○中江
政府委員 御質問の三点について簡潔にお答え申し上げます。
まず、金日成主席の身辺に何かがあったのではないかといううわさは私
ども耳にいたしましたけれ
ども、最近は北朝鮮の党大会にも出席して報告をしたという情報もございまして、金日成主席の身辺そのものについて何か異変があったというようなことはないように思っております。ただ、その路線について変化らしきものがあるかどうかという点でございますけれ
ども、これは、八月のコロンボの非同盟
会議のとき、あるいは板門店事件の処理、さらには
国連総会に対する対策、そういうところで一般に予測されていたところとは違った動きというものが散見されたためにいろいろ憶測が行われております。しかし、これがどういう背景で、どちらに
向こうとしているのかということをまだ断定するといいますか、明確に申し述べところまでは情報はございませんが、最近板門店で開かれました休戦協定に基づく軍事
委員会の席上で北朝鮮側が、いままでは冒頭に激しく非難しておりました在韓米軍の撤退要求というものについて、今回は言及がなかったというような徴候もまた最近あらわれておりますし、私
どもは少し注意深く見詰めていかなければならぬ、こう思っております。何分、閉鎖された社会でございますので情報が足りませんので、なかなか的確な判断がしにくいのが私
どもの
一つの悩みでございます。
第二点の
日本人妻の問題は、これは当
委員会でも何度か取り上げられまして、私
どもも
日本赤十字社とも情報を交換しながら、人道的な問題ですので、何とかいい
方向に発展すればいいがと思っておりますが、現在までのところ
調査の依頼件数は三百八十四件ございまして、その中でこれは理由がある、根拠があると思われるものについて、いろいろ日赤を通じて北朝鮮の赤十字社にあてて消息の確認の問い合わせをしておりますのが現在までのところ百六十三名になっておりますけれ
ども、残念ながらどの
一つについても
日本側で満足し得るような回答は寄せられていない。したがって、
向こうに渡っている
日本人妻がいろいろ苦しい生活に悩んでいるという断片的な情報はございますけれ
ども、それをそれじゃ赤十字社を通じてでも何とか人道的に配慮できないかという私
どもの期待はまだ満たされていないという
状況で、はなはだ遺憾なことだと思っておりますが、これは赤十字社ともさらに
協議をいたしまして、何とか実現の
方向に持っていきたいということしか申し上げられないのは遺憾なことだと思っております。
第三番目の松生丸の事件は、これは山田
先生がかねがね御関心をお持ちいただいておりますが、私
どももあの事件が
日本の
関係当局の
調査によれば、明らかな国際法違反の行為であるということで厳重に抗議を申し入れ、またこれに伴う損害賠償につきましては、ある程度個人的な見舞い金その他の措置は
先方はとりましたけれ
ども、なおあり得べき損害の補償については権利を留保しているという
段階でございまして、これが国際的に補償を要求することになるのかあるいは国内的に補償されることになるのか、その辺のところは被害者の船長さんからもいろいろ
お話を伺っておりますけれ
ども、まだ具体的な形では上がってきていないということで、国際法的には厳重な抗議をし、
先方が一人二万ドルでしたか何でしたか見舞い金を出したとか、あるいは完全に治癒するまで負傷者については手当てをしたということはそれなりに評価しておりますけれ
ども、あり得べき損害補償の権利は留保したままで日朝
関係の
推移を見守るというのが現状でございます。