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1976-10-19 第78回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月十九日(火曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 熊谷 義雄君    理事 石井  一君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 葉梨 信行君    理事 枝村 要作君 理事 村山 富市君    理事 石母田 達君       伊東 正義君    大野  明君       加藤 紘一君    川俣健二郎君       島本 虎三君    田口 一男君       田邊  誠君    田中美智子君       寺前  巖君    大橋 敏雄君       岡本 富夫君    小宮 武喜君       和田 耕作君  出席国務大臣         労 働 大 臣 浦野 幸男君  出席政府委員         厚生省保険局長 八木 哲夫君         林野庁長官   松形 祐堯君         労働省労政局長 青木勇之助君         労働省労働基準         局長      藤繩 正勝君         労働省婦人少年         局長      森山 眞弓君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         労働省職業安定         局失業対策部長 石井 甲二君         労働省職業訓練         局長      中原  晁君  委員外出席者         厚生省医務局総         務課長     此村 友一君         林野庁林政部森         林組合課長   穂積 良行君         運輸省船舶局監         理課長     熊代  健君         労働省職業安定         局雇用保険課長 北村 孝生君         参  考  人         (社会保険診療         報酬支払基金理         事長)     今村  譲君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 委員の異動 十月十五日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     中村 寅太君   越智 伊平君     栗原 祐幸君   加藤 紘一君     竹下  登君   高橋 千寿君     小川 平二君   羽生田 進君     鴨田 宗一君   寺前  巖君     中島 武敏君 同日  辞任         補欠選任   小川 平二君     高橋 千寿君   鴨田 宗一君     羽生田 進君   栗原 祐幸君     越智 伊平君   竹下  登君     加藤 紘一君   中村 寅太君     伊東 正義君   中島 武敏君     寺前  巖君 同月十九日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     佐々木更三君   田中美智子君     田代 文久君 同日  辞任         補欠選任   田代 文久君     田中美智子君     ————————————— 十月十八日  長野県篠ノ井労働基準監督署の復活に関する請  願(下平正一紹介)(第五三四号)  重度戦傷病者及び家族の援護に関する請願(三  ツ林弥太郎紹介)(第五三五号)  同(荒舩清十郎紹介)(第五八八号)  同外三件(左藤恵紹介)(第六二八号)  柔道整復師法の一部改正に関する請願木下元  二君紹介)(第五三六号)  同(越智伊平紹介)(第五六五号)  同(長谷川峻紹介)(第五六六号)  同(小川平二紹介)(第六一一号)  同(黒金泰美紹介)(第六四六号)  基準看護指定病院入院患者に対する付添看護条  件緩和に関する請願原健三郎紹介)(第五  三七号)  同(大久保直彦紹介)(第五七一号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第五七二号)  同(椎名悦三郎紹介)(第六三一号)  同(福田篤泰紹介)(第六六四号)  国民健康保険改善に関する請願外一件(井岡  大治君紹介)(第五三八号)  母性保護に関する請願寺前巖紹介)(第五  三九号)  同(寺前巖紹介)(第五七五号)  同(寺前巖紹介)(第五九〇号)  原爆被爆者援護法制定に関する請願枝村要作  君紹介)(第五五九号)  同(金子みつ紹介)(第五六〇号)  同(田口一男紹介)(第五六一号)  同(田邊誠紹介)(第五六二号)  同(村山富市紹介)(第五六三号)  国民健康保険における療養給付費補助金の定率  引き上げ等に関する請願戸井田三郎紹介)  (第五六四号)  同外一件(荒舩清十郎紹介)(第五八九号)  療術の単独立法化阻止に関する請願石井一君  紹介)(第五六七号)  同外一件(久野忠治紹介)(第五六八号)  同(羽田野忠文紹介)(第五六九号)  同(山崎拓紹介)(第五七〇号)  同(近藤鉄雄紹介)(第五九九号)  同(塩崎潤紹介)(第六〇五号)  同(小坂善太郎紹介)(第六一二号)  同(藤本孝雄紹介)(第六一三号)  同(小坂徳三郎紹介)(第六二九号)  同(椎名悦三郎紹介)(第六三〇号)  同(竹内黎一君紹介)(第六六三号)  看護婦家政婦紹介所所属看護婦家政婦に労  働保険適用に関する請願大久保直彦紹介)  (第五七三号)  同(椎名悦三郎紹介)(第六三二号)  建設国民健康保険組合に対する国庫補助増額に  関する請願外二件(野坂浩賢紹介)(第五七  四号)  成人病予防法制化に関する請願小坂善太郎  君紹介)(第六一〇号)  同(小川平二紹介)(第六二七号)  小児発達療育センター新設等に関する請願(吉  田法晴紹介)(第六六一号)  簡易水道国庫補助制度改善等に関する請願(  吉田法晴紹介)(第六六二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 熊谷義雄

    熊谷委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山富市君。
  3. 村山富市

    村山(富)委員 十七、十八、十九の三日間、全国から白ろう病患者を中心に関係者が東京に集まりまして「イノチを返せ三千人告発中央動員」というものが行われております。関係各省要請行動を行ったわけですが、きのうも労働省に対して労働基準局長以下、関係者との折衝が行われ、切実な訴えがありました。局長以下、そうした関係者の切実な訴えをお聞きになって相当認識を新たにされたのではないかと思うのですが、それらの実情を踏まえた立場から、これから幾つかの問題点についてお尋ねしたいと思うのです。  この白ろう病関係は、主として山で働く労働者発生をしているわけですが、国有林関係につきましては、後でまた川俣委員の方から質問がありますので、私は、民有林関係にしぼって質問をしたいと思います。  まず第一にお尋ねをしたいことは、白ろう病患者発生状況についての把握ができておらない。これは、いままでもたびたび関係委員会でそれぞれ質問がありましたけれども、いまだに明らかにされておらない。いま労働省が明らかにしておりますのは、現に治療を受けておる患者の教だけが明らかにされているのでありまして、発生件数というものは依然としてわからないわけですね。これは一体なぜそれがつかめないのかということについて、もう一遍お尋ねしたいと思うのです。
  4. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 白ろう病の問題は、大変深刻な問題でございますが、国有林におきましては、かなり実態が掌握されておるにもかかわらず、民有林実態把握が悪いではないか、こういう御指摘でございます。私ども、特に民有林につきましては、先生承知のような経営の実態あるいは労働実態がございますので、実際問題としてなかなか把握は困難なのでございますけれども、この白ろう病につきましては、林災防委託をいたしまして、年々特殊健康診断等を行っておりまして、かなりのパーセンテージの有所見率を見ております。そういう意味では、特殊健康診断に出てきた方々状態はある程度把握できるということと、それから患者ということになりますと、やはりこれは療養を必要とすることになりますから、労災保険受給請求があって、そして認定が行われて、認定患者として把握をする、こういう手順になるわけでございます。この把握につきましては、実は、それぞれの監督署では承知をいたしておるわけですけれども全国の統計を労働省において掌握するということにおいて従来欠けておったという御指摘だと思います。  その後、私どもとしては鋭意実態把握に努めまして、現状を申し上げますと、業務認定者の数でございますが、年度末におきます労災保険受給者の数、これを出しておりますが、これは四十六年度末が百四十九人、四十七年度末が百四十六人、四十八年度末が三百九十三人、四十九年度末が六百三十一人、五十年度末が九百一人となっております。これは年度末において療養していらっしゃる方の数でございます。それから、その年度年度で出てきます認定者というのがあるわけでございます。これは最近の状態を掌握しました限りでは、四十九年度新規認定をいたしました者が二百四十一人、五十年度新規認定をいたしましたのが五百五十六人と相なっております。  かようなことでございますが、私どもとしましても、今後もできるだけ実態把握に努めなければならないという点は御指摘のとおりだと思います。
  5. 村山富市

    村山(富)委員 いま局長から御答弁がありましたのは、先ほど申し上げましたように、現に療養を受けておる患者の数ですね。これは私、なぜこういうことを申し上げるかと申しますと、具体的にこれから対策を立てるためには、現状の正確な把握がないとやはり立たないのじゃないかと思うんですよ。単に療養を受けている者の数だけでなくて、認定された患者が一体幾らあるのかということがわからないと、認定を受けて療養を要する患者がなぜ治療を受けないのかというその原因もつかめませんし、そうすると、その対策は立てられぬでしょう。  これは北海道労働基準局が調べた調査によりましても、たとえば四十八年、四十九年、五十年の累計で、治療を要するとCにランクされた者が六百二十五人おるんですよ。しかも、労働省からもらったこの資料によっても、現に治療を受けている者の数はわずかに百七十四名でしょう。しかも、この治療を要するとCにランクされた六百二十五人のうち、認定された者の数が、四十八年、四十九年、五十年の三カ年間で四百四十四名おるわけですね。そうしますと、治療を要するとされた者が六百二十五人、認定を受けた者が四百四十四名、そして労働省把握しておる、現に治療を受けておる者の数が百七十四名。こうなってまいりますと、六百二十五人のうち、二八%ぐらいしか治療を受けておらない。あとの者は一体どうなっておるのかという実態というのはつかめないわけでしょう。そういう実態がつかめなくて具体的な対策は立てられないと私は思うんですよ。こういう数の大きな違いが生まれてきますから、したがって、そうしたものの全体の把握というもの、物を正確にちゃんとつかむことが必要ではないかというように思うのです。  これは労働省の話を聞きますと、コンピューターに収録する関係があって、こういうものは入っておらない、だから出てこないのです、こういう話がありますけれども、しかし、いま申し上げましたように、各県の基準局ではちゃんと数をつかんでおるわけですから、したがって、その各局でつかんでおる数を全部一遍集めて集計すれば簡単に出る話ですから、どうしてこれがやれぬだろうか。これは勘ぐりますと、労働省がやはり意識的に患者の数を少なく押さえるということのためにやっているのじゃないかと思われても、顔を振っているけれども、それは仕方がないのじゃないかとぼくは思うのです。  これは、やはり深刻な問題があるというのは、治療を受けている人はまだいいですよ、治療が必要であるというふうに言われているにもかかわらず、治療も受けられずに毎日がまんして、もう病気が悪くなっていくことを承知の上でチェーンソーを握っている、こういう労働者がたくさんおるのじゃないですか。そういう実態というものをしっかりつかんでもらわなければいかぬ。事はやはり生命に関する問題ですからね。これはひどくなるとむずかしくなりますよ。命にかかわりますよ。そういう生命に関する問題であるだけに、もっとやはり厳密に厳しく情勢というものを見詰めてもらわなければいかぬ。そういうところに、やはり労働省がつかんでおる情勢把握の甘さがあるのじゃないかというふうに思われるんですよ。これはひとつ、ぜひそういった実態をつかんでもらいたいと思うのですが、どうですか。
  6. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 林野の振動障害の発症の状態をもっとしっかりつかむべきだという御指摘については、先ほど来お答えしていますように、全く私どももそう思います。努力が足りないと思います。しかしながら、いまお挙げになりました数字、いろいろな種類の数字について差があるということは、これは制度の性格上、ある程度やむを得ない。つまり、特殊健康診断のうち有所見となりまして、そして症度分類がある。そのうちで労災保険請求がなされてきます。そしてまた、請求がなされた中で療養の必要ありとして認定されるという、幾つかの段階がございますから、そういう数の違いが出てくるということがあると思います。  何よりも大切なことは、やはり労災保険を積極的に認定請求をしていただく。そうすることによって、私どもはできるだけ認定をしていく。もとより行政指導も必要でございますが、そういった点も特に民有林については若干あるのじゃないかというようなことでございまして、いろいろ複雑な要素がありますから、それらのそれぞれについてできるだけ実態把握するという点は、今後私ども努力をいたしたいと思います。
  7. 村山富市

    村山(富)委員 いや、これは、さっき申しましたように、各県の基準局でそういう数字をやはりつかんで、累計的に出しているわけですからね。ですから、それを全部集約すれば大体全体を把握できるというふうに思うのですが、その点はいいですか。間違いないですか。
  8. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 それは努力をしてやらなければいかぬと思います。先ほどもお答えしましたように、かねがねそういう御指摘がありましたので、四十九年度、五十年度につきましては、労災新規発生件数をようやくこちらで集計できたというわけでございますが、なお努力をいたしたいと思います。
  9. 村山富市

    村山(富)委員 これは、くどくど申し上げますが、後でまた触れますけれども、いま労働省林災防委託をして検診をやっていますね、その検診をやって、あなたは治療を要しますよ、こう言われた患者の数で、北海道の例からすれば二八%しか治療を受けておらない、あとの方はもうどうなっておるかわからぬ、こういう状況の中では、やはり命は守られていかぬと思うのです。ですから、そこらの数はぴたりと把握されて、なぜ治療を受けないのか、なぜ受けられないのかということをやはりつかまないと、今後の対策はできないと思いますから、そういう意味で私は、ぜひともそういう実態というものを正確にしっかりつかんでもらいたいというふうに思うのです。  そこで次に、いま労働省が毎年行っております健康診断実施状況について若干お尋ねしたいと思うのです。  五十年度検診をやりましたその結果が出ておりますけれども、これによりますと、大体五十年度は六千六十六人が検診を受けている。そして所見のあった者の数が二千九百七十人、大体平均しますと、四二%ぐらいの人が何らかの異状が出ている、こういう結果になっておるわけですね。ただ、この検診の結果をしさいに検討してみますと、非常にばらつきが大きいんですね。たとえば和歌山県、徳島県や佐賀県なんかは、異状率が九〇%台になっておるわけです。それに比較して青森八%、新潟九%と一けたの県もあるわけですね。こういうばらつきがどうして出てくるのだろうか。これは労働省はどういうふうに分析していますか。
  10. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 白ろう病診断あるいは治療というふうな点は大変むずかしい問題がございまして、労働省としましても、各界の専門家にお集まりをいただいて、まず診断技法、それからさらに、最近では治療方法等についての研究をしていただいているというようなわけでございます。  そこで、いま御指摘のように、かねてから林災防健康診断をやっていただいておりますが、しかし、診断技術、手法の点で御承知のような徹底を欠いているという面がございました。そこで、昨年の十月に特に「振動工具取り扱い業務に係る特殊健康診断実施手技について」という通達を発しまして、第一次健康診断それから第二次健康診断につきまして、それぞれ各種の診断項目ごとにその具体的な手技というものを示したわけであります。したがいまして、今後ある程度の統一がとれると思いますけれども、場所によっては担当される医師の判断あるいはその健康診断をされます医療機関における器具の整備状況というようないろいろな状況ばらつきが出るということがあるのだろうと思います。しかし、非常に大きなばらつきがありますので、その点は私どもとしても究明をしてみなければならぬ問題だというふうに思っております。
  11. 村山富市

    村山(富)委員 いま局長が言いましたように、医師の問題、それから検診の仕方の問題、いろいろあると思うのです。これは、いままで議事録を見ますと、衆参両院関係委員会検診のあり方について相当議論もされております。私は、こういうばらつきが生まれてくる最大の原因というのは、いま局長が言われましたように、現在の通達に基づいて行われる検診のやり方にやはり問題があるのではないか。  どうしてそういうことを申し上げるかと申しますと、やはり具体的に事例がたくさんあるわけです。たとえば一次健診、二次健診というのをやっていますね。土佐清水市の列を申し上げますと、この一次健診で全然所見がない、異状なしとAにランクされた者が二十一名あった。その二十一名について検診直後に精密検診をやったら全員に異状があった。しかも、二期症状以上の者が二十一名中十三名あった、こういう結果があらわれてくるわけですよ。したがって、いかに一次健診が問題なのかということは、この事例からもはっきりすると思うのです。  これは社会党が調査団を編成して高知県に調査に参りましたが、そのときに基準局保健医がはっきり言っておるわけですよ。一次健診が不正確で、かなり振動病が進行していても、自覚症状が強く出てこないとなかなか把握できない、見逃される危険性がある。これは検診を受ける側の方の理解がやはり若干ないと、なかなかそれもむずかしいという点もあるかと思います。これは高知県の労働基準局局医岡村一雄さんという先生が、現在のA、B、C振り分けのための通達の一次健診では十分ではないとはっきり言っておるわけですから、こういういまやられておる一次健診、二次健診という検診の仕方についてどういうふうにお考えですか、いま私が申し上げましたような観点に立って。
  12. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先ほどもお答えしましたように、振動障害診断あるいは治療という問題につきましては、医学界でもなお相当むずかしい論争があるやに伺っております。また、国際的にもこの振動の問題は非常に注目されまして、ことしのILO総会の課題にもなったわけでございまして、各国におきましても、その発生機序なり診断方法なり治療についていろいろな論議が進んでおる過程にあるわけでございます。  そこで、確かに問題があると私どもも思いますけれども、しかし、従来余りにもばらばらであったために、一昨年来、専門家会議を特にお願いいたしまして、そして先ほど申し上げましたように、去年の秋に、この「健康診断実施手技について」というのを出したような次第であります。そこでは確かに一次健診、二次健診とございますけれども先生方によっては、二次健診まできちっとやらないとなかなか実態把握できないという御意見の方ももちろんいらっしゃるわけでございます。ただ、私ども問題は、この二次健診については、特に冷却負荷テストというようなテストがございまして、これは相当設備も要りますし、判断するための医師なり検査技師の能力の問題もございます。それからまた、患者の負担もかなりきついものだというふうに伺っております。そういうような実態もございますので、現段階では、専門家が集まりました結果はこういう分類になっております。しかし、いろいろ御議論のあるところですから、また、医学の進歩も日進月歩でございますので、なお今後とも研究を重ねていかなければならぬ問題だろうというふうに思っております。
  13. 村山富市

    村山(富)委員 その一次健診、二次健診と分けておるのは、一次健診をやって、あなたは二次健診を受けた方がいいですよという人と、それから、あなたは全然異状がないからもうその必要はありませんという者と、一次健診で、あなたは治療を要しますという者と、いろいろ区分はできると思うのです。したがって、その一次健診で、あなたは二次健診を受けて、もっと精密検査をした方がいいと言われる者は二次健診に回す、こういう考え方で一次健診、二次健診と分けているのですか、どうなんですか。
  14. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 一般的に申しますと、特殊健診の場合に一次健診、二次健診と分けます場合には、いま先生が御指摘になったように、まず一次健診をやりまして、そして特に精密検診を必要とする者に二次健診ということになるわけでございます。ただ、この問題の白ろう病につきましては、いま申し上げているように、設備かなり、そしてまた、そういった診断の要員も整い、かつ労働者が、ある程度きついけれども積極的にテストを受けようというような体制が整いますなれば、できるだけ二次健診までやることが望ましいということは言うまでもないところだと思います。ですから、理論的な問題なり診断技術の問題のほかに、そういうさまざまの実態の格差があるという点が私どもも頭の痛いところでありまして、理想といたしましては、できるだけ精密な、完璧な診断をすべきであるということは、そのとおりだろうと思います。
  15. 村山富市

    村山(富)委員 いや、あなたは五十年の十月に「特殊健康診断実施手技について」という方針を出して大分改善をしております。こういうお話がございましたけれども、しかし、これは一次健診、二次健診と分けてやられたことに間違いないんですよ。前の通達よりも細かくしておるだけであって、具体的に大きく変わった点はないと思うんですよ。  そこで、一次健診、二次健診と分けた理由は一体何なんですか。これは早期発見早期治療という大前提からすれば、何回も検診を受けるよりも一遍でわかるということがいいに決まっているわけですから、一次健診でもっと精密な検査をして、そして二回も検診を受けなくていいということにした方が、いまあなたが言われたように、非常に山奥検診もしにくい状況にあるわけですから、したがって、そういう手間が省けていいんじゃないか。それの方が実態が早急に把握されて、早期発見早期治療ができるのじゃないか、こういうふうに思うのだけれども、一次健診、二次健診と分けておるのは、いろいろな問題があって分けておるのだというふうに思われますけれども、それは一体何ですかと聞いているのです。
  16. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 早期診断早期発見早期治療が望ましいことは言うまでもないわけでございます。ただ問題は、民有林実態把握が十分でないじゃないかということを最初に御指摘になりましたけれども民有林労働者というものがかなり数が多い、しかし、一人親方の方もおられれば、あるいはまた零細規模のものに雇用されておる方々も多い、山奥の職場が多いということも、いまお述べになりましたような実態でございます。  そこで、できれば全員について完璧な健康診断が一番望ましいわけでございますけれども、そういういろいろな実態からいたしまして、林災防で年々やってきまして、ことしは五十一年度予算で八千人を予定しておりますが、それでもなお全員をカバーできないという問題も実はあるわけでございます。  そこで、悩みは、できるだけ数多く現場で処理をするには、健康診断そのものもできるだけ簡便なやり方をとる必要がある、それからまた、できるだけ精密な検査をするには、ある程度施設の整った病院で時間をかけて精密な検診をする必要がある、これは言ってみれば二律背反でございまして、その間の調和をどうとるかという問題があるわけでございますが、私どもとしましては、できるだけ現場に赴きまして、関係医師のチームをつくって診断をするというようなことをやっておりますので、できるだけ完璧に近いものに努力をしたいと思っておりますが、一次健診、二次健診の区別をいま除くというのは、実際の諸般の状況からしまして大変むずかしいのではないかというふうに思うわけでございます。
  17. 村山富市

    村山(富)委員 どうも局長の答弁がよくわからないのです。これは専門の分野に入りますから余り触れたくないのですけれども、しかし、さっき指摘しましたように、専門家の中にも、いまの一次健診、二次健診のやり方は問題があるとはっきり言っているわけですからね。同時に、検診を受ける側の労働者の方から言わせますと、一次健診の場合には若干の補助があってやりいいわけです。ところが、二次健診になると補助が全然ないわけでしょう。ですから仮に、ずっと何年も固定して雇用されておる労働者の場合はともかくとして、移動する労働者がありますね、そうすると、おれのところに来てまだ一カ月しかたたぬ、一カ月しか働いていない労働者になぜおれが検診費用まで負担しなければならないのかという経営者の方の言い分も出てきます。そうすると、金の出場がなくなるわけです。本人は休業補償もなければ、検診の費用も自分が出さなければならぬ。そんな金はないからもう二次健診は行かぬ、こういう事情だって生まれてくると思う。そういう者の落ちこぼれていく数が非常に多いんじゃないか。だから、自分の体は白ろう病に冒されている、けれども、それを承知の上でチェーンソーを握って働いている、こういう労働者が現実にたくさん生まれてくるんじゃないですか。ですから、できるだけ一次健診でそういう患者をすべて拾い上げられるようにする必要があるんじゃないか。ですから、一次健診、二次健診と分けるのではなくて、一次健診でやるところはやるというぐらいの姿勢でやってもらわないと、そういう問題が起きてくるんじゃないかと思いますから、そういう意味で申し上げているわけです。こういう検診の仕方について今後検討する必要があるのではないかと思いますが、どうですか。
  18. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 できるだけ検診も行い、対策も普及させていくことが望ましいわけでございまして、森林の労働実態、特に一人親方というような形の実態もありまして、これについて労災保険の適用をすべきだという御主張もあったわけです。御承知のように、今回はそういう問題も踏み切ったということで、できるだけ労災保険の適用あるいは健康診断の普及というものをやっていきたいと思います。そういう意味で、林災防検診なんかもできるだけ数多く僻地にも行けるような努力を重ねたいと思います。  先ほど来お答えしておりますように、検診の精度というものをできるだけ上げて、可能であれば二次健診まで全部行えるということが望ましい、これはもう言うまでもないわけであります。ただ問題は、それをするには相当設備の整った病院でなければならぬ。相当医師なり検査技師が要るというところが私どもの悩みでございます。しかし先生の御主張のように、そういう点はできるだけ埋め合わせて、希望があればその希望をできるだけかなえられるような健康診断をすべきじゃないかということは仰せのとおりでありますから、そういった人的な面、施設の面等々でわれわれは今後なお十分努力を重ねたいと思います。
  19. 村山富市

    村山(富)委員 これは、やはり患者医療機関へ来てもらって、そこで検診をさせるという場合よりも、ずっと巡回でいくことの方が多いと思うのです。そうすると、チームを編成していかなければならぬわけですね。したがって、人の問題もあるでしょう。それから、もっと言えば予算の問題もあるでしょう。  そこで、たとえば高知県や長野県なんかは、県の保健所なんかを動員して、一緒になって検診をやっている。これは地元の要請があって県の方も協力しているわけですよ。今度上京しました、さっき申し上げました動員の方々が厚生省と交渉する中で、厚生省の方では、それは労働省から要請があればいつでも応ずる用意があります、受け皿はつくります、だけれども一遍も要請がありません、こう言っている。本当にやる気があるなら、そういう機関を動員して徹底してやる、こういうぐらいの気構えでないと、いまあなたが答弁されたようなかっこうでは、私は納得できないと思う。  現に、さっき申しましたように、いままでも衆参両院関係委員会で、この検診のあり方についてはずいぶん議論があったところです。そして労働大臣も、これは前の大臣ですが、前向きで十分検討しますという約束をしているわけです。余り前進がないじゃないですか。私は、そういうところに、冒頭に申し上げました、この深刻な事態に対する厳しい把握の仕方がないんじゃないか、認識がないんじゃないかという気がするんですよ。ですから、この検診については、もっと正確に一次健診で十分患者把握していけるような検診の仕方に変えていく必要があるんじゃないかと思いますが、大臣、これはどうですか。
  20. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 白ろう病という病気が、最近、数の上に出ておるよりも、もっと潜在的な罹病者があるということを言われております。私も、白ろう病という問題についてよく認識がなかったわけであります。いままでいろいろ話には聞いておりましたが、これだけ深刻だということを認識いたしたわけで、就任以来、各方面からの陳情もたびたび受けておるわけでございます。  そこで、いままでのようなやり方でいいのかなということをいま相談しておりますが、これは、きょうも閣議の後で農林大臣から、この白ろう病の問題については、農林省と厚生省と労働省で、これからの方針について一遍よく話し合おうじゃないかという御提議があったわけで、私も、その意見に賛成でありまして、いろいろと問題になっておることを、もっともっと深く勉強して、そうして三省力を合わせてこの白ろう病の問題に対処していかなければならない、かように考えておるわけであります。
  21. 村山富市

    村山(富)委員 具体的な内容について大臣に御質問をしても、ちょっとなんですから、局長の方によく申し上げておきたいと思うのですが、いま申し上げましたように、検診の仕方についても、やはり相当問題が出ていることは間違いないわけですから、したがって、十分そういう点も踏まえて、より正確に、より早く発見できて、そして労働者の命が守られていく、こういうやり方に変えていくようにぜひとも今後の前向きの姿勢を期待したいと思うのです。  次に、チェーンソーの構造規格の問題について若干質問したいと思うのですが、これは、きのうの交渉団との話し合いの中で、いま準備中である、こういうお話もございました。そこで、それと関連をしてお尋ねしたいと思うのですが、振動の強度、それから騒音対策、この二つが一番問題だと思うのです。この規格をどの程度に抑えるというふうに考えているのか、いつごろまでに大体結論は出るのか、その二点についてお尋ねいたします。
  22. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 白ろう病の予防のためには、何と申しましても、原因がチェーンソーでございますから、チェーンソーの振動なり騒音なり、そういう疾病の要因になる要素をできるだけ抑えるということが必要であることは当然でございます。労働省といたしましても、現在までメーカーなり輸入代理店等に対して強力な指導を進めてまいりましたが、やはり構造規格できちんと法的な規制を加える必要があるという判断に基づきまして、現在、中央労働基準審議会に労働安全衛生法施行令の改正について諮問をして審議をしていただいているわけでございます。恐らく年内には答申が得られると私どもは見ております。  その中で問題は、確かに一つは振動の強度でございまして、一ころ三十Gもありましたものが、だんだん減ってはきました。しかし、十Gくらいのものがまだあるということが問題でありまして、われわれとしては、三G以下にこれを抑えるという指導をやってきましたし、そういうふうにしなければならぬだろうと思っております。  それから、騒音につきましても、百デシベルということでいままで指導いたしておりまして、こういったものもやはり守っていただかなければならぬと思っております。ただ、騒音の程度につきましては、いろいろ技術的な論争もあるやに伺っておりますので、なお審議会の場での御論議あるいは専門家の意見等々も聞きながら、できるだけ従来の指導基準の中におさめるという努力をしてまいりたいと思いますが、事は技術的な問題でございますので、なお検討をさしていただきたいと思います。
  23. 村山富市

    村山(富)委員 大体振動については三G、それから騒音については百デシベルというぐらいの線で抑えたいというんですが、この規格というのは、技術的な限界でこの程度でしかできないだろうというのか、あるいは医学的にこの程度ならいいというふうに判断をしておるのか、これは、どっちですか。
  24. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 かねがね、できるだけそういった要素を少なくすべきだということで、私ども専門家の意見等も伺ってきております。強度の三G以下というのは、一つは医学的な判断からいたしましても、ずっと抑えればある程度発症は抑えられるではないかという意見に基づいておりますし、それから技術的にもそこまで指導ができるだろう。御承知のように、大分抵抗がございました問題ですが、ロータリーエンジンの開発とか林野庁でも非常に技術的な開発を進められまして、ようやくそこまでいった、両々相まって三Gという線が一つ出ていると思います。  それから実は、騒音の百デシベルについてやや問題があるという意味のことを先ほど申し上げましたのは、技術的な限界についてなお若干問題があるというふうに伺っています。事は技術上の問題でございますので、できるだけ理想に到達し得るようになお努力をしたいと思います。
  25. 村山富市

    村山(富)委員 これは、いま御答弁もありましたように、技術的な観点と医学的な観点と両方あると思いますね。まあ現状この程度ならという線が引かれたということだと思うんですよ。これが一応構造規格としてでき上がって、そして、いかにも許容基準だというような認識を持たれますと、ある意味では免責になりますからね。したがって、そういう認識に立ってこれがずっと施行されていきますと問題があるのではないか。これは、あくまでもやっぱり暫定的なものだ、今後技術の開発や、あるいは医学的な研究等によって、この規格というのはもっともっと下げるべきものだ、こういうふうに判断をすべきものだと思いますが、その点はどうですか。
  26. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 構造規格と申しますのは、労働安全衛生法の規定に基づきます法的な措置でございます。申し上げるまでもなく労働基準法、労働安全衛生法等々は最低基準でございまして、これ以上のものに努力をしていくということが労使の義務であるということは、労働基準法でも明らかになっておる点でございます。あくまでも最低基準でございます。先ほどおっしゃいましたような誤解がときによく生じがちでございます。そういうことがないように私どもとしても指導に努めたいと思います。
  27. 村山富市

    村山(富)委員 そうしますと、一応労安法の施行規則なら規則で構造規格が決まりますね、そうすると、これ以上のものについては輸入も製造も使用も販売も全部禁止するということになりますか。
  28. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労働安全衛生法四十二条に規定がございまして、輸入、譲渡、設置はできない、こういうことになっております。
  29. 村山富市

    村山(富)委員 これは、やっぱりそれぐらいの強い規制をしていかないと、現にあるわけですから、したがって、自由に使われるということにもなるでしょうから、相当強い規制を加えるということが必要ではないかというように思いますから、やる以上はやっぱり守らせるというふうにきちっとしてもらいたいと思うのです。そうでないと、目の届かぬところでは守りゃせぬところがあるわけです。現に、監督署の方に届け出はきちっとするけれども、しかし、届け出をやったやつと現場とは大きな違いだということだってたくさんあるわけですからね。したがって、そういう点はやっぱり十分厳しく見詰めて強く規制するというぐらいの気持ちでやってもらいたいと思うのです。
  30. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ちょっといま条文が出ましたので正確に申し上げます。ちょっと先ほどの点を訂正させていただきますが、労働安全衛生法四十二条では「譲渡等の制限」という条文がありまして、構造規格が定められたものにつきましては「譲渡し、貸与し、又は設置してはならない。」とございます。これが法律上の規制でございます。  そこで、いま先生がおっしゃいました、法律上はそうであっても、実際にこれを使用してしまうというようなことでは実効が上がらないじゃないかという点につきましては、法律でこういうことでございますから、できるだけその精神に沿って私どもとしては行政指導をしていきたいというふうに思います。
  31. 村山富市

    村山(富)委員 次に、予防措置の関係についてお尋ねしたいと思うのですが、労働省が一人親方の実態について調査をしていますね、この調査振動機械のチェーンソーをどのくらい使っているかということの調査の結果がここに出ていますけれども、大体一日に二時間という規制をしていますね。ところが、労働省調査したこの調査の結果を見ましても、使用状況は三時間、四時間、五時間、六時間が一番多いわけですよ。そして七時間、八時間というのもあるわけですね。これは間違いないでしょう。社会党は、ことしの三月から五月にかけて福島やら、あるいは静岡やら宮城やら北海道やら調査をしましたけれども、この労働省調査の結果と党の調査の結果とは大体合うのです。だから、余り間違いないと思うのです。こうした事実からも明らかでありますように、二時間という時間規制をしておっても、実際には現地では守られておらぬ、こういう実態があるでしょう。こういう現状については間違いありませんか。
  32. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 いまお挙げになりましたのは、五十一年の二月に結果を出しました私どもの方の「林業における一人親方に係る実態調査の結果について」というものの中からの引用だろうと思います。それはそのとおりでございます。ただ問題は、確かに二時間なり十分という規制が現場ではなかなか守られないという点は私どもの悩みでございます。できるだけ監督指導を強化してこれは守らせなければいけませんけれども先ほど先生もおっしゃっているような現場の実態でございまして、なかなか守られにくいという点があるということと、それから、いま御指摘の問題は一人親方でございまして、一人親方というのは、これも申し上げるまでもなく、厳密に言いますと、労働基準法なり労働安全衛生法の形から言うと、労働者でないということになりまして、これはいわば一人の経営者だ、こういうことになります。しかし、そういう法的な割り切りは別といたしまして、実態労働者であろう、問題も同じではないかという点から、私どもも、そうではないかということでこの実態調査もし、そしてまた、この十月一日からは労災の特別加入というのも踏み切ったということでございますから、一人親方だから問題にしないということを言うつもりはございませんけれども、これは、そういう前提の上での調査結果であるということでございます。
  33. 村山富市

    村山(富)委員 時間も余りありませんから総括的に申し上げますけれども、いままで申し上げましたように、たとえば検診のやり方、それから構造規格の問題、それから時間規制の問題、こういう問題がたくさんあるわけです。こういう問題が前段できちっとやられれば相当私は防げると思うのです。いままで労働省がやってきたことは全部通達ですよ。知事あてに通達を出して指導を求めるとか、あるいは経営者に反省を求めるとかいう通達にすぎないわけです。ですから、労働者の健康を守らなければならぬ、守る責任が経営者にあるんだという義務感がやはり相当薄いのではないか。同時に、これは働いている労働者にも、そういう意味の認識が足りないという点もあるかもしれません。したがって、現状からすれば、通達だけではやはり実行されない。ですから、振動機械等についての構造規格もやはり規則に入れる、同じように健康診断も義務づける、作業時間もやはり規則でぴしゃっと決めるというぐらいの規制を加えていかないと、これは、ずっといままで何年も指導して、現に守られていないわけですから、したがって、そういう通達だけでは限界があるというように思うのですが、そういう点はどうなんですか。  たとえば、いま申しましたように精密検診、それから時間の規制、作業基準、それから職場環境、それに構造規格、こういったものを含めてちゃんと規則なら規則、法令なら法令、省令なら省令で決めて義務づける、守らせる、もし間違ったら罰則を加えるというぐらいの強い規制を加えていかないと、さっき言いましたように、何年もやっておって現にいまだに守られておらぬわけですから、あなた方の調査でも、これは一人親方の例だけれども、社会党の調査でも同じ結果が出ている、こういう実態があるわけですから、これは通達だけではだめだというぐらいの判断に立って、もっと厳しく対処してもらいたいと思いますが、どうですか。
  34. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 対策の効果を期するという点では、初めから法的規制をかぶせていくのが一番効果的であるという点は全く同感でございますけれども、今日までなかなかそこまでいかないということについては、先ほど来御議論のありましたようなさまざまの実態というものを反映してのことであります。しかしながら、いまおっしゃいましたように、ここまでまいりましたので、私どもとしては、構造規格については法的規制を加えるということで踏み切って、目下手続を余すだけのところにきておるわけでございます。  さらに予防の問題、健康診断なり、そういった問題につきましても、これは法的規制になじむものとなじまないものとあると思いますけれども、できれば法的規制が望ましいということもお説のとおりだと思います。ただ問題は、やはり法的な規制ができましても、これを守るというのは事業主でございますから、事業主がその気にならないと、なかなか監督指導だけで実効を上げるということはむずかしいという問題もございます。  そこで、お説の点は、私どもも将来の方向として十分考えたいと思うのでございますけれども、さしあたっては、いまの構造規格の法的規制と、もう一つは、先生承知のように、労働災害防止団体法という法律がございまして、そこで、この関係では例の林災防でございますが、こういった災害防止団体は自主規程をつくることができるというふうになっております。この自主規程は従来いろいろつくられておりまして、主として事故に伴います安全の面の自主規程は各災防協会とも持っておる、林災防も持っておるわけでございます。しかし、職業病の点が非常におくれておりまして、私どもは、これをぜひつくりなさいということを強く要請しておりまして、これがようやくできてまいりました。これは法律の規定によりまして、勝手につくればいいということではありませんで、中央労働基準審議会に諮りまして、そこの審議を経てこれは自主規程となるべき性質のものでございます。そこで、出てまいりましたので、この次開かれる三者構成の中央労働基準審議会に諮るつもりでございます。まず、それを十分御論議をいただき、その自主規程を発足させまして、その上で、なお将来必要があれば法的な規制ということも、これは考えなければならぬだろうと思っておるわけでございます。
  35. 村山富市

    村山(富)委員 これは、もう十分実態はわかっているわけですから、くどくど申し上げませんが、もう何年も前からそういう指導をやってきて現実に実践されなくて、そして毎年白ろう病患者というのは数がふえてきている、こういう現実というものをしっかり踏まえて、私は、やはり相当強い規制を加える必要があるのではないかと思いますから、そういう意味で前向きの検討を期待したいと思うのです。  次に、認定の基準について若干御質問をしたいと思うのですが、この認定の基準についての通達が出ておりますね、この通達を見ますと、他覚的諸検査結果に基づいて認定される、こういう考え方が一貫して貫かれておるわけです。振動機械を使用する労働者の自覚に基づく訴えというものは余り重く扱われておらないわけです。したがって、そういう認定の仕方では、何回も申し上げますが、早期発見早期治療という原則にもとるのではないかと思いますから、この認定の基準についてもっと考え直す必要があるのではないかと思いますが、この点どうですか。
  36. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先ほど来申し上げておりますように、白ろう病につきましては、発生機序あるいは診断なり治療なり、いろいろ医学的にもまだ未解明の分野が非常に多い、医学的にも論争があるということは御理解いただいておると思いますが、そうした中で労災保険労災補償の認定をできるだけ早くやる必要があるという観点から、四十九年の六月に、この関係専門家方々にお集まりいただきまして、労災認定基準の専門家会議を開いて約一年間御検討願ったわけであります。その結果、昨年の九月二十二日付で現行の認定基準というものを設けたわけでございまして、まだ一年ぐらいの経過でございますから、いますぐというわけにもまいりませんけれども先ほど来申し上げておりますように、医学の進歩も非常なスピードで進んでおりますので、いつまでもこれでいいということでもないかと思います。常に専門家会議の御意見等を聞きながら、私どもとしては、改定すべきものは改定するという姿勢を崩してはならないと思います。
  37. 村山富市

    村山(富)委員 この認定基準が示されたのは昨年の九月二十二日付ですね。まだ余り時間的経過もないということもわかりますけれども、しかし現に、これは専門分野ですから私も余り中身には入りませんけれども、日本産業衛生学会振動障害研究会というのがありますね、この研究会が五十一年の四月に「振動障害認定基準について要望書」というのを出されておりますが、これによりますと、六つの項目について改善をすべきであるというふうに言われているわけです。  一つは「作業対象を林業関係のチェンソー、ブッシュクリーナーのみに限定して適用している点を改めること。」しかも、このチェーンソーやブッシュクリーナーの場合にはいいのだけれども、それ以外の削岩機とかいったような振動機械の場合には「判定が本省を経過するため、従来監督署だけで決定されていたものが大巾に遅れる事例が生まれている。」こういうことが指摘されております。この点が一つです。それから、もう一つは「振動病の病像を手指・前腕のみの疾病として把握している点を改めること。」言うならば、手や指やあるいは腕だけを把握している点は改めるべきではないか、これは、やはり全身に関係する問題だから、そういう判断をすべきじゃないかという点だと思うのです。それから三番目は「振動工具の使用期間を、おおむね二年としている点を改めること。」これも問題があるというふうに言われていますね。それから四番目は「レイノー現象の存在を医師の視認に限定している点を改めること。」五番目は「鑑別を要する類似疾病のあげ方について改めること。」六番目は「認定基準に記載されているもの以外の検査方法や検査の簡便化などを認めないととれるような表現を改めること。」こういう六つの点について指摘があるわけです。これは「判断の基本となる振動病の病態の把握において医学的な誤りをおかしており、また、その運用面において職場の現状に適合せず、かえって認定を阻む事例もみられる。」こういう観点から、いま六つの点が指摘されておるわけです。結びとしてこの要望書が言っておりますのは「今回の認定基準について、その通達はその内容について患者実態と学問上の進歩に適合しない点がいくつか含まれ、さらにその運用面において監督署認定の要件を過度にせばめたり、認定作業に手間どったりして認定の促進が阻害される事例があらわれ始め、今後もふえる恐れがあるので、その点の改善を要望する。」こういう結びになっておるわけですが、この要望書は知っていますか。
  38. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 そういう要望書が出ていることは承知をいたしております。
  39. 村山富市

    村山(富)委員 この要望書は、私は相当権威のあるものだと思いますが、こういう要望書に対して労働省はどういうふうな対応をするつもりですか。
  40. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 日本産業衛生学会というのは、一般に職業性疾病の問題等についても相当権威のある学会でございまして、実は、いま問題になっております白ろう病認定基準をつくっていただきました専門家会議は六人の先生方がいらっしゃいますけれども、その中には、この学会の委員であります久保田重孝さんでございますとか労研の三浦先生とかが入っていらっしゃるわけです。ですから、先ほど来申し上げておりますように、学会の研究もどんどん進むわけでございますから、私どもとしては、そういうものを絶えず参考にしながら事を進めていかなければならぬと思っております。  ただ、いまお挙げになりました問題の中で一、二申し上げますと、たとえばチェンソー以外の基準については、現在は認定基準がまだできておりませんので、本省禀伺という手続をとっておりますが、これは、もちろん追っかけてつくる必要があるというので、いま専門家会議で御検討願っておりますから、答申が出れば認定基準をつくって、そういう手続を経ずにやるということに踏み切りたいと思っていますし、それから全身症状の点は、これもよく言われる点でございますけれども、私どもは、それだけの全身症状が出るような状態であれば、必ず手指の症状の発症というものはあるわけでございますから、そういった認定で十分カバーできるというふうに、専門家の意見もそうなものですから伺っていますが、なお、これは医学的な問題ですから、それで不十分であれば検討しなければならぬと思っています。  そんなようなことで、これらのいまお挙げになりました点については、一応の意見は持っておりますけれども、なお私どもとしても勉強させていただきたいと思っています。
  41. 村山富市

    村山(富)委員 これは純専門的な医学的な問題ですから、私は、素人ですからこれ以上深入りしませんけれども、しかし、これだけ具体的に指摘されているわけですから、私は、十分検討しなければならぬと思うのです。そういう意味で前向きの姿勢をまた期待します。  そこで、次に治療について若干お尋ねしたいと思う。  厚生省見えていますか。——去年の三月十二日の衆議院の農林水産委員会で、社会党の井上議員の質問に答えて、これは治療に関する質問ですが、厚生省は、治療を進めることによって回復は可能である、こういう答弁をしておるわけですが、現在までに完治した例があるか、あるとすればどれだけの時間どのような治療をした結果治ったのか、わかれば説明していただきたいと思のです。
  42. 此村友一

    ○此村説明員 実は、厚生省関係につきましては、先生御案内のとおり、白ろう病について全般的な管理と申しますか、調査というものは持っていないわけでございますが、労働省関係あるいは林野庁の方々にお聞きした範囲内におきましては、完全な形における治癒を見たという例はまだ把握されていない。ただ、私どもが国立病院におきまして温泉療法を実施いたしておりますその段階で、たとえば腰痛とかそういう症状改善されたというような報告は来ているということでございます。
  43. 村山富市

    村山(富)委員 これも余り実態がはっきりしてないわけですね。これは労働省の方の所管になるのじゃないかと思いますが、現在治療中の労災認定患者症度別の割合というのはわかりますか。たとえば一期、二期、三期とありますね。
  44. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 この症度分類というのは、ことしの六月に専門家会議の答申を得まして、こういう「振動障害治療」というのができております。この中で症度一、二、三、四というものを例示してそれぞれの治療法を明らかにしたわけでございます。まだ日にちがたっておりませんので、私ども中央でこの症度別の分類までは掌握いたしておりません。今後その点は調べたいと思います。
  45. 村山富市

    村山(富)委員 これは、たとえば症度別の分類がはっきりわかりますと、その数を把握できればどの程度の施設が必要か、どの程度の病床が足りないのかという現状が大体わかるでしょう。ところが、その数がわからないと、どうなっているかという実態はなかなかつかめないわけですから、そういう意味で私はお尋ねしたのですが、こういう出された治療の指針ですか、これによって治療を受けておる患者はどれくらいありますか。
  46. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 この治療指針は、労災病院だけではとてもカバーし切れませんから、いろいろな国公立の病院を初めとして民間診療所も含めて各医師の協力を願うと同時に、できるだけ治療について理解を深めたいという意味でこれを出したわけでございます。  そこで、これによってどの程度の治療を受けているかということは、正確な数字承知しておりませんけれども、ただ先ほど来お答えしていますように、労災療養認定ということになった数は、昨年度末で九百一名、こういうことでございます。
  47. 村山富市

    村山(富)委員 ですから、こういう治療の指針が出されましても、症度分類が行われても、たとえば症度三以上の患者、これは治療を必要とするわけだ、そうした場合に、ここで書かれていますように、たとえば理学療法とかあるいは運動療法とか、そういうものと兼ね合わせて薬物療法が行われる、こういう治療を受けている患者の数というのはどのくらいあると思いますか。
  48. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ですから、正確な実態は私ども承知いたしておりませんが、労災保険法上、療養の必要があるということで認定をされた者については、療養でございますから、この治療方針に従って必要な療養が行われているものというふうに思っています。その点は九百一名という数字が現在あるということでございます。
  49. 村山富市

    村山(富)委員 これは私、ある意味では非常に前進だと思いますけれども、これは言うならば、初めて振動病患者に対する治療というのが体系的につくられたという意味で私は前進だと思うのです。ただ、こういう治療指針が出されてみましても、現実にこの治療指針に基づいて治療を受ける施設がなければ、あるいは専門医がなければ何にもならぬですよ。絵にかいたもちにすぎぬでしょう。そういう意味で、私はいままでそういう数なんかについて聞いたのですけれども、特に山林労働者が生活している地域なんというのは山村地域ですから、こういう施設というのは実際にないんですよ。現にあるのは、たとえば交通事故とかあるいは脳溢血とか、そういうことで身体に障害を受けた者が機能回復訓練をやっている施設がありますけれども、そういう患者振動病患者とは治療の方法も違うわけですからね。したがって相当無理がある。ですから私は、せっかくそういう指針をつくったのなら、この指針に基づいて治療が受けられるような施設をつくる必要がある、あるいはその専門医をつくる必要があるというふうに思うのです。そうでなければ完全に治療はできぬわけですから。そういう施設の問題についてどういうふうにお考えになっていますか。
  50. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 いま村山さんが御指摘になりましたように、指針を示しても、それを受ける機関が、病院がなくちゃだめじゃないか、全くそのとおりでございまするが、現在のところ、この指針を、労災病院だけではできませんので、各関係医療機関に示しまして、できるだけ協力していただく。特に私、いまこの白ろう病振動病というものに対して「この痛みを知れ」という本を読みかけたところで、村山さんの意見もここに出ておったのですが、大変なことだなということの認識を非常に深めたわけでございます。  そういう意味からいきまして、現在、労災病院が三十四カ所、さらにそれに関する機関が十一カ所、これだけではとてもこれは大変でございます。こうした問題を、もっと病院をつくってというのですが、いまなかなか病院をつくるというところまでいっておりませんけれども、特に職業病研究センターというものをつくりまして、そうして徹底的にこうした問題の究明をする。さらに病院をつくらなければならないような場面も出てくるかもしれませんけれども、まだまだそこまではいっておりませんが、十分御意思を体しまして、これから白ろう病に対する対策を考えていきたい、かように思っております。
  51. 村山富市

    村山(富)委員 もう時間がありませんから、これは答弁は要りませんけれども、きのうもある患者が言っていましたように、普通の病院に行っても、これはもう全く薬物療法だけですよ。したがって、かえって症状が悪くなって困っている。したがって、それを見てほかの患者は病院に行かない、こういう実態だってあるわけです。ですから、そういう点は非常におくれている。これは診療報酬の問題なんかもあって、機能訓練なんかやったってもうからぬ、だから、やりたがらない、こういう事情もあるし、いろいろな条件があると思います。しかし、現実に患者があって、治療をすれば治るというにもかかわらず、治療を受ける機関がないからみすみすほったらかしになっている、こういう現状もあるわけです。したがって、これは先ほど大臣からも答弁がありましたが、閣議でそういう意見まで出たのなら、労働省なら労働省が中心になって厚生省や林野庁と協力し合って早急にこの対策が講じられるように強く私は要望しておきたいと思うのです。特に厚生省は、公衆衛生員なんかの講習を全部集めてやるでしょう、こういう講習やら研修会なんかで、振動病なんかについても、やはり科目に入れて周知徹底させるということも必要だと思いますから、その点はぜひやってもらいたいと思います。これは答弁はいいですから要望しておきます。  それから次に、これは療養の打ち切りという事態が起こるわけですね。これはどうして起こるかと申しますと、いまの労災法でこれは治療の効果がない、ある意味では固定したという場合に打ち切るということになっていますね、一年半経過すれば。そのかわり障害補償給付をやる。療養が必要だという者は療養をする、療養で出す、こういう仕組みになっていますけれども、しかし、いままで申し上げましたように、この振動病という特殊な病気については、非常に判断がむずかしいのじゃないかと思うのです。特に専門医がいない、だから、薬を何ぼ与えても、もう薬によって回復の機能というものは非常に減退して、治癒の効果はない、だから、これで治療を打ち切るということだって起こり得るわけですよ。障害補償給付だって、症状によって給付が違うわけですから、したがって、そう大きく期待することはできないわけです。それだけに大変判断がむずかしいのじゃないか。  そこで、この振動病等については、せっかくこういう指針が示されたわけですから、こういう治療を加えても、なおかつもうこれ以上治療しても効果はない、だから、ここらで一応判断をしよう、こういう判断に立つならともかく、この指針に示された治療がなされずに、薬だけで治療して、そして薬じゃ治らぬから、もうここらでいいじゃないかというような形で始末をつけられるというのが非常に困る、こういう意味の不安が大変強いのです。ですから、その点について一言お答えを願いたいと思うのです。
  52. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労災支給を打ち切るというお話ですが、これは語弊があるわけで、労災保険の給付についてはいろいろな種類があって、療養の必要があれば療養をする、障害が残れば障害補償給付というわけでございますから、打ち切るという点は問題だと思いますが、ただ、お説の点は、つまり療養の必要があり、かつ療養の効果が期待されるにもかかわらず、治癒として次の補償に移るというところに問題がある、こういう御指摘だと思います。これは、いままで医師がこの白ろう病治療いたしましても、十分な理解が得られないために、非常にばらばらな治療をしてきたという実態に問題があったのだと思います。そういう意味で、できるだけそれを統一し、進んだ治療を理解してもらうためにこの治療指針をつくった、したがって今後は、ある程度これに立脚した治療が行われるというふうに私どもは期待をいたしておりますが、個別のケースについての治療判断というものはやはり当該医師によらざるを得ない、これはやむを得ないと思います。しかし、できるだけ統一した考え方で治療が進められ、したがってまた、その治癒認定なりその先の補償のあり方等についても、できるだけ統一的な扱いが関係者の間でなされるというふうに私ども期待もし、また今後も指導に努力をしていきたいというふうに思います。
  53. 村山富市

    村山(富)委員 これが打ち切られるという表現を使ったのは、患者にしてみれば実際にそう思うんですよ。それは仮に障害給付をもらったって、ずっともらえるわけじゃないのですから、症度によって違うのですから、したがって私は、そういう点はもっと厳しくとらえてもらいたいと思うのです。特にこういう振動病の場合には、薬物療法だけではだめなんですよ。さっきも申しましたように、専門医が少ないために、薬物療法だけで、もうあんた何ぼ薬を飲んだって効き目がないぜ、これ以上どうもならぬのじゃから、もうここらで障害給付に変えたらどうですか、こういうことになる。だから、本当にこの指針に基づいて治療すれば治るかもしれない、そういう事例も起こりましょうから、したがって、せっかくこういう指針を示したのだから、この指針に基づく治療もやはりある程度やって、その上で判断をする、こういう扱いをしてもらいたいということを強く希望しておきたいと思うのです。  時間がないから次に進みますが、次は患者の生活保障の問題です。こういう職業病にかかりますと、体力がぐっと落ちますね。したがって、認定される以前に相当減収になっているわけです。それは、たとえば一ヵ月に十日しか働けぬという場合もありましょうし、それからチェーンソーを使わずに、職場を変えれば賃金は下がるかもしれないし、特にこの山林労働者の場合には、出来高制度が多いですから、したがって、相当収入が低下している、その収入が低下しているものを基準にして休業補償が行われるというのでは、やはり問題がある。だから、現に認定を受けて、治療をすれば治るのだけれども、しかし、家族を抱えて生活に困る、したがって治療を受けに行けない、したがって悪いのを承知の上でチェーンソーを握って働いている、こういう患者も出てくるという現状もあるわけですけれども、それは、やはり私は生活保障ができないからだという点に一番大きな原因があると思うんですよ。ですから、これはやはり同職種の労働者の平均賃金を下回らぬような休業補償をするというようなものに変えていく必要があるじゃないかというふうに思いますが、その点はどうですか。
  54. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいまの点は、白ろう病に限らず、業務上のいろいろな災害に関連して起こる問題でございます。そこで、先生にも御審議をいただきましたこの前の労災保険法の改正の中で、第八条の改正をしていただいたわけでございます。そして従来は、平均賃金の算定が「著しく不適当であるときは、政府が算定する額を給付基礎日額とする。」という規定であったのを、「著しく不適当」という点を、単に「適当でないと認められるときは」というふうに直していただいたわけでございまして、その辺は非常に弾力的に扱うように改正をしたわけでございます。  私どもは、従来の御主張の線に沿いまして、すでに現行制度の中でも通達を発して、離職時前三ヵ月問における賃金に基礎を置きますけれども診断確定日までの賃金水準の変動というものを十分考慮するようにという扱いをしてまいりましたが、いま申しました法律改正が四月から動きますので、なお御主張の点を十分頭に入れて平均賃金の算定というものをやってまいりたいというふうに思っております。
  55. 村山富市

    村山(富)委員 これは、しかも六〇%でしょう、まあ特別給付が二〇%ありますけれども。収入が下がっている上に給付はなお下がるわけですから、したがって、そういう低い補償では、やはり家族は生活できない、安心して治療にも行けない、こういう現実というものは私はあると思いますから、そういう点は厳しく見詰めて十分検討してもらうということを期待しておきます。  時間がないから次に進みますが、林野庁は見えていますか。——これは、やはりこれだけ大きな問題になっているわけですから、林野庁ももっと経営者に対する指導を徹底するなり、あるいはチェーンソーなどを使用する労働者に対する具体的な教育をするなり何かしないと、仮に三Gのチェーンソーを使ってみても、目立てが非常に悪ければ振動はもっと大きくなるわけですから、したがって、やはり経営者に対する教育なり、あるいは働いている労働者に対する教育なり指導なり、こういうものが徹底されないとなかなか守られていかないのではないか、目的が達せられないのではないかというふうに思いますし、特にこういうチェーンソーを使う者については、やはり一定の資格を与えるとか、あるいは登録制にするとか、あるいは手帳を渡して手帳に記録させるとかいったようなことが必要ではないかというように思いますが、林野庁どういうふうにお考えですか。
  56. 穂積良行

    ○穂積説明員 先生お話しのように、民間林業におきましての振動障害対策、時間規制やらあるいは三G以下の機種の使用ということにつきまして、必ずしも徹底していないという実態もございますので、私ども、これら指導の徹底につきまして、いろいろと今後も努力してまいらなければならないと感じておるところでございます。  特に、お話しのように、三Gという基準のチェーンソー、それ以下のものを使うということにつきましても、実は目立てをよくするかどうかということが振動の問題に大きなウエートを持っている問題でございまして、との辺を踏まえまして、常にエンジンの整備やら目立てをよくして使うというようなことまで含めて今後の対策を考えてまいりたい。  また、林業従事者の振動障害防止の具体的なやりようというものにつきまして、さらに末端まで徹底するようなことも必要と存じておるところでございまして、私どもは、これらもこれからの課題と考えております。  いずれにしましても、振動障害実態を深刻に受けとめまして、施策の充実を一層図っていこうと考えているところでございます。
  57. 村山富市

    村山(富)委員 これは、言葉だけではなくて、ぜひやはりそういう具体的な対策を打って、もっと検討を加え、工夫をして、どうすれば防げるかという点を考えてもらわないと、本当に振動病というのはなくなっていかないと思いますから、今後の強力な取り組みをひとつお願いしたいと思うのです。  これを、もっと掘り下げて申し上げますと、やはり民間の林業労働者の雇用の不安定というものに一番問題があるのではないか、雇用関係とかそういうことに問題があるのではないか、こういう点をやはり改善をしていかないと、本当の意味で目的が達せられないというように思いますから、きょうは時間がありませんから申し上げませんけれども、こういう点も一つ含めて今後の真剣な取り組みをお願いしておきます。  最後に、じん肺問題について少しお尋ねしたいと思うのです。もう時間がありませんから簡単に申し上げますが、一つは、いまじん肺については管理一、管理二、管理三、管理四とあります。管理三の場合には職場をかえる、あるいは管理四の場合には認定して治療を受けなさい、こうなっております。ところが、管理三の場合に職場の転換のできない者もある。そうしますと、これは、もうやむを得ぬから、生活もあるわけですから、したがって、体が管理三になっている、これをしてはいかぬのだけれども、これは補償も給付もないから、しょうがないからやはりやらなければならぬといって、そのままやって、むしろ管理四になることを期待している、こういう労働者さえ生まれてくるような現状なんです。これは、やはり早期に発見して早期に治療する、じん肺というのは、そうなったらもう治りませんからね。そのためにも私は、管理三ぐらいから、あるいは管理二ぐらいからやはり何らかの補償をして十分治療もさせる、そうして、できるだけ軽いうちに治していくことが必要ではないかというふうに思うのですが、この点はやはりじん肺法の改善、改正をする必要があるのじゃないかというふうに思うのです。  もう一つは、仮に管理四でじん肺患者になって入院治療を受けておりますね、そして余病を併発した、そうして亡くなったという場合に、死因が違ってきますと補償を打ち切られるわけですよ。遺族補償も何も受けられなくなるわけです。こういう事例があるわけです。  これは一つの事例で申し上げますと、じん肺で入院しておったところが、胃がんを併発したわけですね。しかし、じん肺と胃がんとは関係がないというわけです。だけれども、もっと言えば、これは胃がんだって、早期に発見して治療し手術すれば治るわけです。ところが、体力が弱っているから手術はできない、死を待つだけだ、そして亡くなった。医者の死亡診断書は胃がんとなっている、だから、じん肺とは関係ありません、そこでもう補償を打ち切られる、こういう事例もあるわけですね。こういう扱いについては、やはりもっと検討を加える必要があるのじゃないかと思うのですが、この二点についてはどうですか。
  58. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 じん肺法につきましては、制定から相当時間も経過しておりますので、改正をしなければならぬと考えておりまして、いろいろいま、じん肺審議会を初め専門家方々の御検討をいただいております。  現行法制下におきまして、いまお尋ねの点でございますが、管理区分を設定しまして、四の者については「療養を要するものとする。」という規定がありまして、したがって、三以下は認定の限りではないというような扱いが間々行われがちでありましたけれども、しかしお説のように、たとえ三であっても、やはり医学療養を必要とし、かつ治療効果の期待し得る者というものがあり得るわけでございますから、そういうものにつきましては、客観的な判断に基づきまして、必要があれば補償の対象にしていきたいというふうに私ども扱いをしてまいりたいと思っております。  それから、第二点につきましては、確かに一つの問題点でございます。ただ、労災保険は申し上げるまでもなく、業務との間に相当因果関係のある疾病について補償するというたてまえになっておりますので、いまお話しのような点が、どれだけ法律的に見て相当因果関係と認め得るかという点については、法律的にもあるいは医学的にもかなり問題があるわけでございます。現在では、結核の合併症につきましては、これは、やはり因果関係があるというふうな判断基準になっております。しかし、おっしゃるような問題もございますので、現在、実は労働省におきまして、専門家会議を設置いたしまして、こういった点について検討を願っているところでございますので、その結果を待って私どもとしては対処したいというふうに思っております。
  59. 村山富市

    村山(富)委員 時間がなくて残念ですけれども、十七日から行われております「イノチを返せ三千人告発中央動員」これは体の悪い患者さんが全国から集まって、こういう訴えをしなければ、やはり本気になって取り上げてもらえぬのじゃないかというぐらいの切実な気持ちを持っておるわけですし、現実にはもう自殺したり死んでいく者もあるわけですから、しかも減っていっているというならともかく、患者がふえていっているわけですから、こういう現状をしっかりととらえて、そして、もっと具体的な厳しい姿勢で、この振動病等職業病については取り組んでもらいたいと私は思うのです。  これは特に、いま最後に申し上げましたじん肺問題等についても同じですが、いまの労災法というのは、病気になって初めて治療が行われるわけですから、その前段における予防というのは、労災の補償についてはいまは全然ないのです。したがって、さっき言いましたように、じん肺で管理三になっている者がむしろ管理四になった方がいい、そうすれば十分補償を受けて治療をされる、管理三ではもう体が悪いというのに働かなければならぬ、こういうところにやはり矛盾があるわけですから、したがってもう少し、本当に労働者生命を守るというなら、やはり前段における予防措置というものも十分やる必要があるし、この人はこれ以上やったら悪くなりますよ、これで治療すれば治るというような患者については、やはり治療がされるように考える必要があるのじゃないかと思いますから、そういう点も含めて、今後もっと厳しい姿勢でこの問題について取り組んでもらいたいということを強く要望して、私の質問を終わります。
  60. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次に、川俣健二郎君。
  61. 川俣健二郎

    川俣委員 昭和二十九年、日本にチェーンソーが導入された。それは洞爺丸台風で倒れた木の伐採、いわば緊急措置として百台のチェーンソーが導入されたわけです。そこで、この百台の緊急措置として導入されたチェーンソーが、その後林野行政の例の生産性向上、そして合理化の波に乗りながら、ついにいまは国有林で約六千台、実に民有林を入れると二十万台に近いものになってしまいました。そこで大臣、林野庁が言う文明の利器とかいうはかどる機械が、とうとう人の体をむしばんで、ついに人の命を奪う事態になりました。     〔委員長退席、石井委員長代理着席〕 この委員会で何回となく取り上げましたが、予防、治療、補償、とうてい手だてなく今日になって、そして、ついに国有林の場合は二人に一人が白ろう病というものに認定されてしまった。その白ろう病は、この席上でも昭和四十年に職業病として指定されて今日まできた。こうなると、一体その予防に対する経費、治療に対する経費、そして補償費、死亡者に対する手当等考えると、一体チェーンソ102というのは何のために入れにゃならぬのだろうか、こういうことになった。ついに、けさの102ではないが、社会問題になってしまいました。  そこで、まず大臣にお伺いしたいのですが、こういうチェーンソーを無理やりに使うことによる、いやがおうでも出る白ろう病、二人に一人は必ず出るわけですから。そうすると、労災法なり労働基準法なり労働安全衛生法を取り扱う労働省の大臣としては、この問題認識をどのようにお考えになっておるか、まず伺いたいと思います。
  62. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 私も就任以来、また以前にも白ろう病振動障害というこの問題については、だんだんと世間の声も大きくなってまいりましたし、また、その患者も、これによって冒される人たちも非常に多いということは聞いておりました。このチェーンソーが非常に能率は上がるけれども、それによってこれに従事する人たちの体を非常に大きく痛めておるということで、さてチェーンソーを禁止してしまうというようなことになれば、また一面、能率という問題にもなるので、この使用時間というもの、あるいはそのほか管理の問題等を相当研究しておられるようでございます。  私は、この白ろう病で、先ほども申しましたように、非常に大きな被害を受けておる、また「この痛みを知れ」というような本も、まだ全部読みませんが、読ませていただいて、その被害の、また苦しみの多いということを改めて認識したような次第でございます。  きょう、ちょうど先ほども答弁しましたが、農林大臣が、一遍厚生省と労働省とよく打ち合わせをして、われわれもその中に入って、そうして、この白ろう病振動病に対する問題について、もっともっと真剣に、前向きに検討しなければいかぬじゃないかということを指摘されましたので、われわれも、いま非常にいろいろな声を聞いておるので、ぜひいままでとは違った一つの対策を考えていかなければならない、三省協力してやっていかなければいけないということを申し上げたわけでございます。  いま御指摘のように、これからいろいろな検討をしていかなければなりませんが、われわれとしても、この補償の問題にしましても、あるいは治療の問題にしましても、もっともっと深く勉強しまして、そして、これらの被害者を少しでもなくするように努力いたしていきたいと思っております。
  63. 川俣健二郎

    川俣委員 農林大臣も向こうの委員会が終わればお願いしておるんだが、ちょうど医学博士である。したがって、白ろう病というもので死ぬわけはない、こういう発言をなさったのは本当かどうか。ある席かあるマスコミの前かわからぬが、恐らくそれは違ってほしいと思うが、しかし、新任された農林大臣に白ろう病の恐ろしさというものを、林野庁当局がどの程度いままでのデータを示して説明をしておるか、その辺が非常に懸念されるのであるが、ここで林野庁の長官にただす前に資料をちょっと用意しておいてもらいたいと思います。  時間の規制がありますから、まず第一番目に、チェーンソーは年代別に見るとどういう台数の推移を経たのか、それと並行して白ろう病患者発生の推移がどうだったか、これをいま質問時間中にだれか担当課長でも説明できるように頼む。二つ目は、国有林民有林を問わず、白ろう病で死亡診断を受けた者は何人いるか。さらに三番目ですが、いま労働大臣は、いま直ちにやめるというわけにいかぬ、余りはかどるものであるから、こうおっしゃったが、企業効果、経済効率というのは、単に木の本数が多く切れればいいということではなくて、そのはかどる裏にどのぐらいの経費がかかっておるか。ガソリンもかかるであろう。まず第一番目に、のこぎり一本は一万五千円だが、チェーンソーだと十五万円以下のものがない。一時間に一遍あのガソリンを取りかえねばならぬ。健康診断をやらなければならぬ。治療費をかけなければならぬ。補償費を払わなければならぬ。こうなると、国政の立場から、一体チェーンソーを入れることがはかどるという経済効果に結びつくのだろうか。この問題を皆さん方にぜひ知らしてもらいたいと思いますから、そういった資料をぜひ後で説明してください。  そこで、林野庁長官に伺いますが、この前の委員会で取り上げた際に、やはりあなたが長官でしたけれども、大変重大な問題だ、これと徹底的に取り組まねばならぬのだ。ところが、取り組まねばならぬと言っている間に死亡者が出てきているということになると、これは労働者の方から言わせれば、自分の命を守らねばならぬ、自分の命を守るためには、長官何とかしてくれという嘆願から、しろという指示から、それじゃ裁判闘争だということにならざるを得ぬと思う。ところが長官は、きょうかあすか自分が告訴されるという羽目になってしまった。それは労使関係の感情の対立じゃないと思う。対立であってはいかぬのだ。したがって、やはりこうこうこうするつもりだということを、ここで鮮明にしない限りにおいては告訴の列車はとまらないと思う。  したがって、冒頭ですけれども、長官、社会問題になっていると大臣もおっしゃったが、マスコミにも乗った、死亡者まで出た、銀座の歩行者天国にまで、ああ、これが人を殺す機械か、こういう指をさされるものをなぜ強制的にいまだに使っていかなければならないのか、予防も治療も補償もついていけないのにチェーンソーをどんどん使っていかなければならぬのだろうかということを、国が告訴されているわけですから、告訴された以上は、国会の立場としても、この辺、ともに考える必要があると思う。長官の考え方を率直に聞かしてもらいたい。
  64. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘ございましたように、大変な発生の人数であり、また、私ども相当工夫しながら仕事を進めておりますけれども、いまなお認定者が出ているというような、きわめて緊急な事態でございまして、私ども事態を深刻に受けとめておるわけでございます。  現在、私どもの基本的姿勢といたしましては、どうしても発生しないように、新しい患者が出ないようにということを心がけるということが大事でありまして、かかった方々には、いま先生指摘のように、治療なり補償というようなこと等に努力するということでございまして、現在、時間規制あるいは機械開発あるいはもろもろの施設等の設置について努力いたしております。今後も、解明する問題いろいろございますけれども関係省庁とも十分連絡をとりながら私どもはさらに努力してまいりたいと思っているわけでございます。  このようなことでございまして、先般、きのうでもございますけれども労働組合の方から振動障害の絶滅についての要求書が出されておるわけでございまして、その要求書に対してましては、私どもは、庁を挙げて真剣に取り組んでおりまして、今後とも誠意を持って協議を続けてまいりたい、こういう姿勢を持っておるわけでございます。
  65. 川俣健二郎

    川俣委員 長官、そこがどうも違うのだ。なるべく発生しないように、新しい患者が出ないようにということであれば、その対策が決まるまでやめるべきでないかな。どんどん患者が出ておるのだよ。  それからもう一つは、国会答弁のモデルですが、よく関係省庁と連絡を密にした、これは関係省庁は何も関係ないのだ、労働者はなるべく使わないでくれという考え方なんだから。労働基準法あり労災法あり労働安全衛生法がある、そういう立場からすると、できれば使わない方がいいのだ。そうでしょう。そのとおりなんだよ。社労委員会としてはそのとおりなんだ。したがって、発生しないように、新たな患者が出ないようにという考え方があるならば、発生を食いとめるのには使わないのが一番いいのだ。どうですか。この論理構成はおかしいかな。
  66. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお話しございましたように、確かにチェーンソーを使うことによって振動障害が発するわけでございますから、これは、まさに因果関係があることは事実でございます。したがって、私が申し上げましたのは、林野庁という立場から申し上げますと、いかに予防対策を中心としていくかということでございまして、先生が御承知いただいておりますとおりに、四十四年以来、労働組合と協議の上に操作時間あるいは機種の選定とか、そういうことを厳正に実施してまいったのでございますが、五十年度からは、さらにこれを厳正にやるということでお互いに話し合いをいたしまして、操作時間の規制の強化とか、あるいは人工林等においては手のこを導入するとか、あるいは玉切り装置につきましては、直接手を触れずに玉切りをするという機械を導入しておりますし、今後とも軽量で振動の少ない機械を入れながら予防措置に私ども努力したい、こういうように思っておりますし、また今後将来的に、先生の御意見等よく拝聴するわけでございますけれども、要は、いま現在開発しつつございまして、ほとんど完成に近いのでございますが、リモコンチェーンソーと申しまして、現実に手を触れないでやるという実験をいまいたしておりますし、また油圧式の伐倒機とか、つまり直接振動機械に手を触れない、そういう機械の開発を進めておるわけでございまして、それが完全にできるまでいろいろな予防措置というものをお互いに話し合いながら、そして、きめの細かい実施によって、チェーンソーはその間は使っていかざるを得ないというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  67. 川俣健二郎

    川俣委員 本論に入らないのだよ、最初から。なぜかというと、長官は盛んに話し合いながらと言う。労使で話し合いながらというのは、話し合ってやるというのはどういうことかというと、ともに使おうという人方が話し合うなら話し合いなんだ、そうだろう。片方は使うなという組合、労働者でしょう。話し合いながらやろうというのは、あそこにレクリエーションに行こうや、じゃ、どの汽車で行こうか、どのぐらいの会費で行こうかというのは、行こうという目的が同じだから話し合いなんだ。あなたはだめだよ。労使関係で話し合って使っておるからという責任の分担というような考え方はいかぬよ、長官。あなたは使わしてくれという立場に立たなければうそよ。労働者は使いたくないという考え方で協定ができるだろうか。その話し合いという言葉はやめた方がいいよ。どうです、長官。
  68. 松形祐堯

    松形政府委員 四十四年、組合と協議の上、こういうふうに私は申し上げたわけでございまして、やはり一つのことがまとまるには、いまおっしゃったようなお互いの立場の主張というのはございまして、協約なりそういうことの取り決めをいたしまして、そして、お互いがその範囲内で注意しながら実行していくというのが、私どもの組織の中の進め方でございまして、今後もそういうことで進めてまいりたい、こういうことを申し上げているわけでございます。     〔石井委員長代理退席、竹内(黎)委員長     代理着席〕
  69. 川俣健二郎

    川俣委員 それなら大分話が違うのだ。話し合いとか関係官庁とか労使で話し合って使わせているのだからという考え方はやめるべきなんだ。きょうは大臣はいないけれども、やはり長官は、予算を縮小させられて、政治の枠の中で木を切らなければならぬ、造林をしなければならぬ、そういう体制の責任者なんだ。できれば予算もたっぷりあって、国立病院も建てて治療も十分にできる、予防もできるという、潤沢な予算の中でも使っていって山林を守ろうという体制の責任者だ、長官は。そうだろう。だから、チェーンソーを使うことをみんなで話し合っているという関係はやめるべきだ。やはり責任者なんだ。  そこで、先ほど認定の問題が出たから言うけれども、きのうも、もう歩けなくなって奥さんにすがりながら来た北海道加藤さん、恵庭のあなたのところの職場の人だ。あの人の話を聞いて、あなたもやはり人の子、涙を流した。私もほろっとなった。四十三年に指が白くなったというので訴えた。四十四年に札幌医大で検査してもらった。それでも認定はしてくれなかった。四十八年に腰部脊髄症というものに認定された。それでも白ろう病認定してくれない。ついに五十一年六月十日に手術した。これでも認定していない。そして九月に登別の診療所で受けたという、ここまで言われても、まだ認定しないという考え方はどういうことなんだろうかと私は思うのだ。ああいう説明を聞いて、本人の指を見て、経過を聞いて、そのときには長官もその気持ちになるのだ。  では、まずひとつ林野庁当局の姿勢をひもとく意味において、ああいうような患者訴えを素直に取り上げて、認定の方向で検討するということはできるのか。もしそういうことであれば、私は、初めて長官のさっきの検討を加えているということを信用しますよ。
  70. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  昨日、私の部屋であのような経過があったことは、先生いまお話しのとおりでございまして、札幌で長い期間かかっているというには、それだけのいろいろな理由もあるのじゃなかろうかというようなことで現在、札幌の方に問い合わせ中でございまして、この辺は私ども十分検討いたしまして処理いたしたいという気持ちでございます。
  71. 川俣健二郎

    川俣委員 一カ月や二カ月前の事件じゃないのだよ。部長、きみは後ろで何の知恵を授けているのだ。いいですか。四十三年から訴えて、先ほど言った経過を経て——あなただってきのうその席上にいたでしょう。それでもまだいまになっても札幌の方から資料を取り寄せてというのは、これはとてもじゃないけど納得できない。どうなんですか。もう少しそこで打ち合わせをして返事してください。
  72. 松形祐堯

    松形政府委員 きのうあのように私の部屋に見えたのでありますけれども、私自体も、そういうことを実は承知していなかったわけでございます。と申しますのは、認定は営林局長認定になっておりまして、個々の事案というものが全部林野庁に上がるということになっておりませんので知らなかったということで、いま緊急に問い合わせ、検討をしようというようなことで段取りをいたしているところでございますので、御理解いただきたいと思います。
  73. 川俣健二郎

    川俣委員 これは一つの例ですけれども、こういうようにわんさわんさ地元の山から出かけてきてやって、やっとおみこしを上げたような感じですが、それじゃ認定するのかしないのかわからぬが、いち早く取り寄せるなんという考え方に、なぜいまごろになってなるのだろうかというのだ。医者が診断して認定しておるのに、それを認定していないわけだ。  それじゃ、その診断認定関係で、さっき言った資料を取り寄せるけれども国有林民有林、ちょっと死亡者を発表してみてください。事務局でいい。
  74. 松形祐堯

    松形政府委員 国有林について申し上げますと二名でございます。
  75. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 私ども承知している限りにおきましては、民有林振動障害の死亡事例でございますが、三件ございます。一人は長野の方で、パーキンソン氏病というのがございまして、それが振動障害によって増悪したということで、これは業務上の認定をいたしたものでございます。それから最近、山梨で脳血管循環不全ということで、これは労災請求がいま来ておりまして検討しておるところでございます。それからもう一つは、奈良のこれは自殺でございまして、労災請求はございません。そういう情報を得ております。
  76. 川俣健二郎

    川俣委員 いま労働省局長が言うように、後ろの職員部長、やはり知らせてくれと言ったら、せめてそれくらいの内訳を言うのが普通でないかな。二名ですと言っただけだ。それでは、その二名は、死亡診断を受けて、そして当局は白ろう病で死んだという認定はしておるんだな。どうです。
  77. 松形祐堯

    松形政府委員 大変失礼いたしました。二名の内訳でございますけれども、一人は、下屋久営林署の元常用作業員の佐々彰さんでございまして、死因としては急性の心不全ということで振動障害認定者でございます。それからもう一人の竹邑正一さんは、四国の高知県の奈半利営林署の常用作業員の方でございまして、死因は振動病とはっきりしておるわけでございます。
  78. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、一応いまおっしゃった二名は、白ろう病原因で死亡したという死亡診断書を認めているわけですね。
  79. 松形祐堯

    松形政府委員 下屋久の佐々彰さんは、死因が急性心不全ということに死亡診断書はなっておりますけれども振動障害原因である、こういうふうなことでございます。なお竹邑正一さんは、死因そのものが振動病、こういうことになっております。
  80. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、白ろう病で死んだという取り扱いをするわけですね。
  81. 松形祐堯

    松形政府委員 現在、この二件につきましては、私ども慎重に検討中でございまして、特に主治医の意見は尊重する考えでございますけれども、何分にも新しいケースでございまして、医学的分野にもわたる問題等もあります関係から、専門医の意見等も聞いて処理したいと現在考えておりますが、なるべく急ぎたいと思っておるわけでございます。
  82. 川俣健二郎

    川俣委員 それは何年何月に診断したのですか。
  83. 松形祐堯

    松形政府委員 屋久島の佐々彰さん、昨年の十二月十五日死亡でございまして、竹邑さんがことしの八月二十一日死亡ということになっております。
  84. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、厚生省も来ているんだけれども、医者が書いた死亡診断書に検討を加えるのか。これは医師法の問題だ。ぼくはやるぞ。これはどうなんです。
  85. 此村友一

    ○此村説明員 医師法上の診断書の取り扱いにつきましては、衛生取り締まり立法という性格から、診断書の求めがあった場合に交付義務を課しております。その他、たとえば医師の資格のない人が医療をやってはならないとか、そういったふうに適正な医療を担保するために、医師法上は規定があるわけでございます。それに対して、外部からといいますか、それをどういうふうに評価する云々の問題については、医師法上は規定はございません。
  86. 川俣健二郎

    川俣委員 医師法をめぐる論議を長官とやってもいいんですけれども医師診断書が下ってからもう一年近くになるよ。林野庁で検討するという問題は、これはどうかな。そういう権能があるかな、林野庁の長官の方に。私はあるよ、その法律論議やるのなら。それこそ告訴されるよ。医者が書いた診断書だよ。
  87. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  公務上の死亡認定ということになりますと、認定権者である私どもの方でいろいろ検討するわけでございますけれども先ほど申し上げましたように、医学的にも本当にわからない点がこの白ろう病にはあります関係から、そういう専門医の方々——私ども専門医の方々研究クループもつくっておるわけでございますが、その辺の方々の意見も聞いて、私、冒頭、主治医の意見は尊重する考えであると申し上げましたけれども、そのような手順を踏むべく、必要な資料というものを、いままでかかって鋭意集めておるという段階でございますので、なるべく早く結論を出したいと思っておるわけでございます。
  88. 川俣健二郎

    川俣委員 その論議に入る時間はないけれども、ただ、言っておくけれども白ろう病を職業病にするかどうかという大もめをやったわけだ、この委員会でも。その論議は尽くされているのだ。白ろう病は職業病であるということの認定が下った以上は、死亡診断医師が書いた以上は、白ろう病は職業病である、こういう法律と医師診断書というものを尊重して取り扱わないと、これは大変な問題になると思うから、一応申し上げておきます。  それから、もう少し法律的におかしいのは、林野で働く労働者で、大臣が御承知のように、四月に採用されて十二月に解雇、三カ月か四カ月首になって、また四月に来て、こういう反復雇用というのは世界にないんだそうです。しかもこれは、採用されている間は国家公務員なんだ。  そこで、労働省の皆さん方にお知恵を拝借したいんですが、一つは失業保険の問題、それから一つは労災補償との法律的な精神の問題。その法律的な精神ということは、労災法というのは、病気になったら、まして職業病になった人は、首切っちゃいけないというたてまえなんです。そうでしょう。これは解雇制限というくくり方でいいのかどうかはわからぬがね。そうしますと、おざなりに、冬になったから、その白ろう病認定された人を機械的に首切っているというのは、これは、ちょっと十九条にさわるのではないか、どうだろうか。これは労働省の方から聞かしてください。  それからもう一つ、基準局長の方じゃなくて職安の方だが、失業保険というのは、失業保険の思想で定期作業員に払っているんだが、失業保険改め雇用保険というのは、働く意思があるんだが仕事場がない、ところが、白ろう病認定された人は、働く意思はあるけれども能力がない、その人に失業保険をやった形にして首切るというのは、これはおかしいよ。基準局長と職安の方から、ちょっと知恵かしてもらいたいのです。
  89. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労働基準法十九条は、使用者が業務上の傷病により療養のため休業している労働者を解雇することを禁止しておるわけでございまして、これは、できるだけそういった状態にある者については安定的な状態を保とうという立法の趣旨だろうと私ども思っております。ただ問題は、短期雇用契約でございまして、通常は、短期契約は相当長期間にわたって反復更新される場合において期間の定めのない契約と同一視されるという場合も間々ございますけれども、原則として契約期間が満了した場合は、これは使用者の解約の意思表示を待たずに当然労働契約が終了し、解雇の問題は生じない、したがって労基法違反とはならない、法律的にはやはりそういうことになるのであろうというふうに思っております。  なお、労働者の災害補償を受ける権利は退職によっては何ら変更されることがないことは、これはもう言うまでもないところでございます。
  90. 川俣健二郎

    川俣委員 そう木で鼻をくくったような答弁でなく、職業病と認定されているわけだから、労働省というのは労働者を守る法律の番人だから、そのたてまえからいうと、白ろう病という職業病で認定されている者を自動的にちょん切るという考え方は、どうも法律の精神にもとるような気がするんだが、その辺どうなんです。
  91. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 一定期間でちょん切るのだ、こういうお話でございますが、契約の詳細は私も承知いたしておりませんが、これは短期雇用契約であろうと思いますので、解雇ということではなくて、雇用期間が満了をする、こういう法律構成になるのだろうと思います。  ただ、先ほどもお答えしましたように、法律的にはという前提を置いてお答えしておりまして、十九条の立法趣旨というのは、業務上の災害の状態がある場合には、やはり安定的な状態を維持しながら、できるだけ早く災害からの復帰を待つ、こういう立法趣旨に出ているのであろうということも先ほどお答えをしたわけでございます。
  92. 川俣健二郎

    川俣委員 そうなると、期間が終わったから、こういう雇用の仕方はほかに例がないから、林野庁の定期作業員のようなあれはほかに例がないから、だけれども、冬まで使うという期間設定だから、期間も来たら自動的に、だとすれば、白ろう病患者には療養補償というのは実費を支払っておるわけでしょう、冬の間の治療費は実費を払っているのでしょうね、これは。間違いないですね。——それからもう一つは、失業保険に見合うようなものは休業補償で払うという方が好ましいのではないだろうか。その辺は職員部長どうですか。
  93. 北村孝生

    ○北村説明員 林野庁の作業員の場合、多分、支給されておりますのは、雇用保険の基本手当ではなくて、国家公務員等退職手当法に基づく失業者の退職手当ではないかと思われますが、大部分がそういうことになろうかと思いますが、ただ、この失業者の退職手当というのは、雇用保険による基本手当の支給の条件に従いまして、公共職業安定所で失業の認定を受けて支給される、こういう手続になっておりますので、そういう意味で失業の認定というのは、雇用保険の基本手当の場合と同じであろうと思います。  そういう前提で失業の認定をすべきかどうかという点についてお答えいたしたいと思いますが、雇用保険による失業の認定というのは、先生さっきおっしゃられたように、労働の意思と能力がありながら職業につき得ない状態である、こういうことになっております。  そこで、この場合に労働の意思はあるという前提でございますから、労働の能力があるかどうかということになろうかと思いますが、職業病の認定を受けておることが直ちに労働能力をすべて喪失しておるかどうかというところに問題があろうかと思います。職業病の認定を受けておっても直ちに職につき得ない状態である、全面的にそういうふうには認定しがたい面がございます。したがいまして、個別のケースによって通常の職場に就職できるかどうか、これは多分、白ろう病の場合には、その障害の程度によりまして普通の職場に復帰できるかどうか、あるいは特定の職場、一般的にその労働市場である職場ならできるけれども、たとえば事務の仕事ならできるけれども肉体労働はできないとか、肉体労働の中でも、軽作業はできるけれども重勤作業はできないとか、いろいろな場合がございますので、直ちに全面的に労働能力がないというふうには言いがたい面がございます。
  94. 川俣健二郎

    川俣委員 わかりました。そうすると課長、機械的に何でもかんでも退職手当で清算するんじゃなくて、失業保険を雇用保険に改めるときに、それこそ何カ月もかかって論議したことだから、能力があるかどうかという判断はすべきだな。どうですか。これは労働大臣にかわってあなた答弁してください。労働省の見解だから記録に残る。
  95. 北村孝生

    ○北村説明員 労働能力があるかないかということは、当然、失業の認定段階で判断すべきことでございます。
  96. 川俣健二郎

    川俣委員 私もそう思います。機械的にいま出しているというのは、私は違反だと思う。  もう一つ、もう一つどころかたくさんあるんだが、厚生省待たしてもらっていますから、もう一つ質問するんですが、それは治療なんです。治療は厚生省も協力してくれということの話し合いがあるわけですね。林野庁から話が来ているわけです。それに対して医務局長が通知を出しているわけです。ところが、林野庁自身がなぜ病院を持たないのだろうか。これは非常に不思議の一つだ。国の病院が数々あるけれども、林野庁に総合病院がない。各官庁ごとに日本の国にはある。だから、郵政省が逓信病院を持っているようになぜ持たないのか。あれはみんな総合病院です。みんな現場は持っているわけだ。防衛庁なんかあんなにりっぱな病院を持っていて、林野庁はなぜ総合病院を持っていないのだろうかといつも不思議に思うんだが、各官庁ごとにどのぐらいあるのか。
  97. 此村友一

    ○此村説明員 五十一年の四月現在で申し上げますと宮内庁が一、防衛庁が十三、科学技術庁が一、法務省が六、大蔵省六、林野庁二、郵政省十七、あと三公社、つまり国鉄含めまして五十七。
  98. 川俣健二郎

    川俣委員 三公社はどういうのがありますか。
  99. 此村友一

    ○此村説明員 専売公社が二、電信電話公社が十六、それから国鉄が三十九、それだけでございます。
  100. 川俣健二郎

    川俣委員 福祉事業団は……。
  101. 此村友一

    ○此村説明員 労働福祉事業団は、若干職域病院と言いがたい面がございますけれども労働福祉事業団は三十四ございます。
  102. 川俣健二郎

    川俣委員 それで、けさのスタジオ102でも言っておったんだが、医療があって対策がおくれていると言っていたね、お医者さんが、どなたか知らぬけれども。医療は進んでいると言うんだ。白ろうのあれ、非常に研究は進んでいると言うんだ。ところが、対策がおくれているものだからと、こういうことなんだが、長官は厚生省に頼んだり、労働省に頼んだり、この患者はうちの職員だけれども頼む、こういう姿勢なわけだ。やはりこれじゃいかぬ。もし林野庁の方で総合的な国立病院を持つという、持たしてほしいという意欲がなければ、これは労働省か厚生省に白るりになった患者を預けるしかないんだ。そのかわり権限と責任があります。だから、使う方の林野庁長官が、ガタがきたら労働省に転がしておく、こういう姿勢だとしようがないと思うんだな。  ところが、林野庁の長官に自分の職員だから自分で治すという姿勢があれば、いま言ったように林野庁、総合病院がゼロなんだから——さっき二と言うんだけれども、この二というのは診療所みたいなものだ。私も知っているように秋田に一つあるんだが、一体これじゃどうやって治療という対策を考えていくつもりですか。もっと具体的に言うと、総合病院でも建てて白ろう対策に当たっていかなければならぬ、それとも白ろう病になってしまったらほかの官庁の方に頼んでやる、送ってやる、こういう姿勢であるのか。それでも一つの方法はあると思いますよ、社会労働委員会としては、その立場で検討しなければならぬのですから。どうでしょう。
  103. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  冒頭申し上げましたように、林野庁とすれば予防を中心ということが一つの方向でございまして、現在、国有林につきましては約三千名ということでございまして、大変残念なことでございますけれども、現在、私どもがとっております治療につきましては、関係省庁の御協力も得まして、三十四の病院と二百八十のベッドを確保しておるわけでございまして、さらに先生承知のような既設病院に対しましての併設というようなかっこうでやっておる、こういうことでございまして、今後もやはり各省の御協力等をいただきながら、関係省と御相談しながら、労災病院、国立病院等の活用というようなことで私ども現在考えているわけでございます。  ただ、このような非常に大事な事態でございますし、国有林だけでなくて民有林というようなものも相当認定者が出る、あるいは要治療であるというようなことでございますので、国有林民有林を通じますこの治療体制をどのように充実すべきであるかというような問題につきましても、関係省庁と十分意思疎通を図りながら研究してまいりたいと私どもは考えておりまして、すでに関係省における協議会も、事務レベルではございますけれども、一応そういうものもことしの春発足いたしまして、打ち合わせをしているところでございます。
  104. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、はっきりしなかったんだが、総合的な国立病院を建てようという気持ちはない。いま秋田と青森と診療所があると言ったって、このとおり全国に散らばっておるわけだから、民有林と言ったって林野行政は全部林野庁ですから、そうなると、林野があってチェーンソーがあるわけですから、したがって、この辺で政治的な分野で、ここに労働大臣もおられるんだが、労災病院とかあるいは厚生省の国立病院とか、そういうものをチェーンソー、白ろう患者の病院だ、こういう方向で進あるのか、林野庁として独立した国立病院を持とうという気持ちがあるのか、その辺なんだ。林野庁というのは現業でしょう、だから庁という名前がつくんだ。現業であって総合病院がないのはおたくだけよ。これは応援の意味も含めて言っているんですよ。ただ、林野庁の長官が、今後病院を持つという気持ちがなければ、これは大蔵省に話ししたって、予算委員会に持っていったって話にならない。その辺を聞きたい。いまある既設の病院にお世話になろうとしているのか。
  105. 松形祐堯

    松形政府委員 専門病院をつくれということでございますけれども……(川俣委員「つくれと言っていないのだ、気持ちはどっちだ」と呼ぶ)林野庁の立場から言いますと、きわめてむずかしい問題と考えておりまして、先ほど申し上げましたように、治療体制をどのように充実すべきであるか、病院ということもありましょうし、いろんなことがございますので、さらに関係省庁との意思疎通を図りながら研究してまいりたいという気持ちで先ほどお答え申し上げたわけでございます。
  106. 川俣健二郎

    川俣委員 つくってほしいという気持ちは私にもあるよ。だけれども、つくってほしいと言ったって、最高責任者の林野庁長官につくりたいから予算をほしいという気持ちがなければだめだよ。だから、その気持ちがあるんだろうか、ないんだろうかと言うのだ。そうではなくて、いまある施設を拡大して、いまある病院にお世話になっていきたいという気持ちなのかどっちだろうかと言うのだ。この質問、別にむずかしくないでしょう。
  107. 松形祐堯

    松形政府委員 現在熊本、青森、秋田、長野というような、一種の併設というようなかっこうで施設を設けておるわけでございますが、今後もなるべく各地方ごとに、そのようなことを中心といたしまして施設を整備しながら、あわせて一方では、やはりいろんな問題がございますので、国立病院あるいは労災病院等の施設の整備等をお図りいただくような方向で私どもは考えておるわけでございまして、いま直ちにここで専門病院をつくれとか言われてもなかなか——私ども研究する必要があるというふうな気持ちでおるわけでございます。
  108. 川俣健二郎

    川俣委員 少しわかったような感じはするが、やはり長官、最高責任者として政治の場面に反映させなければだめよ。あなたは大臣じゃないわけだから、政治家じゃないわけだから、したがって、労働大臣あるいは農林大臣なり、厚生大臣なり、ひいては大蔵大臣だろうが、閣議の上で白ろうがこのように発生したから林野庁で独立した総合病院を持ちたいという意思表示をしなければ国立病院は永久に建たない。そういうものなのだ。そうでしょう。あなただって長年官庁勤めをやってわかるでしょう。  だけれども、これ以上やったって時間があれですから、大臣どうなんですか。社労委員会ですから、労災法とか基準法とか安全衛生法をあずかっているものとして、これは林野庁に任せておかれない問題じゃないですか。どんなものなんですか。こう発生したらえらい問題だと思いますよ。
  109. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 いま既設の各病院にお願いもいたしておりますし、労災病院も活用いたしておりまするが、いま御指摘のように、専門病院をつくらなければいかぬという声も大分強く出てきております。これは、これからわれわれも研究してみたいと思いまするが、しかし、白ろう病というこうした障害をどうしたら治療ができるかということについていろいろ研究されておるようであります。  そこで、さしあたっては職業病、これは白ろう病だけではないけれども、職業病の研究センターをつくりたいということで、けい肺も、じん肺もありましょうが、白ろう病が今日非常に大きな問題になっておりますので、こうした研究センターはそうした問題を中心にひとつ研究していきたいということで、研究センターは労働省としてはつくる方針でいま進んでおります。
  110. 川俣健二郎

    川俣委員 それでは、ついでだから大臣、農林大臣いませんから話しておくけれども、閣議に出してくださいよ。これは関係閣僚協議会に出すのに十分に値する問題じゃないですか、この白ろう問題というのは。どうです、その意思ありますか。
  111. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 まあ、非公式に農林大臣から一遍三省で打ち合わせてみよう、そして相当真剣にこれは取り組んでみなければならない、農林大臣、お医者さんでありますので、非常にそういう意欲を持っておみえになりまして、私も、白ろう病というものに対する認識はまだ足らなかったわけでありまするが、このごろ、先ほど申しましたように、本を少し読まさしていただき、また、陳情を聞きまして、これは大変だという認識をいま深めております。三省で一遍大臣でよく打ち合わせをしましてこれに対処していきたい、あるいは三省の打ち合わせの結果、閣議でひとつそういう問題も取り上げてもらいたいというような考え方を持っております。
  112. 川俣健二郎

    川俣委員 ぜひ進めてもらいたいと思います。  それから、労働安全衛生法というのを労働基準法から抜き出してああいう膨大な法律をつくるときに、労働者を守るわけですから、あの穴に入っていけ、しかし落石、落盤のおそれがあるから入りたくない、これは労働者に拒否権があるだろうか、こういう論議をしたのです。それでも無理やりにその穴に入れようとするものを拒否した場合は、労働者はそれを拒否する権利はないのだろうか、それで緊急避難というものが出てきた。刑法にもある。そうしますと、これは藤繩さんに知恵をかりたいのだが、労働者に、体が痛くなったから、とてもチェーンソーに耐えられないから使いたくないという拒否がありますか、どうでしょうか。
  113. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 いまお挙げになりました問題は、雇用契約の民事上の解釈の問題で、私が有権解釈をするという、まあ労働基準法の解釈のような立場でお答えをする性格のものではございませんけれども、一般的に申せば、使用者の業務命令が法令、労働協約、就業規則などに違反し、または公序良俗に反するような場合には、労働者がこれを拒否しても、債務不履行等の責任に問われることはないであろうというふうに思います。ただ、業務命令が当該労務の提供に関してなされ、それが法令等に違反していない場合においては、原則としてこれに従うべき労働契約上の義務があると考えられるのでございます。  そこで、チェーンソーの使用によって白ろう病発生の危険があるからといって、その発症の度合いについては個人差もあることでございますから、チェーンソーを使用させることが、すべて一概に違法な業務命令というわけにはこれはまいらないだろうと思います。  そういうことでございますが、しかし、チェーンソーの使用ということについてはいろいろ問題がございます。したがって、使用時間等の基準も設けて行政指導を図ってきていることでございますから、その基準を超えて作業に従事することを命ずるというようなことにならぬように、私どもとしても十分指導もし、また、関係省庁にもそのことを申し上げたいというふうに思うわけであります。
  114. 川俣健二郎

    川俣委員 そのとおりなんだ。労働省はさすが危険を伴うようなものはなるべくするなという考え方があるわけだから、それは何といったってそのとおりだ。  ところは、私は前回に、チェーンソーというのは危険物扱いにすべきではないか、登録制にすべきではないか、大臣、こういうような問題を投げかけたのです。そうしたら労働省で検討すると言ったのです。登録すればいいんですよ。劇薬、毒薬を買う場合に、みんな未成年者には売らないでしょう。これはなぜかというと、二人に一人は白ろう病にかかっているわけだから、花火だって上げれば危ないから取扱法というので厳重に注意する。だけれども、何百発に一発ぐらいがときどき危ないものが出る。ところが、チェーンソーの場合は確率が二分の一だからね。そうなると、私は、こんなに危険なものはないのじゃないかと思うんですよ。  そこで長官、もし現場において労働者が、これ以上チェーンソーを使うのに耐えられないということでお断りできますか。逆に言うと、断らせていただけますか。
  115. 松形祐堯

    松形政府委員 振動障害等の訴えがありました場合で、自分で扱いたくないというような申し出等がある場合があるのでございますが、そのような場合は、私どもといたしましては、特殊健康診断を早急に実施いたしまして、その場合、医師の判断といたしましては、大体要治療であるとかあるいは経過観察とかあるいは健全であるとか、いろいろな判断があるわけでございますが、その医師所見に基づきまして適切に対処する考えでございます。もしそのような申し出等があった場合は、健全者に対しましては、診断の内容を説明し、また、振動機械の使用についての理解を得るようにわれわれは何回でも努力してまいりたい、このように考えておるわけであります。
  116. 川俣健二郎

    川俣委員 長官、答え方が上手だから、この問題が解決しないんだよ。痛い人は本人なんだ、診る人でないんだからね。現実に六千台使って、二千九百八十四人が白ろう病患者認定されているわけです。二人に一人が認定されているわけでしょう。六千台使って山林を伐採しているわけでしょう。そうすると、拒否できるのだったら、みんなで拒否してもいいのですか。みんなで拒否したらどうなります。また、そのとき考えますか。ところが、生産計画というのは、拒否させない前提で計画を立てている。そうすると、山林行政というのは、労使関係で話し合うことなんだが、そこまで入っていかないと、告訴問題に触れないものだから——答弁の仕方が上手だということじゃないんですよ。大詰めだからその辺をちょっと聞かせてください。拒否できるのだろうか。
  117. 松形祐堯

    松形政府委員 先ほど申し上げましたように、業務命令を出して振動機械を使用させるというような事態は極力避けたいと私どもは考えておるわけでありまして、振動の内容等を説明しながら十分理解を得るように努めてまいりたいと思っておるわけであります。しかし、医師の明確な診断がある、あるいは本人が申し立てております合理的理由が認められないとか、あるいは何回も説得して十分な手段を尽くしたというような場合は、業務命令というようなことは極力避けたいのでありますけれども、そういう場合もあり得るというふうに考えております。
  118. 川俣健二郎

    川俣委員 ところが、業務命令をする場合があると言ったって、それを使わなければ病気にならぬのだ。使えば必ず病気になる。病気になることをわかっていて使わせる。これは過失じゃないだろう。故意だろう。そうなると、刑法の問題に触れるようになってくるのではないか。その辺をもう少し聞かせてください。  もう一遍言うと、使えば必ず病気になる。そんなことはないと言ったって、五〇%白ろう病患者なんだから、病気になるでしょう。六千分の二千九百四十だ。約半分だ、三千人だから。使わなければ病気にならぬのだから、これは過失というものじゃない。故意というものだ。それで、あなたの方には業務命令というものの裏づけがあるでしょう、そうすると、みんなで拒否をすると言った場合に、林野庁の方はどう考えているのか。その場合はやむを得ないと思っているのか。
  119. 松形祐堯

    松形政府委員 先ほど申し上げましたように、医師診断ということで私どもやっておりまして、しかも時間規制とかあるいは使用機械の機種とか、そういうのにつきましては、お互いの労働協約において取り決めておるわけでございまして、その範囲内における労働でございますので、私どもは、先ほど申し上げました医師の明確な診断とかあるいは本人の申し立てに合理的理由が認められないとかいろいろ説得をいたしまして、チェーンソーが十分持てる者に対しましては持っていただくようにしてまいりたいと思っているわけであります。
  120. 川俣健二郎

    川俣委員 その医師診断というものが——死亡診断を一年かかって検討する林野庁でしょう。それだったら、医師の死亡診断を絶対のものにしなさいよ。不都合なものは一年かかって死亡診断書を検討する林野庁が、では本人が痛いと言った場合は診断を受けさせてみる、こういうのは長官、ちょっと一貫してないよ。そうでしょう。死亡診断書は一年かかって検討すると言うんだ。ところが、本人が痛いというものは医師診断を徹底的にやらせてと、こう言うのは、医師診断を最高のものにするという一貫性がないんだ、あなたの考え方は。本人が痛いと言うんだ。何よりも証拠、五〇%白ろう病にかかっているという現実だよ。どうですか。こうなれば、やはりさらに考えていく必要があるんじゃないですか、長官。長官は二年になろうとする。いままでの慣例によると、やがて基金か公団か事業団に行かれる。その本人は終わりなんだよ。その労働者は谷に落ちちゃうんだよ。同じように山を守ってきたはずの林野庁じゃないの。林野庁の六万、七万という労働者は、長官も山を守っていると思っておるだろうし、おらが山を守っておると思うだろう。それが片方は、いままでの慣例によれば、基金か事業団か公団だ。間違いないでしょう。片方は谷間に落ちちゃう。  そういうようなことを考えると、私は、やはりチェーンソーを無理やりに使わせるという考え方は、一考をする必要があるんじゃないかと言うのだ。しかも労働省の方では、できれば使わない方がいいときた。これでも長官、使うの。どうです。
  121. 松形祐堯

    松形政府委員 訴え者の問題につきましては、現在、全林野労働組合からもそれぞれ相当、これも一つずつの項目でございますけれども、提案がございまして、それを現在、誠意をもって検討しているところでございます。  なお、チェーンソーのことでございますけれども、私どもいろいろ対策を立てながら、注意しながら使っていくということでございますが、もしこれが、たとえばの話でございますけれども、日本の林業が全部手のこなら手のこになりました場合は、日本の木材価格から見て、日本の木材は外材がほとんど、六五%でございますから、外材の問題から日本の林業は壊滅的な破壊をするであろう、私は、こういうふうに思っております。ただ、その中でもお互いに工夫しながら、このような病気が出るということはまことに遺憾なことでございますので、関係省庁等の御理解と御協力も得ながら真剣な取り組み方をしてまいりたいという気持ちで私どもはおるわけでございます。
  122. 川俣健二郎

    川俣委員 壊滅するのは、山で働く労働者がいなくなったときだよ。これは農林委員会で日を改めてやりますけれども、そうでしょう、山で働こうとする労働者がいなくなったときに初めて壊滅するのでしょう。何でのこになって壊滅するのだ。その考え方はやめた方がいいと思うよ。定期作業員の問題はきょうの問題ではないけれども、昔は林野用語で「撫育」という言葉があったじゃないか。なぜる、育てるというのです。いまあなた方は、保育という名前を使うでしょう。冬場に雪から守ろうという、なでて育てて初めて苗というものは大木になるんだよ。その考え方を、機械化しよう、下刈りもしないでヘリコプターで上から除草剤をまこうというふうに——チェーンソーを売るメーカーは壊滅するかもしれない、チェーンソーをつくる会社は壊滅するだろう、手のこになれば。しかし 山は壊滅しないと私は思う。チェーンソーをどこまでも使わせていったら、夫婦生活ができなくなるということをマスコミを通して言われているんだから。そうしたら山で働く労働者いなくなると思うよ。長官、その辺じゃないかな、あなたの最後の御奉公だよ、どうです。
  123. 松形祐堯

    松形政府委員 私、壊滅と申し上げましたのは極端かもしれませんけれども、そのような事態になった場合を想定いたしますと、木材価格という面からの国際競争力というもののない国内林業になるのではなかろうか。また、チェーンソーにいたしましても、世界的にある程度合理化あるいは労働の軽減、筋肉労働の軽減という意味で定着している今日でございますので、日本が国内におきまして、このように多数のあれが出ているということは、医学的問題もございましょうけれども、私どもも、先ほど申し上げましたように、真剣な気持ちでこれに取り組んでまいりまして、今後、新しい認定者が出ないようなことをお互いが注意しながら、また検討しながら実行してまいるということで私の方は考えておるわけでございます。
  124. 川俣健二郎

    川俣委員 大臣、国を相手取って告訴を始めているわけだ。最後に長官が告訴されるというんだ。やっぱり山を守るのは労使よ。林野庁長官以下よ。そうすると、告訴となると労使が他人の手にゆだねてしまうわけだ。それはやっぱり努力して回避すべきだよ。私はそう思う。  農林大臣が来ないうちに時間になってしまったからやめますけれども、閣議にも大臣の方から出してくれるそうですか、これは、いま直ちに全部引き揚げる、使わないというわけにはいかぬだろうけれども、とにかく白ろう病というものがなければこういう問題にならないわけです。チェーンソーを使う、二人に一人はなっている、治療費がかかる、予防費がかかる、補償費がかかる、そしてこのように言い合いをしなければならぬ。ついに労使関係が対立して告訴問題に発展した。これは山を荒らすもとよ。こうやって山を荒らすのは間違いだと思うが、大臣どうです。この辺で最後の締めくくりとして政府の考え方を出してください。告訴を回避するのにまだおそくないと私は思う。
  125. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 組合から林野庁長官を告訴しておるということも聞いておりまするが、非常に残念なことだと思っております。先ほど手のこにした場合、それからチェーンソーでやった場合の比較を出せとおっしゃいました。私も非常に関心を持って聞いておったわけですが、そういう比較であったら、それは能率の面においては相当な違いがあると思います。しかし、そうした生命にかかわる問題であるだけに、これも検討してみなければならない。もちろん林野庁においても、すでに研究していると思いまするが、さらに新しいチェーンソーを使わぬでコントロールされるような機械が発見できないか、恐らくこれは日本だけでなくて世界的な問題でございますので、いろいろと研究はしておられると思います。そうした研究の結果が、どういう結論が出るかわかりませんけれども、私も二人に一人の白ろう病があるということは、これは見逃すことはできない、やはりこれは相当真剣に取り組まなければならない。しかも、その白ろう病の悲惨な姿というものは、私も、本を読んでびっくりいたしておるような次第でございますので、先ほど申しましたように、一遍われわれ農林あるいは労働、厚生大臣寄りまして、この将来について勉強させていただくと同時に、国の施策としても十分検討していかなければならない問題であると思います。そうした面について、これから真剣に取り組んで善処と申しますか、対処していきたいと思いますので、御理解いただきたいと思います。
  126. 川俣健二郎

    川俣委員 終わります。     〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕
  127. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次に、田中美智子君。
  128. 田中美智子

    ○田中(美)委員 まず、浦野労働大臣に質問いたします。  御存じのことですが、九月二十六日に豊田市の体育館で浦野大臣の就任祝賀会があったわけです。これは、ことしの三月から、その日は第二回市民総合バレーボール大会の女子部がその体育館を使うということになっていたわけです。それを、市側は円満に話し合って会場を変更してもらったというふうに言っておりますけれども、バレーボール側の方は、手違いで会場がとれなかったのでということで、会場を別なところに移されてバレーボールをやった。そこに後から割り込んだ浦野新労働大臣の祝賀会がそこでやられたという事実があります。これは、よく御存じのことだと思いますが、私がきょう一番問題にいたしますことは、いまの問題は、国の労働大臣ともあろう者が、市民のそうした喜びより自分の祝賀会の方を優先させるというこの政治姿勢というものは、国民に対してますます政治不信、国会議員に対する不信というものを深めているというふうに思います。これが法的に触れていないということであっても、今後こういうことは慎んでいただきたいというふうに思います。よろしいでしょうか。その点だけについてお答えください。
  129. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 いま御指摘の私の就任の祝賀会をやるということで、市長さん、町村長さんが主催でやっていただいたわけでありますが、会場で少しトラブルがあったということを後で聞きましたけれども、市町村の主催でおやりになるので、われわれが余り干渉することもできないが、しかし、そういう結果の話を聞きまして、これはまずいことだ、そういうことがあってはならないということで、私の秘書を通じまして、その関係方々に、市でおやりになったことであるけれども、私から非常に申しわけないということを言っておったから御了解いただきたいということで回らさせていただきまして、了解を得ておるようございます。
  130. 田中美智子

    ○田中(美)委員 一応そのように非を認めて謝られたということですので、今後このようなことがないようにしていただきたいと思います。  もう一つ、私が重大な問題だというふうに思いますのは、この祝賀会の準備のために公務員を使っているという問題です。そこに公費を使っているということです。この個人の祝賀会をするために、いやしくも国民の税金を使うというようなことは、あるまじきことだというふうに思うわけです。  簡単に、一部分になるかもわかりませんがお話ししますと、まず勤務時間に市の電話を使っている。電話はただではありません。結局、浦野さんの祝賀会のために使った電話、この電話料というものは市が負担しているわけですね。これは私、重大な問題だというふうに思います。この事務連絡が市の秘書課になっていて、ここの電話をじゃんじゃん使って連絡をしている。祝賀会に来てくれというようなことをやっているということ。それから案内状を印刷しているわけですけれども、これを発送するときのあて名書きなどを勤務時間に職員にやらせている。封筒書きをさせている。ですから、まず労働者労働力というものを、勤務時間に浦野さん個人の仕事に使っているということと、電話代を使っているということと、それから、この郵送料というものを市が立てかえているというふうに私は聞いています。この市が立てかえているものを、一体どのように処置なさっているのか、それから、この電話代をどのようになさっていらっしゃるのか。それから聞くところによりますと、これは中の職員から聞いたことですが、この郵送料は市長の交際費で落とすことになっているというようなことを聞いたわけですけれども、そうだとすれば大変な問題だというふうに思いますので、これを正確にしていただきたいというふうに思います。その点、浦野さん自身からお答え願いたいと思います。
  131. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 これは市町村長さんがお集まりになって、市町村長の主催でやろう、そのかわり花輪だとか酒だとかお菓子だとかいうものは一切抜こうという計画のようでありました。その案内を出されたということは、私の方では全然わからないわけでございます。それはもちろん案内を出さなければならぬじゃないかと思いますが、そういう経費を、それじゃどこで負担するかということは、私も承知いたしておりません。あくまで市町村主催でおやりになったことのようでございますので、そういうことは私の方はわかっていないわけでございます。
  132. 田中美智子

    ○田中(美)委員 わかっていないという、知らないということになれば、もっと重大な問題だと思います。私は、自治省の公務員第一課にこの事実はどうなんだと聞きましたら、そういう公費を個人のために使ったというようなことは、こんなことは考えられない。あなたは、いま市町村長の主催だ、こう言っていますけれども、私が調べましたら、この市町村長さんたちは、自分は個人の資格で主催をした。ですから市町村長主催ではないわけです。市主催ではないわけです。たまたまそれが市長さんであり、村長さんであっただけであって、個人の資格として浦野さんの祝賀会をしたのだ、これは私は自由だと思います。どういう人であろうとも自由だと思います。しかし、そのための費用の一部分に公費を使い、公務員を使い、公の電話を使うとかいうことは、自治省に私は電話で問い合わせたところが、これは非常に誤りであるということを言っているわけです。それをいま大臣が、九月二十六日にやりまして、きょうはもう十月の半ばも過ぎておりますが、それなのに、いまなお本人は知らない、経費はだれが負担しているか承知しないということで済むでしょうか。
  133. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 事実私は知らないのです。それは市長さんや町村長さんが個人で御負担になったのか、私の方へも相談もないしお話もありませんので、事実私はだれがどういうふうに経費を出したということは知りません。しかし、それに公務員を使ったとかあるいは電話をかけたとかいうことは、好ましいことだとは思っておりません。
  134. 田中美智子

    ○田中(美)委員 好ましいことではないと思われるなら、公費を使っているのがわかった段階で弁償すべき問題ではないでしょうか。そうだと私は思います。ですから、あなたが知らないという、ここまで知らなかったという、こんな長い期間知らなかったということ自体が不謹慎だと思いますけれども、わかった時点で——いま私から聞いているわけですね。これも私、本当の事実というのは、新聞報道だとか中の職員だとかそういう人たちに聞いたわけです。市町村長さんからも聞くという、そういう私の調査をした段階では、こういうことがなされていると聞いているわけです。ですから浦野さんも、いま初めて知ったならば、すぐに調査をして、不当な金をあなたが使ったとするならば、当然これは謝罪して、その分は、市長の交際費で落とすなどということではなくて、あなたの方から弁償すべきではないかと思いますけれども、どう思いますか。
  135. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 これは、あくまで私が主催してやったわけではない、私の後援会が主催してやったわけではないわけですから、主催者がそれは処理されると思います。まあ金が足らぬから少し協力してくれとおっしゃれば、また、それはそのときの相談ですけれども、やはり相当な人たちが主催しておやりになったことでありますから、もしそういう問題があるならば、その主催者が処理されるべきものであるというふうに私は考えております。
  136. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうすると、あなたの祝賀会をしてくれた人たちが悪いことをしている、それはその人が悪いのだ、祝賀会をしてもらった人はちっとも悪くないのだ、それは知らないのだ、その祝賀会をしてもらった人は労働大臣である、それで済みますか。あなたのいまのお答えはそういうことですね。やったのは向こうだ、私は知らぬ、やった方が悪いことをしているのだ、その悪いお金で祝賀会をやってもらっているのだ、だから、その悪いお金の処置はそっちでやったらいいのだ、私は知らない、これで済むでしょうか。国民がそれで納得するでしょうか。こんなことがあっちこっちでやられていいでしょうか、その点お聞きしたいと思います。
  137. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 先ほど申しましたように、私が中心になってやったならば、私がそれは謝罪もしなければならないし——もしそういうまずいことがあればですよ。しかし、そういう市町村長さんの肩書きの人たちが相寄って、ひとつ私のお祝いをやってやろうということでおやりになったことでありますから、問題があればそちらで処理していただく。あいつは悪いことをしておるがおれは知らぬという意味ではないけれども、私がそんな干渉をしていくということは、市町村長さんが中心にやってみえることを、そう干渉するわけにはいかない。向こうからいろいろお話があれば、もちろん私はしかるべき処理がされておるものと思いますけれども、いや、こういうわけだという話があれば、それはまた私の方もよく検討してみたいと思います。
  138. 田中美智子

    ○田中(美)委員 非常に、人のことは知らぬというふうな空気がありますけれども、知らぬという意味ではない、こう言われるならば、一応そういう不正な事実があったかどうかということをお聞き願いたいというふうに思います。そして、あなたの良、心でもってそれに対してどういう処置をするかということをやっていただきたいわけですけれども、一応そういう事実があるかないかということをお調べ願いたいと思いますが、やっていただけますでしょうか。
  139. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 聞いてみます。
  140. 田中美智子

    ○田中(美)委員 聞きましたら、その結果をお知らせいただけますでしょうか。
  141. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 これは委員会にですか。田中さんにですか。
  142. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私で結構です。
  143. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 お知らせします。
  144. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それでは、次の質問に移ります。地下に働く労働者についてのことを質問したいと思います。  いま、地下に働く労働者の環境が悪いということはもう常識で、太陽の当たらないところで働いているわけですけれども、これはどのようになっておりますか。簡潔にちょっとお答え願いたいと思います。
  145. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 かねがね地下街で働く労働者の問題が論ぜられておりまして、労働省といたしましても、昭和四十七年に作業環境及び健康管理等についての実態調査を行いまして、その結果に基づきまして、同年六月、地下街労働対策要綱というものを定めまして、関係者に対してこの要綱の遵守を指導してきているところでございます。  その四十七年の実態調査の際に、既往症でございますとかあるいは本人の訴え、いわゆる愁訴とか、あるいは問視診、血圧検査あるいは全血比重、尿検査等々をやったわけでございますが、地下、地上の各労働者に対してやって比較をしてみました、医学的な調査です。自覚症状についてはある程度の有意差が認められます。しかし、その他の項目についてはそのときには特に有意差は認められなかった。これは客観的な結果でございます。いずれにしましてもそういう対策要綱をつくって指導をしておるわけでございます。
  146. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私がいま聞きましたのは、その問題もその次に聞こうと思っていたことですけれども、事務所の衛生基準規則というのが、地上と地下とが一緒になっているのではないですか。同じ基準でやられているのではないですかということを伺っているのですけれども、簡潔に一言でお答え願いたい。
  147. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 差をつけておりません。
  148. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私は、やはり地上と地下との衛生基準というものに差がついていないというところにちょっと問題があるのではないか、これを今後検討していただきたいというふうに思いましてきょうの質問をしているわけです。恐らく労働省としてもいまの基準だけでは地下の場合は地上と比較して問題があると思って、調査を一九七二年になさったというのがいまのお話だというふうに思います。  これは労働者もやっているわけですね。これは七〇年、七一年、七四年と三回にわたって、大阪の全商業労働組合の太陽分会というところが調査をしているわけです。これは商店街ですね。調査をしているわけです。これを見ますとやはり視力が落ちたとか非常にまぶしいとかいうのが圧倒的に多いわけです。これは常識で素人が考えましても、モグラのような生活をしているわけですから、目が太陽に対して非常に弱くなっていくということは考えられるわけですけれども、この調査の結果五〇%近く出ているわけです。それから、これは抽象的ですけれども、特に体に何か悪い症状が地下で働くようになってから出てきたというふうに思う人たちが四四・三%もあるというふうな調査が出ています。  それからもう一つの調査は、これはことしになってですけれども、名古屋市の交通労働組合、今度は地下鉄の労働者調査をしているわけです。これによりますと、やはり非常に似ていることは視力が落ちたとか目が疲れるというようなこと。両方比べてみますと、やはり目の問題と、それからかぜを引いたりしたときにこれがなかなか治らないというふうなことが非常に多く出ています。この地下鉄の労働者は、職員の四分の一が現在病欠をとっている、この調査のときですね。二五・八%が病欠で休んでいるということです。こういうのが出ているわけです。  私が目を通しました調査というのはこれだけで、いま労働省が七二年にやりましたのと、大阪の商店街、名古屋の地下鉄、これを見て、地下の労働者の健康が非常に破壊されているということを強く感ずるわけです。これに対して、労働省の方としてはこの調査の結果どのような対策をとっていらっしゃるか、それをちょっとお聞きしたいと思います。
  149. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 世の中、非常に進歩いたしまして、昼間のみならず夜間も働く、あるいは地上のみならず地下でも働く、いろいろな労働実態が出ておりまして、私どもも関心を持っているわけですが、特に地下労働については先ほどもお答えしましたような問題意識を持っているがゆえに調査も行ったわけでございます。その結果、私どもは地下街労働対策要綱というものをつくったわけですが、その中身は、地下街における労働者の危害防止措置、それから労働者の作業環境の改善、適切な健康管理、その他必要な措置を総合的に講じさせることによりまして、地下街における労働者の安全衛生の確保、労働条件の向上その他福祉の増進を図ったのでございます。しかしながらどうも、同対策要綱に基づく地下街労働対策協議組織の設置がないというようなもの、あるいはその自主的な活動が不十分なものというのも確かにございましたので、昨年実は特に一定規模以上の地下街を中心にその実態調査を行いまして、そしていま申し上げましたような不十分な点は改善の指導を行いました。今後とも、消防、警察、保健所等々の関係機関とも連絡を保ちながら、地下街に働く労働者労働条件の確保を図ってまいりたいというふうに思うわけでございます。
  150. 田中美智子

    ○田中(美)委員 その五十年の二月二十八日の、地下街に対する実態調査の結果というのを、基準局がなさった資料をいただいています。これを見てみますと、まず、労働対策協議会というのを要綱に沿ってつくるようにという指導をしているわけですけれども、これを見てみますと、実際には大ざっぱにいけば、これは五十六と出ておりますけれども、地下街がいま百五十を超えているとすれば約三分の一しかこれができていない。そうするとあと三分の二というのは全く野放しになって、三分の一しか協議組織ができていない。このできた協議組織の中身を見てみますと、これがほとんど機能されていない。実際には、つくったけれども機能が非常に弱いという結果が出ているいるわけです。これをこのままにしておきますと、これは実に怠慢と言っていいかどうかわかりませんが、ちょっと考えますと、地下街の労働者がこれだけ健康破壊をされて、自分たちが非常に体がおかしいと思って自分たちで調査をしている。それに対してやはり労働省の方が少し怠慢ではないかというふうに私は思うわけです。まして、労働者も気がついてやっているわけですけれども、これが三分の一。三分の一のそれもろくに機能していないということでは進まないというふうに私は思うわけですけれども、これはこのままほうっておくわけですか。それからあと放置されているところ——この組織のできているところはまだ指導ができますね。組織のないところはどうしていきますか。
  151. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 地下街の問題は、もとよりそこに働く労働者の問題もあるわけですが、一般通行人、居住人等々もいまして、先ほども申し上げたように、労働省のみならず消防庁、警察庁あるいは厚生省等々関係しておる問題でございます。私どもも問題意識があるがゆえにああいう調査をやりました。先生は三分の一程度というお話ですが、私ども調査した限りでは、もちろん不活発なものがあるから再調査をしたのですけれども、そんな数ではないわけです。しかし、おっしゃるようにその後もどんどん地下街がふえていますから、調査をしなかったものについてもこういった組織をつくっていく必要があるだろうと思います。先ほども昨年再調査をしたと申し上げましたが、私どもとしては今後も、地下街の労働実態等にかんがみまして、ときにこういう施策を推進していかなければいかぬと思いますので、きょうの御質問もありますし、なお私どもとしても十分研究したいと思います。
  152. 田中美智子

    ○田中(美)委員 最後にちょっとお伺いしたいのは、名古屋市ではここのところ地下街がどんどんできております。そこでは協議組織はできているのでしょうか。
  153. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 昨年再調査をいたしましたけれども、愛知の労働基準局の管内では六つの地下街について調査をいたしました。その結果、そのすべてについて実質的な協議組織が設けられていたことを確認していますが、その運営についてどうも十分でない点も認められておることは事実でございまして、改善の指導をいたしておるわけでございます。また、所轄の監督署では、地下街の商店会、防災組織等を通じまして、環境測定の実施など快適な環境管理の推進についてもあわせて指導を行っているところでございます。
  154. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私が愛知県の基準局に電話いたしましたら、知らぬなあという返事なのですね。四十七年ですか、通達があったときにいた人がいないのでよくわからないがなあ、そんなものあったのですか、こういう電話なのです。びっくりしました。こういうことでは困ります。いま六地下街に協議組織ができていると言われますけれども、地元の係の方がよく知らないということは、つくったはつくったけれども形だけで、ほとんど機能していないという証拠だと思いますので、これは十分に指導していただきたいと思います。時間がありませんのでもう話せませんが、何しろ日に当たる機会もないのです。あの要綱を見ますと、太陽の当たる休憩室をつくれとか一斉の休憩をとれとかいうようなことを言われておりますけれども、実際に私が聞いたところではほとんどそういうことがなされていない。電話だったものですからね、基準局に聞いてもそういう返答です。私、一度基準局に行きましてもっと細かく聞きたいと思いますが、ぜひ協議組織を要綱どおりにしていく努力をするように十分な御指導を願いたいと思います。よろしいでしょうか。
  155. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 来週の月曜、火曜日と全国局長会議を予定しておりまして、みんな参りますので、その点は十分示達をしたいと思います。
  156. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ではお願いいたします。  質問を終わります。
  157. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次に、寺前巖君。
  158. 寺前巖

    寺前委員 大臣の就任初の質疑ですから基本的な姿勢をいろいろ聞きたいと思っておったのですが、何しろ二十五分しか時間をやらぬとおっしゃるのですから全面的に展開できません。そこで幾つか積み残しになっている課題について簡単にお聞きしたいと思いますので、ひとつ御協力をいただいて、お答えの方も要領よくしていただきたいと思うのです。  私がきょう聞きたいと思っておる問題は、民有林労働者の問題、未払い賃金の制度ができた問題、寡婦の雇用上の問題、新日鉄八幡の工場における問題、できるならば専売、電電公社の問題まで聞いてみたいと思うわけです。  まず最初に、所管はどの方になるのか、所管があっちへ行ったりこっちへ行ったりするかもしれませんが、民有林の問題で、十月一日から林業の一人親方の労災保険の特別加入が認められました。通達が出ておりますが、「特別加入前に発生した事故による負傷、疾病、障害又は死亡については、当然、保険給付は行われない」と書かれているわけです。せっかく加入の制度がつくられていながら、林業労働者の場合は、労働災害は単に災害性の事故だけではなくして、白ろう病など慢性的な疾病も多発しているということにかんがみて、この給付の可能な範囲はどの範囲だという範囲問題を明確にしておいてあげないと、入ったわ、もらえないわということになってはお気の毒だ。そこで、給付の対象にしないというのはこういうものに限るのだということを明確にしてもらいたいと思うわけで、ひとつ局長さんから、特に白ろうの関係で、一人親方の加入問題が認められるけれどもこういうものは給付されませんよという、その限定された範囲を御説明いただきたいと思うのです。
  159. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 白ろう関係の問題に関連いたしまして一人親方の労災の特別加入は、いろいろな問題がありましたが、十月一日から規則改正によって実施することになったわけでございます。したがいまして、十月一日以降においてチェーンソー等の振動工具を使用し、かつその後に発症した振動障害等については保険給付を行う、こういうたてまえでございます。およそ制度を新設するという場合には、どうしてもある時点、つまり制度が動き出した時点以降の問題に適用が限られるということはやむを得ないことでございまして、いまお尋ねのような施行前の問題については、これはどうも給付の対象にならないわけであります。  したがいまして、どういう場合に保険給付は行わないのだというお尋ねでございますから、その点を理論的にはっきり申し上げますと、保険加入時において現に振動障害に係る療養を行っている場合、もうすでにそういう状態になっておる場合。二は、保険加入前に振動障害に係る療養を行った事実が認められ、保険加入時までに治癒していない場合。三は、保険加入後振動作業に従事することなく振動障害発生した場合。四は、保険加入前に振動障害に係る療養を行った事実は認められないが、保険加入前の健康診断等から見て振動障害に罹患していたことが明らかな場合。こういう場合にはどうも制度発足前の問題であるというふうに割り切らざるを得ませんので、これらについては適用できない、こういうことになるわけでございます。
  160. 寺前巖

    寺前委員 こういう問題は出先に親切に、すぐにわかりやすく関係方面にも指示を出していただくことが大事なんじゃないだろうかということで、その点どういうふうに処置をしておられるのか、しようとしておられるのかをひとつお聞きしたいと思います。  それから第二番目に、林業関係の、民有林関係労働者に退職金の要求というのがかなり広がっているわけです。それで一部分は中退金に加入しておられるところがあります。しかし、全体として民有林労働者の場合には、雇用関係というのが建設関係の現場の労働者のように変わるという、こういう形態が多いわけですね。そこで、退職金共済制度といいますのか、そういう建設関係と同じような形態のものをこの分野についても考えるべきではないかという意見あるいは要望というのが最近かなり出てきて、都道府県によってはそれを具体的に相談に乗って進めようとしておるところもあるくらいだと思います。ですから、こういうことについて労働省としてはどうお考えになっているのか、林野庁としてはどうお考えになっているのか、この点について次に聞きたいと思います。
  161. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先ほどの一人親方の特別加入制度の解釈の問題でございますが、これについては通達を発しまして、先ほど最初にお読みになりましたような趣旨の連絡をしているわけでございますが、いま特段の御質問もございました。先ほど田中先生にもお答えしましたように、幸い来週月曜、火曜と全国会議を予定しておりますので、その場で改めていま申し上げたような点をはっきり示達をしたいというふうに思います。  それから退職金共済の問題でございますが、中退法におきましては、御承知のように労働大臣の指定する特定の業種につきまして特定業種退職金制度を設けるということが予定されておりまして、建設業あるいは清酒についてそういう制度ができておることは御承知のとおりであります。しかしながら、これはやはりその業種を営む大部分の事業主の熱意あるいは協力体制というものがやはり前提になりますので、制度を実際につくっていきます場合にはそういう条件が満たされなければならないというふうに思っております。ただ、林業労働者も転々移動ということがありますので、実は従来は事業主を構成員とする森林組合を手続上事業主とみなすというような便法を講じまして、中退制度への加入が容易になるような配慮もしてきましたのですけれども、いま先生の御質問ですと、実際にかなり地域においても機運が上がってきているじゃないか、こういうお話でございますので、私の方でももう一遍よく地方の実態をつかまえまして、必要があればそういうことも検討をしてみたいというふうに思うわけでございます。
  162. 穂積良行

    ○穂積説明員 民有林労働者につきましての退職金制度の問題でございますが、先生お話しのように、確かに現状では各県の段階でいろいろと県当局が工夫をしている例はございます。その一つは、中小企業退職金共済につきましての掛金に対する助成制度をとっているところ、それから県独自に退職金制度をこの民有林労働者についてとっているところとございます。  これらにつきまして林野庁としての考え方でございますが、ただいま労働省の方からお答えがございましたところでございまして、私どもも現行の中小企業退職金共済制度の活用ということが現段階では望ましいと判断しているところでございます。問題は、民有林労働者の定着ということを図りながら林業の維持発展を進めていくというようなことのために、どのような工夫をすべきかということでございます。私どもとしましては、林業労働者の定着のためにはまずもって就労条件の向上を図っていかなければならない。そのためには、一つには産業としてのそうした労働条件の向上のための基盤づくりということが大事だと考えておりまして、従来から林業構造改善事業等の施策を進めてまいったところでございます。それに加えまして、今年度からは特に林業労働者の就労条件を改善するために、その中には中小企業退職金共済制度への加入促進ということも入っておることでございますが、そのために適切なる指導助言等を行うように、実は林業労務改善推進員というものを全国に配置しまして、事業主等への指導を行う体制をとってその施策の推進に努めているところでございます。
  163. 寺前巖

    寺前委員 中小企業退職金共済制度だけでは現実に合わぬ点があるんだということをぜひ認識をして、林野庁の方も労働省の方と一緒になってひとつ検討を進めていただくことをお願いして、この問題は終わりたいと思います。  それから次に未払い賃金の問題です。  新聞によると、九月中の、負債が一千万円以上の倒産企業というのが千三百五十七件にも上っております。十三カ月間も千件以上の倒産がずっと続いている。異常な事態が生まれてきているわけですが、そういう中でできた賃金の支払の確保等に関する法律というのは一定の期待があったと思うのです。ところが、七月一日から実施されて現在までに行った立てかえ払いというのは百八十三件だ。労働者数にしても千百二十九名で、金額にして一億八千二百七万九千円だ。実際に現場で聞いてみると、倒産後、早いのもあるけれども、少なくとも三、四カ月かかるだろうというのですね、立てかえ払いまでに。そういうことになってしまうと、立てかえ払いという性格が失われてしまうのじゃないか。  私のところに幾つか申し出がありますが、その一つに、秋田県の山本町というところの岳田さんという親子です。ことしの二月に、東京都の下水道工事をやっている三綱建設の下請の渡建設、そのまた下請になる千代田工業というところに働いておられて、二月に倒産しているのですよ。渡建設というのもまたその後すぐ倒産する。一番の元請は三綱建設ということになるわけですが、親子で賃金未払い二月分約五十七万円、こうなっておる。それで三月二十九日に地元の能代監督署に申告した。そうしたらそこから池袋監督署へこの話が回った。結局八月二十六日になって話し合いをやって三十万円ほどお金を払われたというのだけれどもあとまだ二十七万円残っている。これじゃもう立てかえ払いで後は詰めていくという役に立たぬじゃないか、せっかくの制度ができても、という声が出ているわけですよ。  そこで、一体この事案について速やかに解決するということはできぬものなのかどうか、労働省としてどう考えておられるのか。あるいはこの支払いについてこの元請に責任を追及していくということはやれぬのか。あるいはまた、この立てかえ払いをまずとりあえずやって後から話を詰めていくという指導をやっていくというような対応策はとれないものなのか。あるいは手続の面においてももっと簡単にやるということはできぬものなのか。金額にしても、立てかえ払いが一人一カ月最高が十三万円というようなことになってきていますけれども、少なくとも社会保険の標準報酬の上限の三十二万円ぐらいまで上げるんだとか、もう少し役に立つものに改善をするということは検討されていないのか、ちょっとお聞きしたと思います。
  164. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先般の国会で、賃金の支払の確保等に関する法律案を御審議願って御賛同いただいたわけでございますが、あのときにもさんざん御議論が出ましたように、いろいろな要請があるわけでございますけれども、何せこの制度は長年各方面から希望されながら今日に至ってようやく実現したということの裏には、やはり大変むずかしい問題がたくさんあるということでございます。それを乗り越えて成立をしていただいたわけです。  そこでまず、一つは手続に非常に時間がかかるじゃないかということでございますが、これはいま平均一月半ぐらいかかっておりますけれども、やはり立てかえ払いでございますから債権管理ということが後に残ります。そういうこともございますし、それから倒産といいましても事実上の倒産が大部分でございますから、これについてはやはりある程度の調査をしなければならぬというようなことで、いろいろ手続がかかる、それから、何といいましても新しい、いままで全くなかった制度でございますので職員もふなれということもございます。それらいろいろございますけれども、おっしゃるような手続の迅速化、簡素化ということは大変大事なことでございますから、なお今後ともその点は検討させていただきたいと思います。  御指摘になりましたこの岳田さんの事案につきましても、能代署に申告がございました。そして千代田工業の代表者にも支払い勧告を行っておるわけですが、その千代田工業の代表者というのがまた一介の労働者になってしまって支払い能力がないというようなことで、元請の三綱建設に救済措置を願うという以外に方法がないということで、その行政措置も行ったのでございますけれども、大変むずかしいケースでございます。元請に監督署の方で指導を行いました結果、岳田父子に対しまして三十万円の支払いが八月二十六日になされたと聞いております。残余につきましてはなお引き続き元請に対して指導を続けてまいりますが、御承知のように、こういったケースにつきましては建設業法の規定でできるだけ建設業者に支払わせるというのがたてまえでございますのでそれをやってまいりたい。しかしどうしてもそれができなければ、やはり賃金支払確保法に基づく処置をしなければならないというふうに思っております。申請も八月二十五日に出ていますので、われわれとしてはそういうつもりでおるわけでございます。  それから、上限について十三万円では少ないじゃないかという御議論、これも私どもとしては来年度予算要求をいましておりまして、それぞれ賃金上昇に見合って上げていかなければならぬというふうに思っていますが、いまいろいろ御提案のありました点は、やはり何と申しましても発足早々の制度でございますので、もう少し制度の運用を見ましてなお将来改善の余地があれば検討するということで、当面の推移を見守りたいと思うところでございます。
  165. 寺前巖

    寺前委員 お役に立つように、立てかえなんだから、立てかえらしく早くできるように改善をするよう、改めてもう一度検討願いたいと思うのです。  それから次に、新日鉄八幡製鉄所の過勤務手当不払い問題についてちょっと聞きたいと思うのです。  労働省全国的に七月一日から一週間、労働安全週間というのをやったんですか、その労働安全週間を前にして、新日鉄の八幡製鉄所で企業の指導によって職場のみがき上げ運動というのを全工場でやらした。所定内労働時間外に作業を行わせながら、自主管理活動と称して工場規程による会議手当を支給して、通常の残業による割り増し賃金を支給しないという問題が起こっている。そこで七月二十八日に当該工場の労働者が四人、労基法の百四条に基づいて八幡の労基署に訴えをやっております。八幡製鉄所が労基法二十四条に違反している、是正勧告すべきだ、こういうことを要求しているわけですが、これに対して労基署の方で十月十五日に会社に対して是正勧告を指導されたようです。ところが、その是正勧告をされたといわれている内容を会社がどう受け取っているかという問題なんです。新聞などを通じてこう書いてあるんです。「自主管理活動は労使間の問題としてこれまでも自主的に解決してきたし、要請は出されたがこんごも労使間の問題と受けとっている。労基署からも自主管理活動の範囲を逸脱しているとの指摘はなかった」と、逸脱しているという指摘はなかったというふうに受け取っていると報じられているわけなんです。  そこで私は三つの点を労働省としてどういうふうに見ておられるのかをお聞きしたい。第一は、この事案について労働基準法違反があったのかなかったのか。第二番目に、職場の安全のための所定時間外の作業は労基法上の割り増し金の支給の対象となるのかならないのか。第三番目に、自主管理活動という名目による企業内職制の指揮命令による過勤務を強制することをやめさせるのかどうか。この三つの点について労働省のとっておられる見解を聞きたいと思います。
  166. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 いまもお述べになりましたように、この問題は新日鉄と八幡労組でございますか、組合との間の労働協約に自主管理活動ということが規定をされておりますから、したがいましてその協約の履行の問題だというふうに私ども思います。ただ、その自主管理活動の範囲を逸脱するという場合にはやはり問題があろうというふうに思うわけでございますが、監督署といたしましてはいまお述べになりましたように十月十五日に会社に対して、自主管理活動であるかあるいは本来の業務であるか、その点の具体的判断基準を設定をする。それから自主管理活動における自主性の確保等について、文書をもって改善方を指示しているわけです。その前提といたしましては、やはり自主管理活動の範囲を逸脱するのではないかという考え方を持ったものですからそういう措置をいたしたわけでございます。ただ、問題は協約の履行の問題でございますので、労働組合も十分問題意識を持っておられるようでありまして、労使協議を行う、そういう意思表示がなされておりますので、私どもとしては労使間において円満に善処されることを期待をいたしたいというふうに思っておるところでございます。
  167. 寺前巖

    寺前委員 そうするとやはり、逸脱しているということは基準法違反だということになりますね、私が最初に言ったように。だから違反は違反として明確にやはり受け取るべきだろうというふうに率直にしておかないと、協約上の話であってむにゃむにゃむにゃではその協約上だけだということになっちゃうさかい。協約でいろんなことはあるにしたって逸脱という場合には違反なんだから。違反だから指導するんだということなんでしょう。それはもう間違いありませんね。逸脱だという立場に立ってそういうように指導するんでしょう。その点をはっきりして今後のすべての活動に対して対処してもらわないと、割り増し賃金の問題もそこから出てくるんだし、全部そこから出てくるんだから、その点をきっぱり態度として会社に対して指導してもらいたいということをもう一度改めて聞きたいと思います。それが一つ。その点、もう一度確認しておきたい。
  168. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 言うまでもなく労働条件は労使が話し合いで決めるというのが原則でございまして、特に労働協約でこういうものが定められるということが一番望ましいわけでございます。そこで、労働時間も労働条件でございますから、その考え方をどうするかは協約がこれを定めるということであれば、その協約の解釈、適用について問題があるとすれば、労使でやはりその点をはっきりさしていただきたいというふうに私どもは思うわけでございます。ただ、いままでの協約の文面からすると、自主管理活動の範囲を逸脱するおそれがあるんじゃないかということを私どもとしては考えたものですから、やはりその点をもっと具体的に判断基準をはっきりされたらどうか、あるいはその自主性というものを十分確保されたらどうかという内容を特に文書で会社にお願いしておるわけでございまして、その点は私ども、会社に重ねてここを明らかにするように指導を続けたいと思います。
  169. 寺前巖

    寺前委員 それじゃ、せっかく大臣が顔を出してくださったのですから、私、あと専売、電電の問題がありましたが、時間の関係がありますので、これは失礼になりますけれどもやめさせてもらいます。  大臣に交通事故や労働災害、あるいはさまざまな理由による離婚をされるという、そういうような母子家庭になるということが世の中に多いわけですね。母親にはそこから生活苦が伴ってくる。母子家庭の総数が、昭和四十八年に厚生省が調査したときでも六十二万六千世帯、六三・五%が年間所得六十万円以下だという数字がそのときに出ているわけですよ。先日報道された交通遺児育英会が行った交通遺児の母親の職業調査でも、交通遺児家庭を女手一つで支える母親の七割近くが日給や時間給といった不安定な職場で働いていることが明らかにされている。体のぐあいが悪くても、減収や解雇の口実にされることを恐れて病院へも満足に行けないという実態が出されておりました。私の仲よくおつき合いをさしてもらっている、近所におられる方ですが、母子寮の寮長さんをおやりになっておった方からお手紙をいただいておるわけですが、不況時代になりますと一番最初に被害を受けるのが母子家庭だ。戦後過去二回の経験から見ても、この対策をぜひとも組んでほしい。子供の就職に、欠損家庭の子は採用しない大企業はたくさんあります。当時未亡人会が運動して、地方自治体の首長に父親がわりになってもらった時期もありました。まだ覚えていてくださっている方もたくさんあると存じますが、特にこういう問題について政界は考えてもらいたい。不況下の人員整理となりますと、一人で子を育てる母親はどうしても子供の病気、けがで休暇をとることが多くなって非常に困る状態だ。それが成績不良だというふうに取り上げられたら困ったものだ。地方自治体の出先機関へ、特技のない中年の母は比較的単純作業に従来は採用していただいたけれども、このごろでは定員が削減されてきてそこにも入れてもらえなくなってきた。寮長としてこんなつらいことはない。こういうお手紙が来ているわけなんです。  そこで私はこういう問題について、ひとつ一定の比率で母子家庭の母の雇用の義務を課するというようなこととか、職業訓練所において技能習得のために優先的に無料で入れるとか、職業訓練所のないところに対しても何らかの職業習得をできるような場をつくっていくとか、そういう制度を考えることはできないものなのだろうか。私は、まず何はともあれ調査から始められてでも積極的にこういう分野に対する対応策を打って出るべきではないか。これを最後の質問にしたいと思いますので、大臣からお答えをいただきたいと思うのです。
  170. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 子供を抱えた母子家庭の寡婦の方が職業につくということは非常に苦労しておみえになると思います。これはよくわかります。そこで何らかのそういう寡婦の方を採用する義務規定をつくってはどうかというお話でありまするが、御承知のように身体障害者はさきの国会で義務規定が設けられました。さらに中高年齢層の人も六%、これは義務規定ではないが一つの制度ができたわけでございますが、なかなか寡婦の採用限界を義務規定するということはむずかしい問題があると思います。そこで従来から中高年齢層の婦人の求職者に対しては訓練手当を支給いたしまして職業訓練の実行を図る、あるいは就職のあっせんを図るというようなことをやっております。しかし一つの家庭生活という制約がありますので非常にむずかしい面がありまするが、だんだんこういう面に採用する方も認識が深まってきておりますので、労働省といたしましてもこうした寡婦の方々をできる限り優先的に採用してもらえるようにこれからも努力はいたしていきたいと思います。その義務規定をつくる法律をつくるということについてはまだいまのところ考えておらないようでありまするが、一遍検討はさせてみます。
  171. 寺前巖

    寺前委員 何はともあれ実態調査をやったことがありますか。
  172. 森山眞弓

    ○森山(直)政府委員 労働省では寡婦に関連する調査といたしましては大分古いころ、昭和二十年代におきまして女世帯の調査等の一連のものをいたしたことがございますが、最近は非常に社会情勢も違っておりますし、また新しくいま御指摘のような問題が出てきておりますので新しい調査が必要であると考えております。昭和五十二年度には母子家庭の母の就業に対する実態調査というのを実施したいと思いまして、その経費を財政当局に要求しているところでございます。
  173. 寺前巖

    寺前委員 それじゃ終わりますけれども、大臣、いまお話があったように、五十二年度調査をやりたいとおっしゃっておるので、積極的に調査を進めていただいて、そして、中年になってからいまさら仕事をというのは大変なことなんですから、やはり特別に婦人の国内行動計画、十カ年計画も立ててやろうという過程の一つの問題として、積極的に大臣としてもこの分野に取り組むということを再度御確認をいただいて、私質問を終わりたいと思います。
  174. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 御趣旨に沿いまして、われわれももうすでに関心を持って何とかしなければいけないと思っておったときでありまするので、こうした問題を積極的に推し進めていきたい、かように考えます。
  175. 寺前巖

    寺前委員 終わります。
  176. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次に、大橋敏雄君。
  177. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 初めに、炭鉱離職者緊急就労事業、産炭地域開発就労事業、この二つの事業についてお尋ねをいたします。  御承知のように、産炭地域というのは非常に就労の機会が少ないわけでございます。そういう産炭地域の中で実施されておりますこの両事業の役割りというものはきわめて大きいわけでございますが、それだけにこの両事業の動向は就労者の死活問題にも通じるわけでございます。実は過日の石炭対策特別委員会では、この両事業について、来年度は実施してもそれ以降は雇用情勢やあるいはエネルギー対策の推移等を見てからだというような意味の話があって、今後とも存続するという明確な回答を避けていると聞いております。また、去年から単年度単位の予算措置に切りかわったことなどから、関係者は今後の存続についてきわめて不安を抱いているわけでございますが、前の長谷川労働大臣は五十年度以降も継続実施したい旨を述べておりましたけれども、新大臣の浦野大臣が果たしてどのようなお気持ちであるか、まず初めにその所見をお伺いしておきたいと思います。
  178. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 御指摘の問題は産炭地にとっては大変な大事な問題でございます。これは石炭特別会計の関連がありまするけれども、われわれといたしましては、また労働省といたしましては、この緊就につきましても開就につきましても今後も仕事を進めていきたい、打ち切ることはしないという方針でいま予算も要求し、進めておる次第でございます。
  179. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 非常に明確なお答えをいただいて安心をいたしました。この産炭地域の関係者はその動静を非常に心配しておりました。いまの確約、明確な答弁を現地にも伝えてみたいと思います。  それでは、緊就、開就両事業について、これは開発に寄与する経済的効果の高い事業を行うということとされておりますので、そういうことで動いているわけですが、現行の事業単価、緊就が六千五百円、開就は九千五百円でございますが、これでは今日の経済情勢実態から見ましてよい事業は行えないのではないか、私はこう思うのであります。また、この両事業が産炭地域振興に積極的に活用できるように、単価の適切な引き上げとともに事業種目を拡大して、事業主体が幅広く事業を選定して実施できるように改善を図っていただきたい、こう考えるわけでございますが、いかがでございましょうか。
  180. 石井甲二

    石井政府委員 緊就、開就の事業につきましては、先生御存じのように、一般の公共事業と違いまして失業者を吸収するという役割りというものがございます。ただ、御指摘のように、単価につきましてはさらに実態に合うように引き上げるとともに、事業運営の円滑化を図るように今後も努めてまいりたいというふうに考えます。したがいまして、予算要求につきましてもその面を十分配慮しながら来年度の予算要求をしてまいっておりますということでございます。
  181. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 単価の方は適切な引き上げを考えていきたい、こういうことですね。  同時に、事業種目の問題なのですが、この方は拡大なさるお考えがあるかどうか、そして事業主体が選択できる事業を与えられるかどうか。
  182. 石井甲二

    石井政府委員 事業種目につきましては、要するに事業運営をどう円滑に行うか、あるいは地域の事情に応じてこれをやっていくかという観点を重視いたしまして、今後ともその面を重視した対策を行いたいと思います。
  183. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 期待をいたしておきます。  次に、石炭王国と言われておりました筑豊地区に九十年余りの歴史を誇ってきた貝島炭鉱が先日閉山をしたわけです。石炭鉱害初め多くの問題点を残して、宮田町あるいは小竹町、鞍手町、こういう地域には大変な問題になっているわけでございますが、住民の深刻なあるいは不安の声が渦巻いているわけでございます。中でも貝島とその関連企業に就労していた労働者関係者が失業をするという実情になってきているわけでございますが、特にこれら離職者の平均的年齢が五十歳というような高い年齢であるわけでございまして、この再就職が非常に心配をされているわけです。離職者の実態把握しておられるかどうか、またその離職者対策についてどのような手を打たれているか、お尋ねをいたします。
  184. 石井甲二

    石井政府委員 貝島炭礦の状況でございますが、八月五日に閉山をいたしまして、十月十日現在の現状は約五百名の離職者が発生をいたしたわけでございます。このうち残務要員として臨時的に再雇用されておる約百名を除きますと、三百七十一名の方が公共職業安定所に求職を申し込んでおるというのが現状でございます。  これに対しましてただいままでの安定行政としましては、閉山後直ちに山元に臨時の職業相談所を開設いたしました。毎週水曜日及び隔週の木曜日に指導官が駐在いたしまして、さらに炭鉱離職者臨時措置法に基づきまして炭鉱離職者求職手帳を発給いたし、就職の促進手当を出しながら職業指導あるいは職業訓練を行っているわけでございますが、ただ、御指摘のように年齢が非常に高い方が多うございます。したがいまして、現在のところ就職者数は二十八名ということでございますが、その中に、職業訓練希望者と相談をいたしながら申し込みをさせたわけでございますが、約百七十名の訓練希望者がございます。したがいまして、私どもとしましては職業訓練を、実情に合ったような体制を組みながら実施してまいりたいと思います。現在職業訓練に入校中の者は三十四名ございますが、さらに今後、たとえば自動車の委託訓練を拡充するとか、あるいは総訓にあるいは県の訓練校に具体的に四月から入校させるというようなことをやりながら、全力を挙げて貝島炭礦の離職者の対策に積極的な努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  185. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 インフレ、不況のいまの時代に、まともに働いていても大変なときであるわけでございますが、いま言われますように、特に今回の離職者の中には五十歳以上の人が、あるいはその前後の方々がほとんどだということを聞いておりまして、再就職が非常に心配されておりますので、いまもそれなりの配慮をなされているとは思いますが、特段の配慮のもとに、適切な指導のもとに再就職をお願いしたいと強く要望しておきます。  次に、失対関係についてお尋ねをしますが、消費者物価は八月で前年同月に比較して九・二%も上がっておりますが、依然として物価上昇は続いております。さらに各種公共料金の引き上げも予想されている今日、失対就労者と低所得者層の生活は著しく脅かされていると私は思うのであります。このような実情に対応して、失対賃金の大幅な引き上げをしていただきたい、あるいは地域間の格差をなくしてもらいたい、こういう要請が強いわけでございますが、そうしたものを何としても実現していただいて、失対就労者の生活の安定を図っていただきたいと思うわけでございます。また、臨時の賃金の問題でございますが、公務員並みにとまではいかなくとも、月に十日としてせめて五十日、現行三十一・五日でございますが、これをやはり改善してもらいたい、増額すべきではないか、このように思うわけでございますが、この点いかがでしょうか。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
  186. 石井甲二

    石井政府委員 失対賃金につきましては、御承知のように今年度につきましては一一・七%の当初比の増加をいたしております。さらに九月に米価の引き上げに伴う加算措置をいたしております。今後におきましても、失対賃金の決定原則でございます類似労働者の賃金との対応を図りながら適正な賃金を確保するように財政当局にも要求をするとともに、生活の実態を十分に調査をいたしましてこれに対応してまいりたいというように考えます。  それから第二の失対賃金の地域格差の問題でございますが、これにつきましては長い間かかりましたけれども漸次縮小を図ってまいりました。たとえば昭和四十年の最高地域を一〇〇とした場合に、最低地域は八六ということになっております。四十年が七〇でございますからかなり大幅な縮小を見たわけでございますが、さらに五十二年度の地域別賃金をどうするかということにつきましては、先生の御指摘のような点も考慮しながら賃金審議会の意見を聞きつつ十分に検討してまいりたいというように考えております。  最後に臨時の賃金でございますが、従来から失対審議会におきましても再三この問題が問題点として指摘されたことでございます。その中で、本年一月に提出された失対制度研究会の報告によりましても、一般の日雇いに臨時の賃金という例が余りございませんので、これを積極的にやるという考え方は実は必ずしも出ておりません。むしろ、いままでの実情からして当面現状のまま引き続き支給することはやむを得ないというような状況でございますので、この臨時の賃金の支給日数を増加するということにつきましては、なかなかむずかしい問題があるということを御理解願いたいというように考えます。
  187. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 実は失対賃金の決め方については、もうすでに「失業対策制度調査研究報告」というのが労働省から五十一年一月二十六日付で出ておりますね。その中に「賃金単価」という項がありまして、「乙事業の賃金単価については、「屋外労働者職種別賃金調査報告」の結果を考慮して算定することが適当である。甲事業の賃金単価は、乙事業の賃金単価を基礎にして」云々と、こうあるわけですね。私は、こうした指示がはっきりしているわけですから、恐らくそういうことで失対賃金が決まったんだろうと思っておったわけですが、五十年にすでに「屋外労働者職種別賃金調査報告」というのが労働省から出ておるわけですね。この内容をずっとつまびらかに調べていきますと、これは余りにも低過ぎるのではないかという気がしてならないのです。たとえば職種別の建設業等を見ますと、北海道で軽作業の場合、男で四千七百六十七円、女子で三千三百十三円、土工で六千三百四十九円なんですね。そこで失対事業の方を見ますと、同じ北海道で乙事業で三千二百七十一円、はるかに低いわけですね。また甲、いわゆる軽作業の失対の方はわずかに千九百六十七円、先ほどの一般の軽作業の女子ですらも三千三百十三円、こうなっております。また福岡の場合をとってみますと、一般の軽作業は男で三千七百十九円、女子で二千八百七十八円となっておりますし、土工は四千四百二十七円です。この福岡の失対の乙事業は三千百三十円でございますから、比べますと非常に低い。また甲の方も千九百六十七円ですから、軽作業の女の人の二千八百七十八円に比べても大変な格差がついている。ここで非常に疑問を抱いているわけでございます。これは計算の方法だとかいろいろあるのじゃなかろうかと思いますが、率直にこの表を見て疑問を感じますので、皆さんが納得のいくような賃金にまではアップしてもらいたい、これは強く要請しておきます。その点どうですか。
  188. 石井甲二

    石井政府委員 失対賃金の決め方の問題でございますが、御承知のように基本的な賃金の決定の方式というものがございます。それは屋外の類似の労働者の賃金と対応しながら決めるということでございますが、具体的にいま先生が御指摘になりました屋外職賃調査結果というものとの関連だと思います。乙事業の賃金単価の決め方は、屋外労働者職種別賃金の調査結果の中でいわゆる建設業の、しかも総合工事の中の道路、河川の定額制の通勤の日雇い労働者の土工あるいは重作業、軽作業という一般的な賃金のモードといいますか、そういうものをとりましてこれを算定したわけでございます。さらに季節調整をするというようなことをやっておりますが、そのほかに、現在の日雇い求職者の就労状況調査によりまして、失対就労者をその労働能力によって職種別に分類したウエートを掛けるという操作もいたして、これを全体として加重平均をしたものでございまして、私どもは屋外の職種別賃金調査からいまのような方式で賃金を決定するということでございます。したがいまして、全体としてはやはり今後の屋外の類似の労働者の賃金はどういうふうに動くかということを勘案しながら、来年度に向けてその実態に即したような賃金の決め方をしてまいりたいというふうに考えております。
  189. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 くどいようでございますけれども、この労働省から出ております「屋外労働者職種別賃金調査報告」の中の年齢別賃金の姿を見ましても、五十歳から五十九歳までの軽作業が男で四千八十六円、女で二千八百十三円、土工は四千九百二十二円です。それに比べて最低のいわゆる甲事業の方は失対は千九百七円なんです。また乙事業の方で三千百三十円ですから、話にならないほど低いわけですね。また六十歳以上を見ましても、一般の軽作業は男が三千八百十四円、女で二千七百十円、土工が四千六百九十四円ですから、こういうのを見てまいりますと、計算のあるいは失対賃金のとり方はありましょうけれども、いずれにしてもどうしても納得がいかない感じがしてなりません。そこら、もう一歩納得のいくような賃金決定をお願いしたいことを要望しておきます。  時間がございませんので次に移りますが、失対事業は甲、乙事業に分類されているわけですが、甲と乙間の出入りが自由にできなくなっているはずです。就労者の健康などの状況に合わせまして、甲事業に就労するか乙事業に就労するかを自由に選択できるようにすべきではないかと思うわけでございますが、この点についての見解を伺いたいと思います。
  190. 石井甲二

    石井政府委員 失対事業を甲事業、乙事業に分け、これも四月から分けたわけでございますが、そのなぜ分けたかという理由については、先生承知のように、失対事業を今後存続する上で、いわゆる高齢労働者といいますか、体力がかなり劣った方々もおられます。それと同時に、体力が残っているといいますか、かなり能力が高い方々もおります。そういうことで甲と乙に分けまして、甲の方は年齢的にも体力がかなり劣っておる方々、これが健康管理あるいは労働時間の短縮というようなことを踏まえながら設定をしたわけでございます。したがって、今後さらに高齢化をする場合に、高齢によって体力が低下した方々の言ってみれば就労の状況が安全に確保されるような状態ということを目標にして今度の甲、乙の分け方をしたわけでございますから、甲に入っている方が乙にまた返るということについては、原則としてはこれは考え方の上から立ってもこれを認めるというのは趣旨に反するんじゃなかろうかと思います。ただ問題は、たとえば現に病気等によりまして、本来の基礎的な体力は乙に該当する方が臨時的に一時能力が落ちている場合、この場合に、甲事業に就労している方々が回復した場合また乙事業に移行するということは、これは当然のことでございますが、認めてまいるという方針をとってまいりたいというように考えます。
  191. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 確認をしておきますが、たとえば、乙事業に働いていて健康等でどうしても甲事業の方に移らなければならぬような状況になった。しかしこの甲事業にいる間にまた健康を回復した。その場合は乙事業にまた戻れる、こういうわけですね。
  192. 石井甲二

    石井政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  193. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは、大臣にまとめて失対関係のことでお尋ねしますが、いま申し上げましたような賃金の問題だとかあるいは就労の実態について、特にわれわれの福岡などは非常にこの問題がたけなわでございますので、特段の御配慮のもとに皆さんが生活安定するような状況に、大臣先頭に立って御指導願いたい、こう思うわけです。御決意のほどをお願いします。
  194. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 ただいま大橋さんが御指摘になりましたように、失対事業の賃金がこうした物価の問題、お米も上がる、電気あるいは公共料金も上がっていく物価に対して少し不合理の面が出てきておるようでございます。そこで失業対策事業賃金審議会というのが、実態に合うようにしなければならないということでいま検討をされております。ここの検討の結果が出てまいりまして、恐らくある程度不合理だという線が出るんじゃないかと思いまするが、こうした審議会の意向を体しまして、御指摘のような賃金の改定も考えていかなければならないというふうに思っております。また失業者の職場の確保ということ、いま甲、乙の二つの問題もありましたけれども、いずれにしても非常に恵まれない方々ばかりでございますので、各担当を督励して、やさしい手を差し伸べるように努力をいたしていきたいと思っております。
  195. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 時間も迫ってまいりましたが、あと二点お尋ねします。  一つは、じん肺法関係なんですが、このじん肺法の制定以来初めての抜本改正だということで、いま大変じん肺法改正に関係者の関心と期待は大きいわけでございます。その中の予防措置についてですけれども労働安全衛生法に基づく特別規制として濃度基準も含む粉じん障害防止規則を実施するというふうに言われているわけでございますが、これは労働者側からは、予防措置を特別規制で規定するということは反対だ、当然じん肺法そのものの中に、いわゆる体系内に組み込まれるべきではないかという強い意見があるわけでございますが、この点についてどのようなお考えを持っておられるか、お伺いしておきたいと思います。
  196. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 じん肺法は制定以降相当年月もたっております。その間、じん肺そのものの範囲も広がっておりますし、また医学の進歩もございますので、今度の通常国会にできれば改正法案を提出したいということで、寄り寄り、じん肺審議会、あるいは特に医学的な側面につきましては専門家会議というようなものにお願いをいたしましていま検討中でございまして、最終的にどういうスタイルになるかということは、まだ率直に言いまして未定なのでございます。しかし、いずれにしましても、いまお話のありました粉じんによる労働者の健康障害の予防ということに関しては、現在労働安全衛生規則に基づきまして若干の規定がございますけれども、それではとうてい不備である。やはり独立の何らかの法規制が必要だということでございます。あとは問題は、それを労働安全衛生法に基づく規則でいくかあるいはじん肺法の体系にするかという問題でございますけれども労働者側の御意見もいま伺いまして承知をいたしましたが、これらにつきましてはじん肺法そのものの性格をどうするかという問題とも絡むと思います。じん肺は、御承知のように予防面は労働安全衛生法、補償面は労災保険法、そして健康管理の側面を特に抜き出しまして現行のじん肺法はできておる。これについて、予防も補償も含めた大きな体系のじん肺法をつくるべきじゃないかという意見は昔からあるわけでございます。ですからその辺は、いままでのようなやり方がいいのかあるいはいろいろな組み合わせによって新しい体系を考えるのがいいのか、今後の審議会の議論の結果なども踏まえて私どもとしては検討さしていただきたいというふうに思います。
  197. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 労働者先ほど申し上げましたような意見のあることも十分踏まえた上で、慎重な検討の上の決定をお願いしたいと思います。  最後に、大きな社会問題に発展しました白ろう病の問題でございます。午前中にも同僚委員から認定基準あるいは治療の問題、生活保障等々非常に詳しい質問がなされておりましたので詳細は省略いたしますが、私も一つ考えることは、予防を含むいわゆる白ろう病の専門病院の設置、これが最大の急務ではなかろうかと思うわけでございますが、こうした専門病院の設置についてのお考え、これをお尋ねしたいと思います。
  198. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 この点につきましても午前中から御論議があったわけでございまして、労働大臣からもお答えを申し上げたところでございますが、ただ、昨日も実は代表の方にもいろいろお話をしてこの問題を論議したのですけれども、専門病院をつくるべきではないかというお話の中には、一つは、つまり普通の病院なり診療所ではなかなか十分な手当てができないやはり白ろう独特の治療法の問題がある、それを開発をしてもらいたいという願いと、それからやはりできるだけ広くたくさんの医療機関でこれを扱ってもらいたいという希望と、二つが混在しているように私は思うのでございます。  そこで現段階といたしましては、できるだけ広くとにかく治療をしていくということが必要だと思いまして、午前中御論議のありました例の治療指針というものもつくりましたし、それから労災病院その他これらの治療に向いた病院にできるだけの施設なり専門家を集めるというようなこと、それからまたいろいろな民間の医療機関等にも治療指針の徹底を図るとか、そういうことでできるだけ治療のできる病院を数多くつくるということが一つでございます。  それにしましても、現段階治療指針でもなお実は、非常に議論のありましたようにいろいろ問題がございます。治療法等についても、医師の中にもいろいろな御議論があるようでございます。そこで、こういった振動障害その他たくさんあります重篤な職業病の治療法というものをそもそもわが国でもっと開発をしなければいかぬじゃないかという問題がございます。そこで、予防面では御承知のように産業医学総合研究所を発足させることができました。しかし治療面の開発のためにはやはり独特の研究所が要るという認識で、五十一年度予算にすでに調査費が計上されておりますけれども、職業病研究センターというものをつくって、そして振動障害はもとより、じん肺とかあるいは昨年来御議論のありました有害物質に伴う化学的な諸問題、こういう問題の治療の側面を特にこれから開発しなければならぬというふうに考えておるところでございます。
  199. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの方向を一日も早く実現できるように要望しておきます。  終わります。
  200. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 次に、岡本富夫君。
  201. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は、非常に短い時間ですから、きょうは二問題質問いたします。  最初に、母子家庭の皆さんのために、寡婦雇用の促進について労働省の御意見を承りたい。  そこでまず、労働省は母子家庭の就労をめぐる総合調査を五十二年にやりたいと言っておるそうでありますが、その調査内容は何なのですか。
  202. 森山眞弓

    ○森山(直)政府委員 昭和五十二年度に財政当局に要求をいたしております母子家庭の母の就業に関する実態調査、その内容の案でございますが、それは、まず第一に就労の有無。それから就労しております者はその職種、収入。それから母子世帯になってからの転職経験の有無、回数、その理由。さらに、取得を希望する資格、訓練、技術の有無、その内容。さらに、就労していない者につきましては就労希望の有無などを把握したいと考えております。
  203. 岡本富夫

    ○岡本委員 それは、大切な国民の金をかけてそういう調査をなさるということは何が目的なんですか。
  204. 森山眞弓

    ○森山(直)政府委員 実態を十分把握いたしまして、またそれらの母子世帯に必要なことをしっかり把握いたしまして、これらの世帯の生活の自立と安定を図るのに資したいと考えております。
  205. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま答えをいただきましたが、そういった調査を行ってどういうようにこの方々を就労させたりあるいはまたいろいろと指針を与えていくのか、その点はどうなんですか。
  206. 森山眞弓

    ○森山(直)政府委員 ただいま申し上げましたようなことを、まず実態を十分に把握するということが必要かと考えます。その実態把握いたしました上で、緊急度の高いこと、また要望の高いものからできるだけ実現するよう努力したいと考えております。
  207. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは大臣にひとつ……。あなたは私と一緒に商工委員会で長らくおつき合いありまして、非常に勇気があり、また私はあなたの人となりについてはよく知っておりますが、三木総理が一番最初総理になられたときの所信演説に、社会的不公正を直していきたいと、これが非常に受けておったし、またそういう発言でありましたから、いま三木内閣ですから恐らくあなたもそういう精神は持っていらっしゃるんじゃないかと思うのですが、これをまずお聞きをしておきたいのです。いかがですか。
  208. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 御指摘のありましたように、不公正をなくするということはいずれの社会でも考えてはおりますけれども、それが実際にはなかなか実態と合っていない。これは東西を問わず、いずれの地域でもそういう基本的な考え方はあると思います。ところがなかなか不公正ができてきております。こうした不公正を少しでもなくするために法律をつくりあるいは予算を組みあるいは制度をつくって、岡本さんの御指摘になりましたように、とにかく不公正があることは世の中の乱れるもとでございますので、そういった面には最大の努力を払っていきたいと思っております。
  209. 岡本富夫

    ○岡本委員 なかなか前向きなお答えで安心をいたしておりますが、そこで、先般、関西働く婦人の会あるいはまた交通遺児育英会、こういう人たちが寡婦の現在の実態というものを調査いたしまして、すでに御承知のように身体障害者の皆さんに対する雇用促進、そういう法律もあるわけですから、ぜひひとつそういう法律を制定して皆さんが安心して生活できるようにしてもらいたいという御要求があった。これは浦野さん、あのときには私ちょっとおくれて、あなたがお出ましになった後だったのですが、先ほどちょっと伺っておりますと非常に後退したような御答弁があったわけです。そこで、すぐというわけにもいかぬでしょうけれども、すでに労働省では母子家庭の就労をめぐる総合調査、こういうことをやるということは、恐らくこういった法律をつくっていかなければならぬということで、わが党でもすでにその対案というものを提案をいたしております。そういうことで浦野労働大臣が、これは非常に短い大臣でお気の毒なんですが、いまの発言を踏まえて前向きにひとつそういうような方向を考えていかなければならぬ、また考えていこうというような御答弁をいただければ非常にありがたいと思うのですが、いかがでございますか。
  210. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 私はこの問題について決して後退した気持ちは全然ありません。先般も岡本先生から会いたいというようなお話がありましたので、ぜひ聞かしていただきたいと、こう思ってお待ちしておりましたけれども先生の方からちょっと御都合が悪くて中止になりましたが、また機会を見てぜひ聞かしていただきたいと思います。具体的にいまここに寡婦の雇用促進法案というふうに出ておりますが、いままだ、先ほど婦人少年局長が答弁しましたように、実態がもう昭和二十何年かに調査したままになっております。これは大変申しわけないと思っております。寡婦の問題をもっと早く実態調査しておかなければいけなかっただろうと思いますが、いまからでも遅くはない。実態をよく調査して、そうした結果でまたこの法案の問題あるいは具体的な対策問題を出していきたい、かように考えておりますので、お気づきの点がありましたら御指摘いただきたいと思います。
  211. 岡本富夫

    ○岡本委員 与党でありますところの自民党の松野前政調会長が、七月の六日の日だったと思うのですが、交通遺児の代表に対して次の通常国会に提案したいという発言をなさっております。したがいまして、与党ですから恐らく労働省の方にもそういう準備と申しますか、そういうお話があったのではないかと思うのですが、その点、当局の方はどうですか、聞いておりませんか。
  212. 森山眞弓

    ○森山(直)政府委員 雇用促進法あるいは雇用率の問題、確かに承っておりますが、そのような対策を実施いたしますためにやはり総合的な調査がまず必要であるということで、そこから着手をしていきたいというふうに考えた次第でございます。
  213. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたの考えでなしに、松野さんは、今度かわりましたけれども自民党の前の政調会長なんです。恐らく、まるっきりそのとき逃れでうそを言っているのじゃないと思うのです。やはり何らかの根拠があって、そして交通遺児の皆さんにそういうようにお答えになったのだろうと私は思うのです。ですから、その作業は恐らく労働省でおやりになると思いますので、そういう作業についてすでになさっているのではないか。そうでなければこの松野さんのおっしゃったことが間違いだったということになるわけです。その点についてどうなのかということをお聞きしたい。次の通常国会、これは次というのは何遍もありますけれども、恐らく七月の六日におっしゃった次ということは、今度解散があって次の国会だろうと思うのです。五十二年度というと、五十二年度調査をしてそれで次の国会、非常に重複してくるような、矛盾したように私は感じるのです。したがって、総合調査も必要でしょうけれども、いろんなところで、人数にしましても六十何万ですか、約七十万人の方がいらっしゃるとか、また収入の調査にいたしましてもすでに出ておるわけです。申しますのは、寡婦等雇用奨励金、こういうものをすでに労働省の方で出していらっしゃるわけですから、ある程度の調査というものはできていると思うのです。全然白紙ではないだろう。いま、まことに申しわけないが全然調査しておりませんでしたとおっしゃいましたけれども、そうではない。労働省はそんな手抜かりがあるわけはないと私は信ずるわけです。したがって労働省としても、与党である自民党の政調会長がこうしたことをおっしゃったわけですから、やはりその準備をなさっておる、私はこういうふうに思うのです。したがってひとつ、次の国会ではむずかしいかもわからないが、その次ぐらいには前向きにどうしても出さなければならぬ、こういうふうに考えていらっしゃるのではないか、こう思うのです。与党の自民党さんがそう考えられると、これは労働省としてもやはり出さざるを得ない。そうなると浦野労働大臣がこれは男を上げて、必ずひとつやっていくように前向きにやる、こうここで労働省の定義づけをしておきますと、後、続いてできると思うのですよ。この点どうですか。
  214. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 政調会長がそういう寡婦の雇用促進の問題についての意見を言っておられることは私も耳にいたしておりますが、具体的にまだいろいろ承知いたしておりません。ただ、労働省としては、寡婦の雇用促進という問題はこれはやらなければならない。それを法律的に出すかあるいはそのほかの方法でやるか、いろいろ検討されておりますけれども、やはり法律で出すことが一番きちんとするわけでございます。先ほど局長調査するというのも、法律をつくる以上はより的確な、よりいいものをつくっていかなければならない、そういうこと等を踏まえていろいろと検討するわけでございます。私も岡本さんのおっしゃるように、また党の方の方針もそうした寡婦の雇用促進の問題については非常に大きな関心を持っておるようでございますので、そうした前向きの方向で努力をいたしていきたいと思います。
  215. 岡本富夫

    ○岡本委員 今月の十二日に労働省が婦人労働白書を発表されておりましたが、その婦人労働の実情、こういうことを見ましても、特に母子家庭の皆さん、こういう寡婦の皆さんが、諸年金というのは非常に少ない。だけれども、そういうことよりも自分で働いてそうして子供を育てていこう。国破れて忠臣出づ、あるいはまた家枯れて孝子出づというような昔の言葉がありますように、そういったところから私は将来の日本を背負って立つりっぱなお子たちが出てくる、次代を背負うような方が出てくるのではないか。そういうことでありますから、ぜひひとつこの寡婦雇用促進法を早期に制定していこう。大臣から相当前向きな御答弁をいただきまして安心をいたしております。そこで、すでに私ども公明党では特別措置法として母子家庭の母等の雇用の促進に関する特別措置法案、これを提出をいたしておるわけですから、これをひとつ参考にしていただいて制定をしてもらいたい、これを要望いたしておきます。  次に、昨年四月からの雇用保険法の改正に伴って寡婦を雇用する事業主には雇用奨励金として一年間月額一万円を支給されることになっておりますが、現在までの対象者はどのくらいいるのか、この点お調べですか。
  216. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 この寡婦等雇用奨励金の制度は、いま先生がお話ございましたように、昨年の四月に、岡本先生大変御熱心な御主張で参議院に寡婦等の雇用促進法案が出されました。これをもとにして関係方面からたくさんの方々から御要請がございまして、新たに雇用保険法の中で昨年の下半期から寡婦に対する雇用奨励金制度ができたわけでございます。その実績でございますが、昨年の十一月から三月までの五カ月間に三百四十八名が支給対象として支給されておるようでございます。
  217. 岡本富夫

    ○岡本委員 全国ですから、三百四十八名というと非常に微々たるものだと思うのですね。これの趣旨がまだ徹底していないのじゃないかと私は思うのですけれども、そのためにこんな微々たるもので終わっているんじゃないか。あるいは予算の措置でこういうふうになっておるのか、この点ひとつお聞きしたいと思います。
  218. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 私どもは寡婦の雇用奨励金制度を発足させます際に、どれぐらいの見込みがあるか。これはいままでの過去の実績等から見まして、こういった対象になります寡婦の人たちが常用就職する場合にこの奨励金が支給されるわけでございますが、それをいろいろな角度から精密に積算をいたしまして、私どもは下半期で、ことしの三月末、年度末までに大体五百人という予定をいたしておりました。その五百人の見込みのうちで三百四十八ですから七〇%程度。発足いたしまして半年の間にこれだけ出たということは比較的浸透はしておったんじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。これはたくさん出てくれば、予定した予算よりはオーバーしてももちろん支給されることになりますので、決して予算不足とかそういうつもりではございませんで、積算の結果私ども予定したよりは若干下回っておった、こういうことでございます。
  219. 岡本富夫

    ○岡本委員 これにつきまして、一年間ということですから、非常に期間が短い。したがって、先ほど要求いたしました寡婦雇用促進法というものができるまでこういうことで少しでも不公正をなくしていこうというお考えだろうと思うのですが、この支給期間をもうちょっと延長し、金額ももう少しふやしてくれるとこれはもっと促進される。五百人というのはどこから引いたのか、全体の実態からすれば非常に少ないように思うのですけれども、この延長あるいは増額ということは考えてはいないのか。考えていただいた方がありがたい、こういうように思うのですが。
  220. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 先生承知のとおり、雇用奨励金というのは身体障害者に対する雇用奨励金あるいは中高年齢者の雇用奨励金、こういった制度がございまして、これを範囲を広げまして新たに寡婦に対する適用をいたしたわけでございます。金額にいたしましても身体障害者の雇用奨励金とほぼ同程度のもの、期間につきましてもそうでございます。期間が短いではないかというお話でございますが、雇用奨励金という制度は、そもそも身体障害者とかあるいは中高年齢者、こういった人たちが就職上いろいろハンディキャップを持っている、そのハンディキャップを何らかの形で補う意味で、雇いやすくする、雇ってもらいやすくするために奨励措置としてこういう奨励金を一年間支給する、その間に仕事も覚えていただく、雇用を安定していく、こういう趣旨でございますので、これを一年以上延ばすということについてはいろいろ問題がございます。金額を引き上げる、これは毎年ある程度ずつ金額を引き上げることによりまして内容の充実を図っておりますが、奨励金の支給期間を延ばすことにつきましては、この奨励制度それ自体の考え方の問題とも関連がございまして、なかなかむずかしい問題かと思います。  ただ問題は、本質的に寡婦、母子世帯の母、こういった人たちの就職をどうして進めていくかということでございますが、こういう人たちは本来、いままで家庭の主婦であったいわゆる無業者で無技能者である。職業上の知識経験もない。こういう人たちに安定した職場を確保するということは、まず前提としては職業人としての職業的な技能、知識を習得していただく。そうしませんと安定した職場へ送り込むことはなかなかむずかしゅうございます。それと同時に、子供を抱えている、育児だとかそういった家庭環境と職場との調和をどうさせていったらいいか、こういった大きな問題がございますので、むしろ、奨励金を長く支給すれば済むという問題であるよりは、そういった職業人としてこれから自立をしていただく、安定した職場についていただくためのそういう前提条件を十分こなしていくということがまず大事なことだ。先ほどからお話しになっておりますような促進法をつくって雇用率云々というお話もございますけれども、法律で強制したからといって片づく問題でございませんので、むしろそういった寡婦の方々をめぐる職業上の諸問題をどうやって解決していくかということに私どもまず当面重点を置いて考えてまいりたい。その上で必要なものは予算措置なり行政指導なり、あるいは法律が必要なものは法律で措置していく、こういうことではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  221. 岡本富夫

    ○岡本委員 一人一人実態は違いますし、あれですけれども、やはりお子たちを抱えて働いていこうというこの意欲、これは伸ばしていかなければならぬと私は思うのですよ。遊んで、もらうだけもらって寝ておったらいいのだという怠けた根性では、育つお子たちもよくなりません。こうしてお母さんが一生懸命働いてくれるのだ、私たちもしっかりやらなければいかぬ。日本の将来から考えると、この寡婦だけでなくして、その子供、要するに日本の次代に大きく貢献する人たちのために特段の諸対策が必要である、こういうふうに私は思うのです。  そこで、いま職業訓練についてのお話がありましたが、実態調査を見ましても、寡婦の約八五%が技能や資格を持っていない。不慮の災害で、あるいはまた交通事故、病気で主人を亡くされたこの方々に、職業を身につけるためにやはりある程度の生活費を支給する。中高年齢者やあるいは失業者、農漁村など、この離職者に対しては月額六万円ほど生活費を支給しながら職業訓練をしておりますね、雇用対策法第十三条にもありますけれども。そういった一つの方法もとって皆さん方の将来の自立というものを促進していく、これも大切ではなかろうかと思うのですが、いかがですか。
  222. 中原晁

    ○中原政府委員 先生指摘のとおり、雇用対策法には職業訓練手当という規定がございまして、就職の困難な方々に対しましては訓練受講中に職業訓練手当を支給しながら訓練をしていただくということになっておりまして、したがって、寡婦等につきましてもその方が中高年齢に達しておりますれば当然職業訓練手当を支給しながら訓練していただいておるわけでございますが、問題は中高年齢に達しない寡婦の方々の場合でございます。先ほど先生からもいろいろ御意見がございました。私どもとしましては、そういう寡婦の方々の実情、実態、こういうものを十分踏まえまして、この寡婦の職業訓練の問題につきましては万全の検討をしてまいりたいと思います。
  223. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは省令をちょっと変えたらしまいですからね。そうむずかしい問題ではないのだから、ひとつぜひこの対象にしていただきたい。あなたのいまの答えをそう受け取ってよろしいですね。
  224. 中原晁

    ○中原政府委員 先ほど先生のいろいろの御意見、そういうことを踏まえまして、中高年齢以外の寡婦の方々に対しましてもそういう生活の実態を十分勘案した検討をいたしたい、こういうふうに思っています。
  225. 岡本富夫

    ○岡本委員 特にこのごろはヤングミセスの寡婦の方が非常に多いのですよ。これだけ交通事故もありますしね。  それから、この寡婦という定義づけですね。これもただ夫との生死別だけでなくして、現在その夫が心身障害者や、あるいはまた中には未婚の母というのがありますね。そういう人たちもやはりこの中に入れていくようにひとつ配慮を願いたいのですが、寡婦の定義づけについての御意見があったら承っておきたい。
  226. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 母子家庭あるいは寡婦といった範疇にはいろいろな人が入ると思いますが、いまお話しのように、御主人が精神障害者で廃人同様の人だとか、そういった場合のいわゆる母子家庭に準ずるそういった人たちも先ほどからのお話の対象として考えられているわけでございます。
  227. 岡本富夫

    ○岡本委員 未婚の母も。
  228. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 未婚の母、これはどういう扱いになりますか、制度的に言えばいろいろ問題があるかと思います。実情に応じて、同様の人は同じような扱いをするということではなかろうか、私どもかように考えております。
  229. 岡本富夫

    ○岡本委員 これで質問を終わりますが、最後に、救急医療センターをぜひひとつ阪神間につくっていただきたいという非常に強い要望があるのです。きょうは医務局長は来てないのかね。——大臣、ひとつこの点の検討を、医務局長に言って、してもらってくれませんか。突然で悪いですけれども、なかなか有能な大臣ですから。
  230. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 突然でありますので、私もまだよく勉強いたしておりませんが、関係局長にその旨を伝え、努力をするように進めていきたいと思います。
  231. 岡本富夫

    ○岡本委員 終わります。     —————————————
  232. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 この際、お諮りいたします。  労働関係基本施策に関する件、特に社会保険診療報酬支払基金の現況について、本日、社会保険診療報酬支払基金理事長今村譲君を参考人として御出席を願い、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  233. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  234. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 労働関係基本施策に関する件について、質疑を続行いたします。石母田達君。
  235. 石母田達

    ○石母田委員 ただいま言われましたような問題で質問したいと思いますが、きょうはきわめて限られた時間でございますので、できるだけ関係者の答弁は簡略にしていただきたいというふうに思います。  私はきょう基金の理事長を特に、出張中のところ御無理を願っておいで願ったのは、労使問題の取り扱いの中であらわれた基金の基本的なあり方の問題について少しお尋ねしたい、こういうことで、労使問題直接の問題ではございません。労使問題で、もちろんそのことが、労使問題が対立を拡大する方向でなく、話し合いで解決する方向に、また分裂を拡大する方向でなく、大きな統一と団結が高められる方向でやっていただきたいということはあえて申すまでもありません。  私が特に重要だと思っておりますのは、労働基本施策から見て基金のいまとっておる態度ですが、実は昭和四十六年に宮城基金の中であらわれた不当労働行為問題について宮城の地労委から命令書が出ているわけであります。もちろんこれは公益も含めましての合意された上の命令であります。その中で「申立人組合員菊地富美子を、昭和四十六年十月一日に遡って、五等級に昇格させるとともに、これによって生じた賃金差額を同人に支払わなければならない。」こういう主文の命令が出ているわけであります。こうした命令書について、出ていることは当然御承知だと思いますが、今村理事長に聞きたいと思います。     〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕
  236. 今村譲

    ○今村参考人 承知いたしております。
  237. 石母田達

    ○石母田委員 その理由の中にこういう文章があるのも御存じだろうと思いますが、一応読んでみます。残念ながらこの基金の中で二つの組合に分裂をしている。「この全基労の分裂に際し、基金側は、理事者が新組合設立指導者と会談したほか、某県基金庶務課長が組合分裂に協力したなどの一連の支配介入を窺わしめる行為を行っていた。」さらにその二、三行後に、「全基労は、組合分裂に関する支配介入、その他の処分問題について、各地方労働委員会に不当労働行為の救済申立を行い、一方基金側も、昭和四十一年八月基人秘発第四七号「労務管理について」の通達をもって全基労及びその所属組合員については、その要求を安易に受入れないこと、勤怠基準を厳守すること、全基労の配付文書は本部に送付すること等を各幹事長に指示し、依然として全基労に対する厳然たる態度を維持していた。」この秘通達なるもの、この基本方針に基づいていろいろな差別が行われたというので、基金自体に問題があるのではないか、あるいはこの通達自身にその根源があるのではないかというような内容が命令に書かれてあることは、これは御承知でしょうか。
  238. 今村譲

    ○今村参考人 その地労委の命令につきましては、内容を承知いたしております。ただ、私どもとしましては、そういうふうな基金の労働組合の分裂直後のいろいろの問題がありましたが、今日におきましてはさような事態はないというふうな気持ちでおるわけでございます。
  239. 石母田達

    ○石母田委員 「殊に、既に認定したとおり、昭和四十一年八月基人秘発第四七号通達により、基金が全基労に対する差別的な労務管理の基本方針を定め、この方針に従い、宮城基金の幹事長も、本件昇格査定をしたものと認められるので、その不当労働行為については、基金もまた、その責任を負わなければならない。」こういうふうに書いておりますけれども、このような通達があったのか。またこの通達については、あったとすればこういう内容のものであるか。そういう内容のものであるとすれば、現在この効力についてはどのように考えているのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  240. 今村譲

    ○今村参考人 この通達、ちょうど十年前のものでございますが、現在におきましてそのようなものの効力はないと思っております。
  241. 石母田達

    ○石母田委員 効力がないと言っているのは、その通達の内容がこういうものに疑われるような、あるいはとられるような内容のものであったからということですか。そういうふうに理解していいですか。
  242. 今村譲

    ○今村参考人 ちょうど分裂直後の状況でありまして、基金の秩序維持と業務の恒常的な流れということについての文書でございまして、それはその後事態の平静化に伴いまして、その問題はすでに消えたものというふうに考えております。
  243. 石母田達

    ○石母田委員 このような通達は後で出してもらいたい、見せてもらいたいということについては、よろしいですか。
  244. 今村譲

    ○今村参考人 それにつきましては、いろいろ関連事項もありますので、しばらく検討させていただければ非常にありがたいと思います。
  245. 石母田達

    ○石母田委員 この地労委の公式文書に書かれている内容の文章でございますので、また地労委もこういう判断をしているので、私どもも独自に国会としてもいろいろ検討したいと思いますので、ぜひ委員長の方からもこの提出についてお計らいを願いたいと思います。
  246. 熊谷義雄

    熊谷委員長 いまの点、理事会で取り計らいます。
  247. 石母田達

    ○石母田委員 それでは、厚生省が監督官庁の一つでございますので、厚生省はいま私が今村理事長とやりとりした内容については承知しておりますか。
  248. 八木哲夫

    ○八木政府委員 私どもにおきましては、何件かの具体的なケースにつきまして地労委なりあるいは地裁に係属中であるというような問題を承知しております。ただ具体的な詳細な内容にわたりましては、これは厚生省といたしまして一般的な業務指導なり監督という立場でございますので、具体的な個々のケースの詳細な内容につきましては理事長から事情を聞きませんとわからない点も多々あると思います。
  249. 石母田達

    ○石母田委員 いまの通達先ほど言われたような内容の疑いがあるということで現在効力を失っている、あるいは、はっきり言えば廃止されているということについても承知しておりますか。
  250. 八木哲夫

    ○八木政府委員 私、いまの段階では承知しておりません。
  251. 石母田達

    ○石母田委員 いまの答弁でわかりましたか。確認できますか。
  252. 八木哲夫

    ○八木政府委員 いまの理事長からの答弁で、そういうような具体的事実なり経過があったという点はただいま伺った次第でございます。
  253. 石母田達

    ○石母田委員 さらに今村理事長にお伺いいたします。  それは、ことしの九月二十二日、全国社会保険診療報酬支払基金労働組合の中央執行委員長あての文書によりますと、「共闘会議」——というのは岡山県ですね、いろいろな事態の経過は時間がないから省略しますが、「から、基金の職場における職場差別、部落差別、組合差別のあることの体質を指摘されたことを反省し、民主的に改めるよう確認します。将来、憲法を職場に定着させ職場の自由と民主主義をまもるために努力します。一、就職差別をひきおこしたことから認識をあらためる機会にもかかわらず、再び今回の部落差別をひきおこしたことは認識不足であり、深くおわびし反省いたします。なお、」云々と書いてありますが、省略します。「二、労働組合別に、その所属によって人事、賃金、昇格、昇任差別、その他の職場八分をすみやかにあらためます。そのために、全基労中央および各支部と協議し、早急に解決することを約束します。三、職場を民主的な明るいものにするために、思想・信条にもとづく差別は一切せず、職員の思想・信条の自由を認めます。基金は、共産党員、民主青年同盟員などの所属による一切の差別はいたしません。なお、公安調査庁などとの情報収集や意見交換などはせず、一切基金は関係いたしません」こういう文書が提出されておりますけれども、これはあなたがもちろん署名して出されたものですね。
  254. 今村譲

    ○今村参考人 さようでございます。
  255. 石母田達

    ○石母田委員 この問題について、あなたは現在これを実施する、あるいはこれに書かれたことを実行するという意思を持っておりますか。当然あなたが書かれたことですから、この実行のためにどのような努力をしているか、具体的に話してください。
  256. 今村譲

    ○今村参考人 お答え申し上げます。  岡山、それから兵庫でいわゆる部落差別問題、これは組合間のいろいろの活動の中で部落差別問題まで引き起こしまして、岡山県で御承知のように支払基金における人権侵害反対共闘会議というものが結成されまして、前後四回確認会が行われたということであります。それで、最後の三回、四回に私出席いたしまして、特に第一項の部落差別の問題につきましては、職員に対する同和教育というふうなことについて非常に不徹底というか非常に不十分であったということを反省いたしまして、私の方としては県のそれぞれの担当の指導課にお願いをして、基金の内部におけるそういう教育ということに努力をいたしたい、こういうふうに考えるわけでございます。  第二点におきましては、ここに書いてありますように、共闘会議の中において、部落差別ばかりじゃなしに二つの組合があるということについてのいろいろな問題がある、いわゆる人事、昇格その他を含めての差別があるという指摘、それからいわゆる職場の中において冠婚葬祭あるいは若干のいろいろのトラブルがあるというふうなことについて至急改むべきであるというふうな強い要望がありました。それで私としましては、基金の人事を公平、適切にしなければならぬというつもりで今日までやってきたのでありますけれども、そういういろいろの人事、給与のあり方、あるいは同じ職場の中における両組合併存に伴ういろいろなトラブルというふうなものについては何とか解決をしたい。それについては組合とも話をして、見直すべきものは早急に見直し、直すべきものは早急に直すということで話し合いをしたい、こういうことでございます。  それから第三点は、これはいわゆる当然の規定でありますけれども、過去においていろいろ基金の方であったのではないかというふうなお話がございましたので、それは過去においてもいたしておりませんつもりでありますし、今後においてもするつもりはございません、こういう趣旨でございます。
  257. 石母田達

    ○石母田委員 いまの方向で解決したいということについて、監督官庁として厚生省はどう思いますか。
  258. 八木哲夫

    ○八木政府委員 私ども社会保険診療報酬支払基金をめぐりまして厚生大臣の支払基金に対します監督権というものがあるわけでございますが、これは業務が適正、円滑に行われるという意味の監督でございまして、一般的なそういう意味では監督権があるわけでございます。したがいまして、具体的な個々の労働紛争の問題等につきまして直接厚生省がどうこう言うべき立場ではないというふうに考えておる次第でございます。
  259. 石母田達

    ○石母田委員 ここに、昭和四十八年の八月十四、十五日、二日間にわたって、いわゆる厚生省の本部事務監査が行われて、その結果について厚生省保険局長から理事長あてに次のような通知があった。その中に「人事、労務管理面については、かねてから格別の配慮がなされているところであるが、人事および労務の円滑な管理は基金業務運営上のかなめであるので、さらにいっそうのご配慮を願いたいこと。」字面だけ読むとそのとおりですけれども、いま言ったような反省すべき点、改善すべき点があるという中でこうした問題が出されたということは、厚生省の労務管理あるいは行政指導の内容は一体どっち向きにあるのか。こういうものはいまでも生きているのかどうか。さっきの通達、分裂という事態の中で出された問題について、いまは効力を失っているという、理事長からそういう改善を出してできるだけ円満な解決をしたいということに対して、一般的には賛成を示しながら具体的にこういう問題を出しているこの厚生省の通知について、いまでもこの方向でやれ、いままでどおりに労務管理をやれというものであるか、この点についても再検討をされるのか、厚生省の方から聞きたいと思います。
  260. 八木哲夫

    ○八木政府委員 私ども、四十八年の八月に支払基金に対する事務監査を行ったわけでございまして、ただいま先生から御指摘になりましたような、人事、労務管理につきましての厚生省の支払基金に対します考え方というのを示しているわけでございますが、この文書をよくお読みいただきたいと思うわけでございます。前半におきまして「かねてから格別の配慮がなされている」というところは、最初のところで特に支払基金が新しく沖繩県におきまして支払基金事務所の設立というふうなことを行うとか、あるいは老人医療業務の引き受けをするというようなことで、支払基金の業務というものが従来に比べまして、非常に業務量の面とか新たな問題が出てきたわけでございまして、そういうような支払基金の当面します大きな問題点につきましてこれを処理しなければいかぬという意味におきまして、それらの問題を解決するという意味で、人事、労務管理の面につきましても配慮がなされているというのを前半に評価しているわけでございますが、後段でもございますように「人事および労務の円滑な管理は基金業務運営上のかなめである」というようなことを特に指摘いたしまして、基金業務におきます適正な業務運営が行われるという立場から、人事、労務の管理面につきましては特にかなめであるから配慮してほしいという意味の支払基金に対します事務監査の見解を述べたわけでございます。
  261. 石母田達

    ○石母田委員 結局、現場の方ではいろいろ反省すべき改善点があるけれども、厚生省の方はない、このとおりやる、初めからそういう方針なんだ、こういうことなんだね。
  262. 八木哲夫

    ○八木政府委員 そういう意味で申し上げたのではないわけでございまして、人事、労務管理の問題は基金業務のかなめである、しかもいろいろな係争事件もあるというようなことを踏まえまして一層配慮をすべきであるというような指摘をしたわけでございます。
  263. 石母田達

    ○石母田委員 私が言っているのは、先ほど言ったような事態の中でこういうものが厚生省から来た場合に、その当時の基金はどういう方向でこれを解決しようとしていたかということで、先ほど改善しなければならぬ、今後配慮しなければならぬという内容のものであることは当然だと思うのです。  しかし、あなたがそう言われるならもう一つ進めて、ここに基金の就業規則がある。その三十二条に「職員が年次有給休暇を受けようとするときは、予定の日数を具し、文書をもってあらかじめ上長を経て、所属長の承認を受けなければならない。」こう書いてある。こういう明記しているものについてはたびたびここでも論議されている。そのものが法律違反であるかどうかということも論議されて、とにかくこういうものについては結局は行政指導によって変更させる。この間、北辰電機でしたか、ここでやって、それも変更させているのですよ。こういうものは労基法のイロハの知識からいって、明記して実際に運用された問題の紙もございますけれども、こういう問題についてまず労働省の方からどういう見解かお尋ねして、それから厚生省の話を聞きましょう。
  264. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 年次休暇につきましては四十八年に最高裁の判例ができまして、許可ということではいけないということになりましたのでその点の通達を出したわけでございます。この問題の就業規則も、表現がそうなっておるという点につきましては、それが実際にそのとおり行われない限りは違反ということには必ずしもならないけれども、しかし規定としてはどうも適当な規定じゃないじゃないかということで行政指導をしておりまして、基金の方でも近々就業規則の改定の機会には直したいということを言っておられるようでございますので、そういうふうに願いたいと思います。
  265. 石母田達

    ○石母田委員 それでは厚生省、それはよろしいですか。確認していますか。
  266. 八木哲夫

    ○八木政府委員 私どもの方も、基金の方からそういう方向で進めたいというふうに伺っております。
  267. 石母田達

    ○石母田委員 今村理事長の方からもう少し具体的に改正の機会について。またこのままずっと残しておいたら——改正の機会というのは早急に行われるかどうか、この点についてお答え願いたいと思います。
  268. 今村譲

    ○今村参考人 労働省の方からそういう御意見がありまして、早急に改正をしたいというふうに思っておりまして、今日まで延びておりましたが、至急直したいと思っております。ただ、例の判例が出まして労働省通達がございまして、こちらの方のいわゆる指示といたしましては、特定の業務運営の必要があるとき以外には、これは申し出どおりに、時期変更権の行使をするようなことなく与えるものである、こういうふうに運用せよということでとりあえずそういう通達を出しておりますが、直すものは至急直したい、こういうことでございます。
  269. 石母田達

    ○石母田委員 厚生省に私は言いたいのだけれども、こういう法に触れるような表現のものが長年の間就業規則にある、自分の監督官庁の中にあるということについてもっと真剣に考えてもらいたいと私は思います。これは労働基本施策の点から見て、やはり、政府あるいはそれに準ずるような機関の中においてこうしたものが堂々とまかり通っていたということについては、監督官庁としても十分反省していただきたい、こういうふうに思います。  それから、今村理事長にまたお伺いしますが、あなたが先ほどの九月二十二日の文書と同時に口頭確認として、基金労組の三原則のうちで憲法に違反する部分については訂正を強く要求するということを報じられておりますけれども、この内容はどういう点なんですか。
  270. 今村譲

    ○今村参考人 お答え申し上げます。  私が確認会に出ました第三回の八月三十一日、それから第四回目の九月二十二日、二回出ましたが、基金労組の三原則というものにいろいろの問題があって、たとえばこれについて憲法違反と思うが理事長はどうかというような意見が非常に強く出されました。したがいまして、私は、事労働組合運動の運動方針というものについては事業主あるいは理事者がとやかく言及すべきものではないということで、第三回は話が、せっかく労働問題の解決がつきそうだったのを断った。それで帰ってきた。第四回におきまして、九月二十二日でありますが、その問題がやはり同じように出まして、私も第三回と同じ、少なくとも事業主が言及すべきものではない、もし必要があるというならばいわゆる行政当局あるいは労働当局の判断になるんではなかろうかということで、約二時間ほどでありますがいろいろ議論しました。そのうちに、仮にそうなったらどうなるのだ、こういうふうな話がありまして、私も、その過程でも答えるべきでなかったかもしれませんが、本当に法的にそういうふうな事実があるとすれば事業主も組合にその是正を申し入れなければならぬであろう、こういうふうに申し上げましたのが私の本心でございます。ただ、いろいろな議論のやりとりの間で言葉が足りなかったというふうな問題がありますが、この点は私としては非常に残念だというふうに思っております。
  271. 石母田達

    ○石母田委員 その内容というのは、結局この基金労組の三原則ですか、分裂した二つの組合の一つですね、その加入届の中に「三原則を遵守」するということが加入の条件になっている。共産主義やその他は「排除する。」とか「認めない。」とか、あるいはまた「共産党のような行動」ということで、社会党も含まれておるそうですけれども、そういう行動は「一切行わない。」というような内容のもの、これを労働組合の運動方針でなくてこの加入届の条件にするということは好ましいことではないんじゃないか、あるいはまた憲法上の疑義も生ずるのではないかというようなことが、論議された問題に対するあなたの見解だというふうに思いますが、そうですか。イエスかノーだけで言ってください。
  272. 今村譲

    ○今村参考人 さようでございます。
  273. 石母田達

    ○石母田委員 私は厚生省の局長に聞きたいのだけれども、あなたの監督官庁にこういう相当疑義を生ずるような問題があることをあなたたちは承知であるのか。これは労働組合といっても限界がありまして、労働組合の性格の問題について、こういうことで特に私が厚生省に聞きたいというのは、先ほどの宮城の地労委の中にも、分裂の当時から非常に密接であった。あるいは、ここでいま調査によりますと、基金労組の十周年記念集会に事務次官、保険局長、大臣官房企画室長、ずらっと十名ほど皆さんが出ていられる。これは労働組合に対する介入とまでは言わないけれども、ずいぶんとまた熱心なてこ入れをしている。その組合がこういう原則を掲げた組合であるということを承知しているのか、またそういうことは好ましいことであるというふうに見ているのか、ちょっと厚生省の見解を聞きたいと思います。
  274. 八木哲夫

    ○八木政府委員 労働組合がどういう御方針をおとりになるかということにつきましては、これは行政がとやかく言うべき問題ではないというふうに考えておる次第でございます。
  275. 石母田達

    ○石母田委員 きわめて不明確な答弁ですけれども、時間がないから先に進めます。  最後に私は今村理事長にお願いしたいのだけれども、皆さん方、裁判所や地労委なんかに三十九件、いろいろ出ていますね。これに対してやはり対立的な方法でなく、できるだけあなたがここで確認されたような立場で解決をしていただきたい。これを調べると十ぐらい、いろいろ地裁や地労委から命令や勧告が出ている、それに対してあなたたちが中労委とか高裁に持ち込んでやるというような態度は、行政全体あるいは労働基本全体から言うと好ましいことじゃないのですね。ですから、こういった問題については十分慎重に検討して、この点も再検討して、そうして話し合うべきものは話し合っていくというふうにして、そういう勧告や命令を実施する方向で解決に努力してもらいたいと思いますけれども、この点についてあなたの考えを聞きたいと思います。
  276. 今村譲

    ○今村参考人 いまお話しのように十何件が出ておりますが、仰せのように、検討すべきものは十分検討し、話し合うべきものは話し合っていくというふうな気持ちでまいりたいと思います。
  277. 石母田達

    ○石母田委員 労働大臣に……。きょうの、基金との関係でこうした労働基本施策に関して、いま基金が文書でも出しているように、思想、信条による差別、あるいは労働組合の所属によって差別をするということはしない、あるいはあったものは是正する、こういうことでございますけれども、特にこうした政府の監督下にある機関においての是正については、ぜひ労働大臣、労働省としてもこうした問題について解決の促進に一層の努力を願いたい、こういうふうに思いますので、最後に労働大臣のその点についての見解を聞かしていただきたいと思います。
  278. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、労働保護法規で禁止されているように、思想あるいは信条を理由にして労働条件の差別や不当労働行為が行われてはならないことは、これは今日では何人も承知しておらなければならないことだと思います。しかし、労働省といたしまして、関係労使が十分話し合ってもらわなければいけない、こういう問題も十分話し合っていただかなければなりませんが、もし不当な問題があるならばこれは十分監督をいたしていきたいと思っております。
  279. 石母田達

    ○石母田委員 最後に一つ。大体そういうことだと思いますが、特に政府の監督関係でございますので、そうした特に基金だけではなくて、いろいろ問題になることですから、ぜひとも一般的に指導を強めてもらいたい。  今村理事長にもう一遍再確認しますけれども先ほどの検討すべきものは検討していくという問題ですね。三十九件のうち十件出ていますが、特に十件の問題で早急に実行するなら実行し、中労委とか高裁なんかに対立的な方法で控訴したり持ち込んだりしているが、これは取り下げることも含めて検討してもらいたいというふうに思いますけれども、それはいいですね。
  280. 今村譲

    ○今村参考人 先ほど申し上げましたとおり、基金としてもいろんな理由からいわゆる労働委員会あるいは法廷というところで争うという形になっておりますが、十分に検討して、いろんな種類のものがございますので、それについてはどういうようにするかということにつきまして熟慮してまいりたい、こういうふうに思います。
  281. 石母田達

    ○石母田委員 質問を終わります。
  282. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次に、小宮武喜君。
  283. 小宮武喜

    ○小宮委員 まず最初に、ことし四月以降八月までの完全失業者と失業保険受給者数が幾らになっておるのか、労働省にお尋ねします。
  284. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 本年に入りまして景気も一応順調に回復の過程をたどっておりましたので、完全失業者も、ことしの一月は百二十五万に達しておりましたが、それから逐次減ってまいりまして、四月に百十四万、六月に百四万、七月に九十九万と、ようやく百万を割ったわけでございますが、八月は例年若干高目に出る月でございまして、八月に百三万、再び百万台に乗せた、こういう状況でございます。  それから雇用保険の受給者数につきましては、御承知のように、本年に入りまして、一−三月、これは例年非常に高い水準でございますが、一月の九十六万から四月、五月以降逐次減りまして、五月に七十一万、それから七月に六十九万、八月に六十七万、大体予想どおりに順調な推移をたどっておるようでございます。
  285. 小宮武喜

    ○小宮委員 いまの説明でも明らかなように、大体完全失業者の数字も減ってきているわけです。これは、わが国の経済がようやく不況から脱出して回復基調にあるということが言われますけれども、一方わが国の造船産業は一昨々年の石油ショック以来深刻な不況に見舞われておりまして、そしてその不況も長期的なものでございまして、将来造船産業はどうなるのかと、関係従業員あるいは下請関連企業の方々も非常に心配しているわけです。  そういう状況から、次は運輸省に質問しますけれども、この造船産業の現状とこれからの見通しについてどのように見ておるのか御答弁を願いたい。
  286. 熊代健

    熊代説明員 お答えいたします。  先生ただいま御指摘のように、四十八年のオイルショックの後、海運関係で特にタンカーが非常に過剰状態になった。それに従いまして造船関係も受注が非常に減ってきた。あわせて、すでに成約を、しておりました船のキャンセルという問題が出てまいりました。四十九年、五十年と手持ちの工事量が減ってまいるに従いまして、かなり深刻な不況に突入しておるということでございます。  これがいつまでどういう状態かということにつきまして、実は本年の六月二十一日に海運造船合理化審議会の方から、作業していただきまして、将来の見通し等につきまして御答申をいただいたわけでございますけれども、昭和五十五年におきまして、量にしまして昭和四十九年の約三分の一、六百五十万総トン程度の日本の造船需要となるだろう。これは四十九年当時の約三分の一でございます。ただ、船の種類あるいは型等が変わってまいりますので、工事量的に——操業時間ベースと申しますが、それで見ますと大体六五%程度に落ち込むというふうに見ております。それからさらにそこから先につきまして、五十五年から六十年にかけましてはある程度の回復は見込まれると思いますけれども、その海造審の検討の途中でも、やはりオイルショック以前の非常に旺盛な建造需要というものまで回復するのは六十年まででも多少無理ではないか。そういう意味で、世界的な造船の需給バランスの破綻といいますか、そういったものが相当長期に続くというふうに見ております。
  287. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、昭和四十九年以降現在までに造船下請関連企業の労働者がどれくらい失業しておるのか、その点ひとつ御説明を願いたい。  あわせて、現在時点では五十一年三月ぐらいかあるいは九月時点までしかわかっていないと思いますけれども、その後、いま昭和五十五年ごろまではやはり造船の回復は非常に見通しが暗いという状況の中で、今後の下請関連企業の方々の失業も含めて大体どういうふうに見ておるのか、その点ひとつ運輸省の方から御答弁を願いたい。
  288. 熊代健

    熊代説明員 ただいま私どもの方で、ある程度推定の要素も含んでおりますが、四十九年の十二月末に比べまして今年の三月末の就業者の数の減少を、造船業、造船下請業、それから関連工業合わせまして三十六万一千人が三十三万六千人、差し引き二万五千人の減少になっておるというふうに把握しております。  それから先行きの問題でございますが、先ほど昭和五十五年の操業度が六五%というふうに申し上げましたが、現状におきます受注状況から見まして、五十二年の後半ないし五十三年に相当のところまで落ち込むというふうに考えておりまして、運輸省といたしましては、五十二年度の後半ないし五十三年度相当深刻になるという前提で考えております。そういう意味で、五十五年という時点ではなくて五十三年度末はどの程度かということで試算しております。この試算には当然超過勤務等をやらないとかそういった要素も加味しておりますが、おおむね一万三千人程度の過剰が生ずるのではないかというふうに試算しておりますが、あくまで試算でございますので御了承いただきたいと思います。
  289. 小宮武喜

    ○小宮委員 いまの話は五十三年度末ぐらいの見通しですけれども、それ以降の問題についてのはっきりした数字というか、あるいは推計はどのように考えられておるのですか。
  290. 熊代健

    熊代説明員 ただいま申し上げましたように、五十三年度にすでに六五%程度のところまで落ち込むのではないか。したがいましてそれから後は横ばい、五十四、五十五と横ばいといったような見通しを前提に操業調整といったようなものを考えておるわけでございます。その間の雇用に対します問題点としましては、新規採用の問題ですとか、自然減耗等もあり、やはりかなりの雇用対策を講じなければいけないと思いますが、五十三年度以降については、そこまで参りますと五十四、五十五にかけては特段の問題はないのではないかというふうに考えております。
  291. 小宮武喜

    ○小宮委員 特段の問題はないわけではないので、特段の問題があるから私はこういう質問をしておるのです。  それでは、運輸省はこの造船労働者の雇用の安定を図るためいかなる考えをお持ちなのか、今後の造船対策についての基本的な考えをお聞きしたいと思うのです。
  292. 熊代健

    熊代説明員 お答えいたします。  今後の造船対策全般にわたりまして簡単に御説明いたしたいと思いますが、一つはやはり工事量、いまの操業度六五%と申しますのも相当努力を必要とすることでございますので、仕事量の確保をするという意味から輸出船を振興するという観点で、輸出入銀行の延べ払い資金を確保するという点が第一点でございます。それからやはり中小造船業等に対しまして新規の受注分野といいますか、そういった面を開拓する。それから関連工業につきましては代替工事たるべきものを何とか見出すということでございます。それから中期的にやはり技術開発も進めまして、競争力の強いものあるいは今後需要の伸びるものに対する仕事を早目に見つける。それで、以上をやりましても、いまの世界全体のバランスの中でやります場合にやはり操業調整というものをやっていかざるを得ないということで、目下その調整方法等につきまして検討し、かつ各造船所からヒヤリングを実施しているところでございます。それからなおそのほかに、金融対策あるいは雇用対策等につきましては労働省とも十分協議の上、できるだけのことをやってまいらなければいけないと考えておるわけであります。
  293. 小宮武喜

    ○小宮委員 そういう抽象的なことを並べてみたって、それでは腹は一つもふくらまぬのです。きょうは局長は来られなかったのですか。——まあいい。  それでは、運輸省が今後の造船不況対策として考えられておる中に造船下請業の行う船舶解体業に対する助成の問題がございますが、これはどれくらいの労働者を雇用できるのか。それでその実施期間は大体どれくらいを考えておるのか、その点いかがですか。
  294. 熊代健

    熊代説明員 ただいま御指摘の造船下請業によります船舶解体業でございますが、現在考えておりますのは、百二十万総トン程度を年間解撤するという前提で考えておりまして、そういたしますと大体千五百人程度の雇用吸収になろうかと考えております。それから期間は、基本的には五十五年ということでございますけれども、解体業自身が資源の確保というような面からも有望であるということで、相当長期にわたったものを軌道に乗せるというような考え方で進んでおります。
  295. 小宮武喜

    ○小宮委員 この船舶解体業については、下請業者が親企業の協力を得て協業組合をつくって、その購入資金の融資を受けるに当たっては、下請業者は残念ながら担保能力がないということで親企業が保証するということになっておりますけれども、いろいろわれわれの聞いておる範囲内では、なかなか親企業の保証というのがむずかしい。また親企業の方では保証することを渋っておるということに対して、運輸省としてどういう働きかけあるいは根回しをしておるのか、その辺はいかがですか。
  296. 熊代健

    熊代説明員 ただいまの点につきましては、先生指摘のように協業組合をつくった上でやらせたいということで準備をいろいろ進めております。その中で、やはり小さい企業が集まるということでございますので、いまおっしゃいましたような信用の付与あるいは場所の提供ということで、その親企業といいますか、その協力が絶対の必要条件だということで、造船工業会等を通じまして指導すると同時に、いま申し上げました協業組合が具体化する段階で一層具体的に指導してまいりたいと考えておるわけであります。従前もある程度やっております。
  297. 小宮武喜

    ○小宮委員 ドックを提供するとか施設を貸与するとか、そういうような問題はさほど問題ない。ただ問題は、購入資金の融資を受けるに当たって親企業が保証するということについて、親企業の方で渋ってはいないのか。現に私の耳に入っておるのだから。そういうことではせっかくのこの船舶解体業というのが、運輸省が計画してもうまくいかぬのじゃないかということを私は心配してこのことを言っておるわけです。そうしなければ、解体業というものは台湾あたりが一番安いのだからそこでどんどんやる。そうすると日本で解体業をやろうとしても台湾とか韓国に持っていかれる。ということになれば、せっかくの計画が実際問題としては壁にぶち当たるという問題があるから言っておるわけですが、監理課長の方がよく知っておるのか船舶局長あたりがよく知っておるのか、ようわからぬけれども、どうも少し私が意図するような答弁が出てこないようですけれども、それでは次に移ります。  ここに「今後の造船対策についての基本的考え方」というて船舶局から資料が出ておるわけです。これによれば、やはりこの中小造船の今後の対策として、需要確保のため、輸出確保や事業分野拡大のため調査するということが言われておるわけですが、こういうような抽象的なことでなくて、輸出の拡大がどうしたらできるのか、あるいは事業分野をどうするのかという、やはり具体的なものを説明していただかぬと、そのためにいま調査費をつけておるわけだから、またそれを要求もしておるわけだから、その点についてただ抽象的に言うんじゃなくて、そういうような輸出確保をするためにはどういうことをするのか、またどういう方法があるのか、あるいは事業分野拡大を図るためにはどうしようとしておるのか、また可能性があるかどうかということを含めてひとつ説明してください。
  298. 熊代健

    熊代説明員 まことに申しわけないのですけれども、いまおっしゃいました点につきまして抽象的にじゃなくて具体的にと言われたのですけれども、私直接の担当でない面もありまして、ある程度具体的に御答弁しかねる点は御了解いただきたいと思うのですが、中小造船業の需要確保のための調査等の遂行ということで五十二年度調査費を要求いたしておりますのは、一つは、新規の需要といたしまして輸出市場でございますが、発展途上国、たとえて言いますとアフリカ、南米、中近東あるいは東欧圏といったようなところの、中小造船業に向いた船種がかなりあると予想されるのですが、そこらの市場開拓という面の大きなネックとしまして、それらの国における輸入関係の手続がわからないとか、あるいは船舶関連の規制法規の状態がわからないといったようなことがございますので、そういうものを早急に調査しまして、中小造船業の輸出のために手引書のようなものを早急につくりたいというのが一点でございます。  それからもう一つの新しい分野としまして、これは船舶局内部に検討委員会をつくりまして、学識経験者も入れて検討していただくということでございますが、大企業における陸上兼業部門といいますか、そういったものに対応したものが中小造船業でできないだろうか。いずれにしましても鉄を工作するわけでございますので、どうしてもそういう分野にならざるを得ないと思いますけれども、そういった面で新分野の開拓ができないだろうかというふうに考えておる次第でございます。
  299. 小宮武喜

    ○小宮委員 次に、いまも説明の中でもちょっと触れられましたように、造船産業の操業度の調整について具体的にどのように考えられておるのか、その点いかがですか。
  300. 熊代健

    熊代説明員 実はただいまその面を最終的に詰めておる段階ではございますけれども、基本的には、造船法第七条に業務運営の改善について造船業等につきまして勧告をすることができるという条文がございますので、その勧告を、造船業を大手、中手、あるいはその下のグループといったようなクラファイをした上で、大手につきましては、たとえての話ですけれども、たとえば五十三年度は六三%程度、中手につきましては七〇%程度といったようなことで、操業時間で上限を設定してみんなで協力してやってもらうような形での勧告を個別にやってまいろうというような趣旨を考えております。目下そういう点につきまして個別に各社をヒヤリングしている段階でございます。
  301. 小宮武喜

    ○小宮委員 この操業度の調整に伴う雇用対策として、いわゆる雇用調整給付金制度の継続だとかあるいは適用範囲の拡大というようなことがあるわけですけれども、時間がございませんからひとつ労働省にお尋ねしますけれども、この制度が発足してから現在までに造船下請関連企業の雇用調整給付金制度の適用状況はどうなっておるのか、その点ひとつ御答弁願いたい。
  302. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 この雇用調整給付金制度が発足しましたのは昨年の一月ですが、造船関係に適用になりましたのはおおむね去年の五月あたりからでございます。それからことしの七月までの支給状況を見ますと、造船関連で船舶用の職別工事業、設備工事業、船舶用化学機械装置製造業、船体ブロック製造、舶用機関製造業、大体こういった職種が関連下請企業として適用になっております。件数で事業所数が八百三十七件、休業延べ日数で約二十万三千、金額にいたしまして約五億二千二百万円、こういう状況でございまして、これを実数に直しますと、これは推計でございますが、約二万七千人ぐらいの人が実人員として適用の対象になっておるのではないか、こういうふうに考えております。
  303. 小宮武喜

    ○小宮委員 運輸省がいま説明がありましたように今後の造船産業に対して操業度の調整をやる場合の雇用対策として、いわゆる職業転換給付金制度の造船産業への適用の問題がございますが、ではまず現在のこの職業転換給付金制度の対象職種と適用人員について、御参考までにひとつ御答弁を願いたい。
  304. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 職業転換給付金というのは、雇用対策法によりましていろいろな中身が盛られておりますが、これは主として身体障害者とか中高年齢者とか、こういった就職困難な人たちに対しまして就職援護のための各種の援護措置がとられることになっております。いま御指摘の造船に関連しての御質問の中身は、主として一定の業種からの離職者に対して特別の措置をとる、こういうことについてのお尋ねだと思いますが、これは過去におきましては、いわゆる日米繊維協定による繊維機械のスクラップ化、あるいは港湾の関係で、はしけの買い上げに伴ってはしけからの離職者、こういった人たちが対象になっておりますが、現在では漁船関係が適用になっております。したがいまして、造船につきましてこの職業転換給付金制度を適用するかどうかということにつきましては、いま御質問の中にありましたような、海造審の答申によりまして昭和五十五年度の操業率が六五%程度まで落ちる、その際の調整の措置がどういうふうにとられるのか。言ってみますと、繊維の場合にありましたように、繊維機械を買い上げしてスクラップ化するというように、造船能力が千九百万トンから六百五十万トンになる、そうすると残りの千二百万トンを一体どうするのか、これを、船台なりあるいはそういった施設をスクラップ化するのか、そういうことによって調整をするのか。何かそういう政策的な措置が明確にとられませんと、現行の雇用対策法によります職業転換給付金によるこの手当制度の対象になり得ないわけでございます。そういった点につきまして、私どもはこの雇用調整給付金制度なり職業転換給付金制度をどうやって適用していくか、その検討は進めておりますが、いま直ちにこれを適用することについてはいろいろな難点があるということを御理解いただきたいと思います。
  305. 小宮武喜

    ○小宮委員 それで、職業転換給付金の造船産業への適用について、運輸省としてはどういうふうに考えておるのか。
  306. 熊代健

    熊代説明員 ただいま労働省の方から御答弁いただいたわけですけれども、われわれとして、操業調整をやっていく、それに伴う離職という状態が想定されるということで、ただいま御指摘のようないろいろな問題点がございますけれども、できるだけ職業転換給付金制度が適用できる方向でお願いしたいということで、労働省の方にもいろいろ御協力いただいていろいろ検討はしておりますけれども、ただいま言われたような問題点があるということでございます。基本的には適用方をお願いしたいという立場で御協議いただいているということでございます。
  307. 小宮武喜

    ○小宮委員 労働省の見解は、やはり造船施設を廃止するか、そういうような場合に適用だというような考え方のようですけれども、言うてみれば、施設を廃止するから過剰人員が出る、だから過剰人員に対しての救済措置を考える。しかしながら運輸省の方の考え方は、一応は施設という問題もあるけれども、やはり造船の施設そのものが一般の、たとえば繊維の機械のようにはなかなかいかないわけです。またいま言われたように、将来、昭和五十五年以降か六十年以降か知りませんけれども、とにかくまた回復してきた場合に、ドックをつぶしてしまうとか施設をつぶしてしまえば、またそれを回復するのにかなりの金もかかるし、また時間もかかるわけですから、そういうような意味では、運輸省としては造船法の七条に基づいて——もちろん造船法の七条にしか操業短縮の勧告制度がないわけですから、造船法に基づいて操業度の短縮勧告を行おうということで、結果的には過剰人員が出るということは明らかですから、局長も余り施設、施設ということにこだわらぬで、この問題はもっと弾力的に運用してもらいたいというふうに考えますけれども、この点についてまず大臣に、造船産業への職業転換給付金制度の適用の問題についてひとつ所見を聞いておきます。
  308. 遠藤政夫

    ○遠藤政府委員 いま小宮先生から施設云々というお話が出ました。私は必ずしも施設廃棄といったことにこだわっているわけではございません。実はこの問題につきましても再三関係の各団体、関係労働組合、地方団体等から御陳情いただいておりまして、雇用調整給付金制度と職業転換給付金制度適用についての要請がございます。実は私、先月の下旬に、地域的に一番影響度の高い佐世保と長崎へ現地調査に職員を連れて行ってまいりました。先ほど運輸省の方から、すでに四十九年十二月から今日までの期間中に二万五千くらいの減員になっている、五十二年末から五十三年にかけて一万強の減員が見込まれる、こういうお話でございます。先ほど私が申し上げました雇用調整給付金制度の適用対象になった人たちの実数を御参考までに申し上げますと、約二万七千くらいと推定されます。そもそも雇用調整給付金制度は不況期間中の一時的な休業に対する施策でございますから、本来造船不況になじまない性格のものです。したがって、ある一定期間休業してこの雇用調整給付金によってカバーされましても、結果は離職につながったと見て差し支えないと思います。その数は先ほどの数にちょうど該当するのじゃないかと思います。  そこで問題は、私は佐世保、長崎の現地でいろいろお話を伺っておりますと、影響が一番深刻な長崎、佐世保地区ではもうすでに操業度が六五%に落ちているのです。五十五年に推計されるところまで落ちてきている。しかも減員状況もこの一年半の間に、先ほどの二万五千のうち佐世保、長崎地区で約五千になっております。ということは、操業度が五十五年に六五%まで落ちるという海造審の推計値から見ますと、もうすでにそこの域に達している。そうすると、これから先、果たして減員になるのかどうかという問題が一つございます。それからこういう者に対して職業転換給付金という制度を適用することが果たして妥当なのかどうなのか、そこに基本的な問題が一つございます。私はやらないと申し上げているわけでは決してございませんけれども、職業転換給付金制度を適用しようという真意は一体どこにあるのか。それから雇用調整給付金制度、これはそもそもなじみませんから、先般来私どもで検討しております雇用安定基金制度でこういう中長期にわたるいわゆる構造的な不況業種に対応する対策は検討いたしておりますが、それと違って、転換給付金制度について、私は非常に大きな疑問を持っているわけです。いままで出てきた人をこれから一体やるのかどうか。これは先生議論するつもりはございませんけれども、簡単に済む問題じゃございませんで、基本的な問題を私はここで申し上げておきたいと思うわけであります。  そういうことで、造船業のこれからの将来の見通しそのものがきわめてあいまいだということ。その間に仮に安定基金なりあるいは職業転換給付金で支えることによって一体どうなるのか。支えた結果、三年後にまた同じ状態を繰り返すことになるならこれは何ら意味がない。そこらあたりを明確にしていただかないと、せっかく私どもいま鋭意検討して適用しようと準備しているものが何の役にも立たなくなる。ここのところを御理解いただいて、造船業に対する本格的な政策検討の点を明らかにしていただきたいということを申し上げているわけです。
  309. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 残念ながら造船業界の先行きというものは、またこれから変わってくるかもしれませんが、いまのところ見通しは、先ほど運輸省からも言っておるようになかなか大変でございます。しかし、そうかといって、日本の産業を支えた——まあ最近は自動車とか弱電でありますけれども、今日でもなお日本のドルをかせいでおる五つの指の中へ入っておるわけでございまして、日本の産業にとっては大変重要な仕事でありますだけに、われわれはこれを放置しておいてはならない。しかし、輸出の方も国内の需要もなかなか今日の状況で減ってくる。そこで、あの繊維産業とは設備が違いますけれども、当時私もアメリカへ何回も行きまして、繊維産業の整備計画を立てたわけでありますが、またばっと空気がよくなった。いままたちょっと悪くなっておりますけれども、やはりよほど思い切った、造船業界なりあるいは下請業界の方々相当な覚悟をしなければならぬじゃないかという感じがいたしております。そういう覚悟と同時に、われわれ政府としてもやるべきことをやらなければいかぬ。職業転換給付金の問題も、いま先の見込みのないのにやってもという空気もありますけれども、そういうことがあって、効果のあるような方策を立てていかなければならないということで、運輸省とよく相談しながら何とかこの危機を切り抜けるような方途を考えていきたいと思っております。
  310. 小宮武喜

    ○小宮委員 いろいろ議論したいと思いますけれども時間がございませんで、私の持ち時間の幾らかを割いて関連でひとつ……。
  311. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 小宮さんの時間をいただきまして、一言だけ労働大臣と厚生省関係の皆さん方に御要望しておきたいと思います。  社会保険の診療報酬支払基金、この機関には、御案内のように大きな大きな組合と小さな小さな組合があるわけでございまして、先ほど石母田委員から、小さな小さな組合を代表して大きな組合を告発する一つの質問があったわけでございます。これは特に今村さんのいままでの経過の中でいろいろ確認をしたり何かしておる文書もありますけれども、これは非常に重要な問題を含んでおると思うのです。労働組合というのは、政府でもなければ会社の当局でもないのです。自由な組合です。脱退もできれば加入もできる。その組合が一つの基本方針をつくる。たとえば共産主義に反対だ、あるいは共産党を排撃するということをつくったところで、これは憲法違反なんということは言われない問題があるわけですね。そういう問題がありますので、特に今村さんが確認事項という口頭のところで、先ほどのお答えではある前提のもとでそういうお答えをしたということですけれども、それにしても多少軽率な点があると私は思う。これについて、この次のできるだけ早い機会に、ひとつ労働大臣、厚生省の関係、あるいは今村さんにももう一度御足労願って御質疑をしてみたいと思いますので、その点を要望いたしまして、きょうの私の関連の御質問を終わらせていただきます。よろしくお願いします。
  312. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十分散会