○土井委員 きょうは私は、大きく分けまして二つのことについて質問を、ただいまからさせていただきます。
まず、あたりで
開発事業が進んでまいります。そうしますと必ず
環境保全の立場から住民運動が
全国津々浦々で起こるのは、ただいま通常であります。かつて私は、このことについて七月十六日の当委員会においても質問をいたしましたが、ひっきょう住民運動というのは、ある一党一派に属しての運動ではなくて、純粋に自分たちの命や、いまの生活を守っていくという立場から、また
環境保全という立場から展開される大衆運動だというふうに考えなければならない、そういうふうに思うわけですね。
ところが、きょう私ここに
一つの文書を持ってまいりましたが、それは五十年の三月に日本経済
調査協議会から出されました「住民運動と消費者運動」副題といたしまして「その現代における意義と問題点」という一冊の小冊子であります。この中身は、取り上げ方によって、いろいろ違いは出てまいりましょうけれども、この一冊の小冊子を物された編集者の方々や、また協力者の方々、この面々を見てまいりますと、その方々の中には鹿島建設の方であるとか日本テレビ放送の社長であるとか、また王子製紙の社長であるとか日本
開発銀行の総務部の方であるとか新日鉄の重役の方であるとかいうふうな方々がずっと並んでおられまして、そして特に通産省の役人の方も中に入って、特に主査というのは通産省の顧問をなさっている方であります。したがいまして、これはどっち向けに編集されている中身であるかということは、このリストを見ただけでも非常にはっきりしてくるわけであります。
ところが、この中身を見てまいりますと、これには種々の問題がございます。詳しく一々申し上げますと、これはかなり大部のものでございますから時間的余裕がございませんが、たとえば、いろいろな住民運動が起こりますけれども、特に、いろいろなプロジェクト、
開発計画の具体的な事例に即応しながら「住民運動の主体と
関係者」というリストアップがあるのです。それは具体的に書いてある。それからまた「政党との
関係」ということについては、朝日新聞社のアンケート
調査などを持ってまいりまして、共産党が八・二%だ、社会党が八・一%だ、公明党が四・〇だ、自民党が一・八%だ、民社が〇・三だというふうなぐあいに、ここの中では提示をされているわけですね。片や、また日照権なんかの問題に対しては「支援政党と件数」というのについて、これまた自民党から社会党、公明党、共歴覧、民社党それぞれ、いろいろ高住協の調べに従って四十八年度のデータをここの中で駆使して述べておられるわけです。
ところが、福島県の浪江町の棚塩原子力発電所の反対運動について記述されている部面が、かなり具体的にあるわけですが、この
部分を見ますと、ほかの政党については一言半句触れないで、特に、この
部分については社会党と共産党についてのみの記述の
部分があるわけです。たとえば社会党に対しては「公式見解では、原発は原子力の軍事利用へとエスカレートする危険があり、平和主義の立場から、原発そのものに反対するという態度をとっているが、実際は、反国家独占資本主義に向けての闘争につなげるという志向が強い。」とか、共産党については「原発それ自体には決して反対しないが、現在の技術では安全性の保証に疑問であるという態度をとっており、表面だっては動かず、日本科学者
会議福島支部が地元の教員らに組織の拡大を図っており、住民運動の間でも理論的貢献に対する評価は高く、
影響力も高い。」こういうふうな記述があるのです。こういうふうな記述からいたしますと、やはり政党が運動に協力ないしは、ここには介入という言葉が響いてあるわけですが、その政党の介入ないしは協力体制に対して、ある予断を抱いて事に処するというふうなおそれなきにしもあらずです。また、別の
部分では、これは、そこに参考資料として差し上げましたけれども、まさに、この棚塩原子力発電反対運動の経緯について、何と具体的に非常に詳細に日付入りで運動の動きが一々ここに記述してあるのです。私は、これは少し問題だと思うのです。
こういう記述の
部分について見てまいりますと、それぞれは、どこから引用してきたかというのが実は書いてあるので、そこの
部分に目をやりますと、社会工学研究所「地域
開発政策と住民運動」括孤書きで(内閣
調査室委託)と書いてあるのです。したがって、この出典は、内閣
調査室の方が委託された社会工学研究所のおつくりになった資料に従って、これこれがここに掲載されておるという
かっこうになっているわけですね。もちろん、この原典に当たってみましたら、これは「地域
開発政策と住民運動」という表題ではなくて、「住民運動の現状とその対応に関する研究」とこうなっております。
しかし問題は、この日本経済
調査協議会では、ほかに「提言」という
部分などを見ますと、いろいろ紛争が起こってしまっては遅いので、紛争以前に、やはりそれを
予防する
措置というのを講ずる必要があろうというふうなことを、るる述べられながら「技術基準の設定、
環境アセスメントの具体的手法の確立などの制度上の
改善が必要である。」こういうことを述べていらっしゃるのは至極当然のことだと思うのですが、最後の締めくくりの
部分を見ますと「住民運動といい消費者運動といい政策参加という側面をもっている。それらは、社会の意識形成に関与し、経済社会運営にかなりの
影響をもつようになっているが、これらの団体は本来その基礎は脆弱である。これらを健全な方向に育て、社会におけるバランスを保ち得るよう多角的な参加システムの一環として位置づけ、理性と英知と協調により、健全な経済社会運営を実現していく必要がある。」というのが最後の締めくくりになっているわけです。したがって、健全な方向にこれらの運動を育てていかなければならないというふうに、この先ほど申し上げたような方々が中心メンバーになりながら、提言を企業にしていらっしゃるわけですね。
私は、これ自身、大変問題だと思いますけれども、この裏づけになっている資料が、またさらに私は問題視されていいと思うのです。これは考え方によったら憲法の二十一条が保障している結社の自由、表現の自由、プライバシーに対しての侵害ということになりはしないか。自由に対しての侵害になりはしないか。もちろん長官は御存じのとおりで、憲法十三条では、国政の上で個人として国民はすべて最大限に尊重されるという中身がちゃんと明記してございますし、二十一条では「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」とちゃんとあるのですが、こういうふうに具体的にいろんな運動の
内容に、いわば介在したような
かっこうでデータが駆使されるということになってくると、私はこれは問題点が出てこようと思うのです。この点は、どういうようにお考えになりますか。