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1976-10-14 第78回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月十四日(木曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 熊谷 義雄君    理事 石井  一君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 戸井田三郎君    理事 葉梨 信行君 理事 枝村 要作君    理事 村山 富市君       伊東 正義君    越智 伊平君       大橋 武夫君    田中  覚君       稲葉 誠一君    金子 みつ君       田口 一男君    田中美智子君       寺前  巖君    大橋 敏雄君       岡本 富夫君    小宮 武喜君       山口 敏雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 早川  崇君  出席政府委員         厚生省公衆衛生         局長      佐分利輝彦君         厚生省環境衛生         局長      松浦十四郎君         厚生省環境衛生         局水道環境部長 国川 建二君         厚生省医務局長 石丸 隆治君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 曾根田郁夫君         厚生省援護局長 出原 孝夫君         社会保険庁年金         保険部長    河野 共之君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     大高 時男君         法務省民事局第         五課長     宮崎 直見君         文部省初等中等         教育局審議官  奥田 真丈君         自治省財政局公         営企業第二課長 吉本  準君         消防庁予防救急         課長      持永 堯民君         参  考  人         (日本住宅公団         理事)     白川 英留君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十二日  辞任         補欠選任   田村  元君     越智 伊平君   中村 梅吉君     瓦   力君   寺前  巖君     中島 武敏君 同日  辞任         補欠選任   中島 武敏君     寺前  巖君 同月十三日  辞任         補欠選任   塚田 庄平君     森井 忠良君     ――――――――――――― 十月七日  失業対策事業就労者賃金改善に関する請願  (大橋敏雄紹介)(第三七八号)  身体障害者雇用促進法改正に関する請願(田  邊誠君紹介)(第三七九号)  新鮮血対策確立に関する請願大橋敏雄君紹  介)(第三八〇号)  各種障害年金制度改善に関する請願田邊誠君  紹介)(第三八一号)  中国残留日本人孤児肉親不明者調査等に関  する請願和田耕作紹介)(第三八二号)  成人病予防法制化に関する請願下平正一君  紹介)(第三八三号)  同(中澤茂一紹介)(第三八四号)  同(中村茂紹介)(第三八五号)  同(原茂紹介)(第三八六号)  柔道整復師法の一部改正に関する請願(土橋一  吉君紹介)(第三八七号)  同(和田耕作紹介)(第三八八号)  同(中川一郎紹介)(第四四九号)  同(亀山孝一紹介)(第四七一号)  同(藤本孝雄紹介)(第四七二号)  同(石母田達紹介)(第四八五号)  同(庄司幸助紹介)(第四八六号)  療術の単独立法化阻止に関する請願外一件(小  澤太郎紹介)(第三八九号)  同(折小野良一紹介)(第三九〇号)  同(木村俊夫紹介)(第三九一号)  同外二件(原健三郎紹介)(第三九二号)  同外三件(武藤嘉文紹介)(第三九三号)  同(粟山ひで紹介)(第三九四号)  同(佐々木秀世紹介)(第四五〇号)  同(篠田弘作紹介)(第四五一号)  同(地崎宇三郎紹介)(第四五二号)  同外三件(坪川信三紹介)(第四六九号)  同(金子一平紹介)(第四八七号)  基準看護指定病院入院患者に対する付添看護条  件緩和に関する請願粕谷茂紹介)(第三九  五号)  同(渡辺武三紹介)(第三九六号)  国民健康保険における療養給付費補助金の定率  引き上げ等に関する請願竹村幸雄紹介)(  第三九七号)  同(山田芳治紹介)(第三九八号)  同(藤本孝雄紹介)(第四八四号)  重度戦傷病者及び家族援護に関する請願(粟  山ひで紹介)(第三九九号)  看護婦家政婦紹介所所属看護婦家政婦に労  働保険適用に関する請願粕谷茂紹介)(第  四〇〇号)  同(渡辺武三紹介)(第四〇一号)  福島県喜多方労働基準監督署復活に関する請  願(大橋敏雄紹介)(第四〇二号)  長野県篠ノ井労働基準監督署復活に関する請  願(大橋敏雄紹介)(第四〇三号)  同外一件(小沢貞孝紹介)(第四八三号)  就学勤労青少年就学時間確保に関する請願  (鈴木善幸紹介)(第四四〇号)  市町村社会福祉協議会充実強化に関する請願  (鈴木善幸紹介)(第四四一号)  国民健康保険改善に関する請願荒木宏君紹  介)(第四四二号)  同(神崎敏雄紹介)(第四四三号)  同(東中光雄紹介)(第四四四号)  同(正森成二君紹介)(第四四五号)  同(三谷秀治紹介)(第四四六号)  同(村上弘紹介)(第四四七号)  予防接種による被害者救済に関する請願(大  橋敏雄紹介)(第四四八号)  旧満蒙開拓青少年義勇軍関係者処遇改善等に  関する請願外一件(中川一郎紹介)(第四五  三号)  同(坪川信三紹介)(第四六八号)  建設国民健康保険組合に対する国庫補助増額に  関する請願高沢寅男紹介)(第四六五号)  同(津金佑近君紹介)(第四八八号)  医療制度改善に関する請願田口一男君紹  介)(第四六六号)  医療保険制度確立に関する請願田口一男君  紹介)(第四六七号)  老人福祉に関する請願山田久就君紹介)(第  四七七号)  日雇労働者健康保険任意継続制度導入に関す  る請願多賀谷真稔紹介)(第四七八号)  失業対策事業就労者賃金及び就職仕度金の増  額等に関する請願多賀谷真稔紹介)(第四  七九号)  准看護婦制度廃止に関する請願外十四件(藤本  孝雄紹介)(第四八〇号)  脳卒中対策強化に関する請願中川利三郎君  紹介)(第四八一号)  母性保護に関する請願寺前巖紹介)(第四  八二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十月十三日  歯科医療の差額徴収問題に関する陳情書  (第五〇号)  愛知県に理学療法士及び作業療法士養成施設設  置に関する陳情書(  第五一号)  国民健康保険事業財政確立に関する陳情書外  十二件  (第五二号)  市町村社会福祉協議会充実強化に関する陳情  書外九件  (第五三号)  身体障害者等福祉施策改善に関する陳情書外  一件(第五四  号)  生活保護及び福祉年金制度改善に関する陳情  書(第五五号)  社会保障制度改善等に関する陳情書  (第五六号)  社会医療保障制度拡充等に関する陳情書  (第五七号)  重度戦傷病者及び家族援護に関する陳情書外  二件  (第五八号)  保健所に対する国庫負担制度改善に関する陳情  書  (第五九号)  保育所措置費徴収基準額引き下げ等に関する  陳情書  (第六〇号)  保育事業の推進に関する陳情書  (第六  一号)  乳幼児、重度心身障害児者に対する医療費の公  費助成制度確立に関する陳情書外二件  (第六二号)  救急医療体制の整備に関する陳情書外二件  (第六三号)  難病対策に関する特別措置法制定に関する陳情  書外三件  (第六四号)  結核対策強化に関する陳情書  (第六五号)  公衆浴場確保に関する陳情書  (第六六号)  個室付浴場業の禁止に関する陳情書  (第六七号)  新設水道事業に対する助成措置に関する陳情書  外三件  (第六八号)  労働行政サービス確立に関する陳情書外一件  (第六九  号)  雇用及び失業対策緊急措置法案成立促進に関  する陳情書外一件  (第七〇号)  失業対策事業強化拡充に関する陳情書外二件  (第七一  号)  全国一律最低賃金制実現に関する陳情書外四件  (第七二号) 季節労働者雇用安定に関する陳情書外一件  (第七三  号)  原子爆弾被爆者援護に関する陳情書外三件  (第七四  号)  強制捕虜抑留者補償等に関する陳情書  (第七五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  厚生関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 熊谷義雄

    熊谷委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸井田三郎君。
  3. 戸井田三郎

    戸井田委員 去る十月四日の毎日新聞血管造影剤トロトラストに関する問題が大きく載っております。この問題は、私たちの世代の者にとって、あの過ぐる大戦の中で多くの戦傷病者を出しているわけでありますから非常に関心を呼んでいるわけであります。  そこで、このトロトラストというものは大ぜいの戦傷患者のどの部分の者がそれに該当するのか、あるいはそうでないのか、こういう面から考えると、このままでいけば大ぜいの者に不安が残っていく、こういうふうに感ずるわけであります。そういう観点から、このトロトラストによる肝臓がん、こういう発がん過程と申しますか、こういう面からひとつお聞きしたいと思います。  これによりますと、これは横浜大学医学部森先生が発表しておるわけでありますが、大体どういうような形で発がん状況を起こしているのか、どういう範囲で起こしているのか、お聞きしたいと思います。
  4. 出原孝夫

    出原政府委員 トロトラストにつきましては、特に昭和五、六年ごろから昭和十八年ごろまでの間に旧陸軍病院などを中心にいたしまして、者に対する手術等の必要が出てまいります場合に血管造影剤として使われたものでございます。ドイツから輸入されておって、相当高価なものであったと承知をいたしておりますが、大体全期間を通じまして二万本ないし三万本のトロトラストが輸入されたというように承知をいたしております。  で、トロトラスト造影剤、これは二酸化トリウムというものが中心でございまして、これが微量ながらアルファ線をずっと放射するということで、これを注射して造影剤を打ったことによって手術が成功して助かった方も多いわけでございますけれども、それが蓄積をしてまいりまして、二十年、三十年後に、体の中に残っておって、悪性腫瘍、特に肝臓に集中するようでございますが、それが出てきておるということでございます。  トロトラストによります現在わかっております状況は、先ほど御指摘のございました森先生研究によるものでございますけれども、過去のデータが非常に少のうございますので、少ないデータの中から、国立病院四カ所で把握されましたトロトラスト注入者百四十七名についての追跡調査研究データによりますと、戦前を中心にして、トロトラストを注射された人の百四十七名のうち大体三六%が現在すでにお亡くなりになっております。これと対照的に、トロトラストを打たないで済まされた方の場合の現在における死亡率は二二%でございますので、大体五割以上よけいお亡くなりになっておるわけでございます。  その死亡の原因を見てまいりますと、肝臓悪性腫瘍で亡くなった者が百四十七名中六名ございまして、これは率で申しますと四・一%でございます。トロトラストを打たない方についてはほとんど、一%に満たない数字でございまして、大体十五倍の死亡率でございます。なおこのほか、トロトラストを打った方には血液がんでございますとかあるいは脾臓に若干多く集積が見られて、がんが発現しておるということでございます。
  5. 戸井田三郎

    戸井田委員 いまの答えの中で、主に陸軍病院血管造影剤として、手術をする場合にこれを使ったということでありますが、毎日新聞なんかを見ますとこういうふうに書いてあるのです。「当時も放射線障害が懸念されたものの、身障者になるよりは“まし”という富国強兵策から盛んに使われた。」ということであります。この表現はどうかわかりませんけれども、主に軍に使われたということと結びつけてみると、軍隊というところは、われわれ病院で経験してみると非常に荒い療法もされたりしますから、そういうことから見るとこういうような憶測を生む可能性も出てくるように思うのです。でありますから、いまの御答弁の中では非常に高価な薬だから、逆にその面から見れば、高価な薬だから戦傷病者に使ってみたんだというふうにもとれますし、ここのところあたりは非常に問題だと思うのです。これがなぜ軍にだけ使われたのか、一般民間ではこれを使わなかったのかということについてお聞きします。
  6. 出原孝夫

    出原政府委員 その当時の事情につきましてはつまびらかにいたしませんですが、外科的な手術が特に戦傷病者中心に大きな問題になるということから、軍が、ドイツにこういういい薬があるということで、情報を承知して輸入して、もっぱら軍隊中心に使っておられたということであったように承知をいたします。
  7. 戸井田三郎

    戸井田委員 このトロトラスト禍という、肝臓がん障害、この問題を考えると、戦傷病者、特に手術をした人たちはみんなそういう心配を持つのです。これで見ると、現在残っているのは大体六千人ぐらいじゃないかということも書いておられますが、昭和五年から日本で使っているというのですから、昭和五年から終戦当時までの間の中で戦傷病者として手術を受けた人はたくさんいると思うのです。この新聞なんかで見て、またいま御答弁にもあったように、二、三万本ほど輸入したというのですから、使った方というものが、完全に三万本使ったにしても三万人ということになるのです。しかしながら、実際の戦傷病者という数はもう大変な数だと思うのですね。何百万人になりますか。大体それはどのくらいの戦傷者の数になりますか。
  8. 出原孝夫

    出原政府委員 戦傷された方の数字は実は私ども正確に承知をいたしておらないのでございます。終戦当時に軍人軍属戦傷者であったという人の数が、総司令部から御要求がございまして見ておりますのは大体二十五万弱が軍人軍属、準軍属を含めた数字でございますけれども、しかし、これはその時点において援護の対象になり得べきものだけを集めたというような状況であったと承知されますので、実際には、一般に言われておりますのは、戦死をなさった方々の恐らく同数以上の方が戦傷をしておられるであろうということが、これは根拠はございませんが、常識的に言われていることでございます。したがいまして、同数以上と見ました場合に、過去の大戦を通じての亡くなった方が二百十万というように言われておりますので、二百万あるいはそれ以上の方々が戦争でけがをされたということがあったのではなかろうか。これはもう全くの推測でございます。
  9. 戸井田三郎

    戸井田委員 その推測の二百万と想定してみて、もし三万人に打ったという状態であっても、数からいったらそう多いものではないと思いますね。しかしながら、その受ける心理的な影響というものは、現在生存されている傷痍軍人にしてみたら、おれの中にも打たれたのじゃないかなというような意味で不安におののいているというようなことが想像できるわけなんです。そうすると、そういった人たちのこれからの問題としていろいろ考えていかなければならないわけです。一方に、これを調査をして、君はトロトラストを打った、君は打ってない。打っていないと言われた人は喜ぶし、打っていたと言われた人はおれも近くがんになるのかなというようなことになるわけでありますが、しかし、この問題はいずれにしても重要な問題ですから、その選択をしなければならないと思います。どちらにしても選択をしなければならない。そういうことに考えてみて、厚生省ではいまどういうようなお考えなんでしょうか。
  10. 出原孝夫

    出原政府委員 お話の中に出てまいりました、トロトラストを打った患者肝臓がん中心にいたしまして悪性腫瘍にかかられることが非常に多い。これは死体解剖をいたしました例では六割の方が肝臓がんであったという結果が出ておりますが、死体解剖そのものがかなり例としての片寄りがございますので、実際の面では私が申し上げました、戦後三十年を経て四%。ただこれは、ドイツの例はもっと多いようでございますので、もっと調べればもう少しあるいはふえていくのではないかという推測がございますが、六割というのはそういった特殊なケースでございます。しかし、それにしても肝臓がん中心にしたがん発現率が多いということで、これを御本人に、知らないでおられる方にいろいろ調べてみてその上でお知らせするということは、日本人の持っておりますがんに対する感覚からいって非常にむずかしい問題をはらんでおります。そういう意味で、行政当局としましても非常にこの点の進め方についてはずっと悩んできておった問題でございます。森先生研究お願いいたしてきましたのも、そういうことを含めて、まず実態を明らかにしようということから進んできたわけでございます。おっしゃいますように、現在傷痍軍人が十五万人おられます。十五万人の中で、森先生の御推定でも大体五、六千人トロトラストを打った方がおられるのじゃなかろうかという御推測がございますが、これもかなり漠然とした、資料不足の中での一つ推測でございますので、現在それを明らかにするためには、傷痍軍人皆さん方に、方法はいろいろとあると思うのでございますが、アンケートなりあるいは人によっては実際に健康診断をして、その上で見つけ出すというようなことが必要になってまいります。それと同時に、いま申し上げましたような御本人に、心配のない方にはよろしいのでございますが、そういった方々にどのように対処していくかというもう一つの問題がございます。それを合わせて、私どもまず調査に入ることについて現在準備をし、協議をいたしておる最中でございますが、おっしゃる問題がまだ、調査過程においてどうするかということは大きな問題でございます。
  11. 戸井田三郎

    戸井田委員 実際にはいま十五万人の傷痍軍人がおられるというわけですが、十五万人の傷痍軍人全員レントゲン照射をしてみれば、肝臓の中にこれが蓄積をされているというわけでありますから、実際はわかると思うのです。  それで、いま大体五、六千人だと森先生お話では言われておるのですが、いま御答弁の中で、そういう心配があったから森先生に依頼したのだとおっしゃいましたが、これは厚生省の方からどういう考え方、そして戦後どういうような時点において森先生に委嘱をするというお考えになられたのか。これは、厚生省のこの問題に対する一つの態度として伺いたいと思うのです。
  12. 出原孝夫

    出原政府委員 トロトラストに関しましてはいろいろ基本的にわからないことが多うございますので、学術的な部面からのアプローチが非常に必要であるということがございます。したがいまして、特にこれは放射線の問題でございますので放射線全般にかかわってきて、それと、悪性腫瘍ということでは厚生省だけでございませんで、文部省その他においても行われてきておるわけでございます。これはもう十数年以前からのことでございますが、厚生省がこの問題を中心にいたしまして学者の先生方お願いするというようにいたしましたのは、昭和四十九年度に名古屋大学の高橋先生のチームにお願いをし、それから五十年度、五十一年度は森先生に「特異的肝障害及び血液疾愚の解明並びに治療に関する臨床的研究」とい広課題でお願いをいたしておるわけでございます。
  13. 戸井田三郎

    戸井田委員 そしてこれはその後、いまのお話ですとトロトラストというものが造影剤として適切でないというような判断が出た時期がまだわからないわけですが、この造影剤を使ってはいけないというような指示をしたということがこの新聞の中にある。「終戦後も二十五年に厚生省が使用禁止するまで大学病院でも一部使用したが、この注射を受けた人は、ドイツ輸出記録からみて三万人前後」なんですが、とにかく二十五年に禁止したのですね、「するまで」というのですから。その禁止したのはどういう観点からですか。
  14. 出原孝夫

    出原政府委員 かなり昔のことでございますので正確な記録はございませんが、トロトラストの持っておる微量ではございますがアルファ線というのは、がん関係からいえば非常に質の悪い放射線でございます。そういう意味で、これは放射線問題としては非常に危険であるという観点からこの薬を使うのはやめようということに決まったことでないかと思います。
  15. 戸井田三郎

    戸井田委員 そうすると、アルファ線が危険であるということが判断できる学術的な知識というものは、恐らく終戦前も同じような知識があったのだと思うのです。そうすると先ほど言った、軍の病院であるし、その治療効果の方を重視して害の方を軽く見て使ったということが考えられるようになってくるのですが、これはどうなんでしょうか。
  16. 出原孝夫

    出原政府委員 当時につきましてのそういった意味での記録はございませんけれども、先生のおっしゃるようなことがあったのではなかろうかと私どもも推測をいたしております。
  17. 戸井田三郎

    戸井田委員 そうすると、当時の陸軍病院とか海軍病院、軍の病院だと思いますが、それにカルテや何かはいまどのくらい残っているのですか。
  18. 出原孝夫

    出原政府委員 旧陸軍病院でのカルテも現在ほとんど残っておりません。先ほど申し上げました森先生の御研究も、旧陸軍病院のわずかに残っておる四病院、これも全部でなかったようでございますが、二万程度のカルテを取り出して、その中から研究をしていただいたということでございまして、大部分は滅失をしておるというように考えられます。
  19. 戸井田三郎

    戸井田委員 それを聞いて私はちょっとおかしいと思うのです。それは、多くの傷痍軍人治療を受けて亡くなったり何かすると、その亡くなった方に対する後の援護の問題に関係してくるわけですね。私たち援護の問題でいろいろ相談を受けるわけですが、主にその当時の病状の記録というものが大概なくなって、診断の上で非常に困るという例が非常に多いのです。これは民間の場合だったらあれですけれども、陸軍病院とか海軍病院というような軍の病院であれば、当然公務のものであるから将来の補償という問題にいろいろと関連してくるわけですね。そういうような民間病院とは違うところのカルテが、戦災や何かで爆撃されてなくなってしまったというのだったらわかるけれども、そうでないところで、将来の補償の証拠のために残さなければならない性質を多分に持っておるカルテを、そう簡単に紛失するということは非常に不謹慎だというように思うのですが、どうですか。
  20. 出原孝夫

    出原政府委員 旧陸軍病院が現在国立病院移管をされているのが多いのでございますけれども、移管関係がかなりございましたことと、御案内のような戦後の混乱期を経ましたので、その時点でなくなったものが多いというように承知をいたしております。
  21. 戸井田三郎

    戸井田委員 時間もそうありませんのですが、いずれにしても、現在残っている傷痍軍人方々心配を取り除くことが一つ。もう一つは、その人たちに対してどういうような救済なり援助なりをしていくか。これは非常に重要なことだと思うのです。特に、その病気にかかって入院されておる人もおると思います。これも新聞で見ますと、「わが国にはトロトラスト肝臓蓄積している“未発見の患者”が六千人近くも生存しているが、トロトラストが原因と気づかず闘病の日々を送っているのが実態で、国は救済措置を講じていない。」こういうふうに書いてあるのですが、もちろん、トロトラストのあれがあるということを知らないでということは、よく、がん患者に対しては医者ががんだという宣告をすることが非常にむごたらしいからというようなことで、わかっていてもしない場合もあります。ですから、これがそういう場合に該当して知らせないのか、あるいは、そんなことを知らせてまた問題を起こしちゃいかぬからというようなことで、かえってふたしておいた方がよかろうというようなものなのか、こういうような点についてはどうお考えですか。
  22. 出原孝夫

    出原政府委員 順序を前後いたすかと思いますが、まず、トロトラスト患者で現在すでに障害を持っておられる方につきましては、医療の面では、私ども特援法と言っておりますが、戦傷病者特別援護法というので医療を現物給付でするという制度ができておりますので、そういう意味での受けざらは現在すでにあるわけでございます。それから、トロトラスト障害が出たために生活上の問題があるという場合には、恩給法によりまして傷病恩給の取り扱いができるということでございますので、トロトラスト障害をお持ちの方についての所得保障なり医療の保障というものは制度的にはできておるわけでございます。ただ問題は、持っておられる方を、トロトラスト患者であるということを掘り出してどうするかという問題でございます。これが先ほど申し上げました一番むずかしい問題になるということでございます。  なお、現在私どもが関係の部局あるいは関係の他の省庁とも協議をいたしておりますのは、こういった方々を具体的に調査をして、その方々トロトラスト障害を発見する。まず十五万人の傷痍軍人の中から発見をした上でその措置をとっていくということで、その研究の中に当然健康診断あるいは医療——医療自体は、進んでまいりましたらこれは当然特別援護法の方でお取り扱いできるわけでございますが、含めて総合的に展開できるようにいたしたいということで検討いたしておるわけでございます。
  23. 戸井田三郎

    戸井田委員 この間傷痍軍人の大会が開かれて、御承知のとおり九月の全国大会では、一斉検診を実施してくれということを傷痍軍人の大会の意思によって決めておるようであります。先ほどお伺いすると、アンケート形式でいろいろ調べてみるというようなことも言われているわけでありますが、実際に傷痍軍人方々の持っている意思といったものに対してどの程度早急にこたえられるのか、そのことについて……。
  24. 出原孝夫

    出原政府委員 関係の省庁と、五十一年度から実施できるようにしたいということで現在協議中の内容でございますので、まとまりました上でということになりますけれども、私どもが考えておりますのは、そのことによりまして、まず、トロトラストを打った心配のない、打っておられないという方は明らかになってくると思います。今度は、打ったかもしれないという方々について次のスクリーンをしていくということになってまいるかと思います。これをできるだけ早期に行いました上で、その後の対処につきましては特に医学の専門家の皆さま方、特に森先生その他の専門家の方々と御相談を申し上げながら、対象の方々の心理的影響等を考慮しながら慎重に対処してまいりたいということでございます。
  25. 戸井田三郎

    戸井田委員 その打っている、打っていないというのは何でわかるのですか。カルテもなくなっているようだし……。
  26. 出原孝夫

    出原政府委員 まず第一番目は、トロトラストをお使いであろう、あるいは使う可能性の多い手術を受けられたといったようなことについての調査が必要になってくるかと思います。その上で見ます場合に、トロトラスト自体が体内に蓄積をいたしておりまして、特に肝臓の周辺に集まっておるわけでございます。量の多い場合には普通のレントゲンでも明確にトロトラスト肝臓の周りに集積しておるというのが見つかってまいります。そうでない場合はかなり微妙なケースも出てまいると思いますが、この器械は全国に数も少ないようでございますけれども、特殊な器械装置を使ってなお検査をしていくということによって見つけ出すことが可能であろう。カルテから追及することはもうできませんので、そういうような方法があるというように承知をいたしております。
  27. 戸井田三郎

    戸井田委員 そうするとアンケート形式で、ある程度そういう可能性のある手術を受けているなと思われる者を抽出してレントゲン検査をしてみるというやり方になるわけですね。
  28. 出原孝夫

    出原政府委員 そういう方向で考えております。
  29. 戸井田三郎

    戸井田委員 いずれにしても、いま言ったように二百万人以上の相当の数の傷病者がいて、現在生きている方は、もちろんその全部じゃありませんけれども大ぜいの方がおられる。十五万人の人が現在登録されている傷痍軍人である。そういう人たちがみんな不安を持つわけでありますから、一日も早くその検査をして不安を取り除くようにしていただきたいことと、もう一つは、それらの人々に対する救済援護の措置、こういったことに対して手抜かりがないようにしていただきたいと思います。  このことについて、総括的に大臣から一言お伺いしたいと思います。
  30. 早川崇

    ○早川国務大臣 この問題はきわめて特異な問題でございますので、厚生省の事務当局が今日まで多少慎重にやってきたという理由はわかるのでございますが、毎日新聞なりほかの新聞も含めまして、マスコミで大規模にこういう問題が報道されまして、西ドイツ及び森先生等のデータも出まして、はっきり皆さん知っていることになりましたので、これは大臣としてもう踏み切って、実情把握にスタートすべきではないかと決断をいたしまして、いま局長が申されましたように、二万本ですから、これは十五万人全部に注射されているわけでももちろんございません。それから肝臓がんというものは御承知のようになかなか治りにくいものですから、何かトロトラストをやってこれはがんじゃないかと心配されますと、これまたデリケートな問題がございますので、アンケートを出していくというのが一番いいと思うのです。十五万人全部をレントゲンでやって、別にそういうことはないというようなことは、傷痍軍人会の御決議のようなことはかえって不安を招くのじゃないか。そこでアンケートで、これを注射されたような記憶はありませんかとかいろいろして、そしてちょっと肝臓がおかしいとか、そういうのでレントゲンで発見さすというようなやり方で実態を究明していく。そしてまた、戸井田委員の御指摘のように、そういう疑いのある人につきましては傷病恩給、障害年金あるいはまた特別援護法による療養に万全を期していきたい、かように考えておることを御了承願いたいと思います。
  31. 戸井田三郎

    戸井田委員 これはいま言いましたようにいろいろ影響のある問題であり、しかも、これを使用した経緯あるいはその他いろいろな意味にとられる問題でありますから、この問題は慎重に取り扱って対処していただきたい。それから、こういう問題は、特に明らかな問題ははっきりと明らかな姿勢をもって臨まないと疑惑を持たれるばかりで、その間、戦傷病者に不安を与えるということですから、いまの大臣の御決意のもとに万全の措置をとっていただきたいと思います。  あとちょっと時間がありますので、別の問題についてお伺いしたいと思います。  それは柔道整復師の問題でありますが、柔道整復師の受験資格は現在では二年の実務研修が行われる。特に高等学校を卒業してから二年ですか、中卒の人は四年。現在中卒という人はごくまれになって、実際にもそういう研修所はないようであります。これを、高校を卒業してから二年を四年というように延長してもらいたいというような意見もあるわけなんです。もちろん柔道整復師というものは捻挫であるとか打撲であるとか、こういったものに対する治療行為をされるわけであります。捻挫であってもあるいは打撲であっても、やはりこれは局部現象であると同時に体の一部であり、そういう意味から見れば、この治療技術あるいはそれに対するある意味での診断の能力、こういったものが十分に備わっていればいるほどいいわけであります。そうなってくると、やはりそういった人の技術水準を高めるために、そして治療行為の効果を上げるために一層の研修を重ねていくということは当然なことだと思います。そのことについて厚生省の見解をお述べいただきたいと思います。
  32. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 柔道整復師の修業年限につきましては、柔道整復師として具有すべき知識、技能を修得するに必要な期限を定めるものでございまして、そういった点におきましてただいま先生御指摘のようにいろいろな意見があるわけでございまして、実はあん摩等中央審議会の答申を受けまして本年一月にカリキュラムあるいは時間数等の改正を行ったところでございます。したがいまして、現時点におきましてはこの養成期間を延長する等の特段の処置につきましては考えておらないところでございますが、ただいま先生の御指摘のように、あんまあるいは柔道整復師、そういった人たち治療行為も行っておりますし、またある意味においての診断行為に類似した行為も行っておるところでございます。そういう意味からは、こういった人たちの資質の向上ということも必要なわけでございまして、そういった観点からなおこの問題につきましては研究をさしていただきたいと考えております。
  33. 戸井田三郎

    戸井田委員 審議会でカリキュラムの改正をしたということでありますが、これは短縮したことだと思います。そういう意味から見ると、短縮してもやっていけるのだから、二年から四年にまで延ばしてなんということは必要ないじゃないかというようなものも言外に含まれているような感じがいたしますけれども、私は、こういうものは知識として、より深めていく方向に進むべきものであって、それを短縮していくという方向は、局限してその部分だけをとらえていけば、医学の技術も進んできているし、あるいは教育をする方法も進歩してきているし、そういう段階の中でカリキュラムを短縮するということもあるいはあり得るのかもしれないけれども、人間の体の一部分に対して、ある意味での診断もしなければならないし、そしてある意味での治療行為を続けていく、そして将来も予見していかなければならない、こういう非常に高い仕事を担当するわけでありますから、こういったものは前向きで、より以上高い知識水準というものを備えるという方向の方をむしろ重視すべきであろうと思います。その意味で、前向きで検討してくださるということでありますが、そういう観点に立っていただきたいと思います。そうでないと、いろいろな意味でこの仕事に従事している人たちが固定した現状の中でとどまってしまうというようなことになるわけであります。少なくともそういった治療行為をし、診断の一部をし、こういうようなことをする者に対しては、さらにさらに深い水準に到達するような指導と努力というものが当然とらるべきものである、こういうふうに考えますので、いま言った積極的に進んでいただくような立場をとっていただくように強く要望をいたします。  ありがとうございました。
  34. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次に、田口一男君。
  35. 田口一男

    田口委員 「救急車カラス鳴かない日も走る」、これは一週間ほど前の新聞に川柳で出ておったのですけれども、好ましい現象ではないと思うのです。今日、救急医療に対する国民の需要といいますか要求というものが高まってきておることは十分御承知だと思うのです。  そこで、ちょっと時間の準備の関係で、自治省なんですが、本年の三月に消防庁は「救急業務の現況」という相当詳しい調査資料も出しておりますし、それから厚生省自体も本年の四月に、前の大臣の諮問機関としての救急医療問題懇談会、こういったものを設けて鋭意検討を続けられておるようですが、私は、救急患者の定義、これがはっきりしていないから救急医療にもたつきがある、そこまでは言いませんけれども、今日のこういった川柳にまでうたわれるような状態の中で、どうも時代おくれじゃないかという気がするわけです。御存じかと思うのですが、消防法の第二条には、災害による事故もしくは屋外、公衆の出入りする場所において生じた事故での傷病者を対象にしておる。こういった消防法第二条を受けて厚生省令、救急病院等を定める省令、これの第一条で救急病院について具体的に書かれておる。こういった点からいって、この定義というものとそれから今日までの救急医療問題懇談会などにおける論議、それから自治省が来れば後でお聞きをいたしたいと思うのですが、現況と定義とのずれというものについてどういうふうにお考えか、そこのところをお聞きしたいと思います。
  36. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 救急患者の定義につきましては、ただいま先生御指摘のようにいろいろな定義がございまして、ある意味においては混乱を起こしておるのではないかというふうに考えております。大ざっぱに申し上げまして、救急患者の定義というものが大きく二つに分かれるのではなかろうかと考えております。一つは純医学的に見た場合の救急患者の定義と、それからもう一つは社会的な意味における救急患者の定義、こういうふうに大きく二つに分かれるのではなかろうかと考えておるところでございます。  消防法の関係につきましてはまた後ほど自治省の方からお話があろうかと思いますが、いわゆる交通外傷等の公共の場所における事故を対象に考えておられるわけでございますが、純医学的に救急患者というものを一応定義づけてみますと、脳卒中あるいは心筋梗塞あるいは頭部損傷等、緊急に処置を行わなければ患者の生命に危険を生ずるかあるいは身体の重要な機能を失うおそれのある、そういった重症患者を救急患者というふうに普通取り扱っておるところでございます。しかし、現在わが国のいろいろな実態を社会情勢等の実態から考えてみますと、通常の診療時間帯以外の時間帯、すなわち休日とか夜間、そういった通常の時間帯以外の時間帯におきまして、そういった直ちに生命に危険を及ぼすような患者でなくとも、一般患者を含めましてそういった時間帯における患者の取り扱いということが大きな社会問題になっておるところでございまして、したがいまして、厚生大臣の諮問機関として設置いたしました救急医療問題懇談会におきましてはこの二つの範囲を含めまして今回の答申の対象といたしておるところでございまして、われわれといたしましてはそういった意味におきまして、純医学的な救急患者、社会的な観念によります救急患者、この両者を含めまして今後対策を進めてまいりたいと考えております。
  37. 田口一男

    田口委員 そうしますと、いま局長おっしゃったように、医学的、社会的定義そのものを厳密に言おうと思うのじゃないのですけれども、現実から言うと、はっきり言って、いまの消防法、それから救急病院等を定める省令の考え方は、救急出動をする消防庁、救急車ですね、それを受ける医療機関、こういったものの前提条件というのは、言うならば交通事故ですね。火災なんかによる傷病ということもあるでしょうけれども、概して言えば交通事故というものを前提にした救急業務だ、こういうことを否定できないと私は思うのです、いまの省令なり消防法なんかから見ると。ですから、いま懇談会の方で検討してみえるという話なんですが、そこでずばりお聞きをしたいのですけれども、救急病院等を定める省令そのものがいまの実態にそぐわない。したがって懇談会その他の検討の結果を待ってということなんでしょうが、これはやはり、後で申し上げますけれども、いろいろな支障の一因になっておるということから、こういった省令ないしは、まだ自治省が見えておりませんけれども、消防法なんというものの特に第二条関係改正をする必要があるんじゃないか、これが第一です。  さらにいまの問題に関連をいたしまして、改正をするということになれば問題はないのですけれども、省令の第一条の第一号から第四号までの救急告示病院の要件として列記してありますけれども、これはいま申し上げたように、交通事故というものを前提にしてこういう条件を備えなければならぬと当時は決められたのだと思うのです。しかし、消防庁が発表した調査結果によりますと、たとえば内科系統が三七%、それから小児科が八・八%、産婦人科が二・六%、そのほか耳鼻咽喉科であるとか、普通の概念から救急と思えないようなものまで夜間休日に駆けつけてくる。そうなってまいりますと、やはり救急医療機関として指定をされる内容としてはいま言った内科、外科、それから小児科、産婦人科、こういった必要最小限度の診療科目というものは具備しなければならぬ、こういうことが必要ではないかと思うのですが、その辺どうでしょう。
  38. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御指摘のように、現在の消防法によります救急は交通外傷を主として考えての対策を講じておるところでございます。しかし、近年交通対策等もいろいろ功を奏してまいりまして、最近では交通事故によります頭部損傷等の患者が非常に減少してまいっておるところでございまして、反面、ただいま先生の御指摘になりましたように、内科系、小児科系の患者が非常にふえておるところでございまして、救急車で搬送されます患者の比率もすでに内科系、小児科系の患者が五〇%を超えている、かような現実になっておるところでございます。そういった意味におきましては、従来の救急告示医療施設というものが、現在のわが国の医療供給体制としては必ずしも十分な体系をとっていないということが言えると思うところでございます。  したがいまして、救急医療対策といたしまして、従来の外科系を中心といたします救急告示病院、告示診療所のほかに、内科系、小児科系を中心といたしまして休日夜間急患センターというものを現在考えておるところでございまして、すでに人口十万以上の都市にこういった休日夜間急患センターを設置するよう、現在その普及に努めておるところでございます。しかし、休日夜間急患センターの設置そのものにつきまして必ずしもまだ十分いっていないわけでございまして、特に人口五万から十万の都市が非常にこの要望が強いわけでございまして、そういった意味におきまして、来年度予算におきましては人口五万以上の都市にこれを設置できるよう措置をとってまいりたいと考えておるところでございます。さらに、そういった急患センターができるまでの間の補完的な措置といたしましては、医師会の協力等によります在宅当番医制度というものを組織化いたしまして、内科系、小児科系の休日夜間等におきます患者さんの医療の供給体制を整備してまいりたいと考えておるところでございます。
  39. 田口一男

    田口委員 確かに人口五万から十万までのいわゆる中小都市、ここの要望の強いことは私も承知しておるのですが、それを裏書きするといいますか、さっき問題にいたしました省令の面から見て、省令の第二条に告示機関といいますか指定医療機関といいますか、指定医療機関ということにいった場合に、告示申請があって、都道府県知事が事前事後の審査をしなければならぬ、こういう問題が一つあるわけですね。それが第一なされておるのかどうかということが一つ。  それから特に問題にしたいのは、いま言った人口五万から十万の中小都市なんですけれども、告示申請があって初めて指定医療機関となる。なければ、一体その五万なり十万の都市には一軒も指定医療機関がないということに結果としてなってしまうのじゃないか。それを埋めるための急患センターという意味合いなのか。もしそうだとすれば、私はいまの救急医療というものの体系が全くその場しのぎ、一貫したものがないという気がするわけですね。ですから救急指定医療機関が年々指定を返上する。これは決していいことじゃありませんけれども、といって一概に返上をする医療機関を非難をするということにはならぬわけです、昼も夜もですから。こういう点で、告示のないところは指定機関が全くなしになる。といって急患センターを設けたら、この急患センターに詰めてもらう医者は、これまた現在の医療供給体制から言って私的医療機関がほとんどその責めを負う。こうなると、どこかで輪を断ち切ってしまわないとそう長続きがするものではないじゃないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  40. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 この救急告示病院あるいは救急告示診療所の告示の手続でございますが、ただいま先生のおっしゃったとおりのことでございまして、現在、病院、診療所から申し出があった場合に書類審査によりまして告示の可否を判断していくのが一般的な方法でございますが、なおこの場合、必要のある場合には地域の保健所長あるいは消防機関の意見を聞きまして、必要に応じましては実地調査をもってこの告示を実施するということにいたしておるところでございます。なお、告示後の、告示のための必要な要件のチェックでございますが、これにつきましては医療監視員等を使いまして、各都道府県が医療監視の機会をとらまえましてこの状況の把握に努力をいたしておる、かような現状になっておるところでございます。  ただ、ただいま先生のおっしゃいましたように、救急告示施設というものが、現在われわれがつかんでいる数といたしましては大体横ばいのような数字になっておりますが、場所によりましては返上というような実態も生じておるところでございます。そういった意味合いにおきまして、今後、それぞれの医療機関が毎日毎日こういった救急医療体制をとるということが職員の確保の上からも非常にむずかしいというようなこともございますので、今回救急医療問題懇談会の答申に基づきまして、その地域におきます病院の輪番制あるいは開放型病院の利用あるいはそれぞれの病院によります診療科の協定、こういった三つの方式をもちまして、救急告示施設にかわる病院のシステムというものについての確保に努力してまいりたいと考えております。
  41. 田口一男

    田口委員 消防庁が見えたようですからお尋ねしたいのですが、本年三月に消防庁が発表しました「救急業務の現況」、これによりますと、四十五ページに「転送回数別搬送状況」というのがあるのですが、これは細かいことは申し上げません。ただ要約をして言うと、一一九番に電話をする、そして救急車が出動して患者を乗せて医療機関に到達してすぐに診てもらえる回数が大変に少ない。「一回以上転送」というのは二回目ということですね、ゼロがそのものずばりですから。一回以上という数字を見ますと九四・八%、こういった数字が出ておるのですが、ここでやや事務的な問題でお聞きをしますけれども、転送をするのに、いま医務局長にお尋ねしたような救急医療機関として指定をされた医療機関、または指定されていない医療機関、こういったのを区別をすると、断る度合いはどちらの方が多いのか。そういった調査結果はないかどうか、これが一つです。それから救急車に医師の同乗はできないのか。こういう点について、これは大臣のお考えをひとつお聞きをしたいのです。  私はこの問題で二、三の消防署の職員と話し合ったのですが、消防署の職員はもういやだと言うのです。仕事がえらいからかと聞きますと、そうじゃない。仕事の性格からいって、どんなに真夜中であろうとも雪の日であろうとも電話がかかればすぐに出動いたします。ところが、夜なんか小さな子供が多いわけですね。その小さな子供を若いママさんが抱き締めて病院に飛んでいく。きょうは先生ちょっと都合が悪い。次へ行くと、うちはその専門科でない。次の医療機関を探すのにやきもきする。そばで母親がおろおろしておる。そういう状態を見るともういやだと言っている。この気持ちはわかると思うのですよ。そういった状態からいって、やはり国民の不安——病気は予告なしに訪れるものでありますから、こういった不安をなくするためには、最小限食いとめる方法として救急車に医師を同乗させる。それから、お医者さんも人の子ですから、四六時中起きているわけじゃありませんからその御苦労もわかるのですが、といって、人の命を考えた場合に、また消防署のそういう職員の気持ちを考えた場合に、一遍で診てもらえる、こういう体制を速やかにつくってもらいたい、こういう点についてと、さっき言ったやや事務的な数字について、消防庁からそういう状況についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  42. 持永堯民

    ○持永説明員 第一点の、転送された患者の中で救急指定病院であるのとないのとどういうふうになっておるのかというお尋ねでございますけれども、これにつきましては四十九年中のそういうデータは実はとっておりませんで、現在五十年中の救急搬送業務の概況を調査集計しておりますけれども、五十年につきましてはとっておりますので、いずれそれがまとまりました段階で発表したいと思っております。  二番目の医師の同乗の問題でございますけれども、これにつきましては、患者を搬送することが非常に危険である場合あるいは搬送していいかどうか判断が非常にむずかしいような場合には、なるべくお医者さんが同乗して現場で診ていただくということをするように指導いたしておりまして、現実にそういうケースも相当ございまして、四十九年の数字でございますけれども、約一万五千件ぐらいについてはお医者さんに現場に出ていただいて診察をしていただいておるという結果が出ております。
  43. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御質問の第二の点でございますが、ただいま消防庁の方から現状についてのお答えがあったわけでございます。この問題に対しますわれわれがいまどういうことを考えているかということを事務的にお答え申し上げたいと思いますが、そういった搬送自動車にできるだけ医師の同乗ということが望ましいわけでございますが、現状におきましてはなかなかこれがむずかしいという現状にあろうかと思っております。そういった意味におきまして、現在われわれが考えておりますのは、第三次救急医療機関といたしまして救命救急センターの設置を考えておるところでございます。この救命救急センターには、非常に特殊な装置を備えましたいわゆる患者搬送車というものも今後設置いたしたいと考えておるわけでございますが、その救命救急センターにおきます患者搬送車につきましては、器械といたしましてはICUとかCCUのような非常に高度な器械も積むわけでございますが、これには看護婦あるいは医師、そういった医療関係者の同乗を絶えずできるような措置をとりたいと考えておるところでございます。
  44. 早川崇

    ○早川国務大臣 田口委員の御指摘、特にお医者さんに行ってもなかなか起きてくれない、消防隊員がいやになるということでございます。実は救急医療というのはいわゆる時間的な医療の過疎ですね。いままでは地域的な、農山村でお医者さんがいないということに医療問題の関心があったのですが、最近は都会地あたりで夜間休日の医療の過疎という現象に取り組んできたのがこの救急医療対策でございます。そこで、お医者さんも人間ですから、私のおやじも医者だし、兄弟も医者でよく知っていますけれども、若いうちはヒューマニズムで、医師法によってどんなに遅くても起きて行けるんです。ところがだんだん年を取ってくるとそうもいかないということで、起こされるのを断るという例が間々ある。そこで、まずお医者さんの当番制というものを明らかにしてお願いしていく。それから、いま医務局長が言われましたが、救急医療センターというものを設置してそこへ詰めている。それから病院におきましては告示病院というものをお願いいたしまして——病院もしょっちゅうというわけにもいきませんので、病院も当番制としようというようなことにしていく。それから非常に多いところには救急医療機関も設ける。三段、四段で考えておるわけでございますが、いまようやくこの問題についての世論が非常に高まってまいりましたので、先般の閣議で、たとえば三公社五現業というのにりっぱな病院がたくさんあるんです。ところがそのうちこの告示を申請して告示病院になったのは一つもないんですね。これはおかしいではないかというので、各関係閣僚に御協力を願ってこの告示病院になっていただくように目下努力中でございますが、そういう例でもおわかりのように、そういう世論の高まりに応じまして急速に救急医療体制が進んでいく。  それから、私が非常に感謝するのは、消防庁がコンピューターも入れまして諸外国並みに——大体外国は三十分か四十分くらいでさっと行ける。欧米諸国へ行って帰ってきた人の話では、外国は救急医療体制が非常に進んでいますよ。しかし、東京都や大阪の消防庁がコンピューターを入れまして、非常に迅速に病院まで、あるいはお医者さんに運んでいただくという体制ができて大変喜んでいるんですが、消防法の改正とかそういうものがもし必要であれば、厚生省からもお願いして夜間休日の救急医療体制に万全を期したいと考えております。ただ、患者の方も、ほんの軽い者まで全部持ち込まれるというので、その辺どうするか、大変むずかしい問題があることを承知いたしております。
  45. 田口一男

    田口委員 いま大臣おっしゃられた三公社五現業なんかの医療機関にもということは、せっかく御尽力をなさったことは先般の新聞記事でも拝見をしたんですが、それに関連をして、これは御存じのように救急医療、やはり患者の側にいま言われたような例外中の例外といったそういう問題のあることは私も承知いたしますが、それはそれとして、やはり救急医療というものは公共的な性格を強く持っておるものですし、同時に、金の面からいったら不採算という性格が強いと思うのですね。したがって当然に、三公社五現業は言うに及ばず、国公立の病院というものが全面的にこの救急医療というものについて前に出なければならぬのじゃないか。ところが、いろいろな数字を見てみましてもそうはなっていない。ここでは国立病院は一応さておくといたしまして、全国にある約千近い自治体病院、県立病院であるとか市民病院、国保病院、こういった自治体病院での救急指定の状況、これが、全国自治体病院協議会の調査によりますと、昭和四十九年度の数字なんですが、総数で九百四十一、中には結核、精神が八十程度入っておりますが、構成比として四六・三%、半数に満たないという状況の報告がございます。  そこで、大臣も三公社五現業にやるように要請をされておるのですが、自治体病院という面から見た場合に、なぜそういう積極性がないのか。ここで自治省第二課長が見えておりますからお聞きをしたいのですが、なぜ指定されないかという理由についてやはりこの協議会が調査をしておりますが、こういうことを言っておるのですね。これは私は無理からぬと思うのですけれども、医師の立場からいって一番多い意見が、医師が不足しており時間外の診療まで手が回らないから、これが二五・四%ございます。そして今度は病院財政という設置者の立場から見ますと、時間外患者が急増するので医師、看護婦等の増員が必要となり、給与費等が増高することが考えられるが、一般会計がこれらの経費について全額を負担することはむずかしいと考えられるから、この理由で指定されない、これが二二・四%、こういう数が出ておるわけであります。これは現在の制度または経理の運営の仕方を見れば私は全くそのとおりだと思うのですが、全くそのとおりだから仕方がないというわけにはまいらぬ。  そこで私はこういう考えを持っておるのですが、先般もある県立病院のお医者さんと話をしたら、これも一般開業医と同じ理由なんですね。昼もやり夜もやるのはもたぬ、長続きがしない。ですから片手間の当直医制ではなくて、少なくとも国公立病院には救急部というものを設けたらどうだ。そしてそこにはさっき言ったような内科、外科、小児科、産婦人科、必要最小限度の医師及びそれに関連する医療従事者、こういった職員の方方を救急部に転属をさせる、これを義務づけたらどうかと思うわけであります。そしてもちろん、いま財政的な立場からという反論もあるのですから、それに要する経費は独立採算制というたてまえから外していく、国が補助をしていく、こういったことをとってはどうかと私は思うのですが、特に自治省、今日の財政状況の中から見て、また救急医療に対する国民世論の高まりから見て、救急医療だけは例外とすべきじゃないか、こう思うのですが、御意見どうでしょう。
  46. 吉本準

    ○吉本説明員 救急部の設置のお話でございますが、医師の確保の問題その他いろいろございますし、同時にこれは病院機能の、厚生省の問題でもございますので、ちょっと部としての設置がどうかという問題は私どもの専門外でございますけれども、いずれにいたしましても先生の御提案の御趣旨は救急に対する財政措置の強化という点にあろうかと考えております。そういう意味で、私どもとしましては救急に対する財政措置の強化は今後とも図る必要があると考えておりますし、その意味で、国庫補助の問題あるいは診療報酬の問題等につきましては厚生省の方でお願いをいたしたいと考えますし、自治省といたしましては特別交付税の配分を通じまして、救急問題の財源措置の強化につきましては今後とも努力をしていきたいというふうに考えております。
  47. 田口一男

    田口委員 それは優等生の答弁です、財政的な面から見て。いまお医者さんが不足しておるいろんな難問題があると思うのですよ。しかし、少なくとも自治体病院、国立もそうなんですけれども、私は救急部という一つの提案をいたしましたが、そこで医師を確保する、医療従事者を確保する。まあ俗な言葉で言えば、さあいつでもいらっしゃい、こういう体制をつくるためには、人件費、超過勤務といったものをその病院で安心して賄える。それを見るためには外来一般の方を抑えたりどうこうじゃなしに、これはこれで地方公営企業法の独算制から外しますよ、こういう考えはどうでしょう。自治省どうですか。
  48. 吉本準

    ○吉本説明員 救急の医療の中でも本来診療報酬で賄っていただく部分が当然あるわけでございまして、私どもといたしましてはそれを超える経費については、負担区分の考え方上、一般財源で措置をすることは当然考えるべきであるというふうに考えております。
  49. 田口一男

    田口委員 診療報酬で当然経費が見られますけれども、なおかつ時間外患者が急増するので医師をふやしたり看護婦をふやさなければならぬ、こう言っておるのでしょう、この指定を拒否する理由として。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕 そうすると、医師をふやす——医師の確保はむずかしいというのは一応別として、数字の上から言ったら医師をふやす。一名いるところを三名にしよう。看護婦五名のところを十名にしよう。その分については一般会計が負担をするということにはならぬでしょうね、いまのたてまえからいったら。ですから、救急部に所属する分については経理上からいったらこれは枠外である、大ざっぱな言い方ですが、こういうふうな考え方はとれないか、こういうのです。
  50. 吉本準

    ○吉本説明員 ただいま申し上げましたように、救急と言いましても、患者さんがおいでになりましたものにつきましていろいろ治療行為をいたします。これは当然診療の範囲でございまして、これはやはり診療報酬で賄っていただくというのが現在のたてまえでございます。したがいまして、他の問題を捨象しまして、仮に救急部をつくった場合に、これの経費全体を一般財源で見るということはいささか範囲が広過ぎるのではないかというふうに考えます。
  51. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 自治体病院の問題につきましては厚生省と自治省とがいろいろ相談しながらこの対策を立てておるところでございますが、ただいま先生のおっしゃいました救急問題について厚生省考え方を申し上げますと、この救急部を設けるということは、諸外国の病院におきましてはそういう制度があるわけでございますが、わが国におきましては、現状において直ちにすべての自治体病院あるいは国立病院にこの救急部を設けるということは人的な面等でむずかしいというふうに考えておるところでございまして、先生のお考えのようなことで先ほど御答弁申し上げました救命救急センター、これはそれぞれ既存の病院の中にこのセンターを設けるわけでございますが、この救命救急センターというような形で、先生のおっしゃったような救急部というようなものを今後だんだん拡充してまいりたいと考えております。  ただ、財政問題でございますが、原則的にはただいま自治省の方からお答えになったとおりでございますが、厚生省といたしまして、この救急のためにたとえばベッドをあけておくとかあるいは余分にその医者を待機させるとか、そういった問題があろうかと思っておりますので、そういった救急のために特に通常の診療以外に余分に経費を要する点につきましては、来年度予算からこの助成を考えておるところでございます。
  52. 田口一男

    田口委員 時間がありませんから、救急の問題はあと関連した問題一つだけで終わりたいと思うのです。  これは大臣にお聞きをしたいのですけれども、いまの局長答弁の中にも関連しまして、やはり自治体病院などが救急病院に指定されない理由の  一つとして、病床は満床またはそれに近い、救急患者を収容する空床が少ない、こういったことを理由にしているのが一一・八%あるのですけれども、これに関連をして、本年十二月末で期限の切れる例の公的機関の病床制限の問題、これを近く医療審議会に諮問をするというのですが、諮問をするのですから、ここでどうこうというその内容は固まっているかどうかわかりませんが、しかし大枠としてのお考えはどうなんでしょう。
  53. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 この病床規制の問題は、医療機関が都市に過度の集中をすることを避けるというような趣旨でこの病床規制の制度が設けられておるところでございまして、現在なおそういった意味においての存在意義があろうかと思うところでございます。ただ、救急医療の問題につきまして、ただいま先生御指摘のような点があることは十分承知いたしておるところでございまして、ただこの公的病院の病床規制の問題に絡んで申し上げますと、特殊な診療機能を有します救急病院の病床につきましては現在の段階におきましても加算制度を設けておるところでございまして、この公的病院の病床規制の枠外として取り扱っておりますので、そういった意味におきましてなおこの制度を今後十分利用してまいりたいと思います。
  54. 田口一男

    田口委員 では救急関係は一応終わります。  あと、保険財政に絡んで二つだけお聞きをします。  それは、いまもって一番問題になっておる差額ベッド、それから付き添いの問題です。時間がありませんからもうくどくど言いませんが、最近、これは局長もまた大臣もごらんになったかと思うのですが、汽車や電車なんかの広告に、ある私的生命保険の広告なんですけれども、サラリーマンが赤ん坊をしょって通勤をしておるポスターがあるのです。そのポスターの内容は、いま奥さんが入院をしたらこれこれの金がかかりますよ、差額ベッドを取られますよ、付き添いさんも要りますよ、奥さんのありがたみを知れというようなキャッチフレーズで、中身はそういう保険に入りなさいということなんです。それを聞いてみますと、大体差額ベッド、付き添いさんを含めて一日五千円程度取られることを基礎にして、その保険に入りますと三十七万五千円を一ヵ月に給付してくれます、保険給付を。これは厚生省の保険給付じゃありません、生命保険です。こういった新しい保険の種類が最近出ておるわけです。私は、これはなかなかいいところに目をつけたなと、一面では感心をするのですが、こういうことがどんどん広がっていきますと、近い将来、その保険に入っていなければ入院できない、入院しようと思っても差額ベッドはもうあたりまえだ、差額ベッドの費用を払えなければ入院できないという事態をより助長するようなことになるのではないか。といって、いまの私的生命保険会社に対してそういうことはやめなさいということは言えぬわけですね、いまの体制からいって。やはり国民皆保険という立場から言うならば、この差額ベッド、付き添い——まあ歯科の差額がいま問題になっておりますけれども、これはあえてきょうは言いません。これを解消するということでいままで何回か通達が出ておりますけれども、どうもその通達が守られていない。  私が聞いたり調べたりした結果ではこういう実態があるのです。厚生省の通達では、一人部屋または二人部屋で患者が希望した場合のみ差額を取っても構わない。その割合は、公的医療機関の場合には一〇%、それから私的医療機関の場合には二〇%以下、こういう通達が出ておるのですけれども、医療協という国立病院関係の労働組合の調査によると、本年四月、定まったベッドの大体三〇%に及んでおるし、それから健保連の調査によると三人部屋でも差額を取られておる、こういう実態が実はあるわけであります。さらに個人的な費用の負担、これは私の友人の子供が入院をして聞いた話なんですが、月四十七万程度医療費がかかって、家族ですからその三割給付、約十五万程度医療費を払った。それから差額ベッドが、一人部屋なんですけれども一旦二千円、それから、共かせぎでありますので付き添いさんを頼んだら、昼飯代と交通費を負担をして一日七千五百円、約二カ月入院をして九十万近く金が要ったという話を聞いたのです。これは大変な経済負担だと思うのです。こういう実態は前々から何回もこの委員会でも問題になっておるのですが、依然として解消されていない。これについていろいろな意見も医師会あたりであるようでありますが、解消するという方向でやれないのか、ひとつきっぱりお答えをいただきたい。
  55. 八木哲夫

    ○八木政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、わが国の医療保険制度というのは国民皆保険という強制加入のたてまえをとっておるわけでございますから、国民の医療を確保するという意味で、必要な医療は医療保険制度でカバーするというのがたてまえであるわけでございます。そういう意味から申しましても、せっかく医療保険制度というものがありながら、保険外の負担があるというために必要な医療が受けられないということはあってはならないというふうに考えておるわけでございまして、私どももその方向を基本的な考え方としておるわけでございます。  しばしば御指摘いただいております差額ベッドなりあるいは付添看護の問題等の保険外負担の問題でございますが、ただいま先生からいろいろ数字の御指摘がございましたが、私どもといたしましても、差額ベッドの問題につきましてはやはり社会的な国民の側のニードがあるという面から、差額ベッド、特別室というものを全廃するということは考えておらないわけでございます。しかし、特別室というものがあるために差額を負担しなければ入院できない、医療の機会が妨げられるということがあってはならないというようなことから、この問題に対しまして私どももしばしば指導いたしているわけでございまして、特に四十九年には差額ベッドにつきまして基本的な要件なり基準というものを立てまして、先生からお話ございましたように、一般については二〇%、それから特に国立につきましては一〇%という基準を設けまして差額ベッドの問題につきましての指導を図っておるような次第でございます。現実問題としましてなかなか一挙にできないというような問題もあろうかと思いますけれども、昭和四十九年全体の私どもの調査によりますと、病床数に対しましての差額ベッドの数は一九・二%、五十年七月におきましては一八・三%ということで若干ずつ改善されているわけでございまして、現在も最近の状況調査しておるわけでございますが、さらに一般二〇%、国立一〇%という線につきましての指導を進めてまいりたいと考えておる次第でございます。  それから付き添いの問題につきましても、これもしばしば御指摘賜っておるわけでございますが、基準看護病院等におきましては付き添いを置かないというたてまえで、その意味におきまして、本年四月に行われました診療報酬の改定の際等におきましても、基準看護病院につきましては看護の点数等につきましても特別な配慮を払っておる次第でございますし、さらに、基準看護体制をとっておらない病院につきましては必要な付き添いの看護料を保険で支払うということで、それに関します金額等の引き上げもことしの四月に実施したというようなことでございます。今年の診療報酬の改定の際にも看護の問題につきましていろいろ御議論があったわけでございますが、この問題につきましては看護力等との関係もあるわけでございますので、今後医務局等とも十分御相談いたし、さらに中医協等におきましてもこの問題の御審議をいただきまして、この問題の前向きの解決を図ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  56. 田口一男

    田口委員 この差額ベッドなり付き添いなりという問題は、ただ単にこれだけではなくて、私的にしろ公的にしろ、いまの医療機関の経営状況から見て診療報酬体系全般にメスを入れなければということになると思うのですけれども、しかし、先ほど申し上げたように、生命保険会社の一つの目玉商品となるという状況もあるのですから、室料、差額が払えなければ入院できないという事態を防ぐためにも、より強い態度で差額の解消、付き添いを必要としない、こういうことについて努力をしてもらうことを要望するにきょうのところはとどめておきたいと思います。  さらにもう一点、最後なんですが、今月一日から、いまの診療報酬体系なんかの問題にも絡みがあるのですけれども、政管健保が弾力条項の発動によって千分の二引き上げられました。これもことし来年だけのことで、五十三年以降はどうなるかわからぬという、全くその場しのぎの対応の策だとしか言いようがないと私は思うのでありますが、それはそれとして、組合健保の財政について一つだけお伺いをしたいと思うのです。いま五十一年度、五十二年度だけの場当たり的な弾力条項という言い方を私はしましたけれども、すでに御承知のように、各医療団体から医療費の値上げの要求がどんどんと出ておりますね。たとえば略称保団連が平均二二%アップすべきだ。それから公私立病院連盟が一七・四%プラスアルファを引き上げるべきだ。さらに個々の医師会の意向をそれぞれの機関紙によりますと、たとえば大阪府の医師会が一九・二%引き上げてくれ。こういったことで、いずれ本年末から来年早々にかけて中医協を舞台としてまた医療費引き上げの可否について議論が出てくると思います。そして、いまのこういう状態では一%も上げないということは無理なのじゃないか。上げることのよしあしは別ですよ、いままでの傾向から見て何らかの形で医療費がまた引き上げになっていくのじゃないか。そうすると、その上がった分をだれが負担をするかということですね。弾力条項で今度千分の二引き上げた。まだ足らぬからまた弾力条項で、こういうイタチごっこが出てくると思うのです。  そういう傾向の中で、この組合健保についてはいままで、比較的余裕のある健保だからまあ自前でやりなさいよと言われておったのですけれども、健保連なんかの調査、単位組合の実情を見て見ますと、これは御存じだと思いますが、こういう数字が出ております。赤字組合が昭和四十八年には百五十組合、四十九年には二百七十九組合、そして五十年度には三百六十四組合、どんどんふえてきております。当然に赤字の額もふえてきております。これに対応するためにいかに組合健保が対処をしてきたかといいますと、当然組合議会といいますか組合会で大きな反対がありながらも料率を引き上げてきておる。その結果、千分の七十六、これは政管健保の十月以前の料率と同じなんですが、千分の七十六を超える組合が四百五十五、千分の七十八を超える組合が二百三十八、八十五を超える組合が百、そして何と九十を超える組合が五十八あるわけであります。こうなってくると、組合健保だからまあ自前で何とかやってくださいということではもう済んでいかぬのじゃないか。したがって、前の健保法改正案のときに前の前の厚生大臣であった齋藤大臣の言い分ではありませんけれども、三者三泣きということも言われたのですから、当然にこの組合健保についても政管健保に準ずるような何らかの国庫の助成、補助というものが考えられてしかるべきではないのか。具体的な要望は健保連を中心に出ておるようでありますが、そういったものに対するお考えをお聞きしたいと思います。
  57. 八木哲夫

    ○八木政府委員 ただいま先生から御指摘ございましたように、医療保険の各制度につきましては、最近におきます経済状況の、特に低成長なりあるいは不況の影響、一方医療費の増高ということから考えまして、政管、国保、健保組合を通じまして非常に財政状況が悪化しているということは御指摘のとおりであるわけでございます。基本的には、これらの大きな問題をどういうふうに解決していくかということは、先生御指摘のように一つの大きな問題であるというふうに私ども受けとめておる次第でございます。特にただいまお話しございました健保組合につきましては、従来から体質が非常に弱いと言われております国保なりあるいは政管と比べまして非常に体質の面ではいいというような健保組合におきましても、財政状況の悪化ということが進んでいるわけでございまして、先生お話しございましたように、健保組合の中にもかなり財政状況が苦しくなっている、しかも政管の料率以上に取っているというようなところも出てまいっておるわけでございます。特に現在非常に財政が悪化しているというような健保組合につきましては、企業の体質なりあるいは産業構造等の面から、健保組合も非常にそういう面で悪化の状況というのがあらわれておるわけでございまして、最近におきましても、そういうような財政基盤の非常な脆弱な組合に対しましては国庫補助というような形で、本年度予算におきましても、五十年度予算五億に対しまして本年は六億というふうに一億の増加を計上しておるわけでございますが、今後もこの問題につきまして真剣に取り組んでいかなければならないと思いますし、先ほど御指摘ございました医療保険制度全体のあり方という問題の一環としましてもこの問題に取り組んでいかなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  58. 田口一男

    田口委員 そこでずばり、これは最後です。いま言った組合健保でそういうふうな状態になってきておる。去年までは正直言って健保組合はそれぞれ工夫をこらして、資産を食いつぶしたりして何とかやってきたと思うのです。しかし五十一年、五十二年以降になると、いまの状態が続くとすればもうそういった策は講じられない。しかも、政管健保であれ日雇いであれ他の共済の短期給付であれ、組合健保も同じなんですが、本来なら事務費なり、それから当該組合員の被保険者、また家族の健康増進、こういったことに要する経費は、これは公的なものですから、その組合独自で賄いなさいというのはちょっとおかしいのじゃないか。こういう意味から考えて、どうでしょうね、いま私が例に挙げましたように政管健保の料率を上回っておる組合、こういったものについては法定給付の費用を全額見るとか、またその度合いによっては半分程度見るとか、こういうことが当面考えられないか、この点だけ……。
  59. 八木哲夫

    ○八木政府委員 確かに健保組合のあり方等から見まして、政管の料率を上回っている組合についてどうするかという問題があるわけでございます。やはり健保組合というものにつきましては、設立の際に労使等の考え方等もございまして、健保組合制度というものがあるわけでございますが、個々の組合を見ました場合に、やはり景気の好、不調等によりまして、ある時期には政管の料率よりも低かったという場合もあるわけでございますし、現に健保組合の中にもまだまだいい組合もあるわけでございますので、たまたま政管の料率をある時点におきまして上回っておるということから直ちに国庫補助で考えるということにストレートにいくかどうかということは別問題といたしましても、従来の国庫補助の考え方にいたしましても、企業の体質等から見まして非常に脆弱であり、努力をしてもどうにもならないのだというところにつきまして国庫補助という形で予算補助を行っているわけでございまして、最近の健保組合の財政状況の悪化というような観点からこの予算額も逐次ふやしているというふうな状況であろわけでございますが、御指摘のように健保組合全体の中でも赤字組合、非常に財政の悪化している組合の数がふえているというような傾向を考えました場合に、この問題をどう取り扱うか、医療保険制度全般に通ずる問題もございますし、さらに健保組合の中でもどうするか、あるいは国としてどう考えるか、非常に重要な問題でございますので、来年度の予算編成等を踏まえまして真剣にこの問題に取り組んでまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  60. 田口一男

    田口委員 終わりますが、最後に、いま言ったような個々の健保の財政の問題、それから保険外給付の問題、さらに救急医療などに見られるような国民の医療に対する要求、こういったものをあわせ考えますと、いまの医療保険制度そのものについて、前の国会でああいった改正案が出ましたけれども、来年度中に——来年のことを言うのはちょっとおかしいのですけれども、医療保険制度全般について大きなメスを加えなければならぬ、こういう考え方でいま作業が進められておるのかどうか。そういった点についての基本的な考え方を大臣にお伺いをして質問を終わりたいと思いますが、いかがなものでしょうか。
  61. 早川崇

    ○早川国務大臣 いま御指摘のように、健康保険その他に大きな問題があることは承知をいたしております。いま厚生省として検討の課題になっておるのは、老人医療に関するいろいろな負担増が国保の赤字を圧迫するという問題がありまして、老人医療保険というものが何らかひとつ独自的な制度にならぬかというような検討もいたしておりますが、その他の健康保険とあるいは国民健康保険の統合とか、いろいろな根本的問題は慎重を要する大問題でございますので、いま直ちにこの基本問題まで改正していくという考え方は持っておりません。
  62. 田口一男

    田口委員 終わります。
  63. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 次に、小宮武喜君。
  64. 小宮武喜

    ○小宮委員 私は、厚生省の五十二年度予算編成における原爆被爆者援護に対する考え方をお尋ねしたいと思います。  もうすでに五十二年度予算の概算要求については大蔵省と折衝が始まっておる、このように考えますので、五十二年度予算編成における考え方、そしてあわせて各種手当等についてどのように考えておられるのか、まず初めにその点をお伺いします。
  65. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 五十二年度の原爆予算の要求は約百十二億増額されておりまして、三〇%程度の増額になっております。中身は、従来の施策の充実に力を入れておりまして、まず各種手当につきましては、所得制限の撤廃ないしは大幅な緩和、また各種手当、葬祭料などの引き上げ、こういったものが中心でございます。そのほか、原爆医療法に基づきます健康診断の内容の充実、また、法律に基づかない予算措置でございますけれども、広島、長崎の原爆病院における研究費の増額、また原爆病院や原爆養護ホームの医療器械あるいは各種の福祉機器の整備に対する助成、こういったものをかなり要求いたしております。なお、新規の事項といたしましては、被爆者に対する健康相談事業を強化徹底するという関係から、広島市、長崎市に対して健康相談事業担当職員の人件費の補助、またその他の都道府県に対しましては保健所などにおけるケースワーカーの再教育訓練の費用、こういったものを要求いたしております。
  66. 小宮武喜

    ○小宮委員 被爆者が昭和四十二年以来十年間にわたって訴え続けてきた爆死者に対する弔慰金の問題あるいは財産焼失者に対する見舞い金の支給の問題につきましては、もう前々から本委員会でも必ずといってよいほど取り上げられているわけですが、これに対しては全然考慮する余地がないのかどうか。
  67. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 なかなかむずかしい御質問でございますけれども、私の個人的な意見でよろしければ、一般戦災者との均衡を考えながらやるのであれば考慮する余地があるかもしれないと考えております。しかし、現在御案内のように被爆者に対しては特別な措置が講じられておりまして、すでに一般戦災者との不均衡の問題も表に出ているところでございますし、種々の観点から考えますと、現在においてはそのような死没者に対する弔慰金とかあるいは財産補償といった問題は考えていない、また考えられないと申し上げるしかないと思います。
  68. 小宮武喜

    ○小宮委員 従来は、厚生省は弔慰金の問題あるいは財産焼失に対する見舞い金の問題を言う場合に、いつも一般戦災者に波及することを恐れていままで逃げてきたわけです。ところがいまのは、個人的な見解だということで述べられましたけれども、一般戦災者と比べれば何らかの考慮をする余地があるというような御答弁だったと思いますが、その意味で当然私たちはいまの局長と同じような考え方を持っているわけです。こういうふうな原爆医療法並びに特別措置法があるということ自体が一般の戦災者とは違うのだ、同列には考えていないのだというふうにわれわれは理解しているわけです。そういった意味で、このことは私は大臣に聞きたかったのだけれども、しようがないから局長に聞くけれども、財産焼失者に対する見舞い金は一応こちらにおいてでも、弔慰金ぐらいは、一般戦災者と同列に考えるということでなくて、少なくともこれぐらいはやはり厚生省も踏み切っていいのではないか。その額の問題は言いません。これは厚生省の原爆被爆者に対する少なくとも償いだという気持ちで、ひとつ前向きで御答弁を願いたいと思います。われわれはもちろん野党四党で原爆被爆者援護法を出しておりますけれども、いまのような状態であれば、もう自民党政権が続く限りこの問題は壁にぶつかって絶対考慮する余地はないというふうにも私は考えるわけですが、そうじゃないというふうに厚生省としても言えるような御答弁をひとつやっていただきたい、こう思うのですが、どうですか。
  69. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 私の先ほどの答弁、多少誤解を受けたようでございますが、端的に申しますと、私は、原爆被爆者に弔慰金を払う場合には一般戦災死亡者にも弔慰金を払わなければならないのじゃないかと、逆のことを申し上げたわけでございます。  そこで、現在の原爆医療法と原爆措置法でございますが、これは従来から言われておりますように、被爆者が多量の放射線を浴びまして、その関係で病気にかかりやすいあるいは病気が治りにくい、そういうふうな生存被爆者の特殊事情にかんがみて医療の措置あるいは手当等の支給の措置を講ずるということになっているのでございまして、その限りにおいては一般戦災者とは明らかに違うわけでございます。しかしながら、原子爆弾で瞬間的にあるいは短時日の間に死亡なさったというような方になってまいりますと、一般戦災で死亡なさった方と変わりがなくなってくるわけでございます。したがって、私が先ほど申し上げましたのは、原爆被爆者に弔慰金を払うようなときには一般戦災者の方にも払わなければならなくなってくるのじゃなかろうかということを申し上げたわけでございます。
  70. 小宮武喜

    ○小宮委員 これは確かに、戦争犠牲者という立場から見れば原爆被爆者であろうと一般の戦災者であろうと、その意味では同じだと思うのです。ただ私が言いたいのは、いままでもそうですが、いわゆる原爆被爆者に対して一般の戦災者と違う意味は、やはり医療法、特別措置法を制定しておるし、しかもこの医療法、また特別措置法の措置そのものの性格は、私はやはりある程度国家補償の精神にのっとっているのではないかと考えるわけです。いままでの私の質問に対して局長はいつも、社会保障的なものと国家補償的なものの中間を考えておるということを言っておるわけですから、明らかにこれは一般戦災者とは違う、少しでも国家補償的な精神によってこの法律ができておる、立法精神はそうだということですから、私は、私自身の個人の考え方を言わせれば、やはり一般戦災者も含めて弔慰金制度というのをひとつ考えるべきだということを言っておるわけですが、いつも、そうすれば非常に支出が膨大になるという金の問題を言っておるわけですから、その意味ではこちらだけでも切り離して考えたらどうか。だからむしろ、そういうような財源があれば一般戦災者にもこの原爆の被爆者に対しても弔慰金を払うのは私は当然だと思うのですよ。しかし、そこまで言ってみても、財源の問題があろうから、少しこちらぐらいに対しては一般戦災者とは別個の、こういうような医療法も特別措置法もできておることだし、考え方も一般の社会保障法と国家補償法の中間ぐらいの考え方というから、それでは、その金の額の問題は別として、何らかのやはり被爆者に対しての償いというか見舞いというか、少なくとも弔慰金というか、いろんな形は別としても何らかの措置を考えてしかるべきじゃないのかということを言っておるわけです。  それではいまのあれは、自民党政府が続く限りは全然もうだめだというように考えていいんですか。一般戦災者にもできれば、金さえあればやりたいという考えでしょう、局長も。いかがですか。
  71. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 私の基本的な考え方は、確かに死没者に対する補償の問題とかあるいは失った財産に対する補償の問題とか、そういう問題はあるけれども、しかし、国の財政にも制限はございますし、また特に最近は財政も悪いのでございますから、そういった問題よりも、現に生き残って放射線被爆によって苦しんでいらっしゃる生存被爆者の制度の充実に先に財源を投じるべきではないかと考えております。
  72. 小宮武喜

    ○小宮委員 これをいろいろやりとりしてみてもなかなか結論は出ませんけれども、いまのような局長の話では、いまは財源がないから、生きておる人のそういうような生活保障なり医療の治療なりに重点を置いていきたい。しかし財源さえあればやりたいという気持ちだというように理解したし、またそういうような場合は一般戦災者に対しても同様に弔慰金を渡したいという考え方だというように私は理解して次に進みます。いいですな。  昭和五十年七月、福岡における孫振斗裁判、それに昭和五十一年七月、広島における石田裁判の判決で、原爆被爆者医療法は国家補償の精神によって立法されたものである、こう決めつけているわけです。したがって、この医療法においてすら国家補償の精神で立法されたということであればなおさらのこと、特別措置法は内容を見ても国家補償の精神で立法されておることは明らかだと思うのですが、現行二法は国家補償の精神で立法されておることを認めますかどうか。
  73. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 まず、ただいまお話のございました孫振斗判決、また先般の石田判決、この中には国家補償法だということは書いてないのでありまして、国家補償法的側面を持つ制度である、法律である、こう言っているわけでございます。そこで、数年来私どもが申しておりますように、社会保障法と国家補償法の中間的な法律、制度であるということと同じだと思うのでございます。また私どもも、法律制定以来、絶えずその内容改善には努力をしてきたところでございます。したがって、現行二法につきましてはそのような社会保障と国家補償の中間的な制度と申しますか、あるいは特殊な社会保障制度と申しますか、そういうふうな性格のものでございまして、国家補償の精神に基づく制度ではないのでありますけれども、従来やってまいりました以上に今後も両制度の改善については一層の努力をいたしたいと考えております。
  74. 小宮武喜

    ○小宮委員 被爆者団体では、この被爆者に対する弔慰金の支給の問題あるいは財産焼失に対する見舞い金の問題について、やはり訴訟する意向もあるというふうに私伺っておるわけです。いままで厚生省を相手取っていろいろな裁判が、たとえば公的年金の併給禁止の問題、いろいろあるわけですけれども、厚生省はいつも、裁判に一審で負けたりあるいは負けそうになると法律改正をやってすぐその実態に合わせるようにするわけですけれども、この問題も、訴訟したらこれは私は国が負けるのじゃないか、こう思うのです。そういうような意味で、負けてから改正をして恥をかくよりは、もうここらでひとつ厚生省も前向きで考える、検討するくらいの答弁をしてもいいのじゃないですか。どうですか、訴訟をやってみて負けると思いますか、勝つと思いますか、局長は。
  75. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 これまでの判決でも、国家補償法にすべきである、あるいは国家補償として運用しろというようなことは言っておりません。したがって、もしそのような訴訟が起こりましても、私どもは勝つのじゃなかろうか、私どもの意見が認められるのじゃないかと考えております。
  76. 小宮武喜

    ○小宮委員 それこそひとつ今後裁判で争う以外にないと思います。  特別措置法における所得制限の問題ですけれども、五十二年度予算の概算要求を見ると、各種手当について所得制限の撤廃という方向で大蔵省と折衝しておるようです。これは昨年もそうだったわけですけれども、昨年は大蔵省に押し切られて撤廃までにはいかなかったわけですけれども、ある程度の緩和であったというように理解しております。したがって、今度の大蔵省との折衝の中で、所得制限撤廃についての大蔵省の態度がどのようであるのか。厚生省の所得制限撤廃の要求は実現しそうであるかどうか、その点いかがですか。
  77. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 先ほど来お答えいたしておりますような現在の原爆関係法の性格からいたしまして、大蔵省としては所得制限の撤廃ということにつきましては非常に難色を示しております。しかし、私どもはできるだけ大幅な所得制限の緩和はぜひ実現いたしたいと考えております。
  78. 小宮武喜

    ○小宮委員 所得制限の中で、本人の所得の制限の問題と扶養義務者の所得制限の問題がありますね。いまこの両方でひっかかっておる所得制限者は何名ですか。
  79. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 概数でございますが、約一万八千人の方が所得制限で給付が受けられないことになっております。
  80. 小宮武喜

    ○小宮委員 いまその人たちの中で、本人の所得制限にひっかかって支給されずにいる人はどれくらいあるのか。それから扶養義務者の所得制限にひっかかって支給できない人はどのくらいおるのか。その比率はどのくらいになりますか。
  81. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 ただいま手元に資料を持ち合わせておりませんけれども、原爆被爆者も被爆後三十一年ということでかなり老齢化してはいらっしゃいましたけれども、たとえば老齢福祉年金受給者などと比べれば平均年齢がまだ若いわけでございます。そういうふうな関係で、本人の所得制限の方が所得制限の制度に抵触するというケースがやはり多いのではないかと考えております。
  82. 小宮武喜

    ○小宮委員 われわれも厚生省の所得制限撤廃については大いに賛同するものですけれども、そこで、一挙に所得制限を撤廃することがいまのような大蔵省との話し合いから見れば非常に無理だ。これに対して、その場合は厚生省としては所得制限の大幅緩和というのを考えていきたいということを言われたわけですけれども、その場合、本人の所得制限の問題と扶養義務者の所得制限の問題を見た場合に、私は扶養義務者にまで所得制限をひっかけるというのはいささか行き過ぎじゃないのかというような気もいたします。まあ大蔵省とのいろいろな話し合いの中で微妙な問題もあると思いますが、そうしたら少なくとも、全体的な緩和を図っていくということと同時に、もう一つはやはり扶養義務者の所得制限ぐらいは撤廃をして、それで本人の所得制限についての大幅緩和をするというような——これは決して私がむちゃなこと、無理なことを言うておるわけじゃなくて、非常にわかりのいいことを言っているわけですから、その意味でそういうような方向での取り組み方はできぬかどうか、その点いかがですか。
  83. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 そのような考え方があろうと存じますけれども、端的に申しますと、他の制度との関連からただいま御提案のように扶養義務者の所得制限を撤廃してしまうというようなことはできないと思うのでございます。なお、御指摘のように、本人の所得と扶養義務者の所得ということで、それぞれ一長一短が起こってくるわけでございます。特に、先ほども申し上げましたようにまだ被爆者の平均年齢は老齢福祉年金等の受給者よりも若うございますので、いまのようなやり方の方が有利でございます。しかしながらだんだん老齢化してまいりますと、老齢福祉年金の所得制限のようなやり方の方が有利になってくるわけでございます。そういう被爆者の立場に立てばそのようなことになりますが、また国の立場に立ちますとやはり各種制度の均衡とか公平とかいうものがございまして、なかなかそう一概にはいかないのでございますけれども、両方ともあわせまして今後とも所得制限の大幅な緩和についてはできるだけの努力をいたします。
  84. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは次に進んで、健康管理手当の対象疾病が十種類になっているわけです。この問題についても、被爆者団体には撤廃してもらいたいという強い意向があるわけです。その問題についてはいろいろ問題もあろうかと思いますが、健康管理手当の手当対象疾病十種類というのをすべて撤廃するということは考えられないかどうか。もしそれができないとすれば、いまの十疾病に対して疾病の種類をもう少しふやしていくというようなことも考えていいんじゃないか。だから原爆医療審議会あたりでこれらの問題についてもひとつ審議をしてもらいたいと考えますが、この点についての見解はどうですか。
  85. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 まず、現在の十種類の疾病といった制限を撤廃するということはきわめて困難でございます。その理由は、先生よく御存じのように、いまの健康管理手当の対象者は、いわゆる二キロ、三キロといった多線量被爆者だけではなく、広島では六キロぐらいまで、長崎では十二キロぐらいまで広がった地域の被爆者がたくさん入っていらっしゃいますので、疾病制限を完全に撤廃するということはできないと思います。  そこで現在の十種類のものを十二種類とか十三種類にできるだけ広げるべきだという御意見が出るのでございますけれども、この問題は、もともと現場の被爆者の医療を担当していらっしゃるお医者さん方の御意見を集約した形で原爆医療審議会の委員が審議会に提出いたしまして、そこで慎重に審議されて決められるというような過去の経緯がございます。したがって、私どももそういうふうな形で原爆医療審議会の御意見を今後も引き続きお聞きしてまいりたいと思うのでございますけれども、もうすでに十種類の疾病を指定しておりますので、あと残ってくる疾病と言えば皮膚の疾病とかあるいは胃腸の疾病とか、こういうものになってまいりますが、現在の医学の知見では、そういったものについては被爆者と被爆者でない方の間に何ら発病率等に差がないということになっておりますので、ただいまお話がございましたようにいま直ちに疾病の種類をふやしていくということは困難であろうと考えております。
  86. 小宮武喜

    ○小宮委員 もう一つは、現在特別手当をもらっておる、あるいは健康管理手当をもらっておる、保健手当をもらっておる、こういうような人たちを除いた全員に対して何らかの手当を支給する考え方はないかどうか、その点いかがですか。
  87. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 先ほどのお答えにも関連してまいりますけれども、そのような考えは私どもは全く持っておりません。むしろ、昨年の十月から始めました爆心地から二キロ以内の直接被爆者の保健手当の額を、今後できるだけ早く大幅に上げていかなければならないと考えております。
  88. 小宮武喜

    ○小宮委員 いま保健手当の問題が出ましたけれども、保健手当はいま爆心地から二キロ以内の方だ。しかし、以前に特別手帳をもらっておった人は二キロだったのが後で三キロになった。したがって、保健手当の対象地域を三キロまで拡大する考えはないかどうか。それからもう一つ、被爆者団体の中では、現在のいわゆる二キロの範囲内であっても、二キロの人あるいは一キロの人あるいは一・五キロの人では放射能の影響力から見てそれぞれ相違があるのだから、むしろ一キロの人の方をもっと上げて、一・五キロ、二キロぐらい、こういうように三つのランクぐらい設けてその保健手当をもっと上げるべきだという考え方も出ているわけです。余り細分化されるとまたいろいろな問題がありますが、いずれにしてもやはり二キロを三キロに拡大してもらいたいということと、いまの二キロ以内であってもそういうような、三つでなければ二つでもいいでしょうし、何か考えて、もっともっと保健手当を大幅に引き上げていくという考え方がとられないものかどうか。その点ひとつ見解をお伺いします。
  89. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 第一の、現在の保健手当を支給いたします基準の爆心地から二キロというのを三キロに拡大できないかという御要望でございますが、これにつきましては、私どもは一九五八年の国際放射線防護委員会の勧告、これは一九六五年に改定されておりますが、これに基づいて一応二十五レム以上の多線量被爆者という基本を設けまして行政事務の運用を考えまして、三十五年の特別被爆者の制度と同様に爆心地から二キロと、こうしたものでございます。そこで長崎について見ますと、二キロで設定いたしましたためにその放射線量は十八・三レムになっているわけでございます。基本は二十五レムであったわけでございますが、もうそれだけ甘くなっているわけでございます。そういった問題と、それから基本が国際放射線防護委員会の勧告でございますので、また近く来年の春あたり新しい勧告が出るようでございますから、そういった勧告の内容が変わってくればこれは再検討する必要があろう、このようにこれまでも御説明してきたとおりでございます。ただ、現在長崎の場合、二キロで十八・三レムでございますが、二・五キロで二レムぐらいになります。三キロにいたしますと〇・五レムというふうに非常に少なくなってまいりますので、来年あたり新しい勧告が出たといたしましても、そういうふうな現状も考慮しながらこの問題は慎重に決めていかなければならないと思っております。  また第二の、二キロ以内の直接被爆者についても、たとえば一キロ以内、二キロ以内というふうに二段階にして、一キロ以内の人はもっと高くなるような配慮ができないかという御要望でございますけれども、これにつきましては、やはり先生お話にもございましたが、二キロという比較的短い距離でございますので、その中でさらに被爆者に差をつけるということはどうであろうかというような一般的な問題がございます。また、この保健手当はそもそも特別手当だとか健康管理手当をもらっていない方がもらうわけでございますから、二キロ以内で差を設けるということよりも、やはり全体として保健手当の額の引き上げを考えていくべきではないかと私どもは考えております。
  90. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、この被爆者二世、三世の対策についてはどのように考えられておるのか。
  91. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 被爆二世、三世の問題は、先生もよく御存じのように、結婚とか就職とかに非常に影響するというような面がありますので、きわめて慎重に扱わなければならないと考えております。また、従来の旧ABCC等による研究の結果では、二世、三世については被爆者の場合と被爆者でない場合と病気の発生状況について差がないわけでございます。そういう意味で、二世、三世対策は、国としては正規の事業は行わないで、調査研究の一環として被爆世帯の健康状態に関する研究という中で、希望なさる二世、三世については健康診断などもやってきたわけでございます。しかしながら、理論的には原爆放射線の影響が二世、三世に出てくる可能性があるわけでございますので、従来のような医学の方法でなく、新しい現代の医学、生物学の最先端の技術をもってこの問題を解明しようということになりまして、本年度から広島、長崎の放射線影響研究所において多額の研究費を計上いたしまして、血液のたん白質を分析して測定する方法でございますが、遺伝生化学的な二世、三世の研究を始めたところでございます。この研究もやはり五年ぐらいたたないとその結果が適正に評価できないのでございますけれども、できるだけ早く二世、三世の問題は解明をし、必要があれば何らかの措置はとらなければならないと考えております。しかし、現在までのところは二世、三世には影響がないというのが医学の通説となっております。
  92. 小宮武喜

    ○小宮委員 前々から大分被爆者団体が陳情しておりました地域拡大の問題については、五十二年度は全然考えていないのかどうか。もっと拡大してほしいという切なる要求が出ておるわけですけれども、この地域拡大の問題についてはいかように考えておられますか。
  93. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 五十二年度の予算要求の中には地域拡大の予算は計上してございません。その理由は、私どもも地域拡大につきましては重大な関心を持っておりますけれども、地域を拡大しなければならないというはっきりしたデータがこれまでなかったわけでございます。そこで、先生も御存じのように、本年度、広島と長崎の土の残留放射能の調査を実施いたしておりまして、すでに広島の方はまとまってまいりました。長崎の方もあと一カ月ぐらいでまとまってくると思いますので、その結果などもよく見た上で、必要があるならば予算の編成前に追加要求をするというような措置も講じなければならないと考えております。
  94. 小宮武喜

    ○小宮委員 それから、長崎、広島の原爆病院に対する助成の問題について、今度の五十二年度予算では五十一年度予算に比べてどのように考えて予算要求をしておるのか。その点について若干ひとつ御答弁願います。
  95. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 まず、運営費の補助金につきましては、広島、長崎合わせて国の予算は二千六百万円でございますが、これが病院に渡るときには三倍になって渡ると思うのでございますが、この二千六百万円は本年度どおりでございます。と申しますのは、昨年の両病院の経営の内容を拝見いたしますと、運営費の赤字としてはそれだけ差し上げれば十分であると考えるわけでございます。ただ、従来もやっておりましたけれども、両病院で原爆後障害研究をやっておりまして、本年度はそれぞれ三千二百八十万円ずつ研究費を差し上げましたが、これは来年はさらに一千万円ぐらいずつ増額いたしたいと考えております。また、原爆病院の医療器械等の整備につきまして、本年度は長崎の原爆病院血液の自動分析装置の補助金だけでございましたが、来年は広島と長崎、ほぼ同額ずつということで、それぞれ国費で一千万円以上ずつ医療器械の整備費の補助金が行くようにいたしたいと考えております。これも現場の病院に行くときには三倍の額になる予定でございます。
  96. 小宮武喜

    ○小宮委員 時間が大分なくなりましたが、特別手当だとかあるいは健康管理手当、保健手当、医療手当、介護手当、家族介護手当、この手当の相関性というのはどういうようになるのですか。私が聞き及ぶところでは、健康管理手当はいわゆる無拠出の老人福祉年金を基準にして大体これと同額、それで特別手当はそれの二倍にするとか三倍にするとか、何かそういうような一つの相関性があるやに聞いておりますが、各手当の相関性についてひとつ説明してくれませんか。
  97. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 標準になりますのは健康管理手当で、受給者が六万人程度で最も多いわけでございますが、この健康管理手当は老齢福祉年金と同じ額でございます。したがって、本年は十月から一万三千五百円になったわけでございます。次に認定患者の特別手当でございますが、これは老齢福祉年金の二倍、健康管理手当の二倍ということで、十月から二万七千円になったわけでございます。また保健手当は健康管理手当の半分、老齢福祉年金の半分ということで、実際には六千七百五十円でございますが丸くして六千八百円としているものでございます。これは先生もよく御存じのように、認定患者、それから健康管理手当の受給者、さらに保健手当の受給者と申しますと、病気の面、健康の面でもいろいろ相違がございます。そういった点を配慮いたしましてそのようなバランスにしているものでございます。
  98. 小宮武喜

    ○小宮委員 最後に、私もこの前長崎の健康管理センターに行って健康診断をやってきたわけですが、糖尿の検査、それから血圧をはかる、それから血沈か何かとる、この三つぐらいしか健康診断の場合やらぬわけですが、何かこう物足らぬような気がするわけです。それで、診断の内容をもっと充実するということでひとつ考えていただきたい、こういうふうに考えますが、今度の予算の中で、胃腸、肝機能検査だとか心電図検査などは、これは医師の指示でやるということでなくて、健康診断の中にこれだけ含めてぜひやってもらいたいと思うのですが、どうですか。
  99. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 たとえば心電図の測定と申しますと、これは血圧の高い方だけやるというのが普通でございます。血圧の低い人もやろうという方法もないことはございませんけれども、通常は血圧の高い方にやる。また肝臓の機能検査でございますが、これはかなり高級な検査でございまして、これも医師が問診とか聴打診、触診をやって異常がないと思う方にやるにはやはり少し高級な検査でございます。またそれを全部やれと申しますと、広島市、長崎市の場合でも健康診断チームが大変苦労すると思いますし、ほかの都道府県になりますとそういう健康診断がますます実施しにくくなってまいります。そのような被爆者の健康保持のために必要な項目という立場と、それから一方においては実施者側の実施能力、それに財政も入ってまいろうかと思いますが、そういうことを総合勘案しながら健康診断の内容もだんだんと充実してまいりたいと考えております。
  100. 小宮武喜

    ○小宮委員 いずれまた特別国会あたりで法律案も出ましょうから、そのときまたじっくりやることにしまして、きょうはこれで質問を終わります。
  101. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 この際、午後一時四十分まで休憩いたします。     午後一時五分休憩      ————◇—————     午後一時四十分開議
  102. 熊谷義雄

    熊谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続行いたします。金子みつ君。
  103. 金子みつ

    金子(み)委員 私は本日は、最近新聞で話題に上っております中国の孤児、伊藤司さんという方のことを中心にいたしまして、このことを一つの例として考え、戦後処理の問題について関係の御当局から御意見やあるいは対策などを聞かせていただきたい、そういうふうに考える次第でございます。  申し上げるまでもございませんけれども、この問題は、もう三十年も三十一年も前のお話になるわけでございますが、日本が敗戦ということで戦争の幕が閉じられた結果でございますが、侵略戦争を日本では大東亜戦争と称しておりました。世界的に広がった戦争で、第二次世界大戦とも呼ばれている戦争でございました。その結果、日本では約三百万人近いとうとい生命の犠牲を出しておりますばかりでなく、そのほかに今日なおはっきりしないと申しますか、所在もはっきりしないという実例もございますし、とりわけきょう私が取り上げたいと考えております問題は、中でも一番多いと言われております中国における孤児の問題でございます。これは当時、戦争が終結いたしました際に逃げまどって、内地にすぐ引き揚げてこられなかった家族もあったと思いますし、あるいは引き揚げる際に子供を連れて帰ることができなくて、子供をよそに、中国の方に預けるとかあるいはその他のところに預けるというようなことで、自分だけ引き揚げてきたという家族もあると思います。いろいろなケースがあると思うのでございますけれども、幾つもあると思われますそういう実例は余り新聞等には載って出てまいりませんし、戦後処理の問題としては大方の国民の目の前には余り知らされてきていなかった問題だと私は思います。これは隠された戦後処理の問題として非常に重要な意味を持っている。しかも、親子ばらばらになった人たちが再びそのきずなを結び直すというような問題であったりいたしますから、私ども体験をしない者にとってはまことに想像もつかない非常にデリケートな、機微に触れた問題だと思うわけでございます。それでこの問題については、十分国の責任ということを感じて政府御当局は処理をなさるべきだというふうに思うわけでございますが、昭和四十七年以来、日中国交回復が図られまして大変によかったと思っております。その結果、いまお話をしたようなわけで中国に取り残された孤児が中国の方と結婚をして、そして日本に里帰りのようなかっこうで戻ってこられる日本の婦人もあるというふうに聞いております。あるいはまた親捜しというようなことでございましょうか、孤児の人たちが自分の親を捜してほしいという申請も政府に出ているということもございますし、そういうような関係もございまして、帰国が大変に急激に広がってきたように最近は感じられるわけでございます。  そこで、きょうの本論、質問の中心になると思われます伊藤司さんの件でございますが、今回、九月の二十二、三、四日ごろから毎日新聞中心といたしまして、朝日にも読売にも、日刊新聞がそれぞれこの問題を取り上げて報道しておる事件でございますから皆様方も十分御承知のことだと思います。詳しいことを申し上げる必要はないと思いますから省かせていただきますけれども、私は問題だと思いましたのは、この報道されている中国孤児、伊藤司さんとおっしゃる三十六歳になられる方が、お母さんだと考えられておりました高野竹野さん、北海道に住んでいらっしゃる方ですが、この方との間に長い間かけていろいろと文通をして、そして親子であるだろうかということについての確証を得るような材料のようなものをお互いに取り交わしをしながら、親子だということをお互いに認識し合って、そして日本へ帰ってこられた。中国で結婚されて子供さんもできて、一家五人で日本へ戻ってきて、そしてお母さんと会われたという、大変美しい、うれしい報道を私たちは見てきたわけでございます。  ところが帰国後、ただいまの時点ではこれが一変いたしまして、大変に悲しい事情になってしまったという事実でございます。これは皆様方も御存じでございましょうから簡単に申し上げますが、終戦直後に中国に残してきた息子さんを四十九年秋、中国名で何と読むのかよくわかりませんが、曲民利とでも読みますのでしょうか、と名のっていた男性の一家五人を呼び寄せられた高野さんと言われる老婦人が、あれほど子供だと思って呼んだのに違う、あれは私の子供ではないということを言い出し始められたという事件でございます。このことは、御本人の伊藤さんに言わせれば、四十九年に北海道のお母さんのところに帰ってから一カ月ぐらいしたときに、警察の人がお母さんのところに来て、あの人はあなたの息子さんではないですねと言われた。それ以来お母さんが大変に態度が変わってしまった。ところが自分は日本語が余り上手にできないのでそれに十分反論もできなかったし、うまく言えなかった。とてもつらかった。それで日本語を勉強しなければいけないというので、東京に上京してきて日本語の勉強をしているというのが現状なんでございます。これは一つの例なんでございますが、私は、似たようなケースがほかにもあるんじゃないだろうか、たまたまこれは報道の線に乗りましたからこのようにみんなの目に触れるようになったわけですけれども、報道の線に乗らなかった方たちもあるのではないかというふうに思われるわけなんです。  そういうことでございまして、中国を中心とする孤児の問題は、いま申し上げた伊藤司さんと高野竹野さんとの親子関係、実子か実子でないかということの認定という問題があると思うのですが、ただ親子関係の認定をすればいいというだけの問題ではなくて、これはむしろそれよりも戦後処理の重大な問題だというふうに取り上げて考えてみる必要があるのではないかというふうに思うわけでございます。したがいまして、政府は国としての責任を深く感じてこの種の事件をお取り扱いになっているものだと私は確信いたしますから、そういう意味関係御当局の対策や方針を聞かせていただきたいというふうに思うわけでございます。そこで、このケースの中心の所管となりますのは厚生省でございますから、まず厚生省関係からお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず最初にお尋ねしたいと思っておりますことは、この伊藤さんの問題だけではございませんけれども、伊藤さんを例にとってくだすっても構いませんが、要するに中国その他、大東亜戦争と言ったぐらいですから範囲は広うございます。その広い範囲の中で中国が中心になると思いますが、こういった国に残されておられる孤児の方たちの親子の関係の確認の問題なんでございますけれども、これは従来厚生省の方の調べでは、五十人近い数の孤児が日本に帰ってきて親子の対面をしていらっしゃるという大変に明るい御報告もございますようです。それは大変に結構なことだと私は思うのですけれども、私がお尋ねしたいのは、そういうようなよいケースを踏まえて考えるのですが、いままで五十人ぐらいそういうケースがあったということなんですけれども、どういうふうな方法で親子であるということの認定をなさったのか、それが知りたいわけでございます。単なる記憶だけを頼ってなさったものなのか、あるいは血液検査などの科学的な調査もなさったものなのであるのか、それらの点につきましてまず伺わせていただきたいと思います。
  104. 出原孝夫

    出原政府委員 特に御指摘のような孤児の問題が出ておりますのはほとんど全部が中国関係でございます。中国に残留をしております身元不明の孤児あるいはその周辺の者から調査の依頼がこちらにやってくるわけでございますが、それは厚生省に直接参ります場合と、あるいは北京の日本大使館あるいは都道府県の援護の担当課といったような関係の官庁にということで、それぞれまちまちでございますが、照会が寄せられてきております。あるいは、すでに日本に帰国された方から、こういう子供が残っておるがどうだろうというような情報をいただいてこちらから照会をするというケースもございます。これらによって総合的に厚生省と都道府県は、身元不明の者につきましてわれわれの手元に各種の資料を保管し、またいままで積み上げてきました資料を活用しまして、ある程度の資料を積み上げてまいるわけでございます。また、特に最近では報道機関の御協力を得まして、その資料をもとにして公開の調査をいたしまして名のり出てきていただくというようなことでの身元の解明に努めておるという実情でございます。調査の結果、どうもこれは親子あるいはきょうだいといったような肉親の関係があるようであると思われるものにつきましては、戸籍の調査をいたしましたりあるいはその人の肉親であると考えられるような方との連絡をとりまして、現地の孤児とそれからそれらの肉親の方々との間で通信を重ねていただく。その間にお互いの写真を交換するとか、あるいは容貌あるいは体格でございますとか、あるいは子供のときに受けた傷跡であるとかいったような体の特徴の確認をする、あるいは孤児になった当時の全般の状況等について双方の記憶、記録を確認をしていただくということで、最終的には親あるいはきょうだい、肉親とその子供との間で、この状況から見てお互いにこれはきょうだいである、親であるといったような確認をしていただいた上で、帰国あるいは一時帰国の援護の措置をとるというようにいたしておるわけでございます。なお、御指摘のございました血液検査、血液型であるとかといったようなことにつきましては、今後の課題ではあると思っておりますけれども、相互の医学的な事情その他もございますので、現在の段階では実施をいたしておりません。
  105. 金子みつ

    金子(み)委員 いままでなさっていらっしゃったことはそういうことであるということはわかったわけでございますが、そういたしますと、いまのお話ですと、いままでのは中国孤児を中心にやっていらっしゃったわけでございますね。中国以外にそういう孤児の人たちが存在しているということについてのお話を厚生当局では御連絡を受けられたことはないのでございますか。
  106. 出原孝夫

    出原政府委員 中国以外のところでは先ほどほとんどないと申し上げましたが、私どもが承知しておりますのは、これは事実の確認ができておりませんが、ハバロフスク、ソビエトの中に一人あるということが新聞紙上に出ておりました。そのケース一件でございます。
  107. 金子みつ

    金子(み)委員 そうしますと、積極的にこちらから調査をするという形でなくて、先方側から、あるいは帰られた方のお知り合いからとか、いろいろな方たちからの情報を得た上で進めていらっしゃる、こういうことでございますね。厚生省、国としては、戦争に関係のあった国の政府に対して積極的にそういう孤児の調査を依頼するとかいうようなことはなさっていらっしゃらないのですか。
  108. 出原孝夫

    出原政府委員 そのとおりでございます。ただ、中国、特に旧満州地区が終戦のときの状況からいって非常に極端にこういったことが多うございましたので、中国に関しましては特に国交回復以後、この面につきましては両国の協力のもとに積極的に進めておる、こういうことでございます。
  109. 金子みつ

    金子(み)委員 中国の問題は確かにそのとおりだと私も思いますが、中国以外の国に対して積極的に、孤児を捜してその問題を解決するために措置をとるという御方針は立てていらっしゃらないわけでございますか。それを聞かせてください。
  110. 出原孝夫

    出原政府委員 この点につきましては、他の一般の未帰還の邦人も各地におりますので、そういった一般未帰還の邦人の帰還問題として私どもは各国といろいろ御連絡をいたしておるということはあるわけでございますが、特に孤児だけを取り出してということはいたしておりません。
  111. 金子みつ

    金子(み)委員 いままでいろいろな関係から厚生省の御当局で把握していらっしゃる孤児の方々の、ある程度身元がわかっていると思われるような方は何人ぐらいございますか。
  112. 出原孝夫

    出原政府委員 いままで中国の方から、残留の孤児の方から調査の依頼のありましたものを全部まとめますと、ことしの九月現在で六百二十九件、大体六百三十件弱でございます。その中で調査によりまして身元の判明いたしましたのは四百二十四件ございまして、なお私どもの手元に二百五件が不明のままで残っております。
  113. 金子みつ

    金子(み)委員 不明の方たちの問題については、それを積極的にお調べになる御方針がおありでございますか。
  114. 出原孝夫

    出原政府委員 すでに昭和五十年の三月を第一回にいたしまして、ことしの四月二十六日まで四回、各新聞社の御協力を得まして公開の調査をいたしまして、これはかなりな成果が上がっておりますので、また、私どもいま二百五件たまっておりますので、整理をした上で関係の向きに私どもから御協力をお願いいたしたいというように考えております。
  115. 金子みつ

    金子(み)委員 そういう方々は、いま話題の中心になっております伊藤司さんを初めといたしまして、日本人としての確認をとっていらっしゃるわけでしょうか。
  116. 出原孝夫

    出原政府委員 孤児になりました当時の実情を御本人がほとんど覚えておられない場合もございます。そういった状況と、それから周りの人たちの証言等を得まして、在中国の大使館等から経由する場合もございますし、直接情報をいただく場合もございますが、そういう意味でどうも日本人の孤児であるようであるということがまず第一番になります。その次に、いろいろな事情をできるだけ詳しく用意をいたしまして、日本の側で昔子供を置いてきたけれどもということでお捜しの方がございますので、結局その人たちにできるだけ目に触れるような形で御照会をいたす、その結果確認をしていくということでございますので、日本人の子供であるらしい、あるいはかなりな程度において確実であるというような情報をもとにいたしまして、さらに引き取り手と申しますか、こちらの方に住んでおります親であるとかあるいは兄弟である、親族であるといったような者がこれは間違いないという確認と、双方が必要でございますので、その結果明確にこの人であるということを認めまして帰っていただくように援助をいたすということでございます。
  117. 金子みつ

    金子(み)委員 そういたしますと、いま話題の中心になっております伊藤司さんでございますが、この方につきましては日本人としての確認をお持ちになっていらっしゃるわけでしょうか。
  118. 出原孝夫

    出原政府委員 三十年前のことでございますので、究極的に確実な証拠をもってそうであると言い切れるケースは実は非常に少のうございます。大体の場合には、多分そうであろう、あるいはそう信じられるというようなケースとして御照会を申し上げて、最終的には肉親の方々のお互いに肉親であるということの確認、そしてお互いに信頼関係をもってそのきずなを認められるということが最終的な問題になりますので、この辺のところになりますとむしろ三十年前にさかのぼっての肉親の相互の信頼関係というものが非常に大切になってまいります。したがいまして、私どもがお世話を申し上げます過程におきましても、その点については十分肉親の方にも申し上げるようにいたしております。最終的に証拠はということになりますと、これは非常にむずかしい問題でございます。
  119. 金子みつ

    金子(み)委員 そういたしますと、いろいろ大ぜいのケースの中には、いまお話のあったような形で確かにそうだと、いろいろな方面から考えて確認できる方もある。しかしそうでない方もあるということでございますね。そういたしますと、そうであると認められた方たちに対する生活その他の援護の方法、それからまだ不明だという段階にある方々に対する国としての生活援助の方法なんかはどうしていらっしゃるのでしょう。
  120. 出原孝夫

    出原政府委員 日本の方におきまして肉親がおられるということで確認ができた場合には、まず中国から永住のためにお帰りになるなり一時帰国をされるなりの必要があるわけでございますから、その際の旅費等は国の方でごめんどうを見て、要するに中国の国内における旅費、それから中国から日本の方にお帰りになる旅費等については私どもの方でごめんどうを見させていただくということになるわけでございます。帰りましては、それぞれの引き取りの家族等がおられます場合も多うございます。そういう方につきましてはそれぞれの生活の道を立てていただくわけでございまして、その他の者につきましては一般の社会保障の中で、たとえば生活保護の必要な方は生活保護を適用していただくというようなことになるわけでございます。
  121. 金子みつ

    金子(み)委員 厚生省関係といたしましては最後にもう一度またお尋ねさせていただきたいと思いますので、次に、いまの話と関連をして警察庁の方に質問をさせていただきたいと思います。  いま厚生省の御答弁を伺っておりますと、親子関係を確認するということは科学的な調査はやっていらっしゃらないので、要するに人情的にと申しますか心情的にと申しますか、そういうところで、そうではないか、そうであろうというふうになっているようなお話でございましたから、要するに親子であろうと思われる二人の、あるいは数人のでしょうけれども、相互の信頼関係が一番重要だというふうにお答えいただいたわけでございます。そのことは確かに大変大切なことであるし、いまのお話を伺っておりますと、いまの段階ではそれ以外によりどころがないみたいな対策を進めていらっしゃると思うのです。  そうであるとすれば、今回のこの伊藤司さんの場合に、新聞等にも出ておりましたから御存じだと思うのでございますが、伊藤さんが四十三年から四十九年まで六年間もかかっていろいろと、文書取り交わしをやったり、手型を送ったり特徴な教えたり写真を送ったりして、親子だとお互いに考え日本に戻ってきて、お母さんと一緒に生活して非常に楽しかった、そういう期間があったわけでございますね。ところが、帰ってきてお母さんと一緒に生活している間に、帰国後一カ月と報道では載っておるのですが、帰国後一カ月ぐらいしたときに、お母さんは北海道に住んでいらっしゃるわけですが、北海道の警察の方がそのお母さんのところに訪ねてこられて、あの人はあなたの捜していた本人ではないということを言われたというのです。そのことがあってお母さんの態度が非常に変わったということもわかりましたし、それで本人は非常に不思議だと思ったのだけれども、言葉が不自由だったからそれに反論できなかったと大変に嘆いておられるわけです。それと同時にもう一つは、五十一年の八月、ことしになってからですが、伊藤さんは東京板橋の志村に住んでいらっしゃるわけですが、そこに突然警察の方が見えて、旅券法違反の疑いがあるというので家宅捜索を受けた。そして任意出頭を何回も何回も強制されて、出かけて行っていろんなことを聞かれたということがあるわけでございます。  そこで私が伺いたいと思いますのは、あなたが捜しているあなたの実子ではないですよというようなことを何の必要があってお母さんに言ったのかということと、何を根拠にそういうことをお母さんに言ったのかということが知りたいのです。いま一つは、旅券法違反だという疑いですが、何をもって旅券法違反だというふうにお考えになったのか、この辺を詳細に教えていただきたい。
  122. 大高時男

    ○大高説明員 ただいま先生お尋ねの件でございますけれども、最初に、現在伊藤司と称しております人物につきまして、本人は北海道に四十九年の十二月ですかに中国から引き揚げて帰りまして、その後北海道警の者が訪問しておりますが、その際にいま先生のおっしゃったような話は全く出ていないわけでございまして、警察官が訪問しましたのは文字どおりお話を聞くだけであって、こっちの方からたとえば伊藤司は別人であるとか、そういうような話は一切いたしていないわけでございます。それからさらに翌年になりまして北海道警の方からやはりお母さんのところとか関係のところを訪問しておりますけれども、むしろ先方の方からあれは別人であるという話を警察の方で聞いておるという実情でございます。  それから第二の点でございますけれども、この伊藤司氏は四十三年ぐらいからお母さんと文通をいたしまして、そして四十九年の十二月に引き揚げてまいったわけでございますが、引き揚げました当初のころから、同じような形で引き揚げた人たちの間で、彼は完全に別人である、しかも伊藤司でないということを承知しながら自分で早く帰りたいために北京の大使館で渡航証明をもらって帰ってきた者である、こういう風評がございまして、これに基づいて私どもの方では母親を初めとしまして関係者の方々からいろいろと話を聞いて、これを総合的に分析しました結果、現在の伊藤司氏が北京の大使館から四十八年の九月に渡航書を伊藤司名義で入手した。この伊藤司名義の渡航書を入手するというのは旅券法の二十三条の違反になるわけでございまして、さらに、北海道の方に帰りまして以降、北海道の本人の居住する場所の役場でございますけれども、こちらの方で住民基本台帳、これに移動届を提出して、元満州から北海道に転入した、こういう形で公正証書の原本に不実の記載をせしめた、こういう罪名で私どもの方は捜査を行ったわけでございます。それで、お説のように八月十二日に伊藤司氏方ほか三カ所を捜索いたしまして必要な書類、資料を押収したという状況でございます。その後取り調べをやっておりますが、先生も先ほどからおっしゃいましたような旧満州の孤児であるという立場等も考慮いたしまして、私どもの方では任意でお話を伺っておるというような状況でございます。
  123. 金子みつ

    金子(み)委員 二つ問題があると思うのですけれども、一つは、いまの御答弁では自分たちが言ったんじゃない、お母さんの側から言ったんだというお話ですけれども、本人の言葉によれば、自分は母からそんなことは一つも聞いたことがない。それからお母さんの言葉によれば、警察がこんなことを言ってこなければこんな問題にはならなかったのに、こういうふうに嘆いているわけです。そうするとどっちが本当のことを言っているのだろうということになると思うのですけれども、警察の方が、自分が言っていることが正しいとおっしゃれば新聞報道が間違いである、報道は誤りであったというふうにしかならないわけなんですが、報道が正しかったとすれば、警察庁の方は大変都合のいい言い方をなさったというふうになるか、どっちかにしかならないわけで、私どもとしては大変困るわけでございます。  それからいま一つは、確実な証拠がなくてそういうふうに家宅捜索をするなどしていらっしゃるわけですが、伊藤さんを任意で取り調べておりますとおっしゃいましたけれども、警察に呼ばれていって調べられるということは一般の人にとりましては大変なことですね。皆さん方は御専門ですから、任意取り調べなんて大したことないとおっしゃるのかもしれませんが、それは一般の人にとりましては大問題だと思います。ですから、そういうふうな非常にショッキングなことを無神経になさるということが私はたまらないのですけれども、この伊藤さんについては犯人扱いをなさるおつもりなんですか。
  124. 大高時男

    ○大高説明員 第一の点でございますけれども、私どもの方では伊藤司氏が別人であるとかなんとかいうことを帰った直後にわざわざ母親のところに言っていかなければならない理由も何もございませんので、お帰りになった事情をお聞きに行ったというだけのことでございまして、それは誤解ではなかろうかというふうに私どもの方では考えます。  それから第二の点でございますけれども、なるほど犯罪にもいろいろな態様があるわけでございます。しかしながら、少なくとも法治国である以上、法に違反する行為がございますれば、動機はともあれ、所要の捜査をやり、真相を明らかにするというのが少なくとも警察の責務でございます。しかしながらその中におきまして、事情を慎重に考えながら捜査をやってまいる、御迷惑をかけないようにするというのが筋ではなかろうかというふうに考えております。
  125. 金子みつ

    金子(み)委員 伊藤司さんは伊藤司という人間に成り済まして日本へ帰ってこようというような意思があったと考えていらっしゃるわけですね。
  126. 大高時男

    ○大高説明員 そういう疑いを持っております。
  127. 金子みつ

    金子(み)委員 そういう疑いを持たれるに至った根拠がございますか。
  128. 大高時男

    ○大高説明員 いろいろ細かい問題はあるわけでございますけれども、現在私どもの方でなお捜査中でございますので、その点については御説明を差し控えさせていただきたいと思います。
  129. 金子みつ

    金子(み)委員 そういうふうに答弁をなさると、もう後はこっちといたしましても何も言えなくなってしまうんですね。  私はこの問題について非常に重要だと思いますのは、私ども、報道とかあるいはいろいろな情報を調べた結果のものでございますけれども、この人本人は、成り済ますような悪巧みと申しますか、そういうような考え方をもって戻ってきたのではない。もしそうだとすれば、四十三年から四十九年まで六年の間、高野さんという人と文通したりいろいろなものを送ったり何かして、そして本当に親子だとお互いが信じるようになったその心情を結果的にはぶち壊してしまいますね。だから私は非常にデリケートだと思うのです。だからこういう問題はそんな軽率に扱われたら困ると思うのです。もっともっと慎重にやっていただきたい。私も、この方が本当に伊藤司さんなのかどうかということはわかりません。私どももいろいろな資料から判断する以外にないわけなんですが、警察当局もそうでございましょう。確定的な根拠はいまのところはまだ言えないとおっしゃるのですから、持っていらっしゃらないというふうに判断していいと思うのですけれども、そのことがはっきりするまではこういうことは余り公表なさらないようにしていただかないと、本人を大変に傷つけると思いますし、そのことによってこれから先、将来似たようなケースが何ケースも出てくるかもしれませんね。もうすでにどこかほかのところに、自分は伊藤司だと名のっておられる方がいらっしゃるという記事もありますね。そちらの方も本当にその人がそうなのかどうか調べなければならないわけでございましょう。そうするとまた第三の伊藤司が出てくるかもしれないし、こういう問題はわからないですね。伊藤司関係だけではなく、全然別のケースでもやはり同じような問題が起こってくる可能性があると思うのです。将来そういうことが起こってくると、私が心配しますのは、今後の帰還問題に対して非常に悪い影響といいますか、萎縮させてしまうような影響を及ぼすのじゃないだろうか。堂々と自分はこういう人間でこういうことでといって日本に帰るということについて言えなくなってしまうのじゃないだろうか、警察当局の介入があったために。そういうふうな心配をするのですが、そういうことがないようにお計らいなさる御方針はおありでしょうか。
  130. 大高時男

    ○大高説明員 ただいま先生の方からいろいろ御懇篤なるお話をいただいたわけでございますけれども、こういう問題は何と申しましても終戦後の一つのあれでございますし、また人道上の問題でございますので、警察も従来同様慎重な態度で捜査をやりたいと思っておりますし、また、事案があれば何でもかんでもということでなくて、内容を見て慎重に判断していく、こういうことで参りたいと思っております。
  131. 金子みつ

    金子(み)委員 時間もございませんからこれにだけ余りかかわっていられないのですが、非常に重要な問題だと思います。今回の事件の中心的な存在だと思える問題でございますから十分慎重にやっていただきたい、間違っても本人を犯人扱いするようなことはなさっていただきたくないと、私は強く要望しておきたいと思います。  それからその次に、これは法務省の関係ですが、法務省の方いらっしゃいますでしょうか。——簡単なことですけれどもお尋ねしたいと思いますが、いままでのやりとりを聞いていてくださいましたならば、この伊藤司という人の日本人であるということの確認とか伊藤司という人間であるかということについての結論がまだはっきり出ていないわけでございますが、もしそのことがはっきりと判明いたしましたその暁には、その伊藤司さんなりあるいは今後似たようなケースが出てくるかもしれませんが、その人たちに対して日本人としての国籍その他必要な法律的な保障というものはきちっととれるものなのでしょうか。それともどうなんでしょうか。その点を聞かしていただきたい。
  132. 宮崎直見

    ○宮崎説明員 お答えいたします。  ただいま伊藤司というのが戸籍にある伊藤司と同一人であるということで、日本人としてわが国に受け入れて入ってきておるわけでございまして、それが同一人である以上は、これは日本国籍がもちろんあるということで問題ないわけでございます。したがって将来、この伊藤司なる者が戸籍にある伊藤司と同一人物ではないということがはっきりすれば、その段階で、それでは本当の両親はだれなのかということを明らかにして、国籍の確定をするという段取りになろうかと思います。
  133. 金子みつ

    金子(み)委員 それでは、その伊藤司であるかないかにかかわらず、日本人としての国籍の保障というのは今回もできる、そういうふうにお考えでございますか。
  134. 宮崎直見

    ○宮崎説明員 現在の段階では、一応伊藤司と同一人物であるということでわが国に居住しておるわけでございまして、その限りでは別に問題はないわけでございます。ただ、同一人でないというふうなことが、将来裁判なり何なりで明確になった時点で、それでは同一人でないとすれば、本当の身分関係というのは、それから明らかにしなければいけないということになるわけですね。したがって、その段階で、果たしてその親がどこの国の国籍を有するかというようなことから本人の国籍が確定されるということになります。
  135. 金子みつ

    金子(み)委員 この際伺っておきたいと思うことは、伊藤さんと外れて構わないのですけれども、よその国で国籍を持っていた人が、自分の本当の国籍はあっちの国だ、別の国にあるということがわかって、今度の伊藤さんのように向こうの国から出てきますね、そうすると、向こうの国の籍は外れるわけでしょう。そうして、こちらの国の籍がもらえないと無国籍者になるということになりませんか。そういうことはあり得ないのでしょうか。私は、素人でちょっとよくわかりませんけれども……。
  136. 宮崎直見

    ○宮崎説明員 国籍の得喪については、これは、それぞれの国の独自の権限でございまして、通常はある国の国籍を離れるには、他の国籍を取得しなければ離れられない。つまり無国籍者にならないような法体系になっております。通常の国においては、他の国の国籍を取得すれば自国籍を失うということになっておりまして、出てきたから無国籍になってしまうということは通常はございません。
  137. 金子みつ

    金子(み)委員 それでは、いまの法務省関係の御答弁で、伊藤司さんについては本人が伊藤司であるかどうかという問題、これが一番の問題になりますね。それから、それがそうでなかった場合には、日本人としての証明が必要になってくる、こういうことになるわけで、それによっては国籍もつくることができる、こういうことでございますね。確認しておきたいのですが……。
  138. 宮崎直見

    ○宮崎説明員 もし戸籍上の伊藤司でないとわかりますれば、これは別に両親なりがいるはずでございます。その両親がもし日本人であるとすれば、これは出生により日本国籍を取得したということになるわけです。伊藤司が出生した当時は昭和十五年でございますので、日本で言う旧国籍法に基づきまして、出生のとき父が日本人であれば日本国籍を取得するし、父が不明のときは、母が日本人であれば日本国籍を取得するということになると思います。
  139. 金子みつ

    金子(み)委員 いまの点はわかりました。そういたしますと、判明しない間その人の生活というのは、先ほど厚生省援護局長は、生活保護その他で援護をするとおっしゃっておられますが、国籍のいかんにかかわらず、これはやってくだすっているわけですね。援護局長お願いします。
  140. 出原孝夫

    出原政府委員 生活保護法等につきましては、事実上日本国民以外の者でも、日本に在住しておられる方で生活に困窮される方には適用されていると承知をいたしておりますので、その点は御心配ないかと思います。
  141. 金子みつ

    金子(み)委員 ありがとうございました。それを確認したかったわけでございます。  次に、文部省の方にお尋ねしたいのですが、文部省お見えになっておりますでしょうか。——今回のケース、御存じだと思うのでございますけれども、今度のこのケースは、大変うれしいニュースとして伝わっておりましたのが、一変して悲しい現状を引き起こしてしまったということの中には、先ほど来話し合いをしておりますから、いろいろな条件が出てきていることはわかりますが、警察の介入なんというようなこともあるわけですけれども、いま一つ大きな問題は、言葉の問題だということが言えると私は思うのです。この言葉の問題で少しお尋ねしたいのですけれども、文部省では、帰国者の日本語教育、これは伊藤司さんに限らないで一般の帰国者ですね、外地から帰ってきた人あるいは向こうで育った人、そういう人たち日本語教育というのを、国としてどのように行っているのでございましょうか。国立の日本語教育機関というものがあるのかないのか、それをまず教えていただきたい。
  142. 奥田真丈

    ○奥田説明員 帰国者、外国から引き揚げて帰られた方々に対する日本語教育でございますが、その引き揚げられてきた方々の中で学校教育の面から見ますと、いわゆる年齢で分けまして学齢相当の者と、それから学齢を超えておる者とに分けられるわけでございますが、海外から帰ってきた者について、学齢相当の者は一般の小中学校の学齢相当の学年に極力入っていただいて、そして、ここで一般の教育と同じ教育を受けていくたてまえになっておるわけでございます。普通にはそうしておるわけでございますが、その子供たちに対しまして、特に日本語について弱いというような面がございますと、その子供たちには特別に補習を先生がするとかあるいは補習の時間を特別に用意して、その学校で日本語教育を特別にやる、こういうことをやっている学校もございます。それから学齢を超えた方々日本語が全然弱いという方もいらっしゃるわけでございますが、その方々につきましては、現在、俗称で一般に言われる夜間中学というものをやっておりますが、いわゆる中学校の夜間学級というのが、これは主として大都市が中心でございますが、六つの都府県にございまして、その中学校の夜間学級に通って日本語の勉強をするとか学習をする、こういうケースがいまとられておるわけでございます。  現状でございますけれども、現在その六つの都府県に夜間学級、夜間中学というものは本年の五月現在二十八ございます。そして、そこで学んでおります引き揚げ者の数は百七十三人になっておりまして、そのうち中国からの引き揚げ者は百四人、こういう数が、調べてみますと出ておるわけでございます。それから比較的引き揚げの方の多いのは東京都内でございますが、東京都内には四つの夜間中学がございまして、特にその四つの夜間中学の中には日本語学級というものが設置されております。そして、そこで中国等から帰ってきた引き揚げの方々が特別に日本語を学んでいるという事情でございます。  それから、ちょっとついででございますので申しておきますと、中国からの引き揚げの方々日本語が堪能であるかどうかということを見ますと、中国在住時代に修学しておられた方、これも非常にたくさんあるわけでございまして、全然小学校程度の教育も修了してないという方もおりますし、また上の方は大学程度の教育を受けておるという者もございまして、さまざまでございます。しかし、大体いまおります者について調べてみますと、日常会話がある程度できる者というのが半数ぐらい、それから片言程度ないしは全く日本語がわからないというのが半数ぐらい、こういうことになっております。したがいまして、いま申しました夜間中学等におきましては、極力日本語の習得のために先生方が一生懸命指導する、こういう体制で臨んでおるわけでございます。
  143. 金子みつ

    金子(み)委員 東京には日本語学校を持っている夜間中学は四つしかないですね。ですから、この四つで間に合うかどうかという問題が一つあると思うわけです。  それともう一つは、中国語を知らない先生が教えてくだすっているところがあるのを聞いてびっくりしたのですけれども、そういうことはお調べになっていらっしゃいますか。中国語を知らない人が日本語を、日本語を知らないで中国語しか知らない人にどうやって教えることができるのかということは非常に不思議だと思うのですけれども、そういうことをもしお調べになってないとすれば、ぜひお調べいただきたいと思うのです。  いま一つは、時間がありませんから続けて質問させていただきますが、中学の夜間学校——中学校ですから地方公共団体の学校になりますね、それから私立学校もあるかと思うわけでございますけれども、国立はないですね。それで、いまの公立は東京ではたった四つしかないわけで、全国的に中国語を学習する団体というのが百近くもありまして、この団体が非常に大きな力になって援助しているわけで、いわゆる民間団体、これが非常に大きな力になっているというふうに私どもは伺っているわけです。だから、そうだとするならば、国の責任としても、国立の大学にでも、これは都道府県に全部あるわけですから、そこに付属の日本語学級を設置するとか、あるいはそれが不可能ならば、現在ある公私立の学校に日本語と中国語と両方できる人を配置する、そして、そのために必要な費用を国庫補助するとか、あるいは補助ができなければ、国の仕事のかわりをしてもらう、肩がわりのつもりで委託費を国がお取りになって、そして援助をするとか、何かそういう方法をお考えになりませんでしょうか。学校の数が大変少なくて、民間団体が援助しているのがはるかに多い、この事実は何か私は逆をいっているような感じがするのですが、国としての責任上どのようにお考えになるでしょうか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  144. 奥田真丈

    ○奥田説明員 ひとつ御訂正願いたいと思うのですが、東京都には夜間中学はたくさんございます。その中で日本語学級として開設されているものは四つ、こういう意味でございます。そのほかの夜間中学にも中国からの引き揚げの方は入っておられます。  そこで、いま先生御指摘のように、先生の件でございますが、これは、もともと中学校の先生は、中学校の日本人に対する教育ということで免許状を持っておる先生でございます。全部が全部語学教育に堪能とは申されません。したがいまして、いま御指摘のような非常に困難な、あるいは無理な点があるわけでございますが、これにつきましては、いろいろと経験者あるいはそういう少しでも中国語のわかる方の御協力を仰ぎながら何とか努力してやっているわけでございますが、それについての教員養成対策と申しますか、そういう教師を用意するということで、もちろん教員養成機関、これは外国語大学等もございまして、そこで免許状を取れば教師になれるようになっておるわけでございますけれども、そのほかに、とにかく現職の先生日本語を、いわゆる外国の人に、日本語のわからない方に日本語教育をする際の知識、技術というものを教えるための講習会、これを文部省の方では毎年開催しておりまして、日本語教育についての研修会というものを開いております。それからまた、日本語教育のためには教材が非常に大事でございますので、教材の刊行といいますか、発行、たとえば初級読本とかあるいは中級読本とか上級読本とかいう読本類とか参考書、指導書類、それから基本語彙類、こういうもの、それから外国人のための辞典、こんなものを刊行して参考資料として提供しておるわけでございます。  それからまた、日本語教育のための研究委託、つまり日本語と中国語との言葉の問題の研究委託、こういうこともやっておりまして、一応先生方が中国帰りの方々日本語を教える際の参考資料並びに便宜をいろいろな角度から提供していっておるわけでございますが、この施策は今後も続けていきたい、こう考えておるわけでございます。
  145. 金子みつ

    金子(み)委員 今後もこういうようにして中国から、いままで中国が一番多いということでございますから、中国から帰ってこられる方たちは、子供だけでなく、大人の方も大ぜいあることだろう、これからもだんだんふえるだろうというふうに思われますので、文部省当局とされては、積極的にこの言葉の問題を解決するように熱意を込めて対策を立てていただきたいと思うのです。いままでの形では間に合わないのですよ。ですから、民間が大いに援助しているわけでございましょう。ですから、そういう点を考慮されて、今後積極的にもっと力を入れていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  時間がなくなってまいりましたので、最後に、厚生大臣から御答弁一つ二つお願いしたいと存じます。いままでずっとお聞き取りいただきましたが、大変時間が短くて、十分に審議ができなくて、私自身も大変に不本意でございますけれども、やむを得ませんが、このケースは伊藤司さんという方を中心に話が進められてまいってきたわけでございますが、私は、ただ単に伊藤さんだけの問題を申し上げているのではない。最初にも申し上げましたように、今後ふえてくるであろう帰還者の方たちのために、最も明るく、最も有利に結果が展開できるように、ぜひ国としては責任を持って対処していただきたいと思うわけです。  たとえば今回の伊藤さんの例を一つとってみましても、いままでお話をしてまいりましたように、警察権の介入がありましたり、あるいは日本語の習得が不十分であったというような問題ですとか、あるいは就業もままならない。生活に追われておりますから、生活保護だけでは生活し切れないですね。いまの日本生活保護は最低生活を保障しておりませんね。ですから、これではともも親子五人食べられないから、日本語も十分でないままにみんな就業を急ぐわけです。何とかして仕事をして収入を得て生活していこうという努力をするわけなんですね。ですから、そういった就業の問題、そういうような問題がいろいろと重なり合ってきていると思うわけですが、それらの問題がスムーズに、しかも帰還者のために有利に働くような形で政策を立てていただきませんと、これは、むしろこれからの人たちのためには悪い影響を及ぼすのではないだろうか。日本に帰ろうと思っても、あんな状態では帰らない方がいい、こっちにいた方がいいじゃないかと思われる方もないこともないかもしれないと思うのです、向こうである一定以上の地位を占めていらっしゃるような場合には。それはそれで本人の意思ですからいいと言ってしまえばそれまででございますけれども、帰りたいと思って帰ってこようとしている方たちに対しては、そのようなことのないように。もとはと言えば、これは日本が引き起こした侵略戦争の犠牲者なんですから。これは伊藤さんだけじゃありません。お母さんの高野さんにしてもそうです。母も子もともに犠牲者なんですね。ですから、そういう犠牲者に対する国としての責任を十分感じていただいて、そして最もよい対策が立てられるように、今後積極的に責任ある政策をお立ていただきたいと私は思うのですが、大臣は大臣としてどのような御決意をお持ちでいらっしゃいますか、ひとつ御答弁をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  146. 早川崇

    ○早川国務大臣 戦後三十余年たちましたので、肉親関係を証明する決定的な証拠を得ることが至難の場合が大変多いのでございまして、このたびの伊藤さんの例は、その特異な一つの例だと存じます。しかしながら、そういう困難にもかかわらず、多くの中国孤児の引き取りに当たりましては、日本が起こした戦争の結果起きた悲劇でもございますので、ただいま先生の言われましたような御趣旨に沿いまして、われわれとしてできる限りのことをいたしたいと思います。  また同時に、親子関係が維持できない場合でも、孤児が日本に来られて生活が十分立っていくように現行法の許す限り配慮をしてまいりたい、かように思っております。
  147. 金子みつ

    金子(み)委員 伊藤さんも言っています。これは一体だれの責任なんだろうか、お母さんの罪でもない、自分の罪でもない、だれの責任なのかという問いを投げかけているわけです。その点を、その意味深長な問いをしっかりと正しく受けとめていただきたい、そういうふうに思うわけでございます。  もし親子でないということが確認されても、私は、親戚としてでもつき合っていきたいと思っていたのに、警察が入ってきたためにこんなことになったとお母さんは嘆いているわけです。  ですから、そこら辺のことをお考えくださって、いま大臣から御答弁いただきましたように、どうか慎重に、しかも、こういう方々のために最も有利に国の責任として処置していただきたいということを重ねて要望いたしまして終わります。  ありがとうございました。     —————————————
  148. 熊谷義雄

    熊谷委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  厚生関係基本施策に関する件について調査のため、本日、日本住宅公団理事白川英留君を参考人として御出席を願い、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 熊谷義雄

    熊谷委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  150. 熊谷義雄

    熊谷委員長 厚生関係基本施策に関する件について質疑を続けます。田中美智子君。
  151. 田中美智子

    田中(美)委員 まず最初に質問いたしたいことは、共同住宅の受水槽、水道についての問題です。  ここに毎日新聞のことしの九月二十一日の新聞があります。この中に、題は「ゾーッ」と書いてありまして、「ビルの水槽汚れてます」と、こういうふうな見出しになっているのです。そして「鉄サビ、油、悪臭 腹痛訴える児童も」という見出しで書いてありまして、この中には、たとえば「今年七月、トイレの排水パイプがつまって一階の水洗便所から汚水があふれ、地下の受水槽に流れ込んだ」こういう話だとか「一階のバーで掃除していたバーテンが石油カン入りの洗剤を床にこぼしたところ、そのまま受水槽に流れ込んだ」とか、また「カエルや虫が泳いでいた」とか「ゴム長が忘れられていた」とか「建築当時のゴミが埋まっていた」などとんでもない異物の例も出ています。それからまた「水槽の奥にネズミ、スズメ、ゴキブリの死体が入っていたこともある」とか、また「ビルの管理人さえ受水槽のあることを知らなかった」とか、こういうようなことが、ちょっちょっと読み上げたわけですけれども、書いてあるわけで、人間の一番大切な空気と水、この水の中に汚いものが入っているという問題をどうしたらいいのかということです。  それから、最近また十月の四日に、これは朝日新聞ですけれども、「汚い東京の飲み水 中高層の八割が不適」というような見出しでいろいろ書いてあります。時間がありませんので、これは省略しますが、こういうところで、いまやっと国民が自分たちの飲んでいる水はどうなんだろうかということでちょっと驚き始めているわけです。  私たちは、水道のじゃ口から出てくる水というのは、きれいなものだと全く信頼しているわけです。しかし、急激に地方から都会に出てきて都会の人口が多くなり、みんな子供のときには一軒の家に住んでいたものが、公団住宅ができてから、そして十年前あたりからマンションなどのようなものも出てきて、一軒の家ではなくて集合住宅に住むようになった。それでも家の台所のじゃ口から出る水というものには、絶対の信頼をずっといままで持ち続けてきているわけです。それが実際には、こういうふうにネズミやゴキブリがいたりというような大変な問題になって、一度も検査もしていないというものが非常にたくさんあるということがだんだんわかってきているわけです。  私自身が経験しましたのは、まず、私がかつて住んでおりました愛知県の知立というところに知立団地というのがありますが、ここでも最初油や砂が出た、毎日ガーゼのあれをつけておきますと、薬の袋に包めるくらいの砂が毎日出てくるというふうな状態があったわけです。  それからまた、ことしの四月ですけれども、名古屋市のど真ん中の東山動物園の前にげたばき式の東山住宅という公団住宅がありますが、ここが、トイレの水、それから下水の水が一緒になったものが受水槽の中に入りまして、これが逆流してじゃ口から出てくる、黄色い水が出てきたということを言っているわけです。それが大変なにおいで、ちょっと手についただけでもとれない、石けんで洗っても、手がいつまでもくさいというふうなひどい水が出てきて、おふろに入っている人が水を出したら、ばあっときて、全身それをかぶってしまう、お米をといでいたら、その米の中にばあっとその水が入り込んだというような事件が起きました。このときにも私、朝、朝日新聞を見まして、ちょうど名古屋にいたものですから、伝染病になったら大変だと思って飛んでいったのですが、前の晩にそういうことがあって朝刊に出たわけです。私、その朝刊を見まして、飛んでいったのが十時か十一時ごろだったというように思うのですが、それなのに、水を給水するということだけはやっていますけれども、健康管理も保健所に届けることも全くしていなかったわけです。それで、すぐに私の指示で保健所や何かに行って、そういうものを飲んだ人たちをどうするかというような対策を、市の協力を得まして事後策をしたわけですけれども、これは一つの例で、私が経験した例ですが、新聞にもこういうふうに出ているわけですが、こういう実態というものを、厚生省としてはどの程度御存じなんでしょうか。
  152. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 ただいま先生から、いろいろ共同住宅におきまして水が汚いというようなことを御指摘いただいたわけでございますが、私どもといたしまして、それぞれの地方自治体において一次的には処理をしておる問題でございますので、先生のおっしゃったような問題は、いろいろ新聞に出た場合に、それぞれに問い合わせして、その状況は伺っておるわけでございますが、先生のいまおっしゃられたようなことにつきましては、私どもも聞いております。
  153. 田中美智子

    田中(美)委員 ずいぶんいいかげんな、そんないいかげんな、私の言ったことだけは知っています、これは質問の内容を取りに来られたときに言いましたから、それは御存じでしょうけれども、そんな子供だましみたいなことではなくて、いま私は、厚生省を特に責めているわけではないのです。どうしたらいいかということで質問していますので、もっとまじめに答えていただきたい。そして簡潔に答えていただきたいのです。  新聞情報しか知りませんのか、それともこの実態を知るために、きちっとこういう手はずをとっていますとか、そして、そのうちのどれぐらいがわかりましたとか、こういうふうな答え方をしていただかない限り、先生御指摘のことは知っています、こんなものは知っているに決まっているではないですか、それはそちらに通知してあるわけですから。ですから、もうちょっと簡潔に、まじめに答えていただきたいと思います。
  154. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 一般的に申し上げますと、昨年、五十年の一月から十二月まで、これは当時もこの問題がございましたので、各都道府県を通じまして、いろいろ一般的なチェックをいたしたわけでございますが、一般的に言いまして、先生のいまおっしゃられましたその水槽の掃除という問題につきましては、これは十大都市に大きなビルがあるものでございますから、そこについて調べましたところ、約七二・五%が、一年以内に一回水槽の掃除をするということになっておるわけでございますが、そういう特定建築物につきましては七二・五%が一年以内の水槽の掃除を行っている、こういうふうな報告を得ておるわけでございます。
  155. 田中美智子

    田中(美)委員 そういうとぼけた答えをしないでいただきたい、あなた方は専門家なんですから。  私がいま言いましたのは、特定建築物に公共住宅というのは入っていませんでしょう、私は、いまビルだとかデパートだとかそういうことを言っていません、個人の住宅を言っているわけですよ。これは七二・五%もやっているはずないじゃないですか。だから私は、最初から共同住宅、集団住宅ということで質問しているわけです。それをすりかえたようなことでなしに、もっとまじめにやっていただきたいのです。私が言っています公団住宅だとか市営住宅だとか、それからマンションとかアパートとか、そういうものは、ビル管理法に適用されてないわけでしょう。あなたのおっしゃっているのは、ビル管法に適用されているものの調査を言っているわけでしょう。専門家が間違えるはずないでしょう、初めから言っているのですから。知らないのなら知らないとおっしゃってください。
  156. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 確かに私が申し上げましたのは、法律に基づきます特定建築物でございます。それで、この共同住宅につきましては、特定建築物ではございませんので、この法律の規制は受けないわけでございます。そのために私ども、これらに対する調査を行うということは、いまのところいたしておりません。
  157. 田中美智子

    田中(美)委員 もったいない時間です。それを最初に言えば、それで済むわけじゃないですか。こちらが知らなければごまかしていこうとするような、そういう態度でなしに、もうちょっとまじめに、国民の健康をどうするかということでやっていただきたいと思うのです。  それでは、全国に受水槽というのは幾つくらいあるのでしょうか。
  158. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 現在、水道サイドからの一応推定でございますが、全国三十二万ぐらいであろうか、こういうふうに考えられております。
  159. 田中美智子

    田中(美)委員 その三十二万の受水槽ですが、これは飲み水ですから、このうちでビル管法の適用になっているのは、どれぐらいでしょうか。
  160. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 約一万二千でございます。
  161. 田中美智子

    田中(美)委員 三十二万のうち一万二千しかビル管法の適用になっていないわけですね。そうすると、もうほとんど九〇何%という水槽というのは、全く法的に規制されていないということですね。
  162. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  163. 田中美智子

    田中(美)委員 そこが問題だと言っているわけです。もちろんビル管法を適用しているところでも、まだ七二・五%で、二〇何%というものが一年に一回も検査をしていないということですから、これは別の問題として、法に沿ってきっちりともっと厳しく一〇〇%、飲み水ですからこれはちゃんとやっていただきたい。そうしないと、私たちは、安心してデパートに行って水も飲めないということになるわけです。いま私が質問しているのは、あと九〇何%残された、約三十万を超えた日本人の飲んでいる飲み水というものが法の規制外にあるということなんですが、これは厚生大臣どう思いますか。そんな三十万以上の飲み水のタンクが何の法の規制もなく置かれているということをどうお思いになりますか。
  164. 早川崇

    ○早川国務大臣 一般論として申しますと、それだけ大きい水槽が規制対象外になっているということは好ましいことではございませんが、といって、それによって飲み水の上で非常に大きい被害があったり、いろいろなことがあったという例も多くありませんので、その点のことを考慮しながら今後考えていきたいと思います。
  165. 田中美智子

    田中(美)委員 大きい点があったかどうかということは、これは、いままでにもあちこちで下痢が起きたり何かしています。しかし、自分のおなかが弱いからか、デパートで飲んだ水であたったかどうかということはわからないわけですね。何しろ飲み水のタンクが、三十何万のタンクというものが全く法の規制なく放置されているということは、いま大臣も、これは、いいことではないとおっしゃっていますので、厚生省としても、これをどうするかということを今後の課題として考えていただきたいというふうに思うわけです。  それで、ことしの十月二十七日から二十九日に岐阜で日本公衆衛生学会というのがあるわけですが、ここでいろいろ発表をなさる。これは北里大学の兒玉威先生外何名の方の共同調査で、恐らく厚生省御存じだと思いますけれども、これは、また学会にもっと詳しく発表なさると思いますので、ぜひ厚生省はこれに基づいてもう一度検討していただきたいと思うのです。  二十の共同住宅を調べたところが、水質検査を全然していないのが三分の一もある。それから残留塩素の測定を実施をしていないのが十四あるというのです。二十一のうちの十四が放置されているわけですね。それから受水槽を掃除していない。これも三分の一は掃除を全然していない。まだたくさん出ておりますけれども、受水槽の中が非常に汚れているというのが九ということは、これは非常に大きな数ですね。現実に見てそうなっているし、水として不適格であるというのが一カ所出てきているわけですね。国民の健康によくない水が出てきているということです。この調査のことは厚生省は御存じですか。
  166. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 概略存じております。
  167. 田中美智子

    田中(美)委員 これは厚生省の委託を受けてやっているんですよ。ですから、概略では困るのです。厚生省が委託して調査させているんですからね。ですから、概略じゃなく、もっときちっとこれを入手して、この調査に謙虚に耳を傾けて、どうしたら国民の健康が守られるか、きれいな水を飲ますことができるかということを検討していただきたいというふうに思うのです。  それで、きょうは住宅公団の方に来ていただいておりますので、こういうことについて住宅公団はどうしているか、一番数が多いと思いますので、その点お聞きしたいと思います。
  168. 白川英留

    ○白川参考人 現在、公団では全国で約八百団地に受水槽がございます。名古屋営業所管内では四十九団地、こういうことでございます。これに対しましては、まず公団住宅の受水槽、高架水槽の清掃につきましては、これは私どもは、確かに水道法、同法施行規則がございまして、この趣旨にのっとって原則として年一回清掃いたしております。また、水質検査につきましては、定期検査と臨時検査、この二つがございまして、これも水道法の規定に基づいて行っているところでございます。定期検査につきましては、水の色とか濁りとか消毒の残留効果、こういったものの検査を、これも水道法の施行規則に基づいて一日一回、大腸菌等の検査につきましては、同規則に基づいて月一回行っております。臨時検査は必要に応じて適宜行っているところでございます。
  169. 田中美智子

    田中(美)委員 公団住宅は非常に多くの人たちが住んでいるところですので、ビル管法に準じたような形でいまのところやっていらっしゃるというお話ですが、ぜひこれはきっちりとやっていただきたいと思います。  もう一つお聞きしたいのは、たとえば東山の住宅で起きたように受水槽と、それから下水のタンクがくっついている。そういうことから、雨が降ったり、それから詰まったり、それからセメントの受水槽が完全でないためにしみ込んだりというふうなことが起きているわけです。これは建築基準によってこの七月に改められたと聞いているわけですけれども、新しい団地は全部離しているというふうに聞いていますけれども、そうなっておりますでしょうか。
  170. 白川英留

    ○白川参考人 今後建てます住宅につきましては、御指摘のとおり建設省の基準に基づいて建てます。既設の公団住宅、これは約八十万戸ございますが、これにつきましては、居住者の健康、生命の安全、これに特段の考慮を加える必要がございますので、早急に総点検を行う計画でございます。総点検の結果、改善すべき点については、予算の問題もございますので、できるところから改善を進めることを検討いたしたい、こういうふうに考えております。  ただ、東山住宅の市街地住宅のような場合は、敷地が狭くて物理的に改善がむずかしいところでございます。こういったところにつきましては、さらに何かいい手だてはないか検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  171. 田中美智子

    田中(美)委員 結局、新しいものは問題ない、古いのの問題ですね、これは、いつごろから総点検を始めるのですか。
  172. 白川英留

    ○白川参考人 これは、もう早急に各支所に指示を出しまして総点検を始めたいと思っております。
  173. 田中美智子

    田中(美)委員 政府の方はよく早急にと言うのですが、その早急にというのが、一年でも早急であるしというふうになりますので、早急という言葉、非常に人によってはわからないんですね。十年でも早急という大臣もいらっしゃいます。ですから、何月何日、こう言いませんけれども、大体いつごろから総点検をし始めるのか、その点ちょっとお答え願いたい。
  174. 白川英留

    ○白川参考人 一週間以内に指示を出す予定でございます。
  175. 田中美智子

    田中(美)委員 ぜひこれは総点検しまして、二度とこういうことが起きないように改善できるところはするし、できなければ東山のようなところは、何か途中をとめてしまったというようなことを聞きましたけれども、そういう点でぜひ改善をしていただきたいというふうに思います。どうもありがとうございました。  その次に、医務局長さんにお伺いしたいのですけれども、病院の受水槽というのは、これはどうなっているのでしょうか。
  176. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 先ほど先生御質問のような一般住宅等の状態と同じでございまして、残念ながらわれわれデータを入手しておりません。
  177. 田中美智子

    田中(美)委員 これは医療法にはなぜ入らなかったのですか。私、聞きましたのでは、ビル管法ができるときになぜ病院を排除したのかということですが、その排除したときに、これは医療法に入れるからというふうなことを、新聞情報か何かで聞いたわけですけれども、なぜビル管法の中に入れないのか。住宅というのは自分のうちの水だ、だから自分で責任を持て、こんなふうに厚生省の方きのう言っていましたけれども、デパートとかそういうところはいろんな人が交錯してくるところだ、だから、これはやはりちゃんとビル管法でやっているのだ、こういうふうに言われましたけれども、病院はデパートと同じようにいろんな人が入ってくるわけですね、それがどうしてビル管法に入っていないのか、なぜ医療法に入っていないのか、そこをちょっとお聞きしたい。
  178. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ビル管法に入っていないのは、先生御指摘のとおりでございます。ただ、医療法の方に入っていない、こう言えるかどうか、これはまた、いま御説明申し上げますが、一応医療法で規制を受けているというふうにわれわれ考えているところでございます。  ただ、なぜこれが医療法で規制をいたしまして、ビル管法の中に入れなかったかということでございますが、やはり病院というものは、一般住宅あるいは多数人が集合するデパート、そういったところと違いまして、病人の生活の場でございまして、病人という特殊な人たちを預かっているところでございます。したがいまして、いわゆる病院管理という観点からこの規制を行う必要があろうかと思うわけでございまして、したがいまして、給水の問題等につきましても、病院管理の一環といたしまして管理者にその管理を義務づけている、こういう形にしておるところでございます。
  179. 田中美智子

    田中(美)委員 私は、ビル管法の精神から言えば、ここから住宅をとったということはわかりますけれども、病院をとったということがよくわかりません。これは、いまここで法律論を論議しても仕方がないわけですけれども、病院の水で特に長期療養している患者さんの中からは苦情が出てくるわけなんですね。ちょっといる人は、少しぐらい色がきたなくてもわからないわけです。しかし長期にいる人たちからはいろいろ苦情が出て、そして患者さんたち要求からこういうものが改善をされたという事例もあるわけですね。そういう点で病院というのは、特に体の調子の悪い人が飲む水ですし、また、それで手術などもやっているわけですので、このところがいいかげんになっているということでは、これは国民の健康にとって大変な問題だと思います。その点はどういうふうになっていますでしょうか。
  180. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、病院という特殊な生活あるいは医療の場でございますので、一般の住宅あるいは一般の建築物以上にその管理は厳重でなければならないというふうに考えております。  それで、先ほども申し上げましたように、給水の問題を含めまして病院管理の一環としてこれを実施いたしておるわけでございますが、病院管理の問題あるいは構造設備に関しまして、必要がある場合には、その開設者または管理者に対しまして必要な報告をすることを命ずることができるようになっておりますし、また、立ち入り検査を行いまして、清潔保持の状況あるいは構造設備の状況等について検査することができるようになっておりまして、そのために各都道府県に医療監視員という制度を設けているところでございます。
  181. 田中美智子

    田中(美)委員 できるようになっていても、していなければ意味ないと思うのです。できるようになっているのではなくて、しなければならないというふうに義務づけていかなければ。病院の受水槽が汚れているという事例も出てきておりますので、きょうは時間がありませんのでここで終わりたいと思いますが、ぜひ病院の水槽もビル管法以上に常に清潔であるように十分な検査をしていただきたいというふうに思います。  次に、これは非常に新しい問題ですけれども、厚生大臣も新しくなられたわけですし、ぜひ一度お考え願いたいと思いまして質問するわけですが、それは障害者の割引タクシーの問題です。障害者の割引タクシーがいま日本でやられ始めているということを大臣は御存じでしょうか。
  182. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいまの御質問でございますが、愛知県下に二町村、それから他の府県では熊本県と山梨県に一部行われているというように聞いております。
  183. 田中美智子

    田中(美)委員 まだ大臣も新しいし、これも新しいやり方なので、よく御存じないかもしれませんけれども、いち早く愛知県で障害者のために、足が悪かったり目が悪かったりという方のためにタクシーを割引しようということをやり出したわけです。これは、だれがやったかと言いますと、愛知県の自動車交通労組、愛自交と言っておりますが、この愛自交の労働者がこれをやり始めたわけです。そして車いすの扱い方や何かも講習を受けて、そうして障害者を、車いすをたたんで中に乗せてあげる、こういう非常に手間のかかることですけれども、これを引き受けて、この引き受けた会社の車というのには、そこに全部こういうマークを張っているわけです。障害者がこのマークを張った車を利用したときに、こういう御乗車券という、こういうふうになっておりまして、これが千円ですが、この千円の券を九百円で分けるわけです。ですから百円の割引になる。一割引きになるわけです。この一割引き、だれが損をするのかと言いますと、運転手がその百円のうちの六、それから組合が一というふうに持って、障害者に全く労働者の善意でこういうことを始めたということに、むしろ国がこういうことをしなければならないのに、経営者ではなくて労働者がこういうことをやっているということに私は深い感動を持っておるわけです。  いま年々これを、一年間に約四百万ぐらいの売り上げがあったというふうに聞いておりますけれども、次々とこれをやるところがふえてきているわけです。たとえば労働者がやった、これに対して愛知県の西春日井郡の新川町というところが、ここでは三〇%それじゃ町費を出してやろう、ということになりますと、この労働者の行為と合わせて四割引きでいくわけなんですが、こういうことをやり始めている。ですから、いまおっしゃったのよりもっと多いですよ。長久手町でも二割負担を町がやる。それから日進町、西枇杷島町、尾張旭市がこれからもうすぐやるということで、次次と広がっているのです。また、障害者の期待というものも多くなっているわけです。これは九州にもありますし、いまあなたがおっしゃらなかった千葉の市川でも福祉タクシーという形で、いろいろ補助の仕方が違いますけれども、市が個人タクシーの協同組合と手を組んでやるというようなことをやり出しています。それから、こういうことをやったというのを新聞で見まして、これに対してあちこちの労働組合からこの愛自交のところにカンパが来るわけですね、労働者から。これは愛知県自動車交通労組殿という形で六千八百八十五円というのをカンパとして差し上げますと言って小川香料東京労組というところから来たり、それから、これは大阪市の都島にあります会社の労働者からカンパを五千円同封しますというような形で、一般人たちが、この愛自交のやり方に対して共鳴をして援助金を出しているわけですね。  こういう観点から見まして、私は、ぜひ国でも何とか障害者のためにタクシーの補助金を出すということを考えていただきたいというふうに思うのです。それはなぜかと申しますと、これは、もうなぜかなんということは言わなくてもいいわけで、目に障害があり、足に障害がある方というのが、あの満員電車に乗るということは非常に大変なわけですね。遊びに行ったり、どこかへ訪問したりということも、これは大事なことですけれども、特に一番大事なのは、いま雇用促進というので労働省の方も障害者の雇用促進法というのを多少とも改善していっているわけですが、障害者はとても朝あの満員電車で行けない、しかしタクシーに乗れば大変にお金がかかる、結局働いても全部足代に取られてしまうという形になるわけです。ですから、ぜひ障害者の雇用促進のためにも、こういう労働者の善意もあることですし、それから地方自治体でも、ぼつぼつやり始めているわけですから、その上に国も出す、そうなってくれば、今度は雇用者というものがこの一部分をまた負担するという形になれば、障害者が安心して足代に余りお金をかけないで働くことができる。タクシーで通動、行き帰りができる。そうすれば、障害者の雇用というのはずっと幅が広がる。仕事があったとしても、とても遠くてそこまでは通えないというので、雇ってくれるところがあっても、自分の方から断らなければならないという、こういう悲劇さえ出ているわけです。  そういう点で、ぜひ大臣に、この問題を何とか一度大臣の在任中にこれの検討をするという、すぐにあしたからというふうにはできないわけですので、一度大臣が障害者のためにひとつ何かやってやろう、これならわりあいに簡単にできることではないかというふうに思いますので、ぜひ検討していただきたいというふうに思うのですけれども、大臣の御意見を伺わしていただきたいと思います。
  184. 翁久次郎

    ○翁政府委員 大臣お答えになる前に、事務的な点でございますので申し上げたいと思いますが、このように各種の福祉のサービスがいろいろな形で行われるということ、大変ありがたいことだと思います。ただ、申し上げたいことは、国鉄の割引にいたしましても航空の割引にいたしましても、それぞれの立場におられる団体あるいは公社等で総合的にやっていただいているわけでございます。厚生省といたしましては、ひとつこのような方々の状態に着目いたしまして、むしろそういった方々の所得を保障する、あるいは高めていくという意味で、障害年金なりあるいは福祉手当あるいはホームヘルパーの派遣という総合的な立場で福祉のサービスを厚くしていくということが当面必要なことではないかというように考えておりますので、おっしゃいます御趣旨はよくわかりますが、それぞれの立場で国全体が福祉の向上に向かっていくというようにしていただくことが一番いいことではないかというように私どもは考えておるわけでございます。
  185. 早川崇

    ○早川国務大臣 愛自交のまことにボランタリーな福祉割引のあれというのは、ほんとうにうれしい話を聞かしていただきまして、これらの人たちに敬意を払います。ただ、国の施策としては、たとえば電信電話料金値上げだ、そうすると困っている身障者や弱い立場の人たちに割引しろ、また、国鉄の場合には五百キロ以上は御承知のように無料にしていますが、もっとあれを近くまで乗っても割引しろという御要望がたくさんございます。いま局長お答えになりましたように、国としては個々のケースやりたいのですけれども、基本的には身障者の年金とか援護資金とか、あるいは生活ができない人には生活保護とか、いろんな包括的な面で所得保障をしていくというのが本筋だと思うのです。  ただ、どうしてもひとつというような場合、たとえば寝たきり老人、身障者で目が悪くて身寄りのないというような場合に、例外的なことでございますが、福祉テレホンというのをやっておりますね、電話を。これは国が補助を出しまして貸与してやっている。それから今度は料金が上がりますけれども、基本料金は全部自治体で、持っているところは八割ぐらい持って町村がやっている、こういう例外措置を講じている問題もございます。しかし、このタクシーの割引というところまでそういう例外的に考えるかとなりますと、いろんな要望がございますから、慎重に検討さしていただきたいと思います。基本は、やはり全体の所得保障というところに国のそういった身障者や弱い立場の人に対する政策を考えているということだけは、局長の申されましたとおりでございます。
  186. 田中美智子

    田中(美)委員 ちょっと焦点があいまいで何となくしたくないというふうな感じに受け取れるのですけれども、愛自交の近藤委員長という人は、こういうことをやった目的というのは、もともと国や自治体がやるべき問題なんだ、本来は政治が考えることなんだ、だから、われわれはその呼び水と考えてこういうことをやっている、こう言っているわけですね。これが障害者に非常に喜ばれているし、これはスウェーデンだとかヨーロッパでも、こういうことはやられているわけです。総合的ということは、これも結局その障害者の出費がなくなるという意味で、これは収入をふやすというふうな解釈もできるかもしれませんけれども、実際問題として歩くということがますますこの大都会の中では大変になってきていますので、ぜひこの問題を総合的な中にお入れになって考えていただきたいというふうに思います。よろしいでしょうか、大臣。
  187. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御趣旨は十分承知するわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、国、特に私ども厚生省として総合的にやらなければならない他の問題、これも御承知のとおりでございます。その中でいまおっしゃいましたタクシーの問題、これだけ取り上げた場合に、やはり利用される方、それから利用する地域の問題、こういった点で、総合性という立場から申しますと、あるいは普遍性という立場から申しますと、やや技術的に問題もあろうかと思います。ただ、御趣旨につきましては、十分承知しておりますので、その辺考えながら今後行政を進めてまいりたい、かように思います。
  188. 田中美智子

    田中(美)委員 地方自治体がやり、また、労組がやれていることですので、だからこそ検討し、どういうふうに公平にうまくいくかということをぜひ検討していただきたいと思います。  最後になりましたが、これは大臣がおかわりになりましたので、もう一度確認しておきたいわけです。と申しますのは、夜勤の看護婦さんの車代の予算、これは今度の概算予算に組んでいますね。ちょっとそれをおっしゃってください。——大臣じゃなくていいですが、御存じならひとつ……。
  189. 早川崇

    ○早川国務大臣 よく存じていまして、実はこの前、新聞の投書欄にも載っておりまして、夜勤の看護婦さんが夜タクシーで帰る、中には連れ込まれるというようなことでした。これは、その投書の主が八戸の男の方でして、御自身の投書でありませんでしたが、この夜勤の特別車送りの要求はよく存じておりまして、五十二年度要求額といたしまして、三人相乗りのタクシー代千二百三十円を国立病院及び国の関係の夜勤看護婦の深夜の費用として要求はいたしております。
  190. 田中美智子

    田中(美)委員 これは四回目なんですよ。前の田中大臣のとき——角榮さんじゃないですよ。田中大臣のとき私に確約をなさったわけです。拳々服膺という教育勅語の中の言葉を使われまして、拳々服膺とはささげ持つということで、これは拳拳服膺絶対にやります、こう言われているわけですね。ですから、それを大蔵省が切るということは、これは厚生大臣がしっかりして、もう四回組んでもけられているということのないように、来年度はこれが施行されますように全力を上げていただきたいというふうに思います。よろしいですね。
  191. 早川崇

    ○早川国務大臣 こちらとしても予算要求を出しておりますので、全力を挙げて努力をしたいと思っております。
  192. 田中美智子

    田中(美)委員 ぜひ全力を挙げてやっていただきたいと思います。  それからもう一つ、国民年金の保養センターというのが全国で幾つありますか。
  193. 河野共之

    ○河野(共)政府委員 現在、全国で十九カ所でございます。
  194. 田中美智子

    田中(美)委員 その中で車いすを使える施設というのは幾つありますか。
  195. 河野共之

    ○河野(共)政府委員 大分が一カ所でございます。
  196. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣、このように国民年金の保養センターというところで、十九あるうちたった一カ所しか障害者が使えないのです。これは大した金を使わなくてもスロープをつけ、トイレをつけてというちょっとした配慮でできるわけです。  それで、時間がありませんので私の方で調べましたのでは、いま北海道、埼玉、福岡にこれからつくるという予定になっているようですけれども、これからつくるところは必ずそういうふうにして、障害者が車いすで入れるようにしていただきたいのですけれども、いかがでしょうか。
  197. 河野共之

    ○河野(共)政府委員 十九カ所のほかに秋田が現在建設中でございますが、これは車いす等の利用ができるようなトイレ等の準備をいたしておりますし、それから今後建設いたすものにつきましても、そのように配慮してまいりたい。  それから、福祉施設といたしましては、ほかに厚生年金会館等がございますけれども、これらにつきましても、現在までにつくりましたものについては、遺憾ながらその施設がないわけでございますが、現在改築中の東京の会館、それから増築中の湯河原の会館、これらにつきましては、そのようなスロープあるいはトイレというものを設けるようにいたしております。それから現在設計中のものにつきましても、身体障害者の方が利用できるように、設計上の配慮あるいは建設上の配慮をいたしております。また、既存の会館につきましても、構造上どのようにしたら処理できるかということで現在検討をいたしておるところでございます。
  198. 田中美智子

    田中(美)委員 新しくつくるものには、これから全部つけるというのは結構ですが、既存のものが問題になっていますので、障害者も同じようにそういうところが利用できるようにぜひ検討して御配慮願いたい。大臣、よろしいですね。御決意をちょっと聞かしていただいて質問を終わりにしたいと思います。
  199. 早川崇

    ○早川国務大臣 全く同感でございます。
  200. 熊谷義雄

    熊谷委員長 次に、寺前巖君。
  201. 寺前巖

    寺前委員 大臣がおかわりになりましたから、この間決意のごあいさつを聞かしてもらったことでもありますので、幾つかの面について御見解をお聞きしたいと思います。    〔委員長退席、住委員長代理着席〕 私は、春の予算委員会のときに、六十五歳以上のお年の方々日本ではどの程度働いているのかということを聞いてみました。昨年も聞いて昨年は御存じなかったので、ことしはまあ勉強しておみえになっていました。ともかく五割前後の人が六十五歳になって働いておられるというのが実態になっております。この数字はアメリカの二倍です。ヨーロッパ諸国の三倍です。六十五歳といえば、三十年昔のことですから、あの戦争が終わったときに三十四、五歳でしょう。食糧難のとき家族を抱えて本当に大変であったと思うのですが、そういう方々がいまだに働かなければならない、生きるためにそういう事態にある。そこから最近の国民の願いとして、老人医療の無料という問題とか年金とか、各種の問題に対する叫びが強くなってきたのだろうというふうに私は思います。当然のことです。政治は、いまさら働けと言っても働くことのできないこういうところにこそしっかりと確立しようではないか、そういう叫びになるのは当然だし、それだけに厚生大臣のなさるお仕事というのは、きわめて重要であると思います。  そして、あの戦争中に苦労された方々がいろいろな分野におられます。その一つに、治安維持法の中で泣かされた、裁判も受けずに虐殺された方方の問題があります。この間の予算委員会を聞いておりましたら、資料がないという形でそれは放置されております。それから第一線を走り回られた兵隊さんの問題があります。それから原爆被爆者の問題があります。戦災者の問題があります。そのそれぞれの分野について、戦争犠牲者こそ戦後の民主政治の中で第一番目に考えなければならなかった問題ではないのか。  そこで、私は最初に、きょうも問題になっておりましたが、トロトラストの問題について聞きたいと思うのです。これを使うとレントゲン像を鮮明に映し出すことができる。ところが、三十数年間にわたってじわじわと放射線を浴び続けて、肝臓にたまったそれが内臓諸器官を冒すという結果があらわれてきているという姿が今日問題になってきております。  それで、私の住んでいる京都の綾部市の五津合というところにおいても渡辺豊さんという方、明治三十九年十二月の生まれの方ですが、昭和十三年に中国の山東省で負傷して左ひざ関節及び同大腿貫通銃創という傷を受けて十三年の六月に内地へ帰り、小倉陸軍病院手術を受けた。その際、血管損傷を確認しようとして、それを撮影するために造影剤を入れた。手術は無事に終わった。その後は元気で農業に従事しておられましたが、ことしの正月から急に顔色が悪くなり疲れがひどくなる、三月には福知山の富士原病院というところに入院されました。レントゲン技師が写真を写してみたら、問題になっている造影剤らしきものが出てきた。これは、おかしいと思っていたところへ新聞がばっと載せたものですから、これだろうと思って、浜松医大の金子教授のところに照会し、間違いないという返事が出てくる。この渡辺さんは、現在危篤状態で余命はほとんどない状態であるというふうに言われております。  こういう人たちがいま全国にたくさんおられると思うのですが、こういう事態を厚生省としてはいつお知りになったのか、私は、これを最初に聞きたいと思うのです。
  202. 出原孝夫

    出原政府委員 もとは、これはドイツで開発された薬でございまして、戦後、年数を経るに従いまして障害があらわれてくるということで、西ドイツ方面では昭和三十年代の終わりごろに問題になったように聞いております。私どもの方で具体的にこの問題を大きな問題として考えながらいろいろ研究に着手をいたしましたというのは、トロトラストに関しましては昭和四十九年度からでございますが、その以前から一般に放射能問題としてすでに承知をしておったということでございます。
  203. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、具体的には昭和四十九年ということですが、それ以前にも知っておった。知ったときにどういう措置をとられたのでしょう。
  204. 出原孝夫

    出原政府委員 現実にトロトラスト障害を受けておられる方につきましては、援護法あるいは恩給法あるいは戦傷病者特別援護法等によりまして医療及び所得保障の措置が講ぜられますので、そういった意味での措置は講じてまいっておりました。ただ、積極的にこういう人たちを掘り出して——掘り出してという表現は、ちょっと適切じゃないかと思いますが、見つけ出してというところまでのことを考えました場合に、このトロトラストの持っております影響の大きさから考えて、特に主として悪性腫瘍にかかってくる問題でございますので、ガン一般に関する日本人の物の考え方というものをあわせまして考える場合に、実は慎重に対処をせざるを得なかったという実情がございます。
  205. 寺前巖

    寺前委員 慎重に対処するということで結局、慎重の余りほとんど措置をとらなかったということになるのでしょうか。
  206. 出原孝夫

    出原政府委員 先ほど申し上げましたように、トロトラスト障害を持っておられるということが明らかになった方々については、必要な対策を講ずることができたわけでございますが、積極的に見つけ出すということについては、その点でなかなか行えなかったという事情がございます。
  207. 寺前巖

    寺前委員 私は、やはりそこに重大な行政上の責任を見なければならないのじゃないだろうか、大臣、そういうふうに思うのです。国際機関から一九六三年に要請が出されております。そして西ドイツの場合には、すでにいろいろな調査をやるだけじゃなくして追跡調査もやりました。六千人からの方々をおやりになっている。何とこの十三年の間に十六億円に上るところの予算をかけているのだ。それに比べてわが国は二百五十分の一。いろいろの寄付金を集めて千二百万円前後であったということを新聞は報道しております。いま局長が言われたように、積極的に犠牲者を救うという立場からこれに対処しなかったという責任というのは大きいと私は思うのですが、その点に対する大臣の所見をひとつ聞かせていただきたいと思うのです。
  208. 早川崇

    ○早川国務大臣 私が就任して間もないころ新聞にこれが大きく報ぜられまして、一般国民もこのことを知ったわけで、それまでは余り知らなかった。そこで、厚生省事務当局としましては、内々にそういう人たちを調べてまいったわけですが、当時の資料もない、カルテもないということ。それからもう一つ寺前さんお考えいただきたいのは、肝臓なんて治らないんですね。そういうやっかいな病気なんですね。ですから、これを大々的に二万本ほど潜水艦で入れてあれしたというのですが、厚生省事務当局といたしましては、これを大々的にやって、ああ、これはがんになりはせぬか、なったんじゃないかという不安を持たれることを非常に恐れたようでございます。しかし、もうあれだけ国民一般にマスコミを通じて明らかになった以上、これは、もうそういう慎重な態度よりも実態を積極的に調べていくという方針に私の決断で切りかえて、そうしてアンケート調査等を通じまして実態を明らかにしていく、そうして、いろいろ障害年金とか援護法による特別治療とか、そちらの法制の方はいろいろ整備いたしておりますから、実態調査ということに踏み切った、こういう経過になっておるわけです。
  209. 寺前巖

    寺前委員 知られたからやるんだという結果になっているということは、私は、やはり大きな問題だと思うのです。他の国ではもうすでに知られておって、そして二十年、三十年そこへたまっていくのですから、治らないといったって、その過程において治療対策というものを、健康診断を見ながら積極的にやっていく、そういうやり方というのは、やはりそれなりにあるものですよ。だから、そういうことを考えたら、事の重大性を知っておったならば、もっと対処の仕方があっただろう、この点は率直に反省すべきだ。  それから、引き続いて御質問をいたしますけれども、そういう事態において、今日、日本傷痍軍人会の皆さん方が全国検診を国費で直ちに実施せよということを要求しておられます。あるいは患者治療費は全額を国で負担せよ、あるいは国家補償をせよというような問題が決議で出てきております。  そこで私は、アンケート調査も決して悪いことではないと思いますけれども、ともかく最寄りの病院なり診療所なりに、こういう手帳を持っておる方がお見えになって診断を求められた場合には、積極的に検査を国の責任でしてあげる、そういう通達を出すべきじゃないだろうか、受けて立つということを今日の時点において積極的にやるべきではないか、このことに対する見解を聞きたいと思うのです。
  210. 出原孝夫

    出原政府委員 戦傷病者特別援護法という法律がございますが、その法律の中で、公務によりまして傷病になられた方につきましては、医師にかかる機会を、私どもの方から医療として提供いたすというようにいたしております。  なお、その前段階の健康診断の問題があるかと思いますけれども、そういった面につきましては、異状を訴える方は、当然特別援護法による医療を受けられるわけでございます。それから、そういった以前の段階の方につきましては、傷痍軍人会の方でむしろ福祉活動としておやり願っておる部分もございますので、これらを総合いたしまして、なお今度のトロトラストに関連いたしましては調査研究というものが当然健康診断及び医療と結びついてくるものでございますので、それらを総合いたしまして、適切に、処置に誤りないように期していきたいというように考えております。
  211. 寺前巖

    寺前委員 ということは、どういうことですか。さっき私の方で出た人の話でもそうでしょう。病院に行って、世間で問題になったから病院関係者が問い合わせをやって、調べてみたらわかった。あれはレントゲンですぐにわかるそうですよ。非常にわかりやすいというんですね。そうすると、戦傷病者手帳を持っている人が最寄りの病院に来たときには、健康診断をして差し上げるということを直ちにやったらどうなんだろうか。そして受けて立つ。そして何ともなければそれにこしたことはないのだ。いま、全体の人たちが不安に思っていることがもう知られたんだからと大臣が言われた。知られたんだから、知られた対策を直ちに立てて、受けて立って、そして対処していくことを考えたらどうなんだ。傷痍軍人会がやるとかやらぬの問題ではない。国として打って出るべき問題ではないのか。そういう対応策を直ちに検討すべきではないのかということ。  それからもう一つは、従来これらの方々に対して、原爆被爆者の場合だったら、健康診断という形の問題が前から問題になってきたけれども、内部疾患がこうやって蓄積されて存在してきているのだということが明らかになった以上、戦傷病者に対するところの健康診断についても当然考えなければならない事態がここに示されているのではないか。本当に私は、第一線で苦労なさった方に対する国家的な態度としては打って出るべきだろうと思うのです。直ちに検討すべきだと思いますが、大臣、どうでしょう。
  212. 早川崇

    ○早川国務大臣 ちょっと訂正しておきますが、トロトラストをやったから全部肝臓がんになるというわけではありません。そのうちの三〇%とか、そこはひとつ誤解のないように。そうして肝臓がんとなりますと、非常に厄介な病気であるということで今日まで推移したわけでございます。あの当時の戦傷病者トロトラストを打たれた方の不安がはっきりしておりますので、いま御指摘のように、国の力で、健診に来れば、レントゲンなり、これは当然のことだと私は考えております。
  213. 寺前巖

    寺前委員 それでは、積極的に受けて立って、健康診断から、お見えになった方に対して無料で治療に乗り出していくということをぜひともやってもらいたい、これを確認したいと思います。  それからもう一つ、今度は過去にトロトラストによって亡くなられたと思われる方、この犠牲者に対して遺族の補償を全面的にやる必要があると思うのです。この場合に、本人の申し出がなかったならばできないことになるのです。そこで、本人の申し出に対して、過去の話になりますから、国の方で、カルテなどその他の問題やらを提供してあげて、そして立証してやるという特別な援助の手を差し伸べるべきではないだろうか。この補償問題について聞きたいと思います。
  214. 出原孝夫

    出原政府委員 過去にトロトラストを打っておられて、それで亡くなった方につきましては、それが明らかにわかっております方につきましては、遺族に対しまして、これは所管は恩給局でございますが、恩給、公務扶助料という形でお願いをいたしておるわけでございます。  なお、過去に亡くなった方でトロトラスト注入者であったということがわからないケースがたくさんございます。そういう者につきましては、現在のところ認定する手だてがないのでございますけれども、これにつきましても、そういうことがわかりましたら、私どもの方は、十分恩給局と連絡をいたしてまいりたいというように考えております。
  215. 寺前巖

    寺前委員 私が言うのは、本人の方に挙証を求めても非常に困難な事態がある。カルテその他については、国立病院なんか、たとえば今度の研究班の皆さんでも、残っている資料からずっと研究したとおっしゃっているのだから、それぞれの病院には五年のカルテの保存期間以前の分まで持っているところがたくさんあると思うんですよ。だから、積極的に御援助申し上げて、そして補償をとれる条件をつくってあげるということが、これだけ知られたいまになってからの事態だけに、当然さかのぼってそういう措置を積極的に打って出られる必要があるではないかと私は思うのです。よろしいでしょうか、それで。
  216. 出原孝夫

    出原政府委員 過去のカルテでございますが、森先生お願いいたしておりますのは、ごくわずか残ったカルテでの御研究でございます。百四十あるいはもう少し最近の研究でふえているようでございますが、二百前後の事例しか見つかっておりません。私どもは、いまのところ森先生からは統計的な数字だけを承知いたしておりますので、今後それを、わずかでございましても、追跡をしていくという必要が残っておりますので、これは私どもの仕事だと考えております。
  217. 寺前巖

    寺前委員 私は、国家の方で立証のお手伝いをしてあげてくださいということを言っているのです。それは何もカルテだけではないと思うのです。当時の医者の意見なり友達関係なり、いろいろな形でめんどうを見ないと、過去の問題については、なかなかわかりにくいのだということに十分気をつけていただきたい。よろしいですね、その点。
  218. 出原孝夫

    出原政府委員 その点につきましては、私どもも、当然十分に気をつけて御援助申し上げるようにいたしたいというように考えます。
  219. 寺前巖

    寺前委員 次に、原爆の問題についてお聞きしたいと思うのですが、今度政令で広島県・市に黒い雨の地域の拡大を行って、健康診断地域に指定するということになったようですね。ところが、黒い雨の地域を大雨地域だけを対象にしておられるということで、きょうもお見えになっていますが、ずいぶん不満が出ていますね。それは私は現実がそうだからだろうと思います。全然どうもないのだったらだれも不満が出ないのであって、やはりそれはそれだけの意味があると思うのです。そういう立場から見ると、小雨地域までも対象にすべきだと思うのだけれども、この点について、どういうふうにお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。
  220. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 小雨地域につきましては、いろいろと問題がございますので、本年度土壌の残留放射能の調査を実施いたしております。そろそろその結果もまとまってまいりますので、その状況などをよく判断した上で、どうするか決定いたしたいと考えております。
  221. 寺前巖

    寺前委員 それと、区域指定をめぐって若干の疑問が生まれているんですね。当時、高取、長楽寺から安小学校へ通学している子供さんが、八月六日の原爆投下時は学校におられた、危険だから家に帰りなさいと先生に言われて帰る途中、区域内で黒い雨にぬれた、健康診断受診者証をもらう資格がこういう人にはあるのか、こう言われたら、ちょうどその時刻の八時十五分は学校におったのだからというてだめだという話が出ているというわけですね。ああいうときのことだから、こういうのは総合的に考えて、当然対象にして健康診断をして差し上げてこそ意味があるのだろうと私は思うのだけれども、何でそういうことになっているのか。  それからもう一つ、区域外の人がたまたま八月六日、八時十五分に区域内におって黒い雨にぬれた、こういう人たちに対して、一般の原爆手帳のときには、後から入った人も全部対象になるのだけれども、なぜこの健康診断の対象にこういう人は入れないのか。いや、そうじゃない、入れるのですというのであったら、それで結構なんですけれども、この問題については、どういうふうにお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。
  222. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 その点につきましては、当初、現地におきまして若干誤解があったようでございますが、私どもの方から指示をいたしまして、いま御指摘のあったような方々も対象にすることになっております。
  223. 寺前巖

    寺前委員 それから、過般広島の原爆ホーム、お年寄りの方々がお入りになっているところへ行ったときですが、ここ自身の問題もありますが、同時に、いよいよ近く総選挙があるのですが、寝たきりのお年寄りの方々もたくさんおられます。ところが、在宅投票や税制上の優遇措置がこの施設は受けられないのだという問題について、特殊な原爆の老人ホームをわざわざつくっておきながら、何でそういうものを検討しないのか。厚生省としてどういう対応をしておられるのかをお聞きしたいと思います。
  224. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 原爆養護ホームは長崎にもございますが、長崎のホームは社会福祉法人に経営をしていただいております。したがって、そのような不在者投票だとか免税の問題が起こっておりません。私どもは、ここ一、二年広島に対しまして、現在は財団法人でございますけれども、長崎と同じように社会福祉法人に切りかえたらどうかという指導をしているところでございます。
  225. 寺前巖

    寺前委員 これは、しないのにはしない理由があるわけでしょう。そこを研究する必要があるのじゃないですか。たとえば社会福祉法人にするということになったら一一般の人に広く開放しなければならない。ここは原爆として特殊に見ていくという要素を持ってずっと進めてこられた経過があるわけでしょう。そういう経過との関係で見たら、そこには不合理性が、現実には進めがたい問題があるのだ、あるいは年齢的な面においても問題が出てくるのだ、だから、そういう問題を含めて厚生省お話をしているのに、対応してもらえないのだという問題を当該の方々は言っておられます。ですから、こういう問題について、もう少し現実に合うように合理的に解決をすることが重要だと私は思うのですが、そういうふうに現実に合うように相手の言い分をよく聞いて上げて、役に立つようにぜひともしてもらいたいということを申し上げたいのですが、いかがですか。
  226. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 確かにそのような問題もあり得るわけでございますが、先ほど申し上げましたように、長崎の養護ホームも少しは一般の方はいらっしいますが、もう大部分は原爆被爆者でございます。そういう関係で、現在の財団法人のままで不在者投票等の特例措置を設けるということは、なかなかむずかしいことでございますので、私どもとしては、やはり社会福祉法人に切りかえるのが一番の得策ではないかと考えております。
  227. 寺前巖

    寺前委員 ほかのことも聞きたいので、この問題は、さらに御検討いただくということにして、これは、さておいておきますが、先ほど私は、請願書をぜひ紹介してくれと言われて受け取りました。その請願書というのは、生活保護者の問題です。  日本の国では、盆暮れという言葉が現に存在しているじゃないか、一般の公務員でも盆暮れにちゃんと手当が出るじゃないか、社会の生活様式の中に盆暮れというのが存在しているのだから、生活保護者にも盆暮れの手当というものを特別に考えてくれ。これは地方自治体の場合には、それが常識だということで受け入れているところが圧倒的だ、何で国の制度として——盆暮れけしからぬとおっしゃるのかどうか知りませんけれども、日本の社会常識の中に生活を送っている以上は、こういう夏期手当の制度化とか年末の一時扶助を、級地にかかわりなく一人一万円に引き上げてくださいとかいう請願書を受け取ったのですが、私も、なるほどな、こういまさらのごとく聞いておったのですが、こういう問題について御検討になっておるのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思うのです。
  228. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御趣旨まことにごもっともでございます。私ども、年末の期末一時扶助については、すでに実施をしておりまして、夏期の手当につきましては、一つの大きな課題であると考えております。
  229. 寺前巖

    寺前委員 それじゃ、ひとつ進めてください。  それから、これも先ほど承った話なんですが、心臓病の子供さんの育成医療の問題、手術も受けられない子供さんが、健康な子供と一緒に保育園や幼稚園に入ることができないという問題です。そのために全国幾つかのところで、自主的に毎週水曜日の午後を借りるとか土曜日の午後に開園するとかいうことで、心臓病の子供さんの集団保育のための保育活動というのが現実になされているわけですね。私は、それはそうだと思うのです。親と子供の間だけで生活しているだけでは、発育はやはり適切じゃない。子供同士が与えるところの保育というものの持っている性格というのは非常に大きいと思うのです。そういう意味では、一般保育の中だけで解決しない要素を持っているので、こういうような集団保育の施設を現実に運営しておられるとするならば、こういうもののめんどうを見ていくように国の施策としてやるべきではないか、あるいはもっと積極的にこういうものを考えていくべきではないのか。こういう問題について、どういうふうにお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。
  230. 石野清治

    ○石野政府委員 ただいまお話ございましたケースにつきましては、たとえば京都市あるいは東京都などにおきましても幾つかございます。非常にむずかしい問題でございますが、現在その心臓の疾患対策といたしまして、育成医療とかいろいろなことをやっておりますけれども、そういう給付の対象外あるいは終わったものに対しまして、父兄がまとめて保育をしているという場合に、一体国は助成すべきかどうかという問題だと思います。  御存じのとおり、心臓病の問題というのは、非常にむずかしい問題がございまして、特に日常生活の訓練とかあるいは集団生活となりますと、専門医師の的確な判断あるいは専門医師の管理下という問題が一つの条件になろうかと思います。そうしませんと、特に心臓の問題でございますので、とっさの発作によりまして大きな負荷がかかって、万一の場合が起こるということもございますので、そういうことで非常に慎重にこの問題については考えなければいけない。そういうことがございますので、そういう医学的な管理上の責任の問題もございますし、同時に、こういう問題に対して、心臓病だけでございませんで、たとえば腎炎とかネフローゼとか、その他たくさんの疾病を持っている児童がございますが、そういうものとのバランスの問題もございますし、同時に、基本的に国が一体どこまでやるべきかということになりますと、地方公共団体のやるべき分野、国のやるべき分野につきまして、もう少し明快な分担を、基準を決めてまいりませんと、直ちにこれについて介入するというわけにはいかないのではないか。検討いたしますけれども、非常にむずかしい問題だというふうに考えております。
  231. 寺前巖

    寺前委員 私は、やはり障害児、障害者の問題というのは、分野別あるいは級別というのですか、そういう別にきめ細かく対応措置をとっていかないと、現実には社会人として育たないというのが、この分野の特殊な状況だと思うのです。     〔住委員長代理退席、竹内(黎)委員長代着席〕 ですから、現実に見合うようにぜひとも検討してもらうことを特に要望しておきたいと思うのです。後で大臣にお答えをいただきたいと思うのです。  その次に、大臣のごあいさつの一番最初に救急医療の話が出てきました。今日、救急医療の問題というのは非常に大事だと思うのですが、自治省の消防庁の一九七四年一年間の救急患者の搬送の報告を見ても、百二十万人のうちで二カ所以上旧らせられたという人が六万四千人も出てきているということで、今度、重視されたところの概算亜求がなされるのだろうと思うのですが、たとえば、私の住んでいる京都で言いますと、京都市内には国立の大きな大学病院がある。それから、しかるべき医師層もいっぱいあります。ところが、京抑の南部へ行きますと、そこには新開地がいっぱい出てくるけれども、医療体制がそれに伴っていかない。ところが、救急の搬送の責務ということ以なると、個々の自治体が受け持たせられるとい忙ことになるわけです。たまたま京都の南部に宇拡市というところがあります。城陽市というところがあります。ここの消防署の消防長さんは、京都の消防署の出身者が行っていますから、個々な顔の知り合いでもってこの搬送関係をうまい一といろいろ手を打つことになっているけれども一、そういう関係にないところはそうはいかぬようなるのです、個々の自治体だけで搬送責任を持ている限りにおいては。  そこで、抜本的に救急医療問題は考えるとて、個々のお医者さん方の協力を求めるためのいろいろな手だてを打つとしても、総合的にいまっている能力を動かすポイントはどこにあるのか。それは府県が情報センターを持って総合的に医療機関との結合を図る、そういう体制をつくるということがポイントになってきているのじゃないだろうか。いまのままでは制度的にもそうなっていないから、これはやられていない。だから、そこを現在の予算の範囲内においても予算的にも助成をして、直ちにやらせていくという緊急策をとることが一つの重要な要素を持っているように思うのですけれども、そこはどういうものでしょうか。
  232. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御指摘のような問題は、われわれも十分承知いたしておるところでございます。それで、搬送業務は、ただいま先生御指摘のとおり、各消防本部、これは、ほとんどが市町村単位で行っておりますが、各消防本部単位にこれを実施いたしておるところでございますが、それを受け入れる医療機関側から考えてみますと、消防本部の区域外にどうしても運ばざるを得ないというような問題があるわけでございます。そういう意味におきまして、医療資源を最も効率的に使って国民医療を担当するという立場に立ちまして、ただいま先生御指摘のように、医療情報システムを広域化するということはぜひ必要だと考えておるところでございます。したがいまして、今後の施策といたしまして、少なくともとりあえず一番力を注いでいくべき問題といたしまして、広域情報システムの確立ということを考えておるところでございます。
  233. 寺前巖

    寺前委員 それをやらせるために、府県に対して助成措置をちゃんと予算上も考えるんですね。それをやらなかったらできませんよ。そこはどうなっていますか。
  234. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 昭和五十二年度、すなわち来年度予算におきまして新規事業といたしまして、広域情報網システムの確立につきまして助成を行う予定にしております。
  235. 寺前巖

    寺前委員 それでは、積極的にお願いするということにして、これも請願の問題なんですが、先ほども御質問がありました柔道整復師の問題です。御答弁を聞いておったら、治療行為をやっておられる、診断行為らしきものをやっておられる、こういうお話が出ておりました。とすると、現実にその分野で働いておられる方々が、いまの中学卒四年、高校卒二年でこういう分野をやるというのには、やはり社会責任から見て若干問題があるのじゃないかというふうに当事者自身が言っておられる。言うならば、この問題は私は当然検討に値する問題だと思うのですが、検討に値する問題として取り扱っておられるのかどうかをちょっと聞いておきたいと思うのです。
  236. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御指摘のように、また先ほど御答弁申し上げましたように、柔道整復師等につきましても、国民の医療を担当するという立場に立ちまして、その資質の向上を図っていく必要があろうかと思いますので、そういった観点から、さらにこの教育の内容等につきまして検討を進めてまいりたいと思います。
  237. 寺前巖

    寺前委員 最後に、最近精薄児通園施設及び肢体不自由児施設に重度の子供がどんどん入ってくるということで、従来の基準だけでは運営が問題だという意見が各所から出てきていると思うのです。私は、これはさっきの障害者の問題じゃございませんけれども、現実的にきめ細かく対処していくという問題として、かつて重度の精薄の施設において重度加算をやったように、この分野についても何らかの改善策を検討すべきところにきているのじゃないかと思いますが、このことについてお聞きをしたいと思うのです。
  238. 石野清治

    ○石野政府委員 最近、特に特殊教育の進行によりまして、各施設が重度化の傾向にありますことは御指摘のとおりでございます。そこで、精薄児通園施設の場合と、それから精薄者の収容施設の場合との比較を見ますと、精薄者の方の施設の場合は現在四・三対一という形で、四・三人に一人の割合で人を配置しておるわけであります。ところが、精薄児通園施設の方は五人に一人という形で、片方はいわば二十四時間体制でやっておるにもかかわらず四・三対一、ところが、通園施設の方は八時間前後でございますが、五対一という形でやっておるわけであります。そういうバランスを考えてまいりますと、通園施設の方も重度化は進んでおりますけれども、どちらかというと、むしろ重要なものは収容施設の重度加算、これを大幅に拡張しなければいかぬというふうに考えておりまして、来年度はこれについて大幅な増額要求をいたしたいと考えております。しかし、肢体不自由児の関係につきましては、若干問題がございまして、これにつきましては、いま医療費ベースの上に加算をつけておるわけでございますが、これは確かに足らないと思います。これにつきましては、来年は倍増するような形で予算要求をいたしております。
  239. 寺前巖

    寺前委員 それでは、私はもうお約束の時間が来ましたのでこれでやめますが、最後に大臣に、さっきも心臓病の子供さんの問題をお預けしておきましたけれども、こういう障害児なるがゆえに特別な施策を援助して積極的にやっていくという意味において、ぜひとも御検討いただきたいと思うのですが、御決意をお聞きして終わりたいと思います。
  240. 早川崇

    ○早川国務大臣 困難な問題ではありますが、十分検討いたしたいと存じます。
  241. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 次に、大橋敏雄君。
  242. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は、年金問題について若干お尋ねをしたいと思います。  御承知のように、わが国は老齢化社会への進行あるいは国民年金における五年年金、十年年金の支給という実情から、国民の年金に対する関心はとみに高まってきておりますし、また、年金制度の抜本的改善に対する期待はきわめて大きいと言わねばなりません。そういう立場から、私は、時間の許す限り年金問題をお尋ねいたしますが、この年金制度の問題につきましては、去る九月二十八日の本会議の代表質問でわが党の矢野書記長が質問いたしたわけでございますが、そのときの三木総理の答えは、制度全般に検討を加えなければならぬ時期が来ているという程度の非常に抽象的な答弁であったわけです。実は昨年一月二十八日、これまた本会議場でわが党の竹入委員長が質問いたしたわけですが、三木総理が総理に就任されて間もないころでございましたけれども、すでにそのときに、年金制度の抜本的な見直しを約束なさいまして、五十一年度の予算にその結果を反映させると、このように実は公約をなさったわけであります。しかし、結果的には疑問だらけてございまして、また、田中前厚生大臣も、三木総理のその意思を受けて昨年の二月、予算委員会で私の質問に答えまして「総理の公約でもございますので、五十一年度福祉年金二万円を実施いたします。」という趣旨の確約をなさったわけであります。しかし、公約はすべて破られてまいりまして、いまだに実現いたしておりません。一体政府は何を考えておいでなのだろうかと、本当に憤りを感ずるほどでございます。  御承知のように、福祉年金も十月から一万三千五百円です。五年年金で一万五千円、十年年金で二万五百円、これでは稼得能力を失った老人の皆様の生活を支えていくことはできないというようにわれわれは思うわけでございます。  そこで、去る九月二十八日に発表されました国民生活白書を見ますと、わが国の厚生年金と西ドイツの年金とを比較して、わが国の年金水準は西ドイツを上回ったと述べているわけですが、私は、その実態を見てみたときに、本当にこれでいいのかという気でなりません。現在わが国の老人が受けている年金は、その大半が老齢福祉年金あるいは五年年金、十年年金のものであって、それこそ一万円から二万円程度の受給者でございます。  はっきりここで申し上げておきますと、これは、ことしの厚生白書に出ているわけですからもう間違いないわけですが、四十九年の三月末現存の数字で示されておりますけれども、公的年金から老齢年金を受けでいる全受給者の内容を見てみると、老齢福祉年金受給者が五五・八%、五年年金、十年年金のいわゆる経過的年金を受けているのが二二・八%、老齢特別給付金が八・三%で、合わせますと七七・九%、いま老齢年金を受けている、すなわち公的年金を受けているその全体の数の七七・九%は、わずか一万円ないし二万円程度の人でしかないわけですね。  ですから、こういう実態を踏まえたときに、厚生省としましても、じっとしてはおれないだろう。三木総理も、口ではたびたびその大改革を約束しているわけですが、果たして今度の早川厚生大臣はどのような決意と、あるいは具体的にどのようなことをさせているのか、それをお伺いしたいと思います。
  243. 早川崇

    ○早川国務大臣 総理が、公的年金制度全般にわたって横断的な検討を約束した、この横断的ということは、大変大事なことだと思います。御承知のように、公務員の共済組合の年金と厚生年金においてすら大きいアンバランスがある。さらに厚生年金と国民年金となりますと、非常に大きい格差等が日本の年金制度にはございます。こういったことは諸外国のあれでは例がないわけでございますので、このアンバランスをどう直していくかということが一つ。  もう一つは、国民年金はいまのままでいいかどうか。さっき大橋先生が言われましたように、福祉年金というのは無拠出で本当は年金じゃないんですね。むしろ生活保護のような一種の贈与でございますから、これを除外いたしましても、五年年金、十年年金というようなことで、またもう二十年、二十五年待てないから、少なくても早く出してくれということが非常に多くなっている関係で、すでにこの積立金は厚生年金に比べまして非常に少なくなってきている。当然これまた保険料を上げなければならぬという、いろんな問題があります。  そこで、年金懇というものを設けまして、また、三木総理のいわゆるライフサイクル計画、いわゆるナショナルミニマムだけは同じようにやるし、それから上の部分は応能的に所得に応じてよけい掛金もしていくというようなライフサイクル計画、公明党さんも、また、そういうことをお考えになっているやに聞いておりますが、そういうことを含めて根本的に再検討する時期がきたのではないだろうか。ただし、それじゃ来年度から仕組みをうんと変えていく、こういう性急な改正というものはちょっと無理だと思いますが、やはり二年後、三年後を踏まえた再検討の時期に来ている、かように私も考えておりまして、厚生省でも検討してまいりたいと思っております。
  244. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大臣もそれなりに実態は御理解なさり、あるいはその対策についてお考えになっているようではございますけれども、たとえば国民年金の打ち出しを見ますと、夫婦で八万四千円、もっともこれは二十八年加入して付加年金も加えてというような発表をなさっているわけですが、こういう人はまだ一人もいないわけですね。私たちがいま問題にしているのは、現在のお年寄り、この人を何としても食える年金の状態にしていかねばならない、こう言うわけです。いまの夫婦で八万四千円という国民年金のうたい文句は、いまの老人たちには全く関係がないわけですね。将来に向かっての水準向上あるいは改善の必要は当然のことでありますが、とにかくいま生きているお年寄りをどうするか。先ほど申しましたように、一万円から二万円程度の支給額では、理由のいかんを問わず食える年金と言えないわけです。そのために制度審議会でも、何回となく生活保障的色彩を持つ内容に改善すべきだと提言をしているわけです。われわれ公明党も、先ほど大臣がおっしゃったように、われわれなりに国民基本年金の構想を提言しているわけでございます。  実は、今月の初めに「国民福祉中期五カ年計画」というものの内容を発表したわけでございますが、「生きがいとバイタリティーのある福祉社会トータルプラン」ということでの総合的なものを発表いたしました。これは、まだ製本中のものでございますが、近いうちにこれがりっぱに製本されて一般に市販される予定でありますので、そうなりましたら、大臣のところにも一部進呈申し上げます。  この中に「年金権の保障に立つ年金ミニマムの実現」という項がありまして、かなり詳しく、あらゆる方面から専門的な立場の方の意見も十分聞き入れての内容を示しております。十分参考にしていただきたい。今後、年金の改善を初めとする福祉の充実を図っていくためには、どうしても国民の連帯意識あるいはまた世代間相互扶助の精神の高揚を図っていかねばならぬ、われわれはこう考えるわけです。  私どもは、こうして発表したから、これが絶対的なものだとは決して思っておりませんし、大いに批判を受け、御指導も仰ぎたいと思うわけですけれども、いま申し上げましたような方向で国民のコンセンサスを求めていくという立場から見ると、政府の姿勢は弱いのではないか、私はこう思っているわけでございますが、もう一度この点についてのお考えを聞かしていただきたいと思います。
  245. 早川崇

    ○早川国務大臣 ナショナルミニマムというものをどこに置くか、公明党の案では、何か所得の六〇%あるいは学者なんかは五〇%ぐらいでなければといういろいろな御意見があります。ナショナルミニマムの中には年金がある、住宅がある、教育がある、また医者にかかる権利、いろいろなものがございますが、その中で老後保障というものはまさにナショナルミニマムで、そういったミニマム思想というのは、私は賛成なんです。それから、その上のものは応能主義ということによって自主独立の気分を培っていくという日本的な社会保障という意味では、ナショナルミニマムの思想は私は賛成でございます。どの辺にナショナルミニマムを置くか、これは非常に高いものにすると物すごい負担がかかってくるわけでございます。しかし、ナショナルミニマムの思想、これは私としては賛成でございます。
  246. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大臣のおっしゃるとおり、ナショナルミニマムの水準のとり方が非常に重要な問題になるわけでございますが、わが党が発表いたしました今回の案は、年金の問題だけでなくて、いまおっしゃっているように、住宅の問題あるいは教育あるいは労働、生存等六種類にわたっての総合的な内容になりまして、経済の見通し、それに対する財政計画、そういういわゆる絵にかいたもちではなくて、実際にこうすればこれだけの財源が必要であって、それはどうして求めるのだというところまで、また、そのミニマムの求める基本的な理念も詳しく述べてありますので、これは後日ゆっくりと勉強していただきたいと思います。そして、その内容を見られて確かにというところがあれば、公明党がやったからというのではなくて、国民の福祉を考える立場から勇気を持ってある方向に進んでいただきたい。これは要望でございます。  これからちょっと具体的な細かい問題に入ってまいりますが、「国民皆年金」ということは、御承知のように、昭和三十六年に国民年金が誕生してから言われている言葉ですが、これは、とりもなおさず被用者年金その他の公的年金あわせて国民全体を年金の制度に加入させようということで来たわけですが、それ以来もう十六年が経過したわけでございます。  そこで、国民皆年金の名にふさわしく、あまねく国民の年金権が果たして確保されているのかどうか、この年金権の確保という観点から、私は若干お尋ねしてみたいと思います。  この問題につきましては、さきの参議院の予算委員会で、わが党の小平芳平委員が、海外に赴任した商社員の妻等の年金権に関してすでに質問したところでありますけれども、私は、この問題をもう少し掘り下げましてお尋ねをしたいと思います。  まず、確認をいたしますが、国民年金法では、第八十八条によって被保険者の保険料の納付義務が規定されております。また第八十九条、第九十条では納付免除を規定していると思いますが、この保険料の納付免除は、申請等の一定の手続を踏まなければならないわけでございますけれども、何かの都合で納付がおくれていた、その納付期限が二年を過ぎれば時効ということで納められなくなる、こういうことで、六十五歳になってもなお資格期間が不足で年金が受けられない、こういう人々がまだ数多くいるということを聞いております。  昭和四十八年の国年の改正の際に、附則第十八条の特例納付、すなわち五十年十二月三十一日までに限って、すでに時効にかかっている保険料を納入できるようになされたわけでございますが、このときには市町村の担当者、いわゆる現場担当者は大変な苦労と努力をなさったわけでございます。それにもかかわらず、いまだに資格期間が足りなくて年金がもらえない人がかなりいるわけでございます。  先ほど申し上げましたように、国民年金というのは、国民皆年金がうたい文句でございます。本来、年金がもらえないという人があってはならぬということだと私たちは思うわけでございます。したがいまして、ここで何か法的措置を講ずべきではないか、このように思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  247. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 先生のただいまのお尋ねは、先般の四十八年改正で行いました特例納付をもう一度考えてはどうかというのが具体的なお尋ねかと存じますけれども、御案内のように、この特例納付という非常に異例な措置、過去四十四年改正、四十八年改正と二回行いまして、特に前回の改正、昨年十二月末で締め切りました特例納付は、私どもの予想をはるかに上回る納付実績を上げた、これは第一線の大変な努力によるものでございますけれども。したがいまして、少なくとも特例納付の形でのやるべきことは、おおむねやったのではないかというふうに私どもは一応考えておりまして、現段階におきましては、この特例納付をもう一度考えるということについては消極的でございます。
  248. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大臣聞いておっていただきたいのですが、いま私が手元にしておるものは、地方公務員の年金問題の第一線で活躍している方からの要望書であります。それを見てみますと「国民皆年金の目的達成のために」これは先ほど言ったような趣旨のことですが、「国民年金の老齢年金(通算老齢年金)受給権の受給要件を充足できない者の完全解消を図るべく、特別措置を講じてもらいたい。」この中に具体的に出てきている問題が、いまのことなんです。要するに、昭和五十年十二月三十一日までの特例納付の機会を逸した者に対する救済措置をもう一度図ってもらいたい。つまり「制度発足以来十六年間、末端の市町村では、制度の普及、適用対策、保険料の納付勧奨等鋭意努力してきたのでありますが、当初、無拠出の福祉年金が先行して給付されたことからの誤解」これは「拠出制国民年金に加入しなくても、七十歳になったら福祉年金がもらえると思っている誤解」と、こうなっております。そして「年金の給付内容の貧弱なことから、対象者全員を加入させることは極めて困難なことでありました。」これが現場の声でございます。「昭和四十八年の法改正により年金額が大幅に引上げられたこと及び十年年金、五年年金の支給開始から、漸く国民年金への関心が高まり、附則第十八条の特例納付には多くの人達が新規にそ及加入し、或は未納保険料を納付して、将来の年金受給権に結びつくようになったことは喜ばしいことであります。しかしながら、この附則第十八条の特例納付の機会を逸したため、今後六十歳までの全期間保険料を納付しても、老齢年金や通算老齢年金の受給資格期間を満たすことができない者がまだまだ相当数あることは憂慮すべきことであります。」これは大きな政治課題だと、こう言っているわけであります。「しかも、これらの人達の中には、僅か一か月とか二か月不足という気の毒な人があります。こうした将来の年金受給権から見放された人達を放置することは、国民皆年金の趣旨にもとることでありますので、是非とも救済措置を講じてもらいたい。」  先ほどから申し上げますように、これが現場での実務担当者の切実な声であります。いまのところ消極的な気持ちだということでございますが、大臣、ここでもう一度何らかの特例を設けていただきたい。強い要請です。どうでしょうか。
  249. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 先ほど申し上げましたように、現段階ではそのような考えでございますけれども、今回の特例納付は金額にして六百億を上回る大変な額が納付されておりますけれども、その納付者の実態等さらに吟味が必要とも考えられますし、それからこの問題は、単純に特例納付という形をまたもう一度やるということで済むのかどうか、国民年金といういわば特殊な社会保険制度の今後あるいは予想される年金の谷間という問題、そういった問題の一環として将来の非常に重要な課題として検討してはどうかという意見も実は一部にはございますので、そういう問題も含めまして今後とも検討いたしてまいりたいと考えております。
  250. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 確かにおっしゃるとおりで、従来の特例納付、それをもう一回繰り返せばいいのかという問題ではないと私も思います。もっと深く掘り下げて、あるいは通算制度的なものを取り入れてかからねばならぬと思うわけです。  たとえば六十歳を超えても、不足年数分を納付させる等の措置はとれないかどうかということですね。     〔竹内(黎)委員長代理退席、葉梨委員長     代理着席〕 これは厚生年金では、退職後も不足年数分を納付できる任意継続被保険者という制度が現実にあるわけですから、こういうのを思い合わせて考えていくと何か考えられるのではないだろうか。とにかく国民年金の被保険者になった者が六十五歳になっても年金がもらえないということは、先ほど申した皆年金の趣旨に反しておかしいのではないか、こう私は思うわけです。  また、保険料は確かに納付義務があるのでございますけれども、一方政府側としても、国民年金法九十五条によって、保険料の未納の場合には国税徴収の例によって徴収することになっているわけでございましょうから、こういう点を考えていくと何か知恵もわくし、また、国の怠慢と言いましょうか、責任の一端もあるわけですから、考えられるのじゃないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  251. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 いまお尋ねの点は、一つの問題だろうと思います。六十歳から六十五歳の問題、確かにそういうような御意見もございますが、これは、またやりようによりましては、言い方は大変問題かとも思いますけれども、いわば正直者が損をするということになってもいけません。ですから、むしろそういう問題は、先生が後の方で御指摘になりました現行の保険料徴収のあり方、そういう問題も含めて総合的に検討する必要があるのではないかというふうに考えております。
  252. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いま私が言ったようなことをやっていくと、あるいは正直者がばかを見るようなことが起こるのじゃないかという話がありましたけれども、現に正直者が損をしているに等しい現実問題、不公平な問題がたくさんあるわけですよ。私、それを二、三指摘してみたいと思うのです。  先ほどの公務員の方の気持ちの中にこういうのがありますので、一応これを披露しておきます。「六十歳以後年金受給資格期間を満たすまで被保険者資格を継続させて保険料を納付させる。このことは、厚生年金保険法の第四種被保険者と同様な措置であり、老齢年金の支給開始が六十五歳からであることからも適当な方策と患われる。」二つ目に「六十歳以後に五年間分程度の年数を限って、不足年数分をそ及納付させる。」という考え方。あるいはもう一つは「通算対象期間から除外されている期間を特例として算入(いわゆる「から期間」に算入)して、年金受給資格期間を満たす。」実はこういう考えがありますと、こう言っているわけです。  そこで、通算年金制度が昭和三十六年に発足したわけですね、大変画期的なものであったと私は思うわけでございますが、これがどうも公平を欠いている制度であるように思われてならぬ。先ほども言いました正直者が損をする云々とおっしゃったのが現にあるということをいまから言わんとしているわけですから、よく聞いておっていただきたいと思います。  たとえば戦時中満州などの外国政府、外国特殊法人、特殊機関などの勤務期間は、公務員の恩給や共済年金では通算されますけれども、他の制度ではできない、こういう矛盾がありますね。あるいは共済の退職金をもらった期間は共済では通算されますけれども、厚生年金の脱退一時金をもらった期間はどの制度にも通算されない、これも矛盾でございます。あるいは国会議員や地方議員の期間はどの制度にも通算されない、こういうことがありますね。先ほどの公務員の方も、そのことをやはり指摘しているわけですが、通算対象期間から除外されている期間を特例として算入できるような措置をとったらどうでしょうか。その中で国会議員互助年金法の加入期間あるいは地方議会議員の年金制度加入期間、これは「議員に専従し、厚生年金等に加入していない人は、議員の年金制度加入期間を通算対象期間に算入しないと年金受給権を取得できない者がある。」ここはこのとおりなんですね。  たとえば私の例をとってみますけれども、私は大正十四年生まれですから、もうしばらくすると五十歳になるわけですけれども、国会議員になりましていま九年と十カ月です。今度総選挙が予定どおりあって当選してくれば別ですけれども、今回限りで国会議員をやめることになれば、九年十カ月で二カ月間足りないわけですね。互助年金を受けるには二カ月間足りないからもらえないということです。そこで今度、即座に国民年金に入るとしますと、それからずっと掛けても六十歳までですから十年しかないわけです。それから国会議員になる前の三十六年からの国民年金、その中に私、地方議員の二年間の経験がありますから、それを引くと四年間、それを合わせても十四年ですね。通算されても二十年なければならぬ、ということになると、私、今度もし落選しますと、一生涯年金はもらえないということになるわけです。また私は、軍隊にも参りましたが、その年数が足りないために恩給も受けることはできないわけです。しかし、ここでもし国民年金法の中でいまのような通算制度が特例として認められたならば、この私も生きてくるわけです。また、いま対象になっていない方々、多くの方々が救われてくるという事実があるわけです。  ですから、いま局長がおっしゃったように、先ほどの特例納付というようなことだけでの問題ではなくて、その繰り返しじゃなくて、そういうもっと掘り下げた問題を取り上げて検討して、何らかの姿で救済措置を考え、そして国民皆年金のその趣旨に沿うように努力してもらいたい、こう私は思うのですが、これは、やはり大臣の御決意が必要でございますので、よろしくお願いいたします。
  253. 早川崇

    ○早川国務大臣 まことに残酷なお話でございますが、互助年金は三年勤めれば一時金はもらえるのだそうでございます。ただし、通算はできないということでございます。また、いまお話はございませんでしたが、外国勤務に行った、厚生年金に入っていない者はまた切られる、いろいろそういう不合理な面が多々ございますが、非常に技術的な問題でございますので、正確を期するために、なお局長から見解を御答弁させたいと思います。
  254. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 現行の通算制度は、御指摘のように、いろいろ問題があると思うのですが、国会互助年金の大変切実な御質問でございますが、やはり互助年金の方は、選挙によって選ばれた議員という特殊な身分の方たちのためのいわば特別の制度でございまして、したがいまして、たとえば開始年齢というような問題はございませんで、十年という資格期間だけで一応受給できる、そういうようなこともございますので、これについて通算の対象に取り入れるということにつきましては、いささかどうも問題があるのではないか。大臣からもお話がございましたように、一時金の制度もございますので、これで対処するほかないのではないか。ただ、そのほかいろいろ問題がございますので、通算制度のあり方については、今後とも検討していきたいというふうに考えております。
  255. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 繰り返して言うようでございますが、先ほど言ったように、共済年金、いわゆる公務員の方は優遇されて、そうでない者は片手落ちだという実態もこれあり、また、国民皆年金体制が敷かれた今日、その趣旨を実現させる意味においては、いま言ったような落ちこぼれの人々を何としても救済していく。その上に、いま私が申し上げたような問題を総合的にやはり深く検討されて、一日も早くその措置を実施してもらいたい。要望をいたしておきます。  時間が参りましたので、最後にもう一問お尋ね申し上げますが、これも、この公務員の方からの御要望で「外国から帰国した者及び帰化によって日本の国籍を取得した者に対する特例措置を講じてもらいたい。」ということでございますが、国民年金は、いわゆる日本国籍を有して日本に住所を有する者が対象になるわけでございます。  そこで、先日の参議院予算委員会における小平芳平議員の質問も、国民年金に加入していた奥さんが主人と一緒に外国に長い間赴任していて、帰国後国民年金に再加入したが、六十歳まで保険料を納めても資格期間が満たされないという問題であったわけでございますが、この問題は、帰化によって日本国籍を取得した者にもあるのではないか、この問題は、そのとおりに適用されるのではないか、私は、こう思うのでございますが、帰化すれば国民年金の強制被保険者になるわけでございまして、六十歳まで保険料を納めても資格期間が満たされない、そして、それがわかっていても、強制被保険者というわけですから、保険料だけは払わねばならない、こういうことになっているわけですが、これも当然改善されねばならぬ問題だろうと思うわけでございますが、この点いかがでございますか。
  256. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 御指摘のように、長期間外国に滞在して年をとってから帰国した、あるいは高齢になって帰化した、こういう人たちが今後保険料を払っても老齢年金に結びつかない、実はそういうケースを予想いたしまして一国民年金現行法では、そういう年金権に結びつかない人は、いわば任意脱退、本人の申し出によって強制適用を免除する任意脱退という制度が実はございますので、それによって対処いたしたいというふうに考えております。
  257. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 じゃ、最後に一言大臣に申し上げますが、先ほどから申し上げますように、年金の抜本的な改善に対する国民の期待は大変大きなものがあります。そして、現在の問題点ももうほとんど掌握されている状況下にあろうかと思います。あとは、これをいかにして整合し、そして抜本的な改善をなすか、これはやる気、意欲だと思うわけです。大臣は、ここ二、三年はかかるだろうというお考えを述べておられましたけれども、それこそ直ちにやってもらわねばならぬほどの緊急かつ切実な問題だということでございます。申し上げましたように、将来の問題もさることながら、現在の受給されているお年寄りの年金水準がきわめて低いわけですから、これを何としても食える水準に引き上げる、このような方向にだけは直ちにやっていただくように要望するわけでございます。その点についての大臣の決意を聞いて終わりたいと思います。
  258. 早川崇

    ○早川国務大臣 厚生行政の二つの大きい柱は、医療保障と所得保障でございます。  医療保障につきましては、GNPの四%の納付が実現し、平均寿命も世界一、女性は七十七歳、男性は七十二歳というところまで健康で長生きできるようになったことでございます。  問題は、所得保障の面、特に老後の保障の面でございます。年金制度が先進国に比べまして発足がおくれましたので、現在の給付は御指摘のとおりでございますが、これから逐次充実していくのですが、同時に、受給者がうんとふえてくるという問題に直面しております。そういう意味で、いまからそういう事態に備えて、総理も抜本的に再検討する時期が来たと言われたわけでございます。     〔葉梨委員長代理退席、竹内(黎)委員長     代理着席〕  御指摘のとおり、明年からというような改革はできませんが、将来を見越した再検討をいたしたい。その場合には、ナショナルミニマム年金というか、基礎年金の構想なんか大いに私も検討してみたい、かように思っております。
  259. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それでは終わります。
  260. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 次に、岡本富夫君。
  261. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は、本年の五月六日の当委員会におきまして、初めてトロトラスト問題を取り上げたわけでありますが、この問題につきまして、特にまず大臣からひとつ御答弁をいただきたい。と申しますのは、大臣は和歌山の方でございますが、私の軍隊友だちが、やはり和歌山の有田におりまして、非常な先生の支持者です。非常にごりっぱな勇気のある方だ、今度大臣になられて非常におめでたい、しかし短いかもわからぬというようなことでありましたが、そういうことで、ひとつ前向きの御答弁、また、今後の厚生省の指針というものをひとつはっきりしていただくと非常にいいのじゃないか、こういうように思いますので、まず大臣から御答弁いただきたいのです。  このトロトラスト問題は、大臣、御承知のように、戦争中の戦傷者の問題でありますけれども、さらにこれが将来の日本の国の大きな問題になってくるということがある。これは一つは、御承知のように、現在原子力発電をやっておりますが、原子力で費消されるこの放射能と性質がどうも同じであるという学者の話がある。ということになりますと、私は、これからの日本の国民の健康、こういうことを考えますと、これは非常に重大な問題であろうと思うのです。しかも、この国民の健康保持の問題は、厚生省が担当をされておるわけですから、したがって、いまこの問題を徹底的に解明をし、そして治療方法もつくり、救済もきちっとしておくことが大切な今日問題であろうと私は思うのです。  そこで、前置きはそのくらいにいたしまして、実は十三年前に、国際機関の方から日本にこのトロトラスト問題を調査するようにという要請がきているわけです。ところが、厚生省が取り上げて、治療研究の名目でお金を出したのが四十九年、五十年と二カ年含めてわずか二百五十万円なんです。西ドイツでは十六億円という大きな予算を使っておりますが、十三年もどうも渋り続けた厚生省の姿勢と申しますか、これに対して私は、まず大臣から、この戦傷者の皆さんにやはりひとつ遺憾の意を表してもらいたい、そして、その反省の上に立ってこれから出発していくということでなければならないと思うのですが、いかがでございましょう。
  262. 早川崇

    ○早川国務大臣 厚生省の事務当局なり十数年前の姿勢というものには、それぞれやはり理由があったと思いますが、いま岡本先生の申されましたように、確かにまず、そういうものを投薬された人々に対しましての行政当局としての反省からこの問題に取り組んでまいりたい、全く私も同感でございます。
  263. 岡本富夫

    ○岡本委員 ということは、厚生省の姿勢というものが非常に遺憾であった、こういうように大臣もお考えになっていますね。いかがですか、この点だけちょっと念を押しておきたいのです。
  264. 早川崇

    ○早川国務大臣 そのとおり考えております。
  265. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣がそうして厚生省の姿勢としてまずこの取り上げ方が遅かった、あるいはまた微弱であったということをお認めになったので……。  御承知のように、西ドイツは十六億円も費やしてこの調査研究あるいは救済に当たっておるようでありますが、これは私の方で調査いたしまして、神奈川県の衛生短期大学の森教授にいろいろと聞きました。日独共同分析の結果が出ておりますが、トロトラストを打った、それを使用した中で、日本肝臓がんで亡くなった方が八十五人、全部のトータルが日本では百三十九人のデータでありますが、肝臓がんの方が六一・一%、肝硬変の方が二十人で一四・四%、その他のがんの方が十四人で一〇・一%、白血病、これは放射能によるところの病気ですが、八人で五・七%。これが日本の発生率でありますが、亡くなった方の死因の統計であります。西ドイツでは百四十七人のうちで肝臓がんが五十一人、肝臓がんの発生率は二八・八。以下全部ありますけれども、要約しまして、日本肝臓がんで亡くなった方が六一・一%、西ドイツでは二八・八%ということになりますと、西ドイツよりも肝臓がんで亡くなられた方が非常に多い、倍以上であるということであります。したがいまして、西ドイツよりもよけい力を入れてこの問題に取り組まなければならぬのではないか。  ちなみに、日本におきまして同じような世代、ぼくは大正十年生まれで、いまは五十五歳ですが、軍隊へ四年行きましたが、同世代の一般人、これが肝臓がんで亡くなった方が三・七%でありますから、トロトラストを使用した方は一般の方より十六倍、異常に高い、こういうデータが出ておるわけです。しかも、このトリウムの放射線によるところのX線は、生物学的に見て、その半減期が二百年から四百年、物理学的には半減期は百三十九億年、こういうデータを見ますと、まことに恐ろしいものである。そういうように考えますと、先ほど申しましたように、今後の日本の原子力問題につきましては、厚生省として相当しっかりしたデータを握らなければならないのではないか、こういうように思うわけであります。  そこで私は、五月六日に社会労働委員会厚生省の今後の対策というものをどういうようにやるのかということでお聞きをいたしましたが、その後それがどうなっておるのか、ひとつお聞かせを願いたいと思うのです。これは事務当局からでも結構です。
  266. 出原孝夫

    出原政府委員 トロトラストの対策につきましては、非常に医学的な問題も多く含んでおりますので、厚生省といたしましては、私ども傷痍軍人の皆様方のお世話をしております援護局、それから医療に直接携わっております医務局、あるいは大臣官房の協力を得まして、省内が一体としてやるべきであるという結論を得まして、なお、このトロトラストの問題あるいは放射性物質の体内の蓄積関係する問題につきましては、科学技術庁の放医研、放射性医学総合研究所でございますが、そちらの方でも御研究になっておられるわけでございます。問題が問題でございますので、総合的な対策を必要とするということで、厚生省内の関係局が一丸となりまして、その研究及び対策の実施に当たっていきたいということで関係省庁とも折衝を重ねて、ぜひ昭和五十一年度、本年度から現在の傷痍軍人の皆様方を対象として、もうかなり隠滅しておりますカルテに頼るわけにはまいりませんので、トロトラスト障害者を発見し、そうして対策を講じていくというようにいたしたいと考えて、目下準備をし、折衝をいたしておるところでございます。
  267. 岡本富夫

    ○岡本委員 お話を承りますと、まことにりっぱな対策をおやりになっているようにお聞きできるわけですけれども、ところが、こういった対策をするためには相当なお金がかかるわけです。予算がかかるわけです。報道によりますとわずか百万円。本年に入って百万円ということですが、これは全国ですからね。全国の対象で百万円。聞きますと、そのうちの半分を出張費とかあるいはいろいろな会議費に取るということになりますと、これを研究していただく学者、先生方には、わずか五万円足らずということです。そんなことでは、それは私、ほとんどできないと思うのです。  かつてイタイイタイ病の研究のとき、園田さんが厚生大臣のときにもありましたけれども、一つ研究に百万円では足らない。しかもこの問題は、これは相当対象者を、あるいはまたカルテカルテがなければ戦傷日誌といいますか、そういうものを全部探さなきゃならぬのです。いまお聞きしておりますと、ちょっとまあやろうかという一つのかっこしたみたいな感じですね。先ほども聞いておりますと、アンケート調査で皆さんにお配りする、それを集めるというようなことでは、十万人の戦傷者の生存者に対して百万円ぐらいの費用では無理だと私は思うのですが、その点はいかがですか。
  268. 出原孝夫

    出原政府委員 お話のございました森先生に、すでに昭和五十年度及び五十一年度で御研究お願いした委託の経費が百万円でございます。私どもが現在厚生省内で検討し、関係の官庁と折衝いたしておりますのは、それとは別に、現在の戦傷病者方々の中からトロトラストを注入されておるという心配のある方々を選び出して、その意味では全傷痍軍人を一応網にかけた上で、その心配のない方々を外していって、心配のある方々について診断をし、その上で対策を講じていきたいということを考えておるわけでございます。まだ関係機関の間で話し合い中のことでございますので、正確なことを申し上げられる段階には至っておりませんけれども、早急に実現いたしたいと考えておりますし、その意味では、それに要する経費もいままでよりは格段に大きくなるだろうというように考えております。
  269. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、厚生省ではただアンケートを出して、そして、そういうことを訴える人を検診しよう、こういうことなんですか。
  270. 出原孝夫

    出原政府委員 アンケートにつきましても、これは、むしろ医学的な知識を持った方々と御相談をいたしまして、その質問の内容を決めていくということで、質問の内容によって、客観的に専門家が見てこの人はトロトラストの注入の疑いあるいは心配がある、ないというものを分けられるようなことで、要するに、全部の傷痍軍人方々に、現在の体の状況等を含めて御返事を願い、それを専門家の目を通して判断をしていくというように考えておるわけでございます。
  271. 岡本富夫

    ○岡本委員 それでは、いままで森先生なんかが調査をして、今日までこういった貴重なデータをつくっていただいた、それをよく聞きますと、国立の二十の病院、まあ結核病院は除いて、そこのカルテを一斉に調査した、それも何かこの病院が八十病院ぐらいあるそうですが、費用も余りありませんので、そこまで手が届かない、そういうことであったそうですが、大体トロトラストの被害を受けている方は、肝臓を写しますと、ぴしっとすぐに写真に出るのです。きょうは持ってきておりませんが、この前の委員会のときにお見せしたでしょう。ですから、こういった戦傷手帳を持っておる人の検診を、国立病院とかそういうところに指示をして無料でどんどんやっていく、こういうようなことにしなければ、あなたのおっしゃるように、専門の知識を持っている人はそうたくさんはいないと私は思うのです。これは全国にまたがっておりますから、もっと早く的確につかめる方法はありませんか。どうですか。
  272. 出原孝夫

    出原政府委員 現在の状況では、私どもは、現在の傷痍軍人の皆様方から情報をいただいて、そして発見をするということが残された手段であると考えております。と申しますのは、先ほど御指摘もございましたが、国立病院で残っておりますカルテはごく一部分でございます。森先生の御利用願いましたのも、最終的には四病院の二万枚程度のカルテをずっとめくっていただきまして、その中から百四十幾つの実例が出てきたということでございます。したがいまして、現在おられます十五万人の戦傷病者の方からいただくわけでございますが、たとえば結核といった内部疾患の方ですと、これはトロトラストを打っておられないということは明らかでございますので、そういった意味でのスクリーンをした上で、その他の方々について必要な検診をさせていただくということになってまいるかと思います。それがいま私どもが具体的に検討をいたしております方法の内容でございます。
  273. 岡本富夫

    ○岡本委員 森先生の報告を聞きますと、現在トロトラスト患者は推定六千人ぐらいおる。そして発見されたのがわずか五百二十五人。これは西ドイツのように、国を挙げての調査研究をしなかったから、ただ学界有志にまかせておったというようなところからこういうことになったのだという話でありました。  そこで、この戦傷者傷痍軍人の皆さんあるいはまた元軍人の病歴というようなものは、どこで一番よくわかるかと言えば、各都道府県ですね。ここに戦傷日誌のようなものがあるのです。ですから、一遍この都道府県の方に調査をしてもらうようにひとつ指示はできませんか、どうですか。
  274. 出原孝夫

    出原政府委員 御質問の戦傷日誌というのは、あるいはもとの陸海軍病院における病床日誌等のことではなかろうかと私どもは考えておるのでございますが、それでございますと、当時の陸海軍病院がすでに廃止されておりますので、ちょうどいまカルテで申し上げましたのと同じような事情があるわけでございます。  そのほかに、県にございます書類としましては、戦傷病者カードというのができております。ただ、このカードについては、トロトラスト注入者の把握がどの程度可能であるかということについては、まだ明確でございませんので、さらに私ども今回の調査研究の中で、医学の専門家の御意見等も聞いて判断をいたしたいと考えております。  そのほかに持っておりますものは、兵籍簿でございますとか戦時名簿等でございます。内地の留守部隊が編製する履歴書が兵籍簿でございますが、それによってトロトラストの注入の有無について判断できるような材料ではございませんし、戦時名簿は戦地の部隊が編製する履歴書でございますが、これについても、そういった判断の材料にはならないということでございますので、これらをあわせまして私どももできるだけ発見に努めたいというように考えておりますが、いずれもなかなか頼りにならないもののようでございます。
  275. 岡本富夫

    ○岡本委員 その戦傷日誌といいますか戦傷カードだけで、一発でぱっとトロトラストを打っている、それは見てわかりませんよ。しかし、大体都道府県にそういうものがあるわけですから、その人たちに呼びかけて、その人たちを検診すれば早くわかるでしょう。一般のところでも写したら、すぐレントゲンに出てくるわけですからね、私は、そんなにむずかしくないと思うんですがね。だから、やる気があるかやる気がないかで決まると私は思うのです。  前の田中さんは、それを本人に教えるのはどうかと思うというようなことを言っていましたが、傷痍軍人会の皆さんも、もういまとなっては、これは的確に早くわかった方がいいと言っているわけです。このごろは、がんでも治すいろいろなこともできておるわけですから、そのまま知らぬ顔して死なせてしまうのではなしに、やはり私は、そういった強力な、国を挙げての調査が大事だと思うのですが、そういうことはどうですか。
  276. 出原孝夫

    出原政府委員 いまの戦傷病者カードにつきましては、私も幾つか実物を見て承知をいたしましたが、先生御指摘のように、それから私が先ほど申し上げましたように、たとえば結核でございますとかいうような内部疾患で、当然これは心配要らぬというような区分はできるようでございます。そのほかのものにつきましても、なおスクリーンの具体的な方法でございますので、そういう意味で、私どもがいま検討いたしておりますのは、特に医学の専門の方々を入れまして、行政的にできるだけ早く把握できるようにいたしたいということで検討をいたしており、できるだけ早くに実施をいたしたいと考えておるものの内容でございます。
  277. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、あなたの方では、そういったプロジェクトチームみたいなものをつくって、そして、この医学の専門的な方の御意見をいろいろ伺ってと、いま聞いているとこういうことなんですね。いかがですか。
  278. 出原孝夫

    出原政府委員 そういうように考えておるわけでございます。しかも急ぐ問題でございますので、厚生省関係当局、大臣の特に強い御指示をいただきまして検討を急いでおるわけでございます。
  279. 岡本富夫

    ○岡本委員 本年の五月といいますと約半年前ですね。そのときに対策を講じながら、わりとゆっくりしていますね。このままいきますと、また検討検討で終わってしまうということですから、私は、大臣が勇断をもってこのプロジェクトチームをつくって、そして私が申し上げた、各都道府県にそういった戦傷カードといいますか日誌みたいなものがあるのですから、それを早く把握していく、その予算もつけていくという体制で、そしてその中に、必ずいままで研究をされておった森教授あたりを、もうすでに長年やっておるわけですから、そういう経験者も入れていく、こういうふうにした方がいいと思うのですが、いかがですか。
  280. 早川崇

    ○早川国務大臣 本日の委員会で、与野党を問わずこのトロトラストの問題について真剣に御意見をお述べいただきまして、もうこの段階では速やかに実情を把握して、それに応じたいろいろな対策を立てろという点につきまして御激励をいただきました。  従来、この問題は、患者というのは余り実態を知ることを好まない性格があるのです。ですから、つい厚生省も従来は、これはなかなかむずかしい、肝臓がんにも関係するのでというので、実態把握をおくらしてきたという点もわからぬことはない。しかし、これだけマスコミその他を通じてはっきりわかって不安を持っておられる方が多いわけですから、本日の委員会で示されました諸先生方の意見を体して、速やかに実効の上がる実態調査を開始する、これについては予算も惜しまない、こういう覚悟でおります。
  281. 岡本富夫

    ○岡本委員 非常に前向きな答弁をされまして、私もあなたの人格に非常に尊敬をいたしております。  ただ現在、その援護法によるところの救済措置、これも現在の救済については患者の症状を診るだけでして、がん患者のそのがんの病状を診てないんですね。だから、救済がそこまでいかない。ここのところも、さらに進んで今後の援護法の取り扱いについて注意をお願いしたいと思うのです。  そこで、どうも見ていますと、医療は医務局、援護の方は援護局、これがこのトロトラスト患者の発見、それから救済あるいは治療の方法を研究するという責任体制のようですが、この責任をお互いになすり合いしておったのでは話にならない。ですから、この点どこが責任を持つのか、ひとつお伺いをしておきたいと思うのですが、いかがですか。
  282. 出原孝夫

    出原政府委員 旧軍人方々の、特にこういった傷病を持っておられる方々援護につきましては、これは私どもの方の援護局の責任でございます。なお医学的に究明されるべき分野が非常に多うございますので、私どもの方から、医務局なりあるいは省を離れましても、専門に研究をしておられる方にいろいろ御協力をお願いして事を進めていく、そういう意味におきまして、私は、厚生省を挙げてお願いをしなければならない事柄であると思っております。  ただ、その過程におきまして、事務当局の間に意見のそご、あるいはお互いに引っ込み思案になるというようなことについての御批判なり風評があったとすれば、私ども非常に遺憾だと思いますので、これは私どもも議論の調整の過程におきましては、お互いに各局意見を率直に述べ合って答えを出さなければならない事柄でございますので、そういう意味におきましては、十分論議を闘わすべきであると考えておりますけれども、それがいま申し上げましたような責任回避であるというような受け取られ方ということについては、非常に残念なことでございますので、そういうことのないように十分自戒をしてまいりたいというふうに思っております。
  283. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま援護局が責任を持ち、そして医務局の協力を得てやっていく、こういうようにお聞きをいたしましたが、科学技術庁の予算なんかを使ったらどうかというふうなこともありますけれども、これは私、やはり厚生省のプロパーの仕事だと思うのです。これは科学技術庁の仕事じゃないと私は思うのです。ですから、厚生省で予算をとってやっていかなければならない。その時点において、患者になった方々のこれまたいろいろ大切な治療なんかを考えて、将来の原子力問題の一つの大きな指針にしていくというようなことになると、やはり科学技術庁からもあれしてもよろしいけれども、これはやはり厚生省プロパーの問題です。厚生省で取り組んでいく、厚生省の予算でいく、こういうふうにしてもらいたいと思うのですが、これを最後にお聞きしておきたい。
  284. 出原孝夫

    出原政府委員 先ほど先生から御指摘がありましたように、西ドイツでは非常に大がかりな研究を進めておるということも私ども承知をいたしております。それは先ほど先生の御指摘がございましたように、将来の原子力の利用等とからめまして、人体の中に蓄積される可能性のある放射性物質にどのように対処していくかという大きなプロジェクトの中の一環として、このトロトラストの問題も非常に重要な意味を持っておるという意味での研究開発がなされておるというように承知をいたしております。そういう意味では、私どもは、やはり厚生省のからに閉じこもらないで、全般的に御協力を得ることには十分努力をいたしたいというふうに考えるわけでございます。  なお、この研究の進展に伴いまして、厚生省自体がまた予算措置をする必要があるというふうになってまいりましたら、これは当然私どもの責任において考えるべき事柄であると考えております。当面いま申し上げましたような事柄での進捗をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  285. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたの答弁を聞いていると、どうも現在の予算措置で十分なようで、将来必要になればひとつ考えていこうというようにいま御答弁あったんですね。いままで出している予算を見てみなさい。十分でないことは決まっているわけでしょう。これは厚生省プロパーでやろうとすれば、こんな予算ではできない。だから、次の予算にはやはり予算要求もして、そうして真剣に、厚生省挙げてこの問題に取り組んでいこう、こういう決意がなければだめですよ。いま聞いていると、必要があればひとつ予算もつけてなんて、必要がなかったらこんなことを言う必要はないんですからね。大臣ひとつあなたの前向きの答弁を……。
  286. 早川崇

    ○早川国務大臣 全く厚生省の問題でございます。厚生省独自でこの問題に対処していきたいと思います。
  287. 岡本富夫

    ○岡本委員 あと二点だけお聞きして終わりたいと思うのです。一つは、海外引き揚げ者の皆さんの援護措置、これは厚生省あるいは援護局でどういうように今後考えていくのか、ひとつこの点についてお聞きしておきたいと思うのですが、いかがですか。
  288. 出原孝夫

    出原政府委員 特に現在の海外の引き揚げ者の方は、中国からお帰りの方が非常に多いわけでございますが、二つございます。一つは、一時帰国をされて、またいわゆる里帰りでございます。それから一つは、日本に帰ってきて、こちらで永住するというように考えておられる方がございます。それぞれにつきまして、現在おられるところからこちらへ帰ってこられる旅費につきましては、私どもごめんどうを見ておるわけでございますが、なお、こちらへ帰ってからそれぞれの落ちつき先に行かれるところまで私どもの方でごめんどうを見ております。  なお、その後の生活につきましては、引き取り先のある方もいろいろございますし、それぞれの生活の状況に応じまして、現在の社会保障制度の中でそれぞれの生活が立つように、各方面での施策をお願いしておるところでございます。
  289. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣、この問題は、私は日本の国の将来を考えまして、こんな狭い国で一億二千万、三千万というような、これではとうてい生活できなくなってくる時代が来ますし、それから、やはり日本一国だけでは生活ができない。すなわち諸外国との友好と同時に、今度は諸外国にどんどん出ていかなければならぬ。それを昔のように、あんな農業の移民とかということでなくして、本当に技術を持った人たちがどんどん出かけていって、向こうの国のためになっていく、それこそ日本と諸外国との友好なのであって、こういうものができるのでなければ生活ができなくなる。あるいはまた平和も保てなくなると私は思うのです。それには、やはりいま引き揚げてこられた方々を大切にして、引き揚げてこられてもこうなんだというような一つの方向づけが必要だと私は思うのです。  それからもう一点は、水道環境部長来ていらっしゃいますね。——町営の水道事業があるわけですね。町に県道が通っている。この県道に、いままでちょうど水道本管が通っていた。そうすると、県道が拡幅されるということになると、一番端にあった水道管が真ん中になるわけですから、どうしても移設をしなければならぬ、こういうことで相当な持ち出しが町で行われているわけです。これが結局は水道料金にはね返っていかなければならないというような町がたくさんあるわけです。こういうことにはどういう見解を持っておるのか、この二点をひとつお聞きして終わりたいと思うのです。まず大臣の方から……。
  290. 出原孝夫

    出原政府委員 大臣がお答えになります前に、私から簡単に申し上げます。  引き揚げの方につきましては、戦時中海外に出ておられた方で未帰還になっておられる方につきまして、いま申し上げたような措置をとっておるわけでございます。ただ、一般的な海外渡航者の帰国につきましては、現在、厚生省自体の所管から外れておりますので、私どもの方でその手当てはございません。
  291. 早川崇

    ○早川国務大臣 いま局長が一応申されましたとおりでございますが、お説のように、将来を考えますと、引揚者の処遇という問題は、大変大事な問題だという認識は持っております。
  292. 国川建二

    ○国川政府委員 ただいまの先生の御指摘になりました問題ですが、通常道路の下に水道を敷設する場合には、道路の占用の許可を得るたてまえになっております。それで、場合にもよりますけれども、道路の占用許可条件になっている場合は別にいたしまして、予期されない場合でそういう工事が必要になったときには、一般的には水道事業者と道路管理者の間でその間の費用の負担について話し合いが行われて、適正な負担が行われているわけでございます。私どもの方といたしましても、個々の事情に応じまして必要な話し合いのもとに、占用権に基づく工事ではございますけれども、適正な負担が行われるように指導いたしております。  また、そういったケースにつきましては、担当の方といたしましては、建設省の方ともいろいろ相談を続けているところでございます。
  293. 岡本富夫

    ○岡本委員 では、これは一遍要求しておきますから、あなたの方でひとつ……。これは兵庫県の淡路島にあります五色町という町ですが、これが四十八年は七百三十万、四十九年が八十万、五十年が二百八十万、これは非常にわずかな金額のようでありますけれども、水道事業にすると小さいところですから非常に負担が多いんですね。それで、県は道路だけ広くして、あと水道は町と、こういうことになっている。だから、あなたの方で、ひとつこの点はよく県とも話し合い、調整をとってやってもらいたいと思うのです。あとまだ大分これからの計画があるが、これでは水道事業がやっていけないという要求があるわけですから。これは、また後でぼくの方でその結果をお聞きすることにして、きょうはこれで終わります。どうも委員長、長らく御苦労さまでした。
  294. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 次回は、来る十九日火曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十三分散会