決める方がむしろ効率的かつ公平ではなかろうかという判断のもとにとられた措置でございまして、これはあくまでも大蔵大臣裁量に基づいてやれる、いわゆる判断がそこに行われたわけでございますから、私どもとしましては、統一とれたものとなっているからこそ、かえって地元関係から見れば、過去において安かったものに比べて高いではないかという御意見も出てくるわけですが、過去において高かったところから比べれば、その統一価格というものは逆に安いじゃないかという御議論も出てくるわけでございます。そういうことがないようにするための統一価格ということでございますから、いまの最高限度優遇措置適用しないでというか、その範囲内では最高限という形をとりませんでしたけれども統一価格という形においてこたえることは、法律に対して違反するものではないというふうに考えておるわけでございます。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 いまのところもう一回。最高限はここまでできると法律にある。しかし、行政最高限までいかないで、それの半分ぐらいのところとか、それの七割ぐらいのところとかという形で行政では処置される。それはわかりますよ。わかりますけれども、少なくともそういう幾つかあるケースの中で最高限のところまでいくケースも出てくるということで、初めて特別措置法無償貸し付けができるという規定意味が出てくるのであって、「できる」と書いてあるけれども、実際のケースでは無償という最高限ケースへ到達することは全然ないんだ、というようなことになれば、この無償でできるという法律規定自体意味を持たなくなるということを私はお尋ねしているわけです。
  18. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 私ども、「できる」という規定を完全に無視していこうという気持ちは毛頭ございません。ただ、今度の返還財産に関するケースは何分にも多額の移転経費を必要とするものでございます。それから、基本的にはもちろん国の財産でございますから、国有財産として一括して返ってきたものに対して一括して処理するという形におきましては、統一価格という形をとることは、別に法律が決めている最高限というものによらなくても、これは有償移転経費を伴ったものと——過去において移転経費の伴わなかったものの処分の場合には、もちろんこういう最高限優遇措置適用を受けたものは幾らもございます。それから、逆にそういう最高限適用措置がありながらいまの統一価格よりも高い値段でもって地方公共団体に供与したという例もあるわけでございますから、私どもは今度の場合は統一的な価格によってやることが一番公平であるというふうに判断したわけでございます。そういたしませんと、同じ時期に返還されました財産の中で、ある地域ではこれが無償であり、あるところでは有償である、しかもそれが非常にばらばらであるというようなことになりますと、返還財産全体がもう何か——国移転経費を相当払ったために、それによって初めて返還財産としてどいてもらったわけでございますから、これはそれだけの費用もかかっているということを考えますならば、最高限という法律で決められた優遇措置限度はございますけれども、この際は統一して全部統一価格でもって処理をするのが最も適当であると判断をいたしたわけでございまして、繰り返すようでございますが、統一価格というものは決して最高限というものの優遇措置を否定したものではないというふうに私ども考えております。
  19. 高沢寅男

    高沢委員 私、納得できないわけですけれども、そういうことであれば、小中学校に関して無償貸し付けというケースは現実には出てくることはないということなら、そういうものとして法律を手直しすることがやるべき原則だ、こう思いますが、ずっと同じお答えが繰り返されるようですから、次へ進みます。  今度の三分割有償方式という措置について、これは私がちょっと聞いた話ですけれども、ことしの二月の段階の話、したがってこの措置が六月に最終的に決定される前の段階ですが、キャンプ朝霞がありますね、キャンプ朝霞に関する返還財産処理対策連絡会というものが、ことしの二月の段階で開かれて、ここには大蔵省、自治省、建設省、国土庁それから東京都、埼玉県、こういうふうなところの代表が出席された。ここで大蔵省の代表から、この三分割有償処分考え方が説明された。  その説明に対して、私のお聞きしたところでは、自治省あるいは建設省の方からかなり強く反対意見があったということであります。東京都や埼玉県が地元関係の自治体として反対している、これも当然のことでありますけれども、自治省の方はそのときこういうふうなことを述べたということです。機械的な三分創案はおかしい、基地跡地処分地域の実情を踏まえてやるべきである。それから小中学校は、国の責任でやっている義務教育でもあり、また地方財政に影響を及ぼす、そういうことになるから有償処分はやるべきではない。それから、基地移転経費を生み出すために有償にするならば、それに必要な面積だけを有償にすればいいじゃないか、それ以上を有償とするということはおかしいじゃないかというような意見を自治省の代表の人は述べた、こう聞いているわけです。建設省の代表の人は、この地域の実情を踏まえて処分すべきであるということと、それから保留地という白紙の部分を設けるということは、それでは全体を踏まえた都市計画が立てられなくなるというようなことから反対であるということを述べられた、こういうふうに聞いているわけですが、六月二十一日の段階で最終的に大蔵省としてこういう処置を決められた、この現在の段階で、こういう自治省なり建設省なりというふうな政府部内の他の省庁とのこの点についての意見の統一は、一体完全にできているのか。こういうふうな意見の違いはいまでもあるのかどうか、大蔵省ではどういうふうに把握されておりますか、お聞きしたいと思います。
  20. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 ただいま先生のおっしゃいました、二月十八日に開かれました返還財産処理対策連絡会といいますのは、われわれが実務者、課長レベルで開いておりますその関係機関の協議会でありますが、ただいまおっしゃいましたように、二月十八日に国の方から大蔵省、国土庁、建設省、自治省、それから関係都県との間で会議を開きました。その際、いわゆる三分割方式、われわれがそのときはまだ小委員会で議論していた段階でありますが、それをお示ししたわけです。それに対して自治省の担当者の方から、現在のような地方財政困難な事情もあるので運用面で十分考慮してもらいたいというような要望がなされたことは確かであります。それから建設省の方からは、具体的に反対意見というものは別に出されなかったように聞いております。  それで、その後六月二十一日に国有財産中央審議会において最終的な答申を得るまでの間に、さらにいろいろ関係省の話も聞いておりますが、その際においては政府部内としては十分意見調整を行っておるわけでありまして、現在政府としてこの答申の趣旨にのっとり、個々の返還基地跡地については関係者間で具体的な利用計画について話を進めていくということで意見の一致を見ておるわけであります。この問題は地方行政委員会なり建設委員会でも御質疑があったわけでありますが、その際、自治大臣、建設大臣からもこのような大蔵省の方針については理解できるというような御趣旨の答弁がなされておるわけでありまして、現在のところ政府部内においてそういう意見の不統一があるということはございません。
  21. 高沢寅男

    高沢委員 政府部内ではこの点ではもう意見が一致しておる、こういうお答えですが、われわれがこれからいろいろ運動するときはここが一つのつきどころになりますから、この点は今後も十分ひとつ御注意された方がいいのじゃないかと思います。  そこで次に、これもこの問題に関する根本的な考え方の問題になりますが、こういうことをお尋ねしたいと思うのです。九月二十四日に、東京周辺のこういうふうな米軍返還跡地関係している各自治体の人たちの代表で米軍基地跡地の全面無償地元返還を闘う首都圏連絡会議、こういう非常に長い名前ですが、そういう会議ができております。この会議の代表の人たちが大蔵省を訪問して、理財局長また吉岡次長なりそういう方々にお会いしたときに、吉岡次長がこういうふうに言われたというのです。私はまさかそういうお考えはないと思うのですが、国有財産なんだからこれは本来は国が全部使うというのがあたりまえなんだ、そこのところを三分の一は地元でお使いなさい、こう言っていることは国としては最大の配慮をしたものなんだということで、この三分割方針、三分の一地元で使えるということは物すごく地元に恩恵を与えているのだというような意味のことを言われたということで、そこに行った代表の人たちがこういう考え方では因るじゃないかというふうなことも私案はお聞きしたわけです。まさかそういうふうなお考えはないだろうと思うのですが、米軍基地返還されればそれは確かに国有地です。国有地であるわけですけれども、その基地というのももとをさらにたどってみれば、その地域の農民の所有していた山林であり畑であったもの、これが旧軍の時代に強権的に接収されて、そして米軍基地になっていった、こういう経過があるわけです。したがってこういうふうな土地の利用の方法もそういう経過を当然十分踏まえて決められなければならぬということだと思うのですが、まさか吉岡次長、そういうお答えをされたかどうかということ、またそういうお考えを持ってこの処理に当たられているかどうかということを、私はないと思いますが、ひとつ念のためにお考えをお聞きしたいと思います。
  22. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 去る九月二十四日に、ただいまおっしゃいましたように米軍基地跡地の全面無償地元返還を闘う首都圏連絡会議という方々の代表者と私がお会いしましていろいろお話しをいたしました。その際われわれが御説明しました考え方は、国有地というものは地元住民も含めた国民全体の貴重なる財産である、そういう国民全体の立場からその最も有効な活用を図るべきであるという趣旨のことを申し上げたわけでありまして、国有財産といいましてもその地元からよそに動かして持っていけるわけではありません。ですから、国が使う場合でももちろん地元との十分な話し合いの上でなければ利用計画は立てられないわけで、そういう意味地元住民も含めた国民全体の立場から最も有効な利用を図るべきであるという趣旨のことを申し上げたわけであります。ですからわれわれとしては、今後これら米軍基地跡地の利用計画を具体的に作成していくにつきましては、地元関係者と十分話し合ってこの計画を立てる、こういう考えであります。
  23. 高沢寅男

    高沢委員 地元と話し合いしながら、同時に国民全体の立場、じゃ、それは、たとえばそこに公園ができるのか、学校ができるのか、あるいは何か政府関係機関の施設ができるのか、そういうふうに具体的なことになってきた場合に、いまのそういう地元との関係を前提にしながら、しかも国民全体の利益というふうなこの物差しの当て方は、具体的なものに対して非常に抽象的な物差しを当てるということになるわけですね。そこでその判断がいろいろそこに分かれてくるということになると思うのですが、われわれの考えでは、過去に土地を取り上げられたとか、基地があることによっていろいろな有形無形の被害を受けたというこの地元立場、これを何か償うことができないかということを第一に考えながら、同時に、国有地処分ですから、国民全体の利益ということも当然そこに結びつかなければいかぬというふうなことになってくれば、たとえば学校施設であるとかいうふうな、特に地元が非常に希望するのはそういう施設が多いわけです。学校施設であるとかあるいはまた公園施設であるとか、そういうふうなものになるのが、いま吉岡さんの言われたそういう物差しから言っても、きわめて適当な利用の仕方になるのじゃないのか。そうしてそれが今回の地元と国と保留地の三分割の中の地元というものが非常にそういう性格を持ってくるということなんであって、そういうことから三分割ではなくて、全体としてそういう使い方を地元に認めろということをわれわれが言うのはそういう考え方からなんであって、いま吉岡さんの言われたそういう地元との関係も前提に考えながら、しかも国民全体の利益、こういう非常に抽象的な物差しを現実のどういう施設をつくるかということに当てはめるときに、いま言ったような考え方をぜひ持ってもらいたい、私はこう考えるわけでありますが、もう一度この点について古岡さんのお考えをお聞きしたいと思います。
  24. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたような考え方、そういう考え方に基づいてこそ今回のこの三分制方式というものが出てきたわけであります。いわゆる首都圏における残された広大な貴重な国有地の利用方法に関しては、ただいま言われましたような、基地の存在によって地元がいろいろな影響を受けてきた、そういう経緯もあります。それから残り少ない土地でありますので、国の機関としてもこれを利用していきたいという需要が非常に多いわけであります。と同時に、いわば残された最後の国有地でありますので、現時点においてすべての利用計画を決めてしまうのではなくて、将来のためにこの際いろいろ保有していくべきじゃないかという意見もあるわけです。そういういろいろな意見を調整していく手段として三分割の原則というのが審議会の先生方でいろいろと長い期間御議論願って答申を得たわけであります。ですから、われわれとしてはそういう三分割の原則はそういう考え方に立っておると考えておるわけであります。ですから、それの運用については、全体としてそれぞれ国なり地元地方公共団体なりが計画を突き合わせて、そして全体として最も有効的な利用を図っていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  25. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 いまの次長の説明で尽きるわけでございますけれども、私も何回かいろいろな地元の団体の方とお会いしておりまして感じますことは、私どももかなり気を使って物を申し上げておるつもりなんでございますけれども、それはやはり長い間基地の周辺で非常に被害を受けられたとか、あるいは悩まされたとかいう御体験からにじみ出てくるお気持ちというものは十分よく私どももわかるし、またそれは行政当局として理解していくべきであると私ども当然思っております。ただ、何せもはや首都近辺にまとまった国有地というものは、その返還財産以外にはないと言っていいぐらいであろうかと思います。そこで、抽象的だとはおっしゃいましたけれども、実はその抽象的な表現の中に非常に意味がありますのは、何回かいろんな議論をしながら結局三分割というところに到達した。それはただ足して三つに割るというようなものじゃなくて、どうしてもやはりその土地土地のいろんな御事情というものもあくまでも私どもは尊重せざるを得ませんし、していくべきだと思いますが、地元とのお話の段階でそれは具体的になっていくのであって、初めから国はけしからぬ、たとえば留保地というのは国が将来取ってしまうんじゃないかというようなお話をよくなさるんですけれども、先ほど古岡次長も申しましたように、土地でございますから、よそへ逃げてしまうものでもございません。そうなると、留保地は、将来の地元の需要というものを中心にした考え方、あるいはそれを生かした考え方というものを現実には念頭に入れざるを得ないわけでございます。ただいまは決められない、そういうようなものでございますから、どちらの角度からいきましても、地元に対して私どもは対抗していくという考え方よりも、むしろ地元とよく話し合っていくという基本ラインを絶対に捨ててはおらぬわけでございます。ただ、国有地でございます。それを言うとまたしかられるのですけれども、やはり国の財産でございます。したがって、国も使わしていただくという、そういう形のものはどうしてもこの国有地の貴重な中で必要なことであるから、それを私どもとしては申しますと、国のエゴだというふうにおっしゃる場合がありますので、先生はよく御理解いただいておりますけれども、そういう点を御理解いただいても、抽象的な答弁でございますが、気持ちは大蔵省地元に対しての立場考えるという点はちっとも変わっていないつもりでございます。その辺を御理解いただきたいと思います。
  26. 高沢寅男

    高沢委員 じゃ、いまの岩瀬局長お答えを私なりにもう少し解釈して進めれば、保留地というのはこれは五年、十年先にどういうふうな需要が出てくるか予測できないというところで保留しておいて、そういうふうな需要が大体見通しのついた段階で利用の仕方を決めるということだけれども、その利用の仕方を決める方向は、地元の利益といいますか、あるいは地元の要望といいますか、地元の計画というふうなものが当然優先される、そういう趣旨の御説明であったと思います。そうすると、ごくわかりやすく言えば、保留地という形はとるが、この保留地というのは、時間的に少し後になるけれども、これも結局地元利用という枠の中で考えていいんだというふうに私は受け取りたいのですが、そういうふうに受け取るということでよろしいですか。
  27. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 優先というお言葉を伺いますとちょっと私どもしり込みしてしまいますが、そういうことではなくて、地元の御要望なりお考えというものは恐らくその時点において当然にまたあるだろうと思います。そういうものを無視したようなあるいは理解をしないような、そういう決め方というものはいたしません、こういうことでございまして、それで土地はそこにあるわけでございますから、要するに地元の方々の御需要というものは当然に私どもはよくわかってくると思います。ただし、そこに国が劣後であって、国のいかなる重要な問題や国民全体が渇望するような計画であっても、それは地元の御希望が優先するというふうに解釈していただいては困る。そこにむずかしさがありまして、御理解をいただきたいというのはその点なんでございまして、御理解いただけると私は確信いたしております。
  28. 高沢寅男

    高沢委員 それではもう一回三分割の問題をお聞きして、いまの点にもう一回行きたいと思うのです。三つに分けるということは、これは三等分ということなのか、あるいはA地域、B地域、C地域と三つに分けるけれども、その分け方は必ず三、三、三に分けるということなのか、そのときのその場所の状況によって二、三、四というような分け方も一体あるのか、そういうふうなこの辺の弾力というものは一体あるのかどうかということをお聞きしたいと思います。
  29. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 大体おおむねという言葉を使っております。おおむねでございます。ぴったり一平米も違わず三つに割るというようなことではございません。そこはかなり、地元の御希望がある場所というようなところがどの辺であるかということを伺いながらやはり決めていく問題であろうと私は思っております。
  30. 高沢寅男

    高沢委員 われわれはおおむねという言葉の場合には相当幅をもって考えますので、ひとつそういうことで理解をしたいと思います。  それで、ただ、いま言われた原則、つまり五年、十年先の需要を見なければ確定できない、そういう要素として保留地を置くという考え方、これは米軍基地跡地というだけでなくて、そういう考え方が妥当であるということになれば、それ以外の国有地、たとえば筑波学園ができますね。そうすると、そこへいろいろな施設が東京の都内から移転していく、跡地があいてくるというような場合の利用の仕方、そういうところへもこの原則適用されるのかどうかということをお尋ねしたいと思います。
  31. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 筑波地区はまだ実はこれから、あれは特別の地域でございますので、まだ案を考えておるわけでございます。  ただ、三分割三分割と申しますのは、とにかく十万平米程度、大きさで言いますと、三万坪以上の土地に対して初めて申し上げることでございますから、むしろ小さい地域——いまこの返還財産を除きますと、東京周辺に三万坪以上の土地というものはございません。そういたしますと、むしろ三分制などと分けること自身が効率が悪うございまして、まず大きなところだけをねらっておるわけでございますので、今度の返還財産につきましても、それは先生よく御承知でございますけれども、筑波は別ということで、あとは大体この方式を考えております。
  32. 高沢寅男

    高沢委員 その国の利用する部分ということになってくるのですが、実は地元関係の方が、国が利用するというと非常に警戒心を持ちます一つの大きな理由は、国というときには大抵そこに自衛隊が出てくる、あるいはいろいろな警察関係施設が出てくるというふうなケースが多い。従来も米軍がその返還した跡へすぐさっと入れかわりに自衛隊が入る。立川なんかそうですね。というふうなケースから、ここは国が使うのだ、こうなると、じゃそこへ自衛隊が来るのじゃないか。所沢でもいまそういう問題が出ていますね。そういうふうな地元では国のという場合に非常に警戒心があるのですよ。国のと言ったって、たとえばそこに国の病院ができて、地元福祉の面から非常に歓迎されるというようなものであれば、国のと言ったってそれでそんなに文句が出るということはないと私は思うのですよ。  そういう意味において、国の施設というものの今度内訳になるわけですが、いまからそういう内訳を全部、これはこうなる、これはこうなるということはそれはまだ今後の問題だと思いますけれども、ただ、いままでのケースで見れば、自衛隊なり警察というふうな地元にとって因る施設が出てくるケースが非常に多いということからこういう反応が出ておる、反発が出ておるということを私申し上げたいと思うのですが、これについては大蔵省としてはどういうふうにお考えになっているか、お聞きしたいと思います。
  33. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 最後に残された国の貴重な土地でございますから、国としてもやはりいろいろ使用を検討するということでございまして、その場合に、先ほどから何遍も申し上げておりますように、地元地方公共団体と十分よくお話し合いをしていくということを私ども原則としたいと思いますが、いまの先生のお話のように、国の中のどの部分というのは困るというような、全くそれを頭からはねつけるような考え方をいまから私どもはとるつもりはございません。やはりそれは地元とよくお話をつけた上で、国は国として一つの考え方を持つべきでございます。その上でお話を申し上げるということはあり得る。しかし、いま私の答弁はこういうことでと申し上げますと、もうそんなことを考えているのかということは、全くの白紙でございますが、抽象的な点から言いますと、いまおっしゃったような機関を全く考えないというふうなことをいま申し上げる段階ではございません。
  34. 高沢寅男

    高沢委員 この点は、いまから自衛隊の関係は絶対入れませんというところまで局長のお立場お答えできるとは私は思いませんけれども、しかし、そういうものが出てくると、全体に処理方針の関係地域では、そらやっぱり出てきたということで、それだけ反発も強くなるし、かえってこの問題の円満な処理を妨げる結果になるということはそちらでもよく理解をしてこの処理に当たっていただきたいということは、ひとつ念を押しておきたいと思うのです。  その三分割の中の一つである保留地の問題ですが、これは、七月五日に閉会中審査の委員会がありまして、その際わが党の佐藤委員から質問して、これに対する岩瀬局長お答えで、保留地を五年、十年の間保留するわけですが、しかし将来の有効な利用を妨げない範囲内で地元民の利用に供するように配慮する、だから、保留している間もただバラ線で囲って草を生やしておくということではなくて、利用のできる方法はとるが、その利用のできる方法は地元の利益になるような方法で考慮するということを言われております。このことは私はこの委員会でももう一度確認をしたいと思いますが、そういうふうな方法をとられるということで理解してよろしいですか。
  35. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 保留の意味は将来の有効な清川をということでございますから、それを妨げる、たとえば恒久的な建物がそこに建てられるとかあるいは後でそれをいわゆる本当の目的に使おうと思うときに大変な支障になるというような問題がないことを前提にいたしますならば、地元とよくお話をして、暫定的にそれを地元民のために使うということを慎重にお互いによく相談をして——またお約束は守ってもらわなければいけません。一回そこで使ったらもうこれは絶対にもとへ戻さぬというような前提では困るんでございますが、暫定的なものとしてその一部がたとえば子供さんの運動に使われるとかというような問題は、私どもはむしろ留保期間中には活用するのは当然だというふうに考えておりますので、そういう具体的な問題には地元とよく話し合って入っていきたいと思います。
  36. 高沢寅男

    高沢委員 そういう場合には地元関係の自治体にそういうふうな暫定的管理というものを任せるといいますか、そういうふうな措置をとられるかどうか。それが一つ。  それからもう一つは、キャンプ朝霞ケースで私隣の埼玉県の和光の方の人たちから言われているのですが、非常に広い区域が国有地ということで、向こうの団地へ行くのに、あるいはバスの停留所へ行くのに、その真ん中を通っていけば簡単に行けるのに、中を通してくれないからずっと遠回りをしなければいかぬというふうなことなんかも、地元では通してくれたらいいじゃないかというふうな意見があるのです。こんなこともいま言われた地元の暫定的な利用ということの中で解決できるというふうにお答えをいただきたいと思うのですが、その点をひとつお聞きしたいと思います。
  37. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 ただいまの和光市の通り抜け通路のお話をわれわれとしてもよく伺っております。それで地元住民の方からよくそのお話を伺ったわけです。早速和光市当局の方といろいろ話し合ったわけですが、何せ基地跡地の一部、それから隣にまだ米軍基地が残っておるような地域でございますので、その間そこを一般公共用の道路として使うとなりますと、さくをつくるなりして十分管理の責任を持っていただかないといけないわけであります。そういう点も含めまして和光市と話し合ったわけですが、和光市の方がそういう責任は持てないというようなことでどうも和光市当局がちゅうちょしておられるというふうにわれわれは伺っておるわけであります。
  38. 高沢寅男

    高沢委員 責任を持つという言葉の内容が、いつもそこに市の職員が通路の横についていて見張りをしているとかというところまでやれということになれば、これは、市の当局としてもそこまではできぬというふうなことになるかと思いますが、そこの利用というのは、どうせ子供たちが学校に行き帰りするとかあるいはバスに乗っていくのにそこを通るとかいうような、ごく近所の関係の人たちの利用というのが主体になるわけですから、そういう関係の人たちでそこの道を通る通り方についての一種の自治的なものをつくって、それで管理するというふうなことに委託することだってあると私は思うのです。そういう場合も当然市との話し合いの中でその地区の町会なりその地区の自治会なりというふうなものとの関係でそれができればということになると思うのですが、これは大蔵省の方で前向きなお立場がもしあれば、地元住民はそうしてもらいたいという非常に強い要望なんです。これはもう一歩前向きに処理を願いたいと思うのですが、いかがでしょう。
  39. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 地元がちゅうちょしておられますのは、もちろん四六時中監視人を置けとかいう厳しい条件をこちらが申しておるわけじゃありません。ただ基地の中で、現に隣に米軍基地も存在しておるところでありますので、いわゆるさくのようなものはつくっていただかないと一般に開放することはできない、こう申し上げておるわけです。ですから、さくをつくる負担その他の問題で地元としていろいろまだ検討しておられる、こういうように思っておるわけであります。なお、われわれとしてもちろん地元とその辺さらに話を詰めて、打開策などができれば考えていきたい、こう思っております。
  40. 高沢寅男

    高沢委員 じゃ、この問題はまた私も、前にそういう要望を和光から受けた経過がありますから、その人たちとも相談してみて、その上で地元としては何ができるかということもよく詰めて、そちらへまた御相談しますから、前向きな処置をお願いします。  今度は関係地元地方公共団体関係になるわけですが、基地跡地所在の地方公共団体は御承知のとおりどこでも、いずれ跡地返還される、返還されればここへこういうふうな道路をつくろうとか、こういう施設をつくろうとか、こういう公園をつくろうとか、みんなそれぞれそのためのプランをつくっているわけです。それができれば地域の環境は非常によくなるということでみんなプランをつくっているわけですが、そういう開発プランをつくるための時間的な関係やあるいは労力やそのための費用というふうなものは各関係の自治体として相当なものを負担して一生懸命やってきたわけですね。ところが今度の三分割有償方式というものが出てくると、そうやってせっかくつくったプランが全部御破算になってしまう、こういうふうな状態にみんな置かれておるわけです。このことについて、ともかく各自治体が一生懸命喜んでそういうプランをつくってきたという経過は大蔵省でも御存じのはずなんであって、そういうふうなプランを結局御破算にせざるを得ないということに対して大蔵省としてはどういう責任を感じておられるのか、またそのことに対してどういうふうな処置をなさるお考えか、それをお尋ねしたいと思います。
  41. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 いろいろの御計画が存在し、かつ御苦心なさっていらっしゃるという話も伺っておりますけれども、そういう問題も、国有財産中央審議会でいろいろ御検討いただいたこの三分割方式は、それはそれなりに地元の方にも理解していただいて、またわれわれの方も地元の御計画を参酌しながらお話し合いを進めていくという以外にはございませんで、返還される前の国有地に対して地元がいろいろ御計画をなさったその費用を国に負担しろと言われましても、これは私どもとしても御相談に応ずるわけにはまいりませんけれども、でき上がっておりますプランというものを地元の御意見として拝聴することについては、私ども地元との御協議の中には当然に入れてしかるべきであろうと思っております。
  42. 高沢寅男

    高沢委員 この三分割方式を地元と話し合って理解してもらう、こう言われるわけですが、少なくも私の承知している限りでは、関係の自治体、そこのたとえば市長さんが革新の市長さんの場合もあるし、そうでない保守の方の市長さんの場合もありますが、これはもうその区別なしに、どこも今度の三分割有償方針は困る、これはとても受けられないというふうな非常に強い立場を一致してとっておられるわけです。ですから、そういう地元に対して理解をさせる、あるいは協力してもらうというふうになるためには、これは私は大蔵省の方から、国の方からやはりかなり積極的なものが出ていかないと、なかなか地元理解するということにはいかないのではないか、こういう感じです。  そこで、その積極的なということの中身に、さっき言いました保留地というものの性格の理解であるとか、あるいは三分割の三つの割り方のおおむねの幅であるとか、いろいろの問題が出てくると思うのでありますが、いまのそういうふうな一生懸命いままで計画をやってきた、その計画がいわば死んだ計画になるということに対してどうするかというふうなことも、それは大蔵省としても言い方はいろいろあると思いますが、実際上の内容としてはそういうところもかなり前向きに出さないと、地元理解する、協力するということには私はいかぬと思うのですが、その辺の一種の呼吸といいますか、ここら辺の呼吸は一体局長どの辺くらいまでお考えか、やはりこの際お聞きしたいと思うのです。
  43. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 その原則をつくっておきまして、その原則はまだひとり歩きしておりませんところに、何かすぐ例外が入ってくるようなたてまえというのは、これは行政としては全くまずいことでございますので、私どもはそういうことではなくて、むしろ具体的に、やはり土地でございますから、そこに川があったり道があったり、いろいろあるわけでございます。そこに、図面の上でというかあるいは紙の上で三つに割るというものと違いまして、地形とかいろいろな計画との間のなじみが出てくるわけでございます。そういった具体的な問題を伺った上で判断するということは、三分割の原則の上にとって、私ども地元との話は可能だと考えております。その辺の御理解をいただければ、いただけるのではないかというふうに思っておるわけでございます。少し甘いかもしれませんが、それは大蔵省の現在の立場の最大限の弾力的な考え方だというふうに御理解いただきたいのでございます。
  44. 高沢寅男

    高沢委員 私は、いまの局長の言われた考え方は私から言えばかなり甘いのではないか、こう思うわけです。そこのところは、よほど地元との関係ではこれからも前向きにひとつ勉強していただいた方がいいのではないか、こういう感じがしますが、それに関係して、ここは白くしておくという保留地の部分が約三分の一あるというこの状態のもとで、その返還跡地関係する都市計画の決定というふうなものを、これは一体どういうふうに現実には処置をされるか、お聞きしたいと思います。
  45. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 現在の米軍基地跡地の都市計画上の決め方についてはいろいろまちまちになっておるわけであります。キャンプ朝霞などの場合についていろいろ第一種住居専用地区に指定されている場合もありますし、それからその他の基地跡地ではすべてが市街化調整区域というような地域指定になっているところもあります。先生御承知のように都市計画というものの中身として、まず都市計画区域を決める。それから市街化区域及び市街化調整区域という区分がなされます。それから先ほど言いましたようないわゆる第一種住居専用地区とか商業地区とかいろいろそういう地域地区の指定がございます。それからさらに公園をつくるとか道路をつくるとかいう、いわゆる都市施設の計画がございます。その留保地は現時点では予測できない将来の需要に備えてその最終処理を当面留保していこうというものでありますので、その都市計画を定めるに当たって跡地の具体的利用計画の方針に影響してくるような具体的な都市施設の計画を定めることには問題があるわけでありますが、大体こういう都市区域、首都圏近郊にある土地を問題にしているわけでありますから、そういった都市計画区域にするとか、市街化区域、市街化調整区域の問題、それからいわゆる地域地区の指定の問題というのは、われわれ将来その留保地の具体的利用計画を決めていく上においてそう大きな支障にはならないというふうに考えておるわけであります。それで現在すでに地域地区の指定がある返還跡地については、そういう意味国有地の最高有効利用を図るという観点から、その都市計画の内容なりその地元の要望というものを考慮しながら、先ほど申し上げておりますように地元と十分話し合いの上適切な利用計画を決めていきたい、こういうことであります。
  46. 高沢寅男

    高沢委員 これは私、全く仮定の問題ですけれども、そういう地元の自治体がその保留なら保留地というところに、ほかとの関連でどうしてもこういう施設はここにつくらなければ困るというような計画を持っている。それでその計画に基づいて、相手は国有地ですけれども、その国有地に対してその土地収用の発動をやるというようなことがもし万一出てきたというふうなことになったら、これ、どうなるのでしょうか。そういうふうなケース大蔵省、お考えになっていますか。どうでしょうか。
  47. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 ですから、その地元の具体的な利用計画、ここを公園にしたいとか、いろいろな清掃処理施設をつくりたいとか、そういう問題につきましてはそれこそわれわれとしては地元にそういう計画を出していただいて、それでこちらの計画と十分突き合わせて、それで全体として有効な利用を図っていきたいということでありますから、地元にそういう計画がおありであれば、当然われわれとしてそれはいろいろ十分御相談する対象になり得るわけでありますから、それをわれわれは頭から否定しているものではありません。
  48. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、これは念を押す形になりますが、地元がそういう保留地についてこういうふうなあれをしたい、こういうあれがあった場合に、地元としてはそのために土地収用法の発動というふうなことをやらなくとも、そういう地元からの強い、こうしたいという希望があれば、これはもう大蔵省としては、五年、十年の後という時間的関係はあるにしても、それはそういうふうな計画でいくんだ、そういう地元の希望ができるような計画でいくのだというような方向で受けられる。これはちょっとまたさっきの繰り返しになりますが、その保留地と地元との関係ということでそういうふうに理解してよろしいですか。
  49. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 留保地は先ほどから申し上げておりますように、将来の需要に備えて慎重に構えておるというたてまえでございますから、これは、もし将来の計画というものについてもすでにいまから固定され約束されてしまうというふうな、くぎづけに遭うようなものというのは避けていかざるを得ません。したがいまして留保地の都市計画につきましても、それは地元の都市計画を、現在それがございますならばよくそれを承った上で、三分割を分割する段階においてまず最初にお話し合いを行うべきである。次に、留保地について将来中間段階において何かそういう需要ができたときも、やはりその段階でもう一回お話し合いをするというような形にせざるを得ないのではないかと考えております。
  50. 高沢寅男

    高沢委員 その留保地はつまり白紙にしておくというのでしょう。そして将来その白紙の中へ一番いいあれでもって図をかく、こういうわけでしょう。だけれども、さっき言いましたように、地元はすでに全体が返還されるという前提で、その留保地になるところも含めて図をかいているわけですよ。ここは道路になるとか、ここは病院をつくるとか、ここは公園にするとか、こう図をかいているわけですよ。そこで局長が、そういうところに将来絵をかくには当然地元と相談して地元意見を聞いて、こう言われたわけですが、すでに地元はそういう絵を持っているわけですから、当然ここにはこういうものをしてくれ、こういう絵が出てくるわけですよ。そのときにそれはだめだ、こうなるか、それは当然地元のあれを尊重する、こうなるかと言えば、私は、尊重するというのが当然あるべき大蔵省の態度だ、こう考えるわけですよ。ですから、やり方としては五年、十年先に留保という形なんだけれども、その中身の絵のかき方は、すでに地元はそういう絵として持っている。これを決して無視するわけじゃない、これを尊重するんだということが大蔵省立場として当然あるんじゃないか、またあるべきじゃないか、こう私は思うのですよ。そこをもう一回お聞きします。
  51. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 そこのところは非常にむずかしいことをお聞きになっていらっしゃるのですが、実は一番大事なところでございますので、私どもはっきりしていただきたいのは、留保地というのはあくまでそれは留保地でございます。したがって、将来に何かくぎづけされるようなものであれば、あるいはそれが地元の都市計画の一部としてもう決まってしまうというようなものであれば、留保地を置く必要はないわけでございます。その前提は私どもとしては地元にも守っていただきたい。逆に言えば、国の場合にも現在急いでそういう計画を立てて、その留保地の中に国がどんどん出ていこう、こういう気持ちを持っておるわけじゃございません。いずれも将来、いまわれわれの現時点において考えられる計画よりももっといい計画があって、それにあの土地を利用すればよかったなと地元も国も思うような、そういうことのためにとっておくものでございますから、いま現在の地元の計画というものをそのまま至上のものとして、そしてそれを国がまた受け入れなければならないというように縛ってしまうならば、それは留保地を置く意味はございません。したがって、私が先ほどから申し上げておりますように、いま地元にそういう計画がおありならば、それを返還地の中に適用してみたところで、いまの地元がABCに分けたときのA地区といいますか、A地区にどこが欲しいかというようなところをいまお話を承ることがまず大事であろう。それから国はB地区が欲しい、これも地元と御相談をするべきである。そこでいまある都市計画というものはそれに完全に壊されてしまうものなのか、あるいは計画をし直さなければならぬかどうかという問題は、これは具体的な問題としていろいろ違いが出てまいりますけれども、これは私ども地元の御意見を尊重するとは申しましたけれども、それに国が全面的に従わなければならないということであれば、留保地を置く意味はないわけでございます。そこを御理解いただきたいというのが私どものお願いでございます。
  52. 高沢寅男

    高沢委員 武藤委員の関連がございます。
  53. 田中六助

  54. 武藤山治

    武藤(山)委員 理財局長、いまの話、非常にこんがらかってきたのですが、大蔵省はいつまでに三分割のなわ入れをして、三分の一ずつをきちっとなわ入れして、ABCとして、じゃ、Aは自治体、Bは大蔵省、Cは保留地、そういうようなABCの線引きというか、境界線というか、そういうのをいつまでに決めようというのですか、何年閥ぐらいの間に。それともそういうものはもともと決めないで、自治体からいろんな要望が出てきて、ここは学校にしたい、ここは病院にしたい、こういう形で出てくる。しかし、それは全体の三分の一までしか認めないぞという前提で出させてくる。それから線引きをするのか。三分割の境界というのはいつつくるのですか。
  55. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 いきなり図面をかいて示すということをいたさないつもりですから、できるだけ早く地元とのお話し合いに入りたいということでございます。したがって、それはできるだけ話がつくことが前提でございますけれども、そういう一方的にこちらがいつまでに決めるというふうに押し切っているものではございません。
  56. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、いま高沢さんが質問しているように、三分の二の面積はすでに地方自治団体で都市計画路線をいろいろ引いて、青写真をつくった。本来ならここは大蔵省としては保留地としておきたい場所に道路が貫通するような都市計画ができた。しかし大蔵省はなかなかうんと言わぬ。地方自治団体はこの都市計画を建設省の認可をとってやろうとする。道路の場合は私権だって侵害されるわけですし、強制収用までばたばたやるわけです。そういう場合に、国有地を強制収用にかけるという事態が全く起こらぬとは言えないわけだ。そういうことが絶対起こらぬように建設省大蔵省と事前にチェックするような体制にして、三分の二の部分まで自治体が食い込んでくることには事前にチェックするのだ、そういう考えなのか、そこの地域地域の全体の面積の三分の二だけは大蔵省がきちらと確保するような事前にチェックする体制をつくるのか。現にもう各市町村で都市計画をちゃんとつくって、青写真をつくって、膨大なものをパンフレットにまでしているところがあるわけだ。そういうのを見ると、もう三分の二以上それで食っちゃう計画になっているわけですよ。そういうのはどうするのか。話し合いで引っ込めさせていくのか、どうチェックするのかということなんだ。
  57. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 具体的な問題に入りますとそこが一番むずかしいところでございますけれども、大変申し上げにくいのですが、何せ国有地ということでございますから、国が地元の方々がお決めになったものに全部従えとおっしゃっても、これは無理な話だと思うのです。そこで、計画を承った上でその線引きをいたしましょうと申し上げておるわけですから、そのところで具体的に個々のケース判断せざるを得ないと思います。ただ、そのときに私どもが申し上げておきたいのは、そうなると早く計画をお立てになって、地元の計画がこうであるから国にはもう一歩も譲るなということになりますと——これはまさに将来の予測や需要をもとにして留保地をつくっておこうという意味は、国だけの気持ちではなくて、もちろん地元のためにもなり得るとわれわれは信じて残しておるものを、そういうふうにして現在の時点で決められないではないかということから発した発想でございますから、そこをやはり地元の方も一歩譲っていただいて、国との話し合いで円満に解決していただく以外に具体的にはないのではないかというふうに考えております。    〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕
  58. 武藤山治

    武藤(山)委員 これはあくまでケース・バイ・ケースといま局長は言うけれども、広大な面積の場所と比較的小さい面積の市町村と、しかも比較的人口の密集している近くの場所と山間地と、条件によって大分違うと思うのです。ですから人口密集の高沢議員の選挙区のような場合は、三分の一残すなんということ自体がもう大変需要から見てもったいない話なんだな。だからそういうものは、本当は全面積都市計画でもってきちっとやりたい場所ですよね。またちょっと離れた立川の方、あるいは将来保留地を残しておいて、三分の一ずつに分けておこうやという緩やかなところと、それぞれの地域によって立地条件に違いがあると思うんだ。そういうものも三分割という原則は一歩も変更をしないで、全部とにかく一律三分の一ずつなんだ、こうするのか、それともいまのケース・バイ・ケースということは、地域、地形、立地条件によっては都市計画を全面的に聞き入れるような場所もあるいは起こり得る、こういう余韻が残っているのか、どんな狭い場所でも跡地の問題は三分の一ずつなんだという機械的な線の引き方なのか、その点はどうなんですか。
  59. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 三分割方式を適用いたしますのは、一つのところが十万平米以上の土地でございます。ということは三万坪以上の土地ということでございますから、これはもうかなり広いわけでございます。ただ、いま人口密集地域であればとおっしゃいますけれども、人口密集地域であるからこそ、これ以上の広い土地というものは、もはやこれから将来どこを探してもないわけでございます。もう国有地としてもあるいは私有地としてもあり得ないかもしれません。そういたしますと、それを現在の判断だけで需要を決めて、そして何もかも決めてしまった。将来どんな、国からも地元からも要望をされるようなものを考えようとしても、もはやその土地もなくなってしまっていっておるような状態ということが、一体現在のわれわれの時点において果たして判断していいものかどうかというのが国有財産中央審議会の最も中心の論点でございました。結局、学識経験者、かなりの方々の御意見が一致したところはまさにそこでございます。したがいまして、私どもは、その三分の一を残しておくというのは、何かやみくもに残すということよりも、むしろ現在決めることが恐ろしいというか、あるいはもっと謙虚にならなければならないのではないかという感じでございます。したがって、将来の需要をわれわれはもっと——実はその考え方が出てまいりましたのは、国有財産の過去の、戦後軍から払い下げられました土地がいかなる状態になっておったかということを反省いたしてみますと、やはりもう少し前に都市計画をやっておけばよかったのではないかというような土地が後から非常に障害になっているということも考えまして、そういう判断に立っておるわけでございます。
  60. 高沢寅男

    高沢委員 いま武藤委員から、いつまでに線引きするのか、これに対して、それはケース・バイ・ケース地元と相談をしながらと、こう言われたわけですが、私はこれはこの際ひとつ申し上げておきたいのですが、大蔵省少し知能犯だと思うのですよ。つまり、地元の自治体がもう本当に人口がふえてきて、いままである学校が子供たちを収容し切れない、どうしても一つ新しい学校が欲しい、その用地は基地跡地のあの中にもらうしかない、こうなってくる。そこでもって、こちらの方はもう来年の春にはどうしてもそうしなければいかぬということでいくと、今度は、三分割有償方式だから従来のような無償貸し付けではなくて二分の一は時価で買えと、こう言われて、もう来年のことだからここでそのことであれこれ言っている時間的なあれがないから、しようがない、じゃ買いましょうと、こうなる。  実は私の地元の練馬区はそうなったわけです。そのことのために今度は練馬区は、基地関係のほかの自治体から、練馬区があの値で買ったということはけしからぬじゃないか、練馬区はそのために大蔵省から今度の三分割有償方式を受け入れた、こう言われて、ほかの関係の自治体がそのために大変迷惑しているということを言われて、今度は練馬区の当局は、おれたちはそんなつもりじゃなかったのだ、どうしても来年学校が必要だということで、背に腹はかえられないでやったのだと言って、いまは泣いているわけですよ。そんなことで、大蔵省はこの三分割方針というものを一応示して、地元がそれに応じてくるかどうか、応じてこなければこっちはいつまででもいいのだぞと、こういうことで、地元がどうしても必要に迫られてそこは欲しいとくると、欲しければこれだ、認めろと持っていく。そういうやり方ではないか。これは大変知能犯であって、たちが悪い、私はこう言わざるを得ないと思うのですが、そういうやり方ではなくて、やはり地元と早く、誠意を持ってちゃんと話がつくようにしていく。誠意を持ってつくようにするには、それだけのものを大蔵省も積極的に出して地元と話をつけるということをやはりやるべきだと思うのですが、もう一回そのいまの練馬区のケースも含めて考えをお聞きしたいと思うのです。
  61. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 ケース・バイ・ケースというか、ケースの中には過去においては安いものもあったし高いものもあったということを先ほど申し上げましたが、結局そういうことがございますので、今度のいわゆる返還財産というのは統一的な価格ということで統一したわけでございます。そういたしませんと、それは有償でもって高い撤去費用、高い移転費用を払って米軍にどいてもらったわけでございますから、かなり国の財政も腹を痛めたものでございますので、国有財産としてはもしその基準を統一いたしませんと、やはり一番安いところへ、あそこはこんなに安かったではないか、いま先生の御指摘と逆のケースで、高いケースをおっしゃいましたが、逆にあそこが安いのになぜあれと同じことをしてくれないのかという、安い方へ行ってしまうのです。有償原則がそこで崩れてしまうということでございますので、そこは御理解いただきたい。別に知能犯でも何でもないわけでございます。
  62. 高沢寅男

    高沢委員 もう時間が迫りましたので、あと二つだけお聞きして終わりたいと思います。  その移転費用、これを今度のこの有償方式で賄っていく。もちろんそれは全額賄うということではないんだということは繰り返し言われておりますが、その移転費用、関東計画に基づく移転費用というのは総額で一体どのくらいになるのか、それから基地別に移転費用というのはどのくらいになっているのか、これをひとつお聞きしたいと思います。
  63. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 米軍基地のこのリロケーションに要する経費でありますが、これは具体的には防衛施設庁の方で計画をつくっているわけであります。いわゆる現在の特特会計というものができました昭和四十四年度から五十年度までに支出した額それから五十一年度に支出を予定しています額は、一般会計、特別会計合わせまして千二百八十七億円、うち特特会計分が八百二十四億円ということになっております。五十二年度以降の事業計画につきましては、今後防衛施設庁の方で日米間の調整を行って確定してまいることになるので、対米調整がまだ終わっていない現段階において、事業費の所要見込み額がどうなるかというのは推算することができない状態にあります。
  64. 高沢寅男

    高沢委員 それから基地別はわかりますか。
  65. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 先ほど来申し上げていますように、今回の米軍施設の集約統合化といいますのは、いろいろ方々に分散しておりました基地の機能を空軍でしたら横田なり、陸軍でしたら相模原なり、海軍施設でしたら横須賀というふうに桑約統合化するわけでありますので、個別にどこの分が幾らかかったというのを分解して計算することが技術的に困難のような状態で、たとえばいままで方々の基地に分散してありました種類の施設を今度は一ヵ所に統合する場合は一つで済むというようなこともありまして、だからどこの施設の分が幾らかかったというふうに各基地別に分解してその移転経費を出すことはできない状態であります。
  66. 高沢寅男

    高沢委員 じゃ、最後のお尋ねをいたします。  その払い下げの有償時価、この時価の計算方法というのはどんなふうにされるのか。さっき私言いました練馬区が小学校を一つグラントハイツの中でお願いして譲渡を受けるその価格一平米十万八千円というような価格だと聞いておりますが、こういうふうな価格の出る計算のやり方、根拠を御説明願いたいと思います。
  67. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 国有財産を売り払う場合の評価に当たりましては、普通財産売り払い評価基準というものを設けてやっておるわけであります。そこで、価格決定上考慮を要しますもろもろの要素を多角的に取り入れて、統一的な手法で適正な時価を算出しているわけでありますが、最も一般的な宅地の場合について言いますと、まず相続税及び固定資産税の課税標準価格をもととしまして、これに修正率を乗じて算定した価格、それから二つ目に近傍類似の売買実例から算定した価格、それから三番目に民間精通者の鑑定評価額、こういう三者を総合勘案し、さらに近くに地価公示法に基づく標準地の公示価格または国土利用計画法に基づく基準地の標準価格がある場合にはこれとの均衡を図って評価額を決定する、こういう手法になっております。
  68. 高沢寅男

    高沢委員 じゃ最後に小中学校の場合、二分の一は今度時価で買い受ける、そしてあと残りの二分の一は五年間無横貸与、その五年間無償貸与の後、これはやはり譲渡を受けるわけですね。その譲渡を受ける際の価格はどういうふうな価格になるか、それを最後にお聞きしたいと思います。
  69. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 五年間無償貸し付けとなりました二分の一の分について、五年たった後の処理でございますが、その場合五〇%減額譲渡するという考えでおりますが、その基礎になりますのは、ただいま申し上げましたような統一的な手法によって評価した価格の五〇%を減額するということであります。
  70. 高沢寅男

    高沢委員 それは五年たったそのときの評価でですか。
  71. 吉岡孝行

    吉岡(孝)政府委員 五年たった後において処分する時点における時価であります。
  72. 高沢寅男

    高沢委員 わかりました。  以上で私いろいろお聞きしたいことの質問を終了いたしますが、あと横山委員から関連の質問がありますのでお願いいたします。
  73. 横山利秋

    横山委員 大臣、ちょっと聞いておってください。  いま、十万平米以上の話ですが、私のは百坪か二百坪の国有地の問題。それで前置きとして、国有地に関しての私の失敗談です。失敗談というよりも、横山利秋の株を下げた話であります。それは、地下鉄の駅の近くに公務員宿舎がございます。そこに空き地が道路べたにあったわけです。そこへ通勤客が自転車を並べておいたわけです。それで市会議員が、横山さん、あんた大蔵委員だから、あんな勝手に並べておいてはいかぬので、ひとつ財務局に話して正式に置けるように借りてやってくれ。それはいいことだねと言って、財務局に話した。そうしたら、いまの高沢君の話じゃないけれども、管理者がはっきりすること、さくを結うこと、監視人を置くこと、地代をよこすこと、この四つなんですね。管理人なんかあるはずないのですから、どうしたらいいかと言ったら、市役所に借りてくれというわけです。仕方がないから、市会議員に、おまえさん、市役所に話してくれと言った。市役所は、何でそんなことに、国有地に自転車を置くのに市役所が地代を出さにゃならぬのか、こういうことになったけれども、言い出した限りにおいて仕方がない。管理人は負けました。負けましたというのは、置かぬでもやむを得ぬ。そのかわり地代だけはがんとして取ると言う。それで市役所が、坪当たりたしか五十円ぐらいだと思うのです。とにかく安いには安い。けれども、いままで知らぬ顔して自転車がずらっと百台ぐらい並んでおったのが、横山さんが要らぬことを言ったために市役所は損したと、こう言う。私の株を下げたことなんです。けれども、通勤客はそれで堂々と置かしてもらえるので、あるいは喜んでおるかもしれない。喜んでおったって、いままでと変わりはありませんがね。  そこで思うのですが、いま大都市、中都市は自動車の洪水ですから、自転車が非常に多くなりました。地下鉄やバスの車庫あるいはバスの停留所、ちょっとしたところに自転車がずらっと並ぶようになりました。だから、どうしたってこれは地方自治体も自転車置き場というのを考えなければならぬのです。私の体験は、私の株を下げた体験でありますけれども、まあとにかく国として勤労者のために、国有地が駅周辺にあったならば、あるいは地下鉄かバスの停留所にあったならば、自転車置き場くらい、地方自治体におまえが管理せよ、おまえのところから銭を取る、そんなやぼなこと言わないで、ちょっとした大平善政をおやりになる気持ちはありませんか。これは私の失敗談だけれども、見てごらんなさい、少なくとも自転車が地下鉄の入り口にずらっと並んでおったり何かしているのは、車でごらんになればすぐ目につくのです。ですから、勤労者の自転車置き場について、駅周辺で五十坪でも百坪でもあったならば、便宜措置考える。そんなものは、要るようになったら、すぐにあしたからだめですと言えば済む話ですから、恒久建築物なんかつくりゃせぬのですから、国有地自転車置き場、各人がひとつ管理をお願いいたします、こういうちょっとした善政を大臣、お考えできませんか。
  74. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 御指摘のような……(横山委員「あなたに聞いているのじゃない。政策のことだ」と呼ぶ)百坪でございますから、私が……。  大体、国有財産につきましては、そういういろいろな問題がございます。たとえば不法占拠をされて今日までどうにもならないというような貴重な土地もございますが、いま御指摘のようなところは、まあ財務局によく指導いたしますが、市当局とよくお話をして、市の管理委託という形で、暫定的な契約という形で——普通でありますと、駐車場というのはいわゆる減額貸し付けというような対象になっておりません。それを特別の契約を結んで、無償で管理委託をするという形を考えてみたいと思います。  先生に御迷惑をおかけいたしましたが、どうも……。
  75. 横山利秋

    横山委員 どうもじゃないよ。あなたに謝られたって、私どうにもならぬ。  それで、大平さん、済まぬけれども、私が口をきいたために市役所が銭を余分に出さにゃならぬ。五千円だろうが、一万円だろうが、申しわけない。しかも、その自転車置き場は決して市役所から借りておると思っておらぬ。国から借りておる。市役所に国が管理を要求したというかっこうになるわけです、実際は。そうでしょう。要求しておいて、そこから銭を国が市役所から取るということはいかがなものであるか。自転車置き場については、管理者は地方自治体にしてもらうのもいい、けれども暫定的ですよ、そのかわり無償で貸しますよ、いつでも引き揚げますよ、そういう条件なら仕方がない。仕方がないが、私何回も言うようだけれども、自転車置き場というのはこれから本当に広がるのですよ、自動車が混雑ですからね。ですから、銭はひとつ取らぬようにしてもらいたいが、どうだろう。大臣、いいでしょう。いまうんと言ったな。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 いま事務当局からも前向きの検討の話がございましたが、横山さんには大変御迷惑をかけたこと、恐縮でございますけれども、しかしまた、横山さんなればこそ、そういう細かい配慮をいただいたことでございますので、私の方でもよく注意していきたいと思います。
  77. 山下元利

    山下(元)委員長代理 武藤山治君。
  78. 武藤山治

    武藤(山)委員 持ち時間が三十分しかなくなりましたので、通告をしておいた項目全部はとても質問できません。経済企画庁、中小企業庁の担当局長もおいでいただいておるわけでありますが、簡単に現下の経済動向についてまず伺ってみたいのであります。    〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕  大蔵大臣、いまの経済動向から見て、景気はまだわずかずつではあるが上昇していると見ているのか、全く停滞の状態、あるいは逆に、せっかく離陸を始めたのが低下し始めていると見るのか、いまの景気動向について、大蔵大臣の認識のほどを先にちょっと伺っておきたいと思います。
  79. 大平正芳

    大平国務大臣 最近の経済情勢でございますが、景気の回復のテンポは、一−三月に比べればこのところやや鈍化しておりますけれども、最終需要は総じて言えば緩やかな増加を続けておって、景気は底がたい回復過程にあると政府は見ております。世上いろいろな景気論議があるわけでございますけれども、政府の見方はいま私が申し上げたとおりでございます。
  80. 武藤山治

    武藤(山)委員 企画庁の八月の月例経済報告の数字を見ますと、鉱工業生産は前月比でマイナス〇・八、出荷指数もマイナス、生産予測指数を見ても計画より〇・五のマイナス、九月はマイナス一・三になるだろうという予想、機械受注額も、七月がマイナス九・九、八月がマイナス一〇・六、こういう数字を発表されておりますね。これらの主として生産動向を占う指数を見ると、ほとんどの指数がマイナスをあらわしているわけであります。これは一体底がたい上昇気流を続けていると判断できるのか、こういうマイナスの数字がだっと並んで出てきたということを大臣はどのように認識をされるのでしょうか。
  81. 大平正芳

    大平国務大臣 いま御指摘の数字は前月比の指数であろうと思うのでありますが、先ほど申しましたように、私どもは、年間を通じて傾向として底がたい回復基調にあると見ておるわけでございます。民間の設備投資も企業収益の改善を背景といたしまして緩やかに回復が見込まれておりまするし、輸出につきましても、一部商品についての現地在庫の積み増しが一巡をするなどの原因がございまして増勢が鈍化することは避け得られないといたしましても、世界経済の回復を背景にいたしまして底がたい動きを示すことが予想されますので、政府の見通し、これは五・六%の見通しでございますけれども、十分達成ができるのではないかと見ております。
  82. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣、このように生産指数がそれぞれマイナスに八月は転じた。九月の見通しもどうも好転は望めないようだ、企画庁のこの報告書を読んでみる限りにおいては、そうすると、七月まではどうやら底がたい回復基調にあったのが、八月、九月ごろ、これから下期に至って果たして底がたい上昇回復過程にあるという認識でいいのだろうか、それともこの辺で何か政策手段を講じないと、また従来失敗をしたような後手後手政策になるおそれはないのか、その辺については一体どのような認識でいらっしゃいますか。
  83. 青木慎三

    ○青木(慎)政府委員 ただいま御指摘のような悪い数字も一部ございますけれども、私どもは長い流れを見てまいりますと、四−六、七月までは生産もある程度のスピードで上がっておりますし、八月の生産がマイナスになりましたのは、やはり一つは夏季休暇その他の影響もあると思いますし、九月、十月の予測指数がマイナスでございますのも、若干最近輸出の伸びが鈍化しているのを反映いたしているのではないかと思います。予測指数の方は全業種からとるわけではございませんで主要な業種からとりますので、必ずしもこの数字になるとは限らないと思いますが、そういう若干気迷いのようなものがその予測数字に出てまいったものと考えております。  先行きを見ますと、輸出は、伸び率は鈍化いたしますけれども、非常に高水準でございますので、そう心配することもないと思いますし、若干いろいろな数字で消費その他の弱い数字もございますが、先行きをながめてまいりますと、これから先景気が失速するというような事態であるとは認識しておらないわけでございまして、今後やはり物価と景気の動向を両方にらみながら政策、経済の運営を考えていくという状況が現在の状況ではないかと考えております。
  84. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、調整局長、OECDが日本の経済を診断して対日報告書をことし出しましたね。その数字をちょっと参考に見てみますと、七六年上期の実質GNPは、日本の場合七・六五ぐらいになるだろう、下期は五・六五程度ではなかろうか、こういう予測をOECDではしております。この予測はどうでしょう。いまの経済の動向を勘案して考えた場合に、当たらずといえども遠からずか、それともかなりこの数字は実際とは違った数字になりそうだ、その辺の感じはどうですか。
  85. 青木慎三

    ○青木(慎)政府委員 OECDのいわゆる経済予測は、日本のやり方とちょっと違いまして、年度が会計年度でなくて暦年をとっております。五十一年の経済を見ますと、一−三月の成長が非常に高い成長でございまして、それを勘案して上期が高くなっておりますので、その一−三月のスピードに比べると今後は将来を含めましてややテンポが落ちてくると見ておりますので、そのOECDの見方自体は私どもの方も正しいと思っております。
  86. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうするといまの状態は不況と言うに値しない経済情勢なんでしょうか。いまの経済動向は景気不景気とかそういう範疇で判定をした場合はどういう判定をしたらいいのでしょうか。
  87. 青木慎三

    ○青木(慎)政府委員 言葉の定義の問題でございますのでいろいろ判断はあるかと思いますが、私どもは、緩やかな回復基調をたどっているということでございまして、従来の景気回復のようなV字型の回復をするとは思っておりません。非常に緩やかな回復をさせるということでございまして、やはりまだインフレの気配が残っている段階におきましては緩やかながら確実な回復を図っていくというのが政策としては望ましいというふうに考えております。
  88. 武藤山治

    武藤(山)委員 緩やかな回復基調と底がたい回復基調というのはどう違うのですか。
  89. 青木慎三

    ○青木(慎)政府委員 底がたいと申しますのは、感じの問題でございますけれども、これが失速するような事態にはならない、着実に需要がふえていっている状況を表現したものと考えております。
  90. 武藤山治

    武藤(山)委員 調整局長大変楽観的に見ているような気がしますが、たとえば百貨店の売り上げを見ても、個人の消費動向を見ても、あるいは労働者の支出家計調査を見ても横ばいなんですね。どうも数字の上では上昇をしているという数字が出てこない。特に、時間が三十分ですからこのことだけで論じていると終わりになってしまいますから、その中身について、大臣、ロッキード特別委員会があり、自民党内のみそぎ論、出直し論、反三木、三木擁護、いろんなことがあって臨時国会が開けなかったという理由はわかるのでありますが、その臨時国会が開けなかったために運賃法案がおくれた。そのことによって電電公社だけで約五千億円の支出が減になる。国鉄関連の工事費支出も恐らくそれ以上になるのじゃなかろうかと思うのですね。そうすると、概算の数字で見ても一兆円ぐらいの金が、仮に十一月一日から値上げが実施されたと仮定しても、六、七、八、九、十、この五ヶ月間に支出さるべきだったのがされなかったと考えると、これは経済、景気にかなりの影響を与えたのじゃなかろうか。特に中小企業で下請関連企業の打撃というものは大変大きいのじゃなかろうか。(発言する者あり)いま広瀬さん、国鉄出身ですから明るいので、一兆五千億円ぐらいになるぞという話が出ましたから、恐らく一兆円でなくて一兆五千億ぐらいの支出が削減されたのではないか。その影響というものは一体日本の経済に対してどの程度のウエートを占めたものだろうか。今回の景気が少し停滞ぎみになった一つの要因として数えられるような気がするのでありますが、そういう要因はそんな心配したほどの要因ではない、全く関係ない、一体どちらに判断を下しているのか、大臣の所見を承りたいと思います。
  91. 松下康雄

    ○松下政府委員 この運賃の改定がおくれておりますことに伴いまして相当の工事量の繰り延べ、削減というような措置を講じておりますので、九月までで工事費の額にいたしましては約五千億くらいかと思っております。それの波及効果がどの程度あろうかという問題が別にございますけれども、波及そのものは直ちにと申しますよりもある程度の時間をかけて影響があらわれてくるところでございます。この影響につきましては私どもも気を使いまして、たとえば関係の業界等急激な困難を生じないよう金融措置等につきましても関係官庁にお願いをして配慮を依頼するというようなこともいたしておりまして、現在までのところ各地の金融機関等の協定も受けながら極力この難局を自力で立ち直って切り抜けていくようにということで御努力なさっておるように聞いております。つきましても私ども基本的にはやはり法案が一日も早く成立をいたしますように望んでいる次第でございます。
  92. 武藤山治

    武藤(山)委員 私が言っているのは法案が通った後ではなくて、現実に発生している六月から十月までのその分の工事費の削減が電電公社だけで四千六百億でしょう。あなたいま国鉄と両方で五千億ぐらいだと言ったけれども、電電公社だけで四千六百億削れという政府の方針でしょう。国鉄も恐らく五千億円以上工事費を削れというのでしょう。だから五千億という数字そのものが過小ですよ。そこはどうなんです。いま数字のことを私は聞いている時間ないんだけれども、あなたいま五千億程度とこう簡単に言うから……。
  93. 松下康雄

    ○松下政府委員 説明が若干不十分でございまして申しわけありませんが、私五千億と申しましたのは九月一ぱいにつきまして、つまりただいままでのところ実際に削減を行った数字のつもりで申し上げたわけでございます。十月一ぱいが経過をいたしますとさらに電電公社につきましては工事費につきまして削減の金額がふえますので、合計で約五千五十億円ぐらいに相なると考えております。
  94. 武藤山治

    武藤(山)委員 国鉄もあるでしょう。
  95. 松下康雄

    ○松下政府委員 国鉄につきましては九月で千二百億でございますが、十月一ぱいで約二千九十億に相なっております。
  96. 武藤山治

    武藤(山)委員 大平大臣いまのお話でおわかりのように、中小企業の関連企業などが仕事量が減ってしまった、あるいは電電の下請企業などが苦しんでいる。しかし過去の分はこの五カ月分の削減、六カ月分の削減はもう仕方ないことであって、しょうがない、そういう感じで処理するのか、それとも電電公社の借入限度額をこの際修正して仕事量だけは、希望の電話架設だけはみんな充足してやる。電話の申し込みは殺到して一ぱいあるわけですから、予算があればどんどん工事をやって各電話を全部充足できるわけですね。電電公社としては当初予算の計画だけは。しかしその工事費、金がないために充足できない。完全に充足するためにはプラス二千億ばかりを新たに借入限度額をふやしてやらぬことには完全需要達成できない。この際そういう電電公社の二千億くらいの借入限度額をふやしてやるということを検討してしかるべきなんじゃないでしょうか。大臣の御見解いかがでしょうか。これは通告なしで突然大臣の見解を聞くので、大平さんの性格から言うとなかなか無理だと思うのですが、角さんだったらいやわかりましたやりましょう、とこうくるけれども大平さんではそうはいかぬだろうと思うのです。その辺いかがでございますか。
  97. 大平正芳

    大平国務大臣 大変甚大な影響がすでに出ておるわけでございます。波及効果を見ますとさらに深刻であることは御指摘のとおりでございます。  そこで、衆議院ではすでに両公社の関係法案につきましては成立を見させていただいたわけでございまして、参議院における審議が一日も早く終わりまして成立を渇望いたしておるところでございますが、いまその間におきましても私どもといたしましてはできるだけ契約を促進いたしたり、行政でできることでございますならばあらゆる工夫を講じなければならぬと考えております。ただ、あなたの言われる借入限度を拡張していくということは行政府にできない仕事でございまして、国会の御承認を仰がなければならぬ問題で予算補正の問題になるわけでございますので、両法案が成立いたしました時点を踏まえて計数をきちんと整理した上で、一体これに対して両公社を初め政府としてどう対処するか真剣に考慮いたしまして、いま御提示になりました問題に対してはどのように対処するか決めたいと思いますが、いまの時点でそれではこういたしましょうというお答えはできませんけれども、そういう手順で対処したいと思います。
  98. 武藤山治

    武藤(山)委員 私、大平さんとおつき合いして二年半、いままでにない前向きの答弁で大変結構だと思います。十分ひとつ検討していただきたい。与野党こぞって、もしそういう方向で大臣に要望が出たときには、いまの検討を十分生かしていただきたい、こういう要望をしておきたいと思います。  いまどうも景気が底がたい状況、基調であるとか、あるいは緩やかな上昇過程をたどっておると言いながらも倒産件数が依然として減らないですね。八月が資本金百万円以上で負債一千万円以上の金額で倒産が千二百八十八件、九月が千三百五十七件ですね。これはあくまでも資本金百万円以上の会社ですから、百万円以下の零細の個人企業あるいは個人の商店、そういうようなものを入れると恐らくびっくりする数字ですね。この九月の倒産件数というのは日本史上第二位だというのですから去年の十二月に次ぐ倒産件数だ。いま日銀統計をちょっと調べてみたら、参考までに去年一年間で資本金百万円以上で一千万円以上の負債で倒れた会社の数は一万四千四百七十七社、金額にして一兆五百六十二億円、資本金百万円以下の企業の倒産二千三百三十件、個人企業二万一千七百三十件、企業ではなくて個人というのですから、この統計は恐らく商店とか個人のブローカーとかそういう個人二万四千六百五十一件、これが銀行取引停止処分を食らっていますが、銀行取引停止になった件数は合計六万四千百八十八件に上ります、大変な状況であります。ことしの状況はこれと比較して数字がどうだろうかと思って日銀月報をずっと調べてみたのでありますが、大体この傾向はとまっていない。景気が底がたい基調にあるとか緩やかな上昇であると言いながらこれだけの倒産が続出するというのは一体何たることか、この原因は何だ、一体どう認識されていらっしゃるのか、大臣ひとつお答えいただきたいと思います。
  99. 大平正芳

    大平国務大臣 なるほど武藤委員御指摘のように、倒産件数は、九月千三百五十七件、かつてない数字でございますけれども、負債金額あるいは一件当たりの負債金額になりますと従来よりはずっと小さくなっておることもまた事実でございます。したがって、私ども、このいまの倒産の現象が異常な現象、従来に見ない異常な現象を最近になりまして露呈いたしておるというようには必ずしも見ていないわけでございまして、景気は先ほど申しましたように着実に回復の軌道に乗っておるように思いまするし、物価も卸売、消費者両物価の動きもやや落ちついてきておるようでございまするし、経済の状況は決して危険な刃渡りをしておるというようには見ていないわけでございますので、せっかくの御指摘でございますけれども、件数が多いということだけでこれは異常な事態の象徴であるというようには見ていないわけでございますが、しかし私の認識の足らぬところがございましたならば御教示をいただきたいと思います。
  100. 武藤山治

    武藤(山)委員 異常ではない。そうすると、大臣、資本主義自由経済というのは、中小企業が間引きをされ、倒産をし、銀行取引停止処分を食らった数がこんなにあっても、資本主義ではどうにもならぬのだ、異常と認識しないのだ——冷たい判断ですね。そういう受け取り方でよろしいのですか。
  101. 大平正芳

    大平国務大臣 かつて私の兄事いたしました先輩がそれで不信任の座に着いたことがございます。資本主義経済の原則、あたりまえのことをあたりまえに申し上げてもなかなかむずかしい世の中でございますので、私も、とりわけ経済学者でもございませんし、そういうことを申し上げたいとは思いません。  そこで、問題は、あなたから倒産の現象についてそれが異常かどうかというような意味の御質問がございましたので、なるほど件数は空前の件数であるけれども、内実に至りましては負債金額等は従前よりも少なくなっているのではないかという事実を申し上げたにすぎないわけです。
  102. 武藤山治

    武藤(山)委員 その事実は大臣が言わなくても、去年は、興人が倒れたり照国海運が倒れたり、一社の負債額の大きいのが倒れたから一件当たりの額は多いのであって、そんな原因はわかっているのですよ。  そんなことを聞いているのではなくて、資本主義の経済ではこういうものを最小限に食いとめる手だてというものをしなければいけないのだ。自由競争で弱い者が倒れ、不況の中で間引きをされるのは当然であるという感覚、古い自由主義経済の感覚で大平さんは対処するのか。いまや福祉国家論が叫ばれる時代だから、資本主義のアキレス腱を少しでも事前に防止をする手だてというものを探さなければいけないのではないか。それが私の立場だ。  そこで、中小企業庁がいらっしゃっておりますから、中小企業庁はこういう倒産——私は倒産の事態というのは数の問題ではないと思うのです。倒れる人の立場に立ったら、一家心中、ガス自殺、新聞で悲惨な記事が毎日こう出ている、その殺伐とした人間の状況を新聞で見る国民が、これについてどういう感じを持ち、人生の生き方にこれがいろいろな影響を与える、そういう重大なことなんです。件数が少なくとも、倒れる人にとっては自分の生命まで絶つことですからね、そういう人がいっぱいいるのですから。だから中小企業庁としては自由主義、資本主義経済ならこれはもうしょうがないのだ、これを何とか防止しようと考えること自体がナンセンスなんだと考えるのか、そういうものは半分なり三分の一なり、政府の施策のよろしきを得て食いとめることが可能なのだと考えるのか。いままで中小企業庁は倒産のそういう追跡調査というものを一体やっておるのかどうか。いつも出ちゃってから、何件出ました、いや大変ですと言うだけで、具体的な提言を大蔵大臣にでも、通産大臣にでも、こういった倒産というものはこういう手だてとこういう手だてとこれをやれば、いまの三分の一は救える、半分は救える、それをぜひやるべきだという政策提言を中小企業庁は一体おやりになっているのだろうかどうか。追跡調査をやっているのかいないのか知らぬが、ほとんどやっていないのじゃないかと思うのですね。中小企業庁から見た今日の中小企業の倒産の状況をどう認識され、どうすればこれらの業者の救済というものに力をかせるのか、その中小企業庁の提言を聞きたい。
  103. 大平正芳

    大平国務大臣 その前に一言。  私どもの経済財政政策の基本は、武藤委員がいま御指摘のように、雇用の安定、経済の安定をどのようにして図ってまいって、そしてできれば、それを手がたく拡大の方向にどうしたら持っていけるかについて、どういう施策をどういう手順でやってまいるかにせっかく苦心をいたしておるつもりでございます。  で、オイルショック以後の財政経済政策をごらんいただきましても御理解いただけると思いますけれども、資本主義の原理を裸でやったならば決してあんな政策は出てこないと思うのでございまして、私どもは需要の管理を通じましてインフレを抑えながら、同時に需要の創造を通じまして経済の回復を促して、今日の状況を招来いたしました経過の中に、政府が中小企業を本体とする日本経済の安定と発展、そしてそれにまとわる雇用の安定と拡充にいかに腐心しておるかにつきましては、十分御理解をいただけるのではないかと思います。
  104. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 倒産の原因とこれに対する対策ないし中小企業庁の役割りという点で御質問があったかと思いますが、対策について申し上げますと、やはり景気回復が第一というふうに考えております。  大企業と中小企業と分けまして、回復の度合いを見てまいりますと、やはり大企業の方が立ち直りが速うございまして、中小企業の方は若干スピードが遅いという数字が出ております。したがいまして、そういった立場でございますので、何らかの支えを常に必要とするわけでございますが、これは経済が非常に流動的でございますので、三つの面から施策をする必要があろうかと思います。  一つは需要の面、いま大蔵大臣からもお話がございましたように、いわゆる売り先の確保ということでございまして、これは、電電、国鉄等の問題がございましたときにも、中小企業庁はまず国鉄及び電電公社の方まで足を運びまして、そしてできるだけ削減による中小企業の影響緩和についての配慮方を要請しておりますが、何がしかの配慮、少なくとも一律にということのないようにお願いをしておるわけでございます。それにしましても需要構造が非常に変わっているということは先生御承知のとおりでございまして、最近、需要構造がかつての時代と違いまして非常に変わってきております。その面からも近代化それから販売技術の点でも非常に気を使う必要がございますので、その辺は特に小規模企業の指導対策という点に現在力を入れているわけでございます。  それから第二番目のポイントは技術でございますが、これも相当な技術革新がございますので、これに追いついていけるための、それから国際競争力に負けないような技術対策というものをいろいろな面で講じておるわけでございまして、これも非常にじみちな対策でございますけれども地方公共団体と一体となりまして現在力を注いでいるところでございます。  それから第三番目は金の面でございまして、この点につきましては、中小企業三機関を基軸にいたしまして対策を講じる、機動的かつ迅速にきめ細かに手を下していくということでございます。  それからもう一つ、信用補完制度、これも今回の倒産関連保証その他を通じましてきめ細かにやっておりますが、何せ企業数が全国で五百万企業ございまして行き届かない点もあろうかと思いますけれども、できるだけ多くの人を救っていくという立場で相談業務、指導業務それから振興事業という点で力をいたしているつもりでございますが、今後も気をつけていきたいと思っております。
  105. 武藤山治

    武藤(山)委員 割り当ての時間が来てしまいましたので、私の提言を申し上げる時間がありません。私もこれらの倒産企業に対してどうしたらいいかということを本委員会で何回もいろいろ提言をしてまいりました。きょうは具体的にしようと思ったのですが、時間がありません。さらに、来年度予算編成をめぐる諸問題について大臣に通告をしておいたのでありますが、きょうはそれに触れることができないことを残念に思いますが、割り当ての時間ですから私の質問を終わります。
  106. 田中六助

  107. 増本一彦

    増本委員 初めに、昨年の秋以降今年度の予算編成の段階で、老人医療費の無料化を有料化しようという動きが大蔵省財政当局内部から出て、これは今年度は見送りになったわけです。また来年度の予算編成を契機にして老人医療費無料化を有料化しようという点で検討が行われているという報道もされているようですが、その真偽をまず確かめたいわけです。有料化についての検討を具体的にやっているのかどうか、もしやっているとしたらどのような事柄を検討しているのか、まずその点を説明してください。
  108. 松下康雄

    ○松下政府委員 御質問の御趣旨が、来年度大蔵省としてこの問題についての姿勢を決めまして実現の具体的検討をと申しますか、そういう動きとして、たとえば外部と交渉しようとかそういうことがあるかということでございますならば、ただいままだ予算編成は、私ども各省庁の来年度についての御要求をだんだんとお聞きをしておる段階でございまして、内部的には内容の査定に取りかかったところでございますので、全体の仕事の運びからいたしましても、予算編成の具体的な項目につきまして結論を出しておるという段階ではございません。
  109. 増本一彦

    増本委員 結論を出しているとか出していないとか言っておるのじゃないのですよ。検討を始めているというように新聞報道もあるけれども財政当局として具体的に検討をしているのか、しているとしたらどういう事柄が検討課題になっているのかということを伺っておるのです。     〔田中委員長、退席、森(美)委員長代理着席〕
  110. 松下康雄

    ○松下政府委員 老人医療の問題全体について財政当局としての検討をやっておるかという御質問でございますならば、私どもも昨年の予算編成のとき、あるいはそれ以前から、たとえば財政制度審議会等の御建議におきましても、この老人医療問題というのは財政上のあり方なり制度的なあり方について検討すべき問題の一つであるというようにかねて御指摘もいただいていることでございますので、一般的な意味でこの問題についていろいろ考えておることがあるかということでございましたならば、それは引き続きましてこの問題についてはいろいろ考えておるところでございます。
  111. 増本一彦

    増本委員 十月十一日付の日本経済新聞によりますと、大蔵省財政制度審議会の第二部会に、医療制度の、特に医療予算の関係でこれの改革のために諮問をするというようなことが報道されておるわけですね。十八口に初会合を開くのでそこでやりたい。具体的に財政当局としてどういうことを考えてどの点をこの財政審に諮問しようとするのか、これまでの進めてこられた手順を含めてひとつ明らかにしてください。
  112. 松下康雄

    ○松下政府委員 財政制度審議会に対する諮問といたしましては、必ずしも記憶が明瞭でございませんので恐縮でございますが、一般的な意味での内容の非常に広い御諮問がございまして、これに対して制度審議会で年々御検討の上その結果を建議としてあるいは御答申としていただいておるという形で取り進めていただいておると思っております。したがいまして、この第二部会に大蔵省として手続的に諮問の手続をとるというようなことではございませんけれども、本年の財政制度審議会は部会を二つ設けておられまして、その第二部会におきましては、主として社会保障の諸問題について御審議をいただくということに相なっておりまして、近く第一回目の会合が開かれることになっております。この審議会は恐らく最初のうちは従来と同様に社会保障制度をめぐる主として財政面からのいろいろな実情の御審議、調査というところから始まりまして、だんだんと問題点を審議会の中で煮詰めて御論議をいただくことになると思います。私どもも、社会保障の問題についてお取り上げをいただくということでございますと、医療の問題は財政上も非常に影響するところが大きな重要な問題でございますので、財政制度審議会での検討の重要な一つの対象に当然なっていくというふうに思っております。
  113. 増本一彦

    増本委員 財政危機が起きて以降、毎年、常に老人医療費の無料化の制度を有料化しようという方向が財政当局から出てくるわけですね。これは大平大蔵大臣がずっとおやりになっている中で財政当局からこういう問題が出てくるわけですが、大臣としてはこの制度は有料化をした方がいいというようにお考えなんですか。まず大臣の御所見はどうなんでしょう。
  114. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国の社会がここ当分ずっと長きにわたって高年齢化の傾向が顕著になってまいることは、増本さんも御案内のとおりでございまして、したがって、これは医療問題ばかりでなくいろいろな高年齢化社会として取り組んでいかなければならぬ問題が出てくることは容易に想像できることであると思います。老人医療の問題もその一つでございまして、対象人数がだんだんふえていくという傾向にある、相対的に、これを収容する施設が果たしてどういう程度に充足されておるか、充足さるべきかという問題が私その次にあるのではないかと思うのであります。それから第三の問題として、老人の福祉というのは医療問題ばかりでない、ほかにいろいろあるわけでございますので、老人福祉対策全体としてどのようにレベルアップしていくか、内容を充実していくかという問題があるのではないかと思うのでございます。したがって、私は老人医療問題が有料か無料か、またどの程度有料にするか、どの程度無料にするかというような問題は、それだけを取り出しては評価ができないのではないかという感じがするのであります。やはり、全体として老人の真の医療を具現してまいるにはどういう配慮が全体としてなされるべきであるかということが厚生省を中心に検討がなされてしかるべきではないか。正直に言って、私はどうすればいいかという結論をまだ持っておりません。この問題は、したがってことしの予算の編成のときの問題がございまして、一部大蔵当局で有料化の問題を提起したことがございましたら、世論の袋だたきに遭ったことは増本さん御承知のとおりなんです。それでは一年間ひとつ厚生省を中心に検討してみるかということにいたしておるわけでございまして、私はいま厚生省でもいろいろ御検討されておるのではないかと思います。要は、どうすれば老人の幸せにつながるかという問題でございまして、有料か無料かというような限局された問題ではないのではないかということ、そのように考えておるということ、そしてどうすれば老人の幸せが招来できるかということはよほど各方面英知を集めて勉強しなければならぬ問題ではないかというように私は考えておるんだ。それがいま私の考えの中にあるので、こうすればいいんだ、どうしてもこうしなければならぬというような、そういう思い詰めた考えは私は持っておりません。
  115. 増本一彦

    増本委員 そうしますと、大臣がそういうようなお考えなのに、この医療費抑制の具体策について、財政審の第二部会で検討してもらうというような、そういうことで諮問をするというようなことはどうなんですか。これは事務当局が先走ってやっているのですか。これは当然大臣の名前で諮問されるわけでしょう。
  116. 松下康雄

    ○松下政府委員 その点は先ほどお答えを申しましたように、個別にこの問題について、たとえば老人医療の問題について御検討願いたいというような具体的な諮問ではございませんで、広く全般に財政制度上重要な問題についての御審議をいただく。その御審議のテーマといたしまして、ことしの第二部会では社会保障の制度全般の問題をお取り上げになる。私、その中で医療の問題はこの影響するところは財政的にも大きな問題でございますので、当然これが検討の対象となるでございましょうということを申し上げたところでございます。したがいまして、それは大蔵省の事務当局として老人医療問題を取り上げてこれを御諮問をするということではございません。
  117. 増本一彦

    増本委員 しかし、その医療費の中で去年からの経過をずっと見てみると、やはりこの老人医療費が保険財政の中でも非常に赤字の要因になっているとかいうようなことが財政当局の部内のいろいろな人たちから意見が出されるというようなこともあるわけでしょう。その事実はあなたも認めますね。だから社会保障とか福祉全体を検討してもらうといっても、いまの財政審の動きから免れば、そして財政当局の動機の中にも、少なくとも動機と言えるものの中にも、この老人医療費の無料化の是非について、やはりこれも重要な検討課題になるということは期待もし、そのことは現実にあなた方としても考えておいでになるのではないですか。その点はいかがですか。
  118. 松下康雄

    ○松下政府委員 申し上げましたように財政制度審議会の個々の御審議の内容を事務当局として拘束するというようないたし方ではございません。ただ、社会保障の問題の一つとしまして老人医療の問題ということになりますれば、一つは保険財政あるいはひいて国なり地方公共団体財政に及ぼしますところの財政的な影響ももちろんございますし、そのほかに老人医療の需要に対しましてわが国の医療制度としてこれが十分な供給を今後遠い将来にわたって確保していくことができるであろうか、どうであろうかというような基本問題があり、またその基本問題が同時に将来の、今後の財政問題にもつながってまいるというような、及ぼすところのはなはだ広い問題でございますので、財政制度審議会で御審議いただくにいたしましても、当然そういう幅の広い視野からの御審議があろうと考えております。
  119. 増本一彦

    増本委員 率直に大田にもう一度お伺いしますけれども、老人医療費を無料化したことで何か弊害が今日まで、四十八年からこの三年の間に出た、そういうように大臣はお考えになっていますか。いかがですか。
  120. 大平正芳

    大平国務大臣 実施したのは四十八年一月でござましたか、でございますから、それ以後三年余りの経験というものは確かに振り返ってみていろいろ勉強してみる必要があるのではないかと思いますが、私はその事態を詳しく存じませんのでコメントすることはできませんけれども、そういうことは勉強してみる必要があるのではないか。先ほど申しましたように、施設は限られておる、老齢人口はだんだんふえていくという中で、一体現実の受診の状況がどうなっておるのかということは、確かにみんな関心があるのではなかろうかと思うのでございまして、それは調査してみてその中に弊害があるのか、ないのか、それは確かに検討に値する課題ではないかと思います。
  121. 増本一彦

    増本委員 いま大臣自身としては御自分がこういう弊害があるというような、そういうものは何もお持ちでない、こういうことですね。そうすると、ここで来年度の予算の編成の中でこれを有料化に、いわば実質的に改悪するというようなことはおやりにならないというぐあいに承ってよろしいでしょうか。
  122. 大平正芳

    大平国務大臣 それはまた増本さん気が早過ぎるので、予算編成のときに問題になりまして、そんなに性急に考えぬでもいいじゃないか、一年間は少し勉強期間を置こうじゃないかというようなことで、いま勉強しているのでございますから、今度の予算編成まで勉強させてくれませんか。あなたの方が少し性急過ぎるのじゃないですか。
  123. 増本一彦

    増本委員 厚生省の御意見を伺いますと、それからまた新任の早川厚生大臣の当該委員会でのお話によりますと、ともかく自分たちは老人医療の無料化は続けていく、有料化は反対だ、こういう御意見を対外的には発表されているようですね。しかも厚生省は昨年、老人医療あるいは老人を中心にした社会保障全体のあり方をどうするかということを二、三年ぐらいかけて十分に勉強もし調査もした上でなければ結論が出ない、こういうことでここずっと推移してきているわけですね。そのときに今度の予算編成でまた老人医療費の無料化を有料に、いわば福祉の後退のようなことがなぜ大蔵省財政当局から出てくるのか。ですからいまの大臣のお考えでも、今度の予算編成まで十分勉強ということでなしに、所管をしている厚生省や厚生大臣自身もそれは困る、無料化を続けていくということを言っておられるわけですから、この際この問題は、むしろ大臣としても目立った弊害をお気づきになっていらっしゃらないわけですから、当然そのまま続けていく。むしろ切実な老人の要求からいったらこの七十歳というのをもっと引き下げてくれという要求も具体的にあるわけです。あるいは無料であるけれども、寝たきり老人のような場合には病院にもかかれないというような老人は四十二万人を超えているとか、あるいはお医者にかかれない、あるいは看護をしてくれる人がいないというようなひとり幕らしの老人になりますと六十一万人を超えているというような実態もあるわけです。だから、そういう実態を見てみますと、厚生省もそうやってもっと慎重に十分にあり方そのものを含めて検討をする、それには二、三年かかると言っている事態を考れば、来年度の予算編成でこれを有料化の方向を打ち出すとかというようなことはすべきでないし、そういう意味で来年度の予算編成でこの問題が出るということはないように、この際はっきり結論づけてもらいたい。これが全国のお年寄りのいわば期待でもあると思うのですよ。だからそういう意味で申し上げているので、いま一度そういうことを踏まえて大臣お答えを伺っておきたいと思います。
  124. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、老人の本当の福祉をどうしたらいいかということを、増本さんも考え、私も考えておるわけなんでございまして、そのためには、老人医療問題もありますけれども、ほかの福祉政策もいろいろあるわけでございまして、四十八年一月以降ほかの福祉政策もどのように進んできたかということもいろいろ検討したらよかろうし、老人医療対策の実際がどうなっているかということもまた勉強すべきじゃないかと私は思います。  そこで、厚生省と大蔵省はどうせ予算編成で相談しながら来年度の予算編成をしなければならぬ時期が来ておるわけでございまして、したがって予算編成の前に十分まず大蔵省と厚生省の間の折衝を、これから始まるわけでございますから、どういう結論が出ますか、ひとつそれを見守っていただきたいと思うのであります。私はその予算の折衝に初めからさるぐつわをはめようとは思いません。いい予算をひとつ編成するように努力してくれということを願いこそすれ、こういうことをしちゃいかぬというようなことをあらかじめ予断を持っていろいろ申しつけるというようなことはなるべくしたくないのでありまして、しばらく大蔵省と厚生省にお任せをいただきたいと思うのでございます。いずれ国会の方の御判断をいただかなければいかぬことなんでございます。
  125. 増本一彦

    増本委員 明確にお答えをいただけないのはきわめて遺憾です。  それでもう一点だけ老人福祉の問題で、無料化を存続させると同時に、各地方自治体で、老人医療の無料化をやりながら、しかし保険財政の圧迫にならないように老人の事前の健康管理や何かを十分に積極的に医療関係者と一緒に取り組んで進めて実効を挙げているところがたくさんあるわけですね。私は大臣に、ぜひそういう実態を具体的に調べて、そこから——老人医療費の無料化というのは逆にそういう自治体の関係者は必要なんだということを強調していますので、そういう実態をむしろ典型として全国に広げていくというように、そういう意味でも財政当局としても十分に判断をされる必要があるのじゃないかということを思うわけです。  たとえば長野県の南佐久郡八千穂村とか岩手県の沢内村というようなところでは、それぞれ全国あるいは近県から見ますと、老人がお医者さんにかかる回数というのは非常に多いわけですが、しかし一人当たりの医療費で見てみますとむしろ逆に少ない。保険財政の圧迫になっていない。なぜかというと、地方自治体と医療関係者との間で、たとえば健康台帳というものを一人一人の老人ごとにつくっていて、事前の健康管理や診断が常に進められているわけです。そういう意味で一人一人の老人についてちゃんと健康管理が行き届いている。だから具体的な手だてをとることができて、重い病気にかかったときしかお医者さんにかかれないというようないまの一般的な老人の状態から見ると大いに進んでいるわけです。  だから、そういうようなことを含めてこの実態を財政当局としても十分につかんで、そして本当に老人医療費の無料化という一つの柱を社会保障の柱の一つとして、これをむしろ発展さしていくというような方向で具体的な取り組みをさるべきではないかということを思うわけです。この点はひとつ大いにそういう方向を含めて財政当局としても検討していただきたい、こういうように思うのですが、これは具体的な問題ですから主計局の方からお答えいただきましよう。
  126. 松下康雄

    ○松下政府委員 病気になる前にまず健康に留意することが第一じゃないかという御指摘の点は私どももそのように考えております。ただ、国民の医療の問題、あるいは保健衛生の問題を現実にどういう制度で改善をし推進をしていくかということは、まずこの所管の官庁でありますところの厚生省で十分地方の実情を児ながら、真に国の政策にふさわしい全体政策として打ち出す準備をされて、そうしてその財政面の問題につきまして私どもに御相談に来られるという形で進んでまいるわけでございます。私どももそういった点につきましては、実情なりそれに対する対処の方針なり考え方なりという点につきまして、十分厚生省から話を聞きながら予算の査定を考えていくという姿勢はとってまいりたいと考えております。
  127. 増本一彦

    増本委員 それじゃ次に、少し所得税減税の問題についてお伺いをしておきたいと思います。  まず最初に、最終需要が大ざっぱに分けて四つあるわけですけれども、個人消費あるいは公共投資の政府固定資本形成ですね、それから輸出、民間設備投資、それぞれがいま今日のこの経済情勢のもとで大体どういう状況になっているというぐあいに指数の上でもつかんでおられるか、その辺からお伺いをしていきたいと思います。
  128. 佐上武弘

    ○佐上政府委員 一−三、及び四−六の数字はすでに国民統計速報で出ておりますので、むしろ先生の御質問は最近七月から九月にかけてどうなっておるかという御質問だろうと思うのであります。  まず、最終需要で非常に大きなGNPの割合を占めておる国民所得、国民総支出で五十数%を占めております個人消費の問題でございますけれども、個人消費は家計調査で勤労世帯八千世帯を中心にして毎月統計を出しておりますのが七月まで入っておるわけでございます。これが名目で四月までは二けたでございましたけれども、五月、六月、七月といずれも一けたでございます。七月は名目では八・八というような数字になっております。そういった意味におきましては、四−六に比べまして個人消費の名目の伸びが一けたにとどまった、七、八%にとどまった。これを、よく実質と申しますが、消費者物価の指数でそのまま割りました数字が実質の支出でございますけれども、五月からマイナスに転じておるというところから、個人消費の支出がある意味において実質がマイナスではないかという御批判があるわけでございますが、名目では依然として七、八%伸びておるわけでございます。  そこで、ある意味において個人消費の伸びが鈍化しているのではないかという議論が実はあるわけでございますが、これには私はいろいろの理由が複合して出ているのではないかと思うのであります。  一つは、先生御案内のとおり、今次の春闘と申しますか、春の賃上げが八・八%、大手でございますけれども、一けた台にとどまったということ。それからもう一つは、企業の収益の関係もございまして、夏のボーナスは、大手でございますけれども、三%台にとどまっているということ。それから季節的な要因でございますけれども、ことしの夏は冷害が起きるほど涼しかったということもございまして、レジャーの面もさることながら、たとえばクーラーとかあるいは夏物の衣料とかそういったものの売れ行きが伸び悩んでおるというようなこと、こういう複合的な原因が結びつきまして、この六、七、個人消費の一けた台、名目で七、八%の伸びになったというふうに私は考えております。  しかしながら先行きの問題については、特に御質問がないわけでありますけれども、ことしの冬のボーナスは、企業収益の好調を反映してかなり伸びるというふうにも言われておりますし、御案内のようにオーバータイムと申しますか、時間外手当も、まあいまのところ前年に比して三割、四割程度の伸びでございます。そういった時間外の増も考えられる等々いろいろございまして、これから先行きもいろいろございますけれども、私ども全体として考えますと、政府の見通しております実質五%程度の伸びというものは回復できるのではなかろうか。と申しますことは、逆に申しますと十−十二月から一−三にかけて次第に個人消費も伸びてまいるとか回復してまいるというようなことではないかと思うのであります。  それからもう一つの要素でございますが、輸出がわりあいといままで好調でございます。それが、大臣先ほど答弁されましたけれども、七月以降、たとえば通関輸出あるいは輸出信用状というものが、対前月比マイナスに転じております。これは在庫一巡というようなことも一つ起因しておると思いますが、いずれにしましても輸出はかなり高水準の横ばいのような形でございます。世界経済の全体の見通しとしても米国あるいはドイツを中心にしてやはり底がたい姿でございますから、これが高位水準でいくのではないか。ただ従来のようなテンポで伸びるということはないにしても、まずそういう方向で進んでいくのではないかというふうに考えております。  その次に問題になりますのはやはり民間設備投資でございます。民間設備投資につきましては、先行指標である機械受注なりあるいは建設受注なりを見ますと最近のところ乱高下をいたしておりまして、ちょっとこの見きわめがなかなか——月ごとに動いておりますが、どうも底固めが終わったのではないかというふうに私ども判断いたします。御存じのように四−六のQE、つまり国民所得統計では実質一・七%のプラスに転じておりますし、それから各民間経済研究機関等が出しましたいろいろの指数を見ましても、本年は大体一六%から二七%、名目でございますけれども、そのぐらいの伸びになる。なかんずく、特に電力、鉄鋼というふうに中期的な展望で設備投資をしている、これはなかなか底がたい動意があるというふうに言われておりますけれども、これが果たして下期になって非常に大きく出ていくかどうかということは、それぞれの企業の先行き判断に待ちますけれども、少なくともいままで四つか五つ出ている数字は、かなり底がたいように私ども判断いたしております。  大体需要項目につきまして主要なところを申し上げげますと、こういうふうな判断でございます。
  129. 増本一彦

    増本委員 そこで個人消費は、家計調査でも実質はマイナスですよね。最近の個人消費が、それじゃ国際比較ではどんなぐあいになっていますか。
  130. 佐上武弘

    ○佐上政府委員 正確な数字につきましては、必要でございますれば、後で資料を差し上げますが、まず一つの点として特徴的でございますのは、米国におきましては個人消費は本年の一−三までかなり活発でございました。特に自動車の購入をいままで買い控えているものが急に出てくるというような状況でございましたけれども、どうも四月ころから七月にかけまして個人消費は——小売統計でございますけれども、ほとんど横ばいに推移をしているというふうに聞いております。しかしながら八月に入りましてから再び小売は上昇傾向に転じている。一つは可処分所得のかなりの増が出てきているというところにあろうかと思いますが、形としては四月ごろから七月ごろまで、アメリカの場合は消費が同様に停滞——停滞といいますか、横に並んでいるというふうに私ども聞いております。  それからもう一つ、西独でございますけれども、西独も不思議に同様の傾向がございまして、一−三月まではある程度活発でございました。これまた自動車の需要が耐久消費財としてかなり出てまいりましたけれども、これが七月ごろまでそう盛り上がりも見せていないというふうに聞いております。ただ御存じのように、七、八月につきましては休暇シーズンで、ヨーロッパでは休暇にかなり海外旅行をするというところから、最近また動意が出始めたというふうに私ども理解をいたしております。
  131. 増本一彦

    増本委員 欧米諸国の場合にはいずれも個人消費がかなり活発で、そしてこれが今日の不況を克服していく上ではきちんと下支えとなっている。わが方の場合には実質でマイナスである。国民生活の方は相当ひどい状況があるわけですね。だからこそ、私たちも今年度の当初予算の審議の際から、所得税の減税をすべきことを言うてきたわけです。ところが、大蔵大国が先般またお話しになったところによりますと、ここ二、三年はもう所得税の減税は一切見送りだというようなお話も現実に出ているわけですね。これは一層国民を苦しめるだけじゃなくて、特に低所得層に対する税負担を一層強めることになる。そういう点からも所得税の減税については、少なくとも本気で実施を考えるべき時期にいま来ているというように思うのですけれども、その点いかがなんですか。
  132. 大平正芳

    大平国務大臣 御案内のように、特例債まで出して均衡をやっと維持いたしておりまする財政状況でございまするので、減税を考えるような状況でないことは、どなたが見ても御理解いただける状況であろうと思うのであります。  しかしながら、それにもかかわらず所得税減税という問題は、ひとり共産党ばかりじゃございませんで、野党各党ばかりじゃございませんで、与党内でも強い主張がございます。それぞれ主張するところは、実質所得を割るような状況でよろしいのかとか、そういう政治は許されないとか、あるいは景気対策から言ってもそういう必要があるのではないかとか、おおむね同じ御主張のように承っておるのであります。  もしそれが、この際わが国がとるべきファーストプライオリティー、最初に選択すべき政策である、何をおいてもやらなければならぬほど重要な政策であるということでございますならば、歳出あるいは歳入面におきましてそれぞれの工夫をいたしまして、財政の均衡、つまり赤字公債をふやすようなことではなくて、ほかにいろいろなその政策を実行するような手だてを考えてやるのでありましたならば、あえてそれに反対はできないのではないかというように申し上げておるわけでございます。  つまり私が反対いたしておりまするゆえんは、そういう工夫も考えていただかないで、ただ所得税減税はやるべきであるという御主張だけでは、いまのような財政状況ではいただけないということを申し上げておるわけなのでございます。もし増本さんがそういう御主張をされるのでございましたならば、こういった点は犠牲にしてもいいから所得税減税はどうだろうかという御相談でございますならば、共産党さんといえども御相談に乗りたいと思います。
  133. 増本一彦

    増本委員 すでにその点は、たとえば今年度の予算審議の最終段階で、私どもの予算編成についての意見はそれぞれ申し上げてあるはずであります。それから来年度についても、基本はやはり変わらない。つまり資金の流れについても、公共投資を含めてもっと考える必要があると思いますし、それから、いま財源のお話がありましたが、この点では特に大臣とこれまでも再三議論をさせていただいてきたように、私たちはこれまでの大企業や大資産家の特権的な減免税はもっと厳しくすべきだということも含めて、これは具体的に提起をしています。  もう時間がございませんのでこれを改めて大臣に申し上げる余裕もありませんが、しかしもう一つ考えていただきたいのは、たとえば税プロパーで見ましても、年収二百万円の夫婦子二人の標準世帯を例にとりますと、五十年度の所得税が一万一千円です。仮に一〇%ずつ伸びるとしますと、ことしの所得税は二万四千円でしょう。来年は四万七千円です。二年間で四・三倍にも税負担が強まるのです。これは単純に計算していただけばすぐ出てくることです。そういう人たちが、いわば階層としても非常に多いわけですから、そこがこの家計調査でも、個人消費でも実質でマイナスになっているという今日の状況を見れば、やはり所得税の減税を基本の一つとして考える。そして、最終需要をもっと個人消費の面から喚起して国内市場の拡大を図っていくということが、実は整合性のとれた不況対策、国民の側からの不況対策になるのではないかということを申し上げているわけですよ。  それからもう一点、つづめて申しますと、四十九年、五十年で二兆円の所得税減税をやって、国際比較から見ても課税最低限が非常に高くなっている、こういうようにもおっしゃるわけです。しかし、一人当たりの実質個人消費支出を見ましても、欧米と比較しましても、個人消費支出は四十九年で一人当たり月額五万五千六百円でしょう。ところが、たとえば四十八年で、アメリカは九万八千七百円、西独で七万五千八百円、フランスで六万九千四百円というぐあいに、先進諸国の中でも格段に違いがありますね。それに加えて、課税最低限ということで見ますと、エンゲル係数も一つの基準になると思うわけですけれども、これがわが国の場合、昭和四十九年度で三四%くらいですか。ところがアメリカが一八・一とか西ドイツが二八・五というような状況ですから、そういう点から見ても、名目で百八十三万円の課税最低限になったと言っても、まだ、それぞれの国の経済状況を具体的に見てみると、決して国際水準に日本が誇るべきほどに追いついているというぐあいじゃない。国民生活を守る点からいっても、所得税の直接の減税で還元をしていくことも当然これからの政策の選択としては今日的な課題として重要ではないか、こういうように私は考えるのですが、そういうことまで踏まえて大臣としてはどうお考えになるか。来年度の税制改正も進められている状況ですから、ひとつ御所見を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  134. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 計数にわたって御指摘がございましたので、まず私からお答えいたします。  年収二百万円の標準家庭の方は税制改正がなければ、来年、再来年と収入が一〇%ふえると税もふえていく、四倍ぐらいになるかもしれないという御指摘が、まずございました。正確に計算してみないとわかりませんけれども、四倍までにはならないかもしれませんが、傾向としてそういう数字になるだろうということは御指摘のとおりかと思います。  ただ、それが何を意味しておるかということは、同じ年に二百万円の方と二百四十万円の方を比べればいまがそうなっておるということを縦に並べておるわけでございまして、もっと端的に申し上げれば、いま二百万円の方の所得税はおっしゃるとおり一万一千円でございます。年収が五倍の一千万円になりますと所得税は百三十六万八千円でございまして、年収が五倍になれば所得税は百倍以上になるというシステムがいまあるわけでございます、改正をしないでまいれば。ですから、そういう点が累進構造というものでございまして、それを今後どういうふうに考えていくかというのが基本的な問題の一つであると思います。  それから、各国と比べてどうかというお話でございますが、たとえば三百万円の収入の場合に、各国それぞれの税法であれば幾らの所得税を負担していただかざるを得ないか。日本の場合は住民税を含めて四・八%でございまして、アメリカの場合は八・四%、イギリスの場合は実に二四・六%、西ドイツでは一一・九%という所得税をそれぞれ負担してくだすっておるわけでございまして、国際的に見て日本の所得税が高くてどうにもならないという状態ではないはずである。それは事実認識の問題であろうかと思うのでございます。  しかし、今後の所得税のあり方をどう考えるかということは、御指摘のとおり基本的に非常に重要な問題でございますので、現在税制調査会にお願いをいたしまして、中期的に見た場合の所得税負担のあり方をどう考えるかということを御論議願っているわけでございます。
  135. 大平正芳

    大平国務大臣 計数の問題としてはいま主税局長がお話し申し上げたとおりでございます。  しかしながら、私どもといたしましては、所得税問題というのは非常に大事な税制の中心課題であるばかりでなく、政治の重要な課題の一つでもございますことは御指摘のとおりでございます。こういう問題につきまして軽減措置をとり得るような事態をなるべく早く迎えなければならぬと存じるわけでございまして、そのためにまず財政の正常化を中央、地方を通じて図っていくことに当面努めていくべきじゃないかと思うのでございます。ちょうどいまそういうやさきでございますので、いましばらくは財政当局の言い分にも耳を傾けていただくわけにはいくまいか、そう考えております。
  136. 増本一彦

    増本委員 それではこれで終わりますけれども、主税局長、さっきおっしゃったその点は私は異論がありますよ。所得税の税率は高度累進で決まっているのだからね。しかもそのことは、所得の再配分にとって実は公正なのだということで決められているわけでしょう。だから、高額所得者が重い税を負担をするというのはそれでいいわけですよ。ただ同じ人が年が変わるごとに、たとえば仮に一〇%所得が上がっても、いまの経済状況で考えればそれにつれてやはり物価も上がっていきますね。実質所得としてはそう変わらない状況のもとで税負担がそれだけ、三倍、四倍というぐあいにふえていく。だから低所得の勤労者の生活というものも考えなくちゃいかぬ。特にその中でそういう低所得層の人たちがむしろ、個人消費支出全体の中で占める割合で見ても非常に大きいはずだし、その人たちの人数も多いわけですから、そういう人たちのことも考え所得税の減税、これは国民生活を守るという上からも考えていく必要がある。そのことが景気対策にもつながっていくのだということで申し上げているのです。同じ年度で所得階層別に見るというのじゃなくて、その同じ人が年を越したらそういうぐあいにふえていくという状況、これは最初の税率の刻みが非常にきついとか、そういうところの問題も出てくるでしょうし、いろいろ問題がありますけれども、そこらのところも含めて検討すべきじゃないかという意味で申し上げているわけです。ですから、いまおっしゃった趣旨は非常に問題だと私は思うのですけれども、その点はやはり答弁を訂正されるべきじゃないですか。いかがです。
  137. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 私が先ほど申し上げたのはあるいは舌足らずであったのだろうと思っておわびいたしますが、収入が二割以上ふえると税が四倍近くになるということだけの御指摘があって、その四倍というのはいかにもひどいではないかというところだけでの御議論が出ると、それはやはり倍数で考えればいまの仕組みそのものにそういうものが内在しておりますということを申し上げたかったわけでございまして、問題は実効負担率がどの程度であるかということであろう。つまり、二百万に対する一万一千というのは、収入一〇〇に対して〇・五五%の負担なのでございますから、課税最低限ぎりぎりの方が収入がある程度ふえたときに実効税率がある程度上がっていくということは否定し得ない。課税最低限を持っている限りそうなるわけでございますけれども、それが四倍になった場合の実効負担というのは一・五八という数字になるわけで、その一・五八という実効負担は非常に重いものと考えるのか、過去の経緯とか国際的に見てどうかということでむしろ御議論を願いたいのであって、どことどこを比べたら何倍になる、そこだけでの御議論では問題の全体が必ずしもよくわからないのではないかという趣旨で申し上げたつもりでございます。
  138. 増本一彦

    増本委員 議論をしたいところですけれども、時間がありませんので、これで終わります。
  139. 森美秀

    ○森(美)委員長代理 坂口力君。
  140. 坂口力

    坂口委員 通告をいたしてありませんが、先ほど老人医療の問題が出ましたので、私も一言だけ触れさせていただきたいと思います。  大臣の方から老人医療に対するお考えをるる述べられまして、現在の段階ではまだ白紙だというお話でございますが、いろいろお聞きをいたしておりますと、白紙は白紙ですけれども、できることならという気持ちが何となく大臣の言外に感じられるわけでございます。私のインスピレーションが間違いであれば幸いでございますけれども、そういう感じを受けるわけであります。ただ、大臣としては、医療費の中で老人医療費が年々歳々大きな分野を占めていくということに対していろいろと検討しておみえになろうと思いますが、この全体の医療費そのものですね。国民総生産に対する比でも結構でございますが、全体に占めるところの医療費そのものは、中には低い国もございますけれども、欧米先進国の中では決して日本が高いというわけではないわけであります。一九七 ○年ごろには大体先進国の六割程度でございましたが、最近日本も確かに若干上がってまいりました。しかし、欧米先進国におけるところの国民総生産に占める医療費というもの、これは日本はまだまだ低いと思います。ですから、その国民全体に要する医療費という大枠の中でこれをどう考えられるかということをひとつお聞きしたいわけです。ただ、医療費が何でもふえればそれが国民の健康を守るようになっていると考えるのも、これも早計で、その使い方、そのお金の使われ方ということによってこれは大きく違うことはもう言うまでもございません。どういうふうな医療制度に改革していくかということもあわせてございますけれども、全体に国民総生産に占めますところの医療費というものは、諸外国の例を見ましてももう少し上がっていかざるを得ないのではないか、こういう認識を私は持っておりますが、その大枠での認識だけひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  141. 松下康雄

    ○松下政府委員 突然のお尋ねでございまして、手元に資料を持ち合わせておりませんが、わが国の医療費を全体として見ますと、その国民総生産に占める割合等から申しまして、欧米よりやや低目か、しかしかなり接近したところにきておるということでございます。内容的にこれを見ますとずいぶん違いもございまして、たとえばその中での入院の部分がやや多いのではないかとか、あるいは薬価の部分なり注射の部分が多いのではないかとか、いろいろお国ぶりによりまして内容には違いはございます。私どもも御指摘のようにこの水準そのものが高過ぎるとかなんとかというほどでは必ずしもあるわけではございませんで、最近の医療費の動向を見ますと、医療費の上昇に伴いまして医療費がふえるということもございますけれども、そのほかに大体一〇%ぐらいの年々の自然増がございます。この自然増がそのまま医療水準の中身の向上を示すようなことでありますと、それは大変結構なことでありますが、そのあたりに医療資源の面から見ましてややむだな要素などもあるのではないかという御意見もございます。私どももそういう点はよくながめてまいる必要があるかと思っておるわけでございます。
  142. 坂口力

    坂口委員 大臣、いまの御答弁とあわせてひとつお考えをいただきたいわけでありますが、これは老人医療、確かにこの三年間続きまして、そしてこれによって非常に助かっている人たちが多いわけでありますが、しかし一方、よく言われますように、各病院の入院室はお年寄りによって占領されてしまって、若い人たちが入ることができないというような、一部ひずみと申しますか、その側面も出てきていることはまた事実であります。しかしながら、こういったことが出ているからというので、もともとのところをまたもとへ戻すというのでは、これは何にもならないわけでありまして、その辺のところを取り除く他の方法というものを厚生省とよく打ち合わせをしていただいて、ひとつ御検討をしていただきたい。  特にお年寄りの場合には、外国におきましてはナーシングホームというような、看護の家という直訳が当たるかどうかわかりませんけれども、そういったものができまして、そしていわゆる慢性のそういうお年寄りを病院から引き受ける一つの役目をいたしております。東京にもすでにできているところがございますけれども、そういったものもやはり制度上加味するという中で、現在におきますところの医療施設と、お年寄りの医療の量と、それからそういう制度の改革、その辺をにらみ合わせていただいて、そしてその辺のできましたひずみはひとつ解消をしていただくべきであって、これだけ多いから、また老人医療の無料化をもとへ戻して、それによって患者の数をある程度調整をしようじゃないかというような考え方がもしも根底にあるとしましたら、これは大変大きな間違いだと思うわけです。その辺ひとつお答えをいただいて、次に移らしていただきたいと思います。
  143. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほども増本さんにお答え申し上げましたように、日本の人口構成が非常なテンポで変わりつつあるわけでございまして、老齢社会化を非常なスピードでいたしておるということでございますから、いまの状態のままで判断したら見当が外れるんじゃないかと思います。これから二十年先、二十五年先の日本という状態を想定いたしまして、欧米各国のように成熟した状態における社会保障の状態というものを考えた場合にどうかということを頭に置いて考えた場合に、いまこれがいいからすぐやる、アトランダムにこれをやるというんでなくて、やはりそういう状態を想定した上で用心深くやっておかないと、後でほぞをかむことになりはしないかということを私はちょっと恐れるのです。私、社会保障の専門家でもございませんし、また医療経済について私は余りよく存じませんので、余り知ったかぶりのことは言えないわけでございますけれども、そんな心配をいたします。     〔森(美)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、老人医療問題につきましてもいろんな角度からみんなで勉強して、どうすれば一番老人たちの——われわれももはや老境に入ったわけでございますけれども、老人たちの幸せになるかという問題を真剣に探求していくべきじゃないかということで、ほかに他意はないのです。私がいま財政を預かっておるから、その立場でどうしても、無理してでもそういうように医療問題についてはかたくなな態度をとらなければいかぬと私別に思っていないのですよ。そういうことを当然のこととしてみんなでリベラルに勉強して、そしていい道を発見していけばいいじゃないかというように考えておるのです。坂口さんも、もう無料化はいいもんだというようにあなたは決め込んでおられるようですけれども、何もそう決め込む必要もないんじゃないでしょうか。よく勉強していい道があれば、もっと考えたらいい。増本さんも、先ほどそのように決め込んでおられたようだけれども、もう少しいい道があれば、お互いにそちらのボートに乗ったって別に罰は当たらぬのじゃないかと私は思います。
  144. 坂口力

    坂口委員 決して無料だけが最高の道だと考えているわけではございませんで、たとえば医療費が——私はまだまだ日本はそんな状態になってないと思いますけれども、日本の中で医療費の占める割合がこれだけふえたらもうどうにもこうにもならない、何とかしてどこかで有料にしなければならぬということがもしも起こったと仮定したら、老人医療の無料化のところを拾うのではなしに、むしろ若い人たちの、しかも、たとえば五日間か一週間ぐらいのかぜ引き、あるいは少々おなかをこわすというような程度の軽い病気のところに一部有料化をすべきではないかという考え方を私は個人的に持っているわけでありまして、これは選択順位の問題、先ほどおっしゃったことになるだろうと思いますが、決して何もかも無料ということ、それだけが最高だと考えているわけではございませんで、ただ、その辺のところはお年を召された方々にはやはりそれだけのことはやらねばならぬという心構えで取り組んでもらいたいということを私は申し上げているわけです。  この問題はこれぐらいにいたしまして、次の問題に移らせていただきたいと思います。  これも先ほど社会党さんの方から景気の問題が出ておりましたが、いわゆる景気の中だるみ現象という言葉がこのごろ使われておりますし、また私ども地域を回ってみまするときに、この五月、六月ぐらいからこちらに確かに中だるみ現象というものが感じられる、こういう意見がかなり出ていることは事実でございます。先ほど中小企業庁の方から景気回復に対する考え方として三つのことが示されまして、需要の面、技術革新、それから金融の面というようなことを言われたわけであります。確かにそれぞれごもっともなことでありますし、それがなされれば当然いいわけでありましょうけれども、それが現在なされていないところに問題があるわけでありまして、いまさら私が申し上げるまでもなく、個人消費の動きも、総理府統計を見ましても、三月、四月ぐらいには、前年同月比で二・三%、一・五%というふうに増加をいたしておりましたが、五月、六月になってまいりますと、五月で一・六%の減であり、六月になると三・一%減というふうに実質消費支出の方もだんだん低下をしてきている、こういう現象が起こってまいっております。  そこで、時間がありませんから中間の議論は除くといたしまして、これに対する打つ手はいろいろございますけれども、どれ一つ取り上げましても非常にむずかしい局面にあるわけでありまして、そういたしますと、どうしても税制の問題に突き当たらざるを得ないわけであります。これは新聞報道でございますけれども、個人消費率というものがだんだん低下してきている、このことが現在の景気中だるみ現象の主因ではないかというので、経済企画庁の方はこの減税というものを真剣に考えなければならないのではないかというふうな見通しを立てておみえになる、こういうふうなことが実は出ているわけであります。経企庁長官の言葉ですと高原横ばい現象というような言葉を使っておみえになりますが、決して高原横ばいという感じではなしに、これはもっとふもとを低迷しておるというような感じでございますが、経済企画庁のこの考え方が事実かどうか私も正式に確かめておりません。しかし、政府部内におきましても、こうして現在の個人消費というものを考え、そして景気の状態を考えたときに、減税というものを真剣に考えなければならぬという考え方が出てきていることだけは事実だと私は思うのです。  またこういうことを申しますと、大臣は、坂口さんは税金さえ下げればいいとおっしゃる、こういう言い方をされると思いますけれども、前もって言っておきますが、決してそういうつもりはさらさらございませんで、景気中心に考えましたときに、やはり真剣に議論をしなければならないときにきているのではないか。大臣は、こういう場所で減税という言葉をちょっと口にすると、それでせきを切ったように何かしなければならぬような形になってしまうので、慎重に慎重を重ねて、絶対言わぬようにというようなお考えがあるかもしれませんけれども、そういうお考えではなしに、ひとつフランクにお考えをお聞かせをいただきたい。
  145. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど増本さんにお答えいたしましたように、与野党を通じまして非常に強い御主張がございます。また評論界におきましても、学界におきましても、非常に強い同様の御主張があることは私は承知いたしておるわけでございます。また海外におきまして、端的に税制を景気対策の軸として駆使して成功したかに見える国もあるわけでございます。したがって、決してこのことを考えないわけではないわけでございますが、これには幾つかの条件がなければならぬということでございまして、いまのところ政府といたしましては、税制に頼らなくても、既定の経済政策の手がたい執行を通じて景気の回復は可能であると見ておりますので、そこまで及んでそういうことを考える必要は財政面からも金融面からもないんだという立場をとっておることは、御案内のとおりでございます。しかし、もしそうでなくて、景気が本当にたるんで、回復の弾発力がなくてたるみっ放しと申しますか、回復の軌道にどうしても乗らないという事態が仮に生じたとした場合、そして、いま御主張になっておる税制を景気対策の一環としてぜひやれというようなことが、こういう財政の状況のもとにおいて起こった場合、これはやはりそういうことを主張する以上は、政策選択の問題といたしまして優先的な選択をする以上は、それを歓迎するだけの条件を造築してから御主張願わなければいかぬのじゃないか。歳出において、あるいは歳入におきまして、それをカバーするだけの用意をしながら、端的にこの政策を景気政策としてやるというような場合であれば、これは一つの考えではなかろうかという感じがいま観念的にしておるわけでございまして、いま政府はそういうことについてひとつ検討をしてみようというところまでまだまいっておりません。
  146. 坂口力

    坂口委員 まだもう二、三お聞きしたい問題があるものですから、これだけにさせていただきますが、もう一つ、税制問題でいま新聞紙上等をにぎわしております問題に土地税制の問題がございます。  国土庁、建設省、この両省庁は、土地税制というものの改正に着手すべきだというので、大蔵省、自治省に申し込まれたというようなニュースが出ておりますし、また自治省の方におきましては、いろいろと検討をなさった結果これは見送るべきだというような御意見があるということが出ているわけであります。大蔵省としては、大蔵大臣としてはこの問題をどのようにお考えになるか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  147. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 やや技術的な面が多うございまして、実はまだ大臣に私どもの検討を御報告しておりません。現状を申し上げますと、国土庁と建設省からは五十二年度改正としての要望が参っておりまして、国税の方では、いわゆる法人が土地を売りましたときの土地重課制度の中の適正利益率の部分を手直ししてほしい、もう一つは、公募要件を緩和してほしいということを言っておられます。  それで、坂口委員よく御承知なので、できるだけ簡単に申し上げたいと思いますが、適正利益率と申しますのは、国、地方団体や住宅公団に売る場合と、宅地造成をして一般の最終需要者に公募して売る場合とだけの問題でございまして、山の中を買い占めてそれを法人同士で売買するというようなときには、そもそも適正利益率というものが関係ないわけでございます。したがって、適正利益率をいじるということが、一般的にいま法人が持っておる土地全部の譲渡について重課制度を緩和するというふうにとかく受け取られておりますけれども、問題はそうではない、優良宅地の造成なり公有地の拡大なりというときの条件の一つを直すか直さないかというところにしぼって、いまの要望は来ているわけでございます。したがいまして、適正利益率というものが、現在決まっております率が創設後ある程度年数がたっておりますので、これをそのままでいいのか、合理的な計算としてよろしいのかということは、これは勉強をいたしてみたいと思っております。その場合に、もう少し私どもなりに実態調査も重ねました上で大臣の御判断を仰ぎたいと思っておりまして、そういう意味ではまだ私どもの手元で事務的に検討中の段階でございます。  なお、自治省の方に聞いてみましたところ、自治省の方もまだ結論を出してはいないんだというふうに私どもには申しております。
  148. 坂口力

    坂口委員 大臣、まだ事務的な段階で、大臣の手元には固まったものは上っていないということでございますが、これだけ大きな問題になりつつございますし、一般新聞紙上等にももうはっきりと出ている問題でございますので、事務当局からはまとまった案が上がっていないかもしれませんけれども大臣のお考えは固まりつつあるだろう、こう思うわけでございますが、御所見を賜って次に移りたいと思います。
  149. 大平正芳

    大平国務大臣 土地税制と申しますけれども、これは土地政策の一環でございまして、大蔵省土地政策の主管の役所ではないと思うのであります。これはやはり国土庁等を中心にいたしまして考えられる政策ではないかと思うのでございまして、税制というのはこれを補完する一つの政策的手段であろうと思うのであります。  そもそもこの土地税制も、沿革から申しますと、そういう土地官庁の方から、税の方でもひとつ補完的な役割りをお願いしたいということで頼まれてやったことで、われわれの方でイニシアチブをとった税制ではないわけでございます。したがって、土地政策上いまの税制が不都合であれば直したらいいと思うわけでございます。まず、いま事務当局の方でよく検討しているようでございますから、その検討の結果を待って判断すべきものと考えております。
  150. 坂口力

    坂口委員 これは詳しく議論する暇がございませんが、私どもは、土地税制の緩和というものをしましてもこれは土地供給にはつながらないという雑木的な考え方を持っていることだけを申し上げまして、次の問題に移りたいと思います。  来年度予算の中で、いろいろ現在までの継続事業あるいはまた新しいことを考えていただかなければならないと思いますが、その中で、先般の十七号台風等に関しましても、これは非常に大きな問題を残しましたし、また、この十七号台風だけではなしに、いままでも大きな問題になっておりました治山治水の問題がございます。  昭和四十七年から五十一年まで第四次の治水事業というものが行われてまいりまして、これはことしで切れるわけであります。当局からお聞きするところによりますと、この第四次治水事業全体で四兆七千億円ということになっております。  そこで、これは現在、どうしても手がけなければならないというようなところ、たとえば大きい河川等についてもまだかなり仕事が残されたままになっているだろうと思うわけです。今後、また新しく第五次の治水事業を恐らくやられるだろうと私は思うのですが、建設省の方、お越しいただいておりますか。——その辺のところもお聞きをしたいと思いますし、それから大体どれぐらいの予算で取り組もうとしておられるのか、それから大臣の方からは、積極的にこれに取り組んでいただく姿勢をお聞かせいただきたい、こういうことでございます。
  151. 稲田裕

    ○稲田説明員 お答えいたします。  現在の第四次五ヵ年計画でございますけれども、先生おっしゃるように四十七年度から五十一年度までの五ヵ年の計画で、治水事業が三兆円それから災害関連、地方単独事業、予備費を入れまして四兆五百億ということでスタートいたしました。五十一年度末におきまして九二%ということで一応第四次五ヵ年計画は終了する見通しでございます。  第五次五ヵ年計画につきましては、現在、私の方で総額八兆円の案で関係方面と折衝中でございます。  その考え方といたしましては、大河川にありましては、戦後最大クラスの洪水に対しましておおむね十ヵ年間で再度災害を発生しないような手当てをいたしたい、中小の河川にありましては、時間雨量五十ミリ程度の降雨に対しまして必要な施設をおおむね十ヵ年で整備をしたいという考え方に立ちまして、そのうち緊急を要するものを五ヶ年で積み上げるということで八兆円という案を現在計画中でございます。  なお、十七号台風で非常に激甚な被害を受けておりますので、現在それらにつきましてもなお見直しの検討を続けておる、こういうふうな状況でございます。
  152. 松下康雄

    ○松下政府委員 河川の治水事業五ヵ年計画につきましては、建設省からもお答えいたしましたように、来年度からの新しい五ヵ年計画をつくるべく財政当局におきましても、現在の段階ではまだ事務的に建設省の事務当局と鋭意内容の詳細につきまして検討を重ねておるところでございます。  私どもとしましては、過去の治水事業の実績でありますとか、もろもろの施設の整備状況でありますとか、あるいは七〇年代前期の中期経済見通しでありますとかいろいろの資料を手がかりといたしまして、建設省当局とよく調整いたしました上で、来年度予算編成に間に合わせるように成案を得たいものであると考えて、いま努力しておるところでございます。
  153. 大平正芳

    大平国務大臣 来年度から新しい治山治水計画の作案をやるということでございますが、いま主計局からもお話がありましたが、治山治水事業の重要なことは申すまでもございませんし、とりわけことしの災害で苦い経験をいたしたわけでございまして、これに思い切ってできるだけ財源を割愛しなければならぬことは申すまでもないことでございますけれども、政府全体といたしまして公共投資を五十年代前半にどのようにあんばいしていくかという大きな展望はほぼ持っておるわけでございます。そういうものから大きく外れることはなかなかむずかしいと思いますが、それを踏まえた上で、できるだけの財源は割愛いたしまして御期待に沿わなければならぬのじゃないかと考えております。
  154. 坂口力

    坂口委員 細かな問題をもう一、二だけお聞きをしたいと思います。  一つは、先ほど景気回復のところで関連してお聞きしようと思って落としたのですが、景気回復には住宅建築が非常に大きな影響を与えることは言うまでもないと思いますが、各地域におきましては、個々の一般国民の人たちが銀行の方に住宅ローンを頼みに行きましても、端的な言葉で言えば条件をいろいろ言われてなかなかむずかしい、いい顔をしてもらえない。もう少し積極的に住宅ローンというものを考えてもらえないかという意見が多いわけでございますが、この点、銀行局の方からお答えをいただきたいと思います。  それからもう一つ、時間がございませんので続けて御質問いたしますが、これも全く別の問題でございます。関税の方の問題でございます。お見えいただいておりますか。——これは、最近豚肉等の値段に絡みまして、関税の問題が出ております。これは御説明申し上げるまでもなく、昨年は非常に豚肉が高くて、ことしになりましてからいわゆる減免措置というものがとられまして、最初五月から七月まで、そして七月から十月までというふうに延ばされてまいりました。最近では、下がるのは下がりましたが、今度は、下がり過ぎという言葉を使っていいかどうかわかりませんが、生産者側からすれば原価を割ってしまったということで非常に憂慮しているというような現状がございます。関税の上げ下げはそういうふうに非常に大きな影響を与えてくるわけでございますけれども、今後の見通し、この減免措置をさらに続けるお気持ちかどうか、できることならこの際、十月で切れるようでありますから、これを延ばすようなことはないようにして、余りにも原価を割るということだけはないようにひとつ配慮をしていただきたいと思うわけでありますが、その辺のところをひとつ関税の方からはお答えいただきたいと思います。それから農林省の方、お見えいただいておりましたらそれに対する具体的なお話を先に承りたいと思うのです。  以上、二点承って終わりにします。
  155. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 住宅ローンの方につきましてお答え申し上げます。  先生御指摘のように、わが国の住宅問題の大変重要であるという角度から、民間の金融機関におきましても住宅ローンに資金を回すということにつきまして特別に配慮するようにということは、特に先般の引き締め時期あたりから大変強調してまいった次第でございます。したがいまして、引き締め期間中も貸し出し増加額の少なくとも一割は住宅ローンに回すように、こういう指導をしてまいりました。その実績どおり、そういうふうな資金配分をいたしてまいりました。特に最近におきましては御承知のように企業の資金需要の方が大変落ちついておりまして、全国銀行で大体一一、二%の増加でございますが、住宅ローンの方は三十何%というペースで残高の増加をいたしております。そちらの方にはいま資金配分が大変多くいっておるというのが全般的な状況であろうかと思います。特に相互銀行、信用金庫等につきましては、地域金融機関という色彩が強いものでございますから、さらに住宅ローンの増加率というのは四割とかあるいは五割近くまで最近のところはなってきてまいっております。資金面ではかなりのことを民間金融機関もやっていただいておるのではないか、こういうふうに私ども考えております。
  156. 旦弘昌

    ○旦政府委員 豚肉の関税減免措置につきましては昨年の六月から、本年の四月だけ外しましたが、現在もなお減免措置をとっておることは御案内のとおりでございます。それからただいま御指摘のございましたように、最近の国内の豚肉の卸売価格がかなり下がってきたというのも事実でございます。  十一月以降どうするのかというのがお尋ねの御趣旨であろうかと思いますけれども、その辺につきましては今後の卸売価格等の動きにつきまして農林省と十分協議いたしまして検討してまいりたいと思っておりますが、現在のような卸売価格の状況がこのまま推移するということでございますれば十一月以降さらに減免制度を発動する要件はないのではないか、ということは十一月以降は減免制度が発動しないで済むのではないか、かように考えております。
  157. 関根秋男

    ○関根説明員 御指摘のように最近国内の豚の卸売価格が非常に下がっておりまして、安定帯価格の中位価格と下位価格の間ぐらいのところになっておるわけであります。したがいまして、現在出荷しておる生産者は非常に高い素豚をベースに肥育をしておりますので、いまの状況では採算割れというような状況になっておるわけでございます。  そこで私どもといたしましてはこれに対しましていろいろな施策をやっておるわけでありますが、まず第一に、一つは小売価格を卸価格の値下げに応ずるような形で下げていただきたいというようなことで、小売関係の団体に対しまして御要請をしておるところでございます。現に幾分下がっておるところもあるようでございます。それから第二番目には、輸入の豚肉というのはフローズン物でございまして、従来加工屋さんが使っておるわけでございますが、国内の卸売価格が下がってまいりましたので、そういう加工団体、ハムメーカー等に対しまして、国内の豚肉をぜひ使ってくれ、こういうようなことで要請をしております。またそういう方向で協力する、こういうことになっております。それから第三点といたしましては、輸入の商社に対しまして、こういうふうに国内の状況が下がっておりますので、特にこの際新しく契約をしてさらに在庫の積み増しになるような価格を圧迫するようなことについては極力これを避けていただきたい、こういうことで自粛をお願いをいたしております。さらに生産団体みずから中央市場及び地方の食肉センター等におきまして保管事業をすでに始めております。私どもはこういうような措置によりまして、現在の価格水準というのがさらに暴落していく、こういうようなことは防げるのではないかと考えておるところでございます。
  158. 坂口力

    坂口委員 終わります。ありがとうございました。
  159. 田中六助

  160. 竹本孫一

    竹本委員 私は三つほどお伺いいたします。  第一は、デノミネーションの問題、第二は中期割引国債の問題、第三は物価調整減税等の問題であります。  まず第一にデノミネーションの問題です。  これは大臣よく御承知のように、やるべきか、やるべきでないかと言えば、やるべき問題である。当然なことでございまして、日本の威信のためにも、あるいは計算を簡素化するためにも、あるいはお金を大事にするという意味からもメリットもありますし、当然やるべきことだと思います。しかしながら、いまそれがやれる状態であるかということをまじめに考えてみると、当分できはしない。ところが、委員会等において、毎年のことでございますけれども、デノミの問題が出る。私はそのたびに苦々しく思うのでございますけれども、一つは、やれないときにいかにもやるようなことを言うことが政治のあり方としてどうだろうという問題が一つ、それからもう一つは、このデノミの問題を取り上げることができるような物価や経済の安定した状態あるいは条件というものが、いまにももうできるかあるいはできておるかのごとき印象を与える。そういうことは余り思わしくない。私はいまの日本の財政金融政策の根本は何といっても物価を安定することであり、経済を安定することである。その安定ができた上で初めてデノミの問題は取り上げるべき問題ではないかと思うのです。  そういう意味で、大臣はこの間も、副総理と違って、さすがに慎重な答弁をされたように新聞で見たのだけれども、私に言わせると、もう一歩進めて、いまは、やりたいけれどもと言うか言わぬかは別として、やれる条件ではない、しばらくは物価の安定、経済の安定に全力を投球すべき段階である、この点を力説する方が大臣のしかるべき態度であって、何だかもう物価、経済が安定した、そのうち近くやるんですよ。だんだん聞いてみると五、六年先だなんということらしいけれども、三木内閣で大体やれることを言えばいいので、そう遠い先のことまで約束する必要はない。とにかくミスリーディングである。そういう意味で、私は大臣にひとつお願いであり、また質問でもあるが、いまはやるべき条件が整っていない。いまやるべきことは物価の安定、経済の安定である、こういうことをぴしゃっと言って、まあ株式市場は少しさびしくなるかもしらぬが、しかし、あれを言ってみても二、三日株が二、三のものが上がってまたもとへ戻るだけの話で、何ということもない。そういうつまらない動きはやめた方がよろしい。ひとつ大臣のはっきりした御答弁を伺いたい。
  161. 大平正芳

    大平国務大臣 全く仰せのとおりでございまして、政府の当面の任務は経済の安定、物価の安定を図ることでございまして、それに全力投球をしなければならぬことでございます。現在デノミがやれるような状況でないことは御指摘のとおりでございます。また、そういうことを企てて、そのこと自体が経済を乱すことになることを恐れます。したがって政府としては、そんなことをやる準備をするというようなことは毛頭考えておりません。
  162. 竹本孫一

    竹本委員 もう一度念を押しますけれども、いまの主力重点政策努力の目標は物価、経済の安定である、したがって、いまそういう条件は整っていない、整えるためにむしろ努力をするのだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  163. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございます。
  164. 竹本孫一

    竹本委員 もう一つ、つけ加えて言いますと、これは日本の経済の安定した段階において、それこそそのときにおける内外の情勢をにらみながら、大きく言えば日本の経済新秩序の創造、さらに、できれば世界経済の新しい協調的な新秩序体制ができるということの中でやるべきことである。それには内閣の政治力がまた安定しなければならぬ。いつ飛んでしまうかわからないような内閣のもとでそんなことを言ってみても始まらない。やはりデノミというものは大きな政治力の存在ということも前提条件になっておると思いますので、そのことを申し添えておきたい。  第二番目の質問は、中期割引国債の問題でありますが、これが新聞で見ると大分むずかしく動いておるようでございます。私どもはこの委員会におきましても、商品の多様化と、そしてまたインフレは避ける、個人消化に力を入れるということについては強い要望が同僚議員からも次々に出ておるわけでございまして、方向としてこれは賛成である、そういう立場でながめておるのですけれども、いろいろ複雑——怪奇とまでは言いませんけれども、複雑な動きがあるようで、大臣もいろいろと調整の努力をされておるようでありますから、その辺を伺いたいと思うのであります。  基本的には私は、いま申しましたように賛成という立場でおるのですけれども、しかしながら、仮に賛成であるにしても、これを政策の実施過程に入っていくという場合にはいろいろの総合的な判断や慎重な検討が必要であろうと思う。これが出されるということが新聞で伝えられましてから銀行、銀行にも都市銀行と長期信用銀行とは若干利害が違うようでございますが、銀行それから証券界その他いろいろの方面からいろいろの意見が出ておるようでございますし、大臣はシンジケート団ともいろいろお話をされておるようだが、全体として、中期国債というものの割引債を発行するということに大臣として決断を下しておられるかということが第一点。それから、それをやるために、その関係の向き向きに政治的な地ならしと申しますか、地ならしは大体成功しておるあるいは大体まとまっておるという御判断であるか、この二点を伺いたい。
  165. 大平正芳

    大平国務大臣 去年の暮れ以来、個人消化のために商品の多様化という見地から検討いたしてまいりました結果、大蔵省といたしましては、中期の割引国債の発行ということがこの際最も適当ではないかと考えております。したがって、この基本は崩したくはございません。ただ、これの発行の姿勢と申しますか、条件、金額その他につきましては十分シ団側と話し合いをいたしまして、シ団側の理解の上、円滑に実行いたしたいものと考えております。  それから第二の、シ団側との間の話し合いでございますけれども、これが円滑にまいる見通しかどうかということでございますが、これはまだ始めたばかりでございまして、予断を持ってただいま私が語るのは時期尚早じゃないかと思いますけれども、誠心誠意相談いたしまして、しこりのない状態で実行に移りたいものと考えております。
  166. 竹本孫一

    竹本委員 誠心誠意御努力をいただくというのは、まあ過去から続いた形でしょうが、まだこれからそういう意味で誠心誠意話し合いをされる余地が残されておるという意味であるかどうかという点がちょっとはっきりしなかったのですが、それが一つ。  それから金額の問題も、三千億円というようなことがよく言われるのだけれども、金額もまだ最終結論になっていないのであるかというのが二つ。  それから時期の問題として、蘇れのボーナスが一五%ふえるか一〇%ふえるか、先ほど来御議論のありました景気中だるみ論に対する対策としては、大いにふえるように期待したいところでございますが、そういうこともわからないが、いずれにしても、暮れのボーナスというものをねらって、それを吸収するように出すお考えであるか。  以上、三点をちょっと伺いたいと思います。
  167. 大平正芳

    大平国務大臣 金額の問題は平年度大蔵省としては三千億円程度を考えておりまして、これはシ団側に提示いたしてございます。  それから、いつ発行するかという問題、またどういう条件でやるかというような問題は、これからシ団側の感触も伺いながら決めていかなければならぬことでございます。で、十分誠意を尽くして話し合う余地は残されておると考えております。
  168. 竹本孫一

    竹本委員 次は、具体的な事務的な面も大分ありますが、大事な点を伺っておきたいのだけれども、一つは、これで、三千億にしろ何にしろ出していくということで、要するに、これから、ことにわれわれが言っているような福祉国家の建設というようなことを考えますと、パブリックセクターに動員すべき金というものが非常にふえてくる。そういう点を考えて、民間の市中銀行に預ける金があったならば、それをなるべく直接パブリックセクターにつながり得るような形で、たとえばいまの資金運用部の金みたいな金をそういうところへ流し込むということが将来の経済財政政策として必要であるという基本認識に立って、まあ言葉がちょっと悪いかもしれませんが、民間の市場にある金をなるべくパブリックセクターに回すのだという、いまは三千億円だけれども、将来はもっと大きなねらいをもって、第二の資金運用部というか、第二の郵便貯金というか、そういうような方向づけを考えた上でやられるのか、あるいは、七兆円も公債を消化するのだから、何とか商品の多様化も一つとして考えようという、極端に言えば思いつきで、一つのアイデアとしてやられるのか、非常に基本的な問題ですけれども、その点はどうですか。
  169. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 大臣お答えの前に私から御説明申し上げます。  国債が大量に発行されてきた別荘、これはいま赤字国債まで入っておりますけれども財政の中に国債がかなりの量として登場してくるということは、当分私どもとしてはそれを前提にして物を考えなければなりませんが、そうなりますと、やはり一つは、いま先生のおっしゃったように、国債が国民経済の中で安心して持たれるだけのりっぱな金融商品である、市場性、流通性を十分持っておるというようなことが一つの前提でなければなりません。したがいまして、いま中期国債のことを先生がお触れになりましたけれども、本来それは、十年国債という現在出しておる国債自身についても言えることでございまして、広くそういう点におきましては、これから国債の市場流通性というものをもっと着実に堅実なものにしていかなければならない。そういうことによって財政も支えられていくのだというふうな感じを私ども持っております。  それから、そういう点からいきますれば、やはり一つは、国民に国債を持ってもらうためのなじみと申しますか、多様化といいますか、あるいは逆に言えば金融資産の多様化と言ってもいいかもしれませんが、そういう形でもって国も、諸外国と同じように一種類の国債だけじゃなくて、多種類の国債を出していくということも一つの方法ではなかろうか。いわば国民になじみをつくり、かつ国債というものの信用ある商品を出していくことによって、ひいては多年言われております公社債市場というものがそういうもので育成されていくという形、これは先生のおっしゃるパブリックセクターに金を集めるという点、これはいろいろの見方があるかもしれませんけれども、日本人の金融資産の内訳を見ますと、余りにも預貯金に集中し過ぎておるというような傾向もございますので、そういう点からも見ましても、私どもはこういう新しいものを出していくことによっていろんな目的、いろんな働きが期待できるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、いま実は運用部のことにお話がございましたけれども、運用部の金は郵便貯金から預託されておる金でございますから、これも一種の国債というふうに郵便貯金を見る見方もございますので、これは、運用部のほかにさらに何か新しくそういうパブリックセクターに金を集める手段として中期国債を考えようというようなことではございません。
  170. 竹本孫一

    竹本委員 時間がありませんから、組かいディスカッションはやめますが、大事な点だけちょっと伺っておきたいと思うのです。  一つは、地方自治体が、これを出すと、地方も、赤字転落の都市も非常に多いようですから、財政が逼迫している、緊迫しているという意味から言うならば、何も中央だけの問題ではない。しかも中央が出して地方は出すなというようなことは筋が通らないという点について、新聞では地方には出させないのだというような記事も出ておるのですけれども、これは自治省との関係もありますが、その辺は一体どうなるかというのが一つ。  それから地銀の方から言わせますと、国債も持たなければならぬが、より以上にお隣の地方自治団体のお世話もしなければならぬ。そうなれば地方債も引き受けなければならぬ。そうなれば、地銀の手持ちの資金の関係からいって、非公募の地方債を日銀の適格担保にしてもらわなければ動きがとれなくなるといったような問題もあるようですけれども、その辺はどうですか。
  171. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 地方財政法の現在の規定の中にも、地方自治体は割引債を出せるふうになっております。したがいまして、新しく法律を制定するとかあるいは仕組みを考えるとかということではなくて行えるわけでございますけれども、御承知のように、地方自治団体にそういう起債の許可を行います場合には、大蔵大臣に協議してまいりますが、そういう協議はまだ現在のところ受けておりません。一体、受けた場合にどういうことかと申しますと、私どもとしましては、これはもちろん公募債でございますから、それだけの体裁を持っていなければなりませんし、また、広く一般にそれを買ってもらうということになりますと、これは判別債でございますから、利付債と違いまして、金融機関とかあるいは法人になじむものではございませんので、純然たる個人消化ということであれば、その価格維持という形において、果たして地方公共団体に現在そういった力あるいは仕組みがあるかどうかという点ももちろん考慮しなければなりませんし、また発行団体といたしましては、ある程度のロットがございませんと、これは実際上は経費だけかかって経費倒れになってしまうというような状態もございますので、そういう二点に恐らく、現在の地方自治体の中で公募債で割引債を出すことについては、それ自身に自治体の方にも難点があるように思われます。しかしながら、これは地方財政法に認められておることでございますから、地方公共団体からそういう起債の申し出があったときに自治省と大蔵省とで十分協議し、かついろいろと検討をしてみる段階があるかと思います。しかし、私ども段階におきましては、そういう時期が近い将来あるというふうには認識いたしておりません。
  172. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 縁故債の日銀の担保適格の点についてお答えをさせていただきます。  日銀信用の裏づけとなる適格担保というのをどうするかという問題が、日銀法によりまして日銀政策委員会が決定することに相なっておるのは御案内のとおりでございますが、地方銀行等からも縁故債を日銀の担保適格にしてほしいという要望が出ておりますので、日銀当局において、その御要望を受けて検討中であると存じます。  ただ、問題は、日銀信用の裏づけとなるものでございますから、高度の信用力とそれから市場性の高い、こういうところが適格の担保としては必須の条件になろうかと存じます。ただ、現在の縁故債の発行状況を見ますと、債券という形はとっておりますけれども、条件その他相対で決められているわけでございまして、大変区々になっております。そうして市場にはなかなかなじみにくいというのが現状であろうかと思いますので、したがいまして、この現状では、中央銀行の担保の適格にするにはなかなかむずかしいのではないかというふうに存じます。したがって、やはり地方債が公募という形で発行されるという方をふやしていくということがオーソドックスな行き方ではないかというふうに現在考えております。
  173. 竹本孫一

    竹本委員 もう一つ銀行局長についでに伺っておきたい。  今度の割引国債の価格が下がる心配があるかないか、これも非常に議論があるのだけれども、しかし、これはせっかく銀行が売り出し、また国民の貯蓄を奨励する意味も含めて個人消化をやるわけですから、値段を下げるわけにいかない。大蔵省としても価格維持については特別の御努力があるように見ておるわけですけれども、そうすると、価格を維持する、そして利回りも大体確保してやるというようなことになりますと、ヨーロッパはもうすでにそうなっておりますが、金利を上げたり下げたり、いまからまだまだ経済が、先ほど申しますように、世界的にも国内的にも安定したわけでないので、金利というものは大いに動くと見なければいかぬ。そうすると、動くたびに一方ではシフトが起こるだろうし、一方ではなだれ現象が起こるだろうし、さらに今度は日銀なら日銀が総合的な金利政策を運用する上において、ここに一つの大きなこぶというか、硬直地帯ができる。硬直させて安定させなければならぬ。しかし、一部分が硬直すると全体の弾力的な金融政策はとれなくなる。その点について大蔵省はどういう見通しでおられるかということを伺いたい。
  174. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 私がお答えすることが適当かどうかちょっとわかりませんけれども、市場に出ました場合に、それをどういう場面でどういうふうに管理政策の発動としてされるかということは、まだこれから所管のところで検討されることだと思います。  ただ、基本的には、先生の御指摘のように、この場合の市場価格がやはりリーズナブルな価格ということでございませんと、金利政策の面で一つのそごが出てくることではなかろうかと存じます。  それではどういうふうにやるのかというのは、まさに金利政策、金融政策において機動的に流動的に対処しなければいけないわけでございますから、そのときどきの情勢に応じましてしかるべき対応策をとるということになるんではなかろうかと存じます。ただ、今回の発行予定されておりますものがいわば初めてのケースでございますから、なかなか予則しがたいところでございますが、基本的にはいま申し上げましたように、その場面場面に応じまして機動的に対応していくということになろうかと存じます。
  175. 竹本孫一

    竹本委員 大臣に伺いたいが、まだこれからいろいろと詰めていくというような御答弁だったように思うのだけれども、この国債の価格維持の問題、それからそれにつながる、私が言うように総合的なそして弾力的な金融政策、金利政策をこれからとらなければならぬというとき、大きなこぶがそこにできるじゃないかという問題は、今後の金利全体の政策の上で一番大きな問題で、むしろこれを一番先に詰めておかないといけないほどの重大な問題ではないかとぼくは思うのです。ちょっといまの御答弁でははっきりしないんだけれども、具体的に申しますと、価格維持について自信があるか。それから、価格維持をやるということを中心にいろいろ無理をするというか——無理をせぬで済む場合はいいんですよ。無理をしなければならぬ場合が出てくるが、そういう場合に金利の弾力的な運用というものとの間に硬直地帯ができたために、総合的な弾力的な金融政策、金利政策がとりにくくなるではないか。この点は真っ先に詰めておくべき問題ではないかということを私は心配するわけですが、いいですかということですね。
  176. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 いまのお答えいたしましたことにつきまして、若干私からも補足いたしますが、国債だけが特別にひとり歩きをして、あるいはひとり歩きというか特別な位置にあって、そして常にいい子になろうというような、こういう形の価格維持というものを私ども考えているわけではございません。これは債券でございますから、全体的な金利が動いてくれば当然に動くわけでございますが、割引国債が特別な他の金利と、価格が下がれば金利は上がるわけでございますから、そういったいろいろな乱高下を特別なことで行われる、動くというような場合には、現在の十年国債につきましても、同じように国債整理基金が出動いたしましてそれを買う、あるいは出動を開始するわけですが、そういう仕組みをもとにして私ども考えておるわけでございます。何か固定した金利、固定した価格だけをもって動かさないというふうにお考えになるのは、私どもはそういう前提で物を考えておりません。
  177. 竹本孫一

    竹本委員 最後に大臣、この問題は金持ち優遇になり過ぎはしないかという問題あるいは批判があるように思うのですけれども、ここで三百万円、ここでまた三百万円、また三百万円、また今度と、こういうような調子で、一体これで買える人は庶民の中に何人おるかというメリットを考えた場合、そしていわゆる税制の不公平というものを直そうという政府の基本的なお考えというものとのバランスを考えた場合に、大臣としては最終的に結論を出されるに当たってどういうお考え方であったかという点をひとつ伺いたいと思います。これは大臣に伺いたい、政治的な問題だから。
  178. 岩瀬義郎

    岩瀬政府委員 先にちょっと恐縮でございますが、金持ち優遇ではないかという点を御指摘になりましたけれども、これは現在同じ形態をとっておるものには一年ものの金融債がございますので、その一年ものの金融債の販売状況というものを私ども調べてみたわけでございます。そうしますと、これは証券会社の窓口で一年で売っております件数で申しますと、大体五十万円以下の場合、普通の買いというのが大体全体の六七%ぐらいを占めております。それから金融機関の窓口で見てみますと、窓口の平均の販売は四十九年で一件当たりが二十二万円、五十年で二十六万円という程度でございます。したがいまして、物すごく金持ちがどっとそこに集まって、そういう人たちだけが買っているということではなくて、やはり金融商品の多様化されたその中のいろいろなニーズに従って買い方をしているのではないかということは私ども言えると思いますので、ここで割引債は金持ちである、あるいはある免税点を全部消化した者だけが割引備に出てくるのだ、こういうふうにお考えいただくのは、私ども実態の分析からいくとちょっと実態と離れているのじゃなかろうかというふうな感じを持っております。大臣お答えの前に恐縮でございますが……。
  179. 大平正芳

    大平国務大臣 その問題は、私は国債政策の問題とは考えていないわけでございまして、税制の問題として考えておるわけでございまして、特別措置全体の問題といたしましてどのように今後考えてまいるかという問題の一環と考えております。
  180. 竹本孫一

    竹本委員 時間がありませんから最後に、いまの理財局長の言われるような形にうまく流れてくれれば問題ないと思うのだけれども、そうならない場合はどうなるかということの方がぼくは問題じゃないかと思うのだけれども、この問題はいろいろむずかしい問題もあるしいたしますので、なお検討も政府でされるだろうと思いますので、ひとつ善処を要望しておいて、最後に一つだけ。  先ほど来いろいろお話が出ましたが、特に最近新聞にはいろいろおもちゃ箱がひっくり返ったように、来年度税制あるいは中期税制ということを含めて、あるいは酒、たばこも上げるのだ、富裕税もやるのだ、逆所得税考えるのだというように、いろいろなアイデアが次々、次々出てきておる。これも先ほどのデノミではないが、相当また一方においては国民を惑わす要素があるのではないか。私はやはり税制というものは、ことにこれからの税制は、中期税制なら中期税制ということで税の不公平を是正する、あるいは福祉国家建設の柱に立って、その面からの全面的な見直しをやるというような幾つかの基本的な柱がありまして、その上に立った中期税制改革というものが考えられて、その一環として来年のあるいは増税、あるいは減税というものが考えられなければならぬじゃないか。要するに私の言うのは、来年の税制は改革をするとか手を入れるというならば、増税にしても減税にしても、中期の税制改革への展望なり視野に立って取り上げるべきではないか。それが少し思いつきで、これもアイデアバンクで次々に出てきて一体どうなるのだろうか。相当国民を惑わしつつあるではないか。言論統制をしろという意味でもないですけれども、やってみたけれどもやめるというのは不見識にもなりますから、そういうことのないように中期税制改革というものをここでみっちり検討していただいて、われわれも意見は述べますが、その中の一環としての来年の税制改革ということでないと、少しアイデアが乱れ飛び過ぎておるではないかという点について、大臣はどうお考えになるかということが一つ。  それから結論だけでいいのですが、物価調整減税も、大蔵省大蔵大臣も先ほど来いろいろおっしゃっておるが、やらないのだ、あるいはやれないのだというような御意見があるかと思うと、今度は総選挙対策だからというので自民党の方から、三役が物価調整減税はやるのだ、やらせるのだというようなやつが出る。これまたさっぱりわけがわからないのだが、大臣のお考えはどうなのか。この二つをちょっとお伺いして終わりにします。
  181. 山内宏

    ○山内政府委員 大臣お答えの前に、事務的な点だけまずお答え申し上げますが、現在税制調査会では、ただいま委員御指摘のような形で、と申しますのは、中期税制のあり方いかんという点に問題をしぼっていま審議をしていただいております。そういう意味で、いわゆる政府の中期経済計画でありますとか、あるいは財政収支試算、そういったものを横目に見ながら、そういったもので期待をされておる財源の充足を図るために、いかなることを中期においてなすべきかというテーマで話が進んでおります。  まず、その順序といたしまして、現行の税制の中でそういった要請にこたえるものがあるのかないのかという点の相談を目下やりつつあるところであります。委員の御指摘のような問題も出ておりますけれども、ただ、ここで申し上げておきますと、たとえば富裕税でありますとかあるいは逆所得税でありますとか、そういったものはまだ現在のところ税制調査会では取り上げておりません。基本的には先ほど委員のおっしゃったような方向に沿って進んでおるというふうに私ども考えております。
  182. 大平正芳

    大平国務大臣 いま主税局の方からお話のあったとおりの手順でやっておるわけでありますが、いろいろなアイデアが乱れ飛んでいるのは大蔵省のせいでもなく、主税局のせいでもないわけでございます。そういう御質問がありまして、私どもがいま主税局からお話があったようなラインで答えているわけでございますけれども、新聞の紙面にはどうも竹本さんが御心配されるようにいろいろなアイデアが乱れ飛ぶことになるのです。非常にカラフルなデモクラシーのいたすところでございまして、大蔵省のせいではございません。  それから物価調整減税の問題でございますけれども、私どもはそういう問題につきましても検討を、いまの手順で税制調査会と一緒にまだ勉強しておるところでございますけれども、与党におかれましても、総選挙を前にいたしまして政策綱領というような問題について検討を進めておるようでありまして、その中で減税政策というようなことについて勉強されておるようでございますけれども、まだ方針がお決まりになったとは伺っておりません。
  183. 田中六助

    田中委員長 次回は、来る十五日に開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十三分散会