○
渡部(一)
委員 まず
外務大臣に日中問題について
お尋ねをしたいと思います。
外務大臣は日
中国交正常化協議会の会長でもおありになりましたし、長らく自民党の中の
中国問題に対して非常に熱心な議員のお一人でもありましたし、私どもはそういう
意味で大きな期待を寄せているわけであります。
外務大臣は昨年九月訪中された後、十月二十八日付の自由新報で
中国問題について御
発言をされております。先ほども御質疑がいろいろありまして、宮澤前
大臣の覇権問題に対する四項目を踏襲するかのごとく仰せになりました。またこの自由新報の中のテーマについても触れられました。
私もう一回
お尋ねするのでありますが、この自由新報の記事の中で
大臣が言っておられることをいま省略して申し上げますから、これについての御見識をまず承りたい。
一つは、一日も早く日中
平和友好条約を結ぶことが必要であるという御認識であります。
第二は、
中国側は一九七二年の
日中共同声明の際に問題にならなかった覇権反対がどうして問題になるか。本文でおかしいと
日本側が言い出しているのは
日本側の熱意を欠いているものではないかというふうに言っておるが、私は、
日本政府が同
共同声明の原則と精神を踏み外すことなく、
早期に
条約を結ぶ
決意であると思っている。若干の工夫が要る。それは覇権の内容を突きとめることである。
昭和六年以降日本が
アジアに覇権を求めたことから、覇権に反対することは当然である。一九七二年の米中上海コミュニケも同じ表現を使っておる。
国連憲章、平和五原則の
基礎の上に諸民族が誠実な
努力をするなら、覇権を求めるというようなものはあってはならない。
条約の本文に書くと——ここが大事なんですが、
条約の本文に書くと権利義務を生ずるなどと考えないで、もっと素直に、覇権はいけないことだからこれを求めるべきではないし、覇権は反対だと言い切ったらよい。それから、覇権はいかなるものかを日中
両国が
話し合い、後で問題が起こらないようにしておくべきである。覇権に対する
中国の
理解は、聞いたところでは、実力をもって他国を侵略、支配、内政干渉、掠奪、転覆活動を行うこととのことであるようだ。次のようなことを
双方の
理解を突き合わせ、他日の問題にならないようにしたい。
一、経済上、貿易のアンバランス、たとえば日本の経済投資が多額に及んだり、
日本側の輸出が他の国よりの輸入に比較して著しく多い場合、これを覇権と言うかどうか。前掲の定義にあてはまらないと思うし、貿易立国の日本としては一般経済行為を覇権として
条約上規制されては困ると思う。
二、良好な
日米関係は
わが国外交の中できわめて重要な基軸であるが、国民の一部に日米安保により米国は
日本国に覇権を確立しているとするものがある。これも前掲定義の解釈から覇権とは言えないと思うがどうか。日中友好は反米の中で行ってはならない。
三、一部に、覇権反対と言うと日中間に攻守同盟でも結ばれるかのように考えている者があるが、
日本国憲法は自衛以外の一切の行動を禁じているのだし、日中
両国はそれぞれ社会制度を異にしているので攻守同盟などあり得ないと思うがどうであろうか。
共同声明第七項で、第三国に対するものではないとなっているから、これは日中
両国間の
条約としての
基礎である。こちらから中ソ両
大国の谷間にあってなどと問題を出すのは愚劣である。
最後に、長い将来を見通し、小手先のテクニックを排し、誠意をもって大きな
政治的
立場に立った決断を下すべきときと信ずると書いてありまして、私は、当
委員会においてこの言明を高く評価して、さきに
発言したこともございます。宮澤先生にもお伺いしたことがあるわけでありますが、このいまの話は今日このまま——当時のお
立場が違いますから、当然
立場がある程度留保をつけられるかとも存じますのでお伺いするわけでありますが、小坂外相の信念はその後お変わりになりませんものでしょうか、また、これを一歩進めてどうなさるおつもりか、伺いたいと存じます。