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1976-10-08 第78回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月八日(金曜日)委員会において、 次のとおり小委員及び小委員長選任した。 多国籍企業等国際経済に関する小委員       石井  一君    粕谷  茂君       塩崎  潤君    竹内 黎一君       水野  清君    毛利 松平君       山田 久就君    河上 民雄君       土井たか子君    堂森 芳夫君       津金 佑近君    渡部 一郎君       永末 英一君 多国籍企業等国際経済に関する小 委員長             水野  清君     ————————————— 昭和五十一年十月八日(金曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 藤本 孝雄君    理事 塩崎  潤君 理事 竹内 黎一君    理事 水野  清君 理事 毛利 松平君    理事 河上 民雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 津金 佑近君       近藤 鉄雄君    正示啓次郎君       深谷 隆司君    綿貫 民輔君       渡辺 紘三君    川崎 寛治君       渡部 一郎君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         外務政務次官 小此木彦三郎君         外務省アジア局         長       中江 要介君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    井口 武夫君         外務省アジア局         次長      大森 誠一君         外務省アジア局         北東アジア課長 遠藤 哲也君         資源エネルギー         庁石油部開発課         長       箕輪  哲君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 委員の異動 十月八日  辞任         補欠選任   安倍晋太郎君     深谷 隆司君   坂本三十次君     近藤 鉄雄君   長谷川 峻君     綿貫 民輔君   原 健三郎君     渡辺 紘三君 同日  辞任         補欠選任   近藤 鉄雄君     坂本三十次君   深谷 隆司君     安倍晋太郎君   綿貫 民輔君     長谷川 峻君   渡辺 紘三君     原 健三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置並びに小委員及び小委員長選任  の件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚(だな)の北部境界画定に関する協定及び  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚(だな)の南部共同開発に関する協定の締  結について承認を求めるの件(第七十五回国会  条約第六号)      ————◇—————
  2. 藤本孝雄

    藤本委員長 これより会議を開きます。  この際、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  国際経済動向、特に多国籍企業の現状を調査し、必要な措置の検討を行い、わが国外交政策の樹立に資するため、小委員十三名よりなる多国籍企業等国際経済に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 藤本孝雄

    藤本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、小委員及び小委員長選任につきましては、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 藤本孝雄

    藤本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  それでは小委員に       石井  一君  塩崎  潤君       竹内 黎一君  水野  清君       毛利 松平君  粕谷  茂君       山田 久就君  河上 民雄君       堂森 芳夫君  土井たか子君       津金 佑近君  渡部 一郎君       永末 英一君を指名し、小委員長には水野清君を指名いたします。  なお、小委員及び小委員長辞任の許可及びそれに伴う補欠選任委員辞任に伴う小委員及び小委員長補欠選任並びに、小委員会において参考人より意見を聴取する必要が生じました場合には参考人出席を求めることとし、その人選及び出席日時その他所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 藤本孝雄

    藤本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  6. 藤本孝雄

    藤本委員長 この際、河上民雄君より議事進行について発言を求められておりますので、これを許します。河上民雄君。
  7. 河上民雄

    河上委員 すでに御承知のとおり、韓国金大中氏の獄中における病状が非常に悪化していると伝えられておりますので、私は、政府において、これは外交ルートを通じて実態を調査することを求めたいと思っております。その点委員長において取り計らっていただきたいと思います。  そしてなお、当委員会は、金大中事件が起こりまして以来、この事態を憂慮して論議を重ねてまいりました。そうした当委員会といたしまして、このような金大中氏の病状の悪化に伴い、政府に対ししかるべき措置を要求する、そして人権問題としてこの問題を解決するように求める決議を当委員会として行うべき時期が来たように私は思います。去る九月二十四日、アメリカの下院のいわゆるフレーザー小委員会におきましてもおよそ同趣旨決議がなされておりますので、私は、日本外務委員会といたしましても当然そういうことが必要かつ適切であるというふうに考えております。よって、委員長におきましてお取り計らいいただきますようにお願いをして、私の意見発表を終わりたいと思います。
  8. 藤本孝雄

    藤本委員長 ただいまの河上君の御発言趣旨につきましては、理事会におきまして協議をいたします。      ————◇—————
  9. 藤本孝雄

    藤本委員長 第七十五回国会から継続になっております日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸(だな)棚の北部境界画定に関する協定及び日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部共同開発に関する協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  お諮りいたします。  本件の提案理由説明につきましては、すでに第七十五回国会において聴取いたしておりますので、これを省略することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 藤本孝雄

    藤本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ————————————— 日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部境界画定に関する協定及び日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部共同開発に関する協定締結について承認を求めるの件   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  11. 藤本孝雄

    藤本委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。水野清君。
  12. 水野清

    水野委員 ただいま同僚の河上委員からも金大中氏の病状、その他について議事進行として御提案がありましたが、大陸棚条約の審議をするに当たりまして、私はこの最近の日韓関係あるいは朝鮮半島全体にわたっての諸問題を外務大臣その他関係者からまず伺いたいわけであります。  御承知のように、金大中氏が東京で白昼拉致をされてから一二年有余になっております。その後金大中氏は、民主救国宣言事件首謀者の一人として懲役八年の判決を受けております。しかし、金大中氏の人権回復という問題は、日本にとってこれは責任があるわけであります。御承知のように、金鍾泌元首相が日本に来られまして、政治決着をつけておりますが、そのときの内容について、詳しくは申しませんが、そちらで御承知のはずであります。日本にとって責任があるわけであります。単にこれは韓国の主権内にある、韓国国内問題だというだけでは、私は済まされない問題だ、こう思っておりますが、外務大臣としてはどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
  13. 中江要介

    中江政府委員 三年前の金大中事件決着については、いま水野先生がおっしゃいましたようなことで、外交的には決着をつけた。そのときに金大中氏の身柄の問題ということで一つ了解事項がありまして、これも御承知のとおり金大中氏は、一般韓国人と同様に出国を含めて自由であるということを韓国側日本側との間で了解に達した、こういうことでございますので、その了解がそのとおりに守られているかどうかという点については、日本政府は絶えず関心を持ち続けておりますし、また、それがその了解どおりに取り扱われているということについては、日本政府にもそれだけの責任が御質問にありましたように存在すると思います。この点につきましては再三国会などで申し上げておりますように、折に触れて東京でもソウルでもあらゆる適当な機会に、日本政府としてこの了解については関心を持っている、それが守られているんだろうねということは韓国側に念を押して、そのたびごと韓国側では了解事項には変更はない、そのとおりに了解して処遇している、こういう回答であるわけです。ところがことしの三月一日の民主救国宣言事件に関連して金大中氏がいま拘置所にいるという事態、これ自身は、全く金大中氏が日本から韓国に拉致されてから後で独自に起きた事件で、これを韓国側大統領緊急措置第九号によって処理しているということで、第一審の判決は出ましたが、いままだ控訴中ということで裁判も係属中であるわけで、この事件そのものを取り上げますと、これはやはり純然たる韓国国内問題であるというのが私ども認識でありまして、政府としましては、三年前の金大中事件外交的決着の際の了解事項についての関心は引き続き持ち続けている、こういうことでございます。
  14. 水野清

    水野委員 いま中江さんがお話しのように、一般人と同じように出国の自由を含んでいるという日韓両国間の了解事項というものは御承知のようにあるわけであります。しかし、実際には金大中氏はソウルにおいて過去の大統領選挙選挙違反でしたか、そういう問題、さらに救国宣言事件、この二つの事件関係をしているから、それの結論がつくまではだめなんだ、たしかこういういきさつでしたね。ところがこの救国宣言事件判決というのは懲役八年であります。そうでしょう。事実上、これは日韓両国における政府間のきちんとした了解事項が凍結をされてきておる、私はそういうふうに理解をするわけです。もちろん金大中氏も韓国国内法の範囲できちんと生活をしなければならぬ。これは人の国でありますから、そこまではとやかくは言いませんが、私は、最近外務省がそういうことについて韓国政府にきちんとした話を本当にやっておられるのだろうか、むしろ日韓両国了解事項というのは最近事実上ほごになっておるのじゃないか、こういう気がするわけです。外務大臣、このことについてどうお考えでいらっしゃいますか、ひとつ大臣からできたら……。どうも私はほごにされておるように思うのですが、そうではないとお思いになりますでしょうか、どうですか。
  15. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまアジア局長が申し上げましたように、金大中氏は韓国人として出国を含めて一般的な取り扱いにおいて何ら変わるところがないことになっておるというわけでございますが、その金大中氏がたまたま三・一民主救国宣言事件関係いたしまして、八年の懲役判決を受けた、資格停止も八年であるということは、これはまあ言ってみれば韓国内の問題でございまして、われわれとすればその韓国内の決定についてとかくのことを言う立場にはないわけでございます。しかし、私は水野さんのおっしゃるお気持ちについてはいろいろ考えさせられる点があると存じております。就任早々でございますので、余り断定的なことは申し上げにくいかと思うのでございますが、お気持ちはよくわかる、こう申し上げさせていただきます。
  16. 水野清

    水野委員 新聞報道などで伝えられるところでは、金大中氏の奥さんが面会に行ったときに、非常に金大中氏は衰弱状態であった、何かはって出てきたというような新聞記事も伝えられております。しかし一方、先日の参議院予算委員会でしたか、社会党の田英夫君の質問に対して中江さんは、いや、いまそういう生命にどうということはないのだというふうにも答えておられます。それについて外務省はそれこそきちっとした調査をしておられるのか。日本政府としては金大中氏の基本的人権について、いわゆる自由については重大な関心があるわけでありますから、それ以上の、もし病状が悪化して獄中で死ぬというようなことでもあれば、これはやはり両国に非常に、韓国のいまの政府とどうとかという問題でなくて、私は、大きな禍根を残すし、あるいは国際的な世論としてもほっておけない問題になると思うのです。そういう意味外務省は、それでは拘置所内における金大中氏の健康についてどのぐらいちゃんと関知をしているのか、具体的にどういう連絡があったのかというようなことを少し詳しく伺いたいのです。
  17. 中江要介

    中江政府委員 いま水野先生も御指摘のように、金大中氏の問題というのは、単なる一韓国国民の問題以上に、外交的にもうすでに日韓両国のみならず、アメリカなどでも注目されている問題ですので、私どもも、ただ三・一民主救国宣言事件国内事項だということだけで、知らぬ存ぜぬというわけにはいかないという認識は持っておるわけです。しかし、他方拘置所内韓国国民健康状態について、日本政府外交経路を通じて正式に政府間の問題として介入していくといいますか、直接の関心を具体化していくということは、これはまた国と国との関係としてはなかなかできにくいことでありますので、政府としていまやっておりますことは、そういう方法でなしに、いろいろなルートから、一部の新聞に報ぜられたようなことが事実であるかどうかということについては八方努力をして情報を集めてはおるわけです。それを詳しく一々言えと言われますと、これはまあ情報を提供してくれた方の立場もございますし、なかなか限度がございますけれども、その中には、先般参議院予算委員会で私が答弁いたしましたように、差し迫って金大中氏の生命に危険があるとは思えないという相当確かな情報もあったわけでございます。また、ほかにこういう情報もあるわけです。それは、金大中氏はかねがね神経痛という持病を持っておりまして、これが拘置所の中の生活の中ではよくなろうことは考えられませんし、むしろ悪化しているんではないか。それで、病院に入るなり治療を受けるなりという、そういうことを願い出るというか、考慮してはどうかということに対して、金大中自身としては、むしろ拘置所の中で最後までがんばるんだ、こういうふうに言われたというような情報もあったりいたしまして、そういうところに、日本政府の意思としてどうしろこうしろということはなかなかむずかしい。私どもがいままで得ておりますところでは、健康状態は決してよくはないということでありまして、この点については、今後ともいろいろのところから、真実がどうであるかということについては私ども承知しておきたいという気持ちでおります。金大中氏夫人にも直接会って聞いてこられた話なども、私ども承知しておるわけです。
  18. 水野清

    水野委員 病状が大したことないというふうにも理解しておられるようですが、このことに関しては、万一、金大中氏が獄中で死ぬというようなことがあれば、これは万一ですよ、これは私は、日韓両国における了解事項にかなり抵触してくる可能性があるわけです。そうでしょう。それは人間ですから自然死をすることもありますが、そうでなくて、獄中で、たとえば取り調べにおいて不当な——そういうことかあるかないか知らぬけれども、不当な取り調べを受けたとかそういうようなことがあって、あるいは非常に生活条件が悪くて、もともと神経痛だとかいろいろな——血圧も高いのですねあの人は。そういう意味において、不当な取り扱いを受けて病状が進行して、その結果死亡するというようなことがあった場合には、私はそういう簡単な事件では終わらないと思うのです。しかも、その際に日本外務省は何をしていたのだということを、これは必ず言われます。中江さん、これは言われます。ですから、日本政府として韓国政府に、金大中氏の健康状態については重大な関心を持っている、これだけは私はきちんとおっしゃっても構わないことだと思うのです。どうですか。
  19. 中江要介

    中江政府委員 これは先ほども私が申し上げましたように金大中氏の健康に関心を持っているということの意味は、三年前の了解事項がそのとおり守られていなければならないという、むしろ一般韓国人と同じに出国を含めて自由であるということを韓国側了解された、それが間違いなく守られた上でのことであるかということが実は根本にあると思います。それが守られるためには、先生おっしゃいますように、不幸なことになれば実現し得なくなるわけですから、その点について日本政府としては、韓国政府との最高首脳間の約束について確認をするという形で、日本政府韓国政府に対して、ことしに入りましても、正式の、高い外務大臣レベルで三回に及んで先方に注意を喚起するといいますか、了解事項の再確認を求めて、韓国でもその了解事項には変わりがないということを言っておりますので、そこから先は日韓間の信頼関係に基づいて、韓国政府がこの了解事項に反するようなことになることを、いまおっしゃったように、故意にするということはこれはむしろ考えられない、考えにくいことだ。しかし、やはり日本政府としてはあの了解が実現されてなければならぬのだということで、そのことについては関心を表明し続けるということでありまして、三月一日の民主救国宣言発表事件そのものから出てくる問題は、これは例の外交的決着のときに、あの事件以前の国外における政治活動については改めてこれを問わないということがあったわけですから、しかし、三月一日の事件はまさしく外交的決着の後で、韓国国内法に触れる事件として起きたわけですから、これ自身はちょっと日本としては、金大中事件決着との関係で云々することはできない相談だ、そこのところはけじめをつけまして、もとになる、原点である了解事項についての日本政府関心はその都度表明している、こういうことで臨んでいるわけでございます。
  20. 水野清

    水野委員 大臣お願いをしたいのですが、この問題は、私は金大中氏のこの救国宣言事件、これは好ましいとか好ましくないということは人の国ですから言えないことでありますけれども、ともかく金大中氏が場合によっては非常に健康が悪化して不幸な事件にでもなれば、やはり日本政府措置というのは私は云々されるような事態が起こると思うのです。ですから、いまも、恐らく宮澤外務大臣の時代でしょう、何回か外務大臣レベルできちんとこの話し合いは、日韓両国了解事項というのは続いていますよという確認をしておられるようですが、私はこのことはきちっと口上書なり何なりで、かみしもをつけた形で要望をしておかれるということが必要だと思うのです。でき得れば、たとえば日本側から医師を派遣して、その健康状態あるいは生活状態、たとえ獄中であっても生活状態についてその実情を知らしてもらいたい、見たいというような意見をおっしゃることは、私は韓国国内問題に干渉するとは思わないのですが、ひとつ大臣としての最終的なお考えを伺えれば幸いであります。
  21. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 金大中氏の問題は、事件の発生がもともとわが国内で起きましたことでありまして、そういう関係でいろいろな経緯を経まして、ただいまの事案韓国国内における問題であるということではございまするけれども、やはり関連がそこに全くないとは言い切れないというふうに思います。  と同時に、やはり人道問題としまして、私ども政治根本にこの人道問題ということを深く考えておる者といたしまして、そういう観点から、相手国国内事案に対して内政干渉にわたるようなことはできませんけれども両国了解事項の線もございまするし、ただいまの水野さんの非常に注意深い行き届いた御発言趣旨もございますので、十分考えてみたい、かように思っておるわけでございます。
  22. 水野清

    水野委員 金大中氏の問題はこれで終わります。  次に、最近の朝鮮半島全般情勢について少し伺いたいと思うのです。  この二、三日、朝日新聞で「北朝鮮のナゾ」という特集を組んでおりますが、北朝鮮動向について、非常な経済危機に直面しているというようなことを、これは朝日新聞だけでなくていろいろなところから言われております。たとえば対外債務の累積というような問題も言われております。あるいは内部において金日成主席の健康問題はどうであろうかというような、何か余り公式の席に顔を出していないというようなことも言われております。あるいは後継者問題で権力闘争がいろいろあってというようなことも、これは昨日の朝日新聞特集にも出ております。こういうことを含めて北朝鮮動向について、アジア局長、少し時間が長くても結構ですからひとつお話を聞かせていただきたい。外務省はどのように調査をしているかということ。
  23. 中江要介

    中江政府委員 これは北朝鮮が特に最近板門店事件で示した態度、それの前に八月のスリランカのコロンボにおける非同盟会議での北朝鮮代表行動、それから国連に対する議題要請及び決議案の撤回、そういう一連の事実をつなげてみますと、北朝鮮というのは何か少しいままでとは違ってきてはしないかという疑問はだれしも持ったわけですし、私どももそれをいろいろ検討してみたわけですが、冒頭にお断りしておかなければならないと思いますことは、あの国が、閉ざされた社会という言い方がいいのかどうか知りませんけれども、いわゆる自由主義諸国のように自由に情報が取材できないし、またそういうふんだんな情報が手に入るわけでもなくて、実は向こうの政府正式発表とかピョンヤン放送とか、そういったたぐいの限られた、非常に制約のあると思われるような情報が主として情勢判断前提になる。これはやはり相当注意しなければならないだろうと思いますが、他方日本北朝鮮との間には、貿易、文化、スポーツ、その他の人事交流もおいおいあるわけでございますので、そういう北朝鮮を訪れた日本の方々から現地の生の空気を聞く、あるいは貿易に従事している商社なり企業の受けている感触、そういったものをいろいろ総合して考えざるを得ないわけで、それでもやはり他の自由主義圏諸国における情報の把握とは比較にならないぐらいに情報不足ということですので、にわかな情勢判断はなかなかできにくい、これは冒頭に申し上げておかなければならぬと思います。  そういうことを前提といたしましても、最近の北朝鮮情勢について注目される大きな問題は、まさしくいま水野先生も御指摘になりました北朝鮮における経済的な困難、これがやはり相当深刻なものではなかろうか。これはもう日本に限らずそのほかのヨーロッパ諸国でも、北朝鮮と何らかの経済的な交流を持っている国が等しく得ている印象でありますし、相当の債権がこげついているということも、これは事実の問題としてあるわけです。  もう一つは、内政後継者争いと普通言われておる問題ですが、これは私どもとして一番掌握しにくい問題で、未確認情報の積み重ねでしか判断ができないということでありまして、これはもうしばらく見守らないと、果たしてどういうことになっているのかということはわからない。  いずれにしても、そういった経済的な困難、それからもう一つ、あるいはあるかもしれない国内における政治権力闘争、そういったものが北朝鮮の当局のこの夏以来のいろいろの行動、その行動の変化、激変の中にどういう影を落としているのだろうかということを考えますと、どうも私どもは、ただ北朝鮮内部のそういう問題だけでは説明し切れない面があるのじゃないだろうか。といいますのは、やはり朝鮮半島の平和と安定というのが、御承知のように、非常に複雑に絡み合った大国のバランスというものがある程度の抑止力になり、現在における平和と安定の一つの要素になっている。そういたしますと、この背後にある大国の関係あるいはそういう大国の思惑というものが、あるいは北朝鮮の側の動きの中に反映されている面があるかもしれないということも考えてみたりしておるわけですが、これにつきましても、ちょうどサイゴン陥落の直後に金日成北朝鮮の主席が北京に行って、中国に何らか教えられるところがあったというようなことが言われたり、その後モスクワ訪問が実現される、されると言われながら、まだそれが実現していないというような問題もありますし、この数年の期間でとってみますと、北朝鮮の動きというのはなかなかわかりにくいし、どうもやはり朝鮮半島全体を支えている米、中、ソという大国の間の均衡の中に、もう一つこのなぞを解くかぎがあるのではないかというような気もしております。  ただ、そういう問題になりますと、各国とも極東の安全全体に非常に関連いたす問題ですし、その中には米中の問題も中ソの問題も入ってくるわけで、私どもの限られた情報で即断することは非常にむずかしいというようなことで、いまのところ、北朝鮮にはいままでとは違った情勢があるようだ、それのよって来るところには、経済的危機だとか背後にある大国の間のいろいろの配慮、考慮とか、あるいは場合によっては国内政治の権力闘争というようなものが一応要素としては考えられるけれども、まだ、これだ、あるいは、こうなるだろうと言うところまで断定するには至っていない。要するに、北朝鮮がいままでと違ったアプローチを、板門店事件の直後、それから国連における朝鮮問題の討議というところで示している。それをもう少し見守って、どういう路線になっていくのだろうかということを慎重に検討していきたい、これが現状でございます。
  24. 水野清

    水野委員 北朝鮮のいま広い範囲のお話がありましたけれども、やはり最近の北朝鮮の、今後についても一番いろいろ影響があると思われることは、コロンボにおける非同盟会議北朝鮮が思ったほど、想像していたほどの重要人物を代表に送らなかった。しかもコロンボ会議における北朝鮮取り扱い北朝鮮にとっては意に沿わないものであったらしい、こういうふうに言われております。その後に、御承知のように国連総会で北朝鮮側の決議案を突如撤回をしてきていますね。これは外務省に、いわゆる国連における日本の代表部か東欧のどこかの国から接触があって、取り下げることにしたというような話を聞いていますが、その辺のいきさつはお話がいただけますか。
  25. 中江要介

    中江政府委員 国連局長がいますと、その方がより正確かと思いますけれども、まだニューヨークにおりますので、かわりに私の承知しておる範囲で申し上げますと、北朝鮮が今回の国連総会に当たって決議案を提出する時点から、私どもは昨年とちょっと違うということは感じておったわけです。それは、一つ決議案の提出がなかなか早い段階からなかった。つまり、いつまでも出すのか、出さないのかはっきりしなかったということが一つと、それから出す段階で、御承知のように当初の共同提案国の数が昨年よりも少なかったし、またその共同提案国の中には十分その決議案の内容について承知していなかった国もあったというようなことも後で、その直後にわかったりいたしまして、どうも北朝鮮側の対国連対策というものが多少ごたごたしているなという感じはいたしました。で、決議案が出ましてから、北朝鮮側が昨年のように猛烈なロビーイングをして、各国を説いて回って支持を集めたかといいますと、その活動がどうも昨年に比べて緩慢な感じがいたしました。そういうことで、不毛の議論を繰り返すことは好まないということでわれわれは臨んでおったわけですが、北朝鮮決議案を出したので、やむを得ずわが方も対抗決議案を出してこれと議論をしようということで臨んでおりましたが、肝心の——肝心のといいますか、相手の北朝鮮側かいま言ったような状況でありましたので、多少の疑念を持っておりました。その中で、いま先生がおっしゃいました、ある国からそういう情報が入るよりも、さらに一週間かあるいは十日ぐらい前でしたでしょうか、やはりある国の筋として、これはどうも北朝鮮側は、ひょっとしたら今回は何らかの形で対決を避けるようなことも全く考えてないわけではないようだというような非常に漠とした、未確認ではありましたけれども情報も入っておりました。で、注目しておりましたやさきに、いま先生御指摘のようなことでいよいよ撤回することになったという情報が、たしか一日か二日前に入りまして、これは私どもとしては非常に好ましいことで、幾ら国連で不毛の対決、議論をしても、実際の本質の解決にはならないという立場でありましたので、これは結構なことになったなということで、わが方の議題要請決議案も撤回したというのが、私の知っておる経緯でございます。
  26. 水野清

    水野委員 細かいことを聞くようですが、今度の国連総会で中国もソビエトも北朝鮮の側に立ったロビー活動といいますか、そういったことも消極的だったように聞いておりますが、そうですか。
  27. 中江要介

    中江政府委員 これはどこまでが積極的で、どこまでが消極的かというのは非常に主観的な判断ですから……(水野委員「昨年よりも」と呼ぶ)昨年でも、私どもの見ましたところは、国連におけるいわゆる票集め的な意味でのロビーイングというのは、通常考えられるのに比べれば、そう活発ではなかったという感じがいたしました。中国もソ連も、北朝鮮朝鮮半島政策そのものは完全に支持するということは、これはもう折に触れて言っておるわけですが、ただ、国連における北朝鮮決議案につきましては、必ずしも、そういう意味で積極的にこれを推進するなり可決に努力をするという姿勢は、一般に思われているところから見ますと、少し何か別な考慮があるかなという感じでございました。  それが、ことしはどうかと言いますと、ことしは、先ほど申し上げましたように北朝鮮自身が非常に理解しにくいような様子でありましたし、議題撤回の時点ではまだ活発な票集め活動に至っていない状況でしたので、ことしが去年よりも低調であったかどうかということは、ちょっとにわかには判断しにくい問題だ、こう思います。
  28. 水野清

    水野委員 そこで今度は、問題はあるのですが、御承知のようにキッシンジャー提案というのがありますね。第一段階には南北朝鮮による予備会談を行う。第二段階には南北朝鮮及び米、中による四者会談をやる。第三段階には拡大会談をやっていく。これはそれ以外の近隣諸国を含めるということを意味するのだろうと理解をしていますが、これについて、これはひとつ大臣はどういうふうに評価をなすっていらっしゃいますか。
  29. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、このキッシンジャー提案というのは非常に現実的なものであって、われわれとしては歓迎をしたいという気持ちで見ております。本来、南北が一九七二年の合意のような線で立ち戻ってくれるのが一番いいのでありますが、それのためには予備会談をして、それからそれに関係する米、中が加わって、四者会談をする。しかもその後において拡大会議になる。そして両方の和合が実現するということは非常にいいと思うのでございますが、先般の中国喬冠華外交部長の演説には、これはどうも入れられないような様子であります。それから十月六日に北朝鮮の方がこれを拒否するということを言っておりますので、この提案はそのまましばらく推移したままになるかというふうに思っております。
  30. 水野清

    水野委員 大臣、続けて伺いたいのですが、今度喬冠華外相にお会いになった。グロムイコにお会いになった。グロムイコは水も飲ましてくれなかったのでしょうから、こういう話は出なかったでしょうが、この大臣の御感触及び今度の国連総会において中ソはこのキッシンジャー提案についてはどういう反応を示していますか。全く反応を示していませんか。それから先に伺います。
  31. 中江要介

    中江政府委員 これは事実の問題として、私、正直申して何も承知しておらないわけです。ですから、はっきりとどうということは、ちょっと事実に即して申し上げられませんけれども、常識的に考えられることは、先ほど申し上げましたように、中ソともに、北鮮の対朝鮮政策は完全にこれを支持するという一つの原則を持っておりますので、北朝鮮が明白にこれを拒否しました以上は、中ソとも、これを拒否といいますか、これを支持するということは少なくともないだろう、こう思います。  ただ、よけいなことかもしれませんけれども、こういったたぐいの提案日本なりアメリカなりあるいはその他の国連の国なりがいろいろ提案していくということが、一つの朝鮮問題についての当事者間の話し合いによる和平統一への環境づくりというものに多少とも役立っていけば、それはそれで意義があるではないかというふうに私どもは見ております。
  32. 水野清

    水野委員 御承知のように、ソビエトはアジア安保構想というのを、これは広い範囲で提案していますが、このアジア安保構想というのは、ある意味においては日本の北方領土も含めた国境の現状固定ということになるわけですね。ソビエトは、たてまえはいまおっしゃったように北朝鮮の言っていることを基本的に支持をしていますが、行動から見ますと必ずしもそうではない。たとえば、あれはたしかウィーンかどこかでサッカーのチームでしたか、モスクワに招待をして、実際は北朝鮮の抗議を受けて中止をしたのですか、行ったのですか、ちょっとわかりません。それから韓国新聞記者がたしかレニングラードに入国をしたというようなことが騒がれたこともあります。少なくともソビエトの韓国に対する取り扱いから見ると、私は、中国は別として、キッシンジャー提案というものがそんな空想的なものではないような気がするわけです。ソビエトの考えていること、たてまえは別として、本音とはそう遠くないようにも思うわけです。ただ、御承知のように、ソビエトがそういうかなり幅の広い行動を起こせば中国はソビエトの妥協主義を非難するような行動をとり、現実には北朝鮮が最近はむしろソビエトより中国へ近づいてきているということも御承知のはずです。ただ、そうかと思えば、たとえばさっきお話のあったサイゴン陥落直後、金日成が多くの代表団を連れて北京を訪問したときに、最初の歓迎の祝宴で行われた金日成の演説の内容が、少なくとも帰るときの共同声明その他の中にはトーンダウンしていて、このことは、かなり中国もそれじゃ北朝鮮が武力によって韓国を統一していくというようなことに賛成をしていないんだということもわれわれは客観的ですが判断できるわけですね。こういう面から見て、日本政府として、大臣どうなんでしょうか。よそのお国のことまで言っていられないかもしれませんが、日中平和友好条約もまだ結んでいないのですけれども、一昨日の外務委員会で、訪中をやぶさかでないようなニュアンスのお話もありましたが、やはり私はこの問題は日本としても隣国の韓国朝鮮半島の問題でありますから、日本日本として、手探りでも結構ですからいろんな外交的な行動をとられるということが必要だと思うのです。いかがお考えでいらっしゃいますか。
  33. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 水野さんのお考えに賛成です。ただ、前にマンスフィールド提案というのがございましたですね。あれは中国のほかにソ連が入っておるわけです。私はある時期にある中国の要人にこのことを聞いたことがあるのですが、これは非常にお気に召さぬのであります。ソ連は一体朝鮮に何の関係があるかというような非常に強い反駁がございました。やはりそういう点が一つございますのと、それから、今度のキッシンジャー提案はそういうものを受けて米中ということになっておるのだろうと思いますけれども、私は、またある時期に中国の要人に韓国のことを、あれだけの三千数百万の人民を有効に支配している韓国というものをもう少し現実に即して認めたらいいじゃないか、千七百万ぐらいの北朝鮮が主であって、韓国は存在しないようなことを考えることが現実的でないのではないかということを言ったことがあるのですが、これはもう全然いかぬ、ああいうものはアメリカの軍事力によってできている幻想的な存在なんだというような調子でございまして、やはりその間にいろいろないわゆる超大国の角逐みたいなものがあるというふうに思うのでございます。  先ほどお話しの、金日成が中国を訪問して強力な現状打破をしようと思っても、それはなかなかむずかしいよというような意味の説得をされたような話もある。それもさっきのことと関連して見ますとわかるような気もするわけでございます。わが国としては、何といいましても一番の近い国は韓国でございますし、北朝鮮の側にも最近人事往来が非常に頻繁になっている。しかし、人事往来がいかに頻繁でも、なかなか内部のことは、先ほど局長申し上げましたようにわからないのでございますけれども、そういう韓国あるいは北朝鮮についての情報日本は相当に持っているという国になることがやはり必要ではないか。いろんな表舞台に出るより前に、情報をできるだけ的確に多く持つという努力をすべきであろうというふうに考えておるわけでございます。
  34. 水野清

    水野委員 先ほど来中江アジア局長のお話のように、なかなか情報の少ない国ですから、これ以上、少ない情報で議論してみてもしようがありませんし、この問題はあれしますが、私はともかく、たとえば非同盟会議北朝鮮について完全に支持をしなかったということも一つ特徴的なことだと思うのです。やはりこの朝鮮半島の平和と安定ということは日本にとって非常に大事なことなんで、その意味においては、米ソだけでなくて、たとえば非同盟会議に参加してしかも今度の北朝鮮支持の決議案に比較的消極的だった国、たとえばスリランカであるとか、あるいはユーゴスラビアであるとか、こういったような国を通じて国際世論というものを、朝鮮半島における平和というものがいま必要なんだという国際世論を拡大していくような外交攻勢というものを、私は日本外務省持っていいと思うのです。どうもしかし、そこまで手がお回りになっておられないようだし、余りそういうことをやっていらっしゃるということも聞いてない。キッシンジャー提案は出ましたね、しかしなかなか大変でしょう、むずかしいと思います、情報としては余りありませんというようなことだけでは、私は日本の外交として少し貧弱だとこう思っております。  これ以上申し上げる必要はありませんが、ひとつ朝鮮半島の平和と安定のために、私はもう少し積極的な外交を展開されることを望んで、この問題についてはもうこれで終わりたいと思います。
  35. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 大変いいことをおっしゃっていただいたので私からちょっと一言申し上げますが、いまお話の中にあった国の非常に有力な人と私国連で会いましたときに、あのコロンボの会議の話が出まして、非同盟諸国というものはやはり平和と安定を望んでおるんだ、そういう空気の中にこの北朝鮮の代表が来て、いかにもミリタントな、アロガントな発言をして、非常に多くの支持を失ったということを言っておりました。まあこういうようなことをいろいろ拡大していくのがやはり朝鮮半島の平和のために必要だというふうに思いますので、私ども御忠告を待つまでもなく一生懸命いたしたい、こう思っております。
  36. 水野清

    水野委員 いまお話があったからこんなことを申し上げる必要はないのですが、御承知のように、北朝鮮が非同盟会議に入れたということは、これは韓国の方には外国軍隊が駐留していて北朝鮮にはいないんだというようなことが特徴的であったために加盟できたと思うのですね。しかし実際には、北朝鮮は中朝軍事同盟を持っておりますし、あるいはソビエトとの間の軍事同盟も結んでいるわけです。ですから、そういう点においてはほかの非同盟諸国のやっている、いわゆる非同盟会議の精神とはかなりずれている。しかし韓国の方に国連軍という名前でアメリカの軍隊がいるということがむしろほかの国々に反発を招いてこういう加盟になった、私はそういうふうに理解をしているわけです。それだけに私がいま申し上げたように、ことしは逆な反応も出てきたわけです。ことしのコロンボ会議では逆な反応も出てきたわけでありますから、私は日本の外交がここに能力を発揮される余地もあるし、必要も十分にある、こう思うわけです。  次に移りますが、海洋法会議の問題を伺いたいと思います。  第三次海洋法会議の第五会期において、御承知のようにことしもまとまりませんでした。しかし経済水域二百海里、大陸だなについては非公式単一草案という御承知のものでおおむね合意をされてきている こういうふうに聞いております。大体その方向は煮詰まってきたというふうに聞いています。もしこの線で、非公式単一草案で合意されるということになると、日韓大陸棚協定日本の国益を損なうんじゃないかという議論がまた最近出始めております。そこで、新しい海洋法の趨勢と大陸棚協定との関係を少し御説明をいただきたいわけです。
  37. 井口武夫

    ○井口説明員 実は第三次海洋法会議第五会期がつい二週間前に終わりましたのでございますけれども大陸だなに関しては非常に重要な討議が行われました。春会期のときに実は御説明申し上げましたように、すでに二百海里を超える自然の延長ということが有力になっておりまして、春会期にその自然の延長の外縁をどういうふうにとらえるかということで、夏会期にはさらに詳細な技術的な討議を行うということになっておったわけでございます。そうしてこれは作業部会、さらに小規模な協議グループができましていろいろ討議が行われました。その過程において地形的な基準とか地質学的な基準、さらには堆積層の厚さというようないろいろな提案が出ましたが、やはり自然の延長の外縁というものは非常にいろいろ議論がございまして、実ははっきりした結論がまだ得られなかったわけでございます。それとの関連で、二百海里を超える自然の延長については、これは沿岸国がその収益を全部独占するのではなくて、やはり国際機関を通しまして後進国の援助にも使うということで、いわゆるレベニュー・シェアリング、収益分与の方式があわせて討議されたわけでございます。これについてもいろいろ議論が出まして、相当方向づけはできたのでございますが、結論には至らなかったわけでございます。したがって、自然の延長の外縁の画定と、二百海里を超える部分の大陸だなの開発の収益というものをどういうふうに国際社会に分配するかについては、さらに来年五月二十三日に始まる第六会期まで持ち越されました。しかしながら、これは実は第二委員長の報告が最終日の本会議に出まして、そのとき第二委員長が言っておりますことは、大陸だなの広い国は、もう二百海里を超える自然の延長部分は沿岸国の主権的な権利の及ぶものであるということを重要なパッケ−ジの一環として考えているということでございまして、春会期のときにも自然の延長が有力であるというリポートが出て、それについて御報告いたしましたけれども、その方向がさらに進められたということでございます。ただ、まだ二百海里ということを主張している国もございますけれども、この夏会期の審議を通じて、自然の延長と収益分与のレベニュー・シェアリングというものがパッケージで解決するという形が方向づけられてきておるというふうに申し上げられると思います。  それから、相対している国と相接している国の大陸だなの分割でございますが、これについては実は公平の原則を主張する国と中間線を主張する国とがやはり対立がございまして、委員長がこれも最終日の報告のときに、中間線、等距離線というものが公平の原則に合致する場合には中間線あるいは等距離線というものがいいのだということで、結局、公平の原則と中間線、等距離線というものをどういうふうに調整するかということが今後の作業として残されております。
  38. 大森誠一

    ○大森説明員 海洋法会議におきます大陸だなの問題につきましては、御承知のように、いま井口参事官からも申しましたように、自然延長論というものに基づく立場と、それから一定の距岸距離というものを原則として大陸だなの範囲を決めるべきであるという二つの立場が対立しているわけでございますけれども、私ども承知しているところでは、自然延長論というものがかなりの勢力を占めるに至りつつある、こういうふうに承知している次第でございます。  それで、日韓間の問題に関連して申し上げれば、日本韓国のように相対している国との間の大陸だなの境界画定の問題につきましては、公平の原則に従って合意により行われるものとし、その場合、それが適当であれば中間線または等距離線を使用し、及びすべての関連する状況を考慮に入れて行う、こういうふうにただいまの非公式単一草案では規定されているわけでございます。つまりこのような規定で問題がございますのは、一つは果たして日本韓国との間の大陸だなが一つ大陸だなというふうに観念するか、それとも韓国側が主張していますように、自然延長という立場でこれを取り扱うかというところに一つ問題がございますし、いずれにいたしましても、この問題は、この単一草案の規定にもございますように、両国間の合意によって結局は定めなければならないということになろうと思っている次第でございます。したがいまして、私どもといたしましては、海洋法会議が今後どのようにこの大陸だなの問題について規定するようになるといたしましても、結局はこの問題は日本韓国との間の合意によって取り扱われなければならない問題である。そういたしますと、結局従来まで対立しております両国間の立場、すなわち日本側は中間線を主張し、韓国側は自然延長論の立場に基づいての主張、この相対立する主張というものは結局そのまままた持ち越されるわけでございまして、両国間の話し合いによって果たして合意が成立するかというと、これはきわめて困難な状況にある。このような状況下で、私どもは両者のそういう法的立場というものをたな上げということにいたしまして、この問題この日韓間にまたがる大陸だなの開発については共同開発という方式を使って協力してやっていこう、こういう合意に達して、それがこの協定の内容をなしているわけでございまして、私どもといたしましては、この海洋法会議の結論を待っても、決してわが方に有利になるということではないというように了解いたしているわけでございます。
  39. 水野清

    水野委員 実はこの海洋法会議の問題についてはもう少し承りたいのですが、これは次の機会にして、エネルギー庁が来ておられるから少し伺いたいのですが、率直に言って、この共同開発地域の海底油田の開発の問題ですが、エネルギー庁は科学的に非常に有望だと見ておられるのですか。
  40. 箕輪哲

    ○箕輪説明員 お答えいたします。  結論的に申しますと、日韓大陸だなの共同開発区域の石油類の賦存につきましては、有望である、可能性が非常に強いというふうに考えております。  若干御説明いたしますと、共同開発区域におきましては、御存じかと思いますが、一九六八年にエカフェの調査というのが一応行われております。石油類が存在しております可能性の強い地域と申しますのは、第三紀層に属します堆積層が厚いということが地質的な要件ということに一応されておりますけれども、エカフェの調査ではこれが確認されております。  それからさらに、エカフェの調査の後を受けまして、民間企業で行いました地震探鉱の結果でも、堆積盆の厚さというのは非常に厚い。たとえば最大六千メートルくらいになっておりますというような結果も出ておりますし、第三紀層に属するということが明らかになっております。したがいまして、地質学的に見ました石油類の賦存の可能性につきましては、可能性が非常に大きいということが言えるというふうに考えております。
  41. 水野清

    水野委員 そこで、石油があるという大前提に立つのですが、九州の沖に石油が出ても、採掘をするのにコストの問題があると思うのです。これから少し国際的な比較を聞きたいのですが、中東の石油というのは、いま非常に安いんですね。バレル当たりどのくらいで、採掘時点で伺ってもしようがないんで、日本へいまどのくらいで来ていますか。十ドルくらいになっていますか。
  42. 箕輪哲

    ○箕輪説明員 現在日本に入荷しております中近東産の原油の価格というのは、油種によって大分変動がございますけれども、バレル当たり大体十一ドルから十三ドルの間に分布しております。これはOPEC全体大体同じでございます。
  43. 水野清

    水野委員 いまイギリスが海底油田の開発をやっていますが、北海油田の油が大体どのくらいのコストで掘れておりますか。
  44. 箕輪哲

    ○箕輪説明員 御存じのとおり、石油を採掘する場合のコストと申しますのは、埋蔵油量の規模の大小、あるいは掘削深度のいかん、あるいは陸上といいますか、積み出し施設の規模の大小等によりまして場所によってみんな違うわけでございます。油田のあります場所の自然条件に非常に大きく左右されるということと、それから企業採算ベースから申しますならば、ほかに失敗した探鉱というのがどのくらいあるか、その経費をどのように見るかというような問題も絡んでまいりまして、一律的な比較というのは非常にむずかしゅうございますし、また企業側と申しますのは、御存じのとおりコストというのはなかなか公表したがらないものでございますから、的確な数字というのは申し上げかねますけれども、現在北海で行われております油田につきましては、これはオランダ側あるいはイギリス側、ノルウェー側といろいろございますけれども、大体バレル当たり六ドルないし七ドルというのがそのコストであるというふうに言われております。
  45. 水野清

    水野委員 最近新潟県の沖合いで海底から油田を掘り出したという新聞記事がありました。これは一体、バレル当たりどのくらい、あの油田に関してですね、企業全体ということじゃなく……。
  46. 箕輪哲

    ○箕輪説明員 阿賀沖の油田につきましては、ついせんだって商業生産を開始したばかりでございまして、しかも、現在はガスの方をとっておりますし、また、その全部の油井が坑口を開いているわけではございません。現在出ております油というのは、ガスと一緒に出てまいります軽質の揮発油みたいなコンデンセートと言われるものが主体でございまして、まだ原油の坑井というのは開いていないわけでございます。しかも、その坑井というのは、安定した掘削が可能になるまでかなり時間がかかりますものですから、的確なコスト計算というのはまだ聞いておりません。また、企業側としてもまだ的確な数字ははじいておらない段階ではないかと思いますが、大体バレル当たり四ドルないし五ドルという線を目標にはじいておるように聞いております。
  47. 水野清

    水野委員 そうすると、一体、この共同開発地域で油をとる場合、少なくともいまの時点ではバレル当たりどのぐらいまででないと、企業として採掘するかどうかという採算分岐点みたいなものがあると思うのですが、それはエネルギー庁としてはどういうふうに考えておられますか。
  48. 箕輪哲

    ○箕輪説明員 これは大変むずかしい質問でございまして、私も御納得いただける答弁はいたしかねると思いますけれども、現在、御存じのように世界の油の価格と申しますのはOPEC諸国が決めているに等しいわけでございます。したがいまして、企業採算的に考えますならば、OPECの値段で売れるか売れないかというのが、実は企業の採算の決め手になろうかと思います。それで、販売価格でございますから、コストとして見ます場合には、減価償却をどのように考えるか、あるいは、油田というのは、御存じのとおり減衰してまいりますから、減衰の速度というのをどう考えるか、あるいはそのほかの探鉱をどう考えるかというようなことがすべて検討されて決まるわけでございますから、販売価格よりかなり低い水準でコストがはじかれなければ採算ベースに乗らないはずであるというふうに考えております。それが現在の OPECの値段に比べましてどの程度かということは、現在ちょっと御返事いたしかねます。
  49. 水野清

    水野委員 もう一つ伺いたいのは、この地域にたとえば十億トンぐらいの埋蔵量があるということも言われていますが、埋蔵量についてどのぐらいの数量を推定しておられますか。
  50. 箕輪哲

    ○箕輪説明員 埋蔵量を確定いたします場合には、御存じのとおり、単なる地震探鉱という段階では埋蔵量の確定というのはできないわけでございます。具体的に埋蔵鉱量どのぐらいということを確定してまいります場合には、どうしてもボーリングをいたしまして、それから地震探鉱の結果明らかとなっております地質構造と照らし合わせまして埋蔵鉱量幾らということをはじいていくわけでございます。  現在問題になっております共同開発区域につきましては、物探まではやっておりますけれども、当該区域が係争地域であるということもございまして、現在物探以上の探査はやっておりません。したがいまして、その試掘をいたしましてどのぐらいのものがあるかないかということを調べておらない段階でございますので、いろいろ十億トンとかいう数字が出ておりますけれども、具体的にどのぐらいという数字はまだはじかれておらないという段階でございます。
  51. 水野清

    水野委員 お話しのとおりなので、これはかなり前提条件があっての議論なのですけれども、一生懸命掘って、OPEC諸国が石油減産してもっと引き上げる、石油の価格がもっと上がる、上がって何とかコストがミートすることもあり得るかもしれないし、逆に増産をし出して、せっかく掘って出てきたんだが、バレル当たり十ドル近いような油を掘っても、OPEC諸国が八ドルくらいでもし供給するというようなことになれば、意味をなさぬじゃないかというようなことにもなるかもしれないですね。これは、方式としてはどう考えておられるのですか。これは共同開発なんですが、日本側としては、やはり石油開発公団を通じてどこかの私企業に融資をして、その私企業の負担でやるということなんですか。この開発方式について、具体的な企業をどうするかとか、それについてはどういう構想を持っておられるか。
  52. 箕輪哲

    ○箕輪説明員 ただいまも御指摘がございましたように、油の問題というのは、OPECの動向いかんにかかわってくるわけでございまして、わが国として、エネルギー源を確保いたしますためには、やはり安定しているところから安定して持ってくるということが第一であろうと思います。そのためには、日本の近海、大陸だなで油が発見されるのが一番望ましいわけでございまして、いま御指摘共同開発区域の開発の進め方につきましても、政府としては、われわれとしては、力を入れていきたいと思っておるわけでございますが、具体的には石油開発公団を通じての出資ないし融資という形になろうかと思います。
  53. 水野清

    水野委員 かなり仮定の上のお話ですから、これ以上伺ってもしようがありませんが、これは北東アジア課長に伺いたいのですが、韓国の方で、これは五月の二十一日の日本経済に載っているんですが、どうも韓国のガルフとシェルが、大陸だな開発に消極的になったという記事がソウルからの電報で伝えられています。読む必要もないでしょうが、「韓国政府が石油開発の可能性が大きいとして積極的に進めてきた大陸だな開発が、ガルフ石油やシェル石油の消極姿勢により重大な難関に直面している。これは張礼準商工相が明らかにしたもので、ガルフ石油とシェル石油は大陸だなの探査区を一部を除き韓国に返還してきたという。また、韓国政府は第七鉱区を日本共同開発する計画であるが、日本国会大陸だな協定をこの国会承認しないため、大陸だな開発全般で行き詰まり状態に追い込まれてきたようである。」云々とこういう記事がありますが、この中でガルフとシェルの両石油会社が「探査区を一部を除き韓国に返還してきた」、こういう記事が伝えられている。これの真偽についてまず承りたいのです。
  54. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答えいたします。  御承知のとおり、韓国政府は、韓国の周辺の大陸だなに対しまして、それぞれ鉱区権を設定したわけでございますけれども、私ども調査によりますと、まずガルフは第二及び第四鉱区、これは両方とも韓国の西海岸でございますけれども、これにつきましては契約上一九七七年の四月まで、つまり来年の四月までの契約を持っておるわけでございます。  ところが、ガルフは韓国政府に対しましてこの期日以前にでも鉱区権を返還する用意がある旨を申し出ているのは御指摘のとおりでございます。  それからなお、シェルにつきましては、すでに契約の返還期日以前に鉱区権を返還しております。これは第三鉱区というところでございます。  ただ、これらの放棄ないし返還の理由につきましては、主としてこれは技術的な理由であるというふうに承っております。と申しますのは、韓国の西海岸はどうも地質学的にかなり砂の多い地域だそうでございまして、どうもボーリングをやった結果が必ずしもよくなかった、こういうふうな状況であると聞いております。  なお、韓国側が鉱区権を与えましたテキサコ、これは第一鉱区でございますが、これにつきましてはいまのところ試掘の予定はない、こういうふうに聞いております。  したがいまして、韓国側の鉱区のうちでも今後とも探査が継続されると予想されますのは、共同開発区域を別といたしますと、第五鉱区、これは比較的共同開発区域に近い鉱区でございますが、第五鉱区とそれから第六鉱区、これは韓国と対馬の間でございますけれども、シェルが持っております第六鉱区、それからカルテックスの持っております第五鉱区になろうかと思います。  ただ日韓共同開発区域につきましては、韓国側の鉱区権者はいずれもこれは日韓共同開発協定が発効すれば、協定に基づいて開発に着手する意図があるということを申し述べておるようでございまして、いままで韓国側の鉱区者が放棄しあるいは放棄の用意ありと言っておりますのは共同開発区域以外の部分でございます。
  55. 水野清

    水野委員 これは外務省当局者に申し上げておくけれども、せっかく日韓大陸棚協定がもし批准されたとしても、共同区域の中に経済的な価値がもしないということになるならば、これは何の意味もないわけで、大騒ぎをする必要もないわけです。この辺についてはここでエネルギー庁を含めてもう少し適切な情報収集というか、そういうものをやっておかれる必要があると私は思うのですが、これは御注意を申し上げておきます。いろいろやっても何のことはなかったと、こういうことではしようがないと思うのですね。  それから、次に協定の内容についてもう少し一、二承りたいのですが、中国との問題です。  中国はこの日韓大陸棚協定については御承知のように外交部声明を発表しております。あれはもう三年くらい前の一月になりましたか、この協定には反対の意向を明らかにして非難をしておりますが、その後この非難というのはどういう形になっておりますか。
  56. 大森誠一

    ○大森説明員 ただいま先生御指摘のように、中国は一九七四年の二月四日の外交部声明というものをもちまして、この日韓間の取り決めについては反対であるという立場を表明いたしております。私どもといたしましては、このいわゆる東海・黄海地域の大陸だなというものは日本、中国、韓国北朝鮮などによって囲まれているところでございまして、この大陸だなの境界の問題は、正当な発言権を持つ関係者相互の間で何らかの形で合意によって処理されることが望ましいということは言うまでもないと考えております。  ただ、そのためにはこれらの全関係者が一堂に集まりまして、全体にわたる一括合意というものを遂げることが最も望ましいわけでございますけれども、御承知のように、現在のところこれらの関係者の間にはすべて国交が存在しているという事態にはございません。また近い将来このような話し合いが実現するという見通しもないわけでございます。また他方、この石油資源の開発という問題はわが国にとっての急務であるという事情がございます。これらの事情にかんがみまして、最も望ましい方式ではございませんけれども、いわば次善の策といたしまして、まずこの問題になっております大陸だなのうちで、日本韓国の間にまたがっている部分に限りまして日韓間で話し合いを行った、その結果了解に達しましたのが、ただいま御審議を仰いでいる二つの協定であるわけでございます。日本と中国の間におきましても、この日中両国間にまたがる大陸だな境界問題については、なるべく早い機会に話し合いを行いたいと私どもの方としては希望しているところでございます。また、将来、中国と韓国の間あるいは南北の両朝鮮間においても話し合いが行われることが望ましいというふうに考えているわけでございます。  わが国といたしましては、先ほど申し述べました中国の外交部スポークスマンの声明に示されておりますように、中国が自然延長論を主張しているということ、それから中国としては、東シナ海の大陸だなは中国と他の関係国が話し合いによってこの区域をどのように区分するかを決めるべきである、このような立場をとっているということは十分念頭に置いているところでありまして、今後ともこの協定についてのわが方の考え方を誠意を持って中国側に説明し、理解を求めていきたいと考えている次第でございます。  この日韓大陸棚協定を一九七四年一月三十日に署名したわけでございますが、それ以前の時点におきましてから、わが方は中国側に対してこの協定趣旨というものを説明するということをやって中国側の了解を求めてまいりましたし、また、この中国の外交部スポークスマン声明というものが出ました後においては、なお詳しくこの協定趣旨というものを先方によく説明いたすとともに、日本側としては先ほど申し上げましたように、日本と中国の間にまたがる大陸だなの境界画定の問題についてはいつでも話し合いをする用意があるということで、累次にわたりまして先方に説明及びわが方の立場を表明してきております。  ことしに入りましてからもそのような機会もございました。中国側は、この外交部スポークスマン声明というものを出した以後におきましては、公の形でさらにこの日韓協定に反対であるという声明は特に出すというような措置はとってはおりません。ただ、私どもが累次にわたり中国側にこの日韓協定について説明をいたした場合に、先方はこの外交部スポークスマン声明に示されている中国の立場は維持しているというのが従来の経緯でございます。
  57. 水野清

    水野委員 中国の態度というのは、私も大体よく承知をしております。まあ非難はしたけれども、非常に強い非難はしないし、その後再度それをしない。私自身も個人的に中国の外交当局者と会ってこの問題に話が触れたことがありますが、およしになったらどうですかというようなことは言いますけれども、批准は反対だとかというようなことは私も聞いておりません。それはいいんですが、この協定を結んだ場合に、日本韓国との問題はそれでいいかもしれませんが、中国との問題について悪い影響を与えませんか。特に私が心配しているのは、御承知の沖繩の南の方の尖閣列島の問題。尖閣列島の帰属問題というのは、御承知のように日本と中国の間に残されている唯一の領土問題にもなるわけです。中国もいままでこの領土問題については触れないでいこうということで、日中共同声明でもなるべく避けて通った問題ではあります。しかし、この問題にだんだん私は追い込められていくといいますか、この問題を取り上げざるを得ない段階になってくると思うのですが、それについてはどういう見解を持っておられますか。
  58. 大森誠一

    ○大森説明員 東シナ海の南部に位置しております尖閣諸島につきましては、わが国といたしましてはこれがわが国固有の領土であるということであって、それについてはいささかの疑問の余地もないということで、こういう立場を従来も堅持してまいりましたし、将来におきましてもこの立場は堅持していくという方針に変わりはない次第でございます。  この尖閣諸島周辺の大陸だなの帰属問題という点に関連して申し上げますれば、わが国の立場は相対する国の間の大陸だなの境界画定は、原則としてすべての島を考慮して得られる中間線によるべきであるというのが立場でございまして、今次の日韓大陸棚協定交渉におきましても、このような立場を強く主張して、その結果、北部大陸だなの日韓間の中間線に基づく境界画定に当たりましては、このような考え方が採用されているわけでございます。また南部大陸だなにつきましても、共同区域設定に当たってはすべての島を考慮に入れて画定が行われている次第でございます。したがって、尖閣諸島と中国大陸とが全く同一の大陸だなの上に相対しているということにかんがみますと、本件協定は尖閣諸島周辺の大陸だな帰属の問題に関しますわが国の立場を何ら不利にするようなことはないというふうに考えております。  また、将来予想されます日中間の大陸だな境界画定交渉におきまして、尖閣諸島はわが国固有の領土であって、中国との境界画定に当たっては当然その基点となるべきものであるとの考え方に立ちまして、中間線による画定を主張し得るという立場は十分に確保されている、このように考えております。
  59. 水野清

    水野委員 私は、この問題はわりあいに外務省はそう思っていらっしゃるが、尖閣列島周辺において韓国ともこういう共同開発をやったんだから、中国ともまた共同開発をやるのが本当である、とれたものは半分分けなんだ、こういう先例をつくるんじゃないかという心配を率直に言うとしているのです。これについてはどうですか。これは交渉してないので聞いてもしようがないな。とにかく私はそういう心配をしているのです。これはひとつ頭に入れておいてもらいたいことです。  実は、きょうは質問をもう少し保留してまた次の質問でやりますが、昨年の五月十七日の新聞に、ガルフが韓国の与党に四百万ドルの政治献金をしたという記事が出ているわけです。御承知のことだと思います。この事件は、私は、基本的にはこれは韓国国内における問題ですからあれですけれども、少なくともこの日韓大陸棚条約というものを批准しようとして——私は、基本的にはこれは批准せざるを得ない、こう思っていますが、こういう事件が起こってきているということについては私は余り好ましい感じがしないわけです。これは御承知のように、自由民主党の中でも大陸棚条約について批判的な国会議員が何人かおられます。そういう方々の意見は、一つにはこのガルフの政治献金事件というのがあって、何となくいやだなあという漠然とした問題を持っておられます。外務省として、これは人の国で起こったアメリカ韓国との間の問題ですし、詳しいことは朝日ジャーナルの、何月号ですか——資料を私手にしております。ガルフ社の対韓政治献金報告、国外政治献金に関する同社取締役会特別調査委員会の報告、マックロイ報告と通称言うのですね、韓国関係部分の要約というのが出ております。これを読んでみると、韓国側の石油問題というのはなかなか大変な事件だなというふうに思っているわけです。これはとれた物を半分分けをして、向こうがその半分のうち、それをまたどう国内で配分されるかは向こう様のお話ですからとやかく言うべきではないのですけれども、私は非常に不愉快な感じでこの事件を拝見したわけです。これはあなた方にお聞きしてもしようがない、大臣がおられたら大臣から、これについてどう考えておられるか、この事件についてはどういうその後の経過があったのかというようなことを承りたいのですが、何か情報がありますか。
  60. 大森誠一

    ○大森説明員 ただいま先生御指摘のように、ガルフ社取締役会特別調査委員会の報告書、いわゆるマックロイ報告書と言われているものですけれども、この報告書によれば、ガルフ社は一九六六年に百万ドル、一九七〇年に三百万ドルの政治献金を韓国の民主共和党に対して行ったということが出ている次第でございます。ただ、ここで申し上げておきたいと思いますのは、ガルフ社が日韓共同開発区域において有しております鉱区権は微々たるものでありまして、これを数字で申し上げますと、日韓共同開発区域の全体の広さは約八万二千平方キロメートルでございますが、ガルフ社のいわゆる第四鉱区のごく北側の一部分がこの共同開発区域に入っているわけでございますけれども、その部分の面積は約百二十平方キロメートルということで、全体から見ればきわめて微々たるもので、実態的にはこの日韓共同開発協定というものにはほとんど関係がないというのが事実でございます。したがって、私どもとしてはこのガルフ社の政治献金と日韓協定との間には関係があるとは考えられない、このように思っている次第でございます。
  61. 水野清

    水野委員 私もきょう質問するのでマックロイ報告を読んでみたのですが、その当時この事件の主役をやった李厚洛という人だとか、こういう関係者というのはわりあいにその後韓国の現政府では失脚していますね。ですから、そういう意味においては若干いいのかなという気もするのですが、ともかくこの事件は一般的に、これは与野党を問わずに、この条約批准に当たって日本の議会で好ましい感じを与えていないことは事実です。いま言われたように、ガルフ社がこの共同開発区域に持っている鉱区権というものは非常に狭いものであるというお話を聞きましたが、そういうことについて少なくともあなた方は御説明が不十分のように私は思います。これは大きく心理的にみんなに影響を与えていますよ。少なくとも与野党を問わず相当な人たちに与えています。ですから、もう少しその説明に——私はきょうここでいま説明しろとは申しませんが、その地域であってどうであるというような説明をもう少し十分にしておかれる必要があろう、そういうことを私は注意を喚起をいたします。  委員長、これできょうは私の質問を終わりますが、まだ二、三聞きたいことがありますので、一応質問を保留として残しておきます。  ありがとうございました。
  62. 藤本孝雄

    藤本委員長 次回は、来る十三日水曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十五分散会      ————◇—————